#UDCアース
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「集合ありがとう。今回はUDCアースでの事件になるね」
グリモア猟兵のレン・デイドリーム(白昼夢の影法師・f13030)はどこかの地図を広げながら猟兵達へ笑顔を向ける。
「数日前に数人の若者が行方不明になる事件があったんだ。皆にはその調査をして欲しい」
広げられた地図の中央には赤丸がつけられていた。赤丸が示すのはとあるビルだ。
「事件があったのはこの元オフィスビル。もう長い間使われていない廃墟で、行方不明になった人達は肝試しか何かに来ていたんだろうね」
元々このビルには『ポルターガイストが出る』やら『幽霊がいる』やらの噂話があったそうだ。
それを面白がった若者が深夜に訪れ、そのまま行方知れずになる……それだけなら自業自得のよくある怪談。けれど集合がかかった以上はそれだけではないのだろう。
「この事件には邪神が関わっている。人が消えたからようやく痕跡が掴めるようになったのは歯痒いけど……このままにもしておけないからね」
若者達は邪神によって拐われてしまったようだ。同じことを繰り返さないためにも、猟兵達によるビルの調査と邪神の討伐が必要になる。
「目的の廃墟は三階立てのオフィスビルだよ。中にはある程度の備品……棚やデスクは残っているみたいだね」
見取り図を見る限りはごくごく一般的なビルであったようだが、邪神によってここに何かしらの手が加えられている可能性がある。
実際に猟兵達の目で現場を確認する必要がありそうだ。
「それと、調査は若者達が消えた時と同じ条件で行いたくて……申し訳ないんだけど、深夜に突入してもらえないかな」
このビルには既に電気は通っていない。
懐中電灯はUDC組織が用意しているが、他に明かりの用意があるならそちらを使うのも良いだろう。
「事件が解決したらビルは取り壊す予定だから、中は好きにしてもらって構わない。ただし、あまり派手に動くと邪神が若者を殺すかもしれないから気を付けて」
備品や壁を壊すくらいなら問題ないだろう。しかし、生存者がいる可能性があるからにはビルごと破壊する等の行為は流石にご法度だ。
出来るだけ常識的な範囲で調査を進めた方がいいだろう。
「ビルの様々な部分を調査して怪しい部分を探したり、消えた若者の痕跡を探したり……邪神が手を加えた部分なんかを探してみるのもいいと思う。手段は皆に任せるよ」
地図を折り畳みつつ、レンは話を纏めにかかる。
「改めて依頼内容を確認するね。皆には深夜に問題のビルへ突入してもらい、建物内を調査して来て欲しい。そして中に潜む邪神やその眷属の討伐と、いるなら生存者の確保もお願いするね」
気がつくと地図は紙飛行機の形に折られていた。そこそこ大きな地図であったためか、紙飛行機もなかなか大きい。
「予知の中にこんな形が見えたんだ。もしかしたら何かの手掛かりかもしれないね。それからもう一つ」
紙飛行機を弄びつつ、レンは更に楽しげに笑みを深める。
「……予知の中で、女の人の声が聞こえたよ。でも消えた若者の中に女性はいなかった……これも何か関係があるかもね」
その言葉と同時に転移の準備が整った。
ゲートの向こうにはUDCアースの夜空が見えている。
「何が起きるかは分からないけれど……皆が無事に帰ってくるのを祈っているよ。それじゃあ今回も気をつけて」
ささかまかまだ
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こんにちは、ささかまかまだです。
今回はUDCアースを舞台にした事件です。
一章は「廃墟の探索をする冒険パート」です。
深夜の廃墟を舞台に、邪神の潜む痕跡を探しましょう。
明かりは特に記載がなければUDC組織が用意した懐中電灯を使う事となります。それで何か不利になったりはしません。
二章は集団戦、三章はボス戦です。
敵の詳細は章が進んだ際に確認して頂ければと。
その度に断章も入れる予定です。
プレイングは【第一章の断章追加後から募集開始】とさせて頂きます。
どの章からでも参加していただいて大丈夫ですし、特定の章だけ参加していただくのも歓迎です。
進行状況や募集状況はマスターページに適宜記載していく予定です。
それでは今回もよろしくお願いします。
第1章 冒険
『廃墟の探索』
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POW : 障害物を撤去・破壊しつつ、手掛かりを探す
SPD : 聴覚・嗅覚など感覚を働かせ、手掛かりを探す
WIZ : 洞察力を活かし、隠された場所や手掛かりを探す
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
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夜の闇に紛れつつ、猟兵達はビルへと足を踏み入れた。
既に放棄されてかなりの年数が経っているのか、埃の匂いが鼻をつく。
中は一見何の変哲もない廃墟だ。
一つの階ごとにいくつかの部屋があり、上下階への移動は階段を利用する事となる。
部屋の中にはデスクや書類棚といった備品が残っているが、ちらりと見回す限りでは真新しい人の痕跡はない。
けれどここのどこかに邪神が潜み、若者達を連れ去っている。
同様の事件の再発を防ぐためにも、必ずその邪神を倒さなくては。
懐中電灯のか細い光が足元を照らし、猟兵達を導いていく。
御園・ゆず
かもめを発動させ、感覚を研ぎ澄まさせる
末端の血管が、目の毛細血管がぷちぷち切れる感覚
…もう、慣れてしまった
忌々しい『埒外』のチカラ
使うたびにわたしから離れていく
ペンライトのストラップを左手首にかけて、いざ
曲がり角、部屋に入る前は
壁に背をつけて、耳で中や先を伺ってから
FN Five-seveNを常に構え、警戒を怠らない
…しかし、幽霊見物、ですか
もっと恐ろしいものが身近にいるというのに、物好きですね
オフィスに似つかわしくないものを重点的に探していきましょう
紙飛行機があったら手にしておきたいところです
…わたしが怖いもの?
感情を持った『ヒト』ですよ
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暗闇の中で、どんどん『わたし』と『あたし』が離れていく。
御園・ゆず(群像劇・f19168)は目を閉じながらその感覚に苛まされていた。
わたしは、かもめ。何にでもなれる。
鷹の目。兎の耳。犬の鼻。
それらを自分に宿す度に、どこかの細い血管が、目の奥がぷちぷちぷちぷち切れていく。
嫌だけど怖くはない。だってもう慣れてしまったから。
自分に宿る忌々しい『埒外』のチカラが、どんどん『わたし』を遠ざける。
さっさと終わらせよう。
右手に拳銃、左手に点灯したペンライトを握りしめたのならば、ゆずは廃墟の中を進んでいく。
廃墟の中は埃っぽいが、大掛かりな破壊の跡や人の気配は感じられない。
散らばる備品は確かにここで誰かが働いていた事を示しているが、そのお陰で逆に恐怖が薄らぐ感覚すらあった。
わざわざこんな所に幽霊見物、ですか。
鷹の目をこらしつつ、ゆずは少し呆れたように眉を曇らせた。
だってこの世界にはもっと恐ろしいものが身近にあるのに。見物に来た人達は物好きですね。
一歩暗闇の中へ進めば見えない何かが牙を剥く。
この世界の『当たり前』は、とても脆くて儚いものなのに。
……でもわたしにとって一番怖いのは?
そんな事を思うゆずの前に、一枚のドアが姿を現した。
奥からは微かに物音が聞こえている。
ドアのすぐ横の壁に背をつけて、拳銃を構えながら更に耳を澄ませて。
かさかさ、かさかさ。微かな音。怪物か、それとも。
ゆっくりとドアを開けば、室内には大量の紙が散乱している様子。
他に備品等はなく、誰かが隠れている気配もない。
紙の内容は……入り口付近にあるのは、どこかのオフィスの資料だったりお知らせだったりだ。
けれど部屋の奥に行けば行く程様子がおかしくなっている。
例えばここから離れた地域のチラシだったり。どこかの学校のプリントだったり。
そしてその中に白紙の紙も混ざっている。
(何でしょう、これ……)
銃口を紙へと向けつつ、ゆずは部屋の中に入っていく。
間近で見れば全ての紙に折り目がついている事も分かった。それに従って折れば、出来上がるのは紙飛行機。
そう気付いた瞬間に、ゆずのみつあみがふわりと揺れた。
慌てて振り返れば紙飛行機が飛んでいくのが見える。向かう先は階段、そして上の階。
その動きを見たゆずの脳裏に何かが浮かぶ……誘導されている?
それならそれで構わない。
わたしにとって一番怖いのは感情を持った『ヒト』だから。
それに比べれば、意思のあるかいぶつなんて怖くない。
拳銃を更にぎゅっと握って、ゆずは階段の方へと進んでいく。
大成功
🔵🔵🔵
オルシウス・ヴィルヘルガ
深夜の廃墟か。
ダークセイヴァーで生きてきた俺にとって、暗闇など問題ではない。
むしろ、俺にとって動きやすいものだ。
しかし…こんな所が若人の遊び場となっているのか。
今回は遊びで済まされない事態となったが。
このまま放ってはおけぬ故、速かに対処せねば。
廃墟に入る手前で、相棒である死霊蛇竜(ムカデ型)を呼び出し、廃墟内外の狭い場所からの調査を任す。
異変や違和感があれば直ぐ連絡がくるだろう。
俺は廃墟内で異常がないか確かめて行く。
何かしらの形跡があるのは間違いないからな。
そう言えば。
女性の声がすると言っていたな。
その事も念頭に入れておかねばな。
アドリブ連携歓迎
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UDCアースの夜は明るい。
遠くに街の明かりが見えるし、見上げれば微かに星の瞬きも見える。
そんな夜空を見上げながら、オルシウス・ヴィルヘルガ(ダンピールの死霊術士・f10293)は故郷を思っていた。
故郷の夜はいつでも暗い。だからこの程度の暗闇は、彼にとっては何の支障もない。
次に見上げたのは廃墟のビルだ。
こんな所が若人の遊び場となっているのか。ここへ来た彼らにあったのは無謀な冒険心か、ただの好奇心か。
どちらにせよ起きている事態は『遊び』では済まされない。早急に解決しなければ。
オルシウスはそっと地面へと膝をつくと、骸の海へと意識を向ける。
来い、相棒。
呼び出されたのは百足の姿をした死霊だ。本来ならば恐ろしい存在だが、オルシウスにとっては頼もしい相棒の一人。
その相棒に一足先に廃墟へと入ってもらい、内部を確認しながら自分も廃墟へと足を踏み入れる。
ここに若者が入り消えた事は間違いない。絶対に何かの痕跡があるはずだ。
建物の中は更に暗くて、不気味な程に静かだった。
それはさしたる問題ではない。気になるのは妙な気配。
……女性の声がするという話があった。この気配は彼女のものだろうか?
ネクロオーブを片手にオルシウスは一階の部屋を確認していく。
置かれている備品も見慣れないものばかりではあるが、この世界では普通のものなのだろう。
デスクの引き出しや棚の中、そこに変わったものはない。
その確認の最中に、天井から相棒が姿を現した。
「どうした、何かあったのか?」
近付いて確認してみれば、相棒の体はうっすらと濡れている。
相棒の体に付着した液体は妙に粘り気があった。そしてうっすらと桃色に輝いていた。
「何かに襲われたのか?」
その言葉に相棒は首を振るような仕草で否定を示す。
どうやら通風孔を辿っている最中に濡れてしまったようだが、行き止まりがあって先へは進めなかったようだ。
通風孔が濡れていたのは上の階。相棒に導かれつつオルシウスもその部屋へと向かっていく。
場所は三階。内装は先程の部屋と変わりはしないが、部屋の空気は先程より重い。
相棒が行き止まりだったと示した方向、そちらの壁だけは新設されたもののようだった。
「……壊してくれ」
言葉短く相棒へと指示を出せば、コクリと頷き壁を叩き壊してくれた。
その先にあったのは薄暗い倉庫。しかしそこにも妙なものはない。一体何が?
倉庫へと足を踏み入れようとしたオルシウスの耳に、微かな笑い声が響く。
「猟兵さんって、とってもおもしろいんですね」
女の声。急いで振り返ってもそこには誰もいなかった。
だけどこれで確信出来た。ここには絶対に、何かがいる。
オルシウスは改めてオーブを握りしめ、再び倉庫へと向かっていくのであった。
大成功
🔵🔵🔵
フレッド・カーライル
POW
※『』内はソウちゃんの台詞
いつも不思議なんだけど、みんな肝試しって大好きだよね
『こんな所、明らかに危なそうなんだがなぁ』
懲りてもらう為にも、囚われてる人達を助けないと
早速UCを使ってソウちゃんの分離、探索を手伝ってもらおう
懐中電灯の代わりにフォースセイバーで辺りを照らすよ
注意するのは脆そうな壁と封鎖されている通路、出入り口だよ
探索向けの技能とか無いから、そこは今回は割り切って…
壊せそうな壁、封鎖を見つけたらソウちゃんと一緒に破壊しよう
行くよ、ソウちゃん
『任せろ、フレッド』
紙飛行機に、居ないはずの女の人…
レンさんが言っていた事は、一応頭の片隅には置きながら探索を続けるよ
連携アドリブ歓迎です
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「いつも不思議なんだけど、みんな肝試しって大好きだよね」
『こんな所、明らかに危なそうなんだがなぁ』
フレッド・カーライル(光明は遥か彼方に・f20627)はフォースセイバーを片手に廃墟へと向かっていた。
話し相手は彼に宿るもう一人の人格・ソウちゃんだ。
ユーベルコードの力でソウちゃんには姿を現してもらい、一緒に廃墟へと歩を進めている。
その姿は肝試しに行く小さな兄弟のようだが……彼らの目的は真逆だ。
肝試しに行って消えた人を助けに行く。彼らには危険な事をしたのだとしっかり反省してもらいたい。
そしてそのためにも、彼らに生きて帰ってきて貰わねば。
廃ビルは外装も内装も妙な所はない。怪談話があれば来てみようかな、となりそうな雰囲気ではあるが。
早速中へ踏み入れれば、頼りになるのはフォースセイバーと懐中電灯の明かりだけ。
「雰囲気は確かにあるけど……」
『ちまちま探しててもしょうがないぜ、怪しい所を探そう』
そう言いつつ二人は上の階へと上っていく。通りがかった部屋や階段には妙なものはない。
三階まで上がっても、ぱっと見た限りでは特に異常はないが……。
「そういえば、ここに妙な倉庫があるって聞いたよ」
『じゃあそっちに行ってみるか』
他の猟兵が集めてきた情報を元に、二人は倉庫まで歩いていく。
壊された壁の向こうには確かに隠された倉庫があった。
しかし中にあるのはガラクタばかりで、わざわざ足止めをする必要性は感じないが……。
けれどよく見れば分かる。ここには更に作られた壁がある。
『こっちにあるのは別のオフィスだよな……?』
「分からないけど……取り敢えず壊してみよう。行くよ、ソウちゃん」
フレッドがフォースセイバーを構えれば、ソウちゃんも納得したようにブラッドラストを構えた。
『俺達からすればこれが一番簡単だからな……任せろ、フレッド』
二人の少年が放つのは凄まじい斬撃だ。
光の刃と血に濡れた刃が壁を切り、肉を裂くように壁を壊した。
その奥にあったのは隣のオフィス……の物置スペースだ。
目の前には物置を開閉する扉もあるが、そちらは封鎖されている様子。
そして物置の壁や床も更に新設されているようだ。
『何なんだこれ。もっと壊すか?』
「そうしよっか……ん?」
再び刃を構えたフレッドの視界に、ふと妙なものが見えた。
それは小さな紙飛行機だ。事前の説明でも紙飛行機の話は出ていたけれど、これは一体何なのだろう。
「これって……罠かもしれない」
『だったら好都合だぜ。相手も俺達を待ってるんだからな』
獰猛な笑みを返すソウちゃんに対し、フレッドは静かに紙飛行機を見つめている。
邪神の目的は何なのだろう。それを知るためにも、更に進んでいかなくては。
大成功
🔵🔵🔵
オトハ・リュウグウ
◎アドリブ連携歓迎
掠われた人達はまだ無事だと良いんですが……
いくら自業自得でも、死んでいい程では無い筈
オウガも邪神も人を餌食にするのなら、倒して被害者を助け出すだけです
■行動
私自身、特に探索や洞察力に優れてたりはしてないのですが
今回は一人で調査するわけではないので大丈夫ですよ
【UC】を発動、周囲に浮かぶ水の一部を変化させる事で私の想像した魚介類
拳闘術特化に構造変化させた巨大シャコを創造し、一緒に探索をして貰います
シャコ特有の視野の広さと高い視力で周囲を監視、観察してもらい
怪しい壁などがあったら、彼の自慢の拳で粉砕して調べてみましょう
あ、シャコくん、紙飛行機も手がかりらしいから見つけたら教えてね
伊能・龍己
肝試し。きもだめし。
ためして怖いことなんかないって言って。楽しかったってなるのは、無事に帰れてこそ。っすよね。
探す途中、先輩……仲間の猟兵さんを見つけたら、その人を手伝いたいっす
それにしても、紙飛行機……っすか
飛んでいくのなら、飛ばしたなにかがいるんでしょうか
飛んでいく紙飛行機を見つけたら、反対側を見てみるっすよ
●
暗いオフィスの中を、三つの影が動く。
一つは少女。一つは少年。一つは巨大な甲殻類。
「掠われた人達はまだ無事だと良いんですが……心配ですね」
「そうっすね。きっとこの建物のどこかにいると思うんすけど……」
ぽそぽそと会話をしながら歩くのはオトハ・リュウグウ(ふんわり幻想アクアリウム・f20387)と伊能・龍己(鳳雛・f21577)だ。
傍らにはオトハが呼び出した巨大なシャコも浮遊している。
入り口付近で出会ったオトハと龍己は、共に三階を目指している最中であった。
「いくら自業自得でも、死んでいい程では無い筈です」
「ためして怖いことなんかないって言って。楽しかったってなるのは、無事に帰れてこそ。っすよね」
二人とも行方知れずになった若者を助けたい気持ちは同じ。
例え邪神だろうとオウガだろうとオブリビオンだろうと。人に危害を加える存在ならばきちっと退治して、助けるべき人は助けたい。
「それにしても、仲間の猟兵さんがいて助かったっす。一人じゃ不安だったんで……」
「私もシャコくんとは一緒ですが……三人で調査出来ればもっと心強いです」
にこにこと笑顔を浮かべるオトハに対し、龍己の笑顔はどこか曖昧で。
でも互いの存在に安堵しているのは紛れもない事実。そしてその事も分かっているから大丈夫。
二人と一体は会話も交えつつ、しっかりと階段を上っていく。
目的地は壁や床が作り直されている物置だ。
「……ここが怪しいって聞いたっす」
床を懐中電灯で照らしつつ、龍己はゆっくりとしゃがみ込む。
物置の床は一見何の変哲もないものだが……足を踏み入れたのならば、妙に靴底が引っ付く感触があった。
その箇所を撫でてみると、指先に少し粘り気のある液体が付着してしまう。
液体からは甘ったるい嫌な匂いがして、指先が微かにひりひりとする感触もある。
「……何っすかね、これ」
「あまり良くないものかもしれません。一度洗い流してしまいましょう」
オトハが空中に手をかざすと、そこに収束した魔力が清らかな水へと姿を変える。
その水で龍己の指を洗ってみれば、妙な液体はあっさりと流れ落ちていった。
「オトハさんは水が作れるんすね」
「はい、私に宿ったオウガの力のようで……」
オトハはある日突然不思議の国へと召喚され、憑依したオウガにより水を生成する力を与えられている。
彼女の状況には龍己も思い当たる節があった。彼も雨乞い龍の呪物によって雨を降らす力を得ているのだ。
「一度シャコくんにこの物置を壊してもらおうと思います。床も壁も作り直されているみたいですし」
「それなら俺も手伝うっす。水の……雨の力なら使えるっす」
二人は頷きあい、物置から少しだけ距離を取る。
「それじゃあシャコくん、お願いね」
「俺も合わせるっす」
共に力を合わせれば、物置の中に嵐が吹き荒れた。
オトハの応援に合わせてシャコくんが壁を吹き飛ばし、龍己の生み出す滝のような雨が床を穿つ。
そして剥き出しにされるのは、二階のまた別の物置だ。
「どうして封鎖されてるんすかね……?」
「……あ、見取り図と比べたらおかしいですよ」
上から覗き込む限りは、下の物置も特におかしな空間ではない。
だが事前に確認した情報と見比べれば妙な点もある。本来この部屋に物置はないのだ。
更に懐中電灯で中をしっかり照らしたならば、違和感は更に加速していく。
「……この物置のドア、なんか変っすよ」
「そうですね……色がおかしいです」
二人が今いる三階の物置は、ドアもごくごく普通の茶色のものだ。
けれど二階の物置のドアはまだら模様をしているようで。
まずは龍己が下へ降り、大柄な彼がサポートする形でオトハも二階へ降りていく。
「これ、木とか金属じゃないっすね」
「はい……紙、です」
近くで確認したなら分かる。このドアは紙が何回も重なって出来ているのだ。
大きさはバラバラ。紙の内容も資料にチラシ、白紙も混ざっていて統一性はない。
けれどその全てに、紙飛行機の形で折り目がついているようだ。
より詳しく見てみた方がいいだろうか。そう思った二人がドアへと手を伸ばすが……。
「……!」
「っ……これは一体?」
手が触れるより先に、ドアが蠢いた。
咄嗟にシャコくんが二人を庇うように前へと飛び出す。けれど攻撃が飛んできたりはしなかった。
何が起きたのかというと、ドアが飛んだのだ。
ドアを構成する紙が紙飛行機へと姿を変えて、一気に奥へと飛んでいく。
二人は急いで武器を構えて周囲を探るが、紙飛行機を動かせるような存在はここにはいない。
「紙飛行機の話を聞いて、誰かが動かしたんだと思ってたっす。けれどこれは……?」
「罠かもしれませんが……奥へ行って確かめるしかないでしょうね」
二人は再び顔を見合わせ、紙飛行機に導かれるままに奥へと進む。
そこにあるのはオフィス跡のはずだが、そこにもまだら模様のドアが立ちふさがっていた。
その奥には何かの気配も感じられる。ゴールはきっと近いのだろう。
二人と一体は再び顔を見合わせて、ドアの方へと向かっていく。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
高梨・依都
何で世の若者は肝試しが好きなんですか。何で一人で私はこの廃墟に入らないといけないんですか…!
少し、いえ大分泣きそうですけれど、これ以上の被害は防がなきゃ。
まず突入前に影の追跡者の召喚を。
…いつも不思議と、彼らを喚び出すと怖さが薄れます。
息を潜めて、私と彼の五感を最大限に使って。
敵対者がいないか、紙飛行機や女性の声や気配はあるか、自分が足を踏み入れる前に必ず『彼』に探らせつつ先へと。
その後に続き、懐中電灯で辺りを照らして何か違和感が無いか探ります。
散らばる紙には特に注意を。
…先行された皆さん、三階へ行かれたんでしょうか?
上に進んだ方がいいのかな。
アドリブ絡み歓迎
アンテロ・ヴィルスカ
どこにあっても若者は蛮勇だねぇ…
邪神がいなくとも、深夜の廃墟に行って良い事など一つもありそうにないものだけど。
光源は借りた物を使用
【念動力】を伝せた銀鎖でダウジング
対象は廃墟に訪れた者が興味を示しそうな箇所
壁の落書き、見た者の不安を煽りそうな染みや荒らされたオフィス用品、掲示物
それらの中から邪神の痕跡を辿る
そう……地図の紙飛行機だったかな?
大きい物のようだから念の為、壁なども見渡して、同じ物が貼られていないか調べてみよう
アドリブ等、ご自由に
●
紙飛行機の扉が発見されるより時刻は少し遡る。
廃墟の入り口にて、高梨・依都(カシュマールの帳・f23175)は物憂げな顔でビルの上を見つめていた。
「何で世の若者は肝試しが好きなんですか。何で一人で私はこの廃墟に入らないといけないんですか……!」
元々怖がりな彼女からすれば、そもそも肝試し自体が理解出来ない遊びである。
その上何かしらの怪異が潜む建物にまずは一人で入らなければならない。
ここには他の猟兵も来ているそうなので、上手く合流出来ればいいのだが……けれど時間もどれだけ残っているのか分からない。
「でも……これ以上の被害は防がなきゃ」
黒い瞳に浮かぶ涙をごしごし拭って、依都は自分を鼓舞していく。
幸い彼女は一人だけれど『一人きり』ではない。
「お願い、一緒に来て下さい」
依都の囁きと共に呼び出されるのは影の追跡者だ。
彼らを呼び出すと何故だか怖さが薄れていく。不思議だけど、今はそれが頼もしい。
依都は追跡者の後ろにくっつく形で廃墟へと足を踏み入れる事にした。
互いの五感は共有している。依都がしっかりと懐中電灯で周囲を照らし、追跡者が前方を確認すれば万全だろう。
探すべきはまず敵対者と生存者。次に話に聞いている女性や紙飛行機だ。
仲間は上の階にいると聞いている。ならば自分達も上へと向かうべきだろうか?
「えっと、階段はあっちですね……」
進行方向を照らしつつ、上り階段へ足をかけたその時。依都と追跡者の聴覚は小さな物音を捉え始めた。
かさかさと紙の擦れる音と、くすくすと笑う女の声。
それが同時にやって来るとは思わず、依都は思わず身をこわばらせた。
「きゃっ……だ、誰ですか!」
急いで懐からアムリタを取り出して周囲を観察するが、何かが彼女を襲ったりはして来ない。
……単純な脅かしだろうか。それはそれで迷惑だし止めて欲しい。
けれど何かが動く気配はある。階段をもう少し上った先、踊り場で小さな影が動いているのだ。
恐る恐る懐中電灯で照らしてみれば、そこには小さな紙飛行機が飛んでいる。
紙飛行機は独りでに飛び上がり、二階の奥へと飛んでいく。
「あっ……待って下さい!」
罠かもしれない。けれどきっとあれが何かの手がかりだ。
そう確信した依都は追跡者と共に階段を駆け上がっていく。
●
依都が階段へ踏み入れるより更に少し前、一階を探索していた者もいる。
その猟兵、アンテロ・ヴィルスカ(白に鎮める・f03396)は銀鎖を片手に周囲の探索を行っていた。
「どこにあっても若者は蛮勇だねぇ……」
どの世界でも肝を試したがる若者はいるものだ。
それで何が得られるのだろう。仲間からの名声か、誰かに話せる体験談か。
しかし深夜の廃墟に行って良い事など一つもありそうにないものだけど。
このような場所なら野生生物やならず者が徘徊している可能性もある……ここの場合は巣食っているのが邪神なのだから尚更質が悪いだろう。
だからといって放っておく訳にもいかない。
アンテロは銀鎖に力を与え、若者達の痕跡を探っていた。
廃墟の中は多少荒れているものの、素行の悪い者が訪れたような痕跡はない。
備品もごくごく普通のもので、誰かが手に取ったとしても元に戻すか放置してしまうようなものばかり。
しかし一つだけ異常な事もある。床やデスクの上にはやたらと紙が散らばっているのだ。
オフィスで使われているような内容のものだけでなく、チラシやどこかの資料といった妙なものまで。
そしてその全てに紙飛行機を作る形の折り目がつけられているようだ。
(……地図の紙飛行機だったかな。同じようなものはあるのかな)
懐中電灯も使いつつ、アンテロは落ちている紙を確認していく。
確かに地図のような大きな紙も紛れているようで、その統一感のなさは意図が分からない。
その辺りで、銀鎖が小さく反応を示し始めた。
そこにあった紙をどけてみれば、落ちていたのはどこかのお店のポイントカードだ。
これには折り目がついていない。きっと若者が落とした物なのだろう。
「……少しだけ拝借しようか」
カードをつまみ上げ、再び銀鎖へと力を籠める。探しものはカードの持ち主だ。
方向性を得た事でダウンジングの精度は上がり、銀鎖は建物の奥へと強い反応を示し始めた。
導かれるままにアンテロは奥へと進む。しかしそちらにあるのは同じようなオフィスだけ。
ならば……反応があるのは上の階だろうか。
そう思い始めた頃に、階段の方から少女の声が聞こえてきた。
どうせ向かおうとしていた方向だ。敵でも味方でも、声の主を確かめる価値はあるだろう。
黒い髪を揺らしつつ、アンテロは二階への階段をしっかりと上っていく。
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「……君も猟兵かい? この奥に生存者の反応があるみたいなんだけど……何か知っているかな」
「はっ、はい! 紙飛行機がこの奥に……他の人達も向こうへ来ているみたいです」
アンテロが階段を上り切ると、先へと進む依都へと合流する事が出来た。
最初は驚いていた依都だったが、アンテロの落ち着いた態度によって彼女も落ち着きを取り戻していく。
アンテロもまた声の主が味方だった事に安堵していた。
共に目指す先は同じ。きっと奥の部屋に生存者と怪異がいるのだろう。
互いに顔を見合わせたなら、武器を構えつつ前へと進む。
きっともうすぐ戦いが始まるのだろう。二人はその気配をひしひしと感じていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『六一一『デビルズナンバーはくし』』
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POW : 悪魔の紙花(デビルペーパーフラワー)
自身の装備武器を無数の【白い紙製】の花びらに変え、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD : 悪魔の紙飛行機(デビルペーパープレーン)
【超スピードで飛ぶ紙飛行機】が命中した対象を切断する。
WIZ : 悪魔の白紙(デビルホワイトペーパー)
【紙吹雪】から【大量の白紙】を放ち、【相手の全身に張り付くこと】により対象の動きを一時的に封じる。
イラスト:FMI
👑11
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
紙飛行機の扉の先にあったのは、他の部屋より広いオフィス跡だ。
ここには備品も残っていない。存在しているのは大量の紙と……倒れ伏す若者達だけ。
彼らの肩は微かに上下しているようで、衰弱こそしているものの命に別状はなさそうだ。
とにかく彼らを助けなければ。そのためにも猟兵達は部屋へと足を踏み入れるが……。
突如、嵐が部屋の中を吹き荒らした。
凄まじい風が猟兵達を包み込み、同時にたくさんの紙飛行機が周囲を飛来していく。
だが、その紙飛行機も様子がおかしい。
それらは明らかに意思を持ち、生き物のように飛んで回って猟兵達の行く手を阻む。
この紙飛行機達こそが邪神の眷属――『六一一『デビルズナンバーはくし』』だったのだ。
これらを退治しなければ若者達まで辿り着く事は難しいだろう。
猟兵達も武器を手に取り、戦いの準備を始めていく。
オルシウス・ヴィルヘルガ
先刻聞こえた女性の声…。
デイドリーム殿が言っていた事はこの事だったのか。
あの声が言っていた事を思うと、味方…ではなさそうだったが…。
いや、それよりもまずは目の前の敵に集中するべきか。
もう一人の相棒『死霊騎士』を呼び出して戦闘態勢へ。
彼自慢の大鎌は切れ味抜群故、紙媒体の敵には有利なはず。
敵への戦闘対応は彼に任せるとしよう。
蛇竜の相棒は俺と一緒に行動。
俺に攻撃がくるようであれば、相棒が対応しよう。
相棒達を出してる間は俺は戦えなぬが、彼ら(若者)を守らねば。
隙を見計らって彼らの元へと行ければいいのだが…。
※アドリブ連携歓迎
オトハ・リュウグウ
◎アドリブ連携歓迎
良かった、掠われた人はまだ無事でしたか
しかし、あの紙飛行機自体が邪神の眷属だったなんて
流石に予想もできませんでした、世界は広いですね……
■戦闘
しかし、数が多い上にこうも飛び回られると攻撃が当てにくいですね!
ここは【UC】を使用、今回は発電・放電能力が強化された
巨大電気ウナギたちを創り出します
まずは電気ウナギ達を広い範囲に展開、物陰に待機させていきます
その間、私自身は周囲に浮かべている水を操作して
そこから放たれる水の刃や鞭で周りの紙飛行機を落としていきましょう
展開が済んだら、頃合いを見計らって全ての個体から強烈な電撃を
空間に向けて一斉放射、広い範囲への攻撃で一網打尽を狙います!
●
ネクロオーブを構えながら、オルシウスは飛び回る紙飛行機達を見つめていた。
ふと脳裏に浮かんだのは先程の女性の声。
予知の内容にあった声の主で間違いないだろうが……。
「味方……ではなさそうだったが……」
しかし周囲には猟兵以外の女性の姿はない。
ならば今は目の前の戦いに集中しよう。そう決意してオーブに力を集中させていく。
一方でオトハは奥に倒れ伏す若者の姿に安堵していた。
彼らはまだ生きている。助け出すチャンスがあるならそれを利用しない手はない。
だけどそれには……眼前を飛び交う紙飛行機達が邪魔である。
「あの紙飛行機自体が邪神の眷属だったなんて、流石に予想もできませんでした」
世界の広さに驚きつつも、やるべき事は変わらない。
オトハも手元に魔力を集中させ、次々に魔力の水を展開させていく。
ユーベルコードの高まりを感じた紙飛行機達も更に激しく部屋の中を飛び回り、猟兵達を威嚇するように紙吹雪を飛ばし始めていた。
「俺は相棒達と動こうと思うが、オトハはどう動くつもりだ?」
「私も仲間と一緒に連携します。敵の数も多いですから、一緒に纏めて倒しましょう」
オルシウスとオトハは頷き合い、共に世界への呼びかけを開始する。
骸の海から呼び出されるのは百足の姿をした死霊蛇竜と、大きな鎌を携えた死霊騎士。
魔力の水で形成されるのは数十体の電気ウナギ達だ。
「みんな、それぞれ準備をしておいてね」
まずはオトハがウナギ達に指示を出し、部屋中に彼らを配置していく。
若者達や他の仲間を巻き込まないよう細心の注意を払いつつ、それでいて最も効果的な位置へと辿り着けるように。
そこにすかさず紙飛行機達が割り込んできた。彼らの飛ばす紙吹雪は細かな刃と化して、ウナギ達を一気に切り裂かんと迫る。
「貴様らの好きにはさせない」
しかし紙吹雪の刃がウナギ達を切り裂く事はなかった。
間に入った死霊騎士が鎌を振り払い、紙吹雪を吹き飛ばしたからだ。
騎士はそのまま前進し、一気に紙飛行機達も切り裂いていく。
鎌の一振りで次々に紙飛行機達は千切れ、はらはらと地に落ちる。
騎士の鎌は切れ味鋭く、怪物とはいえ紙で出来た存在との相性は抜群だった。
「オルシウスさん、ありがとうございます」
「礼には及ばない。そちらは任せた」
ニコニコと笑顔で感謝を伝えるオトハに対し、オルシウスの表情は変わらないが……上手く表情に表せないだけで、彼も心の中ではしっかり安堵している。
オトハもそれを踏まえた上で更に優しく笑みを零した。
けれど紙飛行機の勢いもまだまだ衰えない。
彼らは更に紙吹雪を飛ばしていくが、今度の紙は刃ではなく落ち葉のような飛び方をしているようだ。
あれに貼りつかれては体の動きに支障が出てしまう。それを防ぐべく、オトハが敵陣へと飛び出した。
「邪魔はさせません!」
周囲に浮かべた水を刃と変えて、オトハも次々に紙飛行機達を撃ち落としていく。
湿気を帯びた紙は次々に墜落していくが、踏まないように意識すれば戦闘にも支障はないだろう。
オトハと騎士が紙飛行機を切り伏せる間に、オルシウスは少しずつ若者達の方へと進み始めていた。
自身の方に飛び交う紙吹雪は死霊蛇竜が振り払ってくれている。
一撃でも食らってしまえば相棒達は消えてしまうが、リスクを冒してでも若者達の方へと近づく価値はあるはずだ。
そうして若者達へと近づけば……オルシウスはある事に気が付いた。
彼らの方へ接近すればする程、敵の攻撃が緩くなっていくのだ。
いや、厳密にはそうではない。恐らく紙飛行機達は攻撃を細かくコントロール出来ないのだ。
そして若者達を巻き込まないように意識すればする程攻撃の手も緩まっていく……という感じだろうか。
「好都合だが……一体何のために?」
疑問は浮かぶが、今は彼らを守らなくては。
オルシウスは死霊蛇竜と共に若者達の前に立つ。戦えずとも彼らを守る事なら出来るのだ。
そしてオトハもその様子を確認し、ウナギ達へと指示を与えていく。
「あの人達はオルシウスさん達が守ってくれているから……この配置で大丈夫ですね」
ウナギ達は部屋中に展開され、物陰でオトハの指示を待っている。
ならばあとは……全力で攻撃するだけだ!
「さあ、行きましょう。この電撃は、痺れる程度じゃ済まないですよ!」
勇ましい声と共に、部屋中に凄まじい雷鳴が響いた。
まるで室内に直接雷が落ちてきたような衝撃だ。
部屋中に配置されたウナギ達が一斉に電気を解き放ち、紙飛行機達を次々に穿っていったのだ。
雷に焼かれた紙飛行機はぷすぷすと音を立てながら焦げていき、力を無くしたように舞い落ちる。
これで一気に敵の数は減ったものの……紙飛行機はまだまだ部屋を飛び回っている。
けれどオトハもオルシウスも決して諦めはしない。
「敵の数が多いですね……ですが、私達もまだまだ頑張れます!」
「ああ、必ず邪神を倒し彼らを救おう」
二人は再び頷き合い、仲間たちへと指示を出していく。
彼らの見事な連携は着実に敵の数を減らしていった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ナナシ・ナナイ(サポート)
『皆さん!このナナシ・ナナイが来たからにはもう安心やで!』
『どうしたどうしたぁ~!!こんな攻撃かすりもせんわ!!』
わいの本業は傭兵!金次第で何でもやるで!あ、猟兵としての仕事なら金は取らへんで。
主に戦闘で使う武器は基本『突撃銃型アサルトウェポン』や。ユーべルコードは指定したもんは全部使うで!高慢ちきな敵はとりあえず煽っとくわ。目的達成のためなら恥もプライドも捨てる!
探索ではとにかく大体の当たりを付けたら虱潰しに探していくで。
わいは基本ポジティブ思考や!明るく楽しく気楽に行くわ!でも空気は読むで。
この関西弁はキャラ付けやから適当やで。
誰でも名前+ちゃん呼びや!
あとはおまかせや!
●
「おっ、なんやなんや。紙飛行機が沢山飛んどるなぁ!」
廃ビル内に突如明るい声が響く。
それと同時に一人の男がオフィスへと突入し、紙飛行機達の前に立ち塞がった。
「ま、何でもええか。このナナシ・ナナイが来たからにはもう大丈夫やで!」
その男――ナナシ・ナナイ(ナニワのマンハンター・f00913)は突撃銃を片手に仲間へと笑顔を向ける。
邪神騒動だと聞いてビルへと到着すれば、中を飛び交っているのは紙飛行機で。果たしてあれが本当に邪神の眷属なのだろうか?
でも若者が倒れ伏している以上はここを放っておく訳にもいかない。
彼らを救えばUDC組織から支払われるであろう報酬も増えるだろう。
ならばさくっと事態を解決すべきだ。ナナシは紙飛行機達へと向き直り、その動向を窺っていく。
紙飛行機達もナナシへと反応を示し、次々と紙吹雪を生み出している様子。
舞い散る紙吹雪はたった一人の男に対して放つには過剰なまでの量だ。自分だけで対処していては手が足りないだろう。
「そないに手厚く歓迎してもらえるなら……こっちも頑張らんとな!」
既にこのオフィスは戦場と化しており、瓦礫や何かしらの残骸がいくつも転がっている。
ナナシがそれに力を籠めて……生み出されるのは彼自身の分身だ。
「全員男前やろ? 好きなだけ歓迎してや」
ナナシの分身『虚構の中隊』は一斉に駆け出すと、次々に紙吹雪を受け止めていく。
自分の姿をしたものが紙に包まれる様は些かシュールだが、敵の目眩ましとしても十分だろう。
分身に紛れつつナナシも一気に敵へと迫る。
「肝心のわいが歓迎してもらえんのは残念やけど……こっちからは祝砲をプレゼントやで!」
紙飛行機本体へと近付いたなら準備は万端。
突撃銃の引き金を勢いよく引けば、弾丸の雨が紙飛行機を撃ち抜いていく。
穴だらけになった紙飛行機はひらひらと宙を舞い、ごくごく普通の紙のように地に落ちる。
「どうしたどうしたぁ! こんなんじゃ話にならんで!」
勇ましく声を発するナナシだが、彼の目は鋭く室内を観察し続けていた。
恐らくどこかで邪神本体が目を光らせているはずだ。
相手の目的は不明。どんな敵かも分からない。
ならばここで消耗しすぎるのは危険だろう。そう考えつつ突撃銃のリロードも済ませていく。
残りの弾丸も十分、敵の数も着実に減っている。
「好きなだけかかって来いや! わいはまだまだ行けるで!」
ナナシの調子も万全だ。彼は明るい笑顔を浮かべたまま、次々に邪神の眷属を討伐していった。
成功
🔵🔵🔴
伊能・龍己
その人達を助けなきゃならねぇんで……そこを退いてもらうっすよ!
紙吹雪が俺のところまで届くのなら、俺の攻撃も紙吹雪に当たりやすくなりますかね
紙吹雪や紙飛行機を〈なぎ払う〉ように《神立》を使うっす
「さぁ、雨が降りますよ。紙にはちょっと堪えるんじゃないっすかね」
ただの水じゃなく、飛ぶ力を奪って重たくする〈生命力吸収〉の雨っす。くっついてくる紙吹雪も、落としてやるっすよ
高梨・依都
わあ、これだけの紙飛行機、折るのきっと大変ですよねー…
なんて怖すぎて現実逃避をはかってしまうのですが!
けれどあそこにいるのが浚われた方々なら、絶対に助けませんと
数には数で抗いましょう
アムリタを構えて、心を静かに整えて
ベルゼビュートを召喚しお願いします
浚われた方々へ攻撃の余波が行きそうなら身を賭して守ることを第一の
そして皆さんと私の盾になって敵の数を減らしていくことを第二の命として
数が尽きてしまうなら、何度だって喚び掛けますから
私の声に応えてくれますか?
直接攻撃は得意ではないので、皆様の邪魔にならない配置に
オーラ防御での備えも心掛けましょう
●
室内を自律して飛び交う紙飛行機、というのはなかなか不思議な光景だ。
これが邪神の眷属でなければ幻想的だとすら思ってしまったかもしれない。
そんな光景を目にして、依都はついつい現実逃避をしてしまう。
「わあ、これだけの紙飛行機、折るのきっと大変ですよねー……」
勿論あの紙飛行機が誰かの手によって折られたものではない事も分かっている。
けれど目の前の光景はあまりにも非常識で。
かといって目の前の『現実』からも逃げる訳にはいかない。
ここには救出対象である若者達が倒れ伏しているのだ。
「……あそこにいるのが浚われた方々なら、絶対に助けませんと」
依都の呟きに応えるように、龍己も頷き前を見つめる。
「そうっすね。あの人達が無事なのは安心したっす……」
しかし、若者達への道は紙飛行機達が塞いでしまっている。
仮に彼らの元へ辿り着いたとしても、守りながら脱出するのは骨が折れそうだ。
ならば邪神と眷属を倒しきり、安全を確保した上で脱出する。
目の前の光景が何であろうとやるべき事は変わらない。
身体に這う鱗模様に力を籠めつつ、龍己は紙飛行機達をじっと見つめる。
「その人達を助けなきゃならねぇんで……そこを退いてもらうっすよ!」
龍己の叫びに呼応するように、紙飛行機達が一斉に進路を変えた。
そして彼らは飛び交いつつ機体を解し……生み出される紙吹雪は依都と龍己へと迫りゆく。
一見無害そうな攻撃だが、紙吹雪はどうやら二人の身体を目指しているようだ。
あれだけの紙吹雪が身体に付着したのなら満足に動く事は難しくなるだろう。
その後にはより恐ろしい攻撃が待ち構えているかもしれない。そんな事はさせない。
恐怖で脈打つ心臓を深呼吸で整えて、依都はアムリタを取り出した。
「……おいで、おいで」
銃口を左手に添え、自身の内側へと静かに声を呼びかけて。
「ベルゼビュート、私の声に応えてくれますか?」
そして発砲。
銃創から溢れ出るのは血液ではなく、夜を纏った美しい蝶々達だ。
依都の身体に痛みはない。けれど心がガリガリと削られるような感触がする。
だからといってそれに引っ張られてもいられないのだ。
依都は前を見据えて蝶々達に意思を伝える。
「浚われた方々が危険ならば身を賭して守ることを第一の、皆さんと私の盾になって敵の数を減らしていくことを第二の命として……共に戦って下さい」
その声に応じるように、ベルゼビュート達は一斉に紙吹雪へと向かっていく。
紙吹雪にぶつかった蝶は儚く消えていくが、数はこちらの方が多い。
残った蝶々達は次々に紙吹雪へと殺到し、次々にその身体を朽ち果てさせていく。
塵と化した紙飛行機は蝶の羽ばたきによってどんどん消し飛んでいった。
しかし敵の数も未だに多い。
紙飛行機達は再び紙吹雪を生み出して猟兵達へとけしかけてきたようだ。
「そっちがそのつもりなら、俺の攻撃も当たりやすくなりますかね」
今度は龍己が一歩前に出て、静かに片手を前に突き出す。
「さぁ、雨が降りますよ。紙にはちょっと堪えるんじゃないっすかね」
その手に宿るは藍鉄色の龍の鱗。そこから生み出されるのは呪いと雨だ。
龍己の祈りに呼応するように、オフィスの天井には黒い雲が集まり始めた。。
次の瞬間、雨が降り注いだ。滝のような槍のような雨はここが室内だという事を忘れさせる程だ。
その雨に打たれ、紙吹雪はどんどん床に落ちていく。
更には紙飛行機すらも雨が穿ち、彼らを構成するであろう力を次々に奪っていった。
べしゃべしゃになって落ちていった紙達は、すぐにぐずりと溶けていく。
「……雨が降るっつっても、俺が降らせるんすけどね」
その様子を見て少しだけ軽口を叩く龍己。
微かに悪戯っぽい笑みを浮かべる彼には年相応の少年らしさもあった。
「わ、わぁ……凄い雨ですね。びっくりしました……!」
「そっちの蝶々も凄いっす。依都さんは召喚士なんすね」
敵の数は順調に減っていき、戦いも続けば会話をする余裕も生まれる。
笑顔で互いを労う二人は傍から見ればどこにでもいる少年少女。
けれど二人の胸にあるのは猟兵としての自覚と互いへの尊敬だ。
「……きっと今は良い調子です。このまま一緒に頑張りましょう」
「はい、最後までよろしくお願いするっす」
こうやって話していれば気合も再び入っていく。
依都と龍己は更に自身に宿る存在へと声をかけ、紙飛行機達を打ち払っていった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
御園・ゆず
やりにくい
燃やしてしまえば楽なんでしょうけど
一般人まで巻き込みそうだし
かといって、ガトリングを使っても貫通してしまったら
FN Five-seveNを腰後ろのホルスターに戻して
右袖中からプッシュダガーを取り出します
敵前へ躍り出て、それを叩きつけましょう
…紙で切った傷って、地味に痛いし、治りにくいんですよね!
たくさんの紙のあめあられを叩きつけて、叩き切って
あの数字の書いている奴が中核を成しているのでしょうか?
ほかの紙を踏んずけて
ほっぷ、すてっぷ、じゃんぷ!
611まで行ったらまたナイフを振り下ろします
…ひっくり返したら119ですね?
助けでも求めてたんでしょうか?
894(はくし)でも良かったでしょうに
フレッド・カーライル
SPD
うわ、素早いな…どうしよう?
『なら、的が増えるから俺はナイフを操作して援護してやるよ』
よし、とりあえず後詰だ
『しっかりやろうぜ』
まずはブラッドラストを2本とも紙飛行機めがけて【投擲】して攻撃
敵の攻撃は暗さに乗じて【闇に紛れる】したり、【見切り】でなるべく回避しよう
そして投げたブラッドラストはUCでソウちゃんが操って僕とは別に紙飛行機を攻撃させるよ
『目には目をってなぁ!』
ブラッドラストは紙飛行機に紛れて【目立たない】だろうから、【だまし討ち】も効くと思う
僕自身は回避を重視して動いて、隙があったら【2回攻撃】だ
紙で手を切ると痛いんだよね
『紙は手紙や覚書にでもなってな』
アドリブ連携歓迎
●
紙飛行機の数は減りつつあるが、未だに視界にちらちらと入るくらいの数は居て。
「……やりにくい」
手にした拳銃を腰のホルスターに戻しつつ、ゆずは紙飛行機と若者達を見比べた。
これだけ紙が集まっているのなら燃やしてしまえば簡単だ。しかしそれだと若者達も燃えてしまう。
じゃあガトリングは? それも駄目だ、きっと貫通して若者達も蜂の巣にしてしまう。
それなら仕方がない。こっちもシンプルな手段で戦おう。
制服の右袖からプッシュダガーを取り出して、ゆずは前へと跳ね跳んだ。
勢いよくダガーを振るっていけば、周囲の紙飛行機達はあっさりと千切れていく。
一方で、フレッドはソウちゃんと共に作戦会議を行っていた。
「うわ、紙飛行機は素早いな……どうしよう?」
『なら、的が増えるから俺はナイフを操作して援護してやるよ』
懐から取り出すのは血錆の付いた2本のブラッドラスト。
「分かった、とりあえず後詰だ」
『しっかりやろうぜ』
会議が終わった瞬間、フレッドはブラッドラストを紙飛行機の方へと投げ込んだ。
宙を舞う血染めのナイフ。うち片方はソウちゃんが操作して、もう片方はフレッドがこっそりキャッチ。
猟兵達の手繰る刃は同時に紙飛行機達を切り裂いて、進むべき道を切り拓いていく。
紙飛行機達も白紙の刃を飛ばしてきたが、それすらも切り裂けば問題はない。
「……紙で切った傷って、地味に痛いし、治りにくいんですよね!」
「分かります。すごく嫌な痛みがあるんですよね……」
紙の刃に対する所感はゆずもフレッドも同じであった。
あの独特の痛みは気分が悪い。その痛みが指先だけでなく身体を覆うと思うと……。
だったらこっちが先に切ってやればいいのだ。
二人は踊るように紙吹雪の合間を縫って、どんどん前へと進んでいく。
『目には目をってなぁ!』
ソウちゃんは闇に紛れつつ、念動力によってブラッドラストを操作していた。
仲間と比べて後ろにいるからか、紙飛行機達の姿もよく見える。
『そういえば611ってあいつの名前なのか?』
紙飛行機達の中央に見えるのは『611』と書かれた紙。
あれだけは紙飛行機の形に折られてはいない。
「あの数字の書いている奴が中核を成しているのでしょうか?」
ゆずもその紙が気になる様子。きっとあれがあの眷属の中心だ。
猟兵達は『611』の紙をゴールと定め、ひたすらに前へと進んでいく。
フレッドは夜闇に紛れ、紙吹雪の嵐をいなしつつ静かに進む。
小さな身体は影に隠れて、灰色の髪は白紙に紛れて。
その姿はかくれんぼで遊ぶ子供のようだが、表情は真剣だ。
一方でゆずの様子はどこか楽しげであった。
落ちた紙を踏んでいき、進む度に三つ編みもぴょんぴょん跳ねた。
ホップ・ステップ……ゴールが見えたらジャンプも忘れず。
そんなゆずの様子は舞台の上の役者のようだ。
合わせてフレッドも闇の中から飛び出した。
『611』に迫る少年少女。紙飛行機と戯れつつも、手に握るのは鋭い刃。
片方は楽園へと至る銀の道標、もう片方は血に汚れた殺人鬼の証。
「……さよなら」
『紙は手紙や覚書にでもなってな』
まずはフレッドとソウちゃんがタイミングを合わせ、同時にブラッドラストを交差させる。
2本のナイフは『611』の周りで踊る紙飛行機達を一斉にバラバラにしていった。
舞い散る紙吹雪は重力に従いはらはらと地に落ちる。
その中を、ゆずが更に飛んだ。
「生きるべきか死ぬべきか、それが問題だ」
口ずさむのは有名な悲劇の一節。演技の最中のセリフのような、静かな一声。
紙吹雪も相まって、今の彼女は大きな舞台の女優の如く。
こうやって演じるのは得意だ。晴れやかな一撃を送ってやろう。
死ぬのは怪物の方。生き残るのはあたし達。
鋭く振るわれたプッシュダガーの一閃は、ゴールの紙を綺麗に半分に切り裂いた。
力を失い落ちる『611』。地面に落ちた時にはひっくり返って『119』になってしまった。
「……助けでも求めてたんでしょうか?」
どうせなら『894』でも良かったのに。オブリビオンの成り立ちというのはよく分からないものだ。
そんな事を思っていたら、フレッドの方が小さく声をあげた。
「……これで、全部の紙飛行機が倒せたみたいです」
彼の言う通り、もうオフィスの中に紙飛行機は飛んでいない。
地面に落ちた細切れの白紙も塵になって消え始めていた。
『お疲れさん。あの兄ちゃん達も大丈夫かね?』
「無事だとは思いますけど……邪神も、まだ出てきていませんからね」
それぞれ刃物を仕舞いつつ、猟兵達は周囲の様子を観察していく。
紙飛行機が消えたオフィスの内部は妙に静かだ。
……本命はきっとこれから。
そんな予感を感じつつ、猟兵達は若者の方へと歩み始めた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
第3章 ボス戦
『成り変わるもの』
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POW : わたしはにんげん
【流動するスライムのからだ】に変形し、自身の【人間としての性質】を代償に、自身の【液体としての物理耐性と触手の動き】を強化する。
SPD : あなたをおしえて?
【対象を受け止めて取り込む、柔らかいからだ】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
WIZ : わたしはあなた
対象の攻撃を軽減する【スライム状の肉体】に変身しつつ、【対象の姿に変化しながら、対象の持つ能力】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
イラスト:はと銘菓
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠アト・タウィル」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
邪神の眷属を倒し、改めて倒れる若者達を見つめる猟兵達。
しかし、何かがおかしい。
若者の中に妙に髪の長い者が――女が紛れ込んでいるのだ。
事前の説明で「消えた若者の中に女性はいなかった」と言われていたはず。
猟兵達は武器を構え、ゆっくりと若者達へと近付いていく、
「……ああ、バレていましたか」
猟兵達の殺気を感じ、女がのそりと起き上がった。
彼女の表情は穏やかだが……次の瞬間、それはでろりと溶けていく。
女の手足もどろどろに溶けて、彼女の身体は不定形のスライムのようだ。
「誰にしようか迷っていたら、あなた達が来てしまいました。人間の真似をして『我慢』をしてみましたが……勿体ない事をしましたね」
どろどろの女は這うような動きで猟兵達へと近付いて、半分溶けたままの笑顔を向けてきた。
「……でも我慢の甲斐もありました。あなた達の方が美味しそう」
この女こそが若者達を浚った邪神『成り変わるもの』。
人間が好きで、人間を真似したくて、だから食べてしまう不定形の存在。
彼女を倒さなければこの事件は解決出来ない。
この廃墟に救う邪悪を倒し、浚われた人々を救うため。
猟兵達は、武器を握る手に力を籠める。
河原崎・修羅雪姫(サポート)
『全世界サイボーグ連盟団長・修羅雪姫、推して参るわぁ!』
長ーい舌でペローリ舌なめずり。
サイボーグの戦場傭兵×国民的スタア、18歳の女。
彼女は戦場の女王、戦場の華。
弱きを助け、強きをくじく義侠心の持ち主。
口調は「アンニュイ(私、あなた、~さん、ねぇ、ねぇん、でしょお、なのぉ?)」です。
ユーベルコードは指定した物を苦戦した時のみ使用。
普段は愛用の巨銃「20㎜口径リボルバー・フリークスハンター」に各種徹甲弾・爆裂弾等をサイボーグの腕力で軽々と使い、
戦いの中でも「華」を忘れず積極的に行動します。
(ご機嫌なロックソングを戦いの最中に熱唱したり)
連携・アドリブ歓迎、よろしくお願いします。
●
「人間の真似をするなんて妙な邪神もいるのねぇ」
夜の廃墟に、新たな猟兵が姿を現した。
彼女は威風堂々とした足取りで前へと進み、邪神へと不敵な笑みを向ける。
「……新たな猟兵、ですか」
邪神も面白そうな表情を浮かべて猟兵を見つめ返した。
その視線を感じてか、その猟兵――河原崎・修羅雪姫(プリンセス・スノーブラッド・f00298)の笑みもさらに深まる。
「ええ。私は全世界サイボーグ連盟団長・修羅雪姫。推して参るわぁ!」
長い舌をペロリと這わせ、修羅雪姫が取り出すのは20㎜口径リボルバー・フリークスハンター。
修羅雪姫はリボルバーを取り出すと同時に銃口を邪神の頭部へと向け、何度も引き金を引いた。
今回放ったのは爆烈弾だ。まるで砲弾の如き弾丸は邪神の頭を射抜き、凄まじい爆発を生じさせる。
幸い邪神はこちらへ向かって進み始めていたので爆発が若者達を巻き込むことはない。
けれど邪神の前進も止まってはいなかった。彼女は頭をドロドロに溶かしつつ前へと進み続けているのだ。
その体は更に溶けていき、人のかたちを失う代わりに爆発に耐えやすい体へと変形しているようだ。
「随分な贈り物ですね……」
「あらぁ、これで止まらないのねぇ。それじゃあ……もっとプレゼントしてあげるわぁ!」
相手が止まらないのなら更に撃ち込めばいいだけ。修羅雪姫は何度もリボルバーの引き金を引き、銃弾を邪神へとお見舞いしていく。
相手の体はスライム状で動きも素早い。全ての弾丸を的確に当てる事は難しく、邪神との距離も徐々に近づきつつあった。
けれど修羅雪姫の顔に焦りの色はない。彼女の表情は今も楽しげで、銃撃と爆発の音に合わせて明るく歌も歌っている。
「何がそんなに楽しいんですか?」
「私は戦場の『華』なのよぉ。華やかに振舞ってこそ、じゃない?」
人間への興味が尽きない邪神に、自らの立ち振る舞いを忘れない修羅雪姫。二人の戦いはどこか不思議な優雅さも宿していた。
修羅雪姫と邪神の距離もあと少し。そこで大きく動いたのは邪神の方だ。
「貴女の振る舞い方は素敵です。ですから……是非それを、私に下さい」
邪神はスライム状の体を広げ、一気に修羅雪姫を飲み込もうと飛び上がった。
回避は困難。けれどこれが待ち望んでいた好機。
「自分から飛び込んでくれるなんてねぇ? 残念だけど、私からはこれしかあげられないわぁ」
素早く弾丸をリロードし、一瞬の間に相手の体を観察して。
一番薄い部分を見極めたのなら、放つは銀の弾丸だ!
銀弾は邪神の体に大穴を開け、その周囲の肉を溶かしていく。
「やっぱり化物にはこれねぇ。さ、まだまだ撃ち込むわよぉ」
成果を確認しても修羅雪姫は油断しない。彼女は不敵で優美な笑みを浮かべつつ、邪神をしっかりと睨みつけていた。
成功
🔵🔵🔴
八幡・茜(サポート)
ふふふ、この美人のおねーさんに任せて!
基本何でも肯定するわね、殺人であっても一度は肯定しちゃうわ
その上で倒すべき敵であれば、「でも仕方が無いわよね」と割り切って普通に倒すけれど!
楽しそうなことや、笑いが取れそうなことは積極的にやるわ。ふふふ、泥は被ってなんぼじゃない?
男女問わず、人に触るのも触られるのも好きだわ! みんな大好きよ! あ、でも恋人以上な行為はしないし、させないけれどね!
戦うときは、いかに相手の手を掴んで恐怖を与えるかを考えて動くわ! 魅了はあまりしないけど、有効であったら考えるわ!
戦いで自分が傷つくのは仕方が無いわね! おねーさんも相手を倒そうとしているのだもの、当然の覚悟だわ。
●
邪神は足りなくなった肉を補いつつ、再び人の形を取り始めていた。
そんな彼女の姿を見つつ、一人の猟兵が声を発する。
「人間を知りたいとか仲良くなりたいって思うのは良い事よね。おねーさんもあなたと仲良くなりたいもの!」
その猟兵、八幡・茜(銀狐・f04526)は邪神へ明るく笑顔を向けつつ動向を窺っていた。
「もっと平和的な方法で仲良くなれるなら、おねーさんも嬉しいけれど……」
「これが私の平和的な手段ですよ?」
優しい言葉を受けても邪神の考えは変わらないようだ。
それならば仕方ない。茜も覚悟を決めて邪神の方へと進んでいく。
「じゃあ私が教えてあげる。もっと素敵な仲良しの方法!」
自身へと歩み寄る茜を見て、邪神の体が再び溶けた。スライム状の体は蠢き、ドロドロが何かを形作る。
粘土のように捏ね上げられた体が模ったのは……茜そっくりの姿。邪神は一瞬で茜の姿を見極め、彼女に変身したのだ。
「仲良しになんてならなくても、私は貴女が分かります。そして同じ人間は二人もいらないですよね?」
邪神は茜と同じ顔で邪悪な笑みを浮かべるが、茜はそれに屈しなかった。
むしろ面白そうだと言わんばかりの笑顔を浮かべて邪神へと接近し続けている。
「そうかしら? 同じ人が二人いても楽しいと思うわよ?」
「それなら……これはどうですか?」
気が付けば二人の茜は目の前で向かい合っていた。そして先に動いたのは邪神だ。
彼女はいきなり手を伸ばし、茜の手を無理やり握りしめる。
そこから流れるのは強烈な毒電波。それは茜の脳を揺さぶり、彼女の思考を歪めていく。
邪神と仲良くなるべきだ。そして体を明け渡してしまうべきだと。
電波にゆらゆら揺らされて、茜の表情も思わず歪む。
「貴女と同じ力です。私と仲良くなりたくなったでしょう?」
「っ……確かに……でも、おねーさんと同じ力なら……こちらこそ、お友達になりましょう!」
咄嗟の判断か本能か。茜も負けじと邪神の手を強く握り返していた。
そこから彼女も毒電波を送り付ける。仲良くなろう、友達になろうと。
主張の内容は邪神と比べたら穏便ではあるが……あまりにも強いその力は相手の本能に強く恐怖を与えているようだ。
「な、なんですかこれは……!」
思わず茜から手を放そうとする邪神。しかし握る力は茜の方が強かった。
「あなたが分かってくれるまで、この手を絶対離さない!」
「いやいや……離して下さい!」
ギリギリのところで邪神は体を溶かして握手から逃れたが、元に戻った表情には恐怖の色が浮かんでいる。
「あら、まだ足りなかったかしら。分かってくれるまで、何度でも手を繋ぐわよ!」
一方で茜の表情は明るく頼もしかった。
手を繋げて思考を有する相手なら、茜の握手が負ける筋合いはないからだ。
成功
🔵🔵🔴
アララギ・イチイ
ふむ、まずは気絶中の連中が戦闘に巻き込まれない様にしましょうかぁ
【選択UC】発動よぉ
気絶中の若者を液体生物に変換(※一時的です、後遺症は残りません)して、操りこの場所から離脱させるわぁ
ただ、敵がこの能力をコピーしてくる可能性もあるから支配権の争奪戦に専念する為に、戦闘は戦闘人形達に任せるわぁ(思考の耳飾りで思考を複数に分割して処理能力向上させる
戦闘人形フギン(近接戦)はランスの【串刺し】、シールドで【盾受け】、散弾砲で【範囲攻撃】、ムニン(射撃戦)は連装バルカンの【2回攻撃】、ミサイルの【誘導弾】攻撃の【援護射撃】させるわぁ
一応、若者が戦闘に巻き込まれない様に爆発物系は状況を見て使用させるわぁ
●
「面白そうな事をしてるのねぇ。私も混ぜて?」
戦場に更に新たな猟兵が姿を現した。
2体の機械人形を従えたその猟兵、アララギ・イチイ(ドラゴニアンの少女・f05751)は邪神と若者を一瞥し笑みを浮かべる。
「……まずはあの連中をどかしましょうかぁ。寝てる暇は無いのよぉ」
アララギが指をぱちんと鳴らすと、若者達の身体がでろりと溶け始めた。
うねうねと蠢く液体状の若者達を見て、邪神が露骨に顔を歪める。
「一体何をするつもりですか? あんな姿にしてしまっては勿体ない」
「あらぁ。ああいうのがお好みだと思っていたけれど……後でちゃんと元に戻すわよぉ?」
これはアララギの『怪奇・黄泉帰り』の力。
若者達を一時的に変身させる事により、安全圏まで避難させる作戦なのだ。
アララギが指を動かすと、それに合わせて液体状の若者達は部屋の外へと進んでいく。
「……逃しません」
若者達をすぐに殺すつもりはないが、彼らをここに残しておけば猟兵達は派手な動きができなくなる。
そう目論んでいた邪神は一瞬でアララギの姿に変身し、彼女と同じ力で若者達を操ろうとするが……。
「こうするのも分かっていたわぁ。フギン、ムニン、ここはお願いするわねぇ」
先読みに勝っていたのはアララギの方だ。
彼女は耳飾りを起動し分割思考を行うと、若者達を守りつつ戦闘人形への指示も開始しだした。
まずはムニンがバルカンで邪神を牽制し、その隙にフギンが前へと躍り出る。
アララギの姿をした邪神は弾丸により穴だらけになり、慌てて防御の姿勢を取り始めたようだ。
おかげで若者達を逃す事は出来た。邪神はアララギの顔で更に苦々しい顔をしている様子。
「私の顔でそんなに嫌な顔をしないで欲しいわぁ」
「そちらこそ邪魔をしないで……!」
怒る邪神に対しアララギ本人は楽しげだ。
彼女は意気揚々と人形達へと指示を飛ばし、邪神を徐々に追い込んでいく。
フギンがどんどん前に出て振動槍で相手を貫き、逃げられてしまってもムニンのミサイルが相手の位置を調整していく。
若者達が無事に逃せたからここからは遠慮もなしだ。
「さぁ、二人共。一気に決めましょうかぁ」
フギンは槍を、ムニンはバルカンを邪神へ向けてアララギの指示を待つ。
指を再びぱちんと鳴らせば、散弾砲とバルカンの弾丸が一気に邪神の身体を削る!
耐えきれなくなった邪神はアララギの姿を止めて、何とか失った肉体の補充をしようとしている様子。
「その身体も面白いわねぇ。少しくらい持ち帰れないかしらぁ」
にっこりと満面の笑みで邪神を見つめるアララギ。邪神はそんな姿に、更に忌々しげな顔を向けていた。
成功
🔵🔵🔴
オトハ・リュウグウ
◎アドリブ連携歓迎
予知が無かったら危ないところでした……
しかし不定形の体に物理耐性、厄介な相手ですね
■戦闘
有効な攻撃は【UC】の電撃でしょうか
しかし、まず確実に先ほどの戦闘で手の内は知られてしまっているはず
何とか意表を突き、浚われた人にも被害が出ない様にしなくては……
まずは【UC】で電気ウナギを創造後、半数を物陰に隠れさせます
そして残り半数と私で覚悟を決めて特攻、浚われた人達を庇いながら
電撃や水刃で触手を切り落としたりして持ち堪えます
こちらが劣勢になり、相手が油断し始めたら【カウンター】で全ての水を一度に放って
指定位置まで【吹き飛ばし】、隠れて準備させていたウナギ達による一斉攻撃を狙いましょう
高梨・依都
【WIZ】
とても、怖いです
だって当然でしょう?
溶けて、形が崩れて、なんて悍ましい…
だけれども、ほっとしたんです
あなたが人から離れた異形であればあるほど
私は躊躇わずにいられる
だからお願いしますゴエティア
すべて燃やしてください…っ
武器はゴエティアの操る黒い獄炎
左右より邪神をぐるり囲んで、徐々に包囲を縮めていく
味方と若者達を傷つけないようには注意を払って
けれど自分が傷つくことは厭わずに
もしあなたが私を真似るなら根比べですね
でも私勝つ自信はありますよ
この炎が強くなればなるほど
あの悪魔に私の中の何かを捧げるほど
恐怖も熱さも何も感じなくなっていくんです、だから
●
対峙した時より体積は減っているとはいえ邪神は未だ健在。
オトハと依都はうねうね蠢く邪神をじっと睨んでいた。
「さっきは危ないところでした……。人の姿に変身出来るなんて」
「はい、でも……ほっとしてもいます。人の姿のままだと戦いづらいですから……」
敵の脅威を確認するオトハと、相手が人から離れた存在である事を確認し安堵する依都。
どこか対照的な二人だが向かう先は同じだ。この邪神を必ず討伐しなくては。
幸い若者達は部屋から脱出している。あとは邪神がこの部屋を出ないように注意すれば大丈夫だろう。
「恐らく先程の戦いも見られています。何とか意表を突きたいですね」
「だったら一緒に追い込みましょう……!」
二人が出会ったのは数時間前とはいえ、同じ部屋で邪神の眷属と戦ってきたのだ。
交わす言葉は少なくとも、共に連携する事は難しくない。
「それじゃあ……行こう、電気ウナギ!」
「お願いします、ゴエティア。貴方の力を貸してください」
二人は同時に仲間の創造と召喚を開始していく。
オトハが生み出す魔力の水は何体もの電気ウナギを生み出して、依都が左手を撃ち抜けば闇から巨人が這い出てきた。
まずはオトハがウナギ達を駆け出して、邪神を捕らえんと進んでいく。
「数で圧倒する作戦ですか? いいですね、面白いです」
邪神は身体を溶かしてオトハ達から距離を取ろうとしたが……邪神のその背を黒炎が一気に炙った。
「ゴエティア、一気に燃やしましょう!」
巨人ゴエティアは依都の指示に従って地獄の黒炎を展開していく。
邪神が炎に足を止めた瞬間、一気にオトハが踏み込んだ!
「ウナギ達、タイミングを合わせて!」
オトハが放った水の刃とウナギ達は一気に邪神を切り裂いて、スライム状の身体をバラバラにしていく。
けれどまだ相手は動けるようだ。飛び散った肉を迅速にかき集め、再び人の形を取る邪神。
「確かにこれは厄介ですが……私も、あなた達の真似が出来るんですよ?」
邪神が取ったのは依都の姿であった。
その背には巨人ゴエティアまでもが再現されている。
偽のゴエティアも黒炎を生み出すと、一気にオトハ達を薙ぎ払いにかかった。
「くっ……ウナギ達、私の後ろに!」
オトハも負けじと魔力の水を盾のように展開したため、大きなダメージを負う事はなかった。
けれどこのままでは水の刃やウナギ達の援護に魔力をまわす事が出来ない。
その様子を見た依都が、ゴエティアへ向かって声を張り上げた。
「ゴエティア、ここから先は根比べです! 私の心を捧げるから……すべて燃やしてください……っ」
彼女の声に応えるように、闇の巨人は依都の背を抱きしめる。
巨人が近付けば近づく程に心が削れ、頭の中を支配していた感情が消えていく。
依都がこの戦いを始めた時に抱いていたのは凄まじい恐怖だった。
当然だ。あの邪神は溶けて、形が崩れて、なんて悍ましい……完全に『人ならざる存在』で。
いざ相手が姿を崩せば恐怖も薄れたが、自分と全く同じ姿に変身された時には恐怖心も蘇ってしまっていた。
でも、もう平気。怖い気持ちも炎の苦しさも全部ゴエティアにあげちゃえばいいんだから。
依都の心を薪にして、ゴエティアは更に獄炎を展開し続ける。
2つの巨人が生み出す炎は一気にぶつかり合い……勝ったのは依都の方。
邪神は炎に吹き飛ばされて、一気に肉の塊へと姿を戻した。
彼女の身体は焼け焦げ始めている。すぐに触手や人の姿を取るのは難しいだろう。
「……オトハさん、お願いします!」
「ありがとうございます、ここがチャンスですね!」
邪神が吹き飛ぶと同時に、オトハも一気に魔力の水を手元へと集中させた。
そして出来上がった水の塊を弾き出し、更に邪神を奥の壁まで叩きつける!
けれど邪神の表情には余裕があった。彼女はまだ耐えるつもりだ。
「ふふ、また電撃と水ですか? あの程度の力で……」
「いいえ、私達の全力はこれからです!」
オトハの声に合わせるように、物陰から何体もの電気ウナギ達が姿を現した。
オトハと行動していたウナギ達は、実は呼び出した数の半分程。残りの半分は戦いに紛れて部屋中へと散らばっていたのだ。
「この電撃は、痺れる程度じゃ済まないですよ!」
叫びと共に、凄まじい勢いの電撃が部屋の中を蹂躙していく。
仲間は巻き込まないように気をつけつつも、邪神だけは全力で焼き払えるような雷を。
邪神の身体は光に呑まれ、熱に焼かれ、肉を焦がす匂いを漂わせながら倒れ伏す。
「追い込み作戦成功、ですね」
「はい、ばっちりでした……!」
邪神の様子を見て互いを労うオトハと依都。
しかし相手の身体は未だ微かに脈打っている。戦いはまだ続くだろう。
「相手が蘇るなら何度でも撃ち込むだけです……あと少し、頑張りましょう!」
「はい、最後までよろしくお願いします!」
二人は顔を見合わせて勇ましく笑顔を見せる。
それに合わせるように、ウナギ達とゴエティアもその身体を震わせていた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
オルシウス・ヴィルヘルガ
あの時の声は、やはり。
面白がっていたようだが、俺たちを甘くみないことだ。
さぁ、彼ら(若者)を返してもらうぞ。
死霊達を召喚してる間は俺自身が戦えぬ故、『蛇竜』は短刀を咥えて俺の近辺を。
『騎士』は鋭利な大剣と盾を持ってボスへの攻撃を任せる。
一撃でも攻撃が当たれば、【死霊の蒼炎】も発動できる。
液体と全てを燃やす死の炎。
どちらが優位であろうか。
さぁ、青き炎で灰塵と化せ。
戦えぬ間、隙を見逃さず適切な指示するのが俺の役目。
離れていれば、自然と見えてくるものがあるものだ。
あぁ。
無事戦闘が終われば、相棒達に感謝を。
アドリブ連携歓迎
二人称:名字呼び捨て
●
くすくすと笑いながら戦う邪神を見て、オルシウスは眉をひそめていた。
「あの時の声は、やはり」
「あら、聞こえていましたか。あなた達、とても面白かったですよ」
相手には確実にダメージを与えているものの、余裕な態度は崩れない。
それはきっと、まだ相手が油断しているからだ。
「面白がっていたようだが、俺たちを甘くみないことだ」
ネクロオーブを片手にオルシウスは邪神を睨む。
相手が油断しているならここが好機。自分達には為すべき事がある。一歩も引く訳にはいかないのだ。
「さぁ、浚われた人々を返してもらうぞ」
次の瞬間、オルシウスの側に死霊騎士と死霊蛇竜が姿を現した。
蛇竜は刀を咥えてオルシウスの護衛にあたり、騎士の方が巨大な剣を片手に前へと進む。
「なるほど、そちらがそのつもりなら」
邪神は騎士の姿を一瞥して、身体をどろりと溶かし始めた。
人の姿を捨てて流動する液体へと変身した邪神は、更に身体の一部を鞭のようにしならせて騎士を迎え撃とうとしているようだ。
しかし騎士がその鞭に負ける事はない。大盾で攻撃を受け流しつつ、騎士は更に剣を振るう。
「そんな攻撃、通用しませんよ?」
邪神の言うように、彼女に物理的な攻撃は有効打にはならないだろう。
けれどオルシウスは冷静に戦況を見守り、騎士の攻撃を止めはしなかった。
「……やはり油断しているのはそちらのようだな」
スライム状の邪神に、騎士の剣が触れる。
弾む身体によって斬撃は防がれてしまうが……だが彼らの攻撃はこれで終わらない。
「灰塵と化せ」
剣が触れた箇所から、蒼炎が巻き上がった。
その炎は全てを燃やす死の炎。本命のユーベルコードである『死霊の蒼炎』が発動したのだ。
炎は確実に邪神の身体を焦がし、肉の焼ける匂いを部屋の中に充満させていく。
「!? これは……」
「液体と全てを燃やす死の炎。どちらが優位であろうか。俺達が何も考えずに戦う訳がないだろう」
オルシウスの灰と金の瞳が更に鋭く邪神を睨む。
「……貴様は遊びのつもりだろうが、こちらは真剣。ここにあるのは覚悟の差だ」
彼の鋭い声に合わせて騎士が再び剣を振るった。
動きが鈍っている邪神はそれを避ける事が出来ず、再び死の炎によって身を焦がしていく。
熱さと苦しさで人ならざる悲鳴をあげる邪神。その姿を見てもオルシウスに油断はない。
「相棒達も気持ちは同じ。貴様を必ずここで倒す……!」
ネクロオーブを再び握り、相棒達へと気持ちを通じあわせて。
若き死霊術士は着実に邪神を追い込み続けていた。
成功
🔵🔵🔴
フレッド・カーライル
POW
人間の真似がしたいんですか?
『よっしゃ、せーので言ってやろうぜ』
「『邪神とオウガ殺すべし、慈悲はない!」』
UCでソウちゃんを分離します
人の姿のものを攻撃するのは抵抗あったから、スライムになるのは正直好都合かな
無いよりは、と思って切り刻んだ紙飛行機を持って来てます
紙吹雪にして【敵を盾にする】…目眩し程度にはなるかな?
その間にソウちゃんは【闇に紛れる】【目立たない】動きで死角へ行き【だまし討ち】【2回攻撃】【部位破壊】でスライムの部位を斬ってもらいます
最後に僕がその部位を【傷口をえぐる】ようにフォースセイバーを突き刺します
ええと、人は人を食べないんですよ普通
『残念だったな?』
アドリブ連携歓迎
●
人の姿とスライムの姿を行ったり来たりする邪神。
そんな彼女を見て、フレッドがぽつりと呟く。
「人間の真似がしたいんですか?」
「ええ、だって私は人間が好きですから」
彼女の言う『好き』は理解出来ない。
小首を傾げて邪神を見つめるフレッドの後ろから、彼そっくりの少年が飛び出した。
『意味分かんねーな。話し合うだけ無駄だと思うぜ』
「……僕もそう思う」
その少年――自身の片割れ・ソウちゃんに同意を示し、フレッドはフォースセイバーを構える。
合わせるように血塗れのナイフを取り出したソウちゃんは悪戯っぽく笑みを浮かべて。
『よっしゃ、せーので言ってやろうぜ』
「うん……」
「『邪神とオウガ殺すべし、慈悲はない!」』
宣言と共に二人の少年は前へと駆け出す。
そんな二人を迎え撃つように、邪神はスライムの姿を取り始めた。きっとあの姿の方が刃物に強いのだろう。
けれどそちらの方が好都合だ。だって人の姿をしているものより、見るからに化け物の姿をしている相手の方が切りやすいから。
少しだけ安堵の息を吐き、まずはフレッドが一歩前へ。
「そちらから来てくれるなんて。まずはあなたからおしえて?」
前へと駆ける少年を抱きしめんと、邪神がその身体を大きく広げた。
肉の壁と化した邪神に取り込まれたのならばただでは済まないだろう。それでもフレッドが足を止める事はない。
恐れる事なくひたすら前へ。
邪神が自分の身体に触れる寸前、フレッドはこっそりと隠し持っていたものを思い切り投げつける!
それはこの戦場に落ちていた紙飛行機の残骸だ。思わず投げつけられた異物に邪神が一歩退くのが見える。
『人間は喰うのに紙は喰わないのかよ』
そちらの方向にはソウちゃんが待ち構えていた。
油断した邪神の背に深々とナイフを突き刺し、ソウちゃんはニタリと悪い笑みを浮かべる。
「ぐぁっ……!」
「……そもそも人は人を食べないんですよ、普通」
口らしき器官から悲鳴をあげるスライムへと、今度はフレッドが一気に近付いた。
ソウちゃんが刺した場所と同じ部分にフォースセイバーを捩じこんで、光の刃は傷口を抉るようにその肉を焦がしていく。
「あなたの『好き』は人間の『好き』じゃありません」
『残念だったな?』
再び呼吸を合わせて、二人の少年はそれぞれの得物で邪神の身体を切り裂いた。
細切れになった邪神はなんとか身体を再生させるも、もう既に弱りきっている様子。
その様子を見てフレッドは憐れみの目線を向け、ソウちゃんは楽しげな笑みを零していた。
成功
🔵🔵🔴
御園・ゆず
人間が大好き、ですか
わたしは大嫌いですよ
どうぞ、召しませ。
教えてあげます
わたしがどんなに醜いか
人間がどれだけ恐ろしいか
近づきましたね?
どうぞ、わたしの気持ちです
楽園へと至る道標を彼女に叩き込みます
人間は、利己的で、人も簡単に貶めるし、蔑む
それでもなお、成り代わりたいと望みますか?
……この身を、差し出してもいいかな、なんて
そんなことも考えてました
…でも、こんなわたしにも
誕生日を祝ってくれた人が居たんです
その方の為にも、帰らなくっちゃ
…だから、貴女を還します
どうぞ、道しるべを差し上げましょう
迷うことなく、骸の海へお還りください
…さようなら、最もヒトを愛した方
ヒトを愛し始めたわたしより。
●
「どうして、私は人間が大好きなだけなのに」
ボロボロの身体で蠢く邪神。彼女の呟きにゆずがそっと言葉を返す。
「人間が大好き、ですか。わたしは大嫌いですよ」
そう言いつつ両手をそっと前へと差し出して。
気がつくとゆずは諦めたような笑みを浮かべていた。
「どうぞ、召しませ。教えてあげます。わたしがどんなに醜いか、人間がどれだけ恐ろしいか」
投げかけられた言葉に邪神は戸惑いの表情を浮かべたが……次の瞬間、その表情は笑みへと変わる。
「つまり……あなたをくれるんですね?」
「はい。なんだかもう、疲れちゃいましたし」
ゆずの誘いに乗るように、邪神は半壊した足を蠢かせて前へと進む。
一歩一歩、粘着質な音と共に二人の距離は縮まって。
進むごとに邪神の身体は崩れて人から遠のいていくが、笑みだけはそのままだ。
スライム状の邪神は身体を薄く広く伸ばしていき、一気にゆずを飲み込もうと飛び上がる。
ゆずも更に手を前へと伸ばし、2つの影が重なって……。
「……近づきましたね?」
けれど肉色がゆずの身体を包む事はなかった。
広がる邪神の中心に、深々と銀のダガーが突き刺さったからだ。
差し出された右手の袖に仕込まれていたのは『楽園へと至る道標』。これこそが彼女の本当の気持ち。
「ひどい、騙したんですね」
「ええ。人間は、利己的で、人も簡単に貶めるし、蔑む。それでもなお、成り代わりたいと望みますか?」
諦めたような笑みはそのままに、ゆずはじっと邪神の顔を見つめている。
恨みがましくこちらを睨む邪神の方が人間臭いかも、なんて思ったりもして。
演技をするのは得意だ。だっていつもしているから。
『普通』のふりをして、『埒外』の自分を覆い隠して。
そんな日々の繰り返しが邪神すらも騙してしまった。
「……この身を、差し出してもいいかな、なんて。そんなことも考えてました」
「それならどうして……」
邪神をここまで騙せたのはゆずの才能だが、神をも欺く力を齎したのはきっと彼女の嘗ての心だ。
そしてそれが今の本心ではないからこそ、その心は演技として花開く。
「……でも、こんなわたしにも誕生日を祝ってくれた人が居たんです。その方の為にも、帰らなくっちゃ」
あの時貰えた『おめでとう』の言葉達を、手放したくはなかった。ただそれだけ。
「……だから、貴女を還します」
生きるべきか死ぬべきか。
更に銀色が肉色へと沈んでいく。
「どうぞ、道しるべを差し上げましょう。迷うことなく、骸の海へお還りください」
さようなら、最もヒトを愛した方。ヒトを愛し始めたわたしより。
別れの言葉と共に道標を引き抜けば、邪神は塵になって消えていった。
前へと差し出した手をそっと下ろして、ゆずは静かに目を閉じる。
ここから帰ればまた演技の日々だ。けれどそこには会いたい人達も待っている。
……帰ろう、ヒトの世界へ。
●
邪神が討伐されたという報せを受けて、廃墟にはすぐにUDC職員達が駆けつけた。
廃墟や若者の後処理は全て彼らが行う事となっている。
若者達も全員無事だ。記憶処理や治療は必要だろうが、しばらくすれば彼らも日常へと帰っていくだろう。
猟兵達もそれぞれ帰路についていく。
そんな彼らを、上り始めた朝日が静かに包み込んでいた。
大成功
🔵🔵🔵