バトルオブフラワーズ⑩〜エモーショナル・エモーション
●emotional emotion
「第二の関門は、カワイイ怪人『ラビットバニー』が守っているそうですのよ。うふふ、カワイイという言葉自体が可愛らしいと思いますわ」
ラティファ・サイード(まほろば・f12037)は上機嫌にころころと喉を震わせた。
されど、と続いて細めた金の双眸には剣呑な色が差す。
システム・フラワーズの内部の『咲き乱れる花々の足場』はラビットバニーに集中しており、彼女を倒さないと先に進めない。
「ラビットバニーは同時に一体しか存在いたしませんけれど、彼女は『絶対無敵バリア』に覆われておりますわ。ありとあらゆる攻撃が一切効きませぬ故ご注意くださいませ。ですがこのバリアは、ラビットバニーが『エモい』ものを目撃すると一時的に解除されます。……エモい、どんなものかしら。ご存知でいらっしゃいます?」
ラティファの説明曰く。ラビットバニーが『エモい』と感じる基準はかなり緩いらしい。端的に言えばガバガバらしい。
可愛さ、男らしさ、面白さ、逆境に立ち向かう様子、イケメンの壁ドン、顔を洗う猫など。
要するに『SNSで流行りそうなもの』はだいたいエモいと感じるらしい。
それをラビットバニーが目撃するとバリアが解除される。随分杜撰な最強能力ですのね、というラティファの口吻に容赦はない。
「ともあれそれを抜きにしても強敵であることは確かですわ。わたくし、皆々様がどのような『エモい』ものを携えて戦われるか楽しみですの。どうぞ後程教えてくださいましね」
だってそれって、とっても素敵ということでしょう?
ラティファはそんな風ににっこりと微笑んだという。
中川沙智
中川です。
エモいって言葉を結局あまり使えていない(意味を把握出来ていない)ポンコツとは中川のことです。
●プレイング受付期間について
今回はオープニング公開時より随時プレイング受付を開始します。
導入文の追記はありません。
●シナリオ構成について
第1章:ボス戦『カワイイ怪人『ラビットバニー』
以上の流れになっています。
詳しくは下記概要にお目通しください。エモい対策がなければ苦戦必至です。が、それにかまけて戦闘が疎かになるとそれはそれで苦戦すると思われますので、バランスを重視しつつどちらも全力でプレイングをかけて頂くことをお勧めします。
●プレイング採用について
今回はシナリオの性質上全部のプレイングを採用出来るとは限りません。
プレイングお返しする可能性も十分あります。ご理解の上ご参加くださいませ。
採用は先着順ではありません。
あとエモいものは千差万別、何でもありですが、公序良俗に反するものやエロ等は採用可能性が皆無です(※あくまで中川の場合です)。ご注意ください。
●同行者について
ご一緒する参加者様がいる場合、必ず「プレイング冒頭」に【相手のお名前】と【相手のID】を明記してくださいますようお願いします。
では、皆様のご参加を心からお待ちしております。
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ラビットバニーは必ず、猟兵に先制して『絶対無敵バリアを展開するユーベルコード(POW、SPD、WIZ)』を使ってきます。
絶対無敵バリアは本当に絶対無敵で、あらゆる攻撃を無効化しますが、「ラビットバニーがエモい物を目撃する」と、精神集中が乱れてバリアが消滅します。
ラビットバニーのエモい基準はかなりユルいので、バリアの解除は比較的容易と思われますが、バリアなしでも彼女は相当の実力者です。
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第1章 ボス戦
『カワイイ怪人『ラビットバニー』』
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POW : 赤べこキャノン
【絶対無敵バリア展開後、赤べこキャノン】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD : うさちゃんカンフー
【絶対無敵バリア展開後、兎面の目が光る】事で【うさちゃんカンフーモード】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ : おはなハッキング
【絶対無敵バリア展開後、両手の指先】から【システム・フラワーズ制御ビーム】を放ち、【花の足場を自在に操作する事】により対象の動きを一時的に封じる。
イラスト:和狸56
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
矢来・夕立
聞くところによればあなた、その特殊能力を無効化しても相当な手練とか。
まあそうでしょう。でなければ世界の敵にはなり得ない。
……そんなあなたに、オレひとりで立ち向かおうと言うんですよ。
一介の猟兵が、ただひとりで。
本気で来るといいですよ。オレも本気で行かせてもらいますから。
――――メガネを……外す。
コレは個人的にはノットエモですが、メガネキャラがメガネを外すってまあまあエモい絵面なはずです。
ついでに言うとオレは美少年です。言うだけならタダです。
ウサギだか赤ベコだかなんだか知りませんがそのハート、貰った。
すなわちいいねとかfavとかナイスとか心臓とかだ。
《暗殺》【神業・否無】。
…よし、エモい。いける。
●エモ眼鏡
「あーしに敵うわけなくない? いっちょやってこー!」
ラビットバニーの眼前に瞬く間に展開される光の盾。成程それが件の絶対無敵バリアか、と猟兵の誰もが納得するところ。
そして先制攻撃を穿ってくることも知っている。兎面の目が光る瞬間、ラビットバニーの姿が掻き消えた様を矢来・夕立(影・f14904)は確かにその目で見た。
瞬きの間に懐へ滑り込んできた兎面。単純な掌底ながら、爆発的に増加したスピードがその衝撃を跳ね上げる。
「これがうさちゃんカンフーモード……!」
夕立のブラッドレッドの瞳が眇められる。
即座に反撃に移ろうとするも、踏み止まる。今手を出しても効果はあるまいと冷静に判断を下す。
「聞くところによればあなた、その特殊能力を無効化しても相当な手練とか」
人差し指で示せば、ラビットバニーは当たり前じゃんとばかりに胸を張る。
まあそれも致し方ないこと。でなければ世界の敵にはなり得ない――なんて紡ぐ夕立の声はあくまで淡々と。
「……そんなあなたに、オレひとりで立ち向かおうと言うんですよ」
「ウッ」
ラビットバニーが胸を押さえている。1エモ目。
「一介の猟兵が、ただひとりで」
「ウッ」
ラビットバニーが呻き声を漏らす。2エモ目。
夕立が今さっき打撃を喰らった鳩尾を指先で辿る。
傲然と宣った。
「本気で来るといいですよ。オレも本気で行かせてもらいますから」
その刹那。
己がフレームレスの眼鏡に触れる。
ゆっくりと見せつけるように、外した。
「こっ、これは『美形眼鏡キャラが決意と共に眼鏡を外す宣戦布告』……!」
ラビットバニーが分かりやすく歓喜に肩を震わせた。3エモ目。
夕立個人としてはさして感慨も抱かぬが、その行為が一定層にクリティカルヒットすることを自覚していた。要は、結構エモい絵面だった。
しかも言うまでもなく夕立の面差しは大層端正だったので尚たちが悪い、もとい効果的だった。
「わかる~……眼鏡なしで正面ぶっこんで殴り合おうぜってことじゃん……エモ……」
ラビットバニーの前に存在していたはずの絶対無敵バリアがあからさまに剥がれていた。
当然、それを見過ごす夕立ではない。
「ウサギだか赤ベコだかなんだか知りませんがそのハート、貰った」
すなわちいいねとかfavとかナイスとか心臓とかだ。
鋭く踏み込む。
匂に朱が射す脇差を一閃。
「……よし、エモい。いける」
死角から抉りにかかる一撃は、ラビットバニーの脇腹をしたたかに打ち据えた。
成功
🔵🔵🔴
胡・翠蘭
エモいとは…何でしょう、難しい言葉と言いますか感覚と言いますか…
兎も角、やってみましょう
ガジェットショータイムで50型くらいの液晶画面のガジェットに変形させ、その画面に…プライド高そうな美しい猫が、飼い主に撫でられた途端仔猫のように愛らしく従順になる姿や、…そういった飼い主にだけデレるクールで美しい猫――の姿を集めた動画を再生し見せて差し上げましょう
この猫はわたくしの妓楼で長く飼っている子ですが、飼い主以外ですと素っ気ない子で…ふふ、可愛らしいと思いつい動画を作ってしまいましたの
…敵のお眼鏡にかなうかは分かりませんが…
バリアが解けたなら、映像は再生したまま鋼糸や記憶消去銃で攻撃致しましょうか
●エモ猫
「ちっ、ちげーかんね! ちょっと油断しただけだし! だけだし!」
一撃を叩きこまれてもラビットバニーは意に介した様子はない。これは強敵ですね、そう囁いて胡・翠蘭(鏡花水月・f00676)は金と緑の双眸を細める。
「あーしの実力思い知れっ!!」
兎面の目が怪しく光る。言ったが早いかラビットバニーが地を蹴った。
「!」
文字通りその姿を追うことが出来ぬ。
凄まじいスピードに翠蘭が僅かに息を呑んだ瞬間、鋭い蹴撃が放たれた。衝撃に構える間もない。乾いた空気が喉から零れる。
しかし目は逸らさない。リボルバー模す夢を手繰りながら、冷静に戦況を分析する。
まずは再びラビットバニーの眼前に現出した絶対無敵バリアを打破せねばならない。
そのためには。
「エモいとは……何でしょう、難しい言葉と言いますか感覚と言いますか……」
疑問に思えどやるしかない。意を決した翠蘭は短く呟く。
「兎も角、やってみましょう」
すらりと伸びた繊手の先、ガジェットが瞬く間に展開していく。恐らく50型くらいだろうか、液晶画面が作り出された。
電源が入り、画面に映されたその光景は。
「やだエモ――――い!!」
両手を兎面に添えたラビットバニー、大歓喜。
液晶の舞台に姿を現したのは、猫だった。高貴な面差しをしたプライドの高そうな子であった。毛並みのみならずその整った見目は麗しいとしか言えない。
それがどうだ。お澄まし顔をしたその猫が、飼い主らしき手に撫でられた途端、ぷるりと身を震わせる。
特別よ、あなたにだけよと言わんばかりに愛らしく瞳を瞬かせ、いとけない仔猫のように従順に尻尾を振って見せた。
「これクーデレってやつ? 美人猫のデレは……正義……」
ラビットバニーがしっかりと画面に見入っている。
次々と場面が移り変わる。どれもが動画であり、玄関口に迎えに出る姿、猫じゃらしに飛びつく姿、膝の上でうとうとと微睡む姿。そのどれにも飼い主たる翠蘭が映り込んでいて、彼女の前でだけ甘えた様子を見せていることは明白だった。
「この猫はわたくしの妓楼で長く飼っている子ですが、飼い主以外ですと素っ気ない子で……ふふ、可愛らしいと思いつい動画を作ってしまいましたの」
お眼鏡にかなうかは分かりませんが、翠蘭はそう控えめに告げたけれど、明らかにラビットバニーのバリアが薄くなって消失していくのがわかる。
ならば、話は早い。
「ふふ、どうぞ耽溺してくださいませ」
銃口が真直ぐに据えられる。
弾丸がラビットバニーを穿つ間も、画面では美しい猫が戯れて続けている。
成功
🔵🔵🔴
戒道・蔵乃祐
◆バリア無力化
キマイラフューチャーが1度滅び、今の姿に新生した事実
貴女達が拠り所とする大義は
世界を滅ぼした旧種と同じ過ちを繰り返さない為の、決意と信念
ですが輝かしき理想は妄念、妄執へと堕した
理想世界実現を求め人々を滅ぼすのは
嘗ての旧種と何ら変わりない所業
貴女達の過ちを、今度は僕の拳が止めてみせる!
◆
赤べこキャノンの射線を戦闘知識で見切り、フォースオーラを纏った掌でオーラ防御、武器受け
踏みつけで大地に脚を食い込ませて砲撃を堪え
大連珠に括り付けた酒甕を飲酒してドランクマスタリーを発動
酩酊状態と激痛耐性による、負傷を厭わないダッシュとジャンプで吶喊
至近距離から崩拳を穿ち、怪力でバニーを吹き飛ばします
●エモ漢
戒道・蔵乃祐(荒法師・f09466)の佇まいはまさに威風堂々。
実力差故に必ず先手を打ってくるラビットバニーにも、臆した様子は決して見せない。ただしそれは相手も同じこと。
「そんないかつい顔したってあーしが怯むわけないじゃん!」
絶対無敵バリアを張り巡らせ、ラビットバニーが据え構えるは赤べこキャノン。赤と言いつつ紫なのかと思う間もなく、真直ぐに光弾が放たれる。幾発も。
「……! 連射か」
射線を見切り、金剛の如き体躯に霊光を纏わせる。突き出した掌に霊光を集約させ、己を鋭く射抜かんとする攻撃を弾こうとした。
軋む。しかし腰を低くし、地に足を踏みしめる。強敵の名に恥じぬ砲撃を堪え切った。
「キマイラフューチャーが一度滅び、今の姿に新生した事実」
眼光は鋭く。
それは前口上に似ていた。芝居がかった言い回しで、しかし切々と語られる言葉はつい耳を傾けたくなる。
「貴女達が拠り所とする大義は、世界を滅ぼした旧種と同じ過ちを繰り返さない為の、決意と信念」
そこでラビットバニーがはたと気付いた。
口元に手を添え、ふるふると震えながら恍惚めいた吐息を漏らす。
「あっこれはもしや……『激戦の最中に敵へ理念を説く漢前』的なエモ……!?」
「ですが」
逆接は肯定の意。ひとつの珠が大人の頭ほどもありそうな大連珠を手繰り、それに括り付けた酒甕に指先をかけた。
「輝かしき理想は妄念、妄執へと堕した」
蔵乃祐の眼差しに淡く憂いが帯びた。
噛み締めるように視線を伏せる。この世界の成り立ちに、そして相手が何を望んで立ち上がったのかに確かな敬意を払っているのがわかる。
それを踏まえた上で前を見据える眼には、数多の戦場を駆け抜けてきた者特有の重い覚悟が滲んでいた。
「理想世界実現を求め人々を滅ぼすのは、嘗ての旧種と何ら変わりない所業」
カッと目を見開き、声を張り上げる。
その宣言は警鐘の如く。
「貴女達の過ちを、今度は僕の拳が止めてみせる!」
「漢の中の漢ってやつじゃんあーし知ってる~!!」
ラビットバニーがきゃーと兎面の目を覆う。そして絶対無敵バリアが見る間に薄らいでいくのがわかった。
蔵乃祐が無効化の隙を突かぬわけがない。
酒甕を傾け酒を喉に落とす。熱が身体を巡るのがわかる。
「酔えば、酔う、、程に、」
強くなる。
ゆらりと揺らめく闘気。先のキャノンで穿たれた掌の痛みをやり過ごし、蔵乃祐は地を蹴った。
傷を厭うて戦うことが出来るものか。そんな気概を迸らせて、高く高く跳躍する。更に半歩踏み込んで、一息。
「――――!!」
崩拳が唸る。殴るというより突き通すというのが正しいそれは、ラビットバニーを力づくで打ち崩した。
成功
🔵🔵🔴
アリス・フォーサイス
うわー、大きいー。
絶対無敵バリアの弱点はエモいものか。エモいはよくわからないけど、ぼくの得意分野かも。
アナロジーメタモルフォーゼでたくさんのかわいい猫を作ってラビットバニに向けてしかけるよ。
そして、ぼくは空飛ぶ猫に乗って地面から離れるよ。
ビームは見切って回避だ。避けたビームが地面にあたっても離れてるから動きを封じられることはないからね。
こちらからも猫の目からビームだ。じゃれてきた猫も無碍にできないだろうし。ついついかまっちゃうでしょ?そんな猫の目からビームがでてきたら避けられないでしょ?
●エモ猫その2
「うわー、大きいー」
何がとは言わない。
アリス・フォーサイス(好奇心豊かな情報妖精・f01022)は興味に双眸をきらめかせて、他の猟兵たちとラビットバニーの戦いを観察していた。
顎に手を当てて首を傾げ、思考を巡らせる。
「絶対無敵バリアを破ることを考えないとね。ラビットバニーの弱点はエモいものか。エモいはよくわからないけど、ぼくの得意分野かも」
為せる手立てはあるはずだ。不意に閃きが脳裏で瞬いた。
アリスは情報を分析し物質を転換していく。
「ぼくにかかれば、なんでも作れるよ」
次々と情報が現実のものとして顕現していく最中、アリスの視界の隅に入ったのは、絶対無敵バリアを展開したラビットバニーの姿だ。
「何やろうとしてんのかはともかく、こっちから行くよ!」
「――あ、」
その時アリスに理解が降ってくる。
あらかじめ説明された話を思い出したからだ。そう、ラビットバニーは必ず先手を打ってくるのだ。ラビットバニーが両手の指先を操れば、アリスは回避する間もなくシステム・フラワーズ制御ビームに射抜かれた。花の足場が段差を作る。花の蔓が足元を絡め捕り、身動きを封じられたことを知る。
「っ、だからってやられっぱなしじゃないよ」
地面から離れることはままならずとも、次手は費やせる。
無機物から構築されたのは、たくさんの猫たちだ。
それはもう凄まじい数の猫だまりだ。可愛い子、気高い子、美人猫、凛々しい子。みんなちがってみんないいってこのことだ。
「はっ……!! 猫天国とかエモすぎない!?」
ラビットバニーはそれはもう分かりやすく陥落した。
兎面の女の足元に猫がじゃれつく。面の奥の顔はきっと緩んでいるだろうと安易に想像出来る程度に、ラビットバニーは「かわうぃ~ね~」なんて声を発しながら喉を撫でている。平和だ。
当然、絶対無敵バリアは見事なまでに剥がれ始めている。
今だ。
抜け目なく好機を見据えたマリアが指を鳴らした。ラビットバニーにじゃれる猫の目には爛々とした光が宿る。
「甘えてくる猫なんて無碍にできないだろうし。ついついかまっちゃうでしょ? そんな猫の目からビームがでてきたら避けられないでしょ?」
ほら、こんな風に。
ラビットバニーの顎下目掛けて光線が迸るまで、あと僅か。
苦戦
🔵🔴🔴
銀座・みよし
えも…難しいですがやるしかないのでございます
まずメジェドさんぬいぐるみを用意いたします
これだけではパンチが弱い?
では次に冥府と楽園の王の下賜を使用し神様を呼ぶのでございます
植物の姿を借りた神様が…もういますよね、周りはお花で一杯ですもの
さぁ、条件は整いました
ここよりは冥土で楽園アアルにありしオシリスの館
これより行うは死者の書の再演と再現、是即ち
せーの、グリーンフィールド・パピルス!(例の壁画っぽいポーズの物真似
あと物真似するには足場が必要なので【地形の利用】をしながらやりますね
ウケたらジュース飲んでメジェドさんで攻撃にございます!
【封印を解き】メジェドさんビームを相手に放ちます
(アドリブOK!
●エモメジェド様
「まじやばくない!? でもこれであーしを倒そうなんて百年早い!」
何度でもめげずに絶対無敵バリアを張り直すその根性を評価したいところだ。
銀座・みよし(おやしきのみならいメイド・f00360)がお仕事熱心でございますねと感心している間にも、ラビットバニーの両手指からシステム・フラワーズ制御ビームが射出される。花の足場が目まぐるしく彩られていく。
地面が罅割れ、段差が生じる。身動きを封じる一連の動きにみよしは瞬く。その鮮やかさにいっそ感嘆の息を吐いた。
だが、やられるつもりなど毛頭ない。
そのためにもエモを提供せねばならない。
「えも……難しいですがやるしかないのでございます」
きりっと気丈に前を向く。えも。
そして背後に某三分クッキングの音楽が流れそうな佇まいで言葉を紡ぎ始めた。
「まずメジェドさんぬいぐるみを用意いたします」
おもむろに取り出されたのは、女主人たるマダムお手製であるメジェドさんぬいぐるみだ。
元々シュールな見目であることに加え、ホワイトブリムと赤いリボンを装備しているから存在感がすごい。
しかも眼力がやたらと強い。圧が凄い。鋭く目が光ったのは気のせいか。
思わず目が点になっている(しかし兎面で見えない)ラビットバニーを横目に、みよしは首を傾げてみせた。
「これだけではパンチが弱い? では次に神様を呼ぶのでございます」
塩胡椒で味を調えますと同じ声音で言う。
ユーベルコード『冥府と楽園の王の下賜』を展開し始めた。
「植物の姿を借りた神様が……もういますよね」
周りはお花で一杯ですもの――そのみよしの声に応えるように、にょっきり花が蠢いた。一見するとこれまた奇妙な絵面だが、ラビットバニーは「何かエコロジーでエコノミーなエモじゃない? 新境地じゃない?」とご満悦の様子。
「さぁ、条件は整いました。ここよりは冥土で楽園アアルにありしオシリスの館」
神妙な面持ちで諳んじる。
先程までコメディタッチだった空気が一気にシリアスの様相となる。
「これより行うは死者の書の再演と再現、是即ち」
地形を利用し足場を整え、身長差のバランスを取る。
そしてその後すちゃっとポーズ。
「せーの、グリーンフィールド・パピルス!」
説明しよう。死者の書とは霊魂が肉体を離れて死後の楽園に入るまでの過程を描いた書のことである。それに記載された壁画っぽいポーズをキメてみたわけだ。簡単に言うが、これが地味に精度が高いから侮れない。
「すご……! 右斜め四十五度くらいのねじれの位置をキープしそうなくらい、エモい……!!」
ラビットバニーは果たして自分の言っている言葉の意味を理解しているのか。
要するに頭のねじが飛ぶくらいになかなかアグレッシブなエモ表現であった。
その様子をつぶさに観察し、みよしが花神に差し出された葡萄ジュースを飲みながら眼光を煌かせた。ウケた。よし。
「その隙に攻撃でございます!」
実際絶対無敵バリアが朧に消失したのだから、みよしの作戦は成功だったと言えるだろう。
封印を解けばメジェドさんぬいぐるみが不穏な気配を漂わせる。
メジェドさんビームが疾走し、それは見事にラビットバニーの顔面を打ち貫いた。
成功
🔵🔵🔴
鷲生・嵯泉
斃すべきを倒す為ならば何を惜しむ心算も無い、が……
要は琴線に触れれば良いという事か…?
考えれば考えた分、混乱しそうだ。止めておこう
慣れん演技等した所で効果が有るとも思えん
ならば常の通り、真正面から当たる事で示して見よう
攻撃は敢えて躱さずに受け、命を失おうと決して屈さぬ意志を翳す
相当なダメージは有ろうが承知の上だ
激痛耐性と覚悟で耐え、膝など付かずに胸を張る
例え刃を折ろうとも、この五体を砕こうとも
私の意志を折る事等出来はせんぞ
もしバリア解除が叶ったならば
如何な僅かな隙であろうとも見逃しはしない
乗せられる己が力の総てを加えての剣刃一閃、叩き付けてくれる
……破る手立てが有るものを無敵等とは云わぬ事だ
●エモ戦
次々と絶対無敵バリアを構築してはエモで消滅するのを繰り返す、そのせわしなさといったら尋常ではない。
「……、……」
鷲生・嵯泉(烈志・f05845)が眉根を寄せる。
ラビットバニーは強敵だ。強敵である。それはバリアを適宜剥がされ猟兵から連打を浴びている割に、それでも気丈に立ち続けていることからも察せられる。それに一撃一撃が重い。油断大敵だと、気を引き締めてかかるその刹那。
つい思案に耽ってしまうのはそもそも『エモい』という言葉に馴染みがないからだ。
「斃すべきを倒す為ならば何を惜しむ心算も無い、が……要は琴線に触れれば良いという事か……?」
ではラビットバニーの琴線とは何を指す。基準かなりガバい、とは本人の言だが、さてガバいとは何ぞや。どこまでがその射程圏内に含まれるのか。
そこまで考えて嵯泉はかぶりを振った。
「考えれば考えた分、混乱しそうだ。止めておこう」
元々嵯泉は策を講じ芝居をすることに長けてはいない。生真面目な性分であったし、実直に仕事を積み重ねるほうがよほど己に向いていると考えていたからだ。
エモを狙って慣れない演技をしたところで、たいして効果があるとも思えない。
ならば。
「常の通り、真正面から当たる事で示して見よう」
「あっ武人ってやつ? それもなかなかエモいじゃん!」
そう来なくっちゃ、そんな風に嘯いたラビットバニーが絶対無敵バリアを展開する。そしておもむろに赤べこキャノンを構えた。
放たれた光弾は大きい。真直ぐに嵯泉へ向かっていく。
しかし嵯泉は一歩も動かない。
「……!」
歯を食いしばり、敢えて真正面から受け止めた。
柘榴の眼光は鋭く前へ。
身を揺るがさず毅然とした風情は、命を奪われようとも決して屈さぬ意志の強さをこれ以上ないほどに打ち立てた。
衝撃は大きい。骨が軋み、肉が抉られる。口の端から赤が滴った。だがそれも承知の上であった。
ラビットバニーの攻撃力の高さを全身で実感しながらも、意地でも膝をついてなるものかと相手を見据えた。
苛烈な覚悟は、絶対に損なわれない。
「例え刃を折ろうとも、この五体を砕こうとも、私の意志を折る事等出来はせんぞ」
声を張る。どれだけ傷が痛もうとも、厳しい面差しは揺らぐことはない。
するとラビットバニーが両手を口元に添えて肩を震わせた。見えないが、きっと兎面の奥の瞳はハートの形をしている。
「えっ……何その、真の強さは心の強さだ、みたいな……エモ……」
まるで何かの鳴き声か何かのように「エモ」「やばいエモい」「無理」「つらたん」と連呼しているラビットバニー。
完全にバリアが消滅したその隙を見過ごすほど、嵯泉は悠長ではない。
一気に踏み込む。乗せることが出来る力のすべてをその一太刀に籠める。
下段から一閃。
禍断の刃がラビットバニーの横っ腹を横薙ぎに斬り払う。
「……破る手立てが有るものを無敵等とは云わぬ事だ」
「あっ好き」
鳴き声がまたひとつ、追加された。
成功
🔵🔵🔴
◆
猟兵たちの攻撃に、徐々に追いつめられるラビットバニー。
「ふっは、やるじゃん……」
愉快そうに破顔――兎面だから見えないが――しているようにも思う。エモを、存分に楽しんでいるのだろう。
いつからかラビットバニーに明らかな疲労が見えていた。
数多のエモが重なり、着実に絶対無敵バリアを剥がしては叩くの繰り返し。
それが続けばいくら強敵とされるラビットバニーとて、着実に削られるのは自明の理。
決着の時は近い。
誰もがそう、肌で感じているようだった。
戒道・蔵乃祐
◆鼓舞
既に互いは満身創痍
ですが
もう一押し
僕の何がエモいのかは正直よく分からないのです
でも
貴女が戦いの場に於いて
喜びを感じてしまうことで自分自身を弱体化させる矛盾
感性に誠実なんですね
ドン・フリーダムを守護する三強の一角として敬意を表します
非才の身なれど、此処で貴女の様な強者に巡り逢えて良かった
この戦いを糧に、僕は更に高みを目指す
故に今此処で
僕が出来る限りの全力を出し切りたい
◆
最早防御は不要
気合いと力溜めで限界までダメージを受け続けて🔴真の姿解放
釈迦如来の権能を借り受ける神降ろしで破魔の力を宿し
十面埋伏の計発動。十六羅漢と共に、ラビットバニーへ捨て身の一撃で総力戦を仕掛ける
残像十六羅漢正拳突き!
●エモ漢・真
先に一撃を見舞った戒道・蔵乃祐も、その経過を確かに見定めていた。先に喰らった傷が響き、腹に手を添える。互いに満身創痍と言っていい。
「ですが、もう一押し」
言葉にすれば背が押される。蔵乃祐はゆったりとした足取りでラビットバニーの前に進み出た。
「もう一押しなのはこっちだっての!」
再度絶対無敵バリアが張られる。ラビットバニーが跳躍し、赤べこキャノンを放出する。
降り注ぐ光弾。それを蔵乃祐は真正面から受け止めた。
最早防御は、不要。ただ耐えるのみ。
キャノンの軌跡は蔵乃祐の身体を貫き、夥しい鮮血が散る。
しかし蔵乃祐は揺らがない。膝をつかない。視線は真直ぐ据えたまま。限界の端に踏み止まり、それでも尚折れぬ。
不屈の闘志を身体の芯に携え、不動の山の如くに佇んでいた。
ゆっくりと唇を開き、閉じる。少しの間を置いてから意志を声にする。
「僕の何がエモいのかは正直よく分からないのです」
率直な言葉だった。不意を突かれたように瞬くラビットバニーを見遣り、蔵乃祐は続ける。
「でも、貴女が戦いの場に於いて、喜びを感じてしまうことで自分自身を弱体化させる矛盾」
それはオブリビオンの中でも特異なものであるのは間違いない。
続いた声音は存外柔い。
「感性に誠実なんですね」
「えっ……」
今絶対ラビットバニーの背景に点描トーンのハートが舞った。そんな気がした。
蔵乃祐の双眸には、強者とまみえたことへの歓びが確かに萌していたし、相手を一人の好敵手として重んじる誠意が滲んでいる。
「ドン・フリーダムを守護する三強の一角として敬意を表します。非才の身なれど、此処で貴女の様な強者に巡り逢えて良かった」
「そ、そんなさあ……ずるくない……? 流石のあーしもこう……エモ通り越してこう……」
言葉にならないらしく、ついついろくろのポーズをするラビットバニー。
その眼前、絶対無敵バリアが見る間に薄らいでいく様を見届けながら、蔵乃祐は淡々と、だが力強く言い切った。
「この戦いを糧に、僕は更に高みを目指す。故に今此処で、僕が出来る限りの全力を出し切りたい」
口を引き結ぶ。それ以上はいらぬ。億の言葉より一の拳で語ろうか。
――勝負。
空気が薄氷を帯びる。張り詰める。ラビットバニーもバリアが消滅したにも関わらず、怯む様子はなかった。それでいてバリアを再構築しようともしなかった。
否、出来なかったのかもしれない。彼女の胸の中に息衝くエモさがあるばかりに。
蔵乃祐は踏み出す。また一歩。さらに一歩。そのたびにゆらり闘気が膨れ上がる。
それは瀕死とも言うべき体力を糧として紐解く真の姿。
両手を広げ、神が降りるのを待つ。蔵乃祐の背に光の梯子が降りるように見える。しばし戦場に落ちた静謐を反芻するように瞑目する。
蔵乃祐に貸し与えられたのは釈迦如来の権能。破魔の力を漲らせれば、迷いなどない。
「ノウマク サンマンダ ボダナン バク」
目を開く。
十六体の羅漢がそこに顕現した。釈迦の命により永くこの世にあり正法を護持し衆生を導く高僧。彼らは蔵乃祐の意を正確に汲み、前を見据える。
時は来れり。
疾く馳せる。蔵乃祐は真正面から捨て身の一撃を見舞うと決めていた。続く羅漢らと共に一気に肉薄する。
ラビットバニーの肢体にめり込む拳骨。衝撃は二度、三度、さらに重なる拳の嵐は果たして残像かはたまた実物か。
今一度、低く腰を落とし大きく突き出した拳はど真ん中を打ち抜く。それはくしくも、蔵乃祐の先にかけた言葉と同じだけの真摯さがあった。
「残像十六羅漢正拳突き!」
鋭く重く、真直ぐに。
それは先の言葉の通り、蔵乃祐がラビットバニーへ敬意を表しているからこその、遠慮も容赦もない一撃だった。
「サイコーのエモさをありがと――――!!」
弾き飛ばされたラビットバニーの顔には、どこか清々しくも満足そうな笑みが咲いていた。ように見えた。
地面に落ち、転がったラビットバニーは何かを掴もうと手を伸ばしたが、消滅間際の朦朧とした思考にもエモを見出したのかもしれない。
それに誰かが思い至る前に、力のなくなった手は落ちる。そして再び動くことはなかった。
勝負あり。勝者――猟兵たち。
成功
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