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夏氷菓と星の海

#スペースシップワールド #【Q】 #お祭り2019 #夏休み


 蒼く澄んだ空、きらめく砂浜、心地好い漣の音。
 寄せては返す白波は陽のひかりを反射して耀いている。
 けれど此処は宇宙を往く船の中。
 美しい夏の海辺の光景でありながら星の海に浮かんでいるという、言葉にすると少し不思議な空間で――。

「皆さん、夏休みを満喫してますか?」
 グリモア猟兵のひとり、ミカゲ・フユ(かげろう・f09424)は双眸を緩めながら楽しそうに問う。今回は戦いに赴いて欲しいという旨の願いではなく、純粋に夏休みを満喫しようという誘いだからだろう。
「スペースシップワールドにコメットスノウ号というリゾート船があるんです。その船の一角には綺麗な夏の海が再現されていて、楽しい時間を過ごすのにとても最適だって聞きました」
 だから、一緒に行きませんか。
 傍らに控える少女の霊と共に微笑んだ少年は仲間たちを見渡しながら行き先について詳しく語ってゆく。

「コメットスノウ号の見所は海もそうですが、一番はかき氷なんです」
 実は船内ではかき氷が一大ブーム。
 海辺エリアでは様々な氷菓が楽しめるという。
 練乳苺や檸檬、抹茶系の基本はもちろん、変わり種な味もたくさんあるらしい。
「ミントシロップにチョコレートをかけたチョコミント味に、ラムレーズン味、ミルクティー味、他にもシナモンロール味とか……氷がふわっふわだったり、生クリームをかけてケーキみたいにしたり、僕の知らない味もいっぱいあるって聞きました」
 海で泳ぎ疲れたらかき氷を求めて浜辺を散策するのも悪くはないだろう。
 また、船で楽しめるのは砂浜と蒼海だけではない。
 浜辺エリアから少し離れたデッキに出ると、航行中の宇宙空間――つまりは星の海を眺めることができる硝子張り風の展望エリアに出られる。昼の海辺とは正反対の景色ではあるが其処にも穏やかな海の音が流れているため、潮騒の音や雰囲気はそのままに、チェアやベンチに座って星海を楽しむこともできるそうだ。
 エメラルドグリーンの爽やかな海。
 燦めく星々が広がる果てしない海。
「皆さんは何処で誰と、どんな時間を過ごしたいですか?」
 少年は問いかける。
 平和な星海を往く夏の海で何をするか。それを考えるだけでも楽しくなると微笑んだ彼は自由に過ごせるひとときへと思いを馳せ、そっと願った。
 どうか、皆さんにとって楽しい時間でありますようにと――。


犬塚ひなこ
 今回の世界は『スペースシップワールド』
 星の海に浮かぶリゾート船で思いっきり夏を楽しみましょう!

●できること
 青い空の下、海で泳ぐ、砂浜で遊ぶ。かき氷を楽しむ、デッキに出て夜めいた雰囲気の星海を眺める、などなど。夏の海とシップ内で出来ることは何でも可能です。
 船内で味わえるかき氷の種類や味は様々。食べ物を粗末しないことをお約束していただければ、お好きな味を探したり創作していただいて構いません。

 ご自由に楽しく遊んで頂けると幸いです。
 グループ参加に関して人数制限はありません。何人組様でも歓迎いたします。
 お誘い合わせの場合は、お互いのIDや共通のグループ名などを冒頭にお書き添え頂く事に加え、プレイングの送信時間や日時を可能なかぎりで良いので合わせて頂くと迷子防止となります。(大幅に送信日時が違う場合、一緒に描写できなくなることがあります)

●ご注意
 このシナリオは【日常】の章のみでオブリビオンとの戦闘が発生しないため、獲得EXP・WPが少なめとなります。

 こちらのシナリオは【2019/8/7】の夜頃からプレイングを確認しはじめます。
 可能な限り多くの方の描写を目指していますが、プレイングの送信日時によっては失効日の関係で流れてしまうこともございますのでご了承ください。
 そのため出来るかぎり7~9日頃にプレイングを送って頂けると助かります。どうぞよろしくお願い致します。
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第1章 日常 『猟兵達の夏休み』

POW   :    海で思いっきり遊ぶ

SPD   :    釣りや素潜りに勤しむ

WIZ   :    砂浜でセンスを発揮する

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
終夜・凛是
トトリ(f13948)と

あつい…けど、海浮かぶの気持ちいい
俺も、トトリの傍好き
かき氷?知ってる、氷に色んな色かけるやつ
あと冷たい、うん。食べに行く

トトリはなんか、迷ってる
俺は最初から決めてる。これ、と抹茶を選ぶ
トトリの色だから、これにする(尻尾をゆらしてご機嫌)
俺の目の色? たしかにこんな色してる。
トトリが、俺の色ってそれを選んでくれたのがすごく、嬉しい。

抹茶……
! あんまり甘くない。俺これはいける
トトリのもらっていいのか? じゃあちょびっと…
ちょっとすっぱいけどこっちも美味しい
トトリも、俺の食べて
交換するの、ちょっと嬉しい

暑いから美味しいのもあるけど、トトリと一緒だからそう感じるんだと思う


トトリ・トートリド
浮かんでるの、楽しいね…凜是(f10319)
泳げるけど、今日は…浮き輪でのんびりな、気分
凜是のそばは、ふしぎ
頑張っても、頑張らなくてもいいから

ね、ふわふわのかき氷、食べにいこう
この前、食べて…おいしくて
誰かと食べたいって、思ったんだ

果物が、好きだけど…ミント、ラムレーズン
初めての味も気になる
凜是は…トトリの色?
…ちょっと照れる
トトリも凜是の色を探すけど
苺はちょっと、違う…あずきも、違う
…あ、見つけた
はちみつを濃くしたみたいな、橙色、夏みかん、だって
凜是の目の色だ
ほろ苦くて、ちょっとすっぱい
…食べて、みる?
うん、抹茶も、いただきます

凜是と来れて、よかった
楽しいこと、誰かと分けるの、もっと楽しい



●抹茶と夏蜜柑
 夏めいた陽射しが浜辺を照らす。
 やさしい漣に揺られて、浮き輪に身体を預けて波間をのんびりとゆく。
「浮かんでるの、楽しいね……凜是」
「あつい……けど、海浮かぶの気持ちいい」
 トトリに名前を呼ばれた凜是はこくりと頷いた。ゆらゆらと揺れて水の心地を楽しむ時間は心地よい。けれどもきっと、こんな風に思えるのはふたりいっしょだからに違いない。
「凜是のそばは、ふしぎ。頑張っても、頑張らなくてもいいから」
「俺も、トトリの傍好き」
 視線を交わして微笑みあえば、ふと浜辺を歩く人たちが目に入った。その手には涼しげな硝子の器があって、トトリはふと思い立つ。
「ね、ふわふわのかき氷、食べにいこう」
 この前に食べておいしくて誰かと食べたいと思っていたのだとトトリが告げると凛是は同意を示した。
「知ってる、氷に色んな色かけるやつ。あと冷たい」
 食べに行く、と海から上がった凛是はトトリの手を引く。そして、あっち、と指差した凛是はかき氷の店がある通りへと向かってゆく。
 辿り着いた先では様々な色が並んでいた。
「……ミント、ラムレーズン」
 スタンダードなフルーツも良いけれど初めての味も気になってしまう。迷っている様子のトトリを見守りつつ凛是は、これ、と抹茶を選んだ。
「俺は最初から決めてる。これ、トトリの色だから」
 尻尾を揺らす凛是が何だかご機嫌そうに見えて、トトリは頬に両手を当てた。
「トトリの色? ……ちょっと照れる」
 それならば自分も彼の色を探してみようと視線を巡らせるトトリ。
 苺はちょっと違う。あずきも少し違う。凛是の色はもっとこの季節らしい色で、明るくて――そんな風に頭を悩ませていると、それが目に入ってきた。
「……あ、見つけた。凜是の瞳の色だ」
 それは蜂蜜を濃くしたような橙色。夏みかんだって、とトトリが嬉しそうに指をさすと凛是がぱちぱちと瞳を瞬く。
「たしかにこんな色してる」
 トトリが、自分の色だと言ってそれを選んでくれたことがすごく嬉しかった。
 そして、其々のかき氷を手にしたふたりは木陰に向かう。
 今まで遊んでいた海が陽に反射してきらきら光っていた。さやさやと吹いてゆく風も心地好く、ふたりは夏の彩に双眸を細める。
 そして、かき氷を一口。
「! あんまり甘くない。俺これはいける」
 抹茶の味に舌鼓を打った凛是の横でトトリも夏みかんの味を頬張る。
 ほろ苦くて、ちょっとすっぱいけれどこれもまた良い。凛是がじっと此方を見ていることに気付き、トトリは硝子の器をそっと差し出した。
「……食べて、みる?」
「じゃあちょびっと。……ん。ちょっとすっぱいけどこっちも美味しい」
 唇がきゅ、と引き締まったような感覚をおぼえたが、凛是はそのまま口元を緩める。そして代わりに自分の器を差し出し返した。
「トトリも、俺の食べて」
 こうやって交換するのはちょっと嬉しい。
 いただきます、とトトリが抹茶味のかき氷を食べる様を見つめ、凛是は夏の心地を感じる。おいしいね、と緑と橙の氷を交互に見遣ったトトリも嬉し気だ。
 そして、凛是は思ったことを伝えてゆく。
「暑いから美味しいのもあるけど、トトリと一緒だからそう感じるんだと思う」
 うん、と頷いたトトリは微笑む。
「凜是と来れて、よかった」
 ひとりでもきっと楽しいけれど、ちいさな幸せを誰かと分けると更に楽しい。
 それが他ならぬ友達と一緒ならもっともっとその気持ちは大きくなる。
 夏の海の色と、お互いの彩。
 今日という日もきっとまた、大切な思い出のひとつになる。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

逢坂・宵
ザッフィーロ君(f06826)と

かき氷を買ったら一緒にデッキに上がり
ビーチチェアに横になって星の海を見上げましょう

ええ、地上から見る星ばかりで……
宇宙空間からの星空というものは初めてですね
瞬かない星というのもまた常とは変わり新鮮な心持がします

そうして星を眺めてみればふと、視線を感じあの低い声が聞こえたなら
小さく微笑んでそちらへ振り返りましょう
差し出された紫色のかき氷を口に含んでその味と冷たさに目を細めたなら
こちらからも彼の髪のようなブルーハワイ味のかき氷を一口掬って差し出しましょう
ええ、美しい星を眺めながらきみと過ごすこの時間は、とても贅沢で……
たとえようもないくらい幸せです


ザッフィーロ・アドラツィオーネ
宵f02925と
宵と共にかき氷を手にデッキにて星の海を眺めよう
地上から眺めるよりも近くに見える輝きに思わず感嘆の声を漏らしつつ、ビーチチェアをつけ身を横たえ星空を見上げ様と試みる

宵とは様々な世界の星空を眺めてきたが…この様に近くから見る光景は初めてだからな
心が躍るが侭に隣の宵を横目で見遣れば自然と口元に笑みが浮かんでしまうかもしれない
宵、星々に夢中になるのも良いが…こちらも見てはくれんか?と揶揄う様な声を投げつつ葡萄味の…宵の瞳の色に似たかき氷を宵の口へ運んでみよう
青色のそれを差し出されたならば嬉しそうに口を開け口内へ
満天の星々を眺めながら大事な相手とこうして過ごす
本当に、贅沢なひと時だな



●君の彩
 かき氷を片手に向かうのは星の海が眺められるデッキ。
 隣り合った丁度良いチェア見つけた宵はザッフィーロを手招く。
 宵は右側へ、そしてザッフィーロは左側の椅子へと腰を下ろして一息ついた。そっと横たわりながら感じるたは硝子の器の冷たさ。氷が僅かに融けて水滴となっていく中でふたりは頭上を見上げる。
 思わず溢れ落ちたのは感嘆の声。
 星の海。
 まさしくそう表すしかない景色が其処には広がっていた。
「宵とは様々な世界の星空を眺めてきたが……此れは凄いな」
 この様に近くから見る光景は初めてだとザッフィーロが話すと宵も頷いてみせる。
「ええ、地上から見る星ばかりで……」
 宇宙空間からの星空をゆっくりと眺める経験は今までにない。
 瞬かない星というのもまた常とは変わり、新鮮な心持ちがした。宵はそのまま星々を見つめ続け、ザッフィーロも初めての景色を瞳に映す。
 何処までも続くかのように思える世界。この光景をいつまでも見ていられるような不思議な感覚に陥る。
 心が躍るが侭にザッフィーロはふと隣の宵を横目で見遣る。
 目を奪われたかのように星の海に見入る彼の姿に、自然と口元に笑みが浮かんでしまった。そしてザッフィーロは一言、そっと声をかける。
「宵、星々に夢中になるのも良いが……こちらも見てはくれんか?」
 はたとした宵は視線と揶揄う様な声に気が付いて視線を下ろした。
 微笑んだ宵がどうしたのかと問う前に、ザッフィーロがスプーンを差し出す。葡萄味の――宵の瞳の色に似たかき氷が口元に運ばれる。
 口を開けてそれ味わえば、冷たさと甘酸っぱさを感じた。双眸を細めた宵はお返しにと自分のかき氷を一口掬う。
 此方は彼の髪のようなブルーハワイ味。嬉しそうに口を開けるザッフィーロの様子が微笑ましく、宵が湛える笑みが更に深くなった。
 感じている甘さはきっと、氷の味だけではない。
 こうしてふたりで過ごすひとときが甘さを増してくれている。なんてな、とザッフィーロは口元を緩めてもう一口を宵にねだった。
 満天の星々を眺めながら大事な相手とこうして過ごす。
 それはまるで星が浮かぶ空間の中でふたりきりになったような――独り占めならぬふたり占めできているような気分になる。
 そんなことを感じながらザッフィーロは思いを言葉に変えた。
「本当に、贅沢なひと時だな」
 宵は星海を眺める彼の横顔を見つめ、ちいさく笑む。
「ええ、美しい星を眺めながらきみと過ごすこの時間は、とても贅沢で……」
 たとえようもないくらい幸せ。
 宵がそう告げると、ザッフィーロも此方に目を向けた。
 見つめあうふたりの瞳に映るもの。
 それはきっと――お互いがとびきり大切だと思える、一番星。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

バンリ・ガリャンテ
【アドリブ・他参加者様との絡み大歓迎です!】
ああもう最高じゃねえの!コメットスノウだなんてネーミングからして夢心地よ。この日の為に仕立てて頂いたゆめかわパンクロックなモノキニでエメラルドグリーンに飛び込むの。
透き通る輝きに目を凝らし一心不乱に泳いだら、暫し波間に身を委ねよう。大の字ぷかーーーっと寝ちまいそう。
心ゆくまでそうしたら、いよいよ浜辺でかき氷タイム。
俺はピンクのピーチシロップと桃ジュースを合わせ桃の切り身をふんだんに添えたコイツに決めた!愛らしくって甘やかで涼味ある夏のデザート。
浜辺を練り歩きつつ、折角だからデッキに座り星海を目の前に甘味を楽しもう。
感無量とはこの事だね。涙出そう。


レザリア・アドニス
星の海を満喫

水着着用

スペースシップワールド…前回来た時は仕事に忙しくて、あまりよく見てなかった。
チェアにのんびり羽を伸ばして、波の音に耳を傾げ、星の海を見上げれば、昼の部とはまた違う感じ
まさか、星の海の中に航行しているなんて…ちょっと信じられないの
頼んだ柑橘類のシロップと果肉をたっぷりかけたかき氷を一口頬張りつつ、再び星海を見上げて、思わず手を伸ばす
星海の彼方は、どんなものがあるか、果たしてこの海に果てがあるか
ゆらりゆられる心地に、思いを馳せつつ、星海と青海に抱かれて微睡に落ちる

(絡み・アドリブ歓迎)



●桃と柑橘と星の海
「ああもう最高じゃねえの!」
 バンリは今、夏の陽射しが燃えるような感動を覚えていた。
 夏の風、海の音色、輝く砂浜。
 そしてこの船のコメットスノウというネーミングからして夢心地だ。
 バンリが纏う水着はこの日の為に仕立てて貰ったゆめかわパンクロックなモノキニ。浮き立つ心のままに浜辺を駆け、砂を蹴る。
 エメラルドグリーンの海へと飛び込めば、水飛沫が辺りにきらきらと散った。
 寄せては返す波を掻き分けて深く、深く――。
 透き通る輝きに目を凝らして泳ぐと、投影された魚がすいすいと進む姿が見えた。それを追いかけて一心不乱に泳ぐバンリはまるで魚になったかのよう。
 ぷは、と水面に顔を出して空を見上げる。
 此方にもまた投影された太陽と青い空が見えてとても心地良い。
 そのまま浮かんで両手を広げたバンリは暫し目を閉じる。
 水に身を委ねると、波に合わせて身体が揺れた。大の字になってぷかぷかと揺蕩っているといつの間にか眠気めいた感覚が巡る。
「おっと、寝ちまいそうだった」
 はっとしたバンリはくるりと身体を回転させて立ち泳ぎをする。
 もうどれだけ遊んだだろう。海の心地に満足を覚えたバンリは海からあがって砂浜に向かい、かき氷を楽しむことに決めた。
「色々あるけどやっぱり……よし、コイツに決めた!」
 バンリが選んだのはピンクのピーチシロップと桃ジュースのかき氷。氷の上には桃がふんだんに添えられており見た目も鮮やかで美味しそうだ。
 愛らしくって甘やか、それでいて涼味ある夏のデザートは実に魅力的。
 硝子の器から伝わってくる冷たさも良く、バンリは浜辺を練り歩く。そして、折角だからと向かったのは星の海が見られるというデッキ。
「感無量とはこの事だね」
 涙出そう、なんて呟きながらバンリはかき氷を口に運ぶ。
 そんなとき、バンリはあるものを見つけて――。

 それから遡ること少し。
 レザリアはデッキのチェアで羽を伸ばし、星の海を眺めていた。
 夏の陽射しが感じられる浜辺のエリアも良いが、レザリアが見てみたいと思ったのは夜めいた色が眺められるこの場所。
 そういえば此処に来るとき、海辺で誰かがとても元気よく飛び込んでいた。
 弾ける水飛沫と心地好さそうに泳ぐ少女の姿を思い返しながら、レザリアは静かな時間を楽しもうと考える。
 そういえば前回に来た時は仕事に忙しくて、あまりよく見れなかった星の世界。
 のんびりと波の音に耳を傾ける。
 そうして頭上を見上げれば、不思議な感覚になる。
「まさか、星の海の中に航行しているなんて……ちょっと信じられないの」
 浮かんだ思いは自然と言葉になり、穏やかな空間の中にとけてゆく。そっと双眸を細めたレザリアはチェア横のミニテーブルに手を伸ばした。
 其処には頼んでおいたかき氷がある。
 柑橘類のシロップと果肉をたっぷりかけた氷を手に、スプーンで一口分をすくう。それをぱくりと頬張りつつ、再び星海を見上げた。
 そして甘酸っぱい味を堪能した後、レザリアは空いた片手をあげる。
 思わず伸ばした手の先には何処までも続くかのような宇宙の世界が広がっていた。
 ――星海の彼方は、どんなものがあるか。
 ――果たしてこの海に果てがあるか。
 ゆらりゆられる心地に思いを馳せたレザリアはいつしか、微睡みはじめていた。
 まるで、星海と青海に抱かれているようで心地好い。眠りに落ちた少女がすやすやと寝息を立てると、背中の羽もふわりと揺れる。
 そして、穏やかに眠る彼女の傍には別の影が近付いてきていて――。

「おーっ、気持ちよさそうに寝てる。……っと、起こさないようにしないとな」
 それは先ほどデッキに訪れたバンリだった。
 誰に言うでもなく、しー、と口元に指先を当てた彼女は気持ちよさそうに眠るレザリアを見て微笑ましい気持ちになっていた。そして、バンリはそっと近くのチェアに腰掛けてかき氷を食べはじめる。
 まだ眠りの中にいるレザリアはまだ知らないが、彼女は海辺で見かけた少女だ。
 そうして暫し後、少女の目が覚めたとき。
 偶然に同じ場所に居合わせた少女たちがどんなことを話し、どのような思い出を紡ぐのかは、此処に居るふたりだけが知ること――。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リル・ルリ
■ 桐葉/f18587
アドリブ歓迎

みて桐葉
星の海を游いでるようだよ!
相棒のヨルとお揃いのあろはをきて
満天の星を泳いで桐葉に微笑みかける
見つめられるのは少し照れるけれど

どんなかき氷をたべようか
僕は桜のしろっぷのかき氷
甘塩っぱいの美味しい
ヨルは桃ね
…ありがとう
桐葉に口を拭いてもらうのは少し照れくさい
君のは青いのだ!
ぶるはわい…舌も青く?
桐葉の青い舌をみて不思議がる
僕も君のを食べたら青くなるのかな
一口おすそ分け頂戴
僕のもあげる!
ぶるはわい、おいしい
僕の舌も青くなったかな?
…ヨルは青くなってる!いつの間に
笑い合う時間が幸せだ
青くなった舌をべーとして
3人で写真を撮ろう
美味しくて不思議で楽しい時間の思い出


亀甲・桐葉
🦋リルさん/f10762
編纂歓迎

借りたポラロイドを抱えて
宙の果てでの夏休み

わぁ…星が、こんなに沢山
夜空を飛んでるようなリルさんが
あんまり綺麗で泣いてしまいそう
感傷に浸っちゃ、だめですね
微笑うお顔とヨルくんが可愛くて
見上げて、微笑いかえす
ふたりとも、似合ってます!

桜色、とっても綺麗
彩の違いも目に楽しいです
あ、口元…少し、失礼しますね
ヨルくんもですよ

私は、青に惹かれちゃって
無難なブルーハワイ、です
甘くて爽やか、夏の味
食べてみますか?是非どうぞ
わ、ありがとうございます
優しいお味
どっちも美味しい…!

ふふ、みーんな青い舌!
折角だから記念撮影
浮き出るのを待つ時間も楽しくて
はじめての、しあわせな夏の思い出



●蒼の思い出
 今日は宙の果てでの夏休み。
 果てしない星海を往く船の中で、リルはゆらりと尾を揺蕩わせる。
 みて桐葉、と声をかけられて頭上を振り仰げばまるで星の中を進むかのような麗しい人魚――彼の姿が見えた。
「すごい、星の海を游いでるようだよ!」
「わぁ……星が、こんなに沢山」
 桐葉はリルが宙を泳ぐ様子を暫し眺め、借りたポラロイドカメラ越しにもその姿を捉えてみる。本当に夜空を飛んでいるようなリルがあまりにも綺麗で、桐葉は思わず涙ぐむ。けれどすぐに首を振った彼女は、感傷に浸っちゃだめですね、とちいさな笑みを湛えた。
 綺麗な光景でもあったが、同時に可愛くもある。
 何故ならリルはその腕に抱えたペンギンの相棒、ヨルとお揃いのアロハシャツを着ていたから。リルは桐葉からの視線に少しの照れを覚えつつひらひらと手を振る。
 そうやって微笑うリルの顔も、合わせてぱたぱたと羽を振るヨルも可愛く感じられて桐葉は微笑みかえす。
「ふたりとも、似合ってます!」
「ほんと? ありがとう桐葉」
 ふわりと柔らかな視線が交差して、あたたかな気持ちが巡った。
 そうしてふたりはこの船の名物、かき氷を食べに行こうと誘いあう。
 いちごミルクに抹茶金時、フルーツたっぷりのふわふわ氷などなど。道すがら見えるかき氷の数々にふたりの心も浮き立つ。
 どんな氷をたべようかと見渡し、リルが見つけたのは甘く香るフレーバー。
「僕は桜のしろっぷのかき氷にしよう。ヨルは桃ね」
 愛しいものを思い出す桜味と甘酸っぱい桃氷。ふたつが其々に宿す淡い色は似ているようでほんの少しだけ違う。
「桜色、とっても綺麗ですね」
 桃と彩の違いも目に楽しいと感じて桐葉は氷を受け取るリルたちを見守る。
 そして、一口ぱくりと氷を頬張った彼は口元を緩めた。
「ふふ、桜の味。甘塩っぱいの美味しい」
「あ、口元……少し、失礼しますね。ヨルくんもですよ」
 桐葉は喜ぶリルの頬に溢れた雫を拭い、そのままヨルにも手を伸ばす。ヨルの方は冷たい氷が嬉しかったのか口いっぱいに頬張っていて、両頬に氷の欠片がついてしまっていた。
 くすくすとおかしそうに笑う桐葉に対して、また少しの照れくささを感じるリル。けれど其処に嫌な気持ちはひとつもなくて穏やかな心地が浮かぶ。
「……ありがとう。桐葉は氷、何にしたの?」
 礼を告げたリルが問う。すると桐葉は店の人から出来上がったかき氷を受け取ってから、これです、とリルにそれを見せた。
「私は、青に惹かれちゃって無難なブルーハワイ、です」
 甘くて爽やかな夏の味。
 遠く深い海を思わせる色に目を輝かせ、リルは綺麗だとはしゃいだ。その姿も可愛いと思いながら桐葉はかき氷を食べる。
 きんとした冷たさの中に宿る甘さに、桐葉もそっと浸る。
「君のは青いのだ! あれ、ぶるはわい……舌も青くなるの?」
 興味津々のリルは彼女の口元を見て首を傾げた。僕も君のを食べたら青くなるのかな、と呟かれた言葉を聞いた桐葉はかき氷をひとすくいして、どうぞ、と差し出す。
「食べてみますか? 是非どうぞ」
「僕のもあげる!」
「わ、ありがとうございます」
 貰ってばかりはいられないとリルが氷の器を差し出し返すと、ヨルも真似っ子して自分の器を掲げた。楽しい交換っこが始まり、皆が甘い味を堪能していく。
「ぶるはわい、おいしい」
「優しいお味。どっちも美味しい……!」
 目を細めた桐葉が其々の味を楽しむ中、リルは一番気になっていたことを確かめようとしていた。
「僕の舌も青くなったかな? あっ……ヨルは青くなってる!」
 いつの間に、とリルが驚いた様子を見た桐葉は淡く笑む。そんなリルもまたブルーハワイ色に染まっていて、桐葉も軽く舌を出してみた。
「ふふ、みーんな青い舌!」
「おそろい!」
 青くなった舌をべー、と出して笑い合う時間。何気ないこんなひとときが幸せで、嬉しくなってしまう。
 そうしてふたりは記念写真を撮ることを決めた。
 ヨルを真ん中にして三人一緒。ぱしゃりというシャッター音と共にゆっくりと出てくる写真が浮き出ていくのはもう少し後。
 待つ時間もまた楽しくて、かき氷は変わらず美味しくて――。
 不思議で楽しい時間。
 切り取ったこの一枚は、はじめての、しあわせな夏の思い出の証になる。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

蘭・七結
愛しのあねさま/f02896

白いサマードレスを身に纏い
お気に入りのサンダルを鳴らして
夜色を纏うあねさまの元へと
黒い衣装はあなたを美しく染め上げる
とてもステキだわ、あねさま

あねさま、あねさま
見て、一面の星の海だわ
なんと美しいのでしょう
眺むことができて、うれしいわ

あねさまはかき氷ははじめてかしら
冷たくて、あまくて。ステキなものよ
鮮明なあか
イチゴ味のかき氷が食べたいわ

ふふ、ありがとう。あねさま
あねさまもひと口いかがかしら
掬ったひと口分をあねさまに差し出し

包まれた手のひら、きゅっと握りかえして
美しい星海を、ふたりじめしているみたい
もちろんよ、あねさま
今までも、これからも。ずうと
だいすきなあねさまと共に


蘭・八重
愛おしい妹なゆちゃん(f00421)と一緒

星の海なんてとても綺麗ねぇ
黒いワンピースにヒールを鳴らし
隣の愛おしい妹を見る
ふふっ、なゆちゃんとっても綺麗で可愛いわ

カキ氷?あら食べた事ないわね?
一緒に食べましょう
赤いかき氷を選び二人でシェア
あら、なゆちゃんの唇が紅く染まる、まるで紅い血の様でセクシーよ
そっとハンカチで彼女の唇を拭う
口へと運ぶ
ふふっ、甘くて冷たくて美味しいわ
なゆちゃんの様で可愛い、ありがとう

ベンチに並んで座り海を眺める
本当に宇宙空間の様
吸い込まれそうね

そっと彼女の手を握り微笑む
でも、なゆちゃんと一緒なら星の海の中でも宇宙空間の中でも
幸せな時間、一緒に旅をしましょう
ねぇ世界で一番愛する人



●黒と白と紅と
 サンダルとヒール。
 白いサマードレスと黒いワンピース。
 対称的な色を纏う七結と八重はならんで海辺をゆく。向かう先は星の海が見られる上階のデッキ。夜の色を纏う姉の横顔を見つめ、七結は淡く笑む。
 黒い衣装はあなたを美しく染め上げる。まるでこれから眺める景色の先取りをしたようで、七結は心に浮かぶ思いを言葉に乗せた。
「とてもステキだわ、あねさま」
「ふふっ、なゆちゃんとっても綺麗で可愛いわ」
 八重も笑みを返し、隣の愛おしい妹を見つめ返した。
 すると七結が先を示す。
「あねさま、あねさま。見て、一面の星の海だわ」
 漣の音を背にしながら進み、視界に入ったのは宇宙空間。地上からでは遠い星が眺められる景色はなんと美しいのか。
 緩やかに瞳を輝かせる七結は、一緒にあの景色を眺むことができてうれしいと語った。八重もこくりと頷いて同じ気持ちだと示す形で微笑む。
 そうして、ふたりはデッキに座る前にかき氷を用意していこうと決める。
「あねさまはかき氷ははじめてかしら」
「カキ氷? あら食べた事ないわね?」
「冷たくて、あまくて。ステキなものよ」
「それなら、一緒に食べましょう」
 穏やかな言葉を交わすふたりの目に留まったのは鮮明なあか。
 イチゴ味のかき氷が食べたいと七結が告げれば、八重も同意する。ひとつをふたりで半分こしようと話して、移動した彼女たちは隣り合ったチェアに腰掛けた。
 氷にスプーンを潜らせれば、さくりとした軽やかな音が鳴る。
 まずは七結がひと口、氷を頬張れば甘い味が舌先から広がっていった。おいしい、ともう一度口に運ぶとふと八重がハンカチを取り出す。
「あら、なゆちゃん」
 その唇が紅く染まった様を見て、八重は感じたままの思いを告げる。
「まるで紅い血の様でセクシーよ」
 そっとハンカチで彼女の唇を拭うと七結は少し恥ずかしそうに、それでいて嬉しげな微笑みを浮かべた。
「ふふ、ありがとう。あねさまもひと口いかがかしら」
 そして、掬ったひと口分を八重に差し出す。双眸を細めた八重は七結の手からかき氷を貰い、冷たい感覚にそっと目を閉じた。
「ふふっ、甘くて冷たくて美味しいわ」
 瞼をひらいてみると、紅い苺のような唇が見える。
 かき氷の色はまるでなゆちゃんの様で可愛い。ありがとう、と礼を告げ返した八重は穏やかに過ぎていく時間に心地好さを感じた。
 そして――ふたりで分けたかき氷はなくなり、硝子の器に水滴が伝っていく。
 並んで座る八重たちは暫し、景色を眺めていた。
「本当に宇宙空間の中にいるようで、吸い込まれそうね」
 八重はそっと七結の手を握り、淡く笑む。
 七結も包まれた手のひらをきゅっと握りかえして口元を緩めた。
「美しい星海を、ふたりじめしているみたい」
 穏やかな言葉を聞き、八重は繋いだ手のぬくもりを確かめる。
「でも、なゆちゃんと一緒なら星の海の中でも宇宙空間の中でも、幸せな時間、一緒に旅をしましょう」
 ねぇ世界で一番愛する人。
 そんな風に呼びかければ、七結も答える。
「もちろんよ、あねさま。今までも、これからも。ずうと――」
 だいすきなあねさまと共に。
 星の海の果てまでも、ずっとずっといっしょに。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

雨埜・舜
ララ(f20458)と

夏景色にそぐわぬ漆黒のスーツ姿で
……ん? そう言われると暑いかもな
冗談めいて笑みながら
彼女と訪れたのは星の海を眺むデッキ

かき氷は殆ど食べた事が無いのだが
最近はいろんな味があるようだね
迷ったのち頼んだのはティラミス味

届いた其れを早速口へ運ぶ
クリームチーズのシロップにほろ苦ココア
うん、本当にティラミスみたいだ
君のマンゴー味にも興味津々
……良いのか?
交換の提案に勿論と首肯して
掬ったスプーンをあーん、と差し出した
そして君に似合う鮮やかな黄色を一口食めば
涼やかな甘さに頬が緩む

鼓膜を揺らす漣の声
視界一杯に耀う星海
ああ、楽しいな。ララ
君の笑顔に己のかんばせも綻んで
――今日は、幸せな日だ


ララ・マニユ
舜さん(f14724)と

せっかくだから水着を着ようかなぁなんて思ったけど
いつものお洋服……にして大正解!
舜さんたらスーツなんだもん!
暑くない?
軽い足取りで一緒にデッキへ

かき氷いっぱいあって迷っちゃうね
うーん……
悩みに悩んでから、私はマンゴー味!

わぁ、果肉がいっぱいっ
んーっ!シロップはさっぱりめで果肉の甘さと絶妙なハーモニー!
すっごくおいしいよ
舜さんのティラミス味もおいしそう!
ねぇねぇ一口交換こしない?

ありがと!とにこにこ貰って
お返しに私もあーんと口元へ
すっごくティラミス!こっちもおいしいね

……すごいね
こんなに近くで星の海が見れるなんて
波音も、星海も、すっごく贅沢な気分
えへへ。楽しいね、舜さん!



●綻ぶ彩
 投影された空の青に海の蒼。
 夏色に染められた景色の中、ふと目に入ったのは季節にそぐわぬとも言える漆黒のスーツ。その後姿を見つけたララは、自分の今の姿と彼の服装を見比べる。
 せっかくだから水着を着ようか、なんて思ったけれど普段通りの服にして大正解。
「舜さんたら、暑くない?」
「……ん?」
 後ろから近付く気配と、自分を横から覗き込むララに気付いた彼は少し考える様子を見せる。そう言われると暑いかもな、と冗談めかして笑む舜にララもつられて淡く微笑み返した。
 隣同士並んで歩き、軽い足取りで一緒に向かうのは蒼海の景色から少し離れたデッキの方角。揺蕩う波の音を背に進めば、頭上に星の海が見えはじめた。
 その最中にふたりが眺めるのは様々なかき氷の数々。
「かき氷いっぱいあって迷っちゃうね」
 ララが辺りを見渡すと舜も倣って視線を追う。
 かき氷は殆ど食べたことがないが、鮮やかで色とりどりの氷は見ていて飽きない。
「最近はいろんな味があるようだね」
「うーん……どれにしよう」
 あれも良い、これも捨て難いと考えに考えて、悩みに悩んで、まずララが選んだのはマンゴー味。そして舜も迷った後にティラミス味を頼むことにした。
 デッキに足を運び、隣り合ったチェアに腰掛けたふたりはさっそく届いたそれを口に運んでゆく。冷たい感触、その後に感じる其々の味。
「わぁ、果肉がいっぱいっ。んーっ! すっごくおいしいよ!」
 きんとした心地好い感覚をおぼえながらララは目を瞑る。
 シロップはさっぱりめで果肉の甘さと絶妙なハーモニーを奏でていた。嬉しそうに二口目を頬張るララの隣で、舜もかき氷を味わう。
 クリームチーズのシロップに合わさったほろ苦ココアは舌の上でふわりと融けた。
「うん、本当にティラミスみたいだ」
 そう言葉にした舜はあまりにもララが美味しそうに氷を口に運ぶものだから、ついそちらが気になってしまう。するとララは顔を上げ、自分の持つ鮮やかな氷彩とは対称的な落ち着いた色合いのティラミス氷を見つめる。
「舜さんのティラミス味もおいしそう! ねぇねぇ一口交換こしない?」
「……良いのか?」
 ララからの申し出に一度瞬き、舜は勿論だと快く頷いた。
 そうして掬ったスプーンをあーん、と差し出す。唇が触れると同時にほろ苦さが口の中に広がり、ララは目を輝かせた。
「すっごくティラミス! ありがと!」
 笑顔を浮かべるララはお返しに私も、とスプーンを差し出し返す。
 彼女に似合う鮮やかな黄色。太陽の陽射しめいた色の氷を一口食めば、舜の口元にも笑みが咲いた。
 涼やかな甘さに頬が緩むのを感じていると、不意に海の音色が耳に届く。
 鼓膜を揺らす漣の声。
 そして、視界一杯に耀う星海。
「……すごいね」
 ララが思わず零した感嘆の言葉に舜は首肯する。
 こんなに近くで星の海が見られるなんて。波音も、星海も、すっごく贅沢な気分だと彼女が告げる言葉ひとつずつがとてもあたたかい。
「えへへ。楽しいね、舜さん!」
「ああ、楽しいな。ララ」
 無邪気に、心からの思いを伝えてくれる少女に舜は双眸をゆるく細めた。
 君の笑顔に己のかんばせも綻んでいる。
 だから、何の偽りもなくこう思えるのだろう。
 ――今日は、幸せな日だと。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

冴島・類
※フェレスちゃん(f00338)と

はじめていく星の海のせかい
来たのは
戦場に駆けて来てくれた
君にお礼がしたかったから

暗くてつめたい
世界をそう言った君
まだ知らない世界があるって
知りに行こうか

まず、氷菓を楽しみに

フェレスちゃん、おいで

すごいよ、こんな沢山ある
これはふわふわ甘い氷のお菓子
色によって味が違うんだよ
嗚呼、確かに雪にも似てるね
どれが良い?
気になるのを好きに

僕は…黄色
檸檬にしようか

はじめての味
どんな顔するかな?
苺の其れに夢中なのに
和みながら自分も口に
うん、美味しいね
ひんやり、生き返った心地
彼女が気に入ってるようだから
こちらも一口どうぞ?
と、器差し出し

食べたらデッキに
星の海
明るい夜を見に行こうか


フェレス・エルラーブンダ
るい(f13398)と
黒雲に包まれた鈍色のせかい
それしかしらなかったから
招く声、恐る恐るにおとこの後をついて歩いた

氷は固いぞ
水か土の味しかしない
……あまい?

誰も踏んだことのない雪みたいだと告げれば、おとこは笑うのだろうか
味の見当がつかなかったから
熟れた果物のようなあかいろを強請った

まともに匙を握るのが久しぶりでむつかしい
けれど――

あまい
……あまい、うまい

いちごと練乳だよ、と
教えてくれる声に短い返事しかできなくなるくらい夢中になった
差し出されたきいろの甘酸っぱさに、ぐるぐると喉を鳴らして

あかるい夜がおそろしくないなんて
みんなへんなやつだと思ったけれど
なぜだろうか
自分もそんなに、悪い気はしなかった



●苺と檸檬
 宇宙という名の闇。
 遠く光る星。其処は黒雲に包まれた鈍色のせかい。
 そんな風に思っていた。けれどこうして訪れてみれば、ただそれだけではないだと知ることが出来る。
「フェレスちゃん、おいで」
 まだ知らない世界があることを知りに行こう。そう招く声の主、類の後をおそるおそるついていくのはフェレスだ。
 待て、というようにフェレスは軽く駆け出す。
 此処は類にとってもはじめていく星の海のせかい。いつかのお礼を兼ねて、そして暗くてつめたいと世界を現した君と一歩を踏み出すために、類は微笑む。
 まずはそう、この季節にぴったりな氷菓を楽しみに――。
「すごいよ、こんなに氷が沢山ある」
 類が硝子の器に削られていく氷を示すとフェレスは首を傾げた。
「氷は固いぞ。水か土の味しかしない」
 当たり前のことだろうと少女が言うと類は首を横に振る。ただ否定したのではなくやさしく、そういった氷よりも軟らかいものだと告げるように。
「これはふわふわ甘い氷のお菓子。色によって味が違うんだよ」
「……あまい?」
 半分理解できなかった様子のフェレスは削られた氷をじっと眺めた。このまっさらな小さな氷に色がつくのだろうか。そう考えるとある光景が思い浮かぶ。
「誰も踏んだことのない雪みたいだ」
「嗚呼、確かに雪にも似てるね」
 類は笑う。けれどもそれは快い笑みだった。そうして、並ぶシロップを指差した彼は「どれが良い?」とフェレスに問いかける。
 すると少女は、これ、と苺味を示した。
 どれにするかと聞かれても味の見当がつかなかったから熟れた果物のようなあかいろを強請った。そんな彼女に続き、類も自分のかき氷の味を選ぶ。
「フェレスちゃんは赤か。僕は……黄色。檸檬にしようか」
 類が手早く注文を済ませていく様を見守りながら、フェレスは手渡されたスプーンを握った。まともに匙を握るのは久々で難しかったが、覚束ないながらもちゃんと手にすることが出来ている。
 彼女がはじめての味を口にするとどんな顔をするのだろう。
 類は楽しみな気持ちを覚えながら氷の器を手に取り、ゆっくりと腰掛けることのできる場所へと向かった。
 そして、ふたりは其々に選んだかき氷を口に運ぶ。
「あかいのに、しろい。……あまい」
「苺に練乳がかかってるんだよ」
「……あまい、うまい」
 檸檬の甘酸っぱい味を類が味わう中、フェレスは教えてもらった言葉にも短い返答しか出来ぬほどに苺味のかき氷に夢中になっていた。
 その姿に微笑ましさを覚えた類も和みながらもう一口。
「うん、美味しいね」
 ひんやりとした冷たさに生き返った心地を感じ、類は頷く。そして、フェレスへと器の方を差し出した。
「こちらも一口どうぞ?」
 返ってきたのはぐるぐるという喉の音。
 あかが甘いからきっときいろも。そんな風に思ったフェレスは遠慮なく匙で氷を掬い、口に運んだ。
 そうして暫く、硝子の器に残るのは薄い色が残った水滴だけになる頃。
 類は立ち上がり、今一度フェレスを招いた。
「星の海を――明るい夜を見に行こうか」
「……わかった」
 フェレスはこくんと頷きを返してから歩き出した類の後に続く。
 あかるい夜がおそろしくないなんて、みんなへんなやつ。そう思っていたたけれど、なぜだろうか。自分もそんなに、悪い気はしなかった。
「フェレスちゃん、ほら」
 手招く掌も、自分を呼ぶ類の声も何だか不思議で――。
 それが居心地が良いという感覚だと少女が知るのは、未だもう暫し後のこと。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

朧・紅
【夜烏】
《紅》人格で参加
アドリブ歓迎

夏です!海です!名物かき氷ですー!(苺満載のをペロリと食べていざ海へです

水着でなくても遊べるですよ?
荷物番をと言い出したいろはさんの手を取って波打ち際へ
ひょっこり悪戯心が顔を出し
そやー!っと軽くいろはさんに水をかけるです
かけ返されれば水かけっこ開始なのです♪
目配せに応えて息ぴったりに多喜さんにも水飛沫ですよ!

帽子が飛ばされれば
僕にまかせるですって海に飛び込むです!
なにせ僕泳げるようになったのです、先日!
もしかしたら溺れるかもですが判定はMSさんにおまかせ
上手く持ち帰れば笑顔でお渡しして皆さんを次の遊びに誘うですよ!
夏は始まったばかりなのです!


桜屋敷・いろは
【夜烏】で遊びに行きます

わたし、海って初めてです
水着を持っていないので、白いワンピースと麦わら帽子で
…ふふ、荷物番はお任せあれ、です
え、海へですか?
手を引かれ初めての海へ
サンダルのまま足首まで浸かって
ちゃぷちゃぷ、波の感触を楽しんでいたら…
きゃ?!突然の水飛沫に驚いて
…ふふふ、やりましたね?お返しですっ
ニコニコ笑顔で、朧さんへお水をかけます

朧さんとアイコンタクトを取ったら
数宮さんへ、えいっ!と水飛沫のプレゼントです♪

突風に、帽子がひらり、沖の方へ
追ってくれる朧さんを心配そうに見送って
ニコニコ笑顔に一安心

ベタつく風に、潮の香り
さざめく波の音、照らす太陽
……これが、夏。
初めての夏と海

嬉しい。


数宮・多喜
【アドリブ改変大歓迎】
【夜烏】の皆と水着で。

なんというか、診療所の皆と一緒に来ると
引率役になってる気がするねぇ。
とは言え、満更でもないんだけどさ。
今日は仁上センセがお休みだし、
アタシがしっかりしないとね!

って早速紅ちゃんははしゃいじゃってまぁ……
元気なのはいいけど、そのかき氷落とすなよー?
いろはちゃんもあの元気を少し分けてもらっても、って
こういう時に紅ちゃんの元気さが助かるねぇ。
二人ともー、あんまり沖まで出るんじゃ……わぷっ!?
こら、アタシにまで水掛けるな!(嬉しい)

なんやかんやでトラブルが……例えば
物が飛ばされたり誰かが溺れそうになったら、
すぐに【縁手繰る掌】で引き寄せるよ。

いい、夏だねぇ。



●水飛沫と夏景色
「夏です! 海です! 名物かき氷ですー!」
 駆け出した紅の元気な声が浜辺に響く最中、波の音が重なる。
 唇の端についた赤い苺の欠片をぺろりと拭う紅は既に真っ赤なかき氷を平らげた後。その後姿を見守るいろはと多喜は微笑ましそうに双眸を細めた。
「わたし、海って初めてです」
「へぇ、そうだったんだねぇ。それじゃアタシがちゃんと見ていてあげないとね!」
 いろはの言葉に多喜が頷き、それならばと気を張る。
 今日はセンセがおやすみ。だから今回は自分が引率役代わりだと考えた多喜は浜辺を駆け回る紅に目を遣った。
 すると海から吹いた風がいろはの白いワンピースをふわりと揺らす。
「……ふふ、荷物番はお任せあれ、です」
 水着を持っていないので、と話したいろはの声を聞きつけた紅が全速力で戻ってきた。何事かと瞳を瞬いたいろはの手を取った紅は明るく笑む。
「水着でなくても遊べるですよ?」
「え、海へですか?」
 返答も聞かずにその手を引いた紅は波打ち際へと駆けた。あっという間にいろはが連れて行かれる様子を眺め、多喜はゆっくりと浜辺を歩いてゆく。
「って早速紅ちゃんははしゃいじゃってまぁ……」
 見れば既に紅は水の中。
 いろはもサンダルのまま水辺に浸かっていた。水の心地好い冷たさに少し驚くいろはに、紅が大丈夫だといってぱしゃぱしゃと駆けまわる。
 仮の保護者としての気持ちでいる多喜はくすりと笑った。
「いろはちゃんもあの元気を少し分けてもらっても、ってこういう時に紅ちゃんの元気さが助かるねぇ」
 多喜がふたりを見つめる中、紅はふと悪戯をしてみようと思い立つ。
「そやー!」
「きゃ!?」
 ちゃぷちゃぷと波の感触を楽しんでいた中に突然の水飛沫。一瞬は何が起こったか分からなかったいろはだが、すぐに紅の仕業だと気付いて水をすくう。
「……ふふふ、やりましたね? お返しですっ」
「やりましたよ! 水かけっこ開始なのです♪」
 響く波の音、弾ける水の粒。
 少女たちがはしゃぐ光景は実に楽しげで、多喜も水辺に近付く。
 波が僅かに爪先に触れたと感じたとき、多喜の知らない間に紅といろはが何事かのアイコンタクトを交わしあっていた。そのことに気付かなかった多喜は顔を上げて呼び掛ける。
「二人ともー、あんまり沖まで出るんじゃ……わぷっ!?」
 その瞬間、冷たい水が襲いかかってきた。波が弾けたのではないと感じる間もなく第二陣が多喜に降りかかる。
「多喜さんにも水飛沫攻撃です!」
「えいっ! わたしたちからのプレゼントです」
 息ぴったりな紅といろはのふたりを交互に見遣り、多喜は駆け出した。
「こら、アタシにまで水掛けるな!」
 口調は怒っているかのようでも内心は嬉しい。多喜が波間に足をつけて少女たちにお返しをしようとしたそのとき、別の異変が起こった。
「わ……帽子が――!」
 不意に吹き抜けた風によっていろはの麦わら帽子が飛ばされてしまった。
 すぐにそれを察した紅が大きく手を上げ、すぐに拾ってくると名乗りを上げる。
「僕にまかせるです!」
「でも……」
 それなりの水深がある所に帽子が飛ばされて行ったようだといろはが言うと、紅は心配ないといって胸を張った。
「なにせ僕泳げるようになったのです、先日!」
「そうか、ちゃんと泳げるなら……って先日?」
 それなら大丈夫。な、訳がないと多喜が突っ込みそうになるも、既に紅は思いっきり海に飛び込んだ後だった。だが、紅はそのまま浮かんで来ない。
「……どうしましょう」
「ああもう、仕方ないね!」
 心配そうないろはを不安がらせぬため、そして何よりも紅の無事を確かめるために多喜は己の力を発動させた。
 縁手繰る掌――アポート・アンド・テレポート。
(捕まえた、そこっ!)
 一瞬後、ちゃんと泳いでいるというのにぶくぶくと沈む紅のもとへ転移した多喜はその身体を抱え、すぐに海面を目指して泳いでいった。
 そして――。
「ぷはっ、意外と深かったみたいです。助かったのですー!」
 水面から顔を出した紅は何事もなく無事。
 同じく浮びあがった多喜はゆらゆらと水の上で揺れていた帽子を手にしていた。
「帽子も紅ちゃんもちゃんと捕まえたよ」
「良かった……」
 紅も多喜も笑顔だったことで、ほっとしたいろはは思わずくすくすと笑う。
 その頃にはふたりとも波打ち際に上がってきており、少しだけ水を吸った麦わら帽子もいろはの手に戻された。
 そんなハプニングにもめげることなく、紅は次は何をして遊ぼうかと考え始める。
「さあ、夏は始まったばかりなのです!」
 元気の良い声が波の音に響く様は先程と同じ。多喜は何故だかおかしくなって、それでいて楽しい気分を覚えながら空を振り仰ぐ。
「いい、夏だねぇ」
「……これが、夏」
 それに倣っていろはも夏の景色を見つめた。
 初めての夏と海に感じるのは嬉しいという気持ちだった。
 悪戯な風に、潮の香り。さざめく波の音、照らす太陽。
 そのすべてが眩くて、綺麗で、とてもきらきらしたものに思えた。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

紫丿宮・馨子
【梟】
折角ですので水着で

かき氷…先日もいただきましたが
こう暑いと、何度でも食したくなりますよね

自身が先日食べたところよりも種類が豊富なので
興味深そうにきょろきょろと

実はわたくし
最近は生クリームを使用したスイーツがまいぶーむにございまして
濃厚ミルクティーのかき氷に
紅茶風味のホイップクリームをたっぷり乗せたものを

境様
わたくしはどれも好きでございますが
今回はこちらを
紅茶の良い香りがいたします

都槻様は…欲張りさんにございますね(くすくす
シェア、わたくしも賛成でございます
さあ、どうぞめしあがれ

華折様、かき氷で少しは涼しくなりましか?
まだ暑そうでしたら、扇であおいで差し上げて

ふふ、美味しゅうございますねぇ


華折・黒羽
【梟】

フードを被って陽を遮ったまま
更なる涼を求めてかき氷選びを

見たことのない素材も多くなかなか決まらない
悩みに悩んでお任せと店員に伝え出来上がったのは
青いシロップにチョコのソース
桃色の桜の形をしたゼリーがふたつ添えられたかき氷
お客さんのイメージだよ!と言われれば
戸惑う様に連れの顔を見るだろう

一口含めば味に間違いは無く
僅かにほわり綻ぶ雰囲気

花世さんの言葉に頷きながらも
ぱくりぱくりと匙は進む
馨子さんに扇がれれば
その涼しさに心地よさげに目元はゆるり
まるで喉元を撫でられた猫の様

けれど穏やかに此方を眺める綾さんと目が合えば
ハッと表情を元に戻し顔を背けながら
また匙を進め始めるだろう
揺れる尾は隠せぬままに


境・花世
【梟】

夏だ! 海だ! 仕事は休み!
水着姿できらきら波と戯れて
振り向けばみんなが手にするかき氷

猛スピードで砂浜に駆け戻って、
彩り鮮やかな氷たちに目をきらきら
馨子はどんなのがすき? 何味?
氷までいい匂いがしそうだと笑って、
隣の器に目をやれば最終兵器練乳あいす乗せ

綾ってばなんて贅沢……!
あは、わたしも真似してしまおう 

ここぞとばかりに早業発揮して購う氷は
ラムレーズンにミルク、キャラメルアイス
一匙掬えば舌で濃厚に蕩けてじたばた
抹茶も紅茶もチョコのも?おいしい、もうひとくち!

黒羽、こんな風にかき氷が食べられる季節なら
夏もわるくないね、とかろやかに語り掛けて
ふと気付く素直な尻尾に
綾と一緒に、ふくふく笑う


都槻・綾
【梟】

氷菓屋にて
瞳を輝かせ
品書きを眺める横顔は幼子のよう

私は抹茶氷
濃いめの茶蜜に練乳を掛け
みるくあいすと小豆あいすを乗せて貰う

黒羽さんの桜ゼリーにも微笑んで

折角ですし
皆で交換しませんか
味わい比べで二度も三度も美味しいですよ

なんて
理に適った(?)提案のシタゴコロは勿論
様々な味を楽しみたいから

削氷の器を合わせる代わりに
銀の匙を軽く掲げ
夏に乾杯

馨子さんの紅茶氷は上品な香りが立って
かよさんの氷は甘みと仄苦さが見事に響き合い

ラムに紅茶を合わせれば
酒杯も交わしたくなる絶妙さです、と
ほくり

清涼を身裡に取り込んだ黒羽さんの
普段余り動かぬ表情が
僅かに綻んだ気がして和む

ふわり融けいく涼の味
正に夏の醍醐味、ですねぇ



●氷に映す心地
 ――夏だ! 海だ! 仕事は休み!
 海辺にきらきらと弾ける波の雫と戯れ、花世は両手を広げる。
 何の憂いもなく平和な夏の休みを満喫できるのだと思うと心が浮き立つ。漣の音と踊るかのような花世の姿をちらと見てから、馨子は淡く笑んだ。
「かき氷……先日もいただきましたが、こう暑いと何度でも食したくなりますよね」
 氷菓屋にて、馨子が興味深そうにきょろきょろと彩や味の種類を見渡すと、綾も静かに頷く。波飛沫に瞳を輝かせる花世も、品書きを眺める馨子たちの横顔もまるで愛らしい幼子のようだと綾は感じていた。
 そしてフードを被ったままの黒羽もまた、更なる涼を求めてかき氷を選んでいる。見たことのない素材も多くなかなか決まらない。悩んでいる様子の黒羽の傍ら、馨子と綾はこれと決めたものを頼んでゆく。
「実はわたくし、最近は生クリームを使用したスイーツがまいぶーむにございまして」
 そういって馨子が注文したのは濃厚ミルクティーのかき氷に紅茶風味のホイップクリームをたっぷり乗せたもの。
 続けて綾も店員に告げる。
「私は抹茶氷を」
 濃いめの茶蜜に練乳を掛けて、ミルクと小豆のアイスを追加で。
 ふたりが何の迷いもなく頼む様子を見た黒羽は悩みに悩み、お任せでと店員に伝えた。そして黒羽の分として出来上がったのは青いシロップにチョコのソース、そして桃色の桜の形をしたゼリーがふたつ添えられたかき氷。
 これは? と黒羽が僅かに首を傾げると、店員は「お客さんのイメージだよ!」と笑った。戸惑うように仲間の顔を見る彼に綾は微笑んでみせる。
 そんな中、海辺にいた花世が振り向いた。
 見れば既にみんながかき氷を手にしている。はっとした彼女は猛スピードで砂浜に駆け戻り、彩り鮮やかな氷たちに目を輝かせる。
「馨子はどんなのがすき? 何味?」
「わたくしはどれも好きでございますが。今回はこちらを。喩えるならば、紅茶すぺしゃる、と表しましょうか」
 馨子の答えを聞けば、花世は氷までいい匂いがしそうだと笑った。
 隣の器に目をやれば、青とチョコのコントラストが面白い黒羽の氷が目に入る。そして更に見えたのは綾の最終兵器練乳アイス乗せ氷。
「綾ってばなんて贅沢……! あは、わたしも真似してしまおう」
 ここぞとばかりに早業を発揮して購う氷はラムレーズンにミルク、キャラメルアイスの贅沢仕様。さっと頼んだ花世の物が揃ったことで魅惑の氷タイムがはじまる。
 綾は削氷の器を合わせる代わりに銀の匙を軽く掲げ、夏へ乾杯を捧げた。
 透き通った硝子の器を伝っていく水滴。
 波の音が聞こえる浜辺にて、さくり、と氷を掬う音が静かに響く。
 んん、と最初に嬉し気に響いた声の主は花世。
 一匙掬えば舌で濃厚に蕩けて、思わずじたばたとはしゃいでしまう美味しさ。綾は大人味の抹茶を、馨子も濃厚紅茶の味を楽しんでゆく。
「……美味しいですね」
 最初は戸惑いがちだった黒羽も、一口含めば僅かに雰囲気が変わった。お任せの味に間違いは無く、ほわりと少しだけ口元が緩む。
 それは氷の冷たさ故か、それとも甘さからなのか。花世と綾は黒羽の様子を微笑ましく見守った。
 そうして綾は皆に予てからの提案を投げかける。
「折角ですし、皆で交換しませんか」
 きっと味わい比べで二度も三度も美味しい。なんて理に適った申し出は勿論、自分が様々な味を楽しみたいから。
 その無邪気な下心めいた思いに気が付いた馨子はくすくすと笑う。
「都槻様は……欲張りさんにございますね」
 けれどもシェアには馨子も賛成の様子。
 さあ、どうぞめしあがれ。穏やかな言葉とともに差し出される皆の器へと一番に匙を伸ばしたのは花世だ。
「抹茶も紅茶もチョコのも? おいしい、もうひとくち!」
「では私も」
 彼女に続いて綾も匙で其々の氷を一口ずつ掬って口に運ぶ。上品な香りの紅茶に、甘みと仄苦さが響き合う味、そしてラムに紅茶を合わせれば酒杯も交わしたくなる絶妙さ。
 ほくりと綾が口元を緩めると、馨子も皆から貰った味わいに舌鼓を打つ。
 そして馨子は黒羽に問いかけた。
「華折様、かき氷で少しは涼しくなりましたか?」
「黒羽、こんな風にかき氷が食べられる季節なら夏もわるくないね」
 同じように花世もかろやかに彼に語り掛ける。すると黒羽はその言葉に頷きながら、ぱくりぱくりと匙を進めた。
 彼がまだ暑そうだと感じた馨子は匙をそっと置き、手にした扇であおぐ。
「ふふ、美味しゅうございますねぇ」
 やさしい言の葉を向けてくれる彼女に扇がれれば、黒羽の目元が心地よさげに緩んだ。まるで喉元を撫でられた猫のようで、その尻尾も揺れている。
 花世と綾は尻尾は素直なのだと感じて、一緒にふくふくと笑った。
 彼らの視線に気付いた黒羽はハッとして表情をもとに戻したが、匙をすすめる手は決して止まらなかった。
 涼やかな風に揺れる尾。楽しい気持ちと冷たい氷。
 ふわりと融けていく涼の味を思い、綾は遠くに見える夏空の彩を振り仰いだ。
 季節の色を映し出す蒼い海は何処までも爽やかで心地が良い。
「正に夏の醍醐味、ですねぇ」
 そして――漣の音が響いていく夏景色のなかで、快い言葉が落とされた。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

白藤・今鶴羽
・マレークさん(f09171)と夏休み
夏の海…眩しい日差し…何も起きない訳が無く…
だってマレークさんですし(謎の信頼感)

・コメットスノウ号
ふわふわで涼し気なお名前ですね
ふわふわ…ひんやり…かき氷…?

・かき氷
…すみません、ぶしゃー(グラフィティスプラッシュ)には味はついてないと思います
普通のシロップをかければいいんですね、わかります(こくり)
定番はブルーハワイでしょうか、夏の空のような鮮やかな青の
バイオレットはマレークさんの瞳の色みたいですね
いろいろあって迷ってしまいますね
…迷った時は全部がけ。わかります
はい、あーん?

・あれあれー?
マレークさん色にぶしゃーしてる子がいますよー?(アメフラシ)


マレーク・グランシャール
変な期待をされているようだが、今鶴羽(f10403)とリゾートを楽しみたい
コメットスノウ号か
愛らしい名前だな

普段は軍装だがTPOを意識してボードショーツ姿に
色はやっぱり黒系だな
今鶴羽、お前も脱げ
色白細身に合いそうな水着をチョイスしてやる
ラッシュガードパーカーも羽織るといいぞ

自分が着るとどうしても黒になる分、かき氷の色にはこだわりたい
赤(イチゴ)と青(ブルーハワイ)を混ぜたら紫になるのでは
この場合味はどうなるのだろうな
上には今鶴羽のぶしゃー(グラフィティスプラッシュ)のような濃厚な練乳を
味見するか?(はい、あーん)

ところでお前、俺の瞳の色がアメフラシ色と言っていた気がするが、アメフラシとは何だ?



●アメフラシのいろ
 夏の海、眩しい日差し。
 穏やかな漣の音。陽を反射して煌めく波間。こんなに清々しくて素敵な景色の中で何も起きない訳が無く――。
 だってマレークさんですし、と今鶴羽は謎の信頼感を持って言葉にする。
 何やら変な期待をされていると感じたマレークだが、其処は華麗にスルーしつつ船内を見渡していった。
「コメットスノウ号か。愛らしい名前だな」
「ふわふわで涼し気なお名前ですね」
 今鶴羽も彼に倣って夏らしい景色が広がる一角を見つめる。ふわふわといえばひんやり。ひんやりといえばかき氷。
 のんびりと連想しているとマレークが不意に此方を向く。
「今鶴羽、お前も脱げ」
「……脱ぐ?」
 ぱちぱちと瞬いた今鶴羽が何かを言う前にマレークは自分を示した。
 今日の彼の装いは黒のボードショーツ姿。先程の言葉だけを聞くと何やら大変な意味にも思えるが、要は色白で細身の今鶴羽に合いそうな水着をチョイスしてやる、という意味だった。
「ラッシュガードパーカーも羽織るといいぞ」
「このチョイス、マレークさんらしいですね」
 言われるままに水着を選ばれ、最後に上着を羽織らせて貰った今鶴羽はこくんと頷く。そして今鶴羽はかき氷を食べに行こうとマレークを誘う。
 目の前で削られていく氷。
 大切なのは其処に何の味と色を乗せるか。
 自分が着るとどうしても装いは黒になる。その分だけかき氷の色にはこだわりたいとしてマレークは悩む。
「赤と青を混ぜたら紫になるのでは……」
 イチゴとブルーハワイ。この場合味はどうなるのだろうかと考える彼はとりあえず頼んでみることにした。そして、かき氷の上には――。
「ここに今鶴羽のぶしゃーのような濃厚な練乳をかけて、完成だ」
「……すみません、ぶしゃーには味はついてないと思います」
 ぶしゃー、つまりグラフィティスプラッシュを思ったマレークがかけ放題だった練乳を絞り出していく様に、今鶴羽は思わず突っ込みを入れる。
 けれどそんな遣り取りもまた楽しいもの。
 そして今鶴羽もシロップを選ぶ。その中で目に止まったのは夏の空のような鮮やかな青が美しいブルーハワイ味。
 そういえばマレークも選んでいたと気付いてちらりと横を見れば、その氷は見事な紫になっている。
「バイオレットはマレークさんの瞳の色みたいですね」
 似た色が並ぶ様に微笑ましさを感じ、今鶴羽は様々なシロップをかけていった。
 迷った時は全部がけ。それが正義。
 そして、マレークはスプーンで掬った氷を今鶴羽に差し出す。
「味見するか?」
「はい、あーん」
 遠慮なく口を開けた今鶴羽の唇に氷が触れた。冷たい感覚と甘い味が広がり、今鶴羽はもぐもぐと口を動かした。
 マレークもそのまま自分のかき氷を口に運んでいく。
「ところでお前、俺の瞳の色がアメフラシ色と言っていた気がするが……」
 アメフラシとは何だ、と問いかけるマレークに今鶴羽は淡く笑む。それは、と語る今鶴羽もまたかき氷を口にしていく。
 ちいさな夏のひとときは平和で穏やかに、ゆったりと流れていった。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

六波・サリカ
暗裡(f09964)と行きます。

見てください暗裡。船の中だというのに陽が照っています。
真夏の太陽は憎いですが、カキ氷の美味しさを際立たせる役割だけは評価してあげても良いでしょう。
さあ、カキ氷屋はあっちです。行きましょう。

沢山のシロップがあるのですね。暗裡は何味にしますか?
私はジンジャーエール味のシロップあればそれにしたいと考えています。
ああ、せっかくなので練乳もかけてみましょう。
美味しいかどうかは分かりませんが…

カキ氷を入手したら暗裡と共にビーチパラソル付のテーブルで頂くとしましょう。
ジンジャーエールと練乳…意外と合いますね。
暗裡、良ければ食べてみてください。(カキ氷のカップを差し出す)


幽世・暗裡
※サリカと行きます。

お、お日様を今すぐに止めるよう呼びかけてくださいよぉー……
このままでは溶けてしまいます……そして、スライムの如く溶けたアタシは甲板から海へと流れ、深海魚の餌に……

はぁ?なんですかぁ、サリカ。……カキゴオリ? そう、そうですね、かきごおり…… !? カキ氷っ!
忘れていましたぁ。地獄で仏、夏海でカキ氷とはまさにこのこと!
……シロップは、えーとっ……メロンとブルーハワイと、苺と、それからそれから!とりあえず沢山!沢山なんですよ!

因みに是はアドバイスですが、シロップをかけすぎると……
……ぉえ……そ、そういうことですよぉ……。
(羨ましそうにサリカのカキ氷へ視線を向けて、小さくぼやく)



●ダークネス氷とジンジャエール
 此処は宇宙を往く船の中。
 けれども目の前には煌めく太陽と波の音、そして砂浜が広がっている。
「見てください暗裡」
 サリカは景色を示して、人工の太陽を見上げた。
 対する暗裡は照り付ける陽から逃げるように木陰に入っている。
「お、お日様を今すぐに止めるよう呼びかけてくださいよぉー……」
 このままでは溶けてしまいます、と暗裡は目を瞑った。
 スライムの如く溶けたアタシは甲板から海へと流れ、深海魚の餌になって――なんてある意味恐ろしい想像を止めたのはサリカの声だった。
「さあ、カキ氷屋はあっちです。行きましょう」
 サリカとて真夏の太陽は憎い。しかし、カキ氷の美味しさを際立たせる役割だけは評価してあげても良いと感じていた。
「はぁ? なんですかぁ、サリカ。……カキゴオリ? そう、そうですね、かきごおり……!? カキ氷っ!」
 はっとした暗裡は少しでも暑さが和らぐならとサリカの後についていく。
 あまりの太陽の強さにすっかり忘れていた。
 地獄で仏、夏海でカキ氷とはまさにこのことだと感じた暗裡は、今までとは打って変わってやや生き生きとしていた。
 そうして、ふたりは氷屋の前に辿り着く。
「沢山のシロップがあるのですね。暗裡は何味にしますか?」
「……シロップは、えーとっ」
 サリカからの問いかけに暗裡は辺りを見渡す。赤、青、緑に黄色。様々な彩りが少女たちを迎えてくれていた。
「私はジンジャーエール味のシロップあればそれにしようと……ああ、ありました」
 サリカは琥珀色の瓶を見つけて、これがいいと示す。
 すると暗裡は端から端までひとつずつ指差していった。
「メロンとブルーハワイと、苺と、それからそれから! とりあえず沢山! 沢山なんですよ!」
 つまりは全部がけ。
 贅沢なことをするのだと感じたサリカはジンジャエールのかき氷を受け取り、横に置かれていた練乳を手に取った。
「せっかくなので練乳もかけてみましょう」
 美味しいかどうかは分からないがこれも挑戦。冷たくて爽やかな中に甘さが混じればきっと美味しいはずだ。
 そうしているうちに暗裡の氷も出来上がる。
 辺りを見遣ったサリカは砂上にビーチパラソルが刺さっている一角に暗裡を誘い、其処で氷を食べようと決めた。
「いただきます」
「いただきますっ」
 スプーンを手にして同時に氷を掬うふたり。
 さく、と軽やかな音が響く様も何だか涼しげだ。そしてサリカは匙を口に運ぶ。
「ジンジャーエールと練乳……意外と合いますね」
 良かった、と顔を上げると目の前では暗裡が微妙な顔をして俯いていた。
「因みに是はアドバイスですが、シロップをかけすぎると……ぉえ……そ、そういうことですよぉ……」
 口元を押さえた暗裡が持っているのは蜜をかけすぎてジュースのような――それでいて色が混ざり合って黒っぽく染まった水。
 どうやらさくさくと混ぜたことでとけるのが早かったようだ。
 しかし冷たいものは欲しいので暗裡はそれをちゃんと食べる。けれども美味しいと云われたサリカの氷も気になり、自然に視線が向いてしまう。
「暗裡、良ければ食べてみてください」
 サリカは彼女の思いを察し、硝子の器をそっと差し出した。
 いいのですか? と問うような眼差しが向けられ、サリカは静かに頷く。
 そして、ふたりはとても美味しい氷を仲良く分け合った。そのひとときはとても穏やかで、夏の暑さなんて暫し忘れてしまうほどに心地良いものとなってゆく。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

誘名・櫻宵
🌸フレズローゼ(f01174)
アドリブ歓迎

フレちゃんにもらった白地に桜咲く麗しいワンピース水着にセレブ帽
夏の乙女の装い

フレちゃんもよく似合ってるわ

お楽しみのかき氷
どのシロップにする?
あたしは桜!練乳も足して甘くするの
あら虹色
色んな味がして楽しそう

話って?
……
好きな人ができた?!
何処の馬の骨のッ?!
おかあさん許しませんからね!
……一華?!あたしの弟!
照れるフレちゃんは可愛いけど
あまりの衝撃にくらくらする
一華は多分
婚約者いるし誘七の家はやめた方が…
爆破?!え、不穏
あたしにも昔いたわよ親の決めた
やめて!リルには言わないで!

甘くて冷たくて美味しくて衝撃的な夏の一時
がっと食べて頭キーンとなりたい気分よ


フレズローゼ・クォレクロニカ
🍓櫻宵(f02768)と一緒
アドリブ等歓迎

かき氷ー!ハートのリボンビキニにトランプ柄のパレオ、ハートの女王も夏休みなんだ!

櫻宵は見ためは本当に美女だね
ナンパとかされないか心配!
ふふふーん!かき氷を奢ってくれたまえ!
櫻宵は桜?ブレないね
甘しょっぱそうで美味しそう
ボクは、じゃーん!レインボー!苺檸檬メロンブルーベリー練乳マンゴーブルーハワイ!完璧さ!虹の味を堪能

えへへ……あのね
ボク、好きな人ができたー!
きゃー言っちゃった!
何処の馬の骨って、櫻宵の弟の一華くんだけど……?
なんでダメなのさ!
は?婚約者?爆破してやるし?
櫻宵にもいたの?リルくんに言ってやろー

ボク頑張るんだから応援してよね
おにーちゃん!



●桜と虹と乙女心
 夏の色を纏った風が海辺に吹き抜けていく。
 帽子を抑えた櫻宵がその身に纏うのは、白のワンピース水着。夏の乙女の装いだ。
 傍らのフレズローゼから貰ったというそれは白地に桜が咲いていて麗しい。似合ってる、と告げてくれるフレズローゼに微笑みを返し、櫻宵は双眸を細めた。
「フレちゃんもよく似合ってるわ」
「櫻宵は見ためは本当に美女だね。ナンパとかされないか心配!」
 そういって笑うフレズローゼの装いも今日は少し違う。
 ハートのリボンビキニにトランプ柄のパレオ。ハートの女王も夏休み。
 行こう、と誘う彼女のお目当てはかき氷。
「ふふふーん! かき氷を奢ってくれたまえ!」
 意気揚々と甘える気満々で駆け出したフレズローゼの後に続き、櫻宵も氷屋へと歩を進めていく。氷が細かく削られる音は何だか爽やかで、涼を感じられた。
「どのシロップにする? あたしは桜! 練乳も足して甘くするの」
「櫻宵はブレないね」
 問いかける櫻宵はもう既に何を選ぶか決めていた様子。甘しょっぱそうで美味しそう、と口元を緩めたフレズローゼは色とりどりの蜜を見渡す。
 そして彼女が選んだのは――。
「ボクは、じゃーん! レインボー! 苺檸檬メロンブルーベリー練乳マンゴーブルーハワイ! 完璧さ!」
「あら虹色。色んな味がして楽しそうね」
 それはフレズローゼらしい色。贅沢で鮮やかな彩に櫻宵は微笑ましさを覚えた。
 そうしてふたりは波模様の爽やかなビーチパラソルの下で氷を味わうことにする。
 虹の味を堪能して、んん、と舌鼓を打つフレズローゼ。
 櫻宵も上品な桜の味を楽しみつつ、波の音を聞いた。
 そんな中でふと、櫻宵はフレズローゼから話があると聞いていたことを思い出す。
「話って?」
「えへへ……あのね」
 どうかしたのかしら、と問うと彼女はほんの少し照れくさそうに笑った。
「ボク、好きな人ができたー! きゃー言っちゃった!」
「……」
 それを聞いた櫻宵は一瞬、無言になる。しかしすぐにはっとした。
「好きな人ができた?! 何処の馬の骨のッ?!」
 おかあさん許しませんからね、と思わず立ち上がりそうになった櫻宵だが、その前にフレズローゼがきょとんとして口をひらいた。
「何処の馬の骨って、櫻宵の弟の一華くんだけど……?」
「……一華?! あたしの弟!」
 衝撃から更なる衝撃。
 照れるフレズローゼはとてもとても、乙女らしくて愛らしかったがあまりのことにくらくらしてしまった。
「一華は多分、婚約者いるし誘七の家はやめた方が……」
 やんわりと櫻宵が告げると、フレズローゼはなんでダメなのさと首を振る。
「は? 婚約者? 爆破してやるし?」
「爆破?! え、不穏……」
 それを知っても動じない彼女はまさに暴虐の女王。櫻宵はどうしていいか分からずに自分の家の事情を少しだけ言葉にした。
「あたしにも昔いたわよ親の決めた婚約者」
「櫻宵にもいたの? リルくんに言ってやろー」
 くすくすとからかうように話すフレズローゼは無邪気だ。
「やめて! リルには言わないで!」
 慌てる櫻宵の様子も何だか乙女っぽくて、フレズローゼは何だか楽しくなってくる。
 ひとを好きになること。
 其処にどんな事情や理由があったとしても、好きだという気持ちは止められないし、身近なふたりを見ていると尊いものだと思える。だからこそフレズローゼは怖気付いたりも、簡単に叶わないだとか駄目だとかは思ったりはしない。
 未来がどうなるかなんてまだ誰にもわからない。けれどこの気持ちを話したかったことは揺るぎない事実であり、大切なこと。
 だから、とフレズローゼは屈託なく微笑んだ。
「ボク頑張るんだから応援してよね。おにーちゃん!」
「フレちゃん……」
 その宣言と呼び名は甘くて冷たくて美味しくて、衝撃的。
 夏の一時が恋の色に染められた気がして、櫻宵は頭を冷やすためにかき氷を一気に食べることにした。
 きん、と響く冷たさは夏の風物詩そのもの。
 幸せそうに笑うフレズローゼもまた一口、虹色の氷を味わっていく。
 これもまた夏の思い出かしら。
 そんな風に感じた櫻宵はそっと息をつき、これからの日々に思いを馳せた。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

篝・倫太郎
【華禱】
浜辺をのんびり散策
なんとなしに、いつもの習慣で手を繋ぐ
別にそこまで人も多い訳じゃないけど
いつもの癖ってやつ?

今年の夏はフルで満喫してる気がする……けど
夜彦、あんたはどうだろ?
そうならいいな、と思いながら問い掛けて
いつもと同じ穏やかな応えに嬉しくなる

へへ、今日は春暁も居るしな……?

俺にも随分と懐いてくれた綺麗で格好いい夜彦の相棒

かき氷、興味あるみたいだけど、喰うかな?
(空いた手に持った白みつのかき氷を春暁に差し出してみる)

お?おぉ?!

恐る恐るだったのが途中から
凄い勢いでかき氷を掘って啄む春暁の様子に
驚いていいやら喜んでいいやらなんとも複雑

腹壊すなよ?
ん?
じゃあ、あんたの半分くれよ、夜彦?


月舘・夜彦
【華禱】

りぞーと地は何処も過ごし易い所ですね
それにサムライエンパイアには無い物も多いので目移りしてしまいます
ですが、こうして手を繋いでいれば迷いませんね

今年の夏は充実しています
今までは旅をしておりましたから
様々な世界を見て回る機会はありませんでした
倫太郎殿おかげですね

私だけ楽しむのは申し訳なく、今回は春暁も連れてきました
倫太郎殿とは面識があり懐いているので良い機会です

かき氷は食べた事が無いもの、みるくてぃー味にします
春暁も食べられるでしょうか?
一人と一羽のやり取りを観察します

「冷たくて甘い、不思議」
どうやらお気に召したようですね
あぁ、掘ってはいけませんよ

……私と分けて食べましょう
はい、どうぞ



●白蜜と紅茶
 やさしい波の音にやわらかな砂浜。
 そして人工とはいえど眩い太陽の日差し。夜彦は頭上を見上げてから周囲を眺め、心地好い景色を瞳に映した。
「りぞーと地は何処も過ごし易い所ですね」
「ああ、そうだな」
 頷いた倫太郎は夜彦へと手を伸ばす。
 あまり周囲に人が多いわけではないが、なんとはなしにいつもの習慣で手を繋ぐ。
 手を引いてくれる彼についていけば大丈夫。そんな風に感じた夜彦は双眸を細め、その手を握り返した。
「サムライエンパイアには無い物も多いので目移りしてしまいます。ですが、こうして手を繋いでいれば迷いませんね」
 そしてふたりはのんびりと散策を続ける。
 歩きながらふと倫太郎は問いかけた。
「今年の夏はフルで満喫してる気がする……けど夜彦、あんたはどうだろ?」
 自分は楽しんでいる。だから彼もそうならいいな、と思いながら倫太郎は隣に視線を向けた。すると夜彦は静かに頷く。
「今年の夏は充実しています」
 今までは旅をしていたゆえに様々な世界を見て回る機会はあまりなかった。
 倫太郎殿のおかげですね、と付け加えられた声はいつもと同じ穏やかな応えで、嬉しくなってくる。そっか、と答えた倫太郎は深く笑む。
「へへ、今日は春暁も居るしな……?」
 そういって彼が示したのは、今はもう随分と懐いてくれた狗鷲。綺麗で格好いい夜彦の相棒のことだ。
 自分だけ楽しむのは申し訳ないから連れてきたという春暁は夜彦の肩に乗っておとなしくしている。狗鷲の眼差しは先程から倫太郎に向けられており、仲の良さがしっかりと分かった。
 そして彼らは氷屋の前に着く。
「どれにする?」
「そうですね、みるくてぃー味にします」
「じゃあこっちは白蜜かな」
 かき氷は食べことが無いものの、一番興味のある味を選んだ夜彦。其処に続いて倫太郎も食べたい味を注文する。
 硝子の器を渡された後、ふたりは店先のベンチに腰掛けた。
 そんな中、どうやら春暁が氷を気にしている様子。
「かき氷、興味あるみたいだけど、喰うかな?」
「春暁も食べられるでしょうか?」
 倫太郎が春暁に器を差し出す様を夜彦が見守り観察する。春暁は暫し氷の器をじっと見ていたが、いけると思ったのか嘴をかき氷に突き刺した。
 最初はおそるおそる。けれどすぐにすごい勢いで――。
「お? おぉ?!」
 思わず声を上げた倫太郎は驚いていいやら喜んでいいやらなんとも複雑な気分だ。
 冷たくて甘い、不思議。
 そんな感情を読み取った夜彦は薄く笑む。
「どうやらお気に召したようですね。あぁ、掘ってはいけませんよ」
「腹壊すなよ?」
 倫太郎が少し心配そうに呼びかけたが狗鷲は夢中。ゆっくりどうぞ、と夜彦が春暁を嗜めるも既に氷は半分以上掘り進められていた。
「かなり減ってしまいましたね」
「ん? じゃあ、あんたの半分くれよ、夜彦?」
 にっと笑った倫太郎に対し、それならばと夜彦は自分の氷を差し出した。
「……私と分けて食べましょう。はい、どうぞ」
 一羽が一皿。ふたりで一皿。
 不思議な形で氷を分け合う彼らが過ごす夏のひととき。
 それはとても和やかに巡る気持ちと共に、ゆっくりと流れてゆく。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

四・さゆり
【涙雨】
ふたつの海に囲まれた船、…贅沢ね
叶、よく見つけたわ
褒めてあげる

あら、ネムリア
海は初めて、なの?
そう、なら尚更ね。りぞーと、満喫しないとだめよ


かき氷を楽しむのは決まり
けれど、味、を決めるのは、…難しいわね
……たくさんあるもの

…。
わたしは、これ

なまくりーむふわふわいちごれんにゅう、よ
ケーキみたいで、かわいいもの

はい、叶
くち、開けなさい
煙はあるのでしょう、へいきよ
ご褒美。

ふふ、ネムリア、あんたにもよ
はい

ふふ、おいし?

ええ、実はあんたが和で来ることは分かってたの、叶
狙ってたの
ん。やっぱり美味しいわ

あら、ほんとうに宝石みたいね、ネムリア
食べられる宝石だなんて、
今日は贅沢尽くし、ね

ええ、悪くないわ


ネムリア・ティーズ
【涙雨】
僕、海は初めてなんだ
すごいね…きらきらしてる
叶のおかげだね
ステキな場所を見つけてくれて、ありがとう

うん、さゆりに着いていくよ
今日はみんなで、りぞーとを満喫だ

かきごおり。種類が多くてどれにするか悩むね…
……二人がそれなら、僕はこれ

きれいな紫色。ブドウ味のかきごおり
宝石みたいな粒がいっぱいのってたから
みんなで食べられそうだなって

くれるの?ありがとう

イチゴはとても美味しいって、知ってる
最近さゆりが教えてくれた味
うん。この組み合わせもすごく好き

叶のかきごおりは優しい甘さだ
クリームが無い分、氷のふわふわ感がよく分かって、

…ふふ、おいしいね。

はい、二人にも
真似をしてそっと口元へ

どうかな…美味しい?


雲烟・叶
【涙雨】
思った以上に絶景ですねぇ
ふふ、お褒めに与りまして

お嬢さん方は何にします?
思った以上に種類があって悩みますねこれ
……シンプルにみぞれにしますかね
嗚呼、ふわふわした良い氷じゃねぇですか

おや。……あー……確かに煙は纏ってますが
怖いもの知らずですねぇ、さゆりのお嬢さん
ありがたく頂戴しましょう
……生クリームの乗ったかき氷は初めてですが、甘酸っぱさと濃厚な甘さが合いますねぇ

お返ししましょうか、さゆりのお嬢さん
はい、口開けて
ネムリアのお嬢さんもどうぞ

葡萄味もくださるんです?
葡萄のかき氷は初めてですねぇ
お嬢さん方と食べさせ合いなんて男共に恨まれそうですが、まぁ……こういうやり取りも悪くねぇと思いますよ



●宝石氷と夏の彩
 蒼い海と夜色の星の海。
 目の前に広がる船内の海景色を片目に映し、さゆりは風になびく髪を押さえる。
「ふたつの海に囲まれた船、……贅沢ね」
「思った以上に絶景ですねぇ」
 彼女に倣って蒼海を見つめ、叶も目を細めた。
「叶、よく見つけたわ。褒めてあげる」
「ふふ、お褒めに与りまして」
 さゆりからの言葉を受け、叶は口元を緩める。その傍らには陽を受けて光を反射する波間を見つめるネムリアの姿もあった。
「僕、海は初めてなんだ。すごいね……きらきらしてる」
 叶のおかげだね、と付け加えたネムリアは続けてお礼を伝えた。
「ステキな場所を見つけてくれて、ありがとう」
「いいえ、どういたしまして」
 素直な感謝の気持ちを貰えると何だか此方まで嬉しくなる。叶がそんな感覚をおぼえるなか、さゆりはネムリアへと首を傾げた。
「海は初めて、なの? そう、なら尚更ね。りぞーと、満喫しないとだめよ」
「うん、さゆりに着いていくよ」
 どうか楽しみ方をおしえて。そう告げるようにさゆりの横にそっとつく。
 今日はみんなで、リゾートを――特にかき氷を満喫する日。
 そうと決まったら善は急げ。こっちよ、と誘うさゆりの後にネムリアが続き、ふたりを見守る形で叶が歩き出す。
 そうして暫し、一行は氷を削る音が響く氷屋に到着する。
 涼やかな音にネムリアが耳を澄ませる中、叶は少女たちに問いかけた。
「お嬢さん方は何にします?」
「味、を決めるのは、……難しいわね。……たくさんあるもの」
 さゆりは壁の棚に並ぶ色とりどりのシロップやフルーツを見渡す。ネムリアも鮮やかな彩に目移りしそうになりながら、どれにしようかと指をさしてゆく。
「かきごおり。種類が多くてどれにするか悩むね……」
 思った以上に選択肢がありすぎて悩んでしまうのは叶も同じ。しかしいつまでも考えていては肝心の氷菓が楽しめない。
「……シンプルにみぞれにしますかね」
「わたしは、これ。なまくりーむふわふわいちごれんにゅう、よ」
 叶はスタンダードな氷。さゆりはちょっと贅沢なケーキめいた苺氷。それぞれに選ばれた氷を見て、ネムリアも心を決める。
「……二人がそれなら、僕はこれ」
 少女が示したのは紫色が美しい、葡萄味のかき氷。
「宝石みたいな粒がいっぱいのってたから、みんなで食べられそう」
「嗚呼、ふわふわした良い氷じゃねぇですか」
 ネムリアもまた可愛らしいことを言っていると感じつつ、叶は出来上がったみぞれ氷を受け取る。そう云われれば氷もまた極小の宝石めいて見えた。
 さゆりもご所望の氷を受け取り、硝子の器を軽く掲げる。
 氷の間に苺。そしてたっぷりかかった生クリームの上にも苺。
 まるでショートケーキのような可愛さにさゆりも何だかご満悦な様子。ふふ、とちいさく笑ったネムリアも順番にかき氷を作ってもらい、一足先にパラソルの下に向かったふたりを追っていく。
 程よく軋むチェアは心地よく、良い風が吹いてくる。
 さゆりは一番上の苺に練乳をまとわせて食べた後、もう一口をスプーンで掬った。
「はい、叶。くち、開けなさい。煙はあるのでしょう、へいきよ」
 ご褒美、と差し出された匙に足して叶は、おや、と口にする。
「……あー……確かに煙は纏ってますが怖いもの知らずですねぇ、さゆりのお嬢さん」
 そんなことを言いつつもご褒美ならば受けないわけにはいかない。ありがたく頂戴しましょうと返し、相伴にあずかった叶はその甘さに口元を緩めた。生クリームの乗ったかき氷は初めてだが、此れも良いものだ。
「甘酸っぱさと濃厚な甘さが合いますねぇ」
 叶とさゆりの様子を見ていたネムリアにも視線を向け、さゆりはもう一匙を掬う。
「ふふ、ネムリア、あんたにもよ」
「くれるの? ありがとう」
 はい、と差し出されるクリームたっぷりの苺と氷。苺はとても美味しいと知っている。これは最近、さゆりが教えてくれた味。
 だからこれも絶対に美味しいと思い、ネムリアは一口をじっくり味わう。
「ふふ、おいし?」
「うん。この組み合わせもすごく好き」
 いいね、と答えるネムリアは純粋でさゆりもこくりと首肯した。そしてさゆりの視線はシンプルイズベストなみぞれ氷に向けられる。
 勿論、その眼差しの意味に気付かない叶ではなかった。
「お返ししましょうか、さゆりのお嬢さん」
「ええ、実はあんたが和で来ることは分かってたの、叶」
 狙ってたのだと素直に告げるさゆりへと、叶は少し多めに一匙を掬ってやる。
「はい、口開けて」
「ん。やっぱり美味しいわ」
 スプーンが口に運ばれ、さゆりの口元がすっきりした甘さに綻ぶ。叶は同じようにネムリアにも自分の氷を分けようと決め、そっと器を差し出した。
「ネムリアのお嬢さんもどうぞ」
「……優しい甘さだ」
 クリームが無い分、氷のふわふわ感がよく分かると微笑むネムリアは、ふたりへのお礼に自分も葡萄味の氷をあげたいと申し出た。
「はい、二人にも」
「葡萄味もくださるんです? 葡萄のかき氷も初めてですねぇ」
 叶たちの真似をしてそっと口元へ。其々にスプーンを差し出せば何だか嬉しい気持ちが巡ってきた。
「どうかな……美味しい?」
 ネムリアが問うとさゆりは冷たい葡萄の粒を口の中でころりと転がし、ゆっくりと甘酸っぱさを味わった。
「ほんとうに宝石みたいね。食べられる宝石だなんて、今日は贅沢尽くし、ね」
 おいしいと返事が戻ってくることもまた、嬉しい。
 叶は和やかな気持ちを覚え、葡萄味も良いと味を確かめる。
 お嬢さん方と食べさせ合いなんて男共に恨まれそうだとも感じた。しかし、これはこれで自身の役得。
「まぁ……こういうやり取りも悪くねぇと思いますよ」
「ええ、悪くないわ」
「ふふ、おいしいね」
 叶の零した言葉にさゆりがちいさく頷き、ネムリアも幸せの味を楽しむ。
 爽やかな夏のいろと氷の心地好さ。
 そして、皆で過ごす穏やかな時間はひとつの思い出となって巡ってゆく。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

オズ・ケストナー
【虹彩】

いろんなのがあるっ
えーっと、うーんと
わたし、これっ

出てきたのはふつうのレモンのかき氷

と思うでしょ?

ひっくり返すと
レーズンの目に黄桃のくちばし
ひよこだよっ

ふふ、わたしとカーくんの色は青色おそろいだね
クラウ、空はなにあじ?
グィグィーも空だっ

さっぱりしてるの?
気になるっ
わけっこしよしよ
ぶどうもおいしいねえ

すごい
エルルの、たからさがしみたいっ
もちもちに頬ゆるめ
ルナ(f02662)がくれた青色の鉱石に瞬き
わあ、わあっ

えんりょなくつついていいんだよっ
みんながつつけばレーズンが横向き
ひよこはにこにこ顔
みて、みんなとおなじ顔だ

わたしきいろになってる?
べーってしてるのがたのしくて
みんなの舌がにじいろだね


エール・ホーン
【虹彩】

クラウのは綿菓子?ふふ、ふわふわだっ
おずりんのは、れもんじゃないのかな?
わ、ひよこさんっ
かわいいーっ

ほんとだーっ
かーくんはみんなの色を探すのが上手だね?

じゃじゃーんと掲げたのは
大きな器に盛った食べ応え満点の虹色かき氷
味はね
食べてからのお楽しみなの!
みんな食べてみてっ
うんうん、まだ内緒、とグィグィーにむかって

ふふ、でも実はお楽しみはまだあるんだ
中から出てくるのは黒い宝石みたいな粒々
えへへ
虹の麓には宝物…タピオカが埋まってるのっ

わ、ルナ、ありがとうっ
突けば溢れる桃色の彩に同じ色の瞳を煌めかせた

えっ、舌?
(じゃ、じゃあボクのは虹色に!?)
ぴゃっと口元を抑えるも
みんなの笑い声につられ満面笑顔


クラウン・メリー
【虹彩】

かき氷を食べに来たよ!
何食べようかな?

よーし、決めたっ!
俺は綿菓子がついてる青空のようなかき氷!
皆も決めた?

わーい、いただきまーす!
わぁ、ブルーハワイって甘くてサッパリするね!
綿菓子ふわあま!
星形のパイナップルとマンゴーも美味しい!

皆と分けっこしたい!俺のも食べて食べて!
カーくん、葡萄美味しい?
エルルの虹色だ!どんな味なんだろう?ぱくっ、わぁ!
おずりんのひよこさん可愛い!でも食べたい!
グィグィーはシンプルなかき氷かな?
もしお口の周りに付いちゃってたら言うね!
ルナがくれた水晶凄いっ!美味しいな!

見て見て!俺の舌、青色になってる?
わわ、皆も色んな色になってる!

あはは、楽しくて美味しいねっ!


クールナイフ・ギルクルス
【虹彩】

よく見たいと弾むちびっこを
これなら見えるかと抱き上げて
瞳の色と同じとはしゃぐ姿に
よく見てんな、なんて小さく笑い返す

鉱石の名前に惹かれて頼んだそれは
みぞれの上に多彩なシロップを湛えた水晶が散らばっていた
水晶を匙で突けば砂糖の殻が壊れて蜜が色を添える

分けっこと言われれば、それ乗った
皆の瞳の色の水晶をころんと乗せていく
青氷は初めてで確かにサッパリ後味
虹氷と宝物に驚かされて
紫氷の知った味にほっとして
黄氷は崩していいのかと少し躊躇

虹色氷、ぶどう氷、ひよこ氷、形の違う青空氷が二つ
選んだ氷がそれぞれその人を表しているようで微笑ましい
それぞれの色に染まる舌に
すげえ色とケラリ笑って
そういう自分も例外なく


グィー・フォーサイス
【虹彩】
わぁ、ほんと?
ケットシーサイズで作ってもらうよ!
お腹を壊したらいけないからね

僕は空色のかき氷
青空のブルーハワイ
綿菓子入道雲に色とりどりの琥珀糖の星
綿菓子が溶けて消えても甘さが増して美味しい
僕は口の周りの毛が白いから
色がつかないように食べないとだ
色が付いてたら教えてね
クラウンが頼もしいな

エールの虹色は何味なんだろう?
一口ちょうだい
…これは!
ふふ、味の感想は皆が口にするまで言わないよ
オズのひよこさん可愛いね
皆それぞれ好みが違って面白いや
水晶のかき氷もすごい!
色が変わるのをマジマジ見てしまうよ

僕もべーってするよ
皆の笑い声に、耳も尾もヒゲもピンと立つ
夏って楽しいね
青空の下に沢山の笑顔が咲いて


カーティス・コールリッジ
【虹彩】
はじめて見る屋台をもっと見たくて
ジャンプしていたら、体が浮く感覚に歓声上げて

クー(f02662)、ありがとう!
えっとね、おれは……あっ!ぶどう!

ほんもののぶどうを食べたことはなくても
栄養機能食のゼリーの中でいちばんすきな味

ね、ね、みて!クーとおんなじいろだ
ももはエルルおねえさん(f01626)で
あおいのは、オズおにいさんとおれ!
グィーおにいさんに合うおおきさも作ってくれるって!

エルルおねえさんの、すごい
たからのやまみたい!

……わー!!
クラウ(f03642)、すごいいろ!
え?おれも?……あはは!みんなも!

あまくてふわふわ、つめたくって、ゆめみたい
うれしくて、たのしくて、どきどきするんだ!



●夏色の宝物
 蒼い海に白い砂浜、そして――かき氷!
 鮮やかな赤に透き通った水色、深い海のような青に太陽のような橙や黄色。生クリームに蜂蜜、黒蜜から練乳まで様々な彩りにあふれた氷屋の一角。
 虹のいろのように多彩で賑やかな一行は今、何を食べようか楽しく悩んでいた。
「いろんなのがあるっ。えーっと、うーんと」
 オズが色とりどりのシロップ瓶を眺める中、カーティスははじめて見る屋台をもっと見たくてぴょこぴょことジャンプしていた。
 すると不意に体が浮く感覚をおぼえ、少年は歓声をあげる。
「わあっ」
「これなら見えるか」
「うん、だいじょうぶ!」
 クールナイフが抱き上げてくれたのだと知ったカーティスはそのまま一緒に棚を眺めることにした。
 クラウンとグィーも何を選ぼうか考え、口元に笑みを湛える。
「よーし、決めたっ!」
「僕も!」
 ケットシーサイズのちいさな器で、と頼んだグィーの前に置かれたのは空色のかき氷。青空の色に染まったようなブルーハワイを選んだのはクラウンも同じ。
 それが普通と少し違うのは、上にちょこんと綿菓子が乗っていること。
 そして更にちりばめられている琥珀糖の星やフルーツ。
 エールはグィーたちが頼んだ氷を見て笑みを深め、いいなぁ、と口にする。
「クラウたちのは綿菓子と星? ふふ、ふわふわきらきらだっ」
「皆も決めた?」
 クラウンが問うと、暫し悩んでいたオズがかき氷の器を持って軽く掲げた。
「わたし、これっ」
 見えたのは普通のレモンのかき氷。
「おずりんのは、何も他にかけてないれもん?」
「と思うでしょ?」
 エールが首を傾げて聞くと、オズはくるりと氷をひっくり返す。するとレーズンの目に黄桃のくちばしが見え、愛らしい顔があらわになった。
「ひよこだよっ」
「わ、ひよこさんっ! かわいいーっ」
 涼しげな黄色い鳥の愛らしさにエールはおおはしゃぎ。グィーも和やかな気持ちを覚え、空色の氷器とひよこ氷を並べてみる。
 そんな仲間たちを眺めていたクールナイフも注文を済ませていく。
 彼が選んだのは鉱石の名前に惹かれたという一品。みぞれの上に多彩なシロップを湛えた水晶が散らばっており、見た目にも爽やかで美しい。
「決まったか?」
「えっとね、おれは……あっ! ぶどう!」
 クールナイフが腕の中のカーティスに聞くと、その声が弾む。
 ほんもののぶどうを食べたことはなくても、それが栄養機能食のゼリーの中でいちばんすきな味だった。
 目の前に運ばれてきた葡萄氷を前にして、カーティスは楽しげに笑む。
「ね、ね、みて! クーとおんなじいろだ」
「よく見てんな」
 その色が瞳の色みたいだとはしゃぐ少年に、クールナイフはちいさく笑い返した。
 エールも紫色の氷と彼の瞳を見比べてみる。
「ほんとだーっ。かーくんはみんなの色を探すのが上手だね?」
「ももはエルルおねえさん。あおいのは、オズおにいさんとおれ!」
「ふふ、わたしとカーくんの色は青色でおそろいだね」
 楽しそうにエールが話すとオズも自分の瞳を指差した。カーティスも嬉しくなってふわふわと笑う。
 そうして、最後に注文したエールのかき氷がその場に届く。
 じゃじゃーんと掲げたのは大きな器に盛った食べ応え満点の虹色かき氷。
「エールの虹色は何味なんだろう?」
「どんな味なのか気になるね!」
 グィーとクラウンが興味津々に問うと、まだ内緒、とエールはくすくす笑う。
「味はね、食べてからのお楽しみなの!」
「それじゃ揃ったことだし食べに行くか」
 クールナイフは皆をいざない、日陰になっているビーチパラソルの下を指差した。
 まだ選んでいただけなのにこんなにも胸が浮き立って楽しくなれる。けれどもまだまだ皆との時間が続くと思うと嬉しくて、クラウンは駆け出した。
 
「わーい、いただきまーす!」
「いただきます!」
 元気いっぱいのクラウンとカーティスの声を始まりに、かき氷タイムが始まる。
 さくさくと氷を崩す少年たちの傍ら、クールナイフも水晶を匙で突く。そうすれば砂糖の殻が壊れて蜜が氷に色を添えていった。
 きれいだね、と瞳を静かに輝かせたグィーのかき氷にも目を向け、クールナイフは薄く笑む。空の色に乗っていた綿菓子の入道雲も既にとけている。
 それによって甘さが増していて、砂糖を纏った星もきらきらと光って見えた。
 そんな中でエールが虹色かき氷を皆に示す。
「みんな食べてみてっ」
「こうすればいいの?」
 エールのすすめにオズがスプーンで氷を掬う。ふふ、と胸を張ったエールが皆に探してほしかったのはかき氷の下に潜んだ黒い宝石――タピオカだ。
「えへへ、虹の麓には宝物……タピオカが埋まってるのっ」
「すごい。エルルの、たからさがしみたいっ」
 カーティスも一緒に宝探しに興じ、オズもさっそく見つけたタピオカを頬張る。
「もちもち、おいしいね」
「うんっ!」
 甘い味にオズの口元が緩み、エールも誇らしげに頷いた。
 虹の宝探しをしつつ、水面其々に自分のかき氷を味わってゆく。クラウンはふと、グィーの白い口元の毛に空の色が移っていることに気がついた。
「グィグィーも、青空色だね」
 口の周りに付いちゃっててるよ、と優しく教えた彼にグィーは礼を告げる。
「ありがとう、クラウンが頼もしいな」
 くしくしと前脚で口元を拭えば白い毛並みも元通り。
 クラウンはそのままふわ甘の綿菓子を楽しみ、星形のパイナップルとマンゴーの甘酸っぱさに舌鼓を打った。
 オズは和やかな光景をにこにこと眺め、ひよこ氷をちょこっとずつ味わう。そして気になったことをグィーたちに聞いてみた。
「クラウ、グィグィー、空はなにあじ?」
「甘くてサッパリしてるよ!」
「気になるっ、わけっこしよしよ」
 クラウンがおいしいよ、と答えるとオズはわくわくした気持ちで提案する。そう聞けば黙っているわけにもいかず、クールナイフも同意を示した。
「それ乗った」
 ほら、と彼は皆の瞳の色の水晶糖を其々の皿にころんと乗せていく。
「わ、ルナ、ありがとうっ」
 エールは自分の双眸と同じ彩に瞬き、そっとそれを突いた。溢れる桃色の彩はふわりとした甘い香りを運んできてくれた気がして更に気持ちが綻ぶ。
 その代わりにクールナイフも仲間のかき氷をひとつずつ味わっていった。青の氷は初めてで、確かに爽やかな後味。虹氷の宝物には改めて驚き、次は葡萄味の番。
 クールナイフがさくりとスプーンで氷を掬うとクラウンも同時に腕を伸ばす。
「カーくん、葡萄美味しい?」
「おいしいよ。いちばん好きな味なんだ!」
 クラウンに答えたカーティスがあまりにも嬉しそうにいうものだから、オズも俄然気になってきた。あーん、と紫色の氷を口に放り込めば笑みが溢れた。
「ほんとだ、ぶどうもおいしいねえ」
「慣れた味ってのが一番なのかもしれないな」
 クールナイフも紫氷の知った味にほっとしている。クラウンは口元が綻ぶのを抑えきれず、ほら、と氷の器を皆の前に出した。
「俺のも食べて食べて! おずりんのひよこさんも可愛いけど食べたい!」
 元気なクラウンに頷き、オズもひよこ色の氷を差し出し返す。わあ、とエールがひよこの頭を掬っていく中でクールナイフは少し躊躇していた。
 それに気付いたオズは大丈夫だと言ってふわりと微笑む。
「えんりょなくつついていいんだよっ」
「それじゃあ、えい!」
「こっちからもえいっ」
 カーティスとグィーが思い切って黄色の氷をつつけば、ひよこの目になっているレーズンがちょうど緩やかな横向きになった。
 ひよこはにこにこ顔。
「みて、みんなとおなじ顔だ」
「ほんとうだね、笑顔いっぱいっ」
 オズが楽しそうに笑うと、エールもひよこに似た顔でにこっと笑顔になる。
 確かに、と口にしたクールナイフとグィーは其々の氷を見遣った。
 虹色氷、ぶどう氷、ひよこ氷、形の違う青空氷が二つ。選んだ氷がそれぞれその人を表しているようで微笑ましくなり、彼もまた口元を緩めた。
「皆それぞれ好みが違って面白いや」
 とけて色が変わっていく様をまじまじと眺めるグィーもご満悦。カーティスも甘くておいしい感覚を楽しみ、心に浮かんだ言葉を口にした。
「あまくてふわふわ、つめたくって、ゆめみたい」
 それから、うれしくて、たのしくて、どきどきする。
 きっとひとりでは感じられない思いを胸に、皆は夏のひとときを満喫していった。

 それから暫く、氷の器が殆ど空っぽになった頃。
 お腹も心も満たされた気分の中、クラウンはあることに気付いた。べ、と舌を出してみせ、彼はおかしそうに言う。
「見て見て! 俺の舌、青色になってる?」
「……わー!! クラウ、すごいいろ!」
 普通ではありえない舌の色にカーティスが驚き、オズも舌先を出してみる。
「じゃあわたし、きいろになってる?」
「すげえ色」
 けらりと笑ったクールナイフ自身も例外なく氷の色に染まっていた。
「僕も青になってるかな?」
 合わせてグィーもべーっと猫舌を見せた。するとエールはぴゃっと口元を押さえて戸惑いがちの表情を浮かべる。
(じゃ、じゃあボクのは虹色に!?)
 言葉にせずとも彼女が思っていることは皆に筒抜けだった。
 ふっ、と誰かが笑ってしまったことで笑い声が辺りに響きはじめ、エールの頬が真っ赤に染まる。けれどもそれは嫌な気分ではなくて、エールも皆の笑い声につられて満面の笑みを浮かべた。
 その声にくすくす笑うグィーの耳も尾もヒゲもピンと立って愛らしい。
 そしてグィーはカーティスをちょいちょいと呼ぶ。紫色になってるよ、との声を聞いたカーティスはきょとんとして、それから大きく笑った。
「え? おれも? ……あはは!」
「あはは、楽しくて美味しいねっ!」
 クラウンが最後の一口を掬って食べると、オズも屈託のない笑顔を湛える。
「うんっ、たのしい。みんなの舌がにじいろだね」
「みんな合わせて虹色! すごいね!」
「悪くないんじゃないか」
 エールはきらきらと瞳を輝かせ、クールナイフも喉を鳴らして笑っていた。誰もが楽しく、そして仲良く過ごす時間を思い、グィーは夏空を見上げる。
「夏って楽しいね」
 青空の下にたくさんの笑顔が咲いた今というひとときは宝物のよう。
 本当の宝はきっと――そう、探さずともすぐ傍にあるものなのかもしれない。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

浮舟・航
【エレル】
ええ?ロカジさんめんどくさいこと言い始めたな
でも、確かにこういうのって好みとか出ますよね

僕はシンプルにブルーハワイのシロップを
これだけだと少し地味かも
赤いチェリーとそのへんで拾った綺麗な貝殻(ちゃんと洗いましたよ)を飾って
うん、【アート】が活きてますね

ロカジさん、それ氷残ってます?僕には糖の塊に見えるのですが…
美味しいならすこしください
うわっ甘……
ええ、もう少し多く頂いていたら胃が終わってました

ヨシュカさんのは本当にケーキみたいだ、すごい
かき氷の進化系かも。写真とってもいいですか?
ブルーハワイは……なんでしょうね。でも、夏ってカンジの味がしますよ…


ロカジ・ミナイ
【エレル】

カキ氷って凍った水を削っただけの要するに食える水じゃない?
だからこそどんな味を選ぶかってセンス問われると思うのよ
要は自分表現?みたいな?(意識高)

多方面に造詣が深い僕が結局行き着くとこは
苺練乳苺練乳苺黒蜜アイスアイス餡子氷だね
名前の通り順番に盛るやつね
作れる?頼んでいい?もう一回言う?

これはね、サムエンの一部でロカジ氷として親しまれて…
あ?僕ん家でだけど
そうだよ一人だよ憐れむなら食ってからにして下さる?

甘い?美味い?でしょーわかるー🍓
航くんくらいシンプルな好みだと僕のなんてガツンと来るんじゃないの
胃平気?
おやおやヨシュカのケーキ氷って冗談みたいにケーキだね!


ヨシュカ・グナイゼナウ
【エレル】

自己表現とかはちょっとよくわからないのですけれど、取り敢えず滅茶苦茶甘そうですねロカジ氷

はい、わたしは氷を生クリームでコーティングしたケーキの様なかき氷を所望します。テレビで見ました
確か、氷と苺のピューレを交互に重ねて…ホールケーキの形にしたらクリームでコーティング…カットした苺をトッピングしたら完成!わ、本当にケーキみたいです
氷ですからワンホールでもさっくり食べられますね。まあ、ケーキでも食べますけどね

浮舟さまはブルーハワイを。あ、貝殻が乗っていてかわいい。成る程、自己表現とはこういう
ブルーハワイって結局何の味なのでしょうか?ハワイ…?

あ、矢張り甘いのですね。ロカジ氷



●夏彩
 かき氷。氷を欠くことから欠氷とも記すそれは夏の風物詩。
 海辺の一角にて、ロカジはしゃりしゃりと氷が削られていく音を聞いていた。その傍にはヨシュカと航も居て、何のシロップや味にするか考えているところだ。
 要するに、とカウンターに背を預けたロカジは口をひらく。
「カキ氷って凍った水を削っただけの食える水じゃない? だからこそどんな味を選ぶかってセンス問われると思うのよ」
 うわっ意識高い系だ。
 ロカジさんがめんどくさいこと言い始めたな、と彼の言葉を聞いてそんな思いが過ぎったが、航は敢えて何も言わずに聞いている。
「要は自分表現? みたいな?」
 ロカジが軽く自分の胸元を叩く様を見遣り、ヨシュカは首を傾げた。
「自己表現とかはちょっとよくわからないのですけれど」
 そういうものですか、と平坦な声がロカジに向けられる。航は自己表現については何となく理解できたが深くは語らずに静かに首肯した。
「でも、確かにこういうのって好みとか出ますよね」
 僕はブルーハワイを、と氷屋に告げた航に続き、ロカジも注文に入る。
「多方面に造詣が深い僕が結局行き着くとこは、苺練乳苺練乳苺黒蜜アイスアイス餡子氷だね。作れる? 頼んでいい? もう一回言う?」
 名前の通り順番に盛るやつね、と付け加えると氷屋のおねえさん(余談だが童顔で結構可愛い)は、はーい、と軽く頷いてその通りにかき氷を作っていく。
 その間に別の店員がヨシュカに注文を聞きに来た。
 ヨシュカは、はい、と答えて望むものを頼む。
「わたしは氷を生クリームでコーティングしたケーキの様なかき氷を所望します」
 テレビで見ました、と告げたヨシュカは期待を抱いていた。
 氷と苺のピューレを交互に重ね、ホールケーキの形にしたらクリームを乗せる。そして本当のケーキのようにカットした苺をトッピング。
 目の前で作られていく甘味氷を見つめ、ヨシュカは目を輝かせた。
「わ、本当にケーキみたいです」
「すごい。かき氷の進化系かも。写真とってもいいですか?」
「構いませんよ、たくさん撮ってください」
 航が興味深く覗き込みながら許可を求めると、ヨシュカは快く頷いた。
 きっと氷だからワンホールでもさっくり食べられるはず。それでなくても食べますけどね、と甘いもの好きを発揮したヨシュカはご満悦の様子。
 するとロカジが頼んだ氷も出来上がったようだ。
「ロカジさん、それ氷残ってます? 僕には糖の塊に見えるのですが……」
「取り敢えず滅茶苦茶甘そうですねロカジ氷」
 航とヨシュカはロカジが手にした硝子の器に怪訝そうな顔を向ける。航の言葉通り、もうそれは氷には見えない。いわゆるかき氷の退化系かもしれない。
「これはね、地元の一部でロカジ氷として親しまれて……あ? 僕ん家でだけど」
 ロカジ自身もそんなことをいいつつ、氷ではなくなった甘い塊を見つめる。
 そして、ちらっと航の方に視線を向けた。
 シンプルなブルーハワイだったかき氷は今、紅いチェリーと海辺にあった綺麗な貝殻が添えられている。もちろんその貝はちゃんと洗ってある上に絶妙に映える位置に飾られていた。
 それも航の持つ美的感覚の賜だろう。
「かわいい。成る程、自己表現とはこういうものなのですね」
 ヨシュカはやっと納得できたと感じ、愛らしい海色の氷をじっと眺めた。ヨシュカのケーキ氷も実に食べやすそうで良いものだ。
 となると、当然ふたりからロカジへと憐れみの眼差しが向けられることになる。
「憐れむなら食ってからにして下さる?」
「美味しいならすこしください」
 ロカジは氷の器を航たちの前に差し出した。一口なら、とスプーンでロカジ氷を掬った航は思わず声をあげる。
「うわっ甘……」
「甘い? 美味い? でしょーわかるー。航くんくらいシンプルな好みだと僕のなんてガツンと来るんじゃないの。胃平気?」
「ええ、もう少し多く頂いていたら胃が終わってました」
 ロカジと航のやりとりを聞いたヨシュカは、代わりにケーキ氷を差し出す。
「あ、矢張り甘いのですね。ロカジ氷。お口直し、しますか?」
「おやおや改めて見るとヨシュカのケーキ氷って冗談みたいにケーキだね!」
 本当は航に向けてだったのだが、ロカジも相伴にあずかる気満々。こういうものは分け合うのも楽しいと知っているからであり、彼に悪気は欠片もない。
 結局、三人は其々のかき氷をシェアしながら味わうことにする。
 爽やかな海色。甘いケーキ。
 更にはただの糖分の塊。氷は三者三様で見た目も其々。
 そうして、かき氷を楽しむ一行は話に花を咲かせてゆく。
「ブルーハワイって結局何の味なのでしょうか? ハワイ……?」
「……なんでしょうね。でも、夏ってカンジの味がしますよ」
「夏かー。今年は良い夏だったね」
 ハワイ感はないだとか、夏は未だ終わっていないだとか、他愛のない会話ばかりだけれどこれもまた楽しい時間。
 やがて皆が氷を食べ終わった後――。
 硝子の器に残った貝殻は陽の光を反射し、目映い夏の色を映し出していた。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

花咲・まい
かき氷と! 聞きまして!
熱い夏はやはり、かき氷を食べないことには始まりませんですよねえ。
私も美味しいかき氷を求めて、浜辺を散策させてもらいますですよ。

狙うは「虹色のかき氷」ですです!
どこぞのリゾート地では大変人気との噂ですから、もしかしたらここにもあるかもしれませんです。色んなお味が売っていますが、虹色はどんなお味なのでしょうねえ。
きっと、しあわせなお味がするに違いありませんですよ!

他にも散策している方やかき氷を食べている方がいれば、お話してみるのも良いかと。
虹色のかき氷を知っている人もいるやも!
近くにいなければ、ウリ坊の牡丹くんと二人旅と参りますですよ。

*交流やアドリブはお任せします


祢岸・ねず
かき氷、いっぱい食べられると聞きました
美味しい食べ物に釣られてしまったねずです


定番の苺味に、ブルーベリー。キウイに…あ、オレンジも美味しそうです
美味しそうな果物の味を、片っ端からちょっとずつ
おや、これは……スターフルーツ味、ですか
思い切ってえいやとかけてみましょう
…さて、大体これでいいでしょう。最後にたっぷりの生クリームをかけて
……できました!フルーツケーキっぽいかき氷です!

ひんやりふわふわ、そしてあまあま…
我ながら完璧ではと、ねずは思ってしまうのですよ

小さな山のようだったかき氷、ぺろっと全部食べ尽くし
…これも美味しかったですが、まだまだ食べてない味もいっぱいあります。おかわりに参りましょうか



●しあわせの味
 夏はやっぱりきんと冷えたかき氷が一番。
 美味しいものが揃っていると聞きつけ、駆けつけてきた少女がふたり。
「かき氷と! 聞きまして!」
「かき氷、いっぱい食べられると聞きました」
 コメットスノウ号の入り口で偶然に出会ったまいとねずは目的が同じだと知り、自然に意気投合していた。
 美味しい食べ物に釣られてしまったのはまいもねずも一緒。
 ふたりはのんびりと海辺を散策しながら、良い氷屋を探す旅に出る。
「熱い夏はやはり、かき氷を食べないことには始まりませんですよねえ」
「定番の苺味に、ブルーベリー。キウイに……あ、オレンジも美味しそうです」
 まいはきょろきょろと店を探し、ねずはいろんな味を想像してみる。美味しいかき氷を思えば少しの暑さなんて何てことはない。
 楽しく、そして仲良く歩く少女たちは実にいきいきとしている。
「フルーツも良いですね。私が狙うは『虹色のかき氷』ですです!」
 何やらどこぞのリゾート地では大変人気との噂。
 それだから、もしかしたらここにもあるかもしれないのだとまいが語ると、彼女が連れているウリ坊の牡丹くんが愛らしく鳴いた。
 牡丹が何だか行く先にある店を示しているかのようで、ふたりは顔を見合わせる。
 勿論、行かないはずがない。
「あそこにありそう、ですね。虹色のかき氷」
「はい! きっと、しあわせなお味がするに違いありませんですよ!」
 虹色はどんな味なのか、想像を巡らせながらまいはねずと共に揚々と歩いていく。
 そうして店に入ると色鮮やかな光景が見えた。
 赤に橙、黄色。青と藍、紫や緑まで、様々なシロップが透明な瓶に入っている。それだけではなく、ねずが想像したフルーツも揃っているようだ。
「わあ、虹色です!」
「おや、これは……スターフルーツ味、ですか」
 まいがはしゃぎ、ねずも変わったものを見つけて興味を惹かれる。
 早速まいはレインボーのかき氷を頼み、ねずも思いきって未知のものを乗せてみることを決めた。
 しゃりしゃりと氷が削られた後、虹色のシロップと七色のフルーツが器に盛られていく。更に仕上げにたっぷりの生クリームがかけられ、ふたりのかき氷は完成。
「虹の色に雲がかかっていますです!」
「おいしそうなフルーツケーキっぽいかき氷です!」
 それぞれに幸せそうな表情を浮かべ、ふたりは互いの氷を見つめる。そして、笑みを交わした少女たちはスプーンを手にした。
 さく、と氷を掬って一口。
 ひんやりふわふわ、そしてあまあま。
「とってもおいしいのです!」
「これを選んだことが我ながら完璧ではと、ねずは思ってしまうのですよ」
 口の中に幸福が訪れたように思え、まいとねずは氷の冷たさとシロップやクリームの甘さをじっくりと味わった。
 けれども小さな山のようだったかき氷はいつしかぺろっと食べ尽くされる。見ればお互いにまだ余裕があるようで、まいはねずを誘って立ち上がった。
「では、次の幸せを探しにいきましょうです!」
「はい、まだまだ食べてない味もいっぱいあります」
 おかわりに参りましょうか、と頷いたねずは遠くから聞こえる波の音に耳を澄ませる。まいもふわりと微笑み、夏色の景色を瞳に映した。
 そしてふたりは駆け出す。
 きっとこの先にも素敵なものがたくさん待っているのだろうと信じて――。
 少女たちの夏は、まだ始まったばかり。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年08月12日


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🔒
#スペースシップワールド
🔒
#【Q】
🔒
#お祭り2019
🔒
#夏休み


30




種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト