バトルオブフラワーズ⑪〜西風をつかまえて
「フハハハ!ついにここまで来たか!みなの者、これまでの奮戦ご苦労!」
テレビウム・ロック事件をきっかけに始まった大戦争。数多の怪人と戦いを繰り広げながらメンテナンスルートを進んできた猟兵たち。
エイプモンキー、ラビットバニーという恐るべき大怪人をも倒し、ついにキマイラフューチャーの中枢たる「システム・フラワーズ」に辿り着こうとしていた。
中枢は目の前、一刻も早く行かなければいけない、が――。
「立ちはだかるはスピード怪人『ウインドゼファー』その能力は「風を操る」……」
想像する全てを創造する能力でもなく、絶対無敵のバリアを展開する能力でもない。
今まで猟兵の前に立ちはだかってきた強敵が有していた能力に比べれば恐ろしくシンプルで、絶対的な要素を有しているわけではない。
「――だが、間違いなく強い。」
門番たる彼女は決して易しい相手ではない。その身のこなしは吹き抜ける風の如く速く、操る風と二対の車輪剣から繰り出される攻撃は吹き荒れる嵐のように激しい。
さらに特筆すべきはそのスピードであり、彼女を相手に先んじて攻撃を行うことは不可能と言っていいほど。必然、その先制攻撃への対策を行わなければ敗北は避けられないだろう。
「先の二人の怪人に負けない難敵だが……」
グリモア猟兵たるシャレム・アルカードはいつになく真面目な顔で集まった猟兵たちを改めてぐるりと見まわし、一つ頷く。
「うむ!まあ気負わずドドンとぶつかってくるが良い!大丈夫だ!これまでの快進撃を思い出すがいい!追い風は我らに付いているぞ!たぶん!」
いさぶろー
お久しぶりにございます!!初めましての方はよろしくお願いします。
いさぶろーと申します!
今回のシナリオはキマイラフューチャーでの戦争シナリオになります。
今回の敵、「ウィンドゼファー」お姉さんは特殊ルール少なめの比較的対策のしやすいボスになりますが、普通にめっちゃ強いです。判定はきもちシビアに行いますのでご了承をば。
また、戦争ボス特有の注意事項がございますので、下記をよくお読みいただいたうえでご参加くださいますようよろしくお願い申し上げますです!!!
●特殊ルール
敵は必ず先制攻撃します。敵は、猟兵が使用するユーベルコードと同じ能力値(POW、SPD、WIZ)のユーベルコードを、猟兵より先に使用してきます。
この先制攻撃に対抗する方法をプレイングに書かず、自分の攻撃だけを行おうとした場合は、必ず先制攻撃で撃破され、ダメージを与えることもできません。
第1章 ボス戦
『スピード怪人『ウインドゼファー』』
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POW : フルスロットル・ゼファー
全身を【荒れ狂う暴風】で覆い、自身の【誰よりも速くなりたいという欲望】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
SPD : レボリューション・ストーム
【花の足場をバラバラにする暴風】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ : ソード・オブ・ダイアモード
対象の攻撃を軽減する【全タイヤ高速回転モード】に変身しつつ、【「嗤う竜巻」を放つ2本の車輪剣】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
イラスト:藤本キシノ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
片桐・公明
本体は刀を腰だめに構え居合の構え
待ちの構えに相手が警戒するだろうが
分「お前の相手はあたしだ!!」
本体の代わりに2挺拳銃を持って接近戦をする分身
分「銃弾は風に弾かれそうだからな。接射すれば問題ないだろう」
ガン=カタとヒット&アウェイで攻撃
あるいは相手の攻撃を受けるなどをして誘う
分「哀れだな。自分が誘われていることが分からねぇとはな。」
分「まだわからねぇか?既にお前は」
本「私の斬撃範囲内よ。」
分身がその場から大きく離れ、後ろから本体が居合切りを炸裂させる。
本「居合斬る。なかなか悪くないわね。」
分「あたしごと斬ろうとしなければな。」
本「斬られなかったいいじゃない。」
分「よくねぇよ!!」
「……来ましたか、猟兵。」
花びら舞い散るシステムフラワーズへと続く道。行く手を塞ぐように静かに佇んでいたウインドゼファーは両の手の車輪剣を構える。
門番としてこの先へは何人も通しはしないと、決意を滲ませた様子のウインドゼファー。
「手筈通りに行くわよ、私」
「OK、しくじるんじゃねぇぞ?あたし」
それを突破せんとするのは一人の猟兵にして、二人の少女。片桐・公明(Mathemの名を継ぐ者・f03969)とその別人格の少女だ。
「自分自身との連携……なるほど確かに警戒に値します。」
ですが、とウインドゼファーは続ける。
「頭数を増やした程度で勝てる、などと思われるのは少々心外ですね。」
ふわり、と風を纏い中空へ浮かび上がったウインドゼファーの姿が、巻き上がる花吹雪に覆い隠されて。
「――ッ!避けて!」
反応できたのは奇跡と言ってもいいだろう。上空から落雷のように吹き降ろした暴風に素肌を切り刻まれつつも、咄嗟に互いに逆方向に飛びのくことで致命傷は避けられた二人。
「チッ、速すぎて接射どころじゃねぇ!まだか!」
分断され、図らずも事前の作戦通りの位置取りとなった二人。だが、予想よりも敵のスピードが速い上に、暴風による負傷も相まって、間髪入れず襲い来る敵の猛攻対して防戦一方の状態だ。
前方で展開される一方的な戦闘を睨みつけながら、刀を腰だめに居合の構えを取る公明は状況のまずさに内心で歯噛みする。
「(もう、居合斬りの範囲内に入っているのに……!)」
縦横無尽にフィールドを駆け巡り、決して止まらない風と化したウインドゼファーを捉えるのはただでさえ難しい。加えて移動するたびに巻き起こる暴風で花びらが舞い散り、それが時折視界の妨害をするともなれば、斬撃を当てるのはもはや不可能の域である。
暴風で傷ついた額から、血が流れ出る。均衡が崩れたのは、戦場を見つめながらも眼にかかるそれを拭った一瞬。分身が消えた感覚、舞い上がる花吹雪、体を打つ衝撃を認識し、飲み込む間もなく倒れて。
意識を失う直前に、こちらを見下ろす赤いヘルメットの奥の眼差しと目が合った気がした。
「風を捉えることなどできません、そう、誰にも、決して。」
苦戦
🔵🔴🔴
マーリス・シェルスカナ
サル、ウサギときたら次も動物と思ったラ、Bike…?アレ、動物じゃないのですカ?(素朴な疑問)
【WIZ】【UC:アナライズアンドリプロダクション】
此処までの強敵にだって、弱点はありまシタ。
ならばユーにダッテある筈、勝負はOneChanceネ!
先制攻撃はUCを構えてガードしつつ、直撃や致命な一撃は【第六感】で避け、【激痛耐性】で意識を失わぬ様に。でないと反撃出来ないネ
その間にモ、Meの【情報収集】と【学習力】でUCと同時に敵の情報を取得し、一瞬の隙を見つけㇽヨ。
そして隙を狙って、借用したUCによる【カウンター】、暴風を【属性攻撃】で強化しての倍返しネ!
後は、手にできた僅かな情報を仲間に託すヨ…。
蛇塚・レモン
敵は素早いっ!
確かに先制攻撃は避けられないけど、こっちも既に手は打ってあるんだよっ!
素早いとはいえ、車輪剣が届くまで僅かにタイムラグがあるはずっ!
素早く蛇神様を召喚して、結界生成!
他の猟兵もいるなら、みんなを守るねっ!
足場の花も結界に取り込んで「嗤う竜巻」を放つ2本の車輪剣を凌ぐよっ!
(オーラ防御+拠点防御+念動力+激痛耐性+地形の利用)
ガラ空きになった敵の胴体に、不意打ち!
続けて蛇神様の邪眼の念動力で吹っ飛ばす!
呪詛で敵の動きを制限するよ!
(だまし討ち+2回攻撃+視力+誘導弾+念動力+鎧無視攻撃+衝撃波+吹き飛ばし+呪詛+マヒ攻撃)
あたいも蛇腹剣クサナギで敵の武器を落とすよ!
(ロープワーク)
「サル、ウサギときて次も動物と思ったラ、Bike……?アレ、動物じゃないのですカ?」
「確かに、その流れならば次も動物型の怪人が妥当でしょう。しかし、ここには私しか居ません。その期待には応えかねますね。」
マーリス・シェルスカナ(宇宙(そら)飛ぶマーリンレディ・f15757)が溢した素朴な疑問に律儀にも答えながら、ウインドゼファーは両手の車輪剣を振るう。
暴風を纏う刺々しい見た目の車輪が高速で回転し、振るうたびに威圧的な駆動音をまき散らしながらさらに加速していく。
「お願いッ!蛇神様!」
蛇塚・レモン(叛逆する蛇神の器の娘・f05152)の召喚した白き大蛇、邪神様はレモンの意図を汲み、地に向けて狙いを定め最速で邪眼を発動させる。
常ならば相手を邪眼で“視る”ことで敵を攻撃するそのユーベルコードは、敵を視ず、地に向けることで別の顔を見せた。邪眼から発せられたエネルギーは地を中心に広がり、念動力で花びらを巻き込むことでレモンとマーリスを包み込む多層の結界を形成したのだ。
「やったっ!このまま吹き飛ばして……!」
「……むっ、これは予想以上に硬いですね……しかし」
柔らかい花びらの層は車輪の回転を鈍らせ、邪眼の力は鈍った刃を受け止める、見た目の防御力を発揮した結界に喜び、邪眼による追撃をしようとしたレモンだが、それは許されなかった。そう、車輪剣での物理攻撃などおまけに過ぎない。ウインドゼファーの本領は“風”なのだ。
結界に叩きつけられた車輪剣に纏う風が激しさを増し、竜巻と化す。まるで防ぐことは無駄だとでも言うように、響く風音は二人を嗤うようで。
「きゃあああ!」
砕けた結界、舞い上がる花びら、破られる直前に結界を飛び出し、竜巻の直撃を避けたレモンとマーリスだったが、余波だけでもその肌に無数の深い切り傷を刻まれる。
追い打ちをかけるようにウインドゼファーが凄まじい速度で地を滑るように迫り、ギャリギャリと耳障りな音をたてながら車輪剣を振るう。
あまりに速く、目視すら危うい敵の攻撃に、背筋に走る悪寒に従い避け、時に結界で威力を殺し、何とか防いでいく。
しかし、敵は無傷、こちらの傷は増えるばかりでこのままでは押し負けてしまう。
「(此処までの強敵にだって、弱点はありまシタ。ならばユーにダッテ必ずある筈……!焦りは禁物、勝負はOne Chanceネ……!)」
だが、そんな圧倒的に不利な状況の中でも、マーリスの意思は負けず、その青い瞳は輝きを失ってはいなかった。
視て、聞いて、感じて、一撃貰えばそれで終いのスレスレの攻防を繰り広げながら、あらゆる情報を集め、その頭脳を以て凄まじい速度で敵の分析を行っていく。
敵の速さ、攻撃のタイミング、クセ、竜巻の発生場所、そして――竜巻の出力も。
「そろそろ限界でしょう――これで終わりです!」
何度目かの嗤う竜巻をいなし、既にレモンもマーリスも満身創痍で膝をついている、勝負をつけるべくウインドゼファーは連続で竜巻を発動しようとして――
「ええ、これで終わりネ!」
顔を上げたマーリスの“微塵も諦めていない”眼と視線が絡んだ。
「解析なんて、とっくに完了済みネ!UbelCode……お返しデス!」
解析したウインドゼファーのユーベルコードは、電脳世界にて、再現プログラムを通してエミュレートされ、現実世界へと流れ出る。
気持ち安っぽい質感の車輪剣を振るい、放たれたのはウインドゼファーのユーベルコードと全く同じ竜巻だ――そう、風速も、規模も、その全てが同一の竜巻。
「なッ……んっ!」
――まったく同じ竜巻同士がぶつかると、互いに消滅する。
竜巻は消え、風は止み、花びらは静かに舞い落ちる。開けた視界の先のウインドゼファーは意表を突かれ、驚愕した様子で。
「今デス!」
「待ってました!やっちゃえ!蛇神様っ!」
その隙をレモンは逃さなかった。蛇神様の邪眼が妖しく光り、その本領を発揮する。強力な念動力で縛られ、引き寄せるように吹き飛ばされたウインドゼファーの視線の先には、揺らめく蛇腹剣を構えたレモンの姿。
「今までの分、お返ししてやるんだからっ!」
「ぐああああっ!!」
蛇塚家に伝わる3種の神器の一つ、『蛇腹剣クサナギ』。真の力を解放していないとはいえ、霊力により自在に変形を行うことのできる業物は、吹き飛ぶゼファーの体に巻き付いて、その全身を抉り斬った。
「ムムム、もう少し後の仲間に繋げられル情報が手に入ればよかったのデスガ……」
「何とか一撃入れられただけでも十分だよっ!」
たかが一撃、されど一撃。敵の猛攻を耐え抜いた末、掴み取ったその一撃はウインドゼファーの体に大きなダメージを与えたのだ。
「……ッ、知らず慢心していましたか……!ですが、まだ終わりではない!」
だが、いまだ体力を残し立ち上がるウインドゼファー。一撃を食らいはしたものの、いまだ倒れる様子のない向こうに対してこちらは満身創痍。二人はこれ以上の戦闘は危険と判断し、ひとまず退却するのだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
荒谷・ひかる
砂鉄の詰まった土嚢を可能な限り持ち込む
転移後すぐ、それを盾に防御態勢を取る……と、見せかけて
わたし自身は草木の精霊さんにお願いして花の足場を動かしてもらい、足場の下に潜伏するよ
土嚢は囮兼攻撃のための仕込み
ずたずたにして砂鉄を撒き散らしてもらうのが狙い
何とかやり過ごしたら【エレメンタル・ファンタジア】発動
鉄(大地)と雷の合わせ技で強烈な「磁力」を生み出し
風による竜巻と組み合わせて「磁気嵐」を生み出してぶつける
そうすれば金属製っぽい彼女の身体は強烈な「磁気」を帯びるはず
あとは撒き散らした砂鉄が、勝手にくっついて動きを阻害するよ
動けば動くほど、可動部に入り込んで詰まるんだよっ!
動けなくなっちゃえ!
ウインドゼファーは己の前方……新たな猟兵が現れたであろう場所にあるものを見る。
――それは猟兵というにはあまりにも生命を感じさせないものだった。己の体を無数に分ち、その身を光沢を放つ衣に包みこみながらも、それは隠し切れぬ重厚感を放っていた。
――土嚢である。それも円形にうず高く積まれた。
「……努力は理解しましょう、ですが無駄です。」
土嚢で自身を囲み壁とするつもりなのだろう、積み切れていない高さから、ちらちらとはみ出た白い髪と黒い角が覗いている。
土嚢の高さから身長を推定してもあまり高くはない。敵は年若い猟兵だろうかと考えて。
「……例え相手が幼子であろうとも、私達を邪魔するのであれば、容赦はしないッ!」
抱いた微笑ましさを斬って捨てる。振り下ろした車輪剣は唸り声をあげ、竜巻が嗤う。
積まれた土嚢を紙の様に無残に引き裂き、細断していく竜巻。
後に残ったのは元の花吹雪く光景のみ。猟兵が避けた様子も見られず、土嚢ごと細切れにしたと判断したウインドゼファーは眼前から意識を外し――
「ぷあっ!精霊さんっ!ありがとうっ!」
土嚢があった場所、降り積もった花びらの山から顔を出したのは荒谷・ひかる(精霊ふれんず癒し系・f07833)だ。
積み上げた土嚢を壁とし防御態勢を取るのはフェイクであり、敵の視界から身を隠すため。精霊術師である彼女の本命は、草木の精霊さんに“お願い”をすることで花の足場の下へと潜り込むこと。
単純な策ながらも、その作戦は見事にウインドゼファーを欺いた。花びらまみれになってはしまったが、竜巻をやり過ごしたその体には傷一つない。
「仕込みは十分、お返しだよっ!」
「回避などしていなかったはず……!一体どうやって……!」
不意を撃たれた形のウインドゼファーへ向け、ひかるのユーベルコードが発動する。
精霊の助力により生み出された風はウインドゼファーを囲うように螺旋を描き、土嚢の中身と花びらを巻き込みながら舞い上がる。やがてそれは稲光を纏い、巨大な雷の嵐と化してウインドゼファーを飲み込んだ。
「くっ、してやられました。ですが、攻撃に風を選択したのは間違いでしたね!」
「いいえ、これで正解ですっ!」
風を操るウインドゼファーにとって嵐を突破することなど造作もないこと。すぐさま離脱しようとして――自身の体が異様に重いことに気づいた。
腕と一体化した車輪剣に、足に、間接に、次々と纏いつく無数の黒い粒。
「まさか……!先ほどの土嚢は!」
「そう!あれの中身は砂鉄だよっ!」
竜巻により引き裂かれた土嚢の中身、砂鉄が風によって巻き上がり、走る雷と反応し強力な磁力が発生し――「磁気嵐」が生成される。
それに曝されて磁力を帯びたウインドゼファーの体には次々と砂鉄がくっつき……
「動けば動くほど、可動部に入り込んで詰まるんだよっ!そのまま動けなくなっちゃえ!」
「体が重い、動きが鈍い……ぐ、くう、冗談、ではないッ!」
脚部や肩部の加速装置を点火し、上昇して磁気嵐を突破せんとするウインドゼファーだが、それは悪手だった。
「な、あぐっ!」
吸気口から吸い込んだ砂鉄が内部に異常を及ぼし、排熱機構が動作しなかったために起きた爆発により、ウインドゼファーは勢いよく墜落する。
「……ええっと、流石に爆発までは予想してなかったかなあ?」
その結果に若干困惑しつつも、上手く行った安堵感と大きな達成感を覚えるひかる。
ただ、これは決して偶然ではない。仕込みを兼ねたフェイクや、敵の性質を利用した攻撃方法、その頭脳から考え出された作戦は、強力な武器となってウインドゼファーに届いたのだ。
大成功
🔵🔵🔵
カザミ・カナ
月代・十六夜(f10620)と連携。
……アタシらだって風雷の神だ。風の攻撃に耐えられねえとでも?
ま、確証はねえからな。そこは十六夜の護符を借りてなんとかするか。
さて、ヤツの攻撃を凌いだら一発ブン殴りたいとこだけど。
足元を崩されちまうときちいな……おい!カザミ!
――はいはーい!風神さまよ!……って!いったーい!ミリカちゃんやられすぎじゃない?
え?なに?風であそこまで飛べばいいの?
お!なんか結晶貰ってるわね!んじゃ、これの力も借りて、っと……
――おし、上出来だ。
それじゃ、ちょっと本気のUCだ。受け取りやがれッ!
攻撃を軽減?ばぁか。散々攻撃してくれた上に、こっちには十六夜の寄越した結晶もあんだよ!!
月代・十六夜
カザミ・カナ(f17237)と連携。
ここで真っ当な強敵出してくるとかお前このやろう。
事前にカザミさんに予備の護符と風と雷の結晶をパス。好きに使ってくれ。
風は見えないが【聞き耳】で音を図り、【視力】で花びらの動きから攻撃範囲を【見切っ】て【野生の勘】全開でUC抜きの【ジャンプ】で飛び退く。
避け切れなかったら身代わりの護符で軽減。
最悪一撃で行動不能にならなきゃいい。
これを凌げればボーナスタイムだ。【韋駄天足】の【ジャンプ】で舞い散る花びらを逆に足場に【空中戦】で抜刀【フェイント】を混ぜて【時間稼ぎ】する。
車輪剣の竜巻は振ったところにしか出ない。そんなもん【見切る】のはわけないぜ!
――月代・十六夜(韋駄天足・f10620)は焦っていた。
「風雷の神……でしたか。自信の割にはあっけなかったですね。」
戦いが始まると共に放たれた暴風、足場ごと全てを薙ぎ払うそれの回避に全神経を集中していた十六夜は風の軌道を感じ取り、避けることに成功した。
だが、共に戦いに臨んでいた猟兵、神であるカザミ・カナ(ダメ風神と毒舌雷神・f17237)が同時に放たれた竜巻によりやられてしまったのだ。
「(飛ばされて堕ちてったのは見えたが、どう見ても意識失ってたぞあれ……!)」
何とか救出へ向かいたいが、当然、ウインドゼファーはそれを許さない。宙に舞う花びらを足場に、三次元的な軌道で空中戦を繰り広げる十六夜。
「攻めないのですか?逃げてばかりでは勝利など到底得られませんよッ!」
「はっ、そう簡単に手の内を見せてたまるかよ!」
十六夜は回避が得意な――否、回避専門の猟兵。元より現状披露できるこれ以上の手の内などないのだが。
目まぐるしく動き回る両者、攻めるウインドゼファーをギリギリでいなしながら、十六夜は思案する。
「(しっかし、このままじゃジリ貧なのも確か……!何とか隙を見つけてカザミさんを助けにいかねえと……無事で居てくれ……!)」
「(……ん、ああ……アタシ、竜巻にぶっ飛ばされて……)」
自身の体を撫ぜる風の冷たさに目を覚ましたカザミ・カナは、ぼやける意識を徐々に覚醒させていく。
「くそっ……(風雷の神だって大口叩いてこのザマ、情けねえ……!)」
悔しさと不甲斐なさに沈んでしまいそうになる彼女は、ふと、握りしめていた手のひらを開く。
風に乗って飛んでいく紙片、バラバラになったそれは、戦いに赴く前に十六夜から貰った守りの護符だ。
「(こいつがなきゃ、マジで死んでたかもな……っそうだ、まだ終わっちゃいない。十六夜がまだ戦ってんだ…!)……ごほっ、カザミ」
彼女……雷神の人格たるミリカは、消え入りそうな声で己の半身とも言える風神の人格である、カザミを呼び起こす。
「はいはーい、風神様よ!……って痛ったぁ……何これぇ……ミリカちゃん……いくら何でもやられすぎじゃない……?」
呼び出されて早々にボロボロの体の痛みが襲い掛かり、涙目になるカザミ。
「……え?上の足場まで風で行け……?どれだけ離れてると思ってるのよう……」
ぶつくさ文句を言いながらも覚悟を決めたカザミ、その手には翡翠に輝く結晶。十六夜の用意した風の属性を込めた道具だ。
未だ落下し続ける体を遥か上空へ持っていくのは残った力では不可能、結晶を使ったとしても普通に飛べば無理だろう――普通に飛べば。
「ああもう、いいわよ、やればいいんでしょ……!」
半ば自棄になりながら、カザミは風を操り――己の直下で、風を起爆した。
「……っ!」
至近距離で発生した風の爆発はカナの体を蹴鞠のように跳ね飛ばす。ボロボロの体に鞭打つように、襲い来る痛みで飛びそうな意識を必死で繋ぎ留めながら、無限にも思える時間を耐えて……目的の足場へと転がるように辿り着いた。
「へ……花のクッションって奴か……悪くねえ、ありがとよ」
カザミは着地の衝撃で気を失った。ミリカも危なかったが、何とか保っていられたのは花々のおかげだ。地に咲く花々を優しい手つきで一撫ですると、ミリカは未だ戦闘が続いている上方へ意識を向ける。ウインドゼファーと十六夜の戦闘の軌跡は渦を描き、まるで一つの竜巻の様に光る。
「……十六夜の奴、まだ耐えてやがる……やるなぁ……あたしも、負けて……られねえ……」
雷の結晶を触媒に、とうに尽きた力を絞り出す。全身に走るバチバチと弾ける電流が勢いを増していく中、体を起こそうとし、できない。腕を上げようとしても――上がらない。
「……やられっぱなしじゃ、いられねえんだ……!」
上がったのは、指先一本、朦朧とする意識の中その先端に全神経を集中する。
「……雷神からのありがたい贈り物だ、受け取りやがれッ……」
指先の電流が激しさを増し、視界を白く染め上げていく。体から力が抜け落ちていく感覚と共に、ミリカは崩れ落ちるように気を失った。
場は戻る。
「(何故だ……何故私の攻撃が当たらない?)」
ウインドゼファーは車輪剣を振るい、竜巻を放つ、風を纏い、圧倒的なスピードで駆け巡りながら行われる攻撃。しかし、それは掠って裂傷を与えるのが関の山で、十六夜に直撃させることができていない。
「(術か、道具か、ユーベルコードか。いや、使う余裕など与えていない、更に言えば能力にしては変化がなさすぎる。……ならばまさか、速さでこの私が劣っている?――それこそありえない。)」
「そら!さっきから全然当たってないぜ!」
「(なるほど、この男――とてつもなく“巧い”)
速さでウインドゼファーに勝っているわけではない、特別他の猟兵と比べて身体能力が高いわけでもないだろう。だが、恐ろしく回避が巧いのだ。攻めに徹するウインドゼファーが、攻めきれない程に――!
逃げる十六夜、追うウインドゼファー、永遠に続くかと思われた攻防にも、限界はある。
「(いくら避けてるだけって言っても飛びっぱなしはきついぜ……!なんとかしねぇと……)っ!」
強まる焦りの中、十六夜視界の隅、遠く下方の足場で何かがキラリと光った気がした。
「(……まさか!っしゃあ!ツキが向いて来たぜ……!)そろそろ勝負と行こうじゃねえか!」
ニヤリと笑みを浮かべた十六夜は、それまでの動きと一転、ウインドゼファーへ向けて腰の刀に手をかけながら、一直線にとびかかる。
「っ!来ますか!ならばッ!」
ウインドゼファーも迎え撃たんと暴風を纏う車輪剣を構える。
両者は交差し、互いの武器が激突する――――なんてことはおこらず。
「俺は回避専門なんだ!切り結ぶとか無理も無理ってな!」
「なぁっ!」
花びらをもう一つ蹴った十六夜は、ウインドゼファーの頭上を飛び越えて抜けていく。
まさかのフェイントにあっけにとられたウインドゼファーは一瞬呆けるも、小回りの利く左の車輪剣を咄嗟に振りぬいた。
「ぐうううっ!」
片側のみとはいえ、強力な竜巻に身を晒し、全身に切り傷を作りながら落下していく十六夜。
「何をするかと思えば……愚かな。……これは!なん、とっ!」
十六夜は無為に攻撃を食らったわけではない。ミリカの雷撃が届くまでの、ほんの少しの間だけ、ウインドゼファーの意識を周囲から逸らすこと。確実に攻撃を与えるための一手。
空を穿つ雷撃は、ウインドゼファーを飲み込んで――――
「……驚かされはしましたが、直線的な攻撃ならば」
ウインドゼファーは己の右腕を見やる。雷撃により根本から黒く焦げ付いた車輪剣は、ギチギチと音を立てて、動きすらしない。
いつの間にか、吹き飛ばしたはずの十六夜の姿は消え去っており、雷撃の発射位置と目される場所にも焦げ跡のみしかなく、誰の姿もない。ウインドゼファーは空を見上げ、呟いた。
「(逃げられましたか。ふ、傲慢にも避けず攻撃を受け倒れた様は浅はかとしか言いようがありませんでしたが……)――認めましょう、風雷の神。その力は本物のようです。」
苦戦
🔵🔵🔴🔴🔴🔴
中御門・千歳
ヤバそうな相手だけどね、引くわけにゃいかないねぇ!
相手の攻撃はこちらの式神召喚より先になんだよね?
なら、まずは相手の初手の嗤う竜巻の回避に全力を注ぐよ!
「心眼鏡」に力を籠め、相手の技の“流れ”を読み解くよ
飛んでくるってのが竜巻なら、軌道が読めるはずさ
近づいてきたら全力で飛び跳こんで避けるけどね、最後は「第六感」頼りかもねぇ
初手さえ何とかやり切れば、式神の侘助と錆丸を召喚するよ
錆丸には全力で敵に巻き付いて締め付けさせるよ
敵の攻撃を防ぐには、なんとか敵の車輪を止めなきゃね
敵の動きが止められたら、錆丸の隙間から侘助に突き刺させるよ
錆丸には嫌な役目をさせちまうねぇ、ボロボロになっちまったよ
すまないねぇ
愛久山・清綱
研ぎ澄まされた力と、揺ぎ無き意思。
まさに「兵」の鏡というべきか……
願わくば、彼女からは色々と学びたかった。
■闘
ウインドゼファー殿の先制攻撃をかわすのは難しいだろう。
故に、初撃は耐えよう。
【野生の勘】で攻撃がいつ来るか予測しつつ、【オーラ防御】を
纏った【武器受け】と【激痛耐性】で耐える。
チャンスがあれば、【残像】を用いた【見切り】で回避を試みる。
攻撃を耐えたら、刀を投げ捨て【鬼獣】形態を発動。
発動後は【怪力】を込めた【鎧無視攻撃】の引っかきや殴打を連発し、その身体を砕いてみせる。
また、戦う際は他の「速く動く物」が目に入らないよう、
ウインドゼファー殿から目を離さず戦う。
※UC発動後の台詞は咆哮のみ
焦げ付いた右腕、ひび割れて、壊れてしまいそうな脚。
動かすことさえ苦痛であろうそんな体でありながら、相対したウインドゼファーから感じられるのは他の猟兵との闘いの時と同等――否、上回る程の純粋な戦意であった。
「研ぎ澄まされたその力、揺ぐこと無き意思。まさに「兵」の鑑というべきか……」
敵でなければ、オブリビオンでなければ、戦いのこともそれ以外のことも、きっと多くを学べただろうと、一抹の惜しさを感じる清綱。
「力など後からついて来たものです……私が追い求めるものはただ一つ――速くあれ、誰よりも、何よりもッ!」
愛久山・清綱(飛真蛇・f16956)の純粋な賞賛もウインドゼファーには届かない。ぶわり、とひと際強い風が吹くと同時、姿を消したウインドゼファー。l
「来るよっ!綱坊!注意しなっ!」
中御門・千歳(死際の死霊術士・f12285)は前方の清綱へ注意を呼び掛けると、その“眼”を凝らした。
「(本気の奴は確かに速い……けどね、必ず“流れ”があるはず……それを読み解けば、回避もできるはずさね。)」
千歳の装着する「心眼鏡」は、普段は唯の老眼鏡だが、霊力を込めれば見えぬものを見るための強力な道具となる。
今回であれば、見るものはウインドゼファーが纏い、操る風の流れ――即ち、攻撃の予兆である。
「(……捉えた!)綱坊!下だよ!」
「……承知!」
清綱が素早くその場を飛び退いた瞬間、花の足場を突き破り現れたウインドゼファーは、そのまま左の車輪剣を二人へと向ける。
「竜巻が来るよっ!右へズレな!綱坊!」
「ふっ!はああっ!……先ほどから気になっていたのだが千歳殿!綱坊はやめてくれないだろうか!」
最小限の動作で直撃コースを避け、オーラを込めた刀で致命傷を的確に防ぐ清綱は千歳へと抗議をするが、然もありなん。このまさに武人。といった風体のこの男――ピチピチの14歳なのである。まじかよ。
「ヒッヒッヒ!ついつい呼んじまったよ!すまないねぇ!」
まったくすまなそうにしていない千歳も、その年齢からは想像もできない身軽さで大きく跳んで竜巻を避けると、反撃に移るべく、己の手足たる二匹の式神を召喚する。
「錆丸!何とかして動きを止めな!侘助っ!機を逃すんじゃないよ!」
「どうやらあなたを真っ先に倒さなければならないようですね……!」
ウインドゼファーは攻撃が回避される要因、その要が千歳であることに気づき、狙いを定めると、式神たちの反応できないスピードで千歳に迫る。
「……私を忘れて貰っては困る。」
振り下ろされたウインドゼファーの左腕、高速回転する車輪剣、その柄を清綱は刀で以て受け止める。
「見事な防御ですが、胴体ががら空きで……ッ!これは!」
右腕を振ろうとしたウインドゼファーは、何かがそれを阻んでいることに気づく。
ギチギチと音を立てながら右腕と一体化した車輪剣に絡み付くのは、千歳の式神、鋼の大百足である錆丸だ。
あの一瞬で近寄られたのか、背後からはもう一つ気配がする。十中八九鎧武者の式神だろう。
「(まずい……!)」
両手は塞がり、背後には敵、予想以上に大百足が重いため飛んで逃げることも厳しいだろうと焦るウインドゼファー。
背後からは刀を振り上げる気配、猶予はない。決断を迫られたウインドゼファーは――
「なっ……!」
「なんと……!」
飛び立ったウインドゼファー。残されたのは錆丸と黒く焦げ付いた車輪剣――侘助に切り落とされたウインドゼファーの右腕だった。
「(この負傷ではもう戦闘続行は不可能……程なくして“還る”ことになるか)」
幾分か身軽になった体で、二人の猟兵を見つめるウインドゼファー。
「だが……私は門番、この先には何人たりとも通すわけにはいかない。」
だから、勝負を決めなければいけない。
「私はウインドゼファー……誰にも、何にも、私の前へは行かせないッ!!」
彼方より西風が迫る。まっすぐに、ひたむきに、まるで流れ星の様に。
「……千歳殿、すまないが後は任せて貰ってもいいだろうか。」
「若いくせに遠慮なんてするんじゃないよ!思いっきりやってきな!」
「そうか……では、ありがたく。」
千歳に背を向けた清綱の様子が一変する。冷静なその表情は崩れ、殺意に満ちた鬼の如き形相に、刀を投げ捨て、姿勢を低く、己の肉体のみを使い敵の喉笛を食いちぎらんとするその様はまさに“鬼獣”――清綱の誇る獣技が一つである。
「グルルル……グゥォオオオオオ!!!」
唸り声を上げる清綱……鬼獣の視界に、映るのは、ウインドゼファー、ただ一人。
痛みはとうに失せた。ただ、熱い、血が煮え滾るようだ。怪人となり、機械の体を得て失ったはずの感覚。視界が色を失い、時間が引き延ばされるような錯覚に襲われながら、車輪剣を振りかぶる。
生きていた時も、オブリビオンになってからも、今ほどのスピードを出せたことはないだろう。間違いなく今、ウインドゼファーは過去の自分を乗り越えた。だが、足りない。彼女の求めたもの、求めるものはただ、一つ。
「(……速く)」
さらに速く。もっと速く。誰よりも。何よりも。全てを置き去りにして。
「(――スピードの――向こう側へ――)」
――世界が、止まった。
背中合わせに立つオブリビオンと猟兵。
片や車輪剣を、片やその爪を振りぬいたままの姿勢。
静寂を破いたのは猟兵。頑強なはずのその身に無数の深い裂傷を刻み、獣は膝をついて荒い息を吐く。
「…………見事。」
立っているのはオブリビオン、小さく、しかし晴れやかな声色で賞賛する彼女の体は――誰が見ても致命傷とわかるほどに、抉りぬかれていた。
崩れ落ちるオブリビオン。倒れそうな体を千歳に支えてもらいながら、清綱が呟いた言葉は、風に乗って消えていった。
成功
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