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バトルオブフラワーズ⑬〜自由をその手に

#キマイラフューチャー #戦争 #バトルオブフラワーズ #オブリビオン・フォーミュラ #ドン・フリーダム

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「よく集まってくれた、お前さんたち」
 猟兵たちをグリモアベースで出迎えたのは、石動・劒だ。
「キマイラフューチャー世界の戦争、バトルオブフラワーズ。テレビウムの画面に鍵が表示される『テレビウム・ロック』事件から始まったこの大騒ぎもいよいよ佳境だ」
 キマイラフューチャー世界は大きく二つに分断され、猟兵たちはその中から現れた6つのステージを制圧し、システム・フラワーズを占領する怪人三幹部攻略しながら進んで行った。
 そしていよいよ、システム・フラワーズの最奥にいる怪人軍団の大首領“ドン・フリーダム”と戦うことになる。ここがこの戦争の大一番となるだろう。
「ドン・フリーダムの能力は3つだ。そしてお前さんたちの中には、どれか知ってるものもあるだろう」
 絶対無敵バリアを展開し、攻撃して来るラビットバニーの“赤べこキャノン”。
 暴風を放ち、こちらの足場を崩して来るウインドゼファーの“レボリューション・ストーム”。
 そして猟兵たちのユーベルコードの弱点を見抜き、確実に反撃するマシンを放って来るエイプモンキーの“マニアックマシン”。
 いずれもドン・フリーダムの従えていた幹部たちの能力だ。
 対策もいずれも同じ。
 絶対無敵バリアはエモいものを見せれば無効化できる。
 足場崩しは足場を崩された後に対応できる。頼れるものはアイテム、技能、ユーベルコードだ。
 反撃マシンにはそれに合わせた反撃で対処できる。
「だが、見たことがある能力だからって油断はするなよ。ドン・フリーダムの実力は幹部以上だ」
 ゆえに、対策と準備は万全に整えて臨まなければならないだろう。
「戦場は一面の花畑のような場所だ。足場を取られたりだとかいった心配はしなくていいが、ウインドゼファーと同じ力で足場を崩される場合もあるから気をつけてくれ」
 また、敵は必ず先制攻撃をして来る。こちらからユーベルコードなどによる先制攻撃はできないので、敵の攻撃を対処してからの攻撃となることに注意して欲しい。
 一息入れて、劔は猟兵たちを改めて見渡す。
「これが最終決戦になるだろう。勝てると信じてるぜ、猟兵!」


三味なずな
 お世話になっております、三味なずなです。

 いよいよ決戦ですね。なずなも気合を入れて執筆に励もうと思います。
 戦争シナリオ4本目。対「ドン・フリーダム」戦となります。

 非常に強いです。判定が厳しくなるのでご注意下さい。
 判定に寄与するものは「技能」「ユーベルコード」「アイテム」など。データを伴わないものはフレーバーとして処理し、判定には一切関わらず、演出にのみ貢献させます。この点ご了承下さい。
 また、技能の値もしっかり見ていきます。低いと微弱にしか有利になれませんが、高ければ高いほど判定に強く寄与します。技能同士、あるいはユーベルコードやアイテムなどと絡めるとより強く判定に影響を出しやすくなるでしょう。つまりダイスの試行回数が増えます。

 以下は今回の特殊ルールです。

====================
 敵は必ず先制攻撃します。敵は、猟兵が使用するユーベルコードと同じ能力値(POW、SPD、WIZ)のユーベルコードを、猟兵より先に使用してきます。
 加えて、ドン・フリーダムは使用する能力値別に違う対処が必要です。これらに対抗する方法をプレイングに書かず、自分の攻撃だけを行おうとした場合は、必ず先制攻撃で撃破され、ダメージを与えることもできません。

POW:絶対無敵バリアを展開します。エモいものを見せれば無効化できます(エモいの基準はラビットバニーと同じ)。
SPD:風で足場を崩してきます。
WIZ:猟兵のユーベルコードの弱点を見抜き、確実に反撃するマシンを作り出してきます。 その反撃マシンに反撃する方法を考えなければいけません。

 これらの能力はそれぞれ「ラビットバニー」「ウインドゼファー」「エイプモンキー」と同じですが、ドン・フリーダムは彼ら以上の実力者です。
====================


 また、なずなのマスターページにアドリブ度などの便利な記号がございます。よろしければご参考下さい。
 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております!
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第1章 ボス戦 『ドン・フリーダム』

POW   :    赤べこキャノン
【絶対無敵バリア展開後、赤べこキャノン】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    レボリューション・ストーム
【花の足場をバラバラにする暴風】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ   :    マニアックマシン
対象のユーベルコードに対し【敵の死角から反撃するマシン】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。

イラスト:由依あきら

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

矢来・夕立
お仕事です。

暴風の予兆は一度聞いています。《聞き耳》を立てていればある程度…受けはするでしょうけれど、致命傷は避けられるかな。
崩れる足場については《見切り》ながら【夜雲】で対処。
…コレ、結構派手に吹き飛ばしますよね? 花も足場も。「紛れてください」と言わんばかりに。
【夜雲】《忍び足》で空中から近づいてますけど、気づけます?
気づいてないなら頭上から《暗殺》。
気づかれていたら落下するフリの《だまし討ち》。

最初から最後まで読み合いになるんですよね。気を抜けない。
「隠れきって暗殺」と言い切れないあたり、未熟です。
ここまで強いのはそういませんから、イイ経験になるでしょうか。下手すると死にますけど。


ビードット・ワイワイ

見たり見たり見たり、汝の破滅を見たり
汝の欲望肯定しよう、されど汝の欲望は押し付けなり
故に我も欲望を押し付けよう。汝に破滅を与えよう
我は繁栄肯定せず。汝の破滅はここにあり

風で足場を崩すなら小型の我を足場としよう
【踏みつけ】【ジャンプ】し【念動力】で姿勢を制御し
敵に近づき【挑発】することで【存在感】を出し引き付けよう
我があえて近づくならば敵は我を狙うであろう。我の欲望見るがよい
幾ら我が傷つこうと傷与えるならば囮になろう

我を囮にしておる間に小型の我の少数を【目立たない】ように
近づけ攻撃せり。近づいたなら【鎧砕き】【生命力吸収】
例え些細な一撃であろうと積み重ねれば致命となりけり


リア・ファル
SPD
アドリブ歓迎

システム修理の先にあるのは望むものが何でもコンコンコンされる、と
良い事に聞こえる? いいや。まさしく天災ってやつだよそれは

キュマFの皆は、歌にダンス、動画にイラストと、
持てうる創造性で今を生きている

欲望のまま、望むままに満たされる世界の果ては、
衰退と退廃さ多様性なんか消え失せる

そこにキミの言う自由なんてないさ

「いくよイルダーナ!」
グラヴィティ・アンカーでの「ロープワーク」
「操縦」「空中戦」を交えて足場を移動
UC【幻影舞踏】も使用して更に加速
「ハッキング」でフラワーズを変化させて「地形の利用」も行う

チャンスが来たら、
風の軌道、流れを演算解析して、ヌァザで空間干渉し風ごと斬る!



 猟兵たちが転移した先は、一面の花畑だった。
 どれも品種も判然としないような、デフォルメ化された記号的な花。実体を伴ってはいるものの、本物ではないようだ。
 一見して綺麗ではあるものの、欺瞞に満ちた空間。
 それがリア・ファルの抱いた、この場所への感想だった。
「よく来ましたわね猟兵たち。修理の邪魔をしに来たんですの?」
 その花畑の中央に一人、全裸の女がいた。ドン・フリーダムだ。
「もう少し遅れて来て下されば修理も終わりましたのに。そうすればあなたがたもコンコンコンと望む物を手に入れられましてよ?」
「キミはそれが本当に良いことだと思ってるの?」
 穏やかな彼女にしては珍しく、真剣な表情でドン・フリーダムを見遣る。しかし当の怪人の首領はただ不思議そうに首を傾げた。
「逆に、どうして良いことではないと思えるんですの。一時は物質文明の哀れなる末路を辿った我々ですけど、再びこの世を豊かに、自由にするんですわよ?」
「豊かにも、自由にもならない。キミがやろうとしていることは――天災だ」
 リアが否定の言葉を紡ぐと、“ちょうてんさい”の顔に貼り付いたスマイリーフェイスの口角が上がった――気がした。
「あら、どうして? わたくしがもたらすのは皆が享受できる利益ですのに」
 キマイラフューチャーの人々は、歌や踊りを始めとした創造性の中に楽しみを見出し、生きている。
 それが欲望のまま、望むがままに満たされるような世界に変わってしまったら。
 短期的には良いだろう。人々は享楽の限りを尽くすだろうし、物質の豊かさに支えられることだろう。しかし――
「その物質的な豊かさは、退廃と衰退も伴う。そうでしょう?」
 物質的な豊かさは精神的な余裕を生み出すだろう。だが、その代償は果てしなく大きい。
「望む物を望むがままに手に入れる世界に創造性は生まれない。多様性は地に落ちる。……そこにキミの言う自由なんて、ない」
「然り、然り、然り。オブリビオンは破滅をもたらす」
 機械音。のっそりとした動きでリアの横から見上げるほどの巨体を前に出したのは、ビードット・ワイワイだ。
「ゆえに見たり。見たり見たり見たり、汝の破滅を見たり。汝の欲望、肯定しよう」
 ビードットはいくつもの破滅を“蒐集”して来た。彼の持ついくつもの仮想破滅招来補助具の中にはドン・フリーダムの言うような物質的な豊かさを手にしながらも、リアの考えるように衰退してしまった世界のものもあるかもしれない。
「されど汝の欲望は強要なり。ゆえに我も欲望を強要しよう。――汝に破滅を与えよう」
 それゆえに、本来は望みを持たぬはずのウォーマシンは欲望を口にした。それはビードット自身のものとも、あるいは他の何者かのものとも知れないものだ。
「我は繁栄を肯定せず。汝の破滅はここにあり」
「あらあらまあまあ……。そちらの機械はちょっとは話のわかる方だと思っいましたけど、思い違いだったようですわね」
 残念、とドン・フリーダムは肩を竦める。しかしその様子はどこかおどけたような様子で、真剣味がなかった。
「それで、そちらの方は?」
 ビードットとリアから視線を離して、もう一方。今まで気配を消していた黒髪の青年――矢来・夕立へと目を向けた。
「いえ、別に」
 端的に、短く。顔も合わせようとせずに夕立は答える。
「オレは仕事で来ただけなので」
「あらつれないですわね。世界の滅亡とか、男の子ってそういうのが好きだと思っていましたのに。 世界の半分を差し上げると言っても興味は?」
「無いです。コンコンだかトントンだかすれば、望む誰かが死んでくれるわけでも無いんですよね? それならいらないです」
「なんともまあ……仕事一筋ですのね」
「大好きなので、仕事」
 呆れた様子のドン・フリーダムに対して、夕立はあくまで平静通りの無表情。彼の吐いた言葉の、さてどれほどが真実だろうか。
「ではまあ、話も一段落したということで」
 す、とドン・フリーダムが両手を左右に広げると、風のうねるような音が聞こえた。
「死んで頂けます?」
 直後、“ちょうてんさい”の手から暴風が生まれて、三人の猟兵たちへと襲い掛かった。暴風は暴力的な音と共に、猟兵たちの立つ足場ごと破壊する。
 攻撃された猟兵たちは果たして、跳躍した。夕立は宙を蹴って空中へと逃げることで暴風と底なし穴を回避。リアも空中に固定したグラビティ・アンカーを利用して落下を免れ、そのまま喚び出した艦載機イルダーナに搭乗した。ビードットもまた生成した自身を小型複製したコピーを足場に、跳躍して難を逃れる。
「あら、はずれですの? マジヤベーですわね」
「笑止、笑止、笑止。その破滅は稚拙に過ぎる」
 念動力による補助を受けながらコピーを足場にして花畑へと復帰したビードットは、その巨体に見合わぬような速度でドン・フリーダムへと肉迫する。
「我が欲望、汝が破滅を見るが良い」
「あら、押し付けがましいのではなくって?」
 鋼鉄の腕が唸りを上げて振り抜かれる。それをドン・フリーダムは素手でもって横へと受け流す。外見に反してやはり戦闘力が高いのは、さすがはオブリビオン・フォーミュラか。
 だが、それでも個である以上は孤なのだ。ビードットは小型複製体たちに指示を出して、ドン・フリーダムへと攻撃させる。
「見かけによらず随分とせせこましい攻撃ですこと。あなたの欲望はその程度ですの?」
 それもいくらかは打ち払われてしまうものの、知覚の外からの攻撃に成功した数発の攻撃はドン・フリーダムの白肌へと傷をつける。
「見たり見たり見たり。汝の破滅を見たり。汝が破滅は物量による破滅。飲み込まれよ。これが汝の思い描いた物質の豊かさの象徴であるがゆえに」
「あら、意外に痛烈な皮肉」
 ドン・フリーダムの手から生じた暴風が、ビードットの小型複製体たちを吹き飛ばす。
 だが、それで良い。今、彼女の意識は目の前のビードットと、そして複製体たちへと向かっている。
「行くよ、イルダーナ!」
 制宙高速戦闘機に搭乗したリアが上空より急襲する。分析して風の流れに乗った彼女はユーベルコードを用いて更に加速。剣型の多元干渉デバイス“ヌァザ”を振り被る。
 多元干渉デバイスの名に相応しく、荒れ狂う暴風を斬り裂いて刃がドン・フリーダムへと振り下ろされる。が、怪人の首領は咄嗟に身を引いて、その斬撃に肉をわずかに斬らせるのみに留めた。
「上から失礼」
 だが、猟兵たちの猛攻がそれだけで終わるわけがない。上空へと逃れていた夕立が、ドン・フリーダムの真上から刀を一閃する。隠れる場所がないゆえに、ビードットとリアによる意識誘導をうまく利用した不意打ち。暗殺を得意とする彼の奇襲は、しかしその刃を直接手で握られて斬撃を留められてしまう。
「痛い痛い、地味に痛いですわよまったくもう。あなたがたは乙女の柔肌をなんだと思ってますの」
 いずれの攻撃も致命打には程遠く、しかし小さなダメージを積み重ねている。ビードットの複製体が傷付けた極小の穿孔が、リアの斬り付けた一閃が、そして夕立の刀を咄嗟に握った手から滴る血が、オブリビオン・フォーミュラへのダメージを物語っていた。
「……やはり隠れきっての暗殺ではないと、限度がありますね。未熟です」
「敵の首魁だけあって、かなりの難敵だね……!」
「然り。されどたとえ些細な一撃であろうとも積み重ねれば致命となりけり」
 無表情のまま刀を構える夕立。戦闘機に乗ったまま、空中から機を伺うリア。そしてドン・フリーダムの矢面に立ち続けるビードット。
 それぞれが連携しあってオブリビオン・フォーミュラへと立ち向かう。
 猟兵たちの猛攻は、まだ始まったばかりだ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

パーム・アンテルシオ


欲望は、止めなくていい。あなたは、そう言ったけど…
私は、そうは思わない。欲望は…好奇心は。行き過ぎると、皆を不幸にする。
だから私は…私のできる事をして、あなたを止める。

ラビットバニーと同じ対策…と言いたい所だけど。
あの時は、二人だったから。
一人で戦うかもしれないなら…他を考える必要があるよね。

…狐変身。

(小さな桃色の九尾狐の姿になり、相手を見つめる)
(目をうるうるさせて、きゅぅん…と、寂しそうな声を出す)
(元に戻る)

…これが、私のできる事だよ。
今の姿に慣れると…恥ずかしいんだよね。
だって、裸だよ?あの姿は。

ここまでしたんだから、負けられない。
山茶火!あの砲を殴りつけて…
砲口を、相手に向ける!



「しゃらくせえですわね」
 ドン・フリーダムのその一言で、形勢は大きく変わった。絶対無敵バリアの展開――ラビットバニーも使っていた厄介極まりない防御能力だ。
 赤べこキャノンの砲撃によって、形勢不利を見て取った猟兵たちは一旦後退し、その代わりに現れたのは――桜色の妖狐、パーム・アンテルシオだった。
「次はあなたですの。あなたもわたくしの修理を止めに?」
「そうだね。『欲望は止めなくていい』なんて、私は思わないし」
 いまだに若いというよりは幼いと言って差し支えないパームを見下ろしながら、ふぅん、とドン・フリーダムは首を傾げる。
「自由こそがこの世の全て。なのにそれを自分から手放して、わざわざ束縛されようと?」
「欲望は……好奇心は、獣だからね。ちゃんと縛っておかないと、みんなを不幸にしてしまうから」
 欲望。特に好奇心を口にした彼女の表情には、心なしか翳りが見えたような気がした。
 妖狐の少女は歩み寄り、言葉を連ねる。宣言する。
「だから私は、私のできることをして、あなたを止める」
「では、何をしてこのわたくしを止めると?」
 侮りを多分に含んだ言葉を絶対無敵バリア越しに投げかけて、ドン・フリーダムはパームへと赤べこキャノンの砲口を向けた。
「こうするんだよ。……狐変身」
 たん、と地を蹴ってパームが一転宙返りをしたかと思うと、次の瞬間に地に降り立ったのは少女ではなく、小さな桃色の九尾狐だった。
 小さな九尾狐はまだ幼いのだろうか。きゅぅ、きゅぅ、と寂しげな鳴き声を上げて、ドン・フリーダムを見上げる。
「エッッッッッッモ…………」
 それがドン・フリーダムの情動を揺さぶった。狐の可愛らしさに胸を撃たれたかのように胸を抑える。その身が怪人へと成り果てようとも、そしてその魂が骸の海へと棄てられようとも。“可愛い”の前では誰しもがその心を動かされてしまうものである。
 だが、それがいけなかった。絶対無敵バリアの維持には心の平静が必要不可欠。エモーショナルを刺激されてしまえば、バリアは自動的に解除されてしまう。
「……これが、私のできることだよ」
 九尾狐が宙返りをすると、そこには元のパームが降り立っていた。妖狐の種族的な特徴、狐変身だ。
 少し前にラビットバニーを相手取った時は、トナカイの角に豹の尻尾を生やしたキマイラの女と共に衣装で魅せることもできたが。あれは二人ならではだ。一人であれば、こうして体を張る必要がある。
「今の姿に慣れちゃったから、あんまり気乗りはしないけどね。言ってしまえば、あの姿は裸みたいなものだから、恥ずかしいし……」
「追い討ちエモとか卑怯の誹りを免れえませんわよ???」
「そういうつもりはなかったんだけど」
「エモはよろしかったですが――でも、お遊びが過ぎましたわね」
 胸を抑えるドン・フリーダムの周囲には、もう彼女を守るバリアはない。だからこそ、ドン・フリーダムとて悠長に構えてはいられない。構え直された赤べこキャノンへとエネルギーが充填されて、その砲口から砲弾が――。
「陽の下、火の下、炎の運命を動かそう」
 九尾から放出された“気”から、見えざる炎の腕が作り出された。それは一直線に赤べこキャノンへと向かい、砲身を殴りつけることでその砲口の向きを変える。パームから、ドン・フリーダム自身へと。
「あら――……」
 砲音。
 砲弾がドン・フリーダムへと命中し、しかし受け止められた。
「一筋縄じゃいかないか」
 さて、どうやって倒したものか。
 桃色の妖狐は、九尾を揺らしながら思案を重ねる。
「裸まで見せたようなものなんだから、絶対負けられないもんね」

成功 🔵​🔵​🔴​

天御鏡・百々

【SPD】

暴風による足場の崩壊に対し
念動力10での足場の操作、もしくは我自身を念動力で浮かせて対処する
それだけで不足ならば、神通力(武器)で発生させたオーラ防御53による障壁を足場にすることで対処だな
暴風自体も、できるだけオーラ防御で被害を軽減しよう

そして『鏡の中より出づる者』を使用
鏡に映した我自身を呼び出そう
(敵の攻撃に呼び出すのが間に合えば、二人で敵の攻撃に対処)

障壁の足場を利用して接近し
鏡像の我と連携して敵へと攻撃だな
我同士、連携は完璧だ

破魔の力を乗せた真朱神楽(武器:薙刀)で防御の隙間を狙ってなぎ払ってやろう
(破魔55、なぎ払い20、鎧無視攻撃5)

●神鏡のヤドリガミ
●アドリブ連携歓迎



「貴殿がドン・フリーダムか」
 ふわりと、和装の袖を揺らして現れたのは天御鏡・百々だった。
「ええ、そうですけど。……次はあなたですの?」
「我が名は天御鏡・百々。察されている通り、貴殿の企みを阻止しに来た」
 品定めするかのように眺めるドン・フリーダムへと、百々は臆した様子もなく名乗りを上げる。
「猟兵の皆さんも奇特ですわね。更なる自由が要らないだなんて。あなたもコンコンコンとすれば望みのものが得られる世界の方が良いとは思いませんの?」
「生憎と、望みのものは旅路の中で見て楽しむ性分なのだ。貴殿の言うような自由は我の求めるものとは違う」
 音楽性の違いですわね、とドン・フリーダムは溜息をつきながら頭を振る。彼女はおもむろに腕を振る。
「では、死んで下さいまし」
 言葉と共に、振られた腕から風が放たれた。ウインドゼファーの能力、足場を崩す暴風だ。
 耳をつんざくような音と共に吹き荒ぶそれは、百々の立っている足場を崩す。
 あわや暴風に身を斬り裂かれながら崩落によって生じた奈落の穴へと百々が飲み込まれてしまうのではないかという時、太陽の如き光が彼女を覆った。
 神鏡として祀られていた彼女の身に宿る、神々の力。神通力。それは荒れ狂う暴風から百々の華奢な体躯を守り、彼女自身の念動力を補助として足場代わりとなる。
「鏡の世界の我よ来よ、現世へ来たりて我が力となれ!」
 百々の本体たる神鏡が神々しい光を放つ。
 再び百々が花畑の土を踏んだ時には、彼女は二人になっていた。
 もう一人の百々は瓜二つの容貌でありながら、普段は頭の右側に付けている髪飾りが、鏡写しになったように左側に付いている。ユーベルコードによって神鏡に写し取った自分自身を、鏡面の向こう側より呼び寄せたのだ。
「行くぞ!」
『応!』
 自分自身であるからして、二人の呼吸も阿吽のそれ。二人は陽光にも似た障壁を足元に次々と展開して階段のように足場として機能させ、ドン・フリーダムへ二方向から挟み込むように肉迫する。
「『覚悟――!』」
「さすがに、間に合いませんわね……」
 まるで合わせ鏡のように薙刀の挟撃が振られた。ドン・フリーダムはその片方へと手を伸ばし、薙刀の刃を掴んで拳を振り抜く――が、拳で殴り抜かれたはずのそれは揺らいで消えた。鏡像だ。
 そして本命、真の百々が赤塗の薙刀でもって、その無防備な背を袈裟斬りに斬り付ける。防御性能など無いような全裸のドン・フリーダムだが、斬り応えは意外に固い。怪人の首領を称するだけあって、その肉体もまた常人のそれとは大きくかけ離れるらしい。
 手傷は与えられたが浅いと見て取った百々は、振り切った薙刀の刃を返してそのまま追撃に入ろうとする。だが――
「――――ッ」
 そこで第六感とも言うべき悪寒を感じ取って、彼女は上体を反らしながら後退した。先程まで百々の頭があった空間へと、ドン・フリーダムの裏拳が振り抜かれる。
 距離を取って残心で敵の出方を伺いながらも、百々は冷や汗を垂らす。
 怪人の首領、ドン・フリーダム。
「……難敵だな」
 百々は薙刀を構え直す。
 厳しい戦いが予感されていた――。

成功 🔵​🔵​🔴​

エスチーカ・アムグラド

自由が全部だったら自由のありがたさが無くなっちゃうかなーって!
自由じゃない時があるから、自由の良さがわかるんだってチーカは思う!

反撃の対策はー……
空中で正眼に構えれば反撃を後方からに誘えるんじゃないかなって!【おびき寄せ】
攻撃は振りをおーっきく!なっがーくっ!
チーカの周りに吹く風、その流れに気を配って、変化があればそこから反撃が来るはずだから、【恵風】
大きく長くして維持した振りのまま翅で方向転換して、ドンフリーダムと死角からの反撃を纏めて……薙ぎ払うっ!【空中戦+範囲攻撃】
不安になっても剣を握り締めて……出来るって、大丈夫だって自分に言い聞かせて、この一閃に賭ける!【勇気+鼓舞】



「いつも自由だったら、自由のありがたさって無くなっちゃうんじゃないの?」
 開口一番。エスチーカ・アムグラドは怪人の首領へと疑問を投げかけた。
 花畑の上。向き合う女と妖精という構図は、あるいはこれが世界の存亡を賭けた戦いでなければ、絵画のような一場面だったかもしれないが。そうでなかったとしても、ドン・フリーダムの顔に貼り付いたスマイリーフェイスは不気味に過ぎた。
「わたくしが目指している自由とは、本来あるべき理想の形ですわ。この世界の人々はそれを取り戻すだけ」
 怪人の首領は今まで戦っていた猟兵と入れ違いになるように現れたフェアリーへと視線をくれてやりながら、頭を傾げる。
「そうかなぁ。自由って、不自由があるから自由なんじゃないの? 自由じゃない時があるから自由の良さがわかるんだって、チーカは思うんだけど」
「不自由と共存する自由など、所詮は不完全なものですわ。真の自由は不自由とは共存しないんですもの」
 真の自由という言葉を殊更に強調するように、ドン・フリーダムは寿ぐように両手を広げる。まさしく、今自分が真なる自由を作り上げるのだと言わんが如く。
 だが、今度はエスチーカが首を傾げる番だ。彼女はきょとんとした顔で怪人の首領を見つめる。
「その真の自由って本当にあるの?」
「ええ、すでにもう目と鼻の先に実在すると、わたくしは信じていますわ」
「チーカはちょっと信じられないかなー」
 呟いて、しかしエスチーカはううん、と首を横に振る。彼女は風の加護が宿った鞘から、グラジオラスの葉にも似た剣を抜き放ち、構える。
「――ううん、違うや。やっぱり、チーカは『あなたを信用できない』。あなたはオブリビオンで、オブリビオンは世界を破滅させるものだから」
「どうだって良いですわ。どちらにせよ、わたくしは修理を断行するまで」
 交わす言葉は、それでおしまい。
 これから交わして意味を成すのは、ただ武力のみだ。

 Gladiola de amgrada
「 アムグラドの剣 」

 エスチーカの握る剣が呼ばれれば、それに応えるように刃が剣気を帯びる。
「――――」
 恐怖が無いと言えば、嘘になる。だが、これは一つの世界が滅びに瀕した大切な戦い。ゆえにこそ、己が剣を学んだ意味を示すため。彼女は己を鼓舞して勇気を胸に、剣を構える。
「――この一閃に賭ける!」
 正眼に構えられた剣を大きく頭上に振り上げ、振り下ろす。
 一足一刀どころではない遠間。
 しかしエスチーカの妖剣であれば、アムグラドの剣であれば、距離や障害を無視して斬撃を放つことも叶う。
 ゆえに斬撃は大きく、長く。
 合戦剣術の理から外れた剣閃は、フェアリーの種族的に持つ身体能力の限界を超えて、敵へと大きな一撃を与えるものとなる。
 だが――
「隙だらけでしてよ」
 いつの間に放たれていたのだろうか。エスチーカの死角、即ち後ろから攻撃が飛んで来る。反撃マシンだ。

 “攻撃は最大の防御”と言われる一方で、同時に“攻撃は大きな隙を生む”。

 そんなこと、エスチーカはアムグラド家での稽古で何度も身をもって体験している。

 反撃が来た、とエスチーカの周囲に吹く風が囁く。それに従い、彼女は大きく羽を揺らした。
「せい、りゃああああっ!!」
 裂帛の気合と共にエスチーカの振る剣先が更に“回る”。
 フェアリーの羽を使った、縦に一回転する斬撃。それは横合いから見ればまるで満月を描くような剣閃。
 刃が空気を切り裂く。金属音。そして遠間から聞こえる、血の跳ねる音。
 狙い過たず、エスチーカの後ろから攻撃して来た反撃マシンはその身を両断され。
 そして妖剣によってドン・フリーダムの肩は大きく縦に斬り裂かれ、赤い血が流れた。

成功 🔵​🔵​🔴​

アルトリウス・セレスタイト

リコリス(f02296)と

足場を狙ってくると知れているなら、足場を確保に走るか
目標の所作・発言、資格聴覚の情報に第六感も無視せず、極力崩されるタイミングを見切るよう務める
無傷でなくとも直に全力で仕留めに来るよりは被害は少ない筈

界離で時の原理の端末召喚。淡青色の光の、格子状の針金細工
崩れる足場の影で時間停止した空間を作成
光も通さぬそれを足場に

リコリスは機動戦も行けるはず
飛び石のように時間を停止させ目標に迫る

以後足場の作成・消失でリコリスを支援
決定打が入らねば自身も近接
停止空間で目標を檻のように絡め取り、リコリスの手をとって、くるりとターンで場を交代


リコリス・ミトライユ

アルトリウスさん(f01410)と一緒に行きますね。

また足場狙い……。
足場を狙ってくるときに、足元の花の一本に【スネークスウィープ】でがっちりと噛ませておきましょう。

足場をバラバラにされたら、ブーツでふわりと浮いて。
アルトリウスさんの設置した足場の上に着地させていただきましょう。

足場に対しても、ワイヤーを噛ませて、すばやく自分を足場側に引きよせて移動していきます。
足場を使ったり使わなかったり、ブーツで空中での機動を利用すれば、かなり複雑な動きになるはずです。

そうやって接近出来そうなら、格闘戦です!
けっこー、当たると痛いですし、外してもワイヤーで再度捕まえてアルトリウスさんにタッチです。



 フェアリーと入れ替わるように現れた二人の猟兵を迎えたのは、暴風だった。
 遠間から放たれるそれは破壊的な轟音と共に猟兵の立つ足場を崩しにかかる。
「また足場狙い……っ」
 リコリス・ミトライユが遠間に見えるドン・フリーダムを睨めつけるように一瞥した。つい先立っての対ウインドゼファー戦でも足場を崩す攻撃はあった。その時よりも風の力は強く、荒々しい。
「だが、知れたことだ」
 アルトリウス・セレスタイトは花々と共に落ち行く中で、青白い光を編み上げる。ドン・フリーダムが三幹部の能力を用いて攻撃して来ることは事前に知っていたことだ。ゆえにそれに対抗できる物を作り出す。
 彼の足元に現れたのは、針金で作られたような不格好な檻だった。淡青色の光を放ち続け宙に制止しながら足場として機能するそれは、内部の時間停止の原理を内包した端末だ。光すらをも停止させたその内側は外から窺い知ることすら叶わないが、恐らく巻き込まれた足場だったものが静止していることだろう。
「リコリス」
 共闘する少女へと呼びかける。すぐに「はい!」と返事が来た。
 ガラスの靴を煌めかせながら、空中を滑走するかのようにリコリスが作り出された足場に降り立つ。
「無事か」
「全然いけますっ」
「そうか。ならば戦闘続行だ」
 二人は暴風によって擦過傷などのダメージを受けていた。だが逆に言えばそれだけであって、戦闘を続けるには十分だ。
「支援する」
「はいっ、一矢報いましょう!」
 言葉と共に足場から跳躍して、暴風によって崩落した穴の中からリコリスは飛び出した。
「残念、落とし損ねですわね」
 跳躍する少女の姿を認めたドン・フリーダムはそう呟いて、再び暴風を放つ。より圧縮した弾丸の如き一撃だ。
 だが、リコリスはそれを空中にいながらも直角に曲がることで回避する。
 魔法のワイヤー。
 魔力で編まれたそれを地に広がる花々へと噛ませ、手繰り寄せることによって強引な緊急軌道変更を可能たらしめたのだ。
「ですが、それは3方向のみですわね」
 ワイヤーによって方向転換できるのは、下、右下、左下の三方向のみ。そして一度下へ滑れば、再び上昇するには時間がかかる。ジリ貧なのだ。
 だからドン・フリーダムは横に伸びたまるで刃のような暴風を繰り出す。地表に対して水平に。リコリスが避けられない軌道だ。
 花々を引き裂きながら来る暴風の刃を見て、しかしリコリスの表情は悲痛や絶望には染まっていなかった。
 それどころか、彼女はガラスの靴を煌めかせ、光の軌跡を描くようにむしろドン・フリーダムの元へと接近していく。
「アルトリウスさん!」
 暴風に巻き込まれる、その瞬間。リコリスはその名を呼んだ。
 足元に、ぐ、と確かな“足場”を感じた。
 アルトリウスが生成した淡青色の小さな檻。それがリコリスの足場となって、彼女を大きく“羽ばたかせる”。
「行け、リコリス」
「行きます、全力で!」
 リコリスは飛翔するように空中を滑る。
 暴風の刃を飛び越えて。怪人の首領に肉迫して。彼女は敵を蹴撃する。
「……良い蹴りをお持ちですわねえ」
「けっこー、当たると痛いですよね?」
 ドン・フリーダムが反撃の拳を振る。しかし、それはリコリスに当たらずに虚空を掻いた。
 魔法のワイヤー。それをアルトリウスの手へと繋げておいて、アルトリウス側へと“手繰り寄せた”のだ。
「一矢報いた。これ以上は通じない。撤退するぞ」
「はいっ! ――それでは、さようなら!」
 追い討ちの暴風が放たれるも、それはアルトリウスによって防がれて。
 二人は一撃離脱を果たしたのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ヴィクティム・ウィンターミュート
◎●

──気に食わねェ
テメェの理想を押し付けて
そこで生まれる不幸も
何もかもに責任を取る気が無いテメェが

気が変わった
本来ならこんな強者に
正面から戦おうなんざ考えねぇ
だけどな
久々に「心底嫌い」だって思ったからよ
──付き合ってもらうぜ

UC起動
あらゆるリソースを用いて身体強化
先制攻撃は【ダッシュ、ジャンプ、地形の利用、見切り、早業】とUCの効果で高速機動し足場を跳び復帰
以降もこのまま機動力維持

攻撃は【第六感、見切り】で躱す
くらっても【激痛耐性、覚悟】で耐えて【カウンター】
俺の攻撃は【フェイント、毒使い】で惑わし、じわじわ削る
常にヒット&アウェイ

泥臭い持久戦だ
あぁ、らしくないな
感情でこんなことするなんてよ



 ラジオを一つ駄目にした。
 ドン・フリーダムによる全世界へ向けた放送を聞いた時のことだ。スピーカーから流れる言葉に苛立ちを覚えて、彼はいつの間にかにラジオを叩き壊してしまっていた。
「――気に食わねェ」
 ラジオから流れていた言葉の何もかもが気に食わなかった。
 欲望は止めなくていい。自由こそがこの世の全て。
 その言葉のどれもが、ヴィクティム・ウィンターミュートに故郷を想起させた。その言葉の全てが、あの掃き溜めのようなストリートで人々を騙くらかすために宗教家の口から紡がれたそれとダブって聞こえた。
 自分はさも全て正しいことを言っているつもりのツラで。自分はお前たちを救ってやると言っているかのような態度で。お前は全て間違ったことしか言っていないのに。お前は自分たちをただ利用して地獄に叩き落すつもりなのに。
 理不尽に押し潰されて弱り切ったストリートの仲間たちの一体何人がその甘言に惑わされたことか。
 一人は仲間を喪った哀しみで。もう一人は親兄弟が見つかることを信じて。また一人は世の中の全てに嫌気が差して……。
 そして、その誰もがあの詐欺師どもに利用され尽くして使い潰された。なけなしの金も家財を搾り取られて。奴隷のように売り飛ばされて家畜のように臓器を売られて。モルモットのように違法実験の材料として使われて。
「テメェが理想を押し付けて、この世界がそうなったとしても。そこで生まれる不幸も悲劇も理不尽も、何もかもに責任を取る気が無いテメェが気に食わねえッ!!」
 咆哮する。睨めつける。こいつだけは絶対に許さない、許してはならないと言うように。叶うならばこのまま視線だけで殺してしまいたいと言うように。
 眼の前の巨悪、ドン・フリーダムへと敵意を向ける。
「当然ですわよねえ?」
 当たり前のことを言うなと、ドン・フリーダムは歪んだスマイリーフェイスで嘲笑した。
「だってわたくし、オブリビオン・フォーミュラですもの」
 オブリビオン。それは世界を滅ぼす存在。
 だから甘言はまやかしで。だから理不尽を押し付ける。
 ああ、それなら――
「――気が変わった」
 ヴィクティムは、己のスタイルを今この時だけ曲げる覚悟を決めた。
 本来ならばこんな強敵を相手取って、正面から戦おうなどとは考えもすまい。しかし――
「久々に『心底嫌いだ』って思ったからよ」
 自分は小悪党だ。非合法なことに手を染め、他人をハメて、妨害し、破壊工作をいくつもしてきた。
 それでも、ひと掴みの矜持はあった。悪党なりの倫理があった。
 けれど、こいつにはそれがない。
 こいつは――吐き気を催すほどの邪悪だ。
「――付き合って貰うぜ、俺の“勝ち筋”に」
 サイバーデッキの奥の奥。幾重ものセキュリティに守られた禁じられたプログラムを起動する。
 それはあらゆるリソースを用いて身体能力を強化するプログラム。ただただ描かれる勝利への道筋へと己の持ちうる全てを捧げる力。
「あなたに残されたのは“負け筋”だけですわよ」
 それを無駄だと切って捨てるかのように、ドン・フリーダムは暴風を放つ。ウインドゼファーの使って来た能力だ。
 だが、それはすでに5回は見たものだ。仲間たちと助け合いながら乗り越えた。そして――自分一人だけでも、凌ぎ切ったものだ。
「クソ遅えよ」
 最速で放たれる高速の暴風を前に、ヴィクティムは呟く。何番煎じも良いところだと。
 今回ばかりはハッキングによるサイバネ義肢のリミッター解除の必要も無い。
 迫る暴風の位置を巻き上げられる花々で把握して、そこへ向かって走る。見切る。跳ねる。飛び越える。
 当たれば足場を崩されて落とされる攻撃ならば、足場が崩される前に飛び越えればそれで済む話なのだ。
「半分ぐらい人間やめてますわね、それ」
 笑えない冗談だと言うようにドン・フリーダムが再び暴風を放つが、結果は同じ。驚異的な身体能力によって、ヴィクティムは超高速機動することでその攻撃を回避する。
 だから彼女も考えた。暴風では精々掠った程度にしかダメージが与えられない。それならば、ギリギリまで引き付けてから反撃するべきだ。
 肉迫するヴィクティムへと、ドン・フリーダムは拳を振るう。
 それを避けきれないと一瞬で判断したヴィクティムはそれを致命傷から外す。勝利に不要な激痛はアドレナリンに抑制されて、プログラムから切り捨てられた。
「テメェの拳が届く距離なら、俺の距離だ」
 毒の滴るナイフを一閃。ドン・フリーダムを斬り付け、そして瞬時に距離を取る。
 浅手の傷だが、毒の入ったそれは戦いが長期化すればするほど効果をいや増す。隙を晒す治療も戦闘中ではとてもできない。
 だから、それを理解した上で。ヴィクティムが取る戦法はただ一つ。
 ヒット&アウェイでの持久戦。
「ああ、泥臭え。らしくねえなあ、ホントに――」
 ――感情に引っ張られて、こんなことをするなんて。
 呟きは儚く消えて。
 彼は戦い続けた。勝利するという、ただそれだけのために。

大成功 🔵​🔵​🔵​

非在・究子
◎【SPD】
お、お前みたいな、ちょうてんさい、には、いいかも、しれないけど、な。あ、アタシみたいな、やつには、今の不自由な自由で、十分、過ぎる……『現実』は、選択肢、多すぎの、クソゲーだ……

ま、まず先制攻撃、は、コンコンコンへの【ハッキング】で、先に足元の『花の足場』を崩して、回避だ。ダメなら,『ボム』の無敵時間も、使う。
ら、落下中に、『あのコマンド』を、使って、フルパワーアップの『シューティングゲーム』の、始まり、だ。
高速飛行で、立ち回り、ながら、本体とオプションから、レーザーとミサイルで、集中攻撃、する。
危ない攻撃、には、遠慮なく、ボムの残弾を、使い切って、やれる限り、やってやる、ぞ。


アマニア・イェーガー

システム・フラワーズの修復なんてさせないよ!
壊れたものには、他にない"良さ"があるんだ!わたしのコレクション(※審議中)を奪わせてたまるかぁー!

システム・フラワーズに【鍵開け】【ハッキング】で干渉し、重力管理システムをハッキング。エリア内の重力の制御を奪うよ!

先制攻撃は、超重力で破片の弾道を歪めて逸らし、重力操作による全方位への"落下"と【空中戦】、それから多重展開したウィンドウでしのぐプラン

そしてわたしのターン!

超重力でドン・フリーダムの自由を奪いそのまま押し潰す

それからこれはおまけだよ!

逸らした足場の破片を集めて押し固めた、【破壊工作】で準備した超重力ハンマーを叩きつけてやる



 一人の青年の死力を尽くした戦いの後に。回収された彼の代わりに戦場に現れたのは二人の少女だった。
「システムフラワーズの修復なんてさせないよ!」
 その内の一人、アマニア・イェーガーが一歩前に出て声を張る。彼女の瞳で燃え盛るのは敵意――ではない。怒りだ。
「あなたも邪魔しに来たんですの?」
 何度となく問いかけて来た言葉をドン・フリーダムは投げかける。普通ならば、「企みを阻止する」だとか、そういった言葉が返って来るが。
 だが、アマニアの答えは違った。
「邪魔してるのはキミの方だ!」
 逆ギレ、であった。
 彼女は口角泡を飛ばす勢いで言葉を連ねる。
「壊れたものには他にない"良さ"があるのに、それをどうして修理なんてしようとするんだよ!!」
 アンティーク、クラシック、そしてヴィンテージ。
 歴史を重ねたいわゆる“骨董品”というものには、それだけでロマンと価値が生じるものだ。時間という、何ものであっても逃れることの叶わぬ衰退の波を乗り越えたという事実と過程こそが尊いのだ。
 であればこそ、長い年月を経て来たシステム・フラワーズはまさしくこの骨董品――否、遺産とでも言うべきほどの価値を有したものとしてアマニアの目には映っていた。
 それを、保守・点検するだけならばいざしらず、改修するなど言語道断。壊れた物はその“壊れたこと”それ自体が時間流を耐えてきた勲だ。だというのに、どうしてその美しくも誇らしき勲章を剥ぎ取るが如き所業をするのだろうか。
 ゆえにこそ、アマニアは怒っていた。憤怒で色白の手が更に青白くなるほど拳を握り締め、激昂する。
「わたしのコレクションを、奪わせてたまるかぁーっ!!!」
 そんなアマニアの価値観など知るよしもなく。ドン・フリーダムは呆れた様子で首を横に振る。
「……作ったのわたくしのはずなんですけど、いつの間にあなたのものになってたんでしょうねえ」
「お、お前のものでも、誰のものでも、し、システム・フラワーズは修理させない」
 アマニアの影から、どもり気味の声がした。長身な彼女に比べてその身長はまるでドワーフかと見紛うほどに低い。
 非在・究子。彼女もまた、アマニアとは理由を別にしてシステム・フラワーズの修復を止めに来た者だった。
「お、お前みたいな、ちょうてんさい、には、いいかも、しれないけど、な。……あ、アタシみたいな、やつには、今の不自由な自由で、十分、過ぎる……」
 望む物なら何でも手に入るシステム。欲望をわざわざ止めずに済む世界。成程確かに理想郷だ。物質の飽和は人々の生活を安定させて余りあるだろう。
 だが、同時に究子は知っていた。いかに優れたシステムであっても、それを十全に使いこなせなければその有用性は無いも同然なのだ。それこそ、ドン・フリーダムのような優れた者であればいざしらず、究子のような凡百の者どもには優れたシステムは扱い切ることは到底不可能なことだ。
「『現実』は、選択肢、多すぎの、クソゲーだから……」
 現実というゲームはとかく選択肢が多い。優れたシステムはそこへ更に無数の選択肢を人に与えるだろう。だが、その数多ある選択肢から有用なものを選び出すことは、優れた者にしか不可能だ。
 要は我田引水。理想を語っておきながら、自分のための理想を創り上げようとしているように、究子はドン・フリーダムの理想を捉えていた。
「そう。あくまで邪魔をする気なら、ご退場願うまでですわ」
 ドン・フリーダムは腕を振るう。それによって巻き起こった暴風が、風圧で花々を散らしながら二人へ迫る。
 恐るべき攻撃だ。だが、アマニアの表情にはどこか余裕を感じさせるものがあった。
「甘い甘い。ここがシステムで制御された場所だとしても、わたしが“鍵”を開けられぬ道理もなし! そら、開いたよ!」
「よ、よし、それなら、後は任せろ」
 ザッ、と周囲にノイズのようなものが一瞬走る。
 ハッキング。アマニアがこじ開けた突破口から、究子がシステムへと干渉してそのコントロールを一時的に奪う。
 するとどうだろうか。究子とアマニアの周囲から花という花が消え去った。
「ハッキング……。小賢しい真似をなさいますのね。ですが暴風はただ足場を崩すだけではなくってよ?」
 暴風は花の足場を崩壊させる。逆に言えば、花がなければ足場は崩せない。その暴風の性質を利用するために、ハッキングによる環境改変を行ったのだ。
 だが、なにも暴風は足場を崩すだけではない。それそのものが暴力なのだ。
「そんなことは百も承知さ! けれどね、暴風は万有引力に勝てないものだよ!」
 花畑を一時的にしろ消し去ったのは序の口だと、アマニアは言った。
「解き放たれた重力は緩み、ばらつき、収束する。リンゴは落ちる、上に、下に! ――それなら風は、どうなるかな?」
 瞬間、暴風が停滞してしまった。動きは鈍くなって、風の壁とも言うべきものに変わってしまう。
「あらあらまあまあ、システムをハックして重力まで操作したんですの」
 感心するような声を上げながら、ドン・フリーダムはシステムコントロールの奪還を進める。
 コントロールさえ奪取してしまえば、向こうは環境改変も行えない。暴風は再び猛威を振るい、二人を倒すことなど容易だ。
 そしてそのための時間は他ならぬ重力によって停滞した風の壁が稼いでくれる。
 ドン・フリーダムはそう計算していた。それは、爆発によって打ち砕かれた。
「え、遠距離攻撃は、ボムで一掃されるもの……。え、STGの、常識だから」
 究子の“ボム”だ。それによって、ドン・フリーダムと彼女たちを隔てていた壁は取り払われた。 
「そしてここからがわたしたちのターン! 超重力の重さを食らえばいいさ!」
「…………ッ!?」
 アマニアの言葉と共に、ドン・フリーダムへ超重力が襲い掛かる。
 だが、まだだ。決定打に欠ける。いくらハッキングでシステムをいじろうとも、重力でその行動を制限しようとも、ドン・フリーダムがコントロールを取り戻せば巻き返される。
 だが――
「こ、コマンド入力、完了。オプション、展開……」
 究子の周囲に、30超の小型飛行機械――オプションが現れた。
 まるで機体のような機械翼を得て、アマニアは空を飛ぶ。
「動かない的は、ただのカカシだな……!」
 彼女は召喚したビームライフルでもってドン・フリーダムを上空から狙撃する。
 まずは一発、観測射。ビームに影響を与える重力の具合を見て、射角を調整して連射する。ビームによる飽和攻撃だ。
「こ、コントロール、奪い返される前に……!」
「やれるとこまでやり切るよ!」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

黒川・闇慈


「いよいよこの戦いも大詰めですか。最後に出てきたのがあんな素敵ファッションの相手だとは。ちょっと真似できませんねえ。クックック」

【行動】
wizで対抗です。
このUCの弱点はなんといっても私がダメージを受けると解除されてしまう点です。故に私を直接狙った広範囲攻撃か高速攻撃をしかけてくるでしょう。
ホワイトカーテンとブラックシェードの防御用魔術を起動しておき、攻撃の備えとします。
更に高速詠唱、呪詛、全力魔法の技能を用いてUCを使用。防御用魔術で防ぎきれない攻撃は死霊騎士に防御させ、時間を稼いでいる間に死霊蛇竜でドン・フリーダムに攻撃を仕掛けましょうか。


アウレリア・ウィスタリア
最終決戦
敵の首領にボクの力がどこまで通じるのかわかりませんけど……

【血の傀儡兵団】の血人形と共に敵に立ち向かいましょう

血人形たちは僅かな攻撃であっても
一撃を受けてしまえば消え去ります
でもボクが血人形たちを呼んだのはそれが目的
数多くの血人形たちが一気に消え去れば
それは目眩ましにはうってつけの血霧になるでしょう

ボクの力は弱い
だからこそボクはこの刃で敵に立ち向かおう

鞭剣で切り裂き、魔銃で撃ち抜く
ユーベルコードに頼らない戦い方
ボクでは力不足かもしれないけれど
いま、このときは全力で挑もう



「いよいよこの戦いも大詰めですか」
 色とりどりの花畑へと現れたのは、黒ずくめの衣装を纏った黒川・闇慈だ。彼はドン・フリーダムをしげしげと眺めて肩を揺らす。
「最後に出てきたのがあんな素敵ファッションの相手だとは。ちょっと真似できませんねえ。クックック」
「とはいえ幹部も強敵でした。首領ともなれば油断はできません」
 仮面を被った少女が闇慈の影から現れる。アウレリア・ウィスタリアだ。
 敵を見て笑みさえ浮かべる闇慈とは対称的に、彼女の目はどこか不安に揺れる。
「ボクの力がどこまで通じるのかわかりませんけど……」
「ですがやるしかありません。幸い、敵はもう限界のはずです」
「……ええ、そうですね。やりましょう」
 闇慈の言葉に頷いて。二人はそれぞれの得物を構える。闇慈は禍々しい十字架のような杖を。そしてアウレリアは鞭剣状の拷問器具を。
「最早問答は不要ですか。……わたくしもそう余裕はございませんので、そちらの方が助かりますけど」
 二人の戦意を認めたドン・フリーダムが、さあ来なさいと言うかのように手招きする。それはまるでこの戦いで雌雄を決するのだと言うかのようだった。
「死してなお、生に囚われ。囚われてなお、妄執を胸に」
 闇慈の詠唱に呼応して魔力が練り上げられる。展開した魔法陣から現れるのは二つの影。
「悔悟、怨恨、苦痛に恐怖。現し世に顕せ、不滅の闘い。生者を誘え、死人への旅路――」

  Resurrect
 ――召喚

 影は実体を伴って、生者の世界に蘇る。
 それは騎士。それは蛇竜。どちらも死霊として、今再び戦場に立つ。
「我が血は力」
 続くアウレリアが鞭剣の刃へと指を滑らせ、血を流す。
「敵を切り裂く無数の兵団」
 それは地に落ち、何体もの血人形が形を得ては立ち上がる。
 そして現れるのは人形による傀儡兵団。彼らは二人の盾となるようにドン・フリーダムへと剣先を向ける。
「――これより始まるは最終“血”戦。進め、そして切り開け!」
 敵は今までに類を見ない強敵。
 なれど血道を開けば見えて来る。
 破滅を防ぐ、勝利の道が!
「なんともまあ。ご立派な兵士たちですわね」
 一斉に駆け出した傀儡兵団を前に、しかし怪人の首領は焦った様子もなかった。
 オブリビオン・フォーミュラ。それはその世界でも最も強力にして邪悪なオブリビオン。ゆえにこそ、“反撃”の手立ては常に用意されている。
 突如として兵団の後ろに、そして闇慈の後ろに、マシンが現れる。それらは凶悪な刃でもって彼らを攻撃する。
 兵団の弱点とは即ち「脆さ」だ。数は多かれど、それぞれそれなりの性能を有しても、彼らは一撃で消滅してしまう。
 そして闇慈の弱点は「無防備さ」だ。召喚した騎士と蛇竜の性能は高いが、その代りに彼自身は戦えず、そして傷を受けてしまうと即騎士と蛇竜は送還されてしまう。
「ですがそれは私も知っていたことです」
 闇慈へ迫る刃は、しかしその直前で阻まれた。防御用の魔術障壁に阻まれ、そしてその先にある防御魔術がエンチャントされた黒コートによって防がれる。
「ボクたちが何ら考えなしで来ていたとでも?」
 走る刃は兵団を斬り裂き、血人形たちはその身を崩壊させて血霧に成り果てる。
 そう、それこそがアウレリアの目論見。
 広がる血霧は戦場に充満し、周囲一帯を一面の赤で覆い隠す。一体どこに何があるのか、何が起きているのかさえもわからない程に。
「こちらの反撃マシンを逆利用しましたか……!」
 ドン・フリーダムはあとじさる。度重なる猟兵たちによる攻勢による疲労。そして蓄積されるダメージ。継続する毒。それらがドン・フリーダムの思考を鈍らせていた。
 そして、それこそが猟兵たちの勝利への道筋となる。
 霧に隠れた蛇竜がドン・フリーダムへと襲い掛かる。噛みつき、払い、巻き付こうとして来る。ああ、それだけであれば、ドンフリーダムであったらいかようにも対処できただろう。
 だが、それをアウレリアが容易ならざるものに変えていた。
「……ッ!」
 敵に位置を悟られぬよう、声を発さず鞭剣を振るう。それは蛇竜に紛れて敵の傷を増やして重ねる。
 アウレリアの力は弱い。それは彼女自身、自覚していることだった。
 だが、だからこそ。彼女はその手に握る刃で敵に立ち向かう。敵には刃を。その言葉に従うように。
「アウレリアさん!」
 闇慈が大きく、名前を呼んだ。
 それを合図に彼女は手にする武器を変える。
 剣でもなく、さりとて血糸でもなく。――神さえ撃ち抜く、破魔の魔銃を。
『――――!』
 蛇竜の鳴き声が聞こえて。それを頼りに銃口を向ける。
 赤の果て。血の向こう側。その先にこそ勝利はある。
 だから――
「――撃ち抜け」
 祈るように、アウレリアは引き金を引いた。
 銃声。破魔の銃弾が射出されて音の直後に、独特な手応えを感じた。
 蛇竜の鳴き声が途絶える。戦場から音が消え去る。
 血霧の晴れたその先で。
 怪人の首領は、膝をついていた。
「ここまで、ですか……」
 オブリビオン・フォーミュラは黒い塵へと変わりつつある己の身体を見て嘆息する。
「……わからないものですね。人は誰しも、自由を求めるものなのに。欲求の充足を求めるものなのに」
 ぐらりと身体が傾いて、ドン・フリーダムは倒れ伏した。花畑の中で、虚空へと手を翳しながら、彼女は呟く。
「オール、フォー……フリーダム……」
 その言葉だけを残して。世界の危機は、その存在を塵へと変えた。

 ――与えられるはずだった自由を拒絶し、人々は何を手にしたのだろうか。
 それは誰にもわからない。
 しかし、彼らがオブリビオンから与えられる自由を拒んだその瞬間だけは。
 ――きっと真の自由を手にしていたのだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年05月30日


挿絵イラスト