エンパイアウォー⑧~惨劇は繰り返さない
その災厄は唐突に村を訪れた。
生気のない濁った瞳。腐りかけた肉体。血に汚れ破れた服。
そして、両の肩から不自然に生えた水晶の煌めき。
水晶屍人と呼ばれるオブリビオンは、ふらりと村に現れて。
農作業をしていた男に襲い掛かり、喰い殺す。
「きゃあぁぁぁ!」
「おとうちゃんが! おとうちゃんが食べられてるよ!」
悲鳴と共に、村はあっという間に混乱に包まれた。
「何だあれは!? 死に人なのか!?」
「3、4、5……まだ増えるぞ」
「こっちくる。おかあちゃん、こわいのこっちくるよ」
「逃げなければ……」
「でも村長、逃げるったってどこへ!?」
「……あっ、おしろ」
「城への道に、やつらはいないぞ!」
「そうだ、城だ。鳥取城に逃げ込め!」
「鳥取城に向かえ!」
「……こうして追い立てて集めた近隣住民を、鳥取城に閉じ込め飢え死にさせることで、強化型『水晶屍人』を量産し、徳川幕府軍を襲わせる、ってぇ算段のようだ」
関ヶ原から3つの街道に分かれて島原へと向かう幕府軍。
そのうちの1つ、山陰道で待ち受ける陰陽師『安倍晴明』の軍勢は、鳥取城を制圧し、ある有名な惨事を再現することで、幕府軍壊滅を狙っているのだと九瀬・夏梅(白鷺は塵土の穢れを禁ぜず・f06453)は苦い顔で説明を続ける。
それは『鳥取城餓え殺し』と呼ばれる兵糧攻め。
飢えた者達が、死した者を、死にかけた者を食べたという、サムライエンパイアでは非常に稀な『人肉食』の記録が残るほどの惨劇となった戦である。
「仲間の死体を喰って生き延び、自分が死んだあとは仲間に死体を喰われた。
……そんな凄惨な死に方をした者が、より強い水晶屍人になるんだそうだ」
村を襲う水晶屍人も、鳥取城でそういった末路を辿った住民の怨霊を利用して生み出されているようで。
強く残った恨みの念により、水晶屍人は奥羽の戦いの時の十倍以上の強さを得ており、纏めて蹴散らすような戦法は難しいだろうと思われる。
数は少なくとも、油断できる相手ではない。
それを言い含めながらも、夏梅は猟兵達ににっと笑って見せた。
「徳川幕府軍への襲撃を抑えるために、そして、さらなる惨劇を防ぐために。
住民達が鳥取城に行かなくていいよう、村に現れた水晶屍人を倒しとくれ」
佐和
こんにちは。サワです。
ごはんはだいじ。
このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
水晶屍人が現れてすぐ、最初の村人が襲われる前に介入できます。
村人は老若男女様々に50人程。
畑仕事をしていたり、家の中にいたりします。
特に指示がなければ、戦いから離れ、家とか安全そうな場所に逃げ込みます。
水晶屍人の数は10体程度です。
安倍晴明が鳥取城の怨霊を利用して造ったため、大幅に強化されており、この数で充分に猟兵達と渡り合えます。
命令に従って動くのみで、会話などはできません。
それでは、惨劇の阻止を、どうぞ。
第1章 集団戦
『水晶屍人』
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POW : 屍人爪牙
【牙での噛みつきや鋭い爪の一撃】が命中した対象を切断する。
SPD : 屍人乱撃
【簡易な武器や農具を使った振り回し攻撃】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
WIZ : 水晶閃光
【肩の水晶】の霊を召喚する。これは【眩い閃光】や【視界を奪うこと】で攻撃する能力を持つ。
イラスト:小日向 マキナ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
テオドア・サリヴァン
「さっさと終わらせるぞ!」
新たな犠牲者が出る前に片付けよう。
敵の前に立ち塞がり「おびき寄せ」で標的を自分にむけるようにする。
基本的には敵が村人たちに注意を向けないように常に自分が標的となるように移動をする。
「妖剣解放」を発動し、素早く移動し、敵を斬り伏せよう。
「彼らも犠牲者だ。手厚く葬ってやろう」
水晶屍人は元は普通の人間だ。これで、安らかに眠ってもらえれば良いと思うが…
今日の作業を終え、そろそろ引き上げようかと男が立ち上がった時。
それは畑の脇に姿を現していた。
最初は、余所者が迷って来たのかと思った。
街道からは外れた小さな村は、隣村も全て顔見知りだったから。
見知らぬ人が近づいて来る、それ自体が珍しく、男は思わずぼうっと立ち尽くし。
生気のない濁った瞳に。
腐りかけた肉体に。
血に汚れ破れた服に。
そして、両の肩から不自然に生えた水晶の煌めきに、気付く。
「……え?」
だが、目にしたものを理解しきれずに、男は目を瞬かせ。
逃げようと思いつくより早く、水晶屍人は男へと手を伸ばした。
「そこまでだ」
唐突に目の前に割り込んできたのは、漆黒の長い髪。
テオドア・サリヴァン(ダンピールの妖剣士・f14908)は男を背に庇うように立つと、伸ばされた手を妖剣で弾き外して。
「新たな犠牲者は出させない」
振り抜いた剣は、屍人が持っていた鍬とがっちり噛み合った。
「ひ、ひいぃぃ!?」
やっと状況を理解したらしい男が、悲鳴を上げて走り去る。
それを肩越しに見つつ、目の前の水晶屍人が男を追おうとせずにテオドアを狙い続けていることを確認して。
テオドアは腕に力を籠め、鍬を弾き返した。
「さっさと終わらせるぞ!」
再び斬りかかるテオドアに、手にした妖刀に込められた怨念が纏わりつく。
先刻以上に素早い一撃は、鍬で防がれるより前に屍人を切り裂き。
追撃にはさらに衝撃波が重なると、屍人を弾き飛ばしながら、深く傷を刻み込む。
最早、その左腕は肩ごと千切れそうな程になっていた。
それでも尚、水晶屍人は起き上がり、右手の鍬を振り上げていて。
テオドアは、不自然な程に煌めく肩の青い水晶を映した青い瞳を細める。
(「彼らも犠牲者だ」)
水晶屍人は、鳥取城の怨霊を基に生み出されている。
戦国時代に最も惨いと言われた『鳥取城餓え殺し』。
兵糧攻めにより食べる者がなくなった城内で、子が親を、弟が兄を、食べていったと伝えられる地獄絵図。
その中で、死んでいった『普通の人間』が水晶屍人の基ならば。
思うものがないわけがない。
それでも、水晶屍人がさらに人を襲うなら。
新たな犠牲者を生むというのなら。
テオドアの剣閃に迷いはなかった。
振り上げられた鍬を掻い潜るようにして、妖刀を振り抜くと、左肩の水晶が澄んだ音を立てて砕け散り。
さらに返す刀でその胴体を大きく大きく切り裂く。
がくんと水晶屍人の膝が落ち、そのまま地面に倒れ込んで。
振り返った足元で、その姿が消えていく。
できることなら手厚く弔ってやりたいと思っていたテオドアだが、遺体が消えてしまうのではその願いは叶わず。
ならばせめてと、そっと目を伏せる。
(「これで、安らかに眠ってもらえれば……」)
無言のまま短い祈りを捧げて。
すぐに顔を上げると、新たな水晶屍人が姿を現していた。
大成功
🔵🔵🔵
鈴木・志乃
……(けほっ)
まだ大丈夫 戦える
私が祈らないで、誰が祈る?
※オーラ防御常時発動
早業念動力で周囲の器物を屍人と村人の間にドスン
そのまま割って入り足払いを狙う
怨念の塊である敵の動きは第六感で見切り
噛みつき攻撃に対し光の鎖を食ませ、腕は縛り上げる(武器受け)
抱き締める(手をつなぐ)
UC発動
祈り、破魔、呪詛耐性を乗せた全力魔法の衝撃波で
安倍晴明の術式、呪詛、怨念、力の源の一切合切をなぎ払う
危険だなんて重々承知だ
それでも私は諦められなかった
一瞬でも思い出してくれ
貴方が幸せだった時を
もう誰かを呪わなくていい
傷つけなくていい
飢えに苦しまなくていい
休んで、いいんです
これしかできない自分が憎い
……。
既に幾つかの村を回ってきた鈴木・志乃(オレンジ・f12101)は、さすがに少し疲れた様子を見せ、小さく咳き込んだ。
とはいえそれは肉体的な疲労というよりは、精神的なものに近いから。
「まだ大丈夫。戦える」
志乃は自身に言い聞かせるように呟く。
「私が祈らないで、誰が祈る?」
しっかりと前を向き、先を真っ直ぐ見つめる金の瞳に映るのは、畑の端を家へ向けて逃げていく男と、その横手から現れて追いかけ始める水晶屍人。
見慣れてしまった敵だが、その存在に慣れることは、ない。
男の横で、馬鍬だろうか、大きな木組みが持ち上がり。
ふわりと宙を動くと、水晶屍人の行く手を阻むかのように、ドスン、と落ちた。
驚いたか足を止める屍人へ、駆け込んでいた志乃は足払いをかけ、転ばせて。
その間に、男が家の中へ逃げ込むのを肩越しに見やる。
念動力で再び馬鍬を動かし、元に戻すと、起き上がった屍人が大きく口を開けて襲い掛かってきた。
腐敗した口の中で、牙がぬるりと光り。
伸ばされた手には、鋭い爪が伸びていたけれども。
志乃はそれを見切り、腕を弾いて懐に飛び込むと、大きく開いた口へ光の鎖を食ませ。
続いて腕を絡め捕り、縛り上げた。
牙を、腕を、封じられた屍人が、ならば双肩の水晶をと動くより前に。
志乃が、動く。
何も持たぬ色白の手を伸ばして。
屍人を抱くように。
天使は優しく手を回す。
(「一瞬でもいい」)
発動させるユーベルコードは、祈願成就之神子。
呪詛や術で失せた想いを復活させ、昇天を導く聖光。
祈りを、破魔の力を、全てを乗せた光が水晶屍人を貫く。
(「思い出してくれ。貴方が幸せだった時を」)
魔軍将である陰陽師『安倍晴明』の術を、屍人から薙ぎ払いたい。
そう強く強く願って、抱く手に力を込める。
(「もう誰かを呪わなくていい。傷つけなくていい。飢えに苦しまなくていい」)
無謀だとは判っている。
危険だなんて重々承知。
それでも。
それでも志乃は諦められずに、願う。
(「休んで、いいんです」)
ただただ、祈る。
しかし屍人が人の心を得ることはなく。
人肉を求めもがき呻き続けるまま、聖光の中でその身体を崩していく。
最期まで水晶屍人のまま倒れ、姿を消して。
光も消えたそこには、立ち尽くす志乃だけが残った。
終わらせることで苦しみからは解き放てた、とは思う。
けれども。
(「これしかできない自分が憎い」)
志乃はぐっと奥歯に力を込めて。
もう何もない空間を睨むようにじっと見つめていた。
成功
🔵🔵🔴
化野・風音
……死者の未練をなどとは申しません
私とて大差はありませんので
ですが、ええ。ええ、ええ。
過去(オブリビオン)が過去の妄念を持って現世を覆そうなどとは度し難い
武器も鎧も帯びない、与しやすい女の身一つで姿を見せて農民の避難の邪魔にならないように逃げまどいます
水晶屍人に追われるままに着かず離れずの【時間稼ぎ】
ですが……これは袋小路に、追い詰められてしまいましたね
――屍人は勝利の感情に酔わないでしょうか?
否や
――屍人は想わないでしょうか
否や
生者が憎く、未だ飢えているから、生者を喰らいその肉を奪うのでしょう?
その怨念を。そして死した肉体を動かす生命力を≪外法・悪喰≫にて絶ちます
……美味しくは、ありませんね
水晶屍人はその女を追っていた。
古びた着物に身を包み、手ぬぐいのほっかむりで顔は見えないけれども。
袖や裾から伸びた白い手足が。薄い着物が露わにする身体の曲線が。
手ぬぐいから零れ伸びる長い銀の髪が。
女をより美しく魅せているかのようで。
その魅力に惹かれるかのように、水晶屍人は女を追いつめる。
美しさを差し引いたとしても、武器も鎧も帯びず、非力で与しやすい女の身。
追いやすく、狩りやすい相手と見るのも当然だろう。
女は時折、水晶屍人をちらりと振り返りながら、村を走り逃げる。
逃げ切ることも、追いつかれることもないまま、その逃走劇は続き。
どんどんと他の村人達から離れていった。
……水晶屍人は気付いていただろうか。
それが誘いであり、村人達から目を反らさせる囮であったことに。
ついに、女は家と家の間、袋小路となる場所に追い詰められ。
「……死者の未練をなどとは申しません。私とて大差はありませんので」
怯えることなく、むしろ毅然と、堂々たる態度で。
女は……化野・風音(あだしのの怪・f11615)は振り返る。
「ですが、ええ。ええ、ええ。
過去が過去の妄念を持って現世を覆そうなどとは度し難い」
するり、と解いたほっかむりの下から、髪色と同じ銀の狐耳が現れ。
そして隠れていた妖艶な美貌が露わになって。
「……屍人は、勝利の感情に酔わないでしょうか?」
風音は艶やかな動作で、ゆるりと首を傾げて見せる。
「屍人は、想わないでしょうか」
そしてまた逆へ。
問いかけながら首を傾げるけれども。
「どちらも否、でしょう?
生者が憎く、未だ飢えているから、生者を喰らいその肉を奪うのでしょう?」
すぐにその表情はふわりと柔らかな笑みに変わった。
その怨念を引き出された過去……オブリビオンなのだから。
過去の妄念を抱き、現世を恨むように生み出されたのだから。
追い詰められ、逃げ場を塞がれた風音は、水晶屍人のその勝利感を以って、小狐の群れを召喚する。
「勝ったと思いましたでしょう?
可哀想に。ここは化野、現世の事象はまこと、変わりやすいものでございます」
小狐達が飛ばした狐火は、次々と水晶屍人を捉えていき。
まるで、炎の顎が喰らうかのように、水晶屍人は炎に呑まれていった。
水晶が砕け、腐肉が焼け、骨すらも灰と化して。
最後には何も残さず全てを燃やし尽くし、狐火は静かに消えていく。
役目を終えた小狐達も次々と姿を消していくなかで。
「……美味しくは、ありませんね」
風音はぽつりと呟いた。
成功
🔵🔵🔴
陰白・幽
うーむ、餓死とかは本当に嫌な死に方だから絶対にしたくない死に方だよね……そんな死に方をする人が出ないためにも頑張っていくよー。
敵が村の人を攻撃する前にさっさと倒してしまうよー。
まずは鋼糸を使って敵の足とか腕とかを縛っるように罠を作っておいて、引っかかって動きにくくしてからトゲ付き鉄球でドーンだよ〜。
鉄球で倒しきれなかったらこのニャンマクラーでドーンと攻撃するよー。猫眠拳の一発で眠らせてあげるよ〜……怨霊さんもこんな暑い時に頑張らなくてもいいんだよ……おやすみなさい、だよ〜。
ふぁ〜あ、結構頑張ったからもう疲れちゃったよ〜……ボクも少しだけ眠ってゆっくりするかな〜おやすみなさ〜い。
「うーむ、餓死とかは本当に嫌な死に方だから絶対にしたくない死に方だよね……」
食べる事と寝る事。
それこそが生きる事だと普段から明言している陰白・幽(無限の可能性を持つ永眠龍・f00662)は、水晶屍人を前にして、微かに眉を寄せた。
屍である以上、何かしらの要因で死した者なのだが。
よりによって、村に現れた水晶屍人は餓死者だというのだから、暴食を理想の1つとする幽には最も悲惨といえる死体だろう。
それに、いろいろ食べる幽としても、さすがに人肉食は体験したくないところで。
当然、体験させたくもないところ。
「頑張っていくよー」
だからこそ、そんな死に方をする人が出ないようにと、ぼんやりした表情ながらもだぼだぼ袖の腕を上げて振り、気合いを見せる。
その袖口からきらりと陽光を煌めかせて、竜繰鋼糸が伸びた。
細いけれども竜をも捕らえられる程に頑丈な糸は、そっと地面に広がって。
その脇に幽はひょいとしゃがみ込む。
じっとしていると、その白い服が目立ったのか、単に村へ向かう途中だったからか、水晶屍人の1体が近づいてきて。
そこに足を踏み入れた瞬間、鋼糸は罠となり、屍人に絡みつく。
脚を、腕を、絡めとられ、もがく水晶屍人へ。
「トゲ付き鉄球でドーンだよ~」
龍破の鉄球が襲い掛かった。
勢いをも乗せた重量物に、だが強化された水晶屍人は堪えきって。
ふらつきながらも倒れず、糸を外して反撃しようともがく。
「あれー?」
その様子を幽は首を傾げて眺めると。
「怨霊さんも、こんな暑い時に頑張らなくてもいいんだよ……」
今度は、抱きしめていた胴の長い白猫の抱き枕を、突き出した。
どう見ても鉄球より柔らかくてふわふわなその一撃は、ユーベルコードによりすっごい威力を与えられて。
猫眠拳として水晶屍人の顔面をもふっと襲う。
「おやすみなさい、だよ~」
直撃したニャンマクラーを離せば、屍人は、がくん、と膝を崩して倒れ込み。
そして、眠るように地に伏すと、その姿は静かに消えていった。
その消滅を見届けて。
ふぁ~あ、と幽は欠伸を1つ。
「結構頑張ったからもう疲れちゃったよ~」
ニャンマクラーを武器ではなく枕として引き寄せると。
もぎゅっとその柔らかな胴体を抱き、もふっと顔を埋めて。
「ボクも少しだけ眠ってゆっくりするかな~。
おやすみなさ~い」
幽はゆっくりと、黒と紫の瞳を閉じた。
起きる頃には村人達に、いつも通りの平穏が戻っているだろうから。
大成功
🔵🔵🔵
真宮・響
・・・・生きるものの尊厳を奪う行為をした奴は絶対許さない。
屍人にされた人もそれぞれの人生があったはずだ。可哀想だけど、ここは生者の世界だ。いつまでも死者が彷徨ってはいけない。
アタシは屍人が逃走しないように用心しようか。【目立たない】【忍び足】で敵が逃げそうな逃走経路に回り込み、接近した敵は【二回攻撃】【範囲攻撃】【カウンター】【武器受け】で対応し、追いつけなさそうな敵は【槍投げ】で対応するよ。炎の戦乙女を発動して手数を増やす。今度こそ終わりにしたい。意に沿わぬ戦いはこれで終わりだ!!
真宮・奏
どこまで人の命を冒涜すれば気が済むんでしょうか。外道も堕ちる所まで堕ちたという事ですか。清明には報いを必ず受けさせましょう。
屍人にされた方はお可哀想だと思います。これ以上、悲劇が広がる前に終わりを。
農民の皆さんに被害が及ぶ前に勝負を付けます!!蒼の戦乙女を発動、飛び回りながら、【属性攻撃】で炎を付与、【二回攻撃】【範囲攻撃】で攻撃します。遠距離が必要なら【衝撃波】で攻撃。群れに押し切られそうなら【シールドバッシュ】で吹き飛ばします。倒すことでしか救えなくてごめんなさい。今度こそゆっくりお休みください
神城・瞬
屍人を作り出した元凶には心底怒りを覚えますが、僕達に出来るのは、屍人を倒し、苦しみから解放してあげること。
ここは生きる人の世界ですから。世界に生きる皆さんの為、力を尽くしましょう。
数が多いですね。全力でいきましょう。【高速詠唱】【全力魔法】【二回攻撃】で氷晶の矢を使います。【鎧無視攻撃】【マヒ攻撃】【目潰し】【部位破壊】【武器落とし】も乗せましょう。もう苦しまなくていいんです。お休みなさい。
「どこまで人の命を冒涜すれば気が済むんでしょうか……」
村へと進み来る水晶屍人達を見据えて、真宮・奏(絢爛の星・f03210)が零す。
悲痛に歪む紫の瞳に映るのは、その腐り汚れた屍だけではなく。
飢餓に、恐怖に、絶望に、苦しみ抜いて亡くなったその過去と。
終わったはずの苦しみを甦らされた今。
そして、その苦しみをさらに広げさせられる未来。
「屍人にされた人も、それぞれの人生があったはずだ」
奏の肩にそっと手を乗せ、隣に立つのは母である真宮・響(赫灼の炎・f00434)。
柔らかな掌に娘への優しさを乗せ。
そして、強い決意を込める。
「生きるものの尊厳を奪う行為をした奴は絶対許さない」
奏と同じ紫色は、屍人の先、それを引き起こした黒幕を見据えていた。
その凛々しい横顔をじっと奏は見つめて。
「僕達に出来るのは、屍人を倒し、苦しみから解放してあげること」
反対側の隣から聞こえた穏やかな声に振り返る。
神城・瞬(清光の月・f06558)のオッドアイが、優しく奏に向けられていた。
紡がれる言葉は、奏を心配するようでもあったけれども。
「屍人を作り出した元凶には心底怒りを覚えますが、今は、それよりも……」
すっと動かした視線で瞬が示したのは、着実に村へと近づいてくる水晶屍人。
「ここは生きる人の世界ですから。
世界に生きる皆さんの為、力を尽くしましょう」
励ますようでもある瞬の声に、奏は、はい、としっかり頷いた。
「これ以上、悲劇が広がる前に終わりを」
迷うことなく1歩踏み出せば、その姿が絢爛豪華な青いドレス姿に変わる。
その背には水色の翼が広がり、蒼い天使は空へと飛び立つけれども。
たおやかな繊手に握られるのはブレイズセイバー。
青白く光る刃は炎を纏い、一番前にいた水晶屍人を大きく切り裂いた。
(「屍人にされた方はお可哀想だと思います」)
次撃をと剣を握り、屍人を見つめる紫の瞳に、まだ悲哀の色は残るけれども。
(「だからこそ」)
それは奏の剣閃を乱すことはなく、むしろ強い願いとなって刃を煌めかせる。
深く傷を負いながらも、だが強化された屍人は倒れるには至らず。
後ろに続く2体と共に、その双肩の水晶を青く輝かせた。
それが眩い閃光となり、奏の視界を奪う前に。
十数本の氷晶の矢が突き刺さる。
「数が多いですね」
静かに呟く瞬は、矢を放った手を屍人達に向けながら金と赤の双眸を細め。
「全力でいきましょう」
その周囲に生み出されるのは、先ほどの比ではない数の氷の矢。
それを見た奏が空へと舞い、一旦間合いを外したのを確認してから。
「さて、これを見切れますか?」
無数の氷が水晶屍人へと降り注いだ。
傷を刻まれていた1体が、流石に膝を折り、崩れ倒れる。
「もう苦しまなくていいんです。お休みなさい」
土に還るかのように姿を消す屍人を見下ろして、瞬は祈るように告げた。
空から見下ろす奏も、そっと目を伏せる。
その間に。
残る2体は、瞬と奏を避けるように転進し、尚も村を目指して進みだした。
だがその行く手を遮るように、赤熱の槍が空を裂き、地面に突き刺さる。
「可哀想だけど、ここは生者の世界だ。いつまでも死者が彷徨ってはいけない」
投げた槍の後を追い、屍人の前に立ち塞がった響は、その目前に魔法石を翳して。
「さあ、行くよ、燃え盛る炎の如く!」
招き寄せるは炎の戦乙女。
槍を構えた赤熱の戦士は、村へは近づけさせないと言うように立ちはだかり。
振るう刃で屍人を足止めする。
そこに再び、氷の矢が降り注ぎ、さらに蒼い天使が降りてきた。
「倒すことでしか救えなくてごめんなさい」
降下の勢いも乗せた奏の一太刀は、屍人を縦に割るように突き刺さり。
「今度こそ……ゆっくりお休みください」
1体がまた姿を消す。
(「清明には報いを必ず受けさせましょう」)
祈りと共に決意を捧げ、伏せていた紫の瞳を上げれば。
目前に迫った屍人が、鋭い爪が光る手を奏へと伸ばしていた。
しかし、爪が奏を引き裂くより早く、その腕は瞬の氷の矢に貫かれて。
動きが止まった一瞬の隙に、奏はシールドバッシュで手を弾き、さらに後方へ水晶屍人を吹き飛ばす。
そして。
(「今度こそ終わりにしたい」)
響の願いに反応した戦乙女が、地面に倒れ込んだ屍人に迫り。
「意に沿わぬ戦いはこれで終わりだ!」
炎の槍を大きく掲げると、力強く振り下ろした。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
鳴宮・匡
◆レイラ(f00284)と
生きてる限りいつか死ぬなんて当たり前のことだ、けど
……こんな風に死ぬのは、
きっと、何かが違うんだ
横合いから足を狙うように【先制攻撃】
間を置かず接近して、近接戦に臨む
レイラの術が成るまでの足止めと
理性がないなら近くにいる方から襲うはず
村人が避難する間の時間は稼げるし
……レイラの身も守れる
動きを見切って回避しながら
足の腱や関節を狙い動きを鈍らせる
幾ら丈夫でも同じ箇所に攻撃を重ねれば通るはず
崩したら即座に飛びのく
レイラの「本命」が刺さるころだ
心配しなくても大丈夫だよ
言ったろ、レイラのせいで死ぬことはないって
だから、遠慮なくやってくれ
苦しめられた人が、迷いなくゆけるように
レイラ・エインズワース
鳴宮サン(f01612)と
ナンテひどいコトを……
痛めつけて殺すだけジャ足らずニ、その後も弄ぶなんテ
そんなコトは絶対させナイ
ここで、止めて上げなきゃネ
角灯を掲げて乞うノハ、死後の安寧
【呪詛】を籠めた【全力魔法】の槍を【高速詠唱】で連打していくヨ
着弾はタイミングをずらして
まずは鳴宮サンが攻撃した部位を狙って回避をできなくさせてカラ
核になっていそうな部位を残りで一気に
鳴宮サンちゃんと避けてよネ
分かってるナラ、いいケドサ!
ソコでそういうコト言うカナ、モウ
この角灯の輝きは道標
迷わず行けるヨウニ、案内するカラ
ここでゆっくり眠ってネ
大丈夫、コレ以上悲劇は起こさナイ
大事なモノを奪う必要はないんダヨ
生きている限り、誰もがいつかは死ぬ。
それは当たり前のことだけれど。
(「……こんな風に死ぬのは、きっと、何かが違うんだ」)
水晶屍人の足に銃弾を撃ち込みながら、鳴宮・匡(凪の海・f01612)は思う。
多くの死を目の当たりにし、多くの死を与えて来たからこそ。
その死を冒涜するような存在に、焦茶色の瞳が揺れた。
それでも弾は真っ直ぐに水晶屍人を襲い。
動きを鈍らせたところへ、匡は駆け込んでいく。
「ナンテひどいコトを……」
その背に届いたのは、レイラ・エインズワース(幻燈リアニメイター・f00284)の悲痛に震える声。
死してなお飢え、人を襲い続ける屍人という存在のおぞましさに立ち竦む。
けれども匡の知るレイラは、悲劇に泣き崩れる程弱くはない。
「ここで、止めて上げなきゃネ」
強く前を見据える赤い瞳が、振り向かなくても見えた気がした。
だからこそ、匡は水晶屍人に接近して戦う。
振り下ろされる鍬を避け、その動きから肘を狙って打撃を入れて。
そこにもう1体が横薙ぎに鎌を振り抜くように切りつける。
だが匡はその動きをしっかり視ていたから。
攻撃からすぐに回避へと、流れるように動きを変えつつ、方向転換に振った足をそのまま蹴り上げた。
鎌を持った手を弾かれ、少しバランスを崩した屍人に、今度は足の腱を狙って再び足を鋭く振り抜く。
尚も追撃をと地を蹴りかけたそこへ、鍬がまた襲い掛かった。
2体の水晶屍人の間で、鍬と鎌とを躱しながら、匡は接近戦を続ける。
近くに居る者から襲うだろうという予測の下、自身が引き付けることで、村人が避難する時間を稼ぐことができるとともに。
(「レイラの身も守れる」)
ちらりと視界の端を見やれば、少し離れた場所で角灯を掲げるレイラの姿。
そこまで水晶屍人の攻撃が向かないように。
匡は、あえて間を空けず、至近距離での攻防を続けていた。
そうして守られるレイラだが。
守られるだけの弱い存在では、ない。
「鳴宮サン、ちゃんと避けてよネ」
匡が稼いだ時間を無駄にせず、詠唱を重ねていったレイラは、生み出した冥属性の槍に鬼火を纏わせ一斉に撃ち放つ。
しっかりとタイミングを合わせて匡が飛び退くと、足を崩され動きの鈍った水晶屍人だけが、槍の行く先に残っていた。
次々と突き刺さる、本命の一撃。
匡が攻撃を重ねた部分をさらに撃ち抜くようにと着実に狙って。
肘を膝を、足の腱を捉えた槍は、屍人の動きを止めていく。
狙い通りの効果を見ながら、匡はレイラに肩越しに笑いかけた。
「心配しなくても大丈夫だよ。
言ったろ? レイラのせいで死ぬことはないって」
「ソコでそういうコト言うカナ、モウ」
怒るというより困ったように、むぅっとした表情を見せるレイラ。
そんなレイラの反応すらも柔らかな微笑みで受け止めて。
「だから、遠慮なくやってくれ」
変わらぬ口調で告げる匡に、レイラはしっかりと頷いた。
そして再び、自身の本体である角灯を掲げる。
煌々と燃え盛るのは紫焔。
苦しめられた人が、迷いなく逝けるようにと輝く道標。
「ここでゆっくり眠ってネ」
呻く水晶屍人へそっと言葉をかけて、レイラは少し哀し気に微笑む。
それだけが自身にできる唯一のことだと理解して。
「大丈夫、コレ以上悲劇は起こさナイ。
大事なモノを奪う必要はないんダヨ」
それだけが彼らの救いであると言い聞かせて。
紫の光に照らされる中で、冥府の槍をまた生み出すと。
エインズワースの魔術は水晶を砕き、屍人を土へと還した。
もう二度と、哀しみが、苦しみが、掘り起こされることのないように。
大成功
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