検証04:あの日見た女の名前を僕はまだ知らない
鵜飼・章 2021年4月24日
一つ、心情を語るな。
ぼくはきみの心の内を知らない。
一つ、情景を語るな。
ぼくはここがどこだって構わない。
一つ、所作を語るな。
ぼくはきみが今どうしていても興味がない。
ト書きばかりの台本は生命線に分断されてしまうよ。
きみとぼくの即興劇に必要なのはそんなものじゃない。
けれども舞台ぐらいは設定してあげよう。
ここは『鵜飼章が借りている庵』。
括弧をひらいて。さあどうぞ。
最初はきみの台詞からだ、名探偵。
※一日で終わらせる章とはとりの余談
https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=33051
https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=33088
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柊・はとり 2021年4月24日
……。お前、その火傷どうした。
鵜飼・章 2021年4月24日
一応心配してくれるんだ。優しいね。
平気だよ、きみと違って痛みは感じないから。放っておけば治るんじゃない。
まあ痕が残りそうなら然るべき手段で治すさ。こんなことできみに貸しを作ったら可哀想でしょう。
柊・はとり 2021年4月24日
いっつもいっつも二言ぐらい多いんだよ。
生物は生物らしく自分の心配してろ。俺だってお前の死なんか背負うのは死んでもごめんだからな。
顔が長所なんだろ。顔面までなくなったらそっちこそ気の毒だぜ。
鵜飼・章 2021年4月24日
(柊くんはその顔面がないんだけどな……これが『二言多い』の半分か。言うのはやめておこう)
鵜飼・章 2021年4月24日
それで? 結果的にお見舞いになったわけだけど、ほんとうの用件はそうじゃないでしょう。
お見舞いはいらないよ。後で買ってくるなら完全栄養食でお願い。
柊・はとり 2021年4月24日
買うか。結構な値段すんぞアレ。(たまたまポケットに入っていたレーションを投げつける)
……色々思うところはありすぎるが、まあ、まずは……ありがとう。
柊・はとり 2021年4月24日
……ございました……。
鵜飼・章 2021年4月24日
そこまで僕と距離を取りたいか……嫌われたものだね。当然、きみにはそうする権利があるけど。
僕も一応悪かったと考えてはいるんだよ。きみに痛覚があるなんて知らなかったから、ひどいことをしてしまったよ。
柊・はとり 2021年4月24日
……『考えては』ね。正直だな。腹立つわ。
まあ俺もはなから無いものには期待しない。むしろ知り合いの中でもとびきり人の心がないからお前に頼んだわけだしな。
鵜飼・章 2021年4月24日
傷つくんだよ? 概念的には。
人間らしいと言われるのもそれはそれで微妙な気分なんだけど。
柊・はとり 2021年4月24日
表情間違ってるぞ……。
鵜飼・章 2021年4月24日
たまにあるんだ。意識して表情筋を動かすのも大変だからね。
用件をすませて早く帰ってくれないかな。僕は来客の対応をするのが面倒。きみもこんな所で僕とお茶をする趣味はない。意思は統一されている筈なんだけど。
柊・はとり 2021年4月24日
いつもそれくらい正直でいろ。そして友達全員なくせ。
……じゃあ単刀直入に聞くぜ。『カレン』は……どうだった。
鵜飼・章 2021年4月24日
『どうだった』か……難しい質問をするね。
そうだね……予兆で聞いていた通り。相違無いよ。己の理想とする残酷劇を演じたいが為だけに民を虐げ、虐殺する悪徳領主……僕ら猟兵にとっては忌むべき存在だろう。
個人的には彼女の演目は嫌いではなかったけれど、まあ罪の無い人々を手にかけるのは駄目だな。
柊・はとり 2021年4月24日
……。そうか。お前がそう言うなら、そうなんだろうな。ありがとよ。
鵜飼・章 2021年4月24日
僕の言うことをずいぶん簡単に信じるんだね。
探偵というのは疑うことが仕事なんじゃないの。僕がきみを困らせるために嘘を言っているとは考えない?
柊・はとり 2021年4月24日
アホか。お前のことなんかとっくに疑い尽くしてるわ。
その上で何も訊かないでやっている。意味はわかるな?
お前は嘘吐きだか、何の意味もない嘘はつかない。お前が嘘をつくのは……そうだな。『正義と平和のため』だけだ。少なくともお前はそう考えている……と、俺は思っている。
鵜飼・章 2021年4月24日
ふふ……正義か。嫌いな言葉だよ。
平和は好きだけどね。平和と退屈はイコールで繋がるとは限らないから。
鵜飼・章 2021年4月24日
それでどう? 僕は空気を読んで『断頭台の魔女・カレンとは何者か』についてきみに訊くべき?
ちなみに僕は、興味はなくはないけれど、どうしても知りたいというわけではない。ひとの過去を詮索するのは趣味じゃないからね。
柊・はとり 2021年4月24日
その発言をする時点で空気読む気ねえだろ。
だったら俺も言わなくていいわ。帰る。
柊・はとり 2021年4月24日
話を聞く限り、その女は俺の知っている『カレン』とは無関係だ。見た目が同じだけの別人だ……。
ただ、見た目が同じで同名で趣味が似通ってるだけの別人ってのは、常識的に考えてありえないだろ。
『カレン』は死んだ……かなり前に、俺の故郷で。だったらアポカリプスヘルに出現して然るべきなんじゃないか?
鵜飼・章 2021年4月24日
きみは本当に推理小説を読まないんだな。あるさ、そんな事は。
オブリビオンについてはなんとも言えないけれど、ある一つの世界において、明らかに他世界の人種だと思われるオブリビオンが紛れ込んで出現している事例はいくつか見られる。
第一地球だって無数に存在するし、滅んでいたりいなかったりするだろう。UDCアースとアポカリプスヘルのようにね。
きみの知っている『カレン』さんの、ダークセイヴァーにおける人生があれだったとしても、不思議ではないと僕は思うよ。……気の毒なことだけどね。
柊・はとり 2021年4月24日
……知らん顔はできないって事か。クソだな。
……鵜飼。今回は手間をかけた。殴ったら死ぬのが弱点なんだろ。無茶すんじゃねえぞ。
鵜飼・章 2021年4月24日
僕が死んだら何か問題?
まあきみがそう言うなら、死にそうな時はきみに負担がかからないかたちで死ぬし、きみが傍にいたら盾にしてでも生き残ることにするよ。
柊・はとり 2021年4月24日
…………(釈然としない)
鵜飼・章 2021年4月24日
きみのご機嫌もこのあたりが限界かな。それじゃあ、別れの挨拶をしようか。今生の別れにならないといいけどね。
鵜飼・章 2021年4月24日
はいはい。きみも死なないからって簡単に死ぬのはよすんだよ。
それじゃあ、またね。