バトルオブフラワーズ⑫〜黒竜を駆る者
●謎多きドラゴンテイマー
第三の幹部怪人、ウインドゼファーも撃破され、猟兵達はいよいよドン・フリーダムへと王手をかけた。
だが、敵はドン・フリーダムだけではない。彼女の片腕として、システム・フラワーズの修復を手伝うドラゴンテイマー。その存在は今までに対峙して来た敵の中でも、特に多くの謎に包まれている。
「そういうわけで、今からあなた達には、ドラゴンテイマーとの戦いに向かってもらいたいの」
グリモアベースに集まった猟兵達へ、神楽・鈴音(歩く賽銭箱ハンマー・f11259)は敢えてドン・フリーダムの撃破ではなく、ドラゴンテイマーとの戦いを依頼した。戦略的に考えれば、彼を無視してドン・フリーダムを倒すのが正しいのかもしれないが、それでも妙にキナ臭いものが感じられるのも、また事実。
「ドラゴンテイマーについては、私も良く分かっていないわ。ただ、今までに戦って来た怪人幹部達を越える強さを持っているのは確かだけどね」
ドラゴンテイマーは六枚の翼と赤き剣の腕を持ち、『黒竜ダイウルゴス』を召喚することで戦う謎のオブリビオン。加えて、彼の技量は驚く程に高く、必ず猟兵達の先手を取って攻撃を仕掛けて来る。
小細工を仕掛けた程度でこっちが先手を取れないのは、ウインドゼファーの戦いと同様だ。おまけに、相手の攻撃は凄まじい威力を秘めており、無策で挑めば一撃で返り討ちに遭うのが関の山。
「はっきり言って、無視した方が得策かもしれない相手よね。でも、ドラゴンテイマーの目的には、少しだけ気になることがあるの」
鈴音の話では、どうやら彼は『グリモア』を求めているようなのだ。『グリモア』とは、猟兵達が世界を渡るための鍵。いったい、何故にそれを求めるのか。そこまでは、さすがに今の時点では分からない。
「なんとなく、嫌な感じがする……ただ、それだけで戦って欲しいっていうのは、我儘だとも思ってるわ。でも……」
ここで彼を放置することが、果たして本当に正しいのか。それを見極めるためにも、ドラゴンテイマーと対峙してはくれないか。
無茶な頼みだということは承知している。それでも、敢えて挑んでくれるというのであれば、是非とも彼と戦って欲しい。
そう言って、鈴音は猟兵達を、今までになく危険で謎に満ちた戦場へと送り出した。
雷紋寺音弥
こんにちは、マスターの雷紋寺・音弥です。
ドン・フリーダムを前にして、謎の敵、ドラゴンテイマーが現れました。
彼の撃破は戦争の勝利に直接影響しませんが、キナ臭い存在であるのは確かです。
●戦争シナリオについて
このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結する、特殊なシナリオです。
このシナリオの戦場は『⑫ドラゴンテイマー』になります。
●先制攻撃について
敵は必ず先制攻撃します。敵は、猟兵が使用するユーベルコードと同じ能力値(POW、SPD、WIZ)のユーベルコードを、猟兵より先に使用してきます。
この先制攻撃に対抗する方法をプレイングに書かず、自分の攻撃だけを行おうとした場合は、必ず先制攻撃で撃破され、ダメージを与えることもできません。
●ドラゴンテイマーについて
青丸が一定数以上溜まればシナリオはクリアになりますが、この戦場の戦力が残っている限り、ドラゴンテイマーは即座にエリア内の別の場所に復活します。
●判定について
強敵相手なので、判定はシビアに行います。
失敗や大失敗での返却になることもありますので、結果としてシナリオが失敗に終わる可能性もあります。
また、連携を希望される方は、連携を行う仲間が分かるように記載されていない限り、連携プレイングとして扱いませんので、ご了承ください。
第1章 ボス戦
『ドラゴンテイマー』
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POW : クリムゾンキャリバー
【赤き剣の右腕】が命中した対象に対し、高威力高命中の【黒竜ダイウルゴスの群れ】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD : ギガンティックダイウルゴス
レベル×1体の、【逆鱗】に1と刻印された戦闘用【大型ダイウルゴス】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
WIZ : 文明侵略(フロンティア・ライン)
自身からレベルm半径内の無機物を【黒竜ダイウルゴスの群れ】に変換し、操作する。解除すると無機物は元に戻る。
イラスト:ハルヨリ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
グルクトゥラ・ウォータンク
お前さんの同僚には手酷くやられたからの。悪いがリベンジに付き合ってもらおうか。
事前に義手の靱性強化と「電脳妖精」が操作が出来るよう【メカニック】で改造。UCへのデコイと反応速度強化が目的よ。切られた際に剣に貼りつくよう【罠使い】で罠も仕込む。
戦闘は初手で相手の【先制攻撃】に合わせ義手で【盾受け】し【グラップル】と粘着材で固定。
固定できたなら義手を切り離し「ランドメイカー」から鋼材をばら蒔きつつ距離をとりUCで攻撃開始。相手の竜は電脳妖精が【おびき寄せ】て【時間稼ぎ】。こちらへの追撃は鋼材の山を即席拠点として浪費しつつ回避。攻性電脳妖精は【マヒ攻撃】の電撃じゃから一撃でもかすればそのまま泥沼よ。
●
システム・フラワーズの中枢部。怪人3幹部を倒した更に先で待っていたのは、果たして最強の怪人であるドン・フリーダムだけではなかった。
「……来たか、猟兵」
紫色の異様な霧を纏い、男は静かに顔を上げた。
ドラゴンテイマー。その名が示す通り、漆黒の竜を駆る術に長ける謎のオブリビオン。彼もまたドン・フリーダムの計画に与するものだが、しかし明らかに他の怪人達とは様相が異なっている。
そんな彼の前に、現れたのはグルクトゥラ・ウォータンク(サイバー×スチーム×ファンタジー・f07586)。今の彼にとって、ドラゴンテイマーと他の幹部怪人の違いなど、些細なことに過ぎなかった。
「お前さんの同僚には手酷くやられたからの。悪いが、リベンジに付き合ってもらおうか」
「……下らん。誰に負けたのかは知らんが、その憤りを私にぶつけるのは、ただの八つ当たりではないのか?」
そちらの都合に付き合っている暇はないとばかりに、ドラゴンテイマーはグルクトゥラの言葉を切り捨てた。翼を広げ、一瞬にして間合いを詰める。その力強さと俊敏さは、伝説の竜に勝るとも劣らない。
「……ぐぅっ!!」
咄嗟に義手で斬撃を受け止めたグルクトゥラだったが、それでも凄まじい衝撃だ。ドラゴンテイマーの右腕から成る赤い刃。その一撃は、たった一振りしただけで鋼鉄をも切断し、グルクトゥラの義手に深々と食い込む程に強烈なもの。
「右腕を犠牲にして防いだか。その意気込みは良し。だが……」
まだ、こちらの攻撃は終わっていないと、距離を取ろうとするドラゴンテイマー。しかし、その腕と一体化した赤い刃を義手で掴んだまま、グルクトゥラもまた不敵に笑ってみせ。
「……なんだと?」
激しく蒸気が噴き出すと共に、グルクトゥラの肩から義手が外れた。だが、それは外れてもなおドラゴンテイマーの刃を掴んだまま、しっかりと食らい付いて離さなかった。
「これでもう、その刃は使えんのう。さあ、次はこちらの番じゃ」
言うなり、グルクトゥラは鋼材をばら撒きつつ、敢えて自分から距離を取った。反対に、ドラゴンテイマーへは多数の電脳妖精を向かわせる。もっとも、それに攻撃させるわけでもなく、広範囲に散開させることで弾幕のように展開させた。
「ほぅ……自らの腕を捨て、距離を取って攻撃を阻むか。確かに、悪くない選択だ。だが……」
奇策からの反撃に、ドラゴンテイマーも多少は感心した素振りを見せた。しかし、それでも彼にとっては、距離が離れたところで関係はない。義手とはいえ、一撃を食らわせることができた以上、黒竜を呼ぶ準備は既に整っている。
「行け、ダイウルゴスよ。そして、全てを食らい、破壊せよ」
ドラゴンテイマーの呼び声に応え、空間を越えて呼び出される黒竜の群れ。一匹だけでも人を屠るのには十分過ぎる強さを持った存在だが、ドラゴンテイマーはそれらを群れ単位で使役する。
「……やれ」
主に命じられるまま、黒竜達はグルクトゥラへと向かって行く。彼らの標的は、ドラゴンテイマーが攻撃を命中させた対象だ。故に、義手を捨てたことで、攻撃はそちらへ向くと踏んでいたグルクトゥラだったが、甘かった。
「なんと!? 義手を無視して、こちらに向かって来るとは!!」
鋼材を蹴散らし、自分の下へと突撃して来る黒竜の群れを前に、グルクトゥラは驚きを隠し切れなかった。
もっとも、ドラゴンテイマーにとっては、この程度は予測の範疇だったのだろうか。余裕な態度を崩すことはなく、あくまで淡々とした口調でグルクトゥラへと告げる。
「ダイウルゴスは、私の赤き刃で斬られた者を狙い攻撃する。そして……その一撃で腕を斬り飛ばしたからといって、本体を無視して腕だけを食らいに行くという道理もあるまい」
義手とはいえ、身体の一部として用いていた以上、あれはあくまでグルクトゥラの肉体だ。そして、攻撃を受けた部位が千切れたり、斬り飛ばされたりしたところで、黒竜はあくまで初撃が命中した相手の『本体』を狙って攻撃するのだと。
「ぬぅ……ならば、その狙いは電脳妖精を使って逸らすのみよ!」
それでも、まだ自分には策があると叫ぶグルクトゥラだったが、彼の駆る電脳妖精達の挑発も虚しく、黒竜はグルクトゥラへと真っ直ぐ向かって来た。
「私の使役下にある以上、ダイウルゴスは私の命令を優先する。野生の獣や三下の戦士と一緒にされては困るのだよ」
本能のままに暴れ回る存在であれば通用したかもしれないが、ドラゴンテイマーの繰り出すダイウルゴスは、彼の指揮の下、統率の取れた群れとして敵を屠る。故に、標的を見誤ることもなければ、我を忘れて目の前の何かに飛び掛かることもない。
「……終わりだな。私の攻撃を阻止しようとした手腕は評価できるが、それだけでは私に勝つことはできん」
「ぬ、ぬぉぉぉぉっ!!」
黒き竜の海嘯に飲み込まれて行くグルクトゥラに背を向け、ドラゴンテイマーは静かにん目を閉じた。
これで終わった。後は、せめて苦しませぬよう、一撃で止めを刺してやろう。そう思い、ダイウルゴスの群れを下がらせて徐に振り返った瞬間、ドラゴンテイマーの全身を、今までになく強烈な電撃が走り抜けた。
「……っ! なん……だと……」
明滅する視界。あまりに強過ぎる電圧に膝を付いたが、それさえも理解するのに数秒を要した。
これは何だ。いったい、どこからの攻撃だ。目を凝らしてみるも、敵の姿は見えず。耳を澄ませば微かな音を捉えられるも、そちらに視線を向けた時には既に遅く。
「……ふ……ふふ……。見たか! こいつらこそが……正真正銘の本命よ……!」
噛み砕かれ、崩れ落ちた鋼材の残骸を押しのけ、グルクトゥラが口元の血を拭いながら叫んでいた。既に満身創痍な状態ではあったが、それでも彼は笑っていた。
視認することさえ難しい速度で飛び回る、高電圧を纏った攻性電脳妖精。それを放つことさえできれば、勝機はある。先程までの行動は、全てこの攻撃を当てるための布石。細かいところで、多少の失敗があっても些細なこと。最後の最後で、とっておきの本命を当てることができたのであれば、少なくとも一矢は報いたことになる。
「……少しはできるようだな……。だが……片腕を失ったその身体で……私とやり合って勝てるつもりか?」
左手で肩を抑えながらも、ドラゴンテイマーがゆっくりと立ち上がった。身体に痺れこそ残っていたが、それでもこのまま戦った場合、グルクトゥラに勝ち目がないのは明白だった。
ここは一先ず、退却しよう。追撃を警戒し、最後まで電脳妖精達を使って防壁を張るグルクトゥラだったが、しかしドラゴンテイマーは追って来るような素振りを見せず。
(「これが猟兵か……。なるほど、少しは楽しませてくれそうだな」)
全身に残る後遺症。巨像でさえ失神させる程の電撃を浴びて、ドラゴンテイマーにはグルクトゥラに止めを刺そうにも、身体の痺れから追いかけることができなかったのだ。
成功
🔵🔵🔴
オーガスト・メルト
お前は嫌な匂いがする。
竜を「使う」だけの奴だ。
そういう奴を見逃がす訳にはいかないなぁ。
【POW】連携・アドリブ歓迎
今回はデイズ、ナイツは両肩に乗せて、焔迅刀を構えて会敵。
敵が先に来るのは分かってる。
とにかく攻撃を【見切り】つつ、急所を【オーラ防御】で【かばう】
可能なら直撃を避けて攻撃を【なぎ払い】たいがな。
いくぞ、デイズ、ナイツ、UC【真竜顕現】だ!
『うきゅるるるるる!』『うにゃらららら!』
真竜二体による【二回攻撃】の炎と雷の【属性攻撃】ブレス、そして爪の【鎧無視攻撃】を放つ。
そして、本命は俺の【ダッシュ】で接近しての【吹き飛ばし】斬撃!
これが、竜と共に戦うってやつだ。
●力と強さ
竜。それは時として人に仇成す存在でありながら、しかし人知を超えた神々の化身として人に崇められることもある。
果たして、竜は善か、悪か。その違いを生むものが何かを知っているオーガスト・メルト(竜喰らいの末裔・f03147)にとって、ドラゴンテイマーは最も憎むべき相手の一人。
「お前は嫌な匂いがする。竜を『使う』だけの奴だ。そういう奴を見逃がす訳にはいかないなぁ」
「では、私を倒し、己の正義を証明してみるがいい。……できるものならば、な」
元より、話をするつもりさえなかったのだろう。ドラゴンテイマーは一気に距離を詰め、赤き剣の右腕にて斬撃を繰り出して来る。その速さと正確さは、今までに猟兵達が戦って来た怪人3幹部の比ではない。
(「……間に合わないっ!!」)
相手の斬撃の軌道を見切った瞬間、オーガストの脳裏に浮かんだのは、自分の心臓が貫かれるという未来だった。
敵の力と繰り出される突きの鋭さからして、こちらの武器で薙ぎ払うことは不可能だ。辛うじて身体を捻り、闘気を集中して急所を貫かれることだけは防いだが、それでも肩に深々と刃を突き立てられたことで、周囲に鮮血が飛び散った。
「やるな……でも、まだだ! デイズ、ナイツ、真竜顕現だ!」
両肩に乗せた白と黒の小竜。主からの命を受け、彼らは真の姿を解き放つ。槍や二輪車といった道具ではなく、太陽と月の力を宿した竜帝の姿へと。
「うきゅるるるるる!」
「うにゃらららら!」
二匹の小さく愛らしい声が響いたが、それは直ぐに大地を揺るがし、天をも震わせる咆哮へと変わった。
迎え撃つは、黒竜ダイウルゴスの集団だ。敵は多いが、個々の力では勝っているはず。オーガストに迫るダイウルゴス達を、デイズとナイツは炎や雷のブレスで叩き落とし、堅牢な甲殻でさえも爪で易々と引き裂いて行く。
雷鳴、爆音、そして咆哮。あらゆる音が混ざり合い、焦げた肉片が降り注ぐ。力尽きたダイウルゴスの残滓。それらに構うことなく突進し、オーガストは横薙ぎの斬撃でドラゴンテイマーを吹き飛ばした。
「これが、竜と共に戦うってやつだ」
今のは確実に決まったと、オーガストは確かな手応えを感じた。だが、ドラゴンテイマーは間髪入れず翼を広げると、それを使って宙を舞い、一瞬で体勢を整えてみせた。
「なるほど……お前達の絆とやら、見せてもらった。確かに、あの二匹は強い。それは認めよう」
だが、それに比べて、オーガスト自身の攻撃は随分と軽い。まさか、この程度でこちらを仕留めようと思っていたのかと、ドラゴンテイマーは失意とも受け取れる溜息を零し。
「私を倒したいのであれば、相応の力を持った攻撃で挑め」
単に吹き飛ばした程度で勝った気になられては困ると告げ、ドラゴンテイマーは再びオーガストへ肉薄した。ユーベルコードでもない、単なる斬撃で仕掛けるのであれば、人知を超えた強大な力や、鎧をも砕く破壊力を以てしなければ、到底差を埋めることなど叶わない。
「……ぐっ!!」
互いに刃を振るい、交錯する二人。花弁の回廊に着地した瞬間、オーガストの肩から凄まじい勢いで鮮血が吹き出し、彼の足が崩れ落ちる。
急所を狙うと見せかけ、ドラゴンテイマーが狙ったのは、先の攻撃でオーガストが傷つけられた部位だった。そこを狙い、二重に斬り付けることで、闘気の防御さえも貫いて、彼に深手を負わせたのだ。
黒竜ダイウルゴスの群れを迎撃することだけを考えてしまい、二匹の竜に力の大半を与えてしまったのは拙かった。ダイウルゴスは強力な竜だが、敵の本体はあくまでドラゴンテイマー。ユーベルコードに頼らないのであれば、一撃で彼に深手を追わせられる工夫が必要だったが、そこまでの余力がオーガストにはなかった。
「お前は言ったな。私が竜を『使う』だけの存在だと。だが、そこに絆があるか否かなど、戦いにおいては些細なことだ」
黒竜ダイウルゴスが自分に従うのは、あくまで自分自身が強いからだと、ドラゴンテイマーは当然の如くオーガストに告げた。竜でさえも屈服させるだけの力。それを持っているからこそ、自分はこれだけのダイウルゴスを従えることができる。共に戦うというのも結構だが、それでも最後に勝敗を決めるのは、他でもない純粋な力そのものだと。
「猟兵よ、ひとつだけ教えてやろう。人も獣も、そして竜も、勝者に従うものなのだ」
己の正義を通したければ、互いに竜を使わぬ勝負で、実力を以て自分を屈服させてみるがいい。
血溜まりに沈み、デイズとナイツに咥えられて去って行くオーガストへドラゴンテイマーから告げられたのは、冷たく厳しい現実だった。
苦戦
🔵🔴🔴
仁上・獅郎
紅さん(f01176)と共に。
妖刀を手に、接近戦。
剣術の[戦闘知識]を引き出し、動きを[見切り]、
風切り音に[聞き耳]を立て、[第六感]を使い、[武器防御]で斬撃を阻み――
とにかく前へ、前へ、十分に剣を振るえない間合いへ。
右腕が当てる事で群を呼ぶならば、徹底的に防ぐのみ。
それ以外の傷は全て[激痛耐性]で凌ぎ、技を潰す事に集中。
紅さんに傷一つ付けさせませんし、ドラゴンの群も呼ばせませんよ。
この距離なら僕も攻撃できない? 否、この距離だからこそ。
片手に拳銃を召喚、[クイックドロウ]で撃ち抜ける――条件は整いました。
【緑眼触手】、邪神の触手からは逃れられませんよ。
では紅さん、トドメは任せましたよ?
朧・紅
獅郎さん(f03866)と一緒に
紅の人格で行動
むぅ、獅郎さんはやっぱり無茶をするです…
僕は距離を置きサポート
輸血パックから透明にした頑丈なゴム状の強度の【血糸】を伸ばし赤き剣の右腕を動かせぬ様、飛べぬよう、動けぬ様【ロープワーク】で拘束
切り込みやすくするですね
お気持ちはうれしいですがご自分が怪我をされたら世話ないのです(怒
緑眼触手が当たれば【ダッシュ】
勢いのままゴム状の【血糸】の伸縮性を利用して肉薄、膝から自身の血で特大の【血糸】の刃を生やしガラ空きの心臓に膝蹴り突き立てる
ダメ押しに刺さった刃からさらに四方八方に血の針を伸ばし串刺しにするですね
獅郎さんを傷つけたことを後悔するのです
アドリブ歓迎
●絆が呼ぶ甘さ
圧倒的な強さを誇るドラゴンテイマー。個人での力量も然ることながら、彼の使役する黒竜ダイウルゴスもまた、それぞれが強力なオブリビオンに匹敵する戦闘力を秘めている。
独りで挑んでも敵わない。ここは仲間と力を合わせることが必要だと判断し、仁上・獅郎(片青眼の小夜啼鳥・f03866)と朧・紅(朧と紅・f01176)は、互いに協力してドラゴンテイマーへと挑む。
「ほう、次は二人掛かりか。確かに戦いを制するのは数だが……そこに質が伴っていなければ、意味もあるまい」
「言ってくれますね。僕達の質が伴っていないかどうか、その身に教えてあげますよ」
さすがに、聞き捨てならないと憤る獅郎だったが、それでもドラゴンテイマーは、彼の言葉など意にも介していないようだった。
ここは戦場。語りたければ、力で語れ。それだけ言って、ドラゴンテイマーは翼を広げ、一気に距離を詰めて来る。
そのスピードは風よりも早く。その力は、彼の使役する魔竜の如く。
まともに戦って、先手を取ることは不可能だ。ならば、せめて軌道を読んで立ち向かおうと、意識を集中させる獅郎だったが。
(「正面から来ない!? これは……」)
上にいる、と気付いた時には遅かった。
翼を広げたドラゴンテイマーが、恐ろしい速度で降下して来る。思わず妖刀を抜き、身構える獅郎だったが、しかしドラゴンテイマーの狙いは彼ではない。
「……甘いな。まさか、自分が抜かれないとでも思っていたのか?」
急降下の後、花弁の床を蹴って、ドラゴンテイマーが肉薄したのは紅の方だ。彼は最初から、先制に対して何の対策もしていなかった紅の方を狙っていた。慌てて追う獅郎だったが、紅が彼と距離を置いていたことが災いした。
いかに知識を得て、相手の動きを見切ったところで、それに自分の身体能力が追い付かねばなんの意味もない。
敵は怪人3幹部をも超える強さを持つドラゴンテイマー。こちらから仕掛けることはおろか、自分がいつ狙われるかも解らない状況で、仲間の身まで庇えるほどの余裕を与えてくれる相手ではなかった。ましてや、空を飛べない獅郎では、空中そのものが大きな死角となってしまう。
「……あっ……」
花弁が舞い散り、鮮血に染まった。ドラゴンテイマーの右腕と一体化した赤刃は、寸分の狂いもなく紅の胸元を貫いていた。
「戦場で仲間を信頼するのは構わん。だが、それに身を委ね過ぎ、己の守りも警戒も、全てをお前に任せてしまったことが、この女の敗因だ」
血黙りの中に紅の身体を放り捨て、ドラゴンテイマーは獅郎へと向き直った。
互いに背中を合わせて死角を潰す。どちらが先制攻撃を食らっても構わないよう、個人レベルで最良の防御策だけは用意しておく。考えられる策は、いくらでもあったはずだ。
どれだけ信頼できる仲間がいたところで、敵の力が上回っている以上、信頼だけでは勝つことはできない。相手の先制攻撃に対して最低限の用意さえしていなかった紅が先に狙われたのは、考えてもみれば当然の話。
「次はお前だ。いや、その前に、黒竜にあの女を屠らせるのが先か」
「そう好きにはさせませんよ。紅さんに傷一つ付けさせませんし、ドラゴンの群も呼ばせません!」
このまま紅を見殺しにはできないと、獅郎は果敢にドラゴンテイマーへと斬り掛かって行く。だが、ドラゴンテイマーは彼の斬撃を右腕の変じた赤き刃で軽々と受け、余裕の笑みを浮かべながら、配下の黒竜ダイウルゴスを召喚した。
「さあ、食らい尽くせ、ダイウルゴス。全てを蹂躙し、破壊するのだ」
花弁の回廊に、突如として現れる漆黒の竜。それは倒れて起き上がれない紅だけでなく、獅郎の方へも向かって来る。
先程、獅郎の斬撃を受け止めたドラゴンテイマーだったが、単に受け止めているだけではなかった。黒竜ダイウルゴスが赤い刃で斬り付けた人間を狙うなら、刃と刃を交錯さている、獅郎の方へも向かって来るのが道理である。
「くぅっ……!」
次々と襲い来るダイウルゴスの群れ。その攻撃による痛みへ賢明に堪える獅郎だったが、痛みに耐えても身体が傷付くのを止められたわけではない。
武器で受けようにも、ドラゴンテイマーと斬り結んだ状態では、背後まで覆うことはできなかった。そこを狙い、続々と飛来する黒竜の群れ。爪が、牙が、獅郎の背後から容赦なく襲い掛かり、彼の命を削って行く。
「仲間を信頼し過ぎれば、それは慢心を呼ぶきっかけとなる、か……。皮肉なものだな、猟兵よ」
視界が暗転する中、獅郎の耳に聞こえたドラゴンテイマーの声。己の甘さを呪った瞬間、獅郎の意識は、そこで途切れた。
失敗
🔴🔴🔴🔴🔴🔴
龍ヶ崎・紅音
アドリブ・絡み歓迎
【POW】
とりあえず、"赤き剣の右腕"による攻撃を【気合い】と【勇気】で回避するよ
最初の一撃は、先制攻撃してくることは分かっているからかわしやすいけど相手はかなりの手馴れ、油断せずにかわすよ
もし、かわしきれそうにないなら【武器受け】をして、召喚してきた"黒竜ダイウルゴスの群れ"をドラゴンテイマーごと、【捨て身の一撃】のように『煉獄猛焔波動』で焼き尽くすよ
また、ドラゴンテイマーからの攻撃の隙を突いて、焔【属性攻撃】の「黒焔竜剣」で【なぎ払い】や【力溜め】の【鎧砕き】、距離をおいて「槍焔竜「ホムラ」」で【怪力】任せの【槍投げ】での【串刺し】ですこしでもダメージを与えるようにするよ
●紅炎の意地
恐るべしは、ドラゴンテイマー。次々と挑んで来る猟兵達を、彼は容易くねじ伏せ、敗退させて行く。
さすがは、怪人3幹部を越える力を持つ相手だ。しかし、それで怯んだら全てが終わり。ここで退くわけにはいかないと、龍ヶ崎・紅音(天真爛漫竜娘・f08944)はドラゴンテイマーと対峙する。
(「さすがに、今までの相手とは格が違うわね。攻撃の隙を突こうと思ったけど……そもそも、やたらに隙を見せるような相手じゃない、か……」)
どんな相手でも攻撃の瞬間や終わりに隙が出るはずだと踏んでいた紅音だったが、それ以外の隙は、ドラゴンテイマーには存在していないようだった。
相手が先に仕掛けて来るなら、それに合わせて槍を投げるか。否、それは駄目だ。その程度であれば相手も反応して来るだろうし、こちらも相手の攻撃を防ぐだけの時間がなくなってしまう。万が一、攻撃に失敗でもすれば、その先に待つのは一方的に屠られる未来だけ。
やはり、勝負を仕掛けられるのは一瞬だ。その一瞬を見極めるため、紅音は敢えて気力だけでドラゴンテイマーの攻撃を受けんと身構えるが。
「無駄だ。気合いだけで避けられるほど、私の攻撃は甘くない」
さすがに、気力のみでどうにかできる程、ドラゴンテイマーの攻撃は緩くなかった。
「……っ!!」
慌てて敵の赤刃を剣で受け止めたが、それでも凄まじい衝撃だ。思わず、このままカウンターを決めてやろうかと思ったが、しかし敵の攻撃はまだ終わってはいない。
「……来い、ダイウルゴス!」
ドラゴンテイマーの言葉に導かれ、次々と現れる漆黒の竜。あれの攻撃をなんとかして凌がねば、仮に一太刀浴びせたところで、自分の戦いはそこで終わる。
「現れたわね、黒竜。でも……私は、それを待っていたのよ!」
「なんだと……?」
互いに刃を斬り結んだまま、紅音は不敵に笑って見せた。訝しげな表情で警戒するドラゴンテイマーを余所に、彼女は焔の翼を大きく広げ、高ぶる感情のままに燃え上がらせ。
「みんなまとめて燃えちゃえ!」
瞬間、翼から放たれた獄炎が、紅音を中心に全ての敵を飲み込んで行く。ドラゴンテイマーも、黒竜ダイウルゴスも関係ない。紅蓮の炎は迫り来る黒竜を、その主たるドラゴンテイマー諸共に、徹底的に焼き尽くしたのだ。
「……はぁ……はぁ……。どう? 自慢の黒竜を、丸焦げにされた気分は?」
「お前……さては、最初から捨て身で挑むつもりだったな……」
全身から黒い煙を上げながら、ドラゴンテイマーは紅音を睨んでいた。さすがに、この程度で倒れはしないが、それでも少なくないダメージを負ったのは明白だった。
もっとも、己の身を顧みず攻撃に転ずれば、紅音とて無事では済まない。現に、倒し切れなかった黒竜達の攻撃をまともに受けてしまい、彼女もまた傷を負っていた。
捨て身の技は、一撃必殺。己の身を代償に繰り出すからこそ、そう何度も使えるものではない。
「猟兵よ……お前の覚悟、見せてもらった。まさか、私のダイウルゴスが、ここまで多く倒されるとはな」
「悪いけど、こっちも伊達で世界を守ってるわけじゃないのよ。これ以上、戦えないのが、ちょっと心残りだけどね……」
片膝を付きながらも、紅音は満足そうに笑みを浮かべ、再び炎の翼を広げて宙を舞う。
自爆に等しい方法でユーベルコードを放った故、これ以上の無理はできない。已む無く撤退する紅音だったが、それでも戦果としては十分だった。
怪人3幹部をも超える強敵に、地獄の炎の直撃を食らわせてやったのだ。正に、起死回生の一撃。これを機に、戦いの流れが再び猟兵達の方へ向くのであれば、それが何よりの幸いだと。
成功
🔵🔵🔴
フレミア・レイブラッド
POW
かなりの強敵みたいね…悪いけど、出し惜しみは無し。全力でやらせて貰うわ…!
【念動力】で敵の先制攻撃の動きを一瞬でも拘束または逸らす事で回避や防御の時間を稼ぎ、【見切り、第六感、残像】で回避や魔槍による【武器受け】と【念動力】のバリアで防御を行うわ。
発動が間にあえば【吸血姫の覚醒】による速度や膂力も活用。
後はそのまま黒竜の群れを全速力の超高速で掻い潜り、邪魔な竜は【念動力】で拘束か【怪力】と覚醒の膂力を以て魔槍で吹き飛ばし、ドラゴンテイマーに全力の一撃を叩き込ませて貰うわ!
貴方だけ明らかに別格なのよね…ここで倒させて貰う!!
※アドリブ等歓迎
●覚醒、吸血姫
紅音の、文字通り捨て身の一撃によって、ドラゴンテイマーとの戦いは、ようやく猟兵達へと風向きが変わって来た。
だが、それでも予断を許さない状況であることに変わりはない。猟兵達が少しでもしくじれば、この戦いはドラゴンテイマーの勝利に終わる。一方で、ドラゴンテイマーの方は、完膚なきまでに叩き伏せられても、辛うじて立ち上がるだけの余力を残している。
絶対に失敗は許されない戦い。故に、何かを試すことも、気を抜くことも許されない。それを知っているからこそ、フレミア・レイブラッド(幼艶で気まぐれな吸血姫・f14467)もまた最初から全力で挑む姿勢を崩さない。
「かなりの強敵みたいね……。悪いけど、出し惜しみは無し。全力でやらせて貰うわ……!」
「ならば、私も遠慮は不要ということだな。せいぜい、足掻いてみせろ、猟兵よ」
ここで彼女を倒せば勝てると分かっているのか、ドラゴンテイマーも最初から全力で仕掛けて来る。気が付いた時には右腕の赤刃の間合いまで距離を詰められ、もはや避けることはできそうになかった。
(「ユーベルコードの発動は間に合わない! だったら……」)
刃に意識を集中させることで、ドラゴンテイマーの攻撃を少しでも逸らそうとするフレミアだったが、なにしろ相手は自分と比べても格の違う存在。
全力で念をぶつけても、せいぜい急所に直撃をもらわないようにするのが精一杯だった。スピードで対抗しようにも、そもそも相手の方が速い故に、残像を伴う程の動きでさえも気休め程度。
だが、それでもフレミアは諦めなかった。元より、この程度の小細工でどうにかなるとは思っていない。己の持てる勅勘と動体視力全ても使い、辛うじて敵の斬撃の軌道だけは見切る。その上で、魔槍に念を集中させ、斬撃を柄で受け止めた。
「ほぅ……これを受けたか。この間合いなら、一撃で首を刎ね跳ばせたと思ったのだがな」
「……甘く見ないで欲しいわね。避けることはできなくても、全力で防ぐくらいは、ユーベルコードがなくてもできるんだから」
赤い刃と赤い魔装が、それぞれ交差して火花を散らす。戦闘力ではドラゴンテイマーの方が圧倒的に上だが、持ち前の怪力に念を上乗せすることで、フレミアもまた敵の斬撃を押し返す。
「私に力で拮抗するか……。だが、初撃で死ねた方が、むしろ幸せだったかもしれんぞ」
膠着した状態のまま、ドラゴンテイマーがフレミアへと告げた。そう、彼の攻撃は、まだ終わっていない。続く第二波、黒竜ダイウルゴスの群れによる、圧倒的な数の暴力が残っている。
「行け、黒竜ダイウルゴスよ! 全てを食らい、全てを破壊せよ!」
主の命を受けた黒竜達が、どこからともなく現れ、フレミアへと狙いを定めて襲い掛かって来た。
前後左右、あらゆる角度からの一斉攻撃。おまけに、ドラゴンテイマーと斬り結んでいる以上、今のフレミアには逃げ場がない。
このまま硬直していれば、成す術もなく黒竜の餌食だ。が、しかし、そんな状況であるにも関わらず、フレミアは随分と落ち着いていた。
「悪いけど、こっちもまだ、本当の意味で本気は出してないのよね。……我が血に眠る全ての力……今こそ目覚めよ!」
迫り来る黒竜の群れを前に、フレミアはついにジョーカーを切った。
瞬間、彼女の瞳が見開かれ、その身に凄まじい闘気を纏った姿へと変化する。が真祖に由来する爆発的な魔力を解放し、高位の竜でさえも屠るだけの力と、翻弄するだけのスピードを得る姿へと。
「……なにっ! その力……それが、お前の真の姿ということか」
今までとは雰囲気の異なるフレミアの様相に、さすがのドラゴンテイマーも、危険なものを感じ取ったようだ。その僅かな心の動揺を見逃さず、フレミアは敢えてドラゴンテイマーを蹴り飛ばして距離を取り。
「悪いけど、余計な敵と戦うつもりはないわ。わたしの狙いは、貴方だけよ!」
追い縋る黒竜達の攻撃を槍で捌き、時に尾を掴んで振り回し、フレミアは再びドラゴンテイマーとの距離を詰めて行く。自分の魔槍が最も効率よく敵を斬り裂き、貫ける間合いで仕掛けるために。
格上の敵と戦う場合、普通に戦っただけでは効果的なダメージを与えられない。しかし、ユーベルコードを使って攻撃しようにも、そう何度も必殺の技を使わせてくれるほど、敵も甘くはないはずだ。
だからこそ、フレミアは自らの肉体を強化することで、長期に渡りドラゴンテイマーと戦うという手段を選んだ。そのためには、自分の持てる全ての技能を使い、あらゆる可能性に備えることも忘れない。そして、ユーベルコードの発動に成功した後も、持ち前の怪力を更に上乗せして戦えば、いかに相手が上位存在であっても勝機はある。
「己の全てを使い、私と互角に戦えるだけの力を得る布石としたか。……いいだろう。ならば、そちらの気が済むまで、刃を重ねてやろうではないか、猟兵よ」
迎え撃つドラゴンテイマー。だが、フレミアの攻撃を受け太刀しようとしたところで、刃諸共に強引な斬撃で叩き伏せられた。
刃で槍に真っ向から力勝負をするならば、刃の使い手は槍の使い手の2倍に等しい力がいるという。ドラゴンテイマーであれば、その条件は十分に満たしていたが、しかし強化された今のフレミアが相手は、もはやその限りではないのだ。
「貴方だけ明らかに別格なのよね……。ここで倒させて貰う!!」
赤い槍が宙を舞い、黒竜を蹴散らしながらドラゴンテイマーの身体を貫く。ようやく、フレミアが体力の限界を悟って退いた頃には、ドラゴンテイマーに残された命は、もはや風前の灯火だった。
大成功
🔵🔵🔵
チャド・アランデル
【心情】
こいつを逃したら、後々不味い気がするよねー。
今回の異変も元凶はこの人みたいだし、痛い目見てもらわないとねー。
【戦闘】
【チャドの薬瓶】を薬として使用、口に含み振り掛けながら回復を行う。
【チャドの結界石】を範囲を自分に指定して発動【身代わりの木】でダメージを【かばう】という防御策。
ダイウルゴスの攻撃を【野生の勘】で【見切り】【激痛耐性】で耐えながら【逃げ足】を生かし時には【武器受け】したり【敵を盾にする】事により回避に専念。
機を見て選択UCによる【範囲攻撃】、ダイウルゴスへの対処を【フェイント】とし【目立たない】よう【動物使い】で蛇を使役しドラゴンテイマーへ【暗殺】を仕掛ける。
●虚構と現実の狭間で
首領、ドン・フリーダムが倒された。未だドラゴンテイマーとの戦いを続ける猟兵達の耳に入って来たのは、システム・フラワーズの掌握を目論む怪人軍団の長が、ついに討伐されたとの報だった。
これで、この世界は滅亡から救われる。だが、戦いを終えるのは、まだ早い。ドラゴンテイマーを残して撤退すれば、後の憂いになるのは目に見えていた。
倒せるものなら、倒しておきたい。もっとも、その強さはドン・フリーダムに勝るとも劣らないものであり、そう簡単に勝たせてくれるはずもない。
長引く戦いにより追い込まれているとはいえ、それでもなお、戦況はドラゴンテイマーが優勢だった。
今までの戦いで傷ついた者達の数を考えれば、仕掛けられるのは、せいぜい後一回が限界だろう。その上で、ドラゴンテイマーに圧倒的な大差を付けて勝利するか、もしくは大きなダメージを与えなければ勝ち目はない。
「こいつを逃したら、後々拙い気がするよねー。今回の異変も元凶はこの人みたいだし、痛い目見てもらわないとねー」
どんな小さな失敗も許されない戦い。そんな苦境に、チャド・アランデル(キマイラのシーフ・f12935)は、敢えて一人で戦うことを選択した。
複数でかかれば、もしかすると悪くとも痛み分け程度には持って行けるかもしれない。今までの戦いで疲弊している現状のドラゴンテイマーであれば、多少の犠牲は已む無しと割り切れば、別に悪い作戦でもない。
だが、それでも敢えて単身で挑んだチャドには勝機があった。今まで、他の猟兵達が紡いで来たドラゴンテイマーとの戦い。その中に必ず勝利への布石が隠されていると信じ、彼は入念に作戦を練って準備をした上で、ここにいる。
「キマイラか……。勝敗は既に決したが、それでも私の首を欲するというのだな」
その欲望もまた、人が人であるが故の業。全てを納得したように頷いて、ドラゴンテイマーは片手を上げると、自らの眷属たる黒き竜を呼び出した。
「出でよ、黒竜ダイウルゴス。蹂躙し、破壊せよ……」
広がる紫霧。空間が割け、稲妻が走り、裂け目から深淵が顔を覗かせる。
その中より出でしは、漆黒の竜。喉元の鱗に数を刻まれ、ドラゴンテイマーの命ずるままに、あらゆる存在を駆逐する魔性。
「……っと! そう簡単には、捕まらないんだよ!」
迫り来る黒竜を前に、チャドは逃げた。体格差と数の差を考えた場合、あの竜の群れと戦うのは、あまりに無謀と言わざるを得ない。
爪が、牙が、次々にチャド目掛けて降り注ぐも、紙一重でそれらを避けて行く。単に、逃げ足の速さを生かすだけではない。己の内に秘めたる野生の勘を信じて相手の攻撃の軌道を見切り、時に敵の影に入り込むことによって、敢えて後続が攻撃し難い位置取りを確保する。
およそ、考えられる限り全ての策を使って、チャドは回避に専念していた。そんな彼に、さすがに苛立ちを隠し切れなかったのだろうか。
「……どうした、猟兵よ。逃げ回っているばかりでは、私の首を取ることは出来んぞ」
遊びに付き合っている暇はない。それだけ言って、ドラゴンテイマーは黒竜達を融合させる。逆鱗に刻まれた数は、1から3へ。数的有利を維持しつつ、能力の底上げを図ることで、チャドを確実に仕留めるつもりらしい。
(「結界と身代わりの木を使っても、耐えらえるのは、せいぜい1発……。かすり傷以外は、薬瓶でも治し切れない……」)
自分の持つアイテムの効果や限界と相談しつつ、チャドは懸命に頭を働かせ、仕掛けるタイミングを計っていた。
ユーベルコードでない以上、道具の効果は気休め程度だ。痛みに耐える術は持っているが、しかしダメージを軽減する術を持っていない以上、直撃を急所に食らった時点で自分は負ける。
(「さすがに、そろそろヤバいかな? でも、時間は十分に稼げたさ」)
心の奥底で浮かべる微笑。にやりと笑ったチャドのそれに、ドラゴンテイマーは気付かなかった。
それこそが、チャドの狙っていた隙でもある。どのような強敵であれ、勝利を確信した時点で、心の中には少しばかりの慢心が生まれる。その隙を突くことが、苦境を覆す鍵となる。
「それじゃ、逃げるのも、そろそろ終わりにしようか。……綺麗な蛇には毒があるよー!」
黒竜達が力を求めて数を犠牲にしたことで、手数が少しばかり減じた今こそ仕掛ける好機。己の内に眠る爬虫綱の因子。それを色鮮やかな大蛇として、周囲にいる全ての敵へと解き放つ。
「なるほど、お前の使役するのは蛇か。だが……どれだけ巨大な獣であれ、ダイウルゴスの前では獲物に過ぎん」
もっとも、チャドの放った蛇を見ても別段驚くまでもなく、ドラゴンテイマーはダイウルゴスを巧みに操り、それらを次々と捕食させて行った。
大蛇と黒竜。同じ、何かを召喚する類のユーベルコードであれば、呼び出す存在の格で勝負は決まる。異界の魔獣や吸血鬼でさえも屠る大蛇でさえ、強化されたダイウルゴスの前では、単なる餌に過ぎないのだ。
「万策尽きたな、猟兵よ。最後はせめて、私の手で葬ってやろう」
勝利を確信し、ついにドラゴンテイマーが自ら動いた。右腕が変じた赤い刃が振るわれる。チャドの反応を以てしても、避けることが困難な程に鋭く、速い一撃を繰り出して。
「……っ! あ、危なかった……」
一撃で結界と身代わりの木を砕かれ、それでも迫る斬撃を、チャドは辛うじて武器で受け止めた。が、やはり力では相手の方が上なのか、彼の身体は早くも後に押され始めていた。
「見苦しいぞ、猟兵。無駄に生き長らえたところで、お前の苦痛が増すだけだ」
「……そ、それはどうかな? そっちこそ、勝ったと思って、あまり気を抜かない方がいいんじゃない?」
交差する赤刃と黒刃。敵の刃が首元まで迫ったところで、チャドはついに、最後の罠を発動させる。今まで、逃げ回ることで積んで来た布石。その全ては、この一瞬のためだけに。
「終わりだ、猟兵。その黒刃ごと、我が黒竜の餌食とな……っ!?」
止めの一撃として振るわれるはずだった赤刃。それがチャドの首を刎ねるよりも先に、崩れ落ちたのは他でもないドラゴンテイマーの方だった。
「ば……馬鹿……な……」
首元に走る激しい痛み。手を伸ばし、触れたところで、それが先にチャドが放った大蛇の内の1匹であると知ることができた。
まさか、あのダイウルゴスの群れから逃れ、攻撃を仕掛けて来たというのか。もしくは、格下の存在でありながら、何らかの策を用いてダイウルゴスを下したというのか。
答えは、どちらも否だった。チャドは最初から、大蛇でダイウルゴスに勝てるとは思っていない。真っ向勝負の召喚合戦になれば泥沼になることは、既に他の猟兵達の戦いを見て知っていた。
では、それでもなお、彼が召喚に拘った理由はなにか。それは囮だ。自分自身だけでなく、ダイウルゴスに放った大蛇達さえも囮に使うことで、ドラゴンテイマーの油断を誘うための罠。万策尽きたと見せかけて、チャドは最初から暗殺を仕掛け、一撃で相手を仕留めることしか考えていなかった。
「まさか……これも計算の内だったというのか……。どうやら……私の方が……最初から謀られていたようだな……」
頸動脈を噛み切られたドラゴンテイマーの身体から、徐々に力が抜けて行く。せめて、一太刀でも報いようと右腕に力を込めるが、大蛇は身体をドラゴンテイマーへと巻き付かせ、情け容赦なく締め上げて行く。
「残念だったね。勝利を確信した時っていうのは、一番隙が生まれ易い時でもあるんだよ。逃げ回るだけの無能だと思って、僕を甘く見たのが悪かったんじゃない?」
ドラゴンテイマーに比べ、自分が弱いことを、チャドは十分に理解していた。だが、その弱さを敢えて利用して、偽りの弱さを演じている自分を隠す隠れ蓑とした。
嘘と嘘の間が真実を隠す最良の場所なら、真実と真実の狭間は嘘を隠すための最良の場所となる。
虚構と現実の狭間を巧みに使い、己の狙いから相手を逸らす。別段、珍しいものではない。小説家や映画監督、それに詐欺師や、果てはその辺の恋人達でさえ、駆け引きのテクニックとして使用しているものだ。
圧倒的な力を持つが故に、駆け引きをすることさえ忘れた竜使い。チャドが全ての言葉を言い終える頃には、ドラゴンテイマーの肉体は、呼び出されたダイウルゴスと共に消え去っていた。
大成功
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