スイートローズ・カタストロフィ
●咲き誇る薔薇よ
薔薇の竜、カタストローフェは覇を謳う。力こそが全て、強さこそが真理である。厳然たるその事実は、このアリスラビリンスであっても変わらない。
無力なアリスを喰らうオウガとして生まれたその身を厭いながらも、いつだって竜は強者を、戦いを求めていた。
――それ故に、この国に顕現した時、竜は歓喜した。
その身を刺す冷気は明らかにこの国全体を包んでいる。凍てつく風、流れる事のない水、一見華やかにも見える木々の果実は、その全てが零下の氷で出来ている。
生物の存在を拒絶するかのような極寒の地。しかしここには、確かに命の息吹があった。この厳しい自然の中を生き抜く強き者達。これから始まるであろう、彼等との心躍る戦いを予感して、竜は高らかに、国中に響くように吠えた。
「我が名はカタストローフェ、これよりこの国を我が物とする!
この国に他者は要らぬ! 弱者は去れ! でなければ死ね! それが嫌だと言うならば、我と戦い、倒して見せよ――!」
一度聞けばそれとわかる明らかな挑戦状を耳にして、この国の住人達が姿を現し始めた。この極寒の地に生きる、彼等は。
「ええ、なになに新しい出し物デスカー?」
「ワー、何かすっごいのが居ますヨー」
「スゴーイ、カッコイー!」
黒い防寒着に身を包んだ、手足の生えた雪だるまのような身体。『ピーノ君』と名乗る、無闇やたらと寒さに強い、そして気の良い怠け者たちだった。
――出てくる国を間違えたかな、と竜は思った。
●氷菓の国『ラクトパラディア』攻防戦
「温度差ってこう……つらいよねぇ、色んな意味で」
そんな風に季節の変わり目について言及しながら、オブシダン・ソード(黒耀石の剣・f00250)が猟兵達に今回の予知を提示する。
現場となるのは、アリスラビリンスに属する不思議の国の一つ、氷菓の国。今は愉快な仲間達が住むそこに、オウガが現れ、蹂躙し、支配下に置いてしまうのだと彼は語る。
「アリスを待つための根城にでもするつもりなのかな? 何にせよ、オブリビオンの所業を見過ごすわけにもいかなくてね。是非とも君達の手を貸して欲しいんだけど……」
良ければ詳しい話に入らせてもらうよと、彼は猟兵達の反応を窺う様に間を置いた。
「じゃあ、話を続けよう。今回襲われるのは、『ピーノ君』と呼ばれる愉快な仲間達の暮らす、『ラクトパラディア』と名の付いた国だね」
聞き覚えのある者も居るだろうか、そこは以前に猟兵達の開拓した場所でもある。
木々には色とりどりのアイスが果実として実り、雪も砂糖菓子のように甘い。石ころや岩の代わりに大福アイスが落ちているような、そんな国だ。
今は、『黒い防寒着に身を包んだ雪だるま』のような見た目の愉快な仲間達が平和に暮らしているのだが。
「ここに、『獄炎薔薇竜カタストローフェ』というオブリビオンが襲ってくるんだ」
その個体は名の通り植物であり、炎の竜でもある、そんな特殊な由来からだろうか、カタストローフェはこの国にある氷菓の森を、自らの支配する木々で覆ってしまうのだと言う。
「アイスの実る色鮮やかな森が、侵入者を試す、木々の迷宮に早変わりと言うわけさ」
カタスローフェ配下の木々は、それ自体がオブリビオンでもあり、互いの枝を絡め合う事で、生きた迷宮を作ってしまう。……しかしながら、迷宮の突破自体は猟兵ならば容易いだろう。迷路を構成する木々を倒せば道は開くし、空を飛んでしまえばボスの元まで一直線だ。
「とはいえ、そういう問題じゃないよねぇ」
そうグリモア猟兵が肩を竦める。一度木々を破壊しても、手を止めれば瞬く間に再生してしまうだろう。そのままボスと相対すれば……言うまでも無いが、敵に完全に包囲された状態で戦う事になる。
「そこでね、今回はこの愉快な仲間たち……ピーノ君達の力を借りる必要があるんだ」
彼等は氷を切り出すためのノコギリの扱いに慣れており、ユーベルコードで氷の吐息を放つことができる。つまり、オブリビオンである木々を抑えるのにとても向いているのだ。
「現在、彼等は迷宮のあちこちで道に迷っている状態にある。彼等と合流して、共に戦ってあげて欲しい」
戦力が整えば、ピーノ君達が森の木々を抑えてくれる。そうなれば後背を気にせずカタストローフェと戦うことができるだろう。
「君達の力なら、十分に倒せる相手だと思う。それに……無事勝利すれば、このスイーツに恵まれた国を一巡りできるんじゃないかな」
そういうわけで、是非とも頑張ってほしい。そう言って、オブシダンは現地への道へ猟兵達を誘った。
つじ
どうも、つじです。今回の舞台はアリスラビリンス、氷菓の国です。愉快な仲間達と共に、この国を襲う強敵を撃破してください。
終わったらお茶会も出来ます。
●氷菓の国『ラクトパラディア』
アリスラビリンスにある不思議の国の一つ。特徴はオープニングの通りです。
戦場となる森の中には『氷樹の塔』と呼ばれる見張り台が一つ建っています。
以前猟兵達によって開拓された国で、他に様々な施設もありますが、今回の戦いには関わってきませんので知らなくても大丈夫です。
●愉快な仲間達『ピーノ・オブコート』
通称『ピーノ君』。黒い防寒着に身を包んだ雪だるまのような見た目をしています。
基本的には気の良い怠け者ですが、六人一組になると何故か異様な勢いで働き始めます。頭部がハートか星型の個体は、数少ないですが指揮官に向いているようです。
猟兵達にはとても好意的です。
●第一章
それぞれの方法で迷宮を進み、ピーノ君達の協力を取り付けてください。
迷宮を形作る木々(それぞれが全てオウガです)と戦えば、倒しただけ迷宮内を自由に移動できるので、ピーノ君達と合流しやすくなります。
また、絡み合う枝でトンネル状になっている箇所が多く、空から迷宮の内部を確認するのは非常に困難です。
●第二章
ボス戦です。第一章が上手く進んでいれば『獄炎薔薇竜カタストローフェ』単体と、そうでなければボス+配下との戦いになります。
●第三章
お茶会が出来ます。薔薇風味のアイスとお茶が楽しめるでしょう。
また、開拓された『ラクトパラディア』を歩く事も出来ます。何があるかは三章の序文で紹介します。
●参考程度の前回
つめたいらくえん(https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=13880)。
以上です。それでは、ご参加お待ちしています。
第1章 集団戦
『迷わせの森』
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POW : 絡まった枝の迷路
戦場全体に、【互いの枝を絡ませて作った壁】で出来た迷路を作り出す。迷路はかなりの硬度を持ち、出口はひとつしかない。
SPD : 絡まった枝の迷路
戦場全体に、【互いの枝を絡ませて作った壁】で出来た迷路を作り出す。迷路はかなりの硬度を持ち、出口はひとつしかない。
WIZ : 絡まった枝の迷路
戦場全体に、【互いの枝を絡ませて作った壁】で出来た迷路を作り出す。迷路はかなりの硬度を持ち、出口はひとつしかない。
イラスト:麻風
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●ししるいるい
アイスの果実の生る森。獄炎薔薇竜の支配下に置かれ、新たに生えた枝々によって迷宮と化したそこに踏み込めば、地面に転がるピーノ君達がそこかしこに見つかるだろう。
「ハァ……僕はもうここまでのようデスヨ……」
そのうちの一つから響く、力無い嘆き。しかしその身に傷は無く、戦い破れ力尽きたというわけではないらしい。
「別に僕が頑張らなくてもイイヨネー」
「はぐれちゃったものは仕方ナイヨー」
……最初は六人一組で挑んだ彼等だが、迷宮によって分断された結果、いやになって皆サボりはじめたものらしい。
「歩くの疲れマシタ……」
寝息が聞こえる――。
月舘・夜彦
【花簪】
アリスとアイス、一字違いですね
それより死んで……ません、安らかに眠っています
オオカミ殿と協力してピーノ殿達を探しましょう
私も視力にて木々の隙間から確認、聞き耳にて呟きを拾って捜索
何処へ行こうとも木々に邪魔されて探すのも一苦労ですね
やはり手当たり次第木々を斬り倒してしまうのが近道なのでは……?
ではオオカミ殿、私が木々に斬り込みを入れますので
脆くなった所を一気に叩いてください
力には自信があるのでしょう?期待していますよ
抜刀術『陣風』の広範囲にて2回攻撃併せ鎧無視・砕き
丈夫に出来ているのならば鎧も同然、この刃に斬れぬ物無し
見つけたピーノ殿は、最悪おんぶして一ヶ所に集めましょうか
ジョン・フラワー
【花簪】
アリス! アイス?
何者かなんて些細な問題なのさ。そうだろうアイスなアリス!
アリス……? し、死んでる!
オオカミジョークは軽めにしてアリスたちを探そう!
オオカミのお耳が大きいのはアリスの声をよく聞くためだよ!
そしてオオカミの声が大きいのは遠くのアリスを呼ぶためさ!
アリス! どこで寝ているんだい!
返事したら迎えに行くよー!
木が多いけど叩いたらどいてくれるかな?
はさみでちまちま切ってたら凍えちゃうよ! 斧を持ってくればよかったね!
火をつけたら僕らまで燃えちゃうし、地道にやるしかないのかも
簪のアリスの持ってる刀と僕のパワーが合わさればすっごく切れると思わない?
力には自信があるんだ! 力にはね!
●花咲く道
「さーて、アリス達はいったいどこに居るのかな?」
「なるほど、あまり視界はよくないですが……」
先行し、辺りをきょろきょろと見回すジョン・フラワー(まごころ・f19496)に、月舘・夜彦(宵待ノ簪・f01521)がゆっくりとした足取りで続く。木々の作った迷宮の中、探し物に勤しむ必要があるわけだが。
「見つけてあげるにはお邪魔虫がたくさん? 声が聞ければ話が早い?」
「そうですね、ではお任せできますか、オオカミ殿?」
「もちろんだとも、アリスが僕を待ってるからね!」
オオカミのお耳が大きいのは、アリスの声をよく聞くためで、オオカミの声が大きいのは遠くのアリスを呼ぶためだ。童話の中のオオカミは吠える。
「アリス! どこで寝ているんだい! 返事したら迎えに行くよー!」
大音声が森の中にこだまして、耳をそばだてるジョンと共に、夜彦も耳を澄ます。
「アリスじゃないデスヨー」
「でもこっちにイマース」
「……居ましたね」
「向こうかな?」
かすかに届いた返事を二人で捕まえて、声の方へと向き直る。その先は、両手を大きく広げたように、木々が行く手を塞いでいるわけだが。
「アリスはきっとあの先だね! 道は繋がっているのかな?」
回り道の必要があるように見えるが、と夜彦は思考する。だがこの邪魔な木々が、目的の場所まで素直に通してくれるとも思えない。
「やはり手当たり次第木々を斬り倒してしまうのが近道なのでは……?」
「でもはさみでちまちま切ってたら凍えちゃうよ! 火をつけたらあったくなるしアリスも僕等もハッピーかな?」
「いえいえ、火に巻かれたら私達も危ないですよ」
「やっぱりかい? いっそ斧を持ってくればよかったね!」
「確かに、斧はありませんが……」
独特のテンポで喋り続けるジョンの言葉に、夜彦は特に苦も無く相槌を打っていく。恐らくは慣れだろうか、それに言っていること自体は状況に即している。平たく言えば必要なものは、鋭い刃とへし折る力だ。
「そうだ! 簪のアリスの持ってる刀と僕のパワーが合わさればすっごく切れると思わない?」
「なるほど。ではオオカミ殿、私が木々に斬り込みを入れますので、脆くなった所を一気に叩いてください」
淀みなく決まった方針に従って、夜彦は佩いた刀に手を伸ばす。目指す方向は分かっている。後は邪魔な障害物を、極力多く片付けるまで。
鞘を、柄を、順にその両手で捕まえ、踏み込む。
抜刀術『陣風』、二度連続で吹いた太刀風が、互いに枝を絡みつかせた木々の幹を撫でる。迷宮を形作るため丈夫に出来ているのなら、その樹皮は鎧のようなものだろう。けれどその程度、この刃は止められまい。
深く深く、刃で幹を斬り裂いてから、夜彦は既に鞘に戻っていた刀から手を離した。
「――力には自信があるのでしょう? 期待していますよ」
「良いだろうとも見ていてよ! 力には自信があるんだ! 力にはね!」
ふと笑って、同行者へと声をかける。どこか勢いで生きている節のあるこのオオカミは、気分が乗るほど良い仕事をする。
「さー、アリスのとこまで一直線だ!」
夜彦のそれとは対照的に、技術もへったくれもないジョンの一撃が、迷宮の木を傾がせる。
「そーれっ!」
続けてさらにもう一撃。夜彦の斬撃を切り口に、みしみしと音を立てて、その木はへし折れ、倒れていった。
二人がかりの伐採作業を数度繰り返し、彼等は先ほど聞こえた声の主を発見した。雪の積もる地面に、転がった丸い影が二つ。
「し、死んでる!」
「死んで……ません、安らかに眠っています」
すやすやと寝息が聞こえる。まあ冗談はともかく、と近づいて、ジョンはそのピーノ君を揺り起こした。
「やあアリス、いやアイス? 身体の冷たいアリス、目は覚めたかな、風邪引いてない?」
「猟兵さんデスカ? アリスじゃなくてピーノ君です、よろしくお願いシマスヨー」
「うんうんよろしくね、アイスのアリス! 僕とお茶会する?」
「ワーオ話を聞かないタイプですネ……?」
早速全てを投げ出して二度寝に入ろうとしているピーノ君に、夜彦も歩み寄って声をかけた。
「無事のようで何よりです、ピーノ殿」
歩くのを渋るピーノ君達をどうにか背負って、二人はさらに迷宮の先へと向かっていった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
大空・雷華
【SPD/共闘、絡み歓迎】へぇ、ドラゴンか。こりゃあ相手にとって不足はねぇな。
…っておいおい、住人たちはなんだか呑気だなあ。
俺たち猟兵がなんとかしなきゃな。まずは迷宮の木をなんとか
すりゃいいんだな。おっしゃ、壊しまくるとするか!
(妖刀「雷纏」を構え)俺の身体に!宿れ迅雷!ライジンインストール!
妖刀から発せられる雷を身に纏って雷と斬撃で木をなぎ倒そうとするぜ!
おーい、ピーノ君?いるかー?いたら返事しろーい!
見つけたら事情を話して協力してもらうとするぞ。
俺たちが助けてやるから、協力してくれ。一緒にこの国守ろうぜ1
冴島・類
敵襲ですか
美味しかったお土産の礼に、また
あのほわほわしたおとぎの国に
獄炎薔薇……
華麗なのか厳ついのか判断に悩む相手だな
ともあれ
ピーノ君達を集めに
近くに他の猟兵さんいれば協力
絡まる枝葉の攻撃は
瓜江に愛刀渡し薙ぎ払いと引きつけさせ細いのは伐採
力強い、太いのは
糸で絡めて焼ききれたら
連れのヤマネ
灯環に、此方が戦ってる間に木々の隙間を縫って
ピーノ君達がいないか探すの協力頼み
見つけたら、応援しながら
他の子らと合流目指さす
諦めるのは早い!
あの竜に陣取られたら
マッサージチェアも、快適になった場所も使えません
疲れが癒されないんですよ?
この先、のんびりする為に
今集合、です!
ハートか星ピーノ君を探し
集まり次第伐採だ
●稲妻と炎
森の中程から見上げれば、その先に居る竜の姿も、その片鱗程度は望めるだろうか。
「このほわほわしたおとぎの国に獄炎薔薇……」
華麗なのか厳ついのか、似合うのか似合わないのか。判断に困るな、と冴島・類(公孫樹・f13398)が呟く。
「何にせよ、相手にとって不足はねぇな」
丁度そこに行き合った猟兵、大空・雷華(大空の雷神・f21865)がそれを聞いて、類の方にも同意を求める。何しろおとぎの国のドラゴンだ。強敵だと相場は決まっている。
「その意気デスヨー、がんばってくだサーイ」
類の足元に転がっていたピーノ君の声援らしきものに、雷華は苦笑を浮かべた。
「おいおい、当事者だってのになんだか呑気だなあ」
「こういうタイプなんですよね、この国の住人達は」
類も同じような調子で返しつつ、足元に寝転ぶピーノ君へと視線を合わせた。
「諦めるのは早いですよ、あの竜に陣取られたらマッサージチェアも、快適になった場所も使えないでしょう」
「エーそれは困ります。……でも疲れちゃったンデスヨネー」
「疲れを癒す施設も使えないんですよ? 良いんですか?」
「ウー……」
唸る本人も理屈は分かっているようだが……そんな説得の様子を見て取って、雷華もその傍にしゃがみ込む。
「俺達が助けてやるから、協力してくれよ。そっちの協力がないと俺達も苦戦しそうなんだ」
「そ、そうなんデスカー……?」
「ああ、そうだ。なあ、一緒にこの国守ろうぜ?」
事情の方も伝わった。ピーノ君側が言い訳できない状況なのも相まって、渋々ながら彼が動き出す。
「うう、お休みシタイのにー……」
「この先、のんびりする為に、今動きましょう」
類のとどめの言葉に促されて、ピーノ君はよたよたと立ち上がった。
「よーし、この調子で頭数揃えるか」
説得を頼めるか、という雷華の質問に、立ち上がったピーノ君が頷く。とりあえず、似たような状況のピーノ君を確保できれば、仲間同士で話を通してくれそうだ。
雷華の方もそれに満足気に頷いて、次の一手に移った。
「おーい、ピーノ君? いるかー? いたら返事しろーい!」
「ハーイ」
「君はもう大丈夫だから、待ってようね」
彼等の真後ろで声を上げたピーノ君を類が押さえる。すると、微かに。
「……今の聞こえたか?」
「向こうだね」
聞こえた声の方へ、二人は同時に視線を向けた。
絡み合い、行く手を塞ぐ枝の向こう。その壁を抜けた先に居るのなら。
「見てきてくれるかな?」
類の声に応えて、彼の肩に乗っていたヤマネが一匹、枝の隙間を抜けて走って行った。
「それじゃ、こっちは道の確保だな」
そう言って、雷華が妖刀『雷纏』を引き抜く。そして、その名の意味を示すように――。
「俺の身体に! 宿れ迅雷! ライジンインストール!」
ユーベルコードを発動、刀身から生まれる雷が、彼の全身を走る。バチバチと所々で雷を弾けさせながら、雷華は高速の一歩を踏み出した。
目にも止まらぬ速度で、邪魔な木々へと接敵、同時に振り切られた刀から、紫電が迸る。斬撃による裂傷の上から、のたうつ竜のように走る雷が爪を立てた。
焼け焦げ、抉れた傷を晒す木々に、絡繰糸が絡みつく。
「こちらも手伝いましょう――燃えよ、祓え」
『業滅糸』、類の指から伸びた糸から炎が生み出され、絡み、食い込んだ木の幹を牙にかける。
傷口を押さえるように伸び来た枝々を、今度は類の刀を手にした人形、瓜江が迎え撃ち、木の幹に届く前に斬り落とし――。大きく抉られた上に炎に焼かれ、みしみしと音を立てて、その木は中ほどから折れていった。
「では、先へ」
「ああ、待ってろよ次のピーノ君!」
歩みを止めぬまま、二人は次なる目標の場所へと進んでいく。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ゼン・トキサカ
おやおや
バラけるとサボってしまうなんて
困った子たちだねぇ…
UCを使って、その辺りにあるオブリビオン以外の石や何かを
あるだけオモチャの兵隊に変換し
迷路の中に向かわせて、ピーノ君たちを探させよう
オブリビオンの木を切って倒しながら進ませて
見つけたら保護していくよ
揃うまで動かないようなら、仕方ないから兵隊に運ばせようかな
ピーノ君が6人揃ったら
彼らに頑張ってもらいながら
迷路の先へと進もう
兵隊にも手伝わせて
迷路の木をなるべく切り倒して壊しながら進むとしようか
ピーノ君たちが疲れたら、時々紅茶を淹れて休憩させてあげるのもいいかな
…融けてしまったら困るけど
熱いものがダメなら、アイスティーにしようかな
●ちょっと一休み
「バラけるとサボってしまうなんて、困った子たちだねぇ……」
得られた情報から、完全にサボる体勢に入っているであろう愉快な仲間達の様子を思い、時計ウサギであるゼン・トキサカ(メイソウラビリントス・f19411)はそう溜息を吐く。とはいえ、不思議の国を渡り歩く彼ならば、その手の『怠け者』の相手も慣れたものだろう。
「まずは、彼等に任せようか」
謳い上げるは『撥条式劇場遊戯』、その効果によって、そこかしこに落ちている氷の塊が、小さなゼンマイ仕掛けの兵隊へと姿を変えた。
「透明な氷の兵隊か……なかなか面白いものができたね」
透き通った小さな兵隊達に命令を出し、ゼンは隊列を組ませて迷路の方へと行進させた。
急激に頭数は多くなったが、これらすべてを操作するのは骨が折れる。手分けするのを諦めて、ゼンは兵隊達と共に森の中を行く。
「さあ、工事の時間だ」
早速出てきた袋小路に、ゼンは氷の兵隊達を向かわせる。森を形作る木々の、自発的には攻撃しようとしてこない特徴を生かして……彼の操る人形たちは、一斉に敵の足元へと向かっていた。
ノコギリのような氷の刃をそれぞれ手に、兵隊達は木々の伐採を開始、迷路の壁に、小さな道を付け足していく。
サイズ差によるものだろう、伐採にはなかなか時間がかかってしまったが、前へ、奥へ、彼等の歩みは続いていく。
その後ろを歩くゼンは、そこで地面に突っ伏した黒い影を発見、迷路の先で彼とコンタクトを取った。
「君達がこの国の住人かい? 眠っていて良いのかな?」
「よくはないんデスケドネー」
ぐずぐずと地面を転がっていたその個体は、少しだけ気まずげに、ゼンの方へと視線を送った。
「でもデスネー、僕達はもう迷宮の中を散々歩かせられて……」
先ほどまでの苦労を思い出すように、ピーノ君が目を瞑る。出てくる思い出は、きっと明るいものばかりではないのだろうが。
「……ぐう」
「えっ、君、続きは?」
目を瞑ったのがよくなかったか、限界を迎えたピーノ君はそのまま寝息を立て始めていた。
「……仕方ないねぇ」
兵隊達が揃った歩調で進み、皆でピーノ君を持ち上げる。
とりあえず、この子が起きるまではこのまま進むことになった。
「おー、運んでくれたんデスネー」
それからしばし、ようやく目を覚ましたピーノ君が楽しそうな声を上げる。
ゼンの方はと言えば、とりあえず一時休憩だとして、紅茶を淹れていた。
「君も飲むよね?」
「ワーイ、アリガトー」
雪でできているかのような彼の姿を思えば、熱い飲み物は危険なのではと、そんな考えも頭を過るが。
「熱いものがダメなら、アイスティーにするけど」
「お気遣いナクー」
そんな風に言葉を交わして、彼等は一時の平穏を享受する。一休みしたら、また木々を切り開いて、先に進んでいこう。
成功
🔵🔵🔴
紅月・美亜
【共闘希望】
成程、これは私向きの案件だ。まあ、私自身は一歩も森に入る必要はなさそうだが。
「Operation;UNCHAINED、発令だ」
空を飛べればスルーなのだろう? ならば邪魔する者は居まい。複数の早期警戒機を飛ばして森の情報を掌握し、味方にも伝える。
UNCHAINEDは最低限の武装しかない代わりに、情報収集能力は非常に高い。光学、熱、動体、魔力探知、超音波探査等々多彩なセンサーで迷宮を丸裸に出来る。
正確なナビゲーションがあれば迷宮などただの道だ。ピーノ君も十分集められるだろう。
「レミングスのような物だな。これは中々に楽しい」
パウル・ブラフマン
本日もツアーの視察がてら
やってきました、噂のラクトパラディア~♪
…って、なんか森が普段の感じと大分違うっぽい?
とりまあの塔を目指しますか☆
行くよGlanz―UC発動!
【運転】テクを活かして迷わせの森を爆走しながら
Krakeを展開し
【野生の勘】的にオウガっぽい樹の根に
炸裂弾を撃ち込んでいくね!
ヒャッハーしてる最中に
ピーノ君達を目撃したら【コミュ力】全開で声掛けを。
第一国民さん発見~♪
ここピーノ君達の大切な居場所じゃん?
取り戻すお手伝いをしたいんだ。
歩くのメンドい?大丈夫!
Glanzで目的地までお送りしちゃうよん☆
なんといっても
オレはエイリアンツアーズの運転手だからね!
※アドリブ&絡み&同乗歓迎!
●空からの光景
「成程、これは私向きの案件だな……Operation;UNCHAINED、発令」
……まあ、自身としては一歩も森に入る必要はなさそうだが。
そんな考えを浮かべた紅月・美亜(厨二系姉キャラSTG狂・f03431)は、早期警戒機を数機、迷宮化した森の上空に浮かべた。
「空を飛べればスルーなのだろう? ならば――」
警戒機の得た情報を、リアルタイムで五感で受け取る。それだけでもかなりの負担ではあるのだが。
……事前情報通り、密に絡み合った枝が上方を覆っている箇所が多く、光学系はほとんど意味がない。センサーの類にしても、そもそもがオウガであり自ら動く木々と、ほとんど自分から動こうとしないピーノ君、常に形を変え続ける迷宮という複合状況から、有用な情報を拾い上げるのは困難を極めた。
とはいえ、他の猟兵達が動き始めることで、その状況は徐々に改善の兆しを見せ始めている。迷宮の木が切り倒されることで、スポット的にそこの情報が上から得られるようになるのだ。分かるのは主に、その箇所の迷宮の構造と、その場所のピーノ君の有無。
「ああ、でも……」
彼女は眉根を寄せる。偵察機が見た光景は、その場で木を切り倒した猟兵も当然見ているだろう。……ならば、この情報を渡すべき相手は?
検討の過程で彼女は認識する。状況の主題は迷宮攻略と言うより、迷宮の木々と戦う集団戦と見るべきなのだと。
そして、それならば十分にやりようはある。
「ふむ――キミ、私はキミの事を上手くナビできると思うんだが、手を組まないか?」
一旦急降下した警戒機は、彼と協力することにした。
そう、他の猟兵が今どこで戦っているのかわかれば、より有効な道筋を提示できるはずなのだから。
●アリスラビリンスツアー企画
ツアーのコースとしてアリスラビリンスにも手を伸ばしてきた企業、エイリアンツアーズより、パウル・ブラフマン(Devilfish・f04694)はこの氷菓の国の下見も兼ねて参戦した。
「はい、やってきました、噂のラクトパラディア~♪」
銀に輝く宇宙バイク、Glanzを駆り、アイスが生ると噂の森に向かう。そこは果実の代わりにアイスが実り、色とりどりの美しい光景が見られるという。
「……アレ、何かぜんっぜん話と違うんだけど?」
そもそも見られる木の種類が違う。まずはオウガを何とかしないと下見にもならない。そう判断した彼は、バイクを高速戦闘可能な形態へと変形させた。
「はいはい道開けてね~♪」
迷宮化した状態にも関わらずバイクはいつもの速度で疾走し、邪魔な木には炸裂弾が撃ち込まれていく。巧みな操作で迷宮の木をへし折りながら進む彼の元に、他の猟兵――美亜の操る無人機が下りてきた。
「――そう? 案内してくれるならお任せしちゃうよん☆」
「ああ、他の猟兵達の位置から、一番効率の良い道を――」
そうして進むことしばし、道中で一つ、黒い影を見つけて、パウルは車体を横倒しするようにして急制動をかけた。
「おっと、第一国民さん発見~♪」
彼としては初遭遇、影の主は、もちろん絶賛遭難中のピーノ君である。
挨拶を交わしたそのピーノ君は、地面に寝転がったままパウルの方に手を振っている。
「ここピーノ君達の大切な居場所じゃん? 取り戻すお手伝いをしたいんだけど……」
「ワーイ、ありがとうゴザイマース」
返事は良いが、立ち上がる気配がない。そんな相手の様子を察して、パウルはエサを用意することにした。
「あー、歩くのメンドい? 大丈夫! Glanzで目的地までお送りしちゃうよん☆」
「えっ、それに乗っても良いんデスカー?」
楽しそう、という内心を全身で迸らせる愉快な仲間達の様子を満足気に見て、パウルは手招きして宇宙バイクの上に乗せる事にした。
お客様兼現地のガイドを後ろに乗せて、白銀の車体が、再度走り出す。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
華折・黒羽
オズさん(f01136)と
こんなにも早くまた来ることになるとは思いませんでしたね
…さて
オズさんの掛け声と共に現れた鼓笛隊の賑やかさに
つられ動くにおいを辿ろうと鼻をすん、と
人よりも利く己の獣ゆえの特性活かし
前に出会ったピーノさん達であれば尚良いけれど
この迷路の中贅沢も言ってられない
似たにおいを辿り道進む
こっちです、オズさん
誘導しながらも斬り倒されてゆく木々は氷花織の氷で凍らせ
新たな迷路作りを阻む狙い
合流出来たなら、ご挨拶
続け氷花でピーノさん達の攻撃に加勢しながらも
勢揃いした規則正しい音の行進とその動きに
くすり隠れて綻び
あ、待ってください…!
駆け出す脚は揺れる尾添えて
はぐれぬ様に、ついて行こう
オズ・ケストナー
クロバ(f10471)と
このどこかにピーノくんたちがいるんだね
ガジェットショータイム
現れたのはおもちゃの鼓笛隊
たのしそうにしてればピーノくんたちが気づいてくれるかもっ
それぞれにカラフルな風船を結んで
とおくからでもきっと見えるよ
クロバ、においをたどれるの?
すごいっ
クロバがこっちっていうならぜったいだよ
あとはこの斧で切っていくだけだね
今は迷路であそんでいられないもの
凍った木を砕くように
ピーノくんみつけたっ
ねえ、いっしょに木を切ろうよ
まずは六人あつめたいね
いっしょに迷路からだっしゅつしよ
そーれ、ぴっぴ、ぴっぴ
クロバの声に立ち止まって
クロバもいこっ
と笑顔で
鼓笛隊の音に合わせて楽しく道を切り開いていくよ
●進め鼓笛隊
「こんなにも早くまた来ることになるとは思いませんでしたね」
「そうだね、この前戦ったばっかりなのに」
華折・黒羽(掬折・f10471)の言葉に、オズ・ケストナー(Ein Kinderspiel・f01136)が頷いて返す。氷菓の生る森と言えば、先日二人がオウガを迎え討った場所でもある。その後のピーノ君達による修復作業と、今回生えてきた迷宮の木々のおかげで、その時の戦闘痕は少しも見えなかったけれど。
「このどこかにピーノくんたちがいるんだね」
「そのはずです。……それでは、オズさん」
「うんっ」
黒羽の言葉に合わせ、オズが今回のガジェットを展開する。ガジェットショータイム。それにより現れたのは、玩具のような人形たちだった。それぞれ揃いの衣装と、別々の楽器を手にしたそれは、小さな鼓笛隊である。
「たのしそうにしてればピーノくんたちが気づいてくれるかもっ」
それぞれの背中に風船も結んでやって、何だか目立つ事になった一団は速やかに整列する。
「ぜんたい、すすめーっ」
オズが指揮棒のように指を振ると、それに従って、人形達はそれぞれ楽器を打ち鳴らしながら歩き始めた。
ピーノ君達は基本的に怠け者だけれど、楽し気な事を好むのも何となくわかっている。こうしてお祭り騒ぎを演出してやれば、何か反応があるかも知れない。
そんなことを考えながら、黒羽は空を眺めるように顔を上げた。すん、と鼻を鳴らして、風の匂いを探る。
「クロバ、においをたどれるの?」
「ええ、動く気配が探れると良いのですが……」
ふむ、と今度は頭の位置を下げて、足元近くの匂いを探る。こういう時に一度訪れていた経験が生きてくる。身長が低い彼等の、嗅ぎ覚えのある匂いは、こちらの方が色濃く残っている。
「少なくとも、一団がこっちに向かったようです。オズさん」
「ほんとに? すごいっ」
行きましょう、と促す黒羽に合わせて、鼓笛隊がその向きを変えて、再び行進を始めた。
そうして太鼓と笛のリズムに合わせて規則正しく歩む一団は、やがて大きく両側に枝を広げた木の前にやってくる。
「行き止まりだね」
「すいません、匂いを追いかけるのに失敗したかも……」
「ううん、クロバがこっちっていうならぜったいだよ」
惜しみなく信頼を表に出して、オズはおもむろに斧を手に取った。黒羽の感覚が正しいならば、おかしいのは道が通じていないこの迷宮の方だ。
「えーいっ!」
渾身の大斧が炸裂。数回も叩き付ければ、邪魔な樹木が傾いで倒れていく。
「やった、開通っ」
「はい、匂いはこの先に続いています。行きましょう」
少しこそばゆいような感覚を胸に、黒羽は符を自らの剣に貼り付ける。『氷花織』、氷属性を付与された刃で残った切り株を突けば、咲き乱れる氷の花がその断面を包み込んだ。
こうしておけば、再生をかなり遅らせることができるだろう。
「クロバ、いこっ」
「あ、待ってください……!」
進み始めたオズの鼓笛隊を追って、黒羽が駆け出す。その尻尾は自然と軽く揺れていた。
「ピーノくんみつけたっ」
その行先で見つけた愉快な仲間達に、オズと黒羽が駆け寄る。
「観覧車のお二人デスネー、またお会いデキテ光栄デスヨー」
ちょこちょこと手を振るそのピーノ君に視線を合わせるように、オズの顔が傾く。何しろ相手は寝転がったままなのだから。
「ねえ、ピーノくん、いっしょに木を切ろうよ」
そして迷宮からの脱出を提案するオズに、ピーノ君は思い悩むように目を瞑った。
「でもー、それって大変じゃないデスカー?」
「そうかも知れません。ですが、この森をこのままにはしておけないでしょう?」
黒羽の言葉に頷いたピーノ君の顔には、まだちょっと葛藤が残っているようなので。
「それに、僕等と一緒ならきっと楽しいよ?」
そう言って、オズは鼓笛隊の演奏と行進を再開させた。楽し気なリズムが森に響く。促すように、誘うように。
「さ、いこっ」
「ウウ、わかりマシタヨー」
オズと黒羽の手を取って、そのピーノ君は引っ張り上げられるままに立ち上がった。
さて、それではこの調子で。人数の増えた一団は楽し気なリズムと共に、さらに迷宮を進んでいった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
リグ・アシュリーズ
くーちゃん(f01176)と一緒に
ホント、着込んでても震えそうね……!
でも、素敵な世界だもの。頑張って取り戻しましょ!
(バニラアイスひょいパク)
息を合わせてピーノさんを探すわ!(チョコミントもぐ)
黒剣で砕いた石をふりまき、
迷宮の木々だけを狙ってキラキラ煌く『砂礫の雨』。
頭上からの声には地上からの捜索結果を返して連絡を取り合い、
残った幹を剣でへし折って再生を遅らせるわ!
(衝撃でラムレーズン落ちて悲しい目)
助けに来たわ!とピーノさんにお声がけ。(口端にチョコ)
でも、竜を倒すにはもっとテンション上げ上げで行かなきゃ!
あなたたち皆の力が必要なの。
合流して一緒に戦いましょ!(知覚過敏でうずくまる3秒前)
朧・紅
リグさん(f10093)と一緒に
紅人格のみで参加
アドリブ歓迎
うやぁ…さっむいのですぅ…!
ですです
僕たちなら出来るです
あ、僕も!
(チョコアイスぱく
70枚のギロチン刃を丸いチェインソーに変化、高速回転させて広範囲攻撃伐採しながら
僕は手元の刃に乗って上から出来るだけピーノ君探してリグさんに伝えて手分けして集めるです
6人集まるでしょか
ほわ、下がキラキラ
アイスの実る木々は傷つけないのですよ!
というか
もう少しぐらい良いですよね?
キャラメルパクうま
ピーノ君!
僕はこのおいしー世界が無くなっちゃうのイヤです!
おいしーは正義!
正義は僕らに!
一緒に戦うです!(頬にバニラ
…ってリグさん!?つまみ食いしすぎなのですよっ
●アイスは美味しいから
アイスが実るというだけあって、この国の気温は相応に低く、風は凍てつくほどに冷たい。防寒着の上から我が身を抱いて、朧・紅(朧と紅・f01176)とリグ・アシュリーズ(風舞う道行き・f10093)は揃ってそれを実感していた。
「うやぁ……さっむいのですぅ……!」
「ホント、着込んでても震えそうね……!」
引き返すことを本気で検討したくなるような環境だが、迷宮のそこかしこに残る通常の『アイスの生る木』は、カラフルに、平和な国を連想させる。それは彼女等二人のまだ見ていない、この国の元の姿。
その内の一つ、白く輝くバニラアイスの実を慈しむようにリグが撫でる。
「でも、素敵な世界だもの。頑張って取り戻しましょ!」
そのままぷちっともいで、口に放り込む。
「はい、きっと僕達なら出来るです!」
紅はチョコアイスを選んで、手にしたそれを齧り取った。おいしい。
「――赤く紅く、鮮烈に斬り刻むのです!」
『紅朧月』。紅の手にあった一対のギロチン刃、その複製が、彼女の周りに召喚される。紅の意のままに動く刃の列は、整列し、円を描き、チェーンソーさながらの隊列を組む。列を成したそれを高速回転させ、紅は木々の伐採に走った。
彼女自身は手元に残した刃を足場に、空中へとその身を浮かべる。絡み合う枝の作る天井も、刃の群れで裁断し、幹を両断してやればその形を保ってはいられない。
崩れた枝の間を抜けて、木のトンネルから上へ抜けた紅は、眼下の光景に溜息を――。
「いや、あんまり眺めはよくないですね……」
前情報通り、空へ抜けたところで木々の天井が見えるばかり。遠景は綺麗かもしれないが、それは目下挑んでいる迷宮に対してほとんど意味を成さないだろう。
「リグさーん、このままだとほとんど見えませーん!」
「ええ……そう、ちょっと待ってねくーちゃん!」
上から届いた紅の声に、舐めていたチョコミントアイスを一息に口に入れて、リグはその手の黒剣を振りかぶった。刃と鈍器の中間のような特徴を持つくろがねの剣が、転がっていた石の塊を粉砕する。
『砂礫の雨』、その周りの雪と氷ごと破砕された石片が、さながら散弾のようにオウガたる木々へと向かい、無数の牙をその身に突き立てていく。
「ほわ、下がキラキラ……」
紅が思わず呟く。石片に混じった氷が光を反射し、リグの攻撃はキラキラと輝いて見えた。実際に下で見ていると、石片や粉塵でそれどころではないのかも知れないが。
先の一撃でずたずたに引き裂かれた幹へと追撃を入れて、リグが目ぼしい木々をへし折っていく。すると、木々の天井にもいくつか引き裂かれるように穴が開いた。
「どう、これで見える―?」
「ちょっと先の方まで見えるようになりましたー!」
上からの返事に満足気に頷きかけたリグは、さっきの一撃で、あとで食べようとしていたラムレーズンのアイスを撃墜してしまったことに気付き、しょんぼりと肩を落とした。
「どうかしましたリズさーん?」
「な、何でもないよ、何でも……!」
なら良いのだけど、頷いて、紅はキャラメル味のアイスを見つけてそちらに手を伸ばした。これもおいしい。
そうして上下で声を掛け合いながら、木々の迷宮を切り開き、二人は倒れていたピーノ君を発見した。
「居ました! ピーノ君!」
「助けにきたわ!」
降りてきた紅と、駆け寄ったリグが揃ってその顔を覗き込む。
「ワーイ助けが……あれ、随分とお楽しみデシタ?」
「え、何の事ですかね?」
「全然分からないわ!」
ピーノ君の視線から色々と察して、二人は自分の口元に付いたアイスの跡を拭い取った。
「僕もアイス食べながら待ってれば良カッタ……」
ぐったりと倒れる愉快な仲間に、紅はちょっと良心の呵責を受けながら言葉を重ねる。
「た、確かにアイスはおいしかったのです! でもだからこそ、僕はこのおいしー世界が無くなっちゃうのイヤです! ピーノ君もそうではないですか?」
「うう、アイス食べられなくなるのは……」
「でしょう!? おいしーは正義! 正義は僕等に!」
さあ一緒に戦おう、という声に、少しだけピーノ君が身じろぎする。あと一押し、か。
「そうよ、この国を、アイスを守りたいという気持ちは一緒だと思うの……」
ふ、と気持ちを慮るように目を瞑って、リグはピーノ君から背を向けるようにして数歩歩く。
「今はあなたたち皆の力が必要なの、私達は、きっと同じ望みに手を伸ばせるはず」
言いつつ、迷宮の向こうの竜を指差すように、彼方へと手を伸ばす。――あ、そこの赤いアイスが取りたかったんだな、と紅は気付いた。
「だから、合流して一緒に戦いましょ!」
「猟兵サン……!」
その呼びかけに応えて、ピーノ君は気合を入れなおすように頷き、立ち上がった。
「わかりマシタ! こうなったら是非トモ一緒に――猟兵サン?」
「あ、ちょっと待ってくださいねー、リグさんアイスが歯に沁みたらしくって……」
「猟兵サン……」
うずくまるリグの肩を叩いて、紅は次なるピーノ君が待つであろう迷宮の先へ、視線を移した。
つまみ食いしすぎなのですよー。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
リダン・ムグルエギ
マジもう無理…
ピーノくんが居ないとマッサージチェアが動かないなんて…
というわけでピーノくんを探しに参加
ぶっちゃけ直接攻撃する手段が無いから
木を全然倒せないのよね
というわけで、歩くわ
親戚の作ったリアル脱出ゲームで鍛えた足の見せ所ね
仕事は事前に済ませて置いたわ
「自由にお取りください」の看板と一緒に色んなサイズの防寒具を置いて来たからね
防寒能力と耐火性を高めた上、見たものの視覚と触覚を惑わし
「距離感を近く」感じさせ「触れてないのに触れてると勘違いさせる」催眠模様を仕込んだわ
これで木々が「枝を絡ませて壁を作る」のを邪魔するの
それはそれとして
歩くの疲れマシタ…
ピーノくん見つけたら足揉んでもらお…あと膝枕
九之矢・透
お!ちょっとぶりだな
知ってるヤツらのピンチ、駆け付けない訳にはいかないな!
……ピンチ、だよね?これ
まずはピーノ君たちを見つけて、六人組にしなきゃな!
ハートのヒトも見つかると良いんだけど
迷路の足跡を調べながら「追跡」していこう
足跡が見つかったら、その方向に『エレメンタル・ディザスター』
氷の竜巻で木々を切っていく
向こう側にピーノ君が居ないか「聞き耳」でチェックしてからな!
ピーノ君を見つけたら守りながら一緒に移動
手を引いたり、声をかけたりして「鼓舞」
度々木々を攻撃して道を拓くよ
ほら、いくぞ
こんなのに好き勝手されたらアイスも食えなくなっちゃうよ
折角の色々作った国だろ、頑張って守ろうよ?
おーきーてー!
●君に託した
エレメンタル・ディザスター。生じた竜巻は、周辺の氷片も巻き込み、その中心に置かれた樹木を軋ませる。弾丸のように吹き荒れる氷が表皮を抉り、風が枝を掴んでねじり切るようにして幹を砕いた。
「所詮、自然にゃ敵わねえってトコだよな」
伸ばしていた枝ごとその木は倒れていき、術の主である九之矢・透(赤鼠・f02203)の前に、新たな道が開いた。
「お、やっぱり足跡が続いてる」
これまでと同様に、迷宮の中の足跡を探して、それを追っていく。短い歩幅の足跡はまずピーノ君のもので間違いないだろう。ついこの間、一緒に城の修復をしたり、観覧車に乗ったりした相手だ、彼等のピンチに手を貸さないわけにはいかないだろう。
「早く六人組にできれば良いんだけど……」
基本的には怠け者である彼等の事を思い出し、苦笑を浮かべた彼女は、足跡にひとつ別のものが混じったのに気付く。歩幅もサイズもピーノ君のものではない。別の猟兵だろうか――その答えは、すぐに出た。
「そ、そんな! 一体何があったんだ!?」
黒い防寒着のピーノ君に寄りかかるようにして、もう一人、猟兵が倒れていた。
「なあ、おいアンタ、大丈夫か!?」
慌てて駆け寄った透が、その猟兵を揺り起こす。目立った外傷はないようだが――。
「……あら、あなた開拓の時に見た子ね。合流出来て良かったわ……」
気が付いたか、薄く目を開けた猟兵、リダン・ムグルエギ(宇宙山羊のデザイナー・f03694)は、か細い声で話し始める。
「マジもぅ無理……もとい、悪いけどアタシはどうやらここまでみたいよ」
「そ、そんな、どうして――」
「詳しい事を話している時間はないわ。あなたにはこれを渡しておくから……有効に使ってちょうだい」
ふ、と辛そうに息を吐いて、リダンは持っていたそれ……一着の防寒着を透の腕に押し込んだ。
「これは……?」
「アタシが作った防寒着よ……。防寒性能はもちろん、耐火性にも拘ってみたの。それと柄は催眠模様になっているから、これを着ているだけで相手の距離感を狂わせることができるわ。ここの木々が枝を使って道を塞ぐ前に、駆け抜ける事が出来るはずよ……」
めちゃめちゃしっかり説明していった……? 途方に暮れる透の腕の中で、リダンの瞼がまた閉じていく。
「あ、アンタはどうするんだよ」
「ここに、置いていってくれて良いわ」
そんな、と言いかける透の言葉を遮るようにして、リダンは弱々しく微笑んだ。
「頼んだわよ。早く他のピーノ君を見つけてきて頂戴……」
がくりとリダンの身体から力が抜けて、彼女はピーノ君のお腹を枕にする形で倒れ伏した。
意識を失ったのだろうと判断し、透は使命感を新たに立ち上がる。
「よし……待っててくれよ、お姉さん。それからピーノ君――」
「ハーイ」
……。
「……起きてたのか??」
「アッ、ゴメンナサイ。静かにしてるように言われてたんデスケドー」
薄目を開けたところ、透が傍らにしゃがみ込んでいる上にガン見されていると気付いて、リダンはそっと目を逸らした。
「……アタシほら、直接戦闘って専門外なのよね」
「でもここまで来れたんだよな?」
「それはもう、この防寒着と、親戚の作ったリアル脱出ゲームで鍛えた足があるものね。でもさすがにここまで来るので疲れちゃって……」
ううん、と少し考える風にしたあと、おもむろに透は口を開いた。
「このまま、この森を放っておくわけにはいかないんだ。こんなのに好き勝手されたらアイスも食えなくなっちゃうよな?」
「あっ、正攻法? ピーノ君向けの説得をアタシにするの?」
「折角の色々作った国だろ、お姉さんの店だってある。頑張って守ろうよ?」
すやぁ。
「ああ、もうほら、おーきーてー!」
狸寝入りに逃げた一人をどうにかこうにか引っ張り起こして、彼女等は次のピーノ君を探して歩き始めた。
「歩くの疲れマシタ……マッサージチェアが恋しい……」
「早いよ! もうちょっとがんばって!」
「疲れマシター」
「ピーノ君も!!」
なお、事前準備と現場対応が噛み合った場合、道中はとても順調に進む。この後の探索は驚くほどスムーズにいったという。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
誘名・櫻宵
【迎櫻館】
アドリブ歓迎
きゃー!白雪、千織、ヴォルフガング!
木にアイスがなってるんですって
素敵!女子会にぴったり!
けどその前に迷宮を何とかしなきゃ
ピーノ君達と合流して彼等にやる気出してもらいましょ
邪魔な木ね
伐採しちゃいましょ!
こっちであってるかしら?
どう、ヴォルフガング
何か聴こえる?
第六感を働かせながら
思い切り力を込めてなぎ払い木々を切り倒すわ
衝撃波と合わせ「散華」を放つ
白雪……中々に大胆ね!負けてられないわ
あたし壊すのは大好きよ!
合流したピーノ君にはお疲れ様のショコラをあげようかしら
千織の笑顔に合わせにこやかに接して誘惑(お誘い)よ
はやく元の森に戻して一緒にお茶会しましょ!
他の仲間も探すわよ!
鶴澤・白雪
【迎櫻館】
アドリブ歓迎
あくまで女子会って言い張るのね
まぁいいわ、お茶会目指して頑張りましょ
出口が1つしかないなら作るまでよね
この辺り一帯とは言わないけど焼き払いながら探したほうが楽かしら
炎を付与した属性の銃弾で広い範囲を壊しながら櫻宵の後に続くわ
頑丈な壁は全力魔法のUCでどうかしら?
寝息なり会話なり何か聞こえたら空中浮遊で空から様子を伺って来ようと思うわ
その方が見つかるんじゃないかしら
ヴォルフの言葉にちょっと笑って
いいでしょ。此処からなら狙撃も楽なのよ?
櫻宵と千織がいてくれると助かるわね
ピーノ君を見つけてもあたしは労いも説得も苦手だからみんなに任せるわ
3人とも応援してるから頑張ってちょうだい
橙樹・千織
【迎櫻館】
アドリブ歓迎
アイスのなる木だなんて不思議ですねぇ
ふふ、楽しいお茶会のためにも頑張りましょうねぇ
さて、森も管理が必要でして…不要な木は間伐するのですよ
増えすぎた木は周りに悪影響を与えますからねぇ
なんてふわほわ笑いながらUCで熔かし、
【破魔】の力を込めた薙刀で根元から【鎧砕き・なぎ払い】の要領で切り倒して進みます
皆さん頼もしいですねぇ
あら?皆さん何処に??
時折ふらりと一人別方向へ逸れたりしつつも、音を頼りに皆さんと一緒にピーノさん探し
ピーノさん達を見つけたら【礼儀作法・コミュ力】を活用してご挨拶
ふふ、皆さん可愛らしいですねぇ
よろしければこの後私達とお茶会はいかがでしょう?
ヴォルフガング・ディーツェ
【迎櫻館】
アドリブ歓迎
アイスの成る木、楽しみだね!
その前に男手として頑張ろ(3人の手で瞬く間に切り伏せられ燃え盛る木々を眺めて)…女子会ってこんな攻撃力高い会だっけ!?
ピーノくん達も回収しつつ出口を求めて探検だねー
UCで強化した『全力魔法』『範囲攻撃』を用いたルーン魔術でさくっと視界を確保しようか
24の秘跡、その内用いるのは死と再生を司るエイワズ
死の意を強め木々のみを枯死させ道を開こう
聞き耳でピーノくん達と思しき声を捉えたら3人にも伝えるよ
白雪の空中浮遊良いな、飛べるの楽しそう!
見つけたらさくっと回収
ぐだぐたしたい気持ちも分かるけどもうちょっとがんばろ!ほら、誘ってくれるレディ達もいる事だし!
●女子会開催予定地
どこからか手に入れてきたこの国の観光ガイドを手に、誘名・櫻宵(屠櫻・f02768)が仲間達に声をかける。
「きゃー! 白雪、千織、ヴォルフガング! 見て見て、木にアイスがなってるんですって!」
指さされたそれに目を通して、橙樹・千織(藍櫻を舞唄う面影草・f02428)とヴォルフガング・ディーツェ(影繰パラディオン・f09192)はそれぞれにその光景を想像して、笑みを浮かべた。
「アイスのなる木だなんて不思議ですねぇ」
「そんなものがあるのか、実際見てみるのが楽しみだね」
「でしょう? 素敵よね! 女子会にぴったり!!」
はしゃぐ櫻宵の様子に、鶴澤・白雪(棘晶インフェルノ・f09233)が目を細める。今更、そこを改めて指摘する気はないようだが。
「あくまで女子会って言い張るのね……まぁいいわ、お茶会目指して頑張りましょ」
「ふふ、そうですね。楽しいお茶会にしましょう」
千織もまたそれに頷いて、件の森の方へと向き直った。噂の『氷菓の森』はオブリビオンの支配下に置かれ、既にある木々の合間から生えてきた樹木で、迷宮と化してしまっている。
「……女子会、か。その前に男手として頑張らないとね」
ヴォルフガングがそう独り言ちた後ろで。
「この木邪魔よね」
「森の管理においても、不要な木は間伐するものですよ」
「つまり斬っちゃって良いのね?」
「増えすぎた木は周りに悪影響を与えますからねぇ」
櫻宵の問いに、ふんわりと笑みを浮かべた千織が答える。次いで、口を開いたのは白雪だ。
「この辺り一帯とは言わないけど、焼き払いながら探したほうが楽かしら」
「ま、大胆ね」
「元からある木まで燃やさないようにしてください?」
「……気を付けるわ」
なんとも物騒なやり取りの後に、櫻宵がヴォルフガングの方へと話を振った。
「こっちであってるかしら? 何か聴こえる?」
「今のところは何とも。まだ先の方に居るんじゃないかな?」
耳をそばだてた彼の返事は、ある意味「思い切りやって良い」というお墨付きのようなもので。
「――では、手前のこちらから」
『剣舞・燐椿』、千織の舞に従って、赤い椿の花が咲く。花を描く灼熱の炎は、触れた瞬間に、そこからオウガの体を焼き尽くした。
熱風と煙へと姿を変えた木々の先へ、白雪もまた構えた銃の引き金を引く。炎の属性を乗せた銃弾は、着弾地点にその赤を振りまき、その周辺を炙りだす。それだけでは焼き切れないような分厚い枝の壁には、『インフェルノ・ペニテンテ』、炎の嵐が差し向けられた。
「負けてられないわ、あたし壊すのは大好きよ!」
張り合うように告げた櫻宵は、炎のそれよりも赤い太刀を構え、思い切り薙ぎ払う。
『散華』、衝撃波を伴う一振りは、その切っ先の描く直線をなぞって、オウガである木々をまとめて切り払った。
「……女子会ってこんな攻撃力高い会だっけ!?」
ごっそりと削れて燃える森の様子を眺めて、ヴォルフガングが疑問符を浮かべる。手を出すまでもないように思えたところだが、とにかく。彼自身もまた魔術の印を描き出す。『調律・機神の偏祝』、精度を高めたルーン魔術、描かれしエイワズの司る『死』を、木々へと向ける。効果は単純かつ明確、枝を絡み合わせた木々が、その影響下に置かれて枯死していく。
「これで視界は確保できたかな?」
「そうね、ようやく飛ぶ意味がありそう」
ヴォルフガングの声に答えて、白雪が空中に浮遊する。絡み合う枝の天井もあり、ほとんど視界が効かないそこも、彼等の範囲攻撃によって切り開いた部分ならば観測可能だ。
「それ良いな、飛べるの楽しそう!」
「いいでしょ。此処からなら狙撃も楽なのよ?」
かすかに笑って、白雪は視覚で、ヴォルフガングは聴覚で、それぞれに探りを入れる。
「どう? ピーノ君、居たかしら?」
「ああ、気配はあったけど……」
「何故かしら、こっちから逃げていくわ」
「えっ」
猟兵側としては、巻き込まないように注意を払っていたが、それが彼等に伝わるかはまた別の話。単純な事実として、いくら怠け者でも、火事なったらさすがに逃げる。
「しょうがないわね、追いかけないと」
「あ、あたしは労いも説得も苦手だから、みんなに任せるわ」
三人とも頑張ってちょうだい、と白雪は仲間達にその辺りを一任、観察に徹することにする。
「そう? それなら――」
「オウガの木がもう再生を始めている。急いだ方がいいよ」
ヴォルフガングの警句に従って、櫻宵はピーノ君達の方へと走り出す。白雪もそれに続くが。
「……ねえ、千織は?」
「あら、さっきまで一緒に――」
白雪と櫻宵が辺りを見回す。一方、当の千織は少しばかり離れた場所に居た。
「あら? 皆さん何処に??」
とはいえ、感覚の鋭敏な彼女はすぐに仲間達と合流した。あとは、ピーノ君達を追って、彼等は森の中を走って行く。
「ふふ、皆さん可愛らしいですねぇ」
「怖がらないでー、ショコラとか要らないかしらー?」
「ほら、誘ってくれるレディ達もいる事だし、戻ってきなよー」
彼等に協力とお茶会の約束を取り付けるまで、もう少しかかるだろうか。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
朽守・カスカ
【薬B】
またピーノ君達と会えるのは喜ばしいが
中々に難儀な状況だね
さて、ピーノ君を探さねばいけないが
……おやヨシュカ君が早速見つけてくれたのか
なんとも心強いことだ、助かるよ
荷車を引く師匠(ロカジ君)を眺め
ふふ、 師匠を助けるのも弟子(になったばかりだけど)の務めさ
荷車を引かせるなんて忍びない
だから私も手伝おう
【ガジェットショータイム】
得意げに呼び出すのはガジェット仕掛の馬
さぁピーノ君を乗せて馬で荷車を引けば
さながら馬車のようで楽しいだろう
元気が出たかい、ピーノ君?
真珠君も御一緒に如何かな?
これに乗れば薙ぎ倒すのも
思いのままのはず、さ
何せガジェット仕掛けだ
鋸だって出せて
小癪な迷路を踏破してみせよう
ロカジ・ミナイ
【薬B】
わあ、早速ピーノ君を見つけるなんて
ヨシュカくんの森仕込みの野生の勘は凄いなあ
やーやー、ピーノ君たち!この間ぶり
元気にしていたかい?
あれれ、元気じゃない?だよねー
そこで僕が用意したのはイカした荷車
ヘイ、そこのピーノ君!乗ってかない?
6人乗っても大丈夫
真珠くん一匹追加?余裕余裕
いい馬もいるし🐴
…っえ?馬じゃん
さすがカスカ、我が一番弟子
今日はね、ちゃんと小回りの利く武器を用意したんだ
だってほら…蛇って木の隙間に絡まりそうだし
えー、今日は、いつもの刀を斧に代えて使います
妖刀だからね、その辺はフワッと黒い靄的なものがね
コイツで迫り来る枝を切っては投げ切っては投げ
…鉈の方が良かったかな
ヨシュカ・グナイゼナウ
【薬B】
万死です万死。なんでアイスの森をこんな堅くて美味しくなさそうなもので覆ってしまうのですか。絶対不味い
【破壊工作】で全部燃やしてやりたいですね。駄目ですね、はい
というわけでピーノくんを【野生の勘】で探しましょう。あ、いた。どうです、この巷で流行りのロカジ号(勝手に命名)に乗って行きませんか?はい、お一人様ご案内です
(褒められました)(うれしみ)
藪払いはお任せを、慣れていますので。何たって森に住んでいましたので、森に
同じ人形として、如月さま達の働きに負けぬ様頑張ります!
それにしても【開闢】は良く切れますね(満足)流石です
わあ、馬?馬!これはさながらチャリオッツ!(上がるテンション)
雅楽代・真珠
【薬B】
如何に疲れず迷宮を抜けるか考えた所
最初から『主命』を与えるのが一番だろう
僕は泳ぐのが遅くなってしまうから如月に抱えられていくよ
ねえ皐月、何か無いの?
鎖鎌?
ふぅん
それでいいよ
邪魔なものは全て薙ぎ払って
如月は鎧砕きや部位破壊の要領でへし折って進めばいいだろう
ぴぃのの案内をするヨシュカはえらいね
それに比べてロカジは…
…カスカはロカジの弟子なの?師匠はよく選んだ方がいい
そうだね、僕も乗り心地を確かめてあげよう
その分如月の活動範囲が広まるしね
お前たちも確りと働くのだよ
ぴぃのを一体抱えて荷車に収まり、応援してあげる
僕のために働くお前たちは偉いよ
切り開かれる道に満足
…揺れが酷かったら如月の腕に戻るよ
●進め特製荷馬車
「あ、居た」
至極当然とでも言うように、ヨシュカ・グナイゼナウ(一つ星・f10678)は森の中でピーノ君を発見した。あっさりとしたものである、これぞ野生の勘と言うべきか。
「……おや、早速見つけてくれたのか。なんとも心強いことだ、助かるよ」
「ヨシュカくんの森仕込みの野生の勘は凄いなあ」
朽守・カスカ(灯台守・f00170)、そしてロカジ・ミナイ(薬処路橈・f04128)が感嘆の声を上げた。
「話が早くて良い。褒めてあげるよ、ヨシュカ」
何か既に戦闘形態に入った人形に抱えられた、雅楽代・真珠(水中花・f12752)も、そう感謝の言葉を述べることになった。
……とはいえ、見つけるだけで終わりではない。無力と言うか無気力に地面を転がるだけのピーノ君など、戦力にはならないのだから。
――ここからは僕の出番だとばかりに、まずはロカジが口を開いた。
「やーやー、ピーノ君たち! この間ぶりだね、元気にしていたかい?」
「元気じゃナイデース」
「だよねー」
すげない返事に彼は笑う。素直な反応だ。逆にこんなぐだぐだの状況で強がられても困るもの。
「そんな君に朗報だ。今ならこのロカジ謹製、イカした乗り物を使うことができるよ!」
「!? ワーイ、イカした……乗り物ォ……?」
一瞬上がったピーノ君の歓声が急速に萎む。これが? イカした乗り物?
ロカジが持ってきたという乗り物は、どう見てもただの荷車だった。
「どうです、この巷で流行りのロカジ号に乗って行きませんか?」
が、ヨシュカは強引に押す事を選択した。
「は、流行り……?」
「ええもう大流行ですよ? それではお一人様ご案内でーす」
あれよあれよという間に、転がっていたピーノ君を荷車の上に導く。その様子を、真珠は感心したように眺めていた。
「ぴぃのの案内をするヨシュカはえらいね。それに比べてロカジは……」
「えっ、何で僕を責める流れ? ここまでこの荷車引いてきたの僕だよね??」
胸を張るヨシュカと訴えるロカジ。そんな流れを面白がるように見ていたカスカは、そろそろいいだろうと、彼等に向かって口を開いた。
「ああ、すまない、師匠に荷車を引かせるなんて弟子失格だったね。私も手伝おう」
新米の弟子ゆえ、気づきが遅れたのは許してほしい、と断って、カスカは今回のガジェットを展開した。『ガジェットショータイム』、現れたのは機械仕掛けの馬だ。このジョイント部を荷車につなぐことにより、即席の馬車が完成する。
「……っえ? 馬じゃん。僕はお役御免のようだね、さすがカスカ」
そしてさすがは我が一番弟子、とロカジは荷車から離れる。
「良いですね、これはさながらチャリオッツ!」
「いつからカスカはロカジの弟子になったの? 師匠はよく選んだ方がいいよ」
「ついこの間からだよ。真珠君も御一緒に如何かな?」
「弟子にはならないけどね。……まぁ荷車の乗り心地は確かめてあげる」
「お、真珠くんも乗るかい? なーにこの特製荷車なら君一人増えたところで余裕さ、余裕」
そんなやりとりの末に、荷車は乗せられるだけの乗員を乗せて出発した。
「それでは、参りまーす」
御者っぽいことを始めたヨシュカの合図で、ガジェット馬が動き出す。
「元気が出たかい、ピーノ君?」
「元気は出ないけどこれは楽デスネー」
カスカの問いに、言葉に反して上機嫌な様子でピーノ君が答える。
「ねえロカジ、揺れが酷くないかい?」
「僕に言わないでくれないかな、道が悪いんだよ、道が」
「仕方ない、ぴぃの、ちょっとおいで」
「ハーイ」
寝返りを打つように転がってきたピーノ君に、真珠はもたれかかるように姿勢を変えた。この愉快な仲間達はマッサージチェアの材料にもなるのだ、実は単体でもクッション性が高い。
「ふむ、各々落ち着いてきたようだし、そろそろ本気を出そうか」
「え、本気を、ですか?」
ヨシュカの問いに、カスカが頷く。彼女の出したガジェットがこの程度の性能で終わるはずがないのだ。
「もちろん、この小癪な迷路を踏破するための仕掛けだってあるからね」
がしゃーんみたいな変形音が響いて、ガジェット馬の胴体から、前方左右に高速回転する丸鋸が飛び出した。物騒。
「それじゃ僕も、いい加減ちゃんと働こうか」
「蛇は出さないの?」
「オロチはねぇ……ちょっと木の隙間に絡まりそうだから……」
苦笑しながら、ロカジは刀の具合を確かめるように軽く振る。妖刀であるその大太刀の、ちょっと説明しづらい黒い靄みたいなアレが、先端に集まり斧状の刃を形作った。
「伐採ですね? 藪払いでよければ、わたしにもお任せを、慣れていますので!」
ヨシュカの方もまた、若干いきいきした様子で短刀を抜く。何たって森に住んでいたのだから、と誇る相手は、真珠の操る人形達、如月と皐月だ。ミレナリィドールとしては、ちょっとした対抗意識があるものらしい。
「如月さま達の働きに負けぬ様頑張ります!」
「ふぅん……ねえ皐月、何か無いの? 鎖鎌? じゃあそれを上手く使って……如月はとにかくへし折って進めばいいだろう」
真珠から下された『主命』により、人形達は『鬼』形態を取っている。
「確りと働くのだよ、お前達」
主の絶対命令に、人形達の目が輝いたように見えた。
「それで、真珠君はどうするんだい?」
「僕はここで応援してるから」
「なるほど、では私も手伝おう」
転がるピーノ君をクッション代わりにした真珠と並んで、カスカもそこに座ることにした。
「ぐぇー」
「おっと、すまないねピーノ君。それじゃ行こうか」
荷車の上に彼等を乗せて、馬車は前進を開始した。
「はんぶんこがなかよしの秘訣……ってね」
ロカジの振り下ろした大太刀が、迫る枝をまとめて薙ぎ払う。荷車の邪魔になりそうな下藪を、皐月の鎖鎌と、小回りを利かせたヨシュカの短刀が刈り取っていき、邪魔な木の幹はガジェットからの鋸と、如月の力ずくの蹴りで倒壊させ、一行は森の先へと進んでいった。
「ワーイ、何あれカッコイー!」
「僕も乗りターイ!」
行く手からは別のピーノ君の歓声が聞こえる。これなら説得の必要もなく、仲間を集めていくことができるだろう。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
エンジ・カラカ
【薬A】
ピーノ、ピーノ、ピーノ、ピーピーピーノ
アァ……覚えてる覚えてる。
雪だるまになったトコロ。
今日も雪だるまで迷宮入りだなァ……。
ヒューヒュー、じゅーべーやるネェ。
トリスもすごいすごい。
コレも第六感で、たぶんコッチ。
まどろっこしい。
全部全部まとめて倒してしまおう。
人狼咆哮で邪魔な木々をなぎ倒す。
キララ、ビックリした?ビックリした?
もっとやろうか。
ピーノ、ピーノ、怠けたり働いたり忙しいヤツら。
またまた手伝う手伝う。
あのアイスがまた食べたいからなァ……。
トリス・ビッグロマン
【薬A】
せっかく建てた国にやすやす敵の侵攻を許すなんて
民草としての意識が低いな
やはり有能な指導者が必要だよ
いや、王族って思ってたほどいいものじゃなかったしな
軍事顧問、くらいの権威があれば言うことないね
育ちがいいもんで
庭木の手入れなんてのは経験がないんだよ…
なるほど手際が良いじゃないかと、
手を叩いて仲間を称賛しながらついていく
残った枝くらいはサーベルで切り払うなどするけども
オレの分の働きは、召喚した配下の十一人が十分にこなしてくれるさ
おお、献身的だなジューベー
…あー、うん…面倒だがオレも手伝って…やるか
そら配下ども、引きずってやれ
御鏡・十兵衛
【薬A】
せっかく皆で色々とこしらえたというのに、上塗りするのは頂けぬでござるなあ。
くはは、トリス殿は手厳しいでござるな!
先日買ったもこもこの防寒着のおかげで寒さ対策もばっちり。
ん、おお、こっちでござるね。承知したでござるよ。
(エンジ殿の示した方へ)
ちょっとばかり堅くとも、力の加え方を工夫すればこれこの通り……と。
……おお?キララ殿は意外にもわいるど?でござるなー!
しかし、ははは。働き者かと思えば、怠け者に戻ったりと、ころころと忙しいでござるなあ。
良い良い、先だっては随分と働かせたでござるからな、背負って行ってやろう。
何、心配はいらぬ。こう見えて某は羅刹、それなりに力持ちゆえ!
キララ・キララ
【薬A】
な
な
なにこれー!
国じゅうこんなんなってるの??
…トリスがラクトパラディアのおうさま、する?
これじゃあほんとに方向もわかんないのよね
どっちにいったらいいのかしら…
?? エンジ、わかるの?
お任せしてあとをついていくね
ぎゃっ(エンジの人狼咆哮に驚いた音)
びっびびっびっくりしたあ…もうやんなくていいよう!!
じゅ ジューベーは斬るときしずか…?
あ、もう斬れてる!すごーい!
トリスの家来さんたちもがんばってるし
きららもお手手でかじってがんばろっと!
ピーノ君は絵のおともだちでも働いてくれるみたいだけど
しばらく休ませてあげたほうがいいものね…
きらちゃんたちが来るまでがんばってくれてありがとね!
●斬り進む
「な、な、なにこれー! 国じゅうこんなんなってるの?」
以前訪れた時とは全く違った様子の森に、キララ・キララ(トラヴェル・マーチ・f14752)が悲鳴を上げる。アイスのなる木を取り囲むように生えた、味気ない白い木々は、雪とはまた違う不気味さで森を染めている。
「せっかく皆で色々とこしらえたというのに、上塗りするのは頂けぬでござるなあ」
先日みんなで仕立てた防寒着に袖を通し、もこもこになった御鏡・十兵衛(水鬼・f18659)も、どうしたものかと森の様子を眺める。
「せっかく建てた国にやすやす敵の侵攻を許すなんて、民草としての意識が低いな。やはり有能な指導者が必要だよ」
そうして統治者目線を披露するのはトリス・ビッグロマン(ストレイグリム・f19782)だ。
「くはは、トリス殿は手厳しいでござるな!」
「……トリスがラクトパラディアのおうさま、する?」
「いや、王族って思ってたほどいいものじゃなかったしな……軍事顧問、くらいの権威があれば言うことないね」
キララの問いに、トリスは経験からか、そんな答えを返す。常駐できない以上軽口の域は出ないが。
「ピーノ、ピーノ、ピーノ、ピーピーピーノ」
さてどんな奴だったか、と記憶を手繰るようにエンジ・カラカ(六月・f06959)が唱える。
「アァ……覚えてる覚えてる。雪だるまになったトコロ」
もこもこになった十兵衛の姿から連想したか、そう頷いた。とはいえ、そういう彼自身も同じもこもこ防寒着だ。
今回の仕事は迷宮に踏み入り、彼等と合流するのが第一目標となるだろうが。
「これじゃあほんとに方向もわかんないのよね、どっちにいったらいいのかしら……」
元の様子ならまだ見覚えもあったのに、とキララが辺りを見回す。立ち並ぶ木々の壁は、見張り台や城などランドマークさえ見えなくしてしまう。
「迷子、迷子か。そうだなナァ、たぶんコッチ」
キララのそんな様子を見て、第六感にものを言わせたエンジがあっさりと一方向を指さす。
「ん、おお、こっちでござるね。承知したでござるよ」
「?? エンジ、わかるの?」
「ああタブン、もしかしたら、きっとナ」
「えー……」
とはいえ立ち止まっていても仕方がない。彼の示す方向へ、一行は歩みを進める。
別れ道になったところでは、エンジが淀みなく行く手を決めるので、歩くペース自体は早いのだが。
「……ンン」
なんでもない曲がり角で、エンジが首を傾げる。
「どうしたでござるか?」
「アー、いや、まだろっこしいんだ、この」
とん、と傍らの木の壁を手で叩く。とんとん、ともう二回叩いて、息を吸う。
そして、おもむろに吼えた。
「――ッ!!!」
「ぎゃっ!?」
人狼咆哮。衝撃波にも似た音が弾けて、エンジの周りの枝が吹き飛び、木はなぎ倒され、驚いたキララがひっくり返った。
「びっびびっびっくりしたあ……なに今の、エンジ?」
「キララ、ビックリした? ビックリした? もっとやろうか?」
「もうやんなくていいよう!!」
完全に面白がっているエンジに言い返して、キララは迷宮の壁に開いた穴の方へと視線を移す。
「……でも、こっちにいきたいってことで良いの?」
「なるほど、なら某も手伝うでござるよ」
事前に察して耳を塞いでいた十兵衛がそちらに進み出て、腰の刀に手を添える。
「じゅ、ジューベーは斬るときしずか……?」
「そんな警戒しなくて良いでござるよ」
大丈夫大丈夫、と手を振って、彼女は刃を邪魔な木々へと差し入れた。
「ちょっとばかり堅くとも、力の加え方を工夫すればこれこの通り……と」
「あ、もう斬れてる! すごーい!」
するりと刃が滑るのに合わせ、斬り落とされた枝がバラバラと地面に落ちていく。この調子ならば幹を両断するのも容易いだろう。
「なるほど、手際が良いじゃないか」
「ヒューヒュー、じゅーべーやるネェ」
トリスとエンジの賛辞に、十兵衛が胸を張る。
「オレの分は……あいつらに任せるか」
庭木の手入れは専門外だと呟いて、トリスはユーベルコードで11人の猟師の霊を召喚し、作業に当たらせる。エンジもそれに付いていこうとするが。
「コレも、もう一度――」
「エンジは座ってて!」
あの大声は心臓に悪い、と言い渡し、キララも手伝いに入ることにした。
『アート・ラット・ファンク』、彼女の手が、ネズミっぽい生き物のように形を変える。そして、その鋭い前歯で以て、木の幹をがりがり削り始めた。
「……おお? キララ殿は意外にもわいるど? でござるなー!」
さらなる枝を切り払いながら十兵衛が笑って、さらに奥へ、彼女らは迷宮を一直線に進んでいく。そうしてほどなく、彼等は倒れこんだピーノ君二人を発見した。
「だ、大丈夫? もしかして怪我を――」
「だいじょぶデース」
駆け寄ったキララに、しれっと寝転んだままピーノ君達が答える。立ち上がる気はとりあえず、無いらしい。
「ふむ、働き者かと思えば、怠け者に戻ったりと、ころころと忙しいでござるなあ」
「スイマセーン、もう動けないデスー」
「疲れマシター、働きタクナーイ」
「ピーノ、ピーノ、怠けたり働いたり忙しいヤツら、今日は休みか?」
わかりやすい嘆きの声に、十兵衛とエンジが笑う。一方、少し考えるようにしていたキララも、それを受け入れることにしたようだ。
「ピーノ君は絵のおともだちでも働いてくれるみたいだけど、今はしばらく休ませてあげたほうがいいものね……」
先日は、描き出して具現化したピーノ君達の手を借りることに成功している。実は、それで描き足せばすぐに六人揃えることもできるわけだが。
「エッ、優しい……天使サマですカ……?」
「良いの! きらちゃんたちが来るまでがんばってくれてありがとね!」
「おいおい、あんまり甘やかすなよ?」
トリスが窘めるのを他所に、十兵衛とエンジは転がっていたピーノ君達を担ぎにかかった。
「先だっては随分と働かせたでござるからな、背負って行ってやろう」
「コレも手伝う手伝う。あのアイスがまた食べたいからなァ……」
「おお、献身的だな。……あー、うん……面倒だがオレも手伝って……やるか」
と言いつつ、トリスは配下の者達に声をかけた。
「そら配下ども、手伝ってやれ」
「何、心配はいらぬ。こう見えて某は羅刹、それなりに力持ちゆえ!」
行き倒れていたピーノ君達を文字通り拾い上げて、彼女らはまた先へと進み始めた。
「ワーイ、高いデスヨー」
「オオ、はしゃぐな、はしゃぐな」
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
クーナ・セラフィン
まーた厄介なのに狙われたねえ。
折角色々作ったのに溶かされちゃったら怖い怖い。
植物の方も地味にやらしいし、ちゃちゃっと片付けておかないとね。
…そいえばアリス、来たのかなぁ。
迷ってるピーノ君をまず探して集めよう。できれば六人。
張り切って働いてる状態なら植物抑えるのもきっと期待に応えてくれる…!
とりあえず見張り台目指して森を走るね。
邪魔する樹はUCで攻撃力強化した状態で斬り裂いたり。
絡み合う枝邪魔だけど間違ってもピーノ君斬ったりしないように注意。
ピーノ君見かけたら丁寧に挨拶。お久しぶりだし。
迷ってるならとりあえず来ない?と誘い案内。
枝払いなら猫の手に任せるにゃーと冗談言いつつ。
※アドリブ絡み等お任せ
●猫の手
何でも食べる大食いオウガの次は、戦闘狂の竜と来た。また厄介なのに狙われたものだとクーナ・セラフィン(雪華の騎士猫・f10280)は思う。
「折角色々作ったのに、溶かされちゃったら怖い怖い」
言葉と同じく軽快に、彼女は森を駆けていく。とんと地面を蹴る足音に合わせて羽根付き帽子が上下に揺れた。
「……そいえばアリス、来たのかなぁ」
徐々に開拓の進んだこの場所だけれど、猟兵とオウガ以外の来客はあったのだろうか。終わったら聞いてみようと決めながら、クーナは愛用の武器を手の内で踊らせた。
向かう先に邪魔な木を見つけて、ユーベルコードを発動。三属性の魔力が巡り、彼女の手に力を与える。
「ピーノ君、居たら返事してくれるー?」
呼びかけて、近くに居ないのを確認しながら枝の絡み合ってできた壁を切り裂く。開いた道の先、とりあえず彼女が目指しているのは、この森に立つ見張り台だ。少なくともそれを目印にしていれば、方向感覚を失うこともある程度は防げるだろう。
枝のみならず、時には幹も、炎を纏わせた刃が両断する。そうしていくつかの壁を抜けた先で、クーナは集まって座り込んでいるピーノ君達を発見した。
「ア、猟兵サン」
「ワーイ、助かったー?」
いつの間にやら木々に囲まれてしまい、困っていたらしい彼等に、クーナは丁寧に頭を下げた。
「こんにちは、お久しぶり、だね」
いち、に、さんと頭数を数えて、微笑む。六人にはまだ足りない。……いや、六人居たままなら、きっとこんな座り込んだりもしなかっただろう。
あまり勤勉には見えない彼等だが、ちゃんと環境を整えて、張り切った状態になってもらえば、きっと期待通りの働きをしてくれることだろう。
「まずは仲間を探さないとね……迷ってるならとりあえず来ない?」
「良いんデスカー?」
「助かりマスー」
うむ、と頷いて、クーナは彼等を先導することにした。返事は良いけれど、まだまだ、ピーノ君達の声には眠たげな響きが混ざっている。とりあえずは、まだ自分でがんばる必要があるだろう。
槍と剣を構えて、彼女はその小さな体を跳ねさせた。
枝払いなら猫の手に任せるにゃー。
成功
🔵🔵🔴
神埜・常盤
招かれざる客の訪れとはねェ
此の国とは縁のある身だ、助力させてくれ給え
先ずは管狐を召喚しようか
九堕、お前はピーノ君達を覚えているね?
合流したいので彼等の匂を辿ってくれ
動物使いと動物会話の技能を駆使して
迷子のピーノ君たちを迎えに行こうじゃないか
ピーノ君たちが揃うまでは
なるべく森と戦闘は避けたいが……
もし交戦するなら、九堕の炎に巻いて仕舞おう
破魔の業火に紛れながら、暗殺技能で僕もこっそり接近
影縫で木々を串刺しにして道を開こうか
あァ、少し振りだねェ、ピーノ君たち
竜が攻めて来たというから、心配していたが
ウン……元気そうで何よりだ!
さァさァ、僕達に力を貸しておくれ
皆でラクトパラディアを護ろうじゃァないか
●さがしもの
「――招かれざる客、といったところかね」
姿を変えてしまった森の様子を目にして、神埜・常盤(宵色ガイヤルド・f04783)が細く息を吐く。愉快な仲間達が入植してくるだとか、アリスが迷い込むだとか、その程度ならばただただ平和な物語で終われるのだが。
とはいえ、それは嘆いても仕方がないこと。世の不条理を笑い飛ばす事には慣れているはず。
「さぁ、おいで」
常盤の取り出した竹筒から、細い体の狐が姿を現す。式神、管狐だ。
「九堕、お前はピーノ君達を覚えているね? 合流したいので彼等の匂を辿ってくれ」
こん、と小さく返事を返して、管狐は鼻先を地面近くへと下ろした。以前、街の開拓を共に行ってから日も浅い、その匂いを忘れるようなこともないだろう。
やがて、向かう先を定めた式神の案内に従って、常盤は森の迷宮を歩き始めた。
「いやしかし、毛皮が恋しいものだね」
吐いた息は白く、僅かに森の空気を染めた。
再生してしまう木々を相手に奮闘するのも無駄が多い、そう判断した彼は、木の枝を避けて歩みを進める事を選ぶ。雪積もる迷宮は音を吸うのか、他の猟兵達も同時に攻略に入っているはずだが、その気配もどこか希薄だ。
「……九堕」
道に迷ってはいないだろうね、と何度目かの別れ道で常盤が問う。式神が首を傾げる様は愛嬌があるものだけれど。
少し考え、辺りに状況打開のヒントがないかと見回していた常盤は、少し離れた場所からの、くしゃみの音を捕まえる。
「……おや、そこにいるのかな、ピーノ君?」
「ハーイ、どちらサマデスカー?」
「君を迎えに来た猟兵の一人さ」
どうやら匂いを辿っていた管狐の案内に、間違いはなかったらしい。よくやったとその頭を撫でて、そのままもう一仕事だと背中を押す。
ピーノ君の声は、目の前に立ち塞がる木の壁の向こうから聞こえている。邪魔なそれを、常盤が掌で数度叩く。
「ピーノ君、この木から少し離れていてくれるかな?」
向こうからの返事を待って、式神を促す。管狐は破魔の炎を生じさせ、その木を焼き払った。
「ワーイ、この間振りです猟兵サン」
「あァ、少し振りだねェ……元気そうで何よりだ!」
壁に開いた穴をくぐったそこには、寝返りで移動したらしいピーノ君が、仰向けに寝転がったままこちらに視線を向けていた。
苦笑を浮かべながらも歩み寄り、彼はその手を差し出した。
「竜が攻めて来たのだろう? さァさァ、僕達に力を貸しておくれ」
「ウゥ、仕方ありませんネー」
ピーノ君の短い手がそれを握る。自分で立つ気が全くないらしいピーノ君を、常盤と管狐は何とか引っ張り上げて立たせた。
「よし、皆でラクトパラディアを護ろうじゃァないか」
「ハーイ。皆はどこカナァ……?」
割合素直に、ピーノ君が返事をする。その態度にはほんの少し、この国の名付け親への敬意が含まれていた……かもしれない。
たぶん。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『獄炎薔薇竜カタストローフェ』
|
POW : 破滅の蒼き炎
【なにかに接触すると大爆発を起こす蒼炎の弾】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD : 心躍る闘争を!
全身を【地獄の蒼き炎】で覆い、自身の【強者との戦闘を楽しむ意思】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
WIZ : 地獄へと誘う薔薇の舞
自身の装備武器を無数の【炎の如き熱を持った薔薇】の花びらに変え、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
イラスト:ハギワラ キョウヘイ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「ノーラ・カッツェ」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●はたらくピーノ君
「集合、です! 皆さんの力を貸してください!」
類の言葉に、周りのピーノ君達が綺麗に整列する。合流し、六人一組なった彼等は、どことなくきりっとした顔でそれに応えた。
「ヨーシ、行きマスヨー!」
「伐採、かかれーッ!」
ハートの形のピーノ君の掛け声に合わせて、ノコギリを取り出した彼等は、オウガである迷宮の木々に向かって駆け出した。氷を切り出す事さえ可能なピーノ君達の刃は、たとえ迷宮の壁とて止められない。
「スゴーイ、無限の材木デスヨー」
「デモこれ、終わったら消えちゃう?」
「ソンナー」
表面上はいつもの通りだが、だらけきっていた様子からは想像もつかない勢いで、彼等は伐採を進めていく。
「はい、目的地に到着~! お仕事頑張ってね☆」
そこに到着したパウルのバイクからも、しがみついていたピーノ君達が転がり出て、作業者へと加わっていく。カスカのガジェット馬の引く戦車……もといロカジの荷車からも、同様に乗せられていたピーノ君達が飛び出して行った。
「あ、あぶれた子はアタシのクッションになってくれても良いのよ?」
「うん、キリが良い数字になったから諦めてくれ」
ちゃっかり荷台に収まっていたリダンを透が抑える。同じくクッション代わりにしていた真珠も、ピーノ君を送り出した。
伐採した樹木の断面に、ピーノ君達はそっと息を吹きかける。細い吐息は即座に凍り付き、その再生を妨げていった。
次々と切り開かれていく道を、真珠が満足げに頷いて見遣る。
「僕のために働くお前たちは偉いよ」
そうして猟兵達が進む道は、ついに待ち受ける竜の居場所へと繋がった。
●蒼き炎と赤の薔薇
氷菓の生る森の一角、そこには猟兵達と共に、ピーノ君達の建設した物見の塔が建っている。氷の木を模したその塔の傍らに、上体を上げた竜が並ぶ。
聳え立つ歪な大樹のような体。赤い薔薇の花で彩られたそれを、内側から噴き出す蒼い炎が照らし出す。樹皮にも似た鱗の間から、金色に光る瞳が、猟兵達を見下ろした。
「よくぞここまで辿り着いた、強き者達よ」
『獄炎薔薇竜カタストローフェ』の重く低い声音と共に、猟兵達はそれぞれに風を感じ取る。戦闘態勢に入ったためか、竜の宿した炎は激しさを増し、熱風が、あの竜を中心に発生し始めている。
「……居るわよねぇ、空気読めない子って」
周りの木に生るアイスの果実を溶かさんばかりの勢いに、櫻宵が呆れたようにそう口にする。
「お茶会はこの人を倒してから、でしょうか」
千織もそう応じて、迫る攻撃に備えた。
「侮られたものよ、獄炎薔薇竜と称されたこの身を、ことのついでで倒せるとでも――?」
せせら笑うカタストローフェに構わず、ヨシュカは『開闢』の名を持つ短刀にその手を添えた。
「いやもう万死です万死。アイスの森をこんな堅くて美味しくなさそうなもので覆っておいて、何偉そうにしてるんですか?」
「ふはははは! その意気だ猟兵よ! 我が望みは闘争、血沸き肉躍り、命を削り、この炎を昂らせる真なる戦い! 貴様等とならば、それも叶おう……!」
燃え盛る蒼炎、吹き荒れる熱い風。オウガでもある木々を伐採し、平たい戦場を作っていたピーノ君達が、きゃーきゃー悲鳴を上げて距離を取る。どうやら見た目通り、炎は苦手らしい。
何にせよ、猟兵達の助けによって、十分に数を揃えたピーノ君達は、周囲に広がる『迷わせの森』を、猟兵達から十分に遠ざけてくれるだろう。
後は、この竜との戦いに集中するのみ。
「キャーカッコイー!」
「猟兵サーン、がんばってクダサーイ!」
相変わらず緊張感のない彼等の声援を掻き消すように、竜は吠えた。
「さあ、来るが良い!!」
ゼン・トキサカ
温度差がすごいなぁ…
でもまぁ、ピーノ君たちの平穏のためだ
頑張ろうかな
とはいえ戦うのはあんまり得意じゃないんだ
みんなが戦いやすいようにUCで敵の動きを止めようか
赤いリボンを丁寧に敵に巻き付けるよ
特に危なそうな根っこのような脚…根かな?
あたりに念入りに
君の薔薇は確かに美しいけれど
だいぶ物騒だからね
これ以上咲かせるのは遠慮してもらおうか
大丈夫、ちゃーんと
薔薇の代わりにこのリボンで飾ってあげるから
リボンはところどころ
花みたいに飾り結びをしてあげよう
ふふ、綺麗だよ
そのまま朽ち果てて消えてくれれば、もっと綺麗なんだけどね?
この世界の景色としては
冴島・類
ピーノ君達は沢山頑張ってくれてありがと
お見事!視界は良好だ
君らとここ
好きなものの為に後は
1人燃えまくっている
獄炎……獄炎…
何だっけな…名前長くて
あ、薔薇竜さん!は任せて
血気盛んだなあ
吠える様だけ見れば
ここを襲わなきゃ嫌いではないですが
美味しい楽しい、可愛いを
燃やしてしまうなら
それは、嫌なんだよ
大樹のような身体
有効打を与えるには、接近した方が良いか
炎や飛行での味方猟兵への攻撃の狙いを逸らす為
相棒と駆け、攻撃放たれるタイミングを見切り
喚んだ鏡で、視界の像をずらす
隙が生まれたら、避けきれぬ炎は耐性活かしても突っ切り
巨体を駆け上がりしがみつき
至近距離で、斬る
楽しいですか?
お望みの、闘争を
君が倒れる形で
紅月・美亜
【共闘希望】
さて、どう料理してくれようか。
「貴様を倒す手はざっと数えて256通り程思いつく。そうだな、貴様が侮る弱者に倒されるというのはどうだ? Operation;BLACK、発令」
全周を包囲するようにBLACKを展開。収束ビームを撃ち込む。
「どうした、相手はお前なら指先一つで破壊できるような脆い弱者だぞ?」
その返答は範囲攻撃だろう。実際相性は悪い。だがな、
「どんな攻撃も当たらなければ意味は無い」
範囲外に飛び去ってしまえばいい。その為の全周包囲だ。相手の射程外からチクチク刺していく。
「さて、こうやって作った隙は誰が使うんだ?」
私か? 森に入らないと言っただろう。紅茶でも嗜むかな。
神埜・常盤
あァ、闘争は愉しいよねェ
分かるさ、分かるとも!
お前が命懸けならば、僕も命を賭けようか
マヒの護符を竜へと投擲し動きを封じて
一気に距離を詰めれば捨身の一撃
渾身の怪力を込めて、氷を纏った影縫で鎧無視する串刺し攻撃を
炎弾は展開した護符に纏わせたオーラで防御
被弾しても激痛耐性で傷を堪え、怯まず前で戦い続けよう
此の身を削る事こそ僕の目的なのだから
……さて、そろそろ縁は結べたかね
それじゃァ、おいで、縫
絲むすびで喚んだ式神に竜を抑えさせようか
僕は暗殺技能で其の隙を突き竜を吸血しよう
彼女を呼ぶ為に喪った体力を回復したいなァ
何処ぞで食べたドラゴンステェキは旨かったが
お前の命は如何だろうか
――さァ、其の血を寄越せ
●炎の花束
「いや温度差がすごいなぁ……」
帽子が落ちないように押さえつつ、ゼンは上空にある敵の頭を見上げる。轟轟と強い言葉を吠えるその様は、後ろから聞こえるピーノ君達の声援とは対照的と言わざるを得ない。
「スゴーイ、声も大きいー!」
「猟兵サン負けないでー!」
「ああ、応援ありがとう」
それからたくさん頑張ってくれてありがとう、と類がそちらに手を振り返す。彼等の伐採攻撃によって視界は良好、強敵を前に、邪魔が入らないのはかなり重要だ。
「後はあの一人で燃えまくっている獄炎……獄炎……」
なんだったか、名前が出てこない様子で首を傾げながら、見上げた敵の身体に咲くそれを見て。
「あ、薔薇! そう、獄炎薔薇竜さんはこっちに任せて!」
「……まぁ、ピーノ君達の平穏のためだ、頑張ろうかな」
戦いは苦手なんだけどね、と付け足すゼンと共に、類もまたカタストローフェに向けて地を蹴った。
「来るが良い猟兵ども! 宴を! 闘争を! 始めよう!」
赤く咲き誇る薔薇から、溢れ出るように花びらを散らす。噴き出す炎に煽られるように舞うそれは、熱を持って猟兵達へと降り注いでいく。螺旋を描く体に沿い、舞い踊る花吹雪。周りの雪を溶かし、残った木を焼き尽くさんばかりのそれの合間を抜けて、時計ウサギが跳ねる。
「ああ、君の薔薇は確かに美しいけれど、だいぶ物騒だからね――」
ゼンの袖口から伸びたのは、薔薇にも負けない赤いリボンだ。
「これ以上咲かせるのは、遠慮してもらおうか」
駆けた軌跡をなぞるように伸びたリボンは、彼の指先の動きを合図にその口をきつく縛り、竜の身体を締め上げにかかる。足元と言うべきか、根本と言うべきか、竜の尾の根元部分をくくり、絡みついたそれが動きを鈍らせる合間に、複数の無人機が光線を撃ち込む。
「羽虫風情が、鬱陶しいことよ」
ダメージ自体はさほどではないのだろうが、無視もしきれず竜が忌々し気に唸る。だが視線を巡らせる竜の視界に、それらを操る者は映らない。
当の本人、美亜は戦場の外、森の迷宮にすら入っていない、遥か遠くに居た。
「――貴様を倒す手はざっと数えて256通り程思いつく。そうだな、貴様が侮る弱者に倒されるというのはどうだ?」
当然、その言葉は敵に届くこともないのだが。カメラ越しに送られてくる敵の様子を見ながら、彼女は一人あざ笑う。
「どうした、相手はお前なら指先一つで破壊できるような脆い弱者だぞ?」
動きの予測はとうにできている。多数の飛行物を相手にするなら、敵は範囲攻撃で対抗してくるだろう。実際に、カメラの向こうで獄炎薔薇竜がその花びらを嵐のように舞い踊らせる。
「どんな攻撃も当たらなければ意味は無い」
急速に引いていく戦闘機達。猟兵の放つそれとは一段違う、広範囲に及ぶ花吹雪に引っ掛かり、逃れきれなかった機体がぼろぼろと落ちていくが。
「……間合いは掴めた」
相手の射程外から攻撃をしてやりながら、彼女は手にした紅茶を口に運んだ。
「――そんなものか、猟兵ども! 貴様等ならば、と見立てたのは我の買いかぶりにすぎなかったということか?」
吹き荒れる赤い嵐が、美亜の戦闘機を薙ぎ払うように吹き荒れる。当の美亜は試練用の森に踏み込んですらいないので、見立ても何もないのだが。
「さあ攻めてこい! 共に戦いに興じようではないか!」
「あァ、はいはい、闘争は愉しいよねェ」
轟と唸る風の中を、常盤が前に出る。空を舞う戦闘機に狙いが行った分、地表側にはそれを潜り抜けるだけの隙があった。
――まあ、敵の言うこともわからないではないのだ。戦いとは時に、心躍るもの。敵がその命をかけるというのなら。
「お望みとあらば、お相手しよう!」
吹き荒れる風を切り裂くように飛んだ常盤の符が、竜の動きを一時的に鈍らせる。そこに渾身の力で叩きこまれたのは、黒鉄のクロックハンド。硬い樹皮のような鱗を貫き、時計の長針が竜の身体を深々と抉る。血の代わりに蒼い炎を噴出させた竜は、その衝撃に高らかに笑った。
「良いぞ良いぞ、そう来なくてはな!」
高らかな声と共に、その口から蒼い炎が零れる。無数の蒼い炎弾と化したそれは、クロックハンドを引き抜いた常盤へと降り注ぐ。
飛びのく暇はないと見て取り、即座に符を展開、常盤の編み上げた障壁が炎を受け止める。着弾した蒼い炎は、しかしその場で次々と爆発を起こした。
「無事ですか!?」
爆風に煽られながらも、接近した類が火の海と化した一角へと問いを投げる。答えはないが、辛くも立ち上がって見せる常盤の様子を察して、彼は自らの操る人形、瓜江と共に竜の身体へと取りついた。
攻撃と共にかく乱を、軋む大樹のような敵の身体を駆け上がり、一人と一体は共に刃を振るう。
「次は貴様か? 我が命を奪いたいというのなら、その程度では足りぬなァ!」
ああ、血気盛んだなあ、と類は内心そうつぶやく。吠え猛る様は、それだけ見れば嫌う理由にもならないのだが、その吹き荒れる花弁は、炎は、周りの全てを焼いていく。それはきっと、竜の望む戦場の光景なのだろうけれど。
美味しいものも、楽しいものも、可愛いものも、要らぬと言うならば。
「それは、嫌なんだよ」
今。竜から向けられる敵意を察して、その瞬間に類はその力を解き放つ。閃輝鏡鳴、生み出された魔鏡の欠片が、類の意図に従ってずらりと並ぶ。
「何――ッ!?」
様々な角度で並んだそれが、類の、瓜江の姿を無数に映し出す。それでもなお吹き荒れる花弁が、次々と鏡を砕いていくが、類と瓜江本体には届かない。
その間に、立ち上がっていた常盤が空へと腕を伸ばした。
「……さて、そろそろ縁は結べたかね」
負傷は決して軽くない。戦闘特化のオブリビオンの攻撃を正面から相手取ったのだから、それも当然だが、それも含めて、彼にとっては予定の通り。
「それじゃァ、おいで、縫」
灼熱に炙られ焼かれた傷が、竜と彼とを結びつける。『絲むすび』、呪術とはこれ、つなぎむすぶ業。色濃く染まったその縁を辿って、式神――縫姫がその力を顕現させた。
「これは……ッ!?」
不可視の腕が、不可視の縄が、竜のその身を縛り、押さえつける。
「ああ、そのまま動かないでいておくれよ?」
対照的に軽やかな声音でゼンが笑う。くるくると踊るリボンは、止まった竜の身体にさらなる拘束の鎖となって、飾り立てていく。
「大丈夫、薔薇はなくとも、ちゃーんとこのリボンで飾ってあげるから」
ところどころの飾り結びがリボンを絞り、花束を包むように締め上げて。
「ふふ、綺麗だよ。……そのまま朽ち果てて消えてくれれば、もっと綺麗なんだけどね?」
この氷の国に、猛る炎は似合わない。同様の思いを抱いて、類が敵の首筋に、短刀を突き立てる。そこを起点に瓜江の鋼糸が二重三重に絡みつき――。
「楽しいですか? お望みの闘争は」
結末は、君が倒れる形で訪れるのでしょうけど。そんな囁きと同時に、もう一人、ダンピールの持つ刻印がその牙を剥いた。
「何処ぞで食べたドラゴンステェキは旨かったが――」
お前の命は如何だろうか。傷付いた身体をここまで引き上げてきた常盤が、飢えた鬼の目でそれを振り下ろす。
「――さァ、其の血を寄越せ」
吹き上がるそれは、身を焦がすほどに熱く、むせ返るような薔薇の香りを匂い立たせる。連なる刃が、敵の首元を深々と抉った。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
リダン・ムグルエギ
この熱さ
これなら念願が叶うわね
じゃ、キマフュに向けて配信開始っと
アタシはアツさの最前線
肩ロースみたいな名前のヤツの前に飛び出し
『当初からの望み』を実行に移すわ
それは…
『あつい中アイスを堪能すること』よ
炎上覚悟でアイスを堪能してみた動画のはじまりはじまりー
キマイラはね
いいねさえあれば
どんな環境でも生きていけるのよ(コード効果
敵眼前でごろごろアイスを食べたり
炎等を真正面から受けつつ撮影したりして遊ぶわ
アタシを無視して飛翔したらその隙にアイスを取ってきて
止まったらまた目の前に居座るの
冷や菓子って奴ね
疑似的な挑発盾になりつつ戦闘を楽しむ意思を削ぐの
らくーな主目的のおまけでこれだけできれば上等じゃない?
九之矢・透
闘争がお望みだってんなら、この世界を選んだのは間違いだよなあ……
アタシらが居て良かったな
ま、速やかにお帰りクダサイ?
アイスが溶けちゃうからね
【WIZ】
再び『エレメンタル・ディザスター』を使うよ
起こす現象は「霰の豪雨」
花びらは冷やして撃ち落としちゃえ
纏めて竜サンにもお見舞いだ
火炎耐性を纏わせて降らすけれど、
竜サンの熱で溶かされたって構わない
溶けた水は大気に触れて凍るか、熱を奪って蒸発するか?
どっちにしろ竜サンの炎を冷やしていってくれ
寒い?熱い?
アタシはほら、さっき貰った防寒着があるからへーきへーき
……けっこう便利だな、コレ
熱いのもいいけど、クールな方がモテるかもよー?
特にこの国ではさ!
月舘・夜彦
【花簪】
ピーノ殿だけでなくオオカミ殿まで
あの竜は本当に現れる世界を間違えてしまったのでしょうね
残念ながらお茶会は出来なさそうです
あとは力で解決するしかありませんね
敵は随分大きいですね
近寄らなければ攻撃は届きそうにないですが
私も火には耐性が無いので如何したものか
なるほど、雪を纏って
……オオカミ殿が遊び始めてしまいました
はっ……これが童話に聞く犬は喜び、庭を駆け回る
結局雪を纏うだけでは難しそうです
火を躱して頭部へ向かいましょう
ダッシュにて胴体を上を駆け、攻撃は視力・残像・見切りにて躱し
ジャンプにて火の無い所へ跳び乗ります
頭部へ辿り着きましたら早業の抜刀術『陣風』にて攻撃
オオカミ殿と同時に仕掛けます
ジョン・フラワー
【花簪】
戦いじゃなくてお茶会はいかがかな?
きっと楽しい時間になるよ! 一緒にどう? いいことしない?
まあそういうの好きなアリスもいるよね!
キミってばとっても大きい! 大迫力だよ!
燃えてないとこなら登れるかも? 僕上まで行きたいなあ
雪がたくさんあるじゃない? そして雪はつめたい
そう! 雪遊びで全身に雪を纏って熱さに対抗するんだ!
ほら雪だよ! 楽しいねアリス楽しいね! わんわん! わんわん!
おっと夢中になりすぎちゃう!
雪の力を借りたらスピード勝負だ。やっぱり火は熱いからね!
ごつごつして登りやすそうじゃない? 僕ならいけるとも!
角までいけたら木槌でどかん! 簪のアリスとのサンドイッチ攻撃だよ!
●配信中
傷を負い、身体を暴れる大蛇のようにのたうたせて、竜が吠える。舞い踊る花弁は、降り注ぐ炎弾は、それぞれに赤と青の炎となって辺りを熱く燃え上がらせていた。
まだ直撃を受けてはいないため、遠くから炎が照らし出すばかりのその場所で、リダンは真剣な顔つきのまま、アイスの果実の一つを口に運んだ。
「紅茶はないのかい、山羊のアリス?」
「ごめんなさい、いつもお茶淹れてくれる子が忙しいらしくって」
「ふむ、では仕方ありませんね。お茶は後回しにしましょう」
その『いつもお茶を淹れてくれていたあの子』は、絶賛迷わせの森の木と格闘中である。完全にくつろぐ体勢に入ったリダンの勧めるままに、ジョンと夜彦もアイスを口にする。
「なあ、ホントにこんなことしてて良いのか……?」
確かにまだ竜はこっちを向いていないけれど。一応ここも戦場のはずなのだが、と透が内心頭を抱える。
「帽子のアリスも一緒にどうかな? いいことしない?」
「え、遠慮しとくよ」
「そうかぁ、残念だね。代わりに、あの薔薇で竜のアリスも誘ってみようか」
「いや、乗ってこないんじゃないかな、闘争がお望みだって言うし……?」
どうしたものか、という表情を浮かべる透に、ジョンは「まあそういうの好きなアリスもいるよね」くらいの調子で返した。
「あの竜は、本当に現れる世界を間違えてしまったのでしょうね」
「まあ、そうとしか言いようがないよなあ……」
しみじみと言う夜彦に、透が頷く。きっと、この国に相応しいのはここでお茶会を始めるような、そんな者達なのではあるまいか。
「とはいえオオカミ殿、あの敵は随分と大きい。近寄らなければ攻撃は届きそうにないですが」
「ああ、でも燃えてないとこなら登れるかも? 僕上まで行きたいなあ」
飽くまでも泰然と、マイペースに、二人はアイスを食べながら言葉を交わす。
「私も火には耐性が無いので如何したものか……」
「そうだ、簪のアリス、ここには雪がたくさんあるじゃない? そして雪はつめたい」
「つまり?」
「こうするんだよ!」
おもむろに積もった雪にダイブして、ジョンはその場で転げまわり始めた。
「やったー雪だよ! 楽しいねアリス楽しいね! わんわん! わんわん!」
「ええ……?」
アタシはいったい何を見させられているんだろう、という目で途方に暮れる透の横で、大人二人は特に動じた様子もなくアイスを平らげた。
「オオカミ殿……はっ、これが童話に聞く犬は喜び、庭を駆け回る」
「あら、なんか動画の閲覧数がめちゃめちゃ伸びてるわ、その調子でお願い」
なお、リダンは当初から『敵の目の前でアイスを堪能してみた』と題したキマイラフューチャー向けの動画を配信している。そうこうしている内に、我に返ったのか、ただ満足したのか、ぜえぜえと息を吐きながらジョンが転がってきた。
「……と、つまりこういうわけだよ簪のアリス」
「……ああ、雪を纏うというわけですか」
雪塗れの姿で言う彼に、夜彦がようやく合点がいったというように頷く。しかし。
「さすがにそれだけでは難しいのでは?」
「そういうことなら、あなた達にもこれを授けるわ。着ていって良いわよ」
そこにリダンが防寒着の在庫、もとい助け舟を出す。防寒防火仕様の上に狙いを絞らせない催眠模様入り、先ほどの迷宮で透も渡されたそれである。
「まあ……実際けっこう便利だもんな、コレ」
「なるほど、確かに有効そうです」
それだけでは心許ないが、ジョンの言うような雪と合わせればさらなる効果が期待できるだろう。
「――そこにも居たか猟兵ども! 我が身より溢れる炎の熱を知れ! 燃え尽きよ!!」
青い炎を燃え上がらせて、竜が飛翔、リダン等の方へと迫りくる。
「うわっ、ついにこっち来たな!?」
「では、機を見てこちらもかかりましょうか」
「あれ、山羊のアリスは逃げなくていいのかな?」
「あ、アタシなら大丈夫だから」
ひらひらと手を振って、リダンは一時的に離脱する三人を見送る。地響きと共に着地した竜の頭が、ゆっくりと彼女の前へと降りてきた。
「逃げ遅れたか、油断したな愚か者め」
哄笑する竜の前で、リダンはふむ、と顎に手をやる。
「ええと、名前は肩ロースパフェだったかしら? あなたに近づくだけ気温が上がるのね、悪くないわ」
「――自らの危機すら理解できぬとは。もう良い、散れ」
燃え盛るカタストローフェの蒼炎が、リダンの身体を呑み込んだ。熱気が辺りの雪を融かしていき、俄かに生じた上昇気流が渦を巻く、その中心に。
「いいわよー、バエてるわー、もっかいおねがーい」
「何だと……!?」
完全に無傷のリダンが立っていた。
「どうなっている……?」
「あら、知らないの? キマイラはね、いいねさえあれば、どんな環境でも生きていけるのよ」
『トレンドストリーマー・GOATia』、動画配信に没頭している間に限り、彼女にはどんな攻撃も通用しない。
「おのれ……!」
再度吹き荒れる炎の中で、リダンはごろごろしながら次のアイスを探しはじめた。
「ちょっとー、全部融けちゃうじゃない。暑い中でアイスを食べるのがアタシの当初からの目的だったのにー」
肩透かしを食らった形になるだろうか、戦意を削がれた竜の炎が一時、激しさを失う。
「では、こちらの番ですね」
「さあ遊ぼうよ、竜のアリス!」
そこに飛び出した夜彦とジョンの両者が、樹皮のような体を蹴り、一息に駆け上がっていく。
「ええい、調子に乗るな――!」
「おっと、熱くなっちゃダメだって」
気を入れなおした竜の炎、そして舞い散る花弁に対して、透がそれを解き放つ。編まれた魔力に従い、生ずるのは『霰の豪雨』。この国の気候と相まって、大きさを増した氷塊が竜に向かって降り注ぐ。赤い薔薇の花弁を叩き落とし、時に相殺、竜の身体に近付いたものは途中で融けて消えてしまうが、着実にその火勢と熱を奪い取っていく。
「熱いのもいいけど、クールな方がモテるかもよー? 特にこの国ではさ!」
「ぬかしおる、小娘風情が――!」
吠える竜。だがその頭を挟み込むように、影が二つ跳びあがる。
「ごつごつして登りやすかったよ、楽しいねえ、アリス?」
「楽しいかは別として、上りやすくはありましたね」
木登りの要領で身体を引っ張り上げたジョンと、足場を適切に見切って駆け上がってきた夜彦が、それぞれの得物を同時に構えた。
「いざ――」
「それじゃ、もっと楽しくしよう!」
力任せの木槌が、瞬間に走る居合の刃が、獄炎薔薇竜を襲う。
「グオォォッ!?」
逃れようとしたところで、もはや遅い。交差する両者の攻撃により、カタストローフェは片角を、片目を、同時に失うこととなった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
パウル・ブラフマン
オレはエグめのRapで
敵の士気を削って皆を援護したいなって♪
敵の射程範囲を冷静に観測。
攻撃範囲外にピーノ君達を誘導した後に
【コミュ力】全開で
コール&レスポンスをお願いしちゃうぞ☆
愛機Glanzで再度戦場に躍り出たなら
Herz握り締めUC発動―
派手にキメようぜ、ラクトパラディアのヘッズ!
MC jailbreak in da house!
Roseの統率 マジでバラバラ
Rollin’がCrushするルーズなCrew?
Whatevesー6の倍数寄れば文殊のIce
威張り散らし鋳薔薇のDictator
老害ハラスメントヤローはStep off!
You know what I mean?
※絡み&アドリブ歓迎!
●刻む刃
続く戦いの中で敵の間合いを見切り、パウルは愛車であるGlanzを駆って戦場へと躍り出る。銀に輝く車体と共に空へ上り、戦場全体を見下ろした彼は、彼の心臓とも言うべきそれ、Herzをその手に握りしめる。息を深く、吸い込んで。
「派手にキメようぜ、ラクトパラディアのヘッズ! MC jailbreak in da hooouse!」
マイクを通した彼の声は、敵へ、味方へ、ピーノ君達の元へと降り注いだ。ユーベルコード、『Punch line』。展開されるのは超絶技巧のラップである。
「Roseの統率 マジでバラバラ
Rollin’がCrushするルーズなCrew?
Whatevesー6の倍数寄れば文殊のIce
威張り散らし茨のDictator
老害ハラスメントヤローはStep off!」
急に何が始まったのかと戸惑う竜に、畳みかけるような言葉の刃が突き刺さる。このオブリビオンの来歴は定かでないが、このような攻撃を受けたことは、これまでなかったのではないだろうか。
「You know what I mean?」
問われたところで竜の側にアンサーなどできるわけもなく、とはいえディスられたという状況は何となく理解できる。それゆえに、言い知れぬ敗北感がカタストローフェを襲ったという。
成功
🔵🔵🔴
リグ・アシュリーズ
くーちゃん(f01176)と一緒に
明らかにノリ違う敵に、この国に溶け込めなかったんじゃと心配。
大丈夫?アイス食べて元気出してー。
善意のアイス落としちゃうなら、情状酌量の余地はないわね!
食べ物ムダにするのはダメ、絶対。
序盤は銃撃で応戦。
蒼炎を放つそぶりが見えたら、させるもんですか!と
喉元に銃弾を撃ち『二番目の嘘』。一発目はフェイクよ!
隙を作って炎の発動を遅らせ……くーちゃん、お願い!
それでも炎が来たら、木々を盾にやり過ごすわ。
黒剣に持ちかえ反転攻勢、ギロチン刃を伝って
竜の背に飛び乗り、黒剣をざくり。
なんでこんな無茶するのって?
「はやく倒してアイス食べたいからよ!(強敵に挑むのが戦士だからよ!)」
朧・紅
リグさん(f10093)と紅人格のみで参加
アドリブ◎
命を賭けた心躍る戦いは甘美!
わかるです
僕は子どもですが…ご期待に添えれると思うのですよ?
ゆっくり楽しむのです♪
距離を取り刃を構え会話で気を逸らしつつ
血液パックから透明な血糸を死角から伸ばし
強固な耐火強度にして竜の全身を締め上げ行動阻害
炎放たれたら絡めた血糸で即座に爆破
竜を巻き込む
余波は木に隠れ巨大化ギロチン刃でリグさんと僕を武器受け防御です
リグさん!
飛翔するギロチン刃をリグさんの足場に
攻撃は巻き付いた血糸を鋭利な刃と化してリグさんと連携
相手を刺し貫くですよ
決まっているのです
「おいしーアイスを早く食べたいからです!(悪い子を倒す為です!!)」
オズ・ケストナー
クロバ(f10471)と
ピーノくんたちの応援にがんばるよって拳を握ってみせて
れいぎしらず
竜に襲われてる感じのしない感想をオウム返し
ふふっ
そうだね、もっとわかりやすく話さなくちゃ
みんなとなかよくできないよ
薔薇と花弁を見上げ
きれい
よーしわたしもっ
ありがとうと告げたら
ガジェットショータイム
鎖のついた銛が射出できる捕鯨砲
これでつかまえるのかな?
からだがおおきいってことは、的もおおきいってことだよ
先日クロバたちとした射的で鍛えた腕前を披露
うーんと標準を合わせて
飛ぼうとする竜に打ち込み
空へ向かうのを止める
ふふ、おもしろいよね
いつもちがうのがでてくるんだよ
呑気に答えて斧構え
攻撃を武器受けしながら突撃
いくよっ
華折・黒羽
オズさん(f01136)と
新参にも関わらず既に我が物顔…
オズさん、あの竜礼儀知らずです
指差しなんて事ない感想を傍らのオズさんに零しながら
見上げれば竜が放つ蒼炎
氷の属性付与した屠でなぎ払い
力を誇示し我を押し通すだけの竜など
威厳の欠片もありませんよ
血の気の多そうな敵ならば挑発に乗るだろうかと
攻撃来たなら白姫の加護乞い願い、詠唱を
氷の花弁は攻撃の相殺狙い
蒼炎の弾も炎の薔薇も
オズさんやピーノさん達に届かせはしない
引き付けている間にオズさんに目配せ
彼の武器たるガジェットが今度は何を見せてくれるのかと
信を置き興味を連れて
…毎回思うんですが
オズさんのその武器、面白いですよね
知識欲がその眸を輝かせているだろう
クーナ・セラフィン
ピーノ君が頑張ってくれたそれに応えなきゃね。
アイスの森を溶かそうなんて何たる悪竜、これは叩き潰してあげないと。
…ところで。
前は空気の読めない巨人、今回は会話が噛み合わないような竜。
この国、敵の方もすごーくごーいんぐまいうぇい?
何となく思っただけだけど。
遠距離で敵の攻撃を躱しつつ隙を伺う。
ジャンプ、空中戦、スライディング。
小柄な体を活かし直撃避けるよう立ち回るね。
竜がUC発動してきたらこちらもUC発動。
竜の頭を狙い花弁と吹雪を巻き起こし視界を遮り惑わす。
相手が見えないとか幻で位置を誤認している時でも、その炎のような薔薇の花弁で上手く攻撃できるのかい?
聞こえない程度に小声で。
※アドリブ絡み等お任せ
●炎と戦の花よ咲け
戦場を一望できる程度に見通しが良くなったそこを眺めて、クーナが呟く。
「ピーノ君が頑張ってくれたんだから、それに応えなきゃね」
そこから見える森の際には、黒い防寒着の彼等の姿。迷わせの森の木々を相手取っているはずのピーノ君達だが、ある程度抑えたところで満足しているのか何なのか、こちらに手を振っている者達が何人も見える。その上、風に乗って、歓声とか口笛とかも聞こえてきていた。
「マイペースすぎない……?」
「応援ありがとう、がんばるねっ」
謎の盛り上がりを見せるピーノ君達へと、オズが手を振って返す。一方、直前の攻撃による物だろうか、竜の方はどことなくしょぼくれた様子でいた。
戦いを前にした状況ではあるものの、リグはまず仕掛ける前に、歩み寄りを図る。
この竜は周りと比べて明らかにノリが違う。きっと浮いてしまって、この国に溶け込めていないのではないだろうか? まあそれに関しては問いかけるまでもないようなので。
「大丈夫? アイス食べて元気出してー」
差し出されたそれをしばし見つめていた竜だが、やがて意を決したように吠えた。「侮るな! 我は獄炎薔薇竜カタストローフェ! 貴様如きに情けをかけられる程落ちてはおらぬわ!!」
「えっ、ちょっと急に大声出さないでよ! アイス落としちゃったじゃない!?」
決裂。理由はどうあれ、食べ物をムダにするならば、情状酌量の余地もない。リグが「あのアイスまだ食べてなかったのにな」、という顔で銃に手を伸ばす。
「新参にも関わらず既に我が物顔……しかも思いやりに対してあの態度……」
そして、そんな様子を目にしていた黒羽もまた、一つの結論へとたどり着いていた。
「オズさん、あの竜礼儀知らずです」
「れいぎしらず」
敵を指差しての彼の言葉を、オズが思わずリピートする。その率直な響きは何となく、この戦闘前の状況においては不釣り合いに、そしてのどかに聞こえてしまった。
ふふっ、と彼は小さく笑みを浮かべる
「そうだね、もっとわかりやすく話さなくちゃ、みんなとなかよくできないよ」
「……まあ、やたらとごーいんぐまいうぇいな所は、この国向きな気もするけどねぇ」
オズの言葉を近くで聞いていたクーナが、そう言って苦笑する。元は入植者であったピーノ君達と言い、前回と今回の敵と言い、この国はそういうものを引き寄せる性質でもあるのだろうか。ともかく。
「我が心を慰めるのは戦いのみ! そのようなもので懐柔できると思うな!!」
「少し傷付いてはいたのですね」
「何かちょっと可哀そうになってきちゃうね……」
紅とリグがひそひそと言葉を交わす。猛々しい声音で吐かれる強がりに若干の同情を抱くが、それ以外にも、紅は通じるものを感じていた。
アイスと比べる類のものではないが、命を賭けた心躍る戦いもまた、甘美なもの。
「僕は子どもですが…ご期待に添えれると思うのですよ? ゆっくり楽しむのです♪」
不敵とも、無邪気とも取れる笑みを浮かべて、彼女はリグと共に迫りくる竜を迎え撃った。
「我が身に咲くは灼熱の赤薔薇! 身の内に燃えるは地獄よりの蒼炎! この色彩の前に無力を悟り、ひれ伏すが良い!!」
降り注ぐ薔薇の花びら、赤く熱を持ったそれを、黒羽の腕――そこから伸びた黒剣が氷を纏い、斬り払う。
生じた隙間を縫うようにリグの銃弾が竜に喰らい付き、同時に紅が密かに這わせた血の糸が、カタストローフェの身に食い込み、締め上げる。
「色鮮やかなら良いってものでもないのですよ!」
「力を誇示し我を押し通すだけの竜など、威厳の欠片もありませんよ」
紅の、そして黒羽の言葉に、歯噛みした竜がもう一度吠える。
「良かろう、ならば我が全力の炎で、まとめて灰燼に帰すのみ!!」
高らかな咆哮は、しかし『挑発に乗った見え見えの攻撃』でもある。
「させるもんですか!」
明らかな前兆を潰すべく、リグの銃口が敵の喉を照準。発射された銃弾は、しかし身を捻った竜の樹皮、堅い鱗に逸らされて、軽い傷だけを残して彼方へと飛び去った。
勝ち誇った笑みを浮かべた竜の口から、蒼い炎が燃え上がる。
「――なんて。油断、したかしら?」
「――ッ!?」
そこに、即座に放たれた第二射が、気を抜いた竜の鼻先で弾ける。爆音と閃光、炸裂弾によるそれを受け、目を白黒させた竜は、攻撃のタイミングを一時、失う。
「くーちゃん、お願い!」
「任せるのですよー!」
紅の意思に従い、浮かび上がったいくつもの巨大なギロチン刃が、空中で花咲くように重なり、盾を形作る。そして、同時に。
「黒抱く白姫、腕満つらば天降る涙が舞い落ちる──」
黒羽の詠唱に応じて、黒剣がその形を崩す。『花雨は白姫』、刃から変化した氷の花弁が、渦巻くように舞い上がり、放たれる炎弾の前で踊る。その背に庇ったオズに、仲間達に、攻撃を届かせてなるものかと、そんな黒羽の思いを写したように。
「消し飛べ!」
だが竜の側も、そんなものを斟酌するほど甘くはない。血糸の拘束から力ずくで体を動かし、舞う花弁の上から、叩き付けるように炎を放つ。蒼炎が爆ぜて、爆ぜて、爆ぜる。花弁は巻き起こる風の形を明らかにするように散っていき、ギロチンの刃で出来た盾の上で、青い爆炎の花が咲く。
眩いそれの下で、黒羽はオズに目配せする。さあ、何を見せてくれるのか。
「――ありがとう」
守ってくれたお礼を。そして、きれい、と。ただただ素朴な感想を抱きながら、オズはそれに応え、ガジェットを展開した。
現れたのは、大砲に似た筒。弾丸の代わりに込められた槍には、返し付きの巨大な刃が据えられていた。
うーん、とオズが片眼を瞑ってその先端を動かす。射的で鍛えた腕前が、きっとここで生かせるはずだから。
「道を開けてっ」
「はーい!」
ギロチンの刃の束が広がって、生まれた隙間にそれ――捕鯨砲が撃ち込まれる。飛び立ち、一度距離を置こうとしていた竜の元に襲い掛かったそれは、狙い通り胸元に突き刺さる。その飛翔した銛には、見るからに頑丈な鎖が繋がれていた。
「ガアァァァァッ!!」
苦鳴と、怒りの声、それらがないまぜになった咆哮を、竜が上げる。
「……毎回思うんですが、オズさんのその武器、面白いですよね」
「ふふ、おもしろいよね」
興味と知識欲によるものか、その眸を輝かせている黒羽に、「いつもちがうのがでてくるんだよ」と笑ってオズが答える。のんきに見えるが、二人とも次の行動へと移っている。
竜の側もまた、即座に反撃するべく目を見開くが。
「――こんな趣向はどうだい?」
今度は別の種類の、雪混じりの花吹雪がその眼前に広がっていた。
竜巻のように荒れるその花吹雪の根元は、クーナの構えた騎士槍だ。『風花は舞い散り』、凍結と幻惑効果を持つ花弁が竜の鼻先を包んだ。
「そんな状態で、上手く攻撃できるのかい?」
口の中で、クーナが小さく呟く。視界を遮り惑わす花吹雪、相手の位置が見えず、または誤認した状態では、敵の薔薇の花弁もその効果を発揮できないだろう。
しかし、敵の取った行動は単純かつ強引なものだった。狙いが正確でなくとも、当たれば良いのだと、薔薇の嵐がクーナのそれを上書きするように放たれる。
「リグさん!」
「今度はこっちの番ね!」
紅の声と同時に、浮かんでいたギロチンの刃達が、刃を寝かせてリグのための階段を空中に生み出す。一歩間違えば足をざっくりいくか、真っ逆さまだが、そこは連携の成せる業、吹き荒れる赤い花弁の間を抜けるように、時に上に、時に平たく生じた道を、リグは一歩も止まらず駆け抜けて。
「行くよっ」
「アイスの森を溶かそうなんて悪竜は、ここで叩き潰してあげないとね?」
オズの斧が、クーナの槍が、竜の足元を貫いて気を引く。その間に竜の背へと飛び乗ったリグはその黒剣を深々と突き立てた。
「くーちゃん!」
「了解ですよ!」
絡みついていた血の糸が、そこに集まり、さらに深く傷口を抉る。
「おのれ、おのれ、おのれ! やるではないか猟兵ども! 何がそこまで貴様らを駆り立てる!?」
リグを振り払うように体を揺すって、竜が問う。
「それはね――」
それに対し、二人は同時に答えて見せた。
そう、そんなものは決まっている。強敵に挑むのが戦士の矜持であり、悪い子を倒すのが胸に抱いた決意であるのだから!
「はやく倒してアイス食べたいからよ!」「おいしーアイスを早く食べたいからです!」
ああ、本音と建前が逆――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
朽守・カスカ
【薬B】
全く、この氷菓の国でそのような炎とは
無粋極まりないことだ
ピーノ君が溶かされてしまう前に倒さねば
空を飛ぶ相手ならばガジェット馬を
ガジェット天馬に変じて撹乱がてらぶつけて見せよ……
ううむ、我が師が随分と御機嫌に光線を放つものだから
私もそれを倣うとしようか
【還す標】
遠くとも届くだろう
この目も眩むばかりの閃光が
……医術を学ぶために弟子入りしたはずだが
何故このようなことに
あまり冷静になっては
迷いになってよくないな
ああ、でも真珠君にヨシュカ君
弟子入りしたからと言って怪光線が出せるものではない
そもそも、これは怪光線ではないよ
違いを問われれば言葉に詰まるけれど
そればかりは、そればかりは訂正させておくれ
ヨシュカ・グナイゼナウ
【薬B】
あー!!アイス燃やしてる!
何が獄炎薔薇竜ですか、その荊根刮ぎ剪定してやります。丸裸だ
雅楽代さまの涙で止まった動きを、そのまま【針霜】で貫き【串刺し】
【地形の利用】で残っている樹木達に絡めて固定
【早業】で雁字搦めにしてやります。頭が高すぎるとの事ですので、そのまま首を垂れていて下さい。不敬不敬
その隙に竜の荊を剪定伐採【部位破壊】、ロカジさまと朽守さまの攻撃が来る前に離脱して
(ビームが出た)
すっごいすっごい!ロカジビーム!(大興奮)いったいそれはどういう仕組みなのですか?
わ、朽守さままで!弟子になるとビームが出せる…?え、ビームじゃない?(違いがわからないドール)
ロカジ・ミナイ
【薬B】
カカカ!ご苦労だったねピーノ君達!見つけたよ火の元を!
火消しは江戸っ子の十八番
ピーノ君達もアイスも溶かしてなるものかい
…しかしまぁでっかいねぇ
僕の蛇ちゃんよりでっかそう
顔こわーい共食いとか平気でしそーう
こりゃ飛び道具の方が効きそうだ
真珠くんとヨシュカの高性能な足止めを目一杯に活かし
斧にしてた刀に今度は稲妻を纏わせて…撃つ!
喰らえ!ロカジビーム!ドドーン!
愛刀よ、今回もいい声で鳴るじゃないか
実はこれ連打も出来るので連打します
ヒャヒャヒャ!ビームを撃てずして何が剣士か!
えっ、我が弟子のビーム凄くない?
師匠に習ったカスカビームだっけ?
えっ、違うの?えっ、(違いが分からない師匠)
雅楽代・真珠
【薬B】
えらいね、ぴぃの
後は僕以外の猟兵が張り切るから大丈夫だよ
偉そうな竜だね
頭が高すぎると思わない?
ヨシュカも言っていたけれど、万死
その不敬、万死に値するよ
硝子を融かす程の炎でなければ平気だけれど
衣やあいすくりんのことは心配
炎や熱の薔薇には水泡のオーラ防御を張り巡らそう
くっしょん…ぴぃのも守ってあげようね
飛ぶ素振りを見せたなら『人魚の涙』
あいすくりんが溶けてしまうのは悲しいからね
僕の刃たちも行っておいで
うん、ヨシュカも偉いね
そう、不敬罪だ
最近の剣士は怪光線を放つものなのだね
ロカジがカスカの師匠なら、カスカも怪光線を放つの?
あ、出た
怪光線師弟
…カスカのは怪光線ではないの?(違いが解らない国宝)
●走る閃光
猟兵達と竜の戦いは続く。着実にダメージを与えていく一方で、とにかく範囲の広いカタストローフェの攻撃により、戦場にはその爪痕が深く刻み込まれていた。
「あー!! アイスの木が!!」
森の一角に着弾した炎の被害を目の当たりにして、ヨシュカが怒りの声を上げる。万死とか言ったそばからこれなのだから、彼の嘆きはいかばかりか。
「全く、この氷菓の国であのような炎とは、無粋極まりないことだ」
「ま、おかげで火の元は明らかなんだ、火消しといこうじゃないかい?」
カスカの言葉にロカジが続く。火消しと言えば江戸っ子の十八番、猟兵の力の見せどころと言えなくもない。
「しかしまぁでっかいねぇ、僕の蛇ちゃんよりでっかそう」
「そうだね、態度も大きいし。頭が高すぎると思わない?」
間近で見上げれば、きっと首が痛くなるような巨体。自らの使うオロチと尺を比べるようにしていたロカジと、外見も言動も気に入らないと不満げな真珠、二人の視線が、敵のそれとぶつかる。
「顔こわーい共食いとか平気でしそーう」
ロカジのそれに、もうちょっと他に感想無いのかい? とカスカが視線で問いつつ、構える。
「……ピーノ君が溶かされてしまう前に、倒してしまいたいところだね」
一声吠えた竜は、こちらへと迫っていた。
「今度の相手は貴様等か? そう簡単に蹴散らされてくれるなよ、猟兵ども!」
大木が突然根を張ったように、地響きと共にカタストローフェが彼等の目の前に着地する。蒼い炎、花弁の乗った赤い嵐、吹き荒れる熱風が猟兵達を煽る。
「これぞ、地獄の業火――その身で思い知るが良い!」
竜の背負った花弁が散れば、それは風に乗って無数の欠片へと分かれていく。その一つ一つが地獄の熱量を抱え、眼下の猟兵達へと降り注いだ。
それを受け止めたのは、地より生まれた水泡。真珠のオーラ防御によるそれが、猟兵達を、周りの残った木々を包む。ピーノ君達まで攻撃が届くことはないだろうが……その熱量に対して、守りの障壁は少々心許ないか。蒸気を上げて消えていく水泡を前に、竜はさらに畳みかけるべく追撃を狙う。体の奥から噴き上がる蒼い炎が勢いを増し――。
「まったく、嘆かわしい……。その程度の炎では、僕の身体を融かすこともできないだろうけど――あいすくりんがなくなってしまうよ」
そこで、はらりと真珠の頬を涙が伝う。零れ落ちた『人魚の涙』は宝石へと形を変えて、見る者の心を突き刺した。
「何を――貴様が嘆いたところでどうだというのだ。軟弱な菓子など不要、我が望みは闘争のみ!」
ダメージはない、だがそんな言い訳が出てくる時点で効果はあったと言えるだろう。
「口の利き方に気を付けなよ、ただでさえ頭が高いんだ、お前は」
「そうですね、不敬ですよ、不敬不敬!」
その間に、ヨシュカの掌が大地に触れる。植物の根を伝うように伸びた鋼糸が跳ね上がり、槍のように竜の足元を貫いた。
貫通した糸束はその網を広げ、手近な部分を刻み、絡みついていく。
「茨は根こそぎ剪定して、首を垂れさせてやりましょう!」
「うん、ヨシュカも偉いね。僕の刃達も行っておいで」
自動人形の如月と皐月も、それぞれ別方向から飛び込んで、『薔薇の剪定』に手を貸す。伸びる枝を切り裂いて、首に食い込む鋼糸を引き寄せるヨシュカを援護。敵の頭部を下げさせる。
「偉ぶるなよ小僧、この程度で我が身を押さえられるなどと――!」
先手を取った攻撃ならばいざ知らず、力比べとなれば竜の有利は揺らがない。拘束を断ち切ることも容易いはずだった。
が、そうなる前に、刀を抜いたロカジが二人に声を掛ける。
「真珠くん、ヨシュカ、そろそろ良いよ」
「そう。じゃあ不敬罪に処してやって」
「万死ですね、万死!」
素早く飛び退くヨシュカと人形達と入れ替わりに、ロカジがその大太刀の切っ先を敵へと向けた。先程まで、黒く斧のような形状となっていた刀身に、今度は眩い雷が宿る。バチバチとスパークする刀を引き寄せ、敵へと向けて真っ直ぐ、突きを放った。
「喰らえ! ロカジビーム!!」
掛け声と共に、刀身がさらなる輝きを放ち、白く光る衝撃波がロカジと竜の間を駆け抜けた。『手名椎のこえ』、放たれた雷撃を伴う真空波が、竜の胴を穿つ。
「グ、オォ……!?」
躱す暇もない一撃に、竜の身体がぐらりと揺れる。手応えありと見たロカジは、不敵な笑みを浮かべて見せた。
「愛刀よ、今回もいい声で鳴るじゃないか……」
「すっごいすっごい! ロカジビーム! いったいそれはどういう仕組みなのですか?」
「企業秘密という奴だよヨシュカくん、弟子入りするなら教えてあげても良いんだけどね?」
「あまり、適当な事を言うものではないよ……?」
はしゃぐヨシュカとロカジに、窘めるようにカスカが言う。とはいえちゃんとダメージを与えているのもまた事実。
「ちなみにこれ、突きのモーションとかもほんとは要らないからねー」
身も蓋もない。真っ直ぐ敵に向けた刀身から、雷撃が次々と飛んでいく。
「ヒャヒャヒャ! ビームを撃てずして何が剣士か!」
「最近の剣士は怪光線を放つものなのだね」
「そうではないと思うけれど……」
「カスカもできるの?」
ロカジの弟子なのだから、という問いにカスカの手が止まる。先程まで荷車を引いていたガジェット馬を改造して、敵への攪乱に当てようとしていたところだが。
少し考えるようにした後、彼女はランタンを手に持った。
「では、ここは師匠に倣うとしようか」
掲げた灯火が強く、輝きを増す。――『還す標』、一呼吸の間にさらに眩い光となったそれは、一閃、空を切り裂いて走り、ロカジのそれと同時に竜の身体を灼いた。
「あ、出た」
「えっ、我が弟子のビーム凄くない?」
真珠と、ビームを連打していたロカジが揃って声を上げる。
「怪光線師弟だね」
「やはり、弟子になるとビームが出せる……?」
「いやいや、そういうわけでは――」
「師匠に習ったカスカビームだっけ? だったよね?」
真珠とヨシュカの言葉にロカジが乗っかり始めて、カスカがこめかみを押さえる。
さて、自分は医術を学ぶために弟子入りしたはずなのだが、どうしてこうなった……?
「……いや、うん」
あまり深く考えると色々と揺らいでしまいそうなので、カスカはそこで思考を打ち切った。
「ああ、でも真珠君にヨシュカ君。誤解しないで欲しいのだけど、弟子入りしたからと言って怪光線が出せるものではないからね」
「そうなのですか?」
「そう。それに、そもそもこれは怪光線ではないよ」
「えっ?」「どう?」「違うの?」
「……」
ほぼ同時に首を傾げる三人に、カスカはどうやって訂正を受け入れさせるか頭を悩ませ始めた。
さて、ちなみに、二条の光線の直撃を受けたカタストローフェが、その後どうしていたかと言うと――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
エンジ・カラカ
【薬A】
ピーノの応援だー。
で、コイツが悪いヤツ?
さっきは吠えて怒られたからなァ……賢い君、賢い君、行こう。
先制攻撃で狙うのは竜の懐。
潜り込んで、相棒の拷問器具の賢い君で動きを少しでも封じたい
コレなら怒られないだろう。
うんうん。キララに怒られなかった。支援は任せてくれ。
封じるだけじゃ無いンだ。属性攻撃。
コレは賢い君の毒サ。
じゅーべーの攻撃は相変わらずすごいなァ。
狙いやすいように糸を動かすヨー。
トリスは猟師だったのカ。
アァ……みんなみんな頼もしい。
ピーノピーノ、頼もしいだろう。
ココのアイスは美味しいンだ。竜にも食べてもらいたい
食べたら気持ちを改めてくれる?
アァ、くれないかもなァ。
御鏡・十兵衛
【薬A】
ちょっと貴殿~来る場所間違えてなあい?
ま、来てしまったものはしょうがない。……が、キララ殿の言う通り、某たちも菩薩ではないのでな。
あいすの弁済として――竜の首、頂戴致す。
火球の狙いを絞らせぬジグザグな動きで接近し注意を引き、エンジ殿の突入の援護を
おっと、キララ殿やトリス殿が気になるのもわかるが、某を忘れちゃいかんでござるよ?(踏み込み突き)
付かず離れず妨害を続け、しびれを切らして花びらを出せば此方のもの
刀を盾に、炎の熱は水を操りやわらげて【刃鏡】を発動するでござる。
――一切相殺。その情熱、甘く凍らせてから出直して来ると良い。
トリス・ビッグロマン
【薬A】
花道の整備をご苦労
さあ《大物狩り》の時間だ、抜かるなよ
常に標的にならず、こちらから狙いやすい位置を確保するのが重要だ
正々堂々がお望みならすまない
オレは戦士じゃなくて猟師なんでね
懐に切り込んでいくのはエンジやジューベーに任せるさ
一発撃ったら味方の攻撃に隠れて移動、戦地を走り回る
時には攻撃ではなく、囮や援護を
キララのお嬢ちゃん、ナイスフォローだ
やっぱりガキも侮れないな
本音を言えば、ああ、逢いたかったぜ
間近に見るほど美しい、これがお伽噺に聞いた竜か!
ついに「竜殺し」の称号が手に入るとは願ってもない!
オレの名誉のために死んでくれ、デカブツ
キララ・キララ
【薬A】
わわわあちちち
…もう! キャラメリゼくらいならいいけど、ぜーんぶ溶かしちゃいそう!
何いってるかわかんないし、めちゃくちゃにするしー!
きらちゃんすっごく怒ってるんだから!
エンジは急におっきい声だすし!……あ、こんどはしずかに攻撃してくれるのね。じゃあオッケー!
入れ違いに《存在感》できらちゃんに注意をむけられないかしら?
そしたらUCで、離れた場所にいるだれかのところにテレポート
トリスか、入れ替わったばかりのエンジかなあ?
お魚さんたちにはできるだけばらけるようお願いして、ドラゴンの邪魔をしてもらうの。
これならトリスも隠れやすいし、
ジューベーもきっと戦いやすいわよね!
どんどんやっちゃってー!
●追い詰める
二条の光線が空を裂き、竜を貫く。苦悶の声を上げたその身体から、抉り飛ばされた樹木のような体皮が、吹き飛んで戦場の一角へと落下した。地獄の炎の残滓を纏い、蒼く燃え上がったそれは。
「わわわあちちち!」
「アア、キララ、キララ、動くな」
「だいじょーぶでござるかー?」
丁度この三人の傍に着弾していた。キララの服の裾に燃え移った炎を、エンジと十兵衛が叩いて鎮火する。
「……もう! どうなってるのさっきから! 森はあちこち燃えてるし! 何いってるかわかんないし!」
火が消えたことに礼を言ったあと、キララは即座に地団駄を踏み始める。彼女にしてみれば今回は、腹に据えかねることばかりなので。
「ああもう、めちゃくちゃ! キャラメリゼくらいならいいけど、ぜーんぶ融かしちゃいそうだし! エンジは急におっきい声だすし! きらちゃんすっごく怒ってるんだから!」
「まあまあ」
「うんうん、今度は吠えない、怒るなキララ」
「え、ホント?」
それならエンジは許してあげる、とキララが二人の方を向いて一旦矛を納める。
「よしよし、怒られなかった」
「それじゃ、某から仕掛けに移るでござるよ」
頷きつつ、今回用いる拷問具を取り出したエンジの援護に入るため、十兵衛はまず率先して駆け出した。
相手の放つであろう炎弾の、狙いを定めさせないよう、不規則にジグザグに駆けて、十兵衛は竜の元へと接近する。向かい来る彼女の姿はまた、竜の側もすぐに認識している。ゆえに、あえて彼女は声を上げる事にした。
「ちょっと貴殿~、来る場所間違えてなあい?」
からかうような声音で言って、ステップを踏む。思ったよりも敵の視線の圧が強い、近づくのはこの辺りまでが良い塩梅だろうか。
「ま、来てしまったものはしょうがないが……こんなに暴れて、弁済できるでござるかぁ?」
「何を償う必要がある? 戦いとは常に起こる物。我が居場所には戦の嵐が巻き起こるのだ、受け入れよ」
言葉と共に、その頭部が十兵衛を睥睨するように降りて、複数の火球を解き放つ。
「あっぶないでござるな!?」
頃合いと見た彼女は急制動、後方に跳んでそれらの炎をやり過ごす。とりあえずの役目はこの程度だろうか。一拍遅れて、別の方向へ回り込んでいたエンジが地を蹴り、敵の樹木のような体にしがみついた。
「で、コイツが悪いヤツか。……賢い君、賢い君、行こう」
ここからは拷問具の真価を見る時。広げられた赤い糸が、竜の体に絡みついていく。今日だけでも何度も鋼糸を喰らっている分、うまい具合に抉れた位置に、糸は引っ掛かり食い込んだ。
「貴様、何をして――!?」
がん、とその横っ面に、離れた場所からの一撃が叩き込まれる。
「よーし、命中!」
得物を手にしたトリスは、発射したその場所から即座に移動を開始した。身を潜めて、さらに次の、狙撃に適した場所を探して走り出す。
「正々堂々とか言うなよ? オレは戦士じゃなくて猟師なんでね」
敵の目に止まらないよう、駆ける彼の方針を察して、エンジが次の手に移る。
「……なるほど、トリスは猟師だったのカ」
興味深い、と頷きながら、血のように赤い宝石を竜の身体に撃ち込んで。
「何だ、今のは……!?」
「封じるだけでは無いンだ。コレは毒さ」
反撃し辛いよう、樹木の身体を伝って移動しながらエンジは言う。一緒に来ている仲間達は、みんなみんな頼もしい、こうして動きを鈍らせてやれば、きっと。
「ええい、いい加減にしろ! 離れろ貴様ァ!!」
「ちょっと、急に大声出さないでって言ってるでしょーっ!?」
思い切り身体を暴れさせようとしたところで、キララが絶妙の存在感を発揮し、集中を乱す。
「もらった――!」
「はいはい、某の事も忘れちゃいかんでござるよー?」
そこにトリスの追撃が入り、鋭く踏み込んだ十兵衛がその足元を突き刺し――。
「オォ、猟兵どもめ……!」
焦れた竜が、体表に咲いた薔薇の花弁を一つ散らし、無数の小さな欠片の乗った赤い風を、その身の周りに解き放つ。さらに射撃を受けた方向から、竜がトリスの現在位置を見つけ出し、蒼い炎弾を生み出していく。
「あ、キララ殿、これ逃げた方が良いやつでござる」
「はーい!」
テレポートで掻き消えた彼女は、トリスの傍へ瞬時に移動、『アクアリウム・ビッグバンド』で描き出された観賞魚の群れが、二人の周りの空中を泳ぎ回る。目立つそれらは、攪乱と目隠しには十分な効果を上げ、飛び来た炎は全て猟兵達を逸れて飛んでいく。
「できるだけバラけて泳いでねー!」
「お嬢ちゃん、ナイスフォローだ。やっぱりガキも侮れないな」
正直かなり危ない所だったけれど、と胸中で呟いて、猟銃を構えなおす。セオリーならば移動するところだが、今は畳みかけるべき時だ。
「今、ガキって言った?」
「訂正する。お子様」
銃口を向けた先では、熱持つ赤い花吹雪が、その激しさを増していた。
「――見た目だけなら、美しいものでござるなあ」
刃を寝かせた刀を盾に、十兵衛は花吹雪の中に立っていた。操る水で、降りくる多大な熱量を和らげて、屈するのを防ぐ。そして。
「水鏡は決して砕けず、全てを映す刃金とならん」
敵の姿を映し取ったその刀を、大きく振るった。
「――一切相殺。その情熱、甘く凍らせてから出直して来ると良い」
『刃鏡』と名のついたその技は、敵の動きを正確になぞってみせるもの。太刀風に乗って生じた熱持つ花弁が、今度は十兵衛の側から舞い上がり、敵の残りの花弁を相殺しながら、竜の身体を焼いていく。
「じゅーべーの攻撃は相変わらずすごいなァ」
「いやエンジ殿も離れた方が良いでござるよ!?」
その言葉に応える事なく、エンジは赤い糸を一度きつく引き寄せて、竜の首を下に、近くに降ろさせる。
「聞こえるか、竜よ。ココのアイスは美味しいンだ。竜にも食べてもらいたい」
戦いだ闘争だと荒ぶる前に、それを、と呼びかける言葉に、竜は牙を剥いて応じた。
「愚かしい、我には不要だ。そんなもので、我が炎は収まらぬ!」
「――アァ、やっぱり、そう答えるよなァ」
半ばわかってはいたのだろう。そう言うと、エンジは最後に一度、絡む糸に力を込めた。これもどうせ振り払われてしまうのだと分かっている。けれど、もう一時だけ。
「ああ、ああ、本音を言うなら逢いたかったぜ竜よ!」
そしてその硬直を、猟師の目は見逃さない。雄々しく、そして美しい、これがお伽噺に聞いた竜かと、トリスは抑えていた畏怖と歓喜を同時に発する。
恐ろしい敵ではあるけれど、それを倒せば正しく『竜殺し』だ。
「オレの名誉のために死んでくれ、デカブツ!」
指先が引き金を引く。『大物狩り』、竜を仕留めるに相応しい弾丸が、銃声と共に空を切り裂いた。
着弾の衝撃に、竜は苦悶の雄叫びを上げる。そして弾丸の主であるトリスは。
「は、外した――!?」
「えっ……トリス、今の流れではずしたの?」
キララが憂いを含んだ目で彼を見る。正確には命中しているのだが、急所は逸れた、『仕留めそこなった』と言うべきだろう。
「ああ、ダメだ! 待て! 追うぞ!!」
とはいえ、飛翔する竜には、さすがにちょっと追い付けない。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
誘名・櫻宵
【迎櫻館】
アドリブ歓迎
ピーノ君達もやる気をだしてくれた事だし!
このアイスを溶かすドラゴンをハントしてから女子会よ
強者との戦いは心が踊るわ!
女子会前の運動にピッタリ
白雪とヴォルフが後ろにいる安堵感
千織と視線交わし微笑んで刀抜き駆ける
なるほどね…ヴォルフにウインクひとつ
破魔宿した刃でなぎ払い、斬撃に衝撃波を乗せて斬り裂くわ!
一撃一撃に生命力吸収の呪詛を含ませて、ね
攻撃は桜花弁のオーラ防御でいなし、見切り躱して咄嗟の一撃
千織、連携していくわよ!
白雪の炎のほうがずっと綺麗よ
あなたの首をアイスでデコってあげましょうか
思い切り力を込めて放つは「絶華」
炎ごとなぎ払い斬り裂いて
さぁさ、綺麗な華を咲かせて頂戴!
鶴澤・白雪
【迎櫻館】
アドリブ歓迎
獄炎薔薇竜ね…
あんまりゴテゴテ付けすぎると安っぽく聞こえるわよ?
ふふ、でも奇遇ね
あたしもインフェルノ…焔の狙撃手なのよ
あたしとあなた、どちらの火が勝るのかしらね?
あたしとって蒼は守るための焔
櫻宵と千織にそう簡単に届かせられると思わないでちょうだい
氷の属性を籠めた清冽な焔の弾丸
撃ち抜いて道を作るわ、2人とも駆け抜けて
あなた、冷たい焔はお好みかしら?
援護射撃の合間に串刺すように尖晶石の弾丸で右目の薔薇を狙うわ
その薔薇散らせてあげるわ
あたしの紅い花でね
全力でUCの花を舞わせる
地獄に行くのはあなたの方
薔薇は人を傷つけるための花じゃないのよ
全てにおいて不愉快だわ
燃えて咲け、焔華
ヴォルフガング・ディーツェ
【迎櫻館】
若い子達は頑張るね、年寄りも働くか!
UCで強化した【メカニック】【ハッキング】を自前の高度情報体や片視鏡に用い竜を分析
魔力、筋肉神経情報、心理…多角的に分析し自らに【全力魔法】で刻んだ叡知のルーンで取捨選択
有用な情報のみ3人に伝え、攻撃や回避に役立てて貰おう
皆の攻撃に合わせ描くルーンは大鹿なるエオロー
大地より生まれし石角に代えて、死角から串刺しにしてあげよう!
あれ、早贄になっちゃったかなー?
強くなるならキミを面白がらせはしないさ、その為に悪辣な手を打ち続けよう
這い寄る死の悪寒は格別だろう?
怒り出せばキミの下拵えは全て完了だ、後は切り刻まれ焼かれて首なし丸焼きの出来上がりってワケさ!
橙樹・千織
【迎櫻館】
アドリブ歓迎
沢山つけるより、しんぷるな方がいいですものねぇ
倒せるかどうか、ではなく倒すんです
櫻宵さんと目配せをした後、スッと藍雷鳥を構える
同時に武器全てに【破魔】と水の【属性攻撃】を付与
ええ、準備は出来ていますよ!
背を任せられる仲間がいる、隣を駆ける仲間がいることに思わず口元に笑みを浮かべる
開いてもらった道を駆けながら藍焔華を花弁に変えつつ【なぎ払い】
さぁさぁ、その魂が散りゆくその刻まで舞い踊れ!!
敵の攻撃は【オーラ防御・火炎耐性・激痛耐性】を活用しつつ、【見切り・残像】で回避を試みる
回避後は【カウンター・鎧砕き】を活かして【マヒ攻撃】
●散華
複数の猟兵達との戦闘を経ながらも、未だ上空を舞う竜の姿を見上げ、白雪と千織が言葉を交わす。大樹のような体に赤い薔薇を咲かせ、その身は蒼い炎を宿しているというのだから、一言二言口を出したくもなるだろう。
「獄炎薔薇竜ね……あんまりゴテゴテ付けすぎると安っぽく聞こえない?」
「沢山つけるより、しんぷるな方がいいですものねぇ」
「まぁねえ。でも、そう生まれたものは仕方なくない?」
飛行は一時のものだったらしい、地響きを立てて着地した竜の方へと、櫻宵は踏み出した。
「ピーノ君達もやる気をだしてくれた事だし! あのアイスを溶かすドラゴンをハントしてから女子会よ」
「女子会、女子会ねぇ」
「ええ、ここで倒してしまいましょう」
千織と視線を交わし、櫻宵は前へ。含みのある言葉を返しながらも白雪が続き、結果的に最後尾になったヴォルフガングが情報解析に入る。
「若い子達は頑張るね、年寄りも働くか!」
『調律・機神の偏祝』、一時的にその片眼鏡と情報処理能力を先鋭化させ、敵を視る。魔力、筋肉神経情報、心理……得られる情報を、さらに自ら刻んだ叡智のルーンで処理し、取捨選択。有用な情報を掬い上げる。
とはいえ、その身体機能や性質よりは、戦いに挑む彼女等に有用なのは即効性のある情報だろう。たとえば、そう、ここまでの戦いによる負傷、疲弊具合。失った片目によって生じる死角、度重なる攻撃で鱗の剥がれた首、その辺りか。
「――総じて言うなら『あと一押し』ってとこかな?」
情報の礼代わりにウインクを一つ送って、櫻宵は鞘から刀を引き抜く。薔薇のそれにも劣らぬ、紅の刀身が姿を見せた。
「千織、連携していくわよ!」
「ええ、準備は出来ていますよ!」
前進する二人を迎え撃つのは、薙ぎ払う竜の尾。土石流や雪崩を思わせる怒涛の一撃を、櫻宵は身を低くし、舞わせた桜の花弁のオーラで逸らし、やり過ごす。そして生まれた隙間を千織が駆けて、黒い刀身の薙刀で一撃を加えた。
藍色の装飾と共に刃が纏う破魔の力が、装甲のような鱗に深く傷を刻む。
「やるではないか、ならば――!」
深く踏み込んだ彼女等を襲うのは、降り注ぐ蒼の炎弾。水の気を宿した千織の刃はそれを難なく切り裂くが、続く爆発は威力を抑えられながらも、確たる火力で二人を炙る。
「――でも、見え見えよね?」
「大雑把すぎるのよ!」
攻撃の傾向を掴んだ白雪が援護射撃で、櫻宵は斬撃からの衝撃波で炎弾を迎撃し、空中で爆炎の花に変えていく。
「女子会前の運動に丁度良いわね!」
「言ってくれるではないか、ならば我が炎の粋を――!」
楽し気に言ってのける櫻宵の様子に、カタストローフェの炎が激しさを増す。しかし、そこで敵の死角を突いて、大地から突き出した岩の槍が、竜の身を貫いた。
「何ィ……!?」
「あれ、早贄になっちゃったかなー?」
わざとらしく、ヴォルフガングが笑う。彼の描いたルーンは大鹿なるエオロー、その石角の意図は明確、『敵の望み通りにはさせない』。
「ええい、水を差すな!」
「おや、這い寄る死の悪寒はお嫌いのようだね」
串刺しにしていた岩の角を尾の一撃で叩き砕き、傷を負いながらも竜は自由を取り戻す。けれど、怒りを見せたのならば狙い通りだとヴォルフガングは頷いた。勢いは削いでやった、その上冷静さを欠けば……彼女等はそこを逃しはしないだろう。
「まとめて薙ぎ払ってくれよう!」
刹那、薔薇の花弁が散り行く。蒼い炎とは対照的な、しかし同等の熱を持つ赤い花弁が細かく割れて、吹き荒れる炎の嵐となって猟兵達を狙う。
近づく者を呑み込み、灰へと変える花吹雪を前に、白雪はその銃口を向けた。
「奇遇ね、あたしもインフェルノ……焔の狙撃手なのよ。あたしとあなた、どちらの火が勝るのかしらね?」
細身のライフルが備えるのは、尖晶石の弾丸。氷と焔、一見相反する特性を備えたそれが、真っ直ぐに敵を狙う。
「櫻宵と千織にそう簡単に届かせられると思わないでちょうだい」
解き放たれた弾丸は空中で爆ぜ、凍れる蒼い炎と化す。敵と同じ色の蒼炎は、しかし『守るため』の焔となる。赤い風を撃ち抜いて、冷気と熱気の相殺された、清冽な風が吹く。
「二人とも」
行って、という白雪の声に応えて、櫻宵と千織が駆ける。
「やるな猟兵よ、だが我が炎はこの程度では尽きぬ!」
「あら、でも白雪の炎のほうがずっと綺麗よ」
「私もそう思いますよ」
言い返す櫻宵に、千織が同意する。隣を駆ける仲間、そして背を任せる仲間。そんな恵まれた状態を思えば、思わず笑みも浮かぶというもの。
「さぁさぁ、お覚悟を。はらりと舞うは、櫻花と面影。共に散らさん、汝が魂」
開かれた道を駆けながら、千織は黒鞘から、こちらも黒鉄から成る日本刀を引き抜いた。刃の閃きと共に、その刀は花吹雪へと姿を変える。舞うは山吹と、八重桜。
「その魂が散りゆくその刻まで舞い踊れ!!」
ユーベルコード、『剣舞・櫻雨』。そしてさらなる追い風を吹かせるように、白雪もまた花弁を舞わせる。
「その薔薇、散らせてあげるわ。あたしの紅い花でね」
ライフルから姿を変えた『深紅のアマリリス』が、山吹と桜を連れて、前を行く二人を追い越し、竜を包む。
「地獄に行くのはあなたの方。薔薇は人を傷つけるための花じゃないのよ」
燃えて咲け、と彼女の命じたその通りに、緋色の花弁が燃え上がる。炎と刃、吹き荒れるそれらに向けて、櫻宵の持つ紅の刀身が閃いた。
「薔薇以外でデコられた気分はどう? 割と似合ってるわよ」
舌に乗せた言葉のように、踏み込む足取りは軽く、鋭く。
「さぁさ、あなたも綺麗な華を咲かせて頂戴!」
目にも止まらぬ一太刀で、舞い散る花弁に、猛る炎に、そして竜の首に、赤く血色の線を引いた。
『絶華』。両断された首から、地獄の炎が噴き出して、大きく蒼い薔薇が咲く。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 日常
『Under the Rose』
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POW : ――あのね、だぁれにもないしょだよ。
SPD : ――ねぇ、しってる?
WIZ : ――君にだけ教えてあげる。
イラスト:anじぇら
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●炎は消えゆく
斬り払われた首が落ち、巨大な身体が焼けた地面に倒れ込む。薔薇の花弁の上に横たわったその身体は、やがて蒼い炎に呑まれるように、燃えていく。それと同時に、竜が支配下に置いていた、迷宮を形作っていた木々もまた生育が止まり、骸の海へと還っていった。
「ヤッター!」
「猟兵サン達が勝ちましたヨー!」
あちこちから、ピーノ君達の歓声が聞こえる。
猟兵達が互いの無事を確認して、しばし。大きな篝火のように、蒼く燃え続けた竜の亡骸が消えたそこには、小さな薔薇の木々が残されていた。
戦いの傷跡か、それともかの竜の残り火か、その木々の周りは初夏のように暖かい。ささやかに咲いた薔薇の香りが、甘く、森の空気を彩っていく。
●勝者達へ
襲い来るこの国の危機を退けて、愉快な仲間達を救った猟兵達に、ピーノ君達から声がかかる。もちろん、何回も何回もお礼は言われたわけだが。
「ありがとうゴザイマシタ、猟兵サン達!」
「ワーイカッコイー!」
「お帰りになる前に少し休んでいかれてはイカガデスカー?」
そんなセリフと共に、星型頭のピーノ君からこんなチラシが手渡される。
――確かに、帰還を急ぐ理由はない。これを参考に、しばしこの国を歩いてみるのも良いだろう。
====不思議の国『ラクトパラディア』観光ガイド====
●『獄炎薔薇庭園』
森の中心に生じた、小さな薔薇の庭園。この場所だけは気温が高く、それでも不思議と融けないアイスの薔薇が咲いています。ピーノ君達がテーブルとイス、それからティーセットを持ち込んだため、ちょっとしたお茶会ができます。
アイスの薔薇は濃厚で香り高く、お茶に混ぜるのもおすすめだとピーノ君が言っています。
●『氷樹の森』
庭園の周りに広がる、アイスの果実が生る森。物見の塔を兼ねた氷の大樹が建っています。森の向こうには凍った湖、畔に野外劇場とピーノ君の氷像(修復済み)、それからアイスのたくさん並んだコンビニが建っています。
相変わらず色とりどりのアイスの果実が楽しめますが、焼けてしまった箇所も多く、その辺りではピーノ君達が植樹を行っています。
●『氷の街』
森を抜けた先、大穴の開いた城壁に囲まれた街です。中心の通りには、大きな滑り台の公園と、氷の花で飾られた『キララ商店街』が存在しています。
商店街には小さな店舗が軒を連ねており、防寒着を揃えた洋服店、マッサージチェア完備の休憩所のほか、氷のランタンが並んだ雑貨屋などが新たにオープンしたようです。
●『六花の城』
街からさらに進んだ場所には氷の城が建っています。内部はアイスの家具で飾られ、外装の氷はステンドグラスのように輝いています。寒さに弱い者向けに木造りの客間もいくつか。
城の脇には喫茶図書館建っているほか、てっぺんの塔には観覧車がくっついています。上からは国が一望できるほか、トルコアイスみたいな雲に手が届きます。
============================
ゼン・トキサカ
せっかくのお誘いだし
薔薇庭園にお邪魔していこう
この薔薇もアイスでできているなんて面白いね
庭園を散策して薔薇の姿を香りを楽しんだら
テーブルについてお茶をいただこうかな
まずはお茶をそのまま味わってから
おすすめに従って薔薇のアイスをお茶に混ぜてみよう
「……うん、いい香りだ」
困った竜だったけど、この薔薇園を残してくれたことには感謝してもいいかな
おっと
俺たち猟兵だけじゃなくピーノ君たちも頑張ったんだから
労わないといけないよね
…まぁ最初は寝ていたわけだけど
「さぁ、座って。お礼がわりに俺の淹れたお茶を飲んでいってほしいな」
今度はピーノ君たちにお茶を淹れてもてなすよ
●薔薇のお茶会
薔薇の咲く小さな庭園を歩き、ゼンは指先で花の一つを撫でる。庭園と言うには少し見栄えが良くないけれど、できたばかりで手入れが行き届いていないのは仕方があるまい。
「それにしても、この薔薇もアイスでできているなんて……」
面白いね、と彼は呟く。薔薇が竜由来のものなのは予想がつくが、アイスと化しているのはこの国の在り方ゆえだろうか。凍った薔薇の姿と、それでもなお感じられる芳香をしばし味わって、彼はテーブルの方へ向かった。
お茶の方はご自由に、といったところだろうか、用意されたティーセットで一杯淹れて、ゼンはカップを傾ける。そして味と香りに納得がいったところで、傍らに咲いた薔薇の花弁をいくつか摘んで、カップに浮かべた。
紅色の液体の上に落ちたより濃い赤が、ゆっくりと溶けて、沈んでいく。燻る湯気の中に、ふわりと甘い香りが広がった。
「……うん、いい香りだ」
カップを揺らして、ゼンが深く息をつく。
「困った竜だったけど、この薔薇園を残してくれたことには感謝してもいいかな」
薔薇の主はきっと不本意だろうけど、こうなって初めて、あの竜はこの国に馴染めたのではないだろうか。
「これ、猟兵さんもいかがデスカー?」
薔薇のお茶を味わっていたゼンに、後ろからピーノ君の声がかかる。どうやら摘んできたアイスの果実を配っているらしい。
「ああ、ありがとう……」
そう言って受け取ったところで、ゼンは改めて彼等に視線を落とした。
「そうだ、俺たち猟兵だけじゃなく、ピーノ君たちも頑張ったんだから、労わないといけないね」
「良いんデスカー?」
嬉しそうな声を上げる彼等に鷹揚に頷いたゼンだが、しかし。今回の戦いの始まりを思い返せば。
「まぁ、最初は寝ていたわけだけど」
「違いマスヨー、あれは絶望していたんデスヨー」
「立ち上がれたのは猟兵サンのおかげデース」
「……調子いいね、君達」
ピーノ君達の言葉に苦笑しつつ、ゼンは彼等に席を勧めた。
「さぁ、座って。お礼がわりに俺の淹れたお茶を飲んでいってほしいな」
「ワーイ」
「ありがとうゴザイマース!」
短い脚で跳ねるように椅子に上ったピーノ君達は、ゼンの振舞うお茶の香りに歓声を上げた。
大成功
🔵🔵🔵
紅月・美亜
「そうか、では紅茶を頂こうかな」
本音を言うと炭酸飲料の方が好きだが内緒だ! 紅茶も割と好きだし。
優雅(本人談)に紅茶を嗜んだ後本題に入るとしよう。
「そう、今まではただの前哨戦……ここからが私の戦争だ」
ガバっと最高のポーズで宣戦布告!
「この国に、STGを布教する!」
中空にARディスプレイ、コントローラーはS.F.R.B.S.で複数用意。
「景色の良い所で遊ぶSTGは最高だ。ディアドラなど開放感のあるゲームは良いな。だが、いつも心はキャッチザハート。そんな事よりSTGだ! とにかくSTGを遊べ!」
STGコレクションを颯爽と並べながら、
「さあ、遊ぶぞ。これから時間はいくらでもあるのだからな」
●布教活動
戦いは終わった。森の端で過ごしていた美亜は、展開していた無人機達を回収し、その戦場跡を訪れた。竜の遺骸も今は消え、残された小さな薔薇園で、ピーノ君達が忙しそうに動き回っている。
「猟兵さんデスカー? どーぞ、そちらのお席へー」
美亜に気付いたピーノ君の言葉に従って、美亜は茶会の席の一つに腰を下ろした。
「では紅茶を頂こうかな」
本当は炭酸飲料を頼みたいところだが、多分この国にそれは期待できないだろう。大丈夫、紅茶も割と好きだし。薔薇の咲いた小綺麗な庭園に似合う、優雅な振る舞いも余裕のはずだし。
若干ぎこちない様子で紅茶を頂いて、一息。
「おかわり要りマスカー?」
「ああ、ありがとう」
いやそうではなくて、と気を取り直して、おもむろに彼女は立ち上がった。
「今までのはただの前哨戦……ここからが私の戦争だ」
そして、居並ぶピーノ君達に、この国に、宣戦布告する。
「この国に、STGを布教する!」
「何デスカー?」
「しゅーてぃんぐー?」
「気になるか。気になるだろう? まぁちょっと待っていろ」
中空に展開するディスプレイにゲームデバイス。電脳魔術士の技能をフルに生かして、美亜は庭園の一角にゲームプレイ用の空間を作り上げていく。
「景色の良い所で遊ぶSTGは最高だ。ディアドラなど開放感のあるゲームは良いな」
だがいつも心はキャッチザハート。そんなキャッチコピーも含めた各社のタイトルを、コレクションを、ずらりと並べて見せて。
「そんな事よりSTGだ! とにかくSTGを遊べ!」
というわけで、彼女の布教活動が幕を開けた。
元来怠け者であるピーノ君達も、娯楽と知れば食いつきが良い。美亜が初心者に布教するのによさそうなタイトルを見繕っていると。
「ワー」
「死にマシター」
「よーし説明書きを読まないタイプだな! 才能があるぞキミ達!」
早速そんなやりとりが始まった。
「さあ、遊ぶぞ。これから時間はいくらでもあるのだからな」
どうにも、この会合は長く続きそうである。
大成功
🔵🔵🔵
月舘・夜彦
【花簪】
ピーノ殿の救出や竜との戦いで周囲を見ていませんでしたが
薔薇に氷樹、美しい所ですね
オオカミ殿も何処か活き活きとしております
早速お茶会の準備をしましょう
アイスの薔薇はそのままも美味しいですし
砂糖の代わりに入れても合いそうですね
茶道ならば地べたでも良いですが今回は椅子の用意を
オオカミ殿がお茶の用意する間にアイスの薔薇を詰みに行きます
春暁を呼び出し、彼女にも協力して貰います
アイスの薔薇を積み終えましたらオオカミ殿と合流
お茶会は賑やかな方が良いでしょうからピーノ殿達も如何でしょう?
実は別世界のお茶の作法を知りませんので
オオカミ殿に指導して頂きましょうか
春暁と会うのも初めてですし挨拶しなくては
ジョン・フラワー
【花簪】
最初見た時よりずっと素敵な国になったじゃないか!
素敵な国のお祝いにお茶会をしよう!
薔薇になった竜のアリスも一緒にね!
せっかくテーブルを配置してもらったけど少し寄せよう。薔薇は動けないからね
お砂糖は入れる? アイスを入れるの? だったら欲しい時に準備をしよう!
竜の姿も勇ましかったけど、薔薇になったアリスも可憐だね
僕といいことしない? うふふ、お花には自信があるんだ
やあ簪のアリス! 席の準備はバッチリだよ!
お茶会は初めて? 難しいことなんてないさ
お茶とお喋りを楽しめばいいんだ!
簪のアリスはどんなお茶が好き? お花は? そっちの可愛い鷹のアリスはお友達?
キミの好きなものをたくさん知りたいな!
●イイコト
「最初見た時よりずっと素敵な国になったじゃないか!」
ささやかな薔薇の庭園を前にして、ジョンはそう歓声を上げる。降り積もった雪も、色とりどりのアイスの果実も見事なものではあったけれど、惜しいことにこの国には花畑がなかった。花輪も作れないし、転げまわったりお茶会をするには不向きだったのだけど、新たに出来たここは違う!
「もうちょっとテーブル寄せても良いかな? 良いよね? さあさあ薔薇になった竜のアリス! 君も一緒にお茶会をしよう!」
ピーノ君達の用意してくれたテーブルをズズズと動かして、ジョンは薔薇の木とテーブルを囲むようにして席に着いた。足を組んで座って、顔を寄せるように頬杖をついて、彼は薔薇の花の一つに、朗らかな笑みを向けた。
「竜の姿も勇ましかったけど、薔薇になったアリスも可憐だね」
不思議の国の花の品種はよくわからないが、その花の形は先の竜に咲いていたそれとよく似ている。あの竜の影響が少なからずあることは、明らかなのだけど。
「僕といいことしない? うふふ、お花には自信があるんだ」
口数の少ない相手と話すのも、きっとジョンには慣れた事。お茶会の準備をしながら、彼は沈黙する赤い花と『おしゃべり』を続けていた。
「花弁を一枚もらっても良いかい? それとも摘まれるのは嫌かな? ああ、楽しいお茶会になりそうだね――」
一方、夜彦の方はと言えば……。
「あまり周囲を見ている暇もありませんでしたが……美しい所ですね」
薔薇の咲く庭園と、その向こうのアイスの果実の生る木々に目を引かれながら、こちらもお茶会の準備に勤しんでいた。近くに聳えている氷樹の塔、そして彼方には氷の城も見える。肌を刺す冷気に目を瞑れば、観光地に向いていると言えなくもないか。
「さて、それでは――」
手伝っていただきましょうか、と上げた左腕に、どこからともなく現れたイヌワシが舞い降りて、翼を畳む。『春暁』、そう名付けられたイヌワシは、「よろしく」と挨拶する夜彦に応えるように一声鳴いて、ばさばさと羽ばたき始めた。
低く飛んだ彼女は夜彦の頭上の花へと近付き、嘴でそれを摘み落とす。降ってきたそれを掌で受け止めた夜彦は、それを確かめるように眼前へ。
芳醇な香りはその味を思わせるし、これならば砂糖の代わりにお茶に入れることもできるだろう。テーブル周りの準備はジョンに任せたため、こちらの仕事は手頃なアイスの薔薇の摘み取りである。
「その調子でお願いしますよ」
初めて従えるイヌワシの働きぶりを確かめるように指示を出して、夜彦は庭園を歩く。それから追加でいくつか摘み取って、彼はジョンの元へと戻って行った。
「やあ簪のアリス! 席の準備はバッチリだよ!」
ぶんぶんと手を振るジョンの方へと歩み寄り、摘んできたアイスの薔薇を皿に置いて、夜彦もその隣の席へ腰かける。
「ああ、止り木も用意していただけたのですか」
「良い枝があったんだよ、それに、可愛い鷹のアリスともお話してみたいしね!」
「でしたら、ピーノ殿達も如何でしょう。お茶会は賑やかな方が良いでしょう?」
「良いんデスカー?」
「もちろんだとも! 席もお茶もまだまだあるからね! 素敵な国のお祝いに乾杯しよう!」
席が増えるとともに、彼等の持ち込んだアイスで、テーブルの上が俄かに賑やかになっていく。
「実は、別世界のお茶の作法を知らないのですが……」
「んん、こういうお茶会は初めて?」
夜彦の言葉に、ジョンが首を傾げる。確かに、夜彦の出身を考えればそれも無理からぬこと。茶道の作法とは表面上、大きく違うけれど。
「大丈夫、難しいことなんてないさ! お茶とお喋りを楽しめばいいんだ!」
きっと本質は変わらない。その辺りはきっと、ジョンも本能的にわかっているだろう、多分。
「簪のアリスはどんなお茶が好き? お花は? 鷹のアリスはお友達?」
「ええ、ええ。慌てないでください、オオカミ殿。それでは一つずつ――」
君の好きな事は何だろう。一人で三人分くらいの圧のあるジョンの喋りに、夜彦は順番に、応え始めた。
薔薇の香るお茶会の時間は、そうして賑やかに過ぎていく。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
エンジ・カラカ
雲に手が届くって。くも、くも、くも。
ピーノも雲に手が届く?どうだろう。
お。アレは知ってる観覧車。
アレに乗っても雲には届かないだろうケド
たぶんそれはもうスゴイ所まで案内してくれるに違いないネェ。
うんうん、観覧車に乗ろう。
ゆっくりと天辺目指して動く鉄の輪は
とーっても眠くなる。
アァ……見下ろすとこんな風になっているのカ。
小さいなァ……。
上を見上げると、雲の近くには行く。
行くケドさすがは鉄の乗り物。
外に手を伸ばすコトを阻んでいる。
何だか捕まっているみたいだネェ。
天辺をすぎたらあっという間ダ。
もう一周。もう一周乗ってもイイ?
ぜんぶぜんぶ見きれて無いンだ。
●空の上の白
「雲に手が届くって。くも、くも、くも」
手渡されたこの国の紹介文には、そんな記載があった。興味を引かれるに任せて、エンジは一路城へと歩を進めた。丘に建つそれは、石と氷の建材が半々で使われており、一部透き通った不思議な外見をしていた。
「ピーノも雲に手が届く? どうだろう」
あの小さくて手足も短い彼等に届くというのなら、真実味もあるような気がするけれど。エンジの見上げたそこには、城の中でも最も高い物見の塔。そしてそこから冗談のようにくっついている、観覧車があった。
あれならば連れていってくれるのだろうか、それこそ、もうスゴイ所まで。
「おや猟兵サン、乗られマスカー?」
「うんうん、乗せてもらおう」
「ハーイ、一名様ご案内ー」
星の描かれたゴンドラに導かれて、エンジがその中に収まると、止まっていた観覧車はゆっくりと動き出した。
「オォ、動いた動いた」
この国らしいのんびりしたペースで輪が回り、その外周に居るエンジを、少しずつ上へと運んでいく。
「オォ……」
それにしたってペースが遅い。段々と眠くなってきたのか、エンジの瞼が揺れる。
元から並ぶものの少ない高さから、さらに上へ。城の尖塔の屋根を超えれば、視界はあっという間に開けていき、エンジの眠気もどこかへ吹き飛んでいく。
「アァ……見下ろすとこんな風になっているのカ」
城から下れば城壁と家々が、そしてその先には戦場となった森と、薔薇園。植樹を行っているピーノ君や、茶会を始めている猟兵達の姿も遠く、小さく見える。その先には岸辺が見えて、氷の湖。そう、ここは氷の湖に浮いた島。彼等の暮らす国境線はすぐそこである。
「小さいなァ……」
国を一望すれば次に見るべきは上だろう。ゴンドラの中から見上げれば、空を流れる雲が近い。他の世界とは事情が違うのか、この国の雲はとても低い場所にある。実際問題雲ではないのかもしれないが、とにかく。
いくら考察したところで、すべてはゴンドラの扉に阻まれた向こうの話。
「何だか捕まっているみたいだネェ」
それはまるで檻の中。見えているのに、見ているだけで、流れる雲とすれ違う。天辺を過ぎたゴンドラが降りていくのは、あまりにもあっという間に感じられた。
「終わり、かァ……」
「雲には触れマシタカー?」
ゴンドラを迎えたピーノ君が言って、ゴンドラの窓を指差した。
……エンジが首を傾げる。
「開くのカ?」
「開きマスヨー」
「……危なくないカ」
「危ないデス」
だから自己責任でお願いします、と言ってのけるピーノ君に、ひとつ吹き出して。
「じゃあもう一周。もう一周乗ってもイイ?」
コレはまだ、ぜんぶぜんぶ見切れて無い。そう言う彼に、ピーノ君ははいはいと頷いた。
「皆サンには内緒デスヨー? それじゃもう一周行ってミマショーウ」
オー、と地下から掛け声が聞こえて、もう一度観覧車が回り始めた。
エンジはもう一度この国の果てを、そして空を見上げる。さて、今度は何が見えることやら――。
大成功
🔵🔵🔵
トリス・ビッグロマン
城の図書館
棚に並んだ背表紙も前で指をうろつかせるオレは、
はっきり言って不機嫌だった
やはりあのとき、不可避の魔弾を使っていたら!
いいや、運が悪かったんじゃない
手負いの獲物に油断するなんて、なんていう赤っ恥だ!
スゴ腕が聞いて呆れる!
気持ちを切り替えよう
この国に図書館があったとは予想外だった
オレの忘れてしまった、「自分のルーツとなる物語」
もし見つかったら、この気分も帳消しなんだが
いくら本を積み上げても、どこにも見つからない
オレは一体、何者なんだ?
●物語
氷の城の門をくぐり、脇道に逸れる。その先にあるのは、城に併設された喫茶図書館だ。迷いなくそちらへ向かう足取りは、大股で少しばかり乱暴に響く。そう、トリスは少しばかり虫の居所が悪かった。
何しろ、仕留めきる直前に、大物を逃がしてしまったのだから。
「やはりあのとき、不可避の魔弾を使っていたら!」
思わずそう声が出た。
何事も、その場の運の巡りというのは避けられない。ベストを尽くせば常に結果がついてくるほど、世界は理路整然と出来ていない。賽の目はいつだって図れないもの――。
そんなことは彼自身十分に理解している。だが、そこに油断はなかっただろうか。
「スゴ腕が聞いて呆れる……!」
滲み出る苛立ちを踏み潰すようにしながら歩いて、トリスは本の並ぶその部屋に辿り着いた。――さあ、気持ちを切り替えよう。
「この国に図書館があったとはな……」
予想外だった、と呟いて、トリスは書架の一つに近付き、並んだ美しい背表紙達に指を滑らせる。彼が戦う理由の一つ、トリス自身が忘れてしまった『ルーツとなる物語』が、ここにあるかも知れないのだから。
おもむろに選んだ一冊を、開いて――。
「……おい、司書はお前か?」
「ハーイ、そうデスヨー」
こめかみを押さえながら、近くに居たピーノ君の一人に声をかける。
「オレには白紙に見えるんだが?」
「舐めると美味しいデスヨ?」
「アイスか! これも!!」
ばん、とトリスが手元の本型アイスを閉じる。確かに、甘い匂いがここまで漂ってきていた。
「本は全然無いデスヨー、この国は最近出来たばっかりデスカラ。猟兵サンもご存じデショ?」
「ああ知ってる、知ってるぞ。あの城壁とかオレの設計だしな……!」
「まあまあ落ち着いて、お茶でもドーゾ」
そう言って、司書ピーノ君がお茶を差し出す。
申し訳ない話だが、彼の言葉通り、この国はできたばかりで開拓中。実際この建物も猟兵の一人の発案で作られたものであり、蔵書が充実するのはまだまだ先の話になるだろう。
「白紙じゃないのは何冊あるんだ……?」
「今のところはこの三冊デスネー」
少ない。溜息を吐きながら、用意されたテーブルについてトリスはそのページを捲る。一冊は猟兵の記した建国記。この氷の国への入植直後のものなのは、トリスにも理解できる。もう一冊はこの国のアイスの図鑑。それから最後の一冊は、ピーノ君の描いたものであろう、絵本だった。
拙い絵柄で綴られたその内容は、この国を襲った巨大な雪だるま――前回出てきたオウガ、モグモグちゃんとの戦いの記録。
「……これ、オレか?」
城壁の上で、投石器の指揮を執っているその姿に苦笑して、彼はぱらぱらとページを捲った。これもある意味では、『トリスの物語』ではあるのだが、彼が求めるものはそういうことではない。
「オレは一体、何者なんだ?」
答えは出ない。少なくとも、今はまだ。
大成功
🔵🔵🔵
九之矢・透
へええ……あったかい
アイツもこれ位のあたたかさなら良かったのにな
薔薇庭園へ
新しい所はやっぱり気になる!
うわ、なんかオシャレ空間になってる?
しかもすっごいイイ香りもするし……これが、お茶会ってヤツか!
茶席に着いたら早速アイスの薔薇を貰おっかな
あ、ピーノ君たちも一緒にどう?
薔薇アイスはまずはそのまま、ひとカジリ
……うわああ、口の中にバラの香りがする……
今、アタシは、大変に!オシャレな物を食べている!!
……はっ、感動のあまりつい
次はおすすめのお茶に入れてみよう
……薔薇園だ、このカップの中に、薔薇園がある!!
(咳払い)
よし、腹に暖かいモン入れたし
氷樹の森にもいっとこ
植樹の手伝いしに行きたいしな
●しょくれぽ
自由にして良いと言われれば、やはり新しくできた場所が気になるもの。倒れた敵の様子を確認するのも含めて、透は薔薇の木が生えたというその場所を訪れていた。
「うわ、なんかオシャレ空間になってる? しかもあったかい……」
薔薇の花咲く空間は、既にピーノ君達の手が加えられ、テーブルとティーセットの並ぶ庭園と化している。そして、周りを温めるこの熱は、地面の下か、薔薇の木から発されているように感じられた。
「アイツもこれ位のあたたかさなら良かったのにな……」
思わず透が呟く。頭に浮かぶのはもちろん、この薔薇園の前身となったであろう、竜のことだ。全てを燃やす炎ではなく、灯し温める火であれば、上手くやっていくことはできたかも知れない。
それもまぁ、相手がオブリビオンである以上、詮無い話ではあるか。
「猟兵サーン、こちらへドウゾー」
「お、おう」
一瞬しみじみと考えこんでしまった透に、ピーノ君から声がかかる。給仕役らしい彼の先導で、透はテーブルの一つに案内された。
「すっごい良い香りもする……これがお茶会ってヤツか……!」
透にとっては馴染みの薄い世界。緊張と期待に胸を高鳴らせながら、彼女は椅子に腰かける。見れば、召使のように現れたピーノ君が、手早くカップにお茶を注いでくれており、次いで差し出された皿の上には、摘んできたらしいアイスの薔薇が載せられていた。
「相変わらず、働く時はほんとしっかり働くよな……」
呆れるような感心するような、そんな気持ちで呟くと、傍らで控えている給仕ピーノ君と目が合った。
「あ、ピーノ君たちも一緒にどう?」
「本当デスカ?」
「待ってマシタ!」
「ワーイ!!」
完全にサボる口実を探していた彼等は、お茶とアイスを持ち寄って、遠慮なく共にテーブルを囲む。俄かに賑やかになったテーブルで、ピーノ君達は「まずこれをどうぞ」、と薔薇の花を指し示した。
「美味しいデスヨー」
「是非食べてみてクダサイー」
「ふうん、そこまで言うなら、いいけどさ……」
勧められるままに、透は皿の上の薔薇から花弁を一枚拝借し、自らの口に運んだ。
「……!」
その効果は劇的。舌の上で溶けてあふれ出す香りに、透が目を見開く。こういうものに不慣れな彼女の脳内は、「うわああ」みたいな悲鳴とも歓声ともつかない声で満ちていた。
「ああ――今、アタシは、大変に!オシャレな物を食べている!!」
「美味しいデスヨネー」
「喜んでもらえて光栄デスー」
「……!」
取り乱してしまった。はっと我に返った透は、何でもなかったような顔を取り繕って、もう一口。ああ、顔がにやける。
「お茶に浮かべて見るのもオススメデスヨー」
「へえ、そんなに変わるもんか?」
早速試してみた透だが、湯気と共に漂う香りの時点で満足してしまいそうになっている。それでも一口、カップに口を付けて。
「薔薇園だ、このカップの中に、薔薇園がある!!」
ガタッと立ち上がった彼女の感想を、ピーノ君達も微笑ましく見守っていた。
「――いや、美味しかったよ、ごちそうさま」
結局おかわりまでしてしまった。
照れ隠しに咳払いして、透は空になったカップを置いて立ち上がる。お腹に温かいものも入れたところで、気を引き締め直して。
「なあ、森の植樹ってどの辺でやってるんだ?」
「手伝っていただけるんデスカ? ありがとうゴザイマース」
さあ、それでは最後にもう一仕事。
大成功
🔵🔵🔵
キララ・キララ
行動:『氷樹の森』で植樹
きらちゃんはね~、ゆっくりまちの様子をみにいきます!
キララ商店街に新しいおみせもできたみたいだし…、 あれ?
あ、そっか…まだけっこう、焼けちゃってるのね
それじゃ予定変更!きらちゃんもお手伝いしよっと!
フッコーシエン(復興支援)?ってだいじだもんね!
きらちゃんね、べつに働きものってわけじゃないの
せっかく作った作品がこわれちゃったら悲しいでしょ?
みんなで作ったまちなら当然!
ここにはなにを植えたらいいの?
ピーノ君に聞きながら直していくわね
ここでの生活はどーお?たのしい?
きららも住んじゃおうかな~って…あ!この苗木、クッキークリームあじ!
ちょっとだけかじっちゃだめ?
●復興支援!
この国を襲う不届き物を討伐し、キララは意気揚々と街へと向かう。足取りは迷いなく、軽やかだ。何しろ、そこには彼女の名前を冠した『キララ商店街』があるのだから。
ピーノ君達から聞いたところでは、新しいお店もできているらしい。さて、どれだけ賑やかになっているのか……と、道半ばでその足が止まる。
「……あれ?」
彼女の視線の先には、森の一角――先ほどの戦いで、竜の火球が直撃した場所が、焼け焦げた地面を晒していた。
「あ、そっか……まだけっこう、焼けちゃってるのね」
すでに鎮火してはいるが、半ば燃えて融け残ったチューペットの草が痛々しい。燃え落ちた残りの灰を片付けていたピーノ君達が、荷車で苗らしきものを運んできている。
「ねえねえ、なにしてるの?」
「あ、猟兵サン、コンニチハー」
「燃えちゃったトコに樹を植えるんデスヨー」
要は植樹だ。むむ、としばし考えていたキララは、街の方からくるりと方向転換した。
「それじゃー予定変更! きらちゃんもフッコーシエン! お手伝いします!」
「ワーイ、ヤッター!」
「キャーステキー!」
ピーノ君達の謎の歓声に胸を張って、進む荷車にキララが続く。
「でも良いんデスカー? 街の方に行きたかったのでは?」
「いいの! きらちゃんはべつに働きものってわけじゃないけど……せっかく作った作品がこわれちゃったら悲しいでしょ?」
それが皆で作った街なら当然だろうと彼女は言う。開拓から皆でかかわってきたこの国は、言うなれば猟兵と、彼等ピーノ君達で作った作品だろう。
「そう言ッテもらえると嬉しいデスー」
「ありがとーゴザイマスー」
彼等が嬉しそうにそう答えた辺りで、荷車は目的の場所に到着したらしく、ゆっくりと停車した。そこに待っていたのは、星型頭のピーノ君だ。
「ヨーシ、それじゃ仕事にかかりマスヨー!」
「オー!」
彼等の顔つきがちょっときりっとした感じになる。どうやら、六人揃ったようだ。
「ねえねえ、きらちゃんは何すれば良ーい?」
「きらちゃんサンは苗を植えていってクダサイ! 植えるトコは我々が用意シマース!」
「はーい!」
元気よくそれに応えて、植樹を行うグループと共にキララは樹の苗を手にする。残った燃え滓を片付ける者、苗を植えるための穴を掘る者。仕事を分担された彼等はてきぱきと動き出す。キララ達もそれに続いて、苗を植えて、根元に土をかけていく。
とはいえ、それだけでは息が詰まるもの。手を動かしながら、キララは一緒にはたらくピーノ君達と話し始めた。
「ここでの生活はどーお? たのしい?」
「お仕事がチョット大変デスケド、過ごしやすくて楽しいデスヨー」
「本当? きららも住んじゃおうかな~」
「歓迎シマスヨー。でも、猟兵の皆サンにはちょっと寒くナイデスカー?」
うん、その点がちょっと厳しいかも。防寒着の襟元を寄せながら、キララは頷く。その拍子に、手に持っていた苗に顔を寄せることになり……。
「あれ? もしかして……」
今まで気にも留めていなかったが、ひんやりと冷たいそれからは、微かに甘い匂いがしていた。こっそりと舐めてみれば、思った通り、口の中に甘い香りが広がる。
「クッキークリームあじ……! ね、これちょっとだけかじっちゃだめ?」
「えっ、これから大きくなる木なんデスカラ、大事にシテクダサイヨー?」
話し合いの末、結局『一口だけならオッケー』という許可が出たとか何とか。
……さて、彼女の歯型付の木は、この先どんな実をつけるのだろう。
大成功
🔵🔵🔵
朽守・カスカ
【薬B】
……ごくえんばらていえん
とても強そうな響きだ
どのように書くのだろう、と考えていたら
書けるのか、我が師と国宝は流石だね
随分と過ごしやすい場所だけど
ピーノ君達には少々暑くないのだろうか
と送った視線の先で寛ぐ様子に杞憂だったようだね
ふふ、お疲れ様、ゆっくりとお休み
お茶は、熱めにしよう
紅茶は飲み慣れてないけれど
それでも湯気と共に立つ香りは
とてもいいものだね
……でも、私はもう少し甘い方がいいかな
小さな薔薇を多めに浮かべて
カップを華やかな薔薇園に
薔薇園を充分楽しんだら
寛いでいるピーノ君に凭れて人心地
やはり素敵なクッションだと笑いながらも
名産品とは妙案だ
華やかで綺麗だからね
きっと流行るに違いないさ
ロカジ・ミナイ
【薬B】
お仲間さんの作った場所もあるっていうからさ
獄炎薔薇庭園に来たわけ
少年心を持つ者は獄とか炎とかの文字に弱いし
薔薇っていう字も書けちゃうし(書けない)ごめん書けない
やぁやぁ、ピーノ君たちこんにちは
僕のお茶はぬるめで頼めるかい?猫舌なのよ
…ほう、アイスを混ぜるなんて方法が?
美味いし温度も下がるよね
じゃあそれにしようかな!
ほほう!なるほどとーっても綺麗だし美味しいじゃないの
おやつを考えた人は頭が良いねぇ
ひと心地ついたらピーノ君にもたれ掛かってリラックス
僕は大きいからね、一人じゃ足りなかな
そうね、僕も思ってたのよ、さっきのアレはばえるって
甘味辞典でもさぞ目立つだろうしさ
きらら商店街に店出そうよ
雅楽代・真珠
【薬B】
ロカジ、本当に書けるの?
書いてみてよ
僕はエンパイアの国宝だから当然書けるよ
うん、いいところだ
暖かいのにあいすくりんがあるのもいい
ぴぃのたちもゆっくり休むんだよ
働きすぎはよくないからね
僕は熱い紅茶を頂こう
最初の一口は香りとそのままの味を楽しんで
あいすくりんを入れるなら二口目からにするよ
かき混ぜず、溶けゆく薔薇を見守るよ
カスカの紅茶を見て、僕も薔薇を沢山浮かべる
あいすくりんを沢山入れると甘くなるからね
そう?ヨシュカは素直な良い子だね
ばえはよく解らないけれど名産品はいいよね
店を出すならば、食べながら観光出来る
薔薇の花束のようなあいすくりん屋かな
僕が甘味図鑑を作った折には載せてあげよう
ヨシュカ・グナイゼナウ
【薬B】
薔薇って書けるのですか。わ、すごい。ビームも出せるしこれが出来る漢…!(慄く)
獄炎も薔薇も…むむ、漢字って難しい
それにしてもここは暖かくて良いですね。こんな気候のところに永住したい…
ピーノくんたちもいつもに増してくつろいで。皆とても頑張っていましたし。お疲れ様です
薔薇のお庭でお茶会って、不思議の国みたい。不思議の国でした。
紅茶も、薔薇のアイスも香り高くて。高級な味がする…!
は!朽守さまと雅楽代さまが薔薇に囲まれていますと、こう、すごく絵になります!新発見!(無邪気)
おすすめは、アイスの薔薇を紅茶に浮かべて…これものすごくばえる気がするのですが
名産品として売り出すのはいかがでしょうか?
●ごくえんばらていえん
「……いやあ、とても強そうな響きだね」
ささやかな薔薇の庭園を前にして、カスカが苦笑する。見た限りでは、名前の厳つさに似合う面は少しもないのだけど。
「そういえば、どのように書くのだろう」
「おや、我が弟子は漢字が苦手なのかな?」
「えっ、では書けるのですかロカジ様。すごい、ビームも出せるしこれが出来る漢……!」
「さすがだね我が師は。これは素直にすごいよ」
ヨシュカとカスカから向けられる眼差しに、良い気分になってロカジが胸を張る。
「少年心を持つ者は獄とか炎とかの文字に弱いからねぇ。バラだってお手の物さ」
「ふうん、じゃあ書いてみてよ」
「えっ」
とん、と地面を指差して真珠が言う。ピンク頭の表情が強張った。
「……そういう真珠くんは」
「当然かけるよ、僕はエンパイアの国宝だからね」
「……」
「我が師よ」
「ロカジ様……仕方ないですよね、『獄炎』も『薔薇』も難しいですから」
「やめて! ちょっと見栄張っただけだよそんな目で見ないで!!」
――そんな賑やかな一団は、当初の宣言通り、薔薇の庭園を訪れた。咲いている花は、竜のそれよりも随分小振りだったけれど、この極寒の地においても暖かく感じるその気温が、秘めていた熱量を思わせる。
「やぁやぁ、ピーノ君たちこんにちは」
「コンニチハー」
ロカジの声に、ぶんぶんと手を振って歓迎の意を示し、ピーノ君達が彼等に席を勧める。
「それにしても、ここは暖かくて良いですね」
「うん、いいところだ。暖かいのにあいすくりんがあるのもいい」
上着の襟元を緩めるヨシュカに、真珠が空中を泳いで続く。
「こんな気候のところに永住したい……」
「ああ、他の場所もこれくらい暖かければ過ごしやすいのだけど」
ヨシュカの言葉にうなずいたカスカは、その視線を傍らのピーノ君へと向ける。
「ピーノ君達はどうだい? すこし暑すぎたりしないかな?」
「これくらいなら、だいじょーぶデスケド」
「チョットとけそうデス」
「と、融けそう?」
本気か冗談か判別のつかない言葉に苦笑いしながら、カスカも勧められたテーブルについた。
「こちらお茶になりマース」
注がれる紅茶と、皿に並んだアイスの薔薇。屋外の庭で繰り広げられるこの光景は、まるで絵本にあるようなそれとそっくりで。
「薔薇のお庭でお茶会って、不思議の国みたいですね」
「ああ、実際に不思議の国だからねぇ」
ヨシュカの素直な感想に、カスカがカップの中の紅茶を啜る。彼女は珈琲の方が馴染みがあるようだが。
「――良い香りだね」
「うん、悪くないよ。できる子だね、ぴぃのは」
これはこれで良い、と目を瞑るカスカに、こちらもカップを傾けた真珠が同意する。元来怠け者な愉快な仲間達は、こういう娯楽になれているのかも知れない。
「僕のお茶はぬるめで頼めるかい? 猫舌なのよ」
「ぬるめデスカー?」
ロカジの問いに、どうしましょうねとピーノ君が首を傾げる。その横で、カスカと真珠も注文を一つ。
「私はもう少し甘い方がいいかな……」
「せっかくだ、僕も香りを変えてみよう」
カスカは小さなものをいくつか見繕って、真珠は大振りの花を選んで、それぞれアイスの薔薇をカップに浮かべた。
カップの中に生まれた薔薇園を、そして花が静かに溶けゆくのを、二人はそれぞれ愛でるように眺める。
「ほう、それなら美味いし温度も下がるか、名案だねえ」
「はあ……高級な味がしますね、これ」
僕もやろう、とロカジがアイスの薔薇に手を伸ばし、一足早く薔薇を溶かしたヨシュカが、香りと味に溜息を吐いた。
「ほほう! なるほどとーっても綺麗だし美味しいじゃないの」
ロカジの方も気に入ったらしく、温度的にも飲みやすくなったそれを歓迎するように笑う。
「おやつを考えた人は頭が良いねぇ」
「うん、あいすくりんを沢山入れると甘くなるからね」
カスカの薔薇園を横目に、真珠はさらに手元の薔薇を花束に変えていく。そしてそんな様子をのんびりと眺めていたヨシュカが、あることに気付いて声を上げた。新発見。
「は! 朽守さまと雅楽代さまが薔薇に囲まれていますと、こう、すごく絵になります!」
「いやいや、私に関しては褒めすぎさ」
「そう? ヨシュカは素直な良い子だね」
あとで何か買ってあげよう、と真珠が笑う。わかりやすいなあ、などと思いながら、ロカジは紅茶をゆっくりと味わった。
楽しいお茶会はしばし続いて、そろそろお茶も飲み終わるか、といったところで、ロカジは庭園の脇に居る黒い塊に気付く。
「……あれは何してるの?」
「アー。シフトが終わって休憩シテイマス」
それはある種見慣れた光景、寝転がるピーノ君達の姿だった。
「君達って、基本怠け者なのは一貫してるよねえ……」
「働きすぎはよくないからね」
「今回は皆とても頑張っていましたし。お疲れ様です」
納得したような様子の真珠に続いて、ヨシュカが労いの言葉をかける。カスカもまた、働いた彼等に同様のことを、と。
「そうだね、ゆっくりとお休み……うん?」
いつのまにやらそんな彼等に歩み寄っていた大男の影に、首を傾げる。
「いや、僕達だってがんばったからね、休憩しても良いと思うわけだよ」
おもむろに座ったロカジは、その背でピーノ君へともたれかかる。クッション性の高い彼等の身体はしかし、ちょっと耐えきれなくてずるずると押し出されていった。
「もぎゃー」
「おや、一人じゃ足りないかな?」
「ワー」
「押し返せー」
一人でダメなら、と周りのピーノ君がのたのたと集まり、ロカジの背中側で押し返しにかかる。
「お、今度はこっちが負けそう」
「では、バランスを取ろうか」
カスカもそこに混ざる事にする。集まったところでクッション性が高いのは相変わらずだ。というか、いつもより柔らかい。もしかして『暖かくてとけそう』ってそういう? そんなことを考えながら、体重を預けて身体を楽に。
「何だかいつもにも増してくつろいでますね……」
「ヨシュカ、僕のスペースも確保してきてくれる?」
「わかりました、それではお先に――」
残ったお茶を飲みながらの真珠の言葉に従って、ヨシュカもそこに混ざって行った。丸くてやわらかい、手頃なサイズの身体にもたれかかって、一休み。一息ついたところで、ヨシュカは手元のカップへと視線を落とす。
両手で包み込むように持ったティーカップを覗けば、残り少なくなった紅茶の上に、小さくなってしまった薔薇が、ゆっくりと溶けだしながら浮かんでいた。
「……ところで、これものすごくばえる気がするのですが、名産品として売り出すのはいかがでしょうか?」
「ああ、それは妙案だ」
「そうね、僕も思ってたのよ、さっきのアレはばえるって」
カスカが膝を打ち、ロカジもうんうんと頷いて同意する。
「甘味辞典でもさぞ目立つと思うんだけど?」
「うん。ばえはよくわからないけど、ページは用意してあげても良いよ」
顔を覗き見るロカジに、真珠も鷹揚に頷いて返した。
「――だってさ、ピーノ君。ヨシュカくんが言うように、きらら商店街にお店出してみない?」
「食べながら観光出来る、薔薇の花束のようなあいすくりん屋みたいな形が良いかな」
ロカジと真珠の後押しに、猟兵達の側にもたれかかるようにしていたピーノ君達が、それぞれ首をひねり始めた。
「ウーン、どうしまショウカー」
「お客サン来ますかねー?」
「大丈夫、きっと流行るに違いないさ」
最後の一押しを加えたカスカが、「ねえ?」とヨシュカに笑いかける。
「そうですね、きっと素敵なお店になると思います」
ヨシュカのその言葉に、ピーノ君達は顔を見合わせた。この調子なら、きっと、出店する日も遠くないだろう。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
御鏡・十兵衛
ふう、これにて終いにござるな…しかし、団体行動というのは存外疲れる。
単に不慣れなだけ…いや、某の方の問題か。
とはいえ、他人の戦い方から得られるモノも多い故、そう悪くはないでござるな。
さて、どこへ行くかでござるが。……そうさな、物見にでも。
ここであえて来る者もそうはいまい、静かに過ごすには良い場所だ。
これで混みあっていたら……うむ。その時はその時よ。
あいすを食べて高い所に登れば当然寒い!(自明の理)あって良かった防寒着。
それにしても…あいすしかない所からよくもまあこう、不思議な世界でござるなあ。
(景色の美しさに息を漏らし)
――ああ、けれど、やはり。
これでは、満たされない。
●視点
これにて終い。刀を鞘に納めてしばし、十兵衛は一人、森の中をぶらぶらと歩いていた。思わず胸からこぼれた溜息は、慣れないことをしたためだろうか。
この国に来てからは、皆と動くことが多かったが、この団体行動というやつは思いのほか、疲れる。
原因は何となくわかっているのだと、アイスの果実を摘まみながら彼女は思う。不慣れと言うのも少し違う。大本は、きっとその言葉通り、腹の底に居るのかも知れない。
「ふむ、ここでござるな」
ゆっくりと歩いて、目指してきたのは此処――森の中の物見台だ。氷の木を模したそれの中を通り抜けて、上に出る。
静かに過ごすには、きっとここは最適のはず。何しろ襲い来る敵を倒した後だ、このタイミングでわざわざ見張りに立つ者はいないだろう。
「ドーモー猟兵サーン」
「そうかー、居るでござるかー」
上ったそこで、数人のピーノ君が十兵衛に手を振る。やる気がないのか寝転がっている者がほとんどだが、約一名外向きに、塔の縁に身を預けるようにして脱力している。一応見張っていることになるのだろうか。
「相変わらず怠け者なのか働き者なのかわからんでござるな……」
まあ、お互い邪魔にはならないだろうということで、十兵衛もそれに倣うことにする。
「うむ、自明の理とは言え……」
ものすごく寒い。高度が上がった分もあるだろう、遮るもののないこの場所に吹く風は、冷たく、そして容赦がない。先程までアイスを齧っていたこともあり、十兵衛は防寒着の裾を直して体温が逃げないように努めた。
息が白い。風に吹かれた髪が揺れて、その先から頭が、意識が、冴え冴えと冷えていく感覚がある。
「それにしても……あいすしかない所からよくもまあ」
凍り付きそうな睫毛を揺らして目を細めれば、先日の戦いがあった劇場が、城壁が、そしてその先の街や城が順繰りに見える。特に、ゆっくりと回る観覧車はここからでもよく目立つもので。
「こう……不思議な世界でござるなあ」
小さく遠く、動いているのは自分と同じ猟兵達と、この国の住人であるピーノ君達か。
こうして彼等が居る限り、この国はきっと、まだまだ美しく変わっていくのだろう。何だったら、今でさえ美しいと言っても良い。肌を突き刺すこの極寒の地で、ゆるゆると、そして時に華やかに。
……もしかしたら、あの竜も、こんな気持ちで見下ろしていたのだろうか。
そっと目を瞑って、ほう、とため息を一つ。
ああ。けれど、やはり。これでは満たされないのだと。
大成功
🔵🔵🔵
冴島・類
植樹……えっ、アイスの樹を?
前に来た時口にした果実
美味しいあれがどんな風に育つか気になってたから
ピーノ君らの植樹をお手伝いしたいな
食べる、植える、生える
アイスの永久機関……
甘味が贅沢だって概念が崩れるよ、ここにいたら
品種改良の研究したくなるぐらいだ
薔薇も気になったしねえ
美味しくそだてよー
来年2月ぐらいには
ちょこれいとアイスとか生えて見ないかい?
なんて、更に夢を描いてみる
つめたいらくえんは途上なら
まあ、夢想するのは自由だろう
それは冗談半分だけど
少し身体が冷えたなら…
防寒着を求めに行って
氷のランタンを見ていこう
ガラスのような中に灯るあかりは大層綺麗だし
この夢のような場の思い出を
語る机上には
丁度良い
●灯
「植樹……えっ、アイスの樹を?」
「そうデスヨー」
思わず聞き返した類に、ピーノ君達はこともなげに答える。確かに植物の形をしているからには、種とか苗とかあるのかも知れないけれど。
信じられない、という様子で類が額を押さえる。アイスとは大体の世界では嗜好品であるというのに。食べる、植える、生える……この国ではアイスのサイクルが永久に回り続けるのだろうか。
これがそうです、と渡された苗木をしげしげと眺めてしまう。
「これが育って、いつか実を付けるわけだね……」
不思議なものだと唸る。これもまた、アリスラビリンスの特色と言えるだろうか。
「もういいデスカー?」
「……ああ、引き留めて悪かったね。僕も手伝うよ」
類はそう申し出て、興味深いそのアイスの木の植樹へ、同行することにした。
「ソレデハ作業を始めマース」
六人組になったピーノ君達は、それぞれてきぱきと仕事をこなし始める。竜との戦いで生じた焼け跡の、無残な残骸を片付けて、一定間隔を空けて植樹用の穴を掘る。
「また雪が降る前にヤっちゃいマショー」
「オー」
地面に開いた穴に、類も手にしていた苗を置いて、掘り返された土を戻していく。手で掬った土は半ば凍っているかのように冷たい。この国の開拓の大変さを改めて思いながら、掌でひとつ、埋めなおした土を叩いた。
「美味しくそだてよー」
これがどれくらいのペースで伸びて、どんな実を付けるのか。やはり興味は尽きないもので。
「ちょこれいとアイスとか、たくさん実ったりしないかい?」
2月くらいが狙い目なんだけど、という類の問いかけに、ピーノ君達が首を傾げる。
「どうでしょうネー?」
「空気読んでクレルカナー?」
現状では少し難しい夢のようだが、しかし。薔薇の庭園が突如出来上がったのがこの国である。夢想と笑うことは、きっと誰にもできないはずだ。
「品種改良とかもできるのかな?」
「アー、もしかしたら」
「できるかもシレマセンねェ」
そう、この冷たい楽園は、まだまだ発展途上なのだから。
この区画の植樹を終えたピーノ君達と別れて、類は街の方へと足を向けた。
体を動かしてはいたものの、芯から冷えるようなこの寒さは如何ともしがたい。商店街には防寒着を置いたお店もあって、最近では猟兵の提案で雑貨屋もオープンしたのだという。
ピーノ君のそれによく似たもこもこの服を着込んだ類は、そこで氷のランタンが並んでいるのを目にする。
「これ、一つもらえるかな?」
「猟兵サンお目がタカーイ!」
ガラスのように光るその身は、中に光を灯せば幻想的に光輝くのだろう。
類はその明かりの下での語らいを思う。できる事なら、この不思議な氷が融けるまでは、きっとこの夢のような場の思い出も、色褪せることはないだろう。
大成功
🔵🔵🔵
リダン・ムグルエギ
あ”~疲れた
当初の目的から逸れた動画をつい撮っちゃったけど
アタシ、そもそもコレのために林に行ったのよね
というわけで、お店でマッサージチェアを堪能しつつアイスを嗜むわ
今回のはとーるさんというステキで可愛い顧客さんも増えた事だし
面白動画の再生数も成功だったし
結果的に満足かしら
今のアタシの短期目標は、色んな世界にウチの支店を作る事
とはいえ、他のスタッフは猟兵じゃないから移動できないのよね
社長には好きにしろって言われてるし…してみようかしら
ねぇ、ピーノ君
もしよければだけれど
アタシがここに居ない間も服を作れるように、服飾習って…
ウチの社員になってみない?
アナタ達みたいなゆるさ、きっと、合うと思うのよ
●支店開拓
激しくも厳しい戦い……戦い? を終えて、リダンはようやく商店街の一角、休憩所へと辿り着いた。
「あ”~疲れた~~」
「ワー」
「倒れこまないでクダサーイ」
「はいはい、ゴメンナサーイ」
べしゃりとマッサージチェアに身を預けたリダンは、ピーノ君……マッサージチェアに入った彼等に調子を合わせながらごろんと転がる。
「は~~~、ほんと探したわよピーノ君」
それじゃお願い、と脱力したリダンに、椅子のマッサージ機能(人力)が動き出す。そう、戦いに向かない彼女が戦場に足を運んだのは、そもそもこのため。心地よい感触に身を任せながら、リダンは取り出した端末を覗き込んだ。
「今回はとーるさんというステキで可愛い顧客さんも新規で増えたし、面白動画の再生数もかなり伸びたし……」
収支で言うなら概ねプラスかしら。すいすいと画面をスクロールさせながら、彼女はそんな風に独り言ちる。
「アイス食べマス?」
「食べマース」
気が利くわー、などと歓声を上げて、ピーノ君の運んできたアイスを口にする。何か戦闘中も食べていた気がするが、ここまで歩いてきたからリセットということで良いだろう。良いはずだ。
甘く冷たいそれを味わいながら、リダンはピーノ君達へと視線を向ける。猟兵としての役割は、曲がりなりにも全うしたのだから、本業の方に手を伸ばしても良い頃合いだろう。
「ねぇ、ピーノ君」
「何デスカー?」
「アタシ、色んな世界にウチの支店を作りたいと思ってるんだけど――」
デザイナー、というかこれは一社員としてのお仕事。
「もしよければ、服飾習ってウチの社員になってみない?」
アタシがここに居ない間も服増やしたいでしょうし、悪い話じゃないと思うのよ、と。リダンはピーノ君達に提案する。
「オォ、僕達が夢の会社員に……」
「良いんデスカー?」
「ええ、アナタ達みたいなゆるさ、きっと、合うと思うのよ」
わが社の社風に。人事担当のスタッフが言っていたような言葉をなぞってみる。それはそれで、リダンの正直な感想ではあった。
話を受けたピーノ君達は、最初こそ戸惑っていたようだが、相変わらずのゆるいノリでそれに乗っかる事にしたようだ。
「ヤッター就職デスヨー」
「スゴーイ!」
そんなわけであっさりと、キララ商店街の洋服店は、『GOATia』の看板を掲げることになった。服飾を教えるのにしばらくはかかるだろうが、これも支店展開の貴重な一歩、と言えるだろう。
「それじゃ改めてよろしくね、ピーノ君」
「よろしくオネガイシマース!」
歓声を上げてはしゃぐピーノ君達の微笑ましい様子を眺めて、リダンは満足げに頷いた。
「支店デス? げんちほーじんデス?」
「代表誰にシマス?」
「僕すとらいきシテミターイ」
……あ、意外とめんどくさいわねこの子達?
大成功
🔵🔵🔵
オズ・ケストナー
クロバ(f10471)と
ピーノくん、てつだいにきたよっ
焼けてしまったところをくるりと眺め
ここにまたアイスが生るように
がんばってうえようね、クロバっ
ちからしごとはまかせて
このへん掘ればいいのかな?
このくらいでいい?
クロバ、ピーノくん
手招いて樹を置くのをにこにこ眺めて
よーし、うめるよっ
わっせわっせ
次はわたしも持つっ
ひんやりあまい香りがして
ちょっときゅーけーしよ
おやつっ
高いところに生ってる実をシュネーに取ってもらって
これもおいしかったやつ
はいっ、クロバ
クロバはここのアイス、ぜんぶすきっていってたものね
降る結晶にきれいと跳ねて
手のひらに落ちたのを見て満足げ
クロバの優しさの形に微笑んで
よーし、がんばろっ
華折・黒羽
オズさん(f01136)と
ピーノさん達を手伝いに森へ
手渡された苗木は小さくそしてどこかひんやりと
小さいですね…これが、あの樹のように
無事な樹を見上げれば枝に生るアイスの果実から甘いかおり
オズさんの掛け声にこくり頷いて掘られた穴へそっと置く
ぽすり、ぽすり
固め過ぎないよう土を優しくかぶせれば
ひとつ植え終わって満足気
それからオズさんの植樹を傍で見守って
シュネーさんが取ってくれた実を受け取って
口に含めば裏切らぬ美味しさに疲れも解れる
ありがとうございます、シュネーさん、オズさん
僅かな温度の変化にへたれるピーノさん達見れば
取り出した氷の符『縹』に詠唱ひとつ
─白姫
ふわり降り注ぐ氷の結晶で
その身を癒せればと
●森の一角にて
「ピーノくん、てつだいにきたよっ」
「ワーイ、ありがとうゴザイマース!」
焼けた森の修復活動に当たっていたピーノ君達が、訪れたオズと黒羽にぶんぶんと手を振る。彼等の働くその場所は、薔薇の庭園となった地点から少しだけ離れた、竜がその猛威を振るった地点だ。赤と青の炎が行き過ぎたそこは、アイスの木々も雪も消滅し、焦げた色の大地が剥き出しになっている。
「ここにまたアイスが生るように、がんばってうえようね、クロバっ」
「はい、がんばりましょう」
「ちからしごとはまかせて!」
ピーノ君の一人からシャベルを受け取って、オズが地面にそれを突き立てる。半ば凍った土だとしても、普段使っている大斧に比べれば軽いもの。
「ワー、スゴーイ」
「あっという間デスネー」
その間に、黒羽にはピーノ君から苗が手渡される。細い枝くらいのそれを、彼は不思議そうに眺めた。一見したところはただの木なのだが、それを握った手からはひんやりとした冷気が感じ取れる。
「小さいですね……これが、あの樹のように」
無事な木を見上げれば、無事だったアイスの果実が、色とりどりの輝きを放っている。風に乗った甘い香り。こんな風に、枝を伸ばしてたくさんの実をつけるように、なるのだろうか。
「深さはこのくらいでいい?」
「ハーイ、十分デスヨー」
「うん、それじゃ、クロバ」
オズからかけられた声に返事をして、黒羽は手招きする彼の方へと向かう。
「ここですね?」
「うん、置いてあげて」
ほどほどに掘られたその穴に、黒羽がそっと苗木を置く。
「よーし、うめるよっ」
こくりとそれに頷いて、オズとピーノ君に続き、黒羽も両手で土を掬って、優しく被せていく。
「おおきく育つんだよー」
そんな風に言うオズと共に、ぽんぽんと軽く土を叩いて、黒羽は満足気に微笑んだ。
「次はわたしも持つねっ」
今度はピーノ君達の掘った穴に、オズが苗木を置いていく。近すぎず遠すぎず、ほどほどに間を空けて、彼等は更地に苗を植えていった。
「ハーッ、ちょっと疲れてキマシタヨー」
「そう? それじゃちょっときゅーけーしよ」
控えめに訴えるピーノ君の様子を見て、オズは一旦手を休めることにした。近くで一番大きな木の根元に座って、黒羽を手招く。
「クロバも、おやつにしよっ」
はい、と首肯して、彼もまたそこに座った。見上げたそこには、先ほど同様にカラフルな果実がいくつも。
「シュネー、おねがい」
オズの呼び声に応えて、少女の人形が木の幹を軽やかに駆け上がる。服の裾をなびかせて、空中を踊るように跳躍。そしてオズの眼前に着地した時には、その手にいくつものアイスの果実が抱えられていた。
「あ、これおいしかったやつだよね、ももの味」
見覚えのあるそれを受け取って、オズは黒羽にもどうぞ、と促す。
「はいっ、クロバの分だよ」
「ありがとうございます、シュネーさん、オズさん」
丁寧にお礼を言って、彼もまたシュネーからアイスの果実を受け取る。さて、どれから食べようか――。
「ふふ、クロバはここのアイス、ぜんぶすきっていってたものね」
「……はい」
改めて言われると少しばかり恥ずかしいのか、困ったように答えた黒羽は、意を決したように手元のアイスの一つを口に運んだ。
そんな様子をにっこりと笑って見ていたオズは、もう一方向へと視線を移す。そちらにも、一緒に休憩中のお仲間が居るのだが。
「ピーノ君達は、どう? まだがんばれそう?」
「エー、どうデショー」
「モウダメかもシレマセーン」
死屍累々だった。新しい苗木を取りに数名抜けて、六人組が崩れたのが良くなかったのかも知れない。
困ったねぇと笑うオズの横で、それならば、と黒羽が符を取り出す。
「――白姫」
詠唱をひとつ加えれば、氷の符はその力を顕現し――。
「あ、きれい」
「ワー、雪デスカー?」
オズと、ピーノ君もまたその目を輝かせる。オズの広げた掌に、ふわりと降るは氷の結晶。そして輝くそれを伴う冷たい空気は、ピーノ君達にはきっと心地の良いもの。
「……如何でしょうか」
元気は出ましたか、と首を傾げる黒羽に、ピーノ君達は嬉しそうに応えた。
「よーし、がんばろっ」
もうひとがんばり、とオズが立ち上がる。
オズと黒羽の主導もあり、この一帯の復興は急速に進んだ。そう遠くない日に、この森は以前の輝きを取り戻す事だろう。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
クーナ・セラフィン
一難去って、これで一安心だね。
ここのアイスは美味しいからゆっくり楽しもうかにゃー。
街の方も興味あるけどもまず…
…二度ある事は何とやら、はないよね?
氷樹の森へ向かう。
前盛大に壊されちゃってたけど復活したんだね、氷像。
やっぱこれがあると何か気合いが入るのかにゃー?と近くのピーノ君に聞いてみる。
それからコンビニ。
便利だよねー…メルヘンじゃないけど。
制服ピーノ君どんなのかなとか店の品揃えとかを観察。
森の中心に薔薇の庭園も出来たし、新商品も増えるのかなー。
新商品開発もコンビニには大切って聞くし。
店出たら竜による被害確認しつつ、森の中心へ。
アイスの薔薇でのお茶会楽しみにうきうき気分。
※アドリブ絡み等お任せ
●薔薇のお味は?
「前に盛大に壊されちゃってたけど、復活したんだねぇ、これ」
「皆でガンバッテ直したんデスヨー」
氷樹の森の外れにて、クーナはアイスの果実を摘まみながら、氷で出来た像を見上げていた。元は入植時に猟兵によって作られた、ピーノ君の形をした氷像だ。不運にもその時の戦いで破壊されてしまっていたが、どうやらピーノ君達の手で修復されたものらしい。
「やっぱこれがあると何か気合いが入るの?」
「もちろんデス、何だか元気がもらえるのデスヨー」
ふうん、とクーナは改めてその氷像を見上げた。
「でも、前からこんなにムキムキだったかにゃー?」
「ソリャモウ、忠実に再建シマシタヨ?」
言って、アイスをひと舐めする。別に見なくても、ピーノ君が目を逸らすのは察知できていた。
「何にしても、また壊されなくてよかったね?」
まあいいか、と笑って、クーナはまたこの辺りを巡る事にした。二度ある事は何とやら、という言葉もある。そうなった時にも、また無事だと良いねと願ってあげながら。
そうして歩く彼女は、自然と近くの施設に足を運ぶことになる。氷像の飾られた劇場から少し行けば、この世界に似つかわしくない箱のような建物が見えてきた。
「イラッシャイマセー」
「いやー……相変わらずメルヘンじゃないねえ」
入店したクーナを、カラフルな模様の防寒着を着た店員ピーノ君が迎える。狭い店内に商品をたくさん並べたそこは、なんとコンビニエンスストアである。
「便利でいいけれど……それ制服?」
「私服デース」
「そう……おしゃれだね……?」
冗談なのか本気なのかわからない回答を聞き流しながら、彼女は店内を回ってみることにする。以前は本当にもう、アイスくらいしか並んでいなかったのだが。
「へえ、手袋とか売るようになったんだ」
これも文明化の波だろうか、としみじみしながらも、やっぱりアイスがメインの品揃えを一通り眺めて。
「そういえば、森の中心に薔薇の庭園も出来たみたいだね、新商品も増えるのかな?」
「アー、どうデショウネー?」
店員ピーノ君が首を傾げる。仕入れも彼が担当しているのかはよくわからないが。
「僕、まだ行った事無いンデスヨー」
新商品開発もコンビニには重要では? と問いかけるクーナに、ピーノ君はちょっと困った顔をする。店番だってあるのだろう、彼はアイスの薔薇も未体験であり、商品に並べるとかそれ以前の問題のようだ。
「そうなんだ?」
「ハイ、猟兵サン、あっちに行かれるならドンナ感じか見てきてくれマセンカー?」
「え、私に市場調査してこいって?」
「ついでで構いマセンからー」
「まあ、気が向いたらね」
思わぬお願いに吹きだすのを堪えながら、クーナはそれに手を振って応えて、コンビニを後にした。
「どうしようかにゃー、新商品になるのかー……」
どっちにしろ薔薇園のお茶会には行く予定だった彼女は、そちらに足を向けながら考える。アイスの薔薇が素晴らしい出来なら、この国に普及させるのも悪くない。
味が楽しみだと、一緒にそんな事を考えながら、薔薇の香りのする方へ――。
大成功
🔵🔵🔵
神埜・常盤
獄炎薔薇庭園にて
ピーノ君達もお疲れ様!
僕も是非お茶会に混ぜてくれ給え
然し此の庭園は温かくて心地良いなァ
僕、花の中では一等
赤薔薇が好きなんだよねェ
だってほら、赤くて美味しそうじゃないか
だから常々食べてみたいと思っていンだが
まさかココで其れが叶うとはなァ
アイスの薔薇は良い香りがするねェ
此れはお茶に合いそうだ
温かな紅茶に花を浮かべて眼で楽しんだ後
スプーンで掻き混ぜて、舌でも楽しむとしよう
勿論、お茶請けはアイスの薔薇で
咲く薔薇を食み、溶けた薔薇を飲むなんて
……ふふ、何だか贅沢で優雅な気分だ
あァ、ゆっくり寛いだ後は植樹でも手伝いに行こうかなァ
この甘く冷たい楽園に、荒れ地など似合わないからねェ
●赤を啜り、赤を喰らう
薔薇の咲く庭園に、一際大きなテーブルが一つ。ピーノ君達が寛ぐそこに、常盤も席を一つ確保した。
「ピーノ君達もお疲れ様! 僕も是非お茶会に混ぜてくれ給え」
「ワーイ、もちろんデスヨー」
上着を椅子の背にかけて、足を組んで座った彼の元に、おすすめですよと言わんばかりにお茶が運ばれる。わいわいと仲間内で騒いでいた様子の彼等も、来客に飢えていたのかもしれない。
「やあ、ありがとう」
よく気が付くね君達は、などと謝意を述べて、彼はカップを片手に椅子にもたれかかる。体重を後ろに預ければ、その背は庭園を為す薔薇の木の一本に触れた。少しだけ顔を傾ければ、ささやかに咲く薔薇が目に映る。
「僕、花の中では一等、赤薔薇が好きなんだよねェ」
花の色にも似た赤茶の瞳を細めて、常盤は言う。だって、ほら、赤くて美味しそうじゃないか。
「だから常々食べてみたいと思っていンだが、まさかココで其れが叶うとはなァ」
ふふ、と優雅に笑って、冷たく香るその薔薇を、彼は指先で摘まみ取った。
「ドーゾ召し上がってクダサイ、美味しいデスヨー?」
「本当かい? それは楽しみだね」
常盤の含ませた言葉の指すものを、ピーノ君達が気付くことはないだろう。そうでなくとも、察することは難しかったかもしれないが。
「――良い香りがするねェ」
摘んだ花の香りを味わって、紅茶の上にそれを浮かべる。その冷気ゆえか、表面に白く霜が降りていた薔薇が、湯気の中で色づき、蕩けていく。
しばしその様を楽しんだ後、彼はスプーンでそれをひと混ぜして、口に運んだ。
啜ったそれは薫り高く、ダンピールの鋭い嗅覚をそれで満たす。お茶に合うね、と素直な感想を呟きながら、常盤は空いた手でもう一輪の薔薇を摘まんで、その花弁をひとつ、食む。
舌の上で溶けていくそれは、お茶に混ぜたものよりも濃く、率直に香りと味を伝えてきていた。
「……ふふ、何だか贅沢で優雅な気分だ」
咲く薔薇を食し、溶けた薔薇を飲むなんて。味や香りのみならず、その認識が、体験そのものが得難いものだと、常盤はそれを存分に楽しみ、味わうことにした。
「――ああ、美味しかった」
「良かったデスー」
「おかわりシマスカー?」
「いやあ、もう充分いただいたとも」
ゆっくりと一つ伸びを打ち、常盤は椅子から立ち上がった。羽織った上着の前を止めながら、視線は庭園の外へと向けられる。
「植樹をやっているのはあの辺りかな?」
ピーノ君達の答えを聞いて、彼はそちらへと歩き始めた。
森の修復を行っているのなら、それを手伝っていこう。この甘く冷たい楽園に、荒れ地など似合わないのだから。
大成功
🔵🔵🔵
リグ・アシュリーズ
くーちゃん(f01176)と
くーちゃん わたし この国にすむ――
薔薇アイスの味に永住を決意しかけるも、寒風に我に返り。
そ、そうね、たまに来る程度で!
買ったランタンを手に街を抜ければ、見上げんばかりの氷のお城。
城内の調度品を味見したくなるのをぐっと堪え、
ゆっくり見て回りながら頂上の観覧車へ。
すごい、こんな高くまで上がれるのね!
皆で切り抜けた氷樹の森、竜との戦いの跡。
ええ、素敵な世界ね。また何度でも来たいわ!
ピーノ君に大きく手を振ると、その手にみょいんとくっつく綿雲。
この雲は……食べていいやつね?
溶け消える自制心。
二人で張り切った後、城下には青空が広がったとの噂もあるけど、
それはまた別の物語――。
朧・紅
リグさん(f10093)と紅人格のみで参加
アドリブ◎
ずるいのです、僕も――
少し前に堪能してきた薔薇庭園を思い出しつつアイスの薔薇を口に運び恍惚に
だが
極寒の風が吹き抜け凍る
ふみゃ!
…リグさん、やっぱ住むのはナシで
寒すぎです
ずびー
綺麗なランタン溶けないの不思議ですねぇ
あなぐらにも似合いそうです!
アイスの家具に目移り
ここミント
あそこチョコ味?
おいしそ…(じゅるり
わわ
下がミニチュアみたいですよリグさん!
素敵な世界ですねぇ
下のピーノさんに手を振り…
うや?これは…みにょんとのびるアイスですよ!!
きっと、食べていいやつなのですね…!
顔を見合わせ
その日雲一つない綺麗な青い空が広がったとか、広がらなかったとか…
●雲を払う
花弁を一つ舌に乗せれば、豊かな味と香りが、溢れるように広がっていく。件の庭園に咲いたという、アイスの薔薇を口にして、リグは幸せそのものといった表情を浮かべていた。
「くーちゃん わたし この国にすむ――」
夢見心地なのはこちらも同じ、紅もまた恍惚の笑みでそれに続く、が。
「ああ、ずるいのです、僕もこの国に――ふみゃ!?」
――びゅおお、と音を立てて二人の間を風が通り過ぎる。極寒の地に相応しい肌を突き刺すような冷気が、文字通り二人の頭を冷やしていった。
「……リグさん、やっぱ住むのはナシで」
寒すぎです、と続けて紅が鼻を啜る。あまりの寒風に自身の身体を掻き抱くようにしていたリグも、速やかにそれに頷いた。
「そ、そうね、たまに来る程度で十分だと思うわ」
悲しいことだが、多分それくらいが丁度良いだろう。気を取り直すように頭を振って、二人は商店街から丘を登る道をまた歩き出した。
お茶会をはじめ、足の向くままこの国を堪能してきた彼女等の手元には、既にお土産として買った氷のランタンも握られている。
購入からこっち、常に冷気を発し続けるそれを、紅は不思議そうに眼前へと持ち上げる。透明なそれはガラス細工のようにも見えるが、そうでないのは触れればわかる。
「このランタン、溶けないの不思議ですねぇ」
「そうねぇ、何か特殊な材料使ってるのかしら」
綺麗だからいいけれど。そして、彼女のあなぐらを照らすにはきっと似合いの品だ、と二人で買ったそれの品評をしながら、リグと紅は街を抜けていく。城壁の隣を行き過ぎれば、向こうに見えるのは氷の城だ。
「到着ね!」
「おじゃましまーす!」
見上げんばかりだった氷の城も、中に踏み込んでしまえば普通の建物と変わらない……かと思いきや。
「ミントの匂い……あっ、あそこ多分チョコ味ですね……」
「だ、ダメよくーちゃん……ここは我慢して……!」
アイスで作られた丁度品に、二人の鼻が敏感に反応している。しかし、違う、目的はそうではないのだと、よだれをたらしそうな紅を引きずるようにして、リグは尖塔の根元まで歩いて行った。
「この旅の最後の観光スポットは……これよ!」
「! 観覧車ですね!!」
天高くの聳える塔の、さらに上の観覧車を指差すリグに、ようやく正気に戻った紅が頷く。どうにか目的は達成できそうだ、と二人は塔を駆け上がった。
「ご乗車デスカー? ちょっと待ってクダサイネー」
受付なのか見張りなのかわからないが、とにかく観覧車の根元に立っていたピーノ君に声をかけて、一番下で止まったゴンドラへ。
「それじゃよろしくね、ピーノ君!」
「ハーイ、いってらっしゃいマセー」
ぎ、と音を立てた後、観覧車がゆっくりと動き始める。二人を乗せたゴンドラは、地面を離れて、徐々に上へ、上へ。
「ただでさえ高いのに、さらに上に行けるのね……」
「わわ、リグさん見てください、下がミニチュアみたいですよ!」
窓に張り付くようにしている紅と並んで、リグも下へと視線を移す。
「わあ……ほんとね」
そこからならば、この国を一望できるだろう。
皆で切り抜けた氷樹の森、竜との戦いの跡、その中心にあるのは薔薇の庭園で、足元の方に見えるのがランタンを買った商店街――。雪が降り積もり、アイスの実る極寒の地。そしてそこを切り拓いてきた者達の成果が、混ざり合ってこの国を形作っている。
「素敵な世界ですねぇ……あ、ピーノ君がこっち見てますよ」
「ええ、素敵な世界ね。また何度でも来たいわ!」
頷き合って、二人は窓の外――下の方からこちらを見上げるピーノ君に、大きく手を振ってやる。それに気付いたピーノ君も、ぶんぶんと手を振って――。
「うん?」
「何ですか、これ?」
振っていた手に妙な感覚を覚えて、リグと紅はその手を引き戻す。その動きに従って、手にくっついていた雲……だと思われていたそれが、一部ゴンドラの中に引き込まれた。
「くっついて、伸びる……??」
「うや? これは……みにょんとのびるアイスですよ!!」
衝撃の展開に、二人は顔を見合わせる。これは食べていいやつだろうか。果たして。いや。しかし。
「くーちゃん」
「何でしょ」
「やっぱりね、戦いの後は皆、晴れた空が見たいんじゃないかと思うの」
「なるほど、そうするとこの雲は邪魔ですね!」
「でしょう?」
そうと決まればやることは一つ。おもむろに、がしっと、二人は窓の外の白いそれを両手で掴み取った。
●蒼天
不思議の国『ラクトパラディア』。アリスラビリンスの中で、雪と氷とアイスの上に建てられたこの国は、今もこうして続いている。
極寒の気候にも負けず、竜の襲撃も凌ぎ切り、猟兵達と共に。
「それでは皆サン、またいらしてクダサーイ」
転移する彼等が最後に目にしたのは、こちらに手を振る愉快な仲間達と、雲一つない青空だった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵