バトルオブフラワーズ⑪〜疾風、西より来る~
●荒れ狂う西風の嵐
システム・フラワーズの中枢へ至るための関門も既に3つめ。ドン・フリーダムへ至るための最終関門。その関門を為すは、これまでの幹部オブリビオンたちとは異なり、純粋な戦闘能力により猟兵の足止めを狙う者。その名をスピード怪人ウィンドゼファー。
西風の怪人が目論むは猟兵の撃破ではなく、ドン・フリーダムが計画を完遂するまでの時間稼ぎ――捨石としての覚悟を決めた嵐が猟兵を待ち受ける。
●真剣勝負
グリモアベースにて。ニコラの背後にはもはや猟兵たちにも見慣れた光景であるシステム・フラワーズの内部空間が映し出されていた。絢爛たる花の絨毯の上でスピード怪人ウィンドゼファーが堂々と待ち受けている姿は、これまでの幹部2人と比べるとやや決死の覚悟の滲むものであった。
「いよいよ大詰めね――ドン・フリーダムに至る最終関門。待ち受ける幹部級オブリビオン、スピード怪人ウィンドゼファーにエイプモンキーやラビットバニーのような特殊能力はないわ」
拡大表示されるウィンドゼファーを指差してニコラは言葉を続ける。
「――逆に、彼女はああいった特殊能力なしに幹部級の戦闘力を持つということよ」
バイクの車輪やハンドル、あるいは気筒といったパーツを模した造形のウィンドゼファーは、その名の通り風を操る能力を持つ。逆にいえば、その能力だけで十分な戦闘能力を持つということであり――
「機先を制して先制をかけてくるのはこれまでの幹部たちと同じよ。特別な攻略法ではなく、地力や機転からくる対応力が問われるわ」
想像力もエモさでもなく、問われるのは純粋な戦いのセンス。これまでとの幹部の戦いでは弱点を突いての一発逆転があり得たが、ウィンドゼファーとの戦闘は細かな積み上げがモノをいう詰将棋に近い。
「ウィンドゼファーのユーベルコードは、戦闘力と速度上昇、周辺一帯への無差別攻撃、そしてダメージ軽減モードへの移行の3つよ。各自が仕掛ける際の参考にしてちょうだい」
その単純明快な能力ゆえに、ニコラの説明も手短に終わった。ぐるりと猟兵たちを見回し、ひとつ頷くとニコラは転移ゲートを展開する。
「――勝って帰ってくるのを信じているわ。皆、いってらっしゃい」
転移ゲートを抜ければ――そこには小細工無用の真剣勝負が待っていることだろう。
Reyo
はじめましての方ははじめまして、そうでない方はいつもありがとうございます。Reyoです。幹部との戦いも3戦目、関門はこれで最後のようです。
さて、本シナリオでは以下のルールがあります。
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敵は必ず先制攻撃します。敵は、猟兵が使用するユーベルコードと同じ能力値(POW、SPD、WIZ)のユーベルコードを、猟兵より先に使用してきます。
この先制攻撃に対抗する方法をプレイングに書かず、自分の攻撃だけを行おうとした場合は、必ず先制攻撃で撃破され、ダメージを与えることもできません。
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エイプモンキーやラビットバニーと異なり、特殊な攻略法のないオブリビオンです。先制攻撃にいかに対処し、猟兵の有利を積み重ねるのかが重要となります。プレイングには戦場でどのように振舞うのか、皆さまの戦略・戦術をご記載いただければ採用しやすくなります。
それでは、皆様の敢闘をお待ちしております。
第1章 ボス戦
『スピード怪人『ウインドゼファー』』
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POW : フルスロットル・ゼファー
全身を【荒れ狂う暴風】で覆い、自身の【誰よりも速くなりたいという欲望】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
SPD : レボリューション・ストーム
【花の足場をバラバラにする暴風】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ : ソード・オブ・ダイアモード
対象の攻撃を軽減する【全タイヤ高速回転モード】に変身しつつ、【「嗤う竜巻」を放つ2本の車輪剣】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
イラスト:藤本キシノ
👑11
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
マリア・ルート
無限大の欲望が何かは知らないけど、それを望むだけの実力を見せてもらおうかしら。ワイルドハント【殲滅担当】マリア・ルート、あんたを討滅しに来たわよ。
先制攻撃が来たら【紅黒共闘】で■■■を召喚し、その場において私はバックステップ。そう、囮よ。わざと発動させて私はその射程圏外に逃げればいい。あいつもわかってくれるでしょ……
これが成功すればあとはロングレンジからの戦いね。【一斉発射】【2回攻撃】でひたすら相手を狙い撃ちにするわ。相手がスピードの速さをいかして飛び回ったら散弾にして広範囲攻撃。
相手の足が止まったらチャンス。ミドルレンジまで距離を詰めて、【槍投げ】【串刺し】で床に縫い付けてやるわ!
リーファ・レイウォール
▼WIZ
◆先制攻撃対策
【高速詠唱】と【全力魔法】でUCで双檄を召喚
敵の攻撃を【見切り】
2本の車輪剣には、20本ずつ召喚した双戟で【武器受け】
▼攻撃
正面で相対しつつ、敵の動きを見てタイミングを【見切り】
10本を残して、双戟を【誘導弾】で嗾ける
【鎧砕き】して防御を崩すわ
砕けないなら【鎧無視攻撃】で『全タイヤ高速回転モード』すら無視して
【串刺し】にしてあげるわ
【スナイパー】で一点集中の波状攻撃
双戟の特性を活かせば、風を切り裂いて穿ち貫ける。絶対にね
残した10本は、敵を囲むように地面に穿ちます
そこへ雷【属性攻撃】の通常魔法を放って『誘雷』
【生命力吸収】を乗せ、ダメージ与えつつ敵の足下を崩すわ
ニィ・ハンブルビー
◎
風を操る正統派怪人!
わかりやすい弱点がない分、むしろ手強く感じるね…!
普通に殴っても避けられそうだし…
よし!ここは肉を切らせて骨を断つ作戦で行こう!
まずは『ナノマシンアーマー』と『ビームシールド』を起動して防御力確保!
そのまま【ダッシュ】や【ジャンプ】で狙いを絞らせないよう動き回りつつ!
危ない時は背中の『ウェポンエンジン』で自分を【吹き飛ばし】て緊急回避!
致命傷を避けつつ【力溜め】して機を伺うよ!
敵が痺れを切らして全速力で突っ込んで来たら【カウンター】だ!
あの速さなら正面から当たればそれだけで致命的なはず!
【ズバズバの魔法】で巨大剣を召喚して!
そのまま命中重視の一撃をお見舞いするよ!
竜胆・エレナ
ファータちゃん(f02060)と
こういう、覚悟を決めた女って手強いのよね、ホントに。
油断は禁物ね!
先制攻撃の車輪剣の攻撃は、ファータちゃんを『かばう』わ。
ついでに『オーラ防御』で耐え抜くわよ!
目眩しが出ないことには始まらないものね!
「任せて!」
目眩しが出て隠れられたら反撃タイム!
竜巻と車輪剣をやり過ごしたら【ウィザード・ミサイル】よ!
基本的にオーラ防御で相手の攻撃は凌ぐけど、攻撃時の防御はファータちゃんに任せるわ。
「行くわよ!」
「アンタ程の力がありながら、時間稼ぎのために身を張るなんて、アンタのボスは余程の傑物なのね」
「アタシ、アンタみたいな生き方の女は嫌いよ。羨ましくなっちゃうじゃない!」
ファータ・カンタータ
エレナさん(f08680)と
シンプルが故に強力で、脅威ですね
気を引き締めていきます
戦闘開始直後
周りの花々を念動力と魔力で操り辺りに物凄い花吹雪を発生させます
竜巻で一掃されるかもしれませんが一瞬でも目眩まし出来れば御の字
その一瞬で花の中に身を隠します
車輪剣があたった時のことを考えオーラ防御を全力で展開
リスクがある技なら無駄に長期使用はしないはず
回転モードが解除したら宿る生命の息吹を使用
敵の装備を根に変え、敵の動きを封じるよう操ることで少しでも隙が作れれば
「エレナさん、今です!」
エレナさんへ攻撃が行きそうなら再度花吹雪を発生させてフォロー
傷を負ったら救援活動、医療などの技能を駆使して回復
楠木・美羅
@WIZ
「く、来るとわかってるのなら、覚悟を決めます…!こ、こわいですけど…」
わたしだけが攻撃を受けるわけじゃない。傷つくであろう皆を癒して
攻撃を行いやすいように【聖痕】とUCである癒しの光をメインで使います
「嗤う竜巻」を誘発させて、風の【属性攻撃】。自分の周囲に竜巻を発生させて相殺しようと試みます。
完全には相殺できないのを覚悟で、限界まで耐えながら回復した方々に一斉攻撃してもらいたいです
「わたしの光……受け取ってください…!」
例え無事に済まなくても全力を出していきます!
荒谷・ひかる
@
(震えが止まらないくらい恐い……けどっ)
この世界は、わたしの第二の故郷……好きには、させないんだよっ!
お友達の精霊さんを鼓舞して力を借りて防御を試みる
雷撃、火球、石礫で牽制
竜巻に風でと重力(闇)で干渉、水飛沫と光で幻惑して目くらまし
草花の地形を隆起させて壁に、わたし自身は氷の盾を持って身を守る
多分、ほとんど破られると思う
けど最低限、精霊さん達に「お願い」するだけの意識が残れば、それで十分
わたしが動けなくても、精霊さん達は自分の意志で動いてくれるから
「お願い」するのは「積乱雲」
どんなに風が強くて速くても……「雷」からは逃げられない
わたしという「友」を傷つけられた彼らの怒り……受けるといいんだよ
●暴風域
――これまでと違う点を、先ずは述べよう。
第1に、スピード怪人ウィンドゼファーが最初から敗北を覚悟していたこと。
第2に、何らかの特殊能力からくる慢心や油断が彼女に存在しないこと。
そして最後に……その2点を理由として、彼女が常時臨戦態勢であったこと。
「――なるほど、そうやって此処に至るか、イェーガー!」
フルスロットル・ゼファー。荒れ狂う暴風は既にウィンドゼファーの全身を覆い、転移ゲートを目視した瞬間から動き出すだけのスピードを許していた。
「覚悟を決めた女っていうのは、これだから――!」
転移直後、既に眼前に迫りつつあったその紅いヘルムに悪態をつきながら竜胆・エレナ(ドラゴンお姉さん・f08680)はさらに前へと出る。
「前に出るその心意気は買いますが……!」
「アンタと同じよ! 命を投げて身を張って……そうしたい相手が居るってこと!」
ウィンドゼファーが振り回す車輪剣に対し、エレナは無手――ただ竜の闘気を纏っただけの双腕を構え、車輪剣を支える軸を受け止めるように伸ばす。
「――だから、羨ましくって大嫌いよ! ウィンドゼファー!」
受け止めてしまえば、あとは耐えるだけとでも言うように。暴風に吹き荒れる花の絨毯の上でエレナはウィンドゼファーと対峙する。車輪剣が唸りを上げてエレナの鱗と竜闘気を削り――数秒とせぬうちに赤い飛沫が花びらの舞に混じった。
「戯言を……! ならば、その思いを抱えたまま、ここで散りなさい!」
「それはお断りするわ! ――羨ましくはなるけれど、言ったはずよ……アタシも、守りたいものがあるって!」
鍔迫り合いにすらなっていない、ただウィンドゼファーに肉を切らせ続ける壁と化したエレナが、けれどもその一言を吐いてニヤリと笑う。
「みんな、行くわよ!」
応、という応える声は四方八方から。エレナが前に出てウィンドゼファーの目を引き付けた間に、既に6名の猟兵たちが準備を終えていたのだ。
エレナがとった戦術、それは肉斬骨断――なにも、その手法を行うのに肉を切らせる者と骨を断つ者が同じでなければならないという道理はない。
「――貴様ら、まさか……!」
「風を操る能力、確かに強力ですけれど……別に貴女の専売特許じゃあないんです!」
ウィンドゼファーがエレナの狙いに気づいて踵を返す頃には、もう遅い。事前の打ち合わせ通り、エレナのカバーリングに合わせて突入していたファータ・カンタータ(遥か彼方の花びら・f02060)が、花吹雪の中からユーベルコードを発動する。範囲内の無機物を木の根に変えるそれの名は「宿る生命の息吹」――ウィンドゼファーの姿を範囲内に捉えたことにより車輪剣の一部を脆い木へと変換し、一時的に無力化する。
「私の能力を、逆手に取るとは……!」
そう、この空間で花吹雪が発生するのはウィンドゼファーがいる以上当然のこと。暴風を纏う彼女を中心として常に巻き起こっていたそれを、猟兵たちは拡大し身を隠す遮蔽物として利用したのだ。
花吹雪の舞う暴風域――ウィンドゼファーの領域であったはずのそこは、その実、猟兵たちの機転によりウィンドゼファーが狙われる狩場へと変質していた。
●フルスロットル
「そこの領域には迂闊に近寄れない、ということですか……!」
エレナに切りかかっていたところを捕捉され、車輪剣を木に変えられたウィンドゼファー。マッハを超える圧倒的な機動力で一時的に間合いを稼ぎ、ファータのユーベルコード範囲から離脱したことにより車輪剣は元の姿へと戻るが……近接戦を主とするウィンドゼファーにとって立ち回りの難しい範囲が生じた事実には変化がない。
さらに付け加えるのであれば、一時的に嵐を鎮めて花吹雪を抑えても、転移ゲートからの突入時にファータをはじめとする猟兵の手によって巻き起こされた別の嵐や花吹雪がウィンドゼファーの視界を妨げ続けている。視界の悪さは猟兵側にもあるとはいえ、多数で連携し追い詰めることが出来るという利点はどこまでも大きく、ウィンドゼファーにとっては不利に働いた。
「……そこに閉じこもるのならば、そうすれば良い! まとめて薙ぎ払わせてもらいましょう!」
だが、仮にもウィンドゼファーは幹部級オブリビオン。相手にとって安全な領域が存在するのであれば、そこを含む一帯を薙ぎ払う程度の力量は有している。
「……その瞬間を、まっていたよ!」
ウィンドゼファーが足を止め、ファータが形成する安全領域を薙ぎ払おうとした瞬間――黒い長髪をなびかせた猟兵がウィンドゼファーの間合いへと踏み込んでいた。
「クッ――!」
「ワイルドハント、殲滅担当。マリア・ルート。あんたを討滅しに来たわよ!」
振りかぶられた長槍を見て、ウィンドゼファーは車輪剣による迎撃を選ぶ。一閃同士がかち合って、凄まじい衝撃波が周辺一帯を薙ぎ払った。
「安全域から出てくるとは、思っていませんでしたよ、イェーガー!」
そのまま、ウィンドゼファーは車輪剣を振りぬく――黒髪の猟兵が構えていた長槍ごと切り払うように。圧し負けた黒髪の猟兵が、まるで木の葉のように吹き飛ばされる。
「ふん、闇討ちならできるとでも思いましたか?」
吹き飛んだ猟兵の方を一瞥するとウィンドゼファーは改めて猟兵たちが居る筈の領域へと振り返り――頭部を強かにぶったたかれた。その打擲は一発に留まらず、その後に数百の連打を伴ってウィンドゼファーを襲う。
「――一体、どういうッ!」
「一箇所に引きこもるなんて、そんなのは戦術じゃないでしょう! ――改めてご挨拶するわ、マリア・ルートと!」
降り注ぐ無数の槍――厳密にいえば双戟という形状のそれに紛れ、マリア・ルート(黒き面影に囚われし根源姫・f15057)がウィンドゼファーに銃剣付き小銃を突き付ける。
「あんたがさっき吹き飛ばしたのは、私の影――ユーベルコード製の分身を吹き飛ばして、いい気分になれたかしら?」
「あれも囮、ですか――!」
「2度通じるとは思ってないわ。だから、これを喰らいなさい!」
マリアのフルオート射撃が戦場へ響き渡る。超至近距離からのその連撃は一発一発がウィンドゼファーにとって致命でなくとも、絶え間ない衝撃によりその動きを阻害した。
「弾切れまでの10秒間、付き合ってもらうわよ!」
マリアの言葉通り、エクステンド・マガジンに込められた200発の弾丸は10秒もあれば尽きる。しかし、10秒という時間は――猟兵にとっては攻撃の用意をするのに十分な時間だ。
「――天を切り裂き顕現なさい、雷轟の方天戟……!」
ドドドド、という音を立て、つい先ほどウィンドゼファーを打擲した双戟が花の絨毯へと突き立つ。しめて180本余りのそれを呼び出し使役するのはリーファ・レイウォール(Scarlet Crimson・f06465)だ。足場に突き刺さったそれらは帯電し互いの間にばちばちと雷撃を迸らせ、ウィンドゼファーを押しとどめるための牢獄を形成した。
「……準備完了! ――私ごとやっちゃって! でないと……こんなチャンス、もう2度とない!」
カキン、と全弾を吐き出し終えたことを告げるマリアのライフル。リーファの形成した牢獄にウィンドゼファーと共に閉じ込められたマリアだが、その表情には己の仕事をやり切ったという確信と満足がある。
「ごめんなさい、マリアさん――だから、来て、精霊さん……!」
マリアの声に応えたのは、リーファと並んで精霊祈祷を行っていた荒谷・ひかる(精霊ふれんず癒し系・f07833)。彼女の呼び出した雷を司る精霊は花の絨毯の上に黒々とした積乱雲を呼び出し、直下に形成された双戟の牢獄目掛けて直撃雷を降らせた。
「ぐ、おおおおおお!!」
マリアごと撃ち貫いた雷撃を受け、ウィンドゼファーが苦悶の声を上げる。
「この世界は、わたしの第二の故郷……好きには、させないんだよ!」
畳みかけるようにしてひかるの呼び出した精霊たちがウィンドゼファーへと迫る。リーファの形成した双戟による牢獄を満たすのは雷に加えて火と超重力。無論、そんな過酷な環境に仲間を置き去りにするわけもなく、足場である草花へと宿った精霊がひかるの指示に従いマリアの体を牢獄から運び出した。マリアの体がファータの安全領域に届けばすぐさま楠木・美羅(人間の聖者・f11798)がユーベルコードで治療を開始。直撃雷のほとんどは金属部分に引き寄せられてウィンドゼファーを打ったが、そこに巻き込まれる覚悟で足止めを完遂したマリアはほぼ戦闘不能の状態だ。つかさの繰り出した一撃の重さの証拠であり――それでもまだ倒しきれないウィンドゼファーの地力を示してもいる。
「――この程度で……!」
リーファが基礎を作り、つかさが完成させた牢獄の中でウィンドゼファーが声を上げる。雷と炎に苛まれ、精霊の力で花の絨毯に伏せられていても――ウィンドゼファーの闘志は未だ絶えず。
「この程度で、私の風は止まらないッ!」
車輪剣を翼のように広げて構え、踵と右肩のタイヤが全力で唸りを上げる。左胸から生えた2気筒はけたたましく唸りを上げ――次の瞬間、リーファの撃ち込んだ双戟の数本が割れて爆ぜた。
●風の行く末
車輪剣で戟の牢獄を破ったウィンドゼファーが猟兵たちへと突撃する。超重力によりその初速は咎められているが――それでも音に迫る速度の突撃は驚異の一言。一直線に向かうのは、猟兵たちの援護を務めるファータと美羅の居る方向である。
「その領域の中心――そこに居るのだろう、イェーガー!」
「く、来ると判っているなら……!」
万が一にでもウィンドゼファーの攻撃を無力化できる可能性がある安全領域を維持するファータに代わり、恐怖を押し殺しながらウィンドゼファーに立ち向かうのは美羅。彼女の背後には、先の奇襲を成功させるマスターピースとなったマリアの姿。癒すべき者を背にした時、美羅に逃げるという選択肢はない。
「癒し手が貴様一人なら――狩れば、戦場は崩れる!」
「そうは、させないよ!」
寸でのところでリーファが戟を構えて妨害に入る。魔力で統率された双戟はリーファが手にするまでもなく宙を舞い、数十本が円陣を組んでウィンドゼファーの車輪剣を受け止めた。一瞬とはいえウィンドゼファーの動きが止まり、ファータは車輪剣を木へ変えるべくユーベルコードの狙いを定めるが――
「守るということは――やはり重要なのだろう、彼女が!」
リーファの操る戟を数本まとめて叩き折りつつ、ウィンドゼファーが宙を舞った。圧倒的な速力に裏打ちされた機動力は一瞬でウィンドゼファーの体を猟兵たちの射程圏外へと運び、攻撃の暇を与えない。
「――さぁ、イェーガー……止められるというのならば止めてみろ! 私の名前はウィンドゼファー――荒れ狂う暴風、最速を願った者だ!」
クラウチングスタートの姿勢から、加速は一瞬。音を置き去りにしたウィンドゼファーの車輪剣が狙うは、猟兵たちの継戦能力を保証する美羅。加速距離も十分な今回はリーファ操る数百の戟でも受け止めきれないことが一目瞭然であり、ファータのユーベルコードが効果を発揮するよりも前に美羅は車輪剣の一撃に切り伏せられるだろう。
「――そうやって、痺れを切らすのを待っていたよ、ウィンドゼファー!」
――肉を切らせて骨を断つ。であれば、骨を断たせてさらに狙うはその命。ウィンドゼファーが彼女の持つ最高速度で突撃するのを心待ちにしていた最後の猟兵が名乗りを上げた。
「あれだけのことをやれば、美羅ちゃんを狙うと思ってたよ! ――その速度じゃ、ブレーキももう間に合わないでしょ!」
「――ッ!」
ウィンドゼファーの目の前に、刃渡り数十メートルもあろうかという超巨大剣が突き刺さる。その柄を握り振り回したのは身の丈数十センチのフェアリー――妖精猟兵、ニィ・ハンブルビー(怪力フェアリー・f04621)だ。ただ一撃を当てるために花吹雪に姿を隠し続けていた妖精は、攻撃を放つのではなくウィンドゼファーの進路上へと「置く」ことによりその刃を必中へと昇華した。
斬、という重い音がするのと同時にウィンドゼファーの体が真っ二つに割れる。僅かに体軸をずらすことには成功したようだが……右肩から左腰にかけて両断され、2つに別れて花の絨毯に倒れ転がるウィンドゼファーの命が長くないのは誰が見ても明らかだ。
「――私は、最速が故に敗れたと?」
「そうね、その速さがなければこんなに綺麗に切れなかったもの」
倒れたウィンドゼファーの問いに、賛辞の色を込めてニィが答える。
「……そうか。私の風は、最速へと至っていたか」
最後にぽそりと。己の欲望が成っていたことを噛みしめるとウィンドゼファーはゆっくりと骸の海へと還った。復活を果たした後も、きっとその胸に残るであろう満足感を携えて。
大成功
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