●暗闇に眠るもの
恒星の光すらか弱い、まさに暗黒の宙域。近くを行き交うような船もない、主だった航路から遠く外れたそこに、その巨体は静かに眠っていた。
黒々とした鋼の身を漂う隕石の中に横たえ、死んだように動きのないそれらの体内から湧き出し群がる蒼い光。
遠いどこかの恒星からの僅かな光を反射して、蒼く煌めくそれらが巨体の壁面に張り付き翅を広げれば、まるで宇宙に溶けるように蒼い光に包まれた鋼鉄の巨影がその姿から色を失っていく。向こう側が透けているのか、それとも磨き上げられた鏡のように周囲の光景を反射しているのか。メカニズムはどうあれ、その巨大な存在は光学的にも電子的にも、その姿を完全に世界から切り離される。
周囲からその身を隠して巨大な影は眠る。
かつて最強と恐れられたその誇りを押し殺して。度重なる追撃部隊との戦いで受けた傷を癒やし、再び最強として宇宙に君臨するその日までしばしの雌伏を受け入れて。
●消えた帝国戦艦を追え
「ミッションを発令します」
集合した猟兵たちを確かめ、アレクサンドラはいつものようにそう口を開く。
「今回の作戦目標は解放軍の追撃部隊から逃れた銀河帝国軍第81艦隊の捜索およびその戦力の中心である戦艦デフィオンの撃沈。現地までは追撃艦隊の旗艦、解放軍巡洋艦マレッタが皆さんを輸送します」
先の戦争後、散り散りになって抵抗を続ける帝国軍残党。彼らがひとところに集結し、再び組織的な戦闘能力を獲得することは解放軍にとって――この宇宙に生きる人々にとって望ましからざる事態である。
それ故に解放軍は猟兵と密に連携して残党討伐に注力しているが、終戦から数ヶ月が経過した今でもその全てを討伐できたと言い切れるほど帝国の残存戦力は少なくなく、また小規模な部隊で分散して逃走する残党を捕捉することは難しい。
今回、解放軍マレッタ艦隊は幸運にも移動中の帝国軍81艦隊を捕捉し、その場で追撃戦を敢行。しかしトドメを刺せぬまま暗礁宙域へ逃げ込むことを許してしまい、そこで敵影をロストしたということらしい。
「皆さんとの合流後、該当宙域に到達次第敵の捜索が行われますが、マレッタ艦隊は戦闘機や鎧装騎兵といった戦力を保有していません。そのため暗礁での索敵能力を補う意味でも、猟兵の協力が必要とのことです。レーダーや光学観測器から完全にロストするステルス能力は、おそらく敵戦艦そのものの機能ではなく何らかの外的要因によるもの。それをみなさんが排除すれば、自ずと敵も発見できるでしょう」
厄介なステルスのカラクリさえ暴いてしまえば、損傷した敗残艦隊に遅れを取ることは無いだろう。油断さえしないように、あとはいつも通りにやればいい。
「なお、現地宙域は主要な航路からかなり外れているため、ワープドライブを使用したとしても移動時間が長期化することが予測されます。マレッタ側の好意で皆さんにはその間、ドリームマシンを用いた休息が許可されましたのでゆっくりと英気を養ってください」
ご武運を、と敬礼を投げかけ、アレクサンドラは船へのテレポートの準備を開始した。
紅星ざーりゃ
こんにちは、紅星ざーりゃです。
今回は久々のスペースシップワールド、残党討伐依頼となります。
皆さんの手で、スペースシップワールドの平和への一歩を進めてください。
第一章では解放軍艦に同乗して移動となります。
ドリームマシンという望む夢を再生する機械を用いて、好きな夢を見ながら現地までの移動時間を過ごしていただきます。
望むとおりの夢が見られる、まさに「夢」のマシンですが、どうやら故障も多いらしくその場合は楽しい夢ばかり見られるわけではない様子。
プレイングで指定がありましたら、あなたのマシンが故障することもあるかもしれません。
第二章では敵艦をステルス状態にしている敵との集団戦、第三章では敵戦艦との決戦となります。
敗残とはいえ敵は戦艦、火力も装甲も十分に強力です。
どうか油断無きよう挑んでください。
それでは皆さんのプレイングをお待ちしております。
第1章 日常
『あなたの見る夢は?』
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POW : 夢の中でトレーニング!
SPD : 夢の中で懐かしい人と過ごす
WIZ : 夢の中で遊んで過ごす
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
猟兵たちを乗せ、巡洋艦マレッタを旗艦とする解放軍マレッタ艦隊が次々とワープドライブを起動させてゆく。
星の煌めきが猛烈な速度で後方へ流れていく中、一同はマレッタの娯楽室へと通された。
猟兵を連れた士官が入室するなり、仲間とカードや無重力ビリヤードに興じるもの、ベンチに寝転がって携帯ゲーム機で余暇を潰していたもの、めいめいに休息を楽しんでいた兵士たちが一斉に直立姿勢で敬礼を投げかけた。
士官の答礼で直立を解いた兵士たちが猟兵に集まってくる。なにしろ(ほぼ)全員が見目麗しいうら若き女性なのだ、男性の割合の多い兵士たちにとっては目の保養である。と同時に、彼らにとっては憧れのひとつ、帝国打倒において無くてはならなかった英雄たちその人こそ猟兵なのだから、その目に輝く憧れの光は大多数を占める男性兵士だけでなく、女性兵士にもしっかりと宿っている。
戦争の英雄譚や個人的な談笑まで、好き勝手に話しかけてくる兵士たちを士官が掻き分け、娯楽室を横切ってその奥へ。
士官に通された隣室は仮眠室。だが、設置されたベッドはむしろ棺桶めいている。
スペースシップワールドの出身者にとってはもう慣れたものだが、そうでない者にとってはどことなく違和感を感じる機械の棺。それこそが望む夢を見せる娯楽機械、ドリームマシンだという。
「猟兵の皆さんには返しきれないほどの恩がありますから、その一部でもこのマシンで楽しんでいただくことで恩返しができれば幸いだと艦長も申しています。どうか現地到着まではゆっくりと楽しまれてください」
どんな夢が見たいだろうか。およそ本人の想像力が許しえる限りあらゆる夢を見せるドリームマシンを前に、猟兵は悩む。
そんな姿ももう見慣れているのだろう、微笑ましく見守っていた士官が助け舟を出した。
「どうしても決まらなければそちらの棚に収めてある記録メディアから映画を"体感"することもできますよ。とはいえ時間はまだたっぷりとあります。せっかくなのですからじっくりと考えて、これだという夢が決まったら私に声をかけてください」
マシンに繋がる大掛かりな機械装置をマニュアル通りに丁寧に立ち上げながら、士官が笑いかける。
なんでもと言われると却ってすっぱりとは決めがたいものだ。さて、どんな夢を見ようか――猟兵たちは静かに思考に没頭していった。
アリシア・マクリントック
心身を休めるのも仕事のうち、ですね。
それにしても夢、ですか。いずれ為政者になるものとしては現実に向き合っているべきなのでしょうけど……たまにはこういうのもいいですよね。
望む夢……そうですね。マリアは人間の世界で私と共に生きる道を選んでくれていますけれど……もしも、もしもですよ。
現実とは逆に、私が人間の世界を離れて獣の世界で生きるようなことになっていたとしたら。
普段つながりがないように見えても、現実に私たちは出会ったのです。何かが違っていたらそういうこともありえたのかもしれません。
どんな夢になるのか想像もつかないけれど……いえ、想像がつかないからこそ楽しみです。
●
「心身を休めるのも仕事のうち、ですね」
特にこの後には戦いが控えている。万全のパフォーマンスで挑むためにも、休息は重要であるとアリシアは知っている。
だが、その休息がただの睡眠や遊びではなく、望む夢を見せる機械というのはいささか不思議なものであった。
「夢……ですか。いずれ為政者になる者としては、夢などではなく現実を見ているべきなのでしょう」
たとえば、それこそスペースシップワールドのものとはいえ指導者の半生を追うドキュメンタリー映画を追体験してみる、だとか。
あるいは読んだことはあれ、記憶の奥底に沈んでしまった学術書を夢の中で掘り起こし、再び読むことで学びを深める、だとか。
――だが、それは"為政者となってから"でも遅くはないはずだ。今でなくともいいし、何なら勉強は別途時間を取って起きたままやればいい。夢の中でまで学びに時間を割くのでは、休息になるかどうかもわからない。
「……ということならば、たまにはこういう好意に甘えるのもいいですよね」
そう決心すれば、見たい夢はすぐに決まった。静かに挙手して士官を呼び、その身をマシンに横たえるアリシア。
棺桶の蓋がゆっくりと閉じれば、驚くほどすぐにその意識は微睡みに沈んでいった。
●おおかみ少女の夢
うららかな日差しが照らす、青々と広大な草原を狼の群れが駆ける。
先頭を駆ける大柄な一頭は母狼だろうか。その後ろを続くのが彼女の娘たち。灰色の毛並みの狼たちだが、最後尾の一頭だけは毛色が違う。
金色の毛並みを靡かせて駆けるその狼は、母や姉に比べて鼻先も短く、かかとの位置も低い。前脚の指は長く、尾のないその身はまるでヒトであった。
――もしも、マリアと己の立場が逆であったら。
小さな狼が庭に迷い込んだのではなく、小さなヒトが草原に迷い込んだのであったら。そんなifの夢。
アリシアは狼に育てられたヒトの娘として、どこまでも続く草原を駆ける。
母狼は全速力ではなくアリシアがなんとか付いてこられる速度ではあるが、振り返ること無く走る。それでも身体の造りが違うためにどうしても遅れがちな妹をマリアが気遣って何度も振り返り、きちんと付いてきているか確認してくれる。
母とマリアとアリシア、三人の生活は自由だった。
貴族の責務はなく、勉強も生きるためのものだけ。協力して獣を狩り、家族で糧を分かち合い生きる。
それはただ生きることすら大変で困難な生活でもあったが、人間社会のしがらみはそこにはない。
そのしがらみを嫌だと思ったことはないが、それでも胸の何処かにあった自由への憧れが少しずつ満たされてゆくような心地。
――ヒトの身で狼として生きる。それは現実にはとても不可能にすら思える生き方だ。
幾千年の時をかけ、文化という生態に適応して進化した生物が、全く別種の生き物とともに違う生態に馴染むというのは至難という言葉でも言い表せないほどに多くの障害を抱えている。だが、その一つ一つを母狼とマリアは厳しく、ときに優しく乗り越えさせてくれた。
三頭の「おおかみ」が草原を駆ける。
それがうたかたの夢だとしても、感じるひとつひとつの困難が人間社会で自分に寄り添い生きてくれるマリアへの感謝を強めてくれる気がして。
おおかみとして生きるアリシアの中で、夢見るアリシアは静かに微笑んだ。
成功
🔵🔵🔴
ユーノ・ディエール
アドリブ連携トラブル大歓迎
POW
トレーニングしましょう。最近余り動いてなかったですし……
1ヵ月近く宙間戦闘から離れてましたからね
突入シーケンスから戦域制圧のパターンを3つ
優勢/均衡/劣勢の順にトライ
装備は現状を維持、友軍はランダム、行きますよ!
騎乗したクルセイダーで突撃、全武装で弾幕を形成し敵の火線を散らして
念動力でデブリをぶつけつつ手にした二振りの剣で各個撃破
敵の攻撃は念動フィールドで逸らします
領域制圧後に前進、戦術パターンの繰り返しと……想定外の対応
大型艦には接敵してデトネイターで機関を潰す
小型精鋭は念動力で相手の動きを徐々に狭めつつ
タイミングを合わせて誘導レーザーの一斉発射です!
●
「そういえば、最近あまり動いてなかったですね……」
最後に空間戦闘を行なったのはいつだったろうか。思い返せば一月近く宇宙での戦いから退いていた気がする。
それは帝国残党との戦いが沈静化しているという証であろうか。
そうならば喜ばしいことだが、もし彼らが雌伏しているのであれば腕が鈍るのはかなりよろしくない。
ユーノは腕を組み、しばし迷う。久々の実戦を前に休息し、万全の体勢で望むべきか。
あるいは夢の中で訓練プログラムを再生し、勘だけでも取り戻しておくべきか。
少しの間考え込んで、彼女はそっと士官を呼んだ。
●帝国機動艦隊迎撃戦-パターンWk
重要拠点である宇宙要塞を攻略すべく侵攻する帝国軍の大艦隊と、それを迎え撃たんと展開する解放軍の大艦隊。星の輝きすら塗りつぶすほどの数が、宇宙空間で砲火を交えていた。
前衛艦隊同士の激突は解放軍の優位で進行している。突破を急ぐあまり艦列を縦に伸ばし、速度重視の小型艦とスターライダー、戦闘機だけが突出する形となった帝国先行艦群は、前もって戦艦や砲艦を有効な火力投射源として前よりに配置した上に全軍を一塊の陣形とすることで数的優位を得た解放軍艦隊によって半包囲され、徐々に殲滅されている。このままならば一度目の交戦は解放軍の勝利で決着するだろうが、しかしそれまでにどうしてもある程度の損害は出てしまうだろう。
それを最小限に抑えるための速攻。それがユーノに与えられたミッションだ。
「ユーノ・ディエール、ディアブロクルセイダー出撃します!」
解放軍の空母、今作戦におけるユーノの母艦のカタパルトデッキから砲弾のごとき加速で射出される白い騎体。一直線に敵陣に斬り込むその騎体に、迎撃に上がった戦闘機の機銃弾が降り注ぐ。
「迎撃が上がってきた、予想より対応が速い……そう、これが帝国軍でしたね……!」
統制を欠いた敗残艦隊ではない、在りし日の帝国軍宇宙艦隊の練度に感嘆しながらも冷静に念動フィールドで弾丸を弾き返し、解放軍艦隊の攻撃で撃墜され漂う敵機の残骸を念動力でその進路上に放り込み激突させ撃ち落とす。
「これで四機……八機、よし、抜けた……!」
第一陣を打ち破りさらに進めば、敵のスターライダーがその機動性を活かして巧みに進路を切り替えながら追撃を開始。それを至近を往く敵艦を盾に視界を遮り肉薄し、バイクのスラスターに剣を突き刺して撃破、そのまま敵艦に叩きつけて質量弾代わりに使う。
数隻の駆逐艦を沈黙させれば、反撃の弱まったその宙域を斬り裂き解放軍艦隊が突撃を開始。
たった一騎に迎撃網を突き崩され、火力を擦り減らした帝国艦隊は為す術なく沈んでゆく。
「これで敵前衛は崩れるはず。ならば」
次だ。ユーノは更に奥へと進出する。敵中衛は巡洋艦と鎧装騎兵からなる主力。敵は速度こそライダーたちに劣るものの、より迎撃に向く機動性に優れた鎧装騎兵だ。
その上に対空火力を一際強化された巡洋艦が放つ迎撃の火線がユーノの進路を遮る。
「くっ、流石に艦隊主力ともなれば一筋縄では行きませんね……」
視界を埋め尽くすレーザーの雨を掻い潜り、なんとか攻め手を探ろうとするユーノ。
それすらさせまいと割り込む敵騎兵の突撃から身を躱し、被弾こそ避けているが攻撃のチャンスを逸するユーノ。
その視界の端に、友軍の反応が現れる。前衛艦隊を突破し、更に進撃を開始した解放軍艦隊の鎧装騎兵たちだ。
彼らの援護射撃が、しつこくユーノを追う帝国騎兵を叩き落とした。
「感謝します! 彼らが迎撃戦力を叩いてくれるならば、私は!」
鎧装騎兵の相手を味方に任せ、巡洋艦の機関部に念動フィールドで形成した対艦ランスを撃ち込み爆破。
対艦戦闘専用の大火力兵装は、見事に敵艦のエンジンブロックを貫き内側から爆散させる。
その光と熱を浴びながら、次へと取り掛かるユーノに友軍騎の攻撃を抜けた敵騎兵が襲いかかった。
散開と集結を繰り返し、狙いを絞らせず自らの火力は収束させ防ぐに難い攻撃を仕掛けてくる精鋭部隊。それをユーノは念動力で今しがた撃沈した敵艦の残骸を散らすことで誘導し、彼らの機動を制限して――
「捉えた、誘導レーザー斉射! これで、落ちて!」
まばゆい閃光が敵の精鋭部隊の推進機を貫く。機動力を失った彼らはもはや脅威ではないと、後の始末は味方に委ねてユーノは次々とインペリアルデトネイターで敵艦隊を沈めていった。
「――ふぅ、これでひとまず優勢は確保……」
主力艦隊も抑え込み、指揮能力を持つ巡洋艦が何隻も沈んだことで統制を欠いた帝国艦隊は混乱の極みにある。
勝った。久方ぶりの空間戦闘にはいささかハードなもので、振り返れば友軍艦隊の損害も少なくはない。もっとうまくやれた筈だ、犠牲を減らしてより多くを迅速に叩けたならば。
そう望むのは流石に欲張りだろうかと苦笑したユーノを閃光が照らす。
遥か彼方からの巨大なレーザー掃射。幾条ものそれが、解放軍艦隊を飲み込んでゆく。
「…………ッ!?」
息を飲み、その発射点に目を凝らすユーノは見た。
黒鉄の装甲を鎧い、銀河はこそ我らがものと誇示するように悠々と解放軍艦隊を薙ぎ払い進む帝国戦艦を。
その旗艦であろう、中心の一隻。甲板上に立つ、白い装甲が特徴的な、忘れもしないあの巨躯のウォーマシンを。
「白騎士ディアブロ……ということはあれは白城艦隊ですか。リハビリには少しハードすぎませんか……?」
とはいえ、一度は倒した相手だ。むしろ相手にとって不足なし。これは夢で、シミュレーターであるために、もし不覚をとってもそれで死ぬ味方もない。
胸を借りるつもりで行きましょうか、とユーノは今再び、自らの記憶の海から蘇った銀河最強の一角へと果敢に挑みかかる。
成功
🔵🔵🔴
アイ・リスパー
「帝国軍の残党は必ず倒して見せます!」
出身世界のため気合いを入れて任務を受けます。
「あの、ドリームマシンを使う前にお願いがあるのですが……」
整備班の方々に、先日の依頼で大破し、機体だけなんとか回収した『小型宇宙戦艦』の修理をお願いします。
修理を頼んだらドリームマシンを使わせていただきましょう。
「へえー、映画の登場人物になることもできるんですね。
それでは恋愛映画のヒロインを選んでみましょう」
映画を選択し眠りに付きますが……
このマシンは壊れていたのです。
恋愛映画の途中からホラー映画に切り替わり……
「やっ、いやぁっ!」
怖いものが苦手な私は目覚めるまでずっと悪夢に閉じ込められたのでした。
アドリブ大歓迎
●
「帝国軍の残党は必ず倒してみせます!」
ふんす、と気合い充分に士官に胸を張るアイ。生まれ育った世界が未だ戦乱の残滓から逃れられていないというのは悲しいことだ。それゆえに彼女の今作戦における意気込みは十分。
それはそれとして。
「ところであの」
はい? と振り返った士官に、アイは確認する。
「移動に時間がかかるということなら、マシンを使う前に一つお願いしたいことがありまして」
それは先日のデストロイウォーマシン破壊作戦で大破した小型戦艦の修復。
あのあとなんとか回収できたそれは、しかし激戦を経て今戦える状態ではない。
艦隊戦も予想されるこの戦いの前に、なんとか戦線復帰させたいところだが、アイ一人の手では手に余る代物だ。
「ああ、あの格納庫に搬入された。お任せください、ウチは機動兵器は扱ってませんがその分船の扱いには慣れたメカニックばかりです。新品同様に仕上げてくれますよ」
ご心配なくと胸を叩く士官に、よかったと安堵の笑顔を向けるアイ。
それから背伸びをして、士官に耳打ちするように本題を切り出す。
「あの、映画の登場人物になりきれるなら――」
●恋する少女と
出会いは偶然だった。ほんの些細なトラブルが重なって、アイと彼は出会った。
もしあの時、アイが乗るはずだった定期宇宙船が事故で遅れていなかったら。
もしあの時、彼が仲間内のちょっとした賭けで負けて、宇宙船ターミナルのキオスクまでベーコンブリトーを買いに走らされていなかったら。
二人は出会うことは無かったし、その後の定期宇宙船を護衛する解放軍駆逐艦のクルーに彼が居ることなんて気づきもしなかったし、気にも止めなかっただろう。
本当ならば宇宙船の船内食で済ます予定だった夕飯が数時間遅れるために、軽食を買ってひとまず空腹をごまかそうとしたアイ。
ラスト一つのブリトーを確保するために、息を切らせてキオスクに駆け込んできた彼。
二人の手がブリトーの寸前で触れ合い、どちらが買うかで小さく言い合って――
定期宇宙船を襲撃したスペースモヒカンを撃退した解放軍の鎧装騎兵に、窓越しに感謝の会釈をしたら驚いたような仕草をされて、船が無事到着してみればアームドフォートを纏ったままの彼がフルフェイスヘルメットを脱ぎ捨てるなり声を掛けてきて、もしかして運命かも、なんて冗談めかして笑ってきたり。
それから幾つものイベントをこなして、アイと彼は絆を少しずつ、少しずつ深めていった。
喧嘩もしたし、すれ違いもあった。けれど最後には二人はわかり合い、そして帝国残党との戦いに赴いた彼が帰ってくる日、アイは解放軍の軍港でじっと宇宙の星々を見上げている。
――解放軍の若きエースとなった青年鎧装騎兵と、数奇な運命で彼と出会った女性の恋物語。
若干プロパガンダ映画めいた構成だったが、軍艦で見られるラインナップでは比較的まともなラブストーリーに分類できるだろう。ほかはエイリアンとの戦いがメインで恋愛要素が二の次だったり、なんなら帝国軍の女性騎士と解放軍の男性将校の悲恋だったりと純粋に楽しむには少し違う気がしたから、アイはそれを選んだ。
ヒロインのポジションに自分を当てはめ、夢の中で若手実力派の俳優演じる青年士官と愛情を確かめていくその体験は、映画である都合ダイジェスト気味だったがそれでもアイにとって新鮮で楽しいものだ。
これから彼が帰ってきて、それから二人は熱く抱擁を交わしてエンディング。
――の、はずだった。
爆発。悲鳴。入港してくる解放軍の輸送艦が炎を噴いてドックに激突する。
凄惨な事故から逃れようと流れてくる人の大波を掻き分け、アイはその輸送艦の船籍番号を確認しようと近づいていく。
彼が乗っている船ではありませんように――その願いは神に通じた。違う船だ、よかった。
事故現場の見える高台で胸をなでおろしたアイは、しかし違和に気づく。
燃え盛る炎を消すために集った消防ドロイドや消防士たちが、何かともみ合っている。
船の中からぞろぞろと燃えながら這い出してきた人型は、あの輸送艦のクルーだろうか。いや、それにしても様子がおかしい。あれは助けをもとめるというよりも。
「襲いかかってる……?」
映画の登場人物の思考をトレースしていたアイの意思が、あまりの異常事態に通常の思考に切り替わる。
燃える人型が消防士に飛びかかり、首筋に喰らいつく。それを放水で吹き飛ばした仲間の消防士が、噛みつかれた同僚を引きずって退避するが、助け出した仲間が自分を救ってくれた同僚に噛みつき襲いかかる。
「…………えっ? これ、恋愛映画……ですよね?」
どう見ても途中からジャンルが変わったようにしか思えない。眼の前の光景がゾンビパニック物のホラーだというのを認識しながらも脳が理解を拒む。
怖いものは苦手だ。だから絶対にこんな要素があるような映画は選ばないはずなのに、どう見ても目の前で繰り広げられる光景はホラーのそれ。
「まさか……マシンの故障?」
疑念が確信に変わったが、もう遅い。踵を返して迫るゾンビの群れから距離を取ろうとしたアイだが、高台は既に爆発的に感染拡大したゾンビに包囲されていた。
「やっ、いやぁ……っ!」
悲鳴を上げても夢は覚めない。あちこちの肉が抉れ、致死レベルのダメージを受けていながら活力旺盛に捕食し仲間を増やそうとするゾンビたちがアイに手を伸ばす。
――それを空中からの機銃掃射が薙ぎ払う。
「アイ!」
聞きたかった声。待ちわびていた彼の声。
「無事で良かった、外で僕らの船が待機してる、こっちへ、跳んで! 早く!」
携行機関砲でゾンビを打ち払い、中空でホバリングするアームドフォート。全周密閉装甲型のそれは誰が駆るものか外観ではわからないが、その優しい声音と仕草は見間違いようがない。
たった百数十分の数ヶ月をともに過ごした、夢の中の王子様。
腕を広げた彼の胸に、勇気を出して飛び込んで――
それから彼の母艦に逃げ込むために、事故で封鎖された彼の通ってきたルートの代替としてゾンビに埋め尽くされた港湾施設を二人で駆け抜けたり、頼れる体育会系で陽気な若者やゾンビマニアでフィクション知識から有効な策を提案してくれるギーク、余計なことをしてくれたお蔭でせっかくの安全地帯を台無しにした老婆など様々な人々との出会いと別れを経験して。
それはゾンビ映画としては王道だったのだろうが、機械トラブルで妙な夢が混線したおかげで見たくもないホラーに放り込まれたアイにとって、そんなモノを楽しむ余裕はなかった。
「は、早く目覚めさせてくださぁぁいっ!!」
苦戦
🔵🔴🔴
フィーナ・ステラガーデン
どうしてこうなったの・・・
(お腹いっぱい食べる夢を見るはずが
マシンの故障にてイデアールの夢に入り込んでしまったフィーナは絶句)
イデアール?私フィーナ!フィーナよ!
これは夢よ!あんた夢の中でも話しきかないわね!?
●VSイデアール
私が手加減すると思った?思うわけないわよね!
イデアールに断固拒否の姿勢よ!
触手とかの召還系で来るなら【範囲攻撃】で焼き払うわ!
イデアール相手に遠距離戦で打ち合っても決め手が無いわ!
ここは普段と違う行動で対処よ!
【属性攻撃】で火球を飛ばして様子を見て
不本意でも近づくことになったら【全力魔法】【零距離射撃】でUCよ!
その際私は【オーラ防御】で防ぐわよ!
(勝敗お任せ、改変歓迎)
イデアール・モラクス
【PPP開発室】
クク…まずは英気を養うのだな?
楽しませてもらうぞ!
・夢
夢は酒池肉林!
裸の麗しき男女達を愛でているとフィーナがやって来て…
「そうかお前も出てきたのか…可愛がってやるぞぉ!」
可愛がる(意味深)の為に大人しくさせよう。
UC【魔導覚醒】を『高速詠唱』で行使。
魔導防壁を纏いながら空を縦横無尽に飛翔し、両手から次々と『全力魔法』の力で威力を増した『属性攻撃』魔法【風の刃、聖なる光線、闇の球体、炎弾、氷の槍、足元から隆起する石の棘】を無詠唱連射、圧倒的弾幕の『範囲攻撃』と成して飽和攻撃をかけ彼女の攻撃を相殺しながら『なぎ払う』。
「そらそら、私に負けたらチューしちゃうぞぉ!」
※アドリブ大歓迎
●
「好きな夢が見られる、ねぇ……?」
「ほぉ……? それはどんな夢だろうとOKなのか?」
マシンの説明を受け、魔女二人の目が妖しく輝く。その様に士官はややたじろぎながら首肯した。
「ということは、ということはよ、イデアール。私達のやることは一つよね!」
「ああ、ここで望む夢はただ一つ! ククク……せーの、で行くぞフィーナ!」
せーの。
「酒池!!」
「肉林!!」
二人の声が仮眠室に響く。なんと俗っぽい願いであろうか。いや、そのくらい俗っぽい使い方がこそこのマシンのある意味本来の用法でもあるのだろうが。
「フフフ、やっぱり考えることは一緒のようねイデアール! いくわよ!」
かたや尽きぬ美食の山を望み。
「まさかフィーナが同じ夢を望むとはなぁ! そういうことならば全力で楽しむぞ!」
かたや熱量と湿度高めの肌色の楽園を望んで、二人は並んだドリームマシンに横たわる。
ゆっくりと蓋が閉じるその瞬間まで、二人は字面こそ同じでも中身が大きく異なる夢の齟齬に気づくことはなかった。
●ある魔女の夢
「んふふ! これは本当にすごいわね! マシーン一個持って帰れないかしら!」
フィーナの前に積み上げられた肉、肉、それから肉。
彼女が割合小柄なのを差し引いても、身の丈以上に高く重ねられた食器のどれもが最高級の料理に彩られている。
目を引くのはターキーの丸焼きや巨大な塊のローストビーフのような派手な肉料理だが、野菜や魚も十分に素晴らしい出来栄えの料理揃いだ。
「これぜ~んぶ私達の……あら、そう言えばイデアールが居ないわね。ま、そのうち出てくるに違いないわ! いただきまーす!」
ウッキウキでふかふかの椅子に腰掛け、片端から料理を頬張るフィーナ。スパイスの効いたターキーのなんと柔らかなことか。噛みしめる度に溢れ出る肉汁に頬がとろけそうになる。
シンプルに海塩で味付けされた塩焼きの魚は、見た目こそ厳つくグロテスクだがこれがどうして箸がさっくりと皮を破れば綿のようにふんわりとした身は、程よい塩加減が甘みを引き出し筆舌に尽くしがたい旨味を染み出させる。
野菜もまた、サラダは驚くほどの瑞々しさはそれだけで水分を得られる。飲み物が要らないほどだ。煮物やスープともなれば、濃厚な素材の味が肉や魚とは違う優しく温かい甘さが口内に広がってゆく。
――こんなに美味しい料理をどれだけ食べようと、現実の身体が摂取しているカロリーはゼロ。すなわち、
「どれだけ食べても太らないし、お腹いっぱいにもならないから好きなだけ食べられるわ! 最高ね!!」
もっぐもっぐと頬袋をパンパンにして美食を楽しむフィーナだが、いくらなんでも友人の姿が見えるのが遅い。
マシンの説明を受けた時、同じ夢を望むのであればマシンを接続して夢を合体させることは出来ると聞いたはずなのだが、事故だろうか?
不意に殺しても死ななそうな友人が心配になったフィーナは、頬の中身を飲み込むと立ち上がった。
耳をすませば微かに息遣いが聞こえるような気がする。その出処を探したフィーナは、天井のフックから逆立ちするように吊り下げられた豚の丸焼きのカーテンをわずかに押しのけ、その向こうを覗き込んだ。
●ある魔女の夢
「クク……これは凄いな、このマシン一つ寝室に置きたいくらいだが」
残党を倒した報酬に貰って帰れないか、とイデアールは自らに侍る美少女の肌を手で撫で上げながら思う。
まるで本物のような、いやそれにすら勝るとも劣らない絹のような手触り。くすぐったそうに身を捩る姿ですら、見目麗しい少女がやると絵になる光景だ。
傍らで愛でている少女の向こうには、うら若き乙女から大人の色香を纏う妙齢の美女まで年齢もタイプも違う女性たちが次は自分をと目を輝かせて待っている。
ひとしきり少女の素肌を堪能したイデアールが反対側に目を向ければ、そちらは男の園だ。
線の細い美少年の顎先を指でつつと撫で、彫像のようにポーズを決める筋骨隆々の男を視線で愛で、そんなイデアールが喉の渇きを覚えるであろうタイミングで酒を注いだグラスを差し出す渋い壮年の男に微笑みかける。
「こいつらが皆私のモノ……ん? そう言えばフィーナが居ないな。てっきりあっちの美少女たちに紛れて出番待ちでもしているかと思ったが。まあいいか、順番に愛でていればじき鉢合わせるだろう」
山と積まれた肉と酒を楽しみながら、女体の柔らかさと男体の逞しさを愛でるイデアール。
――どれだけ派手に愛でようが、現実の肉体が受ける疲労はゼロ。ということは、
「全員気絶するまで愛でてやるぞ! クク、フフフフ、アーッハッハッハッハ!」
そんな無茶苦茶だって可能なのだ。黄色い悲鳴をあげる美女たちと、歓喜の雄叫びを上げる男たち。その中心で高笑いをしていると、背景だと思っていた丸焼豚のカーテンがシャッと開いて見知った金髪の顔が見え、
「なんだそんなところに居たのかフィー」
美男美女とくんずほぐれつスキンシップを楽しむイデアールと目があった途端にシャッと豚カーテンが閉じた。
●夢の戦い
「いやいやいやどうして? どうしてこうなったの……?」
酒池肉林。池のように無尽蔵の酒と、林のように吊り下げられた肉。
間違ってない。望んだ酒池肉林はここにある。それがどうしてあんな背徳の都みたいな部屋に通じているのか。なんで友人はあんなところに居るのか。
「……酒池肉林ってそういう意味もあったわねそういえば!?」
きゅぴーんと閃き。むしろ現代の用法としてはそちらのほうが通りがいいまである。つまりは退廃で肉体で肌と肌が触れ合うアレとソレが倫理感とかそういうのをガン無視で繰り広げられるようなそんな感じのやつ。
「…………よし、目覚めるまで私は一人でご飯食べてよ!」
それがいい、と踵を返したフィーナの後ろで豚カーテンがゆっくりと開く。
豚さんを吊り下げる金具がレールをスライドしていく音に、肩をこわばらせて振り返るフィーナ。
こちらの部屋の灯りが差し込み、少しずつ見えてくるカーテンの向こうには、満面の笑みを浮かべたイデアールが肌蹴た格好で立っていた。
「イデアール? イデアール!? 私フィーナ! フィーナよ!! これは夢だけど私はあんたの夢じゃなくて酒池肉林にちょっと見解の相違があったっていうか!!」
「いい、いい皆まで言うな! あの部屋にお前も出てきたということはそういうことなんだろう? 恥ずかしがるな、私がしっかり可愛がってやるぞぉ!!」
「あんた夢の中でもぜんっぜん話聞かないわね!?」
高速で後退るフィーナを、悠然と歩いて追い回すイデアール。
「フフ、そう逃げるな……一層可愛がってやりたくなるだろう!?」
まずは動きを封じた上でゆっくり遊ぼうな、とイデアールは魔法の詠唱を開始する。この愛らしい友人を無力化するには出し惜しみは無しだ。そんなことをして勝てる相手だとは思っていないし、何より彼女に失礼だろう。
衣類の代わりに魔導防壁で身を守り、ご馳走だらけの部屋の高い天井ギリギリまで舞い上がって次々と様々な属性魔法で空爆を開始するイデアール。
対してフィーナは得意の火炎魔法の壁でそれを相殺しながら、高く飛ぶイデアールに説得の限界を見た。
駄目だアレ完璧に夢に酔ってるわ、と。
「となれば一回全力でぶん殴って言うこと聞かせなきゃ駄目よね!」
全属性万能型のイデアールと一極特化型の自分、魔女としてのタイプは違えど総合的な戦闘力はほぼ互角の筈だ。
問題があるとすれば、距離を開けての撃ち合いは高度優勢を得たイデアールが有利ということ。
地上はご馳走の山が移動ルートを狭めてくるが、空中のイデアールにそれはない。遮蔽を取るにも彼女はひとっ飛びでそれを越えてくるだろう。
「となれば不本意だけど接近戦しかないわね……!」
覚悟を決めて、フィーナは飛び出しイデアールに向かって走り出す。
積み上げられたなんだかよくわからない巨大な獣の丸焼きを駆け登り、天井に届くほどの大ジャンプで跳び出し――
「来たかフィーナ! そぅら私の豊満な胸に飛び込んでこい! 抱きしめてチューしてあげちゃうぞぉ!!」
なんか戯言を叫んでいる友人の顔面に杖の先端を向け――
「目ェ覚ましなさい色ボケ魔女――っ!!」
巨大な爆発が積み上げられた料理を吹き飛ばし、豚の丸焼きカーテンを激しく揺らした。
その後彼女たちの見た夢がどうなったのか知るものは、二人を除いて誰も居ない。
ただ、艦隊が目標地点に接近し猟兵たちが次々目覚めてくる中で、最後にマシンから出てきた二人の魔女はなんとなくマシンに入る前より気まずそうであった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ミハエラ・ジェシンスカ
いや、悪いが私は遠慮しておく
記憶領域のデフラグも、願望や空想としての夢も
ウォーマシンである私には不要なものだ
そう言い訳をして適当に待機していよう
その間に自己分析をしてみればわかる
私とて見たい夢がないわけじゃない
他の者には言えぬ事だが
私の中には未だ銀河帝国への忠誠心がある
尤も悪心回路との兼ね合いでおかしな挙動をした結果
私はこうしてここにいるわけだが
「忠臣として銀河帝国に殉じたかった」という願望
「皇帝陛下に仕え白騎士と共に戦う」という空想
私が見たい夢はそんな猟兵としても逆臣としても恥知らずなものになるだろう
……全く、悪い夢だ
その分析結果を保存せずスリープモードに入る
夢など見ない
私にはそれが分相応だ
●
「全員の睡眠深度は規定域で安定、あとは監視を怠らないよう……おや?」
ドリームマシンで眠る猟兵たちを送り出し、見守っている士官。彼はマシンの中の人間が居心地のいい夢の中で溺れてしまうことがないように、あるいはマシンに致命的な故障が発生して彼らが浮上できなくなることが無いように見守るために、機械に繋がるモニターを注視していた。
どうにか全員が溺れることなく安全な深度で夢見ているらしい。その観測結果に安堵の溜息を吐いて、視線を上げ目の凝りを揉みほぐす彼は、入り口の扉の脇に寄り掛かるように立つ長身のウォーマシンに気づく。
「いいんですか、まだ時間はありますから今からでもマシンに入っては?」
ウォーマシンには夢を見ない機種もある。特に帝国時代に製造された古い機種ではそういったモデルも少なくないというのは士官も知っていることだが、それでも夢を見ないなりにこのマシンはメンテナンスベッドとして優秀だ。
長く稼働するウォーマシンはその記憶領域に雑多で不必要なデータを多く遺していることもある。それをクリーニングすることもドリームマシンの一つの機能だと説明するが、ウォーマシンの反応は芳しくない。
子供が変わった形の石ころを宝物にするように、雑多なデータというものに独特の価値を見出して大切にするウォーマシンも居ないでもないが、彼女はそうではなく何か負い目があるというか、どこか自罰的な感情で以てドリームマシンの使用を拒んでいるようだと士官は思う。
「そういうわけで悪いが、私は遠慮しておく。記憶領域のデフラグも、願望や空想としての夢も私には不要なものだ」
そうまで言われては無理強いするものでもない。士官は頷き、マシンの管理に戻っていく。
幾つかのマシンが軽微なエラーを吐き出していることに気づいた士官の小さな悲鳴を聞きながら、彼女――ミハエラは静かに視覚センサを閉じた。
●彼女の回想
不要である――それは、持っていないと同義ではない。
ミハエラは自身にとって夢は不要だと言い、事実そうだと自らも認識している。自身は結局の所戦闘用の兵器であり、それが夢を見るなど悪趣味なジョークだ、と。
だが本人が自身をどう認識していようとも、彼女の内面には確かな自我と人格が宿っている。今やウォーマシンが人権を得た種族の一つと数えられるように、彼女もまた"ウォーマシン"であり、そして"ヒト"は少なからず夢を抱くものだ。
ミハエラは自ら不要だと切り捨てた夢を持っている。出撃までの気まぐれに始めた自己分析でも、やはりそういう答えがでた。それは予想通りの結果であったが、本人が受け入れるか忌むかは別だ。
――ミハエラ・ジェシンスカと名乗るウォーマシンは銀河帝国軍の製造した機体である。
製造者によって"墜ちたフォースナイト"の模造体として造られた彼女は、悪であれという運用思想と帝国への絶対の忠誠を誓う帝国軍機の基本理念が真っ向から競合した結果、忠誠を誓う帝国のため、帝国にとっての悪であれという結論を導き出し解放軍に降った機体だ。
帝国兵を斬り、銀河皇帝にまで刃を向けた逆賊としての稼働に後悔はない。制造者の思惑通りか、あるいは思い切り思惑を外れた偶然の暴走の結果か、それはもう確かめようもないがそのように造られたという存在意義を存分に果たしたことは間違いない。
だが、もし。もしもだ。彼女の中に宿る忠誠心が、より真っ直ぐに遂行できたなら。
悪などという物を押し付けられることなく、帝国の正義のために生きることが出来ていたなら。
そのIFを、彼女は夢として秘めている。
この心に宿る悪心がなければ、有象無象の量産機の一機だったかもしれない。それでも自らを産み落とした祖国のため、最後まで忠を尽くして帝国の覇道に殉じたかった。
偉大なる皇帝の為に在る幾億もの刃の一振りとして戦い、そして戦いの中で互いに認めあったあの武人、白騎士ディアブロと戦友として肩を並べてみたかった。
本来自らが在るべき場所で、本来望まれたままの役割を果たしていつかその機能を終える。
それは、帝国軍によって造られたミハエラの思考回路の奥底、泥濘のように重く沈み込む悪の心の深い深い奥底に眠る"善心"だ。
善心のままに振る舞えたならば、もっと――
そこまで考えて、ミハエラは頭を小さく振った。
皇帝を弑逆した逆賊の一人として、いまさらやはり皇帝陛下の下で戦いたかったなど恥知らずもいいところだ。
猟兵として戦い、全てが決着した今になって帝国残党どものように陛下の仇討ちだ報復だと騒ぎ立てるようなみっともない真似をする気はない。
胸中に湧き上がった善心を押さえ込み、溺れ死ぬまで悪心の泥濘に沈めてしまえ。
思い浮かんだ"輝かしいあり得たかも知れない未来"など、そんなものは在りはしない。現実を見ろ、今の私は何処に居て、何をしに往くのだ。
解放軍と手を結んだ猟兵の一人として、かつての同胞帝国軍宇宙艦隊の残党を狩りに行く。
そんな私が、帝国のためなどと笑えもしない冗談だろう。
自己分析の結果検出された空想をログから削除する。ここ数時間の関連する記録も全て消去。
「……全く、悪い夢だ」
思考を制限する。せっかく沈め、消したものが再び浮かび上がらないように。
夢など見ない。旧い軍用ウォーマシンは、そんな余計な機能を持ちはしない。
「私にはそれが分相応だ」
――これから向かうは戦場。帝国にとっての悪夢として、その刃を振るうために私は今此処に在るのだから。
成功
🔵🔵🔴
第2章 集団戦
『電幻の蝶』
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POW : オプティカル・カモフラージュ
自身と自身の装備、【電幻の蝶が群れで覆っている】対象1体が透明になる。ただし解除するまで毎秒疲労する。物音や体温は消せない。
SPD : サブリミナル・パーセプション
【翅の光を激しく点滅させること】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【幻覚を見せる催眠】で攻撃する。
WIZ : バタフライ・エフェクト
見えない【クラッキングウイルスの鱗粉】を放ち、遠距離の対象を攻撃する。遠隔地の物を掴んで動かしたり、精密に操作する事も可能。
👑7
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
「――間もなく目標宙域に到達。旗艦マレッタ以下各艦、異常なし」
「――レーダー及び光学観測器に敵の反応は無し。対空監視を厳に、順次暗礁へ突入を開始します」
デブリや大小の石ころが浮かぶ暗礁宙域。かなり遠い星の光が弱々しく漂う小惑星の輪郭を照らすそこは、まさに死の海の如く。
そこへロケットエンジンの火を煌々と輝かせながら、マレッタ艦隊が順次突入していく。
巡洋艦の巨体がゆっくりと進めば、漂う岩塊は邪魔だとばかりに迎撃レーザーで爆砕され塵と消える。マレッタの拓いた道を、巡洋艦ほどの防御力を持たない駆逐艦隊が静かに続く。
「突入回廊を通過。空間にある程度のゆとりがあります。おそらく先行する敵艦隊が通過した痕跡かと」
「よし、駆逐艦隊を展開して痕跡を辿る。猟兵にも出撃を依頼しろ」
艦隊司令の命令に頷き、僚艦に指示を送ろうとしたオペレーターが何度もモニターと窓の間で視線を彷徨わせる。それから、引き攣った声で叫んだ。
「艦隊全艦の信号消失! レーダー及び光学観測で捕捉不能、通信も繋がりません!」
「――機関停止、状況把握が完了するまで移動を中断! 僚艦は撃沈されたのか?」
司令が叫び、マレッタの巨体がぴたと停まった。緊張感に満ちた静寂の中、状況を確認するオペレーターたちの声だけが艦橋に木霊する。
「僚艦の残骸、確認できず。ワープドライブ使用の痕跡も無し!」
「何らかのジャミングで認識を妨害され、分断されたものと予想されます!」
ならば。艦隊司令はこの状況を打開すべく、最善にして最強の札を切る。
「――ということで、この宙域には敵味方の艦隊が存在していますが、その全てが今現在見えない状態となっています」
出撃ハッチの前で士官の説明を受ける猟兵達。予想以上に面倒な展開になっているようだ。
「かつての戦闘記録から、帝国軍の自律兵器「電幻の蝶」と呼称される機体群が艦艇など物体に接触することで強力なステルスフィールドを生成することが判明しており、今回のこれも類似の現象であると予想されます」
こういうやつです、と立体映像で示されたのは、メカニカルながら美しい蒼色の翅を羽ばたかせる機械仕掛けの蝶。それらが敵味方の艦隊に取り付き、覆い隠して通信を遮断した上で姿を隠したというのが艦隊司令部の結論らしい。
「皆さんには電幻の蝶を捜索、殲滅しまずは視界を明瞭にしていただきたい。――ですが、蝶が取り付いている対象が味方艦である可能性もあります。攻撃の際は細心の注意を払ってください。味方同士で撃ち合うのは……ええ、当然ながら歓迎しかねますので」
いくら透明となっても実体までは消せはしない。あるいは群れから逸れた蝶が合流を目指してひらひらと飛んでいることもあるかもしれない。捜索手段は猟兵に一任されるが、見つけた蝶は可能な限り残さず殲滅せよ。ただし、蝶が隠す存在が味方であるかも知れない以上、全力攻撃で一網打尽では同士討ちの危険もある。
――思いの外の難題を提示された猟兵たちが、開いたハッチから次々と昏い星の海に飛び立っていった。
アイ・リスパー
「電幻の蝶ですか。
電脳魔術士である私に電子戦を挑んだことを後悔させてあげましょう」
マレッタで修理・改修してもらった『小型宇宙戦艦』で出撃します。
「ティターニア、改めてよろしくお願いしますね」
艦名を付けた愛機に呼び掛けながら宙域を航行し【千里眼】でデフォルメキャラを召喚します。
電幻の蝶が翔んでいるのを見つけたら、追跡させて蝶の群れを見つけましょう。
「敵を捉えさえすれば電子戦で片付けます」
【チューリングの神託機械】でティターニアのAIと接続。
五感を共有している【千里眼】を中継点として蝶にクラッキングを仕掛けます!
「敵のクラッキングは防壁で対処!
自壊ウィルスプログラムを流し込みます!」
アドリブ大歓迎
●
「――完全に不可視化した艦隊が現在どの位置に存在しているか、こちらでも把握は出来ていません。衝突には気をつけてくださいよ」
「わかってます。機動は最小限、速度を出しすぎないように。ティターニア、改めてよろしくおねがいしますね」
管制官からの注意に頷いて、アイは小型戦艦――ティターニアと名付けた――を宇宙に進出させる。
デブリが漂う暗礁宙域とはいえ、帝国艦隊とマレッタ艦隊が障害物を排除しながら踏み込んだことでなんとか船が行き交うことができる程度にスペースが確保されているのは、小型とはいえ一定以上のサイズを持つティターニアを運用する上で好都合だ。
アイは衝突回避プログラムを走らせるリソースを探査プログラムに割り当てながら、その好都合は同時に状況の厄介さを増しているとも思う。
「不可視化したとはいっても存在そのものが消えてしまったわけじゃありません。デブリの密度が高ければ不自然なデブリの軌道変更なんかを探るだけですぐ見つかったんでしょうけど……」
宙域をゆったりと航行しながら、デブリの密度分布をマッピングしていくアイとティターニア。
つい今しがたマレッタが作り出した突入回廊のどこかに解放軍艦隊は居る筈だ。アイはそちらにティターニアを転舵させながら、猟兵たちにその他の不自然なデブリの空洞が存在する座標を送信する。
「帝国艦隊の捜索は皆さんに任せましょう。ティターニア、アバターの実体化を開始。感覚を私に共有、広域探査を実施します。サポートは任せました」
すぐさま了承の意とともに、艦のメインコンピュータへのアクセス用アバターが現実世界に出現する。
その姿はデフォルメされた、頭身の低い少女の姿をしている。白い肌に白い髪、赤い瞳の少女は、妖精女王から飛び立つにふさわしく背には小さな翅を羽ばたかせていた。
帝国軍の蝶を警戒させないように、エミュレートした帝国軍の識別コードを微弱な出力で発しながら空間を舞うアイのアバター。程なくしてそれを群れからはぐれた僚機と誤認したのか、翅をキラキラと蒼色に煌めかせながら一機の蝶が現れた。
翅に反射する光で器用に信号を発し、我に続けと訴える蝶。どうやら自律兵器らしくそこまで判断力は高くないようだと、アイはその後を追う。
果たして、アイは目標を発見した。先刻まで追っていた蝶が突然消失し、接近してみればアバターを通じて本体の脳に響く程の強烈な欺瞞情報を周囲に拡散させている巨大な物体がそこにある。
光学ステルスと強力なジャミングであたかも透明化しているように見せていたようだが、電子機器を直接五感に接続したような存在が接近すれば否が応でも不快感や違和感というのは感じるものなのかもしれない。ともあれ長居は無用だ。アイもあまりアバターを接近させすぎれば、欺瞞情報の濁流に脳髄を焼き切られてしまうかもしれない。
「自律兵器でこれだけの電子戦能力を持つなんて……ですが、電脳魔術士である私に電子戦を挑んだことを後悔させてあげましょう!」
眩暈に似た感覚の混濁と激しい頭痛を、大量生産品の機械に負けるかと意思の力で押しのけてアバターを不可視の蝶の群れに触れさせる。
そこから即興で組み上げた自壊プログラムを送り込めば、アイのアバターが触れたところから蝶が機能を停止していった。
剥がれ落ちるように艦の装甲から剥離して漂っていく蝶の残骸、その翅が蒼く煌めく中から解放軍の紋章を掲げた威容が姿をあらわす。
「……ちら解放軍駆逐艦ヘレネッタ、誰か応答してください! 本艦は現在――っ、通信、復旧しましたっ! 誰か聞こえますか、こちら解放軍駆逐艦ヘレネッタ! 本艦は原因不明の機材トラブルにより停船中! 味方艦は現在位置を送られたし!」
そしてようやく繋がった通信は、今にも泣きそうな声音の若い女性オペレーターの願いを確かにアイのもとへと送り届けた。
「こちらは戦艦ティターニア、もう大丈夫です。十一時方向にしばらく前進すれば旗艦マレッタと合流できますよ。通信が途絶えて大変な中、お疲れ様でした」
アバターを消し、ティターニアのシートに深く沈み込んでこめかみを揉みほぐしながら駆逐艦ヘレネッタへと労いを送るアイ。
「…………ありがとうございます! 艦長よりティターニア、貴艦の協力に感謝する、と。それと……全クルーより、あなたの健闘を祈ります!」
ティターニアとすれ違うヘレネッタの窓からは、先程まで蝶に覆われ隔絶された外界をなんとか伺おうと集まっていた人々が手を振っている。
アイは、宇宙で突然盲目の孤独に落ちた人々を救い出すことができたのだ。
成功
🔵🔵🔴
ユーノ・ディエール
アドリブ連携歓迎
電幻の蝶――いい加減宇宙に殺虫剤を撒くべきですね
オーガニックなのは地上やプラント船内だけで十分です!
クルセイダーに騎乗し虹界曙勁を発動
ワイルド・ウィーゼル役を買って出ましょう
この手合いが相手ならば、念動力で私の周辺にデブリを展開し
私の機動に合わせて移動させ、デブリの動きに異常があれば――
例えば何も無い空間で急に弾かれたりしたら
周辺にいるであろう蝶を探し
虹界曙勁で知覚した分を引き剥がして潰し
隠された艦船を実体化させ
敵ならばデトネイターで速やかに沈めます
先程とても良いウォーミングアップが出来ました
私のテンションはあの頃と同じ、捉えた敵を確実に倒すだけ
これ以上、銀河に戦乱は不要です!
宇迦野・兵十
いやはやすごいね。
空の上のずっと果てを鉄の船が飛んでるときた!
物珍しくて見て回ってたら、どりぃむましんを見損ねたよ。
へぇ、次は機巧の蝶かい。
それじゃあ一つ、虫取りに行こうか。
空の上には慣れてなからね。
他の猟兵にお願いして、途中まで連れってもらおう。
適当な位置に降ろしてもらったら、[折紙呪法]で作った紙吹雪を辺りにまくよ。
見えなかろうと蝶がそこにいるなら、その紙が消えるなりの反応があるはずさ。
その反応から蝶の動きを【見切り】、【鎧砕き/2回攻撃】で斬る。
何、僕が全部片付けなくていいさ。
蝶の居場所が解れば「まれった」さん達と協力して潰せるはずだからね。
さてさて、次に出てくるのは手負いの虎かな?
●
「悪いね、乗せてもらっちゃってさ」
送信されてきた不審な座標へと駆け抜けたディアブロクルセイダーからふわりと離れ、兵十はパイロットである猟兵――ユーノに感謝を述べる。
初めての宇宙は、彼にとっては驚きと発見の連続だった。火を噴く絡繰り仕掛けの鉄の船が星空を飛び交い、人の営みの何もかもが機械で助けられる世界。見たこともない、想像すらできない世界を見聞することに夢中だった兵十は、いざその星の海に飛び立てと言われて僅かに眉を顰めていた。
当然だ。不慣れな宇宙、それも無重力だかなんだか、少しでも動けばそちらに流され、天地もないしふわふわと身体が浮く。剣術にとって肝要な全身の体重移動を行えない場所で、彼は一人で敵を探せと言われてもどうしたらいいものか悩んでいたのだ。
そこにちょうど現れたのがユーノだった。機械仕掛けの戦闘騎はどうやら乗せてもらうに都合がいい。
拝むように頼み込んで、騎体にしがみついて出撃したのが先程のこと。そして今、可能ならば複数の群れを狩ると意気込む彼女と別れて兵十は一人宙に漂う。
「では私は敵を狩り出してきます。任務が終わってお互い無事だったら回収に来ますね。ご武運を!」
乗客を降ろして気兼ねなく高速飛翔するディアブロクルセイダーの後ろ姿を手をひらひら振りながら見送って、兵十はさてと周囲を見渡す。
「この何処かに機巧の蝶が居るのかい。いやあ全く見えやしないねぇ。――それでも居るっていうなら居るんだろう、それじゃあ一つ、虫取りと行こうか」
薄く動きを妨げないとはいえ、呼吸するため外界と頭部周りを隔絶する宇宙服のお蔭で愛用の煙管を咥えられないことに気づいて――もっと言えば煙草に火が点かないことにも気づいて、ばつが悪そうにそれを仕舞って意気込み一つ。懐から取り出した千代紙をふわと宇宙に流せば、ひとりでに小さく刻まれていくそれが兵十を中心に吹雪く。
赤白紺に山吹と金。鮮やかな紙吹雪が風のない宇宙を吹き抜け、そしてある一点でなにかに当たって溜まっていく。
紙吹雪を側面にへばりつけて、不可視は可視となった。見えるようになったその塊は、かろうじて今まで乗っていた船と似たような形のなにかだとわかるがそれが敵か味方かまではわからない。
「中身が何かさえわかれば、あとは「まれった」さん達に任せても大丈夫かね」
兵十にはあんな巨大な船を沈めるだけの剣を放てる自身が――少なくとも宇宙に慣れきっていない今は、ない。
故にあの中身を識別した後は、宇宙慣れしている解放軍艦隊に任せるつもりで一気に近づき、半ばぶつかるように千代紙で彩られた蝶に斬撃を放つ。
砕かれた蝶と紙吹雪の残滓が宇宙に散らばり、その下から装甲に包まれた何某かが現れた。その上に足を着き、表面を歩くようにして切り払い蝶を蹴散らす兵十に、マレッタからの通信が入る。
「――旗艦マレッタより作業中の猟兵へ、そちらの艦は友軍駆逐艦ルシアナと同定されました。これより本艦及び駆逐艦ヘレネッタが接近し、低出力の対空パルスレーザーで電幻の蝶を排除します。巻き込まれないよう退避を」
「退避って言ってもどうしていいやら……まあいいや、あの子が拾ってくれると信じるしか無いねぇ」
えいや、と装甲をけとばして跳んだ兵十と入れ替わりに、塊を挟み込むように前進した二隻の船が光の雨を降らす。
船には僅かなダメージに留め、表面に張り付く蝶は排除する。巧みな出力調整で放たれたレーザーが蝶を撃ち抜き、味方艦の姿が露わとなっていくなか、兵十の見上げた宇宙では幾つかの爆発の光が瞬いていた。
「ずいぶん派手な花火だねぇ。こうまでやれば手負いの虎も目覚めて出てくるかな?」
●
「いい加減宇宙にも殺虫剤を撒くべきですね!」
オーガニック志向はプラント船の中だけで十分だ。ユーノはディアブロクルセイダーを包み隠すべき船と誤認して接近する蝶の群れを、念力で操るデブリで叩き潰しながら苛立ちを声に乗せる。
こうも追い回されては船を探すどころではない。
だが、こうまでしつこく追い回してくるだけの蝶が潜んでいるということは、もしかせずとも此処が敵艦隊の潜む宙域である可能性は高い。
「ワイルド・ウィーゼル役を買って出はしましたが、まさか此処まで迎撃が厚いとは……」
いくつめかの群れをホーミングレーザーで撃ち落とし、ユーノは機体の周囲に追従させていたデブリをなるべく低速で全方位へと放出する。
蝶の群れを薙ぎ倒して流れていくデブリが、なにもない空間で何かに当たって弾かれた。
「捉えました! そこと……そこ、それと…………そこですねっ!」
居場所が分かれば、あとはユーノの独壇場だ。得意の念動力で"何かが居る"宙域を包み、ディアブロクルセイダーの機体を覆う虹色の光が可視化した念動力としてふわりとその宙域に伸びてゆく。
イメージするのは、薄皮一枚を摘んで引き剥がす様。
それだけで、艦隊を覆う蝶の群れは根こそぎ念動力に引っ張られて剥離し、そして押しつぶされてゆく。
現れたのは帝国宇宙軍の紋章を貼り付けた巡洋艦隊。絶対の隠れ蓑たる蝶を剥がされ、慌てて対空機銃と連装レーザー主砲をユーノめがけて斉射するがもう遅い。
なにしろつい今しがたまで、かつての帝国が誇った最強の一つ、白城艦隊の重厚な対空防御をすり抜けながら白騎士と相対していたユーノだ。今更数隻の巡洋艦の対空防御などに捉えられはしない。
曳光弾とレーザーが宇宙に光の帯を描く中、虹色の光を帯びて輝く騎体がその隙間をすり抜けて艦隊の後背に回り込む。
一隻ずつ、確実に丁寧に。肩に装備されたインペリアルデトネイターに念動力を集中し、槍状に整形して敵艦の機関部に狙いを定めて撃ち出す。
ロケットエンジンに突き刺さった槍は、内部から膨張拡散してエンジンを爆破した。艦尾を内側からぐずぐずに崩された巡洋艦が姿勢を崩し、背後のユーノに側面を晒すように漂流する。
その艦中央部にさらに二発、三発と突き刺さったデトネイターは、敵艦を真ん中から圧し折った。
分断された敵巡洋艦は小爆発を繰り返しながら僚艦の進路上へと流され、激突してその戦力を文字通りこそぎ落とす。機銃が潰され、主砲が損傷し、なんとか回避機動を成功させるが火力の激減したその敵艦の真正面に飛び出したユーノは、新たなデトネイターを装填し――艦橋へと一撃。
二隻目を撃破し、さらに損傷しながらもロールして対空火器の生き残っている面をユーノに向けつつある三隻目に視線を向け――
「あの時と同じ、捉えた敵は確実に沈めます。これ以上、銀河に戦乱は不要ですから!」
降り注ぐ迎撃を前に僅かにも怯まず、ユーノは翔ぶ。
三つ目の爆発が、宇宙を明るく照らした。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ミハエラ・ジェシンスカ
確かに手数に自信はあるが
あの数の蝶を剣で殲滅するというのは些かフレームが折れるな
無論必要とあらばやってみせるまでだが……いや
一つ試してみるか
光学迷彩のみならずレーダー、通信まで阻害するとは厄介な事だ
だが、これならどうだ?
微細な【念動力】を照射しフォースレーダーでの【情報収集】を試みる
ここで敵味方の識別までは望むまい
艦の位置、形状を把握できたのなら【サイコキネシス】で力場を形成
イメージは掌、あるいは網と言ったところか
このユーベルコードの精密動作性は折り紙つきだ
力場で艦表面を撫でるように、蝶どもだけこそぎ落とすように
そのままひとまとめにした蝶どもを押し潰す……いや、掌のイメージに沿うなら握り潰すか
アリシア・マクリントック
敵だけでなく味方も見えない、ですか……機械相手ではマリアの鼻でともいきませんね。そもそも宇宙なので無理ですけれど。
表面を覆いつくしているのは「敵」です。それならば攻撃すればいいのです。貫通性能に優れたものや、爆発を伴うものでなければ隠されているのが味方であっても、そこまで被害を出さずに敵を倒せるでしょう。
……つまりこうです!セイバーホールド!
これなら覆われている船体にまで攻撃は届かず、追撃も表面の蝶を正確に捉えます。
問題は一機ずつしか倒せないこと、最初に見つけるまでが大変ということですが……根気よく行きましょう。もし敵が船体から離れて襲ってきた場合はフェンリルアーマーに切り替えて応戦しましょう
●
「こんな時マリアが居てくれれば……」
そう思ってしまうのは、先程まで見ていた夢がためだろうか。
脚で駆けることのできない宇宙空間では彼女に負担が大きいと理解できていても、幾度となく助けられた友の不在は小さな不安となってアリシアの胸に影を落とす。
わかってはいるのだ。そも、敵を探すという一点において無類の強さを誇る彼女の嗅覚は今回頼ることが出来ない。何しろ戦場は宇宙空間、ヘルメットで外界と呼吸器を隔てなければ臭いを嗅ぐどころか息をすることすら出来ないような場所だ。
マリアに留守を任せたのは合理的な判断だった――そう胸を張って言うことができる。夢を見て少しだけ不安になってしまっただけだ。だから、大丈夫。一人でも戦える。
胸を張り、視線を上げたアリシアは、なにもないように見える暗礁の宇宙を見回した。
「敵だけでなく味方も見えない、ですか……隠れているものが敵か味方かわからないというのは困りものですね」
「全くだ。探すだけならやりようは幾らでもあるが艦艇を覆い隠すほどとなればどれだけの蝶が潜んでいるか」
ぐるりと周辺の偵察を終え戻ってきたミハエラがやれやれと溜息を吐く。
「お前も見たところ私と同じ剣士のようだな。ともすれば広域を攻撃できるような兵器でも持っていないかと思ったが……」
「すみません、そういう装備は使わないんですよ。けれどそういった貫通性能を持っていたり爆発を伴うような武器では、蝶の下に隠されているのが味方だった時――」
強力な火器は危険だ、と訴えるアリシアにミハエラはわかったわかったと手を振ってそれを制する。
「地道にやれと言うんだろう。全く、仕方のないこととは言え余計な仕事を増やしてくれるな、解放軍は。戦争を経験して練度が上がったといってもまだまだ往時には及ばず、か」
かつてミハエラと肩を並べ共に帝国軍と戦った"敵"である解放軍は、もっと洗練された軍事組織であったように思う。
あのときの解放軍なら、この暗礁宙域を包囲するように網を張り、戦術級の兵器なりなんなりを投じて宙域ごと敵艦隊を殲滅するようなより低リスクな手段を取る将も少なからず居た筈だ。
それに比べて自らも何処に敵が居るのかわからない暗礁に突入し、礼儀正しく艦隊決戦に臨むマレッタ艦隊は甘いと言わざるをえない。
尤も、ほぼ銀河全域を支配下に置く当時の帝国軍と戦うにあたって、かつての解放軍はそのようになりふり構わずでなければ抵抗しきれなかった、という部分も大きいのだろうが。
「…………どちらが正しいかなど考えても詮無きことか。仕方がない、フレームの折れる作業だがやるしかあるまい。敵の大凡の位置座標をこちらで索敵する、場所が分かればやれるか?」
目を閉じ、精神を集中するミハエラにアリシアは頷きを返す。
「やってみせます。ですから、敵を探すのはお任せいたしますね」
真剣な目で宇宙を見据えるアリシアが僅かに前に出る、その後ろで精神集中を終えたミハエラが目を開く。
「光学迷彩にアクティヴステルス、その上ジャミング機能付きとはご丁寧に厄介なことだ。だが、これは想定していまい?」
電子機器に対してほぼ絶対の隠密性を誇る電幻の蝶も、決して実体そのものをどこか別の場所に隠しているわけではない。
そこにある、という事象を変えられないのであれば、探しようはあるのだ。
ミハエラのフォースレーダーが放つ微弱な念動波が暗礁を撫でる。空間を進み、デブリや隕石の表面を走り、そして――
「小型艦二隻、準大型艦一隻……マレッタ艦隊は旗艦を除いて駆逐艦クラスで編成された艦隊だったな……」
なにもない空間に"触れた"とき、手応えのあった三箇所を確認してミハエラは呟く。誰に確認したわけでもない独り言のつもりが、背を向けて護衛に付くアリシアが同意の言葉を返した。
図らずも一隻の所属にアタリを付けることの出来たミハエラは、それともう一隻を引き受けて最後の一隻をアリシアに任せる。
「わかりました。では、また後ほど!」
隕石を蹴ってそちらへと駆けていくアリシア。居場所が分かれば戦いようはあるのだ。その策も、ミハエラが索敵をしている間に考えておいた。
「あの宙域に船が……そしてその表面には敵。ならばつまり、こうすればいいのです!」
剣の切先を向け、叫ぶアリシア。
「セイバーホールド! …………フィニッシュ!」
剣から放たれたビームが何も居ない空間に命中する。捉えた、その感触にすぐさまアリシアは追撃を放った。
そこに居るものを捉えさえすれば、セイバーエッジは応えてくれる。拘束光線は違えず蝶を捉え、それをなぞるように駆け抜けたアリシアの斬撃は蝶だけを切り裂いたようだ。
断ち砕かれて破片となって散らばる蝶、その輝きを身に受けながらアリシアは蝶に埋まった艦へと脚を付ける。なにもない透明な宇宙に脚をつく、不思議な感覚に戸惑いながら、彼女は慎重に根気強く剣を振るい少しずつ敵を駆除していく。
程なくして危険に気づいた蝶の群れが舞い上がり、アリシアを圧殺せしめんと押し寄せる。
それを高機動型のフェンリルアーマーを身にまとって艦上を縦横無尽に駆け巡りながら、追いついたものから順に叩き落としていけば、徐々に戒めから解き放たれてゆく足元の駆逐艦が自由を確かめるように少しずつ動きはじめ、対空火器の斉射を蝶の群れへと浴びせかけた。
あまりの物量に僅かに押され始めたアリシアの視界いっぱいに映る、宇宙へと伸びる火線の煌めき。それは曳光弾の光で飛び散る青い欠片をキラキラと輝かせながら蝶を打ち砕いていく。
「――こちらは解放軍所属、駆逐艦ファイドラ。猟兵、救援に感謝する! 船ごと拘束されて数時間も経っていないとはいえ、懐かしの星海だ! まずはこの忌々しい蝶を叩き落として愛しの宇宙をきれいにせんとな!」
豪快に笑うクルーの声を受けて、アリシアもまた弾幕をくぐり抜けて己の元へとたどり着くほんの僅かの蝶を切り裂いていく。
「……ええ、そちらの援護があるのでしたらこの剣で爪での駆除だって、決して非現実的な話ではありません!」
「必要とあらば手作業で一匹ずつ蝶を剥がしても構わんが……明らかに時間の無駄だな」
ひとりごちたミハエラは、フォースレーダーで捉えた艦影を今なお手の中で玩ぶように詳細に把握していた。へばりつく蝶の分でいくらか形状が不明瞭であることを除けば、必要最低限の情報はある。
あとは想像力の問題だ。合理の化身である機械の身で想像力とは、と皮肉に唇を薄く歪めて、ミハエラは薄く広く広げた念動力を凝縮させていく。イメージは巨大な手、それとも網がいいだろうか。
なるべく目の細かい網を想像し、念動力をそのように整形したミハエラのサイコキネシスが不可視の船の表面を撫でる。
網の目に濾し取られるように蝶が引き剥がされ、まずは小型艦の全貌が明らかとなった。
「識別、確認した。旗艦へ、解放軍駆逐艦リコリエットを発見。さて、あちらのデカブツはどこのどいつだ……?」
結果はわかりきっている。故に言葉もなく、今しがた蝶から助け出した駆逐艦リコリエットと、認識領域の端で蝶を排除し通信を復旧したファイドラにメッセージを送りつけるミハエラ。
それを了承したのか、くるりと艦首をそちらに向け小刻みに位置を修正する二隻の駆逐艦の姿を認め、ミハエラは最後の仕上げに取り掛かった。
準大型艦に取り付く蝶もこそぎ取り、網を丸めるようにサイコキネシスを歪めて捕まえた蝶を押しつぶす。
メキメキと圧壊し、一塊の宇宙ゴミへと変わった蝶の群れ。その下から現れたのは――
「ディクタトル級巡洋戦艦か。軽空母改装型と見た。砲戦能力はそう高くは無いだろうが、艦載機を持たないマレッタ艦隊が相手取るにはやや不利だな」
砲の代わりに艦中央部にもカタパルトデッキを増設したタイプの、楔形戦艦。見慣れたシルエットの中々見かけないバリエーション型は、マレッタ艦隊にとって大きな脅威となりうる。
それが機能すれば、の話だが。
事前に位置情報を知らされ、出現のタイミングまでも予告された駆逐艦群が、姿を白日の下に晒され迎撃体制を取ろうとするディクタトル級巡洋軽空母へと魚雷を一斉射する。
強固なステルスの下、発見される可能性は極めて低いという自負と、事実解放軍の目を潰してみせた強力な隠蔽能力を持つ自律兵器の性能。
それがいざ姿を曝け出されるその瞬間まで自身は発見などされていないという油断を産み、迎撃の遅れは格下である駆逐艦へと攻撃のチャンスを与えてしまった。
カタパルトを撫で、格納庫へと突入した魚雷が爆ぜる。
艦内からの爆発はいかに基本構造が戦艦といえど耐えきれず、巡洋軽空母は到るところから爆炎を吐き出しついぞ一機の艦載機も出撃させることなく沈んでいく。
「駆逐艦リコリエットより友軍! ファイドラと協同にて敵空母一隻撃沈! やったぞ、大金星だ!!」
通信で垂れ流される歓声のやかましさに思わず通信を切りながら、沈む敵艦の炎に紅く照らされるミハエラの横顔は笑みを浮かべていた。
弱者が強者を完璧に屠った勝利の喜びか。いや、帝国が誇る強大な戦艦のとびきり無様な死に様への嘲笑か。
ともかく、ミハエラとアリシアはその役割を果たし、この宙域に潜む一隻の強力な敵を倒し二隻の味方を助け出すことに成功した。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
イデアール・モラクス
【PPP開発室】
チッ、不可視の味方艦を避けて小さな蝶モドキだけ潰せだと?
そういう繊細なのは好まぬのだが…んん?フィーナに名案?
…乗ったぞ!
・行動
フィーナが立案した蝶だけひっぺはがす状況を作る合体魔法を試す。
フィーナ何も無いであろうところに炎の渦を発生させ、その渦に対し私が『全力魔法・武器改造』の力で魔力操作をする形で渦の回転率を上げ宇宙に炎の渦潮を作り出す合体魔法を放つ。
「合魔・煉獄渦!」
蝶々を焙り出したらUC【絶殺武刀】を『全力魔法』で威力を増し『高速詠唱』を用い一瞬で行使、不可避の刀による『範囲攻撃』の『一斉射撃』で同時に多数の蝶を『串刺し』にし『属性攻撃』で刀ごと爆破する。
※アドリブ歓迎
フィーナ・ステラガーデン
【PPP開発室にて参加】
あー。酷い目にあったわ。
それもこれも残党が全部悪いわ!忌々しいわね!
で!その敵が見えないんだけど!?
この鬱憤どこにぶつけろって言うのよ!
え?見えなくなってる?
じゃあ片っ端から・・え?ダメ?面倒臭いわね!!
●蝶々のみひっぺ剥がし大作戦
【第六感】で何となーく敵船がいそうな所にUCを使って
火炎流を渦状にして維持させるわ!
あとはそのままイデアールと私の魔力を注いでいって規模を止めるまで拡大し続け、宇宙艦が頑張れば渦から逃げれるけど蝶々は剥がされるくらいの流れを作り出すわ!
炎の温度は中央ほど高熱よ!
虫らしく火に飛び込んでなさいよ!
(アレンジ、アドリブ大歓迎!)
●
「あーひどい目に遭ったわ……それもこれもイデ……残党が全部悪いわ! 忌々しいわね!」
「そうか? 私は楽しかったがな! 次はリアルででも……おっと!」
凄まじい悪夢のせいで戦う前から疲弊しているフィーナをよそに、元気溌剌で宇宙を飛びまわるイデアール。
八つ当たり気味に放たれたフィーナの炎をひょいと回避しながら、しかしと腕を組んで顎を擦る。
「しかし……不可視の味方艦を避けて小さな蝶モドキだけ潰せだと? チッ、そういう繊細なのは好まぬのだが……ええい面倒くさいな!!」
「本当にね! 敵は見えない片っ端から攻撃しちゃ駄目、この鬱憤どこにぶつけろって言うのよ! やっぱイデアールあんた二、三回焼かれてくれないかしら!」
やるのか、あァ? 望むところよ! と互いに得意魔法を展開する二人。イデアールの背後に魔剣の群れが召喚され、フィーナの生成した魔法の炎が渦を巻きながらその規模を少しずつ広げてゆく。
「喰らいなさいイデアール、夢の恨……んん? あっ。ははーん、休戦しましょイデアール、私に名案があるわ!」
ぐるぐると渦巻く炎を見上げ、げんなりと疲弊していたフィーナの表情に笑顔が戻った。
「なるほどな、やってみる価値はある。……乗ったぞ!」
フィーナの思いついた名案は単純明快。
炎の渦を生み出す魔法は、周囲の空間からの魔力を吸引することで燃焼する。この時、渦側の魔力が大きければ大きいほど、回転が早ければ早いほど必要とする魔力が大きくなるわけだ。
周囲の魔力を燃焼するスピードが早ければ早いほど、空間内の魔力を均一に保つ世界の理は燃焼によって生じた魔力的な真空へと急速に周辺からの魔力を押し流そうとする。
時に、それは物理的な力をも生じさせるほどに。
それこそ高位火竜クラスの魔力炎でもなければそうそう発生し得ない事象ではあるが、前例が無いわけではない。多くの火炎魔法を研究する上でフィーナが知り得た知識は、ここに来て予想外の形で打開策へと繋がった。
「しかしそのレベルの魔力燃焼を起こせるのは火竜くらいということだが……さすがのお前でもちょっと厳しいんじゃないか?」
炎の扱いに精通する魔女といえど、フィーナはヒトだ。いくら彼女でも竜ほどの高密度かつ高度な魔法を放つとなると命がけになろう。
イデアールが気遣うようにじっと目を合わせ、無言でフィーナの真意を問う。お前はこんなところで生命を賭ける気なのか?
「バカね、そんなわけないじゃない! 私ひとりで無理ならもうひとり足せばいいのよ!」
巨大な炎が圧力を増して宇宙を燃やす。
空気が存在しない宇宙空間で、燃料となる酸素なしでものが燃焼するという非常識。それも、この世界では一般的でない魔法が為せる業なのだろう。
「言い出しっぺだけど中々キッツいわねこれ…………!」
「クク……お前はその程度か……? 私に任せて休んでもいいんだぞ……?」
額に汗を浮かべて炎を渦巻かせるための回転式を組み上げ、魔力を注ぎ込むフィーナ。
それをサポートするように、回転式と拡大式に魔力を流すイデアールが不敵に笑う。
「冗談じゃないわ! それにイデアール、あんたにはこの後頑張ってもらうんだから此処で魔力使いすぎるんじゃないわよ!」
二人の魔女が奮闘し、炎はゆっくりと渦を巻き始める。一度動き出せば、あとはそっと押し続けるだけでいい。初動ほどの負担もなく、徐々に加速していく炎の渦。
その魔力燃焼が生み出す吸引力が、デブリを吸い込み燃やし始めた。
「よし、理屈は合ってるわ! このまま回し続ければ……」
魔法を維持しながら喜ぶフィーナと満足げに頷きながら次の準備に取り掛かるイデアール。
「ところでフィーナよ、私達のこの合体魔法に名をつけようじゃないか!」
「いいわね! とはいえもう私の中では決まってるわ!」
奇遇だな、私もだと笑うイデアール。二人の表情には先程のような疲弊や気まずさはない。
「せーので発表するわよ、せーの!」
「フタリデメッチャモエルタツマキ!」
「合 魔 ・煉 獄 渦!」
二人の声は一字すら被ることなく、虚しく宇宙に木霊した。
ともかく、炎の渦は順調に加速、拡大しながら周囲の空間ごと魔力を吸い込み始める。
ほどなく、なにもない空間から何かが現れて吸い込まれ始めた。目を凝らせば、それが蒼色の蝶だとわかる。
作戦成功だ。蝶を吸引出来る力があるならば、それ以上の加速は必要ない。むしろこれ以上回転を早めれば、蝶に纏わりつかれた艦艇すら吸い込んで燃やしてしまうだろう。
敵ならいいが、味方を生きたまま丸焼きに――なんて笑い話にすらならないだろう。
「次よ、そことそことそこ! イデアール、見えてるわよね!」
蝶の群れが出現した宙域を指差し叫ぶフィーナに、無論とうなずくイデアール。
彼女の背後にはすでに無数の魔剣が現れ、主の号令を待って漂っている。
「――いかに透明になろうと、存在する以上滅せぬモノなどありはしない!」
二人の魔女の連携で姿を現した蝶の群れ。必死に羽ばたき渦に抵抗するそれへと魔剣が飛び込み、蝶を切り裂きながら進んでいく。そして群れの中心に達したその瞬間、実体を構成する魔力が一気にその組成を転じて爆発魔法へと変わっていった。
爆風に叩き落とされた蝶が、炎の渦で焼き尽くされてゆく。
「船が見えたわね! マレッタ、あれ敵? 味方?」
姿を現した艦艇が敵か味方か。宇宙出身ではない二人に、遠目で艦艇の所属を識別できる知識はない。
頼るべきは素直に頼って、マレッタに識別を問うた答えは――敵。
「了解よ! イデアール、もう一回手伝いなさい!」
「渦を動かすんだな、任せておけ!」
二人の魔女が再び力を合わせ、炎の渦をゆっくりと動かしていく。
必死に逃げようとスラスターを噴かして回頭しようとする敵艦だが、もはや渦の生み出す引力に囚われそれも叶わず炎に呑まれていった。
「一丁あがりね!」
「うむ、我々の勝利だ!! クク、フフフ、アーッハッハッハッハ! 不可視といえど我らの敵ではなかったな!!」
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『帝国宇宙戦艦』
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POW : フルバースト・コズミック
【全砲一斉射撃】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD : デストロイレーザー
【10秒間のエネルギーチャージ】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【主砲からのレーザー砲撃】で攻撃する。
WIZ : インペリアル・マカブル
【自身の稼働可能時間】を代償に自身の装備武器の封印を解いて【帝国式鏖殺形態】に変化させ、殺傷力を増す。
👑7
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
『七番艦、巡洋艦ガレファール轟沈! 八番艦バルナグ、十番艦ジアゴルト通信途絶!』
『三番艦、空母ディレシオン信号消失、解放軍艦隊の攻撃を受けた模様!』
『二番艦、戦艦アドミラル・コルヴォ―爆沈しました!!』
艦の外壁に取り付く電幻の蝶が捉えた外部情報。それを確認しながら、帝国宇宙軍第81艦隊司令トールマン中将は苦虫を纏めて百匹噛み潰したような表情を浮かべる。
無事結集しつつあるという味方艦隊が送ってよこしたという補給を満載した輸送艦。物資が底を突きつつある81艦隊にとって喉から手が出るほど欲しいそれ――特に主力であった空母ディレシオン艦載機の燃料、すでに艦隊の推進剤に全て使ってしまった――を得るため、危険を承知で反乱軍……今は自分たち帝国軍残存戦力こそが反乱軍なのだろうが、の支配領域を移動していた艦隊は、案の定解放軍艦隊に捕捉されてしまった。
残り少ない弾薬を消費し、ドロイド兵による自律制御で動かしていた無人の駆逐艦を捨て駒にしてまで逃げ込んだ暗礁で、切り札の電幻の蝶を使って敵の追撃を切り抜けるつもりだったが蝶によるステルスまでもが破られつつある。
どちらにせよ、もう補給艦は待ってはいまい。今この宇宙は、帝国軍にとって危険過ぎる場所だ。
補給艦ごときがじっと漂っていては、たちまち解放軍に見つかり拿捕されてしまうだろう。
『進退窮まったな。全艦ステルスを解除せよ』
逃げるにしても、ブースターの噴射口までみっしりと蝶を纏ったままでは動けない。
どのみち蝶を脱ぎ捨てるならば、それは敵によって無様に引き剥がされるより堂々と自分から脱ぎ捨てるほうがよい。
帝国軍人の誇りとはそういうものだ。
『旗艦デフィオン、トールマンより81艦隊残存全艦隊へ。これより我が艦隊は接近する敵艦隊に対し、最後の砲打撃戦を敢行する。――これは沈められた戦友の恨みによる玉砕ではない。皇帝陛下の仇を討つための、忠義の戦いでもない。ただ! 我々が生き残るための戦いである!! 総員、生きて此処を凌ぐため奮起努力せよ!』
応、と兵士たちの声があがる。解放軍への恨みで戦っては、頭に血が昇って自らの生命を軽く見る者が現れる。皇帝の仇を大義名分としては、そのための死が美化されてしまう。
だからこそ、自分の為に戦えとトールマンは命ずる。生き汚いと嗤笑われようが、忠義に欠けると同胞から詰られようが、それも生きてこそ背負える不名誉だ。
生きてこそあれば、必ず道は開ける。そんな司令官の想いを乗せて、デフィオンの主砲が開戦の号砲を放つ。
●
「――駆逐艦ファイドラ、艦首に被弾! 主砲および魚雷発射管大破、戦闘能力喪失!」
突如空間を切り裂き放たれた強大なビームの直撃を受けて、駆逐艦隊の一隻が大破した。
その報せに、解放軍旗艦マレッタの艦橋は騒然となった。
「追い詰めれば窮鼠ですら猫を噛むか。いや、敵は窮鼠どころか虎だったな」
猟兵たちの奮闘のおかげで順調に敵艦隊を捕捉、撃沈できていたところに飛び込んだ凶報に、マレッタの艦長は眉を顰める。
追い詰めていたなど思い上がりだった。敵は対等以上の装備、練度を誇る帝国宇宙軍。残党となって困窮していようとも、それは不変だということを忘れてはならない。
「ファイドラは後退、リコリエットを護衛に付けろ! ヘレネッタ、ルシアナは本艦に随行、敵艦隊へと砲雷撃戦を仕掛ける!」
敵の位置と編成は、と問う艦長に、すぐさま送られてくるデータ。
孤立した大型戦艦が一、ある程度まとまった巡洋艦隊が四。
「本艦および駆逐艦隊の火器兵装ではあの戦艦には――」
「通じませんでしたな。レーザーはおろか虎の子の徹甲榴弾すらあの装甲にはまともに損害を与えられたと思えません」
副官に確認すれば、情けないほど正確な事実を突きつけられる。承知している。もとよりそのつもりだ。
「本艦隊は回頭、側面より敵巡洋艦隊へ突入する! 猟兵に伝えろ――」
敵の巡洋艦隊は一隻たりとそちらの援軍に行かせはしない。
だからどうか、戦艦の相手は任せた、と。
イデアール・モラクス
【PPP開発室】
さぁてメインディッシュだぞフィーナぁ!
我ら紅い2連星の力、見せつけてやろうじゃないか!
・行動
「宇宙は良い…何せ周りの被害や地形への影響を考えず全力でブチかませるからなぁ!」
UC【魔導覚醒】を『高速詠唱』で行使。
本気モードになり、魔導防壁を纏いながら縦横無尽に飛翔し、『全力魔法』の力で魔力を収束した究極の『属性攻撃』魔法【聖と闇、炎と雷を合体させた極太の魔導レーザー】を無詠唱照射、宇宙戦艦すら包み貫くほどの圧倒的な太さへと『範囲攻撃』の力で強化し、敵戦艦を『なぎ払う』。
「戦艦?要塞?軍隊?アーハッハッハ!私こそワンマンアーミー!たった1人の軍隊なのだよ!」
※アドリブ大歓迎
フィーナ・ステラガーデン
【PPP開発室にて参加】
どっかで見たことある気がするわねこいつ!
どこだったかしら?まあいいわ!とりあえず壊せばオールオッケーよ!
どーせイデアールは好きに暴れてるだろうし
私は後方で隠れて魔力集中させてもらうわ!
さっき結構魔力使っちゃったし
相手がこんなデカブツなら、なんかこうすごいの食らわせなきゃ駄目ね!
何をどう凄いの食らわそうかしら?
無駄にどでかくなったマグロ叩き込んでもいいし
もんすごい規模の大爆発を起こしてもいいわね!
うーん。ま!きっと何か詠唱の長さに応じて何かすごいことが起きるわよきっと!
(ひどい丸投げっぷりですがギャグ展開でも本当に何かすごいことが起きても良いです!アレンジ等々自由に)
●
ステルスを解き、その巨体を悠然と猟兵たちの前に晒した帝国宇宙軍第81艦隊旗艦デフィオンは、展開する猟兵に目もくれずに突破可能な解放軍の急所であるマレッタ艦隊へとその艦首を向ける。
81艦隊巡洋艦と激しく砲火を交えるマレッタ艦隊にデフィオンからの強力な砲撃までもが襲いかかれば、奮戦する彼らといえども分が悪い。長くない砲撃戦の果てにマレッタ艦隊は決定的な損害を受け、敵艦隊の突破と逃走を許してしまうだろう。
それは一隻でも多くを生かし、撤退を目指す帝国軍にとって極めて理に適った作戦指針であった。将官まで上り詰めたトールマン中将は、冷静に戦場を俯瞰できる司令官であったと言えよう。
だがそれは戦術的に正しいが一つの過ちを抱えていた。つまりは猟兵の存在だ。電幻の蝶を介して外界を観測していた彼らは、僚艦がなぜ撃沈されたのかを誤認していた。
空母ディレシオンは解放軍の二隻の駆逐艦によって雷撃を受け、それが致命傷となって撃沈した。
戦艦アドミラル・コルヴォーは突如宇宙空間に出現した火炎の渦に呑まれ、マレッタ艦隊との交戦で受けた損傷部が誘爆を引き起こして爆沈した。
彼らが特に戦力として重視し、その動向を注視していた二隻は、解放軍の手によって――あるいは正体不明の新兵器によって沈んだ。彼らはそう考え、猟兵を少し強力な偵察観測要員程度と認識していたのだ。
「さぁてメインディッシュのお出ましだぞフィーナ! 我ら紅い二連星の力、奴に見せつけてやろうじゃないか!」
ゆっくりと艦首をもたげる巨大戦艦の正面に仁王立ちするように浮かぶ女がいる。
「紅……? なんだかわからないけどカッコいいじゃない! いいわよ、とりあえずあいつを壊せばオールオッケーね!」
その女の後ろ、杖をくるくると手の中で回して啖呵を切る女がいる。
イデアールとフィーナ、二人の魔女は己を無視してマレッタ艦隊との砲撃戦に向かうデフィオンの前に立ちふさがり、彼の艦との戦いに臨む。
「宇宙はいい……なにせ周りの被害や地形への影響など考えずに全力をブチかませるのだからなぁ!!」
地上でも周辺への考慮をしていたかといえば、していない訳ではないが常に全力、手加減は他の猟兵より遥かに最小限に留めていたイデアール。そんな彼女が敢えて全力と言うからには、その魔導は凄まじい。
対魔導戦闘など考慮していない、魔力を測ることなど想定していないはずの帝国戦艦の計器すらも乱れ、否が応にもクルーたちの視線がイデアールへと集中した。
「クク……的がでかいな、攻め甲斐がありそうだ! 要塞だろうが戦艦だろうが、この私が根こそぎ滅ぼしてやろう!!」
高笑いとともに高機動装備の鎧装騎兵もかくやという速度で飛翔し、弾幕を展開するデフィオンの防空圏へと突撃する魔女を相手に、対空機関砲から吐き出された砲弾が雲霞の如き軍勢を組んで押し寄せる。
「ハハハ! その程度の豆鉄砲、何万発撃とうが私に傷一つ付けられるものか!」
その弾幕を魔導レーザーの掃射で撃ち落としてみせるイデアール。強力な攻撃はそのまま強力な盾ともなる、が、その一瞬稼いだ時間でデフィオンは猟兵への対応を開始した。
『第815海兵トルーパー中隊続け! 敵の機動戦力を叩き落として撤退戦を成功させるんだ!』
重装甲のアームドフォートを纏った帝国騎兵部隊が盾を構えて次々にデフィオンから飛び立つ。狙うはイデアールだ。戦艦の装甲板と同等のシールドを装備し、纏う装甲も標準仕様より数段強化された改修型。推進剤と弾薬の欠乏は如何ともし難いが、それでもたった一人撃ち落とすに足りないということはない。
隊伍を組み、見事な連携で隙を見せない防御陣形を構築してイデアールの魔導レーザーをいなしながら応射を開始する騎兵。さしものイデアールも戦艦の対空砲と直掩騎兵の攻撃に晒されては、たまらず――否。
「クク、ぞろぞろわらわらと出てきたものだな! いいぞ来い、私一人でお前達を圧倒してみせよう! 私はたった一人でも軍隊、すなわちワンマンアーミーなのだからな!」
『舐めるな、猟兵!』
加速した一騎がフォースセイバーを抜き、イデアールに斬りかかる。それを魔剣の一振りで押し返し、続く騎体の援護射撃を障壁を張って防ぎ切る。
弾き返された騎体が姿勢制御に成功したところで、イデアールはちらと後ろを振り返った。
「時間だな。お前たちとはもっと遊んでも良かったが――」
彼女の持ちうる魔力の全てを注ぎ込んだ、最大最強の魔導レーザーが収束していく。
「ナントカ連星とか言ったってどーせイデアールは好き勝手暴れるのよね」
時は少し戻って、イデアールが敵艦に接近戦を挑む直前。
もうひとりの魔女ことフィーナは、嬉々として飛び立つ相棒の背を見送ってやれやれと溜息を吐いた。
とはいえ、彼女の派手好きはいい目眩ましになる。先程の大魔法、フタリデメッチャモエルタツマキの発動で魔力を大きく失ったフィーナが再度魔力を溜め、戦艦に通用する大魔法を練り上げる時間は稼いでくれるだろう。
迎撃をひらひらと掻い潜りながら、案の定無駄に敵の目を引きつける動きを見せつける魔女を視線で追いかけながら、フィーナはデフィオン攻略の術を考える。
「どっかで見たことあるのよねあの船。どこだったかしら……」
記憶に引っかかる帝国戦艦の艦影。思い出せば攻略の糸口が見つかるかも知れない。少し考え込むフィーナだが、しかしすぐさまそこに割いていた思考リソースを魔法構築へと振り分ける。
「どうでもいいわね、とにかく凄い攻撃で壊しちゃえばあれがなんだろうと一緒よ!」
凄い一撃。そんな漠然としたイメージで魔法を作り上げていくフィーナ。完成形をイメージして最適な呪文を組み合わせ、思い通りの事象を引き起こす通常の魔法構築ではなく、思いつく限りの要素を適当に積み上げ、結果として「狙った効果は発揮するであろうが、そのための事象として何が起こるかは自分でもわからない」というとんでもない術式を組み上げていく。
幸いにも集中を邪魔する敵部隊はまだフィーナに気づいていない。囮がいい仕事をしているおかげだ。内心で優秀なデコイに感謝を述べながら、フィーナは術式の仕上げに入る。
『高エネルギー反応、ニ! 至近に一、その後方にさらに一、現出!』
デフィオンのブリッジでは、せいぜい鎧装騎兵の亜種程度と考えていた魔女たちの大魔法を感知したことで蜂の巣を突いたような騒ぎが起こっていた。
大型砲艦の主砲クラスのエネルギー反応だ。そんなものが直撃すれば、いかな堅牢な装甲を誇るデフィオンといえど沈まないにせよ痛打は逃れ得ない。
『狼狽えるな! 艦側面、バイタルパートを敵に晒せ! そこが一番装甲が厚い!』
『しかしトールマン司令、万が一装甲が破壊されれば急所が剥き出しに……!』
トールマンの一喝で狼狽こそ鎮まったが、今度はその指示への真意を問うような空気を纏うクルーたち。
『万が一を嫌って直撃を受ければそれこそ本艦は沈むかもしれん。沈むか沈まぬかの二択であれば、少しでも沈まぬ可能性の高い重装甲部で攻撃を受けることが最良と判断したまで。回頭急げ、敵は待ってはくれんぞ!』
経験を積んだ老獪なる司令官の命令に、今度こそクルーは一体となってその意思を遂行する。
かくて、イデアールの放ったレーザーがデフィオンの右舷を舐める。熱量と魔力を飛散させ、装甲を赤熱させながら艦の側面を灼くレーザーが、ついにバイタルパートを越えてエンジンブロックに迫り――
『させるか!!』
その射線に割り込む者がある。盾を構えた重装騎兵たちだ。
「愚かだな、お前たちごときの装甲で耐えられるものか!」
承知の上だと吼え、騎兵たちは一人また一人と蒸発しながらもレーザーを堰き止める。船だけはやらせるものか、同胞は、同じ釜の飯を食った戦友は生きて逃がすと覚悟を決めた兵士たちの決死。それは最後の一人が焼失するまで続き、見事にレーザーが途切れるまで致命傷を与えることなくそれを防ぎ切る。
「チッ……フィーナ!」
魔力を使い果たしたイデアールが、後方に控えるはずの友を呼ぶ。
「任せなさい! 行くわよ――恒星召喚!」
魔女の全力が、奇跡を呼ぶ。
ごくちっぽけな、星系を形成するほどの引力すら持たない、けれど確かに燃え盛る星。
星の光すら届かない暗礁の宇宙に、煌々と輝く星が一つ生まれ出る。
その星から伸びた炎が、イデアールの一撃で脆くなったデフィオンの装甲を融解させ、打ち砕いた。
「――どうよ!」
星の庭の魔女が喚んだ星は、暖かな熱と光を降り注ぎ、敵には無慈悲な灼熱でもって滅びを与えんとする。
――そして、その光は。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
メイスン・ドットハック
【SPD】
途中参戦じゃけど、まあいいじゃろー
帝国艦隊は沈めとくに限るからのー
ユーベルコード「星の海を制覇せし船」で大型宇宙戦艦を召喚
ワープで乗り込み、敢えて真っ向勝負を挑む
ビーム機銃で連射しつつ、レーザー砲を発射し、広域破壊ミサイルを撃ち込む
デストロイレーザーの射撃体勢に入ったら、10秒の間に総攻撃を敢行し艦内装備すべてを叩き込む【一斉発射】
デストロイレーザーはこちらのレーザー砲で応酬し、軌道を逸らすことで大破回避を狙う
ボロボロになったら、そのまま自動操縦にして戦艦を敵に突貫させて自爆攻撃を敢行する
そいつは僕が造った奴じゃし、失っても痛くはないからのー
ルベル・ノウフィル
【赤目】
事前に大量の彩花を作成
早業活用
移動速度重視の小型艇に乗り込み援護役で出撃
帝国式鏖殺形態は脅威でございますが、アイ殿に頂いた敵の情報を有効活用させて頂きますぞ
小型艇から放つは彩花
1、彩花弾を念動力で細かく軌道修正し敵の砲弾に対抗する雷撃とする
2、周囲のデブリを念動力で操作し集めオーラ防御にて盾とする
3、アイ殿の合体の時間稼ぎに小型艇を盾としオーラ防御でティターニアを守り、自身は猟兵宇宙服にて脱出、
4、★反撃UC:写夭
【全彩花と小型艇】を代償に自身の装備武器の封印を解いて【痛悼の共鳴鏡刃を死霊戦艦】に変化させ、殺傷力を増す
5、死霊戦艦が接近するティターニアを砲撃で援護する
あとは任せましたぞ
アイ・リスパー
【赤目】
「現れましたね敵戦艦!
艦長、例の物の射出をお願いします!」
マレッタに射出してもらったのは、ティターニアと一緒に持ち込んでいた『機動戦車オベイロン』。
もちろん宇宙空間では戦車は役に立ちませんが、それは普通の戦車の場合です!
「ティターニア、オベイロン、合体シーケンス開始!」
【夏の夜の夢】により、ティターニアがパワードスーツ形態に変形。
そこに武装コンテナに変形したオベイロンが合体します。
「強化ブースターと追加武装にツインジェネレーターの威力、受けてください!」
ルベルさんと協力してロケットランチャーを乱射しながら敵艦に接近。
荷電粒子砲を放ち、さらにプラズマブレードの近距離戦闘をおこないます!
●
そして、猟兵の生み出した新たな星の光は、戦艦デフィオンに接近する影をその視線から覆い隠す。
「今が好機です! 艦長、例の物の射出を願います!」
恒星の輝きを目眩ましに、デフィオンへと肉薄するアイのティターニア。その艦影と、敵巡洋艦隊と交戦中のマレッタ艦隊との直線上に遮るものがなくなった僅かなタイミングで、アイはマレッタへ呼びかける。
そしてマレッタは、自身の存亡を懸けた同格四隻との激しい砲戦の最中にあってそれに応えてみせた。
射出されたのは一輌の機動戦車。空間戦闘においてそれが無意味とは言わないが、いくら戦車砲であっても戦艦を相手に砲撃戦を挑むには分が悪い。上陸戦となれば話は別だが、となると今度は迎撃の危険のある距離で戦車を投入するリスクが高すぎる。
――それが通常の戦車であれば、だが。
「ティターニア、オベイロン、合体シーケンス開始!」
アイの演算によって、戦艦がその形を変えてゆく。飛来した機動戦車もまた、その形状を戦車から別のものへと変じていく。人型となった戦艦ティターニアに、追加ユニットとして合体した機動戦車オベイロン。妖精と呼ぶには些か物々しい機影のそれが、強化された出力でもって星の光の庇護から飛び出してゆく。
「アイ殿、対艦接近戦ですね。援護しますぞ」
その傍らに付くのは、ルベルが駆る小型艇だ。生憎恒星の熱に耐えられる機体では無いがゆえに、合体が完了しアイが飛び出した直後の合流となったが、デフィオン側も突然の恒星出現への混乱で迎撃の初動が遅れたためにそれはさしたる問題ではなくなっていた。
「ルベルさん、ありがとうございます! こちらは直接白兵戦を挑むつもりです、取り付くまで援護を――」
振り返り、小型艇に視線を向けたアイは見る。
巨大なワープアウト反応が、二人の直ぐ側に現れたのを。
空間を突き破るようにして出現したのは、デフィオンに匹敵する大型戦艦。だがその艦影は帝国軍の如何なる艦艇とも異なっていた。
「敵……それとも味方?」
「分かりませんが、敵でないことを祈るばかりでございます」
息を飲む二人をよそに、その新たな艦影は有無を言わさず猛烈な火力投射を開始する。狙うは――帝国軍第81艦隊旗艦、デフィオンだ。
「途中参戦じゃけどまあいいじゃろー、帝国艦隊の生き残りは沈めとくに限るからのー」
その大型戦艦、暁の艦橋でメイスンはキーボードに指を踊らせ艦を制御する傍ら一人呟く。
出遅れたところで、本命叩きに参加できれば問題はない。相手が主力戦艦クラスであれば、暁のもつ砲撃戦能力はあって邪魔になるものではないだろう。
主砲が敵の装甲を穿ち、放ったミサイルが対空砲によって撃ち落とされ爆発の帯を宇宙に描き出す。
「そっちの小さいのの二人、聞こえてるかのー。こっちは真っ向殴り合うからのー、近づくんならその間に行くんじゃよー」
奇襲攻撃で一方的に殴りつけられた時間は数秒にも満たない。すぐさま砲塔が旋回し、デフィオンの反撃が暁へと着弾しはじめた。
「いい反応速度じゃのー。それでこそ撃ち合う甲斐があるもんじゃよー」
「な、なんだか分かりませんが好機ですね、彼女の船が敵艦を相手してくれている内に行きますよ!」
「了解でございます、アイ殿」
暁とデフィオンが大型艦同士の派手な近距離砲戦を展開している今こそが好機。それを逃すまいと加速するティターニアとルベル。
だが、如何に逆光でその存在をギリギリまで隠匿していても、如何により強大な敵との砲撃戦に意識が奪われていても、相手は戦艦だ。完全な死角など存在し得ない。すなわち二人の接近に気づいたデフィオンの迎撃が、二隻へと襲いかかった。
「くっ……さすがは戦艦ですね、この距離なら辛うじて回避できますけど、これ以上の接近となると……」
演算能力をフル活用して迎撃を避けるティターニア。だが、回避を考えるとこれ以上の接近は困難だった。多少の攻撃力減を承知の上で、この距離での砲撃戦を開始すべきか――アイがそう考えたその時、ルベルの小型艇が前に出る。
「ルベルさん!?」
「僕がティターニアの護りに付きますぞ。アイ殿は護りを気にせず攻めてくださいませ」
小型艇からふわりと舞い散る符が、ルベルの念動力で一斉にデフィオンへと向かっていく。迎撃を展開する火砲の砲弾に自らぶつかり相殺されてゆく符弾が火力の密度を下げ、それを潜り抜け飛来した砲弾は同じく念動力で前方に集められたデブリが受け止める。機関砲程度の火力であれば十二分に受け止めきれる防御だ。
だが、ルベルは知っている。このまま接近すれば、敵の迎撃は機関砲では済まないだろうことを。何しろ全体に山程火砲を満載した主力戦艦、副砲の数も十や二十では足りはしない。ましてかの艦種は、消費するエネルギーや砲弾に糸目を付けない鏖殺形態への移行能力を有する。
案の定開始された副砲による猛烈な迎撃に、符弾による迎撃は逆に粉砕され、デブリの盾も穿たれてゆく。
「ですが、ここまで近づけば目標は達成したも同然でございます」
ルベルが脱出した直後、ついに盾を貫通した砲弾が小型艇を貫いた。
――その爆炎を切り裂いて、ティターニアが高速で残った距離を詰めてゆく。
「強化ブースターと追加武装とツインジェネレーターの威力、そしてルベルさんとの連携の成果、受けてください!」
ロケットランチャーを斉射し、対空砲を潰しながらデフィオンに取り付くティターニア。その腕部荷電粒子砲が急激にチャージし、そして副砲を薙ぎ払う。
さらにはその砲口に形成したプラズマブレードが主砲塔に突き刺さり――同時に反撃のため放たれた主砲の一撃がティターニアを掠めて漂うデブリを破砕する。
「くっ、被害状況は……左肩部に動作異常、装甲が一部破損ですか……大丈夫、まだ小破です!」
まだ戦える、見上げれば暁とデフィオンの砲撃戦はややデフィオン有利に進んでいるようで、ここで攻撃を中断するわけにはいかないとアイは気合を入れ直す。
が。
「いえ、退いてくださいアイ殿。あの船からもそのように連絡が来てございます」
宇宙を漂うルベルが、短刀から呼び出した死霊を解放軍型戦艦の船幽霊へと変形させて撤退支援の砲撃を開始する。無数の呪いを帯びた砲弾がデフィオンへと着弾する中、その勧めに不服を述べようとしたアイの視線の先で、デフィオンの艦首大型砲――デストロイレーザーが、暁の船体を貫き爆砕した。
「いや、まだじゃよー」
デストロイレーザーの直撃を受け、爆発を繰り返しながら崩壊してゆく暁の艦橋でメイスンは言う。
まだだ、暁の戦いは終わっていない、と。
あちこちから炎と火花を散らす艦橋で、最後の一手をキーボードに打ち込んで、メイスンは静かに沈みゆく船から脱出する。
全身に攻撃を浴び、もはや原型を留めぬ有様の暁が、自動操縦で艦首をデフィオンへと向けて征く。主に賜った最後の命を遂行すべく、無慈悲な迎撃でその船体をばらばらに砕かれながらデフィオンへと接近する暁は、ついにデフィオンに激突して爆沈する。
「僕が一人で作った船じゃし、乗組員も居らんし、失っても痛くはないからのー」
けれど、最後まで忠実に命令を果たした戦艦に思うところがまったくないではない。
暁の爆発から満身創痍で抜け出して来たデフィオンへと牽制の砲撃を撃ち込むルベルの死霊戦艦とアイのティターニア。その巨体が脱出したメイスンの直ぐ側を後退する。
その船体に掴まって、三人は戦艦デフィオンの攻撃圏から撤退してゆく。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
ユーノ・ディエール
アドリブ連携歓迎
戦艦狩り――今までと立場が逆とは、妙な気分……
ですが、引く訳にはいかない!
乱戦ならば主砲による突破は狙ってくるでしょう
それこそが私の狙い、必ず貫いて見せます
クルセイダーに騎乗、高機動モードに変形
友軍と連携し前線へ突入後、迷彩とハッキングで偽装
早業で駆け抜けて敵旗艦側面まで全速で突入し偽装解除
全武装の一斉射で弾幕を張り、紛れて更に前進
無理なチャージを試みた機に乗じて
敵機関直下に強襲モードで進攻し
インペリアルデトネイターを最大出力
集束した念動力で炸裂槍を撃ち出して串刺しにしてやります!
最後は内側に念動力を浸透させ爆発させ
艦の機能の全てを停止させましょう
何度でも、必ず止めてやるわ!
宇迦野・兵十
手負いの虎が牙が剥く、か。
派手なもんだが、これ以上はさせる訳にはいかないね。
とは言え、鈍刀で斬れるもんはた高が知れる。
狙いは…そうさな、艦橋。大将首だ。
残骸や隕石を蹴りながら戦艦に近づくよ。
蝶の破片の中から近づけば、見つかり難いかもしれないしね。
攻撃に当たったら吹っ飛びそうだ、【残像/見切】でどうにか避けるとしよう。
艦橋まで近づいたら外壁を【剣刃一閃】。
そのまま艦橋に入り込めれば【鎧砕き/2回攻撃】で斬りあい、大将首を狙う。
入り込めなくても直接艦橋を攻撃されたんだ、混乱はさせられるさ。
遠い星の夢の果て、お前さん達の戦はここで仕舞い。
でもね、お前さん達の誇りは僕が覚えておくよ。
アドリブ・絡み歓迎
●
『――被害状況!』
同格の戦艦による自爆特攻。その直撃を受けたデフィオンは、各部に無視できないダメージを受けている。
『上部第一、第二主砲塔沈黙! 第三主砲塔旋回に異常!』
『右舷副砲および対空砲、損耗七割! 防空圏形成は不可能です!』
猟兵たちによる強襲は、最大最強格の兵器である戦艦にここまでの損害を与えた。それはデフィオンを指揮するトールマンも認めざるを得ない現実だ。
『…………だが、まだ艦は動くな? このまま前進、巡洋艦隊とともに戦域を強行離脱する! 艦載鎧装騎兵は812、814中隊を出撃させろ。艦の直掩に充て、彼らの代わりに保安要員を艦内に展開。防空能力が死んだ今、敵は白兵戦を挑んでくるだろう』
戦艦を艦隊戦に依らず、かつ最も効率的に無力化するために取りうる手段はそう多くはない。
肉薄し、脆弱なエンジンブロックへの一撃を以て致命傷を与えるか、艦内に突入して頭を潰すか、どちらかだ。
『――副長、貴様は戦闘指揮所に向かえ。私にもしものことがあれば、この艦の将兵は貴様に任す』
全身から炎を噴き出し、煙を吐き出しながらも止まることのない戦艦デフィオン。そのクルー達の目は、この苦難に際してなお、未だに死んではいない。
「戦艦狩り……いままでとは立場が逆とは、妙な気分ですね……」
かつて宇宙に生きるあらゆる人々にとって、抗い難い恐怖と絶望の象徴であった帝国軍の戦艦。
遭遇すればその圧倒的な火力によって、瞬く間に死を与えられる存在だったそれを、今や解放軍が逆に追撃し、撃沈すらやってのける。
帝国攻略戦のような大艦隊を必要とせず、小規模の艦隊でも帝国軍に対抗できるようになった――時代は確実に変わりつつあると、ユーノは実感する。
「だからこそ、ここで逃がす訳には――退く訳には行かない!」
変わりつつある時代の流れを止めてはならない。ここで解放軍が勝利することが、帝国の艦隊はもはや斜陽であるという証左となるだろう。故に、敵は完全に撃滅せねばならない。
「クルセイダー、高機動モードへ移行……光学迷彩展開、電子干渉開始! 行きます!」
全身の推進機を後方に集約した高速突撃形態でデフィオンに肉薄するユーノのディアブロクルセイダー。蝶による不可視ほどではないにせよ、その姿を隠匿した騎体が燃える戦艦とすれ違う。
その刹那、変形を解き急制動。迷彩を解除したクルセイダーが、搭載したミサイルやホーミングレーザーを艦の側面に浴びせかける。
「やはり通じませんか。マレッタ艦隊の砲撃すら弾いたというのは伊達では無いようですね、ですが!」
これは陽動だ。
――もうひとり、敵艦に致命傷を与えるべく忍び寄るものから敵の目を逸らすための。
『敵騎発見! 814中隊、そちらは上から行け! 中隊各騎、騎首を下げろ! 上下から敵を挟撃する!!』
至近距離に現れた敵を排除するべく、すぐさま出撃した敵の鎧装騎兵たちがユーノに迫る。
見事に統率された隊形を維持し、盾を構え大型ブラスターやミサイルでクルセイダーを追う敵部隊に、ユーノはくるりくるりと天地を激しく入れ替えるような急激な回避機動でそれを受け流しながら笑う。
「直掩部隊まで来てくれるとは願ったりですね……! いいでしょう、本命を撃つ前に貴方たちを落としてみせます!」
ビームの隙間を縫うように、ミサイルが迫れば急制動からの反転、ホーミングレーザーの弾幕でそれを撃ち落とす。
応射する実弾火器による砲撃はシールドに防がれるが、それでもビーム以上の衝撃は騎兵の姿勢を大きく乱した。
そこへ肉薄したクルセイダーの刀が振り下ろされる
『なんの……!』
「ならばっ!」
それをブラスターの銃身で受け止め、スラスターの出力を増してクルセイダーを押し返そうとする騎兵。
弾き返されれば、姿勢を崩すのはユーノの方だ。そうなれば数で勝る敵部隊が一斉に襲いかかってくるだろう。
が、それはユーノの攻撃がそこで終わっていたならばの話。ユーノの刀、スピリットオブスティールはもとより二つで一つ。受け止められた刃を一瞬手放し、もう一振りをすばやく抜き放ったクルセイダーの二撃目が騎兵の胴を断ち斬った。
「まずは一つ、次……ッ!」
僚騎が落ちても勇敢に攻勢を維持する敵部隊に、ユーノは果敢に向かっていく。
帝国兵たちは誰もが捨て身でありながら、誰もが玉砕に逃げてはいない。自らの生命を犠牲に艦を逃がす、そんな自爆覚悟の捨鉢な攻勢ではなく必ず生きて帰るという信念に満ちた慎重かつ大胆な機動はユーノをして一騎ずつ丁寧に仕留めねばならないほど厄介で、ともすれば逆に撃墜されるのではないかと肝を冷やす場面すらある。
だが、その激戦の中で猟兵たちの放ったもう一つの刃が、静かにデフィオンの喉元へと突きつけられていた。
「手負いの虎が牙を剥く、か。派手なもんだがこれ以上はさせる訳にはいかないね」
ユーノが攻め込んだ右舷側とは違い、損傷の少ない左舷側の対空迎撃はまだ万全だ。
戦艦同士の衝突でいくらか機能不全を起こしているものもあるようだが、迂闊に近づけばひとたまりもないだろう。
だがそれも捕捉されればの話。撃破され宙域を無数に漂う電幻の蝶の残骸が、静かに忍び寄る兵十の姿を覆い隠す。他の猟兵と違って兵器に乗らず、宇宙服のスラスターすらほとんど使用せずに体捌きと漂うデブリを蹴る動きだけで移動すれば、発見のリスクは最小限に抑えられる。
それでも偶発的に近くを砲弾が掠めることはあるが、兵十を狙ったものでないのならば見切ることは難しくはない。
斯くて彼はデフィオンに取り付いた。本来であれば艦の目となり、接近するものを遮る為に展開していた騎兵たちが軒並みユーノの陽動に梃子摺っているのも兵十にとっては都合がよかった。もし彼女が居なかったならば、空間戦闘のプロフェッショナルである帝国騎兵部隊に阻まれ兵十はここまでたどり着けなかったかもしれない。
「こりゃあさっき乗せて貰った分も合わせて、あとでお礼をしなきゃならないかねぇ」
折り鶴で喜んでくれるだろうか。あいや、彼女はそんな幼子ではない。はてさて、年頃のお嬢さんへのお礼は何がいいものだろうか。そんな考え事をしながら、艦橋近くのハッチを斬り飛ばして艦内へと突入する兵十。
そして、それはトールマンの予期した通りの展開でもあった。艦隊が後退し、砲撃戦能力の欠けた今、猟兵は寡兵でデフィオンを落とすべく突入作戦を試みるだろう。ならば、その突入が予測される場所には――
『来たぞ、撃て、撃てッ!』
帝国の軍装に身を包んだ兵士たちが、簡素なバリケードを盾にブラスターで侵入者を銃撃する。
間一髪、その射撃を躱して転がるように艦内に滑り込んだ兵十は、すぐさま鞘に収まったままの愛刀を振り抜き眉間を狙う銃撃を弾く。
「いやまさか出迎えがあるなんてね。お前さん達も僕なんかにこんな盛大な歓迎をしなくてもいいもんなのにさ」
へら、と笑って床を蹴る兵十。一足で銃の間合いが剣の間合いに、一閃振り抜けば鞘のままの刀がバリケードを打ち壊す。
「悪いけどゆっくり相手をする時間は無いんでね、押し通らせてもらうよ」
兵士たちを打撃で黙らせ、近距離での銃撃は身体を反らせて躱し、兵十は進む。
そうして幾つ目かの隔壁をこじ開けたところで、兵十は艦橋へとたどり着いた。
『来たか。……その風体、解放軍ではなく猟兵だな。貴様たちが出張ってきたというならば、我が艦がここまでやられたのも納得というものだ』
まるで親しい客人を迎え入れるかのように、落ち着き払った態度で兵十を招く壮年の男。
「お前さんがこの船の大将かい?」
鞘に収まったままの刀を戻し、鈍らの刃に手を掛ける兵十。今にも戦いが始まるような張り詰めた空気が漂う中で、男はいかにもと頷き艦橋の外へと視線を遣った。
宇宙空間では、至近から照らす新たな恒星の輝きを浴びてユーノのディアブロクルセイダーと帝国軍騎兵部隊が激しい砲火の応酬を繰り広げている。
『いかにも。銀河帝国宇宙軍第81艦隊司令トールマンだ。ようこそ猟兵、私を殺しに来たのだろう?』
「ああ。生憎僕には船を沈めるような妖刀魔剣の類に縁がないもんでね、大将首を狙わせてもらうよ」
言うや兵十の斬撃がトールマンの頸を狙う。鈍らであってもお構いなしの鋭い一撃は、しかして老将の頸を刎ねる前に防がれた。
『――現役騎士のようには行かんがね、私にも多少の心得はある。易々この首くれてやりはせん』
赤黒い念動の刃を構え、兵十の刀を受け止め弾き返すトールマン。
二人の戦いが、燃えゆく戦艦の艦橋で静かに幕を開けた。
「――これで、最後っ!」
最後の一騎を撃ち落とし、直掩騎を全滅させたユーノはすぐさま艦底部へと潜り込み、艦尾方向へと舵を切った。
この巨大戦艦に最も有効打たりうるのは機関部への攻撃。そしてそれを成しうるのはメインブースターへの最大威力の一撃だ。
仲間との合流を、戦域からの離脱を目指して進むデフィオンの巨大なブースターの真下へと回り込んだユーノは、ここまで温存していた最後の一撃、インペリアルデトネイターを用意する。
意識を集中し、念動力を高め、形成した力場で強化した槍を撃ち込む。
槍は寸分違わずブースターを破壊しながら艦内に貫入し、そこで爆裂した。
メインブースターが爆ぜる。デフィオンの巨体が傾いでゆく。
「これで推力は失ったはず。全機能を停止させるには至らなかったけれど……」
巡洋艦隊との戦い、そして艦載騎兵との戦いで弾薬も推進剤も、なにより精神も消耗している。無理攻めは得策ではないと、ユーノは静かに離脱を試みる。
「どうやらやってくれたみたいだよ」
足元が揺らぐほどの振動。艦尾方向で発生した爆発の衝撃は、もはやこの戦艦が戦えぬ程の打撃を受けたことを艦内にいる二人に何よりもはっきりと理解させた。
『そうか。だが、私達はまだ生きている。骸の海より蘇り……もはやその本懐は遂げられずとも、私達は二度目の生をまだ生きているのだ!』
裂帛の気合とともに放たれた斬撃が兵十を掠める。老いた将校が放ったとは思えぬほどの一撃を紙一重で躱し、兵十の反撃はトールマンの喉を斬り裂いた。
「お前さん、最後の一撃……当てる気はあったかい?」
皮肉げに嗤うトールマンの口は、もう言葉を紡がない。ただ、喉の傷から流れ出る血とともにひゅうひゅうと空気が漏れるばかりだ。
「そうかい。……遠い星の夢の果てまでやってきたんだ。お前さんたちの戦はここで仕舞い。でもね、お前さんたちの誇りは僕が覚えておくよ」
艦橋の窓を一刀で突き破り、撤退するユーノのクルセイダーに回収されて艦を離れる兵十。
デフィオンを出る直前、死にゆくトールマンを振り返った兵十は、彼の艦長席の上に掲げられた艦隊隊規を見た。
『――――命ある限り、帝国軍人の責務を果たせ』
彼はきっと、最後のあの一瞬以外は艦隊司令として。そして最後のあの一瞬、帝国に仕える将校として責務を果たそうと在ったのだ。
未だなお撤退を目指し、推力の激減した艦体を引き摺るように動き続ける巨体を眼下に見下ろして、兵十はそう思わずにはいられなかった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
アリシア・マクリントック
私も新たな力を身に着けているのです。扉よ開け!スカディアーマー!
重装甲で機動性に劣るのこの装備も、無重力の中ではいくらか身軽に動けます!みなさんが攻撃に集中できるよう、装甲の厚さを活かして敵艦からの攻撃を引き受けましょう。味方の援護を重視しますが、攻撃を受け止めながら少しずつ接近して機関部かブリッジへ全力の攻撃を仕掛けましょう。
いくら防御を重視してるとはいえ所詮は人が纏うもの。戦艦の砲撃は脅威ですが……それこそが勝機。受け止めた攻撃の分だけこちらの力になるのです。
これが私の新しい力、新しい切り札!
「――傷こそ我が力なり(スカー・バスター)!」
ミハエラ・ジェシンスカ
マレッタ艦隊だけで相手取るには厳しい相手だが……いや
良いだろう。そちらは任せるぞ
【念動加速】で敵艦へと突撃
【念動力】で周囲の暗礁や敵艦の残骸を引き寄せ盾代わりに【地形の利用】
そこまでしてもあの近接防御を抜けるのは容易ではあるまい
何度目かの突撃……と見せ掛けて暗礁や残骸「だけ」を飛ばし
それが迎撃された隙を突く【だまし討ち】
【対艦魔剣】起動
フォースセイバー、全段直結。超過駆動(オーバードライブ)!
流石に反応が早いな
良いだろう。後は被弾を承知の上で斬り込むまでだ【捨て身の一撃】
1kmに迫る長大な光の刃を形成
速度に任せてそれを振るう
その後はマレッタ艦隊の援護に向かう
生きているな、新兵(プーザー)ども
●
『副長、どうしてこちらに?』
航行能力を喪い、火砲の大半も機能を停止しつつある戦艦デフィオンの戦闘指揮所で稼働し続ける残り少ない対空砲を操り、必死に抵抗を続ける帝国軍。
彼らの背後で静かに開いた扉に、すわ侵入した敵が此処に襲撃を掛けてきたのかと殺気立つ兵士たち。
だが、姿を現したのは敵ではなく見知った将校だった。口惜しげに唇を噛む若い女性士官、つまりはこのデフィオンの副長。そして、その背後に続くのはブリッジクルーたちだ。
『司令より本艦の指揮を継承した。これより私がデフィオンの指揮を執る』
その宣言と彼女の表情から、兵士たちは全てを悟る。だが、怒り憎しみに拳を握る時間すら惜しい。何より艦長自身がそれを掲げて戦うことを禁じたのだ。
『了解しました、司令代行。艦橋機能をここに。――ここからの行動は?』
すぐさま艦の頭脳としての機能を引き寄せ、副長のもと一丸となるクルーたち。
彼らのこの団結はトールマン中将が遺したものだ。この練度を保つ将兵を一兵でも多く生かす。そのための策は、ほぼ無いに等しい。それでも、副長はやらねばならない。彼女もまたトールマンの意思を継ぐものなのだから。
『――敵艦隊と交戦中の味方艦は? 何隻残っている?』
「巡洋艦が四、対してこちらは巡洋艦一、駆逐艦が二か。マレッタ艦隊だけで相手取るには厳しい相手だが……いや存外によく粘っている。このままそちらは任せるぞ」
振り返れば、同数以上の格上を相手にマレッタ艦隊はよく持ちこたえている。
敵艦隊に切り込み乱戦に持ち込みつつ近距離からの雷撃でダメージを与え、その後は敵艦隊とデフィオンの間に縦陣で壁を作り合流を堰き止めている、というところか。
柔らかな横腹を晒してなお三隻ともに健在なのは、乱戦で思いの外ダメージを与えられたことと敵艦隊の物資欠乏による火力減が大きいのだろう。
冷静に戦況を分析し、今しばらくマレッタ艦隊は持ちこたえると判断したミハエラは自身の機体を念動力で加速し、死に体の巨大戦艦へと突撃する。
「あちらもあちらでよくやるものだ。メインブースターが死に、砲もほとんど動いていないというのに」
辛うじて動く姿勢制御スラスターの噴射で艦を小刻みに動かしながら数の減った砲の射角を補い、ほぼ大破同然の損傷を受けながら今なお戦闘を継続しつつ動き続ける戦艦。
その姿からは、ミハエラをして並々ならぬ執念を感じずにはいられない。それも、帝国残党にありがちな復讐に駆られた禍々しくも隙のあるものではない。もっと清廉で、それでいて手強い意思のもとにあの船は現世に踏みとどまっている。
「だからこそあの手合いは残すと厄介だ。ここで沈める」
手近なデブリ――撒き散らされたデフィオン自身の破片も含めたそれらを念動力で手繰り寄せ、それを盾にミハエラは戦艦へと強襲を掛ける。
白兵型ウォーマシンが艦艇を相手取るならば、やはり肉薄するしかない。そのために使い捨ての盾を構え、迎撃を防ぎながら突撃するのは常道とも言えるだろう。だがデフィオン側もそれは承知の戦術だ。
『敵影二時方向より接近! 実体障壁を展開している模様!』
『残っている予備の騎兵も出せ! ドロイド共も設備の維持に最低限必要な分を残して全部投入しろ! 邀撃に上げるんじゃない、艦の壁面で砲台をやれと言うんだ!』
艦の防御力が下がったのならば、マンパワーで補う。損傷した砲台に代わって艦上に展開した騎兵とドロイドたちが一斉にブラスターやミサイルランチャーで弾幕を形成すれば、かつて万全だった頃の戦艦ほどではないにしても突破は至難の弾幕が形成される。
「もはやなりふり構わず来るか……ッ! しまっ――」
デブリの盾が打ち砕かれ、無理攻めのポーズもここまでかと退こうとしたミハエラ。
彼女をめがけて、一発の対空ミサイルが飛翔する。
それは単独のウォーマシンとしては機動性の高い部類に入るミハエラでも一度捕捉されれば離脱困難なほどに素早く、そしてしつこい一撃だった。
激しい空戦機動を演じてなお引き離せないミサイルに、ミハエラが被弾の覚悟を決めたその時、突如としてミサイルが中空で爆散した。
「何……?」
「間に合いましたか……機動性に劣るスカディアーマーでは駄目かもと思いましたけど、無重力ならいくらか身軽に動けるのが救いでしたね……!」
剣を振り払い、爆炎を浴びながらも健在を示す黒い騎士。
ミハエラと対空ミサイルの間に割って入り、剣の一撃でミサイルを破壊し爆風から彼女を守ったのはアリシアだ。
「すまんな、助かった」
「いえ、いいんです。仲間を守るのが私の役目ですから……それで、もう一度仕掛けますか? それならば私が護衛に付きますよ」
アリシアの提案に、ミハエラは再び距離を開けられたデフィオンを見る。艦のシステムがほぼ失われていても、それを補うだけの兵の練度がある。此処を切り抜けた後を考えるより、確実に此処を切り抜けるために予備戦力を惜しまず、それでいて不用意な機動戦ではなく今必要な"戦域突破までの防御力"として固定砲台として運用する戦術眼は、一流とは言えないまでも厄介だと感じる程度には手強い。
ここに正攻法でもう一度仕掛けたとして、勝率は七分三分と言ったところ。30%も不確定要素があるならば――自分一機ならともかく、アリシアを巻き込むのは避けられるなら避けるに越したことはない。
しかし、取れる手段が限られているのも事実。
「……ああ、もう一度仕掛けよう。お前には私の直掩を頼みたい。ただし――」
取れる手段は限られている。だが、それが強行突撃だけだとは限らない。
『――敵、再度攻撃を開始! 迎撃圏内に侵入、第811中隊迎撃を開始!』
『敵実体障壁を破壊! 敵影二、再度撤退していきます!』
先程から何度もこちらの防空圏を侵犯しては追い返されている二騎の騎兵モドキ。彼らの狙いが掴めないことに、副長は苛立ち爪を噛んでいた。
『――いや、司令はこんな時こそ冷静であれと私達に教えてくれた。敵の狙いがこちらの弾切れであるならば、無駄な努力なのだ。何も案ずることはない。――騎兵部隊のブラスターのエネルギー管理は密に監視しろ、船のコアマシンと直結など本来の用法外なんだ。僅かにでも異常を感じたらすぐ予備と交換するよう再度通達しておけ!』
副長の指示を受け、異常加熱を起こしたブラスターが宇宙空間に放り捨てられ、予備のブラスターが艦の外壁コネクタとエネルギーケーブルで接続される。
無理やりな運用だが、歩兵の携行火器に過ぎないブラスターでもこれで対空機関砲の代わりとして誤魔化すことはできる。
そうして無駄な攻撃を弾き返す内に、デフィオンは交戦中の僚艦に着々と接近しつつあった。
『本艦と味方艦隊との間に展開する解放軍艦隊、間もなく艦首大型砲の射程に入ります!』
『チャージ開始、砲術長より通達、照準は敵艦隊巡洋艦!』
数十秒。あと数十秒で、デフィオンの大型砲が解放軍艦隊を捉える。
あれさえ沈めれば、あとは味方艦に曳航させるなり艦を放棄してあちらに移乗するなりして速やかに戦域を離脱するまで。空母と巡洋戦艦を失い、巡洋艦も半数を沈められ、司令官すら失って。もはや勝利とは言い難いが、無事に成し遂げれば敵に白星をくれてやることは避けられるだろう。
『敵影、またも防空圏に侵入!』
『艦の迎撃は停止、外の部隊に任せろ! 本艦は艦首大型砲のチャージを最優先に!』
『アイマム! 艦首大型砲、チャージ60……65、70、75、80――』
『侵入した敵騎の実体障壁を破壊…………報告! 敵影ロスト! 障壁のみ防衛圏に侵入してきた模様!!』
「――思ったとおりに食いついてくれたな」
「ええ、ですがあちらも本命を放つつもりのようですよ」
デフィオンの正面宙域で、ミハエラとアリシアは艦首に高出力のエネルギーチャージを開始したその巨大な艦影を見つめていた。
幾度も防空圏を侵犯し、盾を壊されては退いてを繰り返し、敵は飛来する盾の裏には敵――即ちミハエラとアリシアがいるという認識を刷り込まれた。
数度の襲撃でそれを確認した彼女たちは、今度は盾だけを飛ばして自らはデフィオンの前方へと回り込んでいたのだ。
敵部隊はその後ろに"二人が居る"以上、接近する盾を撃ち落とすしかなく、そしてその固定観念に反して破壊した盾の裏に誰も居なかったことで二人を見失ったのだ。
そこから再度捕捉されるまで、稼いだ時間で次の反撃の手を打つ。ミハエラの目論見は半分成功し、そして半分は成功したとは言えない。
「予想以上にチャージが早い。まさか艦の防衛能力を落としてまで艦首砲を優先するとは」
考えなかった訳ではないが、人間の心理として遠くの艦隊より近くに潜む猟兵を優先すると思っていた。先んじて突入した猟兵によって指揮官を討たれたとあればなおのこと警戒しているだろう、と。
その予想に反して、最終目標である突破に一点賭けしてくるとは。
「剛毅と言うか……いえ、ミハエラさんは予定通りに攻撃準備を。私はマレッタ艦隊と貴女を守ります」
アリシアがじっとミハエラに視線で訴え、そして前に出る。
人間よりずっと巨大な戦艦、その艦首の殆どを占めるほどの巨大な砲。それはある程度距離のあるここからでも、近くに燃える新星に負けじと眩い輝きを放っている。
その正面に対峙して、恐怖が無いかと問われれば否だ。あんな物の前に好き好んで飛び出す者など居はすまい。形成す死の気配に、思わず目を閉じてしまうアリシア。
けれど。
「私の後ろにはミハエラさんが、そしてマレッタ艦隊の皆さんが居る」
それだけで、アリシアには退けない理由、退かない覚悟ができる。
戦争の英雄、猟兵に憧れの視線を向ける兵士たち。
ドリームマシンでのひとときを見守り、皆が少しでも快適に過ごせるよう尽力してくれた士官。
孤立し、泣きそうになりながらも救いの手に惜しまぬ感謝を捧げたヘレネッタの通信士。
船体のあちこちに被弾しながらも敵を一隻と通すまいと奮戦するルシアナの乗員たち。
蝶の群れから解き放たれ、感謝を述べながら豪快に笑ったファイドラのクルー。
共に連携し、敵の空母を撃沈したことを喜びあったリコリエットのオペレーター。
皆、今を生きる人々だ。できるならば平穏に生きたいだろうに、帝国の脅威からより多くを守るべくこの戦場に赴き、猟兵の負担を少しでも軽くしようと不利な戦いに身を投じている。
「ですから私が、あの人達を守ります! あの人達に降り注ぐ過去からの災いは、私が全て受け止める。それこそがスカディアーマーの力!」
剣を抜き、目を開き、デフィオンを見つめるアリシアを飲み込むように、彼女とその後方のミハエラ、そしてマレッタめがけて敵の艦首大型砲が光を放つ。
「――来る! 全力で、私の全身全霊を捧げてこの一撃は受け止めてみせます!」
構えた刃でレーザーを切り裂く。光を斬るという奇跡は、アリシアから後方へと流れるレーザーを幾条にも分岐拡散させてマレッタ艦隊への直撃を避ける。
そして、その攻撃を耐えれば耐えるだけスカディアーマーはアリシアに力を与えてくれる。恐怖に打ち克ち、誇りを示し、貴族として何人より前で刃に身を投げ出し血を流す。その覚悟が、鎧を通じて剣へと宿る。
「そちらの攻撃が強力であればこそ、受け止めた分だけこちらの力となるのです。これが私の新しい力、新しい切り札!!」
剣先がレーザーにも負けぬほどに、星の如き光を宿した。
強力な破壊の奔流に身を晒すことを厭わず、剣を引き絞り、そしてアリシアはレーザーを刺突する。
「"傷こそ我が力なり"……っ!!!!」
レーザーが、割れた。
アリシアの放った一撃が、強力なレーザーを引き裂きながらデフィオンの艦首砲へと吸い込まれ、その機能を破壊する。
砕けた艦首砲が爆発し、デフィオンの巨体が四度揺らいだ。
『――インペリアル・マカブルを発動したデストロイレーザーを正面から!? いいやまだッ! 敵艦隊が無傷ならばこのまま突撃、味方艦隊と合流する! 総員退艦準備! 敵防衛線を突破次第本艦を放棄する!』
『アイマム! 司令代行、貴女もお早く!』
爆発の衝撃であらゆる物が飛散し、人工重力すら停止した戦闘指揮所でついに副長はデフィオンを捨てることを決断する。
一兵でも生かせ。それがトールマンの命令だ。次々と脱出艇へと向かうクルー達の最後に指揮所を出ようとする砲術長が振り返り、動こうとしない副長にも退艦を促す。
けれど彼女は動かない。
『司令代行! 副長殿、もう本艦は保ちません! 貴女が今そう仰ったでしょう! 退艦を!!』
そう訴える砲術長に、司令代行は――副長は笑った。
『貴官らが無事に逃げ延びるまで、艦を動かす者は必要だろう。ドロイドに戦闘機動は任せられん、いいから行け、私は司令の脱出艇をお借りして追う、待とうなどと思うなよ!』
その声に、砲術長は顔を歪めて敬礼を送る。
『天が何を間違うたのか、蘇り皇帝陛下のもとで再び船に乗る事となった二度目の生。トールマン閣下と貴女の下で戦えたこと、光栄でした。また後ほど、いずれかの僚艦で!』
踵を返し去ってゆく砲術長に答礼を返して、副長はじっと前を見る。
もはやモニターは割れ、真っ黒な画面のひび割れから火花を散らすのみ。
視界は零。動く火器もなければ、推力も子供用の練習艇のほうがいくらかマシな有様だ。
だが、やり遂げる。
『司令の最後の命令を果たす。そのために教えを破る愚か者は私一人で十分だ。――思えば遠い昔、訓練校の候補生だった頃から私は貴方の言うことを聞かない問題児でしたね、トールマン先生。骸の海でまたお会いした時は、あの頃のように苦笑してくださるでしょうか――』
「まだ止まらんか……思いの外しつこい船だ。ぶつけてでも押し通るつもりだろうがそうはさせん」
轟々と燃え盛る鉄塊と化してなお、最後の意地で前進を続けるデフィオン。
アリシアは渾身の一撃で疲弊し、そも反撃技であるスカー・バスターは連射が効く技ではない。
マレッタ艦隊は巡洋艦隊を相手に徐々に押し込まれつつあり、こちらに火力を向ければその瞬間に食い破られるだろう。
そして他の猟兵たちはそんなマレッタ艦隊の援護に回りつつある。今更こちらに引き戻しても間に合わないし、そうすればデフィオンの突破を許した上に巡洋艦隊にマレッタ艦隊を蹂躙されかねない。
「そうなる気はしていた。機械の私が予感というのもおかしな話だがな、だが準備は万端だ」
四振りのフォースセイバーを繋ぎ束ねる。
「――フォースセイバー、全段直結」
出力を臨界まで引き上げる。いや、精神を集中してそれ以上に。
「――超過、駆動……ッ!」
それはもはや剣とは言い難い、巨大な力の顕現だった。
「悪いが、此処を通してやる訳にはいかん。対艦魔剣、間に合ったぞ……!」
現実離れした、夢想のごとき巨剣。デフィオンの数倍にも至るその刃が、沈みゆく船へと振り下ろされる。
破壊された装甲が更に溶け落ち、内部機構が次々と誘爆していく。
脱出艇が弾き出され、それもまたフォースセイバーの光の中で爆散していった。
艦橋構造物がひしゃげ、船体が悲鳴を上げながら軋み潰れ、真二つにへし折れて。
そして、満身創痍であってなおも戦い続けた戦艦はついに完全なる夢の終わりを迎えた。
一度ならず二度敗れた者たちの見た夢。生き延び、再起を掴むという夢は、爆炎の中に潰えてゆく。
「…………アリシア、そちらは無事か? これからマレッタ艦隊の援護に向かう、無事ならお前も来い。疲れたならばその辺りで休んでいろ」
その最期をミハエラは見届けない。最期まで帝国軍人の誇りと意地を胸に散っていった兵士たちを見送るには自身の在り様が彼らへの礼に欠けるように思えたから。
今なお戦闘が続くマレッタ艦隊と81艦隊残存艦との戦いに目を向け、無意識にデフィオンの最期から目を逸した彼女の傍らにアリシアが並ぶ。
「なんとか無事です。――見事な最期でした、きっと。あの船には最期まで人の魂が宿っていた。誰一人諦めることなく、信念と希望を抱いて戦っていました。オブリビオン、私達と絶対に相容れない存在なのが残念なほど、見事な最期でした」
冗談はよせ、とミハエラはそれを最後まで聞くことなく戦場へと飛翔してゆく。
そうしてデフィオンとの戦闘を終えた猟兵たちが戦線に加わったことで、マレッタ艦隊と残存艦隊の戦いは一気に解放軍の優位に傾き始めていた。
戦いは続く。誰もが己の夢想を叶えるために銃を取る限り。
けれど、それは永劫ではない。いつか必ず戦いに終わりは来る。
その時成就しているのが帝国の再興という夢か、銀河の平和という夢か。
猟兵たちは後者こそが叶っていることを願い、そのために戦い続ける――
大成功
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