●骸
それは何も語らず、ただ静かに歩みを進める。
道行く骸を踏みしめ、行く手を遮る獣を蹴散らし。
――なんのために、どうしてなのか。
それは何も語らない――否、語れない。
それの顔は既に白く痩せこけ――眼窩からは艶やかな薔薇が咲く。
それの胸は既に透けて――骨の合間より棘を持つ深緑の蔦を這わす。
それの手足は儚く千切れ――屈強な茨の束が肉の代わりに繋ぎ止める。
それの足跡は薔薇が咲く。血を啜り、肉を苗床に、華やかに彩る死の軌跡。
いざ、狂えや踊れ――。
●獣狩り
「昔、こんな話を聴いたことがある――『村がひとつ滅んだ。原因となったのは小さな薔薇の花であった』――」
猟兵を前にして、黒金・鈊(crepuscolo・f19001)の第一声はそれであった。
「『小さな薔薇は庭師を喰らい、その身体に寄生すると、以後爆発的に生長し――人々を喰らい、死を拡大していった――それがおのれの役割であるというように』……というような話だ。よくある怪談のような話だ」
一言切って、彼は猟兵たちの様子を見る。
今回はそれとよく似たようなものだ、と。
「薔薇に寄生された骸が――オブリビオンを殺そうと、獣に挑む光景を見た。それそのものは勝手にやってろと言いたいところだが、これは強力なオブリビオンを片付ける好機とも言える」
人の悪い表情で鈊は笑った。
「迷宮のような廃墟がある。そこには周囲を縄張とする獣がおり――そして、これを守るために多くの獣が蔓延っている」
この廃墟を攻略するためには、まず眼前に存在する広大な迷路と、隙間から夥しく現れる鼠のオブリビオンを相手にせねばならず――安易に突破できぬ。
だが、先に同族殺しを向かわせれば、幾分楽になる。むしろそうせねば、直ぐに引き返すことになるだろう――それほどに、数が多いのだ。
「そして、無事突破を為せたならば、強大な獣に挑むわけだ……同族殺しと共に」
その後のことは、はて。
狂気に駆られた同族殺しが猟兵に牙を剥くことも。猟兵がオブリビオンを廃することも――至極当然な決着であろう。
「最初から巻き込んで敵対するのは薦めかねる。奴は外見に反して――凄まじい執念をもって、オブリビオンを狩ろうとしている。斃すならば獣と対峙した後、疲弊したところを狙うのが妥当だろう」
――何故、その薔薇の骸がオブリビオンを倒そうとするのか、その理由はわからない。
だが、それは骸であるゆえに、何も語らぬ。何も語れぬ。
それでもその戦いぶりから、何かを見出せる者もいるかもしれん――と。
「いずれにせよ、全て滅して貰えば、如何なる段取りに文句は無い。宜しく頼む」
彼は金眼を細めて告げ、猟兵達に左腕を差し向けたのだった。
黒塚婁
どうも、黒塚です。
今回はシンプルな純戦だと思っていただければ。
●1章:集団戦『悪食ネズミ』
広大な迷路を踏破しつつ、隙間から出てくるネズミを斃すという展開になります。
『共棲者』が辿ったルートには、薔薇の道標ができていますので、探索を無視できます。
逆に何らかの狙いがあって、『共棲者』と同時刻に動こうとするならば、探索の工夫も必要となります。
この時点で『共棲者』に勝負を挑んだ場合、苦戦は必至となり、同時にこの地帯の突破は不可という状況に陥るでしょう。
●2章:ボス戦『???』
●3章:ボス戦『共棲者』
●プレイング募集に関して
各章導入公開後、プレイングを受付します。
期間についてはマスターページ及びツイッターでご案内します。
受付前に受け取ったプレイングに関しては、内容如何を問わず、採用しませんのでご注意ください。
また全員採用はお約束できません。
ご了承の上、ご参加くださいますよう、お願い申し上げます。
それでは、皆様の活躍を楽しみにしております。
第1章 集団戦
『悪食ネズミ』
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POW : 白骨を作る黒い波
【餌に対して集団集中攻撃】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
SPD : 鼠算式
【仲間を呼ぶ鳴き声】を聞いて共感した対象全ての戦闘力を増強する。
WIZ : 感染させる牙
【仲間を犠牲にしてでも噛み付く牙】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
イラスト:井渡
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●腐敗迷宮
その廃墟は曾て街一つ程巨大な城であったという。そして、ひどく残虐な領主が統べていた。
城の居住区に至るまでの迷宮は、領主とその下僕が、人間を放って狩りを行うためのもの。
現在、迷宮が備えていた罠は朽ちて、胡乱な穴を残すだけとなっているが――今も尚消えぬ骸の残骸や、凄まじい悪臭、不可思議な染みを残した触れるもおぞましいほど汚れた壁で構成されていた。
壁を破壊して進むことも可能だが、この広大な迷宮は複数階層に渡った構造をしており、素直に一点の方向を目指せば辿り着くとはいかないようだ。
そして、はっきりとした敵意――。
光源も存在しない闇の中に、あちらこちらに光る目が瞬く。
壁の向こうを素早く走り回る音がする。
いっそ眼前で蠢く影そのものが、それらの塊であると考えた方がよいだろう。
迷宮に彷徨う人々を嘲笑うように、彼らは抜け穴を通り自由自在に駆け回る。群れを成し、新鮮な肉を求めて襲い掛かってくる。
或いは襲撃者の敵意に反応し、主を防衛せんと立ち塞がるか。
猟兵であれば――生理的嫌悪は兎角――怖れは無かろうが、それらはオブリビオン。
本物の鼠のようにあしらえる相手ではないことは、念頭においておくべきだろう。
薔薇の芳香を漂わせた骸が、ゆらり、ふらりと、迷宮を進んでいった――残された茨の断片が、猟兵たちを導くように続いていた。
――・――・――・――・――・――・――・――・――
【プレイング募集期間】
10月13日(日)~15日(火)24:00まで
――・――・――・――・――・――・――・――・――
ジャスパー・ドゥルジー
廃墟を満たす殺意の多さに知れず胸は高鳴る
期待できるんじゃねえか、なァ相棒
自らの胎を斬り肉を抉り
召喚するのは血に宿る炎の魔竜
背に騎乗して行動を共に
遠距離戦は相棒の吐く炎と俺のナイフ投擲
近づいてきたら爪と刃がお相手さ
俺たちのコンビネーションをとくとご覧あれ
負傷は厭わず
流れる血を燃やして雑な止血をしながら突き進む
相棒への避けきれない攻撃は庇う
この止血方法は自分にしか使えねえし、大体――
レディの肌に傷をつけるわけにゃいかねェもんな
アリスとオウガで補い合ってる俺たちみたいなのが居るんだ
同族殺しくらい居てもおかしくねェよな
相棒の喉を愛おしそうに撫で
まだまだ先は長ェんだ
連れて行ってくれよ、あの薔薇の元へ
●口
行く手には暗闇が口を開き――更に黴臭い通路は、暴れるには充分だ。壁に突き刺さったまま朽ちた刃物を見るに、恐らく、人々の抵抗すら『狩り』の一環だったに違いない。
少し進むと四角い部屋に辿り着く。四方の壁に入ってきたのと同じ通路の穴がぽっかりと空いている。染みついた悪臭が一際濃く、怨念がこびりついていそうな空間だ。
そこに救う獣ども――漂う殺気に、彼は思わず身震いした。
――恐怖では無く、歓喜。
「期待できるんじゃねえか、なァ相棒」
くるくるとナイフを弄びながら、ジャスパー・ドゥルジー(Ephemera・f20695)が笑う。
周囲には目をぎらつかせた鼠たちが、ひとつの生き物のように蠢いていた。
ジャスパーがこの場に踏み込んだのを確かめるなり、ぞわりと渦を巻いて、正面、左右の壁から、襲い掛かってくる。
光を放ったありふれたナイフの柄を、彼は無造作に握りしめると――自らの胎へ、構わず突きたてた。
躊躇いなく肉を抉り、色のついた唇を歪ませる。
「出番だぜ、相棒」
どうせ喰わせるなら、鼠に、じゃねェよな――。
囁くと同時に肉が消え、忽然と姿を現した魔炎龍ジャバウォックが身を起こす。その顎からは黒い炎が溢れ、小さな呼気で鞴に煽られた炎のように、周囲を熱した。
一瞬の間をおいて、鼠たちが蒸発した。残った鼠が熱に立ち往生すれば、ナイフが床に、壁に、それらを縫い止めていく。
「俺たちのコンビネーションをとくとご覧あれ」
謳うが速いか、黒い炎で焦げ消えた空間に躍り出たジャスパーのナイフが軽やかに奔る。
そんな彼の腹では、同じ色の炎が揺らめく。血を燃やすことで、血を止め――雑な止血法だと自嘲の振りをした。
「おっと」
身を返せば、ジャバウォックへ果敢と食いかかろうとする鼠たちを追って、ジャスパーはナイフを握った拳で叩き落としていく。
端から見れば、酔狂だろう。自分の肉をもって召喚した頑強な竜を、彼が庇うなど。
「この止血方法は自分にしか使えねえし、大体――」
牙が刺さったことでついた傷口から、再び炎が立ち上る。リーダー格の鳴き声で力を増した鼠たちは確かに十数匹で人を白骨に変えることも容易であろう。
肩が、腕が、小さく穿たれる。だが、それらを振りほどき、自然な流れで身を屈めれば、ジャバウォックの黒炎が背を越えて、空へと跳躍した鼠たちを呑み込んでいった。
「レディの肌に傷をつけるわけにゃいかねェもんな」
笑いながら、大いに暴れ――、道を探る。
一方の通路で、花を咲かせる蔦が見えた。ところで奴さん、うっかり迷ったりしてねェだろうな、と懸念を抱きつつ。
相棒と共に進むのだ、多少の寄り道であっても不安は無い。
「アリスとオウガで補い合ってる俺たちみたいなのが居るんだ。同族殺しくらい居てもおかしくねェよな」
なァ、とその喉元を撫でる。愛おしげな様子は本物で、ジャバウォックも目を細めて身を委ねていた。
たとえ、互いを繋ぎ合うのが、抉り出した血の滴る肉であろうとも。
「まだまだ先は長ェんだ――連れて行ってくれよ、あの薔薇の元へ」
大成功
🔵🔵🔵
ユルグ・オルド
同族殺してのはなンかアレかな
海の底で一緒くたになったダケ、じゃ同族も何もッてか
――まァ特に隔てもしないんだけども
趣味の悪さは人も同じってネ
踏み込む惨状に顰めつつさて
辿るのは薔薇の路、お相手するのは溝鼠ッと
あんまり遅れて迷子じゃア困るんだ
さっさと退いてもらうべく駆け抜けながら
持ち出すのは錬成カミヤドリでのシャシュカを
一本は手に、残りは遊撃といこうか
刃も並べりゃ鋼の盾だ、そのまま薙ぎ払うんなら斧かしらッと
増える前に退治させてもらおうか
尻尾刎ねるか歯には刃ってか
――負けて折れないと良いンだけども
増えた鼠の一匹盾に、も一匹も切り結んだら
先へ先へと行くだけだけど
骸はよくもまァ迷いもしねェもんだね
●剣
軽やかに駆ける足音は、何も聞こえぬ石の迷宮に、歌を響かせるようだった。
先が暗闇でも、彼は臆すことはない。
月のような曲刀をひとふり携え、周囲には同じ剣がずらりと並ぶ。
シャシュカ――、己の複製と共に、ユルグ・オルド(シャシュカ・f09129)は風に金の髪を踊らせる。
「同族殺してのはなンかアレかな――海の底で一緒くたになったダケ、じゃ同族も何もッてか」
それじゃあ同族といわれるのも心外だろうと彼は嘯く。
「――まァ特に隔てもしないんだけども……趣味の悪さは人も同じってネ」
そっと嘆息を零すのは、気が滅入る周囲の状況からかもしれぬ。
さて、ユルグは颯爽と駆っている。茨を辿れば、自ら針路は何処だと悩む必要は無いからだ。
最初は静かだった周辺に、何かがかさかさと動き回る音が加わり、増えていく――チュウチュウと啼く声がひどくやかましい。
お陰で、襲撃は分かり易い。
高い壁の縁から溢れるように鼠たちが湧いて、ユルグへと跳びかかってくる。
それを途中で凌ぐのが、シャシュカを並べた盾だ。彼の意志に従う剣たちは、頭上で傘のように広がると、鼠を弾くと、短い風切り音を立てて薙いだ。
「刃も並べりゃ鋼の盾だ、そのまま薙ぎ払うんなら斧かしらッと」
空に踊った無防備な身体を斬り裂く斧が如く。
当人もくるりと身を返しながら、続く鼠たちを斬り伏せる。通常の鼠よりも屈強なそれらは重い手応えを伝え、鋼と牙がぶつかれば鈍い音を立てた。
(「――負けて折れないと良いンだけども」)
オブリビオンであるそれらの個は然程の脅威ではなかったが、酷使した複製の剣はいくつか毀れつつある。群れを成して一刀に押し寄せれば、ぽきりと折れる――忌々しいが、ひとつくらいはと諦めて、囮と取り残し。
実質、覆い被さってきた群れと、彼が触れ合うは一瞬のことであった。軽い跳躍で前へと逃れると、相手がユルグの位置を掴みかねている間に、宙に浮かぶシャシュカたちが追撃する。
「あんまり遅れて迷子じゃア困るんだ」
ずぶずぶと獣を裂く感覚を後ろに残し、握った拳を開くように、ぱっと剣が扇のように広がって、肉塊を払う。
さて、どっちだったかねェ、と首を回せば、壁を這う茨が見えた。
駆けてきたがゆえの特典か――彼は、踊る屍の姿が鼠たちを茨で翻弄する様を捉えた。思わず身を潜めたのは、正解だっただろう。
四方八方、空間の限りと突如と茨が蹂躙し、埋めつくした。滴る血は残らず茨が啜り、鼠たちを磨り潰す。
周囲から鼠の気配が消えたと見るや、『共棲者』は前へと進み始める。用を終えた茨はぷつぷつと切れて、その足跡のように残す。
しかしそれにさえ不用意に近づけば、ユルグを敵と見なして巻き付いてきそうなほど、残骸も怨に満ちていた。暫く待てば、鎮まるだろうが――。
それにしても、彼は骸の消えた先を眺めて零す。
「骸はよくもまァ迷いもしねェもんだね」
――引きつける何かがあるのか。
或いは『識っている』のか。紅い瞳を細めつつ、彼はまた駆けだした。
大成功
🔵🔵🔵
ニコラス・エスクード
残虐の跡に眉根を顰める
もはやどうする事も出来ぬ過去の痕だ
だが我が主の為し得なかった罪の残骸でもある
思いを新たにする心地だ
この地に潜む獣とやらに八つ当たりさせて貰うとしよう
荊の道標を辿る
この場で共棲者とやらに矛を向けるに益はない
今は襲い来る鼠共を討ち落とすに力を尽くそう
我が身の元は盾である
故に主を護らんと立ち塞がる姿に何を思わぬでもない
だが今、この身は猟兵である
その牙が、爪が、人々へと振るわれるのであれば、
討ち滅ぼすに否はない
首落としの刃に血を纏わせ、
『ブラッド・ガイスト』にて殺戮捕食態へと
一つ一つを潰すなどは性に合わぬ
黒き激流をそのまま、喰らい尽くしてやろう
●盾
兜の下で眉根を顰め、ニコラス・エスクード(黒獅士・f02286)は汚れた床を踏みしめる。
「もはやどうする事も出来ぬ過去の痕だ――だが我が主の為し得なかった罪の残骸でもある」
曾てあった領主の暴虐、それを防げなかったことは、主の無念――ひいてはニコラスの無念にも繋がる。
(「思いを新たにする心地だ」)
無機物としては得ようも無い感情を、今は得ているが故に。
噛み千切られた茨の蔓に視線を落とす――近くに鼠がいるのだろう。
「――この地に潜む獣とやらに八つ当たりさせて貰うとしよう」
気配を隠さぬ彼の進撃に応じ、正面の通路より、鼠が矢弾の如く駆けてくる。
黒甲冑纏う巨躯の男が、両の手で低く構えるは無骨な両手剣、刃は斬頭台のそれ――ひとであれば、恐ろしくもあろうニコラスの姿だが、獣には伝わらぬようだ。
歯を剥いて、キィキィと声をあげながら、一団となって迫ってきた。
それは迷宮の中に突如と押し寄せる鉄砲水のようなものだ。回避もできぬ、呑み込まれれば、唯では済まぬ――だがニコラスは動じず、確りと相手との距離を数えていた。
「我が身の元は盾である。故に主を護らんと立ち塞がる姿に何を思わぬでもない――」
兜で表情の見えぬ彼であるが、その言葉が嘘ではないように、声音は薄汚い闇に不思議な揺らぎをもって沁みた。
ただ、それを聞きつけ、感じ取れるものもいなかった。
「だが今、この身は猟兵である。その牙が、爪が、人々へと振るわれるのであれば、討ち滅ぼすに否はない」
ぎりと握る手より、鮮血が落ちる。首を落とす刃が、血を得て変化する。殺戮捕食態と言うに相応しき、禍々しき姿に。
一つ一つを潰すなどは性に合わぬ――。
「黒き激流をそのまま、喰らい尽くしてやろう」
ゆっくりと斜めに振り上げると、短い距離を疾駆した。同時に振り下ろせば、剛風が黒い群れとぶつかった。
全身の力を奮い、ニコラスは剣を押さえ込む。
跳ね返されそうな反動を制して、振り切れば――鼠の群れは両断されて、消し飛んだ。
その命を咀嚼しながら、彼は剣を担いで先ヘと進む。
侵入者を喰らい付くそうと、この先幾度となく立ち塞がるそれを、逆に飲み乾しながら――。
大成功
🔵🔵🔵
スティレット・クロワール
これは確かに因果なんだろうね
うんうん、好き勝手にやっていてどうぞ、っていう気持ちは私も分からなくも無いけれどね
なにせそのの因果は彼らだけのものだ
とはいえ、そこにつけ込む隙があるのならば、ちょっとお仕事をしてみようか
彼らが祈りを必要とするかもしれないしね
パンくずの代わりに薔薇を辿っていこうか
共棲者君が通った後なら怒っているか怯えているか
UDCの蛇君を召喚して戦おうか
さ、遊んでおいで?
戦闘が始まっているな白馬で追いつこう
私の花びらは君たちを焚べるものだ。獣の如く驚かずとも
他の猟兵の攻撃の隙になればいいしね
ーー失礼。出すぎた真似を
ですが存分にお使いください
さぁ、まずは辿り着かなくてはね
●花
「これは確かに因果なんだろうね」
スティレット・クロワール(ディミオス・f19491)が軽く首を傾ぐと、白い髪が白い衣の上でさらりと音を立てる。
「……うんうん、好き勝手にやっていてどうぞ、っていう気持ちは私も分からなくも無いけれどね」
くすりと湛えた微笑は、誰に向けたものか。
「なにせそのの因果は彼らだけのものだ――とはいえ、そこにつけ込む隙があるのならば、ちょっとお仕事をしてみようか」
――彼らが祈りを必要とするかもしれないしね。
彼の囁く静かな言葉は、どこか不穏な響きをはらむのが不思議である。
視線を落とせば、ぽつ、ぽつと赤い花が咲いている。その近辺を眺めれば、茨に蹂躙された鼠の死骸が落ちている。ずたずたに斬り裂かれ、一切の容赦がない。
「薔薇がパンくずの代わり――かな」
洒落てると思わないかい、と袖口に声をかければ、機械めいた蛇がするりを顔を覗かせる。
スティレットは穏やかに微笑すると、それを解き放つ。
「さ、遊んでおいで?」
言うやいなや、蛇が身を伸ばす。顎を開き、鼠を咥える。蛇が鼠を狩るのは当たり前のことだと言わんばかりに――。
くるりと成果を見せてくる蛇に、彼はいいこいいこと褒める。その間にも跳びかかってくる鼠を尾で強か払い、主に近づけぬよう、役目を果たす。
その奮闘を眺めつつ、スティレット自身もサーベルを手に、ゆるりと腕を上げた。司祭服の装飾が、しゃらりと音を奏でる。軽やかに地を蹴り、身を躍らせれば、道を遮る鼠へと一閃する。
――戯れるような戦いだ。それで済む程度に、鼠たちは弱り、また数が少なかった。
恐らくは誰かが蹴散らした残党なのだろう。
これが他の猟兵なのか、例の同族殺しの仕事なのかは解らない――。
けれど、不意にスティレットは思いついたように、前を進む蛇へ呼び掛けた。
「戻っておいで、蛇君。どうやら道が通じそうだよ」
悪戯めいた微笑みを、見るのはその懐に住まうものゆえに。
何の色もない、汚れた石造りの通路の最中に、ふわりふわりと青白い何かが浮かんで、消える。
闇に妖しく灯る仄かなそれは、青白い花びら――前兆もなく視界いっぱいに降る其れは、白馬が訪れる先触れだ。
刹那、花弁に触れた鼠が燃える。
見事な白馬の背に乗った彼は何処かの戦場へと駆けつけた。
「私の花びらは君たちを焚べるものだ。獣の如く驚かずとも」
身が灼ける音と苦痛に蜘蛛の子を散らすように逃げ惑う鼠を見やり、彼は目を細め。
「――失礼。出すぎた真似を。ですが存分にお使いください」
そして猟兵に向け、ただ美しく、微笑した。
大成功
🔵🔵🔵
冴木・蜜
薔薇に寄生された同族殺し、か
その躰を突き動かすのは
薔薇の意志なのでしょうか
それとも…骸の無念なのでしょうか
体内毒を濃縮しながら
薔薇の導を頼りに進みましょう
鼠の群れに遭遇したら
体を液状化し『微睡』
揮発した毒で鼠どもを屠りつつ
その合間を抜けて行きます
お出迎えして頂いたところ申し訳ないですが
道を開けて頂きましょうか
仲間を呼ばれて噛みつかれても
まぁ問題ないでしょう
逆に喰われた血肉さえも利用し
内側から融かし落として差し上げましょう
ああ 良いのですか
私なんかに噛みついて
私は死に到る毒
ひとたび口に入れれば
貴方がたの命を融かし落としますよ
●毒
「薔薇に寄生された同族殺し、か」
冴木・蜜(天賦の薬・f15222)は紫眼を朽ちかけた薔薇へと向ける。眼鏡の向こう、前髪で蔭を落とした彼の表情は観測者めいていた。
「その躰を突き動かすのは、薔薇の意志なのでしょうか――それとも……骸の無念なのでしょうか」
囁き、歩き出す。
静かなるその所作の奥、彼の体内では、血液の流れに乗って毒が濃縮しつつある。
ふと視線を上げれば、壁に大きな亀裂が走っていた。上から重い負荷がかかったのだろう、押しつぶされたような傷だ。
ともすれば、真っ直ぐ上階が目的地なのだろうか。或いは上層に何かしらの罠があった名残なのだろうか。
不意に、蜜は脚をとめた。その耳が捉えるは、隠すつもりのない獣の足音。肌を刺す感覚が察知するは、途方も無い殺気。
「お出迎えして頂いたところ申し訳ないですが、道を開けて頂きましょうか」
暗闇を漠然と見つめながら、淡淡と、告げた。
ぎらぎらと目が光り、言葉ではない反論を蜜へと向けた。
彼が返すのは嘆息ばかり――彼らは命など惜しくはないのかもしれないが。
「おやすみなさい、さようなら」
合図と唱えれば、彼の輪郭が崩れて消えた。とろりとタール状となって石畳に溶け落ちれば、鼠たちは戸惑い、虚空を見渡した。
蜜はそれを嘲笑うこともない。
ゆっくりと石畳を滑り、彼らを擦り抜けていく間に――一匹、二匹、鼠たちはぎゅっとただならぬ声をあげて、泡を吹いて昏倒していく。
体内の死毒を蜜はその表面より揮発し、その場に居合わせるものを悉く苛んだ。
吸い込むや否や、内腑から身を溶かす猛毒。身体の小さな鼠であれば、ひとたまりもなかろう。
数十の鼠が無惨な死骸となって転がろうとも、蜜は何とも思わぬ。ただ、自らの身に思うところはあっただろうが――今更だ。
動くものがいなくなったのを確認するや、彼はまた人の形に戻る。服も装飾も先程と寸分違わぬ。
歩調もそのまま変わらず、歩き出す。
――ふと、彼は無造作に腕をあげた。刺すような小さな痛み。奇跡的に残っていた鼠が、彼の袖に捕まり、果敢に挑んできていた。
「ああ 良いのですか――私なんかに噛みついて」
穏やかに、問い掛ける。
「私は死に到る毒。ひとたび口に入れれば……貴方がたの命を融かし落としますよ」
さっきご覧にいれたとおり。
そして、既にそれは蜜の血を体内にいれた。
振り落とすまでもなく、鼠は悶えて床に転がった。ジュウジュウと濁った悲鳴をあげていたそれが、静かになると――蜜は少しだけ顔を伏せ、また前へと歩き出した。
彼の行く戦場では――よくあることだ。
大成功
🔵🔵🔵
芥辺・有
茨を眺めて、感触を確かめるように踏みしめつつ、骸らしい奴が進んだらしき道を後から辿ろう
無駄に面倒なことはしたくないんでね
こんな場所に長くいるのも嫌だし
道の先にも聞き耳を立てながら
獣の気配も探りつつ進む
どうもいくらかちろちろと鬱陶しく動いてるみたいだね
まったく嫌なもんだ、鼠なんて
数で来られたら面倒なことこの上ないし
周囲の気配をよく探って
飛び掛かってくる奴がいれば蹴りで叩き落として踏み潰す
まったく、暗闇に紛れやがって
きりがないったら
生憎、一匹一匹狙って退治するほど細かい作業も得意じゃない
手に持つ杭を花びらに変えて、鼠どもを狙って散らそう
数には数、細かく切り裂くのに丁度良いだろうからね
●椿
茨を眺めて金眼が薄く瞬いた。
見通しがよくない通路の代わり、道標の茨を脚で確かめながら、辿って先を目指す。
「無駄に面倒なことはしたくないんでね――こんな場所に長くいるのも嫌だし」
使えるものは、使うだけ――芥辺・有(ストレイキャット・f00133)はそっと息を吐く。
不意に、横穴から、ぎらぎらと輝く目が見えた。すぐさま後ろへ跳ぶ。飛び出してきた鼠を、しなやかな蹴撃で弾き飛ばし、踏みつぶす。
「まったく、暗闇に紛れやがって。きりがないったら」
周辺を四つ足の動物が駆け抜ける音が、彼女の横を通り過ぎて、何処かへと去っていた。
少し警戒するも、襲い掛かってくる様子は無い。余所へ行ったのか、先回りか。常に警戒を怠れぬ状況に、忌々しいねと小さく零す。
鼠の気配が遠ざかれば、場に響くは自分の立てる音ばかり。
世界から隔絶されたような感覚――だが、物思いに耽るには、あまりにも最悪な環境だ。余計な事を考えぬよう、気配を探り、茨を見失わぬように心掛け乍ら、有は淡淡と進む。
かつて朽ちるまえの迷宮では、一体どれほどの人々が、どんな気持ちでこの通路を通ったのであろう。不安や陰鬱さに襲われながら、それでも一縷の希望を抱いていたであろうか。
ふと肌に触れる風向きが変わったことに気付いて彼女は歩調を緩める。
暫し進んで、行き止まりか――と思えば、階段が現れた。既にある程度、上下の移動もしているゆえ、心得は出来ている――。
無防備に踏み込んではならぬ、と。
暗闇を軽く仰いで、彼女は唇を結ぶ。無数の気配を察すると、すかさず距離をあけた。
鬨の声でもあるまいに、喧しい声を上げている。
「まったく嫌なもんだ、鼠なんて」
手にしている黒色の杭が、赤椿となって解けた。
「邪魔」
心のままに唱えれば、我先にと階段を駆け下りながら跳びかかってきた鼠たちを、赤い花弁が斬り裂いていく。
数には数、有の狙い通り。ただ待っているだけで鼠は斬り刻まれていく。
飛んで火に入る何とやら――、嘯く傍らで、蔭が蠢いたのを、彼女は見逃さぬ。
直ぐに身体を倒すと、水平に蹴りを入れる。死角から掛かってきた鼠は椿舞う空間に叩き込まれ、肉塊へと変じるが、それを盾に別の鼠が有へと迫る。
「しつこいね」
嘆息と共に、踵を落とす。床で磨り潰すと、勢いをそのままに有は横に跳んで、次の一体は横蹴りで壁に向かい同じ運命を辿る。
やがて、最後の椿がはらりと花弁を落として消える。
周囲には鼠たちの肉塊。惨憺たる赤で塗り込められていたが――暗くて、見えぬ。
――結局辿る道は同じなんだ。
なんてこともないように彼女は呟くと、階段に脚を掛けた。
大成功
🔵🔵🔵
パウル・ブラフマン
どもー!エイリアンツアーズでっす☆
愛機Glanzのヘッドライトを
ハイビームにして光源をガッツリ確保しておくね。
迷路の突破の際に
機動力マシマシをご希望の方は後部座席へどうぞ♪
それじゃあ、行くよGlanz―UC発動!
道中自慢の【運転】テクを炸裂させ乍らも
茨の断片を辿る基本形は崩さず、着実に迷路を進むね。
ネズミ達の鬨の声も
オレには『撃ってくださーい』にしか聴こえないなぁ。
【野生の…もといタコの勘も併用しながら
最寄りの個体から順にKrakeで狙撃していくよ。
嫌悪感?ないです!
進路を阻害されればGlanzで【なぎ払い】を。
轢き殺すのは平気だけど
グロ耐性ない人は目ぇ瞑っててね☆
※絡み&アドリブ&同乗歓迎!
●速
暗闇を貫くハイビーム。
轟くエンジンは迷宮を揺らすような重低音――それはリズミカルに鼓動しながら、解放の時を待っていた。
「どもー! エイリアンツアーズでっす☆」
慣れた心地好い歌声に身を委ねながら、高らかと告げたパウル・ブラフマン(Devilfish・f04694)の声は何処まで届いただろうか。
殷殷と渦を巻く音はライトが照らす果てへ。
それに応える人はいなかったようだが――ならば、構わず疾走できるというものだ。
「それじゃあ、行くよGlanz――UC発動!」
パウルが前へと身を乗り出せば――白銀の尾が、流れて消えた。
脚で駆けるよりも速く、ともすれば直ぐに壁にぶつかりそうな迷宮を、彼は加減無しで飛ばした。実際、壁も走りながら、彼の隻眼は茨を捉えてる。
何より、道標となるそれを傷つけぬよう躱してもいるのだから、恐ろしく巧妙なバイク捌きである。
――そんな怪物の訪れに、鼠たちは戸惑いながら穴から飛び出してきた。恐らくは彼らの通路まで響き渡る振動が一種の攻撃のように感じたのか。
確認した途端、Glanzとパウルは直線となって消えてしまう。それほどの速度の相手に、仕掛けるとするならば。
鼠の群れが進路を埋めつくすように立ち塞がる。ジュウジュウと殺気に満ちた声を上げて、士気を高める。
ハイビームに照らされようと、ぎらぎらと睨み付け、門歯を輝かせるそれらは、一体の怪物のようでもある。怪物には、怪物。
けれど、パウルはにかっと笑う。
「オレには『撃ってくださーい』にしか聴こえないなぁ」
にゅるりと伸びるは蛸の触手。彼は四肢でバイクをコントロールしながら、触手に固定した砲台で標準を定める。
「お生憎サマ、鼠とタンデムする気はないぜ!」
パウルを追い立てるつもりなのか、壁から併走してくる鼠が、次々に肉塊へ変わった。
彼のアームドフォートKrakeは四方に一斉掃射が可能であり――高速移動砲台と化することに、惑いも躊躇いもない。
ギュリ、とパウルはますますスロットルを解放し、更に加速する。ずっと直線なのは確認している――何より、壁ごとぶち壊しても、文句をいうものはいない。
明るい青の瞳は無邪気に輝く。行くぜ、と笑う口元は不敵と言うよりも遊ぶようなそれ。
鼠たちがこうして立ち塞がるならば、バイクで薙ぎ払ってしまえばいいだけのこと。少々、現場は惨憺たる状態になるだろうが――。
「嫌悪感? ないです!」
先触れは、砲撃からの掃射――高らかな発破の臭いが鼠たちの壁を撃ち抜いて、脆く崩すが同時、口笛ひとつ囃し、解き放つ。
高い歓声をあげ――鼠たちが織りなす壁へ、真っ直ぐと、最速を叩き込む。
ぐしゃり、みしり、キュヴヴ――あらゆる音が一瞬で混ざって、後ろへと流れていった。
タイヤが念入りに吹き飛ばした鼠を轢いて、粘度の高い赤い帯を伸ばしていく。
残党を容赦なく斉射し片付けながら、パウルは軽やかに車体を傾け、次の角を瞬く間に曲がって、消えていった。
唸る怪物の声を、何処までも響かせながら――。
大成功
🔵🔵🔵
リーヴァルディ・カーライル
…ん。恐ろしい鼠の数ね…。
怖気づいたりはしないけど、流石に気味が悪いわ…。
…もっとも、放置すれば更なる災厄となる以上、
ここで見過ごす道理はないのだけど…。
今までの戦闘知識から同族殺しへの警戒は絶やさない
目立たない鼠の存在感や殺気を暗視して攻撃や奇襲を見切り、
生命力を吸収する呪詛を纏う大鎌のカウンターで迎撃
…迷宮に迷わない同族殺し…か。
かつてはこの地の主か関係者だった…?
第六感が危険を感じたら右腕を吸血鬼化してUCを発動
暴走する怪力を気合いで制御して、大鎌による連撃(2回攻撃)を行い、
周囲を斬撃属性攻撃のオーラで防御するようなぎ払い力を溜める
…数で圧せれば勝てるとでも?無駄よ、私には通用しない。
●朱
何処かで、何かの咆哮が聞こえる気がする――ふと顔をあげたリーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は、紫の瞳をゆっくりと瞬かせた。
「ん。恐ろしい鼠の数ね……怖気づいたりはしないけど、流石に気味が悪いわ……」
ただの鼠であってもあまり心地好い話ではない。
そして、鼠のオブリビオンが此処に蔓延っているのも、多少、そういう縁があるのかもしれぬ。
「もっとも、放置すれば更なる災厄となる以上、ここで見過ごす道理はないのだけど……」
零しつつ、彼女は慎重に曲がり角に身を潜め、茨の有無で進路を確かめる。
――もう随分と進んだ気がする。恐らく大方の猟兵たちも同じルートを辿っているだろう。
鼠たちとの戦闘の痕跡が鮮やかに刻まれて、茨以上の目印となっている。それでも未だ湧いてくる鼠たちには、また別の意味で、辟易とする。
彼女の礎となるのは、戦闘知識。暗闇に同化するように気配を殺し、陰の一部として、奇襲を避けて、奇襲を仕掛ける。
また一体。リーヴァルディの黒き大鎌が鼠の首を落とした。相手が鳴き声を上げる隙も許さぬ一閃であった。
「……迷宮に迷わない同族殺し……か。かつてはこの地の主か関係者だった……?」
それは銀髪が揺れて収まるまでの、刹那のうちに。
彼女にとって――対一ならば、この程度の相手は思案の合間でも容易に屠れる。
それでも、油断はせずに感覚を信じて進んでいくと、急激に狭い通路が現れた――その中央には茨がずっと伸びていることから、『共棲者』も此処を通ったらしい。
彼女の身体ならば、何ら問題無く走り抜けられるが。
――嫌な予感を感じ取り、彼女は静かに腕を伸ばす。
「……限定解放。微塵と化せ、血の閃刃……!」
右腕だけを、真なる吸血鬼のものと変貌させ――大鎌を手に、彼女は駆った。
距離からすれば、三歩ほどで抜けられる。だが、リーヴァルディが一歩踏み込んだ時、左右から押し寄せる黒い波が現れた。
仰ぐように半身を傾けてそれを確認すると、
「……数で圧せれば勝てるとでも? 無駄よ、私には通用しない」
彼女はゆっくりと腕を振るった。
吸血鬼の力が暴走せぬよう、じっくりとした動き――だが、それがもたらす衝撃波は凄まじかった。
黒い群れを風が撫でたと思った瞬間、吹き飛んでいく。爆ぜるように、耳が、鼻が、腕が断たれて消える。
それらの骸を踏み越えながら、進撃を続けようとする鼠たちに、阻む突風が吹きつけた。
リーヴァルディの返した鎌の斬撃。振り上げ、振り降ろすという、極自然な高速の二連撃であった――二波には耐えられず、彼女に近づくことも出来ぬ儘、左右の鼠たちは朱色の染みとなる。
通路を駆け抜け――腕を元に戻したリーヴァルディは、そっと髪を整えると進み出し――それらを振り返ることは、なかった。
大成功
🔵🔵🔵
コノハ・ライゼ
共棲者の通った後を行く
標を『追跡』して出来るだけ共棲者の近くに付きたいトコ
どんな動きをするか見れるモノなら見ておきたいしネェ
探索しなくていい分壁の隙間や頭上に注意払って
ネズミは見付け次第しっかり駆除しとくわ
ああ、キミらも食欲旺盛でイイねぇ
ネズミの挙動予測し『見切り』集団の中でも数の厚い箇所の攻撃は避ける
数匹の事なら『激痛耐性』も併せ気にせず
負った傷から大きな【黒涌】生んで、攻撃回数重視でその牙でネズミを喰らって貰いマショ
その隙に『2回攻撃』で畳み掛けるヨ
右目の「氷泪」から『範囲攻撃』で網状に雷を奔らせ、散るネズミを囲い込み喰らおうか
食欲では負けられないってヤツ
さあ、まだまだおいでナサイな
●狂
踊る、躍る――『共棲者』はまさしく、茨を躍らせ、自らも躍る、そういう舞踏を見せていた。相手が鼠であれば、奇妙なものであるが、茨で拘束したと見るやそれが骸の腕の向きに合わせ、引きちぎられる。
その一挙一動も、舞いとなっていた。それも優雅な舞踏というよりは、村人達がこぞって踊るような大衆のそれに似ている。
へぇ、とコノハ・ライゼ(空々・f03130)は薄氷の目を細めた。
どんな動きをするのか、見ておきたいという望みを果たし、彼は如何なる感想を抱いたのか――舞踏であるゆえにうっすらと浮かぶ、虚無か。
「解るような――解らないような」
死人であるゆえの空を掻く舞い。裡に寄生する薔薇によるものか、骸そのものの望みなのか、判断がつかぬは、相手が門番役の鼠だからだろうか。
どちらにせよ、コノハにとって――相手の心の機微を読むというのは、なかなか骨の折れることだ。顔も無い亡骸なら尚更だ。
「――はいはい、いらっしゃいマセ」
身を潜めていてもどこから臭いを嗅ぎつけて、牙を剥く鼠へ、彼は軽くナイフを送る。
一匹の腹をあっさり捌けば、とん、と軽やかに地を蹴って、その場を離れた――経験上、一匹に遭遇すれば、多数が押し寄せてくる。
気配を隠した猟兵を探り出せずとも、仲間の死骸には鼻が利く。
横穴から、だっと十数の鼠が飛び出してきた。仲間の死骸に喰らい付きながら、勢いよく、コノハへと跳びかかってくる。
腕を左右に払うように、両腕のナイフを振るう。戯れるような動きは、物音を立てぬよう柔らかで、触れた鼠を叩きつける。不意に視界を横切る影が、彼の肩口にぶつかった。
後方の穴からも、十数体の鼠が顔を出し、取り囲んでやったと自慢げにキィキィと笑っていた。
紫雲に染められた鮮やかな髪を揺らし、コノハも薄く笑みを返す。
「ああ、キミらも食欲旺盛でイイねぇ」
肩の傷、拳に軽くはしった切り傷を無感情に見やる。些細な傷なら、痛みも感じない。
「おいで」
もっとも深く、血を滴らせた傷から、影狐がするりと溢れた。
突如と姿を現した獣に、鼠たちは怯む――その間に、コノハの指示が儘、影狐は鼠たちを蹂躙する。群れの中央へ飛び込むと、ごっそりと鼠たちを牙にかける。
その速度は恐ろしく速く、壁から壁へと跳躍していく軌道上の鼠は、ごっそりと姿を消していく。
闇に、小さな稲光が輝いた。
コノハの右目が見せた前兆が、鼠たちの意識を引くより先に――全てを覆う網状の雷として、顕現していた。
これは雷纏う氷牙。彼の『口』のひとつ。
一気にぴしゃりと轟き落ちて、蒸発した鼠たちは――コノハの糧となった。
証左、彼の身を彩った朱色の傷は、既にその痕跡も残していない。それは満足そうに咀嚼する、影狐も同じ事。
「食欲では負けられないってヤツ――さあ、まだまだおいでナサイな」
悪食だと指摘されたら、それに何の問題があるカシラと、彼は笑うことだろう。
辺り一面、綺麗に駆除して、まだまだ足りないといった視線を――彼方へと投げた時。
茨の道標だけを残して、『共棲者』は既に消えていた。
大成功
🔵🔵🔵
ロカジ・ミナイ
同族殺し
興味深い言葉だ
僕がそうってんじゃないよ?
ただ、興味深いってだけで
一体どんな奴かと思えば、あれまぁ
骸から草を生やしてるだなんて素敵だねぇ…
死んでお花ちゃんとひとつになるなんてさ
僕もああなりたいもんだよ
くっさい中に薔薇の香りを見つけて後を追う
僕は狐だからね
どちらかと言うと夜目だし、鼻も利くんだよ
足音を消すのは……まぁまぁかな
いいスニーカーを履いてきたからね
それにしてもあんまり気分は良くないな
鼠はあんまり好きじゃないよ、職業柄
けども、感情に任せるのは頂けないので
敵対した鼠は妖刀で静かに刻む
僕の妖刀はリーチがあるし、いっぱいいるなら纏めてザカッと
●匂
「同族殺し――興味深い言葉だ」
ロカジ・ミナイ(薬処路橈・f04128)は、にや、と意味深な笑みを湛えた。
――ただ、興味深い。
落ちている茨を臆さず手にして、しげしげと眺める。
どんな植物なのかしらとひっくり返しても、どれもただの薔薇にしか見えない。これもオブリビオンの一部ではあるのだろうが。
「一体どんな奴かと思えば、あれまぁ。骸から草を生やしてるだなんて素敵だねぇ……死んでお花ちゃんとひとつになるなんてさ」
僕もああなりたいもんだよ、――嘯き、というより万感滲ませた物言いひとつ、飄飄と彼は進む。
天を仰ぎ鼻を動かし、薔薇の匂いを探る。悪臭の中に凛然と咲く赤い花――のイメージが漠然と湧いて、彼を導く――ような気がする。
後は鼠を呼び寄せぬよう、大きな物音を立てぬように――忍び足には特別な心得はないが、足音はあまり響かない。
「いいスニーカーを履いてきたからね」
見立てに間違いはなかったと、うんうんと満足げにロカジは頷き、踏みしめる。
それでも、チュウチュウと囀る声が近くで聞こえると、背筋が冷える。怯えでは無い――眉を大仰に上げると、荷物から一刀、徐に取り出した。
「鼠はあんまり好きじゃないよ、職業柄」
そう、ずっと気分が優れないのはそこなのだ。鼠が沢山うろうろとする光景は、ぞっとしない。敵を怖れているのとは違う、じっとりとした嫌な感覚。
だがそんな理由で刀を振るうのはどうだろう――そう、感情に任せるのは頂けない。
そんなことをぶつくさ口にしている間に、跳躍した鼠が、彼の商売道具に喰らい付こうとする――。
「僕は狐だからね――どちらかと言うと夜目だし、鼻も利くんだよ」
美しい刃が、鼠の開いた口に収まって、ゆっくりと圧し斬る。
振り上げた妖刀が鮮やかに鼠を横割りにした。観客がいれば盛り上がったであろう、均等な二分割。
「ああ、嫌だね」
深い溜息を吐いて、ロカジは振り返る。鼻に感じる獣臭さが一気に増した。さしずめあの鼠は斥候か、それとも突出した命知らずだったのか。
けれど後でも先でも、命運は然程代わりはしない。
覚悟を決めて、彼は適当に構える。剣の間合いを生かして、接近される前に静かに薙ぐ。実直に吹きつけた剣風が、鼠たちの出鼻を挫く。先頭の数頭は斬られたか。血の臭いが濃くなった。
ヂュウゥ――殺気だった号令に従い、斬撃を逃れた鼠たちが隊列を為して、跳びかかってきた。ぎらりと輝いた門歯がロカジに届く前に、垂直に斬り上げる刃が、その威勢を挫くように蹴散らす。
軽く一歩退いて、また一閃。数体を一度にざっくり斬り捨てる。
暗闇に輝く剣閃は妖美に線を結んでいき――あくまでも穏やかに、一閃一閃を丁寧に振るって、確実に裂いていく。
「はぁ、終わった終わった」
じっくりと時間をかけて鼠を片付けると、ロカジは安堵の息を吐き――腥い臭いを飛び越えながら、薔薇の匂いを探すのだった。
大成功
🔵🔵🔵
鹿忍・由紀
同族殺しのおかげでちょっと楽させてもらえそうだね
ついでに鼠も片付けていってくれたら良いのに
聞き耳を立てて鼠達の気配を確認
踏み入りすぎないようある程度距離を取りつつ
鼠が姿を現したら影雨で一掃する
次々出てくる鼠をめんどくさそうに眺めつつ
淡々と数には数で対応していく
高速で向かってくる鼠に対しては見切りで距離を測る
こちらに到達する前に影雨を縦方向に降らせ攻撃兼バリケード
抜けてきたものは自分のダガーで切り捨てる
嫌になるほど衛生的だね
うんざりした様子でダガーに付いた血を振り払いながら
邪魔な鼠が片付いたら薔薇を辿って歩き始める
落ちている薔薇を踏んでも気にする様子もなく
同族殺しへの興味もなく
●弄
最後の通路は無数の穴が空いていた。恐らく、昔は槍か何かが飛び出す仕掛けだったのだろう。
だが当時の領主も、それに追随したものたちも、もういない。こびり付いた血の染みだけが、悪趣味な過去の残滓として此処に在る。
もっとも、彼にはそんな背景など『どうでもいいこと』である。
「同族殺しのおかげでちょっと楽させてもらえたけど」
道標を辿りながら、鹿忍・由紀(余計者・f05760)は小さな息を零す。
「ついでに鼠も片付けていってくれたら良いのに」
周囲に視線を投げれば、素早く駆け抜けていく何かの影。
数が多すぎるのは解っている――彼も嫌に成る程、道中で見てきた。多くの猟兵が同じ道筋を辿っているのに、何度でも何度でも立ち塞がって来るのだから、まさしく無尽蔵の存在なのだろう。
「獣を狩らなきゃ、消えないのかな」
面倒だという気持ちを隠さず由紀は目を細めた。
いっそちょろちょろと纏わりついてくるよりは、一気に大群で現れてくれた方が処理が楽だ――そう思った時。
ひゅ、と風が動く音を捉え、彼は横に跳んだ。
「貫け」
着地と同時、踵で大地を叩けば――彼の影から、夥しい数のダガーが飛び出し、鼠たちを貫く。
更に一歩、後ろに跳んだ。間合いを取って、更に縦方向にダガーを降らせると、それを壁に鼠を阻む。
壁を奔る一群がある。同じく、影のダガーが次々と鼠を壁に縫い止めていく。彼らは大半を犠牲にして、一体を守りながら送り出し、それは由紀へと迫った。
息を吐きながら、由紀は斜めに腕を振り下ろす。
ダガーが鼠の鼻先を掠めて、血が噴き出したが、未だ動けるようだ。
彼は淡淡と動きを見極め、身体を捻った。
反動をつけて、一気に片付けようという由紀と――最後の力を振り絞り、仲間達の死骸を踏み台にして跳びかかってきた鼠が、交錯する。
それへ視線も呉れず、由紀はダガーの柄を浅く握り、ほんの少し間合いを伸ばして、鼠へ刃をねじ込む。
白い頬を、鼠の血が掠めそうになり、由紀は半歩だけ下がる。
頭から腹までさくりと割られた鼠は由紀の視界の外で落ちていき、その他大勢の骸とに加わった。
何の感慨もなく、彼はそれらを見下ろし、幾度目かの嘆息をひとつ。
「嫌になるほど衛生的だね」
手首を返して、ダガーの血を払って、一歩踏み出す。その脚が茨を踏み抜こうとも。薔薇を蹴散らそうとも、由紀は気に留めぬ。
「灯り……?」
訝しむように青い瞳を細めて、先を見やる。僅かに開いた扉から、灯りが溢れている。
近づくにつれ、暗闇の中で多少敏感になった嗅覚が、炎が燃えるそれを捉えた。
――此処が、終着地点なのだ。
そして、この向こうに獣と――先んじた猟兵と――『共棲者』がいるのだろう。
――何とも思わぬ足取りで、由紀はそこを潜り抜けた。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『ノクト・ヴァニタス』
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POW : (世界に選ばれた者?そうなんだ、すごいねえ)
単純で重い【尾】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD : (ボクの前で好きに動けると思ったんだ?)
【視界を奪う黒い霧】【呼吸を阻害する白い風】【抑えきれない怨念】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
WIZ : (キミ達なんか、だいっきらい!)
【凝り固まった人類への不信感】の感情を爆発させる事により、感情の強さに比例して、自身の身体サイズと戦闘能力が増大する。
イラスト:白狼印けい
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「サンディ・ノックス」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●ダンスホール
そこは曾て絢爛豪華を絵に描いた、美しい大広間であった。
同時に血と臓物で彩られた、忌々しき祭礼の場でもあった。
今は何も残らない。何にも無い、ただ寂れた広間だ。調度品も当然存在せず、壁は散々に爪の後が残り、足元の石畳もところどころ抉れている。
天井も同じ。すべて石造りゆえに、この程度で済んでいる、といったところか。
広間の四方には篝火が燃えていた。誰が灯したのか――何かが燻る臭いはするが、魔法の力やもしれぬ。少なくとも、視界に困る事は無いだろう。
中央には、大きな獣が一体居座っている。
悠然と寝そべっていたものの――それは猟兵をみるとひどく苛立った様子で、殺気を顕わに身を起こす。
数メートルはある獣だ。
だが猟兵たちよりも先に、それの前へと飛び出した。
貧相な、動く屍。薔薇を咲かせ、胸に剣を刺した――娘の亡骸。
邪魔をするなといわんばかりに、獣――ノクト・ヴァニタスは吼えた。
双方の間に何の因果があるのだろうか、傍目には全く解らない。だが『共棲者』が獣に対し、抱く殺気は本物だった。
広々とした、四角く冷たい舞台の上――それぞれの思惑を踊らせ、幕は上がる。
●ケモノ
――ああ、この城はひどくひどい領主がいたとも。
ゆえに、その獣は義憤に駆られ、狩ったのだ――遠い遠い、骸の海に沈む前の話だ。
そして獣になったそれは、不意に、噎せ返るような人の臭いに喘いだ。
耐えきれぬと思い、本能の儘に食いちぎった。
それが救いであったのか――あるいは只の破壊であったのか、獣には存ぜぬことだ。
彼はいつの頃からか、ずっとずっと、人間が嫌いだ。
昔あいした分、今は本当に、見るもおぞましいほど憎んでいる。ゆえに、その増悪の儘に振る舞った結果――善きものも、悪しきものも、オブリビオンも、人間も。全て動かなくなっていた。
そうなってしまえば、此処はずっと静かで――うんと広い縄張ができたので、満足して居座ることにした。
――そして、今も此処に居る。
愚かな勇者がもし自分の前に現れたならば、この力で踏みつぶしてやろうと思いながら。
――・――・――・――・――・――・――・――・――
【プレイング募集期間】
10月20日(日)8:31~22日(火)24:00まで
――・――・――・――・――・――・――・――・――
冴木・蜜
……憎悪や嫌悪は
好意無き所には芽生えぬと言いますが
さて 貴方はどうなのでしょうね
私は他の猟兵のサポートを致しましょう
『偽薬』を使用
体内毒を限界まで濃縮
その上で体を液状化し
目立たなさを活かして潜伏
他の猟兵が避けきれぬ攻撃が叩き込まれる際
間に割り入って庇いましょう
物理攻撃ならば液状化し
衝撃を殺せますから
尾で攻撃して下さるのなら好都合
攻撃を受けた瞬間
すかさずその体に溶けた毒腕で触れ
包み込んで融かして差し上げましょう
巨大な生き物であろうが
私の毒は総ての命を融かす死毒
故にただ触れるだけで良い
あいしていたのに
何故憎むのですか
何故殺すのですか
貴方を苛立たせるものは何なのですか
スティレット・クロワール
おやおや、随分大きな子の寝床だったんだね
蛇君よりも随分と大きいね
私も人類を好いている訳でも無いけれど、人が嫌いな訳でもないからねぇ
ふふ、どこの悪役だって言われそうな気もするけれど
折角だから聞いてみようか
君はどうして嫌いになったのかな?
サーベルを掌に滑らせて、詩の蜜酒を展開しようか
霧や風を獣に晴らさせ、自由に聞かせて貰うよ
嫌だなぁ、私をいいようにしたいなら断頭台でも用意なさい?
共棲者の邪魔はしないように獣には言い聞かせておこうか
君が好きだったのは人間だったのか、それとも誰かであったのか。
あぁ、でも。
憎んでいるのであれば、君はまだ嫌いきれてはいなかったのかもしれないね
ーーされど全ては過ぎたことか
ニコラス・エスクード
嗚呼、まさしく獣だな
切り裂くに長けた歯牙
喰らい尽くさんばかりの大顎
そして呪詛にも似た人々への憎悪
紛う事無く、仇なす獣だ
彼奴は必ずや、討ち滅ぼさねばならん
殺意がこの獣の城より溢れる前に、
暴威に人々が飲み込まれる前に、
此処を獣の墓場へと変えてやろう
共棲者とやらが獣に矛を向けるならば、
それを大いに振るわせるが良いだろう
ならば盾であるが故、盾として動くとしよう
錬成カミヤドリにて盾を写し、操り、
共に戦う者達の守護と、共棲者の支援を
盾の群れ達と共に獣の攻撃を受け留める
如何に強大な獣であろうと、
守勢に徹すれば耐えうる自負はある
盾の群れ達と共に、剛力も怨嗟も
我が身を以って受け凌いでみせよう
芥辺・有
ふたつとも、随分な殺気じゃないか
獣と骸骨の気持ちなんか推し測れやしないが
死んで尚突き動かす情念ってどういうものなんだろうね
まあどうでもいいけど
好きにさせてやろうじゃないか
どうせ後から倒すなら、潰しあってくれたら儲けものなんだから
でかいのもそっちに気をとられてくれりゃ楽なんだけどさ
好きにやってろなんていって、近寄ったら無粋かな
それでも早々倒れられても困るし
デカブツもこっちを無視してくれるほど安くもないかな
壁のように大蛇を喚び出して
やっておいでと獣をひとつ指差す
牙を突き立てて、尾で払えと
あんまり大きくなってくれるなよ、狭苦しい
蛇の背を跳んで、牙の痕を狙って、杭でえぐる
ついでだ、受け取っておいてよ
●にくしみ
星空を閉じ込めたような獣だった。
深淵の如き深き体色が篝火に照らされ、その足元に、より深い闇を落としている。
「おやおや、随分大きな子の寝床だったんだね――蛇君よりも随分と大きいね」
腕に乗る機械仕掛けの蛇を前方の敵を見比べたスティレット・クロワール(ディミオス・f19491)の感想は、それだった。
獣から感じる敵意へ、藍色の双眸を柔らかに細めるばかり。
「嗚呼、まさしく獣だな」
ニコラス・エスクード(黒獅士・f02286)は既に臨戦態勢とばかり低く構え、四肢をついて睨みつけている。
切り裂くに長けた歯牙、喰らい尽くさんばかりの大顎――上から下まで一瞥すると、彼は何かを確かめるように肯いた。
「――そして呪詛にも似た人々への憎悪。紛う事無く、仇なす獣だ」
黒き騎士の声に、ゆっくりと瞬くは、芥辺・有(ストレイキャット・f00133)の大きな金色の瞳。
「ふたつとも、随分な殺気じゃないか」
惘れを隠さず、眼を細めた。
「獣と骸骨の気持ちなんか推し測れやしないが――死んで尚突き動かす情念ってどういうものなんだろうね」
顔見知りか、それ以外か。
根源で結び合ったオブリビオンたち。だが、どうにも獣は狂う屍よりも、猟兵たちに立腹している様子だ。
肌を刺すような鋭い殺気を向けられて、冴木・蜜(天賦の薬・f15222)は静かな視線をそれへと返した。
「……憎悪や嫌悪は好意無き所には芽生えぬと言いますが。さて 貴方はどうなのでしょうね」
問い掛けに、獣はただ牙を剥くだけ。
厳密に言えば、蜜は『ひと』ではないが――、その側に立つものをも、それは憎むのだろう。
「私も人類を好いている訳でも無いけれど、人が嫌いな訳でもないからねぇ」
対し、スティレットはそれをやんわりと見つめる。
獣がもつ激しい増悪は、骸の海より出でる前からの話か、否か――そんなことは、さて当人に聴いてみなければ解らない。
応えてくれるとも限らないけれど、曖昧な微笑を湛えた彼の近く、理由か、と有が小さく零す。
「まあどうでもいいけど」
二の句は、あっさりとしたものだった。
獣も、骸も――その理由も、どうでもいい。
「好きにさせてやろうじゃないか――どうせ後から倒すなら、潰しあってくれたら儲けものなんだから」
振り向き様に、黒髪が揺れる。彼女の視線の先――共棲者は後方で交わされる猟兵たちのやりとりなど歯牙にも止めぬ様子で、獣へと向かう。
厭うように、獣は咆哮をひとつ。その尾が躍り、大きくしなった。
見送り乍ら、すっと細く息を吐くは蜜。
「毒薬変じて薬となる 毒の手で救ってみせましょう」
彼は体内の毒を濃縮しながら――そして、輪郭を失っていく。
瞬間、尾が地を叩いた。
地を揺らす破壊音が居合わせる皆の脚を止めるが、とろりと、液状に変じた蜜の障害にはならぬ。
共棲者もまた、ふわりと軽やかに回転すると、尾の攻撃から逃れると、茨を獣に向け奔らせた。
夥しい数の茨は、周囲を取り巻く猟兵にもお構いなしだ。
困った子だねぇと茨を躱しながら、スティレットはひとたび距離をとる。
猟兵たちの前に、次々と、円盾が居並んだ。茨から、獣から、その身を守るために。
「彼奴は必ずや、討ち滅ぼさねばならん――殺意がこの獣の城より溢れる前に、暴威に人々が飲み込まれる前に、此処を獣の墓場へと変えてやろう」
ニコラスもまた獣へと肉薄しながら、低く笑う。
共棲者へと向かう爪を、自らが掲げる盾で庇い、ものいわぬ相手をも守る。
「その矛、大いに振るわせるが良いだろう」
彼のことばを、屍は如何に捉えたか。
ただ薔薇の香りだけを残し、それは荒れた床を蹴って茨を鞭のように叩きつけた。
その空間を埋めるのは、黒い霧、霧を広げるのは胸を詰まらせるような白い息――何より近寄り難き怨念を放っている。
まずはこれを片付けなければね、とスティレットは囁く。床のあたりで、尾の接近を再度待つ蜜は然程苦しんでもいないようだったが、ダメージが皆無ではあるまい。
彼はさっと美しいサーベルを抜き払うと、刃を薄く掌に滑らせ、血を滴らせた。
白尽くしの彼の中で、一点の朱が妖しく色づく。
「さぁ、私と話をしようか」
いつしか描かれていた蜜の香りを帯びた魔法陣から、異形の角を持つ獣が現れる――そして、スティレットは獣――ノクト・ヴァニタスへ、問い掛けた。
「君はどうして嫌いになったのかな?」
ひとを。だれかを。
獣に言葉はない――咆哮が、怒りが、びりびりと身を縛る。
だがスティレットの奔らせた獣は違う。
ぐんと角を低くして、霧を掻き分け、獣へ迫る。茨を踏み越えて跳躍すると、獣へ爪を奔らせる。
痛みか、怒りか。
オオオオォオ、空気を揺らす雄叫びに、うるさいよ、と有は眉を顰める。
「あんまり大きくなってくれるなよ、狭苦しい」
彼女の指摘通り――獣が徐々に身体を大きくしていた。
開戦時から一回りは、巨大化しただろうか。その爪や尾が届く範囲が、広がっているのを感じる。
「でかいのもそっちに気をとられてくれりゃ楽なんだけどさ――こっちを無視してくれるほど安くもないか」
小さな嘆息をひとつ。有の仕草が、何かを招く。
獣が周囲に纏わり付く共棲者や、スティレットの獣を避けるように暴れた。その四肢が跳ね上げ、飛来してきた瓦礫を――巨大な白蛇の雷纏う尾が薙ぎ払う。
「やっておいで」
指さし告げる方向へ、それは従順に従い、伸び上がる。
ニコラスの盾が空を横薙ぐ尾を受け止める。衝突に生じた衝撃波が、身を打ち付けるようだ。それだけなら耐えられる――髪を靡かせ、袖で口元を隠しながら、スティレットは小さく咳をした。
黒い霧と、白い風。荒れ狂う戦場で撒き散らされるそれは、猟兵たちを少なからず苛む。
「嫌だなぁ、私をいいようにしたいなら断頭台でも用意なさい?」
微笑する彼の代わり、角もつ獣が奔る。
狼に似たそれが、随分と太さを増した獣の脚を爪で裂くと、共棲者はそこへ茨を巻き付け、一気に引き裂く。
バランスを崩した獣へ、白蛇が迫る。その鋭い牙が、首元に喰らい付く――。
ガアァァアア――痛みに尾を振り回し、獣が跳ね起きる。
その粗暴なる動きを制限するように、ニコラスの盾が一斉に距離を詰める。
(「如何に強大な獣であろうと、守勢に徹すれば耐えうる自負はある」)
守りにだけ徹する彼の動きは幾度となく猟兵と――脆そうな共棲者を庇う。
獣の放つ怨嗟は、苦痛を伴うようなものではなく――前に進ませぬような斥力めいた力に似ていた。
それを物ともせず彼の隣を素通りしていく共棲者には、何の感情も言葉も浮かばぬが、黒き騎士はその身を盾として獣の前に立つことを、己が役割と決めていた。
「盾の群れ達と共に、剛力も怨嗟も。我が身を以って受け凌いでみせよう」
剣を持たず、盾のひとつを手に、尾も、瓦礫も、怨みすら。彼の振るう盾は全てを打ち払う。
どうと横に投げ出された尾へ――伸びる黒い腕があった。
影のように獣の近くで息を潜めていた蜜が、両腕を広げ――その体内で高めた死毒を、そのものである身体で触れる。
「巨大な生き物であろうが、私の毒は総ての命を融かす死毒」
故にただ触れるだけで良い――。
影のような液状の彼が、囁く通り。強靱な尾は途端、爛れ灼ける。
ひとの形を半ば取り直しながら、彼は問うた。
「あいしていたのに、何故憎むのですか。何故殺すのですか……貴方を苛立たせるものは何なのですか」
虚空の悲鳴をおいて、他の解はない。
すでにそんなこともわからぬほど、狂っているのだろうか――蜜は獣から距離をとりながら、すれ違いに踊る共棲者を見た。
怒れるものがふたり、か。
「君が好きだったのは人間だったのか、それとも誰かであったのか」
スティレットの藍色の双眸が細くなる。
「あぁ、でも。憎んでいるのであれば、君はまだ嫌いきれてはいなかったのかもしれないね――されど全ては過ぎたことか」
ニコラスが割り込む。天井が崩れ、瓦礫が次々と落ちてくる。
土埃が収まるとき、身を起こした彼も盾も、無傷の儘であった。
その背の影から飛び出すように、白蛇が身を起こす。大きく開けた顎、鋭い毒牙が、獣の背を穿つ。
白蛇の背を駆け上り跳躍したのは、有だ。
皆世話焼きだってのに、残念だね――彼女は、獣へ一声掛けた。
どんなに同情的でも、どんなに寄り添おうとも。そしてどんな過去があろうとも――ここに対立する三者に、滅びを介さぬ別れはない。
ましてや聞く耳も、語る言葉ももたぬ獣のこと。彼女にとっては鬱陶しい存在に過ぎぬ。
「ついでだ、受け取っておいてよ」
黒色の杭を傷口に叩き込む。
白蛇が穿った疵を更に深めながら、彼女は気怠げに目を伏せた。
苦痛と憎しみと。そんなもの、さっさと投げ打ってしまえばいいのに。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ジャスパー・ドゥルジー
パウル(f04694)と合流
おっ、あんたも来てたのか!
いっちょ派手にブチかまそうぜ
基本は鼠を相手取った時と変わらねえ
【ジャバウォックの歌】で相棒との共闘
俺自身も「かたわれ」で空を翔ける
俺らは囮、本命はパウルさ
そん中でも俺は積極的に敵に切り込んでいく
奴の動きを封じるように顔の周りを飛び回ったり
ちゃちなナイフでチクチクしたりな
相棒にゃド派手に炎を吐いて貰って
とにかく奴の狙いをパウル達から逸らす事を重視
術を封じる技だけは
お互いなんとしてでも避けようぜ
負傷は程々にしておかねーとなァ
…程々に、な?
「八つ当たり」って気持ちイイもんな
少しぐらい当たってやるよ
【激痛耐性】もあるし
何より俺も気持ちイイから
パウル・ブラフマン
ジャスパーくん(f20695)と合流。
イイね!一緒にダンスパーティーと洒落こもうぜ。
ジャスパーくんとカノジョさん(ジャバウォック)が
メインダンス(正面攻撃)をしている間に
Glanzに【騎乗】したまま随時死角へ回り込む。
Krakeを展開し【援護射撃】。
FMXさながらの【運転】テクを駆使し
尾の攻撃を躱していくね。
降り下ろした直後を狙って―UC発動!
尾を巨大化した手錠と鎖で拘束したい。
記された文字は『grief』―尾の付根を狙って【一斉発射】。
悲しい誤解が解けるまで
骸の海でおねーさんとダンスの続きをどうぞ。
ジャスパーくんが昏倒しかかったら優しく救助を。
※共棲者にはまだ攻撃しない
※絡み&アドリブ歓迎!
●かなしみ
腹の底に響くような音――慣れ親しんだそれに、ジャスパー・ドゥルジー(Ephemera・f20695)は機嫌良く振り返った。
「おっ、あんたも来てたのか! いっちょ派手にブチかまそうぜ」
愛機Glanzに身を任せた儘、パウル・ブラフマン(Devilfish・f04694)はジャスパーへにかりと笑みを返した。
「イイね! 一緒にダンスパーティーと洒落こもうぜ」
返答は高らかに鳴るエンジンの音、軽く視線を交わすなり、双方分かれる。
広間は随分と様子が様変わりしている――天井も床も、獣が暴れたことで荒れて、獣自身も一回りか二回り巨大化している。
それらをジャスパーはにやりと見つめ、唇を軽く舐めた。
「出番だぜ、相棒」
新たな肉を抉りながら、その背のタトゥーが燃え上がる。燃える血が作る炎で空へ駆る。
宙に浮かべば戦場がよく見渡せる――共棲者が瓦礫を諸ともせずふわりと踊る姿や、すっかり悪路と化した床を、バイクが跳ねる様。
負けてられねぇな、と囁きかける相手は魔炎龍ジャバウォック――炎を湛える顎、獣を見据える凛々しい眼差し、その鋭さにますます笑みを深めながら、ジャスパーは獣の鼻先めざして滑空する。
同時に、ジャバウォックより黒炎が放たれ、大地が黒く染まる。塵が燃えたか、もうもうと黒煙が獣の胸元近くまで覆う。
くるりと手首を返し、ナイフを閃かせる。
巨大化した獣の皮膚に、掠り傷のようなものを残し、ジャスパーは再浮上する。
厭うように、それは首を振るう――ずらりと並んだ牙は、近くで見ればなかなかの鋭さだ。
噛みつかれたら、ごっそりもっていかれそう。
「負傷は程々にしておかねーとなァ……程々に、な?」
武者震いとはまた違う身震いを密かに。くるりと取って返し、再び仕掛ける。相棒は彼の望み通り、黒炎を派手に吐いている。
意を共有しているかのように連動する両者の攻撃に、苛立ちまじりに尾が跳ねる。
それは見当違いを叩けど、石造りの床は易々めくれ上がる。共棲者の茨が編み目が如く獣に巻き付いて、それは宙に逃れているようだが――。
パウルは気合いの声ひとつ、殆どひっくり返った石畳みに全速力で突っ込むと、バイクごと回転しながら、別の瓦礫の上に飛び乗り、前進する。
尾を避け、大きな迂回を繰り返しながら、すっかり黒煙で隠れ、獣の視界には入らぬ。時折、触手に備えた砲台が四方へ銃撃を放って、ジャスパーへの援護を行いながら。
「でも、カノジョさんのが巧く援護してるカンジ……!」
くう、と唸る。黒い炎はパウルの進路を誤魔化し、獣から彼を隠すよう広がっている。
負けじと、彼は身体を倒した。
神業トリックさながらの、見事な一回転も、離れ業も、鮮やかに決まるものの、誰にも見て貰えぬのは残念な限りである。
それでもパウルが萎えることはない。頭上を飛び交う超常の業と、直撃すれば死すら過ぎる尾の紡ぐ烈風。悪路というより走行不可能としか思えぬ瓦礫の山を、脅威的な集中力で捌いていく。
それでも予測不可能な拳大の瓦礫が流れ弾と降ってくることがあったが――時々、盾が自分を守ってくれることがあった。
サンキュ、と深く機体に身を委ねた時。大きく巨体が転回して、尾が天を払う。
何か、赤いものが降ってきた、烟る向こうに血の臭いを感じる。
横面を思い切り叩かれて――顔の半分を血で染めたジャスパーは笑った。鼻と口が切れたらしい。直前にナイフを思い切り頭上に刺した応報なら、割に合っている。
加速して直撃は避けたが、間に合わず――身体が一瞬怯んだ隙に、猛る牙が自分を捉えようと迫ってくる。
「『八つ当たり』って気持ちイイもんな――少しぐらい当たってやるよ」
時間は計算していた。パウルの気配を相棒と共有し、そろそろ目標地点に到達しているだろう。
そして、頭を今自分の元へと固定するならば、彼の方角を向くのは――。
否、本音は。
(「何より俺も気持ちイイから」)
しかし流石に直撃は拙い。炎の火力を上げて、身を守りながら、獣の注意を独占する――。
識ってか知らずか、パウルは下がってきた尾へ向け、真っ直ぐ向かう。
「この世は素晴らしい。戦う価値がある。―後半は賛成だ、だっけ?」
首輪から具現化した伸縮性の鎖が、尾と彼を繋ぐ。爆発が、黒煙を吹き飛ばし、輝くGlanzと、パウルの姿を顕わにした。
その先に掛けられた巨大な手錠には『grief』と刻まれていた。
「悲しい誤解が解けるまで、骸の海でおねーさんとダンスの続きをどうぞ」
鎖を抑えながらバイクを奔らせながら、パウルが片目を瞑って見せた。動きを殆ど止めた獣へ、共棲者が茨を垂直に叩きつけた。
即座に、鋭い棘が絡みついて、獣は口を開いて大きく身を反らす――そこからゆっくりと落ちてきた影へと、パウルはすぐさま駆けつける。
ジャバウォックは気を抜かず、再び黒炎を湛えて、獣を牽制し――すっかりダンスホールとは呼びがたい形状になった戦場に、次の風が吹く。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
鹿忍・由紀
まずは遠くから敵達の動向観察
潰し合ってくれるのが一番楽なんだけど
上手い具合に共倒れ、ってわけにもいかないか
ケモノから共棲者への致命的なダメージが入らないように
弓での援護射撃で意識をこちらに向ける
これは嫌悪感、かな
随分大きく膨れ上がったもんだね
吼える敵を見上げながら動きに警戒
距離をとって敵の急な動きにも対応出来るように
追いつかれないように避けていく
踏み潰されそうな程距離を詰められたら
ふと諦めたようにも見える地に向く視線
振り下ろされる敵の足に向けて影繰を伸ばす
敵の勢いを利用して深く深く刺し貫いてやる
攻撃兼足止めで怯んだ隙に距離を取り直す
そんなに俺のことが嫌いなら
期待通りに嫌がることをしてあげるね
ユルグ・オルド
同族で相打ちしてくれたら結構じゃアない
どっちにしたってやることは変わんないさ
お知り合いだった? なんて答えもなし
割って入ンのも無粋かと思うが悠長に待ってる場合でなし
つったって巻き添えはご免蒙りたいもんだから
ぶつかったとこから様子伺いつつ駆け出そう
躍らせんのはシャシュカの一本と
こんだけでけぇ図体してンなら見切りやすいかしらっと
あんまり真向で受けたくないので弾くよりは避けたいね
お休み邪魔して悪かったよ、て
多少の気をひければ十分じゃない
目移りするなら結構で、こっち見るなら他への隙になんでしょう
終いにはつまり倒せるンなら、同族殺しでもいいが
懐へ飛び込めるんなら熄でもって切り込もう
●いたみ
「同族で相打ちしてくれたら結構じゃアない」
ユルグ・オルド(シャシュカ・f09129)の言葉にゆっくりと鹿忍・由紀(余計者・f05760)は肯いた。彼が見ていようがなかろうが構わぬ、由紀の本心だ。
「潰し合ってくれるのが一番楽なんだけど……上手い具合に共倒れ、ってわけにもいかないか」
猟兵たちも戦っているが、どうにも獣は頑丈だ。茨を武器とする共棲者には少々相性が悪いようで――次から次へと力任せに引きちぎられた茨の蔓が、あちらこちらに散らばっている。
「これは嫌悪感、かな――随分大きく膨れ上がったもんだね」
由紀は嘆息する。いよいよ、天井に頭がつこうかというほどに巨大化した獣は、満身創痍と傷を抱えながらも尚猛る。
「どっちにしたってやることは変わんないさ」
はは、と軽快にユルグが踏み出す。手にしたシャシュカと共に、積み上がった瓦礫を駆って、前へと躍る。
「割って入ンのも無粋かと思うが悠長に待ってる場合でなし――順番に、てね」
赤い双眸は笑いながらも、自分に向かう礫や、獣の全身の躍動を見極めて的確に距離を詰めていく。
片や、由紀はクロスボウを手に、距離をとりながら様子を窺う。
幸い、瓦礫で身を隠す場所は多い――ただ、過信していると、獣の僅かな身じろぎで吹き飛ぶことがある。獣の攻撃の直撃を受けていない数枚の盾が残っており、これで窮地を凌いだ猟兵もいる。
「的はでかくて助かるけど……効いてるかな」
細められた由紀の瞳に映るは、矢を受けても平然としている獣の姿だ。大きく膨れあがったことで、小さな疵で狼狽えることもなくなった。ただ、先に刻みつけられた傷は大きく引き裂かれて、痛々しい口を見せていた。
「付け入るなら、そこだね」
飄飄と、ユルグがいう。猟兵たちの動きを無視し、茨が伸びるを軽く傾いで避けながら、剣を振り上げる。刀身の輝きに、獣が首を回す。
その隙に由紀も距離を詰める――安全圏からの攻撃は、あまり意味を成さなさそうだ、と。諦めてしまえば、無駄なことを彼は繰り返さない。
獣が苛立ちを隠さず、四肢を適当に動かせば、足踏みで生じた地響きひとつで全身が震えて狙いが定まらぬ。
だが、よく見れば、それは共棲者の動きの模倣であった。
瓦礫の中心で、薔薇を咲かせた骸は踊っていた。戦場であることを忘れるような、長閑な舞いだ。洗練されてもいない、素朴な舞い。
共棲者の隣を擦り抜ける際に、ユルグはふと唇を解き、
「お知り合いだった?」
どうせ答えは無いが、問うてみる。
口の無いそれは黙々と踊っている――まるで、さっさと倒せと促すかのように。
それなら、それで。軽く身を翻すと、油断はせず、獣に向かい、跳躍した。
一刀、二刀と試すように斬りつける。手応えは確かだが、相手に堪えた様子がない。今更、脚やら爪と戯れても仕方が無いかと、ユルグは先程まで斬りつけていた獣の脚を、脚掛け、身体の側面から、上へと駆け上がる。
「お休み邪魔して悪かったよ」
彼を振り払おうと、尾が横薙ぐ。それを身体に縋るようにして、堪える。この尾が斬れたらいいんだけども――はてさて、そちらを狙うよりも。
「さっさとお休み――」
――王手、と囁き、一気に詰める。斜めに避けた抉れた傷――毒に塗れて爛れたそれへ、高く掲げた剣を叩き込む。
血が、噴き出す。血は青く、傷口は星空のような不思議な色をしていた。
痛みが呪縛を解いたのか、獣は大いに暴れ、身体を、尾を捩って跳ねる。
「俺ばっかり気にしてていいのかな?」
問い掛けと共に、柔らかに飛び降りる――片足を振り上げた獣の足元で、由紀の感情の起伏が乏しい青い瞳が、上目遣いに一度それを見やって――俯く。
自分に落ちる巨大な影を眺めて、諦めるかのように――。
「絡めとれ」
ぽつりと発した言葉が解き放つは、無数の棘――それは獣の影から、次々と飛び出し、脚を降ろさずには居られない獣は、自重でその全てを深く踏み抜いた。
それは声も無く、戦慄いた。魔力で生成された影の棘は何処までも続き、何処までも着いてくる。逃れようも無い。何故ならば、獣の影から生成されるものゆえに。
「そんなに俺のことが嫌いなら、期待通りに嫌がることをしてあげるね」
ふわりと軽く距離をとった由紀が、獣に囁く。淡淡と向けた声音は、いっそ親しげに響いた。
敵意には敵意――そして、仮にその理由を識ったところで、情を掛けることもない。
その一点でのみ、お互いのスタンスは等しい。
獣の流す血が最早殆ど元の状態を残していない石畳に広がっていく。試すように、小さな吐息をひとつ、ユルグが剣を返して、深く踏み込む。
「倒せるンなら、同族殺しでもいいが、」
振り下ろせば、爪の一つを易々斬り飛ばす――先程までのびくともせぬ屈強なる脚は、無数の棘に穿たれたことで、ひどく脆く――自分を支えるのが精一杯の状態まで、追い込んだ。
「そろそろかね」
不敵に笑って、曲刀を振り上げた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
コノハ・ライゼ
これまた素晴らしい舞台だコト
口笛ひとつ、満ちる殺気に笑み深め
『共棲者』は……まあヤル気に溢れてるみたいだし手は出さずにおくわ
コッチに都合がイイコトがありゃ使わせてもらうし
ソッチも好きに利用すればイイ
お互い派手に踊りましょ
デカいから見落としそうにはないケド
得体の知れない動きしそうだからしっかり『見切り』躱してく
そも好かれる為に来た訳じゃねぇし、どう思おうと封じさせてもらうわ
好き嫌いしちゃ大きくなれないヨ、ってネ
踏み込んだ足元の影から【黒嵐】呼び起こし敵へとぶつけて
『2回攻撃』で刻まれた『傷口をえぐる』よう狙い
「柘榴」を深く捩じ込んでの『生命力吸収』
こう見えて命賭けてンの、手早く喰われて頂戴な
リーヴァルディ・カーライル
…ん。死人に口なしと言うけれど…。
時に言葉よりも雄弁に心が伝わる時もある。
…そこの獣とどんな因縁があるかは知らないけれど。
手を貸すわ。それが貴女の安息に繋がるのなら…ね。
今までの戦闘知識から骸は警戒するが手出しはせず、
殺気や気合いを暗視して攻撃を回避しながら【血の魔線】を発動
片手に繋いだ存在感の無い不可視の魔糸を目立たないように操り、
敵に糸を纏わせ生命力を吸収する闇属性攻撃を行い力を溜める
第六感が好機を捉えたら獣の攻撃動作を見切り拘束、
カウンターの要領で敵の怪力も利用して魔糸を吊り上げ、
傷口を抉る呪詛を纏う大鎌をなぎ払い仕留める
…ここは人が住む世界よ。
骸の海に還るが良いわ、ノクト・ヴァニタス。
ロカジ・ミナイ
おや…、ハハッ!大きな獣だ
脳みそは小さいタイプかい?…そう
僕もね、半分獣だけどさ
賢すぎて君の気持ちが分からなくなっちゃったよ
やだねぇ、人間って
しかしまぁ…こんなだだっ広いとこに一匹で寝っ転がってたのかい?
いつから?暇なの?暇するのに忙しいの?
そうだ!友達を紹介してあげようじゃないか
八岐大蛇の仲間らしいんだけどね
頭が一個迷子なんだけどさ、一匹で七頭の友達だなんてお得でしょ
出ておいで、僕の大蛇
ちょいと話し相手にでも…ええ?腹が減ったって?
しょうがないなぁ
確かに七頭で分けるには丁度いい大きさだ
それじゃあ僕は悠然と後方待機で…
え?分かったよ
自分に縁かかった火の粉は自分でなんとするよ
倍返しは得意なのよ
●くるしみ
虚空に短い口笛が響く。
「これまた素晴らしい舞台だコト」
コノハ・ライゼ(空々・f03130)が口元を悪く歪めた。
細めた視線の向こう、共棲者は獣のすぐ傍で戦い続けている。よくその力が尽きぬものだと思う。獣が放つ怨念よりも強い怨念。
さて、どちらの方が美味いカシラと――、脳裡に過ぎるは、癖のようなものか。
「……まあヤル気に溢れてるみたいだし手は出さずにおくわ」
くるりと手首を返せば、いつしか彼の両手には揃いの牙が鋭く輝く。
「……ん。死人に口なしと言うけれど……」
肯くように、首を傾げ――リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)の銀髪がさらりと一房流れた。
臨戦態勢なのは、獣も、彼女も同じ。
戦場を見通し、自分が何処に立つべきか――共に立つものとどう戦うか。冷徹な思考は既に判断を下している。
「そこの獣とどんな因縁があるかは知らないけれど。手を貸すわ。それが貴女の安息に繋がるのなら……ね」
静かなる声音で囁くと、コノハとは別の方向へ向かい、地を蹴った。
獣の動きから目を逸らさず、駆けながら、魔力を練り上げる。
「……限定解放。この糸から逃れる事はできない、血の魔線」
無数の血糸は、顕現するや否や、その気配をすっと消した。存在しているものだ――じっと目を凝らせば見えるだろうが、狂瀾の獣にはこの程度で充分だ。
何より、可視かどうかを問題とする前に、獣は大きくなりすぎた。無造作に腕を動かすだけで、簡単に括れてしまう程度には。
実際、共棲者の茨は既に獣の全身に巻きつけられており、鋭く尖った棘が青い血をゆっくりと吸い上げているようだった。
それでも未だ足りぬというように、両腕を伸ばすその骸の近く、紫雲に染めた髪がふわりと軌跡を描く。
「お互い派手に踊りましょ」
答えは無い。答えは待たない。さっと跳ねて、距離を詰める。
コッチに都合がイイコトがありゃ使わせてもらうし、ソッチも好きに利用すればイイ――体現するように、コノハは強く張られた茨に足かけ、上へと移動していく。
今や獣の周囲は無数の足場が張り巡らされ、どの方角からでも仕掛けられる。
それを利用し獣の攻撃を避けるコノハと、己の糸の力を絡めて弱らせようと、それを防御に使うリーヴァルディ。
そんな二人の動きを余所に、でっかいなーと見物するかのように手を翳して声をあげた男がいる。
「おや……、ハハッ! 大きな獣だ。脳みそは小さいタイプかい? ……そう。僕もね、半分獣だけどさ――賢すぎて君の気持ちが分からなくなっちゃったよ。やだねぇ、人間って」
親しげにロカジ・ミナイ(薬処路橈・f04128)が猛る獣へと言葉を投げれば、獣は牙を剥き出しに、首を返す。
ひりりと肌を刺すような殺気が自分を捉えようと、何処吹く風と言わんばかりに、彼は暢気に続ける。
「しかしまぁ……こんなだだっ広いとこに一匹で寝っ転がってたのかい? いつから? 暇なの? 暇するのに忙しいの?」
畳み掛ける問いかけに、尾が唸る。おおっと、とひょいと後ろへ飛び退り、ぽんと手を叩く。
「そうだ! 友達を紹介してあげようじゃないか――八岐大蛇の仲間らしいんだけどね。頭が一個迷子なんだけどさ、一匹で七頭の友達だなんてお得でしょ。出ておいで、僕の大蛇」
名案だと、からから笑い、ロカジは掌サイズの蛇のようなものをぽいと瓦礫の中に放りこんだ。
途端、むくむくと大きくなっていく。煙管を片手にそれを見守るロカジの表情はにこやかな儘であるが。地味に、若さを少々、捧げている。
「――ちょいと話し相手にでも……ええ? 腹が減ったって?」
すっかり獣と渡り合えるほどに大きくなった七つ頭の大蛇が、代わる代わるに喉を鳴らす。
「しょうがないなぁ。確かに七頭で分けるには丁度いい大きさだ」
好き嫌いせず、たんとお食べ。
嘯けば、大蛇が巨体を物ともせず跳びかかった。
獣と、大蛇とが喰らい合うような姿勢に入り――尾が暴れる。それの足元は深く穿たれ、動作はひどく緩慢だ。
「それじゃあ僕は悠然と後方待機で……」
激しい地響きと、砂埃に、咳き込みながら蹌踉け――薙ぐ尾から、戯けるように身を躱す。
七つも頭を持つ大蛇は全く振り返らないが、並々ならぬ殺気が己を狙っていることは解る。
「え? 分かったよ。自分に縁かかった火の粉は自分でなんとするよ」
倍返しは得意なのよ。
さて妖刀握るか、煙管で叩くか、どうしようかなァと始めた彼を余所に、大蛇は獣へ噛みついていく。
頭を、首を、肩を、固定するように七頭の牙が、食いちぎらんと奮う。
「オトモダチ、ねぇ」
その様を眺めて、すうっと細くなった薄氷が、何を考えたのかは解らぬが。
コノハの接近に気付いた獣が、せめてもの攻撃をと尾を薙いだ。
さっと身を低くして彼は躱す。叩きつけた風圧が彼の頬を浅く裂いた。指を添えて、赤い滴りをそっと拭い、口元に笑みを浮かべた。
「そも好かれる為に来た訳じゃねぇし、どう思おうと封じさせてもらうわ」
吹きつける風に逆らうように瓦礫を飛び降り、たん、と強く影を踏む。
「好き嫌いしちゃ大きくなれないヨ、ってネ」
黒き管狐がその足元から旋風を起こす――四方八方、獣をぎゅうぎゅうと押し込むような風が、それ以上の生長と、身の自由を奪う。
不自由さは既に極まっている。だが、そこに合わせて、リーヴァルディが紡いだ魔糸を引く。獣の巨体をまるまると吊り上げるのは難しい――だが、動きを完全に止められたのなら、充分だ。
大蛇が堅く絡みつく。ますます深く食い込む牙に藻掻く獣へ、コノハは風に乗り、加速する。振り上げた両腕の牙が妖しく煌めいた。
「こう見えて命賭けてンの、手早く喰われて頂戴な」
半端な方向へ彷徨う尾へと一息で迫り――閃光が如く刃が奔る。
両腕を交差させ、猟兵達が繋げた傷をナイフが深く抉り、ぶつり、と一足先に噛み千切る。
コノハの何倍も太い尾から迸る青い血で全身を染めながら――彼は地へと降り立つ。
ふと見上げれば、尾の先に絡みついた茨が、それを奪い、力任せに引き離すのが見えた。あれのお陰で滑らかに切断出来たのだろう。
一気に無防備になった獣の背で、ひとりの女が黒き刃を薙いだ。瓦礫と、埃を払う横一直線に結ばれた黒い線――その向こう。
リーヴァルディの紫色の瞳は、じっと獣を見つめて逸らさない。
青い血を全身から噴き出し、それを守る黒霧は晴れ。呼気を吐き出そうにも、その首元には深々と大蛇の牙が突きたてられている。
天を仰いで、呻くことしか出来ぬ獣の背を、彼女は柔らかに蹴って、高らかに舞い上がる。
「……ここは人が住む世界よ。骸の海に還るが良いわ、ノクト・ヴァニタス」
リーヴァルディは淡淡と告げると、大鎌を獣の首へ振り下ろす。
月の弧を描くように、ゆっくりと。刃は滑らかに彼女の腕の中で半回転し――それと、それを、切り離す。尾の時と同じく、その首を引くような茨が、彼女の視界の端に映った。
そして――今際の際まで、獣は強い怨念を猟兵たちに向け続けていた。
――あいしていた。あいしていたとも。
だのに、ひとは。ひとをまもってきた自分を怪物と呼んで。
挙げ句にこの身を裂いて剣を作った。
そいつはここにはいない。だから、そして骸の海を巡り、また自分は何処かで怒り狂うのだろう。
――ねえ、きみもそうなのか。
それとも。
そして獣は蛇に綺麗に平らげられ――須臾、不気味な沈黙が落ちた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『共棲者』
|
POW : Embraced by wild roses
【勢い良く生え茂る茨】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD : One is nine
自身の【左胸の短剣】が輝く間、【茨】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
WIZ : Would you like to
【絡繰る踊り】を披露した指定の全対象に【共に踊りたいと思わせる】感情を与える。対象の心を強く震わせる程、効果時間は伸びる。
イラスト:すろ
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「メルヒェン・クンスト」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●因果
灼熱の世界に取り残されて、苦痛の片隅にだけ、存在していた。
自分の身体がどうなっているのかなんて解らない。貴族の遊びは残酷だ。正気で認識してなどいられない。だが、理性を容易に手放すことも、許しては呉れなかった。
『綺麗な花を咲かせて見せてね。あいつの花に負けたら、あんたの目を抉ってやるわ』
『今度はもっと美しい色の……そうだわ、全身の骨を折ってしまいましょう。柔らかくなってもっと深く根付くはずよ』
ああ――ぎりぎりの人間性を維持して、わたしは耐えていた。どんな形でも、一日でも、一瞬でも、長く生きていたい。
死ぬのは怖い。そう思う気持ちが強かった。
そういう生き汚い心に縋り続けるか、或いは棄てるか――懊悩し続けた。
そして、あの日、獣が現れた。
圧倒的な力と残虐性の塊であった領主を、それは易々と屠ってしまった。
しかし、絶望する暇はなかった――わたしの繋ぎ続けてきた命もまた、そこでぷつりと切れてしまったのだから。
肉体に埋め込まれた『何か』が、遠い何処かで『わたし』を巻き添えに目覚めさせたけれど。
これは奇蹟では無い。これは復活ではない。
――もうわたしはわたしではない。そして、今、このたった少しの『未練』も消える。
残るは炎。怨嗟だけで焚ける焔。
踊れ、踊れ――わたしの中に根付く怨みよ。
この世界の生を憎んで、怒って、壊してしまえ。
●死と踊る
瓦礫ばかりのダンスホールに、残されたのは、猟兵と共棲者であった。
その身に宿る狂気は未だ猛り――傷付いた身体に茨を巻き付け、彼女は猟兵と戦う意志を見せた。
片や、猟兵たちも――獣との交戦で、心身共に多少の疲弊を覚えている。
先程まで共闘状態にあった間柄ではあるが――言葉も無い。視線も無い。交流も無い。
意志のようなものは感じるが、到底疎通出来るものではなかろう。
それは既に骸。失われた時を、彷徨う器に過ぎぬ。
戦いによって、その魂を送ることができるのも、猟兵ゆえに。
喩え他のオブリビオンであらば、一時の休息に過ぎぬとしても――この個であらば。
――・――・――・――・――・――・――・――・――
【プレイング募集期間】
10月28日(月)~30日(水)24:00まで
――・――・――・――・――・――・――・――・――
ロカジ・ミナイ
人だった時は、きっとべっぴんさんだったんだろうねぇ…
多分、そんな気がするだけだけども
今だって綺麗よ、だってお花ちゃんが咲いてるんだから
僕も自分の死体に花が咲いたらいいなって常々思ってんのよ
僕に刃を向けるって事は、帰りたいって事だよね
ああ、僕には分かる、その理屈が
もとより仲良しが出来るなんて思っちゃいないさ
ならば、その願い通りに送ろうじゃないか
眠る前に送るのが品行方正な男の行動よ
懐から取り出した錠剤を一つ二つ、水無しで飲み下す
効能は、単純な攻撃力強化
ちんたら引き止めておくような男じゃないんでね
さっさとケリをつけようじゃないの
この世に、君の魂に
ニコラス・エスクード
その物言えぬ身にて何を抱いているか
それ知る理などなく
それ知る由もない
だが歪であれど轡を並べた仲だ
彼奴の有り様に憐憫を覚えぬでもない
その身を裂くような荊棘どもを掃い散らし
骸は骸へと還してやろう
首落としの刃に血を零し
『ブラッド・ガイスト』にて刈り喰らう為の刃へと成す
多少の痛苦など意にも介さず
乱れ狂う茨の群れは盾と鎧にて受け凌ぎ
血染めの刃にて払い進む
我が身は報復者の盾であり、刃である
その身に怨嗟が渦巻くならば
我が刃にて喰らい尽くす
その心に憤怨が燃ゆるならば
我が身にて貰い受ける
燃え果てた亡骸は亡骸へ
素っ首叩き落とし、
正しき黄泉路へと送ってやろう
コノハ・ライゼ
よく分かんないケド、ひとつは果たした……って空気ネ
意思をもって動いてる、その上で戦うというのなら
原因や理由なんてドウだってイイわ
ダンスを続けマショ、このコ達も踊りたがってるの、と
残った新しい傷が無ければ「柘榴」で肌裂き【黒涌】を生む
アンタの動きはようく見させてもらったからネ
襲ってくる茨へは影狐を命中重視で向かわせ、爪牙で切り落としてもらおう
捌ききれない分は軌道読み『見切り』
『2回攻撃』で茨の合間縫い踏み込むヨ
フィナーレはどんなステップで?
「柘榴」で抉る肉の無い手を刺し束の間踊りに興じたら
もう片方の刃で絡む花と茨を刈り取って、そこから『生命力吸収』するわ
恨みの炎は燃やし尽くして、ゆっくりオヤスミ
●茨の先に
視線の無い、その屍が猟兵と向き合う体勢になったこと。
茨を巻き付けた身体。赤い大輪の薔薇を咲かせた容貌。胸に刺さる剣。
それが決して労いのためでも――別れを告げるための動作でもないことは、説明されるまでもない。
そして、対峙した猟兵たちが驚くこともない。元々、解った上で此処にいる。
「人だった時は、きっとべっぴんさんだったんだろうねぇ……」
共棲者を見つめて、ロカジ・ミナイ(薬処路橈・f04128)がしみじみと呟く。
――多分、そんな気がするだけだけども。
いやいや、相手が気を悪くしたなどとは思わないが、彼は自らその感想を軽く否定し、続けた。
「今だって綺麗よ、だってお花ちゃんが咲いてるんだから――僕も自分の死体に花が咲いたらいいなって常々思ってんのよ」
にかりと笑って髪を撫でる。明るい毛先が指先で踊る。
彼の言葉に、骸はうんともすんとも言わぬが――猟兵たちをゆっくりと一瞥しているような様子で、どうやら距離を窺っているようだ。
無差別に仕掛けて来ないのは、消耗ゆえか。
「よく分かんないケド、ひとつは果たした……って空気ネ」
コノハ・ライゼ(空々・f03130)は手にした刃を、ひゅっと下へと振り下ろす。
先の戦いの残滓を払って、新たな輝きを取り戻したそれを手放さぬ儘、穏やかな微笑を浮かべた。
何とも――それは敵を前にし、臨戦と整っているとは思えぬ美しい笑みだった。
「意思をもって動いてる、その上で戦うというのなら、原因や理由なんてドウだってイイわ」
彼の言葉に、寡黙に肯くはニコラス・エスクード(黒獅士・f02286)――皆へと配した盾は全て役目を終えて、今は断首台の刃をもつ剣を掲げている。
「その物言えぬ身にて何を抱いているか……それ知る理などなく、それ知る由もない」
黒い兜の下から零れる低い声音は、ただ静かに。
誰も見ることは叶わぬが、ひそり瞑目し、敵を思う。此処に至る因果は解らぬが――目の前に存在する茨に支配された骸は、確かに存在している。
痛々しさと、狂気が満ちる程の憎悪と殺気を身に纏いて――。
(「彼奴の有り様に憐憫を覚えぬでもない……」)
「だが歪であれど轡を並べた仲だ――……その身を裂くような荊棘どもを掃い散らし、骸は骸へと還してやろう」
ゆっくりと前へと刃を傾ける。
長上なる剣の重みを微塵と感じさせぬ、堂とした構えだ。
その横を軽やかに駆ったのは、コノハだ。華やかな髪が揺れて、柔らかな残像を描く。
すっかり血の固まってしまった傷を、自ら裂いて、新たなる鮮血を掲げながら、
「ダンスを続けマショ、このコ達も踊りたがってるの」
誘いに応じて――共棲者の腕が僅かに上がった。
そして、茨が伸びる。それが差し向けた方角のみならず、猟兵の在不在を問わず、無作為に茨が走って貫く。
それを、コノハの血から生まれた影狐が裂いた。隙間へ身を潜らせれば、横から茨が視線を遮るように薙いできた。
近づこうとすれば、それを阻止するように茨が這う。易々貫かれるようなことはないが、影狐と共に刃で茨を裂きながら駆ける姿は、まさに踊っているかのようだ。
一挙に茨で溢れた戦場から、ロカジもまた転がり出るようにして距離をとる。取らされた、というのが正しいのだろう。
先程までは共棲者まで一歩踏み込めば届くという距離感であったところを、数十歩は引き離された。
広間はすっかり瓦礫まみれだったが、獣の死骸が消え失せた空間だけが奇麗にぽっかりと空き、まるでステージのように残されていた。その中央で、共棲者はひとり踊る。
その姿は狂気に満ちているが、少しずつ、人らしい動きを失っているように思える。
「僕に刃を向けるって事は、帰りたいって事だよね……ああ、僕には分かる、その理屈が。もとより仲良しが出来るなんて思っちゃいないさ――ならば、その願い通りに送ろうじゃないか」
滔々と語りかけながら、ロカジは懐から錠剤を一つ、二つ、取り出すと、さっとそのまま口に放り込む。
水も無く飲み干せば、ワッ、にがい……、と戯けるように零し。
「眠る前に送るのが品行方正な男の行動よ」
すらりと抜き払うは窈窕たる妖刀。なみなみと光を浮かべる刃を傾け、彼は地を蹴った。
向かう茨をざくりざくりと斬り下ろし、骸へと迫る。
大雑把な剣の取り回しはいっそ役者の立ち回りのようで、窮地すら仕込まれたように宴となる。茨を貫く三方の鏃、残す一方は、押し寄せる茨を正面から受け止めた。
「我が身は報復者の盾であり、刃である」
ニコラスの言葉が重々しく響く。鎧の隙間より匂うは血。棘に敢えて触れ、刃へと滴らせ――剣の性質を変容させる。
「その身に怨嗟が渦巻くならば、我が刃にて喰らい尽くす――その心に憤怨が燃ゆるならば、我が身にて貰い受ける」
捕食者へと変じた首落としが、一閃、真っ直ぐに振り下ろされた。
途端に茨がごっそり屠られる。その道を彼は悠然と歩いて進むだけだ。道が再び茨で覆われるまでに、次の一閃を繰り、彼の道が遮られることはない。
細い蔦が絡まる程度ならば、引きちぎって進む。剣を持つが、彼は元々盾なのだ――些細な傷も痛みも、彼の歩みを押しとどめられぬ。
「燃え果てた亡骸は亡骸へ――素っ首叩き落とし、正しき黄泉路へと送ってやろう」
大きく身体を開くように、剣を掲げる。
高々と振り上げられたそれは、まさしく処刑台に備えられていた時のように、落ちる時を待っていた。
それぞれの間合いへと、三者が揃ったのはほぼ同時。
「ちんたら引き止めておくような男じゃないんでね。さっさとケリをつけようじゃないの」
妖刀を振り上げ太い茨を両断したロカジが、にかりと笑えば、ひょいと軽やかに、コノハはのたうつ茨を蹴って、空に舞う。
その脚を縛ろうと茨が巻き付けば、やはり、その傷から影狐が牙を立てて食いちぎった。
「アンタの動きはようく見させてもらったからネ」
無防備――とまではいかぬが、漸く障害もなく定めた骸の姿。死臭の代わりに薔薇の香りを纏うそれへ、彼は笑みを向ける。
「フィナーレはどんなステップで?」
頭上からもたらされた軽やかな両刃のナイフと、腰元へと襲い掛かる実直な突き。
半身を傾いで躱しに掛かる。仰ぐように身を倒し、両腕から茨を放って搦め捕り――併し、その機を逃さず、ニコラスの腕が、引き絞るように剣を振るった。
剛刀が落ちれば、烈風が茨を散り散りに吹き飛ばし――共棲者を呑み込んだ。
動けずに翻弄される骸の首筋、滑らかに二閃が走った。
「恨みの炎は燃やし尽くして、ゆっくりオヤスミ」
細められた薄氷は穏やかな光を湛え。
下より斬り上げられた妖刀は未練を断ち切るように真っ直ぐと、鮮やかに。
「――この世に、君の魂に」
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
鹿忍・由紀
そろそろ踊り疲れてきたんじゃない?
敵の隙を見計らって絶影の高速移動で一気に距離をつめ斬撃
敵の連続攻撃には見切りと高速移動で対応
避けきれない茨はダガーで切り捨てる
共棲者の行動に生い立ちや目的が垣間見えても
何かを変えられるわけではないのだから
特段気にすることなく畳みかけていく
高速移動ついでの早業で張った鋼糸を
共棲者の足元に絡ませバランスを崩させる
試しに胸に刺さった短剣を押し込むように蹴りつけて
流石にあんまり効かないか
軽い調子で体勢を整え再び自分のダガーでの攻撃を
その短剣は誰かに刺されたの?
なんて問うも答えに興味もなく
握ったダガーで深く深く傷を抉る
痛みはもう感じてないんだろ
もう少しで楽になるよ
スティレット・クロワール
おやおや。君もまた炎を抱いていたのか
うんうん、量るべきは私達ではなく
天秤の持ち手など最早存在しないのだろうね
これは正解などとうに存在していない事件だ
それじゃぁ、私と一緒に踊ろうか。お嬢さん
冥府の衣を使って速度を上げていこうか
我が騎士不在の戦場であれば加護は冥府へ帰して
私はあれの分も主らしくいないとね
手数が増えるなら速度で斬り結ぼうか
傷は気にしないよ。レディと踊るのだからね
さぁお手をどうぞ
一気にサーベルを通したいけれど
君も、こんな世界を置いて、さっさと行ってしまえば良かったのにね
胸の剣は誰のものかな
罪なき魂など存在せず
真実の羽より軽い心臓など存在し得るのか
天秤の外にお行きなさい。おやすみお嬢さん
芥辺・有
は、まだ元気ってか。楽させてくれないね
ほんと、何が突き動かしてんだか知らないけど
さっさと捨てちゃえばいいのに
そうやって踊る割にゃ楽しそうじゃないじゃないか、ねえ
生憎付き合ってやるほど暇でもないんでね
せまる茨を掴んではぶちぶちと杭で断ち切って
しかし、尽きないね、それ……面倒くさい
ずるりと影から這い出す影に眉を顰めつつ
溜め息まじりにそれを纏う
さあ、手早くいこうか
一息に骸のもとへ駆けて蹴りをひとつ
ね、お前の茨で結構ぼろぼろさ、こっちも
痛くないわけじゃないんだ
だから、ほら
お返しだ
血溜まりを燃やして
骸に咲く花へ、傷から零れる雫を炎に変えて弾き飛ばす
●ミセリコルデ
吹き荒れる剣風が埃を散らす。次いで飛び込んできた猟兵たちは鋭く、その喉元へと迫ろうと向かう。
猟兵たちの斬撃は、骸の形を大きく歪めた。
既に骨を晒す胸を割り――更に首を半ばまで切断され、ぐにゃりと曲げている。
それを瞬く間に元に戻すは、内側から伸びる薔薇の蔓だ。薄汚れたフードが千切れて、攻撃が命中していた証拠のように無惨な傷痕を残すだけ。
あくまでも、敵は骸そのものというよりは、寄生する薔薇なのだろう。
「そろそろ踊り疲れてきたんじゃない?」
草臥れた様子の骸へ、問い掛ける――発声できぬと知る以上、鹿忍・由紀(余計者・f05760)は如何なる返答も求めていない――そも、どうでもよかった。
答えるように、骸は手を差し出す。
しゅるりと音を立てて、新たな茨が彼女を取り巻くように伸び上がる。
「は、まだ元気ってか。楽させてくれないね」
芥辺・有(ストレイキャット・f00133)が目を細めた。
「ほんと、何が突き動かしてんだか知らないけど。さっさと捨てちゃえばいいのに」
黒い杭を手に、囁く言葉に。
砂埃を避けるように、由紀は薄く、そうだ、と目を瞑る。
喩え逐一、過去にあった出来事や――骸が猛る理由を聞かされたとて。
相対することで見える、服装や、行動の癖。そこに『ひとだった気配』を感じ取ったところで、もう届かぬ。
(「生い立ちや目的が垣間見えても……何かを変えられるわけではないのだから」)
先に倒した獣と、同じ。
交わせるのは互いの凶刃のみ。ゆえに、由紀はいつもと変わらぬ姿勢で、敵を捉える。
だからこそ、自分達がいるのだと――スティレット・クロワール(ディミオス・f19491)は唇に指を当てて嘯く。
「おやおや。君もまた炎を抱いていたのか」
くべるべきものは、既に倒れてしまったようだけれど。
死骸も残らぬ獣の痕跡を、藍色の視線で追い、ゆっくりと骸へと向き合う。既に茨が周囲を取り巻いていようとも、彼はその悠然たる態度を変えはしない。
「うんうん、量るべきは私達ではなく――天秤の持ち手など最早存在しないのだろうね」
これは正解などとうに存在していない事件だ、と。
白い瞼が半ばに下りて。
軽やかに、踵を鳴らして姿勢を正す。差し出す手は手袋に包まれて――身を包む白い祭司服は少々土煙に汚れているが、篝火をうけて、きらりと輝く。
「それじゃぁ、私と一緒に踊ろうか。お嬢さん」
ダンスの誘いに剣は無粋と隠すように。代わりに、冥府より備わる護りを纏う。
「誘うは深淵への儀式。冥府の棺に告げよ、凄惨にして蒼古なる青。ーーさぁ、我が声を聞く者」
身体が浮くように、軽くなる。守護の風はそのまま何処かへと流れて、長く尾を伸ばす銀髪を揺らす。その感覚に、彼はつい微笑する。
(「私はあれの分も主らしくいないとね」)
軽く地を蹴って、腕を払うような所作で、衝撃波を放つ――受ける共棲者は、茨を盾に横へと跳ねた。
待ち受けていた由紀が、両腕を広げている。ふわりと、髪が浮かぶ瞬間、細い鈍い光が一筋見えた。
柔らかな跳躍と共に交錯し、低い姿勢で石畳みを滑る。頭上を通り抜けた茨で、前髪の一部が切れ、はらはらと舞う。
共棲者は茨を由紀へと向けながら更に後ろへと逃れようとしたが。彼が仕込んだ鋼糸が、その足元をもたつかせる。
瞬間、彼は這いつくばるような姿勢から、片足を跳ね上げた。斜め前へと繰り出された蹴りが、骸の胸に刺さる剣を強か打つ。
大きく均衡を失った骸はそのまま倒れ込む――ように見せかけ、茨がその身を掬い上げて、瓦礫の上へと導いた。
ふわりと裂けたスカートを翻したそれを見送り、くるりと身体を起こした由紀は僅かに肯いた。
「流石にあんまり効かないか」
腕を一薙ぎすれば、その手元にはダガーが輝いた。
休む間もなく、足場の瓦礫が崩れる――スティレットの衝撃波が煽ったようだ。のたうつ茨の中をするすると自在に泳ぎ、身を守る共棲者へ、女が声をかける。
「そうやって踊る割にゃ楽しそうじゃないじゃないか、ねえ」
生憎付き合ってやるほど暇でもないんでね――鬱陶しく伸びてくる茨へ、杭を打ち込み引きちぎりながら、有が溜息を零す。
「しかし、尽きないね、それ……面倒くさい」
眉を顰めて、纏わり付く最後の茨を振りほどけば、彼女の足元が細かく波打った。正確には、その影が。
尽きぬ茨への倦怠感半分、残る半分は自分の影より身を起こす存在へ。再び深い溜息を落としながら。
それを纏った彼女の、あざやかな金の瞳が、ひとつ瞬く間に。
「さあ、手早くいこうか」
ささめく言葉の合間に。
距離を零と結び、骸へと迫っていた。空を斬り裂き唸る回し蹴りが、骸の脇を捉えて吹き飛ばす。
その脚が、掴まれた。力任せに追いすがるは骸ゆえか。そんな動きに驚きはしないが、次に何をするつもりなのか、有は身構える。
きらり、胸に刺さった剣が輝く――途端、迫る茨が多鞭に分かれて、彼女を包んだ。
巻き付くのではなく、打ちつけるように。四方から寄せる、触れる物を斬り裂こうという棘鞭の動きを、彼女は黒色の杭で迎え撃つ。
一息の間に無数の応酬を交わし、悉くの深追いを阻止して見せたものの――彼女の両の白腕は、茨によって赤い筋が刻まれていた。
――それを表情ひとつ変えずに見下ろし、骸の腕を、今度は彼女が確り掴み。
「ね、お前の茨で結構ぼろぼろさ、こっちも。痛くないわけじゃないんだ」
ぞっとするほど低い声音で、ゆっくりと囁く。
「だから、ほら――お返しだ」
黒い炎が迸る。彼女の血が燃える。流す血も、流した血も――全て黒く燃えて、骸を燃やす。
その指先は、薔薇を摘もうと伸びた瞬間、茨に叩かれる。鈍い痛みに拘束が緩んだ隙に、炎を纏う骸が後ろへ逃れる。
「君も、こんな世界を置いて、さっさと行ってしまえば良かったのにね」
涼やかな声が、役目を果たさぬ耳朶をうつ。
振り返るのは空気振動への反応。きっとそうなのだろう――それでも、問わずにはいられない。彼は送るものゆえに。
「その胸の剣は誰のものかな」
速度を生かし、美しいサーベルを隙なく刺突と繰り出しながら、スティレットが問うた。
その胸を貫く剣こそが、貴方を縛るものではないのか。
解はない――燻る黒い炎にその身を焼かれながら、骸は抵抗の茨を投げた。
茨が腕を斬り裂いて、無垢なる色を赤で染める。それでもスティレットは脚を前に運び、次の一閃を鮮やかに振るう。
踊るような剣戟と共に、朱が弾ける。互いに攻防など無視したやりとりに。
ひとりは花弁を揺らすだけ。ひとりは穏やかな微笑みを湛えるだけ。
「罪なき魂など存在せず――真実の羽より軽い心臓など存在し得るのか……天秤の外にお行きなさい」
おやすみお嬢さん、優しく囁いて、力強く踏む込む。
斜めに振り上げたサーベルの一刀。それが剣の柄をうって、小気味よい音が響いた。
乾いた肉と茨が断ち切られ、天を仰ぐように、共棲者の姿勢が傾ぐ。
「……その短剣は誰かに刺されたの?」
魔力で重ねた脚力で、爆ぜるように――それでいて影のように、そっと背後に迫った由紀が、尋ねる。
いらえは、既にスティレットが沈黙で受け取っている。うん、興味はないんだけどね――すぐさま、そう告げるのも、由紀の心の儘に。
「絶ち切れ」
破魔のまじないが施されたダガーは、彼を阻む茨ごと斬り裂いて、目にも止まらぬ速さで、傷口を深く抉った。肉の感触も、殆どしない。
ぷちぷちと蔦を切り拓くような、不思議な手応えだった。
「痛みはもう感じてないんだろ。もう少しで楽になるよ」
気怠げに――優しげに――。
否、誰も彼も、その真実の心模様は見せず――術だけが鮮やかに、戦場を飾っていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ジャスパー・ドゥルジー
パウル(f04694)と
「サンキュ、これ以上汚さねェで返すわ」
借りた眼帯を傷に巻いて止血しつつ
Glanzの後部座席に乗っけて貰うぜ
さっきは間近でパウルのテク見れなくて残念だったから
身体で体験できるなんてラッキー♪
【九死殺戮刃】使用
寿命削る代わりに自分を斬りつけ
あとはパウルとGlanzのグルーヴに乗るぜ
こっちに来る茨は武器受けや武器投げで往なす
どうしても軌道に支障が出そうだったら身を挺して【かばう】ぜ
楽しいタンデムを邪魔すんなよ
パウルが敵に寄せてくれた隙を逃さず
ナイフの連撃を浴びせる
どんなに極限でも
生きたかったんだな
その貪欲さ、俺は好きだぜ
だけど俺にゃ
その思念をブチ壊す事しか出来ねェんだ
悪ィな
パウル・ブラフマン
ジャスパーくん(f20695)と
よし、コレを使おう♪
止血帯くらいにゃなるっしょ☆
孔の開いた素顔を晒すのも躊躇なく
眼帯を外しジャスパーくんへ。
応急手当が済んだなら
タンデムでUC発動―派手にキメるぜ、Glanz!
冷静に茨を【見切り】つつ
【運転】テクを駆使したヒット&アウェイ戦法で!
Krakeを展開させ【援護射撃】を。
弾幕を張りつつ
隙を突いて胸の短剣を抜き去りたい。
…もう、コレは必要ないよね。
ジャスパーくんの言葉に、応える声は穏やかに。
彼も生きたかったし、ひとを愛したかったんでしょ。
先に還った獣を
癒せるのはオレ達じゃない。おねーさん(共棲者)だよ。
追うんならお送りするよ、おねーさん!
※アドリブ歓迎!
リーヴァルディ・カーライル
…ん。ようやく聞こえてきたわ、貴女の嘆きが。
もう自分でも終われないと言うならば、
私達が終わらせてあげる。
“葬送の耳飾り”が捉えた目立たない共棲者の霊魂の嘆きを聞き届け、
第六感が感じた殺気を暗視して攻撃を見切り、
今までの戦闘知識から効果的な回避方法を選択
敵の踊りによる精神攻撃を気合いで耐え、
吸血鬼化した自身の生命力を吸収して【血の獄鳥】を発動
闇属性攻撃の呪力を溜めた黒炎鳥に、
呪詛を暴走させる魔法陣を纏わせ、
残像が生じる速度で地をなぎ払うように突撃させた後、
自爆して傷口を抉る二回攻撃を行う
戦闘終了後、心の中で彼女に祈りを捧げる
…この一撃を手向けとする。
もう苦しむ必要は無い。眠りなさい、安らかに…。
ユルグ・オルド
海から還った骸なら還してやんのが役目だかんね
先の礼にエスコートといこうじゃアない
満足したかい、まだ足りない? ――なんて返るワケもなし
元よりどうせ、お仕舞だけは決まってる
シャシュカ一振り振り抜いたなら茨断ち切り駆け抜けていこう
他もいるし、ずっとかかりきりってワケにもいかないでしょ
ンなら絡めとられる前に跳んで詰めたなら前へ
惑わされぬよう踏み込んで
手を取る代わりに切り結ぼう、梏でもって捉えたなら
最後までと繋ごうか
贈るためでない花を落として、次の一閃はもう醒めないように
落ちる花弁を踏んだなら、ああ、首を落としにかかれないのは
情なんだろかとなんて掠めながら
手を緩めるには、足りないけども
●フィナーレ
ジャスパー・ドゥルジー(Ephemera・f20695)の傷をしげしげと見つめ。パウル・ブラフマン(Devilfish・f04694)はするりと眼帯を外す。
「よし、コレを使おう♪ 止血帯くらいにゃなるっしょ☆」
朗らかに言う。
孔の空いた素顔を躊躇いなく晒し――ああ、クールじゃん、とジャスパーは笑い。
「サンキュ、これ以上汚さねェで返すわ」
受け取る方も躊躇いなく。溢れる血を止めるよう強く絞る。
それらを横目に――静かに佇み共棲者を見据えているのはリーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)――何かを確かめるように、ひとたび瞳を閉ざし。
ゆっくりと頷き、瞳を開く。
「……ん。ようやく聞こえてきたわ、貴女の嘆きが。もう自分でも終われないと言うならば、私達が終わらせてあげる」
語りかける声は穏やかだった。
「海から還った骸なら還してやんのが役目だかんね」
赤い視線を投げたユルグ・オルド(シャシュカ・f09129)が問う。
「先の礼にエスコートといこうじゃアない――満足したかい、まだ足りない?」
首を傾げて見せれば、相手は肯くような、不思議な動きを見せた。
前へと踏み込もうとした際、頭を落としそうになったのだろう――もう、その身を保持する力が追いつかないほどに追い込まれているか。
試すように踏み込み、斬り込んでみれば、存外合わせてくる。
むしろ茨が伸び上がる速度は勢いを増して、ユルグを捉えようと何処までも追いかけて来る。
「最後の力を振り絞ってンかな」
ぽつり、ひとりごつ。シャシュカのひとふりで迫る蔓を断つは易いが、踏み込む切っ掛けが欲しいところだ。
周囲では黒い炎がまだ燻って、茨を燃している。
共棲者の身体もまた、燃え――その身を苛んでいた。消火すべく茨で覆い尽くそうとも、茨そのものがべっとりと相手の血に染まったそれでは意味が無く、火勢が弱まる気配はなかった。
それでもオブリビオンである薔薇は、炎を灯したまま、更に力強く咲こうとしていた。
「……お前も、呪われているのね」
目を半ば伏せて、リーヴァルディが呟いた。骸の裡も外も身を縛る薔薇――それが何となく、取り替えの利かぬ自分の血と重なって見えた。
燃え尽きる前に――骸がそう思ったかどうかは定かではないが、切り替えるかのように踵を鳴らして、スカートの裾を摘んでみせた。
軽やかな舞いはふわふわと覚束なく。されど、見るものの心をざわめかせる。
楽しそうだから誘われるのではない強制的に身を縛る呪縛――武器を手にしようとするリーヴァルディの両腕両脚を、あらぬ方向へと操る力であった。
しかし――共に踊ろうという心地にはなれぬ。
(「……仮に共に踊って、お前の心が癒えるというならば……いいえ、それでもきっと……」)
ふと浮かび上がった可能性――ただ、もし、そうだと肯定されてもリーヴァルディの血はそれを選び取らぬ気がした。
呪われた血が、死を。力を放つことを求めてやまぬ。
「……限定解放。呪いを纏い翔べ、血の獄鳥…!」
彼女の身より、解き放たれた黒炎の獄鳥が、荒れた広間の宙へ飛翔した。反動で彼女の美しい銀髪が煽られ、乱れる。
黒炎がごうごうと燃え、上昇気流を生み出すと、突如と現れた獄鳥を阻もうとする茨を巻き取り灼いた。
羽ばたく不定形のそれが空に一時留まることで床に濃い影を落としている。
――その下を、エンジンを轟かせたバイクが跳ねた。
「派手にキメるぜ、Glanz!」
空を横滑りに走る白銀のバイクには、パウルと、ジャスパーが同乗している。
遠慮も容赦もいらぬ、という同乗者の提言に従い、パウルはひとりの時と同じように鮮やかに無茶な足場を乗りこなす。
「さっきは間近でパウルのテク見れなくて残念だったから、身体で体験できるなんてラッキー♪」
飛ばされぬよう確り掴まりつつ、もっと行けと口笛で囃し立てる。
答えるように、Glanzは蒼い光を残像と刻みつけながら、茨を潜り抜ける。否、いっそ、茨の道を辿っている。
パウルが広げた触手に備えた砲台が、ふたりを呑み込もうとする蔓の波を穿ち、時にそれは術を発動し動けぬリーヴァルディや、ユルグの進路を作った。
「斬り込みはまっかせて♪ タイミングあわせて行こうぜ! ジャスパーくんも、いいね!」
轟音に負けぬよう、彼が二人へ声をかけると、グリップを握り込む。
ますます強くなった身に受ける風圧に、楽しげな笑みを浮かべたジャスパーが、おう、と答えながら、背後から巻き付こうとする茨へと無造作にナイフを突きたてた。
「楽しいタンデムを邪魔すんなよ」
くるりと手の内で刃を返すと、それを適当に腕へと滑らせる。珠のように零れた血がぱらぱらと散っていく――。
共棲者へと正面から突撃するバイクと二人――それを阻もうと、骸の短剣が輝いた。茨が目まぐるしく二人を撃つ。
Krake全ての砲台を、パウルは正面のそれへと向けていた。予告なしの一斉掃射が空気を揺らし、何もかも掻き消す轟音を紡ぎ出す。
全身で感じる苦痛に似た振動を、ジャスパーは不思議と心地好く感じた。
刹那、それの元へと乗り上げる――。
「どんなに極限でも生きたかったんだな。その貪欲さ、俺は好きだぜ」
囁き。身を半ば浮かせるようにして、ジャスパーはナイフを薙いだ。
その双眸が輝く。その変容を怪物と呼びたければ呼べばいい――。
「だけど俺にゃ、その思念をブチ壊す事しか出来ねェんだ――悪ィな」
優しく告げて――鮮やかに九つの斬撃が胸を切開するように閃いた。その腕の動きは極限まで極められた、ひとごろしの術であれば。
「……もう、コレは必要ないよね」
そっと――パウルは浮き上がった短剣を抜き取る。彼らを諦めきれず打ち付けてきていた茨が、不意に大人しく地に落ちた。
「彼も生きたかったし、ひとを愛したかったんでしょ――先に還った獣を癒せるのはオレ達じゃない。おねーさんだよ」
穏やかな声音。隻眼の青が静かに輝き。彼はぐるりとバイクを回転させると横へと滑らせ、場を開ける。
「追うんならお送りするよ、おねーさん!」
――なんせ、オレはツアー会社のドライバーだからね。
凄まじい熱が、その後ろを追いかけてきていた。
地を這うように滑空する黒炎鳥は魔法陣を纏い、呪詛を暴走させる。
「……この一撃を手向けとする……」
吹き荒れる風が、骸の自由を奪う。身を支える茨は及ばない。烈風に翻弄される儘、目掛けて飛び込んでくる鳥から逃れることすらできぬ。
衝突の瞬間、鳥は自爆した。裡を巡る呪詛が暴走して弾けたことによる、黒き熱。
それは脆い四肢をいとも容易く吹き飛ばす――ゆっくりと落ちていく身体の、短剣を奪われた胸から、大輪の薔薇が覗いた。
容赦なく刈りとるは、月を模したような曲刀。はらはらと落ちる真紅の花弁と、その合間で覗く金色の髪。
遊ぶような一閃が肩口にぶつかるなり、小さく爆ぜて――見得ぬ枷に引き寄せられ、茨は置き去りに、無防備に天を仰ぐ。もっとも、抵抗するのに必要な四肢は役に立たぬほど破壊されていた。
低く跳んだユルグは、共棲者へ、笑みを向ける。
「派手な送り火だね」
くしゃり、ユルグが落ちた花弁を踏みしめる。首を落とそうと、畳み掛けようとしていた身体に――本人にしか解らぬ、躊躇いが生まれそうになるのは、
(「情なんだろか」)
胸を過ぎる小さな違和は、さりとて、その手を緩めるほどのものではない。
最後の舞踏すら叶わぬ姿、さっさと終わらせてやることこそ、手心だ。
「もう醒めないように」
ユルグの鋭く容赦の無い一刀は、高らかに天を指さすように輝くと、斜めに走る。
そして、傷口から血の代わりに赤い薔薇を咲かせていた首を――今度こそ切り離す。
楔の代わり、見えぬ鎖で繋がった両者の交差は一瞬で。
「――……」
効力を失った途端に、共棲者の身体は花が解けるように消え失せた――容貌の明らかではない顔が、口が、何かひとこと残したような幻視を猟兵たちは見た。
それは呪詛の言葉だっただろうか。
それは感謝の言葉だっただろうか。
どちらでも構わない――いずれにせよ、オブリビオンを骸の海へと還し――かの死体は、きっと真の冥府へと旅立ったはずだ。
「もう苦しむ必要は無い。眠りなさい、安らかに……」
誰にも聞こえぬように密やかに。
だが確かに心を込めて、リーヴァルディは祈った――。
最後に落ちた小さな種子は、黒い炎に呑まれて燃え尽きる。
この世で最も許されぬ徒花ゆえに――誰も省みるものもなかった。
獣も、復讐者も、かつての暴虐の痕跡も焼べて。
残された大地は、いつか本物の薔薇が咲き誇る日を待ち侘びる。
大成功
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