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エンパイアウォー⑱~応現、越後の龍

#サムライエンパイア #戦争 #エンパイアウォー #魔軍将 #上杉謙信

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●関ヶ原・車懸かりの陣 中央
 白絹を行人包にした僧形の男が一人、陣の中央に佇んでいた。
 その周囲には彼を守るように浮遊する刃が十振り。あるものは炎を纏い、あるものは冷気を帯び、またあるものは光を放ち、各々が異なる力を備えているようだ。そして彼自身の手には、左右それぞれに純白と漆黒の太刀が握られている。
「武田は来ぬか……」
 彼は遠い目をして呟き、そしてゆっくりと頭を振った。
「……いや、武田を封殺したという者たちが来るのだったな」
 そして顔を上げた彼は、射抜くような鋭い視線を虚空に向ける。
「その腕前、しかと見届けなくてはならぬ。……彼の人の分まで、な」

●グリモアベース
「さて、いよいよあの上杉謙信が出てきたよ」
 上崎・真鶴は、やや楽しげな口調で話し始めた。
「彼の居場所は関ヶ原。そこで軍勢を率いて待ち構えているみたい。……と言っても今回は、その軍勢を相手にする人と、それをどうにか掻い潜って謙信を直接討つ人とに分かれてもらうよ。こっちの受け持ちは謙信のとこだからね。……間違えてない? 大丈夫かな?」
 ニヤリとしつつ、真鶴は猟兵たちの顔を覗き込む。
「それで、なんだけど。魔軍将の一人っていうだけあって、やっぱり謙信も普通のオブリビオンじゃないみたいだよ」
 気持ちを切り替えたのか、真鶴は真剣な目付きで猟兵たちの顔を見据えた。
「まず単純に強い。『軍神』って呼ばれるくらいだから、これはまあ意外でも何でもないけど」
 謙信は毘沙門刀と呼ばれる様々な属性を持った12本の刀と自然現象を自在に操って戦う。文字通り神のような強さだが、それ以外に特殊な力などは持っていないようだ。
「大事なのは謙信の周囲を取り巻いている軍勢だね。『車懸かりの陣』っていう陣形を組んでるんだけど、これが厄介。これ自体に何か特別な力があるってわけじゃないよ。でもとにかく邪魔。ひたすらぐるぐるぐるぐる動き回ってるんだけどさ、それがただ闇雲に動いてるわけじゃないんだ」
 陣形に穴が開けば即座にそれを埋め、敵の勢いが強いところには増援を送り、傷付いた者はすかさず後方へ移すなど、まるで一個の存在であるかのように陣形を保持し続けるという。上杉謙信は、この『車懸かりの陣』を自分の周囲に巡らせることで、自分が蘇生する為の時間を稼いでいるということらしい。
「そのせいでこっちとしても、ちまちま少しずつ戦力を送ることしか出来ないんだ。本格的に止めを刺すには『車懸かりの陣』も潰さないと駄目っぽいよ。さっきも言ったように、そっちはまた別の人たちに任せることになるけども」
 真鶴は小さく溜め息をついた。
「……こんなことが出来るのは、上杉謙信の並外れた統率力があってのことだろうね。そういう意味では、これも『軍神』としての力ってことになるのかも」
 彼もまた戦国最強と謳われた大名の一人。軍神と呼ばれるほどの神懸かった武勇と采配は、オブリビオンとなった今もなお健在ということだ。
「でもまあ直接戦ったわけじゃないとはいえ、あの武田信玄だってどうにかなったんだしね。皆で力を合わせれば上杉謙信だってどうにか出来るはず」
 真鶴は再び明るい調子に戻ると、ひらひらと手を振って猟兵たちを送り出す。
「それじゃ、後はよろしく頼むね。大変だと思うけど任せたよ!」


若林貴生
 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。

 こんにちは。若林貴生です。

 シナリオは敵陣をどうにか掻い潜って、上杉謙信の下に辿り着いたところから始まります。
 車懸かりの陣そのものを攻略するプレイングは必要ありませんのでご注意ください。
 上杉謙信には、他の魔軍将である風魔小太郎や日野富子などが持つ先制攻撃の能力はありません。
 車懸かりが行えるような場所なので、地形はだだっ広い平地です。

 今回は判定が少し厳しめです。
 また戦争シナリオであることを踏まえて、多くのプレイングを採用することよりもシナリオの完結を優先します。ご了承ください。

 それでは皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 ボス戦 『軍神『上杉謙信』』

POW   :    毘沙門刀連斬
【12本の『毘沙門刀』】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    毘沙門刀車懸かり
自身に【回転する12本の『毘沙門刀』】をまとい、高速移動と【敵の弱点に応じた属性の『毘沙門刀』】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    毘沙門刀天変地異
「属性」と「自然現象」を合成した現象を発動する。氷の津波、炎の竜巻など。制御が難しく暴走しやすい。

イラスト:色

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

逢坂・理彦
軍神と名高い上杉謙信公と戦えるなんてね。
いやこれで信玄公も蘇ったりしてたら戦況はやもっと苦しかったかもしれない…なんとか復活を止められて良かったよ。

12本の毘沙門刀かぁ…あれを一気に操られたら厄介だけど。
UC【狐火・穿ち曼珠沙華】発動。
流石に刀一本に一本では対処しきれるほど強力ではないけど軌道を反らしたりして攻撃の隙を作ることができるはず。
刀を曼珠沙華で対処しつつ【戦闘知識】で機をうかがいながら【早業・なぎ払い】で斬り込み。それでも【武器落とし】は常にできるよう。【だまし討ち】を交えつつ攻撃を繰り返す。
敵攻撃は【戦闘知識】と【第六感】で【見切り】

アドリブ連携歓迎。


勘解由小路・津雲
アドリブ連携歓迎

【作戦】
【八陣の迷宮】を使用し上杉謙信と1対1のフィールドを作る、協力できる猟兵がいればその方も。これなら、室外の自然現象は迷宮が防ぎ、狭い室内で発生させれば相手を巻きこめる、はず。

「自分だけ避けるなんて器用なことが出来る術ではあるまい!」

問題は上杉謙信と場合によっては単独で戦わねばならぬことか。十振りの刀は対応するものは「火炎耐性」などの力を込めた霊符で、しないものは「オーラ防御」でしのぎ、攻撃は「破魔」の力を「範囲攻撃」でまき散らす。破魔なら自分をまきこんでも大丈夫なはず。

「あんたには当てようと思って当てられるものじゃないだろうからな、こういう作戦をとらせてもらうぜ」


御剣・刀也
軍神か、楽しい戦いになりそうだぜ
俺は天武古砕流後継者!御剣刀也!!いざ尋常に勝負!!

連斬は第六感、見切り、残像で避ける、もしくは日本刀で弾くなどしながら距離を詰めて、捨て身の一撃に全てを込めて斬り捨てる
車懸かりは第六感で高速移動先を予測し、見切りと残像で回転する方向に身体を流し、受け止めるのではなく、流れに身を任せるようにして滑り込むように接近し、捨て身の一撃で斬り捨てる
天変地異は発動されたら制御も難しいので、自滅する可能性もあるが、そんな詰らない戦いはせず、自滅する前に謙信を斬りに行く
「戦場では俺は死人。死人は死を恐れない。さぁ、生と死の瀬戸際の魂のざわめきを感じようぜ!!」



●水禍
 あちこちで上がる鬨の声が、辺りの空気を震わせていた。地鳴りのように響き渡る蹄音が取り巻き、剣戟や甲冑の擦れ合う音が絶えず聞こえてくる。力と力がぶつかり合い、文字通りに渦を巻いている戦場の中心で、静かに猟兵たちを見据える一人の男――上杉謙信。その目には興味の色が浮かんでいた。
「そなたらが武田を封殺した者たちか」
「……まぁね、なんとか復活を止められて良かったよ」
 薙刀を構え、間合いを測りながら逢坂・理彦が答える。
「ならば手心を加える必要はあるまい。毘沙門天の化身たる私の力、そなたらに見せるとしよう」
 謙信が太刀を抜き放ち、彼の周囲に十振りの刀が浮かび上がった。
「俺は天武古砕流後継者! 御剣刀也!! いざ尋常に勝負!!」
 真っ先に挑んだのは御剣・刀也だ。謙信に向かい、一直線に距離を詰めようとする。その刀也に対して、謙信を取り巻いていた刃が四方八方から襲い掛かった。刀也は身を屈めて正面からの刃を躱し、足元を払いに掛かった刃を跳んで躱す。だが、その全てを躱せるわけではない。上空から振り下ろされたような刃に対し、刀也はそれを弾き落とそうと刀を振り上げた。
「……!? っと、こいつは……」
 予想よりも鋭く重い感触に、刀也は体勢を崩しかけて踏み止まる。流石は軍神と言うべきか、その刃は片手間に捌けるものではなかった。仕方なく刀也は足を止めて、迫り来る刀群を打ち払う。
「12本の毘沙門刀かぁ……やっぱりあれを一気に操られたら厄介だね」
 刀也の様子を眺めつつ、理彦は空中に無数の狐火を生み出した。灯された狐火は曼珠沙華に形を変えて、矢嵐のように謙信へと降り注ぐ。
「曼珠沙華か、これは良い」
 謙信は迫り来る炎に表情を変えることもなく水の刃を一振りした。すると刃から滝のように水が溢れ出し、大きな濁流となって炎の華をあっさりと押し流す。
「……やれやれ、参ったね」
 200本近い華の杭を一度に消し去られ、理彦は苦笑交じりに困惑げな表情を浮かべた。このまま広範囲に及ぶ術を連発されては近寄るのもままならない。12本もの刀を広い場所で縦横無尽に振るわれることも、こちらにとって不利に働くだろう。
「それならば……」
 勘解由小路・津雲は懐から霊符を8枚取り出した。その符を握り締めて念を込めると、霊符は八方に飛び散って空中に固定される。
「休・生・傷・杜・景・死・驚・開」
 印を結んだ津雲が呪文を唱えた途端、広い結界と複雑に入り組んだ回廊が一瞬で構築されて八陣の迷宮が出来上がった。
「今や三吉門は閉ざされ、汝に開かれたるは死門のみ」
「これは……面妖な術よの」
 突然現れた迷宮に物珍しそうな視線を向けはするものの、謙信に動じた様子は見られない。だが狭く限られた空間での3対1。これならば強力な技を操る謙信が相手であっても、手数で押し切れる可能性は十分にある。
「此処ならどうだ? 先程のような大波、自分だけ避けるなんて器用なことが出来る術ではあるまい!」
 津雲は口の端に笑みを浮かべ、新たな霊符を数枚取り出した。そこに込められているのは破魔の力。津雲はその霊符を使い、回廊中を清め祓うかのように破魔の結界で埋め尽くす。
「あんたには当てようと思って当てられるものじゃないだろうからな、こういう作戦をとらせてもらうぜ」
 理彦と刀也もそれぞれ薙刀と刀を構え、三方向から謙信との距離をじりじりと詰める。
「……ふむ、そなたの見立ては悪くない」
 津雲を見据えていた謙信の口元が僅かに緩んだ。その頭上に水の刃が浮かぶ。
「だが賢しいな」
 その言葉と共に、再び水の刃が大量の水を呼び起こした。
 三人は思わず後退ったが、水流は止め処なく溢れ続ける。あっという間に膝から腰、腰から胸へと水かさが増し、迷宮の回廊は水路へと姿を変えた。そして謙信も含めた全員が激しい水流に飲まれ、異なる方向へと流されていく。

●軍神
 水が捌けた迷宮の中を、刀也は一人歩いていた。
「……ん?」
 何処からか響いてくる物音を聞きつけ、刀也の足が止まる。硬い物を叩き壊そうとしているような激しい物音だ。
「これは……」
 音の正体を突き止めようとして刀也が走り出す。そして幾つかの角を曲がり、回廊を進んだその先に上杉謙信の姿があった。刀也の足音に気付いたか、壁に向かっていた謙信が後ろを振り向く。
 どうやら迷宮を破壊しようとしていたらしく、壁には大きな亀裂が生じていた。壁もかなり頑丈に出来ているようだが、それを見た限りでは壊されるのも時間の問題だろう。
「……そなたか」
 刀也を一瞥した後、謙信は辺りに視線を巡らせた。
「一人のようだが、仲間を待たずともよいのか?」
 その言葉を刀也は鼻先で笑う。
「戦場では俺は死人。死人は死を恐れない」
 そう言って刀也は獅子吼の鞘を払った。
「さぁ、生と死の瀬戸際の魂のざわめきを感じようぜ!!」
「……そうか。そこまで言うのであれば、一つ相手をしてやろう」
 迷宮を破壊するべく壁の亀裂を広げていた謙信の刀が、その切っ先を刀也に向ける。
 その数は6本。4本は今も壁の破壊を続け、2本の太刀は未だ腰の鞘に納められたままだった。加えてこの狭い通路なら、刀は前方からしか来ないだろう。
 刀也は先刻と同様、真っ直ぐ謙信に向かった。その頭上に振り下ろされた刃を紙一重で躱し、他の刃が残像を貫いている間に距離を詰める。
「なかなか素早いな」
 謙信が腰の太刀をすらりと抜き放った。刀也はそれに構わず大きく踏み込む。そして上段の構えから、謙信を袈裟懸けに斬り付けた。
「ぬうっ!」
 謙信の身体に一文字の傷が刻まれる。だがその代償に、刀也は左腕と右足を切り裂かれていた。それでも刀也の気迫は衰えることなく、その視線と構えた刀の切っ先は謙信を捉えている。
「まさか、これで終わりとは言わないよな?」
 挑発するように刀也が言った。その問いには答えず、謙信は視線を横合いに向ける。
「……どうやらそなたに助けが来たようだ」
 剣戟の音を聞き付けたのか、二つの足音が慌ただしく近付いていた。ややあって回廊の奥から津雲と理彦が姿を見せる。
「間に合ったか!」
「すまない、遅くなったね」
 理彦を取り巻く狐火が、紅い炎の華に姿を変えた。咲き乱れた曼珠沙華は炎の矢となり、謙信を穿ち抜かんと一斉に放たれる。だが謙信の前に浮かび上がった水と土の刃が、それをいとも容易く斬り払った。二つの刃は宙を自在に舞って、次々に赤い華を散らせていく。
「では、こちらも炎で返すとしよう」
 謙信が放った火の刃から、真っ赤な炎が噴き上がった。それを見た津雲は、霊符を手にして素早く印を結ぶ。
「水剋火! 急急如律令!」
 その言葉と共に霊符の結界が張られ、放射された炎を受け止めた。
「ほう……ならば、これはどうだ?」
 少し感心した様子の謙信が次に繰り出したのは雷の刃。津雲は一旦結界を解くと、新たな霊符を取り出して別の結界を張り直す。
「金剋木! 急急如律令!」
 再び張られた結界は、刃から放たれた雷撃を弾いて打ち消した。
 その隙を衝いて薙刀を構えた理彦が、狐火を纏わせながら謙信との距離を詰める。その理彦を迎え撃とうと、2本の毘沙門刀が突っ込んできた。飛来するそれに対し、理彦は十数本の曼珠沙華を束ねて一度に叩き付ける。それでも刃を叩き落とすことは叶わなかったが、その勢いを殺して押し留めるには十分だった。
「やるな……だが!」
 謙信の前に浮かぶ毒の刃が、紫色の瘴気を撒き散らす。このままでは狭い通路に毒の霧が充満するだろう。
「させるか!」
 津雲は式神の鳥に霊符を挟み込むと、それを広がりかけた瘴気の中に飛び込ませた。
「急急如律令! 毒気の力を散らしめよ!」
 そして津雲が印を結ぶと、霊符の力で毒霧が四散する。その間にも距離を詰めていた理彦は、瘴気の残滓を振り払いつつ薙刀を一閃した。銀の刃先が弧を描き、謙信の胴を横薙ぎに切り裂く。しかし同時に謙信の太刀も、理彦の腕を斜めに斬り付けた。
 だが謙信に斬り掛かったのは理彦だけではない。謙信に生じた隙を見た刀也は、辺りに漂っていた紫色の瘴気を薙ぎ払い、渾身の力で謙信に刃を振り下ろす。謙信は咄嗟に反応して太刀を翳したが、刀也の斬撃を受け切ることは出来ずにその身体を切り裂かれた。
「……しくじったか」
 謙信は忌々しそうに表情を歪める。薄まっていた毒の霧が煙幕の役目を果たし、刀也への備えが疎かになっていたのだ。
「言っただろう、死人は死を恐れない。当然、毒など気にしないさ」
 刀也はニヤリと笑う。
「なかなか見事であった」
 謙信は猟兵たちを称賛して鷹揚に頷いた。
「だが、ひとまず終わりにしようか」
 そう言って謙信は太刀を振るい、崩れかかっていた迷宮の壁を割り砕くと、そのまま素早く外に逃れる。互いに手傷を負った状態だが、謙信はまだ余裕を残しているようだ。彼が出て行くと同時に、迷宮を作り出していた結界が力を失い、ゆっくりと崩れて消えていく。
「流石に軍神と言うべきか……しんどい相手だね、まったく」
 じわりと血が滲む腕を押さえつつ、理彦は大きく息を吐いた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

鞍馬・景正
徳川家旗本、鞍馬景正。
父祖達は北条綱成閣下の一将として仕え、謙信公とは度々争ったと伝え聞いております。

尊敬せし軍神と刃を交わすは畢生の武人冥利。
いざ尋常に。

◆戦闘
愛馬に【騎乗】したまま【鬼騎乗崩】発動。
駆けながら弓を射て、僅かでも注意を逸らし、隙を見て飛翔。
一気に間を詰めさせて頂く。

太刀打ちの距離に及べば全力の【怪力】と【早業】で太刀を揮い、【衝撃波】で刀を弾きつつ、【2回攻撃】で間髪入れずに断つ。

公の挙措は【視力】を以て常に注視し、反撃の動きがあれば【見切り】回避。
最悪【第六感】で危険を察するか、得物と甲冑による【武器受け】で致命傷のみ阻止を。

鞍馬の名に懸け、一太刀なりとて届かせてみせる。



●風檣陣馬
 崩れかかった迷宮から出てきた上杉謙信を待っていたのは、竜胆色の陣羽織を羽織った一人の武士だった。
「……そなたも猟兵だな」
「徳川家旗本、鞍馬景正」
 鞍馬・景正は無表情のまま短く名乗る。
「父祖達は北条綱成閣下の一将として仕え、謙信公とは度々争ったと伝え聞いております」
「北条……小田原か」
 謙信は遠くを見るように物憂げな表情を見せた。
「尊敬せし軍神と刃を交わすは畢生の武人冥利」
 そう言って景正は脇に連れていた愛馬、夙夜の背に飛び乗る。そして跨ると同時に、彼の身体を甲冑が覆った。
「……いざ尋常に」
「よかろう……馬引けい!」
 謙信が声を張り上げる。すると一人の兵士が、立派な体格をした月毛の馬を引いてきた。謙信がその馬に跨ると、騎馬した二人は互いに間合いを取りつつ、円を描くように馬を進める。
「まずは小手調べといきましょうか」
 景正は五人張りの剛弓に矢を番え、それをいとも簡単に引き絞った。羅刹の膂力が為せる業だ。そのまま景正は遠間から矢を射掛ける。疾風のような鋭さで迫る矢を、謙信は一歩も動かぬまま切り払った。景正は続けて何度か矢を射掛けてみたが結果は変わらない。
「腕は悪くないが……その程度ということはあるまい」
 謙信は反撃に毘沙門刀を飛ばした。複数の刃は鋭い風切り音と共に、景正が放った矢と同等の速度で景正に襲い掛かる。
 景正は巧みに夙夜を操って斬撃を避けると、疾走する馬上で再び弓を構えた。そして一度に三本の矢を番え、それを同時に放って謙信を狙う。
「……なかなか器用な真似をする」
 謙信は攻撃に使っていた毘沙門刀を呼び戻し、景正の矢を払った。景正はそのまま矢筒を空にする勢いで矢を射続け、冬の風を思わせる激しい弓弦の音が絶え間なく響き渡る。
 そうやって雨のように矢を降らせ、謙信の意識が矢を切り払うことへと向いた隙に、景正は愛馬と共に宙へと舞い上がった。景正は空を旋回しながら迫り来る毘沙門刀を躱し、急降下して謙信との距離を詰める。それを撃ち落とそうと、謙信は残りの刃を景正に差し向けた。
「行きますよ、夙夜」
 夙夜に呼び掛け、景正は速度を上げつつ太刀の鞘を払う。そのまま一直線に襲い来る毘沙門刀を打ち払い、避け切れぬものは甲冑で受けて致命傷を避けた。敵の刃を受けた甲冑から火花が散るも、景正はそれに構わず謙信へと突っ込んでいく。そして突進の勢いを太刀に乗せ、謙信の構えた純白の太刀を弾き飛ばした。
「そこだっ!」
 太刀を弾かれた謙信の隙を衝き、景正はすかさず彼の胴を薙ぎ払う。両断するとまではいかないものの、景正の太刀は謙信の身体を深く切り裂いた。
「まさか、このように無様な姿を晒すことになろうとは……」
 苦痛と屈辱から謙信は眉間に皺を寄せる。そして口の端を吊り上げるように自嘲の笑みを浮かべた。

成功 🔵​🔵​🔴​

清川・シャル
軍神の戦略について色々御教授願いたいところですが、そうも言ってられませんね
軍神には鬼で如何でしょ?
一体何を何処まで御存知なのでしょうね?

氷と風でブリザードとトルネードの盾を展開、全力魔法で防御を
そっとUCを
見えない人形達(多い)でハグ自爆攻撃です
気配とかギリギリ間で頑張って
合間にグレネードを念動力で当てに行きます
視力と第六感で察知しましょう
盾が破られても、何度でも魔法で抗いますとも
念の為に激痛耐性、毒耐性、火炎耐性とオーラ防御を
見切り、残像も使いましょう
あとは地形の利用と野生の勘で乗り切ります

隙あらばそーちゃんをチェーンソーモードで振り回しておきます

何か聞き出せないか言いくるめとか試みてみたり



●手負いの龍
 清川・シャルは上杉謙信に狙いを定め、グレネードランチャーの引き金を引いた。放たれた榴弾は彼女の念動力によって、物理法則を無視した軌道を描き、謙信へと迫っていく。だがその弾は謙信に命中することなく、彼の周囲に浮かぶ毘沙門刀に斬り落とされた。
「次から次へと……」
 謙信がシャルを睨み付けると、十振りの毘沙門刀全てがその切っ先をシャルに向ける。
 それが飛来するよりも早く、シャルは自身の周囲に激しい風を巻き起こした。更に吹雪と大粒の氷片が混じり、旋風は荒れ狂う氷雪の嵐へと変化してシャルの盾となる。
「その程度で防げるとでも思うたか?」
 謙信が薄く笑った。彼の操る火と風の刃が激しい炎と風を噴き上げる。それは巨大な炎の竜巻となってシャルの氷嵐を相殺した。
 しかしシャルも、ただ黙ってそれを見ていたわけではない。氷嵐が跡形も無く消えた後に残ったのは、シャルと彼女自身にしか見えない日本人形たちだった。
「(みんな、お願いね? 行って)」
 シャルは囁くような小声で人形たちに話し掛ける。その声に従って、人形たちは放たれた矢のように謙信へと向かった。彼を取り巻く毘沙門刀を掻い潜り、人形たちは次々と謙信に抱き付き自爆する。
「何事か!?」
 謙信からすれば何が起きたのか分からなかっただろう。見えない何かに掴まれたと思った瞬間、その何かが爆発するのだ。そして立て続けに起きた爆発が、謙信の周囲に土煙を巻き起こす。
 シャルは漂う煙の中に浮かぶ人影を狙い、グレネード弾を撃ち込んだ。その榴弾を念動力で操って、謙信の頭上や足元、背後などから緩急を付けて叩き込む。
 その多くは謙信の毘沙門刀に斬り捨てられて爆散するが、さしもの軍神も視界が効かない中では全てを処理しきれなかったのだろう。数発の榴弾が謙信に命中し、再び爆発と煙が辺りを満たす。
「……これで終わるほど易しい相手ではないですよね」
 シャルの読み通り、煙が晴れた後には謙信が無事な姿で立っていた。だが、その目には静かな怒りを湛えている。
「その身を以って毘沙門天の怒りを知るがよい!」
 太刀を構えた謙信がシャルとの距離を詰める。しかしその瞬間、彼の四肢にシャルの人形が組み付いた。
「なにっ!?」
 謙信が顔色を変えると同時、またもや爆発が起きる。そして彼が体勢を崩したその隙に、シャルも金棒を手にして間合いを詰めた。愛用の金棒は既にチェーンソーモードで唸りを上げている。
 シャルは大きく跳躍し、謙信の頭上に金棒を振り下ろした。謙信はそれを漆黒の太刀で受け止め、鍔迫り合いのように押し合う金棒と太刀とが小刻みに震える。謙信はシャルと力比べをしつつ、もう一方の太刀を振るってシャルの胴を狙った。シャルは素早く脇差を抜いて彼の斬撃を防ぐ。
「この力……やはり羅刹か」
 謙信は羅刹の証であるシャルの角を睨み付けた。
「鬼なれば毘沙門天の化身たる私に従うが道理であろう」
「いえいえ、そういうわけにもいきません」
 負傷している謙信とシャルとでは、僅かにシャルの膂力が勝っているようだ。シャルの金棒と脇差は、ほんの少しずつ謙信の太刀を押し込んでいく。
「折角ですし、軍神の戦略について色々御教授願いたいところですが……」
「フッ……」
 謙信は小さく吐息を漏らすように笑った。
「そなたに話す必要があるとも思えぬ」
「それなら仕方ありませんね」
 シャルは両腕の力を抜くと同時に、素早く横へ飛び退いた。そして勢い余った謙信がたたらを踏み、前のめりになったところへ全力で金棒を叩き付ける。
「ぐはっ!」
 謙信の口から苦悶の声が漏れた。桜色の棘が白い陣羽織を引き裂き、その下に着込んでいた甲冑を砕く。
 大小無数の傷を負った彼は、既に満身創痍。越後の龍を討ち取る時は、もうそこまで近付いていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

出水宮・カガリ
ステラ(f04503)と

車懸かりの陣、まるで動く城塞のようだった
見事、見事

だが、ここまで来ては陣は無意味だ
武人は、こう言うのかな
いざ、じんじょうにしょうぶ、と

【鉄門扉の盾】を前面に、ステラの本体(【流星剣】)も片手に構えて距離を詰める
怪力にものを言わせる重騎士のように思わせられれば上々
毘沙門刀が飛んでくる前に、先制攻撃として【流星剣】を謙信目掛けて本気で投げる

当然、何かで弾くだろうな
それこそが狙いだ
カガリは武人ではなく、正々堂々など無いのでな
【籠絡の鉄柵】を大型化して隠形を解き、自分の周囲を囲って【駕砲城壁】を
もしステラが危なそうなら、自分の城壁を解いて鉄柵にステラを守らせよう


ステラ・アルゲン
カガリ(f04556)と
アドリブOK

軍神ですか
そこまで呼ばれるほどの強者なら注意したほうがいいだろうな

戦闘前に器物の状態に戻り【流星剣】本体だけの姿になる
カガリの手に持たせてもらおうか

剣が投げられたら謙信は弾き飛ばすだろう
弾き飛ばされるだけでも攻撃だ【オーラ防御】と【武器受け】で被害は最小にする
弾き飛ばされたら気づかれぬように【属性攻撃】で風を操り敵の死角へ
カガリの【駕砲城壁】が発動されれば、謙信の注意もそちらに行くはず
その隙を狙って【凶つ星】をこちらも発動し、至近距離から一撃を食らわせよう
正々堂々とは言い難い手だが私達は敵同士だからな



●神機妙算
 越後の龍、上杉謙信。
 度重なる戦闘によって、彼は満身創痍となっていた。白い陣羽織は幾重にも引き裂かれ、最早原形を留めていない。しかしその落ち着き払った態度は、戦の前と微塵も変わっていなかった。
 そしてそれは彼を取り巻く十振りの毘沙門刀と、左右の手に握られた黒白の太刀も同様だ。軍神の操る刃群は彼の戦意を示すかのように煌き、その切っ先を眼前の敵――出水宮・カガリへと向けている。
「車懸かりの陣、まるで動く城塞のようだった。見事、見事」
 そう言いながら、カガリは謙信の肩越しに上杉軍の様子を見やった。今も他の猟兵たちが敵の戦力を削っているが、謙信が作り上げた車懸かりの陣は依然として続いている。
「……それで?」
 謙信が口を開いた。
「他に言いたきことがあるのではないか?」
「ここまで来ては陣は無意味だ」
 カガリの手にはステラ・アルゲンの本体である流星剣が握られている。その切っ先を謙信に向け、カガリは挑発するように言った。
「武人は、こう言うのかな。いざ、じんじょうにしょうぶ、と」
 流星剣を構え、カガリは謙信との距離を詰める。もう一方の手にあるのは、彼自身の本体でもある鉄門扉の盾だ。それを前面に出したカガリは、剛腕の重騎士さながらにゆっくりと歩を進めていく。
 それを見た謙信は、手負いのためか警戒したように間合いを取った。カガリの歩みに合わせ、じりじりと後退る。
 先に仕掛けたのはカガリだった。後退する謙信を狙い、カガリは渾身の力で流星剣を投げ付ける。名前が示す通り、流星のような凄まじい速度で迫るそれを、謙信は太刀で払い除けた。弾き飛ばされた流星剣は、くるくると回転しながら明後日の方向に飛んでいく。

(「今のは……どういうことか」)
 謙信は訝しんでいた。剣を弾いた時の、いやに硬い微妙な手応え。そして唐突に剣を投げるという不可解な行動。
「……まあ、よい」
 それよりも大事なのは目の前に居る敵だった。謙信は脳裏に過った疑念を振り払い、その注意をカガリへと向ける。

 だから彼は気付かなかった。
 カガリが流星剣を投げたのは、最初から弾かれることを想定した行動であったこと。そして天高く弾き飛ばしたはずの剣が、風に乗って舞うかのように旋回していたことに。
 ステラは本体のまま風を操り、流れるように謙信の死角に回り込んだ。そして彼女は身を潜めたまま、来るべき時を待ち続ける。

●生生流転
 不意に現れた巨大な魚骨が空中を泳いでいた。黒光りするその魚骨は、ぐるりとカガリを囲み、鉄の柵となって彼と一体化する。
「これなるは我が砲門。我が外に敵がある限り、砲弾が尽きる事はなし」
「防御のつもりか?」
 カガリの詠唱を無視して、謙信が毘沙門刀を飛ばす。その数、8本。謙信が操る刃は、前後左右から挟み込むようにしてカガリを狙う。だが、その刃が届くよりも早くカガリは準備を終えていた。
「反撃せよ。砲を撃て。我が外の脅威を駆逐せよ」
 カガリの言葉と同時に、8本の毘沙門刀がカガリを捉える。しかしそのまま突き刺さるかに見えた刃は、カガリの身体に触れた瞬間、光弾となって反射された。
「くっ、誘われたか!?」
 反射された光弾が、一つ二つと謙信の身体を穿つ。しかし謙信は手元に残していた土の刃を素早く地面に突き立てた。その途端、地面から巨大な岩の壁が突き出して、跳ね返ってくる光弾を受け止める。
「さて、どうしたものか……」
 攻撃を反射するカガリにどう対応すべきか、謙信が思案し始めた時だった。器物の状態で謙信の死角に潜んでいたステラが、彼の真後ろで肉体を再召喚する。
「何奴だっ!?」
 突如生まれた背後の気配に気付いて、謙信は振り向きざまに太刀を一閃した。しかしそれよりも疾く、銀光が斜めに走る。ステラが振るう流星剣は、青い残像を残しながら謙信の右腕を斬り飛ばした。斬り飛ばされた腕が、その手に握られていた漆黒の太刀ごと宙を舞う。
「ぬうっ!」
 謙信は迷わず左の太刀を振るい、横薙ぎにステラを斬り払った。身を屈めてその斬撃を掻い潜ると、ステラは謙信の胸を一突きにする。
「がはっ……」
 心臓を貫かれた謙信の身体から力が抜け、その手から純白の太刀が零れ落ちた。
「あまり正々堂々とは言い難い手だが……」
 ステラの言葉に、謙信は笑みを浮かべる。続けて咳き込んだ彼の口元から血が流れ出した。
「成程……そうか、ヤドリガミ、か」
 剣を弾いた時の違和感。その正体に気付いたらしく、謙信は得心が行ったようにステラを見やる。
「そなたらの策は、卑怯でも卑劣でもない……全ては、見抜けなかった私の手落ち……見事であった」
 そう言って謙信は目を閉じ、ステラが剣を引き抜くと同時に倒れ伏した。

「終わったか」
「……ええ、一先ずは、ですが」
 カガリとステラの二人が見守る中、謙信の身体は風に溶けて消えていく。だが彼もまたすぐに蘇生して、猟兵たちの前に姿を現すはずだ。上杉軍を討ち減らして車懸かりの陣を崩すにも、今しばらくの時間が必要になるだろう。
 関ヶ原の戦況は、未だ予断を許さない状態にある。だがここで上杉謙信を討ち取ったことは、揺れ動く未来を決定する一つの因子となるはずだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年08月14日


挿絵イラスト