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バトルオブフラワーズ⑬〜イドラを与えイデアを奪う者

#キマイラフューチャー #戦争 #バトルオブフラワーズ #オブリビオン・フォーミュラ #ドン・フリーダム

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●ついにこの時は来た。
 『システム・フラワーズ』奪還の戦争も、この戦いが最後。キマイラフューチャーに住まう者たちのオアシスをハッキングした犯人、『ドン・フリーダム』を討つのだ。
「……なんつー恰好してやがる」
 ただ、ラスボスというにはあまりにもはしたない恰好。ほぼ全裸に等しいソレを大画面に映せず、ヘクター・ラファーガ(風切りの剣・f10966)は頭を抱えた。
 彼女が行っていることは『修理』。そもそもシステム・フラワーズを作りだしたのは彼女、ドン・フリーダムなのである。
 曰く例の「コンコンコン」を治すために近づいたとか。
 確かにキマイラフューチャーは「コンコンコン」一つで欲しいものが手に入った。だが、それは物品に限る話。実際は場所によって「コンコンコン」で出てくる物品が決まっていたり、ないものは買っていた。でなければキマイラフューチャーに"店"など存在しない。
 もしも「コンコンコン」一つで……例えば島が一つ手に入ったら。例えばこの世に存在しない生き物が手に入ったら。例えば何もかも焼き払ってしまう兵器が手に入ったら。例えば"世界そのもの"が手に入ったら──。
 想像するのは簡単だ。だが、実際に手に入った時、一体どれだけの影響を与えるのか。
 修理していると言えば聞こえはいいかもしれない。しかし修理されてしまえば、キマイラフューチャーに住まう全人(?)類の欲しいものは、絶対に惑星一つに収まらない。
 そして何より、欲しいものを欲しいがままに手に入れる欲望にまみれた結果がドン・フリーダムという全裸の女王を生み出したのなら、なおさら倒さなくてはならない!
「俺の予想だと全人類全裸になっても許される世界が降って来るぞ!」
 うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!と男衆が盛り上がる中、女性陣は冷ややかな目でヘクターを見つめた。

「というのはさておき……コイツについて判明していることを説明するぜ」
 ようやくモニターにドン・フリーダムの姿を映し、彼は予知したものを語り始める。
「まず、コイツは猿、バニー、ゼファーの持っていたユーベルコードを使う。それも本人と同レベルの技量……いや、本人を上回る技量でだ」
 猿、エイプモンキーからは、"猟兵のユーベルコードの弱点を見抜き、確実に反撃するマシンを作り出す"ユーベルコードを。
 ラビットバニーからは"エモいものを見せれば解除される、絶対無敵バリアを展開する"ユーベルコードを。
 ウインドゼファーからは"メンテナンスルート特有の花びらの道を暴風で破壊する"ユーベルコードを。
 幹部はどれも強敵であり、猟兵たちの中には苦戦した者もいた。だが、ドン・フリーダムはそれを嘲笑うかのように全部取り寄せ、自らのユーベルコードにしている。そして本人を上回る技量で戦うというのだから、ほぼ勝ち目がないに等しい。
 流石のヘクターも、今回ばかりは苦虫を嚙み潰したような表情で拳を握りしめていた。
 それでも、行かなくてはならない。
「キマイラフューチャーを、いや……世界を救うことができるのは、俺たち猟兵だけだ」
 どれだけ失敗しても、どれほどの血を流してでも、彼女の蛮行を止めなければならない。
 この戦いで決着がつくのだから。
「行くんだよテメェら!俺も別のグリモアから行って戦うから、傍観はしねぇ!」
 彼らを信じ、妖狐の少年はグリモアを開いた。
 ヤケクソでも死ぬ気でも構わない。
 カラフルで混沌とした、笑いといいねいっぱいの世界を救うために──猟兵たちは一歩踏み出した。


天味
 天味です。
 ついにバトルオブフラワーズの戦いに終止符が見えました。このシナリオは『ドン・フリーダム』戦。つまりラスボス戦となります。
 今回の相手は幹部を越える実力者とのバトル。よってプレイングは厳しめに行います。

 以下戦争ルール。
 敵は必ず先制攻撃します。敵は、猟兵が使用するユーベルコードと同じ能力値(POW、SPD、WIZ)のユーベルコードを、猟兵より先に使用してきます。
 加えて、ドン・フリーダムは使用する能力値別に違う対処が必要です。これらに対抗する方法をプレイングに書かず、自分の攻撃だけを行おうとした場合は、必ず先制攻撃で撃破され、ダメージを与えることもできません。

 POW:絶対無敵バリアを展開します。エモいものを見せれば無効化できます(エモいの基準はラビットバニーと同じ)。
 SPD:風で足場を崩してきます。
 WIZ:猟兵のユーベルコードの弱点を見抜き、確実に反撃するマシンを作り出してきます。 その反撃マシンに反撃する方法を考えなければいけません。

 これらの能力はそれぞれ「ラビットバニー」「ウインドゼファー」「エイプモンキー」と同じですが、ドン・フリーダムは彼ら以上の実力者です。

 この世界を守るために、全力を振るうプレイングをお待ちしております。
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第1章 ボス戦 『ドン・フリーダム』

POW   :    赤べこキャノン
【絶対無敵バリア展開後、赤べこキャノン】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    レボリューション・ストーム
【花の足場をバラバラにする暴風】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ   :    マニアックマシン
対象のユーベルコードに対し【敵の死角から反撃するマシン】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。

イラスト:由依あきら

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 そこは華やかというには単調な、花びら舞い散るピンク色の世界だった。
 ここはキマイラフューチャーの中枢。システム・フラワーズの鎮座する場所──そこに一人の観音菩薩がいた。
「自由こそが、この世界の全て。人々の欲は全てコンコンコンで解決されるのです」
 その名は『ドン・フリーダム』。かつてこのシステム・フラワーズを作り、キマイラフューチャーという世界の核を生み出した者。しかし今となってはオブリビオン。修理と言えば聞こえはいいが、その実態はシステム・フラワーズのシステムを完璧なものとし、人類をより獣へと近づけようとしている。

 オール・フォー・フリーダム。フォール・アウト・リーズン。
 菩薩たる彼女の姿は、全裸。まさに本能全開、ありのままのヒトの姿をしていた。
坂上・貞信
やあやあ。全世界生放送は実にお見事。
お目に掛かれて光栄だ、ドンフリーダム。
……格好は中々に奇抜だが、顔出しNGなところは生主らしいね。

さて。
君の心情を慮るに、或いは親心なのかもしれないと思ったが。
この世界の人々は、君の不完全なシステムを用いながらではあるが、
既に自分で歩き出している……僕もね。

子離れ、親離れの時が来たんだよ。


戦闘は小細工抜き、刀一本で挑む。

先制攻撃、大いに結構。
【見切り】からの【カウンター】。
自身の存在に用いる必要最低限のリソースギリギリまで
この一振りに懸けよう。
躱しきれぬ攻撃は【覚悟】で食いしばる。

相討ち上等、これでも僕の精いっぱいのエモさだけど。
受け取ってくれたら嬉しいね。



「お目に掛かれて光栄だ、ドン・フリーダム」
 最初の到着者、バーチャルキャラクターの坂上・貞信(バーチャル無能軍人・f00110)はゆっくりと彼女へ向けて歩む。
 立ったまま指を結ぶ全裸の菩薩は、かくんと首を傾けた。
「あらま、もう来たのですか」
 上下逆に付けられていたスマイルマークの仮面が光る。花びらが舞い、彼女の立つ睡蓮の台座を中心に、空間が歪み始める。
 ラビットバニー固有のユーベルコードだった精神障壁、絶対無敵バリアだ。
 彼女はこれまで戦ってきたオブリビオンとは全く違う。最上位の存在、オブリビオン・フォーミュラだ。忌避すべき相手ではあるが、こうして世界に危機が及んでいる。
 引くことはない。だが倒れることも許されない。貞信は腰に下げた刀に手を添え、歩みを早めた。
「君の心情を慮るに、或いは親心なのかもしれないと思ったが──」
 小細工は要らない。無敵のバリアがあろうと真正面から突っ込む。
 考えなしに思えるかもしれない。無謀な、神風のように見えるかもしれない。だが、それこそが彼の思う美。すなはち、
「この世界の人々は、君の不完全なシステムを用いながらではあるが」
 次に右足を踏み込んだ時、左足の音は無かった。
 ドン・フリーダムの両脇に無機質な色をした赤べこが召喚される。その首の下には無骨で赤べこに似つかわしくない砲塔。そこから、光が放たれた。
 絶対無敵バリアは、ただバリアを張るだけではない。ラビットバニー本人は迎撃手段として赤べこキャノンを持ち、これを模倣、極限まで強化したドン・フリーダムは自動迎撃システムへと組み込んでいた。放たれる弾丸も実弾ではなく、計算されて造られた爆弾。これは『ザ・ビルドステージ』に集まっていた亡骸を参考にしたものだ。
 完璧な迎撃手段だ。ドン・フリーダムは吹き荒れる硝煙をバリア越しに見ながら思った。
 ──鈴の音色に似た、斬撃が聞こえるまでは。
「『剣刃一閃』」
「──!!」
 覚悟を。絶対無敵バリアと九九式軍刀が交差するその瞬間を。
 貞信はドン・フリーダムに見せつけた。
 UDCアース戦争末期の軍師の姿をした彼は、まさしく神風の如く、無心のままに剣を振るった。このバリアが破れないものだと、理解していながらもだ。剣が折れるリスクも、カウンターを喰らう可能性も踏まえておきながら、最高出力でユーベルコードを放ったのだ。
 距離80cm。貞信とドン・フリーダムの目線が交差した時、バリアが緩んだ。
「子離れ、親離れの時が来たんだよ。──君の知らない間にね!!」
 鼻先に剣先が触れた。瞬間、貞信は遥後方へと吹っ飛んだ。
 至近距離での赤べこキャノン二発。バリアが破けたのを検知した瞬間、ドン・フリーダムは確かに焦った。焦るあまり、反射で赤べこキャノンを使わせたのだ。
 顔は仮面のせいで見れなかったが、感覚でわかる。あの一瞬だけ、僕は彼女に勝ったと。
 爆風に身を焦がされ、花びらと硝煙の中を舞う彼は、ニッと口元を緩ませた。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

セリオン・アーヴニル
予めウインドゼファー戦のレポートを確認しUC特性を把握。
初手は『早業、高速詠唱』を複合した【穿雷迅威】を一瞬使用し超速移動で回避しながら距離を取り同時に足場を確保。
その後『第六感、見切り』を併用しながら『一瞬だけUCを使用し即座に解除』を繰返し、回避重視で常に移動を続けながら時折銃撃の一斉射を放ち、相手に回避が上手いだけの奴と言う印象を与える。

他猟兵との混戦の中で相手がパターンに慣れた頃合いを狙い、手にした槍剣をわざと回避出来なくも無い部位を狙い投擲。
注意が向いた一瞬の隙を突き『全力魔法』でブーストした最大速度最大出力の【穿雷迅威】を使い逆方向から突っ込み、零距離でノクシスの全力射を叩き込む!



 どの力で対抗するか、それは既に決めてある。
 多重人格者、セリオン・アーヴニル(並行世界のエトランジェ・f00924)は、まず最初にウインドゼファーの依頼報告に目を付けた。
 ドン・フリーダムは幹部三人、エイプモンキー、ラビットバニー、ウインドゼファーの固有能力たるユーベルコードを模倣し、本人以上の技量でそれを扱う。
 ウインドゼファーは幹部三人の中でも、もっとも攻略しやすかったという報告が多かった。そのため、彼はここに勝算を見出したのだ。
「俺は彼を攻略していないが、把握すればしたも同然」
 風と速度を主とするウインドゼファー。その能力を知り、理解した彼に死角無し。
 花びらの道を走り、彼は雷速で詠唱を紡いだ。
「『ヒトを辞める』とは──こう言う事だ」
 ピンク色の世界に、突如灰色の嵐が吹き始めた。
 ユーベルコードを検知しての行動だろう。ドン・フリーダムの姿はまだ見えていないが、セリオンが走るこの場所は彼女からそう遠くはない距離だ。
 ここからでも検知されるのかと冷静に分析しつつ、彼は肉体の半分以上を雷に、それに近い存在──半霊体と化する。
「『穿雷迅威(アストラル・インカーネイト)』」
 灰色の嵐、その数数十。無残に破壊され、道を最初から無きものとする渦の中へ、セリオンはまっすぐに突っ込んだ。
 雷鳴が轟く。
 渦の中へ引き寄せられるように、しかし渦をなぞり整流されてゆくように、彼は粉々になる寸前の足場に飛び移り、『穿雷迅威』を解除する。そして、もう一度雷となり次の足場へ移る。
 地図に記されたポイントをなぞるかのように、星座を紡ぐようにセリオンは移動する。
 ──姿が見えた。
「ふッ!」
 足場を破壊する嵐と嵐の間、その隙間から切り傷の入ったスマイルマークの仮面が見えた。
 アレこそが、ドン・フリーダム。狙うべき敵。
 咄嗟に彼は穿雷迅威を解除し、槍剣『オルファ』を投擲した。剣と槍、その両方を兼ねる剣は嵐の中をかいくぐり、美しい直線を描きながらドン・フリーダムへと肉薄する。
「なんですの?」
 当然、その程度で死ぬほどドン・フリーダムは弱くない。彼女はフォーミュラ、強者であるのだ。投擲された槍剣『オルファ』に対し、彼女は指を二本、刀身を挟んでそれを止めた。
 だがこれも、セリオンは予測済み。
 もっとも基本的で、もっとも至難とされる──、
「貰った」
 背面からの奇襲こそが、彼の目的。
 右手にある魔導兵器『ノクシス』。それは眩い輝きと紫電を纏い、ドン・フリーダムの背中を焼いた。
「あが、ァっ……!?」
 ノクシスを当てた速度も、当然雷速。音よりも早く、光に等しきスピードで背中を撃たれた彼女は、台座から強制的に降ろされた。
 数度、否数十度バウンドし、砕かれて無骨な肌を見せる花びらの道に突っ込む。ほぼ確実にトドメを刺したと言っていいだろう。
 しかし相手はオブリビオン。そしてなにより、彼女はフォーミュラ。たった一つの残機を削ったに過ぎないが、この勝利は大きなものとなるだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

イサナ・ノーマンズランド
POW
赤べこキャノンを棺桶の【盾受け】と【激痛耐性】で耐え、エモそうな問答で【時間を稼ぐ】。
OPテーマが勇壮に流れ出しそうな感じで【勇気】を出して棺桶を盾に【ダッシュ】で距離を詰め、【クイックドロウ】で銃器類を無数に並べる【早業】の【一斉射撃】―― 撃ち尽くした銃器を放り捨てて、『零距離全力射撃』を叩き込む。

「もう終わりにしようよ!おさるさんも、ウサギさんも、ヘルメットのおねーさんも、もうみんないなくなったよ!」
「すけべなおねーさんがそこまでこだわる欲望ってなんなの?」
「ここまでしなくちゃいけないものなの……?」
「それなら、とめる!このセカイはもう、おねーさんたちのものじゃないんだ!」



 ズル……ズル……。
 花びらの道に、何か重いもので跡を付ける音にドン・フリーダムは気づく。
 復活し修理を再開した彼女が振り向くと、そこにはゴテゴテに改造された棺桶を背負う少女、イサナ・ノーマンズランド(ウェイストランド・ワンダラー・f01589)がいた。
「不意打ち禁止ですわ!」
 猟兵と感じ取ったその瞬間、ドン・フリーダムは即座に絶対無敵バリアを展開。赤べこキャノンを召喚し炸裂弾を発射した。
 オブリビオンとはいえ、何度でも復活できるとはいえ、そう簡単に何度も死ぬわけにはいかない。限界はいつか訪れるのだ。
 それは猟兵が、一番よく理解している。
「すけべなおねーさん!」
 爆発音と共に鳴り響いたのは、重く衝撃の籠った金属音。
 手ごたえがない。それに気づいたドン・フリーダムは、軽く拳を握り次弾を装填する。
 煙が晴れて最初に見えたものは、イサナが背負っていた棺桶。ぼっかりと凹んでいるがそれは赤べこキャノンの盾となり、小さな少女を守っていた。
「もう終わりにしようよ!おさるさんも、ウサギさんも、ヘルメットのおねーさんも、もうみんないなくなったよ!」
 イサナは悲痛な声で叫ぶ。
 それは幹部三人を統べた女王への問答か。それとも修理の手を止めようとする時間稼ぎか。この場合、明らかに後者。幹部三人のユーベルコードを模倣し本人以上の技量で扱うことができるとはいえ、手の内は斃れた幹部三人が明かしているのだ。
 これは絶対無敵バリアの弱点、エモいと感じさせる罠。
「それで、わたくしがやるせないと思うのなら大間違いでございますわ」
 揺らぐことなど、ない。次弾装填が完了した赤べこキャノンを操作。イサナを横脇から挟むように移動させ、ドン・フリーダムは無慈悲にトリガーを引いた。
「すけべなおねーさんがそこまでこだわる欲望って──!!」
 終幕。硝煙と爆発音が、それを教えてくれる。
 確実に肉を抉った。先ほどより金属音がしなかったのがその証拠。赤べこキャノンの弾丸は少女の体を爆散させた。
「人類の自由。それ以上に崇高な理由など、ありませんこと?」
 無敵バリアに歪みはない。勝った。これでもう一度フリーダムに修理できる。
 ──確信は煙から現れた死神の存在で一蹴された。
「それってここまで、しなくちゃいけないものなの?」
 イサナは盾を足場に飛び出し、華奢な体とサイズの合わないモッズコートを開く。そこにあるのは無数に詰められた銃器類。ショットガン、スナイパーライフル、ロケットランチャー、サブマシンガン、ハンドガン、両手斧──コートに収まりきらない量の銃器が、イサナの早業によって空中に並べられた。
「このセカイはもう、じゅうぶんじゆうだよ!」
 恐怖か、イサナの姿が狩人のそれに見えた時、絶対無敵バリアが歪み始めた。
 今度はこちらが、命の危機を感じ取る番だった。
 一斉射撃(フルバースト)が始まる。ありとあらゆる銃器類が、滞空していた斧が命を削ぎ落す雨をドン・フリーダムへと降らせた。
 鉛、爆撃、木片、金、火薬、鉄片、時々斧。一瞬緩んだとはいえ、絶対無敵バリアで守られている。この攻撃は無意味、自分が優勢のはずだ。
 なのに、バリアが歪むほどの恐怖心はどこから湧いてくる。
「このシチュエーション、わたくしに似つかわしくないのですわ!」
 今この瞬間、一瞬たりともイサナの姿がエモいと感じたら、確実に死ぬ。しかし空中にあれだけの銃器を、小さな体躯に収まりきらないものばかりを扱うその姿に、心が揺らがないわけがなかった。
 人類の自由のため、求めているものを求めるがままにする世界を作りだすために生まれたのなら猶更。ちょっと「あのかわいいけど物騒な子かっこいい欲しい」と思ったが最後。
「──この距離なら、外さない」
「あっ……!」
 絶対無敵バリアが緩み、ドン・フリーダムの顔がハッキリと見えた刹那、冷や汗滲むスマイルマークの仮面に『零距離全力射撃(ゼロレンジスラムファイア)』が叩きこまれた。

成功 🔵​🔵​🔴​

レナータ・バルダーヌ
迷惑と自称しておきながら否定するとはよくわかりませんね。

使用するUCは【A.B.エンパシー】。
本来はカウンター技ですけど、ここまでの戦いで傷だらけですからいつでも放てます。

想定される反撃はいくつかありますけど、中でもこちらに塩を送るリスクがない「鎮痛」と予想します。
予め身に纏ったサイキック【オーラで防御】すれば、注射や薬液は死角からでも防げるので、警戒すべきはガスなどの呼吸を狙ったものでしょうか。
炎の翼で飛行して距離をとったり、風を起こして霧散させて対処します。
ドンさんが自分自身に使ったらお手上げですけど、痛みに鈍くなることは命の危機に鈍くなること、他の方がその隙を突いてくださると信じます。



「迷惑と自称しておきながら否定するとは、よくわかりませんね」
 オラトリオの少女、レナータ・バルダーヌ(復讐の輪廻・f13031)は、穴だらけになった仮面を片手で抑えるドン・フリーダムを一瞥し呟く。
 超天才にして超天災と自称したドン・フリーダム。だが自分は修理しているだけで迷惑でないと、惑星全域同時放送システムで彼女は自白した。
 全くもって理解できない。システム・フラワーズの修理という時点で、世界にとって彼女は"超天災"である。オブリビオン、ましてやフォーミュラとして復活した彼女は、それをもっとも理解しているはずなのに。
 世界を破壊する行為を、修理と。本来あるべきものにすると、彼女は言ったのだ。
「壊れた世界が本来あるべきものですか。オブリビオンらしいといえば、そうですね」
「……壊れた世界?そうですわね、全人類の欲望を解放するのです。一人や二人くらい、それを叶えたいと思う者もいるでしょう」
 カポッ、と何かが嵌る音がした。おそらくドン・フリーダムの仮面だろう。ようやく彼女は抑えていた手を離した。
「なるほど。あなたは全人類が自由になれば、それでいいと──しかし、わたしはそれを許しません!」
 レターナは、ここまでの戦いで負った傷を残しここに来た。
 それもこの『A.B.エンパシー(アゴニーブランド・エンパシー)』を使うためだ。自分が負った傷を、その時の痛みと体験を相手に転写させ、脳に誤信を起させる身体麻痺の念動力(サイキック)──精神錯覚のユーベルコード。
 もしありとあらゆるものが手に入る自由な世界が訪れたのなら、痛みというものはすぐにこの世から消えてゆくだろう。生きているという証を、忘れてゆくだろう。
 この痛みを、生き物に与えられた罰を、理たる鎖をドン・フリーダムに叩きこむ!
「この身に受けた痛み、あなたに!」
 命の意味を知るサイキックを、レターナは祈りをドン・フリーダムへ放つ。
 これまでの痛みを、肉体に刻まれた損傷情報を圧縮し、全裸の仏の脳へと転写させんとする。
 さあ来い。レターナは静かに覚悟を決め構える。
 このように間接型のユーベルコードを使った時、ドン・フリーダムはかつてエイプモンキーが使っていたユーベルコード反撃装置を使うとブリーフィングであった。
 どのような反撃が来るかは予想できるが、その中のどれが来るかは想定しきれない。
 いつ、どこから来るか。構えて、集中して──……なにも来ない?
「わたくしも、やられっぱなしじゃありまへんのです」
 ましてや、肝心のドン・フリーダムには、なんの異常もない。
「え……あっ!?」
 自身の体が軽い。傷も、気怠さもない。
 しまった、とレターナは唇を噛みしめた。「鎮痛」のために注射や投薬が行われると予測し、密に死角にサイキックの障壁をかけていた。
 だが違う。これは──。
「『生まれながらの光』……!」
「塩を送ることで治る傷も、また自由やと思いませんですの?」
 死角は、反撃が来ると思い込んでいた自分自身。実際に来たのは、優しい光。ある種の辱めのスポットライトだった。
「自由に障壁はあってはならへんですわ。痛みであれ、他人であれ、世界であれ、自由を遮るものはいらないのです」
 全人類の自由に不自由はあってはならない。ドン・フリーダムはそう締めくくり、レターナに背を向けた。
 もはや勝負はついた、と。

 読まれたからには、覚悟するしかなかった。
 レターナは自身の翼を紫色に燃え滾らせ、血が滲むほど強く拳を握る。できるのならば、せめて一撃だけでもと、理性を捨てる。
「……ならば、ならばわたしが、あなたの世界の末路の権化となりましょう!!」
 痛みがないということは、命の危機に鈍くなること。命の危機を失うことは、生きるという意味が薄れてゆくこと。
 幾多の自由を手に入れたところで、生きる意味が薄れた世界に、果たして自由はあるのか。
 彼女はその答えとなり、命という炎を燃やしドン・フリーダムへと突撃した。
 届かないと理解している。この程度で、オブリビオンたる彼女の意思など曲がらないと分かりきっている。だが伝えずにはいられなかった。
 痛みあってこそ生きているヒトが、ここにいるということを。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

ドゥルール・ブラッドティアーズ
【ソロ希望・SPD】
過酷なダークセイヴァー出身の私にとって
コンコンは夢のような文化だけど
兵器まで出ちゃマズいわよ。今のままで良いじゃない

欲の恐ろしさを教えてあげる。
さっきから貴女の裸体にムラムラしてたの。
絶対に逃がさない❤

暴風に【オーラ防御】で耐え
足場が壊されても、夜魔の翼で【空中戦】

「そう簡単に、やれると思うなぁぁッ!!」

私も全裸になり
加速した『シーブズ・ギャンビット』で【2回攻撃】
でも、これは囮

「全裸の許される世界は大歓迎よ❤」

悲愴の剣から放たれる【衝撃波】で体勢を崩し
抱きしめて【吸血】しつつ
猫のように体を擦りつけ【生命力吸収】するのが本命

逃がさないと言ったでしょ?
貴女の身も魂も私のモノ❤



 コンコンコン。たったそれだけで、物が出てくる文明。
 それは何よりも素晴らしいもので、夢のような文化。ダークセイヴァー出身のドゥルール・ブラッドティアーズ(狂愛の吸血姫・f10671)には、考えつきもしなかった希望の世界。
 それが今、たった一人の菩薩に壊されようとしている。
「……おや、あなたも?」
「えぇ、私も──❤」
 しかし菩薩の姿は、ドン・フリーダムの姿は全裸だ。
 そして、ドゥルールもまた、全裸。
 ドン・フリーダムは自由と欲望を象徴する、何にも縛られることのない、糸の一本すら張り付くことのない美体。
 対して、ドゥルールは、
「さっきから貴女の裸体にムラムラしてたの。絶対に──」
 逃がさない。彼女は両手を地面につけ、腰を低くし牙を伸ばした。
 獣の如き、本能に全て身を委ねた動物としての真の姿を見せる。豊満な双峰と奇跡のバランスを持つ肢体を、彼女はドン・フリーダムの目に焼き付かせた。
 『シーブズ・ギャンビット』。全裸と化した彼女は、残像を残すほどの速さでドン・フリーダムに肉薄する。
「──素晴らしいッ!!」
 四つの突風が渦を巻き、ドン・フリーダムを中心に破壊が始まる。
 消しゴムで鉛筆で塗りつぶした紙を消すように、メンテナンスルートである花びらの道を砕き、喰らいつくしてゆく。だが、遅い。たった今動物と化したドゥルールは、何にも捕まえられない女豹だ。
 刃渡り30cmほどの悲愴の剣が、ドン・フリーダムの喉を掻っ切ろうと振るわれる。
「その姿、その有り様、まさにわたくしが求めていた世界ですわ!!」
 だが、これで終わるわけがない。
 ぐにゃりと背中が曲がり、弓反りになって剣を寸前で回避する。その姿は絶頂に至るイナバウアー。ぶるんと揺れる隠していない胸が、煽るようにドゥルールの伸ばした腕をキャッチした。
 残像を。
「えぇ──全裸の許される世界は大歓迎よ❤」
「!?」
 ドン・フリーダムは見た。
 自身の胸が掴んだのは残像。ブリッジの体勢になり見たのは、背面に回り瞳に❤を宿した魔女。あの残像は囮。彼女はこのチャンスを待っていた。
 その手に悲愴の剣はない。ここからは刃物など無用。彼女は愛の巣を作るために、ドン・フリーダムの肩に触れた。
「けど、それ以外はお断りね」
 ドクン、と体が高鳴る。
 その腕はナメクジのようにドン・フリーダムの肩から背中を滑り、ブリッジした体に騎乗するようにドゥルールはドン・フリーダムの上にマウント。足は自然に、互いに螺旋し合う蔓のように絡みつく。
 交尾の如く。このまま夜の帳を降ろすように、ドゥルールはドン・フリーダムと体を重ね──唇を奪った。
「んぅ……っ❤」
「んむぐ、っ!」
 そこから始まるのは、吸血鬼の契り(ベーゼ)。
 どれだけの自由を得ても、どれだけの力を以てしても破くことのできない。禁域の完成。
 魂啜る愛と死の交わりは──残念ながらキマイラフューチャーであっても規制済みなのである。

成功 🔵​🔵​🔴​

アストレア・ゼノ
【カタラSPD組】
◆アドリブ歓迎

欲望ねぇ
A&W育ちの私からすれば、今ある……コンコン、だったか?
あれだって十分とんでもない代物に思えるんだが

戦場へ転送される前に予め味方3人に
戦闘中距離を取っても維持できる程度の【オーラ防御】を張っておく

これは騎竜で飛ぶ時に使っている風除けの力だな
身を守るには心許ないが、ライラが和らげてくれた風の中で
私達が自在に動くのを助けてくれるはずだ

敵の暴風が吹いたら【竜言語・嵐の化身】を唱えながら
崩れた足場から浄雲が張り巡らせた鋼線の上へと【ジャンプ】で飛び移り
ライラの合図で一気に距離を【ダッシュ】で詰めて
槍での【串刺し】と【雷撃】の【属性攻撃】で敵に仕掛けよう


音羽・浄雲
※アドリブ歓迎。
【カタラSPD組】

「欲しいがままに与えられ続けることが、果たして欲望と言えるのでしょうか?」
 ぼそりと呟き、詭り久秀を袖口から垂らす。
 相手が暴風で足場を崩すのならば足場を守るか、あるいは足場を作ればいい。
 浄雲はライラとアストレアの築いてくれた守りをより盤石にする為【地形を利用】して糸を張り巡らせ、それらを【ロープワーク】の様に足場の補強と、それでも砕かれた際の仮の足場として設置した。
「足場はこれにて盤石。その飽くなき欲望と共に焼き尽くして差し上げましょう」
 浄雲の身体が蒼炎へと包まれる。そしてライラの合図と同時、謀り長慶を構えてアストレアと共にドン・フリーダムに躍りかかる。


ライラ・カフラマーン
【カタラSPD組】にて参戦
自由には責任が伴います。ドン・フリーダム、貴方がそうするのも自由ならば私たちが対抗するのも……自由なのでしょう?

・先制対策 相手が放つ暴風に『高速詠唱』で風『属性攻撃』の『範囲攻撃』を当てて威力を弱め、威力を弱めようと試みます。最悪私が盾となり囮となる事で、他の二人の被弾を抑えましょう

「話し合いましょう、私は敵ではありません。修理とはなんですか」
暴風を防いだら、詐術を試みて千夜一夜の体勢に持ち込みます。攻撃を止めたのも話し合うため、敵意はないと『言いくるめ』柔らかい物腰で交戦の意思はないことを騙りて『コミュ力』を持って囮となります
「浄雲さん! ゼノさん! 今です!」



 一方、グリモアベース。
 今だ閉じぬ狐火の扉の前で、三人の猟兵は事前準備を進めていた。
「欲望、ねぇ……」
 人間の女性、アストレア・ゼノ(災厄の子・f01276)はアックス&ウィザーズ生まれだ。彼女からすれば、現状のコンコンコンでも十分にとてつもないものだと考える。狩りと冒険の世界において、物品オンリーとはいえ"何でも手に入る"というのは、あまりにも強力で、堕落を招きかねない。
 怠惰(チート)とも言えるだろうそれを、より強力なものに昇華する。彼女には、その結末がどんなものになるのか、想像できなかった。
「欲しいがままに与えられ続けることが、果たして欲望と言えるのでしょうか?」
 妖狐の女性、音羽・浄雲(怨讐の忍狐・f02651)も疑問を呟く。
 自由、フリーダム、オール・フォー・フリーダム。
 何でも手に入る。その何でもに定義はない。概念もなく、比喩でしかないものさえも手に入る。もしもそれが永遠に約束されたのなら、そこに自由はあるのだろうか?
 むしろその逆。手に入らないものがなくなった事で、「手に入らないものがない」という不自由さが生まれるのではないのか。
 これを真に欲望と言えるのか。浄雲にはその是非を、本人に問いたいと思っていた。
「自由には責任が伴います」
 エルフの淑女、ライラ・カフラマーン(放蕩占術師 琥珀のライラ・f09622)は静かに語る。
「あの少年が言ったように、これはたった一人の個人が自由を得る事案ではありません。キマイラフューチャーの住民全員が自由になる権利を得るのです。皆が欲する自由は、きっと善良なものに限りません」
 醜悪、猟奇的、破滅的──そんな願いを叶えるものが現れないとは限らない。
 ドン・フリーダムは、それさえも受け入れようとしているのだ。自由であるが故、民を自由という枷に嵌めた責任を負おうとしない。
 ならば、私たちも自由にする。ドン・フリーダムに対抗することもまた、自由であるのなら。
「……よし、張り終えたぞ」
 アストレアはぐっと拳を握り、全員に長時間持つオーラの鎧を与えた。付呪者であるアストレアから少々離れても解けない鎧だが、一回切りの無敵バリアのようなものだ。
 しかしあるのとないのとでは、戦況に大きく差が出るだろう。
 三人は頷くと、グリモアの中へと一歩踏み出した。

「はぁ……はぁ……っ、長い……夜を過ごす、なんて……」
 システム・フラワーズ中枢。
 ドン・フリーダムは、吸血鬼にたっぷりと生命力を吸われ果てていたところから復帰したばかり。数度目のリスポーンを果たしたところだった。
 それでも、猟兵は待ってくれない。
「……また来るのですわね」
「当然だ。あんたの暴行を止めに来るのも、猟兵の自由だろ?」
 軽口を叩きながら、アストレアは竜槍グウェンを手にし構える。
 ──戦いの狼煙は、道を砕く台風となって上がった。
 ドン・フリーダムは既に瀕死。残機も残り少なく、彼女も本気になって猟兵と潰さんと襲い掛かる。ウインドゼファーの持つ風の力を最大出力にし、あらゆるものを破壊する災害を六つ……否、八つ三人に放たれた。
 迫りくる嵐と、それに比例して無残に剥がれてゆくメンテナンスルート。
 ライラはそれに対抗すべく、風の魔法を紡ぐ。
「──嵐よ、応えてください!」
 高速詠唱により瞬時に顕現したのは、嵐とは逆に渦巻く風。相殺すべく生み出された風はライラを中心に四つ渦を作り、放たれる。
 ゆっくりと、互いに全てを吹き飛ばし破壊する猛威を見せながら近づき──ぶつかった瞬間、ライラは叫んだ。
「話し合いましょう!私は敵ではありません、修理とはなんですか!?」
 嵐と嵐がぶつかり合う。それらは歯車がかみ合うように運命共同体となり、やがて空気となって消えてゆく。だが嵐はまだ四つ残っており、灰色の渦が三人と一体を隔てる。
 それでも聞こえているだろうと信じ、ライラは続けた。
「システム・フラワーズは貴女が作ったものとお聞きしました。……キマイラフューチャーを生み出した一人の超天才として、従来の力でも叩けば欲しい物品が手に入るという自由を与えたようですね。
 ですが不思議なんです!そんなあなたがなぜオブリビオンという立場にいるのか、修理するほど不完全な状態で何故この星にシステム・フラワーズが残ったのかを!」
 是非ともお聞かせ願えないでしょうか、とライラは言葉を紡ぐ。
 これは作戦でもあり、本音だ。ドン・フリーダムがどうしてオブリビオンとなったのか、システム・フラワーズが修理を必要とする理由はなにか。ほんの些細な、個人的に気になっていたことを材料に、彼女はドン・フリーダムの攻撃の手を緩めようと交渉した。
 しかし……彼女は答えず、ただ隔てられたその先で地蔵と化した。
 何も語ろうとしないどころか、攻撃の手も緩まない。
 痺れを切らしたのか、アストレアが動く。
「──荒ぶ風に轟く雷」
 ライラから譲り受けた風を、嵐の如き破壊の力を体に纏う。
「それらは嵐の従者なり!『竜言語・嵐の化身』!!」
 アストレアを纏う風はやがて雷を帯び、全身に黄金の根を張り輝く。
 準備はできた。残るは、浄雲のみ。
「詭り久秀、引きます!」
 両手を地面につけ、暴風の中神経を常に尖らせ指をせわしなく動かしていた彼女は、勢いよく両手を引き上げた。
 地引網の如く引き上げられたのは、浄雲がドン・フリーダムに悟られぬよう地面に引いた鋼線。それらは破壊されたはずの花びらの道、その一部を数珠のように通し、アストレア専用の道を作りだした。
「……仕方がありませんね。浄雲さん、ゼノさん、今です!」
 ライラの掛け声を合図に、アストレアは地面を蹴り、彼女は雷と一体となって浄雲が作った道を駆ける。
 距離僅か数十メートル。雷速となった彼女にとって、一秒にも満たぬ速さで駆け抜けることができる距離。
 ドン・フリーダムにとっては、一秒にも満たぬ速さで死ぬ距離だ。
「てぁーーーーーッ!!」
「!?」
 だが、ドン・フリーダムは諦めない。
 彼女の右手には灰色の赤べこキャノン。そして左手にはユーベルコード反射装置だったものがある。
 完璧だった。地形破壊を行う嵐を排除し、突撃を行うための道を作りだす。そこから回避しようのない攻撃が来たら、それはトドメになるだろう。
 だが、完璧すぎた故にドン・フリーダムは読み取ることができた。
 彼女は両腕を大きく広げ、槍を番えたアストレアに向けて振り下ろした。
「チィッ!」
 刹那の見切りにより、アストレアは振り下ろされた二つの鈍器を避け、浄雲が作りだした道から大きく横へ逸れる。
 その隙を埋めるように、嵐の中から青白い光が顔を覗かせた。
「舞え!我が身を焦がす怨嗟の劫火よ!」
 着物が、尻尾が、凛とした顔が、蒼炎に包まれる。炎と一体となり、募った怒りと肉体を薪とし燃え上がるのは、妖刀【謀り長慶】を手に瓦礫の道を走る浄雲だった。
「ドン・フリーダム!貴殿の求める自由に、私は不自由を感じます!」
 抜刀。そして纏った蒼炎を刀身に流し、付呪を施した謀り長慶を、ドン・フリーダムへと振るう。
「不自由──何故そう感じるのです?」
 ドン・フリーダムもまた、両手に持つ鈍器を振り上げ、刀の一撃を防ぐ。
 しかし力の差は明らか。
 燃え盛る刀はクリームでも切るかのように二つの鈍器を真っ二つにし、一瞬にして無きものとした。
「我慢をせず、欲しいものを欲しいがままに手に入れる。それに、喜びを感じないのです。喜びのない世界など、私には不自由としか思えません!」
 ──パキッ、と仮面にヒビが入る。
 ドン・フリーダムの胴を、竜の尾が貫通した。
 ライラが生み出した嵐の風に乗り、一体の龍となって二度目の突撃を果たしたアストレアは、背後から彼女の胸部を穿った。
「……喜、び」
 風が止む。
 システム・フラワーズの灯りが小さくなり、スマイルマークの仮面は笑顔を無くし目を閉じる。
 とめどなく溢れる欲望を満たせば、我慢しなくていい世界を生み出せば、人々はずっと喜びを得ると思っていた。オール・フォー・フリーダムとは、そういうことだろうと。信じていた。
 しかし少し考えて、ドン・フリーダムはすぐに理解した。
「自由こそ、が……この世の、全て……でも、」
 自由を謳歌すればするほど、徐々に自由に飽きてゆく。
 欲しいものは手に入らないからこそ欲しいと感じ、手に入った時にこそ喜びを感じるもの。手に入らないものを容易く手に入れることのできる自由な世界が生まれた時、そこに手に入った時の喜びはあるのだろうか。
 答えは明白だった。
「自由に、慣れたら……いつか、不自由に……なり、ますわ……ね」
 たとえ最初は楽しくても、全てを手に入れた時、きっと飽きてしまうだろう。
 竜槍グウェンから胴が離れた時、ドン・フリーダムはライラの質問を思い出した。
 どうして不完全な状態で、システム・フラワーズを遺していったのか。その答えを最初から知っていたはずなのに、なぜ忘れたのだろうか。
 肉体が泡となり骸の海に沈んでゆくのを感じながら、ドン・フリーダムはその答えを思い出そうとし──コンコンコンとシステム・フラワーズを叩いた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年05月30日


挿絵イラスト