バトルオブフラワーズ⑩~怪しいウサギは尊さで殺せ!
●ラビットバニーを倒せ!
システム・フラワーズの中枢へ向けて、猟兵たちの進撃は続いていた。
「猟兵の皆様の活躍により、ドン・フリーダムへの道を守る敵幹部怪人の1体を撃破することに成功いたしました」
白金・伶奈(プラチナの先導者・f05249)はグリモアベースにいる猟兵たちに告げる。
「しかしながら、倒したのはまだ最初の敵に過ぎません。この先にはさらなる強敵が待ち受けています」
そして、彼女は第2の幹部について猟兵たちへと語り始めた。
「中枢への道を守る次の敵は、カワイイ怪人『ラビットバニー』です」
同じく花が咲き乱れる空間に潜んでおり、花が集まってできる足場はすべてラビットバニーへ向かって伸びていく。
なんでも作り出せるような能力は持たないものの、彼女は彼女で厄介な力がある。
「ラビットバニーが使用するユーベルコードには、すべて『絶対無敵バリア』が付随しています」
このバリアはユーベルコードによるものを含めてあらゆる攻撃を無効化する。
「これを無効化しない限り、いかなるユーベルコードを使用しても一方的に敗北することになります……が、このバリアがあっても彼女はけっして無敵ではありません」
強力なバリアである分、制限も厳しいのか、ラビットバニーの精神集中が乱れるとバリアは解除されてしまうのだ。
「具体的には『エモい』……つまり、何らかの意味で感情を大きく動かされるものや出来事を見たとき、彼女の精神集中はバリアを維持できないほどに乱れます」
基本的に沸点は低い。SNSとかで軽く流行るくらいのなにかを見ればだいたい乱れる。
「バリアさえ解除すればあとはもう敵ではありません……と、言いたいところですが、バリアがなくてもラビットバニーは並のオブリビオンより強いので、その後の戦いについても考えておいてください」
ちなみに、ユーベルコードの効果も、バリア以外は動揺しても解除されない。
やるべきことは、だいたい3つの段階に分けられる。
絶対無敵バリアを無効化するための『エモい』表現を見せること。
自分の動きに合わせたラビットバニーの攻撃を防ぐ手段を考えておくこと。
そして、ラビットバニーにダメージを与えること。
「エモいことばかり重視していると、その後の戦いで有効なダメージを与えられないまま倒されてしまうこともあるでしょう」
いや、戦術も十分に考えていないと、むしろ負けてしまう可能性が高いかもしれない。
理不尽な能力を持っている上、さらに地力でも猟兵を上回るのが幹部級の実力ということだ。
「ただし、ラビットバニーの動揺が大きければ大きいほど、その後の戦いにも影響があるのも間違いありません。より強くエモさを感じさせるのも戦術の一部と言ってもいいでしょう」
揺さぶられた感情は、バリアが消えたあとも揺さぶられたままなのだ。
ラビットバニーがバリアと共に使うユーベルコードは3種。
パワーで対抗しようとする者に使ってくる赤べこキャノンは、攻撃力、命中率、攻撃速度のいずれかを相手に合わせて強化できる。
素早い戦いかたをする相手には、スピードと反応速度を爆発的に増大させるウサちゃんカンフーモードで対応してくる。
そして、知性を生かして戦う場合は、システム・フラワーズ操作ビームを放って、咲き乱れる花の足場を自在に操って目論見を崩そうとしてくる。
繰り返しになるが、バリアへの対抗策だけでなく、これらへの対処も考えておくべきだろう。
「エイプモンキーと戦った方は同じような説明をお聞きになっていると思いますが、ラビットバニーもまた、一度撃破してもすぐに再びエリア内のどこかへ骸の海から蘇ってきます」
しかしながら、短時間にその能力を超える回数撃破することができれば、完全に滅ぼすことができるのもエイプモンキーと同様だ。
伶奈が予知した地点の近くに復活してくるのはそのうちの一回でしかないが、その一回一回を積み重ねていくのが重要となる。
「ドン・フリーダムへの道のりは確実に一歩前進しました。このまま、勝利へ向かって突き進みましょう」
キマイラフューチャーの住人たちを破滅から守れるのは、猟兵たちだけなのだ。
そう言って、伶奈は頭を下げた。
青葉桂都
おはようございます、青葉桂都(あおば・けいと)です。
今回は怪人軍団の幹部、カワイイ怪人『ラビットバニー』を撃破していただきます。
●シナリオについて
このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「バトルオブフラワーズ」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
このシナリオの戦場は『⑩カワイイ怪人『ラビットバニー』』になります。
●先制攻撃について
ラビットバニーは必ず、猟兵に先制して『絶対無敵バリアを展開するユーベルコード(POW、SPD、WIZ)』を使ってきます。
絶対無敵バリアは本当に絶対無敵で、あらゆる攻撃を無効化しますが、「ラビットバニーがエモい物を目撃する」と、精神集中が乱れてバリアが消滅します。
ラビットバニーのエモい基準はかなりユルいので、バリアの解除は比較的容易と思われますが、バリアなしでも彼女は相当の実力者です。
●ラビットバニーの撃破について
青丸が規定以上たまれば、シナリオが成功になり、ラビットバニーを撃破できます。
ただし、この戦場の戦力が残っている限り、ラビットバニーは即座に花が咲き乱れるエリア内の別地点に復活します。
失敗に終わった場合も、態勢を立て直すために別の地点に移動するので、もうこのシナリオで予知された地点に敵は出ないとお考えください。
それでは、ご参加いただければ幸いです。
どうぞよろしくお願いいたします。
第1章 ボス戦
『カワイイ怪人『ラビットバニー』』
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POW : 赤べこキャノン
【絶対無敵バリア展開後、赤べこキャノン】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD : うさちゃんカンフー
【絶対無敵バリア展開後、兎面の目が光る】事で【うさちゃんカンフーモード】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ : おはなハッキング
【絶対無敵バリア展開後、両手の指先】から【システム・フラワーズ制御ビーム】を放ち、【花の足場を自在に操作する事】により対象の動きを一時的に封じる。
イラスト:和狸56
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
芦屋・晴久
カザミ・カナ(f17237)と連携
この足場は厄介ですね
カザミ君、ここは貴女に頑張って頂きましょう
先ずはバリアですが、相手の感情を揺さぶり維持を解く
同時にカザミ君を強化し、兎に手を届かせましょう
四神創奏、この地の生命の力を活性化させカザミ君に気の流れ、力を集めます。
同時に彼女の感情を揺さぶる見世物、この花達を活性化させて“成長”を促します
今持てる力を生命の息吹として注ぎ込んだ花達は絢爛に育ち、花弁を舞わせ、種子を飛ばす
足場を動かすというのならば、それをも阻害するまでです
見なさい魅てください、命が輝くこの瞬間を。
そして膝をつきなさい、この世界の気の力を取り込んだカザミ君の力、易々とは防げませんよ。
カザミ・カナ
芦屋・晴久(f00321)と連携
さっすが、晴久ね。お花が咲き乱れるのを見てると、私もちょっと感動しちゃうもん。
ちょっと嫌なことがあってもさ、もー少しこの世界に寄り添ってあげてもいーかなって思えるものね。
私も負けてらんないわね。
“邪な風よ、吹き荒べ”
晴久のおかげで存分に振るえるこの力で、眠ってもらうわ。あわよくば永遠に、ね。
これは私の権能のひとつ、ひとに病をもたらすもの。
これのおかげで散々嫌われたし、憎まれもしたわ。
お医者さまに強化してもらってこの力を振るうってのも因果なものだけど……ま、これで世界が救えるってんなら、それはそれでいーかな。
言ってて私もウルッときちゃった。どう?効いた?効いた?
●神風と咲き誇る花
花咲き乱れる空間を、猟兵たちは移動していた。
足場の先に、隠れようとしても隠れられない大きな胸と怪しい被り物のようなウサギの頭部が見えてくる。
「いました。あれがラビットバニーですね」
中折帽を軽く押さえながら、芦屋・晴久(謎に包まれた怪しき医師・f00321)はサングラス越しに敵を見る。
「あんな姿でも、強敵なのよね。油断せずにいきましょう、晴久」
応じたのは、二十歳前後くらいに見える女性だった。
1つの身体に2柱の神の力を宿したカザミ・カナ(ダメ風神と毒舌雷神・f17237)は、晴久と並んで前進していく。
静かに進む晴久と、跳ぶように進むカザミの姿に、ラビットバニーが気づいたようだった。
「2人がかりってわけ? 何人来たってあーしの絶対無敵バリアには通じないし!」
ラビットバニーが接近してくる晴久とカザミへ言った。
「言われるまでもなく、わかっていますよ。それに、この足場も厄介ですね」
晴久はいつも持っている鉄扇を閉じて、ラビットバニーへと向けた。
「カザミ君、ここは貴女に頑張って頂きましょう」
「そうね。こう見えても神様だし、信じてくれたら救われるかもね」
敵から目を離さずに言葉を交わすと、2人は行動を開始する。
まず、動いたのは晴久だ。
「其は四神の陰堕とし奉る共振の言霊」
青年の前に光が現れ、陰陽が絡み合う太極図が描き出される。
「無駄だし!」
ラビットバニーは即座に絶対無敵バリアを展開。けれど、晴久のユーベルコードは敵を直接狙うものではない。
バリアよりも問題なのは、花の足場が動き出したことだ。
カザミが一歩前進する。
彼女に晴久はこの地の気を集めた。
システム・フラワーズの花がなんなのかは不明だが、少なくとも花が咲いているならば、そこには生命力があるということだ。
それを活性化させて、カザミへと集めていく。
いや、晴久の狙いはそれだけではなかった。
活性化した生命の力を利用して、花そのものにも成長を促したのだ。
ただの足場にすぎない花は力強く芽吹き、その花弁を広げていく。
ラビットバニーがハッキングによって花の足場を操ろうとする。
オブリビオンの操作で絢爛に育った花の花弁が舞う。
けれど、それは花の終演ではない。
「見なさい魅てください、命が輝くこの瞬間を」
花は種子をつけ、また広がっていく。
足場の動きが止まった。
「これが花の、命の輝き……こんなすぐそばにも感動が広がってたなんて知らなかったじゃん……」
ラビットバニーの身体が、大きな胸が、感動にうち震えて揺れていた。
展開した絶対無敵バリアはすでに力を失っていた。
「さっすが、晴久ね。お花が咲き乱れるのを見てると、私もちょっと感動しちゃうもん」
呟きながら、カザミはすぐさま動いていた。
「ちょっと嫌なことがあってもさ、もー少しこの世界に寄り添ってあげてもいーかなって思えるものね」
花に見いっているラビットバニーへ向けてカザミは先程以上に軽やかに駆ける。
「膝をつきなさい、この世界の気の力を取り込んだカザミ君の力、易々とは防げませんよ」
「ええ、私も負けてらんないわね」
カザミは指先を敵へと突きつける。
“邪な風よ、吹き荒べ”
濁ったような、嫌な気配をまとわせた風が吹いた。風神の一柱たる彼女の呪いがラビットバニーへと襲いかかっていく。
「晴久のおかげで存分に振るえるこの力で、眠ってもらうわ。あわよくば永遠に、ね」
「や、やらせないって!」
ラビットバニーは改めてバリアをはろうとしたようだった。
だが、2人の連携はその速度を上回った。
あらかじめ連携すると決めていなければ、おそらく防がれていただろう。それに、晴久が支援に徹していなければラビットバニーの攻撃への警戒度はもっと上がっていて、やはり間に合わなかったはずだ。
ラビットバニーが咳き込んだ。
絶対無敵バリアがはられるより一瞬早く、呪いは敵へと届いていたのだ。
「これは私の権能のひとつ、ひとに病をもたらすもの。これのおかげで散々嫌われたし、憎まれもしたわ」
遅れて展開されたバリアの前まで接近し、カザミが語った。
「お医者さまに強化してもらってこの力を振るうってのも因果なものだけど……ま、これで世界が救えるってんなら、それはそれでいーかな」
口の端が自然と、微かに上がる。
ラビットバニーがカザミの表情を見上げてきた。
それから、カザミは大きく口を開けて笑った。
「言ってて私もウルッときちゃった。どう? 効いた? 効いた?」
バリアが再び消え去った。
作り物めいたウサギの目から、滂沱と涙が流れている。
「ヤバい……ヤバいよ、それ……そんなエモいこと聞いたら……。うう、ゲホッ、ゴホッ……」
病魔の呪いで激しく咳き込み、動けぬままのラビットバニーだが、その涙はけっして身体の不調によるものではないようだった。
地脈によって強化された力を込めて、カザミは時空を揺るがす魔力を秘めた杖をオブリビオンに叩きつける。
しばし後、どうにか身体の不調から立ち直ったラビットバニーはようやく花の足場を操って晴久とカザミを止めたが、すでに彼女は少なからずダメージを受けていた。
そして、距離を取ろうとするオブリビオンに、他の猟兵たちもすでに接近してきていた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
エルシー・ナイン
エモい行動ですか……
「なら、こんなのはどうでしょう」
と言いつつ、首を外して腕で抱えてみます。
ウォーマシンですので、このくらいのことでは死にません。むしろ首がもげるくらいよくあることです。この世界では珍しいかもしれませんけど。
バリアが解除されたら、速攻で首を戻しつつ、赤べこキャノンの攻撃を【見切り】、【残像】を残すほどの速度で全力回避です。どうしてもかわしきれない場合は【覚悟】を決めて【オーラ防御】で耐えきって見せます。
赤べこキャノンさえなんとかできれば、後は全火力を叩き込むのみ。
【LC式全武装一斉射撃】で【誘導弾】を【一斉発射】です!
出し惜しみはせずに最強・全力の一撃に賭けます。
フェルト・ユメノアール
レディースエーンジェントルメン!
さあ、楽しいショーの始まりだよ!現れろ!【SPミラーマジシャン】!
取り出したるはこちらの短剣
種も仕掛けもございません
口上を述べて『パフォーマンス』マジックのように袖口から『トリックスター』を取り出し、そのままジャグリング
落ちてきたモノを『投擲』して攻撃する
反応が良くても、予想外の行動には一瞬対応が遅れるはず
投擲攻撃で敵の目を慣らして、攻撃の為に接近するその一瞬を狙う
顔前で『ハートロッド』を鳩に戻し敵を攪乱、さらに『ワンダースモーク』を破裂させ視界を閉ざす
そしてこの瞬間、ミラーマジシャンの効果発動!
作り出した鏡による虚像で敵を惑わし『カウンター』の一撃を決めるよ!
●種も仕掛けもなさすぎる
「レディースエーンジェントルメン!」
花咲き乱れる空間に、道化師の声が高らかに響いた。
片頬にハート、片頬に涙のペイントをほどこした少女は、フェルト・ユメノアール(夢と笑顔の道化師・f04735)だった。
「いや、あーしはマジックとか見てるヒマないんすけど!」
そう言いながらも、ラビットバニーの目は確実にフェルトへと惹きつけられていた。
「さあ、楽しいショーの始まりだよ! 現れろ! 【SPミラーマジシャン】!」
「……ってマジックじゃなくてユーベルコードじゃん!」
ラビットバニーがあわてて絶対無敵バリアをはった。
さらに兎面の目が光り、ウサちゃんカンフーモードへと変化する。
けれども道化師の少女は笑顔でショーを続けた。
「取り出したるはこちらの短剣。種も仕掛けもございません」
流れるような動きで袖口から取り出したのは、派手な装飾が施された投擲用の短剣。
『トリックスター』と名のついたその短剣は、武器としても使えるが、もちろんショーにも使用可能だ。
まるで短剣が宙を踊っているかのような、華麗なジャグリング。
「サーカスってなんだか不思議な空間だよね……不気味なのになんか目が離せないっつーか……」
ため息を吐くように言葉を吐き出したとき、すでにラビットバニーの前に展開していた絶対無敵バリアは消失していた。
「隙あり!」
その瞬間、フェルトは落ちてきた短剣を手首の向きを変えるだけでオブリビオンへと投げつけていた。
ラビットバニーは投擲攻撃をかわそうとするが、間に合うタイミングではない。
むき出しになった肌に刃が突き刺さった。
さらに連続してフェルトは短剣を投げ続たが、さすがは実力者というべきかすり足で花の上を移動して敵は回避してみせる。
いや、そればかりかラビットバニーは受け止めた短剣をフェルトへと投げ返してきた。
道化師の衣装にも短剣が突き刺さり、少女が短く悲鳴を上げる。
オブリビオンは地面を蹴るようにして接近しようとした。
「やらせませんよ!」
だがその進路を大柄な少女が塞ぐ。
人間の少女をそのまま大きくしたような姿のウォーマシン、エルシー・ナイン(微笑の破壊兵器・f04299)だった。
薄型のスーツを身に着けた彼女の腰に装着されたミサイルポッドがラビットバニーへと向けられている。
「やべっ!」
とっさに停止したオブリビオンが再びバリアを展開しながら、背中に担いでいた赤べこキャノンをエルシーへと向けてきた。
(「エモい行動をすればいいのですよね……」)
しかし、その脅威を前にエルシーがとった行動は意外なものだった。
「なら、こんなのはどうでしょう」
両手で頭を持ち上げるようにしたかと思うと、首を外して腰に抱えて見せたのだ。
機械生命体であるウォーマシンならではの、体を張った一発芸だった。
「首がもげるくらいよくあることです。この世界では珍しいかもしれませんけど」
「えええーっ! なにそれ! マジびびったんですけど!」
驚愕の声とともにバリアが再び消えた。
すぐさま首を戻している間に、ラビットバニーも赤べこキャノンを構えなおしていた。
容赦なく放たれる砲撃を見切ろうとするが、オブリビオンの攻撃はエルシーの動きをさらに上回った。
残像を残しながら移動するその先を確実に狙ってみせたのだ。
「とどめだっつーの!」
「そっちも、やらせないよ!」
さらにエルシーへと砲撃を叩き込もうとした敵を、今度はフェルトが止めた。
ステッキへ姿を変えていた白いハト型使い魔が、敵の眼前で元の姿に戻る。
横に回転してハトをかわしながら、後ろ回し蹴りが少女を狙う。
花の足場に蹴り倒されながらも派手な色の煙が敵の視界を閉ざしていた。
「……見えてるっつーの!」
オブリビオンは煙の中、かすかに見えるフェルトの姿をとらえる。
――とらえたと、考えるところまでがフェルトのショーの一部だった。
鏡が割れる派手な音が戦場に響く。
彼女のユーベルコード、SPミラーマジシャンによって生み出された鏡に騙されたオブリビオンはさすがに驚いた様子だった。
ハトに似た使い魔が襲いかかり、煙越しに投げた短剣が突き刺さる。
そして、ラビットバニーが飛び退いたところにウォーマシンが待ち構えていた。
「強力な攻撃でしたが覚悟を決めれば一発くらいは耐えられます!」
赤べこキャノンを受けた彼女は傷ついていたものの、その両手にはしっかり大型熱線銃と携行型ガトリングガンを構えていた。
「マルチプルミサイル、ロック解除。ブラスター、ガトリング照準セット。対象を完膚なきまでに殲滅します。オールウエポン、フルファイア!」
腰のミサイルと両手の火器が、一気にラビットバニーへ襲いかかる。
「こ、こいつらなんであーしの弱点的確についてくんのさ! あーしの絶対無敵バリアがぜんぜん通じないなんておかしくね?」
降り注いだエルシーの全力の一撃を浴びて、泣き言を言いながらもラビットバニーはまだ立っていた。
まだ戦闘能力は十分に残っているらしい。
とはいえ、オブリビオンがだいぶ追い詰められていることは、明らかだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ルベル・ノウフィル
早業
彩花を念動力で周囲に浮かせ、理不尽な世界へ反抗する死霊を舞わせ、死者の書を読む
僕が謳うは死者の悲劇、無念、未来閉ざされ未練に縛られし者たちの感情
敵の攻撃はオーラ防御で致命傷を防ぎつつもわざと受ける
夕闇翻せば光打ち消しそこだけ夜のように
亡夜が刻まれれば少し悲しい
痛悼の共鳴鏡刃は僕の傷に歓喜し鋭さを増す
身の傷心の傷を殺傷力に変えて敵に投げれば反撃の狼煙となる
彩花を敵に向かわせ、世界に反抗する死霊を導きを得て僕は捨て身で墨染を叩き込む
僕はソロでございますが
世界には絶望と悲嘆が満ちています
嘆く死霊が溢れています
彼らの感情が僕に力を与えてくれます
彼らが貴女の感情を動かす
僕の全力を彼らに捧げましょう
●死者の詩
花の足場を静かに進み出たのは、ルベル・ノウフィル(星守の杖・f05873)だった。
人狼の青年の手にあった札が浮き上がる。
死者の無念や怨念が込められた、彼の手製の札だ。
札に込められた怨霊が浮かび上がり、宙に舞う。
「これ以上はやらせねーし!」
ラビットバニーはバリアをはり、赤べこキャノンを構えた。
けれど、砲口を向けられてもルベルは慌てる様子を見せなかった。ただ、手書きの書を静かに広げる。
「僕が謳うは死者の悲劇、無念、未来閉ざされ未練に縛られし者たちの感情」
「えっ!」
語ったその言葉を、ラビットバニーは思わず聞こうとしたが、被り物を左右に振ってキャノンを放つ。
強力な砲撃はルベルの体へ命中し、衝撃が彼の体を痛烈に引き裂く。
ただ、オーラによる守りが、致命傷をどうにか防いでいた。
「僕はソロでございますが、世界には絶望と悲嘆が満ちています。嘆く死霊が溢れています。彼らの感情が僕に力を与えてくれます。彼らが貴女の感情を動かす。僕の全力を彼らに捧げましょう」
夕闇のマントをひるがえし、傷を負った亡夜の衣装を覗かせる。
持ち主の負った傷に、懐に忍ばせた短刀が歓喜の叫びをあげた。
花咲き乱れる空間で微かに現れた闇の中、ルベルは書に刻まれたオブリビオンに殺された人々の記憶を読み上げる。
札より現れた死者の舞が、ルベルの語りにえもいわれぬ迫力を与える。
「や、ヤバい……この儚さ、ツボに入りそう……」
ラビットバニーが身もだえた。
反撃の狼煙とばかりに壊刀を投げると、バリアが砕け散った。
札が敵へと接近する。
血風を撒き散らした少年が、闇をなびかせそれを追う。
走りながら抜くのは墨染の刀。
冷たくも哀しい妖気を纏いし黒刀。
念動力で浮かせた札がラビットバニーに傷を刻み、その傷めがけて少年は捨て身の刃を突き立てる。
「やらせねーし!」
あえて受けた傷が微かに少年の足を鈍らせた。
妖刀が刺さった場所は、逃れようとした敵の脚だった。
それでも大威力の一閃はおびただしい血を敵に流させたが、まだ致命傷ではない。
赤べこキャノンがルベルに再び命中し、今度こそ敵を排除してラビットバニーは後退し始める……が、その動きは見るからに遅かった。
苦戦
🔵🔴🔴
アンネリーゼ・ディンドルフ
【SPD】
アンネリーゼは今日もおいしいオブリビオン料理を求め依頼を受ける
「ラビットバニーですか。兎料理……」
お腹がぐーぐー鳴っている
「スピード勝負なら負けませんよ」
UC発動
「エルフでグールの私の寿命とあなたの寿命、どちらが早く尽きるのでしょう?」
ラビットバニーの攻撃を【ダンス】のように回避する
「エモいと感じてくれるまで踊り続けますよ~」
バリアが解けたら高速に動き回りつつ【早業/2回攻撃】で宛ら弾幕系シューティングゲームのように矢を連射し、芸術的圧倒的物量でラビットバニーを仕留めようと試みる
「兎料理、ぜひ食べてみたいですね」
お腹がぐーぐー鳴っている
●お腹をすかせた狩人
ぐぅ、と音が鳴った。
傷だらけのラビットバニーの前に、また1人猟兵が現れる。
「ラビットバニーですか。兎料理……」
美しきエルフ、アンネリーゼ・ディンドルフ(オブリビオン料理研究所の団長・f15093)からは、ひっきりなしにお腹の音が聞こえてきていた。
グールドライバーである彼女は、今日も美味しいオブリビオン料理を求めて花咲き乱れる空間を走り回っていた。
「はっ? あーしは食いもんじゃねーんですけどー!」
かなり真剣に危機感を覚えた様子でラビットバニーが叫ぶ。
被り物の下では、いったいどんな表情をしているのか。
アンネリーゼが足場を蹴った。
空腹を速度に転化させて、彼女は高速でオブリビオンに迫る。
だが、ラビットバニーもすでに絶対無敵バリアを展開していた。というか、駆け出す前にもう展開していた。誰だって食われたくはないだろう。
「スピード勝負なら負けませんよ」
ウサちゃんカンフーモードに変化したラビットバニーに向けて槍を繰り出すが、もちろんそれはバリアに阻まれる。
高速で敵の反撃が迫るが、同じく超反応速度を得たアンネリーゼはギリギリのところでその拳をすり抜けた。
「今の動き……」
「ええ。寿命が尽きるまで踊らせていただきます。エルフでグールの私の寿命とあなたの寿命、どちらが早く尽きるのでしょう?」
同じタイプの能力ならば、ラビットバニーのほうが強い。
けれど、高速の動きでアンネリーゼはどうにかリズミカルな動きで致命打を避けていく。
リズムに合わせられたならたやすく当てられていたかもしれないが、しかし傷だらけのオブリビオンにはそれだけの対応力が残っていないようだった。
「エモいと感じてくれるまで踊り続けますよ~」
「傷だらけのダンス……?」
呟き、ラビットバニーが頭を左右に激しく振る。
「だ、ダメっしょ! なんか聞くだけでエモそうなそんな踊り、見せられるわけにはいかないし!」
否定しながらさらにカンフーの技を繰り出すが、それはもはや自らを追い詰める死の舞踏に他ならない。
かわしきれず、傷を負いながら、それでも踊るアンネリーゼの前に、ついにバリアは破られた。
高速で逃走しようとするラビットバニーに、エルフもまた高速で弓としても使えるハープを構える。
無数の矢が一瞬にして放たれた。それはあたかも矢が描き出す絵画のごとく、ラビットバニーに突き刺さっていく。
「兎料理、ぜひ食べてみたいですね」
圧倒的物量によって貫かれながらも逃亡を試みるオブリビオンを、お腹を高らかに鳴らしながらアンネリーゼは追っていく。
他の猟兵たちも追い付いてきて攻撃をしかけ、もはやラビットバニーが息絶えるのは時間の問題だった。
成功
🔵🔵🔴
アヤネ・ラグランジェ
カワイイ、かな?
物事の価値観なんて一概には言えないネ
じゃあ、僕なりにがんばってみよう
手紙を封筒から取り出し、読み上げる
Dearソヨゴ
君に告げていない言葉を綴るよ
宝探しの招待状の世界で
君はお菓子を欲しがっていたけど
僕が探していたのは最初から貴石だった
緑と橙の色のどちらを君に渡そうか
実はあの時ぐるぐる考えてしまってたんだ
緑を渡した勇気をどうか褒めて欲しい
ペンダントすごく似合っているネ
読み終えた手紙を破り捨てる
言葉は届かなくていい
気持ちだけ、届け
UDC形式名称【ウロボロス】術式起動
ウロボロスの大鎌を手に
身につけたペンダントにそっと触れ
今は離れているけど
きっと大丈夫
僕は勝つよ
●エモさの許容限界を超えたとき
ラビットバニーにとっては、咲き乱れる花を踏みしめるその音はどう聞こえていたのか。
「そろそろ本気でヤバいし……今日だけでもう、エモさが限界突破しちゃってるっつーの……」
傷だらけのオブリビオンは、それでも猟兵たちを超える運動能力を発揮して、一度は逃げて見せた。
けれど、この空間を守る幹部である彼女のところには、どこまでも猟兵が追ってくる。
全身に傷を負いながらもまだ立っているラビットバニーを見て、アヤネ・ラグランジェ(颱風・f00432)は小首をかしげた。
「まだ来てるし! けど、エモいことさえされなきゃ、この傷でも何人来たってあーしには勝てないし!」
フラグを立てているとしか思えない言葉をオブリビオンは発する。
そんな彼女をアヤネは静かに観察していた。
「カワイイ、かな? 物事の価値観なんて一概には言えないネ。じゃあ、僕なりにがんばってみよう」
取り出したのは武器……ではなく、封筒に入った手紙だった。
ラビットバニーの額に縦線が入ったのが、見るものによっては見えただろう。
展開される絶対無敵バリア。ハッキングを試み、花の足場を操ってラビットバニーはアヤネを排除しようとするが、しかし手紙を読み上げることを阻止することなどできはしない。
「――Dearソヨゴ」
それは、ここにいない誰かへの手紙だった。
君に告げていない言葉を綴るよ
宝探しの招待状の世界で
君はお菓子を欲しがっていたけど
僕が探していたのは最初から貴石だった
緑と橙の色のどちらを君に渡そうか
実はあの時ぐるぐる考えてしまってたんだ
緑を渡した勇気をどうか褒めて欲しい
ペンダントすごく似合っているネ
静かに語られる言葉。
飛び級を繰り返し、友人らしい友人がいないというアヤネの事情をラビットバニーはもちろん知らないだろう。
けれど、そんなアヤネが言葉を伝えたいと思う、その感情は……読み上げる言葉から、感じ取ってしまった。
ラビットバニーが胸を押さえる。
「だ、ダメ……もう、エモさは今日は限界なんだっつーの!」
けれど、沸き上がる感情を押さえることなどできはしない。
アヤネが手紙を破り捨てたのを見て、ラビットバニーは感極まったように叫んだ。
(「言葉は届かなくていい。気持ちだけ、届け」)
体内からウロボロスの大鎌を取り出す。
橙色のペンダント、ファイアオパールのお守りにそっと手を触れる。
「今は離れているけど、きっと大丈夫。僕は勝つよ」
そして、彼女は静かに詠唱の言葉を発する。
「UDC形式名称【ウロボロス】術式起動。かの者の自由を奪え」
影から現れた、蛇に似た異界の触手がラビットバニーに絡みつき、拘束していく。
「待――!」
叫びは断末魔へと変わった。
思いを胸に振り下ろした大鎌は拘束したオブリビオンを容赦なく断つ。
そしてまた一度、ラビットバニーは骸の海に還っていった。
成功
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