0

エンパイアウォー⑩その船は湯船か

作者：劇団劇作家

「次の戦場はですね……海になります」
　戦争中のサムライエンパイアについて自身が担当する戦場を指差しながら稲荷・四乃はそう言った。
「今回皆さんに対処していただきたいのは南海道にある紀伊水道を中心とする海域の防衛任務になります。
　現在、南海道をを進む徳川幕府軍はこの南海道を海を渡って進行中であり、オブリビオン側も瀬戸内海を暴れ回ったという村上水軍という海賊を怨霊として甦らせて従えて妨害作戦をして来ているもようです。
　また、オブリビオン側の船も厄介な物となっています。大悪災『日野富子』の財力により全長２００ｍの鉄甲船だという情報が入っています。この船の大きさをイメージするならば……UDCアースにおける一般的な豪華客船や超弩級戦艦と呼ばれるほどの大きさ、サムライエンパイアの技術では本来不可能なレベルの大きさの船だと考えていいでしょう。
　それで本題ですが、猟兵の皆さんにはこの鉄甲船のうち一隻の無力化をお願いします。無力化する方法は、船に掲げられている村上水軍の海賊旗を奪う事です。そうすることによって船を漕いでいる怨霊たちは消滅し船は動かなくなります。ただし、オブリビオンも船に乗り込んでいるため海賊旗を奪われぬよう妨害してくるので気を付けてください。そして追加の情報ですが、村上水軍の怨霊たちはあくまで船の動力源となっているだけのようなので猟兵の皆さんはオブリビオンの妨害だけに注意してくだされば大丈夫だと思われます。
　今回の作戦の説明は以上です。それではお願いします」

第1章 集団戦 『骨抜き妖怪『衣蛸』』

POW   :    随分と凝ってるタコ～。俺たちのようにほぐすタコ！ 【タコの保護色能力で全身を迷彩して接近し】【筋肉の塊である8本の触手で相手を捕まえ、】【マッサージで弱らせてからの絞めつけ攻撃】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。 SPD   :    カッピングもやってますタコ～。血流良くなるタコ！ 【タコの保護色能力で全身を迷彩して接近し】【非常に強力な吸盤で相手を捕まえて、】【カッピングで生気を吸い取り弱らせる攻撃】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。 WIZ   :    運動不足じゃないかタコ～？ヨガは身体に良いタコ！ 【再生能力を活かして非常にしぶとく接近して】から【筋肉の塊の触手と強力吸盤で相手へ捕縛攻撃】を放ち、【操り人形のように強制的にヨガをさせる事】により対象の動きを一時的に封じる。 イラスト：まめのきなこ 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

「なんか、信長の軍って魑魅魍魎の類とか、人じゃない奴らばかりだね。“人”望、ないのかな……？」
　幾多の戦場を経てオブリビオンが人の形を成してない事が多い事にになんとなく織田信長の心配をし始めるファン。
「ま、知ったことでは無いけれどね。『天翔る羽よ、斬り給え。』」
　ファンはUC【天羽々斬】を発動し、天華の複製を用意するとそれを海の上に浮かべ船までの道にする。
「よいしょっと。この船は誰もいない？」
　目的の船に着き、甲板に来たものの見渡す限り敵が見えない事に困惑するファン。彼女は不意撃ちを喰らわないために複製した天華を周囲に展開し回転させ警戒しながら目的の旗を狙う。
「あれか。さて、砕牙でも投げてへし折ろうか……！？」
　ファンは目的の海賊旗を見つけて手に入れようとするが、気づけば周囲に展開した天華が見えない何かに絡め取られている事に気付く。
「やっぱりいた。数は……いくつ？」
　具体的な数は分からないが、姿を消したオブリビオンが周りにいることは間違いない。
「やっぱ倒さないといけないか」
　旗取り合戦はそう簡単にはいかせてくれない。
　ファンは【歓喜の細剣】の細剣を構え見えない敵に挑む。

成功 🔵​🔵​🔴​

「水軍ね。海から攻めるとはずいぶんな策を考えたものだ」
「そうですね。それに進軍は進ませる訳には行きませんので」
「生来誇り高い水軍を怨霊を使っているのも許せませんね。彼らの魂を救う為にも」
　視線の先、海上に浮かぶ敵の船を見つめる真宮一家。響と奏は敵の進軍を止めようと考え、神城は船の動力源とされている村上水軍に憐みを感じた。神城は勘違いしているようだが、村上水軍は海賊である。
　真宮響はUC【真紅の竜】、真宮奏はUC【蒼の戦乙女】、神城はUC【月読の騎士】を発動し三人は船に向かった。

　三人は船に着き、船上の様子見る。先んじて到着し戦闘中の猟兵の姿が見えるが、オブリビオンの姿が見えない。
「これは？」
「どうゆう事でしょうか。お義母さん」
　真宮奏と神城は自分達の母である真宮響に指示を仰ぐ。
「恐らくだけどオブリビオンが隠れているのか、猟兵側が幻覚にかけられているかの二つだろうな。二人とも気を付ける事！」
「「了解」」
　三人は三カ所に分かれて旗取り合戦に入って行った。

「敵の姿が見えないのは厄介だが……旗を取らねばどうにもならんな」
　鉄甲船に掲げられた旗の一つのそばに着いた真宮響。竜から降りたち、武器を構え旗に触れようとするが、その直前で見えない何かに触れる。
「こいつか！」
　真宮は咄嗟にその場から離れ周囲を警戒する。だが気づけば背中から柔らかい感触を感じ背筋が凍る。
「しまった！？」
　真宮響は気づけばオブリビオンに捕まっており、オブリビオンの手によって竜は消えてしまった。真宮響は自分の子供たちに言った言葉を自分の胸に戒めるのであった。

「私はこの旗を奪取して無力化を早めましょう」
　母とは異なる旗に目を付け、旗取り合戦に挑む真宮奏。彼女は親の指示通り周囲を警戒しながら旗に近づく。
「！？」
　真宮奏は目の前で突如飛び込んできた骨抜き妖怪『衣蛸』に気づき、咄嗟に避ける。
「危ない。タコのオブリビオンでしたか」
　真宮奏が再度旗の周りを見てみると、先ほど現れたオブリビオンの別個体たちが姿を現している。そしてオブリビオンたちは旗を取らせまいと旗本に集まる。
「うぐっ……数はこれ程ですか」
　その数は数体ほどだが、密度が高いため真宮奏的にはやりづらい状況になっていた。
　オブリビオンたちはUC【運動不足じゃないかタコ～？ヨガは身体に良いタコ！】を発動し真宮奏に飛びかかる。真宮奏は【ブレイズセイバー】を振るい追い払うがオブリビオンたちは自慢の再生能力で斬られた個所を再生させ、真宮奏に絡みつく。
「うわああああ！」
　真宮奏は海に落下し、海水に浸かりながらヨガをさせられることになった。

「誇り高き海兵のためにもいち早く旗を取らねば」
　今だ勘違いを続けている神城。彼も二人とは別の旗の下まで飛んで来て敵影がないか周囲を見渡す。見渡せば旗を守るようにタコのオブリビオンが数体姿を現す。
「やはりいましたか。いざ、勝負」
　神城は【六花の杖と月虹の杖】を構え、飛びかかって来るオブリビオンを吹き飛ばしていく。だが、オブリビオンたちはタフで吹き飛ばしても吹き飛ばしても襲いかかってくるためキリがなかった。
　

苦戦 🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

「『こんな事もあろうかと！　ガジェットスピードライド！　……どうや？　うちの子、イカスやろ♪』」
　UC【ガジェットモードチェンジ【高速騎乗】】でホバーバイクを召喚し鉄甲船に接近いる各務。彼女は船の波に巻き込まれないために気をつけながら船の背後に近づく。
　船尾に近づき上の旗を確認すると、【からくり人形「リュカ」】を船に投げ入れ、各務はそのまま船を追い人形を待つ。

　リュカは船の側面を登り甲板に降り立つと、村上水軍の旗元に近づきとろうとするが突如見えない何かに絡め取られ動けなくなる。

「遅いな……オブリビオンやな」
　リュカが船に投げてから数分経って遅いと感じた各務はリュカがオブリビオンによる妨害を受けていると察し、UC【ガジェットショータイム】で万能ポット「フットウ君」を召喚して念動力で浮かせ、中身の煮えたぎった墨汁をリュカのいるところに向けてぶちまける。すると、墨汁はリュカに少しかかるがほとんどは宙に浮いておりタコのような輪郭を伴っているように見えた。
「……ごめんな、後でしっかりメンテするさかい」
　各務も船の甲板までよじ登ると【疾風ハリセン「ツッコミ君」】を構えリュカに纏わりついたオブリビオンを蹴散らしてリュカを救出し、ついでにと旗をもぎ取って撤退していった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

「びゅーん！」
「飛行ユーベルコード持ちは速くていいな……こっちは船漕がなきゃいけないんだからな……」
　UC【エレメンタルドライブ・エアリアル】で飛行し鉄甲船に向かうシルと小舟をせっせと漕ぎシルを追いかける眼健。
　シルの方が先に船に着き戦闘に入るがオブリビオンを見て少したじろぐ。
「いや、あの……たこさんのマッサージは……お断りしますっ！」
　シルが着地した船に居たのはタコ型のオブリビオン骨抜き妖怪『衣蛸』。八本の足をうねうねさせ近づく姿は11歳のシルに怖いものだった。
　シルはすぐさま飛び立ち、空から衝撃波を放ち敵を吹き飛ばしていく。
「よいしょっと……おっと、日本の伝統感ある蛸だな」
　遅れて眼健も鉄甲船に到着して甲板に登り戦闘に加わる。
　眼健は迷彩柄の布を上から被り伏せるなどして船の壁や甲板の色に紛れ２メートル越えの人形【月虹】を操りつつ、UC【絶望の福音】で攻撃に巻き込まれないよう気をつけながらこそこそする。
「傀儡だから効かねえと思ってたが……纏わりつかれると厄介だな！」
　眼健は月虹で姿を消して襲い掛かって来るオブリビオンをUC【虎乱】で対応していくが、想像以上にオブリビオン側がしぶとくキリがなかった。
「しつこいなこいつら……危険だが俺も戦う――」
「おりゃー！」
　眼健が自身も戦おうか決めかねているとシルが衝撃波でオブリビオンを吹き飛ばし海に落としていく。オブリビオンを海に落としたところで倒すことは出来ないが、オブリビオンが船の外壁を登り甲板に戻ってくるため時間がかかるため普通に倒そうとするよりは効果的だ。
　シルはそれが分かっていてやっていたのかは謎だが、眼健はそれに気付き戦法を変える。
「ありがとよ！嬢ちゃん！」
「ん？どっからか声が？」
　数分後、戦っていたオブリビオンを全て海に落とし、旗ががら空きになる。
「これでおーわりっとっ！」
　シルは最後の旗を奪取し空を飛んで船から離れる。
「これで一本……ってか、海賊旗はもう無いんじゃ？……」
　眼健もシルが最後の一本を回収したのを見届け、すぐさま小舟に戻る。
　まだ戦争は終わらない。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

最終結果：成功 完成日:2019年08月30日