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会いたくて会いたくて、だから

#アックス&ウィザーズ #宿敵撃破 #シリアス #切ない

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●貴方に会いたい――ただそれだけ
 会いたい、会いたい、会いたい――貴方に会いたい。
 今度こそ、今度こそ、伝えるから。

 貴方を失ってから、どれほど後悔したか、それを正しく示す言葉などない。
 貴方の仇を討っても、気持ちは全く晴れなかった。
 だから、私は――。

 私が愛した貴方は、とても正義感の強い人だった。
 だから、だから、私はこの槍を血で染め続ける。。
 こうして悪事に加担すれば、正義感の強い貴方は来てくれるだろう?
 そう、信じている。

 今度こそ、今度こそ――想いを伝えるから。
 だから、だから――。

●グリモアベースにて
「あのっ……時間があれば、聞いてほしいのっ……!」
 グリモアベースにて。白い羽を背にオラトリオの少女が猟兵たちに声をかけている。
「あのね、アックス&ウィザーズに行ってほしいのっ……」
 グリモア猟兵――コルネリア・メーヴィス(闇に咲いた光・f08982)の背後には、アックス&ウィザーズの景色が広がっていた。

 元々声の小さいコルネリアは、集まってくれた猟兵たちに聞こえるようにと、出来る限り大きな声を出そうとしながら話を始める。
「アックス&ウィザーズにね、町や村を襲って、そこにいる人々を皆殺しにしてしまう事件がいくつか発生していてね。わたしが見た予知は、オブリビオンの集団が拠点としている場所を出て、町を襲うというものなんだ」
 コルネリアによれば、すでに起こってしまったいたましい惨殺事件は、今回予知で見たオブリビオンの集団によるものだという。
「このオブリビオンたちが、町を襲う光景が見えたの」
 空をふよふよと飛んで迫りくるのは、虹色の雲――否、虹色の毛を纏った羊のようなオブリビオンたち。その姿だけを見れば、可愛くてメルヘンチックで、害を及ぼすようには見えぬだろう。
 だが、その虹色は人々を例外なく眠らせ、夢と生命力を吸収していく。
 そして、人々があらかた眠りに落ちた後に地上に降り立つのは――純白の天馬の背に跨った女性。
 その女性は眠った人々を、手にした槍で躊躇いもなく突き、絶命させていく……。
「虹色の獏羊たちを指揮しているその女性は、騎士みたいな格好をしていて……天馬騎士っていう名前がぴったりだと思うけど、でも……やっていることは騎士として胸を張れることじゃないってわたしにでもわかるんだよ」
 オブリビオンとして蘇った今、騎士としての矜持を忘れてしまったのか、それとも何か理由があるのか、それはわからないけれど。
「幸い、オブリビオンたちが拠点としている廃城の位置も分かったから、そこに攻め込んでほしいんだ。今ならまだ、彼女たちは動いていないから……予知で見た町が襲われるのを防ぐことが出来るかもしれない……ううん、みんなの力なら出来ると思う、だから……」
 お願い、と、ぎゅっと目をつぶってコルネリアは頭を下げた。

「あの町――フルーメンの町は今、お祭りの準備をしているの。この町は海からそんなに離れてはいないんだけど……町の真ん中に川があって、その川の水は海へと流れるのね。だから年に一回、その川に想いを流すんだよ」
 今は亡き相手へ、遠くに住む相手へ、所在の知れぬ相手へ、届くと信じて。
 近すぎる相手に、隣りにいる相手に、喧嘩をしてしまった相手に、思いを寄せる相手に、直接告げられぬ想いを。
 伝えられない想いを、溢れそうな想いを、穏やかな想いを、激しい想いを――どんな想いでも川は、海は、受け止めてくれるから。
「町の人達には大切な儀式なんだ。最近はこのお祭りに合わせて商隊がやってきたり、観光客がきたり、同じく想いを流したいって人が町以外から来たりして、屋台とかもでたり、パフォーマンスとか、いろいろある、以前と比べて規模の大きいお祭りになっているみたい」
 つまり、祭りの準備でフルーメンの町へと訪れている人が多いということは、オブリビオンたちが町を襲えばそれだけ多くの被害が出てしまうということだ。
「みんな、お願い。助けてあげて――」
 コルネリアのその言葉は、町の人達だけを指しているものなのか、それとも――。


篁みゆ
 こんにちは、篁みゆ(たかむら・ー)と申します。
 はじめましての方も、すでにお世話になった方も、どうぞよろしくお願いいたします。

 このシナリオの最大の目的は、オブリビオンたちの殲滅です。

 第一章では、オブリビオンたちの拠点である廃城へと乗り込み、集団戦にて『虹色雲の獏羊』と戦うことになります。

 第二章では、獏羊たちを率いている、ボスオブリビオンとの決戦になります。

 第三章では、第二章までが成功していれば、フルーメンの町でのお祭りに参加することができます。

 どれか1章だけの参加や途中参加も歓迎です。

 現地まではグリモア猟兵のコルネリアがテレポートしたのち、猟兵のみなさまをお喚びする形となります。
 コルネリアは怪我をしたり撤退する猟兵のみなさまを送り帰したり、新たにいらっしゃる猟兵の皆さまを導いたりと、後方で活動しており、冒険自体には参加いたしません。
 ※第三章に限り、お誘いがあればコルネリアも同行させていただきます。

●プレイング再送について
 プレイングを失効でお返ししてしまう場合は、殆どがこちらのスケジュールの都合です。ご再送は大歓迎でございます(マスターページにも記載がございますので、宜しければご覧くださいませ)

●アドリブについて
 「アドリブ×」の記載がなければ、大なり小なりアドリブを入れさせていただくことが多いです。

●お願い
 単独ではなく一緒に描写をして欲しい相手がいる場合は、お互いにIDやグループ名など識別できるようなものをプレイングの最初にご記入ください。
 また、ご希望されていない方も、他の方と一緒に描写される場合もございます。

●オープニング公開後に冒頭文を挿入予定ですが、主に廃城の描写の予定ですので、挿入前にプレイングをお送りいただいても問題ありません。

 皆様のプレイングを楽しみにお待ちしております。
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第1章 集団戦 『虹色雲の獏羊』

POW   :    夢たっぷりでふわふわな毛
戦闘中に食べた【夢と生命力】の量と質に応じて【毛皮が光り輝き、攻撃速度が上昇することで】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
SPD   :    眠りに誘う七色の光
【相手を眠らせ、夢と生命力を吸収する光】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
WIZ   :    ふわふわ浮かぶ夢見る雲
空中をレベル回まで蹴ってジャンプできる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●かつての城は
 猟兵たちが転送された先で目に入ったのは、石造りの城――だったものだ。そう大きくないその城は、かつては支城や出城的に使用されていたのかもしれない。
 けれども今、目の前にあるその城は、使われなくなった年月をその身で表している。長らく風雨にさらされて崩れた石壁や天井の穴などがそのままになっており、とてもではないが普通に住もうとは思えない。盗賊やならずもののアジトとなっていてもおかしくないくらいだ。
 歪んでしまっている扉を開けると、そこが天井の高い玄関ホールだということがわかる。敷かれた絨毯はその美しい面影を無くし、色あせ、汚れ、破れている。
 そして、そこここに虹色の塊が落ちて――否、眠っていたようだった。
 歪んだ扉を開ける際にどうしても抑えられなかった音で、目覚めた数体の獏羊が猟兵たちを視界に入れる。
 続けて、ぽつりぽつりと目覚め始めるたくさんの獏羊たち……。
 壁が剥がれたのか、壁際に瓦礫がいくらかはあるが遮るものの殆どないこの玄関ホールで、猟兵達は彼らと対峙することになった。
朽守・カスカ
再び逢いたい人がいる
その気持ちは分からなくもない
でも、やりかたがいけない
だから、止めよう

羊達に恨みがあるわけでもない
眠らせ、夢と生命力を奪うならば
それに応じた手を取ればいいだけ、さ

【花葩】
呼び出すは、ガジェット仕掛けの猟犬ならぬ、牧羊犬達
眠ることなく羊を追い立て集めてしまえ
大きく吠えて、眠ったものは起こし
傷ついたものは、運んで逃がそう
羊達を逃さぬよう纏めてしまえば、
あとは皆のお気に召すままに
(ああ、でもあまり残酷なのは好まないけれど)

ふふ、まるで羊飼いのような気持ちだね
さぁ、十分夢を食べただろう
今度はお前達が眠りに着く番さ



 続々と目覚めてゆくその虹色は、視界の中でもぞもぞと揺れて。
 こちらを見る瞳は愛らしく、それでも本能で自分たちを敵だと認識していることが知れた。
(「羊達に恨みがあるわけでもない」)
 けれども彼らの上に立つ『彼女』のやり方は。
(「再び逢いたい人がいる――その気持ちは分からなくもない」)
 朽守・カスカ(灯台守・f00170)とて、すでに会うことの叶わない大切な相手がいる。だからこそ、もう一度会いたいという気持ちを頭から否定するつもりはない。そのような気持ちを持つことは悪ではないし、再び会うために行動を起こすことが悪いわけでもない。
 だが。
(「羊達を従える者の、やり方がいけない」)
 だから、止めよう。カスカはその白い掌に意識を集中させる。
 羊たちは相手を眠らせ、夢と生命力を奪うという。ならば、それに応じた手を取ればいいだけだ。

「綻び、咲き誇れ――」

 呼び声に応えて現れたガジェットは、犬の形をしていた。ガジェット仕掛けの猟犬ならぬ、牧羊犬達である。
「眠ることなく羊を追い立て、集めてしまえ」
 カスカの命に従い駆け出した牧羊犬たちは、玄関ホールに散らばっている獏羊たちの元へとそれぞれ駆けてゆく。
『ワンッワンッ!!』
 まだ微睡んでいる獏羊を起こし、そして各自ホールの外周から徐々に、徐々に獏羊たちを追い込んでいく。獏羊たちには一箇所に纏められようとしている事に気がついているのだろうか。
 そんな牧羊犬たちに獏羊たちはそれぞれ七色の光を放つが、ガジェット製の牧羊犬たちは怯む様子も弱る様子もなく、獏羊たちを追い込み続けている。
「右の階段下へ」
 ホールの奥には崩れかけた階段があり、数段昇ったのちに左右へ分かれて二階へと続いている。その右の階段下には奥へと続く扉らしいものがあり、運良く扉の前に瓦礫が落ちていて、それをどけねば通り抜けできぬようになっている。すべての獏羊が階段下へ入り切るわけではないが、一箇所に集めるのが目的だ、そこは問題ない。
(「ふふ、まるで羊飼いのような気持ちだね」)
 牧羊犬たちに指示を出しながら、カスカは心の中で笑う。
 優秀な『羊飼い』と牧羊犬たちのおかげで、獏羊たちはもこもことその虹色の毛を押し付け合うように密集し、一箇所へと集まっていった。飛ぶ可能性がある以上、これで完全に逃げ場を無くしたとは言えないのが残念だが、複数の敵をすべて一箇所に集めるという行為は他の猟兵たちの助けとなろう。
「さぁ、十分夢を食べただろう。今度はお前達が眠りに着く番さ。あとは皆のお気に召すままに――」
 ああ、でもあまり残酷なのは好まないけれど――心の中で告げて、カスカは猟兵たちを振り返った。

成功 🔵​🔵​🔴​

マリス・ステラ
緋翠(f03169)と参加

【WIZ】囮と支援に徹します

「主よ、憐れみたまえ」

『祈り』を捧げると星辰の片目に光が灯る
全身から放つ光の『存在感』で敵を『おびき寄せ』る
光は『オーラ防御』の星の輝きと星が煌めく『カウンター』

「敵は引き受けます。緋翠は後方から攻撃をお願いします」

そうした戦い方が得意なのでしょう?
微笑んで前に出ます
六禁を振るい、敵を叩き伏せましょう
眠りの力は『破魔』の力で退け、

「あなたに星の加護を」

指先が瞬くと緋翠にも『破魔』の力を宿らせる
緋翠への攻撃は『かばう』
負傷時は【不思議な星】

数が減じて来れば、

「一気に畳み掛けましょう」

星の輝きは光線となり敵全てに『一斉発射』

「奥に進みましょう」


緋翠・華乃音
マリス・ステラ(f03202)と共に


「誰かとコンビを組んで戦うのは久々だな。まあ、いつもとやる事に変わりはない」

気配や物音などを極限まで消し、戦闘開始と同時に狙撃に適した場所へ素早く移動。

「彼女を囮に使うみたいで気は進まないが……」

《瑠璃の瞳》を瞬かせて戦場を広く見渡す。
敵の数、戦い方、移動速度、攻撃優先順位、ユーベルコードの種類、構造的欠陥、脆弱点etc.
その特殊な瞳で『視る』事により情報を集積させていく。

「後方からの援護は任せてくれ」

優れた五感と直感を研ぎ澄まし、星の彼女を援護するように狙撃銃のトリガーを引き続ける。

常に最適且つ最善の行動を心掛けて。

「本命はこの後か、油断せずに行こう」



 獏羊たちが次々と機械じかけの猟犬たちに追い立てられてゆく――その様子を見て、マリス・ステラ(星を宿す者・f03202)は隣に立つ青年へと声をかけた。
「敵は引き受けます。緋翠は後方から攻撃をお願いします」
 そうした戦い方が得意なのでしょう? ――柔らかに微笑んだ彼女に手には、星の欠片を鍛えたとされる扇。
「数多に星の加護を」
 指先を瞬かせて彼へと破魔の力を宿したマリス。
「誰かとコンビを組んで戦うのは久々だな」
 それに応えるように呟くのは緋翠・華乃音(終ノ蝶・f03169)。
 マリスが獏羊たちへと向かいゆくのを見つつ。
「まあ、いつもとやる事に変わりはない。後方からの援護は任せてくれ」
 淡々と告げて自身の気配と物音を消し、床を蹴る。
 ああなるほど、『羊飼い』はあそこへ獏羊たちを追い込もうとしているのか――その意図を即座に理解した華乃音は、素早く玄関ホール中央の階段を駆け上る。そして左側の階段を昇り、ところどころ朽ちた手すりのある二階の廊下をゆく。玄関ホールの入口のある面以外を囲むように広がる廊下。華乃音が位置取ったのは、右の階段下とは線対称となる二階左。
「主よ、憐れみたまえ」
 祈りを捧げ、星辰の片目に光を灯したマリスは、追い込まれつつある獏羊たちに『六禁』を振るって。強度の高い扇にしたたかに打たれた獏羊は悲鳴を上げるも、虹色のもふもふ毛皮によって打撃の威力はいくらか軽減されてしまうよう。
 ならば。長い袖と裾を翻らせて、まるで舞うかのようにくるりと向きを変えたマリスは、狙った獏羊の頭部へと『六禁』を振り下ろした。

『ピィィィィィッ!?』

 その衝撃と痛みにふらりと身体を傾かせた獏羊。猟犬たちにひとところに追い詰められながらも、彼らの敵意は一斉にマリスへと向いた。
「彼女を囮に使うみたいで気は進まないが……」
 その様子を二階から確認した華乃音の呟き。だが彼女は進んで囮となったのだ。ならば、その意思に報いる働きをしよう。
 華乃音は『瑠璃の瞳』を瞬かせ、戦場を見渡して。その特殊な瞳で『視る』ことにより華乃音の脳内に集積してゆくのは、文字通りすべての情報。
 敵の数、戦い方、移動速度、攻撃優先順位、ユーベルコードの種類、構造的欠陥、脆弱点etc.……情報が染み込んでくる。
 更に優れた五感と直感を研ぎ澄ませれば、狙うべき場所は自ずと導き出される。

 ――シュンッ。

 華乃音の手にした『to be alone.』から放たれた弾丸は、マリスが打ち据えた獏羊の頭を的確に射抜き。続けてトリガーを引けば、彼女へと強く敵意を向けている近くの二体の頭を撃ち抜いた。

『メェッ……』
『メッ……』

 どこからか突然飛来したなにかに射抜かれた獏羊たちは、悲鳴もそこそこに身体を揺らし、傾ける。マリスはその個体たちに扇を振り下ろし、それらが伏して動かなくなれば、次の目標を定める。
 階段下の奥、そこにいる獏羊の僅かな予備動作を感知した華乃音は、自然な動作でそちらへと狙いを定め。
「――、――」
 もふっ……! 宙を蹴って飛び出した来たその個体を、的確に狙い撃った。
「本命はこの後だ、油断せずに行こう」
 この呟きはマリスまでは届かない。だが意思は伝わっているはず。星の輝きを光線として放つべく構えたマリスの後ろ姿を見て、華乃音は再び獲物に狙いを定めた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

クラウン・アンダーウッド
なんて可愛い動物なんだ...お持ち帰りしたい。モフモフして愛でたい。しかし、相手はオブリビオン。せめて痛み無く倒さねば。

さぁ、皆で彼らを骸の海に帰そうじゃないか♪

10体のからくり人形と共に空中機動で移動しつつ、一体に複数体で対応する。怪力をもって相手を無力化し、人形用の操り糸で拘束し一ヶ所に纏める。集めた相手をからくり人形のβのUCの有効範囲内に収めて使用し、灰も残さない位の熱量をもって焼却する。

本来睡眠を必要としない人形達に、眠りを誘うことは出来ないさ。肉体を消耗しすぎたときのボクとは違ってね。まぁ、今回は肉体を消耗するようなことはないはずだから問題ないと思うけど。


アルマニア・シングリッド
………かつて、この城は小さいながらも多くの人がいたのでしょう

遺跡となった今では、この世界の歴史を知るための貴重な資料になり得るにもなり得るでしょうね



さて
掃除(という名の狩り)を始めましょうか

呪砲
定番の衝撃波を発する音属性の弾をスナイパーで的確に獏羊に当てていきます
骸の海に還らず、残ったものは後で毛と肉を回収するために
我ハ古キ書ノ一編ナリで運搬しましょう

ジャンプで逃げようとしても無駄です
高速詠唱・早業・援護射撃などで呪砲召喚の弾幕を展開してますから


……ここにいるオブリビオンは
かつては住んでいたお姫様なのでしょうかね

人を襲いかねない現状、どんな理由でも同情はしませんが


アドリブ・連携歓迎



 今や朽ちるのを待つだけのその城を視界に収めた時、アルマニア・シングリッド(世界≪全て≫の私≪アルマニア≫を継承せし空想召喚師・f03794)は思った。
(「……かつて、この城は小さいながらも多くの人がいたのでしょう」)
 脳裏に思い描くのは、この城で過ごしたであろう人々の姿。
 城を守る騎士や兵士はもちろんのこと、日常を支える女達の働く姿。ときおり聞こえる子供の声は、この城の住人の子どもか近所に住む子らのものか。
(「遺跡となった今では、この世界の歴史を知るための貴重な資料になり得るでしょうね」)
 そう考えると、これ以上の劣化も戦闘の余波による破壊も避けたく思うのは、やはり『記録』を扱う者ゆえか。
(「……ここにいるオブリビオンは、かつてはここに住んでいたお姫様なのでしょうかね」)
 その予測が合っていたとしても違っていたとしても、一つだけ揺らがないものがある。

(「人を襲いかねない現状、どんな理由でも同情はしませんが」)

 どんな境遇でどんな事情があろうとも、それだけは――。

 * * *

「なんて可愛い動物なんだ……お持ち帰りしたい。モフモフして愛でたい」
 思わず口から欲望が漏れた。
 玄関ホール内で次々と目覚めてゆく獏羊たちの虹色のもこもことそのつぶらな瞳を見て、クラウン・アンダーウッド(探求する道化師・f19033)がいだいた一番最初の思いは欲望とイコールだった。
 しかし相手はどんなに可愛くともオブリビオンだ。倒さなくてはならないことは理解している。
(「せめて、痛み無く倒さねば――」)
 クラウンがそう決意して、指に結びつけた糸を意識したその時。

「お持ち帰りできますよ」
「えっ」

 かけられた言葉に声の主を見れば、そこには見知った顔があった。
「ただ、おそらくクラウンさんの意図とは違う『お持ち帰り』ですが」
「アルマニアさん。……えっ、意図が違うって?」
 そこにいた彼女――アルマニア視線を移すのに倣い、クラウンもまた彼女の視線を追う。すでに機械仕掛けの猟犬たちが獏羊たちを追い込みつつあり、獏羊たちはもこもこを寄せあわせてながら猟犬に怯え、それでも逃げるように移動してゆく。その動きを見た他の猟兵たちも、すでに動き出していた。

『ピィィィィィッ!?』

 打ち据えられて鳴いた獏羊が撃ち抜かれて倒れ伏す。動かなくなったその獏羊を見据えたアルマニアは、『我ハ古キ書ノ一篇ナリ』を片手に念動力でその肉体を自分たちのいる後方へと運び、下ろした。
「のちほど、毛と肉を回収します」
「……なるほど」
 そういえばこの獏羊たちの虹色の毛と肉は最高級品だと、耳にした気もする。オブリビオンである以上、生きたまま持ち帰る事はできないのだ。ならば持ち帰った羊毛で獏羊の人形やぬいぐるみを作るのも良いかもしれない。
「さて、掃除(狩り)を始めましょうか」
「そうだね。皆で彼らを骸の海に帰そうじゃないか♪」
 まずは目の前の彼らを倒すことが先だ。アルマニアが呪砲を召喚している間に、クラウンは10体のからくり人形たちと共に空中へと浮かび上がる。
「飛び上がって群れから出る悪い子にはお仕置きだ♪」
 ぴょんっ、ぴょんっ、ぴょんっ……。最初の一体が宙へ飛んだことで自分たちが飛べることを思い出したのだろうか、次々と飛び上がる獏羊たち。だが、光条や二階からの弾丸に撃ち抜かれる個体も多い。それでも更に高く飛ぼうとする個体を、クラウンはからくり人形たちとともに狙った。
 獏羊一体に対し、こちらは複数体で対峙する。視界の端で獏羊が飛んだ気配を察知したが、これ以上戦力を分配するのはリスキーだ……そんな思いは杞憂に終わった。
 クラウンの後方下部から飛来した衝撃波が――否、狙い定めて放たれたそれは、衝撃波を発する音属性の弾丸。アルマニアの召喚した呪砲が放ったその弾丸の衝撃波が、クラウンの視界の端にちらついた獏羊を的確に落としてゆく。これならば安心して狙った敵へ集中できそうだと、クラウンは人形たちの相手取っている獏羊たちへと意識を集中させる。
「さて、下準備は上々♪」
 人形たちがそれぞれ分散して空中で抑え込んでいる獏羊は3体。クラウンが指を微かに動かすだけで、そこに繋がる操り糸がまるで生きているかのように動き出す。その糸たちは次々に獏羊を縛り上げてゆき、クラウンがぐい、と引けば3体がひとところにぎゅうっと集まった。
「そろそろ仕上げといこうか♪」
 その声に反応したからくり人形のβが放つのは、劫火のオーラだ。捕らえた獏羊たちを中心に、だが無差別に放たれるその熱量は、主人でもあるクラウンにも及ぶ。しかしそれは覚悟の上だ。

『メェェェェェェッ!!』
『ェェェェェェェェェェェェ……!』

 獏羊たちもただやられるままではない。七色の光を発して抵抗を試みる。だが。
「本来睡眠を必要としない人形達に、眠りを誘うことは出来ないさ。肉体を消耗しすぎたときのボクとは違ってね」
 光は、劫火のオーラに徐々に飲み込まれてゆき、熱を上げ続けるオーラは3体を、灰も残さぬ高温で焼き尽くし――クラウンたちのいる高さから、獏羊たちが消えた。
「クラウンさん! あまりたくさん燃やし尽くさないでください!」
 後方から、狙撃の音に混じって聞こえたのはアルマニアの声。そうだ、燃やし尽くしてしまっては、毛も肉も持ち帰れないのだ。
「ごめんごめん、気をつけるよ♪」
 アルマニアとて本気で怒っているわけではない。元々、肉体が消えなかった獏羊がいれば回収しようと思っていたくらいだ。けれども範囲内の対称を無差別に熱するあのオーラは、下手をすればこの城の殆どを――猟兵たちも含めて――包み込んでもおかしくないのだ。
「さて、まだわからないのでしょうか」
 先程から、群れから飛び出した獏羊はアルマニアや他の猟兵達によって確実に落とされている。一撃で仕留められているわけではないので同じ個体が再び飛び出している可能性も在るだろう。けれども最初よりは、確実に動いている獏羊の数は減っていて。
「ジャンプで逃げようとしても無駄です」
 アルマニアは音属性の弾丸を打ち出すことを、やめない。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

黒鵺・瑞樹
アドリブ連携OK
右手に胡、左手に黒鵺の二刀流

決して許せる行動ではないけれど。
会いたいからって想いだけで思い切った行動とれるのは…少し、羨ましい。

……。
俺は誰に会いたいんだろう?

【存在感】を消し【目立たない】様に死角に回り、可能な限り【奇襲】【暗殺】【マヒ攻撃】を乗せたUC菊花で攻撃。代償は寿命。
敵の攻撃は【第六感】で感知、【見切り】で回避。
回避しきれないものは黒鵺で【武器受け】して受け流し、【カウンター】を叩き込む。
それでも喰らうものは【激痛耐性】【オーラ防御】【呪詛耐性】で耐える。
眠りって呪詛みたいなもんだろうと判断。



(「決して許せる行動ではないけれど」)
 グリモア猟兵から聞いた天馬騎士の女性の行いは、騎士道からだけでなく人道からも外れていて、決して容認できるものではない。
 けれども。
(「会いたいからって想いだけで思い切った行動とれるのは……少し、羨ましい」)
 その行動の原動力となった『想い』までは否定できない。そしてそれを原動力に思いきって大きな一歩を踏み出せる――その勇気を今の黒鵺・瑞樹(界渡・f17491)は、羨ましく思わざるを得ない。
「……、……」
 今、自身の中に巡った思いに、瑞樹は一瞬動きを止めた。

(「俺は、誰に会いたいんだろう?」)

 考えすぎて考えすぎて考えすぎて。
 悩みすぎて悩みすぎて悩みすぎて。
 想いすぎて想いすぎて想いすぎて。
 最初は何だったのか。
 最初は何色をしていたのか。
 最初はどんなカタチしていたのか。

 ――もう、自分でも自分の想いがわからない――。

 玄関ホールに足を踏み入れたと同時に聞こえた、耳をつんざくような獣の鳴き声に意識を引き戻されて。
 両の手にきちんと獲物が握られているのを確認して、安堵の息をついた。

(「考えるな――」)

 自分に言い聞かせ、右手の『胡』、左手の『黒鵺』、それぞれの柄を握り直す。
 ゆっくりと息を吐き出しながら、己の存在感を消してゆく。足音をも消し、同じ猟兵にさえ悟られぬように動くその様は、まさに暗殺者のもの。
 瑞樹は猟兵たちの背後を、足音もなく素早く駆け抜け、壁寄りに進んで虹色の塊を目指す――。

『メ……!?』

 その獏羊が痛みを自覚した時には、二振りの刃による二撃目がその身体を斬りつけていた。
 アイオライトの瞳輝かせ、寿命と引き換えに刃を重ねて振るう。途中から片手の刃は、隣の獏羊に向けた。
 
『メェェェェェェッ!!』

 放たれた光が身体を蝕む。痛みは感じるが、まだ耐えられる。オーラが軽減してくれたのか、それとも何か別のものかもしれないが、眠気にもまだ負けずに済みそうだ。
 まずは一体、麻痺して動けぬまま。続けてもう一体、放った光の消える前に。
 倒れた獏羊は、毛だけを残して消えていく。
 瑞樹の足元には、二頭分の虹色の毛。
 それを意にも介さず彼は、次の獲物へと視線を向けた。

成功 🔵​🔵​🔴​

出水宮・カガリ
ステラ(f04503)と

住むもののいなくなった、城
見る影もなき姿、歪んでしまった扉
ひとがいなくなって、愛されなくなってしまうと
建物とはやはりこうなるのだな…
オブリビオンの巣になるために、永らえていたわけではなかろうに

ん、行こう、ステラ
まずはこのふわふわしたものを、倒していこう
他の窓や穴から逃げ出さぬよう、ステラの流星撃から零れたものを【籠絡の鉄柵】を大型化して囲いこむ
窓や扉はできるだけ閉めた上で、【神都落城】を
この城の最後の住人がオブリビオンとは、切ないものがあるが
これ以上、ひとに害なすものの砦となるよりは


ステラ・アルゲン
カガリ(f04556)と

天馬に乗った女騎士……?
いや、まさか。そんな事はない
なぁそうだよな、ルナ?
しかし誰であろうとオブリビオンであるなら倒さないと
同じ騎士であるなら尚更だ

【月光槍】のルナを手にして、カガリと共にまずは獏羊を倒そうか
【高速詠唱】にて雷【属性攻撃】の【マヒ攻撃】の力を持つ【流星撃】を放とうか
敵に掛かった力を打ち消すように【破魔】の力を込められた雷撃だ
敵の能力を封じ動きも止めたら後はカガリに任せよう



 住むもののいなくなってしまった城を見つめる古代紫の瞳が、かすかに揺れる。
 見る影もなきその姿。歪んでしまった扉は建築物の末路を示しているようで、胸が痛む――。
(「ひとがいなくなって、愛されなくなってしまうと、建物とはやはりこうなるのだな……」)
 黄金都市の城門としてあった出水宮・カガリ(荒城の城門・f04556)が、目の前の城の姿を見て思いをいだくのは無理からぬこと。
 憐れみか、悲しみか、得心か親近感か――その全てが混ざりあったものやもしれない。
(「オブリビオンの巣になるために、永らえていたわけではなかろうに……」)
 人が絶えてもまた、誰かが必要としてくれる日が来るかもしれない。そんな日を夢見てこの城は、建物としての形を保ち続けていたのだろう。決して、今のような状況を望んではいないはずだ。

 * * *

(「天馬に乗った女騎士……?」)
 グリモアベースでグリモア猟兵の話を聞いたときから、ステラ・アルゲン(流星の騎士・f04503)は背筋に氷を落とされたような、嫌な予感がしてならなかった。
 槍を手にし、天馬に乗る女騎士――ステラはその条件に当てはまる人物に心当たりがあるのだ。
「いや、まさか。そんなことはない」
 けれどもステラの知る『彼女』は、知らされたような行為を行う者ではなかったし、ましてやオブリビオンとして甦るとは思えなかった。
「なぁそうだよな、ルナ?」
 語りかけるのは、自身の持つ金の長槍。『月光槍』の名を持つそれは、『流星剣』であるステラの同僚とも言える。ステラの主と共に戦った女性が使用していたものだ。
「しかし誰であろうと、オブリビオンであるなら倒さないと」
 自身の中に浮かんだ疑念を無理矢理押さえつけるようにして、ステラは呟く。
「同じ騎士であるなら尚更だ」
 片手で、腰に下げた己の本体へと触れる。
 それは騎士としての己を確固たるものとしつつ、疑念を封じるのを手伝ってくれた。
 そして、もうひとつ、彼女を支えてくれるのは。
「ん、行こう、ステラ」
 目の前に差し出された手袋をはめたその手を躊躇いなく取り、ステラは頷いた。
 迷いなく進むことが出来るのは、隣に彼がいるからだ。

 * * *

「まずはあのふわふわしたものを、倒していこう」
「ああ。一箇所に纏めてくれたのは助かる。これなら」
 今ステラが握っているのは、いつもの『流星剣』ではなく『月光槍』だ。秘められた雷の力を開放し、そして。

「ルナ、共に行こう――墜ちろ!」

 最初よりも数は減ったものの、まだ虹色は複数存在している。そんな群れへとステラが叩きつけたのは、『月光槍』による隕石落下級の一撃。
 その一撃は、獏羊たちの一部が下へ入り込んでいた右の階段を巻き込みながら、床石をも抉る。

『メェェェェェェェッ!』
『メッ……』

 その一撃で消滅した個体、負けじと毛皮を輝かせて自身を強化する個体、毛皮を輝かせようとするが麻痺して動けない個体――そして、宙へと飛び上がる個体。
 続けて特に毛皮を輝かせた個体へと、その個体が得た力を相殺するように、破魔の力を込めた雷撃を放った。
「カガリ、あとは任せたぞ!」
「ん。さて、籠絡の。跳ねたふわふわを押さえてくれ」
 カガリの呼び声に反応して姿を現したのは、頭のない黒い魚の骨。ずんっと大きくなったそれは、跳んだ数頭の身体に覆いかぶさるようにして下へ下へと押し戻してゆく。
 割れた窓や歪んだ扉から逃げ出そうとする個体がいれば、他の猟兵たちが対処に回ってくれるだろう。だから。
「この城の最後の住人がオブリビオンとは、切ないものがあるが」
 告げたカガリが顕現させたのは、黄金都市の炎上する瓦礫だ。
「これ以上、ひとに害なすものの砦となるよりは」
 降り注ぐ瓦礫は獏羊たちを押し潰し、またその毛皮に引火して。
 断末魔の悲鳴は耳に残る。
 けれどもこれ以上、被害が出るのを見過ごすことなど、出来るはずはなかった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第2章 ボス戦 『天馬騎士シンシア』

POW   :    闇を裁きし雷槍
レベル×5本の【神聖】属性の【雷の槍】を放つ。
SPD   :    天馬騎士
【ペガサス】の霊を召喚する。これは【騎乗することで空を飛ぶこと】や【上空からの騎馬突撃】で攻撃する能力を持つ。
WIZ   :    狂い堕ちるも輝く光
【聖なる月光】が命中した対象を高速治療するが、自身は疲労する。更に疲労すれば、複数同時の高速治療も可能。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はステラ・アルゲンです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


※第二章冒頭文追加後から、プレイング受付を開始いたします。
※同時にプレイング受付についてのご連絡がございますので、第二章冒頭文追加後にマスターページをご確認いただけますと幸いです。
●貴方を待ち続けて
 待って待って待って――ただ待っているだけじゃ駄目なのだと、知っていたから。
 殺して殺して殺して――こうすればきっと、私の愛した貴方は来てくれると気がついた。

 だから……殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して――。

 手にした槍が、血に染まれども。
 純白のペガサスが、血に染まれども。
 貴方が私に会いに来てくれるまで――続けなくてはならない。

 * * *

 ……今日は随分と、羊たちが鳴く。いつもは眠っているばかりなのに。
 それだけではない。建物が崩落する音、衝撃音――まるで、何かに攻め入られているかのよう。

 ――!!

 もしかして、やっと、やっと来てくれたの?
 貴方――貴方なの?

●廃城の主へと
 玄関ホールで虹色雲の獏羊たちを殲滅した猟兵たちは、無事な階段を選び、城の奥へと行く。
 廊下も壁が崩れ落ちたり床が陥没していたり、絨毯だったと思われるものは薄くなって千切れたり、その姿を無くしていた。
 飾られていた調度品であろうものも落下したり破損していたりと、城が『生きていた時』のままであるものは殆ど見つからない。
 行方が瓦礫で遮られている場所もあった。瓦礫をどかすのも猟兵であれば難しくはないだろう。だがまずは障害のない道を選んで猟兵たちは進みゆく。
 目指すこの城の主が何処にいるかわからないからだ。
 城の中で行ける場所の殆どを探したが、主である女性騎士はみつからない。主なのだからやはり玉座の間や謁見の間で玉座に座してこちらを待ち受けているのではないか――そんな声が上がり、瓦礫をのけてたどり着いたのは、歪みのない大きな扉の前。
 常ならば扉の横に兵士や侍従が立っていてもおかしくないだろうその場所。その、両開きの大扉を警戒しながら開ける。
 ギギギギギギギギギギ……。
 扉自体は歪んでいないが、両側から扉を引いて開けると、嫌な音が響き渡る。おそらくその、常より重く感じる扉は、開かれない時間が長かったのだろう。
 ならば中に件の女性騎士がいる可能性は――警戒して扉の奥を覗き込んだ猟兵たちの目に映ったのは、謁見用の玉座が一つ。決して王侯貴族の座すような華美で重量感と威厳のある物ではないが、小さくとも一城の主が座るに相応しいものだ。

 しかし、その玉座は空だった。

 やはりここにはいないのか……扉の様子考えれば、頻繁に出入りしていた様子はない――そう思いかけたその時、それが耳へと届いた。

「……やっと、いらしたの?」

 声の主を探せば、玉座の左側奥――猟兵たちから見ると玉座の右側奥に人影が見えた。ただその辺りは天井が酷く崩落しており、太陽の光が直に降り注いでいる。

「来て、くれたの?」

 目を細めて光の中を見れば、そこには天馬を連れた女性騎士が、主を待つが如く佇んでいた。

「私のことがわかる? シンシアよ!」

 扉の戸に待ち続けた彼がいる可能性を捨ててはいないのだろう。彼女――シンシアは期待のこもった声を投げかけてきた。
朽守・カスカ
……残念ながら、私は君の待ち人ではない
君を満たすことは叶わないだろう

愛した人に討たれる運命になろうと
それでも、ただもう一度逢いたいと殺戮に身を染める
殺された人達も
殺していった君も
誰も幸せには辿り着けない
逢いたいと願う想いに罪はないのに
その術を間違えたという
なんとも不幸な話だ

言葉は、届くだろうか
君が求めたように
君が殺めた人は誰かの待ち人で
想い人だったんだ
贖うことも最早叶わないだろうが
それでも、そのことに少しでも
思いを馳せてほしい

【還す標】
君が殺戮を続けたとて
此処には待ち人は現れない
待つのではなく
骸の海へ探しに行くといい

行先が分からぬならば
私が標を示そう
骸の海へと続く標を

今度は間違えることなく


黒鵺・瑞樹
アドリブ連携OK

少しじゃないな、想いだけで行動できるのはかなり羨ましい。
会いたい人はわからなくなってしまったけれど、どうしてもブレーキがかかってしまう。
…天秤に乗せるまでもなく俺は何よりも軽いのだから。

真の姿解放。胡と、人の身と共に刀に姿を変えた黒鵺を構える。
【存在感】を消し【目立たない】様に死角に回ったり、逆に【殺気】を出して注意をひいたり。囮として【マヒ攻撃】を乗せたUC菊花で攻撃。代償は寿命。
敵の攻撃は【第六感】で感知、【見切り】で回避。回避しきれないものは黒鵺で【武器受け】して受け流し、【カウンター】を叩き込む。
それでも喰らうものは【激痛耐性】【オーラ防御】【電撃耐性】で耐える。



 ああなるほど。彼女は騎士であり、城の主ではない。だから玉座に座していなかったのだろう。彼女自身はあくまで『騎士』で、仕える主は別にいるということ――騎士道に悖る自身の行いに疑問を持たぬ半面、こういう部分にまだ騎士としての心が見えるという歪んだ状態を見ると、なんとも言い難くなってしまうではないか。

(「少しじゃないな、想いだけで行動できるのはかなり羨ましい」)
 その姿を、彼女のこれまでの行いの原動力となったモノについて聞き、そしてこうして改めて彼女と対面してみると。
 グリモア猟兵から伝え聞いたときよりももっともっと、彼女の行動に憧憬をいだいてしまう。
 自分の会いたい人は誰か――それはわからなくなってしまったけれど。それでもなお、黒鵺・瑞樹(界渡・f17491)はどうしても無意識にブレーキを掛けてしまう。
 なぜそうなってしまうのか、それは自分の中ではとっくに答えが出ていた。
(「……天秤に乗せるまでもなく俺は何よりも軽いのだから」)
 自身が辿り着いたこの結論は、容易には覆らないだろう。たとえ誰かが違うと言ってくれたとしても、疑ってしまうかもしれない。身構えてしまうかもしれない。心の全てでそれを信じることは出来ないもしれない。
 だからこそ、彼女のように真っ直ぐに、衝動のままに動くことはできない。
 自分は何よりも軽いのだから。
 重くなってはならぬのだから。
「ごめんな。俺は待ち人じゃない」
 告げて瑞樹は己の裡に秘めたる力を開放する。
 銀の髪はそのままに、だが結い方と服装を変え、そして青を映す瞳は金色(こんじき)へ。
 だが、この真の姿の最大の特徴は人の身にあらず。
 肉体の持つ本体――彼自身でもある黒刃のナイフは、両刃作りの刀へとその姿を変えて彼の手にあった。

「……違う……」

 光の中で佇む彼女――シンシアがぽつりと零した言葉に籠められた気持ちは、痛いほど分かる。けれど。
「……残念ながら、私は君の待ち人ではない。君を満たすことは叶わないだろう」
 瑞樹の近くまで歩み出た朽守・カスカ(灯台守・f00170)が、真実を告げる。それが真実である以上、下手な誤魔化しのほうが残酷だ。
「愛した人に討たれる運命になろうと……それでも、ただもう一度逢いたいと殺戮に身を染める」

「……ああ、あなた達も違うのね……」

 シンシアの落胆した声が空間に響く。
「殺された人達も、殺していった君も、誰も幸せには辿り着けない」
 淡々と事実を紡ぐカスカ。
「逢いたいと願う想いに罪はないのに、その術を間違えたという……なんとも不幸な話だ」
 その声は、その言葉は届いているだろうか――それはシンシア本人にしかわからない。
 そのシンシアは、傍らの愛馬を軽く撫で、そして慣れた動作でその背へと飛び乗る。彼女の動きを注視していた瑞樹が、シンシアの意識がわずかでもカスカへと向いている隙を利用して、気配を消したまますでに彼女に接近していた。

「きゃぁぁぁっ!?」

 金色(こんじき)の瞳が輝き、瑞樹の振るう刃は飛雨の如くシンシアへと降り注ぐ。寿命を代償にしたそれは味方を斬ることはなく。されども幾筋かは彼女を庇うかのように羽ばたいた天馬が受け止めた。
 天井の崩落した部分から空へと、シンシアを乗せた天馬は高度を上げてゆく。ナイフから刀へと姿を変えた『黒鵺』でも届かぬ。普通に床を蹴って飛んでも届かぬ。投擲用の武器を取り出すか、瑞樹が僅かに思考したその時――太陽の光を遮って、白がこちらへ降ってくる。
「っ……!」
 しかし真の姿を開放した今の瑞樹にとって、勘を頼りにその落下――否、落下速度を伴った天馬とシンシアの突撃を見切って避けるのは、難しいことではなかった。
 ドゴッ……シンシアが手にした槍が突いたのは、傷んだ床。キッと鋭い視線で瑞樹を睨めつけた彼女は、今一度、天馬とともに高度を上げようと試みる。
(「言葉は、届くだろうか」)
 届いてほしい――そう願いながら、カスカは彼女へと近づいてゆく。

「君が求めたように、君が殺めた人は誰かの待ち人で、想い人だったんだ」
「……、……」

 シンシアを見上げるカスカ。上昇途中で滞空しているシンシアの表情は、逆光で見えない。

「贖うことも最早叶わないだろうが、それでも、そのことに少しでも……思いを馳せてほしい」
「……私は、ただ……あの人に――……」

 ぽろりとこぼれたその言葉。それが純粹な思いであることは、カスカもわかっている。

「君が殺戮を続けたとて、此処には待ち人は現れない」
「……!!」

 だからこそ、嘘偽りは紡がない。

「待つのではなく、骸の海へ探しに行くといい」
「やめて! やめてやめてやめてーーーーーーー!!」

 本能的に何かを感じたのだろう。ランタンの灯を翳すカスカを見て、シンシアは一気に高度を上げる。

「行先が分からぬならば、私が標を示そう。骸の海へと続く標を」

 まばゆい光がシンシアを天馬とともに包み込む――その直前、彼女が勢いよくカスカ目指して突撃する姿が見えた。

 * * *

 光が収まった後、その場には。
 カスカに向かった槍の先を『黒鵺』で受け止めた瑞樹と、彼に守られたカスカと――少し離れたところで体勢を崩しているシンシアと天馬の姿があった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

クラウン・アンダーウッド
心情 愛する者の為に何でもするのは理解出来るが、他人を巻き込むことは共感出来ない。所詮オブリビオンだから同情もしない。

《真の姿》顔の左側がひび割れ崩れ落ち、激しく燃える地獄の炎が顔を出し、両手のガントレットが炎に包まれる。
唯唯、相手をぐちゃぐちゃにしたい欲求に支配される。

衝動に任せる前にちょっとした実験をしようか。(顔の左側にヒビが入る)
はてさて吉と出るか凶と出るか♪
ζ!死者との再会!
ζの姿が女性騎士が望む者の姿に変化する。変化した姿の対象が死者であればその者の魂が宿るが、生者であれば魂の無い人形として現出する。

結果に満足したら戦闘開始。真の姿を解放して相手を徹底的に痛め付ける。



(「愛する者の為に何でもするのは理解できるよ。でもね、他人を巻き込むことは共感できないね」)
 ただ会いたかっただけだ――そう主張するシンシアの言葉にクラウン・アンダーウッド(探求する道化師・f19033)がいだいたのは、そんな気持ち。
 けれどもやはり相手はオブリビオン。ならば同情などしない。
(「ああ、衝動に任せてしまおうか」)
 ピシッ……彼の左側の頬にひびが入る。
(「でも、衝動に任せる前にちょっとした実験をしようか」)
 ピシッピシ……顔の左側に更にヒビが入る。
 そんなクラウンが取り出したのは、10体のからくり人形のうちの1体、男性型の『ζ(ゼータ)』だ。
「ζ! 死者との再会!」
 命じれば、ζの姿が変化してゆく。
「はてさて吉と出るか凶と出るか♪」
 徐々に定まりゆくその形は、背の高い、金髪の男性だ。
「っ……!?」
 体勢を立て直したシンシアが、目を見開いて息を呑む。
 霊体としてではあるがシンシアが望む者の姿へと変化してゆくζ。
 彼女の望んだ姿が死者のものであればその者の霊が宿るはずなのだが――。

『シンシア』

「!?」

 ζの取った姿が、彼女の名を呼んだ。彼女が身体を震わせたのがクラウンにも見て取れる。
 けれども。

「……違う」

 心を表すかのように揺れる瞳を一度閉じて、シンシアはかぶりをふった。

「貴方は、あの人ではない!!」

 彼女の叫びとともに、聖なる力を帯びた雷槍が放たれる。雨霰と降り注ぐそれは、ζだけでなくクラウンをも貫いて。
 降り注ぐ数多の雷槍を、オーラや『カバン型移動工房』で可能な限り防ぎつつ、クラウンはその姿を変えてゆく。
(「この結果はもしかして、ζが変化する過程を見られたからだろうか?」)
 心中で思考をこねつつ彼が変化したのは、真の姿。先程までヒビが入っただけだった左の顔は、すべて割れ落ちて――地獄の炎が噴出している。
 両手にはめた白磁のようなガントレットもまた、炎に包まれて。
 そして彼の心は、シンシアをぐちゃぐちゃにしたいという暴力的な欲求で塗りつぶされた。
「――!」
 降り注ぐ残りの槍を躱しながら、宙を蹴るようにしてシンシアの元へと急接近し、クラウンは炎に包まれた拳を繰り出す。

「ぐっ……!?」

 殴りつけられたシンシアは、ふらつきつつも何とか立っている。しかし彼女を庇うようにその身を差し出した天馬をも、クラウンは容赦なく殴りつけて、痛めつけて。

「ああっ……」

 何発目かの殴打の勢いでシンシアの身体を飛ばし、部屋の奥の壁へと叩きつけた。

成功 🔵​🔵​🔴​

マリス・ステラ
緋翠(f03169)と参加

【WIZ】愛をもって

待ち人は来ない
彼女自身が望むほどに、殺すほどに

「主よ、憐れみたまえ」

『祈り』を捧げると星辰の片目に光が灯る
全身から星の輝きを放ち『存在感』で彼女を『おびき寄せ』る

「緋翠、彼女を浄化します。力を貸してください」

【光をもたらす者】を使用

蝶の形をした星霊達が広がる
放つ矢は彗星のような速射
響く弦音は『破魔』の力を宿して敵の動きを鈍らせる

「その翼で飛べなかったのですか?」

寄り添う天馬とならどこにでも飛べたでしょう

全ての星霊達が光線を『一斉発射』
私自身も愛の『属性攻撃』で彼女達を包み込む

「あなた達に魂の救済を」

灰は灰に、塵は塵に
オブリビオンは骸の海に還します


緋翠・華乃音
マリス・ステラ(f03202)と共に


「その姿を、憐れだと思うのは……彼女に対する侮辱になるだろうか」

戦法は先程の戦闘と同じく狙撃を選択。
並外れた戦闘経験と観察眼を基に相手の行動や戦術を先読みし続ける。

「在るべき場所に魂を還してやるのが蝶の役目だ」

狙撃ポイントの限られる閉所。
故に、射線が読まれ始めたら狙撃を終了し前線へ移動。

戦法は速度や手数を生かしたヒット&アウェイ。
至近距離ではナイフによる斬撃・刺突、近~中距離では拳銃による銃撃をメインに。
重視するのは一撃の威力よりも手数と技巧と速度。
虚実織り交ぜた変幻自在の攻撃は、寄せて返す波のように。



(「待ち人は来ない。彼女自身が望むほどに、殺すほどに」)
 ただ会いたかっただけだ――そう告げる彼女が、仲間の猟兵によって執拗に殴打されるのを見て、マリス・ステラ(星を宿す者・f03202)は祈りの形に指を組む。
「主よ、憐れみたまえ」
 捧げた祈りに応えるように、彼女の星辰の片目に光が灯った。全身から発せられるそれは、星の煌めき。
「その姿を、憐れだと思うのは……彼女に対する侮辱になるだろうか」
 小さく呟いたのは、マリスの隣に立つ緋翠・華乃音(終ノ蝶・f03169)だ。
 決して惨めだと侮辱したいわけではない。ただ単純に、素直にそう思っただけだ。
「侮辱にはならないと思いますよ。それを示すために、私たちは私たちに出来ることをしましょう」
 応えたマリスは、シンシアから視線を離さずにそのまま。
「緋翠、彼女を浄化します。力を貸してください」
「ああ。在るべき場所に魂を還してやるのが蝶の役目だ」
 請われて応え、華乃音は即座にマリスの傍から離れた。
 ただただシンシアと他の猟兵たちのやりとりを、眺めていたわけではない。彼女の戦闘スタイルや癖などを見切るべく、華乃音は並外れた戦闘経験とそれに裏打ちされた観察眼を働かせていたのだ。
 華乃音が選んだ戦闘スタイルは、先程と同じ狙撃。シンシアが天井の崩落した付近にいるのは恐らく、天馬に跨って高度を稼ぐためだ。この謁見の間自体、天井は高めに作られてはいるが、天馬の力――高所からのアドバンテージを活かすにはやはり室外へと出た方が良い。通常の移動も崩落した天井を利用していたというならば、この謁見の間へ続く道が瓦礫でふさがっていたのも理解できた。

「――This is where it periods.」

 シンシアと離れた場所にあった瓦礫を利用して位置取り、『to be alone.』を放つ。狙い通り、弾丸はシンシアの左肩を射抜いたが――彼女は、自分に何が起こったのかわからないようだった。
 だがそれも一瞬のこと。痛みと衝撃で握っていた槍を落とした彼女は、肩からの流血が伝う手で自身の槍を拾い上げる。
 しかし。

「夜が明け、明けの明星が昇るまで、暗闇に輝く灯火として――」
「――っ!?」

 顔を上げた彼女の前には、マリスが喚び出した星霊たちが広がっていた。300体近い星霊たちは皆、蝶の形をしていて。

「その翼で飛べなかったのですか?」

 マリスが『星屑』でもって放つ矢は、彗星が降り注ぐような速さでシンシアを狙い。
 その弦音はいにしえからそうされてきたように、邪気を払う力を持って響き、シンシアの動きを阻害する。

「寄り添う天馬とならどこにでも飛べたでしょう」
「……飛んだとて、あの人は――」

 マリスの言葉に唇を噛むように応えたシンシアは、聖なる雷槍を再び無数に喚び出して。
 視線の先にいるマリスと、銃弾の飛来した方向へと飛ばしはじめた。
 けれども。
 マリスも華乃音も、怯む素振りすら見せない。
 華乃音は狙撃場所から移動しつつ、『to be silence.』にて銃撃を続ける。威力よりも手数と狙いを重視したそれは、時に錯覚を生む。
 一方向からに限らぬ射撃はシンシアの雷槍の行く先を分散させ、自ずと被弾を減じた。

「っ……!!」

 手応えがない――そう感じたのだろう。シンシアの表情に焦りが見えた。
 天馬が彼女の盾となるべくシンシアの周りを移動する。けれどもそれよりも、華乃音の変幻自在の攻撃のほうが明らかに早く、精度が高い。

「まだっ……だめっ……」

 崩落した天井からはまだ、陽光の降り注ぐ時間だ。けれどもシンシアと天馬を包み込むのは、闇を照らす月の光。
 まだ、望みを果たしていない。まだ、彼に会っていない。だから、消えるわけにはいかないと。

 けれどもそれは、彼女がオブリビオンと成り果てた今、身勝手な我儘でしかない。
 自身の望みのために他者を手に掛けることを厭わなくなった彼女を、見過ごすことなど出来ない。そんなことは猟兵として、あってはならないのだ。
 だから。

「あなた達に魂の救済を」

 マリスの声を引き金として放たれたのは、蝶を象った星霊たちからの光線。
 そして、マリス自身が放つ、愛を宿す力。
 華乃音の銃撃によって集中を妨げられているシンシアと天馬に、その光は集まって――。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ステラ・アルゲン
カガリ(f04556)と

――ええ、分かりますよ。シンシア

優しく彼女を呼ぶのは私の声ではない
遠い記憶にある過去の声、私の主の声
【追憶の星】により今の私は我が主……クレムその人
金髪碧眼の騎士。我が国の英雄。そして貴女が愛した人

――ずいぶんと待たせてしまってすまない
シンシア。帰ったら言おうと思っていたんだ
私は君のことが好きだ
どうか、これからも一緒にいて欲しい

過去を思い浮かべて【演技】する
彼が死に際に言っていた言葉を
私はずっと貴女に伝えたかった
貴女の想いは通じていたと

ルナ、後は頼んだよ
私では導けなかった。その証拠が彼女の首の傷
月光槍に【祈り】彼女を導く光を込めて
偽りでない彼の元へ行けるように


出水宮・カガリ
ステラ(f04503)と

天馬の、女騎士
あれも、オブリビオンなのか……――ん?
(彼女の槍とステラのルナ(月光槍)が酷似しているのに気付き)
…ああ、なるほど。お前(ルナ)の。このようなひとだったか。
癒しの槍の主が、オブリビオンとは…何とも、悲しい。

今ひととき、生前に伝えられなかった言葉を聞き届けよう
カガリは、忘れっぽいが
これから月の槍を見る度、伝えられた言葉があったことを思い出そう
彼女の存在があって、今のステラが在るのだから

…言葉が尽きたのなら
あるいは、言葉が届かない間は、天馬の方は任せておけ
【錬成カミヤドリ】で【鉄門扉の盾】を複製、騎士と合流できないように妨害するぞ



 ああ、朽ちていても石造りの床は冷たい。
 ああ、一度死んだとて、また死の足音は聞こえる。
 ああ、また、貴方に伝えられないまま――。

 光が収まったのち、そこにシンシアの姿はまだあった。
 しかし、銃弾と無数の光線によって射抜かれたシンシアは、血溜まりの中、床に伏していて。
 ぼろぼろになったその身を、動かそうとはしなかった。
 動けないのか、もう諦めてしまったのか――彼女と同じく深手を負ったペガサスは、それでも彼女に寄り添うように床に伏せて。
 最期まで傍にいると、そう示しているようだった。

  * * *

(「ああ――何度も打ち消した嫌な想像が……」)
 歪んだ扉の影から室内を覗いた時、その声を聞いた時、ステラ・アルゲン(流星の騎士・f04503)の心臓が強く跳ねた。
 そんなことはない、そんなことはないと、何度も何度も打ち消したその光景が、目の前にあったからだ。ステラは慌てて身を翻し、自身からその人物が、その人物から自身が見えないようにと廊下の壁へと背を貼り付けた。
「天馬の、女騎士。あれも、オブリビオンなのか……――ん? ステラ?」
 彼女の不自然な行動に気づいた出水宮・カガリ(荒城の城門・f04556)は、他の猟兵とともに室内には入らず、ステラの元へと歩み寄り――そして。
「……ああ、なるほど」
 その声は落ち着いていて、けれども悲哀の色を帯びていた。
 カガリの視線が落ちたのは、ステラの手にした『月光槍』――彼女たちが『ルナ』と呼ぶ金色の槍。
「お前の。このようなひとだったか」
 室内にいる女性は、想い人を待ち続ける彼女は、ただひとりの来訪を願って殺戮を繰り返しているというオブリビオンは――今、ステラが手にしたそれと同じ槍を手にしていた。
「癒しの槍の主が、オブリビオンとは……何とも、悲しい」
 そう紡いだカガリは『月光槍』を握るステラの手に自分の手を重ね、そして反対の手でステラの頭を優しく撫でる。

「……出発前に事件の話を聞いた時、まさかとは思ったんだ」
「うん」
「……何度も否定した。でも……」
「うん、うん」

 自分の目で確かめてしまった以上、もう否定は無意味だ。
 仲間たちが『彼女』と戦っている音が聞こえる。けれどもカガリは、ステラの頭をゆっくりと撫で続け、震える手を包み込んで。

「……彼女、だった……」
「そうだな」

 半ば覚悟はしていた。けれども動揺を隠せないステラに、カガリはいつものように頷き、言葉を返す。

「ステラは、どうしたい?」
「私は――」

 彼女に縁がある者ならば、彼女自身が決着をつけなくてはならない。
 ならば、自分はそれを全力で支えよう――カガリの心は揺らがない。
 ステラの脳裏によぎるのは、自身がまだ剣であった頃の記憶。主と彼女と主の親友と共に、戦っていたあの時の――。
 走馬灯のようによぎるのは、主の人生の一部でもある。

「私は……彼女に伝えなくてはならないことがある」

 夭逝した主が残していったそれを、伝えたくともその時のステラは言葉を持たなかった。
 だが、今ならば――。
 支えてくれる相手がいる。恋を知った。そんな今ならば、主の気持ちも彼女の気持ちも痛いほど分かるから――……。

「今ひととき、生前に伝えられなかった言葉を聞き届けよう」
 カガリの言葉に、ステラは顔を上げる。見上げたはずの彼の顔は、少し歪んで見えた。
「カガリは、忘れっぽいが。これから月の槍を見る度、伝えられた言葉があったことを思い出そう」
 そっと指先で拭われて初めて、ステラは自身が涙ぐんでいたことに気がついた。
「彼女の存在があって、今のステラが在るのだから」
 ああ――彼の瞳がしっかりと見える。
 はじめはその金の髪が主と似ていると思ったのだったか。けれども今は、主に関係なく、彼自身を愛し、そして識っている。

「カガリ、手伝ってくれるか?」

 その問いの答えは、待つまでもない。

  * * *

 ブルルッ……最初に反応したのは、天馬だった。新たに歩み入ってきた『男性ふたり』を警戒するように、震える足で立ち上がる。

「もう……いいわ。こんな姿になってしまったら、きっと……あの人にわかってもらえないから……」

 立ち上がった天馬へ告げるシンシアのか細い声。それにかぶせるように響いたのは――。

「――いいえ、分かりますよ。シンシア」
「――!?」

 彼女の名を呼ぶ優しい声。
 遠い記憶にある、声。
 ステラの主――クレムの声だ。

「……う、そ……」

 震える腕で上体を支えたシンシアは、近づいてくるその人物をじっと、じっと見つめている。
 今のステラは『追憶の星』の使用により、その姿を自身の主のものに――シンシアが待ち続けたその人のものへと変化させていた。
 猟兵とオブリビオンであるからして、シンシアにも本能的な敵対意識はあるだろう。現に天馬がふたりを遮ろうとしている。
 その天馬の動きを、カガリは自身の本体である『鉄門扉の盾』を複製することで阻害してゆく。念力で操られた複数の盾に囲まれた天馬は、まるで檻に囚われたかのよう。

「本当に……貴方、なの……? クレム、なの……?」

 何とか上体を起こしたシンシアは、立ち上がろうとする。だがこれまでに負った傷が深すぎて、立ち上がろうとするとそのまままた、うつ伏せに倒れ伏してしまう――けれど。

「――ずいぶんと待たせてしまってすまない」

 差し伸べられた腕が、シンシアが再び血の海に伏すのを防いだ。
 片膝をついたステラ――クレムに抱きとめられる形で、シンシアは彼の顔を見つめる。
 陽光にも月光にも輝く金の髪。海と空を映したような青い瞳。
 シンシアと共に戦った、救国の英雄。
 ぱくぱくと、空気を求めるようにシンシアの口が動く。けれどもあれだけ想っていたのに、言葉がうまく紡げない。
(「主が死に際に言っていた言葉を、ずっと伝えたかった」)
 ステラは自身の主の死から繋がる悲劇を、その身で体験してきた。
 共に戦い、王国の双璧の騎士と讃えられ、国を救った親友に討たれた主。
 勝利を導く戦乙女と呼ばれていたシンシアはその仇を、彼の愛剣である『流星剣』を手に果たした。
 そののち彼女は儀式の場で、『流星剣』で自身の首を掻き切って自害してしまった。
 シンシアを見つめれば、首に残るその傷が目に入る。微かに目を伏せたのち、ステラは再び彼女の瞳をまっすぐに見つめた。

「シンシア。帰ったら言おうと思っていたんだ」
「えっ……」

 記憶にある主の姿を思い出して、ステラは懸命に演技を続ける。

「私は君のことが好きだ。どうか、これからも一緒にいて欲しい」

 ずっと、言葉も人の身も持たぬ頃からずっと、伝えたかったのだ。
 貴女の想いは通じていたのだと。

「……ほん、と……う?」
「ああ、嘘ではない」

 抱きしめた彼女の体が震える。
 嬉しい。私も――涙声の小さな呟き。
 ステラはカガリへと視線を向けて、頷き合って。
(「ルナ、後は頼んだよ」)
 手にした『月光槍』へ、心の中で告げる。
(「私では導けなかったから」)
 その証が、彼女の首の傷だ。
 だから、今度こそ。

 ――バササッ……羽ばたきが聞こえる。

 偽りではない彼の元へ行けるように――祈りを込め、その光が彼女を導くようにと……優しく。

 ずるり……彼女の身体から力が抜けていく。
 盾の檻より放たれた天馬が彼女を覆うように翼を広げて。

 ランタンの光、愛の光、そして月の光が彼女の標(しるべ)となる。
「今度は間違えること無く――」
 シンシアと天馬の身体が、淡い光となって空へと昇ってゆく。
 標を掲げたカスカとマリスをはじめ、猟兵たちは皆、その光の行く先を見つめていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『とある町での一幕』

POW   :    賑やかな場所に行ってみる

SPD   :    穴場を探してみる

WIZ   :    商店や市場を見て回る

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●大海原へ想いを託す
 猟兵たちの活躍により、オブリビオンの襲撃で全滅という未来を逃れたフルーメンの町は、祭りの賑わいで湧いていた。
 フルーメンの町は『川』という名を冠する通り、町の真ん中に川が通っている。数カ所にかかっている橋により行き来はできるが、このお祭りで重要なのはその川自体だ。
 この川をたどっていけば、海へとたどり着く。つまりこの川の水は海へ流れ込む――この川に流したものは、大海原に抱かれるというわけだ。
 元々は、この川が海へと流れ込むことを利用した、町だけの小さな儀式だった。だが徐々にその内容が他の場所へも伝わり、現在は祭りとなり、それに合わせて商隊や旅芸人が訪れたり、祭りに参加したいという町の外の人々や、商隊や旅芸人目当ての人々が訪れるということで規模が大きくなっているのだとか。

 肝心の祭りの内容だが――『想いを流す』のがメインである。
 この『流す』は『なかったことにする』『忘れる』といった意味だけでなく、『遠くへ届ける』『行き場のないそれを海に受け止めてもらう』などという意味もある。
 今は亡き相手へ――何処へ向けて良いのかわからぬその想いを。
 遠くに住む相手へ、所在の知れぬ相手へ――次はいつ会えるのかわからないから、届くと信じて。
 近すぎる相手へ、思いを寄せている相手へ――今は告げられぬけれど、弾けそうで苦しい想いを。
 隣りにいる相手へ、喧嘩をしてしまった相手へ――まだ、言葉にするのはちょっと難しい想いを。
 どんな相手にでも、どんな想いでも構わない。『誓い』の一種として、海に誓うために想いを流す者もいるという。

 会場に用意されている花を一輪選び、想いを記した紙を折り、葉の代わりに結ぶ。
 そしてそれを、水面へそっと乗せるだけ。
 海へと旅立つ『想い』を、見えなくなるまで見つめたり。
 捨てたい思いならば、二度と振り返らずに。
 そうして数々の『想い』は、海へと向かう。

 町の広場では旅芸人たちが様々な芸を披露している。
 芸を見ながら食事をしたり、飛び入りでパフォーマンスを行うことも出来るだろう。

 商隊が集まる一角には、様々な品物が並んでいる。
 この村で作られた物も売られているとか。
 食べ歩きの出来る軽食や飲み物をはじめ、果物やスイーツもある。がっつり食べたい場合は、食堂か椅子とテーブルを外に置いてある店や屋台を狙うといいだろう。
 その他にも刺繍や細工の施されたアクセサリや日用品、鑑賞品など様々な品が揃うので、記念に何か買い求めてもよいだろう。
 ゆっくりと休みたければ、コルネリアがリザーブしてある宿の部屋を教えてくれる。この日近辺は町に人があふれるので、事前に予約しておかないと宿屋だけでなく民家もいっぱいになってしまうらしい。

 さて、猟兵たちは何を想い、どの様に過ごすのだろうか――。

----------------

※補足※
◎想いを流す方
 →想いを綴った紙を、一輪の花に結んで川へ流します。
  ⇒花の色の指定、花言葉の指定があればどうぞ。なければ描写なしか、こちらで考えます。
  (アックス&ウィザーズの花ですので、現実に存在しない花の色や花言葉も大丈夫です)

 →流す想い
  ⇒どんな意味で『流す』のか、分かるプレイングですと描写しやすいです。
  ⇒プレイングに直接『流す想い』を書いても、詳細は曖昧なままにしても、文字数足りないからアドリブでなんとかしてほしいというのも大丈夫です(文字数足りないからアドリブでなんとかしてほしい場合のみ、プレイング冒頭に★をご記入ください)

◎その他
 →飲食物や販売品は、極端に珍しいものでなければあるとおもいます。
  ⇒辛い/甘い、揚げ物/冷たいもの、寒色の/暖色の、などの曖昧なご指定でもアドリブで考えさせていただきます。

 →宿の利用
  ⇒直接的な全年齢でない描写は致しかねます。

◎お誘いがございましたら、コルネリアも顔を出させていただきます。

◎提示されているPOW/SPD/WIZの行動例はお気になさらず。

* * * * * *

 第3章は、10月22日(火)8時31分よりプレイングを受付いたします。
 それ以前に送信していただいたものは、一度お返ししてしまう可能性がございます。

 締め切る場合はマスターページやTwitterなどで告知させていただく予定です。

 この章だけでもご参加歓迎いたします。

* * * * * *
ステラ・アルゲン
カガリ(f04556)と

思いを花に託し、川に流して海へ届ける……なんだか私の祖国にある儀式に似ているな

カガリと共に祭りへ
選んだ花は白いネリネ
月の光に照らせばキラキラ輝くダイヤモンドリリー
結ぶ言葉は二人に幸せがあらんことを

白は献花
花言葉はまた会う日を楽しみに
もしも次があるならば、もしも再び会えるなら
その時は幸せな二人が見たいと願って
そうなるといいなとルナに話しかけながら流そう

花を流したら人気がない場所へ
祖国の祭りなら最後は剣の巫女が踊るんだ
巫女の姿となり剣舞をする
ここは国じゃないから邪魔にならないようにひっそりとしよう

カガリは花に何を託した?
その思いも届けばいいと願いながら踊ろうか


出水宮・カガリ
ステラ(f04503)と

ステラと、ルナの、大事なひと
無事に送ることができればいいな、と

カガリからは、敢えて「あの騎士には」送らない
そこは、ステラ達が、今に至るための場所
カガリが、侵してはならぬ場所だ

カガリは…誰に、何を送ろう
ひとつの縁の、結末を見て
…桜に霞む、母なるもの、よもつひめ(人名ではない)
カガリは未だ、そのかたちをはきとは、思い出せないのだが
きっと、世界は違えど。必ず。
赤くて黒い薔薇は、あるかな。
多分…似合っていたような気が、する
もっと似合いのものはあると思うのだが、今はそれで

最後に、ステラの剣舞を見せて貰おう
巫女の舞。話だけは、聞いていたが
花と共に、届くといいな



 祭りで賑わうフルーメンの町中を歩きながら、ステラ・アルゲン(流星の騎士・f04503)は祖国を思う。
(「思いを花に託し、川に流して海へ届ける……なんだか私の祖国にある儀式に似ているな」)
 出発前にグリモア猟兵の告げた祭りの概要を聞いた時にも思ったが、やはり、似ている。
 ステラの祖国の場合、発祥時は慰霊を目的とした儀式であったが、時代を経るごとにいつしか人々は、願いを託して花を流すようになっていた。
「ステラ、ステラ。花を、ここで、選ぶらしいぞ」
 人混みではぐれぬようにと繋いだ手の先にいる金色の髪――出水宮・カガリ(荒城の城門・f04556)の声に頷いて。ふたりは祭り用の花が並ぶ一角で立ち止まった。
 様々な色の、様々な種類の花が並んでいる。他の世界で見たことのある花もあれば、この世界固有の花なのか見たことのない色と形をした花もある。
「ステラは、どの花を選ぶ?」
 彼女が送る相手は『あの騎士』以外にいないとわかっているから、カガリが問うのは選ぶ花のこと。
「この花にしようと、決めていたんだ」
 そう告げてステラが手を伸ばしたのは、白い花。百合のような花弁を持つ房が、いくつも集まっている。
「これは彼岸花……とは違うか」
「これはネリネという花だ」
 カガリが彼岸花を思い出したのも無理はない。ネリネはヒガンバナ科の花で、彼岸花によく似た花をつけるのだから。
「ダイヤモンドリリーとも呼ぶんだ」
「だいやもんど……?」
 ステラのその言葉に、カガリは首を傾げた。どこかで、どこかでその名を聞いたことがあるような――記憶を辿って着いたのは、夏の記憶。水着コンテストのあったあの日に、旅団で聞いた名前と同じだ。
「これがだいやもんど、りりー、か」
 実物を見ればなるほど、あの時この花のことを話していた人物の告げた形容と花の姿が結びついた。
「カガリはどうする?」
「カガリは……」
 誰に、何を送ろうか。ステラに問われてカガリの視線は、花たちの上を行ったり来たり。
 ひとつの縁の、結末を見た今思うのは。
(「……桜に霞む、母なるもの、よもつひめ」)
 カガリは未だ、そのかたちも真の名も思い出せぬが。
(「きっと、世界は違えど。必ず」)
 心に結ぶ誓いとともに浮かんだ花を探し、今度は明確な目的をもって花の上へと視線を向ける。選んだのは、赤くて黒い、薔薇。ワインレッドよりやや黒いが、赤もその存在を残すその色は、葡萄色(えびいろ)と赤墨を混ぜたような色。
(「多分……似合っていたような気が、する」)
 もっと似合いのものがあるとは思う。けれども今のカガリが持ちえるその人の記憶から導き出したのは、この花だった。今は、これでいい。

 * * *

 ふたりに幸せがあらんことを――そう記した紙を結び、ステラは花を月の光へと翳した。その光を、月の祝福の光を受けたダイヤモンドリリーは、キラキラ、キラキラと輝いている。
 薔薇を手にしたカガリとともに、空いた川べりにしゃがみこんで。ステラは『月光槍』のルナへそっと触れた。
 白は献花の色。ネリネの花言葉は『また会う日を楽しみに』。
 もしも次があるならば、もしも再び会えるのならば――その時は、幸せなふたりが見たい。
 百年前には叶わなかった恋が実り、ふたりが睦まじく幸せに暮らす姿を望むのは、彼らの辿った結末を知るステラとしては自然なこと。
 むしろ、ずっとずっとそれを望んでいる気さえする。
「なあルナ、そうなるといいな」
 小声でルナへと声をかけて、ステラはネリネをそっと水面へと乗せた。
 ステラとルナ、同じ気持ちのふたりに見つめられて、希(ねが)いと想いを乗せた白は、海へと向かってゆく。
 ああ、海は、この思いを受け止めてくれるだろうか。
 ――きっとふたりへと、届けてくれるだろう。

 ステラが花を流す様子を、ルナに話しかける様子を見ていたカガリは、自身の手の中の薔薇を見やる。
 あえて、あの騎士――『シンシアには』送らないと決めた。だってそれは、ステラたちが今に至るための大切な場所で、自身が侵してはならぬ領域だと思ったから。
 彼女たちの様子を見ていると、己の選択が正解だったと思うことができた。
 カガリもそっと、水面へと花を乗せて。
 遠く、遠く、流れてゆく花を、見えなくなるまで見送った。

 * * *

「祖国の祭りなら、最後は剣の巫女が踊るんだ」
 告げたステラは、その姿を変えてゆく。
 花を見送ったふたりは、町外れにひと気のない場所を見つけた。おあつらえ向きにそこにあった岩にカガリは腰を掛け、ステラが白銀を纏う巫女の姿へと変わりゆくのを見つめている。
 ここは祖国ではないからと、祭りを楽しむ人の邪魔にならない場所を選んだふたり。
「巫女の舞。話だけは、聞いていたが」
「カガリは花に何を託した?」
 彼の答えを聞いて、ステラは頷く。

「その思いも届けばいいと願いながら踊ろう」

 巫女姿の彼女が手にしているのは、ステラの本体である流星剣である。
 英雄の剣である流星剣は、『英雄の剣である』という側面とともに『星で作られている』という側面にも人々の願いが寄せられたのだろう。
 剣は魂の未練を絶ち、天に輝く星のように魂を導いてくれると信じて――巫女は、舞う。

「花と共に、届くといいな」

 祭りの喧騒は遠く。
 軽やかに鮮やかに剣舞を捧げるステラを見て、カガリはぽつりと、想いを込めて呟いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

朽守・カスカ
祭りに賑わう街並みを眺め
守れたものに実感を抱きながら
ゆっくりと歩いて一巡りすれば
川へ向かうとしよう

想いを流す、か

逢いたい人はいる
届けたい想いもある
けれど、流れてゆく色とりどりの花達が舟のように見えたから
私は想いを流す事なく
ランタンを灯して花達を見送ろう

それが、亡き父と同じように
灯台守となった私の役目のように思えたから

其々に込められた想いが
迷うことなく届くように
愛しい人を求め
間違った手段を取ってしまった彼女の想いも
いつか届くように
希いながら見送ろう



 町は祭りの賑わいで溢れ、久しぶり、と挨拶を交わしている者たちもいる。
 発祥時よりも規模を増したこの祭りは、人々が再会するきっかけに、遠出するきっかけに、そして自分の中にある色々なものを省みるきっかけにもなっているのだろう。
 夕刻を過ぎ、日が落ちようとしていてもまだまだ思っていたよりも人通りが多く。朽守・カスカ(灯台守・f00170)がちょっと訊ねてみれば、どうやら町の宿や民家や商店が好意で貸してくれる部屋を取れなかった者たち――この時期この町の人口密度が跳ね上がることを知っている者たちは、夜遅くまで祭りを見守り、持参したテントで夜を明かすという。
(「ああ――……」)
 もし、予知通りにこの町をシンシアたちが襲っていたとしたら。常以上の惨劇となったことだろう。
 そう思って人々の顔を見れば、その笑顔(いのち)を守れた実感を得ることが出来た。

 ゆっくりと町中を歩いてゆく。
 広場で披露されている旅芸人たちのパフォーマンスには人だかりができていて、子どもたちのきらきらした瞳や、観客の歓声と拍手が耳に心地いい。
 商隊が集まる一角は、まるで大きな街の市場のよう。普段見ることのできぬ豊富な品揃えを楽しむ者たちの中に、共に並んだアクセサリーを見ている男女の姿があった。互いに落ち着かなさげな様子を見れば、恋人同士というよりはこれからその関係に進む可能性のある者たちに見える。どちらにしても彼らが『想いを告げる機会』を守ることが出来たのは、確かだ。
 告げられずに胸に秘めるしかなかった想いを高じさせた結果、間違ったやり方を選ぶしかなかった彼女――シンシアが。
 他の者達の、秘めた想いを告げる機会を奪ってしまうなんて『悲劇』に手を染めさせずに済んでよかった。
 だって、想いを告げられないまま終わってしまう苦しさは、彼女が一番良く知っているだろうから――。

 * * *

 町を一巡りしたカスカは、川へと向かう。日が落ちて、辺りは暗くなっていた。けれども今日は町のそこここで明かりが灯されているから、移動に不自由はない。
 皆が花を流している箇所へと近づけば、花を配布している村人にどの花を選ぶか訊ねられた。
(「想いを流す、か」)
 カスカにも逢いたい人はいる。届けたい想いもある。
 けれど。
 川面へと目をやれば、人々が水面へ浮かべた花が、ゆらりゆらりと流れている。
(「まるで舟のようだ」)
 流れ行く色とりどりの花たちが、舟のように見えたものだから――カスカは村人に断り、川べりへと近づいていく。
 そして灯し、掲げるのは、父と慕った主人の形見のランタン。
 其々に込められた想いが、迷うことなく届くように……ランタンという標(しるべ)を灯して花たちを見送るのが、自身の役目のように思えたから。
 亡き父と同じ様に灯台守となったカスカだから請け負える、重要な役目のように思えたから。

(「愛しい人を求め、間違った手段を取ってしまった彼女の想いも――」)

 いつか届くように。
 そう希いながら、海へと向かう花の小舟を、優しく見送り続けるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

クラウン・アンダーウッド
心情 相手の笑顔が見たい。

さぁ、皆さんご注目!人形たちのコンサートの始まりさ♪
大道芸を行う。複数の[応援特化型人形]を展開、人形楽団による楽器演奏で場を盛り上げる。喇叭にバイオリン、パーカッション等の沢山の楽器による演奏を行う。演出として癒しの業火を使用して、炎を動物や花等々の形に変えて操作する。

演奏終了後、視聴者全員にフェルト人形をプレゼントする。素材は先の戦いで分けてもらった羊毛を使用。要望があれば心象人形師を使用して、人形一体につき一秒で仕上げる。



 広場に向かったクラウン・アンダーウッド(探求する道化師・f19033)は、広場を取り仕切っている様子の人物を即座に判別し、声をかけた。
 特別広いわけではない広場で断りもなくパフォーマンスを始めては、他のパフォマーたちの妨害にも客の取り合いにもなってしまう。礼儀として町の担当の者にも他のパフォーマーたちにもきちんと話を通せば、飛び入りを拒まれることはなかった。むしろ、諸手を挙げて歓迎されたといえる。

「さぁ、皆さんご注目! 人形たちのコンサートの始まりさ♪」

 前の旅芸人がパフォーマンスを終えるのを待って、クラウンは彼らの向かい側で声を上げる。
 彼らが撤収し、次のパフォーマーが準備を終えるまでの間、観客を釘付けにする役目はクラウンに託された。

「! こんどはなにがはじまるの?」
「おにんぎょさんがいっぱい!」

 背後から聞こえてきた声に一番に反応を見せたのは、やはり子どもたちだ。あちらのパフォーマンスを最前列で見ていたはずなのに、大人たちの足と足の間をすり抜けて、もうクラウンの前まで来ている。

「あら、人形がいっぱいね」
「コンサート? あんなにたくさんの人形をひとりで動かせるのか?」

 続いて大人たちもクラウンと人形たちへと視線を向けて。気がつけばあっという間にクラウンを囲むように半円形の人垣ができていた。

「さぁ、開幕! 皆さんの拍手で彼らに開幕の合図を!」

 クラウンの前に並んだのは、複数の『応援特化型人形』たち。今は地面に座っているけれど――。
 パチ、パチ……大人の遠慮がちな拍手。
 パチパチパチパチパチパチパチパチ! 子どもたちの期待を帯びた拍手。
 それらを合図として人形たちは――ぴょんっと飛び上がるようにして立ち上がった。

「わぁぁぁぁぁっ!!」

 歓声に応えるように人形たちは、それぞれ手にした楽器で演奏を始める。
 ラッパにバイオリン、アコーディオンにマーチングドラムやシンバルなどのパーカッション。
 ピッコロやフルート、トライアングルやマラカスなどバラエティに富んだ楽器を、人形たちが自動で演奏しているのだ。
 楽器の種類が多いのに、聞こえてくる音はきちんと調和が取れていて。
 元気で明るく、リズムに乗りたくてうずうずしてしまうような、そんな旋律を紡ぎ出す。

「あの人形、勝手に動いているのか?」
「いや、まさか……操り手がいるんじゃ……」

 大人たちは始めこそ自動人形を不思議そうに見ていたが、徐々にそんな些末なことよりも、人形たちの奏でる音に心掻き立てられていく。
 クラウンの目にも人々――特に最前列の子どもたちが目を輝かせて、今にも人形と一緒に踊りだしそうな様子が見て取れたから。

「それっ!」

 ジャンッ! とシンバルが鳴り響くのと同時に、花の形にした癒やしの炎たちを空へと放った。歓声を上げる人々の元へと降りていくそれは神々しいほどの光を放っており、本能的に炎を避けるという思考を与える前に人々を包み込んでいった。
 その炎に包まれた人々は、心や身体が軽くなるのを感じただろうか。パフォーマンスに高揚させられたがゆえの一時的なものだと感じるかもしれない。けれどもあとで分かるはずだ。その効果が消えないということが。

「まだまだっ!」

 次はラッパの見せ場に合わせ、星の形にした炎を連ならせて観客たちの周囲や上を走らせる。

「きらきらひかってる!!」
「星が走ってる!」
「なんだろう……すごく、楽しい……」

 ああ、人形たちの演奏とクラウンの炎の演出により、人々の表情が緩んでいくのが分かる。
 このパフォーマンスを見てくれている人たちが、ひとり残らず笑顔になってくれたのなら――お代など、もちろん要らないのだ。
 笑顔に勝る対価など、クラウンは知らないのだから。

 * * *

「お兄ちゃん、ありがとう!」
「オレ、かっこいいおおかみがいい!」
「虹色のねこさん、かわいい!」

 演奏終了後にクラウンが観客たちに配布したのは、先の戦いで分けてもらった虹色の羊毛。それを使って作った小さな羊毛フェルト人形を、希望に沿って配布してゆく。

「あの、熱を出して家で寝ているお婆ちゃんにあげたいのですが……」
「「ぼくたちおそろいのがいい!!」」

 手元にない人形に関する要望も、その場で応えて素早く作成してみせる。
 ありがとう――そう告げて笑ってくれるのならば、いくらでも。

「ねぇねぇ、はねのはえたおうまさん、つくれる?」

 遠慮がちにクラウンの服を引く少女の要望で思い出すのは、先程まで対峙していた騎士の愛馬。
 主人とともに甦ってきた、あの天馬。

「……もちろんできるさ!」

 クラウンは少女に頷いてみせ、虹色の天馬の制作を始めるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

黒鵺・瑞樹
アドリブOK

花の色は白のリコリス…曼珠沙華。思い出せない誰かへ、「再会」を流す。
花が咲く時には葉がない曼珠沙華に葉を模した手紙を付けるなんて皮肉めいてる気がするけど。
捨てるとか忘れるとはまた違うから流れゆく先を、花が見えなくなるまで見送る。

自分が決めた事だ、たとえ後悔は有っても後戻りはしない、出来ないって覚悟したうえでの行動だから。
きっと俺は誰かの唯一にはなれないし、俺自身も見いだせない。…見つけたら壊れてしまう、壊してしまう。そんな気がする。

流し終わったら少し街をぶらついて。そうだ、鏡が欲しいと思ってたんだ。
掌に収まるぐらいの小さなやつ。手ごろなのがあったら買うとしようかな。



 喧騒の中、ひとり歩く。
 ふらふら、ふらふらしているように見えても、黒鵺・瑞樹(界渡・f17491)は器用に人を避け、誰にもぶつからないように歩く。
 もう染み付いてしまった、癖というよりも本能に近いそれのおかげで、目的の場所にスムーズに到着することが出来た。
「これの白はあるか?」
 祭り用の花が並んだ場所で瑞樹が指したのは、黄色のリコリス――曼珠沙華だ。その白が欲しいと思い、花を配布している村人に訊ねる。
「あー、確かそれの白は、あっちの方に――」
「バカ、こっちのは似ているけど違う花よ! 色違いでも同じ種類の花だったら一緒に置くって最初に説明されたじゃない!」
 二十代手前と思しき青年が、コーナーの反対側を指す。するとすかさずそちら側で花を配っていた少女が声を上げた。
「こっちのはネリネ。あんたのところにあるのはリコリス。似ているから離れた場所においてあるの!」
「初めてなんだから仕方ねぇだろっ。花のことなんてよく知らねぇし……」
(「……若いな」)
 少女に指摘されて拗ねた顔をする青年を見て、その若さと初々しさを微笑ましく思う瑞樹。ああ、こんな風に思える心は残っていた。
「すみません、お客さん。白のリコリス、今持ってきますね!」
「……すんません……」
 近くに花の在庫を置いてあるのだろう。一時ブースから離れて走ってゆく少女に対し、青年がしょぼくれていたものだから。

「いや、大丈夫。来年までに花の勉強をして、あの子を驚かせてやればいいんじゃないか?」
「えっ……」

 だって、彼らには未来がある。
 今日この場で消えゆくはずだった未来(じかん)は、守られたのだから。
 戻ってきた少女から白のリコリスを受け取り、瑞樹は手紙を記すためのテーブルが設けられている場所へと向かった。
(「花が咲く時には葉がない曼珠沙華に、葉を模した手紙を付けるなんて」)
 ――皮肉めいている気がする……けれど。
 瑞樹がそこに結んだのは、『再会』を願う想い。宛てる相手は思い出せぬまま。
 手紙を結んだリコリスを、そっと川面に置いて。
 捨てるとか忘れるとかとはまた違うから。想いが流れ行く様子を、静かに見つめて。
 自分で決めたことだった。たとえ後悔があったとしても後戻りはしない、出来ないと覚悟した上での行動だった。

(「きっと俺は誰かの唯一にはなれないし、俺自身も見いだせない」)

 海へと、更に何処かへと向かう白が、小さくなってゆく。

(「……見つけたら壊れてしまう、壊してしまう。そんな気がする」)

 だから今は、思い出せない誰かへ――また巡り会えることを願って。

 * * *

 花を見送った後、商隊の並ぶ一角へと足を伸ばす。どこの店も賑わっていたが、瑞樹が気になったのは老婆がひとりで店番をしている露店だ。
 この町の住人だろうか。木箱にちょこんと腰を掛けた老婆の前には、木箱を並べて作られた台。その上に広げられた刺繍の入った布の上には、手作りと思しき品が並んでいた。
「おや、いらっしゃい。お兄さんが見て楽しいものがあるといいのだけど……」
 控えめに声をかけてきた老婆は優しい表情でそう告げた他には、話しかけてくる様子はない。そのおかげで瑞樹はゆっくりと品物を見ることが出来た。
 品物の数はそう多くはない。刺繍の施されたハンカチーフや巾着にブローチ、レース編みのコースターやつけ襟や手袋。ひとつとして同じものがないのは、やはりこの老婆の手作りなのだろう。
「あっ」
 順に視線を移動させていった瑞樹は、思わず声を上げた。
 花の刺繍が施された、掌に収まるくらいの丸い物体。少し厚みのあるそれらはなんだろう――思わず手に取った時、その正体に気がついて。
「鏡――」
 刺繍を見せるために伏せて並べられていたそれらは、裏返せば自身の顔を写していて。持ち手のない、持ち歩きに便利な小さな鏡だと知れた。
「それはねぇ、鏡職人に弟子入した孫との合作なんだよ」
 孫が作った金属鏡の縁と裏を、老婆が刺繍をした布で覆っているのだという。刺繍されている花も、一つ一つ違っていて。
 けれどもやはり瑞樹の目が向いてしまうのは――リコリスの刺繍。
 先程流したばかりだというのに、紺地に咲いた白いリコリスに惹かれてしまって。
 黒地に咲く黄色いリコリスも気になる。花言葉は『追想』――それにビタミンカラーは力を与えてくれると聞いたことがある。
「……両方もらうよ」
 迷った挙げ句に二枚の鏡を差し出すと、老婆は揃いの刺繍の入った小さな袋に入れてくれた。

 あの白いリコリスは、今頃どのあたりを漂っているだろうか。
 瑞樹は宵の色に染まり始めた空を、そっと見上げた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

マリス・ステラ
緋翠(f03169)と参加

「シンシア達は待ち人に逢えたようです」

緋翠にアルカイックな笑みを向ける

流すのは紫スミレと愛の花言葉を結んだ想い
受け止めて抱かれるよう『祈り』ます

「全てに繋がる大いなる海があります」

それは現在から過去に、そして未来へと至るもの──骸の海

緋翠の迷いにそう口にする
無関心を装う痛みを、水をすくい上げるように

「その想いを流してみませんか?」

緋翠は蝶かもしれない
けれど、忘れているのではありませんか?

「あなたは"ひと"でもあるのです」

彼の手を取るように手を伸ばす

【不思議な星】を使用

運んでくれないなら、自分で飛べば良い

「世界が赦さなくとも、私があなたを赦します」

それが緋翠の第一歩です


緋翠・華乃音
マリス・ステラ(f03202)と共に


誰にでもそういう"想い"の一つや二つ、あって当然のものだとは思う。
……思う、けれど。

用意された沢山の花を眺めながら、流したい想いを考えても――いっそ悲しいくらいに何も思い浮かばない。

………



祭りの喧騒を眺めていても、心に感じるのは他者との隔絶で。
一体いつからだろう。その隔絶の痛みを痛みと思わなくなったのは。

――受け入れられない。
自分が、世界を。
世界が、自分を。

その幼子のような感情も今は"どうでも良い"と切って捨てる。

………



微笑みを浮かべる彼女に、何て言葉を返したものか迷った。
だってそれは、
他者の魂を還すことは、

――蝶にとって、単なる日常に過ぎないのだから。



 誰にでもそういう『想い』の一つや二つ、あって当然のものだとは思う。
(「……思う、けれど」)
 用意された沢山の花を眺め、花たちに見つめられながら、緋翠・華乃音(終ノ蝶・f03169)は流したい想いを考えてみるけれど。
(「――いっそ悲しいくらいに何も思い浮かばない」)
 わかったのは、自嘲するしかない現実。
「シンシア達は、待ち人に逢えたようです」
 そう告げて華乃音にアルカイックな笑みを向けるマリス・ステラ(星を宿す者・f03202)の手には、紫スミレが握られている。そこに結ばれた『想い』は、花言葉の『愛』と同じ。
「……、……」
 その想いが受け止められて抱かれることを祈りながら、水面へと流す彼女の姿を見る。
 彼女の祈りの間、集った人々や町全体に広がる喧騒に視線を向けてみるが……華乃音の心に響くのは、より一層強さを増した、他者との隔絶。
 自分はその喧騒に混ざることは出来ない。混ざらない。混ざりたいと思えない――だって、それは赦されていないから。
 一体いつからだろう、その隔絶の痛みを、痛みと思わなくなったのは。
 今となっては『ソレ』は当然のことになりすぎていて、痛いと思っていたことすらももう、思い出せない。本当にそんな時期があったのだろうか――自分のことなのに。

「――受け入れられない。自分が、世界を。世界が、自分を――」

 喧騒にかき消されてしまうくらい、吐息のように小さく零したそれはまるで、幼子のような感情。
(「――どうでも、いい」)
 それを切って捨てて視線を戻せば、いつの間にか祈りを終えたマリスが華乃音を見つめていた。
「全てに繋がる大いなる海があります」
 それは現在から過去に、そして未来へと至るもの――骸の海――そう告げた彼女は、笑みを崩さぬままに。

「その想いを流してみませんか?」
「……、……」

 マリスには聞こえていたのか、あるいは識っていたのか。華乃音の迷いとも思しきそれを、無関心を装う痛みを、彼女は見過ごしなどしない。
 水をすくい上げるように、手を差し伸べるように。

「……それは……」

 微笑みを向ける彼女に、なんと言葉を返したらいいのか。
 だってそれは、
 他者の魂を還すことは、
 ――蝶にとって、単なる日常に過ぎないのだから。
 だから、華乃音にとっても――……。

「緋翠は蝶かもしれない。けれど、忘れているのではありませんか?」

 言葉を紡ぐことが出来ない華乃音を、星を宿した瞳で見つめて。

「あなたは『ひと』でもあるのです」

 伸ばされたマリスの手が、マリス自身が、星のように輝いている。

「運んでくれないなら、自分で飛べば良いのです」

 己の手を取った彼女の細い指先を、華乃音が払うことはなかった。

「世界が赦さなくとも、私があなたを赦します」

 それが華乃音の第一歩だと告げるマリス。
 彼女と同じ光に包まれたのならば、何かが変わるかもしれない――ふと、そんな思いをいだいてしまったのは、気のせいだろうか。




 色とりどりの花が、それぞれ『想い』を乗せて大海原へと向かう。
 そこから先は、『想い』によって行き先が異なるけれど。
 すべての『想い』が望まれた場所に辿り着ければいい――星空の下、花は海を游いでいく――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年10月30日
宿敵 『天馬騎士シンシア』 を撃破!


挿絵イラスト