●グリモアベースにて
仕事を探す猟兵を見つけ、佐伯・キリカ(陽気な吸血魔法使い・f00963)は呼び止める。
「猟兵さんっ! UDC! アースっ!」
片手を上げて妙に滑舌よく言うさまは、何かの宣言のようだ。
「えへへ、UDCアースの仕事なんてどうかな?」
とある避暑地に、邪神教団の拠点があることが判明した。そこへ奇襲をかけて拠点を制圧し、拠点の中心となっているオブリビオンを倒し、拠点を壊滅させるのが依頼の内容だと、キリカが説明する。
「オブリビオンが拠点としているのは、今は使われてない別荘のひとつだよ。凝った大正建築をしていて、一部の窓はステンドグラスになっているんだけど……そのどれもが、蛍や花火、入道雲といった『夏』をモチーフとしたデザインになってるみたい。よりによってそんな素敵な別荘を拠点とするなんて……」
むっとした表情になるキリカは少し考え込む。
「意外と見る目があるのかも? ……っと、それよりオブリビオンの情報、だよね。まずはわたしが猟兵さんたちを別荘の近くまで転送するね。別荘の周囲は林になっているから、うまく隠れつつ別荘に近付いて行って欲しいんだよ」
別荘の周囲は、オブリビオン『廻るパンドラ』がうじゃうじゃいる。まずは廻るパンドラを制圧し、拠点の中心となっているオブリビオンを倒すための準備を整える。
「廻るパンドラを倒して別荘に入ったら、拠点の中心となっているオブリビオンを撃破、だよ! 残念ながらのオブリビオンについては情報が得られていないんだ。でも、猟兵さんたちなら大丈夫! 絶対に撃破できる、って信じてるよ!」
そしてキリカは猟兵たちを見渡し、話を続ける。
「実は……猟兵さんたちに奇襲をかけてもらう日に、すぐ近くで花火が打ち上げられるんだよ。梅雨の終わり、あるいは梅雨が空けた直後あたりにいつも開催されているイベントで『これから夏を迎える』意味で打ち上げられる花火なんだとか」
特段の告知をしていないそのイベントは、花火大会独特の熱を持った賑わいも夜店も一切なく、たまたま訪れた者や付近に住まう者、そして地方のテレビ局が数人ほど訪れてちょっとした中継をするくらいだ。
いわば、神事のような厳かな花火。けれどそれは鮮烈な夏を迎える前だからこそ、見た者の記憶に静かに残ることだろう。
「そういうわけで! 今回も、宜しく頼んだよ!」
と、キリカは笑顔で猟兵たちを送り出した。
雨音瑛
今回は、UDCアースにてよろしくお願いします。
●別荘
林に囲まれている、二階建ての大風建築。一部の窓はステンドグラスになっており、それぞれ夏をモチーフにしたデザインになっています。
敷地は縦長長方形。
1階外観:長方形底辺に正面玄関があり、上辺に勝手口があります。左右の辺は掃き出し窓となっています。
なお、突入時は夕暮れ時です。
●花火
ボスを倒したら、打ち上げ花火が始まります。別荘から見ることもできます。
●補足
二章・三章開始直後に何かしら文書を書く予定でいます。
途中からの参加も大歓迎です。
第1章 集団戦
『廻るパンドラ』
|
POW : 終末理論
【激しい爆発】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD : 臨界点突破
【高速で接近し、爆発】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
WIZ : 革命前夜
【爆発音】を聞いて共感した対象全ての戦闘力を増強する。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
|
篝・倫太郎
センスが良くてもオブリビオンだしなァ……
早々に還って貰うとしましょーか
林の木々を利用し、戦闘知識で身を隠して移動
ある程度別荘に接近の後
見つからずに移動するのが困難と判断したら戦闘開始
華焔刀で先制攻撃でなぎ払い
刃先を返して2回攻撃からの範囲攻撃
先制攻撃と同時に拘束術使用
視界に入る敵に鎖での攻撃
可能な限り死角に回り込んで確実に仕留めてく
敵からの攻撃は残像や見切りで回避
回避不能時はオーラ防御で防ぐ
爆発だし……
多少のダメージは想定内なんだけど
ちょっと元気良過ぎねぇか、おい
ま、範囲内全て無差別で仲間も攻撃してくれんのはありがてぇけども
何にせよ、こいつら片付けねぇと先に進めねぇもんな
頑張って片付けっか……
林の木々や茂みに身を潜めながら、篝・倫太郎はオブリビオンが拠点としている別荘へと巧みに接近してゆく。
戦闘知識も利用して、警戒にあたるオブリビオン『廻るパンドラ』が視認できるであろう範囲も避けて進めば、別荘は目前だ。
これ以上は姿を隠して進むのは難しい。そう判断した倫太郎は、不意に別荘をちらりと見た。
文豪が住んでいた、と言っても違和感のない外見は夕日を浴びていっそう厳かに見える。このような場所を拠点としたオブリビオンは確かにセンスがいいのだろう。
しかし、結局は『オブリビオン』。
「……早々に還って貰うとしましょーか」
猟兵がもたらす結末は、決まっている。倫太郎は薙刀『華焔刀』の柄を握り、茂みから飛び出した。黒塗りの柄には朱で描かれた炎が舞い踊り、刃にも美しい刃紋が輝いている。
先制攻撃を仕掛けたのは無論、倫太郎の方だ。
華焔刀を水平に振るうと、迫りつつある廻るパンドラに一文字が刻まれる。そこから刃先を返しての二回攻撃で、まずは1体を仕留めた。異変に気付いて集ってきた個体には、一網打尽にせんばかりの範囲攻撃で迎える。
倫太郎の攻撃はそれだけに留まらない。
「縛めをくれてやる」
言葉と共に放たれたのは、視認できぬ鎖。それを用いて、倫太郎は視界に入る廻るパンドラを1体ずつ確実に仕留める。
時には別荘を利用して立ち回り、倫太郎の姿を探す個体を真上から。あるいは退却と見せかけ、通り過ぎた廻るパンドラを背後から。
的確に華焔刀の刃先を走らせ、両断する。廻るパンドラたちは、倫太郎の攻撃に翻弄されるばかりだ。
今もまた、1体を華焔刀で斬り上げた。
「ご苦労さん、っと。――ん? ああ、こりゃやばそうだな」
言葉の割には焦る様子もなく、倫太郎はすぐに距離を取った。
自身から数メートル離れた先に見えた個体の色が赤へと変じている。直後、打ち上げ花火もかくやという派手な爆発が起きた。
別荘が揺れるほどの威力ではあったが、回避行動を取った倫太郎は無傷だ。
「にしても……ちょっと元気良過ぎねぇか、おい」
爆風で乱れた緑色の髪を適当に整えながら、倫太郎は少々呆れ顔で惨状を見渡す。というのも、先ほどの爆発が他の個体にもダメージが及んでいるからだ。
車輪のような部分が外れている個体もいれば、元の形状をとどめていないような個体もある。
図らずとも同士討ちのようになったのはありがたいが、いずれにせよ廻るパンドラを掃討しないことには先に進めない。
「頑張って片付けっか……」
倫太郎は華焔刀、その黒塗りの柄に踊る炎をちらりと見た後、再び刃先を廻るパンドラたちへと向けた。
大成功
🔵🔵🔵
依神・零奈
……邪教騒動、キリがないね。……めんどくさい。
……現世を護るのが私の役割、仕方ないか
さっさと終わらせよう
相手の探知能力はあんま良くなさそうだね
静かに林に紛れていけば近くまでバレずにいけそうだ
敵に声が届くだろう距離まで近づいたらUCを発動しよう
「キミの運命は今ここに確定した」
「廻り始めたその運命はもはや制御不可能、滅びへと転がり落ちる」
私の言葉は禍言になり舌禍を成す
舌禍による呪詛を辺り一帯の敵へ及ぼさせて
敵の同士討ち、誘爆、自爆を誘発させるようにするよ
このところの邪神騒動には、キリがない。
それに対して「めんどくさい」と不満を零すのは、とある土地の守り神である依神・零奈だ。
とはいえ、零奈は自らの役割をよくわかっている。
『現世を護る』ことだ、と。
仕方のないことであるのならば、せめて早々と終わらせるべきだ、と。
そこまで考えた零奈はひとまず雑念を消し、まずは移動に専念する。
林に紛れ、極力物音を立てずに歩みを進めるのは、そう難しいことではなかった。
それに、敵の形状も都合が良い。警護にあたるオブリビオン『廻るパンドラ』の形状から察するに、探知能力は大して高くはないだろう。
今は使われていない――当然、オブリビオンの使用はノーカウントだ――別荘との距離を詰めるにつれ、いくつかの疑問が生まれた。
かつてはどのような人がこの別荘を使用していたのだろうか。
何故、今はもう使用されていないのだろうか。
元の持ち主はこの別荘のことを覚えているのだろうか。
この別荘と、人々が零奈を『迷信』として忘れ去っていることが、なぜか重なる。まだたくさんの人々に信仰されていた頃の思い出がふと蘇りそうになるものだから、それを無理矢理かき消すために零奈は敵の姿を探した。
「……見つけた」
それもちょうど、声の届く範囲に。
「キミに伝えるべき事がある」
やや憂いを帯びた、口から零れる言葉。
「キミの運命は今ここに確定した」
オブリビオンを正面に捉えている、紫色の瞳。
「廻り始めたその運命はもはや制御不可能、滅びへと転がり落ちる」
神託そのものは禍言になり、舌禍を成す。
本来ならば反撃行動を取っていたはずの廻るパンドラは零奈に迫ろうともせず、ただその場で自らを爆発させていた。
付近にいた個体も、その爆発をきっかけに爆発する。ひとつ、ふたつ、みっつ――数える必要のないほど、誘爆が重なってゆく。
爆発を逃れた者も、他の個体へと攻撃を始めた。
こうしてしまえば、零奈が直接手を下すまでもない。ある程度の数を撃破したら移動して、また舌禍の呪いを届ければいい。
その行動を繰り返し、着実に警護の数を減らしてゆく。
遠くから届く夕日の光は、零奈のふちを金色に彩っていた。
成功
🔵🔵🔴
霑国・永一
オブリビオンもセンスがいいやつ居るもんだなぁ。邪教関連の奴とか狂ったセンスしかないと思ってた。この偏見は改めないとだねぇ。
狂気の分身を発動
適当に10人くらい出しておき、本体の自分も含めた全員別荘を囲うように林に身を潜めつつ待機、敵を見つけ次第分身たちは飛び出して銃で遠距離から撃ったり、ダガーで斬り付けに掛かったりする
パンドラの接近自爆は分身たちも自爆を以て応える
本体の自分は林から銃撃で援護
分身が自爆などで減ったら随時追加していく
敵が沢山出て来て、10人じゃ足りないなとなったら分身を大量に出して帳尻合わせの大混戦を狙う
『はえー!俺様死ぬわ!』『ハハハッ!一緒に死ね!』
いやぁ、これが花火大会かぁ
「なかなかいいセンスしてるじゃん?」
霑国・永一は、さも楽しそうに笑った。
邪教関連の奴は、もれなく狂ったセンスの持ち主しかいないと思っていたからだ。この偏見は改めないと、と思うのと同時に自ら分身を出現させる。
「んじゃ、ひとつよろしくな、俺様」
同じ顔の連中に挨拶し、永一は――いや、永一たちは移動を開始した。目的地は別荘ではなく林の中、かつ別荘を取り囲める場所だ。
分身全員が身を潜ませたのを確認して、次は敵の姿を探す。
といっても、探す必要はない。なんなら、分身の1体の眼前を転がって行ったのだから。
それを見て、本体以外の永一は嬉しそうに飛び出した。
ダガーを振るい、あるいは銃の引き金を絞り、手当たり次第に『廻るパンドラ』に襲い掛かる。
一方その頃本体は、
「ほらほらその調子だ、行け行け俺様!」
と、林に身を潜めたまま安全な場所から援護射撃を行う。分身が大量にいるのに本人も一緒に突撃するのは、無意味というもの。でもそれはそれで面白いかもしれない。
永一と愉快な分身たちは、廻るパンドラを1体、また1体と順調に撃破してゆく。
が、それでも廻るパンドラの方が多い。
廻るパンドラの1体が、分身の一人に凄まじい速度で迫る。
「はえー! 俺様死ぬわ!」
詐欺師もかくやという態度で笑う分身は、少しだけ逃げる素振りをしてすぐに足を止めた。そしてにこやかな笑みを向け、廻るパンドラがそうするよりも早く――
「ハハハッ! 一緒に死ね!」
自爆した。
「おお、派手に行ったな! にしても向こうの方がかなり多いな、それならこっちも……増量キャンペーンと行こうかねぇ」
永一本体はそう言って指を弾き、すぐさま大量の分身を出した。
同じ顔の者が一瞬にして量産されたためか、あるいはその全員がダガーと銃を手にして一斉に襲い掛かってきたからか。
廻るパンドラたちの移動に、戸惑いが見える。
襲い襲われ、爆発し爆発され、戦場は大混乱だ。
今起きた爆発を起こしたのが永一の分身か廻るパンドラか、気にする理由もない。どちらにせよ、爆発が起きる際にはもれなく分身の笑い声が聞こえてくる。
永一本体は廻るパンドラの動きを阻害するように弾丸を撃ち込みながらも分身の補充を行い、しみじみと考える。
爆発音に人々の笑い声、そして夏。これらが示すものは、ただひとつ。
「いやぁ、これが花火大会かぁ」
とっても楽しいね、と付け足して、本体の永一は援護射撃をするのだった。
大成功
🔵🔵🔵
冴島・類
趣あって素敵な建物じゃないですか
狙う先の趣味は良いんだか
いや
其処を、うじゃうじゃ爆発物で占拠するんだから
やっぱり趣味が悪いんだろうな
林の中で一対多数にならないよう
木々に隠れながら裏口に近づいて行くように
ヤマネの灯環を樹の上にやり
とわ、上からこわい輪っかが見えたらどっちかと
数を教えておくれ
忍び足、第六感を活用し
出来る限り音を立てず
此方を発見していないもの
若しくは避けきれぬもの優先的に狙う
瓜江と共に
フェイント、残像用いた動きで相手の動きを引きつけながら注視
高速の突撃来る様が見え次第
力抜きUCで受け止め
返し、動きを一瞬でも止めたなら
薙ぎ払いで斬れたら
この先、どんな者が待っているか
※共闘、アドリブ歓迎
月待・楪
ステンドグラスとか建物には被害出したくねェな
終わったら花火見物ついでに写真撮りてーし
【地形の利用】ってことでこんだけ木があんならやり易い
木に登れば【スナイパー】として敵を狙いやすいしな
【存在感】を【目立たない】ように木々に隠して
木から木に【ジャンプ】で移動
【念動力】で弾丸を操れば別に銃から撃たなくても攻撃は出来る
ストックポーチからマガジン一個分の弾丸を出して念動力で操り【魔弾・疼木】で敵を遠距離から【暗殺】してやるよ
敵の爆発は【見切り】とサイキック【オーラ防御】
粗方倒してから建物に潜入する
つか、爆発してくれんのはこっちもやり易いんだが…ステンドグラス…
(アドリブetc歓迎)
ステンドグラスはもちろん、建物にも被害は出したくないものだ。
(「終わったら花火見物ついでに写真撮りてーし」)
月待・楪は心中で呟き、手始めに木に登った。するとすぐ下をオブリビオン『廻るパンドラ』が通ってゆくが、不思議と楪には気付かない。
楪が樹上にいるから、というのもあるだろう。それにしたって集団で警戒に当たっている相手だ、中途半端な対処をすれば途端に発見されてしまうに違いない。存在感を木々と同等にしている楪だからこそ、回避できたのだ。
「これだけ木があればやりやすいな」
楪は、付近の木に身を隠す冴島・類に口の動きだけで告げた。こちらは樹上から狙撃をする、と。すると外見だけならば10代の少年は、妙に落ち着いた態度で笑みを返す。
楪は肯き、木から木へと移動を始めた。
夕日を受けて輝くステンドグラスは、楪の目に眩しい。人々に賞賛を浴びる、ヒーローのように。
視界の端で移動する楪の姿を、そして別荘の佇まいを留めながら、ほう、と類は小さく息を吐く。
「趣あって素敵な建物じゃないですか」
聞こえるはずのない蝉の声が、類の耳に届いた気がする。暑さの盛り、ここで過ごしたのならさぞや素敵な思い出になることだろう。
狙う先の趣味は良いのかもしれない、と類が思考したのも束の間。このような場所を大量の爆発物で占拠する者は、やはり趣味が悪いに違いない。
敵陣に向かう前に、と、類はヤマネ『灯環』をそっと樹の上にやろうとすると、さみしがりのヤマネは体を類の手にすり寄せた。少しの間でも類と離れるのを惜しむような様子に、大丈夫、と類は優しく告げる。
「とわ、上からこわい輪っかが見えたらどっちかと数を教えておくれ」
可愛らしくうなずく灯環とともに、類は移動を開始する。
忍び足で、葉を踏まぬよう。第六感を発揮して、不意の攻撃にも備えられるよう。
向かう先は、裏口だ。
オブリビオンによる警戒は別荘の周囲に均等に及び、極端に手薄な場所というのはなさそうだ。
特に厄介そうなのがいるのを見つけて、類は目を細める。
こまめに方向を転換し、念入りな警戒をしている数体だ。
(「あれは……避けきれませんね」)
いきますよ、と口の中だけで音にして、類は十指に繋いだ赤糸で『瓜江』を操った。そうして濡れ羽色の髪をした髪持つ絡繰人形と共に、廻るパンドラの前へと姿を現す。
「ほら、こちらですよ」
招くように誘うように。相手の間合いとなったのを判断した後は、瓜江と共にわかりやすい動きをフェイントとして、残像を用いて相手を引きつける。視線は、廻るパンドラに固定したまま。
近付けど近付けど一向にダメージを与えられぬことに痺れを切らした廻るパンドラは、速度を上げて類へと迫った。
これこそが、類の求めていた瞬間だ。
「廻り、お還り」
身体の力を抜き、爆発を受け止める。類の体には傷ひとつつかず、代わりに瓜江から同等の爆風が巻き起こされる。
まだ攻撃の届く範囲であるのを判断し、一気に薙ぎ払って廻るパンドラを周囲に止める。
そこへ、数発の弾丸が撃ち込まれた。類の顔に、思わず笑みが浮かぶ。
「ありがとうございます、楪さん」
聞こえるわけがないと理解していても、類は少し頭を下げて丁寧に礼を述べた。
「……どういたしまして」
無論、楪も類の声が聞こえていたわけではない。
類が反撃に移るのを見て、楪は再び指先で弾丸を弾き、念動力を用いて飛ばす。
ある程度は片付いたから、次のフェーズだ。
「さて……」
そう言って楪がストックポーチから取り出したのは、マガジン一個分の弾丸だ。
「先見とは違うけどな…俺の弾丸から逃げられると思うなよ?」
弾丸がひとつひとつ、意思を持っているのかのように林を抜けてゆく。それらを制御する楪には、標的も道程もすべて見えている。楪が頭痛に少しだけ顔をしかめる間も、無数の弾丸は廻るパンドラたちを追尾する。
「逃げ場なんて無ぇよ」
楪が言うが早いか、何体もの廻るパンドラはたちまちのうちに『暗殺』された。
ガラクタと成り下がった個体は動きを止め、無様に転がるだけだ。
残るオブリビオンは、あと数体か。残る廻るパンドラのうち数体が、楪目がけて高速で移動してくる。弾丸の射出先から目処をつけたのだろうか。
楪が木から降りたのと廻るパンドラが爆発したのは、ほぼ同時だ。
体勢を低くしてオーラ防御も発動すれば、爆風と爆風に乗って飛んで来るオブリビオンや木々の破片は「何か弾性のあるもの」が当たった程度にしか感じられない。
爆発してくれる分には、楪としてもやりやすい。だが、心配なのは――
「……ステンドグラス……」
そう、別荘の方。やや不安げに別荘をちらりと見て、見たところの被害がないことに安堵する。それはあまりにヴィランらしからぬ反応だと気付いて、楪は苦笑した。
いま類が薙ぎ払った廻るパンドラが、最後の個体だったのだろう。木々が風にざわめく音だけが、辺りから聞こえる。
あとは屋敷に乗り込んで『中心役』となっているオブリビオンを撃破するだけだ。
「この先、どんな者が待っているのか……」
注意深く別荘を見遣り、類が呟いた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
第2章 ボス戦
『三五零『デビルズナンバーおもてなし』』
|
POW : 悪魔の冥土(デビルメイド)
【メイド殺法】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD : 悪魔の武器(デビルウェポン)
いま戦っている対象に有効な【暗器】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
WIZ : 悪魔の相棒(デビルバディ)
【三五一『デビルズナンバーごほうし』】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
|
猟兵たちが別荘に乗り込むと、ひとりの女が恭しく一礼をした。メイドのような格好をしていることから、誰か主人のような者に仕えているのだろうか。しかし、別荘の中には彼女の気配しかない。
おもむろに顔を上げた女の顔は赤く、仮面のようだ。
「わたくし、三五零『デビルズナンバーおもてなし』と申します。……といっても、皆様方には覚えていただかなくて結構でございます」
ヒトであればそうは曲がらない角度に首を傾げ、三五零は続ける。
「あなた方には、ここで死んでいただきますので」
柔らかな声と告げられた内容は、いたく乖離していた。
篝・倫太郎
元より、覚えとくつもりはねぇから安心しな
倒したオブリビオンの名前なんざ、一々覚えてらんねぇもんよ
拘束術使用
まずは俺自身が華焔刀で先制攻撃からのなぎ払い
そちらに敵の意識が向いたタイミングで拘束術発動
おっと、そっちに気を取られると今度はこっちから行くぜ?
戦闘知識で攻撃の特徴と癖を分析し
見切りや残像も併用して回避
躱しきれない場合と別荘の破損に繋がりそうな状況の場合は
オーラ防御からの咄嗟の一撃
攻撃が相殺出来りゃラッキーってな
立ち回る際には家屋への被害は最小限に留めるよう
立ち位置に気を付けて立ち回る
自身の攻撃は中盤以降フェイントを交ぜて仕掛け
拘束術も併用してく
タイミングはパターン化しねぇよう注意しとく
「元より覚えとくつもりはねぇから安心しな、倒したオブリビオンの名前なんざ、一々覚えてらんねぇもんよ!」
威勢良く言って、篝・倫太郎は三五零『デビルズナンバーおもてなし』に先制攻撃を仕掛けた。
「……!」
倫太郎が華焔刀で大きく薙ぎ払う動きをすれば、三五零の意識はは当然、そちらへ向く。
口角を上げ、倫太郎は次の行動に移った。
「おっと、そっちに気を取られると今度はこっちから行くぜ?」
とたん、三五零の体が何かによって打ち据えられる。それが見えぬ鎖だと知っているのは、放った当の本人である倫太郎だけだ。
「なるほど、そう来ますか。ではこちらもお見せしするとましょう、メイド殺法を!」
ゆっくりと腕で円を描き、三五零は腰を落とした。
「……はッ!」
片足が市松模様のフロアを蹴ると同時に、掌を上にした右手を倫太郎の首めがけ、刺すように突き出す。
咄嗟に首を倒して回避しようとする倫太郎であったが、何かに気付いたようにオーラ防御を発動した。そのまま防御態勢を取るのかと思いきや、三五零の攻撃を打ち消すように見えない鎖を繰り出す。
仰け反るように吹き飛ばされた三五零は空中で体勢を立て直し、フロアに着地した。
「今のは威力だけに長けた一撃。回避しようと思えば回避可能な攻撃でしたのに……なぜ?」
「はっ、反撃を喰らっといて言う台詞かよ。ま、気になるなら教えてやるよ。つっても、俺の後ろを見ればすぐにわかることだがな」
顎で自身のすぐ後ろにある窓――夏空に揺れる風鈴を描いたステンドグラス――を示し、倫太郎は片手で華焔刀をくるりと回した。
「理解いたしかねます。そんなガラスの装飾ごときを守るだなんて」
「……お前、本当はセンス悪いだろ? どっちにせよオブリビオンだ、容赦は不要――だよな!」
華焔刀を振るうと見せかけ、鎖で払う。あるいは鎖を仕掛けたと見せかけ、華焔刀で斬り上げる。
苛烈な攻撃を仕掛けながらも、倫太郎はこの戦いにおいて一つのルールを守っていた。
それは『屋内への被害は最小限に留める』こと。鎖や華焔刀を振るう際は、天井や床、壁はもちろん、ステンドグラスを傷つけないよう、無駄な動きは一切なし、だ。
それでも三五零にとってはこの屋敷がどうなろうがお構いなしのようで、壁を蹴り、天井を蹴り、常人ならば見切れぬ速度で倫太郎の背後へと回り込んだ。
が。
「!?」
三五零の突き出した拳は倫太郎を突き抜け、それどころか背中に打撃を受けて倒れ込む。
拳が突き抜けたのは、残像であったためか。背中への打撃は、拘束術によるものだろう。
「それなりにパターンや特徴は多いみたいだが――把握しちまえばこっちのもんだぜ」
そう言って、倫太郎は得意気に笑った。
大成功
🔵🔵🔵
依神・零奈
……なんだろ、武装はメイドの嗜みかなんかなの?
むしろちゃんとしたもてなしが出来るかどうかの方が
疑問だけど……ま、いいや。
言葉通り、お邪魔させて貰うよ
「丁寧に名乗ってくれてありがと、三五零」
【だまし討ち】で前ぶりもなく三五零を指定してUCを発動させよう
あらゆる死角という死角から【破魔】の力を込めた
矢を放っていく。
相手のUCでもう一人の敵が現れたら
……めんどくさいけど霊符で対応する事にしようかな
隙があればもう一人の敵も指定してUCの効果を適応させるよ
依神・零奈は首を傾げて三五零『デビルズナンバーおもてなし』を眺める。
武装はメイドの嗜みなのか、それとも彼女だけが何かしら思うところがあって思って武装しているのか。
そして何より、ちゃんとしたおもてなしが彼女に出来るのか。
しかし、零奈はおもてなしをして欲しくてここを訪れた訳では無い。
零奈はただ、お邪魔させて貰うだけだ。その文字通りに。
「丁寧に名乗ってくれてありがと、三五零。私は依神・零奈、こちらも覚えて貰わなくて結構だけど」
口元だけに笑みを浮かべ、零奈は丁寧に礼をする――と見せかけて、
「……さようなら」
低く、呟いた。
それは合図だ。三五零が把握できない場所すべてから、破魔の力を込めた矢を一斉に放つ。
三五零が気付いた時には既に遅かった、というのは言うまでもない。身体に突き刺さった矢を引き抜き、三五零はゆっくりと息を吐いた。
「これはまた――おもてなしのしがいがありそうなお嬢様ですね。わたくし一人ではもてなしきれないやもしれません」
しかし、と三五零は続ける。
「どんな方ももてなしてこそメイド、そして三五零『デビルズナンバーおもてなし』です。さあ、悪魔の相棒! 出番ですよ!」
三五零が両手を広げると、すぐ隣に似たような女が現れた。
「彼女は三五一『デビルズナンバーごほうし』。私の協力者にして相棒です。さあ、共にあのお嬢様をおもてなしいたしましょう!」
そう宣言する三五零の言葉に、三五一は無言でうなずいた。どうやら三五零と違って寡黙らしい。
「三五零も三五一も、過剰なおもてなし、ありがと。……私には勿体ないけど」
面倒くさそうに目を細め、零奈は霊符を投げつける。
「遠慮は不要です。これもメイドのつとめにございますので」
三五一が霊符を受ければ、三五零は彼女の肩を足場にして上空から零奈へと襲い掛かった。
「なるほど。つとめ、ね」
今度は三五零に再び霊符を投げつけながら、零奈は三五一へも注意を払う。そろそろ霊符の戒めから逃れているであろう頃だ。
案の定、彼女は零奈へとナイフを投げつけようとしているところであった。
零奈が別れの言葉を口にすれば、三五一の頭上から矢が降り注いだ。四肢をフロアに縫い付けられるように伏した三五一は動きを止め、黒い霧のようになって消え失せる。
「……ッ!」
三五零が驚いたのは三五一が倒されたから、というだけではない。三五零の背にもまた、数本の矢が刺さっていたのだ。
成功
🔵🔵🔴
月待・楪
メイドだろうが、邪神だろうが知ったことじゃねーよ
なるべく建物ん中を傷付けずにぶっ倒す…!
【ダッシュ・スライディング】で一気に近寄って【念動力】で敵を攻撃するように【フェイント】かけながら【先制攻撃】
カルタとガランサスで足を狙って【零距離射撃・部位破壊】
暗器?ハッ…んなもんお見通しだっての
【見切り】回避しながら【thistle】でカルタとガランサスの弾丸に雷撃を纏わせて【カウンター】攻撃してやるよ
おもてなしだか何だか知らねーケド…俺の目当てはここのステンドグラスと最後の花火だっつの
テメェみてーなのはお呼びじゃねェんだよ
(アドリブetc歓迎)
別荘に入るや否や、月待・楪は駆け出した。
「こちらのお客様は……これまたお急ぎのようですね。ティータイムのご提案はすげなく却下されそうな雰囲気です」
「当然だろ。それに急いでいると言ったところで、テメーみたいなのは退いても倒れてもくれないんだろ?」
「勿論にございます。どんなお客様も、もれなくおもてなしをさせていただきたく。わたくしが三五零『デビルズナンバーおもてなし』ゆえんでございます」
丁寧に頭を下げながらも、三五零は楪の動きを警戒している。
三五零との距離がある程度詰まると、スライディングに切り替える。そこから念動力での攻撃を仕掛ける楪、それに対して暗器を召喚する三五零。
かかった、と思いつつおくびにも出さず、楪は二丁の銃を構えた。
「! なるほど、本命はそちらでしたか!」
それでも袖口に潜ませたナイフを素早く投擲し、三五零は無理矢理攻撃に回る。
「ハッ、遅いな。それに……」
真っ直ぐに飛んで来るナイフの位置を把握した楪は、小さく笑った。
「んなもんお見通しだっての!」
三五零の放った十本ほどのナイフを難なく回避し、両手の銃『カルタ』と『ガランサス』にて狙いをつける。
「しまっ……!」
楪が仕掛けてきたのはカウンターである、と三五零が気付いた時には、もはや回避行動を取るには遅すぎた。
楪の狙いは三五零の足だ。暗器を射出した直後の三五零、彼女の隙は大きい。楪は銃口を三五零の足に押し当て、引き金を絞る。それぞれ異なる彫金が施されたそれらが反動で揺れれば、手応えを感じてすぐに距離を取った。
「うっ……っ……これはなかなかに効きますね……!」
バランスを崩し、その場に倒れる三五零。相手がメイドだろうが邪神だろうが、そして三五零がどんなおもてなしをしようが、楪の知ったことでは無いのだ。
楪の銃から放たれたのは、ただの弾丸では無い。射出されると同時に電撃を纏い、螺旋の光を帯びながら三五零の足を貫通したのだ。
「俺の目当てはここのステンドグラスと最後の花火だっつの。テメェみてーなのはお呼びじゃねェんだよ」
銃口から立ち上る煙をそのままに、楪は両の足から多量の血を流す三五零を見遣る。
夏の夕暮れを模したステンドグラスは真っ赤な太陽の色が透過して、フロアの一角に鮮やかな光を落としていた。
成功
🔵🔵🔴
霑国・永一
成程、おもてな死って訳だ。はいそうですかと素直に死ぬわけないんだよねぇ俺は。主人の居ないメイドに価値も無いよ、代わりに命を盗ませて貰うか
狂気の弾丸を発動
一定の距離を保ちながら、別荘の内部構造も利用しつつ敵に向けて撃ち続ける。暗器の使い方も弾丸の効力で随時忘れて貰おう。
無論それだけにあらず、どんどん撃って戦い方も素人に戻って貰うかなぁきっと戦う為に時間かけて磨き上げた戦闘技術とかあるんだろうからねぇ
あぁ、隙あらば武器を盗むよ【盗み・盗み攻撃】
メイドが戦うなんて仕事にないからさ、戦いなんて忘れて平和に暮らして貰った方がいいはずさ。……ま、綺麗さっぱり忘れたところで、オブリビオンだし、死んで貰うけど
なるほど、と霑国・永一は三五零『デビルズナンバーおもてなし』と相対する。
「おもてな死って訳だ。でもな、はいそうですかと素直に死ぬわけないんだよねぇ俺は」
「さようでございますか。しかし、わたくしとしましても素直におもてなしを受けていただきたいのです」
へらりと笑う永一に対し、三五零は至極真面目だ。
先に仕掛けたのは、永一の方だった。
時折物陰に身を潜ませながら、トカレフに似た黒い銃の引き金を引く。
「戦いなんか忘れてしまえば楽になるよ」
一度ではなく、何度も。
「わたくしにおもてなしは不要ですよ。おもてなしを受けるのは、あなたの方です!」
弾丸を受け、あるいは回避しながら、三五零はひたすらに永一を追い、暗器での攻撃を仕掛けて来る。
都度召喚される暗器は包丁であったり手裏剣であったりと、本来の使用法とは違うが、それぞれ確実に永一を狙って使用されていた。
しかし三五零の立ち回りは、徐々に素人じみたものとなってゆく。
最初こそ先回りして永一の動きを追跡していた三五零であったが、今は後ろから永一を追うのが精一杯。
正面から来る弾丸すら、回避できない。
暗器を振るう動きも、精彩を欠く。
思うように、というか戦闘開始当初に比べて格段に動きの鈍った三五零は、いまや素人だ。
「しかし! こちらにはいくらでも召喚できる暗器が……! ……はて。こちらの暗器は、どのように扱うのでしたっけ? ……待ってください、そもそも暗器とは……?」
首を傾げる三五零、彼女が手にする暗器を永一は素早くかすめ取った。
永一の撃った弾丸はダメージだけでなく、戦闘技術に関する知識を消す効果がある。三五零が気付いたところで、理由は解っても取り戻せない戦闘の記憶たちだ。戦うために磨き上げたであろう戦闘技術は、そのほとんどが永一の弾丸によって失われている。
メイドに『戦う』なんて仕事は本来必要のないことのはずだ。戦いを忘れて平和に暮らした方がいいはず――と思う永一であったが、そういえば三五零はオブリビオンだ。どれだけ綺麗に戦闘知識を忘れたところで、死んで貰う他ないのだが。
「多分だけど、こんな風に使うじゃないの?」
召喚された暗器――アイスピックを軽く手元で弄んだ後、一本一本投げつけ、三五零を貫いた。
成功
🔵🔵🔴
冴島・類
主人がいない屋敷でおもてなし…
アンバランスで、ちぐはぐだな
帰らぬ主を待っているのか
単に繰り返すだけ、か
どちらにせよ
覚えておくか忘れるか
それは、こちらが決めること
死ぬ気は、無いけれど
おもてなしの体捌きと武器の数を注視
近づきながら薙ぎ払い仕掛ける
フェイントで攻撃誘発
相手の注意を逸らし
死角から仕掛けるよう心掛け
向こうの攻撃が調度品やステンドグラス
または、近くの他猟兵へ当たりそうな場合は
舞で威力軽減しながらかばい
決して傷つけないように
また、もう一人のメイドが現れたなら
瓜江を糸で操り攻撃受け、いなした隙に
薙ぎ払いで破魔の力込めた対応
忘れませんよ
面の下を見れなくたって
充分インパクトある様相だ
2人共、を
主のいない寂れた屋敷でおもてなし。
それはアンバランスでちぐはぐで、哀愁すら誘う。
帰らぬ主を待っているのか、単に繰り返すだけか。どちらにせよ、三五零『デビルズナンバーおもてなし』を覚えておくか忘れてしまうのかは、冴島・類次第ではある。
無論『忘れる』――すなわち死ぬつもりは、さらさら無いのだけれど。
「本日は来客の多いことですね。わたくしも少々疲れてまいりましたが……しっかりとおもてなしをさせていただきますよ」
もし彼女の表情がわかるのならば、きっときりっと引き締めたような表情をしていたのだろう。
「お手柔らかにお願いしますよ」
言いつつ、類は三五零の動きを警戒する。一瞬のうちに袖口やスカートの下に隠された暗器の数は、合計3。右の袖口には棒手裏剣のようなものを2本、左の袖口にはナイフを1本仕込んだまま、三五零は類へと迫る。
先に一歩踏み込んだ類が、三五零の足元へと薙ぎ払いを仕掛ける。すかさず跳躍する三五零の動きは、類にとっては想定の範囲内だ。
手品師のごとく袖口から棒手裏剣を取り出す三五零、その投擲が45度ほどの角度で類へと狙いをつけるのだとしたら。
類のすぐ後ろにある、瀟洒な台に乗ったクラシックな電話機もろとも破壊されてしまうことだろう。
「風集い、舞え」
類は回避行動を取らず、神霊体へと変化して棒手裏剣を受けた。痛みこそ無いが、受け止めた腕に血が滲む。そのまま短刀を振りかぶり、衝撃波を発生させながら三五零を斬りつけた。
「傷つけさせるわけにはいかないんですよ。ステンドグラスも、調度品も」
「なるほど……では、こうしましょうか」
ナイフを手にしていた三五零は一度ぴたりと動きを止め、相棒――三五一『デビルズナンバーごほうし』を傍らへと出現させた。
「これでも、守り切れますでしょうか?」
「勿論です。こちらも一人ではありませんので」
指先を器用に動かし、瓜江を操る類。瓜江が三五零と三五一との体術をいなして受けることで生じた隙に、破魔の力を込めて薙ぎ払った。
上方に吹き飛んだのちフロアに背を打ち付け、先に消え失せるは三五一のほう。
三五零も足の先から徐々に消え失せてゆく。これまでに猟兵から受けたダメージの蓄積も、かなりのものだったのだろう。
「ふふ、別の意味で『覚えていただかなくて結構』な結果になってしまいましたね……」
「そうですね。――でも、忘れませんよ」
何せ、面の下を見られなくとも充分にインパクトのある様相をしている二人であったのだから。
三五零も消滅したのを見届け、類は夏空のステンドグラスから透けて見え始めた夜の色に目を細めた。
成功
🔵🔵🔴
第3章 日常
『夏の夜と君と花火と私』
|
POW : 参加型の花火中継に出演する
SPD : 花火を写真に撮って楽しむ
WIZ : 友達や恋人と一緒に花火を見上げる
|
細くたなびく音の後、闇色の空で大輪が弾けた。何度も何度も繰り返されるが、一つとして同じ音はない。
都会から離れた山間では、打ち上がる花火の音だけが絶え間く響いている。
夜店もBGMも、桟敷席もなし。付近に住む者やテレビ局のスタッフはどこか神妙な顔をして、花火を見上げていた。
テレビ局のスタッフは、時折はっとしたように人々にカメラを向けてみたりする。「初めてですか?」「このイベント、実はいつから始まったのかよくわかってないんですよ」なんて小声で告げて、コメントを引き出したりしながら。
地上の人々の様子などお構いなく、花火は上空で弾ける。
そんな風に夏へと誘う音と色を、さあ、どこから眺めてみようか。
火神・臨音
アイナ(f01943)と二人で
夏告げの花火か、こんなのもありだな
空に咲く色とりどりの花に見入って
そう言えば遅くなったけど
誕生日おめでとうな
アイナからの御祝いにはそっと頭を撫で
贈るのはケースに収めた紅玉の指輪
シンプルなデザインなそれは
左手をそっと取って彼女の薬指へ
彼女からのプレゼントのブレスレットに
目をやった後に、悪戯な笑み浮かべて囁く
もうひとつプレゼントがあるんだけど
それは今度二人で出かけた時に、な
何かな、と色々考えてる姿も可愛くて
そして誰よりも愛おしくて
楽しみにしてる、と微笑む姿に胸が熱く
花火の音が止んで静寂が訪れた時
『好き』の想いが溢れ
軽く触れて、そして重ねる唇に
離さないの誓いを
アドリブ可
美星・アイナ
臨音(f17969)と二人で
夏告げの花火ってなんだか厳かよね
花火大会みたいに賑やかなのもいいけど
こんな風に静かな場所で見つめるのも
悪くないわ
花火の見える少し離れた場所に敷物を引いて
二人肩寄せて空に咲く大輪の花に見入る
その手はしっかりと繋がれて
降ってきた誕生日おめでとうの言葉に頬染め
臨音も誕生日おめでとうと言ノ葉を返して
彼の右手首にそっと着けるのは
紅玉と水晶が煌めくブレスレット
左手の薬指に輝くのは
臨音からプレゼントされた紅玉の指輪
目をやって笑んだ時に耳に聞こえた
『もうひとつのプレゼント』に何かな、と
考えて
楽しみにしてるねと柔らかな笑み
溢れる位の好きの想いは
触れて、そして静かに重ねた唇に
アドリブ可
「夏迎えの花火、どんなもんかと思ってたが……こんなのもありだな」
「ええ、なんだか厳かよね……悪くないわ」
火神・臨音は美星・アイナと二人肩を寄せ、花火を見上げていた。
出店があり、人々で溢れる賑やかな花火もいいが、このような静かな花火も悪くない。
敷物を引いて見上げる場所は、人々からは少し離れた場所。繋いだ手をひととき解き、臨音はじっとアイナを見た。
絶え間なく上がる花火が二人の顔を仄かに照らしている。このままアイナの顔をじっと見ているのも悪くない、と思う臨音であったが、何せ大事な用件だ。ゆっくりと呼吸を整え、アイナの目を真っ直ぐに見る。
「遅くなったけど」
遠慮がちな臨音の声色に、アイナは不思議そうに首を傾げた。その様子があまりにも可愛らしくて、臨音は優しい笑みを浮かべる。
「誕生日おめでとうな、アイナ」
降ってきた言葉と向けられた表情に、アイナは頬を染めた。遅くなったことなんて、まったく気にしていない。その言葉を臨音が言ってくれただけでも、充分に嬉しい。
「……ありがと、臨音。臨音も誕生日、おめでとう」
そう言って、臨音の右手首にブレスレットをそっと着けるアイナ。紅玉と水晶のブレスレットは、花火の色を反射して煌めいている。
臨音は愛おしそうにアイナの頭を撫で、掌に載るほどの大きさをしたケースを取り出した。それがゆっくりと開かれると、紅玉の指輪が顔を覗かせた。
驚きと喜びを顔に滲ませるアイナの左手を取った臨音は、指輪をそっと薬指にはめた。
アイナは指輪に視線を落とし、顔をほころばせる。シンプルなデザインも紅玉の色も、臨音が選んでくれたもの。そう考えると、言いようのない喜びがこみ上げてくる。
一方の臨音は、アイナからの貰ったブレスレットに目を遣りつつ悪戯な笑みを浮かべていた。
「本当はもうひとつプレゼントがあるんだけど……それは今度二人で出かけた時に、な」
「うん? もうひとつ……? うーん、何かな」
少しの間考え込んだ後、アイナは柔らかな笑みを浮かべる。
「楽しみにしてるね」
そんな風にアイナが考えている姿も微笑む顔も、誰より愛おしく可愛らしいと思う臨音だ。けれど、どうしていいか解らない。どうしようもないほど胸が熱くなるのに。せめてまた手でも繋ごうと臨音が手を伸ばしたところで、花火の音が止んだ。
静寂はきっと、ほんのわずかな時間だけ。きっと、またすぐに花火が上がってしまうだろう。
だから、臨音はアイナに軽く触れて唇を重ねた。
目を閉じていてもわかる、お互いの気持ち。
二人の溢れるほどの想いを祝福するように、また花火が上がり始める。
空に咲く色とりどりの花は、二人の横顔と贈り物を照らしていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
篝・倫太郎
夜彦(f01521)と
へへ、付き合ってくれてあんがとな?
夜彦の言葉に益々笑う
実は誘い過ぎてねぇか一人で勝手に心配してたから
楽しそうな気配がする言葉は素直に嬉しいもんだ
そだそだ、ちっと暗くなって見難いけど
窓がすげぇ綺麗なん…
だぜ、そう言い切る前に綺麗な花が夜空に咲くから
夜彦と二人眺める
ぱちぱちと儚げに消えてくのを見守って
また音に消されないようにくいくいと夜彦の着物の袖を引いて
もう片方の手で別荘のステンドグラスを指し示す
モチーフ夏なんだってさ
硝子だってのもあって涼しげな感じするよな、これ
人の作るもの、はこれもだな……(花火を眺め)
今度は酒飲みながら観れたらいいよな、花火
今日みたいなのも悪くねぇけど
月舘・夜彦
倫太郎殿(f07291)と参加
こちらこそお誘いしてくださりありがとうございます
倫太郎殿には色々な所へ連れて行ってくださっているので
今回も何を見せてくださるのでしょうか
彼に案内されるままに歩けば、大きな音と瞬く様な光
……なるほど、花火でしたか
UDCアースも今は夏の季節ですからね
様々な色と形の打ち上げ花火を眺めていれば、倫太郎殿に着物を引かれ
そちらを見遣れば、建物に装飾された花火以上に鮮やかな一面硝子
すてんどぐらす、というのですね
初めて見ましたがとても美しく、そして人の手によって作られたのですね
本当に人が作る物は素晴らしいものです
お酒と花火と言うのも良いですが、これは静かにじっと眺めていたいです
「へへ、付き合ってくれてあんがとな?」
「こちらこそお誘いしてくださりありがとうございます」
はにかむ篝・倫太郎に、月舘・夜彦は丁寧に頭を下げる。
「倫太郎殿には色々な所へ連れて行ってくださっているので……今回も何を見せてくださるのでしょうか」
その様子に、倫太郎はますます笑みを深めた。
実のところ、心配していたのだ。普段から誘いすぎているのではないか、無理に誘っていたのではないか、と。夜彦自身が押しに弱いということもあり、今日の反応次第では次からは遠慮しようと思っていたが、どうやらそれは倫太郎の杞憂であったようだ。楽しそうな気配のする夜彦の言葉を聞いて、倫太郎も嬉しくなる。
と、浮かれてばかりもいられない。倫太郎は夜彦に見せたいものがあったのだ。
「そだそだ、ちっと暗くなって見難いけど、窓がすげぇ綺麗なん……」
倫太郎が言い切る前に上がった花火の音が、言葉を途中で終わらせた。
大きな音と瞬くような光で夜空に咲く花は、見事であった。
なるほど、と夜彦が花火を見上げて頷く。
「花火でしたか。UDCアースも今は夏の季節ですからね」
色も形も異なるものが打ち上がってはぱちぱちと儚げに消えてゆく。
今度は音に消されぬようにと、倫太郎は夜彦の袖を引いた。それに気付いた夜彦が倫太郎を見ると、倫太郎がもう片方の手で別荘のステンドグラスを指し示している。
夏雲と太陽の意匠が施されたステンドグラスは、花火が上がるたびに色を反射して輝いている。
「夏がモチーフのステンドグラスなんだってさ。硝子だってのもあって涼しげな感じするよな、これ」
「成る程、あれは『すてんどぐらす』というのですね」
初めて見るステンドグラスを、夜彦は感嘆の息を漏らしながら眺める。
「――とても美しく、そして人の手によって作られたのですね。人が作る物は、本当に素晴らしいものです」
自身もかつては人につくられた竜胆の簪であるからか。夜彦の視線は、畏敬の念を覚えているようにも見える。
「人の作るもの、はこれもだな……」
と、倫太郎の視線は再び花火へ。つられて、夜彦も花火へと視線を戻す。
「今度は酒飲みながら観れたらいいよな、花火。……ま、今日みたいなのも悪くねぇけど」
「ええ、そうですね。お酒と花火というもの良いものですが……今日のこれは、静かにじっと眺めていたいです」
ステンドグラスにも花火にも気を取られ過ぎたためか。倫太郎は夜彦の着物の袖を掴んだまま、じっと夜空を見上げている。夜彦もまたそれをまるで気にせず、大輪の花、そしてそれが散るさまを眺めていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
冴島・類
※真珠さん(f12752)と
夏の欠片が散りばめられた場で
静かに花火見物
窓辺でよく見える位置探し
こっちこっちと
真珠さんと如月さんへ手招き
ステンドグラスも綺麗だから
真珠さん、趣味良さげだし
共に楽しめたら良いな
瓜江は側で座らせ
大きな音は好まないと言ったけど
開花の合図もこの距離なら平気です?
打上げ音聞こえたら
何時もより近い目線に
染まる空指差して笑い
大人びているよだったり
幼げだったり
中身は知らぬことばかり
けど
率直で嘘ない様は心地いい
咲いては消える光の洪水
良い、夏のはじまりですねえ
振り返って見た彼らが
鮮やかな色を写していたら
いつか借りた
君の特等席の礼に
なっているだろうか
聞こえた言葉には頷いて
ええ、違いない
雅楽代・真珠
仕事を終えた類(f13398)と合流
別荘で花火を見るよ
手招くお前の元へ
如月は僕を揺らさぬようゆっくり歩く
窓辺まできたら如月の腕から降りて
今日は類の視線の高さに合わせようか
お前と同じ目線で見た方が楽しめそうだと思ってね
如月は反対側に座っておいで
空に花が開く度
室内にも色硝子の花が咲く
間近で見るのは煩く感じるけれど
ここは趣味も良い
悪くはないよ、類
お前が空を指差して笑うから
僕も追うように見上げてしまう
そう、こういうひと時は悪くない
振り返る笑顔に花の光を映す類
釣られて僕も笑んでしまう
そうだね
返すのは短い言葉だけ
けれど僕の気持ちはお前に伝わることだろう
僕の隣も特等席、でしょ
花火の音に重なるように呟いて
現在は使われていない、という割には手入れの行き届いた別荘の中で、こっちこっち、と冴島・類が手招きする。相手は、如月に抱えられた雅楽代・真珠。
如月の動きはあくまで慎重だ。真珠を揺らさぬよう、ゆっくりと。
窓辺まで来たところで真珠は如月の腕から降り、類の視線の高さに合わせた。
「お前と同じ目線で見た方が楽しめそうだと思ってね」
共に楽しめればいい、と願って誘っていた類だから、真珠の反応に柔らかに微笑む。
それに趣味の良さそうな真珠のことだ、綺麗なステンドグラスもきっと気に入ってくれるだろう。
それぞれの相棒も共に座らせれば、始まりの音が響き渡る。
「大きな音は好まないと言ったけど、開花の合図もこの距離なら平気です?」
最初の花が閉じた後、類は真珠を気遣うように問いかけた。
「間近で見るのは煩く感じるけれど」
再び打ち上がる気配に、真珠は一度口を閉じた。直後、盛大に弾ける音と光が強く室内を照らす。でも、それは一瞬。はらはらと消えてゆく光の残滓を目で追いながら、再び口を開く。
「ここは趣味も良い。悪くはないよ、類」
蛍が舞うステンドグラスを眺めて呟く真珠を横目で見て、類は安堵した。
外見だけでいえば数えて十程の真珠を、大人びている、と感じることがある。一方で、意外なところで幼げな部分が垣間見えたりする。真珠について、類はまだまだ知らないことばかりだ。
しかし、率直で嘘のない様子は心地よい。
「……良かった、です。――ああ、ほら。今度のは大きそうですよ」
類が言うが早いか、眩いばかりの光が瞬いた。
ひときわ広い範囲で染まる空を指さして、類がいっそう笑うから。真珠は、類の指先を追うようにして空を見上げてしまう。
――こういうひと時は、悪くない。
そう思う真珠の瞳に、類の指の先で弾けた花の色が映り込む。
「良い、夏のはじまりですねえ」
なんて言いつつ類が振り返れば、瓜江と如月にも鮮やかな色が映されている。
(「……いつか借りた、君の特等席。その礼になっているだろうか」)
笑みを深める類に釣られて、真珠も笑んでしまう。
「そうだね」
返す言葉は短い。けれどこの思いはきっと類に伝わっているだろうと真珠はぼんやりと思う。
そうして見上げる、夏を迎える光の洪水。
夜空には光の花、室内には色硝子の花がそれぞれ開く。ほんものの花火に重なる硝子製の花火が落とす色は、万華鏡のように多彩だ。
空で溢れた光が夜の海に沈んでゆくと、色硝子の彩りは明度を落としてゆく。
惜しんだ色彩が異なる色で返り咲いては、その繰り返し。
夏の欠片が散りばめられたこの場所では、夏の音と色だけが広がっている。
「……僕の隣も特等席、でしょ」
花火の音に重なるように呟いたはずの真珠の言葉には、
「ええ、違いない」
と、緩やかな笑みを浮かべた類の首肯が返ってきた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
月待・楪
おー…すげェ花火だな
…ま、俺の本命は花火じゃねーけど花火以外なんにもないってのもいいんじゃねェの
やっぱ、このステンドグラス夜に見ても綺麗だ
とりあえず月明かりだけで何枚かと、花火の光が射し込んだ瞬間狙って何枚かスマホで【撮影】してみるか
上手く撮れるといいんだが…
にしても、外に配置するオブリビオンのセンスはねーのに
ロケーション選ぶセンスはあったとか、残念過ぎんだろ…
…そのおかげでステンドグラスの写真は満足いくだけ撮れそうだけどな
気が向けばステンドグラス撮った後に花火の写真も撮る
…土産話のネタにはなるだろ
(アレンジetc歓迎)
思わず目を閉じてしまいそうなのを堪えて、月待・楪は息を呑んだ。
「……すげェ花火だな」
スマートフォン片手に、ただただ花火を見上げる。
花火が目的でここに来たわけではないが、花火以外に何も無い、というのもなかなかいいものだ。
戦闘時に目に入ったステンドグラスは、予想通り、夜に見ても綺麗だ。
花火の上がらない間を狙って、月明かりだけを照明に撮影してみる。スマートフォンを構え、ステンドグラスがしっかりと収まるように。
風鈴や海、金魚、そして花火。
夏をモチーフにしたという硝子の彩りは、月明かりだけでも充分に見応えのあるものだ。
「期間限定の宿なんかとして使ったら人気出るんじゃないか、ここ。――いや、やめといた方がいいか」
泊まれる客の数はたかが知れているとはいえ、大々的な宣伝はしていない花火だ。下手に注目されてこのあたりが賑やかになってしまっては、きっと花火の目的も変わってしまう。
夏を迎えるため、という目的がある花火なのだから、このままがいいのだ、きっと。
思案しながらのステンドグラス撮影、次は花火の光とともに。
「……うわ。なんだ、コレ」
決して映りが悪かったわけではない。むしろ、逆だ。
花火が完全に開いた時に撮影したステンドグラスは、それ自体がわずかに発光しているようにも見える。楪は思わず手を止め、撮影した画像に見入っていた。
「他のもいいタイミングで撮影できるといいんだが……」
呟きつつ、何枚か撮影に挑戦してみる。
にしても、と思い出すのは最初に戦った転がるオブリビオン、そしてメイドのオブリビオンのことだ。
「あいつ、外に配置するオブリビオンのセンスはねーのにロケーション選ぶセンスはあったとか、残念過ぎんだろ……」
まあ、そのおかげでステンドグラスの写真は好きなだけ撮影できそうなのだが。
困り笑い混じりのため息を漏らし、楪は撮影を続ける。
そうして、ステンドグラス自体はあらかた撮影し終えただろうか。
ふと花火が気になって、特に何も考えずに撮影ボタンを押した。
スマートフォンに閉じ込められた絵は、重なって弾ける光の花、という構図。きっと土産話のいいネタになるに違いない。
大成功
🔵🔵🔵
影杜・梢
夜空が咲いていたから、釣られてきてしまったよ。
何やら催しているようだね。花火かい?
ふらっと立ち寄っただけだけど、ボクも参加していこうかな。
のんびりと花火を見上げるよ。
ちらっと小耳に挟んだのだけれど、夏迎えの花火なんだって?洒落ているね。
花火の音を聞くと、一気に夏が来た感じがするな。
花火に夏祭り、水着に肝試し。
今年の夏は、目いっぱい遊び尽くさないと。
夏本番が待ち遠しいよ。
それから、夏休みに期末テストに大学受験に…あ、考えたくなくなってきた。
止まらないかな、時間。
あー…でも、猛暑も永遠に続くことになるか。
それはそれで嫌だな…。
ボクの今年の夏は、どんな風になるかな。
今から楽しみだ。
◆アドリブ歓迎
夜空が咲いていたから。
花火は、そんな理由で訪れる者を拒まない。
ふらりこの場に立ち寄った影杜・梢は、何をするでもなくのんびりと花火を見上げる。
わりとラフな服装の子どもたち――きっと、地元の子だ――から聞こえた言葉は「夏迎えの花火」。
洒落ている、と梢が思う間に上がる花の花弁は数え切れないほどだ。
足元からびりびりと伝わってくるような振動に、周囲の言葉が聞き取れないようなほどの音。花火特有の音を聞くと、一気に夏が来たような感じがする。
肌に触れる外の温度はまだ生ぬるいけれど、こうして花火を眺めながらだと、夏のためのエネルギーが蓄積されているようにも思えるから不思議だ。
「花火に夏祭り、水着に肝試し――」
夏に関連することを花火の音に重ねつつ口に出して、指折り数える。
まだ夏本番ではないけれど、今年は目いっぱい遊び尽くしたいエルフの少女だ。
調べれば、他にも楽しいイベントが手招きするように開催されているに違いない。
いつにしようか、誰と行こうか。
もう目前とはいえ、夏本番が待ち遠しい。
「それから、夏休みに期末テストに大学受験に……」
数えていた指が止まり、視線が宙を泳ぐ。猟兵としての仕事をこなしつつ定時制高校に通って受験勉強なんて、他の高校生の比ではないくらい大変なことだろう。
今上げた言葉の後半はもう考えたくない梢だ。
「……止まらないかな、時間」
遠い目をして雨粒が零れるような花火を見上げ、次の花火を待つ。
そこで、梢は気付く。
「でも、猛暑も永遠に続くことになるか。それはそれで嫌だな……」
他の季節があるから待ち遠しく、そして過ぎ去った後も来年が楽しみになる。季節というものは、実にうまくできているものだ。
であれば、どうあっても夏を楽しむのがいちばんの正解。
困ったように笑った梢は、ただ今を楽しむことにする。
「ボクの今年の夏は、どんな風になるかな」
夏を歓迎する花火が上がれば上がるほど、梢の期待も高まっていく。
きっと想像以上の楽しみが梢を待っているに違いない。
大成功
🔵🔵🔵
依神・零奈
……花火と花火を楽しむヒトを見渡せる場所に移ろう
忘却の果てに居場所を失くした神様とやらには相応しい場所にね
……それにしても夜空を彩る大輪の華、思わず息を飲む程に綺麗だね
この光景は昔から全然変わらない、いや、それを見て楽しむヒトの姿も
変わっていないようにすら思える
変わってしまったと思っていたのは私の思い違いだったのかも……
だなんて、私も案外未練深いね、思わず笑いが零れちゃうよ
ま、たまには懐かしいあの日々に想いを馳せるのもいいかもね
依神・零奈は、自身に相応しい場所へと移った。
それは花火と、花火を楽しむヒトを見渡せる、小高い木の上だ。
ここなら誰かに見つかることもないし、声をかけられることもあるまい。忘却の果てに居場所を失った神様とやらにはここが一番いいのだろう、と自嘲めいた笑みを浮かべながら。
零奈の眼下に見える大小さまざまな人間たちは、まるで信仰するように夜空を彩る大輪の花を見上げている。伸びてちらつく人々の影は、ほんのりと花の色彩を帯びていた。
空の方へと視線を移せば、零奈も思わず息を呑んでしまう光の花束が展開していた。すぐに消えてしまった色たちに、人々のため息が聞こえる。
もちろん、花火はそれで終わるわけではない。色を変え形を変え、幾度も上がる。人々の顔も輝き、惜しむような吐息が続く。その、繰り返し。
何度も見てきた光景ではあるが、昔から全然変わらない。
それを見て楽しむヒトの姿すら、変わっていないようにすら思える。
しかも、ここは山間部だ。都会の喧噪もビルの明かりも無いから、なおさらそう思ってしまうのかもしれない。
「変わってしまった、と思っていたよ」
けれど。
いま上がった一色だけの飾らない素朴な花火は、本当に昔と寸分違わないように見えたから。
「私の思い違いだったのかもしれないね……」
思わず笑いを零してしまうのは、自分が案外未練深いことに気付いたから。
それでも、たまには懐かしいあの日々に思いを馳せるのも悪くない。目を閉じればその光景までありありと思い出してしまいそうだから、それだけは踏み止まるように花火を光を、色を、じっと見て。
季節の巡りに歳月の流れを重ね合わせ、ヒトと共に夏を待つ。
迎えられた夏は、どんな顔をして訪れてくれるのだろう。
大成功
🔵🔵🔵