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バトルオブフラワーズ⑫~虚無たる六翼

#キマイラフューチャー #戦争 #バトルオブフラワーズ #ドラゴンテイマー

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 ――『彼』は佇んでいた。六翼誇るその身に紫霧を妖しく纏わせながら。
「『欲望は止められない』……ドン・フリーダムの思想は単純明快だ。そしてそれは明確に世界を破壊する思想」
 それらは己が与するに相応しいと考えた『彼』は侵略樹アヴェスタを与えた。
 だが、樹の力得た怪人達が『システム・フラワーズ』を掌中に収めた後に何を起こそうとももはや彼の預かり知る処では無い。
「……グリモア……」
 赤き剣そのものと化した右腕を虚空へと伸ばし――、
「いずれ――再び……」
 『彼』はただ、永く、待ち侘びていたのだ。

「とうとう『システム・フラワーズ』中枢、大首領『ドン・フリーダム』への道が開かれたみたいなんだ」
 グリモア猟兵のひとりである巳六・荊(枯涙骨・f14646)が猟兵達をグリモアベースへと呼び集めたのは『ドン・フリーダム』とのきたる決戦の為……では無かった。
「『システム・フラワーズ』の中枢からは少し離れた別の所で、ひとりっきりで、なんかやってるんだがやってないんだかよくわかんないオブリビオンも倒してきて欲しいんだ」
 禍々しき濃紫のガスに包まれ六枚の翼と『赤き剣の腕(クリムゾンキャリバー)』を持つそのオブリビオンの名は『ドラゴンテイマー』。
 怪人軍団には属さぬが『ドン・フリーダム』の協力者にしてかつてない強大な力を備えた謎の存在であるという。
「そんな彼が駆使するユーベルコードは『黒竜ダイウルゴス』の召喚と支配。ただ、ボクたち竜騎士とも違ってるカンジなんだよね」
 と、言われても、そもそも荊が人前で竜騎士として力を発揮した機会などこれまで皆無だった為、話を聞く猟兵達は殆どピンと来ていないのだが当のグリモア猟兵は我関せず。
 スマイルをキープしたまま小首を傾げて、謎の敵としか表現しようの無い敵についての印象をどうにか絞りだそうと彼女なりに懸命に頑張ってはいるらしいのだが……。
「えーと。前の銀河帝国攻略戦で倒した、ドクター・オロチだっけ? どこがってワケでも無いんだけどなんとなーくアイツに似た匂いみたいなのはちょっぴり感じるかも~……って、アハハ、ゴメン! やっぱりよくわかんないかな!」
 頑張り、即時終了。

 ともかく黒幕っぽいムーブがやたら鼻につくとはいえ『ドラゴンテイマー』打倒も彼の現在地の攻略も、何ら戦争の勝利には寄与しない。何度もしつこくそう前置いた上で。
「……いまだかつて無い大敵。とっても嫌な嫌な存在。キミ達を送り込まない方がいいのかもってちょっぴり迷いもしてみたんだ、これでも」
 それでも、もしも、覚悟あるのならば。
「――アイツを、殺して」
 何ら裏付けも確証もない、予知どころか予感未満の焦燥を強き嘆願へと変えたグリモア猟兵は深くその頭を下げるのであった。


銀條彦
 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「バトルオブフラワーズ」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。

 いよいよ謎のオブリビオン『ドラゴンテイマー』との戦いです。
 同時に攻略可能となった、オブリビオン・フォーミュラ『ドン・フリーダム』さえ倒せばこの戦争は勝利の内に終結する為、戦略的には無視しても構わない敵です。
 シナリオ内では以下の特殊ルールが適用されます。

●特殊ルールについて
 敵は必ず先制攻撃します。敵は、猟兵が使用するユーベルコードと同じ能力値(POW、SPD、WIZ)のユーベルコードを、猟兵より先に使用してきます。
 この先制攻撃に対抗する方法をプレイングに書かず、自分の攻撃だけを行おうとした場合は、必ず先制攻撃で撃破され、ダメージを与えることもできません。

 この他に特殊なルールは存在しません。
 しかし『ドラゴンテイマー』は『黒竜ダイウルゴス』を召喚し操ることのできる、これまでの誰よりも強敵であると予知されています。

 覚悟を。そして、御武運を。
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第1章 ボス戦 『ドラゴンテイマー』

POW   :    クリムゾンキャリバー
【赤き剣の右腕】が命中した対象に対し、高威力高命中の【黒竜ダイウルゴスの群れ】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    ギガンティックダイウルゴス
レベル×1体の、【逆鱗】に1と刻印された戦闘用【大型ダイウルゴス】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
WIZ   :    文明侵略(フロンティア・ライン)
自身からレベルm半径内の無機物を【黒竜ダイウルゴスの群れ】に変換し、操作する。解除すると無機物は元に戻る。

イラスト:ハルヨリ

👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

尭海・有珠
今この瞬間の為の勝利ではなく
大局を、未来を見据えての必要な行動だろう
野放しにしちゃマズイって奴だろうさ

「何万年待とうが、お前にやれるグリモアなどないんだよな」
黒竜の群れの動きから多少なりとも行動の癖を予測
剣と杖を用い、2回攻撃の要領で敵の攻撃を受け流し
外套で多少なりとも捌き威力を削ぐ
頭部他への致命傷だけは避け、激痛耐性で意識が飛ばずに済めば良い

敵の攻撃の統制が微かでも乱れた瞬間に攻撃に転じる
氷の剥片の戯を、右腕目掛け、
腕のすぐその近くに生み出した薄刃で集中攻撃

此処で未だ命を手放すわけにはいかないが
ドラゴンの体内に潜り込んで来いってのと現状どっちがマシかなんて
止められるんならどっちでも構わないさ


アストリーゼ・レギンレイヴ
地獄の瘴気にも似た、うすら寒い気配
……不気味な相手ね

だけれど退く理由はない
――オブリビオンは、殺すわ

召喚される黒竜の群
体が大きい分、食らえば一撃でしょう
だけれど身体が大きいと云うことは
群で殺到すれば、互いの巨体が互いを妨害しあう筈

構えた武器の前面に、オーラ防御を盾のように展開させ
武器で受けて流し、衝撃を少しでも殺しながら
最初の一体の攻撃を受け
続く群の動きをよく見て、その間隙へと身を滑り込ませる

《漆黒の夜》を展開しながら
足場と竜の背を利用し敵へ肉薄
長くは持たないでしょう、辿り着くための最短を往き
振り下ろされる刃と交差するように
カウンターで一撃を入れる

……生憎、痛みには慣れているの
怯んだりしないわ



(退く理由はない――オブリビオンは、殺すわ)
 アストリーゼ・レギンレイヴ(闇よりなお黒き夜・f00658)は太陽よりもなお赤き其の剣刃を冷ややかに睨めた。
(大局を見据えればこれも必要な行動……野放しにしちゃマズイって奴だろう)
 尭海・有珠(殲蒼・f06286)は其のあらざるものを目の当たりにし必ず止めねばとの想いをよりいっそう強くする。

 花敷き詰められた死地への路上。
 時をほぼ同じくして転移しその場で合流した、ダンピールの騎士たる2人の乙女達の前には今、佇む男が、独り――『ドラゴンテイマー』である。
 精悍と言ってまず差し支え無いであろうその男から発せられる『力』はあまりに圧倒的で異質すぎて……何処か地獄の瘴気を想わせるその不気味さにうすら寒さを覚えながらも、アストリーゼは敵ユーベルコードの熾りを警戒する冷静を備えて対峙する。

「何万年待とうが、お前にやれるグリモアなどないんだよな」
「ふむ、 ……ああ、なるほど」
 まるで全てを見透かすような暗晦たる眼差しを有珠へと落としたその男は何やら一方的に合点がいった様子で、悠然と、首を横に振った。
「私が求めるものは『それ』では無い。そして――お前達の識るグリモアが、グリモアの全てでは無い」
 何、と、思わず問い返したくなる衝動を内心で堪えながら。
 海の宝珠抱く杖を片手で高く掲げた有珠は、更にもう一振り、仄暗き黒藍の剣を逆手に翳して二刀剣術を思わせる磐石の構えで守備を固める。
 アストリーゼもまた『月闇』を……身の丈ほどの巨大剣を軽々と握り、重ねて、その前面へと凝縮させたオーラの盾を展開させていた。
 両者ともにまずはその卓越した騎士としての戦技を最大限に揮うことで来たる敵の初撃を受け流し、いなし、耐え切る心算であるらしかった。
 そして、両者ともに警戒した『初撃』とは襲い掛かる黒竜ダイウルゴスの群れであり『文明侵略(フロンティア・ライン)』である。
 無機物を竜化させて操るという、予知によって判明している敵能力の中でも最も特異と呼べるそれ。
 花に埋め尽くされた見た目とは裏腹に都市リゾート惑星の中枢近くであるこの戦場は、人工物のみで構成されている可能性が極めて高くそっくりそのままドラゴンの巣と化してもおかしくは無い。
 それどころか、如何なる不思議によってか真空の宇宙とはならず大気圏のままのここでなら空気中の窒素や酸素といった気体すらドラゴンテイマーの手駒たりえる可能性もゼロでは無いのだから猟兵達は一瞬たりと気を抜く訳にはいかなかった。

「はじまりたるダイウルゴスよ、『侵略せよ』」
 ――白く静かな其の漣は突然に湧き起こり、瞬く間に拡がって辺りを満たした。

「これは」
「……そう来たか」
 まずは極めて魔法触媒に近い特性を備えるが故に有珠が翳した『海昏』への浸透が始まり、アストリーゼの『月闇』に対しても……いったんは堅きオーラが防波堤の役割を果たすも全方位から伝播する漣全てを食い止めるには至らず歪み捩じれだし……遅れての浸透が開始される。
 無数の黒き竜産み落とす役割を終えると同時に白き波は一斉に消失し、かわって、より激しく辺りを揺るがしたのはダイウルゴス達の咆哮。
 不幸中の幸いというべきか、その頭数は合わせて十ほどで、想定されていた規模よりも大幅に少ない。
 ドラゴンテイマーが自戦力増強以上に敵兵装強奪を重視してそのユーベルコードを運用したからであろうが、それだけではない。
 二振りの剣はどちらも完全には強奪されてはおらずそれぞれ刃の一部を欠いたのみ。
 侵略下、オーラ盾が有効だったのを見て取ったアストリーゼは咄嗟にオーラの護りを剣そのものへと移して漲らせ、有珠もまた無詠唱からの抗呪詛を展開する事で辛うじて被害を最低限に抑える事に成功していたのだ。
「良い反応だ」
 予知情報あって尚ほぼ初見殺しの反則技に対して素早く対応してみせた猟兵達を称讃しつつ、竜使いの男は容赦無く二の矢三の矢と畳み掛けてくる。

「この場の全ての黒竜ダイウルゴスに命じる……『蹂躙せよ』」
 号令とともに翼ある傀儡は次々に飛び立った。
 アストリーゼと有珠だけをめがけて押し寄せる黒き爪牙の進軍に対して、彼女達は微塵も怯む様子を見せない。
「体が大きい分、食らえば一撃でしょう。だけれど身体が大きいと云うことは――」
 躊躇無く『夜茨』振るい抉り啜りあげて先頭の1体を倒す頃には。
 緻密な指揮だった統制を受けない群れなど各個撃破の的でしか無いと、アストリーゼの金紅妖瞳は怜悧に見切っていた。
 「皮肉だな、手に取るようにお前達の行動の癖が解る……そりゃあ当然か」
 長き黒髪が波打ち、己が剣の性質わずかに残すドラゴンの攻撃を残された杖で受け流し、昏き夜色の外套を翻して捌き……その破壊力は有珠の戦い振りの前に完全に翻弄され削がれてゆく。

 敢然と黒竜の群れを踏みつけ、2人の騎士達は遂に、傍観したまま動こうとしないドラゴンテイマーへと肉薄する。
「……生憎、痛みには慣れているの」
「此処で未だ命を手放すわけにはいかないが――ドラゴンの体内に潜り込んで来いってのと現状どっちがマシかなんて、止められるんならどっちでも構わないさ」
 『暗黒』纏いダンピールたる神殺しの力を増幅させたアストリーゼは最短距離での吶喊からのカウンターを狙い、大敵たる男の周囲に百をゆうに超える氷刃の剥片の戯(プリュイ・フォリー)を出現させた有珠は赤き剣宿す右腕潰しを狙い……だが。

 迎え撃つは――無情なる『赤き剣の腕(クリムゾンキャリバー)』の一閃。

「無駄、と言いたい所だったが……」
 ただの一振りで猟兵を圧倒して叩き伏せた竜使いだったが自身も無傷とはいかず右と左から一対、翼が切り落とされていたのだ。
 ドラゴンテイマーと呼ばれる男は謎めいた微笑を浮かべた後、踵を返して、次なる戦いの場へと向かいそのままその場から立ち去った。
 ――激戦の余波いまだ冷めやらず花びら舞い続ける戦場には、解放され、本来の姿取り戻した剣刃の破片たちが、ゆっくりと降り注ぐのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

刑部・理寿乃
【心情】
もう終わった。終わってしまったのに……まだ望むのですか、力を(意味深)

【戦闘】
まず【生命力吸収】と【武器改造】を使い、スクレップに自らの生命力を吸収させてそのエネルギーを纏わせます。
【武器受け】で先制を防ぐと同時に纏わせたエネルギーを【属性攻撃】で光に変換させ、相手を【目潰し】させます。
すぐスクレップを手放し、相手の背後に【ダッシュ】で回り込んで佩剣していたラハットハへレヴハミトゥハペヘットを居合の要領でユーベルコード発動。黒竜ごとドラゴンテイマーを斬ります。


ヴィクトル・サリヴァン
どう考えても危ない何かだよね。
傍観者とか黒幕気取りなのはちょっとイラっとするし一泡吹かせてやらないとね。
…どこまで通じるかは分からないけど。

可能なら他の猟兵と連携。
高速詠唱からの全力の水の魔法で俺とテイマー周囲一帯の空間を球型か箱型の水で満たし形を固定。
水の抵抗とか大きそうじゃない?あの羽。
まあ目的は動きを止めることじゃなくて俺自身が動き易くするため。
海程に広くなくても水中ならこちらの得意分野、泳いで紅剣を躱し逆に銛を集中し投擲。
そこからUCを発動し周りの水も触媒に特大の水の鯱を作って相手に喰らいつかせよう。
…これだけ派手にやれば注意は惹けるはず。
頼んだよ、他の誰かさん。

※アドリブ絡み等お任せ



「どう考えても危ない何かだよね。いかにも傍観者とか黒幕気取りなのはちょっとイラっとするし一泡吹かせてやらないとね」
 出陣するにあたって、ヴィクトル・サリヴァン(星見の術士・f06661)がおっとりと零したその手厳しくも勇ましい意見に対して頷く他猟兵も多かった。
(……どこまで通じるかは分からないけど)
 そして今、彼はよりいっそうの深刻さを増して黒幕気取りのその男、ドラゴンテイマーと対峙する事となる。
 四翼となった翼が一打ちされると同時、衝撃波すら発する加速とともに振るわれた赤き刃は、黒竜召喚を待つまでも無く一刀のもと斬り裂かんばかりの剣速でキマイラの猟兵へと迫る。

 ――キィ……ン。

「もう終わった。終わってしまったのに……」
 その斬撃を、真っ向、受け止めたのも竜の剣。
 手にした赤錆の剣『スクレップ』と哀しげな刑部・理寿乃(暴竜の血脈・f05426)の声が大敵たる存在へと向けられる。
 その響きには猟兵が過去より彷徨い来たるオブリビオンへ掛ける言葉以上の『意味』が有った、ような無かったような。まあ彼女の心は彼女のみぞ知る、である。
 ふんわりと伸びた尻尾を始めとして全体的にぽわぽわとした印象の彼女の愛らしさは、いかにもキマイラフューチャーらしいと映るが歴とした純血種のドラゴニアンである。
「まだ望むのですか、力を」
 半ば朽ちている様にしか見えぬ『スクレップ』の剣刃には使い手の生命力が一時的に分け与えられており、刃毀れ一つ生じること無い名剣と化して赤き剣腕と渡りあっていた。
 だがそれは同時に、分け与えた側である使い手は常より弱体状態へ陥る事を意味する。
「そのような戦い方、長くは保つまい」
「……それ、なら……すぐに終わらせてみせるのです、今度こそ」
 しばし続けられた鍔迫り合いから一転。
 大きく後ろへと飛び退いたドラゴンテイマーが大上段に剣を振りかぶれば、赤き刃鳴り高らかに黒竜の進軍が再び始まる。
「命よ、瞬きなさい!」
 一歩も譲らぬ桃髪の獣竜が詠うように命じれば宿る『命』は『光』へと換わり、見るものの視界を灼く程の輝きを発した。

 竜の剣戟交わされる間、ヴィクトルとてただ静観していた訳では無い。
 彼もまた術士として、魂絞り尽くす全力魔法によって己とドラゴンテイマーを取り囲む空間一帯すべてを作り出した水で満たそうとしていた。
 水棲キマイラとして自らが一方的な優位を発揮できる戦場へ敵を引き摺りこめばよいという豪快な作戦中なのである。
(だって、水の抵抗とか大きそうじゃない? あの羽)
 だが――ユーベルコードならぬ魔力で、全くのゼロから、それ程の大規模術式を完成へと到らせる為にはより多くの時間を費やす必要があった。
「はぅ……ヴィクトルさん、これ、冷たいです~」
 何よりその水量が増す程に近接戦で奮闘する理寿乃をも濡らし巻き込みつつあった。
「あーごめん……あんまり連携向きの戦法じゃなかったかもだね」
 だが一方で、ヴィクトルの水の魔法は黒竜の群れから理寿乃を守る移動防壁として支援にも併用されてゆく。

 ――ひとり、黒竜ダイウルゴスの包囲の只中へと取り残された理寿乃の手の中から輝きを失った『スクレップ』が取り落とされてしまう。
 限界か、と、低く小さく呟いたドラゴンテイマーがトドメにと選んだユーベルコードは先よりもいっそう大きな羽撃きから悠然と放たれた『クリムゾンキャリバー』。
「させない――」
 花上の水中戦を始めるより前に、ヴィクトルは、それら大量の水を『大海より来たれり(エモノハココダ)』の触媒に使い果たしてしまう事となる。
 形成された透明な巨大鯱は、術士にかわって宙を泳ぎ巨体をしならせ、武器を失った仲間に代わって敢然と、赤剣の斬軌めがけてとび跳ねた。
 強烈なダメージを肩代わりした鯱は急速にその形を失い、降り注ぐ土砂振りとなって花の大地へと還る。が、その上に立っていた筈の理寿乃の姿が、忽然と消えていた。
「これで……!」
 ダイウルゴス越し、確かに捉えたドラゴンテイマーの背後めがけて抜き放たれた新たな一振り。佩剣していた黒剣『ラハットハへレヴハミトゥハペヘット』とともに理寿乃は『嵐塵滅砕斬(ドゥーラオーラクラディアクオ)』を絶唱する。
 暴れ狂う嵐の如き衝撃波が竜使いもろとも敵群全てを巻き込んで此処に放たれた――が。
 盾となった多くの黒竜と翳された赤剣による守備を穿ち、竜使い本体へと、その威力を浴びせる事は叶わなかった。
「……そ、んな……」
「悔しいけど……他の猟兵さん達に後を託そう」
 理寿乃も自分も持てる手札はもう全て使い切り、消耗し切った状態で後が無い。
 そう判断したヴィクトルが理寿乃を促して花の道を引き返してゆく。
 背後から感じた新たな転送の気配。追撃は、無かった。

(やれるだけはやった……頼んだよ、誰かさん)

苦戦 🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

エリス・ガーデナー
グリモアとか何かを盗みたがるヒゲはコソ泥ね!
「下賤な火事場泥棒め!しかも誰かのお使いとは惨めね!」

煽ったらまず先制攻撃対処!
敵の剣を受けると見せかけ、直前でピラーを槍投げ
剣に当てて囮にするの
念動力も籠め剣を反らし威力弱め、ピラーごと斬られるのを防止

そして反撃開始!
『可憐なる息吹』を纏い竜の群れを引き離し
ダッシュ&ジャンプ&スライディングで広く翔び回り
竜の群れを敵の死角に使い、飛び超えて直接攻撃!
剣と翼による迎撃を防ぐ為、直前で急上昇。敵頭上から靴を撃ち下ろす!
1発目は左の靴を振り飛ばして囮に、
2発目(2回攻撃)は更に接近して右足で踵落とし!良い音響かせてあげる!
「可愛さは強さなのよ、竜使い!」


戒道・蔵乃祐
グリモアを知る六翼の魔人
貴方はキマイラ?


禍々しき複翼は、汎ゆる生物に一致する特徴は皆無
怪人とも違う部外者が、この世界の滅びに加担し何を得ようというのか

幾度地獄から甦ろうとも、その邪な野望が成就する事は無い!
其は生命にあらざるものオブリビオン
骸の海に還りなさい!!


剣の初撃に見切りで対応
咄嗟の一撃と先制攻撃で大連珠を投擲
命中対象を数珠に逸らして直撃を回避

火炎・氷結・電撃・呪詛・毒耐性のオーラ防御を展開し続く黒竜と毒煙の複合攻撃を防ぐ
踏みつけで花を踏み締め、気合いと激痛耐性で意識を保ち
群れに逆らう怪力任せの猛ダッシュ

殺気を乗せた残像とフェイントで白刃を掻い潜り
灰燼煉獄衝で破魔の属性攻撃を爆発させる



 雨上がりの花園にも似たその戦場へ降り立ったのは、1体の人形であった。
 魔導蒸気文明の粋を集めた精緻、知性備える稀少な人型機械――ミレナリィドール。
 萌ゆる桃花にも劣らぬ色の髪はやや短めに切り揃えられ、菫色の瞳にはヒト以上に人間らしさ……否、ある一定時期にのみに咲く強く儚き少女性すら宿していた。
 不敵な笑みを浮かべ、剛直な柱とも見まごう大振りな白銀突撃槍をまるで片手剣の如く軽々携えて降り立った少女人形エリス・ガーデナー(不器用なニンギョウ・f01337)。
 討つべしと告げられていた大敵の姿を其処に認めると、ほんのり桜色のその唇がためらいがちに開かれる……。

「そこのヒゲ! グリモアとかあと何か文明? とか、とにかくいろいろ盗みたがる下賤な火事場泥棒め! しかも誰かのお使いとは惨めね!」
「――は?」
 唖然と聞き返したのは(残念ながら)そこのヒゲことドラゴンテイマーその人ではなく即席の共闘相手として同行する戒道・蔵乃祐(荒法師・f09466)である。
 こちらはエリスとは対照的な荒々しき形相の偉丈夫、人間の破戒僧たる猟兵である。
「そのくせ痴女には逆に何かあげたそうじゃない! さてはおっぱい目当てなのね、このムッツリヒゲ!」
 というか……ごめん、この娘全然ためらってなかった。
 ムッツリヒゲことドラゴンテイマーをビシリと指差しイケイケのドヤ顔でとにかく初手から煽る煽るそりゃもう煽りまくりなのである。が、さっぱりと暖簾に槍刺し。
「グリモアを知る六翼の魔人……貴方は、キマイラ? 怪人とも違う部外者がこの世界の滅びに加担し何を得ようというのか??」
 便乗とも雰囲気チェンジともつかぬ流れの中で徐々に語気を荒げて問い掛ける蔵乃祐。
 やはりドラゴンテイマーからの返答は、沈黙。
「あ、いまは猟兵の誰かにぶった切られて四翼ね! だから答えなくいいなんてヘリクツは通用させないわ!」
 ちがうそうじゃない。たぶん。単に答える必要性をいっさい感じていないのだろう。
「それじゃ、さあ、コソ泥! ええとほら、そろそろ、ねっ?」
「落ち着いて」
 スカした黒幕ヅラを煽って挑発して先制攻撃のタイミングを予測可能な範囲内にコントロールして……という思惑のもとここまで一連のエリスの言動は吐かれ続けていたらしいのだが、敵との温度差というか、冷ややかさすら感じない完全放置の気配プンプンっぷりにさしもの彼女もちょっぴりだんだん不安になって来たらしい。

「何故怪人らにアヴェスタを与えたのか、私が持ち帰るものとは何か。 ――『私』とは何か。いずれ、おのずと知る事となるだろう」

 ……生き残れていればの話だが。
 底無しの虚無を連想させる不吉な声がそう付け加えたのと紫霧の向こうから予備動作無しでユーベルコード『クリムゾンキャリバー』の初撃が繰り出されたのがほぼ同時。
「そうこなくっちゃ!」
 唐突に切られた戦端にエリスは赤い靴鳴らしその横の蔵乃祐も己が全身の筋肉を躍動させ、たちまちに、彼女達の心身は戦う為だけのそれへと切り替わる。
 赤き切っ先が貫こうとした標的はエリスの心臓部だったが、殺気乗せた微かな風切り音から剣筋をほぼ見切った荒法師が横合いから防御反応を見せる。
「――フンンッ!」
 野太い掛け声から狙い済ました咄嗟の投擲が飛び出したのだ。
 固く握られた大連珠がじゃらりと宙を舞い、腕剣へとまっしぐらに投げつけられた。
 『クリムゾンキャリバー』がマーキングの様なものを用いた連続追尾攻撃だとするならばこれでこの後召喚される黒竜ダイウルゴスの群れはエリスではなく、命中対象たるこの大連珠へと無事その標的を移せただろう。彼がそう考えたのは無理からぬこと。
「いいえ、油断こそ大敵よ!」
 赤き刺突攻撃は大連珠もろとも荒法師の体をも貫き、次いで召喚される黒竜ダイウルゴスの群れによる集中攻撃に繋げようとするかもしれない。
 そう危惧した人形はすかさず大連珠に念動力を籠めてその強度を底上げさせ、今度こそ赤き切っ先の行方を妨げて逸らす。
「アタシは、可愛くなればなる程、強く速く、世界を駆ける!」
 反撃の刻は来たと駆け出した少女の背には、眼には見えない、けれど何処までも甘やかで『少女』であるものだけが確かに得られる蠱惑の『翼』が宿り花の世界を翔ける――。
 顕現した黒竜の列を、時にはドラゴンテイマーからその姿晦ます死角へと巧みに利用しながら天翔けるエリスとは、やはり対照的に。
「幾度地獄から甦ろうとも、その邪な野望が成就する事は無い!」
 花の大地踏み締めた蔵乃祐は、巌をも凌ごうかという堅さ頑なさでダイウルゴスの激流に逆らい、気力のみで痛みに耐えつつ幾重幾種もの防御壁を使い潰すようにしながら強引に駆け抜け――遂に、天と地からの避けがたき挟撃へと結実する。

「可愛さは強さなのよ、竜使い!」
「其は生命にあらざるものオブリビオン――骸の海に還りなさい!!」

 思えば……何処までも対照的でありながら、こと戦闘面に限ればふたりが選ぶ選択肢は何処か似通っていた。
 もし蔵乃祐が大連珠を投げなくとも元々エリスは愛槍で同じ作戦を取るつもりだった。
 そして今。
 翼有る大敵を追い落とす為の技は、共に、巧みなフェイント織り交ぜた連続攻撃。
 音高く赤い靴の両踵鳴らしながらの踵落としと。
 灰燼拳に破魔の発勁重ねる灰燼煉獄衝(エクステンド・オーバードライブ)と。
 人形少女の魔性と『破壊』僧の聖性――その鬩ぎ合いと相乗効果はその爆発的な威力をもって、剣なる右腕を、完全に吹き飛ばしてのけたのだ。
 だがその代償は、深刻ではないが、大きかった。
 赤き剣穿つ程の破壊力に花の足場が耐え切れず完全崩落を始めたのだ。
「って、あれ、これ足場が崩れたら僕……――っ!!!!?」
「そりゃあんなに全力で踏み締めてたら……でも任せて! 可愛いアタシがバビューンとお助けよっ!」
 待てないしいいから早くとの声を置き去りにそれっきり、急落下はじめた蔵乃祐の姿は花の向こうへと消えてゆく。

「……莫迦げた、力だ――だが、」
 たのしませてもらったと大いに笑った男もまた翼飛行によって落下を免れていた。
 だが再び別の花の上へと降り立った彼は、特にそこで何をするでも無い。
 また独り、佇むばかり。
 とめどなく鮮血零し続ける己の右肩にさえ、さして興味が無いままに。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

クロト・ラトキエ
竜使い、なんてより、いっそ地獄の主なんて方が似合いそうですが。
あの手を、グリモアへ届かせてはならない。
勘ですが。

数ある内は大型竜の陰を利用し回避と同士討ちを狙い、
合体するなら“見切り”に全力。
目指すは将の男。
移動、回避。至って単調。故に無傷など望めぬし、
届いても待ち受けられそうな。
…それは唯、一手の為。
己のとれ得る手、敵の見出す最適解、可能性を絞りに絞り、

UC伍式。
一瞬の隙でいい。
あの剣に繋がる肉体を、2回攻撃も惜しみなく、
操る鋼糸で断ち切れたなら。

勝機の見えぬ戦いだろうと…見えないだけ。
零じゃないなら、賭けられる。
己に。仲間に。…その先に。
途方も無い、けれど夢見て紡ぎ出す物語を
――希望と云う


パウル・ブラフマン
【WIZ】
仲良しの先輩、スナさん(f03519)と参戦するよ!

▼先制攻撃対策
愛機Glanzにスナさんと共に【騎乗】。
自慢の【運転】&【操縦】テクで
ダイウルゴスの群れを翻弄しちゃうぞ☆
【地形の利用】を念頭に置きながら
FMXの要領で猛【ダッシュ】キメて【見切り】を試みるね。

▼反転攻勢
大群を逆手に取り、Glanzを迷彩モードにチェンジ♪
視認され辛い状態で
死角へ回り込み、スナさんと連携しながらUCを発動!

流れ込んでくる濁った思念に怯まずKrakeを展開。
借り受けたこの力、ノシつけてお返ししてやんよ。
この【捨て身の一撃】に賭けましょう、スナさん!
派手にカマすぜ…【一斉発射】ァ!!

※絡み&アドリブ大歓迎!


スナッチ・ベット
【WIZ】
タコくん(パウル/f04694)と
Glanzの後部座席に乗せてもらって
無数にいる敵の中を一気に突き抜けるよ

僕は【かばう】と【オーラ防御】を併せて
追い縋る敵からタコくんとGlanzをガード
やることははただひとつ
ベストなタイミングでタコくんにUCを撃たせること
たまにはセンパイらしいとこ見せないとね
こんな時くらい頼ってよ

【激痛耐性】でどうにか耐え抜いたら
フォックスファイアで【カウンター】
自分達を起点に花火のように弾けさせて敵を撥ね退けるよ
今だよタコくん!ガツンとやっちゃって!

さよなら、ドラゴンテイマー
過去のあなたを覚えている人は今の時間にいるのかな

はー、つかれた
タコくん、部屋まで送ってよー


三寸釘・スズロク
ドクター・オロチと近しいこの感じ
何なんだろうなァあいつら
今回も顔を拝みに来てみたワケだけど
正直レベル違うわ…帰れるかなコレ?

黒竜が迫る間に『エレクトロワイヤー』スイッチオン
『バーゲスト』起動…!


黒竜の攻撃はまず人形に庇わせる
鋼の身体とは言えそう長くは持たねえな
全壊させられる前に【次元Ωから覗く瞳】
…これは『スズロク』のUCだが偶には『俺』も使ってみるか

竜共を演算で避けながらテイマー本体に接近して
バーゲストの鉤爪で攻撃…と見せかけて[だまし討ち]
[クイックドロウ]『Fanatic』、全弾連射でブチ込んでやるよ!

テメェにも欲しいモノがあるんだったか?
あのヘンな機械叩いて出て来るようになればイイな



●0泊弾丸ドラゴン満喫ツアー!
「――はじまりたるダイウルゴスよ、『遍く侵略せよ』」

 佇む男の一声とともに拡散し奔流する『文明侵略(フロンティア・ライン)』。
 先とは異なりその白波は男を取り巻く『システム・フラワーズ』そのものの喰える限りを喰らい尽くして次々に黒竜を産み落としていった。
 ――漣が完全に消え失せた頃にはすっかりと視界を占めるは雲霞の如き黒竜ダイウルゴスたちの大群。その全てを創り、従え、操ってみせる男の威容は翼の一部と赤剣が損なわれてなおドラゴンテイマーの名に恥じぬものがあった。
 だが、いまや恐るべき竜の宙域と化したこの戦場へ――バカはバイクでやって来る。

「ヤバいスナさん、地形も利用してキレッキレの走りを見せちゃうつもりだったのに地形そのものが失くなったっ!」
「タコくんタコくん。地形が竜になったという事はつまり竜という地形なんだよあれは」
「な、なるほど~たしかにっ!!」

 手負いのドラゴンテイマー追撃に駆けつけた猟兵2人は、宇宙バイクでタンデム走行中目指す標的を発見してただちに突撃を敢行した途端に物理的に進路が全ロストするというピンチに見舞われていた。
 ハンドル握る『タコくん』こと蛸のキマイラ、パウル・ブラフマン(Devilfish・f04694)はギャーギャーと大騒ぎだが騒ぐべきポイントが若干ズレている。
 そしてそれに答えた後部座席の『スナさん』ことスナッチ・ベット(Vulpes et uva・f03519)は彼の先輩にあたるのだがいかにも冷静沈着そうに見える妖狐なくせにブレーキ役どころか無表情なまんまおもっきしアクセル吹かしに来た。
 かくて嘶くように大きくエンジン音が鳴り響き――ノンストッパブルでエクストリームな白銀宇宙バイク『Glanz』の独壇場が始まったのである。

 そのツーリングは悪路も悪路。
 新たに登場した『足場』は堅いし起伏に富みすぎだし動くし羽ばたくし挙句の果ては、文字通り、こっちに牙を剥いてくる。
「自慢のテクとボディでダイウスゴスを翻弄しちゃうぞ☆」
 ちなみに自慢のマシンのボディのことなのであしからず。
 重力下もなんのその、迷彩モードにある『Glanz』の白銀ボディは悪墜ちっぽいカラーリングへ見事に変身果たしてフル活用中なのである。
 むろんそんなムチャもヤンチャも、スナッチのオーラ防御による臨機応変な防御支援があればこその話。
「たまにはセンパイらしいとこ見せないとね。ま、こんな時くらい頼ってよ」
 黒竜から黒竜への最後の跳躍をダブルバックフリップでキメた猟兵達は、遂に、翼広げて待ち構えるドラゴンテイマーの高みにへと踊り出る――。

「コイツに賭けましょう、スナさん!」
 ハンドルを握るパウルの体を中心に大きく触手が広げられ、その先の固定砲台が一斉に飛翔する竜使いへと向けられる。
 ――ところで。
 パウルには『Sympathy for the Devil(アクマヲアワレムウタ)』という、防御したユーベルコードを1度かぎり拝借できるという使い方次第では強力無比な切り札となり得るユーベルコードがあったのだが、先陣を切った味方猟兵によって『文明侵略(フロンティア・ライン)』の情報を伝えられた彼はドラゴンテイマーに対しての使用を断念していた。
 『Glanz』をドラゴンにされて奪われる危険は冒せなかったからである。
 スナッチのオーラ防御でパウル以外を完全に覆った状態のままひと浴びしに突っ込むという手も一度は考えたが、そこまでカバー範囲が広がるとそもそも防御として有効なままなのかどうかも確証が持てなくなってくる。

「……そのささやかな玩具で何が出来ると?」
「借り受けたこの力、ノシつけてお返ししてやんよ」
 確かにパウロ達はドラゴンテイマーに対して『Sympathy for the Devil』を使う策『は』断念した……だが。
 彼らは此処へ辿り着くまでに、多くはなかったがそれでも迷彩の視認撹乱を越えて襲いかかる黒竜との交戦を乗り越えてきているのだ。
 狐火を火群から一気に集約させた後ひときわ激しく炸裂させたスナッチからの火力支援は同時に攻撃合図である。

「今だよタコくん! ガツンとやっちゃって!」
「派手にカマすぜ……一斉発射ァ!!」

 そう――黒竜ダイウルゴスの砲弾ならばここ(Krake)にある。

「――――――ッッ!」

 襲い掛かる砲撃を脅威と感じたドラゴンテイマーは咄嗟にその翼で防御姿勢を取った。
 致命傷こそ回避されてしまったが……四枚の竜使いの翼を四発の竜の砲弾が打ち破る。
 ドラゴンテイマーの肉体はさらにその鮮血の面積を増し、錐揉み状態でかつて花の戦場であった場所に横たわる虚空へと落ちてゆく……。

「つかれたから部屋まで送ってーと甘えたいところだったけど……もう一仕事みたいだね、タコくん」

●斯く生き、斯く死にて……
 剣のみならずいまや六翼すべてを喪った竜使いはまた別の花の足場にと着地していた。
 その飛行能力が本当に翼だけに由来するものだったのか否かは判断つかぬが少なくとも今の時点で彼は飛ぶつもりが無い様だ。
「――ドン・フリーダムも逝ったか」
「テメェも今すぐ後追わせてやるぜっ!」
 感情を一切読ませぬ眼差しで空を見上げたドラゴンテイマーの首筋を狙ったのは機械人形『バーゲスト』の鉤爪。
 ドラゴンテイマーが煩わしげに残った左腕で無造作に払いのけると同時にユーベルコード『ギガンティックダイウルゴス』が発動される。
 数え切れぬほどの戦闘用大型ダイウルゴス達が召喚され、本体たる人形遣いの猟兵さらにもう1人の姿を炙り出し、極めて統制の取れた隊列行動をもって彼らを取り囲んだ。
 2名共に糸使いであった為どちらが人形遣いかは判断しかねたがもはや些細な事である。どちらも始末すれば済むのだから。

「……テメェにも欲しいモノがあるんだったか?」
 窮地にも余裕を失わず、むしろそれを楽しんでいるふしのある三寸釘・スズロク(ギミック・f03285)の中身は現在『スズロク』では無い。
 多重人格者である彼は『人形』達に幾つもの別人格を移植することで己を保っており、『バーゲスト』はその1つであった。
「ハハ、だったらあのヘンな機械叩いて出て来るようになればイイな」
「願望具現、か」
 一方的に話しかけたつもりだったが思いもかけずドラゴンテイマー返ってきた声にいっそうゲラゲラと笑い出す『バーゲスト』。
「それで叶う程度のものがお望みでしたらあなたはもっと必死にあの怪人大首領を守ろうとしていたのでしょうけれどね」
 花の戦場を駆け抜け、自身に向けられた集中砲火を別の大型黒竜1体を身代わりにする事で切り抜けたクロト・ラトキエ(TTX・f00472)は、その足は止めぬまま、ドラゴンテイマーと呼ばれる男へと視線を向けその真意を探ろうとした。
 だが、そこからはあそこまで満身創痍に追い詰められてなお何かを秘めた不気味さ以外は何も感じ取れはしなかった。
(竜使い、なんてより、いっそ地獄の主なんて方が似合いそうですが――あの手を、グリモアへ届かせてはならない)

「もういい……我が下で一つとなれ、ダイウルゴス達よ」
 猟兵が2、既に半壊しつつある機械人形が1。
 それが今この戦場における敵戦力の全てだと確信しらしいドラゴンテイマーはダイウルゴス達に合体と早期殲滅を命じる。
 遮蔽として足場として縦横に敵列を活用していた戦法が封じられた形となった為か、俄かにクロトの動きから精彩が失われ始めてゆく。
 一方で『スズロク』ならぬスズロクはといえばこちらも現況芳しくはなかった。
「鋼の身体とは言えそう長くは持たねえな……」

 ――ドクター・オロチと近しいこの感じ、何なんだろうなァあいつら。今回も顔を拝みに来てみたワケだけど正直レベル違うわ……帰れるかなコレ?

 そう零しながらエレクトロワイヤーを括り全てをこっちに押し付けてきたのはあいつなのだからあいつだって少しは力を貸すべきだ。
 ふとそう考えた『バーゲスト』は、自らの本体を完全破壊される前にと、己の中にある『スズロク』をまるで道具箱を漁るように掻き回し――その中に置かれた『とっておき』を探りあてる。

 合体によって巨大さと戦闘力を飛躍的に膨れ上がらせたダイウルゴスがその背にドラゴンテイマーを乗せた後、まず狙ったのはクロトだった。
 消耗か何らかの反動によってか今の彼は先よりも輪をかけて鈍重で単調。
 おそらくはただの一撃で処理は終わる。
 そう考えたのはダイウルゴスだったかドラゴンテイマーだったのか、黒き巨躯は恐るべき質量を伴う降下突撃をクロトめがけて実行する。
 そして『人形』は、どちらも、クロトの為には動こうとはしなかった。
 その無謀は唯、一手の為。
 己のとれ得る手、敵の見出す最適解、可能性を絞りに絞り……、

「――その宿命に『剪絶』を」
 神速の『伍式(フュンフ)』がもたらしたのは勝機。
 か細き『正解』の糸だけを瞬時に選びとり掴み取り己のものとしたかのような奇跡的な軌を描いてクロトは黒き巨竜の爪を回避して将たる男へと迫る。

 そして時を同じくして戦場には、竜使いの記憶にも真新しい砲撃音が轟き始める。
 遥か隔てた戦場から全速力の宇宙バイクで駆けつけて来たパウルとスナッチが集中砲火で合体ダイウルゴスを抑えてくれているのだ。

「演算完了。あとはコイツの身体が想定通り動くだけ、ってなぁ!」
 『次元Ωから覗く瞳(チートシート)』により弾き出され待ち侘びた好機の到来に『人形』も嬉々と躍動した。
 軋む人形を無理矢理に動かして再びドラゴンテイマーの首元で鉤爪が閃くも、躱そうともせずそれを受け止めた男は薄皮をかすかに切り裂かれたのみ。
 だが、それは布石に過ぎない。本命はもうひとりの『人形』が構えた自動拳銃。
「全弾連射でブチ込んでやるよ!」
「く…………っ」
 大敵と呼ばれた男の全身が穿たれ、片膝をつき、やがてゆっくりと巨竜の背から滑り落ちてゆく。
 今こそトドメをと追い縋って跳んだクロトが鋼糸を将の首級へと奔らせた。
 ――すっぱりと切断を終えると同時に道連れのように消滅してゆく合体ダイウルゴス。
 それは大敵と呼ばれたこの男をまた骸の海へと還せた何よりの証。
「勝機の見えぬ戦いだろうと、見えないだけ。零じゃないなら、賭けられる。己に。仲間に。その先に……」
 途方も無い、けれど夢見て紡ぎ出す物語――。
「それが『希望』……あなたが決して手には出来ないものです」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年05月28日


挿絵イラスト