つめたいらくえん
●氷菓子の生る場所
花が芽吹いて咲くように、人知れず、世界が一つ生まれ落ちた。
アリスラビリンスの新たな領域、ウサギ穴を通った先のその場所は、どこか甘い匂いで満ちていた。
分厚い氷の張った、真っ青な湖のど真ん中。チョコレートのような大きな島。
木々に実る色とりどりの球体は、果実ではなくアイスクリーム。針葉樹のようにアイスキャンディーの葉が輝き、下草に混じってチューペットが咲いている。岩の代わりに転がる球体は、大福系のアイスだろう、いっそクッションにも使えるかもしれない。
きっと空にある雲さえも、柔らかで粘るトルコアイスに違いない。そう信じてしまえるような、蒸し暑い残暑に夢見るような、きっとそこは、ある種の楽園だった。
●なお、極寒
「――というわけで、ここがその『新たに見つかった不思議の国』だよ」
転移を終えた猟兵達に、今回の案内役であるオブシダン・ソード(黒耀石の剣・f00250)が声を掛ける。ほう、と白い息を吐いたその男は、マントの前を合わせて少しでも体温を逃がすまいとしながら、話を続けた。
「特色はさっき説明した通りさ。この国は、色んなものが美味しい氷菓子でできている、面白い事にね」
ふふふ、と笑った彼は、指で摘まんだ赤い果実……否、赤いアイスクリームを一舐めした。
「うん、これはイチゴ味だね。――そうそう、御覧のとおりこの国はまだ手付かずでね、まっさらなんだ。
この世界、アリスラビリンスの特色からすると、いずれここにもアリスは現れるだろうね。その時に、ここがオウガのものになっていると色々まずいわけだよ」
わかるでしょ? と彼は一同に同意を求める。放っておけばこの場所は、デスゲームの舞台の一つになってしまうという。ならば――。
「そうなる前に、ここを開拓してしまおうというわけさ。幸い、入植者は結構居るようだからね」
そう言ってオブシダンが指差した先に居るのは、ウサギ穴を通ってきたという、愉快な仲間達。彼等は一様に黒いコートに身を包み、フードを被った雪だるまのような見た目をしていた。
「彼等はピーノ君と言ってね、普段は怠け者だけど、任された仕事には本気を出す不思議な種族のようだよ」
身長は1mほどだろうか、二頭身か三頭身くらいの体を折り曲げて、『ピーノ君』とやらの一人が猟兵達に頭を下げた。
「よろしくお願いシマース」
「君達には、このピーノ君達と共に、この国の開拓に手を付けて欲しい。まずはのんびりアイスでも食べながら、この国にどんな建物や施設が必要かを考えてもらえるかな?」
この国の主な場所は、アイスの生る森、雪積もる平野、崩れた石の廃城の三か所。それらをどうするか、何を建てるか。建材に使えそうなのは、島を囲む湖から切り出してきた氷か、降り積もる甘い雪、そして普通の木と岩、といったところだろうか。
「考え付いたそれを提案すれば、このピーノ君達がそれを実現してくれると思う」
そんな感じかな、と説明を一段落させて、オブシダンは準備していた木切れの山に火をつけた。小さな焚火が、柔らかな光を灯す。
「あたたかい飲み物くらいは用意しておこう、しんどくなったらここに戻っておいでよ。それじゃあ――」
ともに、住み良い国を作ろう。そう言って、彼はひらひらと手を振った。
つじ
アイスがたくさん食べたい、という声が聞こえた気がしたので。
今回の舞台はアリスラビリンス。新たに見つかった不思議の国の一つです。未だ誰の手も入っていないこの場所を、皆さんの思うように開拓していただければ、と思います。
勿論、アイスはいつでも食べ放題ですよ。
●第一章
のんびりできます。この国の特色を味わいながら、自由に過ごしてください。また、どの場所をどうするか、何を建てるか、というようなことを提案すれば、愉快な仲間達がそれを実現するよう頑張ってくれます。
また、この新たな『不思議の国』にオリジナルの名前を付ける事が出来ます。提案がある人はプレイングの末尾にでも書いておいてください。国名の提案は一人一つまで。複数候補がある場合はピーノ君達が一番「いいね」って思ったやつが採用されます。
●第二章
さらにのんびりできます。第一章の結果『何ができたか』を序文にて列挙しますので、それら地域や建造物を自由に回る事が出来ます。食堂ができていれば美味しいものが食べれますし、物見台ができていれば景色や夜空を楽しむことができるでしょう。もちろん、さらに開拓を進めていただいても構いません。
●第三章
ふしぎの国の常ですが、オウガもまたこの場所に現れます。開拓の進んだこの国を襲うオウガを撃退してください。
今回現れるのはそこそこの巨体で、あらゆるものを食べてしまうタイプのはらぺこオウガです。第一章、第二章で作った建造物のどれかを壊しに来るので、それを迎え撃つ形になるでしょう。
●愉快な仲間達『ピーノ・オブコート』
入植者達。黒い防寒着に身を包んだ、雪だるまに手足を生やしたような生き物です。猟兵達に好意的で、結構たくさん来ています。
寒さに強く、アイスを食べていれば生きていけるタイプ。
基本的に気の良い怠け者たちですが、六人一組になると何故か異様な勢いで働き始めます。頭が星型かハート型をしているやつは指揮官に向いている様子。
以上です。それでは、ご参加お待ちしています。
第1章 日常
『アイスな世界の愛すべきアイスパーティ』
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POW : 美味しいアイスをいただきまーす!
SPD : 早食い勝負に挑戦!
WIZ : 自分でアイスを作ってアレンジ!
イラスト:V-7
👑5
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ソナタ・アーティライエ
初めて訪れたアリスラビリンス
オウガのいないこの世界は、こんなにも素敵なところなのですね
この平穏が何時までも続けば良いのですけれど……
演奏会や演劇を行える、野外劇場が作れたら嬉しいです
場所は、音響や客席の配置などを考えますと
湖へと繋がるゆるやかな斜面が良いでしょうか?
色とりどりの果実のアイスを気ままに味わい
良さそうな場所を見繕いがてら
仲良しの銀竜、アマデウスと一緒に散策したいと思います
切り出してきた氷で作るステージと階段状の観客席
ステージの背後の湖は、夜には満天の星空を映して幻想的な美しさを見せてくれるかも
完成したら、ぜひわたしもここで歌わせて頂きたいです
アドリブや他の方との絡み歓迎です
●広場にコンサート会場を
生まれたばかりの不思議の国。それは、丁度降り積もった雪景色のようにまっさらで、無垢に見えた。頬を撫でる冷たい風を感じながら、ソナタ・アーティライエ(未完成オルゴール・f00340)は溜息を吐く。それには新雪の野に足跡を刻む感慨と、叶わぬ願いが込められていた。
「この平穏が何時までも続けば良いのですけれど……」
それは、今のアリスラビリンスでは難しい。けれど、少しでも楽しい場所に、安寧の場所にすることは出来るだろう。
桃色のアイスクリームの果実を指で摘まんで舌に乗せる。よく冷えたそれの、不思議と柔らかな舌触りに、ソナタは微笑みを浮かべた。
「アマデウス」
呼び声に応じ、空から降りてきた小さな銀竜、アマデウスがソナタの肩に着地する。楽しいものは二人で分けて、摘まんだ果実の欠片をその口に運んでやりながら、ソナタは銀竜の首元を撫でた。
「良さそうな場所はありましたか?」
労うように優しく撫でて、問う。シンフォニアであるソナタと、音の精霊であるアマデウス、両者が散策がてら探しているのは、歌うのに丁度良い場所である。
銀竜は小さな声を上げて、もたげた頭をある一方向へと向けた。どうやら、お眼鏡にかなう場所を見つけたものらしい。色とりどり、そして香りも様々なアイスの果実を楽しみながら、ソナタはその案内に従って、雪の積もる平野を歩いていった。
「……良い眺めですね」
思わず、感嘆の声を上げる。辿り着いたのは、この島の縁部分、巨大な湖へとつながる岸辺だった。空を映したのか、それともそういう色が付いているのか、広大な湖は鮮やかに青い。そして、この緩やかな下り坂は、ソナタの欲する条件にぴったりだった。
「この場所がご希望ですカー?」
彼女に呼ばれてきたピーノ君の問いかけに、ソナタは頷いて返した。
「はい、ここの傾斜は、野外劇場に丁度良いと思うんです」
「劇場ー?」
欠伸交じりの相手にもめげず、ソナタは言葉を重ねる。頭に描いたその完成したステージは、きっと素晴らしいものになるのだから。
「切り出してきた氷で、ステージと階段状の観客先を作るんです。湖をバックにしたステージは、満天の星空を映して、きっと幻想的な美しさを見せてくれますよ」
「なるほどー、ソレはよさそうですねぇ……」
ソナタは口が上手い方ではない。けれどその懸命なPRは、その甲斐あって伝わったものらしい。ふむふむと頷いていたピーノ君は、「仲間を探す」とソナタに応えた。
のたのたと歩いていた彼等が、6人揃った途端にきびきびと動き出すのを見ながら、ソナタはもう一度、その完成形に思いを馳せた。
完成した暁には、是非そこで歌ってみたい、と。
大成功
🔵🔵🔵
忌場・了
分厚いコートにマフラー装着
道中懐かしい氷菓子が横目に見えても我慢
まずはピーノ君達と一仕事
廃城をお前等が使える新しい城にしたいんだけど、手伝ってくれるか?
立派な城が出来れば、皆が集まって国が賑やかになり易いと思うんだ
建設計画を指揮官向きの奴らと話し合い
六人に別れながら作業を開始して貰う
自分はグループ間を回って工程を調整しつつ資材運び等力仕事を
内部や柱は岩外側は氷に出来たら綺麗な城になんねえかな?
程々に働いたら皆で休憩
見掛けた時から気になってたチューペットを食べる
昔は良く食ったんだよな
ピーノ達はこういうのも好きかね?
国の名前か
六人で働き者になるこいつらと雰囲気に因んで
「六花の国」とかどうだろう
ニオ・リュードベリ
アイスの国!
最高だよ!
凄い国にしよう!!
手入れするならやっぱり廃城からかな?
ピーノ君に手伝ってもらいながら、崩れた部分を補修しよっか
流石に補修は普通の木や岩を使って
その代わり、外装と内装をアイスでいっぱいにしたいな!
可愛いアイスの果実でお城を飾り付けたり、チューペットでリースを作ったり
ふかふかのアイスのクッションとか……アイスのベッドなんかも作れないかな?
アリスが来た時のためにもめいっぱい可愛くしたい!
せっかくだから食べても美味しい感じにしたいよね
色んなアイスを摘んで、美味しい組み合わせを見つけたら家具とかにも組み込んでみよう
チョコ系とバニラ系とか王道だよね
ピーノ君達と楽しみながら探したいな
九之矢・透
え、これ全部?本当に?
うわあ、すっげー!アイスだらけだ!
まずはピーノ君とあちこち見回ってみよう
色んなアイスが食べてみたいから……ってのもあるけどな!
どのアイスがおススメ?
道を行きがてら
大福アイスを摘まんでモチっとヒヤッとを楽しんだり
ソーダ味のチューペットをかじったりしながら
最後は廃城へ
やっぱり家は必要だよな
廃城を直して住むのはどうだろ?
此処と、更に平野に高い見張り塔も作れたら
オウガが来てもすぐ気づけるんじゃないか?
あ、ひとつは氷製じゃない部屋があると良いな
これから来るアリスが寒さに強いとは限らないからさ
国の名前か
アイスの島なんだし……そうだ!
「アイスランランド」とかどう?
…そのまま過ぎ?
●森を行く
小高い丘から森を見下ろす。普通ならば緑の一色、または枝木の茶色で構成されるべき光景は、この世界では七色……否、さらに多くの色彩で飾られていた。
「うわあ、すっげー! アイスだらけだ!」
その一色一色がアイスの果実であると悟って、九之矢・透(赤鼠・f02203)はそう歓声を上げた。見た目のみならず、味もきっと、七色を遥かに超える多彩さで楽しませてくれるだろう。
うちのチビ達も見たら喜ぶだろうな、めっちゃくちゃ寒いけど。そんなことを思いながら、彼女はピーノ君達と共に森へと歩く。足元や木々にも雪が降り積もってはいるが、その雪自体も、砂糖菓子のようにふわふわとした触り心地で、何より舐めると甘い。
「これすら甘いとなるともう何でもありだな……ピーノ君」
「ハーイ」
「どのアイスがおススメ?」
「それはネー、それはネー、僕等の一番好きなやつはネー……」
「内緒デース」
「な、何だよそれ、勿体ぶるなぁ……」
短い足でマイペースに追いかけてくる愉快な仲間達とそんなやり取りをしながら、透は果実へと手を伸ばし始めた。予想した通り、そして見た目の通りに、様々な味が舌の上に広がる。
「――お、何だこれ?」
踏ん付けそうになった白い球体を見つけて、透が手のひら大のそれを持ち上げる。感触からすると、先程見たクッションのような大福アイスの小型版だろうか。
「これも食える?」
「食べれマスヨー」
「へーえ……うわ何これすっごいのびる!」
そんな風に和気藹々としながら、透はしばし森の中を堪能した。
色んな味を楽しんで、ソーダ味のチューペットを口にしながら、透は森を抜ける。そこにあるのは、果たして何の名残なのか、石造りの廃城だ。半ばで崩れたそれを見上げて、透は後ろのピーノ君達に問う。
「……やっぱり家は必要だよな。これって直せない?」
「ドウカナー?」
「この大きさは結構タイヘンー」
怠け者モードの彼等からは若干嫌そうな返事が上がるが、実の所、その城の中では既に修復作業が始まっていた。
●廃城の再建
「ここがアイスの国! 最高だよ! 凄い国にしよう!!」
声高らかに、ニオ・リュードベリ(空明の嬉遊曲・f19590)はテンション高くそう宣言する。彼女の好物はほかならぬアイスクリームだ、それがそこかしこにあるというのだから、自然と声量も上がろうというもの。
「手入れするならやっぱり廃城からかな?」
「ああ、それが妥当なとこじゃねえかな」
同じく廃城に目を付けていた忌場・了(燻る・f18482)が、居合わせた猟兵であるニオに頷いて返す。分厚いコートの中、マフラーに首元を埋めるようにして、了は廃城の様子を確認する。
「できれば指揮官向けの奴と話がしたいんだけどな」
道中で見かけたピーノ君達には声を掛けてきているが、お目当ての相手は意外と見つからない。ふうん、と頷きながら、ニオは廃城の崩れた壁を越えて、中へと入る。
「それって、あの子のことかな?」
「……ああ。運が良いな」
城内で一休みしていた星型ピーノ君を起こして、二人は彼に声を掛けた。
「廃城をお前等が使える新しい城にしたいんだ。立派な城が出来れば、皆が集まって国が賑やかになり易いだろう?」
「手伝ってもらえないかな?」
「ええ~、お城? そんなおっきなモノ、建てられるカナァ」
渋る星のピーノ君に、どうしたものかと二人は首を傾げるが……後からついてきたピーノ君達と合流して、六人組が出来た途端に。
「僕はやるヨ!!」
「建てよう、僕等のお城!!」
異様なテンションで動き始めた。
何はともあれ、まずはビジョンをはっきりさせよう。ニオと了を中心に、彼等は補修の算段を立て始めた。
「さすがに骨組みは普通の木と石を使った方が良いよね?」
「ああ、柱なんかはその辺を軸にした方が良いだろう」
「その代わり、外装と内装をアイスでいっぱいにしたいな!」
「あー、それなら、外装は氷の方が綺麗に見えるんじゃねえかな」
設計図らしきものを書きながらの話し合いに、途中から廃城を訪れた透も参加する。
「城の中に見張り塔とか建てられないか? オウガ対策にもなりそうだしさ」
「なかなか、人手が要る作業になりそうだな……」
ふむ、と了が頷いて、一段落。一同はそれぞれの作業に取り掛かった。
「……いや、しかし。よく働くなぁ、こいつら」
一通り人員を確保した後は、マネジメントを主にしていた了が、運んできた資材を降ろす。
「あっ、ご苦労サマです! 監督!!」
「監督じゃねぇけどな」
苦笑いを浮かべながら、ピーノ君達の働きぶりを見上げる。主にこちらは外装側。破損したもの代わりに石と木で骨を入れて、周りには湖から切り出した氷のブロックを積んでいく。ある程度並べたところでピーノ君が息を吹きかけると、湿った冷気によるものだろうか、ブロックの接合面にぴきぴきと新たな氷が張っていく。先はまだまだ長いが、予想よりも作業は順調のようだ。
「よーし、皆。一旦休憩にしようぜ」
頃合いを見て、了が一堂に休憩を入れさせる。根を詰めては事故に繋がる、それと――さっきからこれが気になっていたんだよな、と地面に生えていたそれを引っこ抜いた。
良く冷えて凍ったそれは、チューペットである。了の手に取ったものは、オレンジに近い何とも言えない色合いをしている。中程で、それを真っ二つに折って。
「昔は良く食ったんだよな……」
ピーノ達もこういうのは好きなのだろうか。半欠けのそれを差し出すと、ピーノ君は嬉しそうにそれを受け取った。
「ありがとーゴザイマス。疲れた時はこれデスヨネー」
「そんなエナジードリンクみたいなもんだったか……?」
かつての光景、暑い日差しの下を思い出しながら、了は冷たいそれに齧りついた。
一方、城の内側では、ニオが丁寧に内装に手を加えていた。草花の代わりのチューペットのリースに、ふかふかの大福アイスクッション、傷む事とは縁遠いアイスの果実は、飾りつけにももってこいだ。
「アイスのベッドなんかも作れないかな?」
「できますヨー。僕たちそれで寝てマスカラ」
「本当? それなら、せっかくだから食べても美味しい感じにしたいなあ」
まだ見ぬアリスが、いずれ訪れた日のために。食べてもおいしく、見た目も目一杯可愛く! 並べてみたアイスを味見して、色ごとの味で組み合わせを吟味する。ミントにオレンジ、リンゴのソルベ、ピーノ君達と揃って首を傾げながら、ニオのこだわり家具選びは続く。
「んー……色々あるけど、やっぱりチョコ系とバニラ系とか王道だよね」
「それは!」
「お目が! 高い!!」
そうして内装が整えられていく中、透は一室、ピーノ君達と共に木を使った部屋を用意する。これもまた、いずれ来るアリスを思っての準備。
「これから来るアリスが寒さに強いとは限らないからなぁ」
楽しい部屋も、安心できる部屋も、両方あるに越したことはないだろう。
徐々に徐々に、廃城はそれを土台に、新たな形に生まれ変わっていく。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
オズ・ケストナー
クロバ(f10471)と
わあ、ほんとうにアイスがいっぱいっ
クロバ、どれたべる?
この大福みたいなのおいしいよ
もちもちだ
このまんまるのもおいしそう
ももだっ
クロバはなに味がすき?
答えに瞬いてから破顔する
わたしもっ
だって、ぜんぶおいしいものね
わたしね、あの雲もたべてみたいな
おおきな観覧車があったらとりにいけるかなあ
やったあ、つくろうっ
ピーノくんたちに手伝ってもらおうか
きみは星のかたちなんだね
なんだかいいことが起こりそうっ
6人集めて
がんばってつくるぞーっ
えいえいおー
星の子を見てゴンドラにいびつな太陽や月を描いていたら
なあに?
わ、雲?
とどいたの?すごいっ
クロバもたべよう
ふたりで一足先に味見
ふふ
おいしいねえ
華折・黒羽
オズさん(f01136)と
見渡す限りの氷菓子と
鼻を満たし尚溢れる程の甘いにおい
見た事の無い景色に呆ける口元は小さく開いたまま
次々に運ばれる菓子を口にしては目を瞬き
あれもこれもと大食いを発揮
何味が好きかと聞かれた問いには暫し悩んで
……全部
と、正直な感想を
見上げた雲を取る為の観覧車
いいと思います
6人のピーノさんと宜しくお願いしますと握手
何か手伝える事はあるだろうか
高所での作業は両翼広げ彼らを運んで
ふと気付けば降りてきた雲の端に手が届く
千切って降りた先
オズさん、これ…
気にしていた彼の手元へ
綻ぶ表情見れたら満足気に小さく笑み
描かれた画を見つければ首傾げ考える間も
味見と渡された雲を食めばまた尾が揺れる
●物見の塔の拡張
「わあ、ほんとうにアイスがいっぱいっ」
オズ・ケストナー(Ein Kinderspiel・f01136)の上げる歓声を聞きながら、華折・黒羽(掬折・f10471)は呆けたように、硬直していた。小さく開けたままの口元に、そしてその上の鼻孔に、甘い匂いが風に運ばれてやってくる。
森の中の見渡す限り、鮮やかな色彩は全部氷菓子によるものだと、頭は理解しているが、心が追い付いてきていない。
「行こう、クロバ、どれからたべる?」
どれから食べましょうか。そんな半ば途方に暮れた黒羽の言葉に、オズは的確に、そして楽しそうに、答えを返してくれた。
「やっぱり最初はバニラだよね。それからこれもあっさりめで食べやすいよ!」
木の枝から千切って渡されるカラフルな球体を、黒羽は渡されるがままに口にしていく。一つ一つ違う味を確かめるように、目を瞬いて。
「この大福みたいなのおいしいよ、もちもちだ」
本当にもちもちだ。というかすっごい伸びる。噛み付いたそれを口と両手で引っ張って、オズの言う通りだと頷く。
「このまんまるのもおいしそう」
そして、オズが二つに割ったそれの片方を受け取る。口にしたそれは、柑橘系とはまた違う、柔らかな甘みを湛えていた。
「……ももだっ」
食べるのに忙しい黒羽は、それにこくこくとまた頷いて返す。その頃にはようやく彼も、自分の思うように、アイスの果実へと手を伸ばし始めていた。
「クロバはなに味がすき?」
丁度摘まんだ緑色のアイスを口に運んで、黒羽は考える。これはとても、とても難しい質問だ。しばし考えて、躊躇いがちに、黒羽はそれを言葉にした。
「……全部」
オズは一瞬きょとんとした表情を浮かべていたが、やがて表情を綻ばせて、ぱっと明るい笑みを浮かべた。
「わたしもっ! だって、ぜんぶおいしいものね」
そうして、食べ歩く事しばし。
高く空を眺めて、オズはそこに浮かぶ雲を指差した。
「わたしね、あの雲もたべてみたいな」
降り積もる雪でさえも甘いのだから、そこにあるのはきっとふわふわで、柔らかなものなのではあるまいか。とはいえ、どうやって取りに行くのか。飛べぬ身のオズには叶わぬ夢だろうか、それを覆す方法は。
「おおきな観覧車があったらとりにいけるかなあ」
「……いいと思います」
ほとんど変わらぬ表情のまま、黒羽はそれに頷いた。
「ほんと? やったあ、つくろうっ」
方針は固まった。さて、それならばあとは、どこに建てるかだが……。
「あそこに、高い塔が見えます。あれを中心にしては?」
「そうだね、いいかも!」
黒羽の提案を採用し、二人はその建設中の尖塔へと駆けて行った。
「きみは星のかたちなんだね、いいことありそうっ」
「アリガトーございます。よく言われマスヨー」
「それでは、宜しくお願いします」
黒羽が指揮官格のピーノ君と握手する。二人の集めてきたピーノ君達は、塔の建設に携わっていた者達と合流し、拡張工事の話し合いを行った。最初は「塔にそんなものを?」と勘繰られていたが、結局「その方が面白そう」という結論で落ち着いたらしい。
「がんばってつくるぞーっ」
えい、えい、おー。オズの掛け声に合わせてピーノ君達が拳を天に掲げる。六人一組になった愉快な仲間達は、てきぱきとそれぞれに役割を振って働き始めた。
せっせと資材を組み立て始める彼等をじっと眺めて、黒羽は考える。さて、手伝うならば何が出来るか。短い足をちょこちょと動かして階段を上る姿は、どこか微笑ましいものの。
ふむ、と小さく鼻を鳴らして、黒羽はピーノ君の一人を両手で抱えた。
「上へ向かうのですね。手伝いましょう」
「へ? ……おわーっ」
ばさりと、力強く打ち振るわれる翼が、黒羽とピーノ君を塔の上へと運んでいった。石積みと氷を組み合わせた、物見の塔の頂上へ。そこに運んできたピーノ君を降ろして、なるほどこれなら手伝えるな、と黒羽は頷いた。
高所作業の危険がないよう運んでやりながら、黒羽はそこに観覧車の柱が立って行くのを見届ける。すると、その内に。
「……?」
流れてきた雲の切れ端が、その髪に触れた。
一方、塔の根元で、オズは観覧車のゴンドラへと指先を向けていた。シュネーは今回は見学。塗料の代わりのアイスの果実を手に広げて、ゴンドラの壁面をなぞる。ぺったりとはりついたそれは、甘い匂いと共にまあるい太陽を描き出した。
星型頭のピーノ君から着想を得たのか、描かれていくのは太陽に月、青空、そして、雲だ。
「オズさん」
頭上から降ってきた声に、オズが視線を上げる。すると黒羽が、名前の通りの背の翼を広げ、ゆっくりと降りてきていた。
「クロバ、どうしたの?」
「あの、これ……」
「なあに?」
差し出されたそれに、首を傾げる。黒羽の掌に乗っていたのは、わたあめのような、クリームのような、真っ白でふわふわの――。
「わ、雲?」
「はい」
「とどいたの? すごいっ」
また、ぱっと花が咲いたような笑みがオズの顔に浮かぶ。それを見て、今度は黒羽の側にも小さな、けれど満足気な笑みが浮かんだ。
「クロバもたべようよ」
二人で雲の切れ端をわけあって、冷たくて柔らかいそれを口に運ぶ。少し弾力があって、あまい。
黒羽の尻尾がぱたぱたと揺れている様子を見ながら、オズが彼に笑いかける。
「ふふ、おいしいねえ」
少し間が空いたあとに、黒羽はこくりと頷いた。
修復された廃城、その一番高い物見の塔に、まさかの観覧車が出来上がるのは、もう少し後の話。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
クーナ・セラフィン
本当に不思議の国みたいだにゃー。
まだ手付かずなら危機に備えられるようにするのも悪くはない…?
まずアイスでも食べてのんびり考えるとするにゃー。
真っ青な湖の傍で大福系のアイスをのんびり頂く。
んー、これは…色んな意味で敵かも?
お菓子の家の竈に入れられた魔女みたいにふくふくさせるという…オウガいないから違うだろうけども。
つまりは美味しいって事にゃー。
この湖の水も何か味があるのかな?
氷はかき氷にでもしちゃえそうだけれどその下は…ブルーハワイとか?
島をゆっくり歩いてみて、崩れた石の廃城へと向かう。
ここに来たアリスが隠れられそうなのはやっぱここかにゃー?
ピーノ君達に修理提案しようかな。
※アドリブ絡み等お任せ
●湖の畔で
「本当に不思議の国みたいだにゃー」
湖を渡る冷たい風に髭を揺らめかしながら、クーナ・セラフィン(雪華の騎士猫・f10280)はその国の様子を眺める。氷菓子で出来たカラフルな植物は言うまでもないが、この真っ青な湖も不思議な光景ではある。
「まだ手付かずなら危機に備えられるようにするのも悪くはない……?」
常駐するのがあのピーノ君達である以上、完全には難しいかもしれないが、例えば防衛力を整えれば……?
そんな事を考えながら、クーナは両手で抱えたそれに齧りついた。つめたい、やわらかい、すっごい伸びる。それは岩のようにそこら辺に転がっている、大福系のアイスである。もたれかかって体を預けたそれもまた、大きな大福。座るにも食べるにもこれは上等な品で……。
「んー、これは……色んな意味で敵かも?」
対象のアリスを太らせて食べるとか、そんなオウガも居ると聞く。今回のこれは、この世界特有の物のようだから、罠とかではないのだろうが。
そう考えてしまうほどに、これは美味しい。噛み千切ったそれをもっくもっくと堪能しながら、その藍色の瞳は青の湖へと向く。
「もしかして、この湖の水も何か味が……?」
どうしようかな、寒いな、みたいなことを大福アイスを齧りながら考えていると、どうやら仕事中らしいピーノ君達が湖の方へと降りていくのが見えた。
何とはなしに、追ってみると。
「それじゃ、切り出しマース」
おもむろにのこぎりを取り出した彼等は、水面の分厚い氷をぎこぎことやりはじめた。
「へえ……そうやってブロックを用意してるんだね」
にゃーとか言っていた口調を整えて、クーナが彼等に問い掛ける。薄青に輝く氷は、かきごおりにでもすれば、きっとそのまま食べられる氷菓子になるだろう。それはそれとして。
「おお……ブルーハワイだ」
掬い取った湖の水を口にして、クーナは感動したように頷いた。
「おいしーデショ?」
「飲みすぎ注意デスヨー」
ゆるい声掛けをしてくるピーノ君達に労いの言葉を返して、しばし。甘い氷菓子を堪能したクーナは、彼等について開拓現場へと向かうことにした。
「ここに来たアリスが隠れられそうな場所と言えば、やっぱりあそこかにゃー?」
案の定というべきか、氷のブロックを持った彼等は、廃城に向かっていたようだ。
「修理提案を……と思ったけど」
あれ、もう意外と直ってきてる? 見上げた氷の城の様子に、クーナは小首を傾げた。
大成功
🔵🔵🔵
リダン・ムグルエギ
わぁい、氷菓子
アタシ夏の氷菓子大好…寒っ?!
えっ、超寒っ
アタシが好きなのは暑い時に食べる氷菓子なのに
というわけで氷菓子を楽しむために
「暖かい空間」をデザインするわ
平原の雪を活かしかまくら風の小屋を作ってもらうの
コードで生み出した断熱材も使うわ
後は暖房器具を置いて
壁紙代わりに布で部屋を覆って完成よ
見た人が部屋の中が超熱いと錯覚しちゃう催眠模様の刻まれた布でね
部屋は誰でも入室OKよ
「あー、コレよコレ
「暑い中食べる氷菓子サイコーねー
と、堪能しちゃいましょ
後、ビジネスチャンスも感じるわ
様々なアイスイメージの防寒具を作って配ろうかしら
ピーノくんらにももちろんあるわ
苺風、抹茶風、マロン風、キャラメル風…
神埜・常盤
さつま君(f03797)と
最近は暑い日が続いていたから
此の涼しさが嬉しいねェ
おまけにアイス食べ放題とは、太っ腹な国じゃァないか
勿論、存分に味わって良いとも!
国の事は摘み食いしながら考えよう
期待に揺れる尻尾に和みながら頷いて
成る程、確かにバニラは王道だ
ラムレーズンもキャラメルも美味しいよねェ
僕はチョコレィトとか好きだなァ
あの真っ赤な大輪の華……あァ、フランボワーズとかも捨て難いところ
大福系のアイスは僕も気になるなァ、ひとつ味見させて貰おうか
ふふ、鱈腹食べて互いに満足したようだ
それでは仕事の話と行こうか
家の庭には色とりどりの、花びらアイスを咲かせたら綺麗だろうなァ
国名はラクトパラディアとか如何かね
火狸・さつま
常盤f04783と!
わぁあい!涼し…!!
アイスー!!!
思わず、びゅーん!と駆けて
ハッ!として振り返る
ね、ね、食べながら、で、良い、の?
もぐもぐして、良い???
きらきら輝く眼差し
尻尾は先程から振りっぱなし!
常盤は、何味が、好き?
俺は…定番のバニラは外せないし
抹茶も好きー!
あとねあとね、この、あまぁい良い香りの…きゃらめる!
ラムレーズンとかも、ある、かな
ちょこー!
もちっとしたアイスも食べたい食べたい!
わぁわぁとアイスに夢中
一頻堪能したら
うん、うん、おしごと、おぼえてる、よ!
くちまわりのべたべた拭き拭きして
お家は必要だよ、ね!
涼しい場所には!
氷レンガや雪ブロックのお家!イグルーとか、素敵じゃ、ない?
●氷と雪の家
転移を終えれば、そこは不思議の国。氷菓子がそこら中に生い茂る、そんな素晴らしい光景を前にして、リダン・ムグルエギ(宇宙山羊のデザイナー・f03694)は歓声を上げた。
「わぁい、氷菓子! アタシ夏の氷菓子大好……寒っ?!」
びゅおお、と雪混じりの風が通り抜けていき、彼女は我が身を掻き抱く。
「えっ、何で? 氷菓子って暑い時に食べるものじゃないの……?」
そう言いたくなるのも道理だろう、これは余りにも理不尽だ。しかし、そんな中に新たに転送されてきた二人は。
「わぁあい! 涼し……!!」
「最近は暑い日が続いていたから、此の涼しさが嬉しいねェ」
火狸・さつま(タヌキツネ・f03797)と神埜・常盤(宵色ガイヤルド・f04783)、彼等二人はこの国の気温にも動じた様子はない。
「おまけにアイス食べ放題とは、太っ腹な国じゃァないか」
「アイスー!!」
歓声を上げて突っ走りかけたさつまが、我に返ったように常盤の方を振り返る。
「ね、ね、食べながら、で、良い、の? もぐもぐして、良い???」
「勿論、存分に味わって良いとも!」
ぶんぶんと揺れるさつまの尻尾を微笑ましく見ながら、常盤は鷹揚に頷いた。楽し気に森へと入っていく二人組を見送って、リダンはこめかみを押さえた。
「えっ、アタシがか弱いってこと……?」
寒さに対する耐性は人それぞれである。何にせよこのままでは自分が楽しむことが出来ない。一旦辺りを見回していたリダンは、付近にいるピーノ君達に声を掛け始めた。
目指す方向性は明確。「この雪積もる平野に、暖かな空間を」。
一方、アイスを求めて森の中へと入っていった二人。揺れる尻尾を追っていた常盤に、さつまから声がかかる。
「常盤は、何味が、好き?」
色とりどりのアイスを前に、悩ましい、と言った様子だ。
「俺は……定番のバニラは外せないし、抹茶も好きー!」
「成る程、確かにバニラは王道だ。抹茶も甘くなりすぎなくて丁度良い」
などと言いながら、常盤は眼に入ったマーブル模様の果実に手を伸ばしていた。手ごろなそれを口に運びながら、まだまだ話足りない様子のさつまに続きを促す。
「あとねあとね、この、あまぁい良い香りの……きゃらめる! ラムレーズンとかも、ある、かな」
「ああ、ラムレーズンもキャラメルも美味しいよねェ」
そうして相槌を打って、常盤は、さつまが食欲の赴くままに色とりどりのアイスに手を伸ばしているのを見ていた。しかしまぁ、これだけ食べても草木も花もなくなる様子がないのが不思議なもので。
「僕はチョコレィトとか好きだなァ」
「ちょこー!」
それは良い、とさつまの側からも喝采が上がる。
「あの真っ赤な大輪の華……あァ、フランボワーズとかも捨て難いところ」
カラフルな世界の中でしっかり味を連想できている彼の目は、今度は地に転がった球形の岩へと向けられていた。
「――ああ、大福系のアイスは僕も気になるなァ、ひとつ味見させて貰おうか」
「もちっとしたアイスも食べたい食べたい!」
拾い上げたそれを二つに割ろう……として、やたらと伸びる様子に笑い声を上げながら、二人は冷たく甘い時間を共有した。
ゆっくりとアイスを堪能している内に、常盤は元の場所――最初のスタート地点に戻ってきてしまったのを知る。
が、しかし。
「うん……? さっきはこんなものあったかな?」
見上げれば、雪で出来た小屋が一つ、ぽつんと建っていた。
「あらお客さん? いらっしゃい、ここは誰でも入室OKよ」
これだけは木で作ったらしき扉を開けると、中には数人のピーノ君と、リダンの姿があった。
「おや、これは……」
「あったかい!」
二人が驚きの声をあげたように、小屋の中はこの世界でも一等に暖かく感じられた。それもそのはず、この小屋の建築には、部屋の中心でくつろぎながらアイスを頬張っているリダンが全面的に関わっているのだから。
壁の内側にはユーベルコードで生み出したレプリカながら、断熱材が仕込まれ、そこだけ石造りの暖炉があり、さらに壁紙代わりの布もリダンの特別製だ。
「上着は着たままの方が良いわよ、『暖かい気がする』だけだから」
特殊な催眠模様を編みこまれたそれは、見る者に大なり小なり『超熱い』という錯覚を引き起こす。
――たとえ半分は見せかけであれど、今はそれでいい。
「あなた達も食べる?」
ピーノ君の一人に持ってきてもらったアイスの果実を手に、リダンは二人に問う。
「もらうもらう!」
「せっかくだから、ご相伴に預かろうか」
外から持ち込まれたのであろう大福のクッションに座って、三人はくつろぎながらアイスを味わった。
「あー、コレよコレ。暑い中食べる氷菓子サイコーねー」
「ふむ、これも仕事の成果と言う事かな……」
仕事。そう、開拓の任を全うした結果だ、と常盤は頷く。
「それでは、僕達も仕事の話と行こうか」
「うん、うん、おしごと、おぼえてる、よ!」
口元を拭って、さつまもそう応じる。
「こういうお家がたくさんあったら良いよ、ね。氷レンガや雪ブロックのお家! イグルーとか、素敵じゃ、ない?」
「なるほどね。ならその家の庭には色とりどりの、花びらアイスを咲かせたら綺麗だろうなァ」
そうしてこれからの作業内容を詰め始める二人を、完全に一仕事終えた顔で眺めていたリダンだったが。
「あら、もしかしてこれ……」
デザイナーと商売人、両方の鼻がビジネスチャンスの匂いに反応している。
この内装セット、これから建つ家の数だけ売れるのでは? それから、アイスイメージの防寒具を作って配るのも良い。
「試しにピーノ君達のものから作ってみようかしら」
「何ですかー?」
「あなた達、その防寒着がお気に入りなんでしょうけど、黒一色だといつか飽きられちゃうわよ」
「ソウですかー?」
もう少しバリエーションがあった方が良いだろう。最近だとイチゴ風味とか、マロン風味とかが良いのでは。
そんな風に、平野部の開拓は少しずつ進んでいった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ライラック・エアルオウルズ
※類さん(f13398)と
氷菓の世界を眺め見るとは、
夢にも思わず 眸を擦り
然して 見てと貴方が示すなら、
夢の産物ではないらしい
勿論、初めてだ
こんなに素敵な光景を前にしていたら
甘味に飽く程に味わってた、と思う
類さんも、特別感は褪せそうかい?
御褒美の先払いに、機嫌良く
柔い大福に腰掛けるなら、
恒の椅子より名案が浮かびそうだ
手に氷菓があれば猶更と悩む末
同様に果実ひとつ味見すれば
冷たさ気にせず、眦下げて
彼等の為にも、城は是非
氷菓の花飾る庭に氷城を造ろうか
守る為の物見台は確り、――ああ
氷菓の木で本作るなら、
図書館は甘い物語を頂く喫茶になるね
案に添い、描く地図は楽しく
思わず弾む声で返して
街の姿に思い馳せる
冴島・類
※ライラックさん(f01246)と
氷菓に満ちた世界だなど
幼子が見る夢そのままで
ライラックさん、見てください!
空も雪も甘い香りに鮮やかな色
甘味好きだと言っていたあなたも
此れは流石に初めてですかね
ええ、これだけ溢れていたら
僕も常より気軽に手を伸ばしちゃうかも
ピーノ君にご挨拶して
働く前に味見しちゃって良いみたい?
柔らかい大福に腰掛け
食べながら作戦会議でもしませんか
目移りする果実を捥いで口にしたら…
どんな味がするかな
お城立て直して物見台や庭作るのも良いし
喫茶併設の図書館や
氷滑って遊べる公園も楽しいかも?
浮かんだ案並べ
あなたが頭に描いた地図も聞いてみる
弾む声がまるで少年のよう
とびきり、楽しい街になる予感
●甘く香る物語
この世界に吹く冷たい風には、誤魔化しようもないほどの、甘い香りが乗っている。ソフトクリームにアイスキャンデー、自生する植物はおろか、降る雪すらも甘い、氷菓に満ちた世界。
こんなものを眺め見る事になろうとは、とライラック・エアルオウルズ(机上の友人・f01246)は眸を擦る。
「ライラックさん、見てください」
ああ、と一つ頷いて、ライラックは冴島・類(公孫樹・f13398)の示す光景へと、もう一度視線を移した。色鮮やかで甘やかな、夢ではないけれど、夢のような景色。
「甘味好きだと言っていたあなたも、此れは流石に初めてですかね」
類の問いかけに、頷いて返す。
「勿論、初めてだ」
きっと、こんなに素敵な光景を前にしていたら、甘味に飽く程に味わっていただろう。ライラックはそう冗談めかして、その上で惜しそうにそう言った。
「類さんも、特別感は褪せそうかい?」
「ええ、これだけ溢れていたら、僕も常より気軽に手を伸ばしちゃうかも」
くすくすと、類が笑う。誘惑の多さはもとより、この世界は、まるで戦いからも悲劇からも縁遠いように見えるから。
「それじゃよろしくね、ピーノ君達」
視線を合わせるように頭を下げて、類は愉快な仲間達と挨拶を交わす。
「早速だけど……働く前に、味見しちゃっても?」
「ドーゾドーゾー」
快い承諾に微笑んで、二人は森の中の、柔らかい大福に居場所を定めた。二つ向かい合うようになっていて、丁度良い。
「食べながら作戦会議でもしませんか?」
「ああ、そうしよう。……これは良いね」
体の沈み込むクッションの心地を味わいながら、ライラックが言う。
「恒の椅子より、名案が浮かびそうだ」
「それは良かった。期待していますよ」
そんな軽口を交わしながら、類は少しその手を迷わせて、果実を一つ選び取った。黄色のそれからは柑橘系の、爽やかな香りが伝わってくる。
「任せてくれるかな、氷菓もあるとなれば、尚更さ――」
こちらも少々悩みながら、ライラックは同じような色に輝く果実に手を伸ばした。
「こちらはリンゴかな?」
さあ、どんな味だろう、と頬張って、二人でそれらに舌鼓を打つ。冷たいけれど、寒いのは苦手だけれど、今は口に広がる味に、目尻を下げた。
「さて、それでは何を建てましょうか?」
「彼等の為にも、城は是非。物見台も欲しいところだね」
「それは例えば、あんな風に?」
類が指差した先は、森の向こう。修復作業に入った廃城が見える。考える事は皆同じだね、とライラックも笑って。
「類さんの方は、何か案はあるかな?」
「そうですね……庭園や、喫茶併設の図書館、氷滑って遊べる公園も楽しいかも?」
「なるほど、図書館かい」
「思い付いたまま並べただけですよ。大体この国は本が無い」
「ああ、それは勿論、アイスで作るんだよ」
すると、その喫茶では甘い物語を頂けるようになるのかな? 冗談めかして、ああでも、それも悪くないと、二人はアイスを片手に案を吟味していく。
「他にはどんな案がありますか?」
「ああ、さっきから考えていたんだけど、こんなのはどうだろう――」
頭の中に描いた地図は、まっさらな国を規定し、彩っていく。きっと、楽しい国になるだろう。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
キララ・キララ
【薬B】
アイス!いいなあー!
きらちゃんもここに住みたーい!
もし住むならね
やっぱりいろんなお店がほしい!
でもなに屋さんができるかもわかんないから
商店街だけつくっておくのはどうかしら
いろんなアイスでいろんなかざりをつけてくの!
屋根にもなかを貼ったのは何になるのかなあ…
氷でキレイにショーウィンドウを作ったのはきっとおようふくのお店!
キレイっていえば、シンジュのお花!きらきらしてステキ!
写真とっていーい?
クッキーアイスの壁は丈夫そうだから、なにかの工房…
あっ トリス、一気にはがすと たいへん! あわわ…
建てるのも戻すのも、絵に描いたピーノくんに手伝ってもらうのはだめ?
後でさみしくなるかなあ…
トリス・ビッグロマン
【薬B】
もっと氷を切り出してこなきゃな
水かけとけば固まるだろう
そのブロックはそっちに積めよ
何を造るかって?
そりゃあオマエ、国を造るなら城壁が必要さ
こっからオレの領土って、はっきりさせんのが大事なのさ
上から安全に敵を撃つのさ
おいコラァ
サボるのは働いてからにしろよ
やれやれ、あそこのキリギリス二人は戦力にならないな
どうせ肝心のところで腹を壊すに決まってる
うーん、やっぱり材質に不安アリ
もっと固いアイスを知らないか?
ああ、そこのクッキーアイスは使えるな
この壁ちょっと借りるぜ うわぁ!?
クソッ!
壁を引っぺがしたら建物が崩れて下敷きにされちまった!
なんでオレがこんなメに!?
ロカジ・ミナイ
【薬B】
開拓開拓ぅ〜
楽しいねぇ〜
僕こういうの初めて!
アイスの木なんてもっと初めて!
うっわこの苺アイス果肉入ってる🍓
うっま!
おや、何だい壁なんて作って…ほう?
アイスを守るわけか!ヒュ〜
…あ、死
(カキ氷を食べ🍧)
そんできらちゃんは
ふふ、お買い物は楽しいものねぇ
生活も潤うし
(ソフトクリームを食べ🍦)
しかし入植者ってのはよく働くねぇ…
実は怠け者なんでしょ?ピーノ君ら
そんじゃやっぱアレ欲しいんじゃないの?
マッサージチェアコーナー
お手軽にアイスも食える様な🍨
おや?氷の花じゃないの!
是非ここにも植えておくれよ🌸
(アイスキャンデーを食べ)
出来たら言ってね!動作チェックするから
これって大事なお仕事よ
雅楽代・真珠
【薬B】
長く生きてきたけれど
開拓は僕も初めて
あいすくりん、食べてもいいの?
大福型のあいすくりんをもちもち
おいしい
そうだよロカジ
自分の事は棚に上げてトリスの言葉に頷いて
きりぎりすって何?
誰か知っている?
僕は花がもっと必要だと思うんだ
果汁の氷の花たちをつける樹や
あいすきゃんでぃの葉っぱ
こっとんきゃんでぃの植木鉢
氷の花を鑑賞する為の場所にはもちもち大福
もちもちに座って花を眺める贅沢
休憩している訳じゃなくて座り心地を確かめているんだ
まっさぁじちぇあの座り心地も後から確かめてあげる
写真?いいよ
キララの店にも氷の花を飾ろうよ
もっと店が綺麗になるよ
ロカジにもあげようね
名前?
あいすくりん王国でいいんじゃない?
●平野の街
「ここを開拓していくってわけかい。楽しみだねぇ、僕こういうの初めてだよ」
「長く生きてきたけれど、開拓は僕も初めてかな」
不思議の国を見下ろすロカジ・ミナイ(薬処路橈・f04128)の言葉に、傍らに浮かんだ雅楽代・真珠(水中花・f12752)が頷く。新しい土地を旅することはままあれど、住みよく変えるというのは中々機会が無いだろう。
「ま、アイスが生る木なんてもっと初めてだけどね!」
「すっごいよね! きらちゃんもここに住みたーい!」
キマイラフューチャーに負けないくらいカラフルで、まさしく不思議の国といった光景は、キララ・キララ(トラヴェル・マーチ・f14752)にも好評だったようだ。
「ねえ、このあいすくりん、食べてもいいの?」
「えっ、なに? うっわこの苺アイス果肉入ってる! うっま!」
「……僕より先に食べ始めてるなんて、生意気だよロカジ」
「ふふふ、こういうのは早い者勝ちさ」
真珠もまた宙を泳いで、白く柔らかな大福系アイスを摘まみ上げる。
「もちもちしているね……おいしい……」
そんな風にアイスを摘まみながら進む二人は、やがて謎のブロック塀に辿り着いた。
「おや、何だいこれは……氷の壁?」
雪を集めた即席かき氷を食べながら、ロカジが視線を上げれば。
「おいコラァ、サボるのは働いてからにしろよ!」
上からトリス・ビッグロマン(ストレイグリム・f19782)の声が降ってきた。既にピーノ君達の協力を取り付けていた彼は、湖から切り出してきたブロックを積んで、壁を作り始めていた。
「何の塀だい?」
「塀じゃない、城壁だよ、城壁! 国を作るんならこいつが必須だろ?」
胸を張るようにして、トリスが言う。国境も何もない此処では、領土を主張する何かが必要だ。そういう意味でも城壁は丁度良いだろう。
「攻められた時の対策にもなる。上から安全に敵を撃つのさ」
「なるほどねえ、そうやってアイスを守るわけだ」
感心したように、ロカジが頷く。
「……で、だ」
そこまで言って、トリスが目を細める。ロカジはしゃりしゃりとかき氷を頬張って、真珠は気に入ったらしいもちもちしたアイスをもちもちしている。
「なに?」
「何か問題?」
「このキリギリスどもは戦力にならないな……」
ため息を一つ。
「サボるのは良くないよロカジ。……ところできりぎりすって何? 知ってる?」
「いやあ、僕にも分からないなぁ」
平行線である。人が分かり合うことはかくも難しい。
「こういう奴等は、どうせ肝心のところで腹を壊すに決まってる」
よーしそれじゃ作業を続けるぞー。トリスの声に応えて、おー、とピーノ君達が掛け声を上げた。
一方、徐々に積まれていく城壁の内側に当たる場所、白の平原にはキララと数人のピーノ君達が集まっていた。
「もし住むならね、やっぱりいろんなお店がほしいと思うの!」
「ナルホドー」
「お買い物楽しいモンネー」
もしも住むならば、という観点は開拓、開発において重要な視点だ。だがどうにも、半端な人数のピーノ君達は動きも反応も鈍い。
「うーん、それなら――」
取り出したるは白と黒のカラースプレー。この世界のカラフルさに比べると、彼等はシンプルな色合いで出来ている。そう、『ブルーバード・ハウス』――キララのユーベルコードのよって空中に描き出されたのは、黒コートの白い雪だるま、ピーノ君達の姿である。
描かれた彼等は実体を持ち、キララに協力してくれるわけだが。
「おおー」
「僕達が増えマシタヨー」
いえーい、みたいな感じで、元から居たピーノ君と絵から生まれたピーノ君がハイタッチする。何故性根まで似たのかはよく分からないが、ともかく。
これで総ピーノ君の数が6の倍数になった。
「みんな、手伝ってくれるー?」
「おっけー!」
「おみせをたくさん!」
「建てマショウ!!」
キララの呼びかけに応えた彼等はきびきびと、彼女の提案した商店街を作り始めた。
氷のブロックと固めた雪で、よく似た建物が出来上がっていく。何の売り物があるのかわからないで、今のところは建物だけ。
「んー、このお店はどうやってかざろっかなあ……」
建設が軌道に乗ったところで、キララは色とりどりのアイスの果実を並べて、店舗の一つと向かい合っていた。壁にイラストを描いたり、模様の形にしたそれを貼り付けたり、各店を飾ってきているけれど、さて、ここはどうしたものだろう。
「キララ、これを飾るのはどう?」
「シンジュ……なにこれお花? きらきらしてステキ!」
真珠が差し出した氷の花に、キララが瞳を輝かせる。ショーウインドウに、輝く果汁の氷の花。「もっと花が必要だ」と、真珠が森から株分けしてきた花束や植木鉢は、まだ空っぽの商店街を美しく彩っていく。
「おや? 氷の花じゃないの! 是非ここにも植えておくれよ」
「ここだね? 今回は特別だよ」
アイスキャンディを舐めながら様子を見に来たロカジにも希望の通りのお花を添えて。
商店街の真ん中、樹や花を眺める事の出来る広場には、クッション状の大福アイスを置いた。
「写真とっていーい?」
「うん、いいよ」
さっそくそこに鎮座した真珠と共に、キララがお花の写真をカメラに収める。そのまま当然のように一緒に自撮りを始めた二人を眺めて、ロカジはソフトクリームを口にする。
それにしても、と辺りを見れば、せっせと建物を大きくしたりお花を植えたり、そんなピーノ君達が目に入る。
「しかし入植者ってのはよく働くねぇ……実は怠け者って話じゃないの、ピーノ君達」
「イエイエ、そんなことは」
「あるよーな、ないヨーナ」
ゆるい応対を聞きつつ、何やら考えていたロカジは、妙案を思い付いたとばかりに手を打った。
「そうだ、あれ欲しくないかい? マッサージチェアコーナー」
「まっさーじちぇあ?」
「そうそう、こう、肩とか腰とかを押さえたり揉み解したりしてくれる椅子だよ。お手軽にアイスが食べれる感じにして――」
店舗の一つを指差して、ロカジは言う。元来怠け者の彼等には、やはり休憩スペースは受けが良かったらしい、提案はすぐに受け入れられた。
「うんうん、出来てきたねっ」
形を成してきた街並みに、キララが満足気に頷く。氷のショーウインドウを構えた店は、きっと洋服店になるだろう。瓦の代わりにアイスモナカを並べた店舗は、今ロカジの提案で休憩所になりつつある。
「このクッキーアイスの壁は丈夫そうだから、なにかの工房かな?」
他より頑丈になった壁面をぽんぽんと叩いていると、様子を見に来たトリスが感心したように頷いた。
「なるほどなぁ」
城壁作りに従事していた彼としては、それは良い発見である。
「城壁の材質が不安だったんだが……これは使えそうだな。ちょっと借りても良いか?」
「あっ、トリス、一気にはがすと――」
「ん? ……うわぁ!」
両手でそれを掴んだトリスが、壁のクッキーアイスを引き剥がす。すると力ずくのそれを拍子に、崩れた建材のアイス達がトリスへと降りかかった。
「く、クソッ! なんでオレがこんなメに!?」
アイスの下敷きになったトリスに、慌ててキララが駆け寄る。
「だ、だいじょうぶ?」
「大変だね、トリス」
「いやあ、大変なことになってしまったねぇ」
大福に腰掛けたままの真珠に続いて、「やっちまった」といった仕草で額を抑えたロカジが言う。多分かき氷の食べ過ぎで頭痛がしただけだろうが。
「お前等見てないでちょっとは手を貸すとかよぉ……」
「ええ……僕はピーノ君達の作ったマッサージチェアの出来を確かめに行く義務があるんだけどなぁ」
「ふぅん、仕方ないから僕も手伝ってあげるよ」
だからそのまっさぁじちぇあとやらの心地を確かめさせてね、と言外に言い足して、真珠もロカジと共に救助活動に入った。
アイス瓦礫の撤去と再建が終われば、続くは街の拡張か。とはいえ、広大な土地を丸々囲む城壁が出来上がるのは、まだまだ当分先になりそうだ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ヨシュカ・グナイゼナウ
【薬A】
名前の前半+さま
滅茶苦茶寒い
いや、アイスの国が暖かかったら悲惨な事になると想像に難くないのですが
魔法瓶に分けてもらったミルクティー(ホット)を持って、アイスを見繕い
このオモチで包んだアイスが中々に…(もちもち)美味!
オモチアイスはこのあたりにころころと…そちらはラムネのアイス?おお、ぱちぱちします!
紅茶はどうぞ遠慮なく!そちらは綺麗ですが冷たいでしょう?あ、紅茶にアイスを入れたら美味しいかも
ピーノくん、そこはかとなくこんびにで見たことあるようなないような
あ、こんびにとかどうでしょう?あれは便利ですよ。景観に合わない?
わあピーノくんの氷像!そっくり!国ができたらモニュメントに良いかも?
エンジ・カラカ
【薬A】
アァ……アイスだなァ。
コレはラムネのアイスが食べたい食べたい。
ラムネのアイスって知ってるカ?
パチパチして美味いンだ。
もちもちアイスは珍しい。とーっても珍しい。
ヨシュカ、もちもちアイスはどこにあるンだ?
コレも欲しい欲しい。
カスカとじゅーべのアイスも気になる。
アァ……冷たいモノはほどほどにしておかないとなァ…。
で、なんだっけ。名前を決める?
ひえひえ王国?、愛す国?、美味しい国?
……ラムネアイス美味いンだよなァ。
ラムネ王国でどうだどうだ。
御鏡・十兵衛
【薬A】
うっひゃー寒いでござるなー
そしてあれがあいす!なるほど、彩り豊かで楽しい菓子にござるな!
はてさて、どれも見た目と味が結びつかんでござるからな、勘で選ぶでござるよ!
(ぶどうのように成った、白玉のようなアイスを頬張って)
…む、これは黒蜜入り
(もむもむと無言で次々と口に運び、気づけば一房無くなって)…はっ!某は一体!?
……いたた、キーンって来たでござるよ、キーンって
冷たいモノは程々に、身に染みたでござるよ…
ふうむ、某が思い付くのはもれなくエンパイア風、景観を壊すのも忍びないゆえ、氷の切り出しでも手伝うでござるよ!
(刀をぶんぶん振り回して)見て見てヨシュカ殿、朽守殿、ピーノ君殿の氷像ー!
朽守・カスカ
【薬A】
なるほど寒い
寒いけれど、とても面白い場所だ
まずは周囲を知るためと称して
アイス探しに勤しもう
実る色とりどりの玉
異なる色を一粒ずつ取りグラスに盛ろう
(もしかしたらエンジ君の探すアイスもあるのかも)
そうして、サイダーを注げば
見た目も華やかな氷菓の出来上がり
ふふ、美味しいけれど
寒いところで飲むものではないね
ヨシュカ君、私にもミルクティーを分けて頂けないか
ああ、そうそう国を作り
氷を切り出し積んで、氷の大樹のような塔を作るのは如何かな
遠くから敵を見つけられるし
物を落とすだけでも脅威となる、氷樹の国さ
そんなことを考えていたら十兵衛君の声が
その出来に笑顔と拍手を贈り
モニュメントは確かに妙案だね
●氷の樹の塔
雪積もる丘の上に転移すれば、眼下に望むのは色とりどりの果樹林……もとい、アイスの森だ。青く映る湖の水面を背景に、この光景はよく映える。
「……これが、不思議の国」
感じ取れる一つ一つを吟味するように、ヨシュカ・グナイゼナウ(一つ星・f10678)は眼を細める。この状況で、何よりも印象深いのは。
「うっひゃー寒いでござるなー」
御鏡・十兵衛(流れ者・f18659)の一言に、ヨシュカも頷く。そう、滅茶苦茶に寒い。
「いや、アイスの国が暖かかったら悲惨な事になると想像に難くないのですが」
「ふむ、どろどろになるのだろうね」
それは困るな、と朽守・カスカ(灯台守・f00170)それに応じる。ここは寒いけれど、とても面白い場所だ。暖かくなればその特徴が両方失われてしまう。
「そしてあれがあいす! なるほど、彩り豊かで楽しい菓子にござるな!」
「アァ……アイスだなァ。コレはラムネのアイスが食べたい食べたい」
独特の調子で合わせるエンジ・カラカ(六月・f06959)も、視線はやはり森の方へ。ふむ、と一つ鼻を鳴らして、カスカは一同に呼び掛けた。
「どうだろう、まずは周辺の状況を把握することに努めては」
「なるほど、つまり」
「あいすを食べに行くのでござるな!」
「いやいや、調査だよ、調査」
そんな事を言い合いながら、彼等は丘を下っていく。
「紅茶を分けてもらっておいて正解でしたね……」
魔法瓶から注いだ、湯気のくゆる紅茶を啜って、ヨシュカはその熱と香りを楽しむ。同じアイスを食べるにしても、これがあるのと無いのでは大違いだろう。それでは、とそこら中にあるアイスからいくつかを見繕って、舌に乗せていく。
果物の風味の強いものも良いが、食感のまた違う、白くて柔らかい大福もまた面白い。
「このオモチで包んだアイスが中々に……美味!」
もちもちとした食感、そしてその中から広がるアイスの甘味を楽しんで、彼の食べ歩きは続く。
「ふむ、色々と種類があるようでござるが……」
こういうものを食べ慣れていない十兵衛には中々難易度が高い。彼女の生まれ育った村には、こんなものはなかったわけで、見切ろうにも見た目から味の想像がつかない。そういう時は……。
「勘で選ぶでござるよ!」
ぶっちゃけどれも『あいす』というやつなんでござろう? 勢いよく彼女の選んだそれは、ブドウのような鈴生りの、白い球体。見た目は白玉によく似ている。
「……む、これは黒蜜入り」
運良く知っているタイプの味を引き当てたらしい。摘まんだ一つをもむもむとやりつつ、十兵衛は思考する。
冷たくて甘い、ははあ、話に聞いていた通りでござるな。女子供に人気と言うが、この程度、思ったよりも大した事――。
「……はっ! 某は一体!?」
伸ばした指が空を切り、手元の鈴生りアイスが消えている事に気付いて、十兵衛が我に返る。誰かが盗っていったのか、否、口元の冷たさが、全部自分で食べたと訴えかけている! まさかこんな事で無我の境地に――?
「……あっ、いたた、キーンって来たでござるよ、キーンって」
アイスの急な食べ過ぎ。額に走る痛みに、十兵衛がうずくまる。
「アァ……冷たいモノはほどほどにしておかないとなァ……」
「うぅ、身に染みたでござるよ……」
通りがかったエンジの言葉に、十兵衛がしみじみと頷いた。
「おやおや、慌ててはダメだよ」
そんな様子を見て取って、アイスの果実を摘み取っていたカスカが微笑む。彼女の選んでいるものは、あまり大きくなっていない、一口大のサイズの果実だ。それらを順にグラスに詰めれば、洒落たアイスグラスの完成。
「アァ……ラムネのアイスじゃないか。ソレ、パチパチして美味いンだ」
「あぁ、エンジ君の探し物も入っていたかい? それじゃ、これは君に譲ろう」
グラスの中から水色に輝くそれを取り出して、カスカはエンジにそれを渡す。
「そちらがラムネのアイスですか?」
「ああ、そノ通り……」
後ろから覗き込んできたヨシュカに頷いて返して、そこでエンジの視線もヨシュカの手元に注がれる。
「……もちもちアイスは珍しい。とーっても珍しい」
「ふむ、では半分こしましょう」
「もちもちするナ」
「おお、これはパチパチします!」
そんシェアが為されている横で、十兵衛が興味深げにグラスを見る。
「朽守殿、それを集めた後はどうするのでござるか?」
「これかい? これはね……」
そろそろ頃合いだろう、とカスカは持参した容器の蓋を開けて、グラスにサイダーを注ぎ込む。しゅわしゅわと泡立つ液体に、色とりどりのアイスが浮かび、グラスの中で踊る。
「この通り、見た目も華やかな氷菓の出来上がりさ」
おおー、という歓声に少しばかり胸を張りながら、カスカはグラスの中身を一口、満足気に微笑んだ、が。
「……ヨシュカ君、私にもミルクティーを分けて頂けないか」
「どうぞ遠慮なく! そちらは綺麗ですが冷たいでしょう?」
「ああ、寒いところで飲むものではないね」
綺麗なだけでなく、味も美味しいのだけど。悩ましいものだと嘯きながら、カスカは注いでもらった紅茶に口をつける。
「あ、紅茶にアイスを入れたら美味しいかも知れませんね」
「なるほど。……そうすると、冷めてしまうのが難点かな」
もう一度悩ましいものだと口にして。カスカは顔の前に持ってきたグラスを眺めた。
一頻り、冷たい甘味を楽しんだところで、ここからは開拓のお仕事である。
「お仕事ありマスカー?」
「よろしくドウゾー」
見た目のままゆるい調子で手を振る愉快な仲間達に、ヨシュカも何となく手を振り返す。
「ピーノくん……何か既視感があるんですよね。どこで見たんでしたか……」
そう、表面が黒くて中身が白くて、よく冷えたその姿は……。
「あ、こんびにとかどうでしょう? あれは便利ですよ」
「こんびに?」
「そう、こんびにです。小さなお店に色んな商品を並べて、夜中までやっている」
中々説明は難航しているようだが、果たして彼等にコンビニの何たるかが伝わるのか。
一方、カスカの方は防衛用の建物を候補に挙げていた。
「高い塔を作るのは如何かな。遠くから敵を見つけられるし、そこから物を落とすだけでも迎撃になる」
「ナルホドー」
「それって、あんな感じデスカー?」
話を聞いてピーノ君の指差した先は、アイスの森の向こう、廃城のあった場所だ。まだまだ建設中のようだが、そこには高い塔が建てられようとしていた。
「そうそう、同じような事を考えた人も居るようだね。――何となく、あのセンスは見覚えがあるような気がするけれど」
そう独り言ちる。なんだって塔の上に観覧車を建てようとしているのか。はてさて。
「それなら、こちらは氷積んだ大樹のような塔にしよう」
森に建てるのだから、丁度良いだろう。それに、この距離ならば、物見の塔がもう一つあれば互いの死角をカバーすることもできるだろう。
「氷樹の国だよ。面白そうじゃないかな?」
そんなカスカの言葉に頷いて、ピーノ君達はせっせと働き始めた。
「よーし、では某は、氷の切り出しを手伝うでござるよ!」
思い付くの建物が悉くエンパイア風で、この国には似つかわしくないだろうと懸念した十兵衛は、ピーノ君達にそう申し出た。
「ワーイ、助かるー」
歓声を上げながらも、凍った湖面に降りていったピーノ君達は、どこからともなくでかいノコギリを取り出して、ぎこぎこと氷を切り出し始めた。
「わっ、ピーノ君殿、何気に得物がえぐいでござるな……」
そんな事を呟きながら、十兵衛は腰に差していた刀に手を添える。――その刀身は澄み渡る水面の如く。剣刃は分厚い氷に引っ掛かる事もなく、静かにそれを両断した。
ただ響くは、鍔鳴りの音。彼女の先祖も氷の切り出しに技を振るわれるのは予想外だったかも知れないが、まあ。
「スゴーイ!」
「ハヤーイ!」
「エラーイ!」
当の十兵衛も気にしてはいないだろう。ふふん、と鼻を鳴らした彼女の剣はさらに冴え渡り――。
「見て見てヨシュカ殿、朽守殿、ピーノ君殿の氷像ー!」
建材そっちのけで削り出されたそれの前で、十兵衛は仲間達に向かって手を振っていた。
「……すごいね、良い出来だ」
「わあ、そっくり!国ができたらモニュメントに良いかも?」
「ああ、それは確かに妙案だね」
そんな彼女に、惜しみない拍手が送られた。これはこれで、きっと成果には変わりない。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 日常
『不思議の国の長閑な時間』
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POW : 好奇心の赴くままに散策する
SPD : お勧めスポットを満喫する
WIZ : お茶やお菓子と共にゆったり過ごす
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●新雪に刻む一歩
「六花の国とかどうだろう」
「アイスランランドはどう? ……そのまま過ぎ?」
「ラクトパラディアとか如何かね」
「あいすくりん王国でいいんじゃない?」
「ラムネ王国でどうだどうだ」
開拓の中で、猟兵達から挙がった国名候補。これらを一つ一つ吟味した結果、審査ピーノ君達の厳正なその場のノリで、国名が一つ選ばれました。
===========
●不思議の国『ラクトパラディア』観光ガイド
開拓も軌道に乗って、猟兵達はしばし自由に、この国を歩くことができるだろう。
もちろん、さらに開拓を進める事も可能だ。
●『六花の城』
廃城は、まだ完全ではないにしろ、氷の城として新たな形への修復が進んでいる。内部はアイスの家具で飾られ、外装の氷はステンドグラスのように輝いている。寒さに弱い者向けに木造りの客間もいくつか。
城の脇には喫茶図書館が併設されている。今の蔵書は、白紙のアイスばかりだけれど、この後どうなるかは分からない。
そして城の中心には、物見台として塔が聳え、上層には観覧車がくっついている。
「――わあ、ほんとにできたんだねっ」
「でもどうやって動かすんだ、これ?」
「ソレは、お城の地下にですネー」
「うん」
「取っ手付きの柱がアリマシテ。それを皆でぐるぐる回すのデスヨー」
「人力だ……」
なんかピーノ君達のダイエットにはなるらしい。
●氷の街
平野部には、建築半ばの城壁に囲まれて、果樹の林と庭付きの氷の家が複数。その中心の通りには、氷の花で飾られた『キララ商店街』がある。
建物はまだまだ空き店舗だらけだが、某ブランドの防寒着が並んだ洋服店や、マッサージチェアの置かれた休憩所などがぽつぽつとオープンし始めている。
「――いやぁ、良い心地だよ」
「ふぅん、悪くはないね」
マッサージチェアの出来を確かめるという義務は、こうして果たされた。
「ところで、これどうやって動いているんだい?」
「中に僕の弟が入ってイマース」
「は?」
「三人」
「ええっ!?」
思わず立ち上がった男のイスから、バランスを崩したピーノ君達がまろび出た。
「働き者だね、お前達は」
キリギリスの才能に満ち溢れた人魚には、特に動じた様子もない。
●『氷樹の森』
アイスの果実が生る森は、依然変わらずそこにある。色とりどりの甘い果実に、クッションのように転がる大福系のアイス。アイスキャンディの葉に、ふわふわのかき氷のような雪が積もる。
森の端に聳える氷の大樹は、ランドマーク兼物見の塔として。森を抜けた先、凍った青い湖には、ピーノ君の氷像と、小さな野外劇場が見られるだろう。
あとは一件、コンビニエンスストアが開店した。
「イラッシャイマセー」
「店員をやってくれるピーノ君も見つけたけれど、ここで何を売るんだい?」
「まあ、順当にいったらアイスでござろう」
「クーラーボックスしかありませんねこのコンビニ……」
華折・黒羽
オズさん(f01136)と
観覧車がまさか人力になるとは
戸惑いながらも
乗ろうという提案に頷いて
見た事あれど乗るのは初の観覧車
不思議な感覚にそわそわと窓へ張り付く
…あ、オズさんあそこ、店が沢山出来てます
あっちには氷像…と…?
煌々と明かり灯す四角い建物はなんだろうか
首を傾げながらも気付けばあれはこれはと言葉は溢れ
はしゃいでしまった事が気恥ずかしく
その身は小さく縮こまるが
同じようにはしゃぐ彼の様子見れば
気にしすぎかとまた視線を動かし
急に窓を開けた事に驚き
はらはらと手はさ迷って
渡された雲のアイスに息吐きながら
礼告げ受け取る
降りたら地下へ手伝いに行こうと
分け隔てなく優しい彼の提案には
再び首を縦に振った
オズ・ケストナー
クロバ(f10471)と
観覧車を見上げて大満足
クロバ、のろうっ
手を引いて
わ、うごいたよっ
同じように窓に張り付き
よく見えるねっ
ずっとむこうにみずうみがあるよ
ほんとだ、しかくい
なんだろう、あとでいってみよっ
静かになったのを不思議そうに見てから
あっ、クロバみてみてこっち
お城の中がちょっと見える
モナカのソファだっ
観覧車たのしいねっ
またクロバが元気になったから喜ぶ
てっぺんだ
3、2、1
とうちゃーくっ
窓をあけて雲をげっと
さっきはクロバにもらったもの
今度はわたしがあげる
おりたらピーノくんのおてつだいにいこっ
わたしもぐるぐる観覧車回してみたい
また森でアイス食べてしかくいたてもの見にいって
やりたいこといっぱいだね
●雲を掴んだ話
観覧車がまさか人力になろうとは。見上げた巨大なそれを眺めて、黒羽は内心の戸惑いを消し切れずにいた。上の方の建設を手伝ってはいたが、まさか根っこの部分がそんな事になっていようとは。
とはいえ、オズの方はご満悦のようで。
「良い出来になったね! クロバ、早速乗ってみよう!」
出来栄えに満足気に頷いて、黒羽の手を引く。でもこれ、ピーノ君達が回すのでしょう? 一瞬そんな思いが頭を過るが……こういうものに乗るのは初めてだ。頷いて、黒羽はオズの後をついていった。
「出発シマース」
何か地下の方から「オー」と小さく掛け声が聞こえて、観覧車が回り始めた。
「わ、うごいたよっ」
浮かぶ太陽の描かれたゴンドラは、二人を乗せて上り出す。そわそわと、落ち着かなげに窓に顔を寄せた黒羽に、オズも並んで窓に張り付いた。
「……あ、オズさんあそこ、店が沢山出来てます」
「うん、よく見えるねっ」
下の方を指差す黒羽の後を次ぐように、オズの指先が不思議の国をなぞり行く。
「あれがわたし達の歩いてきた森で、ずっと向こうに見えるのがみずうみかな?」
「あそこにあるのは雪だるま……ではなく、氷像ですかね。それから、あの明るくて四角い建物は……?」
「ほんとだ、しかく。なんだろう、あとでいってみよっ」
首を傾げていた黒羽は、オズと頷き合ったそこで、ふと我に返って、口を噤んだ。視線が、下に落ちる。我知らず、溢れるままに喋ってしまった。はしゃぎすぎたか、と身を縮める彼だが。
「……?」
オズの側は、そんな様子を察しながらも理由が分からないでいた。どうしたのかな、という点は気になれど、今は……。
「あっ、クロバみてみてこっち!」
「は、はい」
手招きするオズに、黒羽が思わず従う。
「お城の中がちょっと見える! モナカのソファだっ」
そっと盗み見た彼の表情は、黒羽の心配するような事とは無縁の様子。気にし過ぎかと、安心したような気持ちで息を吐いて。
「降りたら、そちらも見て回りましょう」
「うん、そうだねっ」
明るく花咲くような笑みにつられて、黒羽も柔らかく目を細めた。
「3、2、1……とうちゃーくっ」
上る太陽は、やがて天頂へ至る。横に並ぶもののなくなったそこで、オズはおもむろに窓を開いた。
「えっ」
思わず目を見開いた黒羽の髪を、吹き込んだ冷たい風が揺らす。えっなんで、と思考がストップした黒羽を他所に、オズは外へと身を乗り出した。
危ない、などと言う間もなく、身体を引っ込めたオズは、満面の笑みで黒羽の方に振り返った。
「はいっ」
差し出された両手には、抱えるほどの白い塊。柔らかでなめらかなその質感は黒羽にも覚えがある。――この世界の、雲だ。前に、空から千切ってオズへと渡したそれと、同じもの。それが、どうしようかと彷徨っていた黒羽の手に乗せられた。
「今度は私があげるね」
「……ありがとうございます」
白い息をひとつ吐いて、オズの笑顔にそう応じる。胸をくすぐられるような感覚を覚えつつ、黒羽はそれを一口、噛み取った。
もちもちとして、甘い。そんな感想に、そうだろう、とオズは胸を張ってみせた。
「おりたらピーノくんのおてつだいにいこっ」
わたしもぐるぐる観覧車回してみたい、というオズに、黒羽が頷く。彼の願う、『一緒にやりたいこと』は、まだまだたくさんあるようだ。
「それからまた森でアイス食べて、しかくいたてもの見にいって――」
挙げられていくそれは、さて一日で叶えられるものだろうか? 黒羽の心配をよそに、数える指がさらに一つ、折れた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
デリック・アディントン
了(f18482)と
寒いところと聞いたから防寒はしっかりとして
誘ってくれた相方の元へ
確か集合は城の前……あれは、観覧車?
了、お疲れ様
身体は冷えきってないかい?
此処は見事にアイスだらけだね…壮観だ
ん?好きなアイスか、あまり意識したことなかったかもしれないな
あぁ良いね、その案乗った
了のオススメ、楽しみだ
色々食べて好みの物を見つけてみよう
観覧車、私も目に止まっていたんだ
笑いやしないよ、楽しそうだしね
ところでこの動力はどうなっているんだい?
……え、人力?
それは…これでもかと楽しんで
降りたら感謝と感想を伝えに行こうか
差し入れに1番気に入ったアイスを持って、ね
忌場・了
リッキー(f09225)と
お疲れさん、と一生懸命共に頑張ったピーノ君達への労いを済ませ
呼んでいた相方と合流
さて城の上にいつの間にか出来上がっていたのが気になる
観覧車…
来てくれてサンキュ、どんなアイスが好きだ?
ん…寒いのはちょい苦手だが、コート着込んでるし大丈夫
リッキーは拘りねえのか、ならお勧め沢山持って来よ
気に入ったのありゃあ教えてくれ
幾つか食事みてえに皿に盛ってみるのはどうかね
お子様ランチとかバイキング的に
観覧車で国を一望しつつ食べてえとか言ったらガキっぽくて笑うか?
返答には素直に笑み
足取り軽く乗り口へ
え、動力―――
あーこの国を支えている頼もしい奴ら…の手動?
アイツらにアイスを…
それいいな!
●天上の光景
アリスラビリンスの新たな世界、そこに吹く風を受けて、デリック・アディントン(静寂の調律師・f09225)は防寒着の首元を締め直した。白く息を吐いて、開拓の進みつつあるこの国を見回す。
「確か集合は城の前……と?」
目的のものはすぐに見つかった。見つかったが……。
「あれは、観覧車?」
もの凄く目立つそれを目指して、デリックは雪を踏んで歩き始めた。
その観覧車の根元、物見の塔の足元では、この廃城の補修に携わっていた了が、ピーノ君達に労いの言葉をかけていた。手を振るピーノ君に頷いて返して、了は塔の上へと視線を遣る。
「壁を固めてる間に、まさかこんなものが出来上がるとはなぁ」
この開拓は猟兵複数での共同作業である。こういうことはまま起きるもの。
そうして城の出来栄えを眺める彼に、合流したデリックが声を掛けた。
「了、お疲れ様。身体は冷えきってないかい?」
「ん……寒いのはちょい苦手だが、コート着込んでるし大丈夫」
「此処は見事にアイスだらけだね……壮観だ」
ああ、と一足早くこの国を楽しんでいた了はそれに頷く。見ているならば話は早い、この国に触れるなら、やはりそれを味わうべきだろう。
「来てくれてサンキュ。早速だが、どんなアイスが好きだ?」
「ん? 好きなアイスか、あまり意識したことなかったかもしれないな……」
「なるほど、拘りはねえのか」
それはそれで好都合、と了は言う。
「ならお勧め沢山持って来るから、気に入ったのありゃあ教えてくれ」
「あぁ良いね、その案乗った。了のオススメ、楽しみだ」
チューペットも悪くは無いが、ここはアイスの果実から。ミントにオレンジ、チョコレート、と色とりどりの中から選りすぐったものを、了は皿の上にずらりと並べる。
「まるでバイキングだね」
「ああ、普段あんまりやれねぇだろ?」
この国の気候ならば、そう簡単に溶けてしまう事もない。自由に、好きなだけ、色々食べれば好みの味も見つかるはず。だが、そう、『誰と一緒に食べるか』と、『どこで食べるか』もまた重要な要素である。
アイスの並んだ皿を手に、了は空いた手で上を指差した。
「観覧車で国を一望しつつ食べてえとか言ったらガキっぽくて笑うか?」
「笑いやしないよ、楽しそうだしね」
「ん、そりゃ良かった」
「……君の方が笑ってないかい?」
結局そう笑い合って、二人は塔の上のゴンドラへ。ゆっくりと回る観覧車は、やがてこの国を見下ろす高みへと彼等を運んでいく。
「まあまあ寒いな」
「いや、でも良い景色だよ」
アイスを掬い取ったスピーンを口に運びながら、デリックは外の光景に目を細める。雪に咲く、色彩豊かな果実の原風景、そこに人の手が入っていく軌跡を感じ取るように、それをじっくりと味わって――。
「ところで、この動力はどうなっているんだい?」
「え」
ふと浮かんだデリックの問いに、了が少し躊躇う様にして、答える。
「あーこの国を支えている頼もしい奴ら……の、手動?」
「手動……え、人力?」
人力である。冗談みたいな話だが、了の反応からその辺りを察したデリックは、視線を思わず下――城の方へと向けていた。
「それじゃあこの光景を楽しんで、降りたら感謝と感想を伝えに行こうか」
差し入れに、一番良かったアイスを持って行こう。そう提案するデリックに、了も名案だと頷いた。何しろ、一時とは言え共に働いて、共に過ごしたのだから、彼にも思うところはある。
「ああ、それいいな!」
さて、そうと決まれば、心からの感想を伝えるために目いっぱい楽しんで、一番良いアイスを選ばなくては。不思議の国の空の上で、二人の品評会が始まった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ニオ・リュードベリ
わーっ!
国っぽくなってる!すごい!
ラクトパラディア……名前も素敵だね!
改めてお城を見に行こうかな
最初はぼろぼろだったけど、皆の力で綺麗になったね!
図書館も素敵だなぁ……えっ、この本もアイスで出来てるの?
すごい……きっとインクもチョコレーソソースとかになるんだろうなぁ……
いちごのソースやレモンのソースでカラフルな本とかもあるのかな……
色んな本が出来るの、楽しみだね!
観覧車や搭もすごい!
どうやって動かし……え、人力?
ピーノ君達ってやる気になるとすごいんだね……
歩き回る最中も余裕があればアイスを摘まみつつ
ずっとこのまま美味しく幸せに開拓していきたいけど、きっとオウガはやって来る
それにも備えないと……
九之矢・透
ラクトパラディア、良いじゃん良いじゃん!
名前が入るといよいよ国!
って感じがするよな
塔に出来た観覧車に乗りに行こうか!
コレを作ったピーノ君達と一緒に乗れたら嬉しいな。
……うわー高い!しかも回る!
見張りじゃなくても来ちゃうな、これは!
こんなのまで作っちゃうんだからアンタ達は本当にスゴいな……!
改めてお疲れさまデシタ、だな。
向こうの森がキラキラしててキレイだなあ……
冷たい風だって心地いいや
なんて身を乗り出してたら……ん?雲?甘い!
口を開けて雲を迎えてみよう。もが。
観覧車を楽しんだ後は
いくつかチューペットを持って地下へ。
柱を回してくれたピーノ君に差し入れだよー
ダイエットも兼ねてるそうだし、半分ずつな!
●空の上
「ラクトパラディア、良いじゃん良いじゃん! 名前が入るといよいよ国! って感じがするよな」
皆で立て直し、美しく生まれ変わった廃城の中、と透が満足気に頷く。この氷菓子の世界を国とするなら、ここが首都になるのだろうか。何にせよ……補修工事中から気になっていたそれ、観覧車へと彼女は向かう。
「やっぱこれは乗ってみたいよなー」
「すごいデショー。がんばりマシタからー」
「おっ、これ建てるの手伝ってたピーノ君達か?」
正直見分けのつき辛い愉快な仲間達だが、少しばかり胸を張る様子からそれは伝わる。
「そうだ、アンタ達も一緒に乗りなよ」
「良いんデスカー?」
「ワーイ」
諸手を挙げる彼等を引き連れて、透は星の描かれたゴンドラに乗り込む。
「普段は止まってるんだな……」
「誰かが乗ると動きマース」
そりゃまぁ、人力だもんな。と透が内心納得するのを他所に、観覧車が一度小さく揺れて、ゆっくりと回り始める。
「うわ、回った! ただでさえ高いのに……見張りじゃなくても来ちゃうな、これは!」
ゆっくりとしたペースで上って行けば、最初から開けていた視界はさらに高く、国全体を見下ろせる程の高度に至る。
「こんなのまで作っちゃうんだからアンタ達は本当にスゴいな……!」
「わー照レルー」
「いやいや、改めてお疲れさまデシタ、だな」
「お疲れ様デシター」
ふふ、と笑って、透がピーノ君達の癖のあるイントネーションを真似る。わいわいと騒ぐ小さな彼等を微笑ましく見て、彼女は視線をまた外へと向けた。
「この窓、開けても良い?」
「良いデスヨー」
「でも気を付けテー」
慎重にそれを開けば、冷たい澄んだ風が、ゴンドラの中を撫でていく。ここはまた一層に寒い、けれど。
「向こうの森がキラキラしててキレイだなあ……ん、あれ?」
窓から身を乗り出した透は、顔に絡む何かを感じて一度身を引っ込める。くっついたそれは、蜘蛛の糸ではなく、空に浮かぶ雲の一筋。
「これも甘いのか……」
口に入ったそれは柔らかく、甘くて。
「よーし……!」
「ワー」
「気を付けてクダサイー」
もう一度身を乗り出した彼女は、行く手に浮かんだ雲を、口を開けて迎え入れた。
もが。
――甘くて美味しい。顔全体で感じたそれを味わいながら、下を見れば、こちらを見上げる猟兵の一人と目が合った気がする。
少し照れ臭い思いを抱きながら、透はそちらへと手を振った。
●六花の城を歩く
城の補修作業の後に時間を置いて、再度この世界を訪れたニオは、変わっていくこの国の様子を目の当たりにして歓声を上げた。
「わーっ! 国っぽくなってる! すごい!」
雪の原野が切り開かれて、複数の人工物が覗くその様は、正に開拓の醍醐味のように感じられた。
「ラクトパラディア……名前も素敵だね!」
忙しそうに動き回るピーノ君達の姿を微笑ましく見遣りながら、ニオは自らも建設に携わった廃城の方へと歩いていった。
「わあ……」
それはきっと、見違えるような光景。最初はぼろぼろだったこの城も、皆……猟兵達と、ピーノ君達の手により、綺麗に生まれ変わっていた。
まずは併設された図書館へと入った彼女は、本棚に収められたその一冊を手に取った。
「へえ……仕舞ってある本もアイスで出来てるの?」
開いたそれは、まだ書く者もいないため、真っ白。だが良く冷えていて、表紙を捲れば甘い匂いがふわりと漂う。
「きっとインクもチョコレーソソースとかになるんだろうなぁ……」
誰かが、そこに文字を落とせばきっとそうなるだろう。絵本を描くなら、イチゴのソースやレモンのソースで彩られるのだろうか。そんな未来に思いを馳せて、彼女は大事そうに、本を抱いた。
「色んな本が出来るの、楽しみだね」
きっとそう遠くない未来に、この開拓史もそこに載せられるのかもしれない。
図書館を後にした彼女は、自らのデザインした内装や家具を確認するように一巡りする。採ってきたアイスを摘まみながら城内を歩く彼女は、やがて物見の塔の足元に至った。
「やっぱりすごいよね、これ」
見上げれば、聳える塔からさらに伸びる観覧車の姿。ゴンドラの様子まで視界に入れれば、首が痛くなるほど。今は誰か乗っているらしく、観覧車はゆっくりと動いており、上から身を乗り出した誰かが手を振っている。
そちらに手を振り返した彼女は、ふと、思い付いた事を口にした。
「でもあれ、どうやって動かして――?」
「それはねー、こっちデスヨー」
その呟きを拾い上げたピーノ君の一人が、ちょいちょいとニオを手招きする。物見の塔の根っこから下へと伸びる階段。その先の地下室では、何か複数のピーノ君が取っ手の付いた柱をぐるぐる回していた。
「ワーイガンバレー」
「エンヤコラー」
軋みを上げて回転するそれが、歯車やら何やらを通して観覧車を回しているらしい。
「ピーノ君達ってやる気になるとすごいんだね……」
若干途方に暮れた表情を浮かべた彼女の後ろから、今度は透が降りてきていた。
「うわー、こんな風になってるんだな……」
こちらは面白がるようにそう言って、柔らかな白い塊と、チューペットの草を数本持って来ていた。先程まで観覧車に乗っていたらしき透は、ニオの姿にも気付いたようで。
「アンタもこれ回してたの?」
「違う違う、あたしも気になって様子を見に来たところだよ」
「そうかぁ、でも丁度いいや、アンタも食べていきなよ」
ほら、差し入れだぞ、と働いていたピーノ君達に、持参したアイスを透が振舞う。
「ワーイ」
「あーでもダイエット中なんだっけ? じゃあ半分ずつな!」
「エー!」
「一本食べターイ」
わいわいとはじまった宴会に、ニオも差し出されたチューペットを手に取った。
――この国の開拓も、こうして楽しく美味しく、幸せに進んでいけば良いのに。
ああそうだ、と内心ニオは気持ちを改める。それでも、きっとオウガはここに現れるのだから。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
火狸・さつま
常盤f04783と!
ラクトパラディア…
ラクトパラディア!!!
決まった国名におめめきらっきら
常盤見てにっこにこ
わーわーわー!常盤、の、案!
素敵な国名、なた!ね!
尻尾ふりたくり
うきうき弾むよに散策へ
わわ、こっちにも、もう建物!出来てる!
はやいねすごいねとぴょこぴょこ
途中、またアイスをもぐもぐしたり
まだ開拓されてない場所を見れば
ここには何があうかなー?
すべりだい…!!(やりたい!)
良い、ね!長いやつ!滑りたい!!
どーん!ってでっかいやつー!
常盤、寒い?だいじょぶ???
純狐毛皮、ある、よ!(中身入り、だけど)
ご要望とあらば狐姿に変化してマフラー代わりに!(重い)
きゅ?(あったかい?)(しっぽふっさり)
神埜・常盤
さつま君(f03797)と
ふふ、僕よりも君が喜んでくれているじゃないか
――あァでも、有難う、とても嬉しいなァ
楽園のような素敵な国に成ると良いねェ
おお、建物やら店やらで世界が賑やかに成っている
ピーノ君たちも皆も、仕事が早くて凄いなァ
僕らももう少し開拓を続けようか
勿論、合間合間にアイスを摘みながら
ンン、此処には皆で遊べる公園とか合いそうだよねェ
氷の滑り台とか在ると、僕だったら絶対に嬉しい
然し氷の建物が増えて冷えて来たな……
オヤ、毛皮を堪能させてくれるのかね?
あァ、願っても無い事さ
天然狐皮のマフラーを存分に楽し――(ずしり)
……ウン、中身が入ってる事を忘れていた
はは、いや、とても暖かいとも
●白の街
「ラクトパラディア!!! 常盤、の、案! だね!!」
国名決定の知らせを受けて、さつまが目をきらきらと輝かせる。
「素敵な国名、なた! ね!」
「ふふ、僕よりも君が喜んでくれているじゃないか」
全身で喜びを示すさつまを見て、当の常磐も微笑む。
「――あァでも、有難う、とても嬉しいなァ。楽園のような素敵な国に成ると良いねェ」
まだまだ発展途上のこの国が、良いものになりますように。そう言う彼に先立って、尻尾を振りたくったさつまが先導するように、出来かけの街を歩き始めた。
「わわ、こっちにも、もう建物! 出来てる!」
「本当だねェ、建物やら店やらで世界が賑やかに成っている」
二人が作っていた家々に留まらず、この周りだけでも商店らしきものが立ち並び、作りかけながら城壁の姿も見える。遠く離れた場所に目を遣れば、お城や物見の塔も発見できるだろう。
「ピーノ君たちも皆も、仕事が早くて凄いなァ」
もぐもぐと、途中で見かけたマンゴー味のアイスの果実を摘まみながら、二人は平原に生まれた町の様子を見て歩いた。
建物は。今も働くピーノ君達が徐々に増やしていっている。しかし、当然ながらまだまだ開拓の手の入っていない原野も目につく。そのうち一つ、言うなれば空き地を前にして、さつまは小さく首を傾げた。
「ここには何があうかなー?」
「ンン、此処には皆で遊べる公園とか合いそうだよねェ」
なるほど、公園。そう思い描くさつまに、常盤がもう一つ絵を加える。
「氷の滑り台とか在ると、僕だったら絶対に嬉しい」
「すべりだい…!!」
そのアイデアに、さつまが瞳を丸くする。どうやらとても気に入ったものらしい。
「良い、ね! 長いやつ! 滑りたい!! どーん! ってでっかいやつー!」
早速声を掛けると、ピーノ君達もうんうんとそのアイデアに頷いて、設計計画に取り入れ始めた。
本当に良く働くね、とそちらを感心して見ていた常盤が、身震いを一つ。
「ああ、氷の建物が増えてきたからかな……」
冷えてきた、と呟く彼を、さつまが覗き込むように見る。
「常盤、寒い? だいじょぶ? 純狐毛皮、ある、よ!」
「――あァ、願っても無い事さ」
ありがたい申し出だ、と常盤が頷く。フォックスファー、とはよく聞くが、今回のそれは正真正銘、上等の天然狐皮のマフラーである。
「いやその感触を楽しめるとは、僕は幸運で――」
狐のような狸のような、不思議な姿へと変じたさつまがするりと駆けて、常磐の首周りへと巻き付く。
「――ウン」
思わず気合の入った声が出る。柔らかく暖かい。が、重い。考えてみれば当然、毛皮以外に中身もあるよね、と常盤はふらついた姿勢を元に戻した。
あたたかい? と尻尾揺らしてこちらを仰ぎ見る彼に、常盤はどうにか笑みを返した。
「はは、いや、とても暖かいとも」
体幹が鍛えられそう、という感想を心中で付け足しながら、常磐はまた街道を歩き始めた。一通り見終えたら、ピーノ君達の開拓作業を手伝うのも良いだろう。
きっとここには、襟元に居る彼の所望の、滑り台もできるはずだから。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
雅楽代・真珠
【薬B】
喫茶図書館と観覧車が楽しそう
誰が作ったのかと思ったら…成程ね
橇、なんて名案なのだろう
自分で泳ぐのは面倒だから、僕もそれがいい
あいすくりんを食べながらそれで移動したい
もっと娯楽施設が必要かな
寝ながら活動写真が見れる場所なんてどうだろう
勿論枕はもちもち
きらら商店街で服を買うよ
僕は物だから寒さはあまり気にならないけれど
その場所に似合いの服装という物があるでしょう?
見立ててくれるの?
僕に似合いそうなの、全部買うよ
ついでにお前たちの分も買ってもいいけど
可愛い金魚を爺呼ばわりするなんて…
お兄様呼びなら買ってあげる
折角だから皆でお揃いのにしない?
毛皮もいいな
重たくはない?
菓子より重いものは持てないよ
ロカジ・ミナイ
【薬B】
まぁまぁ、君は少し休みたまえ
トリスにチェアを譲ってやろうってんだから
なんて優しいんだろうね、僕は!
アイスはいる?いらない?
わっ、ソリにしてる…なんて怠惰な閃き
そんできらら商店街でアイス片手にプラプラ
おやおや、センスのいい防寒具がありそうだね!
いいな、僕のサイズあるかな
そういやお魚くんはこの寒さ大丈夫なのかね…
店員さん、お魚用のダウンコートとかあるのかい?
毛皮って言ったら最高なのはフォックスファーよ!(あったらあったで身震い)
きらちゃんもこう言ってる事だしピンクのネオンカラーでお揃いなんていかが?
…え!?買ってくれるの?…真珠ジィ…お兄様!❤️
良いなぁ、この国!気に入ったよ
支店出そうかな
トリス・ビッグロマン
【薬B】
ぶるる……やれ、まったく不幸な事故だった
聞くけど、あんたアイスに埋まった直後にアイス食いたいと思う?
オレはごめんだ
でもチェアは遠慮なく借りよう
大人しく待ってるのもつまらないし……
なあ、ピーノ諸君
マッサージはいいから椅子のまま運んでくれよ
ソリのようにしてさ
うん、これは国の中の移動手段としていいんじゃないか?
ついでだから全員分作らせよう
やあ、楽ちんだ
防寒着だって?
そりゃ毛皮だ、毛皮がいいぞ
立派な毛皮は権威の象徴だからな
まあ、オレは何を着たって王子様だが
シロクマなんてあるかい?
軽くて上品なのがよければ貂皮にでもしておけ
オレの分の支払いはいい
お嬢ちゃんにラビットファーの襟巻きでも買ってやりな
キララ・キララ
【薬B】
すごいねえー!いろんなものができたねえ!
一日じゃ周りきれないからまた来ることにします!
商店街にきらちゃんの名前がついた!
うんうん、おかいものしていきましょ!
その前にきららもアイスたべたい…
じつはたくさん動いたからちょっと暑いのです。フルーツのがいいな~
あっ!おようふく?
ロカジはやっぱりネオンカラーが似合うとおもうの!
スニーカーもいっぱいありそうよ。おそろいする?する??
シンジュはまっしろとか、パステルカラーとか、似合うものいっぱい!
…え!ぜんぶ買うの!?
けがわっぽいの、あるかなあ?王様みたいなのがいーい?
わっ!ふかふかのえりまきだあ!トリス、ありがと!
あったかそ~ ぬく~い
ヨシュカ・グナイゼナウ
【薬A】
こんびにが出来てた(吃驚)
ラクトパラディア、素敵な名前。名前もついたし国らしくなって来ました
はあい、散策タイムですね
キララ商店街にて
氷のお花が綺麗ですね。仕立て屋さんがあちらに?それは是非行かねば
防寒着など購入していきませんか?寒いですし、寒いですし(強調)
もこもこしたのがあれば良いな。こういうのは如何でしょう?(見繕い中)
ふふふ、確かにこれは皆揃って雪だるまみたいですね
(散策中)
灯りがすくないと少し寂しいですね(頷き) 氷の街を灯すランタン屋さん。素敵!
あ、お城が見えてきました!
氷の城壁に氷のステンドグラス、御伽噺のお城みたい
天辺にあるのは…観覧車!あの…折角ですし乗ってみませんか?
御鏡・十兵衛
【薬A】
うむ、せっかくなので広く見て回るのは如何か?
身体も冷えて来たところ、ここらで寒さ対策するのは賛成にござる!
ふうむ。某、普段自分から服を買うことなどそうはないゆえ、何を選んだら良いのやら。この際ピーノ君でも構わぬから選んでくれぬものか。
(お揃いのものを選んで)ははは、もこもこで丸っこくて、雪だるまとは言いえて妙にござるな。
エンパイアとは異なる様式の城、興味深いでござるなー!
っとと、床がつるつる。壁もまるで鏡のよう。中々某好みの殺し間になりそうな空間…物騒?ははは、すまぬすまぬ。
観覧車からの景色を眺めながら何か…といってもあいすしかないでござるな
(コンビニのビニール袋を取り出してがさごそ)
エンジ・カラカ
【薬A】
まずは街を散策しようそうしよう。
何があるンだろうなァ……アイスだらけだろうネェ。
アァ、氷の花。
……寒さ対策?
アイスばーっかりだと腹壊すもンなァ……。
もこもこ防寒具を適当に買おうそうしよう。
なんだっけ、雪だるま?
もこもこしててソレみたいダろー。
みーんなも雪だるまになるとイイ。
うんうん、もこもこダ。
寒さ対策をしたらまーたアイスを食べる。
食べながら城の探索。
オー、観覧車。でっかいぐるぐる観覧車。
コレは知っている、あの観覧車は下を見下ろせる。
コノ国の隅から隅まで見下ろせる?
それともアッチの塔?
アァ、そうだそうだ乗ろう乗ろう。
大賛成ー。
朽守・カスカ
【薬A】
なるほど、観光気分で散策するのは大賛成さ
防寒具を求めることに異論はないが
この氷菓ばかりの国にあるとしたら
いったいどのような防寒具となるのだろう
きっと変わったものに違いない
着膨れ雪だるまもきっと可愛いだろう
そんな期待に胸を躍らせながら
見立てて頂こう、かな
着飾りながらもこの変わった街並みを歩いて気付く
とても綺麗だけど、灯が足りないのでは
ピーノ君、夜の警備のためにも灯は必要さ
具体的に言うと、ランタン屋とかがね
とこっそり私の好みも混ぜてのアドバイス
ああ、皆
折角だから観覧車も見に行かないか?
この国を一望してみたいのさ
ゆっくり回りながら眺める景色は
きっととても素敵なものに違いないから、ね
リダン・ムグルエギ
アタシはのーんびり商店街でバカンス兼仕事と洒落込むわ
キララちゃんらには感謝感謝よね
マッサージチェアを自分用にももらい
食っちゃ寝したりミシンで気ままに創作するの
最近はサムエンで戦争特需ーとかやってた分
量とか機能美重視過ぎたのよねー
息抜きに遊びのデザインを色々作るわ
後は次のための「準備」よね
建物の屋根を飾り立てれる色々な柄の美装紙を作るわ
カステラの底とかのアレを瓦に見立てるの
それに「この紙を張ったお菓子は食べたくなくなる」催眠模様を刻めば…
建物の保存にもなるし
オウガの狙いも分かりやすくなるし
何より…コレが流行れば国全体がカラフルになるわ!
アタシ色に染まれー
あ、お代は別の所で取ってきたアイスでよろー
●ようこそキララ商店街
「すごいねえー! いろんなものができたねえ!」
「喫茶図書館と観覧車が楽しそうだね」
一日では到底回り切れないほど、劇的な発展を遂げた世界に歓声を上げるキララの横で、ピーノ君が作ったらしいパンフレットを眺めていた真珠は、面白いものを見つけた、と笑う。どうやら発案者についても記載があるらしい、誰があんなものを考えたのかと思えば……というわけだ。
「ここは『きらら商店街』という名前になったようだね」
「きらちゃんの名前が!?」
そんな感じで発案者にちなんだ名前が付いていることもあるようだ。
「じゃああれは完成したらトリス城壁って事になるのか?」
「労災事故が起きていたようだけど」
「縁起が悪くないかな?」
ロカジと真珠の声に渋面を作って、トリスが答える。
「あれはただの偶然……まったく不幸な事故だった」
そもそも崩れたのは城壁じゃないし、などと口にする彼を、ロカジはまぁまぁと宥めた。
「君は少し休みたまえ。アイスは要るかい?」
「聞くけど、あんたアイスに埋まった直後にアイス食いたいと思う? オレはごめんだ」
「そういうことなら仕方ない、代わりにチェアを譲って進ぜよう。なんて優しいんだろうね、僕は!」
「はいはい」
ひらひらと手を振って、それでも遠慮なくトリスはそのやわらかなマッサージチェアに腰掛ける。クッション性はやけに良い。そのままマッサージしてもらうのも良いけれど、と彼は思い付きを口にした。
「なあ、ピーノ諸君。マッサージはいいから椅子のまま運んでくれよ」
ソリのように、と彼は言う。ふむ、としばし顔を見合わせていたピーノ君達は持ってきたロープを椅子に繋いで、即席のソリを完成させた。
「こんな感じデスカー?」
ロープを引くピーノ君達が前を歩き、椅子の中に居る彼等がちょこちょこと足を動かし、前へと進んで見せる。
「やあ、楽ちんだ。これは国の中の移動手段としていいんじゃないか?」
慣れてきたらしく徐々にスピードを上げるソリの様子に、気付いたロカジ達が驚きの声を上げる。
「わっ、なんて怠惰な閃き」
「名案だね。自分で泳ぐのは面倒だから、僕もそれがいい」
「ああ、ついでだからこれを全員分――」
「あっ」
椅子に入ったまま歩いていた後続のピーノ君が、足元の大福アイスを踏んずけて転んだ。
「アー」
「アワー」
次々に倒れた後続の三名が、順番に椅子からまろびでる。
「えっ、おい、これ……」
クッション性を完全に失った布に乗ったまま、トリスは地面を引きずられていった。
「……知ってるかい? ああいうのをエンパイアでは『引き回し』と言うんだよ」
「へえー、楽しそうだねえ!」
「……やっぱり僕は自分で泳ごうかな」
家畜ならぬこの愉快な仲間達を移動手段にするなら、もう少し別の方法を取った方が良さそうだ。まぁ、それはともかく。
「せっかくの商店街だし、買い物もしていくかい?」
「うんうん、おかいものしていきましょ!」
元気よくキララが頷く、けれど。
「その前にきららもアイスたべたいなー……」
「そう? なら少し散歩をしてから行こうね」
商店街の建造に集中していたキララは、まだ肝心のそれらを味わっていなかったので。
「フルーツのがいいな~」
寒空の下とは言え、たくさん働いた分、頬は火照っている。美味しいアイスを求めて、キララは先頭に立って歩き始めた。
●防寒着のお買い物
「……素敵な名前もついて、国らしくなって来ました」
ラクトパラディア。名前を与えれればぐっとそれらしさが増すものだ、とヨシュカが言う。まぁそんなことより、ほんとにコンビニが出来上がっていた衝撃が大きいようだが。
「ちゃんとコンビニっぽい作りでござったな」
「注文以上でした……」
買い物袋を提げた十兵衛の言葉に、ヨシュカはどこかしみじみとした様子で頷いた。
「他には何がある? まずは街を散策しようそうしよう」
「うむ、せっかくなので広く見て回るのも良さそうにござるな」
「なるほど、観光気分で散策するのは大賛成さ」
開拓は一段落したと見て、次はこの国を見て回ろう。そんなエンジの提案に、カスカ達も乗る事にした。
「はあい、散策タイムですね」
ヨシュカもその後に続いて、一行は湖近くの銛から平野部へと歩いていった。
「何があるンだろうなァ……アイスだらけだろうネェ」
「それはまぁ、間違いないだろうね」
身も蓋もない予測だ、とカスカが苦笑する。実際、見るべきものは多いがそれらは大体アイスで出来ている。それがこの国の特色なのだから仕方がない、が。
「アァ、氷の花」
「なるほど、こうして見ると、一層綺麗ですね」
彼等が辿り着いたのは、商店の立ち並ぶキララ商店街だ。植木で、花瓶で、飾られた氷の花々。人の手が入ったそこは、この国の原生林とはまた違う風情を放っている。
それらを興味深げに眺めていたヨシュカはやがて一つの商店に目を付けた。まだまだ空き店舗だらけのこの区画で、一際目立つその場所は。
「仕立て屋さん、ですかね」
きっと氷で出来たショーウインドウの中には、いくつかの防寒着が飾られている。
「防寒着など購入していきませんか? 寒いですし、寒いですし」
二回言った。ヨシュカとしても、やはりそれは避け得ぬ問題らしい。
「身体も冷えて来たところ、ここらで寒さ対策するのは賛成にござる!」
「アイスばーっかりだと腹壊すもンなァ……」
十兵衛とエンジにも、あえてそれに反対する理由はない。カスカの方もそれは同様だが、懸念点が一つ。
「異論はないが……この氷菓ばかりの国にあるとしたら、いったいどのような防寒具となるのだろうね」
「た、確かに……アイスクリーム製の服とか寒そうです」
「まあ聞いてみるのが早いでござろう。店主殿、店主殿ー?」
ヨシュカが頭を悩ませる前に、店のカウンターの奥へと十兵衛が呼び掛ける。そして、接客に現れたのは、ピーノ君……ではなく。
「はいはい、アタシが店主だけど、どうかしたの?」
現れたのは、気だるげな雰囲気を漂わせたヤギのキマイラだった。
「それが、でござるなー……」
「ああ、アイスクリーム製のコートっていうのも考えたんだけどね……」
質問に対する答えもまた、率直なもの。
「他の国からの輸入品……らしいわ」
そう言って、店主は肩を竦めた。ピーノ君達が元居た国だろうか、ウサギ穴を通した愉快な仲間達の交易路は、どうやら油断できないもののようだ。
「……ふうむ。某、普段自分から服を買うことなどそうはないゆえ、何を選んだら良いのやら」
「せっかくだからね、見立ててもらうのも良いんじゃないかな」
十兵衛の悩みにカスカが答える。ディスプレイされたものを見る限り、いくつかデザインはあるようだが。
「このもこもこした物にしようそうしよう」
「わたしもそれが良いと思っていました」
一際エンジとヨシュカの目を引いたのは、もこもこと、丸いシルエットの防寒具だった。
「ピーノ君風のスタイルがお好み? サイズ、あったかしらね……」
サポート役らしいピーノ君と、億劫そうに在庫をごそごそしていた店主は、やがて見つけてきたそれを二人に手渡した。
ふむ、と頷いた二人は、早速それに袖を通す。
「なんだっけ、雪だるま? もこもこしててソレみたいダろー」
「確かにこれは、フードも被れば一層丸い姿になりますね」
中綿の厚みのせいだろうか、それを着た姿は、二人の言うように雪だるまのようなシルエットになっていた。
「ははは、もこもこで丸っこくて、雪だるまとは言いえて妙にござるな」
「着膨れ雪だるま、かい。可愛らしいじゃないか?」
「うんうん、もこもこダ。みーんなも雪だるまになるとイイ」
せっかくだから、お揃いで。十兵衛とカスカもそれを選んで、暖かなそれに身を包んだ。
「後から何か言われると面倒よね……細かい寸法は合わせてあげるわ」
「ありがとうございます店主さん」
「あ、お代は別の所で取ってきたアイスでよろー」
そんなこんなで揃って防寒着を手に入れた四人は、商店街を後にする。
「今度はあっちの城を目指すのは如何か?」
目指すは十兵衛の指差した『六花の城』だ。きっと今後賑やかになるであろう商店街の通りを歩いて、カスカはふと上を見上げた。平屋ばかりということもあり、頭上はとても開けているが。
「……とても綺麗だけど、ここには灯がないのだね」
「ああ、確かに。灯りがすくないと少し寂しいですね」
それを耳にしたヨシュカが頷く。UDCアースや、A&Wでも見られる街灯や篝火、そういったものが、まだここには備わっていないのだ。
「ピーノ君、ピーノ君。夜の警備のためにも灯は必要だと思わないかい?」
建設作業に当たっていた一組を見つけて、カスカはそう提案する。
「具体的に言うと、ランタン屋とかね。どうだい?」
こっそりと囁かれたそれに、面白そうだとピーノ君達は頷いた。
氷で囲んだ透明な、輝くランプが売りに出されるのは、もう少しだけ後のお話。
●幕間
「はー、よく考えたらアタシが店番に立つ意味ってないわよねぇ……」
四人連れのお客を見送った後、洋服店のオーナー……リダンは店の奥に置いたマッサージチェアに身を沈めた。先程のお代に頂いたアイスの山からいくつか摘まみながら、一休み。
先日のサムライエンパイアでの、戦争特需に比べると微々たる売上ではあるのだが。
「遊びのデザインもできるから、これはこれで良いわよね」
ほう、と白くなった息を吐く。デザインの息抜きにデザインを行うのは仕事中毒か何かに見えるが、ライフワークとはそういうものなのかも知れない。
もう少し、こうして休んだら、またミシンに向かおうと彼女は決める。
「後は、次のための『準備』よね……」
言いながら、やはり頭は次の仕事に向かってしまう。色鮮やかだが平坦なこの建物の屋根を、カステラの紙のような美装紙で飾るのはどうだろう。
先日内装に施したように、「この紙を張ったお菓子は食べたくなくなる」催眠模様を刻めば……きっと、襲撃者対策になるはず。
「何より……コレが流行れば国全体がさらにカラフルになるわ……」
まっさらだったこの国が、自分のデザインで染まり行くのを夢想して、少しばかり、リダンの口元が緩んだ。
気分のいいこの時間を、このマッサージチェアはさらに増強してくれる。もう少し、もう少し、と彼女は仕事からバカンス寄りの時間を味わう事にした。
●防寒着のお買い物、その2
「スイカ味だ~おいしい~」
「良いねえ、僕にも一口くれる?」
それぞれに、森で採ってきたアイスを味わいながら、キララ達が商店街へと戻ってくる。
「ここにも娯楽施設がいくつか欲しいね、寝転んで活動写真が見れる場所、とか」
「そこならきらちゃんの動画も流せるかなあ?」
談笑しつつ歩みを進めて、キララは先日用意したショーウインドウに服が飾られているのを発見する。
「あっ! おようふく?」
「おやおや、センスのいい防寒具がありそうだね!」
早速、とロカジがそれに食いついて、洋服店の扉を開けた。
「イラッシャイマセー」
店番ピーノ君が迎えるそこには、いくつかのデザインの防寒着が置かれている。
「防寒着と言えば、そういやお魚くんはこの寒さ大丈夫なのかね……」
「僕は物だから、寒さはあまり気にならないよ」
空中を泳ぎながら、ヤドリガミたる真珠は答える。つまり現在の服装で全く問題はないのだが。
「でも、その場所に似合いの服装という物があるでしょう?」
夏場なら夏場らしく、水場ならそれに似合いの服装をするのが当たり前だと彼は言う。
「そうだねえ、シンジュには似合うものいっぱいありそう!」
「へえ、それじゃ、見立ててくれる? 僕に似合うものなら全部買うよ」
「ぜんぶ! ほんとに!?」
着道楽全開の発言に、キララの目が輝く。
「それじゃあねえ、このまっしろなのとか、パステルカラーとか――」
すまし顔で浮かんだ真珠に飛びついて、キララは目についたそれらをあれも良いこれも良い、とあてがっていく。
「……店員さん、お魚用のダウンコートとかあるのかい?」
「お客様に合わせて手直しデキマスヨー」
こっそりと確認していたロカジにも、キララは見落とすことなく候補を挙げる。
「ロカジはやっぱりネオンカラーが似合うとおもうの! スニーカーもいっぱいありそうよ。おそろいする? する??」
「お揃いかぁ、なかなか惹かれる提案だねぇ」
「トリスは? トリスもする?」
「オレは毛皮が良い、立派な毛皮は権威の象徴だからな」
「けがわっぽいの、あるかなあ? 王様みたいなのがいーい?」
「まあ、オレは何を着たって王子様だが……そうだな、シロクマなんてあるかい?」
狩人らしい観点での選択に、感心したように真珠もそちらに食指を伸ばす。
「毛皮も良いな。重たくはない?」
「軽くて上品なのがよければ貂皮にでもしておけ」
菓子より重いものは持てないよ、と嘯く彼に、トリスが付け足す。
「えーと、在庫確認して参りマース。店長~」
「――えっ待って未開の地の一号店にそんな要求する? そんな都合良くあるわけな……ある? あるの? あなた達の流通網どうなってるの??」
だって不思議の国だから。ピーノ君がぱたぱたと走っていった先からそんな声が漏れ聞こえたが、とにかく。
「ついでにお前たちの分も買ってもいいけど?」
「……え!? 買ってくれるの? さすが真珠ジィ……」
「可愛い金魚を爺呼ばわりするなんて……お兄様呼びなら買ってあげたのに」
「お兄様!」
真珠の言葉に飛びついたロカジとは別に、トリスは首を横に振って。
「オレの分の支払いはいい。それでお嬢ちゃんにラビットファーの襟巻きでも買ってやりな」
「ふうん、それならそれでいいけれど」
「わっ! ふかふかのえりまきだあ! トリス、ありがと!」
しばしの時間を待って、彼等は完成品を身に付ける。お揃い、とまではいかなかった分は、キララの選んだパステルカラーのアクセサリで補って――。
「お代はアイスでお願いシマース」
「へえ、なるほど、アイスね。……アイス?」
持っている? と目で問う真珠に、「さっきお腹の中に消えたよ」とロカジがジェスチャーで返した。それでは森を、もう一往復。
「……ようやく手に入ったね」
「ぬく~い」
「いやあ、でも僕はこの国、気に入ったよ」
面白そうだし、支店出そうかな、とロカジが笑う。空き店舗の一つが薬屋になるかは、とりあえず彼の胸一つだろう。
●そして、城の上から
「御伽噺のお城みたいですね」
「エンパイアとは異なる様式の城、興味深いでござるなー!」
商店街から歩いて歩いて、辿り着いた氷の城を、ヨシュカと十兵衛が見上げる。氷で彩られた城の表面は光り輝き、眩しさに目を細める事になる。
「上ばかり見てると危ないぞー」
「そうは言うがね、あれは君も気になるだろう?」
アイスを食べながら歩くエンジに、カスカが続く。何しろ、塔の天辺には観覧車が付いているのだから。
「っとと……」
言っている傍から足を滑らせて、十兵衛が慌ててバランスを取る。一部の床は氷で滑るし、内装も場所によっては鏡張り壁のようになっている。――中々、自分好みの殺し間にもなりそうだと、物騒な考えはとりあえず胸に仕舞っておくとして。
「あの……折角ですし乗ってみませんか?」
観覧車を指差すヨシュカに、カスカが鷹揚に頷く。
「勿論さ。ちょうどこの国を一望してみたいと思っていたところだよ」
「コレは知っている、あの観覧車は下を見下ろせる。コノ国の隅から隅まで見下ろせる?」
「ああ、きっとね。――ゆっくり回りながら眺める景色は、とても素敵なものだろう」
先ごろ建てた、森の中の見張り台から、反対側の湖の岸まで、きっと見渡すことが出来るだろうとカスカは言って、塔の方へと歩き出した。
「アァ、そうだそうだ乗ろう乗ろう」
「眺めが良いなら、そこで何か……といってもあいすしかないでござるな!」
コンビニの袋をがさがさとやりながら、十兵衛もそれに続く。
この国に来てから、食べ慣れてきたであろうそれも、空の上ならきっと違う味がするだろう。
「それでは、出発シマース」
気の抜けるようなピーノ君の声と共に、ゆっくりと観覧車は回り出す。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
クーナ・セラフィン
ラクトパラディア…うん、いい名前。
この国はどんな風に発展するのかな?
氷の街とかファンシーでメルヘンな感じになってるんだろうね(わくわく)
不思議の国なんだし。
でも今回は…
氷樹の森へ向かう。
守り準備ヨシ、じゃあ次は先に発見すること。
街とか城にいきなり出てくるかもだけど普通に考えるならこっちだよね。
いろんなアイスを見つつ、でもさっき色々頂いたから我慢我慢。
すたいるいじはつらいのにゃー。
物見の塔を登り周囲観察、特に守りの薄そうな所は後で見回りに行くとして。
氷像も気になるけど野外劇場が気になるかなー。
ピーノ君達がどんな劇とか出し物するのか一通り観劇したい。
感想は…褒めて伸ばす方で。
※アドリブ絡み等お任せ
ソナタ・アーティライエ
舞台に立って耳をすませ……
見た目だけでなく、きちんと音にまで配慮して作ってくれているのが判ります
ありがとうございます、と深々と頭を下げて頑張ってくれたピーノ君達にお礼を言わせて頂きますね
言葉だけでなく何かきちんとしたものを、とも思ったのですけれど
何を喜んでくれるのかも含め、ピーノ君達の事ほとんど知らないのでした
あなたたちの事、それとこの国の事も追々に教えて頂けますか?
他の方々が作られた施設も気になりますし、案内して頂けたら嬉しいです
とりあえずわたしに出来る事はこのくらいなので……と
ピーノ君達への感謝と、この国の美しさを称える曲を、捧げさせて頂きたいと思います
アドリブ・絡み歓迎です
●氷樹の森と舞台
アイスの果実の生る森を通って、クーナは物見の塔へと向かう。先頃は見られなかった色んなアイスを、こういう時に限って次々と発見してしまうが……。
「我慢我慢……」
だって、アイスはたらふく食べた後だ。すたいるいじはつらいのにゃ、と心の中でこぼしながら、彼女は誘惑に目を瞑って、目的の場所に来た。
塔の上から見る景色は、以前、転移直後に見たのとは少しずつ、だが明らかに違っている。
この国はこの先も、こうして発展を遂げていくのだろう。その未来図を想像の上に描いて、クーナは一人微笑んだ。きっと、この世界に相応しいファンシーでメルヘンな感じになっていくのではないだろうか。
街は徐々に建物が増え、城には観覧車なんかついている。けれど……と、クーナは思考を切り替えた。
せっかくこんな塔があるのだから、外敵の発見に役立てたいところだ。
オウガが攻めてくるのなら、果たしてどこからか。半端ながらも城壁がある街や、島の中心部である城にいきなり現れるとは――ないとはいえないけれど――考えづらい。だとすると、凍り付いた湖の向こうから。最初に襲われるのは、湖にほど近い……。
「野外劇場、かな」
あの氷像も気になるけどね、と心の中で呟きつつ、彼女は見回りに出る事にした。
……ピーノ君達があの劇場をどう使うのか、それが気になるのもあるには、ある。
一方、いえーいみたいな格好をしたピーノ君の氷像の前。湖前の劇場を臨んで、ソナタは作業に当たっていたピーノ君達に礼を述べていた。舞台に、客席に、それぞれ立って耳を澄ませば、音響に配慮した構造になっていることは伝わってくるもので。
「ありがとうございます」
「どういたしマシテー
「良いんデスヨー」
頑張ってくれた方々へ、と深々頭を下げるソナタの様子に、ピーノ君達が慌ててわたわたと手を振っている。
「言葉だけでなく何かきちんとしたものを、とも思ったのですけれど……」
躊躇いがちに、そうソナタが続ける。そういう思いはあれども、そもそも彼等が何を好むのか分からない。初対面なのだから、それは当然の話で。
「あなたたちの事、それとこの国の事も追々に教えて頂けますか?」
きっと、ピーノ君達も移住したばかりのこの地の事は詳しくない。けれど、今回皆で、猟兵達と手を加えた場所については知っているはずだ。その辺りを一緒に歩いて、案内して欲しいとの申し出に、ピーノ君達は喜んで頷いた。
「では……とりあえずわたしに出来る事はこのくらいなので……」
舞台の上に上がった彼女は、引き連れていた銀竜……音の精霊でもあるアマデウスを、楽器の姿に変身させる。
「この国と、あなた方に、この曲を――」
弦を爪弾き、その音色に歌声を乗せる。奏でられるのは、この国、ラクトパラディアの美しさを称え、住人である彼等に感謝を伝えるための曲だ。
冷たい空気を揺らす音色に、しばし耳を傾けていたピーノ君達は、曲の終わりに合わせて大きく拍手を送った後で。
「僕達も!」
「やってミターイ!」
それぞれ、舞台の上へと昇り始めた。
「え、ええと……?」
教えて教えて、と目を輝かせている彼等の様子に戸惑いつつも、とりあえずはその希望に応えるべく、ソナタはピーノ君達に声をかけた。
「まずは、並んでみてもらえますか?」
この後の流れを頭の中で組み立てながら、ソナタはもう一度楽器を爪弾き始めた。
六人揃って勤勉になった彼等ならば、歌を覚える事も容易いのだろうか。はてさて――。
……と、そんな理由で、見回りに来たクーナが劇場の観客席に座った頃には、ピーノ君合唱団は探り探りの様子ながら、一応のまとまりを得ていた。
「へえ……意外と形になってるね」
その歌に耳を傾けながら、クーナが言う。正直なところ、オチの無い漫才や、ひっどい脚本の劇なんかが始まるものかと覚悟していたのだが。……いや、ソナタがいなければきっとそういう場になっていたのだろうけれど。
「あの中に未来の歌手とか役者がいるかも知れないしね……」
まさか、と自分でも苦笑を浮かべながら、クーナは舞台上のソナタと、ピーノ君達に拍手を送った。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
冴島・類
※ライラックさん(f01246)と
完成ですね!
白紙の頁に満ちた図書館
どんな物が綴られるんだろう
ピーノ君達や、この国に訪れた人達が作っていけたら良い
まずは僕らが探検して、国の景色を描いてみます?
気になるのは森、かなあ
湖を抜けて凛々しい?ピーノ君像の姿を映しとりたいし
氷の大樹から、この国の景色を見たくて…
あ、野外劇場なんて粋なものもあるんですね
ライラックさんは、戯曲や歌もお好きです?
歌が聞こえたら踊りたくなってしまうかも
とりどりの景色
もし、貴方が綴るなら読んでみたい
僕は言葉を手繰る才はないけど
シロップやちょこ、お菓子などで
装丁も美味しく
鮮やかにできたら良いなんて
初めてみる物語の欠片
なんて贅沢な一頁
ライラック・エアルオウルズ
※類さん(f13398)と
想像以上に素敵な物が完成したね
彼らや誰かに綴られる物語に、
僕も一足先の興味が尽きないけれど
ふふ、先ずは僕らで綴るとしようか?
それなら、向かうは氷樹の森だ
此処の物語を綴るなら、
ピーノさんの姿は欠かせないし
大樹から眺める景色は、
一味違う物だろうから僕も見たい
それに――
視線向ける先は野外劇場
問われたなら、小さく首肯を
歌や音楽の中で物語を辿るのも、
また素敵な物だからね
彼らに纏わる物を演るなら興味深い
聞く歌には、つい口遊んで
景色綴るチョコは、洋墨代わり
貴方の装丁に見合う様、
味も文字も甘くなる様にと綴り
そうして、味見は是非貴方へと
感想は辛口でも構わないよ、
何て冗談粧し差し出そう
●一冊目の蔵書
氷で作られた壁を透かして、外の光がうっすらと室内を照らす。薄明りの向こうに並ぶ本棚、静寂、そして甘い匂い。
そんな風に完成した図書館を見渡して、ライラックと類は各々満足気に頷いた。
「想像以上に素敵な物が完成したね」
「ええ、本当に」
本と言いつつも、それはまだ体裁ばかりで、中身はどれもこれも白紙だ。けれど、それはきっと、アリスラビリンスに新しく生まれたこの国もまた、同じ事。これからどんなものが綴られるのかと、類はその物語に思いを馳せる。
「そうだね、僕も興味が尽きないけれど……」
そうした思いはライラックもまた同様だ。しかしこれらは、放っておけば勝手に記されるものでは無い。
「それなら、まずは僕らが探検して、国の景色を描いてみます?」
「ふふ、先ずは僕らで綴るとしようか」
至った結論もまた、二人同じものだった。
「気になるのは森、かなあ。湖を抜けて凛々しい? ピーノ君像の姿を映しとりたいし、氷の大樹から、この国の景色を見たくて……」
「それなら、向かうは氷樹の森だ」
「良いんですか? さっきから僕の希望ばかり聞いてくれてるように思うんですけど」
「構わないよ、僕も同じことを思っていただけだからね」
こちらを窺う類に、ライラックは笑ってそう返す。事実、この国の物語を綴るならばピーノ君達のことは欠かせないし、大樹から眺める景色は、きっと一味違う物だろうから。
「それに、ね。僕には僕の行きたい場所もあるんだよ」
だから大丈夫、と請け負って、二人は城の外へと歩き出した。城門を潜り、建設途中の家々を通り過ぎて、二人が辿り着いたのは、森の外れ……湖の畔だった。
「ライラックさんが行きたがってたのって、ここですか?」
「ああ、この場所……野外劇場さ」
ピーノ君の氷像の前を通り過ぎて、二人はそこに建てられた野外劇場の中へと進む。
「粋なものもあるんですね……ライラックさんは、戯曲や歌もお好きです?」
そんな類の問いかけに、ライラックは小さく頷いて見せた。
「歌や音楽の中で物語を辿るのも、また素敵な物だからね」
丁度良い事に、舞台の上では猟兵の一人が、ピーノ君達に歌を仕込んでいるところだったようだ。観客席の片隅に陣取って、二人は興味深げに、それに耳を傾けた。
「歌詞の割に愉快な感じですね」
「それも彼等の特色なのかも知れないね」
そんな言葉を交わし、時にその曲を口ずさんで見ながら、二人は持ってきた本の一冊に取り掛かる。
「僕は言葉を手繰る才はないけど――」
こういうのはどうでしょう、と類はシロップやチョコなどで、装丁を美しく、鮮やかに飾り付ける。それはきっと、上から見下ろしたこの国のように、色とりどりで瑞々しい。
「それなら、僕は――」
それを受け取ったライラックは、チョコを洋墨代わりに、この国の風景を文字で綴る。鮮やかな装丁に見合うように、味も文字も甘くなるように。綴られゆく言葉の流れを目で追って、類は感嘆の息を吐く。そんな彼に、ライラックはその本を差し出した。
「味見は貴方に任せたい。感想は辛口でも構わないよ」
冗談めかした言葉に頷いて、類は改めて、そのページを開いた。
――初めて見る、なんてのは当然の話。だってこれは、生まれたばかりの物語なのだから。
真っ白で無垢な新雪の上に、贅沢な、始まりの一頁を。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『モグモグちゃん』
|
POW : お腹が減って仕方がないんだよぉ~……
戦闘中に食べた【無機物または有機物】の量と質に応じて【筋力が向上し】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
SPD : お腹が背中にくっつきそうなんだよぉ~……
戦闘中に食べた【無機物または有機物】の量と質に応じて【瞬発力が向上し】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
WIZ : お腹が満たされないんだよぉ~……
戦闘中に食べた【無機物または有機物】の量と質に応じて【思考力が向上し】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
イラスト:純志
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠竹城・落葉」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
====不思議の国『ラクトパラディア』現況====
●『六花の城』
内部はアイスの家具で飾られ、外装の氷はステンドグラスのように輝いている。寒さに弱い者向けに木造りの客間もいくつか。
城の脇には喫茶図書館。物見の塔には観覧車がくっついている。
●『氷の街』
平野部には、建築半ばの城壁に囲まれて、果樹の林と庭付きの氷の家が複数。屋根には不可思議な模様が描かれている。
中心の通りには、大きな滑り台の公園と、氷の花で飾られた『キララ商店街』がある。
洋服店、休憩所のほか、最近活動写真館がオープンした。
●『氷樹の森』
アイスの果実が生る森。端には物見の塔を兼ねた氷の大樹がある。森の向こうには凍った湖、畔に野外劇場とピーノ君の氷像、それからコンビニが建っている。
=========================
開拓の進んだ雪の世界、青く染まる、凍った湖の向こう側に、それは現れた。
土くれを無理やり人の形にしたような、出来損ないの雪だるまのような見た目のそれは、深く息を吸い込んだ。
「甘い匂いがするなぁ~……」
がば、と大口を開けて、積もった雪を口にする。咀嚼するのもそこそこに、ごくりと呑み込めば、その身体が少しだけ、膨らむ。
「あぁ~~~~……」
最初はどこか満足気に響いた声が、徐々に空腹の嘆きに色を変える。
「ぜんぜん、お腹が満たされないんだよぉ~……」
一歩進んで、さらに一口。身体を少しずつ膨らませながら、そのオブリビオンは、より美味しそうなものが見える方へと進みだした。
曽我部・律(サポート)
『この力を得たことは後悔していない……』
『私以外の人間が不幸になるところを見過ごすことはできないんでね』
『こういうのには疎いんだが……ふむ、こんな感じか?』
とある事件で妻子を失い、その復讐の為にUDC研究を続けているUDCエージェントです。ですが、UDCを強引に肉体に融合させた副作用として徐々に生来の人格は失われつつあり、妻子の記憶も彼らの写真によって辛うじて繋ぎ止めています。
多重人格者としての別人格『絶』は凶悪なオブリビオンの存在を察知すると、律に代わって表に出てきて戦います。その際、口調は『おい律……うまそうな匂いがするじゃねぇか。代われよ』みたいな凶悪な感じになります。
●遭遇戦
雪積もるその場所に降り立ち、転送された直後の曽我部・律(UDC喰いの多重人格者・f11298)は、顔に差す影の方へと視線を上げた。
「あぁ~、美味しそぉ~~……」
そこには、大口を上げたオブリビオン、モグモグちゃんの頭部があった。でこぼこの歯が、奈落のような口が、襲い来る。
「何故こうなる……?」
前後の状況はさっぱり掴めないが、危機である事は明白。咄嗟に飛び退いた彼が白く息を吐く。それが霧散した頃には、口元が哄笑の形に吊り上がっていた。
「おいおい、俺を食おうってのか?」
一瞬前とは様変わりした顔で、表出した『絶』が言う。
「逃げないでぇ~~……」
最初の噛み付きを外したオブリビオンは、積もった雪を呑み込みながらもう一度顔を上げる。そして、空腹を訴える声と共に大口を開けて、跳んだ。
「い、た、だ、き、まぁす!」
「勘違いするなよお前――」
こちらも白い雪を蹴って跳躍、重い音を立てて閉じられた大口の上、敵の額部分を足蹴にして、『絶』はその突撃から逃れる。
「――喰うのは、俺の方だ」
空中で、彼の輪郭が歪む。広がる不定形の闇は、彼が身体に住まわせたUDCのものだ。敵に負けじと顎を開いた『暴食の泥牙』が、オブリビオンの身体を齧り取った。
が。
「……なんだこいつ」
削り取ったはずなのに、その敵の身体は先程よりも大きくなってきている。
雪を食って、巨大化している? そう予想が付いたそこに、モグモグちゃんの剛腕が叩き込まれる。
「――チッ」
舌打ち。展開したUDCと共にそれを受け止めた絶は、衝撃を逸らし切れず、凍った湖の上へと押し出された。
「お腹が減って仕方がないんだよぉ~……」
巨大化しながらのたのたと進み来る敵の姿に、律は一時の離脱を決める。
「……これだけ暴れれば、他の猟兵達も気付いただろう」
視線を向けたのは、湖の中心の島。新しく生まれた不思議の国で、猟兵達の手で拓かれた場所。
現れた脅威、モグモグちゃんは、何かに惹かれるようにそちらへと向かっていった。
成功
🔵🔵🔴
●『ラクトパラディア』防衛戦
「エー、あれ何?」
そんな戦闘の様子を発見したのは、物見の塔である氷樹の上で警備を担っていたピーノ君だった。
「どれどれ? ウワっ大きい!」
「ワー、何かすごいのが来ちゃいマシタねー」
慌てているのか、そうでもないのか、氷樹の端に集まった彼等は、独特のペースで言葉を交わす。そんな中、星型頭のピーノ君が、のんびりした彼等の音頭を取った。
「まずは、あっちこっちの皆にお知らせしよーネ」
「それから避難する? 隠れる?」
「どっちでもイイヨー」
「猟兵の皆さんにもお伝えシヨー」
6人揃った彼等はわちゃわちゃと話し合いを終えて、それぞれ決めた方向へと走り出した。
====オウガ対策開発ボーナス====
●六花の城(再建中)
敵の最終目的地になりました。敵の侵攻ルートが予測できます。
●氷樹の森に物見の塔
敵を早期に発見することが出来ました。
●ピーノ君の氷像、湖の畔のコンビニ
囮になります。森区域の他の施設が狙われにくくなりました。
●氷の街の城壁(建設中)
短時間ですが敵の足止めが可能になりました。
●食欲減退催眠屋根板
氷の街の民家、商店が狙われにくくなりました。
●キララ商店街
全員に戦闘に耐え得る防寒着が支給されます。
●休憩所
マッサージチェアで休んでも良いですよ。
===================
●猟兵の皆さんへ
湖から『氷樹の森』区域に上陸したオブリビオンは、付近の施設を食い荒らしながら『氷の街』を襲い、最終的には『六花の城』へと至るだろう。
上陸直後に倒してしまえればそれで良いのだろうが、この巨大になったオブリビオンを一ヶ所に留めおくのは難しい。幸い敵の移動ルートは見えているのだから、分散してそれぞれの場所で待ち受け、敵の移動に合わせて迎撃するのが有効だろう。
城を目指す敵の動きは止めきれないが、上手く戦えば、戦場となるそれぞれの場所の被害を最小限に抑えられるはず。
各々に、自分がどこで迎え撃つか決めて欲しい。
――伝達役を担うピーノ君は、猟兵達にそう伝えた。
「それでは、よろしくお願いシマスヨー」
ソナタ・アーティライエ
争い事は苦手でも、この国を守りたいと思う気持ちは皆様と同じ
ですからわたしも、皆のために力を尽くします!
『氷樹の森』エリア、野外劇場
ピーノ君の頑張りが作ってくれたこの劇場からなら
この国の全てに歌声を届けることが出来る筈
劇場の音響と、身に着けたハーモニー・ローズとの相乗
そして全霊を込めた祈りの歌で
この国を守り戦おうとする全ての猟兵とピーノ君たちへ
【幻想神楽第九十四首『護法天願祝詞』】にて加護を届けます
アマデウスにも無茶をさせてしまいますけれど
力を……貸して頂けますか?
通常は一つの楽器へ、ソナタの演奏に身をゆだねるところを
複数に、自身で奏でる交響楽団モードを解放
アドリブ・絡み歓迎です
クーナ・セラフィン
うわーメルヘンと言えばそう見えるけど性質は完全にアレだよね。
頑張ってピーノ君達が作った街、なるべく完全な形で護り抜きたいかな。
防寒着も暖かいし頑張れるし。
…氷像には犠牲になって貰うしかなさそうかな。
いやなるべく守りたいけどもしダメだったらごめんにゃー。
ピーノ君の氷像で迎撃。
囮になってくれるしどう足掻いても目立つから狙われそうな気がするし、ならばせめて活用を。
氷樹の森に隠れ氷像に気を取られてる隙に奇襲。
UCの幻と凍結で思考力鈍らせてあげよう。上がった分下げれればいいんだけど。
劇場の方には注意向けさせないよう木を登りモグモグちゃんの頭に取りつき突撃槍で攻撃、注意を惹き付ける。
※アドリブ絡み等お任せ
●奏でられるもの
「あぁ~、お腹空いたぁ~……」
雪を食べ、徐々に大きくなりながら、オブリビオンはラクトパラディアに上陸した。足元の分厚い氷を踏み割りながら到来したそれは、最初に目についたと思しき氷像に向かい、その大口を開けた。
「……あれもある意味メルヘンな見た目かもね」
お伽噺に怪物はつきものだ。大きく膨れ上がったモグモグちゃんの外見にそんな感想をこぼしつつ、クーナは跳んだ。
支給された防寒着を風に靡かせ、最初の跳躍で太い木の枝に乗る。そのまま、その枝の撓りを活かして次の一歩。高く高く、跳んだ彼女は、氷像を貪るべく姿勢を下げたモグモグちゃんの頭上に出る。
「さて、こんな趣向はどうだい?」
『風花は舞い散り』、敵へと向けた突撃槍の切っ先から、冷たい風と共に白い花吹雪が吹き荒れる。
視界を染める白い嵐に、オウガの目の光が茫洋と滲む。
「ん~……今、何しようとしてたっけぇ~~……?」
食事と共に向上していた目的意識が、その花弁の持つ幻惑効果に揺れていた。
そして交戦開始のそのタイミングで、傍らの野外劇場から高らかに、演奏が始まった。
楽団規模のその音色は、ソナタ一人によるものだった。――いや、彼女と音の精霊、アマデウスによるもの、と言うべきか。
「力を……貸して頂けますか?」
それは明らかに無理のある願いだったけれど。その銀竜は一声鳴いて、ソナタの求めに応じた。
荒事に向かない彼女も、この国を守りたいという願いは同じ。そして、彼女には彼女なりの戦い方がある。
様々な楽器へと姿を変えたアマデウスは、奏でる者もいない中、自ずと音色を響かせる。自ら奏者をも担うそれは、きっと負担の大きなものだったが――。無人の交響楽団は、演奏を開始した。
「あぁ~、何だぁ……?」
とはいえ、戦場が近すぎる。劇場の目と鼻の先でそれを聞いたオブリビオンは、何事かと野外劇場へ顔を向けようとする。
「あーっと、ダメだよ、こっちこっち!
そこに、敵の型部分に着地したクーナが、横を向いた顔を蹴り飛ばして注意を引く。
「うるさいなぁ~……」
こちらに向けて振り回される巨腕をすんでの所で屈んで回避し、彼女は敵の頭部へと駆けあがった。この場所は気を引くには丁度良いが、バランスが良くない。いつまでもここで耐えては居られないだろう。だから。
「しょうがないよね……!」
頭部に突撃槍を叩き込んで、劇場からその視線を外させる。
取捨選択。内心で「ごめんにゃー」とか謝りながら、クーナは思考する。今まさに仲間の演奏が始まろうとしている野外劇場か、ただでさえ目立つが、要はそれだけである氷像か。敵の注意を向けさせるべきはどちらか……答えは明らかだ。
何度かフラつきながらも、モグモグちゃんが氷像を捉えなおしたそこで。
「この身を捧げ願い奉ります……」
ソナタの歌声が響き渡った。劇場の構造は、一方向に音を広げる役割を果たし、首飾りもまたその歌を増幅するように震える。伝播する歌声は、国中に届かんばかりに遠く響いた。
幻想神楽第九十四首『護法天願祝詞』。ソナタの歌声から始まるこのユーベルコードによって、それを聞いた各地の猟兵達、そしてピーノ君達は加護と活力を得るだろう。
「すごい……力が湧いてくるよ……」
その効果を一番近い位置で体感したクーナが、その槍を握り直す。これならば、きっと――。
「いただきまぁ~す」
「ニャーッ!?」
再度氷像へと喰らい付く敵の動きに振り回され、敵頭部にくっついたまま、クーナはあられもない悲鳴を上げた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
冴島・類
※ライラックさん(f01246)と
なんとも…
己以外は胃袋に収めそうな勢いだ
度が、過ぎる
皆様が作ったものを
素直にくれてやる事はないですよねえ
氷像の辺りで迎え撃ちたい
不思議と魔法を紡ぐ方が共にいる
なら、僕は前で彼に狙い定めさせぬよう舞いましょうか
ライラックさん
僕、追われる鼠やりますんで
欲張りな手を削いであげてくれません?
貴方のペン先の甘さだけでなく
鋭さもみたいな
瓜江を起こし
モグモグちゃんの前へ
注意引く囮に駆ける
肥大する食欲の攻撃は
フェイント、残像のステップ交え躱し
糸を絡め、縛り
動きを止めたい
ライラックさんや像狙うなら
舞で攻撃の威力和らげ庇いたい
甘さを忘れぬ優しさに
感謝の笑みが漏れる
絶対、狙わせない
ライラック・エアルオウルズ
※類さん(f13398)と
甘味を前にしては、
僕も言えた物では無いけれど
強欲な腹満たすには、過ぎた物だからね
一匙も与えぬ様、氷樹の森で迎え撃とう
一人で薙ぐ事は苦しくとも、
舞う人が傍にあるなら容易い筈
いやあ、類さん
鼠とするには貴方は華やか過ぎるし、
猫とするには彼れは愚鈍過ぎる
然して、そう請われたら
何と云うか 思わず、筆も進むな
氷像を背に万年筆を手に、
《見切り》で隙と危機をと見極め
氷像に限らず貪らんとし、
彼を傷付けんとする手を
線引く黒で削いで《部位破壊》、
今と先の行動妨害を図る
削ぐ物も貪る程の欲なら、
確りと砕く事も忘れずに
庇われる事有れば、
叶うなら《カウンター》で退け援護
少し甘さも、混ぜさせてね
●描く線
鋭いとは言い難い歯が、氷像に突き立てられる。それは、切り取るのではなく、噛み砕くというのが近いだろうか。ばきばきと鈍い音を立てて、ピーノ君像の半身が咀嚼される。
「おいしぃ~……」
一口で丸呑みされなかったのは、ひとえにクーナが振り払われる前に行った最後の一撃のおかげだろう。ただし、次の一口で結果は変わらないことになるのだが。
また開かれた顎の下から、放たれた鋭い一撃がその口を閉じさせる。
「なぁにぃ、邪魔しないでぇ……」
攻撃の主に噛みつきかかるオウガから、それ――人形の瓜江を逃がして、類はその敵の様子に溜息を吐く。
「なんとも……己以外は胃袋に収めそうな勢いだ」
度が過ぎる、というその呟きにはやはり、咎める色合いが強く乗っている。このオウガが食べたものは、これから食べようとしているものは、『誰かが作ったもの』だ。
「皆様が作ったものを、素直にくれてやる事はないですよねえ」
「ああ、強欲な腹満たすには、過ぎた物だからね」
ライラックがそれに頷いて返す。ならば、と、瓜江を操る類は彼の方を振り返った。
あの巨体に耐久性、一人で戦うには荷が重い。だが、この人が居るならば。
「ライラックさん、僕、追われる鼠やりますんで、あの欲張りな手を削いであげてくれません?」
貴方のペン先の甘さだけでなく、鋭さも見たいな。冗談めかして言う類に、ライラックは口の端に笑みを浮かべて、首を横に振った。
「いやあ、類さん。鼠とするには貴方は華やか過ぎるし、猫とするには彼れは愚鈍過ぎる」
とはいえ、やり方としてはライラックもまた同意見だ。瞳の色からそれを読み取り、類は操った瓜江を再度敵の眼前へと踊り込ませた。
それはきっと、信頼の証明。それを感じ取り、ライラックの万年筆を握る手が、羽を得たように軽くなる。
糸の先の人形は、類の指先に従い、軽やかに舞う。残像を生じさせるような緩急をつけたステップで巨腕を躱し、その足元を抜ける。
「あ、あぁ~……?」
結果として、オウガの足に糸が絡み、その動きを制限する。とてもバランスを取る事が良いとは言えないオウガは、あえなく倒れ込む。ただし、前のめりに。
「おっと……」
まずいな、と類が踏み込む。人形ではなく、今度は自らの足で。
食欲の成せる業か、前方向に倒れ込んだオウガは、前方の氷像、そしてライラックの方へと巨大な腕を伸ばした。
「風集い、舞え」
神霊体へと姿を変えた類がその前へと割込み、短刀を振るう。魔を祓う刃は衝撃波を生み出し、オウガの巨腕を切り裂くが、その太さゆえに斬り飛ばすには至らない。
「いただきまぁ~す……」
「くっ――」
建造物を、彼を、狙わせるものかとさらに踏み込んだ類は、敵の攻撃を軽減しながら受け止める。そうして、どうにか堪えたその傍らを、白い影が通り抜ける。
間隙を見切るように、進み出たララックの万年筆が一筋の線を描く。
否定、打消し線、スラッシュ、それに類するもの。黒インクが描く『不要である』というその一線で、巨腕が中程から斬り飛ばされた。
「少し甘さも、混ぜさせてね」
囁くようなライラックの言葉に感謝の笑みを浮かべて、類はもう一度短刀を振るう。今度こそ、その刃は巨大な敵を押し返す風を生み出した。
「う、腕がぁ~、何するんだよぉ~……」
低く呻いたオウガは、割に合わぬ、というように退く。絡んだ糸を引き千切り、氷像からも劇場からも逸れて、森の方へと、巨体ゆえの大きな一歩で進み始めた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
オズ・ケストナー
クロバ(f10471)と
駆けながら
しかくいたてものは光ってるからよくわかるね
こんびに?
わ、おおきいねえ
クロバと視線を合わせ
うんうんっ
まかせて
ガジェットショータイム
現れたのは大きなピックハンマー
これをつきたてて、割ればいいのかな?
聞こえてきたきれいな音も
羽ばたく音も気になるけど
今は視界の外から駆けつけて
えーいっ
思いっきり振り下ろす
もし突き刺さったままになったなら
シュネーのキックとそれを真似したわたしのキックで
さらに深く打ち込む
なんだか
はやく、大きく、なってるもの
先にもろい部分を作っておいた方がきっといい
はやくやっつけて
みんなでアイス食べながら
クロバの笛、ちゃんと聞かせてもらうんだ
華折・黒羽
オズさん(f01136)と
観覧車の上で話した場所
向かったのは四角い建物
─こんびに、というそうです
目の前に現れた巨躯を見上げ
さてどうしたものかと
分厚い肉の壁を狙うより
眼や口の方が威力は伝わるだろうか
考え巡らせた後にオズさんへ目配せ
俺が隙を作ります
攻撃を任せてもいいですか
身体に比べ頼りなげな脚を狙えば体勢を崩せるはず
取り出した篠笛が音を奏で呼び出した烏の影達
口々に森の果実を咥え敵の周囲を飛び回り引き付ける
気を逸らせれば
地を蹴り広げた翼で死角から一気に間合いへ
渾身の力込め片足目掛け横薙ぎに一閃
やみつきになる気持ちもわかりますが
独り占めは良くない
雲に届く国の道はこれから
壊させたりはしませんよ
●楔
オブリビオン接近の報を受けて、オズと黒羽は敵の上陸予定区域へと駆けていた。二人の予測した通り、そこは既に戦場となっている。開拓の最中からその辺りに居た猟兵が対応に当たり、氷像と劇場から引き離したところだが――。
「しかくいたてものは光ってるからよくわかるね」
「―─こんびに、というそうです」
「こんびに?」
いつでも開店している明るいお店、とピーノ君達は言っていたが、なるほどあれがそうか。そう頷いたクロバは、巨大な足音がそちらに迫っていることを察知する。
「居ました、オズさん」
「うんっ、行こう!」
方向を修正して、黒羽はそちらへと駆ける。木々の向こう、垣間見える巨躯はちょっとやそっとでは倒せそうにない。ばきばきと、歩きながら木の枝を食っているらしきそのオウガは、甘い匂いと光に引かれるように、コンビニへと向かっていた。
「美味しそう、食べたいぃ~……」
上陸直後を見ている者なら、巨体がさらに膨らみつつあること、そして半ばで切り落とされていた腕が徐々に伸び始めていることを見て取れるだろう。
とにかく、と黒羽は思考を巡らせる。狙うならば目や口か、しかしあの茫洋とした目と、洞のような口に、果たして人体と同じ効果を期待して良いものか……。とはいえ、迷って立ち止まる時間はない。
「俺が隙を作ります。攻撃を任せてもいいですか」
「うんうんっ、まかせて!」
最低限の言葉を交わして、黒羽は足を止める。手にしたのは、篠笛。巨大な敵を見上げる位置で、静かにそれを吹き鳴らす。
『獣舞ふ有明』、奏でられるその音色は、影の鳥をどこからともなく呼び寄せる。雪のちらつく風の中、黒い翼の群れは主の命に従い、ばらばらに散開した。
舞い踊る彼等はそれぞれに降下し、オウガの前の樹から、その果実を咥えて、次々と飛び去って行く。
「あぁ~、取って行ったら、だめ~……」
全部自分のものだ、と言わんばかりに両手を振るう巨人を、鳥達は嘲笑うように飛び回る。上へ、上へ。舞い上がるそれらを追えば、重心も、両腕も、視線も上へと逃げていく。だから、今。思い切り地面を蹴りつけた黒羽は、その背の翼も打ち振るい、真っ直ぐに地面の傍を駆け抜ける。
「――!」
笛を仕舞ったその右手に、瞬時に刃が現れる。黒剣『屠』、常から黒羽の身に纏わりついていたそれが、出番を知って顔を見せたのだ。
一閃。横薙ぎの刃がオウガの片足を深く、深く斬り裂く。
「やみつきになる気持ちもわかりますが、独り占めは良くない」
低空を駆け抜けたそこで、黒羽が呟く。
「あ、あぁ~?」
膝部分を切り裂かれ、その巨体が、傾いだ。
「えーいっ!」
そこに、敵の死角から飛び込んだオズが、手にしたガジェットを思い切り振り下ろした。ゲジェットショータイムによって今回生み出されたそれは、鋭利な先端を持つ鎚。巨大なピックハンマーだ。シンプルにそいつを叩き付ける事にしたオズの一撃は、オウガのうなじを捉える。ざっくりと突き刺さったその鎚は――。
「……あれ?」
抜けない。足をオウガの背に当てて、クライミングでもしているような姿勢でオズが呼び掛ける。
「ど、どうしようかクロバ」
「え……待ってください今行きます」
背中の違和感に暴れ出すオウガから、速やかに翼を広げた黒羽がオズを救出する。脇を抱えて飛び上がった黒羽に礼を言って、オズはふと思い付いたようにそれを口にした。
「あ、もっと深く刺しておけばいいよねっ」
彼が指先を躍らせれば、小さな少女の人形が、オズの肩から跳び降りる。彼と共に在る人形、シュネーは、降下の勢いを乗せて、ピックの背に見事な跳び蹴りを決めた。
「クロバ!」
「わかりました」
意を汲んだ黒羽は、翼を畳んで急降下。呻き声を上げているオウガへと急速に迫る。
――早くやっつけて、クロバの笛、ちゃんと聞かせてもらうんだ。
――雲に届く国の道は、まだこれからだ。壊させたりはしない。
そんなそれぞれの思いを胸に、降下した二人の蹴りが、突き刺さった杭をさらに深くへ押し込んだ。
「うぅ~、引っ掛かって、邪魔ぁ~……」
背中のそれは、オウガがいくら足掻いても抜ける事はないだろう。しばらくもがき、暴れながら、モグモグちゃんはよたよたとコンビニから離れていった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ロカジ・ミナイ
【薬B】
氷の街の城壁で迎え撃つ
キャー!きらちゃーん!かっこいいー!(黄色い声)
僕“ら”の建てた防護壁にこんなに早く出番が回ってくるとはねぇ
今こそ技術と情熱の集大成を見せつける時よ!
デカいものにはデカいもので対抗
僕のかわいいペットの蛇たち!出ておいで!
身長は大体ビル5階分ある
どうだい、かわいいだろう
寒い?食い意地はちょっと負けても顔で勝ってるから元気出して
ほら、モグモグちゃんがケバブに見えて来たでしょ
僕かい?
僕は城壁で腕組んで高みの見物を決め込みたい所だね
アイスだってもちもち食べちゃう
だってご覧よ、目の前で特撮ライブよ
男の子ならみんな夢中になるってもんでしょ
うおー!いけオロチー!やっちまえー!
雅楽代・真珠
【薬B】
もこもこ毛皮の僕も可愛い
動きたくないけれど作った物を壊されるのは癪
…崩れた建材から助け出してあげたでしょ
城壁から追いかけっこをするキララを見守る
元気でとても楽しそうだね
ぶくぶく太って醜い
お前は罪悪感は感じなさそうだから単純に誘惑してあげる
僕の涙はおいしそうでしょう?
『人魚の涙』は相手から僕が見えれば大丈夫
可愛くないって悲しいね
足を止めさせたら一斉攻撃してしまおう
蛇は寒いと冬眠してしまうのでしょう?平気?
あ、この小豆のあいすくりんもおいしい
おかえり、キララ
控えさせていた人形たちが替わりに飛び出していくよ
行っておいで、僕の刃たち
僕は城壁であいすくりんをもちもちする仕事が忙しいからね
キララ・キララ
【薬B】
これからもーっとステキな国になるの。
キララ商店街だってできたばっかりだもの。壊れたらやーよう。
もしかしたら城壁のない方向にいっちゃうかもよね
さきに誘導しにいこうかしら
あるだけいっぱいアイスを持って…
ほらっ!『存在感』いっぱいでしょ~ おいしそうでしょ!
これでおいかけっこしてくるわね
声援ありがと!
『追跡』でおいついて『逃げ足』でおいぬいて、きららのゴールは氷の城壁!
UCで城壁のうえへただいま!
ロカジのオロチや、キサラギ・サツキたちとバトンタッチ!
これならトリスのあずきアイスも当たらないもんね!
そうそう、きらちゃんも走りながら描いてきたのよ!おさかな!
ふひひ…にぎやかね!みんながんばれー!
トリス・ビッグロマン
【薬B】
望遠鏡で侵略者を探す
……いや、望遠鏡いらなかったな。デカい。
やっぱり城壁を構えておいて正解だ
ロカジの功績はこれっぽっちもないがな
キララのお嬢ちゃんがいい仕事をしてくれたことだし
ここで削るだけ削るぞ
ゲェッあれが例の「薬屋の蛇」か
頼もしいが、火傷の恨みは忘れてないからな
オレも配下の十一人を招集
投石機であずきアイスの砲弾をぶつけさせる
大蛇には「できるだけ」当てるなよ、クハハ!
オレ自身も魔法の猟銃で狙い撃つ
関節を狙って足止めしよう
……シンジュ。
その恐ろしい涙は、こっちに飛んで来ないよう気をつけてくれよ?
ええい、止まれ!止まらないか!
オレの城壁を壊すんじゃねぇーッ!!
九之矢・透
お出でなすったか!
空腹の辛さはアタシも良く知ってるけど
食べられる訳にはいかないんでね
【WIZ】
出来るだけ民家に被害は出したくないな
って事で『氷の街の城壁』で迎え撃つぜ
建設中だから資材も沢山ありそうだし、その陰に隠れながら
後ろからひっそり「忍び足」で「追跡」し、
食べようとした所で『蜘蛛の絲』を使用
「スナイパー」で狙うのはもちろん、口と、足だな
しっかり念入りに、蜘蛛の巣でベッタベタにしてやろう、ベッタベタに!
口の絲は食べるのを妨害して、
足の絲は……せぇー、の!!
絡まった所を引っ張って、転ばせよう
アタシの体重じゃあ引っ張るのに軽すぎるなら、資材と絲を結び付ける
他の仲間が居るなら、今がチャンスだぜ!
●城壁前の大決戦
氷の街を囲む城壁の上、トリスは索敵のために望遠鏡を構え――。
「うわ、居た」
見つけた姿はあまりにでかい。望遠鏡などなくとも何の問題もないだろう、と彼は一旦それから目を離した。
「やっぱり、城壁を構えておいて正解だ」
「僕等の建てた防護壁にこんなに早く出番が回ってくるとはねぇ」
「頑張った甲斐があるというものだよね」
うんうん、とそれに頷いて見せるロカジと真珠に、トリスは渋面を作ってみせた。
「何が『僕等』だよ、お前等の功績はこれっぽっちももないからな」
「崩れた建材から助け出してあげたでしょ」
「覚えがねぇよ……!」
「まあまあ、カタい事は言いっこなし、今こそ技術と情熱の集大成を見せつける時よ!」
そんなやり取りを打ち切るように、ロカジが迫る敵の方を指差して見せた。
「……なぁ、キララの嬢ちゃんは?」
「あれ、聞いてなかったの? あそこに居るよ」
「ああ、元気が良いよねキララは」
ロカジと真珠の視線を追って、トリスがもう一度望遠鏡を構える。
「……あれか」
そこでは多数のアイスを抱えたキララが、オウガの目前を走っていた。
「ほらっ! アイスクリームがいっぱいでしょ~、おいしそうでしょ!」
これまでの戦いでのダメージによるものか、心なしかふらふらしているオウガの前に、キララはありったけのアイスを抱えて進み出た。
せっかくキララ商店街も店舗が賑わい始めたところだ、これからもっともっとステキな国になるだろうに、ここで壊されては困るから。
「んん~、良い匂いだぁ~……」
「そうでしょ~、きらちゃんの選んだいちばんおいしいセットだよ~」
じりじりと下がりながら、キララはオウガのペースに合わせつつ、食欲を煽ってやる。相手の注意を引く方法、自分の存在を知らしめる術を、彼女は熟知している。
「ああ~……、それ、食べたいぃ~……」
「まだダメ~」
颶風と共に振るわれるオウガの腕から、飛び退いて逃れる。間一髪、だが釣り針にかかったのなら後は一目散に逃げるだけだ。
「きらちゃんを捕まえられたらねー!」
「まぁ~てぇ~」
ずん、とキララの後方にオウガの足が落ちる音がする。体型に比べていかにも短い足の一歩、しかし歩幅と――勢いが付き出してからのトップスピードは、キララのそれを大きく凌駕している。
「たぁ~べぇ~さぁ~せぇ~てぇ~」
「し、しょうがないなぁー!」
彼女の逃げ足を以てしても引き離せず、一歩一歩近づいてくる敵に、ぽいぽいとアイスを投げて気を散らせながら、キララは逃げる。それでも逃れ切れない、最後の瞬間に――。
「そぉーれっ!」
トラップ発動。木々の間により合わせた太い糸がぴんと張り、モグモグちゃんの足がそれに引っ掛かる。糸の張った木々を薙ぎ倒しながら、蹴躓いた巨体が一度宙に浮いた。
「あぁ~~……?」
「ひゃ~~~ッ」
「おい、こっちだこっち!」
轟音と共に倒れ込むオウガの前方、手招きする帽子の少女――透の呼び声に応じて、キララは森の中へと方向転換。一手遅れて降ってきたオウガの腕から逃れる。
より小回りの活かせる森の中へと走り込む彼女を追って、もう一度モグモグちゃんの手が伸ばされるが、今度は枝の間に張られた蜘蛛の巣が、それを絡め取った。
「よし、かかった――ああ、待て待て待ってくれちょっと!!」
それを仕込んだ透が一瞬歓声を上げるが、蜘蛛の巣が引き千切られていくのを目にし、慌てて両手から糸を放って拘束を補強する。だが、それでもこの足止めがいつまで保つか。
「待ぁ~~~~ってぇ~~~」
「あー、うるさいこっち来るなって!!」
さらなる『蜘蛛の絲』で口を塞ぎ、追加の食事を阻害、より巨大化するのを防ぎつつ、透は城壁を指差した。
「逃げるぞ!」
「はーいっ」
え、何でこの子、この状況で笑ってるの? 一瞬透の頭をそんな疑問が過るが、今はそれどころではない。
「ム~~~~~~ッ」
口を塞がれながらも追ってくるオウガから、細かく方向転換を加えながら二人は走る。
「ねえねえ、助けてくれてありがと」
「えぇ、良いよ別に!」
「きらちゃん先に行ってるけど、すぐに助けが来るからねー」
「へ?」
がんばってー、という声援を残して、キララの姿が掻き消えた。
「えー……」
テレポート、という単語が頭に浮かぶ。そっと後ろを振り返った透は、巨大なオウガがこっちに迫っていることを悟り、顔を引き攣らせた。
『アクアリウム・ビッグバンド』、一度掻き消えたキララは、城壁の上、ロカジの元へ、描かれた魚の群れと共に現れた。
「ただいまッ」
「キャー! きらちゃん、カッコ良かったよー!」
「おかえり、キララ。楽しかった?」
「うん、でもねぇ……」
彼女から、下にもう一人居ると聞いて、防寒着姿の真珠は、寝そべっていたもちもちアイスの上で姿勢を変える。とりあえず起きる気はないようだが。
「あのオウガはこっちを見ているね?」
「うん、きらちゃんのアイスが気になるみたい」
アイスの匂いによるものだろう、オウガの視線は転移を経てもキララの方を向いている。それはつまり、隣の真珠も視界に捉えているはずで。
「ぶくぶく太って醜い……」
これは罵倒と言うよりは憐みだ。少しだけ顔を顰めた後――はらりと、真珠の頬を涙が伝い落ちた。長い睫毛の間を零れ落ちた雫は、水滴ではなく結晶、宝石となって地面に落ち、涼やかな音色を奏でる。
光り輝くは『人魚の涙』、小さなそれの秘めた味を夢想でもしたか、モグモグちゃんがその目をうっとりとさせ、動きが止まる。
「うん、後はよろしく」
「……いや、恐ろしい涙だな」
成果を見ての一言に、トリスが複雑そうに応じる。少なくともこちらには向けて欲しくないものだ、と考えつつ、彼もまたユーベルコードを発動した。
「さて、お嬢ちゃん達が良い仕事してくれたことだし――」
こちらも働かなくては。召喚されたのは『配下の十一人』、霊体の猟師達だ。
「投石機を用意しろ!」
「さあ、お前達も行っておいで」
クリスの号令に従って猟師達が動き出し、真珠の言葉に、如月と皐月――人形達が、城壁の下へと飛び降りていった。
「ね、シンジュはどうするの?」
「僕はこのあいすくりんをもちもちするので忙しい」
人ならぬ動きで駆けた自動人形、如月と皐月は、手始めにその少女を捕捉する。
「えっ、何だアンタら――!?」
捕まえた透を小脇に抱えて、二体は一旦城壁の上へと戻って行った。
そして、それと入れ替わりに。
「さぁて、始めようか。デカいものにはデカいもので対抗しないとねえ」
投石機が、この国で一番固いと思われる小豆アイスを発射し始めるのに合わせ、ロカジが城壁の際に立つ。
「僕のかわいいペットの蛇たち! 出ておいで!」
『素戔嗚』。ロカジの呼び声に応じて、七つ首の大蛇が城壁の前に姿を現した。
「うわー、でっかいのが出てきた……」
「どうだい、かわいいだろう」
城壁の上に運ばれてきた透の声に、ふふんとロカジが鼻を鳴らす。
「あれが例の『薬屋の蛇』か……火傷の恨みは忘れてないからな」
頼もしいには頼もしいけれど、というトリスを窘めて、ロカジはオロチへと命令を下す。
「さあオロチたち、今日のご飯はあのオブリビオンだ!」
しかし、どうしたものか、蛇達の反応が鈍い。首を傾げたロカジに、真珠が言う。
「蛇は寒いと冬眠してしまうのでしょう? 平気?」
「え、寒がってるの? 食い意地はちょっと負けても顔で勝ってるから元気出して!」
ロカジの声援にもぼんやりとした反応を返すオロチ。そうこうする内に、モグモグちゃんが一時の拘束を脱してしまう。
「あぁ~いぃ~すぅ~……!」
口を塞いでいた蜘蛛糸をぶちぶちと引き千切り、オウガが低い雄叫びを上げる。剣呑な気配に、目を覚ますようにしてオロチたちが動き始めた。
「お、やる気出てきた? そろそろモグモグちゃんがケバブに見えて来たでしょ」
さあ行け、というロカジの声に従って、七つ首の大蛇が牙を剥き、オブリビオンへと襲い掛かった。
「ねえねえ、ロカジはどうするの?」
「僕かい? 僕もねえ、アイスをもちもちしようかなって」
「そう、なら僕のを少し分けてあげても良い」
高みの見物、と言うように、本当にアイスをもちもちし始めた二人を横目に、トリスは砲撃命令を下す。
「全員、どんどん放て!」
高笑いと共に、自らも魔法の猟銃でオウガを射撃する。投石機から放たれる硬質アイスの塊を援護の一撃として、彼等は敵へと攻撃を開始した。
「うおー! いけオロチー! やっちまえー!」
砲弾のインパクトに負けじと、大蛇はその身を敵へと絡みつかせ、強く締め付け始める。その拘束を脱しようという剛腕が蛇の頭の一つを打ち据え、吹き飛ばし――しかし他の六首が、入れ替わるようにして喰らい付き、モグモグちゃんの動きを封じにかかった。
その硬直を好都合と、如月と皐月はそれぞれの得物でオウガの身体を削り取り、トリスは次々に投石機を働かせ始めた。
「撃て撃て! 大蛇には『できるだけ』当てるなよ、クハハ!」
「あ、この小豆のあいすくりんも美味しいね」
「おいやめろシンジュ! それは大事な砲弾だ!」
どうしたものか、という様子で辺りを眺めていた透も、とりあえず目の前の戦いに集中することにする。
「ああ、もう……負けるなよー!」
「ふひひ……にぎやかね! みんながんばれー!」
キララもまた一緒に声援を投げて、巨大な二体の戦いを眺めていた。
巨大怪獣が激しい戦いを繰り広げる中、絡みつく大蛇が、敵の首元に喰らい付く。モグモグちゃんは必死にもがいて――。
「――あっ、ちょっと待て、それはまずい!」
はっと、我に返ったトリスが一斉射撃を命じる。とはいえそんな連射が効くものでもない。これまで景気よく撃ちまくっていたのだから、射撃姿勢を揃える方が難しい。
その間に如月の鋼糸が、皐月の暗器が敵の膝部分を狙い、その攻撃によりよたよたと、大蛇の絡んだ巨体が城壁に迫る。
「ええい、止まれ! 止まらないか! ロカジ、やめさせろ!!」
「よーっし、いけそこだよオロチ! とどめをさせー!」
引き摺り倒すような一噛みを最後に、オウガはバランスを崩して倒れ込んだ。
――城壁に向かって。
「あああオレの城壁を壊すんじゃねぇーッ!!」
トリスの悲鳴も空しく、城壁は盛大に破壊され、モグモグちゃんの身体の形に思いっ切り凹んだ。
「よくやったオロチ! 褒美は弾むよー!!」
「やったーー!!」
ロカジやキララが歓声を上げて、真珠がアイスをもちもちしながら満足気に頷く。
「うぅ~、酷い目にあったぁ……」
オロチが勝利の雄叫びを上げる中、ボコボコにされたオウガはふらふらと身体を揺らして逃げていった。……城壁の向こうへ。
「……えっ、あっちって街の方向じゃないの?」
喜んでていいのか? と透が首を傾げる。
とはいえ、十分にダメージは与えている。そして壊れたのは未完成の城壁のみ。ここでの戦いは大成功と言って良いだろう。
もちろん、敵の向かった先にも、他の猟兵達が控えている。最後に「勝利した」と言えるかどうかは、彼等次第だ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
火狸・さつま
常盤f04783と
狸っぽい狐姿で参戦
人語不可
敵の姿みれば肩からぴょこんっと下り
ぶわり毛並み逆立て
「しゃ……!!!!」
ここは!壊させない!!!のキモチで威嚇!
空気抜けた音にしか聞こえない?気のせい!!!
ステキな国名のついたココは、きっと素敵なトコになる!
それに!これから!常盤と!滑り台するんだから!!
早業びゅんっと一足飛び距離詰めての先制攻撃
敵目前で高くジャンプ!からの雷火の雷撃放ちつつ
二回攻撃、炎纏わた属性攻撃【しっぽあたっく】
二本足でぴゃっと立てば
ばばっと両手広げ大きく見せつつ
「しゃ……!!」
恫喝威嚇
怯んだら腕残ってる方の肩にでも噛み付いて生命力吸収
攻撃見切り躱し
オーラ防御纏い
激痛耐性で凌ぐ
神埜・常盤
さつま君(f03797)と
氷の街で、叶う事なら公園の近くで迎撃を
さつま君と未だ滑り台で遊んで居ないのに
無残に壊されてしまっては堪らないからねェ
然しさつま君の威嚇はいつ見ても和むなァ
此処はピーノ君たちの楽園だ
食い散らかすなんて許さないよ
管狐を召喚して破魔の業火で敵を包もう
――さァ、九堕よ
あのケダモノを燃やし尽して仕舞え
上手くやれたら後でアイスの褒美を呉れてやる
思考力が上がる前に、もう一撃お見舞いしようか
炎に紛れて接近すれば、影縫にて串刺し攻撃を
見境なく摘み食いするような悪い手にはお仕置きだ
腕の辺りを部位破壊して仕舞おう
さァ、さつま君、もう一度威嚇を披露してやり給え
手負いの奴にはよく効くだろうさ
●公園前
ひとつ、ふたつ、みっつ。順番に、そして確実に、地面を叩く巨体による地響きが、街へと迫る。
「――これはまた、随分と」
大きい。やってくる敵の姿を見上げて、常盤が呆れるような声を上げる。城壁の方での大暴れは、少し離れたここでも感じ取ることが出来た。敵の負傷の様子からそれらを感じ取りながら、彼は視線を下げる。
「どうやら、滑り台はお預けになりそうだよ」
首元に向かってそう告げると、その襟巻――首元に巻き付いていたさつまが、するりとその身を外して、遥か上方に向かって全身の毛を逆立てた。
「しゃ……!!!!」
威嚇。彼の後方には先に完成したばかりの公園がある。中心に据えられた氷の滑り台は、まだ誰も乗せた事の無いまま、人の訪れを待っている。
――この国はきっと素敵な所になる。そして何より、この滑り台で遊ばなくてはならないのだから。
迫り来る敵に向けて、さつまは地を蹴って駆け出した。
オウガの側は、あまりのサイズ差にその姿を半ば見失っている。振り払おうとしたのだろう、雑に伸ばされた腕へとさつまが飛び乗り、もう一つ跳躍。高く宙を舞った彼の尻尾が紋様を浮かび上がらせ、黒い雷を迸らせてオウガを穿つ。
「!」
さらに、もう一撃。空中でくるりと回る動きそのままに、さつまは尻尾をオウガの頭部へと叩き付けた。
ユーベルコードによるその一撃はもふもふした見た目に反し、敵の頭を凹ませる。
「あぁ~……いたいぃ~」
鈍そうに見えるが効いてはいるらしい。反動で後方に跳び空中で一回転したさつまは、着地したところでもう一度敵を威嚇してみせる。
「さつま君の威嚇はいつ見ても和むなァ……」
本人には聞こえないように、小さく常盤が言う。手痛い一撃を貰った形のオウガは、その苛立ちを叩き付けるように拳を振り下ろした。
飛び退いたさつまの居た場所に、ハンマーのように拳が叩き付けられ、一際大きな地響きが上がる。
さらに拳を振りかぶるその姿に、そろそろまずいかと常盤もその手を下す。
「此処はピーノ君たちの楽園だ。それ以上は許さないよ」
『簒奪者に捧げし狂宴』、指の間に挟んだ竹筒が開き、炎を纏う式神、管狐が姿を現した。
「――さァ、九堕よ、あのケダモノを燃やし尽して仕舞え」
上手くやれたら後でアイスの褒美を呉れてやる、とそんな主の声に、式神は細い目を輝かせて従う。魔を祓う炎はいくつも生じ、赤く燃えてモグモグちゃんへと襲い掛かった。
「うぅ、あついぃ~……」
「ああ、アイスで育ったその身体に、これは少し熱すぎるかな?」
オウガが、慌ててその手を引っ込める。食べたものに応じて力をつけるこの個体は、やはりその身の質も食べたものの影響を受けている。思いのほか大きな効果を見せる攻撃に、常盤はさらに追い打ちを狙う。
「さつま君」
短く呼ぶ声に、心得たとばかりに狐が駆ける。それに掴みかかろうとするオウガの腕には。
「見境なく摘み食いするような悪い手にはお仕置きだ」
炎に紛れて位置を変えた常盤が、大きな鉄のクロックハンドを突き刺し、一時地面に縫い留めた。そして、止まった腕を駆け上がり、さつまは敵の型口へと喰らい付いた。
「うぅ~……よくも~……」
血が噴き出るわけではないが、体を削られたことで、オウガが呻き声を上げる。力ずくで引き抜いた左腕も、常盤の手により中程で両断されてしまう。
「さァ、さつま君、もう一度威嚇を披露してやり給え」
面白がるような常盤の声に、さつまが応じる。後ろ足だけで立ち、身体を大きく見せるような仕草。その小さな身体に臆したように、オウガは公園の前から方向転換。有体に言えば、逃げだした。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
リダン・ムグルエギ
【休憩所】
あー癒される…
ピーノくん、もうちょっと強く足揉んで?
のーんびり戦いを観戦するわ
アタシはデザイナーであると同時にワイルドハント『事前準備担当』
そのスタイルは戦闘開始前に全部整えて…本番では仕事レスになって撮影とかに回るの
餅は餅屋
戦いは得意な人に任せましょ
事前準備に手は抜かないわ
コードを使って屋根板を使わずに建物を作っておくの
そう、囮よ
一見大きく見えるけれど
構造はスカスカ虫食いだらけのキャベツのような多層構造で
「食べ難いわりに量が少ない」上に
アタシの手持ちの毒をたーっぷり仕込んだ一種の仕掛け罠になってるの
さぁ、食べてる今がチャンス
いけー!そこよー!
(オブシダンさんが金ローみてるノリで応援
ヨシュカ・グナイゼナウ
【薬A】
こんなに沢山のアイスがあれば、食べたくなるという気持ちは解ります
ですが、物事には限度というものが有りますので
え、ピーノくん氷像が…?許せません!(ムッとした顔)
エンジさまが誘き寄せて、街の広い場所に誘導して下さるのでそちらで迎え撃ち
その前に、屋根板を少々拝借。あとで修繕しておきます…!
屋根板を加工して、文字を残しつつ投げやすい形に
あんなに大きな的外す方が難しいというもの
というわけで【七哲】(アイスバージョン) 食欲と共に攻撃力の減衰も狙い
朽守さまの霧でお腹はぱんぱんに。霧っておいしいのかな?
後は【地形の利用】し開闢で高所から【部位破壊】を狙いサポートを
御鏡先生、宜しくお願いします!
御鏡・十兵衛
【薬A】
(ピーノ君から力作モニュメントが囮になり粉砕されたと聞き)
おお…何とむごいことを…形あるものはやがて滅ぶ定めと言えど、あまりにも早い終わり!(よよよ)
…まーそう言うこともあるでござるよね!(けろり)
さて、おびき寄せに封じ込めに弱体化と、もう出来上がってるでござるなコレ。
となれば、残る某は順当に接近戦を。
屋根板の投擲に合わせ接近、腕を狙って斬り、屋根板の迎撃を妨害し命中率を高める。
【光綴】にて、仕掛けるは朽守殿の弱体と重なった瞬間よ。
これほど弱らせておいて斬れぬなど剣士の名折れと言うもの、失敗は出来ぬな?
――しかし、先生とは、何ともむず痒いというか何というか。
朽守・カスカ
【薬A】
氷像に、モニュメントの行く末に、眉を顰めて
全く、食べ散らかすようなことは無粋極まりないね
……かといって余さず全てを平らげたらそれはそれで困るか
エンジ君が誘き寄せてくれるなら
私は迎え撃つとしよう
ヨシュカ君の策に成程と頷いて…
食べものの質と量に応じて、か
ならば私は【微睡の淵】
さぁ、腹減らしのモグモグちゃん
まだまだお腹が空いているなら
私の灯と唄で導いてあげるから
この霧をお食べ
口当たりは軽やかで幾らでも入るだろう?
ふふ、これだけ霧を食べれば鈍く、脆くなるだろうさ
さぁ弱点を作った
後は十兵衛君に、後に続く皆にお任せしよう
お行儀良く、皆と仲良く食べられないのなら
此処ではお呼びでないよ
エンジ・カラカ
【薬A】
なーんか大変そうダ。
敵、敵。
アァ……敵だなァ。
コレが広いトコロに誘き寄せをしよう。
鬼サンコチラ。お前たちには負けないサ。
軽い挑発も交ぜようカ。
誘き寄せ出来たら後はもう戦うだけ。
コレは支援に徹する。ドーンとヤルのはミンナにお任せー。
相棒の拷問器具の賢い君に話しかけてご機嫌を伺おう。
賢い君、賢い君、出来る?出来る?
アァ……そうだそうだ。少し寒いだろう。
我慢してくれ。
像が壊されたらしいンだ。
折角の像がバラバラなーんて、悲しい悲しい。
足止めに君の糸をくるくると放ったら
時間稼ぎくらいはできるだろう?
●市街地決戦
「あー癒される……ピーノくん、もうちょっと強く足揉んで?」
「ハーイ」
休憩所にて、リダンはそんな調子でマッサージチェアに身を沈めていた。内容物がピーノ君三人と言う奇妙な椅子だが、クッション性は無闇に良い。
「良いンデスカー、大きな化け物が近くまで来てるそうデスヨー?」
「良いのよ、アタシの仕事って敵が来る頃には大体終わってるものだから」
アイス入りのグラスを運んできてくれたピーノ君に、彼女はそんな風に答えてそれを受け取る。スプーンで中身をすくって、一口。
所属旅団――武闘派のワイルドハントにおいても彼女が担うのは『事前準備』だ。デザイナーという別の顔と、適性を考えれば当然と言えば当然か。実際に戦いが始まれば、いつも何かと……主に撮影などで忙しい事になるわけだが。
「餅は餅屋よ。戦いは得意な人に任せましょ」
ごろごろと寝そべっていた彼女の耳が、ぴくりと動く。遠くから近づいてくる地響きに気付いた彼女は、残り少なくなったアイスを口に放り込むと、上半身を起こした。
支給用の防寒着作りで凝っていた背中を、労わるようにして伸びを一つ。
「それじゃあピーノくん、良く見えるように、屋根の上に行きましょうか」
「ハーイ」
「屋根の上?」
「ホラ、階段階段」
そうしてリダンを乗せたマッサージチェアが、よたよたと店舗の屋上に登っていった。
……言うまでも無いが、観戦のためである。
「敵、敵。アァ……敵だなァ」
公園があった方角から歩いてくるオウガを見上げて、エンジが感情の読めない声で言う。氷の街の中心、キララ商店街付近に控えていた猟兵達の元に、そのタイミングで伝令ピーノ君が駆けこんできた。
「ワー、大きいのがこっちに来てますヨー!」
「大丈夫、こちらからも見えているよ」
相手を落ち着けるように言うカスカに続いて、ピーノ君はこれまでの戦闘状況を彼等に伝えていく。現在の所、被害に遭っているのは城壁と、通り道になり食い荒らされたアイスの森の木々、そして――。ヨシュカが、むっと顔を顰める。
「え、ピーノくん氷像が……?」
「囮になった上で粉砕されたでござるか!?」
「いや、そこまでは言ってなかったと思うよ?」
「バラバラなーんて、悲しい悲しい」
「おお……何とむごいことを…形あるものはやがて滅ぶ定めと言えど、あまりにも早い終わり!」
非業の死を遂げたピーノ君像の話を聞き、氷像の制作者でもある十兵衛が目尻を押さえる。カスカもまた眉を顰め、それに同調するように、ヨシュカは語気を強めた。
「全く、食べ散らかすようなことは無粋極まりないね」
「許せません!」
「いや……でもまーそう言うこともあるでござるよ」
そこであっさりと論調を変えた十兵衛に、ヨシュカとカスカはもの言いたげな視線を向ける。
「……」
「……」
「え、何でござろう?」
そうして首を傾げる彼女を他所に、エンジは淀みなく敵の方へと歩みを進めていた。
「コレが広いトコロに誘き寄せをしよう」
このまま街中に踏み込まれればきっと被害は甚大だ、ならば都合の良い方に連れて行こう、という腹積もりだが……。
「どうせおびき寄せるなら、こっちでどう?」
そんな彼に、上からそう声がかかる。屋根の上で、マッサージチェアに寝そべったリダンが、とある建物の並ぶ一角を指し示していた。
「はァ……囮、罠カ? ならそれも良い」
何もない広いところ、と都合の良い場所を探すよりは、効果的かと彼は頷く。
「あぁ~……目が回るぅ~……?」
街の方へと徐々に歩んで行きながら、当のオブリビオンは、見える建物の様子に頭をくらくらさせていた。張り巡らされた天井板の模様は、リダンの描いた催眠効果でその思考を蝕む。
「アァ、アァ。コッチだデカブツ。鬼サンコチラ」
歌うように言って、エンジは敵の注意を引く。視線を向けさせた先には、不可思議な屋根板のない、シンプルなアイスの家々。
「サァ来いヨ、お前たちには負けないサ」
「ご……ごはん~~……」
ずん、と意思を乗せた明確な一歩で、モグモグちゃんはエンジの挑発に応えた。
街並みに沿うように歩いたオブリビオンの前に、続けてカスカがその手を向ける。
「ありがとうエンジ君、ここからは私が引き継ごう」
言って、彼女は手元のランタンに火を入れる。眩い輝きは、同時に生じた魔導蒸気の霧に包まれて、鈍く柔らかな光へと変わる。
「さぁ、腹減らしのモグモグちゃん、まだまだお腹が空いているなら、この霧をお食べ」
私の灯と唄で導いてあげるから。そう紡がれた言葉は、空腹のオウガの大口を開かせる。
「美味しそう、いただきまぁ~す……」
がぶ、と喰らい付くような動きを、周りのそれを両手で集めるような仕草を取って、オウガはその霧を吸い込んでいく。
「口当たりは軽やかで幾らでも入るだろう?」
カスカが問う。さて、しかしそんなものを食べ続ければ……『食べたものの量と質』に応じて、このオブリビオンは変質する。体積ばかりの蒸気は、敵の思考を、瞬発力を、茫洋としたものへと変えていく。
「あれっておいしいんですかね?」
「気になるのはそこかい?」
ヨシュカの問いに、カスカが微笑む。後は任せた、という彼女の言に応えて、ヨシュカは屋根板に手をかける。
「あ、ちょっとそれ!」
「あとで修繕しておきますから……!」
咎めるリダンに謝りつつ、それを引っぺがす。ちょっとばかり手を加えれば、『食欲減退板』の完成だ。
ヨシュカはそれをフリスビーの要領で、霧をたらふく食べ、民家へと標的を移したオウガへと投げ付ける。『七哲』、これを暗器と言い張って良いものか疑問は残るが、大きな手裏剣みたいなものだろう。
「うん、有効活用してくれるのなら許してあげるわ」
「恐縮です!」
デザイン使用料とかいう不穏な単語は聞こえなかったことにして、ヨシュカは次々とそれを投擲、民家に手を伸ばそうとするオウガの動きを阻害する。おかげで幾分か動きを鈍らせながらも、しかしその手は民家を掴む。
「やったぁ~、いただきますぅ~……」
他と違って模様の無い屋根板、そして壁板を引き剥がし、オウガはそれを口にする。歓喜の声が上がるのが聞こえる。
そんながっつくオウガの様子をから、カスカは傍らへと視線を向けた。
「……食べさせても良かったのかい?」
そもそもここに誘導しろと言うのはリダンの案だ。これはその結果と言えるのだが。
「良いのよー、あれアタシが作ったレプリカだから」
もはや家で映画見ているくらいに寛いだ姿勢で、リダンがそれに答える。そう、今オブリビオンが大喜びで口にしているのは、彼女が事前にレプリカクラフトで作り上げた『仕掛け罠』だ。
ただの家のように見えながらその壁は多層の板になっており、食べるのに苦労する割に、何だかすかすか。オウガとしては食べても食べてもなくならないご馳走にありついたような気分だろうが。
「お腹が~満たされないぃ~……?」
先の霧に続いてスカスカの建材。消えない空腹がさらにその足を止める。
「ああ、よくできているね」
「でしょ? ついでに毒も仕込んでおいたから――」
「――あぁ、目が回るぅ~……?」
ほらね、とリダンが肩を竦めた。
「なるほど……まぁ、これだけ霧と毒を摂取すれば鈍く、脆くなるだろうね」
「というわけで、今よー、みんなー」
そんな緊張感のない合図が辺りに響く。
「賢い君、賢い君、出来る?出来る?」
敵へと歩み寄りながら、エンジは手元の拷問器具のご機嫌を窺う。
「アァ……そうだそうだ。少し寒いだろう。我慢してくれ」
どうやら話し合いは成立したらしい。そこから伸びる赤い糸で、オウガの足をぐるぐる巻きに、歩みを完全に止めてやる。
「さて、どうです? アイスの家は美味しいですか?」
同時にヨシュカの投擲攻撃、『七哲』も変わらず続いている。反射的にそれを防ごうと動く短い両腕は、他の者から見ればただただ無防備。
「これは……」
できあがっているでござるな、と前に出た十兵衛は独り言ちる。カスカの霧をたらふく食べたこともあり、その身体の組成は薄く、柔らかに広がり、以前の戦いで埋め込まれたのであろう、身体の中心の楔さえも透けて見える。
「いけー、そこよー!」
観客ことリダンの声援が耳に届く。無責任な応援にも聞こえるが、この状況に至ったのは彼女のお膳立てに拠る部分が大きい。
……いや、それだけではない、共にこの場で戦うヨシュカやカスカ、エンジはもちろん、断ち切る事で大幅に長さの短くなった両腕、身体の各所の傷、胴の中心へと打ち込まれた楔。そしてその前提にはこの国の様々な施設の存在がある。
「おや? おやおや……」
思わず笑ってしまう。考えれば考えるほど、その両肩には重みがかかり、同時にその両手には力が宿る。
――これほど弱らせておいて、ここまでの全てを踏まえて、それでも斬れぬなど剣士の名折れ。ああ、失敗は許されまい。
手始めに振るった斬撃二つで、モグモグちゃんの両腕をさらに詰めてやる。防御の及ばなくなったその頭部に、ヨシュカの投擲物が命中、その姿勢が崩れるのが分かる。
それを悟ったのだろう、ヨシュカは十兵衛へと視線を送った。
「御鏡先生、宜しくお願いします!」
いやあ、何ともむず痒い呼び方。心得たとばかりに息を吸って、十兵衛は『止水』を握り直した。
「――!」
放つは一刀、『光綴』。一閃、しかし無数の刃を上塗り、重ねたような一筋の線が描かれ――。
「あ……あぁ~……?」
胴の中心、打ち込まれた楔をなぞった線に従って、モグモグちゃんの体が切断された。
「――お行儀良く、皆と仲良く食べられないのなら、此処ではお呼びでないよ」
小さく、カスカの声が届く。
自らを襲った状況を理解できていないような、茫洋とした呻きを残して、オウガの胸から上がずれ落ち、地に叩き付けられる。同時に、残った半身がゆっくりと、後ろに倒れていった。
●勝ち得た平穏
「ヤッター!」
「勝ちマシタヨー!」
オウガが倒れるのを目にし、ピーノ君達が一斉に諸手と歓声を上げる。その拍子にマッサージチェアの上からリダンが転げ落ちたが、それは些細な事だろう。
勝利の報はすぐさま国中に届けられ、ちょっとしたお祭り騒ぎになったという。
――今回の襲撃で、この国の受けた被害は小さなものとは言えないが……猟兵達の手により、オウガの蹂躙は最小限の被害で押し留められた。
こうして訪れた一時の平穏は、この国に住まうことになったピーノ君達の幸福と、この国のさらなる発展に繋がるだろう。
「ドーモありがとうゴザイマシター!」
「また遊びに来てクダサーイ」
並んだ彼等が揃って手を振る。
ピーノ君達が差し出した秘蔵のアイス――バニラのアイスを黒いチョコレートでコーティングしたものをお土産に、猟兵達はこの新たな不思議の国、『ラクトパラディア』から帰還した。
大成功
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