鬼哭峠
雨野・雲珠 2020年6月21日
うおおおおおおん
うおおおおおおおおおん
遠くで鬼が哭いているから、はやく峠を下りなければいけない。
・暮光わずかな初夏のサクラミラージュ。帝都郊外
・あなたと俺は、長い長い坂を下りるひとときの道連れ
・おひとりまで。どなたでも、どこからでも
・話題の並列進行をなるべく避ける形式で。40~50レスで〆
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雨野・雲珠 2020年6月21日
(長い長い下り坂は、カーブをゆるり描いて見晴らしが良くない。舗装などされていない田舎道だ。両側は藪と、土砂崩れを防ぐためだろう石の壁。辺りは既にずいぶんと暗い。日が完全に落ちれば一帯は闇に沈むだろう。坂上に設えられた提灯置き場から、ひとつ借りてきたのは正解だった)
(うおおおおおおん うおおおおおおおおおん)
(……遠くで、なにかが哭いている)
雨野・雲珠 2020年6月21日
(歩みは止めぬまま顔を上げた。高い低い音はまだ遠くにある)
……野犬でしょうか。
茜崎・トヲル 2020年6月21日
どうだろ? だったら危ないねえ。
(子供さんが誰ともなく言ったから、おれも誰ともなく答えてみた)
もしかしたらオバケかもしれない。つかまったら、きっと食べられちゃうぜー。
雨野・雲珠 2020年6月22日
(からかう言葉は優しげに聞こえたので、くすくす子どもの笑い声で返した。しろいあなたは、灯りに照らされぼんやり橙)
大丈夫ですよ、俺が守ってさしあげますから!お化けと野犬だったら、どっちがこわいですか?
茜崎・トヲル 2020年6月23日
やったー。たのもしいなあ、子供さん。
(やさしい! やさしー子だあ。よーし、いざとなったらおれがエサになろっと)
どっちもこわいよな! でも、うーん、オバケかなあ。野犬なら腹一杯になれば帰ってくれるしさ。
茜崎・トヲル 2020年6月23日
(おれを食べて満足するならいいけど。オバケって怖がらせるの目的だったりするもんなー。困るんだ)
あ、おれはトヲルっていうんだ。茜崎トヲル。あかね色の茜にー、山偏にきてれつの奇でアカネザキ。トヲルはそのまま。好きに呼んでくれていーよ。
雨野・雲珠 2020年6月25日
おなかが空いて襲ってくる野犬が、おなかいっぱいになって帰ってくれる状況……。
(きっと何か食べ物を持ってるんだろうと、桜は無難な推測をしている)
雨野・雲珠 2020年6月25日
茜崎、トヲルさん―――茜崎さん。アメノウズです。降り落ちるほうの雨に、野原の野。空に浮かぶ雲に、真珠のジュ。どうぞ雲珠とお呼びください。
お名前をくださってありがとうございます。あなたが鬼だったらどうしようかなあって思ってたんです、ちょっとだけ。
茜崎・トヲル 2020年6月26日
雲珠ちゃんなー。きれいな名前だ! よろしくなあ。雲と真珠って色似てるよなあ。どっちも基本白いのにさ、映り込みで色が変わってさ。でも結局は白に戻るんだ色は。
(白。黒。白。黒。白。白。なんのはなし?)
おれ、鬼じゃないよー。角生えてっけど。キマイラなんだ。ほら。(長い耳をつかんでひっぱって、梵天がついたヒモみたいな牛しっぽをゆーらゆーら)だからひとを食べたりしません。食べられたことはあったなー。あはは。
雨野・雲珠 2020年6月27日
(名前を褒めてもらえてぱあっと顔が輝いた。大事な贈り物だった。名前も、漢字をあてるための説明の仕方も)
食べる前にお喋りを楽しみたい派の鬼だとしても、つやつやで立派なお角は隠しておくかなあって―――あ、本当だ。尻尾!(細くて長い尻尾の先に、房がついていた。牛っぽい尻尾だった。白い動物。神様の使いだ)羅刹の方かと思ってました。しゅっとなさってるから。
雨野・雲珠 2020年6月27日
へえ、食べられ………(普通に相槌を打ちかけて止まった。今なんと?)(未遂の言い方ではなかった)(目を丸くして、思わず相手をまじまじ見てしまう。なんなら提灯もすこし相手のほうへ寄せた。五体満足だ。すくなくとも、見える限りでは)
雨野・雲珠 2020年6月27日
……照り焼きとかで?
茜崎・トヲル 2020年6月28日
あはは、わかるー。角が黒いもんね。ほめてくれてありがとー。(角をつかんでべきっと折った。途中で折れたから血は出ない)気に入ったならあげるよー。(はいって差し出す)厄除けになるかも。なんかそんなかんじのこと、よく言われてたし。
茜崎・トヲル 2020年6月28日
はは、ふふふ、甘辛いの好きなの? テリヤキバーガーとかおいしいよね(パンってやわらかくておいしいもんね。そういやあれもどっかの預言者の肉なんだっけ?)刺し身が多かったなー。なんか生のほうが効果が高そうってさあ、調理してくんねーの。別にいーんだけどさあ、おれ人魚じゃねーのに(すごい見られてる。どしたの?)ふしぎそうな顔してる。なにがふしぎ?
雨野・雲珠 2020年6月29日
ギャーーーッ!!(楳図か○お顔)角ーーー!!角、角が、折れっ……ああ、なんてことを……!(血の気が引いた。空いているほうの手で一先ず受け取る。「いらない」と言った途端投げ捨ててしまいそうなくらい、頓着のない折り方だったから)こ、これ、なんの種の……牛だったら生え変わらない………刺し身……えっお刺し身?……人魚……!?(目がぐるぐるしてきた)
まっ……待って。ちょっと待ってください―――あか、茜崎さん!
雨野・雲珠 2020年6月30日
す……すみません、大きな声を出して。(待ってくれた。よい子のお返事に、短い眉毛が困る。知らないうちに息が上がっていて、ひとつ大きく深呼吸)
あの―――ひ、ひとつずついかせてください。まず……まずですね。この、お角……は、また伸びたり、生え変わったりなさいますか?
茜崎・トヲル 2020年7月2日
わー、もしかして心配してくれた? 雲珠ちゃんはやさしい人だなー(いいひとだあ。いい人は守らないと)生えるぜー。見ててね。(見えにくいと思ったからしゃがんだ。折れたところから湧き出るみたいに角が盛り上がって、元の形に戻ったのが見えたかな?)ほら、ちょー安心!
雨野・雲珠 2020年7月2日
(息を飲む。速い。それにすごく妙な再生だった。途中から折れた角が『折れる前の形を取り戻す』なんて……―――とはいえ)
よっ……よかったあー……(何より先に、足の力が抜けそうになるぐらい安心した。合わせて立ち止まった足先から、今更震えが上ってきた)
雨野・雲珠 2020年7月2日
……いや、よくない!よくはないですし、心配っていうか……心配もしましたけど、(手の中にあるつやつやの角とにこにこ笑顔を交互に見比べ、恐る恐る問うてみる)……俺が立派だって褒めたからくださったんですか?なんていうか……、取引とかじゃなくて。ただ、俺が欲しいのかなって思って?
茜崎・トヲル 2020年7月3日
だいじょぶ? 雲珠ちゃん。おちついてー。ね。だいじょーぶ(子供さんの……二の腕だっけ? 肩から肘の間のとこ。手でぽんぽんってしようとしたんだ。おれはいましゃがんでて、目線があんまかわんないから)そうだぜー。(とりひき?)あ! もしかして「代わりになにかよこせー」って言うと思ったのか? あはは。だったら安心だぜ、おれは何もいらねーんだ。
雨野・雲珠 2020年7月4日
(なだめるための害意のない接触は、実際効果があった。すん、と鼻を啜って自分より低い位置にあるお顔を見つめる)茜崎さん……
雨野・雲珠 2020年7月4日
―――ご自覚ないようですけど、めちゃくちゃ怖いですからね?焼き芋半分くださるみたいな気軽さで自分の角へし折って、会ったばかりの俺にくれようとなさるお兄さん……(取引目当てだったほうがまだ理解できた気がする。無茶苦茶だこのひと。そして間違いない、だいぶ変な人だ)
角なんて特に、力の宿りやすい部位ですのに……俺が悪い桜だったらどうするんですか。
茜崎・トヲル 2020年7月5日
えー。えっ怖がらせちゃったか……まじ? ごめんなぁ。そっかー……ごめんね(しょぼん。いやいや、しょんぼりしたいのはこの子だよね)(なんで怖いんだろう)えっとさ、なにが怖かった?
あーたしかに、俺の角はすごく魔力あるよ。古いもの。雲珠ちゃんが悪い桜の人だったら……悪魔とかよんじゃう? けっこーいいの呼べるよ。実証済み。
雨野・雲珠 2020年7月6日
ほらーーー!なんですか悪魔呼び出す触媒にできる角(実証済み)って、すでに呪物として一級品じゃないですか!いけません、そんなすごいもの他人にほいほいあげては!悪用されたらあなたに障りが出る可能性だってあるでしょうに……いえ、俺は善く在りたい桜なのでしませんけど、(ちいさな子を叱る口調で子どもがぷんすかしている)
怖いというか……(立ち上がるのを促して、また歩き出す。既に周囲はとっぷり暗い。片手に提灯、片手には立派な角をそっと握ったまま)―――痛くなかったですか?角折るの。
茜崎・トヲル 2020年7月8日
はーい、ごめんなさい!(障りには慣れてるからへーきだけど、ここで言うことでもないよな。ちゃんと叱ってくれるんだあ。やっぱこの桜の人いいひとだなー。すなおに立ちあがって、うしろを猫背でついてく)
(うーん、まっ暗け! あ、遠吠え聞こえた。さっきより近い気がするなー)うん、痛くねーよ。ふふ、おれはね、痛いってのを忘れたんだあ。痛い状態ってのはわかっても、痛みはねーの。さっきみたいにすぐ治るし。
雨野・雲珠 2020年7月9日
あの……あのですね、茜崎さん。(とことこ歩きながら、どういう言い方なら伝わるだろうかと途方に暮れた。『自分を大事にしろ』が的外れなのは桜にもわかる。だって言葉どおりなら、彼を大事にしなかったのは彼じゃない。むごい扱いを受けての最適解が、この対象を選ばない献身なら自分が言えることなんて何も、)
(でも危ういのもわかる。こんな風にしていたら、きっと酷い目に遭わせたがる輩まで寄せる)
……あくまで、俺の話なんですけど。
雨野・雲珠 2020年7月9日
「あげる」と「もらう」が成ったら、そこにひととき縁が結ばれるでしょう?これが焼き芋や水羊羹ならありがたく半分いただきますし、普通にさしあげるんですけど。身に過ぎる贈り物は、ご厚意を受ける側としても相応の覚悟がいるというか……喜ぶより先に怯んでしまうんです。
―――ですから、こういう奴もいるということで……次にあげようかなって思った方には、まず「欲しい?」って聞いてみてくださいませんか。いきなり折ると、俺みたいにびっくりなさるかもしれまんし。
茜崎・トヲル 2020年7月11日
んい、わかったー。次からは欲しいかどーか聞いてみんね。あんがと、雲珠ちゃんセンセ。(おれは、おれより焼き芋や水ようかんの方が高級だと思うけど)(おれは食べてもなくなんねーけど、あっちは食べたらなくなっちまうもの)(雲珠ちゃんはおれのほうが高級なおくりものって思うんだなあ。照れるー)そういやさあ、おれに敬語とか使わなくていーよ?
雨野・雲珠 2020年7月12日
いえ……差し出がましいことを言いました。(気を悪くした様子もない相手に感謝する。考え方に干渉はできなくても、ワンクッションあれば出会い頭の事故は減る―――といいなあ)
えっなんですかそれは。なにもよくないです!(鈴虫にも敬語な桜は笑って取り合わない。気安さを許されたというより、文字通り雑に扱っていいという響きを感じたので尚更だ)あ、でもいま俺のお願いを聞いてくださったから……うーん。
……うんと仲良しになれたら、前向きに検討します。(行きずりの道連れに、いたずらっぽく目だけで笑ってみせた)
茜崎・トヲル 2020年7月14日
仲良しになってもいいのか!?(まじか!)まじかー? へへ、うれしいなぁ。がんばるぜー…………(……あれ?ひとと仲良くなるってどういうことすりゃいいんだろ。言うこと聞くとか、肉をあげるとか……あーでもツノで悲鳴あげてたし、ちがうかなあ)……雲珠ちゃんの好感度ってどうすりゃあがんの? でっかい箱もってるしー、薬屋さん? それならおれ、実験体にはぴったりだぜ! 死なねーし。
雨野・雲珠 2020年7月14日
じ、実験体!?(なんの!?)
雨野・雲珠 2020年7月15日
実験体は―――いらないですね。いるいらないの話じゃないですけど、いるかいらないかだったらいらないですね……(言うこと成すこと、一から十までツッコミどころしかない方なんて初めてだ。だけど、どうして「友だちになってもらう」みたいな言い回しをなさるんだろう?)
何もいりませんから、次会えた時はいっしょに何かしませんか。楽しいこと。(大人の社交辞令だった場合も考えて、反故にしやすい言い方をした)
茜崎・トヲル 2020年7月16日
いんねーの? なんにも? えー、欲がないんだあ。(おれの力不足かなあ。しょんぼり。せっかく仲良くしてくれるって言ってくれたのに……えっ楽しいこと!?)やるー! 楽しいことしよう。おれはなんでも楽しいから、雲珠ちゃんが楽しいことをしよう。なんでもいいよ。(ほんとに)
雨野・雲珠 2020年7月17日
俺が楽しいこと……(大人のひとでもきっとそれなりに楽しめて、あわよくばいっしょに楽しさを分かち合えて、仲良くなれるようなこと)
―――あ、お祭り!今度いっしょにお祭りに行くというのはいかがでしょう?
茜崎・トヲル 2020年7月19日
いいと思う!(すげーいいと思う!)夏だからたくさんお祭りありそーだよね。たぶん。いっしょ行こーぜ。(手を叩いてはしゃいでおります。いいなあ、いいねえ、きっと血とか生贄とかないお祭りだよ。苦手そーだもんね)
雨野・雲珠 2020年7月21日
!行きましょう行きましょう!楽しそうなお祭り探しておきます。
(気づけば大きなカーブも抜けて、坂下に広がる家々の灯りが歩くほどに近くなってきたところ。下り坂続きで足が疲れたかわりに、鳴き声の気配は遠くなった)
えっと……俺はいつも大体決まったところにいるんですけど。どうすれば茜崎さんに会えますか?すまほとか、お持ちです?
茜崎・トヲル 2020年7月23日
すまほ。(ってなんだっけ)うーん、おれは糸の切れた凧だからなあ。家もないし。(休まなくても死なないし。そーいや連絡手段渡して開放!ってひとはいなかったなあ。みんな手元においとくんだ)…あ。(クロークを開いて)えーと……あった。すまほってこれ? いつだかにもらったんだけど(手の平よりちっさいそれを雲珠ちゃんに見せよう)
(すまほじゃなくて電池切れのポケベルだけど、おれはそこまで覚えてないよ)
雨野・雲珠 2020年7月24日
(提灯の明かりで、ポケベルを矯めつ眇めつ)これは……すまほではないですね。すまほよりちいさいということは、さらにはいてくなお品かも……すみません、俺機械には疎くて。
ということは、俺から茜崎さんを捕まえるのはむずかしそうですね。それなら俺の電話番号と―――あ、そうだ!こちらをお持ちください。(根付紐のついた、小さな金の鈴を渡した。揺らしても鳴らない)角のお礼……になるかは分からないんですが、ご連絡いただけたら飛んでいきますから!
茜崎・トヲル 2020年7月26日
そんないいものだったんだ?(すげー!)わーありがと。あ、鈴付きストラップ。ちっちぇー。(音鳴らないんだあ。舌がついてねーのかな)へへ、お礼なんていいのにー。でもあんがとね。公衆電話からかけられるかなあ。(クロークにしまってー、と。ここなら落ちないよ)
そーいやけっこうな坂だったけど、雲珠ちゃん疲れてない? おぶろうか?
雨野・雲珠 2020年7月27日
だっ……大丈夫です!俺はそこそこ健脚の桜ですから!
(流石にそれは恥ずかしいと、慌ててぶんぶん手を振った。こちらの事情に踏み込むこともないまま「あげる」の方向に特化した、このふしぎな距離の近さはなんだろう)
そのちいさいやつの使い方を知ってたらよかったんですけど……
雨野・雲珠 2020年7月27日
(そうして、気づけば坂の下。薄暗いなりに家々の灯りや街灯も増えて、提灯に頼らずとも楽に歩けるほどには明るくなった。火を吹き消した提灯を感謝と共に置き場に戻し、あなたに向き直る)
一緒に歩いてくださってありがとうございました!茜崎さんのおかげであっという間でした。……あの、よければ本当にお電話ください。おれが気づかず出られなかった時は下の番号に。(メモ帳に自分と探偵事務所の電話番号を控えて丁寧に破り、あなたに渡した)
茜崎・トヲル 2020年7月29日
健脚の桜。(ねっこでぐいぐい歩いてる桜の木思いついちゃった。こーゆーのいたなあ。なんだっけ、焼きメシみてえな……ドリアードだ)いーよいーよ、ハイテクだってわかっただけでもじゅーぶん!
(坂が終わるなあ。おわかれだあ)
ありがとー! うれしいね(メモを見て、折りたたんで。クロークにイン)うんうん、なんかおもしれー感じのなんかしら見っけたら電話すんねえ。
茜崎・トヲル 2020年7月29日
(電話番号があるってことは、雲珠ちゃんは社会につながってるんだ。二個もあるってすげーな。たっくさん必要って思われてる)
そだ、そんときにさ。困ったこととか、なんかおれが力になれそーなこととかあったら言ってね。なんでもいいよー。献体でもどぶさらいでも協力すっから。ね、元気でねー。
(別れってどれもさみしい感じ。次がくるかなんてわかんねーもんな。だからせめて元気で生きてね。楽しいこといっぱい味わってね。おれのことなんて覚えてなくていいよ。そんなきぶんで笑って手を振るよ)
雨野・雲珠 2020年8月1日
(尚もそんなことを言うあなたを見上げ、眉尻を下げた)茜崎さんこそ。「誰かいると助かるけど、頑張ればひとりでもなんとかなりそうだしいっかあ」って時にもくださいね、お電話。
………、(何か言おうとして言葉にならず)ではまた。……ご連絡くださいね!きっとですよー!(なんだか怪我をした猫を見てみぬふりで立ち去るような―――幸いなことにそんな経験はない。だって猫なら保護できる―――気分で、振りかえり振りかえり、街の方角へと戻っていったのでありました)
雨野・雲珠 2020年8月1日
【雨野雲珠による後述】
「ぬしさまの角が折れた時、ギャン泣きしたの覚えてらっしゃいますか……はい……はい……びっくりして……ええ、その節は本当に……あれ思い出して泣きそうでした。しかも調べたら牛の角って、神経通ってるから折るとやっぱりすごく痛いって……ううー……」
「あの坂いつも怖いんですけど、全然違うことでドキドキしているうちに下りきるという初めての経験を―――あ、いえ!害しようって気配は流石にわかるんです。悪意なんて全然なくて。明るくてお優しくて。短い間でしたけどずっと俺を気にかけてくださって……ああそうだ。神様っぽかったです。善意に満ちてて、話が通じるようでズレてて、すり合わせるのが難しそうな感じが。……そうでなければ、」
「酷い目にあわされたのに、まだこっちを好きでいてくれる子犬みたいな」
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(鬼哭峠………終)