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バトルオブフラワーズ⑪〜止める訳には、いかないから

#キマイラフューチャー #戦争 #バトルオブフラワーズ #ウインドゼファー

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「私達は全てを手に入れる。誰にも、邪魔は、させないッ!」
 何が彼女をそうまで駆り立てるのか。かつて失敗した記憶が、それほどまでに痛ましいのか。彼女はかつて崇高な理想を追い、そして破れたのかもしれない。その理想を今度こそ叶えんと、戦っているのかもしれない。
 けれども彼女はオブリビオン。その手が栄光を掴むことはなく、ただ破滅への標を示すのみ。

「第一、第二の関門の突破、おつかれさまでした。けれど、わたしたちはなお弛まず、ドン・フリーダムを撃破するために進み続けなければなりません」
 枦山・涼香(烈華なる黒狐・f01881)は、柔らかく笑って猟兵たちを迎え入れた。。
 猟兵たちの前に立ちふさがる新たなる怪人の名は、スピード怪人『ウインドゼファー』。
 風を操るユーベルコードを得意とする彼女は、その名の通り、あまりに速い。どれほどスピードに自身がある猟兵とて、彼女の攻撃に先んじることは叶わない。
 そして、彼女の荒ぶる意志が込められたユーベルコードは苛烈であり、ただ漫然と立ち向かうだけでは、刃を交える資格すら得られないだろう。
 幾度となく蘇る彼女を倒し切るため、策を弄し、技の限りを尽くせ。風を操るユーベルコードを凌ぎ切り、彼女へと肉薄し、あるいは一瞬だけ覗く隙間へ彼方から、己の力の全てを叩きつけろ。
 その暁に、スピード怪人『ウインドゼファー』は骸の海深くに沈む。
「彼女に打ち勝つことは、容易ではないでしょう。けれど決して不可能なことではありません。皆さんなら必ずや打倒してくれるものと、わたしは信じています。――良い報告を聞かせてくださいね」
 そう告げた涼香は、転移していく猟兵たちの背中を毅然と見送っている。


Oh-No
 こんにちは、Oh-Noです。なんかデジャヴを感じますね。

●目的
 スピード怪人『ウインドゼファー』を倒す。
 ※このシナリオは戦争シナリオで、1章で完結します。

●注意点
 敵は必ず先制攻撃します。敵は、猟兵が使用するユーベルコードと同じ能力値(POW、SPD、WIZ)のユーベルコードを、猟兵より先に使用してきます。
 この先制攻撃に対抗する方法をプレイングに書かず、自分の攻撃だけを行おうとした場合は、必ず先制攻撃で撃破され、ダメージを与えることもできません。

●撃破できたら
 最終的に、戦場の戦力「40」をゼロにできれば制圧成功ですが、それ以上の成功数があった場合、上回った成功数の半分だけ、「⑬『ドン・フリーダム』」の戦力を減らせます。

●補足
 技能に関しては何を目的としてどう使うかに重点を置いて判定します。単に「『技能名』を使う」とだけ書き連ねてあっても、およそ効果はないものとお考えください。

 それでは、よろしくお願いいたします。
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第1章 ボス戦 『スピード怪人『ウインドゼファー』』

POW   :    フルスロットル・ゼファー
全身を【荒れ狂う暴風】で覆い、自身の【誰よりも速くなりたいという欲望】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
SPD   :    レボリューション・ストーム
【花の足場をバラバラにする暴風】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ   :    ソード・オブ・ダイアモード
対象の攻撃を軽減する【全タイヤ高速回転モード】に変身しつつ、【「嗤う竜巻」を放つ2本の車輪剣】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。

イラスト:藤本キシノ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

パティ・チャン
【WIZ】
過去の記憶、崇高な理想…ですか。まさか、とは思いますが、革命に殉じたヒロインの話なら、何処かの世界で入手した「神話」で読んだことはありますが…。
それが特定の日に馬鈴薯料理を食す、という風習になったとも。

※対抗策
サイコキネシスで、ウォーマシンの方が使うくらいの大型の「盾」を操って、止めます!
(この間に他の仲間が攻撃して下されれば良いのですが)

これで止まるかどうか…

首尾良く止められるのなら、これもサイコキネシスで飛ばした、剣(こちらは人間サイズのを複数本)使って、車輪や脚を可能な限り狙って、脚を止めさせるべく攻撃します

※仲間やアドリブは、大歓迎します



 待ち構えていたウィンドゼファーが目の当たりにしたのは、ひとつの盾である。その場には、ふわふわと宙に浮かんでいる巨大な盾以外に何もない、ように見えた。
「盾のみ……? いえ、その背後に隠れているのですね。そんなものに、惑わされるものかッ!」
 車輪剣を手に、ウィンドゼファーは花の大地を駆ける。周囲一面に咲いている花弁を散らす風がその身体から巻き起こり、瞬く間に視認することも困難な速度に達した。
 パティ・チャン(月下の妖精騎士・f12424)は、風圧で押されそうになる盾をサイコキネシスで懸命に支えながら、怪人の悲痛なまでの覚悟を感じた。
「吹き飛びなさい……!」
 ――ドゴォォォッ!
 重く響く、激突音。
 パティは吹き飛ばされる盾の影に張り付いて、吹き飛ばされるままに宙を舞う。
(「何処かの世界で蒐集した『神話』で、革命に殉じた女性の話を読んだことがあります。生じゃがいもが得意料理で、それが元で特定の日に馬鈴薯料理を食す、という風習になったとも。彼女の言動は、その神話に重なるように思える。まさかとは思いますが……」)
 何の証拠もない、只の連想に過ぎない。けれど何故か強く、その神話が想起されたのだ。
 ……いや、今はそれよりも。
「くっ、何処に消えた。まさか本当に盾だけだったとでも……?」
 怪人はこちらを捉えきれていない様子だ。盾越しの衝撃で受けた痛みを押し殺し、盾の裏側に隠した数本の剣を、サイコキネシスで投げ放つ。
 一直線に脚を狙った1本目は、奇襲が功を奏して狙い通りに傷つけた。
「盾に隠れていましたか!」
 それでパティの居場所はバレた。わざとミエミエの軌道で飛ばした2本目を囮に、3本目の剣でもう一撃を狙うが、これはどちらも弾き飛ばされた。
「小さな身体を利したつもりでしょうが、次はありません」
 突きつけられた車輪剣の奥に、相手の殺気が満ちている。
 この攻防は痛み分けというには、少し分が悪いように思えた。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

イサナ・ノーマンズランド
POW

爆発物を投げつける【破壊工作】で敵の突撃の勢いを削ぎ、自分の後方にも【早業】で爆発物を用意、爆風で自分を【吹き飛ばし】て【ダッシュ】を加速、前方に突き出した棺桶による【盾受け】でダメージを抑えてぶつかり合い、【クイックドロウ】で引き抜いたショットガンにて【零距離射撃】、最大火力のユーベルコードを叩き込む。

きっといろんな思いがあって、この人はそこにいるんだろう。
けれど、それは他のたくさんの誰かの思いを踏みにじることなんだ。
だから、わたしはその思いを踏みつけてやる。
綺麗事なんて言わない。言えない。
邪魔だ、さっさとそこをどけ。
キミたちはもう、終わっているんだ。

アドリブ歓迎です。



「さあ、次は誰! ……また小さな子ですね」
 無言で姿を現したイサナ・ノーマンズランド(ウェイストランド・ワンダラー・f01589)を見て、ウィンドゼファーは小さくつぶやく。
「でも、容赦はしない」
 けれど惑っていたのは、一瞬のこと。怪人は即座に暴風の化身となって、空を舞った。
(「――きっといろんな思いを抱えて、この人はここに立っているんだろう」)
 イサナは即座に、棺桶型武装コンテナから取り出した爆薬を怪人へと投げつける。それは、飛び来る怪人の正面で轟音と視界を覆う白煙を上げて爆ぜた。
「こんなものでは止まりませんよ」
 生じた爆圧が怪人の速度に制動を掛けたけれど、押し返すにはとても足らない。怪人はそのまま突き抜けようとまた速度を増そうとする。
 その姿を、イサナは至近距離で見た。
 爆圧が己の身を揺らした直後、イサナは後方に投じた爆薬の爆風に乗り、一気に距離を詰めるべく加速したのだ。
(「けれど、それは他のたくさんの、誰かの思いを踏みにじることなんだ」)
 前面に突き出した棺桶の向こうに見え隠れする怪人の表情は、仮面に隠されてよくわからない。だが、中途半端な位置に構えられた車輪剣は、この接触を予期していなかったろうことを物語っている。
 ――衝撃はその直後に来た。イサナは構えた棺桶をコントロールして衝撃をいなし、その中からショットガンを引き抜く。
(「だから、わたしはあなたの思いを踏みつけてやる。綺麗事なんて言わない。――言えない」)
 ビリヤードのように弾かれあった2人の視線が交錯する。推進力を再度得ようとしているのか、ウィンドゼファーの身体からは風が巻き起ころうとしていた。
 暴風が怪人の身体を覆う前に、イサナは引鉄を引く。
「……邪魔だ、さっさとそこをどけ」
 迸った想いが口をついて出た。その間にも銃に添えた手がスライドを引き次弾を装填、銃に組み込まれたギミックの力も借りて、瞬く間に全弾を撃ち尽くした。
「キミたちはもう、終わっているんだ」
「まだだッ! 全てを手に入れるのだからッ!」
 再び暴風を纏った怪人は、漂う硝煙を吹き飛ばし加速する。伸ばされた車輪剣の切っ先を、イサナは敷き詰められた花々の上を転がって回避した。
 ――勝負はまだ始まったばかりである。

成功 🔵​🔵​🔴​

フルム・サーブル
お気楽極楽キマイラフューチャーだと思っていたら
シリアス要員もいたんだね

初撃は装備品の花を利用して見つけ辛い・狙い難いようにして接近し
直撃のタイミングをシールドバッシュで防御兼カウンターして返すつもりだ
荒れ狂う暴風はある程度の大きさの人には効果が大きいけど
地面に張り付いた小さなフェアリーを狙うにはあまり適していない
先に押し寄せる僅かな風圧を頼りに動いていこう

あとは【世界樹の花】任せで、
理性がなくとも怪力を活かして
態勢によって「風に乗って避けるかカウンターで返すか」シンプルに判断
特に花を大量に用意しなくても地形が花畑だから
風を纏いながら特定の花を狙い撃つのはなかなか困難じゃないかな?



 転送された直後、フルム・サーブル(森林の妖精さん・f03354)は大輪の薔薇を頭上に掲げ、花の足場に紛れ込んだ。そのまま低い姿勢を保ったままで走り出す。
 暴風を纏うウィンドゼファーは、近寄る猟兵の気配を感じ取りながらも、その姿を見つけ出せないでいるようだ。その間にフルムは距離を詰めていった。
(「あんな風にシリアスな奴もいたんだね。てっきり、お気楽極楽キマイラフューチャーだって思っていたのにな」)
 怪人に近づけば近づくほどに、受ける風圧は高まっていく。フェアリーであるフルムは、身長がとても低い分、風に吹かれる表面積も小さい。けれどそれ以上の割合で体重も少ないから、足場に張り付いた手を離せば、あっという間に吹き飛ばされてしまうだろう。
「見つけましたよ。花々の間に隠れても、無駄です!」
 隠れながら慎重に進んでも、存在を知られている以上、近づけば見つかるのが道理だ。フルムを見つけたウィンドゼファーは車輪剣を振り上げて、叩き斬らんと迫ってきた。
 だが、すでに距離は十分に詰めている。
 十分な飛行速度が乗る前に振るわれた剣へ、フルムは掲げた大輪の薔薇を叩きつける! その薔薇は、盾としての強度を持つ。フルムが自慢の怪力を込めて、力づくで叩きつけた薔薇は、怪人の剣を叩き返し、あまつさえ、その身体を押し返した。
「フェアリーだからって、非力と侮らないでくれよ」
 姿勢を崩した怪人に笑みを見せたフルムは、そのまま理性を手放して『世界樹の花』の幻影へと姿を変える。
 もはや、眼の前で速く動くものを自動的に破壊するだけの存在と化したフルムだが、速度を誇るウィンドゼファーとの相性はこの上なくよい。
 ――怪人からすれば、最悪の相性だということになるのだが。
 加速してその場を離れ態勢を立て直そうとする怪人を、『世界樹の花』が力任せに襲うさまは、実に奇矯な光景ではあった。

成功 🔵​🔵​🔴​

枯井戸・マックス
「確かに速さの前にはどんな策も無策。だが速さに見合うだけの重さは備えているかな?」

◇対策
【ゾディアックアーマー】で鎧のパーツを召喚。
そのまま装着する…と見せかけ、パーツをゼファーの行動が阻害できるよう【第六感】に頼って【一斉発射、フェイント】を狙う。
鎧を避けるか、それとも弾き飛ばすか…なんにしろこれで奴がどう走り回るかはある程度目星が付けられる。
後は愛銃による【スナイパー・クイックドロウ】で牽制し足止めだ。

上手くいったら鎧を装着。選択するのは天秤座。
天秤座の杖の【封印を解】いて超過駆動による重力フィールドで更に足止め。
「いくら速くても防げない攻撃、その一つが重力だ。重みのある御言葉だろう?」



「次は貴方ですか。誰でも構いませんとも。誰が来ようと、排除するだけですから」
 新たに転送されてきた姿を見定めて、ウィンドゼファーは宙を滑るように方向転換しながら加速する。身に纏う暴風は、地面を埋め尽くす花弁を巻き上げて、さながら花嵐のようだった。
「たしかに速さの前にはどんな策も無策。だが、速さに見合うだけの重さは備えているかな?」
 古びた青い仮面を被った、枯井戸・マックス(強欲な喫茶店主・f03382)は、轟音を上げて迫りくる怪人へとニヤリと笑みを見せ、媒介道具を握った手を前に突き出した。
「星辰の導きに従い来たれ! 召喚武装!」
 力強く唱えられた呪が磨羯宮サモンズアイを輝かせ、異次元への扉を開く。飛び出したのは、各部位ごとに分かたれた重々しい鉄鎧だ。呼び出されたそれぞれのパーツは、マックスを中心として近寄っていく軌道を描いたが……、マックスの身体に装着されることはなく、むしろ速度を増して、まるでスイングバイをするように飛び出していった。
 鎧のパーツが向かった先には、迫りくる怪人がいる。下手にニアミスでもすれば、肉が削がれそうな勢いで飛ぶ重そうなパーツを、怪人は鋭角に跳ねるような機動で躱し続けた。
 しかし、躱すために入り込んだ間隙は、マックスによって誘導された死地だ。躱しにくい状況を作り出した上で、ホルスターから引き抜いた愛銃のリボルバーが火を噴いた。偏差射撃された弾丸は、怪人の向かう先で獰猛な牙を剥く。
 ――怪人ウィンドゼファーは、それすらも避けきってみせた。無理な機動による急激な減速を代償にして。
 だが十分、それで十分だ。速度を落とした怪人は、もう重力の井戸から逃れられない。
 いつのまにか鎧を纏い、天秤座の鉄騎士と化していたマックスの手には、重力を操るという天秤座の杖がある。
「いくら速くても防げない攻撃、その一つが重力だ。重みのある御言葉だろう?」
 超過駆動され唸りを上げて重力フィールドを放つ杖を手に、マックスは笑みを深めた。

成功 🔵​🔵​🔴​

カーニンヒェン・ボーゲン
UC:剣刃一閃にてお相手致します。
互いに曲げられぬものあらば、折れる覚悟一つで踏み込むのみ。

「ジジイとて、役不足とは言わせません」
己への鼓舞も兼ね、宣言しましょう。
一度きり。
反撃と終幕の兆しと思わば、疑わずに疾風の前に立ちます。
太刀一本。
なに。相手は疾風…己が向かうまでもなく来ると分かっているのですから、受け止めて差し上げねば。
その刃以て、二つに裂けぬならば何も出来ずに終わるだけです。
ただし、耐え得れば反撃の為に。
両手に集中させる形でオーラ防御は張らせていただきますが。

ただ一つ、問いたいのです。
「あなたの『守りたかったもの』は、今も傍にございますか?」
風は温むれば、それだけで春を呼べるのです。



 消耗を見せはじめた、此度の怪人ウィンドゼファーに送り込まれた次なる刺客は銀色の老紳士、カーニンヒェン・ボーゲン(或いは一介のジジイ・f05393)である。
「ジジイの相手とて、役不足とは言わせません」
「今更、年格好で侮るようなことはしませんよ。手加減は期待しないでください」
 自らを鼓舞するために放った言葉へ生真面目に返されて、カーニンヒェンは口の端を上げた。
「望むところです。老境の冴え、お見せいたしましょう」
 刀に手をかけたカーニンヒェンを見て、怪人は逆方向へ飛び上がり、瞬く間に彼方へと離れた。
 当然、逃げたわけではあるまい。遠くで旋回する怪人を目で追いながら、カーニンヒェンは意識を研ぎ澄ました。
(「なに、相手は疾風。己が向かうまでもなく来るとわかっているのですから、受け止めて差し上げねば。……例え、それがどんな一瞬のことであっても」)
 最高速に達した怪人は、音速などすでに大きく超えている。無音のままにこちらへと迫り、轟音が耳に届いた頃には再び彼方へと去っているだろう。
 すべては一瞬で片がつく。剣刃が届かぬならば、何も出来ずに終わるのみ。
 その覚悟はとうの昔に決めていた。互いに曲げられぬものがあるならば、こちらが折られることもある……。
 思慮を巡らせていると、点にしか見えない怪人の動きが止まったように見えた。いや、こちらを貫かんと真っ直ぐ向かってきているから、動いていないように見えるだけだ。点は次第に大きくなっている。
 衝撃に耐えきるために、オーラを込めた腕で鞘に刃を走らせる。その間にも怪人の姿は、突き出された特異な車輪剣の形も見分けられるほどに大きくなっていた。
 ――瞬きをする時間もない刹那に2人の刃が交わって、遅れて周囲を轟音を伴う衝撃波が薙いでいく。
 そこに残されていたのはカーニンヒェンただ一人。刃は確かに届いたが、相手の纏う暴風に逸らされて深手を負わせることは出来ず。自分自身も衝撃にこそ耐えきったが、すぐさま追撃を仕掛けるほどの余力は無い。
 出来れば、『守りたかったもの』は今も傍らにあるかと問いたかった。けれど、近づくことすら拒絶する暴風を身に纏う彼女に春を呼ぶことは出来そうにもない。それだけは、問うまでもなく確かだった。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

火狸・さつま
どの方向から来るのか等、多少『野生の勘・第六感』にて補い
敵の狙いや動き、タイミングを『見切り』
『早業』で『オーラ防御』を盾のように幾重にも展開、防御強化
御しきれぬのは『激痛耐性』にて凌ぐ
身体動けば其れで善し
すぐさま『早業』<彩霞>に炎纏わせ『カウンター・属性攻撃』


凄く速い、ね。
これは、もう、すでに、誰よりも速い、よ、ね。
これ以上速さ、必要、ある、かな?

『誰よりも』という部分に着目し
既に叶っているクリアしたと思わせて欲望を削ぐ作戦


敵周辺を逃げる隙間なくすように
もしくは目眩ましになるよう
出来るだけ広範囲へ『範囲攻撃』<雷火>の雷撃落とす
間髪入れず『早業』の『2回攻撃』<彩霞>で斬り込み【粉砕】



 どれほど傷つこうとも、怪人ウインドゼファーの速度は留まるところを知らない。
 火狸・さつま(タヌキツネ・f03797)はもはや視認することも困難な怪人の攻撃を、理性的な予測に獣じみた直感を重ね、辛うじて直撃を避けている。
(「でも、すこし慣れてきた気が、する」)
 回数を重ねるたびに、浅い傷で済むようになってきたようだ。だが相手も修正を掛けてくればどうなるかわからないし、何よりこのままでは攻め味がない。
 さつまは腹を括り、折り返して幾度目かの突撃を仕掛けてきた怪人に対し、反撃の布石を打ちに出る。
 今までは突撃を躱そうと動いていたが、此度は怪人の軌道の正面に身体を滑り込ませた。前に伸ばした腕には、幾層にもオーラを重ねて防御を固める。
 ――次の瞬間には、さつまの身体を衝撃が貫いていた。真正面から振り下ろされた車輪剣を掴み、膨大なエネルギーをねじ伏せる。さつまの大柄な身体が大きく後退し、地面に2筋の溝が刻まれた。立ち昇る白煙は、摩擦熱で花が燃やされたせいか。
 奥歯を噛み締めて、衝撃に耐えきったさつまは、左手で怪人を引っ掴んだまま、右手で蛮刀を抜き放つ。まとわりつくような炎を宿した刃を振り下ろしながら、言葉を紡いだ。
「凄く速い、ね。これは、もう、すでに、誰よりも速い、よ、ね。これ以上速さ、必要、ある、かな」
「私を止めておいて、速いも何もないでしょう? ……私達の邪魔はさせないッ」
 蛮刀と、さつまの手を振りほどいた怪人の車輪剣が交錯し、火花が散った。怪人はその反動で後ろに飛び退り、そのまま距離を取ろうとする。
 だが怪人に先んじて、文様が浮かんださつまの尻尾から黒き雷撃が放たれて周囲を包み、後退する空間を埋める。
 そして、直上に持ち上げた蛮刀を、全力を込めた両手で振り下ろした。
「もう1度、受け止める、のは、勘弁だから、さ」
 その単純に重い一撃が生む衝撃は、怪人の防御を貫き、大地を陥没させるほど。
「まだだ、まだ倒れるわけにはいかない……!」
 ウインドゼファーは傷ついた身体から余力を振り絞り蛮刀を払いのけると、一気に速度を上げて離脱していった。

成功 🔵​🔵​🔴​

カーニンヒェン・ボーゲン
…まだ私の命運は未だ尽きてはいないようだ。
「貴女は申した筈ですね、手加減は期待するなと。
その言葉に偽りはありませんか?」
なるほど。春の嵐ならまだ可愛いげもありますが…ヒトデナシ、ですか。
私も、あるいはあなたと同じです。

太刀を構えてもう一度正面に立ちましょう。
力を溜めて、オーラ防御でガードを。
受けきれぬと判断すれば、残像で姿にブレを生んで急所をずらしたい。
この身は囮。
UC:リザレクト・オブリビオンで死角から死霊らに2回攻撃で奇襲します。
作戦と呼べるものではありませんが、意図を読まれぬように視線は彼女から逸らさずにおきますよ。
惜しまぬ太刀、惜しまぬいのちではありませんが…
じつに、楽しいですなぁ。



 向かい合った2人は、どちらもすでに無傷とは到底言えぬ有様だ。
(「……私の命運は、未だ尽きていないようだ」)
 だが万全な状態ではなくとも、再度ウインドゼファーに挑める機会を得たカーニンヒェンは、より一層激しい闘争を予感して内心で牙を剥く。
 そんな荒ぶる想いは韜晦の笑みの奥に隠して、怪人へと穏やかに言葉をかけた。
「貴女は先程、言われましたね。手加減は期待するな、と。その言葉に偽りはありませんか?」
「まさか先程の一撃を、手加減されたと感じたのですか? よほど命を投げ捨てたいのですね」
 怪人は、笑わない。少なくとも、その声音は冷え切っていた。両の手に一振りずつの車輪剣を握って、軽く片足を引く。怪人に意匠された車輪が次第に速度を増して、ひどく耳障りだ。
 カーニンヒェンもまた、構えた太刀で怪人に応じた。足元の花々を散らして位置を変えながら、2人は間合いを計り合っている。
(「なるほど、春の嵐ならまだ可愛げもありますが……。ヒトデナシ、ですか」)
 ウインドゼファーはその言葉通り、欠片たりとも容赦はしないだろう。自らの望みを阻むモノがいるなら、それを斬ることに何の呵責も感じないだろう。
(「……私も、あるいはあなたと同じなのでしょう」)
 自らの中にも、闘争を望む自分がいる。そんな穏やかならざる心を自覚し、カーニンヒェンは自嘲した。
 ――なにしろ、この期に及び己の身を囮にしてまで、敵を斬ろうというのだから。
 先手をとった怪人が振るう刃は、『嗤う竜巻』を巻き起こす。まるで哄笑のような風切り音をがなりたてる竜巻に、カーニンヒェンはオーラで覆った左腕を突き刺して振り払った。
 直後、竜巻を追うように一閃された車輪剣には、右手に握った太刀を合わせる。だが、怪人にはもう一本の剣がまだ残されていた。
「これで終わりです……!」
「まだここからですよ」
 カーニンヒェンは飛び退くと見せて、残像を残しつつ踏み込む。しかし怪人が振るった剣は、残像に惑わされながらもカーニンヒェンを捉えていた。
「少々、命が延びたようですが――」
「いえいえ、これで十分です」
 切り裂かれた肩から血を流しながらも、天高く剣を振り上げたウインドゼファーからは目を離さない。いや、此処まで一度たりとも視線を逸らしていない。
 ウインドゼファーの腹部から、死霊たちの刃や爪牙が突き出ようとも、カーニンヒェンは彼女の顔を見ていた。
 この一瞬、この一撃にすべてを掛けて。ウインドゼファーが勝利を確信した瞬間に、カーニンヒェンは死霊を死角へと呼び出したのだ。
「実に、楽しいですなぁ」
 血に染まる怪人を前にして、カーニンヒェンは柔らかく微笑んだ。
「……貴方と一緒にしてほしくは、ありませんね」
 表情の読めない怪人は、そのまま静かに崩れ落ちる。
 こうして、あまりに疾き怪人は、ついに静止の刻限を迎えたのである。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年05月29日


挿絵イラスト