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アースクライシス2019②〜複製の矜持

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「国連軍、ヒーロー、そしてヴィランからなる連合軍か! なかなかどうしてやるではないか!」
 ロサンゼルスの海岸線は激しい攻防が続いていた。
 洪水兵器を擁するオブリビオン軍をここで食い止めなければ、ヒーローズアースは未曽有うの災厄に襲われてしまうだろう。
「よし、なんとか持ちこたえられそうだ……!」
 だが、ロサンゼルス防衛軍の健闘をあざ笑うかのように進軍する者がいる。オリハルコンのスーツを纏い、槍を手に滑空するドクター・アトランティス――そのクローンの1体である。
「ぐああッ!!」
「皆の者、我に続け! 敵軍に風穴を開け、一気に突破するのだ!」
 クローンが高々と槍を突き上げると、オブリビオンたちが雄叫びを上げて突き進む。
「答えろ! 負けると分かっていてなお戦うのは何故だ! 功名心か? それとも愛国心とでもいうべき代物か!?」
「ぐああッ」
 その身をグロテスクな貝に侵食されながら、誰かが叫んだ。
「食い止めろ!!」
「だが、我々の力では……ッ」
 ――止めきれない。
「あのクローンを止めるのは、我々だけの力ではどうすることもできない――!!」

「急いでロサンゼルスに向かってもらえるか?」
 サク・スミノエ(花屑・f02236)は端的に告げ、猟兵たちを見渡した。

 アトランティスの洪水兵器を持つオブリビオン軍を食い止めているロサンゼルス防衛軍の前線の一角が、いままさに突き崩されようとしている。
「オブリビオンたちを率いているのは、クローン装置によって造られたドクター・アトランティスの複製だ。彼はオリハルコン製のスーツを纏い、防衛ラインを突破しようと猛攻をかけている」

 いまのところはなんとかドクター・アトランティスのクローンを入り江の岩場に押しとどめているが、もし彼の上陸を許せば、戦線は一気に崩壊してゆくだろう。
「オブリビオンの雑兵ならばいざ知らず、それらを率いる将の前では防衛軍もなすすべがない。急ぎ彼らの援護に向かい、ドクター・アトランティスのクローンを倒してくれ。――よろしく頼む」


ツヅキ
 お世話になります。ツヅキです。
 こちらは「アースクライシス2019②ロサンゼルス防衛戦」のシナリオです。

 戦場では多数のオブリビオン兵と防衛軍のヒーローやヴィランたちが乱戦しています。飛び交う砲弾やユーベルコード、雑兵の攻撃をかわしてボスであるドクター・アトランティスのクローンを倒してください。
 うまくこれらを回避するプレイングがあるとボーナスになります。

 また、このドクター・アトランティスのクローンはSPDで交戦する際、敵に戦う理由を問いかけるようです。

 プレイング受付は11/7朝頃迄の予定です。
 それまでに頂いたプレイングをまとめて執筆、判定いたします。

 それでは、どうぞよろしくお願いいたします。
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第1章 ボス戦 『ドクター・アトランティスのクローン』

POW   :    オリハルコン・アーマー
全身を【自らが発明した超金属のスーツ】で覆い、自身の【科学力】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
SPD   :    イビルインテリジェンス
対象への質問と共に、【マントの下】から【敵にはりつくフジツボ型生命体】を召喚する。満足な答えを得るまで、敵にはりつくフジツボ型生命体は対象を【吸血と超重力】で攻撃する。
WIZ   :    ヒーローズブートレグ
【海底都市アトランティスの実験室】から【召喚した、敵の力を模倣する海賊ロボ】を放ち、【敵の能力とユーベルコードで戦わせること】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ジャスパー・ドゥルジー
【イーコールの匣】使用
腹をナイフで斬り流した血を巨大な盾にして強行突破
余裕があったら防衛軍への攻撃をこいつで防いでやってもいい

ある程度接近したら【かたわれ】で空を飛んで一気に距離を詰める
多少の攻撃は【激痛耐性】でスルーさ

戦う理由だァ?
第一に俺は痛いのが好きだから!
第二に好き勝手暴れまわって金が貰える天職だから!
第三に、あんたらみてーなのがのさぼってるのが気にくわねーからだ!

満足したかフジツボどもめ、さっさと俺から離れやがれ!
魔竜の血を「燃やして」フジツボ生命体を焼き払う
アトランティス・クローンは肉薄して驟雨で攻撃だ
偽物になんざ興味はねェ、さっさと消え失せな


栗花落・澪
★Venti Alaに風魔法を宿し
翼と合わせ【空中戦、空中浮遊】で低空飛行

Venti Alaは翼を狙われた時の保険
どちらかが無事な限り飛び続ける事が出来る
走り慣れてないから、こっちの方が速いんだよね
危ない時には障害物の影に避難し確実な接近を

【激痛耐性+オーラ防御】を纏い
砲弾は【聞き耳】で方角とタイミングを聞き分け対処
UCは常に周囲を注視し発動の前触れを【見切り】回避
雑兵の妨害を受けないよう柔軟に高度変化

回避が難しい流れ弾は★爪紅の【投擲】で相殺

ボス戦は【指定UC】発動
模倣の範囲がわからないけど
この技は技能ありきだから
【催眠歌唱】で操る【破魔】の花弁による斬撃の【範囲攻撃】
動く必要も無いしね?


パウル・ブラフマン
【SPD】
UC発動―行くよ、Glanz!
前線で一番被弾している皆の下へ。
【スライディング】で敵陣との間に割り込み
展開したKrakeで【制圧射撃】を。

今の隙に負傷者を後方へ!
他の皆は大丈夫?あともう少しで勝てるよ、一緒に頑張ろっ♪
防衛軍の皆を陽気に【鼓舞】したら
弾幕を張った隙に
壁面走行や瓦礫を利用して【ジャンプ】など
【運転】テクを駆使して敵勢の死角に回り込むよ!

ボスを射程に納めたら
フジツボは【見切り】躱しつつ、必要に応じ狙撃し相殺を。
戦う理由?
オレはこの街と、この街を護ろうとする皆が大好きだからさ!!
共に戦う猟兵達や先の防衛軍の皆を思い浮かべて
…全砲門【一斉発射】ァ!

※絡み&同乗&アドリブ歓迎!


オーガスト・メルト
量産型とはいえボスはボスか。厄介だな。

【SPD】連携・アドリブ歓迎
武装化したドラゴンランス・デイズを構え、徒歩で会敵する。
頼むぞ、デイズ。水の三叉鉾と炎の竜槍の勝負だ。
『うきゅー!』
敵の攻撃を【見切り】つつ、【二回攻撃】に炎の【属性攻撃】も乗せる。
敵のUCは極力避けるが、避けきれないものはこちらのUCで相殺して防ぐ。
ナイツ、相殺は最小限でいい。あとは自力で避けるさ。
『うにゃー!』

戦う理由?ただの罪滅ぼしさ。誰も救えなかった自分へのけじめってやつだな。
だから俺は戦って、戦って、戦い抜いて、世界だって救うのさ。
俺にはそれしか出来ないからなぁ!


デュナ・ヴァーシャ
接近の際は権能を発動して神躰を強化、弾より速く走り、肉体で弾いて対応する。
それで防げぬ物があれば、放棄された戦車等を持ち上げて盾にしよう。
アトランティスのクローンには、正面から殴り合いを挑む。なかなか厄介なアーマーではあるようだが、この拳で打ち砕いてくれる。

戦いの理由は、問われずとも答えてやるとしよう。
我は神だからだ。神として、我が肉体を与えた人の子らを、その末裔を、愛しているからだ。
醜い所もあろうが、それも含めて我らの子。それを守り導くのは、神としての責務だろう。

クローンよ、貴様は創造された者として何を思う?
我らが勝つ前に、言い遺しておくが良い。我が覚えていておいてやるとしよう。


オルカ・ディウス
■心情
クローンとはいえドクター・アトランティスが出てくるとはな!
貴様に対しては、海底都市の守護神として思う所がない訳でもないのでな……このオルカディウス、容赦はせぬぞ!
そしてオリジナルのドクター・アトランティスよ……覚悟しておけ!

■戦闘
飛び交う砲弾やユーベルコードは、スーパー・ジャスティスの飛行速度や【念動力】、【第六感】で回避や防御を行う
クローンであるとはいえ、ドクター・アトランティスに対しては怒り等様々な想いがある為、それらの意思の力を凝縮して攻撃を行おう

■その他
アドリブ等は大歓迎だ


アザレス・グレイスノヴァ
アドリブ歓迎

戦争か…懐かしい…な…
此度は敗けんよ…だが…油断できる相手では無さそうだ…

▼砲弾や流れUCは氷の楯で弾き

…私は強く在らねばならぬ…
嘗ての如く…嘗てよりも…
それは我が誇りであり…
我が王の望み故に…

さぁ、やろうか…命と命の削り合いを…

私の攻撃手段はクリアフリートによる物理か凍てつく術だが…私に氷は効かんぞ?堕ちれども我が息吹を受けるが良い…
【彼方よりの吹雪】
攻撃と同時に妨害を行い、近付いてクリアフリートでロボを破壊してからアトランティスに氷の槍を撃ち込む
(属性攻撃:氷)


レナ・ヴァレンタイン
ユーベルコードで全武装複製
その中でアームドフォートとガトリング、宇宙バイクをセット運用
50台のバイクをかく乱目的で突っ込まると同時に敵の遮蔽になりそうなものは【鎧砕き】技能を乗せたアームドフォートとガトリングの一斉射撃で破壊しつつ、そこに黒剣とフォースセイバーの近接武装を遠隔操作でぶちこんでさらにかく乱
私自身は速度任せに突っ込む

お前は「負けるから無抵抗で死のう」と考えるのか?
戦う意思と勝敗はまた別の話だ
――殴るなら殴り返される覚悟をしろ、賢いだけの愚か者
理不尽に怒るのは当然の反応だろうが

全武装集結、全力攻撃
【スナイパー】【援護射撃】【乱れ撃ち】その他組み合わせられる技能すべてで圧し潰す!


月居・蒼汰
…問われなくたって答えてやる
俺達は皆、負けるなんてこれっぽっちも思ってない
守るべき人々がいて、守るべき世界がここにある
戦う理由なんて、それ以上でもそれ以下でもない

飛び交うあれこれや雑兵の攻撃なんかは
オーラ防御で凌いだり見切って躱したりしながら
翼を広げて空を飛び(空中戦・空中浮遊)、迷わず入り江の岩場を目指す
ドクター・アトランティスを射程圏内に捉えたら高速詠唱
しっかりと狙いを定め(スナイパー)、破魔の力を籠めた願い星の憧憬を全力で叩き込む

自分のユーベルコードなら、扱い方は自分がよく知ってる
海賊ロボにコピーされた所で…当たったら少し痛いけど、怖いとかは全然ない
同じように願い星を当てて、粉砕してやる


御形・菘
妾には問われずとも、答えてやるのが筋というもの!
右手を上げ、指を鳴らし、スクリーン! カモン!
はーっはっはっは! 今日も元気かのう皆の衆よ!
此度妾がボコる相手は、海より来たる自称天才科学者だ! 凄かろう!

…さあ、見ての通りよ
降り注ぐ歓喜が、歓声が! 妾を感動させ無限の力を沸き上がらせる!
そのためだ、戦う理由など、それ以外の何物でもない!

お主の呼ぶロボにも同様の能力があるそうであるな
ならば存分に見せてくれ、お主らが背負う素晴らしきモノ、アトランティス大陸とやらの応援を!
邪神たる妾が、信者という名の視聴者の喝采で凌駕してくれよう!
真正面から殴り合い、すべてまとめて左腕でブッ倒す!


闇之雲・夜太狼
ライアーヒーロー「クライウルフ」参上!
俺が来たからにはお遊びはここからだよ!

流れ弾対策は【オーラ防御】を纏わせつつ【念動力】で自身を軽く【空中浮遊】
戦場では【第六感】が囁くままに滑るように、縫うように移動
これでアトランティスも撹乱するんだ
フジツボが付いたら苦しそうに伏せつつ答えてあげる

俺は戦ってなんかないよ!
世界は俺のオモチャ箱なんだ!
そして君たちは壊れるまで遊んでもいいオモチャなのさ!

苦しそうなのは【演技】でした(てへぺろ)
ライアーヒーローだもん
重力は無理でも吸血対策は肌に偽装したインナーで十分だ
動けない俺を見て警戒を解いたら選択UC使用
死角に飛んだらガオウ丸の雷【属性攻撃】の弾丸で攻撃だ!


シスカ・ブラックウィドー
ロボの背中に乗って砲弾とユーベルコードの嵐をかいくぐってボスの所まで進むよ。なるべく建物の屋上を通るようにしよう。高い所の方が安全そうだしね。
ボスの所についたらぬいぐるみ達の集中攻撃を浴びせる。毒ガス、ガトリング砲、ナイフ、色々あるよ★
ボク自身はロボから降りずに距離を保って敵の攻撃を受けないようにしよう。危ない猟兵がいたら拾って安全圏まで一緒に避難するね。


ユリウス・リウィウス
起きろ、亡霊騎士団。俺に向かって飛んでくる流れ弾を、その身を張って防ぎ続けろ。

クローンか。難しいことはよく分からんが、あれなんだろ、果樹の挿し木。
所詮はデッドコピーだ。この街を落としたければ、本人が来いと伝えろ。
いや、すまん。お前はここで倒れるんだから、伝言なんか出来るわけがないよなぁ、おい。

俺の戦う理由を知りたいと?
単純なことだ。既に滅びた連中が勝手に湧いて出るな。俺は屍人使いだからな。勝手に生死の境を超えてくるような連中は放っておけないのさ。

さあ、問答は終わりだ、ドクター。
悪意の怨霊を解き放ち、敵が怯んだ隙に「生命力吸収」「精神攻撃」「鎧無視攻撃」「鎧砕き」を乗せた双剣の虚空斬で始末する。


ユーフィ・バウム
※アドリブ・連携歓迎

まずはクローン相手ですが、油断なく倒します

飛び交う砲弾やユーベルコードを
培った【戦闘知識】、天性の【野生の勘】をフル稼働
ビルの死角も活用しつつ
【見切り】、躱し避けつつ【ダッシュ】で突破

どうしても避けがたいミサイル等は風の【属性攻撃】を
付与した武器を振るい弾き飛ばす

アトランティスまでたどり着いたら
武器の【属性攻撃】を雷に変化
他の仲間と連携し、【力溜め】つつの【鎧砕き】で攻撃
私は【怪力】、その鎧、砕かせてもらいます!

戦っている間も砲弾は飛び交うかと思いますので
絶えず動き、【衝撃波】で逐次撃墜

敵の消耗が分かれば、《トランスクラッシュ》!
オーラを纏うヒップアタックで、ぺっちゃんこ!


メンカル・プルモーサ
……うむ、これは拙いね……Dr.アトランティスの元へ急いで向かわないと…
…改造装甲車【エンバール】に乗って突撃……運転技術で砲弾やUCをかいくぐってDrアトランティスまで近づくよ…もし他に難儀してる猟兵居たら拾っていくね…

…Drアトランティスまで辿り着いたら…ひとまず轢き逃げアタック…
…当たっても外れても外に飛び出して戦うね…

…模倣海賊版ロボには出て来た瞬間に…機械だし…【連鎖する戒めの雷】で先手を取って…動きを封じて…
【空より降りたる静謐の魔剣】でトドメ……
…Drアトランティスにも同じように静謐の魔剣で軌道を変えて攻撃…
…それに気を取られているうちに【縋り弾ける幽か影】で足下から爆破するよ…


祓戸・多喜
世界洪水とか洒落にならないじゃん!
絶対食い止めないと…!

迷彩で砂浜風に偽装しつつ進んでいく。
周囲に戦車とか頑丈で盾にできるものがあれば念動力か手で持ち盾にし攻撃の直撃を回避。
敵配下に遠距離大火力の砲、UC使ってるヤツいたら弓で狙撃!
もしアタシの周りに敵集まってきたらUCで纏めて撃ち抜き強引に突破!

ドクター見つけたら十分接近し逃げ場ない状態でUC発動。
可能なら念動力で周囲の猟兵に被害行かないよう矢の軌道を調整。
戦う理由?それはこの世界が故郷だから!
友達とか大切なものとか人もいるんだから戦うにきまってるでしょ?
少なくともアタシはそう、だから絶対くしゃくしゃにしてやるんだから!

※連携絡み等お任せ🐘


アルバ・アルフライラ
何者が相手であろうと構わん
私に牙を向けるならば殺すだけの事よ

常に死角を取られぬよう警戒
攻撃はその軌跡を見切り、回避を試みる
眼前に展開するは予め魔力を込めた宝石達
時に石を砕き、込めた魔力を放出
オーラの守りを展開、弾丸の威力を相殺
そして高速詠唱にて【妖精の戯れ】を発動
複製品のみならず邪魔な雑兵も、範囲攻撃で等しく討ち滅ぼそう
蹂躙によって恐怖を与え、此方への攻撃が減るならば僥倖
やれ、玉体に傷でも入ったら如何してくれる

…っは、よもや貴様等に戦う理由を問われる日が来ようとは
私は寛大故、幾らでも教えてやろう
――オブリビオンと云う畜生征伐の為よ
これ以上に明快な回答はあるまい?
故に、疾く骸の海へと墜ちるが良い



●第1章 『汝、自らの胸に問いかけよ!』
「はァ……こンな切羽詰まった状況でも俺ァよ、こうやって、好きでジブンの体を痛めつけちまうんだよなー……ァ。く、ふはッ……!」
 ずぶりと腹にナイフの先が埋もれ行くのを見つめるジャスパー・ドゥルジー(Ephemera・f20695)の表情が恍惚に蕩けてゆく。
 やがて、真一文字にナイフを滑らせて刻んだ傷跡から膨大な血量が噴き出すのに合わせて狂おしき叫びがその唇から迸った。
「いくぜ、イーコールの匣ォ! 俺の沸騰しそうな程に熱ィ血潮でできた盾はてめーらの攻撃程度じゃびくともしねーんだよ!!」
 地獄の溶岩の如き血色の楯――巨大な壁といった方が近い――が勢いに乗って突進するオブリビオンたちをせき止め、突破されかけていた戦線の崩壊を食い止める。
「ほう、雑兵の分際でこの我を止めるつもりか?」
 妖艶な唇に微笑を刷いたデュナ・ヴァーシャ(極躰の女神・f16786)は、自らに向かってくる数多のオブリビオンと弾幕の前に悠然とその身を晒した。当然その体は蜂の巣に――ならない。
「き、効かぬのか……!? ぶふぉッ」
 驚愕に喘ぐオブリビオンの顔面に手近にあった戦車を炸裂させ、デュナは細い指先で髪をかき上げた。
「いいだろう。その思い上がりが幻想であるとその身をもって思い知るがよい」
「なッ――」
 デュナが地を蹴った瞬間、その姿が視界から消えた。
「は、速過ぎる――!」
 当たるわけがない。
 弾丸が当たるよりも――否、“引き金を引くよりも”速く駆ける者をどうやったら射抜くことができるというのだろうか?
「す、すごい……あれが猟兵の力なのか?」
 血の楯に守られ、人外の速さを見せつけられた防衛軍たちの中からうわ言のような賞賛がこぼれた。
「なにやってんだ、押されてるぞ!」
 裏腹にオブリビオン軍からは悲鳴が迸る。
「退くな、進め――え?」
 鼓舞する声は、眼前に迫った装甲車の車輪に敢え無く巻き込まれて潰えた。
「ん……何か轢いたような……? 気のせいか……」
 メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は電脳ゴーグルのスクリーンに戦場地図を呼び出し、現在位置と標的の座標を特定。
「……いた。あれが……Dr.アトランティスのクローン……」
 金色のオリハルコンを纏い、三叉槍を手にしたドクター・アトランティスは猟兵たちの加勢に気づいて高々と槍を突き上げた。
「怯むな! 攻撃を集中させよ!」
「させるかー!」
 猛々しい弦音が祓戸・多喜(白象の射手・f21878)の手元で弾け、彗星のような白矢が戦場を迸る。
「ぐあッ!!」
 敵の砲手が真っ先に倒れ、反撃は不発。
「ちィッ! あの象ねーちゃん、こっちの射手を狙ってやがる。やられる前にやるんだ!」
 だが、降り注ぐ矢雨を多喜は念動力でひっくり返した戦車の屋根で防いだ。爆発する寸前に投げ飛ばし、周辺にいたオブリビオンを巻き込んで火柱を上げる。
「ちょっとぉ、可憐なJKになんてことすんのよ」
「か、かれん……?」
 愕然とするオブリビオンたちを纏めて撃ち抜く光矢――多喜は残身をとりつつ、道が拓けたことを他の猟兵に伝えた。
「いって!」

 強行突破組が戦線に穿った一点を目指し、栗花落・澪(泡沫の花・f03165)、オルカ・ディウス(神海戦姫・f16905)、月居・蒼汰(泡沫メランコリー・f16730)の三名がオブリビオン軍の上空を飛翔する。
「撃ち落とせ――!」
「――残念、そっちは囮だよ!」
 背の翼を狙われた澪のVenti Ala――両脚に履いた靴から生えた翼が力強く羽ばたいた。仰向けに躱した目の前を敵の砲弾がすり抜けていく。
「なんて、速いッ……!」
「そりゃあ、慣れてるからね。それに耳もいいんだよ」
 耳を澄ませば、実弾よりも速くその存在を知らしめる発砲音。急降下した澪はぎょっとして後ずさる雑兵たちをしり目に、敵味方のひしめき合う戦場を器用に飛び抜けた。
「あれがクローンのいる入り江の岩場か」
 頬を掠める流れ弾に蒼汰は目をすがめる。隣を翔ぶオルカの横顔には堪えきれぬ怒りが滲みだしていた。
「ああ……よもや、クローンとはいえドクター・アトランティスが出張ってくるとはな」
「何か因縁でも?」
「古い昔話だ。海の底に失われた都に纏わる、な……」
 オルカが郷愁に浸るのは、しかし僅か1秒にも満たなかった。
「――近いぞ。ドクター・アトランティスと同じ気配だ!」
 それはオブリビオン軍の攻撃が密度を増したことからも確かと思われた。オルカは自らの直観を信じて突き進む。身に纏う長尺の羽衣が音を立て、空を泳ぐ魚の領巾のようにはためいた。
「とらえた……!」
 ドクター・アトランティスのひと際目立つオリハルコンのスーツを確認すると同時に蒼汰の唇から紡がれる詠唱はあまりにも速い――!
「むッ!」
 頭上から降り注いだ星光に灼かれ、クローンは肩越しに猟兵たちを振り仰いだ。
「させるかよ!」
「迎撃がくるぞ、いけるかデイズ?」
『うきゅー!』
 オーガストの肩に乗っていた白くて丸い塊――白竜ことデイズ――の姿を変えた竜槍をオーガスト・メルト(竜喰らいの末裔・f03147)が一振りするごとに逆巻く炎が敵の技を打ち消した。
「量産型とはいえ、あの統率力は厄介だな。――おっと!」
「なにいッ!?」
 きわどい所を掠めた魔弾を薙ぎ払ったのは、鏡写しの如き同種の魔弾。何が起こったのか把握できていないオブリビオンを炎に撒き、“仕掛け”の種であるナイツに微笑みかける。
「いまからそんなにはりきってたら持たないぞ? 大丈夫だ、あとは自力で避けられる」
『うにゃー!』
「いい返事だ! それに、この場には仲間たちもいるからな」
 気合を入れて振るった炎渦を目印に、背に乗った狼のぬいぐるみ――ロボから身を乗り出したシスカ・ブラックウィドー(魔貌の人形遣い・f13611)が「ハァーイ★」とごきげんで手を振った。
「な、なんだあれは?」
「ふふふ、全然効かないよ!」
 地上から放たれる攻撃はロボの巨体に阻まれてその背に乗るシスカまでは届かない。頃合いを見てシスカが投入したのはいずれも武装したぬいぐるみたち。
「なんだ、こんなもの――うわあッ!!」
 シャチのぬいぐるみを振り払おうとした矢先、その背にくくりつけられた拳銃から放たれた弾丸がオブリビオンの急所を撃ち抜いた。
「こちらにもいますよ」
 鴎のぬいぐるみから落下する爆弾から逃げ惑うオブリビオンたちの合間をユーフィ・バウム(セイヴァー・f14574)は危なげなく走り抜ける
「勇み足はいいけど、足元が隙だらけです」
「うわあッ!!」
 股下を抜かれて地面に転がる雑兵の悲鳴を背に、ユーフィは走る脚を更に早めた。
「早く捕まえろ! このままじゃ、ドクター・アトランティスの元へいかせちまう!」
「わかってるよ!」
 だが、ユーフィは放射線上に放たれた砲弾を跳躍して躱した後、身軽に前転して着地。その瞬間を狙った弾丸は見えない風に矛先を変えられ、周囲で戦っていた他のオブリビオンの背にめり込んだ。
「こいつら、他とはまるで違う……!?」
「――ふ、ようやく気がついたようだな? この私に牙を向けることの意味を」
 戦場の一角で眩き宝玉の閃光が弾け、どこか透徹した響きの声音が高らかに宣戦布告する。
「空よ、地よ、火よ、水よ。四元素の申し子たる愛しき妖精たちよ。我が御名において現世へと目醒めるがよい――!」
 アルバ・アルフライラ(双星の魔術師・f00123)の指先で砕ける宝玉を起点にして恐ろしいまでの魔力量に準じた魔法が爆発的なまでの威力で吹き荒れた。

「うあああ、ああッ!」
「お、お助け――!!」
 雑兵たちが見るも無残に滅してゆく中、ドクター・アトランティスのクローンだけが決然と前を見据えていた。
「前へ! 我らに退くなどという選択肢は存在せぬのだ! 進めぇー!!」
 倒れた同胞たちの亡骸を踏み越え、オブリビオン軍の兵士が波状となって押し寄せる。既に疲弊していた防衛軍にも焦燥の色が見えた。
「やつら、無尽蔵なのか……!? くそ、命と引き換えにしてでもここは通さん――……ッ」
 決死の形相でバリアを構えた彼らだったが、いつまで経っても衝撃はやってこない。
「……?」
 顔を上げた先に見たのは、凶悪なまでの火力を擁する白銀の単車に跨にウインクするパウル・ブラフマン(Devilfish・f04694)と虚ろなる亡霊たちを従えたユリウス・リウィウス(剣の墓標・f00045)の倦みきった背中、そして凍えるほどの冷気を放つ氷楯を構えたアザレス・グレイスノヴァ(竜王の残滓・f13460)の姿だった。
「あ、あ、ああッ……」
 火を噴いたばかりの砲台を取り付けた触手が蠢き、流れ弾に貫かれた亡霊の傷跡が引き攣れるように塞がっていくのを前にして、生き残った雑兵たちの口から呻き声が漏れた。
「た……助かったのか?」
「ああ、あの亡霊たちが氷の楯と一緒に壁となって……それに、あの砲台から斉射された弾幕が敵を一掃して――」
 呆然とつぶやく彼等に、パウルはちちちと優しく舌を鳴らして我に返らせる。
「今の隙に負傷者を後方へ! 他の皆は大丈夫?」
「は、はい!」
「あともう少しで勝てるよ、一緒に頑張ろっ♪」
「――はいッ!!」
 再びエンジンを吹かせ、パウルは親指で後部座席を示した。
「よかったら乗せてくよ? もちろんお代はタダで♪」
「これは……初めて乗るな……噂に聞くバイクとかいうやつか……? おおっ――」
 シートに横座りで腰かけたアザレスの設えた氷楯が砂浜を疾走するバイクを庇い、流れ弾を弾くごとに散る氷の結晶が大気中へと涼やかに舞った。
「ほらほらぁ、ライア―ヒーロー『クライウルフ』のお通りだよっ!」
 闇之雲・夜太狼(クライウルフ・f07230)は左右から交錯する流れ弾を手の甲に張り巡らせたオーラで薙ぎ払い、そのまま大きく背を反らして頭上を迸る魔法の余波を躱しきる。僅かに浮遊させた足元で滑るように移動する様子はスケートで遊ぶ無邪気な少年のようだ。
「そっち、いったよ!」
「これはまた、流れ弾にしては大物だな」
 低く身を屈め、速度任せに突っ走るレナ・ヴァレンタイン(ブラッドワンダラー・f00996)に追従して現れたのは完全武装された50台もの無人バイクだ。そのいずれもが複製したレナの武装を搭載しており、操られているかのように加速したかと思えば吹き飛んできた大型の砲台を爆砕。
「うわあッ、なんだこの特攻バイクは!?」
「くそ、まとめてぶっ壊してや――ひばッ!!」
 ただでさえ混乱しているところへ黒剣とフォースセイバーまで降ってきたら、雑兵たちにはもう為す術などない。
 その時、指を打ち鳴らす軽快な音と共に戦場の至る所へと立体型スクリーンが出現した。
「な、なんだ?」
 敵と味方の別なく困惑する兵士たちの耳に聞こえたのは御形・菘(邪神様のお通りだ・f12350)によるスピーカー越しの嗤い声だった。

「はーっはっはっは! 今日も元気かのう皆の衆よ! 此度妾がボコる相手は、海より来たる自称天才科学者だ! 凄かろう!」
 スクリーンに投影された菘本人は戦場の最前線にいて禍々しき赫翼を広げ、鱗に覆われた尾は猛々しくとぐろを巻いている。
「す……すげぇ……あれも猟兵なのか? 敵じゃなく?」
「や、やっちまえー! あいつを倒してくれ、頼む!!」
 動揺は次第に喝采へと変わり、遂には戦場全体へと波及していった。
「……さあ、見ての通りよ。降り注ぐ歓喜が、歓声が! 妾を感動させ無限の力を沸き上がらせる! 戦う理由など、それ以外の何物でもない!」
 開幕から熱を帯びた菘の演説はクローンの挑戦心を呼び起こしたようだ。彼は周りにいた雑兵を下がらせて進み出る。
「なるほど! 汝の動機は理解した。素晴らしいパフォーマンスだ! ならば、我も全力で答えねば失礼に値する!」
「さあ、存分に見せてくれ。お主らが背負う素晴らしきモノ、アトランティス大陸とやらの応援を!」
 菘は真正面から左腕を振り上げ、握り締めた拳で召喚された機械仕掛けの人形を力任せに殴る。オブリビオン達の声が高まるほど殺傷能力を上げるそれ――負けじと声を張り上げる防衛軍のヒーロー、そしてヴィラン――菘の唇に笑みが生まれ、激しく叩き付けた拳がドクター・アトランティスの召喚したロボを粉砕した。
「むっ!?」
「こちらにもいるぞ」
 背後で含み笑う気配にドクター・アトランティスが振り返るよりもデュナの裏拳がそのこめかみへと叩き込まれる方が早い。
「ぐはッ……」
「戦いの理由? そのようなもの、問われるまでもない。答えは唯一つ、我は神だからだ」
 デュナは体勢を崩したクローンの脇腹を蹴り上げ、首を掴んで一回転させながら地面へと叩き付けた。
「神として、我が肉体を与えた人の子らを、その末裔を、愛しているからだ。過ちを犯すこともあるだろう。醜い所もあるだろう。だが、それも含めて我らの子なのだ」
 容赦のない肉弾戦を繰り広げながも、デュナの口元には慈愛の微笑みが浮かんでいる。そして、けぶるような睫毛に縁どられた瞳に被造物である存在のクローンを映して問いかけた。
「貴様は創造された者として何を思う? 我らが勝つ前に、言い遺しておくが良い」
「創造……された者……」
 それは裏返せば“お前は神ではない”と突き付けられたも同然だった。
「我は――……ッ!?」
 横合いから突き出された杖先をクローンはからくも地面を転がり回避する。オルカは身の裡から湧きたつような怒りに任せて杖を振るい、彼を波打ち際まで後退させた。
「どうした? クローン風情が、真なる神々を前にして怖じけづいたか?」
「言ってくれる!」
 オリハルコンに包まれたクローンと黄金のオーラを纏いしオルカの2人は互いにぶつかり合いながら飛翔し、激しく撃ち合った。
「はぁぁ――」
 その間、ディアボロス――創生の大剣に雷を溜めていたユーフィはオルカがクローンを吹き飛ばした、その瞬間を狙って躍り出る。
「その鎧、砕かせてもらいます!」
「なんだと!」
 身に纏ったオリハルコンのスーツが砕け散るのを、クローンは信じがたいといった表情で見つめた。
「ドクター・アトランティス! 大丈夫ですか!?」
「はっ!」
 配下のオブリビオンが発した援護射撃をユーフィは事前に察知して薙ぎ払う。
「まったく、横槍を入れてくるとは無粋よな」
 埃で汚れた肩を払い、アルバが歩み寄るだけで雑兵たちは一歩、また一歩と後ずさった。あいつの攻撃はやばい――蹂躙された時の恐怖を体が覚えているのだ。
「面白い! 汝らの戦う理由は優越によるものか? 弱き者を蹂躙する愉悦か!」
「……っは」
 アルバはおかしげに喉を鳴らし、胸を反らせる。
「――オブリビオンと云う畜生征伐の為よ。それ以外に何がある?」
 眼前に掲げる指の間には、魔力を込めた宝石が数個。吐息一つで砕かれた内からこの世を構成する元素の源が堰を切ってあふれ出す。
「貴様等に語ることなど他にあるまい? 故に、疾く骸の海へと墜ちるが良い」
「く――!」
 あまりにも膨大な魔法の威力は辺りの海水を巻き上げ、風と融合して逆巻く水流を生み出した。
「うわあああッ!」
 巻き込まれて飛んでくる雑兵を払いのけ、オーガストは両手に構えた竜槍をぴたりとクローンに差し向ける。
「罪滅ぼし……って言って、クローンのお前にわかるかな。誰も救えなかった自分へのけじめってやつさ」
 だから、オーガストは戦い続ける。
 いつ終わるとも分からない贖罪の日々を戦って、戦って、戦い抜いて。そうして振り返れば世界が昨日より少しは救われている。
「そんな明日を希い、俺はこうして戦ってるんだ。だって、俺にはそれしか出来ないからなぁ!」
 クローンの構える水の三叉鉾を、オーガストの炎の竜槍が力ずくで押し切った。
「我の鉾が押し負けるだと!?」
「――驚くのはまだ早いんじゃない?」
 予想外の方角から放たれた声にクローンはぎくりと動きを止める。
 背後――周囲に聳える岩石を足場にして、波打つ海水すらお構いなしに死角へと潜り込ませた愛車に跨るパウルは後輪だけで立ち上がり、身震いして水滴を払う獣のように旋回した。
 振るい落とされた貝が、海底へと落ちて――沈む。
「誰でも、大好きなものを守るためなら信じられない力が出てくるもんさ。オレにとってはこの街と、この街を護ろうとする皆。わからないなら、それこそアンタが“クローン”であることの証明さ!!」
 鼓膜をつんざくほどの轟音がパウルの背負った砲門から一斉に迸った。
「……私は強く在らねばならぬ……」
 響き渡る号砲のなか、アザレスは両目を閉じて己の裡からなる叡知に耳を傾けようと集中を始める。
(「嘗ての如く……嘗てよりも……それは我が誇りであり……我が王の望み故に……」)
 弾幕の後ろに広がる虚空より出ずるブリザードを鏡写しのように照り返す機械たちへと、アザレスは無駄だと言わんばかりの視線を差し向けた。
「無駄なことを……」
 シートから降り、手にした巨大なパルチザンを無造作に振るっただけで機械たちは無力化されてゆく。
 返す刃が、弾幕に紛れる形でクローンの喉元に撃ち込まれた。
「ぐあああああッ――!!」
 甘美な悲鳴にジャスパーが口笛を吹く。
「戦う理由だァ? それだよ、それ! あんたは痛いのが嫌いなのかよ? そンじゃあ、趣味が合わねーな」
 おどけて笑い、手の中で多機能ナイフのような武器を弄ぶ。
「第一に俺は痛いのが好きだから! 第二に好き勝手暴れまわって金が貰える天職だから!」
 ジャスパーは器用にカッターだけを選び出すと、根本まで突き刺したそれを両手で真一文字に突っ切った。
「――第三に、あんたらみてーなのがのさぼってるのが気にくわねーからだ!」
 血をまき散らして体勢を崩すクローンの目に映ったのは、その傷口から燃え上がる炎に焼かれた貝が陽炎のように滅されてゆく様だった。
「信じられん! よもや、我が押されているのは……」
 海水に膝をつき、呼吸を整えるクローンを見下ろしてレナが尋ねる。
「さて、この状況なら理解できるはずだ。お前は『負けるから無抵抗で死のう』と考えるのか?」
「ああ、確かに愚問であった。無抵抗のまま死んでいけるものがいるとすれば、それはもはや戦士を名乗る刺客などあるまい!」
「最初からそう言えばいいんだよ、賢いだけの愚か者が。殴るなら殴り返される覚悟をしてから言うんだな」
 レナが搭載した全武装の砲門を解除。
 ありとあらゆる武器弾薬の諸々が一斉に発砲され、背後にあった海が水平線まで一直線に割れてしまうほどだった。
「うわー、派手にやってるなあ」
 攻撃の届かない上空から戦況を見守るシスカは、深い傷を負って動けない猟兵がいないか目を凝らして探した。
「――ん! どうやら、皆元気みたいだね。よーし、じゃんじゃん攻撃を続けるぞ!」
 万歳、と両手を広げて残っていたぬいぐるみの全てを投下する。
「いまです!」
 ユーフィのトランスクラッシュによって地面に押し付けられた状態のクローンへと、多喜は周囲を巻き込まないように威力を調整した光矢を一直線に放った。
「戦う理由なんて考えるまでもないってば! それはこの世界が故郷だから――友達とか大切なものとか人もいるんだから戦うにきまってるでしょ?」
 多喜の発する光矢の輝きは彼女自身をも包み込むように薄っすらと広がり、血を吸うために忍び寄る醜い貝達をその身の近くにすら寄せ付けない。
「うわわッ! こっち来るなよ!」
 地面を転がるようにして貝を振り払おうと足掻いた夜太狼は、諦めたかのように顔を伏せて体を震わせた。
「俺は戦ってなんかないよ! 世界は俺のオモチャ箱なんだ! そして君たちは壊れるまで遊んでもいいオモチャなのさ! ――なーんちゃって」
 よく見れば、露出した肌に見えていたのは同色のインナーで、ライア―ヒーローに名に恥じぬ偽りの演技で相手を油断させた夜太狼は瞬時に跳ね起きてCODE:PRを発動。
「どこへいった!」
「ここだよ、ここ」
 転移した岩場の陰からすかさず放った雷弾がクローンの脇腹に穴を開け、全身に痺れるような痛みを与えた。たまらず、彼は手近な岩に手をついて体を支えながら噛み殺しきれない呻き声をヘルメット越しに漏らした。

「クローンではここまでなのか……!」
 ぼろぼろになったマントをむしり取るとそれを砂浜に放り投げ、悔しげにこぼした言葉を拾い上げた者がいる。
「難しいことはよく分からんが、あれなんだろ、果樹の挿し木」
 足元を波にさらわれながら、ユリウスはどこを見ているのか分からない眼差しでつぶやいた。
「所詮はデッドコピーだ。この街を落としたければ、本人が来いと伝えろ――と、言っても無駄か。いや、すまん。お前はここで倒れるんだから、伝言なんか出来るわけがないよなぁ、おい」
 ユリウスの言葉はまるで独り言のように淡々としている。
 屍使いの彼は誰よりも理解していた。
 戦う理由はむしろ、問いかける彼等の側にこそ在るという事実を。既に滅びた連中が勝手に湧いて出てくる。
 これこそが――争いの原因。
「さあ、問答は終わりだ、ドクター」
 低い囁きと共に解き放たれた怨霊の、身の毛もよだつ呻き声が終わりの幕開けの合図だった。
「ぐはッ……」
 その胸に十字の傷跡を刻まれ、生気を吸われ、よろめき膝をつくクローンを装甲車から飛び降りたメンカルと空から舞い降りた澪と蒼汰が遠巻きに取り囲む。
「ふ、ふふ……! クローンにはクローンの矜持がある……何を思うか、と問うたな猟兵よ! その答えがこれだ。我は所詮クローン装置から生み出された使い捨ての存在に過ぎん。ならば最後までその役目を全うする!」
 クローンにはもう己の力で戦えるほどの力は残されていない。虎の子の機械仕掛けを並べ、相手が攻撃を仕掛けてくるのを待ち構えている――……先手を取ったのはメンカルの雷鎖である。
「……暴れても無駄……」
 ずらりと空に輪を描いた魔剣がメンカルの命令によってクローンの配置した機械仕掛けを1体ずつ、その急所を貫いて確実に動きを止めていく。
「なんの!」
 そのうちの数本が自分を狙っていることに気づいたクローンは先読みして回避行動に映るが、メンカルは更に先を読んでいた。
「……甘い……」
「まさか!?」
 頭上の剣に気を取られていたクローンは、実際に足元が爆破されてからようやく“その”存在に気が付いた。
「自爆装置付きのガジェット……!!」
 同時に、前後から澪と蒼汰が技を紡いだ。
 澪の歌声に導かれ、咲き誇る花弁の刃を模した鋼の迸りごと飲み込むようにして楽園へと誘う一面の花畑。
「ちッ――」
 頬を掠めるよく見知った痛みに顔をしかめつつ、蒼汰は僅かの怯みすら見せることなく詠唱を続けた。
「そうやって相手の真似をしたって、オリジナルに勝てるわけがないだろ……ッ!」
 守るべき人々、守るべき世界のために蒼汰は戦うのだ。戦う理由などそれ以上でもそれ以下でもなく、単純であるが故にそれは誰にも覆せはしない。
「……問われなくたって答えてやる。俺達は皆、負けるなんてこれっぽっちも思ってない。お前が負けるとすればそれは、俺達を侮ったその油断に他ならない!」
 星と星、花と花がぶつかり合い、偽物が砕ける。
「この技は技能ありきなの。付け焼刃でどうにかできると思った?」
 澪は悪戯っぽく笑い、可憐な歌声を戦場に響かせた。
「うぉ、おおおぉぉおおお……――!!!」
 眩い流星の煌めきに打ちのめされ、美しき花弁の刃に切り刻まれ、ドクター・アトランティスのクローンは千々となって波間に呑まれていった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年11月08日


挿絵イラスト