バトルオブフラワーズ⑫〜地獄の咆哮
「欲望は止められない」
その理解で、手を貸した。
ただ、出方を見るにも、これはいい機会と静観する。
「……あれは、異質な存在だよ。無視してもいいくらいだ」
ソウジ・ブレィブス(f00212)は、そう語る。
見ているだけで寒気がする、気がした。
彼、ドラゴンテイマーが居る場所は、中核ではなく、少し離れた場所である。
「彼は……謎のオブリビオン、本来はこの地にあるものではないのかもね」
必ずしも敵対する必要はないかも知れない、と先にソウジは言い置く。
中核で積極的な好戦を行っていないのがその印。共闘は趣味ではないのだろう。
……ドン・フリーダムさえなんとかすれば、この一連の戦いは終幕するからだ。
「とはいえ、居るものは気になるよね?」
猟兵たちが生唾を飲むようにしたのを見届けて、ソウジは言葉を続ける。
「彼を、幹部たちと比べてはいけないよ。強敵の度合いは違っても、彼は相当の実力者。それでいて、底が見えない存在が闇そのものとも言っても差し支えがないかも知れないね」
幹部同様に、彼は必ず先制攻撃を行ってくるだろう、とソウジは言った。
「赤き剣の異質な右腕も、ドラゴンテイマーという名乗りも決して伊達じゃない」
ドラゴン、黒竜ダイウルゴスを召喚するという。
テイマーである彼は召喚する戦法を取る。それも、大規模だ。
どの様な戦略を立てても、対策を怠れば、ドラゴンの波が猟兵たちを敗北に導く事は間違いない。
戦場での彼は同時に一人でしか存在しないが、何度でも躯の海から蘇る。
「倒し続けなければ、彼を倒せないのは確かだね、でも……」
倒し続けられたとしても、彼を復活不能まで持ち込めるのかは予知では一切わからない。
謎の存在が、何のためにそこにいるのか。
それを問いただして口を割るとは思えないが……。
「何かをする未来の悪なら、ここで戦うのはきっと悪いことじゃないよ」
多分ね、とソウジは猟兵たちを見送った。
タテガミ
こんにちは、タテガミです。
わぁ、すてきなおひげのおじさんだぁ~。
この依頼では、今までの幹部同様に下記条件が発生します。
====================☆
敵は必ず先制攻撃します。敵は、猟兵が使用するユーベルコードと同じ能力値(POW、SPD、WIZ)のユーベルコードを、猟兵より先に使用してきます。
この先制攻撃に対抗する方法をプレイングに書かず、自分の攻撃だけを行おうとした場合は、必ず先制攻撃で撃破され、ダメージを与えることもできません。
====================☆
OPにも記載がありますが、この戦場は戦略的に必須踏破ではありません。
彼は『これまでの誰よりも強敵』なのです。
それでも挑まれる方に、ご武運がありますように。
判定は厳しく行われるものです。ご注意下さい。
第1章 ボス戦
『ドラゴンテイマー』
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POW : クリムゾンキャリバー
【赤き剣の右腕】が命中した対象に対し、高威力高命中の【黒竜ダイウルゴスの群れ】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD : ギガンティックダイウルゴス
レベル×1体の、【逆鱗】に1と刻印された戦闘用【大型ダイウルゴス】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
WIZ : 文明侵略(フロンティア・ライン)
自身からレベルm半径内の無機物を【黒竜ダイウルゴスの群れ】に変換し、操作する。解除すると無機物は元に戻る。
イラスト:ハルヨリ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
梅ヶ枝・喜介
オッサンは戦争のオブリビオンの中でも滅茶苦茶ツエーんだろ?
天下に名を知らしめるのと誰かの役に立つのが一辺に出来るんだ!
これぞ千載一遇!天の采配よ!
今の俺と、戦争の実力者
どれ程の差があるか、一手死合って貰おうじゃねーか
オッサンの持つゴツい剣の初動見切って、打刀"エボシ"で受けるぜ!
マトモに合わせちゃ刃が潰れる、実力も相手が上
角度を付けて後ろに流せりゃ万々歳だ。
命中した対象にドラゴンが寄せられるんだろ?
じゃあこうして打ち合った刀を捨てちまえば、撒き餌になるんじゃねぇかな
"エボシ"!囮役ご苦労!
そして俺が使うの上段!火の構え!
馴染みの木刀を天高く掲げ、一気呵成に振り下ろすのみ!
どうだ!?やったか!!
シャノン・ヴァールハイト
アドリブや他猟兵との連携歓迎
心情
当方は強くなりたい。
そして、強い奴が居ると言うのならば、挑戦するだけだ
先制攻撃に対し…
技能『怪力』を利用して攻撃を防御する。
しかしながら、高い威力を持つ攻撃なので、攻撃が当たる瞬間に肘から先を回す事で攻撃を身体の外側に反らすようにして流すようにするつもりだ。
POW
武器の剣と『怪力』を使用して防御
剣の間合い=一歩踏み込めば、徒手空拳の間合いなので剣を捨て、技能値287の『怪力』を使用して右腕を掴みUCを使用する。可能ならそのまま他参加者が攻撃し易いよう動く
SPDやWIZ
大型については、隙を見つけて倒しに行くしか無いが、手数が無いので可能な限り他参加者と連携して戦う
●
「なぁ、オッサンはこの戦争のオブリビオンの中でも滅茶苦茶ツエーんだろ?」
梅ヶ枝・喜介(悩む若人・f18497)はドラゴンテイマーの姿を見つけると血気盛んに問いかける。
彼はただ、静観していた。
有り様をただ、眺めていた。
その顔には、興味も関心も示さず、視線をちらりとも向けることもない。
「天下に名を知らしめるのと誰かの役に立つのが一辺に出来るんだ! これぞ千載一遇! 天の采配よ!」
――今の俺と、戦争の実力者。どれ程の差があるか、一手死合って貰おうじゃねーか。
「誰の判断で、その答えにたどり着いたものか」
ドラゴンテイマーが裏で何かをしていたことは確かだが、誰もその問の果てを知らない。わかることは、ただそこで成り行きを見ているだけである。
――当方は、強くなりたい。彼と同様に。強いやつが居るというならば、挑戦するだけだ。
六翼をばさりと広げ、彼ら二人を敵対者と認めたドラゴンテイマーはシャノン・ヴァールハイト(死者の声を聞き、招く者・f10610)らを一瞥する。
「手合わせするその手が、無知というなら仕方がない」
紫色の異質なガスを身に纏いながら、悪夢のような疾さで猟兵に近づき、赤き剣の右腕が上段より振り下ろされると、シャノンはそれを身体を捻り回避した。
中段より、上段へ振り上げるようにした次の攻撃は、ギリギリで動きは目で追えていた為、喜介は打刀のエボシで受けることには成功した。
「マトモに合わせちゃ刃が潰れる……!」
受けた打刀が斬撃の重さで押され、長時間動きを制限しようとすればいとも容易く持ち主事斬られる事が容易に想像がつく。
受け流すなど、簡単に出来る斬撃ではない。
見た目以上に悪夢のようにあの剣は重いのだ。
「潰れるのが得物だけで在るはずがない」
喜介が受けた剣を起点に、金属質の黒き竜ダイウルゴスが飛翔し殺到する。
召喚は成った。どこからともなく、それは吼えながら大きな口を開けて、特攻する魚雷のように奔る。
「命中した対象にドラゴンが寄せられるんだろ? じゃあこうして打ち合った刀を捨てちまえば……」
「その憶測は間違いだ」
打刀を囮にドラゴンの攻撃を躱そうとあらぬ方向に投げて試みれば、ダイウルゴスは打刀を目視してはいなかった。対象は息する者。
それは真っ直ぐに、ためらいなく。喜介の腹に牙を突き立てた。
「それは意志持つものか」
「だとしても。それを握るお前以上の意志がそれにあるのか」
命中した対象、それが器物であるなら……とは確かに考えられている。
敵の攻撃を受けたのは器物か、それとも持ち主か。この場合は後者だ。
攻撃する意志を受けたのはどちらでもであるのなら、意志が在る方が攻撃される。
「命中した対象に召喚したモンがこうしてんなら、外しようが……ねぇなぁ!」
馴染みの木刀を天高く掲げようとしたが、食い込む牙の痛みで木刀を落としてしまった。せめて召喚されたドラゴンに攻撃に転じようとしたが、あまりに油断が過ぎたのだろう。ひとりでは攻撃に繋げられないと霞む視界でシャノンに視線を送れば、彼は意図を察して頷き、駆ける。
「せめて同時の召喚が一体であることを願うばかりだが」
堕銀の剣でドラゴンテイマーへ斬り掛かれば、赤き剣でその攻撃は受け流された。
「望み通り召喚してみせるほどの実力なら、そうしている」
「あぁ、そう……ならありがたい。強引な力技で捩じ伏せてやるよ」
想像を超えない実力だ、と言わんばかりに一体以上喚ばないと宣言したも同然だ。
剣を受け流せるほどの距離、それならば、と堕銀の剣を手放す。
「仲間は、助けないとだからな」
更に至近距離に詰め寄り、ドラゴンテイマーの右腕を捕まえ、人の限界を越えた怪力がクリムゾンキャリバーに叩き込まれる!
「狙いは腕か」
衝撃は赤き剣を振るせ、地面を割り砕かんばかりの威力を見せつけた。
限界を越えたシャノンの破壊の力は確かに全てを砕き潰す程の威力だっただろう。
「それで壊れる程度ならば、ダイウルゴスを薙ぎ払う一騎当千となれたかも知れない」
「お前が助ける仲間がいても、お前を助ける仲間は居ないようだ」
赤き剣は砕ける事なく、剣を手放した事により受け止める手段が無くなったシャノンは一呼吸の後に肩からばっさりと切り伏せられた。
喜介の意識も途絶えたのか、食らいついていたダイウルゴスも役目を終えて、いつのまにか消えていた。
苦戦
🔵🔵🔴🔴🔴🔴
空澄・万朶
「黒竜ダイウルゴスですか、ではオレの自慢の黒竜もご紹介致しましょう。虚空、おいで」
漆黒のファードラゴンの虚空をランスの姿にし、赤き剣の右腕の攻撃を【武器受け】する
多分赤き剣の右腕もオレの槍も「命中」した事になるだろうから、まずは黒竜ダイウルゴスの群れを【武器受け】【オーラ防御】で防ぎ、また【空中戦】により後方に飛び退く等してダメージを軽減
…そうやってオレ自身に注意を向けさせたところで【ドラゴニック・エンド】を発動
敵の死角から漆黒のドラゴンを召喚し、ドラゴンテイマーを灼熱の炎で攻撃
「オレの黒竜は虚空だけじゃないんでね…!」
虚空の紹介も、オレ自身を囮にする事も、全てがこの一撃の為の【フェイント】
●
空澄・万朶(忘レ者・f02615)またその場所に赴いた一人。
「黒竜ダイウルゴスですか、ではオレの自慢の黒竜もご紹介致しましょう」
――虚空、おいで。
ふわりと羽を広げた漆黒のファードラゴンの虚空をまるでドラゴンテイマーに見せるようにする。対する者がドラゴンを召喚すると聞いて、なんとなくだ……意味のあることではない。気性の荒いだろう本物の竜とは正反対の、自身の同様なおっとり基質とは全く違うのだろうな、程度のものだ。
「それもまた欲望か」
ふわふわと羽ばたくように滞空していた虚空の羽音がようやく耳に届いたのか今まで視界に入っていなかったように、返答。
「紹介してなんとする」
お前もまた敵対者か、と顔を向ければ、既に攻撃体制であることは一目瞭然であった。
剥き出しの赤き剣での一撃を後押しするように、ドラゴンテイマーは羽ばたき、息をつかせぬ間に急襲を掛ける。紫のガスが取り残されるように後から追従していた。
期待してなかった紹介への応答に、虚空をランスの姿に変え万朶は攻撃を受ける。
――多分赤き剣の右腕もオレの槍も「命中」した事になるだろうから。
予想に違わず、ざわりと異様な気配がした。
ドラゴンテイマーの背後から鋭い視線を感じる。
召喚に応えガォウと、飛び出すように黒竜たちが吼える。
圧倒的に威圧的で、統率された動きで爪と尾を雪崩のように万朶に降らせる。
「想像以上の……!」
なるべく多くの攻撃をランスで受け止めるが、それでも一人のドラゴニアンが受け切るには多すぎた。
鋭い爪が、一張羅とする軍服をこれでもかと傷つけ、引き裂く。
「抵抗は無意味。そう決定されている」
なにに? と問うより早く、万朶は自身の翼を広げ空中へ逃亡を図る。
地上だけが戦場ではないとの判断だが、ダイウルゴスたちにも雄々しく立派な翼があるので、逃げ切れる事はない。逃げ切るつもりはなかったが。
どこで戦うのにも大差はないので、飛び退く経路を空としただけだ。
「これでばっちりオレ自身がばっちり注目の的ですね」
ポツリと零したその言葉はドラゴンテイマーに届いてはいないようだった。
振り向きざまに大きく振りかぶり、槍を今はただ立ち尽くすだけのドラゴンテイマーに渾身の力を込めて投げる。 否、投げつける。
槍投げのように、真っ直ぐ飛ぶそれを、一歩も避けずに赤き剣で払い退けた。
何の疑いもなく、飛ぶ鳥を落とすように無慈悲に。
「オレの黒竜は虚空だけじゃないんでね……!」
――虚空の紹介も、オレ自身を囮にする事も、全てがこの一撃の為のフェイントですよ!
漆黒のドラゴンがドラゴンテイマーの死角に召喚され、ガァアアアアと吠えながら灼熱の炎を浴びせかける。火炎の波に飲まれ、多少は苦悶の表情を浮かべるかと思えば、ドラゴンテイマーの表情は変わらない。
召喚されたドラゴンの息吹で一翼の翼が燃えたが、それに関心がないようだ。
「竜が全てを燃やすに値する熱量を浴びせられないのは、はたまたお前の実力不足か」
いや、とドラゴンテイマーは燃える中で言葉を続ける。
「ダイウルゴスを苦悶に哭かせられないなら、全てが決定されたようなものか」
万朶が最後までその言葉を聞き届けられたかは分からないが。
ダイウルゴスの尻尾の一撃で、空より叩き落とされたことは、間違いない。
成功
🔵🔵🔴
梅ヶ枝・喜介
あー痛ぇ、死んだ連中が手招きしてら
死ぬかも知れねぇな俺、血ぃどばっと出てるしよ……
けど俺ァ刀握って戦場へ来たんだ
俺は逃げない!
勝てる相手にだけ挑んで何が英雄だ!
アイツに勝つには気合いしかねぇ!
齧られた腹が痛ぇ
脂汗と血が馬鹿みてーに出てる
体調は最悪で派手に動くのは無理だ
次の一撃に全部を込める!渾身だ!
このオッサンに一撃入れなきゃ、足引っ張っちまった赤毛の野郎に申し訳が立たん!
剣の一撃を体で受け止め、そのまま両手で怪力任せに赤き剣を握って動かせねぇように固定するぜ
そのまま張り付いて渾身の頭突きを食らわしてやる!
この距離ならアンタもトカゲに噛まれるぞ!
俺とアンタのどっちの頭が堅いか、勝負しようや!!
●Revenge
「あー痛ぇ、死んだ連中が手招きしてらぁ……」
意識を取り戻した梅ヶ枝・喜介は、痛む腹を抑えながら未だ衰えぬ戦意とともに立ち上がった。
一気に流して失った血の分だけくらくらと視界が揺れたが、それは気合いで持ちこたえる。
「死ぬかも知れねぇな俺、血ぃどばっと出てるしよ……」
立ち上がれる以上、噛み千切られなかったことは分かる。
ただ、触れれば手のひらはいとも容易く赤く赤く染まった。
ドラゴンテイマーは立ち上がった喜介を見ると怪訝そうにする。
「ただ倒れているだけでそれで全てが終わっていただろうに」
過去遭遇した脅威を目撃したような視線だ。
苦虫を潰すように、相当嫌な記憶であるらしい。オブリビオン化する前に、一体どの様な戦闘をドラゴンテイマーは繰り広げたというのだろう。
「俺ァ……刀握って戦場へ来たんだ」
先程落とした木刀は、比較的傍に落ちていた。拾い上げ、囮役と投げた打刀も拾う。拾う動作を見過ごすのは、彼がドラゴンテイマーにとって脅威に映っていないからか。
「俺は逃げない! 勝てる相手にだけ挑んで何が英雄だ!」
実力者であるから、背を向けられない。喜介の信念は、持ち前の気合が後押しする。困難であるなら、立ち向かうべきだと自分を鼓舞して叫ぶ。
――齧られた腹が痛ぇ……。少し、流しすぎたか。
額に浮かぶ脂汗と、大分流した血までは誤魔化しきれない。
声に出して叫び続けなければ、意識を再び飛ばしてしまいそうで、これを虚勢だと見透かされるのは癪ではある。
だが、血の気の引いた顔色から既にドラゴンテイマーには気づかれているだろう。
――体調は最悪で、派手に動くのは無理だ。次の一撃に全部を込める。渾身だ!
「このオッサンに一撃入れなきゃ、足引っ張っちまった赤毛の野郎に申し訳が立たん!」
血を吐く思いで喜介が叫べば、ドラゴンテイマーは薄く口角を上げて笑ったような気がした。気配、というか雰囲気というか。錯覚かも知れないが。
「仁義を通す想いは伝わるが」
「その満身創痍で防げるか。……総意は否、だ」
五枚に減った翼を広げ、二度目の赤き剣が喜介に迫る。
一翼が減ったところで、地獄の如き疾さは一つも衰えていないようだ。
「再び立ち上がった俺は! 簡単に切れねぇーっつーんだよ!」
剣撃を敢えて身体一つで受け、赤き剣を止めた。腹以外にも大きく切り裂かれると立ってることまで困難になるが、恩を感じる猟兵と同じ様に。
胴が切り裂かれる前に、両手でドラゴンテイマーの赤き剣をガッチリと掴んだ。
「これで、動けないだろ? それに、アンタもトカゲ共に噛まれるだろ」
喜介はにぃと空元気に笑うと、ダイウルゴスの群れが目的めがけてその場に召喚され襲い来る前に。
「俺とアンタのどっちの頭が堅いか、勝負しようや!! 俺はこれしか出来ねぇ! だからこれだけは誰にも負けたくねぇ!!」
ゴッ――。
ただ単純に。剣撃でもなく、一歩譲れずと言った木刀の攻撃でもなく。
ドラゴンテイマーの額に、渾身の頭突きを繰り出した。
予想の範囲の外から放たれた頭突きで、悪魔のような男ですら額から大量に血を流す事となった。
「……見事だ」
――おい、赤毛の野郎……俺は、やったぜ……!
一歩ニ歩と、ドラゴンテイマーが後ろに下がると同時にダイウルゴスの群れが喜介が襲い、見えなくなった。
溢れたダイウルゴスの群れがテイマーを噛むことは……無かったが、それでも。
喜介が一矢報いる事は、成功した。
成功
🔵🔵🔴
宇冠・龍
由(f01211)と参加
私が先に動き攻撃を引きつけます
その剣筋も続く竜の群れも完璧に防ぐ手立てはありません
しかし子を守るのが親の役目、ならばこの身を盾にかばいます
赤き剣は直接触れなければなりません。斬撃を飛ばすでないのなら、この身に宿る呪詛を斬撃の瞬間に相手へ注ぎ込みます
斬るか突くか、赤き剣が私の肉を割いた瞬間、血と痛みを媒介にした呪詛が、剣を通じて相手を蝕み動きを鈍らせるでしょう
突きなら両手で剣を押さえ、斬られても肉薄し懐に潜り込みます
至近距離なら、向かってくる黒竜の群れにドラゴンテイマーも接触する筈
同時に攻撃を束ねて一矢報います
不可視の霊を一点に集中、狙いは黒翼の根元、機動力を奪います
宇冠・由
お母様(f00173)と参加
お母様が斬撃を受ける瞬間に動きます
本来盾は私がしたいこと。守りたい母を傷つけてしまう無念を力に変えますわ
地獄の炎を、球形にして全方位に広域展開
ダイウルゴスの群れは私にも向かってくるでしょう
その牙や爪は防ぎきれないかもしれません。けれど私に攻撃するには少なからず炎を受ける必要がある
私は小さなヒーローマスク。得意の空中戦で燃えて動きの鈍った隙をついて群れを突破
お母様が引き付けてくださっているドラゴンテイマーに、地獄の炎をお見舞いします
自由自在に降り注ぐ炎の雨、身体として普段扱っている地獄の炎は手足も同然、放たれた炎はどこまでも追跡し相手を燃やします
●
頭数が集まればどうあっても、静観は崩される。
「常に戦況は動く」
「来客ばかりの日であるようだ」
多少の流血も、やむを得ないとドラゴンテイマーは額の血を拭おうと左手を上げたが新手の猟兵を視線の先に見つけ、やめた。
「えぇ、不審な動きに変わりありませんので」
温和な口調で宇冠・龍(過去に生きる未亡人・f00173)が敵対の意志を視線に込めれば、ドラゴンテイマーは直ぐ様動き出す。
「(私が先に動き攻撃を引きつけます)」
「(お母様が斬撃を受ける瞬間に動きます)」
ドラゴンテイマーに気づかれるほんの少しだけ前。宇冠・由(宙に浮く焔盾・f01211)は母とそう約束していた。
――本来盾は私がしたいこと。守りたい母を傷つけてしまう。
決めた以上は、と由はそこに口は挟まないが、思うところはある。
「子を守るのが親の役目、ならばこの身を盾にかばいます」
――完璧に防ぐ手立てはないけれど、一緒であれば、あるいは……。
龍の、母の願いを聞き届けてか、ドラゴンテイマー赤き剣の右腕を突き刺さんと地を蹴り羽ばたき迫った。
「願いだけで叶うものはなにもない」
「言葉だけで叶うものほど儚いものもない」
槍のように、龍の腹へ深く剣を突き立てる。
勢いよく、古き傷を大きく抉るように。
「私の肉を、……腹を、裂きましたね?」
黒竜が雪崩て召喚されるより早く、抉られた場所に対する思いを言うわけでもなく。
痛みと血を媒介にした呪詛が、傷口から刺さった赤き剣を伝い、ドラゴンテイマーに奔る。深淵のように深き呪詛は、絡みつき、他の猟兵が焼いた翼や怪我を異常に蝕み、動きを鈍らせた。地獄の如き男でも、内側に染み渡り棘の様に暴れる呪詛への抵抗は持ち得なかったか。
「私の術が、役に……」
過去を思えば、複雑な心境ではあった。しかし、隙が生まれた事は確かな事だ。
動きを制限出来る僅かな間だけでも、と両の手でしっかりと剣を抑えて見据える。
ドラゴンテイマーの周囲を漂う紫のガスから、足元に広がり広がり。
幾つもの殺気と視線を感じた。――来る。
「ガァアアアアアア!!」
吼え猛る黒竜、ダイウルゴスが怒涛の群れとなり、母娘に慈悲なく牙を向いた。
「死海に還りし息吹達、視界を寡黙に泳がれよ」
龍が唱えれば、龍には目視出来るのだろう、不可視の霊が漂い出す気配がうまれる。娘を穿たんと飛翔する翼の根元目掛けて力ある霊の突撃を掛ければ、墜落し、地面を舐める。
「グルルルルル!!」
それだけでは消滅しないと強靭なドラゴンの手足で由へ襲い駆ければ、炎で燃える身体を、無慈悲に爪で引き裂く。
多少なりとも霧散し、地獄の炎はマスクから離れ、残り火となって翔んだ。
パラリパラリと舞う炎を肢体に浴びればダイウルゴスは叫びだす。
――私に攻撃するには少なからず炎を受ける必要がある。
「狙い通りです」
――私は小さなヒーローマスク。人型は、地獄の炎で補ったものですから。
母がドラゴンテイマーをその身を賭して引き付けているのだ。
準備は既に、整った。
「自由自在に降り注ぐ炎の雨。身体として普段扱っている地獄の炎は手足も同然……放たれた炎はどこまでも追跡し相手を燃やします」
火の粉のようで、それはドラゴンテイマーの纏う気配とは別の地獄を由来するものだ。由が願えば、由の使う力はそれに応える。
「私の再生力を見縊らないでください」
群れに降り注いだ小雨のような火が束ねられ、突如火力を増して肢体を溶かし尽くさんと燃え盛る。
轟々と、熱量を上げ続ける火を消し去ることが出来ず、悲鳴にしか聞こえないドラゴンの声が少しずつ消えていく。
「消えぬ炎、地獄……」
喉の奥で笑うように、ドラゴンテイマーが笑いを零したかと思った時、母娘の視界は暗転していた。母の腹を突き刺していた、赤き剣を勢いよく引き抜きぬかれ、刃を鮮血のように煌めかせて、二人は切り倒されたのである。
「ドラゴンとはまた違う熱量。しかし、我の翼を一対だけ燃やし尽くすほど」
熱量も心意気も、挑むのならば、足りない。
三枚の翼に減ったところで、何がかわることか。
ドラゴンが如何に燃えようと、それはドラゴンテイマーとは関係ないことだ。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
純・ハイト
フェアリーが乗れるように性能を上げて魔改造されたレオパルト5で現れながらドラゴンテイマーと戦うが、戦車が破壊される又は「文明侵略」の攻撃で戦車が完全に壊れる前に脱出しながら自身の全力高速詠唱の爆破魔法で派手に爆破して黒煙で迷彩・目立たない・忍び足で隠れながら脱出するようにする。
脱出した後は隠れながらユーベルコードを発動して応戦、できるだけ大きなダメージを与えられるように死霊騎士を5千を自身の守備に回して、残りを黒竜ダイウルゴスの群れとドラゴンテイマーに向かわせて戦わせる。
厳しい戦いになるだろうがこの戦いに負けるわけにはいかない!
勝てるか心配だが戦ってみなければ分からないな。
●Extermination competition
「ほかの者と違う方法を模索したのか」
その場にて、ドラゴンテイマーよりも異質な音を引き連れて、純・ハイト(数の召喚と大魔法を使うフェアリー・f05649)は現れた。
フェアリーでも乗れるようにと改良の施されたそれは、何をするかわからない男の前で主砲をキラリと輝かせる。
「勝てるか心配だが戦ってみなければ分からないな」
独り言のようにハイトが呟けばドラゴンテイマーは、本来よりもやや少なくなった翼を広げて、レオパルトの眼前まで迫り、ハイトの前へ至り、左手を掲げて宣告した。
「そのような無機物を駆り、戦う前の敗北を約束しては過去が未来を喰らい尽くすも道理だ」
「……文明侵略(フロンティア・ライン)」
白いさざ波のような力がドラゴンテイマーから溢れると、不思議な力は無機物へ浸透するように溶け込む。
波打ったことが嘘のように何の衝撃もなくかき消えた、
砕けた地面を筆頭に、ざわざわと呼吸するように蠢く気配を感じれば有るべき姿から、文明を塗りつぶされた姿へと変化していく。
それは勿論、ハイトが繰り乗り込んできたレオパルトもそうだ。硬いはずの戦車がめりめり、ガリガリと、嫌な音を立てていることに気が付き、これ以上は危険を察知し、慌てて脱出しながら全力魔法詠唱で派手に爆散させんと爆炎を起こす。
「……な!?」
黒煙が上がれば一時的には身を隠し、囮として扱えただろう。だが、しかし。
砕けた地面も、先程まで内部に居たレオパルトも、やや離れ、視認したことで理解した。
……ドラゴン化、している。ドラゴンのようになっていく。
正確には、黒竜ダイウルゴスに迫る姿へ刻一刻と変貌していっているのだ。翼が生え、鎌首をもたげこちらに殺気を放つ群れへと変わっていく。内部に残っていたのなら、文字通り竜の腹の中だった。
全長50m全幅17m全高15m、その大きさを元に肥大化し、大きさの疎らな黒竜が一斉に地獄の産声を身を震わせて吼え猛る。
「いや、まだだ。……『霊界に住まう兵士達よ我が呼びかけに応えて現れろ』」
数には数を、と軍旗を振るい声を上げれば、霊界からの死霊がハイトの背後に並び控える。肉体を持ち、死したそれらはただ合図を待つ。呼び出された総数は無機物から群れとしたダイウルゴスの、10倍以上の戦力か。
「一師団を残し、残りすべての戦力で迎え撃て! 命ある限り!」
ハイトは残した戦力のど真ん中に飛び込み、声のある限り叫ぶと、霊の騎士らは偽りのドラゴンとテイマーへ怒涛のように駆け出した。
「殲滅戦だ、無作為に破壊の限りをつくせダイウルゴス」
『異議なし』
どこからともなく同意の声が響くと、ドラゴン化した魔力動力炉をフル回転させ、ドラゴンヘッドへ変貌した砲台から火炎のブレスのような砲撃をレオパルト・ダイウルゴスは吐き出す。半数がいとも容易く焼き払われ、あっという間に火の海になり、ハイトの兵団に甚大な被害を齎した。
頭数を戦争規模で揃えられても、対策が今ひとつ甘かったのだろう。ドラゴンとの戦争に気を取られ、守りを固めたとハイトは思っていたが、それは揺動に過ぎない。
数の海にドラゴンテイマーが紛れ込める余地を生み出してしまった。
「指揮官がやられては致命的な戦術だ」
「召喚合戦など張り合うだけ虚無である」
背後に殺意を感じた頃には既に遅く。ハイトの腹に赤き剣が突き刺さると同時に、師団全てが消え去った。血が、滴り落ちていく。一気に引き抜き、血を払った。
彼の剣は常にそこにあったもの、ユーベルコードを発動していない。
「それに」
ばさり、と翼を広げて変換された無機物のダイウルゴスへ一斉攻撃を合図すればハイトの姿は瓦礫の海に沈む。
「いつかの戦況を再現するようで、……忌々しい」
静観するのも十分と判断したのか、そう呟くと砕いた地面を元にしたダイウルゴスと共にドラゴンテイマーは飛び去っていった。
失敗
🔴🔴🔴