File04:切り裂き城
柊・はとり 2021年11月23日
夏海ら友人の熱心な誘いで『ホテル霧崎城』にて毎年恒例で行われるミステリーナイトに参加することになったはとりだったが、謎解きイベントの最中に本物の殺人事件が発生してしまう。
イベントが終了する五日後までホテルからは出られず、外部との連絡手段も取り上げられた状況下で、悪夢の殺人推理ゲームは何者かにより続けられる。
『名探偵』柊はとりはこの惨劇の夜を解き明かすことができるのか。
●舞台
T県N市のホテル『ホテル霧崎城』
温泉地として賑わうN市の中でも奥まった山地に建てられた知る人ぞ知るホテル。
オーナーはミステリマニアであり、毎年開催されるミステリーナイトに参加するため、全国各地から客が集まってくる。
外観は西洋の城を意識して作られており、高い城壁と頑強な門に囲まれ、外部から施錠されると脱出はほぼ不可能。
濃霧が出やすいことから『霧崎城』と命名された経緯があり、幽玄たる佇まいで人々を魅了している。
●被害者数
3人
ミステリーナイト初日にオーナーが死体役として登場するサプライズ演出が今年の目玉だったが、オーナーは本当に殺されていた。
その後も架空のシリアルキラー『赤い霧』が繰り広げる連続殺人劇の台本に沿って、常連客たちが殺されていったが、最後の犯行が行われる前にはとりが真相を看破。
犯人を罠にかけ拘束、終息に至る。
被害者達の死因は全て出血性ショック死であり、これらは『赤い霧』の犯行手口をなぞったもの。
凶器は調理場から盗まれた包丁と思われていたが、傷口の違和感が解決への糸口となった。
●犯人
『赤い霧』犬吠埼・サヤ(24)
霧崎城ミステリーナイトの一般参加者で、女性看護師。
イベントには今回が初参加で、当初殺人の動機はないと思われていた。
優しく穏やかな女性だが、男運が非常に悪く、気弱な性格で相手に逆らえないらしい。
すぐ「すみません……」と謝るのが口癖になっている。
●犯行動機/その後
サヤは、自身の担当患者である末期がんの雑誌記者『山室・雄揮』に惹かれていた。
死の直前、実は彼が霧崎城ミステリーナイトの原作を手掛けていたことを聞かされ、その面影を求めてイベントに参加したものの、オーナーに無理矢理言い寄られ、抵抗した際に自分の持っていた凶器でうっかり彼を刺し、殺害してしまう。
パニックに陥ったサヤは、オーナーの部屋から山室が遺した原稿を入手し、彼の考えたトリックで犯行を隠蔽することを思い付くも、そこに書かれていたシナリオは、山室が独自に調べあげた常連客達の許しがたい悪事を告発するものだった(なお、オーナーは設定を改変し、握り潰すつもりだったらしい)。
原稿を読み込んでいくうち殺人鬼『赤い霧』の哀しくも残酷な姿に魅了されたサヤは、自分は山室の遺志を遂げるためにここへ来たのだという想いに取り憑かれてしまう。
その後の犯行は全て山室の遺稿に沿って行われたものであり、この事件の真犯人は山室・雄揮であるともいえるが、果たして彼が殺人まで望んでいたかは不明である。
サヤは逮捕後の勾留中、山室の後を追うようにして自殺した。
幸運にも生き残ったターゲットは現在も生存。因縁の地であるホテル霧崎城を拠点として改修し、復興のために尽力している。
0