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バトルオブフラワーズ⑫〜真紅の剣を携えて

#キマイラフューチャー #戦争 #バトルオブフラワーズ #ドラゴンテイマー

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「皆さん! 戦争お疲れ様です。オブリビオン・フォーミュラさんのルートも開けましたが、別の予知が見えたのでお伝えしに来た次第です!」
 そう言いながら飛んできたのはファータ・カンタータ(遥か彼方の花びら・f02060)だ。
 彼女が見たというのは怪人軍団に占領技術を提供した謎に包まれたオブリビオン『ドラゴンテイマー』がシステム・フラワーズの中枢から少し離れた場所で佇んでいるという内容だった。
「恐らく……この方を倒さなくても、キマイラフューチャーに平和は訪れると思います。ですけれど、……なんだか、倒しておいたほうが、いえ、戦力を少しでも削っておいたほうが、良いと思うのです」
 根拠がなくて申し訳ないですと頭を下げた彼女。しかしこのオブリビオン、今までの幹部と同様先制攻撃をしてくるらしい。
 無敵バリアなどはないが、その一つひとつは非常に強力とのこと。対策を怠れば苦戦を強いられることは間違いないだろう。
「ドラゴンテイマーさんは……黒竜ダイウルゴス、と呼ぶ竜を召喚して戦っているようでした」
 予知の内容を思い出したのだろうか、彼女は小さく震える。そして軽く首を振るとグリモアを操作し始めた。
「先ほども言いましたが、オブリビオン・フォーミュラは他にいます。このドラゴンテイマーさんを今倒す必要はないのかもしれません」
 それでもこの予知を、このタイミングで視た以上、それはきっと意味があるのだろうとファータは言う。
「転送準備、できました……ドラゴンテイマーさんの撃破をお願いいたします」
 どうか、お怪我には気をつけて。
 彼女は祈るようにそう言うと、今回駆けつけて来た猟兵達に手をふるのだった。


苗木 葉菜
 こんにちは、苗木です。
 ドラゴンテイマーの討滅になります。攻略とかには関係ないそうですがもしよければどうぞ。
 以下注意文です。

 敵は必ず先制攻撃します。敵は、猟兵が使用するユーベルコードと同じ能力値(POW、SPD、WIZ)のユーベルコードを、猟兵より先に使用してきます。
 この先制攻撃に対抗する方法をプレイングに書かず、自分の攻撃だけを行おうとした場合は、必ず先制攻撃で撃破され、ダメージを与えることもできません。

 以上です。先制攻撃対策をしっかりした上でプレイングをお願いいたします。
 難易度は【難しい】です。対策をした上で挑んでも成功率やダイス目によっては失敗苦戦も有り得るのでご了承頂ければ。
 それでは、プレイングお待ちしています。
 お気をつけていってらっしゃい。
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第1章 ボス戦 『ドラゴンテイマー』

POW   :    クリムゾンキャリバー
【赤き剣の右腕】が命中した対象に対し、高威力高命中の【黒竜ダイウルゴスの群れ】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    ギガンティックダイウルゴス
レベル×1体の、【逆鱗】に1と刻印された戦闘用【大型ダイウルゴス】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
WIZ   :    文明侵略(フロンティア・ライン)
自身からレベルm半径内の無機物を【黒竜ダイウルゴスの群れ】に変換し、操作する。解除すると無機物は元に戻る。

イラスト:ハルヨリ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 花は舞う。世界が二つに割れたところから。
 花は舞う。自身達を脅かす者が倒れる様を見送りながら。
 花は舞う。この戦いを見定めるかのように。
 花は舞う。ここに足を踏み入れた全てのものを見守るように。
 花は舞う。その身が血潮に塗れ、別の花が咲こうとも。

 そんな花が舞う中、佇む男が一人。
 華々しい場所に似合わない漆黒の衣装、背中から伸びた禍々しい翼。
 右腕に真紅の剣を携えて、この戦いを、この世界を、行く末を、ただ見るためだけに、佇んでいた。
 しかしその男のもとにも気配を感じる。
 それも一つではない。複数。
 どうやら、こちらの存在に勘付き探知した者がいたようだ。
 彼は薄く長いため息をつくと、ゆっくりとそちらに向き直るのだった。
ボアネル・ゼブダイ
このプレッシャー…これまでの敵とは一味違うようだな
心してかからねばなるまい

敵の右腕に注意を払い当たらないように注意深く見切る
命中すれば黒竜の群れ、やりすごしても非常に強大な敵が立ちふさがる
受け止める、受け流す、と言った事は考えずに全力で避けることに集中しなくては

こんな事を続けていたら奴も本気で私に斬りかかってくるだろう
私が認識すら追いつかないほどのスピードでな

なので第六感を駆使して当たる寸前に私もカウンターでUCを発動
召喚した蝙蝠達に竜の群れを発動させたら
即座にフランマ・スフリスの早業で敵を攻撃する

いかに敵が強大であろうと…
我々猟兵は折れるわけにも、恐れるわけにもいかんのだ
この世界のためにな


黒夜・天
喰うぜ

オレはリスキールーレットミニに溜めた幸運を【大食い】して能力を底上げ。広げたボロ布と災禍の腕でテメエの初撃を受ける
同時にテメエに触れてる布と腕から【生命力吸収】。それで何とか気を失わないよう耐える
群れが出たな?
オレはダメージを【呪詛】にしてテメエと黒竜の群れを呪う

さあここからだ
オレは最後の力で悪球を投げる!
これがオレが攻撃を受けた理由だ
悪球は場の不幸な結末へ飛ぶ
ここにはオレと、呪われたテメエと黒竜の群れが居る。オレに当たるかテメエに当たるか。テメエらに対してオレは独り。この場で一番誰にとっても不幸なのはテメエに当たることだろうが!
悪球が当たったら、それを条件にUC発動!
地獄へ道連れだ!



「……猟兵、か」
 ドラゴンテイマーが伏せた目をゆっくりと上げ、出てきた二人を見つめる。
 たったそれだけの行為にすら、重圧を感じた。
「やはり……これまでの敵とは一味違うようだな」
 その重圧を感じているからか、重たそうに口を開いたのはボアネル・ゼブダイ(Livin' On A Prayer・f07146)だ。
 ドラゴンテイマーと同じく、黒い衣装に身を包んだ彼だったが、よく見るとその黒い影が二つあることに気付く。
 黒夜・天(有害無益の神・f18279)はそのプレッシャーの中でも、くつくつと小さくほくそ笑んでいた。
「なに、なんだ。ドコのドイツだかしらねェけど、オレは喰うだけだ」
 黒い髪、黒い瞳、唯一白いのは、黒いボロ布から覗く肌のみ。
 そんな少女が取り出したのは、運を溜め込んでいるという【リスキールーレットミニ】だ。天はその針をがちがちと噛むと、内部にある幸運を搾取していく。
 このプレッシャーの中で、喰うのか。
 ボアネルは天の様子をやや下がりながら見ていたが、突如彼女を取り巻く気配が変わったことに気付いた。
 自らの装備のエネルギーを搾取して、能力を上げたということか。
「――さァ、おっ始めようぜ?」
 びきびきと背から生える黒い手が、地面を押し上げ天を加速させる。ボロ布を広げ、そしてはためかせながら少女は真っ直ぐドラゴンテイマーへと突撃していった。
 自らを強化して突撃していった天のスピードはなかなかのものだった。
 傍らにいたボアネルが、なんとか目で追える程度のスピードだろう。もしこれが自分に来たのだとしたら、完璧に受け流せる自信はない。
「……甘いな」
 だが、それをドラゴンテイマーはものともしなかった。
 勢いよく飛び出していった天を見送った次の瞬間、ボアネルが見たのは赤い赤い、朱。
 鈍く光った紅い剣が、天の背から生えている黒い腕を、そして天自身の胸をも貫いているように見えた。
「っ!!」
 思わず援護へ向かおうとしたボアネルだったが、血反吐を吐いている天と目が合いぴたりとその足が止まる。
 ――邪魔すんなよ?
 釣り上がる口元。ドラゴンテイマーは剣先で軽々と少女を持ち上げると「……まだ息があるか」とだけ呟いた。
 本来であれば致命傷で意識不明の重体に陥ってもおかしくない状況だ。
 だが彼女は自身を貫いているその剣から必死に生命を吸収することで、なんとか意識を保っていた。
「まあいい。どちらにせよ終わりだ」
 少女の黒い瞳に写ったのは、黒よりも深い闇。それはたくさんの竜の群れで、少女の瞳を闇に落としていく。
 だが天はその口角を釣り上げたまま、両手を刃に添えた。
「群れが……出たな?」
 待ってたぜ、と言わんばかりに滲み出たのは黒い影。気がつけば背中から出ている【災禍の腕】は消え去り、黒い呪詛へと姿を変えていた。
 じゅぶりとまるで泥のようなそれは、竜の群れへとまとわりついていく。
 その呪詛にはドラゴンテイマーも眉をひそめた。天が【悪球】を投げるより先に腕を振り払い、少女を花畑へと叩きつける。
「ガッ……! くそ、がァ……!」
 紅い華の中心で、彼女はなお立ち上がろうとしたが、そこに影が落ちた。上を見れば先程の竜の群れ。
 呪詛を受けた影響か動きは多少鈍くなっているようだが、少女を無残な姿にすることは造作もなさそうだった。
 だが天に向っていった黒竜ダイウルゴスの群れは、突如ばらばらに引き裂かれる。
「……邪魔すんなって、言っただろうが」
「そうだったか? 目では語っていたが言ってはいなかっただろう――さあ、喰らい尽くせ!」
 それはボアネルの巨大蝙蝠だった。
 “闇夜の眷属”を発動した彼は天の周りにいた竜を一掃すると、ドラゴンテイマーを護っている群れへと蝙蝠を向かわせる。
「何よりこれ以上レディが傷つく様を見ていられなくてね!」
 鋭く大きな牙を持つ蝙蝠達は竜の翼を噛みちぎり切断していったが、先程の不意打ちとは違い蝙蝠たちも苦戦しているようだった。
 だがそれでいい。ボアネルはまるで金細工のように美しく、呪いのように禍々しい剣――【フランマ・スフリス】を構えると素早くドラゴンテイマーへと斬り込んでいく。
 気付いた竜が割って入るが、巨大蝙蝠が突進し進路を開けた。
「……くっ、届かないか」
 脇腹を狙った剣先が、紅い剣に阻まれる。
 甲高い金属音が鳴り響く前に距離を取り、再度斬り込んでいくがビーストテイマーはボアネルのスピードをものともしなかった。
 巨大蝙蝠も長くは持たないだろう。ボアネルは立ち位置を変え攻撃方向を切り替えると、そのまま怒涛の剣撃を叩き込んでいく。
 数歩下がりながら受け流すドラゴンテイマーだったが、一瞬の隙を突きボアネルの肩に切り込みを入れた。
「この程度か? 猟兵たちよ」
 ため息を付きながらドラゴンテイマーが言う。だが彼は傷を負ったにも関わらず怯まなかった。
「いいや、我々猟兵はいかに敵が強大であろうと……折れるわけにも、恐れるわけにもいかんのだ」
 この世界のためにな!
 ボアネルは尚も立ち向かい、そして剣を振るう。やれやれと言わんばかりに相手は数歩下がった。
 とん。
 ドラゴンテイマーは数歩下がった先になにかが当たったのを感じたが、痛くもないそれに気を取られることはない。
 だがしかし次の瞬間、ドラゴンテイマーの動きが不自然に止まった。
 目を見開き下を見れば、そこには紅い華。
「ハハハッ! ざまあみやがれ! 地獄へ道連れにしてやるぜ!」
 いつの間にかボアネルに誘導され、天のいた位置に移動していたのか。不幸のオーラの塊である悪球を当てた少女は喉を笛のように鳴らしながら嗤う。
 “共倒れ”。見えない鎖は少女のダメージを共有しながら相手を縛る技だったが、痛みが共有される前にドラゴンテイマーはその鎖を切り伏せた。
 嘘だろ。一瞬、ほんの一瞬で。砕けた鎖を見つめながら呆然とする天。
「――いや、一瞬あれば充分だ」
 ボアネルの声に少女が見上げれば、ドラゴンテイマーの肩には金の剣が刺さっていた。
 だが同時に、ボアネルの脇腹にも深く真紅の剣が入っている。ぱたた、と血が剣を伝い落ちた。
 ボアネルは素早く剣を引き抜くと、天を抱えよろめきながらも後方へと下がる。
「ほう、まだそれだけ動けるとはな」
 ドラゴンテイマーは剣の血を払いながら猟兵たちを見据えた。
 助かった、と余裕のない声で言うボアネルに、天は思わず鼻で笑う。
 こっちのセリフだよ。とは言わないが、彼がいなければ自分は竜に喰われていただろう。
「こんだけやってやっと一撃かよ……」
 代わりに出たのは悪態の言葉。彼はそんな少女に対し小さく肩を竦めたのだった。

苦戦 🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

出水宮・カガリ
【ヤド箱】ステラと、ペインと、ファンと

ドラゴンテイマー。ドラゴンを手懐けるもの、か
…果たしてそれだけだろうか、あの瘴気は

来るなら、来い
召喚された大型ダイウルゴスに対して【錬成カミヤドリ】で盾を複製、それらを炎上(属性攻撃)させ、切断するように回転させながらぶつける
【拒絶の隔壁】で盾の耐久と念力の精度を上げ、防御にも使えるように
ダッシュでテイマーの元へ向かうステラに、【籠絡の鉄柵】をこっそり同行させておく
万が一赤い剣の不意打ちがあれば、実体化させて絡みつかせる
盾と同じ【不落の傷跡】が守るだろう
ダイウルゴスがステラ達の方へ向かう事の無いよう、全力でこちらに引き付ける(全力魔法)


ペイン・フィン
【ヤド箱】

竜を召喚し、操る者……
まさしく、ドラゴンテイマー、だね

召喚される、ダイウルゴスの群れ
対処法は……。とにかく、頑張る
空中戦、情報収集、見切り、残像、第六感、聞き耳、迷彩、目立たない、世界知識、暗視、忍び足、視力、物を隠す
周囲の情報を、全力収集。そして、敵の攻撃を回避する
念動力、武器受け、怪力、武器改造、火炎耐性、激痛耐性、気合い、覚悟、オーラ防御、氷結耐性、防具改造、毒耐性、電撃耐性、呪詛耐性
避けきれない攻撃を、武器で受け、耐える

……一瞬、時間があればいい
その一瞬で、コードを使用
器物と化したファンを連れて、ドラゴンテイマーの側に移動
自分は、猫鞭で攻撃するよ

……道はできた、後は、任せたよ


ステラ・アルゲン
【ヤド箱】カガリ、ファン、ペインと参加

ドラゴンテイマー……竜を操るものですか
ドラゴンというものは過去に主が斬ったことがありますね
今回もそのように上手くいくと良いのですが……

先制攻撃やダイウルゴスはカガリとペインに任せる
私は目立つように【存在感】を出しテイマーの目の前まで【勇気】を持って【ダッシュ】で駆けよう

竜を操るとはすごいが…お前本体はどうなんだ?

攻撃しつつ迫りくるだろう赤い剣を受けよう
直撃は避けるよう【武器受け】
群れの攻撃を受けても【激痛耐性】で耐える
今の攻撃は【フェイント】
本命はペインの瞬間移動の隙を作るため

まだ私の攻撃も終わってないぞ

そのまま【2回攻撃】で【流星一閃】をしよう


ファン・ティンタン
【SPD】杓子は耳掻きにならず
【ヤド箱】で参戦

群竜の使役、話の規模が大きなオジサマだね
でもソレ、“私達に対して、適切かな?”

仲間を信じ、機が来るまで器物(天華)の姿に
テイマーの懐に潜り込めたなら、ヤドリガミの肉体を解放し超近接戦(←これ重要)
しばしテイマーと斬り結びつつ竜の攻撃を【見切り】回避
【オーラ防御】で致命打を抑えつつ、【挑発】して竜の合体を誘発
竜、大きいね
気を抜くと薙ぎ払われちゃうかも?

けど…その時は、あなたごとかな?
テイマーから絶対離れず、黒竜の攻撃射線を常にテイマーで遮るよう立ち回ることで【敵を盾にする】戦法
ここぞの機に【天羽々斬】の複製刀でテイマーの動きを妨害
竜との同士討ちを狙う



 血で出来た紅い華の中心に佇む、黒いヒト。
 ドラゴンテイマーは新たな猟兵の気配を察すると、巨大な黒竜の群れを召喚した。
 竜の群れは、ドラゴンテイマーの周りをくるりと渦巻くように飛ぶと気配の元へ、猟兵の元へと飛びかかっていく。
 黒竜を出迎えたのは一つの盾だった。
 その盾は大柄の男性ほどの大きさで、竜の攻撃をなんとか受け流すと、その数を増やしていく。
「……さすがはドラゴンテイマー、ドラゴンを手懐けるものなだけあるな」
 黒竜の数は圧巻と言うべきものだった。通常の依頼で行う集団戦並のその兵力に、出水宮・カガリ(荒城の城門・f04556)は眉をひそめる。
 辺りを取り巻く黒い瘴気。敵の名前はただ竜を手懐けるためだけのものなのだろうか、それとも。
 考えている暇などなかった。“錬成カミヤドリ”で複製した盾は気を抜けば竜達の餌食にされてしまう。
 カガリは盾を操り回転させると、そのまま炎の魔力を纏わせた。
 炎で熱せられたそれが、黒竜達に襲いかかる。
 パラディンたる彼だったが、この軍勢の中仲間たちを護りきれるとは言い切れなかった。
 横を見ればペイン・フィン(“指潰し”のヤドリガミ・f04450)が己の機能すべてを駆使して黒竜達の猛攻を凌いでいるのが見える。
「ペイン、大丈夫か?」
「……なんとか、頑張ってる」
 思わず声をかけたが、いつもどおりの彼にカガリも前を見据える。
 後方にはまだ仲間が控えていた。仲間の道を切り拓くためにも、この竜の群れをなんとかしなければ。
 一方、ペインの黒い瞳が見据えているのは、黒竜の先。
 禍々しいオーラを出しながらこちらを見る竜使い。
 敵の攻撃を回避しながら、敵の攻撃を受け流しながら、敵の攻撃を盾へと誘導しながら機を待っていたが、強力な竜達によって阻まれた道はなかなか開くことがなかった。
 一瞬、一瞬だけでいいのだ。黒竜達の気を逸らすことが出来れば。ドラゴンテイマーをはっきりと視認することが出来れば。
「――ならば、私がその役目を担いましょう」
 ペインの思考を読んだかのように、横を駆け抜けていったのは光だった。
 その光は黒竜を縫うように走り抜け、向かいくる攻撃には目もくれずカガリの横をも通り抜ける。
 光――ステラ・アルゲン(流星の騎士・f04503)は、まるで花畑を駆ける星のように純白の衣装を、蒼いマントをなびかせ、ドラゴンテイマーへと突っ込んでいった。
 彼女を追おうとした黒竜は、炎を纏った盾に阻まれる。気がつけばステラはドラゴンテイマーを間合いに捉えていた。
「ドラゴンを操るその器量……確かに凄いが、お前本体はどうなんだ?」
 見定めさせていただこう!
 一閃。ステラの本体である流星剣がドラゴンテイマーへと切り込む。
 構えている様子などまるでなかった竜使いだったが、彼女の攻撃を屈むようにして避けると、そのまま素早く胸に向かって真紅の剣を突き刺した。
「――っ、見事……!」
 その剣は彼女の身体を容赦なく貫いたことだろう。鮮血が飛び散り、彼女の白い服が、髪が、肌が、すべて血に塗れただろう。
 カガリの横を通った時に渡された籠絡の鉄柵がなければ。
 カガリの鉄柵である頭のない黒い魚はドラゴンテイマーの剣とステラの間に入り、刃が彼女の身体を切り裂くのを間一髪で防いでいた。
 だが衝撃自体は吸収されない。鉄柵ごと吹き飛ばされたステラは咳き込みながらもすぐさま立ち上がる。
「ゴホッ……見事ではあった、が……「まだ攻撃は終わっていない」」
 重なる声。一つはステラから。もう一つは――ドラゴンテイマーの後方から。
「……逃さない」
 狂喜か、猟奇か。仮面から覗く瞳がうっすらと細められる。
 “罪背負う者に逃げ場など無し”を発動させたペインはステラの後方からドラゴンテイマーを捉え、一瞬でその身を移動させた。
 振るわれる猫鞭はドラゴンテイマーの真紅の剣を絡め取る。一瞬敵の動きを止めたかのように思えたが、力は圧倒的に敵のほうが上だった。
 大きく振るわれる右腕。それはペインだけではなく“流星一閃”を使用し再び切り込もうとしていたステラまでをも吹き飛ばす。
「ぐっ……!」
 ステラは諦めず地面を踏みしめると、流星剣を振るう。だがそれさえも、ドラゴンテイマーには届かなかった。
 彼女の目に入ったのは、ドラゴンテイマーの仏頂面と、真紅の剣が命中したことにより顕現した新たな黒竜の群れ。――そして、真っ白な刀。
 それはペインが吹き飛ばされる直前、彼の懐から大事そうに取り出したものだった。
 猫鞭ごと吹き飛ばされることなどまるで些細なことのように、彼はその刀を手放していた。
 ペインの口が、ゆっくりと動く。
「道は、できた」
 ――あとは、任せたよ。たいせつなひと。
 白い刀は、やがて白いヒトに。一房だけ黒い長い髪を揺らしてファン・ティンタン(天津華・f07547)は触れ合いそうなくらい近く間合いを詰めながら刀を振るった。
「竜、凄い群れだね」
 くすり、嘲笑うようにしながら剣を交えるファン。まるで恋人同士の戯れかのように近づき、弾いて距離を取ろうとする攻撃はことごとく受け流していく。
 ここまで主に近いと竜達は攻撃が出来ないようだった。
 本来であれば序盤に召喚された黒竜達を巻き込む予定だったが、これはまた別の群れか。同士討ちで敵の体力を削ぐのは厳しそうだ。
 だがそれでも主人を巻き込むかもしれない攻撃を出すわけにはいかないようで、狼狽えながらもなんとかファンへと攻撃する黒竜達。だが黒竜の攻撃はファンの闘気で充分に防げるものだった。
 彼女は斬撃をなんとか受け流しながら黒竜達を一瞥する。
「……その程度なのかな? 黒竜の攻撃って」
 ドラゴンテイマーとの戦闘は、長期になればなるほど不利。彼女の言葉の裏にはそんな焦りも見えた。
 何匹か突撃してきた黒竜を確認するとぎりぎりまでそれを引きつけ、素早く剣を受け流しドラゴンテイマーの背後へと回り込む。
 それに気付き急ブレーキを掛けた黒竜達だったが、猛スピードの突撃を、空中で直ぐ止められるはずもなくドラゴンテイマーへと突撃してしまった。
 ぐらり、よろめく敵。隙という面で見ればそれはほんの少しだったが、ファンにとっては充分すぎるほどの時間だ。
 突如自身の真っ白な刀が増える、増える、増える、増える。
 念力で浮いたそれはまるで雨を静止したかのように空中でぴたりと止まった。
「天翔る羽よ、斬り給え」
 ずががががが、と降り注ぐのは“天羽々斬”により複製されたファンの本体。
 それらは竜の群れを一掃し、そしてドラゴンテイマーにも降り注いでいく。
 長く、鋭く、念力によって重たい一撃と化した刀をすべて受け流すことは出来なかったようで、急所は避けられたものの何撃か当てることは出来たようだ。
 盾を展開し群れを引き受けてくれたカガリ、ドラゴンテイマーへの道を切り拓いてくれたステラ。そして何より自分をドラゴンテイマーの懐につれてきてくれたペイン。
 一人でも欠けていたら、この敵に攻撃すら許せなかっただろう。
 頬に飛んだ血を、肩でゆっくりと拭うビーストテイマー。
 彼の体力は着実に減りつつあった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

ジュリア・ホワイト
厄介な相手だよ、本当に
だがボクも、素直に引き下がるほど素直ではなくてね!

ボクのUCより先に、敵の召喚が発動するけど……
効果は召喚が完了するまで
ならば時間を稼ぐべく、戦闘開始直後から全力で敵に近づくよ
大型竜の群れ、まさか自分の頭上に召喚できるわけもないだろう

それでもまぁ、懐に入る前に群れが出現するだろう
でもなるべく本体に近い位置から、こっちのUCを発動したいしね
撹乱する意味でも、そのまま恐れず群れの中に飛び込むよ

そして【其は科学の象徴、機関と産業の友】を発動
狙い通りなら召喚直後に発動できるはず

煙に巻かれて動きを止めた群れを一気に突っ切って
奴本体にこの動輪剣を叩き込んであげよう!



「ドラゴンテイマー、か」
 厄介な相手だよ。と言ったジュリア・ホワイト(白い蒸気と黒い鋼・f17335)は帽子を深く被り直す。
 つばから覗く橙色の双眸は、目の前のビーストテイマーをしっかりと捉えていた。
「だがボクも、素直に引き下がれる性分ではなくてね!」
 残虐動輪剣を構えながら勢いよく飛び出したジュリアだったが、ドラゴンテイマーが彼女を指さした瞬間、自身の手に違和感を感じる。
 視線を落とせば、そこには竜。
 範囲内の無機物を竜の群れに変えるそれは、よりにもよってジュリアの剣を対象にしたのだ。
 不用意に突撃せず、遠距離攻撃で仕掛けていればこうはならなかっただろう。
 練度の違いからか、ジュリアの攻撃範囲よりも敵の攻撃範囲は遥かに広かった。自身のユーベルコードを至近距離で発動させたいが故の策が仇となったか。
 まだ間合いは足らない。しかし彼女は諦めなかった。
 竜の姿に変わりつつある残虐動輪剣を素早く手放し黒のスコップに持ち変えると、容赦なく黒竜をぶん殴っていく。
 幸い自分の剣を媒体にしたからか、竜の大きさはそれでもなかった。
 竜を一体、二体、一撃を受け流し三体と薙ぎ払うと、振り切るようにビーストテイマーへ突撃する。
「遅いな、猟兵よ」
 だが後ろから追いついてきた竜の一匹が、ジュリアの背中に勢いよく突進してきた。
「がっ……!」
 勢いのまま倒れ込むジュリア。
 他の竜も追いつき一斉に襲いかかろうとしたが、突如彼女の周りに煙が立ち込めた。
 それは彼女の周りにいた竜も、そしてビーストテイマーをも包んでいく。
「ボクは旧式の蒸気機関車が変生したヤドリガミでね……機関車と言ったら煙を吐くものだろう?」
 ジュリアの口から出ている煙は非常に濃密で、近くにいる竜でさえ彼女の姿を視認できないほどだった。
 “其は科学の象徴、機関と産業の友”により一時期的に動きを封じられた黒竜たちの隙間を縫い、先程目と鼻の先にいたビーストテイマーへと殴り込む。
 その時、彼女の目の前に見えたのは真紅の剣だった。
 金属同士が衝突し、甲高い音が辺りに響く。
 ジュリアの渾身の一撃は、ビーストテイマーに完全に見切られていた。
 ――どうして。
 彼女の口が動く。ぎりぎりと武器が悲鳴を上げた。
「煙を読んだだけだ」
 ビーストテイマーはぽつりとそう言うと、剣と化している腕を振り払う。
 だが彼も煙の影響をやや受けた様子だった。
 ジュリアは吹き飛ばされそうになったところを踏ん張り、二撃、三撃と打ち込むと、ようやくその打撃がビーストテイマーに命中する。
 おそらくこれが開幕であったならば、彼に触れることすらできなかっただろう。先の猟兵たちの活躍によって彼が疲弊していることは明確だった。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

メルティア・サーゲイト
【トイボックス】
 私は味方への攻撃をブロックして注意を引く文字通りのタンク役だ。
 機銃で右腕の剣を銃撃して防げればいいが、避けるのは無理だ。だが、次に来る黒竜の群れはどうかな。
「性懲りも無くまた竜か! 竜退治はもう飽きたって言ってるだろうが!」
 群れで来る位だ、単体は大きくない筈だ。しかもこっちに接近してくる。となれば使うべき銃は一つ。主砲に特大火炎放射器を乗っけて竜の群れを焼き払うついでに本体まで焼き尽くすぜ!
 後は味方に飛んでくる分まで迎撃だ。多少撃ち漏らしてもこっちに向けられれば問題は無い。
「戦車が簡単に潰れるかッ!」
 こちとら防御特化だ。むしろ無限軌道で轢き殺しに行ってやるぜ。


黒夜・天
負けることには慣れてるが、しつこいぜオレは

幸運の【大食い】による能力底上げして、悪球を落として勝手に跳ねさせながら接近する
【オーラ防御】で一撃を受ける。躱せるなんざ思っちゃいないさ。攻撃を受けたら【生命力吸収】で耐えながら腕を掴む。さらにボロ布で逃がさないように縛り不幸【属性攻撃】
当たったから群れが出るんだろ!
オレは自分に感染させておいたミゼリーウイルスを感染拡大させる。ウイルスを介して【生命力吸収】だ。さらに【呪詛】をテメエらにかける。災禍の腕で弱った一匹を掴んで【敵を盾に】しながら【範囲攻撃】だ。同時に両手を放し、さらに踏み込んでUCによる【捨て身の一撃】を放つぜ

絶対喰らいついてやるぜ


ボアネル・ゼブダイ
好機は今ですか
真の姿を解放してお相手しましょう


相手の剣の右腕を引き続き警戒
見切り・早業・カウンター・生命力吸収・を駆使して剣を避けながら先のダメージ回復を狙いつつ攻撃を与えます

相手が群れを放ったならば今度は私の【無垢なる血の祈り】を発動
「深紅の霧」にて群れを食らいながら味方を癒し、助けます

我が祈りで苦難に満ちた世界に光を与え給え…

群れを食らったならば敵の一瞬の隙を突いて私の『聖杖トライリオ』を相手に突き立て、攻撃を行います

この十字の先端が示すは「愛・寛容・誠実・許し」…汝ら、オブリビオンの罪は骸の海へとその魂を返すことで贖われるのです

他の猟兵がいれば彼らとも連携を取り、成功率を高めます
♡♥☆★


ベアータ・ベルトット
【トイボックス】の仲間と一緒に
メルティアと光星が切り拓き守ってくれてる道をひた駆ける

テイマーの油断を誘うため、敢て単調な動きで接近
野生の勘を研ぎ澄まし、赤剣撃の見切りに意識を集中
剣が命中し竜群がそっちを狙う事を期待して…その場に【残像】を留めての早業回避を試みるわ
続けてHAを発動―飢餓に狂うこの姿。仲間にはあまり見せたく無かったけど…仕方ないわね
メルティアの迎撃で弱った竜群に踊りかかり、四肢を振るって血を吸い肉を喰らう
それを原料に機腕銃の弾丸を大量生成しテイマー目がけて一斉発射(+スナイパー)
怯んだ隙に距離を詰めて思いっきり跳躍、顔面に機餓獣の拳(+HA)を浴びせて生命を吸い尽くしてやるわ!


国木田・光星
【トイボックス】
いよいよ本丸。
辛気臭い面してなかなかえげつないなおっさん。
どれ、俺らとも遊んでくれや。

【先制対策】
無機物を竜の群に変換するのは止められねぇ。
だから俺に出来んのは、数には数で対抗する事だ。
出し惜しみはなしだ。喚べる蟲は全部喚んでやる。
メルティアとベアータが前に進む道を繋ぐ囮だな。
悪いが頼むぜ、お前達。
(『操縦』+『衝撃波』+『一斉発射』)

俺の今回の役割は回復役と前線支援だ。
前線に立つ二人、特に壁役のメルティアの回復で蝶へ意識は集中。
キラキラ光るからな、おっさんの目晦ましにもなってくれりゃ、ラッキーだ。

この熱線はオマケだ。手空きならもってきな!
(『スナイパー』)



 ゆっくりと、長い呼吸を続けるドラゴンテイマー。
 呼吸により肺が膨らみ、肩が上下しているのがわかる。
 度重なる猟兵との戦闘に、疲れが出始めている証拠だった。
「いよいよ本丸か」
 その声に目線だけ向ければ、国木田・光星(三番星・f07200)が挑発的な笑みを浮かべている。
 光星の横にいる大きな戦車――もとい戦車形態に変形したウォーマシン、メルティア・サーゲイト(人形と鉄巨人のトリガーハッピー・f03470)が、砲塔にベアータ・ベルトット(餓獣機関BB10・f05212)を乗せながらドラゴンテイマーを見下ろしていた。
 すた、と花畑に着地したベアータは「二人とも、作戦通りいくわ。――信じてるわよ」と敵を真っ直ぐ見つめながら言う。
「おうよ」「そっちこそ頼むぜ」
「ええ。あと、出来れば――ううん、なんでもない」
 ベアータは小さく首を振り、メルティアと示しを合わせると共に突っ込んでいく。
 軽やかに花を蹴りながら、舞うそれと共にテイマーへと接近していくベアータ。その動きは単調であったが、それ故に相手への攻撃に全神経を注ぐことが出来た。
 ベアータの後ろでは、メルティアが機関銃で牽制をしている。だがドラゴンテイマーはその銃撃を物ともせず、接近している彼女に向かい真紅の剣を振りかざした。
 藍色の鋭い眼光が、紅を捉える。目の前には、黒と紅。一瞬でも慢心があれば、油断があれば、そこには自分の朱も飛び散ったことだろう。
「――及第点、ってとこかしら」
 頬に、一筋。肩にもやや剣は食い込んだが、致命傷にはならない。
 だが背後には大群の気配を感じた。おそらく黒竜の群れだろう。
 それに首を向け、確認している余裕も、暇も、ベアータにはなかった。ただ、二人を。メルティア達を信じるほかない。
 ベアータに向かって黒竜の一匹が飛びかかったが、それはあっという間に炎に焼き尽くされた。
 戸惑うような鳴き声を発する黒竜たちが炎の出処を見れば、それは戦車から。
 主砲に特大火炎放射器を搭載したメルティアは、物凄い勢いで竜の群れに砲火をしていた。
「ひゃっはー! 教えてやるぜ、戦車の恐ろしさをなァ!」
 その炎の勢いは恐ろしく、更に“MODE MERKABAH”により強化された射程距離は、黒竜だけに飽き足らず、ビーストテイマー本体をも攻撃していく。
 険しい顔をした彼だったが、背に携えた翼を展開しその炎を振り払った。
 唸る炎。花畑を揺らめく陽炎。そこでビーストテイマーは、群れの中心にいたベアータの姿が変わっていることに気付く。
「ふ、ふふ――カケラも残さず、食らってあげる!!」
 群れの中にいたのは、飢餓に狂った少女だった。
 普段抑えている喰殺衝動を激化させ、四肢の機械はまるで呼吸をしているように、血を求めるかのように作動している。
 メルティアの火炎により弱った竜は、彼女が振るった四肢に吸収され、咀嚼され、吐き出され、そして紅い弾丸となった。
 待ちわびていた血に、自身の口元が緩む。
 出来ればこんな姿、仲間には見られたくなかった。こんな、飢餓に狂った獣のような姿。
 頭の片隅に在る思考は、己の欲望にずぐずぐと呑まれていく。
 メルティアの炎と共に、黒竜で出来た弾丸を一気に発射するベアータ。
 それを片側の翼で受け止めるビーストテイマーだったが、翼の隙間から見えたのは跳躍してこちらへ距離を詰めるベアータの姿。
「はぁあああ!!」
 機餓獣の拳が、圧倒的速さでビーストテイマーに迫る。だが顔面を狙ったそれは、右腕の剣によって防がれてしまった。
 直後、背筋をぞくりと駆け巡るような殺気。ビーストテイマーの剣が、彼女の拳ごと切り込もうとしたその瞬間、目の前に光り輝く蝶がビーストテイマーの視界を塞ぐ。
 それは光星の“風に舞う宝石の輝き”だった。光るそれはベアータの傷を癒やし、その瞬きで敵の目を一瞬、ほんの一瞬だけ眩ませる。
「光星ナイス!」
 その一瞬で第二撃を繰り出そうとするベアータだったが、突如彼のコートがもぞりと動いた。
 飛び出たのは、黒竜。一匹出たと思えばそれはぶわっと溢れるように湧き出る。
「っ、ぁあ!」
 自身の装備を、竜に変えたとでもいうのか。その勢いに吹き飛ばされるベアータ。
「ベアータ!……おいおい、辛気臭い面してなかなかえげつないなおっさん」
 引き笑いする光星に、新たなる竜の群れが襲いかかる。
「性懲りも無くまた竜か! 竜退治はもう飽きたってんだよ!」
 再びメルティアの火炎放射が文字通り火を噴く。光星をかばうように前方へ出ると、群れを一蹴するかのように炎を繰り出した。
 しかしそれを躱した一部の黒竜たちが、メルティアへと襲いかかる。
 時に火を噴かれ、鋭い牙や爪で攻撃され傷つけられるメルティアだったが、このダメージは彼女の予測の範囲内だった。
 そんな彼女の車体に、ぞろりと這い出て来たのは光星が蟲笛で呼び出した蟲たちだ。
「悪いが頼むぜ、お前たち」
 蜂のような昆虫が大群を成し、一匹の黒竜に大量にまとわりついていく。
 混乱するように飛び回り、落ちていく黒竜。それらをメルティアのキャタピラが挽肉に変えていった。
「戦車が簡単に潰れるかッ!」
 メルティアが言うように自身の車体は非常に頑丈で、光星の回復で充分に間に合う程度だ。
 派手な攻撃を連発し、光星に向かおうとする黒竜も問題なく自分に敵視を向けさせられた。
 車体に群がる竜も、光星のフォローで致命傷を負わされる前に倒せる。
 群れは、群れ自体は、どうにか二人で対応することが出来た。
 だが肝心のビーストテイマーは、未だ健在。
 このままではいずれジリ貧となり、彼を倒すことは叶わなくなってしまうだろう。
 光星は一時的に群れをメルティアに任せ、吹き飛ばされたベアータの回復をしようと振り向く。
 するとそこには――真の姿を開放したボアネル・ゼブダイ(Livin' On A Prayer・f07146)がベアータを抱えたまま静かに佇んでいた。
 真っ白な肌に、漆黒の髪。普段とは真逆の姿。
 紅い茨に苛まれ、血の涙を流しながらも、まるで聖母のように微笑むボアネルはその涙を霧と変え“無垢なる血の祈り”を発動させる。
「我が祈りで苦難に満ちた世界に光を与え給え……」
 血霧は近くにいるベアータを治癒し、範囲を広げ敵である黒竜を苦しめる。そしてそれは更に遠くへと、範囲を伸ばしていった。
「好機は今、ですか」
 澄んだ、美しい声が霧に乗る。
 いきましょう、と聖杖トライリオを構えるボアネル。抱えていたベアータを光星へと引き渡すと、前線へと繰り出ていった。
 ボアネルの血霧は、先程の戦闘で大きな傷を負った黒夜・天(有害無益の神・f18279)にもゆらり届く。
 それでもまだ傷は深いようだったが、天は血に塗れた顔を重たそうに上げた。
「……負けることには慣れてるが、しつこいぜぇ、オレはよ」
 ビーストテイマーも、黒竜も、そしてそれと戦っている猟兵たちでさえ、天の存在には気付いていない。
 再び自らの装備に溜め込んだ幸運を貪り、悪球を放り投げながらずるり、ずるりとビーストテイマーに近づいていく。
 敵に手も届こうかという頃、ビーストテイマーはボアネルと武器を交えていた。
 ぎりぎりと鍔迫り合いをしている様を見て、天はにたりと笑みを浮かべる。
 腕を伸ばすと、真紅の剣にしがみ付く。
「……っ!」
 そこで初めて、ビーストテイマーの焦る表情を見た。
「よぉ、会いたかったぜえ」
 自身の身を纏っているボロ布でその腕を素早く縛ると、布を介して呪いを、ウィルスを送り込む。
 そのまましがみ付くように剣を抱き締めると、自身の背中から再び災禍の腕を顕現させた。
 動きが鈍り、はっと上を見ればそこには純白の杖。
「この十字の先端が示すは『愛・寛容・誠実・許し』……」
 ボアネルは大きく杖を掲げると、そのままドラゴンテイマーへと突き刺す。
 聖杖トライリオがドラゴンテイマーの胸部に入るのと、
「すべてを捨てて、ここまで来たぜ」
 天が“黒拳・大往生”を繰り出すのは同時だった。
 どぉん! という大きな音と共に花が舞う。
 天の拳は、咄嗟に防御態勢をとったドラゴンテイマーの片翼をばきばきに折っていた。
 杖は胸部に刺さっていたが、まだ浅い。
「ひゅう、やるじゃねえか!」
 そこに追い打ちで来るのは、メルティアによる機関銃の銃撃。
「さっきはありがと! ――いい加減、コイツ倒しちゃわないとね!」
 意識が戻ったベアータによる一掃した竜で再び造った弾丸。
「ついでに俺のも貰っとけ! 出血大サービスだ!」
 そして光星によるイレイザーレーザーの熱線。
 まさしく集中砲火のそれに片翼の敵は耐えられるはずもなく、純白の十字架は彼の胸の中へと沈んでいく。
「……汝ら、オブリビオンの罪は骸の海へとその魂を返すことで贖われるのです」
 祈るように捧げられた十字架はようやくドラゴンテイマーを貫いた。
 負けたのか。とだけ、彼は呟く。
 だが彼は負けたにも関わらずゆったりと、気味悪く、微笑んでいた。
 しかしその微笑みの意味を問う暇もなく、骸の海へと沈んでいく。
「……こう消えられると勝った気しねェな」
 戦車の中からぱかりとドールユニットが顔を出しぽつりと呟いたが、猟兵全員、緊張が解けたのは言うまでもなかった。
 傷ついた仲間を回復する光星だったが、メルティアの言葉には同意せざるを得ない。
 援護が来なければどうなっていたことか。ベアータも胸をなでおろすと、改めてボアネル達に礼を言った。
「しかし、こうして討滅を繰り返すことで本当に彼を倒すことが出来るのでしょうか……」
 ボアネルは血塗れた聖杖で祈りを捧げながら言う。従来の敵であれば恐らく倒せるはずだが、今回のドラゴンテイマーは何故だかそういった手応えを感じさせてはくれなかった。
 そんな彼の不安を、天がきひひと笑いながら吹き飛ばす。
「なに、また出てきたときは――喰うまでだ」
 ひとまず、こうしてドラゴンテイマーの戦力を削れたことは事実なのだ。
 猟兵達は密かに勝利を喜び合うと、グリモアベースへと続くゲートに入り、帰路についたのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年05月27日


挿絵イラスト