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バトルオブフラワーズ⑪〜君への想い

#キマイラフューチャー #戦争 #バトルオブフラワーズ #ウインドゼファー

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「誰にも、邪魔は、させないッ!」
 ウィンドゼファーは。彼女はそう声を上げる。
 オブリビオンとなり、無限の欲望を喰らい尽くすと叫ぶ。
 目指した理想は、なんだったのか。
 望んだものは、なんだったのか。
 もはや人にはわかるまい。
 わかるは彼女と彼女の仲間。オブリビオンだけかもしれない。
 それでも構わないと彼女は言う。
 それでも戦うのだと彼女は言う。
「私達は全てを手に入れる。無限大の欲望を食らいつくし、きっと……」
 目指すものがある限り、何度倒れても立ち上がると。
 彼女は、天を見上げて己の獲物を握り締めた。

「彼女が何を望んでいるか。それは少しだけ興味があるわ。ええ、だって。ほかならぬ私の故郷。キマイラフューチャーのことですから」
 花降・かなた(雨上がりに見た幻・f12235)はそういって、そっと花が咲くように微笑んだ。
「まあ……知ってもきっと到底受け入れられないだろうから、知っても知らなくてもやることは同じことなんでしょうけどね。……もう。人間に否定されるのって、これ結構くるのよね」
 そしてそんなふわっとした愛らしさは一瞬しかもたなかった。腕を組んで若干唇を尖らせながらいったかなたは、若干拗ねているような、悲しんでいるような、微妙な声音で話をしていた。
「だって私、人間のこと、結構すきなのよね。……まあ、オブリビオンは人間じゃないって言っちゃ、それまでなんだけど。でも……ね」
 首を傾げたり、考え込んだり。気を取り直したり。かなたは割と、せわしない。けれどもしばらくするときを取り直したのか、一同に向かい咳払いをひとつ、した。
「そういうわけでね。ドン・オブ・フリーダムを守る門番の、ウィンドゼファー。彼女を倒してきていただきたいの。彼女が撃破されれば、あとはドン・オブ・フリーダムまで一直線だから、ここが正念場、と言うわけなのね」
 再び穏やかな口調に戻って、かなたはうん、うん。と、頷く。
「ゼファーさんは風を操る強敵らしいの。唯挑めば、確実に彼女の風に押され、不思議な、うるさい音を立てる剣で切り刻まれることになると思うわ。勿論、相手にダメージを与えるまもなく、ね」
 髪をかきあげる。その金と赤の目が僅かに眇めるように細められた。
「相打ちすら、許されない」
 それだけの速さと実力があるのだと、彼女の目が暗に告げていた。
「だから、何かしら対処をしていってほしいわ。私だって、あなたたちに怪我をしてほしくないもの。……その、こういうのもなんだと思うけど、あんまり無理は、しないでね」
 無理しなきゃ勝てない相手なんだけれどね。と、
 苦笑のようなものを浮べながらも、かなたはそういって両手を胸の前に組んだ。
「行ってらっしゃい。……どうか、気をつけて。あなたたちが無事帰るのを待っているわ」
 そして、
「どうか、キマイラフューチャーをお願いね。自分の故郷を自分で言うのもなんだけれども、結構楽しくて、いいところでしょう?」
 と、微笑んで。話を締めくくった。


ふじもりみきや
 いつもお世話になり、ありがとうございます。
 ふじもりみきやです。

●お知らせ
====================
 敵は必ず先制攻撃します。敵は、猟兵が使用するユーベルコードと同じ能力値(POW、SPD、WIZ)のユーベルコードを、猟兵より先に使用してきます。
 この先制攻撃に対抗する方法をプレイングに書かず、自分の攻撃だけを行おうとした場合は、必ず先制攻撃で撃破され、ダメージを与えることもできません。
====================

●運営シナリオ数について
 運営シナリオ数に制限はありません。戦場の戦力「40」をゼロにできれば制圧成功ですが、それ以上の成功数があった場合、上回った成功数の半分だけ、「⑬『ドン・フリーダム』」の戦力を減らせます。

●ふじもりのお知らせ
 早めに完成させられそうなら、早めに完成させますし、
 そうでなければ、ゆっくりやります。
 割と熱いプレイングが好きなので、技能やUCでがちがちに固めるよりも、
 魂の叫びも聞かせていただけると、筆がのります。
 とはいえ、先ほどから述べている通り、対策がおろそかであるのもいけません。ので、どっちも極端にならずにほどほどにしていただけたらと想います。

 多分彼女には信念があり、
 そして自分に立ち向かってくるものたちも、信念があることを知っています。
 だから、戦うしか道がないということも……。
 というわけで、正々堂々、容赦なく、全力でいきます。
 なお、【花の足場をバラバラにする暴風】は●ふじもりのシナリオでは●暴風が吹きすさび足場が崩落するものとして考えます。
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第1章 ボス戦 『スピード怪人『ウインドゼファー』』

POW   :    フルスロットル・ゼファー
全身を【荒れ狂う暴風】で覆い、自身の【誰よりも速くなりたいという欲望】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
SPD   :    レボリューション・ストーム
【花の足場をバラバラにする暴風】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ   :    ソード・オブ・ダイアモード
対象の攻撃を軽減する【全タイヤ高速回転モード】に変身しつつ、【「嗤う竜巻」を放つ2本の車輪剣】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。

イラスト:藤本キシノ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

エルネスト・ポラリス
――正直、困ってる。
オーダーは無茶するな、ウチの妹みたいな事言ってきたなグリモア猟兵。
君もそうだ、ウインドゼファー。
私、達?
そんな友誼に厚い感じなのか君ら。もっと悪人めいてくれた方が楽なんだが。

車輪剣の脅威は回転。
なら止めるべきだ、ロープワークでワイヤーを刃に噛ませる。ワイヤー自体は斬られ拘束は期待できないだろうが、回転が止まれば脅威は半減だ。
そうなれば、こっちは剣持ち、竜巻主体で距離を取った戦いをしてくるだろう。

その瞬間を見切り、手を前に。
UC発動、光化した腰の拳銃を手に移動させ、解除。
光速のクイックドロウだな。

君みたいな奴は嫌いじゃない。
だからこそ、僕なりの『速さ』で挑まさせて貰う……!


ディフ・クライン
それが貴女の、自ら折ってはならない覚悟を持った信念なら
オレたちの信念が寄り添って進む道はないのだと、オレも知っているよ
他の猟兵たちを見て、オレも知ったんだ

オレだって猟兵だ
あの人が「いきなさい」と言ってオレを籠から出した日から
世界が滅ぶのを黙ってみていられなくて、戦おうと思ったんだ

だから『王よ』
駆けてほしい

召喚した王をオレの前に、騎馬で駆けてもらう
ギリギリまで攻撃をひきつけ、ゼファーの攻撃は王に盾になってもらう
オレが傷つかない限りは王は立っている
王は不本意だろうけど、オレの守り優先でお願いするよ

オレに出来ることは多くない
強くだってないけれど
貴女の道を阻むという「呪詛」をのせた「全力魔法」で一矢を


虻須・志郎
アドリブ連携歓迎

ここの肉は意外と美味いんだ
だから邪魔するぜ、全力でな

初撃は覚悟して痛みを耐え
流した血は少しでも王者の石で回収し体力を戻す
崩れた足場から落ちつつその影に隠れ
内臓無限紡績兵装からワイヤーを生成し
ロープワークでぶらさがり地形を利用してやり過ごす

蜘蛛を舐めるな、ここからが本番だ

眷属を密かに召喚
奴の進路に感覚を鈍らす毒糸の巣を張らせる
奴の動きを鈍らせる罠にするんだ

毒が回ったら眷属を合体させ奇襲
俺は眷属の相手をしている所をだまし討ちだ
崩れた足場からロープワークで復帰
咄嗟に捨て身でブン殴って仮面ごと飛ばす!
そん時に喰らったダメージの分も回収する

アンタ見失ったんだろ、本当の願いを――その速さで


モース・レフレクソン
速さ…
先制攻撃を必ずされてしまうというのは痛いが……「痛いだけ」だな
風を纏い、吹き飛ばすなり突進するなりするがいい。

装備でファランクスシールドを装備、さらにユーベルコード【孤独なる要塞】で強固かつ暴風に対しても耐えれる重装備で対応してやるぞ…。
そしてMinigunを乱射して挑発してやる…

突っ込んできて近接戦をしてきても攻撃はわざと受け止めてガッチリ掴んで動けなくしてアームグレネードランチャーをゼロ距離でぶちこんでやる。
その際に保険でフックショットをぶち込んで、逃げられてもワイヤーが繋がった状態で身動き取れないようにしてやろうか。
逃がさん…逃がさんぞ…

速さだけで戦いが出来ると思うなよ…


神酒坂・恭二郎
今度の敵さんは大した強敵だ。
その求道には俺も応えにゃならんな。

刀を抜かず脱力をもって初撃に応じる。
奴の暴風に逆らわず乗り、吹き飛ばされる事で致命傷を避けたい。
【激痛耐性、見切り、オーラ防御】
傷だらけで立ち上がれば笑もう。

「残念だな。俺が見たいのはあんたの“最速”なんだが」
失望の息を吐き、刀を抜いて上段に構える。
言葉にする必要はない。
西風の真なる最速なら【荒れ狂う暴風】すら置き去りにする筈だ。

無防備な大上段。
所詮刀の一振りで暴風は断てない。
奴が誘いに乗り最速で来なければ死ぬしかない。
最速を斬れるかどうかも分らない。
大いに良しだ。

「その求道の最果てを見せてくれよ、西風」

【覚悟、礼儀作法、優しさ】


アヤネ・ラグランジェ
【ソヨゴ(f00669)と一緒】
世界が滅んでもソヨゴだけは守る
それが僕の覚悟だ
お前に解らなくてもいい
僕もお前を理解しない!

ソヨゴ、攻めはまかせた
守りは全て、僕が引き受ける

ウロボロスの大鎌を手に防御の構え
ソヨゴの左手前に立ち
【武器受け】
同時にUC展開
敵を拘束して動きを止める
ソヨゴへの攻撃は全て受け流す

自身よりソヨゴの安全を優先
負傷して動きが鈍るなら触手で補う
立てなくても触手で立つ

痛み?恐れ?
そんなもの
僕には無い感覚だ

相手の動きを止めるまで
絶対に倒れはしない

お前の動きは学習した
思い知れ
学習さえすれば、僕は何者にでもなれる


城島・冬青
・アヤネさん(f00432)と

あの後、何体かゼファーと戦ったんですよ
なので今回はもっと互角にやれると思います
私、あれから結構早くなったんで

先制攻撃は第六感で方向を察知
当たる寸前に残像とダッシュを駆使して回避
アヤネさんに守りを任せ
そのまま血統覚醒し接近戦へ

戦闘中にゼファーの負傷状態を確認
今までの戦闘て決して無傷ではない筈
利き手
利き足
装備の損傷
どこに一撃を叩き込めば彼女のその動きを鈍らせるか
考えろ
そして見つけろ!

当りをつけた傷に隠し持った小柄・女王蜂を用い【捨て身の一撃】で【傷をえぐる】
そしてそのまま【ダッシュ】で突進
その勢いで彼女の体へと深く突き刺す
覚悟は決めてます
絶対に貴女を倒すという覚悟を!


桑原・こがね
向こうの先制攻撃は、防御に徹してやり過ごす。
腰を据えて力を蓄え、轟雷で強化したら反撃よ!
隙を見て、いや、攻撃を凌いで隙を作って口上を上げるわ!

そちらに執念あるならば、こちらも目指すものがある
この期に及んで是非もなし、答えは剣に託すのみ
喰らい尽くすと叫ぶなら、あたしの夢も喰らってみせろ
いざ尋常に、あたしを見ろォ!

そして雷を鳴らす演出!これは目立つ!注目の的!
ここで倒せば一気に有名人!そう思うと力が湧いてくるわね!

あの暴風に生半可な攻撃が効く気がしないわね。
呼吸を合わせて、すれ違いざまに一閃!伸るか反るか、勝負!




 門番、と彼女は言った。
 だから、エルネスト・ポラリス(いつか満月の下で・f00066)は困ったように軽く頭を掻いた。
「私、達? そんな友誼に厚い感じなのか君ら。もっと悪人めいてくれた方が楽なんだが」
 少し人のよさそうな顔は、本当に困ったように揺れていた。
 それをディフ・クライン(灰色の雪・f05200)は目で追う。その表情を観察するかのように。あるいは、学ぶように。
「ためらって、しまうから?」
「ああ……そうだ。そう、です」
 ディフの問いかけに思い直すように、エルネストは頷いた。手加減すると言うわけではない(そもそもその余裕もないが)。勿論助けたいとか和解したいとかそういうわけでもない。けれど……何も感じないわけではない。その言葉を言語化するのは難しい。
「そうだな……。――正直、困ってる。ウィンドゼファー。彼女のありようにも、ウチの妹みたいな事言ってきたグリモア猟兵にも」
 だってオーダーは無理するなだから。この状況で。なんて、冗談めかしてエルネストが笑うと、たまたま隣にいた虻須・志郎(第四の蜘蛛・f00103)が声を上げて笑った。
「ははは、大事だな、そういうの」
 軽くストレッチするような素振り。さて、とどこか食事でも行くような気軽さが志郎にはあった。敵が、彼女がこちらを向く、その一瞬前に、
「まあ、ここの肉は意外と美味いんだ」
 気軽な口調でそういって、志郎は一歩踏み出した。
「だから邪魔するぜ、全力でな」
「……」
 エルネストは困ったように笑う。どうにも嫌いになれないね、と言いながらもそのあとに続く。なるほど、とどこかディフは感心したような声を上げた。
「……それが貴女の、自ら折ってはならない覚悟を持った信念なら、オレたちの信念が寄り添って進む道はないのだと、オレも知っているよ」
 オレも知ったんだ。と口の中でディフは付け足す。様々なところで戦う猟兵たちの背中を見て。あるいはこうして肩を並べて。
 そしてきっとこれからも知っていくんだと心のどこかで予感しながら。ディフは彼らの後を追いかけた。

 風が吹いている。
 やれやれ、とでも言うように。
 神酒坂・恭二郎(スペース剣豪・f09970)は己の刀に軽く手をかけた。
「今度の敵さんは大した強敵だ。その求道には俺も応えにゃならんな」
 応じよう。と、落ち着いた口調で彼が言う傍らで、うぅーっと桑原・こがね(銀雷・f03679)は両手を握り締める。軽く飛び跳ねるようにして、そわそわした顔をしていた。
「あたしだって惑星全域同時放送システムで目立ってみたい! そのためにも、ぜーったい彼女を倒して目立つんだから!」
 動機は不純だがやる気は充分である。がんばろう! と気合を入れるこがねに、モース・レフレクソン(サイボーグの戦場傭兵・f06734)は無言でちらりと視線を向けて、
「……」
 また無言で前に向き直った。特に感慨もなく、どう戦うか算段をつけるモースと、なにやら賑やかなこがねに恭二郎は軽く頭を掻いて、
「まあ……いくか」
 なんて気負いのない様子で言って、一歩踏み出したのである。無言でモースも歩き始め、そして、
「あ、待ってよー!」
 あたしもいく! と、こがねも走り出した。

 剣が立てるはずもない、甲高い笑い声のような音が響く。
 それはゼファーの持つ剣が、回転する刃のようになっていたからだろう。
 けれどもその不快な音に、エルネストは眉根を寄せてちらと振りかえる。
「少しの間、いけますか?」
「ああ。オレだって猟兵だ」
 口に出して、若干自分で自分に少し、感心しながらもディフは請け負った。もとより自分の作戦にはかわりがないから大丈夫。
「『王よ』、駆けてほしい」
 ディフはかつて王であった死霊騎士とその愛馬であった漆黒の死霊騎馬を召喚し、その後ろに乗せてもらう。
「じゃあ」
「気をつけて」
 頷いて、ディフは走り出した。それにゼファーも気がついて、刃を己のほうへと向けた。
 駆け抜けて懐に入る、それすらも許さぬように即座に音の鳴る剣が走る。けたたましい笑い声のような音を耳の奥で聞きながら、
「王……よ!」
 声を上げる。死霊騎士は剣を振るい、それを受け止めようとする。
「……不本意だろうけど、オレの守り優先でお願いするよ」
 無論、無傷で済む相手でもない。鎧が、騎馬が、ゼファーが腕を振るうたびに傷を負っていく。
「それでも……オレが傷つかない限りは王は立っている」
 だから頼むと、心の中で言いながらも。ディフもエレメンタルロッドを握り締めた。
「……っ、さて。あの回転やっぱり脅威だな……」
 そのとなりでエルネストもまた、ワイヤーを手に様子をうかがう。ゼファーとディフの攻撃のやり取りに紛れるように、彼もまた先に進んだ。
 こういうのはタイミングが肝心だ。

 その様子をちらりと志郎は目で追った。
 しかしすぐに自分の足元に向き直る。
 既に風によりその足場は崩れ始めていた。
 そしてすさまじい風が、志郎の体を打ち据えていく。
 痛みに耐えながらも、志郎は内臓無限紡績兵装からワイヤーを生成し、その足場の影へともぐりこんだ。
「……っ」
 視界がから敵消える。体を動かすだけで痛みに気が遠くなりそうになる。
 王者の石を握り締める。成れの果てだな。と自嘲気味に見つめるそのコアマシンを、志郎は抱くようにして握りこんだ。
「蜘蛛を舐めるな、ここからが本番だ」
 ひそかに眷属を召喚する。その毒蜘蛛は隠れるように動きながらも毒の糸を編み出していく。
 頭上から戦っている音が聞える。……気持ちは焦るが、なんとかそれを堪えて志郎は糸を編み上げて行った。
 途中で更に足場が崩れ、風によって舞い上げられ、移動していく。それを糸でぶら下がり何とかやり過ごしながら、志郎は反撃のときを待った。
「必ず……届かせる……。待っていろ」
 必ず、だ。と。
 志郎は小さく、頷いた。

 城島・冬青(六百六十九番目の宿木・f00669)は走った。それは短いようで長い。長い距離であった。それは……、
「……っ、く」
 車輪剣が走る。その音を聞きながらも冬青は駆ける。冬青の足の速さでもってすれば、それも一瞬の出来事だったのかもしれないけれども、
「世界が滅んでもソヨゴだけは守る。それが僕の覚悟だ……!」
 そのとなりで全ての攻撃を受け止める。アヤネ・ラグランジェ(颱風・f00432)の声が隣に聞えて、力強く思うと同時に冬青はきゅっと唇をかみ締めた。
 今は唯、それだけで心強い。
 第六感を駆使して、残像と足の速さを駆使して。冬青はかける。……それだけで足りないところを、アヤネが補ってくれている。
 二人なら、きっと倒せる。……きっと。
「あの後、何度かあなたと戦ったんですよ」
 勿論その記憶はないだろうが。冬青は目の前のゼファーに呼びかける。
「なので今回はもっと互角にやれると思います。私、あれから結構早くなったんで」
 やるしかない。隣ですべての攻撃を引き受けてくれているアヤネのためにも。
 冬青は花髑髏の鞘を握り締める。
 届け、と念じて冬青は地を蹴った。



 回転する剣を王の剣が受ける。その何度目かわからない打ち合いは、着実に王の存在を削り、その後ろにいるディフの体も着実に傷を負わせていく。
「……粘りますね」
「まだ……まだだよ」
 ゼファーとて解っている。攻撃すべきものは後方にいることに。騎士の攻撃をかいくぐり、着実に後方へと攻撃を飛ばしてくるゼファーに、ディフもまた騎士に頼みながら応戦する。
 自分にできることなんてさほど多くはない。
 特別強いわけでもない。
 けれど……、
「あの人が「いきなさい」と言ってオレを籠から出した日から……世界が滅ぶのを黙ってみていられなくて、戦おうと思ったんだ!」
 車輪剣が走る。それを受け止めようとした騎士の剣がその勢いを殺しきれずにディフの肩口を赤く染める。流れる血をかみ締めるように血に染まった手でディフは己の杖を握り締める。
「最後まで諦めない。貴女の道を阻む……。その一矢に、オレはなる!」
 そうして、振った。絶対に阻むという呪詛のような強い思いを乗せて、放たれた魔法の矢は車輪剣をすり抜けてゼファーの体へ降り注ぐ。
「な……っ!」
 抜かれた、と、ゼファーが一瞬気を取られた。そのとき、
「……そこだ!」
 その瞬間、機をうかがっていたエルネストは声を上げた。手にしていたフックつきワイヤーを投げる。
「――! なにを!」
 即座にゼファーが取って返す。その攻撃を剣で受けようとして、
「いくぜっ。……仕掛ける!」
 志郎の声がした。声と同時に、毒蜘蛛が物陰から一斉に飛び掛る。
「……!」
 ゼファーが反応して、再び風を巻き起こそうとするも……遅い。周囲に張り巡らされた毒は彼女を捉え、
 切り裂くことが出来ずにエルネストが投げたワイヤーは振り上げられた車輪剣に絡みつく。
 ものすごい音を立てて刃にワイヤーが巻き込まれた。
 エルネストは手を離す。即座に回転する車輪に巻き込まれたワイヤーはその勢いを弱め……、
「考えましたね……! ですが」
 この程度なら破壊できると。言いかけたゼファーだったが、
「勿論。でも……ええ、『コレ』の扱いは、ずっと見てきましたから」
 その一瞬で充分だと、エルネストは手を掲げる。
 腰の拳銃が光り輝いたと思うと、一瞬でその手の中にそれは握り締められていた。
「君みたいな奴は嫌いじゃない。だからこそ、僕なりの『速さ』で挑まさせて貰う……!」
 固定式の堅牢な大型リボルバーから弾丸が打ち出される弾丸は、彼女が動くよりも早く、剣を持つその腕を貫いた。
 続いて、ディフの放った魔法がゼファーの足を貫く。その呪いは、力となって。その足を地に縫いとめる。
「アンタ見失ったんだろ」
 そして志郎も、その後ろに降り立っていた。蜘蛛は陽動であった。ロープワークで復帰した志郎は、一瞬でゼファーと距離をつめて、
「本当の願いを――その速さで」
 拳を固めて全力で殴りつけた。
「例えばそれが、なんであっても……自分がどう変わっちまったとしても……。それだけは、それだけは忘れちゃならなかったんだ……!」
 例え自分が、バケモノになってしまったとしても。
 顔を殴られて、ゼファーはよろめく。そのヘルメットを殴り壊してやるつもりでぶん殴ったが、それは顔から離れてくれなかった。
「……っ、この」
 それは、変わってしまったものがもう戻らないということを示しているような気がして、
 志郎はもう一回、拳を握り締める。ならば倒れるその瞬間まで、闘いを続けようと。

 車輪剣がものすごい勢いで迫ってきている。
「!」
 先ずはモースの体が切り刻まれた。先制の一撃は容赦なく彼の体をまっすぐに切り裂く。右腕を落とされそうになるのを、ギリギリで超重装甲シールドが守った。
「……っ、こんなもの、痛いだけだな……」
「うわ、ちょっと待ってそれいたそ……ちょっと!」
 思わず、こがねが手を伸ばしかけるがその腕にも返すように剣が走る。ギリギリのところで受けようとしたバスターソードは、嫌な音を立てて砕けた。
「……っ、たい! ああもう!」
 何とか凌ごうとする子がね。しかしそれも時間の問題のような気がした。叫びつつも今度はサムライブレイドを抜刀すると、
「そちらに執念あるならば、こちらも目指すものがある! この期に及んで是非もなし、答えは剣に託すのみ。喰らい尽くすと叫ぶなら、あたしの夢も喰らってみせろ! いざ尋常に、あたしを見ろォ!」
「その口上は、今必要なもんなのか?」
「あたし的には、超! 大事なの!」
 やるきでる!!! と、目立ちたがりパワーを全力で搾り出すこがねに、恭二郎が思わず声を上げる。
「……そういうのは、嫌いじゃない」
「でしょう!?」
「殺すけど」
「殺されないよ! 殺されたら目立てないから!」
「……」
 決して無傷とはいえないこがねとゼファーの会話に、恭二郎は頭を抱えたくなるのを若干、押さえた。放っておけばいいのだけれども、放っておけないのは多分、性格だろう。
「まあいい……いくぞっ」
「うんっ! 決意を新たにする二人! そして雷を鳴らす演出! これは目立つ! 注目の的! ここで倒せば一気に有名人! そう思うと力が湧いてくるわね!」
 そうは言いながらも、こがねの太刀筋は本物であった。傷を負いながらも致命傷を避けながら攻撃するこがね。
「……ここから一歩も引かんぞ。覚悟しろ!」
 そして周囲に流されずに全身を対物理超重装甲兵装に変えていくモース。
 攻撃を受け止めながらも、モースは固定された体制のままガトリング砲を乱射する。
 ゼファーも彼らと同様に、的確に致命傷を避けながらも攻撃を続けていた。恭二郎はその動きを観察する。
 恭二郎が刀を手に取る。その瞬間、ゼファーもまた動いていた。
 ぱ、と血が噴き出す。
 恭二郎の手は刀の柄に触れたままで抜いていなかった。
 一見するとそれは、刀を抜く暇もなく切り伏せられたように見えた。
 けれどそうではなかった。
「……っ!」
 声を上げそうになったのはこがねだ。傷つく仲間のところに思わず毛通うとするのを、恭二郎は手で制する。
 右の肩の辺りから腹まで。一直線に切り伏せられた傷は決して浅くはない。それでも、
「残念だな。俺が見たいのはあんたの“最速”なんだが」
 風の動きを利用して、僅かに後退することで致命傷を避け、傷だらけでたたらを踏んで刀を構えなおせば、恭二郎はそういって口の端をゆがめて笑った。
 正直、痛い。紙一重で致命傷を避け、オーラで防御して。それでも激痛を堪えて立っていられるほどだ。
 だが、恭一郎は笑った。そして、その顔には……、
「……」
 ゼファーが剣を構える音がする。その隙に、こがねが傷だらけの体で飛び込んだ。
「そっちじゃない! あたしを見ろォ!」
 目立ちたい。勿論それだけではない。こがねは全力で刀を叩きつける。打ち合いのたびに派手な音を立てて件が削れていく。もう一本、ルーンソードを今度は抜く。
 嗤う剣が音を立てて振り下ろされた。
「させん!」
 モースの両腕が変形し、そのまま攻撃を受け止める。グレネードランチャーを至近距離で打ち込んでいく。
「逃がさん……逃がさんぞ……」
 その強い思いを感じさせる声に、こがねもひとつ頷く。僅かに呼吸を整えると、
「あの暴風に生半可な攻撃が効く気がしないわね」
「ああ。だが……」
 恭二郎は刀を構える。上段に構えるその姿に、こがねは意図を察して肩をすくめた。
 あえて言葉にする必要はない。
 あの早さにはまだ先がある。
 恭二郎はそれを待っている。
 負ければ死ぬ賭けだ。ついでに言うと、相手が誘いに乗ったからといって勝てる賭けでもない。
 その詳細は伝わらなかったけれども、その気配はこがねにも伝わった。
「そういうの、嫌いじゃないわ。……じゃあ行きましょう。援護も、よろしくね!」
「援護をしてるつもりはない!」
 一歩も動かぬ体勢のまま、声を上げ銃を撃ち続けるモースにこがねは笑って走り出した。そして、
「その求道の最果てを見せてくれよ、西風」
 恭二郎は静かに語りかける。
 ゼファーはふっと、ひと呼吸置くような間があった。
「私は、走り続ける」
「……ああ」
「この街に真の……人々の幸せが返ってくるまで!」
 もはやきっと、その幸せが何だったのかも解らないまま。
 ゼファーは一歩踏み出した。
「伸るか反るか、勝負!」
 こがねもまた走り出す。すれ違う、その一瞬に、
「はああああああああ!」
 全力の一撃を、その胴へと叩き込んだ。
「……っ」
 ゼファーの手が動く。わき腹を血で染めながら、返すように左手はこがねの体に剣を叩き込んだ。そして右手は……、
「剣の聖にゃ程遠く、命の置き場ぞ此処に在り……ってなもんか」
 それは、勝負師の勘だった。
 生死の境目、その一瞬。恭二郎の身は輝きを増す。
 限界まで強化された体は、彼女の催促に追いつけるか、追いつけないか。そのギリギリのところまで追いついていた。
 決して、必勝ではない。
 けれども、届かないわけでもない。
「ああ……。大いに良しだ」
 だが、それがいいのだ。それでこそなのだ。
 恭二郎の両腕から血が噴き出す。車輪剣の一撃は確実に、その腕を切り落とす勢いで恭二郎に放たれた。そして、
 ゼファーの右腕からも、鮮血が噴き出した。
 その傷もまた、深い深い一撃であるように、見えた。

「ソヨゴ、攻めはまかせた。守りは全て、僕が引き受ける!!」
 そうして、アヤネと冬青もついに速さを捉えた。大鎌を手に防御するアヤネ。そして、
「UDC形式名称【ウロボロス】術式起動。かの者の自由を奪え!!」
 アヤネの影から無数の触手が呼び出される。ゼファーの剣がその一手前に走る。
「……っ!」
 腹に食い込む車輪剣。血と共にアヤネに痛みが走るけれど、
「そのままだ……。アヤネは僕が守る! 思い知れ。学習さえすれば、僕は何者にでもなれる」
 アヤネの腹の中に刃を残しながら、アヤネは触手を呼び出した。もうひとつの剣もそれで拘束する。
「お前に解らなくてもいい。僕もお前を理解しない!」
 おそらくはそれほど長くは持たないだろう。
 けれども一瞬でも、アヤネはゼファーの動きを止めた。
 アヤネには痛みもない。恐れもない。
 今、唯。たった今この瞬間。ほんの一瞬に、
 二人は全てをかけた。
「……冬青!!」
 声にこたえて。アヤネは顔を上げる。
 強く目を見開く。その目が深紅に染まっていた。
(考えろ……)
 ゼファーだって今までの戦いで、決して傷を負っていないわけではない。
 その腕は? その足は? どこに攻撃を与えれば、その動きを鈍らせられるのか?
「そこ……だ!」
 叫んで。冬青は花髑髏の柄に隠してあった小柄、女王蜂を引き抜いた。
「覚悟は決めてます。絶対に貴女を倒すという覚悟を!」
 全力で声を上げて。冬青は小柄をつきたてる。
 傷を負ったその腕に、冬青は小柄を抉りこんだ。右手の車輪剣が揺らぐ。だが……、
「……まだまだ、負けてない」
「っ」
 小柄が刺さったまま、ゼファーは剣を振るおうとする。それをアヤネが何とか走りこんで、触手と共に押さえ込む。
「っ、ソヨゴ……!」
「はい、アヤネさん……!」
 応えて。アヤネは深々と刺さったままの剣を動かして。
 血が落ちる。その傷が尋常でないことは明らかであった。


 数多の攻撃を受け、ゼファーはよろめく。
 血が落ちていく。その片腕は、もはや動くことがないだろう程にぼろぼろに切り裂かれていた。
「真の幸せ。……そんな台詞をはかれてしまうと、やっぱり困ってしまうだろうね」
 エルネストが、小さく呟く。
「ああ。だが……真の幸せが、ドン・フリーダムのやり方で作り出せるとは思えない。……そうだよな?」
「……いいえ。それでも、私は……!」
 ゼファーが叫ぶ。叫んで、まだ傷が浅いほうの腕を走らせた。
「……!」
 音を立てて右腕が切断される。それを省みようともせずに、ゼファーは己の片手で剣を握り締める。
「……ああ」
「私は、まだ、戦う」
 声を上げるゼファーに、ディフも小さく頷いた。
「まだ、あと少し……頑張ってほしい、王よ」
 傷だらけでもまだ戦う意思を残したゼファーと。
 そして、それに応じるやはり傷だらけの猟兵たち。
「は……。そうでないとな、お前さんは」
 どこか嬉しげに恭二郎はそういって、傷だらけで歩き出す。
 きっと忘れられない戦いになると、心のどこかでディフは感じながら、己も王に次の頼みごとをする。そして、
 この戦いで知ったものを、敵の顔を、仲間たちの顔を、きっと忘れることは出来ないだろうと、ディフは思った。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

才堂・紅葉
「全く。厄介な門番ね」
難敵だ。
速度で劣る不利は極めて大きい。

初手。風を纏った突進に対し、身を屈め【見切り、破壊工作】で足場を崩して回避を狙う。
落下中にUCで蒸気王を召喚。
背のブースターを最大出力にし、奴の背にするドンへの道へと突貫する。

己を置いて高速で飛ぶ物を奴の欲望は放置出来まい。
必ず“追い越して”いく筈だ。
追い抜いた後、奴がこちらを向く一瞬が勝機。

「そこだぁっ!!」

突き出した蒸気王の拳が開くと私がいる。
【忍び足、カウンター、野生の勘、属性攻撃】でリボルバーにて風の詠唱弾を放つ。
奴の纏う暴風に対し、一瞬でも真空状態を作れば十分。
蒸気王の拳をねじ込む隙があれば良い。

「打ち砕きなさい、蒸気王!」


ユーフィ・バウム
※アドリブ・連携歓迎

譲れない信念がある――それは此方も。
ゼファー!貴女を仕留めます!

彼女の動きを【見切り】と【野生の勘】で予測
暴風は【衝撃波】で相殺を狙い、
攻撃は完全には避けきれなくても、【覚悟】をもって
【オーラ防御】で耐え抜く――頑丈なのが取り柄ですっ
【グラップル】で捕まえ距離を縮め
めいっぱい【力溜め】て

理想も、望みも、歪ませ塗り潰すのがオブリビオンだというなら!
私たち猟兵は、あなた達を狩り尽くす!

《トランスバスター》で砕けとばかりに殴る
以後も【空中戦】で応戦し、必要あれば仲間を
【かばう】ことで勝利への道を拓く

セイヴァー。……貴女を元に戻す力が私にもしあったなら。
そう思うのは、何故でしょうか


フィッダ・ヨクセム
速い、それがてめェの強みか
俺様にはねェもんだな!
強がッたッて仕方がねェし、そこは素直に言い切るぜ?

足元の崩落なんざ頂けねェな、とはいえ気がつきァ事を起こされたあと
……なら、【情報収集】して目ざとく両の足で立てそうな場所へ走ろう
足は全く早くねェから【オーラ防御】でギリギリを耐えられりャ十分
間に合え、間に合え

打つは錬成カミヤドリ
本体たるバス停は苦無(偽)のように
【クイックドロウ】で複製全てを【槍投げ】の様に【一斉射撃】だぜ
仮にも苦無(偽)、【スナイパー】の腕の見せ所だ

俺様はバス停だが、此処は別に終点じャねェと思うんでね
所詮俺様は、中継地点程度だろ
……ならどこまでも邪魔してやらァな!
俺様が、窮鼠だ!


静海・終
革命を謳い、また立ち上がり
もし私が貴女の背を見る者であれば
聖女の様に見えたかもしれません

悲劇は殺して、壊しましょう
不愉快な嗤いを出す武器を真っ先に叩き壊したいくらいではありますが
なるべく致命傷を避けて攻撃を受け止め即座に動けるよう回復
肉を切らせて骨を断つ
これだけの距離、避けられるでしょうか?
その胸に蒼槍を穿つ
私はこの一撃に全てをのせる

門番、時間稼ぎなどとまるで後方に後を任せるような物言い
誰かに未来を託してなんて美談にないでくださいませ
自分のいる未来を強く描かない者に
未来を渡す事など出来る訳ないでしょう
私が貴女の背を見る者なら言うでしょう
1人で選び何かを犠牲にする事を前提とした革命に未来などない


ヴィゼア・パズル
随分と人間臭いオブビリオンだな……あぁ、嫌いじゃない。
【空中戦】にて精霊翼を翻す
信念があり、闘う事でしか分かり合えない者が居る
妥協出来ない事であれば尚更に…
ならば、せめて敬意を贈ろう
強く美しい人よ、同じ風使いとして
【wiz】使用、連携絡み歓迎
【覚悟】を以て挑もう
【敵を盾にする】容量で【地形を利用】し瓦礫を敵に見立て防御に使用。
同時に追って来るだろう、敵の軌道を障害物と併用する事で誘導し、逃げ道を塞ぐ
【範囲攻撃】を使い【二回攻撃】【カウンター】の【全力魔法・マヒ攻撃】を使用

可能ならば仲間と波状攻撃を狙う
早過ぎる風は…急には止まれない
せめて花を添えよう


クーナ・セラフィン
何を願い祈ったのか…全くやな事を思い出させてくれるね。
互いに譲れないならぶつかるだけ。
お互いの屍を踏み越えて勝者が為したい事を為すだけ。

車輪剣に対しては地形を利用し足場を飛び移り時間稼ぎ。
竜巻に対しては軌道を読み直撃を避ける。
UC発動可能になったら花弁と吹雪を竜巻に巻き込ませて、ゼファーを凍結攪乱する。
暴風では砕き切れないささやかなモノ、そんなのだって存外やるものだ。

…花を散らして進むキミが何を望んでいたかは知らないけど。
どこまでも自分しかないんだね。かつてはともかくとして。
その情熱がもしも寄り添える物だったら…ううん、たらればはやめよう。
ゆっくり気ままに前進するだけさ。

※アドリブ絡み等お任せ


ロティリア・マクディーナ
どこまでも、誰よりも速くなりたい。
その結果前にも、後ろにも、横にも誰も居なくなっちまったンすね。
それじゃあ、どれほど速くなったか判らないでしょう?
だから――ひとっ走り付き合ってやるっすよ、《疾風》サン。

先制攻撃には【ゴッドスピードライド】での加速で強引に突破を狙う
こっちも【先制攻撃】の知識はあるっす、どのタイミングで仕掛けてくるかは若干でも予測できるでしょう
避けきれずに当たる分はあるでしょうケドそいつは【激痛耐性】で堪えるっす
むしろ【捨て身の一撃】を狙うならある程度の重傷は覚悟の上っす

僕も、愚直に、真っ直ぐに、自分を省みず眼前の敵を斃す。――きっと、これは昔のアンタのやり口と一緒でしょうよ。


両角・式夜
お互いに譲れない物があると理解があってのぶつかり合いならば結構である
礼儀を持って立たねばなりませんね
革命だの正義だの理想など生い立ちなど二の次だ!

得物を持て!武人の礼儀だ!
その暴風で猟兵が散らせるか試させて貰おうか!!

実はだがな、わしは風には弱いのだよ
ほら、風は岩を風化させるからな
地竜にはちと堪える
だが、暴れる暴風ならば押さえるのは容易いぞ!
それこそ猟兵と言う土嚢でも何でも積んでくれるわ!
手足の一本くらいは【激痛耐性】で誤魔化してしまおう
最悪、他の者への一手を引き受けてもよいぞ!なんせ地竜は懐が広いからな!
地形も崩れるそうだが【地形の利用】と【ジャンプ】で間合いから離れ過ぎない様に立ち回ろうか




 時間は、戦闘の少し前にさかのぼる。
 まっすぐに立ち、門番として猟兵に挑むゼファーは、酷く力強く見えた。
「全く。厄介な門番ね」
 才堂・紅葉(お嬢・f08859)はそういってぐるり、と腕を回した。お嬢様のような口調だったが、その動きは歴戦の戦闘員そのものであった。
「難敵ね。速度で劣る不利は極めて大きいわ」
「ああ。速い、それがあいつの強みか……俺様にはねェもんだな!」
 あっさりと頷いたのは、フィッダ・ヨクセム(停スル夢・f18408)である。じゃあ、と、ぐるりと真似をするように腕を回して、うん、と小さく頷いた。強がったって、仕方がない。強いものは強いと認めて、そして、
「ま……なんとかすっか」
 あっさりとそういって、彼もまた歩き出した。

 クーナ・セラフィン(雪華の騎士猫・f10280)もまた、天を仰いだ。
「何を願い祈ったのか……全くやな事を思い出させてくれるね」
 どこか、遠い目をするようなクーナに、静海・終(剥れた鱗・f00289)は歌うように頷いた。
「革命を謳い、また立ち上がり。もし私が貴女の背を見る者であれば、聖女の様に見えたかもしれません」
「やめよう、そんな言葉は。互いに譲れないならぶつかるだけ。お互いの屍を踏み越えて勝者が為したい事を為すだけ」
「……そうですね」
 クーナの言葉に、終は微笑んだ。
「きっと彼女は……そう呼ばれたかったわけでは、ないでしょうから」
 それもまた、あとに続く者が呼ぶだけのものだから。
「うん。それじゃあ……いこうか」
 とん、とクーナは地を蹴った。終も同じように一歩、踏み出した。
 花が散る。花が散る。
 それと同時に目の前の足場が、世界が崩れ去っていく。
「猫の足を……なめてはいけないよっ」
 クーナは地形を読みながら、足場を変え足場を変え移動していく。時間を稼ぐように遠ざかるクーナに、
「あの不愉快な嗤いを出す武器を真っ先に叩き壊したいくらいではありますが……」
 終は前進した。途端に不愉快な笑い声を立てる剣が終を出迎えた。

「礼儀を持って立たねばなりませんね」
 両角・式夜(銀錫赤竜・f01415)がそういって、己の獲物に手をかけた。ロティリア・マクディーナ(鋼の季節・f04370)は表情見えぬ顔のまま、肩をすくめる。
 何を考えているのか、いないのか。
 見つめるロティリアの表情はわからない。その隣で式夜が名乗りを上げる。
「お互いに譲れない物があると理解があってのぶつかり合いならば結構である。革命だの正義だの理想など生い立ちなど二の次だ! 得物を持て! 武人の礼儀だ! その暴風で猟兵が散らせるか試させて貰おうか!!」
 抜刀し、駆け出す式夜。
「随分と人間臭いオブビリオンだな……あぁ、嫌いじゃない」
 少し遅れて、ヴィゼア・パズル(風詠う猟犬・f00024)はふらりと足を踏み出す。ケットシーである彼はどこか人とも、猫とも取れぬ足取りで歩き出す。
「譲れない信念がある――それは此方も。ゼファー! 貴女を仕留めます!」
 決意は強く。そう声を上げて駆け出したのはユーフィ・バウム(セイヴァー・f14574)であった。拳を握り締めて走りこむ姿。
 強い気持ちと共に走り出す猟兵たちに、ロティリアも枯れ葉色の羽をかすかに瞬かせる。……そして、
「どこまでも、誰よりも速くなりたい。その結果前にも、後ろにも、横にも誰も居なくなっちまったンすね」
 振りきってしまったのか。その声は、仲間たちの思いはゼファーに届くのか。それはもう、誰にもわからないだろう。……けれど、
「それじゃあ、どれほど速くなったか判らないでしょう? だから――ひとっ走り付き合ってやるっすよ、《疾風》サン」
 どこか軽く。どこか真摯に。ロティリアもそういって、表情の見えぬ顔で戦闘を開始した。


 風が吹く。地形が崩落していく。
「っと、これは頂けねェな」
 こんなんじゃバスも走れないと、フィッダは暢気に言う。その隣を、
「失礼、利用されてもらいます」
 それに紛れるように、紅葉もまた地を蹴った。
「ああ、どーぞ」
 気楽に言って、フィッダは素早く周囲を見回した。両の足で立てそうな場所へと駆け出す。
 ゼファーは冷静に対処する。遠ざかっていくフィッダと、攻撃の意思を見せる紅葉。初速、一瞬で距離を詰め、剣を手に一撃を紅葉へと叩きつけた。
「……っ、こ、の……!」
 身をかがめて、足場を落下するていで紅葉は逃げる。避け切れなかった剣が彼女の頬をかすめて血を落とす。それでも立ち止まってはいられない。
「これがゴッドにもデモンにもなれる魔導蒸気文明の申し子……あのマッド共、いつか締める!! 蒸気王!!」
 叫んで。紅葉は蒸気バイクをコアとする巨大蒸気ゴーレムを召喚した。ゴーレムはその巨体で持って走り出す。
 攻撃は行わない。紅蒸気を全開にしてゼファーとすれ違うようにかけていく。
「行かせは、しない……!」
 門番はすぐさま取って返す。守るという役割を果たすべく駆け出した。ゼファーの速さにゴーレムは勝てない。ゼファーはゴーレムを追い越して、
「そこだぁっ!!」
 そんなことは紅葉もわかっていた。そして追い抜く瞬間、必ず彼女はこちらを確認すると。……それが彼女の隙になると。
 ゴーレムの手が開く。その中に隠れていた紅葉が、古びたリボルバーを構えていた。
「打ち砕きなさい、蒸気王!」
 声を上げると同時に、紅葉もまた風の詠唱弾を放つ。
 それに合わせるように、蒸気王の拳が叩き込まれた。
「……やる、な」
 その様子を横目で見やって、フィッダも走る。
 決して足は速くはない。崩壊に巻き込まれて、そして風に打たれて体は今にも砕けそうだ。
「間に合え、間に合え……大丈夫だ」
 それでも、辛うじて。
 オーラで防御された足は、崩れる足場をギリギリ捉える。
 そして振り返り、フィッダは敵へと向き直った。
 丁度紅葉とその蒸気王が、己を追い越したゼファーに攻撃を仕掛けるその瞬間。
「バス停が待つだけッつーのは、誰が決めたんかねェ? ……空だって飛んだやらァ」
 言って。フィッダは錬成カミヤドリで己の本体を複製する。
 一部が「つ」の様にひしゃげたバス停は、見る間に周囲に浮遊して、
「俺様はバス停だが、此処は別に終点じャねェと思うんでね。所詮俺様は、中継地点程度だろ。……ならどこまでも邪魔してやらァな!」
 叫んで、投げた。
 今が腕の見せ所だといわんばかりに、フィッダはバス停を投げ続ける。
「俺様が、窮鼠だ!」
「な……っ」
 流石に驚いたのか。飛んでくるバス停に眼を奪われるゼファー。そこに、紅葉の蒸気王の拳が炸裂した。

 剣が不快な音を立てている。
 先ほど猟兵たちが一本をうがち、残り一本となってもゼファーの動きは変わらなかった。
「……っ、これは一滴の、深紅の御伽噺」
 血を流し、それにより終わりは回復を繰り返す。なるべく致命傷を避けて、回復を続け、蒼槍を振るい続ける。
「門番、時間稼ぎなどとまるで後方に後を任せるような物言い。誰かに未来を託してなんて美談にないでくださいませ。自分のいる未来を強く描かない者に、未来を渡す事など出来る訳ないでしょう?」
 辛うじて蒼槍は車輪剣の動きについてくる。傷だらけのゼファーはやはり、その仮面を取ることはない。だからどんな表情をしているのかは、終にも解らない。
「私が貴女の背を見る者なら言うでしょう。1人で選び何かを犠牲にする事を前提とした革命に未来などない、と」
「私は、自分を犠牲にしているつもりは、ない」
「そうでしょう。……そうでしょうとも。あなた様は、周りの見えないお方だ。……胸を穿つ全てを振りきって、駆け抜けていくお方だ」
「解って、いるのなら」
「ええ。わかって……おりますとも」
 言葉は不要だと、ゼファーは言った。
 勿論その通りだと、終も頷いた。
「私は、私の力で道を切り開く」
「ならば私はそれをお止め申し上げます。悲劇は殺して、壊しましょう」
 車輪剣が馬鹿にするような声を上げる。
 黙れと、終は口にするその前に。
「……これだけの距離、避けられるでしょうか?」
 蒼槍が走った。
 同時に車輪剣も走った。そのとき、
「どんなときにも、一人より二人。仲間と一緒の方が言いに決まっている。……こんな趣向はどうだい?」
 雪混じりの花吹雪が、クーナの突撃槍から舞い落ちた。
 凍結と幻惑により動きを封じるクーナの技は、タイミングを見計らってゼファーの目をくらますように落下する。
「暴風では砕き切れないささやかなモノ、そんなのだって存外やるものだ。……花を散らして進むキミが何を望んでいたかは知らないけど」
 クーナは槍を向ける。その美しい景色がゼファーにも見えているのかどうかは解らない。
「その情熱がもしも寄り添える物だったら……ううん、たらればはやめよう」
 そっと目を伏せるクーナ。……その、一瞬の隙をついて。
「私はこの一撃に全てをのせる!」
 終の槍が、ゼファーの胸を貫いた。
「く……っ!」
「まだだよ……まだ倒れていない!」
「はい。承知して……おります!」
 珍しく声を上げる終。終は一瞬でその槍を引き抜いた。でなくばへし折られそうな気配が、そこにはあった。
 血が噴き出す。それでも彼女は未だ立っている。
「まだ……。まだ、終わってない、まだ、負けない!」
「だったら……気ままに私たちも、前に進むだけさ」
 クーナの声が聞えているのかどうかは解らない。ゼファーは血まみれのまま剣を握り締める。

「は……あ!」
 風が走った。もはや傷だらけであるというのに、ゼファーは最後までその攻撃の手を止めることはない。
「……つっ」
「おお、大丈夫か!」
 避けきれない攻撃に、ユーフィが覚悟を決めた一瞬、式夜が庇うように前に出た。剣と共に、己の刀を合わせる。
「ああ。ありがとうございます! でも……」
「なに、案ずるな! わしは風には弱いが……剣の腕では負けてはおるまい!」
 それに、今まで風除けに使わせてもらったしな! などと冗談めかして式夜は笑いながら、
「さあ。まだまだわしはやれるぞ!」
 と、にやりと笑っている。
「だったら、次はわたしが庇います!」
「おお、心強い!」
 ゼファーは剣を傾けて、車輪の軌道をそらす。風に乗せて式夜の腕をまっすぐに切り落とす。
「おぉぅ! こ、の……!」
 腕一本を犠牲にして、式夜はそれをギリギリで捌いた。いっそそちらと同じように自分で落とすほうが清々するかもなあ! などと。襤褸切れのようになった腕で式夜は言う。
「そう……。こちらもまだ止まらない。このまま……限界まで加速する!」
「いいっすよ。相手になるっす」
 それでもなお駆けるゼファーを、ロティリアも宇宙バイクと共に追いかけた。崩れる足場も、吹きすさぶ暴風も、何とか自分の知識を繋ぎ合わせて、その動きを予想して。ロティリアは銃を構える。
「ある程度の痛みは……覚悟の上っすよ」
 そのまま引き金を引いた。風と共に、ゼファーはそれをかわそうとする。そこに、 
「強く美しい人よ、同じ風使いとして、ならば、せめて敬意を贈ろう!」
 ヴィゼアが精霊翼を翻す。
「時渡り風に乗り、姿変えし蝶の翼よ……遊べや遊べ」
 指揮杖が一瞬にして、刃の如く変化した黒蝶ダリアの花びらへと姿を変えた。吹きすさぶ風に乗るように。あるいはその間を縫うように。ゼファーの体へと吹きすさぶ。
「……!」
「早過ぎる風は……急には止まれない。せめて花を添えよう。強く美しい人よ。あなたは……強すぎたのだ」
 そのあり方を美しいと感じ、
 だが同時に、そのあり方をほんの少しだけ悲しいと感じる。
 だからせめて。これで送ろうと。
 降り注ぐ花びらの中、ヴィゼアは呟いた。
 もはや全身は傷だらけであった。それでもゼファーは顔を上げている。
「あ……。ああああ!」
 まだ。負けられないと。最後まで、立ち止まれないと彼女は声を上げている。
「い……くぞ! ええいこの程度、何の障害にもならんわ!」
 だから式夜が走る。崩れ行く世界の中を、式夜の刀が一閃する。
「……は、あ!」
 しかしそれを、ゼファーもギリギリのところで受けた。
 けたたましい笑い声が聞えている。
 血に塗れたその手でなお、ゼファーは戦うのをやめなかった。
「私は、最後まで、諦めないッ!」
「平和な世界を……平和な世界を作るためですか!」
 ユーフィが追いついて、大剣を振るいながら叫んだ。先ほどのゼファーの言葉を聞いていたからだ。
 願いは。思いは。理解できるものであった。正しいものであるはずだった。
 なのにどうして……こんなに違ってしまったのだろうか。
「どうして。わたしたちだって、同じことを考えているはずなのに……!」
「信念があり、闘う事でしか分かり合えない者が居る。妥協出来ない事であれば尚更に……」
 ヴィゼアが目を伏せる。彼女の意思を尊重すべきだとヴィゼアは言った。それは、ヴィゼアには解っていたからだ。
 ダリアの花の向こう側で、ゼファーは絶対に自分のやり方が正しいと思っている。
 そして、ヴィゼアたちも同じ事だ。絶対に彼女のやり方が間違っていると思っている。
 絶対と、絶対がぶつかったときは、どちらが折れるしかない。自分から折れることは、できない。
「だってそれは、私たちも同じこと。それを……誇りと言うのだろう」
 例え歪んでしまったとしても。
 例え彼女のやり方では、先に破滅しか待たないのであっても。
 それでも、彼女がそうと信じて戦うと言うのなら、
 ヴィゼアもまた、自分たちの信念で持って誇りを持って相手を砕こうと声を上げた。
 ユーフィは拳を握り締める。
「理想も、望みも、歪ませ塗り潰すのがオブリビオンだというなら! 私たち猟兵は、あなた達を狩り尽くす!」
「……」
 ユーフィーを見て、ロティリアは引き金にかける手を一瞬、止める。
「僕も、愚直に、真っ直ぐに、自分を省みず眼前の敵を斃す。――きっと、これは昔のアンタのやり口と一緒でしょうよ」
 ……ああ。だから。
 自分たちは、こんなにも……。
「故に最初から言っている。……勝ったものが正義だと!」
 式夜が吼えた。全力の一刀はゼファーの腹を貫いた。ユーフィは拳を握り締める。
「さあ、いまだ!」
「はい! 行きますよぉっ! ――頑丈なのが取り柄ですっ」
 車輪剣が走る。式夜からそれを守るようにユーフィは立ち塞がる。そのまま痛みを全力で堪える。そして、
「これが森の勇者の、一撃ですっ!」
 全力で、ゼファーの体を殴りつけた。
「……貴女を元に戻す力が私にもしあったなら。そう思うのは、何故でしょうか」
 ユーフィの言葉。それで、終わりであった。
 終がすかさず歩み寄る。
 ロティリアが足を止めて、そっと見送るように目を伏せた。
 クーナは安堵するような。どこかため息をするような吐息をそっと漏らして、
 ヴィゼアは……唯そっと。舞い散る花びらを一枚、手に取った。
 数多の攻撃を受けて、ゼファーの体が砕け、ゆっくりとその存在感を失いつつある。このゼファーはこのまま、消えてしまうようだった。


 もはや周囲を舞っているはずの花びらすら見ることが出来ない。
 風は止まり、世界は色を失っていく。
 唯、それでも先に進まなければならないと。この手が動く限りは。この足が動く限りは。止まることは許されないと。彼女はちゃんと知っていた。
 なぜなら、この背には……。
 伸びた手を掴む手があった。
 それが誰かを判別するのはもう難しかった。
 手を伸ばす。握られていたはずの剣はもうどこにもなくて、
 彼女は、切り落とさなかったほうの腕が、きちんと腕の形をしていたことに、ほんの少しだけ安堵した。
「そう……。私の負け。歴史は、あなたたちを選んだ」
 掴んだ手をたどる。腕を伸ばす。誰かの頬に触れたから、それが嬉しくてそっとなでた。血まみれの手で、悪いことをしてしまったなと。なんとなく、彼女はそう思った。
「どうか、この世界の未来をお願いします」
 言葉が、最後まで伝わったかどうかも解らない。
 一度だけ優しい風が吹いて、それがやんだとき、彼女の姿はもうどこにもなかったから。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年05月25日


挿絵イラスト