バトルオブフラワーズ⑩〜解壁のリュールング
「皆、すごい! あの『想像した全てを創造する』能力を持つエイプモンキーをやっつけるなんて、やるわねぇ!」
キマイラフューチャーの中枢、『システム・フラワーズ』の第一関門は突破した。
最強最悪の能力を持つ敵との熾烈な闘いを見守っていたニコリネ・ユーリカ(花売り娘・f02123)は、猟兵の勝利を興奮気味に讃える。
彼女はやや早口に言を継いで、
「皆が頑張ってくれたお陰で、エイプモンキーが骸の海から受肉する事はもう無いし、花の咲き乱れる道は次なる場所へと私達を導いてくれる」
システム・フラワーズ内部の「咲き乱れる花々の足場」は、彼を失った今、別なる敵へと結ばれている。
怪人軍団の二体目の幹部、カワイイ怪人『ラビットバニー』だ。
「第ニの関門は、ウサギのかぶり物を被った『ラビットバニー』が守っているわ。お花の道は全て彼女に通じていて、彼女を倒さない限り先には進めない」
エイプモンキーと違って、ラビットバニーは同時に一体しか存在しない。
総攻撃を仕掛ければ突破は易いか――いや、彼女のユーベルコード『絶対無敵バリア』はいかなる攻撃も無効化するので、敗北を味わわせる事は不可能。
彼女が『絶対無敵バリア』に覆われている限り、ユーベルコードも通常攻撃も、ありとあらゆる攻撃が一切効かないのだ。
「でもね、付け入る隙はあるの」
ニコリネが紫瞳に光を失わないのは、攻略の術があるからだ。
彼女はエイプモンキーをやっつけた皆なら、と詳細を語って、
「ラビットバニーの『絶対無敵バリア』は、彼女が『エモい』と感じたものを目撃すると、一時的に解除されるの」
ラビットバニーは「エモい」もの見ると、心が乱れてバリアが解ける。
感情に訴えかけてくるようなもの――例えば、かわいさ、男らしさ、おもしろさ、血だらけで立ち上がる様子、突然のパンチラ、イケメンの壁ドン、水を吐き出すフグなど、要するに「SNSでバズりそうなやつ」が良いだろう。
ラビットバニーが「エモい」と感じる基準はかなりユルく、だいたい「エモい」と感じ、それを目撃するとバリアが解除されるようだ。
「絶対無敵バリアって最強の能力だもの、制禦が難しいのかもしれないわ」
多分ね、と憶測でモノを言うニコリネ。
ラビットバニーのツボが何処にあるのか分からないが、蓋し今回限りは、「ガワ」とか「フインキ」に頼ってみるのも良いだろう。
全てを言い終えた彼女は、花型のグリモアを召喚し、
「キマイラフューチャーにテレポートします。怪人軍団の大幹部の一体をやっつけに行きましょう!」
準備はいい? と白磁の繊手を差し伸べた。
夕狩こあら
オープニングをご覧下さりありがとうございます。
はじめまして、または、こんにちは。
夕狩(ユーカリ)こあらと申します。
こちらは、『バトルオブフラワーズ』における第十の戦場、怪人軍団の幹部のひとり『ラビットバニー』と戦うボス戦シナリオ(第一章のみで完結)となります。
●戦場の情報
全自動物資供給機構『システム・フラワーズ』内部。
その空間は花々が咲き乱れており、集まった花弁が足場を形成しています。
全ての道がラビットバニーに集まっており、彼女を倒さなくては先に進めません。
●敵の情報
キマイラフューチャーを脅かす怪人軍団の大幹部の一体、カワイイ怪人『ラビットバニー』。
あらゆる攻撃を無効化する『絶対無敵バリア』を形成する能力で自らを守る他、赤べこキャノンをはじめ、強力なユーベルコードを併せ持つ強敵です(バリアがなくても十分な戦闘力を有します)。感情が揺らぐとバリアは消えます。
ラビットバニーは必ず、猟兵に先制して『絶対無敵バリアを展開するユーベルコード(POW、SPD、WIZ)』を使ってきます。
絶対無敵バリアは本当に絶対無敵で、あらゆる攻撃を無効化しますが、「ラビットバニーがエモい物を目撃する」と、精神集中が乱れてバリアが消滅します。
ラビットバニーのエモい基準はかなりユルいので、バリアの解除は比較的容易と思われますが、バリアなしでも彼女は相当の実力者です。
●リプレイ描写について
フレンドと一緒に行動する場合、お相手のお名前(ID)や呼び方をお書き下さい。
グループでのご参加は【グループ名】をご記載願います。
プレイングが届いた順ではなく、より戦争に有利に動いたプレイングを優先して採用し、リプレイが完成した方から随時お返し致します。
以上が猟兵が任務を遂行する為に提供できる情報です。
皆様の武運長久をお祈り申し上げます。
第1章 ボス戦
『カワイイ怪人『ラビットバニー』』
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POW : 赤べこキャノン
【絶対無敵バリア展開後、赤べこキャノン】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD : うさちゃんカンフー
【絶対無敵バリア展開後、兎面の目が光る】事で【うさちゃんカンフーモード】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ : おはなハッキング
【絶対無敵バリア展開後、両手の指先】から【システム・フラワーズ制御ビーム】を放ち、【花の足場を自在に操作する事】により対象の動きを一時的に封じる。
イラスト:和狸56
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
万紫千紅の様相を呈す『システム・フラワーズ』中枢――多くの猟兵が奥部を目指して進む中、花叢に繋がれた先で彼等を待ち受けるカワイイ怪人『ラビットバニー』は、今の状況に早くも昂揚を得ていた。
『あーし独りで猟兵どちゃくそ相手するとか沸くわ~』
不意に嘆声が零れる。
間もなく現れた猟兵らは、花咲き乱れる足場を陣風の如く疾走し、美し花弁を踊らせながら颯爽と向かい来る。
精悍の躯に雄渾を迸らせ、凛然に満つ炯眼は真っ直ぐ、我がウサギの被り物を射抜いて――研ぎ澄まされた殺気が自身へと束ねられる今の景は、エイプモンキーに最強の名を譲っていた身として、感動を隠さずにはいられまい。
『今のあーし、割とガチめでボスみある……うわっアガってきた』
オーバーニーレングスのヒールブーツで花叢を踏み締める。
シュシュとバングルに飾る繊手を広げたラビットバニーは、虹色の精彩に肌膚を輝かせるや鉄壁のオーラを放射し、『絶対無敵バリア』を展開した。
『とりま、やるしかないっしょ! 鉄壁構築、からの――』
霹靂閃電、【赤べこキャノン】発射――!
百馨を匂わす空間に巨大な熱量を帯びた光条が突き抜け、美し花弁が塵と化した。
オリヴィア・ローゼンタール
エモ、い……?
異世界の言葉は難しいですね……
血塗れでも立ち上がる、というのが該当するのなら、いつも通りで良さそうですね
【血統覚醒】で吸血鬼の力を解放
両の目から止め処なく血涙を流す姿に
【属性攻撃】で聖槍に炎の魔力を纏う
【怪力】を以って聖槍を振るい、絶対無敵バリアごと打ちのめす
名前の通りダメージは与えられないとしても、決して諦めずに
大砲で撃たれても【オーラ防御】と【気合い】で耐え、
【激痛耐性】で痛みを物ともせず戦闘続行
絶望に膝を折らず、立ち向かう【勇気】は人々の心を【鼓舞】するもの
そういった心に働きかけるものをエモいというのでしょうか?
ナミル・タグイール
えも…?よくわからないけどイイもの見せればいいにゃ?
ならこの金ぴかを見ろデスにゃ!どうにゃ?素敵デスにゃ?(斧やアクセをドヤ自慢猫)
…金ぴかの良さがわからないなんてオブリビオンは悲しい奴にゃ!
解いてくれないならゴリ押しで突破にゃ!
なんでも切断する呪われた光を食らえデスにゃー!
クワッと見開いて目から【呪紫煌金の光】にゃー!
(本人は真面目だけど猫が目からビームをだすシュールな光景)
極太ビーム全開でバリアもキャノンも砲弾も切断してやるにゃ!!
目からだけで対処ができなかったら全身の装飾、タトゥからも放射で全方位ビームにゃ!
ぎらぎらパワーにゃー!きっとこれがエモデスにゃー!!
レナータ・バルダーヌ
エモ…?というのはよくわかりませんが、バニーさんの心が乱れた時がチャンスなのですね。
勝機があるなら、耐えて待つのみです。
わたしはバリアが解除されるまで、バニーさんの攻撃を念動力の【オーラで防御】し続けます。
どんなにダメージを受けても【痛みに耐え】るのは得意ですから、そう易々とは倒れてあげません。
わたしの体力が尽きるまでにバリアが解ければ、苦痛を受けるほど力を増幅する【防衛本能:原点回帰】によって強化した【念動力】で、バニーさんの動きを封じて他の方が攻撃を通す隙を作ります。
「わたしを倒したければ、4年間繰り返した拷問の苦痛を一度にもってくることですね……!」
ラビットバニーの心を揺るがすような『エモいもの』が絶対無敵のバリアを解く――ならば『エモい』とは何か。
灼熱の光条が間際を疾走る中、繊躯を翻して躱したオリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)とナミル・タグイール(呪飾獣・f00003)、そしてレナータ・バルダーヌ(復讐の輪廻・f13031)は、その佳声を揃って疑問符に持ち上げた。
「エモ、い……?」
「えも……?」
「エモ……?」
聞き慣れぬ言葉を鸚鵡返しに反芻する。
春風に撫でられる花のように一様に首を傾げた三人は、間断なく撃ち込まれる焦熱を潜りながら声を交して、
「ピンと来たなら良かったのですが、異世界の言葉は難しいですね……」
「わたしもよくわかりませんが、バニーさんの心が乱れた時がチャンスかと」
オリヴィアとレナータが光条の先、ラビットバニーが張り巡らせるバリアを見れば、視線を同じくしていたナミルが花叢から進み出る。
「じゃあ、イイもの見せればいいにゃ?」
イイもの。
心が躍り、瞳がキラリと輝く様な――ナミルは「それなら」と巨斧『カタストロフ』や縛鎖『グレイプニール』を自慢げに見せて、
「金ピカじゃらじゃら見ろデスにゃ! どうにゃ? 素敵デスにゃ?」
全身を黄金の装飾品で飾ったナミルまるごと眩しかろう、ラビットバニーはウサギの被り物の覗き穴に差し込む燦然を遮りつつ、淡々と突っ返した。
『なんかバブリ~でインパクトはあるんだけど、あーしとツボが違うっつーか、ほら、パープルの赤ベコとかカワたんっしょ』
寧ろこっちが、と担いで弾いた光弾は鋭く烈しく、軌道上の花弁を旋風と巻き上げて戦場を疾走する。
これにナミルはぷっくりと頬を膨らませ、
「……金ぴかの良さがわからないなんてオブリビオンは悲しい奴にゃ!」
『悲しい奴って。憐れまれるとかまじテンサゲ』
むむむむむーっと猫と兎が睨み合う中、オリヴィアは『破邪の聖槍』を手にぶわり、鏖殺の気を迸らせた。
「どれだけ守りが固くても、やることはいつもと変わりません」
足元の花叢に血斑が染むのを見た彼女は、此処で多くの猟兵が膝を折った事実を受け止め、胸元の十字架に繊指を添える。
我もまたその一滴となろうと、強い覚悟に長い睫を持ち上げた凄艶は、【血統覚醒】――忌まわしき吸血鬼と変じ、真紅の瞳を炯々赫々、その白皙に際立たせた。
「ダメージは与えられずとも、その一撃を惜しまない――!」
邪を前に溢流する魔力を炎と燃やし、聖槍に宿す。
すれば穂先は黄金と輝き、疾風を連れるやバリアに向かって怒濤の連撃――! 無論、無敵を誇る鉄壁なれば、衝撃を跳ね返してオリヴィアを押し戻すが、彼女は何度も刃鋩を衝き入れる。
『あー無理ムリ、バリアは絶対破れないし、あーしはバリアしてても動けるし』
ウザギの被り物の前でヒラリ手を振ったラビットバニーが、次いで赤ベコを構える。
つぶらな瞳の牛の張子は、抱いた大筒から閃光を散らし、オリヴィア目掛けて厖大なエネルギーを撃ち出すが、須臾に割り入ったレナータのサイキックエナジー『リベリオンフォース』が衝撃を相殺した。
「勝機があるなら、バリアが解除されるまで耐えて待つのみです」
身ごと盾と踏み出たレナータが、柔肌に鮮血を滴らせながら言う。
敵が隙を見せるまで、持ち堪える――いかなるダメージも防ぐラビットバニーに対し、いかなる痛みにも耐えられる彼女は、「そう易々とは倒れてあげません」と、流血を手の甲に拭って正対する。
真紅に滲む繃帯を巻いた繊指は、オーラを紡いで防壁を成し、
「弱点は判明っている相手です。必ず勝機はあります」
「決して絶望に膝を折らず、攻撃の手を止めない――!」
レナータが念動力で防禦するなら、己は躊躇わず攻勢に預ろう。
オリヴィアは鉄壁のバリアに剣戟を押し戻されながらも、丹花の唇を引き結んだ儘、絶えず聖槍を繰り出した。
半魔の血を代償に戦闘力を飛躍的に増強した彼女は、双眸より止め処なく血涙を流し、その勇猛と悲壮を見たラビットバニーが俄に動揺する。
『あっコレ、ゆうきりんりん? ってヤツ? 少年漫画の主人公のようなアツさ……』
ヤバい、と手を泳がせた瞬間が「それ」だったろう。
決して折れぬ心が、見る者を奮い立たせる――他者に流れ込む勇気を「エモい」と感じたラビットバニーのバイブスが上がり、同時に虹色のバリアがシャボン玉の様に揺らいだ。
「今、慥かに――」
最初に気付いたのはレナータ。
激痛に耐えながらも洞察の眼を鋭くしていた麗人は、間断を置かず躍動するナミルを紫瞳に映し、嗚呼、と確信する。
「バニーさんの心に乱れが生じています。バリアが薄くなった今なら――!」
「それならゴリ押しで突破にゃ! なんでも切断する呪われた光を食らえデスにゃー!」
光弾を顳顬の間際に躱したナミルが、クワッと見開いたオッドアイから【呪紫煌金の光】(アイン・ヌール)――呪飾獣の証たる呪詛光線を射る。
「極太ビーム全開でバリアもキャノンも砲弾も切断してやるにゃ!!」
『うわっ、猫が目からビーム出すとかシュール……!』
「目だけじゃないにゃ! 全身の装飾、タトゥからも放射で全方位ビームにゃ!」
『まーじーかー!!』
ヤバいツボる。
バズる、エモい――!
『あー!』
感歎するような、溜息するような声が漏れた瞬刻、絶対無敵のバリアが解ける。
すればレナータは、苦痛を受けるほど力を増幅させる【防衛本能:原点回帰】(ドロローソ・ダ・カーポ)を発動し、強化された念動力を以てラビットバニーの掣肘に掛かった。
肉体的苦痛、身体拘束、記憶のフラッシュバック――過去の苦境に今のダメージを乗算したレナータの強さの程は、『赤べこキャノン』の首をカタカタと揺り動かし、照準を定めさせぬばかりか、其を担ぐ敵の玉臂も縫い留める。
『あっ、あーしのスペおきが……動か、いや動くんだけど……言う事きかない!』
焦るラビットバニーの前で、レナータは被虐と報復の微笑を浮かべ、
「わたしを倒したければ、四年間繰り返した拷問の苦痛を一度にもってくることですね……!」
他の猟兵が次なる一手を打つ「好機」を、自らの手で作り出した。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
荒谷・ひかる
ラビットバニーさん、って……もしかしてあのカワイイブランドの創始者!?
すごーい!
わたし、ファンなんです!
サインくださいなっ!(ペンと大量のグッズを手に迫る)
受けてもらえたらその間、お話をするよ。
今のキマイラフューチャーも、どんどん進歩していってること。
皆さんのブランドが今も残っているのは、それに満足しているからじゃなくて、あなた達先駆者に敬意を表しているから。
この世界の人たちが、大なり小なりアーティストであることがその証明。
だから……素敵なものを今に遺してくれて、ありがとうっ。
(【満面笑顔の向日葵少女】発動)
戦いが避けられないなら精霊さんの雷で牽制して、サインを死守しながら風に乗って逃げるっ!
感情が揺らぐと『絶対無敵バリア』を霧散させてしまうラビットバニーだが、切り替えも早いとは、その後腐れのない性格がよく示している。
『モンキーやられたんならあーしが始末つけりゃいーし、バリアが破られたなら張り直せばいーし』
問題なくね? と言い切った彼女は、直ぐにも原状回復――再度バリアを構築すべく、小麦色の玉臂を左右に広げた。
その時である。
「ラビットバニーさん、って……もしかしてあのカワイイブランドの創始者!?」
『ん?』
とてとてとて、と花叢を小走りにやってきた荒谷・ひかる(精霊ふれんず癒し系・f07833)が、琥珀色の瞳をキラキラと輝かせて我が身を――ウサギの被り物を仰ぐ。
やや興奮気味に、グイグイいくのが子供らしかろう、
「すごーい! わたし、ファンなんです!」
『えっそうなの。あーしにファンがいるとかアガるんだけど』
「サインくださいなっ!」
身に着けたキーホルダーに缶バッジ、差し出すペンも『ラビットバニー仕様』なら、悪の怪人とて悪い気はしまい。色紙を受け取ったラビットバニーはサラサラとサイン(考案済み)を走らせる間、朗々と語る少女の聲を聞いた。
「キマイラフューチャーは、今もどんどん進歩していってる。そんな中で、皆さんのブランドが残っているのは、それに満足しているからじゃなくて、あなた達先駆者に敬意を表しているから」
『あーしらをリスペクトしてるって事?』
こっくりと頷くひかる。
何より事実が語ろうか、この惑星の住民達が大なり小なりアーティストとして暮らしている事がその証明になる、とひかるは桜脣に微笑を湛える。
其はこの世界で育ち、友に恵まれた彼女ならではの言だったろう。
「だから……素敵なものを今に遺してくれて、ありがとうっ」
にぱっと零れる【満面笑顔の向日葵少女】(サンフラワー・ガール)の破壊力は超弩級。
バリア越しなら突っ撥ねられたかもしれないが、純粋無垢な満面の笑顔を向けられたラビットバニーは、タイムラインでカワイイ動画を見た時と同じ衝撃に心を揺さぶられた。
『ずァ、ッ……!』
やだエモい。
笑顔の虜になったラビットバニーは、バリアを再構成するのも忘れ、色紙を胸に抱きしめて去る春風を、まんまと逃してしまった――。
成功
🔵🔵🔴
雷陣・通
『正中線五段突き!』
失敗しても構わねえ、ここは意地の勝負だ!
攻撃は視力でギリギリを見切って痛みは激痛耐性で耐える
きつければ『前羽の構え』だ
何度でも拳を叩きこみ、赤べこキャノンの弾丸を何度でも受け止める
足元の花が赤く咲いても、巻いたバンテージが赤黒くなっても
何度でも……何度でも立ち上がる
「あんたが未来に託して残した文化をつぶすっていうんなら、俺はお前が作ったブランドを守り、人々を守り、未来を守る」
血糊でねばついた顔をぬぐい、立つ
いや、立たねばならぬ!!
「行くぜ、これが空手だ!」
『正中線五段突き!』
……あとは任せたぜ、みんな。
戦場を同じくする者が『絶対無敵バリア』の解除に成功した。
時を同じくする者がバリア再構築までの時間を延長させた。
なれば。
今も花咲き乱れる足場に両の脚で立つ者は、彼等より受け継いだ「攻略の鍵」を次なる者に託すべく、己もまた汗と血を、魂を絞らねばならぬ。
「――ここは意地の勝負だ!」
履き潰したスニーカーの靴底に、血斑の染む花叢を踏み締める。
雷陣・通(ライトニングキッド・f03680)は鉄壁のバリアを解いて尚も強靭を失わぬ強敵を前に、刻下、爪先を蹴った。
『……スペおきの赤べこキャノンはまだカクカクしてっけど、牛(べこ)ちゃんなくたって負けないし!』
百花繚乱の空間に躍した通を追う兎面の目が光る。
忽ち『うさちゃんカンフーモード』に移行したラビットバニーは、花叢を踏み込むや超ジャンプ、超スピードで通の視界に迫った。
両者の拳は花舞う空間で邂逅し、
「正中……見えた! 正中線五段突き!」
『五連打……ッならあーしはそれを超えてみせる!』
角逐――!
通は初撃こそ相殺されたものの、丹田から(豊満の谷間にある)鳩尾、喉笛を衝いた正拳突きは、最後にラビットバニーの下顎に炸裂し、ウサギの被り物をガクガクと揺らした。
『クッ、ッッ!!』
然し彼女は瑞々しい脚で脇腹を急襲し、通を花叢に転がす。
大砲を喰らった様な激痛が全身を駆け巡るが、少年は花の馨に沈むか――否。
「ッッ、ッ……まだまだ!」
気合の聲に痛撃を掃った通は、立ち上がるや再び爪先を弾く。
「あんたが未来に託して残した文化をつぶすっていうんなら、俺はお前達が作ったブランドを守り、人々を守り、未来を守る!」
『……それがガキんちょのマックスの欲望だってんなら、あーしとガチ合って倒されるしかないっしょ!』
拳閃が波動を突き上げ、万紫千紅の戦場を揺らす。
鋭い衝撃波が肌膚を刻みながら通を圧し倒すも、少年は血花の咲く足場より何度でも立ち上がり、バンテージが赤黒く滲もうとも、その拳を下げることはない。
『もうねんねの時間っしょ。次に目覚めた時は世界は滅んでる』
ラビットバニーの淡然たる声に頭(かぶり)を振った通は、血糊でねばついた頬を手の甲に拭い、再び構える。
空手で出来ない困難は多い。
だが空手で切り拓ける道は慥かにある。
だからこそ、と花叢を蹴った通は、全身全霊、渾身の【正中線五段突き】(ライトニング・ファイブポイント・ストライク)を放ち、
「行くぜ、これが空手だ!」
『ッ、ッッ――!』
(『――エモい!!』)
ウサギの被り物を歪に凹ませて三回転、ラビットバニーのヒールを浮かせて花叢に沈ませた。
(「……あとは任せたぜ、みんな」)
ザッと花弁が舞い上がる佳景を見た通は、漸う意識を手離して倒れる。
血の滲む口角には、少年らしい微笑があった。
成功
🔵🔵🔴
戒道・蔵乃祐
◆呼び掛け
バーチャルキャラクター?それともヒーローマスクでしょうか
この世界とドン・フリーダムの関係は窺い知れない
生の肉体に縛られた部外者故に
惑星の繁栄は此の地の種族の命題と思わなくも無い
その為にキマイラフューチャー斯くあるべしと
規範となる貴女達が創造されたのかも
でも
旧人類滅亡以来
住人達は只々在るが儘に生きてきた
理想と現実の矛盾を厭い
世界を無理矢理作り替える行いは本当に進化なのでしょうか?
◆
カンフーの本質は接近戦
鞘から抜いた刀を正眼に構え、バニーの挙動を動体視力と見切りで追う
風を裂く徒手空拳に聞き耳を立ててカウンター
地に落とした鞘を蹴り上げて虚を衝くフェイント
早業と残像の鷹蝙剣でバニーと切り結ぶ
『あーっ、あーしのウサちゃんボッコンボッコンになってんじゃん!』
まじテンサゲ、と佳声に怒りを滲ませるカワイイ怪人『ラビットバニー』。
この世界を幾度と訪れた戒道・蔵乃祐(荒法師・f09466)は、サイバーパンクな都市構造物の中に、彼女が被るウサギの頭部を模したオブジェを見た事があったが、果たして骸の海を潜ったのは「何者」であったか。
(「バーチャルキャラクター? それともヒーローマスクでしょうか」)
既に人類は滅亡し、怪人として受肉した者達がキマイラやテレビウムら現今の住民を淘汰しようとしている――。
『このウサちゃんがあーしのブランドアイコンだから……割とガチで凹む……!』
惑星に意匠を遺して蘇った怪人幹部。
そして、彼等を従える首魁『ドン・フリーダム』。
この世界との関係は窺い知れぬが、生の肉体に縛られた部外者故に、惑星の繁栄は此の地の種族の命題と思わなくも無い――と、花叢を踏み込む蔵乃祐に、ラビットバニーは警戒を露わにする。
「その為にキマイラフューチャー斯くあるべしと、規範となる貴女達が創造されたのかも」
『創造? クリエイターはあーしらなんだって!』
創造するも、破壊するも。
全て我等が大首領ドン・フリーダムが掌握するのだと――赤べこの頭をカクカクとさせたラビットバニーは、己が兎面もカクカクと揺らしながら、蔵乃祐の言に反駁した。
その反論は灼熱の砲弾を連れて蔵乃祐の肌膚を裂き、肉を焼いて鮮血を噴かせるが、彼は流血淋漓をその儘に、「でも」と言を続ける。
「旧人類滅亡以来、住人達は只々在るが儘に生きてきた」
『あるが儘に? 寧ろアイツらって只々漫然と生きてきたんじゃね?』
再び弾く。
然し彼は噤まない。
「理想と現実の矛盾を厭い、世界を無理矢理作り替える行いは本当に進化なのでしょうか?」
『ガチの欲望を取り戻す、あるべき姿に戻すだけだし! ――はっ!』
被せるように声を荒げ、息を呑む。
敵たる猟兵とこのように会話するなど、まるで物語のクライマックスを迎えたボス戦で、己が身こそまさにそのボスではないか――!
『やっ、今の対立……エモい……!』
時に鞘を落とし、正眼に構える蔵乃祐。
此方の挙動を一縷と逃すまいと炯眼を絞る――厳然たる訣別にバイブスが上がる。
『――ヤバい沸く』
兎面の下に隠るる丹花の唇は舌を舐めずったか、目に光を疾らせて『うさちゃんカンフーモード』に変身した彼女は、我が拳の風を裂く音に合わせてカウンターを寄越す蔵乃祐に艶笑を注ぐ。
『もらった――!』
鉤爪と迫り出した掌指が蔵乃祐の心臓を掴み掛かる――刹那、両者の間合いを鞘が遮った。
花叢より鞘を蹴り上げた蔵乃祐は、彼女が吃驚に手を留めた弾指の間に冴刃を振り被って――、
「發吒!!!」
『――ッ、ッッ!!』
八相の構えから繰り出る【鷹蝙剣阿陀呂】(オウヘンケンアタロ)は、怒濤の斬撃に兎面を切り裂き、秘められたる素顔を血斑の染む花叢に沈めた。
成功
🔵🔵🔴
『きゃあああアアッッッ!!』
絶対無敵バリア、破れたり――!
鉄壁を誇ったカワイイ怪人『ラビットバニー』は、然し其を上回る猟兵の雄姿、溢れるエモに心乱され、バリアを維持すること叶わず花叢に倒れた。
彼女を受け止めた瞬間、足場に満つ花弁が一斉に舞い立ち、決戦を華やかに彩る。
血腥い死闘にあって、戦場は斯くも美しく――故に遣る瀬無い。
「――進もう」
短く言ち、沈黙の是が返る。
猟兵は未だ緊迫を保った儘、花咲き乱れる道を進んだ。