バトルオブフラワーズ⑪〜深紅の鉄馬
●グリモアベースにて
「バトルオブフラワーズもいよいよ佳境に入ってきたなぁ。いざって時にヘバらないように、おまえさんたちも食える時にしっかり食っとかなくちゃダメだぜ」
伊達姿のケットシーが猟兵たちの前で、特大サイズのブリトーを貪っていた。
グリモア猟兵のJJことジャスパー・ジャンブルジョルトだ。
JJはブリトーを瞬く間に完食すると、口吻についた食べカスを舐め取りつつ、本題に入った。
「皆が奮闘してくれたおかげで、システム・フラワーズ内の第三の関門への攻略ルートが開かれた。で、そこに陣取っている敵を倒してほしいんだわ。そいつはスピード怪人『ウインドゼファー』とかいう野郎で……いや、『野郎』って言い方は正しくないかな。どうやら、女のようだから」
ウインドゼファーは同時に一体しか存在しないが、骸の海から何度でも復活する。しかし、許容値を超えるほどの回数の死を短期間のうちに与えれば、復活は不可能になるという。
「つーことだから、サル男やウサギ女の時と同様、ウインドゼファーを倒して倒して倒しまくらなくちゃいけないんだ。でも、これまたサル男やウサギ女の時と同様、一筋罠ではいかねえらしい」
スピード怪人というだけあって、ウインドゼファーは非常に素早い。戦闘時には風を操るユーベルコードを用いて、常に先制攻撃をおこなってくるだろう。
「つまり、先制攻撃への対抗策ってやつを講じない限り、まともな勝負にはならねえってことだ。正直、頭脳派の俺様でも有効な対抗策はすぐには思い浮かばねえが……でも、まあ、おまえさんたちなら、なんとかできるって。うん、なんとかできる」
楽観的な意見で皆を励ます自称『頭脳派』。
そして、二つ目のブリトーの包みを開けながら、転送の準備を始めた。
「スピード怪人、なにするものぞ! シュババババァーっと素早くやっつけちゃってくれや!」
土師三良
土師三良(はじ・さぶろう)です。
本件は「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「バトルオブフラワーズ」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
●戦闘について
敵は必ず先制攻撃します。敵は、猟兵が使用するユーベルコードと同じ能力値(POW、SPD、WIZ)のユーベルコードを、猟兵より先に使用してきます。
この先制攻撃に対抗する方法をプレイングに書かず、自分の攻撃だけを行おうとした場合は、必ず先制攻撃で撃破され、ダメージを与えることもできません。
●運営シナリオ数について
運営シナリオ数に制限はありません。戦場の戦力「40」をゼロにできれば制圧成功ですが、それ以上の成功数があった場合、上回った成功数の半分だけ、「⑬『ドン・フリーダム』」の戦力を減らせます。
それでは、皆さんのプレイングをお待ちしております。
第1章 ボス戦
『スピード怪人『ウインドゼファー』』
|
POW : フルスロットル・ゼファー
全身を【荒れ狂う暴風】で覆い、自身の【誰よりも速くなりたいという欲望】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
SPD : レボリューション・ストーム
【花の足場をバラバラにする暴風】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ : ソード・オブ・ダイアモード
対象の攻撃を軽減する【全タイヤ高速回転モード】に変身しつつ、【「嗤う竜巻」を放つ2本の車輪剣】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
イラスト:藤本キシノ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
城島・冬青
バニーちゃんより(動きが)はやーい!
…ってのんびり観察してる場合じゃないよね、強敵相手だけど臆せず行きます!
先制攻撃には【残像】を用いて相手の攻撃方向を狂わせるか【ダッシュ】で避ける
残像での惑わせも、ダッシュ回避も無理だったら…仕方ない!【武器受け】で防御!
弾き飛ばされない様に踏ん張るよ
先制攻撃を凌いだらそのまま【血統覚醒】し
ゼファーに向かって【衝撃波】を放つ
【衝撃波】がゼファーに当たっても避けられても彼女はピンピンしてるだろうから
【衝撃波】の起こす土煙に乗じて接近し、そのまま斬り合いを挑みます
死角からの攻撃は【第六感】で素早く察知できるようにして直撃被弾はなるべく避ける
アドリブ・連携歓迎
影守・吾聞
兎怪人は斜め上な強敵だったけど
今度の敵は正統派だね
故郷を守る為だもの
できるかぎりのことをするよ!
敵が暴風放ってきたら
まずは『武器受け』『オーラ防御』で身を守る
勿論、対策はそれだけじゃないよ!
加えて【黒竜召喚】を発動して、友達のリムを召喚!
花の足場が崩れても、リムの背中に『騎乗』して戦闘継続
でっかくて空も飛べるリムと一緒なら
暴風が吹き荒れる戦場でも『勇気』百倍だ!
リム、滑空して敵に突っ込んで!
避けられちゃうかもだけど
この攻撃は『フェイント』だ!
本命はこっち!
リムの体当たりを避けた敵目掛け
魔法剣から『衝撃波』を放って攻撃だ!
『早業』と『二回攻撃』も駆使して
一太刀でも浴びせたいな
※連携、アドリブOK
セツナ・クラルス
これは一人で何もかもしようとせず
仲間と共闘するのがよさそうかな
敵の存在を確認すると同時にドローン型の観測者を召喚
形状はドローン型に拘るつもりはなく
目立たなければ鳥でも凧でもなんでもOK
キマイラフューチャーだったらどんなものでも違和感はなさそうだが
観測者と視覚を共有し、
攻撃を可能な限り見切る
回避不可時は土属性の障壁を作り威力を削ぎ、
攻撃を受ける度に敵の攻撃パターンを学習し、
回避の精度を上げていこう
目視では回避が不可能な場合は第六感に頼る
攻撃を凌ぎつつ
反撃の機会を伺う
隙が見当たらなくても
土の属性を纏わせた鎌でなぎ払い、
無理やり隙を作ろう
私にできるのは精々ここまでかな
とどめは共に戦う仲間に託そう
●城島・冬青(六百六十九番目の宿木・f00669)
まっぷたつに割れちゃったキマイラフューチャー。
ここはその中枢のシステム・フラワーズ。名前の通り、辺り一面、花だらけ。おまけに空(というか、宇宙?)では二羽の鳥がのんびりと輪をかいている。一羽は私のお供のカラスくん。もう一羽は野鳥かな?
いやー、のどかな光景だねー。
敵さえいなければの話だけど。
「ウサギ怪人は斜め上をいく強敵だったけど――」
と、今は亡きラビットバニー(オブリビオンなので、倒される前から『亡き』者だったんだけどね)のことを口にしたのはキマイラの吾聞。タイミングを計るかのように、長い尻尾(爬虫類っぽい形なのにモフモフな毛がついてるの。かーわいー)を左右にゆっくり揺らしてる。
「――今度の敵は正統派だね」
「うん」
私は頷き、『正当派』の敵を改めて見据えた。
スピード怪人のウインドゼファー。
タイヤやマフラーやミラーといったバイクのパーツがついたアンドロイドだかサイボーグだかみたいな外見だけど、実は女性なんだって。言われてみれば、お花畑で静かに佇むその姿はなにやら乙女っぽく見えないこともない……かな?
「さあ、かかってきなさい」
おっと。こっちに語りかけてきたから、もう『静かに』の部分はなくなったね。でも、『佇む』のほうはまだキープしてる。すぐに攻撃に移れる自信があるのか、身構えもしていない。
「あなたたちにはモンキーとバニーの後を追ってもらいます……と、までは言いません。でも、ここから先へは行かせませんよ」
「いや、行かせてもらうよ」
と、多重人格者のセツナさんが挑発に挑発を返した。案外、どちらも自分の意思を素直に表明しただけで、挑発の意図はないのかもしれないけどね。
「そして、あなたが言わないのであれば、私たちが言わせてもらおう。『あなたにはモンキーとバニーの後を追ってもらう』とね」
悠然とした足取りでウインドゼファーに近付いていくセツナさん……って、悠然はまずいでしょ、悠然は!? 相手はスピード特化型の怪人なんだから!
「セツナさん、あぶなーい!」
私が叫んだ時にはもうウインドゼファーは攻撃を終えていた。
●影守・吾聞(先を読む獣・f00374)
「……全タイヤ高速回転モード」
さっきまで彫像みたいに突っ立ていたウインドゼファーが目にも止まらぬ速さで変身し、車輪付きの剣を振った。
『目にも止まらぬ』ってのは比喩じゃないよ。変身するところも剣を動かすところも本当に見えなかった。一瞬にして、バイク味がより強くなったというかなんというか……まあ、とにかく異様な姿(変身前も異様だったけどね)になって、剣の構え方も変わったんだ。最初と最後の絵しか描かれていないチョー手抜きなパラパラ漫画みたいに。
「セツナさん、あぶなーい!」
冬青の絶叫。
それに続くのは、不愉快な笑い声じみた音。
車輪の付きの剣から放たれた竜巻の音だ。
その竜巻に巻き込まれ、哀れセツナはズタボロに斬り裂かれてボロ雑巾のように……ならなかった!? 回避した! ウインドゼファーみたいに『目にも止まらぬ』とはいかなかったし、完全に避けきれずに少しばかり傷を負ったけどね。
その傷をものともせずにセツナはウインドゼファーに走り寄り、簒奪者の鎌を思い切りスイング。
鎌は命中したものの、大きなダメージは与えられなかったみたい(全タイヤナントカモードとかいうのは防御力もアップするのかな?)。だけど、攻撃を受けたことでウインドゼファーの体勢が崩れ、隙が生まれた。たぶん、これこそが……そう、隙を生み出すことがセツナの狙いだったんじゃないかな。その隙に乗じて、他の誰かがウインドゼファーを攻撃できるように。
セツナの意図を悟ったのか、冬青が動いた。学校の制服らしきスカートの裾を翻し、サムライブレイドを構えて斬り込んでいく。
でも、敵もさるもの。素早く変身を解いたかと思うと、ブンブンと唸る旋風で全身を覆って――
「はっ!」
――気合いを発し、迫り来る冬青めがけて車輪付きの剣を振り下ろした。
高速回転する車輪を脳天に受け、哀れ冬青は縦にまっぷたつに……ならなかった!? いや、まっぷたつにはなったんだけど、それは本物の冬青じゃなくて、残像だった。
「なかなか、やりますね」
「そっちもスピード怪人を名乗るだけありますね! バニーちゃんより、はやーい!」
と、ウインドゼファーと賞賛の言葉をやりとりしたのも残像。
本体はウインドゼファーの懐めがけてダッシュして――
「でも、臆せず行きまーす!」
――サムライブレイドを横薙ぎに払った。
なかなかに素早い動き。
だけど、ウインドゼファーのほうが素早かった。軌道上の花を吹き飛ばしながら、サムライブレイドが届かかない距離まで一気に後退。
もっとも、届かなかったのは刃だけ。空振りの斬撃から生じた衝撃波は届いた。衝撃波によって巻き起こった土煙もね。
その土煙に乗じて、冬青は再びウインドゼファーに突撃した。
●セツナ・クラルス(つみとるもの・f07060)
ウインドゼファーには、茶色の土煙の奥から二つの赤い光点が飛んでくるように見えたかもしれない。冬青さんの瞳は赤くなっているから。
そう、『血統覚醒』を使ったんだ。
「斬り合いなら、負けませんよー!」
ダンピール(といっても、見た目は普通の女の子だけど)から一時的にヴァンパイアに変じた冬青さんは土煙を突き破ってウインドゼファーに肉迫し、サムライブレイドの一太刀を浴びせた。
その凄まじくも華麗な攻防を私は数メートルほど離れた場所から観戦し、同時に数十メートル上空から俯瞰していた。ユーベルコード『並走する観測者(ウノメタカノメ)』によって召喚した鳥型の使い魔(冬青さんのペットらしきカラスと仲良く飛んでいる)と五感を共有しているんだ。種明かしをすると、ウインドゼファーの攻撃をなんとか躱すことができたのも、鳥の視点で攻撃を見切ったからだよ。
そして、今、使い魔の目が新たな動きを捉えた。冬青さんの攻撃を受けたウインドゼファーに向かって、吾聞さんが走っていく。
ウインドゼファーはそれに気付いたらしく、またもや後退して冬青さんの間合いから離れ――
「レボリューション・ストーム!」
――両腕に持ったタイヤの剣を胸の前で交差した後、勢いよく振り下ろした。
彼女の立つ位置から全方位に暴風が吹き、それを追うようにして無数の亀裂が地面に走った。
使い魔の目で俯瞰しているので、亀裂が放射状に広がり、地面が崩れていく様がよく判る。まるで、歪んだ蜘蛛の巣のごときカオスな図が不可視の手で描かれていくかのような……などと呑気なことは言っていられない。崩落の範囲に吾聞さんがいる。
しかし、私が警告や手助けをするまでもなく、吾聞さんは自力で危機を脱した。
いや、正確に言うと、自力じゃない。
「俺の魂の友達……リム、力を貸して!」
リムという名の友達――黒い竜を召喚したんだ。
亀裂だらけになった地面に足を取られるより早く、リムくんは吾聞さんを背に乗せて飛び立った。
そして、ウインドゼファーが起こした暴風の中を突き進んでいく。
「でっかくて空も飛べるリムと一緒なら、暴風が吹き荒れる戦場でも勇気百倍だ!」
百倍どころか、千倍じゃないか? またもや、迫り来る光点をウインドゼファーは見たかもしれない。ただし、今度の光点は二対。吾聞さんとリムくんの双眸。
『血統覚醒』した冬青さんと同様に赤い瞳を光らせて、リムくんはウインドゼファーに体当たりを仕掛けた。
ひらりと身を躱すウインドゼファー。
でも、次の瞬間――
「ありがとう、リム!」
――翼を持つ友達に礼を述べながら、尻尾を持つ吾聞さんが背後から斬りつけた。青白い輝きを放つルーンソードで。
そう、リムくんの体当たりはフェイント。吾聞さんは瞬時にリムくんから降り、死角に回り込んで攻撃したんだ。
「うっ……」
背中を斬られて苦鳴を漏らしながらも、ウインドゼファーは倒れることなく、奇妙な形の剣を構え直した。
どうやら、戦意は失っていないらしい。
まあ、私たちも失っていないけどね。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
アストレア・ゼノ
◆SPD/アドリブ歓迎
風を操る力か
だったら対抗するには「これ」しかないな
【竜言語・嵐の化身】を発動し先制攻撃を耐える
身に纏う【嵐の力】による【オーラ防御】で暴風を凌ぎ
そのまま風を味方に付けての【空中戦】へと持ち込もう
素の速さなら向こうが上だろうが、
こっちも命を削る【覚悟】で得た超速度と
【野生の勘】での先読みで互角に追い付いて
【串刺し】【なぎ払い】【早業】【武器受け】【見切り】
を駆使した竜槍の技で敵へと果敢に攻め込もうじゃないか
それでもこちらを振り切ろうとするなら、
すかさず【雷撃】の放射による【属性攻撃】で追い打ちをかける
例えどれだけ素早いとしても、風は雷からは逃げ切れないさ
ジェリー・ワイルダー
なんだぁ、こいつも先制攻撃か!?
まともに防御するだけじゃ不安だな、ちと足搔かせてもらうぜ
怪人が爆風を纏ったら、装備から外したフック付きワイヤーを投げ込んで絡め取って貰おうかな。
ただおそらくそれだけじゃスピード怪人って呼ばれてるくらいの奴は止められねえよな。じゃあ煽ってみるかな?
「すげぇ速えな!」「あんたみたいに速い奴見たことねえよ!」「LI〇Eの返事も一瞬で返してきそう」「トイレも爆速で終わらせそう」
速さに固執してそうだから少しはおちつくといいんだが〜……?風やスピードが緩んだ隙を見てブラスターで反撃したい。
万が一駄目だったら後は頼んだぜ相棒
お前みたいに死に急ぐやつだとさ!
織部・樒
ザフェルさん(f10233)と行動
連携・アドリブOK
【WIZ】
基本行動はザフェルさんが行動し易い様基本は防御に専念しつつ
敵の注意を彼から逸らせるよう動きます
む、…これは目で追うのも難しい
ですが可能な限り動きをよく観察します
行動の予測を立てられれば少しは反応出来る筈
先制攻撃には九字真言で対抗
防ぎ切ったら、逆上とはいかなくても頭に血を昇らせる為
何か挑発の言葉が出るといいのですが
敵の通常攻撃がある場合は装備した獣奏器(竜笛)で受けようと試みます
此方の攻撃は獣奏器で不協和音やテンポが変わる曲を奏でるなどして
敵の気を散らせる事程度ですが、役に立つと良いのですが
ザフェル・エジェデルハ
樒(f10234)と連携して挑む(他参加者との連携やアドリブもOK)
正直、敵の先制攻撃に対抗しうるユーベルコードも技能も
持ち合わせちゃいねぇが、敵の情報があるのは強みだな。
グリモア猟兵に感謝だぜ。
スピードは敵の方が上手と認識しているため、敵が動いたと感じた瞬間に
防御の体制を取る。飛翔能力があることも忘れず、上空から攻撃を受ける
可能性も考慮して全神経を集中させて防御を行う。
また防御の最中は力溜めを行うことも忘れず、反撃の機会を伺う。
攻撃は一瞬の隙を逃さずにグラウンドクラッシャーを撃ち込む。
敵の意識が樒に向いた瞬間などは確実に物にする。
スピードには自信がないが、パワーはそこそこだと思ってんでな!!
●織部・樒(九鼎大呂・f10234)
ウインドゼファーの『レボリューション・ストーム』なるユーベルコードによって、美しい花畑は亀裂まみれになり、そこかしこが盛り上がり、あるいは陥没しています。
「クソッ! 地面をメチャクチャにしやがってよぉ!」
その惨状を睨みながら、地団駄を踏むかのように肉球付きの足を何度も上下させているのはケットシーのジェリーさん。
「歩き辛いなんてもんじゃねえぜ! まったくもう!」
苛立って毒づいているように見えますが、本当は敵を攻撃するタイミングを計っているのでしょう。
でも、ジェリーさんより先に攻撃を仕掛けた人がいました。
白い仔竜を連れた竜騎士の女性――アストレアさんです。
「風を操る力か……だったら、対抗するにはこれしかないな」
その静かな独白が耳に届いたのかどうかは判りませんが、ウインドゼファーはすぐに反応を示しました。
「レボリューション・ストーム!」
車輪剣を交差させて、あのユーベルコードを発動させたのです。どうでもいいことですが、技の名前を叫んでポーズを決めるのは必須の行為なのでしょうか? ある種の様式美?
まあ、様式美の必然性はさておき、そのユーベルコードの威力が凄まじいものであることだけは間違いありません。またもや暴風が吹き荒れ、ウインドゼファーの周辺の地面はズタズタになってしまいました。
当然、ウインドゼファーに突進していたアスレトアさんも攻撃範囲に入っていたのですが――
「荒ぶ風に轟く雷、それらは嵐の従者なり』
――オーラの防壁を展開してダメージを防ぎつつ、足場が崩れる前に跳躍しました。その際に紡いだ言葉はユーベルコードの詠唱だったらしく、鎧と上衣に包まれた体が電光と烈風に覆われていきます。『対抗するにはこれしかない』と仰っていましたが、このユーベルコードこそが『これ』だったのでしょう。
「空中戦といこうか」
嵐の化身とでも呼ぶべき姿に変じたアスレトアさんは重力に引き戻されることなく、空中を疾走してウインドゼファーに襲いかかりました。槍に変身したあの仔竜を構えて。
「望むところです」
ウインドゼファーが地を蹴り、空に舞い上がりました。
●ザフェル・エジェデルハ(流離う竜・f10233)
「素の速さなら、そちらが上だろうが、意地でも食らいついてみせよう」
アストレアが空中で竜槍を突き出した。
「そうでなくては、こちらとしても張り合いがないというものです」
ウインドゼファーは身を翻すようにして竜槍を躱しつつ、車輪の剣を横薙ぎに一閃させた。回避を兼ねた攻撃。
だが、棘がびっしり生えた車輪をアストレアは竜槍の中程で受け止め、絡め取るかのように旋回させながら、相手に叩きつけようとした。
ウインドゼファーはそれを紙一重で避け、反対の手に持ったもう一本の車輪の剣で斬りかかる。アストレアは体をわずかに仰け反らせて回避し、竜槍で薙払うかのように反撃……といった具合に戦いを繰り広げている間、二人の足は一度として地面につかなかった。ものすごく滞空時間の長いジャンプなのか。あるいは普通に空を飛んでいるのか。どちらにしても、たいしたもんだ。風の力と風の力とぶつかり合い。いや、アストレアのそれは風というよりも嵐か?
「どれだけ素早くとも――」
アストレアがまた竜槍を突き出した。だが、間合いを読み違えたようだ。寸前の攻防でウインドゼファーは飛び退り、竜槍が届かない場所にいるんだから。
「――風は雷からは逃げ切れない」
「むっ!?」
ウインドゼファーの深紅のヘルメット(いや、あれが素顔なのかもしれないが)から驚きの声が漏れ出た。というか、見ている俺も驚いた。アストレアの竜槍から電光が迸り、ウインドゼファーに命中したんだ。あのユーベルコードで変身すると、こういうこともできるらしい。
とはいえ、ただでやられるようなウインドゼファーじゃない。電光を食らいつつもアストレアに迫り、車輪の剣で脇腹を斬り裂いた。
そして、互いにダメージを与えた二人の女戦士は高度を落とし、華麗な着地を同時に決めた。
「次の一手はお任せを」
そう言いながら、アストレアの横を駆け抜けたのは樒だ。サムライエンパイアでチャノユとやらに使われていた椀のヤドリガミ。そして、俺の相棒。
『次の一手が云々』というのはアストレアじゃなくて、実は俺に向けての言葉だろう。それくらいのことは判る。以心伝心ってやつだ。
もちろん、樒がなにをしようとしているのかも判ってる。敵の意識が俺に向かないように陽動を買って出たんだ。
●ジェリー・ワイルダー(野良猫・f15817)
肌も髪も服も白っぽい樒がアストレアの横を駆け抜け、ウインドゼファーへと向かっていく。
「全タイヤ高速回転モード」
着地した時の姿勢のままで呟くウインドゼファー。
次の瞬間にはそのナントカモードとやらへの変身を終え、タイヤが付いた珍妙な剣を振りかぶっていた。変身はこれで二度目だっけか。一度目の時もそうだったが、あまりにも速すぎて、過程がすっ飛ばされているように見える。
そして、タイヤ付きの剣が振り下ろされ、竜巻が発生した。癇にさわる笑い声みたいな音を立てる、小さいながらも激しい竜巻。
その音に対抗するかのように、樒が呪文だかなんだかを唱えた。依然、ウインドゼファーめがけて走りながら。
「青龍、白虎、朱雀、玄武、勾陳、帝台、文王、三台、玉女」
詠唱が終わるのとほぼ同時に竜巻が樒にぶつかった。
いや、ぶつからなかったのか? 俺のいる位置からは樒の背中しか見えないからよく判らねえが、どうやら先程の詠唱で障壁みたいなものを作って、竜巻を防いだらしい。
だが、快進撃もそこまでたった。
「この! えーっと……」
無傷でウインドゼファーの傍に近付いた樒だったが、なにやら様子がおかしい。大声を出したものの、後が続かず、口ごもっている。どうやら、相手を挑発して頭に血をのぼらせようとしたけども、適当な悪態が思いつかないらしい。まあ、しょうがねえか。そういうのが得意そうなタイプには見えないからなぁ。
しかし、攻撃こそできなかったとはいえ、樒は立派に役目を果たした。
陽動という役目を。
そう、樒がウインドゼファーの注意を引いている間に別の方向から近付いていた奴がいたのさ。樒とは対照的な色黒の大男――ザフェルだ。
「甘い!」
ウインドゼファーが叫びざまに飛び上がった。ギリギリのところでサフェルの接近に気付いたらしい。ちなみにナントカモードの変身は瞬時に解けて、代わりに暴風が体を覆っている。これもさっき見せたユーベルコードだな。
「いや、甘かねえよぉ!」
と、咆哮するザフェルめがけてウインドゼファーは急降下し、タイヤの剣で斬りつけた。
しかし、ザフェルはただ吠えていたわけじゃないらしい。防御の姿勢(空からの攻撃を想定したであろう姿勢だ)を取り、ダメージを最小限にとどめた。
一方、樒はといえば、獣奏器で不協和音を奏でている。ウインドゼファーの気を散らそうとしているんだろうな。効果があるかどうかはさておき、そういう風に仲間を気遣う心は買いたい。ザフェルは良い相棒を持ったな。
いざって時は俺も相棒に頼るとするか。
この世にはもういない相棒だが。
●アストレア・ゼノ(災厄の子・f01276)
「ぎゃう! ぎゃう! ぎゃーう!」
槍から竜の姿に戻ったグウェンがけたたましく吠えている。ザフェルに声援を送っているつもりなのだろう。
「てめえと違って、スピードには自信がないが――」
ザフェルが防御の構えを解いて身構えた。
「――パワーはそこそこあるほうだぜ!」
『そこそこ』とやらのパワーで振り上げられた得物はバトルアックス。そこから放たれたユーベルコードは『グラウンドクラッシャー』。
その強力な一撃はウインドゼファーを叩き落としただけにとどまらず、落下地点の周辺を破壊した。
「くっ……」
苦しげに呻きながらも、ウインドゼファーはすぐさま立ち上がり、ザフェルの追撃を受ける前にまた飛翔した。
だが、追撃者はザフェルだけではない。
『グラウンドクラッシャー』と『レボリューション・ストーム』によって荒れ果てた地面の上を小さな影が走る。
ケットシーのジェリーだ。
「俺からのプレゼントだ!」
ジェリーの腰に装着された射出装置らしきものからフック付きのワイヤーが勢いよく飛び出した。
それはウインドゼファーに向かって伸び、彼女を覆う暴風に巻き込まれて、体に絡みついていく。
「あんたってば、ホント、マジで、ビビっちまうほど、すんげぇー速えよな! そんなに速い奴、見たことねえよ!」
ロープに続いて、挑発の言葉を投げ始めるジェリー。
「きっと、SNSの返事なんかも一瞬で返すんだろうな! トイレも爆速で終わらせんじゃね? 速すぎて、ケツ拭くのを忘れたりして!」
ロープを絡め、更に挑発し、相手の動きを少しでも鈍くするつもりなのだろう。ロープはさておき、挑発のほうはあまり効いていないようだが、樒は『なるほど。勉強になります』などと呟きながら、ジェリーの言葉をメモしている。あまり参考にしないほうがいいと思うが……。
そうしている間にウインドゼファーは着地し、剣を構えた。ロープが絡みついているにもかかわらず、その動きに淀みはない。
対するジェリーは素早く拳銃を抜き、ウインドゼファーに向けたが――
「ぐわっ!?」
――引き金をひく暇もなく、車輪付きの剣の斬撃を浴びて吹き飛ばされた。
だが、私には見えた。
吹き飛ばされたジェリーの顔に浮かぶ不敵な笑みが。
そして、聞こえた。
彼が何者かに発した呟きが。
「後は頼んだぜ、相棒……おまえみたいに死に急ぐ奴だとさ」
ジェリーの体が地面に落ちた瞬間、その『何者か』かもしれない存在がどこからともなく出現した。
ドラゴニアンだ。
「……」
正体不明の八人目の猟兵は無言で拳銃を抜いた。ジェリーが持っていたものと同型の拳銃。
いや、それ(だけでなく、おそらくジェリーの銃も)は拳銃ではなかったらしい。銃口から発射されたのは弾丸ではなく、熱線だったのだから。
胸部の装甲を熱線で貫かれ、『死に急ぐ奴』であるところのウインドゼファーが声も出さすに頽れる。
その隙を見逃すことなく、私たちは総攻撃を仕掛けた。
『私たち』と言っても、意識を失ったジェリーといつの間にか姿を消したドラゴニアンは含まれていないが。
数分後、ジェリーはユーベルコードでヒールされて目を覚まし――
「終わったか?」
――開口一番、そう尋ねた。
「終わった」
と、私はウインドゼファーの死体を指し示した。
そして、尋ねる側に回った。
「あのドラゴニアンは何者だ?」
「今は亡き相棒さ。ユーベルコードで召喚したんだ」
ジェリーはそう答えると、猫の口吻を歪めて笑ってみせた。
どこか寂しげな笑みだった。
「持つべきものは頼れる相棒だよなぁ」
「ぎゃーう!」
ジェリーの言葉に同意するかのように私の相棒が鳴いた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴