エンパイアウォー㉑~渡海のケルサス
「信長に仕える『第六天魔軍将』達の所在が次々に明らかになっているが、今回、大帝剣『弥助アレキサンダー』と隠し将『豊臣秀吉』の所在を掴み、決戦を挑む事が叶った」
全てはエンパイアの各地を巡ってオブリビオンを討伐し続けた君達のお陰だ、と枢囹院・帷(麗し白薔薇・f00445)が猟兵の獅子奮迅の活躍を讃える。
端整な花唇を僅かに持ち上げた彼女は、凛々しい声で言を継いで、
「決戦の場は『関門海峡』。海峡が狭く潮流も速い海上で、弥助は『大帝の剣』、『逆賊の十字架』、『闘神の独鈷杵』という三つの『メガリス』と称される渡来人の至宝を用いて果敢に戦う」
メガリスの効果は様々だ。
その一つ『大帝の剣』は大軍勢を操る能力を持ち、関門海峡に陣取った毛利水軍に対して「猟兵を敵だ」と洗脳し、剥き出しの敵意で襲い掛からせる。
「彼等は一般人だが屈強な武士……戦闘は避けられないが、殺さずに済む方法があるなら、是非に工夫して彼等を攻略して欲しい」
骸の海より来た者達でないなら、そこに送る事もなかろう、とやや瞼を伏せる帷。
彼女が長い睫毛を持ち上げれば、凛然たる緋眼が猟兵を見つめ、
「毛利水軍を退けたら、次に隠し将『豊臣秀吉』が立ち塞がる」
フェンフェンとしか喋らない秀吉は、メガリス『逆賊の十字架』によってスピードと反応速度が強化されている。
義と忠に厚い、武将の鑑たる彼は、弥助の盾としてあらゆる攻撃から彼を守るので、彼を倒さない限り、弥助を攻撃する事は叶わない。
「その秀吉を倒せば、やっと弥助に手が届くのだが、奴はメガリス『闘神の独鈷杵』の力によって関門海峡に大渦を喚び、大渦を中心に浮遊しながら戦う」
また弥助は、力を高めた三つのメガリスを武器に全力で戦いを挑みに来る。
これらに対する戦術を練らなければ、猟兵はメガリスの力によって天変地異の如き雷の大渦に吹き飛ばされて大敗するに違いない。
嘗てない厳しい戦いになりそうだとは、帷の表情でも伺えよう。
ごくり、緊張を嚥下した猟兵は、更に続く言を確と聞いて、
「今回は全て海上での戦いになる。飛行や水泳、自分で持ち込んだ乗り物、毛利水軍の軍船やその破片を利用するなど、海上戦での工夫が必要になるな」
海上戦での移動、一般人の無力化、敵の先制攻撃に対する対策等、それぞれに配慮が必要だと瞳を鋭くしていく。
その凛然と見た帷は、ぱちんと弾指してグリモアを召喚し、
「サムライエンパイアにテレポートする。戦いは困難を極めるが、勝利を手にした君達を迎える用意をしておこう」
と、雄渾漲る猟兵らを、光の波濤に包んだ。
夕狩こあら
オープニングをご覧下さりありがとうございます。
はじめまして、または、こんにちは。
夕狩(ユーカリ)こあらと申します。
このシナリオは、『エンパイア・ウォー』における第二十一の戦場、大帝剣『弥助アレキサンダー』を攻略する、三章構成の戦争シナリオ(難易度:難しい)です。
第一章(冒険)
猟兵は『関門海峡』の海上で『毛利水軍』と戦います。
毛利水軍は一般人ですが、大軍勢を操るメガリス『大帝の剣』の能力によって「猟兵は敵だ」と洗脳されており、敵意を剥き出しにしています。
毛利水軍は猟兵に比べれば弱いですが、屈強な武士達です。
皆殺しにすれば、江戸幕府の未来に禍根を残すかもしれません。
殺さずに無力化するユーベルコードを使う等の工夫があれば良いでしょう。
第二章(ボス戦)
隠し将『豊臣秀吉』との戦いです。
秀吉は、対象を異形強化するメガリス『逆賊の十字架』の能力によって、スピードと反応速度を強化されています。関門海峡の海上をゴムマリのように飛び跳ねながら、あらゆる角度からの弥助への攻撃を超高速で受け止めます。秀吉を倒さない限り、弥助は攻撃できません。
第三章(ボス戦)
大帝剣『弥助アレキサンダー』との戦いです。
弥助は、メガリス『闘神の独鈷杵』の力によって発生した『関門海峡の大渦』の中心に浮遊しながら(高くは飛びません)、3つのメガリスの力を高め、これらを武器に果敢に戦います。
この大渦を戦闘に利用できれば有利になるかもしれません。
大帝剣『弥助アレキサンダー』及び隠し将『豊臣秀吉』は、先制攻撃を行います。
これは、『猟兵が使うユーベルコードと同じ能力(POW・SPD・WIZ)のユーベルコード』による攻撃となります。
彼を攻撃する為には、この先制攻撃を『どうやって防いで、反撃に繋げるか』の作戦や行動が重要となります。
対抗策を用意せず、自分の攻撃だけを行おうとした場合は、先制攻撃で撃破され、敵にダメージを与える事はできないでしょう。
対抗策を用意した場合も、それが不十分であれば、苦戦や失敗となる危険性があるので注意してください。
フレンドと一緒に行動する場合、お相手のお名前(ID)や呼び方をお書き下さい。
グループでのご参加は【グループ名】をご記載願います。
以上が猟兵が任務を遂行する為に提供できる情報です。
皆様の武運長久をお祈り申し上げます。
第1章 冒険
『毛利水軍を突破せよ』
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POW : 邪魔する船をひっくり返すなど、力任せに毛利水軍を突破します。
SPD : 毛利水軍の間隙を縫うように移動し、戦う事無く突破します。
WIZ : 毛利水軍の配置、天候、潮の流れ、指揮官の作戦などを読み取り、裏をかいて突破します。
👑3
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
古歌に「明日こそ船出はせしか」と詠まれた響灘を北西に臨む関門海峡。
潮流が速く、更に潮の干満によって頻りに流向が変わる為、これまで多くの帆影が波間に呑まれたものだが、舟を沈めしは海難のみならず、天下分け目の大戦――嘗て栄華を極めた一族の舟もまた、この海底に眠っているという。
そんな盛者必衰を語る潮騒を耳に、海流を読み風を読み、自在に舟を操った海賊衆が居た。
戦国最強の海上軍団と謳われた『毛利水軍』である。
徳川の世となり天下泰平となってからは、禁令によって主力の安宅船を手放したものの、海を陸の如く往く操船技術は衰えず、関船・小早は未だ鰐(サメ)の様に波間を行き交っていた。
その毛利水軍を、大帝剣『弥助アレキサンダー』が持つメガリス『大帝の剣』が操っている。
渡来人の至宝だと謂う其は彼等を巧みに洗脳し、激しい敵意と憎悪を以て猟兵を襲わせようとしているのだ。
「――扨て、如何しようか」
敵意を抱かれたとて、骸の海より来た訳でもない彼等に敵意は湧かず。
壇ノ浦と和布刈を結ぶ早鞆の瀬戸に降り立った猟兵らは、波を掻き分け迫る大軍勢に「ふむ」と溜息ひとつして、決戦の幕を切って落とした。
舞塚・バサラ
【SPD】
海上での戦いに御座るか
まあやってやれぬ事もなし…
いざ_来たれや、阿弖流為。某の身を食むで御座る
参戦と同時にUCを発動
強化された身体能力にて、海の上を駆け抜けるで御座る
曰く…秒速30m程の速度で駆け抜けたならば可能であるとか
……化身法込みならば余裕で御座るな(ダッシュ)
そして相手が人であるならば…
どこを突けば死に、どこを突けば動けなくなるかなど…手に取るように分かるで御座る(暗殺、部位破壊)
殺しはせぬ故、少々眠るが良いで御座るよ
後は斯様に動くのであらば、某は酷く目立つ筈
敵意に漲っているのならば、向こうから来る筈で御座るし
…それを読むのも某の得手(殺気、存在感)
沢山寝ててもらうで御座るか
エル・クーゴー
【ワイルドハント】
●SPD
躯体番号L-95
当機は友軍機パル・オールドシェルと同船に乗り込み、敵船の航行機能及び火器類の不全を主眼とした狙撃支援を実行します
電脳世界、展開
周辺海域を包含する交戦地帯自体に【情報収集】を目的とした【ハッキング】を実施
敵布陣状況、並びに海流の変遷を、操船の助けになるようパルへ逐次提供します
通信回線ポート、許諾を申請します
船体外縁に布陣し狙撃モードに移行(スナイパー)
強行突破時、針路上の敵船の帆・櫂を相対距離の近い順から優先して狙撃・破壊
また敵搭載武装に対しては、本戦争中に交戦した切支丹女武者の採用武装を参考に作成したトリモチ弾(学習力・武器改造・メカニック)を用います
パル・オールドシェル
【ワイルドハント】
モウリ・フリートはなるべく沈めぬように。
厄介なオーダーですが、僕らなら可能でしょう。
徳川将兵とその勝利を信じる人々の祈りを集め、最大規模の無敵艦隊を展開。
解放軍航空宇宙艦隊の威容を以て進撃を開始します。
艦隊の八割を陽動に割き、レーザー砲による砲撃でモウリ艦隊を牽制。徹底して帆と櫂を狙うことで、航行能力を奪うことを最優先とします。
残る二割にワイルドハント戦友諸君と同乗、陽動攻撃で混乱した海域を強行突破し主力たる猟兵の無傷での通過を成就させましょう。
猟団長、いえ――提督。それに皆さん。艦隊戦は僕ら解放軍の得手。
どうか信じて、任せてください。
陽動艦隊もなるべく多く、無事の合流を!
奈々詩・空
【ワイルドハント】
人を操るってのは厄介なもんじゃて
船は沈めないように動きましょう
味方の船に乗り込んでじっと機会をうかがう
こちらの船に意識を向けたら、対武装破壊血風吸血鬼を使用。
可能な限りの範囲の敵の刀やら槍やら鎧やらを機能停止または破壊して攻撃の手段を封じましょう
それでも相手は鍛えられた武士なのでこっちに乗り込んできて素手で向かってくる場合もあるじゃろう
そのときは素手で手加減して攻撃を行うなるだけ怪我もさせたくはないんだけどね
あとは味方を信じて突破するしかあるめえ
荒谷・ひかる
【ワイルドハント】
すっごいお舟っ!
でも乗ってるひとは操られてるだけなんだよね……なんとかかわしてかないとっ。
北国のお舟じゃないなら、こんなのはどうかなっ。
パルおねえさんのお舟での牽制の隙間から【氷の精霊さん】にお願いして氷の槍をたっくさん放つよ!
でも、わたしの狙いはお舟じゃなくて、お舟とお舟の間。
氷の槍を芯にして、海水を取り込んで動きの障害になる流氷を作るの。
さすがに流氷対策なんて、この辺のお舟には無いでしょー?
あわよくば、お舟の周りも巻き込んで凍らせて動けなくするよ!
お舟同士を氷で繋げて固めたりできたら、かんぺきなんだよっ!
御園・ゆず
【ワイルドハント
いつもは単身で突っ込んでたけど
今回は協力戦 がんばるぞー
………はぁ、なるほど
ほんと埒外ってやつは何でもアリなんですね
独りごちながら乗り込もう
甲板へ降り立ったら『かもめ』を発動
末端の毛細血管や眼球の毛細血管がぷちぷち切れるのを感じながら
主に鷹の目で相手の動きを観察、予測
隙間を縫って駆け抜けましょう
同時に左袖から鋼糸を出して
ある程度翻弄したら、柱を支点に
よい、しょ!
キュっと引いて縛り上げます
これが一網打尽ってやつ、なのかな?
此方は制圧完了です!
お手伝いありますか?
……しかし、メガリス?
中々手強い物品ですね
記憶の凄く奥の方で『壊してはいけない』と警鐘が
なんででしょ?
●
海峡狭しと寄せる五百重波は返って千重波となろうか、止まず波を蹴立てる紺碧の海に臨んだ舞塚・バサラ(罰裁黒影・f00034)は、己が貌を匿す『顔影』が水飛沫に濡れる爽涼を得つつ、淡然と言ちた。
「此度、海戦に御座る」
為留める敵は、海上の大渦に据わる大帝剣『弥助アレキサンダー』と、彼を守る隠し将『豊臣秀吉』。
今は毛利水軍の船影に隠されているが、猟兵は舟を分け波を分け、奴等を骸の海に沈めなくてはならない。
蓋し壁と立ち塞がる毛利水軍こそ易く慎莫(始末)は負えぬ。
舟を足の如く操る最強軍団と渡り合うには、先ず以て海を制さねばなるまいが――歴戦の猟兵は幾許も機智が利いていた。
「海の上を渡る……まあやってやれぬ事もなし」
云うやバサラの忍装束、曙光天甕星が颯と翻る。
汐風か――否。刻下、六尺に届く長躯に満つは妖怪、悪鬼、幽鬼……人ならざる鬼神の力が、術者を超強化していく。
「いざ――来たれや、阿弖流為。某の身を食むで御座る」
其は【降魔化身法】――己が魂を食ませる代わり、身体能力を飛躍的に向上させたバサラは、爪先を擦るや拇指を蹴り出し、海面を走った。
「曰く、一呼吸で三十丈も跳べば水面を駆け抜けられるとか」
神を降ろした今のバサラなら余裕の歩武だろう。
彼は足半も千重波に濡らす事なく波間を渡り、暗黒の仮面に跳ねる飛沫を筋と走らせる。
疾風の如き彼を「共闘する仲間」と捉えられたのは、海峡全域をサイバースペースに席捲・変換したエル・クーゴー(躯体番号L-95・f04770)しか居るまい。
「電脳世界、展開」
対象範囲は、周辺海域を包含する交戦地帯。
地形をスキャン、天候及び潮流データを収集……域内環境の掌握完了。
敵艦の規模と兵員配置をハッキング――完了。
「集約したデータを投影します」
電脳ゴーグルに翠光を往復させ、電脳魔術にて高速演算したエルが、ホログラムにて解析結果を反映する。
其を見た【ワイルドハント】の仲間達は、面々に口を開いて、
「すっごい数のお舟っ! でも乗ってるひとは操られてるだけなんだよね……」
「人を操るってのは厄介なもんじゃて」
敵船の数に瞳を丸くする荒谷・ひかる(精霊ふれんず癒し系・f07833)の傍ら、奈々詩・空(日々を過ごす・f00083)は白狐の尻尾をふうわり揺らし、淡然と言つ。
家族の為でなく、名誉の為でなく、操られて戦う無情は幾許かとひかるが柳眉を顰めると、空は闇黒色のスティックキャンディで船団の合間を縫って示した。
「船は沈めないように動きましょう」
「うん、なんとかかわしてかないとっ」
二人が不沈不殺の意志を共有すれば、胡桃色の瞳に漆黒の点を追いかけていた御園・ゆず(群像劇・f19168)が、ホログラムを指差して、
「えぇと。この高速で動いているのが――」
「マスターNINJAの先駆けをマーカーしました」
「はやい」
瞳をぱちくりとさせるゆずに、エルがこくり首肯を添える。
ホログラムに影が差したのは、この時だったろう。
海峡に臨んだ四人の影は、間もなく大きな雲に取り込まれ――いや、其は雲に非ず。
見上げれば、白銀と輝く大船団が異空間転送に成功しており、その指揮を執るパル・オールドシェル(古き戦友・f10995)が仲間の頭上に佳声を降らせた。
――モウリ・フリートはなるべく沈めぬように。厄介なオーダーですが、僕らなら可能でしょう。
不沈不殺を成功させる為の布石。
其の一つが、この【栄光の無敵艦隊】(インヴィンシブル・フリート)――徳川将兵とその勝利を信じる人々の祈りを集めたパルは、最大規模の無敵艦隊を連れて仲間の元に合流を果した。
「躯体番号L-95」
然ればエルは、当初パルと共有した戦術を復唱し、
「当機は友軍機パル・オールドシェルと同船に乗り込み、敵船の航行機能及び火器類の不全を主眼とした狙撃支援を実行します」
先に得たデータをパルに提供すべく回線のリンクを求めれば、ひかるや空が挙って乗船許可を求める。
「通信回線ポート、許諾を申請します」
「わたしも乗せてくださーいっ」
「さて、呼ばれてみましょうかな」
斯くしてまとめて許可するパル。
傍らのゆずはと云うと、いつもは単騎駆けの自分が初めて仲間と共闘するに、この展開は些かインパクトが大きすぎると口をぽっかり開けて、
「…………はぁ、なるほど。ほんと埒外ってやつは何でもアリなんですね」
さぁ、と手招きするパルに促される儘、乗船した。
そうして無人の大艦隊に戦友を乗せた彼女は、我がサイキックエナジーに人々の祈りを増幅させると、碧落を往く白銀の鉄塊を一際眩く輝かせ、
「これより解放軍航空宇宙艦隊の威容を以て進撃を開始します」
真っ直ぐと差した繊指、その進路に不穏の漂う毛利水軍を示した。
●
今日々の関門海峡に鳥は羽搏かぬ。
白い羽根に代わって影を差すは漆黒の幻像――海上を疾走るバサラは、眼前に毛利水軍の船影を捉えると、小早船に乗る武者らの常人たる姿に、ほつり、言ちた。
「相手が人であるならば……どこを突けば死に、どこを突けば動けなくなるかなど……手に取るように分かるで御座る」
死殺を自在に操る忍びなれば、刹那に命を摘む事も出来よう。
然ればこそ、バサラは生の間際を知り、
「殺しはせぬ故、少々眠るが良いで御座るよ」
『んなっ――!』
『ぐむゥ!』
蓋し「時」は奪う。
宛ら疾風の如く擦り抜け様に差し入れた手刀は、彼等の武装を掻い潜ってひとつ、またひとつと意識を沈ませていった。
『敵襲ッ! 敵襲ーッ!』
『忍が海を走っておるぞ! 射殺せぬなら、舟に近付いた矢先、銛を突き立てェッ!!』
次々と兵員が倒れれば、船上は俄かに騒めく。
敵意漲る毛利水軍は、弓を番え、銛を構え、或いは抜刀し、バサラを仕留めんと船首を回し始めた。
然し、殺気を読むのも彼の得手なれば、肌にザワつく感触を受け取ったバサラは雨の如く降る矢を縫って波を蹴り、無数の刃を潜って舟に侵入した。
「沢山寝ててもらうで御座るか」
『ぬ、を……っ!!』
『痛ァ、ッ――』
起きた時には、洗脳も解けていよう。
慈悲の滲む手刀が須臾に意識を摘み取り、一隻、また一隻と舟が沈黙した。
「北北西より漸次、敵船の推進速度の低下を確認……マスターNINJAの交戦と特定しました」
刻一刻と変わる戦況を、風向と潮流の予測と共に逐次パルに提供するはエル。
操船の援けを得たパルは、それらの情報を基に大艦隊を手足の如く動かし、戦国最強と呼び声の高い毛利水軍の攻略に掛かった。
「艦隊の八割を陽動に割き、レーザー砲による砲撃でモウリ艦隊を牽制。徹底して帆と櫂を狙い、航行能力を奪うことを最優先とします」
残る二割に【ワイルドハント】の戦友を乗せ、陽動攻撃で混乱した海域を強行突破する――。
主力たる猟兵を無傷で首魁の元に送り届けるに、艦隊の役儀を分けたパルは、靭やかに玉臂を振るうや麗顔を白ませ、空から無数の光条を射て波を裂いた。
「艦隊戦は僕ら解放軍の得手。どうか信じて、任せてください」
陽動艦隊もなるべく多く、無事の合流を――!
確固たる意志によって弾かれた光砲が、海域を白く浮き立たせる。嘗て壇ノ浦の戦いを見届けた潮流も、これほどの戦を見るとは思わなかったに違いない。
『ッッ! 空から光が降ってくるぞぅ!』
『避けーい、避けろーッ!』
歴戦の水兵とて、空からレーザーで撃たれる経験は無かろう。
俄かに波立ち揺られる船内、声を張り上げた毛利水軍の兵らは、挙措が遅れたのも已むない。
その瞬刻、船体外縁に布陣していたエルが動き出し、
「これより狙撃モードに移行します」
僅かに船列が乱れた箇所を見出した彼女は、針路上に座す敵船の帆や櫂を相対距離の近い順から優先して狙撃に掛かる。
『憎き猟兵を通すな! 矢を雨と降らせて射殺せェい!』
『投射機、用意!!』
推進力を失っても、操られた敵意と戦意は潰えぬか――波間を揺蕩う船が機装を、兵が武装を暴けば、エルは「切支丹女武者」との戦闘経験より作成したトリモチ弾を射出し、
「柔粘性強誘流体にて閉塞します」
『ふなっ!?』
『わっわ、うわぁ――ッッ!!』
ネバネバのモチモチが攻撃を封じた刹那、戦艦に乗り込んでからじっと機会を窺っていた空が、海色の双眸を縁取る長い睫毛をスッと持ち上げた。
「――今じゃろ」
時は現刻(いま)。
敵影を射るや犀利を増した青瞳に映るは朱殷の風――【対武装破壊血風吸血鬼】は半径26m圏内に居る敵の武装を破壊・機能停止する。
「刀やら槍やら鎧やら、危ないもんは可能な限り壊して、攻撃の手段を封じましょう」
『!! おおぉおっ、儂の刀が粉々に……ッ!』
風は颶風と吹き荒び、赤黒い刃となって毛利の兵士らの武装を悉く破砕する。
蓋し戦慄く者も居れば、憎悪を増す者も居よう、
『畜生ッ、妖術使いめ! 刀がなければ戦えぬと思うてかァ!』
「――――いえ」
丸腰ながら拳を固めて吶喊する益荒男は想定済み。
ひくり狐耳を動かして初動を掴んだ空は、華奢な小躯を後方宙返りして逃れると、可憐にも凄まじい強度を誇る踵を鎚の如く打ち落とす。
『むぎゅう!』
「なるだけ怪我もさせたくはないんだけどね」
たんこぶ一つ、くれろ。
強烈な踵落としで意識を絶たせた空が甲板に戻った時、「おかえりなさいっ」と安堵の表情で迎えるはひかる。
精霊と通じ合い、彼等に助力を願う以外は常人の力にも及ばぬ少女は、白銀の戦艦に乗り込んだ儘、【氷の精霊さん】(アイス・エレメンタル)に呼び掛ける。
「氷の精霊さんっ、パルおねえさんのお舟が光を射る隙間から、氷の槍をたっくさん降らせて!」
すれば友の願いに応えた精霊は、碧落を漂う水を集めて凍らせ、合計210本の氷の槍を驟雨と降らせた。
『雹かッ! いや、氷の飛礫が……槍みたいに降ってくるぞ!!』
『ひえぇっ、あんなの喰らったら肉も舟もみんな裂けらぁ!!』
矢なら盾して凌げようが、鏃を遥かに凌ぐ氷の刃は防ぎようもなく、俄かに恐慌に陥る毛利水軍。
其を眼下に敷いた少女の狙いは、願いは――。
「お舟じゃなくて、お舟とお舟の間におとせば、流氷にならないかなぁ?」
氷の槍を芯に、海水を取り込んで流氷を作る。
北国で造られた舟でなければ、進路を阻む流氷を砕く構造は持つまいと読んだひかるは、漸う海水を含んで水面に浮かび始めた氷塊が、舟の周りに漂って身動きを奪っていく様に、ほっと安堵の息を吐く。
「お舟同士を氷で繋げて固めたりできたら、かんぺきなんだよっ!」
連環の計と謂うべきか。
遂に周囲の海ごと舟を囲んで凍らせたひかるは、友なる精霊ににっこりと花の咲みを見せて成功を喜んだ。
そうして足場が安定したのを頃合いと見たのはゆず。
甲板に降り立った少女は、美し艶髪を揺らすや、【かもめ】(チャイカ)――鷹の目、兎の耳、犬の鼻を宿し、超感覚及び驚異的な身体能力の向上を得る。
「わたしは――なににだって成れる」
末端の毛細血管や眼球の毛細血管がぷちぷち切れる感覚が生々しい。
己が身を蝕む痛みを代償に全神経を研ぎ澄ませたゆずは、主に鷹の目で敵兵を鋭く観察し、細かな挙措ひとつからも次の動きを予測して、僅かな隙間を縫って駆け抜けた。
『うぬっ!?』
『――速いッ!』
吃驚の声を置き去りに、影が疾る走る。
左袖に滑らせた繊指に鋼糸『Trick & Trap』を取り出した彼女は、その俊敏に船上の兵を翻弄すると、暫くしてその軌跡を暴く。
「よい、しょ!」
『おおぉぉお!!』
柱を支点に、キュっと引いて縛り上げる。
然れば極細ながら靭やかで強度のある鋼糸に纏められた兵士が宙に吊り上げられ、情けない悲鳴を汐風に運ばせた。
「これが一網打尽ってやつ、なのかな?」
『んぎぎぎぎっ!』
『たすけてくれー!!』
「此方は制圧完了です! お手伝いありますか?」
佳声は軽やかに語尾を持ち上げ、幾許か明るさを増した瞳が海上を見渡す。
見れば対角では他の猟兵が毛利水軍の無力化に尽力しており、海峡を埋め尽くした大船団も、漸う切り崩されて中核を暴きつつある。
「……洗脳がとければいいんだけど」
「メガリス『大帝の剣』を封じる事が叶えば、彼等も解放されるでしょう」
心配そうに言ちるひかるに、パルが言を返す。
この時、渡来人の至宝の名を耳にしたゆずはふと呟いて、
「……しかし、メガリス? 中々手強い物品ですね」
記憶の遥か片隅、欠けた断片が『壊してはいけない』と警鐘を鳴らしている気がするのは、なんででしょ? と小首を傾げる。
蓋しその疑問符は周囲の剣戟に押し流され、続くエルと空の声に意識を戻された。
「突破口を確認しました。一気に侵入します」
「――あとは味方を信じて突破するしかあるめえ」
今は、今は唯。
武士とはいえ一般人を守壁にメガリスの力を高める悪に刃を突き立てるのみ――。
毛利水軍の無力化に成功したメンバーは、船影の向こうに必ずや居る「脅威」に、己が闘志を炎と燃え立たせた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴
仇死原・アンナ
アドリブ絡みOK
海の上か…
落ちて溺れ死ぬのは嫌だな…
他の同行者と共闘
[地形の利用]に[ジャンプ]と[ダッシュ]を使い、軍船を跳びまわりながら移動
鎖の鞭による[ロープワーク]で凹凸や柱に引っ掛けながら隣の軍船に乗り移ろう
「お前達に用はないんだ、邪魔をするなよ…!」
敵に対しては鞭を振るい[武器落とし]を行い、【咎力封じ】を使い無力化しよう
もしくは[グラップル]と[マヒ攻撃]で死なない程度に痛めつける
攻撃は[見切り]で回避、[カウンター]も狙おうかな
ユース・アルビトラートル
……道は長くなりそうだね。大海原の旅は戦争じゃない時にやりたかったな。
まずは毛利水軍だね。頭のスイッチ入れていこう。ボクの戦闘知識が正しければ、洋上で大群を抜ける上で最も安全なルートは海中なんだけど……厳しいね、うん。
次善の策があるなら、空。フェアリーのボクにも通れるし、人は真上に意識を向けにくい。体格的にも発見されづらいし、世界知識を援用すれば、ボクのような存在はエンパイアでは普遍的でないことからも非常に効果的じゃないかな。でも念には念を。情報収集をして、最も船が少ないルートを、相手から見て太陽を背にしやすい経路で飛び進む。
この戦争、お天道様と一緒に見届ける覚悟だよ。頑張らなきゃね。
ノネ・ェメ
毛利水軍の間隙を縫うように移動し、戦う事無く突破、は猟兵の人なら皆出来そう。むしろ手荒な通り方する猟兵は許さない! ……じゃないけど。でもま、ほら、後味悪いし?
……うん、全部わたしの本音。1人として一般の人はしなせたくない。しなせない。UCで例外なく全ての戦意ある人を鈍らせて、武器を取り払ったりして回ろう。
ぁでも、先へとまっすぐ向かう人には、サポートを。たとえ命を守ったとしても、操りが解けないと──その心も守れないと。ノネの心をフルオープンすればこの先の戦いへだって、誰にも向かってほしくない。だけど……うーん、、だけど……。
今はただ見送ります。
パウル・ブラフマン
【WIZ】
ども!エイリアンツアーズでっす☆
行くよGlanz、水陸両用モード!
移動手段にお困りの方は、後部座席へどうぞ♪
持ち前の【コミュ力】を活かして
【情報収集】してきた関門海峡の地形図などを
他の猟兵さん達と共有しておきたいな。
UC発動!
Herzを通して紡ぐのは
猟兵の皆のテンションアゲ用のナンバーだけど…
実はこの曲、毛利水軍の活動地域に伝わる船歌なんだ。
オレらは敵じゃないんだよって
ちょっとでも伝わりやすくなりますように♪
落水した毛利水軍さんは
Saugerのワイヤーに引っ掛け【救助活動】を。
Glanzの後ろにくっつけたサブボートに乗せて
毛利水軍は助けるって意思アピールするね!
※絡み&アドリブ歓迎!
オリヴィア・ローゼンタール
なるほど、ゾンビ化ではなく洗脳……
単に斬ってしまうわけにはいかない、狡猾な手ですね
【転身・炎冠宰相】で白き翼の真の姿へ変身
飛翔能力で船へ乗り込む
信ずる者のために戦う――それ自体は善きことですが、根本が洗脳にあるとなれば話は別です
聖槍に纏った炎を消し、単純な物理攻撃とする
強化された【視力】で攻撃を【見切り】、【聖槍で受け】流す
敵の武器を【怪力】で握り潰し武器破壊を試みる(部位破壊)
大きな穂先の腹で叩き(なぎ払い)、ガントレットで殴り(グラップル)、グリーブで蹴る(踏みつけ)
すべて手加減をしながらの【気絶攻撃】
群がられて手が足りなくなれば翼で羽撃き、【衝撃波】を起こして【吹き飛ばす】
●
戦国最強の海上軍団と誉れを得る毛利水軍ともなれば、兵は舟を足の如く操り、舟上を陸の如く歩く強者揃いの大船団。
見事な操船で大帝剣『弥助アレキサンダー』と隠し将『豊臣秀吉』を守り固めた益荒男らは、メガリス『大帝の剣』によって猟兵に対する憎悪を膨らませながら、一縷の隙間もない巨壁と化して関門海峡に立ち塞がっていた。
然して、その対角。
潮騒に紛るる剣呑に、ユース・アルビトラートル(見据えるもの・f03058)が清澄のテノールを置く。
「……道は長くなりそうだね。大海原の旅は戦争じゃない時にやりたかったな」
裁判官でありながら、冒険者然と旅をする事もある彼は、これが平時であれば佳景もゆっくり望めたろうに、と小さく溜息する。
蓋し困難を避けようと引き返す性格でもない。
「まずは目の前の毛利水軍だね。頭のスイッチ入れていこう」
珈琲色の瞳を縁取る長い睫毛を持ち上げた少年は、見事に編成された毛利水軍の船影を見つつ、我が頭脳に蓄積された厖大な知識を洗っていく。
「ボクの戦闘知識が正しければ、洋上で大群を抜ける上で最も安全なルートは海中なんだけど……厳しいね、うん」
潮流が速く、潮の干満によって頻りに流向が変わる海域では、海中移動は厳しかろう。
荒々しく波を蹴立てる海面を見たユースは、間もなく言を継いで、
「次善の策があるなら、空。フェアリーのボクにも通れるし、人は真上に意識を向けにくい」
碧落は晴朗にして、潮風はやや強く爽涼。
繊翅に風を集めて飛べば、躰の小さなユースに目を向ける者は余程居まい。
抑もフェアリーは、このエンパイアにて普遍的な存在に非ず。大戦を前に海上を警戒する彼等の視界に、ユースが捉えられる可能性は限りなく少なかろう。
「それでも、念には念を。最も船が少ないルートを捜そう」
船数と布陣を調べ、且つ太陽を背に飛べばより効果が得られるか――そう思案した時、傍らより艶麗なる佳人が声を掛けた。
オリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)である。
「空を往くなら、ご一緒します」
凛然たる佳声がそう言を置いた刹那、黄金の炎が繊麗の躯を包み、【転身・炎冠宰相】(モード・メタトロン)――万魔穿つ炎の槍、不滅の聖鎧、そして純白の翼を得た聖女が颯爽と天翔ける。
ユースの美しい双翅が音もなく舞い上がると同時、オリヴィアは力強い羽搏きで瀬戸を離れ、間もなく影を雲間に隠した。
その二人を見送った仇死原・アンナ(炎獄の執行人・f09978)とノネ・ェメ(ο・f15208)は、気儘に向きを変える潮風に艶髪を弄ばれながら、穏やかな口調で言を交す。
「空か……落ちて溺れ死ぬ事はなさそうだな……」
「……うーん。わたしは、どうやって行こうかな?」
アンナは風と戯れる黒髪を項へと送りながらぼんやりと、ノネは繊指を顎に遣ってふうわり思案していた――その時、一陣の風が二人の柔肌を撫でた。
「ども! エイリアンツアーズでっす☆」
軽快な声と無垢な靨笑を連れて挨拶したのは、パウル・ブラフマン(Devilfish・f04694)。
宇宙バイク『Glanz』に跨って現れた彼は、我が愛騎を水陸両用モードに転身させ、ピッと立てた親指に後部座席を示して見せる。
「移動手段にお悩みの方は、後ろにどうぞ♪」
舟に勝る機動力。何より濡れない。
艪に勝る推進力。何より溺れない。
気になるのは渡し賃だが、二人の無言を受け取ったパウルはそっと親指と人差し指で輪を作り、拈華微笑の「ゼロ円」に美し二輪の花が動く。
旅行会社の運転手なれば、運航の準備は万全、針路も保証されていよう。
「地元の漁師さんから得た情報を元に、関門海峡の地形と海図を起してきたから大丈夫!」
事前に現地民と接触したパウルは、垣根を感じさせぬフレンドリーさで話を聞き出し、毛利水軍に負けぬ地の利を得ている。
「……水戦を得意とする相手に、これで五分には持ち込めるか……」
「船の間を抜けて進むだけなら、できそう、だけど……操られている人と、戦って、切り開くとなると……」
地図を共有したアンナとノネが、瞼を持ち上げて眼前に迫る船影を見る。
戦うだけなら、抜けるだけなら慎莫(始末)は易い。
蓋し毛利水軍はメガリス『大帝の剣』によって洗脳された一般人なれば、如何に無力化して活路を開くかが問題なのだが――いや、機智に富む猟兵は、不沈不殺の難しい戦いも見事制して見せよう。
「大丈夫、いけるよ」
寄せる五百重波は返って千重波に。
躍るような水飛沫に頬を濡らしながら、パウルは笑顔で速力を増した。
●
屈指の強さを誇る毛利水軍なれば、戦端が開かれた後の騒憂にあっても、操船に必要な太陽の位置を忘れることはあるまい。
だが、然し。
空戦を経験した時代でなければ、太陽の中に何かが隠れていると注視する事は無かろう。
「――やっぱり、気付かれないね」
常に太陽を背に空を飛ぶユースが、潮風に声を隠す。
刻下、大船団の上空に近付いた彼は、憎悪と敵意に膨れ上がる喚呼を眼下に敷きつつ、より舟の数が少ない箇所を経路に選んで飛び続けている。
冷静なるユースが思わず瞠目するのは、歪なる狂気。渡来人の至宝の魔力に操られた益荒男らの辿る未来が、太平を治めた徳川の世に禍根を残さねば良いが――と、懸念が過る。
「この戦争、お天道様と一緒に見届ける覚悟だよ」
頑張らなきゃね、と強い意志を滲ませるユース。
少年の凛然が燦光に紛れた、その時――その太陽より翼を駆って滑空したオリヴィアが、船首目掛けて墜下した。
彼女の黄金色に冴ゆる双眸にも、兵らの異常な敵意に歪む貌は映ろう。
オリヴィアは冷ややかに声色を落として、
「なるほど、ゾンビ化ではなく洗脳……単に斬ってしまうわけにはいかない、狡猾な手ですね」
国の為でなく、名誉の為でなく、唯だ道具として使われる無情。
そして、その彼等の偽りの敵意を斬り捨てられぬ猟兵の心理を利用したか――悪辣な手を使う第六天魔軍将に正義の炎を燃やした聖女は、繊手に握る槍に力を込め、甲板に降り立った。
『敵襲ッ! 敵襲ーッッ!!』
『白銀の鎧を纏う妖魔め! 弥助様と秀吉様の元には行かせぬ!!』
「……信ずる者のために戦う――それ自体は善きことですが、根本が洗脳にあるとなれば話は別です」
聖槍に炎は灯さぬが、炎の御柱は聢と胸に秘めて。
一斉に飛び込む槍の間合いを一瞬で見極めたオリヴィアは、全ての刃鋩を『黄金の穂先』に受け流し、須臾に柄を返してそれらを叩き落す。
次いで襲い掛かった銛は、素手で掴み、柄を握り潰して、
『んんんっ、そぉりゃ!』
「――偽りの敵意に身を任せてはなりません」
『をおッ!!』
吃驚に時を止めた兵は、間もなく腹に打ち込まれる大きな穂先に悶絶し、その場に倒れ込む躯の蔭から飛び出した追撃もまた、白銀に輝く『ホーリーガントレット』に振り払われる。
其の全てが純粋なる物理攻撃で、手加減した慈悲の一手と知らば、益荒男らは泡を吹いたに違いない。
冴銀神々しい『セイントグリーブ』に刃を砕かれた兵は、遂に膝をついて、
『くっ……刀が折られた時こそ武士の死。首を取られよ』
「いいえ、奪うのは意識のみ」
次に目覚めた時には洗脳が解けているでしょう、――とは耳に届いたろうか。
甲板に横たわる躯に慈愛の眼差しを注いだオリヴィアは、瞬刻、右舷より近付く船影に気付いて羽撃く。
双翼の聖女は衝撃波に船体が揺れた瞬間に飛び移り、稍あって、また一隻を沈黙させた。
――時に。
潮騒に紛れる剣戟と怒号、そして悲鳴……あらゆる音を鋭い聴覚に拾っていたノネは、見るより具に戦況を読み取っていたろう。
「毛利水軍の間隙を縫うように移動し、戦う事無く突破、は猟兵の人なら皆出来そう」
歪な熱狂を掻い潜って船影を抜けるだけなら、力も技能も備わった猟兵なら難無い。
然し力押しで切り開く事も叶う今回、ノネは無辜の血が海流に混じるのは避けたかった。
「むしろ手荒な通り方する猟兵は許さない! ……じゃないけど。でもま、ほら、後味悪いし?」
彼女が謂う「後味」とは、徳川の治世に遺恨を残す云々ではなかろう。
純粋に人を、命を見る彼女は、メガリス『大帝の剣』に穢された魂の救済を希って、こくん、と首肯を添えた。
「……うん、全部わたしの本音。一人として一般の人はしなせたくない。しなせない」
透徹なる青の瞳を真っ直ぐに、紡ぐは【〝音憩〟】(チリン・ザッピン)――戦いの制止に応じた者が絶対好む選曲を提供し、尚も戦意の儘に刀を振るう者に対しては、その行動速度を五分の一にする。
『な、ん……っ……!?』
『む、くく……おそ、い……!!』
漲り奔る敵意に反し、身体がスローテンポになる違和感は強烈だろう。
戦闘圏内に居る戦意ある者は、例外なく時の巡りを鈍らされ、
「本意に反して誰かを殺めるのって、辛いと思うから」
『く、ぬっ……おぉお……!!』
憎悪の儘に禍き刃を振り被るも、其はノネの花顔に迫る前に取り払われ、虚しく甲板に横たわる。
「たとえ命を守ったとしても、操りが解けないと──その心も守れないと」
ノネの直感は、メガリスを――其を操る弥助を斃さねば洗脳は解けないと知覚している。
故に弥助を隠す船影を真っ直ぐに抜ける者のサポートには応じるが、自身は彼等を置き去りにして往くつもりはなかった。
「ノネの心をフルオープンすれば、この先の戦いへだって、誰にも向かってほしくない。だけど……うーん、だけど……」
佳声が正直に想いを告げる。
人一倍に敏感な彼女だからこそ、剣戟と狂熱の満ちる戦場で、より人の心と自身の心に向き合わねばならないと思うのだ。
「――今はただ、見送ります」
ノネは舟の間を颯爽と抜けて先行く仲間に、そう小さく告げて送り出した。
扨て、そのノネと共に毛利水軍の先頭に辿り着いていたアンナは、激しく揺れる船首に思わず帽子のブリムを押えて、
「以降の戦いは全て海の上か……落ちて濡れるのも嫌だし、溺れ死ぬのも嫌だな……」
花唇を擦り抜ける言はぼんやりとしているが、海上を見渡す漆黒の瞳は淡然かつ沈着と、次なる足場を探している。
『猟兵は怨敵ぞ! 掛かれェい!!』
『射殺せ! 近きにある者は槍を持てい!』
故に悪意に膨れ上がった益荒男が鋭刃を持って迫れば、アンナは直ぐにも『鎖の鞭』を投げて柱に引っ掛け、
「……マストを借りようか」
『! 飛んだぞ!!』
槍の鋩が彼女を追うも、絶影の速さに刃は空を突くのみ。
なればと飛雨の如く襲い掛かる矢は、靭やかに鞭を振るって払い落し、軽快かつ華麗な跳躍で軍船の間を飛び回ったアンナは、執拗に敵意の刃を向ける者にのみ声色を鋭くする。
「お前達に用はないんだ、邪魔をするなよ……!」
憎悪の牙を折るは【咎力封じ】――手枷、猿轡、拘束ロープを同時に放ったアンナは、死なない程度に拘束し、その痛撃と痛痒によって挙措を封じる。
『むごごっ……むぐむぐ……!!』
『いいい痛ぃぃああ!!』
一人、二人と膝を付き、その陰から現れた三人目の刃撃は、須臾に軌跡を見切って躱す。
『ぬっ――!』
「斃すべき敵じゃない。だから殺さない」
僅かに半身を引いて刃鋩をやり過ごしたアンナは、濡烏の艶髪を風に梳らせるや懐に飛び込み――カウンターを閃かせる!
「黙っていて貰おうか」
『ッッ、ッ……――!!』
朱殷の佳人は、一隻、また一隻と軍船を飛び回るごとに沈黙を置いて、首魁に向かう進路を切り開いていった。
斯くして猟兵が水戦を制していく中、漸う押される毛利水軍に優しさを見せたのがパウル。
「元々海難の多い所だから、落水したら大変だよ」
騒憂にあって舟より足を滑らせる者、船の衝突で弾かれた者を救助する――波を蹴立てる荒海にあって敵味方の区別は無しと、相棒『Glanz』の後部にサブボートを牽引したパウルは、波間に揉まれる益荒男達を次々に引き上げていく。
『ぜぇ、はぁ……もう死ぬかと思った……』
『ぶはっ……た、助かった……敵ながら忝い』
たこさん型キーホルダーが愛嬌のある『Sauger』、そのワイヤーを手繰ってボートに乗り込んだ兵達は、海水を被り潮に呑まれて幾許か憎悪が洗われたか。或いは万人を助ける意志を見せたパウルに悪意が削がれたのかもしれない。
後ろ背に彼等の無事を確かめたパウルは、安堵の艶笑をひとつ置くと、次いでハンドマイク『Herz』を手に伸びやかな声を発し、【サウンド・オブ・パワー】――海域に歌声を広げて聴く者の戦闘力を増強した。
『――こ、これは……っ!!』
『ああ、儂らと儂ら家族が唄う、故郷の唄ぞ……!!』
寄せて返す波のような音の揺籃。
潮騒の様に腹底に染み入る声と唄。
聞き覚えのある、いや、今も口ずさむメロディーは、毛利水軍の益荒男らの心を洗い上げる様だった。
ハッと活眼する兵達に振り返ったパウルは、敵意の無い靨笑を浮かべて、
「これ、猟兵の皆のテンションアゲ用のナンバーだけど……実は、地元の海の民から聞いた船歌なんだ」
オレらは敵じゃないんだよって。
ちょっとでも伝わりやすくなりますように。
――その思いは慥かに胸に届いたろう。武士らは己が誇りたる刀を横たえ、自ずとパウルに頭を下げていた。
『な、んと……! 恐れ入った……』
『……負けじゃ。この様にして敵意を削ぐ主らと戦う気は、もうのうなった』
サブボート上で正座し、完敗を認める益荒男たち。
パウルはすっかり狂気を拭い去った彼等に安堵して、彼等の船――即ち編隊から切り離された軍船に確と送り届けてやった。
斯くして無力化された毛利水軍は、軈て綻ぶように船列を乱して隙を作る。
その隙間に颯爽と滑り込んだ猟兵は、巨壁に楔を打ち込む様に活路を開いて、遂に大船団を抜けた。
「――行くぞ」
無数の船影を抜けた先に座すは、骸の海より来たりし魔。
猟兵は剣呑にヒリ付く頬を手の甲に拭いながら、視界に迫る異様を睨め据えた――。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴
第2章 ボス戦
『隠し将『豊臣秀吉』』
|
POW : 墨俣一夜城
自身の身長の2倍の【墨俣城型ロボ】を召喚する。それは自身の動きをトレースし、自身の装備武器の巨大版で戦う。
SPD : 猿玉变化
自身の肉体を【バウンドモード】に変え、レベルmまで伸びる強い伸縮性と、任意の速度で戻る弾力性を付与する。
WIZ : グレイズビーム
【腹部のスペードマーク】から【漆黒の光線】を放ち、【麻痺】により対象の動きを一時的に封じる。
イラスト:フジキチ
👑4
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
毛利水軍の船影を抜けた先、関門海峡の海上に「その者」は居た。
荒々しく波を蹴立てる潮の飛沫を浴びながら、その海とは決して相容れぬ――骸の海より来たりし者達である。
『フェンフェン、フェンフェーン!』
『ああ、理解っている。信長様の野望に泥を掛ける者は一人とて許さない』
人語を喪った異形と、黒膚の偉容を見せる侍。
予知を得た猟兵ならば、其が隠し将『豊臣秀吉』と、此度の戦大将たる大帝剣『弥助アレキサンダー』と知れよう。
彼等もまた船影を潜って現れた猟兵に気付いたか、愈々殺気立って、
『フェーンフェン! フェーン!』
「ああ、問題ない。今、秀吉殿はメガリス『逆賊の十字架』の能力によって異形となり、格段に強化された」
『フェンフェン、フェンフェンフェーン!』
「然う、慥かに実感出来る筈だ。パワーもスピードは常人を超え、鉄塊の巨人を喚び、その躰からは漆黒の光線も放てる」
渡来人の至宝は決して裏切らない。
メガリス『逆賊の十字架』に強化されたなら、万が一にも仕留められる事はない、と秀吉のパワーアップを信じた弥助は、故に「盾となる」と進み出た彼に全てを任せる。
『フェンフェンフェン、フェーン!』
『ああ、俺も大将なら、秀吉殿が聢とこの戦を終わらせるのを見届けよう』
王将が卒爾に動いてはならぬ。
力強く首肯を返した弥助は、直ぐにも先制に掛かる秀吉を堂々見送った。
白斑・物九郎
【ワイルドハント】
●WIZ
・対先制
パルの艦隊に頼んで海上進軍
フォースオーラ・モザイク状の空間を、搭乗船を囲うように広域展開(投擲+なぎ払い)
【早業】モザイク【アート】、見せてやりまさァ
敵側からはこっち側が全体的に黒っポく見えるように、マジックミラーの要領に倣って空間中の視認性・光屈折を操作
これで黒いビームの的なんざ絞れますかよ?
・反撃
パルの船らを足場に接近開始(ダッシュ+ジャンプ+地形の利用)
腹の向きを射線と見、発射緩急を【野生の勘】で読んで回避
【アイシクルドライブ】を当てに行く
【捨て身の一撃】上等
相討ちになろうと左拳を当てる
一瞬でもヤツの動きを封じる
狩りの時間っスよ、ワイルドハントの猟師共!
パル・オールドシェル
【ワイルドハント】
引き続き移動手段兼足場として無敵艦隊を維持しつつ進軍。
豊臣秀吉の先制への対処は同行する友軍に任せます。
しかし彼らに損害が及ぶならば、撃沈されようとも艦隊を前に出して彼らを庇う盾となりましょう。
戦友諸君の奮闘はきっとこの場を切り抜けるでしょうが、それでも艦隊の何割かは沈むでしょう。
ですが私は振り返りません。さらなる艦隊の招来を以て、人々に望まぬ戦を強いる大帝の剣への道を作り、人々を"解放"するために。
私とともに数多戦場を駆け抜けた戦友たちよ、星歌隊よ。
全ての砲を、艦載機の兵装を、一点集中でアレキサンダーへ。
一撃一撃は弱くとも、間断無き火力投射で彼を庇う秀吉を釘付けとします。
荒谷・ひかる
【ワイルドハント】
「ビーム」って言うからには、何らかの直進する粒子の束である筈
なら、その指向性を攪乱してやればいいんだよっ
・先制対策
精霊さん達の助けを借りて、搭乗している船の周りに微細粒子を大量に撒き、対ビームのバリア代わりにするんだよ
具体的には草木と炎で「煙」
水と風で「霧」
そこに氷で「霧氷」
大地と風で「砂塵」
これだけ撒けば、遮断とは言わないまでもかなり減衰するはずだよっ
・反撃
わたし自身はあの毛玉さんを追いきれない
なら、空間をまるごと攻撃するんだよっ!
【幻想精霊舞】発動
猟団長さんが突撃する前に、ビームの飛んできた方角一帯に「氷雪の竜巻」を作るよ
毛玉が雪塗れになれば、狙いやすくなるはず!
御園・ゆず
【ワイルドハント】
わたし、ばかだから
だから
……行ってきます!
ぴょん、飛び降りて
左袖から鋼糸を繰り出し、フェンとか鳴く怪物に絡めるよ
わたしはアレを秀吉とは認めない
教科書と違うもん
マックススピードで巻き取って、急接近
って、城ロボ?
こんなのも、知らない!
腰後ろに忍ばせている武器FN Five-seveNで攻撃
ロボに取り付いて核を探りながら撃ち抜くよ
攻撃は受けるまま受けて
血を舐めとれば『わたし』は『あたし』に成り代る
なんでも出来る『あたし』を演じましょう
血を流させたのが運の尽きね
救ってあげる
なんて、悪魔の善意を弾に込めてプレゼント
血が流れれば流れる程に身体が軽くなっていく
今ならきっと空も飛べるはず…
奈々詩・空
【ワイルドハント】・POW/対先制
今のサイズがどの程度かはわからないけどまともに受けるのは危険っすね。
ということでロボで殴り掛かってきたら海に飛び込んで攻撃を受けても意識を保てるよう【気合】を入れ海という場所の【地形の利用】で【残像】を出して的を絞らせないように【水泳】で海中に潜りながら接近よ。
特にビームを撃ってきた場合は全力で回避。
接近したら海中から【超巨大機械城ダモクレス】を使用して腕を組みながら浮上。敵の攻撃を可能な限り受け止めつつ、攻撃を加えよう。上からつぶしては逃す可能性があるし、左右から掌で蚊をつぶすように叩き潰させていただきますのよ。
●
メガリス『逆賊の十字架』の能力によって異形強化された隠し将『豊臣秀吉』は、反応と反射、スピードを爆発的に上げ、関門海峡の海上を鞠の様に飛び跳ねながら、電光石火の先制を仕掛ける。
『フェンフェーンッ!!』
其は神速の機動が土産と置いた残像か――否。
秀吉の躯の倍ほどもある黒影は【墨俣一夜城】――主と分れて質量を得た巨塊が、強靭な城型ロボと化して潮面を跳ねた。
高い――ッ!!
主の動きをトレースした『墨俣城型ロボ』は、重厚感ある威容ながら秀吉と同等の俊敏を以て躍しつつ、墨色の鋭爪を振りかぶる。
「――まともに受けるのは危険っすね」
まだ距離はあるという時、ふと言ちた奈々詩・空(日々を過ごす・f00083)が直ぐさま海に飛び込んだのは幸甚だった。
(「衝撃波が海面を疾走っていく……危ねぇ危ねぇ」)
まだ空気を含んで水面に戻ろうとする尻尾を掴みながら深く潜り込んだ空は、繊指に眼鏡を持ち上げつつ、海上を削って走る爪撃を見送った。
『フェンフェンフェーン!!』
この時、異形と化した秀吉の腹部が妖しく蠢く。
黒毛に覆われた腹部、その中央に刻まれたスペードマークに妖光が揺らめいた――刹那、【栄光の無敵艦隊】を率いていたパル・オールドシェル(古き戦友・f10995)が指先を動かした。
「――前進して艦首旋回。敵性に対し船腹を垂直に」
戦艦を並べて盾を展開――!
パルは先制攻撃の対処を友軍に任せ、自身は彼等の移動手段と足場を維持する算段だったが、漆黒の光線【グレイズビーム】の損害が彼等にも及ぶと瞬時判断すれば、玉臂を揮って守壁を展開する。
『フェンフェンッ! フェーン!!』
読みは至当。
腹部より射られた禍き光条は、碧落の天蓋を裁つように走って、盾と並んだ戦艦群を次々と薙ぎ払った。
「前衛に配した一割が機能麻痺、活動停止……いいえ、損害は想定内です」
オーダーを遂行する為のリスク、成功と犠牲は常に天秤に掛けている。
パルは沈黙して海へと墜下する白銀の躯体をバイザー型電脳ゴーグル『ECU』越しに映しながら、蓋しその輝きは、祈りは決して潰えぬと桜唇を引き結ぶ。
彼女の視界を過った次なる光景が、其を証したろう。
「パルおねえさんのお舟さん。守ってくれて、ありがとう……」
荒谷・ひかる(精霊ふれんず癒し系・f07833)は、きゅっと花唇を噛んで戦艦の沈黙を見届けると、再び持ち上げた瞳に凛然を灯して光条を追った。
「今の攻撃って『ビーム』だよね。それなら何らかの直進する粒子の束であるはず」
艦がダメージを代わったお陰で、ひかるは攻略を練る数秒を得られた。
おっとり者でどこまでも一途な光の精霊と深い親交のある少女なれば、その稟性をよく心得ていよう。
「それなら、その指向性を攪乱してやればいいんだよっ」
二時の方向へ振り切ったビームが戻ってくる――それまでの数秒。
繊手に握った精霊杖【絆】を媒介に、己と絆を結んだ精霊達を降ろしたひかるは、各々を結んでバリアを展開した。
「おねがい、精霊さんっ! みんなを守って!」
草木と炎は「煙」を結び。
水と風は「霧」を結び。
霧は更に氷と結ばれて「霧氷」に。
大地と風は「砂塵」と結ばれて。
ひかるの希いを聞き入れた精霊達は、搭乗する船の周りに微細粒子を大量に撒き、間もなく迫る漆黒のビームを見事に屈折させた。
「これだけ撒けば、遮断とは言わないまでも、かなり減衰するはずだよっ」
射角が変われば直撃は防げる。
またバリアの細かな凹凸に乱反射したビームは、光条を幾筋かに分けて虚空や海面に吸い込まれた。
「やるじゃニャーですか、ひかる」
この時、光線を間際に遣り過した白斑・物九郎(デッドリーナイン・f04631)が、その無愛想にも小気味よく口端を持ち上げたのは、彼もまたビームの攻略を見出していたからだろう。
猟団員に遅れは取らぬと揺らめいたのは『モザイク状の空間』――狩りの王の意志に呼応して励起するフォースオーラが、不規則な彩色に搭乗船を覆っていく。
「早業モザイクアート、見せてやりまさァ」
云うや広域に展開したモザイクは、光の屈折率を巧妙に操作して、敵側から見れば混沌たる黒が広がる一方、味方は十分な視野が得られる――マジックミラーの要領で視認性を確保した。
「これで黒いビームの的なんざ絞れますかよ?」
狙いは絞れず、闇雲に照射したとて霧散すれば、ビームはもう頼れまい。
『フェンフェンフェン! フェンフェン!!』
「あ、怒ってる」
「おう、気が済むまで吠えなさいや」
多属性のバリア、黒き斑のベールに舌打ったか歯噛みしたかは判らないが、秀吉が苛立った様子は見て取れる。
『フェンフェン、フェンフェン!!』
ならばと墨俣城型ロボを連れて跳躍した異形は、東西南北中央無尽に、爪撃を疾走らせて波を蹴立てた。
宛ら水龍の背の如く水柱が立つ中、敵の異様と威容に面と向かったのは御園・ゆず(群像劇・f19168)。
「わたし、ばかだから。だから……行ってきます!」
慥かに彼女は然う言ったか。
戦艦からぴょん、と飛び降りざま、左袖から鋼糸『Trick & Trap』を繰り出した少女は、メガリス『逆賊の十字架』の力によって異形化したという悪塊を見る。
「あのフェンとか鳴く怪物。わたしは秀吉とは認めないよ」
だって教科書で見たのと違うもん、と紅唇をやや尖らせて。
異形の進行方向に鋼糸を放ったゆずは、毛に覆われた右脚に絡んだ瞬間に超高速で巻き取り、急接近する。
すれば秀吉と対を為して躍していた墨俣城型ロボが彼女を追うが、佳声は抗う様に強い語調で言い放った。
「城ロボ? こんなのも、知らない!」
知らない。認めない。
吃ッ、と睨めて後ろ手に取り出したのは、アサルトウェポン『FN Five-seveN』。
身を翻してロボに取り付いた可憐は、反撃覚悟で銃爪を引いた。
「撃ち抜く――!」
『フェンフェンフェーンッ!!』
霹靂閃電――ッ!!
鉛弾が装甲を貫く音と、魔爪が華奢を屠る音は果して何方が早かったか。
「ッ、ッッ――!」
然し、だらり右腕を下げるロボと、袈裟に血飛沫を疾らせたゆずでは、何方が強度で勝ったかは灼然炳乎として見えよう。
ダメージは受けるまま受ける気概で臨んだゆずは、櫓型の肩口を射抜いて爪撃を封じる代わり、その柔肌を深紅に染めて弾かれた。
「気合いがないと海中じゃ意識が保てませんのよ」
ゆずが波間に呑まれる瞬間を助けたのは空。
紺碧の海に鮮血が交じりゆく中、空が創痍を追ったゆずを抱き留める上空では、追撃に掛かる秀吉とロボをパルが牽制する。
中衛の戦艦が砲を下に向け、彼等と仲間と分つべく水柱を立てたのだ。
射角を読まれて反撃を喰らう事を前提とした牽制である。
『フェンフェン、フェンフェンッッ!』
「ええ、この場を切り抜けるに、艦隊の何割か沈むとは覚悟しています」
『フェンフェーン!!』
「結構です。嘗て武将として采配を揮った者なら理解る筈」
轟音と水音が声を遮る中、直截言を交した訳でもないのに、通じ合う意志と意志。
艦下よりビームを撃ち込む秀吉に対し、数艦の腑(はらわた)を抉られたパルは、ここに繊手を振り上げ、
「私は振り返りません。さらなる艦隊の招来を以て、人々に望まぬ戦を強いる大帝の剣への道を作り、人々を“解放”するために」
と、ここに190機の人型自律兵器と無人迎撃母艦38艦から成る白亜の艦隊を異空間転送した。
然して刻下、軌道防衛艦隊δ-61『星歌隊』(オービタル・クワイア)に号令す。
「私と共に数多戦場を駆け抜けた戦友たちよ、星歌隊よ。全ての砲を、艦載機の兵装を、一点集中でアレキサンダーへ」
照準、大帝剣『弥助アレキサンダー』。
一斉に砲の角度を揃えた凄まじい統率は、秀吉の肝を大いに冷やしたろう。
間断無き火力が投射されると同時、彼は戦大将を守るように背進して、折角の機動性を一範囲に釘付けられてしまった。
「戦友諸君の奮闘を信じています」
「うんっ、パルおねえさんありがとう! わたし自身はあの毛玉さんを追いきれないから、空間をまるごと攻撃するんだよっ!」
元気いっぱい、義気凛然と花顔を咲かせたのはひかる。
渡来人の至宝『メガリス』と渡り合うスピードもパワーも持ち合わせていないと自覚する少女だが、出来る事を見出した時に帯びる光の強さは人一倍。
琥珀色の瞳を爛々とさせた可憐は、精霊に満たされた白皙を煌々と浮き立たせ、【幻想精霊舞】(エレメンタル・ファンタジア)――「氷雪の竜巻」を生成した。
「毛玉が雪塗れになれば、狙いやすくなるはず!」
言うや、凍える結晶を結び合った氷雪が、真白き旋風となって渦を大きくする。
『フェンフェン! フェンフェーン!!』
深い毛に覆われた異形なら、刃の如く凍気を突き立てる竜巻は然程脅威ではない。
然し体表に付着した白雪は、寒さに代わる劣勢を突きつけよう、
「ン、随分と目立つ白粉を施されたモンじゃニャーですか」
ええおい、と幾許か楽し気に語尾を持ち上げた物九郎は果して「秀吉」と云ったか「サル」と呼んだか。
とまれ、禍き異形に見事な雪化粧を施した少女に「おつ」と、淡然たる流眄を寄越した無愛想は、戦艦を素早く伝い渡ると、極上の獲物を捉えて金瞳を鋭くする。
『フェンフェン! フェンフェンフェンッ!』
「あーそうですかよ」
言は適当に聞き流し、牽制に射られるビームを肌膚一枚で躱す。
スペードマークを刻んだ腹部の向きは常に観察し、射線を過らぬは勿論、発射の緩急を本能に根差す読みで見切る。
経験と勘の危ういまでのバランスが、相討ちが最良と判断させたか――迫り出した左腕が白い虎縞模様を広げながら、握り籠めた拳に凍気を迸らせていく。
「ザ・レフトハンド――」
『フェ、ッッ――!』
デッドリーナイン・ナンバーフォー【アイシクルドライブ】。
普く生命の活動熱を奪う魔の左腕が腹部に沈み、ビームを射かけたスペードマークと衝撃を爆ぜる。
その波動すら凍気に沈黙すれば、時が止められたかのよう。
いや、針は動いているとは、物九郎の一声こそ其を証し、
「狩りの時間っスよ、ワイルドハントの猟師共!」
野太い声こそ返らぬが。
勇邁卓犖たる【ワイルドハント】の面々が、凄まじい気迫で異形を睨め据えた。
「血を流させたのが運の尽きね」
と、艶帯びた声で終焉の到来を告げたのはゆず。
少女は深い創痍に血を流した筈だったが、多量の鮮血を舐めとった『あたし』が『わたし』に成り代わったとは知るまい。
自身の血液をトリガーに発動する【悪魔と神】(ル・ディアブル・エ・ル・ボンディユ)は、殺戮鏖殺に特化した『あたし』を表層に浮かばせ、戦闘能力を爆発的に増大させる。
何でも出来る『あたし』を演じるゆずは銃を構えて妖艶に、血が流れる程に身体が軽くなっていく感覚を得ながら、軽快に颯爽と鉛弾を弾いていく。
今ならきっと空も飛べそうな――そんな気さえ確信に変わって。
『フェンフェンフェンッ!』
「救ってあげる」
『フェンフェンッッ!!』
――悪魔の善意を弾に込めてプレゼント。
バランスの要たる長い尻尾が千切れて宙を舞う光景を映した少女は、端整なる口角に漸う咲みを讃えた。
『フェーンフェーンッ! フェーンッッ!!』
痛撃を叫ぶ異形は、闇雲にビームを弾いて猟兵を遠ざけようとするも、海中を移動して接近する空を阻めはしない。
(「海中は光の屈折率が変わる上、今見ているのは残像ですよ……」)
当たらなければどうという事は無い。
いや、当たりそうになれば全力で回避する空だ。地形と海流を見極め、ギリギリの位置まで接近した彼女は、頃合いに――敵に覆らぬ劣勢を突き付けた今こそ適当と、【超巨大機械城ダモクレス】を召喚する。
「中々見れるものじゃないから是非味わってくれ」
是非に、と云うだけはあろう。
海中から飛沫を連れて現れた魁偉は、秀吉の墨俣城型ロボを優に超す、空の100倍の身長を誇る人型の機械城だ。
その肩口に厳然と屹立し、堂々腕を組みながら浮上した空は、両手を大きく水平に広げ、蚊を殺す様に左右から掌で叩き潰しに掛かる。
「上から潰しては逃す可能性がありますゆえ――」
云うや須臾。
妖し黒影が迫り、ロボごと秀吉が挟み込まれる。
動きをトレースするのだ。全く同じ挙動を見せた面妖二体は、脚をバタバタと狼狽えさせながら掌の中に消え――。
『フェンフェンフェーンッッッ!!』
くぐもった悲鳴が摺り潰された。
大成功
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ユース・アルビトラートル
……毛玉だなぁ。鳴き声も不思議だし……いや、考えるのはやめよう。不毛だ。
戦闘知識を基に、相変わらず太陽を背にしておく。まず、殺気と呪詛(と威厳)を放つ。すると、原因位置の推定から、咄嗟に「一番目立つ」太陽に向けて脅威排除をするだろう。これなら回避しやすい。ただ、回避も戦闘行動と考える。これが済んでからユーベルコードを使おう。
召喚するのは、今はボク付の書記官、「元は護衛の死霊騎士」、ジャスティーナ。召喚位置は「秀吉直下の水中」。気づきようのない位置から剣撃を加えてもらおう。続く戦闘は基本、彼女の自律的思考にもある程度委ねる。指揮は上空から情報収集しつつ続けるよ。
傷に塩水は染みるだろうね。
オリヴィア・ローゼンタール
これが……豊臣秀吉?
予習に使ったUDCアースの歴史書とはだいぶ姿が……(動物と話す)
真の姿を維持(属性攻撃・空中戦)
墨俣城型ロボ……!? 城型ロボとはいったい……!?
ロボの攻撃を強化された【視力】で【見切り】、【聖槍で受け】流す
巨大なら威力は相応でしょうが、動きは緩慢になりそうですね
威力に逆らわず、敢えて吹き飛ばされることで距離を取り、【天軍戦士の召喚】
【祈り】と信仰心で墨俣城型ロボ並に巨大化したサンダルフォンと共に戦う
自身が秀吉を、サンダルフォンがロボの相手をして一対一の状況に持ち込む
【怪力】を以って聖槍を振るい、縦横無尽に斬り打ち穿つ
先の方々と違い遠慮する必要はありませんね……ここで討つ!
仇死原・アンナ
アドリブ絡み共闘OK
黒い…猿?
あの守護獣を倒さないと先には進めないならやるしかない…!
「守護獣よ掛かって来い…!ワタシが相手する!」
[存在感、挑発]で敵を[おびき寄せ]て
[怪力、力溜め]を用いて鉄塊剣で[武器受け]し攻撃を防ごう
多少の損傷は[激痛耐性と覚悟]で耐えきる
無事に攻撃を防げたら【絶望の福音】を使用
敵の移動先に拷問具を[投擲]し[マヒ攻撃で傷口をえぐり]肉体に食い込ませで機動力を奪おう
同行者の攻撃が当たりやすくなれば幸いだね
柄に鎖の鞭を巻き付けた妖刀を[ロープワークと範囲攻撃]で振り回しながら
敵を[鎧無視攻撃と串刺し]で攻撃しよう
こいつは悪魔で守護獣…倒すべき敵はあそこにいる…!
パウル・ブラフマン
【SPD】
▼先制攻撃対策
…速い!
けど、高速の景色を見慣れたオレにとっては
【見切り】が出来ない程じゃない。
バウンドモードの一撃を
ギリ急所を外れるくらいに受けながら
伸びた部分に触手でしがみつきたいな。
【ロープワーク】を駆使して
ダメ押しでSaugerのカラビナも引っ掛けてみるね。
▼反撃
さっき助けた毛利水軍の兵士さん達に
オレが秀吉の攻撃に当たった瞬間に
焙烙火矢を水面に投下して欲しいって頼んでみるね。
可能なら弾幕代わりになるかも!
体が戻るスピードに更に上乗せするように
UC発動!行くよGlanz!!
特攻しながら
Krakeを展開して【一斉発射】ァ!
【零距離射撃】を喰らいやがれ!!
※絡み&同乗&アドリブ歓迎!
アルトリウス・セレスタイト
先手を取られるなら、凌げるようになるしかあるまい
避け得ぬ先制は纏う原理――顕理輝光を全力で運用し対処
『天光』『天護』で攻撃を確実に捕捉
『超克』で”外”から汲み上げた魔力を用い『励起』『解放』で個体能力を一個の生物の極限まで引き上げ、『無現』『虚影』で捌きつつ行動
攻撃は天位での強化からの打撃戦
最大限干渉力を強化した原理を運用し迫る
異界の物品を使うなら、これに文句もあるまい
『絶理』で物理法則による制限を脱し、『天光』『天冥』で逃さず、『討滅』に全力の魔力を注いだ白打での一撃を見舞う
叩き込んだ死の原理を『再帰』で循環させ、途切れなく延々と続く死の一撃で仕留める
●
毛利水軍の大船団を抜けた先、関門海峡上にゴムマリの如く跳ねる其を見た一同は、犀利な炯眼を更に絞って、先ずは吃驚を口にした。
「黒い……猿? 猿、なのか……?」
「……毛玉だなぁ。黒い毛玉」
『フェンフェーン!! フェンフェン!』
「鳴き声も不思議だし……」
仇死原・アンナ(炎獄の執行人・f09978)が声色を固くして語尾を持ち上げる上空で、ユース・アルビトラートル(見据えるもの・f03058)がそっと柳葉の眉を顰める。
『フェンフェンフェーン!! フェーンフェン!!』
其は正しく、メガリス『逆賊の十字架』の能力によって異形強化された『豊臣秀吉』。
古書や伝承にて彼を知る者こそ、眼前の異様に衝撃を受けたに違いない。
天翔ける双翼に風を掴んだ儘、漆黒の異形を見下ろしたオリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)は、予習に使ったUDCアースの歴史書とは随分と姿を変えた彼に、眼鏡を隔てた金瞳を大きく震わせていた。
「これが……豊臣秀吉?」
『フェンフェーン!』
「なる、ほど……それが渡来人の至宝『メガリス』の脅威と……」
『フェンフェン! フェーン!』
人語は操らぬが、なんとなしに疎通も出来る不思議。
黒毛の異形の円らな両眼を暫し見詰めたユースは、然し静かに睫毛を落として、
「――いや、考えるのはやめよう。不毛だ」
不毛。
骸の海を潜るより前は、天下人として名を馳せた英雄の有り様を考えるより、今は唯、超強化された黒毛玉の攻略を見出すべきと、我が叡智を研ぎ澄ませていく。
『フェンフェーン、フェンフェンッ!!』
腹部に刻まれたスペードマークが妖しく揺らめいたのは、この時。
異形は四肢を伸ばすや腹を迫り出し、漆黒の光線【グレイズビーム】に穹を裂いた。
九時の方向から裁ち裂くように放たれた魔の一条は、先ずアルトリウス・セレスタイト(忘却者・f01410)の長躯を両断しに掛かる。
「――先手を取られるなら、凌げるようになるしかあるまい」
蓋し声は水を打った様に冷静かつ沈着。
纏う原理――『顕理輝光』を活性化した彼は、全知の原理『天光』と希望の原理『天護』にて禍き焦熱を捕捉すると、創世の原理『超克』で“外”より最古の理を導く。
厖大なる魔力に満たされた躯は、間もなく美し淡青を迸らせ、
「存在に眠る威を呼び覚まし、境界を超え全を己とする」
其は宛ら人の器に注がれた光。
創造の原理『励起』と、自由の原理『解放』で個体能力を一個の生物の極限まで引き上げたアルトリウスは、否定の原理『無現』を駆使して盾を為し、或いは流転の原理『虚影』で絶影を駆りながら回避した。
『フェンフェンフェーンッ!!』
然し『メガリス』によって強化された秀吉の魔力も厖大なれば、ビームは尽きること無く雲を薙ぎ払い、紺碧の天蓋を裂かんばかり。
『フェンフェン!! フェンフェン!!』
この時。
危うい魔光こそ妖し殺気に結ばれたか――脅威を察知した異形はふと太陽を仰ぐと、殺気の漂う光源目掛けてビームを射る。
「――想定内だね」
やはり、と嗤笑を零したのは、正に太陽を背に空を飛んでいたユース。
殺気と呪詛、そして威厳に満ちた気配を漂わせていた彼は、闇黒の魔光線が咄嗟に「一番目立つ」太陽に向けて脅威排除をするだろうと読んでおり、予測の通りに射られたビームを危なげなく回避する。
繊翅に風を集めて颯と身を翻した少年は、手応えなく苛立った異形が二つに分かれ、漸う肥大化する片方の黒影に鋭眼を絞った。
「あれは――」
其は秘技【墨俣一夜城】。
漆黒の異形の倍ほど膨れた黒塊は重厚なる城と化し、主の動きを映して襲い掛かってきた!
『フェンフェン! フェンフェンフェン!!』
「墨俣城型ロボ……!? 城型ロボとはいったい……!?」
秀吉の言に疑問符を浮かべつつ、オリヴィアが瞬時に聖槍の刃鋩を向ける。
『フェンフェン! フェンフェンッ!!』
「――ッッ!」
巨岩の如く迫る櫓型の拳に活眼を開き、軌道を見切って受け流す。
衝撃の余波が螺旋の刃となって柔肌を裂くが、美し白皙に血滴を乗せた凄艶は、敢えて之に逆らわず、吹き飛ばされる事で距離を取る。
剛を制す受け身が二撃目の拳を空振りにさせると、魁偉は大きく蹈鞴を踏んだ。
「……巨大なら威力は相応でも、動きは緩慢と」
眼鏡を縁取る紅のアンダーリムを繊指に持ち上げ、佳声が言を置く。
墨俣城型ロボがオリヴィアを睨める間、主の秀吉はというと、【猿玉变化】にて黒毛の異形を縦横無尽に伸縮させ、パウル・ブラフマン(Devilfish・f04694)に先制を仕掛けていた。
『フェンフェンフェーンッッッ!!』
「……速い!」
十分に隔てた距離を須臾に無と化す伸縮の腕が、視界いっぱいに迫る。
神速の爪撃が、パウルの眼帯『Geheimnis』ごと面輪を切り裂くか――否。
スピードの限界、高速の世界を見慣れたパウルの瞳は、漆黒の猛爪が睫毛に触れんばかりギリギリまで惹き付けた後に半身を退いて躱すと、伸び切った腕に触手を絡めてしがみつく。
『フェンフェンッ!!』
「嫌がってる、みたいだけどっ!」
腕を振って拒む相手には、更に『Sauger』のカラビナを引っ掛けて。
斯くして自在の腕と結ばれたパウルは、水陸両用バイク『Glanz』を左右に揺らしつつ、海上に弧を描いて波を蹴立てた。
『フェンフェンフェンッ!!』
なればと逆の腕を伸して追撃に掛かる敵には、後部座席に据わったアンナが応じ、
「守護獣よ掛かって来い……! ワタシが相手する!」
雷を降らせる様な凛然たる佳声は、「猿の黒毛を削ぎ落してやる」と挑発も加える。
すれば瞬きの裡に爪撃は迫ろう、アンナは鉄塊の如き巨大剣『錆色の乙女』の剣鋩を突き立てて迎撃し、
『フェンフェンッ!! フェンフェン!!』
「……ッッ、この守護獣を倒さないと先に進めないなら、やるしかない……!」
角逐――ッ!!
パワーとスピード、爪と剣が紫電を閃かせて相剋した刹那、アンナは繊手に疾る激痛を受け取りながら手首を翻し、幅広の剣身に衝撃を往なした。
「多少の損傷は耐える、耐えきる――!」
敵が強大なれば、その首を狩るに支払う代償も多く求められるとは知っている。
アンナは異形の血と己の血で滑る我が剣を強く握り直すと、激痛に収縮して主の下へ戻った腕の下――飛沫を立てる海面に、ゆらり、何かが潜む影を見て花唇を引き結んだ。
「これは――」
「――ボク付の書記官、『元は護衛の死霊騎士』、ジャスティーナ」
其はユースの右腕、【書記官】ジャスティーナ。
ユースと同じ強さを有し、更に高度な雑用もできる人間大の死霊騎士は、刻下「秀吉直下の水中」に召喚され、奇襲のタイミングを任されている。
「気付きようのない位置から剣撃を加えて貰うよ」
彼女の自立的思考にある程度委ねつつ、自身は上空より戦況を読みながら指揮を執る。
然して間もなく少年は、我が書記官が突き立てた鋭刃が、漆黒の異形のバランスの要たる尻尾に沿って斬撃を疾走らせる景を眼下に敷こう。
『フェンフェンッ、フェーンッッ!!!』
「血は赤いのか……まだ少し人間だった部分が残っているのか……」
『フェンッ、フェン……ッッッ!!』
「うん、傷に塩水は染みるだろうね」
激痛を訴える悲鳴と、冷静に徹した佳声のアンバランス。
紺碧の海に鮮血が交じりゆく中、蹈鞴を踏んだ秀吉をアルトリウスが追い立てた。
「これより最大限干渉力を強化した原理を見舞う」
『フェン――』
其の原理は【天位】。
具象化し武装と纏う原理を統合強化した状態に昇華した彼は、『顕理輝光』の威力を増強させ、外的干渉の無効化、一時的な存在原理の改変による飛翔能力を得る。
『――ッフェンフェン!! フェンフェンッッ!!』
須臾に激痛が躯を蝕み、後で其が打撃であった事を知る秀吉。
腹部よりビームを射出する身なれば、丸まって防御する選択は無かったか、漆黒の異形は射角も捉えられぬ裡に次撃を喰らい、その場に押し留められる。
『フェンフェン、フェンフェンフェン!!』
「――まさか。異界の物品を使うなら、これに文句もあるまい」
『フェンフェン!!!』
会話はそこで断たれたか。
断絶の原理『絶理』で物理法則による制限を脱したアルトリウスは、最早、天衣無縫。
全知の原理『天光』は万物を見通し、因果の原理『天冥』は未来を予知して反撃を排し、そして死の原理『討滅』は、繊麗の白手を刃と変えて破滅を告ぐ。
全力の魔力を注いだ手刀は、何にも勝る冴刃となって――腹部に沈んだ。
『フェンフェンフェンフェンッッ!!』
スペードマークに叩き込まれた一撃は、循環の原理『再帰』によって無限を為し、途切れなく延々と続く「死」によって沈黙させる。
遠距離攻撃のビームを殺された秀吉は、苦悶の表情を浮かべながら背進する。
蓋し未だ戦意を失わないのは、己が機動力が生きているからか――凄まじいスピードで跳ね回った秀吉は、俊敏より繰り出す爪撃に猟兵を蹴散らさんとした。
『フェンフェンフェーン!!』
だが、然し。
10秒先の未来を視る【絶望の福音】にて移動の軌跡を把握していたアンナが、既に罠を仕掛けていれば敵うまい。
「機動の要――脚を奪う」
『フェンフェン!!』
進行軌道上に投げ入れられた『赤錆びた拷問器具』は漆黒の脚に咬み付き、傷口を抉って神経を麻痺させる。
凡そ攻むにも退くにも脚が要るもの。
之を封じれば仲間の攻撃も通りやすくなるだろうと、漆黒の瞳は醜く裂けた創痍の深さを確かめる。
『フェンフェン! フェンフェン!』
「いや、これで終わりじゃない」
畳み掛ける、と言ちた白皙は玲瓏にして冷徹。
妖刀『アサエモン・サーベル』の柄に『鎖の鞭』を巻き付けたアンナは、繊手に旋回して勢いを付けた所で黒毛玉に投げ込む。
逆の脚もと彼女は断ったろうか――剣鋩は深い体毛を突き進み、十分な手応えを以て肉を貫通した。
『フェーンッ! フェーンッッ!!』
「こいつは悪魔で守護獣……倒すべき敵はあそこにいる……!」
絶叫が碧落を裂くが、アンナの意志に固められた佳声は掻き消されず。
この時、是の首肯を添えたパウルが、大きくハンドルを切って動いた。
「そうだね、オレ達の目的地はまだ先にある」
毛利水軍の益荒男らを救う為にも、オレ達は其処に到達しなきゃいけない――。
口元に柔かい咲みを湛えた儘のパウルだが、その胸奥には先に救助した毛利水軍の武士達より預った炎が宿っている。
未だ秀吉の漆黒の腕と繋がれた彼は、巧みな操舵で円弧を描きながら当該の場所に移動して、
「さっき助けた毛利水軍の兵士さん達に、焙烙火矢を水面に投下して欲しいって頼んだんだ。反撃の瞬間に炸裂したら、弾幕代わりになるかも!」
己と敵の位置。
そして毛利水軍の船の配置。
全てが揃った瞬間に、焙烙火矢が水柱を立てた。
『フェンフェンフェン!! フェンフェン!!』
夥しい量の水飛沫が海上を覆い、秀吉の伸び切った黒腕の先を隠す。
この時、「緩んだ」「離れた」と錯覚したのが失策だったろう。秀吉は張力から解放されて安堵したが、其は実はパウルが腕が縮むスピードに加速を掛けており、目下、愛騎ごと秀吉目掛けて特攻する。
「行くよGlanz!! ゴッドスピードライド!!」
『フェン――ッ』
自身の移動速度と戦闘力を増強したパウルは、固定砲台『Krake』を展開して一斉掃射!
「零距離射撃を喰らいやがれ!!」
『フェンフェーンッッ!!』
爽快な水飛沫と、甘く死の馨る鉄鉛を浴びる秀吉。
凄惨たるキスを受け取った漆黒の異形がゴムマリの如く弾き飛べば、やや距離を隔てた海域から「やんや」と喝采が湧く。パウルと共に一矢浴びせた毛利水軍の声だ。
『フェンフェン!! フェンフェーン!!』
海面に沈みそうになるところ、辛うじて跳躍した異形は、然し其の場で凛冽極まる聖女が待っていたとは――気付くのが遅かったろう。
「貴方は私が、ロボはサンダルフォンが預かります」
『フェンフェン!』
「言わずもがな――終焉を」
距離を取って大局を見ていたからこそ、両者に王手を差せたか。
オリヴィアは【天軍戦士の召喚】(サモン・サンダルフォン)――無敵の武装天使サンダルフォンを降臨させ、強い祈りと信仰心によってその躯を巨大化させる。
魁偉は墨俣城型ロボに比肩し、抜き翳した御魂の剣は彼の拳に勝ろう。
「先の方々と違って、遠慮する必要はありませんね」
手加減の必要は一切無し、と金瞳を炎の如く煌めかせた佳人は、自身は秀吉を、サンダルフォンはロボと一騎打ちで剣戟を交え、海上で激しい角逐を見せた。
『フェンフェン、フェンフェン!!』
「いいえ、メガリスの能力もこれまで。骸の海に還る時です」
仲間の攻撃により、グレイズビームは封じられ、猿玉变化も攻略された。
機動力、バランス、敏捷を喪った今の秀吉は、既に「黒くて丸い毛玉」に等しい。
「……ここで討つ!」
怪力を籠めた聖槍が、毛を斬り肉を裂き、心臓を穿つ。
『フェンフェンフェーンッ――ッッ!!』
ここに潮を噴く如く血飛沫を上げた異形は、今際の咆哮を挙げて絶命した。
『秀吉殿……ッ!!』
まさか、と声を震わせた弥助が名を叫ぶ。
然し波間に沈む黒い毛玉は最早なにも言うまい。
秀吉の断末魔の叫びも、弥助の叫びも。荒々しく波を蹴立てる潮流は、全て波音に掻き消して、海上に座す猟兵を雄渾と立たせていた――。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴
第3章 ボス戦
『大帝剣『弥助アレキサンダー』』
|
POW : 大帝の剣
単純で重い【両手剣型メガリス『大帝の剣』】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD : 逆賊の十字架
自身の身体部位ひとつを【触れた者の闘志を奪う超巨大肉塊『視肉』】に変異させ、その特性を活かした様々な行動が可能となる。
WIZ : 闘神の独鈷杵
自身からレベルm半径内の無機物を【無尽蔵に破壊の雷槌を放つ『闘神の渦潮』】に変換し、操作する。解除すると無機物は元に戻る。
イラスト:みやこなぎ
👑5
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
戦大将として泰然と構えていた弥助の表情が漸う曇りゆく。
真一文字に結ばれた唇が滑らせた声の音吐は、より彼の憮然を示していたろう。
『毛利水軍の大船団を突破し、秀吉殿を破った……だと……!』
とは詰り、渡来人の至宝が破られたという事だ。
大軍勢を洗脳して操るメガリス『大帝の剣』が無力化され、対象を異形強化するメガリス『逆賊の十字架』を以てしても、猟兵を駆逐することは敵わなかった。
追い詰められたか――否。
眉を固く顰めながらも敗色に染まらぬ顔貌は、未だ彼等を排斥する術を持っている。
『俺はこの戦の間、メガリス『闘神の独鈷杵』の力によって関門海峡に大渦を発生させ、その中心に浮遊しながら、三つのメガリスの力を高めていた』
三つ合わせれば何とやら。
一つ一つは破られたとしても、三位一体となれば大いなる脅威を齎す。
愈々殺気立った弥助は、右手に剣を、左に独鈷杵を握り、黒膚の首に十字架を提げて焔(ほむら)立つ。
『来い、猟兵ッ! 格段にパワーアップしたメガリスに虚しく屠られ、三至宝が呼び起こす天変地異、雷の大渦に呑まれるが佳い!!』
言うや弥助を中心とした海域に『闘神の渦潮』が逆巻き、無尽蔵に雷槌を放つ。
蒼白い閃光に天地が結ばれる中、猟兵はその身を飛沫に輝かせて攻め掛かった。
エル・クーゴー
【ワイルドハント】
●POW
・対先制
パルの艦隊の内、一隻を借り受け搭乗
敵を牽制する砲撃船と共に進軍
敵攻撃圏内と見次第、搭乗船を突出させます
地形破壊攻撃へのカウンターとして、当機は当艦船に対しとある改造を実施していました(メカニック&武器改造)
即ち――十中八九かの大剣が叩き付けられるであろう、甲板全面への爆発反応装甲化改修
攻撃者を【吹き飛ばし】、反撃に移行する機を見出すことを目的とします
・反撃
搭乗船へ【攻城級マネギ】を召喚し接続
互換性は【ハッキング】でどうにかします
アームドフォート(アップサイジング版)、搭載火器フル展開
360度旋回砲塔として運用し、弾幕及び艦砲射による【援護射撃】を適宜敢行します
パル・オールドシェル
【ワイルドハント】
この状況でなお退かぬ忠節、見事です。
「無敵艦隊」および「星歌隊」残存全艦全艦載機、闘神の渦潮へ順次突入を開始。
砲撃にて敵を牽制しつつ、白兵戦を仕掛ける友軍が艦上を駆ける為の足場となるのです。
敵はこれを無視できぬ筈。猟兵の接近を許す前に撃沈を狙うでしょう。
しかし艦隊はそれを誘う囮。物量にて敵の対処能力を飽和させ、友軍の損害を軽減しましょう。
そして私自身も真の姿――巨大なる人型戦艦、惑星護る機巧として我が身を投じます。
僚艦に勝る耐久性と火力、これこそが武人を斃すための私の全力全霊。
大帝剣に囚われた人々の祈りを我が身に集め、戦艦そのものたる巨槍による衝角突撃にて戦局を砕く一撃を!
荒谷・ひかる
【ワイルドハント】
先制攻撃はパルおねえさんのお船を一隻借りて、高度を取りつつ回避行動
雷の精霊さんにお願いして、雷撃をできるだけ逸らしてもらう
変換してる無機物は多分海水で、渦潮を維持するには空間が必要なはず
なら、海の中を「有機物」で埋め尽くせば……
【草木の精霊さん】にお願いして、戦域内の海の中を多種多様な「海藻」で埋め尽くすんだよっ!
渦潮を作る場所も材料の海水も、これでかなりなくなるはずっ!
あとは深菜おねえさんと協力して、海藻さんたちにたっくさん光合成して酸素を作ってもらうよ。
普通よりも酸素が濃い場所では、火はよく燃える……酸化反応が激化するの。
そんなところで、戦艦が爆発したらどうなるかな?
白鳥・深菜
【ワイルドハント】
「戦争って、えげつないものよね。
いいえ、こっちの話よ」
先制攻撃としてやってくるであろう『闘神の渦潮』は
【空中浮遊】で大渦を、【電撃耐性】で雷の軽減を図る。
そしてコードはひかるの『草木の精霊さん』で発生した、
海を埋め尽くすほどの海藻に対して合わせて使用。
「希うは<草>の<異常活性>、望むは生命活動の疾走!」
海藻を異常に活性化させ、光合成を促進させ酸素を大量放出。
その高濃度の酸素を、爆発反応する甲板周辺に漂わせておけば……
「酸素濃度が高ければ、着火温度は下がるし、
引火すれば普段の比じゃない大爆発が起きるわね」
しかしまあ<異常活性>なんて。
「寿命を削れ」って言ってるような物ね……
●
関門海峡の大渦に仁王立ちする戦大将、大帝剣『弥助アレキサンダー』。
毛利水軍なる駒を失い、秀吉なる盾も奪われた今、不屈の闘気を立ち昇らせる威容は当に武士(もののふ)だった。
「――この状況でなお退かぬ忠節、見事です」
全ては信長様の為に――と云ったか。
パル・オールドシェル(古き戦友・f10995)は黒膚の大男を誠の忠士と認めると、我が指揮下にある「無敵艦隊」及び「星歌隊」の残存艦・艦載機を再編成し、渦中たる『闘神の渦潮』へ順次推進させていく。
そこは紫電が龍の如く天を貫き、無数の稲妻が檻を為す嶮難。
逆巻く怒涛の中、白梟の双翼にて難しい風を掴んだ白鳥・深菜(知る人ぞ知るエレファン芸人・f04881)は、噛み付かんばかりに迫る雷撃を滑空して躱し、
「大渦は空を飛んで回避するとして、雷は耐性で凌ぐしかないわね」
「深菜おねえさんっ! わたし、雷の精霊さんにお願いして、雷を集めてもらうね!」
空を往く深菜と並行して艦船に搭乗していた荒谷・ひかる(精霊ふれんず癒し系・f07833)は、漸う高度を上げる甲板で精霊杖【絆】を振り翳す。
「避雷は導雷や誘雷と同じなんだよっ」
豪放磊落な雷の精霊が電位差を緩和して落雷の頻度を抑えると同時、自らを避雷針の如くして雷を食べれば、幾許か制禦は叶おう。
「美味しそうに食べるのね……」
属性を自在に操る深菜なれば、雷の精霊が煌々と光を増す様を納得の表情で眺め、「扨て」と翡翠の瞳を海上に落とす。
彼女と視線を揃えたひかるは、荒々しく飛沫を蹴立てる大渦を具に観察して、
「あふろさんが渦潮に変換してる無機物は多分、海水……」
「ええ、あれだけの量を資源にされると厄介よね」
「海の中を有機物で埋め尽くせば……材料はなくなるんじゃないかなぁ?」
「――成る程」
言を交し、首肯を揃える。
戦術は決まったか――ここに向日葵が咲む如く花顔を輝かせたひかるは、親友たる【草木の精霊さん】(プラント・エレメンタル)にお願いして、戦闘海域を多種多様な海藻に覆い、海中を埋め尽くさんとする。
「精霊さんっ! この海峡を海藻で覆いつくして!」
然れば精霊は応えよう。
もさもさ、もさもさと生え出でた海藻は、海を侵食するように広がって、先ずは猛々しい潮流に身を揺らし、次いで大渦の流勢を阻害するほど増えていく。
「渦潮を作る場所も、材料の海水も、これでかなりなくなるはずっ!」
「それじゃあ、次はわたしの番」
紺碧の海が豊かな緑に呑み込まれていく様子を眼下に敷いた深菜は、【災厄と希望の開放器】(パンドーラー・エルピス)――<属性>と<自然現象>を合成した災厄魔術を発動する。
「希うは<草>の<異常活性>、望むは生命活動の疾走!」
森羅万象も強引に発現されれば災厄となるとは、今の光景を見れば瞭然。
現下もっさりと繁茂した海藻は、生命活動を異常に活性化し、光合成を超促進させて酸素を大量放出している。
「しかしまあ<異常活性>なんて。『寿命を削れ』って言ってるような物ね……」
その危うさは術者こそ息を凝らそう。
眼には見えないが、刻下、海域の二酸化炭素は悉く酸素となって放出され、どんどん濃度を高くしているとは敵は知るまい。
弥助は目に見えて現れた変化にこそ眉を逆立て、
『足場の大渦を止めた……!? 奇術使いめ、直々に刃をくれてやろうッ!!』
大帝剣として武に組み伏せる可しと、高く躍動して攻め掛かった。
これに間隙を置かず応じたのはパル。
「戦闘序列展開。戦場機動後、全艦砲撃開始」
接近する弥助を砲撃にて掣肘し、圧倒的物量にて敵の対処能力を飽和させる策戦か、雷槍の如く降り注ぐ光砲は弥助も無視できまい。
『鉄の塊が俺の行く先を阻むなど――!』
怒れる戦大将はメガリス『大帝の剣』を振りかぶり、真一文字に一閃――ッ!
純粋なる斬撃の波動が、射線上に座す戦艦を悉く破壊していく。
「前衛の二割が損傷、一割が撃沈……想定より大きい損害ですが、策戦を続行します」
戦況が更新される毎に勝率が変動するも、パルの指揮は揺るがない。
彼女は視界の端より突出して前進する一隻を見送り、間もなく其が戦局を優勢に決定付ける瞬間を聢と見届けた。
「物理攻撃の波及圏域及び疆界を測定しました。これより機動します」
「了解。貴艦を管轄から除外します――完了」
「当機搭乗船は、現下敵性牽制中の砲撃船と共に突出します」
「了解。進路援護します」
轟砲と衝撃に穹が震える中、パルと電子暗号を交したのはエル・クーゴー(躯体番号L-95・f04770)。
直撃した周辺地形をも破壊に巻き込む【大帝の剣】を攻略すべく、搭乗船に或る改造を施していたエルは、まさに其処に――甲板に一撃を誘うべく艦列を抜ける。
『むっ! 一騎突出とは急いたな。事を仕損じるぞ』
大将を見て功を焦り、列が乱れるとは騎馬隊とてある話。
弥助はエルの単騎駆けを嗤ったが、好餌に食らいついたのが己と知るは間もなく。
『大帝剣は単騎で獲れる首ではないと、骸の海を潜って知るがいい!!』
天地鳴動の大剣閃――ッ!!
両腕に渾身の力を注いで猛刃を振り下ろした弥助は、艦船を両断せんと剣鋩を甲板に叩き落したが、刹那、大爆発が彼を吹き飛ばす。
『ぐおおをををっっっ!!』
何故なら、甲板全面が爆発反応を起こす装甲に改修されていた。
何故なら、爆発が異常なまでに膨れ上がるよう酸素濃度も高められていた。
全てが仕組まれた罠であり、彼等が練り上げた策戦だったとは、凄まじい焦熱と白光に佳顔を照らした深菜とひかるが教えてくれよう。
「海藻の光合成で発生した高濃度の酸素を、爆発反応する甲板周辺に漂わせたの」
「普通よりも酸素が濃い場所では、火はよく燃える……酸化反応が激化するんだよ」
嗚呼。
麗し花の少女らは、何と爽やかに脅威を語ろうか。
「酸素濃度が高ければ、着火温度は下がるし、引火すれば普段の比じゃない大爆発が起きるわね」
「そんなところで、戦艦が爆発したらどうなるかな?」
其の答えは。
即ち、眼前に広がる景。
『――おおお嗚嗚ををを!!!』
碧落は青白く浮き立った須臾に灼熱の色を広げ、一瞬で雲を掻き消す。
熱膨張した空気は弥助を吹き飛ばし、轟と逆巻いた炎がアフロを焼いた。
『ッッ……! やってくれたな、猟兵……!!』
まんまと爆薬に爪を立てた己を呪うより、敵の見事な戦術に悔しがろうか。
直情的にぶつかり、返報を受け取る弥助に純然を感じたパルは、己もまた透徹にして十全なる力を暴くが誠意かと、ここに真の姿を解放する。
「――僚艦に勝る耐久性と火力、これこそが武人を斃すための私の全力全霊」
其は巨大にして壮麗なる人型戦艦、【惑星護る機巧】(デウス・エクス・マキナ・イフ)。
右臂に『戦艦槍パルラス・アテーネⅡ』、左臂に『要塞盾ネオス・アルカディア』を備え、『思念加速器オールド・ハイロゥ』を展開した人造神は、熾烈極める連戦を凌いだ戦艦を連れて弥助を追う。
二臂が鉾と盾を握る中、残る二臂が掌を合わせて祈る姿が印象的であろう、
「大帝剣に囚われた人々の祈りを我が身に集め、戦艦そのものたる巨槍による衝角突撃にて――戦局を砕く一撃を!」
『ずぉぉおお嗚嗚ッッ!!』
墜下する弥助を上回る速度で鋭槍の鋩が風を切る。
弥助はメガリス『大帝の剣』で之を受け止めんとするが、超強化されたパルの巨槍に刃が零れ、宙で虚しく剣身を別つ。
『メガリスが、渡来人の至宝が……折れ……ぐあッッ!!』
その勢いの儘、海面に叩きつけられた弥助は、人型巨大要塞艦の突撃に臓腑を圧殺されたか――しとど繁噴く飛沫に鮮やかな紅血が滲んだ。
『ぐあぁぁああ嗚呼ッッッ!!』
三つ目のメガリスの敗北は弥助に敗色の濃厚なるを感じさせたが、其が覆らぬものと突き付けたのはエル。
「これより搭乗船に接続した【攻城級マネギ】を運用します」
『ッ、ッッ……!!』
「互換性はハッキングでどうにかしました。シンクロ率400パーセント」
『ッ!! !?』
ざぶり、水飛沫を被りきった折に上空に見えた光景。
骸の海を潜る前より変わらぬ太陽に翳を差した巨影は、月白の双翼を広げたデブ猫型機械兵器『マネギ』――お腹周りがやさしめの招き猫が、巨大砲撃拠点として降臨したのである。
「アップサイジング版アームドフォート、搭載火器フル展開」
『な、ん……っっ!!』
エルの命令――主の音声波形に感応したマネギは、360度旋回砲塔として海域一帯を網羅すると、艦砲を一斉解放する。
周囲の酸素を取り込む様に弾幕を張れば如何なるかは、深菜の佳声が示そう。
「戦争って、えげつないものよね。――いいえ、こっちの話よ」
『ずぁぁあああ嗚呼嗚呼!!!』
或いは弥助は、その声を最後まで聴く事は叶わなかったろう。
宙空より垂直に無断に撃ち落された砲撃は、咄嗟に構えた『闘神の独鈷杵』を穿ち、我が身を守る『逆賊の十字架』を断ち切って、血飛沫を上げる躯を海面に押し付ける。
大爆音と轟砲、そして我が絶叫が今際に聞く音声となったか。
『信長様、無念に御座いまする……!!』
戦大将、大帝剣『弥助アレキサンダー』は、【ワイルドハント】の一大連携戦術に敗れ、もっさり生い茂る海藻の間に揉まれ、潰えた――。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
ナイ・デス
【念動力】で自身を【吹き飛ばし】飛行【空中戦】
大渦の中へ
突貫します……『イグニッション』!
変身で飛翔速度は秒速68m以上に
更に、威力の上がった念動力による自身吹き飛ばしで加速
『ただ速く――
【第六感による見切り】で避け
【オーラ防御】で軽減+腕で頭を【かばい】受け
『生まれながらの光』発動しようとすることで渦潮さらに操作されるが
【覚悟、激痛耐性】ぼろぼろでも意識落とさず『生まれながらの光』発動
高速再生して
――もっと速く!』
秒速1.3km以上にまで加速
黒剣、つまり全身鎧のどこか使った一撃……攻撃回数9倍
【暗殺】急所狙い【鎧無視攻撃】である九連『瞬断撃』!
そして、視肉変異もされてるので触れ、落下
交代です
ユース・アルビトラートル
【真の姿解放】
いやぁ、ね。全力を尽くすその姿勢は悪いとは言わないよ。しかし――そのやり口が悪辣すぎるんだ。強大な力で、破滅を齎す。無辜の民を洗脳してまで。斯くの如き理解に及ばぬ恐るべき存在に、人は排除を求める。少なくとも、もうボクには止められない。
弥助は、制御を離れた剣自体が独立して攻撃しているのを知り得るだろうか。この手にあっても、使用者がお飾り。ボクの身も意識も失せても、剣は攻撃を続ける。道具に雷などそう効くまい。間違いなく対処に難儀するだろう。
とはいえ、あの大渦はそれ自体防御となる。しかし、剣が発する強大な呪詛は渦に関係なく通用するはずさ。
ボクにこんな事させないでよ、本当に……
オリヴィア・ローゼンタール
1つでも強力だったメガリスとやらを3つ同時に……
確かに尋常ではない力ですが、相当な負担になっているのでは?
しかし三位一体と言われては負けられません
真の姿と【空中戦】を維持
父と子と聖霊の御名において――!
あの巨腕と大剣は伊達ではない筈
【全力魔法】で炎の【オーラ防御】を展開し、【聖槍で受け】流す
力に逆らわず吹き飛ばされることで致命的な一撃を受けないように
海の藻屑と沈んだフリをして機を窺う
聖槍を手放して【念動力】で操り、弥助を挟んで自分と反対側に飛び出させる
秀吉を討った聖槍の【威厳】【存在感】に気を取られた瞬間、自身も海中から飛び出し、【属性攻撃】【踏みつけ】による【熾天流星脚】を放つ
蹴り砕く――!
仇死原・アンナ
アドリブ絡み共闘OK
この世界では武人の事をマスラオと呼ぶらしいけど
まさにそう呼ぶに相応しい相手だ…
ワタシは処刑人として相手をしよう…!
仮面を被り真の姿の[封印を解く]
敵の一撃を[視力と見切り]を使用し[ダッシュとジャンプ]で回避
[電撃耐性、オーラ防御]を纏い[勇気]を振るい宙に舞う
そして【ゲヘナ・フレイム】を発動し地獄の炎を身に纏わせて[空中戦]で上空高く舞いあがり
鉄塊剣を掲げ[力を溜め]ながら敵めがけ垂直に落下する
[怪力、鎧砕き]と共に[捨て身の一撃]を敵に叩きつけて渦潮巻く海中へ[吹き飛ばし]てやろう…!
敵と共に海の藻屑になる[覚悟]はある…!
刺し違えてでも倒す…!
相馬・雷光
独鈷杵を持ってるなんて聞いたから駆けつけて来たけど……なにあれ、ヤバくない?
あの大剣、私なら一撃でも受けたらお陀仏ね
【見切り】と【ダッシュ】でとにかく避ける!
雷のパワーの応用で全身に電磁力(オーラ防御)を帯びて、反発力で弾かれるのも利用!
悔しいけど私じゃ太刀打ちできそうもないわね……
【属性攻撃】【全力魔法】【帝釈天降魔砲】を【スナイパー】の【武器落とし】で体勢を崩させるのに専念するわ!
カートリッジ解放! 大盤振る舞いよ!
アルトリウス・セレスタイト
御高説結構だが
迫る猟兵は三ではきかんぞ
避け得ぬ先制含む自身へ届く攻撃は纏う原理――顕理輝光を最大限働かせ対処
『励起』『解放』で一個体の持ち得る極限まで個体能力を引き上げ、残る全てを行使して迫る
攻撃は破天にて
魔力を溜めた体内に魔弾を生成・装填
全力の魔力を注いだ高速詠唱での装填を『再帰』で無限に循環させ、それら全てを統合
溢れる分もオーラで押し留めて保持し、自身と周囲の球形空間を、触れれば万物一切死に絶える死の魔弾と化す
必要な魔力は『超克』で“外”から汲み上げ供給
そのまま目標へ近接し、一瞬でも捕らえ離脱を封じ、
集積した魔弾の全てを解放
周囲一切を大渦諸共消し飛ばす
※アドリブ歓迎
パウル・ブラフマン
【SPD】
▼先制攻撃対策
視肉化した部分に触れないよう
Glanzを【運転】し
Krakeの射程範囲を保ちながら猛【ダッシュ】!
念の為、周辺船舶の渦潮化も警戒。
猟兵仲間に注意を促し、必要に応じ手助けを。
近辺の毛利水軍さん達には距離を取るように呼びかけるね。
▼反撃
視肉って伝説だと…確か何度切っても復活するんだよね?
ならそれ以外の部位を狙撃していこう!
【援護射撃】なら任せて☆
【地形の利用】を念頭に可能ならアウトレンジ戦法を。
厳しければヒット&アウェイを駆使して対抗。
任せてよ、海図もバッチリ頭に入ってるからさ♪
隻眼で弥助の胸元の十字架を捉えたら
撃ち落とせるかどうか試してみるね。
※絡み&同乗&アドリブ歓迎!
●
毛利水軍なる駒を失い、豊臣秀吉なる盾を亡くし。
戦大将として王手をかけられた大帝剣『弥助アレキサンダー』は、果して孤軍の将であったか――否、彼は敗勢を払い除けて余りある覇気に漲っていた。
『何度でも謂おう。全ては信長様の為に――!』
其が真理と腹底より喝破する。
すればメガリス『闘神の独鈷杵』は両端の槍刃に稲妻を迸らせ、関門海峡の海域一帯に怒涛逆巻く渦潮を喚んだ。
穹に霹靂、海に怒涛を從えた大帝剣は、攻め来る猟兵を仁王の如く睨め据え、
『信長様の野望を砕かんとする者は、俺が必ず討つ。――此処で!!』
無尽蔵の雷鎚が戦場を檻と囲む中、その中央に大将を捉えたナイ・デス(本体不明のヤドリガミ・f05727)は、念動力で我が身を宙空に吹き飛ばしながら、その進路を渦中へと結んだ。
「突貫します……『イグニッション』!」
桜唇がほつりと告ぐは【エクストリガー『ブレンホルズ』】(エクステンドオーブ)――繊指を覆う黒手袋が二振りの短剣に変じると、更に全身を覆う黒鎧となる。
之と融合して黒騎士と成った少年は、真の姿たる「光」を内に秘めつつ、69m/秒の飛翔速度を以て閃雷の巣に突入し、大帝剣目掛けて翼を駆った。
月白の艶髪も、玲瓏の緋眼も。
全てを光と変えれば、意志だけが強く疾走しよう。
「ただ速く――」
更に念動力を増強して加速したナイは、龍の如く立ち昇る雷撃を見切り、或いはオーラで防御しながら、マフラーを棚引かせて翔る、翔る。
無数の雷鎚が彼を捉えんと黒鎧に噛み付けば、ナイは聖なる光に身を癒さんとするが、ユーベルコードに感応した渦潮がここに稲妻を閃かせる。
「ッッ!」
灼かれて癒し、また灼かれる――並の猟兵では先に意識が果てるものを、少年は痛撃を覚悟して受け取りながら、【生まれながらの光】に高速再生していった。
「――もっと速く!」
真の「光」たる彼は、攻撃を叩き込む瞬間には1.3km/秒を超えていたか。
刻下、漆黒の右臂を迫り出したナイは、【瞬断撃】――刹那に九回の斬撃を叩き込むべく弥助に肉薄する!
『……この攻撃を受けてはならぬと言うか。十字架が黄金の身を輝かせる!!』
この時、メガリス『逆賊の十字架』が弥助のアフロヘアーの一部を視肉と変じ、巨大な肉塊と膨れてナイの視界を遮った。
「――ッ」
畢竟、彼が斬ったのは数多の眼球をぎょろりと動かす肉塊。
切り口から肉を生む異形は、ナイの黒剣――即ち全身鎧と融合したナイに触れ、彼の闘志を、ひいては翼を駆る意志を奪った。
「――交代です」
唇を擦り抜けたテノールは静けく。
漆黒に染めた繊麗の躯が、荒々しく飛沫を蹴立てる渦潮に落ちゆく時――怒涛に滑り込んだ水陸両用バイク『Glanz』がその躯を預った。
「視肉化した肉塊が自律行動を取ってる……触れないようにしないと」
操者はパウル・ブラフマン(Devilfish・f04694)。
海面を弾む視肉に対し、固定砲台『Krake』の射程を保ちながら荒波を分けたパウルは、ハンドルを握りつつ他の猟兵に警戒を促す。
「秀吉のような速さはないにしろ気を付けて、あと毛利水軍さんは距離を取ってね!」
力強い首肯を返す仲間達。
そして間もなく野太い「応」の返事があり、船団が戦闘海域を離れる。
渦潮の流勢に乗りながら、鞠の様に弾む視肉――黒く丸いフォルムに先の強敵を重ねたパウルは、【ゴッドスピードライド】で移動速度と戦闘力を高めながら照準を絞る。
「確か何度切っても復活するんだよね? ならそれ以外の部位を狙撃していこう!」
標的は視肉でなく、其を生む主。
渦潮の勢いに乗る肉塊と一定距離を保ちつつ、高速移動中に射撃するのは至難の業だが、海図を手に入れて地形を把握したパウルなら難しくない。
「地元の漁師さんが言ってた。波を押さえつけるんじゃなくて、波と共に在れって!」
彼は猛々しく白浪を立てる潮流に乗りながら、精確精緻に鉄鉛に弾いて、
「ヒット&アウェイを繰り返して揺さぶるアウトレンジ戦法だよ!」
『むぅっ……ッッ!!』
己は的を絞りつつ、敵には的を絞らせない――絶妙な立ち回りで弥助を翻弄する。
視肉がパウルに触れるより、パウルの砲弾がメガリスに触れる方が早かったろう。
「胸元の十字架、繋ぎ目を狙えば撃ち落とせるかな」
深い海の色を秘めた隻眼を一瞬、怜悧に細めた彼は、鳩尾と鎖骨の間という僅かな空間に衝撃を撃ち込み、黄金の十字架を切り離した。
『ずゥッ…………なん、だと――ッ!!』
閃弾に魁偉を弾かれた弥助が、蹣跚めき様に宙空に躍る十字架を見る。
間もなく其は異国の輝きを波間に隠し、異形化の能力が海底に沈んだ。
『ッッやってくれる――!!』
激昂した弥助に畳み掛けるは、ユース・アルビトラートル(見据えるもの・f03058)。
眩し太陽の方角から現れた少年は、真の姿“歪なる審問者”を解放し、紫黒の闇と迸る殺気と呪詛に身を包みながら、強大な呪詛を振り撒く正義の剣を打ち落とした。
「いやぁ、ね。全力を尽くすその姿勢は悪いとは言わないよ。しかし――そのやり口が悪辣すぎるんだ」
『ッ、視肉が……!!』
冷徹の声と共に開かれたのは【魔女裁判】(ヒステリック・トライアル)。
ユースの統禦を離れた正義の剣は、悪の塊たる視肉に垂直に鋩を落とすと、ぎょろりと動く目玉ごと串刺しにする。
「この手にあっても使用者はお飾り。ボクの身も意識すら失せても、剣は攻撃し続ける」
視肉が闘志を奪ったとして、道具たる剱は罪を裁くのを止めない。
ユースは剣閃に任せる儘、怜悧に言ちて、
「強大な力で、破滅を齎す。無辜の民を洗脳してまで。斯くの如き理解に及ばぬ恐るべき存在に、人は排除を求める」
少なくとも、もうボクには止められない――。
故に視肉を貫いた剱が、強大な呪詛に感応して迸る雷鎚に身を投げ、その焦熱を以て肉塊を灼いたのは、ユースの狙いではなかったかもしれない。
珈琲色の麗眸を目隠しに覆い、白皙に触れる高熱で視肉の消滅を悟った少年は、ぼたぼたと朽ち落ちる死肉の感触に嘆声を零して。
「ボクにこんな事させないでよ、本当に……」
『ッッ、小躯の童が知った口を――!!』
ユースの爪先が弥助へと向かえば、弥助は歯切りして独鈷杵を振り翳し、更なる渦潮を喚んで足止めを図るが、正義の剣に動かされる彼の歩みは止まらない。
「道具に雷などそう効くまい」
『ッッ、ッ小癪な……』
加えて。
纏う原理――顕理輝光の能力を極限まで引き出して迫るアルトリウス・セレスタイト(忘却者・f01410)も厄介至極だったろう。
「三位一体が脅威を齎すと――御高説結構だが、迫る猟兵は三ではきかんぞ」
避け得ぬ攻撃には、個体能力の強靭と堅牢を以て対処する。
畢竟、相剋を制すのみだと唇を引き結んだアルトリウスは、創造の原理『励起』と自由の原理『解放』にて一個体の持ち得る能力を最大限まで増強する。
「漂う淡青は覚醒を促し、光と為り鍵を開く」
『これだけの迅雷を浴びて怯まぬとは、見事……ッ!!』
弁慶とて真似できぬ、と弥助が息を呑むのも無理はない。
雷鎚は怒れる龍の如くアルトリウスに噛み付き、ロングコートや諸々の装備を引き裂くが、その龍の牙を掴んで手折る躰こそ烈々。
彼は身に疾る激痛を靴底に摺り潰すと、我が鼓動を詠唱として【破天】を現した。
「――存在の終わりとしての死を導く」
血流と共に巡る魔力は滔々、体内に魔弾を生成・装填し。
循環の原理『再帰』は其を無限に循環させると、軈て全てを統合する。
『こ、れは――!!』
厖大な魔力を溢流させる事なく押し留めたアルトリウスは、己が周囲を球形空間に囲み、触れれば万物一切を絶やす死の魔弾を生成した。
「必要な魔力は『超克』で“外”から汲み上げれば尽きることは無い」
一触即発の魔力エネルギーが、須臾、全てを解放する。
溢れた魔弾は狂濤を超え閃雷を裂き、軌道上に或る全てを消し飛ばしながら弥助へ。
『ッッ、メガリスよ! 大帝の剣よ!!』
間に合うか――!!
弾指の間に両手剣を抜いた弥助は、その剣身を身体に沿わせて盾にする。
『ぐっっ……ぉぉおお嗚嗚!!』
辛くも致命傷を遁れた弥助だが、安堵する間は無かろう。
間隙を許さずオリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)が翼を駆り、数多の雷鎚に囲われた檻を抜けて聖槍の刃鋩を差し向けたのだ。
『ぬをっ!!』
剣は間もなく聖槍と結び合い、剣戟を間に言が交される。
「一つでも強力だったメガリスとやらを三つ同時に……確かに尋常ではない力ですが、相当な負担になっているのでは?」
『ッッ、フフ……俺の躰を心配するとは余裕がある!』
「――成る程、冗談を言う余力はあると」
其の角逐は天地を揺るがそう、凛然たる佳顔と不敵な嗤笑が火花を挟んで睨め合う。
槍と剱、武と力が熾烈な抗衡を為す中、炎の御柱を降ろした双翼の聖女は、純粋かつ純然たる斬撃を『破邪の聖槍』に受け流し、胸を突き上げる剣圧を炎のオーラで防御した。
『渡来人の三至宝を從えた俺に敵う者はいない!』
「三位一体と言われては負けられません」
蓋し長きに打ち合えば、差が生じるのは仕方ない。
オリヴィアが「伊達ではない」と認めた巨腕は、大剣を振るう地力があり、恵まれた躰から渾身の力で振り下ろされた一太刀に圧された彼女は、海面に強く叩きつけられた。
『メガリスッ! 俺に信長様を援ける力を!!』
「ッッ――!」
波間に沈むオリヴィアを斬撃の余波が追う。
「独鈷杵を持ってるなんて聞いたから駆けつけて来たけど……なにあれ、ヤバくない?」
雷神インドラの加護を受けて閃雷の檻を潜った相馬・雷光(雷霆の降魔忍・f14459)は、一太刀打つ毎に海嘯を引き起こすメガリス『大帝の剣』の威力にちょっと焦る。
「あの大剣、私なら一撃でも受けたらお陀仏ね」
敵の力量を図る洞察は鋭い雷光。
まともに斬り結べば吹き飛ばされてしまうだろうと距離を取った矢先だった。
「きゃぁっ」
剣撃が衝撃波となって波を揺らし、凄まじい波動が雷光の繊躯を垂直に突き上げる。
しとど水飛沫を浴びて夏色の柔肌を濡らした可憐は、頬を拭うや疾風となり、
「これ以上は――とにかく避ける!」
忍者の得手は回避にありと、軽やかな跳躍と神速の脚で斬撃を躱した。
渦潮が放つ雷鎚は、全身に電磁力を帯びることで対処し、反発力で弾かれる事も利用して海域を移動した少女は、弥助が大振りになった瞬間に犀利を増す。
「悔しいけど私じゃ太刀打ちできそうもないから……体勢を崩させるのに専念するわ!」
緋眼が光を帯び、厖大な魔力を解放する。
「カートリッジ解放! 大盤振る舞いよ!」
『――ぉぉおお!!』
二挺拳銃、ヴァジュラブラスター『鋼』と『黒』に装填した神酒の霊気が溢れる。
間もなく弾かれた【帝釈天降魔砲】は、海を削る様に疾走するや『大帝の剣』を捉え、超強力な雷撃に弥助が蹈鞴を踏んだ瞬間――オリヴィアが動いた。
力に逆らわず、吹き飛ばされる事で致命傷を避けた彼女は、今が好機と見極める。
『女! 海の藻屑と沈んだ筈では……!』
「父と子と聖霊の御名において――!」
弥助の吃驚と、オリヴィアの祈りが同時に重なる。
手放した聖槍を念動力で操った彼女は、弥助を挟んで自分と反対側に飛び出させ、
『むっ――!』
秀吉を討った聖槍を背にする事を警戒した弥助は、その鋩が放つ剣呑に視線を繋ぐが、この時、オリヴィアもまた海中から翼を広げて飛び出す。
其は光の柱と見紛う程の燦然。
「蹴り砕く――!」
碧落に猛き炎を輝かせるは、【熾天流星脚】(ブレイズ・ストライク)――聖なる炎を纏った跳び蹴りが、その僅かな隙に楔と打ち込まれた。
『ずアァァッッ!!』
今度は弥助が波間に沈むか――否。
受け流すも戦術であろうに、彼は痛恨の一撃を聢と受け取ると、黒膚を鮮血淋漓とさせて踏み止まった。
『全ては信長様の為に……退くことは俺の忠誠が許さない……!』
杖にした両手剣を再び構え、反撃の一太刀を振りかぶる。
その勇壮なる姿は、戦大将というより、一介の忠士であったろう。
「この世界では武人の事をマスラオと呼ぶらしいけど、まさにそう呼ぶに相応しい相手だ……」
弥助の武勇と忠心を認めた仇死原・アンナ(炎獄の執行人・f09978)は、彼に安い死は与えぬと、誠意を持って『処刑人の仮面』を被り、真の姿を解放する。
「ワタシは処刑人として相手をしよう……!」
其は呪われし処刑人の一族、『アンダルシャナ家の紋章』を受け継ぐ者。
アンナは間もなく振り下ろされる大剣閃の軌道を見極めると、穹高く躍動して宙返り、地形の破壊を逃れる。
『ほう……俺を介錯するつもりか!』
彼女を最後の好敵手と認めた弥助は、血濡れた顔貌に好戦的な笑みを湛え、
『俺が斃れるか、お前が先に斃れるか――競り合おうじゃないか!!』
枯れるほど号(さか)べば、渦潮は須臾に呼応して雷鎚を放つも、アンナは白龍の如く疾る閃雷に耐え、身を蝕む激痛を勇気に変えて戦場を舞った。
彼女と火花を散らす弥助は、既に多くの猟兵と戦いながら気焔万丈。
『力は俺が上、技はお前が上……流血の程は五分!』
いや、死の際を往く程に昂るか、更なる技を見せろとばかりアンナを睨める。
剣戟を交えて彼の胸奥に触れたか、アンナは此処に【ゲヘナ・フレイム】を発動し、
「共に海の藻屑となる覚悟はある……! 刺し違えてでも倒す……!」
この身の無事など望まない。
唯、弥助を処断すると固く決めたアンナは、殺意猛々しく燃ゆる地獄の炎を身に纏い、未だ霹靂に満つ穹に高く高く舞い上がる。
巨大剣『錆色の乙女』に渾身の力を漲らせた凄艶は、振り下ろす勢いに重力を乗算して墜下し、全身全霊――捨て身の一撃を叩きつけた。
「終焉の刻だ……!」
『――おぉぉおおをを嗚嗚ッッッ!!』
今際に盾した『闘神の独鈷杵』が砕け、圧倒的衝撃が弥助を貫く。
メガリスの力を失した大帝剣は、海面に叩き付けられると同時、怒涛と迫る渦潮に呑まれ、黒膚の魁夷を紺碧の海に隠した。
『おぉぉおおをを嗚嗚ッッッ!! 信長様、無念に御座いまする……!!』
関門海峡の海域一帯に絶叫が谺する。
荒々しく白波を立てる渦潮が収まったのは間もなくの事で、険難の海に珍しい凪を見た猟兵は、ここに大帝剣『弥助アレキサンダー』の死を受け取る。
渡来人の至宝『メガリス』を手に戦った強敵は、海に散った――。
熾烈な戦いだったと、我が創痍に手を宛てつつ波間を見詰めた猟兵達は、弥助が最後まで忠を尽くした主――信長を斃すべく、海峡の向こうに犀利な視線を向けるのだった。
成功
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