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お手紙ちょーだい!めぇめぇさん!

#アルダワ魔法学園

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#アルダワ魔法学園


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●くろやぎさんったら……!
 めぇめぇ、めぇめぇ。
 くろやぎさんは跳ねる様な足取りで進んで行く。
 大きなポットを抱えたネズミ達を引き連れて、迷宮行進!
 いっぱいお手紙を食べたけれど、もうお腹はペコペコで……。
 また食べたい!食べたい!美味しいお手紙、心の篭ったお手紙が食べたい!
 色々な味が楽しめる、不思議なお手紙をもう一度。
 だから、くろやぎさんは再び迷宮を出ようとするのだ。

「おいしーお手紙、ちょーだいめぇー!」
「きゅー?きゅーっ!」
 出来れば、好きがぎゅっと詰まったお手紙がいいな!
 そんな風に思いながら、迷宮の出口へと向かって進んで行く。

●もふもふ、のち、きらきら
「もふもふさんが、もふもふさんを連れて来ます、です……!」
 先程、そんな予知を見たのだと。
 グリモア猟兵の辰神・明(双星・f00192)、其の妹人格である『メイ』が告げる。
 沢山のもふもふを視たのだろう、ぴょんぴょんと跳んでいて。
 ……でも、表情は直ぐに少しだけ寂しそうなものへと変わってしまう。

「このめぇめぇさんは……前に、帰ってもらった、めぇめぇさん……で」
 もしかすると、此の場に集った猟兵の中に居るかもしれない。
 四月頃の話。他のオブリビオンを連れて、お手紙を強請っていたくろやぎさん。
 あの時は満足させた上で、帰ってもらったが……。
 どうやら再び空腹になってしまった事で、迷宮を出ようとしているらしい。
 尚、今回は眠りネズミの大群と共に迷宮を進んでいる様で。
「折角、仲良くなれました、です……けれど」
 お腹を満たす為に、いつかは誰かを襲ってしまうかもしれないから。
 ……眠りネズミ達も含めて、今度はしっかりとお別れを。
 猟兵達に頭を下げて、お願いをするメイは泣きそうで。
 其れでも、自分の責任を全うしようと彼女は続ける。其れが、自分に出来る事。

「戦闘能力は、あまり高くないみたい、です」
 どちらもオブリビオンである以上、決して油断をしてはいけない。
 ……しかし、倒す前に彼らと戯れる事くらいは出来ると思うから。
 最低限の攻撃以外は猟兵達の思うままに、楽しく過ごして欲しいとメイは願う。
「あと、くろやぎさんは……好き、がいっぱいなお手紙を。ちょーだい、めぇ、って!」
 ――其れは恋愛感情に限らず。
 自分の好きな物、好きな事に対してでも。
 難しければ他の内容でも構わない、きっと美味しく食べてくれるだろう。

「お別れの、後は……きらきらさん、です」
 眠りネズミが持つ、夜糖蜜の様なきらきら。
 重力が曖昧となった場所に、映し出される魔法の星海。
 其れは幻だけれども、煌めきは本物と遜色無い。
 思う儘に星の海を泳いで、きらきらに触れる体験をしてみるのも良いだろう。

「その、お別れは、悲しいです……けれど。せめて、遊んでいる時、は」
 ――互いにのんびりと、心穏やかな時間を。
 少しだけ寂しいと感じる者もいるかもしれない、けれど。
 きっと、星の海が癒してくれるはずだから。
 メイは再び深々と頭を下げてから、現地へ向かう猟兵達を見送った。


ろここ。
●御挨拶
 皆様、お世話になっております。
 もしくは初めまして、新人マスターの『ろここ。』です。
 蒸し暑くなってきましたが、皆様如何お過ごしでしょうか……暑いです、はい。

 十九本目のシナリオはもふもふ、及び日常シナリオです!
 以前運営をさせて頂いた下記シナリオの続編の様な形となります。
 勿論、未読でも楽しんで頂ける内容となっておりますので、皆様安心して御参加頂ければ嬉しく思います。

 もーふもっふもっふ!もふもふ!
 『https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=6594』

 其れでは、以下は補足となります。

 『第一章』
 もっふもふな眠りネズミが、迷宮内ですやすやと眠っています。
 眠そうにしている個体も存在しますが、優しく戯れる事は出来るでしょう。
 彼らの倒し方は御自由に、一緒に眠ってしまわない様にだけ御注意を。

 『第二章』
 お腹を空かせたくろやぎさんです、詳細は導入にて。

 『第三章』
 蒸気機関と魔法による、星空の立体投影となります。
 無重力の部屋となりますので、星空を泳ぐ様な体験も可能です。

 尚、第三章(日常パート)のみ、お呼びがあれば辰神・明も同行が可能です。
 同行を希望する際はお手数をお掛けしますが、プレイングの先頭に【同行希望】と記載をお願い出来ればと思います。
 また、迷子防止の為にグループでの参加の際はグループ名を。
 お相手がいる際には、お名前とIDを先頭に記載して頂けると助かります。

 其れでは……皆様の素敵なプレイングをメイ共々、お待ちしておりますね。
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第1章 集団戦 『眠りネズミ』

POW   :    おやすみなさい、よいゆめを
全身を【ねむねむふわふわおやすみモード】に変える。あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になるが、自身は全く動けない。
SPD   :    みんないっしょに、ねむりましょ
【ふわふわのしっぽ】から【ふんわりとつつみこむもふもふのいちげき】を放ち、【今すぐこの場で眠りたい気持ち】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ   :    きらきらひかる、こうもりさん
対象のユーベルコードに対し【吐息からキラキラ光る小さなコウモリたち】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。

イラスト:なかみね

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


【お知らせ】
 プレイング受付期間は『6月21日(金)8時31分〜6月23日(日)23時59分』までとなります。
月藤・紫衣
迷宮にいるだけでしたら災魔だとしてもまだ穏便に済んでいたのですが…
そうですか…出て来てしまいましたか

倒さなければならないことは残念ですが、その前に彼らと戯れておきましょう
それにしても何度遭遇しても眠りネズミはとても愛らしいですね
まずはそっと撫でて毛並みを楽しみつつ、ブラシでブラッシング
抜けた毛は頂くとして…ふふ、柔らかでふわふわで極上の毛並みですね
眠ってしまった個体がいましたら空き瓶にでも夜糖蜜を分けていただきましょう
…何匹かずつまとめて迷宮へと戻すというのはダメなのでしょうか…?

はぁ…名残惜しいですが、なるべく痛くないように【歌唱】による【催眠術】で眠らせてから倒します
(アレンジetc歓迎)



●嗚呼、現実とは悲しき哉
「そうですか……出て来て、しまいましたか」
 月藤・紫衣(悠々自適な花旅人・f03940)が呟く声は、とても残念そうで。
 ……そう、言うだけならば簡単だろうが。
 迷宮にいるだけだったならば、災魔だとしてもまだ穏便に済んでいたのに。
 何匹かずつ、纏めて迷宮に戻すのはダメなのでしょうか……?
「きゅー……?」
 ――しかし、そんな悲しき現実に月藤が心を痛めていても。
 眠りネズミは不思議そうに首を傾げて、くわぁと欠伸を一つ。
 彼は何度か他の個体に遭遇した事があるらしいが……其の姿はいつ見ても愛らしくて、少しだけ心が癒された気がした。
 彼が近付こうとすれば、花の良い香りを感じ取ったのか。
 すんすん、とネズミさんが鼻を動かして。目を細めて、きゅうと鳴く。

「(倒さなければ、ならないのですよね)」
 せめて、其れまでの間は穏やかな時間を過ごそうと。
 そっと手を伸ばして撫でれば、ネズミさんは心地良さそうな仕草を見せる。
 柔らかくて、ふわふわな感触はまるで綿あめの様で。
 更に取り出したブラシで優しく梳くと、また嬉しそうな鳴き声が聞こえた。
「……っと、少し抜けてしまいましたね」
「きゅう!」
 其れも大事に小さな綿の手巾に挟んでから、月藤は懐に収めた。
 ――もっと、もっと!もっと、やってー!
 ブラッシングが気に入ったのか、そう言いたげに鳴くけれど。
 そろそろ、依頼を遂行しなければならないだろう。
 此れ以上、愛着を持つ事は支障が出かねないと理解している。
「ふふっ、では……少しだけ、ポットの中身を頂いてもいいでしょうか?」
「きゅー?きゅっ!」
「ありがとう御座います」
 ……でも、あと少しだけ。
 再び首を傾げてから、月藤が差し出した空き瓶にポットの注ぎ口を添えて。
 眠りネズミが傾ければ、少しずつ夜糖蜜が満たされる。
 其の間、彼は約束通りブラッシングを続けながら歌っていた。
 心休まる、藤花の歌を――。

「はぁ……本当に、名残惜しいですが」
 あらあら、ネズミさんったら。いつの間にか眠ってしまったらしい。
 否、月藤が催眠術によって眠らせていたのだ。せめて、あまり痛みを感じない様に。
 酔蜜月刀による迅速な一撃に込められていたのは優しさ。
 そして、確かな愛情があった……かもしれない。

大成功 🔵​🔵​🔵​

インディゴ・クロワッサン
アドリブ乱入大歓迎☆
よし。(UC:無限収納 から空のビンを取り出して)
「もふなでぽかんで夜糖蜜の回収タイムだ!」(目的は何処に)
まぁぶっちゃけ、別件の依頼で白ヤギさんを満腹にさせた事があるから、慣れてるっちゃ慣れてるんだよね、この手の依頼(なでなで)
「撫でてるとさ、寝たくなっちゃうよねー。気持ちは分かる。」(もふもふ)
って、なんで僕の回りにこんなに集まって…(気が付いたらもこもこに埋もれている)
流石にこれはマズイと判断して【咄嗟】にUC:侵食の赤薔薇 を発動。
「いや流石に…埋もれるのは…」
ぜぇはぁと呼吸を整えながら、残ったポットから蜜を回収しながら
「…久しぶりに、夜糖蜜でお手紙でも書こうかな」



●星空映す蜜を求めて
 ――無限収納、発動。
 藍薔薇の茨を衣服の様に纏う扉から取り出したるは、複数の空き瓶。
 目の前には眠りネズミがもっふもふ。既に眠る個体も、眠そうな個体も存在する。
 そんな彼らを見て……インディゴ・クロワッサン(藍染め三日月・f07157)はふと笑みを浮かべて、告げるのだった。

「もふなでぽかんで、夜糖蜜の回収タイムだ!」
 ――恐らく、最後の発言が彼の主目的ではなかろうか。
 きゅう、と眠っていた個体が目を覚まして……明確な敵意が無いと感じたのか再び夢の世界へ。まだ辛うじて起きている個体も眠そうに、でも興味深そうに彼を見る。
 別件だが、白ヤギさんという今回のボスに類似した……部下の様なオブリビオンを満腹にさせた経験もある。インディゴの余裕は其処から生まれているのもあるだろう。
 普段通りの足取りで起きている眠りネズミに接近、そっと撫で始めようと。
「撫でてるとさ、寝たくなっちゃうよねー」
 インディゴは同意する様に頷いて、気持ちは解ると言葉でも。
 撫でる手付きが優しいのか、ネズミさんも御機嫌な様子。
「きゅう、きゅーっ!」
「それにしても、本当に手触りがいいね。枕とかに丁度良さそう」
 寝る事が好きなのか、彼らの抜け毛を集めた枕なども想像してみる。
 此れ程までにふわふわ、もふもふなのだ。頭部を優しく包む様な枕になるのでは。
 そんな取り留めのない考えに耽りつつ、もふもふを堪能していたら――。

「……あれ?」
 撫でられて、心地良さそうな仲間の様子を見ていたのだろう。
 鳴き声を上げて、インディゴに迫る。もふもふが迫り来る、其の数は多い。
 ――自分も撫でて、もふって……なんて。
 気付いた時には、彼はもふもふの集団に埋もれていた。
 遠目から見てみると、巨大な一つの毛玉の様にも見えるかもしれない。
 流石に不味い、息も出来ない程のひしめき具合に苦笑――瞬間、藍から赤が咲く。
 そして、激痛に苛まれるのも一瞬だった。
「いや、流石に……埋もれるのは……」
 赤薔薇の茨が、自身の周囲に存在する眠りネズミ達を吹き飛ばすのに然程時間は掛からなかった。しかし、ポットも含めて消えてしまった様で。
 インディゴは心臓部分を押さえながら、代わりにと。
 未だ眠り続けるネズミさんから、夜糖蜜を少しずつ分けてもらう。
 ……久しぶりに夜糖蜜でお手紙でも書こうかな、なんて思いながら彼は微笑んだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

ディフ・クライン
あれが、眠りネズミ
実際に見るのは初めてだ
とても愛らしいね
ベニトアイトの瞳が珍し気に瞬いて

触れてみても、いいだろうか
ふわふわ、柔らかで、こういう生き物に触れるのは、はじめてだ
温度のない陶器のような己の手で触れても、逃げないだろうか

オブリビオンであっても、生き物としての温かさや柔らかさは少しだけ憧れる
感情も表現も全て真似
生き物らしさ、ヒトらしさって何だろうな
ヒトだったら、この子を前にどうするものなんだろうか

腕の中で眠る温かく柔らかな生き物の心地よい撫で心地を堪能し
それでも表情は変わらぬまま

…白狩人よ
風纏う白鷲

…この子を、あるべき場所に還しておくれ
風切り羽根をそっと腕の中の子に添え
風に攫われ、お還り



●ぬくもり
 生き物としての温かさ、柔らかさには少しだけ憧れを抱いてしまう。
 喜怒哀楽を含む、ヒトとしての感情。
 其れらを表す術も、見様見真似の模倣にしか過ぎない。
 ……ヒトらしさとは何だろう、温もりの無い自分には解らない。
 ディフ・クライン(灰色の雪・f05200)は今も、己を空っぽの人形と称する。

「きゅう?」
「あれが、眠りネズミ……」
 眠りネズミを実際に目にするのは、ディフは今回が初めてだった。
 見た目から理解出来るふわふわ感。眠そうな様子で自分を見つめるつぶらな瞳。
 ベニトアイトという名の宝石にも似た彼の瞳も一層、輝きを増す。
「(触れてみても、いいだろうか)」
 一定の距離を取ったまま、ディフは思う。
 ヒトの手の温もりは何となく、解っているつもりだけれど。
 オブリビオンとは言えど……動物の様な生き物に触れるのも勿論、初めてで。
 温度のない陶器の様な己の手、此れが触れても逃げないだろうか。
 ……どうして、触れようとする自分の胸が締め付けられるのだろう。
 不安、という言葉を彼自身が理解するまで……まだ、時間が必要かもしれない。
 手を伸ばそうとして、止めて。彼が其れを繰り返す内に、眠りネズミの方から動いた。
「きゅっ、きゅうー!」
「……怖く、ない?」
「きゅー?」
 寧ろ、心地良く感じているのか。
 眠りネズミはディフの胴体にダイブする様に、自らぽすっと収まって。
 眠かったのだろうか……直ぐにすやすや、夢の中。
 突然の出来事に、無意識に彼は目を丸くする。
 其れでも近付いて来てくれたからと、彼は優しい手付きで撫で始めた。
 表情は変わらないが、柔らかな生き物の撫で心地はとても良くて。
 ……撫で続けている内に何故か、胸の締め付けが無くなって。
 代わりに生まれていた穏やかな熱は、友人知人と語らう時にも感じる其れ。
「(オレは楽しいって、思っているのかな……)」

 ……答えは、明確には解らない。
 其れでも、お別れの時間はやってくる。
 また、胸の内が締め付けられる様な気がしたけれど……人形だから、大丈夫。
「この子を、あるべき場所に還しておくれ」
 ――風を纏う白鷲、気高き狩人。
 其の一羽根を手にすれば、ディフは眠り続ける生き物にそっと添える。

 風に攫われ、お還り。
 還る直前。眠そうな目を開けてから、羽根を見た眠りネズミが嬉しそうに鳴く。
 ありがとう、と。そんな風に聞こえた気がして。
 ……彼は、何を思うのだろうね。

大成功 🔵​🔵​🔵​

マクベス・メインクーン
ゆー兄ちゃん(f16731)と
こんな気が抜ける敵も居んだなぁ
ちょっと倒しづらいけど、まぁオブリビオンだしな
その辺気にしなくていっか

なんか…みてっとちょっとウズウズすんな
尻尾とか…(ふわふわの尻尾に触りながら)
へ?なにゆー兄ちゃん?
(周りに眠りネズミ集められて)
うわ…もう、ゆー兄ちゃんオレで遊ぶなよな~っ!
まぁこのもふもふ具合悪くねぇけど、寝ちまいそう…
ゆー兄ちゃんは素材集め出したし
終わったら起こしてくれるよな?(うとうと)

ん?ゆー兄ちゃん終わった?
じゃあ飽きてきたしもう倒そうぜっ!


月待・楪
猫助(f15930)と

前に遭遇した時も思ったんだが…やっぱコイツら気ぃ抜けすぎだろ
猫助、倒す前にちょっとコイツら触ろーぜ?

ふは、やっぱふわふわしてんなァ
…つかいつ見てもどいつもこいつも眠そうなのな
………よし、猫助ちょっと座って動くなよ
(無抵抗な眠りネズミを選んでマクベスの周りに集める)
く、ふははっ
すっげー似合ってんぞ、猫助
記念に【撮影】してやるよ

と、そうだ
集められるなら持ち込んだ大きい蜂蜜瓶に満杯になるまで夜糖蜜を集めとく
ついでに毛とリボンも欲しいとこなんだが…

素材を集めるだけ集めてたら猫助のやつ寝てやがる…これも写真撮るか
気乗りしねェけど、なるべく苦しまねーように…
おい、起きろー猫助、倒すぞ



●ねむねむ注意報?
「前に遭遇した時も思ったんだが……やっぱ、コイツら気ぃ抜けすぎだろ」
「こんな気が抜ける敵も居んだなぁ」
 マクベス・メインクーン(ツッコミを宿命づけられた少年・f15930)と月待・楪(Villan・Twilight・f16731)の二人が思わず零すが、仕方がないだろう。
 倒さなければならないオブリビオンは現在、すやすやと。夢の世界へ。
 ……迷宮の奥で、きゅーくぷ言いながら寝ているだけだったならば。
 そんな無害な連中だったら、倒さずに済むのに。何故、出て来てしまったのか。
 以前の依頼を思い出しながら、月待は内心……そんな葛藤をしていたかもしれない。
 まぁ、出て来てしまった以上は倒すしかないのだけれど。

「なんか……みてっと、ちょっとウズウズすんな」
「猫助、倒す前にちょっとコイツら触ろーぜ?」
「ゆー兄ちゃん、賛成ー!」
 ちょっと倒し辛いけれど、オブリビオンだから気にしないでいいだろうと。
 マクベスはそう考えている様だが、兄貴分の提案を却下する理由も無い。
 倒す前にふわふわ、もふもふを堪能しようと二人は眠りネズミに近付いて……まずはマクベスが尻尾をもふっ。
「おぉ、尻尾ふわふわ!すげぇ!」
「……きゅー?」
「ふは、やっぱふわふわしてんなァ」
 何かが触れる感覚に眠りネズミがゆっくりと目を開けようとして……害意が無いと判断すれば、くわぁと欠伸を一つ。
 再び目を閉じて、穏やかな寝息を立てながら眠る姿も愛らしい。
 ――そして、存分にもふもふを堪能出来そうだ。
「ゆー兄ちゃん、尻尾以外もふわふわしてるぜー!」
「そうだな、ふわふわだな」
「うん!……へ?なに、ゆー兄ちゃん?」
「何だ?つか、猫助ちょっと座って動くなよ」
 周囲を見渡せば、其処に居る眠りネズミ達は気持ち良さそうに眠っていて。
 いつ見ても、どいつもこいつも眠そうなのな、と思いながら月待はそっと運ぶ。
 ……何処に?決まっている。先程動くなと告げた、弟分の周りにだ。
 マクベスが意図に気付いた時には、既に沢山のネズミさん達がきゅーきゅー、寝言の様に鳴いている。其のどれもがふわふわ、もふもふ。もふもふ小空間の完成!
「く、ふははっ!すっげー似合ってんぞ、猫助」
「うわ……もう、ゆー兄ちゃんオレで遊ぶなよなーっ!?」
「記念に撮影してやるよ」
「……後でデータ、オレにも送って」
 きっと目の前の兄貴分は……自分の、もう一人の兄貴分に見せるだろうし。
 折角なら、自分の大切な人にも見せたいなと思ったから。
 ――ゆー兄ちゃんの楽しそうな笑顔見れたのも嬉しかったし。まぁ、いっか!
 そんな風に考えていると、沢山のもふもふに包まれているからか。
 うとうと、うとうと……マクベスが船を漕ぎ始める。うとうと、後にすやすや……。

「猫助?……寝てんのか」
 眠りネズミの群れの中、鮮やかな黄色も夢の中へ。
 そんな姿もこっそり撮った後、月待はスマートフォンをポケットへ突っ込んだ。
 次に取り出すのは蜂蜜瓶。其れも、かなりの大きさで。
 彼は其の中に少しずつ、眠りネズミが持つポットから夜糖蜜を分けてもらおうとする。
 ……大きな瓶を満たす蜜は使い道次第だが、暫くは困らない量だろう。
 恐らく其れは自分の為ではなく、他の誰かの為。
 瓶の中で煌めく星空を見て、彼の脳裏に過ぎる色は――。
「っと、ついでに……」
 月待は眠っているネズミさんのリボンをそっと、手にしようとする。
 ……其々に拘りがある事は理解しているから。
 眠っていても尚、嫌がられたならば諦めて別の個体の其れを貰おうと。
 ブラシは持ち合わせていなかったが、梳く様に優しく撫でながら集めていた。

「おい、起きろー。猫助、倒すぞ」
「んー?ゆー兄ちゃん、終わった?」
 ふわぁ、と欠伸を一つ。
 起こさない様にそっともふもふ達から抜け出して、マクベスは身体を伸ばす。
 ……ゆー兄ちゃんなら、きっと起こしてくれるだろう。
 そんな安心感故か、彼は思ったよりも熟睡出来ていた様だ。
「(なるべく、苦しまねーように……)」
 ――貰う物を貰って、倒す。
 正直、月待個人としてはあまり気乗りしないが……仕方がない。
 心の内側で夜糖蜜を含む素材、其れらを貰った事に感謝を告げれば。
 偶然だろうが、とある一匹の眠りネズミがきゅーと鳴く。まるで返事をする様に。

 ……彼らが眠っていた事は、幸いだったかもしれない。
 月待とマクベスは素早く、確実に己の得物で倒して行くのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

真宮・響
本当にオブリビオンを連れてくるとは・・・前はおとなしく帰って貰えたが、今度はそうもいかないか・・・世の理は無情だね。まずはこの眠りネズミをなんとかしないとね。

奏は良く眠る子だから、うっかり寝そうになったら、頬をつねる。自分は・・・腕をつねるか。いよいよになったら、拳骨を一発。それでもダメだったら、耳元でシンフォック・キュアを聞かせる。眠りネズミは一応抱きしめてもふもふ。せめて安らかに眠ったまま骸の海に還って欲しいから。ガントレットを嵌めた手でポカッと一発。


真宮・奏
【真宮家】で参加。

本当に仲間を連れて来ましたね。ある意味律儀というか・・・またお手紙を渡して帰って貰う事が無理なら、物理的手段で骸の海にお帰り頂かねば。・・・凄く残念ですが、仕方ないです。

つい先日、災魔に眠らされて全然起きないでいたら、母さんの拳骨を喰らって痛い目に遭いましたので、頬をつねって貰ったり、大音響を耳元で鳴らして貰ったりしながら、眠りネズミを存分にもふもふして、撫で撫で。眠気に耐え抜いて時間が来たら、【信念の拳】でポコッと殴って倒します。


神城・瞬
【真宮家】で参加。

まさか、本当にまた仲間を連れてまた戻って来るとは・・・また繰り返す可能性がありますね。本当に残念ですが、大事になる前に止めませんとね・・・

眠りネズミ、見た目からして本当にこちらが寝てしまいそうですね・・・家族でお互い頬や腕をつねったり、最後の手段としてフルートでサウンド・オブ・パワーを耳元で聞かせたりしながら、次いでにもふもふ。存分にもふもふして家族が満足したら、杖でポコッと殴って、眠りネズミを倒します。



●約束はちゃんと!守るめぇ!(某ヤギさん談)
 流石に、本当に仲間……他のオブリビオンを連れて来るとは思わなかった。
 きっと【真宮家】一同の思考は、先に述べた内容で揃っていた事だろう。
 ある意味律儀というか、何というか……もふもふが好きな真宮・奏(絢爛の星・f03210)としては残念な事実かもしれない。
 今回も手紙を渡して、帰ってもらえれば良かったのだが。
「……また、繰り返す可能性がありますね」
「世の理は無情だね」
 とても残念そうに呟いたのは……彼女の家族である真宮・響(赫灼の炎・f00434)、そして神城・瞬(清光の月・f06558)だった。
 奏の気持ちを考えれば、出来れば穏便に済ませたいと思うけれど。
 今回の様に一度帰ってもらったとしても、お腹が空いた頃に戻ってくるかもしれない。
 ……猟兵として、大事になる前に止めなければならない。
 アルダワ魔法学園に住まう人々の為にも、三人は改めて決意を固める。

 ――さて、其の為にもまずは眠りネズミ達からだ。
 彼らから骸の海に還ってもらう必要がある、あるのだけれど。
「寝てるね」
「寝てます、ね?」
「既に熟睡していますね……」
 すぴー、すぴー。時折、きゅー。
 【真宮家】が辿り着いた頃には、眠りネズミの小さな集団が固まって眠っていた。
 ……三人が来た事には気付かないのか、のんびりと眠り続けていて。
 恐らく、今直ぐにでも倒すのは容易だろう。ただ、己の得物を振るえば良い。
「響母さん、瞬兄さん……」
 今はまだ眠っているだけ、誰も傷付けていない様に見える。
 ……恐らく、自分達が敵意を露わにしない限りは無害ではないだろうか。
 そんな思いを抱けば、せめて……なんて考えが浮かんでくるのも仕方がない。
 愛娘の、義妹にして大切な人の視線の意味を理解したからか。
 響と瞬は互いに顔を見合わせてから、微笑みを浮かべて奏に告げる。
「うっかり寝そうにならない様に気を付けるんだよ」
「少しなら問題ないでしょう。でも……奏、気を付けて」
「――ありがとう!」
 眠りネズミの群れに向かう奏の足取りは軽く……しかし、静かに。
 穏やかな寝息が聞こえる程に近付くと、彼女はそっと眠りネズミの背を撫でる。
 柔らかくて、触り心地が良くて。何より気持ち良さそうに眠っている様子が、とても愛らしい。もう一度撫でてみると、今度はきゅうと欠伸を一つ。
 ……起きてしまうだろうか?
 いやいや、御安心。明確な敵意が無ければ、再び夢の中へ向かうだけ。
「(良かった……でも、何だか釣られて眠くなって――)」
「奏?また、拳骨するかい?」
「い、いひゃいですー!?」
 もふもふとは違う、誰かの手が頬に触れる。
 瞬を含めて、二人も既に近くまで来ていたのだろう。
 響は其のまま笑顔で、奏の頬を抓る。むにーっ!と、少しだけ強めに。
 うとうとし始めていた彼女は慌てて目を覚まして、大丈夫です!と母親に明言する。
 ……抓られるのはまだいいけれど、拳骨は喰らいたくない。
 どうやらそう思う程に、響の拳は相当痛かったらしい。
「でも、見た目からして本当に此方が寝てしまいそうですね……」
「抓るだけでも駄目そうなら、拳骨を――」
「響母さん、其れは出来れば最終手段に……!」
「……奏も言っている事ですから、耳元で大きな音を鳴らしましょうか」
 家族での相談も交えつつ、眠りネズミ達をもふもふ。もふもふ。
 ――あまり続けると、多少なりとも愛着が湧いてしまうのでは。
 瞬は其の可能性も考えたが……其れでも、家族の楽しそうな笑顔には敵わない。
 眠気との戦いも含めて、三人は眠りネズミ達に触れて。撫でて。時折聞こえる、気持ち良さそうな鳴き声に耳も癒されて。
 【真宮家】はきっと、心穏やかな時間を……夢の中でのんびりしているであろう眠りネズミ達と過ごす事が出来ただろう。

「それじゃあ、二人共。名残惜しいけれど、そろそろ」
「……奏、辛いなら僕が」
「ありがとう、瞬兄さん。でも、大丈夫」
 ちゃんと、自分自身の手でお別れをしなければ。
 ……胸が痛むけれど、其れでも。眠りネズミ達の内の一匹を抱き締めて、奏は呟く。
 響もまた、二匹の眠りネズミを抱き締める。
「(せめて、安らかに眠ったまま骸の海に還って欲しいからね)」
 其れは自己満足かもしれないけれど、其れでも響は願う。
 家族で穏やかな時間を過ごさせてくれたから、還る時は痛みを感じずに。
 ……眠っているのならば、無闇に起こすつもりもない。優しく還してあげたい。
 奏や瞬も同じ気持ちだから、きっと……拳や杖を振るう力は、過剰ではない筈で。
「ありがとう、御座います……」
 眠りネズミ達は苦しむ様子も無く、眠った状態のまま消えて行く。
 骸の海に、還っていく。一匹、また一匹と。
 ……此の場に居る最後の一匹に拳を振るう直前、奏がぽつりと零した感謝に。
 きゅう、と。寝言の筈だけれど、嬉しそうに。眠りネズミが鳴いた。
 其れが少しだけ切なくて、彼女もまた涙が零れそうになるのをぐっと堪える。

 二人がそんな奏に寄り添い、背を撫でる。
 ……家族が其の場から移動するまで、少しだけ時間が必要だったかもしれない。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

逢坂・明
も、もふもふ……
かわいい、もふもふ……ふわふわ……

……はっ
な、なんでもないわ。あまりのもふかわ度合いに躊躇なんてしてないったら!

可愛くてもオブリビオンだものね
けれども、触れあいができるくらいに大人しいのならもふらない……
いえ、触れあいしない手はないわ

はぁ……ほんとうに、ふわふわ……まるで綿雲のよう
オブリビオンでさえなければ、連れて帰って一緒に添い寝したいくらいなのに
毛並みに沿って手を入れつつ、ゆっくりと撫でて行って
ふふ、かわいい……もふもふ……
あなたたちを見ているだけで一曲歌えそう

機会がありそうだったら小瓶に夜糖蜜を入れられたらいいわ
満喫したら残念だけれども倒していきましょ
楽しい機会をありがと



●綿雲カランド
「きゅう?」
「も、もふもふ……」
「きゅー?」
「かわいい、もふもふ……ふわふわ……!」
「きゅっ、きゅー!」
 好意的な言葉と取ったのだろう、眠りネズミ達は御機嫌!
 きゅー、きゅーと嬉しそうに鳴く様もまた可愛らしい。
 嬉しさのあまり身体をゆったりと揺らし、尻尾もゆらゆら。もふもふ。
 大きな、大きなマカライトの瞳に映る世界は揺れる綿雲と星空。
 ……不意に、逢坂・明(絢爛エイヴィヒカイト・f12275)がハッとして。
 首を横にふるふる、眠りネズミ達も真似っ子ふるふる。

「(な、なんでもないわ。あまりのもふかわ度合いに躊躇なんてしてないったら!)」
 予想以上に可愛らしかったから……つい言葉にしても仕方がない、仕方がないのだと。
 そんな風に納得して、逢坂はこほんと咳払いの様な所作を一つ。
 改めて眠りネズミ達と向き直れば、少し動いて眠くなってきたのだろう。瞼を重たそうにしている子、既に夢の世界に向かった子。様々な様子を見せていた。
「可愛くても、オブリビオンだものね」
 ――倒さなければいけない敵、ではあるけれど。
 今はまだ大人しいのだから、もふらない……もとい、触れ合わないという手はない。
「きゅう?」
 なんだろー?と鼻先を逢坂へ向けて、じっと見つめる眠りネズミに……彼女はそっと手を伸ばす。
 指先が触れるだけでも解るだろう、其の柔らかさが。
 毛並みに沿って撫でれば心地良さそうな声で鳴いてくれて。ちゃぽん、と星空が揺れた。
 警戒心を見せない眠りネズミに、彼女の緊張も解れたのではないだろうか。
 愛らしい綿雲に心休まる気がしつつも、同時に思う。

「(オブリビオンでさえなければ……)」
 連れて帰って、一緒に添い寝したいくらいなのに。
 残念そうな様子は見せないけれど、撫でる手が止まった事に何かを感じたのだろうか。
 撫でられていたネズミさんが、そっと自分のポットを差し出して。
「夜糖蜜、くれるの?」
「きゅーっ!」
 其れはきっと、逢坂の優しさに対するお礼。
 ……ポット中で揺れる星が煌めく空蜜。
 彼女が持っている小瓶に其れが満ちた頃、再び眠そうな様子を見せていて。
 再び背を撫でてあげれば、此の子は直ぐに夢の世界へ。
「……あなたたちを見ているだけで一曲歌えそう」
 口にする歌がどんな内容か、知るのは逢坂のみだけれど。
 彼女の声に篭められるのは悲哀ではなく、感謝だろう。
 ……こっそりと貼り付けたcon animaが、声を切っ掛けに光を帯びる。
 残念だとは思うけれど、消えない物だってある筈だから。
 光と共に消えようとする柔らかな温もりに対して、彼女は笑顔で告げるのだ。

「とても楽しかったわ、素敵な機会をありがと」
「きゅうー、きゅ……」
 のんびりとした寝言がまた愛らしくて、逢坂は再び微笑んだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

木槻・莉奈
ニナ(f04392)と
※動物は好きだが近しい存在過ぎて弱肉強食をよく理解しており、倒す事に心を痛めるタイプではなし
とは言え無駄に苦しめる趣味もなく、苦しめずにすむようにとは思っています

ニナったら…優しいんだから
…表に出てしまったら、人だけじゃなく今を生きてる動物達にも被害が出るかもしれないもの
だからその前に…眠ってもらわないと、ね
ん、今は目の前に集中しましょ

紅鳶を使って子守歌を『楽器演奏』
音楽を聞けば逆に起きてしまう子なら、そっと撫でて温めてあげる事で眠気を誘う

過剰な攻撃はせず、一撃で仕留める
【神様からの贈り物】で、香りも合わせて穏やかに眠ったまま済ませられるように

…おやすみなさい、いい夢を


ニナ・グラジオラス
リナ(f04394)と

あの黒ヤギとの事を考えるとこれからの事が憂鬱になる
ありがとう、リナ。大丈夫だ。…大丈夫
外に出られてしまっては、更に痛い目に合わされるかもしれないしな
けど、あの子を私は攻撃できるのだろうか
とにかく、今は目の前の…いや、この子相手でも既に結構しんどいぞ

眠っている子に通用するかは分からないが、
せめて痛みを感じないように『催眠術』で深い眠りを
寝物語が、子守唄が必要ならば、いくらでも

攻撃は最低限
可能なら『毒使い』でそのままずっと優しい夢を見続けられるように
できれば刃も使いたくない、が、止む終えない場合のみ【ドラゴニック・エンド】で
カガリ、できるだけ痛みの時間を短いように。頼む



●花香に包まれ、微睡む
「きゅーっ?」
「きゅきゅっ、きゅっ!」
 眠りネズミ達が元気に鳴く様子は、敵意を示すものに非ず。
 突然現れた者達への好奇心からだろう。
 鳴き声は、一緒にお昼寝しよう?なんて愛らしい誘惑の様にも聞こえてくる。
 嗚呼……せめて、敵意を剥き出しにしてくれたならば。
 即座に傍らの小竜――カガリを槍と化して、思い切りとは言えなくても……振るう事ならば出来たかもしれないのに。

「(とにかく、今は目の前の……いや、この子相手でも既に結構しんどいぞ)」
 苦しげな心境を汲み取ったのか、カガリが心配そうに鳴きながら……ニナ・グラジオラス(花篝・f04392)の肩にうりうりと頭を擦り付ける。少しでも元気付けたいと思っての事。
 ――二人を不安にさせてしまった、だろうか。
 彼女は苦笑を浮かべながらカガリを撫でて、もう一人……心配そうに自分を見つめる大切な親友と目を合わせて。
「ありがとう、リナ。大丈夫だ。……大丈夫」
「ニナったら……本当に優しいんだから」
 木槻・莉奈(シュバルツ カッツェ・f04394)の言葉にカガリも同意を示す様に、こくこくと首を縦に振っている。
 相手がオブリビオンという事実を差し引いたとしても、彼女は躊躇いなく仕留める事が出来るだろう。
 ――弱肉強食、其れが自然界における理の一つ。
 何より、倒す事で大切な人達を守る事が出来るのならば迷う必要は無いと考えている。ただ、其れは眠りネズミ達を無闇に苦しめたいという訳ではない。
 ……穏やかに還せるのならば、其れでも良い。
 大丈夫だと言い聞かせるニナの心境を考えると、少しだけ申し訳無さはあるけれど。
「(表に出てしまったら……人だけじゃなく、今を生きてる動物達にも被害が出るかもしれないもの)」
 例え、目の前の眠りネズミ達に其のつもりが無くても、だ。
 だから……其の前に、安らかに眠ってもらおうと木槻は考えて。
 取り出したのは音階が限られるも、動物達に心地良い音色を響かせるオカリナ――紅鳶だった。眠りネズミ達の視線が集まる。
「きゅ、きゅっ?」
「今から子守唄を演奏するの、聞いてもらえる?」
「きゅー!」
 木槻の持つ、動物に関する技能もあったからか。
 起きている眠りネズミ達は興味津々な視線を向けつつも、其の場でそわそわとしているだけ。妨害する様子は見られない。
 ……とあるネズミさんの上にぽふん、と乗っかっている小竜もそわそわと。
 見知った姿に彼女も、ニナも思わず笑顔が溢れる。
「リナ、私も良いだろうか」
「ニナ……」
「せめて、優しい子守唄を奏でる手伝いをさせてほしい」
 ……眠っている子達に届くかは、解らないけれど。
 寝物語を語ろう、子守唄を紡ごう。痛みを感じない様に。
 やっぱり、ニナは優しいのだと改めて思いながら、木槻は演奏の準備を。
 互いに視線を合わせて、息を合わせて奏でられるのは……深き眠りに誘う子守唄であり、優しくも切ない葬送曲だ。
「きゅう……きゅ……」
「きゅー……」
 木槻が奏でる音色が眠りネズミ達に安心を与えて、ニナの言の葉に宿る力が彼らをより一層深い眠りに落としていく。
 演奏が聞こえてきた故に起きた子も、まだ眠っている子も。
 優しい音色に包まれて、微睡み、夢を見る。
 眠りネズミのふわふわな体毛が心地良くて、カガリも聞き入っている内にすやすやと。
 ……演奏を終えた時、其の場で起きているのは木槻とニナの二人だけ。

「貴方達に神様からの贈り物を――さあ、還りなさい」
 ニナが眠っているカガリを抱えて、眠りネズミ達から離れた事を確認してから。
 木槻が祈る様に呟けば、ふわりと花の香りが広がっていく。
 紅の名を冠する獣奏器が、美しい白の茉莉花の花弁へと姿を変えたのだ。
 良い香りに反応して鼻を動かすが、深い眠りについているからか……夢の中の出来事と感じているのだろう。目覚める事は無いが、表情は穏やかな其れで。
 彼らは痛みを感じる事もなく、まるで花嵐の中へ溶けていく様に還っていく。
 ――最後の一匹が、きゅうと鳴いた。嬉しそうな鳴き声を上げた。
「(優しい夢を見続ける事が出来た、だろうか)」
 瞳から涙が零れる事は無かったが……爪が食い込みかねない力で、ニナは拳を握り締めている。きっと此れで良かったのだと、自分に言い聞かせる様に。
「……おやすみなさい、いい夢を」
 自分は優しくないと理解しているけれど。
 ニナの抱えている辛さが少しでも軽くなるならば、勿論其れだけではないけれど。
 良い夢を見ながら、眠る事が出来たと。そうであってほしいと思う。

 彼女達の祈りはきっと届いた事だろう。
 だって、ほら。花香が仄かに残る中、腕の中で眠るカガリの様子は穏やかで。
 ……其れは眠りネズミ達も同じだった筈だから。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『上司のくろやぎ』

POW   :    でりしゃすれたー
【『あまい』告白の手紙】【『しょっぱい』別れの手紙】【『からい』怒りのお手紙】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
SPD   :    ようしゃしないめぇ!
【『するどいきれあじ』の催促状のお手紙】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
WIZ   :    そくたつぽっぽさんめぇ!
レベル分の1秒で【頭上にいる速達担当の相棒ぽっぽさん】を発射できる。

イラスト:Miyu

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠メーアルーナ・レトラントです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●絶賛お昼寝タイム満喫中
 猟兵達は一度合流した後、互いに情報を共有したが。
 此処でふと、ある不思議な事に気付く。
 誰も、くろやぎさんの姿を見ていないのだ。
 ……既に迷宮の出口へと辿り着いてしまったのか!?
 そうだとしたら不味い、猟兵達が急いで迷宮の出口へ向かおうとして――呑気な寝言が聞こえて来た。ああ、一部の猟兵は聞き覚えがあるかもしれない。

「むにゃむにゃ……お手紙、おいしーめぇ……」
 ――夢でも手紙を食べているのか!?
 迷宮内の、とある小部屋の一室でくろやぎさんはお昼寝タイム。
 ぽっぽさんも釣られたのか、一緒になってすやすやと。幸せそうに眠っている。
 少し間を置いて、くろやぎさんはハッ!?となってから両目をごしごし。
「ふわぁ……寝ちゃってた、めぇ……めぇー?」
 ネズミさん達が居なくなって、代わりに見えた人達に首を傾げて。
 ……其の中に以前出会った猟兵が居たのか、耳をぱたぱた!
「はじめましてめぇー!お久しぶりな人達もいるめぇ?嬉しいめぇー!」
 くろやぎさんは頭を下げながら、丁寧に御挨拶。
 ぽっぽさんも羽をぱたぱた、何だかとっても嬉しそう。
 くろやぎさんは知っているのだ、こういう時は――お食事タイム!
 此の場に居る猟兵達一人一人に視線を向けてから、くろやぎさんは両手を差し出し。
 其の場で跳ねて、人懐っこい笑顔と声で告げるのだった。

「おいしーお手紙、あまーいお手紙!ボクにいっぱい、ちょーだいめぇ!」
 此のくろやぎさんは、とあるしろやぎさんの上司……つまり、グルメである。
 以前、くろやぎさんにお手紙をあげた人に関しては、全く同じ内容だと飽きさせてしまうかもしれないね。
 ――甘いお手紙とは恋愛感情に限らず、好きが詰まったお手紙の事。
 其れ以外の味でも、お腹の空いたくろやぎさんならばきっと食べてくれる。
 
 ……還す前に、少しばかり戯れる時間があっても良い筈だから。
 さあ、猟兵諸君。貴方達の手紙はどんな手紙?そして、どんな味だろう?
 是非是非、くろやぎさんに教えて頂戴な。

【お知らせ】
 プレイング受付期間は『6月27日(木)8時31分〜6月29日(土)23時59分』までとなります。
逢坂・明
好きが詰まったお手紙は美味しいの?
くろやぎさんって不思議なものね

「あたしの好きなものは、かわいいものともふもふと
ふわふわのあんことぱりぱりのバターたっぷりクロワッサン!
これだけあれば幸せになれるの
あんこはつぶあんでもこしあんでも、うぐいすあんでもなんでもいいわ
クロワッサンは焼きたてがやっぱり最高ね
くろやぎさんもお手紙じゃなく、これらを食べられたならよかったんだけれど
とっても、本当に、おいしいあんことクロワッサンが好き!」

……オブリビオンだから偏食なのかしら。仕方ないわね
くろやぎさんもかわいいから、倒すのはとってもためらうけれど……
ううん、ちゃんとお仕事はしなきゃだわ
また会えるといいわね



●お手紙ぱらだいす! 和洋折衷編
「好きが詰まったお手紙は美味しいの?」
「おいしーめぇ!とーっても、おいしーめぇ!」
「……くろやぎさんって不思議なものね」
 不思議と言われた事が、逆に不思議に思ったらしい。
 逢坂・明(絢爛エイヴィヒカイト・f12275)の呟く様な声に、くろやぎさんはあれー?と首を傾げていた。
 オブリビオンだから偏食なのか、其れとも単にくろやぎさんに限る話なのか。
 残念ながら今直ぐには解らないが、他に判る事はある。
 少なくとも目の前のオブリビオンはぽっぽさんを含めて、敵意は無さそうだ。
「お手紙って、これでいいのかしら?」
「おじょうさん、くれるのめぇ?いただきまーすめぇ!」

 ――あたしの好きなものは、かわいいものともふもふと。
 ――ふわふわのあんことぱりぱりのバターたっぷりクロワッサン!

 逢坂の手紙をもぐもぐ、もぐもぐ。
 食べていくにつれて、彼女の好きという感情が口の中に広がる。
 甘くて、美味しくて……何よりも感じるのは愛らしい、彼女の幸せ。
 美味しいあんこに、バターたっぷりクロワッサン。
 此れらを食べている彼女の表情は、きっと幸せに満ちた綺麗な笑顔なんだろうと。
 くろやぎさんは逢坂を見て、そんな表情を想像しては微笑んだ。

「とっても甘くて、おいしーめぇ!……おじょうさん、おじょうさん!」
「何かしら?」
「ボクも、もふもふするめぇ?」
 まさかの申し出に、逢坂は大きなマラカイトの瞳を丸くした事だろう。
 目をぱちぱち、としている間にくろやぎさんがぱぁ!と眩しい笑顔で告げるのだ。
「とっても甘くて、おいしー手紙のお礼なのめぇ!」
「そ、そこまで言うなら……」
 ……天邪鬼とは言えど、無下にするのも申し訳なさが増すだけだと。
 逢坂はそっとくろやぎさんの頭に触れて、優しく撫でる。
 先程の眠りネズミと同じくらい、でもまた違った手触りで。ふわふわ、もふもふ。
 擽ったそうにしつつも、食事を再開する様子に彼女は思わず微笑んだ。
「(……うん、ちゃんとお仕事はしなきゃだわ)」
 あまりにもオブリビオンらしからぬ、優しいくろやぎさん。
 可愛くて、もふもふで……倒すのはとってもためらうけれど。
 ――其れでも、己は猟兵だから。
 聡明で決然と在ろう、逢坂の決意は揺るがなかった。

「くろやぎさん、また会えるといいわね」
「ぽっぽさんも忘れちゃだめ、めぇ!」
「そうね、ぽっぽさんも」
 離れる直前、逢坂は密かにcon animaを一枚、くろやぎさんの鞄に忍ばせる。
 仮にくろやぎさんが戦意を露わにしても、守りを砕く布石となる様に。
 ……彼女の胸に渦巻いたのは一抹の寂しさ、だったかもしれない。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ディフ・クライン
フレンドリーなオブリビオンだね
オレは、ディフだよ。よろしくね
なんて一先ず挨拶

手紙か…参ったな、そういうの書くのは初めてだ…
しかも「好き」、か…

悪戦苦闘しつつ書いたものを迷いながら手渡し
…変な味がしたらごめんよ

「オレは魔導人形だ
多分失敗作だと思う
ヒトのようにと望まれて作られたのに、感情が生まれなかったから
今も、人の感情を真似ているだけ

感情はわからないけれど
オレを作った人のことを思うと、ほんの少し、胸のあたりが温かくなる
この事件を予知した子と話しているのも、やっぱり温かい
これを明確に「好き」と言えるかはわからない
けど、心地は良いから
たぶんそれが、オレの「好き」なのかな」

戦う時はUCで離別の突風を



●お手紙ぱらだいす! はじめて編

 ――さて、もう一度繰り返そう。
 ディフ・クライン(灰色の雪・f05200)は人形である。
 極寒の地にて生まれ、其処から先は籠の鳥。
 つい最近まで、語らう相手は死霊や精霊のみ……だったかもしれない。
 そんな彼が『手紙』という物を書く機会があったかどうか、語るに及ばず。

「(参ったな、そういうの書くのは初めてだ……)」
「めぇめぇ、ぽっぽさん!お手紙楽しみめぇー!」
「(……本当に参ったな)」
 フレンドリーなオブリビオン、最初は少しだけ呆気に取られたけれど。
 和やかに挨拶を済ませた後、まだまだお腹ペコペコなくろやぎさんは両手をディフに伸ばして。早速、同じ様におねだりを。
 ――好きがぎゅーっな、あまーいお手紙!ちょーだいめぇ!
 そして、少しばかり時間が経過して今に至る……手紙は数行書き終えた所か。
「好き、か……」
 手紙を書く事すら初めてなのに、中々難しいお題だと思う。
 ……好き、とは何だろう。どんな感情なのだろうか。
 ちゃんと理解出来ていない自分が書く手紙に、不快に思わないだろうか。
 そんな気持ちもまた、ディフは明確に言葉に出来ないけれど。穏やかな笑顔で、律儀に待ってくれる様子に誰かの姿が重なって。少しずつ筆を進めていく。
「……変な味がしたら、ごめんよ」
「食べてみないと、わからないめぇよ!いっただきまーす!」

 ――オレは魔導人形だ、多分失敗作だと思う。
 ――感情はわからないけれど……。

 迷う様に差し出された手紙を見て、くろやぎさんは両手でしっかりと受け取る。
 はむっ!もぐもぐ。ディフの胸中は無意識に、忙しなく。
 ……最初に感じた味は少しだけ、しょっぱいけれど。遅れて甘さが広がる。
 彼自身は真似事の感情、失敗作と言うけれど。其れでも確かに甘いのだ。
 作り手である人への、幼い薄紫のグリモア猟兵に対する感情。
 ――其れは多分ではなく、きっと。彼自身から生まれた『好き』と呼べる気持ち。
「しょっぱくて、でも……ちゃんと甘さがあっためぇ!おいしーめぇ!」
「そうか……本当に、良かった」
「ボクもぽかぽかするめぇ、おいしーお手紙食べられたから……しあわせめぇ!」
「しあわせ……そんな感情もあるのか」
 理解する事は出来なくても、言葉を知る事は大事だと思うから。
 くろやぎさんなりのお礼の気持ち。ちょっとしたお節介。
 ディフから貰った手紙は本当に美味しかったのか、残さず食べ終えて。

「ごちそーさまでした、めぇ!もっとあるめぇ、めぇ?」
「もうないんだ、ごめんね」
「めぇ……もっとおにいさんの手紙、食べてみたかっためぇ」
 ――ずきり、と胸から何か音がした気がした。
 外傷は無いし、攻撃を受けた様子も無い。……此の痛みは何だろう。

成功 🔵​🔵​🔴​

マクベス・メインクーン
ゆー兄ちゃん(f16731)と
まぁたまにはこんな敵もいいんじゃね?
手紙かぁ…何書こうかなぁ
んー…グラナトさんへの手紙…
そうだな、そうしよっかな!

「愛しい『赤』へ。オレは、永遠に貴方の『青』です」

…これ、すげぇ恥ずかしいな…
後、大事な兄貴分たちにもこっそり

「ゆー兄ちゃんへ。いつもカッコいい兄貴分で居てくれてありがとう
 オレに弱いとこ見せないようにしてんのは嬉しいけど、たまには気を抜いてもいいんだぜ?」
「望兄ちゃんへ。いつも相談に乗ってくれてありがとう
 甘やかしてくれんのは気恥ずかしいけどめっちゃ嬉しいんだぜ」

ゆー兄ちゃんに見られないようにヤギに食わせるぜ
おっし、そんじゃ倒しちまうかっ!


月待・楪
猫助(f15930)と

にしても、こいつも結構のんきなヤツだな…調子狂う
とりあえず猫助ともう一人と三人で行った依頼の感想でもいいか
あーいうの柄じゃねェけど楽しかったし
また行ってもいいって思えた、みたいなそんな感じの感想でも書いとく

猫助は何書くつもりだ?
決まってねェなら、グラナトへの手紙の練習でもしたらどうだ?
言葉に出すのは大切だけどな、残る形にすんのもいいんじゃねェか?

猫助が手紙書いてる間に、こっそり短い手紙とも言えそうにねーのを一つ
「いつか呪いをかけたヤツに会った時はいつでも呼べよ。」
とだけ書いてこれだけさっさとヤギの口に押し付けておく

よーし、猫助ー
ヤギも満足したみてーだし、さくっと倒すぞ



●お手紙ぱらだいす! 兄弟分と練習編
「めぇーっ!かっこいーおにいさん達、はじめましてめぇー!」
「こいつも結構のんきなヤツだな……調子狂う」
「まぁ、たまにはこんな敵もいいんじゃね?」
 律儀に自分達の所へ駆け寄って、丁寧なお辞儀を一つ。ぽっぽさんも真似をして。
 あまりにも呑気過ぎる、そう断言出来る様子に月待・楪(Villan・Twilight・f16731)は脱力感を覚えずにいられなかった。
 彼の弟分であるマクベス・メインクーン(ツッコミを宿命づけられた少年・f15930)は逆に慣れて来たのか、面白そうに笑っていて。何が面白いのか解らないけれど、くろやぎさんが釣られて笑う……面白がって、マクベスがまた笑う。
 ……まァ、いいか。弟分が楽しそうだし。
 月待も状況を受け止めてきた所で、くろやぎさんが恒例のおねだり。
「好きが詰まったお手紙、ボクにちょーだいめぇ!」
「手紙かぁ……何、書こうかなぁ」
「決まってねェなら、グラナトへの手紙の練習でもしたらどうだ?」
 ……言葉に出すのは大切だけれど、残る形にするのも良いと思うから。
 月待の提案にしっかりと頷いて、マクベスは目の前の便箋と向き合い始めた。
 ――さあ、どんな風に書こうかな。
 苛烈な赤い見た目、炎の神。
 大好きな赤と炎……改まって書こうとすると、何故か変に緊張する。

「……おい、お前」
「めぇめ?……ボクめぇ?」
「お前以外に誰がいんだよ、さっさとこれ食ってろ」
「もごご……め、めぇー!?」
 マクベスが手紙に集中している事を確認してから、月待はくろやぎさんに接近。
 ぶっきらぼうな言い方だが、くろやぎさんに食べさせ……否、口に押し付ける様にしたのは二通の手紙だ。バレない内に早く食べて欲しい、そんな気持ち故か。
 ……ついでにこっそり触れた毛並はもふもふで、撫で心地が良かったそうな。

 ――猫助と氷月との依頼は柄じゃねェけど楽しかったし、また行ってもいい。
 ――猫助、いつか呪いをかけたヤツに会った時はいつでも呼べよ。

 二通の手紙から感じられたのは、二種類の甘さだった。
 どちらもさっぱりとした甘さだけれど、味が少しだけ違うのだ。
 仲の良さ、月待なりの好きが詰まったジューシーな甘さは苺の様。
 兄貴分として、大切な戦友として、マクベスの力になりたい。そんな決意の篭った甘さは葡萄だろうか。
 口の中がフルーツで満たされる感覚に、くろやぎさんは幸せそうな笑みを浮かべた。
「おにいさん、おにいさん!おいしいめぇー!」
「あーっ!ゆー兄ちゃん、先に食わせたのズリぃ!」
「黄色のおにいさん!えっとね、とーっても甘……めぇ?」
「お前、勝手にバラそうとすんじゃねェ……!」
 危うく、手紙の内容がざっくりとでも伝わってしまいそうだった。
 くろやぎさんの口を塞ぐ様にして阻止するも、直ぐにいやんいやんと大きな耳をぱたぱた!マクベスの元へと猛ダッシュ!……スピードが遅いのは御愛嬌。
「黄色のおにいさん、お手紙書けためぇ?」
「バッチリだぜー!……ゆー兄ちゃんには見られない様に食えよ?」
「おにいさん達、シャイなのめぇ……?」
 好意を素直に伝えるくろやぎさんは、不思議そうに首を傾げて。
 ……でも、目の前の三通のお手紙に食欲が抑え切れない!一気にもぐっ!

 ――愛しい『赤』へ。オレは、永遠に貴方の『青』です。
 ――いつも、カッコいい兄貴分で居てくれてありがとう。
 ――いつも、相談に乗ってくれてありがとう。

 大好きで大切な『赤』への愛情、そして二人の兄貴分に対する感謝の気持ち。
 たった一文、しかし其れに込められた気持ちは強い甘さを生み出す。
 とても甘くて美味しくて、感謝の手紙も強い甘さに負けない程。
 全てが異なった甘さだけれど、不思議と調和が取れているから……くろやぎさんはまるで、一つのスイーツを堪能している気分かもしれないね。
 手紙を食べ終えた後、くろやぎさんは両手で頬を押さえながらにっこりと。
「めぇー!好きがいっぱいめぇ、甘くてほっぺた落ちそうめぇー!めぇめぇー!」
「……マクベス、グラナト以外にも書いたのか?」
「内緒!おっし、そんじゃ倒しちまうかっ!」
「……まァ、ヤギも満足したみてーだし」
 未だ調子が狂う気分は変わらないが、そろそろ攻撃を開始してもいいだろうと。
 マクベスが他の誰に書いたのかは気になるけれど、其れは戦いが終わってか――。

「てめぇにゃ、コイツをお見舞いするぜっ!」
「めぇ?わっ、わ、突風めぇ――め゛ぇっ!?」
「…………」
「え、終わるの早くねぇ!?」
 ――訂正、一先ずは終わった様だ。
 マクベスの二丁の魔装銃による、暴風を纏う銃弾がくろやぎさんに襲い掛かって。
 お手紙を食べ終えて満足したくろやぎさんったら、直撃を受けた上でごろんごろんと転がって……壁に頭をゴツン!
 ……倒すには至らずとも暫くの間、気を失っていたそうな。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

インディゴ・クロワッサン
(ぷふっと軽く吹き出しながら)
「『好き』が詰まったお手紙、ねぇ」
本当に好きなものを書いてくと、確実に血みどろだから、そこは自重しよ…。
夜糖蜜の入った小瓶にペン先を浸しながら、思い描くのは別の迷宮で出会った新入生3人組を支えるべく潜った、お菓子で出来た迷宮。
美味しそうなマジパン頭を持つ兵隊達を退け、聳え立つシャルロットの迷路を越えて、バウムクーヘンとリーフパイで構成された木で出来た森の中には、バターケーキの台座に乗ったイチゴとブルーベリーのタルトレット…
「お?気になっちゃう?」
ま、いいか
「はい どーぞ」
仕留めるのは誰かがやってくれるでしょ
誰もやらないなら、僕が【指定UC】でぽかっとしますかー



●お手紙ぱらだいす! たっぷりスイーツ編
「めぇ……あれれ、お星様はどこいっちゃっためぇ?」
「お星様?」
「めぇ、きらきらめぇ!ぴゅーって飛んで……ボク、また眠っちゃったのかめぇ!?」
 きょろきょろしたかと思えば、おろおろし始める。
 何だか見ていて忙しなくて、でも飽きないなと。インディゴ・クロワッサン(藍染め三日月・f07157)はぷぷっ、と軽く噴き出してしまう。
 攻撃を受けて警戒するかと思えば、人懐っこさは変わらない様で。
 白薔薇を咲かせる必要は無いか、と彼は笑みを浮かべ続ける。

「めぇ……あっ!藍色のおにいさん、好きがぎゅーっなお手紙持ってるめぇ?」
「『好き』が詰まったお手紙、ねぇ」
 本当に好きな物を書くと、血生臭い手紙になってしまいそうだ。
 どうしようか少し悩んだ上で、結論はあっさりと。よし、そこは自重しよう。
 特定の薔薇に関する内容を諦めて、インディゴは何を書こうかと思考を巡らせる。
 ……寝るのも好きだけれど手紙と呼べる程、書けそうにない。
 夜糖蜜の入った小瓶にペン先を浸して、考えて……どうやら決まった様だ。
「(お菓子で出来た迷宮、の事にしようかな)」
 別の依頼で出会った、カエンにヒトヨ、そしてマイの新入生三人組。
 彼らを支える為に潜った場所での出来事を思い出しながら、インディゴはすらすらと筆を進めていく。ふわり、香る夜糖蜜の匂いにくろやぎさんがそわそわと。
 書き終えれば便箋に収めて、封を……嗚呼、近い。
 待ち切れなかったのか、くろやぎさんが彼の近くまで迫っていた。耳も忙しない。
「お?気になっちゃう?」
「気になっちゃう、めぇ!ぽっぽさんもそう言ってるめぇ!」
 ――いや、言ってない。
 少し冷ややかなぽっぽさんの鳴き声に、また噴き出して。まあ、いいか。
「はい、どーぞ」
「わーい!おにいさん、いただきまーすめぇ!」

 ――美味しそうなマジパン頭を持つ兵隊達、シャルロットの迷路を越えて。
 ――お菓子の木で出来た森、イチゴとブルーベリーのタルトレット。

 ……じゅるり、くろやぎさんが涎を零しそうになった。
 直ぐに引っ込めたけれど、其れ程に魅力的な手紙だったのだ。
 手紙自体に甘さを感じるのもあるけれど、新入生達とのやり取りには優しい甘さを感じて。勿論、メインはお菓子で出来た迷宮だけれども。
 甘いお手紙じゃない、でも甘くて美味しい迷宮。想像しただけで夢の様だ。

「おにいさん、おにいさん」
「んー?」
「甘い甘ーい迷宮は楽しかっためぇ?」
 くろやぎさんの問い掛けには、少しだけ考える素振りを見せて。
「僕にとっては、楽園だったかもねぇ」
 仕留めるのは誰かがやるだろうと、返答を一つ。
 丁寧にお礼を告げるくろやぎさんに笑みを返して、インディゴは其の場を離れた。

成功 🔵​🔵​🔴​

真宮・響
【真宮家】で参加。

・・・久しぶりだね。相変わらずの調子でなによりだ。もうちょっと違う状況で再会したかったが。お手紙欲しいようだね?複数人宛ての手紙でも構わないかい?

「奏と瞬へ

いつもありがとう。奏はその向日葵のような笑顔と明るさにはいつも元気を貰っている。いつも体を張らせてすまないね。

瞬。いつもフォローに回らせて申し訳ない。いつも助けて貰ってる。今後も頼らせて貰っていいかい?

奏と瞬、2人が元気でいる事がアタシには何より嬉しい。これからもずっと一緒にいよう。

愛しい子供達へ。母より」

なんか照れるね。今度こそ・・・お別れだ。竜牙で一気に斬り裂く。またどこかで会いたい・・・というのは贅沢かね?


真宮・奏
【真宮家】で参加。

・・・いつもの調子で何だかほっとしました。お別れに来たので、凄く寂しいのですが・・・せめて、お手紙を。

「響母さんへ

いつもありがとうございます。響母さんが戦う姿は美しくて勇猛で。私が目指す戦士そのものです。いつか母さんみたいな立派な戦士になりますっ。待っていてください。

後、いつか母さんが作ってくれた手料理、とてもおいしかったですっ。また作ってくれますか?

これからも家族3人でずっと一緒に。いつまでも母さんに付いて行きますっ

奏より」

お別れは悲しいです。目に涙を溜めながら楽しい思い出をくれた黒やぎさんへの感謝も込めて思いっきり信念の一撃で。楽しかったですよ。ありがとうございます。


神城・瞬
【真宮家】で参加。

こちらが倒しに来たのに、相変わらずのようで。お手紙、差し上げましょう。お別れの前に一杯いい思いが出来るように。

「響母さんへ。

いつも僕を引っ張ってくれて感謝してます。響母さんがいつも前に出て率先してリードしてくれるので僕が存分に自分のやれる事が出来る訳で。

今まで育ててくれてありがとうございます。これからも背後のフォローはしっかりしますので、ずっと家族3人で歩いていきましょう。

瞬より」

いささか自信がありませんが、愛情はたっぷり込めましたので、お好みに合えばいいのですが。・・・今度こそ、お別れですね。凄く名残惜しいです。ひと思いに、氷晶の槍で貫きます。



●お手紙ぱらだいす! 家族編
 此処からは初めましてではなく、お久しぶりな面々。
 【真宮家】の三人が近付くと、直ぐに会った覚えがある相手だと気付いたのか。大きな耳をぱったぱったと揺らして、くろやぎさんの方からも近付いていく。
「仲良しさんな家族の人達だめぇ!おひさしぶり、めぇー!」
「……久しぶりだね。相変わらずの調子で何よりだ」
 本音を言うならば、違う状況で会いたかったけれども。
 変わらぬ人懐っこさ、穏やかなくろやぎさんの雰囲気に真宮・響(赫灼の炎・f00434)は何処か嬉しそうに笑っていた。
 安心したのは彼女だけではなく、真宮・奏(絢爛の星・f03210)もだ。後に待つ別れに寂しさを感じても、くろやぎさんがいつもの調子だとホッとするのだろう。
「(……こちらが倒しに来たのに、相変わらずのようで)」
 あまりにも呑気過ぎると言える様子に、神城・瞬(清光の月・f06558)は思わず内心呟いた。
 敢えて心の中に留めておいたのは、己の隣にいる大切な人の為だろうか。
「お手紙、くれるめぇ?あまーいお手紙、ちょーだいめぇ!」
 彼の真意は解らないまま、くろやぎさんはまだ足りないのか。
 出会った時と変わらぬ様子で【真宮家】の三人にもお手紙が欲しい、とお願いを。
 ……せめて、お別れの前にお手紙を渡したい。沢山、良い思いをして欲しい。
 そんな風に思っていたのか、三人共既に準備は済ませていた。
 複数人宛でも大丈夫かと響が問い掛ければ、勿論とくろやぎさんが頷く。
 好きがぎゅーっと詰まったお手紙は、きっと美味しいから。

 ――二人が元気でいる事が、アタシには何より嬉しい。
 ――これからもずっと一緒にいよう。

 ――いつか、母さんみたいな立派な戦士になります!
 ――これからも家族三人でずっと一緒に。

 ――いつも僕を引っ張ってくれて、感謝してます。
 ――ずっと家族三人で歩いていきましょう。

 嗚呼、なんて優しくて甘いお手紙なんだろう。
 母から子供へ、子供から母へ。感謝の思いが詰まっている。
 其の手紙には幸せが、憧れが、信頼が……ミルフィーユの様に幾重にも折り重なっていて、家族の絆の強さを感じさせる。
 幸せがぎゅーっな家族が、これからも一緒に過ごせる様に。
 くろやぎさんとぽっぽさんが、思わず願ってしまう程に気持ちが込められたお手紙。
「いろんな好きが重なって、ぎゅーって!おいしーめえ!」
「お好みに合ったならば良かったです」
「改めて書くと、なんか照れるね……」
 くろやぎさんの反応は目に見えて喜んでいる様に見える。
 愛情はたっぷり込めたが自信がなかったらしく、瞬は安堵した様に微笑みを浮かべる。照れ臭さ故か、後頭部に手を当てる響も笑って。
 ……唯一、奏だけは複雑な様子で拳を握り締めていた。

「(もう、お別れをしないと、ですよね……)」
 お別れは悲しくて、寂しいもの。
 前に一度出会ったオブリビオンの内の一体。
 ……其れだけだと言い切るには語らい、笑い合う時間が予想以上に大切になってしまったのかもしれない。
 他にも別れを告げたい猟兵がいるだろうから、と。
 くろやぎさんへ攻撃を仕掛ける為、前に踏み出したのは――目に涙を溜めて、歯を食い縛る奏だった。そう、お別れは自分の手で。
「おねえさん、泣きそうめぇ……?大丈夫めぇ?」
「大丈夫ですよ。……とても優しいですね、くろやぎさん」
「よかっためぇ!おねえさんも、おねえさんの家族も優しいから……ホッとしためぇ」
 ……嘘偽り無く、心から安堵してくれているのだろう。
 だからこそ、ブレイズセイバーを握る手が僅かに震えてしまう。
 愛娘、そして大切な人の後ろ姿に……ふと、響と瞬は考えてしまうのだ。
「(また何処かで会いたい……というのは、贅沢かね)」
「(奏の気持ちもありますが、僕自身も……凄く名残惜しいです)」
 くろやぎさんとの別離に寂しさを感じるのは、二人も同じだった。
 二人も楽しんでくれたからこそ、そう思うのだろう。
 本当は奏よりも自分達が攻撃を行う方が、心の痛みは少ない筈だと解っている。
 出来る事ならば、そうしたいけれど……。
 ――奏の気持ちを、覚悟を、無視したくはないから。
「めぇ……?」
 どうして、三人とも寂しそうなんだろう?
 どうして、おねえさんは泣きそうな顔をしているんだろう?
 お手紙を食べれば元気になるだろうか、おねえさんはどんなお手紙が好きかな。
 くろやぎさんが自分の鞄から手紙を取り出そうとした瞬間――信念を込めた剣が閃く。
「楽しかったですよ、ありがとうございます」
「めっ、めぇ……!?」
 肩掛け鞄の紐が、服が、切り裂かれる。
 奏の一撃は重くて、剣圧で其のまま吹き飛ばされる。
 痛い、悲しい、どうしてこんな事をするのだろう。
 そんな風に思って……くろやぎさんがふと、見上げた時だった。

「めぇ……」
 悲しい決意を秘めた瞳。
 無意識に一筋、奏の頬に雫が伝う。
 其れを見てしまえば、呑気過ぎる程に穏やかなくろやぎさんでも理解出来てしまった。

 今日この日が、おにいさんやおねえさん達とのお別れの日だと。
 ……わかって、しまったのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

月藤・紫衣
ふふ、お久しぶりです黒ヤギさん
今回も沢山お手紙をいただけるのではないでしょうか?
ほら、皆さん用意してくださっていますし…
もちろん、私もですが

今回のお手紙は楽しかった依頼について、です
小さな友人と花を見にお出かけしたこと、友人とビアガーデンに出掛けたこと、戦争とは思えないくらい賑やかな戦争で料理を作ったこと
…こうして書いてみると、書ききれなくなりそうなくらいですね

お手紙を食べてくださっている間に毛並みを堪能させていただきましょう
ああ…この魅惑の柔らかさとも暫しのお別れなのですね…

黒ヤギさん、今回のお手紙はいかがでしたか?
…それでは、暫しのお別れを
(アレンジetc歓迎)



●お手紙ぱらだいす! 思い出編
 悲しい事実に気付いてしまい、しょんぼりとした様子のくろやぎさん。
 ……ふと、お花の良い匂いがした気がして、顔を上げると。
「めぇ……?」
「ふふ、お久しぶりです黒ヤギさん」
「キレーなおねえさ……おにいさん、めぇ!」
 見覚えのある人物――月藤・紫衣(悠々自適な花旅人・f03940)の姿を見て、再び笑顔が浮かぶ。彼の柔らかい微笑み、藤の香りに心が癒されたからか。
 そんな様子に安堵して、彼はくろやぎさんと目線を合わせる様な体勢を取って。
「今回も沢山、お手紙を頂けているのではないでしょうか?」
「おにいさん、エスパーめぇ!?びっくりしためぇー!」
「皆さん用意してくださっていますし……もちろん、私もですが」
 そっと差し出された手紙を見て、くろやぎさんの表情が輝く。
 今回も甘いお手紙なのかな、其れとも違う味なのかな?ドキドキ、ドキドキ。
 ……自分の手紙で喜ぶ姿を見て、月藤もまた笑みを浮かべていた。
「いっただきまーすめぇ!めぇー!」

 ――依頼の前に飲めるなんて、珍しい機会ですよね。
 ――ごま油、何処かにあるでしょうか……。

 月藤の手紙に綴られていたのは、出会った後の思い出の数々。
 小さな友人と神秘の泉で見た、藤の花天井。
 依頼の前に友人と、ビアガーデンで過ごした時の事。
 賑やかな戦争の最中に料理を作り、怪人達へ振る舞った事。
 其れ以外にも沢山の出来事が、其のどれもが彼にとって楽しかったのだろう。
「おにいさん、いっぱい、思い出作ったんだめぇ……すごい!めぇ!」
「ありがとう御座いますね。今回のお手紙はいかがでしたか?」
「ほんのり甘くて、おいしーめぇ!」
 ……例えるならば、和菓子の様な甘さのお手紙だったのか。
 様々な出来事の中に込められた友愛、親愛の気持ちが甘さを生み出していて。
 満足そうにもぐもぐと食べているくろやぎさんに、月藤はそっと触れる。
 初めて出会った時と変わらず……柔らかくて、撫でていて落ち着く感触だった。

「(ああ……この魅惑の柔らかさとも、暫しのお別れなのですね……)」
「おにいさん、おにいさん」
「どうかしましたか?」
 呼び掛けられる声に反応して、月藤はくろやぎさんに視線を向ける。
 気付けば表情は寂しそうな、悲しそうな……置いて行かれる子供の様で。
「おにいさんとも、お別れ……めぇ?」
「……ええ、暫しのお別れです」
「もう、会えないめぇ?」
「そうかもしれません」
 はっきりと告げられた声に、再び落ち込むけれど。
 そんなくろやぎさんの頭を優しく撫でて、月藤は続けるのだ。
 きっともうこの子には会えない、次に会うのは全く別の子。だから、せめて――。
「ですから、お手紙に書いた様に。楽しかった思い出として、私は忘れません」
「本当、に……めぇ?」
 ……こくり、と静かに月藤が頷けば。
 くろやぎさんの頬を濡らすのは、甘さの詰まった綺麗な雫。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ニナ・グラジオラス
リナ(f04394)と

覚えてくれていたのは嬉しいが、忘れてくれていれば気持ちは楽だったのだろうか

前回はリナとカガリの協力がなければ、辛い手紙の想い出になってしまっただろうな
今回は大丈夫、甘くなるように気をつけて手紙を書いてきたので、
よかったら食べてもらえないだろうか

手紙の内容はくろやぎさんへの親愛感と、滲む少しの罪悪感
けれどそこにはありったけの、眠りに誘うような『優しさ』と『祈り』
『催眠術』と『毒使い』で眠るような、
そして幸せな夢から二度と目覚めないようにと願いを織り込んで

【ドラゴニック・エンド】は最終手段であり、私の心の支え
リナが一緒でよかった。きっと私一人だったらツラくて逃げ出していた所だ


木槻・莉奈
ニナ(f04392)と

久し振りね、くろやぎさん
覚えていてくれて嬉しいわ

手紙の内容は大好きな人達の事を綴った手紙
…私がくろやぎさんに向けて書いても甘いお手紙にはなりそうにないんだもの
大切な親友と、彼女の小さな相棒への、彼女達が心穏やかにあれるよう願いを込めた手紙を

眠りネズミ達のように、眠ったまま還してあげられたら一番いいんだけど…
『高速詠唱』『全力魔法』で【トリニティ・エンハンス】
【風の魔力】で状態異常:眠りを付与
怖がらせたいわけじゃないから、剣は使わずにおくわね

眠らせる事が難しいようなら、せめて苦しめる事のないよう一撃で

役に立てたのなら嬉しいけど…そんなにニナが背負わなくたっていいんだからね



●楽園でおやすみ、さようなら
「めぇー、おねえさん達と小さなドラゴンさんめぇ!」
「久し振りね、くろやぎさん。覚えていてくれて嬉しいわ」
「ボク、ちゃんと覚えるやぎさんめぇ!」
 えっへんっ!と胸を張る様子は最初に会った頃と変わらないけれど、涙に濡れた頬はまだ乾いていない。……元気を取り戻してくれた事は素直に嬉しい。
 しかし、倒さねばならない現実は変わらないと、木槻・莉奈(シュバルツ カッツェ・f04394)は理解している。受け止めている。
「(……忘れてくれていれば、気持ちは楽だったのだろうか)」
 無邪気に再会を喜ぶくろやぎさんの様子に、ニナ・グラジオラス(花篝・f04392)の胸中は複雑だった。
 自分達の事を覚えていなければ、以前の出会いを忘れていたならば……武器を振るう手は軽く感じたかもしれない。
 現実は嬉しくも、悲しい事に覚えていてしまったのだけれど。

「ニナ、大丈夫……?」
「赤色のおねえさん、元気出ないめぇ……?」
「あ、ああ。すまない、大丈夫だ……甘くなるように気を付けて、手紙を書いてきた。よかったら、食べてもらえないだろうか」
「私も書いてきたの、食べてもらえる?」
「ありがとうめぇー!あっ、めぇ……」
 お手紙を渡す際に触れた木槻の手は優しくて、温かくて。
 風の魔力による効果だろうか、くろやぎさんの眠気を誘おうと。
 ……そして、もう一通の手紙は口にしなくても伝わる。
 このお手紙はきっと甘くておいしいけれど、祈りにも似た優しさのおくすりでもあるだろう。最後の食事になる、そんな確信。
「くろやぎさん、もうお腹一杯……?」
「違うめぇ!コレは食べたいお手紙なのめぇ、でも……」
 食べたいのに、どうして食べたくないと思ってしまうのか。
 ……其れをくろやぎさんは理解している。
 顔を上げて……ニナと木槻の事を、カガリを。
 他にも来てくれた猟兵達にちゃんと目を合わせて。再び浮かぶ涙をぐしぐし。
 お別れが寂しいのはくろやぎさん、そしてぽっぽさんもだった。
 出会いの数は少なくとも、充実した……とても楽しい時間ばかりだったから。
 だから、感謝を込めて。くろやぎさんは笑って、二人に問い掛ける。
「おねえさん達も、ボクを覚えていてくれるめぇ?」
「ええ、勿論」
「キミとの事を、忘れる訳がないだろう」
 依頼で偶々出会って、話して、笑い合って……。
 言ってしまえば、其れだけ。其れでも、確かに繋いだ絆があった。
 ……くろやぎさんとの思い出は忘れないと、二人は確かに頷く。
 ニナが自分を抑える為に……絞り出す様な声で忘れない、と繰り返せば。
 くろやぎさんはにっこりと、心から嬉しそうに笑うのだ。
「ボクも、消えちゃっても……忘れないめぇ。すっごく、すーっごく大切にするめぇ」
 頭の上で寂しげに泣くぽっぽさんにごめんね、と告げて。
 くろやぎさんは二人から貰った手紙を迷いなく、美味しそうにぱくっ!
 もぐもぐ。噛み締めるように食べていた――。

 ――ニナとカガリが健やかに、心穏やかに過ごせます様に。
 ――大切な友が幸せな夢に抱かれて、終われる事を……切に願う。

 とっても甘くて、優しい気持ちがじんわりと心を温める。
 こんなにも美味しいのに、少しだけしょっぱいのは……さっき流した雫のせいだろうか。まだちょっと残ってる気がして。
「(でも……今は、そんなに悲しくないのめぇ)」
 甘いお手紙、しょっぱいお手紙、辛いお手紙。
 色々なお手紙がいっぱいで、大好きなぽっぽさんも一緒!
 今はお腹一杯だけれど、お腹が空いても此処なら大丈夫だから。
「おにいさん、おねえさん、みーんな!ありがとうめぇー!」
 美味しいお手紙でお腹一杯、幸せもいーっぱいだから。
 ――ボクは、ボクは……とってもしあわせなやぎさん、めぇ!

 ……幸せな夢の中で浮かべる笑顔は、現実にも表れていたらしい。
 光となって溶けて、穏やかに眠りながら消えて行く姿を最後の一瞬まで見届けて……ニナは静かに涙を溢れさせていた。
 骸の海へと還った此のくろやぎさんは、もういない。
 次にくろやぎさんと会う事があったとしても、其れは別の個体の筈だ。
 だからこそ……彼女は様々な感情を胸に抱き、溢れた分が涙となって出てきたのかもしれない。
「……リナが一緒でよかった。きっと私一人だったらツラくて逃げ出していた所だ」
「役に立てたのなら嬉しいけど……」
 静かに涙を流すニナに、木槻とカガリが近付いて。
 彼女はニナの背を撫で叩き、カガリは元気を出してと言いたげに頬に頭をすりすり。
 ……心配を掛けてしまっただろうか。
 そんな言葉をニナが発するよりも早く、木槻は告げる。
「そんなに、ニナが背負わなくたっていいんだからね」
「リナ……カガリ……」
 同意するようなカガリの頷きに、ニナも首を縦に振る。
 悲しみも寂しさも消えた訳では無いけれど。
 其れでも……くろやぎさんが笑って還る事が出来たのだから。
 二人だけではなく、此の場に集った猟兵達の優しさがあってこその、最良の結果だったかもしれない。

 ――ありがとう、なのめぇ!ごちそーさまでした、めぇ!
 そんな声が聞こえた気がして、涙を流しながらもニナは微笑んだ。
 木槻やカガリと共に……優しいオブリビオンとの思い出を確りと胸に刻み、迷宮の出口へと向かうのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『まほろばの星巡り』

POW   :    廻る星を追ってみる。

SPD   :    星の動きを読み、先回りして捕まえてみる。

WIZ   :    魔法で星の光を作ってみる。

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●煌めきと共に
 依頼を終えた猟兵達が迷宮を出た後、案内されたのはとある部屋。
 扉を静かに開けば、既に満天の星空が君達を迎えてくれる。
 蒸気機関と魔法を組み合わせた、立体投影が映し出す星海の美しさは本物の様。

 其れだけなら、普通のプラネタリウムだろうが。
 ……此処には重力の制約は無く、輝く星に触れる事も出来る。
 案内してくれた者達の力を借りる、或いは魔法に心得がある者は星の光を自分の手で作り出す事も可能な場所。
 グリモア猟兵の言っていた通り、星海を泳ぐ様な体験も可能だ。
 魔法の星々と追いかけっこ、というのも素敵な思い出になるだろう。

 ようこそ、星空の楽園へ。
 一人でのんびりと、或いは友との語らいを楽しみながら。
 まほろば、と呼ぶに相応しい場所で羽を伸ばすのは如何だろうか。


【お知らせ】
 プレイング受付期間は『7月4日(木)8時31分~7月6日(土)23時59分』までとなります。
月藤・紫衣
本物にも劣っていない、素晴らしく美しい星空ですね

せっかくですから、少々お手を借りて星を作ってみようかと
手のひらに乗せられるくらいの小さな星を
橙に紫、銀に青…たくさん、たくさん作りましょう
出来上がればそれを散らして…のんびり揺蕩うのも一興ですね

実は、まだお手紙の紙とペンがあるんです
…だから、いずれ出会うかもしれないあの子とは違う、けれど近しいくろやぎさんへお手紙を
色んなお手紙を食べて、たくさんの人に可愛がられて
…様々な猟兵に惜しまれながら、泣いてしまっても、それでも最後は幸せそうに笑顔で還ったくろやぎさんも居たと、ちょっとでも伝えられるように

君は素敵なくろやぎさんでしたよ
(アレンジetc歓迎)



●縁を文に認めて
 ――本物にも劣っていない、素晴らしく美しい星空ですね。
 部屋に入ると同時、月藤・紫衣(悠々自適な花旅人・f03940)は心からそう思う。
 まるで星空に包まれた様にも感じる場所で、さて何をしようかと。
 彼は思案して、直ぐに考えが纏まったのか。
 先程、案内をしてくれた者達の内の一人に声を掛けようとする。

「折角ですから、少々お手を借りてもよろしいですか?」
 星を作ってみようと思ったから、其れを聞けば男性も快く頷いてくれる。
 月藤が作り出すのは手の平に乗せられる程、しかし確かな輝きを放つ星だ。
 ――橙色、紫色、銀色や青色。其れ以外にも沢山の色を。
 ふわり、彼の手の平から離れれば……新たな星々が此の空間を、彼の周囲を彩る。
 作り出した星の見た目は淡雪の様で、其れらと共に舞う彼の美しさは雪月花の如く。
 少なくとも、傍で助力してくれた男性はそう思ったかもしれない。
 男性に感謝を告げた後、月藤は星々と共に揺蕩う様に浮かんで。
 ……途中、ふと思い付いたのか。何かを取り出そうと。

「(いずれ出会うかもしれないあの子とは違う、けれど近しいくろやぎさんへ)」
 悲しくても、笑顔でお別れしたくろやぎさん。
 あの子に渡した手紙に用いた便箋、そしてペンはまだ持っていた様だ。
 ……月藤が目を閉じれば、今も瞼の裏にはっきりと映る。
 美味しそうに、嬉しそうに手紙を食べてくれた優しいオブリビオンの事を。
「(愛らしい子供の様な、素直で感情豊かな――)」
 色々な味のお手紙を食べて、沢山の人達に可愛がられて。
 消えてしまう事に酷く心を痛めて、悲しんで、泣いて。
 最後は幸せそうな笑顔で、様々な猟兵達に惜しまれながら還っていった。
 ……そんな、ぽっぽさんと仲良しな心優しいくろやぎさん。
 此の手紙で、少しでも伝えられる事が出来れば嬉しい。

「君は、素敵なくろやぎさんでしたよ」
 封筒には手紙だけではなく、藤の花弁をひとひら。藍色の星を一つ。
 夜糖蜜とは違う上、此の部屋を出た頃には封筒の中で消えてしまうだろう。
 其れでも還った子の事を思い、寂しくない様にと。
 ……其れは月藤なりの優しさ、だったのかもしれない。

大成功 🔵​🔵​🔵​

木槻・莉奈
ニナ(f04392)と

あったわね、懐かしい
…こんな夢みたいな景色の中でくらい、信じたって罰は当たらないわよ
きっと、あの子も喜ぶもの

あら、それぐらい我儘でも何でもないわよ、ねぇカガリ
お礼なんていいの
私にも手伝わせてくれる事が嬉しいもの

持てる知識と魔力を込めて
忘れないと約束した、彼らの姿に見合うような優しい光となるように

こんな風に魔力の細かい調整必要な事ってそうないものね
私一人でも無理だったと思うわ
(くすくすと笑って)星じゃなくて太陽だったり、気合い入れ過ぎて辛いお手紙になっちゃったり、ニナったらくろやぎさんに対しては随分と情熱的ね
カガリにやきもち妬かれちゃうかもよ?

楽しかったわ、ありがとう


ニナ・グラジオラス
リナ(f04394)と

昔、読んでもらって絵本で、死んだ者は星になると言う話があったな
そんなお伽話を信じる程子供じゃないが…あの子の為なら、今日くらいはいいか

リナ、カガリ、ワガママを言っていいか?
2人に手伝って欲しいんだ
あの子の為の星を作ってあげたい
きっと私一人の魔力じゃ難しいから、2人に協力してほしい
お礼は考えておくから

星座を作るほど大層じゃなくていい。1つ…いや、2つかな
ぽっぽさんが仲間外れにしては、あの子も悲しむだろう

魔力調整って意外と難しいんだな、私一人じゃ星どころか
太陽みたいな熱源体が出来てたところだ
カ、カガリとリナは特別だぞ!?ほら…殿堂入りと言うか?

おやすみ、くろやぎさん。いい夢を



●きらきらの笑顔、きらきらのお星様

 ――みんな、いつか何処か遠くへ行ってしまうの。
 ――死んだ人はお星様になるんだよ。

 子供の頃、絵本や別の何かを切っ掛けに『死』について考えた事はあるだろうか。
 其の時に誰かから、先に述べた様な言葉を貰ったかもしれない。
 ……少なくとも、ニナ・グラジオラス(花篝・f04392)は其の内の一人で。
 幼い頃に聞いた其れが御伽話である事を、彼女は知っている。
 信じる程、子供でもない。嗚呼、でも。今日……今、此の時だけならば。
「絵本で、死んだ者は星になると言う話があったな」
「あったわね、懐かしい」
「……あの子の為なら、今日くらいは信じてもいいか」
 勿論、と傍らで頷くのは親友である木槻・莉奈(シュバルツ カッツェ・f04394)だ。
 見上げれば何とも美しい数多の星、まるで夢の様な景色だと思いながら。
「こんな場所の中でくらい、信じたって罰は当たらないわよ」
 笑顔を見せてくれたけれど、寂しいかもしれないから。
 ……きっと、喜んでくれる。何より、そう思う事がニナの心を癒すのならば。
 木槻は同意しない理由は無い。カガリも同様に頷いて、星に向けて一鳴き。
 見ていてくれるかな、見えるかな?
 羽を忙しなく、パタパタさせている様子は微笑ましい。

「……リナ、カガリ。ワガママを言っていいか?」
 これから二人に頼む事は自己満足かもしれない、ニナは其れを理解している。
 だからこそ、何処か遠慮がちにも聞こえる声で彼女は続けるのだ。
 ――二人に手伝って欲しいんだ、と。
「あの子の為の星を作ってあげたい。私一人の魔力じゃ難しいから……二人に――」
「あら、それぐらい我儘でも何でもないわよ。ねぇ、カガリ?」
 大切な親友が続けるであろう言葉くらい、何となくでも解るものなのか。
 ニナが続けようとする言葉を遮り、木槻はカガリと向き合いながら微笑み掛ける。
 ね?なんて聞こえてくる様な木槻の首を傾ける仕草に、子竜はこくこく!と頷いた。
 ……律儀な彼女の事、きっと『お礼は考えておく』なんて言いそうだから。
「お礼なんていいの、私にも手伝わせてくれる事が嬉しいもの」
 ニナの事を思っての言葉、其れは本当だけれど。
 くろやぎさんとの交流は木槻にとっても、大切な時間となったのかもしれない。

 ――さて、星を作ろう。
 忘れないと約束した、彼らの姿に見合う様な……優しくて温かい光を。
「一つ……いや、二つかな。ぽっぽさんが仲間外れにしては、あの子も悲しむだろう」
「とても仲良しだったものね、あの子達」
 消える直前にも、ぽっぽさんを見上げて謝罪をしていたくろやぎさん。
 ぽっぽさんもまた、返事をする鳴き声は何処か優しくて。
 ……あの子にとって、ぽっぽさんはただの速達担当ではなく。友達だったのだろう。
 全く同じ事を思い出しながら、ニナと木槻、そして応援担当のカガリは集中。
 不慣れな魔力調整に悪戦苦闘しつつ、木槻の知識に助けられながら――完成したのは紅と蒼、二つの星。
 二人の手の平で煌めく其れらを、カガリが感動した様に見つめていた。
「魔力調整って、意外と難しいんだな」
「こんな風に魔力の細かい調整必要な事って、そうないものね」
「私一人じゃ星どころか、太陽みたいな熱源体が出来てたところだ」
 紅色の星をまじまじと見つめて、安心した様にニナが微笑む。
 きっと、目の前の親友に助けられたからこそ出来たのだろうと。
 ……感謝してもし尽くせないな、と彼女は思う。
 自分一人では星では無く、太陽にも似た熱源体――下手をすれば、炎を生み出しかねなかった。そんな考えに耽っていると、くすくすと笑う声。楽しげな鳴き声が聞こえる。

「リナ、カガリ……どうした??」
「ニナったら、くろやぎさんに対しては随分と情熱的ねって話していたの」
 気合いを入れ過ぎて、甘いつもりが辛いお手紙になってしまったり。
 今回も思いの強さ故か、危うく太陽にも似た星を生み出しそうになったり。
 ……思い入れが強くなってしまう、其の気持ちは解るけれど。
「ふふっ、カガリにやきもち妬かれちゃうかもよ?」
「カ、カガリとリナは特別だぞ!?ほら、その……殿堂入りと言うか?」
 普段は凛々しいニナが、慌てる様子は何だか微笑ましくて。
 木槻は目を細めて笑いながら、同じく殿堂入りらしいカガリを見る。
 ふーん、だ!カガリはそっぽを向いて、木槻の背中に回る様にぱたぱたと。
 ……本気ではなく、カガリのちょっとしたイタズラ。
 ニナがショックを受けたと判れば、びゅーん!と彼女の元へ飛んでいく。
「カガリ、驚かせないでくれ……!」
「私もやきもち、妬いてみようかしら?」
「リナ、それは困るぞ!?」
 冗談めいた会話を楽しんで、二人とカガリは作った星を空へ浮かべる。
 ……気に入ってくれるだろうか。きっと、喜んでくれると思うわ。
 星空へ向けて、カガリがとても嬉しそうに鳴いていた。

 ――楽しかったわ、ありがとう。
 ――おやすみ、くろやぎさん。いい夢を。
 ――本当に、ありがとうー!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

榎・うさみっち
ぴゃ~♪ 何これすげー!すげー!
クロールや平泳ぎで星空を泳ぐマネをしてみたり

こんなに綺麗な星空を見たら
神絵師うさみっち様の右腕がうずくぜ!
うさみっちスケブセットに描き残すのだ!
暗くて上手く描けない?ノンノン
ちゃららっちゃら~♪ミニミニスタンドライトー!
【すごうでのうさみっちディーアイワイ】で早業で作り出す
これで俺の手元だけ明るくしてお絵かき!俺って天才!

そういえば、今は「七夕」のシーズンだな!
離れ離れの織姫様と彦星様が七夕にだけ会えるらしい
雨が降って会えない事も多いらしいけど
ここならその心配も無いな!
スケブに満点の星空とともに
幸せそうな織姫様と彦星様のイラストも即興で描き上げる



●High Level Do It Yourself
「ぴゃー!何これ、すげー!すげー!」
 小さな身体で、広大な星海を泳ぎながらはしゃぐ声が聞こえてくる。
 榎・うさみっち(うさみっちゆたんぽは世界を救う・f01902)のテンションは最高潮!と言っても過言ではないだろう。彼はクロールや平泳ぎなど、自由に泳いでいて。
 ――しかし、泳ぐだけでは勿体ない。
 泳ぐのを中断、彼が手にした物は愛用のうさぎデザインのペンや絵の具。
 そして、何とも愛らしいうさぎマーク入りのスケッチブックだ。
「こんなに綺麗な星空を見たら、神絵師うさみっち様の右腕がうずくぜ!」
 ……嗚呼、でも。星灯りだけでは手元が見辛い事だろう。
 声を聞いた誰かが、小さめのライトを取りに行こうとして――止まった。
 小柄な体躯故に、チッチッチッ、なんて手の動きを正確に読み取れなかったけれど。
 自分に向けて何かを伝えようとしている事は、理解出来た様だ。
 ……彼はどの様に暗い中で絵を描くのだろうか?

「ちゃららっちゃらー!ミーニーミーニー……スタンドライトー!」
 某にゃんこ型ロボットが登場する漫画風に言おうとして、榎は止めた。長い。
 いつの間にか、彼の反対の手にはフェアリーの身体に丁度良い大きさのライト。
 しかも、灯りがブレない様にスタンド仕様!電池式なので直ぐに使える!
 忘れてはいけない、可愛らしいうさぎマーク入り。
 最早、図画工作のレベル超えている。
 今ならお値段なんと――コホン、話を戻そう。
「これで俺の手元だけ明るくして、満足するまでお絵かき!俺って天才!」
 スケッチブックの下に敷いた板にソフトクリップを挟み、準備は完了。
 自画自賛をしてから、榎は視線を星空へと向ける。
 白い輝きだけではない、色取り取りの星が鮮やかに。美しく明滅を繰り返す。
 ……そういえば、今のシーズンは『七夕』だな!
 彼は思い出して、何かを思い付いた様だ。

 ――神絵師である彼の手に掛かれば、其れは程なくして完成する。
 離れ離れの男女、一年に一度だけの逢瀬の機会……だが、雨が降れば会えぬと聞く。
 梅雨の時期、或いは其れに近いと雨も多いもの。中々会えない、と聞くが。
「ここならその心配も無いな!」
 榎が完成した絵を見て、満足そうに呟く。
 色鮮やかな星空の中心で――手を取り、幸せそうに微笑む織姫様と彦星様。
 ……ありがとう、なんて声が聞こえた気がした。

大成功 🔵​🔵​🔵​

真宮・響
【真宮家】で参加。

黒やぎは沢山の優しさと幸せに包まれて笑顔で逝ったか。寂しいけど、黒やぎは本望だったろうね。さあ、星との追いかけっこだ。アルダワだからこそできる浪漫溢れる場所だねえ。

実は旅暮らしが長いんで、星の巡りとかは見慣れてる。流星も一杯見たねえ。星を捕まえられるなら、動きを読んで先回りして捕まえてみようか。楽しいねえ。年甲斐もなくはしゃいじゃいそうだ。ちょっと動き辛いが、絶対星、捕まえてみせるよ。


真宮・奏
【真宮家】で参加。

黒やぎさんのお別れは凄く悲しかったですが、黒やぎさんが満足して笑顔で旅立ったとなれば、少しは慰めになります。黒やぎさんが安らかに眠れることを祈りながら・・・星の海へダイブ、です!!

曲りなりにも輝く星になる事を目指してるものですから、星はお友達のようなものです。真っ直ぐ突進しか慣れてないものですから、無重力の環境に苦戦しながら必死に自在に動く星を捕まえようと格闘。ようやく星のひとつを捕まえたら、大事そうに手の平に乗せて、自分の名前を言って自己紹介。星とお友達になります!!


神城・瞬
【真宮家】で参加。

黒やぎさん、笑顔で逝けましたか。あれだけ人好きのするオブリビオンは初めてでした。こういう送り方も在り得る事を心に留めて上げたいですね。

響母さんと奏が星を追いかけている間に魔法がメインの僕は星の光を作ってみましょう。氷の精霊術がメインですが、光の精霊も扱えますし。氷で星の形を作って、光でコーティング・・・出来るかどうか不透明ですが、挑戦して見ますか。成功してもしなくても、響母さんと奏が楽しそうにしているのを見るだけで、満足です。



●いざ、星の海へ!
「さあ、星との追いかけっこだ!」
「響母さん、私も行きます!」
 くろやぎさんのお別れを済ませたら、星と戯れる時間。
 案内された部屋に入った途端、【真宮家】の真宮・響(赫灼の炎・f00434)と真宮・奏(絢爛の星・f03210)は早速星海へとダイブ!
 アルダワだからこそ出来る、ロマン溢れる場所だと感じながら……響は星の動きをしっかりと見つめている。彼女は流星も含めて見慣れたものらしいが、此処が其れと同じ様に動くかは不明。先ずは確認をしようと考えた様だ。

 ――対して、奏の行動は何処までも真っ直ぐに!
 無重力空間は慣れていない為、思う様に進めない様子だが。
 目指すは輝く一等星、星はお友達の様なものと考えているからこそ。自由自在に動く星を捕まえようと奮闘している。
 せめて、あのくろやぎさんが安らかに骸の海で眠れるようにと祈りながら。
 ……彼女が一心不乱に追い掛けるのは、くろやぎさんとのお別れした悲しさを誤魔化す為でもあるのか。其れは彼女だけが知る事。

「(……あれだけ人好きのするオブリビオンは初めてでしたね)」
 二人から少し離れた場所にて、地に足を付けている神城・瞬(清光の月・f06558)は……共に星を追い掛けるのではなく、其の間に作る方に回る様だ。
 本来は魔力を集中させる事で、星の光を生み出せるが……。
 今回、彼は其れを少しアレンジ。先ずは精霊術を使用して、星の形をした氷を作ろうとしている。彼なりの、ちょっとした挑戦だ。
 集中している間に考えるのは、先程別れた人好き過ぎる程のオブリビオンの事。
 家族の為にも倒すべき敵。其の認識は変わらないが……あの子は母や義妹と笑い合って、笑顔で骸の海へと還っていった。
 あんな送り方も在り得るのか、と彼は思った事だろう。
「……心に留めて上げたいですね」
 瞬自身も名残惜しいと感じる程度にはくろやぎさんに情を抱いたが……其れよりも、彼は家族の事が大切だから。
 其れでも、あの子の様な送り方もあると忘れないでいよう。
 彼は楽しそうに星を追い掛ける二人を見るだけで満足の様で。
 自分の手の平の上で仄かな光を纏う氷星を見て、上々な出来かと微笑んだ。
 ……後で二人に見せた時、少しでも其の心を癒せるようにと願いながら。

「よし、捕まえた!」
 ふわふわと動く星の動きを読む事が出来たのだろう。
 進行方向の先で待ち構えて、先に捕まえる事が出来たのは響だった。
 ……年甲斐もなくはしゃぎ過ぎてしまった気がするが、偶にはいいだろう。
 両手の中で光る星はまるで、蛍の光にも似ている気がした。
 地上で待機している瞬に向けて、捕まえたよ!と伝える様に親指を立てるハンドサインを。彼も気付いたのか、祝う様に笑みを浮かべていた。
「さて、と……奏、手伝うかい?」
「ありがとう御座います、響母さん!でも、もう、少し……!」
 奏が無重力空間に慣れ切るまでは、どうやらまだまだ時間が掛かりそうだ。
 心配から響が声を掛けるが、彼女の決意は固い。
 ――自分の力でで捕まえた星と、お友達になりたい!
 しかし、捕まえようとする奏の手をすり抜ける様に星はするりと流れていく。
 手を伸ばす、するり。また手を伸ばす、するするり。
「(思ったよりも、難しいですね……)」
 母が捕まえてから、更に時間が経過して……。
 待たせる事への罪悪感が増してきたのか、奏が母に助力を求めるか考え始めた――正に其の瞬間だった。
 彼女は軌道を読んだ訳では無い、偶々其処に居ただけだった。
 ――目の前にふわふわと、淡く輝く星一つ。
「あ……っ!」
 慌てて、潰さない様にそっと両手で包む様に捕まえて。
 中に星が入っている事を確認出来れば、奏の表情は眩しい程の笑顔に。
 彼女の喜び様で気付いたのか、既に地上に降りていた響。
 ……そして、奏の奮闘を見守っていた瞬が顔を見合わせて、笑い合っていた。
「えっと、初めまして!私は真宮家の長女、真宮・奏と申します!」
 こほん、と咳払いの様な動作をしてから深呼吸。
 大事そうに手の平の上に乗せた星へ向けて、普段通りの様子で自己紹介を。
 くろやぎさんとは別れる事になってしまった、けれど。此の子とは――。
「――是非、私とお友達になりましょう!」
 本物ではない、幻の星。固有意思を持たない存在。
 本来は返事をする事なんて有り得ない、けれど。
 偶然か、必然か。明滅する様子は承諾を示している様にも見えて……奏はより一層、嬉しそうな笑顔を見せた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

マクベス・メインクーン
ゆー兄ちゃん(f16731)と
おお~っ、すっげぇな!
宇宙空間漂ってるみたいだなっ!
ゆー兄ちゃん星好きだしめっちゃ楽しめそう♪
いっぱい楽しんでるゆー兄ちゃん撮って
後で望兄ちゃんに写メあげよ~っ!

星の海を泳いで見るのも面白そうだけど
せっかくだし星の光作ってみたいな
精霊たちに力借りて
オレの好きな赤い星を再現してみたい
きっとゆー兄ちゃんも気に入るだろうしなっ!

上手くできたらゆー兄ちゃんに見せるぜ
へへ~っ、めっちゃ綺麗にできただろっ!
オレ達の好きな『赤』には負けるだろうけどさっ
ん?ゆー兄ちゃん撮ってくれんの?
じゃあ撮り終わったら交代なっ、兄ちゃんも見せてやりたいだろ?


月待・楪
猫助(f15930)と

っ…!
すげぇ…星、星だ…!
ああ、そうだな、猫助
宇宙ってこんなのかもしんねー
猫助ほら、あの辺りとかこっちとか…ヒーローズアースでもUDCアースでも見ない星の並びしてんぞ

猫助が撮ってるのとか気付かないくらい星に意識向けてるかもしんねーな…だって触れるんだろ?
もちろん気になった星々に触りに行くに決まってる
近寄って写真撮影してから、触るけどな?

ん?
なるほどな、星作りか
おー、すげー器用だな猫助
めちゃくちゃ綺麗だけど…ふは、そうだな
俺達にとっての「赤」が一番綺麗なのは認める

っと、猫助
その星持ってこっち向いてろよ?
写真撮ってやるから
後でスマホに送っとくし見せてやれば?
あー…そうだな



●星も、瞳も、輝いて
「っ……!すげぇ……星、星だ……!」
「おおーっ、すっげぇな!宇宙空間漂ってるみたいだなっ!」
 普段ならば自分の方が先に反応するのに、今回は逆だ。
 ――ゆー兄ちゃん、やっぱり楽しみだったんだな!
 マクベス・メインクーン(ツッコミを宿命づけられた少年・f15930)は内心呟いて、隣の兄貴分――月待・楪(Villan・Twilight・f16731)を見る。
 驚きに目を見開いて、思わず小さく口も開けている程。
 視線はまるで少年に戻ったかの様に、星にも負けない輝きを見せている。

「ああ、そうだな、猫助。宇宙ってこんなのかもしんねー」
「だよな!あっ、星を作ったりも出来るらしいぜ――」
「猫助ほら、あの辺りとかこっちとか……!ヒーローズアースでもUDCアースでも見ない星の並びしてんぞ、すげぇ……!」
 此処だけの宇宙、此処だけの特別な星の巡りなのだろうか。
 ……しかも、其れに触れられる。
 普段は手を伸ばしても届かないけれど、今なら届く。
 逸る気持ちを抑え切れないまま、月待はマクベスに行ってくる、と告げては跳ぶ。
 白い輝きだけではない、様々な色を持つ星。
 気になった星を見つければ、彼は其れがある場所へと向かう。
 普段空中戦に慣れているからか、無重力空間への適応も早かった様だ。
「一般的な星座が白、他が色付きか?すげぇ、こんな間近で見られるんだな……!」
 撮影時のフラッシュさえ無ければ、写真撮影も構わないと聞いていたから。
 月待はスマートフォンを取り出して撮影。其れが終われば、優しく触れようと。
 ……熱くはない、でも包む様にすれば輝きが一層増した気がして。
 白色以外もそうなのだろうかと同様に試せば、包もうとした瞬間――ふわり。
「あっ、待てよ……!」
 どうやら、他の色の星々は簡単に捕まえさせてくれないらしい。
 予想外の星の動きに目を丸くしてから、月待はクハッと笑って追い掛ける。

 ――心から楽しんでいる様子を、星と共に写真に収めて。
 マクベスは満足そうに、何より兄貴分の楽しげな様子に嬉しそうに笑った。
 後で此の場に居ない、もう一人の兄貴分にあげようと思っての事。きっと喜んでくれるだろうから。
「星の海を泳いで見るのも面白そうだけど……うし!」
 写真撮影を一時中断、星の光を作ろう!とマクベスは意気込む。
 再現しようと試みるのは、彼が好きな赤色のお星様。
 尾に炎を灯す小さな赤色のドラゴン――サラマンダーを中心に、精霊達の力を借りようと。巡る星々の輝きにも負けない、煌めく赤の一番星。
 此の部屋に案内してくれた者達の一人から、何かコツがあるならばと確認。
 其の後、早速彼は星作りに挑戦しようと。
「(レプリカクラフトを使う時、みたいな感覚かな……)」
 手の平を上に向けてから、マクベスは精霊術を行使する時の様に集中する。
 直後――ふわふわ、と手の平の上に仄かな輝きが浮かんだ。
 赤色に輝く、星一つ。サラマンダーが鼻先でつんつん、と触れていた。
 大分撮り終えたのだろうか、少し遅れて月待が彼の元へと下り立つ。
「ん?……なるほどな、星作りか」
「ゆー兄ちゃん!へへーっ、めっちゃ綺麗にできただろっ!」
「おー、すげー器用だな猫助」
 近付いて、マクベスの手の平の上で浮かぶ赤星を見て……月待は感嘆の声を上げる。
 見た目は柔らかい印象だが、其の輝きは強く。
 ……鮮やかな赤色はとても綺麗で。彼は言葉だけではなく、マクベスの頭をわしゃわしゃと撫でて褒めようと。兄貴分が相手だからか、反応は満更でも無さそうだ。

「あ、でもさ」
「どうした、猫助」
「綺麗だけど……オレ達の好きな『赤』には負けるだろうけどな、ってさ!」
「……ふは、そうだな」
 此の赤星が綺麗だと感じるのは本当だ。
 でも、二人にとっての一番綺麗な『赤』は別にある。
 同じ事を考えていた事が嬉しくて、マクベスもまた釣られた様に笑った。
 ……遠くで誰かがくしゃみをした事は、ちょっとした余談話。
「っと、猫助。その星持ってこっち向いてろよ?」
「ん?ゆー兄ちゃん撮ってくれんの?」
「そのつもり……っつか、何で解ったんだよ」
 ――い、言えない。
 さっきまでこっそり、いや……割と普通に隠し撮りしていたから、なんて言えない。
 マクベスの笑みに月待は疑問符を浮かべていたが、其の事実に至らず。
 彼は誤魔化す意味も含めて、提案を言葉にしようとする。
「そうだ、撮り終わったら交代なっ!兄ちゃんも見せてやりたいだろ?」
「あー……そうだな」
 ……其れも悪くない、と。
 己のスマートフォンを選んでくれた、写真を見せたい相手を思い浮かべて。
 月待はにーっと笑みを浮かべるマクベスを画面に収めて、撮影ボタンを押した。

 ――今度は三人で、星を見に行くのも良いな。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ウルウ・エイシィ
僕も遊んでいい?
綺麗な景色が見たくて、星の海に遊びに来てみた

わ、あ…っ、すごいっ
見て、レテ!僕達、夜空を飛んでるよ!?

僕の左手から顔を出す水猫レテ
『星ねぇ…腹の足しにもなんねーけどな』
悪戯に星に齧り付く、さて食べられるのだろうか
手を伸ばしてみれば、不思議と光に触れられた

魔法で作られた幻でも、いつかは無くなってしまう記憶でも
この星海の美しさも、僕の忘れたくないという気持ちも
全部、本物だから

ふわふわ水面に浮かぶように流れに任せて
星々の輝きを目に焼き付けるよ

帰ったらすぐに絵を描くんだ
この景色を忘れても、残るように
それで、せんせに見せたい…
レテ、描き終わるまでは、ぜーっったい、
食べちゃダメなんだからね



●忘れてしまっても、忘れない

 魔法で作られた、幻想の星海。
 此処で見た事もいつか、そう遠くない内に消えてしまうだろう。
 ……其れが『レテ』と交わした約束。
 大切に思えば思う程、喰われて消えてしまう約束(けいやく)だ。

「わ、あ…っ、すごいっ!すごい、すごい!」
 ――ふわふわ、ゆらゆら。
 ウルウ・エイシィ(忘レモノ・f19531)は浮かび、揺蕩う様に。
 何とも綺麗な星空を近くで見て、目で楽しんでいた。
 煌めく色鮮やかな星の数々。とても美しくて、綺麗で、其れに。
「見て、レテ!僕達、夜空を飛んでるよ!?」
『星、ねぇ……腹の足しにもなんねーけどな』
 左手からぬっと現れて、三日月口を僅かに一文字に近付けるのは『レテ』だ。
 オウガの水猫、ウルウの体内で飼われている存在。
 腹を満たさない物に興味は無いと、言葉からは現実主義な一面を見せていて……いや、待てよ。此の星は食えるのか、腹の足しになるのだろうか。
 ニヤリ、再びレテの口が弧を描いて――手近な蒼色の星をばくんっ!
『……やっぱ、腹の足しにもなんねーな』
「レテ、本当に食べちゃったの!?」
 魔法で作られた星は一応、食べる事は出来た様だが……あくまでも魔力の集合体。
 無味無臭、記憶の代わりにもならず。レテは腹を満たす事が出来ずに不満げだった。
 ウルウは食べられるんだと驚きつつも、右手を金色に輝く星に伸ばしてみると……不思議と触れられて。彼がせんせ、と呼ぶ人の色だからだろうか、温かく感じた。

「(……帰ったら、すぐに絵を描くんだ)」
 星々の輝きを目に焼き付けながら、ウルウは帰った後の事を決める。
 魔法で作られた夢幻、いつかは無くなってしまう記憶。
 ……其れでも、本物はある。
 此の星海の美しさ、此の景色を忘れたくないという彼自身の気持ち。
 忘れてしまっても残したい、せんせに見せたい。綺麗だったと伝えたい。
 ――其れらは全部、全部、本物の筈だから。
「レテ、描き終わるまでは、ぜーったい、食べちゃダメなんだからね」
『へーへー』
「ぜったい、ぜったい、ぜーったいダメ!」
 忘れて、いいよと言うまでは。
 仕方がないと言いたげな、レテの適当な返事に念押しをして。
 絵が完成したら、Myosotisに挟んでおきたいな。絵も挟めたっけ。
 帰った後の事を今から待ち遠しく思いながら、再びウルウは星の海を見上げた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

天之涯・夕凪
【同行希望】
これは美しいですね
浮かんで漂うのは楽しそう
明さんをお誘いしましょう
一緒にクラゲになってみませんか? なんて

明さんは魔法の心得はあるのでしょうか
星を作って見せてくれませんか? と、お願いしてみましょう
勿論、お嫌でなければ

見せてもらえたら御礼と、明さんの星だから文字通り「明星」ですね、等と笑い
明星…所謂、金星は美神である事が多いですが、ルシフェルも金星なのですよね
彼は悪魔ルシファーでもある二面性のある天使で
だから…貴女に近いところもあるかも知れませんね、と
ああ、決して貴女方を悪魔に例えているのではなく、その逆

きっと、貴女方の中にも強く輝く力があるのだろうなと思ったと言い、非礼を詫びます



●金星と巡る
「――明さん、今回はお疲れ様です」
 ふと後ろから聞こえた声に、明――メイが振り返れば。
 其処には見覚えのある男性の姿が在った。
 沢山のお友達を喚ぶ術を教えてくれた、先生の様に感じている人物。

「天之涯、おにいさん……!来て下さって、ありがとう御座います、です」
「いえ、此方こそ。良ければ、一緒にクラゲになってみませんか?」
 目線を合わせた上で、問い掛けてくる天之涯・夕凪(動かない振子・f06065)の言葉にメイはこくこくと頷いて。嬉しそうに其の場で飛び跳ねる様子に、彼は目を細めた。
 ……二人でふわり、ゆらゆらと。星の海をのんびりと漂う。
 時間の流れも穏やかに感じる心地になりつつ、彼は美しい星々を見つめて。
「そういえば、明さんは魔法の心得はあるのでしょうか」
「メイが、です?」
「えぇ、良ければ……星を作って、見せてくれませんか?」
 ――勿論、お嫌でなければ。
 無理強いをさせたくないのだろう、天之涯の優しさが伝わって来た気がして。
 だからこそ、だろうか。頑張り、ます!と告げる少女は言葉だけではなく、全身でやる気満々な様子を表現している。ふんすふんす、と聞こえてきそうな程。
 ……暫しの集中を終えて浮かぶのは、淡く輝く橙色の星。
「御見事。明さん、ありがとう御座います」
「はい!出来、ました……!」
「……明さんの星だから、文字通り『明星』ですね」
 楽しげな笑みを浮かべて告げれば、メイにはまだ漢字は難しい様で。
 彼女が首を傾げる様子を見て気付いたのだろう。天之涯が自分の手の平の上で指を滑らせて、『明星』という文字を教えると……星の一部に自分の名前がある事が嬉しいのか。彼女は、ぱあっと綻んだ笑みを浮かべた。

「天之涯おにいさん、物知りです……すごい、です……!」
「ありがとう御座います。明星……所謂、金星は美神である事が多いですが――」
 ルシフェルもまた、金星だと天之涯は零す。
 聞き馴染みのない言葉に、メイが再び首を傾げて……続きを待つ様に、そわそわと。
 悪魔と称されるルシファーでもある、二面性を持つ天使。
 ――正反対とも言えるであろう人格を有する存在だからこそ。
「だから……貴女に近いところもあるかも知れませんね」
 眼鏡のブリッジに触れて、位置を調整しながら天之涯は告げた。
 嗚呼、しかし……少々、誤解を生んでしまっただろうか。
 話を聞き終えたメイの様子は、明らかに動揺していると判る程。
 自分が悪魔になってしまうのではないだろうか、天之涯おにいさんを傷付けてしまわないだろうか。そんな不安が伝わって、彼は苦笑を浮かべながら頭を撫でようと。
「言葉が足りませんでしたね、すみません」
「メイ、悪魔さんに……なったりしない、です、か……?」
「そんな事はありませんよ。寧ろ、その逆です」
 少女の震えが少し治まった事に安堵しつつ、目線を合わせて。はっきりと。

「きっと、貴女方の中にも強く輝く力があるのだろうなと思ったんです」
 凛然たる輝きを放つ、明けの明星。
 そんな力がきっとあるだろうと、天之涯が微笑めば。
 褒めてもらえた事が嬉しかったのだろう、メイもまた笑みを浮かべて。

 ――そんな二人の間で、星は優しい光を放ち続けていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ディフ・クライン
メイと【同行希望】

無重力空間に、メイの手を引いて
すごいな
まるで本物の宇宙の中みたいだ

…あの、くろやぎさん
美味しいって言ったんだ、オレの手紙
「好き」だなんて何処まで理解しているかも判らないような、オレが書いた手紙を
…もっと食べたいって、言ったんだ
オレの手紙が、きっと味がしないと思っていたけれど
あの子は…オブリビオンだったけれど、もっと話してみたかった
表情は変わらぬまま、ただ瞳を沈ませて

メイ
君と一緒に居ること、オレは多分、好きなんだと思う
そう書いたら、あの子は美味しいと言ったから
これは、オレの感情だろうか

…星に触れに行こうか
きっと綺麗だよ

床を蹴って、星海を泳いで、最上にある星を、君に
微かに微笑んで



●今、歯車が動き始める
「……すごいな。まるで本物の宇宙の中みたいだ」
 表情は変わらず、しかし呟く声に込められたのは無意識の感嘆。
 今回の依頼を予知したグリモア猟兵、メイの小さな手を引きながらディフ・クライン(灰色の雪・f05200)はゆっくりと歩みを進める。
 広くて、綺麗な景色を薄桃色の目に映して……メイは感動を素直に表現している。
 其の様子に胸が温まったのか、彼の雰囲気が少し柔らかく変化していた。

「……メイ、少しいいかな」
「ディフおにいちゃん、どうしました……です?」
 どうしたんだろう、ディフ自身もあまり理解出来ていない。
 ただ……気付いた時には彼はメイに向け、言葉を発していて。
 其れだけではない。先程の軋んだ様な胸の内から、別の言葉が溢れようとする。
「……あの、くろやぎさん。美味しいって言ったんだ、オレの手紙」
 人形の自分が書いた手紙だ、上手に書けた自信なんて無かった。
 きっと味なんてしない、残念な思いをさせてしまうだろう。
 其れは卑下ではなく、ディフにとっての事実だ。
 ――だって俺は、人形だ。空っぽの人形なのだから。
 其の筈、なのに……美味しいと言ってくれた。
 もっと食べたい!でも、食べられないと知った時の目は確かに、心から落ち込んでいる様だった。……目は、雄弁だから。
 故に、あれはくろやぎさんの本心からの言葉だっだと彼は判ったのだろう。
「あの子は……オブリビオンだったけれど、もっと話してみたかった」
 ディフにとって、自分の感情を理解する手段になり得ただろう。
 でも……其れを抜きにしても、彼はもっとくろやぎさんと沢山話したかったと思ったのだ。表情に表れずとも、沈む瞳が彼の内側を物語る。

「ディフおにいちゃん……メイは、忘れません、です」
「忘れない?」
「ディフおにいちゃんも、メイも。めぇめぇさんを、忘れなければ、まだ……思い出の中で、笑ってくれるかな、って……」
「思い、出……」
 上手く伝えられているか、メイは不安げに見上げていた。
 くろやぎさんとぽっぽさんは骸の海に還って、きっと次に会う彼らは別の個体だろうけれども。覚えていれば、きっと……喜んでくれるのではないかと。
「(それが、あの子が居た証になる……のかな)」
 ――空っぽの自分でも、出来る事だろうか。
 ディフ自身も解らない、けれど。メイの言う通りだったらいいな、と思うから。
 嗚呼、でも……居た証は他にもある、かもしれない。
「メイ。君と一緒に居ること、オレは多分、好きなんだと思う」
 自分を作ってくれた人の事と、目の前の少女。
 二人の事を綴った手紙を、くろやぎさんは美味しいと言ってくれたから。
 もしかしたら、此れは――。
「……これは、オレの感情だろうか」
「メイは、そうだったら……いいな、って。めぇめぇさんが、おいしーって言ってくれたなら」
 きっと其れは、ディフ自身から生まれた感情だと。
 くろやぎさんの分の想いを込めて、メイは笑って頷いて。
 彼女の笑顔を見て、ディフもまた胸が温かくなるのを感じていた。

「……星に触れに行こうか」
 さあ、行こう。星の海の中心へ。
 床を蹴って、共に浮かんで……最上に在る星をメイへと。
 ディフおにいちゃんも一緒に、です……なんて。
 温かい言葉に、ディフは微かな笑みを浮かべていた。

●いっぱいの、ありがとう
 姿形が消えて、骸の海に溶けていったとしても。
 ……確かに残るものだって、ある筈なのだ。
 猟兵達と過ごした楽しい時間や交わした言葉、素敵な思い出。
 其れは誰かの心に響く、奇跡の出会いだったかもしれない。

 ――みんな、おいしーお手紙ありがとうめぇ!またね、なのめぇ!
 ――くるっぽー!

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年07月08日


挿絵イラスト