●サムライエンパイア、とある村にて
田植えが終わり、雨を待つ稲がすくすくと葉を伸ばす頃。山から流れる清流が田を満たし、きらきらと流れる様子を見る少女が一人いた。
「ふむ、このままいけば今年は豊作……じゃなかった。うーん、人通りが少ないなあ。頃合いを間違えて来ちゃったよ」
至極残念そうにそう呟くと、畦道の方に視線を向ける。少し前までは苗を植えるため沢山の村人で溢れていたが、今は水を張った田んぼや稲の調子を見に来る程度で人もまばらだ。畑仕事にいそしむ村人たちを遠目に見ながら、退屈しのぎにうり坊をひと撫でする。まだ若く柔らかい毛並みを梳いていると、鼻先を甘えるようにすり寄せた。
「可愛いのう、可愛いのう。よしよし、次に人が来たら目一杯驚かしてやろうな」
今度は少々乱暴にかき回すと、可愛らしい鳴き声がひとつ。暫し安穏とした時が流れ、そして。
「待たれよ!」
がさりと草を踏む音と共に、威勢のいい声が飛ぶ。
「木槌、うり坊……。その姿、瓜小槌とお見受けいたしますニャ」
「いかにも。アタシは妖怪・瓜小槌。二叉の尾の猫……、アナタは猫又かな」
「その通りニャ!」
瓜小槌が振り向けば、びしっと爪先を瓜小槌へと向け、自信満々に答える猫又たち。ピンと耳をそばだたせ、二叉の尾を楽しげに揺らすと、声高らかに合唱する。
「悪戯を仕掛けるなんて愉快なことに、我ら猫又、加わらずにいて何が猫又か! その愉快な悪事、我々も加勢致す!」
思いがけない言葉に、最初は警戒していた瓜小槌もにたりと笑う。なかなかどうして面白いことになりそうだ。
「ほう……。ならば、その意気や良し! お手前拝見といきましょうか」
「合点承知! お手並み見せつけるニャ!」
斯くして青空の下、妖怪たちは結託し悪事を働くべく改めて身を潜めるのだった。
●はた迷惑な妖怪たち
「といった調子でして、悪意はないのですが害意は十分な様子です」
水標・悠里(魂喰らいの鬼・f18274)は瞳を僅かに伏せると、困った妖怪たちですね、とため息を吐いた。透き通る蝶の形をしたグリモアを指先で弾くと、二体のオブリビオンの姿を映し出す。
「今回事件が起きるのはサムライエンパイア。長閑な農村で起こる未来の出来事です。ふらりとやってきた妖怪・瓜小槌は、村人たちに悪戯を仕掛けようと機を窺っておりました。そんな瓜小槌の元へ猫又たちがやってきて、自分たちも混ぜて欲しいと言い出したのです」
瓜小槌の悪戯や人を驚かす手腕を見て、楽しそうと思ったのだろう。彼女らの性格を思えば深く考えていることはなさそうだが、オブリビオンである彼らが暴れれば、甚大な被害をもたらす事は必至。
彼らの悪事はただの悪戯ではない。猫又の鋭い爪で引っかかれれば傷つけることは容易く、瓜小槌の強烈な一撃は周辺の地形を変化させてしまう。
そうなれば村人だけではなく、大切な田畑まで被害を受けてしまうだろう。
「妖怪たちは農村から離れた物陰で待ち伏せし、村人たちを驚かせようと企んでいる状態です。幸い村人が水田の様子を見に来るまで時間があります。その前に皆様にはオブリビオンたちと遭遇し、倒して頂きたいのです」
悠里はここで一旦言葉を切ると猫又の姿を拡大し、指先を滑らせて前へと移動させる。
「皆さんが姿を見せればまずは猫又たちが襲いかかってきます。瓜小槌は猫又たちの様子を窺うだけで手は出してきません。猫又たちのお手並み拝見、とばかりに静観しています」
そこで一旦言葉を切ると、悠里は村の周辺を映し出す。
「村から離れた茂みに彼女たちは潜伏しています。そして目の前を通過した人間に襲いかかる算段です。ここまでは問題ないのですが、傍には大切な水田があり戦えば被害を受けてしまいます。そこで――、」
人差し指を立てて、真剣に彼は告げた。
「皆さんには、鬼ごっこをして頂きます」
一時の静寂。
言葉を失った猟兵たちの表情を見て、悠里は咳払いを一つした。彼とて真面目に語っており、きちんとした理由もある。
「……私の力で、村の外れへと転送致します。そこからオブリビオンたちの前を通り、走り抜けてください。なにか気を引く言葉があればなお有効でしょう。数枚の水田抜ければ人の手を離れた荒れ地が広がっています。被害を抑えるのならうってつけの場所ですので、ここなら全力で戦っても問題ありません」
火照った顔を手で扇ぎながら、これで終いとばかりに映像を消す悠里。
「そうそう、丁度村では豊作祈願の祭りの準備が行われています。戦闘が終わる頃には準備が整っていることでしょう。様々なお餅が振るわれるとのことですから、戦闘後の一服にいかがでしょうか」
そして鈴の音が鳴り、悠里は門を開く。
「健闘をお祈りしております。皆様ならきっと成してくださる、そう信じております」
水平彼方
水平彼方です。二作目はサムライエンパイアにて妖怪退治となります。
●このシナリオについて
第一章:『猫又』との集団戦。
第二章:『妖怪・瓜小槌』とのボス戦。
第三章:『お餅の季節』では村で行われるお祭りに参加し、振る舞われるお餅に舌鼓を打つ。
●戦闘パートについて
鬼ごっこという名の誘導からスタートします。
第一章、第二章では悪事を働こうとする妖怪たちを退治して頂きます。オープニングにあるとおり、猫又との戦闘中に妖怪・瓜小槌が手を出すことはありません。両者を思いっきり懲らしめてください。
村人たちは畑仕事と祭りの準備に忙しいため、戦闘のことには感知していません。
コミカルな軽い調子で進行します。どっかーん。
●日常パートについて
第三章では村でのお祭りに飛び入りで参加します。沢山のお餅が皆さんを迎えてくれることでしょう。食べたい味などがございましたらプレイングに記載して頂き、水平を飯テロで沈めてください。
このパートのみ、お誘い頂ければ悠里が同行致します。彼は村を眺めたり、舌鼓をうったりのんびりと過ごすようです。
●進行スケジュールについて
プレイング受付は各章幕間を公開後、マスターページやお知らせTwitterで告知致します。それ以前に頂いた場合は一旦お返しさせて頂きます。
迷子防止のため、お連れの方の【ID】と【キャラクター名】をプレイングに記載して下さい。『ゆーくん(f00000)と』でも十分伝わります。プレイング送信のタイミングを揃えて頂くと非常に助かります。
それでは、皆様のプレイングを心よりお待ちしております。
第1章 集団戦
『猫又』
|
POW : バリバリ引っ掻くニャ
【両手の鋭い爪による引っ掻き攻撃】が命中した対象を切断する。
SPD : 猫の本領発揮なのニャ
【両手を地に付ける】事で【四足の型・高速戦闘モード】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ : これが猫又の妖術なのニャ
レベル×1個の【鬼火】の炎を放つ。全て個別に操作でき、複数合体で強化でき、延焼分も含めて任意に消せる。
イラスト:風鈴
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
【プレイング受付は 6/17 8:31からとなります。】
四王天・燦
「豆腐屋チョロいな。盗み放題・ご馳走三昧だ♪悪さで適う奴はいねーな♪」
油揚げ片手に猫股の前を通り、第六感任せに不意打ちを避けるなりしてダッシュ&逃げ足で鬼ごっこ。
狩猟本能を刺激するよう尻尾をふりふり
「勝った方が人生を貰う…いいな?」
荒地に着いて油揚げを平らげ(1枚くらい分けても良いぜ)、妖魔解放…見習い雪女の魂を霊着
『適当に降参してね』
別人の物言い。
高速移動で臨み、四王稲荷符を貼り付け呪詛で体力を奪う。
氷属性の衝撃波を加減して吹いて凍らせると同時に、足場も凍結させて意表を突く
降参したら「ご馳走三昧さ」と口付け。
生命力吸収で精気と魂を頂戴だ。
「アタシが骸の海に落ちる日まで、一緒に楽しくやろーぜ」
●お揚げは猫又の好物になるか
心なしか足取り軽く、四王天・燦(月夜の翼・f04448)は続いて鼻歌を歌いながらあぜ道を進む。
「豆腐屋チョロいな。盗み放題・ご馳走三昧だ♪ 悪さで適う奴はいねーな♪」
意気揚々と歌い上げると、片手に持った油揚げを見せつけるように振りながら長閑な小道を歩いて行く。
成果はいかほどか。ちら、と意味深な視線を視線に向ければ、爛々と輝く金色の瞳がきらりと光った。次の瞬間。
「ニャンニャニャーン! お命頂戴するニャー!」
両手を挙げ勢いよく飛び出した猫又は自慢の爪をきらりと光らせ、勢いよく飛び出した。燦の姿を見るや、両手を地に着けしなやかに地面を駆ける。こちらへ向かってくることを確認した燦は、彼女の狩猟本能を擽るようにゆらりゆらりと尻尾を揺らす。
「ほら、おいで。追いつけるもんならな」
「ま、待つニャ!」
シャキンと伸ばされた鋭い爪が燦目がけて振り下ろされる。第六感を働かせ咄嗟に姿勢を落とす燦。しゅばっと空気を裂く音と共に通り過ぎたのを横目に、彼女はしたりと笑った。
「おっと、間一髪。流石アタシ」
走りながら振り返れば、躱されたことに悔しそう地団駄を踏む猫又の姿。一度スピードを落とし更に尻尾を一振りすれば、嬉々としてこちらへ向かってくる愛らしい姿があった。
「待つニャー!」
「ははっ! 捕まえられるものなら捕まえてごらん」
あと少し、それまでは捕まる訳にはいかない。ちらりと水田に写る姿を見ると、燦は速度を上げ一気に駆け抜けた。
荒れ地にたどり着いた燦は持っていた油揚げを口に咥えると、その内の一枚をを猫又に投げて寄越す。じゅわりとお揚げの甘辛い味が口いっぱいに広がり、燦は思わずうっとりと目を眇めた。
「何のつもりニャ。手袋をではなく、油揚げを投げつける……。これはもしや、チョウセンジョーを叩きつけられたニャ!」
「そういう意味じゃないんだけど。勝った方が人生を貰う……いいな?」
あからさまに挑発され、尻尾を膨らませて憤然とする猫又。笑いを交え軽い調子で返す燦は、その途中で口調をがらりと変えた。その豹変ぶりに背筋に冷たいものが走った猫又が体を震わせると、息が白く曇ることに気がついた。
梅雨だというのに真冬の様な冷気が吹き付ける。燦がかつて喰らった『見習い雪女』力によって、霜が降り、地面が凍っていく。冷気は猫又の足下まで到達すると、氷に足を滑らせ尻餅をつく。
「さ、寒いニャー! 凍えてしまうニャーっ!」
「ああそうそう」
喚く猫又に、最早最初の快活な妖狐の姿はない。左目を冷たい黒へと変貌させ、自身を見下ろす巨大な敵であった。
「倒れる前に適当に降参してね」
他者を圧倒する高圧的な態度でそう告げると、燦は荒れ地を駆けた。高速で猫又に迫りながら、懐から取り出した四王稲荷符を指先で摘まむ。伸ばした指先で猫又の額に貼り付ければ、込められた破魔の力が瞬く間に猫又の体を蝕んでいく。
「痛いニャ、降参するニャー!」
痛みに堪えられなくなった猫又が泣きながら懇願すると、燦は目元を緩めまろい頬を優しく撫でた。
「ご馳走三昧さ」
そして猫又の愛らしい唇に己の唇を重ねる燦。口付けと共に生命力を吸い取られた猫又は、やがて形を崩し骸の海へと還っていく。
「アタシが骸の海に落ちる日まで、一緒に楽しくやろーぜ」
その最後の残滓を見送って、燦は土を払って立ち上がった。
大成功
🔵🔵🔵
ワルゼロム・ワルゼー
自らの欲求を満たすため、無関係の人間に迷惑をかけることを良しとするなど…全く以て困った奴らよ。ここは一つ我々が躾けてやらねばなるまい。
方針:WIZ
まずは誘導からだ。『布教は数こそ力なれば』で人形たちを召喚し、連中の前を通り過ぎる合間に、猫又を挑発させるとしよう。大量の人形による一斉挑発、まず興味を惹くには十分であろう。
荒れ地まで誘導できたら戦闘開始。人形に持たせた爆弾を投擲させ、爆破で焼き払っていこう。範囲攻撃のスキルも使って、更なる効果拡大も狙っていくぞ。敵の鬼火に対しては爆弾が火種となり、相殺も可能のはず。
我は合間を縫って、呪詛・高速詠唱・闇属性攻撃で猫又たちを一匹ずつ仕留めていこうかな。
●我が名は『枢機卿』ワルゼロム・ワルゼーである
「自らの欲求を満たすため、無関係の人間に迷惑をかけることを良しとするなど……全く以て困った奴らよ。ここは一つ我々が躾けてやらねばなるまい」
ワルゼロム・ワルゼー(枢機卿・f03745)はため息と共に呟いた。しかしその言葉に憂いはない。生まれながらの「導く者」という認識通り、ワルゼロム・ワルゼーは自信に満ちた――それは時に傲慢にも見える不遜な笑みを浮かべ、指先を茂みへと向ける。
「さぁ、お仕事の時間であるぞ、我が分身ども。給料が欲しければ、キリキリ働くが良い!」
号令と共に召喚された教祖さま人形(爆弾搭載型)、その数160体。圧倒的な数の暴力である。
『ゴ命令デアル』
『働ケ! 教祖様ノゴ命令デアルゾ』
『オ主モナ』
口々にいいながら行進する教祖さま人形(爆弾搭載型)160体。小石に躓いても後ろの誰かがそっと起こし、全員がぞろぞろと進んでいく。その姿はさながら大名行列のようだったと、後にワルゼロムは回顧する。
「ニャ! 怪しい人形め、発見しましたニャ!」
この光景を見て猫又が興味を引かれないはずがない。物珍しい光景に目を輝かせて茂みから飛び出せば、その内の一体へと手を伸ばす。
『コノ我ノ姿ニ気取ラレルトハ。チョロイ、チョロイゾ』
『サア愛ラシイ我ノ姿ヲ追イ求メルガイイ』
『ア、ネコチャン……』
猫又の姿を瞳代わりのカメラで確認した教祖さま人形(爆弾搭載型)が拙い口調で挑発すると、それに釣られたのかはたまたその姿に魅了されたのか、数匹の猫又たちが追いかけ始める。
『最高速度デ振リ切ルゾ』
「待て待てー! 待つんだニャー!」
姿に似合わぬ機敏さで攻撃をかいくぐると、目的地である荒れ地に向かってひた進む。
その後方で事の成り行きを見守っていたワルゼロムは、その所為かを見てにい、と笑った。
「うむ、重畳である。我が分身どももよく働いた。仕上げは我自身が行うとしよう」
そう満足げに独り言ちると、悠然と歩を進めるのだった。
ワルゼロムが荒れ地へと踏み入る頃には、その広い土地を余すところなく使い鬼ごっこが行われていた。
「ニャに奴!」
「我々の崇高なる悪戯を邪魔するとは、さては悪い奴ニャ!」
鬼ごっこを邪魔されたことに怒った猫又たちは、一斉にワルゼロムへと鬼火を飛ばす。
「この様な火の粉、打ち払うのは造作もない。遊びはここまでぞ。さあ我が分身ども、この小悪党を懲らしめてやるのである!」
高らかな教祖の宣言を聞けば、分身たちは手に持った爆弾を猫又たちへ一斉に投擲する。
『ヤッテヤルノデアル!』
「何なのニャー!」
鬼火を着火剤代わりにし、爆発の勢いで自身もろとも全てを吹き飛ばす教祖さま人形。一つが爆発すれば、近くにある爆弾を誘爆させる。その合間を縫ってワルゼロムは外典マリス・ウィザードの頁を捲り、詠唱する。
「さあ、これで躾も終いぞ」
放たれた闇色の魔力が猫又を討ち、一匹また一匹と骸の海へと還っていく。
そして爆風が収まる頃には、塵一つ残さぬ焼け野原が広がっていた。
大成功
🔵🔵🔵
佐世保・初春
臭う臭うの、悪戯において妾達狐に敵うと思い上がった間抜け猫の匂いがするの
怒ったか?ほれ、怒ったか?ほれほれ着いてくるがよい♪
誘惑を使いながら相手のプライドを刺激するような挑発を投げかけつつ隠れている場所の傍を通過。かからなければ意気地の無い残念猫がいたもんじゃと言いながら狐火を撃ちこみ炙り出す。
荒地まで誘導したら狐火で視界を塞ぎつつ、残像を使って敵の鬼火で同士討ちが起こるように誘導する。
相手が一匹になったら破魔を使って討ち取る
●この後小魚も美味しく頂きました
長閑な農村に降り立った佐世保・初春(妖狐の陰陽師・f02603)は、グリモア猟兵から聞かされた茂みへとのんびりと歩いていた。近づくにつれ不自然に揺れる草むらやはみ出した尻尾が見えると、思わず笑いを堪えてしまう。だがそれもここまで。
「臭う臭うの、悪戯において妾達狐に敵うと思い上がった間抜け猫の匂いがするの」
怪しい茂みの横を通りつつ呵々大笑すれば、茂みが激しく揺れ紫色の塊が飛び出してくる。
「失礼するニャ! 狐はお揚げでも食べていればいいニャ!」
「そうニャ、小魚は体にとってもいいんだニャ! そしていい匂いにゃ!」
小魚を持った手を振り上げ憤然と抗議する猫又たち。少々方向のずれた主張もどこ吹く風か。初春はさらりと受け流すと背を向けて走り出す。
「待て待てー!」
己の術中にはまった猫又たちを見て、狐火を放つまでもなかったかと心中で呟くと、下駄を鳴らして荒れ地へと急いだ。
目的地へとたどり着けば、初春を挟むように二匹の猫又が両側から襲いかかる。
「とうとう追い詰めたニャ!」
その姿を視界の端に捉えながら初春は手のひらに狐火を呼び、その光で猫又の視界を奪う。
しかし振り下ろされた鋭い爪は止まらない。ザンッ、と初春が切り裂かれる音が辺りに響いた。
「ふっ、勝ったニャ」
「残念じゃったな、そいつは残像よ。妾はこんな程度では捕まらんからなぁ、猫又殿」
確かな手応えに笑った猫又は、その声を聞いて背筋を凍らせる。見れば初春の残像が朧になり、代わりに傷ついた猫又の姿がぐらりと傾ぐ。
「ニャにー!」
「すぐに後を追わせてやろうぞ。――我が焔はすべてを焼き尽くす破壊の力、燃やし尽くせ! 狐火・大火々!!」
初春の狐火が一つまた一つと合わさり、破魔の力を宿した大きな焔となる。瞬く間に膨れ上がり猫又を飲み込むと、轟音と共に天へと燃え上がる。
「成敗!」
後光の如き光炎を背に、初春は終わりとばかりに高らかに宣言した。
大成功
🔵🔵🔵
セシリア・サヴェージ
一見ほのぼのとした予知でしたがオブリビオンの悪戯はもはや悪戯の域ではありませんからね。早急に対応しなくては。
さて、【存在感】を発揮して猫又たちをおびき寄せたいところですが……。驚いて逃げるふりをすれば味をしめて深追いしてくるかもしれませんね。演技しながら追いつかれない程度に【ダッシュ】しておびき寄せます。それでは……
わ、わー!びっくりしましたー!お、追いかけないでくださいー!(棒読み)
……いかがでしょうか。我ながらなかなか良い演技だと思うのですが。おびき寄せに成功したら頃合いを見計らって振り向きざまにUC【暗黒剣技】を浴びせます。素早そうなので命中率を重視しましょう。
●騎士と女優について
ちちち、と小鳥が囀り、羽ばたいていく。セシリア・サヴェージ(狂飆の暗黒騎士・f11836)は、畑仕事に精を出す村人たちを見ると、僅かに目元を綻ばせた。
サムライエンパイア独特の湿気を孕んだ風が、銀の髪を浚う。その端を片手で押さえると、いつものように表情を引き締めた。
セシリアはグリモア猟兵が語った予知の内容を頭の中で反芻し、件の怪しい茂みをじっと見る。
「一見ほのぼのとした予知でしたがオブリビオンの悪戯はもはや悪戯の域ではありませんからね。早急に対応しなくては」
さて。
ではいかなる策を持って彼らの注意を引けば良いか。
セシリアの持つ高潔で、凜々しく物静かな雰囲気。身に纏う黒い鎧と相まって荘厳とすら感じさせる存在感は、サムライエンパイアにおいて圧倒的だ。傍を通るだけでも十分だろう。
しかし、念には念を入れよとも言う。万が一のことも必要だ。
「なら、この策はどうでしょう」
頭に思い浮かんだものは至極単純な策。だがこれならば猫又たちは味を占めて深追いしてくるかもしない。
そうしてセシリアは一計を案じると、真っ直ぐ前を向いて歩を進めるのだった。
黒い鎧の麗人が歩いてくる。
猫又たちは先刻の愉快な通行人たちとは違う圧倒的な雰囲気に押され、生唾を飲んだ。だが獲物は獲物、全てに満遍なく悪戯を仕掛けねば猫又の名が廃るというものだ。
「そこな奴! この猫又の妖術を喰らうニャー!」
宣言と共に飛び出した猫又たちはセシリアに向けて鬼火を放つ。
「あっ……」
振り向いたセシリアは、瞬時に現れた鬼火に驚きの声を上げる。そして慌てて進行方向へと向き直ると、逃げるように駆けだした。絶妙に追いつかれない程度の速度で、距離を保ちながら水田の間を駆け抜ける。
そして、満を持して最後の一押しを披露する。
「わ、わー!びっくりしましたー!お、追いかけないでくださいー!」
その時、猫又たちは宇宙を見た。虚無、空……。圧倒的な力で頭を殴られたかのように何も思い浮かばない、そんな台詞だった。
「……いかがでしょうか。我ながらなかなか良い演技だと思うのですが」
「酷い棒読みだニャ!」
ビシッ! と音が聞こえそうなほど綺麗なツッコミが飛ぶ。いつの間にか景色が水田から荒れ地へと変わっていた。
「それは失礼致しました。ならば――」
振り向きざまの一閃。セシリアは暗黒剣で猫又たちを両断した。
「我が暗黒剣でお前を在るべき場所へ還そう」
声すら上げることも叶わず、猫又たちは血へと倒れ伏す。最後に見たのは、陽光の下にありながら闇を纏った、一人の騎士の姿であった。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『妖怪・猪子槌』
|
POW : どっかーん!
単純で重い【不思議な木槌】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD : 不幸になーれ!
【不思議な木槌を振ること】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【不運なこと】で攻撃する。
WIZ : とっつげきー!
自身の身長の2倍の【うり坊】を召喚し騎乗する。互いの戦闘力を強化し、生命力を共有する。
イラスト:すねいる
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「御狐・稲見之守」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●幕間公開後、プレイング受付を開始致します。
●
空気は凍え、爆風が吹き荒び、大火が消えたあと。
ぽんっ、と音を立てて猫又最後の一匹が骸の海へと還っていった。
さあ、やれやれ。誰かが息をつく。
次の敵は誰だっただろうか。そう誰かが尋ねる。
「こんな手に乗るなんて、猫又も大したものじゃなかったなー」
突如響いた少女の声に、猟兵たちは元来た方角を振り返る。
――ドォン!
次いで聞こえたのは岩を砕くような轟音。巨大な木槌が打ち付けられた場所が、蜘蛛の巣状にひび割れひしゃげている。もうもうと立ち上がる土煙の向こうの人影が、ゆらりと立ち上がった。
「自信がある奴は歓迎するよ。強いのなら尚更大歓迎だ! さあさあ、この瓜小槌と戦いたいのは何奴かな!」
ぶうんと勢いよく木槌を振り回し、肩に担ぐは妖怪・瓜小槌。
名乗りを上げる者はいないかと、その表情は期待に満ちた目で猟兵たちを見る。
「まあ、名乗り上げる奴がいなくとも、全員アタシの相手だと言うことに変わりはないよ」
瓜坊たちがぴょーんと勢いよく飛び出し、瓜小槌の周りを跳ね回る。
「さあ、化かし騙しも二幕目。今度はアタシと遊んどくれよ!」
四王天・燦
◎
楽しく逝かせてやりたい。但し。
「大したことないってのは謝ってもらわなきゃ、にゃ」
妖魔解放・猫又霊着…アタシと猫又の意識が混ざる状態だ
『瓜たん遊ぶニャー!』っと四足高速移動。
見切りと残像で物理攻撃は避け、爪…はないので只のパンチ。
『ポンコツな身体ニャ』
不幸一例
・古井戸に転落。ホラー調で這い出る
・油揚げ窃盗にキレた豆腐屋襲来
・自生のマタタビに酔う
『遊んでみたかったんだニャ。不幸にニャーれ!』
木槌を武器落とし&盗み攻撃。
手当り次第に振り回す☆
飽きたら槌を返し、指先に炎を灯し火属性の衝撃波にし放射。
『牡丹鍋でもナマでもいただきますニャ』
グラップルで組み伏せ接吻で生命力吸収。精気を頂戴
やりたい放題ニャ
●猫は自由な生きものニャ
猫又たちを撃破し、勝利の味に酔うこと暫し。四王天・燦(月夜の翼・f04448)は瓜小槌の口上を聞き、顎に指を添え考え込むふりをする。
お望みとあらば楽しく逝かせてやりたい、と燦は思う。但し――
「大したことないってのは謝ってもらわなきゃ、ニャ」
――妖魔解放。燦の左目が再び妖しい光を放つと、猫又のオーラを纏う。両手を地面に着け体勢を低くすれば、先ほどまで元気に走り回っていた猫又そのものだった。
「瓜たん遊ぶニャー!」
燦は四つ足で軽やかに地面を蹴ると、瓜小槌の元へ走る。
「ね、猫又!? 違う、アンタ何で……!」
「瓜たーん!」
「ああもう、鬱陶しいな!」
ちょろちょろと瓜小槌の周りを走る燦。瓜坊たちも混ざって楽しい鬼ごっこ――ではなく、攻撃を掻い潜りながら猫又パンチをお見舞いする。
しかし燦の体に鋭い爪はなく、ぺちんと頬を打っただけに終わった。
「ポンコツな身体ニャ」
己の手を見つめながら、ため息を吐く。ちぇ、と舌打ちしていじけるが無いものは仕方が無い。
「よくもやったなー!」
怒った瓜小槌が不思議な小槌を振るうと、燦の身に寒気が走る。この匂い……溜まらなく鼻を擽るこれは。
「うにゃーん、た、溜まらないー!」
近くに自生していたマタタビに、ごろごろと喉を鳴らして地面を転げ回る。地面を砕く一撃が耳元を掠めようと、猫又の魂がマタタビを求めて仕方が無い。
「隙あり!」
マタタビに夢中な燦へと、巨大すぎる小槌が振り下ろされる。間近で素早く動く物体を目にした燦は、目を輝かせその細腕に飛びついた。
「これ、これ欲しい!」
「あ、こら! 離しなさーい!」
腕にしがみつくと足で蹴り、尻尾で顔を叩く。小槌を握る手が緩んだ隙に、鮮やかな盗みの技で獲物を奪い取る。
「重い……」
その小槌は見た目以上の重量であった。丸太の様なそれは、持ち上げようともびくともしない。
「なら入らないニャ」
飽きた玩具を放り出すと、指先に炎を点しふっと息を吹きかける。炎は渦を巻き、熱風に乗って滑るように進んでいく。
「ギャッ! あちっ、熱っ!」
着物に燃え移った炎を消そうと、バタバタと叩く。瓜坊も機動力を活かして火に体当たりをして消していく。
その背後に、舌舐めずりする燦がいつの間にか立っていた。
「さてさて。熱々の後はー、牡丹鍋でもナマでもいただきますニャ」
束の間触れあい、精気を奪う口付け。味を占めた燦が思わず口の端を釣り上げた。
「何、してるんだあぁ――!」
すぐに体勢を立て直した瓜小槌のパンチに、燦は沈むこととなった。
「うぐっ! 結構なお点前で……」
「やかましい!」
本当に熱かったのは誰の唇だっただろうか。その答えは本人のみぞ知る。
成功
🔵🔵🔴
セシリア・サヴェージ
このオブリビオンは悪戯よりも戦いのほうがお好みのようですね。ならばサムライエンパイア風の名乗りを上げてから決闘と参りましょうか。
やあやあ我こそは、世の為人の為に妖異を討たんと常夜の世界より推参した暗黒騎士、セシリア・サヴェージなり!腕に覚えがあるならばいざ尋常に勝負!
……こう見えて真面目にやっているつもりなのですよ?さて、派手な名乗りを上げた後は正々堂々真っ向勝負の力比べと参りましょう。UC【闇の解放】を発動し能力を上昇させた上で、あの巨大な木槌の一撃を見事【武器受け】してみせましょう。さらにその状態から【怪力】で木槌を撥ね除け、がら空きの胴に暗黒剣で横一文字に【なぎ払い】ます。
●騎士とサムライ
瓜坊が一つ、ぴょーんと跳ねた。
炎に飲まれた瓜小槌が、酷い目にあったと独り言を呟いた頃。
妖怪・瓜小槌の名乗りを聞いたセシリア・サヴェージ(狂飆の暗黒騎士・f11836)は、静かに銀の双眸を眇め相手の姿を見つめていた。
どうやらこのオブリビオンは、悪戯よりも戦いの方がお好みの様子。
ならば、こちらもサムライエンパイア風の名乗りを上げて、決闘の舞台へといざ参らん!
「やあやあ我こそは、世の為人の為に妖異を討たんと常夜の世界より推参した暗黒騎士、セシリア・サヴェージなり! その方を退治に参った。腕に覚えがあるならばいざ尋常に勝負!」
一歩前へと進み出て、毅然と剣を構えるセシリア。思わぬ名乗りに瓜小槌は驚いたように目を瞬かせ、しげしげと彼女を見た。
「意外だなあ、もっとお堅いかと思ってた。しかもサムライの名乗り! もしかして、異国の騎士様はアタシと遊ぶ気満々だったのかな」
その言葉に、セシリアは声のトーンを低く落とす。
「……こう見えて真面目にやっているつもりなのですよ?」
「半分くらいは本気だよ。それにしても……いい返事だねえ。そこまで言うなら受けきって頂戴!」
瓜小槌は肩に担いだ木槌を持ち上げると、勢いよく頭上へ振り上げる。
重さが加味された強力な一撃が、セシリア目がけて振り下ろされた。
「暗黒よ……この命を捧げよう。私に全てを護る力を!」
しかしこれしきのことで暗黒騎士は動じない。真の暗黒の力を覚醒させたセシリアは、闇の化身へと変貌を遂げる。手に、足に、身体中に満ちる力を剣に込めて、真正面から勝負を挑む。
一撃。耳をつんざく剣戟の音だけが辺りに響いた。
「なっ……!」
その騎士は倒れなかった。足下の地面は割れようと、魔剣を握りその巨大な刀身で以て受け止めきって見せた。
更に彼女の怪力は、小槌を撥ね除け押し返す。体勢を崩した瓜小槌目がけて、セシリアの暴風の如き一撃が迫る。
「はあああぁ――っ!」
咆哮と共に剣が横一文字になぎ払われる。振り抜いた軌跡は、瓜小槌に確かな傷を負わせた。
成功
🔵🔵🔴
音海・心結
美味しい匂いに惹かれてやってきたのですが
なんなのですか、これはっ!
みゆが相手になってあげるのですっ
マイくんっ
UC『捕食の刃』を使って、攻撃力アップアップなのですよー
オオカミ耳とうさぎの尻尾が生えたみゆ、かわゆいですねぇ
えへへー
あとは殴るのですよ
武器『Engraved cherry』を使い更に攻撃を強化
【ダッシュ】で近寄って【フェイント】攻撃するのです
みゆの速さについて来れるのですか?
久しぶりの戦闘は楽しいですねぇ
いくら血が合っても足りないのですよ♪
あまりの怖さに【精神攻撃】になってるかもしれないのですが
みゆは殴るのが楽しいので容赦はなしなのですっ
後悔させてあげますねぇ
アドリブ・絡み歓迎なのです
アテナ・アイリス
お餅の為に、わたしも加勢させていただきますわ。
「武器受け」とUC『アイギスの盾』を使って、妖怪・猪子槌の攻撃を全て受け止めて見せる。
ごめんなさいね、アイギスの盾の効果でうり坊達はすでに石化しているわよ。
猪子槌がイライラしてきて、こちらに気を引いている(「誘惑」「存在感」)間に、仲間に決定的な攻撃をしてもらう。
「お餅の作り方、絶対習得するんだから。」
「ほらこっちよ、当ててごらんなさい。まあ、無理だと思うけど。」
「あらあら、瓜坊達は石になっちゃたわね」
「いまよ、お願い!」
アドリブ・連携好きです
ワルゼロム・ワルゼー
(方針:WIZ/共闘・アドリブ歓迎)
遊び相手を見誤ったな、猪の娘よ。対象が我々猟兵となると、その代償は高くつこうぞ。
将を射んとする者はまず馬を射よ、という。騎乗するうりぼうの動きを鈍らせてやれば、自ずと攻撃のチャンスも生まれよう
突撃を【残像】【第六感】で回避しつつ、【呪詛】を込めた闇の【属性攻撃】を【高速詠唱】で、うりぼうへと撃ちこんでいこう
生命力を共有するのなら、猪子槌へのダメージも期待できそうだの
動きが鈍ったところで側面または背面に回り、UC【原罪のフラクタル】で敵の急所を狙い、一気に勝負を決めよう
遊戯の続きは骸の海で、猫又共と一緒にやるがよい
●勝利へと導くもの
痛む傷を押さえながら、瓜小槌は悔しそうに地団駄を踏む。
「まったく! 何だいあいつら、悪戯する隙がありやしない!」
いきり立つ彼女を宥めようと、瓜坊たちはその足下にすり寄った。
「ああ、ごめん。心配掛けちゃったかな。ちょっと気が立ってたみたい、もう大丈夫。次はお前達も一緒に遊ぼう」
「なに、遊びなら間に合っておるよ」
「誰!?」
その声に振り向けば、見覚えのある姿が立っていた。確か、猫又が追いかけていった中にいた法衣の女性。
「遊び相手を見誤ったな、猪の娘よ。対象が我々猟兵となると、その代償は高くつこうぞ」
ワルゼロム・ワルゼー(枢機卿・f03745)は相手の返事を待たず、外典マリスウィザードを掲げ持つ。慣れた手つきでいつものページに当たりを付け、指先を引っかけて開く。見慣れた文字が仄暗く輝き、呪詛を紡ぎ上げていく。
「やらせないよ! おいで、瓜坊!」
対する瓜小槌もおいそれとやられる相手ではない。
瓜坊を呼ぶとその体を自身の倍まで大きく膨らませ、その背中に跨がった。
「美味しい匂いに惹かれてやってきたのですが……なんなのですか、これはっ! みゆが相手になってあげるのですっ」
美味しいものに惹かれてぶらりサムライエンパイア。音海・心結(ゆるりふわふわ・f04636)は想像とはかけ離れた光景に驚き、思わず大声を上げてしまう。その隣、アテナ・アイリス(才色兼備な勇者見届け人・f16989)は心結を宥めるように、努めて穏やかに声をかける。
「落ち着いて、みゆちゃん。ちゃんとオブリビオンの情報もあったわよ。それとあなたも猟兵ね。お餅の為に、わたしも加勢させていただきますわ。……お餅の作り方、絶対習得するんだから」
「おや、アテナは食いしん坊でしたか」
「ち、違うわよ! そうじゃないわ」
「ふっ……。良い、我と共に奴を懲らしめるぞ!」
仲のいい二人のやり取りに、束の間心を和ませ鷹揚に頷くワルゼロム。
思わぬ加勢に様子見をしていた瓜小槌だったが、辺りに人影が見えないことを確認すると、瓜坊を小突いて合図をする。
「やられるのは、あんたたちの方だけどね!」
主の声を聞き、瓜坊は鉄砲玉のように駆けだした。巨躯に似合わぬ速さと勢いで、三人目がけて突進する。
「鍛冶神の盾よ、あらゆる邪悪・災厄を打ち払え!」
アテナがユーベルコード『アイギスの盾』で受け止める。よろめき後退した瓜坊は突如現れた障害物に怒り狂いながらも、もろとも吹き飛ばそうと再び突進の構えを取った。
「アテナ、ナイスですっ。マイくんっ!」
アテナの活躍を見た心結は、彼女に続けと『捕食の刃』で自身の攻撃力を研ぎ澄ます。
「どーですか! オオカミ耳とうさぎの尻尾が生えたみゆ、かわゆいですねぇ」
心結はどうだといわんばかりの自信満々の表情で、スカート裾を翻しくるりと回る。
ただ可愛らしいだけの少女ではない。その身のうちには華々しい毒がある。『愛らしい女性』はかわいさを武器として纏い、瓜小槌目がけて跳躍した。
「みゆの速さについて来れるのですか?」
「このっ!」
迫る心結を叩くべく、瓜小槌は獲物を振るう。強化された一撃は、その体を砕くことなど容易いだろう。
「残念です、みゆはこっちですよ」
くすくす、と鈴を転がすような声でレディが笑う。掻き消された残像が花弁となって散ると、その向こうから心結は手を伸ばした。
「ちょうだい」
『Engraved cherry』――桜の形をした刻印が、鮮血を求め渇いている。
なら、血を与えましょう。
心結の攻撃で肌が裂け、流れる赤をすくい取る。
「痛っ!」
「ほう、やるのう。我も働くとするか」
心結の戦いを見て、ワルゼロムは知れず昂ぶる心を抑えられずにいた。教祖として、ひとりの猟兵として、彼女たちに後れを取るわけにはいかない。ワルゼロムは呪詛を込めた闇を指先に点し、凝縮させる。そして瓜坊へと狙いを定めると、最後の句を唱え、放つ。
『オオオォォオオ――ン!』
藻掻き苦しむ瓜坊を見て、次々と闇の呪詛を撃ち込むワルゼロム。生命力を共有するのなら、瓜小槌へのダメージも期待できる。
その見立ては正しく、蝕むように瓜小槌の体力を奪っていった。
「ほらこっちよ、当ててごらんなさい。まあ、無理だと思うけど」
我武者羅に体当たりをする瓜坊を、アテナは『アイギスの盾』で正確に捌いていく。心結も負けじと軽やかに戦場を舞い、手傷を負わせていく。
「久しぶりの戦闘は楽しいですねぇ。いくら血があっても足りないのですよ♪」
玩具を与えられた子どものように笑っているのに、獲物を見つけた狩猟者のように冷たい。声と表情が最初見たものとはまるで違う。
ぞくりと恐怖が足下から駆け上がる。思わず震えた手を叱咤して、恐怖もろとも砕こうと小槌を振るう。
しかし心結の攻撃の手は緩まない。血で彩られた心結は、それを糧として啜り力を増す。血と笑顔との対比はより鮮やかなものとなり、瓜小槌を追い詰めていく。
「後悔させてあげますねぇ」
「こ、んのぉッ!」
余裕を失い、滅茶苦茶に振り回す。一撃でいい、こいつらを黙らせるだけでいい。当たれ、当たりさえすれば……。
「おっと。やれやれ、当てずっぽうとは無策にも程があるぞ。……動きに精彩を欠く、そろそろ手の内も尽きた頃であるか」
「このッ!」
「させないわ」
煽るワルゼロムをひと思いに砕いてしまおうと、瓜坊と共に突進するも、アテナの盾に阻まれてしまう。その時、盾に浮かび上がった女性の顔と蛇の瞳から、禍々しい光線が放たれ瓜坊を射貫いた。
「あらあら、瓜坊は石になっちゃたわね」
光線を浴びた瓜坊の体が、音を立てて石へと変わっていく。
「瓜坊!」
主の声もむなしく、やがて力尽きた瓜坊が元の大きさに戻り、物言わぬ石像と化した。
「うるさい、うるさい! アンタたちを、不幸のどん底へたたき落としてやる!」
ありったけの力を込め、アテナ目がけて小槌を振るう。アイギスの盾が小槌を受け止め、メドゥーサの石化光線を放つ。足を貫いた光が触れた場所から石へと変えていく。決定打への道が、アテナの前に開かれる。
「ワルゼロムさん。いまよ、お願い!」
「感謝する、アテナ殿。さて――」
礼を述べると、ワルゼロムは掌を瓜小槌へと向けた。
「衆生済度、寂滅為楽。我が慈悲と憐憫をその身に刻んでくれようぞ!」
虚空より生み出された闇の刃が伸び、瓜小槌へと振り下ろされる。
「そん、な……、人間に、こん、な、力が……?」
馬鹿な、と瓜小槌は思わぬ人間の力に
「みゆたちは、とーっても強いのですよ!」
「一人で敵わないなら、誰かと協力する。団結すれば、個に勝る力になるわ。あなたが測り損ねたのは……もう分かるかしら」
猟兵たちは困難に立ち向かうため、互いに協力し打ち勝ってきた。共鳴し合った力が起こす波紋は、いつか岩をも飲み込む大波となる。
「我らを甘く見たな、妖怪。遊戯の続きは骸の海で、猫又共と一緒にやるがよい」
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
「なぜ、どうして……」
不幸すら楽しんで、困難すら乗り越えて。なぜ、彼らは強くあるのだろうか。
わからない。満身創痍になった今でも、彼らの強さの理由が分からない。
「そんなこと、どうでもいいや。こんなになっても、それでも、アタシはまだ立てる……」
まだ小槌を振るえる。まだ、残った瓜坊たちもいる。
こういう時、窮鼠猫を噛むと言うのだったか。
「油断してると、不幸に食われるよ。アタシが蒔いて、呼んであげる」
止めたければ寄っといで。招かれなくともやるしかない。
――決着は近い。
「さあ、おいで『猟兵』たち。アタシは逃げも隠れもしないから、場所は分かっているんでしょ? ――第二幕、アタシと華々しく飾ろうじゃない」
そして妖怪・瓜小槌は再び立ち上がった。
四王天・燦
身を弾ませて起き上がる。
「女の子を傷つけるのは嫌だけど、戦を望むなら応えるニャ」
アークウィンドを抜く。
大振りな槌を見切り懐に入って斬る。
パンチが来たら逃げ足で間合いを取り直しヒット&アウェイ
石化した足を補うべく召還騎乗を試みるなら、応えるように抜刀し真威解放・神鳴!
納刀、力溜め開始
空に退避なんて不敬はせず、低空飛行で残像を残し紙一重の回避に臨む…ホームランされたら吹き飛んで勢いを殺す。
覚悟を決め激痛耐性で凌ぎ力溜めを継続。
溜まれば地に足を着き、真の姿も解放し真っ向勝負で神鳴一閃。
「神威・電刃居合い斬り!」
勝ったら要求。
「猫又が大したことないってのは謝ってくれニャ」
瓜たんが戦に満足したら嬉しいな
●遊戯閉幕
よっ、とかけ声一つかけて身を弾ませると、軽々と起き上がる。
眼前には満身創痍になりながらも立ち上がる瓜小槌の姿。その彼女の瞳には戦意の炎が未だ灯り続けている。
「女の子を傷つけるのは嫌だけど、戦を望むなら応えるニャ」
燦はアークウインドを抜くと、体勢を低く落とし一気に間合いを詰める。
「アンタ、まだ来るの?」
傷を負ってなお、瓜小槌は流れるように獲物を振るう。最初に比べて精彩は欠くものの、当たれば怪我どころではないだろう。
それらを的確に見切り、躱しながら燦は懐へと潜り込む。
「そこっ!」
「させるかぁっ!」
しかし瓜小槌も燦の動きに慣れ始めていた。相手が大ぶりになる攻撃の合間に仕掛けてくることは、容易く予想できた。
振り下ろし地面にめり込んだ小槌から手を離すと、柄を蹴り飛ばしそのままの勢いで燦へと殴りかかる。
「おっ、と」
ひゅ、と風を切る音が間近で聞こえる。燦のもつスピードと猫又の力が為しえた力だった。
「瓜坊!」
避けられたと知るや、瓜小槌は更なる攻勢に出る。瓜坊を呼び、巨大化させるとその背に再び騎乗する。
石化の呪いは、片足を覆い尽くしていた。
「片足が石になってもまだ戦うというのなら、その覚悟やよし」
ならば燦も、全力を以て応えよう。
アークウインドを鞘に収めると、妖刀【神鳴】の柄に手をかける。
「いくよ、瓜坊!」
丸々と大きな巨躯が走る。外れれば追い詰めるように小槌の一撃が飛ぶ。
空に逃げるなんて不敬はしない。燦は覚悟を決め、それらを躱し、或いは受け流し、燦は妖刀に流れる力を増幅させる。
「貰ったぁ!」
「――あ、ぐっ」
遂に瓜小槌の攻撃が燦へと届く。吹き飛ばされた体は軽々と宙を舞う。それでも燦は【神鳴】を離さない。
ブーツの底が地面を削り、燦の体は止まった。とどめを刺すべく、瓜小槌は再度突進する構えだ。
「御狐・燦が願い奉る。今ここに雷神の力を顕さん」
静かに相手を見据える瞳は、満月の色。その覚悟を感じ取った妖刀が呼応し、真の力を解放する。
雷が落ち、閃光が視界を焼く。
耳鳴りと明滅する視界が元に戻ると、そこにあったのは一人の戦巫女。紫電を帯びた羽衣をたなびかせ、戦場に凜と立つ燦の真の姿があった。
「これで勝負を決める」
ふわりと僅かに浮き上がると、地上を滑りながら瓜小槌へと迫る。
「神威・電刃居合い斬り!」
刃が鞘を走る音が、ひとつ。倒れた影は、ふたつ。
「アタシの、負け。か……」
どう、と倒れた瓜小槌は、先に還っていく瓜坊たちを見てそう呟いた。もうすぐ瓜小槌も骸の海へと還っていく。
「瓜小槌、最期に言いたいことがある」
刀を納めた燦は、瓜小槌の傍まで寄ると、再び猫又の魂の欠片を瞳に宿す。
「猫又が大したことないってのは謝ってくれニャ」
その瞳を見て、瓜小槌は息も絶え絶えになりながら笑った。
「謝らないよ……。アタシはアタシが思ったことに、嘘、吐かないよ。けれど、まあ……」
今度は燦を見て、その笑顔を悔しそうに歪ませる。
「アタシこそ、結局何も出来てない。猫又のこと、どうこう言えないのは、アタシの方かもなあ……。アンタに連れて行かれて、楽しくやれたなら……猫又も本望だろう、さ」
そのまま視線をずらし、瓜小槌は空を仰いだ。梅雨の合間の、晴れた空。夏の気配を孕んだ、青い青い空だった。
「ああ、楽しい遊戯だった……。また、いつか……お祭り騒ぎが、やりたいなぁ……」
そう呟くと、瓜小槌は骸の海へと還っていった。
成功
🔵🔵🔴
第3章 日常
『お餅の季節』
|
POW : 沢山食べよう
SPD : 味付けに工夫を
WIZ : お供えし飾ってみよう
|
種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●さァ祭りだ祭りだ
オブリビオン――妖怪たちは骸の海へと還っていった。
村の脅威は取り払われ、何も知らない村では祭りが始まる。
――さァ、豊作祈願 いたしましょ
秋に黄金の稲穂が波打つ光景を願って、今年もまた飢えることなく食べられることを祈って。
――さァ、知るも知らぬも 参りませ
今日そこに居合わせた、それだけでも参加する理由は十分だ。
今日ばかりは無礼講。老いも若きも、さあさ飲め飲め、歌えや踊れ。
村人たちは皆浮かれた面持ちで、歌を歌い手を鳴らす。
今日は特別、美味しいお餅が皆を迎えてくれる。
たらふく食べて、楽しんで。お味はなにがお好きかな。
===================================
四王天・燦
SPD
何本かアバラが逝ってるけど…猟兵たるもの据え膳食わねば何とやらだ
「黒蜜抹茶稲荷餡蜜。餅入りで」
甘味処の主に無理を言ってアタシ参上。
何でも油揚げが入るのが妖狐クオリティ。
油揚げに餅を詰める餅巾着は当前。
焼いても揚げても油揚げ
豆腐屋の親父からは距離を取っている。
(窃盗がばれると殺される)
食ったら酒宴に参加!
「皆、かんぱぁーい!」
…ごめんなさい19歳でした(摘み出されます)
ま、許されるなら瓜小槌の逝った場所に酒を注ぐよ。
「友人に捧げてんだよ」
村の衆には適当に誤魔化しておく。
(アタシらがそっちに逝く日が来たら、楽しくやろう、にゃ)
で、宴に戻る…
はずがフラフラとマタタビに誘われるのでした、ごろごろ
●献杯
「あー……、いっつつ」
痛む傷を押さえながら、燦は村への道を歩き戻る。呼吸の度に走る痛みに、これは何本かアバラが逝ってるな、と乾いた笑いを漏らす。
とはいえこれはこれ。それはそれ。猟兵たるもの据え膳を食わねば何とやら。村に着くや意気揚々と甘味処に駆け込むと、早速注文するのだった。
「黒蜜抹茶稲荷餡蜜。餅入りで」
「おいおい、そりゃあどんな食べ物だよ」
何でも油揚げが入るのが妖狐クオリティである、とは燦の持論で。無理難題にぎょっとしながらも、燦がレシピを教えれば甘味処の主を務める女性はころころと笑い、手際よく器に盛り付けた。
炭火で炙りパリッとした黄金色のお揚げの上に、とろりと黒蜜がかけられる。つやつやとした小豆を載せて、抹茶の入った茶碗が横に添えられた。
「ああ、成る程」
「はい、お待ちどおさま」
抹茶の蜜はこの村には存在しなかったらしい。ズズ……、と音を立ててまずは抹茶を頂く。程よい熱さの中に、抹茶の香りが口いっぱいに広がる。
さっぱりとしたところで餡蜜を一口。最中のようにパリパリとしたお揚げの皮に包まれた、つきたてのお餅。どこまでも伸びるそれと格闘しながら、燦は甘味に舌鼓を打つ。
「おーい、俺にもおはぎと茶を頼む」
背後に聞こえた豆腐屋の親父の声に背を向けて、耳をぺたんと倒し、尻尾を丸める。
「(窃盗がばれると殺される)」
盗んだ以上仕方が無い。追われるのは盗人の悲しい運命とでも、自業自得とも言えるだろうか。いそいそと残りを口に入れ咀嚼すると、ご馳走様でしたと主に言い残し甘味処を後にした。
さて、次なる目的地は神社の前。鏡開きが行われ、酒が振る舞われている。知るも知らぬも混ざり合い、静かに、または賑やかに楽しんでいる。
燦は杯を受け取ると、近くで飲んでいた村人たちの輪に混ざり込み酌を受ける。
「皆、かんぱぁーい!」
「かんぱーい!」
さて、酒の味とはどんなものだろうか。舌なめずりをして杯を近づける。
「あれ、あんた随分と若いねえ」
「本当だ、肌なんか水を弾いてそう。ああーそんな頃があったなあ」
「……」
何も言い返すことが出来ない燦。寒いと感じるくらいなのに、じわりと額に汗が滲む。
「あれ、お前さん本当に……」
「ごめんなさい、一九歳でしたぁ――っ!」
怪訝そうに覗き込む女性の視線から逃れるように、杯を持ったまま逃げ出すのであった。
さて、持ち出してしまった杯をどうしようか。飲むわけにもいかず、ぶらぶらと外れの方へと歩いてきてしまった。
その先に見えたのは、先ほどまで瓜小槌と戦っていた荒れ地だった。
「そうだ、アイツに呑ませるか」
これは我ながら名案だ、と自画自賛。燦は石ころを足で退けると、腰を下ろす。まるでそこに誰かがいるように、杯をくいっと持ち上げ乾杯の仕草をとる。そしてそのまま地面へと――瓜小槌が消えていった場所へと酒を注いだ。
「おや、お前さん。祭りの最中にどうしたんだ?」
通りかかった村の衆に尋ねられ、燦は少し考え込み、頬を掻く。
「――ああ、あれだ。アタシは飲めないから、友人に捧げてんだよ」
それ以上は何も言わなかった。しかし言葉を聞いて何かを察したのか、これも持って行ってやれと竹の葉の包みを燦へと渡した。
暫くぽかんと立ち尽くしていた燦だったが、後ろ姿が村へと入っていく頃にようやく包みを解いて中を見た。
そこには、弁当代わりの小さな餡団子が入っていた。
「流石にこれはあげられないぞ、アンタの代わりにアタシが全部美味しく頂くぜ」
一つをつまみ上げると、ぱくんと一口。アンタは酒を楽しんだだろう、なら甘味の一つくらい頂いたっていいじゃないか。ケチくさい。
「(アタシらがそっちに逝く日が来たら、楽しくやろう、にゃ)」
――それは楽しみだねぇ。
からからと笑う声が、耳元を通り過ぎる。聞こえるはずの無い声に、やはり気のせいだと胸の内で一蹴する。
「さて、団子も食べ終わったし宴に戻るか」
立ち上がり埃を払うと、燦は歩き出す。まだまだ祭りは始まったばかりだ。
しかし。
「にゃあーん! マタタビにゃあーっ」
そう、この辺りには何故かマタタビ草が自生していた。マタタビに酔い、地面をごろごろと転がる燦。
まだもう暫くは、ここを離れられそうにない。
――本当に、飽きないねぇ。
また誰かが、呆れたように笑った。そんな気がした。
大成功
🔵🔵🔵
セシリア・サヴェージ
村の平和が守られたようでなによりです。お祭りも無事執り行われるようですし、めでたしめでたしですね。村の人々が私の姿を怖れないか心配ではありますが【礼儀作法】良く【優しく】接すれば分かっていただけるでしょう……無礼講ということですし。
お餅も色々な種類があるのですね。どれを選ぶか迷いますね……これは、白いお餅を黒い餡で包んだものですね。えっと、こちらの菓子は何という名前なのでしょうか?え、『あんこくもち』ですか?(聞き間違え)
なるほど……甘くておいしいです。これは暗黒騎士のためにある菓子と言っても過言ではありませんね。失礼ですがもう一つ頂けますでしょうか?
●あんこくもちの暗黒騎士様
祭りで活気づく村を見て、セシリアはほっと胸を撫で下ろす。
「お祭りもお祭りも無事執り行われるようですし、めでたしめでたしですね」
ふわりと銀の眼差しを綻ばせて、騎士は笑う。この手で守ったものを、何より誇らしく、そして静かに喜ぶ。セシリアを騎士へと駆り立てる衝動が慰められ、穏やかに凪ぐ。この一時だけどこか許されたような、そんな心地がする。
ほんの、僅かな時間。
「さて、参りましょう」
セシリアは普段通り、凜々しい騎士としての仮面を被り、賑わう村へと足を踏み入れた。
その圧倒的な風格で他者を威圧するセシリアは一つ懸念があった。
敵ならばいざ知らず、相手は無辜の民。鎧で固めた冷たい容貌と、圧倒的な力は恐れの対象となる。
「村の人々が私の姿を怖れないか心配ではありますが」
思案しながらも、セシリアの足は一歩一歩、賑やかな村の喧噪へと近づいていく。
セシリアはそっと、飛び交う声に耳を傾ける。
祭りを祝う村人の声。太鼓や笛のお囃子と、振る舞われる料理の美味しそうな匂い。
ただそこにあって、繰り返される日常の光景。また今年もやってきた、祭りの日。
何も知らず楽しむ人々を見て、セシリアは削れ消えてしまった自身の生命と精神を省みる。
――守り切った。
暗黒に蝕まれようと、この気持ちは変わらない。
それがセシリアの誓いであり、己に課した使命であった。
「お姉さん、よかったらうちに寄っていってよ」
「私でしょうか? ……ええ、構いません」
幼い少女の招きに応じ、努めて礼儀正しく、優しく心がける。驚かせてはいけない、怖がらせてはいけない。
「ほら、そんなに怖い顔してちゃだめだよ。今日はお祭りで、えっと……『ぶれいこー』って、お父さんが言ってたよ」
「無礼講、ですか」
「うん、堅苦しいのは禁止だって。だからお姉さんもおいしいお餅を食べて、笑顔になろう」
思いのほか子どもというのは物怖じしないようだ。セシリアの手を取ってぐいぐいと引っ張っていく力の強さに、密かに感嘆する。
「それなら、おいしいお餅を頂きましょう」
「へい、まいどあり! お母さん、お客さまだよ」
軒先の椅子にセシリアを案内すると、少女は店の奥へと駆けていった。母親らしき女性と何か話しているが、セシリアは極力聞こえないように意識して行き交う人々を観察する。
「はい、おまちどおさま!」
元気な声にそちらを振り返れば、先ほどの少女が母親を連れ立って戻ってきた。その手には、大きな角盆が一つずつ。
そして並べられたのは一人前ずつ盛り付けられた皿の数々。色とりどり、味付け様々なお餅たちが机の上にずらりと行列を作った。
「お餅も色々な種類があるのですね」
「うん、どれもおいしいよ」
セシリアは目移りしながらも、一つのお餅に目が留まる。
「これは……。白いお餅を黒い餡で包んだものですね。えっと、こちらの菓子は何という名前なのでしょうか?」
「お姉さん気になる? 私大好きなの! 『あんころもち』っていうのよ」
「え、『あんこくもち』ですか?」
「おいしいよ! ほら、食べてみて」
「はい、有り難うございます。頂きます」
黒文字を手に取りそっと一口大に切ると、突き刺して口へと運び入れる。優しい甘さと、もちもちとした食感が真新しい。
黒い『あんこく』に包まれた、白い『もち』。それは暗黒を纏い人々のために戦う騎士を顕しているようで、セシリアは一人、発案者の思いの深さに感じ入った。
「なるほど……甘くておいしいです。これは暗黒騎士の為にある菓子と言っても過言ではありませんね。失礼ですがもう一つ頂けますでしょうか?」
「うん! もちろんだよ。お母さん、お代わりだって」
「はいはい、今お持ちいたしますね。喉に詰まらせないよう、お茶を忘れずに」
「有り難うございます」
律儀に頭を下げるセシリアに、笑顔で返す母親。そしていつの間にか隣に座った少女は、あんころ餅を突いていた。
「お姉さん」
「何でしょうか」
「お祭り、楽しいね」
逸る心を抑えられないのか、足をぱたぱたと忙しなく動かす少女を見て、セシリアは表情を緩めた。
「そうですね、楽しいです」
その表情はとても綺麗な笑顔だったと、別れ際の少女は教えてくれた。
大成功
🔵🔵🔵
アテナ・アイリス
アイテム「シークレットレシピ」をつかって、お餅の様々な食べ方を調べ、自分で作ってみる。
UC「アテナの手料理」をつかって、料理レベルを450にして、料理の鉄人みたいに、料理を作り始める。
自分で持ち込んだ食材を使いながら、素早くいろいろなおもち料理を作成し、みんなにふるまってあげるわ。
お土産に、いっぱいおもちを持って帰りましょうか。
「さあ、どうやって料理しましょうかね。」
「この為に準備してきたんだからね。さあ、これの出番ね。」
「これは、会心の出来よ。さあ召し上がれ。」
「旅団のみんなにも、食べてもらわないとね。」
アドリブ・連携好きです。
●幸せのレシピ
『お持ちの作り方を習得する』
アテナは当初の目的を果たすべく、村の中を歩き回っていた。さほど広くない村だが、祭りの間あちこちで出店が出ており、様々なお餅が振る舞われている。
「こうしてみるだけでも、本当に色んな調理法があるのね」
見聞きし、実際に食べながら、アテナは『シークレットレシピ』へと書き留めていく。既に分厚くなった本のページには、新しいページがどんどんと増えていった。
「冷たい餡蜜、蒸したよもぎ餅、温かい小豆の中に入れたお汁粉……。お餅そのものに様々な味を加えるものもあるわ。
それだけじゃなくて、焼いたり揚げたり、更に幅が広がっていて……。今日一日で書き切れるかしら」
祭りの日に振る舞われるものもあれば、普段から食べられるものも沢山あった。村人にも声をかけ、できる限りのレシピを集め、気がつけば村を一周していた。
ここで集会所の台所を借り、つきたてのお餅を前に『シークレットレシピ』を広げるアテナ。
「この為に準備してきたんだから。さあ、これの出番ね」
エプロンの紐を締めて、ユーベルコード『アテナの手料理』を使う。料理レベルは飛躍的に上昇し、『鉄人』と呼ぶに相応しい。
「これだけ揃っていると、作りがいがあるわね……」
食材リストから導き出されたレシピの中からいくつかをピックアップする。頭の中で瞬時にくみ上げられていくレシピを、再度手順ごとにばらしていく。下ごしらえ、調理など完成に必要な時間を逆計算し、最も効率のいい順番でタイムラインに並べていく。
「――よし!」
かけ声と共に、最初の食材に手を伸ばした。
「ん、何だあの人だかりは?」
集会所の周りに出来た人混みを見つけた男性が、近くに居た青年に声をかける。
「あ、豆腐屋の親父さん! なんでも凄い料理人が村に来てて、美味いもんを作ってるんだってさ!」
へえ、そいつは面白そうだ。豆腐屋の親父は隙間を縫って顔を覗かせると、その先に見えたのは――
早く、そして均一に切りそろえられていく野菜。丁寧な下処理で、余分な部分をそぎ落としていく包丁さばき。
料理という日常の光景が、アテナの手で魅せるものへと変わっていく。真剣な表情で食材ひとつひとつに向き合う姿は、スタジアムから見下ろした先、剣を構える闘士のように油断はなく刃先を見つめている。
「親父さん、親父さん。そういえば」
「何だ」
「アテナさんは四品つくるらしいです」
「はあー、そうか」
何でお前がそれを知っているんだ、と言いたかったが黙っておくことにした。細かいことを気にするのは、豆腐だけで十分だ。
親父はふと、薄い黄みを帯びた見慣れない食材が調理台の上にある事に気づく。
「あれは、なんだ。見たことも無い食材だな」
「事前にアテナさんに伺ったところ、これは『ちーず』という食材であり、豆腐のようなな滑らかな食感と濃厚な味わいが特徴だと言うことです」
「そうか、ありがとう」
隣で目を輝かせている青年を見て「お前、そんな性格だったか?」と思わず口にしそうになったが、きっと祭りで浮かれているのだと結論づけた。
「これは、会心の出来よ。さあ召し上がれ」
アテナの声に、太鼓や笛が賑やかに鳴り響く。いつの間にか出来ていたギャラリーの熱狂に気圧されながらも、気になった飾り付けを箸で整える。
雑煮、おはぎといったなじみ深いものから、餅ピザ、肉巻きといったアレンジレシピが卓上に並んだ。
「頂きます」
ぱくん、と一口。暫しの間の沈黙が流れる。
「うん、美味い!」
「この『ぴざ』っていうのは初めて食べたけど、おいしいね」
馴染みのお餅を手に取る者、真新しいものに目を輝かせて口に運ぶ者。皆それぞれがアテナの手料理に舌鼓を打つ。固唾を呑んで見守っていたアテナも、思わず胸を撫で下ろす。
「お口に合ったようで、何よりですわ」
それは料理人として、何よりの賛辞であった。
「これならみんな、喜んでくれるかしら」
そうしてアテナが思い浮かべるのは、いつも旅団で出会う団員の笑顔。アテナの手料理で笑顔になる、大切な人たちだった。
「旅団のみんなにも、食べてもらわないとね」
いつも温かい皆の笑顔を見たいから。
アテナは笑顔のレシピを振る舞うため、大切な人たちが待つ世界へと思いを馳せた。
それは、よく晴れた梅雨の日だった。
大成功
🔵🔵🔵