スタードロップ・ナイトビーチ
●きらきらの。
満天の星空なんてよく言うけれど。
ここの星は本当にたくさん、たくさんなんだよ。
夜、灯りがなくともほとんど不自由がないくらい。
でもね、いちばんのひみつは。
星が降ってくること。
あなたが、とある感情をいだくことが、条件だけれど――。
●ごあんない
「……皆さん、エンパイアウォーお疲れさまでした。一ヶ月に渡る、激しい戦いでしたね」
グリモアベースにてそう口を開いたのは、流れるような金の髪をふたつに結った女性だ。少し表情が硬いのは……緊張しているのだろうか。
「皆さんに、息抜きのご案内をしています。スペースシップワールドのリゾート船、『スタードロップナイト号』へのご案内です」
彼女――グリモア猟兵のヒャーリス・ノイベルト(囚われの月花・f12117)は、表情も声色もやや硬いが、紡ぐ言葉は丁寧だ。その内容を聞き、ああなるほど、だから彼女は水着なのかと頷く猟兵たち。
「……『スタードロップナイト号』の中はその名の通り、常に夜です。そして、たくさんの星が、空を彩っています」
ヒャーリスが映し出した映像では、夜空に星がひしめいている様子が見て取れた。だがぎゅうぎゅう詰めというわけではなく、満天の星空としての美しさを遺憾なく発揮できるレベルだ。
常夜の海には、灯りがなくてもある程度近くにいれば相手の顔が見えるくらいの明るさで星が輝いていて、波も管理されているので海に入っても危険はない。
もちろん、必要と思われる場所にはきちんと灯りは設置されており、その場にいる者が必要に応じて灯りをつけたり消したりして調整することも出来るという。
海辺ではバーベキューや花火などもできるし、喧騒から離れた場所に設置されたビーチチェアで波音と星の瞬きを静かに楽しむことも出来る。
軽食やデザート、飲み物などを楽しむ場所も屋外にあり、全体的に星空が楽しめる場所にある。
その理由は。
「この海では――星が降るそうです」
ヒャーリスの言葉を聞いた猟兵達は、首をかしげる。それって比喩ではなくて? と。
「えぇと……、比喩ではありません」
それって一大事じゃないの! と腰を上げそうになる猟兵たちを手で制して、彼女は続けた。
「その……いわゆる天体的な星ではなく、こう、一般的(?)な……」
彼女が言うには、たとえば小雨のようにぽつりぽつりと。
例えば雪のようにはらはらはら、と。
例えば雫のようにぽとり、と。
ここの夜空から降る星は不思議と触れても痛みは無く、それでいてその光景はとても幻想的で美しいのだとか。
「ただ、降り方に違いが在るのは、星が降る条件が関わっているようです」
条件――そう聞くとなんだかかしこまってしまいそうになるが。
「そこにいる人が、大小問わず『幸せ』を感じた時――『楽しい』『嬉しい』など、プラスの感情をいだいた時に、星が降り注ぎます」
それはまるで、その『時』を彩るかのように。祝福するかのように。星は降り注ぐ。
自身にそのような感情をいだいた自覚がなくとも、星が降ることがあるという。どのようなシステムになっているのかは流石に秘されているとか。
「そしてその降った星なのですが、海面や砂浜などの地面に落ちた後、カタチとして残るのです」
色も、形も、大きさも数も様々なそれは、まるでその時いだいた『想い』の形のよう。恋人同士、仲間同士の記念にと持ち帰る者も多い。
ひとりで星空を見て過ごしていた者が、ふと誰かを思って心が暖かくなった時にも降り注ぎ、それを相手に贈ったという話もある。
「……というわけで、興味のある方は一度、行ってみませんか?」
自分も行くつもりである、とヒャーリスは告げて、ティアラ型のグリモアを取り出した。
篁みゆ
※このシナリオは【日常】の章のみでオブリビオンとの戦闘が発生しないため、獲得EXP・WPが少なめとなります。
こんにちは、篁みゆ(たかむら・ー)と申します。
リゾート船のひとつ『スタードロップナイト号』は、常夜の、星の瞬く場所です。
基本的によほど無茶でない限り、海でできることはできますし、食べ物も道具もだいたい売っています。
星が降る条件は、OPを御覧ください。基本的に皆さんに星の降る描写を入れます。
降って形になった星はお持ち帰りいただけますが、シナリオとしてのアイテム発行はございません。後日アイテム化していただくのは大丈夫です。
※水着でなくともOKです。
●1章のみの日常フラグメントです
したいことを絞ったプレイングのほうが濃い描写ができると思います。
提示されているP/S/Wの選択肢は気にせず。
ワイワイでもラブラブでもシリアスでも心情でも。
ただし公序良俗に反したり著作権的なものに触れるようなものは採用できないことがあります。
年齢制限のかかるようなラブラブは直接的な描写はいたしませんが、らぶらぶな雰囲気をマシマシ予定です。
アルコールはステシ年齢が20歳以上の方へのみ提供させていただきます。
●星の指定について
降る星、形となった星の色や形、大きさや数にこだわりがある場合はご指定ください。ご指定のない場合はお任せor具体描写なしとなります。
また、後日加工して別の色形にしても大丈夫です。
●ヒャーリスについて
ひとりでフラフラしていると思いますので、お声掛けいただけましたら喜んで顔を出させていただきます。
初対面の方でも、お声掛けいただければ話し相手くらいにはなれるかと。
●プレイング再送について
日常フラグメントという関係上、万が一ご参加いただける方が多くなった場合は、プレイングの再送をお願いする可能性がございます。
基本的にプレイングを失効でお返ししてしまう場合は、殆どがこちらのスケジュールの都合です。ご再送は大歓迎でございます(マスターページにも記載がございますので、宜しければご覧くださいませ)
●お願い
単独ではなく一緒に描写をして欲しい相手がいる場合は、お互いにIDやグループ名など識別できるようなものをプレイングの最初にご記入ください。
※プレイングの受付は、9/3(火)8:31~です。受付終了日時はマスターページやTwitterでお知らせいたします※
第1章 日常
『猟兵達の夏休み』
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POW : 海で思いっきり遊ぶ
SPD : 釣りや素潜りに勤しむ
WIZ : 砂浜でセンスを発揮する
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
黒鵺・瑞樹
アドリブOK
海に入るつもりはないから適当な軽装で。
人気を避け、ドリンクを片手に、ぼーっと何をするわけでもなく夜空や海を眺めてる。
戦争はホント疲れたしな。
しかし星が本当にふるのか?
ふることに疑問を持ってるわけじゃない。どちらかというと俺のとこに降るわけないと思ってる。
この一か月いろんな事があって。
二度と人を想うまいと思ってたのに。気が付いた時にはなにもかも遅すぎて。
目の前のエンパイアの危機を何とかしたくて心に蓋して頑張って来たけど、それも終わった今何もかもがしんどい。
自分の愚かさに吐き気がする。
こんなこんがらがった気持ちの整理を付けたらなぁと思う。
ただ確実なのは相手の幸せを願ってるって事だけだ。
ああこんなにも、夜空は星で満ちているというのに、俺の心は――。
* * *
「……はぁ……」
吐いた息はまるでため息のようで。しかもこれが初めてではない。しかも本人――黒鵺・瑞樹(辰星月影写す・f17491)には、自身がため息を付いているという自覚は薄い。
常夜の船内で、満天の星空を見上げるその手には、ウイスキーを入れたピューター製のスキットルが握られている。
何か飲み物でも買っていくかと店に寄ったものの、ビールで開放感を味わう気には到底なれず。底に船の名が刻印されているというスキットルを買い求め、中にウイスキーを入れてもらって浜辺へとふらり。
海に入るつもりはなかったので波打ち際には寄らず。それでいてなんとなく、無意識のうちに喧騒を避けて歩いていた。
どこかを目指していたわけではない。ただ、波音とともに耳に入る他人の声を、今だけはすべてシャットアウトしたい思いだった。
――疲れた。本当に疲れた。
何に? と問われれば、とりあえず『戦争に』と答えるだろう。一ヶ月の間、激戦を繰り広げたエンパイアウォーは、確かに猟兵たちを疲弊させていたからだ。
けれどもそれは、間違ってはいないが正確でもない。
軽装で砂浜を歩いていた彼は、足を止めた。
――疲れた。疲れた……。
胸を占める思いに身体が応えるように座り込んだのは、砂浜の端に近い岩場だった。よほどの理由がなければ、他の者はこんなところまでこないだろう。人々の声も波音に砕かれて、ほとんど気にならない。
腰を下ろした瑞樹は、砂浜に足を伸ばして岩を背を預ける。何気なしに選んだ場所だったが、不思議と寄りかかった岩には人の背中にフィットするような小さなくぼみがあり、落ち着く。
来た方向の景色は、砂浜に出っ張った岩に邪魔されて見えない。反対側は砂浜が終わると岩と海水が遊んでいて、まるでここはデッドスポットのようだった。
「……ふぅ……」
なんとなく、ようやく落ち着けた気がして。息をついてスキットルからウイスキーを一口。
酔える気はしない。けれども酔っ払いがするように、地に座り込んで夜空と海を眺める。
別に、何かを見ているわけではない。見ようとしているわけでもない。何をするでもなくぼーっと、ただ視線を向けているだけ。
何も考えたくない。けれども思いは自然と浮かんでくる。
この一ヶ月、戦争だけではない、本当にいろいろな事があった。
(「もう二度と、人を想うまいと思ってたのに――」)
気がついた時には、何もかも遅すぎたのだ。
想いが生じるのと自覚するのは必ずしも同時ではない、なんてどこかで読んだ本に書いてあった気がする。
想いが浸潤し、発露してから自覚することもあると『識って』はいた。だから。
目の前に広がった、エンパイアの危機をなんとかしたいという『思い』で『想い』に、心に無理やり蓋をして、我武者羅に頑張ってきたけれど。
「……、……、――……」
それも終わった今、瑞樹を満たすのは、再構築したとしても身体のどこかに残る疲労感と――心が腫れ上がったような感覚。
何もかもがしんどくて、心は表面張力が働いているかのように溢れる寸前なのに、絞り尽くされた後のような乾きと虚無感が同居していて。
考えれば考えるほど、辛くなるだけで。
本当に自分が求めるものへ近づきたい気持ちと、なんだかんだと理由をつけてそれを強引に押し止める気持ち。両者の拮抗が――酷く気持ち悪い。
(「……自分の愚かさに、吐き気がする」)
矛盾と葛藤で雁字搦めになり、どうやってもほどけぬほどこんがらがってしまったこの気持ち。
嗚呼、何もかも投げ出して、何もかも忘れてしまいたい。
ふと、『認識した』夜空には、幾多の星が瞬いていて。グリモア猟兵の言葉を思い出した。
「……星が本当にふるのか?」
浮かんだ疑問が小さな声となって空へと昇ってゆく。星が降ること自体に疑問を持っているわけではない。星が降るという条件が問題なのだ。自分のところになど、降るわけない。こんな気持ちの自分など、その条件に当てはまらない、そう思うからだ。
もう一口、ウイスキーを口に含み、来た方向の景色と自分を遮断してくれている岩へと、寄りかかる。左半身に重心をかけてもたれ掛かったその岩は、夏だというのに不思議とひんやりと感じた。
(「ああ、でも――……」)
その冷たさが、瑞樹の思考の一点をクリアにする。
こんがらがった気持ちの中で、ただひとつ確実な想いが、絡みつく海藻から逃れて浮かび上がってきたようだ。
相手の幸せを願ってる――その揺らがぬ想いが、ただひとつ、確実なもの。
ヒュッ――……一条の、細い細い光が瑞樹の視界を横切って。
無意識にそれを追えば、岩にもたれかかる自身の視線の先、砂の上に光は落ちて。
光が終息したのちの砂の上には、仔龍の手におさまるほどの大きさの、灰色の珠があった。先程まではなかったそれは、水星の色をしつつも空からの星の光を受けて、時折キラリと煌く。輝く、あるいは光を反射する粒子がいくらか表面に混ざっているのだろう。
けれども確かなことは、それが瑞樹の『想い』に惹かれ、降ってきた星の、形となったものだということ。
(「まるで、俺の心の中みたいだな」)
手を伸ばしてそれを見れば、灰色は様々な想いの色が混ざりすぎた結果を表しているようで。散りばめられた輝きは、恐らく相手の幸せを思う心。
多色の絵の具を混ぜ合わせれば、黒になる。けれどもこの想いの欠片が灰色なのは、まだ、絡まった色を紐解くことが出来るという可能性を示しているのかもしれない。
瑞樹自身には、まだそんな未来は想像すらできないけれど。そんな余裕はないけれど。
もしかしたら時間が、色を解いてくれるかもしれない――そんな微かな期待と願いを、無意識にいだいた。
大成功
🔵🔵🔵
ニコリネ・ユーリカ
マブダチのパウルさん(f04694)と
私、この夏に20歳になったの
大人の仲間入り記念に、乾杯させて下さいな
先ずはパウルさんオススメの一杯を
グラス縁に腰掛けた檸檬のお月様が瀟洒なカクテル
こんなお酒が似合う女性になりたいわ
私、パウルさんみたいに優しくて立派な大人を目指します、ので
これからも宜しくお願いします!
夜色の酒精をこくり呑み込んで、染み渡る甘美に咲んで
えへへ、美味しい(ほよん)
夜空を仰げば流星がキラリ
あの輝きが今の気持ちを代わってくれるようねぇ
んンッ大きいわ! こっちに向かって落ち…逃げてー!!
浜辺にスライディングして回避した後、お星様を観察
(色や形はおまかせ)
両腕に抱えてお持ち帰りしましょ
パウル・ブラフマン
マブダチのニコちゃん(f02123)と遊びに来たよ!
ハタチになったお祝いをビーチでするんだ♪
眩しい水着姿ももうすぐ見納め。
名残惜しさを感じつつ
菫のリキュールを使ったカクテルを運んでいこう。
ニコちゃんと飲むなら
お花にちなんだお酒がいいかなって想ったんだ♪
オレが優しい?…照れちゃうなァ。
ニコちゃんは今でも
十分魅力的だけれど…これからも応援してるよ!
オレの方こそヨロシクね☆かんぱーい♪
はにかむ間に明るむ夜空。
落星に気付いて
咄嗟にニコちゃんを庇おうと身体が動いて
一緒にスライディング回避ィ!
ちょいダイナミックな空からの贈物をふたりで手にとって。
(形状・色等お任せ)
超綺麗だね…!うん、大事に持って帰ろう♪
輝く星の下、浜辺には白いテーブルと2脚の白い椅子が置かれている。近くに街灯をつけるスイッチがあるが、街灯の明かりがなくともその椅子に座る彼女のしなやかな肢体は、星の煌めきによって夜の暗さの中でも浮かび上がって見える。
もうすぐ夏は終わりだ。眩しい水着姿ももうすぐ見納め。名残惜しさと比例するかのように、彼女のシンプルな黒の水着姿が鮮やかに見えた。
「ニコちゃん、おまたせ!」
カクテルグラスを両手に浜辺に降り立ったパウル・ブラフマン(Devilfish・f04694)は、ゆっくり彼女の元へと歩み寄る。気持ちは急いていたが、こぼしてしまわないように、しっかり砂を踏んで。
「パウルさん、ありがとう」
マブダチの声に振り向いたニコリネ・ユーリカ(花売り娘・f02123)は、どーぞと自分の前へと置かれたカクテルグラスにきらきらと瞳を向けた。
この夏に二十歳になったばかりのニコリネ。大人の仲間入り記念にとパウルにオススメの一杯をねだれば、ハタチになったお祝いに、とパウルが選んだのは、ニコリネの瞳の色と同じ、菫色の一杯。
「とても綺麗だわ」
彼女がじっと見つめるそのグラスの中には、星明かりを受けてブルーバイオレットに輝く海。そのグラスの縁に腰を掛けたレモンの月が、瀟洒な雰囲気を醸し出している。
「ニコちゃんと飲むなら、お花にちなんだお酒がいいかなって想ったんだ♪」
「このお酒は、お花にちなんでいるの? 確かにこれは……ニオイスミレの香りかしら。とてもいい香りね」
「さすがニコちゃん! 菫のリキュールを使ったカクテルなんだよ♪」
パウルが選んだのは、バイオレットリキュールを使用して作られた、ブルー・ムーンというカクテルだ。作り手によって青みが強いものもあるようだが、今ここにあるカクテルは、綺麗な紫色を帯びていた。
「こんなお酒が似合う女性になりたいわ」
うっとりとグラスを見つめて呟いたニコリネ。なんとなく、もったいないのと恐れ多いのとで見つめるだけだったが、思い切ってグラスの足へと手を伸ばして。
「私、パウルさんみたいに優しくて立派な大人を目指します、ので、これからも宜しくお願いします!」
軽く掲げるように持ち上げて、パウルに視線を移せば。
「オレが優しい? ……照れちゃうなァ」
はにかむように告げたパウルも、同じようにグラスを掲げて。
「ニコちゃんは今でも、十分魅力的だけれど……これからも応援してるよ!」
ふたりでグラスの高さを合わせ。
「オレの方こそヨロシクね☆ かんぱーい♪」
「乾杯!」
微笑みあって、グラスを傾ける。
夜の色と混ざりあった酒精をこくりと飲み込めば、『飲む香水』の名の通り、鼻に抜ける菫の香り。染み渡る甘美に、ニコリネの笑顔が咲いた。
うっとりと、初めてのお酒とパウルの心遣いに笑みを咲かせた。
そんな彼女の笑顔を見て、嬉しくてはにかんだ。
「あの輝きが今の気持ちを代わってくれるようねぇ」
そう、その通り。
ふたりの視界にキラリ、他の星よりも強く瞬いたものがするりと夜空を滑り始め――。
「んンッ、大きいわ! こっちに向かって落ち……逃げてー!!」
「ニコちゃ……わぁぁぁぁっ!?」
咄嗟に浜辺にスライディングするふたり。椅子は倒してしまったものの、まだ夜色を残すカクテルグラスだけは、倒さずにしっかりとテーブルに置いてきていた。
「……、ニコちゃん、大丈夫?」
彼女を庇おうと咄嗟に動いた身体。腕の中の彼女を潰してしまっていないかと、パウルはそろりと彼女の様子を窺う。
「ちょっとびっくりしたけれど大丈夫よ、ありがとう、パウルさん」
互いの無事を確認したふたりが視線を向けるのは――ここからでも手を伸ばせば届きそうな位置に降ってきた、ソレだ。
星が降る、降ってくる途中の星に触れても痛くはない、そう聞いてはいたけれど。自分たちに向かって何かが落ちてくるとなれば、本能で回避してしまうというもの。
「あれがオレたちの星?」
「そう、ね」
そろり、起き上がってゆっくりと近づいて手を伸ばせば、指先が触れたそれはやや温かくて。
丸みを帯びた★型のそれは、小さなビーチボールほどの大きさの立体。しかもふたつ、まるで手を繋いでいるようにくっついて浜辺に座していた。
「綺麗。菫色ね」
「超綺麗だね……!」
菫色をしたそれは、半透明でキラキラと輝いている。
「ひとつずつ、両腕に抱えてお持ち帰りしましょ」
まずはひとつ、そっと持ち上げてパウルへと差し出すニコリネ。
「うん、大事に持って帰ろう♪」
パウルがそれを腕に抱けば、人肌のような温もりを感じる。
「今日の記念ね」
ニコリネもそれを抱いて。
そしてまた、ふたりで笑んだ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
火神・臨音
【比翼連理】
水着:紺のサーフパンツに黒のビーチサンダル
少し離れた場所の少し大きめのビーチチェアに二人並んで背を預け
ソフトドリンクを片手に星を眺めつつお喋り
形になって残る星なんて不思議な話だな
それを見る度に、抱いた想いを思い出せる
まるで誓いの証みたいだ
隣で笑うアイナの姿を見て思う
大きな悲しみに打ちひしがれてた俺の心に
一筋の光を届けてくれた彼女への愛
自分でも信じられない位に大きく深くなって
想い伝え結ばれてからも
その想いはもっと強くなってるなと
『護りたい、お前の全てを』
光が落ちた先に二人で駆け寄り
拾い上げた星をアイナに手渡し改めて誓う
この手、決して離さない
言の葉と共に贈るのは約束のキス
アドリブ可
美星・アイナ
【比翼連理】
水着:水着イェーガーカード参照
ビーチチェアに背を預け
ソフトドリンクを片手に星を眺めつつ
臨音とお喋り
形になって残る星?って
初めて聞いた時は不思議だったわ
でもその輝きを見る度
自分のあの日抱いた気持ちを思い出せる
それって凄いなって
臨音の姿を見て思いだすを
初めて会った日の事
今からは想像出来ない程
身も心もボロボロに傷ついてて
まだ恋を知らなかった私だったけど
それでも彼を助けたいと必死になった
好きを伝え結ばれた今思う
私の心の鍵
開けてくれたのは貴方だったと
『貴方に会えて良かった』
光が落ちた先に二人駆け寄り
拾った星を臨音と交換しながら応える
離さないわ、私も
贈られた甘いキスをそっと受け止めて
アドリブ可
夜の闇の中、大空に輝く星たちの明かりで互いの姿がよく見える――万が一明かりなど一切ない真っ暗闇でも、互いを見失わない自信はあるけれど。
賑わいから少し離れた浜辺に置かれた大きめのビーチチェア。身を寄せ合えば、ふたりで背を預けることもできた。
紺のサーフパンツに黒いビーチサンダルを履いた火神・臨音(火神ノ社ノ護刀・f17969)は、フリルの付いたチューブトップとショートパンツを合わせた水着を纏う美星・アイナ(解錠の音は新たな目覚めの音・f01943)と共に、ソフトドリンクを片手にそっと肩を寄せ合っている。
喧騒から遠く、ふたりの距離も近いから、囁き――否、吐息さえ聞こえてしまいそう。
「形になって残る星なんて不思議な話だな」
「ええ。形になって残る星? って、初めて聞いた時は不思議だったわ」
他愛のない会話かもしれない。けれどもまるでそれが儀式であるかのように、ふたりはそっと言葉を交わし合う。
「でもその輝きを見る度、自分のあの日抱いた気持ちを思い出せるってことよね。それって凄いなって」
素直に感想を口にするアイナに笑みを向け、臨音が紡ぐのもまた、思ったままのこと。
「それを見る度に、抱いた想いを思い出せる――まるで誓いの証みたいだ」
「誓いの証――素敵ね」
自分の笑みに返すように笑うアイナ。その姿を見、触れている部分からその熱を感じていると、自然と臨音の心に浮かんでくる思いがあった。
(「大きな悲しみに打ちひしがれてた俺の心に、アイナへの愛は一筋の光となって届いて」)
悲しみの闇は完全に消えることはない、すべて消し去って忘れてしまうことはないけれど。けれども最初は一筋でしかなかったその光は、今は臨音自身でさえ信じられぬほどに大きく、深くなっている。
想いを伝えて結ばれた――けれどもそれで終わりではなかった。その後も、その想いは現在進行系でもっともっと強くなっている。
自分を見つめる思色(おもいいろ)の瞳を見つめ返し、アイナが思い出すのは彼と初めて会った日のこと。
彼は、今からは想像もできないほどに、身も心も深く激しくボロボロに傷ついていた。
そんな彼を見たアイナの心に浮かんだひとつの想い。
(「まだ恋を知らなかった私だったけど……それでも彼を助けたいと必死になったわ」)
好き。その想いを伝えあって結ばれた今だからこそ、心の底から思う。
(「私自身さえ知らなかった、私の心の鍵――開けてくれたのは、貴方だったのね」)
どちらからともなく、互いの頬へと手をのばしていく。
「貴方に会えて良かった」
「護りたい、お前の全てを」
触れた指先から感じる体温は、不思議と、肌を重ねたあの時のように熱を持っている――。
ああ、貴方が隣にいて。
ああ、お前が隣にいる。
カチリ、欠けていたピースがはまった安心感と幸せは、今この瞬間も続いている。
キラリ、夜空で星が、一層強く瞬いた。
そして尾を引いた光が、ふたつ並んで夜空を滑り――。
「あれね!」
「行こう」
光が落ちた砂浜へとふたりで駆け寄れば、キラリキラリと輝くそれは、透明度の高い綺麗な紅玉色をしていて。
手のひらに乗るサイズのそれを、それぞれ拾って星の光にかざせば。
「……鍵?」
「錠、か?」
不思議とその『カタチとなった星』の中に、模様のようなものが見えたのだ。例えるならば、琥珀の中に閉じ込められたそれのような――。
「アイナ、手を」
臨音に請われて差し出した手に、彼の拾った『星』が乗せられる。
「じゃあ臨音、貴方も」
アイナも彼の手に、自身の拾った『星』を握らせる。そんな彼女の手を、臨音はそっと両手で包み込んだ。
「この手、決して離さない」
告げる誓いの言葉。彼を見上げるアイナもまた、そっと唇を動かして。
「離さないわ、私も」
互いの瞳に吸い込まれるように、互いに引き合うように、ふたりの距離は縮まってゆき――重なる唇、甘い口づけ。
この、星々を証人として立てられた誓いが破られることは、未来永劫ないだろう。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
榎・うさみっち
【千夜子(f17474)と!】
よし千夜子!花火しようぜー!
この星空に負けないくらいピカピカにしてやるのだ!
ロケット・線香・ナイヤガラ等々
ありとあらゆる玩具花火を用意
更に【こんとんのやきゅみっちファイターズ】も召喚!
人数は多い方がより楽しさもアップだ!
花火の光で文字を書くようにぐるんぐるんと振り回してみたり
…そうだ!千夜子、やきゅみっち達と花火しといて!
俺は少し離れてスケブセットを取り出し
灯りを確保して早業で絵を描き始める
星空をバックに満点の笑顔で花火を楽しむ千夜子の姿!
描けた絵は千夜子にプレゼント!
この世に1枚のうさみっち先生直筆の絵だぞ!
そんな時間を過ごしていたら
頭の上にコツンッとお星様が!
薄荷・千夜子
うさみっち(f01902)君と
わー!花火!!やりますやります!
ふふふ、盛大にやってやりましょうね!
わぁ、やきゅみっち君も一緒で賑やかになりますね
負けじと両手に花火を持って円を描いたりと楽しみます
うさみっち君がお絵かきタイムとのことなのでやきゅみっち君たちとロケット花火を打ち上げてみたりねずみ花火できゃっきゃと逃げ回ってみたりしながら遊びます
わぁ、お絵描きのスピードも早いですね……ってとても綺麗に描いてくださってるー!
わぁわぁ、大事にしますね!
あ、星も降ってきましたね……こちらも綺麗
そうだ!ではお返しに星に破魔の力を込めてお守りになりますようにとプレゼントです!
「よし千夜子! 花火しようぜー!」
「わー! 花火!! やりますやります!」
星々の輝きにも負けぬ元気な声が浜辺に響く。
「この星空に負けないくらいピカピカにしてやるのだ!」
「ふふふ、盛大にやってやりましょうね!」
きちんと水の入ったバケツを用意した榎・うさみっち(うさみっちゆたんぽは世界を救う・f01902)と薄荷・千夜子(鷹匠・f17474)の手には、古今東西の花火が大量に入った袋が! 手持ち花火だけでなく、ロケット花火にねずみ花火、置いて着火するタイプの噴き出し花火など、あらゆる玩具花火が揃っているのだ。
「人数は多い方がより楽しさもアップだよな!」
そう告げたうさみっちが召喚したのは、野球服姿のうさみっちの一団である。やきゅみっちファイターズのやきゅみっちたちが、わらわら、わらわら、わらわら。
「わぁ、やきゅみっち君も一緒で賑やかになりますね」
突然現れたやきゅみっちたちにそんな感想を述べられる千夜子は、以前にもやきゅみっちたちをみたことがあるのか、それとも彼女が大物なのか。なにはともあれまずはみんなで手持ち花火に火をつけて。
「綺麗だろー!」
うさみっちが、花火の火で文字を書くようにぐるんぐるんと振り回せば、やきゅみっちたちも羽ばたきながら真似をするように花火を動かして。
「もう~、危ないですよー!」
と言いながらも千夜子の声は明るい。近くに他の利用者がいないことを確認して、負けじと両手に花火を持って円を描く。
光の尾が、文字や模様を描き出すのは刹那。けれども刹那的だからこそその美しさは増し、それに惹かれるのである。
「……そうだ! 千夜子、やきゅみっち達と花火しといて!」
「……? わかりました!」
その様子を見て、うさみっちは閃いた。その閃きを実行に移すべく、手にしていた、役目を終えた花火をバケツに突っ込んで、千夜子たちから少し離れた位置で街灯のスイッチを入れた。
明かりを確保して取り出したのは『うさみっちスケブセット』である。それを使って描くのは、今目の前の光景――。
「わー、すごいですねー!」
「きゃっ!? 全部私の方へ来てしまいましたっ!」
「やきゅみっちくんたち、火をつけたらぴゃーって離れてくださいね!」
ロケット花火にねずみ花火、噴き出し花火でやきゅみっちたちと遊ぶ千夜子の表情は、くるくる変わる。けれども共通しているのは、どれも笑顔だということ。
「……よしっ!!」
早業を駆使して描き上げたその絵に、うさみっちは満足げに頷くと、道具をささっとしまって千夜子の元へ。
「千夜子、描けたぞ」
「わぁ、お絵描きのスピードも早いですね……ってとても綺麗に描いてくださってるー!」
うさみっちが描き上げたのは、星空をバックに、満点の笑顔で花火を楽しむ千夜子の姿だ。
「これは、千夜子にプレゼント!」
「わぁわぁ、大事にしますね!」
思いがけぬプレゼントに、笑顔になる千夜子。その笑顔が、やきゅみっちたちと花火をしている時以上に輝いている事に気がついたうさみっちは。
「この世に1枚のうさみっち先生直筆の絵だぞ!」
照れ隠しなのか、腰に手を当ててふん、とふんぞり返った。
すると――。
ヒュッヒュッ……。
星が一際強く瞬いたと、ふたりが認識するよりも早く――それは降り注いだ。
コツン、コツンコツンコツンコツンコツン……。
うさみっちの頭の上に続々と降り注いだ星は、話に聞いていた通り痛くはないけれど。フェアリーである彼が抱えられるほどのサイズの★型のカケラが、たくさん降り注いで浜辺へと着地してゆく。
「ぴゃっ……お、多いな!!」
着地したカケラはパステルカラーで彩られていてとても綺麗だ。人間サイズの瓶に入れれば、金平糖みたいに見えるかもしれない。
「あ、星も降ってきましたね……こちらも綺麗」
パステルカラーの流星雨を見つめる千夜子の視界に入ったのは、うさみっちの頭を経由せずに彼の後方へと落ちた星のかけらだ。たくさん落ちたそれよりも明らかに大きいカケラに駆け寄ってみれば。
「わわわっ……!」
手を握れば中におさまるサイズの天色(あまいろ)のカケラが落ちていた。それを拾ってよく見れば、クリアな天色のその中には、雲のような模様が少し閉じ込められていて。まるで、本物の空を切り取ったカケラのようだった。
「そうだ!」
ピンっと閃いた千夜子は、やきゅみっちたちと共にカケラを拾い集めているうさみっちへと駆け寄って。
「うさみっち君! これを」
「ん~?」
「私の星のカケラです。お守りになりますようにと、破魔の力を込めました。お返しにプレゼントです!」
握りしめて力をこめた天色のカケラを差し出した。
「いいのか?」
「もちろんです! あ、でもこのままでは持ち歩きにくいでしょうから、袋に入れたり身に付けられるように加工した方が良いかもしれませんね」
千夜子の掌の上の空を見つめるうさみっちは、自然と笑顔を咲かせてゆく。
「ありがとな、千夜子!」
その笑顔が、自身の描いた千夜子の満点の笑顔に負けずとも劣らないことに、うさみっち自身は気づいていない――。
ああ、また、星が降ってきそうだ。
大成功
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出水宮・カガリ
ステラ(f04503)と
最近は戦争で忙しかったからなぁ
肉体は回復できても、本体的な意味で今回は結構削れたから
ゆっくり、ごろごろしたくもなる
ステラが膝を貸してくれる(膝枕)、というので
浜辺でそのまま、は、ちょっと痛そうなので、シートを敷いて
……以前、してもらった時より、柔らかいように感じるのは
……。ステラも太るのか、本当は?
依頼で行った先で、よく食べ歩いて…ああ、いたい、引っ張るな、うー
……ああ、服が薄いから、か
ステラは柔らかいのだなぁ、と。彼女の頬を撫でてみたり
ステラも一緒に寝ないか?
今日は二人で休みたい気分だ
あの星は…食えるのかなぁ
ふふ。ステラといると、そんな事を気にするようになってしまった
ステラ・アルゲン
カガリ(f04556)と
水着は女性物を
こうしてカガリと夜の浜辺に行くのは2回目だったかな
戦争はお疲れ様だ
私も傷を負ったけど本体に負ったお前の方が心配だったかな
今日はレジャーシートの上で座りながらゆっくり星と海でも眺めるか?
膝枕をしよう。またすると約束していた
ほら、遠慮せず来ると良い(ポンポンと膝を差し出す)
あ、しまった!
そういえば今日は水着だった
太ももが……え、太ってる?
……太ってないぞ(頬を引っ張る)
痛かったか? 悪かったよ(頬にキスを落として)
寝る……?まぁ少しだけなら
二人で寝転びながら星を眺めようか
こんな風にカガリと過ごせる日々が幸せだと思う
星が拾えたら持っていこう
今日の思い出の星だから
さく、さく、さく……。
砂を踏む音は二人分。けれどもそれが余韻のようにほぼ重なって聞こえるのは、ふたりの歩調がほぼ同じだからだろう。
長い白糸(しらいと)の髪と宵から夜の星空を切り取ったかのようなグラデーションのパレオを靡かせて歩くステラ・アルゲン(流星の騎士・f04503)。
金糸の髪をいつもと違う位置で結った出水宮・カガリ(荒城の城門・f04556)は、羽織った打ち掛けと同柄の入った黒のスイムパンツを身に纏い、隣を歩く彼女に歩幅を合わせている。
並んで歩くふたりの手は、しっかりと繋がれていた。
「最近は戦争で忙しかったからなぁ」
「戦争はお疲れ様、だ」
過日の緊迫した様子を思い出しつつカガリが呟けば、ステラは前方に向けていた視線をそっと、隣を歩く彼へと向ける。
「私も傷を負ったけど、本体に負ったお前の方が心配だったかな」
告げたステラが繋いでいない方の手を掲げる。その手には、ビニールバッグが。
「今日はレジャーシートの上で座りながら、ゆっくり星と海でも眺めるか?」
そのビニールバッグにレジャーシートが入っているのだろう。カガリはその提案に目を細めた。
ヤドリガミゆえに本体の器物が無事ならば、肉体を再構築することは出来る。けれどもカガリやステラのように本体を戦闘で使用する者は、特に今回のような強敵相手には本体が無傷で済まないことも少なくない。
「ああ。確かに、ゆっくり、ごろごろしたくもなるなぁ」
彼女の気遣いが嬉しくて。
ふたりは喧騒から離れた場所に、大きめのレジャーシートを敷くことにした。
* * *
寝転ぶことも出来る大きめのレジャーシートの端近くに座ったステラ。その理由はふたりの体勢を見ればすぐに知れる。
「ほら、遠慮せずに来ると良い」
ぽんぽんと太ももを叩いたステラに導かれるようにして、カガリは彼女の太ももに頭を乗せて寝そべっていた。いわゆる膝枕である。
以前こうした時にまたする、と約束していた。だから。
「……、……」
「どうかしたか、カガリ?」
妙な間を感じ、ステラは問う。星明かりに照らされた彼の表情を窺えば、なんだか不思議そうというか、思案顔というか。
「……以前、してもらった時より、柔らかいように感じるのは……」
(「あ、しまった! そういえば今日は水着だった。太ももが……」)
言葉を選ぶようにして感じた疑問を紡ぐカガリ。ステラがその答えに行き着いて戸惑っている間に、カガリが続きを紡いでしまった。
「……。ステラも太るのか、本当は?」
「――!?」
その言葉は、女性にとって、男性が想像するよりも大き聞く響くものである。
(「……え、太ってる?」)
「依頼で行った先で、よく食べ歩いて……」
確かにカガリの言う通り、依頼に行った先で美味しいものをよく食べるステラだ。とくに甘味には目がない。だが。
「……太ってないぞ」
怒りというよりもやや拗ねた声色で、彼女はカガリの頬を引っ張った。
「……ああ、いたい、引っ張るな、うー……」
「今日は水着だからだ」
きぱっと言い放ったステラ。その言葉をカガリが疑うことはなく。
「……ああ、服が薄いから、か」
腑に落ちた、というように告げて伸ばした手は、彼女の頬に向かい。
「……ステラは柔らかいのだなぁ……」
優しい笑みを浮かべて感慨深げに呟くものだから。触れた指先が優しく頬を撫でるものだから。ステラの心は簡単に蕩けさせられてしまう。
「痛かったか? 悪かったよ」
お詫びの印に、と彼の頬にキスを落とした。これでもう、仲直り――元々喧嘩をしていたわけでもないけれど。
「ステラも一緒に寝ないか?」
「寝る……?」
「今日はふたりで休みたい気分だ」
カガリの提案にステラが「少しだけなら」と答えると、カガリは身を起こし、身を横たえる位置をずらした。その隣、肩が触れ合う位置にステラもまた、寝転んで。
ふたりで見上げる星空には、たくさんの星が煌めいていて。ここが船の中だということを、忘れてしまう。
「あの星は……食えるのかなぁ」
「食べたいのか」
「ふふ。ステラといると、そんな事を気にするようになってしまった」
それは自分が食べてばかりいるということだろうか――そんな思いも浮かんだが、それよりも自分と共にいることが彼に影響を与え、変化をもたらしたということがなんだか嬉しくて。
ステラの胸に満ちるのは、こんな風に穏やかにカガリと過ごせる日々は幸せだという思い。
(「……穏やかで、なんだか満たされる」)
カガリが感じるのもまた、ステラが隣りにいるからこその幸せ。
キラキラキラ……。
「ん?」
「何だ?」
そんな思いをいだいたふたりの視界に舞い落ちて来たのは、光の粒子のようなもの。手を伸ばしても、不思議と肌につくことはない。
気がつけばその粒子は、寝転んだふたりの間に積もり、カタチを成していた。
「これが星のカケラ、か?」
ステラが手を伸ばしたそれは、小ぶりの懐中時計ほどの大きさで。ひとつだと思っていた塊は、持ち上げると上部と下部のように2つに分かれていることが知れた。
「青のような、紫のような……」
カガリが片方を手にして星明かりにかざせば、それは青みを帯びた紫――まるでふたりの瞳の色が混ざりあったような色をしていて。
「カガリ、こちらは真ん中にくぼみがある」
「ああ、こちらにもあるなぁ」
ふたつが合わさっていた部分には、何かを埋め込めるような穴が空いていた。そして合わさっていたとはいえ、その断面は平らではない。
「……、……」
「……、……」
どちらからともなくカケラを相手に差し出せば、ピタリとそれは重なり合った。
おそらくこれは、一対の星のカケラなのだろう。対となる貝殻としか合わぬ二枚貝のように、対になる相手を違えないのだ。
まるで、今のふたりを象徴しているかのようなそのカケラ――。
どちらからともなくそっと身を寄せ、互いの方へと身体を向ける。
言葉は、いらなかった。
ステラがカガリの胸に頬を寄せ、カガリが彼女の背へと手を回す。
星のこえと波のうただけが聞こえる、その海で――。
大成功
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