バトルオブフラワーズ⑪〜ヘーリオスの琴の音を高らかに
「みんな集まったな!では作戦の説明を開始する!」
それはある日の昼下がり。手にサンドイッチなどの片手に持てる軽食を持つ者がちらほらいる中、ミーティア・シュヴァルベ(流星は燕が如く・f11420)のいつもより若干緊張した声が猟兵達の集まる一室の響き渡る。
「皆の活躍で、システム・フラワーズの奥深くまで進行出来た。よって、残す門番と言える敵は後一人だ」
その名をスピード怪人『ウインドゼファー』。怪人軍団の幹部のひとり。風のユーベルコードを得意とするれっきとした女性の怪人である。
「敵は強い。まず留意しなければならないのは相手の方が格上であるということだ」
風を操るという性質もあり、現在存在する猟兵達の誰よりも素早く、近距離での攻撃しか持たないながらも彼女の射程は彼女の視界が届く限りというほかない。
「まず、何をしても先手を打たれる。何かしらの手を打たない限りは何をやっても奴に潰され届かないだろう。そして奴には今までの二人みたいに明確な弱点はない。最後の最後でとんでもない門番がいた物だな」
さしずめ、地獄の門を守るケルベロスと言った所か。などと、腰に両手を当て、冗談と苦笑を交えて鼻を鳴らすミーティア。
「まあ、そんなわけで私の予知も敵に必ず先手を打たれる事、敵のユーベルコードの情報と、戦場が花畑であるという事位しかまともな物がない。だから、こういう時はお前達の戦いの感覚という物を信じるのが一番だと判断した。自らの力を信じ、的確に対策を練れば自ずと道は開かれていくはずだ!」
自身の得意分野をもって、敵の攻撃を的確に防ぎ、反撃する。たった一つの作戦(オーダー)。それはまるで――
「ケルベロスに立ち向かうオルフェウスと言った所か。残念ながらヘラクレスの様にはいかないが勝機があるだけ十分だ!さあ行ってこい!作戦名は『オルフェウス』作戦と言った所だな!」
勿論、お前達の勝利を信じていると。小さなグリモア猟兵は、戦士達を送り出すのであった。
風狼フー太
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敵は必ず先制攻撃します。敵は、猟兵が使用するユーベルコードと同じ能力値(POW、SPD、WIZ)のユーベルコードを、猟兵より先に使用してきます。
この先制攻撃に対抗する方法をプレイングに書かず、自分の攻撃だけを行おうとした場合は、必ず先制攻撃で撃破され、ダメージを与えることもできません。
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はいどーも。風狼フー太でございます。今回は特に語ることがないのでサクッとした補足だけ。
敵は必ず先手を取ってきます。それに対するプレイングがない限り、ほぼ必ず苦戦か失敗扱いになります。勿論ある程度は先手を取られることに対するプレイングを書いているという前提条件を満たし、成功しそうなプレイングを選んで判定を行います。そんなわけでじゃんじゃんプレイングを送ってくださって構いません。
また判定は厳しいものになると思います。その中にはどうしても運の部分もあるので決して苦戦や失敗が出たからと言ってそれらすべてがプレイングが悪かったからという事ではないというもお伝えしておきます。ですので、苦戦や失敗したからといってしり込みせずにジャンジャン他の決戦シナリオとかにもどんどん参加していってください。
では、この辺で。ご参加お待ちしております。
第1章 ボス戦
『スピード怪人『ウインドゼファー』』
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POW : フルスロットル・ゼファー
全身を【荒れ狂う暴風】で覆い、自身の【誰よりも速くなりたいという欲望】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
SPD : レボリューション・ストーム
【花の足場をバラバラにする暴風】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ : ソード・オブ・ダイアモード
対象の攻撃を軽減する【全タイヤ高速回転モード】に変身しつつ、【「嗤う竜巻」を放つ2本の車輪剣】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
イラスト:藤本キシノ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
「来ましたね」
システム・フラワーズのさらに中枢へと至る道の前。開けた場所に咲き誇る花の絨毯は、この状況でなければそれは美しい物であっただろう。
だが、奥へと続く道の前に立つ怪人ウインドゼファーの殺気は、怪人と猟兵がこの広い戦場の外周の対角線上に立っているというにも関わらず、朗らかな春の陽気を感じさせるこの場所の暖かさを感じさせぬほどの冷気を猟兵達に突き刺していた。
「あの二人を倒し、ここまで来た。その実力をまずは褒めましょう」
ですが――、と。
風が舞う。風が飛ぶ。風が狂う。その度に散る花が猟兵達に迫り、視界を一瞬だけ奪い
「この先は、一歩たりとも、通させはしないッ!」
ウインドゼファーの刃がすぐ眼前まで迫っていた――
カグヤ・アルトニウス
うーん…バイク魂がという感じですかね
転移直後に目前に突っ込んで来ているという状況をどうにかして反撃するというのが…やってみましょう
能力値:WIZ
「時間さえ制圧してしまえばただの剣士です」
事前に【第六感】で向こうの行動を予想し、転移完了と同時に周囲の空気にUCで
「内部の質量のある物体は元が高速である程遅くなる」
という法則を与えて向こうのUCの効果を潰します
ただ、高速なら竜巻すらそよ風になるこの法則は仕掛けた自分も例外ではない為、ゆっくりと正確な動きによる【暗殺】・【鎧無視攻撃】で急所にエクストラ・ブルーを「置いて」来ます
幸い、向こうは光学兵器と高速でない攻撃を持っていないので、何とかなりそうです
猟兵達を襲った物、それは単純にただ速いというだけの暴力であった。
キィィィン、と。耳障りな回転音と共に響き迫りくる刃。だが、突然何かに当たるでもなく緩やかな動きになり、徐々に動きが止まり始めた。
「なんですか、これは!?」
ウインドゼファーが力を込めれば込めるほど、蜘蛛の糸にでも絡みつかれたかの様に動かなくなる体。何が起こっているか?思案の必要もないと、切り棄てる。何が起こっているかなどそんなものは猟兵達のユーベルコードに決まっていると。
「時間さえ制圧してしまえば、貴方でさえただの剣士です」
カグヤ・アルトニウス(辺境の万(面倒)事(請負)屋・f04065)はゆっくりと、動かない彼女へと近づく。彼のユーベルコードは自身の周囲にある無機物に自身が設定した法則を付与した空間に変換。その能力により、自身の周りにある空気に「内部の質量のある物体は元が高速である程遅くなる」という能力を設定。
自身にもその設定が及ぶが最早相手は動けない獲物。ただ、ゆっくりと。手に持つ光剣を急所に差し込めばそれで済む話。そんな状況の中、ウインドゼファーは
――ただ、自身の周りを舞い落ちる、風に巻き上げられた花弁を見ていた。
「では、覚悟――ッ!?」
跳んだ。跳んだのだ。ただ刺し貫けばいいだけのはずの相手が。誰の目にも見える程の動きではあったが、後ろに跳んだのだ。ゆっくりとカグヤの剣が空を裂く中、聞こえたのは
「随分と」
面白い能力を持っていますね。と、ウインドゼファーの口からこぼれる言葉。
花弁が自身の周りを何事もなく重力に引かれて落ちる。たった、それだけの事でウインドゼファーはカグヤのユーベルコードの性質を予測し、誰もが見える程の速度で後ろに跳んだのだ。
動力を取り戻したウインドゼファーの車輪剣が唸り、風と共に花弁を巻き上げる。高速で宙を舞う花弁が不自然に遅くなる空間、それこそがカグヤのユーベルコードの範囲だと。それを確認すると同時に放たれた竜巻は空間にとどまる花弁を法則を付与された空気ごと吹き飛ばしていく。
しまっ――。と、そう思うと同時に彼女の刃がカグヤに迫っていた。
苦戦
🔵🔴🔴
ヴァシリッサ・フロレスク
「ナニが疾ぇんだか知らないけど、逝っちまうのもハヤいんじゃないのかい?」
絶対速度じゃ勝ち目0。追えぬなら、迎撃するのみ。アンタの速度と風、使わせて貰うよ?
ヤツのUCは【挑発しておびき寄せる】
被弾上等、アタシの血煙は火薬さ。幾らでも喰らってやる。
その間銃撃で応戦、遠距離を嫌厭させ、油断するか、止めを刺しに突っ込んで来たら勝負だ。
流血を一気に発火、ヤツの暴風で煽らせた炎で視界を奪う。その一瞬で、相対速度で加速したUCをブチ込む――刺し違う【覚悟】だ。手傷さえ負わせられれば。
【激痛耐性、早業、だまし討ち、目潰し、見切り、カウンター、捨身の一撃、串刺し、戦闘知識】
アタシにも魅せてくれよ、音速の先をさ?
何度、同じような事を繰り返しただろうか――
「遅いっ!」
ヴァシリッサ・フロレスク(浄火の血胤(自称)・f09894)のリボルバーショットガンが、唸りをひそめ次の咆哮を行うまでのリロード。銃弾一発を込める為に一度、下手をすれば二度斬られるといった行為。
(ああ、クソ)
つい、心の中で悪態をつく。ほんとに、あまりに遅いと。正直ここまでの差があるとは思っていなかったと。
痛みには慣れている。昔の事を思えばこれくらいなんともない。勝つためにいろいろ考えてきた。だからと言って、これは少し無謀すぎたかと。ああクソ、また斬られた。サンドバッグの方がまだマシな働きをするんじゃないかと。
斬られる度に血飛沫が舞う。追い払わなくてはならないとリボルバーに一発だけ弾丸を込め、まとわりつくゼファーに撃つが、やはり当たらない。
「いくらやろうと」
無駄だッ!と。足を、腕を、そして肩から袈裟を切るように車輪剣がヴァシリッサの肉を引きちぎる。そこで足に力が入らなくなった。ガクリと、力をなくして体が沈み込む。右手に持ったいくつかの12ゲージが地面にこぼれて、花の中に隠れてしまった。
随分手間をかけさせてくれたと。時間を惜しむように素早く、一直線にゼファーはヴァシリッサに近づき彼女の首を刎ねようとして。
「……よーく、魅せてもらったぜ。音速の先をさ?」
――ノインテーター、9mmパラベラム仕様の自動拳銃。連射機構も備えているが、今は必要ない。たった一発でいいのだ。その為に、今まで。
――血を流してきた。
「アンタと速度勝負したって勝ち目0だ。……だったら、使えるもんは、使わねぇとな」
今までの12ゲージの咆哮よりも、小さな、小さな咆哮。たった一回行われたナインパラベラムのワンショット。
それが彼女の流した血に、文字通り火をつけた。
「なっ!?」
花咲く花に燃え移り、地面に落ちた12ゲージバックショットが熱に当てられ、爆発音と共にあられもない方向へ弾丸を飛ばし、そして彼女の纏う風に炎が吸われて、彼女に竜巻の様に炎が襲い掛かる。
無論、自身が起こしている風だ。ほんの少し力の加減を考えるだけで竜巻は消え、視界が開ける。ただそれだけの事
「アンタの速度と風、使わせてもらったよ?」
一瞬、視界を奪うだけで充分。一直線に近づいたゼファーの動きは今までの動きよりもはるかに読みやすかった。だからこそ、たった一瞬視界をなくすだけ。それだけで、懐に近づけた。そしてこの為の力だけは残しておいた!
「ガ、アアぁ!?」
ゼファーの腹に、深々と刺さった杭。自身の発火する血液を、対象の体に送り込み爆破するヴァシリッサの一撃。
「ナニが疾ぇんだか知らないけど……」
その、たった一刺しの為。酷使した体は限界を迎えていた。だが、意識を手放すその刹那、確かにゼファーの体から炎が吹き上がるのを見てヴァシリッサは一人牙を出して笑っていた。
――逝っちまうのもハヤいんじゃないのかい?
成功
🔵🔵🔴
アーサー・ツヴァイク
※何でも歓迎、🔵過多なら不採用可
槍形態のライドランを構えて戦闘開始。敵は超高速で突っ込んでくるので【オーラ防御】【激痛耐性】【気合い】で一発目は受ける。
だがただ攻撃を受けてから反撃……ってのは性に合わねぇ!
使うUCは【エクスプローシブ・ドラゴンライド】
俺は敵の攻撃の瞬間にこいつを【荒れ狂う暴風】にぶち込み爆破するぜ!
【命中した対象を爆破する】……別に物質に限った話ではない!
敵は俺達のUCに合わせて先手を取る能力があるが、フルスロットル・ゼファーでは遠隔攻撃は不可能……つまり暴風を纏って確実に接近する!
死角から突っ込んでこようが、こっちの狙いは暴風だから問題ねぇ、的は向こうから来るってな!
三角・錐人
故郷の危機だからな…久しぶりに命をベットしたゲームをさせてもらう。
「されることは分かっている」から、対処の仕様はある。被害無しとはいかないが、ゼファーの攻撃を「野生の勘」と「見切り」で何とかしのごう。その上で本来のダメージ以上の被害を受けたと「だまし討ち」で錯覚させつつ【テラーテンタクルス】を「高速詠唱」で発動。ゼファーの起こす風に触手君達を羽毛のように乗せ……一気に「全力魔法」も加味して合体させ、風の流れを乱して隙間を作ってやる。
その一瞬、ゼファーが立て直しを図る刹那に全てを賭け、「先制攻撃」「早業」「鎧無視攻撃」「マヒ攻撃」をもってフォースセイバーで斬りかかる!
さあ、このターンが勝負だ!
「おああァァーー!?」
渦巻く風の中、光り輝く鎖を離すまいと握りしめアーサー・ツヴァイク(ドーンブレイカー・f03446)が叫ぶ。
炎に焼かれ狂乱するゼファーの一撃を防いだまではよかった。彼女の纏う暴風にユーベルコードで出来た鎖を打ち込み彼女から離れない用意をするまでもよし。問題があったとすれば、彼女の風のその強さ。
ガギィン!と、何度目かの鉄と鉄のぶつかり合う音が響く。彼女の纏う風を爆破しようと打ち込んだ鎖は渦巻き、荒れ狂う暴風に流され、アーサーもそれに引きずられ風に流されるままになっていた。
引き離せないとわかったのだろう。いつしか風は、彼女の剣が届くよう時折中心に引き込まれるような風に代わり、アーサーを引き寄せ、切り裂こうと車輪の剣が何度も迫った。
【Danger:Over Damage】
「くっそ装甲が……おい、大丈夫かアンタ!」
それは先程、ゼファーの攻撃を受けた仲間に向けられた声。切り裂かれ、地面に倒れ伏し、ピクリとも動かない彼。
予定が狂った。怪我人も守らなきゃならない。だが、まだ大丈夫だと。自身に何度も言い聞かせるアーサー。
ヒーローとはどんな時にでも諦めないのがヒーローの第一条件である。だから、まだ活路はあるはずだと――
そんな信念を打ち砕くべく再び引き寄せら、目の前に迫る剣閃。
(しまっ――)
後コンマ数秒あれば、胴体と首が二つに分かれる。そんなアーサーの耳に
「キャスト・スペル……てな」
聞こえてきた声と共に、足元から巨大な触手がゼファー横から殴り、アーサーに向かう剣の軌道を上にそらした。それは、見る者が見れば異界の怪物、あるいは邪神の類の物だと理解できただろう。
「お、お前!?」
「わりぃ。仕込みに手間かかっちまった」
驚愕するアーサーの目線の先には先ほどまで倒れていたはずである三角・錐人(ロケットスパイダー・f08517)が地面を踏みしめて立っていた。無論、ゼファーから受けた傷は彼の脇腹を深く抉り取っている。
重傷だ。すぐにここを離れて治療しなくては。だが、だ。
――ここは俺の故郷(せかい)だからだよ。命の一枚ぐらいBETしなきゃなんねえだろ?
決して利口に過ごしていたわけではない。だが、この場所には、ここには夢があった。輝かしい物があった。だったら十分だと。
「ここは俺の故郷だから守りてぇ。諦めんなよヒーロー。守ろうぜこの星をよ」
そんな、たった一つの声援に。
「は、く……はは!」
腹の底から笑いが込み上げてきた。そうだ、人が何かを守りたいという理由なんてそんな事でよかったのだと。ならば、自分がここに立つ理由は?決まっている。
――そんなもん一つしかねぇだろ。俺はヒーローだからだよ。
「勝算はあるんだろうな魔術師!」
「わかんねぇ!だが、俺のタクティクスを信じろ!」
「わかった。お前に合わせるぞ!」
任せろ!と、錐人持つカードが魔力を帯びた光に満ちる。
それはまさに、錐人が仕掛けたコンボのキーカード。
風に乗り目に見えないほど小さな、羽毛のようなものが彼が彼女の剣に倒れてから徐々にゼファーの起こす風に漂っていた。それはよく見れば小さな触手のようなものにも見えた。
「行くぜ、俺のターン!」
カードを切れば、瞬時に集まる触手達。それは壁の様な形でゼファーの風の壁を一瞬だけ止め、ほんの少しの時間を作る。
その、ほんの少しだけの時間だけ風の戒めを解いたアーサーは
「行くぜ、ライドラン!」
【Select…DRIVE ACTION!】
機械的な電子音がアーサーのオーダーに従い風に刺さった鎖を引き寄せ、残りの力全てを使いゼファーの元へ。元より狙いは
「お前の、風だぁァ!ライドラン!!」
残された力、全てをライドランに使い、倒れ伏したアーサーのユーベルコードの爆発は完全にゼファーの風の鎧を剥がし、彼女を丸裸にする。そんな隙を見逃す猟兵達はこの戦場にはいない。
爆発に合わせフォースソードに持ち替え、突貫していた錐人が既に剣の間合いにまで入っている。鎧の隙間を縫うように、腕に、腹に、足に。後一撃――
「舐め、るなぁ!」
それは痛みによって覚醒したゼファーの一撃。痛みを感じる間もなく、錐人の右肩から入った刃は軽々と骨を砕き、さらに奥深く切り裂こうとして、止まる。
キマイラ特有の動物の因子。外見に変化はなくとも、肉体が強靭な事に変わりはない。だから、一言だけ叫ぶ。
「ヒーロー!!!」
――その言葉で、立ち上がれるのが、第二の条件だ。
「ゼファァー!!!」
唸り声をあげ、四つ足で立ち、ゼファーを睨む様はまさに獣の様。だが、間違いなく――
ほんの少し、足に残っていた力で飛び出した。ほんの少し腕の力を込めて、ほんの少し……ほんの少しだけ持ってくれと!
「ヒーローの一撃、受けてみなぁ!!」
ゼファーの顔に、アーサーの拳が届き、彼女を数メートル吹き飛ばして、もう立てなくなった。その場に大の字になって、息を整えるアーサー。だが少し息を整えると這いずるように、ほんのすぐそばにいる錐人の方へ。
こちらは二か所を深々と切られ、少なくとも回復がなければ動けそうにない。
「よう……無事かヒーロー?」
口に血が詰まった声。当然。答える
「無事に決まってるだろ魔術師」
互いの顔を見て笑い合う。その確認だけがしたかった。まだ残りの奴らが戦っているが、そう。
――自分達はやるべきことをやったのだと、確信した。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
羽馬・正純
【morgen】花盛さんと出撃
転送されたら『グングニル』を手に迎撃用意。
誰よりも速く、という欲望を謳うならその速さを阻む障壁としての<存在感>で立ちふさがって<おびき寄せ>てみせるまで!
さあ来い、お前の相手はこの僕だ…!
あれほど強い暴風だ、耳や肌で感じる感覚… 嵐の前触れを<学習力>で分析すれば衝突のタイミングは測れるはず!
ウインドゼファーと接触する瞬間に<オーラ防御>を集中、 攻撃を<武器受け>で受けきってUC発動までの<時間稼ぎ>を行うよ!
僕のUCは継続時間が短いほど戦闘力を増強するUC、
一瞬の<カウンター>に賭けた一撃で敵の纏う暴風を剥がし次へ…花盛さんへ繋ぐ!
花盛・乙女
【morgen】より、正純殿と出陣
私の役割は剣。次の一太刀、任せてもらおう。
先制攻撃は正純殿へ集中し攻撃がいくよう離れずに待機だ。
刀を鞘に納め、攻撃の意志を見せない。
「激痛耐性」で暴風は凌ぎ、流した血は鞘に溜める。
正純殿の一撃を受けた隙を「見切り」攻撃に転ずる。
飛翔するならば距離を取るのも速いだろう。
だが私のUC、火喰鳥の移動法から発する剣刃一閃…瞬歩の居合【雨燕】なら届く。
距離を取ろうが3684尺(1.4km)までは眼前と同じ。
呼吸を止め、一拍。
「怪力」を足に伝え「ジャンプ」で「追跡」、鞘内の血滑りでより加速を加えた【黒椿】の一閃。
二身一体となった猟兵の強さ、骨身に刻み骸の海へと還るがいい。
「まだ、だ」
腹を抜かれた。身を焼かれた。身を切り刻まれた。
だが、それ等の事実が自身の勝敗を決する物ではないと。自身の体が動く限り敗北ではないのだと。抱いた想いの為に、負けるわけにはいかないのだと
「ここは、通さない。絶対にッ!」
二振りの車輪剣は轟音を立て回転する。まだ、足は動く。ケルベロスの牙はまだ折れてはいないのだと。
暴風を纏い再び二本の牙が猟兵達へと襲い掛かる。相対するのは羽馬・正純(雷刃の代行者・f02626)と花盛・乙女(羅刹女・f00399)の二人。
「手筈通りに任せたぞ、正純殿!」
刀を収め一歩、後ろに引く乙女の前に正純が砲を構え立ち塞がる。その言葉と同時に正純の頭脳がクリアに煌めいていく。
(敵の速度を計算。グングニルの耐久を考慮。耐久の不足を確認)
たった、一瞬。刹那と立たないうちにゼファーの刃が届く。だが、それまでにできる事を。
(グングニルの電磁エネルギーを防御に転用。進入角度の予想を画像化。)
何度も見た。感じた。すべて覚えている。
そして、確かに。刃が届く刹那の間に正純は叫んだのだ。
「来い、僕が相手だ!」
その言葉を掻き消すようにゼファーの剣が届いた。
まず響いたのは、電線が火花を飛ばすような爆発音。薄皮一枚、ほんの少し威力を削いで貫かれた電磁の壁。それに次いで、金属と金属が削れるような音。そして、肺を押しつぶし、肌を切り裂く圧倒的な風。
攻撃の余波は後ろで庇われている乙女にも襲いかかる。裏に鎖を編み込んでいるとはいえ、艶やかな反物を風が切り裂きその体を所かまわず切りつける。それでも――
(まだだ)
急所に届く致命的な物だけを防ぎ、流れた血は黒椿の鞘へ。
信じると言ったのだ、ならば、ただ待つのみ。全ては一刀の為に。
「が、あッ!」
グングニルの重量を紙屑の様に吹き飛ばす剣圧と風を両腕で抑えつける。
(まだだ)
あと少し。その少しが遠い。必ず来るその時を待ってひたすらに正純が耐える。全体重を前にかけて。たった、一射を行える以外のエネルギーを防御に変えて。青痣ができるほど、両の腕でグングニルを押さえつける。そして。
――ゼファーの剣が、振り切った。
「――ッ!」
無論、二撃目が来る。だがこの瞬間だけは、剣圧がない。たった、この一瞬に全てをかけた。この近距離での発射。自身がどうなるかもわからない、だが、それでもいいと。
すべての理性が、思考がグングニルの発射を告げている。縦に掲げていた砲を手早く水平へと構え直す。長すぎる砲身で狙うため、トリガーを引くと弾丸が当たるように同時に後ろに投げ捨てる。彼女が纏う暴風が狙えればそれでいいと。発射の衝撃を自身の体にもろに受けようといいと。
そして、弾丸が発射されると同時に正純の体が後ろへ飛んだ。暴風と自身の砲の余波を受けて。
「……後は――」
吹き飛び、しゃがれた声のその先は、聞こえなかった。だが、聞こえなくてもいい。誰が聞こうと、誰でもわかる。
「花盛家が一、乙女」
呼気を止める。世界を止める。託された想いを叶える。風に鳴く花の匂いも、今は止まって見える。
「――参るッ!」
……それは、あまりにも早かった。
風に巻かれ、稲妻が奔り散った花びらが、宙を舞っている。鞘から抜かれた黒椿は血潮で濡らしながらも火花を走らせ、グングニルが穿った暴風の隙間を縫って、紫電が如く駆けた乙女。
「……二身一体」
刃にこびりつく血を払い、擦り切れた鞘に黒椿を戻す。
「これは正純殿が身を挺して作った道だ」
キン。という、鍔と鞘が当たる音。
「骨身に刻み骸の海へと還るがいい」
風の倒れる音が聞こえた。一つの想いが途切れる音が聞こえた。
(――ああ)
終わったのか、と。守れなかったのかと。
……いつしか風はやんでいた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴