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月湖と月の花

#アックス&ウィザーズ

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#アックス&ウィザーズ


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 こがね色の夕刻が過ぎ去って、夜が世界に満ちる時間。
 パールホワイトの月が天穹に耀くと、鏡面のような水面にその光が映り込んでいた。
 そこは人里離れた自然の秘境。
 丘と花園を越えたずっと先にある、静謐の翠に彩られた畔。
 月光を遮らず湖面に映す景色は、まるで二つの月が瞬いているように見えたけれど──それだけじゃなく。
 ぷかり、ぷかり。
 水面の下から、いくつもの月色が浮かんでくる。
 それはとても大きな水中花。空に月が光るときだけ湖面に現れる、月色の花弁。
 円形をしたそれはまるで月を象っているようで──人が乗っても沈まぬ浮力で、湖面にまばゆい月面を作っていた。
 水上ならではのふわふわとした感覚は、宇宙にも似ているのかも知れない。
 もし、ゆっくりとその上を歩いたら──。

「月の上を歩いている……そんな心地になるかも知れませんね」
 千堂・レオン(ダンピールの竜騎士・f10428)はグリモアベースに集まった猟兵達に、柔らかい表情でそんな言葉を口にしていた。
 それはアックス&ウィザーズにある、とある湖畔の話。
 村々からは離れた場所にあり、知る人も殆どいないという秘境だ。
 そこには月夜にだけ水底から現れる植物があり──湖面に美しい地面を形作るという。
「月面が現れたようでとても神秘的であるといいます。そんなところへ赴いて、夜を過ごしてみたいものですが──」
 そこにオブリビオンが出現することが判ったのだと、レオンは語った。
「湖だけでなく、畔への途上にある野道にも多くの個体が現れることが判明しています。放っておけば、自然は喰らいつくされて……人々にもまた被害が及ぶことでしょう」
 そこで皆様には討伐をお願い致します、とレオンは頭を下げた。

「まず皆様には、畔を目指して花々の咲く道に入って頂きます」
 そこが最短ルートであり、集団のオブリビオンが現れる場所でもある。
 道は自然が作り出したなだらかなものであり、辺り一帯には多数の色彩を持った花が咲いているといった。
 これは『虹の花』と呼ばれる花で、全く同一の種類でも咲くたびに色が異なるという。
「一輪一輪に個性があるようで美しい花だといいますが──或いはそれに誘われたのでしょうか。現れる敵は『エレメンタル・バット』です」
 個体によって様々な色を持つ蝙蝠のような魔物。
 種々の属性を持つのが特徴で、魔力による攻撃を警戒をしておくといいでしょう、と言った。
 その群を倒して湖畔に到着すれば、そこには一体の強力なオブリビオンがいるはずだ。
「それが『光輪のヒポグリフ』です」
 黄金の毛並みを持つ変異種で、素早い空中移動と光の属性を行使する。戦闘力は高いが、陸地で迎え撃てば景色への被害は免れるだろう。
「無事に撃破できれば、湖畔は元の静けさと美しさを取り戻すはずです」
 月色の花が作る景色は幻想的。そこをゆっくりと散策して過ごす時間も得られるはずだ。
 そんな静謐と美観を守るためにも、と。
 参りましょう、とレオンはグリモアを輝かせた。


崎田航輝
 ご覧頂きありがとうございます。
 アックス&ウィザーズの世界での討伐、散策シナリオとなります。

●現場状況
 月夜の湖畔と、そこへ続く花園。

●リプレイ
 一章は集団戦、敵は『エレメンタル・バット』です。
 色彩豊かな花の咲く道を進みながらの戦いとなります。

 二章はボス戦、敵は『光輪のヒポグリフ』となります。
 光属性の力を行使する魔物です。獰猛な相手ですので手加減無く戦うといいでしょう。

 三章は湖畔を散策します。月の花の上を歩んだり、ゆったりと散歩したりといった自由な時間を過ごすことになるかと思います。
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第1章 集団戦 『エレメンタル・バット』

POW   :    魔力食い
戦闘中に食べた【仲間のコアや魔法石、魔力】の量と質に応じて【中心のコアが活性化し】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
SPD   :    魔力幻影
【コアを持たないが自身とそっくりな蝙蝠】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
WIZ   :    魔力音波
【コアにため込んだ魔力を使って両翼】から【強い魔力】を放ち、【魔力酔い】により対象の動きを一時的に封じる。

イラスト:つかさ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

白斑・物九郎
●POW



害獣の間引きも猟師の務め
ワイルドハントの始まりっスよ

連中のコードは基本「共食いして強個体を練り上げる」カンジっスか
魔力音波でブチ撒けた魔力の余波や、戦闘中に瀕死になったヤツのコア――そのヘンを連中が互いに喰いでもして強化を積んで来る動きを想定して掛かりますでよ

迂闊に瀕死域の輩を出さない
コンセプトは一撃一殺
ザ・レフトハンド――【力溜め】ON
【フルドライブ】の力を込めた左腕で魔鍵をブン回して(怪力&なぎ払い)、一発毎に頭数を確実に減らしてやりまさァ

難のある命中率は【野生の勘】でカバー
プラス、およそ獲物が最も無防備になる時――『食事(魔力喰い)の瞬間』を狙うコトも視野に入れときゃ盤石ですよな



 高空に月が昇り始め、薄っすらと世界が乳白色に照らされる。
 その下でも、虹の彩を抱く花道は鮮やかさを失わなかった。
 淡紅色に眩い黄色。
 清廉な白に深い紫。
 同系色ですら一輪一輪異なっている花園は、飽くことのない美しさ──だけに、そこに羽ばたく影こそ悪目立ちして止まない。
 夜に月とくれば、花には牙が寄るものか。
「こりゃまァ、随分な数っスね」
 野道に一歩踏み入って、前方へ視線を注ぐのは白斑・物九郎(デッドリーナイン・f04631)。
 黒の髪色を夜風に揺らし、金色の瞳で既にその敵影を捉えていた。
 花園に飛ぶのは、魔力を湛えたコアを持つ蝙蝠。
 漂うだけで魔法の力を緩く零しているそれは、時間を置くほどに自然の景色を朽ちさせてしまうことだろう。
 故に、物九郎は軽く拳を打ち合わす。
「害獣の間引きも猟師の務め」
 ──ワイルドハントの始まりっスよ。
 瞬間、夜の間を奔り出した。
 風の如き速度で距離を詰めながら、物九郎は一瞬の内に敵を観察している。
(連中のコードは基本「共食いして強個体を練り上げる」カンジっスか)
 事前の情報を合わせてみればそれも納得できる。
 魔力を欲し、魔力を行使する異形の魔物。
 一体一体が言わば共生関係であり、捕食関係。攻撃をしようと喰らわれようと、どちらにしろ敵自身の力となるように出来ているのだ。
 数が多いほどに厄介。
 確かに易い戦場ではなかった。
「──だったら、一撃一殺してやるだけですわ」
 物九郎は夜気のように静かな表情に、鋭さを垣間見させる。
 捕食させると面倒で、攻撃されれば面倒。ならそうなる前に素早く討つだけだと。
「ザ・レフトハンド──【力溜め】ON」
 左腕を軽く伸ばして呪紋を励起させる。
 フルドライブ──短く白に明滅したそれは、溜め時間に応じて力を増す超常の業。
 それによっていや増した膂力で、モザイク状に明滅する空間から巨大な魔鍵を取り出していた。
 淡い光を湛えた造形美を持ちながら、頑強さも兼ねた凶器。
 これこそが物九郎の矛。 
 敵は前方に十体ほどによる群れを作り出している。が、物九郎は躊躇わずそこへ肉迫して鍵をぶん回し、一撃。業風で薙ぎ払うかの如く二体ほどを消し飛ばした。
 わなないた蝙蝠は、群れを二分する形で物九郎を挟み撃とうとする、が。それにも物九郎は惑わず、脚を軸に廻転。円月を描く打撃で両側の敵を吹き飛ばしていく。
 一撃一撃に裂帛の力を込めるのは、うかつに瀕死域の個体を出さないため。そうすることで敵の強化を防ぎ、且つ最速で数を減らすことを可能にしていた。
(──とはいえ)
 物九郎は冷静に視線を巡らす。
 一瞬で敵を殲滅できない以上は、自由になる個体が出てくる。そうなれば、数体が仲間のコアを捕食し始めるのもすぐのことだった。
 ただ、物九郎はそれも予想済み。
「その隙、突かせてもらいまさァ」
 かろりと下駄を鳴らして、素早く跳躍。一足飛びにその個体の元へ迫っている。
 食事をしていれば護りは疎かになる。それは敵にとって強化の手段でありながら、無防備な姿を晒す弱点でもあったのだ。
 それを予見していた物九郎には、好機以外の何物でもない。怪力を活かし、地面に叩きつけるように鍵をぶつけて蝙蝠を霧散させた。
 そのまま動きを止めず、次々に敵を散らせていく。
 あまりに強力になった腕力は本来、制御も難しい。だがそれを思うままであるかのように操っているのは、何よりも物九郎の抜きん出た野生の勘の賜物だった。
 力を込めて邁進すれば、その鋭い勘が排除すべき目標へ導いてくれる。
 自然の中にあらば、風も気配も音も物九郎の仲間。そこは正しく、無粋な蝙蝠ではなく猫の縄張りだった。
 背後から迫る敵も、すんでで見切り突進を許さない。軽く前転するように回避すると、そのまま勢いを使って殴り上げるように粉砕した。
 疾く、的確に。
 眼前の個体を確実に潰し、食事を阻害し、数を減らすことに終始する。
「一先ずはこんなもんっスかね」
 一つの群れを油断なく殲滅すると──物九郎は前進し次の集団へ。畔への距離を確実に狭めながら、蝙蝠を打ち砕いていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

月舘・夜彦
【華禱】

月明かりはあるものの、太陽程ではありませんから
注意するのは足元くらいでしょう

この世界には魔法という摩訶不思議なものがあるそうですね
それでも、数えられない程の色の花が一面に咲く景色は圧巻です

……時間を気にせず楽しむのはもう少し先でしょうね
往きましょう、倫太郎殿

倫太郎殿の拘束術発動に合わせ行動
鎖で拘束された敵を優先
ダッシュして接近し、早業の抜刀術『陣風』
2回攻撃・なぎ払いにてより多くの敵を攻撃
共食いされる前に倒してしまえば強化も防げるでしょう

範囲の広いユーベルコードであっても
足元の花まで斬ってしまう程加減が出来ないわけではありません
速やかに片付けてしまいましょう


篝・倫太郎
【華禱】
月明りがあるから
視界はそこまで心配する必要ねぇのな

はー……(感嘆)
なるほどなぁ確かに色彩豊かだわ、こりゃ……
根は同じなのに花色が違うとか……どんな魔法なんだか
ま、種明かしは無理なんだろうし、するほど野暮でもねぇってな

っと、確かに無粋だな
さっさと片付けちまおうぜ、夜彦

拘束術使用
射程範囲内の敵全てに鎖での先制攻撃
同時に俺自身も華焔刀でなぎ払い
刃先返しての2回攻撃
拘束術の攻撃も自身の攻撃も衝撃波を常時乗せる
共食いされても厄介だし、確実に倒してくぜ

出来るだけ花畑を荒らさないよう注意して立ち回り
折角綺麗に咲いてるのに荒らしちゃ勿体ねぇ

極めればそこまで出来るのかー……
やっぱ夜彦はすげーや



 煌々とした光が、まるで行く先を導いてくれるように。
 その道は淡い輝きに照らされて湖畔のある地平に伸びていた。
 澄んだ空気には既に仄かに甘い香りが漂って、花園が近いことを教えてくれている。涼し気な空気が流れるそこは歩むだけで快かった。
「これだけ明るきゃ、視界を心配する必要はなさそうだな」
 柔らかな土の地面を進みながら、篝・倫太郎(災禍狩り・f07291)はぐるりと見回す。
 前方はなだらかな坂で、丘のように少し視界を遮っている。
 ただ僅かに視線を上げるとその向こうにぼんやりと遠方の畔が垣間見えて、迷うことはなさそうだった。
「そうですね」
 と、隣で頷くのは月舘・夜彦(宵待ノ簪・f01521)。夜のような静けさを抱いたおもてと瞳をそっと下に向けた。
「ただ、太陽ほどではありませんから、足元は注意しておきましょう」
 ──何せ、ここから先は花園ですから。
 言って、緩やかな丘を越えたそのすぐ先。
 視界に、色彩の海が広がっていた。
 それは道を挟むように雄大に咲き誇る虹の花達。
 茎の背は高くないけれど、その分花弁が満開になって絨毯のよう。
 桃色に、灯のような橙。清流のような蒼に、天鵞絨のような緑。色は個性豊かに、そのどれもが目を惹いた。
 はー、と、倫太郎は思わず感嘆の吐息を零す。
「なるほどなぁ。確かに色彩豊かだわ、こりゃ……」
 自然と花道へ歩み入り、見つめてしまう。
 多くの株は一つに対し二、三の花を付けている。そのどれもが同じ花であるはずなのに、色味は虹。似たものでも微妙に濃淡の異なる色をしていた。
「根は同じなのに花色が違うとか……どんな魔法なんだか」
「魔法──確かに、この世界にはそういった摩訶不思議なものがあるそうですね」
 夜彦は鮮麗な花々を見つめつつ、呟く。
 或いはこの花も、魔法の産物だろうか?
 それは判らない。
 けれどそれが夜彦の心の琴線に触れるものであることに、違いはなかった。
「何にせよ、こうして数えられない程の色の花が一面に咲く景色は圧巻です」
「そうだな」
 倫太郎も心は同じ。
 この景色の種明かしは無理だろうし、するほど野暮でもない。見る価値のある景色があるというのなら、ただそれを味わえば良いと思った。
 ただ、それも邪魔する者が居なければの話。
 夜彦はつい、と視線を前に戻す。
「……この眺めを、時間を気にせず楽しむのはもう少し先でしょうね」
 風音に交じる羽音が、耳朶を打った。
 目線が指し示す先。そこに花とは違った色の群れがいた。
 魔法石を妖しく輝かせ、魔力でゆらゆらと陽炎を作る不可思議な蝙蝠達。
 紛うことなき魔物。
 放っておけば花も喰らい、枯らせてしまう侵入者。
「無粋なモンだな」
 倫太郎は軽く肩をすくめると、ふっ、と吐息。
「さっさと片付けちまおうぜ、夜彦」
「ええ。往きましょう、倫太郎殿」
 互いに小さく頷くと、二人は同じリズムを刻むよう、同時に虹色の間を走り出す。
 蝙蝠──エレメンタル・バットは大きさはさほどではない。だが二人の正面に既に二十以上の個体数を以て大きな塊を作っていた。
 その色彩もまた一見は、美しい。
 だが、手加減不要。倫太郎は数十メートル手前の段階から手元に巫力を集め、淡く空間を揺らがせている。
 音もなく連なり、色もなく伸びていくのは透明の鎖。
 禍を縛る超常の力──拘束術。それを前方に放ち縛ることで、その群れの全ての個体を拘束していた。
 突如襲った不可視の呪縛に、蝙蝠達は対応できない。
 そこへ草履を擦らせて踏み込んだのが夜彦。夜天にもう一つの月を顕してみせるよう、美しき刃を抱く刀を抜き放っていた。
 蝙蝠がその姿をしかと捉える暇もないほどの、早業。
 鞘から奔った刃は、眼前の二体を両断すると止まらず次へ。十字を描くような連閃を繰り出しさらに四体ほどを斬り捨てていく。
 陣風の如き抜刀術。
 それが自身達を襲っているのだと、蝙蝠達が気づいたときには──既にその半数近くが塵となって消えていた。
「さすが夜彦だぜっ!」
 残る半数へは、倫太郎が肉迫している。
 再び夜彦と並び合う位置にたどり着くと、くるりと華焔刀を握っていた。
 典麗にして鋭利な薙刀──それを扇形を描くように大きく振るい、術力による衝撃波も乗せて一閃。烈風の如き斬撃で群れを吹き飛ばしていく。
 一撃では無論止まらず、刃先を返して二連撃。残った敵もしかと斬り伏せて、縛った敵を素早く全滅させていた。
 一度間が出来ると、二人は視線を交わす。
「倫太郎殿、怪我などはありませんね」
「ああ、夜彦も問題ないな?」
 そうして小さく頷き合った。
 尤も、互いが無事であることは息遣いを感じれば判ること。
 だからこれは確認。
 ただ互いの存在を強く感じて。そうして戦意を新たに、次の敵へ向かうのだ。
 上方より舞い降りてくる集団が、挟撃を仕掛けるように前後に散開してくると──それに対しても倫太郎は焦らず鎖を放っていた。
 闇雲に攻め入っても、共食いによって敵の強化が進むばかりだと判っている。確実に仕留めることに重きを置くべきだと知っているから、二人の動きに迷いは無かった。
 そうして背中合わせに独楽のように一回転し、広域の斬撃で纏めて薙ぎ払う。
 戦いは熾烈を極める──けれど、その中にあって花は傷付かなかった。
 景色も護ってこそと思えば、夜彦は裂帛の抜刀を繰り出しながらも、足元だけを無風にして被害を及ぼさない。
 その剣技に惚れ惚れするように、倫太郎は感心を見せていた。
「極めればそこまで出来るのかー……やっぱ夜彦はすげーや」
「倫太郎殿とて、花弁一つ裂いてはいないでしょう」
 夜彦の指摘もまた正しい。大振りに薙刀を振るっている倫太郎も、下方にだけは斬撃を届かせていなかったから。
「ま、折角綺麗に咲いてるのに荒らしちゃ勿体ねぇからな」
 自然の恩寵は、自然のままで。
 過去から這い出た魔の物は、しかと時間の彼方へ還すように。
 二人は美観を荒らさず、ただ夜風に舞うように敵だけを屠っていく。それはまるで、激しくも静やかな演舞のようだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

キリカ・リクサール
私はあまり花には興味はないが…それでもこの風景は美しく、幻想的だな
ゆっくり観光と行きたいところだが…
まずは、あの無粋な蝙蝠達から片付けるか

ここまで見事に咲き誇る花畑に鉛玉は無粋だな
アンファントリア・ブーツに念動力を込め敵にダッシュ
ナガクニを懐から出したら早業で次々と斬りつける
敵が増援を呼んだタイミングでこちらもUCを発動
デゼス・ポアから生える無数の刃を放ち増援ごと敵を一気に切り刻む

踊れ、デゼス・ポア
奴らの羽ばたきが聞こえなくなるまで

重視するのは攻撃回数で
なるべくコア付きの蝙蝠達を狙って攻撃し
増援がどんどんと追加されないように気を付ける

後の戦闘に割り込まれても面倒だ
後ろは任せたぞ、デゼス・ポア



 花が夜色に染まっている、というよりも。
 夜が花色に染まっている──そんな印象を抱かせる鮮麗な景色だった。
 別段、花に興味があるわけではない、それでも。
「……この風景は美しく、幻想的だな」
 キリカ・リクサール(人間の戦場傭兵・f03333)は呟きながら、深いバイオレットの瞳にその花園を映している。
 道に入ると、芳しさと共にあらゆる色が見えていた。
 虹を敷いたような眺めは、一夜の夢のよう。
 けれどこの景色はこの路に、この世界に存在している──宙に羽ばたく魔物にさえ喰われなければ。
「ゆっくり観光と行きたいところだが……まずは、あの無粋な蝙蝠達から片付けるか」
 視線を宙に戻すと、そこに見えるのは無数の魔石蝙蝠。まるでどの色の命から摘もうかと、花色を吟味するかのように回遊している。
 キリカは仄かに吐息すると、次には軽く意識を集中。
 黒のアンファントリア・ブーツに念動力を込め、強い慣性にも似た力をそこに宿し──強烈なまでの速度で疾駆し始めた。
 一息に近づきながら、その手に握るのはライフルでも拳銃でもない。
 ここまで見事に咲き誇る花畑に、鉛玉は無粋だと。懐から出すのは柄と鞘を黒革で拵えた短刀──ナガクニ。
 きらりと夜闇に刃先を輝かすと、まずはそのまま一刀。先頭の一体を斬り裂いて、さらに隣の一体もコアを突き刺して絶命させていった。
 群れの只中には入り込まず、直前で止まると蝙蝠の攻撃を回避。艷やかな髪を靡かせながら、横合いを取って更に一体また一体と斬りつけていく。
 十体ほどの群れが壊滅しかけると、残った蝙蝠は増援を呼んだ。すると再び辺りが蝙蝠に満ちてくる。
 このままでは鼬ごっこ。
 だが、キリカはそれを看過するつもりはなかった。
 元より一対多、対抗策を用意していないはずもない。その手元には既に一体の人形──デゼス・ポアを携えていた。
「踊れ、デゼス・ポア」
 奴らの羽ばたきが聞こえなくなるまで、と。
 その体を敵へ解き放つと──人形は無垢なほどの哄笑を響かせる。
 否、それは嘆きの嗚咽なのかも知れない。
 不可思議で、けれど耳を捉えて離さない声がわんわんと反響すると──デゼス・ポアは錆びた刃を棘のように伸ばし、敵を無慈悲に裁断していた。
 バール・マネージュ。
 無数に放たれる酷薄な刃によるその攻撃は、執拗なほどに蝙蝠を追っては斬り落とす。残虐なまでの斬撃の雨が、敵の数を急速に減らし始めていた。
 キリカもコア付きの個体を狙って攻撃することで、戦力増強も、仲間を呼び寄せることも防ぐ。そのまま連撃を続ければ、群れの殲滅はすぐだった。
 そして息つく間も置かず、キリカは人形と共に前進する。
 道中にも次々と敵の姿があったが──数の少ない群れであれば元より苦戦はしない。ブーツの念動力を強めて飛翔するように跳躍。くるんと流麗に廻って直上から刺突して撃破する。そのまま腕を薙がせるように斬撃を見舞い数体を倒していた。
 後ろから狙う敵がいれば──。
「任せたぞ、デゼス・ポア」
 後の戦闘に憂いを残さぬよう、人形をけしかける。声音を響かせて、デゼス・ポアは刃を突き出して蝙蝠を蜂の巣にしていた。
 大きな群れが出てくれば、再び力を合わせるだけ。
 現れる蝙蝠を斬り裂きながら、キリカとデゼス・ポアは止まることもなく畔への道を進んでいった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

真宮・響
奏と瞬の子供たちは大分戦争に連れまわして疲れているようだからね。今回はアタシ1人だ。育ち盛りが無理しちゃいけないからね。


その攻撃はまともに喰らいたくないね。【目立たない】【忍び足】で敵の視線から逃れつつ、【残像】も使いながら、敵の群れの背後を取る。上手く背後を取れたら、【先制攻撃】【二回攻撃】で竜牙を【範囲攻撃】で攻撃するよ。遠距離からの攻撃が必要なら【槍投げ】を【範囲攻撃】で使うよ。



 虹の上を歩いているような感覚だった。
 緩やかな丘を降りて暫く、辺りに広がった景色は美しい色を湛えた花園。柔らかい風が花を静かにそよがせて、心地よさを覚えさせる。
「いい眺めだね」
 その光景に視線をやりながら、真宮・響(赫灼の炎・f00434)は道に入っていた。
 呟きつつも、警戒を欠かさないのはあくまでそこが戦場であるが故。そして視認できない場所から、既に気配にも似た違和を感じ取っているため。
(敵も、近くにいそうだね)
 僅かに姿勢を低め、夜陰に隠れるように動き始めた。
 此処が只の観光地であったならば、奏と瞬──大切な子供達を連れてきても良かったろう。
 けれど先の戦争に連れ回したこともあり、二人が疲れているのも知っている。
 あの二人もまだまだ十代、育ち盛りである故無理もさせられないから。
(今回は、アタシ一人)
 何、上手くやってみせる、と。
 響は見えてきた無数の敵の群れに対して、怯むこともなく。
 寧ろ勇壮な色を浮かべてみせていた。
 元より性格は豪快で大胆不敵。行けると思ったら、己の手腕と退かぬ心を以て突き進むのみ。
(アタシも昔から変わらないね)
 自分で少しだけ笑みを零しながら、躊躇なく前進していく。
 とはいえ、無数の敵にいきなり自身を晒すことはしない。漆黒の戦闘服で夜に溶けるように隠密行動し、正面からぶつかることを避けることに注力した。
 道が広がっている場所、花の密度の小さい場所。道の中でも敵の視線から逸れる死角は存在する。そこに的確に入り込みながら──同時に残像だけを正面方向に残して囮に使った。
 羽ばたいてくる蝙蝠──エレメンタル・バットの集団は、それが残像だと気づかずに殺到してくる。
 そうして攻撃が残像に集中した頃には、響は既に敵の背後側をとっていた。
 あとは此方の独擅場。
「本気でいかせてもらうよ」
 敵とあらば、元より手加減するつもりもないけれど。
 瞬間、一振りの光剣を抜き放つと、その刀身が滾る戦意に呼応するように赤く耀く。ブレイズフレイム──鋭利にして眩き刃。
「この剣の切れ味は──強烈だよ!」
 袈裟懸けに放った一閃“竜牙”は、文字通りの竜の牙の如き斬撃。
 苛烈な振り抜きと眩い煌めきで凄まじい衝撃を生み出し、五体ほどの蝙蝠が背中から引き裂かれた。
 響は止まらず、連撃。敵に攻撃の手を譲らずに、下ろした刃を振り上げる形でさらに五体を消滅させる。
 それで最初に見えていた群れは全滅。
 無論、それで終わりではなく、既に後続の敵も迫ってきている。こちらの姿を捉えられた以上、今からは隠密行動の効果も薄いだろう。
「なら、近づかれる前に攻撃すれば良い話、ってね」
 響が手をそっとかざすと、そこに顕れるのは明滅する槍。
 振りかぶってそれを放つことで、複数体を一気に貫いてみせると──群れが離散したところへ響は接近。剣を振るって残りの個体を寸断していった。
「あの子達に余計な心配させたくないからね。怪我しないようにでも気をつけようかね」
 呟きながら、決して退かない。
 それでいて、かすり傷も負わない。
 響は素早く壮烈に。敵を退け、蹴散らし、両断しながら道を突き進んでいった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

小宮・あき
アドリブ、連携、歓迎です。

花の咲く坂道を行くのですね。
警戒もかねて【かつての友】と向かいましょう。
アマネさん、一緒に、お散歩しませんか。

一緒に並んで、花畑を進みます。
魔力による攻撃、ですか。周囲を良く観察して進みましょう。
オーラ防御も忘れずに。何か感知をしたら、教えてね。

エレメンタル・バットが見えたら、先行をお願いしますね。
私はマスケット銃を構えて、援護射撃・スナイパーを。
武器改造で用意した魔力弾も使用し、全力魔法の範囲攻撃も混ぜて。

前衛にアマネさん、後衛に私、の布陣で行きましょう。

私の第六感と、アマネさんの野生の勘。
回避しつつ、ゆっくり進んでいきましょうね。


リュカ・エンキアンサス
※アドリブ、他の方との絡みも歓迎
花園…
個人的には縁のない場所だけれども
でも、同じ戦いなら色とりどりで綺麗なほうがいいのはいいと思う
敵がいないときは若干ものめずらしげに周囲を見回して
これだけ綺麗なら、湖のほうも楽しみだな、って

勿論警戒は怠らないよ
敵の姿を見つけたら即座に戦闘態勢に入る
周囲に協力できそうな仲間がいれば、援護射撃で攻撃
いなくても普通に攻撃するんだけれど
コアを持たない蝙蝠が現れても、まずはコアを持つ蝙蝠の殲滅を優先する
数は増えても焦らずに。絶望の福音で回避して的確に対処する
狙えそなら、コアを狙って積極的に潰していこう
花と一緒で、蝙蝠も色とりどりだ
でも、あんまりうるさいのは好きじゃないな



 仄かな傾斜の丘を下って、一歩、二歩。
 ふわりふわり。穏やかな足取りで進むとそこはもう花の咲く色彩の世界だった。
「とても広い花畑なのですね」
 撫でるような風に淡い撫子色の髪を遊ばせて。ほわりと柔らかい笑顔を浮かべるのは小宮・あき(人間の聖者・f03848)。
 明るい空色の瞳で、花々を見回していた。
 花の芳香に夜の匂いが交じって、それがひんやりとした風に乗るから心地よい。けれどその中には既に不穏な魔力も交じっている──だからあきはいたずらに進まなかった。
 足を揃えて立ち止まると、どこかへ向かって呼びかける。
「アマネさん」
 すると夜闇の中から声に応じて、一つの影が歩み出てきた。 
 それは一匹の黒い豹。
 かつての友──アマネ。
 獰猛な顔つきは、頼り甲斐のある証。身軽な動きであきの隣に寄ってくると、あきは笑顔を向けている。
「一緒に、お散歩しませんか」
 応えるように小さく鳴いたアマネは──早速、あきと共に並んで歩み出した。
 道に入ると視界の両側が花で一杯になる。けれど道が広い部分があったり、花の分布や密度が隔たっているところもあって同じ眺めは一瞬たりとも訪れない。
 緩やかな坂であることも手伝って、敵がいつ何処から現れるか単純な予想が立たない面もあった。
 けれど、そういうときこそアマネは野生の勘で助けてくれる。
 ふと何かを察知したように顔を動かすと、あきへ合図。誘導するように道の端に寄っていく。
 あきはそこへ着いて、それからアマネが指す方向を見やる。すると前方の夜陰から蝙蝠の群れが現れるのが見えていた。
 距離は十分に開いていて、敵はまだ此方に気づいてはいない。
 臨戦状態としては最良の状況。
 それに一つ頷きつつ、あきはマスケット銃を握っていた。
 自身は前面に出るつもりはない。オーラによる防御だけはしておいて、アマネに先行させて自分は援護射撃に徹する戦略だった。
 故にあきは後衛の位置を保ったまま、静かに踏み出す。
「ではアマネさん、行きましょうか」

 花の香りは甘い。
 同時に色彩と同じで、一輪一輪に微かな差異があるように思えた。
 人里から離れる方向へ歩んで暫く、浅い丘を越えた先。リュカ・エンキアンサス(蒼炎の・f02586)は虹の彩に挟まれた道に入っている。
「ここが、花園……」
 穹か海にも似た澄んだ瞳を巡らせて、呟きながら花々を見やった。
 戦場を渡り歩く旅人には、美しい花畑というのは縁遠い場所に思える。斬り、撃ち、奔り、糧を得る──そうした日々を生き抜く者にとっては。
「……でも」
 と、淡い表情は、その光景を見て僅かにだけ和らいでいるようでもあった。
 同じ戦いなら、色とりどりで綺麗なほうがいいのはいいから、と。
 はっとするような濃紅に、薄雲がかかったような白みを帯びた青空色。
 或いは夜天のような藍色に、星のような純白。
 ものめずらしげに観察するほどに、違った色が垣間見えて。
「これだけ綺麗なら、湖のほうも楽しみだな」
 自然とそんな言葉が零れて、足取りにも仄かな期待が表れていた。
 畔に近づくにつれて涼しさも増してくると、ジャケットの前をしっかりと合わせて。リュカは一歩一歩と前へ歩みゆく。
 無論、警戒も怠っていない。
 吹く風は、自然とは別の匂いも含んでいた。
 その気配を鋭敏に感じ取るだけの経験と勘を持っているから──リュカはその手に銃を携えている。
 改造を施した、愛用のアサルトライフル。
 これを持っていくつもの戦場を越えてきている。今回もそうするつもりだから。
 静かに一つ呼吸をすると夜闇を奔り出す。丁度前方に、戦いを始めようとしている仲間の姿も見えていた。

 花の間を、黒豹が駆けてゆく。
 あきが先行させたアマネは、疾風の如き速度で敵へ肉迫していた。
 エレメンタル・バット──魔石を抱く蝙蝠は、冥闇に紛れるその黒い毛並みを一瞬、捉えられない。
 その僅かな間隙に、アマネは四肢に力を込めて跳躍。鋭利な爪を振るって三体ほどを塵としていた。
 遅れて豹に気づいた蝙蝠達は、羽をばたつかせて敵意を表し、アマネを取り囲もうとする。
 だがそこへ、間合いを置いた位置からあきが狙いをつけていた。
「傷付けさせませんよ」
 銃口を水平にして引き金を引く。瞬間、一直線を描く弾が、アマネに迫ろうとしていた蝙蝠を的確に貫き四散させていた。
 同時に、あきは薬包から次弾を取り出している。
 当り金と銃口に装薬を注ぎ込むと、次に銃弾を投げ込んで鏃で両者をぐいっと押し込む。そのまま発射装置を引き絞り、再び照準を合わせていた。
 僅か一呼吸の間の、流れるような手際。
 ようやく敵があきの存在に気づき始めたところで──二射目。違わぬ狙いの弾丸が耀くコアを砕いて蝙蝠の命を奪い取っていた。
 ただ、蝙蝠の個体数もまだ多い。群れから離れて空に逃れた蝙蝠達は──そこで更に二分。左右に分かれて上方からあきに迫ろうとしていた。
 あきは一度下がろうかと考える、が。
 そこで後ろから連続の銃弾。
 宙の蝙蝠が一体、また一体と四散していく。
 あきが振り返ると、そこにライフルを構えたリュカの姿があった。
 銃口は上に向けたまま、戦闘態勢を崩さず。それでいて、穏やかで優しい声をあきにかけている。
「協力させてもらってもいいかな」
「勿論です。ありがとうございます~」
 こくりと頷くあきは、下がらず戦闘に戻る。宙の群れの一方へと射撃を集中させて、的確に殲滅した。 
 上方にいる群れの数は、前方に比べて多くはない。残る一方も、リュカがたん、たん、と拍子を打つように素早く発砲することで全滅させていた。
「……前の方は、増えてるみたいだね」
 リュカは油断せず、すぐに視線を下ろす。
 前方の群れは、コアの無い蝙蝠を呼び寄せることでその数を増しつつあった。
 或いは放っておけば、花園を覆い尽くし兼ねない程。
 それでもリュカは焦らない。冷静に、怜悧に、つぶさに視線を奔らせて、コア付きの蝙蝠がいる位置だけを見て取っている。
 数が増えるのは、あくまでその蝙蝠が原因。
 ならばそれから排除していけば、必ず増殖が止まる時が来る、と。
 その銃口の動きには澱みがない。星が瞬くようなマズルフラッシュを燦めかせながら、一弾、また一弾。宙踊る弾丸がコアを破砕し、穿ち、壊して敵数の上昇を止めていった。
 蝙蝠もそれを脅威に感じたか。前方のアマネを振り切るように、数体が距離を詰めてこようとする──が。
 リュカは気配を感じると同時、絶望の福音を行使している。
(こっちに……来る)
 未来予知にも似たその力は、感覚を伸ばす程に先の時間の出来事を察知する。
 一秒後、蝙蝠は此方の間近に迫るだろう。
 二秒後、複数体で散開して此方を囲うだろう。
 三秒後、一斉に魔力を放ち、反撃を許さぬ猛攻を仕掛けるだろう、と。
 ──それが判っていれば脅威ではない。
 リュカは敵が動き出すのと全く同時にバックステップ。距離を保ったまま、群れから離れてきた敵だけを撃ち落として切り抜けていた。
 静謐の内に行われた、鮮やかな手並み。
 前方ではアマネが獅子奮迅の動きを見せて、確実に敵を減らしている。気づけば群れは増殖前よりも小さくなりつつあった。
 蝙蝠達は、このままでは群れが全滅すると危機を抱いたか。
 互いを捕食し数を減らしつつも、一体一体を増強させてた上で──コア付きの個体で寄り集まって力押しに前進してこようとしていた。
 色彩のコアは、きらきらと煌めいて一種美しくもある。花と同じくらい、それは色とりどりでもあった。
「でも、あんまりうるさいのは好きじゃないな」
 リュカは躊躇わず正面にレティクルを合わせ、弾丸をばら撒いていく。
 あきも頷いた。
「まとまっている内に、一気に倒してしまいましょう」
 言うと、特殊な工程を経て生成された魔力弾を装填している。
 それは魔力を内に秘めながら、同時にあき自身の魔法とも呼応するもの。ありったけの魔力をそこに通わすことで、銃口を眩く明滅させていた。
 アマネがそれを感じて敵から間合いを取った、その瞬間。あきは光の奔流の如き魔弾を放って群れを包み込んでいた。
 コアを持たぬ多くの蝙蝠は消滅して失せ、コアを持つ個体も朽ち、瀕死に追い込まれる。
「今です」
「ありがとう。仕留めさせてもらう」
 そこへあきは違わず射撃。残った蝙蝠を撃ち落とし、その群れを壊滅させた。
 それから二人は前進を再開する。
 変わらず警戒は欠かさずに。
 リュカは常に注意を払いつつ。あきは自身の第六感とアマネの野生の勘を活かしてゆっくりと歩んでいった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ジャスパー・ドゥルジー
【狼鬼】
集団で来る上に増えるのか、厄介だな
おいザザ、悪ぃがまた「アレ」頼むぜ
目線を送りUC発動
互いの代償を補い合う寸法

増やしたナイフのひとつをザザに向け
「手加減って言葉は知らねえんだ
だからあんたも遠慮すんな、思いっきり痛ぁくしてくれよ」
ちょっと痛い思いをすりゃお互い『長生き』出来るなんてめっけもんだろ

残りのナイフでコアを持つ本体を見定め斬りつける
敵の攻撃もザザの一撃も【激痛耐性】で素知らぬ顔だが
ザザの粋な計らいにゃ思わず笑みが零れる
「は、やっぱあんたが側にいると愉しいねえ」
だけどカワイイ声はそこの蝙蝠ちゃんに聞かせてもらいな
俺はちょっとヤられたくらいで根を上げるチェリーじゃねえのさ


ザザ・クライスト
【狼鬼】

「オマエさんも好きだねェ。そんなに斬られたいのかよ?」

クツクツと笑いながら煙草に火を点けて【ドーピング】
自身の瞳に"狼の目"が顕れて剣呑に輝く
同時に【破魔】の力を纏い"牙"を抜く

まァこういうのはキライじゃねェよ
長生きはともかく弾の節約になるしなァ

【魔弾の射手】を発動

動きは軍人らしく無駄のないシャープエッジ
敵のコアは【スナイパー】の嗅覚で嗅ぎ分けてまとめて【なぎ払い】
ジャスパーには綺麗にハートマークでも刻んでやる

血飛沫が頬を濡らすと、

「どうせならイイ声で啼いてくれよ」

ペロリと舐めて獰猛に笑う

「ハシャギ過ぎンなよ、ジャスパー。前戯で"イッちまった"ら興醒めってモンだ」

お愉しみはこれからだろ



 夜の只中に色味豊かな花がそよぐ。
 けれど鮮やかなのは花ばかりではなく。少し視線を上げてみれば──ぎらぎらとした極彩色の魔石を抱く異形が羽ばたいていた。
 花道に踏み入ったジャスパー・ドゥルジー(Ephemera・f20695)は、風に無造作な黒髪を波打たせながら──へぇとその魔物を見遣っている。
「集団で来る上に増えるのか、厄介だな」
 その心の一端は言葉通りでもある。
 ただ、それと同時に内奥には微かな期待感も内包されていた。この戦場で、あの敵から。如何な刺激を受けられるだろうか、と。
 思うからこそ本気で戦いに臨む。
 故に視線を隣に向けて、その瞳をぼうと輝かせていた。
 瞬間、手元に握っていたナイフが明滅するようにぶれて複製されていく。九死殺戮刃──その燦めく刃から一本を向けながら、視線の先の男へ声をかけていた。
「おいザザ、悪ぃがまた「アレ」頼むぜ」
「アレ、ね」
 目線を受け、応えるのはザザ・クライスト(人狼騎士第六席・f07677)。
 八重歯を見せて、ほんのりと両肩を持ち上げつつ。
「オマエさんも好きだねェ。そんなに斬られたいのかよ?」
 そんなふうにクツクツと笑いながら、煙草に火を点けていた。
 とはいえそれは拒絶ではなく同意の証。
 煙草の煙をたっぷりと取り込んで、肺だけでなく全身の細胞一つ一つに巡らせて。
 ドーピングの感触が体を満たすのを自覚すると、ザザも魔弾の射手(デア・フライシュッツ)──能力を顕現させ、瞳に“狼の目”を顕していた。
 そうして双眸を剣呑に耀かせながら、濃密な破魔の力を纏うと──鋭利なソードブレイカー“牙”を抜いている。
 これこそ、ジャスパーの欲していたもの。
 ジャスパーの能力もザザの異能も、まるで水鏡に映したようにその特徴は似通っている。
 即ち、敵でない誰かを傷付けねば寿命を減らすということ。
 故にこうして刃を向け合うことで、互いの代償を補う。つまりはそれがジャスパーの案であった。
 ジャスパーは狼の男の言葉に頷いて、刃先を向けたまま笑んでみせる。
「ちょっと痛い思いをすりゃお互い『長生き』出来るなんて、めっけもんだろ?」
「まァ、な」
 ザザも言いながら、それが嫌いではない。
「長生きはともかく弾の節約になるしなァ」
「なら、勿体ぶらずにやってくれよ」
 と、ジャスパーは瞳を僅かに横に向けて腕を振り抜く。すると側まで接近してきていた蝙蝠の一体が、八の刃に裂かれて消滅していた。
「敵も来てるしな」
「みてェだな」
 ザザもまた視線を流して牙を振り抜き、傍らに迫っていた蝙蝠を寸断してみせている。
 元より躊躇う質ではない。だから、ジャスパーは改めて刃を月光に輝かせて。
「手加減って言葉は知らねえんだ。だからあんたも遠慮すんな」
 ──思いっきり痛ぁくしてくれよ。
 ニヤリと笑うと、文字通り加減なく、激しく斬りつけるようにザザの膚を裂いていた。
「イイ一撃を呉れるじゃねェか」
 ぽたり。
 血を零しながらザザも愉快げな様相を崩さずに。今度はこちらの番だとばかり、刃を奔らせてジャスパーの肌を破っていく。
 紅色の線が引かれて、それからぷつりと血飛沫が零れ出した。それが頬を濡らすと、ザザはペロリと舐めて獰猛に笑う。
「どうせならイイ声で啼いてくれよ」
「は、やっぱあんたが側にいると愉しいねえ」
 傷で描かれたのは綺麗なハートマーク。痛みにこそ慣れているジャスパーだが、その粋な計らいには思わず喜色が零れていた。
 だが、と。
 視線を周囲に戻す。
「カワイイ声はそこの蝙蝠ちゃんに聞かせてもらいな」
 ゆらゆらと踊る羽。細い鳴き声。ぎらつく色彩。前方を見れば、蝙蝠の群れが目と鼻の先まで迫っていた。
 その五体ほどを殺戮刃で射抜くと、ジャスパーは口の端を持ち上げている。
「俺はちょっとヤられたくらいで音を上げるチェリーじゃねえのさ」
「そうかい」
 ザザは頷きながら、蝙蝠相手に長々と愉しむつもりもない。故に至近の三体を薙いで捨てると、その奥にいる集団には銃を取り出し乱射。増殖した弾丸の雨で、ものの数秒の内にそれを殲滅させてしまった。
 動きは軍人らしく、無駄はなく。
 側面から蝙蝠が飛んできたと見れば、近場の個体を斬りつけ数体を塵とし、それから一歩前に出て突撃を回避。振り返って弾丸をばら撒いて残りの敵を掃除する。
 ジャスパーもまた所作に澱みはない。愉しみながらも足は止めず──前方に新たに現れた群れに真っ直ぐ切り込む。
 多少敵が突っついてこようが素知らぬ顔。敵が仲間を呼び寄せようと、コアを持つ本体だけを的確に見切って刃を振るい、一振りで四体、五体と消し飛ばしていった。
 敵が左右から挟撃を仕掛けてくれば、自然と二人も死角を補い合う立ち位置につく。
 二十を超える集団を前に、二人は刃を踊らせ弾丸を舞わせた。
「ハシャギ過ぎンなよ、ジャスパー。前戯で"イッちまった"ら興醒めってモンだ」
 ──お愉しみはこれからだろ。
 向けられたその目にジャスパーは斬撃を暴れさせながら応える。
「この程度じゃ刺激が足りねぇよ」
 ──それこそナイフで肌を刻まれるくらい、情熱的じゃねぇとな。
「啼くにはまだまだ、程遠いぜ」
 蝙蝠の攻撃も痛みはゼロじゃない、だがこれじゃあ虫の羽音だと言ってみせるように。
 半端な痛痒なら無慈悲に斬り裂いて藻屑とする。
 ハッ、と声を零すザザも同じ。蝙蝠相手に立ち止まっては居られぬと、鋭い刃で、無数の弾丸で、立ちはだかる全てを四散させていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ユノ・フィリーゼ
二つの月とたゆたう月の水花
浮かぶ花を歩むそれが、空を游ぐ感覚と似たものなら
嗚呼、きっと夢の様に素敵だろう
自然が生み育んだ美しい世界
決して失わせるものですか

花の道に降り立ち
討つべきものを確認
煌めく色彩宿す虹の花
豊かな表情魅せる彼等に惹かれるのは私も同じ
お互い立場や出会いが違えば、仲良くもなれたかしらね
(思っても、仕方のない事だけれど)

緩りと笑みを浮かべた後、
ダッシュで近寄り蒼刃で素早く翼を切り裂く
花達が咲く場所を避ける様、
地と宙を使い分けながら攻撃と回避に

コアが煌めいたなら、不可視の蒼薔薇の蔦を中心部へと狙い放つ
もし相手が回避すれば、早業で手にした蒼刃をコアへと投擲
―逃がさないわ。此処で終わりよ



 夜の空気が世界を美しくしている。
 涼しい風は肌を撫ぜるベルベッド。漂う宵の匂いは芳醇な香気。
 宙をふわりと滑り降りるユノ・フィリーゼ(碧霄・f01409)は、澄んだ大気に満たされた美観を目にしていた。
(月がまぶしいくらいに、よく見える)
 蒼空の瞳に月光を映して、ユノはそれが今宵、ひときわ綺麗であることを知る。
 この先にある畔には、それを映す水鏡と不思議な植物があるのだという。
 目を閉じて、その想像を心に招いた。
 二つの月とたゆたう月の水花。
 浮かぶ花を歩むそれが、空を游ぐ感覚と似たものなら──。
 嗚呼、きっと夢の様に素敵だろう。
 けれどそれを侵食して、踏みにじって憚らない存在が居るという。だからユノは瞳を開けて地上へと近づいていた。
「自然が生み育んだ美しい世界──決して失わせるものですか」
 声音は優しい風。けれど心のうちには真っ直ぐな志を抱いて。くるりと靭やかに廻ると、花の道へと着地している。
 その気配はすぐに感じられた。
 正面の遠方。飛んでいるのは煌々と耀く色の石を抱く魔法の蝙蝠達。
 地面に広がる色の海に惹かれたように、ぱたりぱたりと羽を動かし花の間を回遊している。
 その気持ちだけは、ユノにも少し理解できる気がした。
 煌めく色彩宿す虹の花。
 高空の蒼があれば、絹雲の白もある。
 蒼海の青があれば、海空の碧もあって。
 豊かな表情魅せる彼等に惹かれるのは自分だって同じだから。
「お互い立場や出会いが違えば、仲良くもなれたかしらね」
 思っても仕方のない事だけれど、と。
 緩りとおもてに笑みを浮かべた後、空の少女は地を駆ける。
 柔く靴を踏み込んで、奔る速度は風のよう。ひゅるりと音が響く頃にはもう、蝙蝠達の姿を眼前にしていた。
 細腕に握るのは天青の翼──夜天の空をその身に映した蒼刃。 
 形が象る羽のように、風に游ぶようにすべらかな動きで一閃すると、まずはひとつの翼が斬り裂かれて散っていく。
 風に交じる少女の姿に、蝙蝠達はようやく気づく。そうして複数体で囲もうと羽ばたいてくるけれど──ユノは即座に跳躍。
 ゆっくりとした回転を伴って、敵の突撃を避けるよう宙へと舞っていた。
 そのさなかでも刃の動きは止めず、曲線を描く斬閃で蝙蝠達を討っていく。音もなく地に降り立ちながら、敵のコアが煌くのを見つけたなら──。
「させないわ」
 そっと指をのばして不可視の翠を放っていた。
 蒼薇の抱擁(ローズオブメイ)。
 宙を這うその蔦は、高速で奔ってコアを貫く。その鋭い威力が、硝子のように石を砕いて蝙蝠の体と共に四散させていた。
 群れの数が減ったことで逃げようとしていたのか、すんでのところで蔦を逃れている個体も居た。けれど透明な夜気の中ではユノから姿を隠すのは不可能だ。
「──逃がさないわ。此処で終わりよ」
 ユノは軽く払う動作で、素早く蒼刃を投擲していた。
 鮮やかに迫るその色に、見惚れる暇すら無く。蝙蝠は一瞬で裂かれて消滅していく。
 刃を拾い上げ、前を向く。
 気づけばそこにはもう蝙蝠は居なかった。
 あるのはただ畔へと続く、虹に挟まれた道のみ。ユノは吹き抜ける涼風のように、迷わずその場所を目指していった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『光輪のヒポグリフ』

POW   :    光輪の乱舞
【黄金の光輪から無数の光線】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD   :    光輪の障壁
対象のユーベルコードに対し【障壁と化した光輪】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
WIZ   :    光輪加速装置
【無数の光輪を召喚、高速機動モード】に変形し、自身の【動きの小回り】を代償に、自身の【攻撃力と直線速度】を強化する。

イラスト:あなQ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はガングラン・ガーフィールドです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●光を求む
 花園を越えると、その先に広がるのは湖の景色だった。
 眺めを遮らぬ木立と、翠の草。ぽつぽつと地面に彩りを添える小さな花。
 そして静謐の水面。
 そこは夜気に彩られた透明な空気が、肌に快い温度を運ぶ畔。
 水辺までに距離はなく、少し歩めば広い湖面を目にできる。
 月が出てまだ長い時間が経っていないからだろうか、水中花は完全に現れてはない。それでも月色をした花冠がいくつか垣間見えたし、湖面に映る月の煌めきが目を惹いた。
 ──けれど。
 それに呼び寄せられたかのように、現れる魔物も居た。
 激しい風が吹き下ろして、猟兵達は視線を上げる。そこに眩しい光を纏う猛禽が飛んでいた。
 光を瞬かすヒポグリフ。
 黄金の毛並みを輝かせ、羽に、爪に、嘴に、そして瞳にも光を宿す。その全てに、強力な魔力が通っているようだった。
 かつて絶滅した筈の変異種は、骸の海よりいでて、高く吼える。
 そして月も水面も花も──光あるものを全て手中にしようとするかのように。眼前の猟兵達へと踊りかかってきた。
白斑・物九郎
●WIZ



幻獣狩りの機に恵まれるたァ
過去の亡霊に湧かれるのも、たまにゃ悪くありませんわな

あの高速機動
飛び道具をバラ撒いて来ねえ代わりに、真ッ直ぐブチかまして来る時の威力と速度とが爆増するカンジっスか

なら対処は見えましたわ

まずは全速【ダッシュ】で距離を取って、ヒポグリフがスピードを乗せに乗せて突っ込んで来る一直線を確定させる
後は向こうの突貫が俺めに至る瞬間を読むのに【野生の勘】を傾注するだけですわ

突っ込んで来る瞬間【残像】を囮に、さぞ小回りが利かなかろう側面へステップ・イン
同時【ビーストドライブ】
ヒポグリフの鼻先へ【怪力】を叩き出す獣腕の拳でジョルト・ブローをカウンター気味にブチ込んでやりまさァ!



 金色の瞳の中に、黄金色が映る。
 威嚇するように踊りかかってきた猛禽──光輪のヒポグリフの動きを、目を見開いた物九郎はとっさに察知。
 まずは素早くバックステップして、間合いを取っていた。
 すると風だけを残してヒポグリフは前進を中断。自身も宙へと距離をとっていた。
「いきなりご挨拶じゃニャーですか」
 物九郎は見上げながら言ってみせる。
 猛禽と言うには巨大で、動物と言うには眩い魔力に満ちすぎている、変異の獣。
 おそらく、今の前進はヒポグリフなりの力の計り方。普通の飛行すら見きれない相手だと判断すれば、今の一瞬で狩りを遂行するつもりだったのだ。
 だが、猟兵達が弱者でないことに敵はすぐに気づいた。
 だから一度空へ戻って態勢を整えているのだ。
 そこに感じられるのは獣らしい本能と、知能も兼ね備えた聡明さ。
 ニャるほど、と物九郎は瞳を細めた。
「何にせよ──幻獣狩りの機に恵まれるたァ。過去の亡霊に湧かれるのも、たまにゃ悪くありませんわな」
 俄に自身も戦意を湧かせたように。
 その気配も強く感じ取ったからだろうか、ヒポグリフは高空を周遊しながら無数の光輪を招来し始めていた。
 淡く、時に激しく明滅するそれは、敵自身の四肢を纏って体を輝かす。するとそれが力を生み出したかのように、ヒポグリフは一瞬前と比べ物にならぬ速度を得ていた。
 その疾さは、空を揺蕩う姿だけを見ても明らか。
 つぶさに観察していた物九郎は、それが自身の速度を上回るものだと認めながら──それでも心では怜悧に考察を重ねている。
(あの高速機動……完全な自由を得たってわけでもなさそうっスね)
 軌道を見ていれば判るが、それは自然なものではなく、ジグザグを描く直線的なものだった。
 同時に、遠距離攻撃に使うための魔力を自身に纏うことで力としているらしい。
(飛び道具をバラ撒いて来ねえ代わりに、真ッ直ぐブチかまして来る時の威力と速度とが爆増するカンジっスか)
 小回りと他の攻撃法を犠牲にした突撃特化、というわけだ。
「──なら対処する方法は見えましたわ」
 物九郎は全速力で疾駆してまずはできるだけ距離を取る。
 その上で動きを無駄にぶれさせず、敵が突っ込んでくる一直線をしかと確定させることに注力した。
 ヒポグリフは当然、物九郎に攻撃できると判断すれば──躊躇うことなく高度を下げてその直線上を翔んでくる。
 自身の速度が圧倒的に疾いのだから、受けきれるわけがないと踏んでのことだろう。
 だが、それは物九郎の掌の上。
 元より、疾さそのものでこちらが勝る必要はない。肝要なのは、敵がこちらに至るそのタイミングを見切ることだと。
(今、っスね!)
 鋭敏な物九郎の野生の勘は、自然の中で動く物の、短期的未来までもを読んだように感じ取る。
 刹那、目に捉えるのも難しい速度で飛翔してきたヒポグリフに対し──小さく移動。僅かに横にずれる形を取っていた。
 同時に物九郎は刻印に力を巡らせ、ビーストドライブ。
「ザ・レフトハンド──【怪力】ON」
 その腕を、猫の巨大な前脚へと変貌させている。
 ヒポグリフを残像に突っ込ませながら、自身は側面へステップ・インした物九郎は──獣腕の拳で躊躇わずジョルト・ブロー。強烈なカウンターを鼻先へ叩き込んでいた。
 敵自身の速度をも、威力に転化する一撃。
 ヒポグリフはあまりの衝撃に体を後ろに回転。同時に斜めの慣性を受けて地に叩きつけられ転がっていく。
 紛れもないクリーンヒット。
 嘴を僅かにひしゃげさせた猛禽は、その瞬間だけは纏っていた光も全て飛び散らせて。宵の暗がりを辺りに戻したかのようだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

キリカ・リクサール
アドリブ連携歓迎

まったく…美しい風景に感傷を抱く暇もないか
無粋な奴だ

流石にこちらも銃を持たなければ討伐は難しいか
UCを発動
敵から見えぬように秘かに後方に移動させて隙を伺う
シガールQ1210を装備
敵を銃弾で牽制しながら観察し
敵がUCを発動したら即座に回避し地上へと誘い込み
突っ込むと同時に潜ませた黒豹に足を噛み付かせ
一時的に動きを止める
直線の動きであれば単純で読みやすいだろう

ようやく降りてきたか
たまには大地から空を眺めることも悪くはないだろう?

奴の動きが止まったらそのまま一斉射撃を行い
可能であれば部位破壊で羽根を破壊し機動力の低下を狙う

だいぶ怒り狂っているな
焦らずとも、すぐに骸の海に叩き返してやる


小宮・あき
連携、アドリブ歓迎します。

そんなに光が欲しいのなら、差し上げますよ。
「神罰を!」

両手杖を握り【先制攻撃】【早業】で【全力魔法】でUC【神罰】。
スポットライトのように物質を透過する聖属性の【属性攻撃】。
聖職者の私の【祈り】は、光の範囲は半径レベルmの円柱。
直径104mの光の柱は【範囲攻撃】、移動による回避は不可能。

SPD障壁による防御、見ていれば防げるようですが。
私、上空からだけとは、一言も言っていませんよ。
下から、横から、斜めから。放たれる方向に障壁が向けられるかしら?

【聞き耳】で音を逃さず【第六感】【野生の勘】を重視。
脚武器の加速と、【ダッシュ】【ジャンプ】【スライディング】で回避。



 激しく猟兵と遣り合うヒポグリフは、まさに猛獣と言ってよかった。
 眩くも獰猛で、苛烈なほどに暴虐。攻撃を受けても尚退くことを知らず、こちらに矛先を向ける機会を窺っているようだ。
「まったく……美しい風景に感傷を抱く暇もないか」
 咆哮にも似た鳴き声が響く湖畔で、キリカは呆れように声を零す。
 少なくともあの敵をしかと撃破するまでは、景色などと言っている暇はなさそうだ。
「──とはいえ」
 整った目元に微かにシビアな色を浮かべる。
 一見するだけでも、それは易い相手ではないと判った。
 集団で力を発揮していた先の蝙蝠とは違い、この猛禽はたった一体で強者たる猟兵をもなぎ倒す力を持っているだろう。
「流石にこちらも銃を持たなければ討伐は難しいか」
 ならば仕方ないと、提げていた機関拳銃に手を遣る。
「倒せる方法で、倒すまでだ」
「ええ。出来うる限りの力で討伐するとしましょう」
 そっと頷くのは、あき。 
 こつりこつりと歩み出て、その相貌は未だ目を惹くような穏やかさ。
 けれど携える両手杖には、既に膨大な魔力を注ぎ込んで。
 まるで陽光か月光か、もう一つの光源が生まれたかと空目するほどの眩い光を明滅させていた。
 空に居る黄金のヒポグリフは、その光を見逃さない。
 欲するものに、本能的に惹かれるように。地上のあきへと狙いをつけると滑空して接近してこようとしていた。
 あきはそこへ、杖を真っ直ぐに翳す。
「そんなに光が欲しいのなら、差し上げますよ」
 瞬間、祈りを上げることにより湛えた魔力を天へと昇華。杖先の光が完全に消え去ったかと思うと──遥かな高空を瞬かせていた。
「神罰を!」
 その刹那、まるでスポットライトの如く物質を透過する聖なる輝きが、巨大な光柱となってヒポグリフを飲み込んでいく。
 神罰(ジャッジメント)。
 清廉なる祈りと滂沱の魔力が生み出すその一撃は、実に直径104メートルを誇る煌めきの奔流。
 それが一瞬の内に襲ってくれば、如何な素早さを誇る猛禽と言えど回避は叶わない。全身を清らかな力で灼かれ、甲高い鳴き声と共に空中でふらついていた。
「今のうちです」
「ああ、利用させてもらうとしよう」
 その一瞬の隙に、キリカは手のひらを宙に向けて淡く光る魔法円を構成している。
 召喚されるのは、怪異の黒豹(ヴァリアンテ・イベア)。
 粘液の体を持つ、闇に溶ける色彩の獣。
 キリカが解き放つと、豹は夜陰に隠れるように走り出し、間隙を縫うように敵の後方へと回り込んでいく。
 無論、そのままであれば敵に気づかれるの時間の問題──だがキリカは、そのために銃器を抜いたのだ。
「さあ、こちらに目を向けるがいい」
 けたたましい銃声を響かせるそれはシガールQ1210。魔術的力学を作用させた弾丸が、一弾一弾が強烈な衝撃となってヒポグリフへ襲いかかった。
 とはいえ散発的な射撃は致命にさせることよりも、陽動と牽制に重きをおいたもの。ヒポグリフはその弾丸を避けて高度を落とし、光を纏って加速するが──それもまたキリカの思惑通りだ。
 キリカはその瞬間に立ち位置を変え、まずは遠方から敵の接近を回避する。高速を誇るヒポグリフだが、距離が開いていれば直線運動を避けるのは不可能ではない。
 無論、ヒポグリフは地に降り立って即座に方向転換。すぐにキリカを捕らえようと狙いを定めるが──。
「ようやく降りてきたか」
 キリカが軽く言ってみせると同時。
 丁度その背後まで迫っていた黒豹が疾駆。ヒポグリフの脚に鋭利な力で噛み付き、その挙動を阻害した。
 縫い留められた形となったヒポグリフは体勢を崩して一瞬、突撃を行えない。
 それこそが狙い。
 キリカは至近から銃口を向け、今度は一切の間髪を入れず弾丸をばら撒いた。
 情け容赦のない一斉射撃。魔力を含んだ弾丸は輝きながら脚を穿ち、胴を貫き、そして翼に風穴を開ける。
 鳴き声を劈かせる猛禽に対し、キリカは何処までも冷静に──それでいて微かな嗜虐の色を含めていた。
「たまには大地から空を眺めることも悪くはないだろう?」
 その言葉に、ヒポグリフは反抗の意志を露わに飛びかかってこようとする、が。
「させると思いますか?」
 あきが杖を燦めかせれば、再び宵の空間は清浄なる煌きに包まれる。
 光の柱は光輪の猛禽が抱く光よりも更に眩しく、更に激しく。その全身を干上がらせるかのように慈悲無き慈愛を齎していた。
 毛並みの一部を朽ちさせながら、ヒポグリフがそれでも力にものを言わせて突っ込んでこようとすれば──あきはそれを素早く察知。シューズで加速し、真横にダッシュしながらジャンプ。滑るように着地し敵の接近を躱す。挙動の僅かに鈍った敵の動きなら、回避も困難ではなかった。
 分が悪いと見ればヒポグリフは一度後退する。宙に上がりながら、それでも響かす鳴き声は獰猛そのものだった。
「だいぶ怒り狂っているな」
 一方のキリカは静やかに仰ぐ。そして再び照準を向けると──。
「焦らずとも、すぐに骸の海に叩き返してやる」
 空に弾丸を撒いて牽制を再開していた。
 敵も警戒しているのか、先刻のようには降りてこないが──それならば直接銃弾で削っていけばいい話。
 ヒポグリフは間合いを保つことでそれも回避しようとする、が。
 そこへあきがまたも杖を輝かせている。
 とは言え敵も数度喰らった攻撃だ。上方へと障壁を展開して受け切ろうとした。
「私、上空からだけとは、一言も言っていませんよ」
 直後、杖の輝きは虚空に消えたかと思うと、ヒポグリフの下から光の柱として現れる。無防備な状態で直撃した光に、敵は空中でよろめいていた。
 惑うように下へ障壁を張り直すが、次は横から、或いは斜めから。あきの意思に従って、あらゆる方向から光は襲う。
「何処から来るともわからない攻撃を、的確に防御できるかしら?」
 無論、如何な変異の幻獣とてそれは困難を極めた。
 祈りの光が明滅するたび、聖なる力で灯火を段々と削られていくよう、ヒポグリフはその体力と光を弱めていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

真宮・響
【真宮家】で参加。

(大きなヒポグリフに眉を顰める)大物だね。手間がかかりそうだ。(駆けつけて来た奏と瞬を見て)なんだ来たのかい。・・・まあ、こうなりそうな気はしていたよ。一緒に頑張ろう。

空に留めておくと不利になりそうだから、ブレイズフレイムの光とブレイズランスの赤熱で敵を引きつけ、無敵の相棒で敵を空中から叩き落す。光線を【見切り】【オーラ防御】【残像】で被害を減らしながら【槍投げ】【串刺し】【二回攻撃】で攻撃する。


真宮・奏
【真宮家】で参加。

湖畔に1人で立つ響母さんの元へ駆けつけます。響母さんを1人で戦わせるのは本意じゃないです。いつも家族で戦ってきましたよね?

敵が湖畔に降り立った所で勝負を仕掛けます。トリニティ・エンハンスで防御力を高めてから、【オーラ防御】【武器受け】【盾受け】【拠点防御】で光線の被害を抑えながら接近、【属性攻撃】【二回攻撃】【シールドバッシュ】で攻撃します。


神城・瞬
【真宮家】で参加。

響母さんが1人でいる所に駆けつけます。僕と奏が響母さんを1人で連戦させると思いましたか?僕としては母さんに怪我されたら大変ですので。

何か奏がトリニティ・エンハンスの展開に失敗してるようですので、フォローとして月読の同胞を召喚。奏の援護に向かわせて、【誘導弾】で【援護射撃】を。【範囲攻撃】も併せて、【鎧無視攻撃】【マヒ攻撃】【目潰し】【部位破壊】も乗せましょうか。光線が僕の方にも来る場合は【オーラ防御】を使います。



 夜闇に耀くのは大きな光。
 太陽か月か、何か眩いものが翔んでいる。
 光輪のヒポグリフ──それを目にしたとき最初に抱くのはそんな思いだ。
 だが劈く鳴き声に、隠さぬ殺意。猛禽の翼に、強力だと判る魔力で──それが危険な代物だと理解するのもすぐのこと。
「大物だね」
 その巨影を仰ぎながら、響は眉を顰めていた。
 自身の実力を疑っているわけではない。けれど一人であれと対峙した場合、如何な強者でも厳しいという事実もまた理解していた。
 元よりあれは、人間が戦うべき相手ではないのだろう。
 それほどの威容をあの猛禽には抱かざるを得ない。
「手間がかかりそうだ」
 それでも、響は決して退くつもりはなかった。
 あれが相手では、少々の怪我は免れないかも知れないけれど。それくらいならきっとあの二人も許してくれるだろうと思いながら。
 ──と。
「響母さん!」
 そこに耳馴染みのある声音が聞こえて、響は踏み出す足を止める。振り返ると、そこにやはり誰より知った顔があった。
 紫の瞳でしかとこちらを見つめて、仄かに癖のついた紅鳶の髪を揺らして。まっすぐ奔ってそばに寄ってくる真宮・奏(絢爛の星・f03210)。
 娘の姿を目にして、響はほんの少しだけ目を見開いていた。
「奏──」
「僕も、来させてもらいましたよ」
 と、奏と並んで駆けつけてくる姿がもうひとり。
 こちらも確認するまでもない。駆けつけて並び立ち、二彩の瞳を向けてくる神城・瞬(清光の月・f06558)。
 並ぶ子らの姿に、響は少しだけ力が抜けたような声音を零す。
「なんだ来たのかい」
「僕と奏が、響母さんを1人で連戦させると思いましたか?」
 瞬は穏やかに、それでも力強さを感じさせる声音を聞かせた。
 奏も全く同じ気持ちだというように頷く。
「響母さんを1人で戦わせるのは本意じゃないです。だって──いつも家族で戦ってきましたよね?」
 だからここでも一緒です、と。
 信頼と、愛情と。その感情を表情と声音に滲ませて。
 瞬も頷いて言葉を続ける。
「それに、僕としては母さんに怪我されたら大変ですので」
「……そうかい」
 まあ、こうなりそうな気はしていたよ、と。
 響の心の内にあるのは少しの安堵でもあるだろうか。
 二人が守るべき存在であることは確かだ。けれど同時に心強い仲間であることも事実だから。
 ふっと、一度だけ笑みを零して。
 それから響は剣と槍を握り、二人を見た。
「一緒に頑張ろう」
「ええ」
「勿論ですっ!」
 瞬と奏が頷き前を向く、それが開戦の合図。
 ヒポグリフは高空を周遊するようにして攻撃の機を窺っている。仰ぐ響にはその一瞬一瞬が油断できぬ瞬間だと判る。
「……遠距離攻撃が出来るなら、空に留めておくと不利だね」
 ならば、まずは空から叩き落とす。
 滾る気持ちで二振り──ブレイズフレイムとブレイズランスを赤く輝かせ、宵闇にさらなる光源を生み出した。
 するとヒポグリフはそれに誘われるように飛翔してくる。
 それでも警戒を欠かさぬよう、至近にまでは迫ってはこなかったが──ある程度まで近づいてくれれば、響には十分だ。
「さて、アンタの力も借りるよ」
 言って輝かすのは召喚の魔法円。
 眩い光と共にそこに顕現されたのは無敵の相棒──誰あろう夫の姿を模したゴーレムであった。
 巨大な剣と矛を持ち、響の動きに呼応するそれは、文字通り頼りになる相棒そのもの。響が地を蹴ることにより高所にまで上がったそのゴーレムは、強烈な刃の振り下ろしでヒポグリフを地面にまで煽っていた。
 そうなれば今度は奏達の出番だ。
「さあ、行きましょう」
 気合十分、真っ直ぐに駆け出した奏はトリニティ・エンハンス。まずは防御力を万全とするよう、盾と自身の体に炎、水、風の魔力を渦巻かせていく。
 迷いのない挙動から生み出される魔力は濃密で強力なもの、だが。
(──何か、展開に失敗しているような……)
 と、その姿を見てふと感じるのは瞬。
 大事を取って、というわけではないが、フォローするに越したことはないと自身もまた月虹の杖へ魔力を燦めかせていた。
 描いた魔法円から召喚するのは、月読の紋を付けた戦士。
 月読の同胞(ツクヨミノドウホウ)──優美な弓を携えたそれを、瞬は疾走させて奏の援護に向かわせる。
 戦士はそのまま弓弦を引き、耀く矢で射撃。光線を放とうとしていたヒポグリフへ鏃を突き刺し、聖なる魔力に寄ってその体を麻痺に陥らせた。
 それでも敵は、その場から光線をばら撒いて抵抗してくる。
 だが正面に迫る奏は決して下がらない。精霊の力の込められた盾に、更にオーラを纏わせて。足を踏みしめしっかりと衝撃の嵐を受け止める。
「二人とも、大丈夫ですかっ?」
「ええ、問題ありません」
「こっちもだよ」
 同時に小さく振り返って二人を確認すれば──瞬もしかと月色のオーラで自身を守って受けきり、響もまた光線を見切ってその全てを躱していた。
 なれば後は攻めるのみ。
 奏はそのまま地を蹴って速度を上げると、一息に肉迫して一撃。強めた属性の力を集中してシールドバッシュを叩き込んだ。
 痛烈な衝撃に、さしもの巨体も吹っ飛ばされる。それでもヒポグリフはすぐに宙で体勢を立て直して羽ばたき、突進を目論むが──。
 そこを次に襲ったのは、矢の雨。瞬が月読の戦士に放たせた広範囲攻撃だ。
 それを避けきれず、ヒポグリフは翼を貫かれ高度を落とす。
 すると突進しか無いと思ってだろうか、そのまま光を纏って滑空しながら突っ込んできたが──。
「やられませんよ!」
 奏がイージスの盾の力を発揮。防御しながら敵の姿を鏡のようにその表面に映し、衝撃をそのまま送り返していた。
 速度と重量の塊を受けて、ヒポグリフは地に転げるように後退していく。
 そこへひた走るのが、ゴーレムと共に槍を掲げる響だった。
「さあ、全力だよ」
 激しく赤熱するその槍を投擲すると、ゴーレムもまた巨大な矛を投げ飛ばす。二連の衝撃がヒポグリフを貫くと、二人は止まらず零距離へ。
 咆哮を零す敵へ、今度は同時に剣を振り上げていた。
「喰らいな」
 全く同じタイミングで振り下ろされた光の剣と巨剣は、違わず猛禽の体を抉り、深々と傷を刻み込んでいった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

篝・倫太郎
【華禱】
綺麗だけど、オブリビオンだってんなら
やることはいつも通り……ってな

夜彦の言葉に小さく笑い
ま、そゆこった……
デカい一撃はあんたに任せるぜ、夜彦?

拘束術使用
敵が攻撃のために降下してくるタイミングを狙って
拘束術の射程に入ったら鎖で攻撃
ついでに地に落ちて貰おう、ってな?
飛行させたままじゃ、どうやっても攻撃し難いしよ

俺自身も華焔刀でなぎ払いからの2回攻撃
拘束術の攻撃も俺自身の攻撃も
衝撃破と鎧無視攻撃は常時載せてく形で攻撃してく

敵の攻撃は見切りと残像で回避
回避が間に合わない場合は
オーラ防御で防いでからのカウンター

出来るだけ視界を広く取って
夜彦の死角もカバーするように立ち回り
必要なら拘束術でフォロー


月舘・夜彦
【華禱】

目の前の存在は絶滅した種の変異
オブリビオンは過去から出づる者
つまりは絶滅したという過去より……

しかしオブリビオンであり、姿は美しくとも歪められているのならば
我々が刃を向けるのが道理というもの

牽制は倫太郎殿に
空中戦は不利、ならば地へ落とすのみ
光線を残像・見切りより回避しながら距離を詰める
回避し切れないものは武器受けにて光線の軌道をずらす
接近された場合も同様、攻撃を受け流した後にカウンター

倫太郎殿の拘束術にて捉え、地へ落ちる時こそ好機
早業・抜刀術『静風』の2回攻撃となぎ払いにて翼を斬り、次に体を断つ
現世に在ろうとも、今は過去に非ず
過去は過去へと、戻すのみ



 夜闇に瞬くこがね色は、目も眩む程輝かしかった。
 澄んだ空気だからこそ、一層その光がよく伝わる。鏡面のような水面を傍にするから、その眩さが下方からもきらきらと煌めいて見えた。
 幻獣、或いは魔獣。
 猛禽にして壮麗な光を抱いている大きな翼。
「──光輪のヒポグリフ」
 夜彦は明滅する月がもう一つ増えたかのような感覚を得て、呟く。
 その存在は絶滅した種の変異であるという。
(オブリビオンは過去から出づる者。つまりは絶滅したという過去より……)
 微かにだけ、夜彦は静かな思考に沈んだ。
 けれどその手は決して、刀を下げはしない。
 それは倫太郎もまた、同じ。
 ほんの短い時間だけ、光るその魔物を見つめてから。
「綺麗だけど、オブリビオンだってんならやることはいつも通り……ってな」
「──ええ」
 夜彦も伏せていた瞳を上げて。
 オブリビオンであり、姿は美しくとも歪められているのならば。
「我々が刃を向けるのが道理というもの」
「ま、そゆこった……」
 視線を前に向ける倫太郎も、心は既に戦いに向いている。
 小さく笑いを見せて、獰猛な咆哮を響かせる魔の猛禽に対しても、決して退かぬと言ってみせるように。
「デカい一撃はあんたに任せるぜ、夜彦?」
 その言葉と共に、手元に術力を集中して透明色の揺らめきを湛え始めた。
 そこまではまず自分が切り拓く、と。隣への信頼と、それを実現してみせるという自負を抱きながら。
 ヒポグリフは二人の姿を捉えると自身もまた敵意を返すように、羽ばたきながら接近をしてきた。
 そのまま零距離には迫らず、まずは様子見とばかりに宙から無数の光線を降らせてくる。
 無論、それも一つ一つが強力な衝撃の雨。 
 だが予見していた倫太郎は、前に跳びながら転がり出ることで回避。全く同時、夜彦も距離を詰める方向へと疾駆。自身の残像を囮にする形で避けきってみせた。
 微かに零れるヒポグリフの鳴き声は、驚嘆の表れか。
 次には二人を確実に仕留めようとしてだろう、一気に接近しながら光を放とうとしてきた。
 それこそが二人の狙い。
 廻転の威力を残したまま腕を前に出した倫太郎は、拘束術。巫力を不可視の鎖にして放ち、一瞬にしてヒポグリフの巨体へと絡みつけている。
 敵自身は未だ、自分の体を縛るものの正体に気づいていない。倫太郎はその隙に素早く引き付けて落とすよう、鎖に下方へ力を込めた。
 元より空中戦が不利だとは判っていた、ならば。
「ついでに地に落ちて貰おう、ってな?」
 張り詰めた鎖は、倫太郎の膂力によって直下へ猛烈な慣性を生み出す。振り子の先端のような加速を受けたヒポグリフは、そのまま地面へと剛速で振り落とされていた。
 上方へと羽ばたいて、大地への直撃は免れていたが──そこまで高度が落ちれば、十分。
「バッチリだな」
「確実に──斬り裂いてみせましょう」
 倫太郎に呼応するように、夜彦が滑り込むように肉迫。眼前にまで距離を詰めていた。
 瞬間、夜彦が取ったのは納刀の構え。
 予め高めてあった集中力をそこで一層研ぎ澄ませ、心を夜気に溶け込ませるほど、静謐な空気を漂わす。
 それでいて、抜打ちによる一閃は熾烈。
 抜刀術『静風』。
 静から動、凪から突風を生むような撫で斬りで翼の一端を斬り飛ばすと、更に踏み込んで連撃。肩口から胴までもを裂いて光粒の如き血潮を散らせていた。
 咽びを零したヒポグリフは、それでも光線を間近から放って抗おうとする。
 だが、そこで倫太郎が鎖を横側へ引いて体勢を崩させると──そのまま自身も接近して華焔刀を掲げていた。
「悪ぃけど、させないぜ」
 引き寄せた速度に、横薙ぎに振るった刃の速度を合わせ一撃、痛烈な衝撃を与えて敵が湛えていた光を霧散させていく。
 直後に刃先を翻して連撃。膚を裂いて重いダメージを刻み、ヒポグリフを衝撃で吹っ飛ばした。
 そこで夜彦と倫太郎は素早く視線を向け合う。無事であることは知っているが、互いに傷を負っていないことをその目で確認していた。
 微かに苦悶の声を落とすヒポグリフは、羽ばたいて大きく後ろに後退している。空に上がらないのは、再び鎖を喰らう可能性を警戒してのことだろう。
 そのままこちらが攻め入る前に、距離を保ったまま大きく旋回。地面付近で円周を描くように飛行しながら、光線を偏差で放ってきていた。
 一直線上に撃っても二人には躱されると、そう考えての対処法かも知れない。
 だが、二人は二人であるが故にその光に灼かれない。
 夜彦は刀を振るい、倫太郎はオーラを身に纏い。互いの死角を補うよう、二人で立ち位置を緩く回転させながら全て受けを受けきっていた。
 光線を退ければ、倫太郎は即時に距離を詰めてカウンター。鎖を飛ばしてヒポグリフの動きを縫い止めてみせる。
 倫太郎がそうして道を拓けば──そこへ剣気を漲らせて踏み寄るのが夜彦。
「現世に在ろうとも、今は過去に非ず」
 ──過去は過去へと、戻すのみ。
 刹那、放つ剣撃に躊躇いはなかった。
 その横一閃は熾烈にして強烈。こがねの羽を散らせ、体に剣線を消えぬ傷として刻みつけ、その生命の一端を確実に消失させていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

緋翠・華乃音
……美しい景色を護る為なら手を貸そう。
恨むのなら恨んでくれて良い。俺は何処までも利己的に君を討つ。


ユーベルコード"瑠璃の瞳"の範囲内で戦場を広く把握出来る場所(樹々の枝上など可能な限り遠距離且つ高所が望ましい)に気配を消して目立たぬように潜伏。
最初は敵を観察。そして情報収集をしつつ、敵の攻撃パターンや回避行動等の情報を収集・分析し、見切りを行う。
それに合わせて常に優れた視力・聴力・直感を生かして戦況を把握し、敵が隙を見せた一瞬を突いて狙撃。後は適当に狙撃ポイントを変えつつ必中の狙撃を繰り返す。
戦闘に有利になる技能は適宜使用。



 宵の色を含んだ風は穏やかで優しい。
 煌々とした光を落とす月は艷やかで、水面はその輝きも映し出して。自然の祝福を存分に浴びたその眺めは全てが優美に思えた。
 けれどその中にたった一つだけ、討たれるべき存在があるから──緋翠・華乃音(終ノ蝶・f03169)は宙を見つめている。
「光を抱く幻獣、か」
 遠目にも、その眩さは一入。
 調和した景色の中で、それだけが鮮やかながら何処か歪。
 だから、この美しい景色を護る為だというのなら──自分も手を貸そう、と。
 華乃音は畔の手前の木立で立ち止まり、周囲を見回していた。
 湖の至近には高台はない。
 同時に潜む場所も無く、潜伏して戦うには適さないから──華乃音は戦場の只中に位置するのではなく、その場の木の枝上へと昇り、敵も戦場も広く見渡せる位置を確保していた。
 そこからまずは敵をよく観察する。
 光輪のヒポグリフ──その猛禽の何よりの特徴は飛翔が出来ることだろう。光を強く纏うことで高速移動を可能にするようだが、平時でも十分に疾い。
(能力は物理攻撃だけじゃなく、光線もある)
 広範囲と長い射程を持つ驚異的な能力だが、逆に言えばそれだけ注意しておけばこちらまで攻撃が及ぶことは少ないだろう。
 後は回避行動の癖や動きをつぶさに観察し、機を窺う。
 そうして猟兵達の猛攻により、敵が一時空に退避しようとしたその瞬間に、華乃音は狙撃銃を向けていた。
 照準を覗き込み──瑠璃の瞳の力を発揮する。
 夜に舞う蝶のような、或いは深い硝子の色のような。澄んだ色の眼は、その先天的な異能によって超常的なまでの狙撃能力を実現させる。
 それは流麗なる造形のその一丁から放たれた銃弾を、異能の及ぶ限り必中と成すもの。
 静かなフラッシュと同時に宙を翔ぶ弾丸は、まるで流星のように微かな光の尾を引いてヒポグリフへと吸い込まれる。
 狙った翼に寸分違わず命中すると、貫通と共に凄まじい衝撃に見舞われてその巨体が傾いでいた。
 連撃が可能だと踏んだ華乃音は、更に一発。僅かに着弾点をずらして風穴を広げ、ヒポグリフの高度を落とさせていく。
 その頃には敵も、遠距離攻撃を受けていると気づいただろう。木立の中へと羽ばたいて来ていた。
 だが華乃音もひとところに留まるつもりは無い。既に木から木へと飛び移り、敵に対して円弧を描くように動いて距離を保っていた。
 ヒポグリフはそれでも華乃音の気配をたどるよう、木立へ突入すると方向転換をして距離を詰めてくる。
 けれどそう思ったときにはもう、華乃音は銃身を真っ直ぐに構えていた。
 銃口を映す猛禽の瞳。
 それを、華乃音はスコープの中心に捉えている。
「恨むのなら恨んでくれて良い。俺は何処までも利己的に君を討つ」
 抑えられた銃声と、それとは裏腹な程の威力。
 華乃音が放った弾丸は狙いのままの動線を辿り、一直線にヒポグリフへ。その瞳を貫いて、苦悶の鳴き声を木立に木霊させていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リュカ・エンキアンサス
※他の方との連携・アドリブ歓迎

月の魔物…って言うには眩しすぎるよね
大きい鳥とか、こういうの、結構好きだけれども
強欲なのはいただけないな
ただひとつの光なんて、つまらないと思うんだ

と、いうわけで
基本は再度銃攻撃をして
他の方との援護射撃を中心に。じわじわダメージを積み重ねていくことができたら
攻撃を牽制するように、爪や目を狙って傷つけていけたらいいし、
他の人のUCに対して光輪の障壁を敵が展開する際に、可能なら、少しでもそこにひびをいれるようなイメージで、弾丸を叩き込んでみる
自分のUCは、敵が隙を見せた瞬間、ここぞと言うときに一度だけ
相殺しに来たら、即座に別方向へと回り込んで弾丸を叩きつけられたら


ユノ・フィリーゼ
幻想の、お伽噺でしか見た事の無かった
美しくも気高き獣
思わず見惚れてしまうけれど
目的は決して忘れていない

手加減はせず全力で
地形を利用し空へ舞い、銀剣から繰り出す衝撃波
空気の刃で一瞬怯んだ隙を狙い
黄金の身へと花蝕の種を蒔き放つ

眩い光の花がお好き?
望むのなら幾らでも差し上げるわ
貴方に寄り添い咲く、弔いの花を

既に強化を許してしまっていても
彼が代償にしたものを逆手にとって
恐れず風と共に立ち向かおう

直線上には立たぬ様に、
身軽さを活かして立ち回る
鋭い爪や嘴、光輪は見切りと残像で躱し行き
夜の闇に紛れ音もなく
手にした刃で薙ぎ、斬り伏せて

貴方の舞台はもう此処では無いから
さぁ、在るべき場所へ還りましょう

☆共闘等歓迎



 空を翔けるその姿が月を隠しても、夜は翳りはしなかった。
 その大きな翼が、雄大な姿そのものがまばゆく光り輝いていたのだから。
(夜を照らすほどの光──)
 仰ぐユノは、その姿に確かに鮮麗さを感じる。
 幻想の、お伽噺でしか見た事の無かった、美しくも気高き獣。
 思わず見惚れてしまう──それほどの優美さと煌めきをその存在は持っていたから。
 けれど、それは確かに世界に招かれざる者でもあった。
 隣り立つリュカは少しだけ瞳を細めてそれを心に感じ取る。
「月の魔物……って言うには眩しすぎるよね」
 美しすぎて、輝かしすぎる幻獣。
 それを見続けていたら、他のものが見えなくなってしまうほどの光。
 否、文字通りその獣──光輪のヒポグリフは、他の光るもの全てを自身のものにしようとしていた。
 故にリュカはその手に銃を握る。
「大きい鳥とか、こういうの結構好きだけれども。強欲なのはいただけないな」
「……ええ」
 そっと頷くユノもまた、目的は決して忘れてはいない。
 手加減はせず、始めから全力で。
「──行きましょう」
 瞬間、触れるように地面を踏んでステップ。傾斜を利用するように飛び上がるとそのまま空の人となる。
 まるで泳ぐように滑ってきたユノの姿に、黄金の獣は驚いたろうか。微かに瞳を見開きながら、それでもすぐに羽ばたいて距離を詰めようとしてくる。
 が、ユノは月明かりに耀く銀の剣を抜き放つと、虚空へ一閃。振り抜くことで疾風の如き衝撃波を生み出していた。
 飛来した空気の刃に、ヒポグリフは僅かに羽を削られてふらつく。
 そこへ地面から銃口を向けるのがリュカだった。
 役割は、仲間の援護。それをしかと完遂してみせるよう、ぶれない照準で巨体の爪を捉え──引き金を引いてフラッシュを焚く。
 瞬間、風を裂いた弾丸は違わず巨体の爪へと飛来。強烈な速度と威力を以て粉々に破砕してみせていた。
「さあ、この隙に」
 リュカの言葉に、ユノは頷いて宙を蹴っている。
 真っ直ぐに伸ばした腕を中心に、ゆるりと廻りながら──勢いのままに投げたのは小さな花の種子。
 宙を奔って黄金の身へと触れたそれは、微かに鳴動して芽吹きを迎えてゆく。
 それに違和感を覚える幻獣へ、ユノは穏やかに言ってみせていた。
「眩い光の花がお好き? 望むのなら幾らでも差し上げるわ」
 ──貴方に寄り添い咲く、弔いの花を。
 瞬間、咲き誇るのは鮮やかにして麗しい大輪。それは生命力そのものを糧に育つ、儚き葬送花。
 花蝕庭園(ソウルドレイン)。
 美しさの代わりにその命を吸い上げて、茫漠とした懊悩を与える。その感覚が魔力に対する楔となって、幻獣の能力を一時的に封じていた。
 ヒポグリフはそれでも自身の素早さと飛翔能力を持って突撃を狙おうとしたが──。
 地上から光が明滅する。
 リュカが弛まず一射、二射。狙いすまして弾丸を昇らせていた。
 一撃一撃が体を貫くほどの威力を持つそれは、ヒポグリフの脚を穿ち、傷ついた翼を更に欠けさせ、着実にその体力を削りつつあった。
 加速すればそれを阻害するように張られる弾幕。攻撃を仕掛けようとすれば的確に飛んでくる牽制の弾丸。 
 喉の奥で僅かな鳴き声を零した幻獣は、そこにも脅威を覚えてだろう、一時リュカへと狙いを変えて滑空しようとしてくる。
 けれどそれを許さぬのが空の少女。
「まだ、踊っている最中でしょう?」
 涼やかに言ってみせるユノは、自身もまた滑空してみせるように。追い風を味方につけて降下して、ヒポグリフの頭上を取っていた。
 そのまま剣を奔らせて一閃、三日月を描いてみせるような美しき斬閃を光らせ、巨獣の首元を深く刻んでいる。
 金粉の如き血潮を零して、幻獣は上方へ振り返る。
 そうなれば、リュカがまた下方から弾丸を浴びせるだけ。
 巨体の後背にも、振り返ってきた胴体にも。金色を抱く毛並みにも翼にも、その顔にも。狙い通りに体を穿ち確実に命の灯火を弱めさせていた。
 ヒポグリフも、苦悶しながら花を削ぎ、ようやく微かに能力を行使する自由を取り戻す。だが耀く障壁を張ろうとしたその瞬間も、リュカは見逃さない。
 光が明滅するそのタイミングに弾丸を差し込むように発射することで、障壁へと衝撃を挟み込ませ──まるで硝子が弾けさせるように障壁全体を破砕した。
 幻獣が地に落ちてくると、ユノもふわりと着地する。
 リュカはその背に声をかけた。
「一気に畳み掛けよう」
「ええ」
 頷くユノも、油断なく。起き上がる金色の巨体の正面に向かわず、すぐに風に乗って旋回するように横合いを取って斬撃を加えていた。
 ヒポグリフはそれでも自らの体と嘴を以て接近戦を仕掛けてこようとする。
 けれどユノはそれをまともに受けようとはしない。パ・ド・ドゥを踊るのは残像だけに任せて──自身は夜の闇に紛れ音もなく、後背側にまで回り込んでいた。
 そのまま刃をしかと握りしめて、縦一閃に斬撃を放つ。
「貴方の舞台はもう此処では無いから」
 ──さぁ、在るべき場所へ還りましょう。
 風に後押しされたような、疾き刃は幻獣の背を深く捌いて体力を奪い取る。
 苦渋の鳴き声と共に、ヒポグリフが前傾に投げ出された、そこでリュカは銃口から眩い星色の光を燦めかせた。
 それは光を奪わせないための光。
「ただひとつの光なんて、きっとつまらないと思うんだ」
 だからそれを護ってみせると。
 放つ弾丸は眩き星。
 届け、願いの先へ(バレット・オブ・シリウス)。
 光の粒子で幽き流線を描くその一弾は、真っ直ぐに。揺らぐ事無くヒポグリフを貫き、その巨体を纏う光を四散させていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ジャスパー・ドゥルジー
【狼鬼】

随分とロマンティックな戦場だなァ
被害を抑えるなんて配慮は俺にゃ出来ねえから
せめてさっさと倒そうぜ

ザザが作ってくれた隙に大技を仕掛けようとするも
奴の傷を見逃せず使用UCを切り替える
聖痕から光を喚んで
「立てよザザ、まだおねんねの時間じゃねえぞ」
喉を鳴らし笑う言葉と裏腹に
光はどこまでも暖かく優しい

ったく
痛みに耐えるのは俺の専売特許だぜ
イイとこ全部持っていきやがって、あの野郎
ぼやきながらもナイフを構え
奴の急所目がけて懐に飛び込み捨て身の一撃
光輪の傷は激痛耐性で無視する

ーーはん、見た目はご立派だが大したことねえな
なあザザ
俺をイイ声で啼かせてくれる奴は
とうとうここには居なかったらしいぜ


ザザ・クライスト
【狼鬼】

「イイ風が吹いてるぜ」

煙草に火を点けて【ドーピング】
紫煙をくゆらせ【破魔】の力を纏ってうそぶく

「やっこさんの動きはなんとかする。隙を見逃すなよ?」

バラライカで【先制攻撃】
同時に【監獄の鎖】を発動

「もう空に逃げられると思うなよ!?」

しかし繋がってるのはこちらも同じ
猛烈な反撃を喰らう

「ガッハァ……ッ!」

もんどり打って吹っ飛ばされるが鎖は離さない
ジャスパーの回復を受けて何度でも立ち向かう

「月が出ているさ」

光輪を銃弾で【なぎ払い】
または【盾受け】で【時間稼ぎ】
ジャスパーへの攻撃は【かばう】

「何よそ見してやがる、クソグリフ!」

派手に【挑発】して【おびき寄せ】る
最後は【零距離射撃】

「くたばれ!!」



 宵の風が吹いて金色を明滅させている。
 清廉な芳香を漂わす草花がそよいで、涼しさに彩りを加える。その中で水面の月は緩やかに瞬き、まだ数少ない湖面の花を小さく揺らめかせていた。
 煌々と光る月色の景色。
 ジャスパーはその中に一歩踏み入って見回している。
「随分とロマンティックな戦場だなァ」
「あァ。イイ風が吹いてるぜ」
 と、ザザは微かに金髪を戦がせて。
 先刻よりも幾分温度の下がった心地良さの中で、煙草の新たな一本に火を点けていた。
 透明な空気に交じって、白灰の靄が肺を駆け巡って得も言われぬ快感を体内に刻みつける。それを欲していたのだというように体が活性化する感覚、それこそ戦いへの備え。
 そんな隣を見て、ジャスパーも微かに兇猛な笑みを含んで。
 空で荒れる巨獣にちらと目をやっていた。
「被害を抑えるなんて配慮は俺にゃ出来ねえからな。せめてさっさと倒そうぜ」
「賛成だ」
 ザザも朱の瞳を向けてその敵を短い時間観察している。
 光輪のヒポグリフ。蛇行した軌道を取って宙に揺蕩う金色の幻獣は、猟兵達との戦いで既に傷ついている。
 しかし獰猛さは尚変わらず、邪魔するもの全てを薙ぎ払おうとする敵意を感じた。
 弱っている、とは言えるかも知れない。それでも不用意に近づいたものを殺すだけの殺意がそこにはあったし、力も残っている。
 その動きを捉えるのは寧ろ困難であるようにも思われたが──ふっ、と。
 紫煙を涼風にくゆらせて、浄化の力を身に纏いながら。ザザはすたすたと歩み出て背中側に声を投げた。
「やっこさんの動きはなんとかする。隙を見逃すなよ?」
 同時、緩やかに駆けながら宙にバラライカを向けている。
 強烈に発光するフラッシュと、エコーする銃声。まずは宙の一端に弾幕を張る形で、ヒポグリフへと先制攻撃を仕掛けていた。
 縦横に飛び廻る幻獣は、その多くを回避する。だが連射される弾丸の中を無傷で切り抜けることもまた出来ない。
 弾が尽きると、ザザは新たなドラムマガジンを差し込んで銃撃を継続。その内に金色の羽を散らせ、肉を抉り、相当数の弾丸をその巨影に叩き込むことに成功していた。
 とは言えこれだけで終わりはしない。
 ヒポグリフが弾幕から逃れようと僅かに高度を落とした瞬間、ザザは弾丸に異能の力を込めて狙撃し──監獄の鎖(チェーン・プリズン)。
 その一撃が命中すると同時に射線を鎖へと変じ、敵と己を決して断ち切れぬ形で繋いでいた。
 敵の体重と慣性が一気に伝わり、地面を微かに滑る感覚に見舞われながら──それでもザザは踏みとどまってしかと敵を抑えている。
「ハッ──もう空に逃げられると思うなよ!?」
「……へぇ」
 と、感嘆にも似た吐息を零すのはジャスパーだった。
「強引に縛り付けるなんて、やるじゃねぇか。それに手慣れたもんだ」
「じゃじゃ馬にはこういうやり方が合ってんのさ」
 ザザは応えながら敵に自由を許さない。
 これこそ最大の好機。
 ジャスパーは既にナイフの柄に手を添えて、既に大技を仕掛けようとし始めている。これが直撃すれば敵もただではいられまいという確信があった──が。
 ザザが敵を捕らえているというのは、敵がザザを捕らえているというのもほぼ同じこと。
 ヒポグリフは瞬間、豪速で後退してザザの体を引き寄せると、至近から無数の光線を発射。ザザの全身を灼けるような衝撃で貫いた。
「ガッハァ……ッ!」
 血煙が散って、ザザはもんどり打って吹っ飛ばされる。
 それを目にすると、ジャスパーはナイフを握ろうとして──しかしそれをしなかった。ザザの傷を見逃すことが出来なかったのだ。
 とっさに攻撃から治癒に行動を移し、聖痕から光を生みザザへ。その身体を淡い輝きで包み込んでいた。
「立てよザザ、まだおねんねの時間じゃねえぞ」
 ジャスパーは見下ろしながら、喉を鳴らし笑う。ただ言葉と裏腹に光はどこまでも暖かく優しく──殆どの負傷と痛みを拭い去ってしまっていた。
 ザザは膝をつき、それからすぐに立ち上がる。
「見事なモンだ」
 これでまた戦える、と鎖を握った。攻撃されている最中も、鎖は決して断ち切らせず、離してもいなかったのだ。
 ヒポグリフは再度光を放ってこようとする、けれどザザは、今度はそれを上手く見て銃弾で薙ぎ払ってみせた。
「月が出ているさ」
 ならこれ以上の灯りは要らないと。
 人狼の身には元より戦意が高まる宵でもあったから──更に近づいて連射を速め、幻獣の身体を蜂の巣にしていく。
 そうなればヒポグリフは同じ轍を踏まぬよう、ジャスパーへと狙いを変えようとするが──ザザはそれすらしかと庇い受けて射線を通さなかった。
 ジャスパーはそんな背を見て微かに肩を竦める。
「ったく。痛みに耐えるのは俺の専売特許だぜ」
 イイとこ全部持っていきやがって、あの野郎、と。
 ぼやきながら、それでもザザへと癒やしの光を再度当てて回復させれば──自身もナイフを改めて構えていた。
 敵を討つ機が見えたからだ。
 ザザがヒポグリフの攻撃を相殺している間に、ジャスパーは一息に疾駆。急所めがけて接近していく。
 無論、ヒポグリフはそちらに目を向けようとする、が。
「何よそ見してやがる、クソグリフ!」
 ザザは天に弾丸をばら撒いて挑発。自身に目を向けさせてから敵をおびき寄せてみせた。
 同時に顔面に弾丸を浴びせれば、ヒポグリフはザザに躍りかかってくる。その隙を突いて、ジャスパーはその懐にまで攻め込んでいた。
 敵は最後まで光を放ち広範囲を攻撃してきている。けれどジャスパーはそんな事に構いはしない。激痛をその身に受けながらも耐えて無視し、ナイフを奔らせていた。
 全く同時、ザザもヒポグリフへ零距離から射撃。
「くたばれ!!」
 弾丸がその命を貫き、刃がその魂を裂く。苛烈な衝撃で、二人は光の幻獣を霧散させ、消滅させていた。
 金色の粒子が風に散って、消えていく。
「──はん、見た目はご立派だが大したことねえな」
 ナイフをくるりと回して納めたジャスパーは、息をついていた。
「なあザザ。俺をイイ声で啼かせてくれる奴は、とうとうここには居なかったらしいぜ」
「みてェだな。今日はおあずけだ」
 それでも手応え自体は悪くなかったがなァ、と。
 ザザは静寂に戦闘の烈しさを思い起こし。後は息をついて銃を下げていた。 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『月湖』

POW   :    湖の月面に勢いよく乗ってみる

SPD   :    湖の月面に恐る恐る乗ってみる

WIZ   :    湖の月面を湖の外から眺める

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●月の時間
 ぷかり、ぷかり、と。
 水面から静かな音がして、月色がきらめいた。
 それは湖の中に息づいていた水中花。
 平和な時間が訪れると、月の明かりに誘われるように、或いは湖に映る月光を羨ましがるように──次々に湖面へと現れ始めている。
 そうして月を象ったようなその花は、沢山集まって大きな月面を作っていた。
 するとそこに小さな兎が駆けて、何処かへ渡っていく。
 小動物の通り道にもなっているのだろうか。湖面に現れた月の地面は、ふわふわと水に浮かびながらも不思議な安定感を持っているようだ。
 猟兵達は少しの間、それを目にしていた。
 見渡せばもう倒すべき敵は存在せず、そこにあるのは自由な宵の時間。
 人が乗ったくらいではびくともしない月の花の上を、小動物を追って散歩するのもいいし、ゆったりとその浮遊感を味わってもいいだろう。
 或いは周りを散策してもいい。畔は種々の草花が生り、月や湖を眺めて歩んでも静かな美観を楽しめるに違いなかった。
 少し踵を返せば、平和の訪れた虹の花園も遠くない。自分だけの色や、自分だけの香りを探しながら色彩を楽しむのもいいだろう。
 何処で過ごしても、きっと夜風は優しく心地良い。
 猟兵達は夜の憩いの時間に、歩み出していく──。
真宮・響
【真宮家】で参加。

いやあ、物凄く手間が掛ったが、物騒な乱入者は消えたし、ゆっくり過ごそうか。湖に浮かぶ月の花。感慨深いねえ。・・・月に縁が深い瞬がいるからね。

月の花を渡っていく兎を追っていく子供達の後ろをゆっくり追っていく。月明りに照らされるのは可愛い子供達の姿。何よりも輝いてみえる。家族3人で協力して勝ち取った時間。存分に満喫するよ。


真宮・奏
【真宮家】で参加。

母さんが無事で良かったです。偉大なる光の獣、強かった。彼のヒポグリフももしかして、月に浮かぶ花に引き付けられたのでしょうか?ええ、月の美しさはしっていますよ。清光の月・・・瞬兄さんがいますし。

光の花に人が乗っても大丈夫なんて凄いですね。あ、瞬兄さん、兎が花の上を飛んでますよ!!追いかけましょう!!瞬兄さんの手を取って一緒に月の花を渡って行きます。兎さんがゆっくり月の花を渡れる状況になって良かったです。この風景、護れた事を誇らしく感じます。


神城・瞬
【真宮家】で参加。

何より、響母さんが1人で出て行った時は慌てましたよ。母さんが無事で本当に良かった。そうですね、生まれ故郷にあった湖は月明りが水面に映って綺麗ですが、湖に浮かぶ月の花も乙なもので。月に縁が深い僕にとっては、多くの同胞に出会えた気分です。

奏と手を繋いで、兎を追って、月の花を渡って行きます。ええ、楽しいですよ。兎も楽しそうです。月に照らされたとびきりの宵を、存分に楽しみましょうか。



 幾つもの月が宵を照らす世界は、淡くまばゆい。
 静かで涼しくて、先刻より空気も清らかになったように思える。
 畔にそんなゆったりとした時間が訪れると──響はようやく人心地がついた気分だった。
「いやあ、物凄く手間が掛ったが──何とか倒せたね」
 軽く伸びをして、風の温度を感じるように深呼吸する。
 傍らに立つ奏はそんな母の姿に安堵の表情だ。
「母さんが無事で良かったです」
「ええ、本当に」
 と、同じ心で頷くのは瞬だ。
 こうして家族となって短いわけではないけれど。未だ響の活発さには慣れぬといった調子だ。
「響母さんが1人で出て行った時は慌てましたよ」
「余計な苦労を子供にかけちゃいけないと思ってね」
 響は応えつつも、改めて二人の顔を見て。
「でも、結果的には助けられたね。アタシだけならもっと苦労していたはずだよ」
 それは認めるように表情を和らげていた。
 奏はその敵の姿を思い起こすように、景色を見やる。
「偉大なる光の獣──強かったですね」
 眩しすぎる光を持っていた、幻獣。それが骸の海から蘇った存在でなければ、この眺めにも溶け込んでいたろうか。
 尤もそれは叶わぬことではあるから──響は歩き出す。
「ま、何にせよ物騒な乱入者は消えたし、ゆっくり過ごそうか」
「はい!」
「ええ」
 二人も勿論頷いて。親子三人、水入らずで歩み出していく。

 水辺に近づくと、風が水気を含んでひんやりとする。
 残暑の時分にはそんな感触も快くて、自然と湖に惹き寄せられてしまうようだ。
 そうして湖面を広く見渡せる位置まで来ると──。
「湖に浮かぶ月の花、か。言葉通りだね」
 響は感心を浮かべて見渡した。
 水面に浮かぶ大きな花。
 風に僅かに揺蕩っているようで、けれど水中に沈む様子は見られない。
 そんな揺らぎが小さな波を立てると、まるでビロードのように湖面が艷やかな光を反射していた。 
「彼のヒポグリフももしかして、月に浮かぶ花に引き付けられたのでしょうか?」
 奏は花のまろみを帯びた輝きを瞳に映して呟く。それくらいそれは美しくて、文字通りの幻想世界の産物に見えた。
 奏がその光景をとても綺麗だと思うのは──月の美しさは誰より知っているという自覚があるからでもあろう。
(清光の月……瞬兄さんがいますしね)
 ちらりと、隣の姿を見やりながら。
 響もまた思いは同じのようだった。
「感慨深いねえ……。月に縁が深い瞬がいるから、尚更だ」
「そうですね」
 と、瞬自身もまた、その景色に美しさと──馴染み深いものも感じている。
「生まれ故郷にあった湖も、月明りが水面に映って綺麗でしたが……この湖に浮かぶ月の花も乙なもので」
 柔らかい風に身じろぐ花は、まるで瞬のことを歓迎しているよう。
 瞬もそれをその身に感じる気がした。
「月に縁が深い僕にとっては、多くの同胞に出会えた気分です」
「それにしても、人が乗っても大丈夫なんですよね──」
 と、奏は傍の花にちょっと触れてみる。
 少しだけすべらかな感触だけれど、滑って足下が不安定になることはなさそうだ。力をかけるとほんの少しだけ沈んで、それでいてしっかりと浮力を保っていた。 
 それに好奇心を覚えていると、ふと視界を横切る白い影を見つける。
「あ、瞬兄さん、兎が花の上を飛んでますよ!!」
 それはとことこと駆けていく、真っ白な小兎。
 通り道なのか遊び場なのか、跳ねては次々に花を渡っていっていた。
 奏は瞬の手を取って花へと歩を踏み出す。
「追いかけましょう!!」
「ええ、行きましょうか」
 瞬も穏やかに応えると、手をつないだままに自身も花の上へ。ふわりとした浮遊感と共に、一つ一つの花を渡り始めていた。
 響は少々笑みを零しつつ、そんな二人の背中に声をかける。
「気をつけなよ? 落ちたら今の時期でも冷えそうだ」
「もちろんです!」
 奏は爛漫に応えて、瞬を導くようにして月面を歩んでいっていた。
 響はちょっとだけ肩をすくめて。
「あの子もアタシに似たね」
 そんなふうに呟いて、それから自分もそっと花の上へと足を下ろして進み始める。
 その前方では、奏が兎を追い続けている。
 湖の中心は波の抵抗も少なくて、より一層ふわふわ浮いているようだ。
「不思議……楽しいですね!」
「ええ」
 共に歩む瞬もまたこくりと頷く。こうして奏と、そして家族で過ごす時間が瞬にもとても楽しいものだった。
「それに、兎も楽しそうです」
 花から花へと歩む兎もまた、ぽんぽんと感触を愉しんでいる。そして湖の丁度真ん中までくると、休憩をしているのか少し月を見上げているようだった。
 それからまた動き出すと、奏達もそのあとをついていく。
「兎さんがゆっくり月の花を渡れる状況になって良かったですね」
「ええ、綺麗な景色が綺麗なままでいられて、何よりです」
 奏の言葉に応えて瞬は見回す。
 だから月に照らされたとびきりの宵を、存分に楽しみましょう、と。
 それにまた奏も頷く。
 美しい眺め、清らかな風景。この景色を守れたことを誇りに思うから──その中でもう少し時間を過ごしていこう、と。
 そうして並んで歩んでいく二人を、響もゆっくりと追うようにして歩んでいた。
 月明りに照らされる可愛い子供達の姿こそが、何よりも輝いて見えるから。
「いい夜だね」
 家族3人で協力して勝ち取った時間。
 それをまだまだ存分に満喫しようと思った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

篝・倫太郎
【華禱】
空に月……湖面にも月
不思議な感じだなぁ……

夜彦、折角だし渡ってみよーぜ?
湖面の月を指し示してそう誘ってから
いつも通り手を差し出して

お?案外と大丈夫なんだな?
そっと、注意深く足をおろしてゆっくりと渡る

頭上に月、足元にも月、隣にも月のような男――
中々に味わえない月三昧だなァ
ま、最後のはあれだ、当人には内緒だけど

こういう体験は俺も初めてだし
あれだな?
あんたと一緒に2人揃って『初めて』ってのは
中々にないから実はかなり楽しい
だろ?こーゆーんも悪くねぇや

うん?あぁ……
俺も同じこと考えてた
あの花畑も後で寄ろーぜ?
快諾してくれるのが嬉しい

も少しだけ、こうしてたい
そんな事は言ったって困らせるだけだしよ?


月舘・夜彦
【華禱】
空の月も地の月も、どちらも美しいですね
どちらが地なのか判らなくなりそうです

湖面の月を眺めていれば、差し出される手
彼と出掛ける時はいつも差し出され、引いてくださる
その手を握って、今夜は月の道を歩いていく

湖の上を歩くのは初めての経験です
自然と乗せる足が慎重になってしまいます
慣れるのには暫し時間が必要ですね

言われてみればそうですね
貴方が様々な世界を知っていて、それを私に教えてくださって……
時には共に初めてを知るというのも良い機会でした

渡り終えたら、次は最初に見た虹色の花畑に行きましょう
あそこもとても綺麗でしたから、もう一度見ておきたいです

もう暫し彼と共に幻想的な世界に浸れる時間が欲しい



 夜のしじまに浮かぶのは天穹の月。
 ぷかりぷかりと、心地よい水音の中に漂うのは水上の月。
 大気のベールに覆われて、仄かにぼんやりとした輪郭を持つ優しい光と。その光を抱いて淡く煌く花の色。
 二つに挟まれた畔は夜なのにほの明るくて、美しい。
 その灯りにゆっくりと目をやって、倫太郎は感心とも驚きともつかぬ表情で、少しばかり吐息している。
「空に月……湖面にも月。不思議な感じだなぁ……」
「空の月も地の月も、どちらも美しいですね」
 夜風に程よく溶ける耳障りの良い声音は、隣の夜彦。倫太郎と並んで、世界を挟む月色を眺めていた。
「どちらが地なのか判らなくなりそうです」
「本当だなぁ……」
 試しに少し首を動かして、倫太郎は視界を傾けてみる。
 上下逆に、とまではいかずとも、少し世界が傾ぐだけでも天と地の眩さに差異がないことがよく判った。
 となると勿論、普段は見られない湖面に月に興味が行く。
 水辺に近づくと、その花が普通のものより大きいことが判った。それが沢山連なって足場を構成しているのだ。
 顔を寄せてみると、蓄光の習性があるのだろうか。花弁が金色を帯びた乳白色にうっすらと発光しているのも見て取れる。
 同時に風にそよぐと、微かに月の匂いがした。
 それに少しだけ見知ったような気持ちを覚えながら──倫太郎はその花達を指す。
「夜彦、折角だし渡ってみよーぜ?」
 そして一つ笑みを向けると、いつも通りに手を差し出した。
 湖面の月を観ていた夜彦は、伸ばされたその手に目をやって。静波の心の中に淡い温かなものを感じる。
 彼と出かけるときはいつもこうして差し伸べられて。
 そしていつも自分の手を引いてくれる。
 今日もその心を受け取ることが出来ることに、また新しい感慨を覚えながら。夜彦はその手を握って月の道を歩き出す。
 にかっと笑った倫太郎も、一緒に花へと乗った。
 すると僅かな柔らかさと、同時にしっかりとした浮力を感じる。
「お? 案外と大丈夫なんだな?」
「ええ」
 一つの花が、触れている他の花と支え合っている状態でもあるようだ。
 少しだけ、それは手をつないだ自分達のようだと。夜彦はそんな思いを抱きながら花を渡り始めていた。
 倫太郎が注意深く足を下ろしてゆっくりと進むと、夜彦もまた重心を崩さぬように歩幅を合わせていく。
「湖の上を歩くのは初めての経験ですから、自然と慎重になってしまいますね。慣れるのには時間が必要になりそうです──」
「こんな経験ないもんなぁ。ま、ゆっくり慣れていこうぜ」
 二人でバランスを取り合えば大丈夫だろ、と。
 倫太郎は笑みを向けて、今一度しかと手を握ってみせる。
 湖面に吹く風は涼しくて、その中では触れる温度を一層強く感じる。だから、ええ、と応えて夜彦は月を渡っていった。
 湖の中程まで来ると、岸が遠くに感じられて宙に揺蕩っている感覚を覚える。
 見回せばどこまでも月色が広がっていて──倫太郎は一度立ち止まって空も見上げた。
「頭上に月、足元にも月」
 そして隣にも月のような男。
「中々に味わえない月三昧だなァ」
 と、最後のひとつは口には出さなかったけれど。
 でも今、一番間近に感じるのはその月だ。
「こういう体験は俺も初めてだし……あれだな? あんたと一緒に2人揃って『初めて』ってのは中々ないな」
「言われてみればそうですね」
 夜彦は、倫太郎と共にあった時間を心の中に巡らせる。
 手を差し出してくれて、握った手を優しく引いてくれるように。倫太郎の方が様々な世界を知っていて、それを教えてくれた記憶が多かった。
 その思い出もまた、忘れ得ぬものとして胸の内にあるけれど。
「時には共に初めてを知るというのも──良い機会です」
「だろ? こーゆーんも悪くねぇや」
 とても楽しい、と。その気持ちを内在させた表情で倫太郎も応える。
 けれど、はたと視線を前にやったのは──歩みを再開すると、いつしか湖の中程も通り過ぎて反対側の岸にたどり着いていたからだ。
 二人で陸に上がると、月の散歩も一先ずは此処まで。
 ただ、そのまま帰路につきはせず。夜彦は畔へとやって来た方向を見やっている。
「次は最初に見た虹色の花畑に行きましょう。あそこもとても綺麗でしたから、もう一度見ておきたいです」
「うん? あぁ……」
 倫太郎は少しだけ目を開いて、それから自分も花畑がある方向へ視線をやっていた。
 それは意外、というよりも単純に嬉しい心。
「俺も同じこと考えてた。寄っていこーぜ?」
「ええ」
 夜彦がそう応えて、また共に並び合って歩んでくれる。それに対する喜ばしい心持ち。
(も少しだけ、こうしてたい──そんな事は言ったって困らせるだけだしよ?)
 だから倫太郎は再び屈託のない笑みを見せて、夜彦を先導するように進み出す。
 その倫太郎の姿を見ることが出来て、夜彦も良かったとそう思っていた。
 ──もう暫し彼と共に幻想的な世界に浸れる時間が欲しい。
 月の散歩が終わって、岸に上がる時、自然とそんな思いが湧き出ていたから。
 そうして二人は湖を背に、色彩の空間へと入った。
 そこは色と薫りに溢れた世界。ひとけがなくて、絵画の中を歩んでいるかのような心地になる。
「こうして見ると、面白いモンだなぁ」
「一つとして同じ花が無い──そう言っても過言ではなさそうですね」
 夜彦も仄かな甘い香りの中に視線を巡らせてそれを実感した。
 どの花も色が違うけれど、決して全体を眺めてもちぐはぐな印象ではない。
 同系色が集まっている箇所や、グラデーションを形作って色が流れている場所もあって、視界に映る景色の一つ一つが芸術のようだった。
 と、その中で夜彦はふと一輪の花を見下ろす。
 それは若草のような緑の花弁で、萼の部分が小さな金色となっているものだった。
 そこに何か親近感にも似たものを覚えていると──丁度、倫太郎も別の一輪を見ている。
 それは艷やかな翠の葉が美しい、夜色の花弁だった。
 唯一無二の花を眺めながら、二人は歩いていく。
「来てよかったな」
「そう、思います」
 二人は小さく見合って。それからまたゆったりと景色を観ていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

キリカ・リクサール
アドリブ連携歓迎

ふむ…改めて見ても美しい景色だな
ようやく静かになったことだし、少しこの景色を見て回ろうか

月が輝く夜にだけ現れるとは何とも不思議な花だが…
この風景を見れば納得だな
月明かりに輝く花達は妖しくも美しい

っと…ふぅ…これは中々いい訓練になりそうだな

水面に漂う花達の上をジャンプで渡り、水に落ちないギリギリの所を連続で渡る
水に落ちたところで濡れるだけだが…程よい緊張感があって良いな
もちろん、花弁を潰さぬように念動力で柔らかく着地することも忘れん
子供の遊びのようだが、なかなか楽しめるな

私達が守れた景色か…そう考えると、さらにこの風景が愛おしく思えて来るな
もう少しだけ、この風景に癒されていようか



 水中から現れた月の花。
 それは今では湖面を広く覆っていた。
 全体を埋めるほどではないし、所によっては飛び石のようになっている。けれどそれがまたパッチワークのようで美しく、月の花と澄んだ湖面両方の清らかさを楽しめた。
「ふむ……改めて見ても美しい景色だな」
 キリカはその水辺に歩み寄り、見回している。
 慌ただしい戦闘の中では、直ぐ側にあっても堪能できなかった眺め。
「ようやく静かになったことだしな。少し見て回ろうか」
 折角の機会、それを十分に観賞してから帰るのもいいだろうとそう思った。
 それにしても、と。
 キリカはぷかぷか浮かぶ月の花を見下ろす。
「月が輝く夜にだけ現れるとは何とも不思議な花だが……」
 ただ、この風景を見ればそれも納得できる気がした。
 月明かりに誘われて水中から昇ってくる──そんな謂れに共感できるほど、今宵は明媚。増して月明かりに耀く花達こそ、妖しくも美しいから。
 こんな夜にこそ美しいものが現れてしかるべきなのだろう、と。
 キリカは早速その花の一つに乗ってみることにした。
 まずはゆっくりと自身の体重をかけてみる。するとぱしゃりと僅かな水音が鳴って花弁が少しだけ沈み──キリカの体をしかと支えていた。
「乗るだけでなく、走っても問題はなさそうだな」
 思うと、キリカはすぐに実践。
 最初の花から少し離れた別の花弁へとジャンプして渡る。着地すると少々慣性で重心が不安定となるが──倒れる前にその勢いのまま他の花へ跳躍していった。
 ともすれば滑り落ちそうになるが、ぎりぎりのところで耐えて連続で渡っていく。
「尤も、落ちたところで濡れるだけだが……」
 それでも程よい緊張感があって良い。
「っと……ふぅ……これは中々いい訓練になりそうだな」
 一度止まって息をついて、小さな波の立った湖面を見つめていた。
 花弁を潰さぬように、念動力で柔らかく着地することも忘れていないから──花弁には傷一つ無い。
 一段落すると、キリカはまた跳ぶ。
 そして今度は急な方向転換も兼ねて、湖の中心を軸に行き来してフットワークを鍛えた。
「子供の遊びのようだが、なかなか楽しめるな」
 普段は経験出来ぬような足場だからこそ、そこに慣れることにも意義がある。
 こういった積み重ねが、戦場で想定外の環境に陥ったときの対応力、適応力に繋がっていくのだ。
 とはいえ単純に面白くもあり、キリカは暫しそれに興じた。
 少々息が上がる程度までこなすと、特に大きな花弁の一つに着いて休む。
「こういった場所で体を動かすのも悪くない」
 見回すと、足元に耀く月色ばかりではなく、岸に生える翠の草や小花、それに木立、多くの自然がこの景色を形作っていると判る。
 そしてそれを護ったのは自分達猟兵だ。
「私達が守れた景色か……そう考えると、さらにこの風景が愛おしく思えて来るな」
 そんな場所で過ごす宵は、格別だ。
 だから──もう少しだけ、この風景に癒されていようか。
 また遠くない内に新たな戦場に赴くことにもなるのだろう。だからこそ、守れた美しさと共に過ごそう、と。
 涼しい風が吹く中、キリカは幻想世界の宵を見つめていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

白斑・物九郎
●WIZ



『ワイルドハント』
『白斑・物九郎』

【17・10・18】
もう二年近く前の話になりますわな
俺めはこの二ツの言葉以外に記憶と呼べるような記憶も無く、いきなりキマイラフューチャーに「居た」
ま、神隠しっスね

ところで俺めには猟兵としての力、モザイク模様の空間を操るユーベルコードがあった
ワイルドハントの語にも準えて、だから狩りに生きるコトにした
そうして今に至る

今までも、これからも
ソレが俺めの存在証明で、生き方ですわ
――今回の幻獣狩りも、まあ悪くねえ狩りでしたわな


次元も跨いで、獲物を探して追って狩る
次はどこの世界に行きましょっかな

ココの湖面の月も、上を歩いてってみりゃどっか行けたりするんでしょうかや?



 月明かりを透かす澄明な風が、耳をやわく揺らす。 
 自然の薫りが鼻孔を擽る夜に、物九郎は暫し佇んでいた。
 時刻は深い夜になろうとしているけれど、景色は決して闇に閉ざされず。月の眩さが幻想世界の有り様を今もはっきりと見せていた。
 こんな夜には、自身が世界から世界へ渡る存在なのだと強く意識させられる。
 ──17・10・18。
「もう二年近く前の話になりますわな」
 仄かに風が強くなって、黒髪がさらさらと揺れて。少しそれを手で押さえて、物九郎はふとそれを思い出した。
 それは自分の知る限りの自身の原初。
 ──『ワイルドハント』。
 ──『白斑・物九郎』。
 物九郎はこの二つの言葉だけを携えて今の自身を得た。
 正確には、言葉以外の記憶らしい記憶が一切ないまま、いきなりキマイラフューチャーに自身として「居た」。
 それ以前のことはまるで霞かホワイトノイズ。自身がどこに居たか、どこかに存在していたか否かすら霧中のことだ。
「ま、平たく言えば神隠しっスね」
 物九郎はゆっくりと歩み出して水辺に近寄る。
 そして風に花の浮かぶ湖面が波立つのを見ながら、自己を得てからの短い記憶を辿った。
 記憶がないことで良いことも悪いこともあったろう。だが中でも特筆すべきは、物九郎に猟兵としての力があったことだ。
 モザイク模様の空間を操るユーベルコード──ワイルドハント。
 強力なまでのこの能力を、物九郎は自在と言ってもいいほどに使いこなすことが出来た。
 そこに如何な理由や端緒があるかは判らない。だがそれは世界の敵たるオブリビオンを倒すことが出来る程の力だった。
 故に物九郎は狩りに生きることにした──ワイルドハントの言葉にも準えて。
「で、今に至るってワケですわな」
 気ままに歩を進めながらそれを確認する。
 沈思黙考せずとも、記憶が朧の彼方でも、確かなことはあると。
 今までも、これからも。
 ──ソレが俺めの存在証明で、生き方ですわ。
「今回の幻獣狩りも、まあ悪くねえ狩りでしたわな」
 想起して呟く。
 敵のネックにあたる部分を素早く読み取り、それを敵に圧倒するための戦法に転化できたのは重畳だったろう。
 故にまた、次の狩りはどうしようかという思いが湧く。
 そうして次元も跨いで、獲物を探して追って狩る。
 それが己が辿る道。
「次はどこの世界に行きましょっかな」
 考えながら、ふと月の花の上に乗ってみた。
「ココの湖面の月も、上を歩いてってみりゃどっか行けたりするんでしょうかや?」
 ぷかり、ぷかり。
 淡く光る月色から月色へ、渡っていく。
 新たな獲物でもいればいいと、そんな思いを抱きながら──物九郎は夜の時間を過ごしていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リュカ・エンキアンサス
……さて、お疲れさま
後はふらりと、月をたどる旅にでもでようか
お邪魔しますって水中花の上にふわりと乗って
大丈夫。沈まない
自分でも確認したら、うさぎを追ってのんびりと歩き出す
急がずゆっくり。うさぎを見失ったらそのときはそのときで
水の中の月を覗き込んだり、
時々休憩したりしてゆっくりと過ごすよ
寝転べそうなら寝転びたいけれども、流石に無理かな
座るくらいなら、出来るだろうか
ぼんやりと空を見ていたら、ここがどこかわからなくなってしまいそうだ
そういうのも……たまにはいいかもしれないね
何せ、ちょっと疲れたから
のんびりぼんやり、月でも見ながら
明日の朝ご飯は目玉焼きもいいかもしれないな、なんて考えておこう……



 お疲れさま、と。
 皆に挨拶をして歩み出したリュカは、改めて宵の幻想世界を眺めていた。
 パール色の月が空と水面に浮かんで、藍色の夜をやわらかに照らしている。風には自然の草花の匂いが涼しさに溶け込んで、爽やかな香気を作っていた。
 そんな景色に誘われるよう、リュカはふらりと水辺へ歩を伸ばし。
 ──月をたどる旅にでもでようか。
 淡く耀く湖面の花を、目の前にしていた。
「不思議な花……」
 世界を旅すれば、様々な不可思議と出会うことがある。月夜にだけ水中から顔を出す花──これもまたそんな一つだという気がした。
 大きく開いた花弁はふわふわと紺青の水面を揺蕩って、風に吹かれても沈む様子はない。
「お邪魔します」
 まるで天頂に昇った空の月のようだと。そんな思いを抱かせる花弁に、リュカはふわりと乗っていた。
 空中に足を置いたみたいな感覚が訪れて、それから小さな波の上下を感じる。
 ゆるい風にほんの少しだけ流される感触もあって、確かに地面にいるときとは全く違う気分だ。
「……大丈夫。沈まない」
 それを確認すると、ちゃぷ、ちゃぷ。
 静かな音を立てて花を進むうさぎを見つけて──リュカも追う形でのんびりと歩き出した。
 月色の花は湖面全体を覆っているわけではない。
 ところどころ途切れていたり、曲がった道のようになっていたりして、うさぎはそこをぴょんと跳んだり、分かれ道で迷ったりしながら歩んでいる。
 リュカは急がずゆっくり、その後をついていく。
 そうすると岸から離れて周りが全部水面になり、遮るものもなくて……宇宙、なんて言葉をふと連想する景色。
 水の中を覗き込むと、湖面の月とも空の月とも違う、艷やかな月が垣間見えてそれもまたひときわ美しかった。
 休憩しながら進んでいたから、うさぎはもうどこかに行ってしまったかと思っていたけれど──ふと見ると、うさぎは止まってこちらを見上げている。
 それからまたぴょんと跳んでは進み、時折リュカに振り返ったりしていた。
 遊んでいるのだろうかと、思いつつ。リュカも歩みを再開すると、そこに一層、花に満ちた場所があった。
 複数の花弁が集まり、時に重なって。幾つもの月色がきらめいている。
「ここなら、寝転べそう……」
 ぽむ、と手をおいて安定性を確認すると、リュカは早速横になってみる。
 すると微かに甘い香りが鼻先をくすぐって、快い浮力を感じた。
 月のベッド。
 その上でリュカはぼんやりと空を見る。
 ふわりとした感覚に、澄み渡った空。そんな眺めをじっと仰いでいると、ここがどこかわからなくなってしまいそうだ。
「こういうのも……たまにはいいかもしれないね」
 何せ、ちょっと疲れたから。
 ぷかぷかと、揺蕩いながら。
 のんびりぼんやり、月を見ながらゆっくりと静かな時間を過ごす。
 まんまるな形をずっと眺めていると──。
(明日の朝ご飯は目玉焼きもいいかもしれないな……)
 なんて考えも浮かびつつ。リュカは暫し淡いまどろみの中で、月の香りを感じていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ジャスパー・ドゥルジー
【狼鬼】
『かたわれ』で空を飛び辺りを見回す
戦闘の影響で崩れている場所があればUCで回復
折角の絶景だ、万全の状態で楽しみたいもんな
いやあ俺ってイイヤツ?
ザザの所に降り立ちながら笑う

ザザは行きたいとこある?
特になければ月面探索としないか
ここじゃなきゃ出来ねえ体験だろ

――あんたとこうしてのんびりすんのってなんだか新鮮だなァ
オブリビオンの方はまあそれなりだったが
やっぱあんたとコンビ組むのは楽しいねぇ
既に止血も済んだハートを指しきししと笑う

なんだろなあ、「不思議の世界に迷い込んだような」光景?
悪くないねえ
隣にいるのがあんたってのも
悪くない

草笛に随分気の抜けた音だなあと笑う
歌詞はもっと気が抜けてるって?


ザザ・クライスト
【狼鬼】

飛んで大地を癒すジャスパーを見上げながら一服

「悪くねェ長めだ」

戻ってきたやっこさんに、

「オツカレさん。今回は助かったぜ」

ジャスパーに礼を言う
少なくともコイツは悪ィ奴じゃねェと正直思う

「イイね」

提案にアッサリ頷いて歩き出す
ナルホド、確かに"ここ"でしかできないに違いない

「そりゃァオマエさんと連んでる時は大抵が荒事だしなァ」

だが、こういうの悪かないぜ
コンビを組むのもな

"月面旅行"を楽しみながら花と月を眺めて、次いでジャスパーを見る

「案外乙女チックだよな……」

可愛いコトを言ってやがる
思い立って草を千切って草笛を吹く
"カブトムシ"の歌がイイ、それもタックスマンだ
ピープーと情けない音が響いた



 高い空に浮かぶ月は深い宵でも世界を詳らかに照らし出す。
 故に視線を巡らすほどに、風に揺れる草花も、淡く波立つ水面も、さわさわと音を立てる木立もよく見えるから──。
「上から確認しとくか」
 ジャスパーは呟くと空を仰いでいた。
 それから『かたわれ』──翼を模ったタトゥーを文字通りの翼と成すと、ふわり。宙に浮かび上がり、風に乗ったような速度で翔け始める。
 長髪を靡かせながら、地面に荒れた箇所を見つけると、舞い降りて聖痕から光を零し治癒。まるで時間を巻き戻すよう、あたたかな癒やしで元の状態へと戻した。
 それから敵の攻撃で折れた木々を発見しても、同じく回復していく。
 草花も同じ。
 折角の絶景だから万全の状態で楽しみたいと。ジャスパーは戦いによって傷ついた大地をその聖なる力で癒やして巡っていた。
 そんな姿を、ザザは地面から見上げている。
 新しい煙草を指に挟み、今度は急ぐ必要もないからと悠々と火を点けて一服。ふうと煙を宙へ泳がせながら、その聖者の姿を仰いで。
「悪くねェ眺めだ」
 ふと言って、またスモーキーな香気を吸い込む。
 その紫煙の間を、ジャスパーは暫しの後に降下してきた。ひらりと着地するその表情は笑顔だ。
「いやあ、俺ってイイヤツ?」
「景色は実際元に戻ったみてェだしな」
 ザザは見回してそれを確認する。
 声音は軽いものだったが、少なくともコイツは悪ィ奴じゃねェ、と。ザザは正直にそんな思いも抱いている。
 それから彼に視線を流して礼を一つ。
「オツカレさん。今回は助かったぜ」
「あァ、こっちもな」
 中々楽しませて貰ったぜ、と。ジャスパーは言うと自分も視線を巡らせた。
 景色を眺めに行っている猟兵達の姿をそこに見つけて、瞳をザザへと戻す。
「ザザは行きたいとこある?」
「ン? 行きたいトコ、ねェ──」
「特になければ月面探索としないか。ここじゃなきゃ出来ねえ体験だろ」
 ジャスパーは歩を踏み出して水辺へ近づく。
 そうして湖面に浮かぶ花々を見やっていた。
 畔を訪れた直後にはそれほど出ていなかった花も、今では数え切れぬほど水面に浮いている。風に煽られて小さく水音を立てながら、うっすらとした輝きを見せていた。
「イイね」
 と、ザザも提案にあっさりと頷いて歩み寄っている。というのも──。
「ナルホド、確かに"ここ"でしかできねェな」
 岸に隣接したその花の群に足を乗せてみると、まるで重力が失せたかのような感触を覚えたからだ。
 ジャスパーもそんなザザの肩に手を置き、借りるぜ、と。言って隣の花に降り立って水上を歩み始めていく。
 とぷり、とぷり。
 揺蕩う花の上の歩みは自然とゆっくりになり、文字通りの月面のよう。
 遮るものもない湖上で、ジャスパーはふと声を零した。
「──あんたとこうしてのんびりすんのってなんだか新鮮だなァ」
「そりゃァオマエさんと連んでる時は大抵が荒事だしなァ」
 ザザは想起して呟く。
 思い起こされるのは硝煙と爆ぜる弾丸、奔る刃と血潮。そんな光景をよぎらせつつ、ザザは明媚な景色を改めて眺める。
「だが、こういうの悪かないぜ」
「あぁ。オブリビオンの方はまあそれなりだったが──」
 と、その声音にジャスパーも愉快げだ。
「やっぱあんたとコンビ組むのは楽しいねぇ」
 言って、既に止血も済んだハートを指してきししと笑う。
「そうだなァ。コンビを組むのもな──もう痛みはねェのか?」
 ザザが軽くその痕に指を這わせてみると、ジャスパーは頷いた。
「残念ながらな」
 見下ろすそれは今では新たなタトゥーかペイントのようでもある。また別の仕事に行くことがあったら新しい柄でも描いてくれや、とジャスパーは声音に期待を含めていた。
 それからまた一歩一歩、花を渡っていく。
 月の色が水上に示す路。
 それが思いのほか幻想的で、ジャスパーは顎に手を当てた。
「なんだろなあ、「不思議の世界に迷い込んだような」光景? 悪くないねえ」
 不健康なおもてをほころばせてみせると、ザザも"月面旅行"を楽しみながら花と月を眺めて──ジャスパーを少々意外そうに見ていた。
「案外乙女チックだよな……可愛いコトを言ってやがる」
「そういうのもいいだろ?」
 ──ここで隣にいるのがあんたってのも、悪くない。
 そんなふうにジャスパーはまた浮遊感の中を進んだ。
 ザザもその後に続いて──ふと側面の岸に生える草を見やり、それを千切る。口元に当てると草笛にして音を鳴らし始めた。
 "カブトムシ"の歌、それもタックスマンがイイとメロディを奏で始めると、ビー、プー、と情けない音が響いた。
「随分気の抜けた音だなあ」
 ジャスパーが笑いを零すと、ザザも肩を竦めつつ八重歯を見せた。
「歌詞はもっと気が抜けてるさ」
 だからおあいこだ、と。
 力の抜ける音色を夜風に交えつつ。二人は今しばらく月の上を歩んでいく。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ユノ・フィリーゼ
空と地と。互いに咲いた二つの月
姿形は違うけれど、
抱く輝きも美しさも違い無く思えて

静夜を照らす優しい、ひかり
それに誰もが魅せられるのだろう
(…あの光の幻獣も、きっと)

咲いた月花にそっと、一歩
確かに地はある、のに
足もとは何処か覚束なくて
沈んで、浮かんで。ふわふわと
心弾ませる不思議なこの感覚を、私は知っている
(空の果てへ初めて踏み出した時を忘れた事は無いから)

―嗚呼、此処にも、あったんだね

愛した蒼空はひとつだけ
けれど、手の届くこの距離にも
異なる空は広がっているのだと

喜びと愛おしさと
心に幾つもの花が咲くのを感じながら
水面の空に咲く月の舞台を静かに踊る様に歩み行く
この夜に、この世界に、感謝を歌って



 眩しすぎる光が過ぎ去って、自然の宵が訪れた。
 風は透明な絹地のような肌触りで涼しさを伝え、さらさらと揺れる草花は優しく耳朶を撫ぜるよう。
 快い夜の帳。
 けれど決して世界は冥闇ではなく──蒼穹の少女はそこに光を見ていた。
 仰いで空色の瞳に映すのは、周りの空気までもを薄ぼんやりと煌めかす満月。そっと視線を落とすと眼に入るのは、水中からぷかりと顕れた煌めき。
 空と地と。
 互いに咲いた二つの月。
 どちらも清らかで、どちらも魅力的で。姿形は違うけれど、抱く輝きも美しさも違い無く思える。
 静夜を照らす優しい、ひかり。
 きっとそれに誰もが魅せられるのだろうと、ユノは衒わぬ心で素直に感じた。
(……あの光の幻獣も、きっと)
 昏い時間の海の底から、綺麗な耀きを見つけたのかも知れない。そうして魅せられるままに、この幻想世界の宵へと羽ばたいてきたのだろう。
 その眩さを、水底に還る前に少しでも感じることが出来たろうか。
 そうであればいいと少し思いながら。
 ユノは水辺から脚をのばして、咲いた月花にそっと一歩。触れるくらいに優しく静かに乗っていた。
 すると濃紺の水面に少しだけ漣が立って、花弁が僅かにだけ沈む。けれどすぐ後には、浮かぶ力が足元にまで伝わってユノを水上に留めた。
 他に支えの無い、湖面。
 けれど一歩、二歩と。歩んでも花は決して拒まず解けず、そこに道筋を作ってくれる。
 同時に特別な浮遊感は無くならない。
 確かに地はある。なのに足もとはずっと、何処か覚束なくて。
 沈んで、浮かんで。ふわふわと。
 ──心弾ませる不思議なこの感覚を、私は知っている。
 ユノは月の上を歩むに連れて、その気持を強くしていた。
 快くて、どこか掴みどころもなくて。でももっとそれに触れたいと思うその気持ち。
 それは自分が確かに抱いたことのある心だ。
(空の果てへ初めて踏み出した時を忘れた事は無いから)
 ──嗚呼、此処にも、あったんだね。
 懐かしいようで、けれどとても新鮮で。
 今も変わらぬ心持ちで居続けているからこそ、その感慨をまた抱くことが出来ることが嬉しかった。
 愛した蒼空はひとつだけだけれど。
 手の届くこの距離にも、異なる空は広がっているのだと。
 はらり。
 はらり。
 喜びと愛おしさと。月彩の花を見つめながら、心に幾つもの花が咲くのを感じる。
 胸の中で色彩豊かに広がるそれは、意識する程に鮮やかで。その気持ちが自分の中にあることを嬉しく感じさせる。
 そうして心の花を思いながら、ユノはまたとん、とん、と。水面の空に咲く月の舞台を静かに、踊る様に歩み行く。
 この夜に、この世界に、感謝を歌って。
 花の揺れるリズムにステップを踏み、麗しい風の伴奏に旋律を乗せて。美しき自然の中で、蒼の少女は月の色と共に歌い舞う。
 遥かな夜の空が、静かに暖かく。
 艷やかな月光を湛えてその姿を見守っていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年09月13日


挿絵イラスト