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帝都連続殺人事件

#サクラミラージュ


●血塗られた殺人の館
 桜の花びらはひらひら舞っている。
 薄桃色に色づいたそれはふっくらと咲きほころんで、風に巻かれて散っていた。
 世間の季節は秋に移ろい往こうとしていたが、帝都には常に桜が咲き誇っている。
 窓の外から覗く桜に――似つかわぬ、赤。
 ごろりと力なく転がる身体、投げ出された四肢。くったりとして生気のない肌。

 死体が、転がっている。

●帝都殺人事件
「死んでくれ」
 死んでくれ。どうか死んではくれないか。
 開口一番、探偵は猟兵達に死を願った。
 死んでくれという言葉通りに受け取ればなんとも剣呑な字面だ。この場で一戦交えても可笑しくはないピリリとした空気だが、目の前の青年――違法論・マガル(f03955)は至って真面目な顔で自分達に死を要望しているらしい。
 死んでくれとは一体どういうことだろう。
「随分と物騒だな」
「死ぬ必要がある依頼をしたい」
「死ぬ必要?」
「そうだ。死ね」
「端的に言うな!」
 これではただの暴言だ。思わず顔をしかめる猟兵達に、マガルはそのまま依頼概要を説明する。
 ある館で影朧による連続殺人が行われることが予知された。館の名はクロユリ邸。
 このままでは死人が出てしまうため、あらかじめその日クロユリ邸に行く予定だった人々全員に館に向かわぬように指示をした。これならば誰も死ぬことはない。めでたく事件解決である。……ただし話はここで終わらない。
 連続殺人によって影朧――オブリビオンが出現するため、影朧を倒すには殺人事件が起きる必要があるのだ。
 せっかく影朧が出るという予知を当てたのだから、この機を利用しない手はない。
 幸いにして犠牲者が誰であれ、連続殺人さえ起これば影朧は姿を現すだろうことは予見できている。
「なるほど。それで死体役が必要というわけか」
「そうだ、正確に言えば死んだ演技をしてくれ。殺人事件の被害者役になってくれる猟兵を募りたい」
「それ安全性は大丈夫なんですかね」
「猟兵は埒外の存在だ。普通の人間なら死ぬようなトリックでもどうにか生還するに違いない。多分な」
「多分!?」
 やや信じがたい言葉が尾にくっついたのはさておき。
 マガルは館に入ってからの具体的手段を提示した。ぺらりと封蝋のされた手紙を差し出される。
「まずは謎の招待状によって館に集められたという体でクロユリ邸に入ってもらう。最初はなるべく一癖も二癖もありそうな人物像を演じて、館内でくつろいでくれ」
「それだけでいいの?」
「実際にくつろぐのも構わないし、くつろぐフリでもいい。徹底的に隙を見せろ。単独行動をしたり意味深な言葉を零したり、とにかく事件の第一被害者にでもなりそうな行動が求められる」
 殺人事件のセオリーとして、一癖も二癖もありそうな人物像は消される運命にある。
 ひとりで部屋に閉じこもったり、シャワーを浴びたり、何かに勘鋭く感づいてしまったり、そういう類の登場人物は真っ先に犯人にやられるものだ。
 今回の猟兵達は影朧を誘き出すための餌として動く必要が出てくる。
「あとは簡単だ。館には犯人……影朧の仕掛けた罠がたくさんあるだろうから」
「あるだろうから?」
「全身に浴びればいい」
「えぇ……」
 猟兵達の一部は困惑している。尤もである。しかし死体役になるのが此度の目的なので頷くしかなかった。
 一応対抗策として本当に死なない工夫を施して小ダメージに見せかけることも可能だ。避けて懐から血糊を出すとか、本格的に苦しみもがくような迫真の演技をして倒れるとか、諸々である。影朧との一戦が控えているのなら体力は温存するべきだ。
「複数の死体さえ出れば影朧が出てくる。動機を語ったりすると思うから適当に聞いてやってくれ。あとはサスペンスドラマよろしく説得しながら倒せばきっと転生してくれると思う」
「大事なところだけ全部フワッフワなんだが大丈夫か?」
「大丈夫だ」
「本当に?」
「多分な」
「多分!?」
 本当に大丈夫なのだろうか。
 やや不安を残したまま猟兵達はサクラミラージュの世界へ転送される。
 桜舞う帝都へ――これから見せかけの連続殺人事件が起こるだろうクロユリ邸へと、重い足取りを進めていった。


山田
●マスター挨拶
 山田と申します。お久しぶりです。
 今回はナンチャッテ殺人事件シナリオです。
 事件の謎解きや犯人当てなど小難しいことは一切なく、純粋に殺人ギミックで死んだふりをすることになります。血しぶき。

●一章プレイングに関して
 ここでは「館でのくつろぎ方」を記入して下さい。
 方法はフラグメントで提示されているPOW・SPD・WIZの例以外の別の方法でも全く構いません。踊るもよし食うもよしです。

●二章プレイングに関して
 ここでは「死因と、死んだふりの詳細」を記入して下さい。
 なるべくド派手に死んだふりをすることになります。毒やロープや刃物などたくさんご用意いたしましたので猟兵さん達のお好みの死因をお書き下さい。
 ギミックを受ける際に細工をしてダメージをやわらげる場合はその旨を書いたり、ダイイングメッセージを残したり、より死体っぽく演技することも可能です。

●三章プレイングに関して
 二章が成功すると、犯人の影朧氏による動機解説のための描写として、具体的な名前の出る猟兵が登場しない空のリプレイが入ります。
 名探偵は無事におうちに帰るまでが名探偵です。
 戦闘にプラスして熱い説得プレイングなどがあればきっと犯人の影朧氏も満足してくれるに違いありません。

●同行者に関して
 共に行動される方がいる場合は、お互いの呼び方を各位ご記載下さい。

●グリモア猟兵
 違法論・マガル(f03955)
 探偵を生業とするブラックタールの不愛想な青年です。
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第1章 日常 『回ル廻ル舞踏会』

POW   :    豪華な料理を食べまくる。

SPD   :    華麗にダンスを楽しむ。

WIZ   :    優雅に誰かと語り合ったり、建物を見て回る。

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●きらびやかな館
 地図をもとにクロユリ邸についた猟兵一行は、館内部のきらびやかな装飾に瞠目した。天井から垂れ下がるシャンデリア、ふわふわの絨毯、壁に飾られた絵画達。
 フロア真ん中にある階段から見るにどうやら二階建てらしい。二回には簡単な客室がいくつかあるようだ。
 フロアの端々に置かれたテーブルには古今東西のごちそうが鎮座している。
 大きなダンスホールとしても使われていたのか、アコーディオンを主旋律にどこか昔懐かしいレトロチックな音楽が流れていた。ぷつぷつと時折途切れるようなノイズが混じるのは本物の蓄音機を使っているせいだろうか。
 おずおずとクロユリ邸に猟兵達は入り込むと、思い思いにくつろぎ始めることにした。
織江・綴子
こ、ここがクロユリ邸!
豪奢を極めたと名高いクロユリ邸!

雰囲気に呑まれて咄嗟に言いましたが、本当に名高かったかは知りませんけど。
ここに転送してくださった怪しい方が言うには、本来ここに来るはずの方はいないという事で、まずは好きにしていいとの事でしたよね。

ひとまず腹ごしらえをしましょう。
それにしてもすごい種類の料理ですね、美味しい!
これもあれも美味しい。すごい!

それでは本命の屋敷探索へ!
このような立派なお屋敷を好きに見て回れる機会など、そうそうありません!
場に相応しく振る舞い、走らず騒がず見学に参りましょう!
(TPOを弁えて走ってるような速度の歩行と抑えてもデカイ独り言を呟きながら見学に向かう)


村井・樹
いやぁ、なんというか。随分と趣のある館ですねぇ
これは如何にも何かが起きそうですが。
……というか、『死ね』と宣告された上で来ているわけですが

ひとまずは、ここの空気を味わいましょう
我々もUDCとしての任務で羊羹に潜入したことこそありますが、このような空気のところは流石に初めてなのでね

クロユリ邸に飾られている芸術品やら、装飾やらを愛でながら、『不良』とともに内部を散策
後で死んだふりをするためのトリックにでも使えそうなものに、検討をつけておきましょうか

シャンデリアとか、絵画とか、豪華な家具とか。

このように必要以上に嗅ぎ回るネズミも、犯人にとっては目障りな存在になりうるでしょうし?

※プレ外の言動等大歓迎


稿・綴子
※絡みアドリブキャラ崩壊お好きにどうぞ

>設定
記憶をなくした大正ご令嬢
招待状はドス黒く血にまみれている、何故かしら?
答え「殺してでも奪い取った」
誰から?←要出典

>行動
「ここに来ると何かわかると思って…寛ぐ、ですか?」
不安気に周囲を見て曰くありげな物品があれば「これは…う、頭が…」と蹲る
親切にされたら笑顔で如才なく
ダンスに誘われたら喜んで
踊りながら御髪にさした彼岸花飾りを抜いて 相 手 を 刺 そ う とします
「!違うの、違うんです…っ!」
疑われるフォローされるどちらにしても
「私、ここに居てはいけないのね」
と振り払って招待状にある部屋に引きこもります
ここにいれば誰も傷つけたり傷つけられたりしないわ


秋稲・霖
やたら勘の鋭いヤツの振りをしてゆーっくり楽しみながら思った事をぶつぶつ、ぺらぺら喋っちゃおーかと思ってるぜ!

…えっ、マジ!?ほんとにゆっくりしちゃっていーの?超ラッキー!!
すっげーうまそうな物ばっかりあるし、とりあえずはそれを全力で楽しみたい!食べたい!

…にしてもここ、すっげー広いよな!踊れそう…。
全力で楽しんだ後は運動しなきゃだし、踊るのもいい感じに楽しめそう!誰かいないかなーっと

【アドリブ、絡み等歓迎です】



●クロユリ邸へようこそ
 たどりついた館の外観は洋風で、煌びやかな中にもどこかどっしりとした荘厳な雰囲気があった。
「こ、ここがクロユリ邸! 豪奢を極めたと名高いクロユリ邸!」
 なんて、雰囲気に呑まれて咄嗟に言いましたが、本当に名高かったかは知りませんけど。
 こそりと一つ呟いてみる。
 帝都桜學府情報科所属のユーベルコヲド使い、ハイカラさんの學徒兵である織江・綴子(f22455)は館に入る前にしみじみとクロユリ邸を見上げていた。
 二階建てにしてはまあまあな広さで庭も手が入っているのか小綺麗だ。
 綴子の目測では中もそれなりの広さになっていそうである。ギイギイと鳴く木製の扉を開ければ綴子に続いて複数の猟兵達が館へと足を踏み入れた。シャンデリアはきらきらと煌き、オレンジ色のあかりを絨毯に反射させて時折ゆらりゆらりと揺れている。
「さてと……ここに転送してくださった怪しい方が言うには、本来ここに来るはずの方はいないという事でしたね」
「はい、それは確認済みです」
 聞けば傍に立っていた多重人格者のUDCエージェント、村井・樹(f07125)が頷く。
 肩にはひょっこりと彼自身が収容したUDC『メメ君』を乗せて。館の扉をくぐった樹は綴子の言葉に頷いた。
 この館に本来居たはずの招待された者達は、ここにはいない。
 先手を打って予知を見たグリモア猟兵の手によって、ここに来ることのないよう言い渡されているはずだ。
 生贄として代わりに来たのは猟兵達。
「にしても、いやぁ、なんというか……随分と趣のある館ですねぇ」
「はい、すごく雰囲気があります……」
 UDC『メメ君』は綴子の視線を追ってきょろきょろと館を見回している。
 樹も広々とした館の中をちらりとモノクル越しに確認した。
 物語の舞台にふさわしい、ミステリにありがちなスタンダードな館だ。まるで大量殺人のために拵えられた、お誂え向きの。サスペンスなら今頃雷鳴が轟き大雨になって外部との連絡が遮断されていそうですらある。
「これは如何にも何かが起きそうですが」
 そう、如何にも何か起きそう、というよりもさらに詳しく言うならば。
「……というか、『死ね』と宣告された上で来ているわけですが」
「確か、まずは好きにしていいとの事でした。それっぽく犯人を釣るようにも、と」
「そうですね、思い思いに振舞いましょう。ひとまず私は、ここの空気を味わうことに致しましょう」
 樹もUDCアースの任務で洋館に潜入したことこそあるものの、このような空気のところは流石に初めてだ。
 サクラミラージュという世界に馴染むためにもその空気感をまずは知りたいのだと言う彼に綴子もコクンと頷いた。
「なるほど、それは大事ですね。それでは私はひとまず腹ごしらえをします」
 二人がぱっと離れると他の猟兵達も二人に倣ってそれぞれクロユリ邸のなかでくつろぎ始めた。

●毒物混入の布石
 ダンスホールの端、軽食をつまめるようにと立食式で用意されているオードブルは意匠を凝らした料理の数々。
 和食に洋食、中華のほかに甘味類も豊富に置かれている。
 グラスに注がれているのはシャンパンやワインのほかに未成年用だろうかアルコールの含まれない飲み物もしっかり用意されていた。周到である。
「それにしてもすごい種類の料理ですね、美味しい! これもあれも美味しい。すごい!」
 ぱくりと頬をふくらませて綴子が舌鼓を打っていると。
 ちょうど料理を食べようとした妖狐の陰陽師、秋稲・霖(f00119)と伸ばす手が重なった。二人は同時にひょいと手を引っ込めてどうぞどうぞと互いに譲り合う。
「あっ悪い! お先どうぞ! これ、最後の一個だしさ」
「いえいえ、私が後でしたから! どうぞお食べになってください」
「マジいいの? ありがとなー!」
 和桜の形に切り取られた和菓子をつまんで霖がひとくちで口に放り込む。
 ほのかな甘みとやわらかな食感がふんわり広がってなんとも上品な味がした。
「うめぇ!」
「ふふ、あなたもお食事に目を付けられたんですね」
「ほんとにゆっくりしちゃっていーんだったら全力で楽しまないとな!」
 まずはくつろぐ演技と来れば何を好きにしても良いということだ、そこに料理とくれば無論タダ飯になる。
 依頼をこなして飯も食えるの超ラッキー、と霖は真っ先にテーブルに来ていた。
「演技もしっかりやんないとな。俺は一応やたら勘の鋭いヤツの振りをしようかなーと思ってる」
 きらりと輝く眼鏡の向こう側、霖は犯人の気を引くためにミステリーなどで真っ先に消されそうな人物像を演じるようだ。一方綴子はそのまま館の見学に行くつもりらしい。
「なるほど見学かー」
「はい! せっかくの館ですから隅々まで見学させていただかなくては!」
「おぉー、いかにもじゃん。むやみやたらに歩き回るのも犯人とエンカウントしやすいミステリーの鉄板だよな!」
「もちろん純粋に気になるというのもあります。このような立派なお屋敷を好きに見て回れる機会など、そうそうありませんから!」
 力説する綴子に霖はうんうんと腕を組んで首を縦に振った。他の猟兵達もきっと各々それらしい動きをするのだろう。

●シャンデリア落下の布石
 バイバイと手を振って綴子が館の探索に乗り出していったのを見届けると、霖はそのまま満足した胃をするりと撫でた。
 粗方食べて料理は堪能した、全力で楽しんだ後は運動しなきゃとフロアを見渡す。
「……にしてもここ、すっげー広いんだよな。踊れそう……」
 ダンスホールに使われていたらしいクロユリ邸のフロアは流れる音楽にまかせて足を動かせばそのまま舞踏会と洒落こめそうだ。レトロな曲にあわせて踊るもまた一興。
「踊るのもいい感じに楽しめそう! 誰かいないかなーっと」
 辺りを見渡す霖に声を掛けてきたのは曼珠沙華を髪に飾る、記憶をなくした大正ご令嬢――という役柄でここにやってきたヤドリガミの死霊術士、稿・綴子(f13141)。先の彼女と名の綴りが同じである。
 役になりきっているのか綴子本来の吾輩という一人称は私に矯正されているようだ。口調も然り。
「私、綴子と申します。パートナーをお探しですか?」
「うん。俺と踊ってくれるか?」
「ええ、喜んで」
「とじこ、ていこ……どっちも素敵な名前だな」
 霖は彼女を踊りに誘う。アコーディオンの速い曲調が彼らの足取りを軽くした。
 飲めや歌えや踊れや踊れ。Shall We Danceと問えば、綴子はするすると足を絨毯をなめらかに滑らせてシャンデリアの真下に来る。
 美男美女の踊りは絢爛たるダンスホールの真下、まるで一枚の絵画のごとく見る者を惹きつけさせる魅力があった。
 どちらがどちらともなくリードして和やかなダンスを楽しんでいると不意に綴子がまんまるの黄色い目をきらめかせてニィと口端を上げて見せた。
 悪戯を仕掛ける前の子供のように楽し気に。ひやりと仲間であるはずの猟兵に、ダンスパートナーに、悪寒が生じた。
 悪寒――悪寒? 彼女相手に?
 ひゅ、と霖の喉が鳴る。その刹那だった。
 綴子が踊りながら、御髪にさした彼岸花飾りを引き抜いて霖に突き刺そうとしたのは。
「わっ!?」
「! 違うの、違うんです……っ!」
 咄嗟に手を引く彼女はフルフルと震えて涙を目に滲ませている。
 急にどうしたのだと霖が一歩踏み出すと途端に綴子は身を引いた。
「私、ここに居てはいけないのね」
「ちょ、待っ、」
 すたたたたたた、すたこらさっさ。
 シンデレラが王子から逃げるかのように綴子は二階へと行ってしまった。呆然と取り残された霖は目を白黒させて、ただ彼女が消えた二階を見上げることしかできない。
「あ、なるほど! 今の演技か……!」
 霖はようやっと彼女の行動の意味がわかって思わず膝を打った。なるほど確かにミステリの鉄板には一人でひきこもるような登場人物も狙われやすい。一癖も二癖もある登場人物のうち、そのひとり、記憶をなくした大正ご令嬢。
 なかなか凝った演技派である。突然の身の翻しようはさすが原稿用紙のヤドリガミ、物語でどういう役が求められているのか熟知しているのか猟兵の中でも一枚上手だ。
「にしてもメッチャビビった……! 本格的じゃねえか、俺も負けてらんねー!」
 霖もさっそく、やたら勘の鋭いヤツの演技に入る。思った事をぶつぶつぺらぺら。顎に手を当ててダンスホールをゆるりと歩き始めた。なかなか様になっているようだ。

●トラップの布石
「それでは本命の屋敷探索へ!」
 所変わって綴子――ではなく綴子側。稿・綴子ではなく織江・綴子はふむふむと興味深げに二階を見てまわっていた。壁に飾られた風景画も廊下に置かれた調度品もどれも高額に見える。壊せばいくらするのやら。
 クロユリ邸の持ち主の総資金が気になるところですねぇ、と大きな声で独り言を呟いている。足取りは軽やかにやや大きめに。彼女本来の気質か、ハイテンションになっているのか。声と足音の騒がしさは館によく響いていた。
 ずんずんと元気よく進んでいくと目の前に二人分の人影。
「しかし【俺】に死ねと来たか、今回の依頼人は随分と荒い――……」
「とは言え【私】と他の方達が死なないことにはどうしようもありませんから――……」
 なにやら話しているようだが聞き取れず、ぱたぱたと綴子は駆け寄った。
 モノクル越しに優しい赤目をしている青年は館前で話していた樹だ。
「おや、また会いましたね」
「先程ぶりです! 今お二人いらっしゃいませんでしたか?」
「いいえ、私一人ですよ。ああいや、正確には一人ではないのですが」
 自分も居るのだとUDC『メメ君』が彼の肩から主張している。樹はメメ君のことを軽く撫でて宥めた。確かに二人いたような気がしたが、綴子は見間違いかと目を擦って頭を下げる。
「すみません……勘違いだったみたいです」
「構いませんよ。勘違いではありませんから」
「?」
「失敬、なんでもありません。しかしなかなか調度品が多いですね」
 彼が見回るだけでもかなりの量の家具が置いてあったらしい。
 シャンデリアとか、絵画とか、銀食器の詰められた欅の食器棚、などなど。
「後で死んだふりをするためのトリックにでも使えそうなものに、検討をつけておきましょうか」

 ……このように必要以上に嗅ぎ回るネズミも、犯人にとっては目障りな存在になりうるでしょうし?

 にこりと笑う樹は誰かに見られているかのように唐突に渡り廊下の向こうにある絵画に目を向けた。
 彼の見る方向に今度こそ人影を感じたのは、綴子の直感か、はたまた別の何かか。
 
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

カイ・オー
WIZで判定。アドリブ、連携歓迎。

俺好みの世界がやって来たもんだな。不謹慎ではあるが、楽しませて貰おうか。

チャラチャラした若者風の装いと演技で入館する。
「へぇ、聞いてた通り豪華な邸じゃないか。随分と金がかかってそうだなぁ」
等と、下世話な感想を述べながらあちこち見て回ろう。片手に酒のグラスを持って呑みながら。
他の参加者がいれば酒を勧めたり、世間話を持ち掛けたり。

フラグの一つも立てとこうか。
一枚の肖像画を見て、真剣な表情で「この絵……まさか、あの時の……」と呟く。誰かに聞き咎められたら「いや、何でもない」と誤魔化す。
物陰で「へへっ……どうやら、俺にも運が向いてきたらしいな」等とほくそ笑もう。


皐月・灯
「私」の出番のようですね。
ああ、私は「灯」の別人格です。名前は「セクト」、以後お見知りおきを。

さて、ここでの私は被害者の一人……フフ、推理小説の登場人物になった様な気分です。
折角ですから、この館に関わる後ろ暗い過去を持ちながら、
人当たりもよく、余裕のある態度を崩さない青年実業家……という役柄を演じましょうか。
衣装も相応に仕立てておきましょう。灯のままでは、ね。

ええ、物語の舞台が「連続殺人」なのであれば。
私は2人目か3人目……中盤に殺されるタイプ、ということですね。

給仕の方に麗しい女性などが居れば、談笑なども楽しみましょう。
勿論、あくまで演技ですよ?

……まあ、役得と思わないとは言いませんがね?


青葉・まどか
はあ、殺人事件の被害者になる……ですか。
新しい世界で何とも珍妙な依頼ですね。
それでも、必要なことなんですよね。
様式美……最早、儀式と言ってもいいんですかね?
でしたら、犠牲になりやすそうな人物を演じてきますね。

今回は『浮世離れした少女』なんてどうでしょうか?
人形(ビスクドール)を抱きかかえて館を徘徊したり、物陰から人を眺めたり怪しげな行動を繰り返します。
「うふふ」
「内緒。内緒よ」
「嫌よ。次は私なんだわ」
他者から話しかけられても意味のわからない言葉を繰り返して周囲から不審がられ孤立していく。

それはそれとして館の中でどこが殺人事件の現場になれば盛り上がりそうか下調べしておくね。


桜雨・カイ
※偶然秘密を知ってしまい口封じに殺される役

本当に死ぬはずだった人が無事ですむのなら良い事なのですが
えっと来る前に大急ぎで推理小説に目を通してきましたのでこれでいきましょう

招待状に呼ばれてきたのですが、なぜ私が呼ばれたのでしょうか?
落ち着かない様子で部屋の外に出て行きます

ふと廊下の向こうで何かを見たような気がして、そちらの方へ行き部屋を覗いてみると
……?はっ、これは!?
※そして他の人が来たときには、人形の仮面だけがそこに残っている状態
(どこかへ連れて行かれた感じ)

あ、あのこんな感じで大丈夫でしょうか?


夏目・晴夜
傍らに戦闘特化からくり人形を待機させ、
それっぽい言動を適当に演じつつ過ごします
私は本来慎ましやかな人間なので演技でも心が痛みますねえ。いや本当に

もっといい食事は無いんですか?肉とか肉とか
…私、知ってるんですよねえ『あの事』を
『あの事』を知らない人も多いでしょうが、
『あの事』が世間に知られたらクロユリ邸はどう壊れてしまうのか…
このハレルヤをもてなす気がないならバラしてもいいんですよ?

ああ、彼ですか?ニッキーくんです
めっちゃ可愛いですよね
人懐こくて誰彼構わずジャレては相手をアレな事にしてるんですが、
私にだけは手を上げない私の最高傑作なんです
本当に何故か私にだけは絶対に手を上げないんですよね、何故か



●倒木の布石
「へぇ、これは……俺好みの世界がやって来たもんだな。不謹慎ではあるが、楽しませて貰おうか」
 バーチャルキャラクターの猟奇探偵、カイ・オー(f13806)が庭に植えられた桜を見つめる。
 クロユリ邸に来るまでに通ってきた帝都ではレトロモダン溢れる風景が広がっていた。クロユリ邸もまた同じく、古き良き日本の和洋が入交り独自の変化を遂げた、当時のなんともいえぬ懐かしい雰囲気がある。
 UDCアースでいうところの大正時代にほど近くそこから700年を超えたサクラミラージュの世界。それはレトロADGのバーチャルキャラクターと人間のハーフらしいカイには親近感をもたらすものだった。
 彼の職が探偵というだけあって、怪奇事件として影朧との不可思議な戦闘が巻き起こるこの世界に馴染みを感じるのも頷ける。まして今回は殺人事件、探偵の腕が必要な場面だ。
「サクラミラージュ……新しい世界で何とも珍妙な依頼ね」
 ふぅ、と同じく桜を見上げるのは人間の探索者青葉・まどか(f06729)。
 彼女もまたこの場に送られたひとり、自身の好奇心故に不思議な事件に進んで首を突っ込む事件慣れした猟兵だ。
「にしても、はあ、殺人事件の被害者になる……」
 実際に言葉にしてみるとなんとも嫌な響きだ。何が悲しくて自らすすんで痛い思いをしなければならないのか。
 それでも必要なことなのだとまどかは首を横に振って雑念もとい悩む心を追いやった。ようは死ねばいい、死ぬしかあるまい、死ぬしかないのだ。覚悟はもとより決まっている。
「様式美……最早、儀式と言ってもいいかもね。それなら私は犠牲になりやすそうな人物を演じてみようかな」
「ふむ、そういうことなら俺はチャラチャラした若者風の装いと演技をしよう」
 二人は頷いてそれっぽく装いを変えてみる。
 まどかは『浮世離れした少女』を演じるために持参したビスクドールを持ち、すうっと目を細めてみせた。生き生きとした黒い瞳は途端になりを潜めて幸の薄そうな少女が眠たげに人形を抱いている。
「どうかな?」
「良い感じだと思う。こういう少女が犠牲になったほうが物語もシリアスになるだろう」
 実にそれらしい連続殺人のシナリオにありがちな導入だ。
 横たわる少女の死体、腕から転がった人形はガラスの胡乱な瞳で第一発見者を見つめる。
 犠牲者にはふさわしいチョイスだと言えるだろう。
「そっちも犠牲になりそうな被害者に上手く変装してるね」
「探偵には演技も必要なスキルだからな」
 お手の物だとカイは胸をとんとんと軽く叩いた。カイが装うのはこれまた連続殺人の犠牲者にはよくいるタイプ、チャラチャラとした若者。
 事態をよく呑み込めていなさそうな若者は先走ったり単独で籠ったりと犯人に目を付けられる行為に事欠かない。いわゆるゾンビ・ホラー・スプラッタ・サスペンス等の映画で最も気を付けなければいけない真っ先に死にそうな犠牲者リストの一つである。
 ちなみにその他リストにはカップルやいじめっ子などエトセトラ、エトセトラ。
 二人とも上手く犯人の気を引けそうだ。

●隠した秘密の布石
「へぇ、聞いてた通り豪華な邸じゃないか。随分と金がかかってそうだなぁ」
 館へ足を踏み入れた二人はさっそく演技に入っていた。
 下世話な感想を述べながら、酒の入ったグラスを片手に悠々と歩きまわる。
 適当に周りの猟兵に話しかければみな上手く演技をしているのか不審なところは見受けられない。謎の招待状に集められた登場人物達を見事に演じている。
 傍らに戦闘特化からくり人形を待機させていた人狼の人形遣いの夏目・晴夜(f00145)がぴくりと耳を動かしてカイに話しかけた。
「料理は美味しいですが、もっといい食事は無いんですかねぇ。肉とか肉とか」
 食事類には肉もあるにはあるものの。和食系列のほうが豊富なのか軽食中心で、しっかりしたボリュームのある肉料理と成ると限られてくる。不満そうにして、とは言ってもそれは声色からしか察せないほどに表情の動かない晴夜に、カイはククッと喉を鳴らして笑った。
「不満か?」
「不満も不満、大いに不満です。このハレルヤをもてなす気がないならバラしてもいいんですよ?」

 ――……『あの事』を。

 ニィ、とそれまで動かなかった晴夜の口が動き、白く尖った歯がのぞく。
 同時にカイもへぇ、と話に乗り気になった。
「……私、知ってるんですよねえ『あの事』を。『あの事』を知らない人も多いでしょうが、『あの事』が世間に知られたらクロユリ邸はどう壊れてしまうのか……」
 ちら、と一枚の肖像画を晴夜が見る。
 晴夜のいうところの『あの事』に深く接しているのかカイも倣って肖像画を見た。はっと目を一瞬だけ見張っていかにもその絵に何かある様に見せかけた。
「あの事というと、この絵は……まさか、あの時の……なるほど、そういうことか」
「おやおやそちらも感づかれたようですね、『あの事』に」
「ああ。へへっ……どうやら、俺にも運が向いてきたらしいな」
 とかなんとか。なんとも思わせぶりな会話だが、二人ともそれとなく会話のノリと調子を合わせているだけで別に肖像画に何か秘密が隠されているかなどは全く露程も勘繰っていなかったのである。この意味深なセリフ、意味深な会話。それらで犯人が釣れれば儲けものなのだ。
 それが二人とも分かっているのか『あの事』がなんなのかは深く追求せずに、話の腰を折らぬよう互いに注意深く如何にもな言葉ばかりを含ませて、膨らませている。
「ところでそっちのからくり人形は?」
「ああ、彼ですか? 彼はニッキーくんです。めっちゃ可愛いですよね」
 同意を求められたがカイは首を横に振る。そうですか、と特に気にもせず晴夜はするりとニッキーくんの手を取った。
「彼はとても人懐こくて誰彼構わずジャレては相手をアレな事にしてるんですが、私にだけは手を上げない私の最高傑作なんです。本当に何故か私にだけは絶対に手を上げないんですよね、何故か」
 何故か、と念押して言うに、それは言外に私以外には容易に手を出すのだと示していた。
 ニッキーくんの手をそのまま持ち上げて握手のようにカイに差し出す。握手は遠慮するわ、という言葉におや残念と返して、二人の演技派犠牲者達はそれぞれ静かに笑ってみせた。

●階段落下の布石
「どうしましょうか……本当に死ぬはずだった人が無事ですむのなら良い事なのですが、演技ですか……」
「そうですね、こういう場合は「私」の出番のようですね」
 二人の男性がぽそぽそと会話を交わしている。
 ヤドリガミの人形遣いである桜雨・カイ(f05712)は困ったような顔を浮かべている。奇しくも前述の彼と同じ響きの名前だ。
 カイは館の二階に上がる階段でダンスホールの様子を眺めながら、傍らの男――多重人格者のマジックナイトの皐月・灯(f00069)に相談していた。今回の依頼は被害者の演出、であるならば確かに演技をしておくのが良さそうだと彼らは結論付ける。
「演技には自信がおありで?」
「えっと、来る前に大急ぎで推理小説に目を通してきましたので……」
 たぶん大丈夫です、とカイがちょっぴり自信なさげに目を伏せるのを見て、灯はちらりと左右色の違う目で彼を見遣る。励ますようにそっと声色を優しくした。
「きっと大丈夫ですよ、上手くいきます」
「ありがとうございます。そういえば館の前でお話したときと口調がやや違いますね」
「ああ、私は「灯」の別人格です。名前は「セクト」、以後お見知りおきを」
 深々と一礼をするセクトにカイは館に入る前の灯の様子を思い出した。
 口数は少なく、どことなく人の輪から外れた位置にいた彼。ぶっきらぼうな印象を受けたが、今目の前にいるセクトは礼儀正しい好青年のそれだ。
 多重人格者は別の人格を保有する、故に多重人格者。別の人格は性格がそっくり同じの兄弟のようなものもいれば、全く違う性格の人格を保持している者もいる。その差は万別だ。『灯』と『セクト』でいうと、灯は後者の方だったらしい。
「……フフ、それにしても推理小説ですか。確かに今回演技するうえでは重要だと思います」
「参考になるかと思いまして……」
「まるでミステリーの登場人物になった様な気分ですね」
「そちらの役は?」
「ええ、折角ですから、この館に関わる後ろ暗い過去を持ちながら、人当たりもよく、余裕のある態度を崩さない青年実業家……という役柄を演じましょうか」
 館の前でそれらしく変装したのが功を奏したか、普段の魔術師らしい服装ではなくいかにもやり手の実業家らしく服装を変えていたセクトは見事にクロユリ邸に溶け込んでいた。
 猟兵はどの世界でも不振にみられる事は無い。が、今回求められる演技――『犯人好みの被害者の役』により一層寄り添うのであればこの変装はかなり効果的と言えるだろう。
 一方、カイの方は元が和装のおかげでサクラミラージュの世界に則した自然な格好。このまま演技をしても問題はなさそうだ。大通りを歩けば誰もが振り返るだろう見事な美男子である。
「衣装も相応に仕立てておきました。灯のままでは、ね……そちらはどのような役を?」
「あ、はい! 偶然秘密を知ってしまい口封じに殺される役をしようかと」
「いいですね、いかにも犯人が好みそうな役柄です。私は2人目か3人目……中盤に殺されるタイプでしょうか」
 どちらも犯人が目を付けやすいタイプだ。
 ふたりはすぐに演技に取り掛かる為、二階への階段を上がっていった。

●孤立の布石
 二人の目に入ったのはビスクドールを抱えてミステリアスに佇む少女。浮世離れした少女となったまどかだ。
 目配せをするとすぐにまどかとカイ、そしてセクトが動き出した。
「そう……あなたも招待状を持っているのね」
「招待状に呼ばれてきたのですが、なぜ私が呼ばれたのでしょうか?」
「うふふ……内緒。内緒よ」
「おや、麗しいお嬢さん。これは何かをご存知で?」
「さあ、知らない。知らないわ。でも、知っているのよ」

 これから、ここが殺戮の館に変貌することを。

 少女の言葉に何か感づいた表情を作るカイ。まさしく偶発的に起こる事象によって真実に無意識に近づく一般人だ。こういうタイプは犯人が危機を察知して消しに来る。ミステリーの定番、知りすぎた者はなんとやら。
「何か知っているんですね、それは……殺人が起こるんですか?」
「嫌よ。嫌、教えてあげない。きっと次は私なんだわ」
 ふらふらとまどかが個室に入っていくのを追いかけようとして、カイは廊下の向こうで何かを見たような――演技をした。部屋を覗いてみるふりをして、するりと個室に入り込む。
「……? はっ、これは!?」
 わざと驚いた声をあげて、人形のつけていた仮面だけが廊下に残される。ホラー演出家ならばかなり上手い見せ方だ。
「おやおや、二人とも上手く孤立しましたね」
 まあ、役得と思わないとは言いません。こうして楽しく他の皆さんとお喋り出来たので。
 仮面を拾い上げながら、セクトはひとり呟いた。
 上手く孤立分断されたまどかとカイの方を見ながらくすりと笑いを零す。
「殺戮の館、ですか。さてどうなることやら」

「あ、あのこんな感じで大丈夫でしょうか?」
「バッチリだと思うよ。うまく演技出来てたから」
「ふう……良かったです……」
 壁越しにこそこそと話し合うカイとまどか。殺人事件で単独行動はご法度というルールを利用して、彼らは見事犯人の手に掛かりやすい状況を生み出した。これがどう転ぶかはこの後のお楽しみである。
 
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

薬袋・布静
【徒然】
呼び名:八千代 ro 本格的に甘やかす時 千代

おー、八千代は新世界来ても食い気は変わらんな
タダ飯や、たらふく食ったろう

◆寛ぎ方
コンセプト『B級映画で序盤に殺されるバカップル』

手持ちのタータンチェックスーツ着て身なり整えよか
八千代の腰に手を添え抱き寄せて終始くっついておく
膝上に乗せたら言われるまま甘やかし食べさせ
「おー、苺のな…千代ー俺肉食いたい」
「あー…八千代に食わせて貰うと更に美味いわ」

ふと、さして普段と変わりないのでは?
そう思いつつ目立つようにイチャつく
「なあ、折角やし風呂も一緒に入らん」
「えっち言うて抱っこ強請る千代も乗り気やんけ」
楽しんでいる様子の八千代を徹底に甘やかし倒す


花邨・八千代
【徒然】
呼び方:「ぬーさん」or甘える時は「布静」

タダ飯が!食えると聞いて!
折角の新世界だしなー、うまいモン食いたい。
楽しみだな、ぬーさん!

◆くつろぎ方
コンセプト『B級映画で序盤に殺されるバカップル』

手持ちの赤チャイナ着てお洒落するぞ。
どこ行くにもぬーさんにぴったりくっついて離れない感じ。
ご馳走を食べる時は膝に乗っけてもらって食べたり食べさせたり。
「ぬーさん、次俺ケーキ食べたい。苺のやつ」
「あ、これうまい!ぬーさんもほら、あーん」

終始いちゃいちゃべたべた、どこかにいる犯人に見せつけるぜ。
「えー、風呂も?……ぬのせのえっち」
「歩くのやだから、だっこで連れてって」
徹頭徹尾甘え倒すぞー!楽しい!



●風呂場殺害の布石
「タダ飯が! 食えると聞いて!」
「おー、八千代は新世界来ても食い気は変わらんな」
 ヒャッホウ、と元気よく声を上げたのは羅刹のグールドライバー花邨・八千代(f00102)。腹ぺこである。その隣で目を細めているのはキマイラの聖者である薬袋・布静(f04350)だった。
 ゆるりと彼女の様子を眺めている。
 グリモアベースで最初に寛げと仰せつかっている猟兵達は思い思いに料理を食べたり踊ったり探索したりとさまざまだ。
 特に料理に関しては自由に手をつけていいとも言われている。その後に控える被害者さえうまく演じられれば何をしてもかまわないというなんとも魅力的な誘いに乗らないわけがなかった。
「折角の新世界だしなー、うまいモン食いたい。楽しみだな、ぬーさん!」
「ん。タダ飯や、たらふく食ったろう」
 嬉しそうに歩を進める八千代の後ろを布静は微笑ましくついていく。
 ちなみに今回彼らが演じるのはずばり『B級映画で序盤に殺されるバカップル』。そう、実に序盤の序盤で殺されそうなコンセプトである。カップルは犯人の神経を逆撫でするのか、もしくはイチャイチャシーンを見せた後に惨たらしく死んだほうが読者の爽快感を引き起こすのか。理由は定かではないが、とにかく事あるごとにカップルは猟奇殺人のなかでとくに被害者に挙がりやすい。そういうものだ。
 今回の二人も被害者となるため、あえてそれらしいカップルを演じつつ館に乗り込んでいた。
 せっかくお洒落もしたし、と八千代そっと服裾を軽くつまんで見せた。
 八千代は真っ赤なチャイナ服姿、布静は落ち着いた色合いのタータンチェックのスーツ。
 八千代の溌溂さを際立たせ、反対に布静の冷静沈着な雰囲気をよく飾った似合いのそれ。二人は誰が見てもクロユリ邸でひときわ美しい美男美女カップルだ。
「ぬーさんほら、めっちゃ料理置いてあるぜ!」
「おーおー千代、そんなに走んなくとも飯は逃げ、」
「逃げる! 早いモン勝ちなんだよこういうのは!」
「あー……」
 館に入るや否や、止めるのも聞かずぴゅーんと擬音効果とともにテーブルに駆け寄って。ぶんぶんと手を振る八千代に布静は呆れとも感嘆とも似つかぬ吐息をフゥと吐き出した。
 とびきり甘やかす時の呼び方に気づいているのやらいないのやら。
 腰に手を添えて密着しながら、ひょいひょいぱくぱくと景気よく口に放り込まれていく料理に相変わらずの食いっぷりだと布静が眺めていると、不意に着ていたタータンチェックスーツをくいくい引っ張られる。
「なんや、どうしたん」
「これうまい! ぬーさんもほら、あーん」
「あーん」
 ごく自然な流れで、箸で器用につまんだ料理を口元に出される。ぱかりと口を広げれば甘酢あんかけの鶏肉が乗せられた。
 これはいわゆる「はいダーリン、あーん」「ありがとうハニー」のやり取りなのだが二人の場合はやけに様になっている。
「ぬーさん、次俺ケーキ食べたい。苺のやつ」
「おー、苺のな……千代ー俺肉食いたい」
「よし任せろ、あーん」
「ん……あー……八千代に食わせて貰うと更に美味いわ」
 もくもくと片頬を膨らませて咀嚼する布静にそうだろうそうだろうと八千代は頷いてみせた。
 甘酸っぱい苺がお気に召したのか何も言われずとも口を開けて次の料理を待つ彼女は可愛らしい雛鳥にも似ていて。
 食べさせにくいからと膝に乗る彼女を軽々と支えて、端から見ればなんとも仲睦まじい……睦まじすぎるカップルのできあがりである。甘い空気を醸し出していくカップルに羨ましい妬ましいのなまぬるい空気がダンスホールにあふれた。犯人もこれを見ているに違いない。

(でもこれ普段と変わりないわ)

 途中ようやっと更にイチャつきが必要かもしれないと思い至った布静が、そっと耳打ちするように彼女の頬に顔を寄せた。
 きょとんとした顔の八千代に普段よりずっとやわらかい声色で話しかける。しゃらりと耳元の揃いの飾りが触れあった。
「なあ千代、折角やし風呂も一緒に入らん」
「えー、風呂も? ……ぬのせのえっち」
 ぷうと朱色を増した頬を膨らませてそっぽを向く八千代に、膝に乗ってきたのはそっちだろうと布静が薄く笑う。
「えっち言うて抱っこ強請る千代も乗り気やんけ」
「歩くのやだから、だっこで連れてって」
 もちろんだと返せば、八千代は背けていた顔を彼の方に向き直して。とびきりの笑顔で頷いた。

 ……ちなみに風呂場での殺害率、ミステリーではかなり上位に入る。閑話休題。
 
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

逢坂・宵
ザッフィーロ君(f06826)と

タキシードを着こんで館へ向かいましょう
演技はあまり経験がありませんが……
まぁ、なんとかなるでしょう

ええ、あのシャンデリアは造りはもちろんですが、趣味もいいですね
おや、それは名案です
きみのお誘いならば受けないわけにはまいりますまい? と差し出された手を取って

フォロー側に回りつつダンスホールにてワルツを踊りましょう
かれと踊るのはとても楽で、ひとつ先の動きが手に取るように伝わります
ええ、きっと常に一緒にいるからでしょうね
そう笑って見上げつつ今この時の踊りを楽しみましょう

シャンデリアから僅かな軋みの音も聞こえますが……
そんな、まさかね


ザッフィーロ・アドラツィオーネ
宵f02925と

タキシードを着用し館へ
癖のありそうな人物を演じる、か
俺に演じられるか心配だが…そうだな。お前とならばなんとかなるだろう

館内部を興味深げに眺めつつも、シャンデリアに自然と視線が引き付けられれば其方へ
宵、あのシャンデリアはとても美しいな
音楽もある故、久々にあの下で踊らんか?と宵へ手を差し出そう
丁度良い音楽が流れれば俺がリード側に回りつつダンスホールにてワルツを
踊る度思うが…ぴたりと息が合うのはなんだ、矢張り常に共に居るからだろうか
向けられる宵色の瞳についぞ瞳を細め笑みを返しつつ音に合わせ踊りを続けよう
…美しい光を放つシャンデリアが微かに揺れている様にも見えるが…まあ、気のせいだろう



●ダンスホール崩落の布石
「なるほど癖のありそうな人物を演じる、か。……俺に演じられるか心配だが」
「演技はあまり経験がありませんが……まぁ、なんとかなるでしょう」
「そうだな。お前とならばなんとかなるだろう」
 ふ、と藍色の髪の男性が口元をふわりと綻ばせた。信頼のおける同行者とならば問題なく切り抜けられるに違いない。
 タキシードに身を包んだ男性二人が館に入る前に打ち合わせている。
 ヤドリガミの聖者、ザッフィーロ・アドラツィオーネ(f06826)、彼の傍らに立つのはヤドリガミの精霊術士、逢坂・宵(f02925)。サファイアの指輪と天図盤を元とする彼らは今回クロユリ邸に潜入する猟兵だ。
 赤を基調にした荘厳な造りの館は彼らをまずまばゆいほどのシャンデリアの光と共に迎え入れた。
 きらきらとクリスタルガラスは明かりをあちこちに反射して眩く光り揺れている。吊り下げられる鎖は銀色に、燭台部分は磨き上げられて誇り一つなく鏡のように館を映している。左右対称に配置され、ちりばめられた幾つもの星々は夜空を連想させた。
 館内部を興味深げに眺めていたザッフィーロが上を見上げて、シャンデリアに自然と視線が引き付けられていく。
「宵、あのシャンデリアはとても美しいな」
「ええ、あのシャンデリアは造りはもちろんですが、趣味もいいですね」
 隣に並び立ち、彼と同じように宵はシャンデリアを見上げる。
 ザッフィーロはふと思い立ったように宵に提案した。
「音楽もある故、久々にあの下で踊らんか?」
「おや、それは名案です。きみのお誘いならば受けないわけには参りますまい?」
 そっと差し出された手を恭しく握って、二人はそのままシャンデリアの真下へ躍り出る。
 アコーディオンの主旋律はまるで二人の踊りに合わせるかのようにゆるやかな曲調を紡いだ。
 蓄音機のレコードは切り替わってワルツへ、タキシード姿の二人は絨毯の上をくるりくるりと楽し気に。
 ザッフィーロがリード側になって導かれるままに宵は踊りを楽しんだ。
 互いの動きが互いに分かっているような、淀みのないダンスを。
「踊る度思うが……ぴたりと息が合うのはなんだ、矢張り常に共に居るからだろうか」
「ええ、きっと常に一緒にいるからでしょうね。私もザッフィーロ君と踊るのはとても楽で、ひとつ先の動きが手に取るように伝わりますから」
「なるほど、じゃあこういうのはどうだ」
「おっと」
 ぐっと手を引いて一回転、くるりと宵の身体を回して向き合って。
 のけぞるように背を反らせた宵の腕を優しく引いて再びナチュラルターン、アウトサイドチェンジ。
「やはり楽しいな」
「全くもう、楽しいのはこちらも同じです」
 急に別の動きを取り入れてもまったく問題なくダンスをつづけられる程に二人の相性はぴったりだった。
 向けられる宵色の瞳に藍色の深い瞳がかちりと合う。
 今この時の踊りを楽しみましょう、勿論だとも。
 そんな言葉を交わしあいながら踊る二人はなんとも楽しそうで、同時に注目されていた。
 そう、注目されるとはすなわちこの後に控える犯人の餌食になりうる可能性が高いということ。
 ダンスを楽しみつつ、優雅に、しかし着実に。寛ぎながらも二人はしっかり依頼をこなしていく。
 ふと宵が踊る際中に静かにザッフィーロに告げた。
「先程のけぞった時に見たのですが」
「ああ、俺も見た。美しい光を放つシャンデリアが微かに揺れている様にも見えるが……まあ、気のせいだろう」 
「僅かな軋みの音も聞こえますが……そんな、まさかね」

 そのまさかである、と彼らが気づくのはもう少し後になるだろう。
 アコーディオンの音は相変わらず、この後の不穏な空気を払拭するように軽やかな曲ばかりを流していた。
 
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

冴木・蜜
ふむ
死体役とはなんともまぁ

謎の招待状に呼び出された医師の体で
薄汚れた白衣を纏って
黒い医療鞄を一つぶら提げて
少し浮くくらいの格好が理想でしょうか

(そもそも人の視線が苦手ですし…)
今回は普段よりも人の視線を避け
人前では極力喋らず
反応は会釈などの最低限を徹底

集まった猟兵の皆さんの顔を一通り見たあと
図面を頭に叩き込むべく
館を独り隅々徘徊…いえ、見て回ります

内装を把握したら
書斎から医学書を数冊借りて
自分の客間に引き籠りましょう

…ふふ
実は私、和菓子には目が無くて
館を回るときに
こっそり和菓子をいくつか拝借してきたのです

事態が動くまで
時折窓の外を眺めながら
お茶と和菓子をお供に
この世界の医学書を読み耽りましょう


神元・眞白
【WIZ/割と自由に】
面白い世界。やっぱり初めての世界は見どころがいっぱいありそう。
しばらくはゆっくりしていいってことだし、のんびりさせてもらおう。
飛威、見取り図があればよろしくね。なくてもいいけど。
この機会にこのお屋敷を回ってみるから、見取り図は野暮なのかも。

なんだかオブリビオン、影朧?が出てきやすい様にするみたいだけど…
普段通りでいいっていうし動きながら考えればよさそう。
食事までいただくのはなんだか悪いし、飲みものをいただくぐらいに。


シャルファ・ルイエ
色々雑ですっ。
亡くなる一般のひとがいないならそれに越したことはないので死んだふりに異論はありませんけど、死んだふりをするのって流石に初めてです。上手くできるでしょうか……。
あと、今回は背中の羽根は仕舞って行きます。

でもせっかく初めての世界ですし、こちらの食べ物がどんなものだとか、お部屋の雰囲気なんかを色々見て回りたいです。好奇心は猫を殺すって言いますし。
仕掛けがありそうな所も、《見切り》や《第六感》でそれとなく確認しておきますね。
どんな感じで死ぬのが良いか、今から悩みます……!
スプラッタな感じは苦手なので、そうじゃない方が良いですし……。
落ちるのに良さそうな窓とか仕掛けなんかあるでしょうか。



●被害者達の布石
「ふむ。死体役とはなんともまぁ」
 ブラックタールのUDCエージェント冴木・蜜(f15222)が楽しそうなきょとりとした顔で館を見上げる。今回の舞台はこのクロユリ邸、見上げれば中にはなんとも事件の起こりそうなダンスホールに客室に。
 さてはて何はともあれ死体役だ。
 こういうのはどうするべきなのだろう、普段はオブリビオン相手に戦闘を求められる事が要求される猟兵達は今回わざと被害を受けたように装わなければならないと蜜はムムムと唸っている。
「何とかなるとは仰っていましたが大丈夫でしょうか」
「色々雑ですっ」
 確かに、と声には出さずに蜜は内心頷いた。
 確かにその通りである。
 まあきっとなんとかなるから上手くやれ、と軽い言葉で送りだされたのにオラトリオのシンフォニア、シャルファ・ルイエ(f04245)は可愛らしい顔をぷくっとさせて何とも可憐な怒り顔をのぞかせていた。
 なんとかとはなんだ、これから死ぬのは猟兵達である。
 ぷしゅんと頬の空気を追い出して、シャルファは上を見上げた。
「亡くなる一般のひとがいないならそれに越したことはないので死んだふりに異論はありませんけど、死んだふりをするのって流石に初めてです。上手くできるでしょうか……」
 軽く会釈をして蜜は彼女に返した。
 蜜は今回は普段よりも人の視線を避け、人前では極力喋らずに反応は会釈などの最低限を徹底している。
(死体役、の前に登場人物……そこなんですよね、演技は私も上手くできるかどうか……謎の招待状に呼び出された医師の体でいこうと思っていますが)
 薄汚れた白衣を纏って、黒い医療鞄を一つぶら提げて。
 周りから少し浮くくらいの格好が理想。そんな姿で蜜は館に居る。確かに医者の風貌は周囲から目を引くような登場人物だろう。
 少し離れたところで学生服に身を包んだシャルファがくるくるとその場で回った。桜の花びらとともに踊る彼女はとてもきれいだ。
 羽根を仕舞いこんでサクラミラージュの世界によくいる女学生に扮装した彼女。
 これで準備は整った。いざやと館に足を踏み入れる。
「せっかく初めての世界ですし、こちらの食べ物がどんなものだとか、お部屋の雰囲気なんかを色々見て回りたいです。好奇心は猫を殺すって言いますし」
「好奇心は猫を殺すか、良いかもしれない」
 神元・眞白(f00949)、ミレナリィドールの人形遣いがなるほどとシャルファの言葉に反応を見せた。
 テーブルに置かれた食べ物をぱくぱくと摘まむシャルファに。
「どんな感じで死ぬのが良いか、今から悩みます……!スプラッタな感じは苦手なので、そうじゃない方が良いですし……」
 落ちるのに良さそうな窓とか仕掛けなんかあるでしょうか、とシャルファが周りを見渡せば二階大階段が目に入った。
 高さはあるがどうにも倒れたら角がぶつかりそうだ。
「あそこから転げ落ちるのは?」
「痛そうなので……ちょっと……」
「冗談」
 ジョークだと言って眞白がほんの少しだけ口元をゆるく上げた。
 笑っているのだろうか、とシャルファが見ればまた元の真顔に戻ってしまったけれど。
「にしても面白い世界。やっぱり初めての世界は見どころがいっぱいありそう。
しばらくはゆっくりしていいってことだし、のんびりさせてもらおう」
「そうですね、美味しいものもたくさんありますし」
 素敵な世界サクラミラージュにようこそ。そんな言葉と共に。
 世界を知るには確かに良い機会だろう、食文化や医療術、建造など。UDCアースの大正時代と似通った部分とそうでないところを観察しやすい。
「飛威、見取り図があればよろしくね。なくてもいいけど……この機会にこのお屋敷を回ってみるから、見取り図は野暮なのかも」
 眞白の世話役兼近接戦闘用人形がその言葉に反応して見取り図を探し始める。持ってきたそれに目を通せば隠し部屋などはないダンスホールに客室で構成されたシンプルな二階建てだった。
「それにしても死体、死体か」
「みなさん死体役に少し悩んでいるみたいですね」
「なんだかオブリビオン、影朧? が出てきやすい様にするみたいだけど……普段通りでいいっていうし動きながら考えればよさそうだな」
 飲みものをいただくぐらいに留めておく、と言ってグラスを片手に眞白はあえて見取り図をたたむと、ゆるりと探索を始めた。
「うーん、しかしどこもかしこも罠だらけなような気もしますね……」
 シャルファはそっと館の調度品を見て、なんとなくどれもこれも後に自分達に凶器として向かってきそうな気配にほんの少し震えた。

 蜜はと言えば。
 最初に館に入ったあとにテーブルからいくつか和菓子を拝借していたらしい、すぐさま見取り図を持つと二階に上って隅々徘徊……もとい観察して内装を頭に叩き込む。
 客室に引きこもって本棚から多数見繕ってきた本を開いてゆるりと寛いでいる。
「事態が動くまでは休憩しておきましょう」
 時折窓の外を眺めながら、お茶と和菓子をお供に。
 読書に耽るその姿は実に――実に殺し易そうだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

エンジ・カラカ
ヨシュカ(f10678)
兄弟設定でどーんっと。

やァ……親愛なる弟クン。
ご機嫌はいかがー?
お兄サマは今日も今日とて元気元気。
暫く見ない間に大きくなったかもしれないネェ。
ヘェ……お喋りにもなったネェ。

まわりも羨む仲睦まじい兄弟ダ。
いつだって仲良し――なふりをしておかないと怪しまれるもンなァ……。

弟クンは退屈してないカ?
お兄サマは退屈で退屈で仕方ないンだ。
折角だからこの屋敷で遊ぼう。
探検ごっこサ。好きだろう?

探検ごっこと見せかけて
ついでに何か使えそうなモノを探しておこうカ。
アァ……イイ兄を演じるのも大変大変。
もう少しの辛抱サ。

あまり遠くに行くなヨー。
何をするにも近くにいた方が楽だもンなァ…。


ヨシュカ・グナイゼナウ
エンジさま(f06959)と
演技で一人称変更中

遺産争い中の資産家兄弟設定で屋敷に侵入
質の良い洋装にウィッグと白粉で少々【変装】して兄弟らしく

ええ、御機嫌ようお兄さま。お変わりない様で僕も嬉しく思います
子供は直ぐに大きくなってしまうものですから。当主の役目も立派に務まるのではないでしょうか?
冗談ですよ

食事を終えて、『大好きな』お兄さまからの素敵なお誘い
断る理由は有りませんね、その方が都合が良い
だって僕らはとおっても『仲良し』ですから!探険、探険致しましょう!


遊びのふりして人目がなくなったら、屋敷を探索【情報収集】。仕掛けを探したり

こういうの少しワクワクしますね
大丈夫、遠くには行きません


花剣・耀子
理に適ってるけど腑に落ちない依頼ね……。
ミステリに然程明るくはないのだけれど、求められている事柄は理解したわ。

舞踏会に御呼ばれした研究者を装いましょう。
ちゃんとドレスを着て、かしこそうな顔をするわ。眼鏡だもの。
……、……これだけだとパンチが弱いかしら。
ええと、そうね。
無表情、喋らない。コミュニケーションは手帳に筆談で行いましょう。
声を出さない女なんて、殺しやすそうでしょう?

もくもくとお料理を食べましょう。
うわっ美味しい……。
あたしは研究者なので、思考するとカロリーが必要になるのよ。
必要だから仕方がないの。美味しい。

医食同源という思想も興味深いわ。
ねえきっと、あたしの一番美味しい場所は頭の中よ。


千桜・エリシャ
被害者役だなんて愉しそう
自分が死ぬ機会なんてそうそうありませんもの

レトロなドレスに身を包んで
此度の私は美術品の貿易をしている会社の社長令嬢ということで
まあ!素敵な館ですこと!
我社も贅を尽くしていると自負しておりますが
ここにあるものも負けず劣らずかしら?
こういう調度品もうちで扱ってみたいですわ…
一つ一つじっくり眺めていれば何か違和感
この美術品…どこかで見たことがあるような…
亜米利加だったかしら?
ううん、確か花の都巴里で…

――はっ!

いいえ、なんでもありませんわ
ふふ、そうそう
私ダンスでも踊ってみたい気分ですの
誰かお相手してくださらない?

と、意味深な発言をして誤魔化して
頃合いを見て一人になりましょうか



●兄弟殺しの布石
「どうするよ……」
「そうですね……」
 どうしましょうか、と彼は返す。乳白色の髪が右目を隠してさらりと風に揺れていた。
 ミレナリィドールの咎人殺しヨシュカ・グナイゼナウ(f10678)は隣の彼に問うていた。人狼の死霊術士エンジ・カラカ(f06959)はその問いにただ無言で、うんともすんとも返さずに考え込んでいる。
 館の中に踏み込む前の彼らはグリモアベースで先に聞いていた演技について思案していた。そのままくつろぐも良し、何か演技をして犯人の気を引くも良し。ならばどうするべきか。
 ややあってから思いついたのかじゃあ、と前置きしてからヨシュカに提案した。
「んじゃ、兄弟設定でどーんっと」
「もう一捻り」
「……ええと……そうだナ……遺産争い中の資産家兄弟?」
「では一人称も変えておきましょう」
 こほん。
 咳払い一つと共にヨシュカはころころとまだ幼い少年らしい声色でお兄さま、と彼を呼ぶ。
 エンジはやあやあと彼を見て笑顔を浮かべて見せた。ここから先は演技だ。彼らは今から疑似兄弟である。
 質の良い洋装にウィッグと白粉を使って少々変装してみせたヨシュカは館に入るとぴたりとエンジの隣についた。兄に寄り添う弟として。
「やァ……親愛なる弟クン。ご機嫌はいかがー?」
「ええ、御機嫌ようお兄さま。お変わりない様で僕も嬉しく思います」
「そうサ、お兄サマは今日も今日とて元気元気。にしても暫く見ない間に大きくなったかもしれないネェ」
 こォんなに小さかったのに。そう言って小豆でもつまむように親指と人差し指を狭めてみせる。
 くすくすと笑いを零してヨシュカは“兄”へと冗談で返した。
「子供は直ぐに大きくなってしまうものですから。今ならば当主の役目も立派に務まるのではないでしょうか?」
「ヘェ……お喋りにもなったネェ」
「冗談ですよ」
「口も上手くなったもんダ」
 まわりも羨む仲睦まじい兄弟を演じる二人。軽口の叩きあいならお手の物。
 いつだって仲良しで、賢い兄と良く出来た弟――。

(……の、フリをしておかないと怪しまれるもンなァ……)
(周りの方々に聞こえますよ、お兄さま?)

 シィ、と人差し指を立ててみせる。
 やれやれと肩を竦めるとエンジはすぐさまヨシュカに向かって良き兄の面を見せた。
「弟クンは退屈してないカ? お兄サマは退屈で退屈で仕方ないンだ」
「ではお食事にでも参りましょうか」
「食事よりもっと楽しいことをしよウ」
 そうだ、せっかくだから、と小さい弟を遊びに誘う。
「折角だからこの屋敷で遊ぼう。探検ごっこサ。好きだろう?」
「なるほど、『大好きな』お兄さまからの素敵なお誘い。断る理由は有りませんね」
 含みを持たせた弟の言い分にエンジは笑う。
 言葉裏にはその方が都合が良いという意味が隠れ潜んでいた。
 探検ごっこは建前、建物の観察に動こうとごく自然な言動で疑われずにエンジはヨシュカを前に誘う。
「親愛なる弟クンが乗り気でお兄サマ嬉しいなァ」
「もちろん。だって僕らはとおっても『仲良し』ですから! 探険、探険致しましょう!」
 どの口が言うんだか、と咄嗟に出かけてエンジは口端を空気の糸で結び付けた。
 危ない危ないボロが出ると、代わりに口笛を乗せて吐き出して。
 アァ……イイ兄を演じるのも大変大変。もう少しの辛抱サ。そう心の中で飲み込んだ言葉を放流してやった。
「そうこなくちゃネェ、それじゃ行こうカ」
「はいお兄さま」
 すたすたとダンスホールを離れるとすっかり調子の戻ったらしいヨシュカが一歩二歩と先に踏み出して離れていく。
 歩みだした足はだんだんと早まって、駆け足に変わった。
「こういうの少しワクワクしますね。大丈夫、遠くには行きません」
「あまり遠くに行くなヨー。何をするにも近くにいた方が楽だもンなァ……」
 気休め程度に声を掛けて情報収集に乗り出したヨシュカを見送る。
 一定の距離を保ちながらのんびりとエンジも館を見始めた。

 さあ、鬼が出るか蛇が出るか。なんにしても用心に越した事は無いのだから。

●美女殺しの布石
「理に適ってるけど腑に落ちない依頼ね……」
「被害者役だなんて愉しそう!」
 相反する二つの意見が館の前で衝突――せずに収束した。
 一方では楽しそう。
 また一方では腑に落ちない。
 異なる思想を持つ美女二人は、今日この場においては同じ役割を求められている。どうか死んではくれないかと言葉通りに死に役となり館で倒れ伏す重要任務だ。
「死体役が好きなのかしら、変わっているのね」
「あら、自分が死ぬ機会なんてそうそうありませんもの」
 とても愉しそうではありませんか。そう言ってふふふと笑うのは千桜・エリシャ(f02565)、羅刹の妖剣士。
 対面するのはこれまた羅刹の妖剣士――ではなく、UDCメカニックの花剣・耀子(f12822)。
 確かに被害者役になることはそうそうないだろうと耀子はこの不可思議な依頼にある程度の納得を持って頷きを返した。
「誘き出したいという意図は分かっているつもり。ミステリに然程明るくはないのだけれど」
 求められている事柄は理解しているわ。
 そう続ける彼女にエリシャはかるく頷いて、それでは張り切って死にに参らなくてはと館を見上げた。
 さあいざ館へ。ただしその前に。
「演技をしなくてはなりませんね」
 今回殺されやすくするためにまずは招待状にて呼ばれた登場人物として犯人の気を引く必要がある。
 この期に控える殺しの為に、より犯人が食べやすいご馳走を演じなくては。
「それならあたしは舞踏会に御呼ばれした研究者を装いましょう」
「では此度の私は美術品の貿易をしている会社の社長令嬢ということで」
 鮮やかな桜の色彩をのせた、レトロなドレスに身を包み。ふわりと裾を持って恭しく一礼して見せる彼女に。
 同じくレトロチックなデザインの館に沿っているドレスの耀子も真似して裾を持つと、恭しく、一礼を。
「……」
「……」
 一礼を……するが、ややぎこちない。
「とても素敵ですわ、自信をお持ちになって」
「そうね。かしこそうな顔をするわ。眼鏡だもの」
 眼鏡だもの。眼鏡は関係あるのだろうか。
 メガネは外見知的度を飛躍的に高めるのである。と天の声も言っている。天の声が仰るのならばそうに違いない。
 ふむ、と耀子はおじぎでずれた眼鏡を正した。
「……、……これだけだとパンチが弱いかしら」
 さらりと手帳を持ちだしてもうワンキャラクターほど設定を付け加えることにしたらしい。
 無表情、喋らない。鉄の女研究者。
「コミュニケーションは手帳に筆談で行うわ。声を出さない女なんて、殺しやすそうでしょう?」
「如何にも、という雰囲気は流石ですわね。それではいざや参りましょう」
 クロユリ邸へと足を進め、中に入るとエリシャはすぐに瞳をきらきらと輝かせて自然な足取りで前に出る。
「まあ! 素敵な館ですこと! 我社も贅を尽くしていると自負しておりますがここにあるものも負けず劣らずかしら?」
 調度品を眺めながら社長令嬢らしい言動を振舞って見せる。
 金持ちの家の娘と言えば殺人鬼には格好の獲物だ。
「こういう調度品もうちで扱ってみたいですわ」
 お高い家具にも見識があるのだとアピールすれば彼女の見方はすぐさま社長令嬢に相応しいものになる。
「ふふ、そうそう。私ダンスでも踊ってみたい気分ですの。誰かお相手してくださらない?」
 踊りも令嬢のたしなみの一つ。が、意味深な言葉を残す前に。
 ぴ、と目の前に手帳が差し出される。耀子がもくもくと食事をしていた。取り皿に乗せられた料理にエリシャはきょとんとしているとそのまま耀子は続きを手帳に書き綴る。
 あたしは研究者なので、思考するとカロリーが必要になるのよ。
 必要だから仕方がないの。美味しい。
 料理感想であった。
(まあ、すっかり演技に入っているではありませんか。お上手ですわ)
(それは、どうも)
 演技下手は杞憂で済んだようだ。
 怪しさを見事醸し出す研究者と、殺し甲斐のある社長令嬢の二人は。そのままふわりと自然に離れる。
 二人は同時に推理小説の登場人物らしい、含みをもたせた独り言を落とした。
「あら、そういえばこの美術品……どこかで見たことがあるような……亜米利加だったかしら? ううん、確か花の都の巴里で……いいえ、なんでもありませんわ」
「医食同源という思想も興味深いわ。ねえきっと、あたしの一番美味しい場所は頭の中よ」
 ちら、と耀子とエリシャはあたりを見回す。誰かが此方を、見ていたような気がした。
 
 殺人鬼がすぐそばで得物を見定めた。
 さあ、敵の舌に彼女達の味はお気に召すだろうか。
 
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『矢弾が降ろうと槍が降ろうと』

POW   :    罠を力ずくで破壊する、わざと罠にかかって仲間を守る

SPD   :    紙一重で発動した罠を回避する、器用に罠を解除する

WIZ   :    罠の配置を予測し、罠のありそうな場所を避けて進む

👑11
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●殺すための館
 ぱたり、とどこかで絵画が外れる音がした。
 ばたん、とどこかで家具が倒れる音がした。

 頭上でシャンデリアが大きく凪ぐ。どこか焦げ臭い。
 しゃきん、しゃきん、刃物の音がどこからか近づいてくる。
 ぐらぐら、ぐらぐら、絨毯の下は蠢いている。

 猟兵の誰かの鼻先を、突然何の前触れもなく壁から突き出してきた槍の穂先が掠めた。それを皮切りに一斉にクロユリ邸が意志を持ったかのごとく猟兵達に牙をむく。
 飛び出す刃物に、放たれる火に、首元に掛かる縄に、本来であれば被害者達はなすすべもなく殺されている筈だ。
 苦悶の表情を残し、この世の未練を嘆いて命を落としていた筈だ。
 クロユリ邸は血を欲している。しかし招かれた客は居ない。それでは代わりに命を落として差し上げましょう。猟兵達は罠の前に躍り出る。
 ある者は胸の内に諦観を。
 ある者は胸の内に叛逆を。
 ある者は懐の内に企みをひそませながら。

 彼らは潔く死へと、挑むのだ。
 
 
カイ・オー
POWで判定。アドリブ歓迎。

とりあえず死んで見せればいいんだな。
キャラ設定に沿って、ボンクラで派手な死に様を演じてみるか。

「こんな訳の分からない場所にいられるか!」等と叫んで逃げ出そう。ベタだが基本は大切に。
「くそっ、ここまで来て手ぶらで帰れるかよ!」と、一章で見つけた油絵具で描かれた肖像画を剥ぎ取って抱えて逃げる。
途中、吹き出す炎に驚いて思わず絵で防ぐ俺。
油絵具が激しく燃え上がり、全身炎に包まれる。悲鳴を上げながら転がり回る俺。
実際の炎は「火の手」の火炎制御能力を応用し【火炎耐性】で防ぎ、【ブレイズフレイム】で全身至る所から炎を上げて燃えている様に見せる。
後は煤まみれになって転がっておこう。


青葉・まどか
私が被害者として演じるのは『浮世離れした少女』。
個人の意見で恐縮だけど、このタイプの被害者は無残に殺されることで殺人事件の凄惨さを強調するのには丁度いいよね。

夜中に微かに聞こえるてくる音色。
どうしても気になり独り、音源を探しに館を探索。
(迂闊な行動を取らないと話が進まないよね)
探していると空き部屋から聞こえてくる音色。
意を決して部屋に入ると音色を鳴らすオルゴール。
何故?
疑問に思う私の後ろに人の気配。
日本刀で背中から心臓を一突き。
(予め、変化【水銀】で体内を水銀にしてなかったらヤバかったね)
日本刀が串刺しのまま蹲るように絶命した私の周囲に犯人が桜の花弁を捲く。
(見立て殺人にしたいのかな?)


シャルファ・ルイエ
薄々気づいてましたけど、このお屋敷本当に殺意が高くないですか?
連続殺人というよりは、殺人罠屋敷の方がしっくり来るような気がします……!

転落死も考えたんですけど、せっかく用意してもらったかわいい服を汚してしまいそうなので、潔く毒で死のうと思います。
これだけお部屋があるなら何処かに毒ガスが噴き出してくるようなトラップもあると思いますから、《第六感、見切り》で見つけて、思い切り毒を吸い込んで倒れます。
毒ガスが蔓延しているような場所なら、倒れていれば生死の確認は難しいはずです。
毒対策には、此方に来る前に【王国の鍵】で召喚したユニコーンから分けて貰っておいた解毒効果のある角の欠片を口に含んでおきますね。



●始まりの犠牲者達
「わわっ……! 薄々気づいてましたけど、このお屋敷本当に殺意が高くないですか?」
「おぉ、随分派手にやってんなぁ」
 シャルファの言葉にカイがおやおやと上を見上げる。天井からは雨あられと刃物類が降り注いでいた。ひとまずテーブルの下へと避難したものの、いずれはここも安全地帯ではなくなる。
 テーブルの向こうからは驚きの声と、迫真の悲鳴が聞こえていた。
「連続殺人というよりは、殺人罠屋敷の方がしっくり来るような気がします……!」
「本当に無差別っぽいな。とりあえず館にいる全員を殺すつもりらしい」
 これでもかと言わんばかりに揃えられた罠の数々に思わずそう感想が漏れるのも仕方ない。
 スイッチを押したらぴゅんと刃物が出てくるような、忍者屋敷顔負けのクロユリ邸に二人とも顔を見合わせていた。
 こんなに盛り沢山のラインナップだなんて言っていただろうか。さすがにここまで大々的に隠そうともせず殺しをするような館だなんて説明、グリモアベースでされただろうか。否、そんな説明はなかった。
 しかしまあ、こう来てしまったからには任務遂行が第一だとカイは当初の目的を思い出した。
 死んでくれと頼まれたからには死ななければならない。
「さて、とりあえず死んで見せればいいんだな。キャラ設定に沿って、ボンクラで派手な死に様を演じてみるか」
「いわゆるお決まりのあれですか……」
「そうだな。物語の登場人物らしくセリフを言うなら――」
 すう、とカイが深く息を吸って呼吸を整えると。
 突然テーブルから這い出して声高々に周りに聞こえるよう例のセリフをくちびるに乗せた。
 ベタだが基本は大切に。オーソドックスに勝るものなし。
「こんな訳の分からない場所にいられるか!」
「!」
 その言葉を聞いた猟兵達はすぐにこの惨劇に対応すべく動き出した。ああ始まったのかとカイの言葉で死ぬ準備をする。
 みなそれぞれ思い思いの死因を脳裏によぎらせて、あらかじめ目星をつけておいた細工の効きそうな死に場所を探して散っていった。
 なかなか異様な……イヤな終活風景である。
「それじゃあ俺は先に死んでくる。また後でな」
「はい! それではどうかお気をつけて、というべきなのでしょうか……ええと、良い死に際を……」
「ああ」
 なんとも送り出しづらい言葉を無理やり選んでシャルファはテーブル下からカイを見送った。

 ――……彼の生きている姿を見たのは、それが最後だった。

 なんてモノローグが似合いそうな別れだ。
 すたすたと刃物を避けながらカイはなるべく犯人の気を引こうとそれらしいセリフを嘯く。
「くそっ、ここまで来て手ぶらで帰れるかよ!」
 あらかじめ先程見つけておいた油絵に近づいて、思い切り額縁を引っ張る。思っていた通り、そこから剥き出しの火炎放射器が姿を現した。さきほどから焦げ臭いのはこれが要因のようで、すでに火の手が回っている個所もある。
 絵を持ったまま走り出すとすぐに炎が噴き出したため、カイは盾のように油画を掲げた。
 紙はちりちりと燃え上がり、あっというまにその炎は嘗めるようにしてカイの身体を包み込む。
「ぐっ……! あぁっ!」
 火だるまになって踊る様に悶え苦しむ。喉は焼け、煤は肺に溜まり、皮膚は焼け焦げ――ていなかった。
 カイ自身は燃えておらず、実際はカイ自身が操る炎でそう見せていただけだ。なにせ人体発火は普段抑えていなければ己から自然と噴出してしまうのだから、彼がこの程度の炎で苦しむはずもない。
 けほけほと辛そうに咳き込む姿は彼が得意とする演技だ。
 体内の炎を現出させ、制御増幅する事が出来る革手袋『火の手』によって火炎制御能力を応用し、派手に燃える火柱と化した彼は全身の至る所から火花を散らせて苦しんでいるように見せかけていた。
「熱ッ、クソッ、ぐ、ぁ……!」
 火炙りの刑は見た目よりもずっとインパクトが大きい。摂氏千℃を超えるまばゆい炎の中で、生き物の身体は耐えきれず炭化していく。吐き出した呼吸さえ燃え尽きそうな熱さに苛まれる猟兵はひとり、そのままゆっくりと蝋燭が倒れて力尽きるかのように床に伏せた。
 煤まみれの焼死体がひとつ転がっている。クロユリ邸の最初の犠牲者がついに現れた。

「どうしましょう、転落死……は考えたんですけど」
 シャルファは纏った可憐な服を見下ろす。彼女の青い髪によくあう清楚な和装は星がちりばめられていた。
 落下は服を切り裂いてしまいそうだ。転げ落ちるならばせっかくの服を台無しにしてしまう。汚してしまうだろうとシャルファは転落死の三文字に頭上で二重線を引いた。
「せっかく用意してもらったかわいい服を汚してしまいそうなので、潔く毒で死のうと思います……」
 テーブルから這い出すと隣では炎に包まれたカイが苦し気に呻いている。思わず咄嗟に駆け寄ろうとして、刹那それが演技だと思いなおし踏みとどまった。
 心優しい彼女の良心は痛むが、ここで死から助けては元も子もないのだ。
 猟兵はみな惨たらしく、この館の中で死ななければならないのだから。
「――握るは鍵、ひらくはあなたに続く扉。声に応えて、力を貸して」
 ひとつ胸の内で繰り返す。
 それはクロユリ邸に踏み込む直前、シャルファはユーベルコードにより、物語や伝承の架空幻獣を召喚していた。此度は額に一角を持つユニコーン。その角には解毒作用があると古くから言い伝えられている。
 物語や伝承に語られる能力を持った幻獣について知識があればこそ使えるその手は有効に働いた。シャルファは最初から服毒死を狙っていた為に、ユニコーンの角をあらかじめ館に踏み込む前に受け取っていたのだ。
「上手く行くといいんですが……」
 角の欠片をそっと舌に乗せて、シャルファは目的のものを探す。
 これだけトラップに事欠かない豊富さならば必ずあるだろうと探していたそれはすぐに見つかった。毒噴射のトラップだ。たった一呼吸吸い込んだだけで常人ならすぐにあの世行きのそれを、シャルファは臆することなく吸い込む。
 ユニコーンの角で中和されていくそれは口に溜まり、肺を犯し、血液をめぐって。
「くっ、うっ!」
 滾々と、喉奥から湧き上がるのは血だ。身体が毒を拒絶して、心臓がどくりどくりと煩く脈打った。瞬く間にシャルファの体内を夥しい毒が支配していく。
 息苦しさと吐き気と頭痛と、身体が必死に生命の危機を訴えてきていた。
 くるしい、くるしい、だれか。
 助けを求めて伸ばした手は力なく垂れ下がる。シャルファはそのまま床にゆっくりと横たわった。
 明滅する視界の中でこめかみのあたりをドクドク血が巡っていくのがわかった。ユニコーンの角は上手く作用しているらしい、少しずつ不快感が研ぎ澄まされて消えていく。毒素と浄化作用が激しく体内で争っている。
 やがてそれがどちらとも分からなくなる頃――……シャルファはそのまま瞼を降ろした。

●少女は孤独の中で
「随分派手に始まっちゃった……さてどうしようかな」
 怒号と悲鳴のオンパレードにひょっこりと顔を出したまどかが様子をうかがっている。
 ダンスホールはかなりひどい有様のようだ。あちこちが燃え家具や調度品に仕込まれていたらしい罠がそこかしこで炸裂している。まどかはといえばそれを見下ろしながら二階個室にて死因をゆっくりと考えているところだ。
「うーん、そうだなぁ……私が被害者として演じるのは『浮世離れした少女』。このタイプの被害者は無残に殺されることで殺人事件の凄惨さを強調するのには丁度いいよね」
 ビスクドールを抱きかかえて館を徘徊した甲斐あってか、ミステリアスな人物を演じられている彼女は。せっかくだからと惨い死にざまを選んだ。可憐な少女や愛らしい犬がこぞって死ぬような作品は凄惨さをより説得力をもって描写できるため、なかなか人気が高いのである。
 米印つきで一般ウケするかは個人差があります。なんてメッセージ付きになりそうだが、とかく美少女の死に際は画になりやすい。
「さて、そうと来たら犯人に殺されるのが一番いいよね」
 騒がしい館の中でまどかはふと蓄音機とはまた別の音楽が流れていることに気づいた。
 レコード音源ではなく何か歯車で動くような自鳴琴の音。
 ホラーお得意のオルゴールである。軽率に見にいくものはすぐさま犯人の餌食だが、この罠にまどかは自ら進んで食いついた。まさしく渡りに船、お誂え向きの罠である。
(こういうときは軽率な行動が効くんだよね)
 無防備に背をさらしたまま、たったひとり部屋に入っていけば。そこは部屋の中央に丸テーブルが置かれ、オルゴールが配置されているだけの殺風景な客室だった。
 ビスクドールを持ったまままどかがそれを眺めていると、不意に背中に衝撃が走る。
(来た!)
 胸から生えている白銀の刃がまどかの身体をつらぬいて、ビスクドールのすぐ脇から突き出していた。
 こぷ、と口から血が零れる。
 まどかを背後から突き刺したらしい犯人はそのまま力を掛けてずる、ずる、と日本刀を抜いていく。
 刃渡りおよそ一尺半ほどの脇差がすらりと数センチ抜かれて、しかしまどかの身体を貫いたまま放置された。抜けた部分は血をぬらぬらと夜闇で輝かせている。
 そのままくったりとまどかは蹲る様に前に倒れ込んで、オルゴールをひっくり返した。
 犯人の満足げな呼吸が吐き出される。
(殺したと思ってくれてるみたい。予め、変化【水銀】で体内を水銀にしてなかったらヤバかったね)
 心配ご無用、彼女もまた猟兵である。
 刺される直前にユーベルコードによって変化し、見た目はそのままに体組織のみを水銀へと入れ替えていたまどかは見た目ほどの外傷はない。倒れたのも演技だ。とはいえ脇差が刺さったままなので多少の痛みはあるが。
 軽傷で済んだ彼女は息を潜めて犯人の動向を待つ。突き刺した誰かさんは、そっと彼女のまわりに庭の桜のはなびらを撒いた。
 わざとらしく証拠を残す犯人は何かアピールしているのだろうか。
(見立て殺人にしたいのかな?)
 生きているのがバレないようにと息を殺しながら体勢を保っていたため姿を見ることは出来なかったが、うまく死体を装って。まどかは連続殺人の犠牲者の一人と無事相成った。
 
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

秋稲・霖
ていこの嬢ちゃんの、あの感じ?見たら思いついちゃったぜ!刺されるってのもアリだよなあ、うんうんっ
どうせ振りでも死ななきゃいけないんなら、思いきってやってやる!

連続殺人を解決してやるーって探偵気取りで嗅ぎ回ってたヤツが殺されるってのもよくある話っしょ、多分!

屋敷ん中をひたすらうろうろして証拠探しに熱中する演技を頑張るぜー!
そんで、疲れて壁に寄りかかった瞬間に首に向かって刃物が飛んでくるトラップ発動!
ほんとはギリギリのとこで避けてるから助かってはいるんだけど、こっそり血糊をどばっと撒いて倒れて死んだ振り!
…血糊で何か書いたらそれっぽい?

【アドリブ、絡み等歓迎です】


村井・樹
始まりましたか、連続殺人が
では『不良』、先に話した手筈通りに死んでください
私が、その手解きを致しましょう

伏線回収を使用
屋敷内にある、凶器になりそうな調度品達を鋼糸にして自分のもとに引き寄せ、解除したところで、圧死を装う
ただし、わざと一部は鋼糸にしたまま解除せず、または自分が最初から保有している鋼糸も駆使し、自分の回りに防護壁を構築

本当に自身が調度品に潰されることの無いよう、『村井・樹』の潜り込める程度の空間を確保しておく

……『紳士』め、俺に無茶ぶりしやがって
まあいい、お前の案で心中してやるよ
ただし、俺達は元は同じ一人
失敗したら、お前もろとも道連れだがな?

※プレ外の言動など大歓迎


冴木・蜜
*中毒死
…私、毒ですので
全く効きませんし
ついでに体内毒を濃縮できますし
安全に死んだフリが出来るかなと

猛毒を何の疑いもなく服毒
折角ですから一目で死体と分かるように
吐血でもしておきましょうか
血は…私のは赤くないですし
血糊を吐きますね

本の山を引っ繰り返し
喉元を掻き毟り
藻掻いて
爪が剥がれるほどに床を掻いて…力尽きた
そんな感じで如何でしょう

医学知識をフル活用して
散々苦しんで死んだフリをしておきます
どうせなら見るも無残な死体になってみたいものです

あ、そうだ
中毒死ならダイイングメッセージとか残せますね
なら手に何か握り込んでみますか

事前に医療鞄を処分しておけば
謎めいていて他殺体っぽくなるでしょうかね


桜雨・カイ
(一章の続き)ここで何か見つけた事にしないと…何かないでしょうか
おや?こんなところに地下室が…ここに何かあるのでしょうか?
どんな攻撃が来るか分かりませんし警戒はしておかないと。

がちゃん?もしかして上が閉まった音ですか?
え、ええっ水が上から?
刃とか矢を警戒していたのにまさかの水攻めですか!
どうして家の中にこんな仕掛けを?全力で殺る気じゃないですかっ!
※水攻めによる水死

水が引いた後:
…私がヤドリガミでなかったら本当に死んでましたね。
それでも苦しいものは苦しかったですよ…(器物は「人形用の服」で無事)


神元・眞白
【SPD/割と自由に】
死因:首吊り人形
状況:吹き抜けの広い広いダンスホール。天井から吊るされるのは――

・演技部分
飛威とはぐれてお屋敷の中をぐるぐる。天井裏の点検用通路を見つけて見学
その際にホールの確認用小窓へのぞき込む際バランスを崩して転落。
何故かその場にあったロープがかかり、ぷらりとなる様に。

・実際
演技が必要って聞くし、飛威にも合わせてもらおう。
私とはぐれた体にしてホールに待機してもらっていて……。
何人かいるのが見れたら落ちよう。派手めに?
ドールとは言ってないし吊られても死なないけど、そこは流れに。



●冷たい檻
「ここで何か見つけた事にしないと……さて、何かないでしょうか」
 クロユリ邸が殺人へと動き出す直前。ひとり客室で単独行動に入ったカイは死への準備をすすめている。いかにも推理小説の犠牲者らしい死にざまを演出するためにさっそく部屋内を物色、もとい下見していた。
 棚にはいくつかの薬品だろうか、アンプルや瓶といった小物類が置かれている。
「どんな攻撃が来るか分かりませんし警戒はしておかないと」
 置かれている薬品の種類まではさすがに判別できなかったが十中八九毒の類だろう。すでにダンスホールからは罠が発動する機械音が聞こえてくる。
 あれでもないこれでもないと探すうちに隣の部屋からザクリと何かを裂く音がした。
 ついで詰まったような呼吸の音。刃物の擦れあう音。
「隣には確かどなたか……おや?」
 ぱかりと床の一部がめくれあがる。梯子のかけられたそこはどうやら直通でダンスホールのさらに下に繋がる地下室らしい。隣から聞こえてきた音も気になるが、とりあえず下ってみようとカイは梯子に手をかけた。
 ちょうどその頃隣の部屋では少女が犯人によって無残にも刺殺されていたのだが、カイにはそれよりさらに苦しい死の運命が待ち受けていたなどとこの時点では知る由もなく。
 何かに誘われるようにして地下へと降りていく。差し迫る死へのカウントダウンは刻一刻と近づいてきていた。
 ひたひたと、わざとらしく足音を立てながら。
「……ここに何かあるのでしょうか? とりあえず降りてきてしまいましたが……」
 冷たい石に足をつけた途端真上の明かりが遮られた。
 弾かれるようにしてカイは真上を見上げる。梯子の穴から誰かが覗き込んでいた。逆光となって顔の判別はつかないが、その人物は確かに笑っていて。
 そして、そのまま。

 ガチャン。

「がちゃん?」
 金属の重なる重い音がしたと同時に、地下は一切の明かりもなく暗闇に包まれた。
 差し込んでいた入り口付近からの明かりはもう見えない。つまり。
「もしかして上が閉まった音ですか……?」
 尋ねても誰も答えはしなかった。当然カイはたったひとりここに居るのだから、誰に聞こえるはずもない。彼がここに居ることは己を除いて一人しか知らないのだ。そう、犯人しか知りえない。
 単独行動で気を引くのは上手く行ったらしいが、まさかここまで上手く犯人がかかるとは。カイがぼんやりそう考えていると。
 ぴちゃん、ぴちゃん。頬に冷たい水滴が当たった。
 雨のように最初はぽたぽたと、次第に強くなってバケツをひっくり返したような量になる。
 よくよく暗闇に目を凝らせば小さな穴から無数に水が流れ込んできていた。
「え、ええっ、水が上から?」
 なんとも大がかりな仕掛けである。驚くカイの足元にはすでに水がたまり始めていた。
 足首へ、腰へ、首元へ、あっという間に水位は増していく。洪水の川のように濁流にのまれて足で踏ん張ってはいられないほどに水は強くカイを押し流そうとしていた。
「ごほっ、こほっ、刃とか矢を警戒していたのにまさかの水攻めですか!」
 水を吸って重たくなった和装は体にまとわりついて泳ぐのを阻害し、体力を消耗させていく。
 浮くこともできずついにカイはどぷりと水に頭まで浸かった。凍えるほどに冷たい水の檻に閉じ込められたまま、あぶくとなって消えていく呼吸。流れ込んでくる水が気道を塞ぐ。
 息が出来ない。前が見えない。胸をかきむしるような苦しさと共に、彼は。
 彼は――溺死する。

 小一時間後。
 死んだはずの“彼”の瞳は水中でゆっくりと開いた。
(どうして家の中にこんな仕掛けを? 全力で殺る気じゃないですかっ!)
 口元からこぽこぽと気泡がのぼっていくにつれて水が引いていった。
 常人ならば生きてはいられない程長い間水中に居た彼は……まだ生きていた。それもそのはず、ヤドリガミの彼は本体にダメージが及ばない限りはこの手の水攻めも問題がない。
「ぷはっ……私がヤドリガミでなかったら本当に死んでましたね。それでも苦しいものは苦しかったですよ……」
 溺死の感覚など知りたくは無かった。とうぶん味わいたくもない。
 濡れた床に横たわりながらぜえぜえと息を荒げて、カイはぐったりとしたまま青白い肌が乾くのを待っていた。

●鬱血の青痣
「……始まりましたか、連続殺人が」
 炎に包まれて燃える者や毒を吸う者。刃物に刺される者。
 ありとあらゆる死に方で猟兵達は命を落としていく。殺戮の宴に交じろうと樹はそっと足を進めた。
「では『不良』、先に話した手筈通りに死んでください。私が、その手解きを致しましょう」
 しゅるりしゅるりと彼の手から鋼糸が伸びていく。
 目についた調度品を巻き込んで、ピアノ線のように強靭な糸が家具を根こそぎからめとっていく。
 まるで操り人形のように自在にひっかけられた鋼糸の元は樹の指先へと繋がっていた。
 手品のようにつながる蜘蛛の巣。その中心にいる蜘蛛こそが樹だ。
 縄張りのごとく広げたそれらを悪戯に引いて見せれば。
 ず、ず、ずずず。
 ずずずずずずず。
 ゆっくりとゆっくりと連なって調度品が引きずられていく。
 くい、と更に樹が鋼糸を引き寄せた瞬間それは起こった。
 バツンと強い力で千切られたような音と共に樹に向かって調度品が一斉にすっ飛んでくる。
 堅く重い箪笥や破片を巻き込んだ食器棚、ありとあらゆるものが凶器となって彼に襲い来る。
「待っていましたよ、この時を。お膳立てはこちらで整えて差し上げましょう」
 屋敷内にある、凶器になりそうな調度品達を鋼糸にして自分のもとに引き寄せ、解除したところで、圧死を装う。
 それが彼の作戦だ。
 ただし、わざと一部は鋼糸にとらえさせたままで。解除を行わずに手繰り寄せはしない。
 一部の調度品を連ねて防御壁の要領で積み上げると樹はそっと創り上げたスペースに身を屈めた。
 本当に自身が調度品に潰されることの無いよう、『村井・樹』の潜り込める程度の空間を確保しておく。それが彼の行う“お膳立て”なのだから。
「それじゃ、後は頼みましたよ『不良』。こういうのは得意でしょう?」
 家具で築かれた山の向こうから聞こえる、もはや外からは覆われて見る事の出来ない彼の声は。
 丁寧な言葉遣いから一転、次の瞬間には粗野で無骨な若者のそれに変貌した。
 多重人格者の人格スイッチ。樹は――樹へと成り替わる。
「……あの『紳士』め、俺に無茶ぶりしやがって」
 ぎゅう、ぎゅう、と四肢のあちこちを圧迫されて鬱血痕が浮かび上がる。
 締め付けられるような痛みの原因は、多大な負荷がその身体にのしかかっているからだ。自分の体重の何倍もある家具に圧し潰されて、ほんのわずかな隙間だけで永らえる彼は一筋汗を額から落とした。
「ったく……まあいい、お前の案で心中してやるよ。ただし、俺達は元は同じ一人。失敗したら、」
 お前もろとも道連れだがな。
 文字通りの心中にぼそりと悪態をついて。
 たったひとりは、たったふたりで死んでいく。
 家具の山はやがて支えを失ったか、内側に圧し潰れるようにして倒壊した。

●毒喰らわば皿まで
 ダンスホールは阿鼻叫喚に包まれていた。
 死体の数は着々と増えていく。床に転がるのは先程まで館でくつろいでいたはずの猟兵達だ。
 みな見るも無残な死にざまを晒しているのを蜜は小部屋からそっと眺めて扉を閉める。
「皆さんしっかり役割を果たしているようですね。そろそろ動きませんと」
 勤しんでいた読書から目を離してぱたりと本を閉じる。
 そろそろ己も死ななければならない。ダンスホールから拝借してきた和菓子の隅に隠れるようにしておかれていたのは一杯のグラスだった。
 飲み物に、ではない。彼にはそのグラスに入っているものが何なのかわかった上でこの客室に持ってきていた。
 一見ただのワインに見えるそれに溶かし込まれているのは猛毒だった。
 医学知識を持つ蜜だからこそ見つけられたもの。テーブルには普通の料理に紛れていくつか毒が仕込まれている。犯人は本当に無差別に食事に手を付けた者を殺すつもりだったことが伺い知れた。
「まあ……私、毒ですので全く効きませんし」
 そもそも致死性の死毒で構成された彼は今更どんな毒を体内に摂取したところで十も百も千も変わらないのだ。
 それこそ彼がジュース感覚で服毒が可能だとはまさか犯人も思うまい。
 毒を無害化。体内に蓄積している毒素を自在に濃縮。毒による攻撃も可能。毒毒毒、毒のスペシャリストと呼んでも過言ではなかった。
 なんの疑いもなくグラスに口を付けて一気に飲み干す。
 旅人が水筒から呷るように。躊躇いも無く彼は毒をこくこくと飲んだ。

 口元をぬぐいながら。さて、と蜜は懐から血糊を広げると口に含む。
(折角ですから一目で死体と分かるように吐血でもしておきましょうか)
 黒い体液を吐き出すと犯人が驚くかもしれないというなんとも彼らしい配慮もあってか、犯人の満足するような赤赤しい血糊を咳き込む演技と共にぽたぽたと垂らした。
「か、ふっ……うぇ、げぇっ、ケホッ」
 苦しみ暴れ、喉元を掻きむしり、口に指を突っ込んで必死に嘔吐しようともがく。
 げえげえと苦し気に顔を歪めて、回りだした毒に痙攣するような仕草を付け加えた。
(うーん、我ながら演技派です。どうせなら見るも無残な死体になりましょうか、もう少々暴れておきましょう)
 渾身の演技をつづけて意識して顔に苦しみを出す。本当は全く苦しく何てないのだけれど。
 絨毯を必死に引っ掻いて、助けを求めてふらついたフリをして本棚に体当たりをかましておいた。どさどさと本が落ちてくる。眼鏡も割れた。哀れな犠牲者Aとしては申し分のない死にざまだろう。
 いいぞ、上手い、その調子だと天からお褒めの言葉が聞こえた……ような気さえした。
(あ、そうだ。中毒死ならダイイングメッセージとか残せますね。それなら手に何か握り込んでみますか)
 小説でならこういう場合に何かしら推理のキーになるものを持っているのだ。
 這いつくばりながら必死に医療鞄からメモをむしり取るとぎゅうと握り込む。
 呼吸と心拍が激しくなって、そのまま硬直した拳はつめたく固まってゆく。――ように見せかけて。
 最後に天井を向いた彼の目はどんよりと混濁し、やがて光を失ってぼんやり曇る。
 死人の目はどす黒く染まっていった。

●スプラッタ・スプラッシュ
「ていこの嬢ちゃんの、あの感じ? あれ見たら思いついちゃったぜ!」
 ダンスホールで刺されかけた彼女を霖は振り返る。ぎらついた刃が向かい来るのには肝を冷やしたが、よく考えればなかなか様になる死因ではなかろうか。きらりと眼鏡の奥の瞳を輝かせて霖は楽し気に頷いた。
「刺されるってのもアリだよなあ、うんうんっ! どうせ振りでも死ななきゃいけないんなら、思いきってやってやる!」
 よっしゃー! とひとりやる気になってぱたぱたとクロユリ邸を歩き回る。
 とても楽し気な様子に、まるで名案と言わんばかりの言動に。これからまさか彼が死にますなどと事情を知らぬ人間が教えられたら仰天してしまいそうだ。
 ルンルンと嬉しそうに歩を進める霖が向かうのはピクニックなどではなく死そのものである。
 死因が決まったと成ればすぐさま実行だ。
 これだけ罠が張り巡らされているのならば都合のいい刃物の一つや二つあるだろう。
「連続殺人を解決してやるーって探偵気取りで嗅ぎ回ってたヤツが殺されるってのもよくある話っしょ、多分!」
 行動派探偵よろしく霖はクロユリ邸の中を駆け回る。
 証拠探しに熱中する演技は犯人からしたら脅威だろう、案の定すぐに向こうは仕掛けてきた。
 そっと背をついて寄り掛かった壁が不自然にへこむ。カコン、と乾いた木材の音と共に壁の一部分が押しボタンのように内側にめり込んだ。そら来た罠だ、と霖がすぐに視線を投げた。
 向かい来るのは顔面めがけてまっすぐ飛んでくる斧。振り子のようにしてロープが括り付けられたそれは、頭部をかち割らんばかりの勢いでスピードをつけて突っ込んでくる。
 霖の肩に、首に、頸動脈にめり込んだそれは血しぶきを上げてあっという間に青年の身体を真っ赤に染め上げた。
 景気よく、盛大に、溢れんばかりに。
 血が辺り一面に広がった。映画のスプラッタシーンで定番の光景が一瞬にして出来上がる。被害者の断末魔と共に壁が赤く赤く、赤黒く飾られる。
 液体がばちゃばちゃとはねて、飛び散る。猟奇的で、嗜虐的で、残忍で。スナッフムービーならば最高潮と言ったところか。
(ちょっとやりすぎたかな)
 スローモーションで倒れ伏したはずの被害者――霖が薄く目を開けた。
 もちろん死んでなどいない。死んでたまるものか。
 トラップは確かに発動していたが彼は寸前でそれを避けていた。斧は彼の身体を少しばかり掠めただけで、霖がタイミングよく持っていた血糊袋を握りつぶしたのだ。
 どばっと撒いて、倒れて死んだ振り。上手く行ったかな、と霖は心配そうにきょろきょろとあたりを見回したがここでするっと起き上がってしまうと演技がバレてしまうので大人しくそのまま死体のフリをしておいた。
 実際は上手く行ったどころの話ではなく死者の中でも一番の血みどろを演出している素晴らしい演技だったのだが、彼がその講評を仲間から聞くことになるのはもう少し先の話である。
 なにはともあれこれで死体がまた一つ。犯人はさぞや満足してくれたことだろう。

●吊り下がり人形は死の狭間で
「全く、やりすぎ」
(やっぱやりすぎてた!?)
 床一面に広がる血溜まりを踏みつけないようにして眞白は倒れ伏す猟兵にそっと呟いた。
 絨毯にじわじわと染み込むだけでは飽き足らず、踏むだけで飛び散ってしまうほど濡れたそこはもう歩けそうにない。
 血糊がちょっと多すぎたかもなあ、でもあれくらい派手にやらないと目立たないし……と振り返って反省会をしている霖を横目に眞白は死因をぼんやり考えていた。
 さてそろそろ死ぬべきなのだがさすがにここまで血で汚れるのは御免こうむりたい。白い肌に赤い血は映えそうだけど、と言いかけて霖はいけないいけないと口を閉じた。彼は今死体役である。私語厳禁。
 眞白は真上を見上げてダンスホール、をきらびやかに照らしていたシャンデリアに目を止めた。
「吹き抜けの広い広いダンスホール。天井から吊るされるのは――……悪くない」
 眞白の世話役兼近接戦闘用人形、戦術器の飛威はその言葉に心得たと言わんばかりに彼女の傍を離れた。
 眞白の言わんとすることを理解したのだろう。準備に移ったらしい。
 クロユリ邸は今や犠牲者の数が半数を回っていた。着々とひとりずつ死んでいく館の中を彼女はまるで意に介していないかのようにゆっくりと一歩ずつ歩いて行く。
 やがてダンスホールの端、壁際までやってくると、そうっと様子をうかがった。天井裏へつづく点検用通路だろうか、小さな梯子がかけられたそこをこれまたゆっくりと登っていけば。
 導かれるようにして突き当たった上には小窓があった。照明などを掃除するためか、ホールを一望できる確認用の小窓のようだ。透き通った青い瞳がそこに吸い込まれるようにして釘づけにされた――刹那。
 押し出されたか、あるいは自らか。眞白は体勢のバランスを崩してその小窓に倒れ掛かってしまった。
 シャンデリアを掃除するためにご丁寧に戦術器によって垂らされていたロープが首に引っ掛かる。
 くん、と体重をのせて首を絞める縄が気道を狭めた。
「――っ、ぁ、」
 酸素が、空気が、声が。吐き出せない。吸えない。響かない。狭められた喉は何も通す事はなかった。
 血の巡りがすぐに悪くなり、常人ならば顔は真っ青になるだろう。ミレナリィドールであったがためか表面上の変化はないが、美しい女性が首を絞められているのは何とも痛々しい光景だった。
 今や彼女の身体を支えているのは己の爪先ひとつだ。たった一歩踏み出せばおそらく身体は重力に従って首吊り状態となる。
 シャンデリアは高く、手も足もとどかぬ高さの宙に吊られてしまえばもはや助ける術はない。
(演技が必要って聞くし、飛威にも合わせてもらおう)
 声の出せない眞白の意図を汲んで、飛威はすでにダンスホールの真下に待機していた。
 それを見届けた彼女はトン、と小窓を軽く蹴る。
 自重によってますます縄は締まり、シャンデリアの真下に彼女は吊られた。
 ミレナリィドールは可憐な操り人形のごとくダンスホールに垂れ下がる。縄で自由を奪われ、なすすべなく、飾り物のように。一番目立つ場所で彼女は死んだ。まるで奇妙な事件の死体第一発見者が見るような、インパクトのある吊り下がりの死体を見事に演出する。この時まだ生きていた猟兵達は彼女の死に様をしかと見届けた。目に焼き付けた。
(ドールとは言ってないし吊られても死なないけど……この体勢、意外と……)
 ぶら下がりはそれなりに疲れるのか、などと。まるで他人事のように彼女が思っていたのは誰も知らなくて良いことなのだ。犯人にも登場人物にも。サスペンスの舞台裏を観客に見せる必要はないのだから。
 
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

薬袋・布静
【徒然】
なんでそないにドヤ顔で張り切っとるん
飯美味かったからか?腹一杯でご機嫌ですよってか?
この後吐かん程度に頑張りましょ

◆コンセプト「風呂場での感電死はある意味様式美」
泡風呂入りたい八千代の要望に答えて準備中
背に張り付きじゃれつくのを宥めて
「おー、もうちょっとしたらなー」
「この後嫌って程構ったるから待っときぃ」
普段作業中は大人しい分託けて
甘えてるであろう八千代の頭を撫ぜた

屈んだ姿勢+泡で濡れたタイル
綺麗な条件下で抗う事無く浴槽へ
「おっぶ、んぐぅ!?」
「ったく……」
仕方ないと言うように八千代の髪を払って

天井から落下した照明
それに気付いても――もう遅い
八千代を庇うように抱き締める術しかなかった


花邨・八千代
【徒然】
次はある意味メインシーンだなー、せいぜい派手に死ぬか。
バカップルの散りざまよく見とけよコラ。

◆コンセプト「風呂場での感電死はある意味様式美」
シーンは移って客室の風呂場。
風呂の用意してくれる布静の背中にくっついて邪魔したり急かしたり。
「なーぁ、ぬのせまだー?」
「俺ひまー、遊べよーぅ」
頭を押し付けてみたり、風呂の横で相変わらずいちゃいちゃするぞ。

不意に足元のタイルがガクリと凹む。
バランスを崩して2人一緒にバスタブにダイブ!
「うぶっ、わ!?」
「うははっ、びしゃびしゃ」
濡れたけど大した被害もなくて笑いあう。

しかし、不意に天上から洒落た照明がコードごと湯船に落下。
……残るのは死体がふたつだけ。



●仲良死こよ死
「さてとお次は……ある意味メインシーンだなー。せいぜい派手に死ぬか。バカップルの散りざまよく見とけよコラ」
 びしりと突きつけた指は明後日の方向に。
 画面の前のお友達は目をかっぴろげてとくとご覧あれと番宣のように八千代が意気込んでいる。指さす方向にカメラこそ無かったが彼女の決めポーズはなかなか画になっていた。
「なんでそないにドヤ顔で張り切っとるん」
 飯美味かったからか?
 腹一杯でご機嫌ですよってか?
 妙に張り切る八千代にそう声を掛けたのは布静だった。この後に控えるのは死だというのに何をそんなに張り切っているのやらと呆れ顔を滲ませている。
「一番の盛り上がりだろーがよ!」
「……さいで」
 ここで頑張らなくていつ頑張るのだという彼女に布静はハイハイといつもの調子で応えて見せた。当たり前だが死ぬことに乗り気な人間はごく少数派だろう。少数派なのだ。
 ……この館には数名かなりノリノリで死んでいった猟兵が多かったようにも思えるが、ここでは割愛しておこう。ご賢察お願い申し上げる。

 さて、彼らが掲げたコンセプトは当初の予定通りカップルの死だ。
 カップルの死は様式美なのだ。約束された勝利の死とも言っていい。ああこの二人は早めに死にそう、と読者が思う一番のおいしいポジションである。むしろホラーサスペンスミステリー等のジャンルで死なないカップルはだいたい犯人である。
 有名どころはボニーとクライドといったところか。挙げれば大抵の人間が頷く。
「さーて、となればせっかく今居るし風呂場で景気よく死のうぜ!」
「おー……この後吐かん程度に頑張りましょ」
 善は急げ、死も急げ、とグイグイ八千代に押されるがまま布静は前に進みだした。
 浴槽に熱い湯を張っている準備の最中も、後ろの方では「おいアヒルちゃん居たぞ!」だの、「バスタオルすっげーある! 六枚ずつ使おうぜ!」だの、楽し気な彼女の声が響き渡っていた。これが依頼でなくただの旅行だったならば本当に心ゆくまでゆったりと寛げるのだがお生憎。彼らはこれから悲しい事に死の運命にある。
 今度は依頼絡みではない普通の旅行も、などと彼が考えていると丁度風呂に湯がたまった。
 泡風呂入りたいと彼女がねだったのもあって、棚にあった入浴剤を拝借してフワフワモコモコの風呂を作ってやる。
 湯をかき混ぜていると探索に飽きたのか、ぴたりと八千代が布静の背に張り付いた。
 くっつきムシのように体重をあずけた背中側で、くすくすと彼女が笑う。
「なーぁ、ぬのせまだー?」
「おー、もうちょっとしたらなー」
「俺ひまー、遊べよーぅ」
「この後嫌って程構ったるから待っときぃ」
 はやくはやくとジャレつく八千代を宥めあしらってやれば、グリグリと額を押し付けられた。待て、をされた子犬のような仕草に自然と口角が持ち上がる。
 普段作業中は大人しい分、託けて。甘えているのであろう八千代の頭を、泡を拭いたやわらかな手で撫ぜてやった。
 そうこうしているうちに二人で入ってもまだ余裕のあるバスタブはまっしろな泡が水面を覆って、ようやく彼女ご待望の泡風呂が完成する。
 そっと屈んで湯に浸かろうとすれば、タイルに散った泡は潤滑剤となっていたらしい、ほらほらと手を引かれるままに足を踏み出せば石鹸のようにつるりと滑る。バランスを崩した二人は同時に声を上げた。
「うぶっ、わ!?」
「おっぶ、んぐぅ!?」
 ばしゃん、とお湯と泡が跳ねる。シャボン玉がいくつか風呂場をふわふわと飛んでいく。
「……」
「……」
 ぱちぱち弾ける虹色の世界で、お互いにキョトンとした顔を浮かべて見つめあう。しばらく無言の時間が続いて、八千代がやがて耐えきれず吹き出してしまった。
 花咲き綻ぶように笑ってみせる彼女は、心底可笑しそうにけらけらと。幸せそうに快活に笑っていた。
「ん、ふふっ、うははっ、びしゃびしゃ! ぬのせ泡だらけ!」
「ったく……泡風呂にしたいって言ったんはそっちやろ」
「そーだけどさぁ」
 自分と同じくらい泡まみれになっている、黒と赤の織り成す髪にくっついた泡を取ってやりながら。
 さあ入浴を楽しもうとした瞬間、ブチリと真上で嫌な音が響いた。

 あ。

 どこか間の抜けた八千代の言葉に、咄嗟に庇うように彼女を抱きしめて。覆い被さることくらいしか、布静に残された時間で出来ることは無かった。
 不意に千切れた照明は二人の楽しい時間を無慈悲に引き裂いた。
 電球が割れる。水に落ちる。剥き出しの線が泡に触れて瞬く間に火花が散った。
 ビクリと同時に二人の身体が痙攣する。青白い電流がぱちぱちと嫌な音を立てて猟兵の身体をすさまじい速度で貫く。痺れるような感覚を残して、視界がブラックアウトする寸前に見えたのはお互いの顔。
 ああ、やっぱり普通の旅行が良かった、なんて。
 言おうとして舌の先まで痺れていることに気づいた二人は、そのまま瞼を閉じると泡の中へと抱き合ったまま沈んでいった。 
 かくしてカップル死に至れり。風呂場には死体が二つ上がった。
 
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ヨシュカ・グナイゼナウ
エンジさま(f06959)

作戦会議の結果
『兄が弟をバラバラにして殺害するも、弟に盛られていた遅効性の毒によって相討ち。のように見せかけた殺人』に
人形ですからジョイントから上手く分解、バラバラ遺体に扮します。後で組み立て手伝って下さいな
この部屋の電気系統を【破壊工作】。時間差で壊れる様に、暗いと粗が隠せましょう

お兄さまからプレゼントだなんて初めて!何処にあるのかなあ
僕も『プレゼント(毒)』しているのだけれど、そろそろ効いてくる頃
床に何かが落ちて…僕の手?考える間もなくバラバラに
何だ、考えてる事は同じだったのですね。流石兄弟
死ぬ前に見たものは、苦しそうなお兄さま
はは、ざまあみろ


エンジ・カラカ
ヨシュカ(f10678)
やってきましたコノ時間。
下見は済ませた。バッチリバッチリ。
迷宮入りするような死に方をしようそうしよう!
後々の組み立ては任せて任せて。

アァ……弟がいなければ全部ぜーんぶ貰えるのになァ。
弟がいなければ。
そうだお兄さまがプレゼントを用意したンだ
この部屋の何処かに隠したから見つけてごらんヨ。

探している隙に赤い糸でぐーるぐる。
ジョイントに糸を食い込ませてバラバラ分解。
アァ……成功した。後は隠してそれから
何するンだっけ?

息苦しくなってきた。この感覚は知っている。
毒か。毒耐性のお陰で本当に命を落とすコトはないけどなァ

盛ったのだーれだ。
苦しみもがいて、アァ…コイツと一緒に死にたくない



●兄弟は殺しあう
 さあさあやってきましたコノ時間。殺し合いのお時間がやって参りました。
 飄々と血溜まりやら刃物やらを避けながら兄弟達は迫るその時を静かに待ち続けていた。それが今ついに来たのだ。
「下見は済ませた。バッチリバッチリ」
「準備はよろしいですか?」
「勿論。迷宮入りするような死に方をしようそうしよウ!」
 周りに聞こえないように“兄弟”達はこそこそと小声で確認を取りあう。数分前に始まった殺戮の手前、彼らはとある打ち合わせを済ませておいた。
「シナリオとしては、『兄が弟をバラバラにして殺害するも、弟に盛られていた遅効性の毒によって相討ち。のように見せかけた殺人』などいかがでしょう」
「なァるほど、仲の悪い兄弟同士の殺し合いか。遺産争いの果てに死体が二つ。妙案だね」
「ではその手筈で。わたしは――」
「弟クン?」
「こほん、失礼。僕は――でしたね。僕は人形ですからジョイントから上手く分解、バラバラ遺体に扮します。後で組み立て手伝って下さいな」
「了解。後々の組み立ては任せて任せて」
 ぱきゃりと音を立てて関節が不自然な方向に折れ曲がったかと思うと、またぱきゃり。小気味よい音を立ててヨシュカの細い腕が本来の正しい方向へと戻る。ヨシュカ・グナイゼナウはミレナリィドール。これしきの接合部外しなど造作もない。
 さすがにバラバラに四肢が取れていればこれ以上なく死体として致命傷に見えるだろうと、さっそく二人は口裏を合わせて演技の内容を決めておく。

 そしてクロユリ邸が怒号と悲鳴につつまれてから。
 エンジは仰々しく芝居掛かった声色でぼそりと虚空に向かって呟いた。
 その言葉を皮切りにヨシュカも演技に移る。さあこれより始まるは兄弟殺しの大一番。一世一代の大立ち回りだ。
「アァ……弟がいなければ全部ぜーんぶ貰えるのになァ。弟がいなければ」
「あぁ……お兄さまがいなければ事は上手く運ぶのですが。お兄さまがいなければ」
 弟さえこの世に居なければ何も分け合わずともすべてが己の懐に入ってくるというのに。
 兄さえこの世に居なければ手に入るものは分割されることなく己のものになるというのに。
 なんと邪魔なのだろう。目の下の瘤はちぎり取らねば。
 なんと邪魔なのだろう。目の上の瘤はちぎり取らねば。
「どうかなされましたか、お兄さま?」
「ン? いいや何も。弟クンこそ何か言っていたかナ?」
「鳥のさえずりではないでしょうか」
「あァ、そう。……そうだお兄さまがプレゼントを用意したンだ。この部屋の何処かに隠したから見つけてごらんヨ」
 見つけたら全てをあげようと気前よく弟を罠へと誘導する。
 純粋無垢なる弟はその言葉にきゃらきゃらと喜んだ。
「お兄さまからプレゼントだなんて初めて! 何処にあるのかなあ」
 くるくると楽しそうに部屋を探索する弟にぎらりとエンジの目が光る。馬鹿な弟は簡単に隙をさらしてくれる。
 無防備な背中に赤い糸を気づかれぬよう食い込ませて、腕や足をからめとった。
 一方兄に見えぬよう後ろを向いたヨシュカもまたニィと笑っている。兄はそのことに気づかない。
(……僕も『プレゼント』しているのだけれど。そろそろ効いてくる頃かな)
 不意にぐい、と力強く引っ張られる感覚とともにヨシュカの四肢はあちこちに飛び散った。
 ジョイントに糸を食い込ませて、バラバラと分解していく弟を兄は感慨も無く見つめている。
 ことん、と落ちたそれに気をとられた弟は驚愕に目を見開いていた。
「え……僕の手……?」
「アァ……成功した」
 驚いたまま、それが最後の言葉になる。
 兄は散らばった“弟だったもの”を手早く家具の後ろに押し込む。
 まんまと上手く行った。邪魔ものは消えた。これで弟はもう居ない。
「さて、これから何するンだっけ?」
 振り返りもせず部屋から出ようとすると、ぐらりとエンジの身体が傾いた。
 体勢を立て直す。立て直せない。立ち眩みのような感覚とともに完全に足から力が抜けた。
「――? ……っ、はァ?」
 疾走した後のように息苦しくなってきた。この感覚は知っている。
 毒か、と瞬時に思い当たったそれに苦々しげにエンジは顔を歪めた。
 では、犯人は。盛ったのだーれだ。
 そんなのは一人しかいないに決まっている。
「この期に及んで……アァ……くそ、ったれガ」
 舌打ちとともに上半身を起こす事すら叶わなくなって、エンジは床に沈む。
 コイツと一緒に死にたくない。邪魔ものを消そうとしていたのはあちらも同じだったということだ。
 
(何だ、考えてる事は同じだったのですね。流石兄弟)

 もはや喋ることもかなわぬ残骸と成り果てたヨシュカは、床で死に藻掻いている兄に憎悪と親近感を込めて楽しそうに最後の情景を家具裏から眺める。その姿を瞳に焼き付けた。
 死ぬ前に見たものは、苦しそうな兄の姿。
 はは、ざまあみろ、なんて。
 言葉はついに発されることもなく。兄弟殺しは此処に終結した。
 
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

稿・綴子
まぁ演技だなんてそんな…!なぁんてな、今暫くは演じる所存、さて
※絡みアドリブご随時に

*
閉じこもった私室で目を覚ます
「う…この頭痛、なに?」
嗚呼何かを思いだして仕舞いそう、いけない、いけないわ

机上の招待状を前に唇が戦慄く
「クロユリ…百合、姉様?」
私、百合姉様を殺してしまった…いえ、違うわ
殺されたのは私
そう、姉様の凶行を止める為に私はここに来た
「大変、みんなに知らせなくちゃ…」
扉をあけて廊下に躍り出れば血なまぐさい

※後は既にクロユリ邸の手にかかった人達を前に絶望したり、巻き込まれたり…他、好きなように使ってください
※姉様は綴子の妄想にしてくれてもOKです
※殺され方は血が出るのならなんでもいいです


夏目・晴夜
よし、死にますか


落ちてきた物を戦闘特化【怪力】人形ニッキーくんに受け止めさせ
助かった、と思いきやその物でニッキーくんに殴り殺されようかと

強大な生命体を生み出したマッドな博士がその生命体に殺される
SFサスペンス映画あるあるですよね
SFとは程遠い世界観ですけどね、此処
あくまで死んだふりなので優しく殴って下さいよ

は…?な、何故このハレルヤに手を上げ――痛っっってえ!

何ですかコレ、クソ痛い…ふざけんなよ、オイ…
今までニッキーくんに倒させてきた敵にも
こんな痛い目に合わせてしまっていたのかな、と
反省する余地もない程に痛いんですが

今回は転生が狙いですからね
この痛みへの苛立ちはぶち殺していい敵に後日ぶつけます


織江・綴子
なんていうかですね。
思ったより堂々と血を欲するんですね、このお屋敷!

服に穴が開いてしまう死因はイヤだなぁ。
さっきから首を引掛けようと揺れてる、この縄で首吊りにしましょう。

ほんとに絞められたら死んじゃうかもしれないので、縄と首の間に"影"を挟み込みます。
書き込む命令は『我ヲ生カセ』。
いいですか、クレムツさん。
私が窒息しないように影を首と縄の間に挟み込んでください。

では、迫真の演技をご覧あれ、とう!
うわ~~縄が首に~~~ぐげっ!
(ちょ、思ったより苦しいこれ、縄を切ってクレムツさん!あっ、無視してる!?)

しばらくすると縄を切って貰えました、ぽとりと落ちて「バカ悪魔、アホ」と呻いて横たわります。完。



●その血を捧げよ
 綴子は閉じこもった客室のなかで倒れていた。
「まぁ演技だなんてそんな……」
 どうしましょう、どうしましょう、困った風に悩む少女は急に演技を崩すと。
 クロユリ邸で次々に死んでいく猟兵の苦痛にまみれた悲鳴を聞いて、己が次の番であることを悟った。
「――……なぁんてな、今暫くは演じる所存」
 さてどうしたものか。
 死に様は己で決めろと丸投げされている通り、猟兵達はみなそれぞれ工夫をして死んでいった。
 綴子はしゃらりと頭で揺れる曼珠沙華に誘われるようにして、しばらく考え込んだ後。今まで目を通してきた数々の名作、名場面を反芻する。紙上のインクであった彼らはどのように死んでいっただろうか。
 無念を抱えて物語の中で命を落とした登場人物達に一番詳しいのは星の数ほどの奇譚を知る己だ。死んでいった人物達は何度も見てきた。読んできた。読書経験は存分に振るうべきだろう。
 であるならばと綴子は以前読んだ密室殺人の場面を脳内で鮮明に再現する。巧妙なトリックで殺された男の死体だ。
 丁度今居るのは小部屋。死ぬにはもってこいじゃないか。
「どうせ死ぬなら派手に逝こう。死んでご覧にいれて魅せよう。諸君、こういうのが好みなのであろう?」
 誰に聞かせるわけでもなく、くつくつと喉を震わせて笑いながらつぶやくと。
 彼女はすぐさましとやかな少女へと様変わりする。

「う……この頭痛、なに?」
 何かを思い出そうとして、鈍痛に苦しむ。何も思い出せない。
 嗚呼このまま何かを思いだして仕舞いそう、いけない、いけないわ。
 いけないのに、どうして。
「――!」
 机上の招待状を前に彼女の唇が戦慄く。ああ、思い出してしまった。
「クロユリ邸……そうだわ、今日この館で起こる殺戮は、すべて……」
 すべて彼女が起こした事ではないか。
 犯人のことをまるで知っているかのようなセリフとともに意味深に演技を重ねていく。
 掴みは上々、あとは上手くできるはず。
「私、この事を知っていて……止めようと……いえ、違うわ。殺されたのは、殺されそうなのは私……」
 そう、彼女の凶行を止める為に私はここに来た。
 刺し違えてでも彼女を止めるためにここに来た。
 その為に刃物を持ちだして、止めにきたはずだ。
「大変、みんなに知らせなくちゃ……」
 ふらつく身体を支えて部屋から出た瞬間。綴子の身体は串刺しにされていた。
「あ、っぅ、」
 真正面からひとつき。まるで彼女が部屋から出るのを知っていたかの如く待ち伏せされていたらしい。
 犯人の姿をその瞳におさめた綴子が震える唇でその名を口にした。記憶をなくした令嬢が本来の目的を思い出すには、ほんの少し――時間が足りなかったのだ。……という体で彼女は殺される。
(ふむ、我ながら中々凝ったシナリオではなかろうか)
 これが殺されかかる直前でなければ。事の運びように得意げに笑っていたところだ。犠牲者としてはなかなか画になるシチュエーションを再現できたことに上手く行ったと自負しつつも演技は忘れない。
 ぱくぱくと金魚のように空気ばかり吐き出して、言葉が出てこない彼女を。
 犯人はそのまま凶器を身体から引き抜くと、もう一度念入りに深く突き刺した。

●目論む博士は死の運命にある
「お、あれが犯人でしょうか」
 今しがた突き刺された綴子の前から人影が立ち去っていくのを目敏く晴夜は見かけていた。
 踊り場から身を乗り出した綴子の死体が降ってくる。びしゃびしゃと血を撒き散らしながら、彼らの頭上へと。人間の体重から考えても重さの有るものとぶつかれば怪我はまぬがれない。運悪く当たり所が芳しくなければそのまま死ぬケースもある。
 晴夜はしかし悠々と避けることもなく、落下してくる綴子から特に逃げる行動はとらなかった。
 そんなことをしなくとも彼の隣には頼もしい人形が居るのだ。
 その名も戦闘特化怪力人形、ニッキーくんである。
「さあ頼みましたよニッキーくん、出番ですからね」
 ぶぉん、と風を切る音とともにニッキーくんの腕が上がる。綴子の身体は横凪ぎに吹き飛ばされた。
「よくやりましたねぇニッキーくん――グゥッ!?」
 フルスイングはそのままにニッキーくんの腕はアッパーカットのごとく。勢いを殺さぬまま晴夜にがつんとぶつかった。遠心力やらなんやらで紙のように吹き飛ぶ晴夜は壁に叩きつけられる。
「は……? な、何故このハレルヤに手を上げ――……痛っっってえ!」
 ニッキーくんは止まらない。そのままずんずんと晴夜の方に向かって歩いてきたかと思うと馬乗りになって殴り始めたのだ。
 言うことを聞かない人形の暴走に殴られつつも晴夜は必死に訴えかける。
「う、ぐっ、ちょっ、待て、何ですかコレ、クソ痛い……ふざけんなよ、オイ……」
 止まれ。止まれ。止まれ。止まれ。
 止まらない。止まらない。止まらない。エラーが吐き出されるだけだ。
 ニッキーくんの制御機能は完全に失われていた。――否、本当は失われてなどいない。これは彼らが死の演出として行っている演技なのだ。

 小一時間前。
「さてニッキーくん。私も死ななければなりません」
 主を生かす命令ばかり聞いてきたニッキーくんにとって聞き馴染みのない言葉だ。
 敵を殺せ、自分を助けろ、というのが常だったのに今宵の彼は死ぬ手伝いをしろと宣う。
 晴夜から発されたものとしては初めてのオーダーには思わずこてんと首を傾げた。
 見た目こそかなり悪趣味だが動作はなかなかに可愛らしく見える。……感覚が麻痺しているのかもしれない。
「強大な生命体を生み出したマッドな博士がその生命体に殺される……こういうのってSFサスペンス映画あるあるですよね」
 まあSFとは程遠い世界観ですけどね、此処。
 晴夜はからくりに話しかけるように呟く。人形は相槌を打っているのかそれとも一定時間で自動的に首が傾くよう仕込まれているのかは定かではないが、なんだか話に頷いたようにコクンと首を縦に振った。
 フランケンシュタイン氏はどうやって死んだんでしたっけ。あれは怪物に結局殺されたんでしたっけ、殺されなかったんでしたっけ。談笑するように晴夜は言うと。あっなるべく優しく殴ってくださいよとオーダーに付け加えた。
「あくまで死んだふりなので。優しくお願いしますね」
 主からの命令ならばとニッキーくんは可能な限りやさしい拳で主を殴り倒す命令に従った。
 しかし。加減されているはずのその拳は――とても、とても重かったのだ。

「優しくって言ったでしょう!」
 優しくしてますよこれでも。そんな幻聴が聞こえて来そうだ。
 今までニッキーくんに倒させてきた敵にもこんな痛い目に合わせてしまっていたのかな、と死に際に反省しようとして。
「いや反省する余地もない程に痛いんですが、ちょ、ちょっと、イヤ本当に死ぬ――!!」
 ニッキーくんストップ。ストップして。
 というわけですったもんだの末、彼は目論み通りに死ぬことができた。自身の立てたストーリーの筋書きに沿って、自身が操っていたはずの人形によって撲殺された。
 彼も猟兵、きっと無事に違いない。たぶん。きっと。おそらく。メイビー。
 ……健闘を祈る。

●クビシメとアラタメまして
 ニッキーくんが華麗に吹き飛ばした稿・綴子の身体は、何の因果か同じ名の織江・綴子の前に転がってきた。
「うわっ!」
 胸を一撃でやられている。
 もちろん彼女が死んでいないことは分かっていたが綴子は思わず唇をひくつかせた。
 見れば向こうの方では気絶してもなお殴られつづける男性がいたり、シャンデリアから力なくぶら下がる死体があったり、燃えて燻ぶる焼死体があったり、毒を口に含んで倒れている者がいたり、瓦礫に潰されている者がいたりとやりたい放題である。
「なんていうかですね。思ったより堂々と血を欲するんですね、このお屋敷!」
 これではレトロ漂う風流な館というよりも忍者屋敷ではないか。
 めくるめく死のオンパレードに綴子は若干頭痛を覚えながらも、己も死ぬために行動しだした。
 とはいえ目の前で見てしまうと刺殺はなかなか痛そうだ。死なないにせよ少しばかり気が引けてしまう。
「うーん、服に穴が開いてしまう死因はイヤだなぁ」
 そうですねえ、と綴子はあたりを見回すと丁度良いものを目の前に見つけた。
「これは好都合。さっきから首を引掛けようと揺れてる、この縄で首吊りにしましょう」
 ぷらぷらと揺れているのは頭上で吊られた少女――シャンデリアから操り人形のように垂れている彼女から垂れ下がる縄。さあ首を突っ込んでくださいといわんばかりに輪の状態に結ばれていた。
 気道が強く締まれば人間は平均七秒ほどで意識を喪失してしまうらしい。どこかで呼んだ文献だ。
 だからこそ首吊りは昔からポピュラーなものとして他殺自殺ともにお手軽に使われてしまっている。数ある人体急所の中でも首はそれだけ重要な部位なのだ。
「ほんとに絞められたら死んじゃうかもしれないので、縄と首の間に“影”を挟み込みましょう」
 綴子はこの後に控えるオブリビオンとの戦闘のために体力は残しておくべきだと結論付けた。
 なるべく不測の事態に対して動けるように準備はしておくに越した事は無い。
 懐から手帳を取り出すと、彼女は悪魔に気さくに挨拶した。
「おはよう、クレムツさん」
 ご機嫌は如何かな、なんて。
 手帳から何者かが浮かび上がる。具現化していく。呼び出されたのは彼女の使役する悪魔、光源操作と影の術を操る【クレムツ】だ。
 彼ないし彼女は、おはようと声をかけた綴子に反応するようにシュルシュルと音をたてて首にからみついた。
 手帳には『我ヲ生カセ』という文言が綴られている。クレムツはその命令に忠実に従うしもべ。
「いいですか、クレムツさん。私が窒息しないように影を首と縄の間に挟み込んで空間を作ってください」
 頼みましたよと綴子がそのまま縄を首にかける。きゅう、と息苦しさとともに呼吸がしづらくなった。

「では、迫真の演技をご覧あれ、とう!」

 掛け声と共にぐっと体重をかけた。
 縄は軋み、シャンデリアが傾いたせいか上に引っ張られていく。足がふわりと浮く。
 ギチギチと縄が首に食い込んでシャンデリアに吊られた少女の下にもうひとつ首吊り遺体ができた。
「うわ~~! 縄が首に~~~ぐげっ!」
 かふ、と呼吸が逃げていく。苦しい、想定よりもずっと苦しい。
 わたわたと腕を縄にひっかけて緩めようとするが、己の体重分絞られている縄はそう簡単に腕力だけで緩むはずもなかった。
(ちょ、思ったより苦しいこれ、縄を切ってクレムツさん!)
(……クレムツさん?)
(クレムツさんてば)
(あっ、無視してる!?)
 クレムツは一応スペースを作ってくれているようだが、それは首の手前ではなく後ろ側。
 うなじに当たる部分に隙間を作っていた。
 これでは気道が塞がったままで緩んでいないではないか。
 約束が違う! と訴えかけようにも声は出ない。
 もうだめだと意識の落ちる寸前に、ようやくパツンと音を立てて縄が切れた。一応『我ヲ生カセ』という命令は守られていたようだ。忠実なしもべとは言い難い実行内容だったがそこはご愛敬である。クレムツさんも悪魔だからね。
 ぜえぜえと起き上がる気力もなく床で息を整えながら、そのまま死んだフリをして綴子は目を閉じた。視界が暗くなる寸前、仕事は終わったといわんばかりに手帳にスルスル戻っていくクレムツに。思わず文句の一つや二つが零れてしまったのも無理はない。
「うぅ……バカ悪魔、アホ…………」
 クレムツがそれを聞き届けたのかどうかは、定かではないけれど。
 
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

逢坂・宵
ザッフィーロ君(f06826)と

音楽が終わって足が止まったならば、かれへと視線を向けると同時――
頭上からの軋んで割れる音に咄嗟にかれを力いっぱいに突き飛ばしましょう

我が身よりも大事なその身がスイッチが切れるかのように視界が黒く塗りつぶされて消えた時
思い返されるのはかれとの思い出
ああ、これが走馬灯というやつでしょうか
ヤドリガミたるこの身にも走馬灯というのは訪れる者なのだなとどこか遠く思いながらシャンデリアの下敷きとなりましょう

どこか遠く焦った声が聞こえて
その声に偽りのない本気が滲んでいることが聞き取れれば
演技を忘れていますねと苦笑いをしながらも
【天星アストロノミー】で自己強化を行っておきましょう


ザッフィーロ・アドラツィオーネ
宵f02925と

音楽が終り踊っていた足を止めると同時。頭上から影が迫ってくれば思わず宵を庇おうと身を向ける…も
宵の方が気付くのが早かったのか突き飛ばされ、そしてシャンデリアの下に消えた宵が瞳に映れば思わず呆然とそれを眺めながらも
直ぐに正気を戻れば慌ててシャンデリアを退かして行こう
…手が切れる…?知った事か…!
宵、お前返事をしろ…!
そう声を掛け漸く見えた宵を引き寄せんと試みる…が
集中している為か背後から放たれた矢に貫かれその場に崩れてしまうやもしれん
…ああ、死んだふりをするのだった、な
漸く本来の目的を思い出しつつも意識が途切れる前に宵には【生まれながらの光】を
…お前だけは助けねばならんから、な



●死へのワルツ
 それは楽しい音楽が唐突に鳴りやんでからだった。
 おや、と二人が足を止める。蓄音機は静かになって、レコードはいつの間にか止まっていた。
 すぐさまクロユリ邸の罠が作動して猟兵が次々に死んでゆく。
 ザッフィーロと宵も例外なく罠に襲われそうになるが、刹那。
「!」
 宵は悪魔の鳴き声を聞いた。
 ギイギイと煩くわめく音は頭上のシャンデリアからしている。
 頭上からの軋んで割れる音に咄嗟に目の前の彼を力いっぱいに突き飛ばした。驚愕に見開かれたザッフィーロの銀の瞳に自分の姿が写り込む。まあるい瞳の奥の自分は何が起こったのか察せてはいなかったけれど、それでも確かに彼を生かすためにと咄嗟に取れた行動に安堵すら浮かべていた。
「宵!」
 必死に呼びかける彼を嘲笑うかのように。
 シャンデリアを吊っていた天井付近にぴしりぴしりと稲妻のような亀裂が走っていく。シャンデリア本体こそ落ちなかったが、それを支えていた天井が崩落しだしたのだ。シャンデリアもいつ落ちるか分からない今、瓦礫が二人めがけて一直線に落ちてくる。
 瓦礫が当たってシャンデリアの装飾の一部、燭台部分の三分の一ほどが鋭利な破片となってザッフィーロに降りかかる寸前。
 宵は彼に当たらぬようにと落下地点から追い出して、代わりに自分がその場に立った。
 ザッフィーロも頭上の影に気がついてはいたが、数瞬ばかり彼の方が気づくのが早かったらしい。庇おうとして逆に庇われ、そしてそのまま。
 降り注ぐシャンデリアの破片と天井から剥がれ落ちた瓦礫によって彼の身体は覆われた。
 埃が舞い上がり視界が塞がれる。
 庇われたザッフィーロにはそれを呆然とそれを眺めることしか許されなかった。
 宵の視界が暗くなっていく。スイッチが切れるかのように視界が黒く塗りつぶされて消え往かんとする最後、見えたのは己の身体の惨状でも砕けたシャンデリアの残骸でもなかった。
 そこに居たのはザッフィーロだ。
(良かった、無事で。庇えたみたいですね)
 しかしそれは実物ではなかったようだ。必死に宵を呼んでいる彼の声が聞こえる。目の前のザッフィーロはひどく優しく微笑んだままこちらを見ているので、宵の思い出している記憶だったらしい。
(ああ、これが走馬灯というやつでしょうか)
 ヤドリガミたるこの身にも走馬灯というのは訪れる者なのだな、とどこか他人事のように感じながら。最後に見るのが彼の姿であることに宵は微笑みを浮かべた。死の間際、大切な人に見送られるというのはなかなか幸福なことではないだろうか。
 瓦礫の下敷きとなったのは宵だけなのだろう、宵の事を呼ぶ彼の声に、彼の身をちゃんと守れた己を誇りながら。
 身を案じつつ遠ざかる声にゆっくりと息を吐きだした。

「宵、宵! お前返事をしろ……!」
 ザッフィーロは己の手が切れるのも知ったことかとシャンデリアの割れた破片を直接素手で退かして、下敷きとなってしまった宵を救おうと必死になっていた。
 まだ上では不安定に壊れずに済んだシャンデリアの残りが揺れている。
 本来であれば今すぐでも落下地点から遠ざかるべきなのだがザッフィーロはそうしなかった。目の前の彼を見捨てて逃げることなどできようものか。
 漸く瓦礫の下から姿を現した宵を引き寄せんと試みるが、しかしそれは叶わない。
 どすり、静かな衝撃とともにザッフィーロの背中に矢が突き刺さる。
 どすり、どすり。続けざまに放たれた矢は深く突き刺さっていた。館の罠が発動しだしたのだろう、あたりでは猟兵が次々に死に始めている。頭上では壊れかけたシャンデリアを使って猟兵がひとり吊り下がっていた。
 そうだ、死にに来たのではなかったか。
 大切な人の死に焦って、演技を忘れて本当に助けようと動いていた彼がようやく本来の目的を思い出した頃。宵は閉じていた目をゆっくりと開いた。
 どこか遠く泣きそうな、焦った声が聞こえてくれば目を覚まさないわけにもいかない。その声に偽りのない本気が滲んでいることが聞き取れれば尚更だ。
「……ああ、死んだふりをするのだった、な」
「そうですよ。演技を忘れていますね」
 苦笑いをしながらも彼が自分の死をみてこんなに動揺し、必死になって己を助けようと動いてくれたことがちょっぴり嬉しくて。くすくすと笑いながらまた目を閉じる。ああ、やはり走馬灯ではなく本当の彼と最後に話せてよかった。
 そっと指先をかざして誰にも見えぬよう二人の間だけに天星図を空中投影する。
 宵のユーベルコードによる自己の強化だ。このあと生き返るために手は打っておいた。力尽きたかのように床に崩れる手をザッフィーロが握ると治癒を施して、彼も折り重なるようにして倒れていく。
「……お前だけは助けねばならんから、な」
 それはそちらも同じことですよ、ザッフィーロ君。唇に乗せた言葉は空気を震わせることなく。
 二人はゆっくりと、同時に息を止めた。
 
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

千桜・エリシャ
殺され方…迷いましたが毒殺にしましょうか
刺されたりは戦場で慣れっこですし
死ぬなら美しく死にたいですわ
そう、これは一種の芸術ですの!

舞踏会にて
毒が入っていることに気付かない素振りで
勧められるままに飲み物をごくり
飲んだふり

あら、なんだか目眩が…
ふらふらくるくる
まるでダンスを踊るように派手に藻掻いて
そのまま窓から転落
桜が満開の庭の池に真っ逆さま
花々に囲まれて
仰向けに浮かべば意識が遠のいていくようで――
嗚呼、そうですわ
これはまるで外国で見たあの絵画にそっくり…


眠るように息を引き取る…ふり


ふふ、どうかしら?
私、演技は得意ですのよ

…それにしても死体役って暇ですわね
黒幕との逢瀬の前に少しだけ仮眠でも
…すやぁ


花剣・耀子
存分に伏線は張ったことだし、いざ尋常に。
あたしの死因は、頭を割られての撲殺よ。

……生還するためのトリックは、自力なのだったかしら。
血糊はたくさん用意していきましょう。

落ちるシャンデリアや、倒れてくる甲冑なんかがあると良いのだけれど。
そのような罠のある場所まで、そうっと宙を蹴って窓や吹き抜けから入るわ。
殺人事件って、シチュエーションも大切だと思うの。
密室殺人を演出できるならしたいじゃない。死体だけに。

罠は紙一重で躱して、盛大に倒れておきましょう。
説得力が得られるなら死なない程度に怪我をするのも良いけれど、
派手さも必要だろうから血糊をぶちまけるのは忘れずに。

意味深に破れた手帳を握りしめておくわね。



●そして誰もいなくなった
「あら、もう皆さん死んでしまったようですわね」
「残っているのはあたし達だけみたい」
 クロユリ邸にはもう生存者がいない。千桜・エリシャ、花剣・耀子、たった二人生き残った二人を除いて。
 その二人も直に死の運命に相対する。
「ではそろそろ死に参りましょうか」
「そうね。存分に伏線は張ったことだし、いざ尋常に」
 二人はそれぞれの死因を思い浮かべる。
 猟兵達の殺され方はどれもバリエーションに富んでいた。
 撲殺、刺殺、絞殺、毒殺、圧死、焼死、感電死、その他もろもろ。
 まるで買い物でもするかのように、どれにしようかしらとエリシャは考える。
「殺され方……迷いましたが私は毒殺にしましょうか」
 彼女のチョイスは毒殺に決まったようだ。猟兵として戦場を駆けた彼女だからこそ、馴染み深い刺し傷切り傷よりもクロユリ邸での殺人に相応しいものを考えた。レトロ調の室内、集められた招待客、とくればよりミステリアスな死が相応しい。
 切り刻まれることのない、五体満足な体で、しかし冷たく死に倒れ伏すのが良さそうだ。
「刺されたりは戦場で慣れっこですし、死ぬなら美しく死にたいですわ。そう、これは一種の芸術ですの!」
「芸術ね……それならあたしはその逆を往ってみるわ。あたしの死因は――」
 対して耀子が選んだのは撲殺だ。サスペンスチックな死亡シーンを演出するのならその様相はより悲惨であればあるほどインパクトが大きくなる。現場には血が飛び散っていて、頭蓋への一撃が炸裂する。これ以上なく死をアピールしている死体もまた、別の観点からすれば“芸術的”といえるだろう。
「あら、そちらも楽しそうですわ!」
「楽しい……かどうかは別として。生還するためのトリックは、自力なのだったかしら」
「ええ。罠を受けて死んで、その後どう生還するかは」
 猟兵次第だ。細工をして体力保全につとめた者もいる。このあと犯人と一戦交えるには万全とは行かずともある程度動けた方が好ましいのは二人とも分かっていた。
 同時に頷くと踵を返す。生き残った二人はもう振り返ることはしなかった。
「私はあちらに」
「あたしも準備するわ」
「それではどうか良い死を」
「良い死を」
 さようなら、最後の生存者達。いらっしゃい、最後の犠牲者達。
 先んじて死んだ仲間は二人の死を静かに待っている。

「血糊はたくさん用意してきたから万全ね」
 赤く着色、少しとろみをつけてねばりもあるそれは人の血に限りなく似せられた偽ものだ。
 いつ袋を開けてもいいようにと懐に忍ばせて耀子は死に場所を探す。
「落ちるシャンデリアや、倒れてくる甲冑なんかがあると良いのだけれど……」
 シャンデリアは既に一部が壊れており、猟兵も吊り下がっている。なかなか人気な死にスポットなのかもしれないと耀子は考えに耽った。自殺の名所があるくらいなのだから人気の死にスポットがあってもおかしくはないのだ。と誰に聞かせるでもなく己を納得させる。
「仕方ないわね、どうせなら個室で死にましょう」
 殺人事件って、シチュエーションも大切だと思うの。なんて小説の劇的な死亡シーンを思い浮かべる。
 雷鳴に照らされる数瞬だけ暗闇に浮かび上がる死体であったり、登場人物の真上に落下してくる死体であったり、鍵のかかったドアをやっと開けたと思ったら待ち受けていた死体であったり。
 ミステリーやサスペンスの醍醐味として死体の発見シーンとは第一の盛り上がりを生み出すのだ。
 となればせっかく死ぬのだからそれらを踏襲しても良いだろう。
「密室殺人を演出できるならしたいじゃない。死体だけに」
 ……。
 ……。
 審議中である。
 彼女の珍しい冗談はもしも誰か傍らで聞いているものがいれば、驚きや笑いを生み出せたかもしれなかった。生憎ここにいるのは耀子だけ、エリシャは先程分かれてしまった。非常に残念だ。

 客室は内側から鍵をかけられるらしい。カチャンと音をたてて密室を生み出した耀子は突如部屋の罠に襲われた。急に棚の上に飾られていた壺が頭上めがけてすっ飛んでくるのを躱し、片手で押さえつける。
 そしてそのまま、あたかも頭蓋が割られたかのように見せかけてわざとらしく壺を割ると、頭の上で血糊の袋を破った。頭部出血は派手な方が好ましいからだ。
(説得力が得られるなら死なない程度に怪我をするのも良いけれど、)
 血糊だけで十分に悲惨な死体が演出できるのであればこのままでも良さそうだ。
 床に倒れ伏して、そうだと思いだして小説にありがちなダイイングメッセージよろしく手帳を握り締めておく。完璧だ、と胸中で呟いて耀子はそのまま犠牲者としてゆっくりと身体の力を抜いた。
 残りの生存者は、これであとひとり。

 エリシャは耀子と別れてから、テーブルに用意されていた客人用のグラスをひとつ手に取った。
 何の疑いもなく血よりも濃い葡萄の果汁を呷る。香りをふわりと楽しむようにくるり、グラスを一度だけまわして。そのままテーブルにグラスを置いた。
 もちろん、毒だということは分かっている。
 毒が入っていることに気付かない素振りで呷ったフリをしただけだ。あたかも飲んだかのように見せかける、彼女の演技。
 死者が倒れ伏すダンスホールで、止まっていたはずの蓄音機が流れ出した。
 彼女以外は誰も居ないダンスホール。ダンスに誘う男性も、曲や食事を楽しむ者も、もう誰も居ない。ひとりぼっちだ。
 音楽だけが彼女を踊りに誘っていた。踏み出されるまま、ふらふらくるくる。ふらりふらりとくるくると。
 まるで踊るかのように彼女の足が次第にふらつきだした。縺れる足はやがて藻掻きに変わって、彼女は踊り狂うように床で苦しみだした。毒が全身を回って、呼吸が荒くなって、歯を食いしばった先から苦痛の声が漏れる――演技を。
 死に怯えて見悶える様子を第三者がもし見ていたのなら、思わず助けようと駆け寄ってしまうような苦しみ様だった。
 人々の恐怖や焦燥感を駆り立てるほどの演技は犯人の目にも毒が回ったと見せかけられただろう。
 やがて苦しむ彼女はそのまま開いていた窓より落下する。
 転落した先、クロユリ邸の庭には見事な桜が花びらを散らしていた。この館に入る前に招待客を歓迎するかのように見事に咲き誇っていた桜が、今は死にゆく猟兵を地獄へと歓迎している。
 浅い庭の池へと転落したエリシャは濡れた髪を水面へ広げて、花々で彩られた世界から空を見上げる。
 薄桃色の花びらが雪のように舞うそれを見て、仰向けのまま目を閉じた。
「嗚呼、そうですわ。これはまるで外国で見たあの絵画にそっくり……」
 物語の終わりに、オフィーリアの絵画のように幻想的な世界で彼女は死んでいく。
 館の中からは蓄音機のワルツがずっと流れていた。
(なんて、ふふ、どうかしら? 私、演技は得意ですのよ)
 眠るように死んで、死んでいるように眠るだけ。目を閉じて生きている彼女はなるべく呼吸をしているのが見ているかもしれない犯人に気づかれぬよう息を潜めた。
(……それにしても死体役って暇ですわね。黒幕との逢瀬の前に少しだけ仮眠でも……)
 すう、と目を閉じて呼吸が深くゆっくりとしたものになる。
 耳元に流れるぼうっとした水の膜音につつまれて彼女は少しだけ――死ではなく、眠りに落ちた。
 
 
 クロユリ邸で、生きて動く者は誰一人として居なくなった。
 
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『血まみれ女学生』

POW   :    乙女ノ血爪
【異様なまでに鋭く長く伸びた指の爪】が命中した対象を切断する。
SPD   :    血濡ラレタ哀哭
【悲しみの感情に満ちた叫び】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ   :    応報ノ涙
全身を【目から溢れ出す黒い血の涙】で覆い、自身が敵から受けた【肉体的・精神的を問わない痛み】に比例した戦闘力増強と、生命力吸収能力を得る。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

●自供
 クロユリ邸には死体が転がっていた。
 老若男女問わず死体が転がっている。
 徹頭徹尾死んでいる。完膚無き迄に死んでいる。
「みんな、みんな死んだのね」
 誰もが倒れ伏すその場所でたった一人喋れる者がいた。女学生の容姿をしている少女は二つの瞳からだらだらと黒い涙を流して、異常に伸びた爪で頬を引っ掻く。
「ああ。良かった。みんな死んだのね」
 よかった、よかった、よかった。良かったと彼女は安堵の息を洩らした。招かれたものはみんな死んでくれた、本当に良かったと。
 必要がなくなったのか所持していたらしい脇差も放り投げて、カツカツと靴を鳴らして階段から降りてくる。
 彼女はかつてこのクロユリ邸で死んだ女学生、その無念の過去から生まれた影朧――オブリビオンだ。
 彼女が死んだのは事故だったのかもしれない、彼女が死んだのは誰かの故意だったのかもしれない。今となってはもう分からなかったが、それでも無念を晴らすためにこうして影朧として出て来てしまったのだ。同情の余地はあるだろうが人を殺すのはいただけない。
「私を助けてくれなかった人達は、みんな死んだのね!」
 館の中で死んだ猟兵達を見て、血まみれ女学生は色めき立つ。
 もはや記憶もあいまいで自分を殺したかった人すら誰かも判別できない程に。血まみれ女学生はとかく人が死んだ事実だけに喜んでいた。
 このどうしようもない無念を晴らすためだけに彼女は凶行に及んだのだから。むしゃくしゃとした感情を復讐という名の憂さ晴らしで昇華せんとした。悲しくて苦しくてやりきれない思いをどうにかして吐き出したかったのだ。
 それが猟兵の演技とも気づかずに。

 復讐は果たされた、かと思いきや。
 死んでいたはずの猟兵達がぐっと足に力を入れて身体を擡げる。
 話はそれだけか、無差別殺人も良いところだと言わんばかりに復活の兆しを見せる猟兵達に血まみれ女学生は一度目を見開いて。そしてそのままどこか悲しそうな、それでも怒りを滲ませた顔で彼らを睨みつけた。
 死んだはずの死体は生きていた。何故。どうして。
「どうして死んでいないの、殺したはずじゃない」
「どうして?」
「どうして、死んでくれないの」
 どうしてどうしてと繰り返す彼女に猟兵達は顔を見合わせる。
 さて彼女は影朧だ。傷つき虐げられた者達の『過去』から生まれた、不安定なオブリビオン。影朧はその荒ぶる魂と肉体を鎮めた後、桜の精の癒やしを受ければ『転生』することができる。
 ここで彼女の気持ちを鎮めて倒せば、その魂は咲き誇る桜に導かれて転生できる可能性もある。どうしたものかと考える猟兵達に向かって、血まみれ女学生は手を振り上げて襲い掛かってきた。

「一度死んで死なないのなら、もう一度殺すまでだわ!」
 
 
カイ・オー
正直同情はするが、まず倒す事を考えないとな。
痛みを与えなければ強化もされない。ならばUC 【火焔魔人】だ。全身を熱を持たない炎状のオーラで包み彼女に近寄る。
爪等で攻撃されても、敢えて避けずにくらう。彼女の手を掴み【生命力吸収】。エナジードレインで、痛みを与えずに活力のみを奪おう。吸い取った生命力を燃料に炎のオーラが勢いを増し、自身の傷を癒す。燃やされようと刻まれようと、俺は死なないぜ。気が済むまで弄りな。
だが、それで本当に気が済むのかい?こんなのは、古傷を抉って痛みを紛らわしてる様なもんだ。それじゃ何時までも治りゃしないよ。
俺達は君を転生させる為に……助ける為に来たんだ。遅くなって悪かったな。



●君を救う痛み
「正直同情はするが、まず倒す事を考えないとな」
 猟兵がみな彼女にどう切り込むか考えあぐねて尻込みするなか、最初に動いたのはカイだった。
 反撃として攻撃してきた猟兵達にはすかさずカウンターを使ってくるのを見るに、どうやら血まみれ女学生は与えられた痛みを糧にして強化されているらしい。敵の様子を見てから、ダメージをどう与えるのが有効なのかカイは考えを巡らせる。
「……痛みを与えなければ強化もされない。ならばコイツが役立ちそうだ」
 ばちり、と視界の端で炎が弾ける。
 めらめらと全身を舐めるようにして炎が包んでいく。
 燃え盛るのは彼が死体を演じた時のように再度燃えだしたからだ。身体に課された制約――リミッターの解除。カイが常日頃から戦闘で扱う橙色の炎は、優しく強く彼を抱いていた。
 炎に包まれても表情を崩さないカイを見て女学生は驚嘆に目を見開いた。どうして、さっきはあんなに苦しんでいたのに、そう訴える顔を隠せないままでいる。
「残念、燃えるのは日常茶飯事でね」
「騙したのね!」
 やわらかく見た目ほどの熱を持たない炎状のオーラに包まれながらカイはゆっくりと血まみれ女学生に近づいた。
 振り翳される爪に怯むことなく、敢えて避けずに食らっていく。身体にはそれなりの傷が刻まれたが彼はそれをモノともしなかった。そっと異様に爪の長い彼女の手を優しく壊さぬように包み込む。
 まるで愛おしむような動作に一瞬戸惑った血まみれ女学生は、カイの意図に気づけなかった。するり、と肌を撫でる感触は生命力の受け渡し……エナジードレインだ。
 敵に痛みを与えまいと活力のみを奪おうとする動きに、痛覚を感じなかったためされるがままに女学生は体力を吸われていく。
 吸い取った生命力を燃料に炎のオーラがさらに勢いを増し、先ほど攻撃されていた爪の傷が燃え盛るにつれてみるみるうちに塞がっていった。
「燃やされようと刻まれようと、俺は死なないぜ。気が済むまで弄りな」
「なっ……」
「だが、それで本当に気が済むのかい? こんなのは、古傷を抉って痛みを紛らわしてる様なもんだ。それじゃ何時までも治りゃしないよ」
「っ分かってる、そんなの、分かってる! でもどうしようもないじゃない!」
 この怨嗟をどう晴らせばいいのか、恨めしい気持ちをどう昇華すればいいのか、影朧にはわからなかった。誰か殺して憂さを晴らせばそれも救われると思った。
 いやいやと頭を振って拒否を示す血まみれ女学生に、諭すようにカイは告げる。それは彼女が過去になる前、死にそうになっていた当時にともすれば一番欲しい言葉だったのかもしれない。
「なあ、俺達は君を転生させる為に……助ける為に来たんだ。遅くなって悪かったな」
「……!」

 ――……私を助けてくれなかった人達は、みんな死んだのね!

 そう言っていたではないか、とカイは血まみれ女学生の言葉を指摘する。
 彼女は本当は助かりたかったのだと、誰かに助けてほしかったのだと、カイは彼女の言葉から導きだしていた。ぽたりぽたりと両目から黒い涙が零れ落ちる。
 血まみれ女学生は初めて己の瞼からとめどなく落ちるそれが嘆きからではなく、安堵からが理由で流れていることに気づいた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

冴木・蜜
犯人役のお出ましですか
ではそろそろ幕を下ろさなくては

体内毒を濃縮しつつ
身体を液状化
目立たなさを活かして
そのまま背後へ回り機を待つ

他の猟兵に注意が逸れた隙に
取り出した医療器具で『介錯』
内側から死毒で侵して差し上げましょう

爪の一撃は体を液状化し
やり過ごします

申し訳ないですが
私に物理攻撃はあまり効かないんですよ
まぁ 痛みくらいはありますけれど

貴女の死因は分かりませんが
もし本当に殺されたというのなら尚更
貴女まで加害者になる必要はない

もう止めましょう
私は貴女に救われて欲しいのです

ああ そうだ
最後に一つ

貴女の毒
非常に口当たりがよくて
飲みやすかったですよ

ご馳走様でした


織江・綴子
いやぁ、狂ってますねぇ……
それだけ悔しいて悲しい最後だったんですかね?

ひとまず落ち着くまでは戦うしかなさそうですよね。
クレムツさん、命令は『敵ヲ穿テ』です。
あの子自身の影を使ってください、ほら早く。
クレムツさんには、どうせ物理的な衝撃はダメージが無いので軽くキックしながら命令しますよ。
さっきの事、ちょっと怒ってますからね!

一応会話は試みますけど、通じるかな?
聞いてください、私達は貴女を救いにきました。
貴女はこのままこんなところに縛り付けられたままでいいんですか?
その怒りを一旦納め、私達の話を聞いてみてください。

詳しい説明は!他の誰かに任せましょう!
私は『転生』した事も無いし、知識だけですので!



●誰が為の復讐劇
「ちがう、ちがう、私は殺しに来たの!」
 目の前の猟兵を振り切って、がむしゃらに攻撃に転じる血まみれ女学生に。おっと、なんて驚いた声をあげて綴子がひらりと攻撃を躱した。目標の定まらない爪の攻撃は空を切って焦げた絨毯に突き刺さる。
「いやぁ、狂ってますねぇ……それだけ悔しくて悲しい最後だったんですかね?」
「そうですね、察するに相当惨い死を迎えられたのでは」
 さすがは帝都桜學府情報科所属のユーベルコヲド使い、喋りながら敵の攻撃を避けるなど造作もない。彼女がむむむと悩む声にこたえたのは、同じくひらひらと血まみれ女学生の攻撃を避ける猟兵、枯れ枝のような頼りなさの中に芯を持つ男。冴木・蜜だ。
 戦闘慣れしているのですか、と綴子が問うと首を横に振られた。普段は研究員ですからと言って蜜は冷静に一歩下がって状況を俯瞰的に見る。
 敵位置としては申し分ない、調度品が散らかってあたりは燃えたせいか焦げ臭いが支障もない。
 影朧は他の世界と比べても脅威と呼べるほどの強さは兼ね備えていないオブリビオンだ。
 血まみれ女学生は長い爪で頭を刺すように抱えてグウと絞り出した声で唸っていた。彼女は怒りに我を忘れ、感情のままに手を振り回している。その様相は哀れにさえ思えた。
「なんにせよ犯人役のお出ましです。そろそろ幕を下ろさなくては」
「ええ、華麗に解決いたしましょう!」
 それが私達、ユーベルコヲド使い――……猟兵の役目なのですから。
 綴子は蜜の隣に立つと、召喚した悪魔クレムツを従えて気丈に目の前の影朧と対峙する。

「では先行して私が。引き付けをお願いしても良いですか」
「はい、もちろん! 任されました!」
「では」
 体内毒を濃縮しつつ、蜜の身体は端からぐずぐずと液状化していく。ブラックタールとしての能力の本領発揮だ。どろどろと溶けるそれは黒焦げの景色になじんでいく。目立たなさを活かしてそのまま背後へ回り機を待つ間、すぐさま綴子が前に飛び出た。
「さてと、ひとまず落ち着くまでは戦うしかなさそうですよね。クレムツさん、命令は『敵ヲ穿テ』です」
 その言葉に脇に構えていたクレムツがずるりと彼女の前に顕現する。
「あの子自身の影を使ってください、ほら早く」
「……」
「どうせ物理的な衝撃はダメージが無いんでしょう、さあ早くお願いしますよ!」
「……」
「私さっきの事、ちょっと怒ってますからね!」
 ほら行った行ったと催促する声にクレムツは溜息をついたような所作でかくりと折れる。乗り気ではない、己の召喚した悪魔。えいやとばかりに綴子は軽めの蹴りを入れた。が、どうにも反応が薄い。素直さがやや足りないらしい。
 乱暴な救出劇は主のお気に召さなかったらしい、命令通りに動いたのに、なんて文句を垂れる気配までする。
 それでも悪魔は命令に忠実だ。敵ヲ穿テと命ぜられればそのとおりに動くまで。
 しゅるしゅると床を這うようにしていたクレムツはむくりと起き上がると綴子の言葉通り、血まみれ女学生の足元に在る影を操作した。この場にある影はすべてクレムツの手中にある。意のままに、自在に、それは影となって血まみれ女学生を拘束した。
「離して、離してよ! 死んで!」
「そうはいきません、まずは落ち着いて聞いてください」
「何よ!」
「私達は貴女を救いにきました」
「私を……?」
「そうですよ、貴方を救いに来たんです。貴女はこのままこんなところに縛り付けられたままでいいんですか? どうかその怒りを一旦納め、私達の話を聞いてみてください」
 綴子は『転生』したこともない。それに関する知識もない。
 ただサクラミラージュの影朧は上手くいけば次の生を歩めるチャンスがあるのだと、それだけは知っていた。
「影朧は、その荒ぶる魂と肉体を鎮めた後、桜の精の癒やしを受ければ転生することができる――ご存知でしたか?」
 血まみれ女学生の真後ろから声がする。
 拘束されたまま驚いて振り返った瞬間、彼女の首筋にツキリと痛みが走った。
 途端にぐらぐら揺れる視界に毒かと女学生は思い至る。毒。クロユリ邸の者を殺すために己が用意した殺しの手段。まさかそれが自分に盛られようとは。
 驚きながらも藻掻いてクレムツの拘束を解除する。
 彼女に毒を流し込んだのは攻撃のチャンスを息をひそめて待っていた蜜だった。
 ずるずると音を立てて黒い液状の身体が人間として形成されていく。医療器具を持っていた手はそのままゆっくりと降ろされた。拘束を解いたおかげで自由になった腕から振りかざされる爪に驚いた様子もなく、ただぼうっと眼鏡の奥からそれが自身の胸に突き刺さるのを眺めていた。ざくり、一撃が深く入った。
「やった! 死んだのね!」
「冴木さん!」
「ご心配なく」
 綴子が悲鳴じみた声を上げたが蜜はさほど動転もせずに普段の声色で彼女を宥めた。血まみれ女学生は驚いて手を突きだしたまま固まっている。
「どうして……」
「申し訳ないですが私に物理攻撃はあまり効かないんですよ。まぁ、痛みくらいはありますけれど」
 ずるりずるりと爪が抜けた先はただぽっかりと穴があいているだけで、そのうち水面から刃を抜くように塞がってしまった。蜜に爪を突き立てることはできなかったのだ。
「先程の彼女の話の続きと行きましょう。我々は貴女を救いに来ました。貴女の死因は分かりませんが……もし本当に殺されたというのなら尚更、貴女まで加害者になる必要はない」
「だからってこの行き場のない思いは……!」
「もう止めましょう。言ったでしょう、私は貴女に救われて欲しいのです」
 救いに来た。救われるための方法がある。蜜と綴子の二人は言う。
 本当に救ってくれるのと縋る言葉は救われたい思いと復讐を遂げたい気持ちの狭間で大きく揺れている。
「私が救われるの……? 助けてもらえるの?」
「そうですよ! その為にも少しだけ大人しくなってもらう必要があるんですけれど」
「だって私は、そんな、今更そんなこと許されるはずがないわ!」
「確かに全力で殺しに掛かられていましたが、まあ……ああそうだ、一つお伝えしておかないと」
 貴女の毒、非常に口当たりがよくて飲みやすかったですよ。ご馳走様でした。
 まるでご馳走にあずかったように。彼女の非礼を許すかのごとく蜜は深く一礼した。殺そうとした男に丁寧に礼を言われ、血まみれ女学生はますます混乱する。
「お、説得の効果は有りとみてよさそうですね。さあクレムツさん畳みかけますよ!」
 綴子の威勢のいい言葉と共に、血まみれ女学生と猟兵の戦いに再び火がついた。
 
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

桜雨・カイ
確かに驚きますよね、皆さんの死にっぷりをみたら。
…あの水責めもすごい仕組みでしたし、本当に死ぬかと思いました(大真面目に)

無念を晴らしたかった…それで本当に晴れますか?
仮に皆さんを殺しても、あなたはこの館から解放されないのでは?

あなたが本当に望んだのは、誰かを殺すことですか?
誰かに助けにきて欲しかったのではないですか?

遅くなりましたが、助けにきました。
辛かった事、怖かった事。
ここにいる人達に思い切り吐き出して、そして終わりにしましょう

【援の腕】発動
「もう大丈夫ですよ『転生する準備はできましたか?』」と問います
UCとは関係なく彼女の為に、もう痛みを負わないように光で浄化していきます。


青葉・まどか
殺されるなんて滅多に出来ない経験ができたのは面白かったね。痛かったけど
さてと、ようやく会えたね黒幕さん。ここからが本番だね

サクラミラージュだと『転生』が出来るんだよね。正直、自信はないけど頑張るよ

自分の死に納得できる人なんて多くないよね
それが事故だったり、誰かの故意だったりしたらなおさらだよね
恨むな、なんて言わないよ
だけど、八つ当たりで人を殺しちゃ駄目だよ
人を殺しちゃ駄目なんだ。殺された人が貴女と同じ様に無念を抱くことになるからね
辛い気持ちを知る貴女が同じ境遇の人を増やさないで
このまま同じ事を続けても悲しいだけだよ
ねえ、次に進もうよ

彼女が来世で幸せになれる様に『祈り』を込めて刃を振るいます



●零れ落ちる黒
「助かりたい、助けてほしいの! 嫌! 死んでほしい!」
 もはや言動は支離滅裂になりつつある。連続殺人鬼と化していた凶暴性は猟兵のかけた真摯な言葉によりかなり傾いて来ているらしかった。もう少し後押しがあれば大人しくなってくれるだろうか。
「どうして死んでいないの! 殺したじゃない、私確かに殺したのに! なんでよ!」
「確かに驚きますよね、皆さんの死にっぷりをみたら。……あの水責めもすごい仕組みでしたし、本当に死ぬかと思いました」
 うんうんと彼女の言い分に深く頷きを返しているのは桜雨・カイだった。地下で溺死――しかけた身としては、見事な殺人とラップに命の危機を感じたと肝を冷やしたものだ。
「殺されるなんて滅多に出来ない経験ができたのは面白かったね。痛かったけど」
「面白いと言うか……本気で溺れ死ぬかと覚悟しましたよ……」
「あらら、そっちは大変だったのかな。私も刺されちゃった」
「刺されたんですか!?」
 驚愕するカイにまどかがケロリとした顔でここを一突き、と胸部を指さす。
 情け容赦のない一撃にカイは思わず顔を青くした。死因について耳にしてしまったのは失敗だったかもしれない。よく見れば焼けこげたり圧死したりレパートリーだけは充実していたようだ。想像するだけでそこかしこが痛みそうだった。
「うう、想像するのはこの辺りにとどめておきます」
「賢明だね。さあ彼女を助けに行こう」
「はい!」

 まどかと共にカイは血まみれ女学生の前に出る。滅茶苦茶に振り回してくる爪や発される叫び声、落とされる涙は脅威ではあったが猟兵達はみなそれを器用に避けていた。
 近づかなければ説得は届かない。危険を承知で二人とも血まみれ女学生の真正面に立つ。
「はあ、はあ、誰かを殺せばいいと思ったのに、誰かを殺せば……そうすればきっと……」
 わたしのむねんは、どうなるの。
 わたしのかなしみは、どうなるの。
 道に迷って親も居ない、取り残された迷子のような言葉に。カイは静かに語り掛ける。
「無念を晴らしたかった……それで本当に晴れますか? 仮に皆さんを殺しても、あなたはこの館から解放されないのでは?」
「……そんなこと……」
「あなたが本当に望んだのは、誰かを殺すことですか? 誰かに助けにきて欲しかったのではないですか?」
「私は……、」
「遅くなりましたが、助けにきました。辛かった事、怖かった事。ここにいる人達に思い切り吐き出して、そして終わりにしましょう」
 ぼたぼたと黒い涙が落ちていく。
 瞳は黒く染まって、そしてまた流れ落ちていく。
 痛かった、苦しかった、辛かった、怖かった、悲しかった。
 言いようのない憎しみに焼かれて彼女は凶行に走ったのに。目の前にいる、己が殺す思いで刃を向けた被害者であるはずの猟兵達がかけてくる言葉は――みな彼女を優しく宥める言葉ばかりだ。
 てっきり飛んでくるものだとばかり想像していた罵倒や詰問ではなかった。
 膝をついた血まみれ女学生に寄り添うようにまどかが膝を折ってかがみ、目線を合わせる。
 透明にきらきらと、まっすぐに。彼女の涙を流す瞳をとらえた。
「自分の死に納得できる人なんて多くないよね。それが事故だったり、誰かの故意だったりしたらなおさらだよね……恨むな、なんて言わないよ」
 怨嗟の気持ちは否定されることはない。
 辛くて悲しいのならそう言えばいいのだと主張を許してくれた。
「だけど、八つ当たりで人を殺しちゃ駄目だよ。人を殺しちゃ駄目なんだ。殺された人が貴女と同じ様に無念を抱くことになるからね」
 殺しをすればその分だけ彼女と同じ無念が増える。傷ついた過去が、影朧が増えていく。
 どうかその手をおさめてほしいとまどかは彼女の頬に手を添えた。手が黒い涙で汚されて痛みが走るが、まどかはそれに顔をゆがめることなく、表情は変わらず優しい顔を浮かべたまま血まみれ女学生の涙をぬぐう。
「辛い気持ちを知る貴女が同じ境遇の人を増やさないで。このまま同じ事を続けても悲しいだけだよ。ねえ、」
 次に進もう。
 まどかが示した転生の道に、気持ちが傾いた。
 もしこの罪を許してもらえるのなら。誰かを傷つけてしまったことが許してもらえるのなら。
 人生をやり直せるのなら。
「少しだけ我慢してね」
 まどかが静かに懐からダガーを取り出した。彼女が来世で幸せになれる様に、祈りを込めてまどかはそれを血まみれ女学生に突き立てる。襲う痛みに目をぎゅっとつむるが、不思議と痛みは一瞬だった。
「どうか、あなたが救われますように」
 ゆるゆると開けた瞳の向こうでは、カイはそっと刺された傷に浄化の光を当ててくれていた。
 怪我をさせたのは、殺そうとしたのは自分の方なのに。彼らはあくまで己を助けるためだけに、力を振るう。荒ぶる魂と肉体を鎮めるためだけに。血まみれ女学生の瞳からまたひとつ、ぽろりと涙がこぼれた。
 
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ザッフィーロ・アドラツィオーネ
宵f02925と

折り重なる様倒れていた身を起こせば、宵の手を引きつつ敵と対峙を
宵の言葉に宵を背に隠す様前に出かけながらも続いた言の葉にはついぞ安堵の吐息を
…俺の過去も未来も全て宵の物と決まっている故同じくやる訳にはいかんので、な
さあ、理解り合えるまでやりあうか

戦闘と同時に切り込むよう地を蹴り『怪力』を乗せたメイスを敵へ
後は『盾受』しつつ『カウンター』にて反撃をして行く―も
宵の元に向かおうとする場合は敵を掴み【鍛錬の賜物】にて地に叩きつけんと試みよう
…もう二度と手は出させん

お前が殺したい相手は俺達ではないだろう
怒りの侭殺し回るお前は、お前を殺した者ともはや同じだ
…大人しく悔い改め次の生に向かえ


逢坂・宵
ザッフィーロ君(f06826)と

かれの手に引かれ身を起こし
殺して気が済むのならば、どうぞ心行くまでこの身を―――と、以前の僕なら言っていたかもしれません
けれど、今は貴女の望むとおりにしてやれぬ理由があるのです
僕の死も、彼の死も。許さぬと己に誓っておりますれば
けれど、貴女の想いを受け止めることはできる
心行くまでころしあいましょう

「視力」で彼女の様子を窺いつつ
攻撃が向かってくるようならば「激痛耐性」を使いつつ「オーラ防御」で攻撃を防ぎ
かれを傷つけないでくださいね、僕の大切な人なので
「カウンター」で「衝撃波」をもって彼女の体勢を崩すことを試みましょう
―――貴女は、本当に僕たちを殺したかったのですか?



●悲しき過去も明るい未来も
「起きられるか、宵」
「はい、なんとか」
 折り重なる様倒れていた身を起こして、ザッフィーロは宵へと手を差し伸べた。
 死んでしまっていたためか少しだけ冷たくなっていた手をあたためるようにしっかりと握って宵は上体を起こす。猟兵は徐々に死から復活してきていた。最初に倒れた者から順に、と言うわけではなかったが概ねみな意識を取り戻しつつある。
 死ぬ際に行った細工や演技が上手く効いたようだ。
 手を握り合ったまま彼らはすうと目を前に向けた。連続殺人の犯人――クロユリ邸で起きた惨劇の黒幕、血まみれ女学生と対峙する。
「あなたたちも起きてしまったのね、そう……」
 殺せていなかったのね、と彼女は言う。悔しそうな目でもあり、申し訳なさのにじむ目でもあった。その真意は分からない。
 生きたい気持ちと復讐したい気持ちを往ったり来たり、天秤のように傾く彼女は危うい。
 その均衡を崩せるのは猟兵だけだった。彼らの掛ける言葉によって血まみれ女学生は、元々不安定だったためか説得によってより片側に傾きやすくなっている。それが良い方向に進むのか悪い方向に進むのかは彼ら次第だ。
 宵はそっと彼女に聞こえるよう声を張った。
 殺せていなかったと彼女は言う。ならば。
「殺して気が済むのならば、どうぞ心行くまでこの身を」 
「宵、」
 ザッフィーロの喉がひくりと動く。思わず彼の手前に立とうとして、しかしそれは宵自身に遮られた。
 簡単に彼を差し出すわけにはいかないのだと渋るザッフィーロに宵は安心させるように口元に笑みを浮かべて、そして毅然と言葉をつづける。
「――と、以前の僕なら言っていたかもしれません。けれど、今は貴女の望むとおりにしてやれぬ理由があるのです」
 死ねない理由が出来た。
 生きたい理由が出来た。
 身を捧ぐことのできない事情が、今の宵には存在する。
 僕の死も、彼の死も。許さぬと己に誓っているのだから。
 宵の言葉にザッフィーロは知らず知らずのうちに詰めていた息を吐きだした。安堵から漏れ出たそれに宵は彼と、目の前の犯人の双方を安心させるための言葉を紡ぐ。
「生憎ですが僕は貴女のために死んで差し上げることはできません。僕の死、そしてザッフィーロ君の死も。許容することはできない――けれど、代わりに貴女の想いを受け止めることはできる」
 死ぬ以外で彼女の憂いを晴らせる方法ならある。その為ならば身を窶してでもお付き合いしますよ、と宵は血まみれ女学生に笑いかけた。
「あなたも、そうなの?」
「そうだな……俺の過去も未来も全て宵の物と決まっている故同じくやる訳にはいかんので、な」
 ザッフィーロもまた血まみれ女学生に命をやれはしない。
 共に生きたい人がいる中で、そう簡単に死の運命に傾いてやることはできない。彼もまた宵と同じ心持ちなのだ。死ぬにはまだ早すぎる、大事な人を置いていくことはできない。
「さあ、理解り合えるまでやりあうか」
「心行くまでころしあいましょう」
 転生のためにはどうやっても荒ぶる魂を鎮める肯定が要る。血まみれ女学生の内から復讐を遂げたいという気持ちが全て消え去るまではサクラミラージュにおけるユーベルコヲド使い、すなわち猟兵が未練を昇華させてやる必要があるのだ。
 そうして肉体と魂が癒えれば、彼女は晴れて転生のチャンスを得られるのだから。
「いいでしょう、殺しあいましょう。私とあなたたちで」
「ああ」
「のぞむところです」
 ぱ、と二人は手を離す。それが開戦の合図だった。
 戦闘と同時に切り込むよう地を蹴ったザッフィーロがメイスを敵へ振りかぶる。血まみれ女学生は爪でメイスを弾くとそのまま襲い掛かったが障壁となったオーラに阻まれた。
「かれを傷つけないでくださいね、僕の大切な人なので」
「なら、こっちよ」
 くるりと目標を変えて宵に向かえば、今度はザッフィーロが邪魔をしてくる。爪の間をぬうようにして器用に手首を掴んだザッフィーロが宵へ向かった爪の軌道を逸らした。
「……もう二度と手は出させん」
「、」
 衝動に任せて爪を突き刺そうとする女学生にザッフィーロが硬い口調で窘めた。
「お前が殺したい相手は俺達ではないだろう」
 怒りの侭殺し回るのなら、それはお前を死に追いやったかもしれない者ともはや同じになる。
 その言葉に血まみれ女学生は悔し気に唇を噛んだ。分かっている。分かっていて、どうしようもないから、せめてこの気持ちだけは吐き出したかったのだ。彼女はそれ以外に恨みを晴らす術を知らなかった。
「――貴女は、本当に僕たちを殺したかったのですか?」
 違うでしょう。今はただ悲しさや苦しさを凶行に乗せているにすぎないのでしょう。
 図星を突かれた血まみれ女学生は悲し気に目を伏せた。涙がこぼれる。彼女は二人のように叱責してほしかったのかもしれない。罰してほしかったのかもしれない。もっと言えば、こうして殺しに走ってしまった己を止めてほしかったのかもしれない。
 厳しい口調ではあるが、彼らは確かに自分を止めようと、救わんとしてくれているのだ。
「まだ間に合いますよ」
「……大人しく悔い改め、次の生に向かえ」
 お前にはまだ次の生があるのだから。ザッフィーロがメイスを掲げて一撃をたたき込んだ。
 
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

薬袋・布静
【徒然】
視聴者が居ったら盛大なブーイングの嵐が起こる生還やんな

溜まった鬱憤晴らさせるってとこやなぁ
って聞いといて自分中でもう決まってるやんけ
はいはい、エンドロールと行きましょか

◆戦闘
戦闘前に念の為に
「医術」か【生まれながらの光】で電撃による痺れがないか
八千代と己を治癒してから戦闘態勢へ移行
一旦待てや、待て

鬱憤晴らす脳筋プレーもええけど…
すこぉしお話(言いくるめ+精神攻撃)しよか

誰を殺したいか復讐したいのかも分からんで
小さい子のように癇癪起こしとっても楽しくないやろ
こうやって暴れるんにも相手が居らんと始まらんし終わらんの分かったやろ

人生やり直せる権利放り出さんと
転生して楽しまな損やで、お嬢ちゃん


花邨・八千代
【徒然】
いぇーい、馬鹿ップルまさかの生還。

憂さ晴らしに良い方法ってぬーさん知ってる?
俺ァ知ってるんだぜ、つまり思いっきり喧嘩すりゃ良い。
がむしゃらに暴れれば気分も良いしな、つー訳でやるぞ!

◆戦闘
掌掻っ捌いて【ブラッド・ガイスト】だ。
武器は黒塚、「怪力」乗っけてぶん回すぜ。
あ、うっかりぬーさん巻き込まんようにはするぞ。

敵の攻撃は「第六感」で避けつつ遠慮なくぶち込んでくぜ。
ぬーさんの方に攻撃がいきそうな時はその前に叩き落す。
俺の男に手ェ出すんじゃねーよ。

暴れろ暴れろ、飽きるまで付き合ってやる。
俺ァ鬼だからな、悲しいのも悔しいのも全部食らって飲み込んでやるさ。
すっきりして人生二週目、楽しんでこいよ。



●しっとりした空気は一旦ここまでだ諸君
 そんな今までの重い空気を払拭するかのように、バァン、と大きな音を立てて二階客室から飛び出す影が二つ。
 すっかり髪も乾かして万事絶好調の八千代と、その後ろからのそのそと。いや良い風呂でしたと言わんばかりの布静がお目見えする。
「いぇーい、馬鹿ップルまさかの生還!」
「はいはい、いぇーい。視聴者が居ったら盛大なブーイングの嵐が起こる生還やんな」
 派手に登場してきたのは風呂場の感電……からなんやかんやあって見事生還してきた猟兵二人組。
 B級映画バカップルもギャグ路線ではちゃっかり生きているのである。
 八千代はきれいさっぱりした泡風呂のおかげか、艶めいた肌になっていた。
「さてと戦いも佳境ってとこか。憂さ晴らしに良い方法ってぬーさん知ってる? 俺ァ知ってるんだぜ、思いっきり喧嘩すりゃ良い」
「憂さ晴らしか……って聞いといて自分中でもう決まってるやんけ」
 漫才のごとくポンポン景気よく交わされる軽口に、場の空気は一変した。獰猛に、どこか楽し気に、陽気に。彼らの雰囲気につられるようにして悲しみに包まれていたクロユリ邸に初めて明るい空気が流れた。
「がむしゃらに暴れれば気分も良いしな、つー訳でやるぞ!」
「はいはい、エンドロールと行きましょか……と言いたいとこやけど、一旦待てや、待て」
「なんだよー!」
 走り出そうとした八千代に待ったをかけた。走り回る犬を捕まえる飼い主よろしく、首根っこをつかまえて阻止する。一応感電から復帰したのは埒外の存在、猟兵としての体力によるものだが後遺症がないとは限らない。戦闘に支障があっては困るのだ。
 頭のてっぺんから爪先まできちんとチェックを行った布静は軽く治癒を施してからようやく猛犬――ではなく八千代のリードを手放す。がうがうと威勢よく向かってくる八千代に血まみれ女学生は思わず身構えてしまった。
「おーおー。元気やなぁ。鬱憤晴らす脳筋プレーもええけど……すこぉしお話しよか」
 布静が静かに笑う。彼は八千代とは異なる切り口で彼女の心をさらけだそうとした。
 言葉による説得も、力による説得も、気持ちがこもっていればどちらも届く。
「誰を殺したいか復讐したいのかも分からんで、小さい子のように癇癪起こしとっても楽しくないやろ」
 兄が妹に言うような、それは叱るというよりも諭す言葉。
 正しい道にまっすぐに導いてやるような言葉だった。
「こうやって暴れるんにも相手が居らんと始まらんし終わらんの分かったやろ?」
 だから、と布静は一度言葉を切ると。真剣な瞳で血まみれ女学生に語り掛ける。
 必要なのはたったひとつの勇気と後押し。それがあれば彼女は、影朧はきっと歩みだせるはずだ。彼女の心はまだ揺れ動いている。その手助けをするために彼らはここに来たのだから。

「人生やり直せる権利放り出さんと――転生して楽しまな損やで、お嬢ちゃん」

「私、わたしは、」
「話終わった!?」
「……」
「……」
 待ちきれなくなったのか八千代がひょっこりと顔を出す。布静がハァと周りに聞こえそうな溜息をついた。血まみれ女学生に至っては驚きでぱちくりと瞬きしている。
「あんなぁ、今大事な話しとるから……」
「待つの飽きた!」
「私は、やっぱりこの無念を捨てられない……殺したい衝動が抑えられない……」
「お嬢ちゃん、」
「よし来た! じゃあ戦おうぜ!」
「……」
 わぁ脳筋、などと布静は口を滑らせたりしなかった。
 ここではツッコミよりも合いの手を適当に挟んでおくに限ると経験上よく知っていたからだ。
 鬱憤溜まってんだろ、と八千代がニィと白い歯をみせて快活に笑う。彼女もまた、こうした形で恨み辛みを素直に受け止めてくれる、吐き出しても良いのだと血まみれ女学生の怨嗟を肯定してくれた。
「いいの? 私、あなたたちを一度殺そうとしたのに」
「知ったこっちゃねぇや」
「……ふ、ふふ、へんなの、こんなに快く、もう一度殺しあおうだなんて誘ってくれて、ふふ! いいわ、それなら私のこの無念、ここで晴らしてあげる!」
「おっしゃ!」
「さあ、存分に死んでちょうだいな!」
「誰がもう一度死んでやるかよ!」
「覚悟してよね!」
「――そうだ、暴れろ暴れろ。飽きるまで付き合ってやる。俺ァ鬼だからな、悲しいのも悔しいのも全部食らって飲み込んでやるさ」
 すっきりして人生二周目、楽しんでこいよ。
 その言葉に、彼女は死体となった猟兵達を見た最初以来――初めて心からの笑顔を見せた。
 まるで仲の良い子供がじゃれあうように始まった本気の殺し合いに、布静はどこかこうなるのが分かっていたような気さえしていた。端に座って戦いの見学でもと考えていた布静の鼻先を爪がかすめていく。
「ねぇ、あなたも私に殺されてくれる?」
「おおっと、お嬢ちゃん結構血気盛んやな」
「俺の男に手ェ出すんじゃねーよ!」
 三人はそのまま殺し合いにもつれこむ。楽しい、楽しい、人生の二周目を目指して。
 
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

エンジ・カラカ
ヨシュカ(f10678)

もう一度殺されるって。殺せるのカ?
バラバラの弟クンの組み立てを手伝って手伝う。
まずはどのパーツからはめ込む?
やっぱり手は必要だよなァ。
足は後でイイと思う。だーってコレの足は自慢の足。
弟クンを抱えて走ることくらい簡単に出来るサ。
うんうん、楽しい楽しい。

アァ……影朧だっけ。
コノ世界の不思議なヤツ。
人生は一度きりだからこそ楽しいンだろ。
だからお前とバイバイしよう。

薬指の傷を噛み切り、相棒の拷問器具に分け与える。
今日の君はいつも以上に楽しそうダ。
壁に縫い付けてしまおうカ。
それとも床?机の上で派手な演出をするのもイイ。
そーら、縫っている間にやってしまえ。


ヨシュカ・グナイゼナウ
エンジさま(f06959)

あれだけ皆さま迫真の死亡っぷりを演じたのですから
それで満足してください。我儘ですね

(組み立て手伝って貰いながら)
うーん、手も足も全部必要なので。ああでも、抱えて貰って走るのはちょっと楽しそう
きっと風も追いつけない!

という訳で我々はそういう方針ですので、ごめんなさいね
どうぞ良き眠りへ

手袋を外しぽたりぽたりと【惑雨】を。室内に拡散充満。閉鎖空間ですので濃度は十分
…お兄さまは【毒耐性】があるので大丈夫でしょう。多分。
兄の赤い糸は痛いでしょう。大丈夫、もう痛みなんて感じない様に
どうぞしあわせな夢をご覧になって

そっと【開闢】を構え、急所を【見切り】【早業】で【串刺し】に



●血を分け合った義兄弟
 荒れ狂う魂が満足するまでその爪は振るわれる。
 復讐による憂さ晴らしに全力で付き合うことが彼女にとって救いと成るのなら。戦いは必然だ。言葉も力も彼女には通る。あとはアプローチの仕方次第。
「ああ、楽しい、楽しい、本当は苦しいけれど、私今はとても楽しいの!」
「盛り上がっちゃってンだよなァ」
 テンションが。エンジは猟兵達との戦いでヒートアップしているらしい血まみれ女学生を見つめていた。荒れ狂う魂は思うが儘に存分に戦っている。猟兵達は彼女の行いを咎めはしても、その怨嗟までは否定しなかった。
 苦しさや怒りを鎮めることで影朧は転生の機会を得られる。そのため、彼女を諭す者や優しい言葉で宥める者、あえて戦いに付き合って気持ちの昇華を図る者など試行錯誤を繰り返しながら猟兵達は血まみれ女学生と渡り合っていた。
 が、人生は一度きりだから楽しいのだとエンジは胸中で反芻する。
「で? もう一度殺されるってよ。殺せるのカ?」
「全く、あれだけ皆さま迫真の死亡っぷりを演じたのですからそれで満足して欲しいものです。我儘ですね」
 ヨシュカがやれやれと首を横に振った。
 まだ暴れ足りないのか、くるくると踊るようにして血まみれ女学生はあちこちに爪を伸ばしてクロユリ邸を傷つけている。
「どうやら彼女を満足させるまでは止まりそうもありません」
「アァ……影朧だっけ。コノ世界の不思議なヤツ」
「そうですよ。とりあえず起きないと」
「よーしこのお兄サマが弟クンを手伝って進ぜようかナ」
「ああ、ありがとうございます」
 よっこらせ、とエンジが家具の後ろにまわり、自分で押し込めた弟を助け出す。
 四肢を失ったミレナリィドール――ヨシュカの胴を抱き上げた。
 死への工夫のためとはいえど少年の四肢欠損はなかなかショッキングな光景だったが、エンジは特に気にする様子もなくあちこちに吹き飛んだ手足を拾っていく。
 右手。左手。右足。左足。胴。
 五つのパーツに分離してしまった弟はぱたぱたと腕を振ったが、関節部分から先がわずかに動くばかりだ。
「まずはどのパーツからはめ込む?」
「うーん、手も足も全部必要なので。ああでも、抱えて貰って走るのはちょっと楽しそうですね」
 抱きかかえられたままヨシュカは楽し気にくすくすと笑って見せた。
 小さくなってしまった弟を軽々と横抱きにして、兄は赤ん坊をあやすように腕をゆらりと振る。
「やっぱり手は必要だよなァ。足は後でイイと思う。だーってコレの足は」
 自慢の足だ、と彼は言う。弟を抱えて移動するのが心底楽しいのか、散歩でも行くかのようにくるくるとその場を回って見せた。
 小脇に抱えた褐色の手足が遠心力でぶんぶん振り回されている。
「弟クンを抱えて走ることくらい簡単に出来るサ。うんうん、楽しい楽しい」
「そうですね、きっと風も追いつけない!」
「そうとも。さあ彼女にはこのまま会いに行こうカ」
「その前に腕だけお願いしても?」
「おォそうだった、えーと……これ右腕……いや左腕カ?」
「それは足ですよ」
「冗談冗談」
 腕や足を大事に今一度抱え込むと、エンジはヨシュカと共に部屋を出ていく。外のダンスホールで暴れる影朧に会いに行った。

 血まみれ女学生は彼らの姿に気づくと問答無用で襲い掛かってくる。ひらりとヨシュカを抱えたままエンジはそれを避けて、ただ首を横に振った。考え方は様々だ。
「人生は一度きりだからこそ楽しいンだろ。だからお前とバイバイしよう」
「という訳で我々はそういう方針ですので、ごめんなさいね。どうぞ良き眠りへ」
 ヨシュカはエンジに装着してもらえた手から手袋を外すと、掌の十字の亀裂からまるで黄金を溶かした様な揮発性の液体を放った。きらきらとまばゆく、しかしそれらはすぐに霧状になってクロユリ邸に満ちていく。血まみれ女学生の周辺に気化したそれは。
 よいゆめを、と彼が呟いた瞬間に惑雨は館に降り注ぐ。霧は幻覚となって彼女を拘束した。
 惑雨は例外なく彼らにもまとわりつく。
「……お兄さまは毒にお強いので大丈夫でしょう。多分」
「さっき毒で殺しておいて……」
 今でこそケロリとしているがエンジの死因は彼の盛った毒なのだ。まあいいケド、なんて言いながらエンジも攻撃を仕掛けていく。薬指の傷を噛み切り、彼の相棒である拷問器具へと分け与える。
 幻覚によって拘束された血まみれ女学生に生きた蛇のごとく赤い糸がまとわりついてく。
「今日の君はいつも以上に楽しそうダ。壁に縫い付けてしまおうカ。それとも床? 机の上で派手な演出をするのもイイ」
 お好きなのをどうぞ。いくつでも。いくらでも。そう呟けば糸の締め付けはさらに強いものになっていく。
 うめく女学生を横目にエンジがヨシュカへ耳打ちする。
 さあ存分にやってしまえ、そうら、縫っている間に。今この機を逃さないために。
「兄の赤い糸は痛いでしょう。大丈夫、もう痛みなんて感じない様に――」
 どうぞしあわせな夢をご覧になって。
 ゆっくりと兄が弟をおろした。いつのまにか付けられた足でしっかりと絨毯を踏みつけたヨシュカはサムライエンパイアにて名匠が打った短刀、『開闢』を構える。
 たん、と音を付けて少年は絨毯を蹴った。ほんの数瞬、まばたきの間に彼は女学生の胸を穿つ。
 さあおやすみ、よいゆめを、よいゆめを。誘われるかのように女学生は瞳を閉じた。
 
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

村井・樹
心中してやる、とは言ったが止めだ、やめ

こんなクソ重い中で死んでられるかってんだ
どうやら、外には真犯人がお出ましのようだし?
脱出の手伝いでもしてもらおうか

【存在証明】を誇示
敵の意識をこちらに向け、わざと俺を囲む家具だのが相手の技で吹き飛ぶように仕向ける
それが全部弾けて身軽になっちまえば、こっちのもんだ

俺が隠し持つ【吾が手の中に】や、先に紳士のやつが残してた鋼糸、それも利用してやる

【罠使い、ロープワーク】で敵や、調度品、その破片に糸をかけ、そのままそれ全部を巻き込んで、糸を引く
それらで相手の足下や回りを囲んで、敵の動きを制限してやれ
俺も先に、家具の下敷きにされた事だしな?

※アドリブ等大歓迎



●仕返し
 眠りに落ちようかとした血まみれ女学生は、しかしその手を振り払ってなおも暴れている。影朧の荒ぶる魂はまだまだ止まる様子を見せない。
 丁度その時、ダンスホールの隅にあった瓦礫の山から箪笥が一つ吹き飛んだ。瓦礫の山の上に出てきたのは一人の青年だ。
 まだ半分以上身体が埋まったまま忌々しげに舌打ちする。
「心中してやる、とは言ったが止めだ、やめ。こんなクソ重い中で死んでられるかってんだ。どうやら、真犯人がお出ましのようだし?」
 脱出の手伝いでもしてもらおうか、と彼――村井・樹の複数の人格の一角を成している口調の荒い『不良の青年』が言う。
 さあ来いよ、と挑発すれば血まみれ女学生はゆらりと首を樹の方へ向けた。
「あら、あなたも起きたのね」
「ああそうだ、起きてやったぜ。今度はこっちがお前を殺してやる」
 かかって来やがれと顎で示してやれば。
 挑発に成功したのか血まみれ女学生がふらふらと瓦礫の山に近づいた。
「私と殺しあってくれるのね、その度胸買ってあげる」
「はっ、わざわざ喧嘩売ってやってんだ。買って当然だろ」
 売り言葉に買い言葉、売り喧嘩ならぬ買い喧嘩。
 樹は粘り強く彼女の注意をひきつけて挑発を繰り返す。
 血まみれ女学生の爪が狙うは一点、彼の心臓だ。しかし彼にたどり着くまでには瓦礫の山をどける必要がある。
 実はこれこそが樹の狙いだった。
 わざと樹を囲む家具に対して、相手の技で吹き飛ぶように仕向けられれば苦せずして脱出することができる。
 血まみれ女学生は彼の予測通り、案の定瓦礫の山の下部分を爪で壊しにかかっている。積み木崩しのように山は瓦解して、家具に取り囲まれていた樹の足は不意に穴が開いたようにひらけた。
 拘束がとけた樹はすぐさま攻撃に転じる。
「先に紳士のやつが残してた鋼糸も利用してやるよ、喰らいやがれ!」
 四方の家具を巻き込んで圧死に見せかけていた鋼糸が残った家具の破片を巻き込んで鋭利な縄鏢へと変わっていく。
 調度品やその破片は今や彼の手中にあった。すべてを巻き込んで手繰る様に強く強く引いてやれば。ブラックホールに周囲の星が引かれるかのごとく、中心にいる樹へと家具が一斉に動き出した。瓦解した山は収縮して、圧力で閉じ込める檻のように血まみれ女学生すら巻き込んでいく。
「俺も先に、家具の下敷きにされた事だしな?」
 恨みっこなしだぜ。樹はそう呟くと、瓦礫が当たる寸前に中心から素早く移動した。位置をスワップされた女学生は目の前に迫りくる瓦礫を避ける事が出来ない。
 悲鳴を上げる間もなく、轟音とともに血まみれ女学生は家具の下に沈んでいった。
 
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

千桜・エリシャ
濡れた身体を乾かしていたら遅れてしまいましたわ!
芸術的な死に様を演出できたかとは思いますが
次に死ぬときは注意が必要ですわね…

あら、黒幕は女の子でしたのね
まだお若いのにお可哀想に…
転生できる可能性があるなら
そちらに賭けるのが猟兵というものですわね

鬱憤を晴らしたいならお付き合いして差し上げますわ
今一度
殺して御覧なさい
爪が当たる間際に見切って花弁になり躱して
背後に回り込んで生命力吸収を載せた斬撃で反撃

気が済んだかしら?
でもね、私はあなたのことなんて知りませんのよ
だってあなたを助けてくれなかった方ではなく
助けてあげられる者ですから
殺人なんて美しいお嬢さんには似合いませんわ

だから
その御首を私に下さいまし


神元・眞白
【SPD/割と自由に】
……ありがとう、飛威。結構高くてどうしようと思っていたところ。
ちょっと首が痛いけど暫くはなんとかなりそう。やる事をやらないと。
んん……でもちょっと変な感じ。あとで調整が必要、かも。

勘違いと後悔で動いているなら気が済むまで、お付き合い。
そう簡単に壊れたりはしないから、どこまでやってもらえるか。
魅医、暫く待機しておいて。あの人に必要なのはきっと話し合う事。
まだ相手も分からないし、事を済ませる前にやれることは色々と。
…そう、お茶会でも開いたらのんびりできるのかも


シャルファ・ルイエ
うう、酷い目にあいました……。
これだけたくさん殺したんですし、そろそろ満足してくださると嬉しいです……!

それに、復讐する対象ならまだ残っていませんか?
例えばあなたが亡くなった場所であるこのお屋敷とか。
詳しい事情は知りませんけど、ここで亡くなったならあんまり良い思い出ってないんじゃないでしょうか?
残しておいても罠だらけで物騒ですし、それなら壊してしまえば多少はすっきりしませんか?
住んでたお家だったら、ちょっと申し訳ないですけど……!

今度は大人しく殺される心算はありませんし、【星を呼ぶ歌】で反撃はします。
お屋敷に籠ってないで、一緒に外に行きましょう。
黒百合よりも似合う花が、きっとあるはずですから。



●憎しみは彼方へ、愛は此方へ
「うう、酷い目にあいました……」
 まだ毒が残っているのか、滲む視界にふらつく足に。シャルファはよろよろと起き上がると状況を確認する。
 既に何人かの猟兵が戦ったせいかダンスホールはかなり壊れていた。
 そうでなくとも数々のトラップが発動した後だ。きらびやかな館は様相を変えてあたりには血が飛び散っている。
「あら、あらあら、まあ、あなたも起きたの? 私と殺しあってくれる?」
「これだけたくさん殺したんですし、そろそろ満足してくださると嬉しいです……!」
 とはいえ目の前の影朧には説得がもう効いている状態だ。言葉をかけながら、拳を当てながら、そうして彼女の満足するまで。荒ぶる魂を鎮める術がない。何人かの猟兵と戦って疲弊は強くたまっているのか時折ぐらりぐらりと揺れながら、それでも彼女は楽しそうに爪を振るう。
「まだまだ遊びましょう? 一度は死んでくれたじゃない」
「それならば付き合うしかありませんね……ですが、今度は大人しく殺される心算はありませんし、」
 すう、と彼女が息を吸えば。紡ぐ歌に誘われるようにきらりきらりとダンスホールのなかで星が煌いた。
 クロユリ邸の天井は崩落しかけている。
 あとひとつ切欠さえあれば崩れ落ちてしまいそうだ。その引き金を引いたのはシャルファだった。
 ――空を見て、手を伸ばして。今なら星にだって手が届く。
 彼女のやわらかな唇が詩を紡げば、ぱらぱら天井から粉が降り注ぐ。半分以上がダンスホールに落下しているシャンデリアはついに嫌な音を立てて軋んだ。終わりが近いのだろう、シャンデリアに吊られた猟兵がちょうどその衝撃で瞳を開く。
 鎖は揺れて、千切れて、落ちる。
 轟音と共に残ったシャンデリアがダンスホール目指して真っ逆さまに落ちていくその瞬間。眞白の世話役兼近接戦闘用人形がすかさず飛び出して彼女の絡まっていた鎖を解いた。囚われた姫君のように引っ掛かっていた眞白はその手をとって危なげなく着地してみせる。
 気遣わしげに眞白の周りを動く人形を褒めるように握った手を撫でていた。
「……ありがとう、飛威。結構高くてどうしようと思っていたところ。ちょっと首が痛いけど暫くはなんとかなりそう。やる事をやらないと」
 かくり、と首をかしげる。長時間吊られていた彼女はミレナリィドールといえど苦痛の続く体勢を強いられ続けていたせいかまだ身体の節々に違和感が残っていた。ぱきり、ぱきり、関節が鳴る。こくん、と首が上手く固定できずに反対側にまた傾げた。
「んん……でもちょっと変な感じ。あとで調整が必要、かも」
 さて、と眞白が今しがた着地したすぐ近く――シャンデリアの落下地点を見る。ダンスホールの真ん中には大きな穴があいていた。シャンデリアの真下に居たせいであわや激突しかけ、慌てて避けたシャルファが咄嗟に眞白は頭を下げる。
「わわっ、すみません落としちゃいました!」
「平気。それより上を見て」
 あなたの呼んだものが降り注ぐから。眞白がすらりと細い腕を伸ばして人差し指を向ける。つられるようにしてシャルファが見上げれば、シャンデリアの落下とともに抜けたクロユリ邸の天井は窓のようにぽっかりと開いていて。いつのまにか夜になったサクラミラージュの空が見えた。
 桜の花びらが隙間からひらひらと降り注ぐのに加えて、もうひとつ。星呼びは旋律とともに来たれり。
「上手く行っていたみたいですね……」
 きらきらとユーベルコードによって呼び寄せられた幾百の星がクロユリ邸に降り注ぐ。血まみれ女学生は光の粒を浴びるようにしてその身を貫かれる。戦いの意思が見えたことで血まみれ女学生はその身から血を流しながらもどこか顔は晴れやかだった。
「ああ、殺しあってくれるのね! 殺しあいましょう! どうか死んでちょうだいな!」
「影朧は傷ついた者の過去から生まれた不安定なオブリビオン。止めるには……」
「彼女の満足するまで、でしょうか?」
「勘違いと後悔で動いているなら気が済むまで、お付き合い」
 シャルファの答えに眞白が頷く。そう簡単に壊れたりはしないから、どこまでやってもらえるか。
 なにせこちらは猟兵だ。埒外の存在、別の次元から到来した世界の理から外れた者。現に一度死んで、こうして生き返って彼女と対峙しているのだから。
 対話が必要だと眞白は憶測を立てる。
「あの人に必要なのはきっと話し合う事。まだ相手も分からないし、事を済ませる前にやれることは色々とあるはず」
「そうですね、戦いながらでも構いません。まずはお話合いからです」
「魅医、悪いけれど暫く待機しておいて」
 心得たとばかりに眞白の人形が下がる。
 代わりにシャルファがそっと一歩前に出た。――爪が頬をかすめる。動揺することなく彼女を見据えれば、血まみれ女学生は避けないのねと笑いながらその爪をひっこめてカラカラと笑った。
「復讐はお気に召しましたか?」
「ええ。とっても。復讐するのは、苦しいけれど楽しいの。だって、すうっと胸が空いた様な気持ちになるのよ」
「復讐……復讐ですか。復讐する対象ならまだ残っていませんか?」
「あら、それはあなたたちではないのかしら」
「いいえ」
 眞白がその答えを否定する。シャルファが続く言葉を紡いだ。二人の問いかけは輪唱の様に血まみれ女学生の脳内を廻る。
「そうですね……例えばあなたが亡くなった場所であるこのお屋敷とか」
「クロユリ邸?」
「詳しい事情は知りませんけど、ここで亡くなったならあんまり良い思い出ってないんじゃないでしょうか?」
 彼女の悲しい過去。この館の中で死んでしまったのなら、それは彼女自身を苦しめる要因になってはいないだろうか。シャルファはそう思案したのだ。
「残しておいても罠だらけで物騒ですし、それなら壊してしまえば多少はすっきりしませんか? 住んでたお家だったら、ちょっと申し訳ないですけど……!」
 過去を断ち切り未来に進むためには彼女は何時までもこのクロユリ邸に囚われるわけにはいかないのだ。転生を目指すならここから解き放たれて、桜の精に誘われて外に向かわなくてはならない。
 きっと彼女がこの館で殺人を画策したのには意味が合った筈。それは彼女自身が心のどこかでクロユリ邸自体を忌々しい過去の傷として感じていたからではないか。シャルファはそう語り掛けている。
「お屋敷に籠ってないで、一緒に外に行きましょう」
「外に……」
「ねえ、ここに来る前、この館の近くにある大通りを覚えてる?」
 クロユリ邸に向かう途中、サクラミラージュの大通り。眞白の目にはこの世界によくある喫茶店の看板が目に入っていた。クリームソーダにパンケーキ、美味しい食べ物に落ち着いた店内。客入りもよく賑わっていたはずだ。彼女がもしずっとこの館に囚われているのなら外の情景など久しいに違いない。
「外には沢山のものがある……もし、気持ちが落ち着いて転生したら。お茶会でも開くのはどう?」
「それはとっても素敵な案ですね!」
「そとのせかい……」
 きらりと血まみれ女学生の目に浮かぶのは、これからの未来。
 もしも転生できたなら。希望が二人の言葉で形作られていく。血まみれ女学生の目に映った情景は、もしかしたらそう遠くない未来のヴィジョンだ。
「連れて行って、私を、どうか外の世界へ」
「もちろんです!」
「そのためには、」
 彼女の気持ちをもう少しだけ癒して晴らして、発散させてやらなければならない。
 眞白は待機させておいた飛威と魅医を手前に出して戦闘体勢を取った。荒ぶる魂を鎮めるには、やはり気持ちの向くまま暴れさせてやるのを抑え込むまで。
 シャルファは血まみれ女学生に歌うように語り掛けた。
 さあ、外の世界へ。黒百合よりも似合う花が、きっとあるはずですから。
 
 戦いの火蓋が切られようとしたその瞬間、クロユリ邸の扉が勢いよく開かれた。

「濡れた身体を乾かしていたら遅れてしまいましたわ!」
 一人庭で死んでいたエリシャが外から桜の花びらを連れてクロユリ邸に舞い戻ってくる。クロユリ邸は既に半壊していて、庭に植えられていた桜から散った花がひらりひらりと壊れた隙間から入ってきていた。
 天井から、割れた窓から、薄桃色の花びらが舞い込んでくる。
「芸術的な死に様を演出できたかとは思いますが、次に死ぬときは注意が必要ですわね……」
 水中に沈む彼女の姿こそオフィーリアそのもので絵画のように美しかったが、生き返ったあとのことはそこまで綿密に考えていなかった。エリシャはぷくりとまろい片頬を膨らませる。
 浴室近くの部屋からタオルを拝借して、ついでに濡れてしまった服も乾かして。池の水が澄んでいたことで汚れはしなかったが復帰にやや時間がかかってしまったらしい。
「主役は遅れてやって来ると言いますし……ねっ!」
「むしろ丁度今から始まるところ」
「あら、ではベストタイミングだったでしょうか?」
 サクラミラージュの演劇、プリマドンナだって登場は終盤だ。スタァは常に優雅にゆるやかに。戦いの舞台へと降り立ったエリシャはシャルファと眞白の隣に立つ。
 エリシャはそこで初めてこの連続殺人を起こした張本人、事件の犯人の姿を見た。
 見たところ年若い彼女は黒い涙を垂らして生への渇望をようやっと見いだせたところだ。
「あら、黒幕は女の子でしたのね。まだお若いのにお可哀想に……」
 きっと生きたかったでしょう。きっとまだやりたいことも沢山あったのでしょう。人生の花盛りに死んでしまった彼女がもう一度生きたいと願うのであれば。
「転生できる可能性があるなら、そちらに賭けるのが猟兵というものですわね。お二人とも準備は整っていますか?」
「はい!」
「ん、仔細ない」
「では、いざ尋常に」

 命のやり取りをすると致しましょう。

 飛威と魅医が飛び出して眞白の指示のまま血まみれ女学生に攻撃を仕掛ける。シャルファが後方で歌を紡ぎ再び星を呼び寄せた。夜空と桜と血が混じる。
 エリシャは眞白の人形の立ち位置を邪魔せぬように隙間をすり抜けながら血まみれ女学生に斬りかかった。
「魂が荒れているのなんて今まで分からなかったのに、どうしてかしら、今はあなたたちを襲いたくてたまらないの」
 殺したい。殺したい。殺したい。殺人衝動の向こう側にあるのは荒ぶる魂だ。
「殺してころしてコロシテ、そうすればこの気持ちは晴れるのかしら?」
「鬱憤を晴らしたいならお付き合いして差し上げますわ。今一度――殺して御覧なさい」
「それならまずはあなたから殺してあげる!」
 伸ばされた爪がエリシャに当たる――刹那。
 まるでそこに春が訪れたかのように大輪の花が咲き誇った。否、そう見えたのは近場に居たシャルファと眞白の錯覚だったのかもしれない。咲いたように展開されたのは沢山の花びら。
 爪が当たる間際に見切って、エリシャが花弁になる。変わり身のように残像のように。彼女が今そこに立っていたはずの場所には花弁が舞っている。視界を覆い隠された血まみれ女学生が目を覆った瞬間、攻撃を躱したエリシャが容赦なく刃を突き立てた。
「がっ、ぁっ……」
「気が済んだかしら? でもね、私はあなたのことなんて知りませんのよ」
 くすりと彼女は笑う。あなたのことなど知らないのだという彼女は、続く言葉に慈しみを込めて手に力を籠める。首にめり込んだ刃をさらに押し進めた。
「だって私は……私達は。あなたを助けてくれなかった方ではなく、助けてあげられる者ですから」
 殺人なんて美しいお嬢さんには似合いませんわ。
 幾人もの猟兵にかけられたその言葉が、ずっとずっとほしかった。血まみれ女学生の欲していた言葉を惜しげもなく皆かけてくれる。助けてほしい、と嘆いた声は誰に聞かれることもなく風化してしまった。気づかれぬまま一体どれだけの月日が過ぎ去ったのだろう。
 目の前の彼女達は確かに――かつて誰にも助けてもらえなかった自分を、助けに来てくれたのだ。
「だから、その御首を私に下さいまし」
「ありがとう……」
 首を斬られながらも礼を唇に乗せて。そのまま血まみれ女学生は首を落とした。ぐらりと凪いだ身体はしかし絨毯につく前に飛威と魅医が眞白の指示でその身体を支える。シャルファが呼び寄せた星の歌はその身体を貫くのではなく、今度は労わる様にそっと寝そべらせた。
「終わりでしょうか?」
「ちがう、此れは――……黒百合ね」
「最後のお相手ですわね」
 
 首の切断部から、真っ黒な百合が咲き誇る。
 
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

夏目・晴夜
敵の攻撃は、ニッキーくん庇って下さい
死ぬ演技の影響で私は重傷です

折を見て、話を聞いて貰う為に『死の抱擁』
女性を正面からハグしてはセクハラになりそうなので、
背後から両手でグッと掴む形で動きを固定しUCを封じます

我々は貴女を助ける為に来た、貴女の味方です
貴女の死の苦しみはよく解ってます
本当によく解ってます
私も今耳が聞こえづらいしずっと血の味がするし呼吸する毎に全身痛いし、
なんかもう苦しすぎて泣きたいレベルですからね

死の苦しみを棄てて、幸せになって下さい
貴女が生まれ変わって幸せになる事は、
貴女を苦しめた人への最高の復讐にもなります
我々は貴女の最高の復讐の手伝いをしたいのです

必要なら妖刀で【串刺し】に


花剣・耀子
嗚呼、そう。
ここでは、過去も死も道のひとつでしかないのね。
……、そう。よいことなのでしょう。きっと。

それでも、終わったことは終わったこと。
おまえの死因も、ここで起きたことも、もうどうしようもないことよ。
ここは、ただの楽屋裏。
死体役がぴんしゃんしているのだもの。
舞台が跳ねて幕は下り、語られる只の後日談。

おまえがどんな結末を選びたいかなど、知ったことではないのよ。
好きになさい。
あたしも勝手にするわ。

その爪と真っ向から斬り合いましょう。
片手間に恨み言くらいは聞いてあげる。
未練があるなら言ってご覧なさいな。
これは勝手のうちなのよ。

続きがあるのは、よいことなのでしょう。
……――ねえ、おまえは続けたいの?



●その行く末に
 黒い百合はしゅるしゅると伸びて頭部のない血まみれ女学生の身体を立たせた。
 安らかな表情を浮かべている生首を茎で器用に巻き取って拾い上げると、切断された場所へこれまた器用に乗せてみせる。眠ったままの彼女はまるで寝言のように小さく口を開いて、そうしてつらつらと言葉を述べた。それは悔しいだとか、悲しいだとか、猟兵達が今までさんざん聞いてきた彼女の本音だ。
 これが最後の、彼女の慟哭。嘆き。怨嗟。影朧の残りだ。
「どうやらこれで最後のようね」
 転生まで本当にあと一歩といったところか。すでに説得によって彼女の魂は救われている。だからこれは、彼女が吐き出し損ねた本当に最後の復讐心なのだろう。彼女に対峙した最後の猟兵である一人、耀子はそう結論付けた。
「アアア――生キタイ、生キタイ、私モ、生キタイ」
「おまえがどんな結末を選びたいかなど、知ったことではないのよ。好きになさい。あたしも勝手にするわ」
 影朧がどちらの結末を選んだとて、彼女の選択は変わらない。
 生きたい生きたいと叫ぶ彼女の未練の残りかすに感慨も無く呟いた。
 花剣・耀子の有りようは、変わらない。
「生キル、生キル、ドウシテ、私、死ンダノ」
 もっともっと生きていたかったのに。死にたくなんてなかったのに。
 苦し気に呻く声に過ぎたことだと耀子は静かに言い放った。
「終わったことは終わったこと。おまえの死因も、ここで起きたことも、もうどうしようもないことよ」
 ここは、ただの楽屋裏。殺戮の宴は既に終わった。
 役者はみな仕事を終えて、舞台のクライマックスへ――犯人を追い詰める仕事を片付けている。
「死体役がぴんしゃんしているのだもの。舞台が跳ねて幕は下り、語られる只の後日談」
 彼女の説得はもう終わっているのだ。首を落とされて安らかな死に顔を浮かべているのがその何よりの証拠だ。咲いてしまった黒百合が語られなかった影朧の気持ちの残穢だというのなら、今のフェーズは本当に事後処理なのだろう。終わりだと耀子はしつこく残ってしまった彼女の思いと相対する。
 振り下ろされる爪にも威力は無い。ただ咲いた黒百合の茎に従って、まだ暴れているだけだ。真っ向から斬り合いその両手を打ち据えていると、傍からうめき声が聞こえてきた。
「ぜえぜえ、はあはあ、本当にひどい目にあいましたよ……」
「あら生きていたのね」
「いやよく見てくださいこの傷。死ぬ演技の影響で私は重傷です」
「それはお生憎様」
 自身の従えていたニッキーくんにボロクソに殴られていた晴夜がよろよろと立ち上がっていた。まだ暴れているんですか暴れ過ぎじゃありませんかと不満を湛えた顔で血まみれ女学生を見ている。ちなみにニッキーくんはつい先ほどまで主を力の限り殴っていたのが嘘のように大人しくなり、静かに彼の隣に立っていた。お利口さんである。
「説得は終わったんじゃ?」
「その筈なのだけれど」
 どうやら最後に一片残った思いが今際の際に激しく燃える消えかけの蝋燭のように吹き返してしまったらしい。
 ひたすらに生きたいと生にしがみつく姿は、理性のあった首を切られる前までの様子と違ってただ思いの丈を一心不乱に吐き出している。
「片手間に恨み言くらいは聞いてあげる。まだ残っている未練があるなら言ってご覧なさいな。これは勝手のうちなのよ」
 この際だからすべて吐き出してしまった方がいいと促す耀子に、血まみれ女学生は微かにほほ笑んだ気がした。
 晴夜はそっと血まみれ女学生の後ろにまわると、ニッキーくんに命じて彼女をその剛腕に捕らえる。
「女性を正面からハグしてはセクハラになりそうなので、ちゃんと背後に回りましょうね。偉いですよニッキーくん」
 ニッキーくんに抵抗を示しているのはあくまで黒百合だけのようだ。血まみれ女学生の方はと言うと大人しいもので、ニッキーくんにされるがままになっている。その黒百合も耀子と斬りあっているため、今の晴夜を邪魔する者はいなかった。
「聞いてください。我々は貴女を助ける為に来た、貴女の味方です。貴女の死の苦しみはよく解ってます……本当によく解ってます」
 だって私も今耳が聞こえづらいしずっと血の味がするし呼吸する毎に全身痛いし、なんかもう苦しすぎて泣きたいレベルですからね。けぽ、と血でも吐きながら言うその言葉には説得力がありすぎたような気もするが、ここでは割愛する。
 耀子はどこかあきれ顔で彼に声をかけた。眼鏡の奥の瞳は冷めているようだ。
「重傷ね」
「ええ、誰かさんが加減してくれなかったもので」
 いやだいぶ加減してましたけど。当社比で。ニッキーくんが浮かべた表情は如実にそう物語っていたが、晴夜は無視して話を進めた。
「死の苦しみを棄てて、幸せになって下さい。貴女が生まれ変わって幸せになる事は、貴女を苦しめた人への最高の復讐にもなります。我々は貴女の最高の復讐の手伝いをしたいのですよ」
 黒百合の抵抗がその言葉で薄まっていく。もともと説得がこの時点で通っていたおかげか、最後の抵抗を見せた怨嗟も次第に収まっていった。影朧には転生の道が残されているのだから。ここまですればもうきっと、彼女は大丈夫なのだ。
 ぱたりと黒百合が地に落ちた。抵抗の意思はすでに塵一つとして無い。猟兵達は彼女の荒ぶる魂を鎮めて、救いあげることが――できたのだ。
「ニッキーくん、もう大丈夫です。離してあげてください」
 きっともう抵抗しませんから。晴夜がそう言うとニッキーくんが腕の力をゆるめて彼女を手放す。言葉通り、もう暴れまわることはしなかった。瞳の黒い涙はぬぐわれて、とても心満ちたやすらかな面持ちをしている。
「嗚呼、そう。ここでは、過去も死も道のひとつでしかないのね。……、そう。よいことなのでしょう。きっと」
 耀子が剣を仕舞う。勝負は成った。これ以上の切り結びは必要ない。
「続きがあるのは、よいことなのでしょう。……――ねえ、おまえは続けたいの? それとも――続けたい?」
 それは今この場の戦いに対しての問いか、それともこのあと続くであろう彼女の生に対しての問いか。血まみれ女学生は前者の問いに対してゆるりと一つ首を横に振り、後者の問いに対しては首を縦に振った。
「ふふ、もう十分よ。最後まで…………本当にありがとう……」
 理性の戻った声で彼女は答えた。
 最後の未練まで出し尽くして、魂はようやく救われた。影朧はもはや何一つとして不満は無かった。ありがとう、もうじゅうぶんだわ。そんな言葉を残して、彼女の姿は薄れていく。

 蜃気楼のように、最初からそこに居なかったかのように。彼女の姿は透過していく。残された黒百合が桜に変わった。ひらりひらりと、何百もの花弁が壊れたクロユリ邸の天井から風に誘われて飛んでいく。ありがとう、ありがとう、ありがとう。輪唱の様にその場にいた猟兵達の間をすり抜けるようにして声が響いて。
 やがて静かになった。

「……行っちゃいましたね」
「ええ」
「彼女はちゃんとこの後、無事桜の精に出会って癒しを受けられるでしょうか?」
「知らないわ」
 どんな結末を選びたいかなど、知ったことではないと。
 好きになさい。あたしも勝手にするわ。女学生にそう言葉をかけたのは耀子なのだから。
「ま、でも大丈夫でしょう。なんてったって肝の据わったお嬢さんでしたから。一緒に外に遊びに行こうって約束した方達もいらっしゃったようですし、きっと上手くいくはずです」
 これから――彼女の望むこれからがあるのなら、きっと。
 と、いうや否や晴夜は受けていたダメージの蓄積でその場に倒れてしまった。耀子が眼鏡越しに見つめるその目は、やはり少し冷めていた。
「あーやっぱダメですこれ痛い死にそう」
「立ちなさい、これから帰還よ」
 無理無理やだやだと言わんばかりに大の字になって転がる晴夜に晴夜が深く溜息をつく。
 天を仰ぐ晴夜には、壊れてしまったクロユリ邸の天井から夜の空が良く見えた。
 
 
 
 
 惨劇の一夜を終えた犠牲者達は、先に行ってしまった彼女を追いかけるように一人また一人とクロユリ邸を後にする。
 桜に祝福されるようにひらひらと猟兵達に花びらが降り注ぐ。
 願わくばその行く末に、桜の導きがあらんことを。
 
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年10月20日


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#サクラミラージュ


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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト