エンパイアウォー㉛~冬香のお・ね・が・い
●まさかこんなことになるなんて
緋薙・冬香(針入り水晶・f05538)はとても急いで猟兵たちを集めた。それはそれはかつてない速度で。
「皆、ありがとう!」
感極まった様子で冬香が叫ぶ。しかし、次の瞬間、トークダウンした。
「えっと、あのね? この前、私の予知で『鬼海星』、沈めてもらったじゃない?」
鬼海星、それは『大悪災『日野富子』』が造り上げた巨大鉄甲船のひとつ。先日の冬香の予知で、その船が幕府軍の脅威となることが判明した。そのため、冬香の依頼によって、猟兵たちが対応し、海底に沈めてもらったのは記憶に新しいところだ。
それがどうしたのかというと、だ。
「私はね、『この後、敵に再利用されると面倒だなー』とか思って、皆に沈めてもらったんだけどね?」
何故か髪の毛をいじいじしながら視線を逸らす冬香。
「あの後、幕府軍の中で『せっかくなんだから我々が再利用すればいいんじゃね?』的な意見が優勢になってね?」
この辺でお気付きの方がいるかもしれない。船を沈める必要は厳密にはなかったのだ。つまり、冬香の独断が入っていたということだね。
そんな独断で船を盛大に沈めた冬香、幕府軍が再利用の方針を打ち出してきたもんだから、内心めっちゃ焦ってるのである。
「その、なんというか、せっかく沈めてもらったのに、大変申し訳ないんだけど、サルベージしてくれないかなー? って……ダメ?」
珍しく上目遣いでお願いモードな冬香であった。
●聞いてくれる人には感謝を
そんなわけで冬香が状況説明を行う。
「詳細は別途まとめたこの報告書を読んで欲しいんだけど、簡単に言うと、鬼海星は轟沈してるわ」
火薬庫が爆発して、上から全力でユーベルコードを撃ち込んでいるのだから、さもありなん。
何度も言うが、冬香の指示によるものなので、実行した猟兵たちに罪は無い。全部グリモア猟兵が悪い。
「船体は真っ二つ確定。水圧なんかでさらに細かくなってる可能性すらあるわ」
さらには船内は爆発が起こっていたので、船倉などの中身はほぼ全滅と思っていいだろう。
「とはいえ、あの日野富子の巨万の私財を注ぎ込んで、建造した巨大鉄甲船」
船を構成していた部品や外壁にあたる鉄甲部分は頑丈で無事のはず。これらをサルベージして修理すれば、再度、船として利用できるだろう。
また、ここだけではなく、サルベージがたくさん成功すれば商戦や軍船、外洋船と用途によっても船を揃えることができるかもしれない。
実際の作業を行う海は、海水浴に行くような場所では無い。調査を始めとしてサルベージにはユーベルコードの力が必要不可欠だろう。また、ユーベルコードを効果的に使うアイディアがあれば、より捗るはずだ。
「とりあえず海底に潜ってみないと何がどう落ちてるかわからないんだけど」
推測するに、爆発によって部品単位まで飛び散っているはずだが、船首などは大きな塊で残っているかもしれない。大小様々あるであろう、船のパーツと思しきものなら手当たり次第引き上げてもらって大丈夫だ。次のことは引き上げた後に考える。
「そんなわけで、お願い。本当、お願いっ!」
両手を合わせて拝みこむように、冬香はお願いするのでした。
るちる
はじめまして、あるいはこんにちは、るちるです。
『ひゃっはー、徳川幕府軍をくすぐりの刑で鍛えるぜー!』とか思ってたら、看過できないシナリオフレームが降ってまいりました。これだからPBWの神様(運営様ではなく、もっと超常的な何か)は油断ならないぜ!
そんなわけで、今回の目的である鉄甲船、鬼海星を沈めたリプレイはこちらになります。
『エンパイアウォー⑩~超巨大鉄甲船団を強襲せよ! https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=12993』
ご覧いただくと分かりますが、船沈めた部分は完全アドリブでして、真面目にMSの責任部分でございます。皆に責任はない。真剣にオープニング内の冬香状態になってるるちるです。
お願いです、鬼海星をサルベージしてください。お礼に冬香が何でも……は出来ないけど、ハグくらいなら喜んで!
シナリオの補足です。
皆さんそれぞれ得意な分野が違うと思いますので、得手で攻めてもらって大丈夫です。
例えば、調査を専門に行う、海中から引き上げる作業を集中的に行う、運搬を一手に引き受ける、など。連携はるちるの方でやります。ご安心ください。
人手のいる作業です。ソロ参加はもちろん、団体様の参加も大切ですし、手数や頭数を増やすユーベルコードも活躍するでしょう。皆さんの作戦、アイディアが勝負の決め手ですよ。
それでは皆さんのプレイングお待ちしていますー。
ところで、ここまで全力で鉄甲船破壊したMSは私だけじゃないよね?
第1章 冒険
『巨大鉄甲船引き上げ作戦』
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POW : 重量のある船体部分などを中心に、力任せで引き上げる
SPD : 海底を探索し、飛び散った価値のある破片などを探し出して引き上げる
WIZ : 海底の状況や海流なども計算し、最適な引き上げ計画を立てて実行する
👑11
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
シリン・カービン
冬香もあんな顔をするのですね、
と思いつつ現場へ急行。
私は海域の調査を行います。
【ピクシー・シューター】を発動。
複製した精霊猟銃の一挺に跨って空へ上がり、
超視力で高空から海面に目を凝らします。
(獲物を探す猟師の目)
水の精霊の動きを注視し、海流を把握。
残骸の流れ着きそうな海域を絞ります。
場所が絞れたら船の残骸と思しきものを探します。
目星をつけた場所には複製猟銃を
ブイ代わりに立てて浮かせておき、
ある程度数を見つけたら、風の精霊に頼んで
私の声を近くの仲間に伝えてもらいます。
「今度は、皆の役に立てるといいですね」
未来へと船の命を繋げるものならば、
もうひと頑張りと行きましょう。
アドリブ・連携可。
鈴木・志乃
※人格名『昨夜』で参加
流石に80戦場も参加しては志乃の体も壊れてしまうと思い
少し休みに、と考えたのですがそうは言っていられないようですね……?
(船の惨状を見ながら)
さて、運ぶと致しましょう
UC発動
第六感で使えそうなパーツを見切り、必要に応じて光の鎖を使いロープワークで縛り上げつつ念動力で運びます
こんな力業しか出来ませんが、それでもお役に立てるのならば
こちらは重要な部分が破壊されてますね
このパーツだけ取り替えれば使えそうです
あの装飾、融かせば良い材料になるのでは……?
しかし幕府も余裕ですね
船を引き上げる時間があるのだから
……猟兵の体力が切れていないと良いのですが
おにぎりでも振る舞いましょうか
●サーチャー・シリン
(冬香もあんな顔をするのですね)
シリン・カービン(緑の狩り人・f04146)は、出発前に見たグリモア猟兵の様子を思い浮かべる。普段からクールな彼女、その表情からは読み取れないが、少し驚いたのだろうか。
そんなシリンが臨むのは、鉄甲船『鬼海星』が沈んだ瀬戸内海。だいたいの位置は既にグリモア猟兵から聞いている。
ならば。
「……羽根妖精よ、私に続け」
ユーベルコード『ピクシー・シューター』で手にしていた精霊猟銃を複製する。ふわりとシリンの周囲に浮かぶ精霊猟銃の一挺に跨って、念力で空へ上がるシリン。
(さて……)
高空から海を見下ろす。その超視力で海面をくまなく探すシリンのその目は、獲物を探す猟師の目であった。
おそらくは海底に沈んでいる鬼海星の部品。しかし、海面に痕跡が残っていないわけではない。例えば、爆発した時に吹き飛んだ樽であったり、そこから漏れ出た油であったり。
(……見つけた!)
その痕跡を発見したシリンは海面近くまで降下する。手を差し出し、次に行うのは、精霊術士としての力の行使。水の精霊に働きかけ、流れを見て。海流を把握し、その動きを頭の中でシミュレートする。
「……こっちですね」
そして導き出すは、残骸が流れ着きそうな海域。その方角へ再び精霊猟銃を駆る。
海域を絞り込んでの捜索。
しかし、海上から上を領域とする今のシリンでは、海底まで完全に見通すのはなかなか厳しい。浮いている部品もあるため、目星をつけるには困らないのだが。
「こうしましょうか」
そこで目星をつけた場所に、複製猟銃をブイ代わりに立てて浮かべていくシリン。
その数が揃ったところで、風の精霊を呼び出す。その役割はメッセンジャー。陸で待っているであろう、仲間にシリンの声を伝えるため。
風の精霊を送りだし、シリンは海に浮かんでいた残骸をひとつ拾い上げて。
「今度は、皆の役に立てるといいですね」
声をかける。『未来へと、船の命を繋げるものならば』と。
(もうひと頑張りと行きましょう)
精霊猟銃を操って、シリンは再び空へと上がった。
●シノハサクヤトナリテ
シリンの風の精霊が運んできた、彼女の声。それを受け取ったのは、鈴木・志乃(ブラック・f12101)であった。
「さて、運ぶと致しましょう」
いや。その言動は普段の志乃とは少し異なるようだ。曰く、志乃の意識が途切れた時に現れる『昨夜』と名乗った彼女は、志乃の身でありながら彼女とは『違う者』らしい。
されど、悪意のある存在ではなく。
グリモアベースにて、グリモア猟兵の招集に集った志乃であったが、度重なる連戦、連続任務に参加して疲労困憊であった。意識が途切れる志乃。志乃の体に宿る昨夜も、このままでは志乃が壊れると考えて。
「少し休みに、と考えたのですが……そうは言っていられないようですね……?」
志乃の代わりに、この任務を遂行するため、この場を訪れたのであった。
メッセージを受け取った昨夜はユーベルコード『Ms.Yesterday』を発動する。自身の翼で浮かび上がり、風の精霊から聞いた場所まで移動。
『光の鎖』をロープ代わりにして、海底に伸ばす。光の鎖から感じる手応え、そして第六感。集中した彼女の全てが、海底に沈む鬼海星のパーツを認識していく。
(こんな力業しか出来ませんが、それでもお役に立てるのならば)
光の鎖でパーツを素早く縛りあげ、念動力で補助しながら海上まで引き上げる。そして幕府が用意した運搬用の船の上にパーツを引き上げていくのであった。
引き上げた部品にふと昨夜の目が引かれた。かなり大きいが、どうやら重要な部位のようだ。
「このパーツだけ取り替えれば使えそうです」
と言葉を添えて、船に乗せ。
「あの装飾、融かせば良い材料になるのでは……?
再利用のアドバイスもしっかり。
そうやって引き揚げを行っていく昨夜であったが、ふと視線を遠くへ遣る。
「しかし幕府も余裕ですね。船を引き上げる時間があるのだから」
その方向は、今頃、決戦となっているであろう島原の方角。昨夜の見解が当たっているかどうかは、この戦争の結果が示すのみだろう。
今は、猟兵として戦争を戦い抜くことが求められているのだから。志乃が怒りを感じていようとも。
意識を遠くから近く、仲間へ戻す昨夜。
「……猟兵の体力が切れていないと良いのですが」
志乃に限らず、連戦、連続任務という者は多いはず。そろそろ疲労が見えて来てもおかしく無い頃だ。
「おにぎりでも振る舞いましょうか」
今、ここにいる猟兵にも、これから来るであろう猟兵にも。
まだまだ、先は長いのだから。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
文月・統哉
にゃはは、これまた豪快に壊したもんだね
冬香がどうしてもって言うなら仕方ない
ちょっくら俺も手伝うかな、勿論貸しで♪…なんてのは冗談冗談
何度も予知してくれて、ありがとな
先ずは仲間と情報共有
なるほど、この辺に沈んでそう?
ならばガジェットショータイム!
潜水艦型のガジェットを召喚
にゃふふ、海中探査なら任せとけ
お魚発見、美味しそう♪…じゃなかったゴメンコメン
ソナーで海底地形を情報収集
海流の様子も見ながら
金属探知機能で海底探査
なんだか宝探しみたいで楽しいぞ
船の残骸を見つけたら
仲間にも情報を送りつつ
掴んで引っ張り上げていくな
他にも面白い物あればついでに引き上げてみよう
冬香達のお土産にでも
※連携・アドリブ大歓迎
彩波・いちご
冬香さんのお願いなら仕方ないですね
ハグは喜んでいただきます♪…なんて(笑)
というわけでサルベージですね
海の中でも自在に動けて、しっかりと重いものを保持することもできて、そして海上に引き上げるほどの力のあるモノ
ええ、触手です
【異界の抱擁】の触手を大量に呼び出し、海中に伸ばして探査
沈没船を発見したら、それをこれ以上壊さぬようそっと、しかし安定して引き上げられるようにしっかりと絡みつかせて、そのまま海上まで持ち上げましょう
全体を広くコントロールするので、細かな制御までは難しいかもですが、そこは他の皆さんにフォローをお願いして、大きな部分を支えて持ち上げますよ
化野・那由他
ああ……何だか緋薙さんの気苦労も分かると言うか……私も出来る限りお手伝いしましょう。
まず【付喪神奇譚】で召喚した一反木綿に乗り、現場へ。
それから【妖奇譚『蛟』】で巨大な蛟を召喚。大顎で船の残骸を運ばせたり、水流を操らせて海底の残骸を一挙に浜へと運ばせます。また、水の操作で部品を海底から吹き上げさせ、幕府の船に回収して貰いましょう。
波等で被害を出さぬよう慎重に。漏れ出た油も浜に打ち上げさせぬよう。
[空中浮遊]の技能を駆使して一反木綿を操りつつ、[失せ物探し]しながら上空で蛟の監督をします。
……やってみて分かったのだけど、海の上での作業って案外難しいものね。
※アドリブ大歓迎です。台詞等ご自由に!
鳶沢・成美
轟沈というか、爆沈というか派手に沈んだみたいですね
下手するとバラバラになっているかもしれない……
それなら”全力魔法”の”範囲攻撃”で【人形行進】を使って
巨大鉄甲船のパーツに自力で陸に上がってもらいましょうか
少なくとも海面あたりまで泳いであがってもらえれば、回収もだいぶ楽になるでしょう
”失せ物探し”の要領で”第六感”を働かせてパーツが多くありそうな海域を調べ
海に潜ってユーベルコード使用
海中での作業になりますが一応”水泳”も”暗視”も出来るしどうにかなる……といいなあ
アドリブ・絡み・可 ””内技能
郁芽・瑞莉
船を利用するつもりがあるのなら、
鉄甲船を攻略する時に言って貰えれば面倒も無かった気がしますが……。
そうでは無かったという事は敵の再利用も考慮していた結果。
冬香さんの判断も間違っていなかったと思いますよ。
などと皆さんと話しつつ慰めながら。
本題のサルベージでは私は回収を担当しましょう。
場所が特定したなら水着姿で空中浮遊で海上に立って。
ポーチから水色の合一霊符で転移の力を宿した水弾を生み出して。
スナイパーのノウハウを生かして白の符で光弾を最初に放ち、
目標を最終確認後。
誘導弾として水弾を放って海上の味方の元へと転送していきますよ。
回収後は船体に手を添えて。
修理されて、再び海原を行けるといいですね……。
ヘスティア・イクテュス
今回の戦争はあれね…
あまり活躍できなかったことだしこういう所で働かせてもらおうかしら?
アベルでデータを解析、ソナーの反応から大雑把な場所を把握して
そこまでティターニアで飛んで移動ね
数人のプチへスが合わさったビッグへスに重いデブリ掃除用射出型投網を持たせて投射
まさかこういう風に役立つとは思わなかったわね…
大きな残骸はこれを使って引き上げさせてもらうわ
細かいものは残ったプチヘス達に潜らせて回収ね
高そうな物の回収頼むわよ
アドリブ・連携OK
政木・葛葉
富子、お金で軍備を整えたっていうからオブリビオンっぽくないなって思ってたけど……船は今のものだったから消えなかったんだね。
微力だけど、頑張りまーす!
【天翔・荼枳尼天】で白狐さんを喚んで狐火焚いて飛び回るよ。
鎖鉤を上空から降ろして【釣り】で部品を引き上げる。
流石にあんまり無理はできないけど、小さい部品ならなんとか。
大きい部品は近くに誰かいたら協力して引き上げたいね。
最終手段……【水泳】で白狐さんもろとも水に潜って部品の下で狐火を爆発。空気を作って浮力を生み出すよ!
そのまま曳航の予定だけど、鎖がヤバそうだったら後ろに回り込んで押す形にしよう。
白狐さんかなりスピード出るから回数で稼いでいこうね!
●出立前のグリモアベースにて
グリモア猟兵の冬香から話を聞き終えた一同。
「にゃはは、これまた豪快に壊したもんだね」
と笑うのは、文月・統哉(着ぐるみ探偵見習い・f08510)であった。気心の知れた仲ゆえ、その言葉は単純に事実を述べるのみ。……冬香が胸を押さえて蹲っているのはご愛敬ということで。
「ああ……何だか緋薙さんの気苦労も分かると言うか……」
そんな冬香の様子が心臓に悪かったのか、うっかり魂が口から出そうになる化野・那由他(書物のヤドリガミ・f01201)。しかし、ここで気絶するわけにはいかない。
(私も出来る限りお手伝いしましょう)
と魂を呼び戻す。
「船を利用するつもりがあるのなら、鉄甲船を攻略する時に言って貰えれば面倒も無かった気がしますが……」
そう告げたのは郁芽・瑞莉(陽炎の戦巫女・f00305)。その言葉は正論でもあり、冬香に対する慰めも入っていたり。
「そうでは無かったという事は敵の再利用も考慮していた結果。冬香さんの判断も間違っていなかったと思いますよ」
と言ってもらえて、冬香もなんとか立ち上がることができたのです。瑞莉、ナイスフォロー。
そんなわけで出立である。
「冬香さんのお願いなら仕方ないですね。ハグは喜んでいただきます♪」
なんてね、と彩波・いちご(ないしょの土地神様・f00301)笑えば。
「冬香がどうしてもって言うなら仕方ない。ちょっくら俺も手伝うかな、勿論貸しで♪」
とか統哉が言うもんだから、冬香がすごい勢いで振り向く。
「……なんてのは冗談冗談」
またもや人のいい笑顔で切り返してくる統哉。
「何度も予知してくれて、ありがとな」
とさりげなく礼を添えて。
4人に、鳶沢・成美(探索者の陰陽師・f03142)、ヘスティア・イクテュス(SkyFish団船長・f04572)、政木・葛葉(ひとひら溢れし伝説の紙片・f21008)の3人を加えて、猟兵たちはサムライエンパイアへ向かう。
●瀬戸内海を臨んで
冬香によって転送された先。それは鉄甲船『鬼海星』が沈んだ瀬戸内海を臨む岬であった。
「轟沈というか、爆沈というか派手に沈んだみたいですね」
グリモアベースで読んだ報告書を思い出し、成美が呟く。
「富子、お金で軍備を整えたっていうから、オブリビオンっぽくないなって思ってたけど……」
そういうのは葛葉だ。確かに実力行使に出やすいオブリビオンの中、搦め手を多用してきた富子は異端といえるのかもしれない。だが、その異端の手段ゆえに、葛葉の推察通り、鉄甲船は今も消えていない。
「微力だけど、頑張りまーす!」
宣言する葛葉を見て、ヘスティアが視線を海へ遣る。
「今回の戦争はあれね……あまり活躍できなかったことだしこういう所で働かせてもらおうかしら?」
戦闘だけが戦争ではない。このサルベージが未来につながる可能性もあるのだから。
●探索
先に到着して活動していた猟兵たちからの情報によると、どうやら爆発の衝撃と海流の関係が運悪くかみ合ってしまい、広範囲にパーツが散逸しているようである。
しかし、この人数なら対応できるはず。これを効果的に活用するなら、必要なのはさらなる情報だ。
「行ってくるわ」
『ティターニア』のブースターをONにして、ヘスティアが空へ浮かび上がる。
「こっちも行くぜ! 『ガジェットショータイム』!」
ヘスティアの言葉を受けて、統哉がユーベルコード『ガジェットショータイム』で呼び出したのは潜水艦(一人乗り用)……何故かデフォルメされた黒猫型なのは趣味ですきっと。
上空からヘスティアが大雑把に解析し、そのデータも活用しながら統哉が直接海底で探査する。この2つのデータを基に、サルベージをすれば。効率的な活動ができるはずだ。
ヘスティアが鬼海星が沈んだ辺りの上空に辿り着き、『サポートAI端末 ティンク・アベル』を起動させる。聞こえてくるのは聞き慣れたアベルの声。
「アベル、この辺りの海底のデータを解析。それからこれから言うところに送って」
あなたならできるでしょう、とヘスティアが問いかければ。
「かしこまりました、お嬢様」
アベルが応える。
一方、潜水艦に乗り込んで海底を進む統哉。なお、黒猫の目がライトです。
「お魚発見、美味しそう♪ ……じゃなかった、ゴメンコメン」
美味しそうなお魚の群れを発見したところで、ヘスティアから周辺の解析データが送られてきた。ナイスタイミングである。
そんなわけで、手元のコンソールを操作しながら、一番『当たり』が多そうな海底へ向かう。
「にゃふふ、海中探査なら任せとけ」
この潜水艦はこの場で『有効』と判断されたガジェット、探査系統の装備もばっちりだ。そんなわけで、ソナーで海底地形を、船体に届く振動で海流を調べ。そして、にょきっと飛び出るアームには金属探知機!
「なんだか宝探しみたいで楽しいぞ♪」
弾む口調とは裏腹に、仕事はきっちり正確にポイントを押さえていく統哉。
集めた情報を解析データにマッピングして、さらにデータの精度を上げる。
「あ、来ましたよ」
岬で待ついちごたちの前で、みょんみょんと反応を示すモニター。統哉が呼び出した潜水艦からのデータ受信器である。というわけで、統哉から探査データが届いていた。
まだ統哉の海底探査は続いている。しかし、探査の終わった海域からサルベージをしていくことは探査の邪魔にはならないだろう。
「私も合流するわ」
と空から戻ってきたヘスティアを交えて。
各々が幕府軍から借りた船を使って、サルベージに赴く。
●沈没地点
最初に探査が終わった地点である、鬼海星の沈没地点。ここの担当はいちごとヘスティア。
「軽く解析を走らせただけでも、大きなパーツがたくさんあったわ」
というヘスティアの言葉を受けて、いちごが思考を巡らせる。
(海の中でも自在に動けて、しっかりと重いものを保持することもできて、そして海上に引き上げるほどの力のあるモノ……)
それは思索でもあり、自問自答でもある。既にその存在の答えをいちごは『持っている』。
「ふんぐるいふんぐるい……、星海の館にて微睡む我が眷属よ!」
これが解。ユーベルコード『異界の抱擁』によって、いちごの影から姿を顕した大量の触手たち。触手たちはそのまま海へ潜り込んでいく。
一方、ヘスティアが召喚したのは。
「使っててすごい複雑なんだけど……」
ユーベルコード『プチヘス部隊』。ヘスティアを模した二頭身ロボがたくさん呼び出された。その一部が合体して、お腹の数字が増えていく。お腹の数字が10になったビッグヘスである。それが3体、ヘスティアの前で浮かんでいる。
「まさかこういう風に役立つとは思わなかったわね……」
そのビッグヘスたちに渡すのは、重い『デブリ掃除用射出型投網』である。これで大きな残骸を地引網の要領で引き上げる作戦だ。
そして残ったプチヘスは、ビッグヘスのサポートへ。
「高そうな物の回収頼むわよ」
と海底へ送り出す。
(確か、この辺りに)
いちごの頭の中には探査データはあるが、海域を直接見ているわけではない。そのため、海底を触診するかのごとく、触手たちを制御して、船のパーツを探り当てる。
見つけたならば、次はこれ以上壊さないようにそっと、しかし安定して引き上げられるように、触手をしっかりと絡みつかせていく。
「いきますよ……!」
いちごが小さく息を吐いて、触手たちを一斉に引き上げる。大量の触手を手広く使っている関係で、細かい制御が難しい状態だが、この辺りに沈んでいる大きなパーツなら、そこまでの制御はいらない。
程無くして、まず最初のパーツが船まで引き上げられた。
そしていちごの触手たちがこの海域で巨大なパーツをひとつずつ確実に引き上げていくのに対し。
ビックヘスたちはある程度まとめて引き上げられるパーツたちを狙う。
海底に潜ったビッグヘス3人がデブリ掃除用射出型投網の発射機を肩に担いで、どーんと放つ。ばしゅっと広がった投網がパーツに覆いかぶさったところで、ビッグヘスたちが泳いで接近。
「……」
黙々と投網からパーツがこぼれ出ないように角度を調整して、3人が一気に海上に向かって飛ぶ。一度、がくんとパーツの重さにバーニア出力が負けてしまうが、徐々に出力を上げて、ゆっくりと投網を引き上げていく。
「いいわね、いい感じよ!」
海上まで飛び上がったビッグヘスたちの釣果、じゃない、サルベージ具合を見て、ヘスティアは楽しそうに笑った。
ちなみにプチヘスたちは個々でわらわらっと細かなパーツを拾い集めています。
●海流に流されて
沈没地点からそう遠くないものの、ひとつの船では対応できない距離。
「私は回収を担当しましょう」
と皆に宣言して、瑞莉はここを引き受けた。
ひとりでどうにかなる大きさながら、その大きさゆえに海底に広く散っているこの場所。
万が一、波を被っても支障が無いように瑞莉は水着姿。その見た目は必要最低限の場所だけ覆った鎧のようなデザインにポーチという、蠱惑的な姿。
「この状況に対応したのはこの色の符ですね」
海面にふわりと空中に浮遊して。瑞莉がポーチから取り出すのは水色、そして白の符。ユーベルコード『合一霊符「送」』。その下準備となる符に魔力を込める。
まずは水色の符から転移の力を宿した水弾を、そして白の符から光弾を生み出し。
先に見た探査データを基に、スナイプする要領で光弾を発射。炸裂する光で対象を最終確認後。
「……見えました、そこです」
水弾を誘導弾の要領で射出して、目標にヒットさせる。瞬間、パーツが転移する。『合一霊符「送」』は瑞莉がグリモアを解析して編み出した転移の術。符の力を込めた弾が当たった対象を味方の元へ送り届けるこの力は、今回のケースで大いに力を振るうといえよう。
「まだまだあるようですね」
探査データでも、先に確認した光弾でも。まだ海底にはパーツが転がっているようだ。瑞莉は次の符を取り出して、再び水弾を作り出す。
●海底(みなぞこ)に沈む
沈没地点からさらに遠く。海に揺蕩うわけでもなく沈み切っているものの、人が、あるいは人の代わりになるものが直接拾い集めるには数多くパーツがある海域。ここを担当した成美は、小船から海に飛び込んでいた。
元々、『下手するとバラバラになっているかもしれない』との懸念を抱いていた成美は、第六感を頼りに失せ物探しの要領でパーツの場所の当たりをつけるつもりだったが、その部分は探査データが肩代わりしてくれた。
ならば、あとは回収するのみ。
「さあ、カーニバルの始まり始まり」
ユーベルコード『人形行進』を発動する成美。全力の範囲で発動させた『人形行進』の力が付近のパーツに対して作用していく。
(バラバラになっているなら、自力で陸に上がってもらいましょうか)
拾うのも苦労する小さなパーツであればあるほど、成美の策は効果を発揮する。
(少なくとも海面あたりまで泳いであがってもらえれば)
海面まであがってくれば、空から周囲をチェックしている那由他か、この辺り一帯を巡回してくれているプチヘスたちが回収してくれるはずだ。
その思惑に従うように、木製の人形たちに変じたパーツが、一斉に海面に向かって泳ぎ出した。
ユーベルコードの効果に漏れは無いと信じながらも、一応、暗視も出来る目で泳いで周辺を確認する成美。どうやら、範囲内のパーツたちは皆、泳ぎ出しているようだ。
●海に揺蕩う
海底にまとまって沈んでいるパーツたちは、成美たちのように範囲に対して制御できるユーベルコードが効果を発揮していた。
なら、いまだなお海の中を揺蕩っているパーツはどうするか。
解析データや探査データにはひっかかったものの、特定の場所に居付いていないパーツたちを追いかけたのは那由他と葛葉である。
ユーベルコード『付喪神奇譚』で呼び出した一反木綿に乗る那由他と、ユーベルコード『天翔・荼枳尼天』で呼び出した白狐さんにまたがる葛葉。
「あれだね」
「はい、思ったより広いよう、ですね」
小さく、細かく。金属片とて軽くなれば海に浮く。それらのパーツ群を見つけたものの、やはり波に揺蕩っているせいか、拾い上げるには細かな制御と手数が必要になりそうだ。
「こっちはあたしが」
そういって葛葉が取り出すのは『鎖鉤』。これでパーツを釣り上げようという作戦だ。
「流石にあんまり無理はできないけど……小さい部品ならなんとか」
振り回して勢いをつけて。ひゅん、と風を切って鎖鉤が飛ぶ。海面に鉤がついたなら、その先でパーツを引っ掛け。そのまま曳航する形でパーツを運ぶ。
「白狐さん、回数で稼いでいこうね!」
回収拠点としての船は近くに待機させてある。そこまで白狐さんのスピードで手数を稼ぐ作戦。ついでに周りを待っている狐火を操作して鎖を動かして。道中にあるパーツを上手くひっかけていく。もちろん、動けなくなるほどの重さにはできないけど。
パーツを一度、船に預けて、葛葉は反転する。
「じゃんじゃんいくよ!」
まだまだパーツはたくさんある。
一方、那由他は。
「此度は水神(ミズチ)の御話を」
ユーベルコード『妖奇譚『蛟』』で巨大な蛟を呼び出していた。海面に揺蕩っているならまだしも、海中を流れているパーツはなかなか手が出しにくい。そこで那由他が取った手段は。
「こうしましょう」
蛟に海流を操らせて渦を作り出す那由他。その流れに引き寄せられて、海面と海中、そして海底のパーツが渦の中に集まってくる。そのまま、船の方へ蛟ごと渦を移動させて、パーツを運ぶ那由他。
(波や漏れ出た油で被害が出ないようにしないと)
二次災害が起こればそれはそれで問題なので。浜まで、波が、油が届かないように細心の注意を払いながら、一反木綿の上で蛟を監督する那由他。
船の近くまで辿り着けば、渦を解いて、下から湧き起こる波に変換。パーツを浮遊させて、船に回収させる那由多。ちなみに、渦から零れ落ちたパーツは、葛葉が素早く回収しているので、ナイス連係プレイ。
こうしてパーツは徐々に、そして確実に回収されていくのであった。
●そして目の前にあるのは
猟兵たちの活躍で、海底およびこの海域に残っていた鬼海星のパーツはすべて回収できた。もちろん、元の鬼海星の全てのパーツが集まったわけではないが、おそらく船1隻を再建するには十分な量であろう。
お疲れ様の猟兵たちは浜辺で座り込んで、その前には、おにぎりとお茶があって。ひと仕事終えた後の休憩タイム。
「……やってみて分かったのだけど、海の上での作業って案外難しいものね」
波に揺れる、そして空からの作業。陸に立っているのとは勝手も違い、那由他はほうと息を吐きながらそう告げて。
「どうにかなってよかった」
成美も安堵のため息をつく。自分一人で暗い海の中を探査して引き上げて、とかなら、こうも容易くは作業が終わらなかっただろう。
「何がどこでどう役に立つかわからないものね」
そう言うのはヘスティア。デブリ掃除用射出型投網もそうだが、プチヘスの小回りの利く浮遊&巡回は、人手の足りない箇所ですごくサポートしていたのだ。
「白狐さんもおつかれさま!」
隣に座り込む白狐さんを撫でながら葛葉が労いの言葉をかけて。
「にゃふふ、こんなのも拾ってきてみた!」
統哉が皆に見せるのは、潜水艦で一生懸命拾っていた船のパーツではなく、面白そうだと思って勝手に引き上げてきたもの。
「え、何、そのお宝が入ってそうな箱!」
速攻で反応したのはヘスティア。統哉が拾ってきたのはどうやら大昔に沈んだ船に積まれていた荷のようだ。それを見つけてついでに回収していたのだが、きっちり密閉してあるからにはきっと……?
「これは……お漬物!」
「なんで!?」
「美味しいですよね、お漬物」
葛葉の言葉に、いちごがツッコみ、ほんわかした感想を述べる那由他。
そんな中、瑞莉はそっと、回収された船体に手を添えて。呟く。
「修理されて、再び海原を行けるといいですね……」
こうして、猟兵たちの鬼海星サルベージ作業は無事完了したのであった。
大成功
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