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エンパイアウォー㉙~骸の海の揺り籠揺らし手

#サムライエンパイア #戦争 #エンパイアウォー

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●グリモアベース
「陰陽師・安倍晴明がここまで外道だったとはね。オブビリオンを一体討伐して欲しいんだ」
 集まった猟兵を前にカバンシ・サフィリーン(ギャル系宝石人形(妹分)・f10935)が集まった猟兵を前に説明を始める。

「安倍晴明が水晶屍人を『造り』出し、奥羽で暴れていたのを皆が掃討した。……そう、安倍晴明は研究の拠点を奥羽地方に作っていたわけ」
 カバンシは報告書に目を通し、ため息をつく。
「掃討戦を行っていた武士達が調査をした所、研究施設は既に放置されていたみたい」
 しかし、施設の奥には『誰かが直前まで住んでいた』かのような場所があったという。
 道中に点在する非道な人体を改造してきた凄惨な『実験場』とは違い、清潔な寝具と小さな着物が用意され。
 まるで、子を産む母のために用意された部屋であった。

「『偽神降臨の邪法』。女性の形をしたオブリビオンの胎内に、安倍晴明自身も含む魔軍将の力やコルテスが持ち込んだ神の力を宿らせ出産させる」
 カバンシは眉を顰めながら安倍晴明が研究を行っていた邪法について口を開く。
「人為的にオブリビオンフォーミュラを生み出すため、らしいけど……よくもここまで非道なことを思いついたもんだよ」
 邪法により『胎内に宿った神の子』と共に女性オブビリオン達は研究施設から逃げ出し、隠れ潜んでいる。
 邪法が示す転生の日、10月10日の間まで。
 何があろうとも至上なる神の子をサムライエンパイアの地に産み落とすまで。

「彼女達の一人、死霊女主人『髑髏彼岸』の足取りをアタシが発見したんだ」
 スクリーンに映し出されるのは奥羽地方は陸奥の山間。
 獣道には血と死体が飛び散り、血痕は深い木々の中に消えていく。
「髑髏彼岸は何としても出産をするために、隠れられる場所を探そうとしているみたい」
 もし猟兵との戦闘になったとしても子を産むために戦闘より逃走を選ぶのではとカバンシは予想した。

「今から皆を陸奥の山奥に転送するよ。日も差さない森の中、戦闘で一般人を巻き込む心配はない」
 もう一度報告書に目を通し、カバンシは猟兵を見渡す。
「この邪法でオブリビオンフォーミュラが誕生するか、といえば可能性はかなり低い。でもこのまま放置しておけば、戦争が終わったとしても徳川の世を転覆させるような大事件を生み出す『子』が産まれる」
 邪法とはいえ、その胎内に子を宿した『母』は戦うより逃走することを選ぶであろう。
「逃げる敵を追い詰めて倒す……色々思う所はあるかもしれないけど、サムライエンパイアの未来のため、ここで食い止めてほしいんだ」
 転送ゲートを作り終えたカバンシは、頭を下げ猟兵達を見送った。

●おやまへむかう母の愛
 みられた、みられた、わたしをみられた。
 かみのこをみられた。
 だからころした。
「とつきとおか、とつきとおか……会いたいわ、会いたいわ」
 陸奥の山奥。通りかかった農民が伸ばした手を体ごと切り裂いた死霊女主人『髑髏彼岸』は山に入る。
「私の子、神様の子……おいで、おいで、産まれておいで」
 周囲を漂う怨霊がまるで彼女の腹を撫でるように移動する。
「あ……動いた。そうね、ここでお母さんと一緒に待っていましょうね」
 日の差さない森の中、オブビリオンは笑う。母の愛を物言わぬ森が包む。


硅孔雀
 サムライエンパイア大戦、奥羽地方での戦いです。
 硅孔雀です。
 安倍晴明マジ外道。ボスオブビリオンとの闘いです。

●構成
 ボス戦:死霊女主人『髑髏彼岸』。
 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。

●状況
 深い森の中。戦闘に支障をきたす事のない場所です。
 ボスである『髑髏彼岸』は隙があれば猟兵との戦闘から逃げ出す>猟兵を倒すという思考の元行動します。
 胎内に宿った神の子は特に戦闘に影響しません。

 それではプレイングお待ちしております。
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第1章 ボス戦 『死霊女主人『髑髏彼岸』』

POW   :    この子達と遊んであげて?
【記憶】を代償に自身の装備武器の封印を解いて【妖怪がしゃどくろ】に変化させ、殺傷力を増す。
SPD   :    希望というのはよく燃えるわ
対象の攻撃を軽減する【紅く燃える人魂】に変身しつつ、【心を焼く呪いの炎】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    思い出して……
【優しい言葉】を向けた対象に、【悲しい記憶】でダメージを与える。命中率が高い。

イラスト:エゾツユ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠鳴猫・又三郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

数宮・多喜


アンタがお腹の子供を守ろうとする気持ち、
分からなくもないさ。
……だからってな、アタシ達はそれを見逃す訳にはいかないんだ。
こういうのは気が進まないんだけどね、
その縁、アタシらの手で断ち切らせてもらうよ。

あまり長引かせるつもりはないよ、一気に仕掛ける!
森の中を追いかけながら、即座に
【縁手繰る掌】で髑髏彼岸を味方の近くへ転移させる。
その際に、置くようにサイキックの『マヒ攻撃』を込めた
電撃を放射させておく。
奴が離脱を諦めるまで、何度逃げ出しても引き寄せるよ。

……胸糞悪い戦いだね。
その子がもしも、真っ当な子だったのなら。
アタシらもまた違う道を探せたかもしれないのによ……
まったく、猟兵も因果な稼業だよ。


プラシオライト・エターナルバド
逃走防止最優先
トリックスターを念動力で足に絡めて
予め罠を張っておきます

【ツミトバツ】
複製した魔鍵が敵を囲みます
子を守る為に他者をあやめる…
赦されるかどうか、どうぞ天に尋ねてみて下さい
貴女の過去の罪も含めて、裁きが下るでしょう

すみません
悲しい記憶…とやらには、心当たりがないもので
ああ、今。貴女方を、母子をあやめなければならない
やるせない気持ちはございますね
それでも
様々な感情に疎い宝石人形は、淡々と仕事をこなすだけなのです

とどめが必要な時、仲間と連携する際は
エレノアで光属性の破魔弾を撃ちます

その子は邪法によって生み出されてしまいました
願わくば、今度は…、と
言葉に出さずとも、天に祈りましょう


蔵館・傾籠
方針●
「探索、追跡、捕捉」を重視。
数多の手足に目に耳に、さあ拡がれよ【籠目籠目】、追って見つけ出せよ、見付けたらば決して母から目を離すな、姿を見失うなよ。
逃げると言うのなら何処までも引き伸ばして絡め、そう、蜘蛛の糸の如くに。
二つの命を逃がし零せば、後に多くを失うと言うのならば選択は一つだ。万が一に何方も躊躇うならば己が請け負おう。
心情●この身の出来た時、人の胎から生まれもしなきゃ、器を焼いた手を覚えても居ない、物らしく主が傍に居た訳でもない。優しげな言葉なんかを繕って、添えてやれなくてすまんなあ。…生憎と人の其れを、俺は知らんのさ。

(諸々歓迎)



●女は愛を捧げる
「まったく、猟兵も因果な稼業だよ……胸糞悪い戦いだね」
 山中を慎重に進みながら数宮・多喜(撃走サイキックライダー・f03004)が思わず呟いた。
 オブビリオンといえど女性の胎内には子──猟兵の使命はその討伐。
「邪法での植え付けとはいえ趣味が悪い。早くに終わらすか」
 蔵館・傾籠(傾籠の花・f11800)が足を止める。
「敵が逃げ隠れるので有れば俺がユーベルコードで見つけよう」
「それは助かる。こっちは見つけたオブビリオンを転移させるよ。逃げる暇も与えないさ」
「……」
 二人のやり取りをプラシオライト・エターナルバド(かわらないもの・f15252)は淡々とした表情で立案されていく作戦を聞き、状況を把握する。
 居場所を探り、逃走の隙を与えず猟兵達側に引き寄せる。
「それでしたら、私があらかじめ『Trickster』にて罠を張ります。オブビリオンが逃走を図れば足に絡め、逃走を封じます」
 念動力でTrickster──透明なワイヤーをプラシオライトは張り巡らせた。
 かくして猟兵達による舞台は整った。

「……数多の手足に目に耳に、さあ拡がれよ」
 籠目籠目。蔵館のユーベルコードで地面から生えるように召喚された不定形の追跡者達は、山中の影に溶けながら追跡を始める。
「追って見つけ出せよ、見付けたらば決して母から目を離すな、姿を見失うなよ。」
(女、女……人間か。姿形は今は一緒だが、生憎俺は量産品なものでね)
 五感を共有させながら蔵館の脳裏を過ぎるのは、人と自分、その差異。
 この身の出来た時。人の胎から生まれもしなきゃ、器を焼いた手を覚えても居ない。物らしく主が傍に居た訳でもなく。
「人探しねえ……っ!」
 『視界』に映る髑髏彼岸。蔵館の発した声に数宮が反応する。
「居たのかい?」
「あそこの竹林をまっすぐ抜けて……200メートルくらいか、岩が多い場所。そこに潜んでいる。影に案内させよう」
「ナビ感謝するよ。じゃあアタシが捕まえてくる。あまり長引かせるつもりはないよ、一気に仕掛けにいく」
 ライダーブーツが森に足跡を残し、数宮の姿は風のように消える。

 残されたのは蔵館と数宮の後ろ姿を眺めていたプラシオライト。
「逃げるというのなら、俺の影は何処までも引き伸ばして絡め、そう、蜘蛛の糸の如くに足止めとなろうよ」
 探索、追跡、そして捕捉を重視し行動した蔵館が振り返る。
「その代わり戦闘になったら二人に任せてしまう形になるが大丈夫か?」
 プラシオライトはオッドアイの双眸を瞬かせ、淡々とした様子で答えた。
「猟兵としての仕事ですので」
 ざあざあと山中の木々が揺れ、葉の擦れ合う音が二人を包み込む。
「……二つの命を逃がし零せば、後に多くを失うと言うのならば選択は一つだ。万が一に何方も躊躇うならば己が請け負おう」
 蔵館の発した言葉を記憶、否記録しているかのようにプラシオライトは表情を変えず。
 数宮の走っていった方角を見つめていた。
「それもまた、猟兵としての在り方だと思います」
「……猟兵も因果な稼業、か」
 ヤドリガミの蔵館、猟兵の蔵館は『視界』に映る髑髏彼岸──愛おしそうに岩に背を預け、腹を撫でる人間を監視しながら心の中で呟く。
(優しげな言葉なんかを繕って、添えてやれなくてすまんなあ)
 ……生憎と人の其れを、俺は知らんのさ。

 森の中を駆け抜ける数宮。
 精神を集中させながらも、頭にちらつくのは髑髏彼岸の存在。
「……ぼうや、ぼうや、なまえば何がいいかしら?あら、動いたのね」
 岩影に身を隠した髑髏彼岸は笑っている。
 小さな声で、気が付かれないように数宮は呟いた。
「アンタがお腹の子供を守ろうとする気持ち、分からなくもないさ」
 足音を極力立てないように近づく。
(……だからってな、アタシ達はそれを見逃す訳にはいかないんだ)
 数宮は一気に踏み込み。髑髏彼岸の目の前に立つ。
 青ざめた顔で立ち上がり、身をひるがえそうとする彼女を前に。
「こういうのは気が進まないんだけどね、その縁、アタシらの手で断ち切らせてもらうよ」
「……えっ?」
 数宮の発動させた縁手繰る掌(アポート・アンド・テレポート)は、数宮と髑髏彼岸二人を瞬時のうちにテレポートする。
 猟兵達が待ち構えるその場所に。

「なに、なによ……!」
 髑髏彼岸を取り囲むは3人の猟兵、6つの眼。
 数宮のユーベルコードによる突然の移動により恐慌状態に陥りながらも立ち上がる。
「かみさまの子、まだまだ母と一緒……きゃあ!」
 髑髏彼岸がその場で痙攣するかのように、びくびくと身をよじらす。
「効いてきたみたいだね」
 数宮はユーベルコードの発動の際、サイキックの雷撃を放射状に展開していた。
 雷撃の舞台の上、振り返った髑髏彼岸の顔は険しく。
「邪魔を……しないで!」
 赤く燃える人魂へと姿を変え、放たれるは黒き呪いの炎。
 しかし既に弱っていた髑髏彼岸の攻撃を猟兵達は躱す。
「ああ、ああ……わたし、の、子!」
(その子がもしも、真っ当な子だったのなら。アタシらもまた違う道を探せたかもしれないのによ……)
 数宮は、自らがサイキックを幾度使っても、プラシオライトの罠で身を削られようとも逃げようとする髑髏彼岸の姿を、茶色の瞳で見つめた。

「お二人ともありがとうございました。攻撃を開始します」
 逃走を成功させないようプラシオライトは髑髏彼岸に向かい駆けだす。
 背を見せた髑髏彼岸にプラシオライトがユーベルコード:Crime and Punishment(ツミトバツ)を発動させた。
 数十の複製した魔鍵が敵を囲み、髑髏彼岸は慌てて逃げる方向を変える。
 しかし、それを遮るのは魔鍵から放たれる天罰を下す光。響く絶叫。
 与えられる痛みは過去他者に与えたそれと比例する。
「……子を守る為に他者をあやめる」
 痛みにのたうち回る髑髏彼岸にプラシオライトは淡々と語りかける。
 転送ゲート近くにあった血痕。死体。
「赦されるかどうか、どうぞ天に尋ねてみて下さい──貴女の過去の罪も含めて、裁きが下るでしょう」
「いや、いやよ、この子は神様の子なんです!……ああああ!」
 彼岸髑髏の最後の悪あがきのように、風がプラシオライトの淡いミントグリーンの髪を揺らす。同時に流れ込んでくる、悪意。
「いえ、攻撃ですか……すみません。悲しい記憶…とやらには、心当たりがないもので」
 ゆっくりとプラシオライトは近づく。
「ああ、今。貴女方を、母子をあやめなければならない。やるせない気持ちはございますね」
 天罰を下す光をより集中させながら、確実にオブビリオンを骸の海へと還そうと、プラシオライトは冷静に動く。
 ──様々な感情に疎い宝石人形は、淡々と仕事をこなすだけ。
「それが、私の役目なので」
 悲鳴は木々をいつまでもいつまでも続いていた。

 言葉に出さず、天に顔上げ祈るプラシオライト。表情は変わらない。
(その子は邪法によって生み出されてしまいました。願わくば、今度は……)

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ニレ・スコラスチカ
…確かに。その子には『まだ』、何の罪もありません。

ですが。異端の子は異端です。
罪を犯す前に殺します。最初からいなかったことにします。そうすれば、魂は無垢のまま。
…きっと神にも、受け入れられるでしょう。

伸縮自在の生体拷問器の眼と共有した【視力】で敵を【追跡】し続けます。

散弾銃には【呪殺弾】を装填。敵の武器を妖怪に変えるユーベルコードに対して【カウンター】で撃ち、聖縛骨釘も使用してしゃどくろを足止め。そのまま【激痛耐性】の続く限り本体へと【捨て身の一撃】……【罪滅】で、腹部を切り裂きます。

生まれる前に赤子を殺す。そんな人がいる世界には、きっと生まれてこないほうがいい。

何も良いことなんてありません。



●かみのこかみのこはやくおかえり
 猟兵達の襲撃、逃げなければと母は足を縺れさせながら山中を彷徨う。
 オブビリオンの母は笑い、そして悲しむ。
「きっとかわいい子なのに、何もしていない子なのに」

「……確かに。その子には『まだ』、何の罪もありません」
 山中に響く少女の声は、木々のざわめきの中でもやけにはっきりと聞こえ。
「ですが。異端の子は異端です。罪を犯す前に殺します。最初からいなかったことにします」
 腹をさする髑髏彼岸の手が震える。
「そうすれば、魂は無垢のまま……きっと神にも、受け入れられるでしょう」
 ニレ・スコラスチカ(旧教会の異端審問官・f02691)の緑色の瞳は異端を見つめ、厳粛に紡がれた言葉に髑髏彼岸は真冬の山に取り残されたかのように震える。

「だ、だめ……私が、産んで、あげ、ない、と!」
 山道を転がり落ちるように逃亡を始めた髑髏彼岸を見つめるのは伸縮自在の瞳。生体拷問器と繋がる失せた左眼ははっきりと異端の姿を捉えている。
 異端と異端の子、それを狩る者の追跡劇が始まった。

 ニレは後を追いながら重鍵の散弾銃に呪殺弾を装填する。異端を追う足は消して一瞬たりとも止めず。
 逃げられない──髑髏彼岸が判断し、ニレを振り返り見る。
 その双眸は黒く淀み、先程まで見せていた怯える母の顔ではなかった。
「それじゃあ、仕方ないわね。この子達と遊んであげて?」
 
 めき。めきめき。
 擦り切れ過去の海に漂っていたオブビリオンの、僅かな記憶を焦がしつくし産み出した死霊は妖怪がしゃどくろ。
 弔われることなく野ざらしにされた白骨達が身を寄せ、一つの巨大な怨霊と化したそれがあげるは咆哮。
『──ガァァァァァァアアアアア!!!!』
 ニレは躊躇することなく上下2連式の銃の引き金を引き、骨を白い破片へと還していく。
 聖縛骨釘、ニレ自らの肋骨から作られた聖釘を投げ込み、がしゃどくろを地に縛り付けた。
「殺して!私の子を殺そうとしているのよ!」
 がしゃどくろの至る所から突き出た骨がニレを襲うが、今やその痛みをニレは感じて”いなかった”。
 ただひらすらに足を進め、髑髏彼岸に守られている髑髏彼岸の元にニレは歩む。

「……っ!あなたの贖罪を、代行致しましょう」
「──え?」
 目の前に映るのは黒い流れ。それは腹から出る黒い水飛沫。
 鞭のようにしならせた生体拷問器の鋸の一撃。
 ユーベルコード:罪滅(エクスピエイション)はかくして発動し、がしゃどくろの崩壊と共に響くのは腹部を切り裂かれた髑髏彼岸の絶叫であった。

「生まれる前に赤子を殺す。そんな人がいる世界には、きっと生まれてこないほうがいい」
 がしゃどくろの破片が肌に触れる前に風に消えるのを感じながらニレが呟く。

「何も良いことなんてありません」

大成功 🔵​🔵​🔵​

ナターシャ・フォーサイス
【聖狐】
身籠った方を、と言うのは抵抗がありますが。
身に宿すもまた哀れな魂なら、私も使徒として責を果たしましょう。
産むなと言うのではありません。
幸福を約束された楽園で、と言っているのです。

都月さんは経験が浅いでしょうし、結界を張り手を貸しましょう。
経験が浅くとも、天使たちも助けてくれるでしょう。
今はまだ不慣れでしょうけど、徐々に慣れてくださいね。

貴女の甘言は受け入れますが…
私は楽園へ導く身、悲しい記憶はあまり。
もしそれが貴女のものならば、受け止め浄化し、救い導きましょう。
立ち去るのなら、天使が阻むでしょう。
憂うことなどないのです。
どうか楽園への道行きへ加わる貴女がたにも、ご加護のあらんことを。


木常野・都月
【聖狐】
先輩に同伴してもらえるとはいえ…猟兵になって初め戦う。しかも事は戦争だ。

相手は格上。数年前の普通の狐だと思ってた俺ならまず逃げるんだが…

俺は猟兵になってしまった。
そして今はナターシャさんが横にいる。
(流石に逃げる訳にはいかないよなぁ)

とりあえず、敵の攻撃はナターシャさんがなんとかしてくれると言っていた。

つまるところ、俺は全力でやるしかない。
初陣で元野生の俺には、相手を思いやる優しさも、力を出し惜しみする余裕も無い。

と言うわけで、ナターシャさんが敵を防いでくれている間に、ユーベルコード狐火で攻撃。
加えて余裕があれば、「全力魔法」で火の「属性攻撃」を追撃する。

速やかに倒す。



●聖なる山道、知るのは狐火
 鳥も虫も野ネズミ一匹もいない山中を、木常野・都月(妖狐の精霊術士・f21384)は歩く。
「ナターシャさん……先程からこの森、生き物がいないんです。まるで逃げ出したみたいに」
 木常野の呼びかけに振り向いたナターシャ・フォーサイス(楽園への導き手・f03983)は木常野にありがとう、と言って辺りを見回す。
「もしかしたらオブビリオンの出現、他の猟兵の皆との戦闘で逃げたかもしれませんね。近くにいるかもしれません」
「え……」
 木常野の頬を不意に撫でる風。思わず飛びのいてしまう。
(先輩に同伴してもらえるとはいえ……猟兵になって初めて戦う)
 しかも事は戦争。魔軍将・陰陽師『安倍晴明』が残したという厄災の種火を孕んだオブビリオンの討伐。
(相手は格上、数年前の”普通の狐だと思っていた”俺ならまず逃げるんだが……)
 数年前の自分が取ったかもしれないように、生き物がいない山中で木常野は考える。
 ──俺は猟兵になってしまった。そして今はナターシャさんが横にいる。
(流石に逃げる訳にはいかないよなぁ……ん?)
 風向きが不意に変わるのを即座に感知し、振り返る。木常野を見つめるのはナターシャの藍色の瞳。
「わっ!」
「緊張していますか?」
 オブビリオンがいる山中でもナターシャは冷静に辺りを見回し、そして木常野の様子に気が付き声をかけようとしていたようであった。
「あ、その」
「都月さんは経験が浅いでしょうし、結界を張り手を貸しましょう。戦闘はお任せください。なんとかしてみます」
「あ。ありがとうございます」
「大丈夫です。経験が浅くとも、天使たちも助けてくれるでしょう……今はまだ不慣れでしょうけど、徐々に慣れてくださいね」
 ナターシャの声にはい、と木常野が返す。
「木常野さんが先程仰っていた『生き物の気配がいない』というのはオブビリオンを探すための手がかりとしてはいいかもしれません……お願い、できないでしょうか?」
 
 山中独特の気配。
 木常野の野生の勘、そして第六感を働かせ、獣道を進んでいく。
(空気が張りつめている……木々の葉の揺れ方も、おかしい)
「……あ」
 ちいさな声で、木常野が呟く。
 目に入ってきたのは、着物を着た女性。山中には存在するはずのない、黒く広がる染み。
 よろよろと動くそれを前に──ナターシャは躍り出る。まるで木常野を庇うかのように。
 振り返る女、そこから発せられる禍々しき風のような呪詛を含んだ威圧感。
(これが、オブビリオン……!)
 オブビリオン、髑髏彼岸の体はすでに負傷し、しかしまだ逃げようとあがいていた。

「いや、どうして、私は神様の子を産みたいのに……それだけなのに……」
 ナターシャの瞳に映るオブビリオンは譫言のように子を産みたいと呟く。
「身籠った方を、と言うのは抵抗がありますが……身に宿すもまた哀れな魂なら、私も使徒として責を果たしましょう」
「なんで?神様の子、産みたいのに!」
 過去の海から蘇り、その身と心を更に世の理から外れたオブビリオンにより操られた存在。それを目の前にしたナターシャのとる行動は、ただ一つ。
「産むなと言うのではありません。幸福を約束された楽園で、と言っているのです」
「……楽園?」
「ええ。まだ見ぬ楽園、その一端。我らが同胞を導くため、闇と罪を祓い、救い誘いましょう」
 ナターシャの手は救いのため、楽園への道行きに引くための手。
 歌い上げるように言葉が紡がれると同時に、地面に結界が展開される。
 その中央に天使率いる機械仕掛けの大天使へと姿を変えたナターシャ。発動したユーベルコード:楽園の結界(サモン・サンクチュアリ)を目の当たりにした木常野は慌てて結界に入る。
「お……思い出して……」
 髑髏彼岸の攻撃、過去の記憶を元にしたそれを受けたナターシャは笑む。
「貴女の甘言は受け入れますが……私は楽園へ導く身、悲しい記憶はあまり」
「いや、いや……!」
「もしそれが貴女のものならば、受け止め浄化し、救い導きましょう。立ち去るのなら、天使が阻むでしょう」
 髑髏彼岸の悲しき記憶、それもまた救うために。
 機械仕掛けの大天使、ナターシャの言葉の通り逃げようとする髑髏彼岸を天使が阻害する。

(敵の攻撃はナターシャさんがなんとかしてくれると言っていたし、してくれている)
 つまるところ、俺は全力でやるしかない。目の前で繰り広げられている戦闘を木常野は目を開いて観察する。
(初陣で元野生の俺には……俺には)
「相手を思いやる優しさも、力を出し惜しみする余裕も無い……攻撃!出てこい!」
 ナターシャの展開した結界範囲内の味方を強化する結界の中、木常野は声を上げ、精神を集中させる。
 ユーベルコード:狐火(キツネビ)で生まれた数十の狐火の炎が、髑髏彼岸を焼き始める。
「あ、あああ!赤ちゃん!赤ちゃんが!……や、やめてええええ!」
 身を焦がされながらも、叫ぶのは自らが『孕んだ神の子』への心配。その様子を見守りながら、早く身を焼き切れるようにナターシャが罪祓う浄化の光で攻撃を重ねる。
(……早く、速やかに倒す)
 木常野は精神力を集中させ、狐火をより一層燃え上がらせる。火の力を全力で狐火に。

「──わたし、しんじゃうの?あかちゃんは……?」
「今灯っている火は幸福を約束された楽園への火、憂うことなどないのです」
「……そっかぁ」
 そう一言残し、髑髏彼岸の姿は灰となって消えた。

「お怪我はありませんか?」
 木常野を心配そうに見つめるナターシャに首をぶんぶんと振って大丈夫です、と答える木常野。
「オブビリオンは……幸せにいけたのでしょうか」
「ええ、穏やかな様子でした」
 木常野はふと、山に多くの気配が戻ってきたことを感じる。森が、山が元の姿に帰る。
 オブビリオンは討伐され、偽神降臨の邪法の一つは封じられた。
「どうか楽園への道行きへ加わる貴女がたにも、ご加護のあらんことを」
 任務を終え、帰還するその間。ナターシャは振り返り祈る。
 二つの魂の行方は──美しい火の向こうに。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年08月25日


挿絵イラスト