バトルオブフラワーズ⑩〜人ってエモい
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「好きぴ的な感情で倒しましょう!」
元気におー!っとラビット・ビット(中の人等いない!・f14052)がセルフ合いの手と気合を入れる。集まってくれた猟兵たちの目が点になっていても気にしない。オタクとはそういう生き物だ。
けどまあそのままというわけにはいかないのでしっかり説明もしておこう。
カワイイ怪人『ラビット・バニー』、彼女は『絶対無敵バリア』という超強いバリアを戦闘開始と同時に先制ではってくる。絶対無敵な最強のバリアをどう攻略するか。それは彼女の好きなエモいものを見せればいい。そうすることでラビット・バニーの動揺を誘いバリアを解除することができる。判定はガバいので大体何でもエモカウントしてくれるだろう。
今回はそんなエモのなかでも特定のエモを大量に浴びせてバリアがはれない状態にしてしまおうという作戦だ!
そこで今回選ばれたのが『好きぴ的な感情』である。好きぴとは“好きなピープル”を略したもの。つまり“好きな人”のことだ。 ちなみに恋愛感情じゃなくても構わないらしい。
「もうね!二人組の繰り出すあーじれったいんじゃーって感じのエモとか最高に強いと思うんですよ!あ、でもおひとりぼっちさまもいるでしょうからそういう人は推しについて語るとか好きな人のことを惚気るとか。そういうのでもいいです!とにかくエモで殴って殴って801回くらいかわいいバニーちゃんの『絶対無敵バリア』を倒しましょう!」
ラビットが本型のグリモアを開く。
「それじゃあ皆さんお願いします!いってらっしゃい!」
筧さん
●エモについて
今回は『好きぴ的な感情』で倒してもらいます。ふわっと思い合う二人組や推しや好きな人、親しい人に対する惚気と思っていただいて構いません。そんな感じの人と人の間に発生するエモを全力でしたためてください。
●戦闘について
ラビットバニーは必ず、猟兵に先制して『絶対無敵バリアを展開するユーベルコード(POW、SPD、WIZ)』を使ってきます。
絶対無敵バリアは本当に絶対無敵で、あらゆる攻撃を無効化しますが、「ラビットバニーがエモい物を目撃する」と、精神集中が乱れてバリアが消滅します。
ラビットバニーのエモい基準はかなりユルいので、バリアの解除は比較的容易と思われますが、バリアなしでも彼女は相当の実力者です。
戦闘対策がゼロだとバリアが割れても倒せないのでご注意ください。
第1章 ボス戦
『カワイイ怪人『ラビットバニー』』
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POW : 赤べこキャノン
【絶対無敵バリア展開後、赤べこキャノン】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD : うさちゃんカンフー
【絶対無敵バリア展開後、兎面の目が光る】事で【うさちゃんカンフーモード】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ : おはなハッキング
【絶対無敵バリア展開後、両手の指先】から【システム・フラワーズ制御ビーム】を放ち、【花の足場を自在に操作する事】により対象の動きを一時的に封じる。
イラスト:和狸56
👑11
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
仁科・恭介
※アドリブ等歓迎
【学習力】で今までの個体とは違うと判断
ビット君からの作戦を思い出し…頑張ろうと決意
「よろしくお願いします」と【礼儀作法】通りに牽制する
土手に体育座りしながら話し出す
片思いの子がいます
同じ親方の所で修業した猟兵です
意識したのは初めて依頼に失敗して身包み剥がされた時ですね
何時もはクールなくせに、涙でぐちゃぐちゃにした顔でこのオーバーオールを投げて寄こしました
「背中の傷を見られるの…嫌だろう」って
表情を見せたのはあの時だけですね
その後はずっと追っかけてるんですけど…
兄妹に思われてるのかな
友人の猟兵に恋しているみたいだし
なんでこんな話してるんでしょうね
そんな中、こっそり蟻を展開していた
●仁科・恭介(観察する人・f14065)の場合
「あーもうまじ猟兵エモじゃん。まじ困るっていうかー。すぐバリアとけちゃうしー!」
目の前のダンピールの顔の良さ、人の好さそうな笑みにダンダンと地団駄を踏む。その度にラビットバニーの豊かなお胸が揺れる。
それを眺めながら恭介はもう一人のうさぎから言われた作戦を思い返していた。好きピ…好きな人について語る。本当にそれで倒せるのか?そんな恭介の思考は露知らず。ラビットバニーは一人で自問自答を続ける。
「でもあーしだって今までのあーしと違うし!すぐバリアはりなおせば無敵じゃん?」
自慢気に胸をそらすとビシっと恭介を指差し。光の加減で頭部のうさぎがニヤリと笑ったように見えた。やはり腐っても敵幹部……!真面目に戦わないといけないのか!?危機感が過る……が、
「好きピについてめっちゃ語られるとかそんなのあるわけ無いし余裕っしょ!」
あ、これはいけるな。今まで経験から学習していた恭介は確信した。この個体はちょろい。うん、頑張ろう。
「よろしくお願いします」
礼儀作法通りに恭介が丁寧にお辞儀するのに面喰いつつもラビットバニーが絶対無敵バリアを展開し、右手の平を上に、恭介の方へ突き出した。くんっと手首を動かし招くようにすると、恭介の足元の花がボコりと盛り上がる。それは湧きあがる水の如く上へ上へと昇ると恭介の首を目掛け襲い掛かってきた。バックステップで避けるが、払おうとした腕を掴まれる。
「あはっ♡宙づりにしてあげる!」
足元の花々は崩れ細い蔦のみが恭介を支える。いきなりピンチ!誰もがそう思った、その時――恭介は口の端に笑みをうかべ、自由な方の腕を横に薙ぐ。すると、その指先に従うように花が彼の足元に集りだした。それはユーベルコード【超伝導】。彼はラビットバニーのユーベルコードを簒奪し、自身に与えたのだ。
「うっそ!まじ!?」
先程とは逆にラビットバニーに迫りくる花々。思わず反射で目を瞑る。ああでも、あーしエモとか感じてないし余裕じゃん。思い直して目を開く。その光景をみて彼女は驚愕した。――そこには、土手が出来上がっていた。
土手が!!出来上がっていた!!!
花咲く土手に体育座りで佇む恭介。オレンジの光に照らされている気すらする。
えっなんかヤバ青春って感じ。ラビットバニーはめちゃくちゃ興味をひかれた。一瞬エモとか思ったのも仕方がない。いきなりの土手だ仕方がない。素早くバリアを張り直しつつも本能の従うままに恭介の隣に腰を下ろす。この青春の空気の中男は何を語ってくれるのか。ラビットバニーの期待が高まる。
「片思いの子がいます」
「えっ好きピの話じゃん」
ラビットバニーが食い気味に被せてくる。バリアが揺らいでまた戻る。恭介はそう、と首を縦に振り肯定。柔らかく笑うと土手の向こう――あるのだろうか――を熱の籠った目で見た。
「同じ親方の所で修業した猟兵です。意識したのは初めて依頼に失敗して身包み剥がされた時ですね」
「えーウソまじ卍。ヤバじゃん、あーたよく生きてたね」
「彼女のおかげ、ですね……」
そう呟く表情はひと際深く。溶かした蜂蜜を紅茶に垂らすように、茶色の瞳を揺らめかせる。
「何時もはクールなくせに、涙でぐちゃぐちゃにした顔でこのオーバーオールを投げて寄こしました。『背中の傷を見られるの…嫌だろう』って。彼女が表情を見せたのはあの時だけですね」
「はーやさぴじゃん!しかもあーたのことよくわかってっし!え、てかこの?今着てるヤツ!?マ?」
感情移入が激しいのかはわわといったジェスチャーをしてくるラビットバニー。好きになってからずっと着てきたのだろうそれは、よく見ればわかる程度の小さな傷こそあるもののきれいなまま。大事に、大事にしてきたことが伝わってくる。相手への思いと一緒に、大事に。
「その後はずっと追っかけてるんですけど……。兄妹に思われてるのかな。友人の猟兵に恋しているみたいだし」
「まじ沸いた!それでも好きピなんっしょ?応援してあげたりしてんの??はーエモじゃんすご!!」
テンション高くうさぎ頭にハンカチを押し当ててエア涙をぬぐうラビットバニー。なんでこんな話してるんでしょうね、なんて。照明効果では収まらない程度に頬を赤くして、照れ笑いする恭介の少し寂しそうな顔がさらにラビットバニーに追い打ちをかける。
それが罠とも知らずに。
ラビットバニーがふと足に、腕に触れた違和感に気づいた時には既に遅く。【知恵の実】で展開された軍隊蟻たちが彼女を食らおうとその鋭い顎を開閉していた。
大成功
🔵🔵🔵
アレクシス・ミラ
アドリブ歓迎
先制攻撃を盾で受け止める
そうだな…とりあえず一旦座ろうか
では、まず
僕には大切な幼馴染がいます
自信家で僕の手を引っ張っていく…僕にとっては導きの星だ
黒髪が美しく、瞳も星空のようだしね
友は歌が得意でね
何度もその歌に助けられたし
友の歌が大好きだ
昔から友の世話を焼くのは好きだったのもあるけど
友の望みには応えたくなってしまう
料理とか……僕の料理を美味しそうに食べる顔は好きだな
あ、友は男だよ?
一緒に住んでる…おや、バリアが
ちょっと楽しくなってきたんだけど
本来の目的を果たそうか
攻撃を盾受け…と見せかけ【絶望の福音】で回避
勢いを利用して剣で1撃目、盾で2撃目と二回攻撃
友の真似だけど中々いいね、これ
●アレクシス・ミラ(夜明けの赤星・f14882)の場合
「まじホント酷い目にあったわ~」
なんとか軽傷で軍隊蟻から逃げ出したラビットバニーの前に立ちふさがるのはアレクシス・ミラ。見た目と足元の花の相性120点、王っぽさ200点な見た目にはる前からバリアが揺らぎそうになるが、ラビットバニーは偉いので堪えてスッとバリアを展開した。どこかの王に弱い個体の反省点をちゃんと生かしている!!
「今度は絶対手加減しないし!」
彼女は膝を曲げバネの様に一瞬でアレクシスの前へ躍り出る。足を跳ね上げ斜め上段蹴り。それをアレクシスが盾で受け止め弾き返す。浮いた状態から繰り出される上段突きは拳で受けて。――そうして、流れるような動作でその手を引き寄せる。アレクシスはラビットバニーが抵抗する暇さえ与えずダンスをするかのように彼女の腰を引き寄せると、
「そうだな……。とりあえず一旦座ろうか」
優しい声でそう宣った。
「何!?座らせんの流行ってんの!?」
「だってその方がゆっくり話ができるだろう?」
ラビットバニーのツッコミも意に介さず、アレクシスが小首を傾げる。あざとい。この27歳あざとい。これにはラビットバニーもバニーのバリアもちょっと揺らぐ。けどラビットバニーだって学習してる!してるから!
「そうだけどぉ~」
「ほら、おいで?」
「はい」
あ~ラビットバニーちょろかった~!!ポンポンと叩いて促されるままに、うさちゃんカンフーの速度を生かし素早くアレクシスが座った目の前に座る。
そんなラビットバニーの行動を確認してアレクシスは小さく咳払いすると、ではまずと切り出した。
「僕には大切な幼馴染がいます」
「マ~?好きピ?」
「うん、そうだね。大切な存在だ。自信家で僕の手を引っ張っていく、僕にとっては導きの星だ。黒髪が美しく、瞳も星空のようだしね」
元々優し気な風貌の目じりをさらに下げてアレクシスが言う。離れていても簡単に思い浮かべることのできるその煌めきは、いつだってアレクシスの中で輝いて、その炎で心を照らすのだ。
ラビットバニーのバリアが揺らぐ。
「友は歌が得意でね。何度もその歌に助けられたし、友の歌が大好きだ」
彼が故郷の歌を口ずさめばそれは言葉通りアレクシスの力になる。同時に背中を押してくれる。
「好きピじゃん……」
ラビットバニーが深く息を吐いた。語り口調が優しいのヤバ。
そんなラビットバニーの様子を見てか、友の様子を思い出してか、アレクシスが小さく笑う。
「昔から友の世話を焼くのは好きだったのもあるけど、友の望みには応えたくなってしまうんだ」
料理とか……。そう言う彼の目には自分の作った料理を強請る友の姿が映っているのだろう。
「僕の料理を美味しそうに食べる顔は好きだな」
足元の花さえ惚れさせそうな笑み。
好きピキングダムじゃん……。ラビットバニーは力なく呟く。っていうかこの男料理もできるのかどちゃくそエモじゃん。どんな少女漫画のヒーローだよ。
「あ、友は男だよ?」
あー少女漫画じゃなかったー!別方向からもエモで抉ってくる関係だったー!
一緒に住んでる……という追い打ちの一言がラビットバニーのバリアを粉砕する。もはや形とか保ってられない。
そんなバニーを後目にアレクシスがすくっと立ち上がって剣を抜く。
「ちょっと楽しくなってきたんだけど、本来の目的を果たそうか」
楽しくなってたんだー!!バリアはりなおさなきゃいけないのにそれをさせないエモの追撃。もうこれバリアなしで倒すしか。そう覚悟を決めてラビットバニーはアレクシスに殴り掛かる。本調子ではないもののかなりの威力のそれをアレクシスは盾で受ける――と見せかけ、まるで最初からそこにはいなかったかのように華麗に回避した。それはユーベルコード、【絶望の福音】。予測された動きに合わせてアレクシスが剣を振るう。ザンっと振り下ろした剣でまず一撃。その反動を利用し、溜めて振り上げるように盾でもう一撃。連続で敵を攻撃する。ふふっと楽し気な音が空気を震わせる。
「友の真似だけど中々いいね、これ」
僅かに子供の様に、無邪気に笑う姿もまたエモし。猟兵ってば恐ろしい。
大成功
🔵🔵🔵
月待・楪
(アレンジetc歓迎)
開幕フルスピード
【レゲナリア・シスラリア】で変身
跳ね上がった反応速度とスピードで【ダッシュ・スライディング・ジャンプ】で【見切り】回避た【念動力のオーラ防御】で凌ぐ
…アイツの赤い瞳が好きだ
いつもは飴玉みたいで
能力使えば輝く星にも見えて
こっちを射殺すみたいな殺気を込めて見られると宝石みたいで…奪いたくなる
軽薄な笑顔を歪ませて無駄なことが考えられねェくらいに思考を俺でいっぱいにしてやりたい
あの手に触られてふざけてない時の声音で名前を呼ばれると恥とか外聞とか投げ捨てて無茶苦茶にされたくなる
殺したい、殺されたい
くそ恥ずかしい…!
これでいいな?!
【傷口を抉る零距離射撃】して離脱だ!
●月待・楪(crazy trigger happy・f16731)の場合
「も~まじ頭きた!もう話とか聞いてあげないしぃ!」
バリアを張りなおした兎面の目が強い光を放つ。トンっとつま先で軽く地面を打つと鋭い跳躍。目の前に佇む漆黒の青年へと踊りかかった。
「くっだらねェ……後悔もなく終わらせてやるよ」
燕尾をはためかせ迫り来るラビットバニーを青年――月待・楪は2つの日の暮れた空で捉えると、人差し指をこめかみにあて自らを打ち抜くように軽く跳ね上げた。同時に鴉をモチーフにしたマスクが鋭く人を射抜く美しい顔を覆う。それはユーベルコード【レゲナリア・シスラリア】。ヴィラン・トワイライトへと変身した楪は、迫り来るラビットバニーへと背を向けず、敢えて彼女へとつま先を向けた。ザリっと足元の花を踏みつぶし、地面を蹴りつけた勢いで走り出す。繰り出される拳は、身をかがめ勢いのままラビットバーニーの後ろへ滑り込むことで回避。体を跳ね上げ無理やり捻ると次に備える。
「結構早いみたいだけどッ、絶対無敵バリアがあるあーしの方が絶対に強いし!」
「……ッチィ」
振り向いた勢いで繰り出された蹴りを、鉄仙で弾いて後ろへ跳躍。短い舌打ちと共にまた距離をとる。防げてはいる。だが防戦一方であることは事実。ヤツの言う通りこのままでは負けるだろう。
トワイライト――楪は、苦々し気に息を吐くと、今度はこちらの番だと言わんばかりに銃を構えた。弾丸と共に言葉をラビットバニーに放つ。
「……アイツの赤い瞳が好きだ」
「は……!?」
その短い一言にこもった熱にラビットバニーは目に見えて動揺する。
好き!?アイツってどいつ!?あーし!?……あ、違うあーし赤くないから――好きピの話じゃん!!
その揺らぎを楪は見逃さない。自分は―…ヒーローではないのだ。正々堂々など知ったことか。つけ入る隙があるなら畳みかける!
「いつもは飴玉みたいで」
思い浮かべるのはただ一人の共犯者。笑み、僅かに細められるその甘そうな赤が。能力を使えば輝く星にも見える強い光が好きだと。光への憧れを刻んだ銃を吠えさせながらラビットバニーに叩きつける。
「こっちを射殺すみたいな殺気を込めて見られると宝石みたいで……奪いたくなる」
甘い毒薬の様にとろけた声で。
「軽薄な笑顔を歪ませて無駄なことが考えられねェくらいに思考を俺でいっぱいにしてやりたい」
夜の海の様に深く音を沈ませて。
「あの手に触られて、ふざけてない時の声音で名前を呼ばれると、恥とか外聞とか投げ捨てて無茶苦茶にされたくなる」
切なく瞳を潤ませる。
「殺したい、殺されたい」
奪われるくらいなら壊してしまえ。この身に馴染む歪んだ本性。
アイツの全てを俺のモノに。
――ああ、でもそれだけじゃ足りなくて、もっともっと。アイツの執着も、全部、欲しい。俺の全てを奪われたい。
「エッッッッッッモ!!!!む、むり~~~!!どちゃくそエモじゃん!!!」
膝から崩れ落ちるラビットバニー。こんなくそでか感情を正面から聞かされてバリアが無事なわけがなかった!無防備な姿で地面をバシバシ叩いて滂沱の涙を流す。
あまりの反応に楪はマスクの下で顔を真っ赤にした。その姿もすこです、エモいです。
「くそ恥ずかしい……!これでいいな?!」
やけくそ気味に叫ぶ楪は、うずくまるバニーに銃口を押し当てると零距離から弾丸を発射。反撃が来る前に戦線から離脱した。
まっすぐ帰らず別の部屋に寄ったかどうかは……想像にお任せする。
大成功
🔵🔵🔵
マレーク・グランシャール
【壁槍】カガリ(f04556)と
俺には「好きぴ」や「推し」という程ものはない
執着、依存、期待‥‥俺は記憶ごと想いを葬った
だからせめてカガリが存分に語れるよう尽くそう
「たとえこの身、この命を削ったとしてもカガリを砕かせは‥‥、‥‥‥」
(カガリの弁が何とも面映ゆく、どういう顔をしていいか分からん)
敵の攻撃が来たら身を挺して守る
俺の血を吸った槍を【邪竜降臨】で邪竜に変化させて穿つ
攻撃を食らうのは捨て身の一撃のための準備
届かずに死んだ想いの代わりに、決死の覚悟を敵へ届けよう
俺には何がエモなのか分からない
自己満足なだけだとも分かっている
だがこれがカガリの「好き」という言葉に返せる俺なりの「好き」の形だ
出水宮・カガリ
【壁槍】まる(f09171)と
すきぴ。とは…
まるは、あまり口では語らんのでな
カガリも、そう口が回る方ではないのだが
とりあえず、カガリはまるが大好きだ
まるは色々忘れてしまうし、…忘れた振りも、したりするし
でも、いいのだ
忘れたらまた、思い出を組み直せばいい
まるが生きている限り、何度でも、何年かけても組み直して
危なっかしいまるが、寝たきりの爺さんになって大往生するまで、この門の内で看取ってやると決めたのだ
まるの何が好き、というのではなく
ただ、まるが大好きだからな
まるを危険に晒すのは、とても嫌なのだが
カガリの【駕砲城壁】に対する先制攻撃を、まるに受けてもらう
一撃をきめたまるの傷を、しっかり押さえるぞ
●出水宮・カガリ(荒城の城門・f04556)とマレーク・グランシャール(黒曜飢竜・f09171)の場合
「もう!!絶対!!!話とか!!!聞かないから~!!!」
今度こそ油断はしないと。そこにいないからできる惚気とかそんな、そんな……エモいけど今度こそ絶対堪えると。そう大きく叫んで再び地団駄を踏むラビットバニーを遠目で眺めながら。さしたる焦りもなくカガリは藤花の瞳を顔ごとマレークへと向けた。
「すきぴ」
まる、わかるか?と視線で問えば彼の槍は表情を変えぬまま頷きを一つ返し、それは好きな人という事だと告げる。自分には『好きぴ』や『推し』という程ものはないけれどと、そう添えて。
「そうだった、カガリが忘れてまるに教えられるとはな」
鷹揚に笑う友の顔を見ながらマレークは思う。そう、『好きぴ』という程のものは、ない。
(――執着、依存、期待……俺は記憶ごと想いを葬った)
だから、せめてカガリが存分に語れるよう尽くそうと。白い手袋を黒い柄へ這わせると、マレークは視線をカガリからラビットバニーへ移す。言葉よりも雄弁な男のその姿勢にカガリは心得たと瞬き一つ。
「まるは、あまり口では語らん。カガリも、そう口が回る方ではないのだが……、まあ、がんばるとしよう」
そのカガリの言を、嗤う声がする。
「語る方がわかってるとかまじ楽勝じゃん!」
自分へ気合を入れ終わったラビットバニーだ。彼女は自慢の絶対無敵バリアを展開すると、担いだ赤べこさんの照準をカガリに合わせる。
「まずはあーたから送ってあげる♡」
赤べこの首が振動にカクカクと小刻みに揺れ、その下の大きな口に光が集まる。溜めて溜めて、一気に放たれた光のエネルギーは、攻撃を放たれてなおその場に佇む男へと吸い寄せられるように、そして――!
「させるか」
ドゴォンと大きな衝撃音。上がる土埃の中カガリは目を細める。
(――ああ、嫌だ。とても、嫌だ)
飛び散る赤を見ながら眉間の皺を深くする。
カガリは無傷だ。【駕砲城壁】の効果だけではない。
今、マレークが己の前に立っている。カガリに当たるはずだった攻撃を槍で弾き、受けきれなかった分をその身で止めて。だから、カガリは無傷なのだ。
彼を危険に晒している。それは、カガリにとっては耐え難い程。とても嫌なのだけれど、今は。
(まるの、槍を届かせるのがカガリの仕事だ)
カガリの思いに呼応するようにマレークが吠える。そして――、
「たとえこの身、この命を削ったとしてもカガリを砕かせは――「とりあえず、カガリはまるが大好きだ」
カガリも、しゃべり始める。
「……せは。……」
ド直球の言葉にマレークは口を閉じた。何度も聞いたことがある、聞いたと覚えてる限り以上に聞いたような気もする。そんな言葉だとしても、カガリのド直球な弁が何とも面映ゆい。
(どういう顔をしていいか分からん)
そう思いながら正面を見ると、ラビットバニーも動きを止めて赤べこキャノンを強く。強く握りしめていた。
しかしカガリはそんな二人の様子を気にしない。あくまでマイペースに話を続ける。
「まるは色々忘れてしまうし、……忘れた振りも、したりするし」
困ったというように首を傾げ。
「でも、いいのだ」
それから、優しく深い眼差しを己の槍に注ぐ。いいのだと、許して、肯定する。
「全然よくないしぃ!忘れるとかまじ寂しいじゃん!」
思わずラビットバニーが叫んだ。それに静かに首を振ると、カガリはいいのだと繰り返す。
「忘れたらまた、思い出を組み直せばいい。まるが生きている限り、何度でも、何年かけても組み直して。危なっかしいまるが、寝たきりの爺さんになって大往生するまで、この門の内で看取ってやると決めたのだ」
涼やかな面差しに固く結んだ城門の決意。
「まるの何が好き、というのではなく。ただ、まるが大好きだからな」
心の底からの笑顔と言葉を受けて、ラビットバニーは絶句した。これがエモでなくて何だというんだ。無防備に晒されるラビットバニーの生身の体。いやもうほんと耐えられるはずがない。
しかし、ラビットバニーにもボスとしての意地があった。――このままただやられて終わるわけにはいかないのだ!
再び光を集めだす赤べこを視界に収め、マレークはギリっと強く、強く槍を握った。手首を伝い槍に血が落ちる。ユーベルコード【邪竜降臨】。彼の血を喰らい、槍は今、邪竜へと変化する。
(届かずに死んだ想いの代わりに、決死の覚悟を敵へ届けよう)
――まだ、何がエモなのかマレークには分からない。自己満足なだけだとも分かっている。だが、
「これがカガリの「好き」という言葉に返せる俺なりの「好き」の形だ」
捨て身覚悟でマレークがラビットバニーの眼前へと躍り出る。大振りに振りかぶり、心臓を、心のド真ん中をめがけ碧眼の邪竜を突き立てた!
「まじ……エモ……尊死……」
空洞になった胸を押さえラビットバニーは地に伏した。そうして、彼女は光となり骸の海へと消えてゆく。
「まる、おつかれさまだ」
血を失ってなお動き続けたせいでふらつく体をそっと抱き留める温度を背に感じ、マレークは静かに目を閉じた。
――今、自分はカガリによって開かれた扉の、その先にある勝利を掴めたのだ。
大成功
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