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バトルオブフラワーズ⑫〜文明を呑み込む者

#キマイラフューチャー #戦争 #バトルオブフラワーズ #ドラゴンテイマー

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 システム・フラワーズの中枢より僅かにずれたその場所に、その男は存在していた。
 オブリビオン・フォーミュラ「ドン・フリーダム」に侵略樹アヴェスタを与え、此度の戦争の引き金となった者だ。
 彼はこの戦争に関わる気がないのか何をするでもなくそこに佇み、ただ戦いの行く末を見守っていた。



「はい、と言うわけでオブリビオン・フォーミュラが姿を現したし、今回の戦争も大詰めだね」

 グリモア猟兵のミーナ・ペンドルトン(中学生妖狐・f00297)が、パンッと手を叩いて注意を促しながら猟兵達に告げる。
 あとはドン・フリーダムを倒せばこの戦争は終結するが、気になる存在が一人いた。
 そう、ドラゴンテイマーである。
 彼の存在は戦争開始時からまことしやかに噂されていたが、ここに至りようやく所在地が判明したのだ。
 しかし、彼は別に何かをしているわけではなく、猟兵達の戦いを静観しているだけだ。

「今回の戦争の主旨としては、無視してもいいんだけど……どう考えても良からぬことをしでかしそうだからね。 倒すに越したことはないね」

 そんなわけで、今回の依頼だ。
 同時に一体しか存在しないが、許容域を超えない限りは何度でも骸の海から蘇ってくる彼を倒してほしい。
 さしもの彼でも、短期間に幾度も倒され続ければ、いずれは復活できなくなる"はず"なのだから。
 だが注意してほしい。 ドラゴンテイマーは凄まじく強いのだ。
 これまでの幹部達のように何か特殊な能力があるわけではないが、これまでの誰よりも強敵なのである。

「ドラゴンテイマーは必ず先制攻撃をしてくるから、みんな、注意して戦ってね。 それじゃ、いってらっしゃい」


神坂あずり
 ※要注意


====================
 敵は必ず先制攻撃します。敵は、猟兵が使用するユーベルコードと同じ能力値(POW、SPD、WIZ)のユーベルコードを、猟兵より先に使用してきます。
 この先制攻撃に対抗する方法をプレイングに書かず、自分の攻撃だけを行おうとした場合は、必ず先制攻撃で撃破され、ダメージを与えることもできません。
====================

 ドラゴンテイマーとの戦闘になります。
 戦争の本筋とは関係がない戦いとなりますが、ご参加お待ちしております。
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第1章 ボス戦 『ドラゴンテイマー』

POW   :    クリムゾンキャリバー
【赤き剣の右腕】が命中した対象に対し、高威力高命中の【黒竜ダイウルゴスの群れ】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    ギガンティックダイウルゴス
レベル×1体の、【逆鱗】に1と刻印された戦闘用【大型ダイウルゴス】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
WIZ   :    文明侵略(フロンティア・ライン)
自身からレベルm半径内の無機物を【黒竜ダイウルゴスの群れ】に変換し、操作する。解除すると無機物は元に戻る。

イラスト:ハルヨリ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 広い電子で彩られた花畑。
 どこまでも続くような広いその場所に、場違いな禍々しい空気を纏う男はいた。
 四対八枚の翼を持ち、ドラゴンテイマーの名を冠するオブリビオンだ。
 戦況を見守る彼の前で青い燐光が沸き上がり、一気に励起状態へと移行する。
 彼は直感的に"それ"が何であるかを理解した。

「私の前に立つか、猟兵」

 青い輝きを放つ転移環を抜け駆け出した猟兵を前に、ドラゴンテイマーは四対の翼を広げ悠然と迎撃態勢を整えるのだった。
黒川・闇慈
「おやおや、こんなお祭りで高見の見物とは無粋というものですねえ。さあさ、お付き合い下さいな。クックック」

【行動】
wizで対抗です。
まずはダイウルゴスの群れへの対処ですねえ。
属性攻撃、高速詠唱、全力魔法の技能を用いて迅速に炎獄砲軍を使用し、ダイウルゴスの群れを火球で迎撃します。
出現させた火球のうち30個はダイウルゴスの群れへの迎撃に使用します。こちらは時間稼ぎ兼囮ですね。一気に火球をぶつけるのではなく、なるべく数個づつ小出しに使ってて時間を稼ぎましょうか。
残りの火球4個は群れを大きく迂回させ、ドラゴンテイマーの背後、左右側面、上方から奇襲します。


【連携・組み合わせ・アドリブ歓迎】


天御鏡・百々
【WIZ】

多勢に無勢、されど、臆してはおられぬな
未来の脅威は取り除かせてもらおうぞ

ダイウルゴスの群れの攻撃に対して
「第六感」を頼りに
神通力(武器)による障壁(オーラ防御53)で防御する

そして、巫覡載霊の舞を使用し光を纏う
(可能なら初撃の対処時に使用してダメージ軽減を重ねる)

真朱神楽(武器:薙刀)から衝撃破を放ち
ダイウルゴスの群れをなぎ払ってドラゴンテイマーへと迫るとしよう
(なぎ払い20)

ドラゴンテイマーの防御の隙間を縫って、我が刃を届かせてやろうぞ
(鎧無視攻撃5)

●神鏡のヤドリガミ
●アドリブ、連携歓迎


マリン・ラピス
見るからに強敵ですね。
小細工は通用しないでしょうし全力でぶつかるのみです。
【シーブズ・ギャンビット】で一気に加速します。
速度を落とすことなく攻撃の回避を最優先で。
瑠璃の鎖で立体的な機動力も加えましょう。
【第六感】、【聞き耳】で常に感覚を研ぎ澄ませ回避が難しいと判断した攻撃は【武器受け】、【なぎ払い】でうまくいなします。
どんな強敵が相手でも攻撃が当たらなければ問題ありません。
かわし続けていれば私に意識も攻撃も集中してくるでしょう。
そうすれば他の方に攻撃のチャンスが生まれます。
それに動きと動きの合間に必ず隙は生まれるはずです。
あとは私の全力が相手にどこまで通用するかだけです。


ナターシャ・フォーサイス
WIZ
貴方もまた、骸の海から蘇った哀れな魂なのですね。
であれば、我々が楽園へと導かなければならないのも必然でしょう。
貴方のいるべきところは、ここではないのですから。

先制して大軍をけしかけるようですが、数で押すのは貴方に限ったことではないのです。
天使たちを呼び、数には数で対抗しましょう。
黒竜もまた呼び出された哀れな魂、残さず導いてあげてください。
倒れることを恐れることはありません。
皆ですべてを導きましょう。

ドラゴンテイマーさん、貴方には私と天使たちが。
黒竜たちを導き、そのあとで導きましょう。
貴方の楽園への道行きには黒竜たちもまたいるのです。
竜を操る夢の続きは、どうぞ楽園で。


クロエ・ウィンタース
彼奴が誰でどういう腹積もりかは知らんが、
オブリビオンと言うのなら俺は斬り捨てるだけだ。いざ。

>行動
【SPD】アレンジ、共闘歓迎。

>ギガンティックダイウルゴス
UC【黒】を使用
初撃は【見切り】で回避
出てきた大型ダイウルゴスの群れに飛び込む
妖気で速度を上げ【ダッシュ】【ジャンプ】を駆使し龍の体を蹴り登る
目、顎の下、眉間、脇等を【フェイント】【2回攻撃】刀で突いていく
無論、一番の弱点であろう逆鱗も狙う
数字が刻印されているというなら場所は明確だろう
合体は阻止できれば良いが俺だけでは手が足らん
数字が大きい順に優先して叩いていこう
敵の攻撃は【見切り】【カウンター】

ドラゴンテイマーは隙を見せたら斬りに行く


ユウキ・スズキ
UCを発動した場合、夥しい竜種の群れ…一匹一匹喧嘩を売っていたらキリがないな…
狙うは必中必滅の一撃…
UC【StartenSieWalküreSystems】
先んじて召喚される竜を無視し、強化された反応速度と身体能力で本体へと接近、食らうダメージも【激痛耐性】で無視。
本体に取り付いた後は、UC【処刑】発動。
相手の初撃。右腕の一撃を受け止め、捕まえる。
「捕まえたぞ…」
放たれる竜が到達する前に、顎を打ち上げるように掌底を放ち、頸椎をへし折る。
そのまま、竜が到達前に自壊すれば御の字。
殺しきれてなかったり、最悪そのまま竜が飛んできても、まぁ、生きてりゃ誰か拾ってくれんだろ…
※アドリブ、共闘歓迎


守田・緋姫子
スバル・ペンドリーノ(星見る影の六連星・f00127)と行動
先制攻撃対策:事前にユーベルコード内にスバルを隠しておき、敵の攻撃が当たる直前にスバルを出して攻撃を防いで貰う
 敵の攻撃を凌いだら、全力で悪霊を連続召喚。ドラゴンテイマーに叩きこむ!

■心情

 あのオブリビオンは他の連中とは明らかに違う......ここで叩いておくべきだと私のカンが告げている。スバル、協力してもらうぞ。

 隙を見せたな。私の全力の悪霊召喚を食らえ!亡者達と共に在るべき所に帰るがいい!

 (倒せたら)貴様もオブリビオン。どうせ何度でも蘇るんだろうが......死ぬ前に答えろ。グリモアとは何だ?お前は何を知っている?


スバル・ペンドリーノ
友人の緋姫子(f15154)と行動。確かめたいことがあるみたいだから、それまで、この子を守ってあげないとね。

あらかじめ緋姫子が作った【夜の小学校】の中に潜んでおいて、先制攻撃に対する対応を受け持つわ
「星空の憧憬者」で、高めておくのは防御力
強敵でしょうけど、なんとかこの爪で赤き剣の一撃を受け止めて、まともに食らわず逸らしてみせる!
認識してないところから新手が現れれば、さすがに不意を突けるはず

その後は、まだ行動できるようなら、引き続き前に立って、緋姫子を庇いつつ戦うわ

何を企んでいるのか知らないけど、戦いをずっと静観してるなんて、趣味が悪いこと
覗き見はマナーが悪くてよ? ……まあ、私も隠れてたけど




 先行してグリモアの転移を抜けた三人の猟兵達は、ドラゴンテイマーを視界に収めるや否や行動を開始する。
 周囲にはまだ他の気配はない。 今ならまだ、ドラゴンの群れに煩わされることなく接近できるかもしれない。
 速度に秀でた彼らは、即座にユーベルコードを起動した。

「見るからに強敵、小細工は通用しなさそうですね」
「なに、オブリビオンと言うのならいずれにせよ斬り捨てるだけだ。 いざ」
「行くぞ。 システム直結……対象認識に問題無し」

 花を踏み散らし加速、ドラゴンテイマーに接近を試みる。
 だが、その直後、ユウキ・スズキ(少尉・f07020)とマリン・ラピス(禁忌に生み出されし姉妹・f08555)の直感が警鐘を鳴らす。
 しかし、それが何に対する警鐘なのか見極めないことには対処のしようがない。
 研ぎ澄ませた感覚に、上空からの唸るような風切り音が微かに届く。
 振り仰いだ視界に映るのは、人工的な光の中に揺らぐ極小の黒点。

「不味い、散開しろっ!!」

 咄嗟に回避行動に移る三人をよそに黒点は急速にその姿を巨大化し、ついには地面に衝突する!
 高高度からのドラゴンの突撃によって花畑は破砕され、フラグメント化した電子が花弁の如く舞い上がる。
 だが、それと同時に飛来したドラゴンの首筋から血煙が噴出し、大きな地響きを立てながら巨体が倒れ伏す。
 血と色鮮やかなフラグメントに煙る視界の中、ドラゴンの死骸の上に黒髪赤目の少女が降り立つ。
 地面に向けて突撃するドラゴンの動きを見切り、跳躍したクロエ・ウィンタース(刃狼・f15418)は、すれ違いざまにその首筋を斬り裂いたのだ。

「他愛ないな」

 刀を振るい、血糊を掃う彼女を通り抜けて白いさざ波が広がる。
 舞う電子のフラグメントによって視界は不良だが、波紋の起点からしてドラゴンテイマーが何かを行ったとみて間違いない。
 彼の能力を鑑みるに、これは文明を侵略する衝撃波――フロンティア・ライン――だろう。
 だが、波紋は何の衝撃もなくただ広がり浸透していく。
 <文明侵略>は無機物をドラゴンへと変換する能力だが、 ここは何一つ障害物もない広い花畑だ。 無機物などどこにも……いや、違う。 ここは電子の海だ。
 元よりこの世界、キマイラフューチャーはリゾート惑星に作り替えられた世界。 自然物などどこにも存在しない、無機物だけの世界なのだ。
 舞い落ちるフラグメントは奇妙に歪み、捻じれ、ドラゴンへと変貌を遂げた。
 降り立つ無数のドラゴンの群れが咆えたてる!
 ただドラゴンテイマーに操られるだけの、理性なき獣達の姿がそこにはあった。



 ドラゴンの群れに相対するように、猟兵側にもまた数多の翼が呼び出されていた。
 かなた鋼の黒翼、こなた光輝の白翼。

「貴方もまた、骸の海から蘇った哀れな魂なのですね。 であれば、我々が楽園へと導かなければならないのも必然でしょう……さぁ、楽園へ参りましょう」

 ナターシャ・フォーサイス(楽園への導き手・f03983)の言葉に従い、百を超える天使の軍勢がドラゴン達へと群がっていく。
 だが、それだけではない。
 劫火を湛えた無数の火球が追従するように飛び出す。

「クックック、楽しい曲芸の時間です。 さあさ、お付き合い下さいな」

 一体のドラゴンにつき四翼の天使と一つの火球が肉薄する。
 天使達を振り切ろうと垂直上昇するダイウルゴスを、少し遅れて天使達が追う。
 使役されたダイウルゴスに理性などない。 だが、その培われた技術は決して失われたわけではないのだ。
 頂点へと至ったダイウルゴスは即座に翼を畳むことで推進力を消し、重力に引かれ速度を落とし一瞬空中で静止、失速反転する。
 俗にストールターンと呼ばれる機動だ。
 反転し急降下したドラゴンは迫る天使の一翼に喰らい付く!
 真っ二つに喰いちぎられた仲間の天使に、残る三翼は慌てて反転する。 数では天使が勝るが、技量ではドラゴンの方が圧倒的に上であった。
 だが、ダイウルゴスに一つ誤算があったとすれば……。
 ドラゴンの眼前に鋭角な機動で回り込んだ火球が鼻先で炸裂し、その身を炎が包み込む!

「あなたはあくまで翼に縛られている、ということですねえ」

 墜落したドラゴンに群がる天使を眺め、黒川・闇慈(魔術の探求者・f00672)は楽しげに笑た。



 上空で白と黒の翼が舞い踊るさなか、地上もまた戦乱の中にあった。
 光を纏いし少女は天使を振り切り接近してきたダイウルゴスの爪を障壁で防ぎ、薙刀から衝撃波を放つことで押し戻す。
 ダイウルゴス達の個々の力は猟兵には及ばないが、数が多いのが厄介である。

「多勢に無勢、元を断たねば終わりは見えぬな」
「ああ、それにあのオブリビオンは他の連中とは明らかに違う……ここで叩いておくべきだろう」

 爪と刃を交えたドラゴンを切り捨てた天御鏡・百々(その身に映すは真実と未来・f01640)は、ドラゴンの群れの先で悠然と佇むドラゴンテイマーに視線を向ける。
 手のひらの上で点る小さな青い人魂を消しながら、百々に相槌を返したのは守田・緋姫子(電子の海より彷徨い出でし怨霊・f15154)だ。
 今でこそ戦力は拮抗しているが、追加で召喚されてはいずれは数によって押しつぶされる可能性もあるのだ。
 ならば対処できている今のうちに召喚者を叩くしかあるまい。

「道は我が切り開こう」

 言うや否や、薙刀を下段に構えながら駆け出した百々に気付いた大型のダイウルゴスが襲い掛かる!
 その首に存在する逆鱗に見える数字は「3」だ。
 一撃で屠るのは難しく、いちいち倒していては足を止めることになる。
 ならば……と、突進する大型ダイウルゴスの身体を掬い上げるように薙刀を振るい、上方へ向け衝撃波を放つ!
 勢いそのまま受け流された巨体が障壁の表面を撫でながら後方へと弾き飛ばされ、落下の衝撃によって断片化した電子の花を撒き散らす。
 ドラゴンテイマーへの道が拓けたこの隙を逃す手はない。
 緋姫子は足に力を込め、一息にドラゴンテイマーとの距離を詰める。
 ドラゴンテイマーとてただ傍観し接近を許したわけではない、右手と一体化した赤き剣が振り下ろされる!
 だが、その刃は緋姫子に接触する寸前、青い人魂が燃え上がると共に、硬質な音を立てながら受け流され地面を穿つ。
 このタイミングでそんなことができる人物は、今この場にはいないはずだった。

「何だと……!?」
「ふふ、驚いたかしら?」

 スバル・ペンドリーノ(星見る影の六連星・f00127)の真紅のオーラを纏った爪に抑え込まれた赤い刃が、ギチリと擦れ合う。
 彼女は今この時まで、緋姫子がユーベルコードで生み出した異空間である夜の小学校の中で身を潜めていたのだ。
 それはドラゴンテイマーの虚を突き、大きな隙を生み出すことになった。
 だが、この状態が長くは持たないことをスバルは感じていた。
 オーラによって防御を固めた上で受け流したというのに、先の一撃だけで既に腕が痺れているのだ。 そう何度も受けることはできそうにない。
 ならば一気に畳み掛ける!

「お前の罪をくらえ。 ……さあ、復讐のチャンスよ、貴方達」

 地面から湧き出した顎がドラゴンテイマーを襲う。
 それは緋姫子が呼び出した、ドラゴンテイマーによって殺された者達の霊だ。
 その数は一つ二つなどではない。 九十九にもおよぶ竜の顎が、ドラゴンテイマーに喰らい付こうと迫る。
 しかし、寡は衆に敵せずとは言うが、この場合はそうとは限らない。
 数は多くとも、人間大の対象に同時に喰らい付けるのは精々が三体、四体程度だろう。
 であれば、ドラゴンテイマーにも対処のしようはあるというものだった。

「いくら来ようとも、所詮はかつて私に敗れた者。 再び私の大願の礎となれ!」

 一対の鋼の翼で身を覆った彼に顎が喰らい付く。 だが、浅い。
 三対の翼で力強く空を打ち、ステラに抑え込まれた紅の剣を無理やり引き抜きながら背後へと跳躍する。
 翼によって引き起こされた暴風にたたらを踏むステラの前で、煩わしげ薙がれた赤き剣が竜の顎を蹂躙するのだった。



 ダイウルゴスは当初よりは大分減り、ドラゴンテイマーにも多少の手傷を負わせることに成功した。
 これ以上長引けば更にドラゴンを召喚する可能性もあるため、一気呵成に畳み掛けるなら今をおいて他にはない。
 猟兵達は気勢をあげて動き出す。

「どういう腹積もりかは知らんが、ここで消えてもらう」
「あまり長々と高見の見物というのも無粋ですしねえ。 お祭りは参加するものですよ」

 大型のドラゴンが行く手を阻む。 だが彼らは止まらない。
 闇慈の撃ち込んだ火球が横っ腹を弾けさせ、怯んだ巨体を加速した人狼の少女が駆け登る。
 クロエが舞うように振るう刀は鮮やかな軌跡を描き――無銘・参。
 例え他人の技術を模倣したものだとしても、手に馴染んだその技は硬質な鱗を切り裂いてゆく。
 屍を足蹴に跳躍し肉薄するクロエに合わせるように、ドラゴンテイマーの背後に回り込んだ火球が炸裂する!
 だが、妖刀は赤き剣に受け止められ、爆炎は一対の鋼の翼に阻まれた。
 振り払われ弾き飛ばされたクロエと入れ替わるように、ユウキが赤き剣と一体化した腕へと手を伸ばす。

「がふ……っ!?」

 捕らえた! そう思った瞬間、ユウキの腹部を衝撃が突き抜け、彼は盛大に地面を転がることになる。
 腕を取られそうになったドラゴンテイマーは、咄嗟に鷹の右翼で防ぎカウンターで左の拳をユウキに叩き込んだのだ。
 しかし、ユウキとてただではやられない。
 翼を捕らえると同時に放った掌底で、翼を根元からへし折ったのだった。
 猟兵達の追撃はまだ終わらない。

「残りの黒竜達もすぐに導きます。 ドラゴンテイマーさん、貴方も私と天使たちが導きましょう」

 もはや最後の一翼となったナターシャの天使が槍を構え、大きく翼を広げながら真正面からランスチャージを行う。
 愚直なまでの特攻など、容易く対処されてしまうことは想像に難くない。
 そして白翼の天使は予定調和の如く切り捨てられる。、
 ――だが。

「天使が格下と侮っておったのか?」
「油断大敵ですよ」

 大きく広げられた白翼の下、舞い散る羽根を突き抜け踏み込んだ小柄な少女達の持つ刃が、ドラゴンテイマーの左右に振り下ろされる。
 百々とラピス、ふたりは小柄故に大きな天使の翼の影に隠れ、敵に気付かれることなく接近したのだ。
 ふたりの得物は狙い違わず、左右八枚の翼を切り飛ばす!
 ドラゴンテイマーの身体に激痛が走る。
 だが、彼に呻き叫んでいる暇などない。 青白い肌の少女が目前まで迫っているのだから。
 緋姫子は手のひらに青い人魂を呼び起こす。
 人魂を用いた伏兵は既に見た。
 二度も同じ手をくうはずがないと右手の赤き剣を引き突きを放とうとしたドラゴンテイマーは、背後からの軽い衝撃に背を押されたたらを踏む。
 何事かと視線を落とした彼の目に、胸から突き出した真紅のオーラで形作られた爪が映る。

「……ごふっ」
「二度ネタなんて使うわけないでしょ? ……まぁ、不意打ちは二度ネタかもしれないけど」

 そう言ったスバルが爪を引き抜くと、ドラゴンテイマーは地に倒れ伏し血溜まりが広がっていく。
 もはや彼に起き上がるほどの力は残されておらず、分と立たずに骸の海へと沈むだろう。
 だが、その前に緋姫子には聞くことがあった。

「おい、死ぬ前に答えろ。 グリモアとは何だ? お前は何を知っている?」
「お前達が繰る力だ。 だが、それが全てではない。 ……お前達も、いずれ知る事となるだろう」

 その言葉だけを残し、ドラゴンテイマーの姿はたちまち薄らぎ、跡形もなくその場から消えていた。
 あとにはただ、広く広くどこまでも続く電子の花畑だけが残ったのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年05月26日


挿絵イラスト