10
エンパイアウォー⑦~風車瓦解

#サムライエンパイア #戦争 #エンパイアウォー

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#サムライエンパイア
🔒
#戦争
🔒
#エンパイアウォー


0






「アイヨ、みんなおつかれサーン。ど?調子いい感ジ?俺様もいい感じ!」
 きしし、と笑い声を歯でかみ殺しながら。
 ヘンリエッタ・モリアーティ(犯罪王・f07026)の四つある人格のうち一人、「ヘイゼル・モリアーティ」が戦争であわただしくなったグリモアベースの一角にて仲間を募っていた。
「けっこーいろンな幹部が発見されてンだろ。そっちに行くのもいいンだが、もう一個大事なことがあるンだわ。」
 どう扱うんだっけ、と蜘蛛の巣型のグリモアをくるくる回したりしてその調子をうかがいながら己の烏口をした面に触れている。
「上杉謙信。」
 脅威の名前を口にすれば、猟兵たちの顔もやはり――こわばってくれた。
 そうれはそうだろうな、とヘイゼルも思う。こと、サムライエンパイアにおいては軍神でありながら強敵であるというそれにはすでに挑んだ猟兵たちも多いことだろう。
「アイツを倒すにゃ、もちろんアイツをブチのめすことも大事なんだが――もうちょい、だいじなことがあンの。」
 ち、ち、ち。と舌を鳴らしつつ。
 猟兵たちもすでに知っている条件であるから、今更説明する必要も無ェかなとは思う。しかし、この緊迫した状況において改めて情報の整理は必要だろうとも思って。
 集結した仲間たちに一礼をしてから。
「説明する。」
 彼は――いつになく、真剣な声色で床にしゃがんでから、足元においてあった資料を展開した。

 仲間たちも同じように視線を合わせてくれるのを口元だけで微笑んで。
「上杉謙信の討伐にゃ、もう一個大事なことがある。コレだ。」
 紙面にあったのは――戦場となる地形の見渡せる地図のほかに、文字があった。ちょっと雑で描きなれていない墨字は、ヘイゼルの爪に染みた黒が犯人を物語っている。
「車懸かりの陣。これをブチ負かしてやらねェと、関ヶ原で幕府軍を蹂躙しやがる。この陣は、円陣でできてンだ。」
 地図を人差し指で、くるりと囲うようにして這わせてやる。
「センター、上杉謙信。その周りをオブリビオンどもが固めて、風車みてェに回ってやがる。こうすると、最前線の兵士を目まぐるしく交代させるっつー天才ならではの発想で効率よく戦場をまわしやがるわけだ。ムカツクよな?」
 ――統率力に優れた軍神ならではの、「超防御型攻撃陣形」。
 それが、この車懸かりの陣と呼ばれる厄介な仕組みであった。
「これの何がムカツクって、頭のいいお前らならわかると思うが常に向こうにゃ手ごまを回復する時間を与えられる。」
 資料をねめつけて。
「しかも、強化までついてきやがる。この陣で足止めしてる間に上杉謙信のあんにゃろうも復活時間を稼げるっつゥ、鼬ごっこもいいとこになっちまうンだよな。」
 がりがり、と頭を掻きつつも猟兵たちを見てみる。
 各々の受け止め方をしてくれているのだろう表情を確認して――。
「続けるな。」

 つたない、頭のよろしくない「ヘイゼル」の説明でも、届くことを願っている。
「上杉謙信にゃ、俺様はこの依頼じゃ案内できねェ。かわりに、お前達にやってほしーのは……こいつらだ。」
 とん、とん。と何度か地図を叩いて見せる指先には、首のない白虎の写真がはりつけられていた。

 ――『堕ちた白虎』。

「毘沙門天の御使いにゃァ虎がいるらしいぜ。どうだい、足元から崩して一泡吹かせてやろうじゃねェか。」
 出来れば、と言葉を付け加えて。
「こいつらと戦ったことがあるやつもいるかもしれねェが。すッッッげェ固くなってるみてェだ。これも恩恵かね。――だからよゥ、仕留めるときゃ、チクチクじゃいけねェんだ。」
 ごん、と地図ごと床を拳でたたく。
「すぐに回復しちまう。だから、一体ずつ、確実に。一撃の撃破――もしくは、連携攻撃での撃破が望ましい。」
 そのほうが成功しやすいってだけだから、各自好きに動いていいんだけどネ!とは付け加えて。
「だいたい目標討伐数は3~6体ってとこだ。いつもの雑魚だとだけ思ってくれなけりゃァ失敗はねェよ。」
 まあ――。
 この場に集まった仲間たちの視線を見ていれば、そんな油断もしていないのはわかったのだけれど。
「ははッ!」
 なんともまあ、頼もしい!
 立ち上がったヘイゼルは、同じく仲間たちが立ち上がってくれるのを待っていた。
 彼の掌で展開される蜘蛛の巣が、どんどん空間に広がっていく。

「頼むぜェ。俺様もお前らも、こんなところで躓いてられねェ。そうだろ?ああ――そうだろう!」
 不敵に笑った大鴉が、猟兵たちにぎらぎらとした眼光を向けた。
 期待と、――鼓舞を込めて。
「ぶちかませ、猟兵(Jaeger)!軍神に一泡吹かせてやろうや! 派 手 に い こ う ぜ ッ ッ ! 」

 真っ赤な蜘蛛の巣が、未来の使途を戦場へと導いていく!
 さあ、猟兵たちよ。中心に座した軍神の「完璧」を打ち砕け――!


さもえど

 巴御前が好きです。
 十度目まして、さもえどと申します。


 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。


 軍神『上杉謙信』は、他の魔軍将のような先制攻撃能力の代わりに、自分の周囲に上杉軍を配置し、巧みな采配と隊列変更で蘇生時間を稼ぐ、『車懸かりの陣』と呼ばれる陣形を組んでいます。
 つまり上杉謙信は、『⑦軍神車懸かりの陣』『⑱決戦上杉謙信』の両方を制圧しない限り、倒すことはできません。


 今回も戦争シナリオとなります。タイトなスケジュールで行いますので、成功度達成次第でプレイングを締め切ってしまうおそれがあります、ご容赦くださいませ。
 また、ぜひ皆さんの素敵なお子様方のきらりと輝く一撃や、冴えわたる絆の連撃などで燃え上がりながら執筆させていただければと存じます!
 是非是非、ご自由なプレイングでご活躍のほどよろしくお願いいたします。
218




第1章 集団戦 『堕ちた白虎』

POW   :    旋風
自身の身長の2倍の【3つの竜巻】を召喚する。それは自身の動きをトレースし、自身の装備武器の巨大版で戦う。
SPD   :    飄風
【触れるものを切り裂く暴風を纏った突進】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
WIZ   :    凱風
自身に【相手の動きを読む風の鎧】をまとい、高速移動と【かまいたちによる遠距離斬撃】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

グラナト・ラガルティハ
白虎と言うのも神の一種のようなものだと理解していたが…「堕ちた」がつくわけか…なら遠慮することもなかろう。

十分広い戦場だしこれをやっても問題はないか…。

【封印を解く】で神の力を限定解放。
自身の装備品、蠍の剣と柘榴石をベースに
UC【我が眷属の領域】を使用し火炎柱を発生させ【属性攻撃】炎で威力を上げ。
効果範囲内の無機物も遠慮なく使用し火炎柱を生み操る。

風と炎、相性としてはいいだろう。
力押しの様なものだが一撃撃破にはもってこいだと思うのだがさてどうか…。

アドリブ連携歓迎。


マクベス・メインクーン
流石軍神、って感じだな
正攻法に強い手打って来やがる
けどコレを崩せりゃ結構でかいぜ

生半可な攻撃じゃ倒し切れなさそうだな
雷の精霊を魔装銃に宿して雷【属性攻撃】に
【全力魔法】で魔力を込めUCを使用して一気に撃ち抜く
足りなきゃ【2回攻撃】で更にもう一度【傷口をえぐる】ように
同じ箇所に攻撃する
他の猟兵が居れば、その人と攻撃を合わせて各個撃破してくぜ
敵がUCを使用すんなら、こっちもUCで強化して逃さねぇ
固いのに攻撃回避されんのは厄介だしな

敵からの攻撃は【フェイント】で撹乱させて回避
当たるようなら風の【オーラ防御】で相殺する

※アドリブ・共闘OK





 この燃ゆる男は、神である。
「――白虎か。」
 威厳ある雰囲気は、きっと彼が間違いなく神でありそして、戦のために在り続けた――いいや、正しくは戦のためだけ必要とされた存在だからだろうか。
 グラナト・ラガルティハ(火炎纏う蠍の神・f16720)は、この戦局を冷静な顔つきのまま見ていた。
 金の瞳は美しく、彼の立ち振る舞いはやはり姿勢よく堂々としている。
 白虎という存在について、彼は考えていた。彼の纏う焔どもが煌々としながら、空気に流れて熱を逃がす。
 ――彼は、蠍として描かれてきたことが多い。
 連なるようにまとった炎たちがきっと、ひとのこ共の目にはそう映ったのだろう。
 まがまがしい、蠍の尾は。個体によっては毒があり、個体によっては鋭い痛みを伴うものであるから――きっと、彼の力もそう思われていた。
 兄弟のかみどもは、豊穣と愛の神たるものもいたもので。人間に日常的に求められる彼らが信仰心を集めるにはたやすいものだったのだ。
 対して、このグラナトである。
 ――今この瞬間すら、彼の纏う焔がもし、何か魔がさして悪さでもしてしまえばたちまちこの戦場は炎獄となるだろう。
 それほど苛烈な、炎であるのだ。
「神の一種であるようなものだと、思っていたが。『堕ちた』がつくわけか」
 ――虎と、蠍。
 どちらも怯えられ、うとまれ、脅威とされた信仰の対象である。
 その力を望まれるのは人間の都合の良いときばかりで、それに怒るなと絶対の強さを持つ自分たちが耐えねばならない。
 ひとのかたちをするかぎりは――ひとのこころに寄り添える神格であるのに。
 この神を崇める人々は、少ない。
 信じてくれる誰かたちのことを思い出しつつも、だからこの虎を殺すのはどうにも気は乗らなかったが、堕ちた神であるなら。
「遠慮することもなかろう。」
 ――身勝手な人間どもを、許せないと嘆くのか。その亡くした頭がないから、考えられなくなったのか。
 もはや問うことすら叶わぬ彼が、戦場に来たのを。

「グラナトさん!」
「む。」
 ――彼が唯一「愛する」人間が、見かけたのである。
「き、来てたのッ!?」
 帽子の下に隠された、猫耳が隠しきれないままで跳ねていて。
 マクベス・メインクーン(ツッコミを宿命づけられた少年・f15930)が己の背に在る羽やらしっぽやらの先だけをひくひくと跳ねさせて神の元へとやってきたのである。
 日々日々、前へ前へと成長を続ける彼である。20歳になるまでに、彼の呪いを解かないと――彼は愛らしい猫のそれになってしまうのだけれど。
 そうならぬために抗う彼を、この炎の神は愛したのだ。
 ヒーローの象徴に「うってつけ」な赤と炎を宿す神に恋した竜の少年が、二丁拳銃を握ったまま走り寄る。
「グラナトさんがいるなら――軍神も怖くねぇや」
 からっと太陽のように笑って見せるマクベスの目には、間違いなくグラナトは「絶対強い」存在なのだ。
 だから、グラナトも薄く微笑んでやる。
「少々過大評価しすぎだ。だが、負ける気もしない。油断はするなよ。」
「もちろん」
 にい、と少年の顔つきのまま、隣に立った愛する人を燃やしてしまうような神でない。
 ――ならば。

 己にかけた、錠を解く。
 神である力を押さえつけるそれを今だけゆるめて――彼の炎は苛烈を増す!
 炎の気配を風に感じて、きっと大きな虎がやってくるのだ。
 ――マクベスもともに、己の銃に灯す精霊を選んだ。炎の彼と「合わせる」には小さな火種よりも攻撃力の高い刺さるような雷を選ぶ、
 彼の周囲に――稲妻が走る。まるで彼の瞳のように、空気を反射して蒼く輝くそれだ。
 正攻法に強い手を打ってくる相手である。この陣をわざわざ用意して、己は中心で復活を続けるような時間まで確保することも考えるような、この戦場で「戦いなれている」相手の手法だ。
 しかし。
 ――コレを崩せりゃ結構でかいぜ。
 だからこそ。
 ちらりとやはり横を見てみれば。炎を纏う彼が神々しくあった。

 ――負 け ら れ な い 。 い い や 、 負 け な い !

 どう!と走ってくる四つん這いのそれがあった。
 頭を失って、どこで一体彼らの気配を感じているのかすらもわからぬ。だからこそ、恐ろしい!
 堕ちた白虎が駆ける、駆ける!大きな体をしたそれが、戦場の真正面から突っ込んでくる。
「ン゛ッ――なろォオオ!!!!」
 吠えてまず一撃を喰らわせたのは。マクベスだ!
 【身体能力超強化(エレメンタル・エンハンス)】で強化した肉体は、銃の衝撃をも殺す!
 きゅいい、と悲鳴を上げて雷が空気を奔り――巨大な白虎の胴体を撃った!しかし止まらない!
 続けて連射。これでも怯まぬ!
「おいおい――マジかよ!」
 ならばもう一発!
 どう、と放った三撃でようやく――その胸を貫いた。
 しかし!まだ前へと体から黒煙を放ちながらやってくるそれである!爪を突き出した風のけものが、触れるものをすべて切り裂く魔導を纏う!
 みるみるうちに三撃目でようやく穿った胸の穴が塞がれていくのだ。
「さすがゾンビだな。くたばってンのにくたばりゃしねぇってか」
 これには、さすがのマクベスも笑いながら頬を引きつらせていた。
「いいや。――合わせろ」
 その彼の肩を、支えるようにグラナトが握る。
 少年らしい、まだ未熟な体だ。しかし戦う戦士の肩をしていたそれを握る彼の手は、――祝福する。
 グラナトは、戦いの神であるから。今ただしくその恩恵を、たった一人愛した人間に授けるのであった!
「――うん。」
 低い声が、頼もしい。
 マクベスもまた前を向いて諦めない。マクベスの雷で穿てるのだ、グラナトの炎であれば長時間燃やせれば消し炭にできるやもしれない。
 グラナトの柘榴石と、それから蠍の剣から火の粉が散り始めた。剣を抜いて、白虎に突きつける。
 すべてを切り裂く旋風は、走るたびに地面に爪痕を彫り。そして、木々をぐちゃぐちゃにしていく。
 ――堕ちれば神とて獣と変わらない。
 それを金の瞳に刻み付けて!

「 『 我 に 属 す る も の た ち の 領 域 と す る 。 』 」

 ――たちまち、炎が轟いた!
 【我が眷属の領域(ワガケンゾクノリョウイキ)】!!
 グラナトの力の源たちから彼の眷属である炎共が湧き出たならば!
 火炎の柱といってもいい。剣の切っ先を起点として渦巻いた炎の束が密度を上げて、光線のように放たれる!
「スッゲ……。」
 呆けるマクベスの前髪が、その威力に吹き上げられて視界が見やすくなった。
 白虎は鳴くことすら許されぬ質量の中に縛られている。
「――マクベス。」

 金の瞳が、導くように蒼を見た。
 空のような、色を――赤で彩ったのを満足そうに。

「やれ。」
 にやりと笑った彼は、猫でない。

「――おう!」

 頼 も し く 返 事 を す る 戦 士 は 、 竜 な の だ ! 

 火炎柱の勢いは増すばかりで、だいたい読み通りであったグラナトである。
 ――風は炎をよく燃やすばかりだ。燃料となる空気を運んでしまう。
 その起点であるあの白虎の胸中たるや。炎の中でもがき苦しんでいる巨体が影となってでもよくわかる。
 それに焦点を狙いをさだめて、集中する竜がいた。
 先ほどは三回撃てば貫通できたのだ。ならば――その倍の力で。

「 仕 留 め て や る ぜ ッ! 」

 もっとずっと、強く。隣にいる神にはなれずとも、彼のような力を――此処に!
 ばちりと走った電気が、金の髪の毛を浮かせたところで。

 ――轟音。

 その黒が炎の柱に閉じ込められているのを――竜の戦士が炎ごと、雷で穿って見せた!
 少年の体に未だ、雷がちりちりと這うのを耳で拾いながら。堕ちた神が黒灰へと姿を変えて風ごと空へと帰っていく。
 ああ、戦士の一撃がなんと勇ましいことか。炎ごと消し飛ばした一撃に神が微笑んだのだった。
「よくやった。」
「グラナトさんがいたからだって!」
 それは、素直な賞賛と。
 その称賛を素直には受け取れない少年の――確かな愛の交わし方であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鵜飼・章
◎★

わかった
死体を消すのなら得意だ
軍神と死神の戦いといこうか

攻守共に【早業】での素早い立ち回りを意識し
竜巻に巻き込まれないよう留意
攻撃はUC【悪魔の証明】で
【投擲/スナイパー】の技術で針に糸を通すように
竜巻の隙間を抜けて【串刺し】の標本にしてあげる
風の流れを読んで狙いがぶれないように意識し
攻撃に巻き込まれる等で弱った個体は特に優先
仲間が作った隙も見逃さず次々に針を投げる

一度串刺しにすれば後はこの子たちが片付けてくれる
僕の鴉達は食いしん坊でね
首無し死体でも構いやしないよ
ちょっと硬いかな?でも頑張って
飛ばされないように気をつけて

こんな姿で生きるのは可哀想
骨まで綺麗にたいらげて
雲の上まで送ってあげる


矢来・夕立
◎★△
オブリビオンが敷くなら、この陣形のデメリットはほとんどない。
そう。『ほとんど』というのは『全く』ではありません。

殺せば死ぬ

で、一匹一匹仕留める、というのでしたら得意です。
手慣れた手段が通用しそうな敵でもあります。 
手慣れたからといって手は抜きませんが。

《忍び足》で乱戦に紛れて《暗殺》。
仕留めきれなかったヤツはブラフ混じりの《だまし討ち》でトドメを刺す。

幸いにして手数は多いので、手段にも困りません。
風ときたら雷ですので、ここは。
【紙技・紙鳴】。
要はスタングレネードです。
猫だましならぬ虎だまし。
押し切るのにも、仕切り直しにも、咄嗟の支援にも有効です。
…首ありませんけど、通用しますかね。


ジャハル・アルムリフ
城に将が座すならば先ずは砦から崩す
肝要であるな

見事な獣であったのだろう
初めて見る筈だが、顔が拝めぬとは残念だ

ひと息に駆け、白虎へ放つは【竜墜】
衝撃波と、怪力を以て鎧砕く加護を乗せ
身体を穿てずとも、その足元を破砕
その足場の破壊と
群れる虎たちの分断を
何より、続く猟兵の矛が易く届くよう

図体のでかい猫と戯れているようだ
全く可愛げはないが

貫けぬとしても衝撃までは殺せまい
続け様の竜墜で吹き飛ばし
或いは上空から地へと叩きつける
近くに攻めるものらが居れば合わせ、重ね
その刃を深くへ
受ける代償は厭わず
必要なら壁となり隙を作る

…我等が正義だなどとは全く、思わぬが
生憎、過去となった筈の亡者どもに
くれてやる未来はない


加里生・煙
◎★△

各個撃破 か。戦争のやり方はわからない、けれども…これくらいなら 俺でもやれるはずだ…ッ!

◆POW
いいな、アジュア。今回は一体ずつ各個撃破だ。俺も お前も、仲間の攻撃に合わせてぶん殴る。連携するんだ。
……正気を飛ばして好きに暴れる訳にはいかない。(お前も、……俺も。)
俺は……正義だ。俺と共にいる限りは、お前の牙も正義であれ…ッ!
仲間の攻撃に合わせて、息もつかせないように 俺とアジュアで切り裂いていく。
(……沸き上がる衝動は 最後に俺自身を貫くことで 正気に戻そう。
まだその時じゃない。今じゃない。
沸き上がる狂気は全て アジュアに喰わせてやる。)

さあ、正義の所業(殺し合い)を 成すとしよう。





 雷が空を貫き、炎の熱波が心地の良い余韻をもたらして、それが虎どもの風によって巻き上げられて彼らまで届いたころである。
「あっつ。」
 一声、真っ黒に身を包んだ矢来・夕立(影・f14904)が声をあげてしまうのもしょうがないことであった。
 何せこのエンパイアウォーと呼ばれる作戦は夏のものであるから――真っ黒に身を包んだ彼の中には熱がよくこもることだろう。
「各個撃破 か。戦争のやり方はわからないな。まあ、効率がいいのはわかるが」
 足元に真っ白な犬を連れた彼もまた、同じようにじんわりと汗ばんでいたが――目の色だけは夏に浮かされたものでない。
 加里生・煙(だれそかれ・f18298)とその相棒であるアジュアが戦場を見渡す。
 木々が茂りつつも開けたところであった。空を見上げれば入道雲が見え、広大な蒼がうかがえる。
 ――戦場でなければきっと、心地のいい晴れ間に違いなかったのに。どこか、勿体ないな。
 なんて煙も日常を思いつつ、己の中にくすぶる狂気性を感じる。
 ――暴れるわけには、いかないのだ。
 今回の戦場は仲間との連携がかなめとなる。各個撃破を確実にしなければ余計に体力が削られ、猟兵たちが窮地に追いやられてしまうのだから。
 片目だけ開いた色で、群青となる獣を見下ろす。言い聞かせるような視線に、獣は分かったような顔をして一度鼻を鳴らしていた。
「確かに、オブリビオンが敷くなら、この陣形のデメリットはほとんどない。」
 夕立が顎に滴る汗を親指で弾きながら、くだんの堕ちた神の気配を探る。
 今のところ殺気も獣性も感じられない。うろうろとあたりをうろついてはいるのだろう、木々は不自然に揺れだしていた。
「ほとんど?」
 それに返事を返したのは――。
 鵜飼・章(シュレディンガーの鵺・f03255)である。
 人間になり切れないものどもの集まりになったのがちょっと面白おかしくもありながら、此処に同族嫌悪たる感情が発生していないのもまた不思議な彼だ。
 好奇心の生き物である。
 じい、と此処にたまたま集まった彼らを見た。ひとつひとつをまるで美術品かのように眺める視線を無視して、夕立が話す。
「そう。『ほとんど』というのは『全く』ではありません。」
 ――殺せば、死ぬ。
「城に将が座すならば先ずは砦から崩す、肝要であるな。」
 夕立が言うことに、同意をしたのはジャハル・アルムリフ(凶星・f00995)。
 今この場において「誰よりも人外」の常識を持つ竜である。竜は――この光景に臆する様子もないどころか、猟兵たちの作戦を善いとした。
「どう崩す。俺に案はない。しかし、いざとあれば壁として使ってくれ」
 この竜にはそれしかできないのだ。
 呪われた同胞喰らいともいわれた凶星は、こうでしか味方を守るすべも知らぬ。
 心がけだけは非常に仲間にとって心強いし、この場において竜である彼ほど――固い存在もあるまい。
 夕立が一度、ジャハルを見てから。それから、章と、煙と、アジュアを見る。あつそうだな、と毛まみれの獣に目を細めて。
「忍び目線ですが、バランスはいいと思います。」
 彼にとっては、此度の作戦は手慣れた戦術である。――一網打尽でなく、各個撃破というのならば。
 この場にいる彼らすべてを「暗殺の道具」と定義して考えれば容易い。
 握り方、振るい方、動かし方をわかっている。しかし、彼らは「そうでない」。
「死体を消すのなら得意だ。」
 それに、好奇心で見つめていた章が気づかないはずがなかったのだ。
 この男が、己らを「道具」として定義することなどよしとはしない。
「軍神と死神どもの戦いといこうか。」
 ふふ、と笑んで見せる彼が「食えない」存在であることは――竜であるジャハルよりも、煙が感じたものであった。

 虎である。
 二頭の虎がずしんずしんと歩いてやってきていた。
 虎どもは――ごるるとありもしない喉を鳴らして、足音を隠せていないのだ。
 なんともまぁ、獣というのは頭がよろしくないのである。狙いやすいだけの生き物だなと、大きな木に降り立った夕立が見降ろしている。
 夕立のかなめは、速さであった。
 相手が人であればさほど苦労はしなかったのだが、なにせ虎――堕ちた神であるからか、非常に大きな虎である。
 山一つに隠しきれないだろう虎の大軍をどこに持っていたのかと、それかこれが強化の恩恵であるのかと思いながら。
 ひとつ、遊び道具を手から放ってやった彼である。
「首ありませんけど、通用しますかね。」
 まあ、見えなければなんてことはあるまい。――そう思って放ったのは千代紙の風船。

 ちか、とそれが瞬いたのだけを視認して、彼もまた己の腕で目を覆った。

 【紙技・紙鳴(カミワザ・カミナリ)】!!
         ・・・・
 猫だましならぬ、虎だましである!
 大きな雷鳴と共に世界を真っ白に染める一撃が――虎どもの虚をついたのだ!
 のどのない体のどこから、あのような嘶きが漏れるのかはわからないまま。
「お願いします。」
 仲間たちに合図を出してやったなら――!

「『これは正義、正義、正義……ッ!』」
 己への呪詛のような、詠唱であった。
 絞るような声で唱えてから、黄昏に濁らされる左目を見開いた煙である!
 どう、と群青色になった獣と共に駆け出した彼であったのだ!手に握られるはアサルトウェポン。それは彼の牙となる!
 ――正気を飛ばして好きに暴れる訳にはいかない!
 【正義の衝動(ミラーキラー)】を胸に抱いて、彼は攻撃態勢をとる。引き金に指をかけて――虎へと向ける!
 この獣も、己も。仲間を蹴散らしてまで暴れたい『正義』が此処にはなかった。
 だから、今この煙と――アジュアは!
「俺は……正義だ。俺と共にいる限りは、お前の牙も正義であれ――ッ!」
 構えたアサルトウェポンから放たれる弾丸任せに!それがびすびすと虎の巨体を貫いてく!
 しかし、虎は何せ夕立のいる木々よりも少し低い程度の巨体であった。これで穿てるはずもないのを見越して、煙は仲間たちとの連携を図る!
 
 このメンツで。
 相手の円陣における唯一の欠点が「死ぬこと」であるならば。
 こちらの欠点は――「攻撃力にかけること」であろうか、と悪魔よりも恐ろしい彼が微笑む。
 
 忍者の奇襲は成功である。間髪入れずの鉛玉も成功である。ならば次は正体不明の彼の番であった。
 竜巻を纏う獣たちの「無い」頭はどうやら冷静を取り戻そうとしているらしい。
「ああ、それはいけないな――。」
 余計なことをしないでくれよ、と。
 彼が風の動きを瞬時に紫で追ってやった。
 漆よりも美しい黒髪をなびかせながら、数本、まるで手品のしかけでも作るかのように当たり前に空気に乗せた。
 広がったのは鉄杭のごとく鋭く太い大針どもである。
「標本――ああ、いいや。剥製かな」
 中身を取り除くのは彼でないが、その場にはりつけるのなら一緒だ。

 【悪魔の証明(アクマノショウメイ)】!!
 
 虎がひとまず混乱ばかりのこの場から逃げおおせようとするのを察知して、章が放ったそれである!
 どどどど、と勢いよく一匹の虎にすべてが刺さった!
 脇腹を穿ち、脚を貫き地面へと縛り付ける。まずは一匹各個撃破であるから――とりあえず、狙いやすいほうを選んだ彼であった。
 しかし、その狙い方は「なんとなく」でない。
「――ッッアジュア!!」
「こっちですよ」
 引き続き、忍者と正義の使途が一匹の虎を襲っていたのだ!
 混戦しだしたあちらを狙うより、手薄になった一匹を仕留めてやったほうが「食いやすかろう」と思っての気遣いであった。
 人間とは――コミュニケーションを糧とする生き物であるから。
 これが、人間らしい行いであると思っての一手である。ゆったりと微笑んで、章は己からあふれ出た大鴉どもに日を避けられていた。
「僕の鴉達は食いしん坊でね。首無し死体でも構いやしないよ」

 ましてや、死体であろう。

 ぎゃあ、と大きな声を上げて突っ込んでいった黒どもである!
 一匹は腹を満たしてあるのか、章の肩にとまって、その大きすぎる羽を開いていた。
 主を守るように、威嚇するように、彼を焼く太陽からも隠すかのように。
 無数の鴉共につつかれながら、獣が血まみれになっていく。血はどんどん酸化を初めて、獣を黒くしてしまうだろう。
 ――これは、鳥葬なのだ。

「こんな姿で生きるのは可哀想。」
 哀れに、こころより哀れに思って見せた章である。
 その彼の隣を――星が、駆けたのだった。
「骨まで綺麗にたいらげて」
 真っ黒な星が、その呪詛を纏ったまま赤に染まりつつあるけものへととびかかって――。
「雲の上まで送ってあげる」
 長いまつげを、章が震わせて瞼を閉じるころには大きな衝撃が場を揺らがせた。
 ほぼ、地震のそれである。

 【竜墜(リュウツイ)】。
「図体のでかい猫と戯れているようだ。――全く可愛げはないが」
 どう、と地面に背骨をへし折りながら地面に叩きつけてやったのはジャハルだった!
 ジャハルの攻撃で風が消えたのは、一瞬であれどこの虎の意識を彼が奪ったからであろう。
 虎を包む風に満足いくほど嘴でつつけなかった鴉たちが、これを待っていたとばかりにまた集りだす。
 ジャハルがその光景に眉一つ動かさなかったのは、その在り方が――とても自然のそれであったからだ。
 弱者は強者に喰われ、その死骸を別の獣が食べ、魂は空へと還りまた新たな生命へとめぐる。
 何も――このおぞましき光景に異常さがない。
「我等が正義だなどとは全く、思わぬが」
 回復が始まっている。鴉のついばみ、それから先ほどの呪われし一撃でもまだ立ち上がる獣なのである。
 これを厄介といわずとしてなんというか。あの一撃で砕けぬ命とやらも軍神が強化しているのだ。
 しかし、ジャハルは揺るがない。
 彼の使命は、たった一つなのだ。だから、彼のできることもたった一つである。

「生憎、過去となった筈の亡者どもに――くれてやる未来はない。」

 ――彼を救った、星宿す片角と眸の七彩、授けたる双つ星が歩む未来を、護ることだけが!

 振るわれた圧倒的な暴力であった。
「葬送の時間だよ。」
 優しく、哀れむように笑う章がいる。
 彼の言う通りに――死に切れぬ神どもを送る戦いが終わりを迎え始めていたのだ。

「くら、えェエエエエエッッッッ!!!!」
 怒号。
 薬きょうを何度も地面に転がしながら火花を放つ煙と、獣に牙を立てていくアジュアである。
 このままではらちが明かないことは――夕立だってわかっていた。
 ジャハルのような一撃を、煙が選ばかったのはわかる。「人間」にとって銃器は一番殺しにつながりやすい武器であるからだ。
 しかし――やはり決定打にかける。
「あの」
 回復の始まる白虎に舌打ちする彼に、夕立が声をかけてやればギラリとした視線が向いた。
 こわ、と口から出そうになって掌で己の顔半分を覆う。
「お届け物です。有効活用してください。――俺もいきます」
 だから、怒り任せの鉛玉はよしてくださいね。なんて。
 手慣れている、だからこそ手を抜かない彼であった。放り投げた一本の刀が――無骨な刀が地面に突き刺さる。
 『刀絶』。
 使えるものは、使うがよい。使わなければ、道具に意味などない。
 そう――期待をわずかだけ込めて、夕立は駆ける。彼の手にした千代紙の風船たちはまだまだ在庫があるのだ。
「夏の大セールです、どうぞ。」
 
 どちらかというならば、花火のような。

 どどう、どう、と爆炎が上がる。
 彼の好きなタイミングで破裂する風船共が、獣の動きを止めていった!
 ああ、ならば――と。振るうことに慣れていないはずの、刀を握る煙なのだ。
 どうやったらぶち殺せる。どうやったら正義をなせるかだけを――今、彼の頭が考えていた。
 殺す。いいや?――正義の所業を成すとしよう。
 ざらりとしたノイズを感じながら。彼の狂気を食うアジュアもまた殺意を高めていたのだ。
「正義だ」
 踏み込む。

「俺は――、 正 義 だ ッ ッ ッ ッ ! ! ! ! ! ! ! ! ! 」

 正義でなくとも。
「まあ、勝てば正義であろうな。」
 叫び声を聞いたジャハルが、虎を煙にしながら言ってやったのだった。
 最後までたっていれば、正義である。鴉共が黒霧を纏いながら戻ってきたのを確認して、章もまた頷くのだ。
「自然というのは、尊いね。――世界の真理を見たような気がするよ。」

 振るわれた正義の刀が、虎をめちゃくちゃに切り裂いて。
 爆炎に巻き込まれてその肉が余すことなく焼かれていった。

「だから、熱いですって。」
 はあ、と誰に向けた愚痴でもないが。
 夕立が――風船を放ってやったあとで、大きな木に戻って涼んでいたのである。
 そんな、夏の一戦。今この場に立っているこの「人でなし」どもは果たして、「正義」であったのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ジュジュ・ブランロジエ

エレニアさん(f11289)と

エレニアさんと連携すればどんな敵だって勝てる!
痛覚遮断の呪詛も心強い
優しい呪詛だね!

風の白虎には土属性?火属性?
とりあえず試してみよう!
白薔薇舞刃(花弁に変えるのはメボンゴ以外)に土属性付与し二回攻撃
効果が薄ければ火属性付与に変更

動きを読んだってこの花弁の刃の動きは読めないでしょ?
どこまでだって追いかけるよ!

かまいたちは軌道を見切ったり第六感を働かせて
メボンゴ波(メボンゴから出る衝撃波)を範囲攻撃で守る範囲を広げ、二回攻撃をぶつけて相殺を試みる

エレニアさんの合図に合わせてダッシュで近付きナイフを突き立て、白薔薇舞刃で花弁に変えて虎の内部を抉るように

敷物も良さそう


エレニア・ファンタージェン
ジュジュさん(f01079)と

ジュジュさんとなら心強いわ
上手く連携して着実に一匹を仕留めましょう

自身とジュジュさんに痛覚遮断の呪詛を施して前準備完了

それにしても良い風が吹くのね
右腕を蛇に変え、全力で毒霧を放たせる
生命力吸収の呪詛を載せた毒霧、風が撒いてくれるでしょう?

突進は歓迎するわ
貴方達走り回っていて追うのが面倒だったんだもの
右腕の蛇で噛み付いて生命力を吸い上げながら、Adam&Evaで絡め取って
「ジュジュさん、今よ」
空いた左手で大鉈に変えたSikándaを振り下ろす

かまいたちは無視、近接して本体を叩くわ
それにしても、良い毛皮になりそうよねこの子





 友情の前には何事も――無力になるという。
 はてさて、それは本当であろうかどうかなど、この二人が証明するにはたやすい難題であったのだ。
「エレニアさんと連携すればどんな敵だって勝てる!そうだよね?」
 にぱ!っと明るく。まるで夏のひまわりのようにひたむきに笑って見せるのはジュジュ・ブランロジエ(白薔薇の人形遣い・f01079)だ。
 汗をかいていないのは、痛覚を遮断されているからである。
 痛覚って暑いのとか、寒いのとかも感じさせてくれてたんだねえなんていう感想を聞いて、初めてその術式を編んだ幻惑は知るのだけれど。
「ジュジュさんとなら心強いわ!上手く連携して着実に一匹を仕留めましょう」
 同じく、明るい声色で返すのはエレニア・ファンタージェン(幻想パヴァーヌ・f11289)だ。
 彼女こそ、阿片の御使いでありその煙に呪詛を纏うヤドリガミである。共に呪詛を振るうことにも何の抵抗もない。
 ジュジュが、みんなが笑顔で在れば嬉しいというように。
 エレニアもまた、友たるジュジュが笑顔であれば嬉しいのだから。
 この行為に危険やあれやそれやがついてきたところで、二人を止めるようなものには至らないのだ。

「――それにしても良い風が吹くのね。」
 びゅう、と目があまりよくないエレニアの耳元を疾風が駆けていく。その方向をジュジュが見てやれば、一匹の虎がこちらを見ていた。
 いいや、正しくは顔を向けていたのやもしれない。なにせ、首がない。
「風の白虎には土属性?火属性?」
 フウスイ、と呼ばれる相性的にはどうだっけ?とまるで占い話でも楽しむかのように。
 生憎エレニアも知りはしないのだ、こてんとかわいらし気に笑って首をかしげるのがすべての答えである。
「とりあえず試してみよう!」
 わからなければ、やってみる。楽しければ、それでよい!
 火炎で燃やしている神のことも聞いていたジュジュである。燃やそうと思えば燃える、ならば同じく土くれで埋めても埋まるだろう。
「そういうことで――『ご覧あれ、白薔薇の華麗なるイリュージョンを!』」
 ふわ、と。
 ジュジュの宣言と共に沸き立ったのは、彼女の抱く白うさぎの彼女以外の小道具が白薔薇に変わる奇術である。
 花弁がはらはらと廻って、風を纏う首なしを襲ってゆく!たちまち――白の花弁は硬度をあげてつぶてとなりながら獣の体をえぐっていくのだ!
「どこまでだって追いかけるよ!」
 獣がたとえ、この攻撃をかわしてやろうと暴れたところでその身に風を纏う限りは!
 この花弁たちの動きは読めまい。目もなければ耳もない愚鈍な肉塊に、この攻撃は避けれない!
 しかし。

「おっと。効いてるみただけど――回復が早いね。」
 そう、攻撃は確実に当たっているのだ。
 メボンゴを引っ張って、その絡繰りを起動してやれば放たれてくるかまいたちはエレニアと己に届くよりも早く打ち消す。
 この程度の即興対応などでぶれるようなジュジュでない!いたって冷静に相手の動作を見ていたのだ。
「うーん。厄介――そうだわ!」
 思いついたように、エレニアが顔をきらきらと輝かせてみるのだ。
 だいたいエレニアの、こういった戦況での思い付きというのはジュジュにできないことが多い。
「エレニアさん、できる!?」
 ――どんな内容か聞くよりも、動かしたほうが早いこともジュジュは知っていた。
 何度も何度も、戦況を共に動かしてきた二人である。この世界のほかにも、いくつか。
 だから、お互いの動きかたというのはよくわかっていた。エレニアとジュジュは――その本質からして別物だ。
 エンターテイナーで、人を喜ばせることに楽しさを見出すジュジュと。
 対するエレニアは人に使われる道具であり、幻惑を見せるのが生業なだけである。
 使命感のジュジュと、作られた理由でしかないエレニア。二人の行動理念というのはなかなかどうして真逆であった。
 しかし――。
「ええ、ジュジュさん!」
 エレニアは。その生まれ通り、「自分の気に入った誰かにはとことん尽くす」たちである。
 そうでなければ――友達に痛みを取り除くような呪詛(まじない)をかけてやらないのだから。

「――『どうせ目覚めても虚しいばかり』」

 甘い吐息には、憂いが少し。
 そのまま――エレニアの白く細い右腕が、白銀の蛇へと姿を変える!

 【夢路の舞曲(オピウム・パヴァン)】!!

 ずるりと顕現して見せた蛇が、吹き荒れる風に乗せて虎へと毒霧を放つ!
 激しく吐かせる必要はない、この風が――起点であるけものへ毒を運んでいくだろう。
 ぐるる、だとか、がるる、だとか。苦し気な喉は一体どこにあるのやら。
 爪を立てて毒に苦しみあえぎだし、じたばたと狂ったように地団太を踏む四つ足があったのだ。
 毒の解呪を急ごうと――その体をまた軍神の加護が癒し始めるよりも早く狂ったように獣は走り出した!
 エレニアに突進を繰り出そうと力強く前足が土を削る。
「歓迎するわ。貴方、走り回っていて追うのが面倒だったんだもの」
 事実である。
 ジュジュは走らずとも彼女の奇術が虎を仕留めんとするのだが、エレニアはそうでない。
 エレニアは――近接のほうがむいているのだ。
 邪魔するものは蹴っ飛ばし、無礼な首を斬り落とすほうがずっとシンプルでわかりやすい。
 美しく儚げな花にこそ鋭すぎる棘があるというものである。その凶悪さ――向かってきた虎を絡めとるのに、蛇が躊躇するはずもない!
 蛇が首なしの虎に噛みつけば、たちまちその生命を奪いだしていたのだ。
 さらに――真っ黒な二本の蛇どもが、また白い巨躯を縛り上げる!
 Adam&Eve。禁断の果実を齧ってしまった罪人たちの名を得た彼らが獣の脚に絡みついてから横倒しにしてみせた!

「ジュジュさん、今よ」

 まるで、解体でもはじめるかのように。
 空いた左手に握った大鉈を振るいあげたエレニアが、それをおろしてしまうまでに。
 駆けだしたジュジュが――横になった身体にナイフを突き立ててみせた。そのまま駆け上がる!

「ッ――やぁあああああああッッッッ!!!!」

 ヒールで毛皮を蹴りながら、大きな丘のような白をかけたなら!
 先ほどのつぶてたちがナイフから生まれて、白い虎の内部を跳ねまわしてずたずたにしてやったのだった。
 ああ、まるで。
 少女を食べてしまったばかりに――腹に石ころでも詰められた狼のよう。
 かわいそうに、とエレニアが少しだけ慈悲をまじえてそのさまを見ていた。
「ねえ、ジュジュさん。」
 もう、かまいたちも纏えないらしいこの堕ちた神徳である。
「なーにー?エレニアさん。」
 ひょこ、とうなだれた尻尾の先から顔を出して、走り寄ってきたジュジュに微笑む女神があった。
 もう長く持たないであろう神徳を、二人で見る。
 エレニアが手にした鉈を、振り下ろすのをやめてからジュジュに提案した。

「良い毛皮になりそうよねこの子。」

 ぞっとしたのは――きっと、横たえさせられた神徳のほうかもしれない。

「あー、……敷物も良さそう!」

 ぱあ、と笑って見せるまでの間で、ジュジュがどういう顔をしたのかこの虎には見えぬ。
 哀れと思ったのか、それとも実用できる可能性を模索したのか。

「じゃあ、そうしましょう!持って帰りましょう!」

 高級な『元』神獣の毛皮であるからと――。
 振り下ろされた大鉈は、果たして上手に『敷物』を造れたのだろうか。戦場に、黒霧がまた一つ舞っていったのは、しばらくしてからのことである。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アカネ・リアーブル
連携大歓迎

堕ちた白虎がこちらの動きを読んでくるのでしたら
読ませて差し上げましょう
一体に集中して攻撃を

ダンスと2回攻撃を駆使して、まずはテンポの良い動きを
拍子を正確に守り、来るだろうなというタイミングで攻撃
白虎にも親しみやすい祭り囃子で通常攻撃
相手の攻撃は見切りとオーラ防御で防ぎます
食らっても激痛耐性で耐えます
舞台の上では、辛くても笑顔です

白虎がこちらの動きに慣れてきましたらフェイントで拍子を変えます
アップテンポのロックに曲を変え大きくジャンプ
自身を、味方を鼓舞しながら退魔封縛の舞の鎖で捕縛
高速移動を封じ締め上げた上で通常攻撃
一気に畳み掛けます

ここはアカネの故郷
オブリビオンに蹂躙などさせません!


真守・有栖
◎△

ふぅーん?白虎が相手ね!
えぇ、此処は銀狼たる私にお任せあれっ
がぶりと!ずばっと!ど派手にぴっかぴかでいくわ!

どこからでもかかってらっしゃ……んんん?
ぐるぐるがびゅんびゅん!たつまきじゃないの!?
けーれーどーもー?この麗狼にて猛狼たる私にかかれば――
わふぅっ!?ちょ、まだ狼語りの最中……わぅううう!!?

ひゅぅう……どすん

わぐぐ……おめめはぐるぐる。からだはずたずた。
とっっってもびゅんびゅんじゃないの!褒めてあげるっ

今度は此方の手番よ
えぇ――この身で“喰らって”いめぇじは掴んだわ!

――月喰

刃に込めるは“裂”の決意

――光刃、裂閃

彼方に延びる斬光が迸りて
風を断ち、裂き――白虎を喰らうわ。成敗……!


ヴァーリャ・スネシュコヴァ
◎★
一撃で倒せばいいのか…
ならシンプルだな!俺にとってはやりやすいのだ!

凍らせた地面の上をジグザグに滑り
縦横無尽に動き回って敵を惑わせ、隙が生まれるのを狙う

竜巻の動きを【第六感】で見極め
竜巻と竜巻の合間すれすれを滑って
掠っても大丈夫、もろにあたらなければ楽勝だ!

敵の元へ近づくことができたら避ける暇を与えない、【先制攻撃】だ!
【ジャンプ】と回転で勢いをつけた『亡き花嫁の嘆き』の蹴りを相手に与え
蹴った次の瞬間に吹き荒れるダイアモンドダストは、氷の【属性攻撃】でより威力を高める!

この一発でも倒せないなら
【2回攻撃】でさらに追撃でダイアモンドダストを放ってやる!

流石に強いけれど
でも俺の氷には敵うまい!





 相手の虎は、どうやらこちらの動きを読んでしまうようであって。
「ふぅーん?白虎が相手ね!えぇ、此処は銀狼たる私にお任せあれっ!!」
 意気揚々と、私はできます!といわんばかりに一頭の白虎の前に躍り出たのは真守・有栖(月喰の巫女・f15177)である!
 がぶりと!ずばっと!ど派手にぴっかぴかでいくわ!と意気込んできた彼女は今日もまた己のスポットライトを意識するのだ。
 こうして――自分でハードルをどんどん高くするスタイルというのが、彼女のやり方であは在るのだけれど。
「どこからでもかかってらっしゃ……ん、んん?」
 少々、長すぎるのがやはり玉に瑕であった。
「た――たつまきじゃないの!!?」

 戦況は、すでに始まっていたのである。
 竜巻の中心にいるのは――狼よりも大きな図体をした首のない白虎であった!
「一撃で倒せばいいのか――、ならシンプルだな!俺にとってはやりやすいのだ!」
 勇猛果敢に!
 耳のような髪を寝かせて空気抵抗を少なくしてから、前かがみで彼女の足先からステージを作って疾走する氷の狼がいる!
 ヴァーリャ・スネシュコヴァ(一片氷心・f01757)!
 今この場が【亡き花嫁の嘆き(ゴーリェ・ルサールカ)】の冷気に伴い、彼女の進行方向にレールを作っていた!
 女王のお通りであるといわんばかりに、疾風どもの間を縫って走っていく姿はまさに氷上の奇跡そのものである!
 ――とはいえ。
 風圧に巻き上げられた砂ぼこりはともかく、こちらに突っ込んでくるからだを、片腕で飛び越える跳び箱のように背骨に掌底して飛び越えてやる。
 飛び越えきるまでに――5秒もかかったのだ。
 この相手は、あまりにも大きい。ヴァーリャが好きを見て踵で蹴り上げたり、ブレードで横っ腹を裂いてやってもたちまち修復してしまう。
 ――回復がはやすぎるのだ。
 そして、大きすぎる。かなり固くなっているとはいえ、攻撃は一応刺さっているのに向こうが全く怯まない。
 しかし今は、彼女の顔に絶望の色はないのだ。これはまだ「演目」のAパートであり、この後からBパートが始まるのである。
「この麗狼にて猛狼たる私にかかれば――わふぅっ!?ちょ、まだ狼語りの最中……わぅううう!!?」
 大きな声で高らかに宣誓していた彼女が――。まるでその合図のように降ってくるものだから。
「おっと!大丈夫か!?」
 この戦場を舞うヴァーリャが見事に細い両腕で受け止めて、そのままターンを一度してから地面におろしてやる。
 吹き荒れるかまいたちに吹っ飛ばされた有栖は夏らしくひどく薄着であったし――案の定、その柔肌に無数の傷が走っていた。
 大変だ。とヴァーリャが瞳孔を狭くする。
「すぐに回復できる人のところに行こう!」
「わ、わぅ!?だ、大丈夫よ!――これで分かったから!」
 また担ごうとしたヴァーリャに有栖が肩を跳ねさせてから首を振る。
 わかった、というのはなんだろう――。と、ヴァーリャが考えているうちに空気が変わる。
 新たな猟兵が白虎の注意をひいていたのである。ヴァーリャと有栖に襲い掛かるはずのかまいたちが止んでから、風向きが大きく変わった。
 それを二人が己の耳や尻尾で感じて振り向いた目線の先には、一人の踊り子がいたのだ。
「『――君がため 惜しからざりし 命さへ ながくもがなと 思ひけるかな』」
 どこからともなく。
 ああ、祭りなのだと――二人が想う。特に、有栖はたちまち響きだしたこの音色に親近感があったやもしれない。
「お盆だわ。」
 狼の瞳孔が懐かしさをはらんで、視界の先を穏やかに見ていたほどに。
 ステップ、ワンツー。
 三拍子で店舗の良い動きを繰り返す彼女は「あえて行動を読ませる」ことで白虎を「乗せて」いたのである。
 この東方の神獣だというのなら、祭囃子の音色であるなら乗らざるをえまい。
 そう思って――【退魔封縛の舞(タイマフウバクノマイ)】を成功させたのは、アカネ・リアーブル(とびはねうさぎ・f05355)!
 サムライエンパイアの生まれである戦巫女なのだ。――ここが、生まれ故郷である。
 オブリビオンの蹂躙など許してならぬ、ましてやこんなに凶悪な虎どもを連れるような、禍々しきものどもに。
「――好きにさせてやりません!」
 虎が乗ってきたところで。
 彼女のステップは大きく変わる!
 ヴァーリャがこの曲調に反応を大きく示した――ロックテンポに切り替わったのである。
 スケーターである彼女は、普段から音楽に乗った戦い方をしてきた。戦場では無意識だが、演目では意識して行ってきたのである。
「よぉし――!任せろッ!」
 にかっと笑って!
 氷上を再び靴裏で作りながら――滑走を始めたヴァーリャである!
 祭囃子の穏やかな音頭に乗せられていた白虎はステップ通りでなくなったアカネの動きに爪をうまく合わせられなくなっていた。
 戸惑いが――無い頭から伝わってくる。
 アカネはあえて合わせていた時に何度も攻撃を防いでいたものだから、「当たっては」いたのだ。
 攻撃をあえて喰らって、それを祭囃子の太鼓と合わせてこの虎を誘導していた。
 ――巨大すぎる虎の一撃を、受け止めていれば。
「ふふ、――まだ、やりますよ」
 傷だらけになってもしょうがないのである。
 愛らしく二つに結った髪の毛などはすっかり乱れて、ほつれて、細い髪の毛のどこかをちぎられてぼさぼさになってしまった。
 それでも――此処に彼女の音楽がある限りは彼女の舞台であった!
                           オマモリサマ
 絶対に笑い続けておかねばならない。それこそ、彼女が「舞う姫」で在る理由である!
 ステップを間違えだした白虎の体を徐々に舞扇が叱咤するように鎖で縛り上げ始めるのを――。
「シンクロ・スケートだ!」
 たちまち斬りつけるのがヴァーリャである!
 滑走してきた勢いのままジャンプをすれば、遠心力を活かしてトリプルアクセル!のち、そのまま余力と共にトゥループ!
 腰を落とした姿勢のままに楽し気に踊る妖精に少し身を見張ってから。
「――ッ、ええ!」
 ぶわ、とロックテンポの音量を上げるアカネの顔に戦意が燃える!
「ついてこれるか!?」
 滑りながら、次はサルコウの姿勢で白の獣に抵抗を許さないまま斬りつけていくヴァーリャである!
 ダイヤモンドダストを纏った一撃が鎖で縛られた白虎を氷で固めていく。これは――最後の仕上げのためである!
 その一撃を担うのは――この戦況の中で力を貯めていた、一匹の狼だ。
 その狼は、確かにヴァーリャに「分かった」と言っていたのだ。

「もちろんよ。」

 凛とした声で返事を返す有栖である。
 ゆっくりと――刀を構えた。
 仲間たちが縛り上げ、凍り付かせていく。

 この身で、彼女も『喰らって』討伐のイメージをしかとつかんだのだった。
 勝利を、イメージする。有栖が放った一撃が完膚なきまでに白虎を断ち切る一撃を考える。
 そのために必要なコードを編み出して、彼女の掌には熱がこもって――必要な力を震わせる準備が整っていた。

「――月喰」

 そ れ は 、 こ の 狼 の あ る べ き 姿 !

「――【光刃】、裂閃」

 刃に込めるは“裂”の決意!斬光が放たれて――ヴァーリャもアカネとのタイミングもほとんど即興であったにも関わらずそれが白虎のみを一刀両断したのだ!
 このリズムに合わせた一撃を放ったのは、アカネのコードが放たせた音頭が有栖の脳に響かせていたからでもある。
 そして、ヴァーリャが「シンクロ」を意識したことによって今――この場において「乗れない」白虎のみが見事討ち取られたのだった!

「成敗――!」

 きん、と光刃を放った刀を腰にしまって、白虎を、この嵐を喰らったことを宣言すれば!
 たちまち――氷漬けになり鎖で縛られていた悪夢は黒霧となって消えていったのである。
「やったな!!」
 ヴァーリャがこぶしを突き上げて飛び跳ねながらアカネにハイタッチをするのを
「ええ!」
 アカネもまた傷だらけの笑顔で受け止める。

 三人官女の祭り囃子――というのも、悪いものではない。
 にかりと笑ってみせた銀狼の笑顔は、やはり自信に満ちていた。 
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

非在・究子
く、車懸かりの、陣、か。ゆ、有名な、やつだ、な。
そ、そして、面倒な、やつだ。

し、シンプルに、火力を、集中、して、確実に、削る方向で、やって、見るか。

あ、あれだけ、展開してる、陣だから、遠くからでも、よく、見える、だろう。
に、2km、離れた、遠隔、地点から、仕掛ける、ぞ。
ゆ、UCを、使った、リキャストタイムの、改竄、で、50発分の、火炎魔法を、同時発動、させる。
ね、狙うとき、は、もちろん、相手の、移動速度を、考慮して、狙う、ぞ。
あ、相手は、強烈な、近距離攻撃のUC、持ってる、みたいだけど、この距離なら、届かない、だら? ぎゃ、逆にら届かせる、ために、近づいて、来たら、釣り出し成功で、万々歳、だ。


花剣・耀子
◎★△

ええ、――派手にいきましょう。
嵐はあたしの領分よ。

御幣を風に流して、流れを読みながら踏み込むわ。
視えるなら、そこに在ると判るなら。
あたしの剣はおまえたちを斬れるのよ。

その竜巻へ【花剣】
加速の後押しを受け、衝撃波を引き起こしながらなぎ払い。
領分。領地。あたしの領域。
四方八方すべてが敵であろうとも、斬り崩して進むだけ。
渦巻く風を割いて削って打ち消して、白虎までへの道が出来ればそれで良い。

白虎が見えたなら、竜巻を力一杯大きく割いて弾きましょう。
出し惜しみはしないわ。
エンジンの加速は全部この瞬間の為に注ぎ込んで。
道を開けられるのが秒に満たなくたって構わない。

その間隙に、全力で白虎を叩っ斬るわ。


緋翠・華乃音
……さて、一撃で仕留めろとのオーダーだが。
狙撃も暗殺も"それ"に関しては得意分野だ。
まあ、今回は狙撃で殺らせて貰う事にしようか。


ユーベルコード"瑠璃の瞳"の範囲内で戦場を広く把握出来る場所(丘陵など可能な限り遠距離且つ高所が望ましい)に気配を消して目立たぬように潜伏。
最初は敵を観察。そして情報収集をしつつ、敵の攻撃パターンや回避行動等の情報を収集・分析し、見切りを行う。
それに合わせて常に優れた視力・聴力・直感を生かして戦況を把握し、戦闘に有利になる技能は適宜使用。

ヘッドショット狙おうにも頭部が見当たらないしな……
まあ、代わりの弱点を見付け一撃で仕留めれば同じ事か。





 彼女は、分析に長けているのだ。
「く、車懸かりの、陣、か。ゆ、有名な、やつだ、な。」
 ――それでいて、面倒な攻略方法しかない。
 非在・究子(非実在少女Q・f14901)は、電脳世界での生き物である。 
 そしてなんと、ゲーマーなのだ。この戦争を「戦争ゲーム」という仮想に置き換えてしまえば、彼女の右腕に出るものはそうそう出てこないほどに冷静になれる。
 究子がどもりながらも声をかけて、集めた戦力たちがいた。
「し、シンプルに、火力を、集中、して、確実に、削る方向で、やって、見、みようと、思うんだが。ど、どうか」
 二人、集めてみたのだ。そして、二人とも同意する。
 冷静な顔つきをしていて、一人は決意に。もう一人は己ができることを考えていた。
「ええ、――派手にいきましょう。嵐はあたしの領分よ。」
 この花剣・耀子(Tempest・f12822)の独壇場であるのだと、決意に満ちた彼女は言う。
 耀子は――エンパイアの戦場を渡り歩く斬り祓い屋であったのだ。
 師を喪い、仇を遺し、残骸を抱え、世界を越えて、十と少しの月日を流し、帰る場所はもう違う。
 だから、止まらない。
 憂いよりも、今はただ前へ彼女を突き動かす世界がある。変える場所がある。ここで彼女は――止まってやれないのだ。
 熱い思いと決意を抱く耀子と動く理念は対照的であるのだが。
「狙撃も暗殺も"それ"に関しては得意分野だ。」
 一撃で、仕留める。
 それは緋翠・華乃音(終ノ蝶・f03169)にとっては得意な項目である。 
 どちらかというのなら――苦しめずに殺すほうが、後味もよい。
              メモリ
 早く仕事は終わるし、余計な記憶を食わないままで凶を終えられる。
「今回は狙撃で殺らせて貰う事にしようか――それでいいか?」
 一度、確認のために聞いてみるのだ。
 彼よりも小さな体で、柔らかそうな究子がふむ、と考えてみる。
 ――虎の姿は、まだ今この場にはない。
「あ、あれだけ、展開してる、陣だから、遠くからでも、よく、見える、だろう。――に、2km、離れた、遠隔、地点から、仕掛ける、ぞ。」
 いいか、と聞く前に頷いた二人の頼もしさたるや。
 さしずめ、この二人は強力な仲間である。アサシンと、セイバー。ならば自分はマスターではなくて、メカニックとしてやらねばならない。
 この場において究子が己の立場をわきまえたように。この二人も――花嵐の彼女も、蝶の彼も各々の武器を取るのだ。
 粛々とした作戦への取り組みが、彼らのまじめさを物語る。
 それもそのはず、相手は――『軍神』の息がかかっているのだから。

 さて、まず前線。
 歩き始めたのは、花剣の彼女である。遠くから狙いを定めて、狩りを始めるのは耀子である。
 虎よりももっと恐ろしい力を秘めたる彼女が――御幣を懐から抜き出して、そのまま空気に乗せた。
 たちまち、それが風に巻き上げられる。
 ――風の行きつく先に、虎がいるのを知らせるそれをにらみつけていた。
 遠隔からしかけるというのなら、仕掛けていることに気づかれないようにしておかねばならない。
 耀子は。
 ――一度、己の装備の加減を見てやる。温まっている機械のそれは、今にも駆け出す準備は整えてあるといわんばかりの攻撃力を秘めていた。
 周囲にも仲間たちの殺気が集まってきている。とはいえ、この距離だ。先ほどの札が先にいる四つ足の獣には悟れまい。
 ならば、嵐の女であるこの戦乙女は。
 領分。領地。あたしの領域――。この戦場を我がものとするための出し惜しみはしない!
 ぎゃるる、と音を立てた彼女のチェーンソーの準備は整っていた。

「よ、よ、よし、よし、よし――い、いく、いくぞ!」
 【不正改竄・重複並列魔法(チートアクション・ハイパラレルキャスト)】。
 究子が扱うのは、彼女がこれまでプレイしてきたゲームの要素だ。
 リキャストタイム――MMOなどで見かけられる、呪文発動までのタイムラグである。
 ゲームにもよくあることなのだが、大きな魔術を使おうと思えば思うほどそれは長くPLを拘束してしまう悪しき文化でもある。
 いくら一発で敵を殺す攻撃力があっても、技を使おうと立ち止まっている隙に殺されてしまうことも多いのだが。
 この――究子の技は、「チート」なのだ。
 システムの改ざん。いいや、この場においては現実の改変を可能とするツールがユーベルコードなのである!
 今回相手どろうとする超大型の首なしは、真っ向勝負を挑むほうが馬鹿らしいのだ。
 ――向こうだって「チート」を使っている。
 傷つけられた端からの回復、そして防御の超強化なんて、チート中のチートだ。それに対して究子がこの手を使うのは、「どんな手段を使っても攻略する」という点において勝負師たる彼女のモットーに反しない!
「『た、ただの、連打じゃ、ない、ぞ? じ、実質時間差、コンマ1ナノセカンド以下の、重複飽和、攻撃、だ。受けて、みろ。』」
 相手のデータはもう読み込み済みだ。
 超強烈な近距離攻撃のユーベルコードだって、この距離なら届かないと知っている。
 だから、――今から始めるのは釣りなのだ。花剣と己で、得物を仕留めるための槍と剣の役割をするならば。

 彼の役目が、釣り師なのである。
 【瑠璃の瞳】。
 華乃音は――先天的な、異能をもつ。
 どうしてそうなってしまったのかの起因は事象としてわかれど、その時の記憶など覚えていない。
 いいや――もう、きっとそれが想像なのか、記憶なのかはわからないくらい、彼の頭が呪われているのかもしれなかった。
 そして、彼の異能は彼に才能をももたらすのだ。
 すべての約束のかわりに、すべての約束を裏切る力を彼に施している。――観察眼。
 彼のもっとも得意とするのは、アサシンにおいて必要である「行動の予測」だ。
 ゆっくりと――音もなく腰を据えて。木々の間にしゃがみ込んだ彼の手には紛れもなく銃器があった。
 これで殺してやろうとは思っていない。今回は「一発で殺せる」ようなわかりやすい頭がない。
 代わりの弱点などがあるとしたら、心臓なのだろうか。
 ――神様が心臓刺されて死ぬって言うのも、馬鹿らしいな。
 まして、そう簡単には貫けまい。ならば、「一番当てられたら痛い」ところを狙ってやればいいと踏んでゆっくりと虎を見た。
 虎と、華乃音は非常に今距離が近い。
 もう5歩ほど前に出てやれば、間違いなく虎は華乃音に気付くはずである。しかし、遠いところで音もなく休んでいる蝶のことなどには気づけないのだ。
 ――大きすぎるというのも、考え物だ。
 優れた聴覚、それから視覚、――直感。
 華乃音のそれらが今は「殺すこと」という点において集中しだす。
 己の鉄を構えて、それから――全く乱れぬ呼吸を噛みしめてやる。息を、止めて。
 右足、左足。軸は右。得意そうなのは左の一撃。ならば狙うは。

「左だ」

 どう!と放たれた鉛玉が!
 白虎の左腕をひきちぎっていく!貫いた弾が何処から跳んできたものかわからず、たちまち虎はよろめいた。
 そのまま、――華乃音はどこにも逃げない。続いてやってくる爆音がすべての注意を引いたのだ!

「嵐、ね。――まさにそのものだな。」

 驚いたけものがたまらず、向かってくる爆音にほぼ反射で竜巻を起こす!
 しかし――。
 四方八方すべてが敵であろうとも、斬り崩して進むだけ!この彼女に、そのような一撃は無意味と知れ!
 加速する。加速する黒がある!道を開けられるのが秒に満たなくとも今、この――耀子には十分すぎるほどの空白となった!

「 『 散 り な さ い 』 」

 【《花剣》(テンペスト)】!!
 加速しきったチェーンソーと共に突っ込んできた彼女が、発生した竜巻を切り刻む!
          ・・・・・・・・
 その一撃はまさに、目にも止まらない!
 黒い美しい髪の毛を翻すよりも早く、高火力の一撃で――竜巻を斬りはらったのなら。

「釣り出し成功、――万々歳、だ。」
          ・・・・・・
 続いて、究子の――チートじみた火球が!
 炎をかき消される障害物のなくなった戦場に、大きな一つが放たれる。
 それは灼熱の温度を保ったまま、まるで隕石のようにして白虎に直撃!
 いやな音を立てて圧に押しつぶされながら、湧き出た焔に焼かれるけものが、ここまでくるといっそ哀れにも思えて。
「まだ終わってない。早く眠らせよう。」
 死にたくとも軍神の加護でまだ死ねぬ。大玉転がしの火だるまに包まれて藻掻いてあがく四つ足をいじめる趣味には華乃音にはなかったのだ。
 では、と前に踏み込んだ耀子が。

 風も炎も獣もまるっと一つにまとめて――一閃。

 後に残ったのは、燃える火の玉とそれに包まれていたはずの、堕ちた神性の黒灰のみが立ち上っていったのだった。
「ク、クリアだ。リ、リザ、リザルトは、す、スーパー、スタイリッシュ、ってとこ、か」
 歓喜でやはり、下品な笑いをこぼしつつもこれこそ勝負の成果である。
 かくして、計画的かつ絶対の一撃を持った彼らが――この場をスマートに収めてみせた。

 きっと、リザルトは『スーパー・スマート・スタイリッシュ』だっただろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ヴォルフガング・ディーツェ
◎☆

軍神、守護神をも従える…と言えるなら良かったんだけどね

只人の身で成し遂げたのならまだしも、外道に堕ちての所業…認めるわけにはいかない

風を纏い、高速で移動するのなら…物量と炎で圧倒するとしよう

サイバーアイで敵の行動パターンを分析
予測しうる動線に【調律・創成の空図】で精製した破魔矢を雨と降らせよう

矢それぞれには魔術で精製した太陽のルーンを宿し、火矢として運用

一度突き立てば、正に太陽が堕ちたかの如く炎を撒き散らせ
当たらなくとも「風は乱れる」なら上々というものだ

そのまま白虎も燃えるなら善し、掻い潜るなら炎を纏わせた爪の連撃を見舞おう

我が牙の代わりとして君を突き抉り、切り裂くーー眠れ、哀れなる神よ


ティオレンシア・シーディア
◎★△

烈風纏う白虎、ねぇ…
あたし風遣いとやるの、これで三度目なんだけど。
どっかで縁でもできたのかしらねぇ?

チクチクやるんじゃダメ、かぁ…
あたしドでかい一撃、って得意じゃないんだけどなぁ。
…ちょっと〇覚悟決めないと、かしらねぇ、コレ。

グレネード〇投擲でバラ撒きながら〇ダッシュで接近するわぁ。撃ち落とされるのは織り込み済み。ちょっとでも気を惹けたらそれでいいわぁ。
用意するルーンはエイワズ・ラグ・ウル。
多少のダメージは〇オーラ防御と激痛耐性で耐えて「前進」、風の「流れに乗」って「突撃」。
突進に合わせて〇零距離射撃の●滅殺を〇カウンターで叩き込むわぁ。
相討ち上等、刺し違えられたら御の字かしらねぇ。


ジャック・スペード
◎★△

軍神の思い通りに戦況が動くのは気に喰わないな
力の限り邪魔させて貰おう

撃破は一体ずつ確実に、というオーダーだったか
――では、全力で其れに応えるとしよう
機械竜に転じた片腕と、空いた腕に持つ刀に
渾身の怪力を篭め鎧無視攻撃を
竜の牙からは毒を、刀からは電を滲ませて
白虎を着実に仕留めて行きたい
共闘が可能であれば攻撃は仲間に合せよう

――暴食竜である所以を見せてやれ、ハインリ
其の牙で砕けぬモノなど無いのだとな

突進の気配を感じたら、残像を遺しつつ距離を取る
敵が残像を追わず此方へ向かってくれば、動きを観察して見切り
必要なら突進をグラップルで受け止め
この身を盾とする覚悟で仲間を庇う
損傷は激痛体勢で堪えてみせる




 その彼は。
 背徳の都にて生まれた、双子であったのだ。
 魂を分けて生まれ落ちた双子は、百年よりも少し前に、狼神へと片割れを捧げてしまう。
 それから、何度も、何度も同胞の心臓をささげて、今は――その十字を背負ったまま生きていた。
「軍神、守護神をも従える――と言えるなら良かったんだけどね」
 ヴォルフガング・ディーツェ(花葬ラメント・f09192)は神の使途であったから。
「只人の身で成し遂げたのならまだしも、外道に堕ちての所業」
 このような有様はよしとしない。
「認めるわけにはいかない」
 あの軍神が――。
 ひとのままでこれを成し遂げているのならばヴォルフガングはきっと下してやろうと思わなかったのだ。
 もとより信仰心に厚い生を、この場にいるほとんどよりも長くは生きていた彼である。
 神話の奇跡をなぞらえただけである悪しきの所業であるから、許せないのだ。人の身を捨てたのなら、幾ら人間であるとはいえ怪物である。
 ――英雄になれただろうに。
 長くを生きた彼だからこそ、道をたがえて次の命を奪う存在を許しはしない。さて、どのように攻めようかと考えて魔術を選び始めていた。
 そんな彼とこの度、死線を超えることになったのは。

「軍神の思い通りに戦況が動くのは気に喰わないな」
 ならば、力の限り邪魔をしようと笑う機人の彼が居る。
 ジャック・スペード(J♠️・f16475)にとってもかの軍神の策略通りに未来を穢させるわけにはいかない。
 どのような叡智があり、たとえどのようにあれが動いていたとしても。 
 その本質が――このサムライエンパイアという世界を脅かすものでしかないというのならば、彼の正義執行対象である。
「撃破は一体ずつ確実に、というオーダーだったか」
「そう、それ――なんだけど。あたしドでかい一撃、って得意じゃないんだけどなぁ。」
 はあ、とジャックの隣でため息をついて憂うのはティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)である。
 彼女は、一撃必殺を得意とはしない。
 手数勝負のガンマンであるから、本来の領分ではないのだ。
「あたし風遣いとやるの、これで三度目なんだけど。どっかで縁でもできたのかしらねぇ?」
 強敵とも――やりあったことがある。
 それに比べればこのような獣どもなど大したことは無いのだが、如何せん回復が自動で行われるのが面倒だ。
 まして、固くなっていると聞く。神の炎で焼いたと聞いたが、やはり焼きながらでも少しは耐えていたようだし――ティオレンシア単体とは相性が非常に悪い。
 消耗戦か、どうか。悩んでいたところであったときに彼らとタイミングがそろっていたのはある種、救いだったかもしれない。
 己の扱える魔術を組んで手にしたルーン石たちをもてあそびつつも考えていた彼女に――ヴォルフガングが目を向ける。
「ルーンかな。」
「――ああ、ええ。」
 彼らとも、扱う魔術はたまたま似ていた。
「ほう、俺にはない技術だ。」
 機械であるジャックには扱うことのないものである。ならば、戦術の幅は広がるだろうかと演算式を立てていくのだ。
 黒の脳内で戦術式が建てられているように、またヴォルフガングも己の経験から魔術を組み立てていく。
 目の前にいるティオレンシアが持つのはエイワズ・ラグ・ウルのルーンが刻まれたそれらである。
「弓で穿ち、水を纏い。勢いをつける――なるほど、なるほど。」
 問題はない。こくりと頷いたヴォルフガングである。彼にも彼の策があるように、彼女の策がすでに組まれているのであれば共に行うのみである。
「目標、索敵――発見。いけそうか」
「ああ、構わないよ」
「ラジャー。覚悟決めて、行くわ」
 ジャックの理想としては――己の損傷を含まないものではあるが、この場皆の損傷率0%である。
 計算式では限りなく可能性の低い作戦であるが、それをこなせねば彼は彼でないのだ。
 頼もし気な仲間たちの、戦いなれたしぐさが――可能性を広げるというのなら、この頭脳ではたきだした計算も覆されるだろう。
 演算は、しょせん演算である。人間を愛して未来を愛して、世界を愛する己に正直な彼ならばきっとわかっていたことだった。
「よし。」
 ならば、――恐れることもあるまい。
 三つの影がそれぞれに動き出していた。己らの得意な方法で、それからお互いの実力を信じて。
 彼らは、一頭の虎を殺すために狩りを始める。

 さて。
 最初に――斬りこみを入れることにしたのはやはりジャックだ。
「『――餌の時間だ、ハインリヒ』」
 遠距離の二人がいるというのなら、近距離かつ「そうそう死ぬ体でない」己が手早く注目を集めようという手段である。 
 【暴食に狂いし機械竜(グロトネリーア・ハインリヒ)】。
 暴食竜の名はだてでないのを教えてやれと――念じたジャックの右腕が、禍々しき機械竜のあぎとへと形態を変える。
 切り替わるコード名を承認してやれば、獣の唸り声の代わりに腕パーツから蒸気が立ち上った。
  モード・ハインリヒ・オールグリーン
 形 態 変 更 、 完 了 。
「では、暴虐の時間と往こう」
 竜のあぎとを右腕に、それから左手に雷を纏う刀を手にして――黒の正義が前へと歩む。
 打ち砕かんは、眼前に現れてこちらを威嚇する一頭の虎である。
 猟兵同士の交信――報告を電波から傍受しながら、各個撃破の良い報告を耳にしている彼だ。
 ならば、このオーダーにも完全で応えてみせねばならぬ。

 駆ける!

 機械の体が体中のポンプをうならせ、彼の体をまるでばねで弾いたかのように鋭く駆けさせた!

 黒が着弾する――その前に!

「おっとぉ、逃げないで――もらうわよぉッ!」
 一直線すぎる暴虐の動きを読んだ白虎の死角から飛び出したのはティオレンシアだ!
 相討ち上等、刺し違えられたら御の字かしらねぇ――。
 彼女の覚悟は存外に重い。守るべき己の信念とそれから誰かの未来のために死ぬことだけは避けるが、勝利だけは何としても掴む!
 「全身」、風の「流れに乗っ」て、「突撃」――!!
 念じれば彼女を護らんと、水の塊が湧き出てきてその体を風の脅威から守って見せた!
 これも長くはもつまい、だから――次の一手を投げ込む!
 走りながらグレネードをばらまいて、そのまま体を脚からスライディングさせ、風を渦巻かせている獣のまたぐらをかいくぐる!
 どうどうどう、と爆発を繰り返した腹の下を焦がして、獣がティオレンシアに注意を向けた。
 焼けこげる内臓の修復が行われているのを、態勢を立て直してから確認したティオレンシアである。
「――回復してるわ!」
「だろうね。読み通りだ」
 頭のない獣が――かの黒によって分析しつくされているのであった。
 ヴォルフガングが、ひそめていた木々からティオレンシアに返事をする。
 木のそばまで滑りこんできた彼女に、ちらりと一瞥してから狼は四つ足のそれを見る。
 堕ちた神である。
 ――見るに堪えない。
 眉を顰め、それから躊躇いなく彼は己のコードを紡ぐ。

「『指令、「我が思想を受肉し意の儘に」』」

 彼の魔術がくみ上げられて――彼の体からあふれたそれで精製された無数の矢があった!
 【調律・創成の空図(コード・アトラス)】!!
 ごう、とその矢どもが燃え盛る。彼が編み出した戦法は、物量と――はやり、すべてを奪い焼き尽くす炎なのだ。
 燃える、燃える。彼の手にしたルーンの紋章とともに、きらめく炎共が白虎へと向く!

「我が牙の代わりとして君を突き抉り、切り裂く。――眠れ、哀れなる神よ」

 最後には、目を伏せて。
 ヴォルフガングの完璧な術式で、白虎に逃亡を許さぬ無数が襲い掛かる!
 吠える白虎の頭はどこにあったのか、それともあの風が頭であったのか――もう、わからぬが。
 一つ着弾すればその体を焼き、まるで無数の太陽が堕ちたかのように地面すら燃やす!
 逃げることすら許さない布陣で、駆けてくる黒があったのだ!!

     アタック
 ――、 着 弾 !

「 喰 ら え 」

 無機質なはずの黄金のモニターから、眼光を放ち!
 黒の剣たる彼が――竜のあぎとで燃え盛る白へつかみかかる!
 がぶりとその巨大な腹を横から喰らったならば、右腕を叩きつけるようにして地面へ沈ませた!
 そのまま、電気を纏った剣を振り落とし、胸へと突き刺さんとする。
 ――耐熱温度外、至急離れてください。
 ――離脱をお勧めします。
 頭の中の機械的なアナウンスが、彼の体を焼く太陽の熱を悟らせる。
 しかし――だからといって、この仲間の熱がジャックを余計に燃え上がらせるだけなのだ。
 たとえ回線が焦げようと!己の体が燃えようと!

「俺の「こころ」はもっと――燃えている!」

 心臓に届かぬ雷の剣を固定しながら、灼熱の中に留まる彼に!

「いいとこどりしちゃあ、だめよぉ――任せて。」
 人間の体で在りながら、躊躇いなく水を纏ったまま飛び込んできたのはティオレンシアである!
 水の加護を受けている、燃えはしない。だが――蒸発していくのは止められない。
 ヴォルフガングがそのさまを見ながら、彼らを信じて炎の向こうで待つ。
 ――炎を消すことはできる。しかし、それをしてしまえばまた。
「まだ、火の中でもがいているんだね」
 いっそ――惨たらしく。
 いまだ悪しきの呪縛から逃れられないけものが全身を黒焦げにしきれずに、あがく。
 この炎を消してしまえばまた自由を与えてしまう。二度目の作戦を立てる時間もないのだ。
 仲間を信じるしかない彼の赤が――運命を、待つ!

「熱さ上等。夏だからねぇ」

 【滅殺(ブラスト)】!!
 どう、と零距離の射撃でティオレンシアが撃ったのは、ジャックの剣だったのだ。
 その持ち手に弾丸をあててやれば、より深くに押し込まれる!
 超威力の銃撃に体をくだかれながら、獣の皮、筋肉、骨まで断っていった刀が――そのかけらが体内に残ったのなら!

 コンプリート
「完了だ。」

 放電!
 体内で内臓ごと、そして心臓事焼き切ってしまった一撃である!
 外からも内からも燃やし尽くされた獣の、最後を感じてヴォルフガングが炎をかき消した。
 汗だくになったティオレンシアが、心地の良い風に巻き上げられていく黒煙を見送る。
 ――ジャックのボディは多少溶けていたが、それ以上の痛みはない。この程度なら、少し修理すれば事なきを得るだろう。
 夏の空に消えていく、黒い神性を見送るヴォルフガングの瞳が、どこか――哀愁に満ちてから、閉じられる。

「帰ろうか」

 未来へ。――彼らを待つ、次の戦場に。三人の狼たちが、群れを成して歩いていく。
 駆けた風車の完全崩壊まで、あとひとつ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

穂結・神楽耶
【穿牙】◎★△

確かに奇抜な発想の陣形ですよね、これ。
上杉謙信は生涯無敗だったのでしたっけ?
…ええ。
過去にいつまでも大きな顔でいさせる訳にはいきませんからね。

【朱殷再燃】《挑発》《存在感》
頭がないにしても温感くらいはありますよね?
軽く炙って怒らせて、こっちの方へ来て頂きましょう。
わたくしの炎では固くなった表皮を抜けないでしょうが…
構いません。
誘導が役割だと心得ておりますので。

さ、電脳の支配者がお待ちです。
どうぞ食らいついてくださいな。
その後はごゆっくり――銃弾と念動力のフルコースをお楽しみください。
終わるまで席からお逃げになりませんよう。
炎を以てお願い申し上げます。


鎧坂・灯理
【穿牙】
無敵の天才、越後の龍か
くだらない
天才は過去、無敵は錯覚
策は失敗する。我々がそうする

電脳の支配者が前に出た
兵士は敵の陣地へ歩を進める
非女神は己の光で「人」を導くだろう
私が手伝う事はない

念動力で上空へ。出来る限り多くの敵を視野に収める
――PSI能力は意志の力。私の思い込みは力になる
「竜巻など我が念動力の前ではそよ風に等しい」と信じる
『霊亀』による分析もある、あの程度は容易くかき消せる

「剣」が届いたならばテレパシーで皆に合図を
合わせて視界内の敵すべてを握りつぶす
外ではないよ、頑丈な皮の内側だ
内臓は柔らかいままだろう?

虎よ、虎よ
あかあかと――地を染めろ


鳴宮・匡
【穿牙】◎★△


「無敵」なんてものがこの世にあるわけがない
生きて動くものなら、いつか死ぬし殺せるものだ
それを今から証明してやるよ

ヴィクティムの無茶はいつものことだ
どうせ歯を食いしばってでも成功させる、
なんてのもわかりきってる

だから、こっちは備える
襲い来る竜巻を掻い潜って
奔る暴風を、穂結の放った炎の熱や光を隠れ蓑にして
あいつの策が成る瞬間に、間に合わせてみせる

鎧坂の合図でUC起動
中身を握り潰されたら普通死ぬはずだけど
倒れないタフなやつには、外側からもくれてやる
頭がないからな、腹に全弾ぶち込むよ
複数生き残ってるならダメージで怯んでいる隙に次々と処理していく
一つ残らず食らってくれ、釣りはいらないからさ


ヴィクティム・ウィンターミュート
【穿牙】◎★△

戦国無敵の陣形を相手にするか──いいね
横っ腹に風穴空けて、崩してやるよ

俺の役目はシンプルさ
無造作に、白虎の前に出る
毘沙門天の御使いの虎らしいが──狗の間違えだろ?
さあ来い、尻尾振って突撃してみろよ

──来た
目の前に殺意がある
暴風で頬が切り裂かれた。流れる血が熱い
まともに喰らえば即死は免れない
あぁ──心底恐ろしいと思うよ、本当に
心が浮つく、乱れる──ダメだ、凍りつかせろ
いつだってArseneは、シニカルに笑って出し抜くもんだ

『Durandal』セット、完全脱力
着弾確認──エネルギー奪取

変換開始──3人に合わせた『勇者の剣』が完成する
受け取れ英雄ども──お前たちの勝ちは、揺るがない





「わあ、――確かに奇抜な発想の陣形ですよね、これ。」
 かの越後の竜で、毘沙門天の使いたる彼は。
「上杉謙信は生涯無敗だったのでしたっけ?」
 発想こそ常人のそれでない。それでいてあの時代では義に厚く、「敵に塩を送る」ような武将であったという。
 穂結・神楽耶(思惟の刃・f15297)は数多の猟兵たちがなんとかへし折ろうと繰り返す風車の陣を眺めながら誰となしに尋ねてみた。
「くだらない。策は失敗させます。我々がそうする。」
 鎧坂・灯理(不退転・f14037)がため息をついてから、かの非女神の一言に答えを返した。
「無敗でなく、厠で倒れてそのまま死んだのです。――彼の死後は決められていなかった家督を争って内乱になり、上杉家は大きく衰えたそうですよ」
 何とも天才の最期の割に情けない。と、彼女が毒づくように。
 UDCアース基準の歴史でいうのならばかの上杉謙信の最期はそうである。それが、この天才に追いつくために必死な彼女には理解が及ばない。
 何もかも、戦、いくさばかりで――未来のことなど考えていなかったのではないか。
 過去の天才はしょせん過去である。無敵は錯覚で、あとづけ設定といってもいい。
「「無敵」なんてものがこの世にあるわけがない。生きて動くものなら、いつか死ぬし殺せるものだ」
 実際、死んだろ、一度は。
 なんて、中央で走る戦火を見ながら――鳴宮・匡(凪の海・f01612)は巻き起こる夏の風よりもひどいそれに前髪を撫でられていた。
「それを今から証明してやるよ。そうだろ?」
 隣に並ぶ「信用できる腕」を持つ彼に問うてやる。
 そうすれば、にやりと笑って見せる少年が腕を組んでから。
「戦国無敵の陣形を相手にするか──いいね。」
 あくどく笑ってやる彼は、電脳の支配者である。
 ローテクなこの世界とは相性が良い。それ以上に――彼には、この世界を救う理由がある。
 負けられない。負けてやるものか。蒼に滲む苛烈な闘志に、匡の瞳があきれたような色をはらんでいたのすら気にならない。
「横っ腹に風穴空けて、崩してやるよ――。」
 ヴィクティム・ウィンターミュート(impulse of Arsene・f01172)。
 彼が電子の画面を起動してから、彼の体を蒼のパネルが埋め尽くさん勢いで現れる。簡単なタップをしてから、彼がゴーグルを下すのだ。
 そして、皆に振り返る。
「さて、それでは――今一度気を引き締めてまいりましょうか。非女神殿。号令をお願い致します。」
 ぽん、と手を叩いた灯理が、ぶれない人の子たちに感動している非女神の不意をつく。
「えっ!?またわたくしですか。」
「ええ、貴女意外に誰がふさわしいのか。」
「生憎俺は端役なもんでね。」
  ・        ・
「軍神に抗うんだ、非女神様のご加護がないとな。」
 いけしゃあしゃあ。
 この場にいるひとのこの誰もが――目立ちたがりでない。
 もはや半分くらい面白おかしさも交えていただろうが、彼らが己を頼りだしたのであれば。
「過去にいつまでも大きな顔でいさせる訳にはいきませんからね。」
 苦笑いも交えて、照れた笑いを向ける非女神たる神楽耶である。
 守り損ないの――悔悟の刀であるのに、彼らがそんな自分の加護を求めてくれるというのなら、届かせねばなるまい。
 並んだ四人が、一点を見つめる。目指すは、残った大きな一頭の虎。
 仲間たちを失って余計に獰猛になっているのだろう。虎の纏う術式が苛烈であるのはもはや視認できるほどであった。
 挑む。
 挑まねば、なるまい!

「無敵の陣を穿ちに。──いざ、出陣!」
「応!」
「御意。」
「承知。」

 さあ、いざやいざ、――最後の風車を破壊せん!

 戦場を突っ切る真っ赤な彼女がいた。
 神楽耶が走る!鼻緒をしかりと結んだ草履で、踏み込んで土を蹴って、待ち構える虎に突っ込んでいく!
 無策なわけがあるまい、この非女神は此度の役割をよくわかっているのだ――。

「頭がないにしても温感くらいはありますよね?」

 不敵な笑みを浮かべてから、彼女のからだをめらりと炎が撫でる!
 そのまま――魔術を乗せて放つのは【朱殷再燃(シュアンサイネン)】!!
 纏う焔が彼女ごと虎を焼かんとその風に乗っていった!たちまち、首なしの虎は体を炎に包まれる!
 たまらず――無い頭からの咆哮をとどろかせて、完全に神楽耶へ意識を向けるそれである。
 悔悟の炎が予想通りに白虎の皮を焼けない。しかし、それによって余計に勝利を確信した神楽耶である!
 炎で頬を焼かれる彼女であるが、なんてことはない。このような痛みは――誰も知らなければよい痛みなのだ。
 構わない。
 今日の彼女は――誘導役なのだ。

「さあ!こちらへどうぞ。食らいついてくださいな」

 笑みをますます深めて、刀を構える彼女に躊躇いなく虎は風を纏ったまま襲い掛かる!
 その間に――最強の電脳であるヴィクティムが現れたのである。
 この戦い方は、事前に組み合わせていたのだ。この暴挙とも思える手段に出ることも、匡は少し考えてから承知した。
 どうせ止めても、――やるだろう。それに、ヴィクティムは一度取り組んだプランは必ず成功させるのだ。
 たとえ、それがどのような犠牲を伴ったとしても彼は必ず成功へと導く計算を何度だって叩きだせる。
 わかり切っている、彼の動きを匡も止めれなかった。
 竜巻のタイミングを読みながら、灯理と共に次の一手を構えている彼である。
 灯理は念動力でふわりと己の体を浮かせていた。
 涼しい顔をしているが、彼女の頭は「思い込み」でいっぱいなのだ。
 ――サイキックである。
 思い込み、すなわち「意志」の力で不可能を可能とする彼女の力は明確なイメージが必要なのだ。
 化け物のような思考回路を持っていたとしても、人間の体である限りは「人間であることをフルに使った」ものしか行えない。
 だから――己を信じるしかないのだ。
 竜巻など我が念動力の前ではそよ風に等しい、と。何度も何度も呪いのように念ずるのを高速で行っている。
 だからこそ、この場を『霊亀』を用いて分析も行い、軽々と虎の上を取れているのだ。
 この作戦の成功に必要なのは、灯理の念である。すべて、イメージが力となる。
 ――この作戦の成功を、「念じている」。
 執行役が上をとるのを成功したのを見上げて、匡は再び虎と対峙したヴィクティムを見た。
 飛び出したヴィクティムの顔が微笑んでいて――思わず、舌打ちそうになったのだった。

 なんて顔を、してんだよ。

 目の前のこれは、虎だって――?
 ヴィクティムが笑ってやるのだ。毘沙門天の御使いを名乗るわりに高貴さのかけらもない。
 いいや、狗の間違えだろ?なんて資料を見たときに思わず笑い飛ばしそうになったほどだ。
 悪しきに尻尾を振り、その思うがままに動かされるだけの獣どもに――このArseneが敗北するはずもない。
 むろん、仲間たちもだ。
 この英雄たちの――礎となるために「端役」たる彼は此処に在る!

 目の前の殺意は、明らかに巨大だった。
 爪を上下に振るだけで、ヴィクティムの体などは消し飛んでしまうだろう。
 暴風が彼の頬を裂いて、流れる血潮は彼の熱さを物語る。その赤が――後ろにいた神楽耶の頬を弾いた。
 心底、恐ろしい。
 ――一撃でもまともに喰らえば、即死である。
 この場には灯理がいる、しかし灯理の治癒だって「生きていなければ」回復できないのだ。
 確率がゼロでない。死んでしまう確率のほうが極めて高い。

 心が浮つく、乱れる──ダメだ、凍りつかせろ――!

 赤が、散る。
 赤を燃料にめらめらと虎を焼く炎が勢いを増した!
 立ちふさがった彼を、まるで鼓舞するかのように。
 少しの空白で非女神が彼に加護を与える!
「終わるまで席からお逃げになりませんよう。――炎を以てお願い申し上げます。」
 笑っている。
 彼の背で、神楽耶が笑っていたのだ!
 そうだ、笑え。
 ヴィクティムが、絶対の恐怖から逃れるには単純な一手であった。
 しかしこの一手がどこで得れるかはタイミング次第であり、信じてくれる仲間が――彼の後ろで勝利を望んでいなければきっと、駄目だったのである。

 >Aresene: Order.
 >Comand...Set :Reuse Program『Durandal』

 ――いつだってArseneは、シニカルに笑って出し抜くもんだ。

 逃げ場を失った白虎が爆風を伴った一撃を手ひどくヴィクティムに振り下ろした。
 灯理も、匡もまだ動かない。まだ、――まだ。

「受け取れ英雄ども──お 前 た ち の 勝 ち は 、揺 る が な い ! ! 」

 着弾したかまいたちが――すべて打ち消された!
 首なしの虎が慄いて、その動きを固めた瞬間にヴィクティムの腕から連弾されるのは数列を伴ったコードだ!
 戦場にいる皆の――後続の二人の体を大幅に強化する反射強化プログラム、【Reuse Program『Durandal』(エイユウニタクスユウシャノツルギ)】!!
 暴風をかいくぐり続ける匡を守るのは、今回の作戦において彼のみの実力でしかない。
 上空にいる灯理はきっと頭の中が「念」で満たされているし、もとより、己の身は己で守るたちだった。
 だから匡はずっとこの戦場で止まらなかったのだ!
 勢いを増した炎も、その光も、何もかもを隠れ蓑にしてずっと潜んで信じていた彼である――!

「間に合わせる。」

 彼のもとにコードが届いて、それから――。

 >鳴宮殿、非女神殿、Arsene殿――ご注意を。

 皆の頭に、テレパシーが届く。
 構えた匡が、強化された己の体を信じて竜巻などお構いなしに銃器を構えた!
 狙うは、――目標、虎!虎である!

 匡が銃器を構えた。
 神楽耶がヴィクティムを連れて炎を纏いながら巨大な盾を造った。
 虎は己の攻撃が打ち消されて二人に夢中である。

 上から見れば、ああ、なんとわかりやすいことか。
 潰せばいい――相手がよく見える。
 ふ、と笑った灯理の紫が、色を落としていた。

「虎よ、虎よ」

 にい、と笑った彼女がいる。
 紫を三日月のようにして、それから小さく映る虎を掌に収める。
 想像するのだ――成功のイメージを。

「 あ か あ か と ――、地 を 染 め ろ ! 」

 ぎゅう、とそのまま「白虎が握りつぶされた」。

 それと同時に匡がダメ押しとばかりに、脚からスライディングをしかけて鉛球を放つ!!
「一つ残らず食らってくれ、釣りはいらないからさ」
 出し惜しみなどしない!
 虎の四肢の間をすり抜けて――腹に【終幕の雨(フルバースト)】!!
 がうがうがうと狼の嘶きよりも強い音で撃ち抜かれた腹から、血の雨が降り注ごうとしてから――『爆発』した。

「ぅおあ、――っぶね」

 もう一拍遅れていたら、匡の全身が真っ赤なグロテスクで染められていたかもしれない。

 虎が、「握りつぶされて」いたのだ。
「ああ、少々握りすぎてしまいました。Arsene殿のアシストがよく効いたようです」
 ふわり、とあくどい笑みを浮かべたまま地面に降りた灯理がいる。
 靴を汚すのは今更気にもならないが、好き好んで赤に浸すのも少し癪だ。そのまま、数ミリほど体を浮かせて仕事の出来に満足した。
 【念動奇術・壱ノ型『胡桃割人形』(サイマジックオーワン・チャイコフスキー)】。
 心臓――どころでない。
 中身すべてを握りつぶした彼女のそれと、匡の出し惜しみなく放った近接での鉛球の嵐で見事虎は打倒されたのである。
 たちまち、赤が黒煙になって躯の海へと帰っていくのを見送る神楽耶が、ささやかに目を閉じて祈るのを。
 ヴィクティムがしばし――息を吐いて、待っていたのだった。

 まだ、夏の戦いは終わらない。
 きっとこれからも、彼らの苛烈な戦いは続く。
 ――真っ赤に染まった風車は、もう回らないだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年08月13日


挿絵イラスト