エンパイアウォー④~不死の山に敵を伏して~
●不死の山へ
「この山のお話は色々あるけれど、それはまた後でだよ諸君」
異界の天使スフィーエ・シエルフィートは手帳の中の輝きから、とある雄大な山を映し出した。
それは国一番の山と名高き、伝説の霊峰・富士山であった。
雄大なその山を映し出しながら、彼女は集まってきた猟兵達を見回すといつものようにゆっくりと語り出した。
「さぁ語ろうか。舞台はサムライエンパイア。信長軍との戦争が始まった世界だ。君達には徳川軍の為に戦ってきて貰いたい」
サムライエンパイアにての亡霊頭(オブリビオン・フォーミュラ)、『第六天魔王・織田信長』が現れ侵略を始めた。
そこで徳川十万人の軍が決死の覚悟で信長の居城を阻止するべく進軍を続けているのだが……敵も愚かではない。
様々な策を巡らし、徳川軍の妨害と殲滅を図るだろうと語る。
ここで改めて、スフィーエは富士の山と、麓に広がる鬱蒼とした樹海を指し示す。
「君達に行って欲しいのは、この富士山の樹海だ。ここで信長軍の将軍が一人『コルテス』の儀式を妨害して貰いたい」
曰く、コルテスは配下の亡霊に富士の樹海の中、太陽神の力を以て富士山を噴火させる儀式を行っているのだという。
「ただ儀式場は巧妙に秘匿されている。手がかりになるとしたら……単純に魔力の気配を探ってみるか、或いは……」
儀式自体は、築かれた儀式会場の下で小さな竜の子供を殺し、その血を使うという大変生臭い儀式を行っているという。その匂いを辿ってみるのも良いかもしれない。
「とにかく、まずは儀式会場を探してみなければ始まらない。その上でオブリビオン自体も倒して貰いたい」
また、儀式会場に潜む亡霊を上手く奇襲する手立てなどがあれば戦闘を優位に進められるであろう、とも語って。
「だが戦闘もそれなりに強敵だろう……探索などは勿論だが、戦闘自体にも十分気を付けてくれ」
待ち受ける、錫杖を構え人形を携える男らしき姿を映し出しながら警告を一つ。
一頻りの語りを終えて、スフィーエは熱い緑茶を一気に飲み干し、一息入れると銀灰色の目に真剣な輝きを宿し改めて猟兵を見回し、頭を下げた。
「徳川軍十万人、皆命を賭してサムライエンパイアを守る為に戦っている……どうか、彼らが少しでも生き残れるように、君たちの力を貸して欲しい」
暫くして頭を挙げると、スフィーエは転送結界を作り上げながら、猟兵達に対しこう締めた。
「さて、私からは以上だ。大変な戦いにはなると思うが、君たちならば問題なくこなしてくれると信じている。では、転送を始めるので準備ができた者から声を掛けてくれたまえ」
裏山薬草
●注意!!
このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
どうも、裏山薬草です。
今月はサムライエンパイアでの戦争が始まりましたね。
今回も張り切っていきましょう!
今回はですね、富士山噴火を目論むオブリビオンの儀式を阻止してもらうシナリオとなります。
流れとしては儀式会場を捜索し、ボス格オブリビオンに攻め入る流れとなっております。
今回は一章構成なので一つのプレイングに織り込まなければならない為、大変かもしれませんがよろしくお願いします。
また、捜索を上手く行ったり、奇襲に対し何かしら触れられていればプレイングボーナスを発生させやすくなります。余裕があったら狙ってみてください。
それでは皆様のプレイングをお待ちしております。
裏山薬草でした。
第1章 ボス戦
『異端なる術士西行』
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POW : 素材ともなれん端材共よ、我が身を守る栄誉をやろう
【幾万の犠牲者の遺骸を纏う異形の戦闘形態】に変身し、武器「【錫杖により放たれる雷霆】」の威力増強と、【犠牲者達の嘆きの念に包まれた血と骨の翼】によるレベル×5km/hの飛翔能力を得る。
SPD : 我が願い、我が望み、我が目指す最高の人よ顕現せよ
無敵の【心を除き全てが美しく皆を魅了する最高の体】を想像から創造し、戦闘に利用できる。強力だが、能力に疑念を感じると大幅に弱体化する。
WIZ : 我がしもべ、我が忠臣、黒百合よ我が敵を封じよ
【幾万の犠牲者達の遺骸の素材と成得なかった】【部分を用い作り上げし呪詛に塗れた裁縫道具】【此が変じた狂妖、黒百合が妖糸、糸巻、糸車】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
イラスト:灰猫
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠ヴァーリ・マニャーキン」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
死之宮・謡
アドリブ&絡み歓迎
太陽神復活の儀式だと?…此処はUDCアースじゃないぞ?世界を間違えてないか?まぁ何でも良いが、放置する訳にはいかんのだろう?なら…征くか…
「呪詛」感知で呪詛や怨念の分布を
「全力魔法」の魔力探知で魔力の流れを調べ
その結果に基づいて儀式の場を突き止め【天翔る狂気】を発動させ、上空から強襲を行う(先制攻撃)
戦闘突入後は停滞の「呪詛」籠めた大槍を「怪力」で振るい
「傷口をえぐる」様に攻め立て
「鎧砕き」の要領で相手の武器を圧し折る
相手の攻撃は多少の傷は無視し、戦闘に支障を来しそうなモノだけ「見切り」回避する
さぁさぁ…前哨戦と征こうじゃないか!
梅ヶ枝・喜介
富士山を滾らせるなんざ到底許されん行いヨ!
止めにゃならんだろ!
猟兵もおぶりびおんも関係ない人がたくさん殺されっちまう!
しっかし捜し物についてはおれァ戦力外!門前の小僧以下!
せいぜい他の連中の邪魔にならんよう引っ込んどくしかねェな!
すまねェ!任せたゼ!
だが亡霊への手立てだってェなら策もある!
これでも陰陽に関しちゃ門前の小僧くらいには納めた!
師匠譲りの筆を白符に走らせ、隠形に徳のある符を作って渡すゼ!
重要なのは、まじないの腕じゃあねェ。
まじないを信ずる心だ
ってェ師匠に散々言われたナ……
今こそ実践の時!
この符に命を託す覚悟で戦に挑む!
どんな痛みも覚悟して接近し!木刀を振り上げ!振り下ろすのみ!
トリテレイア・ゼロナイン
富士山の噴火とはまた大掛かりな儀式……流石はフォーミュラの配下といったところですね
噴火によって齎されれる被害は例え戦争に勝利しても甚大
絶対に阻止せねばなりません
●防具改造で森に紛れる外套を装備
暗い森の中、センサーでの●暗視や●情報収集で真新しい足跡や枝折れ等の痕跡を捜索
一定以上の重さ、大きさの小竜を連れている以上、痕跡はある筈
それらを手掛かりに儀式場を見つけます
術師を見つけたら、投光器を起動し●目潰し
その隙にUCでの●だまし討ち●ロープワークで小竜を回収
小竜を●かばいつつ、雷霆をスラスターでの●スライディングで避けながら格納銃器での●スナイパー技能射撃で上空への逃げ道を封鎖し味方を援護します
●森林を往く
鬱蒼とした富士の樹海を往く女の一人がふと呟いた。
「太陽神復活の儀式だと? ……此処はUDCアースじゃないぞ? 世界を間違えてないか?」
死之宮・謡(統合されし悪意→存在悪・f13193)は敵の為さんとしている行いを思い返し思わず突っ込んだ。
かの世界なら珍しくもないが、まさかこの世界で行うとは……そんな彼女の言葉に、梅ヶ枝・喜介(武者修行の旅烏・f18497)は危機感を覚えつつ声を挙げた。
「けど富士山を滾らせるなんざ到底許されん行いヨ!」
鼻息荒く、情に厚き喜介の熱い言葉に、魔力の流れを探りながら改めて同行者二人に問いかける。
「まぁ何でも良いが、放置する訳にはいかんのだろう?」
「ああ、止めにゃならんだろ! 猟兵もおぶりびおんも関係ない人がたくさん殺されっちまう!」
「そうです。噴火によって齎されれる被害は例え戦争に勝利しても甚大。絶対に阻止せねばなりません」
謡の言葉に、喜介ともう一人の同行者、白銀の大鎧姿の戦機人トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は噴火の齎す被害の恐ろしさを説く。
噴火が為されれば戦争の不利を齎すだけでなく、その他にも莫大な影響を齎す――真剣な言葉に頷き。
「なら……征くか……」
改めて使命の重さを確認しあったところで、謡は悍ましい魔力の流れを探りつつ。
トリテレイアは物理的な痕跡――感覚器を以て儀式に使われるであろう小竜の重さ、それを連れることに伴う痕跡……枝の折れた跡や引きずる跡などを探る。
魔力の流れで大体の辺りを付け、物理の痕跡を以て確証を固めるようだった。
ここで喜介が心底に申し訳なさそうに手を乾いた音を立てて打ち合わせれば。
「……っと、言っといてなんだけど探索は門前の小僧以下だ! すまねえが任せたゼ!」
「お任せを。その分、オブリビオン相手にはお願いします」
それを咎めるでもなく、騎士の礼節を以てトリテレイアが答えれば喜介も任せろと言わんばかりに胸を叩き。
その二人の姿を特に咎めるでもなく、謡の探知が隠された儀式会場を示した。
「……どうやら、ここのようだ」
●開戦
着いた儀式会場は暗く、方陣が描かれその中央に黒衣に錫杖を持った男が見える……傍らには小竜が藻掻いている姿。
どうやらこれが今回討伐す相手であり、まだ気づかれていない――なればと、赤黒い力の奔流に身体を覆った謡が上空から殺意と狂気に満ちた急降下の一撃を放つ。
「さぁさぁ……前哨戦と征こうじゃないか!」
「……なっ!?」
突然として現れた女の莫大な力の奔流に固まった刹那、黒衣の男の目に飛び込むは激しい閃光――トリテレイアの放った目晦ましの閃光に完全に身体を硬直させ。
急降下の奔流を纏った一撃をまともに喰らってしまえば、黒衣の男こと西行は吹き飛ばされる。
かくなる上は一刻も早く生贄を捧げることは捧げよう――そう決意し、西行が小竜に手を伸ばさんとした次の瞬間。
「騎士の戦法ではありませんが……命には代えられませんので」
小竜を絡め取り西行の魔手から奪還したのは、トリテレイアの腰部、その甲に隠された腕が伸びて小竜を掴んでいたのだ。
鋼線の巻き戻る音と共に小竜を受け止めつつ、おどろおどろしき空気の方陣を見て思う。
(この大掛かりな儀式……流石はフォーミュラの配下といったところですね)
儀式の要すらも取られた西行は怒り、その身に亡霊自身が手掛けてきた犠牲者の骸を纏い、その背に血と骨で出来た翼を羽ばたかせると、錫杖から雷霆を走らせる。
「よそ見をしている暇はないぞ!!」
それを滑り込みでトリテレイアが回避すれば、彼を庇うように謡の力強く、大気すらも震わせる槍が錫杖へ打ち付けられて。
纏う奔流も合わさり錫杖に罅を入れられた西行の身が僅かに崩れ。
(師匠に散々言われたナ……まじないは腕じゃねえ、信じる心だって!)
白符に走らせる筆、それが描くは隠形に徳――捜査は門前の小僧以下、されど亡霊に対しては門前の小僧程度役立たねば。
決意を以て符を渡し、喜介は木刀を一つ構え、錫杖を打ち据えられ僅かにたじろぐ西行へと立ち向かう。
「ウォォォォオ!!」
振り下ろされる木刀の一撃は強力無比――鋼とも打ち合える強度のそれから放たれた、その余波が方陣を突き崩すほどの一撃が西行の体へ深く切り込まれ。
血反吐を吐き出す西行に、返す刀が再び打ち据えれば忌々し気に喜介を睨みつける。
「ふん、馬鹿の一つ覚えめ……!」
「そうさ、俺はこれしか出来ねぇ!」
ああ知っている。知っているけど、ここまでの仲間の補助あって叩き込めた重い一撃。
西行が反撃に錫杖に雷霆を込め始めたのを見て一瞬息を呑むが、決意は固まっている。
師の教え込められた符に命を賭けて、雷霆が叩き込まれようと、何度でもこの必殺の一撃を叩き込んでやる。
「……だからこれだけは誰にも負けたくねぇ!!」
「がっ……!」
強かに三度目の、鋼をも砕く勢いの振り下ろしが強かに西行の纏う骸の鎧を砕き。
堪らずに翼をはためかせ空中に逃げようとしても。
「させません。逃がしはしませんよ……私がここにいる限りは」
戦機人の肩部と腕部の甲が開かれ、放たれる銃弾が正確に西行の肩を貫き体勢を崩し。
崩された体勢へ更に一つ、二つと容赦なく追い打ちをかけていく弾が、西行の回避と逃走を許さず縫い付けて。
「まぁよしんば逃げられたとしても……私がいるのだがな!」
その赤黒き狂気と殺意は絶望の足音――絶望が戦意を折り、動きを停滞さす呪い込められた謡の剛槍が。
西行の犠牲者の無念を喰らった忌まわしき翼を、片方圧し折った――!
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
レン・ランフォード
この世界は失くした記憶に関係あるかもしれません…
だから必ず護ります…噴火なんて絶対にさせません
臭いの「追跡」となるとこの子の出番です
【口寄・数珠丸太郎】…お願いね、太郎
儀式場を発見したら【分身・雪月花】でれんを呼んで
太郎と一緒に待機してもらい別方向に移動
れんに合図を送って太郎に唸り声を上げてもらい
敵の注意を引けたら、背後から手裏剣「投擲」し「だまし討ち」後
戦闘開始です
敵の召喚したものについて
成程、整った体かもしれませんが、この子には関係ないみたいですよ
と太郎をけしかけます
獣には分からない?獣も魅了できないなんてその程度という事です
アドリブ連携歓迎
四季乃・瑠璃
緋瑪「迅速な移動と奇襲が必要な作戦なら、新しい能力にちょうど良いね。瑠璃」
瑠璃「敵も結構な外道みたいだしね。やろう緋瑪」
【破壊の姫君】で分身
飛行しつつ、瑠璃が【高速詠唱、全力魔法、情報収集、ハッキング】による探知術式で敵の儀式場を探知。
緋瑪は護衛とサポート。
儀式場を発見次第、空中から閃光仕様及び【範囲攻撃、早業、鎧無視、鎧砕き】接触式ボムで奇襲。敵の狂妖や犠牲者達の遺骸諸共爆破で吹き飛ばし、敵のUCを封じながら戦闘。
最後は全て纏めて強化したジェノサイド・ノヴァで消し飛ばしてあげる!
緋瑪「因果応報…貴方が犠牲にして来た人達の元へ送ってあげる」
瑠璃「見てくれだけの最高に意味は無いよ…消えちゃえ!」
数宮・多喜
【アドリブ改変・連携大歓迎】
まさかこっちの世界でも富士の樹海を彷徨う事になるとはねぇ……
まあ、それは置いといてだ。
儀式場に生贄と亡霊がいるかもしれないなら、
アタシがやる事は単純さ。
【超感覚探知】の網を張り巡らし、
周囲の意思を感じ続ける。
あくまで受動的に感知するにとどめて、
気取られないよう注意するよ。
儀式の犠牲者、執行者。
どちらでも引っかかれば、場所の特定はできるだろ。
さてそしたら奇襲の準備か。
まぁそのままテレパスを、奴が生み出した最高の肉体とやらに繋ぎ、
『催眠術』を試みるよ。
心を除き、ってことはその精神には付け入る隙があるってこった。
せいぜいうまく使わせてもらうよ。
●一つの体に数多の御霊、感ずるは……
一方その頃、同時に探索を行っていた猟兵達の、焦げ茶色の髪の女がげんなりとした様子でぼやいた。
「まさかこっちの世界でも富士の樹海を彷徨う事になるとはねぇ……」
「ですが必ず護ります……噴火なんて絶対にさせません」
邪神の跳梁跋扈せし狂気の世界にも似た場所はあるが、この世界でもかという数宮・多喜(撃走サイキックライダー・f03004)のぼやきに、レン・ランフォード(近接忍術師・f00762)は眼鏡の位置を直しながら決意を示す。
それと同時に失われた記憶がこの世界にあれば……とも淡い期待を抱き。
「迅速な移動と奇襲が必要な作戦なら、新しい能力にちょうど良いね。瑠璃」
「敵も結構な外道みたいだしね。やろう緋瑪」
その横で四季乃・瑠璃("2人で1人"の殺人姫・f09675)と緋瑪の“2人”はその背に魔導と機械の合わさりし翼を背負っていた。
「よし……じゃあアタシは大体の方角を探るよ」
「じゃあ私は魔術で空から探って絞り込むね」
準備は良いかと頷く多喜の声に、瑠璃と緋瑪の二人はその翼広げ飛翔し、瑠璃は魔力による追跡の準備をする。
しかしまだ行わない……迂闊な魔力操作は逆に探知される危険性もある。
「匂いでの探索は任せてください。ね、太郎?」
「護衛は私に任せて」
故に魔力に引っ掛からない探索手段として、レンの操る白い狼が亡霊の匂いを探りながら、緋瑪が空中から敵襲を警戒する。
張り巡らされた多喜の超感覚の網が大地に広がり探る――聴くは、儀式の実行者か被害者か。飽く迄能動的には行わない、受動的に感知するに留めるだけ。
「! そこだよ!」
そうして多喜が儀式場の呪文の声色を聞き取れば、その方角を指し示し。
レンが太郎に匂いを確認すれば、狼が頷いた。
「太郎、匂いは? ……間違いないようです」
「魔力の気配も確りあるよ」
「敵の気配もないみたいだね、行こう!」
大まかな方向と匂いによる物理の痕跡、その二つがあるから最低限の魔力操作で特定も出来た――敵襲の心配もいらない。
彼女達は、一斉に儀式の会場へ急ぐのであった。
●感じ入り交わる時
彼女達が場に到着したころ、西行は既に先に突入した猟兵によって強力な一撃を叩き込まれた後だった。
「刃は氷雪・術は月光・我が身は徒花……」
だがまだ終わるには至らない……レンは密かに、印を組み己が内に眠る「れん」と呼ばれる人格を呼ぶと、白狼・太郎と共に待機させ。
その隙に別方向へ移動しながら、西行を取り囲むような配置となれば――眠たそうな目のれんへと合図を送り。
立ち上がった西行が太郎の唸り声に気が付くと同時、レンが背後から放つ苦無が西行の背中に突き刺さり。
狙いに気付いた西行が怒りを露わに、嘗て亡霊が犠牲とした骸の塵(ごみ)とした部分を用いて作り上げた裁縫道具を解き放ち動きを封じんとするが。
「有象無象が鬱陶しい……我がしもべ、我が忠臣、黒百合よ我が敵を封じよ!」
上空から翼を広げた殺人姫達が、その時既に爆弾を構えていたのに、彼は気付いていなかった。
「行くよ、緋瑪」
「行こう、瑠璃!」
「「さぁ、わたし達の破壊を始めよう」」
空中から、世界観にそぐわぬ空爆のように。
閃光と爆音が響き渡り、嗾ける裁縫道具諸共、亡霊が纏う遺骸を吹き飛ばし無力化していく。
無様に芋虫のように転がり、その先にれんと太郎が待ち構え、その牙と苦無で薙ぎ払われつつも、西行は立ち上がり想像する。
「我が願い、我が望み、我が目指す最高の人よ顕現せよ……どうだこの究極の肉体はあ!」
想像から具現へ。
己が絶対なる自身を以て生み出した自称・最高の肉体から匂い立つ圧倒的な気配が、場の猟兵達の思考を狂わすかと思いきや。
その肉体を打ち据える太郎――平然とその肉体に牙を立てる狼を受けとめ、必死で振り払う西行にレンは語る。
「成程、整った体かもしれませんが、この子には関係ないみたいですよ」
「……ふん、獣には分からぬと」
「獣を魅了できなかった時点でその程度だ、ということです」
見苦しく主張を続け自信を保とうとする西行の言葉を、レンは眼鏡を押し上げながら情け容赦なく斬り捨てて。
息が詰まり一歩ほど僅かに後退した西行の脳内に急に声が響けば、彼は体を僅かに硬直させる。
(あー、あー、悪いね。ちょいと繋がらせて貰ったよ)
それは多喜の精神感応力に依るものであった。
肉体の強靭さを揺るがされた西行に、煽るように多喜は脳内から語り掛ける――この時、彼の心を揺るがす催眠の波動も忘れずに。
(心までは無敵じゃあ無かったようだね?)
(くっ、肉体は最強なのだ肉体は……!)
(レンちゃんも言ったけど、獣も堕とせなかったって時点でもうアウトなのさ。無敵で魅惑の体が聞いて呆れるよ)
最早精神をつなげた時点で多喜の術中に嵌っているのに彼が気付くことはないだろう。
蛇の毒のように蝕む術と言の刃は、西行の無敵の自信を穴だらけの脆くなった壁のように揺るがす。
(ところでいいのかい? アタシとお喋りなんかしててさ。今が戦闘中だってこと、忘れてないかい?)
多喜と西行の精神感応は時間にしてみればほんの僅かなものだっただろう。
しかし無敵の肉体とやらに疑念を植え付け揺さぶり、隙を作り出すには余りにも十分、慌てる西行を後目に多喜は指を力強く彼に指し。
「――今だよ! やっちまいな!!」
この状況下、極限まで力を溜めておくには十分、瑠璃と緋瑪の新たな力で唯でさえ強化された爆弾には更なる力が籠っており。
「因果応報……貴方が犠牲にして来た人達の元へ送ってあげる」
「見てくれだけの最高に意味は無いよ……消えちゃえ!」
「富士山噴火の前に倒します!」
投げ放たれた殲滅の閃光と名付けられた爆弾が黒衣を焼き尽くす勢いで西行を包み込み。
全身より白煙を噴き上げて崩れる西行の喉笛を、レンの苦無が素早く掻き切っていった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
フレミア・レイブラッド
【念動力、情報収集】により、念動力の網を周囲に広げる様にして情報を収集。
敵の場所を補足次第、すぐに向かうわ。
【ブラッディ・フォール】で「生み出すことを許さないというならば」の「イーギルシャトー」の力を使用(イーギルシャトーの翼や尻尾等が付いた姿に変化)。【白銀の世界に君臨す】で敵を凍結。無敵であろうと動けなければ意味が無いでしょう?そのまま凍結させて心を圧し折るわ。更に【極寒の空を往く】の白銀の輝きで敵の糸を触れた傍から凍結させて無効化。
【世界を絶つ氷翼】を魔槍に宿して肉体も精神も斬り捨てるわ
その力…随分外道な行いをしてるみたいね。貴方の犠牲になった人達の無念…晴らしてあげるわ!
ゼット・ドラグ
「探索は苦手だが、コルテスを引き吊り出すためなら何でもやってやるぜ!」
特別鼻が利くわけじゃないが、散々竜を殺してきた俺には子竜の匂いは分かるぜ。足跡や血の痕跡なんかも探しながら探索するとしよう。
戦闘になったら、まず自分が飛び出し黒剣形態の【竜を殺す百の刃】で戦う。男の体になんぞ興味はないが、女体にでもなるのだろうか。
「まぁ、女は嫌いじゃないが・・・今の俺を突き動かすのはただ一つ。コルテスを戦場に引きづり出す事のみだ。」
その一念のみで武器を振るいつつ、隙を見て【奇襲の極意】を発動。近くの猟兵の元にテレポートし、同時攻撃を仕掛ける。
「これはあまり得意ではないが、中々良い作戦だろ?」
仇死原・アンナ
謀反を企てる奴らを痛めつければいいのかな…
私は…処刑人だ…!
他の同行者と協力
[呪詛耐性]を施して[目立たない]ように[地形を利用]し
[視力、暗視]を発揮しながら儀式場の[情報収集]をする
【大鴉の訪問】を使い
先に儀式場を見つけ戦闘に入った者たちの許へ移動し
妖刀を抜き[早業、2回攻撃]で敵に[だまし討ち]を食らわせる
「お上に楯突く不届き者共め…成敗してやろう…!」
鉄塊剣を振るい[怪力、なぎ払い、範囲攻撃]で攻撃
敵の攻撃は[武器受け、見切り、オーラ防御]で回避防御
まだまだ先は長いだろうし…[覚悟]して敵群を潰してゆこう…
アドリブ絡みOK
鏡島・嵐
判定:【WIZ】
……世界史に出てくる名前の人間が日本で悪さすんのか。こういうことが起きんのはオブリビオンならでは何だろうけど、こっちにとっちゃいい迷惑だ……。
ともかく、その儀式ってのを止めねーとな。
まずは儀式の場所を〈第六感〉〈野生の勘〉も使って捜索する。
奇襲を受けねえようになるべく〈目立たない〉よう気を付けて行動。
場所を突き止められたら、他の仲間に連絡を取りながら集結して、頃合いを見計らって襲撃をかける。
戦闘では仲間を〈援護射撃〉で支援したり、相手の攻撃を〈目潰し〉〈武器落とし〉で妨害したり。
相手がユーベルコードを使うようなら、《逆転結界・魔鏡幻像》で相殺して、味方への被害を防ぐようにする。
●更に更に呪を追う者達
「謀反を企てる奴らを痛めつければいいのかな……」
「痛めつけるなんて生温いわ」
自殺の名所として名高き富士の樹海にて、ぼんやりとしていた女がぽつりと声を漏らした。
その言葉に金髪の女子が、吐き捨てるように語る。その様子にぼんやりとした女、仇死原・アンナ(炎獄の執行人・f09978)は気配を消しながら軽く見やる。
金髪ことフレミア・レイブラッド(幼艶で気まぐれな吸血姫・f14467)の張り巡らせる念力が、儀式で待ち受ける亡霊の力の気配から、僅かに入り混じった嫌な気配を感じ取ったようであった。
「……世界史に出てくる名前の人間が日本で悪さすんのか」
鏡島・嵐(星読みの渡り鳥・f03812)はその横で溜息を吐いた。
「こういうことが起きんのはオブリビオンならでは何だろうけど、こっちにとっちゃいい迷惑だ……」
この世界でのそれが如何な存在かは分かりかねるが、過去の偉人が――正確にはその姿を取り特質を持った「過去」が現在を侵す。
亡霊なる者の宿命といえばそれまでかもしれないが、
「ともかく、その儀式ってのを止めねーとな」
「ああ。探索は苦手だが、コルテスを引き吊り出すためなら何でもやってやるぜ!」
妙に角ばった髪型のゼット・ドラグ(竜殺し・f03370)は鼻頭を微動させ辿る。
特別に犬か何かのように鼻が利く訳ではないが、二つ名に相応しく数多の竜を殺してきた身の上ならば、儀式に使うであろう小竜の匂いを辿ることも容易い。
「……」
その間もアンナは気配を消し、地形に紛れ呪詛の影響を遮断しつつ周囲を警戒している。万一こちらが奇襲を受けても対応できるように。
そうして暫くお互いにそれぞれが役割を請け負いながら進んで行くが、唯でさえ迷い易い樹海。
儀式を行う気配も足跡も、匂いも様々――気配と痕跡だけでは辿ることが難しくなってきた頃合。
ゼットが匂いを辿り、その方向を元にフレミアの張り巡らせた念力が亡霊の気配を色濃く感じ取り絞り込んできたが、ここに来て立ちはだかったのは森の分かれ道。
確率は二分の一、匂いも気配も同程度の濃さなれば。
最後の一欠片を補うのは、極限まで張り巡らせた勘を以て――そして、それは時に
「……こっち、かな?」
この中で最も第六感と野生の勘の総合に秀で、それを駆使し捜索を行ってきた身の上なれば。
言葉にできない亡霊の存在を感じ取り、彼は三人の最後の一押しを担うのであった。
●より深く重ねて重ね
首を掻き切られ、白煙を噴き上げ、錫杖を突きそれでも立ち上がる西行に斬りかかったのは黒き刃だった。
「援護するぞ!」
黒き刃を振るうゼットの後ろで、弾弓を射出しそれを補助するは嵐。
弾丸を躱し、竜をも殺す黒き刃の斬撃を西行は錫杖で受け止めるも、弾かれても、何度弾かれても。
ゼットは重く鋭い刃を幾度となく錫杖へと振り下ろしていき、嵐は幾度となく鉛弾を弾き身体に叩き込んでいく――しかし西行もまた、その身に自信を僅かながらに取り戻し想像を働かせ、その創造を身に降ろす。
男の逞しさに満ち溢れていながら、女の妖しい色香も備え屈強にして柔軟なその肉体を見せつける西行。しかしゼットは意にも介さずに剣を振るう。
これが女と化していたら多少はとも思ったが、如何に世界法則を覆す力といえど男女の性を入れ替えることは敵わないのが幸いか。
「まぁ、女は嫌いじゃないが……今の俺を突き動かすのはただ一つ。コルテスを戦場に引き摺り出す事のみだ!」
「なっ……!?」
先ほどの交戦にて揺らいでいた西行の自信と、確たる戦意は呆気なく無敵であった筈の体を打ち崩し。
錫杖を空へと舞い上げる勢いで、竜殺しの黒刃の打ち上げを以て西行の得物を宙へと舞い上げて。
舞い上げられし錫杖に気を取られた刹那、西行の目に次に移ったのは全てを覆い尽さん勢いの凶鳥、不吉な鳴き声の賑やかな黒羽の群れと共に現れたアンナの姿。
ゼットの交戦を見据え、いざ行くべき好機を見計らいて突然にして現れた彼女の刃が背中から西行の体を深く斬り裂き、返す刀が背後から脚の腱の一つを断ち切る。
「卑怯な……!」
「卑怯? 私は……処刑人だ……!」
よろめき膝を着き、心底に屈辱を伺わせる西行の眼を闇深きアンナの眼が冷徹に見下ろして。
「お上に楯突く不届き者共め……成敗してやろう……!」
伝説の首狩り処刑人の名を持つ刀を収め、鉄塊の如き大剣を取り出して。
再び嵐の弾弓から放たれる鉛弾が裂かれた腱を打ち抜き、その動きを止めた瞬間に――鉄塊の如き剣が唸りを上げ、重く烈しき剣の旋風を巻き起こし。
叩き付けられる質量と刃が無敵の鍍金を剥がされし肉体の骨を悉く圧し折り、筋肉に二度と戻らぬ裂傷を与えていく。
その様子を見て口角を吊り上げ、ゼットは自慢気に語る。
「俺はあまり得意ではないが、中々良い作戦だろ?」
「ッ……ふん、だが二度とは喰らわんよ」
騙し討ちを決められ、忌々しく新たに戦意を固めても。
待ち構えるのは、過去の亡霊の力をその身に降ろすフレミアの姿がそこにあった――時間の稼ぎは、十分にして最高。
「骸の海で眠るその異形、その能力……我が肉体にてその力を顕現せよ!」
その背に氷細工の如き煌めく翼を持ち。
絶望を齎す白銀の輝きを体に帯びた、竜の如き角を生やす姿――かつて討伐せし冬の絶望の化身。
「その力……随分外道な行いをしてるみたいね」
「外道で結構!」
森探しの時より漂っていた気配に嫌気を覚え、それを吐き出すようにその口から絶対零度の吐息を吹きかけて。
無様に転がる西行が直撃を避けても、突き上がる氷柱の刃がその身を打ち上げていき。
なれば無効化しよう――西行がかつて手に掛けし犠牲者の無念を弄び、作り上げた裁縫道具を嗾け絶望の凍土を消し尽さんとしても。
「鏡の彼方の庭園、白と赤の王国、映る容はもう一つの世界。彼方と此方は触れ合うこと能わず」
今こそ、この力を使うときと嵐は西行が掌を翳すのと同時に己が掌を翳す。
まるで鏡合わせのように動くのは動作そのものに非ず――正に鏡そのものを掌に生み出す。
そして鏡に映る虚像もまた虚像に終わらず、左右だけが反転さし同様の裁縫道具が鏡よりはい出れば。
怨嗟の糸と糸が絡み合い、その存在を虚空へと掻き消した。
「……幻遊びはお終いだ。アンタの術は、俺がいる限り防いでみせる」
無効化の技すらも無力化され、毅然と言い放つ嵐の希薄に気圧されて。一歩引いたその先に待ち受けたのは。
「貴方の犠牲になった人達の無念……晴らしてあげるわ! 肉体も精神も、斬り裂いてあげるっ……!」
――その槍に宿すは、翼より出でた氷の刃。
冬の凍気が齎す絶望感を以て、肉体と精神を喰らう刃が華麗に血を湧き出ることも許さず、深い絶望と痛みを彼の身に刻み込む。
心を絶望に侵されながらも、西行は必死で距離を取る――せめて、逃げなくては。
逃げて別の場所で儀式を行わねばと駆け出していったのだが。
「え……?」
氷の魔槍を構えた吸血姫の眼前に、西行自身があった。まるで最初から逃げ出していなかったように。
「二度は喰らわん……? 私達が、二度と逃がしはしない、だ……」
「こういう戦法もあるんだぜ?」
連れてこられたのも予想外ならば、待ち構えていた攻撃もまた予想外――逃げ出した西行をフレミアの下へ引っ張ったのは、ゼットの奇襲の極意と呼ばれし呪法。
そして待ち構えていたのは、再び大鴉の羽舞い散らせ転移をしていたアンナの姿。
呆気に取られる西行に、竜殺しの黒刃が。処刑と拷問の名高き鉄塊剣が。
同様の呪法を使う二人の苛烈な交錯する刃が叩き込まれ、弾弓の鉛玉が傷口に叩き込まれ、そして……凍り付く刃がその傷口を烈しい痛みと絶望感という重すぎる代償を以て、その血を塞ぐのであった。
大成功
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シャーリー・ネィド
【かまぼこ】
【エクストリームミッション】発動!
宇宙バイクと合体してウィーリィくんを背負ったまま森の中を飛行して儀式会場を探す
すでに他の猟兵が先行しているみたいだからその痕跡が見つかれば儀式会場まで行けるよね?
ボスを発見したら【エクストリームミッション】で空中を飛び回りながら地上のウィーリィくんと連携攻撃!
熱戦銃の【援護射撃】でウィーリィくんを援護しながら、ウィーリィくんのユーベルコードで敵の動きが止まったら一気に加速し体当たりでの【吹き飛ばし】!
ウィーリィ・チゥシャン
【かまぼこ】
食べる訳でも敵対している訳でもないのに命を奪うなんてな。
しかも、より多くの命を奪うために。
だから、そんな儀式止めてやる。
手掛かりは血の臭い。
『料理』をする上で血生臭さを抜くのは基本だからな。
それを辿り、シャーリーを儀式の場へと導く。
……これが小竜のものじゃなく敵のものである事を祈りながら。
戦闘では攻撃は鉄鍋の『盾受け』で受け止め、『カウンター』で大包丁の『二回攻撃』を炎の『属性攻撃』を乗せて繰り出す。
そして『飢龍炎牙』の無数の咢を襲いかからせながら敵の動きを制し、シャーリーが必殺の一撃を繰り出す機を作る。
●許されざる大罪
樹海の中を翔ける少女と、その背に乗り焦燥の表情を浮かべる少年がいた。
少女シャーリー・ネィド(宇宙海賊シャークトルネード・f02673)は、外装を纏いその背より激しい気流を噴き上げ飛ぶ――その外装はいふなれば宛ら鮫の如く。
シャーリーはその背に乗る少年、ウィーリィ・チゥシャン(鉄鍋のウィーリィ・f04298)に、他の猟兵が辿ったであろう痕跡を元に飛翔しつつ問いかける。
「こっちで合ってる!?」
「ああ! ……匂いがプンプンするぜ」
料理人ウィーリィにとって嗅ぎなれた血の匂い――仲間が辿った痕跡と、その先に立ち込める新鮮で、尚且つ生臭い血の匂いに顔を顰める。
これが生贄にされた小竜の命ではなく、敵の命であることを祈りながら――捕食と防衛を目的としない殺生は殺生の中に於いても最も重き大罪なれば。
増してその殺生の果てが、よりその大罪の殺生を齎す物といふならば。
「じゃあ、飛ばすよ! しっかり掴まってて!」
「応!!」
止めなければならない――瞳の中の炎は、少年も少女も等しく熱く。
少女が気流を噴き上げ、少年の案内に従い儀式会場に飛び込むのは遠からぬこと……
●呪法の末に
見つけた亡霊の姿はあまりにも無残――裂傷はおろか、内部の損傷はそれ以上であろう。
にも関わらず、その身体を尚も突き動かすは嘗て亡霊が手に掛けし者の骸――死して尚、その遺骸に安らぎを与えぬ所業。
大罪の殺生の果てのその姿に、シャーリーとウィーリィは怒りを燃やし、シャーリーから飛び降りたウィーリィの大包丁が強かに西行の錫杖を打ち据える。
入っていた罅が更に広がり、最早繋がっているのも不思議な錫杖へ、命を扱う責務重き料理人の怒りを込めた包丁が幾度となく打ち付けられ。
苛烈な猛攻に血と骨の翼を緩やかに羽ばたかせ空へ逃げようとする動きがあらば、どこまでも冷たく徹する超科学の眼がそれを捕え、シャーリーの熱線銃の光芒が撃ち抜き翼を封じる。
「う、ぁああっ!」
終には圧し折れた錫杖から、破れかぶれに雷を繰り出そうとも鉄鍋を正しく避雷針の如く放り、雷霆を逆に捉えて逸らし。
大包丁に怒りの炎を宿し、裁きの十字を刻むように骸の鎧を斬りつける――その勢いで錫杖を持つ腕を斬り飛ばしつつ。
熱線は熱く、視線は冷たく――シャーリーが引き金を引き次々と放たれる熱線は、斬り飛ばされた傷口を苛烈に焼いていく。
「喰らい尽くせ、炎の顎! 命を弄ぶこいつの命を喰らい尽せぇッ!!」
そうして身動きも許されぬ西行を睨みウィーリィは舞うかの如き大包丁を揺らし、纏う炎を竜の形へと変えて。
腕を抑え血と骨の翼を動かさんとする西行の体を、燃え盛る牙が完全に捉え――砕けた骸の鎧から流される炎が苦悶の雄叫びを西行に挙げさせる。
「今だシャーリー!!」
「そして史上最大の凶暴すぎる竜巻――覚悟なんて、させてあげないッ!」
全ての準備は整った。
纏う鮫の如き外装――否、外装の形も合わさったその気迫は絶対なる深海の捕食者そのものの覇気に他ならず。
背中より噴き上げる激しき気流は、その余波すらも戦場の猟兵が気圧される程に烈しく――故にその気流に押され飛翔するシャーリーの姿は。
亡霊の体を擦り抜ければ、纏う骸の鎧もその本体も塵一つ残さず消し去るその勢い、正に魔獣と称される鮫の如く在ったといふ……。
戦いは終わり、儀式の方陣を破壊し終えた猟兵達は一息ついていた。
そこではっと思い出したようにウィーリィが声をあげた。
「……そうだ、小竜は!?」
「無事みたいだよっ……よかったぁ」
最も気に掛かっていた事案だが、幸いにも保護を担った者がいたので小竜は無事だったようだ。
奇怪で何処か可愛らしい鳴き声を挙げるそれの頭を軽く撫でてやりつつ、それが在るべき場所へと還してやりつつ。
この潰した儀式が、見上げる霊峰の噴火を止める礎となることを祈るのだった。
大成功
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