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電車に揺られ、帝都を巡る

#サクラミラージュ

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#サクラミラージュ


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 電車――それは帝都において、今もなお重要な交通手段の一つとして重宝されている。特に幻朧桜が彩るサクラミラージュの世界では、いつでも桜吹雪の絶景が落ち着いて見れる絶好の乗り物として、一部の人々に熱狂的な指示を受けている。

「…………」

 その中の一人、加納源蔵もまた帝都の電車を愛する者の一人であった。目を輝かせ、電車の車窓から覗く幻朧桜を楽しむ……学生の彼にとって、将来の夢は電車の運転士になる事だった。
 ただ、今の彼はただの一学生に過ぎない。一月に一度、休日に有り金をはたいて行けるところまで日帰りで行く――今の源蔵の唯一にして最大の楽しみだった。
 その日も、いつもの駅で折り返すはずだった。しかし、『ソレ』の襲来がすべてを覆した。

「あれ?」

 電車が、急に止まったのだ。最後尾の車両にいた源蔵は、ふと前を確認しようとして――。

『その目――その目――許すまじ、許すまじ――!!』

 空から振ってくる声に、源蔵はつられるように上を見た。発火するほどの高温の排気、それが源蔵の見た、最後の光景だった……。


「電車の事故で亡くなった者の影朧が、電車好きの少年の命を狙っているらしい」
 黄幡・甲一郎(十五代目黄幡家当主・f22568)は、そう真剣な声色で切り出した。
「おそらくは自分を事故に合わせた運転士もまた、源蔵少年のように電車が好きだったのだろう……その想いを狙われたとなれば、皮肉な事だ」
 問題は、電車が影朧に襲われるという事実だ。源蔵はもちろん、運転士や客の皆が巻き込まれ、命を落とす事となる。
「まず、みんなには電車に乗ってもらう。襲撃があるまでは……そうだな、幻朧桜の絶景を楽しんでくれるといい」
 駅弁など、お弁当やお茶も駅で売っている。客席は四人がけのボックス席が大体だ。戦いの前の腹ごなしをしたり、風景を楽しんでおくといいだろう。
「その後は、どんな襲撃があるかはみんなの目で確かめて、現場で判断してくれ。少なくとも、電車は何らかの手段で停止させられる――それを防ぐのだ。犠牲者が出るか否か、その瀬戸際である事を忘れないでくれ」


波多野志郎
いつでも桜の景色が楽しめるっていいですよね、どうも波多野志郎です。
今回はサクラミラージュの世界で、源蔵少年をはじめとした電車の乗客たちの命を救っていただきます。

まず、第一章は電車を楽しんでいただければ幸いです。なにせ、襲撃のある二章からは楽しむ余裕はないですからね!

それでは、大正ロマン溢れる帝都の電車で皆様をお待ちいたしております!
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第1章 日常 『列車に揺られて』

POW   :    まったりと食事

SPD   :    車両を探検

WIZ   :    外の景色を楽しむ

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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

花園・スピカ
(カッコいい乗り物(電車)を前に明らかに目が輝いてる!)
UDCアースで見た車両もカッコよかったですが、木製車体のレトロな電車も素敵です…!(きゅん)

それにしても文明レベル的にここの鉄道は蒸気機関車だけかと思っていましたが…既に電車もあったとは
…勉強不足でした(しゅん)

可能なら是非源蔵さんとも(同じ電車好きとして)お話してみたい所
念の為【コミュ力】駆使しつつこの時代の鉄道についてお伺いしたり、他の世界の鉄道についても写真(スマホに入ってる大量の車両画像)を見せたり語ったり
ただ他の世界のものは支障があるようならやめておきますね(猟兵だとバレると騒ぎになりそうなだけなら源蔵さんだけに内緒で教えます)


御園・ゆず
はじめての、世界。
枯れることのない、散り切ってしまうことのない、不思議な桜の世界。
本で読んだこともない、不思議な世界。
息をのむほど美しい世界なのに、こうも胸が苦しく感じるのはなぜでしょう?

やっぱり、わたしの目から見てここは『非日常』に映るからだろうな
普通のUDCアースの人間は、万年桜の世界には来ない
普通でありたいと願うのに、『埒外』の力を使ってしまう
何のためなのか、まだ自分でもわかっていない
偽善?自己満足?
…わからない。
でも、助けてって、手を伸べられたら
取っちゃうんです
…理屈抜きに。

車窓から見る、万年桜
嗚呼、綺麗な桜。
でも……やっぱり、散り逝くからこそ、美しいのだと思います。


アイシス・リデル
電車……
蒸気機関車は他の世界で見た事あるけど、違うのかな
そっか
煙が出ないからお花も、空気も、汚さなくて済むんだ
すごい、ね

わたしはくさくて、きたないから
普通に乗ったら、他のお客さんに迷惑かけちゃう、よね
だから、スチームドローンに掴まって、空から近付いて
こっそり、天井に乗り付けるよ
あとは敵が来るまで、このまま大人しく隠れてる、ね

わぁ……桜、きれいだね
花びらも、咲いてるのも、みんな後ろに流れていって
こうしてるとなんだか、お花の中を泳いでるみたい
えへへ。それに気持ちいい、ね


黒鵺・瑞樹
アドリブ連携OK

電車というか列車、面白いよなぁ。
SL初めて見た時の大きさとか仕組みとか。モーター駆動になっても色々工夫があってすごいと思う。
電車好きなら襲撃はしないで欲しいよなぁ。好きが憎しみに変わった影朧なんだろうか。

席に余裕があるようならボックス席を一人と一匹(小竜の伽羅)で。
買った弁当食べながら景色を眺めようかと。
しかし幻朧桜ってのは普通の桜と違うのはわかるんだけど、植生的にはどうなんだろう?
この世界サクラミラージュ自体が常に春みたいな気候なんだろうか。
…。
でも俺はやっぱり四季折々で変わる方が好きだな。
桜吹雪は確かに綺麗だけど、夏の青葉も秋の紅葉も、冬の雪景色も自然の贈り物だと思うから。


鞍馬・景正
電車――UDCアースの物とは多少異なるようですが。
どうあれこの景正の生まれた世界では馬か駕籠しか走っていませんでしたし、珍しく思えます。

弁当と茶を購い、適当な車両に入るとしましょう。

(席に正座で座る)
……(他の乗客の座り方を見て、足を伸ばす)

動き出せば、その速力には驚嘆。
こんなに速く、大人数を収容できる乗り物なら、豊公の大返しや北畠顕家公の強行軍めいた事が誰にでも可能やも知れませぬ。

路線図なるものを見れば、聞き慣れた地名がある事に不思議な感覚を覚えます。
江戸も時を経ればこの地の如く発展していくのでしょうか。

それはまだずっと先の事として――窓を見遣り、不凋の桜を愛で、戦に備えるとしましょう。


篝・倫太郎
【華禱】
駅で弁当とお茶を買って列車へ
折角だし、種類あるみてぇだから
弁当は別々のを買おうぜ、夜彦

車両は、他の猟兵が最後尾の車両に居るようなら
最後尾に近い空いた車両にしとこう

列車初体験の夜彦には進行方向に向かう席を譲って向かい合って座る
つーか、慣れねぇと進行方向に背を向けるの酔ったりするしな
車窓からの景色を楽しみつつ、買った弁当も満喫

夜彦、夜彦ー、これ美味い
(カツサンドを一切れ差し出し、差し出されたのは遠慮無くぱくり)
おー?夜彦の弁当も美味いなぁ……

んー?あぁ、列車……仕組み?
それは俺も判んねぇな……
(夜彦と一緒になって首を傾げ)

あー……今度、UDCアースで
資料館とか行ってみるのもありかもな?


月舘・夜彦
【華禱】
お弁当と飲み物を買って列車へ向かいます
駅弁と言うものは種類も豊富で興味深いです
はい、別々のものを買いましょう

列車は見た事があっても初めて乗るので楽しみにしておりました
何処に乗るかは倫太郎殿に選んでもらいます

席に座りましたら早速お弁当を頂きましょう
私は幕の内弁当、色んな種類の料理が入っていて華やかです
倫太郎殿から頂いたかつさんど、食べ応えがあって美味しいですね
では私からは栗ご飯とおかずのから揚げもあげます

それにしても列車は一見鉄の箱ですが下に車輪が付いてましたね
あとはどのように動くのでしょう?
倫太郎殿も詳しくは知らないと
聞くよりも調べる、ですね
今度UDCアースで一緒に調べましょう


ナイ・デス
ソラ(f05892)と

ボックス席で向かいあい
隣にはフードファイターソラが、駅でたくさん購入した様々なお弁当の山
私はそんなお弁当の一つを膝に乗せ
窓から飛び出しそうなぐらいはしゃいでいるソラに、微笑みながら

危ないですよ

と声をかけ
幻朧桜……オブリビオンを引き寄せる、この世界の不思議な桜がみせる景色を
電車からというシチュエーションを、楽しんで

……楽しみながら、ソラ
敵が現れるまでに、このお弁当、全部食べましょう、ね

たくさん食べて【力溜め】です
確りと、食べて……にゃ?

あーん。ぱくり。もぐもぐ
……美味しい、です♪ソラも、どうぞ。あーん

はい。この世界を、景色を、電車を、そして、人を、守りましょう


ソラスティベル・グラスラン
ナイくん(f05727)と

二人向かい合うボックス席
桜が見えると手早くわたしは窓を開け放ち

見てナイくん!外は絶景ですよ!風が気持ちいいです…!

この世界の象徴、これこそ枯れぬ不滅の桜!
幻朧桜に目を輝かせて喜んで
ナイくんに注意されてしまうも感動は収まらず

冒険の旅は大体が徒歩ですけど、これもまた風情がありますね
静かでもないのに……どこか安らぐ
なにより素敵な景色を見ながらご飯が食べれますっ

名産品の大盛り特上駅弁は、一口食べればより美味しく
ナイくんも一口どうぞ!あーんっ
あ、わたしにもですか?ありがとうございますっ、あーむ♪

しっかり備えて行きましょう、ナイくん
この世界を守る為、わたしたちは来たのですからっ


仇死原・アンナ
アドリブ絡みOK

あれが帝都の電車…あんな重そうな物が走るのか…
初めて乗るから緊張するなぁ…うぅん…


電車に乗る人々を救う為にも電車に乗らないと…
「え、割り込みは駄目?並ぶ…?えぇと…切符?ちょっと待って…えぇと…あれ…」
まずは電車への乗り方を[情報収集]しようね…

無事乗れたら[目立たない]ように歩き回ってとにかく座れる場所を探そう
…同行者じゃない知らない人がいても[覚悟]を決めて相席しよう

…疲れた
それにしてもいろんな人が乗ってるね…
みんな乗り慣れていて凄いなぁ…
…え?この席はすでに先客がいるから別の席に座れって?
あぁ…そうなの…ごめんね…


御剣・刀也
POW行動

さて、せっかくの電車旅行
旅行とは違うか?まぁ、何はともあれ、楽しませてもらえるんだ
折角の桜吹雪に電車とくれば、お握りでも食べながらのんびり景色を楽しませてもらおうか。

自作のおにぎり(塩結び、鮭入り、おかか)を食べつつ、電車の窓から桜の風景を楽しむ
「こうしてるだけで花見の気分を味わえるんだから、乙な世界だよなぁ。桜ミラージュってのは」
流石にお酒を飲むのは公共良俗に反するとお物で控えて作ってきたお握りを食べつつ、お茶を飲んで桜吹雪の中を移動する景色を楽しむ



●大正帝都の東京駅
 東京駅は赤レンガ製のハイカラな外観が特徴の駅だ。始まりは大正三年――サクラミラージュの世界では既に七百年の歳月、そこに有り続けている。
「UDCアースで見た車両もカッコよかったですが、木製車体のレトロな電車も素敵です……!」
 花園・スピカ(あの星を探しに・f01957)は目を輝かせ、駅へと滑り込んできた電車にきゅんと胸をときめかせた。過保護故外に出ることを許されずにいた彼女にとって、外の世界の全てが興味の対象だ――更に言えば、別世界の物などそれこそ一生目にできるかどうかもわからないのだ。テンションが上がるのも仕方ないと言えるだろう。

「それにしても文明レベル的にここの鉄道は蒸気機関車だけかと思っていましたが……既に電車もあったとは……勉強不足でした」

 しゅん、とスピカが落ち込むものの、勘違いするのも仕方のない事である。電車、ようは電気を動力にするそれは、明治後期から東京の一部で走行を始めていた。そう、ごくごく一部――大正時代ではまだ電車とは設備の面の負担が大きく、走行距離の長さを考えるのなら蒸気機関車が主流であったのは確かだったのだ。
 なお、余談になるがこの蒸気機関車も実に1982年まで実機が稼働した、実に息の長い存在であった事を記しておこう。

(「あれが帝都の電車……あんな重そうな物が走るのか……初めて乗るから緊張するなぁ……うぅん……」)

 乗り込む電車を仇死原・アンナ(炎獄の執行人・f09978)は硬い表情で見つめていた。初めての世界、特に電車というに円のない生活をしていたのだ。テレビを見て小人が動いている! とかバイクを見て鉄の馬が走ってる! とか、異世界物でよくあるネタは、決して他人事ではないのである。
(「え、割り込みは駄目? 並ぶ……? えぇと……」)
事前に調べていた知識を頼りに、アンナは改札に並ぶ。ここでは昔ながらの手動だ。
「切符をお出しください」
「切符? ちょっと待って……えぇと……あれ……」
 切符をどこにしまっただろう? 慌てるアンナに駅員は笑顔を崩さず、待ってくれた。ようやく差し出した切符にバチンと切符切りで穴を開けられ、ようやく先へと進めた。

 数十人の人々が、同じ電車に乗っていく。これから起こる惨劇の未来を知らず、電車はゆっくりと駅のホームから発車した……。

●幻朧桜の帝都を走り
 木造の社内は、落ち着いた木の色を活かした造りだった。鞍馬・景正(天雷无妄・f02972)は空いている席を見つけると、改めて車内を見回した。
(「電車――UDCアースの物とは多少異なるようですが……」)
 どうあれこの景正の生まれた世界では馬か駕籠しか走っていませんでしたし、珍しく思えます――景正は事前に東京駅で買っていた弁当と茶を手に、席に正座で座った。

「…………」

 そのまましばし、周囲の様子を見て景正は普通に座り直す。籠とは違い、正座である必要はないのだとここで理解した。
「……おお」
 ガタン、ガタン、と動き出した電車に、景正は目を見張る。最初こそゆっくりであったが、すぐに速度が上がったからだ。
「こんなに速く、大人数を収容できる乗り物なら、豊公の大返しや北畠顕家公の強行軍めいた事が誰にでも可能やも知れませぬ」
「……はぁ」
 そんな向かい側に座っていたアンナが、ため息をこぼす。すでに、疲労困憊といった風だ。
(「……疲れた。それにしてもいろんな人が乗ってるね……みんな乗り慣れていて凄いなぁ……」)
「ああ、あんた達、手を貸してくれないかい? 窓を閉めとかないと」
 そう言ったのは、一人の老婆だ。それに、アンナが小首をかしげる。
「窓を?」
「ああ、知らないんだね。もうすぐ、横をね、通るんだよ。アレが」
「はぁ……」
 アレではわからないが、景正とアンナは老婆に言われるままに窓閉めるのを手伝っていく。そして、すぐにアレの正体を知った。

 ――電車の横を、黒煙を上げながら蒸気機関車が通り過ぎたのだ。

「おお……!」
 蒸気機関車に、景正が目を輝かせる。老婆は、小さく笑った。
「あんた達、帝都は初めてかい? 東京駅は色々な線路が集まってるからね、ああやって蒸気機関車ともすれ違うのさ。最悪、電車の中が煤だらけってね」
「……それで、窓を」
 アンナもようやく納得がいったという口調だ。老婆はしばらく待って、うなずきながら言った。

「さぁ、もう開けていいよ。改めて、帝都の電車を楽しんでおくれ」

 老婆が窓を開けると、桜の花びらが車内に舞い込む――左右を幻朧桜で彩った、帝都の線路がそこにはあった。

●桜の車窓から

(「はじめての、世界。枯れることのない、散り切ってしまうことのない、不思議な桜の世界。本で読んだこともない、不思議な世界。息をのむほど美しい世界なのに、こうも胸が苦しく感じるのはなぜでしょう?」)

 車窓から覗くその美しい光景に、御園・ゆず(群像劇・f19168)は目を奪われていた。しかし、そこに実感はない。いっそ、窓枠型の画面から映画の一幕を見せられている気分だった。
「失礼、ここいいかな?」
「はい、どうぞ」
 相席を訊ねられ、思わずゆずが笑みをこぼす。それは黒鵺・瑞樹(界渡・f17491)の傍らにいた小竜の伽羅に頭を下げられたからだ。見た目は愛らしいが、その視線やまとう空気には龍にふさわしい空気があった。そんなゆずの態度に、同じ猟兵と気づいた瑞樹も、買ってきた弁当を広げながら、ふと桜の幻想的な光景を見た。

「しかし幻朧桜ってのは普通の桜と違うのはわかるんだけど、植生的にはどうなんだろう? この世界サクラミラージュ自体が常に春みたいな気候なんだろうか」
「どうなのでしょうね? 桜は一年中咲いているそうですが」
「……でも、俺はやっぱり四季折々で変わる方が好きだな。桜吹雪は確かに綺麗だけど、夏の青葉も秋の紅葉も、冬の雪景色も自然の贈り物だと思うから」
 瑞樹の素朴な言葉に、ゆずはああと、腑に落ちた。

(「やっぱり、わたしの目から見てここは『非日常』に映るからだろうな。普通のUDCアースの人間は、万年桜の世界には来ない」)

 普通でありたいと願うのに、『埒外』の力を使ってしまう。何のためなのか、まだゆず自身でもわかっていない。
 偽善か? 自己満足か? ……わからない。

(「でも、助けてって、手を伸べられたら取っちゃうんです……理屈抜きに」)

 ゆずは、再び車窓に視線を向ける。車窓から見る、万年桜――。

「嗚呼、綺麗な桜」

 その呟きに、瑞樹と伽羅が視線を向ける。その視線を感じながら、ゆずは素直な想いを口にした。
「わたしも……やっぱり、散り逝くからこそ、美しいのだと思います」
「そうだな」
 四季の美しさ、儚さを知るからこその想い。それを感じながら、二人と一匹はその美しい帝都を眺め続けた……。

●初めての電車旅
「駅弁と言うものは種類も豊富で興味深いです」
 駅の売店で見た様々な弁当を前に、月舘・夜彦(宵待ノ簪・f01521)は呟いた。その呟きに、篝・倫太郎(災禍狩り・f07291)が口元を綻ばせる。
「折角だし、種類あるみてぇだから弁当は別々のを買おうぜ、夜彦」
「はい、別々のものを買いましょう」
 夜彦の笑みも、心なしか普段よりも明るいものに感じられた。何せ、夜彦からすれば初めての電車旅である――倫太郎の後に続いて、電車へと乗っていく。
「ここにするか」
 倫太郎は自然な動きで席を選び、夜彦に進行方向に向かう席を譲って向かい合って座る。
(「つーか、慣れねぇと進行方向に背を向けるの酔ったりするしな」)
 電車が走り出し、蒸気機関車とすれ違った後に二人は弁当を広げ食事を楽しむ事にした。
「夜彦、夜彦ー、これ美味い」
 倫太郎はそう言って、カツサンドを一切れ夜彦に差し出した。挟んだパンの柔らかさにカツの衣のサクサク感が、小気味いい。味も濃すぎず、薄すぎず、お茶との組み合わせが最高だ。
「このかつさんど、食べ応えがあって美味しいですね。では私からは栗ご飯とおかずのから揚げもあげましょう」
 夜彦の方は幕の内弁当だ。さまざまなおかずが所狭しと並び、味だけではなく視覚からも楽しませてくれる。
「おー? 夜彦の弁当も美味いなぁ……」
 仕込みをしっかりしているからだろう、から揚げは肉によく味が染みている。栗ご飯も口の中に栗が入った時点で栗がほぐれるように溶ける、炊き込み具合が絶品だった。
「それにしても列車は一見鉄の箱ですが下に車輪が付いてましたね。あとはどのように動くのでしょう?」
 食事も進み、ふと夜彦が素朴な疑問を投げかけた。それに、倫太郎も考え込む。
「んー? あぁ、列車……仕組み? それは俺も判んねぇな……」
「倫太郎殿も詳しくは知らないと……ふむ」
 文明の利器とは、それが起こす結果を知っていてもその仕組みとなるとさっぱり、というのはよくある話だ。倫太郎は夜彦と首を傾げる事しばし、口を開いた。
「あー……今度、UDCアースで資料館とか行ってみるのもありかもな?」
「聞くよりも調べる、ですね。今度UDCアースで一緒に調べましょう」

 知らない事は、これから知っていけばいい――それは、現在を生きている者の特権なのだから……。

●車窓の誓い

「見てナイくん! 外は絶景ですよ! 風が気持ちいいです……!」

 ソラスティベル・グラスラン(暁と空の勇者・f05892)が、窓を開けると桜の香りと爽やかな風が車内を駆け抜けていく。ソラスティベルが車窓から身を乗り出そうとするのを、ナイ・デス(本体不明のヤドリガミ・f05727)は笑みをこぼしながら止めた。
「危ないですよ」
 英雄譚に憧れ心躍る冒険を好むソラスティベルだ、この初めて見る光景に魅了されるのはナイでも納得できた。
「この世界の象徴、これこそ枯れぬ不滅の桜!」
 ナイに注意されても、ソラスティベルは感動の収まらない。幻朧桜に目を輝かせて喜びながら、ソラスティベルはしみじみと告げた。
「冒険の旅は大体が徒歩ですけど、これもまた風情がありますね。静かでもないのに……どこか安らぐ」
「そうですね」
 幻朧桜……オブリビオンを引き寄せる、この世界の不思議な桜がみせる景色に、ナイもまた心躍らせていた。それがましてや動く車窓からとなれば、感想も一入であった。
「なにより素敵な景色を見ながらご飯が食べれますっ」
「あー……」
 ソラスティベルの満面の笑顔に、ナイは彼女の傍らを見る――積み上げられた、弁当の山を。
「……楽しみながら、ソラ。敵が現れるまでに、このお弁当、全部食べましょう、ね」
「もちろんですっ」
 そんなナイとのやり取りの間にも、弁当の一つを空にするソラスティベル。ナイも自分の弁当を手に、外の風景を楽しみながらしっかりとお腹を満たしていく。
「ナイくんも一口どうぞ! あーんっ」
「あーん……美味しい、です♪ ソラも、どうぞ。あーん」
「あ、わたしにもですか? ありがとうございますっ、あーむ♪」
 名産品の大盛り特上駅弁も、二人で食べればより美味しい。特に風に乗ってくる桜の匂いは、まるで桜並木の下でお弁当を広げているような気分を味わえた。
「しっかり備えて行きましょう、ナイくん。この世界を守る為、わたしたちは来たのですからっ」
 この楽しく穏やかな時間が、奪われようとしている。その事を知っているからこそ、ソラスティベルは食べるという行為にも熱が入る。お腹が減っては戦が出来ない、これはこれから起きる悲劇を止めるための、エネルギー源なのだ。
「はい。この世界を、景色を、電車を、そして、人を、守りましょう」
 ナイも、それに同意する。お腹の辺りに熱がこもるのは、何もお腹が満たされただけではない――この素敵な時間をくれた世界と人々のために、そう思って溜め込んだ力と想いがあるからだ。
 しっかりと食べて、備える。二人は、そう車窓から見える光景に守る事を誓った……。

●花見を楽しむ
「さて、せっかくの電車旅行……旅行とは違うか? まぁ、何はともあれ、楽しませてもらえるんだ。折角の桜吹雪に電車とくれば、お握りでも食べながらのんびり景色を楽しませてもらおうか」
 御剣・刀也(真紅の荒獅子・f00225)は、自作のおにぎりを広げると窓から見える幻朧桜の絶景へと視線を向けた。電車はそれほど速いわけではない、ただそれでもすぐに光景が通り過ぎてしまうのは確かだ。
 だというのに、桜色が途切れない。幻朧桜の道は、延々と続くのだ。これほどの長さ途切れない桜並木など、他の世界では考えられなかった。
「こうしてるだけで花見の気分を味わえるんだから、乙な世界だよなぁ。桜ミラージュってのは」
 一口、にぎりめしを食べる。ぱりっとした海苔の歯応えに続き、口の中で米がほぐれていった。塩結びの簡単な味付けは、シンプルだからこそ米によく合う。米とともに口の中に広がる塩味に、刀也はお茶でそれを胃へ流し込んだ。

「……酒がほしいな」

 花見といえば酒、と言った連想だが、さすがにお酒を飲むのは公共良俗に反する。桜吹雪を楽しんでいると、ふと傍らにおにぎりを見つめている子供を見つけた。

「……食べるか?」
「うん!」

 刀也の問いに、子供が満面の笑顔でうなずく。なお、ここから車両一つを巻き込んだ怒涛の食べ物交換会が始まるのだが……わらしべ長者ならぬおにぎり長者となった刀也の食事が、大変豪華になったとだけ記していこう。

●電車の上から桜の川を泳いで
「電車……蒸気機関車は他の世界で見た事あるけど、違うのかな。そっか、煙が出ないからお花も、空気も、汚さなくて済むんだ。すごい、ね」
 スチームドローンに掴まって、空から電車を見下ろしていたアイシス・リデル(下水の国の・f00300)が感心したように呟く。蒸気機関車とすれ違った電車の上へ、黒煙を隠れ蓑にアイシスは降り立った。

(「わたしはくさくて、きたないから、普通に乗ったら、他のお客さんに迷惑かけちゃう、よね。あとは敵が来るまで、このまま大人しく隠れてる、ね」)

 ちょこんと電車に腰掛けて、アイシスは目を丸くする。そこは、まさに特等席だったからだ。

「わぁ……桜、きれいだね。花びらも、咲いてるのも、みんな後ろに流れていって、こうしてるとなんだか、お花の中を泳いでるみたい」

 風が、花びらが、頬を撫でていく。痛くはない、むしろ桜の川を流されていく気分だ。アイシスは幻朧桜の桜並木と帝都の光景を興味深げに眺めていた。

「きれいも、きたないも、いっぱい、だね」

 いや、あるいは――帝都にあるきたないものを、幻朧桜がきれいなもので隠してくれているのかもしれない。人でさえ、自分でさえ、そう思えるのだ。だったら、オブリビオン――影朧達にとって、どれほどの慰めになるだろう?
 アイシスは桜の川に身を浸しながらしばし、サクラミラージュの美しさに癒やされつのであった……。

●源蔵少年
 加納源蔵は、ふと自分の隣に立った気配に気づいた。
「席、いいですか?」
「どうぞどうぞ」
 スピカに、源蔵は快く席を指し示す。電車は誰か一人のものではない、それをよく知っているからだ。
「電車、お好きなのですか?」
「……はい」
 目を輝かせる源蔵は、スピカの問いにどこか照れくさそうに答えた。嘘偽りを言う必要など無い、素直に越えた源蔵に、スピカも笑みをこぼす。

 それから、スピカと源蔵は電車について語り合った。互いに電車好きであること、その仕組みやサクラミラージュにおける電車の話、そして、スピカは猟兵である事を明かすと、他の世界の鉄道についてスマホの画像を見せながら語った。
「金属製! この重さでも動ける動力を確保できるんですね!」
 すごい、と源蔵は他の世界の鉄道に目を輝かせてくれる。本当に電車というのが好きなのだろう、それが伝わってくる表情と声色だった。

 同じ電車好きとして、スピカも喜んでもらえて嬉しかった――だからこそ、止めなくてはならない。
 これから彼と、愛すべき電車を襲う悲劇を……。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『影狼』

POW   :    シャドーウルフ
【影から影に移動して、奇襲攻撃する事】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    復讐の狼影
自身の身体部位ひとつを【代償に、対象の影が自身の影】の頭部に変形し、噛みつき攻撃で対象の生命力を奪い、自身を治療する。
WIZ   :    ラビッドファング
【噛み付き攻撃(病)】が命中した対象を捕縛し、ユーベルコードを封じる。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。

イラスト:鴇田ケイ

👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●影狼

 電車の先頭、運転士は自身の目を疑った。

「……嘘だろ、まさか――」

 電車の進行方向、線路の先。そこにいたソレは、決して見間違いなどではなかった。影から染み出すように現れる、四足の獣――狼の群れ。
 影朧、影狼だ。影狼達は次々に影から姿を現すと、電車に向かって駆け始めた。

 これを見て、運転士はブレーキをかけようとする――しかし、これが不幸のきっかけだった。判断は間違いではない、ただ、影狼の足の速さと数の多さ、それが計算外だったのだ。

 これは、これから起きる悲劇のきっかけ。この悲劇を、始まらせてはならない……。
御剣・刀也
影の狼か
まぁ、なんとも物騒なもんが現れたもんだ
ま、それでも一人も犠牲にする気はないがね

影から影に移動して奇襲をかけようとしてきたら、第六感、見切り、残像、武器受けで奇襲を避けるか防御するかして、それからカウンター、捨て身の一撃で斬り捨てる。
自分ではなく乗客の影に紛れて攻撃しようとしたら、ダッシュで助走をつけて、乗客を襲うとしてる影狼にグラップルで飛び蹴りか体当たりをしてそのまま首関節を決めて圧し折るか窒息させる
「握り飯食ってのんびりした分、働かせてもらおうかね。食った分動かないと体重増えちまうからよ」


黒鵺・瑞樹
アドリブ連携OK

電車を止められないっていうけど、でもそのまま走り続けたら脱線の危険もないか?

【存在感】を消し【目立たない】様に死角に回り、可能な限り奇襲をかけUC五月雨及び、投擲できるだけの飛刀で【マヒ攻撃】を乗せた【暗殺】攻撃を仕掛ける。【マヒ攻撃】は一撃で殺せない時の一応保険。
集団戦だ、数もいるだろうしマヒはそれなりに有効だろう。
奇襲をかけやすいように立ち回るが乗客に被害が及びそうな時は躊躇わず【かばう】。
敵の攻撃は【第六感】で感知、【見切り】で回避。
回避しきれないものは黒鵺で【武器受け】して受け流し、【カウンター】を叩き込む。
それでも喰らうものは【激痛耐性】【オーラ防御】で耐える。


鞍馬・景正
来たようですな。
もう少し風景を楽しみたい所でしたが、またいずれ。

◆戦闘
老婆殿に暇を乞うて、窓から外へ。
愛馬(夙夜)に【騎乗】し、【鬼騎乗崩】にて迎撃致す。

列車の先頭目掛けて走りつつ、狼達を視認したら矢を射掛けて参ります。
【怪力】で弦を絞り、【早業】の【二回攻撃】で、狙いが此方に向くよう誘導。

他猟兵の【援護射撃】も可能なら承ります。

姿を消したならば次にどこから現れるか、僅かな気配や物音でも拾えるよう集中し、【第六感】も研ぎ澄まして感知。

死角から襲い掛かってくるなら、太刀を払って退けるか、夙夜の脚による【踏みつけ】で牽制。

そのまま跳躍し、【衝撃波】の斬撃で影から現れた個体を撃破していきましょう。


ナイ・デス
ソラ(f05892)と

急ブレーキ……影朧、ですね(冷静な推理)
空のお弁当を【念動力】まで使い瞬時に纏め上げ

いきましょう。ソラ
勇者パーティの、出番、です!

【地形の利用】窓から電車の屋根の上へ
ソラの合図受け、現場へ【忍び足ダッシュ】

敵を確認し電車から【ジャンプ】
そのまま【鎧無視攻撃】黒剣突き立てる【暗殺】奇襲です

噛まれても【覚悟】してるし【激痛耐性】慣れてる
普段なら噛ませ【カウンター】するとこ、ですが
【第六感】危険を感じ【見切り】回避

影を走る、狼……わかりやすく、こういうの、どうでしょう……!

車両を【かばう】ように【範囲攻撃】
『生命力吸収光』ひろげて、影を消す

ソラの炎に続き、黒剣で仕留めていきます


ソラスティベル・グラスラン
ナイくん(f05727)と

むっ!(勇者的直感)

すぐさま異変を察知
お弁当を掻きこみしっかり噛んで飲み込みます

……行きましょう、ナイくん
敵襲です!

窓から飛び出し翼で空へ
状況を確認、ナイくんに合図し列車の前へ急ぎます!

―――ナイくんが強く光り、影を消してくれました!
今こそ見せましょう、【黄昏竜の一族】の誇りを!
上空から奇襲、動きの止まる狼さんたちを、
真下から前へ、舐めるように【範囲攻撃】の灼熱の津波で焼き尽くします!
焼いた場所から炎は即座に消火
地上に降り、追撃するナイくんに続き大斧を構え、突撃ですッ!

流石ですね、わたしの小さな相棒さんっ!
言葉にしなくとも伝わる作戦、これが勇者パーティの呼吸です!


仇死原・アンナ
アドリブ絡みOK

ついに来たか…あれを叩き潰さないと…!

「お婆さん、ありがとう…ここで待っていて…」
窓から外に飛び出して敵を迎え撃とう!

「かかってこい…ワタシが相手をしてやる!」
電車に近づけさせない為に敵を[おびき寄せ]て
鉄塊剣を振り回し[怪力・範囲攻撃]で敵群を[なぎ払おう]

[絶望の福音]と同時に[見切り]を用いて
敵の攻撃を[ダッシュ、ジャンプ]で回避しつつ
妖刀を抜いて[早業、カウンター]で反撃しよう

逃げようとする奴がいるなら妖刀を[投擲し串刺し]にして一匹でも多く仕留めよう

電車に近づこうとするものなら何が何でも叩き潰してやる…!


アイシス・リデル
来た、ね
電車から飛び降りて、まず一匹、バラックスクラップで叩き潰す、よ

バラックスクラップは大きいし
わたしはこうした方が、戦いやすい、から
また、後で追いつく、ね

狼さんなら鼻がいい、のかな?
だったら、ごめんなさい
わたしのいやな臭い、わたしのくさい臭いも、よくわかっちゃう、よね
それで敵を、ここに足止めする、よ
全部は無理でも、できるだけたくさん、ね
追わせない、から

【毒耐性】があるわたしには、あなたたちの病気も効かないから
捕まったりなんかしないもん、ね
噛みついて、動きが止まったと思って油断したところを、まとめて叩き潰す、よ


緋翠・華乃音
一つの世界、一つの星、一つの物語。興亡も趨勢も、結末なんて結局の所どうでも良くて。
守りたい者の居ない世界に、俺にとって一体何の価値があるのだろうかと時折過る。
それでも――今の俺は猟兵だから。
助けて欲しいと言われたのなら、その手を取ってあげる理由がある。

何を捨ててでも助けたかった人に、手を差し伸ばす事が出来なかったから――その代償行為。だなんて、思いたくはないけれど。


狙撃手なら防衛戦は得意分野だ。
どれだけ行動が素早かろうと、己の目でものを見て己の脚で走るのなら、単なる獣とそう変わりはしない。
自身や相手の影を操ろうと同じこと。
知性のある影朧ならともかく、猟兵を相手取るには即応力が足りていないな。


花園・スピカ
共闘○

車内の安全確保優先
急停車で車内はパニック状態かと思いますので…

「皆さんの事は私達猟兵が必ず守ります。どうか落ち着いて下さい」
【礼儀作法・優しさ・コミュ力】をもって伝え乗客を落ち着かせる

敵の襲撃方向を確認しつつ、可能ならこの時代の車両に詳しい源蔵さんにも車両構造等意見を求めて車内で少しでも安全と思われる場所に乗客を避難させる(前方からなら車両後方、窓の近くは避ける等)

パニックが収まらない方には致し方ありませんがUCを

負傷した乗客や乗務員はUCや【医術】で手当て
「(UCは)少し眠くなりますが大丈夫ですからね」

相手の攻撃は【オーラ防御】で防ぐ
乗客の皆さん(と貴重な車両)は必ず守ってみせます…!


御園・ゆず
急ブレーキ、激しい衝撃
…来ましたね
ヴァイオリンケースからパーカーホールM85を取り出して、組み立て
弾倉の入ったスクールバッグと共に、窓から外へ出ます
車両と車両の間に身を滑り込ませて、狙撃銃を構えます

……早い、その上、軌道が読めない!
スコープ越しにその黒い影を追って
……大丈夫、埒外のチカラを使えば、当たる

居もしないかみさまに祈りをささげて、引き金を引く
『主よ御手もて 引かせ給え』
ただ、わが主の、道を歩まん…っ!
弾倉を変えて、再度撃つ
数が多くても、一つ一つつぶしていけば必ずいなくなるから
タンッタンッ
撃つたび、チカラを使うたび
埒外になっていく

嗚呼…
……かみさまがいるなら
こんなことを起こさせないでよ


月舘・夜彦
【華禱】
衝撃を感じましたらジャンプして窓から出ます
戦いになりますので、猟兵以外の方には車内の中心へ
窓ガラスも割れる可能性がありますので離れてもらいましょう

影から移動となれば不意打ちを受け易い
倫太郎殿と声を掛け合い、敵の位置を確認しましょう
車両へ向かおうとする敵を最優先に狙います

抜刀術『神風』は早業併せて見えない斬撃を飛ばし
2回攻撃にて手数を増やして接近される前に討ちます
接近された場合はなぎ払い、衝撃波にて吹き飛ばします

攻撃は残像・見切りにて躱してカウンター
影に潜った際には奇襲に警戒
奇襲を狙うならば近くの影、つまり我々の影も然り
一度攻撃を止め、第六感と聞き耳にて気配を察知してカウンター


篝・倫太郎
【華禱】
身体に急ブレーキ独特の衝撃を感じたら
即座に座席から離れて外へ
何も知らねぇ人達には窓を閉めて窓際から離れるように言っとく

拘束術使用
影から影に移動するってンなら日向側を戦場にして迎撃
常時立ち回りには注意して
車両にダメージが行かないよう留意して行動

敵が射程に入ったら鎖で先制攻撃
同時に華焔刀でなぎ払いからの範囲攻撃
刃先返しての2回攻撃
拘束術の攻撃と俺自身の攻撃
どっちも衝撃波と鎧無視攻撃を常時乗せてく形で使用

奇襲に対しては第六感と野生の勘で
可能な限り対応
攻撃自体は見切りと残像で回避
回避が間に合わない場合はオーラ防御で防いでカウンター

夜彦と俺の死角からの攻撃は拘束術でフォロー

ほい、お疲れさんっと



●影の狼
「むっ!」
 ソラスティベル・グラスラン(暁と空の勇者・f05892)が勇者的直感で危機を感じたその時だ――急ブレーキの音が、木造の電車を軋ませる。
「急ブレーキ……影朧、ですね」
「んぐんぐ、ですね」
 冷静の状況から推理したナイ・デス(本体不明のヤドリガミ・f05727)に、ソラスティベルは既にお弁当を一気に食べ終えていた。しっかり噛んで飲み込んで、勇者は食べ物への感謝を忘れない。それを見て、すぐにナイはすぐに大量のお弁当を念動力でまとめあげると立ち上がった。

「……行きましょう、ナイくん。敵襲です!」
「いきましょう。ソラ。勇者パーティの、出番、です!」

 ソラスティベルとナイが、同時に窓から外へと飛び出す。同じように、電車内のあちこちで猟兵達が動き出していた。

「来たようですな。もう少し風景を楽しみたい所でしたが、またいずれ」
「お婆さん、ありがとう……ここで待っていて……」
 鞍馬・景正(天雷无妄・f02972)と仇死原・アンナ(炎獄の執行人・f09978)が、同席していた老婆にそう告げる。老婆は立ち上がった二人に、目を白黒させた。
「あんた達、帝都桜學府の……?」
 老婆の問いかけに、しかし、正直に景正は首を左右に振った。
「いえ、違います」
「ユーベルコヲド使いでもないと、影朧の相手は無理だよ!」
「……大丈夫、お婆さん……私達は、猟兵だから……」
 アンナが老婆に語ると、景正が言葉を継いだ。
「私達はあのようなモノの専門家ですから」

 花園・スピカ(あの星を探しに・f01957)はパニックが起きかけた車内へ、よく通る声で言った。
「皆さんの事は私達猟兵が必ず守ります。どうか落ち着いて下さい」
「あ……」
 その声に、源蔵もパニックに陥った状況から意識を引き戻す。そんな源蔵に、スピカが声をかけた。
「源蔵さん、影朧の襲撃です。どこか安全な車両は思いつきますか?」
「……ううん、影狼が相手なら止まってしまったら安全な場所はないと思います。この場合は、一箇所の車両に人を集めて、帝都桜學府の方を待つしかありません――」
 源蔵の言葉の意味を、スピカはすぐには理解できなかった。しかし、源蔵の知識は正確なものだった。影狼が相手の場合の対処法、それが何故止まってはいけない事なのか、源蔵の説明でスピカは知ると、顔色を変えて外へ視線を向けた。

「だとしたら、それこそ――!」

 その頃、気配を消した黒鵺・瑞樹(界渡・f17491)が電車の外へと降り立っていた。
(「電車を止められないっていうけど、でもそのまま走り続けたら脱線の危険もないか?」)
 瑞樹の判断も正しい。運転士も同じ考えで、停止を選んだのだから。だが、外に一歩出て――止めてはならないという意味を理解した。

「――電車の影か!」

 そう、電車が作る影だ。影狼という影朧を相手にする時のみ、止まるという判断が悪手になりかねない理由がこれだ。走り続けていれば、電車の影に現われても追いつくまでの時間が稼げる――だが、止まってしまえば格好の的なのだ。
『ガァ!!』
 瑞樹の背後で、影狼が影から飛び出し電車に襲いかかる。それを振り返りざまに、瑞樹は飛刀を投擲した。ダン! と突き刺さる飛刀に影狼が体勢を崩し、地面に転がる。
「なら、悪手も良手に変えさせてもらおうぜ」
 影に溶け込むように、瑞樹が気配を消していく――囲まれて守りきれない可能性、それは戦力がない事か戦力不足の場合だ。
 今、この電車には十分以上に猟兵が揃っている。ならば、この状況は好転させられるはずなのだ――そして、そうするために瑞樹は行動を開始した。

●ユーベルコヲド

 ――時間は、わずかに巻き戻る。

「――ッ!」

 突然のブレーキに、座席に背が強く当たる。その衝撃に篝・倫太郎(災禍狩り・f07291)は即座に動いた。すぐ横では、同じように月舘・夜彦(宵待ノ簪・f01521)が床を蹴って共に窓の外へと駆け出す。

『グルァ!!』

 飛び出したそこには、影狼の牙がある。しかし、その牙が夜彦の喉元で不意に止まった。

「縛めをくれてやる」

 ジャラン! と倫太郎の拘束術が影狼の体を捕えたのだ。そして、それを確信していたからこそ迷わずに夜彦は夜禱を抜刀――見えない斬撃で影狼を横一文字に断ち切った。
「是は空さえも斬り裂く刃也」
 ジャ! と砂利を鳴らしながら夜彦は着地し納刀、背中合わせに降り立った倫太郎が車内へと叫んだ。
「窓を閉めて窓際から離れとけ!」
「あ、ああ!」
 戸惑いながらも、乗客は倫太郎の指示に従っていく。それを見届けた倫太郎に、夜彦が告げた。
「来ますよ、倫太郎殿」
「おう!」

「……来ましたね」
 ヴァイオリンケースを手に、御園・ゆず(群像劇・f19168)が大股で車両の中を進む。ゆずはヴァイオリンケースからボルトアクション式の狙撃用ライフルの部品を取り出し、組み立てていく。
 全長115.1cm、重量5.7kg、使用弾薬308win(7.62×51mmNATO弾)、マガジン収容弾数10発――パーカーホールM85だ。ゆずは窓から外に身を踊らせると、電車と電車の間に滑り込む。そして、ボルトを手動で操作。弾丸を装填する。

(「……早い、その上、軌道が読めない!」)

 スコープ越しにその黒い影を追って、こちらへ駆けてくる姿にゆずは息を飲む。それでも、当てる方法はある。

(「……大丈夫、埒外のチカラを使えば、当たる」)

 自分に言い聞かせるように、居もしないかみさまに祈りをささげ、引き金を引く。

「主よ御手もて 引かせ給え。ただ、わが主の、道を歩まん……っ!」

 ゆずの魔弾の射手(フライクーゲル・シュッツ)、銀の弾丸が正確に影狼を撃ち抜いていく。正確なリズムを銃声、十発ごとに弾倉を変えて、再度撃つ――数が多くても、一つ一つつぶしていけば必ずいなくなるから、そう信じて。

「嗚呼……」

 タンッタンッ、と撃つたび、チカラを使うたび埒外になっていく。その事を自覚しながら、ゆずは嘆かずにいられなかった。

「……かみさまがいるなら、こんなことを起こさせないでよ」

 ゆずが狙撃で遠くから迫る影狼を減らす中、それからも漏れた影狼にアイシス・リデル(下水の国の・f00300)が微笑んだ。

「来た、ね」

 アイシスは電車から飛び降りると、バラックスクラップを展開する。影狼を覆う巨大な影――そのまま、影狼をバラックスクラップが押し潰した。
「バラックスクラップは大きいし、わたしはこうした方が、戦いやすい、から」
『ガルウウ!!』
 仲間を押し潰され、一体の影狼がアイシスへと襲いかかった。それを防いだのは、御剣・刀也(真紅の荒獅子・f00225)だ。飛びかかろうとしていた影狼の首を掴み、そのまま豪快に地面に叩きつける!

「影の狼か。まぁ、なんとも物騒なもんが現れたもんだ。ま、それでも一人も犠牲にする気はないがね」

 笑い、刀也は地面に転がった影狼に獅子吼を突き立て消し飛ばした。

(「一つの世界、一つの星、一つの物語。興亡も趨勢も、結末なんて結局の所どうでも良くて。守りたい者の居ない世界に、俺にとって一体何の価値があるのだろうかと時折過る」)

 ゆらり、と緋翠・華乃音(終ノ蝶・f03169)は前に出る。迫る影狼を前にしながら、自問の答えは出ない――出ないが。

「それでも――今の俺は猟兵だから。助けて欲しいと言われたのなら、その手を取ってあげる理由がある」

 ヒュオン、とto be vengeance.がいつの間にか抜かれていた右手が閃く。華乃音と影狼が交差し、着地するより早く影狼が桜吹雪に掻き消えていった。

 何を捨ててでも助けたかった人に、手を差し伸ばす事が出来なかったから――その代償行為。だなんて、思いたくはないけれど。

「さぁ、やろうか」

 濃藍に降る流星を模した狙撃銃――to be alone.を手に、華乃音が告げた。

●電車を拠点とした防衛戦

 次々と、影狼が電車へと群がっていく。それは砂糖に群がる蟻を連想させ――ある意味で、間違いではないのだろう。

「主よ御手もて 引かせ給え」
「――それが神であろうと、俺の眼からは逃れられない」

 遠くから迫ろうとする影狼は、ゆずの魔弾の射手(フライクーゲル・シュッツ)と華乃音の瑠璃の瞳による狙撃で数を減らされる。特に影を用いた奇襲を行わせない、という意味ではこの二人の狙撃は強力だった。

「どれだけ行動が素早かろうと、己の目でものを見て己の脚で走るのなら、単なる獣とそう変わりはしない。自身や相手の影を操ろうと同じこと。知性のある影朧ならともかく、猟兵を相手取るには即応力が足りていないな」

 華乃音はそう断言するが、これは正確ではない。ゆずと華乃音の狙撃能力が高すぎるのが要因だ。本来のこの世界のユーベルコヲド使いであれば、数の前と機動力を前にすり潰されていたはずだ。

 その上、近づく事に成功しても――。

「喰らえ!」

 木々の死角から、瑞樹が五月雨によって大量に複製した黒鵺を降り注がせる! ヒュガガガガガガガガガガガ! と影狼達に降り注ぐ黒い大振りなナイフは、縦横無尽の軌道を取って影狼達を穿ち、撃ち抜いていった。

『ガル!!』

 状況が悪い、と本能で悟ったのだろう。影狼達が影へ逃げ込もうとした――だが、それをナイが許さない!

「影を走る、狼……わかりやすく、こういうの、どうでしょう……!」

 ナイが生命力吸収光(ウマレナガラノヒカリ)を放ち、強い光が周囲を照らす。光は影を生むが、強すぎる光は影さえ残さない――影狼達が逃げる影を失った瞬間、空を舞ったソラスティベルが身構えた。

「今こそ見せましょう、【黄昏竜の一族】の誇りを!」

 ソラスティベルが口から放った夕焼け色の炎、黄昏竜の息吹(トワイライト・ブレス)が影狼達を飲み込み、文字通り燃やしていく。炎に飲まれ、なおももがいて逃れようとする影狼は、ナイの黒剣が切り刻んだ。
「流石ですね、わたしの小さな相棒さんっ! 言葉にしなくとも伝わる作戦、これが勇者パーティの呼吸です!」
 ソラスティベルの喝采に、ナイが赤い瞳でうなずく。そのまま、ソラスティベルとナイは、次の敵を求めて動き出した。

「弓馬刀槍、すべてが合わさった武士の神髄をお見せしよう」

 景正は愛馬夙夜を走らせると、鬼騎乗崩にて完全武装を果たす。ガッガッガ! と疾走する夙夜の背で虎落笛の弦を引き絞った。

「行きます」

 ヒュオ! と真冬の凄風にも似た弦打ちの音に合わせ、二本の矢が放たれた。ドォ! と矢は狙いを違わず、影狼達を穿っていく! その気負いは止まる事はなく、夙夜の蹴りが影を消し飛ばし、景正の振るった濤景一文字が影狼の首を断ち切った。

「かかってこい……ワタシが相手をしてやる!」

 景正が向かったのとは反対側へ駆け、アンナは迫る影狼達を引きつける。そのまま噛み付いて来ようとする影狼を錆色の乙女による大上段の一撃で両断。そのまま横回転すると、わずかにタイミングをずらし迫っていた影狼の群れを横一文字に斬り伏せた。

「……電車に近づこうとするものなら何が何でも叩き潰してやる……!」

 絶望の福音は、アンナに10秒先の未来を見せる。だからこそ自分に迫るだけではない、電車に向かおうとした影狼をアサエモン・サーベルの投擲で刺し地面に縫い付けた。
「……お願い」
「ああ!」
 そして、妖刀によって地面に縫い付けられた影狼を、瑞樹の黒鵺が頭を吹き飛ばす!

「狼さんなら鼻がいい、のかな? だったら、ごめんなさい。わたしのいやな臭い、わたしのくさい臭いも、よくわかっちゃう、よね」
『ぎゃん!?』

 アイシスのきらわれものの偶像(ヘイト・フィギュア)の悪臭に、影狼達が蜘蛛の子を散らしたように逃げ出した。アイシスは、スプラッタースクラップを豪快に逃げる影狼に叩きつけ、消し飛ばしていく。

「夜彦!」

 逃げ出した先にいた倫太郎が、見えない鎖で影狼達をその場に押し留めた。その瞬間、倫太郎が舞うように横へステップ。背中合わせに構えていた夜彦が、夜禱の柄を握りながら横回転する。

「任された!」

 お互いの立ち位置を入れ替えるように動き、夜彦の抜刀術『神風』が放たれた。繰り出された見えない刃が、拘束術に捕われていた影狼達をまとめて斬り飛ばす!

「倫太郎殿、車内に!」
「チッ!」

 視界の隅に夜彦が電車内に影移動した一体の影狼を視認、倫太郎もそれに気づいて舌打ちする。

「ひ!?」
「やらせません!」

 子供を庇った源蔵へと迫った影狼を、スピカはオーラを込めたAiakosで受け止める。牙の軌道を逸し、座席へ影狼が叩きつけられそうになった瞬間だ。

「握り飯食ってのんびりした分、働かせてもらおうかね。食った分動かないと体重増えちまうからよ」

 いち早く気づき車内に戻っていた刀也が、影狼の首を腕で締め上げる。ガリガリガリ、と影狼はもがき苦しみ――そのまま、刀也の腕に締め上げられ霧散した。
「大丈夫か?」
「はい、控えてて良かったです……」
 何事もなかったように問いかける刀也に、スピカもようやく安堵の息をこぼした。乗客や運転士も、ようやく笑みがこぼれた――その時だ。

「ほい、お疲れさんっと。そんでもって――」
「ええ、ここからが本番です」

 倫太郎の労いの言葉に、夜彦は視線を上げる。そこには、凄まじい蒸気をまとった何かが落下してくる姿があった……。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『火の車』

POW   :    燃え、漏れる吐息
【発火するほどの高温の排気】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD   :    誇示すべき健脚
予め【攻撃対象の退路を断つように絶え間なく動く】事で、その時間に応じて戦闘力を増強する。ただし動きが見破られやすくなる為当てにくい。
WIZ   :    変ずる不朽の肉体
自身の身体部位ひとつを【人と機械の両方の特性を併せ持つ器官】に変異させ、その特性を活かした様々な行動が可能となる。

イラスト:雲間陽子

👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ジズルズィーク・ジグルリズリィです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●――許すまじ

『――許すまじ、許すまじ――!!』

 空から舞い降りてきたのは、人の顔を持つ蒸気カラクリだった。あるいは、かつては人だったのかもしれない。しかし、その体の九割を越える『部品』はカラクリに置き換えられている――コレを人と呼ぶのに抵抗があるかどうか、人によっては千差万別だろう。

 だが、ソレは人ではない、ないのだ。影朧、火の車――幻朧桜の癒やしすら拒み、転生を否定したモノ。そして、電車を、機関車を、強く強く憎むモノ。

 だから、火の車にとって選択肢は常に一つ――『殺す』だけだった……。
黒鵺・瑞樹
アドリブ連携OK
右手に胡左手に黒鵺の二刀流

自分で絡繰りになってりゃ世話ないな。
あぁあれか、愛しさが募って逆に憎しみになるってやつか。
でも物は使いようで、電車や機関車は最初から傷つけるために作られた物じゃない。
正しくそれは逆恨みって奴だろ。

【存在感】を消し【目立たない】様に死角に回り、可能な限り奇襲をかけ、二刀でUC菊花で【マヒ攻撃】を乗せた【暗殺】の18連撃を仕掛ける。かつ【傷口をえぐり】ダメージを増やすようにする。
敵の攻撃は【第六感】で感知、【見切り】で回避。
回避しきれないものは黒鵺で【武器受け】して受け流し、【カウンター】を叩き込む。
それでも喰らうものは【激痛耐性】【オーラ防御】で耐える。


月舘・夜彦
【華禱】
癒される事を拒み、動かすのは憎悪
電車や機関車を憎みながら己の姿はまるで車
皮肉と感じましたが愛と憎しみは表裏一体
電車が好きで、それによって命を奪われたのだとしたら
その想いは憎しみへと変わるのかもしれません

倫太郎殿の拘束術に合わせてダッシュにて接近
鎧砕き・鎧無視・2回攻撃を主に装甲を破壊
突進のような単純攻撃は残像・見切りにより回避
排気の攻撃はジャンプで後退
倫太郎殿に援護して貰い、その後火華咲鬼剣舞で斬り返す

電車を愛する者の目が許せないのは、嘗ての自分を思い出し
そして奪われた時を思い出すから

車内には電車の運転士を目指す者も居るそうです
……その方を、貴方と同じにして良いはずがありません


篝・倫太郎
【華禱】
こいつ……
自らの意思で「こう」であることを選んだなら
説得は難しいだろーけど……どうするよ、夜彦

憎悪が強ければ強いほど
いや、強いからこそ癒しも説得も拒絶してる
憎悪がてめぇの存在証明になっちまってる

拘束術使用
射程に入った時点で鎖で先制攻撃
列車や乗客への被害を出さないよう
極力列車から離れた場所に落下地点を誘導させる
鎖の攻撃と同時に俺自身も華焔刀でなぎ払い
刃先返しての2回攻撃
攻撃には常時衝撃波と鎧砕きを乗せてく

敵の攻撃は見切りと残像で回避
防げない場合はオーラ防御で防いでカウンター
夜彦への攻撃もかばう
ダメージは激痛耐性、火炎耐性で耐える

発火する程の蒸気ってな
あんま、夜彦に当たって欲しくねぇからな


御剣・刀也
おー、おー、変なからくりが出てきたなぁ
人の顔があるようにも見えるが、まぁいい
お前が元凶だってんなら、お前を斬り捨てるだけよ

発火するほどの高温の排気を放たれたら、ダッシュで助走をつけて勇気をもって跳躍してその上を超えていき、相手の本体めがけて捨て身の一撃を打ち込んで斬り捨てる。
跳躍できないなら、ダッシュで排気を気にすることなく、勇気でダメージを覚悟しながら突き進んでいって、捨て身の一撃でもって斬り捨てる。
「お前が元々何だったのかはどうでもいい。今は人に仇名す存在、俺はただそれを斬り捨てるだけだ。さぁ、真っ向から行くぞ!受け止めれるもんなら止めて見せろ!」


鞍馬・景正
憎悪の果てに変化したのか、あるいは望まず絡繰りにさせられたか。
しかしどれほど無念であろうと、それは凶行の免罪符にはならぬ。

◆戦闘
あの排気が車両に噴き付けられれば厄介。
此方を狙うなら電車から引き離すように動き、乗客を狙うならそのまま立ち塞がり、抜刀。

【太阿の剣】を振るって【衝撃波】で熱波を【吹き飛ばし】、乗客たちを守りましょう。

とはいえ防戦一方では芸も無い。

敵を【視力】の限り観察し、再び排気を放とうとする瞬間を【見切り】、
灼熱が放たれる瞬間を【早業】で先んじて再びの【太阿の剣】で断ち切りにかかります。

転生を拒み、憎しみを抱き続ける――。
その在り方は、既に地獄に堕ちているようなものにも思えます。


花園・スピカ
共闘○

なんか私絶対狙われそうな気がするので(※源蔵さんと同じ部類の人)後方支援を優先
【学習力・情報収集】で敵の動きを観察し【見切り・第六感・地形の利用】で攻撃回避
避けられない分は【オーラ防御・激痛耐性】で致命的な被弾を避ける

怪我人(民間人含む)はUCと【医術】で回復
多人数へのUCは疲労も激しいでしょうが必要なら人命には変えられません
余裕あれば【破魔・属性攻撃の二回攻撃】

鉄道事故の原因は様々ですが…原因が何であれ鉄道員の方々は決して貴方を打ち捨てたり酷い扱いはしなかったはず
それでも貴方の恨みは晴れないのですね…癒しを拒むほどに
せめて転生できる可能性があればそれにかけてみたかったのですが…残念です


仇死原・アンナ
アドリブ絡みOK

奇怪な奴が降ってきたな…
だが…倒させてもらおう

「許すまじか…すまないけど貴様の襲撃を許すことは出来ないんだ…」

鉄塊剣を振るい[怪力、鎧砕き、部位破壊]で敵の装甲を撃ち砕いてゆこう
敵の攻撃は仲間や電車を[かばい]ながら[オーラ防御、火炎耐性、武器受け]で耐え抜こう

「熱い…だが…地獄の炎はもっと熱いぞ!」
排気による発火を身に纏わせた地獄の炎で[吹き飛ばし]、[力溜め、属性攻撃、衝撃波]を用いた【火車八つ裂きの刑】を敵に喰らわせよう…!

戦闘が済んだら、少年や乗客たちの無事を確かめてからお婆さんがいた席へ戻ろう

「ただいまお婆さん…怪我はない?もう大丈夫だからね…」


ナイ・デス
ソラ(f05892)と

これが……事故死して、電車を、それが好きな人まで、全て、許せない影朧、ですか
悲しいこと、です。せめて、罪を重ねないように
……はい。止めましょう、ソラ!

私も、その無茶、付き合います!

と【ダッシュ】で続き
排気に焼かれながらも【覚悟、激痛耐性】慣れていると
肉が焼けることでかたくなるとこ【念動力】で自身の身体無理やり動かして
燃え尽きてしまうとこ『生まれながらの光』で高速再生して
【鎧無視攻撃】機械の装甲などないかのように黒剣突きさし【生命力吸収】回復の代償、疲労を補いながら
力を奪い、ソラの怪力に抗えないように

電車を、それを好きな人を、殺しても
あなたは、救われない、ですよ……!


ソラスティベル・グラスラン
ナイくん(f05727)と

電車だけでなく、電車を好きな人まで憎む
強すぎる憎しみが暴走しています…止めてあげましょう、ナイくん
人々と、何より彼自身の為に!

恐るべきは放たれる熱波!
恐らく電車に近づくだけでも乗客の皆さんに危害が…
……すみません、ナイくん
ちょっと無茶をしてきます!

【勇者理論】(防御力重視)を全開
【気合】で火の車に飛び込み【オーラ防御・火炎耐性】で全力防御
正面から【怪力・盾受け】で突撃、押し返し、電車に近づけさせません!
ナイくん!?あなたまで無茶する必要は……くっ

発火するほどの高温をその身に受け、それでも尚前へ!
勇者とは身を挺して民を守る者、今こそ【勇気】の見せ所ですっ!!


緋翠・華乃音
哀れだな。そんな姿になってまで一体何に執着しているのだろうか。
その憎悪も、何もかも――下らない。


どれだけ動きが素早かろうと"存在している"のなら少し大きな的でしかない。
脆弱点や構造的欠陥、弱点と為りうる箇所は少なくないだろう。

……全く羨ましい、憎悪出来るだけの執着。
俺には、何も無いから。

戦闘中でも優れた五感や直感を研ぎ澄ませて敵の行動パターンや戦術、UCを見切るのも忘れずに。
常に味方と共闘する事を想定した位置取りや、UCを使用して戦術を組み替えたりと多角的な戦闘を心掛け相手を翻弄する。


アイシス・リデル
すごく熱い、ね
近くにいるだけで、蒸発しちゃいそう……
早く倒さなきゃ

【収集体】のわたしたちの中にしまってあるスクラップを
わたしのバラックスクラップに組み込んで、おっきく、つよくする、よ
電車や機関車を憎んでる、なら
そういうスクラップも使えば、こっちに気を惹ける、かな?
それにあなたの身体……機械でもあるなら
一度壊れたらスクラップ、でもあるよね?
壊した部分からどんどん、わたしのバラックスクラップに組み込んじゃうから

電車や機関車を憎んで、あなたも、機械の車みたいになって
そうやって、自分を焼く火でいつまでも苦しんで
わたしには、生まれ変わりはさせてあげられない、けど
今ここでの苦しみは、終わらせてあげる、から


御園・ゆず
ひすいさん(f03169)とは知り合い

空から来るソレに、唖然
なに、あれ
顔?電車?
……敵だ。平和を脅かす、敵
殺す事が救済になるのなら、引鉄を引こう

パーカーホールM85から救済の弾を贈る
居もしないかみさまに祈って、引く
かみさまの元へ送ります
居たらよろしく言ってください

距離を詰められたらパーカーホールは捨てて、身軽になって取り付きましょう
左袖に隠してる鋼糸を繰り出し、引っ掛け、高速巻き取り
セーラー服の下、腰後ろのホルスターからFNFive-seveNを抜いて、撃つ

憎む程に、好きだったんですね
これで救いになれたら、いいんです

……救われたいなら、言って、手を伸べてくれなきゃ
救えないんです
…まったく。



●火の車
 蒸気を吹き出しながら、火の車が地上へと降り立つ。その異形の姿に、御園・ゆず(群像劇・f19168)は唖然として呟いた。

「なに、あれ。顔? 電車?」

 蒸気機関に体の大部分を置き換えた存在、火の車はその内側を燃え焦がすような憎悪を込めて叫んだ。

『――許すまじ、許すまじ――!!』
「これが……事故死して、電車を、それが好きな人まで、全て、許せない影朧、ですか」

 ナイ・デス(本体不明のヤドリガミ・f05727)は、そこに込められた憎悪に哀れみを抱いてこぼす。ソラスティベル・グラスラン(暁と空の勇者・f05892)は、まっすぐに憎悪を見て言った。
「電車だけでなく、電車を好きな人まで憎む。強すぎる憎しみが暴走しています……止めてあげましょう、ナイくん。人々と、何より彼自身の為に!」
「……はい。止めましょう、ソラ!」
 ソラスティベルとナイ、二人の視線を受けて火の車が体の蒸気機関を変形させていく――直後、四足歩行となった火の車が猟兵達へ襲いかかった。

●憎悪の方向性
『――許すまじ、許すまじ――!!』
 焼け付く蒸気をまとい突撃してきた火の車を跳躍でかわし、篝・倫太郎(災禍狩り・f07291)が隣に降り立つ月舘・夜彦(宵待ノ簪・f01521)に言う。
「こいつ……自らの意思で「こう」であることを選んだなら、説得は難しいだろーけど……どうするよ、夜彦」
 倫太郎には、目の前の火の車を動かす原動力が理解できた……理解、してしまった。

「憎悪が強ければ強いほど、いや、強いからこそ癒しも説得も拒絶してる。憎悪がてめぇの存在証明になっちまってる」

 この世には言葉が無力な時があれば、力が無力な時もある。そして、往々としてそのどちらかが必要ない時は――もう片方の出番なのだ。
「癒される事を拒み、動かすのは憎悪。電車や機関車を憎みながら己の姿はまるで車――皮肉と感じましたが愛と憎しみは表裏一体。電車が好きで、それによって命を奪われたのだとしたら、その想いは憎しみへと変わるのかもしれません」
 夜彦もそれがわかるからこそ、感情を排して呟く。目の前の『敵』に、言葉は届かない。ならば、力で届かせるしか無い、と。

「縛めをくれてやる」

 ジャラン! と音だけさせて見えない鎖を放ち、倫太郎の拘束術が火の車に迫る。ガギン! と絡みつき、動きを止めた火の車へ即座に夜彦は接敵。刀身に瑠璃色の炎を宿し、夜彦は夜禱を振るった。

「舞いて咲くは、炎の華」
『許すまじ――!』

 変形させた火の車の機械で出来た尾が、夜彦の火華咲鬼剣舞(カガサオニケンバイ)と文字通り火花を散らす。その尾が振り払われると、見えない鎖が外され、夜彦は跳躍で後退した。
「おー、おー、変なからくりが出てきたなぁ。人の顔があるようにも見えるが、まぁいい。お前が元凶だってんなら、お前を斬り捨てるだけよ」
 御剣・刀也(真紅の荒獅子・f00225)がすかさず跳んだ。白い蒸気が肌を炙るように感じる、それでもその隙間を勇気を持って飛び込むと獅子吼の切っ先を蒸気機関の尾に突き立て、動きを止めた。

「あの排気が車両に噴き付けられれば厄介」

 鞍馬・景正(天雷无妄・f02972)は濤景一文字を抜刀、太阿の剣(アルイハウンヨウノタチ)を繰り出した。限定的な時空断層を発生させる程の単純で重い大上段の斬撃は、火の車の巨体を軽々と衝撃波で吹き飛ばした。

『ゆぅるすぅ――まじィ!!』

 空中で回転し、火の車は体勢を立て直す。そこへゆずと緋翠・華乃音(終ノ蝶・f03169)が銃口を向けた。

「……敵だ。平和を脅かす、敵。殺す事が救済になるのなら、引鉄を引こう」
「哀れだな。そんな姿になってまで一体何に執着しているのだろうか。その憎悪も、何もかも――下らない」

 ゆずのパーカーホールM85による救済の銃弾と、華乃音のto be alone.から放たれた瑠璃の銃弾(バレット・オブ・ラピスラズリ)の狙撃が着弾する。ガン! と流星の如き銀と瑠璃色の銃弾に大きくのけぞったところに、パーカーホールM85の銃弾が丁寧に関節部分に撃ち込まれる――だが、火の車は止まらない。
 ボォ! と全身の隙間から白い灼熱の蒸気を吹き出す。その熱気に、アイシス・リデル(下水の国の・f00300)が呟いた。
「すごく熱い、ね。近くにいるだけで、蒸発しちゃいそう……早く倒さなきゃ」
 アイシスは自身の中から取り出した無数のスクラップを自身のスプラッタースクラップに組み込んでいく。見る間に巨大となったスプラッタースクラップを、アイシスは豪快に振り下ろした。

「あなたの身体……機械でもあるなら、一度壊れたらスクラップ、でもあるよね? 壊した部分からどんどん、わたしのバラックスクラップに組み込んじゃうから」

 アイシスは堆塵撃(ヒープ・アタック)の一撃で火の車からこぼれ落ちた蒸気機関をスプラッタースクラップに取り込み、重量を増加させる――ただ、その破損速度を越えて人と機械の両方の特性を併せ持つ器官を変異させて、火の車は巨大化していった。

『――許すまじ、許すまじ――!!』
「うん。電車や機関車を憎んでる、なら、そういうスクラップも使えば、こっちに気を惹ける、よね」

 怒りを向けてくる火の車に、アイシスは覚悟していたように迎え撃つ。そんな火の車の腕部へ、仇死原・アンナ(炎獄の執行人・f09978)が降り立った。

「許すまじか……すまないけど貴様の襲撃を許すことは出来ないんだ……」

 アンナが力任せに振り下ろした錆色の乙女が、火の車の腕を斬るのではなく粉砕する! 火の車は後退、破壊部分から大量の発火するほどの高温の排気を行ない、牽制した。

「恐るべきは放たれる熱波! 恐らく電車に近づくだけでも乗客の皆さんに危害が……」

 それが引き起こすだろう惨劇を想像して、ソラスティベルは迷わず駆け出していた。勇者として、守るべき者の盾となるために――!
「……すみません、ナイくん。ちょっと無茶をしてきます!」
「私も、その無茶、付き合います!」
「ナイくん!? あなたまで無茶する必要は……くっ」
 止めようと思ってももう遅い――ソラスティベルの隣に、ナイも並ぶ。勇者の仲間もまた、勇気がなくては意味がないから――ソラスティベルとナイは、覚悟を決めて濃厚な蒸気を突っ切っていった。

●その目――許すまじ
「落ち着いて移動してください、大丈夫ですから」
 花園・スピカ(あの星を探しに・f01957)は、そう乗客達の避難を行なっていた。電車に関わる悲劇で、亡くなる人に出てほしくない……その想いがあるからだ。
 スピカが戦闘ではなく後方支援に徹していたのには、理由がある。

(「なんか私絶対狙われそうな気がするので……」)

 自分が源蔵の同類である、という自覚がスピカにはあるのだ。そして、それは事実正しい認識だった。

 ――皮肉にも、それを証明する機会が訪れてしまったからこそ証明できてしまった。

「危ない!」
「――ッ!」

 源蔵の声に、スピカは振り返った。自身に迫る電車と同等か、それ以上の圧力――強引に抜けた火の車が、スピカへと襲いかかったのだ。

『その目――その目――許すまじ、許すまじ――!!』

 その怒りに、スピカは感じた。感じてしまった。何故、自分が嫌いになったものを好きでいるのか――嫉妬と羨望、行き場のないやるせない怒りを。

「ッ!」

 スピカはAiakosへオーラを全力で込めて、火の車の突進と蒸気を止めた。避難は終わっていない、何よりも人命がそこにあり……電車が、あるのだ。
 スピカには、決して引けない一線だった。

「鉄道事故の原因は様々ですが……原因が何であれ鉄道員の方々は決して貴方を打ち捨てたり酷い扱いはしなかったはず」
『――許すまじ!』
「それでも貴方の恨みは晴れないのですね……癒しを拒むほどに」
『許すまじィ!!』

 スピカが押しやられる。靴底が砂利に轍を刻む。それでも、それでもスピカは言わずにはいられなかった。

「せめて転生できる可能性があればそれにかけてみたかったのですが……残念です」

 同じ物を一度は好きになった相手だからこそ、スピカの無念は強い。火の車がスピカごと電車を破壊しようとした、その時だ。

「自分で絡繰りになってりゃ世話ないな」

 ガキン! と四脚だった火の車の前脚二本が断ち切られた――死角から現われた、黒鵺と胡を両手に構えた黒鵺・瑞樹(界渡・f17491)だ。前脚を失い体勢を崩した火の車を見下ろし、瑞樹は告げる。

「あぁあれか、愛しさが募って逆に憎しみになるってやつか。でも物は使いようで、電車や機関車は最初から傷つけるために作られた物じゃない」

 かつて、暗殺者が用いたナイフのヤドリガミである瑞樹だからこそ、思う。物は使いよう、あくまで使う者の問題であって物には責任はないのだ。

 者と物、その間にあるものは広く、そして深い――その事を瑞樹は知っているのだ。

「正しくそれは逆恨みって奴だろ」
『ゆぅるすまじいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!』

 ナイフのようにえぐる瑞樹の正論に、蒸気機関で作った二本の腕で火の車は襲いかかる。だが、腕が振り下ろされたそこに既に瑞樹はいない――蒸気が作った死角へ、潜り込んでいる。

「はっ!」

 瑞樹の瞳が輝く。菊花(キッカ)によって増加した攻撃回数、黒鵺と胡の二刀による十八連撃が蒸気機関の両腕を細切れにした。

『ぎ、い、い!!』

 断ち切られた両腕部分から蒸気を降りまく火の車に、倫太郎は突っ込んだ。発火する程の蒸気は、倫太郎を襲う。だが、夜彦がこの蒸気に晒されるよりも、遥かに我慢できた。

「夜彦!」

 倫太郎が華焔刀 [ 凪 ]を横回転の勢いを乗せて、振り払う! その華焔刀 [ 凪 ]が巻き起こす風が蒸気を払い、そこへ夜彦が駆け込んだ。

「電車を愛する者の目が許せないのは、嘗ての自分を思い出し、そして奪われた時を思い出すから――」

 夜禱の柄を握る夜彦の手に、力がこもる。自分を見る、源蔵の視線に気づいたからだ。

「あそこに電車の運転士を目指す者も居るそうです……その方を、貴方と同じにして良いはずがありません」

 夜彦の火華咲鬼剣舞(カガサオニケンバイ)の剣舞が、綻ぶ華のように火を咲かせる。大きくのけぞった火の車、そこへ砕かれ切り刻まれた部品をスプラッタースクラップに取り込んだアイシスが続いた。

「電車や機関車を憎んで、あなたも、機械の車みたいになって。そうやって、自分を焼く火でいつまでも苦しんで、わたしには、生まれ変わりはさせてあげられない、けど……今ここでの苦しみは、終わらせてあげる、から」

 真っ直ぐに放たれたアイシスの堆塵撃(ヒープ・アタック)の一撃が、火の車を吹き飛ばした。空中でもがく火の車――その上に、刀也が降り立った。

「お前が元々何だったのかはどうでもいい。今は人に仇名す存在、俺はただそれを斬り捨てるだけだ。さぁ、真っ向から行くぞ! 受け止めれるもんなら止めて見せろ!」

 渾身、二撃目を考えない捨て身、刀也は振り上げた獅子吼を大上段に振り下ろす!

「この切っ先に一擲をなして乾坤を賭せん!!」

 ザン! と刀也の雲耀の太刀が、火の車の巨体を完全に断ち切った。蒸気を吹かし、下半身が落下する――だが、残った上半身は終わりを拒んだ。

『ゆ、ゆ、る、す、ま、じ、いい、いいいいいいいいいいいいいいい!!』

 ガゴン! と再び生み出した両腕で、着地。火の車は強引に前へ出た。

「――駆けろ、瑠璃の流星よ」
「かみさまの元へ送ります。居たらよろしく言ってください」

 華乃音の瑠璃の銃弾(バレット・オブ・ラピスラズリ)が右腕を、ゆずの魔弾の射手(フライクーゲル・シュッツ)を左腕を、それぞれ肘関節を撃ち抜き破壊した。腕さえ失い、勢いのまま火の車の上半身が転がる――その前に立ち塞がったのは、アンナだ。

「熱い……だが……地獄の炎はもっと熱いぞ!」

 火車八つ裂きの刑――アンナは錆色の乙女を振り回して刀身に纏わせた地獄の炎を火の車へと叩きつける! ゴォ! と己の蒸気でさえ燃えなかった火の車の蒸気機関が炎に飲まれる――それでも構わず蒸気を放とうとした火の車へ、景正が踏み込んでいた。

(「転生を拒み、憎しみを抱き続ける――その在り方は、既に地獄に堕ちているようなものにも思えます」)

 己の憎悪に焦がされもがく、景正の目には火の車の戦い方はそうとしか見えなかった。観察し、蒸気の吹き出すタイミングを読んで――景正の太阿の剣が、灼熱を発する前に断ち切っていた。

「勇者とは身を挺して民を守る者、今こそ【勇気】の見せ所ですっ!!」

 ソラスティベルのコンカラーが振り抜かれ、熱気と火の車を吹き飛ばす! そこに生み出された道を走り、ナイは告げた。

「電車を、それを好きな人を、殺しても、あなたは、救われない、ですよ……!」

 だから、せめて終焉を――ナイは黒剣を変形、手袋と短剣の中間形態にして突き刺した。奪うのは、その生命。ナイの生命力吸収による一撃に、ついに火の車の憎悪は燃え尽きた……。

●未来へと続く線路
「ただいまお婆さん……怪我はない? もう大丈夫だからね……」
「ああ、大丈夫だよ。ありがとうね」
 アンナの問いかけに、お婆さんは綻ぶように笑った。そこにある安堵に、アンナも小さくうなずく。

「皆様、電車にお戻りください。次の駅までお送りします」

 運転士の呼びかけに、避難していた乗客達は電車の中へと戻っていく。ふと、ゆずはそこに残された小さな火の車の破片に気づいた。

「憎む程に、好きだったんですね。これで救いになれたら、いいんです」

 ゆずはそう呟き……小さくかぶりを振った。

(「……救われたいなら、言って、手を伸べてくれなきゃ救えないんです……まったく」)

 再び、電車が動き出す。よく、人は運命や進路をレールに例える。ただ、運ばれていくだけなのだ、と。ある時は肯定的に。ある時は否定的に。
 それでも、行き先がどこなのか知れるというのは、ある意味で救いなのかもしれない。このサクラミラージュにある、転生のように……。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年10月16日


挿絵イラスト