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『こんなはずではなかったのに』

#UDCアース

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●堕ちた未来を悔いる声
 こんなはずではなかったのに。こんな思いをするために手を伸ばしたのではなかったのに。悔いる声、絶望の声。その嘆きは簡単に恨みへと転じる。
 どうしてこうなったの? 私は悪くなかったはずなんだ。私は助けたかっただけ。だからあんなに、がんばった。
 なのにどうして裏切った? 大蛇を倒せなかった私を村人たちは裏切った。
 憎い。ただただ憎い。私を裏切った者たちに制裁を。幸せを甘受する者たちにとびきりの呪詛を。
 そうしなくては私は浮かばれない。きっとそうしても私は浮かばれない。
 それでもこうしなければ、気が済まぬのだ。

●都市伝説『姦姦蛇螺』
「姦姦蛇螺、という都市伝説を知っているかい?」
 事件と召集した猟兵たちにアメーラは語りかける。姦姦蛇螺、という言葉を聞いて何人かの猟兵は顔をしかめ、もしくは合点したようにうなずき、その他の者は不思議そうに首をかしげていた。
「よくある怪談なのだがね。……かつて村を襲う人食い大蛇がいた。村の巫女は村人たちを守ろうと、単身その大蛇に立ち向かったんだ。隙を突かれて下半身を大蛇に食われても構わず、術を使ってなんとか退治しようと奮闘した。……ここで終いなら、わが身を犠牲にした巫女の美談なんだがねぇ……」
 巫女は死を覚悟して戦った。しかし、下半身を食われたその姿を見て、村人たちは勝てないと思い込んでしまったらしい。逃げだすのならともかく、とんでもない愚行に出た。
「村人は巫女を生贄として差し出した。まだ生きている巫女の両腕を、大蛇に言われるまま切り落とし、飲み込ませた。それで一時は平和になったようだが……巫女に恨まれることは想定していなかったらしい」
 そして生まれたのが『姦姦蛇螺』。巫女を差し出した一家の者含む多くの村人が呪殺され、そしてなんとか封印されたという。彼女は未だ成仏することなく、恨みで目を曇らせ、人々を呪い殺す存在へと変貌してしまった。
「そーんな恐ろしい存在の封印がなんと! うっかり解けた!」
 うっかり解かれてたまるか! という叫びが聞こえてきそうだが、解かれてしまったものは解かれてしまったのだ。なんでも、街のやんちゃどもが度胸試しに祠まで行き、あろうことか封印の印の形を崩してしまったのだ! なにが問題かというと、このままだと姦姦蛇螺が山を下り、人の集う街に躍り出てしまうことだ。
 姦姦蛇螺は視るだけで人々に死を与える危険な存在。街に到達する前に倒さなければ多くの被害者が出るだろう。
「下半身の蛇部分を見たら助からないそうだ。まあ猟兵の諸君はなんとか乗り切れるだろう?」
 エールなのか脅かしなのかよくわからない言葉をかけて、アメーラはグリモアを開いた。
「ひとつ付け加えておくと、姦姦蛇螺に目をつけたのは私たちだけではないだろう。あちらさん……別のオブリビオンが凶悪な姦姦蛇螺に目をつけて、もしくは彼女の境遇に同情して、接触をしてくるかもしれない。怪物同士結託されたらこの上なく面倒だ。その前に、姦姦蛇螺を倒してしまってくれ」


夜団子
 こんにちは、マスターの夜団子です。オープニング閲覧ありがとうございます!

●今回の構成
 第一章 街につく前に姦姦蛇螺を倒そう! めっちゃ呪ってくるぞ!
 第二章 姦姦蛇螺に目を付けたオブリビオンの配下を倒そう。
 第三章 姦姦蛇螺に目をつけてやってきていたオブリビオンを倒そう。

 戦闘メインのシナリオになります。封印を解いてしまったやんちゃたちは街に逃げているので気にしなくて大丈夫です。

 みなさまのプレイングをお待ちしております!
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第1章 ボス戦 『『都市伝説』姦姦蛇螺』

POW   :    巫女の術
【巫女が大蛇退治で使用していた様々な術】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    サマエルポイズン
【対象に自身の姿を視認させる事】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【相手の寿命を削り、急速に疲労させる呪詛】で攻撃する。
WIZ   :    メドゥーサ・ボディ
【対象が自身の姿を視認する度に、全身】から【対象の四肢を麻痺させる強烈な呪詛】を放ち、【身体機能を低下させる事】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はアララギ・イチイです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

クンツァイト・スポデューメン
封印が解かれちまうとこまでが都市伝説だもんなぁ、そりゃぁこうなるよなぁ!っかー、骸の海ってのは面倒っちぃねぇ。ま、いいさ。やることは変わらん。



「漏電」でアンタの呪いをブッ壊すッ!(属性攻撃、気合)
所詮は呪いを再現した何かに過ぎねぇんなら、アタシ程度で十分なんだよッ!

怒りも憎しみも、汲み上げれば消えていく感情だ。いつまでもぐだぐだぐずぐず、ちゃんと晴らすべき時に恨みを晴らせねぇからアタシらにボコされんだよッ!力は振るう範囲を定めて振るえッ!それをどんな理由であれ超えた瞬間、暴力にしかなんねぇんだよッ、ボケッ!



 言葉にならない呪詛を吐きながら、姦姦蛇螺は山を下る。収まらない恨みを胸に、ただ殺戮することだけを目的に。
 しかし、這いずる姦姦蛇螺の前にクンツァイト・スポデューメン(キミと歩む英雄譚・f18157)が立ちはだかった。
「封印が解かれちまうとこまでが都市伝説だもんなぁ、そりゃぁこうなるよなぁ!」
 電気を纏ったクンツァイトが姦姦蛇螺の瞳に映る。ぐりんと向いたその瞳には裏切り者へ向けられるべき恨みが籠っていた。
「おーおー怖い怖い。確か、視ることで呪われるんだっけ?」
 クンツァイトの言葉に応えるように姦姦蛇螺はその身体を大きく持ち上げる。悪霊と化した六本腕の上半身と、蛇と化した下半身。それらすべてを視たものは助からない、というのが伝説だ。それへなぞらえるように、姦姦蛇螺は呪詛を放った。
「だけどな、所詮呪いを模した何か、なんだろ? それならアタシ程度で十分なんだよッ!」
 手に宿した電撃を、ビームのように姦姦蛇螺へたたきつける。打ち付けられた特殊な電撃はその全身を走り回り、その呪詛を破壊した。人間の声とは思えぬおぞましい絶叫が山道に響き渡る。
「怒りも憎しみも、汲み上げれば消えていく感情だ。いつまでもぐだぐだぐずぐず、ちゃんと晴らすべき時に恨みを晴らせねぇからアタシらにボコされんだよッ!」
 振りかぶられた拳が、姦姦蛇螺の体に沈む。よろけた相手に容赦なく、クンツァイトは顔面目掛けて拳を振るった。
「力は振るう範囲を定めて振るえッ! それをどんな理由であれ超えた瞬間、暴力にしかなんねぇんだよッ、ボケッ!」
 怒りをこめた一撃は、姦姦蛇螺を押しとどめるのに十分すぎる威力だった。

成功 🔵​🔵​🔴​

エーリャ・シンデレラベル
……私は、それでもヒトを信じているつもりよ。だから、貴方を許すわけにはいかないの
私の事も、許してくれなくていいから

「悪徳:茨姫の呪い」が貴方の呪いを抑え込めるか、試す価値はあるのかしら……。何にせよ、それが貴方から生じるモノならば、閉じ込めておけるはずだけど、私は未熟だから…どうかしら(祈り、呪詛、破魔)

ペス、レギオン、辺りを探っておいて。私の眼は、次の戦いが視えている……。避けられない不幸だわ、きっとね……。(情報収集、暗視、聞き耳)



 怨嗟の声が、金切り声になって響き渡る。
 許せない。どうして私を。私は助けようとしていたのに。
「……私は、それでもヒトを信じているつもりよ。だから、貴方を許すわけにはいかないの。……私の事も、許してくれなくていいから」
 静かな声と共にエーリャ・シンデレラベル(邪眼の魔女・f17836)が姦姦蛇螺の前に歩み出た。その金の目には陰鬱な光が宿っている。
 姦姦蛇螺の身体を、魔女の茨が縛り上げた。姦姦蛇螺は依然金切り声をあげているがその声は呪詛とは相成らず、ただの不快な叫びとして響き渡る。全身から放たれていたはずの呪いは茨によって、その効果を完全に封じ込められてしまった。
「あら……試してみるものね……私は未熟だから、閉じ込められるか不安だったけれど……」
 ぎり、ぎりと茨が姦姦蛇螺の体に食い込んでいく。けたたましい悲鳴と共に姦姦蛇螺は蛇の下半身を振り回すが、むなしく地を叩くだけであった。そんな彼女を一瞥して、哀し気に眉を下げた。
「ペス、レギオン、辺りを探っておいて……私の眼は、次の戦いが視えている……」
 彼女の使い魔、一匹と一羽がその場を発った。エーリャを守るようにそばに控えていた彼らは新たな敵を警戒して、その場をぐるぐると巡る。
 レギオンの鳴き声が姦姦蛇螺の絶叫と共に山の空へと響き渡った。

成功 🔵​🔵​🔴​

碧海・紗
アドリブ歓迎


人は弱い生き物。
だから手のひらを返して
易々と裏切る。

生贄にされるとは、思ってなかったでしょうに。

敵を見てしまう前に眼鏡を外して
ぼんやりとした視界の中
目が悪くて都合がいいこともあるんですねぇ…

大体の位置は第六感で
周囲に甘い香りを放ち暗香発動
空中戦も用いて攻撃を交えながら
つい言葉を紡いでしまうのは
彼女の思いも受け止めたい、なんて
偽善かもしれないけれど。

もう、良いんじゃないかしら。
あなたは村人を呪殺したのでしょう?

…村を、村人を。
守る為に命を掛けた巫女様
これ以上は、村を襲う大蛇と同じだわ…

せめて、ここで終わらせて。
安らかに眠って頂きましょう

…来世では、あなたの思いが
報われますように。



 人は弱い生き物だ。群れ、社会を形成することでしか身を守れない。そしてまた、心を持つがゆえにその脆弱性も抱えている。
 怖い、恐ろしい、死にたくない。そんな感情が弱い人間の掌を返させ、易々と裏切らせる。きっと、巫女を差し出した村人たちもそうだったに違いない。
「目が悪くて都合がいいこともあるんですねぇ……」
 姦姦蛇螺を目撃する前に眼鏡をはずした碧海・紗(闇雲・f04532)は、そのぼやけた視界で相手を捉えた。位置は第六感でカバーする。紗はその黒翼を広げて、空へと舞いあがった。
 手の届かぬ敵対者に姦姦蛇螺は怒りの形相で腕を振るう。おそらく呪いも発動しているのだろうが、視認できない紗相手では条件を満たせない。彼女の特性はほとんど封じられてしまっていた。
「……生贄にされるとは、思ってなかったでしょうに」
 ぽつり、と紗がつぶやく。その瞳には同情と哀れみの色が濃く映っている。紗には姦姦蛇螺でさえ、否、姦姦蛇螺となってしまった巫女の思いも、受け止めてやりたいという思いがあった。しかし、妖異と堕ちた彼女に言葉は届かない。
(……偽善、かもしれないけれど)
 それでもやるせない。
 紗は大きく翼を広げ、甘い毒香を周囲に放った。姦姦蛇螺を包み込んだそれは彼女を苦しめるのには十分すぎる威力で、姦姦蛇螺は体をねじりながら金切り声をあげている。
 紗の言葉は続く。
「もう、良いんじゃないかしら」
 姦姦蛇螺はただ、苦しそうにのたうち回っている。その口からは呪詛が溢れていた。
「あなたは村人を呪殺したのでしょう?」
 怒りに、恨みに満ちた表情で、紗へその腕を伸ばす。
 憎い。憎い。お前が憎い。自由なその翼が憎い。私の奪われた自由を持つ、お前が憎い。
 姦姦蛇螺の双眸から赤い液体が流れ落ちていく。涙のようなそれは、彼女の嘆きを表しているのだろうか?
「……村を、村人を。守る為に命を掛けた巫女様。これ以上は、村を襲う大蛇と同じだわ……。それ以上は堕とさせない」
 恨みに囚われたままでは眠れない。眠れない彼女は恨みつらみを積もらせるほかない。彼女にはまだ先がある。堕ちた未来をリセットして、次の命で幸せになる権利があるのだ。
「アナタをここで、終わらせて。一度安らかに眠ってください。……来世では、あなたの思いが報われますように」
 充満した暗香が姦姦蛇螺の体を蝕んでいく。紗の思いを乗せたその香りは、じわりじわりと姦姦蛇螺を安息の眠りへ誘っていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

駆爛・由貴
オイオイ、あのねーちゃん完全にブチ切れてるじゃねーか
ここでなんとか食い止めねーとだな

オンモラキとバサンを展開
俺もミストルティンを装備して遠距離から攻撃
デウス・オデヲンからパンクなサウンドをガンガン鳴らして呪詛耐性を上げるぜ
呪詛なんてーのは結局は後ろ向きの恨み言だ
そんなのは鬱屈した不満すらも前進するための力にする音楽のパワーで塗り潰すぜ!

そのままUCを発動
眼ではなくゴーグルのセンサーで場所を確認してロケットを打ち込む
中身は強力な液体窒素だ
蛇相手ならこいつは効くぜ
ついでに頭も冷やしな!

いつまでも恨み続けんのはしんどいだろ、ねーちゃん
だから、せめて俺達がその恨みを止めて、眠らせてやるよ

アドリブOK



 理不尽な話は、眠くなるほど聞き飽きた。貧民街ではそんな話、聞きたくなくとも耳に入る。そこで腐ってしまうのかどうにかあがくのかは本人次第。前進する力を手に入れるか、死してなお後ろを見続けるのか。手を差し出してくれるほど、駆爛・由貴(ストリート系エルフ・f14107)の知る世界は優しくなかった。
「だからこそ、俺は手を出してやろうじゃん」
 猟兵たちとの戦闘を続ける姦姦蛇螺の前に由貴は躍り出た。彼の姿を見つけた姦姦蛇螺は標的を切り替え、雄たけびを上げながらその腕を振り回す。ひょいひょいと避けた由貴は体に走る妙な痺れに、眉を寄せた。
「オイオイ、あのねーちゃん完全にブチ切れてるじゃねーか。妙な呪いまでしてくるし、ここでなんとか食い止めねーとだな」
 ピアス型の端末から流れるパンクな音楽が、由貴を奮い立たせる。同時に二つの自律ポットを展開し、ビームとライフルの銃弾で姦姦蛇螺の周りを打ち砕けば、金切り声をあげて姦姦蛇螺は後ろへ下がった。そうして距離を取ったところで由貴は弓を構える。
「呪詛なんてーのは結局は後ろ向きの恨み言だ。そんなのは鬱屈した不満すらも前進するための力にする音楽のパワーで塗り潰すぜ!」
 ぎり、と引き絞ったそれを打ち放てば弾幕の合間を縫って姦姦蛇螺へ迫る。魔法の矢はその威力を殺さずに、姦姦蛇螺の脇腹へと突き刺さった。
 姦姦蛇螺の悲鳴は、不協和音となって山道へ響きわたる。蛇の下半身を叩きつけ、のたうちまわる彼女に容赦なく由貴は追撃する。
「逃げられやしねぇぜ? 派手に踊りな!!」
 ゴーグル越しに見えた姦姦蛇螺は憎しみを滾らせた鬼の形相だった。そんな彼女に誘導レーザーを当てる。
「蛇ってのは自分で体温を調節できねぇんだよな? 大蛇だろうが巫女だろうが、下半身は蛇なんだから、これはよく効くだろ! ついでに、頭も冷やしな!」
 大量のペンシルロケットが由貴の背後から打ちあがる。その中に込められたのは液体窒素。それは触れたものを凍り付かせ、より冷やす。普通の蛇ならば動きを止めて、そのまま召されてしまうだろう。
「……いつまでも恨み続けんのはしんどいだろ、ねーちゃん。だから、せめて俺達がその恨みを止めて、眠らせてやるよ」
 自分で止められなくなったなら、その手伝いをしてやる。痺れ動かなくなった下半身を引きずる彼女に、由貴はミストルティンを向けた。

成功 🔵​🔵​🔴​

メグレス・ラットマリッジ
【ブットバース】からこんにちは

嘗ての彼女がそうしたように、私も人の脅威を取り除かねばならない。
今の彼女がそうであるように、目的を無くしては生きられないから。
今度こそ冥府へ辿り着けるようにその恨み辛みごとまとめてぶっとばしましょう。

動くときは基本的に木々に隠れて、相手の位置は聴覚を頼りに大体を把握します。
『樹木を伐採して押し潰す』『UCによる無差別電撃』『呪詛耐性を頼りにして開眼、武具によるマヒ攻撃』などの方法で動きを止め、他の猟兵をサポートします。

……呪詛耐性は言うなれば『もう24時間寝てないから逆に眠くないぜ!』的なやけくそ耐性なのであまり頼りたくはありませんね!



 嘗ての彼女がそうしたように、私も人の脅威を取り除かねばならない。
 メグレス・ラットマリッジ(襤褸帽子・f07070)は目を伏せ、山の木々に隠れて耳を澄ませていた。大蛇の下半身が地面を擦る音を頼りに彼女は姦姦蛇螺を追う。
 メグレスは、巫女が化け物と成り果てた今のように、目的をなくしては生きられない。だから姦姦蛇螺を討つ。そして無力な人々を守る。その決意を胸に、懐を叩いて手斧を取り出した。
 メリ、メリメリメリ……! 音を立てて樹木が折れる。またひとつ、またひとつと轟音を立て始め、根本から折れ倒れていく。突然起きた異変に姦姦蛇螺の進みも止まり、警戒するように周囲を見渡していた。それに見つからぬようメグレスは森に溶け込み、またひとつ樹木を切り倒す。
「……あなたは、死ぬこともできずにひとり取り残されたのね」
 ぽつり、とつぶやいたメグレスの言葉は倒れ行く木々の音でかき消された。ついに倒木で閉じ込められた姦姦蛇螺。その背後を取るように姿を現し、メグレスはその意思を口にした。
「なら、今度こそ冥府へ辿り着けるように、その恨み辛みごとまとめてぶっとばしましょう」
 姦姦蛇螺が振り向くより早く、彼女は雷杖を抜く。それを強く地に叩きつけ、高らかに叫ぶ。
「ゴートゥヘル!!」
 地を這う電撃が、倒木で作られたリング内をめちゃくちゃに走り回る。姦姦蛇螺に逃れる場所などなく、悲鳴とともに焼け焦げた匂いがあたりへ漂い始めた。
「多少なら……耐える!」
 カッと開かれた赤茶色の瞳が姦姦蛇螺を捉えた。彼女を視界に入れた途端に体を異様な倦怠感と鈍い痛みが襲う。
 辛いことには変わりがないので、耐性は頼りたくなかったのですが……。そんな思いを胸に、メグレスは素早く雷杖を姦姦蛇螺へ押し当てる。腹を突かれた姦姦蛇螺は一瞬怯み、その隙に全力の電撃を注ぎ込んだ。
 焦げていた彼女の体がいっそう痺れ、カチカチと歯を打ち合わせる音がする。
(う……いやな能力ですね。見るだけで呪いを与えるとは……)
 額を押さえふらりとよろめきかけたメグレスは、また姦姦蛇螺と距離を取り、森の中へと消えた。やけくそのような耐性なのでダメージ自体は通る……。これ以上無理はしたくない。
 メグレスは麻痺した姦姦蛇螺を狩る他の猟兵のサポートに専念する戦法に切り替え、また耳を澄ませはじめた。

成功 🔵​🔵​🔴​

ボアネル・ゼブダイ
裏切られ、恨みの余り安らぐこともできず
己が最も嫌悪していたはずの悪へと堕ちたか…
哀れな魂ではあるが、野放しにはできんな

敵UCに対しこちらもUCを発動
大量のインプ達で包むように取りつかせ攻撃
直接視認せずとも敵の位置が分かるようにする

貴様も魔を払う者であったならば知っていたはずだ
どんなに深い恨みや悲しみを持つ者も
いずれはそれを全て時の川へと流し、在るべき場所へと還らなければならないと言う事を

防具に祈りを込め、己の呪詛耐性を挙げて対峙
群がるインプ達の間を縫うように武器による攻撃を与える

眠れ、退魔の巫女よ
貴様が恨みを晴らすべき者達は、すでにその報いを受けた
これ以上、罪を重ねることもあるまい

アドリブOK



 邪と聖。その二つは本来交わりうるものではない。聖の立場にあった巫女と、邪たる大蛇は出会う前から対立する運命だったのだろう。しかし巫女は庇護する村人たちに裏切られ、邪へと堕ちた。ボアネル・ゼブダイ(Livin' On A Prayer・f07146)にとってはそれが悲しくてならない。
 邪と聖が手を取りあえる、という生きた証左である彼は黒剣を手に姦姦蛇螺を阻む。その赤い瞳は堕ちた彼女を映さない。
「裏切られ、恨みの余り安らぐこともできず、己が最も嫌悪していたはずの悪へと堕ちたか……哀れな魂ではあるが、野放しにはできんな」
 ボアネルを中心に飛び立ったインプたちが各々の武器を手に、姦姦蛇螺を取り囲んだ。悪意の化身である彼らはそれでも主に従順で、呪いを受けてもなお彼女に立ち向かっていった。
「ギギッ」「ギャァッ」「ア゛ー!!」
 呪いを受け体を痺れさせ、地へと落ちるインプたち。それでも残った者が前に出、その間に落ちた者がその身を癒してまた飛び立つ。
「貴様も魔を払う者であったならば知っていたはずだ」
 邪の力を扱いながら聖の立場を説く。それは混血たる彼に許された特権であり、その特殊な立場ゆえか、正気を失っているはずの姦姦蛇螺がぴたりと動きを止めた。
「どんなに深い恨みや悲しみを持つ者も、いずれはそれを全て時の川へと流し、在るべき場所へと還らなければならないと言う事を」
 手を組み、神へ祈りを。聖者の祈りを込めた漆黒の衣は彼に呪詛へ抗う力を与えた。
 開かれる紅の瞳。落ちくぼんだ姦姦蛇螺の両眼は彼をじっと見つめ、互いの視線が交わる。堕ちた邪とボアネルの聖が確かに通じあった。
 とっ、とボアネルが地を蹴る。一蹴りで距離を詰めたボアネルは父の形見である黒剣を構え、一閃。姦姦蛇螺の胸へと突き刺した。
「……眠れ、退魔の巫女よ。貴様が恨みを晴らすべき者達は、すでにその報いを受けた。これ以上、貴様が罪を重ねることもあるまい」
 驚くことに、姦姦蛇螺は避けることも抵抗も、しなかった。彼女は終わらせて欲しかったのだろうか。それともボアネルの言葉が届いたのだろうか。
 悲劇の巫女の成れの果ては、灰となって風に攫われていく。その行く末を、ボアネルはじっと目に焼き付けていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『縁切りカレン』

POW   :    カレンにちょーだい?
【 大振りな糸切り鋏】が命中した対象を切断する。
SPD   :    あなたもカレンの家族だよ?
【ぬいぐるみが持つ、縁を繋げる赤い糸】が命中した対象にルールを宣告し、破ったらダメージを与える。簡単に守れるルールほど威力が高い。
WIZ   :    みんな、助けて!
【回収した縁に連なる家族】の霊を召喚する。これは【包丁などの刃物】や【フライパンなどの鈍器】で攻撃する能力を持つ。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 灰となり、消えていった姦姦蛇螺。それを見守っていた猟兵たちの背後に別の存在が近寄ってきた。
「間に合わなかった」「間に合わなかったね」「ママ悲しむかな」「ママ悲しむかも」
「カレンの家族になってもらおうと思ったのに」「裏切られた気持ちはよくわかるもの」
「カレンの前のパパはカレンを殴った」「カレンの前のママはカレンをいない子扱いした」
「裏切りだよね」「裏切りだよ」「未来が欲しいね」「楽しい家族との未来が」
「ねぇ」「猟兵さんたち」
「「カレンたちにその幸せな縁をちょうだい?」」
 幼子の姿をしたカレンたち。彼女らも立派なオブリビオンだ。かつて両親に虐待されて殺された彼女たちは幸せな縁を欲しがっている。その一環として、同じく裏切られた姦姦蛇螺を、家族に迎え入れようとしたらしい。
 彼女たちのいう家族は、本当にただの家族なのだろうか? カレンたちの呼ぶ「ママ」というのも意味深だ。「ママ」が本当の黒幕なのだろう。
 奪われたくない縁がある者はお気をつけて。君にとって大事な縁であるほどカレンたちは執着して、奪おうとするだろう。幼子だと思って侮るべからず。彼女の攻撃は鋭く、重い。
 カレンたちを倒してしまえば、裏に潜む「ママ」は姿を現すだろう。危険な元凶から断つためにも、彼女たちと戦い、殲滅しよう。
駆爛・由貴
おーおー今度は随分と大量に出てきやがったか
悪さするガキ共にはお仕置きだな

オンモラキとバサンを展開
砲撃と狙撃を交えつつ高速で動き回って相手を翻弄し敵陣を一気にかき回す
敵が混乱しだしたらこちらもミストルティンを構えて連携するように攻撃だ
防具に魔力を込めて身を軽くしたら高速で動いてあいつらが捕まえられないように動き回る

家族なんだろ?
じゃあ俺を助けてくれよな!

敵が霊を召喚したらこちらもUCを発動
電脳ゴーグルで霊体やカレン本体を複数体ハッキングしてお互いがお互いを攻撃しあうようにしてさらに敵陣を引っ掻き回すぜ

ガキ共は寝る時間だぜ
今度はちったぁマシな家で目が覚めるように祈っておいてやるよ

連携・アドリブOK



 捨てられた子どもたちはたくさん見てきた。殴られ殺された子も見た。だからこそ恨みのまま彷徨うなら、姦姦蛇螺と同じく眠らせるだけだ。
「おーおー今度は随分と大量に出てきやがったか。悪さするガキ共にはお仕置きだな」
 駆爛・由貴(ストリート系エルフ・f14107)のオンモラキとバサンがその銃口をカレンたちに向ける。身を寄せ合って猟兵たちへと対峙する彼女たちの反応は様々だ。二つの銃口におびえるように震えたり、むしろ堂々と立ち向かって見せたりと彼女たちの中でも性格は様々らしい。虐待児がオブリビオン化したものが彼女たち、という話もあながち嘘ではないようだ。
「悪ィが、手加減はしねェぞ!」
 オンモラキとバサンを連れて地を跳んだ由貴は、その二つの銃口から雨のような銃弾を降らせた。カレンたちが対策をする前に移動し、逃げ惑う彼女たちへ弾を打ち込んでいく。陣形もなにもない彼女たちはどんどん混乱を極めていき、蜘蛛の子を散らすように駆け始めた。
 魔力が籠った衣服は由貴の体を羽のように軽くしており、闇雲に駆け寄るだけのカレンに捕まるはずもない。焦れた一人のカレンが『家族』へ語り掛け始めた。
「あのひとがカレンをいじめるの! みんな……カレンを助けて!」
「おーおー来やがったな!」
 カレンの嘆きに応えて彼女のまわりの空間がぐにゃりと歪む。そこから現れた対の幽霊が言葉にならない唸りをあげながら由貴を睨む。家族と呼んだそれは彼女自身の両親のようには見えない。己の縁の悪さを憎み、愛された子を妬み、その縁を奪って配下としたのならば彼女はすでに立派なモンスターだ。
「へぇ……そいつら、家族なんだろ? じゃあ俺を助けてくれよな!」
 電脳ゴーグルをつけた由貴はそれ越しに幽霊とカレンたちを見る。機械だけじゃなくナマモノ、幽霊までハッキングするなんて、我ながらエグイ技だ。そう由貴はにやりと笑う。
「きゃぁッ!?」
 家族を呼び出したカレンが鋭い悲鳴をあげる。なんと彼女の『家族』であるはずの幽霊がカレンを攻撃しているではないか。その手に握られた包丁やフライパンが、カレンを襲う。
「なんで! なんでまたカレンを裏切るの!?」
「裏切るもなにも、お前の家族じゃねェだろ。ひとから奪ってもお前のものになるわけじゃねぇんだよ」
 ガチャ、とミストルティンを構える。涙を流しながら幽霊に殴られ続けるカレンはその大きな瞳をより開いて、絶望を映していた。
「ガキ共は寝る時間だぜ。……まあ、今度はちったぁマシな家で目が覚めるように祈っておいてやるよ」
 ミストルティンの魔法の矢がカレンの胸へと突き刺さる。泣き叫びながら、ひとりのカレンが消えていく。ハッキングされていたはずの幽霊がなぜか一度由貴を見つめ、なにかをつぶやいて消えていった。
 その口が「ありがとう」と動いたように見えたのは由貴の見間違いではなかっただろう。

成功 🔵​🔵​🔴​

ボアネル・ゼブダイ
愛される事もなく世を去った哀れな子供達のなれの果てか…
幸せな縁を欲しがる気持ちはわからないではない…が、人々に危害を加えるというのならば容赦はせん

黒剣グルーラングで攻撃
過去の遺物を喰らう蛇で虐待死したカレン達の過去を喰らいながら倒す

その記憶ごと貴様らを断ち切る
未練なく逝けるようにな

霊魂が現れ攻撃を始めたらこちらもUCを発動
聖槍で天国の門を描き、霊魂も巻き込むようにカレン達を武装した天使達で攻撃
さらに自分はその上に立ち、己の能力を高めて一気に敵を殲滅していく

理不尽に虐げられ、幸せすら知ることなく散っていった幼子達よ…
せめて、この天国の門で貴様達を骸の海へ還してやろう
安らかに眠れ

アドリブ・連携OK


エーリャ・シンデレラベル
……子供を愛せない親、ね。でも、終わったハナシ、終わったお話なのよ。
思う所がないとは言わない、けれど、……言い訳ね。
UC「戒告・迷い路の双子」を起動。遊んできなさい、あの子たちが遊んでくれるそうよ。……えぇ、好きに遊んでおいで。

呪われた私は、それでもパパとママに愛された、愛してくれた
私とあの子の違いは何?
私達をどうしたいの、神様……



 愛を得られなかった子どもたち。故に幸せな縁を求め刃を向ける。オブリビオン同士でありながら姦姦蛇螺を家族として迎えようとした彼女たちは実際、姦姦蛇螺と同じく恨み妬みで行動しているのだ。
 その境遇は哀れに思える。だが許されるかというのは全くの別問題だ。
「愛される事もなく世を去った哀れな子どもたちのなれの果てか……」
 哀れな彼女たちを一瞥しながらボアネル・ゼブダイ(Livin' On A Prayer・f07146)は黒剣を抜いた。その行動から容赦などする気がないことは明白である。しかしその表情は曇っており、ためらいが見える。
「……あら……斬れるの? 同情しているように見えたわ……」
「確かに、幸せな縁を欲しがる気持ちはわからないではない……が、人々に危害を加えるというのならば容赦はせん。そのための剣だ」
「そう……」
 答えに応じたのか、それとも偶然だったのか。エーリャ・シンデレラベル(邪眼の魔女・f17836)はその手のベルを鳴らしながらボアネルの横に現れた。
「……子供を愛せない親、ね。でも、終わったハナシ、終わったお話なのよ」
 そこに侍るは少年少女。各々の武器を構えた彼らは無表情でカレンたちを見つめている。
「貴様こそ、同情しているように見えるが」
「……思う所がないとは言わない、けれど。……言い訳ね」
 ふい、とエーリャが手を振ると、少年と少女は数歩前に出た。臨戦態勢となった彼女たちは主の言葉をただ待っている。
「遊んできなさい、あの子たちが遊んでくれるそうよ。……えぇ、好きに遊んでおいで」
 振り返った二人にうなずき、カレンたちを指さすエーリャ。その瞬間、少年と少女がカレンたちの元へととびかかっていった。
「手助けは不要か?」
「どうかしら……一応、借りておくわ……」
「まあ、要らぬと言っても貸すつもりだったがな」
 黒剣を構え少年と少女の後に続いたボアネルはその剣を存分に振るう。剣に巻き付いた蛇の瞳が輝き、爛々と光を放つ。
「グルーラング!」
「いやぁッ! へび、へびはきらい!!」
 過去の遺物を喰らう蛇。それがカレンたちへ容赦なく襲い掛かり、悲惨な過去ごと彼女たちを喰い散らす。最初こそ悲鳴をあげたカレンのひとりだったが、過去を喰われ眠ったように消滅してしまった。
「その記憶ごと貴様らを断ち切る。未練なく逝けるようにな」
「っ……せっかく家族の縁を手に入れたのに……どこまでもいじわるをするのね!」
 離れていたひとりのカレンが怒りの形相で声をあげる。それに反応するように空間は歪み、縁を奪われた家族と呼ばれる亡霊たちがその身を現した。彼らはカレンを守るように前へ躍り出、ボアネルたちに刃を向ける。
「やはり死霊を使役するか……ならば、相応の技で応えよう」
 ボアネルは黒剣を戻し、取り出した聖槍でなにかを描き始める。天国の門と言われるそれは、カレンたちの行くべき本来の場所へとつながっていた。
「理不尽に虐げられ、幸せすら知ることなく散っていった幼子達よ……。せめて、この天国の門で貴様達を骸の海へ還してやろう。安らかに眠れ、そして在るべき場所へ送り還そう!」
 召喚された天国の門が神々しい光を漏らしながら開かれていく。内に控えていた天使たちは聖なる武器を手に、次々と門から飛び出していく。カレンとその家族を取り囲んだ彼らはその力で彼女たちの殲滅を図った。

「……神話のごとき光景ね……」
 離れた場所からしみじみとひとりごち、エーリャは手を組んだ。そうして祈りを捧げながら、邪眼の魔女は悲し気につぶやく。
「呪われた私は、それでもパパとママに愛された……愛してくれた。私とあの子の違いは何?」
 その問いに答えはない。エーリャも答えを求めてはいない。だが、どうしても口から零れ落ちたのだ。
「私達をどうしたいの、神様……」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

クンツァイト・スポデューメン
縁切りねぇ、面白れぇ、やって見ろッ!アタシとダチの縁が、その鋏で切れるってんならなッ!
どんな理由も、誰かをブン殴る正当な理由にはなんねぇのさ。だから、アタシが、今から…テメーを不当にブン殴るッ!(属性攻撃、麻痺攻撃)

「急速充電」で強力な電気を纏ってまとめて昏倒させてやんよ。オシオキにしちゃぁちと強烈かもしれねぇが、ま、相手が悪かったな!(麻痺攻撃)



 縁とはなにも、家族との絆だけを指すものではない。戦場を共にした仲間、尊敬できる誰か、同じ道を歩む友人。それにも恵まれることなく死んでしまった彼女たちの前世は、確かに同情できる。が。
「同情したからって納得できるわけじゃねぇんだよ!」
 カレンたちの前に雷光のようにクンツァイト・スポデューメン(キミと歩む英雄譚・f18157)が現れる。雷でありながら嵐のようなヒーローは、哀れな彼女たちに対して一切の容赦をする気がなかった。
 突然現れた彼女にカレンたちはぱちぱちと目を瞬かせる。じい、と凝視する彼女たちの表情は異様だった。皆一様にクンツァイトへ視線を突き刺している。
「……あなた、すてきな縁をたくさん持っているのね」
「いいなぁ、いいなぁ、すてきなおともだち」
「そんなにあるならカレンにくれてもいいと思うの」
「いいよね?」「いいよね」「うん、もらおう!」
 少女たちの空虚な声がクンツァイトの耳にも届く。しかしそんな言葉を聞いてなお、クンツァイトは変わらず笑っていた。
「縁切りねぇ……面白れぇ、やって見ろッ! アタシとダチの縁が、その鋏で切れるってんならなッ!」
 ぎらりと日光を浴びて輝く大鋏。その刃はクンツァイトごと縁を真っ二つにしようと彼女を狙っている。甘い飴をがりりと噛んで、クンツァイトは口端をあげた。
「アタシに向かって鉄の獲物を使うなんて、いい度胸だなぁオイ!?」
 彼女を切断せんと振り下ろされた鋏が地面へめり込んだ。ぎりぎりで避けて見せたクンツァイトは電撃を帯びた拳を大きく振りかぶる。電流を存分に流しながら鉄の鋏を横に殴った。
「う、ぁぁぁぁぁッ!!?」
「雷注意ってなぁ?」
 バチン、と音を立てて一人のカレンが弾かれる。鋏を捨てた彼女は苦しそうに胸を押さえているがまだ立っていた。
「どんな理由も、誰かをブン殴る正当な理由にはなんねぇのさ。わかったか? だから、アタシが、今から……テメーを不当にブン殴るッ!」
 ぐるぐると腕を回し、無事なカレン目掛けて地を蹴ったクンツァイトはその拳を存分に振るう。当たれば大ダメージ、軽傷でも麻痺は免れない。縁を狙って狩る側だったはずのカレンたちはいつしか逃げ惑っていた。
「知ってるか、雷ってーのはめちゃくちゃ規模がでけー静電気なんだってよ」
 カレンたちの返答など待たず、クンツァイトはその拳を天へ振り上げる。轟く電撃は雲をかき混ぜ、みるみる黒く染めていった。雲からはけたたましい轟音が響き始める。そしてついに、まばゆい光が天を割った。
「まとめて昏倒させてやんよ。オシオキにしちゃぁちと強烈かもしれねぇが、ま、相手が悪かったな!」
 雷を受け、パワーアップしたクンツァイトがその拳をぱきぱきと鳴らす。雷におびえていたカレンたちも慌てて立ち上がり、後ずさる。逃げなければ自分たちの命が危ういことを直感していたのだ。
「逃がすかよ。たっくさん、遊ぼうぜ?」
 雷のように苛烈なヒーローが、カレンたちを殲滅すべく襲い掛かった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『裏本『落窪凋落伝』おちくぼの君』

POW   :    忘れてしまったのですか?
自身の装備武器を無数の【忘れてしまった過去の記憶を蘇らせる桜】の花びらに変え、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD   :    あなたの心には何が棲んでいますか?
【貴方様の事をずっとお待ちしておりました】から【蓄積してしまいました強い寂寥と僅かな憎悪】を放ち、【負の感情で相手の心を激しく乱すこと】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ   :    あなたの未来はどれですか?
【あったかもしれない未来を見せる不可視の霧】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠紫丿宮・馨子です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「ママ……ごめんなさい、ママ……」「負けちゃった……家族になれたのに……」
「……いいのよ、カレンたち。またどこかで会いましょう?」
 消えゆくカレンたちを慈しむように黒髪の女性が膝をつく。十二単が鈍い布刷りの音を立て、その手に持つ扇がしゃらりと開かれた。
「新しい仲間を迎えにこようと思ったら……つくづく私たちの邪魔が好きな方々ですね……」
 儚げな美しさをたたえるその女性はその顔を憎しみに歪め、猟兵たちを睨みつける。その怒りは猟兵たちを超えて誰かに向けたようであり、暗く深いものだった。
「あなた方はわからないのね? 誰かに裏切られた苦しみが。愛した故に憎しむ気持ちが!」
 かつての健気なおちくぼの君の姿はない。未来を歪められた彼女は自身の在り方まで歪めてしまった。苦しみを持つ彼女は同情できる者を取り込み、オブリビオンの群を作っていたようだ。
「いいわ、わからせてあげる……いいえ、思い出させてあげましょう」
 ぱちん、と扇を閉じたおちくぼの君はその憎しみから悪夢を生み出す。猟兵たちの記憶をまさぐる悪夢は猟兵たちを強制的に飲み込んだ。
 一人は己の過去を思い出し、一人は負の感情を植え付けられ、一人は絶望の未来を幻視する。彼女の悪夢を打ち勝つには強い意志が必要だろう。

【PL情報】
 見る悪夢(精神攻撃)はオブリビオンの反撃に対応します。選んだ悪夢と対応するUCを選んでください。
 また、プレイングとプロフィールを見てリプレイを書くので悪夢の内容を指定したい場合、プレイングでの指定をよろしくお願いします。
 もちろん普通に戦っていただいても構いません。その場合悪夢に打ち勝つプレイングをお願いします。
駆爛・由貴
ハッ!おちくぼだか荻窪だか知らねーけど俺も仕事でな
テメーが好き勝手やってると大量に死人が出るんだわ!

まずはベロボーグを装備
ナイフを使った斬撃で敵を攻撃

※悪夢
貧民街での過酷な過去
野良犬に混じって残飯を漁り
理不尽に殴られ痛めつけられた無力な過去
そして、棄てらず幸せな生活を送っている未来の自分の幻覚
そこには両親に愛されたはずの自分が…

んな夢は見飽きたぜ!

UCを発動!
圧縮空気を満載したロケットを炸裂
さらに強力な治癒の薬液を満たしたロケットも炸裂させ
癒しの強風で霧を吹き飛ばす
復帰したらオンモラキとバサンを呼び敵に一斉射撃

過去から来て過去に固執するお前には
未来に向かって歩く奴らの力は理解できねぇだろうよ



「ハッ! おちくぼだか荻窪だか知らねーけど俺も仕事でな。テメーが好き勝手やってると大量に死人が出るんだわ!」
 テメーの過去なんか興味もない、と言わんばかりに駆爛・由貴(ストリート系エルフ・f14107)は啖呵を切る。対しおちくぼの君はただただ目を細めるばかり。
「あなたにも苦しみの記憶はあるでしょうに……。それとも、忘れてしまったのかしら?」
「うるせぇな、勝手にわかった気になってんじゃねーよ!」
 美しい刃を持つナイフ、ベロボーグを抜いて由貴はおちくぼの君に襲い掛かる。貧民街仕込みの戦闘術はあっという間におちくぼの君との距離を詰め、彼女を斬りつけた。しかし、その軌道はむなしく空を切る。
「さぁ、思い出してごらんなさい……」
 空ぶった由貴を悪夢を見せる霧が包んでいく。遠くから聞こえるおちくぼの君の声を最後に、由貴は悪夢へと落ちていった。

 ……鼻のひん曲がる、腐った残飯の匂い。周囲から漏れる病んだ者のうめき声を聞きながら、痩せこけた野良犬と共に残飯を漁る。味なんて期待していない。とにかく食べなければ自分たち孤児に明日はやってこないのだから。
 残飯は形が残っていれば儲けもの、腐っていてもとりあえず口に入れる。本能が毒だと言わない限り吐き出しもしない。残飯すら他の孤児や野良犬と取り合いな状況だ。腹がいっぱいまで満たされるなんて夢のまた夢だ。
「おいッなんだおまえ! 孤児風情が生意気な面してんじゃねぇぞ!」
 小奇麗な格好をした貧民街の外の人。なにかをする気力もなくただぼんやりと貧民街から外を眺めていただけの自分に、男は肩を怒らせて近寄ってきた。彼曰く目が反抗的だったらしい。
 理不尽に殴られ口の中に鉄の味が広がる。思わずうずくまれば容赦ない蹴りが背中を打った。息が漏れ出て、ぎゅっと目をつぶる。曖昧な意識の中でなんだか幸福な夢を見た。

 朝ごはんよ、と母に優しくなでられる。まだ眠いと毛布を被りなおした自分に、あらあらと笑って母は毛布はがした。なんとかベッドから起きて食卓へやってくるとそこでは父がサラダを取り分けており、起きるのが遅すぎる、と微笑みながら自分を叱る。それを苦笑でごまかしながら皿を並べれば、母が焼きたてのパンを切って運んできた。両親に愛されて、これからも愛され続ける家庭の、朝の一幕。こんな未来が、自分に……。

「……なんてな。んな夢はとっくに見飽きたぜ!!」

 霧の中から放たれたペンシルロケットが癒しの強風を巻き起こし、霧を吹き飛ばす。悪夢を破られたことに目を見開いていたおちくぼの君は哀れなほどに無防備だった。
「なぜ……!」
「なぜ? ハッ! 過去から来て過去に固執するお前には、未来に向かって歩く奴らの力は理解できねぇだろうよ」
 展開されたオンモラキとバサンが銃口をおちくぼの君へ向ける。容赦のない一斉掃射がおちくぼの君へと襲い掛かった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ボアネル・ゼブダイ
かつて貴様を包んでいたはずの優しく、暖かな愛情すらも忘れたか…

凄惨な過去の悪夢
「吸血鬼の父が人間の母を愛した」
ただそれだけで他の吸血鬼どもは全てを焼いた
愛する両親を殺され自らが育った故郷も
子供のころから親しんできた善良な領民たちも全て
そして私も彼らと共に死ぬはずだったが…死ぬことすら出来ずに一人、生き残った

なぜ私だけが生き残ったのか…
それは、私のようなものを誰一人として生まないためだ

人工血液から吸血
ドーピングとUCで身体能力を極限まで上げ
一歩も動かずにコ・イ・ヌールの刀身を伸ばし敵を貫き花びらを吹き飛ばす

感謝するよ
私がなぜ猟兵として戦うのか…その答えを改めて思いださせてくれた事にな

アドリブOK



 過去は現在を傷つける。それが凄惨な記憶であれ、愛しい記憶であれ、現実と相違があるならなおさらに。だから同時に、その傷を持つ者がどう捉えるかによって、その人の運命は大きく異なってしまうのだ。
「かつて貴様を包んでいたはずの優しく、暖かな愛情すらも忘れたか……」
 光剣を手にボアネル・ゼブダイ(Livin' On A Prayer・f07146)はおちくぼの君へ歩み寄る。彼の言葉が琴線に触れたのか、おちくぼの君は扇を手に彼を睨みつけた。その口元は扇で隠されている。
「忘れてなどおりません。忘れられるものですか……あの幸福だった時間、いつまでも続くはずだった愛しの時間を!」
 彼女の怒りに呼応するように、虚空から桜の花びらが散り始める。嵐のように舞い始めたそれに、ボアネルは剣を構えるも花弁が襲い掛かってくる気配はない。怪訝そうに眼を細めると、おちくぼの君は酷薄に笑った。
「あなたもあるでしょう……? 己を傷つける過去が。痛みを伴う記憶が!」
 ぱちん、とおちくぼの君が扇を閉じると舞っていた花びらが一斉にボアネルを囲う。まるで台風の目のように旋回するそれらはボアネルの過去の記憶を、悪夢として蘇らせた。

 ________吸血鬼の父が人間の母を愛した。ただ、それだけだった。
 パチパチ、と何かが焼ける音がする。薪を燃やしているようなその音。しかし鼻にくる匂いが、燃えているのは皮膚であると知らせていた。
 耳に届くのはつんざく悲鳴。子の死を嘆く声。死にたくないと助けを求める絶叫。
 地獄だ。ボアネルはそう思った。幼いころから親しんだ故郷が、善良な領民が、燃やされていく。どうして、と思う余裕もなくて、気が付けば走り出していた。
 父に、母に、知らせなくては。父も吸血鬼だ、きっと彼らの蛮行を止められる。母は聖者だ、その身からあふれる光で人々を癒すことができる。
 尊敬する両親が、大切な二人が、いればきっとなんとかなる。そんなすがるような気持ちで屋敷の扉を開いた。そこでボアネルが見たものは________。

 血濡れで吊られた、最愛の両親だった。

 血だまりの屋敷に座り込んだ標的の子どもを、吸血鬼たちが見逃すはずがない。呆然と両親の亡骸を見つめていたボアネルに剣を持った吸血鬼たちが迫る。ひとりは嗤い、ひとりは血を求め、ひとりはお前たちが悪いのだと罵声を浴びせ。
 その時にボアネルは理解した。この吸血鬼どもが両親を殺したのだと。吸血鬼の父が人間の母と愛し合った。ただそれだけで二人を惨殺したのだと。
 人間と融和し、虐げるどころか保護した父を、ひとりの吸血鬼が口汚く罵った。
 二人とも死ぬべきだったのだ。こうして晒された姿を見て、今は実に気分がいい。だが、混血の子など見ているだけでも反吐が出る。お前もズタズタに引き裂いて吊るし上げてやろう。
 自分のことなどどうでもよかった。ただ、父を、母を、罵るその口が許せなくて。ボアネルは血に塗れて転がっていた父の形見の剣を、手に取った。
「________私も彼らと共に死ぬはずだった……」
 己の剣は悲しいほどに届かなかった。嘲笑われ、引き裂かれ、重傷を負いながら地を這った。ボアネルの必死の抵抗を、吸血鬼たちはおもちゃで遊ぶように弄んだ。
「だが結局、死ぬことすら出来ずに一人、生き残った」
 血の海に沈み、意識もほとんどなく、遊び飽きた吸血鬼に捨て置かれたときに見た最期の光景。灰となるまで焼き尽くされる故郷を、人々を、何もできずに見ることしかできなかった。

「なぜ私だけが生き残ったのか……それは、私のようなものをもう、誰一人として生まないためだ」

 ボウ……と光が桜吹雪の中から浮かび上がる。次の瞬間まばゆい光がその場に破裂し、目も開けられぬほどに輝いた。
 流石のおちくぼの君もあまりの光に扇で顔を隠す。刹那、桜吹雪の中からまっすぐに伸びた光の剣が、おちくぼの君を刺し貫いた。
「かはっ……!?」
「感謝するよ。私がなぜ猟兵として戦うのか……その答えを改めて思いださせてくれた事にな」
 人工血液のついた口元をぬぐいながら、桜吹雪を吹き飛ばしてボアネルが現れた。忌まわしき半身の力を解放することでその身を強化したボアネルは、その場から一歩も動かずにおちくぼの君を刺し貫いている。
「な……!? 吸血鬼が、憎いのでしょう……!? なぜ、その力を使えるの!?」
「使えるものは何でも使う。私の正義を成すためならばな」
 その五指を少し動かせば、おちくぼの君を突き刺す光が増える。血反吐を吐く彼女を眺めながら、ボアネルはそっと、微笑んだ。
「これは、思い出させてくれた礼だ。受け取れ」
 残されていた光の剣が、一斉におちくぼの君へ襲い掛かった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

碧海・紗
WIZ
アドリブ歓迎


私には、愛された記憶が殆どありません
残念ながら、わかりませんし…思い出せもしませんが。

絶望の未来、それは猟兵として過ごした僅かな時間の中での…――
見えるのは、ニヒルな笑みを浮かべる眼帯の彼
共に戦うことが幾度かありましたが…
何故、倒れてらっしゃるんですか
あなた、そんなに弱くないでしょう?

――…っ、起きなさいよ!私…まだ、
 あなたに嫌がらせのひとつもし返せていないんですから!

【紫苑】発動、周辺には満開の紫陽花
――私のこと…侮蔑の目で見ていませんか…”ママ”?

空中戦とオーラ防御を用いて
冷ややかな視線を向けての攻撃を


彼が、そう簡単に消えるわけがありません。
思い出したら、何だか苛々…。



「忘れてしまった幸せな記憶……」
 うらやましい、と思ってしまう。おちくぼの君は裏切られたのかもしれない。幸せな未来を歪められたのかもしれない。でも、その身は確かに愛された。その事実が少しだけうらやましいと、碧海・紗(闇雲・f04532)は思ってしまうのだ。
「私には、愛された記憶が殆どありません」
 紗の言葉におちくぼの君の眉が吊り上がる。扇に隠された口元は見えず、その感情は読み切れない。だが友好的な雰囲気は当然なく、その目にわずかに宿っていた同情の光も消え失せていた。
「……ですから残念ながら、アナタの気持ちはわかりませんし……なにかを思い出せもしません」
「そう……」
 失望したわ、とおちくぼの君の声が聞こえた瞬間、紗の周囲を不穏な気配が覆う。見えないそれはしかし、悪意を持っておちくぼの君から放たれており、攻撃であるということは自然と理解された。
「わからないというのならば……持っていることを、わかっていないのならば、なんて妬ましいんでしょう……。貴方は絶望の未来に閉ざされてしまえばいいのよ」
 どう、と吹いた突風に、紗はその腕で顔を庇い思わず目を閉じる。再度目を開いたときに映りこんだのはある男の背中だった。
 それは猟兵として過ごしたまだ僅かな時間の中で、出会った人。共に肩を並べて戦場に立ったことも、少し厄介な彼に惑わされたこともある。なぜここに、という疑問が口を突いて出るより先に、彼はゆっくりと振り返った。
 口端だけがふ、と上がる。そんな非対称のニヒルな笑顔は簡単に思い出せるほどよく見ていて。だからこそ、振り返った彼がゆっくりと倒れるさまは紗の心をめちゃくちゃにかき乱した。
「……何故、倒れてらっしゃるんですか。あなた、そんなに弱くないでしょう……?」
 返事はない。彼は、駆け寄った紗をからかうこともおろか、反応すらしなかった。おそるおそる手を伸ばして、その肩をゆすっても目覚める兆しもない。だんだん、だんだんとゆする力が強まり、彼の体が大きく揺れる。だというのに、相変わらず彼はぴくりとも動かないのだ。
「――…っ、起きなさいよ! 私……まだ、まだ……!」

 あなたに嫌がらせのひとつもし返せていないんですから!

 この感情はなんだ。頭がぐちゃぐちゃにかき乱されて、気持ち悪い。
 そうだ。おちくぼの君は絶望の未来を見せると言った。自分に絶望の未来で閉ざされてしまえと。これは幻だ。オブリビオンが見せる、偽物の未来なのだ。だって、この人が、彼が、そう簡単に消えるはずがない。
 彼をゆすっていた紗の手が止まる。その周囲にひとつ、ふたつ、みっつ、と大きな花が生まれていく。小花が集合した大きな花。紫の美しいその花々は紫陽花と呼ばれる梅雨の花だ。雨の中でも咲き誇る大輪の花が、無数に咲き誇る________!
「――私のこと……侮蔑の目で見ていませんか……“ママ”?」
 おちくぼの君が息を飲む音が聞こえた。そちらを振り返り、紗は冷たい視線で彼女を突き刺す。
 ぱっ、と無数の紫陽花が一斉に散った。舞い上がった花弁が、葉が、鋭い刃となっておちくぼの君へ向いた。
「――あなたになら、私は酷く冷たく出来る……――」
 その黒翼を大きく広げ空へと飛びあがる。眼下に見える彼の姿は幻だと、彼女の放った霧の生む幻なのだと、今ならよくわかった。花弁や葉に体を裂かれているおちくぼの君。彼女に余裕がなくなったからだろうか、幻はほころんで消えていった。
 それでも紗の脳内で先ほどの光景が思い出される。その光景にわけもなく苛々と感情が高ぶって、そんな自分に戸惑いながら紗は額を押さえる。
(まったく、嫌なものを見ましたね……)
 絶えずおちくぼの君を攻め立てながら、紗は霧の届かぬ大空へ翼を広げるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

蛇塚・レモン
蛇関連の事件だって聞いて駆け付けてみたけど……?
どうやら幕引きの時間だねっ!

先制攻撃!
召喚した蛇神様に結界を張ってもらうよっ!
これで悪夢と攻撃から身を守るね!
(動物使い+オーラ防御+破魔+呪詛耐性+狂気耐性+勇気)
あったかもしれない未来なんて、所詮は幻っ!
そんな虚像に狼狽えるほど、あたいの心は脆くないよっ!

むむっ!
敵の持ってる本が怪しいって、あたいの第六感が告げてるよっ!
蛇腹剣クサナギを怪力任せに振り回して(ロープワーク)、
風属性の斬撃で敵の武器を両腕ごとなぎ払って武器落としっ!

トドメは蛇神様の2回攻撃のカウンター!
邪眼の念動力+鎧無視攻撃+衝撃波+生命力吸収!
敵の存在概念諸共吹っ飛ばすよっ!



「蛇関連の事件だって聞いて駆け付けてみたけど……?」
 駆けつけた蛇塚・レモン(叛逆する蛇神の器の娘・f05152)の前に、すでに蛇、姦姦蛇螺はいなかった。同じく彼女を求めて間に合わなかったおちくぼの君が小さく息をつく。扇で隠されたその下は忌々しく歪められていた。
 その身はすでに傷だらけで多くの猟兵たちの反撃の跡を残している。悪夢に堕ちなかったのが苛立たしいのか、掻きむしられた黒髪は哀れなほどに痛んでいた。
「ふーんじゃあもう幕引きの時間だねっ! 悪いけど君にこそ眠ってもらおうかな。やっちゃえ、蛇神様っ!!」
 召喚された蛇神オロチヒメがその瞳をおちくぼの君へと向ける。突如現れた巨大な白き神に目を剥いたおちくぼの君は、一瞬反応が遅れるもなんとか彼女の念動力を避けた。しかし、レモンにとってはそれも計算のうちである。
 光り輝く結界がレモンを外界から切り離す。おちくぼの君の攻撃を軽減するその聖なる結界は、レモンをおちくぼの君の霧から守ってみせた。
「余の可愛いレモンを悪夢に堕とすなど、余が許すと思うたか?」
「ありがと蛇神様!」
 結界に守られながらレモンは思う。確かに嫌なことはいっぱいあったし、今もうまくいかないことだってある。でもそれは自分たちが歩んできた道の結果なのだ。それを否定することは自分たちの否定に繋がる。そんなこと、許せない。
「あったかもしれない未来なんて、所詮は幻っ! そんな虚像に狼狽えるほど、あたいの心は脆くないよっ!」
 溢れる勇気を力に。その力はレモンへ悪夢を見せんと襲い掛かっていたおちくぼの君の悪意を完全に退けた。
 狼狽えるおちくぼの君。その隙は、彼女の本体ともいえる器物を表に晒してしまった。大切に抱えていた己の本体……裏本『落窪凋落伝』がその細腕と共に現れる。
 その隙を、レモンは見逃さなかった。第六感の告げるままあの本が怪しい、とその腕を振るう。怪力の乗った蛇腹剣クサナギの一撃は切り裂く風となって彼女へと襲い掛かった。
「ッああ!」
 腕ごと本体を切り裂かれ悲鳴をあげるおちくぼの君。落としてしまったその本体を慌てて拾おうと大きな隙を見せる。仕方のないことだ。彼女にとって本体を損なわれることは死を意味するのだから。
「そしたら、トドメだよッ!」
 しかし、本体を庇ったとしても彼女の運命は変わらない。本体を庇うのならその身ごと、存在概念諸共吹き飛ばしてしまえばいいのだから。
「吹っ飛べぇッ!!」
 白き蛇神の念動力が今度こそおちくぼの君を捉える。二度の攻撃を受けた彼女は抗うことも叶わず、悲鳴をあげることもなく消し飛んだ。その場に、空しく落ちた扇が転がり、そしてそれも塵となって消えゆく。

 こうしてうっかりからはじまった一連の邪神事件は、猟兵たちの手で無事に幕を下ろしたのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年07月16日


挿絵イラスト