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生贄特急 ~始発地獄行き~

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 音があった。列車の音だ。車輪がけたたましく回転し、レールを軋ませる音だ。わけもなく鼓動を急かすような不安感と焦燥感を抱かせる音。
 風景が流れていた。車窓から見える風景はどれも決して一時一所に留まることなく過ぎ去って行ってしまう。
 臭いがあった。鉄にも似た臭い。きっと余人が嗅げばその生臭さに顔をしかめてしまうような、血の悪臭。
「う、うぅ……」
 列車の狂ったような走行音が車掌室に響く中、列車の操縦室に操縦士のうめき声が混じる。
 床に座り込んでいた操縦士は血糊で滑る運転席を掴んで、非常停止装置へと手を伸ばす。
 伸ばした手が、どろりと指先から赤混じりのピンク色の液体となって溶けた。
「ぁ、あ、あ……」
 恐怖に操縦士の声が引き攣る。
「違う、俺はお前の父親でもなければ友だちでも、違う! 嫌だ! 助け――」
 操縦士の言葉は最後までは続かず。絶叫と悲鳴になって列車の走行音に掻き消された。


「みんな、よく集まってくれた」
 石動・劒はグリモアベースに集まった猟兵たちを見渡す。
「UDCアースの事件を予知した。ある路線の列車が暴走し、このまま走り続けると多数の一般人がいる終点駅に激突し、車内の乗客もろとも大爆発で何百人もの犠牲を出す」
 その駅は当分の間は使えなくなるだろうし、被害は駅周辺にまで及ぶだろう。その事件を未然に防ぐための作戦に参加して欲しい、と劒は言う。
「列車には一般人の乗客がいる。だもんだから、列車ごと吹っ飛ばすことはできねえ。列車に乗り込んで、暴走状態から止める必要があるんだ」
 列車は緊急列車停止装置などが正常に作動せずに暴走状態にあることから、恐らくは列車内には乗客の他にもオブリビオンがいるだろうと高い確度で推測されている。
 列車への飛び乗り、乗客の保護の後に、車内に潜むオブリビオンとの戦闘を経て列車の完全停止を行う。これが今作戦の全体の流れとなる。
「基本的には列車の通過地点から力技で通過ざまに飛び乗ったり、あるいは足に並々ならぬ自信があるなら走って掴まるのが基本手段になるだろう。魔法の類で飛び移っても良い。通過地点はお前らの指定に任せるぜ」
 注意点は三つ。
 一つ。列車を何らかの手段によって一時的に減速させることはできても、完全に停車させることはできない。
 二つ。停車のために列車を攻撃することで車内の乗客に被害を与えるようなことは控えて欲しい。
 三つ。この事件は終点駅までタイムリミットがある。迅速に決着を付けなくてはならない。
「まずは列車に乗り込むこと、そしてできれば車内の安全確認を行い、一般人をその車両に避難誘導して欲しい。俺たちなら必ず大惨事を回避できるはずだ。頼んだぜ、猟兵!」


三味なずな
 お世話になっております。三味なずなです。
 今回はスタイリッシュアクションシナリオです。カッコよく描写しますよ!

 こちらは他のMSさんとのコラボ依頼となっております。
 時系列としてはそれぞれ別なので、気兼ねなく複数参加されても問題ございません。
 コラボ先は以下のタイトルです。
「生贄特急 ~こちら邪神行き~」(鍼々MS)
「生贄特急 ~斜陽のニア・デス・レールウェイ~」(煙MS)
 どちらも素晴らしいMSですので、よろしければ是非。

 こちらのシナリオでもプレイングお待ちしております!
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第1章 冒険 『走行する列車に乗り込め!』

POW   :    気合や卓越した身体能力を使って列車に掴まる。列車を気合や力技で減速させてから乗り込む。

SPD   :    速度で列車に追い付いて飛び乗る。列車の仕掛けに外部から干渉することで乗り込みやすくする。

WIZ   :    列車が減速する通過地点で待ち伏せして飛び乗る。魔術などを使用することで乗り込みやすくする。

👑11
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

デナイル・ヒステリカル
オブリビオンによって引き起こされる惨事を、見過ごす理由はありません。
それが人を助ける事に繋がるのであれば尚更。
「僕は僕の信念(プログラム)に従って行動します」

列車が下を潜る架道橋の欄干の上で待ち構えます。
【ハッキング】を使用して可能な限り列車に減速をかけ、普段と変わらない気軽さで空中に一歩踏み出し、列車の天板へ飛び降ります。
架道橋下の段差で生じる音に紛れられれば幸いです。

その後は自身に【迷彩】を施して車内へ侵入し乗客に扮装、
敵の数や目的、一般客の状態や比較的安全な車両を探すなど、
事態解決に向けて【情報収集】に勤めます。


黒白・鈴凛
暴走列車を止めるだなんて胸の高鳴るシチュエーションアルナ!
不運にも乗り合わせた乗客達には悪いが、派手にやらせてもらうアル

先ずはどうやって乗り込むか……
ま、深く考えずに飛び乗るとするネ
列車が通過する高台で笹を食べながら待って
通過する時にその屋根に飛び乗るアル
後は【怪力】で屋根を伝いながらドアまで行って中に入る

乗客達に危険が無いかを【野生の勘】で探知して、危険が無さそうなら子供とお年寄り優先で安全な場所に移動させるヨ

時間がないアル
腰抜けたりして動けない奴は担ぎ上げて連れてくアル


木目・一葉
列車への飛び乗り、不謹慎だが映画のようだ
「これは勇気がいるな」
だが怖気づいてはいられない

【WIZ】通過地点で待ち伏せして飛び乗る

列車のルートを【情報収集】で把握し、地形も確認しておく
【地形の利用】で、列車より高い建物や崖、もしくはトンネル出口の上で待ち伏せし、そこから【勇気】をもって飛び移る
その後、乗客のいる車両内へと入る
乗客には【礼儀作法】と【コミュ力】で状況説明し、避難先が仲間に確保されている場合は誘導を行う
またこの時、こっそり離れようとしている人がいたら【影の追跡者】を使用する
我々から距離をとるのなら、客に化けたオブビリオンの手先の可能性もありえるからだ

明日という日常へ、彼らを送り届ける


富波・壱子
戦闘用の人格に切り替わった状態で行動開始
時間がありませんね。急ぎましょう

先行して車内に侵入し、後続の味方の侵入経路を確保するため行動します

先回りした線路沿いのビルの屋上からユーベルコードにより最後尾車両の屋根、車内の順に瞬間移動していきます

侵入できたら車両内の乗客に呼びかけます
助けに来ました。すぐに後続の猟兵がやってきます。どうか落ち着いて、指示に従ってください

その後左右のドアを開けることを試みます
もし開けることができなくても、後部乗務員室の開き戸であれば金具を銃で破壊するなどすれば開放できるでしょうか
味方が外から車両の壁を壊すなどして侵入しそうであれば乗客に被害が及ばないよう退避を促します


夜暮・白
(襟を上げて顔を隠し)邪神教徒さん達って大胆不敵だね。早く止めたいけど…… どうやって入ればいいかな。

スマホで事前に路線と列車のことを【情報収集】して足場と飛び込む先をイメージ。【野生の勘】でうまくいけそうなところに先回りして、【地形の利用】も駆使して飛び移る! 速さがいるならブラックタールの体を活かしてバウンドボディを使うよ。

落ちそうになったら綱状のアーマーをひっかけたり、ダガーで車体を刺してこらえよう。
壊してごめんなさい。中もひどそうだしスクラップになっちゃうのかな。

上手く移れたらほかの猟兵が乗るのを手伝います。邪魔になりそうなら先に進んで、一般人を誘導しつつ敵から【かばう】ようにします。



 走行する列車に飛び乗るための最もスタンダードな方法とは何か。
 すなわちそれは「高所からの飛び乗り」に他ならない。
「鉄道ジャックって言うんだっけ。邪神教徒が犯人だとしたら、だいぶ大胆不敵だね」
 スペースシップワールドの情報端末を模したスマートフォンを操作しながら、夜暮・白はリラックスした表情で呟く。その画面にはジャックされた鉄道路線と、列車の構造などが映っていた。
「オブリビオンによって引き起こされた事件であることには変わりないでしょうね。乗客が助けられるぐらい早い段階で露見したのは僥倖でした」
 架道橋の欄干に座って、白に答えたのはデナイル・ヒステリカルだ。彼は仮想展開された情報ウィンドウを操作していた。
 時計を確認し、列車の来るであろう方向を見遣るのは木目・一葉だ。
「それよりも、事前の調査通りならそろそろ来るはずだよ。準備は?」
「そりゃもうバッチリ。暴走列車だろうと案内役として案内させて頂きますとも」
 一葉の問いかけに、デナイルがへらりと笑って答える。なら良いんだけど、と一葉はフードを目深に被った。
「暴走列車を止めるだなんて、胸の踊るシチュエーションアルナ! 乗客たちには悪いが派手にやりたいアルヨ」
 黒白・鈴凛が近くの高台に座って笹を食べながら言う。一見呑気にも見える食事光景だが、その実、彼女の丹田には気が練り上げられていた。いつでも応じられる臨戦体勢である。
「――来ました」
 富波・壱子の冷徹な言葉の直後に、列車の音とその姿が線路の向こうから姿を現してきた。彼女はピルケースからスタビライザーを取り出すと、一気に嚥下する。
「もう時間がありませんね。では、作戦通りに。私は急いで先行します」
 言うが早いか、壱子がユーベルコードの能力によって意識を向けた列車最後尾へと瞬時に転移した。
「オーライ、僕は僕の信念(プログラム)に従って行動しますから。任せて下さいよ、っと!」
 デナイルが仮想展開していたウィンドウでハッキングを開始する。接続先はまさに今眼の前で暴走している列車の走行システムだ。強固なシステムを物ともせずに、するり入り込んで列車の機構を遠隔操作する。
「入り込んだは良いけど……ああ、すぐに弾かれた! 十数秒分の減速がやっとだ!」
「それだけあれば十分アル。覚悟は良いアルネ?」
「勇気なら。今更怖気づいてなんかいられない」
 問いかけに対して素っ気なく応える一葉。それを聞いて、上等アル、と鈴凛は笑みを形作る。
「それじゃあ夜暮さん、何かあったらサポートよろしくお願いしますよ」
 座っていた欄干の上に立ち上がり、まるで道端の側溝を飛び越えるような気軽さでデナイルが列車目掛けて飛び降りる。
「こっちの心配はいらないアルヨ」
 食べていた笹をぱくりと最後まで食べると、鈴凛も飛び上がって列車へ取り付く。
「……よし、行くぞ!」
「サポートするよ」
 勇気を振り絞って決意した一葉がワンテンポ遅れて飛び降り、白もそれに続く。
 まず最初に列車の屋根に飛び移ったのは鈴凛だ。彼女はユーベルコードで強化しておいたその身体能力と持ち前の怪力でもって屋根を掴み、白く長い三つ編みをたなびかせながら壁伝いにドアへと向かっていく。
 次に飛び降りた白が飛び移った列車の屋根にダガーを刺してその身を固定し、ユーベルコードでもってバウンドモードに変じさせると、デナイルと一葉に向けたロープ代わりとなって二人の確実な着地を助ける。
「生きてるアルカー?」
「な、なんとか……」
「生きた心地はしてないですねー!」
「こっちは大丈夫だよ」
 鈴凛の問いかけに、一葉、デナイル、白がそれぞれ応える。身体能力に優れた鈴凛ならばともかく、肉弾戦が特に得手というわけではないデナイルと、気の弱いところがある一葉ではなかなかにキツい乗車方法だ。
「さすが、心配はいらないと言っていただけはあるね」
「こんなのワタシにはお茶の子さいさいアルヨ。……哎呀(アイヤー)」
 壁面伝いに移動していくと、先に車内に転移していた壱子と扉のガラス越しに目と目が合う。手指で扉を開くジェスチャーをすると、壱子は頷いてその周辺にいた乗客を別の場所へと誘導する。
「――嗨哟(せーの)!」
 壱子と鈴凛の手によって、列車の扉がこじ開けられた。わぁ、きゃあ、と車内から乗客の小さな悲鳴が上がった。
「突入アル!」
「手分けして避難誘導ですね!」
「了解だ!」
 鈴凛と壱子によってこじ開けた扉から、転がり込むようにして4人は車内へと突入するのだった。



 突入した後、それぞれ行動を起こし始める。
 突入した車両での避難誘導を担当するのは壱子と一葉だ。壱子は乗客たちに状況と事情を手短に説明し、一葉は持ち前の礼儀正しさで丁寧で彼らをまとめ上げて安全な車両へと誘導し始める。
 デナイルは迷彩で乗客に擬態して別の車両まで敵情視察や安全な車両の確保へと向かった。 
 鈴凛、白は老人や子供などの避難が難しい者たちを直接運んだり護衛することを目的に、隣接した車両へと向かう。
「あれは……?」
 ふと、一葉が誘導から外れてどこかへ行ってしまう人影に気付いた。やけに小さく、ランドセルを背負っているように見えたが……。
「……一応、追わせてみるか」
 ユーベルコードで影の追跡者を召喚し、それに追わせる。
 避難誘導はつつがなく進行して、オブリビオンたちとの戦いの気配が近付いていた――。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

千桜・エリシャ
弱者を徒に甚振るなんてはしたないこと
猿山の大将気取りにお灸を据えに参りましょう

まずは電車との鬼ごっこですわね
もちろん、鬼はこの私ですわ
桜花葬送の高速移動で列車を追いましょう
追いついたら怪力で勢い付けて飛び乗りますわ
ふふ、鬼は執念深いものですのよ

そういえば大将さんのお名前はぽっぷへっどだったかしら?
へっど――とは確か頭という意味…
ということは、大将には首があるということですわね!
嗚呼――ならば私がやることは唯一つ
御首をいただくことですわ
ふふふ…私がいただくまで、大人しく待っていてくださいまし


ジン・エラー
まずは不運なヤツらに【オレの救い】を見せてやるとするか
【箱】でも引っ掛けりゃ簡単だろ
ギブヒャハハハハ!!!
さァさァ、救いの時間だぜ

オイオイせっかく救いに来たってのにその反応はねェ~~~だろお前ら
こっちは猟兵、ヒーローだぜ?
オレはただの聖者だけどな
ほォらさっさと動いた動いた

泣くな喚くな、大人しくしてろ
オレが救ってやる
ここでジッとしてりゃすぐ終わる

信用ならねェーならしょうがねェ
聖者の【光】を見せてやるよ



 ジン・エラーは列車を待っていた。
 駅のホームではなく、線路の脇で。マスクのジッパーを弄びながら待っていた。
「おォ、来たかァ!」
 列車の音が聞こえて、姿が見えた。彼は少しばかり脇に退いて、列車が来るのを待つ。車両が横を通過していき――。
「そんじゃァ途中乗車の旅と洒落込もうじゃねェの」
 その通過する車両と車両の間に、ジンは背負った箱を差し込んで引っ掛けた。ぐん、と体が引っ張られ、宙に浮く。
「あー……あーあー、ア~ッヒャガハハハッ!」
 慣性の法則でぶらんぶらんと体を横にたなびかされながら、ジンは笑う。
「――こっから乗り込む方法考えてなかったなァ、そういえば!」
「まさかと思って様子を見に来れば……本当にそうだったんですのね」
 おォ、とジンが顔を向ければ、そこには怨念たちをまとって走行中の列車と並走する千桜・エリシャがいた。
「よォ、女将サン。今日は列車と徒競走かい? グヒヒハハ!!」
「そうですわね、差し詰め鬼ごっこといったところでしょうか。もちろん、鬼はこの私で」
「オヒャヘヘヘ! そりゃァ良い、羅刹のお前ならハマリ役だろうさ!」
 楚々とした表情でいながらも冗談めかしてエリシャが答えると、手を叩いてジンが笑う。鬼の角を生やしたエリシャであれば、なるほどジンの言う通り鬼役として申し分ないだろう。ユーベルコードによる高速移動も含めれば言うことなしだ。
「では、こんな状態で話し続けるのも酷ですし、そろそろ参りましょうか」
「おォ、頼んだぜ」
「承りましたわ」
 やり取りは数秒。エリシャが墨色刃の大太刀を列車へ向けて数度振り抜く。人間大の穴が開き――。
「では、いってらっしゃいませ」
 そしてひょいと列車に引っ掛けていた箱ごとジンを引き抜いて、その穴へと放り込んだ。
「……想ッ像以上に乱暴なエントリーだなァオイ」
「これが一番手っ取り早いと思いましたので」
 続いて穴から飛び乗ってきたエリシャへとやや非難がましい目を向けても、「ホホホ、羅刹らしいでしょう?」と微笑むばかりだ。
「そういえば大将さんのお名前は……なんと言いましたっけ?」
「さァな。ジョン・ドゥだか山田・土左衛門じゃねェのォ~?」
 ジンの乱雑な返答に半目を向けるが、彼は愉快そうに笑うだけだ。
「いずれにしても。こうしてわざわざ閉鎖空間を作り出して弱者を徒に甚振ろうだなんて、はしたないことですわ」
 キン、と大太刀をその鞘の内に収めて。その仕事ぶりを一旦労るように柄を頬に寄せる。
「猿山の大将気取りの御首を頂戴して、少しばかりお灸を据えに行きませんと」
「あァ、鬼ごっこの最中だったな。そンじゃァそっちは任せたわ」
「あなたは、いかがなさいますの?」
 仕事道具が山と詰まった棺桶にも似た箱を背負い、ジンは立ち上がる。
「決まってンだろ。猟兵の聖者様による“救いの時間(ヒーロータイム)”だ」
 確かにそれは愚問でしたわ、とエリシャが苦笑する。
「それでは、私は大将首を探しに」
「そンでオレは救いをもたらす」
 再びそれぞれのやることを確認し合うように言葉にして。
 二人は列車の中を歩き始めた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ネグル・ギュネス
速度勝負か。
ならば、私の得意な分野だ。行くぞ、ファントム!

【天乃宮・いづな】を後ろ
【フレズローゼ・クォレクロニカ】と【鳴宮・匡】を左右サイドカーに乗せて爆走

【SPD】勝負で行く
ユーベルコード・幻影疾走で一気に加速!振り落とされるなよ!
【騎乗】【操縦】スキルで上手く接近する!

【世界知識】によると、列車には接続部があるが、そこが車両移動の為の通路があるが、其処が横からでも飛び乗り易いはずだ!
1人ずつ侵入してもらい、最後に私が飛び乗る!


【衝撃波】で自分を吹き飛ばし、列車に飛び込んでやる!


【4人即席チーム】ではあるが、作戦は周知したが…
いよいよ雑技団めいてきたなこれは!!


雨乃宮・いづな
【ネグル・ギュネスに同行】
ひゃあ、凄い風。
列車と並走する機会なんて有ると思ってなかったんだよ、ネグルのお兄さんには感謝だねっ!

ネグルのお兄さんのバイクに同乗させて貰うよ。
列車との距離が近づいた時点で早めに列車へ向けて跳躍するね。
跳躍と同時にユーベルコード『天駆翔』を発動。連続「ジャンプ」で衝撃を殺しつつ列車に飛び乗るよ。
無事に移動出来たら列車の扉を開け放ったり味方を支えたりと、他の猟兵が移動しやすくなるよう支援していくね。

即席のコンビネーションだけど上手く行ったかな?
早く他の猟兵と合流してオブリビオンを倒さないと、だねっ!
(補足※ネグルとはほぼ初見。現場での即席チーム)


壥・灰色
電車に乗るもの達の耳に、遠雷のような炸裂音が聞こえる……

それは断続的に炸裂し、徐々に近づいてくる。
誰かが窓の外を見たなら、驚愕しただろう。
走って、この最高速の電車についてきている人間がいるというのだから。

「壊鍵、全稼働」

全力魔法によって練り上げた魔力を全て「衝撃」へ変換
脚に突っ込んで炸裂、反作用により加速
射程圏内まで近づいた後、思い切り地面を蹴り離し
流星の如くデッキ車両に向け落ちる

天井を蹴り破って内部に侵入
敵対象の有無を峻別
敵対象がいるなら容赦しない
手足に残った衝撃を叩き込み、木っ端微塵に粉砕する

もう大丈夫
これ以上は、一滴の血も流させない

死ぬのは奴らだ
魔術回路「壊鍵」の破壊力、とくと御覧じろ


ジョン・ブラウン
気分はハリウッド、いいやジャッキーかな?

ウィスパー、サポート頼むよ
神経接続、各種プラグインセット完了……

っし、エアトリック全力機動、最高速で列車に並走を
ワイヤーを車体に射出して引きずられながら巻取りを

……って
何だいあのバイク、サーカスかな?

んー、下からだとぶつかりそうだなぁ
それじゃあ邪魔にならないように……
両サイドのビル、陸橋、電信柱
オッケー、何とかなりそうだ

ワイヤーシューターであちこちに飛びつきながらスイング移動とジャンプ
乗客の少ない場所を割り出せたらワイヤー巻取りからガラスぶち破って突入だ!

ヒーローの条件その1
何処からともなく現れて――駆けつけるのさ

アドリブや絡み
ウィスパーのセリフ追加歓迎


鳴宮・匡
【ネグル・ギュネス】の駆るスペースバイクに同乗
もっと速度上げていいぜ、速さが勝負なんだろ?
軽口叩きつつスマートフォンで【情報収集】
路線と時間帯から列車の種別を割り出して構造を確認しておこう

他の猟兵の細工や、或いは自然現象的な何かでもいい
僅かでも列車が減速するタイミングがあれば
そのタイミングを【見切り】、同乗者に伝達

飛び乗るのはどうするかって、……気合かな
シンプルイズベストって言うじゃん
足場になりそうな地形があれば利用して
とりあえず力づくで乗り込むぜ

窓や構造物を破壊する必要があれば
人がいないのを確認して銃撃で素早く行う
人的被害が出そうならもう少し穏便にするけどな

【アドリブ・アレンジOK】


フレズローゼ・クォレクロニカ
🍓🏍ネグル・ギュネス(f00099)くんと一緒
グラサン+ヘルメット装備
アドリブ等大歓迎

ひゃっほーー疾走する風が気持ちいい!
ネグルくんにぴとっとくっついてバイクでかっ飛ばしてもらう
吹き飛ばされないようにしっかりネグルくんにくっつく
ゴーゴーネグルくん!

接続部分だね、おっけー!
ネグルくんが上手く近づいてくれたら
空中戦や衝撃派を上手く使って、振り落とされたり吹き飛ばされてもリカバリー出来るように
接続部分なら、噛める場所もあるかな?
いざとなったら【女王陛下の気まぐれ裁判】でがっつり噛み付いて乗り込む

ボク知ってるよ!
こういうときは、こういうんだよね!
超!エキサイティンッ!!シューーー!!!(乗り込む)


ティアー・ロード
暴走列車、か……なぁに暴走といってもあの怪人ほどではあるまい
他のモノの支援も兼ねて減速させてから進入させてもらおうか!
「人命救助!それなら大得意さ!任せてくれたまえ!」

使用ユーベルコードは【ジャスティスペイン】

私は線路の上で列車を待ち構えるよ(仮面単体)
列車がきたらジャスティスペインで身体能力、つまり私にとっての念動力を強化!
捨て身の仮面のボディと念動力で列車を迎え撃って
減速を確認したら列車の窓を突き破って中へエントリーしたいな

「少しでもタイムリミットを伸ばさせてもらおう!」

「ここからは迅速な行動が必要になる、皆の協力が必要不可欠だ」
「というわけで!そこのキミ!私を被って……えー、だめかい?」



 暴走列車を追う方法は様々で。当然のことだがそれは大抵、自分の得意な手段を頼みとすることが多い。
 ジョン・ブラウンであれば、装備したエアトリックとワイヤーシューターによる立体機動だ。デバイスへの神経接続、そして各種プラグインをセットして完全装備を整えた彼が、全力の最高速ワイヤーアクションでもって暴走列車に追い縋っていた。
「気分はハリウッドか、いいやジャッキーかな?」
《検索結果》《マルヴル・コミック・シネマティック・ユニヴァースでも同様のシチュエーションのシーンが多数見受けられます》
「わざわざ律儀に検索しなくたっていいのに、ウィスパー」
 ヘッドフォンから聞こえてくる高度人工知能の言葉で、最近列車系のこういうシチュエーションもよく見るようになってきたなぁ、などとのんきなことを考えていると、後方から音がした。
「……何だいあのバイク」
 思わず振り返って見てしまう。ただのバイクではない。まさかの4人乗り。雑技団もかくやと言わんほどの曲芸乗車である。
《推測》《友好勢力と判断》《彼らも猟兵です》



「ひゃっほー! 疾走の風が気っ持ちいぃー!」
「しっかり掴まっていろよ。――飛ばすぞファントム!」
《Will do.(了解)》
 4人乗りのバイクの上。迎い風を受けてご機嫌な声を上げるのはフレズローゼ・クォレクロニカ。そして彼女が掴まっている操縦手がネグル・ギュネスだ。彼が呼びかけると、愛騎SR・ファントムの女性A.Iが応えて、機体が加速する。
「ひゃあ、凄い風。さすがにあたしも単体だと追い付ける手段が無かったから、ネグルのお兄さんには感謝だねっ!」
「なんならもっとスピード出してくれたって良いんだぜ。速さが勝負なんだろ?」
 狐耳をぺたんと閉じて、風でたなびく乳白色の髪を抑えながら口を開くのは雨乃宮・いづな。そしてスマートフォンを操作しながら軽口を叩いているのが鳴宮・匡だ。
「チェイスは速度勝負の我慢比べだ。向こうが減速したタイミングに合わせて、一気に加速して飛び乗るぞ」
「でも、減速なんてしてくれるの?」
 ネグルが軽口に返答すると、フレズローゼが首を傾げる。わざわざ減速するような減速をするのだろうか、と。それに対してネグルに代わって答えたのがいづなだ。
「自然と減速するタイミングがあるんだよ。曲がる時とかね。走ってる時に急に曲がろうとすると倒れそうになっちゃうでしょ?」
 要は慣性の法則。いかに走る鉄の乗り物とて、それに抗うことは叶わない。
「それに限らず、もっと他にも減速するタイミングなんていくらでもあるしな。こんな事件の作戦中なんだ。例えば――他の猟兵とか」
 スマートフォンから顔を上げた匡が例示に指した方向には、白い仮面が浮いていた。



「来たね、暴走列車が」
 線路の上で列車を待ち構える白い仮面は、ティアー・ロードだ。
 彼女は少しばかり、仮面の赤い瞳を遠くさせて以前戦った機関車怪人との戦いを思い起こす。今回は電車ではあるが、同じ列車に変わりない。
「なぁに、暴走度合いで言えばあの怪人ほどではあるまい」
 ともすればやや危なっかしささえ感じるような発言だが、それこそがユーベルコード【ジャスティス・ペイン】によってティアーに力を与えていた。わざわざ列車の進行方向にいるのも、そのためである。
 迫る列車。ティアーの赤い瞳が輝き念動力が発動すると、列車の速度が落ちていく。
「少しでもタイムリミットを伸ばさせて貰うよ!」
 減速させられれば、他の猟兵たちが乗り込みやすくもなるし、それだけ事件解決に使える時間も長くなる。
 しかしその伸ばせる時間も、列車が減じたスピードで念動力の有効射程の間合いを詰める間に限った話だ。時間にすれば十秒程度の僅かな時間。
 逆に言えば、猟兵にはその短時間で十分なのだ。
 ティアーの目に見えたのは、見覚えのある赤毛の少年。ジョン・ブラウンがワイヤーアクションでもって列車の車窓を突き破り、突入していく。
 次に聞こえて来たのはバイクの音。乳白色の妖狐が飛び上がり、まるで空中を歩くかのような連続跳躍でもって減速した列車に追い縋りながら黒く大きな大太刀を振るい、列車連結部を斬り裂くとそこへと飛び乗って、強引気味に扉を開けて突入経路とする。ピンク髪の少女が腰の翼とユーベルコードを使って黒髪の青年と一緒にそこへと飛び乗る。「気合だー!」だとか「超! エキサイティンッ!! シュ――!!!」だとか聞こえて来た。最後に飛び乗ったのは、宇宙バイクへと一旦の別れを告げるように手を振ってから跳躍する灰色髪の操縦手だ。
「思ったよりも便乗してくれる猟兵がいて嬉しい限りだね。さて、それでは私も乗り遅れないようにしなければ!」
 衝突寸前のタイミングで仮面の身体をヒラリと翻しては躱し、そのままの勢いを利用して自分もまた車窓を打ち破って車内に突入する。
 突如として窓から闖入して来た仮面に、猟兵の違和感を与えない能力があれども乗客たちが動揺した。
「おっと、騒がせてすまないね。君たちを助けに来たんだ!」
 ふわりと浮いて、困惑する乗客たちへ説明する。ここからは時間との勝負で、迅速な行動が必要だ。ティアーは手近な美しい女の元へと向かう。
「事件解決のために君の力が必要なんだ。さあ、美しいキミ、私を被って――」
「何やってるのさ、ティアー」
 聞き覚えのある声がして振り向けば、そこにいたのは先に突入していたジョン・ブラウンがいた。ティアーの話し掛けた女性はその隙にそそくさと奥の方へと逃げてしまっていて、彼女はやれやれとばかりに仮面の身体を左右に振る。
「なんかいると思ったら、本当にティアーだったんだね」
「愚問だとも。ヒーローの条件とは――」
「『悲劇が起きると、どこからともなく駆けつける』――だろ?」
 そういうことだね、とティアーは赤い瞳を愉快そうに輝かせた。
「何にせよ、ティアーがいてくれるなら心強い。ここは――」
《トラブルシューティング》《状況に適した迅速解答を検索》《過去の事例から解決方法が見つかりました》
「――おっと、ウィスパーが名案を思いついたらしい」
「おや、それは素晴らしい。是非拝聴しようじゃないか」
 ヘッドフォンを押さえてウィスパーの言葉に耳を傾けるジョン。それを自分も聞こうとティアーもヘッドフォンへと身体を寄せる。
《最適解》《次のデバイスを接続して下さい》《接続先デバイス:ティアー・ロード》
「「お断りだ!」」



「まったく、今回ばかりは無茶が過ぎたか……」
 ネグル・ギュネスが車内の席に座って、一息つく。時間はないが必要な休憩だ。特にプレッシャーに晒される運転を要求された上に、別れ際、無茶なミッションへ貢献してくれた愛騎が《I look forward to dinner tonight.(今晩の食事は楽しみにしているわ)》と暗に事件解決後に高級燃料を要求されたとなれば尚更である。
「燃料代とメンテ代で今回の報奨金も、ほぼあってないようなものになりそうだ……」
「お疲れさま、ネグルくん。だいじょうぶー?」
「今回ばかりは災難だったねー」
 頭を抱えるネグルに、ぽんぽんと労るように肩を叩くフレズローゼと、お金の話となるとちょっと共感してしまういづなが励ますように声をかける。
「言われてみれば当然だけど、こうやって乗り物で追いつこうとするとそれなりに費用もかかるよね……」
「ま、そこはそれ。今回限りの付き合いってわけでも無いだろう。今度別の形で返させて貰うさ」
 マイペースに装備が脱落してないかなどの確認や状況把握に務める匡の言葉に、そうだね、といづなが同意するように頷く。そう、別の形で借りは返そう。できればお金のかからないカタチで。
「……未来のことを考えても仕方がない、か。装備の確認ができたら行こう」
「いや、ちょっと待て。何か様子が変だ」
 立ち上がるネグルへと、匡が手で制止をかける。

 直後、遠雷にも似た炸裂音が鳴り響いた。それは断続的に鳴り続け、徐々に徐々に、その音を大きくしている。

「――何かが、近付いている」



 人間の足はなぜ二本あるのか。
 一般的に、進化論で言えば四本脚から二本足になったからである。
 だが壥・灰色は違う答えを出すだろう。
「壊鍵」
 後先など考えない全力全開の魔法によって練り上げた魔力を衝撃波に変換して脚部で炸裂させ、得られる反作用によって推進力を得る。余人が見れば目を剥くような魔法走法。
 それを成立させるには、テクニカルな二本の脚への交互魔力噴出が必須になる。ではその技術とはどこから?

 ――そう。いわゆる「2回攻撃」である。

 人間の足はなぜ二本あるのか。
 彼がその問いに答えるならば、きっと「二本の脚に魔力を流し込むためだ」と答えるだろう。
「全稼働で行くぞ」
 雷のような炸裂音を響かせながら、灰色は疾駆する。灰色の瞳が射程圏内に列車を捉えると、その怪力と衝撃波の力でもって捨て身の跳躍を敢行する。
 灰色は流星となった。車両の天井に向けて飛び蹴り。魔力噴出による炸裂でもって天井を破壊して突破口を作ると同時に制動。内部に突入する。
「さあ、ここから先は一滴の血も流させない」
 ゆっくりと、車内で立ち上がる。灰色の胸には魔導銀によって刻まれた始動刻印が存在を主張していた。
「死ぬのはオブリビオンだ。――魔術回路『壊鍵』の破壊力、とくと御覧じろ」



 次から次へと、猟兵たちが列車に乗り込む。
 破滅の未来を防ぐため。死する命を、救うため――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ヴィクティム・ウィンターミュート
【レイラ】と【アリカ】を支援する

オイオイ、今回は随分と派手にかますじゃねえか。潰される覚悟はいいかフリークスども。悪いが列車は、テメエらを弔う棺桶にしかならねえよ。

ランニングハックは俺の専売特許だ。
走りながら【ハッキング】で列車のシステムに侵入して【時間稼ぎ】して…止めるのは理想だが、減速できりゃ儲けもん。
レイラとアリカをユーベルコードで支援して速度を上げさせて、タイミング合わせて【早業】と【ダッシュ】で飛び乗る。こちとらストリートをパルクールで制したランナーだ。造作もねーよ。


「あーあー、お客様方ー!駆け込み乗車はおやめくださーい。飛び乗り乗車は?ガンガンぶちかませ野郎どもォッ!」


レイラ・エインズワース
こんなにも多数の命を奪おうナンテ
そんな勝手なことさせないカラ
過去の幻に、未来の灯は消させはしないヨ

予めユーベルコードを使って
呼び出した怪盗に安全な突入ポイントと、突入後の周囲の安全確保のため【情報収集】させるヨ
【世界知識】で列車の構造も把握しておこうカナ
そしたら、ヴィクティムサン(f01172)のサポートで、加速して列車に迫るヨ
ウウウ、実際は走らなキャいけないナンテ、ヴィクティムサンのいけず……
私は頭脳労働で、運動はそんなに得意じゃないんダヨ
カンテラわれちゃったらたいへんダシ
なんても行ってられないカラ、覚悟を決めて飛び込むヨ
はいれたら周囲の乗客を保護していきたいナ


桜庭・英治
あ、いいなバイク
俺もバイクで追いかけ……
ありません! 免許ありません!
ちくしょう!

しかたねぇローラーシューズで代用だ!
列車にフック付きワイヤー取り付けてレールの上を滑走すればいけるだろ

うおおホイールから火花出てんだけど!!
やべぇこれ壊れたら俺死ぬんじゃね!!

ワイヤーを徐々に手繰り寄せればたどり着けるはずだけど
途中でカーブとかあったら怖いな
トンネルもあったら非常に困る
壁にローラーついて走るしかないのか…!


フェム・ポー
(シスター服姿で現れて)
列車に乗ったたくさんの人達ぉ、生贄にしてしまおうなんてぇ、とっても行けない事だわぁ。
……神に身を捧げるならぁ、それは自分の意志でなくちゃだめなのよぉ?
ちゃんといけないことだってぇ、分からせてあげなくちゃぁ。

でも、ちょっとぉ……体を動かしたりするのってぇ、あんまり得意ではないのよねぇ。乱暴に扱ってもいいから、だれか一緒に連れて言ってくれないかしらぁ?
乗り移ったらぁ、すぐに車両の中の相手の信者の人達は捕まえられるようにぃ、ユーベルコードを準備しておくわぁ。

難しそうだったらぁ、ちょっと危ないけれどぉ、ユーベルコードの鎖で頑張って乗り移るわねぇ?


神威・くるる
ややわぁ、暴走やなんて品のない
爆発なんてしてもーたら美味しい血ぃまで吹っ飛んでまうやないの
それなら止めとかなアカンなぁ

猫ちゃんを召喚して背中に乗って列車を追いかけまひょ
追いつけへんそうやったら、いつも【咎力封じ】で使うてる縄と拘束具を投げて
取ってや出っ張りに引っかけて中へ突入
うち、ちょーっとだけ、ほんのとーっとだけ、人より小柄やさかい
入り込めるんちゃうやろか

……人より、ほんの、ほんのすこーーーしだけ、軽いさかい

……少しだけやで?


天命座・アリカ
始めようか始めよう!
さて、まずは電車に乗ればいいんだろう?
途中乗車はマナーがよくないがね!緊急事態だ大目に見てね!

さて、乗り込む方法だがね!
どうやらみんな、下から上から行くらしい!
しかして私は天命座!天才が故に他とは違う!
下でも上でもなければ!横から行くしかあるまいよ!

では騎士君、大道芸と行こうじゃないか!
事前準備は大丈夫!この橋の上からなら、隣の橋の電車まで!直線距離ならそこまででもなく!
タイミングを合わせて、ぶん投げてくれたまえ!こいつは貴重な体験さ!弾になるのは初めてだ!

後は電車へひとっ飛び!
乗車方は……親切な誰かさんがハッキングで扉でも開けてくれるんじゃないかな!最悪窓からこんにちは!



「良いなぁ、バイク。俺もバイクで追いかけたりしてぇよ」
 こうして飛び乗りをする直前、雑技団めいたバイクに乗って向かって行った連中を見た桜庭・英治は夢想する。自分も大型バイクに乗って「ターボをフカしてやるぜ!」だとか「パラリラパラリラ」とかちょっとワルな感じを出しつつバイクアクションで華麗にジャンプして暴走列車に飛び乗ったりしてみたかった。
 振り返って現実。
 彼は列車にフック付きワイヤーを取り付けてレールの上をローラーシューズで滑走していた。
「うぉぉおお免許を取得していなかったばっかりにぃぃいい!」
 いやそういう問題でもないと思うが。シューズのホイールからすさまじい勢いで火花を散らしながらも、彼はワイヤーを手繰り寄せていく。脚に掛かる負担は相当なもので、ほぼ脚を前に突っ張ったような姿勢になってしまっていた。
「せめてもう少し減速してくれりゃあなあ……!!」
 無賃乗車も楽じゃねえぜ、と歯を食いしばりながら、ワイヤーを手繰り寄せていく。
 ――突然、キキィ、と甲高い音を立てて電車にブレーキがかかり、危うく後ろへ倒れ込みそうになってしまう。
 そして後ろから、何やらワイワイと言い合う男女の声が聞こえて来るのだった。



 ハッカーというのはどうにもパソコンを前にカタカタやっているギークやナードというステレオタイプがある。
 しかしそれはあくまでステレオタイプ。偏見に過ぎず、ヴィクティム・ウィンターミュートに限って言えばそのご多分からは大きく外れる。
「3、2、1……クラッシュ!」
 右腕のフェアライト・チャリオットから送り込まれた攻撃プログラムによって、列車の走行システムへと干渉し、一時的にブレーキをかける。
「ウィズ(よし)! 誰だかわからねえけどあらかじめICEをクラックしててくれて助かったぜ! 今だ、スピード上げるぞレイラ!」
 網膜に投射された情報を処理しながら、ヴィクティムは走る。走りながらハッキングを仕掛けるランニングハックは彼の十八番だった。
「ウウゥ、減速もさせるしサポートもあるとは聞いてたケド、実際は走らなきゃいけないナンテ聞いてないヨ!」
 スカートを蹴立ててハイヒールで走るのはレイラ・エインズワースだ。彼女は抗議するように声を上げながら本体であるカンテラを抱える。
「むしろなんでそんな格好で来たんだよ!」
「私は頭脳労働担当で運動はそんなに得意じゃないんダヨゥ! カンテラ割れちゃったら大変ダシ!」
「じゃあアリカのところに今からでも行くか!?」
「それはモット嫌ぁ――っ!」
 拒否を身体で体現するように、レイラの走る速度が上がる。やりゃあできんじゃねえか、とヴィクティムが走っていくと、列車の最後尾でワイヤーを張っている見知った顔が見えた。
「ようエイジ! いつぞやの寺以来だなワイヤー借りるぞ!!」
「うわっ、えっ、何すんのちょっと待ってそれ俺のワイヤー! 今使用中なんだけど!?」
「ドウモ! 私もチョット借りるネ!」
「お、美人――待って待って今俺が使ってるってば! ねえ!」
 英治の抗議を完全に無視した二人は列車へと繋げられたワイヤーを利用して、レイラの指示通りにヴィクティムが生体ナイフで突入口を作り出すと乗り込んでいく。
「うぉぉ俺が一体何をしたんだってんだ……!」 
「はぁ、あんたはん何やら大変そうどすなあ」
「大丈夫かなぁ? そろそろまた加速し始めると思うからぁ、早めに乗り込んだ方が良いよぉ」
 乗り込んでいくヴィクティムとレイラを見送りながら心の中で頭を抱えていると、後ろから巨大な猫に乗った神威・くるるとフェム・ポーが話し掛けて来た。
「えっ、マジで? ヤベえじゃん俺も早く乗り込まねえと――」
「ほな、うちもこのワイヤー使わせて貰いますわあ。おおきに。フェムはん、あんじょう掴まっとってなあ?」
 そう言ったかと思うと、くるるはフェムを手にしてひょいと身軽に騎乗していた猫からワイヤーの上へと器用に飛び移った。
 無論のこと、ワイヤーがその体重でガクンと下へ落ちて「フォオ」などと家電品のような奇妙な声を出しながら英治がそれを身体を張って持ち上げることになる。でないと減速したとはいえ自分も体勢が崩れて列車に引きずられることになるし、くるるとフェムも地面とキスだ。誰も得をしない。
「あらいや、うち他の人よりほんのちょーっと小柄やさかいに、乗れるもんやと思っとりましたけど……」
「今アイドルの体重情報って全部嘘だったんだなぁって夢から醒めたところだよ!!」
「あらぁ、女性の体重を悪く言うのはぁ、いけませんよぉ?」
 喚きながらもなんとかワイヤーを保持する英治。くるるはそれを見て「いけずなお方」と頬を膨らませながら、ワイヤーの上を歩いてフェムと共に開かれた突破口から入って行く。
「……俺もまた後続が来る前に早いところ乗り込まねえと……!」
 一刻も早く乗り込もうと、英治はワイヤーを手繰る速度を早めるのだった。



 目に見えて減速した列車を見て、天命座アリカはにやりと笑う。
「やあやあこれは、彼らがうまくハッキングしてくれたようだね! それでは列車に飛び乗る最高のショウを始めようか、始めよう!」
 橋の上からユーベルコードで呼び出した死霊騎士と共に隣の橋で彼女は待機していた。
「さてさてどうやらみんなの乗車方法は、下から上から後ろから。はたまた真正面から行くらしい!」
 くるり、くるりと踊っていたアリカが、ピタリと止まる。
「しかし、私は天命座! 天命座・アリカ! 天・才であるがゆえに他とは違う!」
 なぜ高所に陣取るでもなく。正面から待ち構えるでもなく。後ろから追うでもなく。なぜこうしてわざわざ隣の橋で彼女は待機しているのか。その答えとは――。
「下から上から後ろから、正面からでもないのなら――そう、横から行くしかあるまいよ!」
 とう、とアリカが跳躍すると、死霊騎士の腕の上に乗る。
「さあ、死霊騎士君。大道芸と行こうじゃないか! 事前準備は万端さ! 途中乗車はノンマナーだが、緊急事態だエマージェンシーだ。大目に見てくれ許しておくれ!」
 天才たるアリカが狙うのは――死霊騎士による遠投による飛び乗りだった。
「アリカァ――!」
 ヴィクティムの大きな声がした。見れば最後尾車両から、ヴィクティムとレイラが大きく窓を開け放って突破口を用意していた。
「今行くよ! さあ、歓声と共に出迎えてくれたまえ!」
 そしてアリカは死霊騎士に投擲されて、ほんのひと時だけ鳥となった。
 レイラとヴィクティムが文字通り飛んできたアリカを受け止め、車内で尻もちをつく。
「あっはっは、貴重な体験だった。弾になるのは初めての体験だったよ!」
「いらねえよそんな体験! クソっ、腰打った!」
「ホラ、二人共早く立って。乗客を保護しなきゃダヨ」
 レイラにせっつかれるままに立ち上がり、三人は乗客の保護のために最後尾車両から進んで行くのだった。



「怪しい子がいたから縛ってみたけどぉ……」
 フェムがふむんと男を見上げる。闇の光と言うべきか、黒い光の魔法陣から現れた、これまた黒い光の鎖によって、男は拘束されていた。車内に怪しげな魔法陣を刻印しようとしていたところの現行犯逮捕だ。
「オブリビオンではないみたいねえ」
 がっくりと男が項垂れているのは、フェムのユーベルコードによる鎖によって生命力を吸い上げられたからだろうか。残念、とフェムは首を横に振る。
「信者にされた一般人っちゅうところでっしゃろなあ」
「ということはぁ、オブリビオンが別にいるってことよねぇ?」
「……せやろなあ。きな臭くなって来ましたわぁ」
 くるるの第六感が、なんとなく嫌な予感がすると告げていた。そして大抵、嫌な予感というものは的中するものである。
 ――うふふ、と。少女の声が、どこかから小さく聞こえた気がした。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

新堂・ゆき
列車のすぐ横に送って貰えれば、減速したタイミングで予備用の人形繰りの糸の先端に重りをつけて、外の手すりとかに絡めるとか、最悪の場合は
タイミングを合わせて気合いで飛び乗る!
舞で片っ端から敵を攻撃します。
舞で纏めて、更に2回攻撃で倍の数をお掃除です。
ボス相手には通用するほど甘くはないでしょうけど、
数を掃討するのにはきっと。
月照丸を繰りながら、舞うように華麗に敵をなぎ倒し。
一般の逃げ遅れのお客を見つけた場合は退路をしっかり確保して、
誘導出来るまで耐えます。
列車旅はもっと優雅にするものですよ? 纏めてお掃除してさしあげます。


ネージュ・ローラン
乗客に被害を出すわけにはいきません。
慎重かつ迅速に行動しなくては。

乗り込む為に列車と並走しましょう。
最初はスピードの差が大きいですが、精霊の力を借りて追い風を起こします。
そこから【スカイステッパー】を使用して空中に駆け上がりながらヴェールを広げて風を受けることで更に加速します。
そのまま車両の屋根に着地を決めましょう。

着地したら窓から中に侵入して、襲いかかってくる敵がいるなら迎撃し、その車両の制圧を目指します。


リンネ・カーネーション
「はっはぁ面白いね! 
シベリア超特急だろうが銀河鉄道だろうがあたしの愛馬に追いつけないもんなんざありゃしないよ!!
ゴッドスピード、見せてやろうじゃないか! 聖人様の御降臨と来たもんさぁ!!」


スピード勝負なら負けられないねぇ。
ゴッドスピードライドの全力加速で一気に追いついて乗り移ろうか。
アリだったら猫の毛づくろいであたし自身とバイクを舐めて空気抵抗も極限まで減らして挑もうかね。
騎乗技術で上手く横付けして、バイクごと突っ込んでいくよ。
なんせバイク抜きだとまともに戦える武器なんざありゃしないもんでねぇ。
あぁ、もし相乗りしたいってぇ奇特なのがいるならソレもアリだね。
その辺はアドリブ歓迎ってとこさ。


トルメンタ・アンゲルス
暴走列車ですか!いいですねぇ!
状況が状況ではありますが、一度一緒に走ってみたかったんですよ!
行くぜ相棒!マキシマム グッドスピィィィィド!!!

宇宙バイクNoChaserに乗り、アクセル全開。
マキシマムグッドスピードを使用し、列車と並走します。
いつでも列車に突入できますが、自分で乗り込むのが難しい人や、落ちそうな人などの、乗り込むフォローをします。

乗り込む際には、バイクごと跳躍し、突っ込みます。
ぶつかる前にマシンベルトを起動。
『MaximumEngine――HotHatch』
勢い其のままに、バイクを防御力重視の装甲として変身合体しながら突入。
飛び込んだ場所に邪教徒がいたら、序でに蹴り飛ばします。


ミハイル・ヴァリコフ
慣れぬ世界での活動になりますが、人々を救うため、
オブリビオンを狩るためには怖気付いてなどいられませんね。参ります!

まずは狼に姿を変え【ダッシュ】して接近を試みます。
【咎力封じ】の拘束ロープを車体の一部に巻きつけてから
人の姿に戻り、ロープを支えにして乗り込む算段です。
内部に入る際は身振りで乗客を遠ざけてから
【怪力】【鎧無視攻撃】でこじ開けたりする事になるでしょうか?
無論、楽に侵入できる手段があればそちらで。

車内での移動時は再び狼の姿に。
これならば乗客が多かったとしても足下を通りやすいでしょうから。
迅速に車内の安全確認を行い、
他の猟兵さんと協力して避難誘導を行います。



 猟兵とは生命体の埒外にある者だ――と言われている。
 普段は人とそう変わりはしないが、ある場面ではその規格外さを表出させる。例えば真の姿であるだとか。
 あるいは――列車と並走するだとか。
「行くぜ相棒! 俺たちの速さ、見せつけてやろう! ――マキシマム グッドスピィィィィドッ!!!」
 アクセル全開で暴走列車と並走するのは、トルメンタ・アンゲルスだ。「その機体に追い付ける者なし」とまで謳われる彼女の乗る愛車NoChaiserだが、それは同時に「その機体で追い付けぬ者もなし」という意味でもある。列車と並走する程度のこと、トルメンタとNoChaiserにとってそう難しいことでもない。
 ところで。一般に車両のエンジンにおいて、速度と静粛性能というものはトレードオフ関係にあると言われている。つまり速度が早いと爆音が出るし、静かであると速度が出ない。そして、NoChaiserは非常に速かった。
「お、音が、速度がぁ……っ」
 静かな場所を好む新堂・ゆきはトルメンタの愛車に便乗することで、すっかりと目を回してしまっていた。無理からぬことだ。この音量のすさまじさもさることながら、猛烈な加速で掛かる重力と風には、訓練を積まない限り抗しえまい。
「さあ、そろそろ列車に飛び乗りますよ新堂さん!」
「は、はい……お手柔らかにお願いします……」
 少し車酔い気味になりながらも、なんとかゆきは人形繰りの糸を見つけて、付けておいた重りを利用して並走する列車の出っ張りへと引っ掛ける。準備完了、意を決したならば車上から飛び上がり、神霊体へと変身しながら薙刀で窓を打ち破ることで突入する。
 そこでは今まさに、覆面の男たちが乗客たちを拘束しているところだった。それを認めるや否や、ゆきは薙刀を舞うようにして二度薙ぎ払う。その衝撃波の直撃を受けた覆面たちは吹き飛ばされて壁や窓に叩き付けられ、気絶してしまう。
 ガタン、と列車が揺れた。車酔いをしていたからか、ゆきの舞が乱れてしまう。その隙を突くように、覆面男の一人がゆきに襲いかかろうとして――。 
『MaximumEngine――HotHatch』「大丈夫ですか、新堂さん!」
 マシンベルトの音声と共にNoChaiserと変身合体したトルメンタによって蹴り飛ばされた。
「ええ、助かりました」
「この覆面たちがオブリビオンですか……?」
「いいえ、違うと思います。多分、これは一般人から邪教団に入った信徒でしょう。でなければもっと強いはずです」
 成程さもありなん、とトルメンタが頷く。突入ついでに蹴り飛ばしたものだから、割と勢いが付いてしまっていたのだが。死んではいないだろうか。
「ともかく、安全地帯を見つけ出してこの人達を避難させましょう」
「オブリビオンはそれからですね。了解です!」



「はっはぁ、面白いね! シベリア超特急だろうが銀河鉄道だろうがオリエント急行だろうが、あたしの愛車に追い付けないもんなんてありゃあしないよ!」
 宇宙バイクを駆って列車と並走しているのは、サングラスを掛けたケットシー、リンネ・カーネーションだ。普段は豊かでボリューム感のある毛並みの彼女だが、事前に愛車に跨る前に空気抵抗を減らすための毛づくろいで準備をしておいたのだ。毛づくろいで身だしなみを整えた今、ワイルドな顔立ちはそのままに、まるで女豹のようなしなやかさが強調される肢体となった彼女の身体は毛が乱されることもなく風を切って直進する。
「イイ女ってのはねぇ! 事前準備とおめかしを怠らないものさ、覚えときな!!」
 果たして悪そうなやつらには大体恨まれ時としてクソババァとまで呼ばれる彼女が本当にイイ女なのかは疑問が残るものだが。ともかくユーベルコードによって宇宙バイクを変形させた彼女は更に加速していく。
「さあ、聖人様の御降臨だよ迎え入れなぁ!!!」
 彼女は大きく宇宙バイクの前輪を持ち上げ、ウィリー走行をしたかた思えばそのまま飛び跳ねた。着地先は――列車の窓ガラス。ガラスの破砕音と共にリンネはダイナミックエントリーを果たした。
 ――その後方では、エルフの女と狼が追走する。ネージュ・ローランとミハイル・ヴァリコフだ。
 ネージュの持つエレメンタルヴェールが風で揺れるたびに、それに宿った精霊の魔力が追い風を起こして二人の疾走を補助する。
「ヴァリコフさん!」
 最後尾車両との距離が縮んだタイミングで、ネージュが並走するミハイルへと呼び掛けた。彼はそれに応じて、口に咥えた拘束ロープを首を振ってネージュへと投げて託す。
 ロープを受け取ったネージュが跳ぶ。広げられたエレメンタルヴェールが風を受けてその背を押し、その推進力を利用して彼女は空中を舞うように跳ねて最後尾車両の上へと着地した。そしてミハイルから託されたロープを取っ手へと括り付ける。
 ロープがしっかりと結ばれたことを確認すると、ネージュはそれを思い切り引いた。走るミハイルが引っ張られる力によって補助され、最後尾車両で人間形態へと姿を戻して取り付く。
「UDCアースは……いつもこんな身体を張った依頼なんですか……?」
「私もUDCアースは初めてですけど……多分違うと思います。さすがに」
 さしものミハイルとネージュたちとて列車とのチェイスは肩で息をしようもの。ミハイルはすでに開いていた突破口を、怪力でもって拡張して車内へと見を滑り込ませる。ネージュも軽い身のこなしでそこから突入した。
「この車両はもう制圧済みのようですね」
「ええ、他の先行した猟兵がやってくれたのでしょうね。これだったら私は別の車両の制圧へ向かえそうですね」
「それなら俺は、車内の安全確認と避難誘導を。」
「ええ、迅速に、けれど慎重にいきましょう」
 ネージュとその身を再び狼のものへと変じさせたミハイルは、互いの武運を祈りながら隣接する車両へと進んで行った。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

ジャガーノート・ジャック
(ザザッ)ミッション受諾――これより暴走列車へ突入する。

(ザザッ)
SPD選択。
速度を活かし列車に接近――
『Mode:Couger』使用。
右腕を一時的にパージ、高速機動形態に移行。

『ダッシュ』『早業』で豹の如く駆け、暴走する列車に並走。
レーザーブレードをフックの様に使い列車に飛び付き、内部への潜入を試みる。

(ザザッ)
――突入する猟兵は多い方が作戦がスムーズに進むと推察。
仮に列車の突入に戸惑うものがいた場合、一人程度なら列車への突入のサポートも可能だ。
『手を繋い』で対象者を引き寄せ共に飛び乗る事とする。

本機の行動指針は以上。作戦の実行に移る。オーヴァ。
(ザザッ)


マリアンネ・アーベントロート
沢山の人の命がかかった任務……絶対に止めないと!

【催眠術】を活かしての【催眠・万象の掌握】を使って線路上の空気抵抗をすっごく高くして、少しでも列車の速度が遅くなるようにしてから乗り込むよ!
もちろん、催眠は一時的なものだから止められるわけじゃないけど……まずは乗り込まないと始まらないもの!
ただ、乗り込めるほどの身体能力は私にはないから……なにか機械や道具を使って乗り込む人に乗せてもらったりできないかな?
乗り込んだあとは、列車後方に移動しながら安全確保をしつつ無事な乗客を列車後方に誘導しようかな。
列車なら敵に回り込まれたりはしないから、安全を確保した上で一番後ろに誘導すれば安全なはず!


ルフトゥ・カメリア
列車事故とか洒落になんねぇほど死ぬだろうなぁ、そりゃ。アイツらにとっちゃ都合が良いワケか、胸クソ悪ぃ。

空から行く。
速度が足りなきゃ翼の付け根からも炎吹き出してブースター代わりにでもするさ。
近付いたら鞭と流動金属型使い魔を列車の連結部に絡めて、自在の伸縮で引き寄せて飛び乗る。【ロープワーク】
……あ?だってこの列車壊すなってんだろ。

飛び乗ったらそのまま先頭車両まで走る。
道中の乗客には、一番後ろの車両へ移れとでも一応言っておくさ。言いくるめるのはそれなりに得意だ。【言いくるめ】

襲われてんのがいれば助けには入るさ、……不本意だけどな!
【第六感】【オーラ防御】【かばう】【激痛耐性】【武器受け】


立花・乖梨
※人格が普段(ステシ)と違います。
ユーベルコード【リザレクト・オブリビオン】を使い、
人が乗れる死霊蛇竜と、線路を覆う程の死霊騎士を召喚。
止められなくても、減速できるならそれでいい――

死霊騎士に、列車を抑え込ませる。
その間に死霊蛇竜と共に列車へ飛び乗る。

私は傷付かない。傷付いた彼らは既にいない。
〈堪えてくれます?蛇さん。騎士さん、貴方達も。〉
その言葉は、まるで女王のように冷酷で――残酷。

※アドリブ大歓迎です!



 戦いに臨む時のプレッシャーは、いつだって重い。
 マリアンネ・アーベントロートのようにしっかりとした平和な日常を持っていて、戦いが非日常である人物であれば尚更だ。
「大丈夫ですか?」
 引っ込み思案なところのある立花・乖梨が彼女へと声をかけたのは、きっとマリアンネがあまりにも不安そうにしていたのが見えたからだろう。
「少し、緊張しちゃって……。えと、立花さんは……あんまり緊張してないんだね」
「う? いえいえ。緊張してますですよ、これでも」
 自然体に見える乖梨の否定に、マリアンネはぱちくりと目をしばたかせる。
「誰かが死んだり、自分が死ぬかもしれないですから。怖いですし、緊張もしますです」
 あるいはそれは、轢死に類する物が彼女の呪いにも似た処刑記憶に含まれているかもしれないからだろうか。そうであっても、そうでなくても、いずれにせよそれは余人には推し測ること叶わない。
「でも、きっとうまく行くと思うですよ」
 それは経験に裏打ちされた自信に過ぎず。同じ背景を持たないマリアンネのために、乖梨は言葉を接ぐ。
「それにほら、私もいますですし。ね?」
「……ふふっ、そうだったね」
 頬に指を当て、にっこりと笑って見せる。狙い通り、マリアンネがくすりと笑って、凝り固まっていた緊張が解けた。
「――ルフトゥ・カメリアから連絡。残り40秒で列車が来る。準備は良いか」
 砂嵐のような声で、ジャガーノート・ジャックが告げる。二人が返事と共に頷くと、ちょうど線路の向こう側から列車の影が見えて来た。
「――今!」
「うん!」
 乖梨の合図と共に、マリアンネが催眠光線を発した。更に彼女のユーベルコードによって召喚された死霊騎士がその身を挺して列車を止めようと突撃する。
 レールに車輪が車輪が擦れて甲高い音を立てる。マリアンネの催眠光線が列車正面の空間の空気抵抗を瞬時に高めて、列車の速度を抑える。更にそこへ死霊騎士が加わり、列車の速度は格段に遅くなった。
「や、やった!」
「掴まっていろ」
 ジャガーノートが四肢にレーザーブレードを展開した高速形態へと姿を変えて、右腕の巨大砲身を一時的にパージしてマリアンネの手を取る。
「わ、わっ……!?」
「口を閉じていろ、舌を噛むぞ」
 マリアンネが突然抱え上げられたことや、その豹型の鎧の冷たさに目を白黒させる中。ジャガーノートはそうとだけ告げて豹の如き素早さで列車へと飛び乗った。
「……私は傷付かない。傷ついた彼らは既にいない」
 死霊蛇竜の背に乗って、乖梨は死霊騎士へと目をやる。その表情にはいつの間にやら、マリアンネと会話していた時のような小動物のような可愛らしさはなく。代わりにあるのは、まるで冷酷な女王のような残忍さ。
「<堪えてくれます? 騎士さん。あなたたちが犠牲になれば、より多くの人たちが助かります>」
 返事は無い。返答は無い。騎士は何も言わずに、命じられるがままに列車に押し返されながらもその速度を抑えていた。それを見て良しとするように乖梨は頷き、蛇竜に乗せられて列車へと飛び込んだ。
 ――彼らが乗り込んでから十数秒は耐えただろうか。ついに力尽きた死霊騎士は列車に轢殺されて、その姿を消した。



 時間は少し遡る。
 オラトリオ、ルフトゥ・カメリアは空の上で翼を広げ、暴走列車を眼下に収めていた。
「ああ、そろそろお前たちの場所に着く。あと4、50秒ってところか」
 持たされた通信機の相手へと連絡する。視線を列車の先に移せば、そこには3人の猟兵が見えた。
『了解。手筈通り、こちらで列車の減速を試みる。そのタイミングで飛び乗りを試みてくれ。オーヴァー』
「俺の仕事もここまでってこったな。良いぜ、後はこっちで好きにやらせて貰う」
 通信機の交信を切り、ルフトゥは翼の付け根の青い地獄の炎を燃え上がらせる。
 急降下。まるで猛禽類のような速さで列車へと迫り、ダガーを投げる。流体金属生物でできていたダガーはその姿を鞭へと変えて、列車の連結部へと絡まった。そのまま流体金属の高い伸縮性能を利用したロープワークでもって列車に突入する。減速されているだけあって、突入は想像以上に楽だった。
「チッ、もう列車の接続部分で壊れてるところがあるじゃねえか……」
 舌打ちを漏らすルフトゥ。なるべく列車を壊さない形での突入を考えていたが、もう壊れているのであれば仕方ない。この事件が終わった後、この列車は一体どうなってしまうのだろうかと少しばかり想像しながらも、彼は鞭を回収してダガーへと戻していつでも応戦できるように構える。
「終わらせるぞ、この胸クソ悪ィ事件を終わらせるためにも」
 チリリ。一瞬、彼の傷跡から吹き出す青い炎が激しさを増した。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

キャナリニア・カルコメラン
暴走列車と言えども、減速せずに走り続けることは不可能なはず。飛び移るならそこでありますな。【情報収集】でポイントを探し、進路近くの建物からダイブ。ダイナミック乗車であります。

甲冑人形を操っても切れることの無い操り糸を小型の槍に括り付け【槍投げ】。絡まった糸を伝い、人形であるならそのまま車体に捕まり続けることも可能でありましょうか。他にも飛び乗ってくる猟兵様がおりましたらサポートするのであります。

乗降口を剣先でこじ開け、『屑鉄の傭兵部隊』を車内に展開。危険性の有無を軽く確認後乗り込むであります。オブリビオンが釣れる可能性もゼロでは無し、いないならいないで避難用車両として使わせてもらうであります。


パーム・アンテルシオ
●WIZ
力にも速さにも自信はない…となると、頭でなんとかするしかないよね。
高台から飛び移る、っていう方針に変わりはないんだけど…
多少なりとも速度が下がりそうなカーブとか、比較的近くから飛び乗れるトンネルなんかがあれば、そこを狙おうかな。
もちろん、誰かが減速させてくれた所を狙うのもありだね。ふふふ。

そうそう…ユーベルコード、月歌美人。
乗客のみんなも、不安だろうから。飛び乗った後は、これで。
流すのは、明るく軽快なアニメソング。ふふ、猟兵参上、って感じかな?
外から全部、しっかり届くかはわからないけど…少しでも、みんなが勇気付けられたらいいな。

…私は、風がびゅんびゅんいってる中で歌う事になるけど、ね。



 暴走列車と言えども減速せずに走り続けることは難しい。
 そうしなければ終点駅で大惨事を起こす前に、カーブで曲がり切れずに脱線してしまう。そうであっても乗客の多くは無事では済まないので大惨事と言えばそうなのだが。
 ともあれ、暴走列車はカーブで必ず減速する。
「ちなみにその甲冑人形で列車を止めることっていうのはできないのかな?」
 線路がカーブする場所の頂点。そこに位置する建物の屋上で列車が来るのを待つパーム・アンテルシオが質問した。
「さすがに無理でありますなぁ。そもそも出力が足りてないでありますし、人形は有線でありますゆえ有効射程も限度があるでありますし、失敗したら自分も糸で繋がっているゆえ巻き添えを食うであります」
 首を横に振って答えるのはキャナリニア・カルコメランだ。ジャンクパーツ由来の甲冑を身にまとった機械仕掛けの甲冑騎士人形を見る。まあそうだよね、とパームは苦笑を返す。
 ガタゴトと列車が走行する音が聞こえて来た。そちらに視線を向けると、列車の姿が確かに見える。
「所詮は鉄屑。されど鉄屑とて捨てたものではないであります」
「それじゃ、お手並み拝見ってことで」
 その言葉を合図にするかのように、キャナリニアとパームは高台から車両へとダイブした。
 キャナリニアが五指を動かして甲冑人形を操作すると、人形は空中で糸を繋いだ小型の槍を投擲し、それによって彼女は列車の天井に掴まり続ける。パームの方を確認すると彼女もしっかりと手近な出っ張りに掴まれたようだった。
「では突破口を開くであります!」
 スクラップ由来の剣でもって列車の天井に人が通れる程度の穴をこじ開け、その中へとこれまたスクラップでできた自立式の小型人形たちが先に突入していく。安全確認ができたなら、キャナリニアもまた続いて突入する。
「突入完了でありますな」
「風で髪も毛並みもボサボサになっちゃったよ」
 しゅた、とスマートにして降り立つキャナリニアと、もふもふ尻尾をクッション代わりにしてバウンドするように降りるパーム。
 周囲を見渡すと、乗客たちが突然の闖入者に困惑したように身を引いていた。
「自分は安全確認を行うであります。パーム様は――」
「うん、わかってるよ。私は乗客を安心させる」
 糸を繰り、人形たちを操るキャナリニアへと応じるように頷いて、パームが一歩前に出る。何が良いかな、と彼女は少し、悩むように宙を見つめてから、明るい歌にしようと決めた。
「――陽の下、月の下、幻想を創り出そう」
 歌い前にそうとだけ告げて。彼女は歌い始める。
 けたたましく鳴り続ける列車の音の上を、パームの喉が奏でる綺麗なソプラノボイスが鳴り響く。
 それはまるで、猟兵たちが現れたことを知らせるかのようであった――。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

シャルロット・クリスティア
リゥさん(f00303)と挑みます。

電車の進行ルートの脇、極力見通しの良い場所であらかじめ待機。
列車が視認出来たら、通過する前に列車に向けて発砲。後方車両の窓ガラスを撃ち割ります。
距離はありますが、私の狙撃の腕ならば乗客に当てずに窓を割る程度ならできます。
狙撃の射程は400m。列車の速度はまぁ、時速200㎞と見積もったとしても秒速55~56m。
射程ギリギリから当てれば、少なく見積もっても5秒以上は余裕はあります。
リゥさん、それだけあれば十分ですよね?
取っ掛かりは作りました。ここからはお願いしますよっ!


リゥ・ズゥ
シャル(f00330)と共に行く

リゥ・ズゥが、測る。シャルが、射つ。
入り口が出来たら、シャルを抱え、飛び込む。
シャルは、リゥ・ズゥが、必ず守り、運ぶ。任せろ

(「視力」「見切り」「野生の勘」でシャルの観測手として最適のタイミングで窓を狙撃できるよう援護します。
窓を割ったらシャルを抱えた状態で電車に飛び込み
「バウンドボディ」で己自身をロープ状にし「ロープワーク」で窓に取り付きます。
一連の流れを「早業」で行い、特急の速度が予想以上でも「衝撃波」で自身を発射し対応します。
弾性の高い身体でシャルへの衝撃も遮り安全確実に遂行してみせます。)



 命中率の高い長距離狙撃をするためには?
 良い狙撃銃を使う。銃身を安定させる。多くの練習を積む。コンディションを最高にする。
 成程どれも正しい。しかしそれはあくまでも命中率を安定させるための施策に過ぎない。
 命中率を上げるなら、そう。――良い観測手と狙撃をすることが肝要だ。
「――列車、来た」
「はい、こちらでも見えました」
 望遠鏡の中に列車を捉えたリゥ・ズゥが伝えると、シャルロット・クリスティが頷きを返す。
「私の狙撃の有効射程は400m。列車の速度が200km/hと見積もって秒速に換算すると55~56m/s」
 エンハンスドライフルのスコープを覗き込みながら、シャルロットが冷静に計算を行う。彼我の距離、弾速、そして風速を数字上で計算し、それを現実で実現可能なものであるかイメージする。乗客に当てずに列車の窓を狙撃すること自体はそう難しくはない。むしろ問題は――。
「射程ギリギリから当ててから5、6秒の猶予時間……リゥさん、それだけあれば十分ですよね?」
「リゥ・ズゥは、問題ない。リゥ・ズゥが、測る。シャルが、撃つ。入り口ができたら、リゥ・ズゥ、シャルを守りながら、飛び込む」
 それが今回の事件における、二人の列車突入プランだった。
「二人で、やる」
「ええ、やりましょう」
 緊張で震える指先をトリガーにかける。
 吸って、吐いて、肩の力を抜く。その一連の動作を経ることで、シャルロットの指先の震えは止まり、完全な狙撃姿勢になる。
「修正、左に5度。これで狙撃をする。――今」
 リゥの指示に従って銃口を向ける先を微修正し、合図と共にトリガーを引く。リゥの類まれなる視力と直勘によって発射された偏差射撃は、果たして正確に狙った場所の窓を撃ち破った。
 しかしリゥはその結果を見届ける前に、ユーベルコードでもってその身をロープ状に変えると、シャルを抱えた状態で猛烈な速度で今しがた車窓に開けた窓へと跳んで行った。
 窓枠からべしゃり、ぼうんとリゥが車内へと闖入し、その中からシャルロットが出て来る。さすがはブラックタールと言うべきか、突入時の着地の衝撃すら全て吸収してしまったようだった。
「さすがに服装はちょっと無事ではないみたいですけどね……」
「リゥ・ズゥ、それはどうしようもできない」
 リゥが少ししょんぼりしたような気配になった。まあ良いですけど、と呟きながらシャルロットは銃に再び弾を込める。
「突入は完了しました。さあ、オブリビオンを探しに行きましょう」
「シャル、いれば、リゥ・ズゥ、負けない」
 一人と一匹は、そうして列車の奥へと向かって行くのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

夢飼・太郎
☆団地
☆SPD
さて
オレ達団地が目ェ付けたんだ
民間人は絶対に帰宅させるから覚悟しとけよ

UCを発動
最後尾の車両連結部に有る扉に接続して侵入
敵から袋叩きされぬようタイミングは仲間に合わせる
「喧嘩の時間だオラァ!」

戦闘になる場合
乗客に飛び火しないように近接格闘で制圧
乗客が狙われた際は身を呈してカバー
そして殴る
アドリブ歓迎!!!


セラ・ネヴィーリオ
【団地】メンバーと参加
やっほ!ヒーローしに来ました!
救える人は救っちゃうよーっ!

僕は【残火】の高速移動で飛び乗る
待機場所は風を感じる特急沿線
狙うは車両の一番後ろ!
「白魂、励起――解放!」
身体能力を思いっきり強化して跳んじゃおう!
車両側面、お客さんのいない窓を震脚の要領で踏み抜いて勢いのまま突入だ!
その時に連結部から入った未夜さんと車両内を挟み込めるような位置につけたいな

最後尾車両に敵がいれば【残火】の効果時間内に格闘で掃討
敵がいなければお客さんに声をかけて安心してもらおうね
団地組の支援を目標に動くよ
アイコンタクトとかハンドサインってチームっぽくてカッコいいよね!

(アドリブ/連携歓迎)


三岐・未夜
【団地】
走ってる列車に飛び乗るとか、それどんなびっくり人間ショー?……え、僕らがやるの……?

とりあえず、えっと、儚火を喚び出して乗せて貰おう。
そのまま使い魔の脚力で連結部に飛び乗るよ。
壊しちゃうとそのあと直すの大変だろうし、平和的に、うん。
乗ったら扉を開けて中へ。
もし速度が足りなさそうなら、外部から操縦のハッキングも試みよう。乗っ取れなくても、少しでも速度が落ちればそれでいいし。……でも、儚火の脚力で済めばそれが一番かな。

中は狭いだろうし、儚火はちょっと邪魔になるよね。
中に入ったら儚火は消して、【第六感】【誘惑】【催眠術】で奇襲に警戒。
なんかあれば【属性攻撃】【誘導弾】で返り討ちにするよ。


浅沼・灯人
【団地】の仲間と
走る電車の中で暴れるなんざ随分傍迷惑なやつだな。
ああ、俺らで全員救ってやろうぜ。

SPD
俺はセラと最後尾車輌後ろ側から乗り込む。
さあ、飛ばそうぜ相棒。
宇宙バイクのZANYに乗って、ヘルメットは着けて、フルスロットルで電車を追う。
近付けば扉付近に人がいないのを確認してから、扉を壊して飛び乗る。

乗客はコミュ力使って説得して、敵に狙われたらかばう。
敵はアサルトウェポンによる射撃を食らわせる。距離関係なく当ててやるよ。
近づかれ過ぎたらぶん殴るけどな。
にしても挟み撃ちってのはいいなぁ。テンション上がる!
「待ってたぜぇ!この瞬間をよぉ!!!」

(アドリブ歓迎)



「作戦はこうだ」
 グリモアベース。浅沼・灯人が四六九九団地のご近所さん3人の顔を見渡して、作戦の説明を始める。
「まず俺とセラが列車と並走し、最後尾車両から乗り込み、恐らく中に潜んでいるであろう敵の注意を引く」
「そしてタイミングを合わせて、連結部から突入した俺と未夜が一気に制圧。駅弁名物サンドイッチの出来上がり、と……。悪かねぇぜ」
 言葉を継いだのは夢飼・太郎だ。彼ら二人は不敵な笑みを浮かべながらもっともらしく頷き、眼鏡をきらりと反射させる。
「……それなんだけどさ」
 小さく、手を挙げて。言いにくそうに口を差し挟んだのは三岐・未夜だ。
「グリモア猟兵からさっき聞いた話なんだけど、えっとね……」
「最後尾車両の制圧もう終わってるらしいんだよねー」
 どう話したものかと悩む未夜の言葉を横から奪うように言葉を連ねたのは、セラ・ネヴィーリオだ。「は?」と灯人と太郎が真顔でセラを見てから、未夜を見る。未夜は「そうなんだよね」と顔ごと目を逸しながら頷いた。
「「――作戦立て直すぞオラァ!!!!」」



「昔のヤツらはよく言ったもんだ。『押してダメなら引いてみろ』――ってな」
 所変わって、線路の上にて。太郎が架空上のドアノブ的な物を押し引きしながらのたもうた。
「だからって制圧された最後尾から先頭車両に標的を移すのはどうなのさ……」
「仕方ねえだろ、列車ってのは狭えんだ。俺たち4人で地の利を活かして戦うってなると、挟み撃ちしかねえ」
 未夜が跨っている大きな黒狐の頭を撫でながら、やや呆れた表情を浮かべる。灯人は無愛想に返事をして、愛車ZANYに凭れ掛かりながら装備確認を怠らない。
「あははっ、でも何だかんだで灯人さんと太郎さん、みんなで活躍してくれる作戦立ててくれるよね」
「「うっせぇ黙ってろ」」
 セラがハンドサイン一覧表(灯人謹製)を確認しながら笑うと、メガネ二人から鋭い眼光が寄越された。おっと、と肩を竦めるセラ。
 面倒見の良い灯人と、賑やか好きの太郎。この作戦の由来というものはつまるところ、そういうことなのだろう。

 ――ふと、列車の走る音が聞こえた。瞬間、弛緩した雰囲気が一変し、4人はそれぞれ臨戦態勢に入る。
「覚悟は良いな」
「あァ」
「当然」
「できてるよ」
 よし、と灯人が口元に獰猛な笑みを浮かべる。
「――行くぞセラ、オブリビオンどもに不運なダンスを踊らせてやる!!」
「白魂、励起――解放!」
 まず動いたのは灯人とセラだ。
 灯人は宇宙バイクZANYに跨がって走り出す。凶悪な咆哮とともにZANYと灯人は疾駆した。
 セラが『ゆりかご』と呼ぶ杖の鐘を鳴らすと、内に眠る今は亡き武闘家の魂から生前の力を喚び起こすことでセラは力を得た。ズンッ、と腹に響くような震脚の音と共に、彼は跳んだ。
「……ホントにやるんだよね、この人間ビックリショーみたいな飛び乗り芸」
「んだよ、今更怖気付いたのか?」
 溜め息をつく未夜へ、グリモアであるドアを展開した太郎が視線を向ける。まさか、と未夜は首を横に振った。彼は冗談めかして肩を竦める。
「せっかくこんな面倒くさい曲芸やるんだから、観客がいなかったのが残念だっただけ」
「よく言うぜ。俺が見ててやるっての」
 小さく笑って。行ってきます、と未夜は儚火に乗って二人を追った。行って来い、と太郎はそれを見送った。



 視点は先行した灯人とセラに移る。
 彼ら二人は列車と同じ進行方向へと高速移動していた。それぞれ速度を調整し、追い付いて来た列車の先頭車両の頭を二人で挟み込む。
「…………ッ!」
 灯人が突破口を作れとアイコンタクトを送る。そして送られた本人、つまりセラは数秒首を傾げてから、ああ、と思い出したかのように頷いた。一覧表作ってやったじゃねえかと灯人が歯軋りするが、さてそれはセラに届いたかどうか。
 セラが大きく跳躍したかと思うと、車両の鼻っ面。操縦室のガラス窓に着地する。彼は瞬時に丹田で練り上げていた気功を脚へと伝達し、そのまま操縦室のガラス窓を蹴破った。
 それに合わせて灯人がバイクから跳躍し、セラの作った突破口へと身を滑らせる。
「チッ、わかっちゃいたが、先頭車両はダメみてえだな!」
 血に塗れた操縦室の扉を豪快に蹴破ると、そこには腕や頭が融解した人ならざる人どもがいた。
「ダメならせめて、救える人だけ救っちゃおう!」
「言われなくてもわかってるッ!」
 灯人がアサルトウェポンを構え、セラが灯人の火線でカバーできない敵へと近接格闘を仕掛ける。
 先頭車両の最前線で、戦端が開いた。



「儚火!」
 時間はやや遡る。未夜は大黒狐に乗って列車と並走していた。
 彼は列車へと大黒狐を横付けする。その先頭車両の連結部、ゴムで守られた部分を火属性の破魔矢で焼き切って突破口にして中に身を滑り込ませる。
 ゴムの焼ける匂いの中で、ふと酸っぱいコーヒーのような匂いがしたかと思うと、ガチャリとドアの開く音と共に連結部へと太郎が現れる。
「よォ、先に来てたか」
「……やっぱりさ、そのグリモアズルくない?」
「グリモア猟兵の特権だぜ」
 半目を送ってくる未夜へと太郎が肩をそびやかしていると、ばりん、と先頭車両の方からガラスの割れる音が聞こえた。



 そして、4人による挟撃は成る。
「喧嘩の時間だオラァ!」
「待ってたぜぇ! この瞬間(トキ)をよぉ!!!」
「ヒーロータイム! って、言うよりヤンキータイム?」
「まあ、僕らヒーローって柄でもないしね」
 銃火と拳、破魔矢と格闘。ご近所さん同士によるこの上ない連携で、瞬く間に先頭車両は制圧されたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『ゆかりちゃん』

POW   :    「ただいま」「おかあさん、おとうさん」
戦闘用の、自身と同じ強さの【母親の様な物体 】と【父親の様な物体】を召喚する。ただし自身は戦えず、自身が傷を受けると解除。
SPD   :    「どうしてそんなへんなかおでわたしをみるの?」
【炎上し始める捜索願いからの飛び火 】が命中した対象を燃やす。放たれた【無慈悲な】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
WIZ   :    「ひどいよ、ひどいよ、ひどいよ」
【嗚咽を零した後、劈く様な叫声 】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


◆◇◆◇◆◇◆◇
○おしらせ○
 1/24(木)9~10時頃に、第二章集団戦「ゆかりちゃん」の断章を投稿します。
 プレイングの投稿受付はこの断章が投稿されてからとなります。お待たせして申し訳ございませんが、なにとぞよろしくお願いします。
◆◇◆◇◆◇◆◇
 ――「ゆかりちゃん」を知っているだろうか。
 黄色い帽子に赤いランドセル、そして“顔の捜索願い”が特徴の少女型オブリビオンだ。
「うふふふふ、うふふふふ」
 少女は列車の中を楽しげにスキップする。今の彼女は“鬼”だった。鬼ごっこの、鬼役。隠れたお友達を見つける役だ。
 最初、お友達に「かくれんぼをしよう」と誘われた時はこんな列車の中で隠れる場所なんか、と思っていたが。言い出しっぺなだけはあって、隠れたお友達はまったく見つからず。長い列車の中で退屈しきっていたゆかりちゃんは、今ではすっかりかくれんぼに夢中になっていた。
「うーんここかな? それともここかな? ねえ、おとうさん、おかあさん、どう思う?」
 ゆかりちゃんが振り返ると、そこには融解した人型の人間が二人、立っていた。
「■■■■■■■■■■■■」
「えー、ヒントぐらい良いじゃん」
「■■■■■、■■■■?」
「■■■■■■■■■」
 不平を言うように、ゆかりちゃんが捜索願いの顔面を傾ける。おとうさんとおかあさんと呼ばれた人型は、常人には理解できないような声を上げるのみだ。
「むー……っ、なんで二人ともそんなイジワルゆーの!!!!」
 癇癪を起こしたようにゆかりちゃんが甲高い声で叫ぶ。周囲にある窓ガラスが一斉に割れた。捜索願いの頭は燃え上がり、そこから出た飛び火でおとうさんとおかあさんは燃やされ融かされ、消えてしまった。
 すっかりいじけた様子で、うつむいたゆかりちゃんが呟く。
「……いいもん、いいもん。それなら――」「あたしだけで」「お友達を見つけて」「みせるんだから」
 声が、分かれる。1つ、2つ、3つ、4つ……。そこには何人ものゆかりちゃんがいた。
 何人ものゆかりちゃんが各車両に散っていく。
「こんにちは、おじさん! あなたのお腹の中を見せて! お友達が隠れてるかも!」
「こんにちは、おばさん! あなたの頭蓋骨を開かせて! お友達が隠れてるかも!」




・UDC番号:UDC****
・オブジェクトクラス:【検閲済】
・説明
 UDC****、通称「ゆかりちゃん」は少女型のオブリビオンです。頭部が一枚の紙になっており、その表面には過去に失踪した少女の捜索願いが描写されています。コミュニケーション能力を持ちますが、その性質は人類に対して敵対的であることが多いです。
 1714号事件において発見されたゆかりちゃんは攻撃的かつ残忍な性質を持ち、一般人を殺害した後に素手で解体する行動が確認されています。
 過去の出来事より、ゆかりちゃんは以下の能力があることがわかっています:

・UDC****-1、UDC****-2の召喚能力。UDC****-1はゆかりちゃんに「おとうさん」、UDC****-2は「おかあさん」と呼称されています。それぞれ人体が頭から融解したような造形をしています。極めて攻撃的な性質を持ち、ゆかりちゃんを守るように戦います。現在、近接格闘、融解面から火球を放射する、叫声を合図とした念動力系の破壊能力などの攻撃手段が確認されています。「おとうさん」「おかあさん」が召喚されている間、ゆかりちゃんは戦闘行動を取らないことが確認されています。
・捜索願いの頭部を炎上させ、そこから火球を放射する攻撃能力。炎(UDC****-3)は延焼した分も含め、ゆかりちゃんが任意に消すことができるものであると推測されています。
・叫声を合図とした念動力系の破壊能力。過去の事例ではゆかりちゃんの感情が高ぶり、嗚咽を零した時に発生する事象であると推測される。広範囲かつ無差別的な攻撃で、1714号事件においてその能力は電車1車両の中で効果を発揮されました。

 遭遇した場合、猟兵は即座にゆかりちゃんを殺害して下さい」

 あなたはこの報告書を知っていても良いし、知らなくても良い。
木目・一葉


影の追跡者で追跡させているのは、このゆかりちゃんだな
「残念だが、かくれんぼはもう終わっている」

・戦闘
第1章にて使用している影の追跡者にはそのままゆかりちゃんを追跡させ続け、仲間と共にこれを追いかける
そのゆかりちゃんと接敵したら、追跡させていた影の追跡者からUC『影人の縫い針』を繰り出し、UCを封印させる
これで一人は無力化できる
その後は斧で相手の攻撃を【武器受け】でかいくぐり、近接戦闘をしかける
ただしUC封印が通用してない場合の飛び火と叫声については、【第六感】で警戒しつつ、座席などの【地形の利用】で防ぐ
また他のゆかりちゃんが隠れようとしたら、影の追跡者の召喚による『影人の縫い針』を仕掛ける


アルトリウス・セレスタイト
妄念は外へ出すものではない
抱えて戻れ

車体や一般人に被害が及ばぬよう華嵐で掃討
見える敵性個体を近い方から、複数体纏めて攻撃
狭い空間で他へ被害を与えぬよう頭部から押し潰す形で狙う

要救助者があれば回廊で安全確保した場へ

精密に狙う必要があれば崩壊で一体づつ確実に
この際は要救助者の近くから始末

一般人不在が明確であるなど狙う必要がない状態なら破天で速やかに
味方に当てず車体を壊さない程度に、弾幕を叩き付ける飽和攻撃



「どっこかなー♪ どっこかなー♪」
 列車の走行音に混じって、少女の鼻歌が聞こえて来る。そこにはゆかりちゃんが座席の影などをきょろきょろと見回していた。
「みっつからないぞーお友達ー♪ かくれんぼーは始まったばかりー♪」
「――残念だが、かくれんぼはもう終わっている」
 不意に声がした。ゆかりちゃんは目の前に現れた木目・一葉に注目しようとして、しかし突如として背後を振り向く。影がゆらめくと同時に、一葉が放っていた影の追跡者がゆかりちゃんの喉へと蛇のように巻き付いた。
「――――!?」
 驚きと困惑。喉を締め上げる影の追跡者を掻きむしるようにほどこうとするも、それはますます締め付けるばかりでゆかりちゃんに声すら出させない。
 奇襲と喉の締め上げ。敵の外見が外見なだけに一葉も罪悪感を覚えないでもないが、いかに女児の外見をしていようともその異形の頭部と向けられる殺意、そして苦しむ様を見せるでもなく窒息せずに生きているという事実が、眼の前にいる女児が紛れもなく敵対するオブリビオンであることを証明していた。
「無駄だ。あなたのおとうさんもおかあさんも、助けには来ない」
「…………」
 一葉のユーベルコードによるユーベルコードの封印。それが成功した今、あとは純粋な力勝負となる。戦斧を構えながら告げると、きょろきょろと左右を見ていたゆかりちゃんが一葉へ意識を向ける。顔を見ずとも何を言っているのかぐらいはわかる。あれは「おとうさんとおかあさんを取らないで」という子供の怒りだ。もっとも、そこにはかつて平凡な暮らしを送っていた幼少期の一葉と比較して、明確な殺意という大きな差があったが。
 殺意が一瞬だけ鋭くなったかと思うと、ゆかりちゃんは跳ぶように一葉へと襲いかかった。まっすぐな素手での攻撃。一葉もそれに合わせるように戦斧を盾代わりに防御する。鉄を爪で引っ掻く嫌な音と共に、子供が出した物とはとても思えないような威力が戦斧越しに伝わってきた。
「っ、ここだ!」
 戦斧で作った影から、空いた片手で小太刀を振るう。ひゅ、と音がして肉を斬った手応えが返ってきたが、致命打と言うには浅過ぎる。
「楽しそうだね、わたしも混ぜて!」
「っ、来たか……!」
 舌打ち一つ。一人はユーベルコードを封じたというのに、二人目のゆかりちゃんが現れる。挨拶代わりだと言わんばかりに二人目のゆかりちゃんが連れてきた両親から二つの火球が放たれる。一発目を戦斧で防ぎ、二発目を座席の影でやり過ごす。
 だが、一葉は諦めてはいない。戦斧は大きく重く、盾としては有用だが一葉にその機動力を犠牲にさせている。堅実である一方、速攻手とは言い難い。ではなぜ小太刀のみで攻め込まず、戦斧を車内で使っているのか。

 そう、「おびき寄せ」である。

「ご苦労。両親合わせて都合4人ならば悪くはないか」

 後ろから声がした。アルトリウス・セレスタイトだ。
 彼がカードを一枚放るとそれは無数の淡い青色の花びらと変じて天井を這うように飛び、まるでシャワーのように四人の頭から降り注ぐ。
「妄念は外へ出すものではない。抱えて戻れ」
 斬り裂くでもなく、破裂するでもなく。淡青色の花弁たちはまるで幻のように四人の体へと吸い込まれていき――そして、四人を内側から自壊させた。【華嵐】。それは敵の存在根源へと深く浸透し、自壊の原理でもって内側から砕く恐るべきアルトリウスの異能だった。ざ、と黒い塵へと変わったオブリビオンたちがその姿を消していく。
「終わったな。次は?」
「2つ隣の車両。もう影が追跡済みだけど、3匹いるみたいだ」
「では同様の作戦で殲滅する」
 塵へと還ったオブリビオンたちに一瞥をくれてやると、アルトリウスは隣の車両へと進んでいく。
「……ハードボイルっていうか、エリミネーター、的な?」
 即席コンビのパートナーの背中を見て、簡潔にそう評する。頼れる味方であることは間違いなさそうだ。
 いつか見た、映画の傭兵のように口元に笑みを浮かべ、一葉は戦斧を担いで歩き出す。
「あれだけ相方が頼れれば、今日は死ぬのに不向きな日みたいだな」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

雷陣・通

【POW判定】

父ちゃんが言っていたよ。空手はこういう事に使うもんだって
残像からスライディングで距離をつめて、「おとうさん」「おかあさん」が攻撃する前に本人に先制の一撃。
二回攻撃で徹底的に足を蹴り、腹に正拳を打ち込み
ゆかりちゃんの攻撃は見切りからカウンターに繋げて、何をしても攻撃が返ってくるようにして意識を腹より下へ向けさせる
狙うのはフェイントの下段蹴りからの手刀による頸部切断

「ゆかりちゃんがどうなったか俺は知らない。でもこれ以上はやらせない。それが……俺の今やる事だ」

つぎのゆかりちゃんへ向かって歩いて行く
やることは一杯だ


デナイル・ヒステリカル
事前に調査したUDCの【世界知識】によって敵オブリビオンについては知識を持ち得ているはずです。

"隠れんぼ"に熱心なオブリビオンへと、僕の方から話し掛けて興味を引き、他の乗客の安全を優先します。

近付いてきたオブリビオンへUC:セルフ・オーバースターティークによる雷の範囲攻撃を敢行します。
範囲攻撃ではありますが、このUCならば狙った対象のみを攻撃することが可能なはずです。
乗客・列車・味方猟兵への被害をゼロにしつつ、相手だけを撃滅します。



「遭遇した場合の即座の殺害、ですか……」
 デナイル・ヒストリカルはドアの向こう側にいる二人のゆかりちゃんと、情報ウィンドウに表示されたレポートを見比べる。隣の車両に他の乗客はおらず、少女型のオブリビオンは座席の影や網棚をしきりに調べていた。二人の会話を盗み聞く限りでは、どうやら彼女たちはかくれんぼに熱中しているようだった。
「ええ。それでは僕の方で注意を引くので、機を見計らって手筈通りにお願いしますよ」
 通信ウィンドウから了解の応答が返って来るのを確認し、デナイルは展開されていたウィンドウを閉じて扉を開く。
「お兄さんだぁれ?」「わたしたちのお友達知らない?」
 扉を開いた瞬間、二人のゆかりちゃんがその異形頭をデナイルに向ける。たじろぎそうになるのをぐっと堪えて、デナイルは笑顔を作った。乗客が全て避難済みであるのならば、やることは敵の気を引くネゴシエーションではなく、純粋な注意の誘引だ。
「はぁいこんにちは。かくれんぼお兄さんでーす」
「かくれんぼ?」「お兄さん?」
 同時に首を傾げる少女二人。よし、とデナイルは掴みは取れたことを確信する。後は彼に案内役のプログラムとして元々組み込まれていた子供向け対話技術に従えば問題ない。
「そう、なんとかくれんぼお兄さんはかくれんぼの達人なんです! ゆかりちゃんがかくれんぼでお友達をなかなか見つけられないと聞いて、遥々やって来ました!」
「達人さん!」「すっごーい!」
 きゃっきゃと喜ぶ二人の少女。彼女たちがオブリビオンでさえなければ、デナイルも微笑ましかったのだろうが。彼女たちの異形頭が嫌でも敵としての悪性を証明している。
「ねえねえ達人さん」「お友達はどこにいるの?」
「それを教えちゃ面白くないでしょう。かくれんぼは鬼が見つけてあげなきゃ、隠れいている子が可哀想ですからね」
 えー、と二人は不平そうに声を上げる。そして片方が何かを思いついたように手を合わせ。
 ――瞬間、デナイルは嫌な予感がした。
「そうだ、お兄さんから教えて貰おう!」「指を潰せば教えてくれるかも!」「火で髪を燃やしたら命乞いしてくれるかも!」「もしかしたら、お兄さんの中にも隠れているかも!」
 まるで歌うように彼女たちは話し合い、デナイルへとその顔を向ける。捜索願いに描かれた少女の笑顔が、不気味にこちらを覗き込んでいた。
「いやぁ~、あっはっは……。レポートの推奨、アレ本当だったんですねえ……」
 思わず苦笑が漏れてしまう。即座の殺害が推奨されるのは伊達や酔狂ではないということか。
 少女たちが駆け寄ってくる中、デナイルはPSI演算宝珠の回路を過剰稼働させる。ターゲットの指定は、目の前二人。
「痺れて止まれ……!」
 手の平を突き出すとそこからバチバチと電流が流れ出した。狙い過たず、ゆかりちゃんたちにその電流が流れ込む。

 それに合わせて、向かい側のドアが開いて一人の影が躍り出た。
「ライトニングゥ――旋刃脚!」
 息もつかせぬスライディングで距離を詰めて、下段回し蹴りをゆかりちゃんの一人へと先制して叩き込んだのは雷陣・通だ。体勢を崩し、転倒したゆかりちゃんを置いて、通は流れるように身を屈めてもう片方の腹へと拳を突き刺す。手応えが返って来た。
「片方は任せたぜ!」
「えっ、僕も戦うんですか」
 当たり前だろ、と叫ぶように応えながら通はゆかりちゃんの貫手を紙一重で見切る。あれだけの電撃を受けた上に正拳突きを食らっておきながらすぐに攻撃へと転じられるのはさすがオブリビオンと褒めるべきかそれとも嘆くべきか。
 転倒していた方のゆかりちゃんも起き上がり、デナイルへと襲いかかる。彼は小型戦闘用の機械兵器たちを展開すると、その集中砲火でもって襲いかかってくるゆかりちゃんを迎え撃つ。
 通とデナイルが一人ずつゆかりちゃんを相手取る構図だ。
「なんで邪魔するの」「わたしたちを邪魔しないで」
「いいや、やらせはしねえ。お前たちがどうしてそうなったのかなんて俺は知らないけど、これが、俺の今やることだから!」
 ここが父に教わった空手を使うべき時だから。
 言葉を交わしながら、通とゆかりちゃんの攻防は止まない。閉所での近接格闘戦となれば通の領分である。燃え上がるゆかりちゃんの頭部から放たれる火球を頭を振って避け、下段蹴りを食らわせる。通の狙いが転倒であることを理解した。脚へ意識を傾けて、敵のローキックをサイドステップで回避しようとして――。
「――いまだ!」
 その意識の集中こそが、通の真の狙いだった。ガードの緩まった頸部を、鋭い手刀でもって両断する。黒い髪と、異形の頭、そして黄色い帽子が宙を舞って、黒い塵に変わった。
「あ、ぅ……」
 それを見てしまったもう一人のゆかりちゃんが、嗚咽を上げる。
「デナイル!」
「わかってますよ! ――もう一回、痺れて止まれ!」
 通の呼び掛けに応じてデナイルが再度PSI回路をオーバードライブさせて電流を出す。ゆかりちゃんの口から出る叫声が、悲鳴へと変わった。
「――これで、終わりだ!」
 電流が流し込まれるゆかりちゃんの首を、通が手刀で切り飛ばす。残心を取る中で、残されたゆかりちゃんもまた同じく塵へと還った。
「終わりました、か……」
「ああ、なんとかな」
 安堵するようにデナイルが吐息する横で、通は拳のバンテージを巻き直して歩いていく。
「次はもうちょっと戦術を変えないとですねえ……」
「ああ、次を倒しにいこう。やることはまだまだいっぱいだ」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ネグル・ギュネス

成る程、子供の姿と無垢な声で惑わし、殺害───其処に悪意は無くとも、悪はあるか。

では、斬る。


貴様の傾向は知っている
まず両親の物体が阻害してくる、守る為にな

刀を振るうて【なぎ払い】【衝撃波】で其れを叩き伏せる

厄介な攻撃は【残像】でいなしながら、【ダッシュ】で距離を詰めて、立ちはだからせて貰おうか

私は君の友では無いし、君は私の敵だ。
其処にそれ以上の感情は無い。

少しは不憫には思うし、同情する部分もあるが、だからと言って許容は出来ない。


では、さらばだ。
ユーベルコード:剣刃一閃で、涅槃に送ってやる


………行方不明。
記憶喪失の私も、似たようなもの、か。
全くやりきれん話だ、なぁ…?


【仲間と協力歓迎】


都築・藍火
童でござるか。嘗てはその見た目通りの哀れな童であったかもしれぬ。されど世に仇なすモノと成り果てた以上、斬るしか無いでござろう……やりづらいでござるなぁ

拙者は父母が出ている間を狙うのでござる。かの二体、野放しにしては非常に厄介なことと成るでござる。故に、本体を狙い、解除させるのでござる。そうすれば達人の智慧により、180秒間の間再召喚を封じれるでござろう。そうでなくても奴らは本体を守る様に動くとのこと、本体を狙えば牽制の効果は十分に狙えるものでござろう

場所が狭い場所でござるからな。状況を鑑みて、武器はその場で使いやすい獲物を選ぶでござる
嗚咽を漏らし始めれば見たら全力で逃亡

アドリブフリーダムに歓迎



「――以上がUDCゆかりちゃんの概要だそうだ」
 サイバーアームにインプットされていた、UDCレポートの情報を説明し終えてネグル・ギュネスは一息ついた。
「童でござるか……。かつてはその見た目通りの哀れな童であったかもしれぬと思うと、やるせないでござるなぁ」
 概要を聞き終えて、都築・藍火は目を伏せる。いかに武道に秀でた彼女とはいえ――いいや、武道に秀でた彼女だからこそ、幼子の外見をしたゆかりちゃんと戦うのは気が引けるのだろう。
「確かにそうだろう。だが、そこに悪意はなくとも悪はある」
「世に仇なす化生と成り果てた以上は、斬るしかないでござるか」
 観念するように藍火は吐息して、眼を開いた。ネグルは相変わらず能面のような鉄面皮で、表情を微動だにしていない。それで、いよいよもって藍火の覚悟は決まった。
「斬りに行くぞ」
「ああ、参るでござる」
 二人は合図をするように頷き合い、藍火がドアを開け放つと同時にネグルが踏み込んだ。
 敵UDCは二体それぞれ両親を召喚済み。だが、ネグルがやることは変わらない。
「――薙ぎ払うッ!」
 言葉の通りに、彼は刀を抜き放った。刀から生じた衝撃波から両親がゆかりちゃんをかばう。
 そこまでは織り込み済みだ。ネグルの脇をするりと通り抜けるように藍火が踊り出て、瞬く間に敵との距離を詰める。
「その召喚。一見して厄介極まりないでござるが、弱点がござろう」
 それを今から証明してやるとばかりに、藍火はゆかりちゃんへと槍を突き込む。
 藍火はネグルから聞いたUDCについてのレポートを聞いて、一つの仮説を立てていた。すなわち、両親が召喚されている間にゆかりちゃんが戦闘行動を取らない理由は、取らないのではなく取れないのだ、と。確信は無かった。だが、彼女の今までの戦闘経験と何よりも直勘がそう告げていたのだ。だからその仮説を前提にネグルと藍火は作戦を立てた。
 そしてそれは、正解だった。
「■■■■■、■■■■」「■■■■■■■■■!」
「おとうさん、おかあさん!」
 ネグルの放つ衝撃波から庇わせても、藍火の槍が突き込んで来る。防戦一方、どころかゆかりちゃんはジリ貧へと追い込まれていた。父と母に守られて戦ってきたオブリビオンが今、その両親こそ最大の足枷になってしまっているのはなんとも皮肉な光景だった。
 そしてその弱点が証明された今、藍火のそばに立った守護明神が少女を見下し、そのユーベルコードを封印する。
「ごめん、ごめんね。おとうさん、おかあさん……」
 ゆかりちゃんは嗚咽を漏らしながら消える両親を見送る。ネグルの衝撃波を受け、藍火の槍を受けて、多くの傷を負いながら少女は叫声を上げようと口を開く。
「しまっ――」
 間に合うか。藍火は咄嗟に、その喉目掛けて槍を突き込もうかと逡巡した。あるいは逃げるべきか、とも。
 戈を止めると書いて武。果たしてこの少女を殺すのは、自分の武であるのかどうか。迷ってしまった。

「――すまん」

 藍火の脇をすり抜けるように。疾走してきたネグルがその刀でもってオブリビオンの頸を刎ねた。
 りん、と柄に付いた鈴が鳴って。ぐしゃりと硬い床に肉と血が落ちる音がした。
「あ……」
「大事ないか」
 刀を鞘に収めたネグルが問いかける。藍火は、呆然とした顔をしていて。目を伏せると、槍を立てた。
「未熟でござるな……」
「……少しは不憫に思う気持ちは理解できるし、私でも同情するところはあった」
 だが、とネグルは黒い塵へと還るオブリビオンを見下す。
「だからと言って許容はできないし、するべきでもない。私たちは彼女の友ではなく、彼女は私たちの敵なのだから」
「……これが覚悟の差、でござるか」
 いいや。ネグルは頭を振る。事実、覚悟だけならば藍火にだってあっただろう。
「誤魔化し方の差、だろうな」
 自分の心に迷彩をかける技術。あるいは、自分の心を操縦するかのごとくコントロールする技術。差があったとしたら、そこだろうと彼は言う。
「……もう行こう。車内にはまだオブリビオンが潜んでいる」
 ネグルは歩く。塵と化したゆかりちゃんを通り越して。
 ちらりと見えた捜索願いが、脳裏に焼き付いて離れなかった。
 行方不明の彼女と、記憶喪失のネグル。居場所を失った者という意味では、どちらも似たようなもので。
「……まったく、やりきれん話だ」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

雨乃宮・いづな
即座の殺害推奨って、また随分な相手が出てきたものだね?
とはいえこの報告書を読む限りかなり危険な相手だし、躊躇してる余裕は無いかも。

ユーベルコード『紅霞』を発動。幻術で周囲の景色に紛れ「目立たない」ように「忍び足」で進んでいくよ。
敵も猟兵も多いなら乱戦になると思うし、奇襲するチャンスは多いと思うんだよね。
相手の声や挙動に注意しつつ、相手からの攻撃は「見切り」で回避努力。
チャンスを伺いつつスキを見せた相手に接近して「鎧無視攻撃」で顔か首を狙って「暗殺」していくよ。
死にきらないなら「2回攻撃」で追撃。その後は再度『紅霞』を発動して奇襲を繰り返していくね。

さ、早い所済ませよっか?


天命座・アリカ

……ふむ。
アトラクションの次は、鬼ごっこにかくれんぼかい?
おーけーおーけー!
気のすむまで私が遊んであげようじゃないか!
子供と遊んであげるのも、大人の役目だからね!

さて、私は追われる側か!実に都合がちょうどいい!
なんせこの天才美女は!溢れるオーラで目立ってしまう!
故に、囮を引き受けよう!私が引き付けておけばね!
無辜の民やお仲間に、被害が行かないって寸法さ!
さあさおいでよ鬼さんや!天命座はここにいる!
【存在感】

飛んで跳ねて、逃げ回ろうじゃないか!
どうしても捕まりそうになったら仕方ない1
ユーベルコードで切り抜ける!余り使いたくはないんだがね!
戻ってこれたらさ!ついでに拳骨でも叩きこんであげよう!



「成程そうかい、アトラクションと来たらお次は鬼ごっこにかくれんぼ!」
 天命座・アリカは車内を走っていた。
 走ることが特段得意というわけではないが、ともかく走らなければならなかった。なぜなら――。
「ねえ待ってよお姉さん!」「お姉さんって頭が良いんでしょ?」「だったらお友達を探すのを手伝ってよ!」
「子供と遊んであげるのも大人の役目ではあるけどね! デンジャラスだよ危機存亡だよ!」
 すぐその後ろに、何人ものゆかりちゃんを引き連れてしまっているのだから。
「まったく時に美しさとは罪だね嘆きだね。この天才美少女が! 溢れんばかりのオーラで! こんなにも人を惹き付けてしまう!」
 演技がかった仕草を混じえつつ、飛び来る火球を避けては距離を離していく。時折火球が掠っている辺り余裕があるんだか無いんだかわからない。
 とにかく彼女は飛んで跳ねて走って転がり逃げ回る。
「さあさおいでよ鬼さんこちら! 天命座のありかはここにある!」



 ――そんな一見して滑稽にも見える逃走劇の中。
 果たしてアリカを追うゆかりちゃんの数がいつの間にか、次第に減ってきていることに誰が気付いただろうか。
「まずは一つ」
 雨乃宮・いづなは音を発さず、唇だけでカウントする。足元には、既にオブリビオンが塵と化していた。
「次に二つ」
 アリカを追う最後尾のゆかりちゃんへと音もなく接近し、黒い刀で頸を刎ねる。楽しそうにアリカを追っていたゆかりちゃんの一人は、何が起きたのかもわからぬ内に首と胴が泣き別れして、塵へと還る。
 ああ、わからないだろう。いづなの用いる狐の妖術。彼女が【紅霞】と呼ぶそれは、ともすれば傾いた風にも見られがちな彼女の風体を、周囲の景色と同化させる光学迷彩として機能する。視覚が誤魔化すことができたならば後は気配だけ。そして気配を押し殺すことはいづなの得意技の一つだった。目立つアリカが囮になっていれば、もはやこの空間で気付ける者もいないだろう。
「――おっと」
 嗚咽を漏らしそうなゆかりちゃんの頸を刈り取る。これで三つ目。さしもの隠密に優れるいづなとはいえ、室内制圧だけには滅法弱い。ゆえにこそ、彼女もそれを理解しているからそれを未然に防ぐ。
 危ない危ない、といづなは胸中で吐息する。以前読んだことのある報告書の内容の限り、相当に危険な相手だったといづなは覚えている。それこそ、即座の殺害が推奨されるほどに。
 だから、敵がどのような外見だったとしても躊躇している余裕など無い。
 すう、と狐が幻術で背景へと溶けて消えた。



「捕まえた!」
 追いかけ始めてから、どれほどの時間が経っただろうか。おとうさんとおかあさんに協力して貰って壁際へと追い込み、火球で牽制し、ようやくゆかりちゃんはアリカを捕らえることに成功した。
 余人が見れば、アリカにゆかりちゃんがじゃれついている様子。だが、実際には万力のような力でもってアリカは締め上げられていた。
「逃げないで。ねえ、教えてよ。私のお友達はどこにいるの?」
「さあ知らないね、存じ上げないね。そもそも私はキミのお友達と会ったことすらない。居場所がわかろうはずもない」
「……ふぅん、そう。じゃあ――」
 死んでね。
 ゆかりちゃんが万力のような力で絞め殺そうと腕に力を込めて。
 しかし、その腕は虚空を掻いて交差した。
「え――?」
「最後」
 頸が、刎ねられた。黒い塵となり、宙を飛ぶゆかりちゃんの頭から見えた光景は、自分の胴体と。
「ゆかりちゃんの命、妖術のお代として確かに頂いたんだよ」
「ああ、まったく。このユーベルコードばかりはあまり使いたくはなかったのだけどね。……けど、拳骨ばかりは許してあげよう勘弁しよう!」
 そして真っ黒な刀を鞘に収める乳白色の髪の女と、日記帳のようなものを広げるピンク色の髪の女が並び立つところだった。
 それも視界から消えて。ゆかりちゃんは完全に黒い塵へと還っていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ジャガーノート・ジャック
(ザザッ)
内部潜入完了。これよりオブリビオンの討伐を開始する。

(ザザッ)
狭い車内、大振りな武器は取り回しが困難と推察。
『Summon: Arms』使用。
小型のレーザーファンネルを二機召喚。
ブラスターと同等の威力の熱線を照射する。
『スナイパー』で命中精度向上。
胸部・頭部への『早業』『二回攻撃』『一斉発射』で可及的速やかに攻略する。
必要性を感じたならば助けを要する友軍への『援護射撃』も行う事とする。

順次車両を攻略をしつつ、本命がいると思しき箇所へと向かう。

本機の作戦概要は以上、実行に移る。オーヴァ。
(ザザッ)


黒白・鈴凛
さて、此処からが本番アルナ
乗客の避難は十分、戦闘に集中できるネ

乗客が居ないとはいえ、揺れるし、狭くはないが広くもない車内じゃ他の猟兵達の邪魔になりかねないアル

そうな、前衛のワタシ、後衛に二人くらいの人数で動ければ最善カ?
ま、一人でも蹴散らして魅せるがナ

ワタシにできるはこの拳と蹴りで打ち倒すことだけヨ
母親父親、纏めてワタシの崩拳でゆかりちゃんに向かってブッ飛ばしてやるアル

拳には【怪力】【力溜め】【鎧無視攻撃】【捨て身の一撃】をのせるアル
力溜め終わるまでは八卦掌で攻撃を捌き【時間稼ぎ】
後衛に攻撃がいかないように【挑発】も行うネ
やーい、お前のお顔探索願いー
とでも言っとけば釣れそうアルナ


富波・壱子
オブリビオンの姿を確認、交戦を開始します
例え子供を模した姿の敵が相手でも、やることは他のオブリビオンと相対した時と変わりません。殺します
無感情な態度を崩さず即座に戦闘行動に移ります

【先制攻撃】【クイックドロウ】【スナイパー】【二回攻撃】
ユーベルコードによる予知を用いて敵が現れるのと同時にホルスターから抜いた拳銃で躊躇うことなく心臓と頭部目掛けて発砲します
乗客は安全な車両に避難させたとはいえ、狭い車内で無差別攻撃をさせるわけにはいきません。泣き叫ぶことが攻撃の予備動作ならばそれを行う前に始末します
射撃で標的が沈黙するならよし。まだ活動を続けるのであれば射撃で怯んだ隙に間合いを詰め刀で首を狙います



「――内部潜入完了。これよりオブリビオンの討伐を開始する」
 列車へと乗り込んだジャガーノート・ジャックはそう報告すると、端末の通信を切った。特殊兵装を操作し、小型のレーザーファンネルを召喚する。
「索敵状況は」
「隣接車両に一体。召喚済みのようです」
 大型自動拳銃の装弾数を確認しながら富波・壱子が返答する。スタビライザーの入ったピルケースへと手を伸ばそうとして、突入前に飲んだことを思い出して手を下ろした。
「上等アル。援護と時間さえあれば一発で安心確実に蹴散らして魅せるヨ」
 発音は怪しいものの、拳を繰り出す動作で自信たっぷりに言うのは黒白・鈴凛だ。列車に共に突入した壱子は「確かに可能でしょう」と頷く。
「叫声を出されない程度に追い込まず、一気に片を付けるのであれば確かにその作戦は合理的だと本機は判断する」
「決まりネ。惹き付けてる間の援護は頼むアルヨ」
 二人の賛同を得られて準備も整っていることを見て取るや、鈴凛はUDCのいる車両へと突入した。
「你好(ニーハオ)、早速だけどワタシと一勝負して貰うアルヨ、捜索願い頭!」
「……お姉さん、誰? わたしたちの邪魔をしないで!」
 先制して両親二人の融解した頭部から二つの火球が鈴凛目掛けて放たれる。
「――来ました」
「了解。照射開始」
 壱子の未来予知能力がそれを看過しない。号令一下、二つの火球へ向けて壱子の大型拳銃の銃弾が、そしてジャガーノートの放ったファンネルのレーザーが迎え撃ち、相殺する。
「謝謝(ありがとう)。――さあ、距離は詰めたアル」
 二人の援護によって至近距離にまで辿り着いた鈴凛が奇妙な構えで踏み込む。八卦掌だ。
 庇う“おとうさん”の手を取り、強く引いて重心をブレさせると同時にローキックのような歩法でもって相手の片足を払い崩す。あとは空いたもう片手を引いた相手の手の脇へと滑り込ませて胴体を反らせるように押してやれば、相手の身体はいとも簡単に転倒してしまう。転掌八式である。
「父親の方を頼みました。頭部より火球」
「了解、任された」
 反撃に打って出ようとする“おとうさん”と“おかあさん”。しかし、転倒した“おとうさん”の融解した頭は火球を作り出す前にジャガーノートのレーザーで焼き切られ、“おかあさん”の仕掛けようとする近接格闘は鈴凛に辿り着くよりも早くその腕が、足が、壱子の銃によって撃ち抜かれてしまう。
「あなたたちには何もさせません」
 弾丸を撃ち尽くせば、ビーチェからブレッサーへ。同型拳銃への持ち替えによって、通常の装弾数よりも多く援護射撃を行う。
「こ、の……!」
「残念アルネ、もう勝負ついてるヨ」
 両親を消してゆかりちゃんは鈴凛へと近接格闘を挑む。が、近接格闘は鈴凛の領分だ。襲いかかるゆかりちゃんを軸にするように鈴凛は体捌きでそれをいなし、その背へ回り――。
「ぶっ飛ばすアル」
 前屈みの姿勢から放たれる進歩崩拳。鈴凛の怪力と練り上げられた気功によって、ゆかりちゃんの胴体へと大きな穴を開ける。
 叫声を上げる暇もなく、ゆかりちゃんはその場に倒れ、塵と化した。
「………………」
「オブリビオンに同情なさっているのですか?」
 塵に還ったオブリビオンを見下ろすジャガーノートへと壱子が問いかける。彼は「いいや」と頭を振った。当然だ。暴力装置は、同情などしない。
「良かったです。例え子供の姿を模していたとしても、オブリビオンはオブリビオンに違いありませんから」
「オブリビオンの討伐。それが我々に課された使命だ」
 ジャガーノートが鈴凛の元へと歩んで進み、壱子もそれに続いた。
 戦いはまだ、始まったばかりだ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

壥・灰色
サーチ・アンド・デストロイ
単純でいい指令だ

おれはもう一滴の血も流させないと決めた
列車の中を駆け抜け、敵を探す

みいつけた

かくれんぼの鬼はこっちだ
狩る側になったつもりだったか?
なら悪いが、攻守交代だ

壊鍵、撃殺式
起動

両手に嵌めたメリケンサックに、壊鍵の衝撃を増幅する術式を宿し
壊鍵の衝撃を、両腕に集中させる
この狭い列車の中だ、脚に宿しての回避行動は周りにも被害を与えるだろう
ならば、この両腕――2回攻撃――を無双の槍とし
何が来ようが貫き進むのみ

おとうさんも
おかあさんも
おまえらもだ

眼前に立つ「ゆかりちゃん」を叩き潰し、一人でも多く守る
身を挺して守れるならそうもしよう
誰も、殺させてやるものか


鳴宮・匡
肉体派のやつも多そうだな
派手にやりそうな灰色のも見かけたし
ま、後方援護に徹しよう

「視る」ことに徹して戦場全体を把握
味方に攻撃を仕掛けようとする個体を優先的に狙撃
動き出しの瞬間や攻撃動作の予兆など
「必ず当たる」って瞬間を狙うよ
特に前衛向きじゃない味方が襲われてるなら
できるだけ助けてやろう
近づかれるのは巧くないだろうし

援護とは言ったが殺さないとは言ってない
弱っているやつがいれば確実に落とすぜ
数減らしは集団戦闘の基本だ

無差別攻撃とやらはうまくないんで
できるなら【抑止の楔】で潰したい
泣くような素振りのあるやつから喉、または頭
序でに脚や腕くらい吹っ飛ばせばいけるかな?


複数描写・台詞追加・掛け合い大歓迎



 壥・灰色にはいくつか好む指令であるだとか、命令というものが存在する。
 中でもとりわけて彼が好むものは二つ。
 “Search & Destroy(見つけ次第殺せ)”、“Dead or Alive(生死は問わない)”。
 そういう意味では、今回の作戦は実に灰色向きだった。
「みいつけた」
 連結部のドアを開けると、その先には2人のゆかりちゃんがいた。
「おじさんだぁれ?」「知ってる?」「知らなぁい」
 電車は良い。一直線で、索敵という意味ではクリアリングが非常に楽だ。それは同時に彼自身も見つかりやすいことを意味しているのだが、どうということはない。
「じゃあ、殺しちゃってもいいよねっ!」「そうだね、殺しちゃおう!」
 敵に攻撃されるよりも先に相手を倒してしまえば良いのだから。
 ゆかりちゃんたちの頭部が同時に燃え上がって、火球が放射される。灰色はそれを見切る。列車に飛び乗った時と違って壊鍵を脚部に使用してしまえば電車を破壊してしまう恐れがあるため、距離は容易には詰められない。
 よって彼の取る方策は一つ。
 避けて、打ち消して、ゴリ押す。
「かくれんぼの次は鬼ごっこをしよう。ただし鬼はこっちだ」
 術式が起動した二本の腕が振るわれるたびに、空気を打つ音と共に衝撃波が生じて火球を迎撃、相殺する。
「来ないで!」「邪魔しないで!」
「ずっと狩る側のつもりだったのか? だとしたら悪いが、攻守交代だ。おれはもう一滴の血も流させないと決めたからな」
 速度を落とさず迫る灰色。火力と手数が足りてない。そう瞬時に判断した二人のゆかりちゃんはそれぞれの“おとうさん”と“おかあさん”を呼び出して、身体の融解面から火球を射出させる。
 実に2倍の弾幕。
 一つは見切れる。二つは相殺できる。だが、残る一つは――?



 銃声。

 弾丸が火球を撃ち抜き、相殺した。
「お前、走るの速すぎだろ」
 鉄火の場にあってなお飄々とした口調で話すのは、鳴宮・匡だった。彼は灰色を後から追って来たのだ。
 匡の援護によって火球の弾幕を完全に掻い潜ることに成功した灰色は、到達すると同時に両手のメリケンサックへと壊鍵の衝撃増幅術式を付与する。筋繊維が千切れんばかりの壊鍵の衝撃が集中したその両腕でもって、“おとうさん”と“おかあさん”を叩き潰す。パァン、と肉の弾ける音がした。
「ひっ……」
 自分の両親が目の前で殺されたゆかりちゃんが悲鳴を漏らし、叫声を撒き散らそうとして――。
「悪い、泣かれるとちょっと困る」
 匡のRF-738Cによる狙撃で喉を撃ち抜かれた。悲鳴が全て、ただ喉の穴へと繋がる呼気へと変わる。
「子守上手じゃねえか。教師になれる」
 一瞥して無力化されたと判断した灰色は、勢いをそのままに、庇うように立った両親を同じように衝撃波で消し飛ばす。
「先生はちょっと。仕事大変そうだし」
 まるで日常であるかのように会話を続けながら、今しがた両親が消されて無防備になったゆかりちゃんの脳天へと銃撃を放つ。
「猟兵稼業やっといて大変そうも何もないだろうよ」
 銃撃に続く灰色の打撃。ぱきゅ、と軽妙な折れて潰れる音がした後に、ゆかりちゃんの一人が黒い灰へと変わる。
 後は喉が撃ち抜かれた方だけ。匡が覗くスコープの先をそちらへ向けると、そこには燃える頭部が見えた。
「あ、やっべ」
 火球が迫る。
 照準の後に相殺――間に合わない。伏せて間に合うか、間に合わないかの分の悪そうな勝負。
 判断は一瞬。匡はいつものように火球を照準しようとして――眼の前で、火球が消えたのを見た。他ならぬ、前衛を務めていた灰色の拳が直に火球を殴りつけ、衝撃によって消したのだ。
「――――っ」
 その隙があれば十分だとばかりに、残ったゆかりちゃんが距離を取ろうと立ち上がろうとする。
 銃声二つ。火球から照準をズラして、匡が的確に膝を撃ち抜く。
「――捕まえた」
 タッチ。灰色の手が少女型オブリビオンの頭に置かれて、術式によって発生した衝撃波が敵を黒い塵へと還した。
「まずは二つ。……なんだ?」
 術式を切ってメリケンサックを嵌め直している灰色を見ていると、彼はそれに気付いていたのか顔を向けてきた。いや、と匡は頭を振る。
「よくあの火球打ち消せたな、って」
「そこは普通打ち消した俺の拳を心配するところじゃないのか」
「ああー……。大丈夫だったか?」
「親切にどうも、見ての通り問題ないよ」
 匡の取って付けたような心配の言葉に対して、肩を竦めた灰色が打ち消した方の手をひらりと振る。
 自動的な反射行動、には見えなかった。となると、純粋に彼の驚くべき反射神経によるものか。そんな予想を立てていると、休憩は終わったとばかりに灰色が次の車両へと動き始める
「あ、もう行くのか」
「あんまり悠長に構えてると、血が増えそうなんでね。誰も殺させないためには進むしかないだろ」
 違うか、と振り向く灰色の言葉に、そうだな、と匡は応じる。
「んじゃあ行くか」
 弾倉を交換して、匡はその後に付く。お前も来るのか、という視線を一瞬向けた後に、ああ、と灰色が頷いた。
「行こう」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ジョン・ブラウン

「やーお嬢ちゃん、一人で電車に乗れるの?凄いね」
『すごいむー、我々はウェブマネーくらいしか買えないむー』
「待って課金する時は僕が買う約束だったよね?」
『黙秘権を行使するむー』

「こいつ………っ!」
『そんな事よりお嬢ちゃん、隠れんぼかむー?』
『ここには誰も隠れてないむー』
『違うとこ探したほうが良いと思うむー』
「自然に増えるのやめてくんない???」

『む、意地悪じゃないむー?』
『ほんとに中に誰も居ないむー』
『泣かないでほしいむー』
『そんなに疑うなら調べてみると良いむー』

『『『『合体だむ―!』』』』

「ねぇミッッッチリ詰まって向こう側見えないんだけど、彼女そっち居る?」

『今お腹の中調べてるむー』<ゲップ



 子供の相手はそれなりに慣れている。まず興味を引いて、友好的に接していけば仲良くなれることが多い。
 そしてジョン・ブラウンは子供たちの興味を引きやすいものによく慣れ親しんでいた。例えばそれはゲームであるだとか、コミックであるだとか。
 それから、一見してかわいらしいぬいぐるみだとか。
「やーお嬢ちゃん、一人で電車に乗れるの? すごいねえ」
 通りすがりに声をかけてきたジョンへ、目を瞬かせながらゆかりちゃんは小首を傾げる。その顔はジョンの顔とその頭の上にでんと座った白いモチのようなぬいぐるみの間を行き来していた。
《疑義》《声の掛け方が不審者です》
「シッ、ウィスパー、今はちょっと黙っていてくれ……」
「……お兄さん、だぁれ?」
「えっ、ああ、僕? 僕はジョン・ブラウン。で、こっちがだむぐるみ」
『よろしくだむー』
 息を呑むような気配。小さく「ぬいぐるみが喋った」と口にしている辺り、もしも彼女の顔が異形でなかったらさぞかし驚きで目を丸くしていたことだろう。
『ゆかりちゃん、一人で電車に乗ってるむー?』
「ううん、“おとうさん”と“おかあさん”もいるよ。わたし、二人を連れてきてあげてるの」
 言葉と同時に、ゆかりちゃんの背に頭部の融解した人間が二人分、いつの間にかに立っていた。ワァオ、と上げそうになる驚きの声を堪えて、ジョンは笑顔を作る。
『連れて来てるなんてすごいむー。我々は自分たちを連れてウェブマネー買いに行くぐらいしかできないむー』
「……あれ? 待って課金する時は僕が買う約束じゃなかったっけ?」
 本来の目的を一瞬忘れて、だむぐるみの方を見上げる。『黙秘権を行使するむー』とそっぽを向かれてしまえば、さすがに任務中に余罪の追求はできない。なんということだ、なんかだむぐるみ用のデータが少し見ない間にものすごい速度でチャプターを進めていたりあまり見ないようなスキンを主人公に着せていたり、果ては見慣れないユニットが編成に組み込まれていたのはそういうことだったのか。
「……いや、気付けよ僕」
『そんなことよりお嬢ちゃん、隠れんぼかむー?』
「うん、お友達とかくれんぼ。でもね、探しても全然見つからないの」
『ここには誰もいないむー』『違うところ探した方が良いと思うむー』『お友達はかくれるのが上手だむー』
 ぽてんぽてん、と頭上のだむぐるみから増殖したのか、他のだむぐるみたちが落ちてくる。勝手に増殖するなよ、と思いながら、ジョンは頭のだむぐるみを床へ下ろした。
「でも、他のところを探してもいなかったんだもん」
『それはおかしな話だむー』『この列車、全然止まってないから途中で降りたのも考えにくいむー?』『でも、ここにいないのは本当だむー』『行き違いむー?』
「うそ。電車にいるもん、すれ違ったら絶対わかるもん」
「…………」
 マズい、とジョンは直感した。これは元ガールフレンドのレーシャが怒り始める直前の空気によく似ている。
「……ウィスパー、どうにかする方法は?」
《確認》《先程黙っていろと命じられましたが》
 さすがは高度人工知能と褒めるべきか嘆くべきか。普段の平坦な口調のままに、どこか怒ったような気配を見せている。それもそのはず、彼女は“囁く者(Wisper)”なのだから、その囁きを黙っていろとも言われれば頭に来もするだろう。
 眼の前にいる怒気を膨らませるゆかりちゃんと、耳元のウィスパー。悪魔と深海に挟まれているようなものだ。この場合、悪魔がゆかりちゃんで深海がウィスパーだろうか。
「悪かった、撤回するって。だから早く検索を――」
 小声でそう詫びて、打開策を考案させようとした瞬間だった。
 はらりと、捜索願いの紙から一滴、雫が落ちた。涙だ。
《推奨》《即時の退避》《一車両分以上の距離を空けてください》
「……いや、まだだ」
 すぐにウィスパーが退避を勧告してくるが、ジョンは頭を振る。まだ、あのゆかりちゃんは堪えている。
「なんでそんないじわる言うのぉ……」
『意地悪じゃないむー』『ほんとにほんと、誰もいないむー』『泣かないで欲しいむー』
「そんなに言うなら、あなたのお腹の中を見せてよ! そこにいるかもしれないから!」
『わかったむー』『そんなに言うなら調べてみると良いむー』
 やれやれとだむぐるみたちが身体を振って、わさわさと集まって、重なって――。
『『『『合体だむー!』』』』
 何体ものだむぐるみたちが集合したそこには、巨大な一つのだむぐるみがいた。それはごろんと前傾に転がると、マフンという奇妙な音を立てて元の姿勢に戻る。
「…………ねえ、なんか今すごい音したんだけど。っていうか、前が全然見えないんだけど」
『ちょっと待つむー、今ゆかりちゃんがお腹の中を調べてるむー』
 ゲェップ。だむぐるみが下品なゲップを付けて返答する。
「……いや、ゆかりちゃんを一人対処できたから良いんだけどさ。これ、だむぐるみたちだけで良かったんじゃ……?」
 途方もない徒労感に包まれながら、ジョンははあ、と溜め息をつくのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

新堂・ゆき
子供の姿をしていて、でもなんて禍々しいのでしょうか。終点まで
時間もない事ですし、この子にはここでお帰りいただきます。
一緒に列車に乗り込んできている皆様と協力して戦うのが必要不可欠ですね。
月照丸で攻撃です。オペラツィオン・マカブルで攻撃したり、素早い攻撃
をいくつも叩き込んだり。
威力は多少落ちるかもしれませんが、どうも嫌な予感がします。
気休めかもしれませんが、攻撃の手は緩めたくありません。
敵本体が動かない隙を見て、他には構わず本体を集中して攻撃です。
本当にもう、ね。悪趣味な列車ですね。


パーム・アンテルシオ


えぇと、あれが…例の報告書のやつ、だよね。
なんていうか…すごく、イヤな存在。怖い…違う。怪しい…いや…歪。そう、とびきりに歪んでる。
うん…私には、私たちには、足踏みしている時間なんて無い。
怯んでなんていられない。倒して、先に進むもう。

ユーベルコード…金竜火。
車内で行動範囲は限られてるし、大規模な攻撃を行うわけにもいかないし。
一番小回りが効くのは、きっと、これ。
小さく、速く、鋭く。数で攻めて、確実にダメージを稼ごう。

これを選んだ理由として、もうひとつ。
万が一外しても、すぐに消せる事と…
相手の炎。
そう好き放題燃やされちゃ、たまらないからね。
囲め。もみ消せ。焼き消せ。
私の炎で、その炎を消し去る…!



 新堂・ゆきとパーム・アンテルシオは敵と対峙していた。彼女たちの眼の前には少女型のオブリビオンが一体。ゆかりちゃんだ。
「あれが例の報告書のやつ、だよね」
「ええ。容姿こそ子供ですが、報告書以上に……禍々しい」
 パームが狐火を展開し、ゆきが人形・月照丸に臨戦態勢を取らせながら、ゆかりちゃんとの間合いを測り合う。
「なんていうか、すごくイヤな存在だ。怪しいとか、怖いとかじゃなくて……歪。とびきりに歪んでいるよ」
「ええ。ですが終点まで時間の余裕があるわけでもありません。――この子にはこのまま骸の海へとお帰り頂きましょう」
 ゆきが腕を振ると同時に、人形の繰り糸が舞い月照丸が駆け、その手に持った薙刀でもってゆかりちゃんへと斬り掛かる。
「来ないで!」
 オブリビオンの頭部が燃えると同時に、火球が月照丸目掛けて放たれる。糸を引いて急制動し、火球を回避。そしてまるで人形の間を縫うかのように、後ろから桃色の火の玉がいくつも飛来しては火球を迎え撃つ。パームの狐火、【金竜火】だ。
「囲め、揉み消せ、焼き尽くせ!」
 次々に狐火が現れては炎へむかい、拮抗し――ついにはオレンジ色だったそれは、桃色の火によって飲み尽くされて、その場で消えた。
「私の炎で、敵の炎を消し去る! その隙に!」
「存じております!」
 再び月照丸を走らせて、ゆかりちゃんへと突撃させる。まるでハエを撃ち落とそうとするかのごとく少女型のオブリビオンは腕を振るう。しかし幼少の折より人形繰りの技術を磨きに磨き上げて来たゆきにとって、そんな単調な動作は指を数本動かしてやるだけでひらりと避けさせることができる。通常の人体ではありえないような、慮外で無理のある動作での回避行動を取る月照丸は回避の直後にその勢いを利用して、なぎ払いを放つ。月照丸の薙刀によって与えられた傷口から、血の代わりにざあ、と黒い塵のようなものが溢れ出して消えていく。
「悪いけど、もう足踏みしている時間は無いんだ!」
 だから早く終わらせてくれ。そう胸中で願うようにつぶやきながら、パームは生み出した狐火をゆかりちゃんへと集中させる。
 だが、突如としてゆかりちゃんの目の前に、庇い立つように頭部の融解した男女が現れる。“おとうさん”と“おかあさん”だ。彼らは狐火の桃色炎に焼かれながらも、自らの融解面を向けてそこからオレンジ色の炎を放射する。火球は二つ、それぞれゆきとパームに向けられたものだ。
「っく、まだそんな力を残してるんなんて……!」
 展開した狐火を自分へ向かってくる橙火へと集中させて、桃色で橙色を塗り潰してそのまま囲い消す。
 向こうは大丈夫だろうか、とゆきの方を横目に見ると、まるで吊り糸人形のようにだらんと脱力していた。
「あ――」
 危ない、と口に出して。金竜火を今から向かわせるには何もかもが遅く。ゆきの身体に火球が直撃する。
「――この火球」
 だが、直撃するはずだったその火球は、その直前でまるで雲散霧消したかのように突如として立ち消えた。
「そっくりそのままお返しします」
 楚々とした仕草で一礼すると、月照丸に抱え込まれていた火球をゆかりちゃんへと放たれる。【オペラツィオン・マカブル】――それは脱力状態で受けた攻撃を無効化し、それを人形に使わせるユーベルコードだった。
 まさしく悪因悪果。因果は応報し、皮肉にもゆかりちゃんの両親の放った火球こそが、ゆかりちゃん自身を焼いた。
「ああ、あぁぁァァア……!」
「……さようなら」
 親の放った炎に焼かれ、苦しみ悶えるオブリビオンへとパームは桃色の狐火を寄越して。尻尾の毛を逆立て気を集中させると、狐火たちはゆかりちゃんを一気に燃やし尽くして、炎を消した。
 後に残ったのは、黒い灰のような塵だけだ。
「荼毘に付した……わけでもないけれど。これで少しは救われると良いな」
 できれば鎮魂歌でも歌ってやりたかったが。今はともかく、時間が惜しかった。
「本当にもう、悪趣味な列車ですね……」
 吐息と共にゆきが呟きを漏らす。当初期待していた優雅さは諦めたが、それを更に下回る悪趣味さが見えていた。
 さもありなん。これは死者を生み出すための特急車両。誰に捧ぐものかも知れぬ、生贄を生み出す車両。
 ――生贄特急なのだから。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

セゲル・スヴェアボルグ
一気に叩きたいところではあるが、流石に列車ごと吹っ飛ばしかねんな。
それに、下手に刺激をすれば逃げ遅れた乗客にも被害が及ぶか。

逃げ遅れている一般人の安全確保が最優先だな。
ゆかりちゃんとやらの数を考えると、安全な車両が近くにあるかはわからんのが厄介か。
なぁに、近くに無いならば俺が壁になればいいだけの話だ。
多少燃える程度であれば気にする必要などない。
遠慮などせずに槍を叩き込んでやろう。

子供を手を掛けることにためらいはないのかって?
生憎だが、この状況で子供であるかどうかは関係はない。無意味な死をばらまく輩を野放しにするほど、俺は慈悲深くはないのでな。
まず救うべきは生きている人間だ。それだけは揺るがん。


ヴィクティム・ウィンターミュート
ケッ!随分とめんどくせえフリークスもいたもんだな。悪ィが、ジューヴのナリしてるからって、手は抜いてやらねえ。とっくに下校時間は過ぎてんだ。地獄って名前のお家に帰してやるよ。

ユーベルコードで溶かし殺してやる。優先的に狙うのは喉。声を上げさせなければ範囲攻撃はできねえ...はずだ。
喉から頭にかけて溶かしていき、両親を召喚されても優先的に本体を叩く。
攻撃は【見切り】と【ダッシュ】と【早業】でアクロバットに避けるぜ。
余裕があれば、【情報収集】で事件の首謀者が何者か調べてみよう

よぅ、とっても楽しそうじゃねえか。
せっかくだ。かくれんぼの必勝法ってやつを教えてやるよ。
それはな?

鬼を殺しちまうことだ。



 絶望的な壁があるとしたら。きっとそれは青色をしている。
「さて、悪いがここから先はオブリビオンお断りだ」
 セゲル・スヴェアボルグが大盾を軽々と片手で前へ置くと、ズシンと腹の底に響くかのような音が出た。それだけで列車の横幅の1/3ほどが塞がれてしまう。
「通せんぼ? どいてよ、邪魔しないで」
「悪いがそれはできかねるな。何せオブリビオンお断りなのだから」
 眼前にはゆかりちゃんが紙の顔でこちらを見上げていた。その肩は微細に怒りが伝わるかのように震えていた。まあどちらにせよ戦闘にはなるだろうな、とセゲルは胸中で頷く。あちらはお友達とやらを探したくて、こちらは後方にいる一般人たちを逃したいとなればそうもなろう。
「なんでそーやってイジワルゆーの!!」
 怒りの言葉と同時に彼女の頭が燃え上がり、火球を放射する。燃え盛る炎の弾丸は勢いよく突き進み、しかしセゲルの大盾によってその行く手を阻まれた。真正面から火球を受けた大盾は微動だにしないどころか、焦げ目一つ付いてはいない。
「あ、ぅ――」
 己の頼みとする技が一切通用しないところを見てしまったゆかりちゃんは、しばし呆然とした後に嗚咽の声を上げ始める。だが。
「悪ィなジューヴ(ガキンチョ)、とっくに下校時間は過ぎてんだ。俺たちが地獄って名前のお家に帰してやるよ」
 大盾の向こう側からセゲルとは別の声がしたかと思えば、盾の脇からそいつは姿を現した。ヴィクティム・ウィンターミュート。
「だから――理不尽に食われて死にな」
 彼が右腕のマシンアームを操作したかと思えば、何かがゆかりちゃん目掛けて飛んで行った。肉眼では捉えられないほどの小さな何か。
「え、ぁ――」
 ゆかりちゃんは喉元を両手で抑える。両手の指の隙間からは、溶けて焼け爛れた皮膚が見えた。ヴィクティムが射出させたものの正体が何なのかは、すぐにわかった。
 強酸だ。
「お、ぁ……!」
「冥土の土産にかくれんぼの必勝法ってやつを教えてやるよ」
 きっとゆかりちゃんは今、声さえ上げることが難しいほどの激痛を感じているのだろう。それもそのはず、ヴィクティムの放った強酸を物質化したナノマシンは着弾して皮膚を破り体内に侵入した後は、その部位を切り落とさない限りは無数に拡散・増殖を繰り返すという代物だ。ワームウイルスとさて、どちらが凶悪か。残酷という意味では、間違いなくこちらなのだが。
「鬼を殺しちまうと、ずーっと隠れてる側は勝ち続けられるんだ」
 そんな激痛の中でも彼女は叫び声も上げることすら叶わず、頭部を燃え上がらせてそこから火球を繰り出し、盾の向こう側にいるヴィクティムへと手を伸ばす。
「下がっていろ」
 セゲルがそう言うと、彼は大盾を構えながら、空いた手に握った大槍でゆかりちゃんを突き刺す。
 ず、と腹に大槍を受けながらも、しかし彼女は前進をやめようとしなかった。伸ばした手で虚空を何度も掻き。火球を何発も撃って。そのことごとくをセゲルの大盾によって阻まれようとも。
 ゆかりちゃんが止まったのは、強酸によって首がごろりと溶け落ちたときだった。それでようやく、オブリビオンの身体は黒い塵へと変わった。
「ドレック(クソ)、これだからウェットワークってやつは……」
 ヴィクティムが選んだ戦術はおよそ多くの選択肢の中でも最も安全で、効果的で、多くの人々を守れるものだった。
 それでも、彼にだって痛む良心はある。あるいは、彼がまだストリートチルドレンだった頃に、その仲間がイカレ野郎に連れ去られて溶かし殺された経験すらあったかもしれない。
「……やりきれねぇ」
「まず救うべきは今、生きている人間だ」
 セゲルは敵の沈黙を確認すると、槍を立てて盾を置く。
「この状況で子供であるかどうかは関係はない。無意味な死をばらまく輩を野放しにする理由もないだろう」
「俺だって慈善家ってわけじゃねえけどな。それでもあんな殺し方しちまえば、気分も悪くなるんだよ」
 こんな最悪の気分になるなら、ウェットワークを請け負うサムライやらがクスリに逃げる理由というものがよくわかろうものだ。
「そうか。では気分が良くなったらもう少しマシな顔をしておくことだ。……後ろに控えている者どもは、俺たちのことをよく見ている」
 セゲルに言われて、振り返らないだけの余裕はまだヴィクティムにもあった。守っている側が辛そうな顔をしていたら、守られている側は心配する。単純な理屈だ。
「……ああ。すぐにマシになる。だから少しだけ待っててくれ」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

シャルロット・クリスティア
報告には目を通していましたが……あれがUDCですか。私も実物を目にするのは初めてです。得体のしれない感じですね……。
気を付けてください、リゥ(f00303)さん。あんな見た目ですけど、危険な相手ですよ!

前衛はリゥさんに任せます。閉所ですし、彼の体格と技量であればそうそう突破はされないでしょう。
負担が大きいのは心苦しいですけど……その分、私も為すべきことはしますので!
私がすべきことは……本体への狙撃です。
リゥさんが『おとうさん』『おかあさん』や炎を受け持っている間に、その合間を縫って彼女本体を撃ち抜かせてもらいますよ。
ちょっと心苦しいですけど……そう言っている場合でもなさそうですしね……!


リゥ・ズゥ
シャル(f00330)は、アレを知っている、か。
なら、倒すのは、任せる。リゥ・ズゥは、シャルを、守る。
任せた、ぞ。
(「バウンドボディ」でシャルを守りながら、敵を倒す隙をこじ開けます。
「見切り」「野生の勘」広範囲攻撃を察知し「かばう」でシャルの周囲を覆うように変形し全方位を防護、
炎攻撃には「火炎耐性」、お父さんお母さんには「カウンター」と「捨て身の一撃」、「衝撃波」で対応し、シャルがゆかりちゃん本体を狙い撃つ隙をこじ開けます。
自在に伸縮変形する身体を活かし「早業」「ジャンプ」「ダッシュ」で狭い車内でも縦横無尽に動き回り対応します)

お前の友達は、此処には、居ない。
リゥ・ズゥ達、友達には、なれない。



 UDCが出現した。
 その報を聞いたシャルロット・クリスティとリゥ・ズゥはひとまず現場に向かおうと先頭の車両へと向かっていく。
「こんにちは、おねえさんたち」
 その道中、二人の前に現れたのは一人の少女だった。
「ねえ、わたしのお友達を知らない? どこにも見当たらないの」
「リゥ・ズゥ、知らない。リゥ・ズゥ、お前の友達、わからない」
 シャルロットが硬直する間に、のそりとリゥが前へ出て少女に答える。少女は「そっかぁ」と残念そうに呟いた。
「――リゥさん、気を付けてっ!」
「それじゃあ……死んでくれる?」
 シャルロットの警告の直後に、少女の大振りな一撃がリゥを襲った。少女の腕が、リゥの身体に沈む。
「シャル、コレを知っている、か?」
「そいつがさっき報告されたUDC“ゆかりちゃん”です!」
 エンハンスドライフルを構えるシャルロット。それを認めるや否や、さっと異形頭の少女――ゆかりちゃんはリゥから身体を引いて距離を取る。ぼよん、とブラックタールの身体が跳ねた。ブラックタール特有の【バウンドボディ】による伸縮性と弾力性による防御だ。
「大丈夫ですか?」
「リゥ・ズゥ、いくらか抉られた。でも、問題ない」
 シャルが安否を確認すると、いつもの調子でリゥは応えた。一見して被害がどの程度なのかブラックタールではないシャルロットにはいまいち実感として掴めない。ひとまずは彼の調子からして大事はなさそうだと胸を撫で下ろすことにした。
「おとうさん、おかあさん!」
 ゆかりちゃんが呼び掛けると、それに応じるかのように少女の前に融解した頭部を持った男女が現れる。
「敵の主な攻撃手段は火炎です、気を付けて下さい!」
「リゥ・ズゥ、火炎なら問題ない」
 のそりとシャルロットを庇うような位置取りへとリゥが進み出る。
 果たして、シャルロットの言葉通りに両親の融解面から火球は発射された。リゥ・ズゥは漏らさずそれを受け止める。ジュ、と黒煙が上がるも、その火球はリゥの黒泥の身体によって完全に消火された。
「リゥ・ズゥ、二人をやる。その間は、シャルに任せる。リゥ・ズゥ、シャルを守る」
「……はい、任せました!」
 一瞬だけリゥへ負担が掛かりすぎることに逡巡するも、すぐにシャルロットは決断してリゥの作戦に応じた。彼になら前衛を任せても大丈夫だという信頼がそこにはあった。
 二人の中でまず動いたのはリゥだった。ユーベルコードによって伸縮性が上がった身体を利用して、鞭のようにしなることで衝撃波を生み出して攻撃する。火球によって迎撃されるが、リゥに当たったとしてもやはり黒煙を上げるだけでそれは致命的な攻撃とはなり得ない。
 ヒュッと鋭く軽い音がして、黒い鞭がしなった。それはゆかりちゃんの前に立つ両親を締め上げる。
「シャル、今」
「はいっ!」
 応えて、シャルロットは大きく息を吐くことで肩から力を抜く。
 オブリビオンであろうが女児の姿をしたものを撃つのか? 得体の知れない相手だが彼女は元は救われるべき存在だったのではないか?
 頭の中を支配していたシャルロットの疑問は、照準のブレと共に消えていく。
 銃声。
 放たれた弾丸は吸い込まれるようにゆかりちゃんの異形の頭、捜索願いに描かれた少女の顔に、風穴を空けた。
 とさ、と軽い音を出してオブリビオンは仰向けに倒れて、黒い塵へと変わっていった。リゥが拘束していた両親もまた同様に、黒い塵へと還る。
 構えていた銃口を下げ、小さくシャルロットは何事かを呟くとリゥへと駆け寄って行った。
「リゥさん、大丈夫ですか?」
「リゥ・ズゥ、問題ない。少し抉られたし、蒸発したけど、すぐに元に戻る」
 ロープのように細長くなっていた彼は、その身を変形させて楕円形へと変わる。信じてはいたが、無事であると聞いてシャルロットは少し安堵する。
「敵、まだいるようだ。リゥ・ズウ、まだ戦う」
「はい、発見報告は多数あります。このまま私たちで倒しに行きましょう」
「リゥ・ズゥ、シャルと一緒に行く。でも、その前にやることがある」
 のそりとリゥが這って行った先は、黒い塵と化したゆかりちゃんの跡だ。
「お前の友達、ここにはいない。リゥ・ズゥ達、友達には、なれない」
 少しだけ、言葉に迷うように彼は黒い身体を揺らし、そして。
「骸の海へ、還るといい」
 呟くと、シャルロットの方へと戻って行った。
 そうして二人のコンビは並び立って、次の戦場となる隣の車両へと向かって行くのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

トルメンタ・アンゲルス


さぁて、急ぎましょうか!
まだ乗り込んだだけで、止めるどころか減速すら出来てませんからねぇ!

第一リミッター解除。
装甲を一部展開し、真の姿の一部を解放!
更に加速していきますよ!

電車の中という閉鎖された空間なら、都合がいい!
床が込み合ってるなら、天井やその付近の壁を駆けたり跳び回りながら進みましょう!
その最中に……ゆかりちゃんでしたか?
見つけたり第六感で感じ取ったら、追撃のブリッツランツェで蹴り穿ちますよ!

火炎耐性は多少ありますし、これだけ足場があるなら、火球も対処出来そうですねぇ。
……叫ぼうとしようものなら、飛び蹴りで突っ込んで即座に痛撃のブリッツカノーネや零距離射撃でその頭を叩き潰しますよ。


ネージュ・ローラン
どのような経緯で発生したUDCかは知りませんが、痛ましいものです。

狭い列車内であろうと、わたしの【空中戦】は場所を選びません。
火球も全て【見切って】みせましょう。
【スカイステッパー】により空中を【ダッシュ】し、壁や天井を蹴り、時には【エレメンタルヴェール】で受け流すことで回避を狙います。
そうして接近できたらスカートの下から【シークレットダガー】を取り出し斬りつけます。

「わたしでは貴女を終わらせることはできません。ごめんなさいね。」


リンネ・カーネーション
へんなかおたぁよくも言ったね、あんたにだきゃ言われる筋合いありゃあしないよ、ペラい面ぁしてからに
ひどいことされたくなかったら端から出てこないこったね!
さあお退きよクソガキ、それとも骸の海までデリバリーして欲しいのかい!

自慢のバイクで車内でも関係なく突っ走るよ。
なんせケットシーサイズだ、騎乗技術も合わせて小回りは十分効くとも
相手の意志も攻撃も追いつかないほどに加速して、ぶち抜いて、邪魔なガキはとっとと引っ込んで貰うとするさ。
こちとら泣く子も拝む聖者様だ、救いようのない邪神の眷属なんざ相手してられるかってんだ……ガキの格好なんざしやがって、煮干しが不味くなるじゃないかい



「シケたツラしたやつらだよまったく。こっちの気まで滅入っちまう」
 ケットシーサイズの宇宙バイクを曳きながら、リンネ・カーネーションは避難者たちの顔を思い出す。皆不安そうに体を寄せ合い、得体の知れない物への恐怖を抱いている顔だった。状況からすれば致し方ないことなのだが、そんなことはこのリンネの知ったことではない。気分良く走って突入して来た直後に、こんなに遠出して来てまでゴミ溜めで嫌というほど見てきた無気力な表情たちをなぜ見なくてはならないのだ、と彼女は煮干しの頭を噛み砕いた。
「ですが多くの乗客たちがまだ無事なようで安心しました。この列車を止めさえすれば、彼らにも笑顔が戻るでしょう」
 横で共に歩くネージュ・ローランが言うと、リンネは「フン」と鼻を鳴らす。
「その列車も動力系のコントロールが奪われてるだとかで、まずはオブリビオンのクソ野郎どもを始末しないことには止めるに止められないんだろう?」
「ええ。さしあたっては、出現報告のあった少女型のオブリビオンを退治しなければなりません」
 ネージュのスマートフォンに届いたレポート――メールでの受信があったが、彼女は操作がわからずに結局周囲の人たちに教わりながら閲覧した――がUDC“ゆかりちゃん”の出現を知らせてくれていた。概要は通読したが、なんとも痛ましい姿が載っていたのが印象的だった。
 何かを察知したのか、ぴくりとリンネのひげと猫の耳が揺れ動く。
「ネージュとか言ったねアンタ。そのゆかりちゃんだか言うUDCは……こんな姿をしてたりするのかい?」
 リンネが連結部の扉に手をかけて開くと、その先の隣接車両には3人のゆかりちゃんたちがいた。
「まさか三体もいるなんて……はい、あれで間違いありません」
「発見次第殺害推奨って話だったねえ! お嬢ちゃん、覚悟は良いね!?」
 ドルルン、とリンネの宇宙バイクが凶悪な音を立てる。
「――ええ、いつでも!」
「上等! 行くよ!」
 まず最初に動いたのはリンネだった。ケットシーサイズの宇宙バイクが爆音を立てると同時に、三人のゆかりちゃん目掛けて疾走を始める。
「何の音?」「あのバイクの音じゃない?」「あの猫かわいくない!」「変な顔してる」「殺しちゃおうか」「殺しちゃおう!」
「あ゛ァ゛!? 変な顔たぁよくも言ったねこのスカポンタン!」
 ゆかりちゃんの言葉を地獄耳で聞き分けては、さらに加速して車体を大きく持ち上げてウィリーし、ゆかりちゃんの一人の顔へとバイクを跳ねさせた。
「あんたにだきゃ言われる筋合いはありゃしないよ、ペラいツラァしてからに!」
 甲高いブレーキ音を立てながらターンするリンネ。異形の頭を押さえて倒れるゆかりちゃんを見て、他の二人もリンネたちを一方的に殺せる獲物から抵抗してくる敵へと認識を改め、敵意でその顔を燃え上がらせ始める。
「その姿、どのような経緯でUDCになってしまったのか想像するだに痛ましくはありますが」
 列車とバイクの走行音と比べれば、ネージュのステップ音など微細に過ぎるもの。それがユーベルコードによって、空中を足場に跳躍しているのであれば尚更だ。彼女は空中を足場にして、文字通り空を駆けて距離を詰める。
「来ないで!」
 気付いた一人のゆかりちゃんが迎撃せんと火球を撃ち出す。が、遅い。ネージュは的確にそれを見切ると、空中でのステップと同時にその手にあるエレメンタルヴェールでもって火球を受け流した。
 宙を、壁を、床を、天井を蹴って、ネージュは接近すると、ダンスドレスのスカートの下に忍ばせていたダガーを手にゆかりちゃんを切り付ける。ぱっと血の代わりに黒い霧のようなものが広がった。
 ブルルン、とリンネのバイクが威圧的に咆哮する。
「――さあ、お退きよクソガキども。それとも骸の海までデリバリーして欲しいってかい!?」
「わたしたちではあなたを完全には終わらせることはできませんが、骸の海までであれば、送ることも叶いましょう」
「うるさい!」「大きなお世話!」「死んじゃえ!」
 三者三様に叫びを上げて、ゆかりちゃんたちは異形の頭を燃え上がらせる。
 だからだろうか。列車の走行音や炎の音に紛れて、リンネ以外の宇宙バイクの上げる“声”に気付かなかったのは。

 ガラスの破砕音。

 列車の外、窓ガラスの向こう側から現れたのは、宇宙バイクNoChaserと合体したトルメンタ・アンゲルスだった。
 彼女は第六感的に瞬時に状況を把握すると、ゆかりちゃんの一人へと突入時の勢いをそのままに、まるで物理法則を無視した軌道変更の後に飛び蹴りを食らわせる。
「おっと、どうやら鉄火場だったようですね。タイミングが良かったです」
「トルメンタさん!? わたしたちと列車に乗り込んでいたはず……」
 驚きの声を上げるネージュに、ええ、とトルメンタは頷きを返す。合体した愛車の車体部分を軽く叩き。
「車内だとスピードを出しづらかったので、一度外に出てから今しがた再突入しました」
 とんでもないことをしれっとのたもうた。
「ハッ、上等だよお嬢ちゃん。今ちょうどツーリング中だったんだ、アンタも付き合いな!」
「楽しそうですね。俺も一枚噛ませて貰いましょうか」
 リンネの誘いにトルメンタが応えて、二人は並び立つ。リンネとトルメンタ、そしてネージュによって、三人のゆかりちゃんは挟み込まれていた。
「さあさあさあ、地獄のデス・ロードの始まりだよ!」
 最初に動いたのはリンネだ。急加速させた宇宙バイクを宙へと浮かび上がらせた上に、空中で横スピンをかけさせる。凶悪な横回転をしながら文字通り飛んでいくその宇宙バイクの姿はまるで凶悪なブーメランであるかのようだ。ゆかりちゃんの一体が、その凶悪なスピンの牙にかかって吹き飛ばされる。
「う、ぁ……」
 その暴力的な光景を見てしまった残されたゆかりちゃん二人が嗚咽を漏らし始める。が、それを看過する二人ではない。
 壁も天井も空中も足場にした三次元機動で接近したネージュは手にしたダガーでその喉を切り裂き。ハイスピードで接近したトルメンタが装甲を纏った拳でもって最後の一人の顔面を撃ち抜く。
 出来事は瞬く間。高速の攻防の後に、ゆかりちゃんたちは黒い塵へと還っていった。
「……終わったね。邪神の眷属なんざ相手するもんじゃないよ。こちとら泣く子も拝む聖者様だってのに、まったく救いようってもんがない」
「ここは終わったでしょうけど、まだいると思った方が良いでしょうね」
「そうですね。俺が外を走っていた時、戦っている車両がいくつかありましたし。援護に向かいましょう」
 リンネは黒い塵を一瞥すると、煮干しを噛み砕いてバイクを次の車両へと向かわせ。
 ネージュは一度心配そうに避難者たちのいた車両の方を見てから先へと進み。
 そしてトルメンタはまた突入部から列車の外へ出ると、地上の流星となった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

夜暮・白
思わず出てきちゃったけど、大人を運ぶのは難しいし……(小柄な小5のブラックタール) 付き添いして、移動してもらおう。この先はさっきのコがいて、きっと危ない。

え。どこか行ったと思ったのにこっちに来た!? お客さんがいたらかばいつつ、服をバサバサして通せんぼ。

列車は遊ぶところじゃないよ。(戦うところでも、ホントはないんだけど) かくれんぼ始めちゃったんだ。お友だちはいつもどんな隠れかたをしてるの?

会話で時間稼ぎしつつ、怪我した猟兵には聖なる光を投げて回復させます。攻撃されたらダガーで受け流すか、バウンドモードからの体当たりでカウンターです。

もしかしてお客さんの中に敵がいる? 戻った方がいいかな。


キャナリニア・カルコメラン
走行中の列車の中で集団戦とはまた厄介でありますなー…。回避しようにも逃げ場が無さすぎであります。

騎士人形の右手に槍、左手に盾。少しでも延焼を防ぐため、槍には水の属性を纏わせるであります。前衛の傭兵様方の少し後方より【串刺し】の援護攻撃、嗚咽の予備動作を見せ、尚且つ叫び声を止められない場合、【ダッシュ】で騎士人形のみ最前線に躍り出て【盾受け】で皆様を【かばう】であります!

盾と人形は傷いてしまうかもしれないでありますが、それに見合うリターンを味方に。無差別破壊そのものをUBで打消し、攻撃の機会を増やす後押しを行うであります。

それに自分の足がまだ動くのなら、剣を手に戦い続けることは可能であります!


千桜・エリシャ

あら、次の敵さんはこの可愛らしいお嬢さん?
へぇ……鬼ごっこの最中ですの
私を差し置いて鬼を名乗るとはいい度胸ですわね
まあ、たまには追いかけられるのも悪くはないかしら
面白そうだから遊んで差し上げますわ
――それにあなたには首がありますもの、ね

沢山いらっしゃいますし、この花弁が届くまで攻撃しましょうか
叫び声を発しそうな動作をしましたら花時雨を開いて盾にしつつ耳を塞ぎましょう
他に巻き込まれそうな味方がいらっしゃいましたら、傘に入れて差し上げます
相手に隙を見つけたら2回攻撃で畳み掛けますわ
ふふ、きっと覚めるのが惜しいほどの夢を魅せて差し上げますから
その首が落ちるまで――ともに楽しみましょう?


ティアー・ロード
「ほーぉ、都市伝説タイプのUDCかな?」
「可愛らしい少女、だったようだが、残念だねぇ」

ゆかりちゃんを見つけたら
まずは挨拶でコミュケーションといこう!

「やぁ、こんにちわ!何をしてるんだい?」

ああ、挨拶の返答はいらないよ
すぐ攻撃するからね

「ハハッ!悪い感じに熟してるねぇ!食べ時のガイストだ!」

「キミも私の刻印になってくれないかい?」

使用ユーベルコードは【ブラッドガイスト】!

私の「刻印」を殺戮捕食態へと変化させ
仮面そのものを鋭利な形状へとし「お父さん」と「お母さん」を切り刻むよ!

「捨て身!ブゥーメラン!」
「んー……味はそこそこか」

切り刻んで得られた肉片はそのまま吸収するか仮面の裏から取り込みたいなぁ



 夜暮・白は追っていた。避難者たちから一人だけ子供が離れて行くのが見えたのだ。
「ねえ、きみ。ねえってば」
 はぐれたその子へ呼びかけて、足を止めさせる。
「こっちは危険だよ。一緒に安全なところまで戻ろう。ね?」
「――でもわたし、お友達とかくれんぼしてるの」
 諭す白へと振り返った少女の頭は、異形の顔。オブリビオンだと白にだってすぐにわかった。
「えっと、列車は遊ぶところじゃないよ?」
「うん……。でもね、お友達がぜんぜん見つからないの」
「そのお友達は……いつもどんな隠れ方をしているの?」
 わかんない、とゆかりちゃんは頭を振って、それから「ねえ」と言葉を接いだ。
「あなた、とっても黒いのね。あなたの中に隠れてたりしない?」
「えっ、そりゃあまあ、ブラックタールだし黒いけど、さすがに隠れてなんか……」
 ないよ、と白が言い切らない内に、二つの出来事があった。
 一つ目。ゆかりちゃんが頭部を燃え上がらせて火球を放って来たこと。
 二つ目。幾重もの軽い音と共に白の眼の前へと騎士の格好をした人形が現れて、放たれた火球を盾で代わりに受けたこと。
「――え?」
「大丈夫でありますか!」
 対峙する騎士人形とゆかりちゃんを見て、呆然とする白。それに声を掛けたのは騎士人形を操るキャナリニア・カルコメランだ。
「……なんで邪魔するの、わたしはかくれんぼしてるだけなのに!」
「人を襲うことのどこがかくれんぼでありますか! ええい、ここでやるしかないようでありますな……!」
 怒気を纏い始めるゆかりちゃんへキャナリニアが反駁しながら白を下がらせる。
 ふと、鈴の音が鳴った。
「あら、ちょうど良いタイミングだったようですわね」
「おやおや、何やら一触即発の雰囲気じゃないか」
 髪飾りの鈴をちりんと鳴らしながら、傘を片手にやって来たのは千桜・エリシャと、ティアー・ロードだった。
「ほーぉ、都市伝説タイプのUDCかな? 元は可愛らしい少女だっただろうに、残念だ」
「……おねえさんたち、誰?」
 観察するティアーを見て、警戒も顕にゆかりちゃんが問う。
「あら失礼。そうですわねえ……。猟兵、と申し上げるのが一番わかりやすいでしょうか?」
「おとうさん、おかあさん!」
 エリシャの答えを聞いた瞬間に、ゆかりちゃんはバックステップで距離を取って、頭部が融解した人間を二人召喚する。現れた二人はすぐさまその融解面から火球を発射した。
「させないであります!」
「ぬるいねえ」
 キャナリニアの騎士人形とティアーが矢面に立って火球を受け止める。二人の火球を防がれたゆかりちゃんが一瞬たじろいだ。
「大丈夫ですか!?」
 夜暮が火球を受け止めたティアーと騎士人形のところへ駆け寄り、その身体から聖なる光を発することで受けた火傷や破損を修復する。
「あら、楽しそう。それでは私からも一興、遊んで差し上げましょうか」
 お返しとばかりにエリシャがユーベルコードを行使する。彼女が大太刀を撫でると、それは無数の桜の花弁へと変化した。その様はまさしく花嵐。花の津波がゆかりちゃんへと襲いかかり、“おとうさん”と“おかあさん”がそれを庇う。エリシャの攻撃を受けた二人はまるで夢の中にいるかのように、ふらふらと体の軸が定まらない。
「これはこれは、まさに腐りかけ直後かな? ちょうど食べ頃のガイストだ」
 ティアーがその赤い瞳を妖しげに光らせたかと思うと、ユーベルコードによってその仮面に描かれた模様を中心にして凶悪で鋭い形態へと変化を遂げる。殺戮捕食態だ。
「では、お膳立てもして貰ったことだし遠慮なく頂くとしよう! いざ、捨て身! ブゥーメラン!」
 ティアーはその仮面の身体のまま、まさにブーメランのごとく回転しながら宙を滑空して“おとうさん”と“おかあさん”を斬り裂く。ざあ、と攻撃を受けた二人が黒い塵となって消えた。
「ふぅーむ、ここ数年で一番の味のガイストだね。味がだいぶ若い」
 黒い塵となる前の血肉を仮面に吸収させながら、ティアーは評論を述べる。
 一陣の風。ゆかりちゃんが走ったかと思うと、その腕を白へと振り下ろす。
「うわぁ、危ないっ!?」
 手にしていたダガーでもって、攻撃を受け流す。そのまま受け流した後の流れを利用してカウンター気味に一撃。ダガーが深々とゆかりちゃんの身体に刺さる。
「うっ、うぅ……っ」
 両親の喪失。手痛い反撃。ゆかりちゃんはよろめきなんとか距離を取って体勢を整えながらも、嗚咽を漏らし始める。
「叫び声を上げさせるなであります!」
 敵の無差別攻撃を防ごうといち早く動いたのはキャナリニアだった。騎士人形を操り、その盾でもってゆかりちゃんの顔を面で殴りつけ、槍で串刺しにさせる。その攻撃によって、ゆかりちゃんが叫ぶタイミングが一瞬だけ遅れる。
 そして、エリシャにはその一瞬だけで十分だった。
「――御首、頂戴いたしますわ」
 斬、と。
 桜の花弁から元に戻った大太刀でもって、その細い頸を刎ねた。両親と同じく、致命打を受けたゆかりちゃんはその身体を黒い塵へと変える。
「あら残念。御首は残りませんのね」
 残念そうに呟くエリシャ。殺戮捕食態から元の姿へと戻ったティアーが、少し考え込むようにその身体を傾がせる。
「しかし、意外と避難者たちに近い場所にも出現しているのだね」
「猟兵ではありますが、まさに襲われているところだったであります。危険であります」
 そうだそうだ、と同調するキャナリニアの言葉に、襲われていた白はフードの中で苦笑する他なかった。
 白は黒い塵の中に残されたダガーをそっと拾い上げて、呟くように声をかける。
「お友達、向こうで見つかると良いね」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

レイラ・エインズワース
あんまり戦ってて気分のイイ相手じゃナイネ
あなたは過去の作った怪物? それともどこかにいた誰かの残滓?
どちらにしても、今を奪っていい理由にはならないカラ

この狭い車内で数を出すのは不利
向こうはいっぱいいるのに、ずるいヨネ
だから、マスター、一緒に戦おう
【高速詠唱】で魔力を編むのをお手伝い、その声は謡うように
雷撃を【全力】で収束させて、敵を射抜くヨ
敵が声を上げようとしたラ、【呪詛】を籠めた死霊召喚で妨害
できるダケ、被害の範囲を減らすネ

その声はモウ、誰かの助けを呼ぶものじゃナイ
誰かを害すモノだから……
せめてどうか、ゆっくりと眠れるヨウニ
この葬送の灯で案内するからサ


狭間・悠弥
ガキの姿したモンを斬るんは良い気分やないが…
いや、何であれ人に仇なす化物やったら始末するだけや
「おう、そこのガキ。かくれんぼの時間は終いや」
俺が鬼でお前らが逃げる側、こっからは鬼ごっこの時間や

叫び声が一番厄介やな
放ちそうな奴を、まずは優先して味方と攻撃して妨害や

それが済んだら速攻でケリつける
忍者手裏剣をガキに向かって【早業】で【投擲】
召喚された内1体にガキを守らせ、その隙に残る1体に【残像】が残る速度で接近
敵の攻撃を【見切り】、カウンター気味に爆轟鉄拳の一撃で怯ませ、
【怪力】でガキを守ってるもう1体に向けてぶん投げる
一か所に固まってる方が狙いやすいからな
全員纏めて【華閃爪】を叩き込んで黙らせる



「どこにいるかなぁ、どこにもいないなぁ」
 ゆかりちゃんは“おとうさん”と“おかあさん”を連れて、列車の中を歩いていた。探しても探しても、なかなかお友達は見つからない。
「おう、そこのガキ。かくれんぼの時間は終いや」
 声がして、そちらを振り向くとそこには奇妙な風体のサムライ風の男、狭間・悠弥が立っていた。警戒するように、“おとうさん”と“おかあさん”がゆかりちゃんの前へと出る。
「こっからは鬼ごっこしようや。俺が鬼で、お前が逃げる側でどや」
「イヤ。わたし、お友達と遊んでるの」
「そないつれないこと言うもんやない、でっ!」
 言葉の途中で、悠弥はゆかりちゃんへ向けて手裏剣を投擲。当然それを看過するはずもなく、“おとうさん”がゆかりちゃんを庇って手裏剣を受ける。「ああ、せやろな」と頷く悠弥は、既に疾走して距離を詰め始めていた。
「せやさかい、頼んだで」
「頼まれたヨ。――マスター、雷撃を彼の者へ」
 ゆらりと、ランタンを揺らして現れたのはローブ姿の少女と男。レイラ・エインズワースとその主だ。二人は長杖を向けて、詠唱を始める。
『いと高き天に輝くもの』「されどそれは陽にあらズ」『陽を覆い隠してなお輝けるもの』「なれどそれは天のみにあらズ」『地へと墜ち行く其は――雷鳴』
 主が主文を高速詠唱し、レイラがそれを補う。謡うような声は一瞬。編み上げられた魔力は紫電を迸らせて収束し、一本の槍と化した雷撃が“おとうさん”に刺さった手裏剣を伝ってその体内を焼く。
「■■■ッ!?」
「片割れの心配しとる場合ちゃうぞ。――爆轟鉄拳、喰らえや!」
 パートナーの身を案じるような声を“おかあさん”が上げるが、その隙は致命的だ。融解した頭部に悠弥の左拳が突き刺さる。インパクト。ガチンと鳴った機構音を合図に幾重もの銃声にも似た火薬の破裂音がしたかと思えば、その左腕はまるでパイルバンカーのように射出されていた。
「仲良うしとれ!」
 よろめく“おかあさん”の腕を残った右手で掴み取り、信じられないほどの怪力で“おとうさん”目掛けて背負投げる。感電した“おとうさん”ではどうすることもできず、“おかあさん”を受け止めてその場に共倒れした。
「ほな……失せな」
 腰に佩いた刀の柄へと手を伸ばすのは一瞬だけ。それを合図に鳴った音は三つ。
 ひょう、と鳴った風切り音。融解した男女が斬り裂かれた音。そして、残る最後は刀が鞘へと納まる音のみ。
「え、あ……」
 瞬く間に何もできずに殺された両親を見て、ゆかりちゃんは困惑するような声を上げる。困惑が感情の奔流を喚び起こし、それらが嗚咽へと変わるのにさして時間は要さない。
「ガキの姿したモンを斬るんはええ気分せえへんなあ」
「そりゃあ私だって気分は良くナイヨ」
 けれどどうあれ、眼前の少女は既に誰かの助けを呼ぶ無辜の少女ではなく。人に仇なす化物で。今を奪い害なす怪物だ。
「マスター、死霊の誘いを彼の者へ」
『其はすでにこの世にあらず』「されどそれらは幽世より映し出サレ」『其はすでに死に絶え』「なれどそれらは現し世にて力を振ルウ」『死に近しくしてなお為さんとする、其は――亡者』
 高速詠唱によって長杖にかかったランタンが妖しく光り、ゆらりゆらりと現れたのは無数の亡者たちの群れ。それらは非実体でありながら、ゆかりちゃんへと纏わりついてその呪詛でもって彼女を苦しめ、その悲鳴を上げさせない。
「南無三」
 悠弥が再び刀の柄へと手を伸ばして、三つの音が鳴り。ゆかりちゃんは黒い塵へと変わった。
 お疲れ様ダヨ、と還る主を見送ってから、レイラは塵の元へと向かう
「……せめてどうか、ゆっくりと眠れるヨウニ」
 長杖を傾けて、ランタンの光を塵へと翳す。
 それはまるで、葬送の灯火のようであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

フェム・ポー


うふふ。うふふ。
とっても、かわいい子供達ねぇ?
でも、でも、悪い事が好きなオブリビオンなのねぇ?
……どこにも行けなくなってしまったのにぃ、彷徨いつづけているのねぇ?
それならぁ、『救って』あげなくてはいけないわぁ。
そうねぇ、「一緒に遊びましょぉ? 一緒に歌いましょぉ? そして……一緒に還りましょぉ?』 ってぇ、攻撃を受けても気にせずにぃ、『誘って』みるわねぇ?(技能:誘惑)
誘いを受けてくれた子達はみんな、みぃんなぁ、『救って』あげるわぁ。

それが終わったらぁ……子守唄を、歌おうかしらぁ?
子供達がぁ、痛みも、苦しみも、悲しみもないところでぇ、安らかに眠れるようにねぇ。



「うふふ、うふふ」
 フェム・ポーは笑みを漏らしていた。視線の先には異形の頭を頂いた幾人もの少女のオブリビオンたち。余人が感じるはずのその不気味さを彼女は感じず、笑みを浮かべる。
「とっても、とってもかわいい子供達ねぇ?」
「妖精さん?」「妖精さんだよ、本で見たもの」「どんな声で泣くのかな」「どんな中身をしてるのかな」
 捕まえようとゆかりちゃんたちは手を伸ばすが、フェムはひらりひらりとその手を躱す。
「あらあら、まあまあ、悪い子達ねぇ。悪いことが大好きなオブリビオンなのねぇ?」
 まるで子猫をねこじゃらしでからかうように飛びながら、フェムはくすくすと“おいた”を笑う。
「……どこにも行けなくなってしまったのにぃ、こんなところで彷徨い続けているのねぇ? それならぁ、『救って』あげなくてはいけないわぁ」
 それが聖者としての務めならば。それが聖者としての在り様であれば。
 化生となった子供達を救ってやらなくてはならない。
「さあ、一緒に遊びましょぉ? 一緒に歌いましょぉ? そして……一緒に還りましょぉ?」
 少女たちの手と比してなお小さな手を差し伸べながら、フェムは歌い始める。
「♪ああ、永劫の神子 痛みでどうか泣き止まないで
  ああ、我らが御子 悲しみを得て目を開けないで
  苦しみをどうか眠りの中に。絶望を遥か未来の彼方へ――」
 それは聖歌と言うには邪で。それは童謡と言うには歪んでいた。
 歌はフェムの背後に黒光りする巨大な胎児のような異形を召喚し、それがまるで羊水の中で揺蕩い眠るがままに任せる。
 異形を見て、ゆかりちゃんたちは手を伸ばすのをやめて火球を召喚者であるフェムへと放つ。火球はフェムの褐色の肌を焦がし、黒の修道服を焼く。しかしフェムはそれらをまったく意に介さず、むしろ歓喜にその矮躯を震わせながら歌い続ける。
「♪救いはここにあり 死は救いにあらず
  扶けはここにあり 蒙昧は扶けにあらじ」
 歌が続くにつれて、火球の数が減っていく。何人ものゆかりちゃんが、ただ呆然と宙を揺蕩う異形の胎児を見上げていた。
「♪ここに救済を 永劫の神子がもたらさん――」
 遂には火球が放たれることはなくなって。
 歌の終わりと共に、異形の胎児がその口を開いた。
『――――――――』
 幾重にも重なって聞こえる赤子の叫び。異形の胎児はまるで栄養を欲するかのように触手の群れを伸ばし、呆然と見上げる少女たちを掴み上げる。けれど彼女たちは皆抵抗せず、触手の力によって存在を融かされ、己と他の物を区別する境界すらも曖昧にさせられる。
 ――そして遂には、ゆかりちゃんたちはその尽くが融かされ消えて、異形の胎児へと同化した。
「おやすみなさぁい。痛みも、苦しみも、悲しみもないところでぇ、安らかに眠れますようにぃ」
 祈るように手を合わせ、フェムは子守唄を歌い始める。
 異形の胎児は、もう泣いてはいなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

西園寺・メア
味方も敵も多くて中々大変ね!
ここはひとつ外から攻撃を入れながら、ゆかりちゃんの探し物を逆手にとってみますわ!
踏破せよ、果ての果てまで!

ゆかりちゃん!探し物は電車の外よ!探し物は外の骨の中よ!
そこには、元気に電車と並走する騎士団の姿が!
騎士団は窓際によってきたゆかりちゃんに槍を突き入れて攻撃!

うーん、これじゃ電車を襲ってるのはどっちかわかりませんねぇ!
とりあえず迷彩で隠れつつ、自身の安全を確保しますわ!



 こと規模が大きくなった作戦ともなると、敵も味方も多くなるものだ。
「そうなってくると、なかなか大変よね!」
 西園寺・メアはさてどうしようかと首を捻る。もう他の猟兵たちは出払って、列車内にいるUDCを探しに行った。では自分も行くかとなると、特別索敵に優れているわけでもなしに今からどうこうできる気もしない。
 ならばメアがやることはただ一つ。
「蹂躙とはかくあるべき、血も、命も、悲鳴すらも飲み込みただ進むべし!」
 メアが布告するように声を上げると、列車の走行音に混じって馬の蹄音が聞こえて来た。
『踏破せよ、果ての果てまで!』
 メアの召喚に応じたのは首なし馬を駆る幻夢騎士団団長シェイプ。そして続いて現れるのは、骸骨馬に騎乗したスケルトン騎兵たちだった。
「さあ、ゆかりちゃん!」
 車両のどこかにいるゆかりちゃんたちへと向けて、愉快そうにメアは満面の笑みを向ける。
「探しものは電車の外よ! 探しものは外にいる骨たちの中よ!」
 だからほら。
「探せるものなら、探してごらんなさい?」
『頸を落とせ!』『その頸を!』『果てまで進みて刎ね跳ばせ!』『永劫の前にはすべてが無駄だ!』
 鬨の声を上げながら、暴走列車に並走する幻夢騎士団。彼らはその手に持った槍を、窓際へと寄って来たゆかりちゃんたちへと突き入れる。火球で迎撃を受けても次の騎兵が補充され、その様はさながら馬車を襲う騎兵たちのようでもあった。
「うーん、これじゃ電車を襲ってるのはどっちかわかりませんねぇ!」
 あははは、と笑い飛ばす。口ではそう言うものの、メアにとってはどちらでも良いことだった。
「それにしても捜し物……いいえ、この場合は捜し“者”?」
 猟兵たちから聞く限りでは、車内はゆかりちゃんが全て捜索済み。列車の天井も側面も、猟兵たちが突入する際に使ったがそれらしい影すら見つからなかった。
「となると、残された隠れられる場所はただ一つ……」
 メアは視線を落としてふーむと唸り。
「……ま、いっか。とりあえず自身の安全確保が優先ですわね!」
 彼女はあっけらかんと笑いながら、外套を羽織るとその場から迷彩でもって姿を消した――。

成功 🔵​🔵​🔴​

夢飼・太郎
☆団地
☆報告書は既知
☆アドリブ大歓迎

合点がいったぜ
オレらが制圧した敵の姿
「ゆかりちゃん」の召喚する存在の報告と合致する
つまり敵は「ゆかりちゃん」で……灯人がキレる事案ってこった

☆戦闘
UCの追跡者と分担し乗客を避難
乗客への攻撃は極力庇う
「先頭車両は安全です!騒がず移動してください!」
「灯人庇うな!テメェの命が保たねぇから客は任せろ!」
「未夜大丈夫か
人混みが辛いなら場所変わるぜ
……灯人を頼む」
「怪我ねぇかセラ!ブッ倒れたら承知しねぇからなァ!厳ぃくなったらすぐ言えよ!」

乗客が掃けたら座席を破壊
空間を拡げて戦闘に参加

☆戦闘済時
乗客へ適当な事情説明
怪我人がいれば可能な限り治療


浅沼・灯人
【団地】
ガキの形の敵かよ……畜生、容赦はしねぇぞ!
客を助けるぞ!急げ!

俺は敵に突っ込んで、客と敵の分断を試みる。
接敵すれば迷わず灼焼で敵だけ燃やして、客が逃げる時間を稼ぐ。
セラと太郎が客逃がす間、立ち往生と洒落込むか。
悪いがそっちは任せたぞ。うまいこと逃がせよ。
一般人と仲間をかばいながら、ガキ共をどうにか足止める。
俺ぁ竜なんだ、この程度で倒れるかってんだ。
いいからさっさと逃がしてとっとと戻ってこい!
未夜!手ぇ足りねぇ!貸せ!

一般人がいなくなったらアサルトウェポンもぶっ放して殲滅だ。
太郎、未夜、セラ!どうせこんだけ暴れりゃ廃車確定だ、加減なしでいくぞ!
遊びの時間は終わりだ、帰って寝てろ!


セラ・ネヴィーリオ
【団地】
まずはお客さん助けないとね!
会敵次第【残火】起動
「楽しそうだね!僕たちも混ぜてくれるかな?」
行こう、灯人さん!灯人さんの炎に続いて、いま狙われてるお客さんとゆかりちゃんの間に縮地で割って入るよ
「おっ待たせしましたー!団地レンジャーただいま参上、夜露四久ねえ!」
手を掴んだら引き寄せ抱え、他の猟兵が制圧した区画まで運んじゃおう
こんな時だけど笑顔は崩さずに。だってお客さんの前だもの。ヒーローは笑ってないとねっ!
報告書は見たことないなあ。……ゆかりちゃんの魂も骸の海に帰してあげたいけれど、それは他の人に任せよう
避難が終われば、うん、そうだね。戻って彼女たちを屠り、魂を海への旅に連れて行こうか



三岐・未夜
【団地】報告書確認済

……ゆかりちゃん相手は、何度かやった。大丈夫、僕も行ける。
人混みはきっついけどそんなこと言ってる場合じゃないし、早く何とかしなきゃ。
それに、灯人にばっか無理させらんないもん。

物量には物量!
行け!レギオン!
灯人のフォローをするようにレギオンを立ち回らせて、出来る限りの被弾を防ぐよ。
僕自身は……ちょっとこわいけど。一般人の避難と、灯人との間に立つ。

【属性攻撃】で狐火を纏って、【誘惑】と【催眠術】で敵の攻撃の照準を僕らに。出来る限り後方に敵が抜けないように壁になるよ。……痛いの、やだけど。
だって、こんな敵が相手で、子供で。おまけに一般人に怪我人が出たとか寝覚め悪いじゃん……。



 その車両はまさしく地獄と化していた。
 肉が裂かれて血が跳ねて、逃げ遅れて倒れ伏した人が蹂躙される。異形頭の少女たちは手を赤色で濡らしながら、おかしそうに笑い合う。それを見た乗客たちは恐怖に駆られて我先にと狭い車両連結部へと殺到し、なんとか自分だけでも助かろうと隣の車両へと向かう。
 ここは第三車両。逃げ遅れ、避難誘導の手も届かず、そしてUDCの魔の手が伸びてしまった不運で不幸な混沌の戦場。
 そこの乗客たちが唯一幸運だったのは、先頭車両から4人の猟兵たちが駆け付けてくれたことだろう。
「先頭車両は安全です! 慌てず騒がず移動してください!」
 夢飼・太郎はともすれば怒声になるのをぐっと堪えながら、しかし叫ぶような大声で避難誘導に努める。
「灯人庇うな! テメェが保たねぇだろ、客は任せろ!」
 避難の間に敵を抑え込むべく前衛へ出て、敵からの火球を受け続ける浅沼・灯人へと太郎が叫ぶ。
「うっせぇいいからさっさと逃がしてとっとと戻って――火球流れたッ!」
「――ッ!」
 灯人から来た警告と同時に、太郎の身体は動いていた。客へと飛んだ流れ弾の火球を、間に割って入ってその身体を盾として受け切る。
「チッ、淹れたての珈琲よりもヌルいっての」
「よくやった太郎、あんま無茶すんなハッ倒すぞ!」
「褒めるか心配するか脅すかどれかにしろよブン殴るぞ!」
 暴言の応酬を交わしながらも、避難は順調に進んでいく。灯人が前へ立って敵を攻撃することでその注意を惹き、敵の攻撃を集中して受けて被害を一般人に出さないようにしていたのが彼らの精神的余裕に大きく貢献していた。

 ふと、太郎が状況把握のために飛ばしていた影の追跡者が、仲間の青い顔を知覚する。
「おい、未夜。大丈夫か?」
「人に酔った……けど、大丈夫」
 少しふらつく三岐・未夜へと太郎が近付いて行って声をかける。未夜は頷きを返して自分の無事を伝えた。人混みを苦手とする彼にとって、避難誘導地点での人の密集度はまさしく殺人的だ。
「灯人、まだいけるか!?」
「ああ!? 俺ぁ竜だぞ、この程度で倒れるかってんだ!」
 忠告を無視して火球を受け続ける灯人が、太郎へ怒鳴り返してからしばし考え込むような沈黙を挟んで言葉を続ける。
「……それより手が足りねぇ! 未夜、手ぇ貸せ!」
「ここは後は俺とセラでやっておく。未夜、灯人を頼んだ」
「……うん。灯人にばっか無理させらんないもんね」
 太郎に気合を入れられるように背中を叩かれて、ふらつきそうになる足を意思の力で押さえ込み、未夜は避難者たちから離れて灯人の支える前線へと向かう。
 眼前に見える敵――ゆかりちゃんたちの人数は多い。それが両親を召喚しているとなるともっと多くなる。UDC報告書でゆかりちゃんの凶悪さについてはある程度調べてあったし、実際、彼には何度か交戦経験すらあった。だからこそ、灯人にこれ以上受け続けさせるわけにはいかなかった。
「――こっちだ!」
 未夜が手を振ると、その身に黄昏色の狐火を纏う。車内でなお妖しく揺らぐその狐火はゆかりちゃんたちの目を惹いて、火球のいくらかを未夜へと集中させた。苦痛で表情を歪めながらも彼は更に続けて周囲へと小型戦闘用機械兵器を大量召喚し、その物量と火力でもってゆかりちゃんを迎撃し始める。
「クソっ、人酔いの直後に痛がり屋が無茶しやがって!」
 未夜が代わりに火球を引き受け、彼の召喚した機械兵器にも火球から庇われて。灯人は舌打ちを漏らす。しかし、限界が近かったのもまた事実だ。
 だから彼は大きく息を吸って、大きく吐いた。
「うぜぇな俺の仲間にヌルい火ィ使ってんじゃねえよ!」
 彼の吐息は竜の火炎となってゆかりちゃんたちを焼く。異形とはいえ、オブリビオンとはいえ幼児とその親を焼く様は彼の眉間に深いシワを寄せさせたが、そんなことを言っている余裕はない。

 ――不意に、どたんと前線の後ろから誰かが倒れる音がした。

 乗客の一人、少女が足をもつれさせて倒れたのだ。当然、派手な転び方をすれば戦場の中であれそれなりに目立ち、そしてその結果――絶好の的になる。
「マズい――」
 太郎は仮にユーベルコードで移動しても届かない、間に合わない。火球の量はいかに未夜と彼の操る機械兵器たちであってもカバーしきれない。
 一人犠牲が増えてしまうのか。そんな時に、轟音がした。
「おっ待たせしましたー! 団地レンジャーただいま参上、夜露四久ねえ!」
 場違いに明るい声。セラ・ネヴィーリオがユーベルコードで呼び出した武闘家の魂を利用して駆け付けたのだ。
 彼は火球よりも早く倒れた少女の手を取り、抱きかかえると火球の軌道から避ける。
「やー危なかったねー、大丈夫だった?」
「だ、だいじょう、大丈夫、です……」
 動揺で何度もつかえそうになりながらも応える少女へと、そっかそっかとセラは笑顔を向けながら床に降ろす。その笑顔でいくらか落ち着きを取り戻したのか、転んだ直後にしては派手に転んだにしては少女はしっかりと立つ。
「隣の車両は僕たちが通さないからもう大丈夫。先頭車両まで向かってね。あ、転ばないようにだよ?」
 こくこくと頷きながら駆けて行く少女を見送ると、よっしとセラは振り向いた。もう、避難が必要な一般人はこの車両にはいない。
「避難、完っ了しました~!」
「よし。――太郎、未夜、セラ! どうせこんだけ暴れりゃ廃車確定だ、加減なしでいくぞ!」
 応、と三人が返し、それぞれがそれぞれの得物を構える。
 ここから先は、地獄ではなく戦場だ。
「さっきのお礼参りだ。容赦はしねぇ、思う存分喰らいやがれ!」
「レギオン、一斉掃射だ! 弾薬を撃ち尽くせ!」
 灯人のアサルトウェポンが、未夜の機械兵器たちが一斉にマズルフラッシュを放つ。幾重にも重なる銃声と火力の集中で、まずゆかりちゃんたちを守る両親たちが蜂の巣となって消えた。
 だが、当然それだけでは終わらない。両親たちに庇われて覆われていた視界が開けると、眼の前に迫っていたのは巨大な斧を振り被る太郎と、拳を振り被るセラだった。
「潰れろォ!」
「ヒーロォー、パーンチ!」
 前衛二人に後衛二人。都合四人の息もつかせぬ本領発揮の連携攻撃。
 乗客という守るべき足枷から解き放たれた彼らは、瞬く間にオブリビオンたちを殲滅する。
 戦闘が終結する頃。この車両で倒したゆかりちゃんを最後に、この列車に出現したゆかりちゃんの全消滅が確認された。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『鑼犠御・螺愚喇』

POW   :    友、死にたまふことなかれ
【友を想う詩 】を聞いて共感した対象全てを治療する。
SPD   :    怪物失格
自身の【友の帰る場所を守る 】の為に敢えて不利な行動をすると、身体能力が増大する。
WIZ   :    永遠の怪
【皮膚 】から【酸の霧】を放ち、【欠損】により対象の動きを一時的に封じる。
👑17
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は吾唐木・貫二です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


☆★☆★☆★☆★☆★☆★

プレイング受付期間:2/6(水)朝8:30~

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「……う~ん、おかしいなあ」
 呟く。相変わらず暗いし、列車の走る音がすごくうるさい場所だったが。そこは彼のお気に入りのかくれんぼスポットだった。
「ゆかりちゃん、全然見つけてくれないなあ」
 もぞもぞと彼は身動ぎする。自分でもうまく隠れた方だとは思っていたけれど、まさか本当にここまで見つからないなんて!
 幼いゆかりちゃんのことだ、もしかしたら、あんまりにも見つからなくて泣いてしまっているかもしれない。
「……そろそろ出て行ってあげようかな」
 それで見つかってしまってかくれんぼに負けたとしても、きっと彼女は笑ってくれるだろう。ちょっと悔しいけれど、彼女の笑顔が見れるなら悪い負け方ではない気がする。

 のそりと彼は――鑼犠御・螺愚喇(ラグオ・ラグラ)は列車の車輪の間から姿を現した。

 その醜い鉤爪で列車の外壁を素早くよじ登るその最中。
 彼は見てしまった。猟兵たちがゆかりちゃんを倒しているところを。
「――え?」
 驚きの声を上げながら、彼は急いで列車の上に登り切る。彼も自分は怪物であるという自覚はあった。だから見つかったら殺されてしまうだろう、ともわかっていた。だからこそ同じ怪物同士、ゆかりちゃんとラグオは仲良くなれたとも言える。
 大切で可愛い友達だったゆかりちゃんが! 猟兵たちに!
「――――許せない」
 呟くと、ブシュッ、とラグオはその黒い皮膚からわずかに酸の霧を噴き出させる。列車の天井が嫌な音を立てて溶けた。
「許せない、許せない、許せない……!」
 自分はただ、この列車で邪教団の人たちに儀式で呼び出されて。同じく呼び出されたゆかりちゃんとここで遊んでいただけなのに!
「やっぱり人間なんて信用できないんだ。あの邪教団の人たちが、僕とゆかりちゃんをイジメたように……」
 ラグオとゆかりちゃんを列車内で呼び出した邪教団たちは、目当ての物が呼び出せなかったのかその腹癒せに二人を攻撃してきた。
 だから彼はゆかりちゃんとそいつらを返り討ちにして、そこで友達になったのだ。
「ああ、僕の友達 かけがえもなく大切だった 何よりも大事だった友達」
 ラグオ・ラグラは黒い塵となってしまったゆかりちゃんを想って、詩を歌う。
 さらさらと、黒い塵たちが列車の窓や隙間から外へ向かう。ラグオ・ラグラのいる列車の上へと塵が集まったかと思えば、それは一人のゆかりちゃんの姿となった。
「ああ、ゆかりちゃん。ゆかりちゃん、痛かったよね。ごめんね、僕が隠れている間に……」
「大丈夫、大丈夫だよ」
 復活を遂げたゆかりちゃんが、ラグオを優しく撫でる。
「ゆかりちゃん、僕決めたよ。あの猟兵たちを殺しちゃおう。教団とかいう人たちと同じように、殺しちゃおう。そうすれば僕たちを酷い目にする人はもういなくなるんだ」
「でもわたし、もうおとうさんもおかあさんも呼べないよ? お友達がいたら、泣くことだってもうできない」
「関係ないよ。僕達だったら勝てる」
 だって、とラグオ・ラグラは無数の黄色い目のようなものを蠢かさせる。
「――だって僕達、友達だろう?」 
 そして怪物と化物は、大きく空いた天井の穴から列車の中へと突入した。

=================================

・UDC番号:UDC-■■■■
・オブジェクトクラス:【検閲済】
・説明
 UDC-■■■■、通称「鑼犠御・螺愚喇(ラグオ・ラグラ)」は異形の怪物です。重い酸の霧を噴出させる黒い肌に、無数の黄色い球のような感覚器官が埋まっている外見が特徴です。感覚器官は特に、背中に生えた突起物群とねじれた尻尾に集中しています。
 ねじくれた手足をいくつも生やしており、それによって身体を支えて移動を行うことが確認されています。黒
 ラグオ・ラグラは人語を解し、また綺麗な声で喋ります。発声器官は感覚器官が兼ねているのではないかと推測されていますが、断定には至っていません。
 概ねラグオ・ラグラは噴出させる酸の霧が有害なものの、性格としては穏やかかつ善良で、危害を加えない限りは人類に対して友好的に接してきます。ラグオ・ラグラは友好関係に至った対象を「友達」と呼称し、それを尊重して扱います。

 1714号事件では、ラグオ・ラグラがUDC-****と接触し、友好関係になっていました。UDC-****を猟兵が討伐したところ、ラグオ・ラグラは怒り狂って猟兵たちに復讐と称して攻撃して来ました。
 以下に記載する能力は、1714号事件の中でラグオ・ラグラが使用した能力と、ラグオ・ラグラが共闘したUDC-****の能力です。

・詩を歌う能力。これを聞いたUDC-****は戦闘中に受けたダメージを回復していたことが確認されていることから、特殊な回復手段であると推測されています。
・酸の霧を噴出させる能力。黒い皮膚からは強力な酸の霧が噴出されます。耐酸性の無い周囲のあらゆる物はこの酸の霧によって時間をかけて溶かすことから、討伐プロトコルでは閉所での戦闘を避けるように定められています。1714号事件は走行中の列車内での戦闘だったため、この強酸によって列車の床や壁が溶かされてしまうなどの地形的な不利が生じました。
・UDC-****を庇うなどの行動を取る際、動きが機敏になり身体が硬化したという報告が猟兵からありました。これはヒーローマスク種の猟兵たちの多くが持つユーベルコード【検閲済】と効果が酷似しており、恐らくは友好関係にある対象のために不利な行動を取ると身体能力が強化されるのではないかと推測されています。

 遭遇した場合、UDC本部へ報告して下さい。敵対的であった場合、迎撃・殺害して下さい。

=================================

 あなたはこの報告書を知っていても良いし、知らなくても良い。
雨乃宮・いづな
●心情
ようやく殲滅し終わったと思ったら…面倒な事になってきたね。
これを排除しないと列車が止められないし、もうひと頑張りかな!

●行動【SPD使用】
乱戦だと大技は使いにくいし少しずつ削るしか無いかな。
「目立たない」ように後退しつつユーベルコード『五百重波』を発動。複製滞空させた小太刀を投射して、味方を巻き込まないように「先制攻撃」していくよ。
けどあたしの火力だと多分削りきれない。味方の支援を念頭に「2回攻撃」で手数を増やしつつ尻尾や背中の感覚器官を中心に狙って行くんだよ。
倒れない事が重要かな。ゆかりちゃんの横槍は勿論、酸の霧も要注意だね。「見切り」つつ大きめの回避行動を心掛けるね。


ネグル・ギュネス
許せないから、何だと?
先に手を出したのは貴様らだ。
境遇は不憫に思うが、同情はせん。

ユーベルコード【勝利導く黄金の眼】で先読みする
酸の霧を発しようとすれば、【衝撃波】【薙ぎ払い】を刀を持って放つ!

ゆかりちゃんとやらが邪魔をするならば、【残像】で目眩ししながら、蹴り飛ばしておこう

この黄金の眼を持って、貴様らの動きは常に見切らせて貰う。
仲間に其れも伝えておこう


ああ、ゆかりちゃんを目の前で蹴られたら激昂するかもな
だが、此方ばかり見ていては、他が疎かになるぞ。

───今だ!!

【他の人と連携、協力歓迎・アドリブ歓迎】


キャナリニア・カルコメラン
壱子様(f01342)、鈴凛様(f01262)と参加

貴方にとってゆかりちゃんが大切なお友達のように、自分達にとっての大切なお友達は電車に乗っている方全員なのであります。
傭兵として、貴方がしようとしていることは止めさせて頂くのであります。

前衛盾持ちの役割、騎士人形で味方に【盾受け】【かばう】を行いつつ槍と剣で【カウンター】を仕掛けるのであります。
壱子様が霧の発生を予知できたなら作戦開始。UCにて限界まで巨大化させた槍を形成し、【力溜め】【鎧砕き】【捨て身の一撃】を乗せた【串刺し】若しくは【槍投げ】でとっておきの一撃を叩き込むでありますよ!


セゲル・スヴェアボルグ
姿などは関係ない、少なくとも教団とやらよりは人間らしさはあるわけか。だが、それだけの話だ。

己の中の矜持に従い、正義と称して自らとその周囲に害をなすものを排除する。奴も俺達もやってることは、基本的には何も変わらん。
だからと言って相容れることはできん。遊びと称して罪のない人々を殺めるモノを是とすることはできんからな。故に私は彼の者たちへと槍を振るおう。

ゆかりちゃんを狙えば……恐らく奴は庇うのだろうな。
だが、それでは身体能力が増大するか。ならば最初から直接狙い、絶巓の帝を打ち続けるしかあるまい。
当然、俺も味方をかばう。奴に守らねばならないモノがあるように、俺にも守らねばならん者がいるのでな。


富波・壱子
キャナリニア(f07077)、鈴凛(f01262)と参加

例えその怒りが正当なものだったとしても、あなた達を生かしておくことはできません。殺します

前衛は任せ、後方からユーベルコード『あなたには何もさせない』を用いて動きを阻害するよう二丁拳銃で援護射撃していきます
予知で酸の霧の発生を察知したら、すかさずユーベルコード『あなたを決して逃さない』によってゆかりちゃんの背後に瞬間移動。鑼犠御・螺愚喇へ向けて蹴り飛ばします
あなた達の友情が本物であれば、友達を巻き込んでまで攻撃はできないでしょう
それが有効であるならば、人間失格と謗られる行いでも私は一切躊躇いません

さぁ、動きは止めました。後は任せます


黒白・鈴凛
キャナリニア(f07077)、壱子(f01342)と参加

友達ごっこなら公園にでも行くヨロシ
此処は公共の場ネ
お前らの遊び場違うアルヨ

なんて、勝手に呼び出されたお前らからしたら知らんこっちゃないんだろうが
ちょっと悪戯が過ぎたネ
お前らはもう害でしかないアル

ワタシは二人の後ろ手待機しとくネ
キャナリニアの槍が突き刺さったら
【力溜め】で拳に【怪力】と【鎧無視攻撃】を籠めて
ユーベルコード:熊猫の寸剄を突き刺さった槍の石突きに当て更に食い込ませつつ内部にダメージを与えるアル


狭間・悠弥
『お友達』が大人しい奴やったら、俺らも手ェ出さんで済んだかもしれんけどな
ま、運がなかったと諦めェや
…後味の悪い話や。運がなかったのはお互い様かもな

何してくるか分からん奴や、まずは距離を取って紅苦無の連続投擲で牽制して観察する
あの黄色い球は…目玉かそれに類するもんか?
纏めて潰せれば一気に弱らせれるかもやけど…霧が厄介すぎるな、クソッ

けど遠間からチマチマやっててもジリ貧や
黄色い球を狙って紅苦無を投擲
防御させた瞬間に烈風盾を前面に展開、霧を吹き飛ばしながら懐まで一気に飛び込む
霧をもう一回放たれる前に、最大火力の【鏖魔壊神拳】や
喰らい尽くしてその背を喰い破れ!丸ごと球ァ吹っ飛ばしたる!


ジョン・ブラウン
うっげ、何だあれ
ってうーわ、なにあれめっちゃ溶けてるじゃん

……いやいやいや、そうだよここめっちゃ狭いのにガスは不味いって!

ぶっ飛ばすにしても壁とか床ぶっ壊れたらたまったもんじゃ……

ええい!だったらこいつだ!
ウィスパー!or条件で眼の前のコイツとゆかりちゃん、猟兵達!
乗客は除外して演算開始!
領域設定はとにかく広い場所!具体的に?こいつのガスが充満しなくて仲間が大技ぶっ放せる程度だよ!

ああくそまどろっこしい!もうだいぶ溶けてるぞ!?
……っし解析完了!

行くぞウィスパー!仮想サーバーコンストラクション!

外した?違うね、ハナっから狙いはこの列車さ!

僕は維持でいっぱいいっぱい!後は任せたよ!


立花・乖梨
☆報告書は未知。
☆アドリブ歓迎です!

<あら、まだ存在したのですね>
『関係無いね、2つとも、消すだけだろ?』
<冷徹な私>と『男勝りな私』の【オルタナティブ・ダブル】。

<私>は後方から【スナイパー】精霊銃で後方射撃。
『私』は――拷問具を【武器改造】、ガントレットを両手にインファイトします。『殴殺の処刑記憶』――それはゼロ距離での戦闘の効率では無く。【激痛耐性】【捨て身の一撃】【二回攻撃】【鎧無視】エトセトラエトセトラ…!
『――あぁ、全部載せだ。ぶっ飛びな!』

<殺すしか能の無い『私』とは違った、信頼関係の成り立ったら奇妙な間柄ですわね。ですけれど――>
『満員の為、列車の外に乗り換え頂けますかァ!?』



 列車の走行音がする。
「ようやく殲滅し終わったけど……」
 雨乃宮・いづなは車窓の外を見て吐息する。視線の先では風景が流れ、まるで一大パノラマのようだった。これが暴走列車であることを考えなければ、の話だが。
「どうやって列車を止めるんだろう? みんな色々と動いてはいるみたいだけれど……」
 一部の猟兵たちはこの暴走列車を止められないかと画策しているようだった。
 もっとも、戦闘を最大の得手とするいづなから何か助力できそうなこともなく。ひとまずは警戒・索敵と称してぶらりぶらりと列車内を歩くに留まっているのだが。
「ハッキングしとった奴に聞いた話、どうも穏当には止められへんようやで」
「ふむ、いかに高機能な機器と言えども暴走する列車には効かずか……。となれば取れる手段はもうアレしかないな」
 手持ち無沙汰に歩く狭間・悠弥が聞きかじった話をすると、セゲル・スヴェアボルグが顎を撫でながら窓の外を見る。つられるようにしていづなと悠弥もセゲルの視線の先を見て、同時にセゲルの方へと向き直った。
「……大体予想はついたけど一応聞くね。アレって?」
「うむ。――腕力でもって力づくで止める他あるまいよ」
「予想ドンピシャ、そないなことしたら命がいくつあっても足りへんわ」
 巨盾と巨槍を持ち上げながら言うセゲルの言葉へ、やっぱりか、といづなと悠弥が溜め息をつく。残された選択肢と言えば、それ以外に無いことは誰もが重々承知だった。
「俺もやろう思えば脱輪ぐらいはできるんやろが……」
「――待った」
 自分の得物の刀をぽんと叩きながらもいまいち気の進まない表情をする悠弥を、ピンと狐耳を張らせたいづなが手で制する。
「何かいる」
 けたたましい走行音に紛れてはいるが、近くで異質な物音がした。異常を敏感に察知したいづなは警戒しながらも脇差へと手を伸ばす。その様子を見て、二人は得物を構えながらそれぞれ死角を補うように背中合わせになった。
「まだあのチビっ子が残っとったんかな」
「方角はどっちだ」
「外。歌声みたいなのが聞こえたけど、女の子っぽくは――」
 なかった、と言おうとして、異音を感じ取った。上、列車への侵入に使われた天井の穴を見上げる。
「上から!」
 いづなからの警告と同時に、三人はその場から跳ねるように退いた。
 ずしん、と大きな黒い塊のようなものと少女が降ってくる。ラグオ・ラグラとゆかりちゃんだ。
「あの人たち!」
 ゆかりちゃんが着地ざまに、三人を指差した。
「あの狐さんは見えない姿でたくさんわたしたちの首を刎ねたの! あのドラゴンさんはわたしを串刺しにした! あのお兄さんはわたしとおとうさんとおかあさんを切り刻んだ!」
 列車内で遭遇した猟兵たちにされた仕打ちを甲高い声で矢継ぎ早にまくしたてる。
「やっぱり生きとったんか!」
「怪物も一緒とは、俺たちも余程恨まれたらしいな」
 回避後、陣形を整える。セゲルが前衛、悠弥といづなが後衛となる。即席のチームだ。
「……これはちょっと、面倒なことになったかな」
 いづなが怪物を注意深く見る。報告書で見覚えがあったような気がする。気性はゆかりちゃんほど荒くはないと覚えていたが、目の前の殺気立った怪物は到底その情報とは一致しない。
「復讐だ。ゆかりちゃんのために死ね!」
 外見に反した綺麗な声で怪物――ラグオ・ラグラが言った。同時にゆかりちゃんの異形頭が燃え上がり、火球が放たれる。
「成程、その怪物がかくれんぼとやらの相手だったか」
 セゲルが盾を構えて青い巨壁となり、火球を防いだ。
「お前さんたちは害なす者だ。それは俺たちとて変わりはしないが……だからこそ、相容れることはない」
 互いに互いを傷付け、殺めた。結果として出た行いは互いに同じだが、だからこそ彼らはわかり合うことはない。
 セゲルは大鎧の内側にある自身の矜持に従って、盾と槍を構える。怪物は「復讐だ」と自身を正当化した上で、まるで正義であるかのように暴力を行使する。であれば、彼が戦う理由には十分だった。
「そのゆかりちゃんが大人しい奴やったら俺らも手ェ出さんでも済んだかもしれんけどな」
 だが、結果はそうはならなかったのだ。
 悠弥が自分の手を斬り裂いたかと思うと、そこから溢れ出す血を紅色の苦無に変えて投擲する。それに合わせていづなも十を超える脇差を空中に複製すると一斉に投射した。白刃と赤がセゲルの脇を駆け抜けて弾幕となった。
 ラグオが応じて、ゆかりちゃんの前へと庇い立つ。尻尾の一払いでいくつかの投擲物が撃ち落とされるが、狭い車内で弾幕を避けきることも叶わずに、いくつかの脇差と苦無がその黒い肌に刺さる。
「あの怪物、やたら機敏やな……目ェはようわからへんけど、あの黄色い球か?」
「あれは確か感覚器官。あそこから潰したいけど……」
「そんならそれを纏めて潰せば一気に弱らせられて――」
 次の脇差を複製しながらいづながラグオを睨む。怪物は身体からゆっくりと霧のようなものを噴出させていた。脇差と苦無がその霧に触れると、刃が腐食してぽっきりと折てしまう。
「強酸の霧がちょっと邪魔だね」
「うせやん……。これであのチビっ子からの横槍も来るんやろ?」
 渋面するいづな。悠弥が更に自分の血から苦無を生成しながら驚嘆する。
「お前たちがゆかりちゃんを殺したんだ! 許せない、僕の大切な友達を殺すなんて!」
 酸の霧を噴出しながらラグオが飛びかかりざまに尻尾を叩き付けに来る。鋭く素早く、それでいながら重い尻尾の一撃がセゲルの盾を強かに打撃した。
「これはさすがに俺たちの手には余るな。騒ぎを聞き付けた増援が早々に来ることを祈ろう」
 ゆかりちゃんから火球を受けながらセゲルがジリジリとゆっくり後退する。いかなる巨壁、いかなる巨盾と言えども酸で溶かされてしまえば意味が無い。
「せやけど遠間からこのままチマチマやっとってもジリ貧やで!?」
「――ならば俺が隙を作る。そこをどけ!」
 後ろから声がした。応えるようにサイドステップで横へと逸れると、セゲルのいた位置を衝撃波が通っていく。白い霧が衝撃波によって吹き飛ばされた。
 彼らの後方には太刀を振り切った灰色髪の男、ネグル・ギュネスがいた。
「今だ、行け!」
「オォ――ッ!」
 ネグルの叫びによってセゲルが動いた。地鳴りのような咆哮と共に巨盾の影から巨槍が突き出される。その一撃はドラゴニアンの膂力と巨槍の重量に加え、ユーベルコードの補助を得てラグオの重さすら加重されたものとなる。余人であれば持ち上げることすら困難なその超重槍がラグオの身体を刺し穿った。
「参鬼、解放……」
 車内にあって、一陣の風が吹いた。
 悠弥が毘羯羅と呼ぶ左腕の義手が機械音を上げる。その甲に埋め込まれた三つの勾玉が鈍く光を放つ。その中で一つだけ際立って輝く風の力を宿した勾玉が風の障壁を作り出していた。
「――爆轟鉄拳、喰らい尽くしてその背を喰い破れ!」
 風と共にラグオの懐まで到達した悠弥が、義手の左腕でもって目にも留まらぬ剛拳を放つ。
 インパクト。火薬の破裂音。パイルバンカー機構が作動し、撃ち出された剛拳が黒い肌にめり込む。ラグオの巨体が大きく後ろへとよろめいて、セゲルの巨槍の穂先が抜ける。
 ――だが、貫通までは至らない。
「っ、なんちゅう硬さ……!」
「ッ、マズイ! 避けろ、後ろだ!」
 ネグルが叫ぶ。彼のカリキュレイト・アイが超高速の高度演算によって導き出した近未来予測の結果は、ラグオによる反撃だった。あるいは悠弥もそれと同じ予測を、今は眼帯に隠した義眼から得ていたかもしれない。
 だが、彼らは既に渾身の一撃を放ち終えた直後。大きな攻撃の中では往々にして防御は疎かになるものだ。悠弥とセゲルの二人はまともな防御をする時間も与えられず、ラグオの体当たりで諸共吹き飛ばされる。
「ぬぉォオ……ッ!!」
 その威力は利用した本人であるセゲルが一番よく理解していた。彼は盾でもって悠弥を受け止め、槍の石突を利用した反動で致命傷をなんとか軽減する。
「だ、大丈夫!?」
「よ、余裕も余裕、余裕のよっちゃんや……」
 慌てて駆け寄ろうとするいづなへ向けて、悠弥が右腕を振って制する。その表情はかろうじて笑みを作っていたが、直に体当たりを受けたダメージでその口元は強張っている。彼は骨と内臓をいくつかやられているようだった。
「見え透いた見栄を張るな、ッぐ……」
 盾を杖代わりにセゲルが立ち上がる。致命傷こそ回避できたがダメージが大きいことは間違いない。強かに打撲して床を擦った背中と、無理に動かした槍を持っていた方の腕に激痛が走る。
「俺たちは戦闘続行が難しい、下がって応援を呼ぶ!」
「頼んだ。その間は俺が受け持つ!」
 負傷したセゲルと悠弥が後方へ引く。異形の少女から放たれた追い討ちの火球をまるで未来で見てきたかのように切り払って、ネグルが前へ出た。
「そのお兄さんもわたしの首を斬って殺した!」
「許せない、絶対に!」
 糾弾するようにゆかりちゃんが喚き、ラグオが怒りで殺気立つ。だが、ネグルは怯むことなく刀を構えた。
「許せないから、何だと? 先に人を殺めたのは貴様らの方だ」
 だから同情の余地は無い。彼はそう言うように太刀を振って牽制の衝撃波を生み出す。
「合わせるよ!」
「承知した!」
 その衝撃波に便乗して、脇差に加えて刀や苦無がいづなのユーベルコードによって投射される。ラグオが衝撃波へ防御姿勢を取ったとて、個別に操作される刃物による斬撃が防御の及ばない感覚器官を中心に削るように斬り裂いていく。
 反撃とばかりにラグオが肉弾戦を仕掛け、ゆかりちゃんが援護の火球を投射する。だが、それらはネグルのカリキュレイト・アイによって全て演算されて予測されたものでしかない。時にネグルが攻撃を避けて火球を断ち割り、時にいづなが牽制と妨害をしながら隙を突くようにダメージを蓄積していく。
「うっげ、何だあれ!」
 その鉄火場に駆け付けてきたのは、ジョン・ブラウンだった。彼はラグオの醜悪な外見を見て顔を引きつらせる。彼の視線がその怪物の足元に向いた時、その表情は更に凍りついた。
 床が溶けている。
「ちょっ――何あれめっちゃ溶けてるじゃん!」
「酸の霧による溶解だ! 未来予測によればそう遠くない内に列車が切り離される!」
「溶断みたいに!? それだと列車を止めるどころじゃなくなる!」
 回避しながらネグルが状況を説明すると、ジョンが悲鳴を上げながら頭を抱える。
「ええい、だったらウィスパー! or条件で眼の前のコイツとゆかりちゃん、猟兵達! 乗客は除外して演算開始! 領域設定はとにかく広い場所!」
《指定がファジーです》《具体的な要件をお伝え下さい》
「とにかくこいつのガスが充満しなくて仲間が大技ぶっ放せる程度だよ!」
 ヘッドフォンからウィスパーの了解を聞くよりも早く、彼は接続端子を列車の床へと突き刺す。
《アクセス》《コンストラクト・スタート》《構築中です。構築完了まで、あと5分》
「おっそ! 今時VESTAかXBでも積んでるの!?」
《あと1時間》
「悪かった。俺が悪かったから延ばさないでくれ!」
 変なところで高度な知能を持った人工知能だ、と頭を抱える。一瞬だけネグルがこちらへなぜか同情するような視線を向けてきたが彼は今戦闘中だ。きっと気のせいだろう。
「五分間だ! そうすれば戦場を戦いやすくできる! 耐えられる!?」
「……ッ、少し、難しい注文だな……!」
 高度演算デバイス“カリキュレイト・アイ”、そしてネグル自身による超高速演算はその性能ゆえに長時間での稼働はオーバーロードになる。事実、現時点でもところどころで予測が外れ、経験に裏打ちされた直感でもってカバーしている場面はそう少なくない。
「せめて応援さえ来れば……」
 いづなが呟いて歯噛みする。彼女もまた、長時間に渡るユーベルコードの使用で疲労が隠しきれていなかった。事実、彼女によって操作されている刃物たちの動きは精彩さを欠き始めている。
 限界が近くに迫り、綻びが生じ始めている。口には出さないが、いづなとネグルははっきりとそれを感じ取っていた。
 その矢先だった。
 火球があらぬ方向へと飛ばされた。最初、それは敵の牽制だとネグルとカリキュレイト・アイは判断した。
 だが、ネグルは嫌な予感がして後ろを振り向いた。
 火球の先には、いづながいた。こちらが疲労し始めたタイミングで敵は狙いを変えて来たのだ。
「させ、るかぁッ!」
 未来予測。今から振ったところで火球は打ち落とすことは難しい。疲労によって判断が遅れたいづなもこれを避けられない。
 だから、ネグルはいづなの方へ向けて走った。火球が到達するよりも早く彼はいづなへと飛びつくようにして火球から庇う。
「ぐぁっ……!」
「ネグル君!?」
 ネグルのブラックジャケットが焼け、苦悶の表情を浮かべる。いづなが悲鳴のような叫び声を上げた。
 そして、それが致命的な隙となることは最早高度な演算を用いらずとも容易に予測できることだった。
「ゆかりちゃんを殺したんだ、お前らも死ね!」
 ラグオが尻尾の叩き付けで追撃を仕掛けて来る。いづなも武器を操作して抵抗しようとするが間に合わない。
 一巻の終わりか。そう思われた時だった。
 銃声が二発分。それから、誰かが走る音。
「させ、るかってぇのォ!」
 銃撃で怯んだラグオへとショートボブの女が飛び入って、そのガントレットでもって殴打することで敵の追撃を無理矢理に中断させた。
「まだゆかりちゃんもそれ以外も存在していたのですね」
「関係ないね。二匹とも消すだけだろ?」
 まったく同じ声で、しかし印象のまったく異なる別々の口調で話す女が二人。
 彼女たちは、立花・乖梨だった。
「おい、立てるか? 立てるな?」
「ここは私たちが預かりました。あなたは負傷者を連れて後方へ」
「っ、ありがとう……」
 オーバーロードと戦闘でのショックによって気絶したネグルを助け起こし、肩を貸して引きずるようにしながら後方へと向かっていく。
「さあ、ここからは私たちの独壇場だ」
「二人いますけどね。ユーベルコードによる人格の分離ですので、大目に見て下さい」
 行くぞ、と男勝りな乖梨が呟くと、ええ、と冷徹な乖梨が銃を構える。
 まず冷徹による銃撃が始まった。銃弾が火球を放とうとするゆかりちゃんと、それを庇おうとするラグオを牽制する。
 それによって足が止まったところへと、男勝りが飛び込んだ。
「満員の為、列車の外までお乗り換え頂けますかァ!?」
 酸の霧さえ無視した捨て身の特攻。殴殺の処刑記憶を宿したガントレットでもって、渾身のワンツーの拳打をラグオへと放つ。衝撃波さえ伴った二撃は確かなダメージとなって僅かにラグオの身体を浮かせるが――吹き飛ばすには至らない。
「クソ重い上にクソ硬ぇ! 一筋縄じゃいかねえぞ!」
「問題ありません。そのまま敵を惹き付けて下さい」
 霧から逃れるように男勝りが飛び退り、冷徹が的確な射撃でそれを支援する。
「惹き付けるったって、私たちの手にゃ余るぜコイツは!」
「ええ。ですからもうすぐ増援が――いえ、今来ました!」
 冷徹の言葉の通りに、車両へと三人の猟兵が駆け付けた。
「大丈夫でありますか、自分も援護するであります!」
 到着して即座にジャンク品で構築された騎士人形を前線へ立たせたのは、キャナリニア・カルコメランだった。
「こちらも援護します。鈴凛さん、準備はよろしいでしょうか?」
「万全アルよ。早速始めるアル!」
 両手に持った二丁の拳銃でもって銃撃するのは富波・壱子。その後ろへ続くのが黒白・鈴凛だ。
「うるさい、殺す! 僕と僕の大切な友達の邪魔をするやつらはみんな死ねば良いんだ!」
「許さない、おとうさんとおかあさんを撃ったのも、わたしを殺したのも!」
 ラグオとゆかりちゃんが共に怒声を上げながら火球を放ち、体当たりを仕掛ける。それを未来で見てきたかのように銃撃によって打ち消すように阻害するのは壱子だ。
「たとえその怒りが正当なものだったとしても、あなた達を生かしておくことはできません。――殺します」
 銃撃によってねじれた足を撃ち抜かれたラグオが動きを鈍らせる、すかさずそこへキャナリニアが人形に突撃をさせた。
「あなたに大切なお友達がいるように、自分たちは電車に乗っている方全員が大切であります! 傭兵として、あなたたちを止めるであります!」
 人形によって、スクラップ製の重量級の突撃槍が突き出さてラグオの肉を浅く刺す。
 その瞬間、ラグオを注視していた壱子が弾かれるように頭を上げた。
「来ます!」
 彼女の未来予知能力によって、ラグオの次の行動が判明したのだ。
 壱子が転移能力で姿を消すと、次の瞬間にはゆかりちゃんの真後ろに彼女はいた。
「なっ――!?」
「あなたたちの友情、試させて貰います」
 突然の出来事に驚きを隠せないゆかりちゃん。壱子は余りにも軽いその少女の身体を引っ掴むと、軽々と投げた。
 放り投げられた先は――黒い肌を膨らませ、今まさに酸の霧を噴出させんとしているラグオがいた。
「ゆ、ゆかりちゃん!?」
 慌てて酸の霧の噴出を抑えて、ラグオは放り投げられたゆかりちゃんを受け止める。
 余人が見れば外道とさえ評するであろうその戦術を行った壱子の表情には、微塵も躊躇が見えなかった。
「今です!」
「続きます!」
「ッシャァオラァ!」
「集めて繋げてくっつけて――行くであります!」
 壱子の号令一下、二人の乖梨の銃撃と拳打が続き、そこへ更にキャナリニアが追加のスクラップを召喚することで補強した、巨槍による一撃を叩き込む。
 敵が反撃してこない、またとない好機に猟兵たちの火力が集中されていく。
「友達ごっこは余所でやれヨ」
 鈴凛によってラグオへと添えられるように軽く当てられた一撃。それは一見してセゲルやキャナリニアの槍や、乖梨や悠弥の拳打にも比べるべくもないほど弱い。
「オイタが過ぎたお前たちはもう、害でしかないアル」
 拳打の衝撃がラグオの体表から身体の芯へ伝わり――そして、炸裂した。
 中国武術の一つ、寸勁だ。ユーベルコードにまで昇華されたそれは、ラグオの硬い外皮の更に奥へと浸透して直にダメージを与える。
 どう、とラグオの巨体が傾いで、座り込むようにその身体を床に伏せた。
「やったでありますか!?」
「まだヨ! 殺った手応えがなかったアル!」
 キャナリニアの希望的観測に、厳しく鈴凛が言葉を刺す。
 昏倒している今こそトドメを刺そうと猟兵たちが崩れ落ちたラグオへ向かおうとしたときだった。牽制するように火球が放たれて、ゆかりちゃんが庇うようにラグオの前に立った。
「お友達は、殺させないもん……!」
「抵抗するならば諸共骸の海へ送還しましょう」
 冷徹な乖梨がゆかりちゃんへと拳銃を向ける。
 これで決着か。そう思われた時だった。

「――いけない。皆さん、逃げて!」
 
 壱子が悲鳴にも似た声を上げる。猟兵たちの注目が集まる中、彼女は仮想世界を構築するジョンへと振り向いた。
「完成するところがまだ見えませんが、仮想世界はまだ構築中ですよね?」
「え? あ、ああうん。あともうちょっとだけど、終わったならキャンセルしようかなって思ってたところなんだけど……」
「そのまま続けて!」
 一体どういう意味なんだい、と聞くよりも早く。壱子がジョンへと覆い被さる。
 それはまるで何か強烈な攻撃から身を挺して守るかのような動きで。
 その答えは、音によって判明した。
「――ひっく、う、うぁぁ……」
 幼い少女の嗚咽。ゆかりちゃんと戦った猟兵たちの表情が、さっと変わった。
「喉だ、喉を撃ち抜け!」
「わかっています」
「……ダメです、間に合いません」
 男勝りな乖梨の言葉で、冷徹な乖梨が拳銃を構える。だが、壱子は半ば以上諦めるように言う。
 あの短期的ながら未来を予知する壱子が、だ。 

「うぁぁあああああアアアアアアアAAAAAAAaaaaaaahhhhHHH!!!」

 異形の少女が喉を震わせ、サイレンにも似た叫声を上げる。叫声は衝撃波となって、猟兵たちを襲い、車両自体を揺るがす。
 誰もが咄嗟に防御姿勢を取るが、防御してなお叫声による衝撃波は強力だ。音によって頭の中を半物理的に掻き乱され、衝撃を身体に受けて吹き飛ばされた後に壁や床へと叩き付けられる。
「■■■■■■■■■■■■■――――――!!!!」
 少女の叫声と列車の走行音が響く最中。
 ジョンのヘッドフォンから囁くような音声が入った。

《アクセス》《構築完了》《この世界での破壊行為は現実世界に反映されません》

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

アルトリウス・セレスタイト
仲良く遊べるところに行くのが一番だぞ

ゆかりちゃんから順に焼尽で焼却
乱戦なら分裂状態で個別に
そうなる前なら合体させた巨剣で薙ぎ払い一気に
各種技能を活用しなるべく間を開けず障害を排除

ゆかりちゃん掃討したら鑼犠御・螺愚喇も同様に
皮膚を焼き固めたら酸の霧が減ったりしないかと幾らか考えるが過度な期待はしないでおく
感覚器を排除して知覚力を、或いは脚を切り落として機動力を奪えそうなら狙っていく


パーム・アンテルシオ
これは…また、こんなに歪な存在が…
いや…えっ、なんで…
悪意じゃない…ただ純粋な、怒り…?
あなたは…何なの?悪い存在じゃ、ないの…?

いや、違う、ダメだ。ここは戦場。
迷いは捨てる。今、目の前にいるのは…敵。
倒さなければ、殺される。今は、それが全部…!

ユーベルコード…っ、月歌美人!
私は、みんなのサポートを!きっとそれが、一番の貢献!
…違う。これは迷いじゃない。私は、迷ってない。
悪意がなければ敵じゃないなんて、そんな事はない。
敵だって、生きている存在。友情があれば敵じゃないなんて、そんな事はない。
悪じゃなければ、敵じゃないなんて。…そんな事は、ない。
ここは戦場。ここに立つ以上は…
敵は、倒すしかない…!


レイラ・エインズワース
【MM】◎
鳴宮・匡サン(f01612)と

ホントは無害な相手だとシテモ
ヒトに害を為すナラ
それが過去の亡霊だというのナラ
ココで止めるヨ

朗々と、天に響くように【高速詠唱】するノハ鎮魂の調べ
【全力】の魔力を籠めて作成するのは冥府の槍ダヨ
コレは貴方たちの墓標
葬送の為の灯
籠めた【呪詛】は被害者たちの無念
友達がいけないコトしたナラ、止めてあげるのも友達じゃナイノ?
皮膚の広域を焼いて霧を阻害
鳴宮サンのサポートがあったラ
また槍を呼び直して、攻撃を集中させるヨ
百を超える槍、さばききれるカナ!
被弾しても刺した槍から【生命力】を奪って再生するヨ
驚いたカナ? だって、私も模造
過去の夢なんダカラ

アドリブ・絡み歓迎ダヨ


鳴宮・匡
【MM】◎
◆レイラ(f00284)と
◆周囲の味方とも連携

殺したんだ、殺されて文句は言えないだろ
……ま、何を言っても無駄かな
なら、解決策は一つだ

【援護射撃】を行いながら観察に徹する
感覚器官は見た目には違いがないが
場面ごとに「どの器官が主要な役割を担っているか」は判断できるかもな
【見切り】【聞き耳】他使える全知覚で捉えるよう尽力

詩が聞こえ始めたら【抑止の楔】で相殺
「その時点で発声に関係しているであろう器官」を判別
重点的に狙う
一瞬でも止まれば、巻き返す隙ができるだろ

はいはい、そっちの詩はストップだぜ
後ろに控えたお嬢さんの詩が終わる頃だ

……模造、過去の夢、か
レイラがそう言うのは、何となく落ち着かないな


ヴィクティム・ウィンターミュート
オイオイ、邪教相手と思いきやワックド・フリークス相手かよ
どんな精神性してようが、邪魔をするならフラットラインにしてやるまでだ
お友達ごっこはあの世でやってくれ

俺ぁ奴のユーベルコードの封印を狙う。完璧な封印を狙うにはちょいと骨だが…疲労も負傷も、ある程度なら仕方ねえ。欠損も腕程度なら許容できらぁ。とにもかくにも3つ当てて、状況を可能な限り好転させたい。
戦いでは【ダッシュ】【見切り】【早業】で駆けまわりながら攻撃、【時間稼ぎ】をメインにする。隙あらばプログラムを当てることを狙うぜ。

主役の膳立ては端役の仕事さ。俺ぁ、勇者の剣を託すような存在でいいんだよ。だから…この役目を全力でやり遂げさせてもらうぜ。


壥・灰色
化物同士が傷を舐め合い、その果てにとばっちりで何人も死ぬか
おまえらの有情にケチを付けるつもりはないが、そのまま続けるんなら話は別だ
言いたいことはただ一つ。仲良く死んであの世でやれ

壊鍵、起動

『真の姿』?
ああ、袖も包帯も失せてたな……
仕方ない

前腕部にびっしりと細密に書き込まれた魔術回路に常に魔力が循環、「衝撃」が再生産され続ける。それはつまり、無尽蔵で「衝撃」を籠めた拳を連打できることを意味する。余剰魔力が肘よりアフターバーナーの如く噴出しており、まるで天を衝く牙のよう。

今からやることは単純だ。ラグオ・ラグラを死ぬまで殴るだけ
泣こうが喚こうが知ったことか
お前が人を殺すなら、おれがお前を殺してやるよ


ティアー・ロード
「素晴らしい、まさかUDCが友情を持つとは……
……とても御しやすいじゃないか」

使用UCは【刻印「比翼連理」】
仮面裏からカードデッキを取り出し
炎を纏う槍と巨大な盾を持つ前衛の重戦士[炎槍幽士-ガイスト・ランサー]と
炎を放つ杖をもったローブ姿の後衛の女魔導士[炎操霊士-ガイスト・エンフォーサー]を召喚するよ
「コードセレクト……そうだね、ユナイテッドなんてどうかな?」

ランサーの攻撃対象はゆかりちゃんに集中
エンフォーサーは炎の壁でラグオの行動を阻害
ダメージを狙おう

私自身は炎の壁の中で挑発するね

「さぁ!キミの敵はここだ。友を助けたくないかい?」
もし彼が友の為に私まで食らいついたなら甘んじて攻撃を受けたい


天命座・アリカ

さあて、クライマックスだ!カーテンコールまで駆け抜ける!
勝負といこうか決戦さ!

君とは出合い方が違えばさ!結末は違っていたかもしれないが!
残念、もしもは存在しない!悲しきかな運命だ!
君は己の友達の為!私は己の生き様の為!大事な物をベットして!勝負の席にね、つこうじゃないか!

此度はそうだね音響役を!BGMはね任せておいて!
クラシックがよかったが!それではしかし上品すぎる!
歌を掻き消す楽曲を!少々煩いがね、これもまた一つの芸術だ!
「列車の走行音」を「指向性のある音波」として再現する!
発声器官が感覚器官を兼ねているのであれば!タスクを占領してやるのさ!
すまないが、舞台から降りてくれたまえ!



 そこはまるで未完成の世界だった。
 広大無辺な白の世界。絵の具が塗られる前の真っ白のカンバスの上に世界があるとしたら、きっとこんな世界なのだろう。
 ゆかりちゃんはそんなことを考えながら、ぼんやりとどこまでも白い空を見上げる。
 ここはジョンがウィスパーに構築させた、仮想世界。
 周囲には何人もの猟兵たちが倒れていて、彼女の大事な友達であるラグオ・ラグラもまた、ゆかりちゃんのすぐそばで倒れていた。無理もない。ゆかりちゃんの叫声による攻撃は無差別的なもので、当然ラグオもその攻撃の巻き添えを食う。
「ごめんね……」
 異形の頭から涙は流れないが。悲しげにゆかりちゃんは言葉をぽつりと落とす。
「大、丈夫……。これで二人で逃げて、ゆっくり休めば、一緒に――」
 遊べるよ。ラグオが最後に紡ぐはずだったその言葉は、銃声によって阻まれた。
「――――――」
 ぐらり、とゆかりちゃんの身体が傾ぐ。この銃撃には覚えがあった。確か自分の一人が、この銃撃を受けて――。
 喉元に手を当てると、そこには風穴が空いていた。何かを喋ろうとしても、こひゅ、と風穴から空気の大半が抜けて言葉すら出せない。
 銃声のした方向へと視線を向ける。そこには、アサルトライフルを構えた黒髪の青年がいた。



「……思わず撃っちまった」
 鳴宮・匡には好きな言葉がいくつかある。
 その中でも「見敵必殺」と「先制攻撃」は彼の身にも染み付いた語句だった。
「チョットチョット、撃つなら撃つって先に言ってくれないカナ!? 変な場所に来たこと含めて私すっごくびっくりしたヨ!?」
 レイラ・エインズワースがアサルトライフルを構えた匡へと抗議する。
 オブリビオンが出現したと聞いて応援へ向かってみれば、突然白い世界へと送り込まれていたのだ。加えて一緒にいた匡が突然の銃撃。ランタンのオイルを僅かに漏らしてしまうほどレイラは驚いた。
「いやごめん。でも敵がいたからさ」
 口調に反して特に悪びれもせず、銃撃した先を指す。そこには何人もの倒れた猟兵たちと、怪物と、そしてゆかりちゃんがいた。
 レイラの表情が日常のそれから戦いの時のものへと一瞬で変貌する。
「アレは――ラグオ・ラグラ!」
「へえ、さすが。物知り」
「呑気に言ってる場合じゃナイヨ! 大変ダヨ! ラグオ・ラグラがあそこにいるってコトハ、ゆかりちゃんのお友達はラグオ・ラグラで、ゆかりちゃんを倒した私たちとは敵対ってことになっチャウ!」
「要は討伐対象が一つ増えたわけだ」
「エエ……。ラグオ・ラグラって、基本的に人間に友好的なオブリビオンだケド、敵対するとすごく強いんダヨ……?」
 盛んに敵戦力の脅威性を騒ぎ立てているレイラだが、平然といつも通りを貫く匡を見て徐々に困惑するような表情に変わる。
「慌てたところで変わらないって。それより敵の感覚器官は? あと攻撃手段」
「それは、そうダケド……。黄色い球体が感覚器官って言われテテ、歌声とあと、肉弾戦……ダッタカナ」
「へえ」
 銃声。銃声。銃声。
 倒れたラグオの黄色い球体へと、匡が三点バーストを撃ち込む。いくつか潰れはするが、それでも感覚器官の数が多すぎる。
 お返しとばかりに、ゆかりちゃんから燃え盛る火球がいくつか飛ばされてきた。
「まあ撃ち返して来るか。なんとかあのラグオが弱ってる内にトドメ刺せないかな……」
「勝手に戦闘始めナイデヨ! ラグオは私の魔法でなんとかできると思ウ!」
「ならそっち任せた」
 匡が銃撃でもって正確に火球を撃ち抜き、相殺する。その間に、レイラは藤の花が意匠された長杖を天に捧げるように掲げ、詠唱を始める。
「――コレは貴方たちの墓標 葬送の為の灯 現世への未練を断ち切る刃 塵を塵に 灰を灰へ 私たちを在るべき場所へと還す――」
 ――冥府の槍。
 呪詛の入り混じった鬼火を纏った短槍が、レイラの周囲に展開された十重二十重の魔法陣から次々に出現する。その数、優に百は下らないだろう。
 その槍の群れが、雨のように一斉に投射された。
「――――――」
 ラグオとゆかりちゃんに槍が突き刺さる。遠目から見ても、無事では済まない火力と物量だ。
「これだけやれば問題ないと思うケド……」
 掲げていた長杖を下ろしながら、レイラが横目に匡を見る。彼はまだ、戦闘態勢を取り続けていた。
 それが意味することはただ一つ。敵はまだ、生きている。
「――――――――♪」
 歌声が、聞こえて来た。遠くから聞こえて来るため、歌詞はよくはわからないが。なぜだかとても優しい雰囲気の歌だ。
「あの歌……」
「列車に乗ってる奴に似た声は……いないな。間違いない、ラグオの歌だ」
 匡の言葉通り、ラグオとゆかりちゃんが槍に突き刺され、呪詛の混じった鬼火に苛まれながらも立ち上がった。ラグオの歌声で回復したのだ。
「あの歌をどうにかしないことにはどうにもならないな……発声器官は?」
「感覚器官が兼ねてるって説があったハズ……」
「さすがに全部撃ち抜くってわけにも――」
 あるいは長期戦に持ち込んで観察を続ければどこが発声の要所なのかがわかるのだが。持久戦になればこちらの方が不利だ。
 銃撃でゆかりちゃんを牽制し、ラグオの感覚器官を撃ち抜くが、先行きは不透明だ。さてどうしたものかと匡が頭を悩ませていると、二人の後ろから新たな人が現れた。
「よくわかんねえけど、あのワックド・フリークス(イカレ怪物野郎)を抑えりゃ良いのか?」
 ヴィクティム・ウィンターミュートだ。彼もまた、応援に駆け付けて展開されていたこの白い世界へと足を踏み入れたのだろう。
「できるなら任せた」
「アイ・コピー(了解した)。こんだけ広けりゃランニングハックもやりやすくって良いぜ」
 匡とのやり取りは必要な分だけ。彼は時間が惜しいとばかりに駆け始め、右腕のサイバーアームから攻性プログラムを起動する。プログラムライブラリから呼び出したのは――“ブレイン・ハック”プログラム。本来ならば電脳接続者でなければ効果を発揮しないそれは、非電脳接続者であってもその脳機能を掌握するための電気信号を流し込めるように作られていた。
「ハックには時間が必要だ、なるべく稼いでくれ! ――任せたぜ!」
 言い残す対象は、レイラと匡だけではない。
 この白い世界に足を踏み込んだ援軍は、ヴィクティムだけではなかった。
「任されたが、倒しても問題はないよな」
 その緻密な魔術回路が刻み込まれた右腕を剥き出しにして、その余剰魔力を溢れ出させながら壥・灰色が前へと進み出る。
 彼の視線の先は、異形の怪物と異形の少女だ。
「化物同士が傷を舐め合い、その果てにとばっちりで何人も死ぬか」
 吐息する。血は流させないと誓ったが、結果的に自分以外の血は多く流れた。その元凶が、目の前にいる。
「――壊鍵、起動」
 始動刻印が起動する。魔導銀が魔力を循環させて、ギガース・パスを経由して、加速と増幅の回路へと魔力を行き渡らせる。
 足から衝撃波を放って敵へと瞬時に接近し、衝撃を籠めた拳を振るう。魔術回路を循環する魔力によって高効率で衝撃が生産・再生産されて凄まじい爆音と共に、アフターバーナーのごとき余剰魔力の噴出でもって加速された拳はラグオのボディを捉えた。内臓術式“ノヴァドライバー”が起動。壊鍵が生み出した百数十発分の衝撃が敵の硬い外皮を透過・浸透して内部で炸裂する。
 ラグオの歌が、苦悶の悲鳴によって中断された。硬い外皮で鎧っていたとしても、酸の霧を纏っていたとしても――浸透し、吹き飛ばす。それが彼の支配する“衝撃”という力だった。
「歌を止めたいなら、殴るのが一番手っ取り早い。――さあ、きみらは仲良く死んであの世でよろしくやっててくれ」
 もう片方の腕で二発目の拳打をブチ込むと、ラグオがその身体を浅く浮かせて強制的に後退を余儀なくさせられた。
「……普通乗用車ぐらいなら軽く吹き飛ばせるはずなんだが」
「あんまり出力高めると援護できナイシ、倒れてる猟兵が回収できなくなるカラ加減してヨ!」
 仕方ないもっと出力を上げるか、と魔術回路に注ぐ魔力を効率重視の量から増量しようとした矢先、レイラの言葉で中断した。直接巻き込まない程度に距離があるとはいえ、彼の扱うものは衝撃波。余波で倒れている猟兵たちにトドメを刺してしまったら問題だ。
「……成程、確かにこれは時間稼ぎだ」
 周辺被害を度外視すれば倒せる目も見えるかもしれないが。
 “NO.6 悪魔の右腕”。“コードネーム・ギガース”。そんな単語が彼の脳裏を過ぎった。
「化物め……」
 眼の前のラグオが、唸り声を上げながら灰色へ警戒姿勢を見せる。
「悪いが、おれは人間だ」



 皆が戦うところから、少しだけ離れた場所で。彼女は戦いの趨勢を見守っていた。
「あの怪物……」
 パーム・アンテルシオは遠目から、異形の少女と共に戦う怪物――ラグオ・ラグラを見て、目を瞬かせる。
「外見は歪だけど、あれはゆかりちゃんと違って悪意が薄いというか……純粋な、怒りが感じられる……」
 言ってみれば、ゆかりちゃんは存在の根底から人というものへ対する悪意が備わっていた。それは大抵のオブリビオンに備わったものだろう。
 だが、目の前のあの怪物にはそれが感じられない。純粋な悪い存在とは思えず、場合や状況が違えば、自分たちは仲良くなれるのではないかとさえ思えてくる。
「そんな彼を、私は……」
 倒すのか? 倒せるのか?
 答えはない。答えは出ない。
 ――その末に、彼女は展開しようとしていた魔法陣の生成を中止する。
「♪陽の下、月の下、幻想を創りだそう――」
 狭間から溢れ出すメロディに合わせて、歌声を奏でる。
 普段であれば勢いのあるその歌は、しかし今だけはその勢いが削がれてしまっていた。
 歌によって、みんなのサポートを行う。ユーベルコード【月歌美人】による支援は幾度となく行ってきた。今回はきっとそれが一番の貢献だと、自分に言い聞かせた。だから迷っていない、敵であるはずのあの怪物を攻撃したくないなんて思っていない。そんな風に、自分の中にある惑いを無理矢理に否定する。
「まるでダメだね、なっちゃいない! せっかくのクライマックス、カーテンコールまで駆け抜ける過程をそんな歌で飾るつもりかい?」
 呆れたように言葉をかけてきたのは、天命座・アリカだった。
「どうせ君、彼との出会い方が違えば結末が変わるかもしれない! なんて考えていたんだろう?」
「そん、な、ことは……」
 まるで内心を見透かされたかのようなアリカの言葉に、パームは動揺する。歌は、すっかり中断されてしまった。
「けれど残念、If(もしも)は存在しない! 悲しきかなこれが運命、これが宿命! 過酷だね、嘆きだね!」
 芝居がかった口調と所作で言葉を発するアリカは、あるいはパームの目からは道化師のように映ったやもしれない。
「――彼は己の友達のため! 猟兵たちは己の生存のため! そして、私は己の生き様のため! それぞれ大事な物を賭けているんだ!」
 この場にいるのは、勝負の席に着いた者たちだけだ。彼らは皆、賭けた大事な物のために勝負する。
「迷っていては、戦っている彼らにもいかにも失礼というものさ! それでも歌うことさえ憚られると言うのなら!」
 アリカは手を、パームへと向ける。
「――共に歌おう! 声高らかに!」
「……うんっ」
 パームは差し出された手を取って、頷きを返す。
「たまにはデュエットも悪くはない、よね」
「そうだとも! さあ、私たちの歌声を戦う者たちへと届けよう!」
 二人は狭間から溢れ出すメロディに合わせて歌い始める。
 メロディを、歌を聞いたアリカは、聞いた端から記憶領域からその劣化再現となる霊を召喚・反映することで指向性を持たせて再現。そのまま猟兵とラグオ目掛けて放射する。果たして、二人の歌う歌は戦う猟兵たちへと力を与え、戦う怪物の感覚器官の一部がこの歌声を聞き取るのに占有されてしまう。
「これが勝負さ、決戦さ! 盛り上がって行こうじゃないか!」



「喰らえよ、スクィッシー(雑魚め)!」
 疾走するヴィクティムが、まず一発目の電気信号を送る。速度鈍化プログラム。四肢へ伝わる伝達系の働きを阻害することによって、その動きを鈍らせる攻撃プログラムだ。効果はすぐに表れ始めて、ラグオの動きが目に見えて遅くなり始める。
「お友達をいじめるなんて許せない……許せないんだから!!」
 火花を散らす松明のように、ゆかりちゃんが燃え上がる異形の頭から火球を四方八方へと打ち放つ。それらは倒れた仲間たちを助け起こす猟兵たちにも向かっていた。
 しかし、それは突如として現れた巨大な盾を持った重戦士によって防がれた。
「コードセレクト……そうだね、ザ・ユナイテッド、といったところか」
 ふわりと浮かんだカードと共に現れたのは、ティアー・ロードだ。カードには目の前の重戦士、そして女魔導士に酷似したイラストが印刷されている。ティアーはそのカードのキャラクター――[炎槍幽士-ガイスト・ランサー]と[炎操霊士-ガイスト・エンフォーサー]を現実に召喚したのだ。
「まさかUDC同士が友情を持つとは……素晴らしいな」
 ティアーは言いながら、ランサーとエンフォーサーへと指示を飛ばす。ランサーはそのままゆかりちゃんと接敵し、エンフォーサーは炎の杖を掲げてラグオを炎の壁でもって分断した。
「だが無意味だ。御しやすくて仕方がない」
「これから去りゆくものに友情があったとして、何の意味がある?」
 青い剣型の炎を大量に滞空させたアルトリウス・セレスタイトが歩み出た。
「骸の海へと還るが良い。そこでならば仲良く遊べるだろう」
 存在根源を裂く原理の炎が合わさって、一つの巨大な剣となる。
 アルトリウスが腕を横に振ると、それに合わせるように巨剣が薙ぎ払われる。
「去るが良い」
 少女の身体が青い剣型の炎によって焼かれ、燃える異形頭もまたその青い炎によって飲み込まれ――やがて、それらは焼き尽くされて消えた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

三岐・未夜
【団地】
……友達を消されて怒ってる、んだよねあれ……。でも、……やらなきゃ、みんな死んじゃってた
いきなり知らない場所に喚び出されて良いように使われかけて、嫌だっただろうなって、思うけど……行動は、曲げらんない

ともだって、たろだって、セラだって、みんなを守って怪我してる。連戦だし
僕が治すよ。みんな。何度怪我しても、僕が治す
……疲れてないよ、まだ平気。みんなが痛いの嫌だもん【祈り】
僕だって、見習いとはいえ神使なんだから。出来るよ

……UCないと、僕、ろくなこと出来ないけど。まだ走れる。動ける。狙いを絞らせることは出来るはず!
【催眠術、誘惑、おびき寄せ、時間稼ぎ、見切り、第六感、フェイント】で敵を誘導


浅沼・灯人
【団地】
……友達か。随分とまあ仲がいいこった。
だが、そんなこた関係ねぇ。
てめぇらが死ななきゃ殺されるもの、守るためにここに来たんだ。

【POW:擒餞戈】
心地いい傷だ。丁度いい。
未夜が治してくれてるなか悪いが、躊躇いなく前へ出る。
鉄塊剣で攻撃を受けながら射程内に潜り込めば、
負傷省みず竜の爪を解放しぶっ裂く。
酸の霧なんぞ俺の血が燃やしてくれる。
仲間達だっている。
臆することなんざ何もねぇよ。

お前も友は失いたくないか。
そうか、分かる。
その気持ちは俺も同じだ、だからてめぇが死んでくれ。

あぁ!?止める方法!?つかママ言うなや!!
ああくそ!大盤振る舞いだ、竜化を増やす!
先頭車両切り離してそこだけ横転させっぞ!


セラ・ネヴィーリオ
【団地】◎
友達の為かあ。分かるよ
僕も世界の人や仲間が好き!
だからそれを害そうとするなら、負けないよ

ラグオ君、前に会ったことあるねえ
今回は【鈴蘭の嵐】を呼ぼうか
狙いはラグオ・ラグラ本体、ゆかりちゃん!
敵の撹乱、皆の支援を目標に
「未夜くん大丈夫?こっちへの攻撃は僕が払うね!」酸の霧は花弁で散らし
「太郎さん!花びら行くよ、使って!」分断には視界を遮る様に花弁を遣わせ
「隙を作るよ、いっけー灯人さああああん!!」彼の一撃が届くよう、踏み込む瞬間に合わせて集中攻撃!

撃破後は猟兵の少ない車両へ移動
鈴蘭を車輪に纏わせて少しでもブレーキにするね
皆が無事に帰れるように全力を尽くす【祈り、全力魔法、覚悟】を載せて


夢飼・太郎
☆団地
☆アドリブ可
☆報告書は知らない

めっちゃイイ声……コーヒーとか好きそうだな

☆戦闘
空間的に可能なら参戦
UCを発動し分身と前線へ
車両の破損箇所から天井を通って挟撃を狙う

分身には銃を渡しゆかりちゃんを
本体はラグオを担当
「お前らを生かせない理由は灯人や未夜が言った通りだ
分からなくていいし
許さなくていい
オレもお前らの考えなんざ……分かる気もねぇからなぁ!!」

分身はゆかりちゃんに射撃しつつ
ラグオから引き剥がして精神的余裕を割く
座席や内装をフル活用


☆車両
「架線じゃねぇならエンジンの筈だが急ブレーキは効かねぇし脱輪させたら全員死ぬしどうするどうする……どうする灯人ママ!!!!」


夜暮・白
え。なにこの嫌な音と臭い? 避難した人たちの安全を確認したら行ってみよう。
……っ。お友達、見つかったんだ。

まずは動き回れるように、ざっと見て車内の[情報収集]から。バウンドボディの[ジャンプ]で[地形の利用]もしながら敵と距離を取ります。備え付けの消火器が使えたら攻撃の妨害に使おう。
[オーラ防御]で身を守りつつ、【生まれながらの光】で回復して、綺羅針(スローイングダガー)の[投擲]で敵の隙を作って味方を助けるよ。

お友達がいて楽しくなる気持ちはわかるけど、次に遊ぶときは周りを困らせないでね。始発だと寝てたい人も多いし。
(頭巾を直すために引き下げ)これが終わったら、列車を止めなくちゃ。




トルメンタ・アンゲルス
◎◎◎◎◎

大分時間を使ってしまいましたね!
終点まであとどれぐらいですか!?
速い事は良い事ですが、死の刻限は速く来ない方がいいんですよ!

列車を停止ないし減速させるのを最優先にします!
自慢の速さで運転席に飛び込み、非常停止装置を起動……させますが、その前に車内放送で急制動をかけることを通知しませんと。

止まってくれるか!止まらないか!?
止まらないなら、俺が止める!


『Tune-Up――SteamEngine』
SteamOn起動。スチームユニットを装着し、出力強化。
パワーにエネルギーを集中させ、怪力を発揮。
列車の前に飛び出し、両足を踏ん張り、ブーストを吹かしてブレーキを掛けます。


止ォまァれェェェェ!!!


ジン・エラー
歌えよラグオ
怒れよラグラ
お前がそうしている限り
"ゆかりちゃん"は救われるぜ

まァ〜〜〜〜?
お前が誰を守ろうが、救おうが??
オレには関ッ係ねェ〜〜〜〜ンだけどよ
あァ待てよ、そンな殺してやるって顔すンな

話をしようぜ

お前は何をしてェンだ
オレらを殺してェのか?
なら殺してどォーすンだ?
その女と仲良く二人で旅でもすンのか?

生きてェのか?

あァ、そうかい
よくわかったぜ、お前のこと

じゃ、決まりだ

お前らを、
全部、
そっくりそのまま、


救ってやるよ


フェム・ポー
お友達をまもるためにきたのぉ?
うふふ。とっても勇敢でぇ、優しい子なのねぇ?
……でもぉ、本当にかわいそおねぇ。女の子達もぉ、貴方もぉ、可愛そうにねぇ。『安寧』(死)に至ったのにぃ、オブリビオンになんかなってしまってぇ、こんなぁ、痛くてぇ、苦しくてぇ、悲しいことばかりの現世をさまようなんてぇ。フェムが『救って』あげるわぁ。
UCを使って変身するわねぇ?(生命力吸収の力を持った黒い光を纏い、黒く輝く禍々しい天使の輪を乗せた人間大の姿に変じ、その光と、魔力で生み出した生命力吸収の無数の呪詛の鎖で相手を『救済』に導く)
(相手のUCで酸を受けてもその痛みに悦びを見出し、奪い去った生命力で次々と再生する)


千桜・エリシャ

ふふ、ついに大将首ですのね!
――あら、あなた……首はどこですの?
教えていただかなければ上手に狩ることができませんわ
ねぇ…どうか私にだけそっと教えてくださいまし
そして御首を、私に――ね?

放たれた酸の霧は花時雨でオーラ防御しましょう
私の肌に傷をつけようだなんていい度胸ですこと
ああ、でも戦さ場で傷つくのもまた一興かしら
あら、尻尾に手足と沢山ありますのね
一つひとつ切り離して差し上げましょうか
そうすれば動きを封じられるでしょう?
隙を見つけたならば2回攻撃で畳み掛けますわ

へぇ、先程のお嬢さんとお友達ですの
ならば首は一緒に並べて差し上げませんと
繋げてさくらんぼの出来上がりですわ
――私なりの優しさですのよ?


桜庭・英治
望んで出てきたわけじゃないんだな
もともと人を襲うつもりなんてなかったんだな
友達が傷ついて怒ってるだけなんだよな

でも、俺はおまえを倒さなきゃいけないんだ
お前がいると酸で人々が危ないし、パニックを起こすからさ
だから人のために倒さなきゃいけない
お前は巻き込まれたほうなのに理不尽な話だよな

だけど、ごめん
俺は人間だから、人間の味方にしかなれないんだ

だからせめて、苦しまないように
燃やす!
パイロキネシス、全力全開だ
属性攻撃を乗せて思い切り焼き払うぜ!
酸の霧も、お前の友達も、なにもかも!



「――――――――――!!!!!!!!!」
 原理の青い炎。その中で燃やし尽くされる異形の少女を見て、ラグオ・ラグラは咆哮した。
 その絶叫には烈火の怒りと、深海の悲しみに染まっていた。
 桃色の二人によって詩は封じられている上に、あの原理の青い炎は存在根源を裂くものだ。恐らく詩でもって再生することは難しい。仮にできたとて、それは新たに骸の海から呼び出されたものに過ぎず、ゆかりちゃんであっても彼と友達だった少女ではないだろう。
 憎悪の視線が原理の支配者へと向けられる。涙の支配者の従者が作り出した炎の壁を突き破り、突進する。
 原理の支配者はそれをまた原理の青い炎でもって薙ぎ払おうとして。涙の支配者は従者たちで迎え撃とうとして。しかし二人はその行動を中断した。
 原理の支配者は存在の根源すらをも掌握できるだろう。
 涙の支配者は悲しみに暮れる者の涙を拭い、英雄として立つことができるだろう。
 けれど、どちらの支配者であっても眼の前の怪物を救うことはできない。支配者は物事を司ることができても、他者の心までも意のままに操ることは叶わない。
 あの怪物を救うことができるとするなら。それはきっと――聖者だけだ。
「よォ~~~~~~そんなに急いでどうするってんだよ」
 上から、ラグオの眼の前に大きな黒が現れた。棺桶のように大きな箱。救済箱。
 衝突して、受け止めて。まるで道化師の笑みのようなマスクを覗かせるのは、ジン・エラーだ。
「そこをどけ! お前も殺されたいのか!!」
「あァ待てよ、そンな殺してやるって顔すンな。話をしようぜ、ラグオ・ラグラ」
 それからだって遅くはねェだろ、と聖者は金と桃色の瞳で怪物を見上げる。
「まず最初に、お前は何をしてェンだ?」
「うるさい、黙れ! お前らを殺す、殺してやるんだ!」
「ンン~~~~成程ねェ。オレらを殺す。大変結構、素晴らしい! ――なら殺してどォーすンだ?」
 鈍く光を放ちながらジンは救済箱で進もうとするラグオを押し留める。が、まるで憎悪と憤怒を燃料にするように、ラグオは一歩、また一歩と進んで行く。
「うるさい、うるさいうるさいうるさい! お前らがゆかりちゃんを殺したんだ! お前らが僕の友達を殺したんだ! それなら、お前が死ぬのは当然だろう!?」
「ゲヒフヒャアハハ! すっかり復讐心に取り憑かれちまってるなァ! サイコー!」
 ジンの放つ光が徐々に強まる。ラグオの前進する足の歩みが、遅くなる。
「じゃ、決まりだ。お前を救ってやるよ。――その復讐の怒りから」
 カッ、と眩いばかりの光がラグオの視界を覆い、白い世界が一瞬だけ白紙に戻る。
 その次に、怪物の視界に映ったのは黒い光だった。
「ああ、かわいそぉ。本当に、かわいそおねぇ」
 光にあって照らすことなく、日差しのように差し込んでは闇として抱擁せんとするその輝きを放つ聖者は、フェム・ポーだ。妖精にあってその大きさは人間ほどの大きさとなって、彼女は闇色の光輪をその頭に頂いた禍々しくも神々しい堕天使のような姿へと変じていた。
「お友達は安寧に至ったのにぃ、こぉんなに痛くてぇ、苦しくてぇ、悲しいばかりの現世で怒りに取り憑かれて彷徨うことになってしまうだなんてぇ」
 彼女が虚空を抱擁するように腕を動かすと、白い世界に落ちた闇から無数の鎖が現れる。呪詛を帯びた鉄の縛めはそれら自体が闇の光を放ち、じわじわとラグオの生命力とも言うべき力を奪っていく。
「怒れよラグオ。悲しめよラグラ。お前が復讐を遂げたとしても、あの女は帰って来ない。お前が復讐を遂げたとしても、お前は命を狙われ続ける」
「救われないわぁ。あなたは決して、自分で自分を救うことはできないしぃ、ましてやゆかりちゃんを救うこともできないわぁ」
 だからこそ。
 白い光を放つ聖者と、黒い光を放つ聖者は口を揃える。

 ――「お前を救ってやろう」。

「……救い……なんて……」
 軋む音がした。
「――救いなんて、いらないッ!!」
 砕ける音がした。
「救いなんていらない、僕が、自分で! 救われてみせる!! 救ってみせる!!」
 フェムの拘束を、怪物は力でもって打ち破った。酸の霧で鎖が弱っていたのだ。
 ジンが即応して、救済箱で横薙ぎに攻撃する。怪物はそれを身体で受け止め、身体を反転させて尻尾を薙いでジンを吹き飛ばす。
 教典を開いたフェムが魔法で再び拘束しようとするが、それよりも早く怪物は体当たりで撥ね飛ばす。
「お前らを殺す! 殺して殺して殺す! もう怪物だから殺されるなんて嫌だ! 僕も、ゆかりちゃんも、怪物だから殺されたくなんてないんだ! お前らを殺せば、僕たちは殺されなくて良いんだッ!!」
 ラグオの叫びにはすでに悲しみはなく。怪物の狂うような怒りだけがそこにはあった。
 怪物が確実に息の根を止めようと追撃に動く。しかし、その動きは一本のダガーの投擲によって遮られた。
「そんなこと、させない……!」
 黒い影のようなものが伸びて、フェムとジンの身体を受け止める。それは光を放って、二人の受けたダメージを癒やしていた。
 二人の聖者を回収した黒い影は、ローブを纏った一体のブラックタールへと変化する。夜暮・白だ。
「僕たちだって、誰かが殺されれば悲しい。君のやろうとしていることは、ただ君と同じ悲しみを新たに生み出すことじゃないか!」
 怒りと悲しみの再生産、復讐の連鎖。まだ幼い彼であっても、その未来は見えていた。
 けれど幼い彼には。平和に暮らしていた彼には、喪う悲しみと怒りへの実感としての理解が欠如していた。薄々であっても白はそれをわかっていて、救うことはできないと心得た上で、それでも言葉にせずにはいられなかった。
「黙れ、ゆかりちゃんが殺されたんだ! お前らも死んで当たり前だ!!」
 怒りの咆哮と共に、復讐の怪物が突進する。異形の少女が教団員のみならず一般人さえも殺めていたがゆえに、彼の理屈は矛盾していることを誰もが理解していて、けれど激情に駆られる怪物だけが理解できていなかった。

 ――ふと、桜の花が舞う。

 影が怪物の脇を通り過ぎたかと思うと、怪物の足から紅い花が咲いた。
「はぁ、残念ですわ」
 大太刀を手に、吐息するのは羅刹の女。千桜・エリシャだ。
「せっかく大将首を見つけたかと思えば、首らしい首も見当たらず。さりとてあのお嬢さんはもう倒されてしまった後」
 物憂げな表情でエリシャは墨色に染まった大太刀を構える。
「ねぇ、怪物さん。どうか私だけ、そっと教えてくださいな。あなたの御首はどの辺りですの? 教えてくれたら――上手に刈って差し上げますから」
「痛ぅ……よくも、よくも僕の足をォ!!」
 怪物は斬られていない足を使って、羅刹へと吶喊する。
 ぱっと和傘が広げられて。酸の霧を伴った怪物の視界から、鬼姫が消える。
 黒が走って、怪物の手足が断ち斬られ、紅い花と共に宙を舞った。
「その紅い花は手向けの花。散り際のあなたに贈る死出の花ですわ。気に入って頂けまして?」
 苦痛に悶えて下げられた怪物の身体が、エリシャの目には首に見えて。
 我慢に我慢を重ねて恋い焦がれ、一日千秋の思いと共に待ち焦がれ。ようやく出会えたその“首”へと、ついつい刃を伸ばしてしまう。
「――御首、頂戴致しますわ」
 断頭台のギロチンのように、大太刀の刃が振り下ろされる。
 けれど、それが振り切られるよりも早く。怪物の咆哮と共に振られた尻尾がエリシャの身体を曲げた。
「――――――ッッ!!!!」
 狂乱したかのような絶叫と共に、迎撃されたばかりのエリシャへ向けて飛び掛かろうとして。
 その怪物の動きは、鉄塊によって留められた。
「させるかってんだ、この野郎……ッ」
 差し込まれた鉄塊剣の主は、浅沼・灯人。脚を、腕を、竜のそれへと変貌させたその姿でもって、彼は怪物の一撃を受け止める。
「なんで止める! なんで邪魔する!? どいつもこいつも僕のやることなすことどうして、どうして!!」
「知るかよ馬鹿野郎。てめぇらが死ななきゃ殺されるものを守るために、俺たちはてめぇの前に立ってんだ」
 噴出される酸の霧に武器を、防具を、鱗を溶かされながらも、灯人は鉄塊剣で鍔迫り合いのように押し留める。
「友達を消されて怒ってる……んだよね。でも、あの子を殺さなきゃ一般人や僕たちが死んでいた」
 酸に侵される灯人の傷を黄昏色の狐火を浮かべて癒やすのは三岐・未夜だ。
「同情はする、けど……行動は、曲げらんないよ」
「友達のために怒れるって、良いことだよね。それって友達のことが大好きってことじゃない? 僕も世界の人が、仲間が好きだからわかるよ」
 花の嵐が舞い起きる。鈴蘭の花弁の向こう側に、セラ・ネヴィーリオがいた。
「だからそれを害そうとするなら、負けないよ。――灯人さん!」
 鈴蘭の花弁が怪物の頭上から襲いかかり、灯人が鉄塊剣をズラして怪物の身体を受け流す。
「ナイスだセラ! 特攻(ブッコミ)行くぞオラァ!!」 
 セラの援護で生まれた隙を利用して、灯人が竜化した腕を振るう。酸の霧で溶けることも厭わぬ竜爪による一撃。
「俺だってダチを失いたくなんざねぇ。――だからてめぇが死んでくれ」
 肌が剥がれ落ち、血が出て霧に地獄の炎が灯る。竜の爪が、怪物の硬く黒い肌へ深々と爪痕が残した。
「セラァッ!」
「オッケー、花びら行くよ! 太郎さん、使って!」
 灯人の呼びかけに応えたセラが、鈴蘭の嵐を再び怪物へと差し向ける。
「お前らを生かしておけない理由は灯人や未夜と、セラが言った通りだ」
 花弁の壁の向こう側から、苛立ち紛れの夢飼・太郎の声がした。
「わからなくて良いし、許さなくたって良い。……オレもお前らをわかろうなんざ思ってねぇからなぁ!!」
 放たれた影の追跡者と太郎の二方向から発砲音がした。音の出処は、彼の持つ“フラッシュアウト”。放たれた光線が、花弁の隙間から怪物に命中する。光線は怪物の肌を焼くこともなく、ただその身体へと浸透して今見えていることすらも一時だけ流し出す。



「――――――――――」
 忘我の様子で怪物は、ラグオ・ラグラは立ち尽くす。
 自分はなぜこんな場所にいるのか。何か大事なことを忘れているような気がした。
 知らない人間たちがたくさん目の前にいて、なぜ彼らがこんな場所にいて、武器を構えているのかわからなかった。
 怖くて、でもそこから何かが思い出せそうだった。
「ごめんな」
 一人の青年が、桜庭・英治が怪物の前に現れて、一言だけぽつりと詫びた。
「おまえらも望んで出て来たわけじゃなくて、元々人を襲うつもりもなかったんだよな」
「え、え……?」
 英治の言葉に、わけもわからずラグオは困惑する。だって“そんなことは記憶にない”。
「……悪い、わかんねえよな。俺のエゴで話してるだけだし。お前を殺すのだって、俺たち人間のエゴだ」
 銀色の指輪を付けた手を、ラグオへ向ける。
 その手を見て、ラグオは忘れかけていた記憶を呼び戻しそうになって――。
「――ごめんな。俺は人間だから、人間の味方にしかなれないんだ」
 英治の一言と共に、怪物を火柱が飲み込んだ。
 ユーベルコード【パイロキネシス】。サイキックエナジーによる炎は、酸の霧も、怪物の身体も、そして復讐への妄執も、全て、全て燃やし尽くして。
 白い世界は、哀しき怪物の死と共に崩壊した。



「架線じゃねえからエンジンのはずだが急ブレーキは効かねぇし非常停止装置も起動しねぇし脱輪させたら全員死ぬし……あぁぁぁぁどうする!? どうするんだよ灯人ママァ!?」
「誰がママだうるっせぇぞ!!」
 頭を抱えて叫ぶ太郎へ、灯人が一喝する。
 ラグオ・ラグラを倒して元の列車へと戻った猟兵たち。しかしこの事件はオブリビオンを排除すれば終わりというわけではなく。元々の目的はこの暴走列車を止めることだ。
「痛ぅッ……」
「とも、動かないで。まだ酸の負傷が治ってないんだから……」
 酸で焼け爛れた肌が痛みを訴えて顔をしかめる灯人。それを未夜が狐火の光を当てて治療しながらたしなめる。
「ともかく止めねえことには乗客諸共俺たちもお陀仏だ。先頭車両からホトケさんは回収済みだよな?」
「確かみんなで協力して遺体袋に入れて後部車両に輸送済み……って、灯人さん、まさか……」
 セラが目を瞬かせて灯人を見つめる。彼はニヤリと獰猛な笑みを浮かべた。
「先頭車両を切り離して横転させる。それがストッパー代わりだ。それで脱輪させれば列車は止まる」
 どうしようもないほどの力技。どうにもならないほどの無茶。
 けれど、打てる手立てはそれしか残されていなかった。
 そうと決まれば猟兵たちは協力して行動した。先頭車両の連結部を切断して解除する。
 そこから先は魔法を始めとしたユーベルコードの出番だ。二号車両以降を減速させて、一号車を横転させる。
「止まれ止まれ止まって止まってくれ止まれぇぇぇ……!!」
「ああくそ、やっぱ馬力が足りねえ! 大盤振る舞いだ竜化を増やす!!」
 横転した一号車がレールの上を滑って甲高い音を出しながらもストッパーになるが、それでも列車は止まらない。セラが鈴蘭の花びらを車輪に纏わせて少しでもブレーキになるように力を尽くし、灯人も竜化部分を増やしてなんとか列車を押し留めようとする。他の猟兵たちも、それぞれ思い思いの手段でもって車両を止めようと持てる力を尽くしていた。
 終点駅は近く、しかしそれでも列車は止まらない。
 ――ふと、音がした。それはバイクのエンジン音のようで、けれどエンジン音にしては大き過ぎた。
 爆音を吹かしながら、流星が舞い降りる。
「こちらトルメンタ・アンゲルス! 乗客に列車を止める旨を伝えて回るのに手間取ってしまってね、オブリビオン退治に参加はできなかったが列車を止める役目は任せて貰おう!」
 愛車である宇宙バイクを装甲として身に纏ったトルメンタ・アンゲルスだ。彼女は光の軌跡を描きながら、一号車に取り付く。
『Tune-Up――SteamEngine』
 ユーベルコード【SteamOn】が起動して、召喚されたスチームユニットが装着される。
 それによって得られたスチームパワーで出力を上げてブーストをかけてその身自体をブレーキとする。
「止まらないなら、俺が止める! 止ォまァれェェェェ!!!!」
 走行音とレールの擦過音とエンジン音が不協和音となって辺りに響く。
 力を尽くし、誰もが止まれと祈りを捧げる中で。
 暴走列車は――ついにその走行を止めた。



 以上が1714号事件の顛末と詳細です。
 総括します。
 UDCラグオ・ラグラとUDCゆかりちゃんは猟兵たちによって討伐されました。
 それらを召喚した邪教団は召喚した時点でUDCによる造反を受けて壊滅。残党も猟兵たちによって突入の際に排除されています。
 比較的規模の大きな事件であり、突入作戦より前の時点から一般人の犠牲者が出ている悲惨な事件でした。しかし、裏を返せばこれだけ少ない犠牲で、戦力の損失なくして事件を解決できたのは紛れもなく事件の解決に尽力した猟兵たちの功績によるものでしょう。
 1714号事件自体は世間に公表されず、隠匿したままカバーストーリーで報道されます。被害者となった一般人たちにはCクラスの記憶処理措置が施されます。また、犠牲者の遺体は事故死という形でUDC職員が適切に遺族へカバーストーリーと共に説明し、処置を行います。
 最後に、この1714号事件の解決に尽力した猟兵たちへ敬意と謝意を表して、このレポートを締め括ります。
 以上。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年02月11日


挿絵イラスト