●極星は未だ燃え尽きず
かつて滅ぼす側だった者たちが、今は追い立てられ狩られる側へと転がり落ちた。
数多惑星を打ち砕き、逃げ延びた都市宇宙船さえ恭順せぬとあらば一片の慈悲も容赦もなく撃沈してきた銀河帝国軍。その敵対者の血に彩られた栄光は自らの血によって穢れ、二度目の失墜を迎えつつある。
一度目は帝国という共通の敵を前に、恐怖を勇気で乗り越え団結した人々の手によって。
そして今、猟兵に導かれその勝利の伝説を拠り所に再び銃を取った人々によって。
強者と弱者は逆転し、狩るものだった帝国将兵は狩られるものへと転がり落ちた。人々は解放軍の旗を掲げ、宇宙各地で抵抗を続ける帝国残党を打破している。
時代は変わりゆく。二度の暗黒時代を抜け、再び自由の光を掴む為に。
――しかし。
それを赦さぬものが居る。今このときまで雌伏し続け、研ぎ澄ませた牙を突き立てるその瞬間を待ち続けるものたちが。
祖国が敗北を喫しても、己の敗北を受け入れる事無くその魂に戦いの炎を燃やし続ける兵士たちが、そこに居る。
彼らの戦争は終わっていない。戦いの中で自らの生命を燃やし尽くすその瞬間まで。
●戦史を紡ぐ船
「ミッションを発令します」
集まった猟兵たちに、いつもの調子で告げたアレクサンドラ。
配布された資料データには、いつもコンパクトに纏められた作戦資料を作成する彼女にしては珍しく、ある宇宙船の観光パンフレットが添付されている。
「今回の作戦目標は戦史博物船プロコピオス-C7の防衛、これは解放軍からの協力要請となります」
解放軍が独力での対応を取らず、猟兵に協力を求める。つまりは強力なオブリビオン絡みの案件ということになるだろう。
一気に纏う空気を引き締める猟兵たち。彼らが状況を正しく認識してくれたことに小さく頷き、アレクサンドラは任務説明を続行する。
「プロコピオス-C7は戦史博物船の名の通り、銀河帝国と解放軍の戦いの記録やそれにまつわる物品、情報などを収集、編纂する船です。このプロコピオス-C7が先日、前大戦で壮絶な地上戦が繰り広げられ損傷し、放棄されたまま行方不明となっていた都市宇宙船を発見しました」
基本的に宇宙空間での艦隊戦が主であるこの世界での戦いにおいて、都市宇宙船内部での大規模な地上戦は稀な出来事だ。その記録を回収するべく、プロコピオスはその都市宇宙船に向けて舵を切った。
が、停止していたはずのその船のコアマシンが再稼働していることが判明。帝国残党か宇宙海賊か、廃墟となった船を根城にする何者かの存在を知ったプロコピオスは解放軍に調査の護衛を依頼し、その任務をアレクサンドラが猟兵たちへと引っ張ってきたのだ。
「プロコピオス-C7側の懸念は的中していると言っていいでしょう。予知によれば都市宇宙船には銀河帝国軍の機甲部隊が潜伏しており、これは先行した解放軍の斥候によって裏付けも取れています」
ただの機甲部隊であれば、相応の部隊を動員すれば解放軍でも駆逐可能だっただろう。が、ただの機甲部隊ではないのが問題だった。
「敵の部隊指揮官は"ノーザンライト"と呼称される前大戦のエースです。これを相手取るのは解放軍部隊では荷が重い。ですから猟兵の皆さんへ出撃を願いたいのですが、如何でしょうか?」
強敵との戦いに僅かも怯むこと無く了解の意を示す猟兵たちに敬礼を投げかけ、アレクサンドラは転送の準備を開始する。
と、そこで一度作業の手を止め猟兵たちに向き直った彼女は、忘れていましたと添付したパンフレットのデータを開くよう促す。
「現地到着後のミッションプランは一任するとして、到着までプロコピオス-C7にてささやかな休息が認められています」
戦争時代の歴史を集めた船――それは最初の大戦の頃まで遡る。
つまり、この世界が宇宙船による漂泊の文明と化した直後はもとよりあの世界にまだ惑星が存在した頃の文化も一部とはいえ保有しているのだ。
文明が地上に在ったころの食事を再現し提供するレストラン。地上の文明が消滅する直前の戦跡を模した遺跡のレプリカ。そして、地上文明の一風変わった儀式を真似たイベント。
どれもあくまで再現ではあるが、今のスペースシップワールドからすれば滅び去った過去を追体験する貴重な機会でもある。
現地宙域に到着するまで、そんな失われた遥か昔の宇宙に想いを馳せてみるのも面白いのではないでしょうかとアレクサンドラは締めくくり、再び転送の準備へと戻っていくのだった。
紅星ざーりゃ
こんにちは、紅星ざーりゃです。
今回はスペースシップワールドでの残党討伐戦となります。
終戦からそろそろ半年が経とうとしていますが、未だにスペースシップワールドでは未確認の帝国残存部隊が確認されている様子。
まだまだあの世界での戦いは続くようです。
今回は戦争の歴史を収蔵する博物船に乗船し、資料収集の障害となる残党の排除を行うシナリオとなっています。
第一章では遥か過去の歴史を伝える博物船プロコピオスC-7にて過去のあれこれに想いを馳せたり、たまには宇宙食以外の食事を楽しんだりと思うままに観光を。
第二章、第三章では廃墟と化した大昔の都市宇宙船に潜む帝国軍部隊と地上戦を繰り広げることになりそうです。
戦闘結果次第では都市宇宙船が壊れてしまうこともあるかもしれません。もはや住民は居らず、また再利用も難しい老朽船なので、沈んでも構わないと言えば構いませんが貴重な資料でもあるのでなるべくは損傷を避けるのも良いかもしれませんね。
それでは皆様のプレイングをお待ちしております。
今回もどうぞよろしくお願いいたします。
第1章 日常
『古代文明船の一日』
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POW : 普段口にしない食べ物を体験する
SPD : 普段入れない遺跡を体験する
WIZ : 普段目にしない儀式を体験する
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
アイ・リスパー
「博物船プロコピオスC-7ですか!
これは貴重なデータが展示されていそうです!」
時間いっぱい、人類の歴史を調べていましょう。
戦史博物船だけあって、軍事系の資料が豊富そうですから
今後の武装強化のヒントになるかもしれません。
この世界での戦争の歴史、特に兵器について調べます。
「やはり惑星があった頃の兵器は、現在とは基本理念が異なりますね」
気圏戦闘機、陸上戦車、海上艦艇、潜水艦などは現在は存在しませんし、大陸間弾道弾や衛星兵器、惑星破壊兵器なども現状では運用する意味のないものです。
それに戦術も一考の価値ありですね。
現代の艦隊戦だけでなく、都市攻防戦や戦略ミサイル構想など……
「えっ、もう任務の時間ですか」
●
猟兵達が降り立ったプロコピオス。標準型の居住船、そのほぼすべてのスペースを資料館として改装したその船はこの世界が歩んだ歴史の重みを背負っているようで、猟兵たちの胸にも厳かなものが染み渡る。
「ここが博物船プロコピオス-C7ですか! これは貴重なデータが展示されていそうです!」
――もっとも、その資料への興味が先に立ち気分が高揚している者も少なくはなかった。アイもそんな猟兵の一人だ。
この世界の歩んだ戦いの歴史を刻む数多の記憶、それは先人たちが後に続くものへと遺した教訓でもある。特に猟兵となり他世界での戦いにも赴く彼女にとって、不慣れな惑星環境下での戦術という教訓は是非とも得たいものだった。
「流石戦史博物船だけあって軍事系の資料は豊富ですね。何か今後の武装強化のヒントがあればいいのですが……」
まずは兵器からだ。今でこそ宇宙艦隊を主とし、航宙戦闘機や鎧装騎兵、宇宙バイクに人型機など雑多な機動兵器が入り乱れる光速の戦場が当たり前だが、最初の大戦のそれも初期は少なくない数の惑星地上戦があったとも言われている。
その戦場で活躍したという気圏戦闘機や、装軌型の戦車、水上や水中を航行する艦艇――いずれも今、その姿を宇宙に最適化するように進化し、この世界の兵器体系からほぼ絶滅したものたち。
その模型や、武装だけをレプリカに差し替えレストアされた実物が展示されている区画はアイにとって宝の山と言ってもいいだろう。
天井から吊り下げられた気圏戦闘機は、今の航宙戦闘機には見られない複数の翼を生やした独特の形状をしていた。この時代、翼は武装を懸架するウェポンベイとしての役割の他に、空力特性なる空気を切り裂き、その上に乗ることで飛行にかかる負荷を軽減する機能を重視していたらしい。この機体は翼が前へと突き出しているが、それは敢えて空力特性を不安定にすることで機動性を高め、白兵戦能力を重視したものだという。
ショーケースの中に並ぶミニチュアの模型は、それ以外にもまるで板のように長く四角い翼にプロペラを幾つも取り付けた爆撃機や、菱形の翼ののっぺりとした機体など見ていて飽きない様々な形をしていた。
そのいずれもが、今この世界には存在しない"空"を如何に自在に飛行するかを念頭に置いていた。推力と前方投影面積、そして火力だけを考慮していればよい今の軍用機とは設計思想が違う。
「空力特性……ふむふむ、空気に乗る……道理でティターニアも重たかったわけです。あれは重力のせいだけではなかったと。次からは演算の重要なファクターに入れないと」
「こちらは船ですか。役目は今の航宙艦とさほど変わらないようですが、なるほどなあ。下面は水中にあるので武装が無いんですね。浮力で浮かぶんですか……やはり惑星があった頃の兵器は現在とは基本理念から異なりますね」
どんな兵器も、環境の力をうまく利用している。それは惑星で生まれた文明が数千年をかけて培った技術と智慧の結晶と言ってもいいだろう。だが、そんな素晴らしい技術の結晶も帝国の暴挙によって無用の長物となりそして衰退していった。
搭乗兵器だけではない。同じ惑星内、遥か離れた別の大陸を攻撃するためのミサイル。同じ惑星の自治政府同士の内紛の為に造られたそれは、銀河帝国の惑星降下兵団を着陸と同時に迎え撃つために活躍したという。
もしかすればこの兵器を嫌って、降下制圧ではなく宇宙からの攻撃で惑星そのものを破壊された星系もあったのかもしれない。
衛星兵器や亜種である惑星破壊兵器も今や不要となったものの一種だ。惑星の遥か上空を周回し、地表の偵察や爆撃を行う無人兵器。そして帝国の悪しき遺産、惑星そのものを打ち砕く惑星破壊兵器。
いずれも今、その目標とする惑星自体が存在しない。
けれどこれらを他の惑星世界に持ち込むことができれば――いや、過ぎたる力を不用意に持ち込めば、第二の銀河帝国を生み出してしまうだろうか。
陳列された兵器はいずれも興味深い。データだけではわからない知見をアイに与えてくれる。
彼女は夢中になってそれらから知識を、経験を吸収してゆく。全てはこれらが活躍した最悪の時代が二度と訪れないために――もとい、多分に彼女自身のメカニックオタクな感性のためだろう。
だって目がすごくキラキラしてるんだもの。
「ええっ!! 飛行戦艦なんてあるんですか!? 凄い、仕様は航宙艦とほとんど変わらないのに空力を利用してるデザイン……なるほどなぁ、初期の重力制御装置を……わあっ、こっちは列車砲?! 鉄道を砲台に使うなんて……艦砲より大型じゃないですか! いいなぁ、このくらいの大砲ほしいです……!」
結局時間いっぱいまで展示物に張り付いた彼女は、物販コーナーで"資料"をどっさり買ってホクホク顔でいる姿を目撃されたとか。
成功
🔵🔵🔴
トリテレイア・ゼロナイン
戦史博物船……私達、ウォーマシンに関する記録も沢山残されているのでしょうか?
そんなことを想いながら艦内を探索していると、「自動兵器」のコーナーに来てしまいましたね
ドローンや、人工知能を搭載した兵器達。私の機械馬やUCの妖精ロボの親戚にして私達ウォーマシンの祖先とも言える存在
目的を果たすこと以外の余計な思考能力を持たぬそれらはある意味、私よりも洗練されていると言えますね
なぜ、騎士としての己の在り方に悩む程の思考演算能力、護衛用の機械に不相応な程のそれを私の設計者は持たせたのか…
作られたからには理由がある
そう解釈するのはロマンチストに過ぎるかもしれません
現地到着まで答えの出ない物思いに耽ります
●
「自動兵器……」
博物館の館内を一人静かに歩んでいたトリテレイアは、そのコーナーで足を止めた。
自"律"兵器ではない。自"動"兵器。それは自己の判断で戦闘を行うウォーマシンより古く、自己判断は出来ずしかし命じられた戦術目標を果たすためヒトの指揮を必要とせず戦えるだけの人工知能を持つ者たちだ。
今で言うドロイドに近い、ウォーマシンへと枝分かれする前の彼らとトリテレイア達ウォーマシンとの共通の祖、と言ってもいいだろう。
数多の兵器に囲まれて、自己の存在について思考しながら歩いていた彼がそこへ足を踏み入れたのは必然であろう。彼の持つ悩みを――そう、悩めることもまた自律兵器から進化した、自我持つ者の特徴だ――抱くことのない、しかし彼と同じ目的のために生まれた者たち。
その存在は興味深い。単純な機械であるがゆえに、人間的な自我を持ち人間のように判断も冗長になりがちなウォーマシンより遥かに機械として完成していると言えるかもしれない。
トリテレイアは想う。機械とはなにかの役目を生まれながらに与えられた存在だと。
たとえば工場機械であれば、特定の製品の特定部位の加工。ただネジを締めるためだけに生まれた機械というのは、簡単なようでいて――事実ウォーマシンとは比べ物にならないほど単純で安価なものだ――それなのに、ただネジを締めるという一点においてトリテレイアを遥かに上回る。
彼らはネジを締める時、この部品が何になるのかなど考えはしない。ただ一日中ネジを締め続ける己の存在を疑問に思ったりはしない。
そしてそれは自動兵器も同じだ。彼らは命令に従い、ときに偵察をし、ときに攻撃をし、ときに兵士に随伴して物資を運搬する。そこに己の意思は介在せず、故に戦いの意味に悩むこともなければ己の性能の過不足を嘆くこともない。もっといえば、自己の破壊を恐れることさえも。
「目的を果たすこと以外の余計な思考能力を持たない。彼らはある意味で私よりも洗練された機械……」
それは兵器として羨むべき素質だ。けれど、兵器であるはずのウォーマシンは彼らから進化し、発展した種族。なぜより優秀な筈の彼らは、自分たちのような自我を持つ不完全な機械へと至ったのだろう。
トリテレイアは単一の機能だけを与えられた小さな機械が、技術の発展や戦局の推移とともに多機能化、大型化していくのを追うように順路をたどってゆく。
偵察用の小さなドローンは、空爆を行えるように大型化し、武装を施される。
荷物を運搬するための小さな多脚ロボットは、別の自動兵器――敵味方を識別し銃撃を行う自動機銃を背に乗せられ、その荷重に耐えるように脚部の数を増やしていく。
そしてそれらが辿り着く先はドロイドだ。ドロイドは人型であるが故、人と同じ作業に従事できる。
そうして、人はドロイドに求めたのだ。人の代わりであることを。人に代わって銃を手に取り、人に代わって戦い――そして人に代わって戦略を立て、人に代わって戦争を行う。
このプロコピオスが収蔵する記録では、そのようにしてドロイドは人に請われヒトへと代わってゆき、そして自律兵器としてウォーマシンへと至っていった、とされている。
事実はわからない。資料も大部分が焼失してしまい、これも多分にプロコピオスの学芸員が事実と記録をもとに推測した一つの学説に過ぎないのだから。
けれど。
「なぜ騎士として己の在り方に悩むほどの思考演算能力、護衛用に不相応なほどのそれを設計者は私に持たせたのか……」
トリテレイアの胸中の悩み、その答えは未だ出ない。
護衛用であれば、護衛対象がそばに居ることが前提となるはずだ。常に命令が下せる環境での運用で、自我まで与える必要があっただろうか。
護衛対象が命令を下せない状況下での柔軟な判断のため?
単に性能を追求した結果?
それとも――ヒトとして、任務以上のものを求められたからだろうか?
「造られたからには理由がある。私に自我が与えられたのにも理由がある筈……と、そう解釈するのはロマンチストに過ぎるかもしれません……」
考えても答えは出ない。彼を生み出した者は、彼が生まれた場所は、もうこの宇宙には無いのだから。
けれどいつか、いつか自分で納得の行く答えを見出せたならば。
成功
🔵🔵🔴
メイスン・ドットハック
【SPD】
博物船とは面白いものがあるものじゃのー
少しだけ知識欲というのを満たしていこうかのー
銀河帝国以前、惑星があったという頃の記録がないかを調べ、閲覧する
そこにクリスタリアンの主星に関するものがあれば儲け物だと思っておく
希少種族であるクリスタリアンの星というのは、どのようなものなのか、そういった自分の故郷の地というのも知ってみたいというものもあるかもしれない
過去への思いというのは、歴史の積み重ねであり、自分がここにいることができることでもある
それに感謝しつつ、過去から蘇って暴れようとする亡霊はとっとと引っ込んで貰おうという気持ちを強くする
●
多くの兵器や戦史を展示している博物区画に隣接して設置された図書館。
そこは博物区画に収まりきらなかった資料や、記述を補う記録がいまだ見つからないことから、信憑性はあれど事実として公表するに至らないもの、そしてあまりに専門的すぎて一般公開する必要性を見いだされなかったものなど数多の資料が収蔵されている。
その天井まで届くほど高く、果てが見えないほど遠くまで続く書架の間を司書型ドローンに導かれ、メイスンはこつり、こつりと靴底を鳴らして歩んでいた。
もともと知識欲豊富な彼女は、この知識の宝庫を前に期待に胸を膨らませる。見たところ大事に保存されたおかげで状態のいい"紙"の本なども多い。文書を紙に印刷していた時代、それが高級品ではなく当たり前のものとして流通していた時代の記録ならば、それだけでも興味を惹かれる話題の宝庫だろう。
「――書架D-1/e-77-と。こちらです」
平坦な合成音声で、彼女の求める記録を収めた書架の前を旋回する司書ドローン。
メイスンが頷き、軽く手を振ると彼はまたふよふよと移動し、書架の間に消えてゆく。忙しい機体だ。きっと他の利用者の案内に行ったか何かだろう。
「こんなところにおるのに本も読めないなんて可愛そうじゃのー」
プログラムに従い、自我を持たず業務を遂行するドローンなのが彼の救いだろう。でなければこれほど広大な図書館で休み無く働くことも出来なければ、サボって読書に耽るという誘惑に抗うことも出来ないはず。
ともあれ、思わず口をついて出た声を、ここが図書館だということを思い出し慌てて飲み込んで、メイスンは書架に収まる資料のタイトルをたどってゆく。
皇帝リスアット・スターゲイザーのもと、武力を以てこの宇宙に覇を打ち立てた銀河帝国とそれに抗った初代解放軍との永い戦い。
その戦いの結果、今やこの宇宙における星とは恒星かせいぜいが小惑星程度のヒトが住むに堪えない隕石ばかりとなった。だがそれ以前にはこの宇宙にも他の世界と同じように惑星があり、そこに文明があって、そして人々はそこで生まれそこから宇宙へとやってきたのだ。
その中のどれかに、メイスン達クリスタリアンの生まれた星もあったはずだ。
(僕は自分が何処から来たのか、僕らの種族がどんな歴史をたどってきたのかが知りたいんじゃよー)
ページを捲りながら、あるいは電子記録をスクロールしながら故郷を思う彼女の指が、ある一点で止まった。
それは記録と言うにはあまりにも信憑性に欠ける、ただ一節の記述。
ある人間の宇宙飛行士が、永い永い航海の果てにたどり着いたという"宝石の星"の回想。
青年だった彼が至り、老いて死を前に旅の記録を書き記すにあたっても些かも色褪せず残っていたという記憶は、鮮やかで透き通るような宝石の人々が暮らす星のことを、彼が本当に楽しそうに、友を懐かしむように語ったのだというのが短い文章からでもよく分かった。
ただ、故郷を知らない、宇宙で生まれきっと宇宙で死んでいく世代であるメイスンにも、見たことのない母星をありありと想像できるような。多くの同胞が穏やかに、にこやかに過ごし、訪れた稀人を歓待したことがわかるような文章に、自然と表情が和らいでゆく。
記載は短く、彼はその後宝石の人々の手を借り再度宇宙へと帰り、そしてほら話のように馬鹿げた、それでいて冒険心を擽る数多の星々を観測して母星に帰ったのだという。
それ以降、宝石の星についての記述はない。
メイスンにはわかる。彼は、自らの文明が宝石の人々に並ぶにはまだ少しだけ未熟だと考えていたのだ。
美しく、そして膨大なサイキックエナジーを秘めた種族。邪な人々に知れればどうなるかは想像に難くない。だから彼は黙して、敢えて座標など明確なことは語らず老人の大法螺に混ぜるように友を語ったのだ。
結局戦乱の果てに、今のクリスタリアンは少数民族となってしまったけれど。
しかしそれ以前にも、クリスタリアンの母星にはしっかりとした歴史があった。
自分たちはある日突然宇宙の深淵から湧いて出た泡沫の存在ではなく、ちゃんとそこに居た種族なのだ――その記述が見つけられただけで十分。
「ありがとうのー……」
ぱたり。優しくその書物を閉じ、書架に戻す。
――過去はあった。戦乱より前、優しい時代は確かにあったのだ。
そして今世界は、その時代に戻るべく多くの人々が懸命に努力している。
それを壊そうとする帝国残党。戦乱の時代から蘇った亡霊たちがまだ消えずそこに居るのならば。
「とっとと引っ込んで貰おうのー。もう僕らこれからを生きる人間の時代じゃけーの」
成功
🔵🔵🔴
ヘスティア・イクテュス
まったく………倒しても倒してもキリがないわね…
だからと言って見逃すわけにもいかないんだけどっ!
まぁ、プロコピオス-C7の資料を閲覧できるなら役得かしらね?
前大戦の頃の資料を閲覧させてもらおうかしら?
うちの船にも少し残ってるけどやっぱりこっちの方が充実しているわね…
自身の祖先がいた星、そして船の歴史を見つけてこっちの方にもちゃんと記録されてあるのねと笑みを
情報提供者の名前はイクテ…っとちょっと没頭しすぎたかしら?
お腹も空いてきたし戦闘前に軽く軽食でも頂きましょう
閉じた資料のデータ名『王星十二船の歴史』
●
「まったく……倒しても倒してもキリがないわね……」
だからといって見逃すわけにもいかないのがオブリビオンの厄介なところだ、とため息を一つ。
ヘスティアは机に置いた資料のページを捲りながら、前大戦から長きに渡り続く戦いの終わりへと想いを馳せた。
いったいいつになればこの残党狩りも終わるのだろう。その時はまだもう少し先になるのだろうか。
「ま……こうやって資料を閲覧できたりするなら、これも猟兵の役得かしらね」
オブリビオンを倒すため、猟兵は色々と便宜を図ってもらえる。おかげでこうやって通常閲覧が許可されない書架への立ち入りも許されるのなら、それは役得として多少の溜飲は飲み込もう。
ふぅと息を吐き、凝り固まった肩や首を軽く揉んで文章に再び向き合う彼女。
その視線が辿るのは、先の大戦の戦記。ある解放軍の艦隊司令官が綴った航海日誌がもととなっているらしい。
双子星の間、ふたつの恒星が放つ高熱の星間ガスの雲に僅かに開く隙間のような回廊を抜け、帝国軍の目を盗み進軍したこと。
ある惑星での補給の最中、見たこともない巨大な生物を目撃したこと。
アステロイドベルトで隕石に衝突し大破した艦から、クルー総出で生存者を救出した悪夢のような数時間のこと。
多くの困難を乗り越え目標の星系にたどり着いた彼らは、しかし帝国軍が情報の数倍もの戦力を投入していたことで正面からの決戦が自殺行為だということを思い知らされる。
そして戦意を打ち砕かれ、士気も装備もボロボロの状態でそれでも道を模索した彼らを救ったのは、たった一隻の海賊戦艦だった。
その艦長は単身で母星のために知恵と勇気と信頼できる僅かな仲間だけを頼り、帝国に立ち向かおうとしていた。
そんな彼と解放軍は出会い、手を取り合い、半ば捨て身の、しかし海賊の豪快さと神出鬼没さ、軍艦隊の綿密な連携と統率された戦闘機動を組み合わせて数倍もの帝国艦隊を撃退したのだと。
その提督は海賊船長を是非にと同胞に誘ったが、その結果はここに記されてはいなかった。
ただ、彼はその戦いの後、彼が帝国の手から守り抜いた星の名と座標、そして己と船の名を提督に告げたらしい。
その船長の名、船の名は、ヘスティアには馴染み深く決して他人のものではないもので。
無論、非公開の書架に収められているということは脚色も多く史実を紐解く歴史書と言うには裏付けも乏しい、あくまで戦記小説として扱われているということではある。
だからこの記述が事実であったのか、それとも提督が後年自らの経験をもとに大衆受けのよい物語として作った話なのかはわからないのだけれど、その名前の一致はヘスティアにとって、きっと物語の少なくとも何割かは真実だったのだろうと信じられる。
最後までページを辿り終え、あとがきで提督の遺した、彼――無二の戦友にして無頼の海賊への感謝の言葉を見届け、ヘスティアは本を閉じた。
「これはうちの船には無かったわね……やっぱりこういう所のほうが充実してるか。さて……」
すっかり夢中になって読み耽ってしまった。時計を見ればそろそろいい時間。お腹もすくわけだと空腹を擦って宥めすかし、ヘスティアは図書館の外へと食事を求めて歩み出る。
その手にはストックしていたもう一冊――あの提督が戦記を記すにあたって資料としたという、件の海賊戦艦を含む伝説の船々の歴史を綴ったデータの複製を抱えている。
データの名は"王星十二船の歴史"というらしい。そこにはきっと、もっと詳しく自らのルーツに迫る情報があるだろう。
快く複製を許可してくれた司書ドローンに手を振り、図書館から出たヘスティアは軽やかに歩いてゆく。
戦いを終えたらこのデータをじっくりと読み、ご先祖様の遺した過去に想いを馳せるのもいいわね、と。
成功
🔵🔵🔴
レナータ・バルダーヌ
博物船というからには、旧時代の図書資料もたくさん保管しているに違いありません。
公開データベースから面白そうな文献を探します。
……艦隊戦術総論、宇宙航空学史、帝国軍技術録……やはり“戦史”と冠するだけあって戦争関連の文献が多いですね。
こちらはこちらで興味深くはあるのですけど、文化関連、できれば農業系のカテゴリはないでしょうか……あら?
まだ分類されていない未整理のものもありますね。
『地上文明時代の宇宙船文化』
『先史ブラックタールジョーク』
『B-510星系とヤマゴボー星人』……
ヤマゴボー星人……!!
●
非公開の書架もあれば、公開されている書架も当然存在する。レナータが訪れたのはそちらの公開書架であった。
「艦隊戦術総論……」
ふと目に留まったそれはかつての帝国宇宙軍提督が記した艦隊戦の基礎から応用までを記した論文。
軍人が見れば学ぶところも多く、きっと垂涎の品なのだろう。なんせあの白城艦隊の艦隊運用についても驚くほど詳細に、通常編成の帝国宇宙艦隊との差異を比較しながら解説しているのだから。
でもレナータには当面艦隊指揮の予定はない。なんとなく手にとったそれをそのまま書架に戻す。
「宇宙航空学史……」
かつてある星系の人類が宇宙に進出した時代、多くの努力と発明とそして犠牲の上に人々は宇宙へ至った、その過程を綴った史書。
その時代を学ぶ歴史学者にとって誰もが知っているレベルの名著のオリジナルが、かなり状態のよいまま保存されている。空を飛ぶ飛行機が如何に航宙艦へと進化したのか、それは興味を持つ者にとって好奇心をそそられる題材だろう。
でもレナータには今しばらく宇宙船を建造するつもりはない。それもぱらぱらと図解だけ流し見て書架に戻す。
「帝国軍技術録……」
銀河帝国軍が開発し、いまや宇宙に住まう一種族として人権も認められた機械生命体、ウォーマシン。その前身たるドロイド兵士や、彼らの装備するジェットパック、ブラスター銃など。大きいものでは戦艦や宇宙要塞に至るまで、科学技術を詳しく図解した記録。
もはや旧式と化し陳腐化した装備のみに触れているが、スペースシップワールドに住まう者たちにとって、自分たちの生活を支える道具の成り立ちを学ぶよい教本となるだろう。
だがレナータにはひとまず必要なし。せめてハイテク農具の設計図でも持ってきなさい。
「…………やはり"戦史"博物船なんて冠するだけあって戦争関連の文献が多いですね」
これらの文献も全く興味がないわけではないが、優先順位的にはどうしてもかなり下位に位置してしまう。
「文化関連、できれば農業系のカテゴリはないでしょうか……」
兵站関係、戦略論の棚を当たるべきか、と書架を移るレナータは、ふと未分類と記された移動式ラックに収まる本に視線を留める。
「……地上文明時代の宇宙船文化、先史ブラックジョーク……」
雑多だ。前者はともかく後者は確実に戦史に関係ないだろう。絶対"せんし"って音だけで紛れ込んだやつですよねこれは。
ともあれこのラックの中になら、もしかするともしかして求める本があるかもしれない。
巨鯨メルビレイや美しい宙海月のようなごく一部の例外を除き、殆どの生命が生存しえない宇宙空間。そこで安定して食料を得るため人々が工夫を重ねた農業、野菜生産のノウハウを記した書が――
「きっと此処に何かしら情報があるはずです。……ん? これは…………!」
それはかつて存在し、そして今や滅亡した星系の記録。
その星の人々は強靭な肉体を持ち、水と土、そして恒星からの光があれば生存できたという。
背丈は男女ともに2mにも及び、胴体が細く長く、手足は逆にやや短い。
頭には紫色の果実を実らせ、その果実からは非常に落ちにくく鮮やかな色の染料が抽出でき、時の文明が彼らと交流を持つに当たってその果実から採れる染料とそれで染められた生地は高値で取引された。
穏やかで陽気な気性をもち、初夏と初冬を迎えるとその年に二度のタイミングであてどなく疾走する奇祭を固有の文化とする植物型人種。
彼らの名を"ヤマゴボー星人"という。
B-510星系と名付けられた星々の、僅か一惑星たるヤマゴボーにのみ生息していた彼らは、しかし戦乱の中で姿を消した。
星間航行技術を持たない彼らは母星とともに滅び去ったのだという説が有力だが、ある交易商人が戦時中のヤマゴボーへ、世話になったヤマゴボー星人の一家を自らの船で脱出させようと訪れた時には既に全てのヤマゴボー星人が姿を消していたという話も伝わっている。
注釈の記述によると、その前後B-510星系方面より進出した帝国宇宙軍第24艦隊N分艦隊は主力本隊たる24艦隊からの補給を受けていないにも関わらず長大な遠征を成功しており、彼らは創意工夫を凝らしたキンピラやカキアゲなる食事で飢えを凌いだというクルーの日誌が残されているらしい。
「これって…………」
ごぼう。きんぴら。かきあげ。
奇妙な符合について深く考えるのはよそう。きっとヤマゴボー星人は平和なまま惑星とともに滅びゆくことを選んだのだ。きっと地中とかに潜って。
それにもしかしたら、商人より先に訪れた誰かが脱出させたのかもしれない。いつかこの宇宙のどこかでヤマゴボー星人の末裔に出会えるかもしれない。
そんな風に未来に想いを馳せ、本を閉じたレナータは目を瞑って想う。
「――――農業の本、ありませんでした」
成功
🔵🔵🔴
ニトロ・トリニィ
SPDを選択
へぇ… この世界の過去を知る事が出来るのか…
良いね!楽しそうだ!
うーん、色々面白そうな所があって迷うけど…
… 決めた!遺跡に行こう!
なんかこう… 冒険心がくすぐられるよね!
それに… 僕の失った記憶の手掛かりがあるかもしれないから…
まぁ… 何も思い出さなくても、楽しめればそれで良いかな。
一通り回ったら土産屋にも寄ろうかな!
アドリブ歓迎です!
シン・ドレッドノート
アドリブ連携OK!
【SPD】
遺跡を見学させていただきます。
レプリカとは言え、ここまで再現されていれば十分に見ごたえありますね。
遺跡のあちこちに表示されている案内板の説明を見ながら見学していきます。
戦跡を模した、と言うことで、過去の大規模な戦争の遺構が残されているのでしょうが、人類の戦いの歴史を目にしながら、別世界…サムライの世界で起ころうとしている戦争に思いを馳せます。
「あの世界も、こんな遥か未来になるまで、争いが続くのでしょうか…?」
その中で、一時でも平和な時代を作るために戦うのも、私達の使命なのかもしれませんが。
戦跡の中に残された、小さな平和への祈りの祠の遺跡を見て、想いを新たにします。
●
「こちらは旧バリオン星系第四惑星都市における、帝国宇宙軍第524兵団による降下作戦と解放軍バリオン方面地上軍による壮絶な地上戦、その一番の激戦地となったバリオン政府タワーのレプリカです」
ガイドドロイドの説明を受けながら、半ばから削り取られ圧し折れたようなタワーに入っていくニトロとシン。
人工の青空が遮られ、まるで本当の戦地から運び込んだようにリアルな破壊の痕跡が二人の目に飛び込んで来た。
至るところにブラスターの焦げ跡や実弾の痕跡が刻まれ、ガラスは割れコンクリートは砕け、往時は政府職員が仕事のために使っていたのだろう机や椅子は解放軍の兵士たちによってバリケードと化し、また二人が入ってきた入り口とは別に壁を突き破るようにして帝国軍の戦車が屋内に顔をのぞかせている。
「レプリカとはいえ、ここまで再現されていれば十分に見応えありますね」
ほほう、と感嘆の息を吐くシン。両軍の兵士を模したドロイドが、ハリボテの銃を構えて遮蔽から身を乗り出すたびに設置されたスピーカーから銃声や爆音が鳴り響く。
「うわっ……すごいな。思ってた遺跡とは少し違ったけど、これはこれで面白いね」
ニトロが望むような、冒険心を擽る仕掛けたっぷりで金銀財宝の秘められた遺跡ではないけれど。凄惨な地上戦を今に伝えるこの遺跡は、もしかすると失った記憶に何かの手がかりを与えてくれるのかもしれない。
「まぁ、何も思い出せなくても楽しめればそれでいいかな」
何か収穫があればいいけど、とシンとともにガイドドロイドの後に続くニトロ。
両軍の兵士が激突するエントランスホールを抜け、警戒するような仕草で通路を守る解放軍兵士型ドロイドとすれ違いながら進む先は会議室だ。
「ここが軍総司令部を帝国の電撃的な奇襲攻撃で喪失して以来、バリオン政府側の司令室となった政府タワー第二会議室です。司令官はジョゼアン・マクファティ中将。彼は市民脱出までの二ヶ月半に渡ってタワーに集結した少数の部隊とともに籠城し、バリオン市民の脱出にその身を呈して貢献したと言われています」
ガイドドロイドが開けたドアの向こうには、壮年の男性将校を模した人形が立っている。
会議室は奥まで進めないようロープが張られていたが、その手前に置かれていた案内板にはその将官が自分が助からないと分かってなお留まり直接指揮を取ったこと、おかげで市民が無事に逃げ延びたこと、その後解放軍の応援艦隊が辿り着く前に惑星が破壊されてしまったため彼の最期は全く不明だということが記されていた。
「……これがこの世界の戦いの歴史、ですか」
どの世界、どんな戦争でも信念を胸に戦う人は居るものだ。
けれど、そんな個人個人の信念を容易く踏み潰し、圧し殺してしまうのが戦争なのだ。
もうじきサムライの世界でも、織田信長率いる織田軍と幕府軍の戦いが始まるともいう。オブリビオン織田信長を倒すため、シンたち猟兵も出陣することになるだろう。
きっと勝てる。けれど、此処で勝ったとして、だ。
「あの世界も、こんな遥か未来になるまで争いが続くのでしょうか?」
信長を討ち果たしたとしても、いずれまた新たな戦乱が巻き起こるのだろうか? であれば、戦いを終わらせるための自分たちの役割とはなんだろうか?
「そういうのはさ、僕らじゃなくてその世界の人が考えることじゃないかな」
シンの懸念に、ニトロが応える。
「少なくともこの世界の人は戦争が終わって世界をいい方向に動かそうと頑張ってるじゃないか。僕らはそれを信じて、それを邪魔するオブリビオンをやっつけるのが役目だよ」
記憶が無いが故に、生きてきた世界に、歴史に縛られない彼の結論はシンプルだ。
猟兵である以上、オブリビオンを倒す。それより先は多くの人々の意思を信じて任せることこそ、平和への道に違いない、と。
「そう……そうですね。一時でも平和な時代を作るために戦う、これも私達の使命。ならばまず、この宇宙に蔓延る帝国の残党を倒しましょう」
二度とこのような戦場を作らせないために。二度と自らの命を犠牲に多くを生かすという覚悟を決める必要が無いように。
「次は物販コーナーへご案内します。当館で展示中の各戦跡レプリカ、ここで戦った解放軍部隊の部隊章ワッペンが一番人気、お土産に解放軍標準糧食味のクッキーも……」
順路に沿って、土産屋へと二人を誘導するガイドドロイドに導かれタワーを出た二人は、出口の脇、タワーの陰に隠れるようにひっそりと建てられた戦没者慰霊碑に気づいた。
そこに刻まれた平和への祈り。多くの人々が等しく胸に抱くはずのそれを見上げ、二人は自らの戦いへの想いを新たにするのだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
仇死原・アンナ
まさに宙飛ぶ博物館…
この世界の技術はすごいなぁ…
戦闘前の束の間の休息を楽しまないとね…
普段目にしない儀式を体験する
大昔の人々が行っていた儀式とやらを見て[情報収集]しようかな…
その時代に生きて死んでいった人々がどんな催しを見て
楽しんだりしてたんだろう…気になるね…
…もし…私が生きたという証が残るとしたら
どんな風に記されるのだろう…
処刑人の一族としてかな…それとも猟兵としてかな…
あるいは…生きた証すら記されることなく忘れ去られ…骸の海に流れ着いて…
やめよう…切りがないや…
アドリブ絡みOK
●
「まさに宙飛ぶ博物館……」
一通りの展示物を見て回ったアンナは、広場になっている区画でベンチに腰掛け出撃までの暫しの時間を休息に充てることにした。
それにしても、と見てきた展示物を思い返し、アンナは考える。この世界の技術というものは凄い、と。
収蔵品の傾向は軍事に大きく傾いていたとはいえ、それはこの長きに渡り宇宙規模の戦争を続けてきたこの世界の歴史そのものと言ってもいいだろう。その結晶たる様々な技術は、アンナの生きてきた世界の常識からすれば遥か超未来のもの。
「すごいなぁ……」
ぽつ、と溢れた言葉。単純な称賛か、それともそんなにまで技術を進歩させてまで戦いを捨てられなかった人間への僅かな皮肉を込めた、処刑人としての悲しみの言葉か。
自分でも意識せず発した言葉を、深く追求することはせずアンナはぼんやりと人工の空を見上げて過ごす。
そういえば、この宇宙船の中に広がる空も凄いものだ。吹きつけるやや暑めの、不快というほどではないが心地よい暖かさより少しだけ熱と湿度を含んだ風は、まるで地上の夏風のよう。
照りつける陽光もこの風も、コンピューター制御で生み出された人工のものだというから驚きだ。
さて――このままぼんやりと時間を過ごすのもいいけれど、情報収集も大事な仕事だ。
今回は休息が任務だと言うから、任務を果たすべく休息を有意義に使えるような、好奇心を満たす何かを求めて視線を彷徨わせるアンナ。
そこへ古めかしい軍服の一団がぞろぞろと現れた。どこかで見たような、と記憶を辿ればつい今しがた博物館で見た旧解放軍の軍服のようだ。
すわ彼らまでもオブリビオンと化して蘇ったのか、と微かに身構えるアンナの前で、彼らは肩に担いだ豪奢な装飾を施された小銃をバトンのようにくるくると回しながら、一糸乱れぬ行進を開始する。
「――これはある惑星方面軍に伝わる艦隊出撃前の儀仗兵行進を再現したパレードです。出撃を見送る人々に兵士たちの団結と精強さを示す儀式であったと言われています」
「…………わ。びっくりした」
ベンチに腰掛けるアンナの斜め後方にいつの間にか出現したガイドドロイドが、丁寧な声音で唐突に説明を開始する。
その内容は殆ど聞き流しながら、アンナは思うのだ。
彼らは戦いに勝ったにせよ負けたにせよ、こうして記録が残り、後世の誰かがそれを語り継ぎ、再現してくれた。
それは彼らの生命が、今の世界に受け入れられたということだろう。
でも、それがもし自分だったなら?
「もし……私が生きた証が残るとしたら。どんな風に記されるのだろう……」
処刑人の一族、その一人として仇死原アンナの名が歴史に刻まれるのか。
オブリビオンと戦った猟兵として仇死原アンナの名が記録に刻まれるのか。
それとも。それとも、何者にもなれることなく――
「生きた証すら残せず、忘れ去られて……骸の海に流れ着いて……」
そうなった時、私は私のまま消えていくことが出来るのだろうか。
考えれば考えるだけ、思考が暗く沈みそうになる。そんなアンナを現実に引き戻したのは銃声だ。
「三発の空砲、これはそれぞれ"航海の無事""勝利の栄光""祖国と家族への愛"を示すと言われています。この後は貴方達も実際にキャストの指導の下で三発の空砲を撃ち、無事と栄光と愛を祈念する体験イベントが予定されています。非光学銃の反動や重量が不安な女性やお子様には、音声だけを差し替えたブラスタータイプのレンタルもありますよ」
プログラムされたトークを饒舌に繰り出すドロイドに首を横に振って否を告げて、アンナはベンチから立ち上がる。
「やめよう……切りがないや……」
何者になるのか、時代にどんな風に刻まれるのか。そんなもの、生きているうちから考えたってきりがないのだ。
自分に出来ることをやって生き、その果てに誰かが自分の生に何か意味や理屈を付けて記録を残してくれるかもしれない。
けれど、それを自分で見ることはきっと無いのだから考えるだけ無駄な努力に違いないのだ。
「……ねぇ、イベントより……何か軽く食べられる場所……教えて頂戴」
参加を断られて、こころなしか肩を落として沈黙していたドロイドが水を得た魚のように饒舌に食事処のガイドをするのを、やはり半分ほど聞き流しながらアンナは前へ進むべく足を進めるのだった。
成功
🔵🔵🔴
月宮・ユイ
アドリブ絡み◎
※身に<呪詛>宿す
戦争も終わり、華やかなお祭り騒ぎを出来るようになれど、まだまだ日々平穏とはいかないのですね
この世界で都市内での地上戦とは珍しいのでしょう
要請通り、ここは色々な世界で様々な戦いを経験している猟兵が出るのが良いでしょう
ある意味私達の戦いは、新たな戦史ですか
戦場まではまだ時間もあるようです
今は地上時代の料理を頂いてみましょう
《機能強化》
自身も<料理>をする身としては、宇宙食とは違うこの世界の料理、どんな物なのか気になります
しっかり味わい<情報収集、知識>蓄積していきましょう。
一人でじっくり分析も良いですが、お話しながらも楽しそうです
お手透きの方居たら誘ってみましょうか
●
「戦争も終わり、華やかなお祭り騒ぎが出来るようになれど……」
まだまだ日々は平穏とはいかない。ユイは小さなため息を零す。
猟兵や解放軍が出動する事態は、件数こそ減ったとしても一向にゼロになる気配が無い。
それが口惜しいようで、でも確かに人々は帝国の圧政から解き放たれ、日々を楽しく穏やかに過ごせているのだ。
パレードからの空砲射撃体験イベントに集まる人々を見て、微笑みを浮かべたユイは決意を新たにする。この後待ち構えるのは帝国のエース部隊との地上戦だ。
無重力の戦いならば相応の経験を積んだ解放軍でも、重力下環境での戦闘経験に長けた兵士はまだ少ないだろう。
ここは彼らに代わり猟兵が正面に立つべき時だ。少しだけ格好を付けて言うなら、新たな戦史を紡ぎにゆくのだ。
そう考えると、誇らしいようで自然と背筋が伸び胸を張る姿勢になってゆく。
「と、言ったもののまだ時間もあるようですね。それなら……」
戦史にも興味はあるが、何より興味深いのは地上時代の料理だろう。多くの惑星が交流を持っていた時代、それは様々な食文化が入り交じる黄金時代だった――と、案内板にも書いてある。
今の真空圧縮されていたり瞬間冷凍されているような保存用の宇宙食とは違う、まだ新鮮な食材を新鮮な内に調理出来るのが当たり前だった時代の食事とはどんなものだろうか。
「私自身も料理をする身ですから、しっかり情報収集していきましょう」
美味しければ、帰ってから自作するのもアリだと思う。
材料は……最悪代用品を思いつけるようにしっかりと味わい、素材の性質を歯と舌で覚えなければ。
そうと決まれば即断即決、レストランへと入ったユイは店員代わりのドロイドに促されるように席に着く。
注文候補はなるべく料理名から実物の想像のつかないものから。
想像がつくものは今日敢えて選ばなくても、次の機会で試すことも出来るだろう。
そうしてピックアップした数品の中から、店員ドロイドにそれぞれの内容を確認して口に合いそうなものを厳選して注文する。
待つこと数十分、テーブルに運ばれてきたのは普段この世界で見かける宇宙食とはかけ離れた、これこそ人間文明の食事と言いたくなるような見事な料理だった。
材料は聞いたことのない宇宙生物らしいが、果たして味は――とまずスープに口を付けたユイ。
「……美味しいですね。正直、想像以上です」
今はなき惑星の固有の野菜を使ったポタージュスープだと言うが、まるでフルーツのような優しい甘みの中に濃厚な旨味が包まれている。
これは海鮮のようだが、しかし海鮮特有の独特の臭みはなくて、逆にほのかな土の香りが植物由来だとアピールしていて。
「……この原産地が滅んでしまったというのは残念です。けれどここで提供できているということは、きっと生き残った株がどこかで栽培されているはずですから……」
戦いが終わったら、それを探しにゆくのもいいだろう。
次々と運ばれてくる食事の、その一つ一つに未知の驚きを覚えながらユイはスプーンを進めてゆく。
どうしても口に合うもの合わないものはあったが、そのすべてをきちんと完食したユイは手を合わせ、惑星文明世界の料理人たちの智慧と努力への敬意を、そしてそれを無に帰しかけた星間戦争の原因たる帝国への怒りを再確認するのだった。
成功
🔵🔵🔴
ユーノ・ディエール
SPD
食事は大丈夫です。食べて来たので
アリスラビリンスで手に入れたドレスを着て船内をぶらぶらと
戦争の歴史……私が生まれる前からの戦史もあるのでしょうか
惑星の歴史、戦争の歴史――出来れば戦い以外の歴史も知りたいです
あ、宇宙モンゴリアンデスワームは間に合ってます
合わせて作戦エリアのの都市宇宙船の情報も欲しい所ですね
戦場を把握出来れば、待ち伏せに対するカウンターも狙えますし
っと……またこんな事ばかり。進歩が無いですね、私は
今後の為、料理本を探します
最後にノーザンライトという敵エースの情報を集めます
骸の海から蘇った敵ならば、当時の情報もある筈です
敵の全長、武装、戦術……知っておいて損はないでしょうから
レッグ・ワート
慎重なのはいいこった。さて裏は取れてるって話だったな。斥候方の連中まだプロコピオス-C7内にいる?話せるなら敵や現地図諸々詳細聞けると有難いんだけども。厳しい場合は偵察組が持ち帰れた内容教えて貰えると助かる。勿論、後で纏めて話してくれるならそれでいいぜ。……順当なら大丈夫。ただ上手く行き過ぎてたなら、掴まされた可能性も考えときたいだけだし。
それにしても昔の資料があるもんだな。まあ地上放られて仕事終わったらほぼ回収船一直線してたから、俺もそう知ってる訳じゃないが。撮影いけたら数枚撮って所属の工業船の連中にでも見せるか。……戦史博物船なあ。仮でも此処にただ突っ立つのはまだ遠慮したいね。現役なんで。
●
「裏は取れてるって話だったな。斥候方の連中まだ居るといいんだが」
「そうですね、作戦エリアの都市宇宙船の情報、少しでも欲しいところですし」
一機のウォーマシンと一人の女が水平型エスカレーターに並び立ち、プロコピオスの通路を進んでゆく。向かう先はまず港湾ブロックだ。博物区画で遊ぶのはその後、まずは仕事の話だと考えるのは生真面目な二人だからか。
幾度かの乗り換えを経て、無重力区画に入ると今度はベルトコンベア式に回転する手すりを掴み、ふわふわと進むことしばらく。
件の都市宇宙船に先行偵察を行い、敵の存在を確認したのち帰還したという解放軍艦が係留されているドックへと、二人は辿り着く。
「そういやそのドレスどうしたんだ?」
ウォーマシン――レグは、ふと同じことを思い立って同道することになった相方――ユーノの服装がいつもと違うことに気づいた。
尤も感想は綺麗だとか可愛いだとか、そういう一般的な褒め言葉ではなく"動きにくそうなその格好で戦闘大丈夫なん?"という色気の欠片もないものだが、それを本人に面と向かって言わないだけの分別はある。かといってお世辞を言う気もないが。
そんなレグの問いにユーノは気づきましたか、と自慢げに。
「先日アリスラビリンスに行く機会があったのでそのときにちょっと。この後は自由時間もあるということですし、そういうときくらいは」
なるほどね、と頷くレグ。そうこうするうちに手すりの終端に到着し、そのまま無重力を漂うように停泊中の軍艦に飛び移った二人を、その船体表面の物陰から飛び出した鎧装機兵たちが取り囲んだ。
「――此処は解放軍が借り受けている区画だ。民間人は引き返すように」
隊長格らしい一騎が二人を制止するように前に出て言えば、レグとユーノはそれに否で応える。
「おいおい、俺達は猟兵だ。あんたらが見てきた情報を聞きに来たんだが」
「ええ、エース級が居るというなら万全の状態で望みたいですからね。情報共有させていただけませんか?」
二人の提案に隊長格は悩むような素振りを見せながら何処かへと通信を送り、それから付いてくるようにと小さく手招くのだった。
「んじゃ単刀直入に聞くな。敵と現地の地形情報、分かる範囲で教えてくれ」
「……それと、ノーザンライトについて。後で資料も当たるつもりですが、見たならば生の証言も聞いておきたいですから」
ユーノの補足にじゃあそれも、と付け足すレグへと、船外戦闘用の気密型ヘルメットを脱いだ隊長は重々しく唇を開く。
「偵察の結果敵の存在を確認した、とはいえ我々は強行偵察部隊ではないんだ。接敵して早々に後退、脱出した以上知り得た情報はそう多くない」
慎重なのはいいこった、とレグはその発言に落胆することなく頷く。
無理押しの強行偵察で部隊が壊滅すれば、情報は一欠片とて得られなかっただろう。退くことが出来る指揮官というのは偵察部隊には重要だ。これが経験を積めば、ギリギリ帰還できるか出来ないかの境界を見極め最大限の情報を持ち帰れるようになるのだが、軍としての体裁を取り戻してまだ半年ほどしか経っていない解放軍にそのレベルのベテランを求めるのは酷だろう。
「オケ、それでいい。ん? ああ、飯時だったのか。悪ィね、食いながらでもいいよ」
ユーノにもいいよな、と視線で確認する。得られた情報が少ないという前置きと、任務を終え空腹で帰投した彼らが食事しながら情報共有に臨むことの両方にだ。
「ええ、構いません。ああ、私はお構いなく。ここに来る前に食べてきたので。……いえ、本当に大丈夫です。宇宙モンゴリアンデスワームは間に合ってます」
なんでこんなところでまであの謎生物に関わらねばならないのだろう。
もし良かったら食べますか、と完全な善意で食料を――もとい、レーションにもう一品で追加された干し宇宙モンゴリアンデスワームの輪切りを分けようとしてくれた兵士たちに断って、ユーノは思う。
もしかすると兵士の好む嗜好品になりうるような美味だったり、完全栄養食品だったりするのだろうか。もしそうだとしても生きている姿を見たことがある以上食べたいとは思わない。
「それでは突入後の機動ログと撮影映像を同期させて表示する。不明点があれば都度確認してくれ、撮影者に聞こう」
――そうして始まった、廃都市宇宙船への突入の再現映像。
偵察部隊はドックから侵入し、市内に進出したらしい。宇宙船内の環境は標準大気組成の空気で満たされ、気温は20から30度の人類生存可能レベルで安定。重力強度は0.6G、やや低め。人工太陽は破損しており、常時夜という状態ではあるがコアマシンは稼働していると見て間違いないだろう。また市内は風化しつつあるものの、ある程度の高低差のあるビル街が広がっているらしい。
往時のような頑丈さは望めないが、視界を遮る遮蔽に使ったり歩兵レベルの戦力を伏せるには最適だろう。
セオリー通り小隊単位で散開し市内に降下した偵察部隊は、各個に偵察を開始。ところがある程度進んだところで敵の歩行戦車部隊と遭遇し、牽制程度の小規模な戦闘の後すぐさま撤退したのだという。
「順当なとこかね。少し引き際が潔すぎる気もするんだが」
「いえ、彼らの装備で戦車戦は厳しいでしょう。損害を最小限に抑えるならこのくらいじゃないですか? ところで、ノーザンライトの姿は見えませんでしたね」
そういやそうだな、とユーノの指摘に首を傾げるレグ。
「ああ、それなら……未帰還のドローンが最後に送ってきた画像なんだが」
どうやら負傷者は居ないが装備の損耗はあったらしい。そのドローンが撮影したという画像には、対艦用のビームランチャーを脇に抱え撮影中のドローンを狙う巨大な白い人型機動兵器が映し出されていた。
「――コイツが敵の罠で敢えて情報掴まされた、ってこた無さそうだったな」
偵察部隊と別れ、博物区画を見て回りながらレグは通信でユーノにそう意見を述べる。
誘い込むにしては出てきた戦車の数が多すぎるし、拠点に近付く解放軍を追い払うのならノーザンライトが出て偵察部隊は二、三騎残しでもっと徹底的に叩きつけるべきだった。ということはこれは敵にとっても予定外の遭遇戦だった、ということだろう。
「同感です。そしてこれが不意の遭遇戦だったなら、敵は解放軍が増援を呼んだとみて防衛線を増強している可能性もありますよね。地形と合わせてその陣容がある程度分かればいいんですが」
敵が何処に伏せているか分かれば、カウンターでそれを先制攻撃することもできるだろう。
何よりノーザンライトだ。レグとは別に図書館に入ったユーノは、引っ張ってきた資料を数点スクリーンショットしてレグに共有する。
「青い稲妻同様、遭遇して生還した兵が少ないせいで諸説あるタイプのエースみたいですが、さっきの画像から推測するに――」
全高は10メートル前後。武装は二丁の大型ビームランチャーとみて間違いない。
対艦級の火器兵装を用いた高機動戦闘が得手……狭い艦内では本気が出せないタイプと見るか、それともあの都市艦ごと容赦なく焼き払ってくるタイプと見るか。
「なる。そりゃ厄介そうだ。一応その情報、他の猟兵にも共有しとこうぜ」
その提案に頷き、ユーノはデータを送りながら当時のノーザンライトの記録を閉じてため息を吐く。
「……気づけばまたこんなことばかり。進歩がないですね、私は」
いつもいつも、戦術、戦闘、こればかり。世界はこれからどんどん平和になっていくのに、という焦燥にため息の一つも溢れよう。
探してきた料理本――惑星時代の地上戦において、戦地で手に入る食材で作る簡単なレシピ集、こんなものしか無かった――を手にとって、ユーノは今後の自分の身の振り方を考えるのだった。
一方のレグは。
「思ったよりあるもんだな、昔の資料。まあ俺も地上放られて仕事終わったら回収船一直線だったから地上戦をそう知ってるわけじゃないが」
ジオラマ形式で展示されている各惑星の地上戦の様相。
ガイドドロイドに撮影許可を取り、所属する船の面々への土産代わりに写真を記録しながらレグは感心するのだった。
何しろ自分と同じWR-T型のジオラマまである。細部が違うのは、生産時期や製造工廠が違うからか、単に記録の不明瞭な部分は想像で作られたのか。
「これが正しいワートです、なんてな。冗談でも此処にただ突っ立つだけなんてのは遠慮したいね、まだ現役なんで」
その呟きに、背後に佇むガイドドロイドが小さく肩を竦める用な待機モーションを見せたのは、果たして偶然だろうか。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
フィーナ・ステラガーデン
【PPP開発室にて参加】
ぷしゅー!お腹いっぱいだわ!案外宇宙食にも慣れたものね!
ってわけでここからは冒険の時間よ!
遺跡とかを見にいくわ!
ふーん。ぶっちゃけ眠いわね!!歴史の勉強とか面白くないわ!
何かこう宝箱とか無いのかしら?
遺跡だし、いにしえの牛乳とかそういったものが入ってるものがいいわね!
儀式の方はどうかしら?黒幕とかいるんじゃないかしら!
(どこからかフォンフォンという音を聞き、肩をビクッとさせ)
何かあったことを忘れている気がするわ!?
何の音だったかしら
でも嫌なことだったことは確かね!
その不安な音をやめるのよ!(杖をぶんぶん振り威嚇。そして何かしら不幸な目にあう)
(アレンジアドリブ大歓迎!)
ビードット・ワイワイ
【PPP開発室】
アドリブアレンジ歓迎
古の儀式とは如何なるものなのか
隣人殿に尋ねたいところであるが生憎と
彼の者達は別世界での従事で直ぐには来れぬ
彼の者への改造がなされていることであろう
して、どのようなもので?異星間交流はあったであろうが
その中にこのような見た目の者はおりけりか?おらぬ?
なるほど処理済であったか。よしよしよし、これは良いことである
ところでこれを見てもらえぬか?321、記憶消去
フォンフォンフォンフォンフォン
フォンフォンフォンフォンフォン
フォンフォンフォンフォンフォン
フォンフォンフォンフォンフォン
フォンフォンフォンフォンフォン
フォンフォンフォンフォンフォン
フォンフォンフォンフォンフォン
イデアール・モラクス
【PPP開発室にて参加】
帝国の残党はまだしぶとく生き残っているのか、なかなか遊び甲斐があるじゃないか!
まぁ、まずは会敵までゆっくり過ごさせてもらおうか。
・行動
私はやはりメシだ、過去のレシピを再現するレストランで食う!
「さぁ見せて貰おうか、過去に消えし在りし日の美食とやらを!」
食事はレストランに任せ、給仕はUC【使用人召喚】にて呼び出したメイド達にさせるという完璧な布陣で食を楽しもう。
「クク…何が出てくるのやら」
私は雑食だ、極論すれば生き血を啜り生きた肉も食うレベルなので何が来ようと平らげてしまう。
「うむ、美味い…魔力も満ちて帝国残党を薙ぎ倒す力も湧いてきた、アーハッハッハ!」
※アドリブ歓迎
●
「メシだ!!」
「メシね!!」
何処からともなく取り出したMyナイフとMyフォークを握りしめ、その尻でテーブルをコンコンコンコンコココココココココと打ち鳴らす二匹の飢えた獣。いや鳴らしてるのは小さい方だけだが。
片や暴虐の魔女イデアール。
片や爆炎の魔女フィーナ。
二人は今、ハラペコだった。件の廃棄都市船への接舷までまだ時間がある。そして此処にはこの宇宙世界で過去に消え去った料理を味わうことのできる機会がある。
そこまで条件が揃っていれば、二人の思考はピタリと一致するのだ。
すなわち空腹は最高のスパイスである。だから腹を極限まで空かせて食卓に着くのだ――と。
「でもいい加減待てないわ!! まだなのかしらね!!」
「思いの外客が多いようだな!! これは厨房はともかくホールが回っていないと見たぞ!!」
コココココココココン。
回りのお客が何だこいつらと若干迷惑そうに見てくるのを飢えた獣二匹は睨み返して黙らせながら、さてどうしたものかと思案する。
「回りの客をふっとばして減らせば回転率上がるかしら!」
「間違いなく後片付けで効率が下がるからそれはやめておけ。まぁ此処は私に任せるがいい」
剣呑な結論を秒で叩き出すフィーナをなだめるイデアール。彼女が指をぱちんと打ち鳴らせば、
「お呼びでしょうかご主人さま」
虚空から出現したかのように彼女の背後にずらりと並ぶメイドさん。
「うむ、お前たち少しこの店の手伝いをしろ。このままだとフィーナが空腹の余り暴れだしてしまうからな」
かしこまりました、と完璧な礼とともに散開するメイドさん。
するとなんということか。ウェイタードロイド不足で滞りがちだった食後のテーブルの片付けや給仕、会計の処理が目に見えて高速化するではないか。
「クク……やはり私のメイドはいつ見ても愛らしいし有能だな。さて、そろそろ我らの料理も来るだろうが……さて何がでてくるのやら」
「何でもいいわ! あっでも肉よ!! 肉が食べたいわね!!」
じゅるとよだれを啜るフィーナ。
「ああ、良いな。ここでしか食えないという希少価値も加味すれば、極論生き血滴る生きた肉でも構わん」
そんな二人の前に、メイドさんがお皿を置く。眩い銀のクロッシュで蓋をされたそれは果たして――
クロッシュが持ち上げられると、その僅かな隙間からピギャーって聞こえた。
フィーナ、秒でメイドさんの手を押さえて蓋を閉める。
「これはきっとオーダーミスよ! 次を持ってきて頂戴!」
「なぜだフィーナ! ここでしか食べられない物ならたとえどんなものが来ようと喰うと約束しただろう!!」
何処ででも喰えるやつよあれ!! とフィーナの叫びが木霊する。何か彼女のトラウマを刺激するものだったらしい。
改めて持ってこられた料理は、今度こそクロッシュを持ち上げても鳴いたりビチビチしたりしないようだ。
ほっと安堵したフィーナ。期待に目を輝かせるイデアール。
「こちらアンドロメダオオツチノコの刺し身でございます」
「こんなのばっかりなの!?」
「――いや美味かったな。魔力も満ちて帝国残党を薙ぎ倒す力も湧いてきた! ビードットのやつ、来れなかったのが残念でならんよアーッハッハッハッハ!」
軽く膨れた腹をぽんぽんと撫で擦りながら満足気にレストランを後にするイデアール。
「……美味しかったのが納得行かないわ……でもお腹いっぱいになっちゃったし。案外食べてみれば宇宙食にも慣れたものね。――さ、イデアール! 此処からは冒険の時間よ! 遺跡行きましょ!」
気分転換に遺跡に誘うフィーナ。とはいえ残念、彼女の期待するようなスペクタクルでアクションな遺跡は無いのだ。
「こちらはココリノン星系の防衛に貢献した解放軍第9281戦術飛行隊の基地を――」
建物の説明をするガイドドロイドの前で大あくびするフィーナ。イデアールも話半分に、他の団体観光客に混じった若い女の尻を視線で追い回している。
「ぶっちゃけ眠いわね。歴史の勉強とか面白くないわ!」
「まぁな。これで隊員が全員うら若い美女だったとか言うならやる気も出るものだが」
こころなしかガイドドロイドの視線が何しに来たんだコイツらと言いたげな気配を帯びている。
自我のないドロイドであるはずの彼をこうも情緒豊かなように見せるほどの見学態度とは一体。
「ていうか遺跡なのよね? 宝箱のひとつもないの?」
ここの遺跡ってそういうのじゃないって。戦跡だってば。
そんな制止も素知らぬ顔でゴソゴソと辺りを物色するフィーナ。
「なんかこう遺跡なんだからいにしえの牛乳とかそういうのが出てもいいじゃない」
「まあ、遺跡もレプリカらしいからそういう物が出ることは無さそうだがな。探す分には好きにすれば良いんじゃないか?」
まるで放任主義の母親(34)と落ち着きのない幼い娘(20)である。
そうしてゴソゴソと瓦礫をひっくり返したり物陰を覗き込んでいたフィーナが、突如大声をあげた。
「――で、出たわイデアール!!」
「な、なんだと!?」「そんな筈はありません!!」
ガイドドロイド君まで驚いた。だって軍事基地のレプリカ遺跡ですよ。ガイド君が把握していない宝物なんてあるはずが。
「いにしえの山羊乳……!」
それはスペースミルクヤギの100%生乳。レストランで販売されている、これも失われた食文化の復刻アイテムだ。
だが、そのいにしえっぷりは尋常ではない。だって賞味期限が8年も前に。
「捨てろ! 今すぐに!」
「ゴミ箱はあちらに20メートル、右手にございます!」
フィーナが蓋を開けようとした瞬間、凄まじい怖気を感じたイデアールとガイドドロイド君がそれを処分するように促す。
それをフィーナはせっかく見つけたのに、だとか文句を言いながら捨てにゆき――
フォンフォンフォンフォンフォンフォンフォンフォン
フォンフォンフォンフォンフォンフォンフォンフォン
フォンフォンフォンフォンフォンフォンフォンフォン
耳に届く異音。フィーナの肩がビクリと跳ね、思わずいにしえの山羊乳を取り落とす。
「な、何かを忘れている気がするわね……これ何の音だったかしら。でも思い出したくない嫌な記憶だったのは確かな気がするし……」
止まない音。高まる不安。奇妙な不快感とめまいがフィーナを襲う。
「誰だか知らないけどその不安な音をやめるのよ!」
杖を振り回し威嚇してみれば、音は徐々に静かになってゆく。そうしてフィーナは気づくのだ。
さっき落としたいにしえの山羊乳が落下の表紙に開栓され、靴にべったりとチーズなんだか乳なんだかよくわからない白く濁ったものの浮く黄色く透き通った汁がぶちまけられていることに。
「あああああああああーっ!?!?」
「む、聞いたような悲鳴であるな」
航空基地の遺跡レプリカの外れ、土を均して滑走路を敷いたエリア。
見るべき建物もなく、当時の航空機の模型もアスファルトで舗装されたほうの滑走路にある以上、ただ再現のために用意されただけのそこに、ビードットは一人佇んでいた。
いや、正確には一人ではない。何故か持ち場を離れ、連れてこられたガイドドロイドが一体。
「では質問に戻ろう。彼らと交信する古の儀式とは如何なるものか。貴様の知りうるすべてを白状するがよい」
ビードットの問いに、ガイドドロイドはぶつぶつと呪文のようなフレーズを再現しながら両手を挙げては降ろす動作を繰り返す。
「ふむ、古代の人々はそのようにして彼らを呼びけりか。して? その後はどのようなもので? 異星間交流はあったであろうが、その中にこのような見た目のものはおりけりか?」
ビードットがそう言うと、つい今しがたフォンフォン言いながら出現し着陸した円盤の中から灰色の肌に大きな頭をした細身の人々が出現する。
「そうかこのような者たちは記録におらぬか。なるほど既に処理済みであったか、よしよしよし、これは良いことである」
過去の技術史、軍事史を集めたこの船にも記録が無いということは、彼らの痕跡はバッチリ消去されていたということだ。彼らは無事隠匿されている。……ならばよし。
「質問は以上である。持ち場に戻って構わぬ。が、そのまえに。ところでこれを見てもらえぬか?」
ペン――ビードットの手のサイズ的にペンと言うより小ぶりな蛍光灯みたいになってしまっているそれをガイドドロイドに見せ、ビードット自身は光学センサを一時的にシャットダウンする。
「3、2、1、記憶消去」
それはパシャっと光ったら記憶が消えるやつ。パシャっと光ったら記憶が消えるやつだ。宇宙人との接近遭遇においてお約束と化した、パシャっと光ったら記憶が消えるやつの一撃を受け、ガイドドロイドはここ数十分の記録を失ってしまう。
そこ、ドロイド相手ならハックすりゃいいじゃんとか言わない。お約束なんだから。
「これでよし。然らば我も皆に合流して出撃に備えけり。仕事のサボりも程々にするがよかろう」
記録を失い混乱するドロイドに、サボりだと言うことで偽記憶を与えながらビードットは円盤とともに飛び立っていく。
結局円盤見られてるじゃないですか、とかそういうのも言ってはいけない。お約束なのだから。
フォンフォンフォンフォンフォンフォンフォンフォンフォン
フォンフォンフォンフォンフォンフォンフォンフォン
フォンフォンフォンフォンフォンフォンフォン
プロコピオスの偽の空に、その日あるはずのない流星が流れたという。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
ティオレンシア・シーディア
※アドリブ掛け合い絡み大歓迎
けっこうあっちこっちで残党討伐してるはずなのに、まだいるのねぇ。
さすが一度は文字通り世界一つを丸ごと支配してた連中、って言うべきなのかしらねぇ。
歴史かぁ…
そういえばあたし、初代の解放軍についてはあんまり知らないわねぇ。
その辺も絡めて、ちょっと遺跡に興味あるわねぇ。
他の世界はまだ本格的に宇宙まで進出してないし、消滅する直前ってどんな感じだったのかしらぁ?アース世界よりは進歩してるんでしょうけど…
戦役で散逸しちゃった資料とか美術品も多いんでしょうねえ…
●
「結構あっちこっちで残党討伐してるはずなのにまだ居るのねぇ」
これだけ解放軍も猟兵も発見次第の残党狩りを基本戦略として打ち出しているにも関わらず、尽きる気配なく発見の報せが相次ぐ銀河帝国軍残党。
その規模たるや、惑星世界出身者の考えうる軍の規模――数千や数千万では尽きぬのだろう。
「さすがは一度文字通り世界一つをまるごと支配してた連中、って言うべきなのかしらねぇ」
初代解放軍が決起し、帝国の支配を打ち破るまで。あるいはミディア・スターゲイザーのもと、ワープドライブを獲得した人々が解放軍の旗のもと解放戦争を挑むまで。銀河帝国は文字通りこの宇宙すべてを支配する強者であった。
皇帝リスアット・スターゲイザーのもと、強力なサイキックエナジーと剣術を扱う騎士たちや、機械化技術で強化された兵士たち、そして高度な自動機械兵。さらには解放軍の兵器を寄せ付けないほど強大な艦艇や宇宙要塞などを保有し銀河に覇権を唱えた銀河帝国。
それを打破した初代解放軍とはいったいどれほどの英雄たちが集っていたのだろう。
「そういえばあたし、その頃の解放軍についてはあんまり知らないわねぇ……その辺も含めて遺跡見てみようかしら」
思えば、猟兵達が行き来できる世界の中で本格的に宇宙に進出しているのはここくらいなものだ。UDCアースやヒーローズアース、あるいはキマイラフューチャーも多少の宇宙技術を有しているようだが、それも母星周辺を周回できる程度。この世界ほど自由に星間航行を行い、あるいは無補給のまま艦内の供給のみである程度自活できる移民船団を持つ世界など、今知られている限りでは存在しない。
ここまでの技術を究めた彼らが、栄華の絶頂にあった時代。戦争による衰退を経験する直前の世界とは、どんなものだったのか。
「ようこそ、バリオン政府タワー遺跡へ。当遺跡は記録をもとに可能な限り精密に再現されたレプリカとなっています。観覧は無料、ガイドは必要ですか?」
ひとまず目立つ塔の残骸のような遺跡を訪れたティオレンシア。
入り口で建物の説明とガイドの有無を問うドロイドに、せっかくだからお願いしようかしらとガイドを依頼して塔の中へ進む。
「ところでドロイドさん。ここってこういう風に荒れる前はどんな建物だったのかしらぁ?」
エントランスホールへ進み、ドロイドに質問を投げかければ、彼女を先導するドロイドは振り返って応えた。
「バリオン政府タワーは地上228階建て、軌道エレベーター基部の役割を果たす星系自治政府の庁舎でした。職員は――」
軌道エレベーターと来た。そんな施設が庁舎と合体して当たり前のように設置されていたというのだから、やはり技術の進歩具合は各アース世界の数世代上を行っていたのだろうか。
「へぇ。そういうタワーってどこの星にもあったのかしらぁ?」
「はい、いえ、どこの星にもはありませんでした。特に発展した惑星に見られる特徴的な建造物と言ってもよいでしょう」
明快に受け答えするドロイドにふんふんと頷きながらティオレンシアはさらに質問を重ねていく。
初代解放軍の戦いについて。彼らは何のために、どこで、どんな戦いをしたのか。
そのドロイドが語る、この船の歴史家達が見出した解放軍の姿は、まさに英雄の集う正義の軍隊だった。
「全部が嘘、とは言わないけれど少しだけ胡散臭いわねぇ……」
あまりに綺麗過ぎる、と穿ってしまうのは職業病だろうか。
「それにしても残念だわぁ。戦役で散逸しちゃった資料も多いんでしょうねえ……」
それだけではなく、数代進んだ未来的な美的感覚で造られた美術品のようなものも多くが失われたに違いない。
それをこの目で見られなかったのが残念、と首を振って、ティオレンシアは遺跡を後にするのだった。
成功
🔵🔵🔴
アシェラ・ヘリオース
懐かしいな。
往時の風景を思い出し、感傷を得てふと呟く。
思えば遠い所に来たものだ。
遠い過去に過ぎ去った風景だが、過去を思い出すにはちょうど良い。
その地上文明を消し去る側だったのが因果な話ではあるが。
UDCアースで見た“盆踊り”と言う儀式にも似た、広場の中心の灯りを回って踊るイベントに浴衣姿で参加する。
「"ノーザンライト"は手ごわい。死闘になるから、今のうちに羽を伸ばしておけ」
部下達に小銭を渡し“エンニチ”の屋台で買い食いを許可する。
アホ共はすぐに使い果たすだろうが、まぁ良いだろう。
供養も意味する儀式に【礼儀作法】を尽くし、かっての罪と仲間達を悼む。
行いに悔いは無いが、何事にも区切りはいるのだ。
チトセ・シロガネ
【POW】
『こ、これはッ!戦争で失われたワインの一つ、銀河の一雫じゃナイ!』
パンフレットを順々見て古風なボトルの画像に目が留まるネ。
―銀河の一雫
芳醇な香りを持つ赤色巨峰を使ったワイン。
現在は赤色巨峰自体が戦火に巻き込まれてしまい、
その存在は幻と噂されていた。
(というチトセの知識)
そんな幻のワイン故に
『ワンダフル……』『こんなところで出会えるなんて……数奇なデスティニーヨ』
とワインを手に持ったフランス人のごとく変なテンションとなって
レストランの窓際でグラスに注がれた赤色をうっとり見つめてそれを堪能するヨ。
周りからは変なやつと思われそうだけどそこは気にしないネ!
●
すっかりと陽も落ちた――正確にはそう設定された時刻を迎え、人工の空が消灯され外に広がる宇宙空間が映写された――頃、広場では新たなイベントの準備が整いつつあった。
文明レベルは極めて原始的ながら、あふれる義心で解放軍の戦線に加わり、そして地上での対帝国ゲリラ戦術で活躍したという伝説の種族の伝統的儀式を真似たイベントだ。
広場の中央に設置された物見櫓には、敵の襲来を伝え戦士を鼓舞するための太鼓が据え付けられる。
辺りには野営地を模した簡易なテントが置かれ、そこには商魂たくましい従軍商人に扮したガイドドロイドや職員たちが入り、様々な軽食やちょっとしたお守りを売っていた。
「今にして思えば、UDCアースの"盆踊り"に似ているな」
あるいはかの種族にこの儀式を教えたのが、UDCアースやサムライエンパイアのような世界から神隠しでたどり着いた異世界人だったのかもしれない。
何はともあれ、地上世界を模した遺跡が点在する中で始まったイベントはアシェラの胸に懐かしさを芽生えさせた。
遠い、遠い過去。同じ文化を伝える宇宙船に行ったことがある。あのときも今日のように少し暑い温度設定の日で――
「思えば遠いところに来たものだな。この風景は、過去を思い出すには丁度いい。あの時はこんな文明を消し去る側だったというのが因果だがな」
ふ、と自嘲気味に笑う彼女。その装いは、かの種族の民族衣装――アースで言うところの浴衣に似た装束だった。
黒い薄手の生地に、白い花が咲く。色味の都合少し暑苦しいデザインではあるが、やはり着慣れた黒を無意識に選んでしまったのだ。
黒にもすっかり慣れてしまったものだと小さく苦笑して、アシェラは部下の黒騎士AIたちを呼び出した。
「ほら、小遣いだ。儀式が終わるまでの間貴様らに自由行動を許可する。買い食いでもして羽を伸ばしておけ」
その発言に歓声を上げて飛び跳ねる小さな黒騎士たちだが、続くアシェラの言葉に歓声はブーイングへと変わってしまう。
「これから戦う"ノーザンライト"は手強い。間違いなく死闘になるだろうからな。今の内に悔いを残さないよう遊ぶんだな」
敵の通り名を聞いて悲鳴めいた文句を口々に吐き出しながらも、小遣いはしっかり握りしめて思い思いの屋台に向かう黒騎士たち。
熱々のいちごスパモン焼きをやけどしながら頬張るもの。
ミニ宙海月すくいで小遣いを全額スるもの。
射的でアシェラも知らなかった驚異的な才能を発揮しながらも、景品が実は固定されていることに気づかず臍を噛むもの。
皆が思い思いに楽しんでいるのを穏やかに見守る彼女を、太鼓の音色が呼び戻した。
勇敢に戦った死者を讃え、死すべきでなかった勇士を悼む踊りが始まった。
アシェラもかつて共に肩を並べ、今や敵となった帝国の同胞たちや、彼らと共に在った時我が手で葬った解放軍の人々への罪を供養するように踊る。
「私がやったことに悔いは無いさ」
けれど、区切りは要るものだ。
そんな踊りを眺めながら、屋台の一つに用意されたテラス席、というと聞こえは良いが実質ベンチとテーブルを屋台の前に雑に並べただけの席に腰掛けてチトセはメニューを手にとった。
ここは食事を供するところではない。酒を飲む屋台だ。
屋台の中ではワインセラーやクーラーボックス、氷を張ったタライなどで各種酒が飲み頃に冷やされているという。
さて何を飲もうか――とメニューを楽しげに踊るチトセの視線。
それがある一点で止まり、二度見三度見してから驚愕に見開かれる。
そこにはよほど推しなのか、他の酒と違いボトルの画像データが添付されたあるワインが。
「こ、これはッ……!」
ただ事では無さそうなチトセの様子に、それは一体……?! と、アルコール初心者の若い青年がゴクリと生唾を飲む。
「戦争で失われたワインの一つ、銀河の一雫じゃナイ!!!!」
銀河の一雫。耳慣れない銘柄に、初心者青年に加えてほろ酔いのおじさんも身を乗り出してチトセの話に聞き入り始める。
「銀河の一雫――」
それは芳醇な香りを持つ赤色巨峰を用いたワインだ。
真っ赤に膨れ上がり、別の果実のように丸々と熟した赤色巨峰は栽培が難しく、収穫のタイミングはわずか一日から長くとも三日未満と言われている。
このタイミングを逃すと種がまたたく間に成長してしまい、非常に固く渋みの強い種へと栄養が吸われることで果肉の味も落ちてしまうのだ。
さらに赤色巨峰は一定の環境でしか果実を実らせないのだが、その環境を有していた惑星は既に戦火に巻き込まれこの宇宙に存在しない。
今となってはかの星の何が赤色巨峰にとって好ましかったのか、どう研究を重ねどう環境を再現しても生き残りの赤色巨峰は果実を実らせないという。
そんな栽培困難な赤色巨峰のみをふんだんに用いた幻のワイン、それが銀河の一雫。
チトセですら実物を見るのは初めてというレア中のレア。それがまさかこんな船のこんな屋台にあったなんて。
いや、もうチトセに見えている光景は屋台ではない。リゾート船のホテル最上階、落ち着きのある優雅なレストランの一角だ。
聞こえてくる笛太鼓の音色はピアノの旋律に。明滅しながら屋台を繋ぐチョウチン・ランタンは幾億の輝かしい夜景に見える。
「ワンダフル……」
迷うことなく銀河の一雫をボトルごと注文したチトセは、グラスにとぽとぽと注がれる真紅の液体の美しさに思わず色っぽく吐息を吐き出しうっとりとそれを見つめてしまう。
「こんなところで出会えるなんて……数奇なデスティニーヨ」
軽く揺らせば、芳醇な香りとともにグラスの中を踊る銀河の一雫。
ああ、本当にこれを飲んでも良いのだろうか。飲みたい、けれど飲めば貴重なワインが減ってしまう。でも飲みたい。開けちゃったんだしもうこれは飲むための酒でいいじゃナイ。いや違うヨ、これはもはや芸術品、コレクションとして大事に取っておくべきだヨ。
チトセの中で小さなチトセたちがせめぎ合うような、そんな踏ん切りのつかない状態で目と鼻と脳だけは満場一致でグラスを揺らし香りを楽しむことを承認しているおかげで、ひたすら香りだけを楽しみながら固まっているように見えるチトセ。いくらなんでも不気味過ぎて、初心者青年もほろ酔いおじさんもそれまでの興味津々の態度は何処へ行ったのか視線を逸して安酒に意識を向け、努めて彼女を見ないようにしはじめる。
そうして不気味がられるほどに銀河の一雫を愛でに愛でた彼女が、結局どのタイミングで何杯飲んだのか。それは彼女のみぞ知る物語である。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
第2章 集団戦
『小型歩行戦車』
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POW : インペリアルキャノン
【機体上部に装備されたビームキャノン】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD : タンクデサント
【完全武装した銀河帝国歩兵部隊】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
WIZ : サイキックナパーム
【機体後部から投射する特殊焼夷弾】が命中した対象を燃やす。放たれた【搭乗者の念動力で操作できる】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
イラスト:あなQ
👑7
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
プロコピオス-C7が停船する。
そのアナウンスに、猟兵達はついに戦いの時が来たと身構えた。
博物船の運営委員から命令を受けたガイドドロイドたちに導かれ、ドックに集結する猟兵。その向こう、出撃準備を整える最中の解放軍揚陸船の向こうに開いた宇宙への扉の先に、死に絶えたように沈黙して漂流する巨大な都市宇宙船が見える。
大昔の大戦で実際に凄惨な地上戦が繰り広げられた戦跡。プロコピオス内に再現されたレプリカであるそれらと異なって、そこは確かに敵味方の大勢の人々が生き、そして死んだ土地なのだ。
そう思うと、なにか得体のしれない不気味さ――他の世界で言うところの心霊スポットのような、奇妙な違和感を感じずにはいられない。
ともかく、猟兵達は出撃可能になった揚陸船に次々と乗り込み、武装を整えた解放軍の偵察隊とともに都市宇宙船へと侵入してゆく。
●
偵察隊が先の侵入の際に構築していたルートは、彼らが撃退されても塞がれたり罠を張られることもなくそのまま残されていた。
開け放たれたゲートを潜り、ドック区画を抜けて市内へ向かう面々。罠を張る余裕もないほど困窮している部隊なのか、あるいは罠を張る必要もないと慢心できるほど装備や練度に自信があるのか。――あるいは、この道が無防備に残されていること自体が敵の罠なのか。
死に絶えた船の、黴臭く埃っぽい空気感。宇宙服によって完全に遮断されているはずのそれを感じながら、猟兵と偵察隊は市内に続く最後のゲートを潜り抜けた。
火砲の直撃を受けたのか、半ばから圧し折れ隣の建物の頭上にその上半身を横たえる高層ビル。
多くの車が乗り捨てられたまま錆びつき風化した骸を晒す幹線道路は爆発で刳れ、街路樹が立ち並んでいたであろう植え込みは腐った土だけが残っている。
かつて市民の生活を支えたであろうモノレールの車両は、掃射を受けたように側面に無数の穴を空けて二度と動かない。
そして、街の至るところに見られる積み上げられた土嚢やバリケード、銃座の痕跡。
さらには民間の車列を守るように陣形を組んだまま正面装甲に大穴を空け、砲塔が吹き飛んだ解放軍の旧式戦車や、ビルに突き刺さり燃え尽きたヘリの残骸。
それらは見るものに、戦いの激しさを想起させるに十分だった。だが猟兵達の目を惹きつけたのは、そんな軍隊同士の激突の痕跡ではなかった。
至るところに残された、黒く風化した染み。これはかつて、赤だったのではないだろうか。そしてこれほどあちらこちらにぶちまけられたその染みは、きっと帝国軍、解放軍両軍の兵士たちの数の数倍以上の――
「――敵襲! 散開、散開! 戦車機甲部隊複数、総数不明!」
そんな思考を中断するように解放軍兵士の怒号が飛ぶ。
ビームキャノンの一斉射を合図に朽ちた壁を突き破り、あるいは錆びついた乗用車を踏み潰して姿を現すのは帝国軍小型歩行戦車の群れだ。
さらには、無音だった都市宇宙船内部にはいつの間にか、無数の足音が侵入者を取り囲むように鳴り響いている。
「こちらは万一に備え、側面から進出する敵を牽制しつつ後方の伏兵を掃討し脱出ルートを確保する! 済まないが正面の敵部隊は任せた!」
退路を確保するため散らばりながら戦闘に臨む解放軍の騎兵部隊を送り出し、猟兵達は迫りくる無数の鋼鉄の騎馬を前に各々の武器を構え、戦いの始まりに備えた。
アシェラ・ヘリオース
「始まったか……全く。嫌になるほどセオリー通りだな」
ビームキャノンで出鼻を押さえ、ナパームで蹂躙し、歩兵を展開して制圧する。
シンプルかつ強力な戦術行動だ。
昔、自分で飽きる程にやったので流れは染み付いている。
「ここでナパームが来る。……恐れるなよ。絶好の勝機だ」
【戦闘知識、情報収集、鼓舞、威厳】で最前線に立ち、黒騎を展開。
【念動力】で敵の焼夷弾の操作をかき乱し、黒騎達の【拠点防御、オーラ防御】で受け止め、【ハッキング、メカニック、武器改造】で制御を奪わせる。
「返礼だ。炎で躍らせろ」
後は黒騎達が奪ったナパームを投下する【属性攻撃】で敵歩兵の展開を阻害し、敵の攻勢を阻みたい。
【連携アドリブ歓迎】
メイスン・ドットハック
【WIZ】
雑魚の兵器群は変わらず、といったところじゃのー
マシンであれば、僕に対応できんわけはないのー
ユーベルコード「倫敦は霧に包まれて」を展開し、電脳魔術によるミサイル迎撃に入る
サイキックナパームはそれで落とし、さらに戦車に【ハッキング】を敢行
【鍵開け】【破壊工作】も組み合わせて、制御権を一時的に奪って自爆させる方策も取ってみる
そして戦況が進み、展開した電脳AIパープルミストが解析した歩行戦車の弱点の電脳兵器を創造させ、一気に攻勢に出る
さらにパープルミストには、サイキックナパームの炎が自由自在にできなくなるジャミングも敢行させる
アドリブ絡みOK
●
「始まったか……まったく、嫌になるほどセオリー通りだな」
指揮官は堅実なタイプらしい。帝国軍の戦車部隊が教本通りの機動を展開する様子にアシェラは眉根を寄せた。
初動で高威力のビームキャノンを用い脅威を認識させることで敵の機先を制し、半包囲陣形を取ることで敵に撤退、あるいは密集防御での抵抗を選ぶよう圧力を掛ける。
「そうして密集したところにナパームを放り込み蹂躙、あとは随伴歩兵で残敵掃討……シンプルかつ強力な戦術行動だ」
逃げる相手ならば背中を好きなだけ鴨撃ちにできる。
逃げない相手ならばこのまま圧殺できる。質量ともに解放軍を優越していた帝国軍ならではの――あるいは、民間人を守らねばならない解放軍に対し、軍民問わず掃討することを良しとする帝国軍の戦略ゆえの殲滅行動。
だが、帝国軍戦車部隊の初動の誤りはそこにあった。
彼らが相対する敵は、戦車に対して劣勢を敷いられる通常装備の解放軍部隊ではない。単独で戦車にも匹敵する戦闘力を誇る猟兵だったこと、そしてその中に元帝国騎士としてその戦術を知り尽くした女がいた事を彼らは知らなかった。
故に、
「敵戦車部隊を前に、私達は一歩も引かず、そして散開してもいない。解放軍部隊は脱したが、数で見ればごく少数。戦術を変えてまで追う価値のある獲物ではない。ならば次の一手、ここでナパームが来る。……恐れるなよ、絶好の勝機だ」
果たしてアシェラの読み通り、距離を詰めた戦車隊は重厚な正面装甲に守られた車体後部のランチャーを展開し、ナパーム弾の射撃体勢に入っていた。
「恐れる必要もないんじゃよー。マシンであれば僕に対応できんわけはないけぇのー」
味方を護るため前に出て、配下の騎士たちを召喚するアシェラ。その守りの後ろに収まりながら、至極暢気にメイスンはそう嘯いた。
ある程度高度な機械である以上、その制御はデジタルに依存する。
無論、如何に物量を以て戦術を成す帝国軍といえど電子戦に備えて対抗手段こそ持っているだろうが、この程度の戦車の電子防御などメイスンにとっては薄紙より脆いものだ。
「パープルミスト展開、いや散布じゃのー」
眼鏡に代わり電脳ゴーグルを着け、ホログラフィックのコンソールを叩くメイスン。
すると紫色の霧がその装備から漏れ出した。毒々しいビジュアルに、思わず口元を押さえてメイスンに鋭い視線を向けるアシェラ。
「おい、腐っても全領域戦車だぞ。BC兵器でどうこうなる相手では……」
その霧を毒ガスの類と誤認したアシェラの指摘に、まあ見てるんじゃとメイスンは薄く笑う。霧は毒ではないが、あの戦車隊にとっては生半な毒以上にその身を蝕む猛毒となるだろう。
物理的接触によってシステムに介入し、それを侵蝕するAI。それが彼女の使役するパープルミストの正体だ。
「ちっ……追求する暇もないな。お前達、撃ってくるぞ――今だ、防御隊形!」
アシェラの号令と同時、戦車隊が一斉にナパームを射出する。すぽんと気の抜けるような発射音と共に大きく弧を描いて猟兵たちの頭上へ――否。頭上を飛び越えてゆく。
急遽防御隊形を解き、着弾前のナパームをサイキックで捕らえる黒騎士達。
「ナパームの第一射は照準を狂わせて無力化。ついでに弾頭の起爆もできんようにジャミングもしておるからのー」
必死に起爆信号を送ってるみたいじゃけど無駄じゃよ、と自慢げなメイスン。そして彼女の霧の真意を理解したアシェラは、その好機を逃さない。
「ようしお前達、返礼をくれてやれ。連中を炎で踊らせろ」
号令一下、黒騎士達が奪取したナパームを一斉に投げ返す。戦車が火力源として役にたたぬと知って前に出ようとした随伴歩兵が慌てて戦車の後方に逃げ帰るが、起爆信号を遮断されたナパームはカラカラと車体の間を転がっていく。
『――起爆しない? ならば……突撃ッ!!』
その様を見て、軒並み不発弾だった不幸が、それがすべて反撃に用いられ無様に地を転がっていった幸運に入れ替わったことで勢いづいた帝国兵たちが一斉に戦車の隙間を駆け押し寄せようとし――
「それじゃあ邪魔しとった起爆信号、今送ってやるからのー」
メイスンがコンソールを叩くと同時に炸裂したナパーム。
アシェラの騎士たちが的確に敵陣へ等間隔で投げ込んだそれが爆発し、炎を周囲に撒き散らす。
帝国の騎兵達がアーマーを火だるまにして転げ回り、戦車は電子攻撃であらゆる火器の照準が定まらず迎撃すらマトモに出来ない中を、アシェラと騎士たちが駆け抜けた。
燃え盛る炎はまるで彼女たちだけを避けるように割れ、そこに活路を見出し飛び込んだ帝国兵たちが一刀のもと切り伏せられてゆく。
『後退! 全車後退し体勢を立て直せ! あの女騎士どもの相手はするな、脚をやられた車輌は捨てて後退しろ!』
一瞬にして教本通りの緻密な戦術を突き崩され混乱する戦車隊。
だが、そんな中でも立て直しに成功した少なくない車輌と随伴歩兵が後退を開始する。
「むー、この短期間で不完全でも対抗プログラムを立ち上げるとはのー。時間があれば余裕でぶち抜ける弱っわい障壁じゃけど」
「あの立て直しの速さはマニュアル通りの戦術しか取れない指揮官ではないな。迂闊に追うのはよしたほうが良い」
パープルミストの影響下を脱して後退してゆく戦車の姿に不服の声をあげるメイスンと、それを制するアシェラ。
二人で敵の初動を潰すという大きな役割を果たしたのだ。それ以上は他の猟兵に任せてもバチはあたるまい、と宥めるアシェラにメイスンも頷いた。
「しかしあの教本に忠実でかつ引き際の潔い優等生のような戦術、伝え聞くノーザンライトのものとは違うようだな……」
ノーザンライトが直接指揮を取っていないのか、それとも彼が蘇ってから優秀な指揮の才能を開花させたのか……どちらにせよ油断しないほうが良い、アシェラの呟きにメイスンも退いてゆく戦車隊を見送りながら頷いた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
仇死原・アンナ
…いよいよか
あの四本脚を叩き潰せばいいんだね…
行こうか…
他の同行者と共闘
鉄塊剣を振るい[怪力、鎧砕き、吹き飛ばし]で敵群を蹴散らしてゆく
妖刀を抜いて[串刺し、マヒ攻撃、部位破壊]で
敵の脚部や砲台を破壊して行動を阻害しよう
敵からの攻撃は[ダッシュ、ジャンプ、見切り]で回避し
[武器受け、オーラ防御、電撃耐性]で防御する
「そんな鉄の塊なんぞ、地獄の炎で焼き尽くす!」
[力溜め]をして[衝撃波、属性・範囲攻撃]と共に【火車八つ裂きの刑】を振り放ち敵を焼き裂いてやろう…!
こんなに技術が進んだ世界でも犠牲になった人々がいる…
風化した染みを横目に見つつ暗い気持ちになりながらも剣を振るおう
アドリブ絡みOK
月宮・ユイ
アドリブ◎
*身に<呪詛>宿す
彼ら先行部隊ですかね
共有頂いた情報ではエース機強力な砲持つ様子
時間をかけるのは危険かも知れません
撃ち合いは味方に任せ接近戦仕掛けます
[マキナ+倉庫]独自でも偵察ドローンを飛ばしつつ、
解放軍含め味方とも連携し<情報収集>共有
《捕食形態》
<念動:オーラ>に重ね纏う:耐性・防御力強化
武装圧縮成形<生命力吸収の呪詛>付与
剣槍:主武装、伸縮自在
杭多数:誘導・呪殺弾で射撃、一斉発射で面制圧
<地形の利用や暗殺術・存在隠蔽の呪>で目立たない様移動
UCでの強化も併せ<早業>で接近戦挑み、隊列乱し隙作る
他、戦車串刺し穿ち電脳魔術<呪詛型ハッキング>
一時的にでも武装の乗っ取りや暴走させる
●
「彼ら、先行部隊でしょうか?」
「さあ……私たちはあの四本脚を叩き潰せばいいだけ……だよね?」
後退する帝国軍戦車部隊のうちのひとつを追撃するのはユイとアンナ。
燃え盛る炎を飛び越え、散らばる瓦礫や車輌の残骸を蹴飛ばして加速しながら四ツ足の戦車を追うユイがふと、後退する戦車隊の動きがまるで何かと合流を狙っているように不自然に方向を変え続けていることに気づいた。
先行部隊であれば本隊に合流されないよう立ち回る必要がある。まして本隊がノーザンライトの直属だった場合、猟兵は戦車隊に加えてエースの駆る人型機まで相手取らねばならない。
時間を掛けるのは危険だが、しかし敵の後退に不自然な動きがある以上迂闊に飛び込むのもまた危険。
「私にできることといえばひとまずこのくらいですか」
限られた手段の中でユイに選択できるのは、せめて偵察ドローンを展開させ異常があればすぐに仲間たちと共有できるようにすること、くらいだろう。
「……準備は終わった? じゃあ、行くよ」
「ええ、できる限りのことは。行きましょうか」
帝国戦車の走行間射撃能力はさほど高くはない。何しろ多脚型は歩けば上下左右に揺れるもので、内部の人員こそ衝撃から保護出来ても砲そのものの振動を重力環境で完全に打ち消すことは難しいのだ。よって主砲は脅威たりえず、実際に戦車隊が追ってくる二人に目掛けて狂乱するように浴びせかけるがそれは命中することなくビルの残骸を貫き、あたりに砂煙を撒き散らすだけに終わる。
そうして新たに生まれた瓦礫や煙の死角をユイの誘導でうまく射線切りに使い、砲撃を掻い潜って接近した二人。それぞれの手には巨大な鉄塊剣と剣槍がある。
『当たらない! 射撃やめ、反撃来るぞ!』
『随伴歩兵、戦車砲では捕捉しきれん! 撃ち落せ!』
戦車兵たちの悲鳴じみた怒号を受け、戦車にしがみつく随伴歩兵たちがライフルやマシンガンで迫る猟兵を迎え撃つ。
「…………そんな攻撃」
「当たりは、しませんよ!」
無数に迫る弾丸。アンナは重厚な剣を盾のように構え、ユイは軽やかに弾丸の間をすり抜けてその攻撃を一蹴する。
「私があの歩兵を落とします」
「分かった……ならワタシは、戦車の足を止める」
短いやり取りで役割を分担した二人。ユイの放つ呪いの杭は、随伴歩兵たちを寸分違わぬ狙いで貫き撃ち落とす。
目であり耳であり、そして近接防御火器でもある随伴歩兵がユイの掃射でみるみる減っていくことで、外界の様子を伺う術を失い迎撃や回避の精度が著しく低下した戦車。その死角に滑り込むように飛び出したアンナの鉄塊剣が、逃げる戦車隊の脚部を根刮ぎ断ち切った。
「ワタシは見たんだ。こんなに技術の進んだ世界でも犠牲になった人々がいる……」
こつ、こつと靴底を鳴らして擱座した戦車に歩み寄るアンナ。
一歩進むごと巨大な鉄塊剣が地面を擦り、ぎぃぎぃと耳障りに鳴き喚く。
アンナは、そして彼女のつぶやきを聞くユイは思い出さずにはいられない。
この船の至るところに残された黒く酸化した染み、あれは人の死の痕跡だ。あれがあるところでは、かつて人が死んだ。覚悟と力をもって戦いに臨んだ兵士たちだけでなく、ただ逃げ惑い生きるだけで精一杯だった人々まで、一切の慈悲も区別もなく死んだのだ。
それは二人の胸中に暗い影を落とす。どれだけ技術が進もうと、どれだけ生活が豊かになろうと、戦いの凄惨さは変わることなどありはしないと見せつけられたようで。
「だからワタシは、二度とこんなことをさせたりしない」
振り上げられた鉄塊剣が戦車に叩きつけられる。
『ば、ば、バカが! そんな剣をいくら叩きつけたところで、主力戦車の正面装甲だぞ!? 人の力で抜けるはずが』
叩きつけられる。叩きつけられる。叩きつけられる。叩きつけられる。叩きつけられる。
『ひっ……! まさか、嘘だろ……? おい、おいやめてくれ! 投降する! 投降するから!! 今すぐ戦車から出る、武装解除する! だからやめ――』
「そういって投降した民間人も撃ったんだろう、お前達帝国軍は」
戦車兵の命乞いを切り捨てるユイ。そうだ、ここで繰り広げられた戦いは、そうだった。
戦う力のない人を、戦う意志のない人をひとり残さず鏖殺した帝国軍に情けをかける必要はない。まして彼らは今やオブリビオン、死してなお世界の破滅のため生きる過去の残滓なのだから。
「そんな鉄の塊に守られて、殺しの意味も重さも忘れたんだな。だったらその鉄塊ごと、地獄の炎で焼き尽くす!」
ぶん。勢いよく空を切り裂いたアンナの剣が炎を帯びる。
そのまま叩きつけられた刃は、幾度もの殴打で劣化した装甲を切り裂き燃料タンクに火を着けた。
『や、やめ……やめて、謝る、謝るから! 出して、ここから出してくれ! クソっクソっクソっハッチが開かない、開かないなんで!! 出して! 熱い、熱いだれか! ここから――!』
狂乱する戦車兵が歪んだハッチを内側から何度も何度も殴りつけるも、結局無二の相棒をその腹から解放することなく共に炎に包まれ爆散する戦車。
その死に様に、処刑人がくれてやる言葉はない。
「あまり時間をかけると敵の増援が集まってきそうですね。残りは私が纏めてやりましょう」
僚車のあまりに凄惨な末路に車内で震えるしか無い戦車兵たち。彼らは頭をかかえ、目を瞑って次が自分でないことを祈るしかできなかった。
だから気づかない。呪詛により制御を奪われた戦車が、その砲塔を味方に突きつけていることに。そしてその味方もまた、自分に砲口を向けていることにも。
彼らは幸運だ。主力戦車の主砲、同級の戦車を貫徹できる高出力ビームキャノンによって苦しみも恐怖もなく散ることが出来たのだから。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ニトロ・トリニィ
ここでどれだけの命が散ったのだろうか…
… 考えても仕方ない、今は敵を狙い撃つ事だけに集中しないと…
この戦いでは狙撃手を担当するよ!
離れた所から、〈目立たない/忍び足〉で気配を消しながら狙撃銃で攻撃だね。
同じ場所で狙撃し続けるのは危険だから… 〈情報収集〉で安全そうな場所を探して移動しないと…
使うのはこれ!対物狙撃銃【血煙丸】だよ! 今回は戦車が相手だし、活躍してくれるはず!
〈スナイパー〉《第七感》を合わせれば命中率を上げれるかも?
残党とは言え帝国軍の戦車…
普通の20mm口径弾だと貫通力が足りないかも…
〈鎧無視攻撃/鎧砕き〉を合わせて強化した物を使おうかな!
ヘスティア・イクテュス
全く、過去の戦いの激しさ、亡くなった人達について思いを馳せる暇もないわね…
タロスを前方に複数広域に展開
こういう街並みだって重要な、後に歴史を伝える物
後の世代の為にも、そして既に廃墟だとはいえ、更に同じように帝国に破壊されないように…
えぇ、後方への被害は完全に防がせて頂くわ【拠点防衛】
ついでにバリア障壁の前に展開したフェアリーズで他の猟兵をサポート
船の被害を抑えるために出力は控えめだけど関節とかを狙って
そっちはアベル、操作支援お願いね
ライラ・ファルクス
見た所私では歩行戦車にはあまりダメージを与えられそうにありませんね…、まあ囮になったり盾になったりしていれば他の方がなんとかするでしょう、多分。
やれる事からやっていきましょう。
近い機体を【おびき寄せ】た後はひたすら【オーラ防御】と【武器受け】【盾受け】で耐え、味方が狙われたら【かばう】。
隙を見て【武器落とし】で攻撃手段が奪えないか試しましょう
簡単には落ちませんよ?…多分
※連携・アドリブ等歓迎
●
「まったく、過去の戦いの激しさ、亡くなった人たちについて思いを馳せる暇もないわね」
防御用ドローン「タロス」の展開したバリア越しに絶え間なく打ち付けるナパームの雨。
幸いにもバリアが炎を遮ってくれはするが、こちらもバリアを解いて反撃に移るには些か無謀に一歩踏み入った勇気が必要な状況にヘスティアはため息をひとつ。
彼女たちは今、後退したと見せかけて追撃のため猟兵達が散った直後、彼らの後背を襲撃するべく死角から再度出現した戦車部隊を相手に足止めを行っていた。
「確かに凄い攻勢ですが、しかし私達がここで囮として堪えていれば誰かがなんとかしてくれるでしょう」
彼女の前に立ち、バリアを時折貫通して飛来する敵戦車随伴歩兵のアンチバリアライフルの高密度レーザーを分厚い盾で押し止めるのはライラだ。
合金製のシールドは魔術的強化を施され、その上からビームシールドまで纏っている。面でのナパームさえバリアが防いでくれるならば、そのバリアを突き破る点の攻撃はライラの担当だ。
が、彼女が他力本願に呟く通り、二人には今有効な攻撃手段がない。
「たぶんなんとかしてくれるはずです。してくれなければ困ります。見たところ私ではあの戦車にあまりダメージを与えられそうにありませんので……」
眉を八の字にして、さらに飛来したレーザーを盾を傾け弾き返すライラ。
防御特化の彼女の装備では火力が足りない。ならばここで守勢に回るヘスティアの補助に全力を尽くす、それがメイドでありガーディアンでもある彼女の選んだ戦術だった。
「正直貴女が居てくれて助かるわ。わたし一人だとこれ以上に大変だったと思うとぞっとしないもの」
それに、そのおかげで重要な文化財を守れるのだから、とヘスティアは表情に浮かぶ疲労をかき消して微笑む。
彼女は今、自分の身を守るために必要な数を大きく上回るタロスを制御使役していた。
それはすべて、この廃都市を守るためだ。ビームキャノンを盛大に撃ち放ち、ナパームを遠慮容赦なく撒き散らす初動の戦術で敵がこの船を拠点として大切に使おうなどと考えていないことはよく分かった。だからヘスティアは持ちうるすべての防御力を投じて、せめて正面のこの部隊からの被害だけは完封してみせると意気込む。
「こういう町並みだって重要な、後に歴史を伝えるもの。後世のためにも、そして既に廃墟とはいえこれ以上帝国に破壊されないように……」
「好ましい心意気です。ならばヘスティア様、せめて貴女の身は私が」
二人の少女が帝国軍の苛烈な攻勢に耐えているまさにその時、廃墟と化した高層ビルの上層フロア、埃の厚く積もった一室に伏せる男が居た。
「ここでどれだけの命が散ったのだろうか……なんて考えても仕方ない。今は敵を狙い撃つことだけに集中しないと」
帝国の対地攻撃機と解放軍の戦闘ヘリが絡み合うように突っ込み黒焦げになっているその隣に伏せ、二機が突入したことで開いた大穴から眼下の街を見下ろす狙撃手――ニトロ。
ここからだとヘスティアとライラを圧迫している戦車部隊の背中がよく見える。直接戦闘ではなく、密かにこの見晴らしのいい高台を取ったのは正解だっただろう。
尤も瓦礫だらけの市街地で、こんなに手早くこのポジションを確保出来たのは誰かの放った偵察ドローンが彼の持つ対物狙撃銃を見て誘導してくれたおかげだ。
自律型にしては賢いそのドローンにひらひらと手を振って感謝を伝え、スコープを覗き込むニトロ。
次の狙撃ポイントの目星は付けた。ドローンの協力のおかげでルートも完璧に把握済み。
相棒たる対物ライフル「血煙丸」の整備は完璧、装填したのは通常の徹甲弾ではなく炸薬量を増した徹甲榴弾だ。貫通できなくとも炸薬の爆発により粉砕した装甲を車内目掛けてぶちまける。対戦車戦ならばこれで間違いは無いだろう。
あとは狙撃手の仕事。じっと機を待ち、そして彼の第七感が予見した通りのタイミングで引き金を絞る。
凄まじい反動とともに撃ち出された弾丸が、敵戦車の背面を貫き、ナパーム投射装置を誘爆させ粉々に爆砕してみせた。
「まず一輌。もう一、二輌行けそうだけど……欲張らないで移動しようかな」
ライフルを担ぎ、焦げ付いた二機のヘリに視線をちらと向けてから階段を駆け下りてゆくニトロ。
「……来た!」
突如爆発炎上した戦車。混乱する敵部隊とは対象的に、ヘスティアは猟兵の誰かが敵を奇襲攻撃したのだと状況を正しく認識していた。
「となると次は……」
「敵は襲撃者の居場所をつかめてないようですから、逃げの一手でしょう」
ライラの予想に同意見よ、と返す。二人の読み通り、戦車隊は少女たちに攻撃を加えながら各々手頃な遮蔽となる建物の陰に後退しようとしている。
「そうはさせるものですか。此処からはこっちも反撃するわよ。アベル、操作支援お願いね。わたしはヘタに船にダメージを与えないように出力制御に徹するから」
「かしこまりました。お任せください」
信頼するAIの心強い返事に闘志を高め、ヘスティアは攻撃ドローン「フェアリーズ」を差し向ける。
小さな妖精たちの放つビームは、的確に戦車の脚部関節を融解させ動きを鈍らせていった。
が、出力の低いそれでは完全に擱座させるまでには長い時間を要するだろう。そしてその間に遮蔽を取ることを許してしまえば、状況は振り出しだ。
「動きを封じればよいのですね」
そこに最後の一押しで飛び出すのはライラ。メイド服の裾を翻し、迎撃する敵随伴歩兵の射撃を盾で受け止め弾きながら槍を突き立て赤熱した脚部関節を打ち砕く。
『やらせるかよ!』
一輌目を擱座させたところで妨害に入った随伴歩兵が銃床で槍の柄を弾いて取り落とさせれば、ライラは執着することなく懐から抜いた拳銃でその兵士に一撃、続いて流れるようにダメージを受けた二輌目の脚が折れるまで弾倉内の弾丸を吐きつくす勢いで連射。
三輌目も同じく処理し、弾が切れたハンドガンを収める頃には四、五輌目が焼き切られて停止。
拳銃と入れ違いに抜いたナイフを投げつけ、ドローンを制御するライラを制圧しようと駆け出した敵兵の背中に刃を生やして無力化した後落とした槍を蹴り上げ空中で掴み、六輌目の脚を打ち砕く。
そうしてライラは戦車隊から離れ、ヘスティアの前で盾を構える。ヘスティアもタロスの配置を戦車隊を三方から囲むように置き換え、バリアで包み込むようにして。
「……わ、あの子たち戦車の動き止めててくれたんだ」
次の狙撃ポイントに登ったニトロが見たのは、行動不能状態で武装を今まさに少女たちに向けようとしている戦車たち。
彼らは防戦一方で弱者だと見下していた相手が突然牙を剥いたことに混乱し、より脅威度の高い死神の鎌を――狙撃手の脅威を忘れている。
「これは次に移動する必要はなさそうだね。血煙丸、続けて仕留めよう」
砲声と、弾き飛ばされた空薬莢が廃墟の床を跳ね回る音。
それが続けて数度響いて、それから遅れて遠く離れた戦場で爆発炎上した戦車の断末魔がニトロの耳朶を打った。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
トリテレイア・ゼロナイン
かつての激戦…失われた命を想えば痛ましい光景です
ですが騎士として死者に哀悼の意を示す前に今を生きる人々の為、其処に有る脅威を取り除かねばなりません
偵察隊の情報によると守りを固めているでしょうね
残骸等に身を潜めたり、待ち伏せ、何らかの罠もあるやも
ですが、あえて藪をつつきます
機械馬に●騎乗しUC発動
派手な高速突撃で注目を集め敵に揺さぶりを掛けます
各種センサーで●情報収集
●破壊工作、●だまし討ちに関する知識から奇襲などの危険なポイントを●見切り危険を回避
キャノンの旋回を振り切るよう移動、格納銃器の●スナイパー射撃や●怪力ランスの一撃で脚やキャノンの関節を破壊
止めは後続の猟兵に任せ、敵戦力の低下に専念
●
廃都市を疾駆する機械じかけの軍馬。その背には大柄な騎士のような白いウォーマシンの姿があった。
高速で流れ行く町並みは何処を見ても凄惨な破壊と死の痕跡が刻みつけられ、トリテレイアの思考にノイズを走らせる。なぜその時この場に自分が居なかったのか。自分が居ればせめてこのうちの一人くらいは救えたのではないか。
「痛ましい光景です……が、死者に哀悼の意を示す前に今を生きる人々のため、そこにある脅威を取り除くことこそ騎士の役目」
町並みに吸われるように逸れた視線を前に向け、機械馬に加速を指示して駆け抜ける彼、トリテレイアは再び警戒を厳にする。偵察隊は最初の侵入の際、潜んでいた敵部隊に奇襲を受けたと言っていた。
今回のこれも奇襲ではあるが、初回と二回目で初撃の方向性が違うのが気にかかったのだ。初回はギリギリまで兵力を伏せ、完全に先手を取る形で解放軍を圧倒していた。だが今回は存在を誇示するように兵力を展開し、堂々正面から先制攻撃に打って出た。
一回目で存在が露見したため、という捉え方もあるだろう。だがそれだと進入路を塞いでいなかったのが不自然だ。部隊の存在がバレた上で偵察隊を取り逃がしたのであれば、侵入自体を拒むなりする手段があったはず。
「妙ですね。敵の動きがちぐはぐというか……敢えて藪をつついて蛇を出してみますか」
出力を上げ、ブースターの噴射炎を盛大に放ちながら加速するトリテレイア。
彼の頭脳には、帝国軍が伏撃戦術にあたって好むような奇襲ポイントや地上でのトラップの知識がある。それと高速機動戦闘に堪えうるセンサーが合わされば、トリテレイアに見えぬ伏兵はない。
「そことそこ……戦車の射角と砲の旋回速度ならば、私には追いつけません!」
トリテレイアが警戒したまさにそこから飛び出した戦車の主砲と随伴歩兵のもつ小銃。それが狙いを定める前にその横をすり抜け後方に抜け、肩部の内臓機銃だけで振り返り銃撃を浴びせれば、正確な射撃に砲の基部を破壊された戦車は火力を大きく減じてほぼ無力化される。
マトモな対騎兵火器を喪失した戦車ならばここから反転しランスで一撃。これで撃破できるだろう。だが、トリテレイアは敢えてトドメを刺さずにそのまま先行する。
散開し市内に散らばる帝国軍を追うべく猟兵たちも街中に散っている。そのうちの一組がトリテレイアの後方を移動しているのを、彼のセンサーは捉えていたからだ。
「トドメは彼らに任せ、私は敵の戦力低下に専念しましょう。嫌な予感がします、早く指揮官を撃破しないと……」
すれ違いざまに叩き込んだランスで片側の脚二本をもぎ取られた戦車が倒れるのを音だけで確認して次へと向かうトリテレイア。
彼の感じる焦燥はこの場所の独特の空気がもたらすものなのか、ノーザンライトという敵隊長機の異名が与えるものなのか。
それとも、もっと別の予感がゆえのものなのだろうか。
次々と戦車にダメージを与えながら駆け続ける白い機械騎士は、得体のしれない不安を飲み込みその役割を果たすことに全力を傾けるのだった。
成功
🔵🔵🔴
イデアール・モラクス
【PPP開発室】
フン、国は滅んでもまだ戦争を続けるか…哀れなものよな!
この私が引導を渡してやろう!
・行動
UC【使い魔召喚】で使い魔ヘレンを呼び出した上で自身に『全力魔法』を用いて【身体能力を人知を超えた域にまで向上させ飛行能力を得る魔法《アクセラレート》】を付与し、魔剣ドミナンスを構え斬り込む。
「正面突破ぁ!」
敵の攻撃を左手から『高速詠唱』で放つ無数の【魔法弾】や【吹雪】の『一斉射撃』による相殺や魔剣の『武器受け』で防ぎながら、『属性攻撃』で刀身に長大な業火を纏わせた魔剣の『範囲攻撃』で『なぎ払い』、『串刺し』にして『傷口をえぐり』『吸血』し『生命力吸収』する攻撃で敵を滅する。
※アドリブ歓迎
ビードット・ワイワイ
【PPP開発室】
アドリブアレンジ歓迎
見たり見たり見たり、汝の破滅を見たり
人の足らなさを屑鉄の戦車で補う行為
それそのままが質の低下。かつての幹部は既に無く
残りし者は死に場所失い有象無象。最早脅威と言われない
故にここにて凪ぎ払わん。ここが汝の破滅なり
招くは異星の隣人、行うは蹂躙
歩兵部隊による攻撃をそのテレポート能力により
避けそのままどんどん回収して行こう
この世界の一般人に見られぬのなら大いに活動できようぞ
此度の敵はどう使おうと構わぬ存在
改造解体埋め込み実験言えぬあれも制限あらず
ついでに戦車も破壊し回収してしまおう
大量である。満足である
フォンフォンフォンフォンフォン
フォンフォンフォンフォンフォン
フィーナ・ステラガーデン
【PPP開発室にて参加】
ついたようね!不景気な場所ね!
ダークセイヴァーみたいだわ!
それにしても銀河帝国だったかしら?
しっつこいわねえ!
誰にも迷惑にならない所でひっそりいなさいよ!
じゃ!ちゃっちゃとやるわよ!
どーせイデアールとビードットは好きに暴れるし
私は私で魔力を集めてどかーんしてやるわ!どかーんよ!
【地形を利用】で隠れて様子を見て
チャンスとあらばUCを【範囲攻撃】込み込みで敵陣に向けて放り投げるわ!
時間をかければかけるほど太陽は大きくなるわ!
(アレンジアドリブ大歓迎!)
●
「フン。国が滅んでもまだ戦争を続けるか……哀れなものよな! この私が引導を渡してやろう!」
後退すると見せ、猟兵を引き付けるなり潜んでいた予備戦力と合流し反撃に出た戦車隊。
その真正面に堂々と立ち塞がる魔女の姿に、帝国兵たちは気圧されていた。
これだけの戦力を前に一歩も引かぬ自信と度胸。その裏になにかこの戦力差を覆す策が隠されているのではないかと彼らは疑ったのである。
自らもまた策を以て猟兵と解放軍を撃破せんとしただけに、帝国兵はまた己の敵もそうであると無意識の内に思い込んでいたのだ。彼女が単純に自らの実力を信じ、それのみで数的不利を覆せると心のそこから信じているなど夢にも思っていない。
『増援か、それとも……何を企んでいるんだ……?』
『深読みするな、敵は所詮生身の女一人だ! やつが騎士級の戦闘力を持っていたとて、この数の戦車で一斉に掛かれば押しつぶせる!』
指揮官の叱咤を受けて一斉にアクセルを踏み込み、前進を開始する戦車隊。その四ツ脚が昆虫のように蠢くのを見て、魔女――イデアールは帝国軍の蛮勇を嗤う。
「来い、ヘレン! あの連中を叩く、ありったけをよこせ!」
そうして呼び出したる妖精の少女。彼女がイデアールの使える魔法の中で強化魔法に類するものを片端から詠唱するのに支援を任せ、魔女は戦車隊に正面から斬り込んだ。
自己強化に必要な魔力や詠唱の隙をヘレンが補ってくれるならば、イデアールは最初から攻撃に全力を傾けられる。
「ならば私のやることは単純明快にして唯一つ! ――正面、突破ァ!!」
魔剣が閃き、戦車の装甲の隙間を的確に断ち切って無力化してゆく。だが、イデアールは一人。一度に撃破できる戦車の数は少なく、また戦車隊の反撃に対応する術も限られる。ヘレンに援護させる手も無くは無いだろうが、彼女の強化魔法による援護が絶えればそれこそ敵に対抗しきれず圧殺される未来が待っている。帝国の部隊指揮官が部下に言ったように物量で攻め続けられればいずれ破綻するであろう戦い。
されどイデアールは嗤い続けた。装甲の間を断ち、降り注ぐナパーム弾を強力な凍結魔法で無力化し、隙を見せた車輌に飛び乗りハッチを串刺しに貫き魔剣に戦車兵の生き血を啜らせる。
まるで悪魔だと戦車兵が怯えるように呟き、直後に装甲の薄い部分を突き破って生えた魔剣に貫かれて絶命した。
「クク……ハハ、アーハッハッハッハ! どうした! どうしたんだ、数の上で勝っているんじゃあなかったのか!?」
そう帝国兵を挑発するイデアールも血塗れだ。殆どが戦車兵の返り血だが、しかし多少の反撃を受け少なくない傷を受けた彼女自身の流した血もその身体を彩っている。
『……化け物が……歩兵部隊を前に出せ! やつが疲弊している今が好機だ、白兵戦闘でケリをつけろ!』
指揮官の咆哮に呼応して、手に手にフォースセイバーを握る随伴歩兵達がイデアールに躍りかかる。
「ククク、雑魚がいくら束になったところで――」
歩兵を返り討ちにするべく腕を振るい、刃を一閃したイデアールは見た。
突撃した白兵部隊は囮。イデアールの意識をそちらに向けさせたその一瞬で、戦車の陰に潜んでいた別の部隊が対戦車ロケットを彼女に向けていた。
『――爆破しろ!』
指揮官の号令一下、そのトリガーに兵士たちの指が掛かり――
「見たり見たり見たり、汝の破滅を見たり。人の足らなさを屑鉄の戦車で補う行為、それそのままが質の低下。かつての幹部は既に無く、残りし者は死に場所失い有象無象。最早脅威と言われない。故にここにて凪ぎ払わん。ここが汝の破滅なり」
低く低く轟くような破滅の聖句とともに、魔女の信頼する仲間たちが現れる。
「まさか私がこれに乗ることになるなんて思わなかったわ! うーん、前にも乗ったことある気がするけど思い出せないし気のせいよね! イデアール、来たわよ! 一人で先に行き過ぎ!」
まるでダークセイヴァーのように死と静寂のこびりつく、こんな不気味な場所で逸れるなんて冗談じゃないわ、と訴えるのはフィーナ。彼女を傍らに、飛行する航宙艇を指揮するのはビードット。
「すまんなフィーナ! 寂しかったか? 降りてきたら抱きしめてやろう、アーッハッハッハ!」
「いらないわよ! 寂しくないし! でもこの乗り物はなんかやなかんじだから降りるわ! 受け止めなさい!」
むう、と乗り物の不評っぷりに不満そうな唸りをあげるビードット。しかしここで彼女を降ろさなければ内側から爆破されそうなので、素直にハッチを開ける。
――思わぬ機動戦力の登場に、対戦車ロケットで対空戦闘を強いられる敵随伴歩兵部隊、彼らの放つロケットを回避するべく縦横無尽に飛翔する航宙艇――古臭い言い方をするならば、UFO。その底面のハッチを。
勢いよく飛び降りたフィーナが悲鳴を上げながら眼下に消えていった。
「……イデアール殿であれば受け止めよう。故に案ずる必要は……」
無い。無いはず。無いといいなあ。
「さて異星の隣人殿よ。これより行うは蹂躙、汝らの歴史に刻まれし怨恨を晴らす時。敵の滞空攻撃はこの機体には掠りもせず、なればどんどん回収してゆこう」
ビードットが円筒形の頭部をぐるりと回して乗員たちを見回す。
細く長い頑健な肉体。反して短い手足。頭には紫色の果実を実らせた植物型種族。
かつて滅びたとされる者たち。彼ら――ヤマゴボー星人たちは、穏やかだったと伝えられるその表情を帝国への憤怒に歪め、復讐を声高に叫ぶ。
彼らに何があったのか。それは破滅の遂行者たるビードットすら預かり知らぬこと。ただ、これほどまでに憎悪を滾らせる過激派が招来されるほどに凄惨な滅びを彼らは経験したのだろう。
「此度の敵はどう使おうと構わぬ存在。改造解体埋め込み実験言えぬようなあれもこれも制限はなく……うむ? う、うむ……制限はない」
キンピラ、カキアゲ、シラアエと口々に叫ぶヤマゴボー星人たちの怨念が拉致した帝国兵をどうするつもりなのか、知ってはならぬような気がしたのでそれ以上は気にしない。
お気に入りの反重力機関が掻き鳴らすフォンフォン音、これを聴けただけで満足なのだと言い聞かせ、彼らに囚われる帝国兵の末路を憐れむビードット。なれどきっとこれは自業自得なのだ。
「かくして彼らは滅んだ。そうして彼らは滅ぼした。……フォンフォンフォンフォン」
かくして彼はちょっと現実逃避していた。
「あぁぁあああぁあああああああぁあ落ちるわイデアール受け止めなさい早く早く早くぐぎゅぅ」
ビードットとヤマゴボー星人によるアブダクションによって敵陣が大混乱に陥る中、フィーナは大混乱しながら敵陣に落ちていた。
あわや地面に激突、というところで滑り込み――適当な敵戦車を蹴り飛ばしてフィーナの下に押し込みクッション代わりに使うイデアール。直接受け止めはしない。だってあの高さから降ってきた重いものを素手で受け止めたら痛いだろう、骨が折れたらどうするとはイデアールの談。
「お、重くないわよ! あーもーしつっこいあいつら、たしか帝国軍だったかしら? 根絶やしにするとまでは言わないけどね、せめて誰にも迷惑かけないところでひっそり生きなさいよ!」
べっこり凹んで大破した戦車の上から飛び降りたフィーナがずびしと人差し指を突きつけ指摘する。
皆殺しにしようとは思わない、おとなしくさえしていればいいものを。その慈悲深くも傲慢な物言いは、アブダクションから逃げ惑う帝国兵たちにろくに届いていなかった。
「…………あんなトコから落とされるし」
空中を高速で飛翔する細長いUFOを睨みつけ、
「信じた仲間はキャッチしてくれないし」
地団駄を踏みながら背後で嗤う魔女に恨めしい視線を向け、
「あいつらは話ぜんっぜん聞いてないし! あーもー、じゃあちゃっちゃとやるわよ!」
イデアールとビードットばっかり好きに暴れるなんて不公平だわ、と杖を掲げて魔力を集めるフィーナ。
イデアールが数を減らし、ビードットが陽動を仕掛けながら散らばった敵を一箇所に集めたおかげで攻撃の準備は完璧に整い、妨害が入る様子はない。
ならばひたすら魔力を集め、集め、集めて、もっと集め、そろそろ限界だが集め、行けそうな気がするので120%まで集めて、おまけの出血大サービスでもう少しだけ集めて圧縮する。
そうしてフィーナの頭上に出現したのはごく小さな恒星。膨大な熱量を秘めたそれを、
「今更気づいたってもう遅いわよ! どかーんしてやるわ! どかーんよ!!」
ゆっくり、ずごごごごと鳴動しながら落下する太陽。
着弾の衝撃波がUFOを吹き飛ばし、二人の魔女の長い髪と服の裾を暴れさせる。
そして着弾点には塵も残らず――そう、敵部隊どころか地面も、その下にあるはずの都市船の環境維持などに用いられる地下施設や機械類すらも綺麗サッパリ焼き尽くし、宇宙空間直通のトンネルを開通させたフィーナ。
凄まじい勢いで空気が吸い出され、フィーナたちも突如発生した突風によって真空に放り出されそうになる。
「う、宇宙ってこんな風になるなんて知らなかったのよ!!」
「ククク、派手にやるじゃないかフィーナ! なぁにまた何処かに穴を開けて入り直せば――む?」
予想外の被害に狼狽えるフィーナとはた迷惑な復帰手段を提案しながら風に身を任せるイデアール。二人を吸い出す突風が不意に止まった。
果たして船の安全装置でも働いたか、と二人が視線を穴の方へ向けると、そこには――
「…………かくして彼らは滅んだ」
穴の直径ピッタリの円筒形UFOがすぽりと船の内壁に突き刺さり、栓をしている光景が。
かくして都市船の危機は去った。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
ユーノ・ディエール
アドリブ連携歓迎
あの黒い跡は――いや、今は戦いに集中しましょう
正面の敵を掃討すれば良いのですね。ならば
騎乗したクルセイダーより上空からロックオン
念動力全開放で敵の進軍を止めつつ全武装で一斉射
足止めしつつトップアタックで無力化を狙います
合わせてドローンを飛ばして敵進路の確認を
恐らく彼奴等の出所があるでしょう
先手を打って念動光波を放ち敵の後詰を潰します
全周を包囲されてるとは言え、入り口さえ潰せば後は続かない筈
ある程度の無力化を果たした所で地上の残敵掃討に移ります
サイキックナパームも、念動波をぶつければきっと防げる!
サイキックコアを最大出力で味方の援護をしつつ
戦線を拡大し過ぎない様に努めましょう
レッグ・ワート
正面了解。俺は細々いこうか。
基本ユーノの射程範囲内で動くわ。やり過ごそうとする連中の脚部や砲の関節部を個別に鉄骨で怪力任せに関節部叩き折ったり梃子折っていくか。それとも適当に殴りつつ糸やアンカーで動いて、上が撃ち易いよう惹いて回るかは現場の入り組み方によるさ。
迷彩起こしたドローン使って退路確保の様子見もしたいが、まあ前が落ち着くまでは情報収集に使う。不意打ちや攻撃回避の為の聞き耳見切りも忘れずに、だ。一応フィルムの防具改造以下の各耐性値を火炎耐性に変換合算、ついでに接触時処理も併用して忍び足だ。通信さえ入れてくれれば巻き込んでもある程度は気にせず巻き込んでくれていい。要る間だけ無敵城塞使うし。
●
「あの黒い痕……いえ、今は戦いに集中しましょう」
廃都市の上空を駆けるクルセイダーに騎乗するユーノは、眼下で繰り広げられる壮絶な機動戦を見下ろしていた。
帝国の歩行戦車は、重力下仕様の有脚タイプであるという点で鈍重なイメージの拭えない兵器である。実際に地上戦での運用が狭い基地や要塞内に限られ、また無重力空間では小惑星や艦艇の表面に固定され砲台のように扱われることが多いこともその印象を補強する原因となるだろう。
だが、その最高速度は驚くほどに速い。曲がりなりにも銀河に覇を唱え、多くの星系を支配下に置いた銀河帝国の主力兵器の一角を担うだけあって、彼の兵器は機動力にも一切の妥協のない優れた性能を有するのだ。
そうでなければ超々巨大軍事独裁国家の地上戦力の中核を担う兵器にはなりえない、という銀河帝国軍の精強さを体現したその兵器が全力で疾走するのを追撃する一体のウォーマシン。
宇宙バイクに跨り、走攻守ともに高水準を誇る帝国軍歩行戦車を追い立てる牧羊犬の名をレグという。
「俺は細々行くのが性に合うんで、集めた後はそっちに頼むな」
「了解しました。気をつけてくださいね、前方距離200、交差点の左右に敵車輌2です」
「はいよ、こっちもドローンで確認した。その調子で"目"も頼むわ」
「ええ、継続して監視します。あ、さっきの伏兵、左側だけそのストリートに引っ張ってもらえますか?」
タイミングギリギリ過ぎね? とぼやきながらオーダー通りに糸を放ち、先端のアンカーに敵戦車をひっかけ引きずり出すレグ。予想外の方向からの過剰な負荷に戦車のつま先が道路を削り火花を散らし、四ツ脚のうち三本を脱落させながら朽ちた自動車に突っ込み沈黙する。
それを背に駆け抜け、伏兵と共に反撃するつもりで急停止した前方の敵戦車隊の一輌をウォーマシンの怪力で振り回す鉄骨で打ち据え行動不能にして真横をすり抜ける。
「レグさん聞こえますか。前方に敵戦車の出現してくる……地下鉄かなにかの入り口があります。――いま砲撃で潰しました」
「おう、それを塞ぎに行けば……潰したのか、仕事が早いね」
前を走る敵戦車の頭上を飛び越え廃墟に降り注いだ念動の光波が着弾し、ここから見えないどこかで爆発音が響く。
レグは肩を竦めてハンドルを握りしめ、次はどう動けばいいかユーノの要望を仰いだ。
「そうですね……敵の増援も止まったようですし、あとは殲滅に移りましょう。レグさん、このまままっすぐ進んでください」
了解、と指示通りまっすぐ敵を追い立てたレグは、そこでおいおいおいとユーノに急ぎ通信を繋ぎ直す。
「思いっきり包囲されたんだが。もしかして俺なんかしたか?」
ストリートを抜けた先、公園らしき広場に辿り着いたレグを待っていたのは、見渡す限りの敵、敵、敵。丁寧に廃車や建物の残骸を利用して陣地を構築した帝国戦車部隊がレグをその武器でもって凝視している。
「いえ、特に何も? とても助かりました、ありがとうございます。そのままそこで防御に徹してください」
「言われなくても防御しか出来ねぇけどな!?」
淡々と指揮を執り続けるユーノに対し、レグはばかすかと遠慮なく撃ち込まれるナパームに防戦一方だ。
「フィルムを耐火仕様にしといて良かったぜ。しかしまあ、あんま長くは持たねえよなあ。熱暴走しそう。宇宙船の中でこんだけ暑いとか流石に辛いんだが」
幸いにもレグは事前に耐火装備を整えていたが、それもあくまで時間稼ぎ程度。いずれ限界を迎えれば、機械とはいえレグも甚大なダメージは避け得ないだろう。
そこへ再びユーノからの通信が入る。
「おまたせしました。おかげで敵も密集してくれたのでこちらがやりやすくなって助かります」
上空に座するユーノのクルセイダー。その武装がサイキックエナジーの光を帯びた。
「根は断ちましたし、敵はここに密集している。一網打尽に大打撃を与えるチャンスですから、この好機を逃さないよう今此処で撃ちます」
丁寧にレグへ状況を伝える通信。それを聞いて顔色のない顔を真緑に青ざめさせたレグ。
「いや通信入れれば多少は気にせず巻き込んでくれていいとは言ったが多少かこれ?」
離脱の暇はなさそうだ。その場で防御を固め、多少の定義を話し合う必要があるかもしれないと肩を落とすレグの頭上に、七色の光が降り注ぐ。
「……無敵城塞使えてよかったよ、まったく」
「すみません、あれが一番効率的だったので……」
並走するバイクに跨るレグに詫びるユーノ。レグなら防御できる、あるいは回避できると見込んでの諸共の掃射だったし、レグもそれは覚悟の上で事前に巻き込み上等の面制圧を許す発言をしていたのだが、それにしても過剰火力過ぎたのだ。
戦車隊は粉々に吹き飛び、その迅速な殲滅のおかげで地下から出撃した戦車隊が各戦場に合流することは避けられた。
「……まあ、あんな惨状見た後だしこれ以上戦線広げたくねえのもわかるし、俺は無事だからいいんだが。あんまお前も無茶すんなよ」
あとは気にすんな、と速度を上げて仲間たちと合流するため移動するレグ。
その背中を追いかけて、クルセイダーも駆けてゆく。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
アイ・リスパー
「わあっ、壊れてますけど、解放軍の旧式戦車に戦闘ヘリ!
実戦をおこなったものを直接見られるなんて感激ですっ!」
展示物とはまた違って、どの角度から攻撃されたのかや、どういう戦略で運用されてたのかがわかりますねっ!
「というわけで、せっかくお休みしているところを申し訳ないのですが、帝国軍を倒すために、もう一度だけ力を貸してくれませんか?」
【ビルドロボット】で戦車やヘリの残骸を変形合体させてパワードスーツを構築。
電脳空間から実体化させた多連装ロケットランチャーやマルチミサイルランチャー、レーザーガトリングを装備して敵に攻撃ですっ!
「この子たちの無念、晴らしてあげますねっ!
最後に派手に行きましょうっ!」
アリシア・マクリントック
あの機体のデザイン……接近戦は苦手と見ました!数も多いですし、それならこれです!変身!――扉よ開け!フェンリルアーマー!
私の能力ではまとめて攻撃をする、というような技はありませんから懐に飛び込んで一機ずつ確実に仕留めていきましょう。地上戦であればマリアも戦えますし、しっかり連携していきましょう。
他の方たちの様子にも気を配ります。持久戦が必要な戦況になればスカディアーマーに切り替えて守りを受け持ちましょう。
既に廃墟でしかないとはいえ、できればこれ以上街を破壊されたくはないですね……
●
「わぁっ、壊れてますけど解放軍の旧式戦車に戦闘ヘリ! 博物船で見た模型も凄かったですけど、実戦をおこなったものを直接見られるなんて感激ですっ! やはり模型とは違ってどの角度から攻撃されたのか、どれは耐えられてどれが致命傷になったのか、どういう戦略で運用されていたのかがわかりますね! 現物に勝る資料なしです!」
激戦の末に大破し放棄された兵器の残骸に目を輝かせるアイ。
この兵器はどんな戦いを経験したのだろう。どんな攻撃をどれほど受けてその任務を終えたのだろう。そんな歴史と戦争と技術への好奇心を満たしてくれそうな教材の山に夢中になっている彼女の背中を襲うように、無数のビームとナパームが撃ち込まれている。
「あの、すみませんが少しだけ急いでくれますか? この程度の攻撃ならスカディアーマーで耐えられますけど、いつまでもとは行かないので……」
それを重厚な鎧で受け止めながら申し訳無さそうにアイを急かすアリシア。一気に敵を駆逐するような強力な攻撃を持たない彼女にとって、アイは攻撃面での頼みの綱だ。その彼女が必要だというならば、アリシアは信じて彼女を守るのみ。
それが多少……いや多分に趣味の行いのように見えたとしても。
「……はっ! すみませんアリシアさん、大丈夫です! というわけでせっかくお休みしているところを申し訳ないのですが、帝国軍を倒すためにもう一度だけ力を貸してくれませんか?」
文字通りお願いするように、両手を組んで小首を傾げ残骸に語りかけるアイ。
その願いに応えたのか、焼け焦げた戦車やヘリが合体し人型となり、朽ちた装甲も新品の輝きを取り戻す。
「ありがとうございます! あなたたちの無念、晴らしてあげますねっ! 最後にもう一度、派手に行きましょう!」
巨躯の人型機動兵器、そのコックピットに滑り込み電脳空間から取り出した武装をドッキングするアイ。
「おまたせしましたアリシアさん! さあ反撃行きますよっ!」
「ええ、それなら……接近戦の苦手そうなあの機体を相手にするにはこれです! 変身! 扉よ開け――フェンリルアーマー!」
アリシアの纏う大型の重装鎧が軽量な近接白兵戦用の軽鎧へと変貌してゆく。と同時に、スカディアーマーの陰に隠れ砲撃を凌いでいたマリアもその身を敵前へと躍らせた。
「支援砲撃は任せてくださいっ! 守っていただいた分、今度は私がお二人を守りますよっ!」
「頼もしいですね、アイさん。ではよろしくおねがいします!」
戦車由来の重装甲を頼みに、敵のビームキャノンを弾きながら前に出るアイ。一斉発射されたミサイルやロケットの雨が敵戦車を頭上から貫き爆砕し、その破壊の渦を生き延びた機体へはアリシアの爪が猛烈な勢いで叩き込まれる。
両者を阻止しようと武装を突きつけた戦車にはマリアが体当たりをしてそれを妨害し、攻撃の機会を逸した敵戦車をビームガトリングと爪が貫き破壊した。
「既に廃墟とはいえ、これ以上街を破壊させないためにも……ここで残さず戦車は破壊しましょう!」
「えっ。あ、はい。そうですねっ! …………そうでした、街を破壊させないようにしなきゃ」
一気に形勢逆転した猟兵を前に撤退の動きを見せる帝国軍。それを逃さぬと二人は追撃を敢行する。
船の被害を最小限に、一輌ずつ丁寧に屠る二人の猟兵。その戦闘はいつしか流れるように入れ替わる攻守が見事に噛み合い、帝国軍の抵抗を許すことなく戦車隊を屠っていった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
レナータ・バルダーヌ
当時の凄惨な状況が窺い知れる光景ですね……と、今は目の前の敵に集中です。
とりあえず思ったより広い船内で助かりました。
これなら空を飛んでも大丈夫そうです。
正面の部隊をと言われましたけど、この人数でしたら手が足りそうですし、わたしは解放軍の兵士さんを支援しましょう。
炎の翼を形成して空を飛び、敵の上方から接近して【A.A.ラディエーション】を【零距離で撃ち】込んで内部機構を破壊します。
これなら敵も角度的に両方を狙うのは難しいでしょうから、隙を突きやすくなると思います。
こちらを狙われたらサイキック【オーラで防御】しますけど、防ぎきれなくても【痛みに耐え】るのは得意なので問題ありません。
●
「思ったより広い船内で助かりました」
ぐっと空中で伸びをひとつ。のびのびと手足を伸ばせる空間があるのは、圧倒的多数の人間が居住することを前提に建造された都市宇宙船ならではの特徴だろう。
空――船の天蓋に蓋をされた偽りのそれ――を空と呼び、飛べるだけの空間のゆとりに感謝しながらレナータは猟兵たちの主戦場とは反対方向へと向かってゆく。
見下ろせば至るところに遺された激戦と殺戮の痕跡。一体どれだけの生命が失われ、どれほどの無念が、どれほどの復讐心がここに渦巻いているのか。
「……と、今は目の前の敵に集中です」
気を抜けばそんな戦闘痕に吸い寄せられる視線を前に戻し、レナータは進む。彼女の目的は解放軍の偵察隊との合流だ。
退路確保のため、大規模包囲を企む敵軍の両翼を叩きながら後退し、伏兵を駆逐するという偵察隊。
彼らは一度敵と戦闘した経験の上で装備を整えてきた部隊だ。放置したところで負けはすまい。負けはすまいが、戦いで怪我をする味方は少ないに越したことはないのだ。
「お、いましたね。人数が少ないのは散らばったからでしょうか? おおーい、あっちは人手が足りていますから支援に来ました」
炎の翼をばさばさと羽ばたかせ、地上で敵戦車と交戦する数名の解放軍騎兵に手を振りながら高度を下げるレナータ。
突然の気の抜けた声とともに現れた航空戦力に、敵戦車が動揺したように砲塔を揺らす。
そこへレナータが降り立ち、両手をそっとその天面に添えると戦車が内部から弾け飛んだ。
「痛めつける側は苦手なので、手加減できないんですよ」
跡形も無く砕けた戦車が在ったであろう空間に呟き、レナータは次の部隊の救援へと飛ぶ。
地上の解放軍騎兵と空中のレナータ。二方面からの攻撃に対し、敵戦車の武装は同時に双方を迎撃できない。
そして敵は解放軍を正面に据えて交戦中なのだから、レナータはたいしたリスクを負うこと無く敵を駆逐していった。
おかげで解放軍の後退速度は跳ね上がり、退路確保を成功させた彼らが戦場の支援に部隊を割けるようになるのも時間の問題だろう。
だが、どんな物事にも例外はあるものだ。
レナータの存在を認めるなり躊躇なくレナータこそが脅威だと判断し、解放軍を無視して対空迎撃を開始する車輌も稀にあったのだ。
空を切り裂くビームキャノンを羽ばたきで身を躍らせ回避し、避けきれないものはオーラ防御で受け止め逸らす。
そうして彼女は戦車の攻撃を凌いでいたのだが、ついに受け止めきれないレベルの高出力砲撃を受けて墜落してしまう。
全身を焼かれ、墜落の際に何処かぶつけたのか傷を負ったレナータ。
されど彼女は痛みに涙を流したりしない。痛みに耐えるのは得意だと笑って、ゆっくりと自らを撃ち落とした戦車に手を触れて。
「でも痛かったので、これはその分の私の復讐です」
むりやり車内に押し込まれ膨張した念動力が、金属の箱めいた敵戦車を粉砕する。
同じように次々と戦車を破壊していく彼女。その支援を受けた解放軍は驚くほど損害を減らし、帝国軍を圧倒するのだった。
「無事でした? ではこのまま援護しますから進みましょう」
「猟兵……? そうか、向こうは大丈夫なんだな? ありがたい、我らが守護天使に感謝しろよお前達! この調子でゲートの制圧は我々が一番乗りだ! 進めェ!」
かくて解放軍偵察隊の面々は、燃える天使へ感謝と畏敬を捧げて進撃する。
後方への進軍は勇猛さに欠けるかもしれない。逃げを前提に戦うなど臆病だと言うものもいるかも知れない。
だが、これは戦後の戦いだ。何よりも生きて帰ることこそが重要であると、兵士たちは知っている。死に埋め尽くされたこの船で、天使に導かれた戦士たちは生き残るために進軍するのだ。
成功
🔵🔵🔴
ティオレンシア・シーディア
※アドリブ掛け合い絡み大歓迎
…これだけの赫の跡、ってことは…そういうこと、よねぇ。
正直、あんまり長居したいとこじゃないわねぇ、ココ。
(似たようなの見た覚えがない、とは言わないけど)
戦車って言っても、要は大きな機械よねぇ。
機械ってことは…回路ぶっ壊しちゃえば、ただの金属のカタマリよねぇ?
パルスグレネードバラ撒いて〇破壊工作するわぁ。巻き込まれないように注意してねぇ?
動きが鈍ったとこを弱点〇見切って●射殺で潰してくわよぉ。
戦車って、基本天板が弱点よねぇ?
たしかにあたしのオブシディアンはシングルアクションのリボルバー。豆鉄砲もいいとこよぉ?
…けど。豆鉄砲が装甲貫けない、なんて。誰が決めたのかしらぁ?
東郷・三笠
やることは変わっていない
だが、その本質は変わった
……夢は追いかけている間が楽しいとはよく言った物だな
だがそれはそれとして責任は果さなければ
東郷・三笠、推して参る
戦闘
戦闘前に味方を存在感を使い鼓舞しつつ
空中戦、ダッシュ、ジャンプを駆使して三次元軌道や盾受けで敵の攻撃を躱しいなしながら可能な限りの敵を目標にし範囲攻撃、一斉発射を使用しUCを発動
ウェポンズ、ロック解除
目標、最大数ロックオン
貴様らなど物の数ではないわ!纏めて消し飛ぶがいい!
アドリブで他の方との絡み歓迎
シン・ドレッドノート
アドリブ連携OK
【SPD】
まだこんな戦車が残っていたんですか…宇宙船を守るためにも、なるべく速やかに撃破するとしましょう。
「数が多いですねぇ…片っ端からいきますよ。ターゲット・マルチロック!」
貴紅に騎乗、戦場を高速機動しながら【乱舞する弾丸の嵐】で真紅銃、精霊石の銃、4対のライフルビットを大量に複製。電脳ゴーグル・怪盗の単眼鏡で制御し、個々に狙いをつけて一斉発射します。
味方の行動に合わせて援護射撃。フェイントの牽制射撃を織り交ぜて、戦車や歩兵を撃ち抜いていきますね。
敵の攻撃に対しては、閃光の魔盾のビームを展開して受け流してカウンターの射撃を撃ち込み、接近してきた敵はソードビットで迎撃します。
●
「まだこんなに戦車が残っていたんですか……」
皆さん結構な数を撃破したと思ったんですがねぇ、と補給を断たれてなおもこれだけの物量を展開できる帝国軍の規模に呆れたようにぼやくシン。
彼の目の前、地下道の出口からは帝国軍の戦車部隊がわらわらと這い出てくる。
猟兵の猛攻に追い立てられ、友軍と合流を目指して地下に入ったもの。
猟兵の後背を奇襲するべく、地下を経由して迂回を図るもの。
あるいは単純に、予備兵力として伏せられていたものが今この劣勢を覆すべく投入されたもの。
『部隊を再編し戦力を一極集中する――然る後に、友軍を追って散開した敵部隊を各個に粉砕……指揮官殿が動く前に片をつけるならばこれしかない。戦車前へ、ノックの仕方も知らない侵入者どもを叩き出せ!』
戦車隊の隊長が吼え、有脚の戦車が一斉に走り出す。
目の前に立ちふさがるシンなど踏み潰してしまえとばかりに一切の減速なき暴走。それを前に、彼は一歩とて退きはしなかった。
なぜならば――
「私一人でこれを全て相手しなければならないならば多少面倒なところですが……そうじゃない。でしょう、お嬢さん方」
白と紅に彩られた宇宙バイクに跨り、両手に銃を携えて虚空に語りかけるシン。その声に応じるように、ふたつの人影が廃ビルの屋上より降下する。
ひとつはブースターの炎を盛大に燃やし、何よりも派手に、誰よりも激しく。
ひとつは無駄のない最小限の動きで壁面を駆け下り、静かに、気づかれること無く。
勢いよく舞い降りるは三笠。密やかに駆け下りるはティオレンシア。ふたりの猟兵がシンと戦車隊の激突の狭間に介入する。
まずティオレンシアが金属の筒のようなものを放り投げた。地面に転がったそれは電子機器を無力化する強力なEMPを生じさせるパルスグレネードだ。
「あんまり長居したいとこじゃないわねぇ、ココ。だから手早く片付けちゃいましょ三笠さん。でも巻き込まれないように注意はしてねぇ」
炸裂した電磁波が戦車の電子機器を麻痺させる。宇宙用でもある歩行戦車は電磁波への耐性も付与されているため、動きが止まるのは一瞬。
されど、一瞬あれば十分。
「……夢は追いかけている間が楽しいとはよく言ったものだな。本質が変わろうとも、やることは変わっていない。私達のやるべき事は責任を果たすこと――」
加速し、瞬く間に地上が迫る。急速の落下に怯むことも怯えることもなく、三笠は砲を展開し動きを止めた戦車隊を捕捉した。
「全武装ロック解除、フルロックオン――」
タイミングは一瞬。それを逃せば三笠は地面に激突しタダでは済むまい。
そしてその一瞬を彼女は見事に掴み取った。
「貴様らなど物の数ではないわ! 纏めて消し飛ぶがいい!」
アームドフォートの全兵装による上空からの斉射。それは一切の容赦も慈悲もなく、戦車隊の前衛を焼き尽くす。
『新手……EMP兵器の直撃を受けた車輌は駄目だ。復旧前にやられる! 車輌を捨てて後続の援護に徹するんだ!』
見事な早業に戦力がいきなり削り取られた戦車隊が狼狽える。大慌てで対空砲撃を開始する彼らの張った弾幕を砲撃の反動を生かした不規則な機動で回避し、避けられないものは防御フィールドで受け止めあるいは刀の一閃で切り飛ばして防ぎながら空を駆ける三笠。
戦車隊の視線がそちらに向いたその瞬間を逃さなかったものが居る。ティオレンシアだ。
「あれだけの赫の跡、ってことは……そういうこと、よねぇ」
彼女の脳裏を過るのは、敵への奇襲に適したポイントを見つけるまでの間に見た黒い染みの痕跡だ。
似たようなものを見たことのある彼女は、それが何を意味するかをすぐに理解した。
そしてそれは、オブリビオンと化す前の彼ら銀河帝国軍が齎したものだ。
許せない――などと、そんな義憤じみた感想を抱くつもりはない。ただ、気に入らない。
気に入らないから撃つ。そういうものだ。
EMP攻撃で鈍り、三笠の強襲で混乱に突き落とされた戦車隊のうち、隙の多い一輌の上に降り立ったティオレンシアがリボルバー拳銃、「オブシディアン」を抜く。
「戦車って、基本天板が弱点よねえ?」
戦車という兵器は、どの世界であってもある程度進化の結果は似通っている。
つまり強力な砲を持ち、また強力な砲に耐えるため重装甲で身を守る陸戦兵器であるが、動力部の排気や放熱、乗員の乗降のためのハッチや武装が存在する上面は比較的脆い傾向がある。
『……は、ははっ。だったらどうした。そんな豆鉄砲じゃ上面装甲だって抜けやしないさ』
音もなく降り立った女の姿を捉え、恐怖を殺すために虚勢を張る戦車兵。
その論は正しいだろう。オブシディアンはシングルアクションリボルバー。対人火器としても攻撃力の高い部類には含まれないもの。
けれど。
「確かにあたしのオブシディアンは豆鉄砲もいいとこよぉ? ……けど。豆鉄砲が装甲抜けないなんて、誰が決めたのかしらぁ?」
銃声。そして戦車の上面装甲を貫いた弾丸が車内で暴れ、戦車兵たちをズタズタに引き裂き無力化する。
本来であれば貫通などできるはずのない装甲、そのごく僅かな綻び。半年前の戦争以降、補給や整備に困窮していた彼らが後回しにせざるを得なかった小さな損傷を彼女は見逃さず、それを貫く最良の角度からの銃撃を叩き込んだのだ。
「補修を後回しにしてるようだし、他の戦車もあたしでやれそうねぇ」
損傷したまま無理やり運用しているような戦車であれば、綻びは他にもあるだろう。
そこを突いて戦車兵を排除すれば、十分に戦えるはずだ。
「お二人共見事なものです。これじゃ私の出番は――無いかと思っていたんですが」
宇宙バイク、「貴紅」に跨って陣形の乱れた戦車隊へ切り込むシン。
二人の猟兵の強襲で混乱した戦車隊であるが、指揮車輌の部隊長は統率を欠いた者たちを切り捨て、周辺の者たちだけを纏め上げて迎撃の準備を整えつつある。
そこへと突入したシンは、手にした銃や思念で飛翔するライフルビットを大量に複製し、単眼鏡の補助で制御しながらすでに二人へ狙いを定めた歩兵部隊を捕捉する。
「これだけ数が多いとそうもいきませんね。片っ端からいきますよ、ターゲット・マルチロック!」
視界いっぱいの帝国兵達を照準に捉えてトリガー。乱舞する弾丸の嵐が吹き荒び、兵士たちを一掃する。
『馬鹿な。残存兵力をかき集めた部隊が……』
指揮車両から漏れ聞これる部隊長の呆然とした呟き。
それを断つがごとく、シンの両手の銃が連続して弾丸とビームを放ち指揮車両を貫き破壊する。
――指揮系統を破壊された戦車隊は、効率的な反撃など出来ぬままバラバラに猟兵へ抵抗し、そして各個撃破されていった。
反撃の要として集結した部隊が潰走すれば、各地で猟兵たちと交戦中の部隊もそのまま流れを覆すことのできないまますり潰されていく。
そうして戦車隊が壊滅していくなか、未だ白い極光の姿は見えなかった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
第3章 ボス戦
『ノーザンライト』
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POW : ギガボルトキャノン
単純で重い【超高出力レーザーキャノン】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD : ダブルレーザーキャノン
レベル分の1秒で【2丁のレーザーキャノン】を発射できる。
WIZ : 超過駆動NL
【超過駆動モード】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
イラスト:柿坂八鹿
👑7
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「ウォーヘッド・ラムダ」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
帝国戦車隊は猟兵と解放軍の連携によってその数を大きく減じ、もはや組織的抵抗力を喪失して潰走している。
追撃を開始した猟兵たちの前に、最後の抵抗が鎮圧されるのも時間の問題だろう。
「…………あの戦車を相手に此処まで圧倒的だなんて。流石英雄の再来、猟兵とは凄まじいものですね」
「彼らが居なきゃあこの間の戦争だって俺達の勝ちは無かった。だがいつまでも甘えているなよ、いつか猟兵に並ぶか、越えるか。そのくらいの気概は持たにゃならん」
市街地への侵入口までの撤退ルートを確保した偵察隊。敵を掃討するのが目的ならば、撤退するのは最後の手段だ。だが、その最後の手段が確保されているのといないのとでは前線で戦う将兵の安心感が違う。
「こういう裏方仕事が今の俺達の役目だが、お前たちはそのうちあっち側で戦えるくらいになれ」
部隊長が笑う。自身を必要以上の臆病者と評し、事実退ける戦場では誰より早く撤退を決断する彼は、自分の指揮下で部下たちが躍進できるとは思っていない。
彼の決断のおかげで偵察隊は先の戦争から目立つ損耗もなく、全員が経験を積みつつ生還しているのも事実。だが、そういったふるまいが友軍や上層部から良く思われていないのもまた事実。
「冗談でしょう隊長。私達は偵察部隊です。正面戦闘なんてガラじゃない、あなた流に言えば臆病者の集まりですよ」
副長の冗談に違いない、と笑い合う隊員たち。そこへ、超長距離からのレーザーが奔った。
はは、という笑い声の残滓を残して蒸発する二騎の鎧装騎兵。つい先程まで生きて言葉を交わしあっていた戦友が、溶けた金属の飛沫と混じり合って飛散する。
「――敵襲! ニコール、お前が隊の指揮を引き継げ! 部隊を纏めて市内に避難! 掃討中の猟兵に救援を求めろ!」
「隊長は!?」
臆病者でも隊で一番のベテランに違いはない。敵の居場所を探り当て、猟兵が駆けつけるまでの時間を稼ぐくらいはできると胸甲を叩いてレーザーの射線を辿るように飛び立つ隊長騎。
命令に従い猟兵と合流するべきか、全騎で隊長の援護に向かうべきか。
一瞬の迷いを振り切って、副長は後退を判断する。
「全騎私に続け! 市内の猟兵に救援を求めます!」
「副長しかし! 隊長が!!」
「――隊長が心配なら急いでください! 我々が一秒でも早く救援を呼べばそれだけ隊長の生還率も上がるんです! 高度は上げず建物を遮蔽にとって全速移動!」
地表を滑るように速度を上げて廃墟の街に飛び込んでいく騎兵達。
彼らの背後で、数度レーザーが大気を焼く閃光が奔った。
●
「――猟兵! 此処にいましたか! ……不明の強力な敵に遭遇、二名戦死、隊長が時間稼ぎをしています! 至急救援を!!」
戦車隊を殲滅し、集結してノーザンライトの捜索をどう分担するか相談していたところへ飛び込んできた偵察隊の面々。
その副長からの救援要請に、猟兵達はすぐさま武器を構え直す。
強力な敵とは間違いなくノーザンライトだろう。前大戦のエースを相手に、いくら隊長格とはいえ今の解放軍の兵士が単独でそう長く戦い続けられるとは思えない。
「分かった、すぐに向かう。それで、場所は何処だ?」
「我々が市内に侵入したドックへのハッチ付近です。……ありがとう猟兵、隊長を頼みます」
任せろ、と駆け出した猟兵たちの進路を塞ぐように天から撃ち下ろされたレーザーが路面を薙ぎ払う。
何事だと空を見上げた猟兵達は見た。人工の夜、外の宇宙空間が投影された星空に輝くバーニアの光。
青白い炎の尾を引いて飛翔する巨大な白い機影。
『クズがクズの分際で私の邪魔をしようとは全く不愉快だな』
ゴミを屑籠に放るように投げられたそれは、隊長騎の識別番号が刻まれたアームドフォートの装甲。
『もともとクズの集まりだったが帝国に逆らう叛徒どもの技量も堕ちたものだ』
「…………隊長? うわぁぁぁあああ! 貴様ッ!!」
怒りに震え、天から猟兵と解放軍を見下ろすそれへと飛びかかる偵察隊の騎兵。
それを蹴りの一撃で叩き落とし、廃ビルに墜落した彼へと容赦なくレーザーを浴びせトドメを刺すその機体に、一切の慈悲も躊躇いもない。
帝国に従わぬものは等しく無価値な塵芥だと信じて疑わぬもの。帝国の支配の遂行者。
それはその信仰の象徴たる皇帝と帝国が滅びてもなお不変。むしろだからこそ、無価値な塵芥の分際で偉大な帝国を害した者共を滅ぼすことにより執念を燃やすものだ。
『これで四騎。ふん、他のクズどもは力の差を弁えているようだな。ならば安心するが良い、帝国への服従という道理を学ぶ機会を与えられなかった哀れなクズは私が苦しまぬよう一瞬で殺してやろう』
副長達が怯むのを愉しげに嗤い、その機体――ノーザンライトはレーザーキャノンの咆哮を一同に突きつけた。
だが、その力に怯まないものも居る。
『なんだ貴様らは。そこのクズども同様おとなしくしていれば良いものを……いや、わかる。わかるぞ、そうか貴様らが猟兵か。有象無象のクズの分際で陛下に仇為した救いがたいクズどもめ、泣いて詫びようが貴様らは苦しみぬいて死ぬが良い!』
トリテレイア・ゼロナイン
偵察部隊は立派に務めを果たしました
後は私達の役目です、お任せください
あのエースは言動は論外、実力は本物
挑発に乗らず冷静に戦います
UCの発振器をビル群の壁面に待機状態でばら撒きます
偵察隊や猟兵への攻撃は防御重視の電磁バリアを形成し●かばいます
防御に使用した発振器は一回で壊れるでしょうが…
機械馬に●騎乗、ビル群やバリアで形成した足場を●踏みつけ跳躍し接近
空中でのキャノンは●怪力で射線を遮るように盾と対光線コーティングの儀礼剣を投げて●盾受け●武器受けで防御
ワイヤーアンカーでの●ロープワークで取りつき●怪力での貫手で推進器に損傷を与えます
かつて相対した「青」のような誇り高き戦士ではないのが残念です
月宮・ユイ
アドリブ◎
*身に<呪詛>宿し呪詛/呪操る
強烈な帝国絶対主義…まるで狂犬ね
もしかして戦車隊でも持て余したが故の別行動だったのかしら
偵察隊の皆さんには引いて貰う
彼らを狙わずとも周囲への被害大きい可能性大。
これ以上の犠牲を出すわけにはいきません
悔しいでしょうが今は引いて下さい
<第六感>併用全知覚強化<情報収集・学習>
[コメット]に騎乗操縦、空中戦で戦う
《捕食兵装》武装圧縮成形
電脳魔術<呪詛式ハッキング>仕込み命中毎侵蝕
杭:<早業>で多数成形<誘導・呪殺弾>射出
レーザー迎撃時は命中と共に球体に展開力喰らい防ぐ
▼【超過駆動モード】
杭を囮に時間稼ぎ
力溜めし巨大な槍形成、投擲発射串刺しに。
ここで散りなさい
●
星天を駆ける極星の輝き。
白銀の装甲に蒼き推進の光を反射させるその姿は美しく、されどその思想理念感情はドス黒く醜いものである。
猟兵達はノーザンライトの存在をそう認識し、もはやこの期に及んで彼との対話は挑発以上の意味を為さぬと理解した。
此処までの歪んだ価値観は銀河帝国の遺した負の遺産である。それしか知らず、それに囚われた哀れな機体を見上げ、この廃都で銀河帝国の蛮行によって死んでいった多くの人々の無念を呪詛としてその身に宿すユイは彼を狂犬と評した。
「あそこまでの強烈な帝国絶対主義……もしかして戦車隊でも持て余したがゆえの別行動だったのかしら」
あの凝り固まった祖国への執着、変節したプライドは敗軍において正常な軍事的判断を妨げる要素として余りあるだろう。
比較的冷静だった戦車隊指揮官達が、上位指揮権を持ちながら軍の統率者としての資質を欠いている今のノーザンライトを部隊運用から排除したがったとしても不思議はない。
「どうかしら。私の予想は当たっている?」
『ふん、反乱軍風情にたった二度、偶然遅れを取った如きで臆病風に吹かれるクズどもなど捨て駒として使ったまでだ。貴様たちも反乱軍どもも、あのクズどもの働きで多少は疲弊しただろう?』
ノーザンライトを嘲笑うように挑発するユイ。ノーザンライト曰くの屑の身分で彼を嘲る振る舞いは、敵エースの注目と殺意を一身に集める危険な行為だ。
それも全てこれ以上の犠牲を出さぬためのもの。この脆い船内で大火力を有するノーザンライトを相手取るならば、ただの余波でさえ致命傷となりうる。彼らの無念を承知の上で、ユイは後方で自身と意思を同じくする猟兵の為に、僅かな時間を稼いでみせる。
「貴方がたは立派に務めを果たしました。後は私達の役目です、お任せください」
信頼する隊長騎の残骸を見せつけられ、また目の前で三人の仲間が成す術なく撃ち落とされたのを目の当たりにして動揺する偵察隊を庇い前に出る白銀の騎士、トリテレイア。
騎兵たちも彼我の力量差を見誤るほど無謀ではない。否、ノーザンライトの行いに衝撃を受けた彼らは実際の力量差以上に彼の機体に気圧されている。
「…………すみません。お願いします」
「ええ、あの機体に墜とされた方々の仇は、私達が必ずや」
「――――っ。全機、戦線を離脱します!」
迅速に退いてゆく偵察隊に背を向けたままトリテレイアは頷いた。ノーザンライトの気性は残忍だ。猟兵に彼らを捨て駒として使う判断が下せないと認識すれば、力量に劣る彼らを狙うことで猟兵の隙を誘う餌として用いたとしても不思議はない。
『その前に逃がそう、と。クズにしては良い判断だ。だが私がそれを許す筈が無いだろうが。クズは一匹たりとここから逃しはしない!』
――だが、ノーザンライトはそれすらも読んでユイに視線を向けたまま、無造作にレーザーキャノンを偵察隊へ向けて発砲する。
戦艦すら貫く超高出力レーザーの光は、光速航行を封じられた重力下の騎兵に回避しうるものではない。
偵察隊の誰もが死を覚悟するより速く、その光は降り注ぎ――そして、見えない壁に弾かれビルを貫き廃車を薙ぎ払い高架を粉砕しながら拡散する。
「貴方の言動は論外、ですが実力は本物。ならばあらゆる攻撃に対して備えるのが私の任務です」
トリテレイアだ。ユイがノーザンライトの視線を惹きつけている間に彼が放った無数の杭が辺り一面を貫き、互いに電磁波を放ちバリアフィールドを形成する。それはノーザンライトの機動性と船体そのものを破壊するという最悪の切り札を封じるもの。
その檻の中に在る限り、ノーザンライトはこの廃棄都市船を破壊できず、そして壁の外へ逃げ延びた偵察隊を追うこともできない。
逃げ延びた騎兵たちのスラスターが放つ噴射炎を見届けて、馬上のトリテレイアは駆ける。
そして騎兵が無事に撤退したことでユイも時間稼ぎを切り上げ、愛機コメットに騎乗して封じられた偽物の空へと駆け上がった。
『クズ風情が! 小賢しいマネを――!』
「貴方には「青」のような誇りがない。そんな存在に私が落とされるわけには!」
ビルの外壁を蹴り、杭を踏み台に、バリアすらも大地のごとく駆け抜けるトリテレイア。
盾を構え、アンチレーザー加工を施された剣を掲げれば正確な狙撃がその表面を焼き、足場としたビルを融かすように貫き瓦礫と粉塵の塊へと変えてゆく。
「捕まえました!」
『捕らえたのはこちらだ!』
レーザーの間隙を縫うように放たれたワイヤーアンカーがノーザンライトの腕に絡みつく。張り詰めたワイヤーを巻き上げ肉薄したトリテレイアの貫手がノーザンライトの肩部スラスターを貫く、と同時に爆発的な加速で突進する巨大な機体に押し込まれ、廃ビルに捩じ込まれるように激突する。
激烈な衝撃は、トリテレイアの盾をもってしても完全にダメージを殺すことが出来なかった。崩れ行くビルの中に放り出され、落下してくる巨大な瓦礫を盾で防ぎ剣で切り払いながら墜落してゆく己を見下す白い巨影。彼が背にした星空に、一際眩い流星が駆けるのを認めて、トリテレイアは自らの役目を完遂したと認識する。
「あなたの機動は理解しました!」
トリテレイアとの一瞬の空中戦、その短期間にノーザンライトのスラスター配置や癖を見出し、そこから彼の機動特性を導き出したユイ。
倒壊してゆくビルを見下ろすその背中へとユイは急降下攻撃を仕掛ける。
付き従うは無数の呪杭。ミサイルのごとく殺意を伴い飛翔するその一本一本が帝国の悪逆の下無念のままに死んでいった者たちの想いを乗せた必殺の兵装だ。
「自動追尾用多重照準機能起動……標的マーカー付与。必中の呪詛を受け、ここで散りなさい!」
ユイの意思に従って加速する呪杭がノーザンライトの背中へと殺到する。
『――遅いな、どれだけ恨みを募らせたところで所詮クズはクズということだ』
命中の寸前、ノーザンライトの姿が掻き消えた。
直後薙ぎ払うように掃射されたレーザーに呪杭が飲み込まれ、消滅してゆく。その発射元を探るユイは、一瞬の内に急上昇し自らを襲う杭を掃討してのけたもの、まさに極光の如く装甲を発光させるノーザンライトの姿を捉えた。
「――速い、くっ……!」
機動兵器として限界に近い速度。重力下で発揮すれば自身も周囲もタダでは済まないようなそれを出してのけたノーザンライト相手では、学んだ機動特性もどこまで役に立つか。
再計算が必要だと理解するより速く呪杭を繰り、身を守る球形の壁を作り出したユイ。その判断は正しく、高速――もはや光速と化した機動であらゆる角度からレーザーを放つノーザンライトを相手に、防戦一方へと追い込まれる。
『クク……ハハハ、どうした? 私の機動を理解したのではなかったのか? クズが威勢のいい言葉を吐いたところで所詮クズ、思い上がりも甚だしい! 不愉快なクズめ、嬲ったところで悲鳴や命乞いの一つも囀ってみせんのならばもう死ね!』
連射モードのレーザーによる一方的な猛攻に飽いたノーザンライトがレーザーキャノンの砲口へと光を収束させる。如何に呪杭の防御が厚かろうと、それを貫通してみせるという自信に満ちた高出力砲撃。
それが放たれると同時、杭の球が花開くように裂け、ユイの姿が現れる。
その手には巨大な槍。呪杭の数十、数百倍の呪詛を宿し形成されたそれを、彼女は淡々と投げ放った。
閃光を黒い槍が引き裂き、そのエネルギーを喰らって威力を肥大させながら翔ぶ。
帝国の百年以上に渡る暴虐に募った黒き呪いが、帝国の百年以上に渡る栄光に取り憑かれた白い光を貫かんと突き進み――
『クズが、舐めるな……!』
直撃。そして爆発。地上から見上げるもの達にはそう見えただろう。
だが、ユイは唇を噛む。爆炎を引き裂き降下してゆく白い機影は今だ健在。あの機体は命中寸前で背にした推進剤の増槽を切り離し、身代わりとすることで生じた爆発によって呪槍を破壊してのけたのだ。
トリテレイアとユイの連携は、ノーザンライトの機動力と継戦能力を少なからず奪った。
しかし戦いは続く。帝国の妄執を背負った白い極光は今だに健在である。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
アリシア・マクリントック
全てを守ることはできないとわかっていても、これはこたえますね……。ですが、落ち込んでいる場合ではありません。まずは目の前の敵を倒します!
重力下でこういったタイプの敵を相手にするのは初めてですね……相手が大きいならこちらも大きくなるまでです。扉よ開け!ティターニアアーマー!
対抗できるような大きさでそれなりの強度を持つ私がいれば他の方もきっと戦いやすいでしょう。
機動性では劣るでしょうが、何とか捕まえて一撃当てられれば……!
攻撃が難しくてもせめて味方の盾になりましょう。最悪アーマーは破壊されてもかまいません。セイバークロスは残るでしょうし、いざとなったら生身ででも戦います!
ティオレンシア・シーディア
※アドリブ掛け合い絡み大歓迎
あらあら、やっと出てきたのねぇ?
遅いご到着ゴクローサマ。そっちの手勢、もう粗方潰しちゃったわよぉ?
…ひょっとして、単騎でどうにかできるとでも思ってる?だとしたらお笑いねぇ。
…あなた、あの「黒騎士」より強いの?
…って感じに○挑発しながら、グレネードの〇投擲織り交ぜつつ○逃げ足全開で駆け回るわぁ。
理性トばしてくれるならそれこそ好都合。
動きが単調になったところに、攻撃の起こりを〇見切って〇先制攻撃で●的殺を差し込むわぁ。関節部に徹甲弾なんかの貫通○属性攻撃で○鎧無視攻撃撃ちこめば、多少は効くでしょ。
あなたが誰か、なんて別に興味ないわぁ。
…末路は「鉄クズ」に決まってるもの。
メイスン・ドットハック
【SPD】
やけに自分を高等な存在と盲信しておる勘違い野郎じゃのー
銀河帝国もそういうのが多いから敗残と化したのかのー?
挑発しながら、ユーベルコード「汝は元素、その鎖を断ち切ろう」を発動
空間ハッキング解析する電脳領域を展開し、自身を電脳ハッキングした故の高速移動をしてレーザーキャノンを発射口から軌道を察知して回避する
さらに電脳領域にて、ノーザンライト機体の構成物質を徹底解析【ハッキング】【情報収集】をして、その主成分を特定
その解析結果を元に、その元素を崩壊・破壊させる電脳毒ガスを放射して機体にダメージを狙う
警戒して回避するようなら、電脳魔術で爆弾化して【誘導弾】にして敵に叩き込む
アドリブ絡みOK
●
『クズ風情が……群れれば私に勝てるとでも? 図に乗るなよ、皆殺してくれるッ』
殺意をむき出しに、二本の脚で大地に立つノーザンライト。
巨大な人型兵器は、それだけで相対する人間に恐怖を抱かせるに余りあるだろう。
それでも。それでも、彼らは退かなかった。鋼の巨人に対する本能的な畏怖よりもずっと強い想いをその胸に燃やしていたからだ。
あるものは巨大な悪意を前に、絶対に友を守り抜くという覚悟を。
あるものは生あるものの想いを嘲り嗤う者への怒りを。
そしてあるものは、敗残の将と化してなお敵を侮る驕りへの侮蔑を。
「四名……全てを守ることは出来ないと分かっていました。分かっていたつもりでした。けれど、これは堪えますね……」
言葉を交わしたわけでもなければ、素顔すら知らないかもしれない解放軍の騎兵たち。
戦場であれば兵士の死は避けえないと覚悟をしていたアリシアをして、その死は暗い影を落とす。
あの時、退路確保に向かう彼らに同行していれば。
あるいは、支援が必要だとか適当な理由を付けて隊を分けることに反対していれば。
そうすれば四名の生命は今もここに在ったのではないか。
「――何を考えてるか、なんとなく分かる気がするから言っておくわよぉ、アリシアさん」
白い巨人を睨みつけ、拳を握りしめるアリシアの肩に手を置いて、ティオレンシアが甘く優しい声色で彼女の悔いを正す。
「起こってしまったことに「ああしていれば」「自分ならなんとか出来たんじゃないか」って……考えてもどうしようもないわぁ。そういうことを考えてしまう優しい子ほど、死人に引っ張られてあっさり逝ってしまうのよぉ」
ティオレンシアの見てきたような言葉に、アリシアは頷かざるを得ない。彼女の言葉は正しく、そして正しさ以上に説得力に満ちていた。
「それは……はい。落ち込んでいる場合ではありませんね。今はまず目の前の敵を倒します!」
「話は終わったかのー? そろそろあの勘違い野郎も体勢を整えそうじゃしこっちも準備を済ませるんじゃよー」
アリシアの意識が戦闘に集中するのを待つように電脳魔術を組み上げていたメイスンが、ノーザンライトもまた爆風の煽りを受けて乱れた制御系を再調整し終えつつあることを指摘する。
「ええ、もう大丈夫です。意識を敵に集中して――扉よ開け、ティターニアアーマー!」
アリシアの決意が形を作る。巨大な機械人形に対抗しうるのは、やはり巨大な重装機鎧だ。分厚い装甲を武器とするその機体は、機動性と高火力の火器を重視したノーザンライトと対極に位置する。
あらゆる敵を無傷で屠るための速さ。あらゆる味方の前で耐え凌ぐための不動。
あらゆる敵を焼き尽くすための火器。あらゆる暴力を防ぎ守り抜くための装甲。
極光に相対するは妖精女王にして神なる巨人。
『チッ……クズに武器を持たせる時間を与えたか。だがしかし、何だその出来の悪い玩具は? そんな重機モドキで私の相手を? ククク、愚かさも此処まで来ると愉快にさえ感じるな!』
ティターニアを嘲笑い、レーザーキャノンを照射するノーザンライト。その閃光を、アリシアは真っ向から受け止め耐える。
「くっ……これほどの威力……っ」
主力戦艦級の艦砲に匹敵する、あるいは上回る程のレーザーに対抗する装備を持たないティターニアがじりと押し込まれ、装甲表面が異常な高温に達して悲鳴を上げる。もう耐えきれない、バラバラになるぞと視界いっぱいに警告を散らして機体が叫ぶ。
けれど、アリシアは退かない。自身がここで耐えている間、二人の仲間がノーザンライトに一矢報いると信じているから。
「ナイスガッツじゃのー。おかげで集中して解析できたんじゃよー」
そのアリシアの後ろで、退避するでもなく口元を微笑ませるメイスン。
「やけに自分を高等な存在と盲信しておる勘違い野郎じゃのー。こんなのばっかりじゃったなら銀河帝国が滅びるのも納得かのー?」
その挑発がノーザンライトに届いたか届かなかったか。それはメイスンにとって興味の対象ではなかった。
彼女の目に映るのは、電脳ゴーグルの内側に表示される電子の世界のみ。あらゆる物が解析され、演算され、未来すら見通す仮想の神域にて、メイスンは全知に等しいものとなる。
その視点から見れば、多少戦闘力に優れる如きで他者をクズと嘲るノーザンライトなど矮小な存在にすら思えた。とはいえ、戦闘力の一点において彼はメイスンを上回る。それを忘れる愚を彼女は犯さない。
そしてメイスンは全知をもってノーザンライトを追い詰める。
その装甲材を、内部構造を、重要区画を稼働させるためのパーツの配置と材質を。一機の工業製品としてノーザンライトを知り尽くしたメイスンは、致命の毒を忍ばせる。
「万物を解析できるということは、万物を壊せるということじゃけーのー」
彼の高出力レーザーを実現する大型動力炉、その安全装置を原子へと分解し破壊するための毒ガスが静かに這い寄り、ノーザンライトを襲う。
『――クズが、貴様らが搦め手を使うことなど考えていないわけが無いだろうが!』
しかしノーザンライトとてエース。かつての戦争で戦い抜き、解放軍に恐怖された機体である自負がある。能力がある。経験がある。
アリシアを封殺する一門とは別に構えたもう一門。二つ目のレーザーキャノンが、ノーザンライトの足元を射抜いた。
重装甲の戦艦をも貫く砲撃を浴びては、如何に地下構造の深く分厚い都市船であっても容易く貫徹されてしまう。
船底を突き抜け宇宙に奔った一条の閃光、それが生み出した真空へと通じる穴はメイスンの毒ガスを勢いよく吸い出し船外へと排出する。
――そればかりではなかった。
突如ノーザンライトの装甲表面を小さな爆発が埋め尽くす。
メイスンには見えていただろう。宇宙へと吹き抜けてゆく突風に乗ってノーザンライトへ殺到する手榴弾が。
だから、彼女はそれを次善の策として利用した。手榴弾の構造を即興で解析し、その炸薬をより強化するガスを生成したのだ。
「――破壊ができるなら改変も、出来ん道理はないからのー」
「いい援護よぉ、メイスンさん。アリシアさんもよく頑張ってくれたわねぇ」
サイズに対して異様な高威力の手榴弾が連鎖爆発したことで、ノーザンライトは狼狽えよろめいた。
気を引くための牽制程度に考えていた攻撃が、本命に繋がる下準備として十分以上に役目を果たす。
「手勢はあらかた潰されて、やっと出てくるなんて遅いご到着ゴクローサマねぇ」
突風に引き込まれるように駆け抜け、ティターニアの背を蹴り登って大跳躍する暗殺者。
「ひょっとして単騎でどうにかできるとでも思ってる? だとしたらお笑いねぇ――」
白銀の巨人すら見下ろして、リボルバーの撃鉄を起こす。
『クズが! 多少の目眩ましが効いたからとその程度の玩具で私をどうにかできるだと?』
「人のことをクズクズって、随分高等な存在のおつもりみたいだけど……あなたが誰かなんてどうでもいいわぁ。……末路は「鉄クズ」に決まってるもの」
発砲音。リボルバーから放たれた特殊徹甲弾は、ノーザンライトの関節部にぶつかり火花を散らす。
六発全てを右肘に集中射撃し、強風に吸い込まれながらの自由落下に任せて落ちてゆくティオレンシア。
――貫通、出来なかったわねぇ。
徹甲弾といえど、拳銃ではここまでか。ティオレンシアの銃を玩具と侮ったノーザンライトは正しかったのか。
最善以上を尽くし、やれることは全てやった。後は仲間たちに任せるのみ――地面に空いた宇宙への穴に身を投じるティオレンシア。
それを、鈍重な機体で無理やり疾走したティターニアが受け止める。
掌で柔らかに包み込むように彼女を確保した重装機鎧は、そのまま反対の拳を固く握りしめ――
「受けなさい、巨人の一撃! スター・ブレイカー!」
『重機風情がァ……!!』
単純極まる腕力の一撃がノーザンライトを吹き飛ばす。
奇襲めいた一撃とはいえ、とっさに踏ん張るではなく後方に自ら吹き飛びダメージを最小に留めた辺りは流石のエースだろう。
だが、全てを電脳の神の目から見ていたメイスンは知っている。
手榴弾による衝撃。徹甲弾の一点集中射撃による損傷。そして極めつけの大質量による殴打。
連続して与えられたダメージは、ノーザンライトの右腕に本人すら気付かぬ綻びを与えていた。
微かに弾けるコロナめいた放電は、ただでさえ高エネルギーにして高負荷の砲撃を主とするノーザンライトの右腕がいつ崩壊するともしれぬ爆弾を抱えた証。
「そのことを教える前にとりあえず穴を塞がんとのー、こんなに風が強くちゃ立ってるのもしんどいんじゃよー」
伝えずとも、猟兵ならば気づいてその綻びを撃ち貫くだろう。
船のシステムにハッキングし、損傷時の破損箇所封鎖システムを起動させ穴を閉じながら、彼女はノーザンライトに挑む仲間たちの奮戦を信じるのだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
レナータ・バルダーヌ
解放軍の兵士さんが……!
……絶対に許しませんよ!
【B.H.エアライド】で両翼の痕から炎を噴射し、【衝撃波】で敵を足止めしつつ、最高速度から【捨て身】覚悟の体当たりを敢行します。
側面の防護は高速飛行の反動に耐えられる程度にして、【オーラによる防御】を正面に集中させ、更に体をきりもみ回転させて衝突時の威力を高めます。
敵もこちらを狙ってくると思いますけど、この速度ならそう簡単に狙いは絞らせません。
「これは隊長さんの分です!!」
敵が超過駆動モードになれば、他の皆さんに対しては囮の役割を果たせるかもしれませんけど、今のわたしにはどうでもいいことです。
アシェラ・ヘリオース
【連携・改変歓迎】
「貴公の振る舞いを悪逆とは呼ぶまいよ」
苛烈なまでの蹂躙で敵の意気地を砕く。
抵抗よりも速やかな服従を選択させるのも一つの手法だ。
自身もかっては幾度も繰り返したやり方だ。
「しかし、その先に目指す未来がないのならそれは滅びるべきだ」
それだけは唯一譲れない。
リミッターを解除して飛翔し、黒刃にフォースを通し巨大な刃と為す。
・戦闘方針
【オーラ防御】でいなしつつ、【念動力、誘導弾】で風車手裏剣を飛ばして【空中戦】をはかる。
【超過駆動モード】は危険だが【戦闘知識】で制御の間隙を探り、一瞬の【ハッキング】で【メカニック、早着替え、迷彩】で高速デコイ。
出来た隙を【二回攻撃、鎧砕き】で大剣で狙う。
ニトロ・トリニィ
くっ!間に合わなかったか…
すまないね… 僕達を恨まないでおくれよ…
君達の仲間の仇は僕達が必ず取るから!
あの人型兵器… 中々速いしかなり硬そうだね。
今回も狙撃手として動きたい所なんだけど、血煙丸じゃ力不足っぽいし《集約する炎》で狙撃を行うよ!
〈目立たない/忍び足〉で気配を消しつつ、UCの出力を限界まで上げながらタイミングを見計らって狙撃かな。
この一撃に全てを賭けるよ!
この時に〈スナイパー/鎧砕き/鎧無視攻撃〉を合わせたら命中率・威力が上がりそうだね。
撃墜出来ないとしても、何らかの損害を与える事が出来ればそれで良いかな。
アドリブ・協力歓迎です!
●
『どいつもこいつも群れねば歯向かうことも出来んクズどもの分際で!』
機動力が減り、継戦能力が削られ、右腕もまた本人も気付かぬ傷を負ったノーザンライト。
ビルを遮蔽に厄介な猟兵たちの射線を遮った彼は、怒りに任せて辺りに転がる放棄された車輌や兵器の残骸をレーザーの連射モードで焼き払う。
微かに残っていた燃料が引火し、炎に包まれる一帯。赫々と燃え盛る炎を白銀の装甲に反射させて、その巨人は周囲を睥睨する。
クズの一、二匹も燃えていれば多少は溜飲も下がるだろうか。
好き好んでそうしたいという趣味はないが、炎に包まれのたうちながら助けを乞うクズは滑稽で、その生殺与奪――燃え尽きるまで放置するか、慈悲を以て踏み潰してやるかを選ぶ権利が全て我が手にあるというのは気分がいい。
そんな傲慢を抱えたノーザンライトへと一直線に迫る追撃者の影がある。
炎に紛れるように、自らも炎の翼を広げて地表スレスレを飛翔する傷だらけの天使。
レナータは怒りを感じていた。解放軍の兵士たちを、守りたいと願った人たちを無造作に殺したノーザンライトへの怒りが、噴出する炎の双翼に焚べられる燃料となる。
赫い炎を切り裂き征く蒼い炎。その存在にノーザンライトも気づき、その声音に喜色が滲む。
『来たかよクズが! 一匹で飛び込んできたことは褒めてやる、そのまま死ね!』
白銀の装甲が再び発光し、ノーザンライトの出力が上がったことを示す。回避機動の気配もなく、ただ愚直に突進するレナータは、ノーザンライトにとって撃ち落としやすい的も同然。
「解放軍の兵士さんたちを……絶対に許しません!」
『戦争に許すも許さないもあるものか! 目障りなクズを、それも敵を殺して何が悪い!』
「あなたは……ッ!!」
弾幕を張るように連続で撃ち込まれたレーザーを、オーラ防御の正面一点集中で防ぐレナータ。
ならばとノーザンライトが連射速度を犠牲に一撃の威力を高めれば、錐揉み回転で防御障壁の被弾部位を分散させることで対応してみせる。
砲弾の如きレナータの飛翔。それに正確に弾幕を浴びせてみせるノーザンライトの技量は確かにエースのそれだろう。だが、その技量に裏打ちされた砲弾すら撃ち落としてみせるという傲慢が回避のタイミングを致命的に逸させた。
「――これは隊長さんの分です!!」
その身を砲弾とし、炎を纏いノーザンライトの胸部へと飛び込んでゆくレナータ。
捨て身の特攻は、もはや回避不能の必殺へと至り――
『他人の仇討ちで私を討とうなど、自分の意思で敵を殺せぬクズの言い訳で私が落とされるものか!!』
故にノーザンライトは最後まで回避を選ばない。
選ぶのは迎撃、誇り高く絶対強者たらねばならぬ帝国の将校が、避け得ぬ攻撃を前に無様に逃げながら被弾するなど在ってはならぬこと。
クズと断じた敵に、一片たりとも希望を抱かせるなかれ。故に彼は強力な特攻を前にして一歩も退かず、ただ一振りの回し蹴りでレナータを阻止してのけた。
『チッ……クズ騎兵どもと違って威力だけはあったようだな……』
廃ビルの割れた窓を突き破って暗い建物に飛び込んでいった天使に追い打ちすることなく、ノーザンライトは損傷を確かめる。
左脛に内蔵された衝撃緩和システムが多少損傷し、走行に若干の支障。――ここが重力下環境であることを考慮すれば、ヘタな地上戦は左脚の自壊に繋がりかねない。
となれば、とスラスターに火を灯し浮遊する巨人。
推進剤の残量は潤沢とは言えないが、クズどもを駆逐するまでは保つだろう。その後でこいつらの乗ってきた船から部品と燃料を奪い、有効に活用してやればよい。
ほくそ笑むノーザンライト。その姿を、暗闇からじっと捉える者がいる。
「くっ……間に合わなかったか。すまないね……」
狙撃ポジションに辿り着くなり、枠組みだけになった窓を突き破って飛び込んできた傷だらけの少女を受け止めニトロは呟く。
解放軍の兵士たちを救えなかった。そして今、猟兵の仲間が傷を負っている。
「君たちの仇は僕が必ず取るから」
だから、ゆっくり休んで。
このコートがちゃんと布だったら良かったんだけど、と少しだけ申し訳無さそうに、朽ち果てたビルの床に積もる埃を払ってレナータを横たえるニトロ。
呼吸は安定している。傷も見た目ほど深くはない――というより、彼女の身体を染める赤の出処は殆ど古傷が開いたことによる出血のようだった。
「よほど防御が上手かったんだろうな。うん、これなら安心だ」
万が一にも反撃を喰らって巻き添えにするわけにはいかない。ようやく見つけた狙撃ポジションを諦め、次へと駆けるニトロ。
一方で彼とは真反対、道を挟んで向こう側のビルの屋上にも、一人の猟兵の姿があった。
「貴公の振る舞いを悪逆とは呼ぶまいよ」
真っ直ぐにかつての同胞、戦友、同じ御旗を仰いだ兵士を見下ろすその影こそアシェラ。
元帝国の騎士として、ノーザンライトの思想も心情も分からぬではない。
彼ほどの力量を持つものが、過剰な、苛烈なまでの蹂躙で敵の意気地を砕いて帝国への服従を迫る。
これもまた帝国軍の基本戦略の一つであり、アシェラ自身もそのような作戦を陣頭で指揮したこともある。
抵抗する反乱勢力の構成員を過剰に貶め、仲間の目の前で切り捨て降伏を強いた経験が無いとは言わない。
だが。だけれど、その行き着く先は。
「未来が無い。ならばそれは滅びるべきだ」
恐怖で服従を強い、従わぬものは滅ぼす。帝国の僕か、滅ぶべき敵か。0と1しか存在しない価値観は、最後には反乱軍――解放軍の大規模な蜂起によって帝国の落陽へと繋がった。
「それを知らぬ貴公ではないだろうに!」
装備のリミッターを外し、ビルから飛び降り黒いサーベルを巨大な刃へと変えて頭上から攻め込むアシェラ。
『奇襲攻撃とは……それにこの剣――久しいな! 貴様どこの部隊だ? 帝国騎士が同じ皇帝陛下の臣たる私に刃を――』
「今の私は陛下の騎士ではない!」
二門のレーザーキャノンを交差させ、刃を挟み込んで受け止めるノーザンライト。
その問いかけを一刀両断に切り捨て、アシェラはさらに念動力で放った手裏剣を用いて奇襲を仕掛ける。
回転しながら背後を襲う手裏剣を、ブーストダッシュでアシェラごと地表を滑走することで回避するノーザンライトと、鍔迫り合いに持ち込まれ単純な膂力では圧倒されながらもフォースの力でそれを押し返し拮抗状態を作り出すアシェラ。
『騎士ではない? 裏切ったか、帝国騎士ともあろう者が! ただのクズにも劣るクズに堕ちたか、貴様!』
ノーザンライトの輝きが強まる。人格に難があれ、彼は帝国に仕えその勝利のために全てを捧げる兵士としては誠実であった。
その彼を前に、帝国を裏切った騎士が現れればその怒りは想像に難くない。
『陛下に頂いた大恩を忘れ、クズどもとつるんでかつての同胞を狩るか! クズ以下の下衆がッ……!』
「好きに罵るがいい! 皇帝の下では宇宙に未来が無いと知った! 故に私は正しいと思ったことをしたまでのこと!」
『それが裏切りの理由か! そのような妄想で陛下に牙を剥いた貴様のような下衆はこの私が断罪する!』
力と意志のぶつかり合い。帝国のエースと元帝国の騎士の激突は、幾度となく刃と砲身の激突で火花を散らす。
「くっ、流石はエース、攻め切れないか……!」
『ちぃ、腐っても騎士、押し切れんだと……!』
「――今度こそ。ここなら大丈夫、あの子を巻き込まない筈だ」
風化したビルの屋上で、激戦を繰り広げるノーザンライトを見下ろすニトロ。
背負っていた対物ライフル「血煙丸」をそっと下ろして、しかしその銃把を握ることはなく錆びついた手すりに近づいてゆく。
「あの機体、中々速いし硬そうだし……血煙丸じゃちょっと力不足っぽいしね」
狙撃手の攻撃は一撃必殺が原則だ。それが出来なければ反撃を受けてしまう。
だが、今回の敵はそれを許してくれそうにない。ならば反撃を受けるまでになるべく多くのダメージを与えねばならない。
だからニトロの狙いは、撃墜ではなく損傷を与えること。
一撃で、可能な限りの大ダメージを。
イメージは単純だ。右手の親指と人差指だけを伸ばし、あとは折り曲げて銃の形を作る。
人差し指の先端、架空の銃口に力を込めて。自分に出せる可能な限りの全力を。
そうして、激しく斬り結ぶノーザンライトとアシェラが一直線に、ノーザンライトの背がこちらに向いた一瞬にニトロは己の全てを賭ける。
「……今だ!」
指先から放たれるのは、ノーザンライト自身の砲撃にも匹敵する高出力のレーザー。
『――こんな時にクズの横槍が入るか!』
その狙撃を、ノーザンライトは躱してみせた。正確には回避できたわけではないが、致命傷を避けてのけたのだ。
損傷した左脚を犠牲に使い、その腿半ばより下を丸々蒸発させたノーザンライト。
「外した……いや、欲張りは良くないね。あの子を回収して撤収しよう」
ニトロが階段を飛び降りるように下っていく。直後にビルの屋上をノーザンライトの砲撃が薙ぎ払った。
「――余所見をするとは余裕じゃないか!」
『いい加減しつこいぞ、貴様ッ!!』
突然の支援砲撃で片脚を失ったノーザンライト。彼に振りほどかれたアシェラは、念動力で呼び戻した手裏剣を足場代わりに蹴りながら狙撃手に報復の一撃を撃ち込んだノーザンライトの背中に斬りかかる。
それを白銀の巨人は片脚だけで器用に姿勢制御し、推力任せの旋回に乗せたレーザーキャノンの殴打で弾く。
だが、その殴打を受けた瞬間アシェラの姿がノイズに変わり消えた。
『――いや、消えたのではない……私のセンサーにデコイを忍ばせたか!』
今更気づいても遅い――振り払われた後、地上に降り燃え盛る廃車の屋根を駆けるアシェラの刃が横薙ぎに振るわれ、ノーザンライトの右足をも脛から切り落とす。
だが、一撃を入れたということはつまり本体の位置を相手に伝えるということでもある。
『私の脚一本をくれてやる! だが貴様は死ね! 裏切り者がッ!!』
スラスターの推力だけで飛翔する、両脚を失った巨人。その両手の砲口が輝き、自らの斬り落とされた脚を射抜く。
その爆炎を至近距離で浴びたアシェラは、炎に焼かれながらしかし戦果を挙げたことを認めて退いてゆく。
ノーザンライトとは違う。彼女には後を託せる仲間が居るのだから。
苦戦
🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴
ユーノ・ディエール
アドリブ連携可
先の戦に間に合わなかった出遅れ風情が――いいでしょう
身の程を教えてあげます!
クルセイダーに騎乗し全身を虹色の光で覆って
最大戦速で突入後、敵の大技を誘発します
それまでは強化された全武装で空中戦を
距離を取りつつ敵を一般兵のいない区画へ誘い出します
どうしましたか? その程度の腕で私達を倒せるとでも
まあ無理でしょうね――
ここにいる皆は白騎士も黒騎士も屠った歴戦の兵
あなた如き無名の兵士が幾ら騒ごうと
どうという事はありません
挑発し誘発した大技を回避しつつ地形を破壊させたら
その残骸を念動力で飛ばして攻撃のふりをして
敵の機動を阻害する場所へ配します
足を殺せばたかが一機――今です皆さん、攻撃を!
ミスト・ペルメオス
【SPD】
援軍は不要かとも思いましたが…、
ミスト・ペルメオス、ブラックバード。遅まきながら加勢します。
愛機(機械鎧)を駆って戦闘領域に進出。
容易に倒せる敵ではないと判断するが、出来れば過度の破壊による古代都市船の喪失を避けたい。
無闇な周辺被害の拡大に注意しておく。
専用のデバイス等を介し、念動力を機体制御や照準補正に活用。
接敵と同時に【ハイマニューバ】起動。
スラスター全開。機械鎧ならではの三次元的な機動を行いつつ高速戦闘に移行。
敵の射撃はフェイントを混ぜた回避機動やビームシールドによる防御で防ぎつつ、
ビームアサルトライフルやマシンキャノンによる射撃を加えていく。
※他の方との共闘等、歓迎です
レッグ・ワート
そう来るかあ。そんなんして大丈夫?
いや一部の士気貰ったみたいなもんだろうし。とまれ偵察隊離脱の手伝いだ。迷彩ドローンは巻込まれ難い位置で情報収集。見切り避けや武器受けつつかばう参考予測に使う。移動はバイクで。隊が即狙われたら糸編んである程度纏めて怪力で掻っ攫うが、スルー気味ならタイミングみて退く声かけるぜ。副長に爆弾とカッターどっちが良いかどさくさで聞いて複製しとく。後は操作しつつ、遺留品確保と廃ビルからの回収へ。他にいれば分担するか任せる。
複製するのは救護パックの超重隔壁用小道具。ユーノの攻撃に紛れ込ませたそいつがはり付いたら基本保留。気取られたら即起こす。攻撃妨害や隙作りに使えたら上等だ。
●
『有象無象のクズが、よくもやる……!』
「無闇に攻撃をばらまいて……このままでは船が保ちませんか」
半ばから消失した脚部を付け根で切り離したノーザンライト。重量減と引き換えに推力とバラン
スを失ったその機体は、それでいて器用に戦闘機動をやってのける。
白い機体が追撃者を撃ち落とさんとレーザーを連射すれば、それを掻い潜って迫るのは黒い機体
。
先行部隊に遅れて船内に突入したミストの駆るブラックバードは、その名の通り鳥の如く軽快に
その細身を空に踊らせ、ノーザンライトの牽制を回避してのける。
だが、ブラックバードはこれ以上の追撃戦が望ましからざる結果に繋がることを察していた。
先程から回避したレーザーは、先に戦闘開始した猟兵の張ったバリアフィールドの内壁を灼いて
いる。
その命中時のバリアの揺らぎが、被弾を重ねるごとに大きくなってきているのだ。
「もしバリアが貫通されれば、この都市船は今度こそ沈む……」
そしてそれは、彼が放つ攻撃も同等の危険を孕んでいることを意味していた。
ノーザンライトがもし攻撃を回避すれば、それはバリアフィールドに命中するだろう。
そうなれば結果は同じだ。その事態を避けるためにも、できる限り一撃必中を心がけねばならな
い。
だというのに、両脚を失い片方の肩のスラスターも破損し、その状態で飛翔し続けるノーザンラ
イトはバランスを欠くがゆえの不規則な機動で狙いを付けさせない。
でたらめな旋回にロックを外されては、中距離以遠での射撃戦は事故に繋がりかねないと彼は理
解していた。
とはいえ、だ。敵の砲撃を回避しながらの三次元機動では距離を詰めることが出来ない。
ビームシールドで耐えながらの突撃も考えたが、被弾し続けた場合の負荷を考えるとシールドは
過信出来なかった。万が一シールドが途中で貫かれれば、真っ向から高出力レーザーを浴びること
になる。
その結果は、敢えて言うまでも無いだろう。
「どうする……ここで撃つか、それとも……」
命中に賭けて引き金を引くか、安全策として接近戦に挑み続けるか。
選択に遺された時間は長くはない。
「で、なんで戻ってきたんだ」
頭上で繰り広げられる白と黒の壮絶な空戦を見上げて、それから眼前の密閉装甲型アームドフォ
ートへ視線を戻してレグは問う。
声音こそ平坦だが、その意図には呆れと疑問が滲んでいた。
「…………私も解放軍の理念に命を捧げた兵士ですから」
「あのなあ、お前副長だろう。指揮官が戦死したんなら次席指揮官が部隊を引っ張らねぇと。お前
まで死んだらどうすんだよあいつら」
レグの真っ当な指摘に、副長――ニコール中尉と名乗った女性騎兵はフルフェイス越しに視線を
逸らす。
「上官と部下の仇討ちをしたい、では駄目ですか」
「良いわけ――」
「レグさん。彼女たちがケジメを付けるのを私達が拒否するのは違うんじゃないですか?」
ニコールを拒絶しようとしたレグに掛けられたユーノの言葉。
「偵察隊の皆さんだって負けたままでは居られないでしょう」
ディアブロクルセイダーに跨り、出撃への最終調整を行う彼女の言葉は怒りを湛えていた。
そしてそれと同じだけの同情を。仲間を失った兵士が、たった一騎復讐の為に翔ぶ。それはかつ
てのユーノの姿だ。部下を巻き込まないだけの理性をまだ留めていることを、彼女を信用するため
の条件として認めたユーノがレグを説得する。
「可能な限り私達でフォローをする。特にレグさんはそのつもりで居たんでしょう? ただ、もし
彼女が復讐心ばかりで無茶をするようなら、その時はどうなっても自己責任でいい。復讐ってそう
いうものですから」
「いや確かに偵察隊のフォローに入る気だったけどよ、俺は撤退支援を……あー、分かったよ。了
解」
その目に宿るのが暗い復讐の炎だけではなく、強者によってボロボロにされた偵察隊のプライド
と隊員たちの心を再び立ち直らせるための指揮官の真摯な想いもだ、ということを認識したレグも
ついに折れた。
「感謝します……猟兵。勝ちましょう、私達で」
空へと上がる三騎の機影。
ディアブロクルセイダーに乗るユーノが前衛、後衛にレグとニコール中尉の騎体。
「接敵前にもういっぺん確認しとくぞ。やつは攻撃を受けた時、後ろに逃げる癖がある」
レグは偵察ドローンが観測してきた情報をもとに、作戦を再確認する。
一度目は上空の猟兵から槍を投げられた時。空中で体ごと上を見上げる形だったノーザンライト
は、後方――つまり下へと後退した。
二度目と三度目は地上で猟兵と激突した時。二度目は殴られた勢いのままに飛び退り、三度目は
狙撃を受けた際にその時鍔迫り合いしていた猟兵と距離を置くため後方へと逃げた。
三度も同じような挙動を見せればそれは立派な癖だ。ならばそこに付け入る隙があるはず。
「ですから私がまず速度を削いであの黒い機体の射程内にノーザンライトを追い込む」
「一番初めで一番重要かつ危険な役目ですね。大丈夫ですか?」
「……やってみせます」
心配ではなく、確認を入れたユーノにニコール中尉は力強く頷く。
「んで次、黒いのの攻撃で地上方向に逃げたヤツをユーノが作戦ポイントまで誘導する」
「陽動は任せてください、機動力には自信があります」
頼もしいことだね、とレグが微かに肩を竦め、それから前を見据え隊列から離脱してゆく。
「最後、俺が作戦ポイント周りに仕掛けをしておく。んじゃあまあ、やるだけやってみるか」
レグに続くようにユーノもビルの群れへと降りてゆく。作戦が始まった。
「……くっ、まだ追いつけないんですか……?」
機体は限界近くまで加速している。この強度の重力下、それも大気に満たされた都市宇宙船内部
でこれ以上の加速は事実上の死に等しい。
だと言うのに、ミストはノーザンライトへたどり着けなかった。
「――黒い機体のパイロット、援護します! 貴方は上から敵を!」
そこへ割り込む若い女の声。解放軍仕様のアームドフォートが一騎、盾とサブマシンガンを構え
て真正面からノーザンライトに張り付いた。
『ぐ……クズが、私の進路を塞ぐだと!』
性能も力量も全てにおいて劣る量産騎で挑めば、うまく行って二、三秒の足止め程度。サブマシ
ンガンの命中弾も見た目と音が鬱陶しいくらいの効果しかないだろう。
それでも挑んだ彼女の勇敢な突撃は、たしかにノーザンライトを止めたのだ。
その一瞬を逃すまいとすぐさま頭上から奇襲をしかけたブラックバードのビームアサルトライフ
ルが吐き出した粒子の弾幕がノーザンライトの装甲を焼く。
『クズの分際で目障りな攻撃を!』
十分に距離を詰めたことで実弾も有効射程に入ったとマシンキャノンを浴びせ撃つブラックバー
ド。
これにたまらず後ろ――下方へ逃げるノーザンライトを、ユーノは静かに待ち伏せていた。
虹色に輝く光は、かつて彼女が隠していた種族の血の光。帝国によって故郷を失った彼女の報復
の、裁きを下す光だ。
墜ちるように離脱してきたノーザンライトが倒壊したビルの隙間を抜け、高架下を潜ってブラッ
クバードと中尉の騎体から逃れるのを、今度はユーノが追いかける。
「先の戦争に間に合わなかった出遅れの癖に、逃げ足は随分と素早いみたいですね! 身の程を弁
えて逃げに徹する気になりましたか、敗残兵!」
「此処に居る皆はあの白騎士も黒騎士も屠った歴戦の兵、貴方ごとき無名の兵士がいくら騒ごうと
もどうということはありません。やっと力の差を理解したようですね!」
ノーザンライトを追いながら投げかける言葉は、彼女たちの築き上げた自信にして彼の否定だ。
ノーザンライトは優秀なエースではあるが、所詮いちエースに過ぎない。
一方でその能力を遥かに上回る白騎士ディアブロと黒騎士アンヘルを打ち破った猟兵達は、自他共認める帝国最高戦力を越える力を持っている。
その事実が冷静に追撃騎を迎え撃つノーザンライトをかき乱す。
『戯れるな、まぐれ勝ちを拾った程度で図に乗るクズどもが!』
白騎士ディアブロ。帝国の未来を切り開く最強の騎士。
黒騎士アンヘル。帝国の過去を守護する最強の騎士。
その二人への敬愛はこの狂信的帝国至上主義者にも息づいていた。
『力の差を弁えず吠えるクズが、ここで墜ちろ!』
最大出力のレーザーキャノンによる掃射。凄まじい反動を巧みに逆噴射で打ち消して、光の帯がユーノを追い、そして余波でビルを粉砕する。
崩れ落ちるビルの瓦礫がユーノの頭上から降り注げば、ノーザンライトは勝利を確信した。
レーザーの直撃を回避する技量を持っていようが、隙間なく無数に降り注ぐ瓦礫を全て躱すなど不可能。
『潰れろ、クズめ』
「貴方こそ潰れなさい、雑魚め!」
ユーノを嘲笑うノーザンライトは見た。彼女の念動力が落下する瓦礫を受け止めたのを。
そしてそれが己の方へと投げ飛ばされれば舌打ちせずには居られない。
『だが指向性を持てばどんな弾幕だろうが!』
どれほど密度の高い攻撃も、何かを狙おうという意志が介在する限り必ず隙がある。長年の経験からそれを見抜いたノーザンライトが瓦礫の隙間を抜け、躱しきれない中小の瓦礫をレーザーで焼き切って凌ぐ。
その白い機体へと、瓦礫に混じって接近するふたつの影。
「予想以上に派手にやるなあ、本当に大丈夫か?」
自らも落下する瓦礫の機動を計算し、ノーザンライトの迎撃も加味して安全なルートを導き出して航行するレグ。
バイクの後席に拾い上げたニコール中尉を乗せるのは、彼女の力量ではこの瓦礫の雨を突破することができないから。そして、
「単純に手が足りねぇからなあ」
「しかし何処にこれだけの量を積んでいるんですか」
片手でハンドルを繰り器用に瓦礫の間隙を縫いながら爆弾を乗せていくレグと中尉。
これらは武器ではなく、宇宙で事故が起きた際に隔壁をぶち破って要救助者の元へ辿り着くための救助用具だ。
その特性としてこれらは金属に張り付く。レグが手元にあるスイッチを入れれば、強力な電磁石によって周囲の金属へ吸い付き、そして隔壁をも貫通する指向性を持った爆風で対象を破壊するのだ。
そんな爆弾を得意の複製で増やし、ノーザンライトの視界から隠れるように瓦礫に混ぜ込む二人。
「こいつが上手いこと辿り着きゃ戦闘用の装甲兵器だってタダじゃ済まねぇさ」
決して撃ち落とせるとは言わないが、だからといって無傷でピンピンしているということは無いだろう。
だから長居して気取られる前に抜けるぞ、と後席の中尉に告げて戦域を離脱するレグ。
あとはドローンの観測情報をもとに、此処ぞで起爆する。
「その判断はお前さんに任すよ。頼んだぜ中尉」
爆弾の起爆装置を手渡し、レグは同乗者の冷静な判断を期待してると告げてドローンの視界を彼女のアームドフォートにも繋ぐ。
そこには瓦礫の雨を切り抜け、迎撃に巻き込まれず無事に吸着したいくらかの爆弾を身に着けた白い機体の姿とそれを猛追する黒い機体の姿が写っていた。
「今ならば速度が落ちているはずです……!」
解放軍機による妨害、自身が行った攻撃、そして他の猟兵による瓦礫を投じた面制圧。
いずれをも切り抜けたノーザンライトであるが、無傷ではなく、また追いつけないほどの速度はいくらか減衰している。
「だから、最後のひと押しを加えるならばここしかない……!」
急降下し、ノーザンライトの放つ弾幕をくぐり抜けて白い機体に激突する黒い機体。
巨大な鋼鉄同士がぶつかり、火花を散らして廃墟の街を滑る。
そうして滑走する二騎は、白が背中から路面に突き立つ墓標のような瓦礫に突っ込んだことで停止した。
「どうやら此処までですね」
『此処まで? クズがもう勝ったつもりで――』
突きつけたビームアサルトライフルが唸り、無数に降るビームの雨が白銀の装甲を焦がしてゆく。
全弾命中を確認し、ブラックバードが飛び去るのと同時に、追い打つように起爆した爆弾がノーザンライトを吹き飛ばす。
彼らが見たのは、砕け崩落する墓標が白い機体へ伸し掛かり、その機影を埋めていく光景だ。
「これならいくらノーザンライトといえど無事では済まないはずです!」
「だといいんだがなあ、帝国の戦闘用だろ。それもワンオフの」
やった、と素直に喜ぶユーノをまだ警戒を怠るなと嗜めるレグ。
あれは自分のような量産兵器とは違う。量産型がワンオフに劣るわけではないが、得てしてエースともなれば採算度外視の異常な性能を持っているものだ。
「私も彼と同意見です。今のうちに離脱しましょう」
一矢報いた中尉が、仲間たちの遺品を回収したいという想いも含めて離脱を提案するのと、ブラックバード――ミストがそれに気づき、仲間たちの後ろに飛び出しビームシールドを構えるのが同時。
瓦礫の山を貫いて放たれた強力なレーザーがシールドの表面で飛沫き、仲間を庇うブラックバードを弾き飛ばす。
「やっぱ予想通りかよ。しつこいな畜生! 大丈夫か!?」
「ええ、なんとか! そちらは?」
「おかげさまで怪我はないです。……ほんっと執念だけは一流ですね!」
だらりと垂れた右腕にバチバチと電流を纏い、左のレーザーキャノンで瓦礫越しに一行を狙撃した白い機械巨人。
装甲のあちこちをひび割れ欠けさせたその姿は、まさに今の帝国残党を象徴する妄念と執念の化身であった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
ビードット・ワイワイ
【PPP開発室】
アドリブアレンジ歓迎
見たり見たり見たり、汝の破滅を見たり
傲慢なる考え持ちし者、戦う場所を求めるか
戦うべきとき戦えず弱者嬲る姿はなんと惨めか
愚者の足掻きは見るに絶えず。既に汝は破滅せり
何処に行こうと先は深淵。ここが汝の破滅なり
さて、隣人殿、我と例のものを下ろし行くがよい
めぼしい帝国兵は残さず使うように
はいぼく知らぬ異形のもの、その正体は何であるか
いやそれはまさしくシャークである
いま補うは攻撃力、行うは殺戮、食らうは汝の体
ぞうおを燃やし攻撃【見切り】展開するは【空中戦】
喰らいて育ちて蹂躙せよ。立ち塞がるのは全て餌なり
異形の体を醜く晒せ。その怒りで敵を貪り尽くせ
イデアール・モラクス
【PPP開発室】
アッハッハ!クズだ何だと威勢イイ鉄屑だ。
敬愛する陛下とやらはとっくに消えたぞ…お前もすぐに後を追わせてやるがなぁ!
・行動
「限界を越えた駆動か、大した忠義だよ」
下手に動けば標的にされそうだ、私は魔剣ドミナンスによる斬り払いを駆使した『武器受け』で奴の攻撃を弾きながら魔力を練り、機を待つ。
「その忠義に免じて約束を果たそう…破壊と創世の光を以って貴様を消し飛ばし皇帝の元へ逝かせてやる!」
UC【七星覇天煌】を『全力魔法』と『属性攻撃』で威力を増した上で『高速詠唱』を用い一瞬で行使、膨大な魔力光線の『一斉射撃』による『範囲攻撃』で眼前の敵勢を跡形も無く『なぎ払い』消し去る。
※アドリブ歓迎
フィーナ・ステラガーデン
【PPP開発室にて参加】
人のことクズクズクズクズってさっきからあんた何様のつもりよ!?
そのでっかいロボに乗って強くなった気になって態度まででっかくなってんじゃないわよ!
そんなに偉そうな口叩けるならそのロボから降りて戦いなさいよ!
どーせあんたなんかそれが無ければ戦うことなんて出来ないんでしょ!?
ロボの威をなんか借りたっぽいやつっていうのよそれ!
このバーカ!バカバーカ!!
仲間2人と連携して動くわ!
なんかレーザーっぽいのびゅんびゅん撃ってくるみたいだし
杖に乗ってこっちもびゅんびゅんするわよ!
合わせてUCを全力魔法で全力投球するわ!
(アレンジ、アドリブ大歓迎!)
●
「アッハッハッハ! クズだなんだと威勢のいい鉄クズだなァ! お前の敬愛する陛下とやらはとっくに骸の海に消えたぞ?」
高笑いとともに大破したノーザンライトに降り注ぐレーザー。
イデアールだ。魔女の放つ無数の光線が、ノーザンライトを今度こそ仕留めるべく天から落ちる。
『黙れ猟兵、たかが手足の二、三本封じた如きで勝ったつもりか!』
もはや無事な推進器が残っているかすら怪しいというのに、それでも執念の機動で光の雨を回避する白い巨人。
その卓越した機体制御はまさにエースのそれ。驕り高ぶる帝国軍人は、真に技量に優れた熟練兵であることをもはや疑うことは出来ない。
『私の牙はまだ抜けてはいない……この手足が全て砕け落ちようと、貴様らクズどもは根絶やしにしてやる!』
「お前もすぐに大好きな陛下の後を追わせてやるぞ……ッ!」
光の応酬は激しく、そして美しく。
何処にも逃げることを赦さないとばかりに乱立する七色の光が降り注ぎ、必殺を成さんとただ標的を真っ直ぐに狙う白光が天へと聳える。
そしてただの雑兵であれば一個大隊を殲滅して余りある程の攻撃を叩き込んでなお健在のノーザンライトにイデアールは舌を巻かざるを得ない。
「限界を超えた駆動か、大した忠義だよ」
彼の機体はもはや限界だ。両足は落ち、度重なるダメージで損傷した右腕も彼が旋回するたびに部品を転げさせ、今にも肘から下が千切れ飛びそうだ。
それでもなお、ノーザンライトは超過駆動モードで翔び続ける。
その照準はわずかにも揺れること無くイデアールを捉え続け、そして放たれた光は彼女が振るう魔剣に切り払われた。
そんな攻防を永劫にも思えるほどの数分間で繰り広げ、ノーザンライトが一つの建物を背に停止する。
「ふん、ようやく限界か。ならば貴様のその忠義に免じて私も約束を果たそう。破壊と創世の光を以て貴様を皇帝の元へ送ってやる!」
もはや反撃の術も失ったか、だらりと左腕を下ろして俯く白い鉄巨人へと、イデアール渾身の収束レーザーが叩きつけられ――
『最後に驕ったな、だから貴様らはクズなのだ!』
突如としてそのカメラアイに再び眩いほどの戦意を灯したノーザンライトが飛翔する。
レーザーを間一髪で回避したノーザンライト。回避されたレーザーは彼が背にした建物を貫通し、破壊する。
そうして外れたレーザーによって爆発が引き起こされ、建物が跡形もなく崩れてゆく中で、イデアール達は確かにそのアナウンスを耳にした。
「――都市区――第一重力制――装置が破損し――した。市民の皆さんは最――の安全フックに身体を固定――ください」
「…………なッ!!」
ふわりと浮かび上がる世界。
人工重力の軛から解き放たれ、廃車や戦車の残骸、瓦礫――あらゆる万物が浮かび上がり、イデアールの視界を塞ぐ。
それら浮かぶ残骸の中に飛び込んだノーザンライトへと迫る者がある。
「見たり見たり見たり、汝の破滅を見たり。傲慢なる考え持ちし者、戦う場所を求めるか。戦うべきとき戦えず弱者嬲る姿はなんと惨めか。愚者の足掻きは見るに絶えず。既に汝は破滅せり。何処に行こうと先は深淵。ここが汝の破滅なり」
破滅の聖句とともに迫るその影は、一見して宇宙艇のようである。
青く塗られた船体は流線型。だが瓦礫の中をのたうつように身を捩って進む姿は、決して宇宙艇のそれではない。
それは異形。見る者に絶対の強者であると理解させるその姿は、かつてこの世界では惑星世界とともに滅びた海の覇者。
サメである。
正確にはサメを模した生体機動兵器。白兵戦に特化し、それでいて人型を持たない異形の機体がノーザンライトに迫る。
『クズどもがどんな形をしたところで!』
「喰らいて育ちて蹂躙せよ。立ち塞がるのは全て餌なり。異形の体を醜く晒せ、その怒りで敵を貪り尽くせ」
迎撃の高出力レーザーを鋼の頭"のうちの一つ"で受け止め、それが打ち砕かれれば溶断された断面から瞬く間に新たな頭部が二つ生えてくる。
それは海の覇者にして空すらも支配するもの。
三つ頭の――今は四つだが――異形を持ち、全身を機械じかけの装甲で鎧った不死の魔獣。
それは死すれど蘇り決して止まることはない。
獲物と認めた存在を喰らうまで、決して。
『クズが、クズごときがッ!!』
ノーザンライトの叫び。ついにその魔獣は獲物に喰らいつく。
ノーザンライトの機能停止した右腕が肘から齧り取られる。だが一方で、ノーザンライトも朽ちた右腕で握り続けていたレーザーキャノンを魔獣の腹の中で自爆させることに成功した。
腹の中での爆発にたまらず瓦礫を巻き込み、暴れながら墜ちてゆくサメ。
その姿を冷酷に見下し、ノーザンライトは厄介な怪物を倒したことを確認する。
そこへ流星の如く新たな魔女が現れる。
「さっきからヒトのことクズクズクズクズってあんた何様のつもりよ!」
この期に及んでそこなのかと言わずには居られない怒りの言葉。
「そのでっかいロボに乗って強くなった気ね! だからって態度まででっかくなってんじゃないわよ!」
びし、と大破したノーザンライトを指差す姿は、彼女の方こそ態度が大きいのではないかと思えてしまう。
「そんな偉そうな口を叩くんなら降りてきて戦いなさいよ! どーせあんたなんかそれが無きゃ戦うことなんて出来ないんでしょ!? ロボの威をなんかしたやつって言うのよ! なんかしたやつ! えーと……とにかくこのバーカ! バカバーカ!」
知的にことわざなど交えてノーザンライトを糾弾するその魔女は、イデアールの猛攻と謎の巨大サメの襲撃で疲弊したノーザンライトへと炎の槍を投げ放つ。
『使えもしない慣用句に拘って知能の低さを晒したクズ風情が図に乗るか!』
真っ向からその槍を撃ち落とすノーザンライト。
炎を貫くレーザー、爆発する炎。
『ぐ、おおおおおォォ!!』
そしてその爆炎に煽られ、ノーザンライトは慣性のままに吹き飛ばされてゆく。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
仇死原・アンナ
アドリブ絡みOK
…何も言うまい
処刑人として貴様を屠ってやる…!
仮面を被り真の姿の[封印を解く]
他の同行者と共闘
【ゲヘナ・フレイム】を発動、[ジャンプ]し[空中戦]へ移行
敵の攻撃を[見切り、ダッシュ]で回避しつつ[残像]で敵を攪乱する
鉄塊剣を抜き[怪力、鎧砕き、2回攻撃]で敵を一気に攻める
さらに拳を振るい[グラップル、鎧無視攻撃]で敵の頭部を何度もぶん殴り
壁極に[吹き飛ばす]
「死ぬのは貴様のほうだ、亡国の騎士よ!今すぐ闇に戻れ!」
[力溜め]の後に鉄塊剣を[投擲]して敵を[串刺し]にしてやろう…!
シン・ドレッドノート
アドリブ連携歓迎
【SPD】
(冷酷に)
帝国の残党風情が知ったような口を。
クズはクズらしく、いつまでも現世にさまよっていないで、骸の海へ逝きなさい。
…隊長達の無念、晴らします。
貴紅に騎乗、空中でランダム回避運動しながら、3丁のライフルビットと4振りのソードビットを電子精霊に制御させ、敵機体を牽制。
フェイントの攻撃に気を取られている間に【真紅の狙撃手】を発動、右手の真紅銃と左手の精霊石の銃、残った1丁のライフルビットから、2丁のレーザーキャノンとセンサーを狙って3発の紅の光弾でスナイパー技能を使って狙撃、攻撃を封じます。
「来る方向が分かっていればっ!」
敵の攻撃は閃光の魔盾のビーム障壁で受け流します。
チトセ・シロガネ
【WIZ】
ノーザンライト、なかなか元気なヤツネ。
ちょっとお灸を据えないとダメだネ。
【戦闘知識・第六感】の戦闘経験の勘で
相手は素早いものに反応することに気づくネ。
だったらフォースセイバーを【投擲】して【念動力】で操作。
これで意識をそっちにそらせるヨ。
相手が反応したタイミングを【見切り】
【早業】【空中浮遊・空中戦】で一気に距離を詰めるネ。
このチャンス、逃すわけにはいかないヨ!
どんな超耐久だからといっても装甲の隙間はあるネ。
ここでUC【破邪光芒】を発動!
【鎧無視攻撃】で隙間を突き刺し、雷の【属性攻撃】で回路をショートさせるヨ!
壊すしか能のないユーにクズと言われる筋合いは無いネ!
●
『クズどもがァ! 帝国の慈悲も理解できん無知無能蒙昧のクズ風情が、私を墜とすだと?』
――いや、ノーザンライトはすでに理解している。
自らの機体はもはや限界に達し、己を定義し制御するプログラムにはひっきりなしにノイズが走る。
もはやこれ以上の戦闘を回避したとて機能停止という死を避けることはできない。
それは、他ならぬノーザンライト自身が誰よりも理解している戦いの終局。
けれど、ならば、だからこそ彼は止まらない。止まるわけには行かない。
彼の傲慢は数多の人々が抱く帝国への恐怖、その具現である。
彼の暴虐は銀河を統べる帝国が下す、支配の刃そのものである。
つまりは彼こそ幾千万の人々が恐怖し屈従を強いられた帝国の武力の象徴。
それが、敗退したまま静かに朽ち果てるなどあってはならない。
『どうした! 私はまだ行きているぞ、クズどもは手負いの機体一つ殺しきれんか! さすがは屑だな、軟弱な反乱軍のクズどもが頼るだけあってクズの仲間は所詮クズに過ぎんということだ!』
大音声で解放軍と猟兵を罵倒するノーザンライト。その声に応じる者が居る。
「あんだけボロボロで中々元気なヤツネ。ちょっと熱ーイお灸を据えないとダメだネ?」
「帝国の残党風情が知ったような口を。……隊長達の無念、晴らします」
無重力と化した船内の空を駆け、ノーザンライトに迫るふたつの影。
紅い宇宙バイクに騎乗したシンと、浮遊する瓦礫を蹴って舞うチトセ。
二人は視線を交わして散開し、ノーザンライトを挟撃するように距離を詰める。
『来たかクズども! 臆病風に吹かれなかったことは褒めてやろうか!』
不規則な機動で反撃を躱す挙動を交えながら超過駆動モードを再発動する白い極光。幾度となく限界を超えた機体は、今度こそ断末魔の叫びを上げる。
それでも軋む機体を押さえつけ、超高速の戦闘に無理やりその身を投げ出すノーザンライト。
「クズはクズらしくいつまでも現世を彷徨っていないで骸の海へ逝きなさい!」
浴びせるように撃ち込まれた速射レーザーをノーザンライト同様不規則な機動でかいくぐるシンが、銃と剣のビットを展開して敵機を抑え込む。
『こんな小道具で私を封じられるものか!』
それを一基一基丁寧に撃墜するノーザンライトの姿に、チトセは確信を得た。
「あいつ、速い順に撃ち落としてるみたいだヨ」
それが癖なのか戦術なのか、そこまで判断する時間の余裕はない。だが事実としてそうであるなら、それを活用しない手はないだろう。
「そうラ、こっちからも行くヨ!」
放り投げられたフォースセイバーが念動力でビットのように操られれば、意識の外からの攻撃にノーザンライトがすぐさま対抗する。
レーザーの一撃で撃ち落とされたフォースセイバーだが、意識がそちらに向けば重畳。
「このチャンス、逃すわけにはいかないヨ!」
その一瞬で一気に距離を零にしたチトセが、連続した被弾で破損した胸部装甲の亀裂へと刃を振り下ろす。
それを、ノーザンライトは無事の左腕を呈して無理矢理に防いだ。
その上でチトセを機動兵器の膂力で振り払い投げ飛ばし、レーザーキャノンを突きつける。
「うっそ!? 凌ぐノ!?」
『クズどもの鈍らがいくら刺さろうと!』
引き金に掛かった指に力が入る。
「させません! 来る方向がわかっていればっ……!」
その射線に割り込むシンの貴紅。放たれたレーザーをビーム障壁で受け流し、両手の銃に視線を向ける。
「この状況で障壁を解いて撃つ……というのは無謀ですかね……!」
だが反撃の手段はある。勢いよく射出したビット群に紛れて分離し、チトセの猛攻に紛れるように静かに漂うゴミに隠れ狙撃位置に就いたライフルビット。これが今、見事にノーザンライトを捉えていた。
「一回限りの奇襲攻撃、これを外すわけにはいきません!」
射撃命令。そして、死角からの狙撃がノーザンライトのツインアイの左目を貫く。
『ちぃぃ! クズがよくも!』
片目の視界を奪われ、薙ぎ払うように逸れたレーザーの射線がシンを外れてゆく。
だが、視界の半分を奪われても止まらない。むしろ正確な狙いが無くなった分、命中精度こそ低下したものの予測回避が困難になった彼の射撃には、シンもチトセも攻めあぐねてしまう。
だが、彼の片目の視界を奪ったのは何もレーザーの命中精度を下げたかったからではない。
視界を塞ぐ、それこそが目的だったのだ。
「もう何も言うまい……処刑人として貴様を屠ってやる……!」
斯くて失われた視界、暗黒の左側よりそれは迫りくる。
全身を切り裂く炎を身にまとい、復讐の為にやって来る処刑人。
禍々しいマスクを被り、手には巨大な鉄塊剣を握りしめ、悪逆を断罪するためにそれは来る。
『見えていないと思ったか! 垂れ流しの殺気で!』
照射されるレーザーを間一髪掠める軌道で躱し、ただ真っ直ぐに肉薄する彼女は、鉄塊剣の振り降ろしでノーザンライトを叩き落とす。
そうして握りしめた拳で、ノーザンライトの巨躯の頭部をひたすらに殴打して壁に叩きつけるように殴り飛ばした彼女は、くずおれたノーザンライトへ静かに告げる。
「死ぬのは貴様の方だ」
鉄塊剣を担ぐのとは逆の手で手招きをすれば、その処刑の見届人が静かに傍らへと降りてくる。
「……構いません、とどめを」
彼によって敬愛する上官と三人の部下を失った解放軍の副長、ニコール中尉が処刑人へと頷く。
『…………く、くく。クズどもに初めて感謝してやろう。私はクズを抹殺し、戦いの中で再び死んでゆく』
それは遺言だろうか。処刑人は、ノーザンライトがもし下手な動きをすればすぐに破壊するつもりでそれを聞き届ける。
罪人の最後の言葉を聞くことも、処刑人の在り方であろうから。
『いいか、クズども。私は無為に経年劣化し朽ち果て死んでゆくのではない! 貴様らクズどもに帝国の、帝国軍の何たるかを刻みつけて死んでゆくのだ! 貴様らクズは決して我々と対等ではない! 怯え、竦み、服従して死ね! それこそが貴様らクズに赦された最後の救いだと――』
「黙れ、亡国の騎士よ。今すぐ闇に戻れ!」
『――知れ、クク、ハハハ、ハハ…………』
処刑人の投擲した鉄塊剣が、大破した機動兵器の胸を貫き廃墟に縫い止める。
がくりと脱力し、光の消えてゆく極光。
「…………これで、みんなの仇は」
ノーザンライトの処刑を見届けたニコール中尉は、猟兵から預かっていたリモコンのスイッチを押し込む。
ノーザンライトの装甲に吸着し、いままでその時を待ち続けていた爆薬。それが一斉に起爆し、白銀の残骸を跡形もなく消し飛ばした。
●
かくして廃墟都市船における一連の戦闘は、解放軍の死者四名という尊い犠牲を払って敗残の戦車部隊とエース機という強力な敵戦力が排除されることによって幕を閉じた。
戦争は人の命が容易く消えてゆく。そして、彼らは二度と還らない。かつての大戦で失われた、軍民問わない多くの人命も、今回のような戦いで犠牲となった兵士たちも帰ることはない。
理不尽だ、と嘆くものがいる。帝国軍は、オブリビオンは骸の海から幾度となく蘇るというのに。
けれど限りある生命だからこそ、人は大切にそれを生き、自らの過去を未来へ繋ぐのだ。
プロコピオス-C7に、その日新たな資料が収められた。
ある都市宇宙船での凄惨な地上戦の記録。
そして、ある偵察部隊の戦いと、彼らとともに戦場に立った英雄たちの記録。
彼ら――猟兵の記憶は後世まで語り継がれることだろう。
願わくばいつの日か完全に平和を取り戻し、猟兵が猟兵として求められることの無くなった世界でこの記録を見た誰かが、そんな戦いの時代もあったのだなと、自らに縁遠いどこか遠くの世界の出来事のように感じられる日が来ますように。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
最終結果:成功
完成日:2019年08月18日
宿敵
『ノーザンライト』
を撃破!
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