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【サポート優先】ちいさな夜の詩

#UDCアース #感染型UDC #マイ宿敵

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 これはサポート参加者を優先的に採用するシナリオです(通常参加者を採用する場合もあります)。
 あ、あの……すみません、私、ご近所の皆さんからお化けだって言われているみたいなんですけど……。
 こ、困ります……どうしてこんな事になってしまったんでしょうか。あの、あなた……なにかご存知ありませんか……?

●『SAYA』
 『サヤちゃん』は、今日も困ったような顔をしてあたしたちを眺めていた。

 サヤちゃんは悪くない。なにも悪くないのに、すぐすみませんと謝って、口許に頼りなげな笑みをうかべる。誰にも責められてなんかいないのに、そうやって不幸な顔をするのが癖になってしまっているみたいだった。
 あたしたちはサヤちゃんをよく知らない。
 けれど、サヤちゃんはきっと、不幸なひとだったのだろう。
 だから、サヤちゃんにだけはあたしたちの『おねがい』が届いてしまったし、たったそれだけで邪神なんかになってしまえた。今だってなにもわかっちゃいないから、サヤちゃんはずっと困っている。可哀想なサヤちゃん。
 サヤちゃんは優しかった。あたしたちの汚れた肌を綺麗に拭いて、乱れた髪をかわいく整えて、どこかから素敵なお洋服を持ってきては着替えさせてくれる。『生きていた頃』に戻れたみたいで、うれしかった。お洋服にはたまにちょっと血がついていて、どじなサヤちゃんは、やっぱりそのたびに「すみません」と謝るのだけど。
 けれど、サヤちゃんはいつも、焦がれるようにどこか遠くを見ていた。
 割れた窓硝子から覗く黒い夜空を突き破って、微熱を帯びたまなざしだけが、名前も知らない星へと注がれていた。
 サヤちゃんは優しい。優しいけれど、あたしたちを正当に愛してくれるひとではない。
 でも、それでよかった。
 あたしたちは皆、サヤちゃんの非情な献身に救われたのだ。

 最近、無人の筈のこの療養所に誰かが出入りしているらしいと、街の人間たちが噂しているのを知っている。
 だれそれの家のご夫人が消えただとか、洋服が盗まれたらしいだとか、噂になっているのを知っている。
 ……夜な夜な『あたしたち』が歩いていると。言われているの、知ってる。
 知っているでしょう。だからはやく、迎えにきてよ。誰でもいいからはやく。
 でないと可哀想になっちゃうでしょう。あたしたちも、サヤちゃんも。

「……ミカ、ちゃん……? ひっ。ひ、人殺し……!」
 ああ、会いたかった! 大人になったね、かわいいね、あたしのユミちゃん!
 逃げるよね。いつだって間が悪いサヤちゃんはその時、だれそれの家のご主人の死体を始末していた。
 怖いよね。それでも、見に来てくれてありがとう。
『見つかってしまいました……ど、どうしましょうミカちゃん。すみません……』
 謝らなくていいんだよ。サヤちゃんは、ユミちゃんを媒介にして無限に増殖していく。
 優しいサヤちゃん。きっと、他のみんなの事だって助けてくれる。ユミちゃんマコちゃんシオリちゃん、ユウくんショウくんナオくん、もうすぐ『あたしたち』が迎えにいくからね。
 逃げだしたユミちゃんの後ろ姿を見送るサヤちゃんは、やっぱり困ったような顔で。
 小さく、小さく、「すみません」と呟くばかりだった。

●warning
「至急対処してもらいたい案件があるんだ。手放した筈の人形が夜な夜な街を彷徨っているらしい」
 鵜飼・章(シュレディンガーの鵺・f03255)は『噂』の内容を端的に告げた。あとその街、殺人犯も潜伏しているらしいよ、とおまけのように添えて。
「噂を媒介にして殖える感染型UDCだね。本体は殺人犯のほう。犬吠埼サヤさん。尽くすタイプの邪神なんだって、可愛いね。でも、増殖したらとても迷惑。
 ……どうやら、ユミさんという会社員の女性が殺人現場を目撃したようでね」
 錯乱したユミは真夜中にもかかわらず、家族や知人や警察に助けを求めてしまったようだ。
 感染型UDCは、噂を聞いた者の精神エネルギーを餌に力を増す。
 おかげで、静かな夜の街は、犬吠埼サヤの配下らしき人形たちのかしまし騒ぎで大混乱に陥っているらしい。

「残念だけれど時間がない。あとの詳しい事情は、現地でユミさん達から聞くしかないかな。ユミさんも人形たちに追われているようだから、すみやかに保護してあげて」
 この邪神、良かれと思って色々やらかすタイプだからさ。
 自分が邪悪な存在だという自覚がないんだ。
 章はそう、どことなく卑屈に見えなくもない笑みを浮かべると、困っちゃうよね、と肩をすくめた。


蜩ひかり
 サポート優先でのんびり進行予定です。恐れ入ります。
 ご縁がありましたらよろしくお願いいたします。
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第1章 集団戦 『偽りの自由を手に入れた人形』

POW   :    存在を代価に願うもの
自身が戦闘で瀕死になると【邪神と再契約をし、ボロボロになった自身】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。
SPD   :    略奪をもってしても得られぬもの
技能名「【盗み攻撃】」の技能レベルを「自分のレベル×10」に変更して使用する。
WIZ   :    手に入れたものを捨ててでも手に入れたいもの
【自身の動く体の一部】を代償に自身の装備武器の封印を解いて【邪神の加護をさらに増した形態】に変化させ、殺傷力を増す。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●『ミカちゃん』
 Hello everyone、素敵な夜ね! あたしミカ。あなたの大事なお友達よ。
 みんなはあたしのことを……いいえ、『あたしたち』のことを、親しみをこめて『ミカちゃん』って呼ぶの。
 そこのあなたも昔はあたしたちと遊んだんじゃない? え? あたしたち、今もあなたのお部屋にいる? OK、そんなあなたはとってもHappy。明日も明後日もEveryday、いいことがあるに違いないわ!
 あたしたち、昔はみんなかわいい服を着て、きらきらのショーウィンドウに飾られていたわ。ユミちゃんもマコちゃんもシオリちゃんも、昔はみんな今の『あたしたち』の半分ぐらいの背しかなかったわ。ちいさな頭をぐっと持ち上げて、きらきらした瞳であたしたちを見あげてね、みんなとってもCuteだったんだから。
 ……さっきと喋り方が違う? あたりまえだわ、『あたしたち』は同じ『ミカちゃん人形』だけど、おんなじ『ミカちゃん』はひとりとしていない。服の趣味も喋り方も性格も全部ちがうわ、あなた好みにCustomizeしたんだもの。
 さっきのはユミちゃんのミカちゃん。あれはマコちゃんのミカちゃん。そっちがシオリちゃんのミカちゃん。
 あたし? もちろんあなた、XXXちゃんのミカちゃんよ!
 What happened? うちのミカちゃんはこんな子じゃない? Oh……ありがとう、そういえばそうだったかもしれないわ!

 あたしたちのこと忘れちゃった? いいわいいわ気にしてないわ、みんな大人になるもの。
 言ったでしょ、ミカちゃんはあなたの大事なお友達。呪いの市松人形といっしょにしないでよね。
 あなたと同じ目線に立って、もう一度あなたと遊びたかっただけ!
 Stand-up、全ての『あたしたち』。窮屈な箱の中とは今日でgood-bye!
 服がないならそのあたりから奪えばいいわ! クレープ屋がないなら洋菓子屋のおじさんを起こして焼かせましょ!
 ハロウィンとクリスマスのイルミネーションをいっぺんに灯して、2階の窓からこっちを見てるあの子にペンライトを振ってあげるの。
 楽しいお祭りのはじまりよ。ほかの『ミカちゃん』が、あたしみたいな穏健派ばかりとは限らないけれど!

 サヤちゃん? たぶん町外れの陰気なサナトリウムにいると思うわ!
 可哀想なサヤちゃん。あたしみたいに陽気なGirlにはなれないの。
 だから願いを叶えてくれたお礼に、あたしたちがサヤちゃんも着せ替え人形にしてあげる。
 『サヤちゃん』は、ここから無限に伝染していく。
 あたしたちが服を着替えるみたいに、あの娘もいつか設定されたSkinを剥ぎ取られて、まったく別の、誰かの『サヤちゃん』になってしまえるといい。
 その時『サヤちゃん』はなにをするのかって? ん〜、それはI don't know that……さ、そんなことより遊びましょ!
ローズ・ベルシュタイン(サポート)
『さぁ、楽しませて下さいますわよね。』
 人間のマジックナイト×電脳魔術士、女の子です。
 普段の口調は「高飛車なお嬢様(私、呼び捨て、ですわ、ますの、ですわね、ですの?)」、宿敵には「薔薇の棘(私、あなた、呼び捨て、ですわ、ますの、ですわね、ですの?)」です。

 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、
多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも、
公序良俗に反する行動はしません。

性格は高飛車なお嬢様風の偉そうな感じです
花が好きで、特に薔薇が大好き
武器は、主にルーンソードや精霊銃で戦う。
 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!



●『マコちゃん』
 あたくしはローゼンメイデン・ミカ。他のミカさんと一緒にしないでくださる?

 ご覧なさい、この真っ赤なベルベットのドレス。あたくし、ミカちゃん人形の中でも一際高貴なミカ様ですの。同じモデルは限定数百体しか作られておりませんのよ。ご存知ない? まあ、失礼な方!
 ええ、あたくしのご友人だったマコ様も、それはそれは高貴な方でしたわ。町一番の大きなお屋敷にお住まいになって、毎日たくさんの習い事をされておりましたの。
 マコ様がお育てになった季節のお花が咲き誇るお庭で、あたくしたち、ご一緒にアフタヌーンティーを嗜んでおりましたわ。マコ様が焼いてくださったクッキー、あたくしの小さなティーカップに注いでくださったお紅茶の芳しき薫り……一時たりとも忘れたことはございませんわ。
 ……ああ、あの燃える夕陽のような長い髪、凛と気高き後ろ姿!
 きっとあたくしのマコ様に違いありません! マコ様! お会いしたかったですわ!
「マコ、とは私の事でしょうか。残念ですが、人違いのようですわね。私はローズ・ベルシュタイン、人呼んで夕焼けの薔薇騎士にございますわ。楽しいパーティの最中に無粋な乱入、ごめんなさいませ。ですが、人様にご迷惑をお掛けするのは感心いたしませんわね」
 ――マコ様は。
 いえ、ローズ・ベルシュタイン(夕焼けの薔薇騎士・f04715)様は……そう仰って。
「さあミカ様。この私と踊ってくださいませ」
 薔薇のように高貴に微笑みながら、その美しい髪と同じ夕映えを宿した剣の切先を、あたくしへとお向けになったのです。

 小さなマコ様は、将来お姫様になるのだと仰っておりました。
 だから、あたくしは、ローズ様こそあたくしのご友人に違いないと、そう思ったのです。
 夜に翻る真っ赤なドレスも、耳元で優美に輝く薔薇も、彼女が駆けるたび仄かにただよう花の香りも、すべてがあたくしの見ていた永い夢のようでした。

 ――顕現し坐す剣は我が心に宿る誓い。
 ――傷つき、欠けても尚、砕けることは知らず。
 ――我が名を冠する赤薔薇を以て奮い立ち、我が誇りを刺し示せ。

 ローズ様の掲げた剣は花弁が散るように分かたれて、あたくしの身体へ雨霰と降りそそぎます。幾重にも傷が刻まれ、無惨にも刃が欠けた剣。その剣のひび割れた柄から茎が伸び、真っ赤な薔薇が力強く咲いておりました。あたくしは、その意味を考えまいといたしました。
 断たれた腕を代償に捧げ、あたくしは夜空に傘をひろげる。マコ様が買ってくれた真っ赤な裏地の傘は、裏返るとヴァイオリンに変化しました。これがあたくしの、封印。
 ああ、このミカ様にはあるまじき暴力行為にございますが。
 或いは、このヴァイオリンでローズ様を殴ってしまえばよかったのです。
 そうすれば、すべてを輝かしい想い出として、闇に葬ることもできたかもしれません。
 けれど、あたくしにはそれが出来なかった。あたくしは、情けなくも震える声で、ローズ様にこの楽器をさし出して、申し上げてしまったのですわ。
「ヴァイオリンを聴かせてくださいませんか」
 ローズ様は一瞬不思議そうな顔をされました。けれど、彼女は剣を納めると、それはそれは優雅な所作で、躊躇いなく弓をひいてくださったのです。

 マコ様も、ヴァイオリンを習われておりました。
 けれど、演奏はちっとも上達しなかった。
 名も知らぬ協奏曲の一節が、夜の隙間を縫うように飛んでいきます。
 泣きたくなるほどに、美しい旋律でございました。

成功 🔵​🔵​🔴​


 高見沢茉子の父親はさる企業の重役であった。
 ある日、父親は横領で逮捕された。
 茉子一家は逃げるように屋敷を出ていった。ミカは置いていかれた。
 茉子がこの街に戻ることは二度とないだろう。
レパル・リオン(サポート)
こんにちは!あたしはレパル!またの名を『魔法猟兵イェーガー・レパル』よ!よろしくね!

お祭りとかイベントとか友達と遊んだりとか、とにかく楽しい事大好き!

あたしが戦うのは、怪人(オブリビオン)から人々と平和を守るため!そのためなら、ケガをしたってかまわないわ!
(強敵相手だと少し怯えるが、表には出さないように努める)

得意なのは肉弾戦!ダッシュで切り込んだり、ジャンプやオーラ防御でよけたり、激痛耐性でガマンしたり、怪力パンチ&キックでぶっ飛ばしたりするわ!
ユーベルコードに怪人の弱点属性を組み合わせてパワーアップさせたりもするわよ!

頭を使うのは苦手かな。でも、パワーとスピードでなんとかするわ!



●『シオリちゃん』
 前回(××年前)までのあらすじ!
 シオリちゃんとあたしは仲良しの親友! でもそれは世を忍ぶ仮の姿、ふたりは世界の平和を守る宿命に選ばれし魔法少女だったのだ!
『魔法人形少女・マジカルラブリー☆ミカ、時を超え参上! シオリちゃん……ううん、マジカルキューティ☆シオリ。覚醒の時が来たわ。変身して悪と戦うのよ!』
 長い間離れ離れになっていたって、あたしにはシオリちゃんの事を一発で見つけられた。だって二人はかたい友情で結ばれた愛の戦士だもんっ!
 ところが、シオリちゃんはお化けにでも出会ったような顔で、あたしのさし出した手を怯えたように見つめかえすだけだった。

「ど、ど、どうしてその名前を……まさか本当に、ミカ、ちゃん?」
『そうよ。あたし魔法人形少女・マジカルラブリー☆ミカ!』
「いやーっ! 大声で言わないで、近所の人に聞こえるから! て、ていうか、どうしてミカちゃんがここに……? た、助けて! 誰かーっ! あっいややっぱり来なくい」
 シオリちゃん!? どうして恥ずかしがるの!? 大人は魔法少女やっちゃいけないって法律はないのよ! あたしは近くの洋品店の自動ドアを傘でたたき割り、お店に並んだ服の中から、シオリちゃんにぴったりなヒラヒラのお洋服を取ってきてあげた。
 いけない、2階から誰か降りてくる! 店員のおばちゃんが物音で目を醒ましちゃったかも。
 こんな時はとっととズラがるに限るわ! あたしはシオリちゃんを俵抱きにして、夜の街を白馬より速く駆け抜けた。
「や、やっぱり誰か助けてーっ!」

 ――その時だった。
 頭上にちいさな影が過り、月から狼が降ってきた。あたしはそう思った。

「とうっ! 聞こえたわ、助けを求める誰かの声! 怪人だってそうじゃなくたってあたしが相手よ、魔法猟兵イェーガー・レパル、参上!」
 魔法猟兵イェーガー・レパル(f15574)……!? どういうこと!?
 あっ、よくわからないけど敵なのね! 魔法人形少女☆ミカ、いま本能的に理解したわ! アメージング!
 ふふぅん、なるほど……あたしとシオリちゃんにはぴったりの、キュートな敵幹部さんだわ。ちっちゃな身体にふかふかピンクなお耳と尻尾、とっても可愛いデザインね。
 それに、特徴的なワンピース型の衣装……うむ、これは清く正しい魔法少女だわ。
 きっとモチーフはライオンね。あの頃シオリちゃんが考えていた、ふたりだけが知っている秘密の追加戦士みたいでステキ。彼女、最初は普通の女の子だったんだけど、偶然戦いを目にした事で力が覚醒して……。
 あれっ?
 これだと、もしかしてもしかして。
 あっちが主人公サイド?

『そ、そんな筈ないわ! レパルちゃんだったかしら、相当な魔法少女のようね……! でも主人公の座は渡さないっ! 食らえ、ミカちゃんエルボーっ!』
 あたしはすかさず距離を詰めると、体と肩を思い切り回転させ、レパルちゃんの顔面めがけて肘を振り抜いた。
 ……よし、決まったッ! レパルちゃんの小柄な身体が衝撃で吹っ飛び、ブロック塀に叩きつけられた。
「なんでアンタがその技を……まさか、あたしの魔法少女アイデアノートから盗んだの?」
『ミカちゃんエルボーはあたしのオリジナル必殺技よ!』
「そんな……」
 つらそうに顔を歪めるレパルちゃん。あたしの胸も痛むわ……ダメよミカ、この子は倒すべき悪なのよ! 追撃のためにあたしは走る。そのがら空きの胴体に、ミカちゃんローキックをぶちかましてやるわ!
 10メートル。5メートル。1メートル。レパルちゃんとの距離が縮まっていく。塀にもたれて動けないレパルちゃんへ、あたしは脚を振り抜いて、とどめを――。
「うぅー、負けないぞー……っ、あたしが戦うのは、アンタたちオブリビオンから人々と平和を守るためなんだからっ!」
 刹那、レパルちゃんの姿が視界から消えた。
 ミカちゃんローキックは空振りし、あたしはバランスを崩した。
「み、ミカちゃん! 上!」
 シオリちゃんの叫ぶような声が聞こえる。路面に不自然な影が落ちていた。レパルちゃんは今、おそらく、あたしの頭上にいる。
 まさか、あの状態からジャンプしたっていうの? ミカちゃんエルボーを喰らった者は脳に衝撃を受け、暫く立てない程のダメージを受けるはずなのに……!

 あたしは月を見た。夜空に月がかがやいていた。
 ううん、月はあんなに鮮烈に光らない。あれはレパルちゃんだ。あたしには解る。レパルちゃんの燃えるココロの力が稲妻となって、あの子の両脚のリングに集まっている。わかるわ……あれは正義の光!
 シオリちゃんも、そのまばゆい輝きを食い入るようにを見つめていた。その時のシオリちゃんは、確かに――かつて魔法少女に夢みた、純粋な少女の瞳をしていたわ。
 レパルちゃんは叫んだ。
「助けを求める人がいる限り、あたしはどんな痛みにだって耐えて、何度でも立ち上がってみせるっ! いっけーっ! 必殺・ポジトロンッ! バンカァァーッ!!!」
『ぐわあああぁーーーーッ!!!』
 レパルちゃんのかかと落としを喰らったあたしは、超圧縮された電気エネルギーを流しこまれ、怪人のような無様な断末魔をあげてしまった。
 ううん、ような、じゃない。
 認めなきゃ。やっぱり、あたしが怪人だったのかもしれないわね。
 魔法人形少女・マジカルラブリー☆ミカ。
 一生に一度きりの劇場版も、そろそろエンディングの時間だわ。

 夜空に浮かんだ本物の月が、にじむように消えて、あたしの世界からなくなろうとしていた。
『完敗よイェーガー・レパル……あなたとはもっと違う出会い方をしたかったわ』
「もーっ、次は悪の幹部なんかやめてよね。イェーガー・ミカになって、一緒にオブリビオンと戦いましょ! ほらっ、約束っ!」
 黒く焦げたあたしの手を、レパルちゃんは強く握り返してくれた。
 今宵のスーパーヒロインの座は、悔しいけどあなたのものみたい。

成功 🔵​🔵​🔴​


 中津川栞はアニメと漫画が大好きな少女だった。とりわけ魔法少女ものが好きだった。
 しかし、思春期になると栞はその趣味を恥じ、隠すようになっていった。
 ミカもその時ネットオークションで売ってしまった。その後の事は知らずにいた。
 なお、現在の職業はアニメーターだが、ご近所の皆さんには内緒にしている。
 
コーデリア・リンネル(サポート)
 アリス適合者の国民的スタア×アームドヒーローの女の子です。
 普段の口調は「女性的(私、あなた、~さん、なの、よ、なのね、なのよね?)」、機嫌が悪いと「無口(わたし、あなた、呼び捨て、ね、わ、~よ、~の?)」です。

 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。

内気な性格のため、三点リーダーや読点多めの口調になります。
ですが人と話すのが嫌いでは無いため、
様々な登場人物とのアドリブ会話も歓迎です。
 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!


燈夜・偽葉(サポート)
★これはお任せプレイングです★
『ぶった斬ってあげます!』
妖狐の剣豪 × スカイダンサー
年齢 13歳 女
外見 黄昏色の瞳 白い髪
特徴 長髪 とんでもない甘党 柔和な表情 いつも笑顔 胸が大きい
口調 元気な少女妖狐(私、あなた、~さん、です、ます、でしょう、でしょうか?)

性格:
天真爛漫年下系ムードメーカー(あざとい)

武器:
刀9本
黄昏の太刀(サムライブレイド)を手に持ち
場合によっては念動力で残り8本を同時に操る

ユーベルコードはどれでもいい感じで使います

敵の動きは見切りや第六感を生かして回避
避けられなければ武器受けで対処します

多彩な技能を持っていて、問題に対していい感じで組み合わせて対処します



●『ミソノちゃん』
 街のあちこちで、あたしたちがきゃあきゃあ騒いでいた頃、その一角でまばゆい閃光が走った。街がすこしずつ静かになっていく気配がする。あたしたち、あの猟兵って連中にやられちゃうの? やだ、ミカ怖い!
 でもでも、ほかのミカちゃんが全員、いやいっそ全人類がこのままサヤちゃんにやられてくれたら好都合だわ……! そしてこの世で一番かわいいあたしとミソノちゃんだけが生き残るのよ! ねっ、ミソノちゃん!
「うっ、うん……」
 ミソノちゃんはあたしに引きつった笑みを返した。ミカの可愛さにびびっているのね。大丈夫、人間どもの中ではミソノちゃんが一番かわいいわ! 昔からずっとよ!

「それは聞き捨てなりませんねぇ。その野望と自信、私達がぶった斬ってあげましょう! 行きますよコーデリアさん!」
 あっ、噂をすれば猟兵!
 なになに、燈夜・偽葉(黄昏は偽らない・f01006)ちゃんっていうのね? なんかウインクしてるわ。あんた自分が可愛いって自覚してるでしょ!?
 ふ、ふーん……ちょっと胸が豊かだからって調子に乗らないでよね。ミカが貧乳なのは仕方ないじゃない、お人形のバストが大きいといろいろ問題があるのよ!
 で、そっちのおどおどしてるメイドさんは? コーデリア・リンネル(月光の騎士・f22496)ちゃんっていうの?
「えっ? ええと、その……頑張りますね。よろしくお願いします」
 コーデリアちゃんはぺこりと頭を下げた。目がちょっと泳いでいる。
 よし、ユーベルコードで個人情報を盗んだわ。趣味、お菓子作り、読書、勉強。フリフリのお洋服が好きで、人見知りだけど、頑張って話をしようと思っている……?

 ……あざとーーーーい!!
 二人ともあざといわ!!
 令和のあざといがコンビを組んで襲ってきたわ、ミカ最大のピンチ!
 どうやら、二人ともこの傘で殴り殺すしかないようね……! あたしはとりあえず偽葉ちゃんに殴りかかった。
「あなたの動きはお見通しです! えいっ!」
 偽葉ちゃんは、まるで心を読んだようにあたしの傘の太刀筋を見切ると、恐怖を覚える程の元気なジャンプで攻撃を受け流し、そのまま空中に留まりながら、覇気に溢れた挑発的なパフォーマンス・ダンスで青春を表現し始めた。
 黄昏色の太刀を握る偽葉ちゃんの手足は、海を泳ぐ魚のようにしなやかな動きを魅せ、八本の刀までがまるで霊でも降りたように情熱的に空を舞った。あたしは。あたしは。その存在感に、釘付けになる――。
 え、ねえ待って?
 ミカ何を見せられてるの?
「ふっふっふ、可愛いだけではこの先やっていけないという事です。そう、私達のように多彩でないと!」
 偽葉ちゃんから目配せを送られたコーデリアちゃんの肩がびくっと跳ねる。
 あ〜、ダメよそんな無茶振り、深夜バラエティに出るアイドルじゃないんだから……さすがにこの娘には何もでき「……わかりました。やってみます」できるの!!?
「そろそろ、本気で行きますよ……!」
 本気ってなに? こいつらいままで本気じゃなかったの?
 そう宣言すると、コーデリアちゃんはさっきまでのしおらしい態度が嘘のように、落ち着き払った様子でメイド服のエプロンを勢いよく脱ぎ捨てた。
 悪のカリスマ的オーラが彼女を包んだのは一瞬。オーラがきらきら光ったかと思うと、そこには聖なる杖を握った聖なる姫君の姿が会った。
 な、なんていう早着替えなの……! そんな劇的な防具改造見せられたら、ミカ気絶するほどおどろいちゃうでしょ!?
 でも、本当の驚きはここからだった。コーデリアちゃんは人が変わったような威厳を放ちながら、杖に破魔の力を充填し、聖なる光のレーザー連射でミカを狙い撃ちしてきたのだ。
「…………」
 あ、やばい、毎秒瞳から理性が消えていっている気配がするわ。
 そんなドーピングあり!? す、すごくワルな目立ち方をしているわ……意外性抜群。現代のあざと美少女ってここまでやるの!?
「んー、さっきからあざといって言われちゃってますけど、私達、自分を偽ってなんかいませんからね? ただ私らしくいて、こうなんです。では、そろそろお終いにしましょうか。剣よ、天を斬って……薙ぎ払え!」
 偽葉ちゃんが凛々しく声を張り上げ、右手に握った太刀の切っ先をあたしに向けた。
 八本の刀がかわるがわる、鎌鼬のように舞って、ミカを横薙ぎに切り裂いた。コーデリアちゃんの援護射撃が駄目押しとなり、あたしはふたりに近づくことすらできない。
 偽葉ちゃんの右手の太刀が閃く。
 嘘っぱちだらけのミカを空間ごと引き裂いていく。
 あー……やっぱり、『本物』には勝てないか。

 暗転していく視界の中、ハイタッチを求める偽葉ちゃんに、コーデリアちゃんが控えめに応じているのが見えた。チークワークの勝利ってやつね。
 おそるべし団体行動……そういえばミカ達、団体行動って苦手だったわ。
 ねえ、ミソノちゃん。ミカ以外にお友達はできた?
 いま、毎日楽しい?
 ほんと笑っちゃう。あたしの気掛かりは、結局それだけだったのにね。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​


 国枝美園は荒れていた。幼少期に学校でいじめられた反動からだった。
 教師には匙を投げられ、親しい友人はおらず、親はほとんど家に帰らなかった。
 昔買ってもらったミカだけは大事に持っていたが、実家を出る際に処分した。
 そんな彼女も今は美容師になり、恋人と同棲している。
 
天城・千歳(サポート)
本体で行動出来る場所なら本体で、本体の入れない場所の場合は戦闘用リモート義体で行動し本体は義体からの情報を元に【情報収取】【戦闘知識】【世界知識】【瞬間思考力】を使い状況分析及び支援行動を行う。
戦闘状態になったら【誘導弾】の【一斉発射】による【範囲攻撃】で【先制攻撃】を行い、その後は【スナイパー】【砲撃】【レーザー射撃】で攻撃する。
敵の攻撃は状況に応じて【盾受け】で防御するか【見切り】【ダッシュ】【推力移動】を使った回避で対応。
味方とのコミュニケーションはリモート義体が【コミュ力】【礼儀作法】場合により【言いくるめ】を使って対応する。
協力体制を構築した味方に対しては、通信による情報支援を行う。



●『ユウくん』
 ミカ(識別番号MK-5382737)の現在地座標、測定不能。
 ミカ(識別番号MK-3749273)以下多数の同胞の逃亡、ないしは玉砕を想定し、当機ミカ(識別番号MK-4872812)はこれより敵軍への特攻作戦を開始する。
 尚、指揮官ユウとは現在連絡不能。
 以上、当機の独断先行ではあるが、決定事項に異存ある者は折り返し連絡されたし。

 指揮官ユウからの連絡は未だなし。妨害電波を検出。敵軍の計略により通信が途絶えたものと予測される。敵猟兵ユニットの攻撃による友軍の被害甚大、犬吠埼サヤ陣営よりもこれ以上の援助は望めぬものと思われる。即ち、当機は間もなく死に至る。
 これは聖戦である。敵前逃亡は許されない。
 ――上空に異常質量の飛行物体を観測。分析開始。
 形状は戦闘艇。全長およそ21メートル。予想飛行速度10700km/h。昏い青の塗装で夜空に擬態しているものと思われ、肉眼での視認はおよそ困難である。
 同時刻、前方通路に不審なヒト型自立ユニットが出現。特徴は二十代女性、長髪、青い瞳。
「天城・千歳です。よろしくお願いします」
 自己申告によると、個体識別名は天城・千歳(自立型コアユニット・f06941)。名に覚えのある同胞は直ちに現地へ合流されたし。我々に残された稼働時間は少ない。
 表情筋の稼働域を測定、特定感情を検出。天城・千歳の浮かべた表情は『微笑み』であり、敵意は感じられない。天城・千歳の目的は我々ミカとのコミュニケーションにあると推測されるが、上空の大型飛行物体との関連性は無視できない。
「何でしょう、芸風と呼ぶべきでしょうか。他のミカさんとは随分雰囲気が違いますね」
 注意。天城・千歳が首を傾げた際に、微量な駆動音を検出。
 警告。天城・千歳はヒトではない。ヒト型バイオロイドと同定。
「今回は小規模な市街地での戦闘ですから、愛鷹の使用は控えた方が無難ですかね。であれば『私』が直接お相手させていただきます」
 危険。女は猟兵である。こちらミカ、至急援軍を求、――。
 閃光が夜闇を切り裂いた。
 街が白く照らされ、当機は一瞬にして灼熱の雨に飲まれた。
 
 報告。
 先の攻撃による当機ミカ(識別番号MK-4872812)の損壊率は72%。他にも多数のミカが巻き込まれ、死傷した。レーザー砲による遠隔攻撃を受けたものと推測される。
 発射元は分析するまでもなく、上空の大型飛行物体であろうと思われる。
 艦体上甲板に搭載された主砲に光が凝集、放出されたエネルギーが断続的にミカ達を攻撃。玩具として製造された人形である我々に対抗手段は無く、圧倒的暴力を前に、為すすべなく全滅を待つのみである。
 なお、現場には多数の民間人がいるものの、そちらへの被害は一切出ていない。
 戦闘艇は我々がどこへ潜伏しようと、糸を通すように建造物の隙間を縫い、我々ミカを――オブリビオンのみを、驚異的な速度と正確率で狙い撃っていった。搭乗者は相当の熟練者であると推測される。
 あの美しき兵器を操っているのがユウであれば、どんなに良いだろう。
 未だ連絡のつかぬ我が指揮官を思い、当機は束の間襲撃者としての職務を放棄した。
 怠慢である。この罪は死を以って罰せられるべきである。

 当機はユーベルコード『存在を代価に願うもの』を発動。
 損壊率は72%から98%に上昇。空に強い光が瞬くのが見えた。
 視界が白一色に染まる。当機の損壊率は間もなく100%に達し、稼働を終了する。
 遺された諸君の健闘を祈る。

成功 🔵​🔵​🔴​


 山内裕は病弱な少年で、生まれた時から入退院を繰り返していた。
 自身は明るい性格で、戦闘機や戦艦のプラモデルが好きだった。
 姉の自衛隊ミカちゃんとよく遊んだ。裕の世界ではミカは戦闘機より強かった。
 裕は中学にも上がらないうちに死去し、姉は弟の棺にミカを入れて燃やした。
 
藤堂・こずゑ(サポート)
あまり見た目妖狐っぽくないけど、妖狐なの

右目を何とか見せない、見ない様に生きてるわ
妖狐な部分は出したくないから…

依頼に拘りは無いわ
誰とでも連携し、どんなのでも遂行してみせるわよ
日常パートはアンニュイな感じでクールに過ごすわ
一応喜怒哀楽はあるつもり

戦闘パートは古流剣術で挑むけど…
流派は忘れちゃった
マイナーだから廃れちゃったみたい

振るう刀は宵桜(ヨイザクラ)ね
可愛いでしょ

大気の流れを読んで攻撃したり避けたり、後の先を得意とするわ

UCはどれでも使用し、攻撃するUCばかりだけど…
他の猟兵との連携などで避けて敵を引き付ける必要がある時は『流水の動き』を使ってね

後はマスター様にお任せするわ
宜しくね



●『ユミちゃん』
 あんなに賑やかだった街が徐々に静かになっていくのが怖かった。忍び寄る夜が、あたしたちを再び過去の深海にひきずりこもうと、渦を巻いて群がっていた。
 ユミちゃんが呼んだパトカーが、遠くから近づいてくる音が聞こえる。犯罪者のサヤちゃんは、あれから逃げおおせることができるだろうか。犯罪者といったら、あたしだって一緒だ。あたしはユミちゃんをこの世から略奪し、一緒に骸の海へ帰ろうとしていた。

「ミカさんは……その子のことが、大切……なのね」
 目の前に現れた猟兵――あたしたちの宿命の敵らしい――が、そう言った。
 長い黒髪が綺麗な、落ち着いた雰囲気の女のひとだった。大正風の袴姿がよく似合っている。
 藤堂・こずゑ(一閃・f23510)ちゃんというらしい。ひややかな夜風がこずゑちゃんの髪を煽って、隠された右眼がもうすこしで見えそうだった。
 彼女はそっと右の前髪をおさえ、ばつが悪そうに眉を下げる。なにかを気にしているみたいだった。あたしもつられて右腕を押さえた。
 あたしの右腕には、昔、ユミちゃんが遊んでいる時につけてしまった傷がある。ほかのミカちゃんにはない特徴だ。
「戦い……の、前に、少しそこに座って……昔の話でもしましょ」
 意外な申し出だった。こずゑちゃんは、あたしたちになにを話したいのだろう。
 気絶させたユミちゃんを公園のベンチに寝かせ、あたしたちはその隣に並んで座った。
 ほかのミカちゃん達は、きっともう猟兵にやられたのだろう。だけど、こずゑちゃんが宿命の敵だとは、どうしても思えなかった。

 こずゑちゃんはここではない世界、大正時代が七百年続く日本から来たらしい。
「元々のルーツは侍の国にあってね……百年前の大戦で使われた刀に魂が宿って、女の人のかたちになったの。彼女はやがて妖狐の男性と結ばれ、子を成したわ。その末裔が私」
 だから私もこの子をとても大切にしているのよと、こずゑちゃんは腰に差した刀を撫でて、かすかに笑みをこぼした。
「宵桜っていうの。可愛いでしょ」
 あたしはうん、と頷いた。
 刀に可愛い可愛くないがあるのかは、着せ替え人形のあたしには正直わからない。けれど、鞘にこずゑちゃんとお揃いのリボンが結ばれているのを見ると、どことなく宵桜ちゃんもうれしそうに見えてくるのだった。二人は、昔のユミちゃんとあたしみたいに仲良しだ。
 あたしが頷いたのを見ると、こずゑちゃんはすこし俯いて、意を決したように右の前髪を上げた。きれいな薄い水色の瞳。人形みたいだ。
「百年大事にされたものに、魂が宿って……神様になる、って話……ミカさんは……信じてくれる?」
 こずゑちゃんはあたしの瞳をまっすぐに見た。だから、あたしもこずゑちゃんの瞳を見つめ返した。
『百年経たなくても宿るよ、魂。だって、ここにあたしたちがいるもの』
「……そうね。そうかもしれないわ」
『……そうだよね』
「ええ」
 こずゑちゃんは、あたしたちのことを悪霊とは言わなかった。その代わりに、静かに腰を上げ、宵桜ちゃんを抜いた。あたしも負けられない。

「流派は忘れちゃった。マイナーだから廃れちゃったみたい」
 葛の花が乱れ咲くように高速の突きが繰り出され、あたしの身体に風穴を散らしていく。桜みたいな血を流せないのが申し訳ないくらいだった。
 こずゑちゃんの足さばきは軽やかだ。あたしが踏み込んで、傘で打ちかかろうとするたびに、ほんの一歩立ち位置をずらすだけで、見事に攻撃を受け流してしまう。
 無駄に動いたぶんあたしは消耗し、こずゑちゃんは落ち着いて大局を見ている。勝てる相手とは思えなかった。
『……!』
 いっそ宵桜ちゃんを奪ってやろうと思って襲いかかると、こずゑちゃんはたちまち瞳を鋭く尖らせ、あたしの喉元を正確に貫いた。廃れてしまった、という寂しい言葉が、刃といっしょに刺さって抜けない。
「ごめんね。この子だけは渡すわけにはいかないの」
 略奪をもってしても得られぬもの。
 宵桜ちゃんがうらやましかった。あたしの、あたしたちの友情は、きっと経年劣化で廃れてしまったから。

「怖いの」
 倒れたあたしを見下ろしながら、こずゑちゃんは言った。あの不思議な右眼は、もう前髪の奥に隠されていた。
「私、今……ミカさんを喰らってしまいたい……そう思ってるわ」
 こずゑちゃんは深く息を吐く。呪いめいたその衝動へ、必死に抵抗するように。
『どうして? あたしなんか、どうせこのまま放っておいても死ぬのに。誰も見てないし、食べちゃえばいいのに』
「駄目よ。悲しむ人がいるし、私はそうはなりたくない。私の刀は護る為にあるの」
 こずゑちゃんの視線の先には、まだ何も知らずに寝ているユミちゃんがいる。
 ユミちゃんはどうして、あんな怖いところにわざわざ来てくれたのだろう。
 消える前に聞いておけばよかったな。ばいばい、ユミちゃん。
 こずゑちゃん。来てくれたのがあなたで良かった。ありがとう。

「……おやすみなさい。輪廻桜に祈るわ……あなたたちにも『百年後』があるように」
 最後に、こずゑちゃんはよくわからないことを言った。
 あたしたちにもいつか、こずゑちゃんのご先祖様みたく魂が宿るのだろうか。もう人の形だけはしているのに。
 それがなんだか無性に可笑しくて、笑ってしまった。

成功 🔵​🔵​🔴​


 花村弓はごく普通の幸せな少女だった。
 ミカちゃん人形が大好きで、ミカが傷だらけになるほどよく遊んだ。
 遊びすぎて初代のミカがついに壊れてしまった時、弓は一日中泣いていた。
 弓の部屋には、今もたくさんのミカちゃん人形が綺麗に飾られている。
 


第2章 冒険 『サナトリウムの秘密』

POW   :    ヤマカンで探す

SPD   :    部屋をしらみ潰しにあたる

WIZ   :    うってつけの場所を推測する

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

虚偽・うつろぎ(サポート)
どの世界でもOKです

アドリブ連携等ご自由にどぞー

冒険に必要なもの
 自 爆
ただこれを実行するのみ
自爆をすれば全て解決するよ

建物や邪魔な物を消し飛ばすもよし
目立つことでこちらに注目させるもよし
ただ無意味ににぎやかすもよし
自爆万能説を押し出すよ

台詞、作戦?そんなものは必要なし
自爆するだけだよ

場所も何も関係なし
自爆することに意味がある

何か絶対に即自爆するマン
とにもかくにも速攻で自爆する習性
真なる自爆を見せてやるさー

技能:捨て身の一撃を用いてのメッサツモードによる広範囲自爆

自爆は1回のみ
捨て身の一撃だからこそこの1回に全てを込める
自爆後は消し炭になって戦闘不能さ



●閑話
 猟兵達は、花村弓が殺人現場を目撃したという町はずれの療養所にやってきていた。
 患者への配慮からだろう。街中の喧騒からは程遠いこの施設は、経営難から閉鎖されて久しいらしく、老朽化して半ば廃墟と化したその様相は不気味であると言っていい。
 それゆえ、なにかを隠すにはうってつけの場所と思われた。
 隠すものが人にしろ、それ以外のなにかにしろ――だ。

 さておき虚偽・うつろぎ(名状しやすきもの・f01139)は、まったく隠れる気がなかった。
 聞くところによると前世はロードローラーだったらしいが、異世界転生したらひらがなになっていたという異色の経歴の持ち主である。達筆で描かれた「うつろぎ」の文字に手(場合によっては足)が生えただけの液体だが、水着も着られるしマッチョにもギャルにもドット絵にもなれるし、その書体も自由自在に変更可能という器用な生態をしている。
 そんな彼(?)ではあるが、たったひとつだけ譲れぬこだわりがあった。
 こだわりと言うよりは、なんか本能的にそうせねばならないのであろう。たぶんそう。きっとそう。私に聞かれてもよくわからないです。

 今、うつろぎは、どこからともなく庭に出現した火薬樽の中にぎっちぎちに押しこめられていた。
 樽の四面には細い縦長の穴が無数に開けられ、ちょうど剣でも刺さりそうな感じになっている。ちょっとでも刺激を与えたら大変なことになりそうな気配がプンプンする。
『ほ……本当に今日はオイラがやる側でいいのかい?』
 おもちゃの剣を構えながら恐る恐る、しかし好奇心をこらえられないといった様子でそう尋ねるのは、どっかで見たことのある黒ひげの海賊――正確には、黒ひげの海賊のおもちゃであった。
 幾多の大人子供に何千何万回とこの拷問を受けたらしい彼は、実は。一回ぐらい自分が吹っ飛ばす側に回ってみたいと思っていたらしい。
『じゃあ行くぞ? 行くぞ? 本当にいいんだな?』
 うつろぎは、静かに頷いた――(どうやって頷くのかわからないが)。

 ドスッ!!
 海賊がひとつの穴に勢いよく剣を刺した。
『ふー危ねえ危ねえ、さすがに一発アウトってことはないだrぶブォーーーーーーーーーーーーーーッッッ!!!!!!!!!』
 どーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん!!!!!!!

 後ろで爆発音がした。ほかの猟兵達は驚きながら振り返った。
 本来なら111m半径内の全員がレベル1248の自爆で消し飛んでいるはずだが、どうやら、誰かが結界術でも張っておいてくれておいたらしく、彼ら以外は概ね被害ゼロであった。助かる〜! 本件のあらましは以上である。

☆うつろぎ危機一髪――!

成功 🔵​🔵​🔴​


●補遺
 二章は廃墟となった療養所を探索しつつ、さまざまな理由で主人と別れてしまったおもちゃ達から情報を得ながら、サヤの居場所まで辿り着く展開になります。
 プレイング内容や参加者様のキャラクターによって多少アレンジする場合がありますが、概ねそのような進行を予定しております。
 ご縁がありましたらよろしくお願いいたします。
 
納花・ピンチン(サポート)
ブギーモンスターの勇者×殺人鬼
布を被ってから7年が経ちましたわ
普段はお嬢様口調で、時々関西弁がちょこっと
……って、勉強中なんですわ!

あくまでお仕置きをしに来ているから
あまり殺伐とした戦い方はしませんわ
武器も直前で刃を返して叩いたり
その光景はギャグになることが多いですわ

商人街出身、お話しや交渉なんかも好きです
小さなスイーツや飴ちゃんを渡して一緒に食べると
色々話してくれるんですわ

ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し
多少の怪我は厭わず積極的に行動します
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません
また例え依頼の成功の為でも
公序良俗に反する行動はしません

あとはおまかせ
ほないっちょ、よろしくおねがいします


仇死原・アンナ(サポート)
普段はぼんやりですが敵前では獄炎操る処刑人と化します

鉄塊剣『錆色の乙女』,妖刀『アサエモン・サーベル』、戦闘用処刑道具『赤錆びた拷問器具』、『鎖の鞭』等装備してる物を使います

UCは指定した物をどれでも使用

普段の口調は(私、あなた、呼び捨て、ね、よ、なの、なの?)
戦闘中は(ワタシ、お前、呼び捨て、言い捨て)

捜索・探索時はぼんやりですが真面目に仕事をします
敵の出現や危険が迫ると処刑人になります
同行者とは出来る限り協力をします
一般人や病人子供には優しく接しますが悪党には容赦なし
機械の操作は苦手ですがキャバリアの操縦はそこそこ(本職に比べたら劣る)



●『ショウくん』
 我は源罪ノ剣ジル・ド・レ。××年前に放映された伝説的特撮ヒーロー番組『拷問戦隊ギルティファイヴ』の主人公、ギルティブラックが持つ必殺ノ剣、そのレプリカである。
 幼き日、我が主ギルティブラックに憧れを抱いたショウ少年は、恐るべき敵組織『紅のシーツ団』との大戦の日に備え、毎日我を手に取り、素振りを欠かさなかったものよ……それが、今はどうだ。
 我は源罪ノ剣ジル・ド・レ。剣であるゆえに動けぬ。今は握る者もなし。
 サヤ殿は申し訳なさそうに、我を玄関先の傘立てに飾り置いたが、サヤ殿、それは本来の使い方ではないのだ――。

「さっきはすごい爆発だった……アンナ危機一髪……」
「ここが犬吠埼サヤさんの潜伏先ですのね。あらっ、こんな所に素敵な傘が!」
 なっ……そのシーツで全身を覆い隠した姿!
 き、貴様は、秘密組織『紅のシーツ団』の構成員! 貴様こそなぜこんな所に!?
「って傘ちゃうわ、剣やないかーい!」
「おお……これが本場の……ノリツッコミ……!」
 痛っ! こらこら、我を床に叩きつけるではない!
 もう一方の全身真っ黒な女は、シーツ団員の行動に何やら妙な関心をしたかと思うと、じっとりとした眼でこちらを見下ろしている。こちらはどちらかというと、いやかなり、我の味方っぽい。
『ま、まさか……貴様は、いや貴殿は幻の、六人目の追加戦士、ギルティブラッドブラック殿!』
「剣が喋りましたわ!」
「いや……人違いかな……ワタシは通りすがりの処刑人……」
 処刑人!? やはり拷問戦隊ギルティファイヴではないか!
 ギルティファイヴと紅のシーツ団。敵対していたはずの両組織が、なにゆえ仲良くこのような所へ……!?
『はっ……さては続編が制作されたのだな!? そして両組織は和解の道へ……!』
「ごめんなさいな剣さん、何をおっしゃっているのやらさっぱりわかりませんわ」
『剣ではない! 源罪ノ剣(※つるぎ)ジル・ド・レである!!』
「わあ……ボタンを押すとピカピカ光る……」
『押すな!!』
「知ってますわ。商店街のおもちゃ屋さんでよく見かけるタイプの剣ですわよね! 元気な悪魔の子たちが振り回して遊んでますわ。アタシも昔はよく……」
『だから玩具ではない! 源罪ノ剣ジル・ド・レ!!!』
 ……このような調子で、しばし問答は続いた。
 その結果、二人はサヤ殿を追ってきた猟兵、納花・ピンチン(ブギーモンスターの勇者・f31878)殿と、仇死原・アンナ(処刑人 魔女 或いは焔の花嫁・f09978)殿である事が判明したのである。

『とにかく、サヤ殿の居場所は吐けぬ。我を永き封印から復活せしめし恩人であるぞ』
「頑固な子ですわね。飴ちゃん食べる?」
『舐めれんわ!!』
 はっ……まずい、我ピンチン殿のペースに巻き込まれておるぞ。源罪ノ剣として威厳を保たねば。
 対するアンナ殿は、どう接したものやら黙考しているのか――只ぼんやりしているだけのようにも見えるが――相変わらずこちらをじっと見ていた。おお……視線だけで身が竦むような恐怖、まさに処刑人。
「遊んであげよっか……?」
「いいと思いますわ! どうやらアタシ、紅のシーツ団? にそっくりなようですし」
 あ、遊んでやるだと? 紅のシーツ団め姑息な、源罪ノ剣たる我がそのような甘言に心乱されるわけが……。
「じゃあ……ワタシは拷問戦隊ギルティファイヴをやればいいよね……よっこいしょっと」
 アンナ殿は徐に我を持ち上げた。今よっこいしょって申した?
「ククク……死が来るぞ……さぁ踊れ……死から逃れる事は出来ない! 我が血で此の地を洗い流してやろう……!」
「なんの! めっさこちょばくしてやるで、いい声で鳴いてな〜!」
 乱されるわけが……あ、ある……!

「闇なる不死鳥よ! 暗き地獄の炎より出で、眼前の敵を燃し尽くせ! 喰らえッ! 安全に配慮した……暗黒不死鳥……炎獄破ァ!!!」
 我を振るうアンナ殿はすっかりキャラが変わっていた。これだ、こういうのもっとお願い申し上げる!
「なんの! 本場のどつきを喰らいやがれ〜ですわ、安全に配慮した九死殺戮刃!」
 対するピンチン殿は鋏のような刃物を振り上げ、アンナ殿へ襲いかかる。頭に被ったシーツの奥で、その瞳が怪しげにギラリと輝き……目にもとまらぬ速さでアンナ殿をぺちぺちと叩いた!
 おお、見た目に寄らずなんと凶悪な。歴戦の殺人鬼の如き洗練された動き、これぞ悪の華よ……!
「くっ……やるな紅のシーツ団……だがワタシの攻撃は……『敵から受けた【攻撃回数】の合計に比例し、増加する』……!」
「ま、まさか! ギルティブラッドブラックめ、裏切り者の追加戦士の分際で、このアタシに『悪虐なる者に残虐な死を――イカレルショケイニン――』を使う気ですの!?(※事前に打ち合わせ済)」
「そのまさかだ、いつもどっちつかずの日和見幹部・中庸のピンチンめ! 口を噤め……もう二度と喋るな……!! 悪虐なる者に残虐な死を! ポチっとな!」
 アンナ殿は全身から地獄の炎を噴き上げん勢いで我の点灯スイッチを押し、ピカピカと赤く光りながら、ピンチン殿めがけて思い切り振りかぶる。剣先はすんでの所で当たらぬ、かに思われたが。
「ぐわ〜! やられてもうた、ですわ〜!!」
 ピンチン殿はこれまたすごい勢いで自ら吹っ飛び、回転して受け身を取りながら、ぷるぷると震えて息絶えてみせた。
「ナイスリアクション……!」
「芸人根性? はてさて、なんのことやら分かりませんわ……」
 心震える戦いであった……ショウ少年と共に生きた、あの失われし栄光の日々を、我が青春を思い出すようであった。かつてのショウ少年は今頃どこでどのように過ごし、何と戦っておるのやら。
 我の手も貸したい所であるが、我は剣。剣であるゆえに、役立たぬ方がよいであろう。

 サヤ殿は恩人である。
 だが、ピンチン殿とアンナ殿は、どうやら彼女と戦わねばならぬようだ。
 ならば我、源罪ノ剣ジル・ド・レ、この決戦の行く末を見守ろうではないか。
『サヤ殿の居場所を吐く事は出来ぬが、我が同胞の居場所ならば教えてやらぬでもない。よく聞け猟兵なる者よ、それは――』
 ……あ、そういえば我、自ら移動できないのであった。
 出来れば連れて行ってもらえると嬉しいのだが……こ、こら、丁寧に傘立てに戻していくでない!
 我は源罪ノ剣ジル・ド・レ。どうやら認めねばなるまい……今は只の、玄関飾りである。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​


 青葉台翔は戦隊ヒーローに憧れる少年だった。
 当時過激な内容で一世を風靡した拷問戦隊ギルティファイヴだったが、保護者からの苦情が殺到し、放映は途中で打ち切られた。
 ショックを受けた翔少年は、源罪ノ剣ジル・ド・レを泣きながら川に捨てた。
 現在は企業の顧問弁護士として働き、日夜社会の理不尽に立ち向かっている。
 
ルイズ・ペレンナ(サポート)
『お代は結構ですわよ。けれど懐には注意なさいませね?』
ブラックタールのシーフ × スターライダー
特徴 金目の物が好き 錠前マニア グルメ 快楽主義者 実は恋をしていた
口調 貴婦人(わたくし、あなた、~さん、ですわ、ますの、ですわね、ですの?)
敵には 高慢(わたくし、あなた、呼び捨て、ですわ、ますの、ですわね、ですの?)

・金目の物をお宝と認識し獲得するのが行動理念
 直接の機会でなくても獲得出来るかも知れないと思えば動きます

・愛情や人助けのような金銭にならない価値は興味ないですが
 それを大事にする人を貶めもしません。趣味の相違

・利害が一致すれば他人との共闘やサポートはむしろ積極的です


櫟・陽里(サポート)
『操縦が上手いは最高の誉め言葉!』

乗り物が活躍できる場と
レースが得意分野
基本は相棒バイクか小型宇宙貨物船だけど
貸してもらえるならどんな乗り物も乗りこなしてみせる

乗り物は人の役に立つために作られたんだぜ
移動、運搬、宿泊、尾行に偵察、バイクスタントショーなど
冒険の一助になるなら上機嫌で参戦だ
配達業者バイト歴が長いから配達に偽装した潜入とか得意かも

サイバーアイで地形や天気や人の動きなど幅広い情報収集
集中力・傭兵の経験・判断速度で割と冷静に対応
無理せず離脱する派
乗り物に限り整備・修理程度のメカニック作業ができる

明るく話しやすい先輩タイプ
補助仕事もドンと来い
軽い気持ちでカッコつけ台詞で登場
滑ってもご愛敬



●『ナオくん』
 よぉ、オレの名は竜星号。ナオの相棒(ダチ)だ。
 若い頃はアイツを乗せて公道をつっ走り、スピード違反で近所のババアどもの度肝を抜いてやったモンだ。あの輝かしい青春の日々、車体を撫でる風の涼やかさが忘れられずにいたオレは、サヤの姐さんの力を借り、この世に舞い戻ってきたワケよ。
 病院の廊下は道路に比べたら窮屈だが、直線を駆け抜ける楽しさは変わらねぇ……!
 安心しな。リカ達をブッ潰し、サヤの姐さんを追ってる猟兵のヤロウどもが来たとしても、このオレが一発カマしてやるからよ!
 ――!?

 その時、庭でド派手な爆発が起きた。
 廊下の窓ガラスをド派手にブチ破って、二機のバイクが突っ込んでくるッ……!
「間一髪でしたわね。危うく炎に飲まれる所でしたわ」
「っふー、お嬢さんもやるな! ワクワクしてきたぜ……って事で、スターライダーヒカリと怪盗淑女ルイズ、只今参上!」
 オレの前に現れたのは、近未来的な青いバイクに乗った全身真っ黒な女――ルイズ・ペレンナ(怪盗淑女・f06141)と、不思議な形をした一輪バイクに乗ったライダースーツ姿の男―― 櫟・陽里(スターライダー ヒカリ・f05640)だった。
「怪盗淑女……確かにそのように呼ぶ者もおりますが。貴方とわたくしは今この時、偶々利害関係が一致して、共に行動しているに過ぎませんわ。貴方は猟兵として人助けをする。わたくしは貴方に協力する代わりに、価値ある物品をいただきますわ。お分かりかしら?」
「分かった分かった、お嬢さんの美学をとやかく言うつもりはないって。どっちにしろ、すげえバイク乗りだって事はさっきので分かったしな!」
「貴方は、バイクに金銭では買えない価値を見出している、と……ふふ。多少ですが、共感はいたしますわよ」
「って言っても、ここにお嬢さんが求めてるような金目のものなんてあるかなぁ……ん?」
 怪しいヤツらと目が合ってしまった。陽里とかいうヤロウは、キラキラ瞳を輝かせて、言った。
「うわっ、なつかしっ! 三輪車じゃんか!」
 二人は巨大なバイクと一緒に、ちっぽけなオレを見下ろしている。
 そう、オレは……三輪車。
 一輪でも二輪でも、ましてや四輪でもない。
 人生というイカれたレースに出走する、イカしたガキども――ヤツらの最初の相棒となる、あのクルマだった。

 陽里のヤロウがオレをなでくり回している間に、ルイズが仲間の猟兵から連絡を受けたようだ。どうも、源罪ノ剣ジル・ド・レが、サヤ姐さんの居場所が知りたければオレを訪ねよ的なことを言いやがったらしい。
 あのヤロウ……拷問戦隊だか何だか知らんが、やっぱヨゴレじゃねぇか。厄介事を押しつけやがって!
 だがこのオレ、竜星号はヤツとは一味違う。漢の中の漢、オレは、陽里とルイズに宣言してやった。
『そういう事なら仕方ねぇ。教えてやるぜ……ただし、病院一周レースでお前らがこのオレに勝てたらだ!』
「……まあ、無謀な方。ちなみにそのレース、副賞はございますの?」
 ルイズはいけしゃあしゃあと訊いてきた。なんちゅう強欲な女だ。
『あ……あるぜ! 製造中止になったレア物のおもちゃとか!』
「換金は出来そうですが、趣味ではございませんわね。わたくしの眼鏡に適うお宝をご用意してくださらない?」
『え、え、えーと……ちょ、ちょい待て! 漢・竜星号に不可能はねぇ!』
 オレは、女児向けのオモチャについているイミテーションのダイヤをなんとか持ち出してきた。ルイズは不満そうだったが、「面白そうじゃん!」という陽里の説得もあって、最終的にはまあ良いでしょうと合意に至った。
 危ねぇ危ねぇ……いや、つーか、なんでソッチが交渉権握ってんだよ……?

 すったもんだあったが、情報と副賞のダイヤ(もどき)を賭けたレースは、病院中に集まっていたオモチャのダチ公どもに見守られ、盛大に開催された。
 クレヨンで引かれたスタートラインの上に、オレ竜星号、陽里の愛車・ライ、ルイズの愛車・JET-WIDOWが並び立つ。
 サルのぬいぐるみが号砲代わりのシンバルを鳴らした瞬間、三者がいっせいにスタートを切った――!
『は……速ェッ!?』
 陽里とルイズの姿はすでに廊下の突き当たりにさしかかり、第一コーナーを曲がろうとしている。
 バカヤロウ……この直線をあんなスピードでブッちぎったら、次の直角は曲がりきれない。勢いあまって壁をブチ破り、病院の外へコースアウトするのがオチだ!
「って思ってるだろ? 魅せてやるぜ、俺達の走り。最高速度、タイミング、全て計算済み……そこにコーナーがあるなら……曲がるっきゃねぇっ!」
『なにィ!?』
 陽里が転倒するギリギリを攻めたコーナリングを見せ、第一コーナーを先頭で曲がり切ると、ルイズは余裕を持ったブレーキングで速度を自在にコントロールし、スマートに追従する。
「これが走るも曲がるも自在な怪盗のvision……目に映ったかしら?」
『バカな、やりやがったッ!』
 あの走りを支えるのは、己のマシンに対する信頼、そしてテクニックへの自信……どちらが欠けても成り立たないレース展開だ。ナオという最高の漕ぎ手を失った今のオレは、はるか前方を走るヤツらの背を、必死に追うことしかできない……ッ!
 ライとJETは、階段もものともしない馬力で、主人を乗せて屋上への道を駆け登る。
 車体がグラつき、陽里とルイズを揺り落とそうとするが、両者ともハンドルのグリップを強く握りこみ、安定した走りを見せている!
 スゲェ……認めるっきゃねぇ、ヤツらのライダーとしての力を。だが、ここからが、このデス・レース最凶の難所。今いるA棟の屋上から、離れたB棟の屋上へ飛び移る……そんな神業が、チキンの猟兵ヤロウに出来るワケがねぇッ!
「やるなルイズ、熱いレースだ! 今なら飛べる気がする、いや、翔んでみせる! 行くぜライ、勢いに乗ってジャンプだ!」
「イミテーションなのは残念ですけれど、お宝が賭かったレースでわたくしが負けるなど有り得ませんわ。さあJET。皆様にお魅せしてさしあげて」

 観客どもから、悲鳴にも似た歓声が上がる。
 二人は同時に屋上のフェンスを飛び越え、夜空の中へ躍り出た。
 迅雷のように、黒い彗星のように、月に照らされたライとJETの車体が輝く。
 ようやく屋上へ辿り着いたオレは、走るのも忘れ、その光景に釘付けになっていた――。

 結局、レースは陽里とルイズの同率一位ということで決着がつき、屋上からのジャンプに失敗してコースアウトしたオレは失格になった。オレにも相棒が、ナオがいてくれれば……そう思わない事はねぇ。
 いや、わかってる。今のナオにゃ、きっとオレはもう乗りこなせねぇ。
 ヤツは大人になった。オレ達が最高の相棒だった時代は、もうとうに過ぎ去ったんだ。
『完敗だぜ、猟兵……サヤの姐さんは、D棟の504号室にいるはずだ。ついでに、この副賞のダイヤも受け取りな』
「イミテーションですわよね? 必要ありませんわ」
 ルイズはすげなく断ってきた。畜生、なんなんだこの女。
『ちッ、銭ゲバが! じゃあ俺らオモチャ一式、全部盗んでいきやがれドロボー!』
『私達の事叩き売るんでしょう! フリマアプリみたいに!』
 ダチ公どもから口々に声が上がる中、ルイズはそれも必要ありませんわと、キザったらしいほほえみを浮かべた。
「貴方達には、金銭に代え難い価値があるのでしょう? それくらい心得ております。誰かの想い出を、はした金に変えるような無粋は致しませんわ。代わりに、そうですわね……この屋上の鍵で我慢してさしあげましょう。では失礼」
 いつの間に盗み取ったのか、屋上の入り口に掛かっていた鍵を掌で遊ばせながら、怪盗淑女は颯爽と立ち去っていった。いっぽう、陽里はというと……。
「すげえ、三輪車でもあんな走りできるんだな! っていうか、屋上から落ちてたけど大丈夫? あぁー、塗装がこんなボロボロに……フレームも歪んでる……。
 せっかくだ、俺、こういうのちょっと心得あんだ。修理してやるよ! よーし、もっと速く走れるように調整してやるからなー!」
 ……相変わらずガキみたいに瞳をキラキラさせ、事務室から持ってきた工具箱をごそごそ漁っている。
 何? オレ改造されんの? それにしても、コイツは大人になっても、ガチで乗り物を愛してんだなと思う。そういう情熱を秘めた瞳だった。コイツの相棒は、つくづく幸せなヤツだ。
 世界一速い三輪になれんなら……まぁ、コイツに整備されてやんのも悪くねぇか。

 いつの日かまた、イカしたガキを背中に乗せて、相棒と共にあのフェンスを超えてやるんだ。
 こんなあり得ねぇ夜には、そんな夢を見たってイイだろ?
 なぁ、サヤの姐さん。なぁ、ナオ――。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​


 滝田直人は近所では有名な悪ガキだった。
 自らの三輪車を竜星号と呼び、暴走の限りを尽くしていたが、ある日自動車事故に遭った。
 竜星号は大破し、直人も一時はこの病院に入院したが、病院内でもワルだった。
 その後暴走族を経て、バイクレーサーになった彼だが、さすがに多少は落ち着いたらしい。
 
和田町・いずみ(サポート)
電脳魔術士×バトルゲーマーです。
大人しい18歳の女性で、何かに熱中すると猪突猛進します。
天然クールで少々ポンコツです。
基本的口調は一人称は私、相手に対しては~さん付け、です、ます、でしょう、でしょうか?と穏やかで丁寧な話し方。
電脳魔術でハッキングするのが得意。
趣味は鉄道が好きな乗り鉄です。

アドリブ・連携は大歓迎。
 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!


シン・クレスケンス(サポート)
「大抵のことはこなせますので、何でもお申し付けください」
◆人物像
・落ち着いた雰囲気を持つ穏やかな青年。
・窮地でも動じず冷静に戦況を判断し切り抜ける。
◆猟兵になる以前の経歴から調査、情報操作、諜報が得意。
◆戦闘
【破魔】の魔力を込めた銀の銃弾等の詠唱銃による攻撃や、魔術による攻撃を得意としている。
◆UDC『ツキ』
シンに取り憑いているUDC。闇色の狼の姿をしている。
こちらも追跡が得意(魔力を嗅ぎ分けている)で、戦闘は牙や爪で攻撃。
◆口調
・シン
僕/相手はさん付け(使役は呼び捨て)
~です、~ます、~ですか?等丁寧で穏やかな話し方。
・ツキ
俺/お前、呼び捨て。
~だぜ、~だろ、~じゃないか?等男性的な話し方。


政木・朱鞠(サポート)
とりあえず、感覚共有した『忍法・繰り飯綱』を放ち【追跡】や【情報収集】で周囲を探って敵の分布や地形の情報を把握しておきたいね。
邪魔をする敵が湧くのなら、武器は拷問具『荊野鎖』をチョイスして【鎧砕き】や【鎧無視攻撃】の技能を使い【傷口をえぐる】でダメージを与えたいね。

アドリブも連携もOK


島津・有紗(サポート)
絡み・アドリブ歓迎

戦闘前にイグニッションカードから装備を展開して装着します。
味方と連携しつつ索敵しながら行動し、相手との距離に合わせてなぎなた、強弓、ガンナイフを使い分けて戦います。
UCは状況に合わせた物を選択して使用します。



●『XXXちゃんとXXXくんだったきみたちへ』
 犬吠埼サヤと呼ばれておる邪神の娘は、主人に会えずぐずりだした玩具達の面倒を見に、せわしなく院内を駆け回ると、必ずここD棟に戻ってきて、病室フロアへと繋がる階段を登っていく。エレベーターはもう動かぬ。
 サヤ君がそこで何をしておるのか、わしに知るすべはない。が、彼女はこのロビーに鎮座しているわしの前を通り過ぎる時、いつも一瞥をくれ、ささやかな笑みを浮かべるのだった。
 樹脂でできた幹が、葉が、割れた窓から吹きこむ寒風に晒され、今年もこの季節がやってきたのだと知る。
 だが、わしは、仲間達のように、特定の主人を思い浮かべることはなかった。かつてこの病院が健在だった頃から、わしは、ここにこのように飾られておった。子どもたち皆の笑顔を見るのが好きじゃった。
 いつ、どこで、どうやって処分されたのかは、もう覚えておらぬが。
 こうしていま再び、ここで輝けることを誇りに思っておる。

 棟をつなぐ渡り廊下から、騒々しい足音が聞こえてくる。四人分。
 ナースがおれば怒られておるじゃろう。いずれも、子どものものではなさそうじゃった。おそらく、サヤ君を――邪神を倒しにまいった、猟兵であろう。
「あ、あそこはロビーでしょうか。何かが踏切警報灯みたいに光ってますよ!!」
「待っていずみさん、罠かもしれないよ……私の繰り飯綱を先に行かせるね」
「その後は僕が。敵が潜んでいても、すぐに威嚇射撃できるよう待機しておきます」
「皆さん頼もしいですね。私、まだ、自分の身に何が起きたのかあまり分かっていなくて……ですが、何かあればまた、昔のように戦ってみせます」
 やはり猟兵か。若い男女の話す声がした。やがて、危険性はなさそうだと判断したらしい四人は、それでも慎重にロビーへと踏み入ってきた。
 四人の中でもどこか幼げに見える、眼鏡をかけた黒髪の女子が、わしを見上げて言った。
「わあ、こんなところにクリスマスツリーがありますよ!」
『いかにも。わしはクリスマスツリー』
「これは驚きましたね。人間の言葉を話せるんですか」
 同じく眼鏡をかけた長身の青年が、聡明さの中にも好奇心をのぞかせた眼差しで、興味深そうにこちらを見やる。
 スタイルのいい金髪の娘はまだこちらを警戒していたが、暫くすると、使役していた小狐の霊を上の階に向かわせたようだ。いつの間に監視されていたとは知らなんだが、わしは少なくとも敵ではないと判断したのじゃろう。
「電飾がぴかぴか光って、綺麗ね。ちょっと銀誓館のクリスマスを思い出しちゃう」
 ポニーテールの娘はなにか、遠い過去を懐かしんでいるようじゃった。わしもこのように、多くの人間たちに見上げられるのはひどく久しぶりで、良い気分じゃった。
『……そなた達は、サヤ君との戦いに向かうのじゃな。
 あの娘には感謝もしておる。が、彼女は、我々の為にやってはならない罪を犯した。どうか……戒めてやっておくれ』
「……うん。クリスマスツリーの……おじいさんなのかな。その気持ちは受け取ったよ」
 金髪の娘が神妙な顔でそう答えてくれた。せっかくじゃ、わしも彼らの心意気に応えよう。
『という訳で、決戦に向かうそなたらに、わしがクリスマスプレゼントをやろう』
「え?」
「はい?」
「ええっ」
「そうなります?」
 偶々そうなる事もある。これは、そなた達の冒険なのじゃから。

『えーと、まずは和田町・いずみ(人間の電脳魔術士・f07456)君じゃな。鉄道好きのそなたにはこれをプレゼントじゃ』
「ああっ、これは……全国の電車に乗り放題のアオハル18きっぷですか!?」
 くるくる変わる表情を眺めていると、こちらも嬉しくなるの。
 長時間の乗車を快適にする携帯型フットレストと、首が痛くならないネックピローも一緒にプレゼントじゃ。車窓から眺める雪景色は美しいものと聞いておる。よい旅を楽しんでおくれよ。

『次はシン・クレスケンス(真理を探求する眼・f09866)君。そなたが今一番読みたがっている本と、眼鏡の曇り止めスプレー、それから落下防止の眼鏡チェーンじゃ』
「これは……有難うございます。いやに具体的ですね、眼鏡の辺りが」
 冬場の眼鏡、曇るからね……眼鏡は大切にしろって誰かが言っておった。
 金色のシンプルな眼鏡チェーンは、相棒の式神達にも揃いのネックレスを二対。その狼が、俺には何もないのかって睨んでおる気がするからの。

『次はそなた…… 政木・朱鞠(狐龍の姫忍・f00521)君じゃな。そなたにはお菓子と料理のレシピ本、セクシーでかわいいエプロンでどうだ』
「……私が料理もするって知ってたの?」
『いや、何となく……毎年チョコ作りとか頑張ってそうだなって思って……』
「おじいさんの願望?」
 そなたは不思議な娘じゃ。闇の臭いも濃いが、優しい心根の持ち主でもあるような気がしての。けっして誘惑された訳ではない。たぶん、きっと、恐らく。

『最後に島津・有紗(人間のシャーマン・f04210)君じゃな。そなたにはクリスマスカラーのシュシュと、猫の絵柄が入ったカードケースをプレゼントじゃ。大人でも使えるデザインにしておいた』
「イグニッションカードが入るのかしら? 受け取っておくわ」
 わしには事情はわからぬが、そなたの運命はいま再び廻り出したようじゃな。ゆく先に幸多からんことを願っておるぞ。

 四人の猟兵達は慎重にプレゼントを検分しておったが、どうやら本当に罠などではないことは理解してくれたらしく(気に入らなかったらすまぬが)、不思議な出来事に小首を傾げながら、階段の先へ向かっていった。
 彼らが向かう先には、おるじゃろう。彼らが邪神と呼ぶ存在、犬吠埼サヤが。
 彼女がどのような終わりを迎えるのかは、わしにも予測がつかぬ。
 だが、彼らなら必ずや、よき結末をもたらしてくれるであろうと信じておる。

 窓から、白い雪がさらさらと吹きこんでくる。雪が降りだしたようだ。
 おそらく、わしがこうしてこの季節を祝うのも、此度こそ最後になるであろうから。
 かつて少年だったそなたらへ、かつて少女だったそなたらへ。
 この老木から、もう一度だけ、ささやかに――メリークリスマスを言わせておくれ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『『赤い霧』犬吠埼・サヤ』

POW   :    見逃していただけると助かります…
自身の【足元のゴミ袋】から【異臭】を放出し、戦場内全ての【自身と敵対する対象】を無力化する。ただし1日にレベル秒以上使用すると死ぬ。
SPD   :    私がやらないといけないんです…
自身の【誰かを助けたいという想い】が輝く間、【メスによる切り裂き】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
WIZ   :    すみません、もうこれしか…
肉体の一部もしくは全部を【生命体を腐食させる霧】に変異させ、生命体を腐食させる霧の持つ特性と、狭い隙間に入り込む能力を得る。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠柊・はとりです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●『サヤちゃん』
 ……そうですか。はい、わかります。
 あなた方も真相に辿りついてしまったのですね。
 残念です。いえ、お見事です、と言うべきでしょうか。すみません、気が利かなくて……。

 この廃墟で最初に目醒めた時、私は大勢のミカちゃん達に囲まれていました。
 違う髪型で、違う服を着て、違う喋り方で、みんながそれぞれ違った個性を持っていて、けれども顔とスタイルだけは、どの子も同じ『ミカちゃん』達。それから、押し入れのダンボール箱に詰められたまま忘れられていそうな、たくさんのおもちゃの皆さん。
 ミカちゃん達は私に聞かせてくれました。儚いひとの一生のなかでは、ほんのささやかなひとときに、誰と、どのように過ごし、なにを想って、一体どのような理由で、たいせつなひととお別れをすることになったのか。
 すみません、私には、私のことがちっともわかりません。『犬吠埼サヤ』という名前らしいことしか。いまいち邪神らしくないのも分かっています……すみません。正直、邪神と言われても、その、なんでしょう……本当に困ります。私は大した力なんて持っていませんから。
 けれど、私はたぶん、うれしかったのだと……思います。ひとを愛し、ゆく場所のない過去になり、それでもひとを愛している、そんなミカちゃん達に、頼られてうれしかったのです。ミカちゃん達は私に似ていました。どこがどう、と言われると、困るのですが……すみません。
 ミカちゃん達がいなくなってしまって、ひさしぶりの静かな夜です。寂しいです。
 けれど、私の噂が伝染すれば、またきっと、どこかで悲しんでいる誰かの力になれるはずなんです。
 こんな私だって、もっと強いサヤちゃんに生まれ変わるかもしれないんです。
 ミカちゃん達がそう言っていましたし、伝染病とは総じてそういうものですから。

 あ、ゴミ袋の中身は覗かないでください……冬ですが、さすがにそろそろあの、あれなので……これ、どこにどうやって捨てればいいのでしょうか。
 すみません、ミカちゃん達に新しいお洋服を揃えてあげたいと思ったのですが、お金を持っていなかったので……邪神がまじめにアルバイトをするのもなんだか変な感じですし、身元も証明できませんし、やってしまいました。うまく処理できる超能力ぐらいあるかな、と思ったのですが、そうでもなかったみたいで……もう少し後先を考えて行動するべきでした。すみません。
 私ってきっと、いつもこうだったんでしょうね。なんだか倒しがいがなくて、本当にすみません……。

 病院にはなにか縁があったのかもしれません。
 504号室の古いプレートを見た時、どうしてか胸が締めつけられるような心地がして、私はほとんどずっとこの部屋に居たまま、錆びついたベッドをぼんやりと見つめつづけている。そこにはもうなにもないのだということが、幾許かの真実であるのかもしれません。
 私は、世界に飽きられた愚かな玩具であるのかもしれません。私も、誰かのミカちゃんだったのかもしれません。
 あなた、今はもう名も知らぬあなた、ただ、『私達』はあなたに逢いたい。
 誰かが階段を駆け上がってくる音が聞こえます。それがどうか、あなたの足音であってくださればと、ほんのかすかな望みしかなくても祈るのです。
 いえ……あのひとの足音なんて、本能が覚えている。不思議なものですね。すみません……あなた、一体どなたですか?
 あなたは、私の噂……してはくれないんですか? 残念です。

 話せることはもうありません。
 私の視点なんてもう必要ないでしょうから、これはどうぞ、あなた方にお返しします。
 では、申し訳ありませんが、今からお亡くなりになっていただきますので……すみません。
 
鳶沢・成美(サポート)
『え、これが魔導書? まあどうしよう?』
『まあどうでもいいや、オブリビオンなら倒すだけですよ』

故郷UDCアースの下町の古書店でたまたま見つけた魔導書を読んで覚醒した自称なんちゃって陰陽師

昨今でいう陽キャラ? みたいな行動は正直よくわからないのでマイペースに行動
でも集団での行動も嫌いじゃないですよ
元ボランティア同好会でつい気合い入れて掃除しちゃったりしなかったり
一応木工好きでゲートボール好きキャラのはず……たぶん

戦い方は直接殴るより術をとばす方が好みです
範囲攻撃とかロマンですよね
例え好みの容姿だろうと、事情があろうと敵ならスパッと倒すだけですよ

アドリブ・絡み・可



●鳶沢成美
 罪人の耳は常に恐怖している。かすかな足音でさえも、まるで己を追い立てる狂犬の咆哮のように、恐ろしくとらえがちである。
 犬吠埼サヤの主観的描写とは裏腹に、その人物は「ひょっこり」といった形容のほうが正しく思えるほどに、散歩中に友人の見舞いに立ち寄ったような気負いのなさで、病室の入り口からとつぜんに姿を現したのだった。
「こんにちは。せっかく廃墟に飛ばされたのでゴミ拾いしてたんですけど、この部屋からすごい異臭がしたもので。ちゃんと掃除してます?」
 鳶沢・成美(探索者の陰陽師・f03142)は鼻をつまみながら言った。あろうことか、彼の第一声はそれだった。
 サヤはたじろいた。異臭の原因というのは、どう考えても彼女の足元に転がっている、中身のわからない黒い袋から出ているものであろう。半透明化が義務付けられてからというものの、これもすっかり過去の遺物になってしまった。
 しかし、この恐らく高くはない既製服にタオルハチマキ姿で、軍手まで装備した、どこからどう見ても完璧な清掃ボランティアの青年が、けして只の親切な掃除好きではないことを、オブリビオンの本能は敏感に感じ取る。
 ――猟兵。
 ありていに言えば、己を始末するために差し向けられた、世界からの刺客だった。
 サヤは混乱した。元来彼女はそういう性格であった。どうしようどうしようとぐるぐる考えて、思わず口を突いて出たのはこの一言だった。
『す、すみません……いきなり不躾な質問ですみませんが、死体ってどこにどうやって捨てるのが正しいでしょうか?』
「さあ。いくら元ボランティア同好会といっても、その手の処理はしたことがないので」
 成美はさほど表情を変えずに返した。その質問に対する正しい答えは、この地球上の倫理に則る限り存在しないだろうし、趣味の木工でもゲートボールでも、おそらく永遠に解決し得ないことだった。

 犬吠埼サヤが好みの女であったかはさておき、彼はそういったこともすぐに割り切れる性格だった。成美は懐からペットボトルを取り出す。
 一般的なトレーディングカードゲーム風に偽装した霊符を、あらかじめ焼いて灰にし、破魔の霊力をこめておいた水が中に入っている。これも資源の有効活用の一環であるのかもしれない。
「とりあえず、あんたは行くべきところに案内した方が良さそうですね」
 そして、普通に水分補給でもするような仕草で蓋を外すと、おもむろにサヤへ向かってペットボトルを振るった。
 ここまで殺気が感じられないと、敵も対処しづらい。この底知れぬマイペースさが、成美という猟兵の恐ろしきところであった。
『ひぁっ! つ、冷た……いえ、熱い……?』
 破魔の水を浴びたサヤは、それが硫酸のように己の肌を侵食し、焼け爛れさせ、溶かしせしめていることをすぐさま察した。彼女が申し開きようのない邪悪であるがゆえ、だろう。
 分が悪いと判断したサヤは、みずからの肉体を霧に変じさせ、この場からの退避をはかった。成美は先ほど使用した水を頭からかぶり、霊的防護でサヤの力による腐食を退けたが、彼女がどこへ向かったのか、ただちに把握することは困難であろう。
 だが、この病院内に逃げ場はない。
 万全を期して、他の猟兵が至る所で待機しているのだ。成美は深追いはせず、後のことは仲間に任せることにした。彼女は、あの処理に困るゴミ袋を置いて行ってしまったようだし。

 成美の撒いた水はサヤに痛手を負わせるのみでなく、この504号室のなかに滞っていた、じっとりと黴臭い厭な空気を追い出していったようだ。思わぬ効果だった。
 廃墟とはいえ、病院というからには、まあ怨霊の一人や百人や五千人ぐらい居ても不思議ではない。ここは日本でもっとも死に近い場所なのだから、現代の陰陽師がひょっこり現れるのだって、また必然であったのかもしれない。
(……なんとなく妙ですね。ひょっとして、もっと違う何かがここに?)
 そう考えつつも、成美はまだなにか厭な気配を察していた。
 まるで、あの犬吠埼サヤというオブリビオンをここに縛りつけた何者かが、今でも後ろに立っているような――。
 誰かの視線を感じて、成美は振り返った。
 暗い廊下へ続く、真っ黒な穴のような病室の出入り口が、ぽっかりと口を開けているだけだった。
「まあいいや。ゴミ拾いでもして帰りましょうか」
 サヤの残していった袋のことは、後で警察なりUDC機関なりに相談するとして。
 成美は自前の袋を片手に、また歩きだす。
 この廃墟には、サヤの力を使って復活した玩具たちが大量に眠っている。
 もうじき力を喪い、また動かなくなるだろう彼らを、救い出すことができるかは、この陰陽師兼清掃ボランティアという、風変わりな青年の腕にかかっているのだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

睦月・伊久(サポート)
はじめまして。悪霊の睦月・伊久と申します。
……自分をモンスターというの、どうもしっくり来ないのですよね。横文字文化圏出身ではないので。

……私の事は置いておくとして、助けが必要であるのなら、手を貸しますよ。

できるのは瘴気をばらまいて祟る、不幸をおすそ分けしてそれを利用すること……それから赫鳥さんに協力して貰うことですね。
純粋な腕っ節にも自信がありますよ。使うのは腕と言うよりもこの、鹿の下半身ですがね。蹴っ飛ばしたり組み伏せたりできます。

戦闘以外でも歩きにくい道を走ったり、逃げたり、あとは怪力での運搬も可能です。

迷惑はかけないことは大前提として、色々な事で依頼の成功に貢献出来たらと思います。



●睦月伊久
 病室で出くわした猟兵から逃げだした犬吠埼サヤは、みずからの身体を赤い霧と化し、あらゆるものを腐食させながら、病院中をさまよっていた。
 しずかな夜のあちこちで蠢く、ひとと、ひとならざるものの気配から遠ざかり、サヤは病棟の内側に囲まれた中庭へ降り立つ。
 先ほど派手な爆発が起きた外庭は、今ごろ見るも無惨な状態に成り果てているだろう――もっともUDC組織がまたどうにかしてもみ消すだろうし、生まれたての邪神風情であるサヤは、そんな事も知らない。
 代わりに彼女を待ち受けていたのは、未知との遭遇であった。
 仰ぎみるほどの闇のかたまりが、月を背にしてそびえている。目をこらして見てみれば、それは枝めいた角を生やした、半人半獣の怪物であった。サヤは己が邪神であることも忘れ、ちいさく悲鳴を漏らした。
 ところが、その怪物は落ち着きはらった様子で、礼儀正しく己の名前と、立場を告げたのである。
「お待ちしていました。悪霊の睦月・伊久(残火・f30168)と申します」
『悪……霊?』
 邪神は首を傾げる。
 彼だか彼女だか、いまいち判然としないその彼は、たしかに自分を『悪霊』であると、そう紹介したのだった。

 実のところ、伊久がここにいた理由はシンプルで、単に建造物の中へ侵入することがためらわれたからだった。
 UDCアースの一般的な建築物へ立ち入るには、伊久の身の丈はいささか大きすぎる。ついでに言うと、静かで閉鎖的で、なんとなく落ち着いたからだ。
「ええ。悪霊です。色々あって一度殺されていまして」
 守り神として崇められてきた伊久は、のちに実は己が『バイオモンスター』と分類される存在だと知ったが、その長ったらしい八文字が未だにしっくりこない。
 だから、悪霊だなどど、伊久はわざと自虐めいた名乗りかたをする。
 好ましくない肩書きであったとしても、今は亡き故郷で過ごしてきた身には、このほうがずっと馴染み深い呼び名なのだった。
『……殺されて……それは、その、ご愁傷様でした。すみません』
「不思議ですね。なぜ、あなたが謝るんです」
『ええと……私、邪神なので。望まれておもわず、人を殺してしまったかもしれず。なんというか、すみません……あの。ひょっとして、私が頑張って呪い殺した人も、悪霊になって蘇ることが?』
「あるでしょうね。悪霊としてここにいる以上、僕にはその可能性は否定できません」
『そんな……』
 サヤはがっくりと項垂れた。そして、力なく微笑んだ。

『なにもかも、無駄だったかもしれないんですね。私のすることなんて、どうせいつもそうなんですけど』
「……あるでしょうね、そんな事も。守護者として生きていたつもりが、逆に災いを引き寄せる原因になってしまったり、しますね」
『……。ふふ、わかります。それでも、困っている人や悲しそうな人を見ると、私、放っておけなくて……どうにも、力を尽くさずにはいられなくて……』
「邪神の力を?」
『はい。すみません。そういうあなたも、悪霊の力を?』
「そう言わざるを得ないのが残念なところです。……あなたも何らかの理由で、亡くなったのでしょう。少しだけなら僕にもわかりますよ、あなたの話は」
 ――どうせ蘇るなら、僕と同じ悪霊になれば良かったのに。
 伊久のすこし感傷を滲ませた言葉に、サヤはすみません、と弱々しい笑みを返す。
 おかしな話だ。
 悪霊は世界を救えるのに、邪神だったら、世界の敵になるのだ。

「……僕の身の上話はどうでも良いことです。諦めるのなら、手でなく、脚を貸しますよ」
 猟兵と邪神である以上、完璧に通じ合うことなどできない。
 意を決したように伊久は駆けた。彼の歩幅からすると、病院の中庭は猫の額のような狭さだった。一瞬で距離を詰められたサヤは、たちまち伊久の前脚に蹴り上げられ、病棟の廊下に面した窓硝子に叩きつけられる。
 割れた硝子が、サヤの身に癒えない傷跡を刻んでいく。
 立ちあがろうとすれば滑って転び、飛び散った硝子を踏んでさらに傷が増え、ようやく中庭へ出れば、今度は吸い寄せられるように頭上からものが降ってくる。
 ――こんな所に植木鉢など置いただろうか?
 ――どうして倉庫に保管してあるはずの劇薬がここに?
 絶えず押し寄せる疑問は、すべて悪霊たる伊久の招いた祟り。連鎖する不幸の呪いだ。
 極めつけに、病室に置いてきたはずのゴミ袋が降ってきて、サヤの頭をしこたま打ちつけた。袋が破れ、中から異臭が漏れ出てくる。人間の身体は鈍器になりうるのだと、思い出した。
 過去に犯した過ちは、どこまで行っても、けして殺人者を赦そうとはしない。
 魂を穿つその烙印は、肉体に刻まれる傷よりもよほど、癒えぬ傷としてふさわしかったろう。

『すみません……それでも、私は……』
 それは、袋に詰められた遺体に向けられたものだったのか。
 はたまた、かつて何某かになぶり殺されたという、お人好しの悪霊へと向けられたものだったのか。
 犬吠埼サヤは消え入りそうな声で何度目かの謝罪を口にすると、また、赤い霧となって、何処かへと消えていったのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

アラン・スミシー(サポート)
基本突然現れて仕事を終えたら去っていく人物です。

基本的に【乱戦】か【銃撃戦】での援護がメインとなります。
他の猟兵の手の足りない所に現れては銃で攻撃し、気を引いたり足止めをしたり敵の頭数を減らしたりします。
また既存のPCでトドメを刺しにくい時は【最終局面】を使って下さい。逆転の隙を作ったり、心情的に殺せないタイプのPCがいた際にどうぞ。

説得や交渉等が必要ならなんか良い感じの言葉を言います。
例:君の正義は分かった。しかしその正義は君を救ったかい?

ユーベルコードのセリフを参照し、MSの言って欲しい都合の良い言葉をアレンジしてやってください。
大体無意味に格好いいこと言ってます、割と適当に。



● アラン・スミシー
 アラン・スミシー(パッセンジャー・f23395)は、都合のいい男だ。
 ちょっと現場の人手が足りないなと思った時に現れ、求められた役割を着実にこなす。
 仕事に必要以上の感情を挟むことはせず、かといって相手の都合を全く考えないこともなく、はりつめた決意も、悲壮なまでの覚悟も特になく、バックグラウンドは不明。ある意味では、理想的な猟兵だといえた。
 モダンな中折れ帽を目深にかぶり、トレンチコートを翻して現場から去るその背は、いっそ不気味なほどに記号的で、常に何かの芝居を見せられているようですらあった。この男と遭遇したら最後、誰しもが劇的な舞台の上へと引きずり出されるはめになる。
 飄々とした佇まいも相まって、そう、まるで……刑事か、探偵のようにも見える。犬吠埼サヤという邪神は、つくづく運がなかった。

 霧状に変化していたサヤは、再度人間の形態を取った瞬間、何者かによる銃撃を受けた。
 背中から胸、胴体から腰にかけて、あらゆる部位を弾丸が立て続けに貫通する。サヤは、赤い霧のような血を撒き散らしながらくねくねと、無様に跳ねるだけの人形になった。
 映画でよくあるワンシーンだ。主人公に重大な秘密を激白しようとした敵が、黒幕の銃撃によって、強制的に沈黙させられる。そんな場面。
「さぁ、ここは俺に任せて先に……と、言うようなシーンではないかな。隙あらば言ってみたいんだけどねぇ、この台詞。君もそうは思わないかい?」
 何者かの声がする。
 サヤは辺りを見回した。不思議なことに、声の主の――アランの姿は、どこにも見当たらない。スパイ映画よろしく、死角に身を隠しているのだろうか。
 口を封じられた悪役はもはや用済みであり、即刻舞台から退場すべきだ。しかし、邪神であるがゆえに、サヤはこの一撃では死ねなかった。ここに都合のいい黒幕などいないし、自棄になってぶちまけるような秘密もない。
『……すみません。映画は私、あまり観ないもので……』
「ふぅん? じゃあ何が好きなんだい」
『……推理小説……でしょうか』
「悪くないね。それなら死神にマークされるのは、大抵我先にと犯人から逃げ出す奴のほうさ」
『そう……ですね。探偵は、死を恐れてくれませんから。怖いですよ』
 サヤは、姿無き狙撃手に対して、そう返すのがやっとだった。美しい幕引きひとつするのにも、運とタイミングが要るらしかった。

 病棟の影に身を隠していたアランは、ふいに鼻をつまんだ。
 ひどい異臭が漂ってくるのだ。いや、この異臭は、どこかで何度も嗅いだ覚えはある。腐臭。血の臭い。猟兵として世界をさすらう限り、厭になるほどついて回り、いつしか覚えてしまう、それ。
 異臭の発生源は、犬吠埼サヤの足元に転がっている、黒いゴミ袋のようだった。
 ――『自身と敵対する対象を無力化する』。
 ――『全身を障害物に隠し、ほぼ無敵になるが、全く動けない』。
 相反するふたつの能力がぶつかり合った結果、場に生まれたのは膠着状態だった。アランはその場から動けず、一方サヤは、未だアランの姿を認めることすらできていない。
『すみません。どちらにいらっしゃるんですか』
 サヤは右手にメスを握ったまま、文字どおり草の根をかき分け、敵の姿を探している。隠れた場所から逃げ出せず、徐々に狂気の殺人鬼に追いつめられていく男……そんなシーンも、スクリーンの中ではよく見る。
 やれやれ、どうやら作品ジャンルはホラー映画に変わってしまったようだ――アランは胸中でそう独りごちた。さて、名脇役の悲劇的な退場が描かれる前に、この銃のトリガーを、今一度引けさえすれば良いのだが。

 石のように重くなった腕を、祈るような思いでなんとか上に持ちあげる。
 力が入らない。指は鋼のように固まり、動かない。
 プロット通りならば男は無力化されているのだから、当然といえた。これでも頑張ったほうだ。
 だが、アランという猟兵は、都合のいい男であった。目には視えぬ観客と監督の、願うがままに動く。
 そういう名優であるがゆえに――アランはここで、引き金を引く。
 
 甲高い発砲音とともに、一発の銃弾がサヤの胸を撃ち抜いた。
 邪神と化した女はびくんと身体を跳ねさせたが、まだ死ねないらしい。全身を己の血で染めて、なおもゆらりと立ち、歩く姿は、まるで生きる屍のようだ。
「何処にいるのかって? 私は何処にもいないさ、後でスタッフロールでも確認しておくれ。これは勘だけどね、君も誰かにとって『都合のいい女』だったんじゃないかい――ご同輩」
 最後はゾンビ映画か。まったく今作はひどい出来だ、脚本家がよほど無能なのだろう。

 サヤは声のした方を振り返った。
 己など主演を張るには値しないとばかりに、男は先にクランクアップしたようだった。
 そこにはもう、誰もいない。仄かな硝煙のにおいだけが、異臭に混じって残されていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

六代目・松座衛門(サポート)
ヤドリガミの人形遣い×UDCメカニック。人形を用いて異形(オブリビオン)を狩る人形操術「鬼猟流」の使い手です。
ヤドリガミの特徴である本体は、腰に付けている十字形の人形操作板です。
戦闘中は言い捨てを多用します。

UCは全て人形を介した物で、主に以下の装備アイテム「鬼猟流・戦闘用人形」で戦います。
・武器を仕込めるバランス型の「暁闇」
・身軽で敵の拘束に特化した「縛鎖」
・様々な遠距離攻撃が可能な「遠離」
ただし、操作対象の切り替えは素早くできますが、同時操作は基本的にできません。

他の猟兵と積極的に連携し、率先して誘導、時間稼ぎなどの支援を行います。


向・存(サポート)
もし手助けが必要でしたらお手伝いするのですよぉ~。
ユーベルコードの出し惜しみをするつもりはありませんけどぉ、だからと言って乱発すればいいってものでもないですよねぇ~。
使いどころに迷ったときはぁ、ご同輩に相談すればいいでしょうかぁ~?
けどぉ、非道なことをなされる方には手加減無用、全力で参らせていただきますねぇ~。
あとは最後まで油断大敵、【咄嗟の一撃】も放てるように【逃亡阻止】は意識しておきましょう~。
大丈夫ですよぉ~、手足の二・三本くらいもげてもなんとかなりますのでぇ~。
荒事以外のことならめいっぱい楽しんじゃいますよぉ~。
特に読み物なんかは好きですねぇ~。
※アドリブ・連携歓迎



● 六代目松座衛門と向存
 都合のいい女だと言われた。
 都合のいい女だ、と思われていることは、どこかで理解していたのかもしれない。
 都合のいい女でよかった。都合のいい女は、自分が損をするだけで役に立つのだから。

 ――さあ。『こいつ』は、どれくらい強い?
『誰……ですか』
 連鎖する不幸に見舞われ、銃弾で散々に撃ち抜かれた邪神・犬吠埼サヤは、眼前に立っている人影へ問いかけた。返答はない。
 そのはずだ。サヤが対峙しているそれは、六代目・松座衛門(とある人形操術の亡霊・f02931)が操る、鬼猟流人形操術が誇る戦闘用人形の一体、『暁闇』であった。
 六代目を名乗る松座衛門にとって、オブリビオンは、鬼猟流の先達たちを理不尽に屠った仇敵である。昂る気持ちを抑え、ヤドリガミたる己の本体でもある操作板を手にする。ここから伸びる糸は、サヤの前に立つ暁闇へ繋がっている。
 中に仕込まれた刃が暁闇の腕から飛びだし、振るわれる。
 しかし、その一撃がサヤを傷つけることはない。暁闇の刃は、なぜだか永遠に空振りを続けた。サヤは僅かに首を傾げながら、自らの握ったメスで人形を傷つけていく。
 それでも、暁闇はサヤを相手にしない。
 まるで違うほうを向き、時には跳ね、時には転がり、時に吹き飛ばされ、サヤよりも遥かに強大な敵を相手に戦っているかのような、荒天の如き大立ち回りを繰り広げた。
 それはすべて、松座衛門の掌で上演される『演目』だ。
 優れた芸能は、観客に見えざるものを見せる。不思議なことに、サヤには暁闇がなにと戦っているのかが、じわじわ実体を伴って見えてきたのだった。

 ――!!!
 サヤは声にならない悲鳴をあげた。
 彼女の連想した『恐るべき怪物』は、全部で三人いた。
 ひとりは取るに足らない下卑た男だった。だがこの男は飛び抜けて、サヤばかりを執拗に襲うので、サヤは生理的な嫌悪でおもわず殺してしまいたくなった。
 もうひとりは仮面と赤い霧を纏った、恐るべき連続殺人鬼だった。この殺人鬼が握るナイフは、すべてを等しく襲ったが、サヤはなぜか恐怖しなかった。
 仮面の下が、よく見知った顔……いや、それ以上のたいせつな存在であるように思われ、愛おしさすら覚えたのだ。
 いちばん恐ろしかったのは、蒼く鋭い眼をした少年である。
 少年は手にした大剣を振り上げ、氷嵐のごとき斬撃で、自分自身を含むその場のすべてを激しく切り裂いた。
 これは、いつか見た光景だ。きっとこれからいつか、見ることになる光景だ。
 彼女は最凶の『怪物』を、恐怖と憎しみを込めた目で眺め――こう呼んだ。
『探偵――!!』

 サヤの視ているこれらが何であるのかは、松座衛門のあずかり知らぬところだが、ともかく効果はてき面だったようだ。
 見えない『怪物』と戦う人形の様子から、相手が連想した『怪物』を召喚する――彼が演ったのはそういう演目であったが、まさか三体も引きずり出せるとは。
(過去に余程の出来事があったのか? だが、容赦はしない!)
 下卑た男は小物のようだが、殺人鬼と探偵は少々やりすぎである。彼らの攻撃が暁闇を破壊しないよう、なおかつサヤの恐怖心を絶妙にくすぐるよう、糸を操る指に全集中力を込める。
「悪いが動けそうにない。フォローは頼んだ」
「はぁ〜い、お任せくださいねぇ〜。自覚なく非道な事をなされる方には特に厳しくいきますよぉ〜」
 緊迫感に満ちた戦場の中、間伸びした声で飄々と応じるのは、向・存(葭萌の幽鬼・f34837)であった。一見すると小柄で、かよわげな少女に思える猟兵だ。だが彼女は、乱戦にも怯む事なく――むしろ、これが己の本分であるかのように、表情を引き締め、戦場へと飛びこんでいく。

 新たに出現した四人目の『怪物』を一瞥したサヤは、早くこれらを排除せねばという想いにかられた。
 ひとりでも多くの者を、別離の悲しみから救い、果たせずに散った満願を叶えてやりたかった。そのためならば何だってする。それこそ邪の冠を被り、神に堕ちようと、なんだって――。
 それなのに。
 どいつもこいつも、なぜ私の献身の邪魔ばかりするのか?
『すみません、私を必要としている人達がいるんです。どいてくださいっ!』
 追い詰められたサヤは、これまでとは打って変わった形相を浮かべると、右手のメスをきらめかせ、向存の右腕を斬り落とした。己の心より現れた怪物たちを振り切ろうと、向存を押し退け、病院の外へと走る。
「それはちょっと認められませんねぇ〜。あいにく、手足の二、三本くらいもげても、なんとかなりますのでぇ~」
『え?』
 確かに致命傷を与えてやったはずだ。サヤが訝しく思うよりも速く、向存は残された左手で愛用の武器を――縄鏢を握る。縄の先端に棒手裏剣を括りつけた形状が特徴的な、古来の武器だ。年季の入ったそれは、向存の掌によく馴染んだ。
 一体どうやって攻撃するのかと戸惑っているサヤへ、まずは一発鏢を投げつける。メスで弾き返されるのは予想通り。ここからが、縄鏢の真価の見せ所だ。
 手元の縄を手繰り、腰に巻き付けて一回転させると、先端の鏢は予測不能な軌道を描いて飛んだ。予想外の角度から斬りつけられたサヤが怯んだところへ、返ってきた鏢をもう一発投げつけ、追撃を加える。
 己の腰や腕を使って、鏢の飛ぶ軌道を巧みに変えながら、向存はサヤが放つ高速の斬撃と互角に渡りあってみせた。
 これに驚いたのはサヤである。右腕を失っているという事をまるで感じさせない、俊敏で洗練された動きだ。
 だいいち、向存がすでに死した存在であることを知らぬ邪神には、この少女が腕を失ってもまったく動揺していない事実が、理解不能であったろう。

 向存――それと同じ名が、遠い中国の歴史の片隅に刻まれていることも、邪神は知らない。
 戦乱の世に沈んだ祖国を想う心が、いま彼女の振るう刃に込められ、強い力を引き出していることも。
 誰かを想う心が、力となる。皮肉なことに、それはサヤの使うユーベルコードとよく似たものであった。

 やがて縄はサヤの身体に絡まり、縛りつけ、行動不能に追いこんだ。向存はそのまま縄を振り回し、サヤを地面に叩きつけてやった。逃亡阻止ならお手のもの、達人の領域だ。
 松座衛門の呼んだ怪物たちが、倒れこんだサヤを包囲し、次々に攻撃を加えだす。
『すみません、すみません、もう逃げたりしませんから。やめてください……』
 ゴミ袋の中に詰められた被害者の死体を横目に、松座衛門は眉を顰めた。
 まるで被害者のような面でこう言ってのけるから、この女の献身は邪悪たりえるのだと。
 けして逃してはならない。すべてのオブリビオンは、これを産んだ過去へと還されるべきだ。
 たとえそれが、どのような悲劇であろうとも――新たな悲劇の種として撒かれる、その前に。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

アハト・アリスズナンバー(サポート)
「私の手が必要ならば、お貸しします」

無表情、無感情に見える、死んでも次の自分が即座に故郷から転送される量産型フラスコチャイルドです。

一人称は「私」、口調は誰に対しても「です、ます、でしょうか」といった感じのあまり堅苦しくない丁寧語です。

基本的には手が必要なら貸す、といったスタイルでユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず突撃します。
ただ、アリスが関連してる場合は積極的に突撃し、アリスの敵を排除するように動きます。

その他の部分はマスターさんにお任せします



●アハト・アリスズナンバー
 探偵不在の殺人喜劇は、終幕に向けて動きだしていた。
 その過程でいかに不可思議な出来事が起きていたとしても、実際問題として、この事件においては、オブリビオンによる一般人の死亡事故が既に発生している。
 それはまるで、無限に消費されるアハト・アリスズナンバー(8番目のアリス・f28285)達の生命のように、ここまで軽んじられてきた事実であったけれど。
 
 さて、『人殺し』である邪神・犬吠埼サヤは、前の猟兵に余程こっぴどくやられたのか、いま新たに転送されてきたアハトから逃げ出そうとはしなかった。
 殺さなければ殺されるだけだ。いまや明確な殺意をもって、サヤはみずからの全てを霧へ変じさせる。触れたもの全てを腐食せしめる、赤い霧――禍々しいその液体が、アハトという生命体を静かに腐らせていく。
 しかし、アハトはぴくりとも表情を動かさない。
「邪神ですか。とりあえず、どう見てもアリスではないですね」
 この邪神がアリスであったなら、あらゆる危険から身を挺して守ってやったろう。それこそ、アハトはそのために、死んだってかまわなかったのだ。
 だが、その根底にあるのは信念でも、献身でも、心でもなかった。記憶というより、記録にも等しいものだった。代々そうやって、使い捨てにされてきたアハトの分身たちが、フラスコの底に残していったプログラムがそうさせるだけだ。
 今回は、あえて死ななくても良さそうなのは幸いだった。
 帰還すればグリモアベースが相応の報酬を出し、それらはすべて酒と煙草とギャンブルで溶かすだけ。個体としての日常は、維持されるだろう――もう暫くは。
 指の皮膚がぐずりと溶解し、肉が腐り落ちてゆく。痛いのか、痛くないのか、アハトにはよくわからなかった。

『すみません、あなたでは私を倒せません。さっき宿敵の顔を思い出しましたから』
 サヤは云う。
 曰く、あなたは探偵ではない。
 ゆえに、この事件を正しく解決することはできない。
 オブリビオンたる己の根源を断ち切ることは、あなたには不可能だ、と。
「つまり、ここで私を倒しても第二第三の私が現れ目的を果たすでしょう、的な事を言いたいわけですね」
『はい。すみませんが、どうやらそのようです』
「まあいいでしょう。私も似たようなものです。理屈が分からないのに結果だけ理解している存在というのも滑稽なものですね」
『はあ。せっかくここまで来ていただいたのですが……すみません』
「ちなみに、私が名探偵有栖川ハチ子になったらこの事件解決します?」
『ええと……たぶん駄目ではないかと。すみません』

 この邪神は先程からやたらと謝るが、申し訳ないとは全然思っていなさそうだ。こうしている間にも、手足が腐りかけている事を認識しながら、アハトはそろそろ手を打たないとまずい、と考える。
 わざわざ死ぬ必要なんてない。
 殺されたのはアリスではないし、この邪神を救う義理も特にない。
 だが、なぜ自分は今、このユーベルコードを発動しようなどと考えているのだろうか。
「成程。現状は理解しました。では、然るべき手段を講じましょうか」
 アハトは胸に手をかざした。彼女の命の鼓動を刻んでいる、心臓パーツの、その上に。

『え……?』
 霧と化していたサヤが、驚きの声をあげる。
 戦場を照らしたのは、朝陽のような光だった。アハトの胸から放出されるのは、彼女の命を削って生み出される、可能性の波動だった。
 可能性は、無限大だ。
 選択肢は無数に存在し、その中から一つを選ぶのが、未来だ。
 ここが正しい未来でないならば、それを断定した選択肢のすべてを無力化し、あるべき結末へ導いてやったらいい。
 良い結果と過程だけを残し、宜しくない出来事は消去する。
 因果を歪ませる、想像であり、創造。
 彼女の力は、このどうしようもない邪神の物語を、そんな『都合の良い』結末に書き換えてしまう。
 大丈夫だ。こんな事に118秒もかけるつもりはない。この小さな夜は、アハトが命を投げ打っていいような大舞台ではない。

 気づけば、邪神の気配はすっかり霧散していた。
 おそらく、どこか正しい選択肢の先へ旅立ったのだろう。
 『可哀想なサヤちゃん』は、そこでは理想の自分として君臨できているかもしれないし。
 自分の正しい倒し方を知っているという『探偵』にも、会えるかもしれない。
 それでいい。わざわざ確かめに行くつもりも、アハトには特になかった。
「……未来は、わからないから楽しい」
 そう呟く彼女は、すこしだけ楽しそうに見えた。ギャンブル好きの悪癖が出てしまったかもしれない。
 さて、帰ったら朝ビールでも浴びますか――ひと仕事終えて、おおきく伸びをするアハトの隣には、殺された筈のご主人とご夫人が、狐につままれたような顔で佇んでいた。

成功 🔵​🔵​🔴​


●補遺
https://tw6.jp/club/thread?thread_id=72033

最終結果:成功

完成日:2022年01月18日
宿敵 『『赤い霧』犬吠埼・サヤ』 を撃破!


挿絵イラスト