バトルオブフラワーズ⑪〜疾きこと風のごとし
『咲き乱れる花々の空間』システム・フラワーズの内部、『花々が集まって足場になる』仕組みになっているが、各階層をつなぐ通路はオブリビオンの手によって隠滅されていた。
しかし、猟兵たちは獅子奮迅の活躍で敵軍の大幹部を撃破し、ついに第三階層まで侵攻することに成功した。
「残る大幹部はあと一体。こいつを討ち取れば、オブリビオンフォーミュラが潜む最深部にたどり着くことができるわ」
伊達メガネの奥で瞳を光らせ、田抜・ユウナ(狸っていうな・f05049)はさっそくブリーフィングに入った。
「第三階層のエリアボスは、スピード怪人『ウインドゼファー』よ。いわく、三大幹部のなかでは最弱だとか?」
苦笑気味に口端を歪めて、ユウナは肩をすくめた。
弱いというのは、あくまでも比較論である。
『風を操る』というエイプモンキーやラビットバニーに比べて地味な能力しか持たないとはいえ、否だからこそ、大幹部の座に上り詰めた実力は計り知れない。
猟兵の駆け出しからトップランカーまで引っくるめて「ドングリの背比べ」呼ばわりする程度には強敵と見積もっておくべきだろう。
「敵の能力がシンプルなだけに、今回の戦闘に特別なギミックはなしよ。分かりやすい分、戦術の重要性がものをいうわ」
予知によって、相手が使用するユーベルコードの内容と、それらを使い分ける条件は判明している。対して、敵は猟兵たちの手の内を知らない。
その情報的優位をどう活かすかは、各人にゆだねられる。
「私から伝えられるのは、このくらいね。テレポートの用意はしておくから、準備が整いしだい声をかけてちょうだい。……ああ、それから」
どうでもいいかもしれないけど、とユウナは最後にひとつ付け加えた。
「ウインドゼファーの性別だけど、女性だそうよ」
黒姫小旅
どうも黒姫小旅でございます。
強敵です。戦闘におけるイニシアチブは、常に敵の手にあるものと考えてください。
プレイングによっては容赦なくひどい目に合わせる所存ですので、ご注意を。
以下はコピペ。
====================
敵は必ず先制攻撃します。敵は、猟兵が使用するユーベルコードと同じ能力値(POW、SPD、WIZ)のユーベルコードを、猟兵より先に使用してきます。
この先制攻撃に対抗する方法をプレイングに書かず、自分の攻撃だけを行おうとした場合は、必ず先制攻撃で撃破され、ダメージを与えることもできません。
====================
戦場の戦力「40」をゼロにできれば制圧成功ですが、それ以上の成功数があった場合、上回った成功数の半分だけ、「⑬『ドン・フリーダム』」の戦力を減らせます。
====================
第1章 ボス戦
『スピード怪人『ウインドゼファー』』
|
POW : フルスロットル・ゼファー
全身を【荒れ狂う暴風】で覆い、自身の【誰よりも速くなりたいという欲望】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
SPD : レボリューション・ストーム
【花の足場をバラバラにする暴風】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ : ソード・オブ・ダイアモード
対象の攻撃を軽減する【全タイヤ高速回転モード】に変身しつつ、【「嗤う竜巻」を放つ2本の車輪剣】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
イラスト:藤本キシノ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
シル・ウィンディア
テラ(f04499)と一緒を希望
この世界の為、負けるわけにはいかないよね
テラ、全力でいくよっ!!
・敵UC対策
対フルスロットル・ゼファー
テラと背中合わせに立って
死角を作らないように立ち向かうよ
捉えられない速さなら…
目で追うのじゃなく、自分の第六感を信じて…
相手の攻撃は、【オーラ防御】と【見切り】、【武器受け】で
致命的なダメージをそらしつつ
【早業】と【手をつなぐ】で相手の手を掴むよ
…簡単に離すと思わないでね?(にっこり)
敵を掴んだら
ヘキサドライブ・ブーストを使用
好き勝手してくれたよね
ここからは、わたし達の攻撃を味わってっ!!
UCで強化したスピードと二刀流に構えた光刃剣で
テラと一緒に乱舞を仕掛けます
テラ・ウィンディア
同行
シル(f03964
対フルスロットル
シルと背中を合わせ互いに死角を補い合って
【戦闘知識・見切り・第六感・残像・早業・空中戦】を以て二刀の剣での斬撃での迎撃を試み
おれの技能で防げるとは思っていない
だから…致命となる急所だけは防ぎそれ以外は受け止める覚悟
ああ…やっぱり痛いな…だが…このまま倒れる痛みと比べれば大した事は無い!
全てにおいて格上だとしても…執念はそうそう負けてたまるか!
耐えたなら…身体の動く限り【属性攻撃】で太刀と剣に炎を宿し…シルと息を合わせての斬撃猛攻
その上で…
おれ達じゃあんたの動きは捕えられない
だけど…あんたの強さとおれ達の刃…利用する!
「言えざる過去の痛み」発動!
斬斬斬斬斬!
●
「でりゃあ!」
右手に太刀を左手に小剣を、テラ・ウィンディア(炎玉の竜騎士・f04499)は灼熱を宿した炎剣二刀流を振るうが、斬ったはずの敵は手応えもなく消失。残像だと気付いたときには、すでに背後を取られていて……
「えいっ!」
割り込んだシル・ウィンディア(光刃の精霊術士・f03964)がオーラ防御を展開。振り下ろされたトゲ付きタイヤを受け流し――
「そこだっ!」
テラは炎太刀を手の中で旋転。逆手に持ち直して背後へ、シルの脇腹をかすめて刺突を放つ。
「ちっ、また外した!」
「さすがに速いね!」
またも手応えがないことにテラは歯噛みし、シルは天真爛漫な笑顔を浮かべながらも油断なく、討ちそこねた敵の気配を追い続ける。
彼女らが対峙するのは、怪人軍団大幹部ウインドゼファー。『スピード怪人』の呼び名の通り、凄まじい俊敏性と機動力の持ち主だった。
目にも留まらぬスピードで縦横無尽に駆け回るウインドゼファーを前に、エルフの双子剣士は防戦一方を強いられている。
互いに死角を補い、背中を守り合うことで何とか負傷はまぬがれているものの、いまだに一太刀とて食らわせることができないでいた。
「……テラ、このままじゃジリ貧だよ」
「分かってる。次で決め――」
最後まで言い切る前に、次の襲撃が来た。
テラの正面。唸る車輪剣を振りかざして、風を纏った怪人が躍りかかる。
とっさに両剣で受けた。無銘の太刀が、星の宝剣が、車輪剣のトゲ付きタイヤと噛み合って……――――秒も持たなかった。
ィイイ――――ン!!
甲高い音を立てて二刀が宙を舞った。衝撃でテラは姿勢を崩し……
「行け!」「うん!」
その後方から、シルが跳んだ。
銀の短杖を両手に力を込めれば意思に応じて光刃が伸びて、二つ並べて一直線に双刃突き。
――それでも、まだ届かない。
返しの車輪剣に触れるや否や、光刃は粉々に砕け散った。
そして残ったのは、共に剣を失ったエルフの双子がただ二人。
「ああ、やっぱり強いな。だが――」
「ここからは、わたしたちの番!」
直後、その場に魔力の爆発が起こった。
起点はシルの体内。火・水・風・土・光・闇の六元素が渦巻いて超常的なエネルギーを生成し、シルの背中から『二対の光翼』という形となって現れる。
――【ヘキサドライブ・ブースト】!!
膨大な魔力を用いた増幅魔法。術者の命すら度外視した、天地がひっくり返るほど急激な肉体強化が、スピード怪人の反応速度に追いついた。
「取った!」
シルの両手が、ウインドゼファーの左腕を掴んだ。
怪人の体を覆う荒風が皮膚をズタズタに引き裂いていくが、青髪のエルフは構わずにっこりと笑って、
「いっけ――――ッッ!!」
ありったけの力で、ぶん投げた。
ただ投げただけでは、意味がない。魔力暴走状態での膂力をもってしても、これほどの相手であれば即座に体勢を立て直せるだろう。
シルだって、そのくらいは分かっている。そして、投げた後を引き受けてくれる存在がいることも。
「――――……我が悔恨、無念……とくと味わえ!」
斬!
まさに着地しようとしたウインドゼファーの右足を、虚空から出現した『斬撃』が払った。
斬! 斬! 斬!
横薙ぎ、縦一閃、ジグザグ軌道。さまざまな斬撃に切り刻まれて、怪人は受け身を取ることすらままならずに地面を転がっていき、数十メートルも滑走してようやく停止したころには満身創痍になっていた。
「よし、捉えたぞ!」
テラは会心の手応えを握り締めた。
空間に刻まれた斬撃を呼び起こす絶技、【悔恨「消えざる過去の痛み」】。シルが上手く合わせてくれたからこそだが、テラのユーベルコードは敵に大きなダメージを与えることに成功した。
「とはいえ……だな」
「そうだね。一瞬だけ捕まえるのが精一杯、かな」
双子の顔に慢心はなく、むしろ警戒は増す一方だ。
テラは武器を失って徒手空拳。シルもまた、強大過ぎる魔力に体がついていかず額に油汗が浮かんでいる。
対してウインドゼファーはどうかというと、何事もなかったかのように立ち上がり車輪剣を構え直していた。体は傷だらけだが、ことごとくが急所を外れているのは一目瞭然だ。
まだまだ戦いは始まったばかりで、どちらに転ぶかは分からない。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
シャイア・アルカミレーウス
あれだけ速いと追いつけない……なら、覚悟を決めるしかないね!
追いつけないなら、向こうから来てもらうまでさ!
(pow)
狙うのは先制攻撃に対するカウンターだ。
速すぎて一瞬しか捕らえられないなら、すれ違う一瞬に一撃を極めよう!
迎撃できなくなる無敵城塞は使わない。攻撃以外はユーベルコード無しの、正真正銘僕の力で迎え撃つよ!
羽ばたきで足場の花を巻き上げて「目潰し」、「視力と野生の勘」で敵の軌道を見切り、【守護者の奇襲逆襲】で刃を生やした盾を「力溜めからの盾受け」で叩き込む!
君と僕の攻撃の『どちらが速いか』決めようじゃないか!
さあ伸るか反るか、力が足りなかったらあとはもう「勇気」で補おう!
(アドリブ歓迎)
●
「さあ、君と僕の『どちらが速いか』決めようじゃないか!」
『私を相手に、「速さ」を挑みますか』
背の大翼を羽ばたかせて、シャイア・アルカミレーウス(501番目の勇者?・f00501)は吠えた。
咲き乱れる花々を羽風で舞い上げながら啖呵を切る小さな勇者に、スピード怪人は愉快そうに喉奥を鳴らし、
『――面白い』
その姿がかき消えた。
常識どころか超常すらも遥か彼方へ置き去りにする超加速。追走どころか目で追うことすら叶わないが、シャイアとて承知の上で、端から追いかけっこで勝負するつもりはなかった。
「追いつけないないなら、来てもらうまでさ」
紅炎の魔石を取り込んだ鍋蓋――もとい石盾から刃を生やしつつ、鉄壁防御の構え。決死のカウンタースタイルで、シャイアは目を光らせ待ちかまえる。
――ゆら
周囲を舞い散る花吹雪が揺らいだ……時には衝撃に襲われていた。
「ッ……!?」
音速越えの正面衝突。踏ん張ることもできずに真後ろへ吹っ飛ばされて、二十回ほども宙返りして背中から地面に激突。肺が叩き潰されたような激痛を噛みしめる暇もなく、さらに五、六度バウンドした。
「ッ……カッ!? ゲホッゴホッ!!」
落ち着いたところでようやく咳き込み、シャイアは酸素を求めて喘鳴する。その姿を見下ろして、ウインドゼファーは一言。
『お見事』
その右腕には、シャイアの盾から生えていた石刃が深々と突き刺さっていた。刹那の交錯で、よもや逆襲を成功させていたとは!
流血かオイルか、傷口からなにがしかの液体を滴らせながら、怪人は称賛する。
『良い反応です。見切れるような速さではなかったはずですが、よくぞ盾受けを間に合わせました』
皮肉ではなく、素直な驚きと敬意を声ににじませながら、ウインドゼファーは無造作に腕から石刃を引き抜いた。
『私も、さらにギアを上げていかねばならないようですね』
成功
🔵🔵🔴
バーン・マーディ
子供達がこれだけ力を尽くしたのだ
ならば…繋げねばなるまい
対ソード
【オーラ防御】展開
更に【吸血・生命力吸収】を利用して笑う竜巻をも切り裂きに掛かろう
如何に早かろうと…迫る竜巻は切り捨てて見せる
この程度で我は倒れぬ…このような俗物たる竜巻ではなく…貴様自身で来い
どれ程苦しかろうと…どれ程深いダメージを受けようと一切顔には出さない
奴自身が来たら…あえてオーラ防御解除
貫かれた瞬間【怪力・オーラ防御】にてその刃を筋肉の収縮で抑え込みその上で掴み固定
貴様のそれは…あくまで我に対する防衛力を高めるものだろう
…我は…我が身を以て我が騎士達に…「託す」!
UC発動!
今こそ…叛逆だ!
騎士達の防御を捨てた特攻乱撃!
●
「この程度の風、斬り捨ててくれる!」
嘲笑うような風音を轟かせる竜巻を前に、バーン・マーディ(ヴィランのリバースクルセイダー・f16517)は命喰らいの力を宿した魔剣を手に飛び込んでいく。
『躊躇なく正面突破、ですか。その意気やよし。……ですが、あまりにも無謀』
竜巻を抜けて怪人の眼前までたどり着いたときには、バーンはボロボロだった。
傷ついていない箇所はどこにもない。吹けば飛ぶような死に体で、しかしその瞳だけは強く燃え続けている。
「わ、我は、まだ斃れぬ。……こ、このような俗物ではなく、…………き貴様自身で、来い!」
『……いいでしょう』
敬意を表するように一瞬だけうつむいて、ウインドゼファーは竜巻を消し去ると車輪剣を振り上げた。トゲ付きタイヤが猛烈に回転を始めて……対するバーンの行動に驚愕する。
『守りを解いた!?』
彼の体を守っていたオーラ障壁が、不意に消失した。驚きながらも車輪剣は止まらず、双刃は無防備な両肩へと喰らいつき、
「ッ…………ぬんっ!!」
すかさずオーラを再展開。自身へトゲ付きタイヤを喰い込ませたまま、車輪剣を拘束してのけた。
『なんという捨て身! しかし、それは死を先延ばしにするだけですよ』
「ああ、そうだろう。我はもはや剣を振るえぬ。……ゆえに、『託す』!」
瞬間、周囲に幾人もの騎士が現れた。
骸の海より呼び出したるバーンの忠臣。今は亡きデュランダル騎士団の英霊たちだ。
『なるほど、これを狙っていたのですか。……見事な布陣です。退路を断たれた』
騎士たちは魔剣や魔槍を構え、全方位から一斉刺突。ウインドゼファーの白外套を突き破り、その奥の肉体を貫かんと…‥
『――全タイヤ高速回転モード』
ギァィィィ――――――ィインッッッ!!!
耳障りな音と火花を散らして、英霊騎士の刃が弾き飛ばされた。ひとつ残らず、全て。
「なっ!? ば、かな…………」
『召喚を介しただけで、攻撃軽減が効かなくなるというのは虫が良すぎるのでは?』
淡々とした口調で語りながら怪人が手に力を込めると、バーンの巨躯が軽々と持ち上げられる。
『第一、召喚した霊体があまりにも不完全。ここに至るまでに、傷を負いすぎたようですね』
赤いヘルメットの奥で、瞳が鋭く光るのが見えた。
『名も知らぬ騎士よ。貴方の唯一にして最大の失敗は、己が身を顧みなかったことです』
ブン! と猟兵の体をくっつけたまま車輪剣を振り回し、周囲の騎士霊を薙ぎ払う。
その衝撃でバーンは意識を失い、気付けば戦域外の花の上に放り捨てられていた。
失敗
🔴🔴🔴
蛇塚・レモン
<WIZ>
怪人はあたいを視認してくるはず
でも、攻撃対象を一瞬でも見失えば、タイムラグが発生するよねっ?
怪人の攻撃に合わせて蛇腹剣クサナギと念動力で足場の花々を巻き上げる!
(範囲攻撃+ロープワーク+なぎ払い)
花弁を吸い込んだ竜巻が花吹雪になって、怪人の視界を一瞬遮るよっ!
(迷彩+目立たない+地形の利用+目潰し)
あたいは全力で防御
(オーラ防御+盾受け+激痛耐性+第六感)
念動力で攻撃の軌道を外へ逸らせるか試すよ
(念動力+武器落とし)
すかさずUCで巨大な蛇神様を召喚
あたいの身体を包んでもらうよっ!
あとは蛇神様の呪詛の念動力で怪人のUCをそのまま反射!
内側から念動力とオーラ防御で防御力を底上げするねっ!
●
ポニーテールを躍らせて戦場に現れた蛇塚・レモン(叛逆する蛇神の器の娘・f05152)は、右手の蛇腹剣を振るって周囲の花々を薙いだ。
視界を埋め尽くすほどの花弁を念動力で捕らえ、舞い上がったままで空中に固定する。
『目くらましにしては、お粗末では?』
ウインドゼファーが再び車輪剣を振るえば、二本の竜巻が放たれた。嗤う暴風が周囲の花びらを吸引し、あっという間に視界が晴れる。
一瞬だった。怪人の目を遮ることができたのは、ほんの一瞬で……
「十分すぎてお釣りがくるよねっ!」
レモンは類まれなる念動力を全力解放。
視力を封じられた一瞬だけ、わずかに狙いが甘くなった隙を突いて竜巻のコントロールへ干渉を試みる。
「こ……んのぉぉぉぉ!!」
可視化するほどに濃密な霊能オーラがほとばしり、血管が切れるのではと思うほどに力を込めて――…………
そして、竜巻が通り過ぎた。
「……。……ぷはっ!」
無意識に呼吸を止めていたレモンは、息を吐き出して左右を確認。見れば、5センチばかり隔てた両脇の地面が大きくえぐられているではないか。
まさに紙一重。軌道を逸らすことに成功したとはいえ、これだけ策と技能を並べてもギリギリだった。
背筋を冷たいものが伝うが、ともあれ先制攻撃は乗り切った。そしてようやく、レモンのユーベルコードが完成する。
「お願い、蛇神様!」
召喚されしは巨大なる蛇神。鋼の鱗を纏う大蛇はとぐろを巻くようにレモンを包み、強固なる壁と化したところへ、やり過ごした竜巻が戻ってくる。
――【戦闘召喚使役術式・か弱き者を守護せよ、慈愛の鉄蛇】!
攻撃反射の呪詛がギラリと煌めいた。
けたたましく嗤い声を上げる竜巻は近付いたとたんに弾き返され、術者へと襲いかかる。
『くっ!?』
ウインドゼファーはとっさに両の車輪剣を振るった。トゲ付きタイヤが高速回転して竜巻と衝突。激しい火花を散らして拮抗するが、
『ぅ……オオッ!』
間一髪、体を左に開いてかわした。竜巻はそのまま後方へ、花の足場を削りながらどこまでも飛んでいく。
「あっちゃー、避けられたか。……ちょっと守りにばかり考えすぎたかな?」
敵のユーベルコードを反射する、程度の意識では追い切れなかった。もう少しくらい攻撃に気を回しても良かった、と自身の策を省みる。
自身は無傷、敵も無傷。攻撃が決まらなかった、という意味では変わらないが、消耗度合いから考えると少しばかり、いや大分に劣勢と言わざるを得ない。
苦戦
🔵🔴🔴
バーン・マーディ
(血塗れで尚立つ
素晴らしき怪人だ
(憎悪は無い…其処には敬意があった
貴様ら怪人は欲望の化身であったな
貴様は数多のゼファーの中で最強であろう
故に…我もまたヴィランとして欲望のまま挑もう
「貴様」を我が組織が騎士として手に入れる
躯の海に帰れると思うな
武を以て貴様に今こそ力を示そう!
対ソード
真の姿・ユベコ発動!
貴様から受けた傷もまた我が力と成さん!
【オーラ防御・武器受け】で受けきり【カウンター・生命力吸収】で竜巻を切裂き少しでも軽減!
防ぎきれぬ…
だが…その傷を全霊を以て力と成す!
確かに格上だ
だが…それでも…全てを尽くし打ち勝つ!
【怪力・カウンター・吸血生命力吸収】でその防御をも貫!
身体が動く限り猛攻!!
●
――嗚呼、素晴らしき怪人だ。
血濡れの脚を引きずって、バーン・マーディ(ヴィランのリバースクルセイダー・f16517)は戦場へと舞い戻った。
「貴様は数多のゼファーの中で最強であろう」
『……答えづらい問いですね』
言葉に迷うように、ウインドゼファーは視線を泳がせた。
『ここにいる自分以外の「私」を、私は認識できません。なので比較のしようがありませんが……自信をもって言えることが一つだけ』
おもむろに車輪剣を振り上げれば、トゲ付きタイヤが回りだす。
『私はスピード怪人ウインドゼファー。怪人軍団の大幹部にして、キマイラフューチャー世界最強の座にもっとも近き者の一人です!』
「それでこそ!」
高速回転するタイヤから、嗤う竜巻が放射された。
ついさっき、真正面からそれを喰らったバーンは知っている。凄まじい攻撃力。下手をすれば全身が粉微塵にされるような、破滅の暴風である。
分かっていて、その上で覚悟を決めて、彼は前進した。
『またも正面突破、ですか。学習しない者は長生きできませんよ』
憐れみを込めて嘆息するウインドゼファーだったが、竜巻を突き抜けたバーンの姿を見て考えを改めた。
漆黒の粘液で覆われた、不気味な容姿。その体からは、異様な量の闘気が立ち上っている。
「……貴様から受けた傷もまた、我が力と成さん!」
『負傷を力に変えるユーベルコード! あの敗北を経験してなお、捨て身を貫きますか!?』
驚愕する怪人に、バーンは肉薄した。
まともに竜巻へ飛び込んだため、彼の肉体は限界間近。いつ崩壊してもおかしくなく、ゆえにこそ全身を包む粘液は望みうる最大級の恩恵を与えてくれる。
ギャア――――ッン!!
耳をつんざく衝撃音がして、鍔迫り合い。不滅の魔剣と疾風の車輪剣が噛み合った。
「我は『貴様』を所望する! 貴様の逝く先は骸の海でなく、我が組織の軍門だ!!」
『フフッ、女性を口説くにしては乱暴ですが……熱く燃えたぎる欲望。なるほど、理解しました。貴方もまた「悪」を戴く者』
ヴィランと怪人。相通じる何かを感じ取り、そして均衡は崩れる。
喰い合っていた刃が、すべった。静から動へ、一気に攻めいく。ウインドゼファーは上から押しつぶしにかかり、バーンは下に潜ってぶち抜きにいった。
勝負は一瞬。刹那の駆け引きを制するのは、果たして……
「――がはっ!?」
先に膝をついたのは、バーンの方だった。
漆黒の粘液が弾け飛び、傷だらけの体が露わになる。
敵から生命力を強奪して間に合わせてはいるものの、もはや立ち上がることも叶うまい。痛みに震えながら、バーンはゆっくりと振り返り、鋭い眼光で敵を射抜く。
堂々と立つスピード怪人もまた、無傷ではなかった。胸部の装甲が砕かれて、その内部が露出している。
「そ、それが……貴様の『核』か!」
装甲の内にあったのは、手の平サイズのスピードメーターだった。ちょうど心臓があるあたりに埋め込まれた速度計は、計測限界を超えて針が振り切れている。
『我が欲望の象徴。……欲しければ、私の死骸から剥ぎ取っていきなさい。それで私を従えることができるかは、確約しかねますが』
彼女もまた大分に消耗しているはずだったが、怪人は気にも留めていない様子で淡々と言った。
成功
🔵🔵🔴
シル・ウィンディア
同行:テラ(f04499)
真の姿を開放っ!
背中に2対の光の翼を展開
でも、わたしにはまだこの子がいるからっ!
風精杖『エアリアル』を両手で構えます
対フルスロットル
テラを後ろ手に庇って
さっきの手は見切られてると思うから
【第六感】を信じて…
敵の攻撃の瞬間
【残像】に【フェイント】、【オーラ防御】に【武器受け】で
被害を最小限にするよ
杖を回転させて【カウンター】!
【串刺し】で【武器落とし】
そして、【グラップル】で蹴るよっ!
ごめんね
わたし、大人しくやられてあげるほど潔くないの
此方の攻撃になったら
【高速詠唱】で隙を隙を少なくして【全力魔法】で
限界以上の魔力を引き出し
【誘導弾】でエレメンタル・ファランクス!
テラ・ウィンディア
同行
シル(f03964
真の姿発動!(イラスト参照
対レボ
シルを庇い己に向かってくる暴風に対し【属性攻撃】で炎を付与した槍で【串刺し】で粉砕焼き払う!
木生火!その風もまた我が炎の糧にしてやる!
それでも尚防げぬなら槍と我が腕を以て防ぎ切る
犠牲にしてでもな!
ああ…あんたは強い
あの銀河騎士を思い出すよ
だからこそ…挑みたいんだ
おれにはまだ…脚がある!
【属性攻撃】で炎を脚に付与
その上で…メテオブラスト!【踏み付け】を付与して更に威力強化…だけではなく更にその場での固定を狙う
おれ一人では及ばぬとも
「おれ達」は負けない!
例え二人分以上に強くてもな!
シル!いっけー!
…きっとあんたは素敵な人なんだ
だから…尊敬する
●
シル・ウィンディア(光刃の精霊術士・f03964)の体が風に包まれた。背中から二対の光翼を広げた姿は、まるで天界に住まう聖霊のよう。
テラ・ウィンディア(炎玉の竜騎士・f04499)の体が燃え上がった。身に纏う灼熱の薄衣は、東洋の伝説にある天女を彷彿とさせる。
生命体の埒外にある猟兵たちが隠し持つ『真の姿』を解放したエルフの双子は、本能的に感じ取っていた。勝つにしろ負けるにしろ、これが最後の一撃となる。
「あんたは強いよ。おれ一人……いや、二人分以上でも届かないくらいに。だけど、だからこそ!」
「大人しくやられてあげるほど、潔くないの。ごめんね」
闘志と敬意と不屈の心で向かう少女らに、怪人軍団の大幹部は朗らかに笑った。
『フフフ、いい顔です。さあ幕引きと行きましょう。スピード怪人ウインドゼファー、推して参る!』
脚部のタイヤを高速回転。足場の花を轢き焦がして疾走しながら、渦巻く狂風をぶちかます。
「喰い破れ、廣利王!」
まずはテラが立ちはだかった。紅の龍牙槍が竜巻を貫き、槍身を包む火炎が風の中で煌々と燃えたぎる。
「木生火! その風もまた、我が炎の糧にしてやる!」
八卦によれば『風』は『木』の属性であり、陰陽五行において『木』は『火』を生み出す。古代中国の理論に基づき、テラの炎は見る間に勢いを増してウインドゼファーの竜巻にも拮抗するほどの火柱を立ち上らせた。
『大した火力です! しかし、分不相応な力は身を滅ぼしますよ!』
その言葉通り、世界最強クラスの風を喰らった紅龍槍は直視できないほどの熱と光を放っている。柄を握る手の平から煙が上がり、肉が焼けていくのが分かった。
――ああ、熱い。痛い。……だからどうした!!
「槍や腕くらい、犠牲にする覚悟はできている!」
骨まで達する激痛にも構うことなく、テラは槍に魔力を注ぎ込んだ。
炎と風が、相食む二頭の神獣のごとくせめぎあって……
――――対消滅。
大地をえぐる竜巻が、天を焦がす業火が、互いを打ち消しあって無空と化した。
開けた視界の向こうには、ウインドゼファーが荒ぶる気流を纏って再び双剣を振り上げるのが見える。
「……ぃ、…………け」
両腕を肩まで黒炭のようにして、テラは朦朧とした意識のなかで喉を震わせた。
「シル! いっけ――――!!」
妹の叫びに背を押されて、シルは駆けた。
真空に吸い込まれる風のように速く敵の懐へと飛び込んで、白い翼のついた杖で打ちかかる。
衝突、轟音。そして……
「きゃあ!?」
少女の悲鳴。
凄まじい回転により杖がもぎ取られ、トゲ付きタイヤが両の肩口に入る。
縦に二本、鎖骨から真下へ朱線が走り、シルはたまらず尻餅を着いた。
噴き上る鮮血。シルは痛みに喘ぎながらも、敵から目を離さない。――だから、”それ”がちゃんと見えた。
「エアリアル!」
それはシルの技巧によってか、契約を交わした精霊の加護か、はたまた単なる偶然か。宙に投げ出された風精杖が、回転しながらウインドゼファーの頭部を直撃したのだ。
カッ、と軽い音を立てて、ヘルメットの向きがわずかに逸れる。視線が、シルから外れる。
万金に値する隙であった。
「我が手に集いて全てを撃ち抜きし光となれ――【エレメンタル・ファランクス】!!」
高速詠唱により、世界を構成する四大エレメントが顕現する。
怪人の背面から『地』の魔力が強襲し、その体躯を覆う暴風を相殺した。左手から『水』が絡みついてタイヤの高速回転を妨害。正面から吹きつける『風』が両手から車輪剣を奪い取り、右側から『火』の集中爆撃が襲う。
許容限界など無視した全力の魔力砲撃。おおよそ形あるものは粉砕されるであろう猛攻を四方から受けては、さすがの大幹部とてたまらな――
『ざ、残念ですが……一歩およびませんでしたね』
しかし、ウインドゼファーは耐え抜いた。
武器を失い、防御用のタイヤも停止し、全身を焼かれながらも、二本の足でしっかりと大地を踏みしめている。
「そっか……届かなかったか。……もうあと一歩は、わたしには無理かな」
悔しそうに吐き出して、シルはうつむき、そして一言。
「だから、任せるね。テラ」
「――応!」
返事は天からだった。
見上げると、炎の天女がそこにいた。
自ら両腕を燃やし、もはや槍を握ることすらままならない体にムチ打って、テラは重力を操って飛翔する。
『そんな力が、残っていたと!?』
「まだ脚は動く。……あと一歩くらい、届かせてみせる!!」
残された魔力を右脚に集中。超重力の靴を履いて、全身をねじるように旋転。
「今こそ我が身、一筋の流星とならん……【メテオ・ブラスト】ぉぉぉ!!!」
全身全霊の踵落としが炸裂した。
隕石かと錯覚するほどの閃光と爆音が轟き、
『……残念です。本当に、残念ですが…………』
それすらも、スピード怪人は受け切った。
クロスした両腕で蹴りをブロックし、ウインドゼファーは口惜しそうに嘆息して……
――どこか嬉しそうに、苦笑した。
『ここまでされては、さすがにケチをつけられません』
ピシッ!
腕部の装甲に、ヒビが入った。
ピシピシピシッ!!
それは瞬く間に全身へと広がって、
ピシピシ……――――ピシャーンッ!!
粉々に砕け散り、周辺に機械の部品のようなものを撒き散らした。
「お、わわっ!?」
「テラ!」
あおりを食らってバランスを崩したところへ、シルが助けに飛んだ。背の光翼を羽ばたかせて着地点に先回りし、テラの体を抱き留める。
「勝ったね、テラ」
「ああ。……素敵な人だった、と思う。尊敬できる人だった」
「……うん」
別れを告げるように、足元に散乱したウインドゼファーの残骸を見下ろして、それから双子は互いの顔を見交わす。
二人とも、酷いありさまだった。
テラは腕が半ば炭化しており、シルは三枚おろしになりかけ、しかも疲労困憊で魔力も枯渇という、猟兵でなければ即死クラスの重傷である。
「なあシル。おれさ……」
「うん、わたしも同じ」
口にせずとも分かっていると、うなずき合って、
「「……もう限界だ」」
双子はそろって、大の字になって倒れ込んだ。
【END】
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵