エンパイアウォー③~その信念は誰がために~
●死して信念は果たされぬ
中山道の要衝、『信州上田城』周辺。すでに上杉軍に制圧されたそこはオブリビオンが跳梁跋扈する、魍魎どもの巣窟と成り果てている。小さな城に入りきらないオブリビオン部隊たちはその周辺で陣を構え、敵を討つその時を待っている。
能面を被り、己の武器をただただ磨く義勇兵たちもそのひとつだ。彼らはかつて織田信長に虐げられる農民たちを救うため、その一揆に手を貸した者たちである。
その死はどれも壮絶で、その果たされなかった信念が成仏することができず、現世に留まった。それが憎き信長に利用されているのだから、皮肉な話だ。どんなに尊くとも信念は死んで果たすことはできず、意思のない信念は為政者に都合のいい道具となり下がる。
彼らは刃を研ぐ。歪んだ信念を刃に乗せるように。その刃を向ける相手は護ろうとした罪なき人々であろうとも。
言葉を失った亡霊である彼らは気づかない。己の刃で己の矜持を切り崩し続けていることに。
●貴殿の信念は如何ほどか?
「さて諸君、戦争の時間だ」
聞いたことがあるような台詞を吐き、アメーラは予言書型のグリモアを閉じた。その瞳は変わらず好奇心を秘め、片眼鏡は鈍く輝いている。
「今回の作戦は至極単純。中山道方面軍の殲滅を狙う上杉謙信……それの戦力を各個襲撃してもらいたい。オブリビオンは数も力も強力だからね。猟兵の力でできるだけ叩いておかないと」
アメーラが予知し、担当するオブリビオン部隊は『義勇兵の亡霊』。かつて農民一揆に協力した義勇兵たちの成りの果てだ。男女混じる彼らは一人ひとりはさして脅威ではないが、その絆は死しても強固である。味方のために身を投げ出し、味方の死によって士気が上がり続ける彼らは、軍団として非常に強力だ。
数を減らせば減らすほど彼らの戦闘力はあがり、陣形を駆使した攻撃を行ってくる。そうでなくとも前衛と後衛がお互いを支え合う、卓越した連携は猟兵たちにとっても脅威だ。
「厄介だねぇ、信念とやらは。敵を斃すことより味方を守ることに注力する善良な軍団は」
自嘲するようなその言葉は皮肉だろうか。彼女は笑う。
「それでも私たちは私たちの目的のために、彼らを倒さねばならない。歪んだ彼らを沈める、君たちの信念を見せておくれ?」
予言書は輝く。猟兵たちを敵のすぐそばまで運ぶために。
輝きが収まったころには、猟兵たちはすでに山岳地帯の茂みへ到達しているだろう。討つべきオブリビオンたちのたむろする、そのすぐそばに。
夜団子
このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
はいどうも、夜団子です。今回の戦争シナリオは集団戦になります。一章完結のシナリオなのでご注意ください。
上杉軍が一部隊、義勇兵の亡霊たちを倒してください。彼らは大体10~20体ほどが軍と成して野営しております。会話はできませんが互いを認識しており、連携プレイで猟兵たちへ襲い掛かります。彼らは味方を置いて逃げるということをしませんのでそこの心配も不要です。
では、皆様のプレイングをお待ちしております。
第1章 集団戦
『義勇兵の亡霊』
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POW : 我が信念、この体に有り。
自身の【味方】の為に敢えて不利な行動をすると、身体能力が増大する。
SPD : 我が信念、この刃に有り。
自身に【敵に斃された仲間の怨念】をまとい、高速移動と【斬撃による衝撃波】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ : 我が信念、この矢に有り。
【弓】を向けた対象に、【上空から降り注ぐ無数の矢】でダメージを与える。命中率が高い。
イラスト:シルエットさくら
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
終夜・還
ハッ、信念貫いて護るべきモンを見失うとか悲しいねぇ。悲しくて笑えて来るわ。
そんな悲しい末路を歩かされてる可哀そうな亡霊に、これ以上護る筈だった者を傷つけない道を。…ま、長く苦しい旅路になるだろうけどね。
アメーラに送って貰ったら堂々と【存在感】を主張
注目を得たなら即死霊の迷宮を展開して【先制攻撃】を狙う
ま、隔離目的だな
味方が呑まれんとしてるのを見て助けに自ら飛び込むなら罠としても上々だろう
俺は矢の雨を受けたとして、激痛は慣れっこだし毒矢も耐性があるから心配は無い
動けなくなることは無いかと
嗚呼そうだ。閉じ込めた奴等は還すまでは意地でも出してやらねーよ
俺の死霊に導かれてあるべき場所へと還んな
※共闘可
いかな猟兵でも、敵の数の暴力は脅威である。それも連携を主としている敵ならばなおさら。
そこで転移した猟兵たちは各々で同時に、そして多発的に彼らを襲うことに決めた。戦力を分散させ戦い方もさまざまな個々の猟兵の特性をよりよく活かすためである。
「ハッ、信念貫いて護るべきモンを見失うとか悲しいねぇ。悲しくて笑えて来るわ」
愉快でも悦を感じることもない、そんな声色で終夜・還(一匹狼・f02594)は堂々と姿を現した。
当然ほとんど全ての視線が、注目が、殺意が、還へ向く。惹きつけた矢じりが放たれる前に他の猟兵たちも飛び出した。
しかし幾人かの義勇兵たちは変わらず還を警戒し続けている。それは、他の敵は預けて目の前の敵に集中できる、仲間に最大の信頼を寄せているからこその行動だ。悲しいねぇ、と還は笑顔のまま、少しだけ眉を寄せた。
前衛の刀を持った義勇兵が還へ突撃した。そのすぐ後ろを槍兵が、そして後衛に弓兵が。見事な陣形だ。強者に対する戦い方をよくわかっている。
だが、異世界の術者に対する警戒にしてはうかつ過ぎた。
「____ッ!」
言葉も呼吸もない彼らが息を飲む。突撃していた刀持ちの盾兵の足元が突如“抜けた”。落ちた先は死者が生者を待ち構えて牙を剥く、死霊の迷宮だ。
「全員は無理だったか」
落ちたのは盾兵と運の悪い槍兵がひとり。弓兵は完全に無事で槍兵もほとんど生き残っている。どうにか落ちてもらわなくては。還の目的は彼らを全て還してやることだった。
「悲しい末路を歩かされてる可哀そうな亡霊に、これ以上護る筈だった者を傷つけない道を。……ま、長く苦しい旅路になるだろうけどね」
仲間の落下を見た弓兵たちは、素早く矢をつがえ、空へ撃ち放った。上空へ飛び立つ矢はその信念を乗せ、還へ降り注ぐ。そしてその間に数人の槍兵が落ちた仲間を救助しようと腰縄を地上の仲間に預け飛び降りた。
仲間のために自ら飛び込む。そんな彼ら相手ならこの迷宮は罠としても上々だろう。
「悪ぃが牽制にはならねぇよ!」
降り注ぐ矢に臆することなく、還は跳ぶ。迷宮の穴を飛び越え、縄を持つ槍兵たちへ飛びかかった。
「っつ……!」
ざくざくと矢が突き刺さる衝撃が還を襲うが、その勢いは全く損なわれず。耐性に任せた突撃は、義勇兵たちにとって予想外であった。
まずひとり、飛び込んだ勢いで迷宮へ蹴落とし、縄を手放せず槍を向けられなかったふたりの肩を掴んで放り投げる。残りの奴らはただ突き飛ばして、引きずりこもうと手を伸ばす死霊たちに後は任せた。
バシュッ!
「ぐッ!!」
弓兵のひとりが撃ち放った矢がひとつ、還の左肩に突き刺さった。ビリ、と走った衝撃に毒か、と還は冷静に判断する。しかし残念、こちらにも多少耐性があるのだ、自分は。
「お前らが最後な」
近づいてしまえばこちらのもの。必死で弓矢を向ける彼らを掴み、放り、蹴とばして、迷宮へ案内する。長い長い旅路の果て、彼らがもう信念を歪められぬように天へ還れるように。
「はー流石に怒られるか?」
肩に突き刺さった矢を引き抜きながら還るはその場に身をかがめた。突き刺さった矢の量は数えたくない。帰ったら流石に怒られるかもしれないと頭を掻きながら、還は魔導書を閉じた。
迷宮の入り口が閉じられていく。バラバラに散らされ迷宮へ閉じ込められた彼らを、出口に辿りつかせる気はない。意地でも迷宮内で膝を折ってもらう。
「……俺の死霊に導かれてあるべき場所へと還んな」
還のそのつぶやきは、戦場の雑音にまぎれて消えた。
成功
🔵🔵🔴
グラナト・ラガルティハ
自身の信念で抗ったものに利用されているなどと理解できたのならどれほど無念だろうな。
ならばせめて止めてやらねばなるまい。
攻撃の開始は出来るだけ敵より上座から
【高速詠唱】でUC【業火の槍】発動【属性攻撃】炎で威力を上げを撃ち込む。
敵の損害を確認したのち残っている兵への神銃に【属性攻撃】炎と【呪詛・呪殺弾】を乗せ攻撃。
敵攻撃は【戦闘知識】で対応。
仲間を守るための信念と行動は素晴らしいが。
今はそれは我々の害にしかならない。
すまないが排除させてもらう。
アドリブ連携歓迎。
蝶ヶ崎・羊
あなた方のその信念は称賛します
しかしワタシ達にも譲れない信念がありますので、あなた方には眠ってもらいます
初手は縛りの呪詛の混ざった歌を歌い、敵の動きを少しでも止めて味方が攻撃しやすいよう時間稼ぎをします
『では、ワタシもそろそろ本格的に数を減らしますか』
途中から鎌鼬で【二回攻撃】及びヒアデス・グリモワールの【全力魔法】に切り替えます
接近してきた敵がいれば歌の振動を【衝撃波】に変えて攻撃します
敵の攻撃は【武器受け】または【見切り】
WIZの場合はUCで奪い、使用します
「……彼らが、己のしようとしていることを理解できない状況にあること。不謹慎かもしれませんが、少しだけ、よかったな、と思うんです」
「無理もない……自身の信念で抗ったものに利用されているなどと理解できてしまったら、どれほど無念だろうな」
彼らからあえて距離をとり、木々の上より動向を探る猟兵たちがふたり。グラナト・ラガルティハ(火炎纏う蠍の神・f16720)はその金の目を光らせ、蝶ヶ崎・羊(罪歌の歌箱・f01975)は痛ましそうに伏せている。対照的な二人だが彼らを眠らせてやりたいという願いは同じくしていた。
「死してなお貫く彼らの信念は称賛します。しかし……ワタシ達にも譲れない信念がありますので。彼らには眠ってもらいましょう」
「その通りだ。それに……俺たちに彼らを救うことはできない。ならばせめて、止めてやらねばなるまい」
二人の意思は重なった。
羊はその手を胸に当てそっと目蓋を閉じる。穏やかに戦場へ流れ始めた歌はあまりに優しく、義勇兵たちは一瞬対応に遅れた。その一瞬が命取りになるとは知らずに。
「業火の槍よ、貫き燃やせ」
天空に出現した無数の槍が炎を纏う。轟々と燃え盛るそれは山岳を太陽以上に熱く照らし、その刃先を義勇兵たちに向けた。
義勇兵たちは動けない。その身を呪歌に縛られてしまったから。未だに流れるその歌を防ごうにも、耳をふさぐための手も動かせない。
スイ、とグラナトが軽く手を動かした。その小さな動きに合わせ、炎の槍が殺到する。神の炎を纏った槍たちは義勇兵に、地面に突き刺さり、さらに炎を巻き上げた。直撃しなくともそばにいれば、炎に巻かれて灰となる。
囂々と音を上げて燃え盛る一帯はまさに地獄のごとし。その炎は、死者を焼き尽くして天へと還す、神の御業である。
その炎の中からぷつり、と矢が突き抜けてきた。そしてそれは、ひとつにあらず。ひとつ、またひとつと炎を突き抜けた矢たちが上空へ撃ち放たれ、天空へ散る。そしてその身に突き刺さろうとグラナトへ音を上げて飛来した。そのひとつひとつは槍より虚弱であろうとも、数は確実に槍に勝る。
炎を破ったそれらはグラナトの体を貫こうと迫る。が、その前に、彼の横をすり抜けた疾風が、矢をつぎつぎと撃ち落とした。
羊はいつの間にか歌を止め、風の精霊の宿る銃、鎌鼬を抜いていた。そこから撃ち出される疾風は空気を裂き、目標をバラバラに切り崩す。羊の目はひとつひとつの矢を見切り、その手で鎌鼬で撃ち抜き続けていた。
「神の炎を抜ける矢、と……なかなか興味深い。そんな興味をそそられる技を魅せられたら、お借りしたくなるではないですか」
矢を撃ち抜き続ける主をよそに、彼の腰にかけられていたヒアデス・グリモワールが浮かび上がる。パラパラパラとページがめくられ、その技を記録している間、不意に青年の姿がその場を掠めた。
「ふむ、生き残ったのは盾兵が少しと弓兵か。なるほどここに攻撃が届くのも道理だ」
懐から神銃を抜くグラナト。それに合わせて鎌鼬から魔導書へ武器を変更した羊は、早速たった今記録されたページを開く。
「では、ワタシもそろそろ本格的に数を減らしますか」
間髪いれぬ全力魔法。唱えられる詠唱はまるで歌のように詠みあげられ、周囲に魔法陣が生み出される。
「仲間を守るための信念と行動は素晴らしいが。今はそれは我々の害にしかならないのでな。すまないが排除させてもらう」
向けられる神銃もまた、炎を纏う。そして今度は苦しませず一瞬で倒そうと、その銃弾に呪詛が乗った。
「終焉の時間だ」
「どうか良き眠りを」
彼らの声が生き残りたちへ届いたとき、彼らの目の前にはすでに無数の矢が、呪詛を持つ炎弾が、降り注いでいた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ヴォルフガング・ディーツェ
アドリブ・連携歓迎
SPD重視
…正しき信念が大きな邪悪の前に倒れる。良くある悲劇だね
けど、その死が辱しめられるのは腹立たしい
信長の顔を抉り潰したくなる程度には、ね
口笛一つ、ガジェットを両手拳銃に変えつつ【調律・墓標守の黒犬】で機霊…テオを召喚
共に攻め立てよう
相手が高速で動くのなら、テオに騎乗し素早く突っ込んでいこう
オレは近接時は所謂ガン=カタで銃の一撃、闇の魔力を乗せた蹴撃で砕く
距離があるなら鞭に風の魔力を乗せて薙ぎ払うとしようか
テオは何れにせよ接近
敵の急所を噛み砕いたり爪や尾で引き裂いてもらおう
…嫌なことばかり頼んでごめんよ
自前のサイバーアイで敵の行動パターンや弱点も解析し仲間と情報共有を図る
ひとり、またひとりと義勇兵たちが倒れていく。火に巻かれる仲間を、面越しに眺める彼らには、動揺とそしてそれ以上の義憤が満ちていた。
助けられなかった無念、そして必ず仇を討つという強い意志。それが彼らをより強くする。
「……正しき信念が大きな邪悪の前に倒れる。良くある悲劇だね」
そんな彼らの前にヴォルフガング・ディーツェ(花葬ラメント・f09192)は姿を現した。他の猟兵たちもよくやっている。ヴォルフガングもそれに続かんと、口笛を鳴らした。
「けど、その死が辱しめられるのは腹立たしい。信長の顔を抉り潰したくなる程度には、ね」
その言葉に応えるように黒犬の機霊、テオが召喚される。普段ならば陽気で愛敬のある彼も、今はうなりを上げるばかり。
ヴォルフガングを仲間を倒した敵の一味と判断した義勇兵たちの殺気が、高まっていく。
「……!!」
気迫を纏い、一人の刀使いが高速でヴォルフガングたちの懐に飛び込んだ。ガジェットから変形させた二丁拳銃で素早くそれを受け止めるも、刀使いの後からも義勇兵たちが一気に間合いを詰めてきた。ならば、とヴォルフガングは彼を蹴り飛ばす。
「テオ」
刀使いを魔力の乗った蹴りで弾き飛ばし、頭を撃ち抜く。同時に他の義勇兵たちへテオが襲いかかり、その喉や胴を食いちぎった。蹴り飛ばされた刀使いはあばらをやられ風穴を開けられ地面に伏し、テオに阻まれた義勇兵たちはその高速を活かし切れずに停滞する。足を止めた彼らは、格好の獲物だ。
素早く刀使いの脳天を銃で撃ち抜いたヴォルフガングを見て、苦戦の中でも義勇兵たちの闘志がさらにみなぎる。しかし不利を悟ったか、盾兵を前に彼らは退却を始めた。
「逃がさないよ」
テオに跨り、今度はヴォルフガングたちが攻めに出る。後ろを守ろうと構えた盾兵にテオが襲い掛かり、その頭上をヴォルフガングは跳んだ。
乾いた銃声音が鳴り響く。空中で二丁の弾丸を正確に放ったヴォルフガングは、地面に足を付けるがいなや、無事な義勇兵たちへ近距離で拳銃ぶちかました。
頭を、首を、心臓を撃ち抜かれた義勇兵たちはなにもできずに地へ倒れていく。
「一人も残さない。みんなで一緒に眠りについて」
盾兵のすぐそばにいたゆえに無事だった一人の義勇兵が、ヴォルフガングから距離をとり刀を抜いた。勢いよく振り下ろされた刀身からは衝撃波が放たれ、遠距離の斬撃となる。鞭を振るってその衝撃派を殺すが、間髪入れず放たれた衝撃波たちは、うなりをあげてヴォルツガングに襲いかかった。
「……嫌なことばかり頼んでごめんよ、テオ」
ガチ、と義勇兵の体が硬直する。首筋に食いつかれた義勇兵は、じりじりと刀を振り上げようとし、がくりと力なく絶命した。彼の最期の衝撃波も、ヴォルフガングの鞭が無情に打ち破る。
「うん、データもとれた。皆に共有すればこの戦いも早く終わるかな」
彼らの攻撃パターン、連携の型、そして弱点や隙をまとめたデータを猟兵たちへ共有する。これで仲間たちの動きがしやすくなれば幸いだ。
こんな戦い、一刻も早く終わらせよう。苦戦する仲間を手助けするためヴォルフガングはその場を後にするのだった。
成功
🔵🔵🔴
シエル・マリアージュ
敵を見つけたら殺気を向けながら敵の群れへと突撃、一見無謀なようで戦闘知識で敵を動きを見切りながら完全に囲まれないように立ち回り、時にジャンプからの空中浮遊や残像などで敵の連携をかき乱しながら戦う。
刃から衝撃波を放つ刀と天上の乙女〈再臨〉の乙女達との連携による2回攻撃で数で勝る敵を切り崩す。
この身に染み付いた殺しの技術、それで奪った以上の命を守り人を幸せにすると決めた覚悟を刃に乗せて、人々の命を守るため敵を討ち、この世界の未来を切り開く。
戦場には色々な感情が満ちている。敵意、闘志、敵を破った歓喜。それを鉄と血の匂いでかき乱すのが戦場と言う場所である。まがりなりにもその戦場へ身をおいていた義勇兵たちは、それを憎みながらも慣れており、そこで面食らうようなことはないはずだった。
だというのに。彼らはその強烈な殺気から目を離せなくなってしまっていた。
柔らかなレースに包まれた純白のドレス。きめ細やかで卓越した網模様を持つヴェール。まるで天使か天女を思わせる風貌の少女が、それに似合わぬ殺気を纏って戦場に降臨していた。
義勇兵たちに、場違いだ、という疑問を持つ余裕はない。
本能が警鐘を鳴らしている。彼女は狩る者で、自分たち以上に血と鉄に慣れ親しんでいる存在だと、直感がそう告げていた。
「申し訳ありませんが……死んでいただきます」
その言葉と共に、シエル・マリアージュ(天に見初められし乙女・f01707)が取り出したるは己が身と同じ純白の刀。“白花雪”と呼ばれる魔力の込められた刀だ。すらりと鞘から引き抜けば、魔力が白雪のように舞い、幻想的な美しさを持つ。
とん、とまるで踊るように地を蹴る。シエルに培われた人を殺すための知識。それが義勇兵たちの連携の隙を見抜く。簡単に崩せるものではないが、隙が見えていればおのずとどう動くべきなのかはわかるものだ。
まずはひとり。
そう狙いをつけ、弓兵に振り下ろした刀は、黒髪の刀使いに阻まれてしまった。
(……これは、まずいですね)
ぱきん、と弾き距離をとる。忘れていた。彼らは味方が窮地に立たされれば立たされるほどその真価を発揮する。強敵に狙われた弓兵をかばうことで刀使いは強化され、シエルの一撃すら受け止めた。
刀使いがシエルを押し返したことで士気が高まり連携はより強くなっている。囲おうとする彼らを散らし、跳び、残像を残すほど素早く動いて、攪乱しながらシエルは策を練った。
数で押されているのは仕方がない。多対一が辛いのなら、完全に拮抗せずともこちらも複数人になればいいのだ。
「……聖櫃の扉は開かれり、来たれ天上の乙女達」
シエルの呼びかけに応え、一帯に光が灯る。輝きは増して膨らみ、その閃光が落ち着いたときには、歴代の天上の乙女たちが再臨を果たしていた。それぞれ己の処刑道具を構えた彼女たちは、取り囲まんと動く義勇兵たちを静かに眺めている。
スパンッ、と乾いた音が鳴った。ついで地をなにかが転がる音。それは、ひとりの乙女が義勇兵のひとりを処刑した音であった。
シエルを含む彼女たちが持つのは卓越した殺しの技術。本当であれば忌み嫌われるその技術を、シエルは自由の身になった今でも使い続けることを選択した。
奪った以上の命を守り人を幸せにする。その覚悟と信念を刃に乗せて、歪まれた信念を持つ彼らを狩る。
人々の命を守るため敵を討ち、この世界の未来を切り開くために。力がなくては覚悟は貫き通せないのだ。
成功
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峰谷・恵
「手駒にして守りたかったものを破壊させる…本当にオブリビオンは度し難い」
敵が迎撃態勢を整える前に飛び込み、可能な限りの敵を範囲に収めて全射撃武器によるフルバースト・マキシマムを発動、撃破する。
できる限り数を減らした後はMCフォートの掃射で残った敵を牽制しながら飛び道具持ちからアームドフォートの砲撃(誘導弾+2回攻撃+鎧無視攻撃)と熱線銃で撃破していく。
敵の攻撃は極力回避、避けきれないものはダークミストシールド(盾受け)で防ぎ、盾でカバーしきれない方向からの攻撃は4重防具とオーラ防御で耐え、遅すぎた収穫期で反撃(怪力)。
「ゆっくり眠ると良い。信長軍との戦いはこっちで引き継ぐ」
戦いに意味はない。在るべきは刃を取る理由で、相手を斃す意思である。その力を暴力に変えないために信念はあり、仲間を民を護るため戦場に立った義勇兵たちはその点において理想に近い戦士たちだったのだろう。
それもいまや過去の話だが。
「手駒にして守りたかったものを破壊させる……本当にオブリビオンは度し難い」
黒幕への怒りをその双眸に宿し、峰谷・恵(神葬騎・f03180)は戦場を見下ろしていた。円陣を取り、周囲からの奇襲を警戒しているようだが、木の上で偵察する恵にとってその程度の警戒は障害にもならない。
彼らに恨みはないが、敵となるのならば倒させてもらう。それに、オブリビオンによって蘇らせられ、その手で信念を汚すような真似を、彼らにしてほしくはなかった。
枝を蹴り、宙を舞う。人間の死角は背後ではなく頭上にできやすい。その範囲を的確についた恵の奇襲に、義勇兵たちの反応が一瞬遅れてしまった。
恵は容易く、彼らの円陣の中に降り立った。
「全射撃武器、装填完了。殲滅する」
空中で展開を終えた恵の武具たちが、地に舞い降りた瞬間に発砲を開始する。たった一人で作り上げた全方位の弾幕に、近距離の者たちはもちろん、外を警戒していた盾兵までもが撃ち抜かれた。
生き残りの盾兵がその盾と倒れた仲間の盾をとり、生き残りの仲間たちの壁になるように間へ滑り込んだ。一時的に生まれた安全地帯は木の盾ゆえにもろいかと思われたが、銃弾を通さずに耐え続けている。これが信念の力か、と恵は息をついた。
盾の向こう側から射られる矢たちは霧状のシールドで身体に到達する前に食い止める。
一斉掃射自体は終えてしまったが、敵が一か所に集まったことで全方位の弾幕は必要なくなった。変わらずMCフォードの連射で彼らをくぎ付けにしながら、別に展開したアームドフォートが火を噴く。弾数はそう多くはないが強力なその銃弾は盾兵の元へと弾道を描き、盾の一か所を貫き彼を撃ち抜いた。
壁が崩れた。とどめと、恵は剣を抜く。
____“遅すぎた収穫期”。その名を冠した兵装は、神への殺意が込められた神殺しの武器。その怪力で振るわれるそれは神の喉元すら食いちぎる。
いわんや、亡霊たちなど。
「…………ゆっくり眠ると良い。信長軍との戦いはこっちで引き継ぐ」
叩き切られた義勇兵たちは消えるその瞬間なにを思っただろうか。死者に口はない。それを尋ねる機会は永遠に訪れないだろう。
彼らの思いを背負い、猟兵たちは戦場を後にする。胸にそれぞれの思いを抱えながら。
勝利の美酒に酔うのはまだ早い。義勇兵たちの信念を糧に、仇敵信長を討つまで戦いは続くのだから。
成功
🔵🔵🔴