バトルオブフラワーズ⑩〜エモいふたりのエモい絆が激エモ
●可愛くてエモいバニー
「まじびびった! だってモンキーやられてっし! あいつあーしらの中で最強っていうか、誰も勝てる訳ねーって思ってたんですけど!」
花々に囲まれた世界に、つるんとしたウサギの耳がぴょこりと揺れる。作り物のウサギ面の下にはスラリと伸びた手足に、ボンキュッボンのナイスバディをバニースーツにはち切れんばかりに押し込んで。
「でもまあ、あーしが全員始末すりゃいいか。なんつっても、あーしのユーベルコードは『絶対無敵バリア』! どんな攻撃も、あーしには全部無効なんだから。それで負けるわけなくない?」
驚いた声を上げた割りには、明るく楽しげにウサギが燥ぐ。
「まあ、エモいもの見ちゃったら、心が乱れてバリアも解けるけど……。あーしのエモ基準かなりガバいけど……」
内緒話を告げるように、少しだけ声を落として。
キョロリと頭を動かしても、だぁれも聞いていないし大丈夫。
「まーなんとかなるっしょ! アゲてくぞー!」
えいえいおーっと腕を突き上げると、豊かな胸がぷるんと震えた。
●尾鰭のいざない
「猿を退治したんだって? ご苦労さま。……そういうことだから」
それじゃあ行ってきてね。
説明を省いていきなりゲートを開こうとした執事人形に抱えられた少年――雅楽代・真珠(水中花・f12752)を、猟兵たちは「ちょっと待って」と呼び止めた。
真珠は煩わしそうに眉を潜め、花唇から可愛らしいため息を零すと説明を始める。
「既にお前たちも知っている通り、今は戦争真っ只中。しすてむ・ふらわぁずの緊急信号を聞いた者も少なくはないよね。そこの内部、『咲き乱れる花々の足場』に居る幹部怪人の『らびっとばにぃ』を倒してきて」
正式名称は”カワイイ”怪人『ラビットバニー』だが、真珠はあえてカワイイとは言わずに。
咲き乱れる花々の足場を占領しているラビットバニーは、どんな攻撃も無効にするユーベルコード『絶対無敵バリア』の使い手である。この絶対無敵バリアを解除しない限り、彼女にかすり傷ひとつ付けることはできない。
しかし、そんな無敵なユーベルコードにも、弱点はある。ラビットバニーの心が乱れてしまうと、バリアは一時的に解除されてしまうのだ。
「えも……衣紋? いや、えっと、えもい? …………まあ、いとをかしと感じさせられれば良いみたいだよ」
若者言葉でそういうのがあるんでしょう? と、首を傾げて。
「既に沢山の猟兵が兎を倒しにいっているらしく、色んな”をかし”を堪能した兎は少し美食家になってるみたいだよ。贅沢だよね。僕が送る先に出てくる兎は、どうやら『ふたりの絆』というものに弱いようだから上手く弱点を抉っておいで」
友愛・親愛・恋慕・愛情……絆の形は様々だろう。しっかりと言葉や行動で見せつけること。それが大事だと真珠は言う。ラビットバニーの心をしっかりと掴むことがかなったならば、攻撃は通るはずだ。
しかし、見せつけるあまりに他が疎かになってはいけない。ラビットバニーは幹部クラスの強敵だ。隙きがあれば、簡単に猟兵たちをひねってしまうことだろう。
くれぐれも油断はしないようにと言い置いて、真珠は掌の上に蓮花を咲かせる。
「……僕を差し置いて可愛いを名乗るとか不敬だと思わない?」
最後の小さな呟きは聞かなかったことにして、猟兵たちはゲートを潜った。
壱花
このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで終了するエモいやつです。
という訳で戦争シナリオをお送りします、壱花です。
どうしてもラビットバニーを書きたくて……けどグィーは他所でグリモア発動しているので、今回は真珠がご案内いたします。
●エモい
ふたりの絆っていうの? そうゆーのエモーい。
友情だったり親愛だったり恋愛だったり主従だったり、
そうゆーのが見たい気分のようです。
●特殊ルール
ラビットバニーは必ず、猟兵に先制して『絶対無敵バリアを展開するユーベルコード(POW、SPD、WIZ)』を使ってきます。
絶対無敵バリアは本当に絶対無敵で、あらゆる攻撃を無効化しますが、「ラビットバニーがエモい物を目撃する」と、精神集中が乱れてバリアが消滅します。
ラビットバニーのエモい基準はかなりユルいので、バリアの解除は比較的容易と思われますが、バリアなしでも彼女は相当の実力者です。
●プレイングについて
難易度高い依頼となりますので、【5/17(金)8:31~】受付とさせて頂きます。
ペア用依頼&判定厳し目となりますので、ご相談の上でご参加頂けますと幸いです。
皆様の素敵なプレイングをお待ちしております。
第1章 ボス戦
『カワイイ怪人『ラビットバニー』』
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POW : 赤べこキャノン
【絶対無敵バリア展開後、赤べこキャノン】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD : うさちゃんカンフー
【絶対無敵バリア展開後、兎面の目が光る】事で【うさちゃんカンフーモード】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ : おはなハッキング
【絶対無敵バリア展開後、両手の指先】から【システム・フラワーズ制御ビーム】を放ち、【花の足場を自在に操作する事】により対象の動きを一時的に封じる。
イラスト:和狸56
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
宮前・紅
【Da capo al finЁ】で参加
●先制攻撃の対処
Tillie!大きくなって(武器改造+拠点防御)赤べこキャノンを防いで!
Elsie!蒼くんの元に!何かあったらよろしく(かばう)
●エモい?
蒼くんより俺が先行して行くよ
UCを使うと敵味方関係なく襲っちゃうからこれはあんまり使いたくないんだけど……これしかない、よね
案の定、蒼くんに当たって、味方を傷付けてしまうと思う
精々、利用しなよ──蒼くん
無駄にしないでよね
際限なく暴れまわってもきっとラビットバニーには、俺の攻撃は効かない
蒼くんが、攻撃の一手をラビットバニーにしてくれる、きっと
解除されたら、そのまま攻撃していくよ
相棒───俺のことよろしくね
戎崎・蒼
【Da capo al finЁ】で参加
さて、僕が使う技がSPDだから相手は反応速度が上昇する筈。紅が庇う感じではあるけど、POW攻撃なら僕も相殺する気概で銃で撃とうか。(クイックドロウ+スナイパー)
●エモい?やつ
この作戦は、本当は僕も使用したしたくはない。それはあのUCを使う紅も同じだと思う。
大丈夫僕が制御してみせる。
相棒だからこその信頼関係ではあるけれど、なに分二人とも自分本位。決して譲歩しない。
……現に僕は彼を利用しようとしている。
さぁ、僕を殺せよ。──相棒。
そう。UCで制御出来なくなった彼の技を食らって斃死する。そして自分のUCを発動させる…これが目的だ。
君を利用させて貰うよ、紅。
●利用し合う相棒 -Da capo al finЁ-
花々が咲き乱れ、悪戯に吹いた風が花びらを攫う。
そんな花畑のような空間に送られてきたのは、宮前・紅(絡繰り仕掛けの人形遣い・f04970)と戎崎・蒼(暗愚の戦場兵器・f04968)の二人だ。白と黒、反対する色を基調とした出で立ちの二人は色彩溢れる花畑の中ではとても目立ち、カワイイ怪人『ラビットバニー』にすぐに補足された。
「わ、まだ来るの猟兵! マジおつハムニダなんですけど、ウケる~~~! あっ、でもいきゃめんたちだっ! ナル入ってるよーにも見えっけど、ケッコーらぶたんかも!」
姿を見せた二人の猟兵に、明るい声を上げるラビットバニー。
「でもま、モンキーやられちゃってべぇし、ブチアゲてこーっと! ま、とりまコレねー!」
まずはコレ、と手にしたのは――紫だが――赤べこキャノン。半身程の大きさのそれを軽々と振り回して構えると、二人へ向けて射出した。その際ラビットバニーの周囲に光が集まったように見えたのはバリアが展開されたせいだろう。
「Tillie! 大きくなって赤べこキャノンを防いで!」
紅が傍らの人形Tillieを二人の前に飛ばし、指示を出す。変幻自在の人形は主の言葉に従って大きく変化し、キャノンの攻撃から二人を守った。
その衝撃でTillieは变化が解除され、爆風と共に吹っ飛ぶ。その爆煙の最中、煙向こうのラビットバニーへ一撃を食らわそうと、蒼は銃を構える。
――が、兎面を光らせてうさちゃんカンフーモードになったラビットバニーが、煙野中を突っ込んでくる方が早い。
「Elsie!」
彼のもとに、なんて言う暇はない。けれど人形遣いとして意思は伝わる為、蒼の前にElsieが飛び出し――彼の代わりに攻撃を受け、Tillie同様にふっ飛ばされぽとりと花の上に落ちた。ふたつの人形は修復しなければ使えそうに無いほどに損傷している。
そのふたつの人形を見て、紅は覚悟を決める。
「あんまり使いたくないんだけど……これしかない、よね」
出発前に話し合った作戦――紅がユーベルコード《Haigha》を使用して蒼を斃死にさせること。殺傷力は増すが人間性を失い、敵味方問わず攻撃してしまうためあまり使いたくはない。暴走の度が酷すぎて何もかも破壊し、蒼を斃死では済まさなくする危険だってあった。けれど。
「大丈夫、僕が制御してみせる」
相棒の頼もしい言葉に笑みを浮かべ、紅は小さく頷き返すとユーベルコード《Haigha》を起動させる。
(精々、利用しなよ──蒼くん。俺のことよろしくね)
紅の人形の目が、赤く光る。禍々しい程にそれは光り、ぐにゃり、曲がって――歪な笑みを残してLacieが変化する。愛らしい顔は血濡れの兎頭へと変化し、そして紅は――。
「0|0O0o0_0`0n0F0U0N0`0??!!!」
咆哮をあげた。
理性を無くし、人間性を無くし、Lacieをただ暴れまわらせるだけの紅。ラビットバニーはうさちゃんカンフーモードのまま兎のように跳ねて距離を取り、カンフーモードを解除する。
「マジおつかれ~しょんな感じなんっすけどー……って、え。ええ~~~~!?」
暴れまわることしか出来なくなったLacieの前に蒼が立つ。それを見たラビットバニーは驚きの声を上げた。
「ちょ、しょーき? アンタマジあぶないし」
いきゃめん失われるのは世界の損失っしょ!
思わず声を上げるラビットバニーの前で蒼は紅の爪とLacieの攻撃を受け――それでも蒼は退かずに攻撃を受け続ける。一撃一撃が重く、確実に身を削られていくのも構わずに。
「さぁ、僕を殺せよ。──相棒」
紅とLacieは止まらない。止めの一撃を蒼へと繰り出し――止めだけは刺される訳にはいかない蒼は身を庇ってその攻撃を軽減させ、倒れた。
その途端、ラビットバニーを中心として環状に数多の魔銃が出現する。蒼が意識を手放せば、途端にその魔銃は消え去るだろう。
引き金は、まだ引けない。まだ攻撃が通らないから。
「なにこ……あっ、利用とかなんとかって窮地に立つために……? ちょい間違えればヤババ案件だし、鬼サイアク時どーすんの!? そんなの信じ合ってないと絶対ムリ~~~~~~~。はー、エモっ! マジエモじゃん……エモい相棒、わかりみの極み~~!」
――パリン。何かが壊れた音がする。
「あっ、しまった! ちょ、タンマ――」
「……放て」
引き金が、一斉に引かれ、魔銃が『終焉』を奏でた。
即座に兎面を光らせてラビットバニーは回避行動を取るが、全てを避けきれる訳がない。いくつかの銃弾に貫かれ、ラビットバニーは後退する。
盛大な銃撃音と共に、蒼の意識は暗色に塗りつぶされる。銃撃音で我に返った相棒が手を握る感触を確かに感じながら――。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ヘルガ・リープフラウ
・ヴォルフ(f05120)と共に
・アドリブ歓迎
わたくしたちの絆があれば、出来ぬことなどありません。
かならずこの世界を救いましょう!
敵の先制攻撃は「見切り」と「第六感」で察知。オラトリオの翼で飛び「空中戦」で回避。
宙に浮いたままの状態を維持し、ヴォルフが傷ついたら彼を【生まれながらの光】で癒し「救助活動」、「勇気」と「優しさ」を込めて祈り、彼を「鼓舞」します。
大丈夫。わたしはあなたを信じています。
あなたに救われたあの日から、わたくしはあなたと共にあると誓いました。
人々のために戦うあなたを守るのは、聖者たるわたくしの務め。
その傷も苦しみも分かち合い、支え、全て包み込みましょう。
ヴォルフガング・エアレーザー
・ヘルガ(f03378)と同行
・アドリブ歓迎
敵の初撃は「見切り」「野生の勘」で察知
極力急所への直撃を避けるよう立ち回るが、流れ弾がヘルガに向かった場合は彼女を「かばう」ことを最優先。
回避しきれない場合は「盾受け」でダメージ軽減しつつ「激痛耐性」「オーラ防御」「気合い」「覚悟」で耐える。
大丈夫だ。この程度の傷、どうということはない。
人々を、何よりもお前を守るためならば、俺はどんな苦痛も耐えてみせる。
俺のために笑い、俺のために泣いてくれる、お前のくれた「祈り」と「優しさ」が、俺を奮い立たせてくれる。
お前がいれば、俺は何者も恐れない。
バリア解除を確認したら【獄狼の軍団】を召喚
絆の力、思い知れ……!
●献身の歌姫と騎士
「わたくしたちの絆があれば、出来ぬことなどありません。かならずこの世界を救いましょう!」
ヘルガ・リープフラウ(雪割草の聖歌姫・f03378)はそう告げて、剣であり盾たる騎士――ヴォルフガング・エアレーザー(蒼き狼騎士・f05120)の手甲に手を置いてからゲートを潜った。
ふわりと香る、花の香。辺り一面の花々に目を奪われそうになるが、その先に兎面のウサ耳がぴょこりと見えている。
「あー、もー! 穴開いてんじゃん。マジテンサゲなんですけどー。マジないし。次会ったらいきゃめんだろうとフルボッコだかんね!」
カワイイ怪人『ラビットバニー』は燕尾を摘んで空いた穴を気にし、プリプリと怒っていた。
「っと、お客さん? マチ男に姫系? まー、そゆのもありっちゃありかー。でもあーし今マジでオチてるから、サクッとガチめでいくかんね!」
言うが早いか、キラッと一瞬光って絶対無敵バリアを張り、両手を二人へと向ける。
「っじゃ、まずは――《おはなハッキング》!」
ピンクに可愛く彩られた指から、ビビビっとシステム・フラワーズ制御ビームが放たれた。花の足場を自在に操作する事が可能となるビームは、離れて立っていない二人の足元へと放たれ――ヘルガは揺らいだ足元に気付いて翼をはためかせ、浮かんで回避した。ヘルガ寄りであった為、ヴォルフガングは一呼吸遅れで横へ跳んで避けた。
ヴォルフガングが体勢を立て直すよりも早く、攻撃回数を重視した《赤べこキャノン》が放たれる。急所への直撃だけは何とか防いだヴォルフガングだが、いくつも飛来する砲撃から守るべきは自身の身よりもヘルガを庇うことを第一とした。ヘルガの盾となるべく前に立ち、ヘルガに退くよう手だけで伝えた。キャノン砲とは、当たらずとも有効範囲が広いものである。ヘルガが近くに居れば、ヴォルフガングが砲弾からの直撃から庇ったとしても二次被害を被るだろう。
「――ぐ、」
「ヴォルフ……!」
盾で軽減し耐性等で身構えても、ヴォルフガングの口から呻き声が上がる。ヴォルフガングが身に付いている技能はどれも練度が低い。到底幹部レベルの相手に通用する練度ではなく、耐えきることは当然出来ない。……それでも、庇護するべき対象たるヘルガを庇いきったことは、騎士として矜持故に為しえたものか。
砲撃による煙が収まった時、そこにあったのは瀕死とも言えるヴォルフガングの姿。
ヘルガが浮いたまま《生まれながらの光》で回復しようとするが、ヴォルフガングの損傷は激しく、ついにヘルガは浮いてられなくなり地に落ちて。
「……もう、いい……ヘルガ」
「大、丈夫……わたしは、あなたを信じて、います」
これだけ回復してもらえば充分だと、ヴォルフガングが口を開く。が、その姿は強がりにしか見えない。立ち上がるのもやっとと言ったところだろう。これ以上ヘルガに負担をかける訳にはいかないと、騎士は歌姫の回復を拒む。
けれど、ヘルガは回復をやめない。既に息も上がっている身で、たとえこのまま倒れようとも、己の信じる騎士が前に進めるようにと力を使う。
(あなたに救われたあの日から、わたくしはあなたと共にあると誓いました。人々のために戦うあなたを守るのは、聖者たるわたくしの務め)
聖なる光がヴォルフガングを包み続ける。それはヘルガの決意。
この程度と言うには過ぎた傷故口には出来ず。それでも人々と歌姫を守るためにどんな苦痛をも耐えてみせると誓った男は、立ち上がる。
「お前がいれば、俺は何者も恐れない」
――だからそこで見守っていてくれ。
ヘルガは小さく頷きを返し……そして、自分の限界までヴォルフガングを回復し、ついに意識を手放した。力尽き花畑に倒れ込む気配を背に感じながら、ヴォルフガングはラビットバニーから目を離さなかった。
「え、えもーーーーい!」
撃とうと思えばいつでも撃てた。けれど二人の雰囲気がとても良かったから。赤べこキャノンを構えて見守っていたラビットバニーが、赤べこを抱き締めキャッキャと燥ぐように飛び跳ねて。
「単なるマチ男と姫系かと思って、ハイハイソレ系ねって思ってたけどー! アンタたちマジやばだね! お互いに相手のこと思い合ってるっつーの? 支えマクリスティーじゃん!? あーし、そーゆうのもヤバいんだよね。秒でバイブス上がったし!!」
一方的に興奮した声でラビットバニーがまくし立てれば、パリンと何かが割れる音がして。
「……あっ、っべぇ」
「絆の力、思い知れ……!」
僅かな好機を見逃さず、ヴォルフガングは《獄狼の軍団》を発動させる。
「ちょ、犬! 来んなし!」
地獄の炎を纏った狼犬たちが吠え立てながらラビットバニーへと向かったその隙に、ヴォルフガングはヘルガを抱き抱えて撤退した。
苦戦
🔵🔵🔴🔴🔴🔴
出水宮・カガリ
ステラ(f04503)と
この戦争が始まってから、口説く機会が多い気がする…ステラの
カガリもか?
お前のように期待させてから落とすようなことはしないぞ
事実と異なることを言っても、互いに空しかろう
本気で口説いたのは一人、と
一体誰に向けたものだ
(自分だと知れば驚いて)
……確かにカガリはお前に陥落したが。口説かれていたのか、あれは。
門を口説いたか、はっはっは!
ああ…敵前でなければ、ここで閉じ込めてしまうのにな
指先からのビームには、【籠絡の鉄柵】を大きく変形させて二人で乗る
(無頭の長い魚の、平たい方を上にする感じ)
カガリの意志ひとつで動くとは言え、振り落とされるなよ!
鉄柵への攻撃は【不落の傷跡】で防ぐ
ステラ・アルゲン
カガリ(f04556)と
あの兎のバリアを破るにはエモい行動をしなければならないと
ならちょっと口説いてきますね
なんだ口説いてはダメなのか?
お前だって女子を口説いていただろ?
常に事実を言えば良いとも限らん
それで相手が本気になったらどうする?
だから私は本気で口説いたことはない
本気で口説いたことがあるのは1人だけさ
あれを口説きと言うかは少し違うかもしれないがな…カガリ、お前だけだよ
ああ、恥ずかしい!!
とにかくバリアが解けても足場は崩される
カガリの鉄柵に乗せてもらう
振り落とされないようにカガリに掴まっていようか
上空からなら狙いやすいよな?
【全力魔法】【高速詠唱】にて【流星雨】を発動し敵に流星を落とそうか
●アチュラチュな関係
花園の中、カワイイ怪人『ラビットバニー』はため息をつく。
「……イケてない……」
自慢のカワイイボディに獣の噛み傷が少々増えているし、燕尾の先が少し焦げてしまった。
「あーしのお気にが……。もー、これもそれもぜーんぶ猟兵たちのせい!」
ぷんすかぷん! とラビットバニーが怒りを露わにしていた花園に、新たに猟兵たちがやってくる。
ラビットバニーを視認したステラ・アルゲン(流星の騎士・f04503)は、同行している出水宮・カガリ(荒城の城門・f04556)に「ちょっと口説いてきますね」と言って肩を掴んで止められる。
「エモい行動をしないとだろ?」
「この戦争が始まってから、口説く機会が多い気がする…ステラの」
口説いてはダメなのか? とステラが首を傾げたところに、
「とりま、《おはなハッキング》~っと!」
ラビットバニーが両手からビビビッとシステム・フラワーズ制御ビームを二人の足元へと放った。同時にラビットバニーの周囲がキラリと輝いて、絶対無敵バリアが展開される。
「うわっ、と」
ステラは思わずカガリにひっついて、咄嗟に『籠絡の鉄柵』を大きく変形させたカガリが柵の上にステラを引き上げた。無頭の長い魚のような柵はカガリの意思で動き、平たい方を上にして二人を乗せているため高さは無いが足場の確保には充分だろう。
しかし、システム・フラワーズ制御ビームとは足場を無くす物ではない。文字通り足場たる花々を制御し自在に操るものだ。にゅるんと蔦を伸ばし二人の足へ絡もうとする。伸ばされる蔦に気付くと、カガリは『不落の傷跡』で防いだ。
「やだ、男前っぽい?」
思わずラビットバニーが零す。
「あ、りがと、カガリ。……でも、お前だって女子を口説いていただろ?」
「お前のように期待させてから落とすようなことはしないぞ。それに、事実と異なることを言っても、互いに虚しかろう」
「常に事実を言えば良いとも限らん。それで相手が本気になったらどうする?」
柵の上で完全に二人だけの世界だ。
――だから私は本気で口説いたことはない。
「えっ、それって!」
ステラの言葉に、ラビットバニーが思わず口――兎面の――に手を当てて。
「本気で口説いたことがあるのは1人だけさ」
「ええっ、それってやっぱり!?」
「本気で口説いたのは一人、と。……一体誰に向けたものだ?」
「って、やっだー! まさかの鈍感!? あ、でもそんな感じしそー! 見るからに鈍感キングー!」
「あれを口説きと言うかは少し違うかもしれないがな。……カガリ、お前だけだよ」
「ぎゃー、やっぱりー! エモいの頂きましたー! あざまる水産~~~~!!」
合間にラビットバニーの歓声をはさみながらも二人の世界の二人。
お前だけだと言われれば、カガリはぱちりと瞬いて。
「……口説かれていたのか、あれは」
「やば~~~い! 鈍感すぎ~~~~!」
はっはっは! と楽しげにカガリが笑い、ステラは恥ずかしげに顔を逸らす。そんなステラにカガリは、敵前でなければ閉じ込められるのにと囁いて更に頬に朱を集めさせるのだった。
「俺と言う城門を陥落させるのはお前だけだ……ってゆーやつっしょ! エモ! って、あーし今めっちゃ空気じゃね?」
二人のやり取りの最中に既にバリアは割れているが、ラビットバニーは気付かず二人に手を振った。
「あーしもいるよーっ! ひゅーひゅーアチュラチュー!」
「う、うるさいっ!!」
片手でカガリにしがみつき、ステラは残る片手で剣を抜く。
剣先は一度上空を指し示し、ビュッと振り下ろせば数多の星々がラビットバニーめがけて降り注いだ。
「ととと、……あっ! バリア切れてッし!」
兎面のため表情は見えないが余裕の表情で二人にやんややんやと声援を送っていたラビットバニーは、慌てた様子でピョンっと跳ね、
「……なぁんて。あーしはレベチだかんね! こんくらい避けるのはよゆーよゆー」
ぴょんぴょんぴょんっと、兎のように跳ねて流星を避けた。
幾度も剣を振るい、ステラは流星を降らす。
数多降る流星の雨。そのいくつかは掠めるが、幹部の名は伊達ではない。
「長時間戦うのダルいしー。んじゃま、おつおつー!」
そのままラビットバニーはぴょんぴょんと軽い足取りで撤退していった。
苦戦
🔵🔵🔴🔴🔴🔴
誘名・櫻宵
🌸リル/f10762
◇
エモって何?リ…
閃光
咄嗟に身を投げ出してリルを庇う
はずだったの
突き飛ばされて視界に舞う血色の桜
リル!!?
白い尾鰭が
鱗が身体が
白が赤に
なんでどうしてあたしなんかを
リルだけはまもりたかったのに
ころしてやるゆるさない
絶望や怒りや殺意色んな感情がごちゃ混ぜにになって涙が零れ
いやよ
何で?!
他の何を喪ってもあなただけは喪いたくないのに!
リルの言葉に気がつく
何時もとは逆の立場ね
あなたの痛みがやっとわかった
微笑み返して刀を握り
リルの歌に背を押されるように駆ける
足元が崩れれば飛び
勘を働かせ見切り躱して
呪詛と怪力乗せて思い切り放つ絶華
リルの想いに応えなきゃ
その首を寄越しなさい
お前は許さない
リル・ルリ
■櫻宵/f02768
◇
えも?僕もよくわからな―
!!
さよっ!
突然の閃光に
僕を庇い守ろうとする櫻宵を突き飛ばす
いつも僕を庇って怪我をする君を
守れたら
君が無事なら、いい
悲鳴を呑み込んで
焼かれる痛みも打ち付けられる痛みも耐えて噛み殺し
身体を鱗を紅に染める血潮の熱さも久しぶりだ――劇団にいる頃なら廃棄されてたな
ぼんやり思いながら微笑んで
取り乱す櫻宵の頬に触れる
いつも怪我するばか櫻
…少しは、僕の気持ちがわかったか
僕は平気
バリアが消えたら行っておいで
泣いてる場合じゃない
喉は大丈夫
ならば歌おう弱ろうとも力強く
【歌唱】に【鼓舞】をのせ歌う「星縛の歌」
害する前に封じる
櫻は傷つけさせない
僕の想いものせて
斬っておいで
●血染めのさくら
花々の中、波打つ髪を指先にくるくる巻いて弄っていたカワイイ怪人『ラビットバニー』は、ぐだぐだと管を巻いていた。
「あー、もうテンサゲパなーい。あーしの爪、血ぃついてっし。あー、タピりたーい……ん?」
猟兵たちに撃たれ、齧られ、可愛くセットした髪もボサボサだし、何より一面花畑のここにはタピオカミルクティーの店など無い。兎面もどこか悲しげ――な、気がする。しかし、肩を落としているところに、転送されてきた猟兵の姿を見つけるとぴょこりと顔を上げた。
猟兵たち――リル・ルリ(想愛アクアリウム・f10762)と誘名・櫻宵(屠櫻・f02768)は『エモ』とは何かと首を傾げながら転送されてきた。
「エモって何? リ……」
「えも? 僕もよくわからな――」
転送したグリモア猟兵が『をかし』と言っていたから、甘い物なのかも。なんてリルの頭を過った瞬間、視界の端に迫りくる砲弾が見えて――。
「!! さよっ!」
「っっっし! 命中っしょ! あーし今AIモードだから!」
チュドーンっと爆音があがり、もうもうと煙があがった。それを見てラビットバニーは思わずガッツポーズを決める。AtamaIiモードのウサギはひと味違うのだ。
もうもうと煙の上がる、その向こう。櫻宵が目にしたのは、愛しい人魚の倒れる姿。血色の桜、なんて、生ぬるいものではない。
「リル!?」
「……さ、よ……無事?」
キャノン砲とは、砲弾を撃つ大砲である。況してや幹部の一撃。直撃すれば瀕死は免れない――が、リルがたどたどしくも喋れるだけの余力があったのは幸運としか言えない。
櫻宵は、リルを庇うつもりだった。しかしそれをリルが突き飛ばした。咄嗟の判断と言え、それは正解だった。櫻宵が庇ったとしても、キャノンの有効範囲はそこそこ広く、爆風や炎に人魚は焼かれていたことだろうし、何の対策もなく被弾しては双方とも地に伏していたことだろう。リルが突き飛ばしたからこそ、櫻宵は軽傷で済んでいる。
炎が身を焼き、鱗は剥がれ、全身に血を流して。それでもリルは意識を手放さず、愛しい櫻の無事を確認しようと目を開ける。君が無事なら、いい。そう、思うから。
「なんで……どうして、あたしなんかを」
リルだけを守りたいと願っていた男の胸に満ちるのは、絶望、怒り、そして殺意。綯交ぜになった激しすぎる感情に涙を零す。
「やっぱあーし、ガチめにいけばイケてる?」
本来なら、ここで《おはなハッキング》をリルへと向けるのだが、そうしなかったのは温情の他にないだろう。「あーし、お別れはさせてあげる系だしー」と、うんうん頷いてラビットバニーは二人を見ている。
(――劇団にいる頃なら廃棄されてたな)
やけにぼんやりとした思考。まとまらない思考。視界が掠れる。けれど、君が涙を零している事は解るから。震える手を、伸ばす。小刻みに震える手は、思ったよりも持ち上がらなくて。頬に触れる前に落ちそうになったところを、櫻宵の熱い手が握り締めた。
じゅくじゅくとした火傷に爛れ血に塗れたリルの手を、頬に押し付けて櫻宵が涙を零す。あなただけは喪いたくないと、唇を震わせる。
「…少し、は……僕の、きもち……」
分かったかとまでは言葉が紡げ無くて、口を閉ざす人魚。
いつもリルを守ろうとする櫻宵。
怪我をする櫻宵を見たくはないのに守られてしまうリル。
そのリルがどんな風に何時も思っているか。
反対の立場になって、ようやく櫻宵はリルの痛みに気がついた。
(――ばか。ばかさよ)
やっと気付くなんて、遅いよ。ばか。
僕は平気と、唇だけ動かして。櫻宵を送り出す。
櫻宵が背を向けて走り出したら、けほけほと血混じりの咳をして。そっと喉を抑える。
(大丈夫、まだ、歌える――)
櫻宵が、駆ける。呪詛と殺意を刀に乗せて。おはなハッキングのビームが足元へ放たれるが、飛び越えて。花々から蔦が伸び、櫻宵の足を絡め取ろうとし――蔦の動きはそこで止まる。
花畑に響く、人魚の唄。一節ごとに身を削り、体力は奪われ今にも意識が飛びそう。体はどこもかしこも痛い。けれど、けれど。歌えるなら。君の背中を押せるなら、リルはいつだって全力で歌う。
「え、えもっ! そうくる系? エモっ! きゃわゆいお魚かと思ってたのに王子系だし、角の方はケッコーお姫様系でギャップがあるってゆーの? すこ! ……あ、でもなーんかおこぷんっぽいしー、こっちにはこないでほしいかなー」
バリア? そんな物はいつの間にか割れている。マジこわたんと口にして赤べこキャノンを構え、至近距離から砲撃を浴びせようとするが――蔦と同じように、止まる。
ただ、一瞬で良かった。それだけで、櫻宵の刀が届くから。
「うっそ……」
「その首を寄越しなさい」
――お前は許さない。
明確な殺意を織り交ぜて、ラビットバニーの首から盛大に血桜を咲かせた。
ぽぉん。ボールが転がるように、ラビットバニーの首が飛ぶ。血の軌跡を描きながら、花畑を血に染めながら、ころんと作り物の兎面が転がった。
ウサギのはしゃいだ声も、人魚の歌声も、もう聞こえない。
――残心。細い糸のように心を伸ばし、カチリと音を立てて刀を収める。
歌声が聞こえないことにハッとした櫻宵は、慌てて愛しい人魚の元へ駆け戻る。
赤く染めた花々に抱かれるように、リルは横たわっていた。
櫻宵は意識を飛ばした人魚の呼吸を確かめて、その身を一度強く抱き。そして、抱えあげる。
倒すべき相手は倒したなら、ここにはもう用は無い。ゲートをくぐればグリモア猟兵が癒やしてくれるだろう。一刻も早く人魚を癒やすため、櫻宵は急ぎゲートをくぐるのだった。
成功
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